約 489,545 件
https://w.atwiki.jp/sexyvoice/pages/449.html
「あれー、今、帰り?ロボ」 日も落ちかけた秋の夕暮れ時、駅の改札を出るとばったりと制服姿のニコに出くわした。 「うん、ニコも?」 半年ほど前、ニコと数年ぶりの再会を果たし、それまで言葉を交わすことのなかった日々が 嘘のように、付かず離れずな不思議な関係を取り戻していた。 「ねぇ、土日は特に予定ないよね?家にいる?あたし、遊びに行ってもいい?」 畳み掛けて自分から、聞いといて 「あ、返事はいいや。どうせこれといった予定もなくてヒマしてるだろうから、適当な時間に覗くわ」 昔ながらの少しばかり生意気な性格はちっとも変わっていない。 それでも少女らしい可愛さの中に女らしい雰囲気が感じられるようになったのは俺も認めざるを得ない。 「ロボんちのお母さん、元気にしてるの?もうそろそろ訪ねてくる頃なんじゃない?」 「それは言わないでくれ……」 近頃の母ちゃんは愛しのカン様のファンの集いはもちろんだが、 それ以外たいした用事があるわけでもないのに気まぐれに我が家に顔を出す。 ヒマを持て余しているのか? 「いつも何かしら文句言ってるけどさ、ロボの世話焼くの楽しそうだよ」 とニコは屈託なく笑って言うけれど。 頻繁にやって来るということは、当然ニコとも鉢合わせするわけだが、 俺が若い娘をたぶらかして部屋に連れ込むなんて考えは毛頭持ち合わせていないらしく それどころか母ちゃんはニコとは気が合うようで何かといえば彼女の肩を持つ。 まあ、仲が良くてなによりってことだけどさ。 「じゃ、ここで。また、あした」 「ん、気をつけて帰れよ」 バイバイと手を振るニコと別れて、馴染みの店で調達した惣菜の袋を提げて商店街を歩きながら 今夜はどのロボットのご機嫌を窺おうかと頭を捻っていると、ポンと後ろから誰かが俺の肩を軽く叩く。 「え…あ、ああぁ~~~!で、出たぁ~!!」 そこらじゅうに響き渡る叫び声をあげる俺。 「なんて驚き方してるんだ、人をバケモノみたいに」 振り向いた先には、ニコが予言したある人物が澄ました顔して佇んでいた。 「母ちゃん!!」 「はいはい、そのとおり母ちゃんだよ。またまたお邪魔するよ。 それより威一郎、その手にぶら提げている小さな包みは晩御飯かい?」 うんと頷く俺に母ちゃんは大きな溜息を吐いて 「給料日までまだ日にちはあるっていうのに例のおもちゃにつぎ込んで、とっくにお金が底をついて、 ロクなもの食べてないんだろ?社会人として情けなくはないのかい?おまえは」 ズバッと言い当てられ、通りの真ん中で説教される始末。 「母ちゃんが栄養のつくうまいもの食べさせてやるから、さっさと帰るよッ ほら、荷物持っておくれ。重たくて仕方ないんだよ」 母ちゃんのカバンの重量まで俺のせいにされそうで、不満たらたらに帰路につく。 突如来襲した母ちゃんによって、ロボット達と共に過ごす有意義な週末は脆くも崩れ去った。 「こら、威一郎!テレビばっかりに集中しないでよく噛んで食べなきゃダメだろッ」 朝から忙しなく動きまわり、俺のペースは乱れっぱなし。 「あーっ、何で切っちゃうんだよ!今、いいとこだったのに~」 ふいに視界から行方を晦ませたマックスロボにご飯粒を飛ばしながらの抗議もどこ吹く風。 「早いとこすませるんだよ。なかなか片付かないじゃないか。朝どころかもうお昼だっていうのに。 お天道様もとうにお目覚めだよ」 ブツブツ言いながら母ちゃんは卓袱台に頬杖をつくと 「休みだからって、ダラダラといつまでも布団の中にいるような堕落した生活は改めなきゃいけないね。 ま、しばらくやっかいになるから、母ちゃんがおまえの緩みきった根性を叩き直してやるよ」 「しばらくって、いつまで居るんだよ?」 「なんだい、不満なのかい?30近いいい歳した息子の面倒をみてやろうっていう こんな優しい母親がどこにいるっていうんだ。贅沢いうもんじゃないよ!」 「う……」 それを言われると…。母ちゃんに心配かけっぱなしなのはわかっちゃいるけどさ。 母ちゃんの愛しい永遠の君、カン様とやらに対する未だ冷めやらぬ熱烈ぶりはうちに来ても いつ何時お構いなく発揮され、当然テレビは四六時中カン様に占領される。 時の流れは残酷で世間では一時的に持ちはやされてとっくに忘れ去られた過去のモノに扱われがちで。 現に母ちゃんのファン仲間もかなり減ったらしいけど、ニコに言わせれば 「周囲に惑わされずにずっとひとつのことを好きでいられるロボのお母さんは素敵で格好いい」 のだそうだ。そんなもんなのか? なら俺だってずーっとロボット一筋だけど? まあそれは置いといて、あと数日は母ちゃんがここに居座っているというのは変えようのない事実。 ああ、さよなら俺の穏やかな日常。 「それはそうと今日はニコちゃんは来るのかい?」 「多分。来るとは言ってたし、母ちゃんのことは一応連絡はしといたけど。何、ニコに用事でもあんの?」 「ん?まあ、ちょっとね。……フフフ」 ……ゾクッ。 うわッ。ど、どうしたんだ?全身に寒気が…。 ヤバいな。何か妙なこと企んでるんじゃないだろうな? 茶碗を持つ手にごく小さな緊張を覚えながら、意味深な微笑を浮かべる母ちゃんに眉をひそめる。 「威一郎、おかわりは?」 「あ、うん」 言われるがまま、差し出して戻ってきた茶碗を受け取ろうとした時 軽快なリズムで階段を駆け上がってくる音がして、 「こんにちはー」 とニコが爽やかな挨拶で玄関の扉を開けた。 「あらー、いらっしゃいニコちゃん。また一段と可愛くなって。さあ、あがってこっちへお座んなさい。 ほら、おまえはよそ見してないでさっさと食べる!」 おじゃましますと一言告げて、丁寧に靴を揃えているニコの動きをぼーっと 目で追っていた俺に母ちゃんのゲキが飛ぶ。 ちぇっ。どうでもいい扱いされてるよな、俺って。 「ロボ、今お昼なの?うわぁ、おいしそうなのがたくさん並んでる~」 ニコは卓袱台の上をひとしきり見渡したあと、俺を見てぷっと声を漏らして表情を崩す。 「ご飯粒ついてるよ、ロボ」 「へ、どこに?」 ここにとふいに伸びてきた手が顎のあたりに触れたかと思ったら、ニコがそれを躊躇うことなく 自分の口の中へと運んだ。 「え!?」 ちょっと待ってくれッ。それはマズいでしょ!? こういうの子供の頃母ちゃんにしかされたことないから、どう切り返したらいいかわかんないよ~。 なんかドキドキしてきた。 なのに緩やかに脈打つ動悸を加速させた張本人は何食わぬ顔をして、ちょこんと座っていて 明らかに俺だけが焦っている。 「あらあら、本当に子供みたいだねぇ、おまえは。 今からニコちゃんの手を煩わせるなんて、先が思いやられるよ」 あ、そうだった。母ちゃんがいたんだ。お、落ち着け、俺! ん?今からって、どういうこと? 「ニコちゃんは食事はすませてきたのかしら?よかったら、一緒にどう?」 「えー、いいんですか?実を言うとこの時間帯を狙って来てたりして…」 と、小さく呟くと可愛く舌を出して笑った。 「抜け目ないなぁ、ニコ」 素直に感心する俺に向かって 「だってさ、ロボのお母さんの作る料理はどれもこれもおいしいんだよ」 「まあまあ、どうしようかしら。そんなに褒められて」 「ほんとですよ。ロボも料理はうまいけど、それはお母さんゆずりだから、あたりまえのことなんですよねー」 「うまいわねぇ、ニコちゃんたら」 用意してきたニコの分の器を手渡しながら嬉しそうな母ちゃんは艶のある顔色で 「その言葉、素直にありがたく貰っておくわね。…そのかわりと言ってはなんだけど、 後で私の頼みを聞いてくれるかしら?」 「何ですか?痛いとか怖い思いするとか余程のことじゃなかったら構いませんけど」 「ありがとう。それほど苦痛なことじゃないよ。詳しくはこの後でね。さあ、食べて」 「はい、いただきます」 頼みってなんだろう?イヤな予感がするんだよなぁ。うーん……。 気分がモヤモヤして晴れないまま、途切れることのない会話は次第に二人だけのものになり 「あの、この間教えて貰った筑前煮、家で作ってみたんです」 「あら、そう。どうだった、ご家族の評判は?」 俺の存在は無視されて和やかに談笑は続く。 「あたし的にはイマイチかなと思ったんですけど、他の皆はおいしいって言ってくれて」 「ニコちゃんは元々素質があるのよ」 「いやー、そんなことないですよ~」 楽しそうに話に花を咲かせるニコと母ちゃんは友達のようで親子にも見えて。 先月だったか、仕事が終わって家に帰ると何の連絡もなしに来ていた母ちゃんとニコが一緒に 台所に立っていてビビったことがあったっけ。 こういう状況で微妙な空気を醸し出していたら、やっぱ大変じゃん? 会社の結婚している同僚の話では男は右往左往するばかりで、気苦労が耐えなくて すげー敏感な問題みたいだからなぁ、嫁姑の関係って。 …はっ!?いやいやいやッ、ちがーう!嫁姑って、ナンだ!?おかしいだろ!? だいだい俺とニコはまだ付き合ってもいないだろ~。 うわーっ、まだって何だよ、まだって!? 「…威一郎、おまえ、何やってるんだい?とうとう頭がおかしくなったのか」 慌てふためく心の内を打ち消すように激しく首を振る俺に母ちゃんの呆れた視線が突き刺さる。 「べ、別に!何でもないよ。大丈夫」 「そうかい、だったらいいけど」 少し怪訝そうな面持ちでそう言うと再びニコと話は弾んで、やがてその合間にカン様なる単語が ちらほらと紛れるようになり、母ちゃんのボルテージが段々と増していくようになると、 勘の鋭いニコは何かを察知したのか、相槌をうちながら俺のほうへ度々目で合図を送る。 これはまずいと隙を狙って、母ちゃんに呼び掛けてはみたものの 「話かけるんじゃないよッ。今、カン様の魅力をニコちゃんに説明している 大事ところなんだから、邪魔するな!」 あえなく一蹴され、やっぱり相手にされない。 「はあ~、ニコちゃんとお喋りしていたら、楽しくて時が経つのも忘れてしまうわ。 やっぱり持つべきものは女の子よねぇ。うちは男だけの一人っ子だから、余計にそう思うわ。 小さな頃は可愛いけど、大きくなったらなんの面白味もないからね」 チラリと俺を見て、あてつけがましく言い放つと 「でもいいわ。いずれニコちゃんがうちのお嫁さんに来てくれるんだから、 私にも待ちに待った娘ができるわ」 「え?」 「は?」 ほとんど同時に声が被る。 たった今、聞き捨てならないことを言ったような……? 「あ、あの、母ちゃん?その今なんて言っ…」 「なんだい、食べ終わったのかい?ニコちゃんも?じゃあ済まないけど後片付け手伝ってくれるかしら」 俺の質問には耳を貸さずにニコを伴い素早く立ち上がる。 そうこうしているうちに台所仕事を終えた母ちゃんは姿勢を正すとようやく本題を切り出す。 「それで、ニコちゃん。頼みって言うのはね…」 「はい、どうぞ」 「ちょっと、あっちへ行きましょうか」 奥の部屋を指差してニコの動きを急かす。 「威一郎、母ちゃんがいいって言うまで部屋を覗くんじゃないよ」 俺にはしっかりとクギをさして。 「え、あぁ…うん」 母ちゃんの意図することが、全く理解できないのだけれど一応返事だけはしておく。 次の指示を待ちながら、俺は仕方なく食事中に消されたマックスロボの続きに見入っていた。 背後から襲ってくるなんとも形容しがたい不穏な空気を感じながら。 「おい、威一郎!おまえはこれに着替えといておくれ」 突然、降りかかった声に顔を向けると何やらコートらしき衣装を渡される。 それに、青いマフラーとメガネ……?これはいったい?? 「そうそう、これも忘れてたよ」 「わッ!?」 茶色い物体が母ちゃんの手から、飛んできて顔面を直撃して落下した。 「何だよ、もう~。……て、え?これはまさか……ヅラ?」 拾い上げたそれは、まさしく疑いようもないカン様のヅラだった。 「ああッ、カン様~!カン様~!!」 保存版の宝物『冬のソナチネ』ポスターを広げて見ているこっちが恥ずかしいぐらいに 黄色い歓声をあげ、頬を摺り寄せている母ちゃんに唖然とするより他はない。 「ほーら、早く着替えて。つっ立ってる場合じゃないだろ」 「あのさ、このポスターのマフラーと俺にくれたやつ色が違うんじゃない? これじゃ、完璧なカン様にはなれないよ?だから母ちゃんの要望に答えられないと思うんだけど」 「つべこべ言うんじゃないよッ。今日はこれでいいんだよ。 そうだ、ほっぺにもホクロ書いとかなきゃいけないね。はい、じっとして。これでカン様に変身変身と」 「ちょっ…やめろって!」 驚異的なパワーで押しまくる母ちゃんと決死の攻防を繰り広げている最中 「あの~、こんな感じでいいでしょうか……?」 戸惑いがちに間に割って入ったニコの声に振り返ると 「あぁ~~!ニコちゃん!すごいわッ」 「ええ~~~!!?」 な、な、何が起こってるんだ!? 俺の目の前に現れたのはニコであってニコじゃない……。 そのどこかで見覚えのある容姿はもしかして? 「ステキだわ!よく似合ってる。まさしくヨジンそのもの!」 そう今のニコはこのポスターのカン様に寄り添う女性・ヨジンのそっくりの衣装を身につけていて 「あ、はあ、そうですか…似合ってますか…」 「母ちゃん!何のマネだよ、これは~」 詰め寄る俺にどさくさに紛れてメガネとヅラを強引に装着させ、してやったりの母ちゃん。 「何のマネって、カン様の恋人のヨジンじゃないか」 「だ~か~ら~」 こんなものわざわざ用意してきたのかよ!?まさか今回の目的はこれか! 「この間から、冬のソナチネを観ていたら、ヨジンの少し俯いた横顔がニコちゃんに似ていると思ってね。 どうして今まで気付かなかったんだろうねぇ」 「似てないだろッ」 つい口答えしてしまった俺に眉間に皺を寄せて 「いつまでもネチネチと往生際が悪いよ。男らしくないぞッ、威一郎!」 「そういう問題じゃない!」 「ならどういう問題なんだい?言ってみろ。さあ、早く」 俺の反発は口先だけのものだと最初からわかりきっている母ちゃんは屈するこもとなく ピクリともせず睨みを利かせている。 「あのッ、ロボもお母さんも程ほどにしておいたほうが…ケンカはよくないです」 なかなかケリがつきそうにない諍いを見るに見かねた(呆れた?)ニコが俺達親子を嗜める。 「ニコ、イヤならイヤだって言わなきゃダメだろッ。 甘い顔するとすぐつけあがるんだからな、うちの母ちゃんは」 「まーた、おまえは生意気にそうやって知ったふうな口を聞く」 「何年親子やってると思ってるんだよ。母ちゃんの性格なんてイタイほど身にしみてるんだからな」 おかげで何度ヒドイめにあったことか。 「もう、ダメダメダメ!ロボ、あたし全然平気だから、お母さん責めないのッ」 少しきつい口調で二人の間隔を遠ざけると、俺を見て 「正直いうとコレに着替えてって言われたとき、変なコスプレでもさせられるのかなって一瞬考えてさ。 やっぱりロボのお母さんだな、血は争えないなぁて思ってたんだ。 だけど、渡された服を見たら、予想に反して普通のモノだったから安心したっていうのがホントのところで まさか女優さんに変身するなんてびっくり」 「そんなこと思ってたの?コスプレだなんて、私は威一郎とは違うよ」 心外とでも言いたそうに俺を流し見た後、ニコをそっと覗き込む。 似たようなもんだろと口に出してブチまけたいけれど、ここはグッと我慢して心の中で悪態をつく。 「でも、やっぱり似てます。なんて言うかうまく説明できないけどホントはお互いわかりあってて 物凄くあったかいところとか、お母さんとロボみたいな関係……あたし好きです」 「ありがとう。私はともかく、世の中からズレてるようなバカ息子をわかってくれるのは貴女だけよ」 にっこりと微笑み、ニコのヨジン仕様の服装を綺麗に整える。 その姿は知らない人が見たら、本当に仲睦まじい母と娘に映るかもしれない。 そんな二人を前にしていたら、さっき母ちゃんが言った“お嫁さん”という言葉がふっと脳裏をよぎって、 変に意識してしまい、カァと身体中の血が熱くたぎる気がして 「そ、それで母ちゃんッ、この後どうすんの?俺とニコにこんな扮装させてさ。 これで気が済んだんなら、もう脱いでもいいだろ?」 早々に終わらせようと母ちゃんをせっつく。 「まあ、待て。そう慌てるもんじゃないよ。まず記念撮影は忘れちゃいかん。 それで最後のメーンイベントは……」 不気味な笑みをこぼしてテレビの前に陣取ると慣れた手付きで再生ボタンを押す。 「あ、カン様……ス・テ・キ」 窒息でもするんじゃないかと思うほど、微動だにせずに恍惚として見つめる先には その名に偽りなくのカン様の姿が。 「ああ~、これこれ、ここだよ」 母ちゃんが指さした画面には、その昔、大事な大事なマックスロボのビデオに重ね撮りされた 冬のソナチネのとあるシーンが流れていた。 「ここが私が一番のお気に入りなんだよ。この場面をおまえとニコちゃんに再現してほしくてね」 はい?幻聴?再現って… 「えーっ!お母さん、あたしとロボがやるんですか?このドラマの二人を!?」 「そうよ。お願いできない?」 予想外の申し出に目を丸くするニコに母ちゃんは臆面もなく答える。 「いいかげんにしろよ、母ちゃん!俺達、役者でもなんでもないんだぞッ」 「いいじゃないか。本物に会うのは無理だから、似ている人間でもいいんだ。 母ちゃんだって夢みたいんだよ。親孝行だと思ってさ」 マジですか?あのシーンの二人って、どの角度から見ても抱き合ってるだろ… あれをやれと?勘弁してくれよ~。 「あ、ほらほらニコちゃんの立ち位置はこっちだね。で、おまえはこう背中を向けて…」 って、おいおい、やるなんて誰も言ってないのに早速指導かよッ。 「よし、準備OK!そうだ、一回セリフの確認をしとかないとね」 リモコン片手に朗々としている母ちゃんを視界の隅に置きながら 「どうするよ、ニコ?本当にやるのかよ。無理しないで今のうちに逃げてもいいんだぞ? 何も母ちゃんに気使うことないんだからな」 さすがのニコもこの展開は選択肢にはなかったようだが、時間が経つにつれ落ち着いてきたのか 「うん…。でも、ここまできたら今更、後に引けないというか…。 本物じゃないのはお母さんの承知してるんだし、さわりだけやっても納得してくれるんじゃないかなぁ」 「いいの?ウソだろ?」 ヒソヒソと小声で囁きあう俺達に母ちゃんの気合の入った声が掛かる。 「じゃあ、このシーンからいくよ。……よーい、スタート!」 …名監督気取りだな。あーもう、こうなりゃヤケだ! 『お願い。チュンサン…』 てな、ニコ=ヨジンの懇願するセリフがあって、こう俺が振り返ってだな… あれ?えーっと、次どうするんだったっけ?そうそう、抱きしめるんだったよな?抱きしめる……。 い、いいのか?いいんだよな?演技だから、仕方ないし。うん。 そう自分に言い聞かせると、ええいッ、なるようになれッ!とニコの背中に腕をまわして引き寄せた。 女の子と…ていうかニコと触れ合えるなんて、振って湧いたまたとないチャンスなのに 何が悲しくて母ちゃんの前でラブシーンをやらなきゃいけないんだよ~。 なんて羞恥プレイ……! ニコも同様に緊張しているのか、微かに震えているように思う。 腕の中にいるニコは暖かくて想像していたよりも華奢でとてもいい匂いがして。 なんだろう?柑橘系の甘くて優しい香り……。 ああ~、このまま時が止まってしまえばいいのに。 「ロ…ロボ…」 胸のあたりで息苦しそうなニコの呼吸が夢見心地の俺を呼び覚ます。 「な、なに?」 「…セリフ、抜かしてるよ」 へ?セリフ?このシーンはまだだった?早すぎたのか。は、恥ずかしすぎる…。バカな俺。 「はい、ストップ!ダメだろ、威一郎。ここぞというときにセリフを忘れるなんて。NGだよNG。 使えない子だねぇ、まったく」 「うるさいなぁ~。しょうがないだろう」 素人の演技にケチつけるなんて、見当違いだっつーの。 「今はチュンサンとヨジンに成りきるんだよ。 熱い抱擁なり接吻なりは後で素に戻った時に思う存分いくらでもやっておくれ」 げッ、何言いだすんだよ~、この母親は! 「ちょっと!こっち来てくれ」 「あぁ?どこに行くっていうんだい?」 慌ててニコのそばから引き離して奥へと連れて行くと、不服そうな母ちゃんに 「あのな、母ちゃん。俺は息子だからさ、こんな柄でもない芝居の真似事なんて百歩譲って我慢するよ。 でも、ニコは関係ないだろ?変なことに巻き込まないでくれよ」 「おまえは妙なとこで頭が固いんだから。ニコちゃんはもう少し経ったら私の娘になる子だよ。 家族も同然じゃないか」 あの、さっきからお嫁さんとか娘とかいったい?? 「ニコちゃんみたいないいお嬢さんがおまえとお付き合いしてくれるなんて、奇跡としかいいようがないよ」 待て。いつ、どこで、誰がニコと付き合ってるなんて言ったよ!? いくらなんでも飛躍しすぎだよ、母ちゃん……。 「数年後には二人が結婚して、新しい命が授かって可愛い孫に恵まれる。そんな日が待ち遠しいんだよ。 まあ、おまえがヘマして逃げられないことが大前提だけどな。 それまでは母ちゃんはカン様で夢見とくんだよ」 肝心な当事者たちは置き去りにして、意気揚々と独りよがりな将来設計をひけらかす母ちゃん。 危ない。こりゃ暴走する前に訂正しておくべきだなと口を開きかけたら、何か物体が落下した鈍い音が響いて、 その方向へと意識を傾けると 「あ…ご、ごめん。マックスロボ落としちゃって……あはは…」 手が滑ったのかニコは足元に落ちているマックスを拾おうとするが取りこぼしてまた床に転がる。 見るからに動揺しているようで、ごめんねと謝罪を繰り返すその視線は落ち着きなく泳ぐ。 あー、聞こえちゃったかな、今の話。低く小声で喋っていたつもりだったけど、ニコに筒抜けか。 「ニコちゃん、そんなおもちゃは放っておきなさい。邪魔になる所に置いている威一郎が悪いんだよ」 「母ちゃん!あいつにはなぁ、魂が宿ってるんだぞ!それをおもちゃなんてッ」 よく知りもしないで勝手なことを~!俺にとっては本当にただのロボットじゃないんだからな! 「訳がわからない事言うんじゃないよ。……おっと、電話じゃないか」 俺の憤りなんか眼中にないようで、はいはい、ちょっと待っておくれよと独り言を呟きながら、 自分のカバンから携帯を探り出す。 「おや、これはカン様の愛のテーマ。父ちゃんからだな。ハイ、もしもし」 愛のテーマ?へぇ~、それを父ちゃんからの着信にしてるんだ。 なんだかんだいって仲いいよなぁ、父ちゃんと母ちゃんは。 俺もああいうふうになりたいなって、最近特にそう思う。 それはニコの存在が俺の中で必要不可欠になっているからだと気付いたから。 だから、母ちゃんの誤解もありがたくはあるけど複雑な気持ちで、あの豪快な懐の持ち主に 首突っ込んで引っ掻き回されたら、まとまるものもまとまらないですべてが空回りしそうな気がする。 いや、ちょっと違うか。そう考えるより先に俺自身が一歩踏み出さなくてはいけないはずで。 「ちょいと突然で悪いけど、これから家へ帰ることにしたから」 「え、どうしたんだよ。何かあったの?父ちゃん?」 急なことに事態を飲み込めずにいる俺に母ちゃんは 「ああ、腰をやったんだとさ。もう若くないんだから、無理するなって言ってるのに。 息子の世話はおろか父ちゃんまでとは、なかなか楽じゃないねぇ」 やれやれといった顔でそう言うと慌ただしく荷造りを始める。 見送りはいいからと頑な母ちゃんを、じゃあ階段下までと言い伏せて 「バタバタして迷惑かけてごめんなさいね、ニコちゃん。 今度来たときにゆっくり貴女のご両親に挨拶に伺うわ」 「え、あ、はあ」 「あー、母ちゃん、忘れ物ない?」 帰り際のいきなりな言動に困惑して、曖昧にそれに頷くニコから話を逸らそうと咄嗟に聞いた俺には目もくれず 「ニコちゃん、頼りない息子でどうしようもないだけど、いたらないところがあったら 遠慮しないで厳しくやって頂戴。 貴女がそばにいてくれたら私は何も心配することはないわ。どうか末永くよろしく頼むわね」 ま、また、母ちゃん!そういうふうに押し付けられたらニコが困るだろ… 「……はい、お母さん」 え…?はいって…ニコ? すぐ隣で微笑みあうニコと母ちゃんには女同士にしかわからない相通じるものがあるのか 要領を得ない俺はただ漠然と二人を眺めていた。 「威一郎、おもちゃ…もとい、ロボット弄りもいいがニコちゃんも大事にしてあげるんだよ。 いざというときに好きな女も守れないような男は本物の男とはいえないからなッ」 と肩を握り締めた拳でつかれて 「うぐぅ……いってーなぁ、少しは手加減しろよな~」 相変わらず半端ないなぁ。わかってるよ、そんなの。 「大丈夫です、お母さん。ロボは情けないときのほうが多いけど、 困ってる人は絶対見て見ぬ振りなんてできないし 少なくともあたしには信頼できて頼りになる人です」 「ニコ」 そう語りながら彼女のまっすぐに俺に向けられる真剣な眼差しが何を表しているのか 女心に疎い自分でも気付かないはずはなくて。 気持ちは通じ合ってる?これからも同じ道を歩んでいける? じっと逸らすことのないニコのはにかんだような柔らかい笑顔にぼんやりとした予感は確信に変わり、 俺の顔も自然と綻ぶ。 「あんたたちー、ケンカしないで仲良くするんだよ~!」 距離をおいてこだまする声にハッとしてすぐそばにいた影を捜す。 「母ちゃん!風邪ひくなよー、身体に気をつけろよー」 「また、来てくださいねー。待ってますからぁ!」 振り返ることなく上げた手を左右に振って小さくなっていく後姿は凛として格好よかった。 「あっというまに行っちゃった。口ではああ言ってたけどさ、 お父さんのこと心配でたまらないんだろうな。お母さんらしいね」 「そうだな」 好き勝手やっているようにみえるけど、それなりに微妙なバランスを保っていて家庭円満だよなと いつまでも見送りながら、つくづく思っていた。 一夜限りとはいえ、俺とロボット達の生活を脅かした元凶はあっけなく消えて平穏を取り戻したというのに なぜだか気の抜けたような、落ち着かないガランとした部屋が物足りなく感じた。 「ロボ、お母さん帰っちゃって寂しいんでしょ?そう顔に書いてあるよ」 「はあ!?なあに、バカなこと言ってくれてんのかなぁ。冗談でしょ?うるさいのがいなくなって、清々するよ」 「そうなんだ、ふーん」 ニヤニヤしながら俺の反応を探るニコにはすべてがお見通しのようで。 だったらと軽くお返し。 「俺はニコが居てくれるなら、それでいい。寂しくなんかないよ。ずっと一緒にいたい」 間違いなく嘘偽りのない本心をこのときとばかり告げてみる。 案の定、ニコは顔どころか耳まで赤く染まっていく。 「あの、その…あ、そうだ、今日の夕食はお母さんの代わりにあたしが腕を奮っちゃおうかな!」 照れ隠しなのかわざとらしい大声をだして、冷蔵庫を漁り始めて、あれこれと献立を組み立てている。 「俺、ニコが作った筑前煮が食べたいな。うまくできなくて自信ないみたいなこと言ってたけど これまでニコが作ってくれた料理でまずいものなんて何一つなかったよ。だから、食べたい」 「…ほんとに?じゃあ、わかった。そのかわり万が一まずくても全部食べてよね。 絶対だからね!残したら許さないから」 勢いよく身体をこちらへ翻したニコはまだちょっぴり頬が赤い。 そのくせ勝気な笑みは絶やさずに俺に念を押す。 するとニコがあっと表情を変えて 「…ねえ、ロボ。あたしら、すっごい変じゃない?」 「変?」 どこが?とニコの問いかけに内心首を捻りつつもしばし互いを観察しあう。 数秒後、思いっきり吹き出した。 それもそのはず、俺達は冬のソナチネコスプレのまま不自由さを感じることもなく過ごしていたのだった。 いやに身体に馴染んでてすっかり忘れてた!いつまでこの格好してんだよッ。 「母ちゃんがいたら大喜びしそうなシチュエーションだなぁ」 「そうかも」 渇いた笑いを交わしながらそそくさと普段の姿に戻るはめに。 「んじゃ、あたし買出し行ってくる」 玄関先で靴を履きかけるニコの後に続くと 「俺も行くよ。ニコ一人じゃ寂しいでしょ、俺がいないとね~」 「な!そんなことないよ。それはロボのほうじゃん!もう、早く行くよッ。ほら、テレビ消して」 「はいはい」 やや乱暴に背中を押されて、リモコンを向けた画面には幸せそうな家族の映像が。 若い両親との小さな小さな愛の結晶。 「可愛いねぇ、赤ちゃんって」 そのまま見とれていた俺の横でいつのまにかニコが目を細めている。 「うん、ちっちゃくて可愛いよな」 目前の情景が未来の自分とニコに重なって、ふとある言葉を思い起こす。 『二人が結婚して、新しい命を授かって可愛い孫に恵まれる』 母ちゃんの思い込みから生まれた家族計画がまるっきりの夢物語じゃなくなる日も遠くないのかもしれない。 どうして俺とニコがデキてると思ったのか聞きそびれてしまったけど、今となってはもうその必要はないか。 そのうち機会があれば聞いてみようか。などとあれこれ考えていたら 「ロボ。今、このテレビ画面を邪まな気持ちで見てたでしょ!?」 「エッ?言ってる意味がびた一文わかりません」 唇を尖らせて、問い詰めるニコに何が何やら。 「可愛いって言いながら、赤ちゃんじゃなくて若くて美人で綺麗なお母さんのほうに目線がいってた」 「はあ?そんなことないよ、あるわけないだろう?バカも休み休み言えよ~」 そりゃ見ていたのは否定しないけど、それはニコと重ねて見ていたからで やましい感情なんてこれっぽっちもありませんてばッ! 「何よ…バカって!いいもんッ、お母さんに言いつけてやるー!」 「えぇ!?ちょっ、ニコ!」 恐ろしい捨てゼリフを残して走り去るニコを追いかけて、もつれそうになる脚を引きずりながら 部屋を駆け出していく。 この先、俺はニコと母ちゃんの強力タッグに頭を悩ませることになるのだろう。 けど、それもある意味理想の形で幸せの巡り合わせに思えてくるからおもしろい。 「おーい、ニコ~、待ってくれよ~!」 あかるい未来はすぐそこに? 終わり
https://w.atwiki.jp/pokecharaneta/pages/17264.html
家族計画 登場人物 コメント 2001年11月2日にD.O.から発売されたハートフルコメディーアドベンチャーゲーム。通称「家計」。 18禁だが2005年2月24日にPlayStation 2版『家族計画〜心の絆〜』が発売された。 登場人物 サワムラー:高屋敷司/沢村司 名前繋がり コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る 草案 登場人物 ピカチュウ:高屋敷寛/広田寛 某トレーナーの名前から ハハコモリ:高屋敷真純/板倉真純 ドーブル:高屋敷青葉 スケッチ必須 ペルシアン:高屋敷準/大河原準 アゲハント:高屋敷春花/王春花 某ヒロインの名前から ジュペッタ:高屋敷末莉/河原末莉 使い手のシキミとの小説家繋がり ニャース:久美景 カクレオン:劉家輝 ルカリオ:山名純子 -- (ユリス) 2020-02-09 20 26 32
https://w.atwiki.jp/critic/pages/48.html
家族計画 ~絆箱~(D.O.)/2002/12/27 シナリオ:山田一 原画:福永ユミ 音楽:I’ve [あらすじ] 主人公・沢村司はわりと孤高。 家族の温もりを知らぬまま世間の冷たい風に当たってきたせいで、 少しばかり排他的な人間に。 そんな司がある日、路地裏で一人の行き倒れの少女を拾った。 チャイニーズ。 言葉も通じない。 司の提唱するところの「最も関わり合いになってはならない」タイプ。 だが司は、その少女……春花と同居生活をする羽目になってしまう。 それをきっかけに、司の周囲に集まる問題ありげな人々。 彼らの共通点は……家族の欠落。 やがてこの集団は余儀なく共同生活を強いられていく。 家族計画―――― それは赤の他人同士が生きるために結束する、互助計画。 モラルも考えも嗜好も異なる、 噛み合わない歯車のような彼らの行く末に、 果たして幸福はあるのだろうか? -OHPより抜粋- シナリオ:28/30 テキスト:27/30 グラフィック:6/10 サウンド:9/10 システム:5/10 基本点:10 総合:85/100 レビューは後日
https://w.atwiki.jp/gundamfamily/pages/832.html
838 名前:幸せ家族計画投稿日:2007/10/27(土) 19 06 44 ID ??? ステラ (もぐもぐ) ロラン 「お味はいかがですか、ステラさん」 ステラ 「おいしい」 ロラン 「そうですか。よかったです」 ステラ 「シンのお兄さんは料理上手」 ロラン 「ふふ、ありがとうございます」 住人が多い割には狭い兄弟家の居間も、三人しか人がいなければずいぶん広く感じるものである。 そんな広い居間の真ん中にちょこんと置かれたテーブルの前に、これまたちょこんと座ったステラは、にこにこ笑いながらケーキを食べていた。 兄弟一家の主婦……いや主夫であるロランお手製のショートケーキである。 シン 「ほらステラ、口のとこ汚れてるよ」 普段の十倍は優しい口調で言いながら、シンがステラの頬についたクリームをふき取ってやる。 まるで兄妹のように仲のいい二人の様子を、ロランは微笑ましげに見守っている。 ロラン 「いやあ、お二人を見ていると実にほのぼのしますね」 ステラ 「ほのぼの?」 ロラン 「こう、心が温かくなる、と言いますか」 ステラ 「うん。ステラも、シンの隣、温かくて好き」 シン 「な、なに言うんだよ……」 ストレートに好意を表すステラに、シンがどもりながら赤くなる。 いつも通りの光景に、ロランは深々とため息を吐いた。 ロラン 「ああ、いいですねえ本当に、やっぱり、この年頃の若者の交際はこんな風に健全であるべきですよ」 シン 「なんか爺むさいよ兄さん」 ロラン 「仕方ないでしょう。ウチの兄弟は、アムロ兄さんを筆頭に、 異性関係にいろいろと問題がある人たちばっかりですし。 ドモン兄さんにシロー兄さん、それにガロードは、一途なのはいいんですけど 少しは周りへの影響を考えてくださいって言いたくなるぐらいにベタベタイチャイチャ…… まあ、コウ兄さんみたいに何もなさすぎるのも問題ですけど」 ズズーッと茶を啜りながら、ロランはステラに微笑みかける。 ロラン 「そこへいくと、お二人は実に年相応に初々しい感じで、見ている方も安心できますよホント」 シン 「そんなもんかなあ」 ステラ 「よく分からない」 シン 「まあ、要するに、ステラと俺の仲がよくて、兄さんも安心してるってこと」 ステラ 「うん。ステラ、シン好き」 にっこり笑うステラに、シンの顔がさっきよりもずっと赤みを増す。 ロラン 「うんうん。いいですねえ、幸せいっぱいですねえ」 シン 「もうちょっと若者らしい幸せを見出せよ兄さん……」 ステラ 「ごちそうさまでした」 ロラン 「はい、お粗末さまでした……それにしても、最近よく我が家にいらっしゃいますね、ステラさんは」 シン 「ははは、半分は兄さんの作ってくれるお菓子目当てなんだよ。な?」 ステラ 「うん。シンのお兄さんのお菓子、とってもおいしい」 ロラン 「それは光栄です。簡単なものしか出来ませんけど、いつでもいらしてくださいね」 ステラ 「うん」 ニコニコ笑って頷くステラと、ニコニコ笑って彼女を見るロラン。 いつもニコニコ元気な我が家。ニコニコ動画ならぬニコニコ一家である。 839 名前:幸せ家族計画投稿日:2007/10/27(土) 19 07 54 ID ??? シン (それにしても、最近本当によく家に来るなあ、ステラ) それが決して自分目当てだけではないことに少々悔しさを覚えつつ、シンはふと心配になった。 シン (ロラン兄さんがやたらお菓子出して、ステラが遠慮なくそれを食べるって流れもお決まりになってきたけど…… 大丈夫なのか? あんだけカロリー高いもの食ってたら、太るんじゃ……) 女の子に対するサービスのつもりなのか、ロランがステラに出すお菓子は大抵普段よりもあまあまである。 今日のケーキなど、シンとしては半分も食べればうんざりするほどの甘さだったのだ。 それなのにステラはぺろりと一つ平らげて……と考えたところで、シンは彼女がじーっとこちらを見ていることに気がついた。 いや、正確にはシンではなく、その前にある半分残されたケーキを穴が開くほど見つめている。 シン (分かりやすいな) 苦笑しつつ、ケーキの乗った皿をステラに差し出した。 シン 「食べなよ」 ステラ 「いいの?」 シン 「俺、もうお腹いっぱいだからさ」 ステラ 「ありがとう。いただきます」 満面の笑みを浮かべて、ステラはまたケーキをほお張り始める。 実に幸せそうなその表情は、どことなく子犬を連想させるほど無邪気である。 シン (まあ、見た感じステラもあんま太らない体質だろうし、 何より本人あんまり気にしてないみたいだし、俺が気にすることじゃないかなあ) ロラン同様微笑ましい気持ちで彼女を見守りながら、シンはぼんやりとそう結論づけたのだった。 ……で、数日後。 ステラ 「うー?」 自宅にある自分の部屋で、ステラはお腹を見下ろしながら一人首を傾げていた。 何故だか分からないが、ぽっこりとお腹が膨らんでいるのである。 こんなことは、今まで生きてきて初めてだった。 ステラ (どうしよう) 不安だった。何か変な病気にかかったのではないかと思うと、怖くて涙が出てくる。 そうやって一人泣きじゃくっていると、扉を開けて同居人のアウルが入ってきた。 アウル 「何泣いてんの?」 ステラ 「アウル……ステラ、病気になっちゃった」 アウル 「え、なに、どういうこと?」 ステラがぽっこり膨らんだお腹を見せて説明すると、アウルは大笑いした。 アウル 「ステラは相変わらずお馬鹿だなあ」 ステラ 「ステラ、馬鹿じゃないもん」 アウル 「いやいや馬鹿だ、大馬鹿だよ! 女の人のお腹が膨らむって言ったらさあ、あれしかないじゃん!」 ステラ 「あれって?」 思い当たることがないのでステラが首を傾げると、アウルは笑顔で指を一本立てた。 840 名前:幸せ家族計画投稿日:2007/10/27(土) 19 09 54 ID ??? アウル 「妊娠だよ、に ん し ん!」 ステラ 「にんしん? えと、京都にあるゲーム会社のファンの人?」 アウル 「……なんでそう変に知識偏ってんだよ……妊娠ってのはさあ」 と、妊娠について簡単に説明する。 曰く、「女の人のお腹の中で赤ちゃんが出来ること」と。 アウル 「ほら、カサレリアのマーベットさんとかさあ。赤ちゃん生まれる前にお腹膨らんでたじゃん」 ステラ 「そういえば……じゃあ、ステラのお腹に赤ちゃんいるの?」 アウル 「そうなんじゃない?」 あっさり頷くアウルの前で、ステラは困惑して自分のお腹を見下ろす。 ステラ 「赤ちゃん……ママはステラだけど、パパは誰?」 アウル 「さあ。そもそもどうやったら赤ちゃんが出来るのかよく分かんないし。 あー、でもあれだよ。兄弟とか以外で、一番長く一緒にいた男の子供なんじゃないの?」 ステラ 「一番長く一緒……」 すぐに、一人の少年の優しい笑顔が思い浮かぶ。 ステラ 「じゃあ、パパはシン?」 アウル 「そうなんじゃないの?」 再びあっさり頷くアウル。 その瞬間、ステラの視界で色とりどりの花々が咲き乱れた。 ステラ (赤ちゃん。シンとステラの、赤ちゃん) プップクプー、と、どこからか天使のファンファーレが鳴り響く。 ステラはお腹を撫でながら、そっと呟いた。 ステラ 「アウル。パパとママは一緒にいるもの?」 アウル 「そうなんじゃないの?」 ステラ 「じゃあ、ステラはシンのお嫁さん?」 アウル 「多分ね」 ステラ 「……あいさつに行ってくる……」 アウル 「はいはい、いってらっしゃい」 841 名前:幸せ家族計画投稿日:2007/10/27(土) 19 11 19 ID ??? ステラ (ステラはシンのお嫁さん、ステラはシンのお嫁さん) 幸せ笑顔でとことこ歩き、ステラは兄弟家の前に到着する。 ちょうどロランが落ち葉の掃除をしているところだった。 ロラン 「ああ、ステラさん。何かご用ですか?」 ステラ 「うん。あのね、ステラ、シンのお嫁さんになる」 ロラン 「あははは、そうですか、それは嬉しいですね。将来そうなったら、僕も当然結婚式に……」 ステラ 「ううん。将来じゃなくてね、今すぐ」 ロラン 「……はい? それはまた、どうして……」 ステラ 「あのね」 ステラは、そっと自分のお腹に手を触れて、言った。 ステラ 「シンの、赤ちゃんができたから」 ロラン 「……」 ロランは硬直した。 シン 「Zzzzzzzz……」 ロラン 「シィィィィィィィィィン!」 シン 「おわぁっ!? な、なんだ、なんだ!?」 ロラン 「嫁入り前の人様の娘さんになんてことをぉぉぉっ!」 シン 「は、なに、なんのはなし!?」 ロラン 「兄さん許しませんよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」 シン 「ちょ、推進剤入りのガンダムハンマーは勘弁……抉れてる抉れてるぅっ!」 誤解を解いてステラを痩せさせるのに、シンは一週間ほど費やしたそうな。 アウル 「なー、スティングー。赤ちゃんってどうやったらできんの?」 スティング「そんなことも知らねえのかよ。いいか、コウノトリがだな……っつーかステラは嫁にはやんねーぞ」 アウル 「スティングは馬鹿だなあ」 link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。このページにつけられたタグ アウル・ニーダ シン・アスカ スティング・オークレー ステラ・ルーシェ 中編
https://w.atwiki.jp/urbangarde/pages/24.html
月へ行くつもりじゃなかった 月へ行くつもりじゃなかった→『海へ行くつもりじゃなかった』(フリッパーズ・ギター) あたしたちビルの上から飛んだ→自殺サークル (漫画) あたしたち駅のホームから飛べた→自殺サークル (映画) 少女の王国→『少女の王国』 (筋肉少女帯『月光蟲』収録) 顔が割れてる人が言った→大槻ケンヂ 「人類未だ月に到着せず」→ アポロ計画陰謀論として人類が月面着陸したのはアメリカのでっちあげだというもの。有名なものに「SF作家のアーサー・C・クラークが脚本を書いて、ハリウッドのスタッフがアリゾナで撮影した」というものがある。 家族計画→明るい家族計画(コンドーム自販機のキャッチコピー)
https://w.atwiki.jp/haruhi_best/pages/50.html
涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 幸せの連鎖 さて、本日は暖かい陽射しの中晴天に恵まれめでたくも高校卒業となったわけだが、 高校の卒業というめでたくも特別な日を涼宮ハルヒ率いるSOS団団員その一であり雑用係である おれが何事もなく過ごそうなどとやはり甘かったわけで、 ハルヒによるおれの親まで抱きこんだ手際良い策略により おれの知らないところで完璧に作成された婚姻届を市役所に提出して 晴れておれとハルヒは世間で言う夫婦関係となった。 まあ、簡単にいまの状況を説明してみたわけだが、市役所では突如制服姿で訪れ、婚姻届を提出しようと する俺たち二人に向けられる窓口のオヤジの好奇の視線に耐えたり、 その後の双方の親を交えた食事会で当事者であるおれより高いテンションで 孫は男がいい、いや女だ、だのたまごクラブだの子供の名付け辞典だのと 気が早すぎる親たちが騒いでいたり、妹がさっそくハルヒをお義姉ちゃんと呼び出し、この気に乗じて 妹のおれに対する呼称をお兄ちゃんに戻すべく画策してみたのだが、 「キョンはキョンでしょ。」 「キョンくんはキョンくんじゃない。」 などと意味のわからない理由であっさり却下されたことなどはどーでもいいことなので詳しくは割愛する。 そんなわけで今、長門の家でSOS団メンバー5人と名誉顧問である鶴屋さんにご足労願い、 結婚祝い&卒業記念パーティーの真っ最中なわけである。 SOS団での祝い事や記念日では恒例となっている鍋や鶴屋さんが手配して届けられた一流ホテルの 料理の数々に舌鼓をうち、こんなときくらいはいいだろうとこれまた鶴屋さんが持ち込んだ 高級そうなワインやらシャンパンやらで酒も入り、まさに宴のテンションは最高潮といっていいほど盛り上がっていた。 ハルヒはいつもの倍はあろうかというハイテンションで、同じくらいハイテンションな鶴屋さんとじゃれあい、 朝比奈さんはそんな二人をニコニコと眺めていて、長門はいつもと変わらない無表情ながら どこか柔らかな雰囲気を纏いながら黙々と料理を平らげている。 そんな光景をおれはこれまたいつもの0円スマイルの中にも楽しげな雰囲気を隠しきれてない古泉と眺めながら この和やかな雰囲気を満喫していた。 古「しかし、驚きました、式のあと姿が見えないと思ったらまさか入籍されていたとは…さすがに予想出来ませんでしたよ」 キ「おれだってそうだ。こんなこと予想出来てたまるか。」 古「それにしても我々はあなたには感謝しなくてはなりません。ありがとうございます」 キ「なんだいきなり、おまえんとこの怪しげな組織のことか? 別におまえらのためにしたわけじゃない。感謝される筋合いはないぞ」 古「いえ、僕の個人的な感謝です」 キ「ハルヒと結婚してなぜおまえに感謝されなきゃならん?バイトが減るからか?かならずともそうとは限らんぞ。」 古「いえ、そうではありません。僕はあなたに出会わなければ人との付き合いを利害や損得だけで 判断するような人間になっていたことでしょう。もしそうだとしたら このような幸福な時間を過ごすことなどなかったはずです。それを考えると感謝してもしきれませんよ」 キ「それならハルヒに感謝しておけ。おまえを連れてきたのはあいつだしな。」 古「もちろん涼宮さんにも感謝しています。ですが、涼宮さんを含め僕達全員を良い方へと導いてくれたのは あなただと僕は思っています」 キ「買い被りすぎだ。まぁ、こんな席だ、素直にどういたしまして、と言っておくさ。だから離れろ。 いつも以上に顔が近いんだよ、気色悪い。」 古「これは失礼。ついつい浮かれ過ぎてしまったようです」 そう言って今まで見たことない自然な笑顔で古泉は笑い出した。いつもそうしてろ。少なくとも腹は立たん。 古「それに浮かれているのは僕だけじゃないようですよ。長門さんを見て下さい。よほど楽しいのでしょうか、 いつもより食べるペースが早いようです」 なぜ食べるペースが早いと浮かれていると思うのかは疑問だが、確かに楽しげな雰囲気は見てとれる。 まぁ、そんな雰囲気を見てとれるのは長い付き合いの俺たちだからだろうが。思えば一番変わったのはこいつかもしれないな。 そんなことを考えながら長門を眺めていたら、今まで朝比奈さんをいじりたおしていたハルヒが長門に近付き、なにやら言い出した。 ハ「ねぇ、有希?」 長「なに?」 ハ「前から聞きたかったんだけどさ、有希ってこんな高そうなマンションに一人暮らししてるけど 有希のご両親てなにやってる人なの?」 相変わらず脈絡がないなこいつは。まあ、たしかに長門の正体を知らないハルヒからしたら当然の疑問かもしれない。 今まで聞かなかったのが不思議なくらいだし、それはたぶんハルヒがあえて踏み込まなかったからだろう。 酒とこの楽しげな雰囲気が少しハルヒの気を緩ませたのかもしれない。 しかし唐突すぎる。少し焦った。さすがに本当の事を言うわけにもいかないだろう。 見ると古泉の顔にも僅かながら緊張が見える。さて、このハルヒの疑問におれはどうフォローするべきかと考えていると 長門は少し視線を上にあげ何か思案するような仕草のあと口を開いた 長「いない。」 ハ「へ?いないって?」 長「両親はいない。」 ハ「いないって、その、もう亡くなってるとか…?」 長「そう。」 ハ「…それっていつごろ?」 長「六年前。」 ハ「六年前って、それじゃそれからずっとここに一人で住んでるの?」 長「そう。このマンションは両親が残してくれたもの」 六年前か。長門が生み出されたのもそのころと聞いた覚えがある。たしかにそうことにしといたほうが都合がいいかもしれない。 まさか本当のことを言うわけにもいかないし、 ハルヒには悪いが正体がバレれば長門はここにいられなくなるかもしれないし、それを考えると仕方ない。 しかし、急に空気がしんみりしちまったな。さて、どうしたものかな。 ハ「…そっか、…その、ごめんね。いきなり変なこと聞いちゃって・・・・・・。」 長「いい。大丈夫。それに…」 長門はかすかに首を横に振るとおれたち全員の顔を一人一人見渡した後、最後にハルヒに向かい静かに言葉を続けた。 長「今、わたしは一人じゃない。」 そんな長門の言葉に全員の動きが止まった。…いや、なんと言うか・・・。まさか長門の口からそんな言葉が聞くことが出来るとはとは思わず、 少し意表をつかれ、唖然としてしまったわけだが。 そんな中、いち早くフリーズ状態から復活した鶴屋さんが口を開いた。 鶴「そのとーりっ!有希っこは一人なんかじゃないっさ!SOS団が有希っこの家族みたいなもんだねっ!キョンくんもそー思わないかいっ?」 いきなり話を振られ少し動揺した、でもまあ、うん、そうだな。その通りだ。激しく同意する。 キ「そうですね。そう思います。おれにとってもSOS団はもうひとつの家族みたいなものです。 頼まれたって一人になんかさせませんよ。そうだろハルヒ?」 おれはそう言うと先ほどから顔を俯かせているハルヒに話を振った。ハルヒはハッと顔を上げ、おれを見て、それから長門に向き直った。 そして少し泣きそうな顔を浮かべていたが、やがて我慢出来ない、といった感じの笑顔なり長門に飛び付きだした。 見ると朝比奈さんも目に涙を浮かべて長門に抱きついていた。酒のせいか、少しテンション変わってないか? ハルヒのハイテンションもしんみりする前よりさらに上がったようで嬉しそうに長門と朝比奈さんを抱き寄せて頬擦りなんかをしている。 まったく、どうなることかと思ったがなにやら結果オーライだな。やれやれ。 …なんてのん気に考えていたわけだが、おれはこの和やかな雰囲気に油断しきっていて肝心なことを失念していた。 そう、テンションの上がりきったハルヒがこのままなにもせず終わるはずのないということにな。 宴もハイテンションのまま進み、もう深夜と言っていい時間に差し掛かったころ、 名残惜しいがさすがにお開きにしたほうがいいだろうとハルヒを見ると、 さっきまでのハイテンションはどこへ行ったのかなにやら難しい顔で考え込んでいた。 先ほどのことをまだ引きずっているのかとも思ったがいずれにせよ、お開きににしたほうがいいだろうと ハルヒに話しかけたときだった。 キ「おい、ハルヒそろそろ…」 ハ「気が付いたっ!!」 ハルヒが突然立ち上がりなにやら叫びだした。なんだ一体? ハ「どうしてこんな簡単なことに気が付かなかったのかしら!」 おいおい、なんだろうね、この既視感。なにやらすごく嫌な予感がするのだが…。 ハ「家族みたいじゃなくて家族になればいいのよ!」 キ「おい、いったいなに…」 ハ「有希に両親がいないならあたしとキョンの養子にすれば本当の家族になれるじゃない!」 キ「ちょ、おまっ、突然なに言っt…」 古「いやぁ、それはいい考えですね、さすが涼宮さんです」 おまえは黙れ。いきなり同意するな、このイエスマンめ! 鶴「あっははははっ!さすがハルにゃん、目のつけどころがちがうねっ!」 朝「ふえぇぇ、すごいですぅ」 二人ともなぜそんな簡単に感心出来るんですか! キ「待て、色々と待て!ハルヒ!」 ハ「なによ、いい考えでしょ?」 キ「少し落ち着け、話が急過ぎる!」 ハ「あんたが言ったんじゃない、家族みたいなもんだって。それに有希だけ両親がいないなんて不公平で可哀想じゃない」 キ「だからって勝手に決めていいことじゃないだろ、長門の意思はどうなる!?」 ハ「それもそうね、どう?有希、あたしとキョンの子供にならない?」 長「わたしはかまわない」 おーい…、長門ー…。 ハ「有希もこう言ってるわよ。何が悪いのよ?」 キ「いくらなんでも、もう少し物事の順序ってもんを考えろ、飛躍しすぎだ!」 ハ「有希みたいな素直でいい子が娘になるのよ?嫌なわけ?」 キ「嫌とかじゃなくて、大体、親たちになんて説明するんだ!?いきなり同級生を養子にしました、なんて許してくれるはずがn・・・・」 ピ、ピ、ピ・・・・プルルルルル・・・・プルルルルル・・・・ ・・・あのー、ハルヒさん?携帯なんか出して、いったいどちらへおかけで・・・? ハ「・・・ああ、お義母さん?うん、まだ有希んち。かくかくしかじかー・・・で有希をあたしとキョンの養子にしようと思うんだけど、 ・・・やっぱり!?いいアイディアでしょ?うん、ありがとー、じゃあまたあとで。オーバー♪」 キ「・・・・・・おい、ハルヒ?」 ハ「さあ、お義母さんの許可は取ったわよ。これで文句ないでしょ?」 うちの親ってこんなアバウトだったのか・・・。どおりですぐハルヒと打ち解けたはずだ・・・。 キ「いや、しかしだな・・・、いくらなんでn・・・」 気が付くと全員の無言で期待に満ちたような視線が向けられている。 一体なぜ、こんな孤立無援の状況に陥っているのか、誰かここに来て説明してくれ。頼むから。 ふと、長門の方に目を向けるとその大きなクリアブラックの瞳が真っ直ぐにおれを見つめていた。 このときほど長門の表情を読むことに長ける自分が恨めしいと思ったことはない。 やめろ、長門、子犬の様におれを見つめるな、小首を傾げるな、その、いやなの?だめなの?的な視線を止めてくれ! 長「おとうさん?」 ・・・・・・・・・・・・いくらなんでもそれは反則じゃあないか?娘よ・・・。 キ「……わかった。好きにしてくれ」 ハ「やたーー!さあ、有希!これであたしはあんたのおかあさんよ!遠慮なくおかあさんって呼びなさい!」 長「わかった。ありがとう。おかあさん、おとうさん。」 古「いやあ、おめでたいことは重なるものですね。おめでとうございます」 鶴「ハルにゃんとキョンくんと有希っこは前から親子みたいだったからピッタリっさ!いやーめでたいめでたいっ!わはは」 朝「ふえぇぇ、長門さんよかったですぅ」 …まったく、結婚初日からこれじゃ先が思いやられるな。 でもしかたない、喜ぶハルヒと長門…いや、有希の姿をみて悪くないなんて思っちまったのが運のつきだ。 それにあんな風に゛おとうさん゛なんて呼ばれちゃ降参しないほうがおかしいだろ? これから色々頑張らんと、娘に頼りきりの親父じゃ情けないからな。…やれやれ。涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 幸せの連鎖
https://w.atwiki.jp/niconicomugen/pages/4737.html
これより第365回家族会議を始める! あらすじ 荒廃した世界とは裏腹に「あらゆる夢が叶う」という噂が伝わる街『ベイグラントシティ』 そんな街で複雑な事情を抱えた7人の男女による「家族ごっこ」が始まろうとしていた。 共通点のない7人の家族はなぜ『家族』になったのか? 欲望と策謀が渦巻く街でそれぞれの夢を追求するにぎやか家族計画ストーリー。 解説 人種、性別、境遇、血統。それぞれバラバラな赤の他人同士が、 ある事件をきっかけに『家族』として暮らし始める物語。 0話では既に『家族』が形成され、意気も通じて仲良く馬鹿騒ぎをしているが、 1話からは一転。何故この『家族』が共に暮らし始めたのか。 物語の始まりから順を追って赤の他人だった『家族』の出会いを丁寧に描いていく。 メインとなる人物が場面によって変則的に代わっていく場面構成が特徴的で、 自由気ままに暮らす『家族』の一員がとある事件に巻き込まれると、 今度はその事件の最中に別の『家族』が違った形で事件に巻き込まれ、 『家族』が織り成すそれぞれ別々の場面が連鎖しながら飛躍的に加速し、事件が膨張していく群像劇となっている。 登場人物 水瀬家 初:「父親」役。謎の多い老人。 秋子:「母親」役。家族を望んだ? ジョンス・リー:「長男」役。数少ない常識人。ケガ人? アサギ:「長女」役。主人公になりたい。 煉:「次女」役。獅牙とは姉弟。弟を探しにやってきた。 獅牙:「次男」役。煉とは姉弟。モテたい。 貞子:「三女」役。獅牙に懐いている。 + ... アパート「総合格闘道場」 カンフー:大家。 シャオ:アパートの住人。 テツ:アパートの住人。 討魔同盟 ジアーノ:古物商を営む凄腕のゴーストバスター。初の兄。 バージル:??? ミナ:??? ???:??? 狂戦士刑事:警察官。 ベイグラントシティ マシェッタ:定食屋の店長。 山崎竜二:チンピラ ルチオ・ロッシ:スリ コメント 面白かったので作成しました。抜けがあったら補足おねがいします -- 名無しさん (2010-06-27 05 01 11) やっとページができたか。拙い部分も多いが構成力が高い動画 -- 名無しさん (2010-06-27 13 30 22) ちょうど新作紹介の方にもきてましたね -- 名無しさん (2010-06-27 14 26 13) これってサザエさんなのかな -- 名無しさん (2010-06-29 05 49 39) 続き来てた -- 名無しさん (2010-07-05 08 50 05) 面白いんだけど、投稿遅いし展開も遅い。テンポ悪いぜ。そこだけ改善されればもっと面白いのに・・・残念 -- 名無しさん (2010-10-29 15 23 00) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/retrogamewiki/pages/12555.html
今日 - 合計 - 家族計画 ~心の絆~の攻略ページ 目次 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 名前 コメント 選択肢 投票 役に立った (0) 2012年10月12日 (金) 13時12分27秒 [部分編集] ページごとのメニューの編集はこちらの部分編集から行ってください [部分編集] 編集に関して
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3992.html
※悪くない人生の続きです さて、本日は暖かい陽射しの中晴天に恵まれめでたくも高校卒業となったわけだが、 高校の卒業というめでたくも特別な日を涼宮ハルヒ率いるSOS団団員その一であり雑用係である おれが何事もなく過ごそうなどとやはり甘かったわけで、 ハルヒによるおれの親まで抱きこんだ手際良い策略により おれの知らないところで完璧に作成された婚姻届を市役所に提出して 晴れておれとハルヒは世間で言う夫婦関係となった。 まあ、簡単にいまの状況を説明してみたわけだが、市役所では突如制服姿で訪れ、婚姻届を提出しようと する俺たち二人に向けられる窓口のオヤジの好奇の視線に耐えたり、 その後の双方の親を交えた食事会で当事者であるおれより高いテンションで 孫は男がいい、いや女だ、だのたまごクラブだの子供の名付け辞典だのと 気が早すぎる親たちが騒いでいたり、妹がさっそくハルヒをお義姉ちゃんと呼び出し、この気に乗じて 妹のおれに対する呼称をお兄ちゃんに戻すべく画策してみたのだが、 「キョンはキョンでしょ。」 「キョンくんはキョンくんじゃない。」 などと意味のわからない理由であっさり却下されたことなどはどーでもいいことなので詳しくは割愛する。 そんなわけで今、長門の家でSOS団メンバー5人と名誉顧問である鶴屋さんにご足労願い、 結婚祝い&卒業記念パーティーの真っ最中なわけである。 SOS団での祝い事や記念日では恒例となっている鍋や鶴屋さんが手配して届けられた一流ホテルの 料理の数々に舌鼓をうち、こんなときくらいはいいだろうとこれまた鶴屋さんが持ち込んだ 高級そうなワインやらシャンパンやらで酒も入り、まさに宴のテンションは最高潮といっていいほど盛り上がっていた。 ハルヒはいつもの倍はあろうかというハイテンションで、同じくらいハイテンションな鶴屋さんとじゃれあい、 朝比奈さんはそんな二人をニコニコと眺めていて、長門はいつもと変わらない無表情ながら どこか柔らかな雰囲気を纏いながら黙々と料理を平らげている。 そんな光景をおれはこれまたいつもの0円スマイルの中にも楽しげな雰囲気を隠しきれてない古泉と眺めながら この和やかな雰囲気を満喫していた。 古「しかし、驚きました、式のあと姿が見えないと思ったらまさか入籍されていたとは…さすがに予想出来ませんでしたよ」 キ「おれだってそうだ。こんなこと予想出来てたまるか。」 古「それにしても我々はあなたには感謝しなくてはなりません。ありがとうございます」 キ「なんだいきなり、おまえんとこの怪しげな組織のことか? 別におまえらのためにしたわけじゃない。感謝される筋合いはないぞ」 古「いえ、僕の個人的な感謝です」 キ「ハルヒと結婚してなぜおまえに感謝されなきゃならん?バイトが減るからか?かならずともそうとは限らんぞ。」 古「いえ、そうではありません。僕はあなたに出会わなければ人との付き合いを利害や損得だけで 判断するような人間になっていたことでしょう。もしそうだとしたら このような幸福な時間を過ごすことなどなかったはずです。それを考えると感謝してもしきれませんよ」 キ「それならハルヒに感謝しておけ。おまえを連れてきたのはあいつだしな。」 古「もちろん涼宮さんにも感謝しています。ですが、涼宮さんを含め僕達全員を良い方へと導いてくれたのは あなただと僕は思っています」 キ「買い被りすぎだ。まぁ、こんな席だ、素直にどういたしまして、と言っておくさ。だから離れろ。 いつも以上に顔が近いんだよ、気色悪い。」 古「これは失礼。ついつい浮かれ過ぎてしまったようです」 そう言って今まで見たことない自然な笑顔で古泉は笑い出した。いつもそうしてろ。少なくとも腹は立たん。 古「それに浮かれているのは僕だけじゃないようですよ。長門さんを見て下さい。よほど楽しいのでしょうか、 いつもより食べるペースが早いようです」 なぜ食べるペースが早いと浮かれていると思うのかは疑問だが、確かに楽しげな雰囲気は見てとれる。 まぁ、そんな雰囲気を見てとれるのは長い付き合いの俺たちだからだろうが。思えば一番変わったのはこいつかもしれないな。 そんなことを考えながら長門を眺めていたら、今まで朝比奈さんをいじりたおしていたハルヒが長門に近付き、なにやら言い出した。 ハ「ねぇ、有希?」 長「なに?」 ハ「前から聞きたかったんだけどさ、有希ってこんな高そうなマンションに一人暮らししてるけど 有希のご両親てなにやってる人なの?」 相変わらず脈絡がないなこいつは。まあ、たしかに長門の正体を知らないハルヒからしたら当然の疑問かもしれない。 今まで聞かなかったのが不思議なくらいだし、それはたぶんハルヒがあえて踏み込まなかったからだろう。 酒とこの楽しげな雰囲気が少しハルヒの気を緩ませたのかもしれない。 しかし唐突すぎる。少し焦った。さすがに本当の事を言うわけにもいかないだろう。 見ると古泉の顔にも僅かながら緊張が見える。さて、このハルヒの疑問におれはどうフォローするべきかと考えていると 長門は少し視線を上にあげ何か思案するような仕草のあと口を開いた 長「いない。」 ハ「へ?いないって?」 長「両親はいない。」 ハ「いないって、その、もう亡くなってるとか…?」 長「そう。」 ハ「…それっていつごろ?」 長「六年前。」 ハ「六年前って、それじゃそれからずっとここに一人で住んでるの?」 長「そう。このマンションは両親が残してくれたもの」 六年前か。長門が生み出されたのもそのころと聞いた覚えがある。たしかにそうことにしといたほうが都合がいいかもしれない。 まさか本当のことを言うわけにもいかないし、 ハルヒには悪いが正体がバレれば長門はここにいられなくなるかもしれないし、それを考えると仕方ない。 しかし、急に空気がしんみりしちまったな。さて、どうしたものかな。 ハ「…そっか、…その、ごめんね。いきなり変なこと聞いちゃって・・・・・・。」 長「いい。大丈夫。それに…」 長門はかすかに首を横に振るとおれたち全員の顔を一人一人見渡した後、最後にハルヒに向かい静かに言葉を続けた。 長「今、わたしは一人じゃない。」 そんな長門の言葉に全員の動きが止まった。…いや、なんと言うか・・・。まさか長門の口からそんな言葉が聞くことが出来るとはとは思わず、 少し意表をつかれ、唖然としてしまったわけだが。 そんな中、いち早くフリーズ状態から復活した鶴屋さんが口を開いた。 鶴「そのとーりっ!有希っこは一人なんかじゃないっさ!SOS団が有希っこの家族みたいなもんだねっ!キョンくんもそー思わないかいっ?」 いきなり話を振られ少し動揺した、でもまあ、うん、そうだな。その通りだ。激しく同意する。 キ「そうですね。そう思います。おれにとってもSOS団はもうひとつの家族みたいなものです。 頼まれたって一人になんかさせませんよ。そうだろハルヒ?」 おれはそう言うと先ほどから顔を俯かせているハルヒに話を振った。ハルヒはハッと顔を上げ、おれを見て、それから長門に向き直った。 そして少し泣きそうな顔を浮かべていたが、やがて我慢出来ない、といった感じの笑顔なり長門に飛び付きだした。 見ると朝比奈さんも目に涙を浮かべて長門に抱きついていた。酒のせいか、少しテンション変わってないか? ハルヒのハイテンションもしんみりする前よりさらに上がったようで嬉しそうに長門と朝比奈さんを抱き寄せて頬擦りなんかをしている。 まったく、どうなることかと思ったがなにやら結果オーライだな。やれやれ。 …なんてのん気に考えていたわけだが、おれはこの和やかな雰囲気に油断しきっていて肝心なことを失念していた。 そう、テンションの上がりきったハルヒがこのままなにもせず終わるはずのないということにな。 宴もハイテンションのまま進み、もう深夜と言っていい時間に差し掛かったころ、 名残惜しいがさすがにお開きにしたほうがいいだろうとハルヒを見ると、 さっきまでのハイテンションはどこへ行ったのかなにやら難しい顔で考え込んでいた。 先ほどのことをまだ引きずっているのかとも思ったがいずれにせよ、お開きににしたほうがいいだろうと ハルヒに話しかけたときだった。 キ「おい、ハルヒそろそろ…」 ハ「気が付いたっ!!」 ハルヒが突然立ち上がりなにやら叫びだした。なんだ一体? ハ「どうしてこんな簡単なことに気が付かなかったのかしら!」 おいおい、なんだろうね、この既視感。なにやらすごく嫌な予感がするのだが…。 ハ「家族みたいじゃなくて家族になればいいのよ!」 キ「おい、いったいなに…」 ハ「有希に両親がいないならあたしとキョンの養子にすれば本当の家族になれるじゃない!」 キ「ちょ、おまっ、突然なに言っt…」 古「いやぁ、それはいい考えですね、さすが涼宮さんです」 おまえは黙れ。いきなり同意するな、このイエスマンめ! 鶴「あっははははっ!さすがハルにゃん、目のつけどころがちがうねっ!」 朝「ふえぇぇ、すごいですぅ」 二人ともなぜそんな簡単に感心出来るんですか! キ「待て、色々と待て!ハルヒ!」 ハ「なによ、いい考えでしょ?」 キ「少し落ち着け、話が急過ぎる!」 ハ「あんたが言ったんじゃない、家族みたいなもんだって。それに有希だけ両親がいないなんて不公平で可哀想じゃない」 キ「だからって勝手に決めていいことじゃないだろ、長門の意思はどうなる!?」 ハ「それもそうね、どう?有希、あたしとキョンの子供にならない?」 長「わたしはかまわない」 おーい…、長門ー…。 ハ「有希もこう言ってるわよ。何が悪いのよ?」 キ「いくらなんでも、もう少し物事の順序ってもんを考えろ、飛躍しすぎだ!」 ハ「有希みたいな素直でいい子が娘になるのよ?嫌なわけ?」 キ「嫌とかじゃなくて、大体、親たちになんて説明するんだ!?いきなり同級生を養子にしました、なんて許してくれるはずがn・・・・」 ピ、ピ、ピ・・・・プルルルルル・・・・プルルルルル・・・・ ・・・あのー、ハルヒさん?携帯なんか出して、いったいどちらへおかけで・・・? ハ「・・・ああ、お義母さん?うん、まだ有希んち。かくかくしかじかー・・・で有希をあたしとキョンの養子にしようと思うんだけど、 ・・・やっぱり!?いいアイディアでしょ?うん、ありがとー、じゃあまたあとで。オーバー♪」 キ「・・・・・・おい、ハルヒ?」 ハ「さあ、お義母さんの許可は取ったわよ。これで文句ないでしょ?」 うちの親ってこんなアバウトだったのか・・・。どおりですぐハルヒと打ち解けたはずだ・・・。 キ「いや、しかしだな・・・、いくらなんでn・・・」 気が付くと全員の無言で期待に満ちたような視線が向けられている。 一体なぜ、こんな孤立無援の状況に陥っているのか、誰かここに来て説明してくれ。頼むから。 ふと、長門の方に目を向けるとその大きなクリアブラックの瞳が真っ直ぐにおれを見つめていた。 このときほど長門の表情を読むことに長ける自分が恨めしいと思ったことはない。 やめろ、長門、子犬の様におれを見つめるな、小首を傾げるな、その、いやなの?だめなの?的な視線を止めてくれ! 長「おとうさん?」 ・・・・・・・・・・・・いくらなんでもそれは反則じゃあないか?娘よ・・・。 キ「……わかった。好きにしてくれ」 ハ「やたーー!さあ、有希!これであたしはあんたのおかあさんよ!遠慮なくおかあさんって呼びなさい!」 長「わかった。ありがとう。おかあさん、おとうさん。」 古「いやあ、おめでたいことは重なるものですね。おめでとうございます」 鶴「ハルにゃんとキョンくんと有希っこは前から親子みたいだったからピッタリっさ!いやーめでたいめでたいっ!わはは」 朝「ふえぇぇ、長門さんよかったですぅ」 …まったく、結婚初日からこれじゃ先が思いやられるな。 でもしかたない、喜ぶハルヒと長門…いや、有希の姿をみて悪くないなんて思っちまったのが運のつきだ。 それにあんな風に゛おとうさん゛なんて呼ばれちゃ降参しないほうがおかしいだろ? これから色々頑張らんと、娘に頼りきりの親父じゃ情けないからな。…やれやれ。 家族の絆へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4282.html
※悪くない人生の続きです さて、本日は暖かい陽射しの中晴天に恵まれめでたくも高校卒業となったわけだが、 高校の卒業というめでたくも特別な日を涼宮ハルヒ率いるSOS団団員その一であり雑用係である おれが何事もなく過ごそうなどとやはり甘かったわけで、 ハルヒによるおれの親まで抱きこんだ手際良い策略により おれの知らないところで完璧に作成された婚姻届を市役所に提出して 晴れておれとハルヒは世間で言う夫婦関係となった。 まあ、簡単にいまの状況を説明してみたわけだが、市役所では突如制服姿で訪れ、婚姻届を提出しようと する俺たち二人に向けられる窓口のオヤジの好奇の視線に耐えたり、 その後の双方の親を交えた食事会で当事者であるおれより高いテンションで 孫は男がいい、いや女だ、だのたまごクラブだの子供の名付け辞典だのと 気が早すぎる親たちが騒いでいたり、妹がさっそくハルヒをお義姉ちゃんと呼び出し、この気に乗じて 妹のおれに対する呼称をお兄ちゃんに戻すべく画策してみたのだが、 「キョンはキョンでしょ。」 「キョンくんはキョンくんじゃない。」 などと意味のわからない理由であっさり却下されたことなどはどーでもいいことなので詳しくは割愛する。 そんなわけで今、長門の家でSOS団メンバー5人と名誉顧問である鶴屋さんにご足労願い、 結婚祝い&卒業記念パーティーの真っ最中なわけである。 SOS団での祝い事や記念日では恒例となっている鍋や鶴屋さんが手配して届けられた一流ホテルの 料理の数々に舌鼓をうち、こんなときくらいはいいだろうとこれまた鶴屋さんが持ち込んだ 高級そうなワインやらシャンパンやらで酒も入り、まさに宴のテンションは最高潮といっていいほど盛り上がっていた。 ハルヒはいつもの倍はあろうかというハイテンションで、同じくらいハイテンションな鶴屋さんとじゃれあい、 朝比奈さんはそんな二人をニコニコと眺めていて、長門はいつもと変わらない無表情ながら どこか柔らかな雰囲気を纏いながら黙々と料理を平らげている。 そんな光景をおれはこれまたいつもの0円スマイルの中にも楽しげな雰囲気を隠しきれてない古泉と眺めながら この和やかな雰囲気を満喫していた。 古「しかし、驚きました、式のあと姿が見えないと思ったらまさか入籍されていたとは…さすがに予想出来ませんでしたよ」 キ「おれだってそうだ。こんなこと予想出来てたまるか。」 古「それにしても我々はあなたには感謝しなくてはなりません。ありがとうございます」 キ「なんだいきなり、おまえんとこの怪しげな組織のことか? 別におまえらのためにしたわけじゃない。感謝される筋合いはないぞ」 古「いえ、僕の個人的な感謝です」 キ「ハルヒと結婚してなぜおまえに感謝されなきゃならん?バイトが減るからか?かならずともそうとは限らんぞ。」 古「いえ、そうではありません。僕はあなたに出会わなければ人との付き合いを利害や損得だけで 判断するような人間になっていたことでしょう。もしそうだとしたら このような幸福な時間を過ごすことなどなかったはずです。それを考えると感謝してもしきれませんよ」 キ「それならハルヒに感謝しておけ。おまえを連れてきたのはあいつだしな。」 古「もちろん涼宮さんにも感謝しています。ですが、涼宮さんを含め僕達全員を良い方へと導いてくれたのは あなただと僕は思っています」 キ「買い被りすぎだ。まぁ、こんな席だ、素直にどういたしまして、と言っておくさ。だから離れろ。 いつも以上に顔が近いんだよ、気色悪い。」 古「これは失礼。ついつい浮かれ過ぎてしまったようです」 そう言って今まで見たことない自然な笑顔で古泉は笑い出した。いつもそうしてろ。少なくとも腹は立たん。 古「それに浮かれているのは僕だけじゃないようですよ。長門さんを見て下さい。よほど楽しいのでしょうか、 いつもより食べるペースが早いようです」 なぜ食べるペースが早いと浮かれていると思うのかは疑問だが、確かに楽しげな雰囲気は見てとれる。 まぁ、そんな雰囲気を見てとれるのは長い付き合いの俺たちだからだろうが。思えば一番変わったのはこいつかもしれないな。 そんなことを考えながら長門を眺めていたら、今まで朝比奈さんをいじりたおしていたハルヒが長門に近付き、なにやら言い出した。 ハ「ねぇ、有希?」 長「なに?」 ハ「前から聞きたかったんだけどさ、有希ってこんな高そうなマンションに一人暮らししてるけど 有希のご両親てなにやってる人なの?」 相変わらず脈絡がないなこいつは。まあ、たしかに長門の正体を知らないハルヒからしたら当然の疑問かもしれない。 今まで聞かなかったのが不思議なくらいだし、それはたぶんハルヒがあえて踏み込まなかったからだろう。 酒とこの楽しげな雰囲気が少しハルヒの気を緩ませたのかもしれない。 しかし唐突すぎる。少し焦った。さすがに本当の事を言うわけにもいかないだろう。 見ると古泉の顔にも僅かながら緊張が見える。さて、このハルヒの疑問におれはどうフォローするべきかと考えていると 長門は少し視線を上にあげ何か思案するような仕草のあと口を開いた 長「いない。」 ハ「へ?いないって?」 長「両親はいない。」 ハ「いないって、その、もう亡くなってるとか…?」 長「そう。」 ハ「…それっていつごろ?」 長「六年前。」 ハ「六年前って、それじゃそれからずっとここに一人で住んでるの?」 長「そう。このマンションは両親が残してくれたもの」 六年前か。長門が生み出されたのもそのころと聞いた覚えがある。たしかにそうことにしといたほうが都合がいいかもしれない。 まさか本当のことを言うわけにもいかないし、 ハルヒには悪いが正体がバレれば長門はここにいられなくなるかもしれないし、それを考えると仕方ない。 しかし、急に空気がしんみりしちまったな。さて、どうしたものかな。 ハ「…そっか、…その、ごめんね。いきなり変なこと聞いちゃって・・・・・・。」 長「いい。大丈夫。それに…」 長門はかすかに首を横に振るとおれたち全員の顔を一人一人見渡した後、最後にハルヒに向かい静かに言葉を続けた。 長「今、わたしは一人じゃない。」 そんな長門の言葉に全員の動きが止まった。…いや、なんと言うか・・・。まさか長門の口からそんな言葉が聞くことが出来るとはとは思わず、 少し意表をつかれ、唖然としてしまったわけだが。 そんな中、いち早くフリーズ状態から復活した鶴屋さんが口を開いた。 鶴「そのとーりっ!有希っこは一人なんかじゃないっさ!SOS団が有希っこの家族みたいなもんだねっ!キョンくんもそー思わないかいっ?」 いきなり話を振られ少し動揺した、でもまあ、うん、そうだな。その通りだ。激しく同意する。 キ「そうですね。そう思います。おれにとってもSOS団はもうひとつの家族みたいなものです。 頼まれたって一人になんかさせませんよ。そうだろハルヒ?」 おれはそう言うと先ほどから顔を俯かせているハルヒに話を振った。ハルヒはハッと顔を上げ、おれを見て、それから長門に向き直った。 そして少し泣きそうな顔を浮かべていたが、やがて我慢出来ない、といった感じの笑顔なり長門に飛び付きだした。 見ると朝比奈さんも目に涙を浮かべて長門に抱きついていた。酒のせいか、少しテンション変わってないか? ハルヒのハイテンションもしんみりする前よりさらに上がったようで嬉しそうに長門と朝比奈さんを抱き寄せて頬擦りなんかをしている。 まったく、どうなることかと思ったがなにやら結果オーライだな。やれやれ。 …なんてのん気に考えていたわけだが、おれはこの和やかな雰囲気に油断しきっていて肝心なことを失念していた。 そう、テンションの上がりきったハルヒがこのままなにもせず終わるはずのないということにな。 宴もハイテンションのまま進み、もう深夜と言っていい時間に差し掛かったころ、 名残惜しいがさすがにお開きにしたほうがいいだろうとハルヒを見ると、 さっきまでのハイテンションはどこへ行ったのかなにやら難しい顔で考え込んでいた。 先ほどのことをまだ引きずっているのかとも思ったがいずれにせよ、お開きににしたほうがいいだろうと ハルヒに話しかけたときだった。 キ「おい、ハルヒそろそろ…」 ハ「気が付いたっ!!」 ハルヒが突然立ち上がりなにやら叫びだした。なんだ一体? ハ「どうしてこんな簡単なことに気が付かなかったのかしら!」 おいおい、なんだろうね、この既視感。なにやらすごく嫌な予感がするのだが…。 ハ「家族みたいじゃなくて家族になればいいのよ!」 キ「おい、いったいなに…」 ハ「有希に両親がいないならあたしとキョンの養子にすれば本当の家族になれるじゃない!」 キ「ちょ、おまっ、突然なに言っt…」 古「いやぁ、それはいい考えですね、さすが涼宮さんです」 おまえは黙れ。いきなり同意するな、このイエスマンめ! 鶴「あっははははっ!さすがハルにゃん、目のつけどころがちがうねっ!」 朝「ふえぇぇ、すごいですぅ」 二人ともなぜそんな簡単に感心出来るんですか! キ「待て、色々と待て!ハルヒ!」 ハ「なによ、いい考えでしょ?」 キ「少し落ち着け、話が急過ぎる!」 ハ「あんたが言ったんじゃない、家族みたいなもんだって。それに有希だけ両親がいないなんて不公平で可哀想じゃない」 キ「だからって勝手に決めていいことじゃないだろ、長門の意思はどうなる!?」 ハ「それもそうね、どう?有希、あたしとキョンの子供にならない?」 長「わたしはかまわない」 おーい…、長門ー…。 ハ「有希もこう言ってるわよ。何が悪いのよ?」 キ「いくらなんでも、もう少し物事の順序ってもんを考えろ、飛躍しすぎだ!」 ハ「有希みたいな素直でいい子が娘になるのよ?嫌なわけ?」 キ「嫌とかじゃなくて、大体、親たちになんて説明するんだ!?いきなり同級生を養子にしました、なんて許してくれるはずがn・・・・」 ピ、ピ、ピ・・・・プルルルルル・・・・プルルルルル・・・・ ・・・あのー、ハルヒさん?携帯なんか出して、いったいどちらへおかけで・・・? ハ「・・・ああ、お義母さん?うん、まだ有希んち。かくかくしかじかー・・・で有希をあたしとキョンの養子にしようと思うんだけど、 ・・・やっぱり!?いいアイディアでしょ?うん、ありがとー、じゃあまたあとで。オーバー♪」 キ「・・・・・・おい、ハルヒ?」 ハ「さあ、お義母さんの許可は取ったわよ。これで文句ないでしょ?」 うちの親ってこんなアバウトだったのか・・・。どおりですぐハルヒと打ち解けたはずだ・・・。 キ「いや、しかしだな・・・、いくらなんでn・・・」 気が付くと全員の無言で期待に満ちたような視線が向けられている。 一体なぜ、こんな孤立無援の状況に陥っているのか、誰かここに来て説明してくれ。頼むから。 ふと、長門の方に目を向けるとその大きなクリアブラックの瞳が真っ直ぐにおれを見つめていた。 このときほど長門の表情を読むことに長ける自分が恨めしいと思ったことはない。 やめろ、長門、子犬の様におれを見つめるな、小首を傾げるな、その、いやなの?だめなの?的な視線を止めてくれ! 長「おとうさん?」 ・・・・・・・・・・・・いくらなんでもそれは反則じゃあないか?娘よ・・・。 キ「……わかった。好きにしてくれ」 ハ「やたーー!さあ、有希!これであたしはあんたのおかあさんよ!遠慮なくおかあさんって呼びなさい!」 長「わかった。ありがとう。おかあさん、おとうさん。」 古「いやあ、おめでたいことは重なるものですね。おめでとうございます」 鶴「ハルにゃんとキョンくんと有希っこは前から親子みたいだったからピッタリっさ!いやーめでたいめでたいっ!わはは」 朝「ふえぇぇ、長門さんよかったですぅ」 …まったく、結婚初日からこれじゃ先が思いやられるな。 でもしかたない、喜ぶハルヒと長門…いや、有希の姿をみて悪くないなんて思っちまったのが運のつきだ。 それにあんな風に゛おとうさん゛なんて呼ばれちゃ降参しないほうがおかしいだろ? これから色々頑張らんと、娘に頼りきりの親父じゃ情けないからな。…やれやれ。 家族の絆へ