約 32,352 件
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/219.html
前の話 「いやー疲れた疲れた。やっと研究が形になったぜ」 そう言いながら入ってきたのは、最近めっきり足が遠のいていた黒白の魔法使い、霧雨魔理沙だった。 「おや、久しぶりだね魔理沙。だいたい2ヶ月ぶりかな?」 「あ~、そういやこの前来たときは会わなかったんだよな。あの時は口やかましい奴がいたからなあ」 「口やかましくて悪かったわね」 どうやら部屋の隅に居たためか気付かれなかったようだ。人がいないと思って好き勝手なことを言う悪友に声をかける。 「うおっと、今日もいたのかアリス。和裁だか白菜だか知らんが、お前ならもう香霖なんかに教わることはないだろうに」 「なんかとはなんだなんかとは」 「そうよ失礼な。言っとくけど霖之助さんの腕前は相当なものよ? だいたい、あんたも裁縫くらい覚えなさいよ。一応仮にも生物学上女の範疇に引っかかってんでしょ?」 「ひどいぜ。こんなに可憐な美少女を捕まえて」 「可憐だと自称するなら、せめて言葉遣いくらい何とかするべきね」 「善処するぜ。んで、まだ香霖にアドバイスもらいにこんな埃臭い所に通ってるわけか。お前も物好きだよなあ」 「別にアドバイスはもらってないわよ。とりあえず一人で作り上げて、何ができて何ができないのか確認するつもりだから」 流れるように掛け合いを続ける2人を眺め、本当に仲が良いなと微笑みつつ口を挟む霖之助。 「この前は一人で作ることにこだわる必要はないとか言ってたような気がするんだが、気のせいだったかな」 「気のせいね。ダメよ霖之助さん、人の話はちゃんと聞かないと。それとも私に話しかけてもらえなくて寂しいのかしら?」 「あれだけ根掘り葉掘り聞き出そうとしていた君がパッタリと質問しなくなったからね。なんとなくしっくり来ないだけさ」 「人間正直が一番って聞いたことがあるわよ?」 「それなら人妖の僕には当てはまらないな」 「ああ言えばこう言う……」 「君がそれを言うのかい?」 今度は魔理沙が2人の会話を眺める。 (……こいつらこんなに軽口叩き合うほど仲良かったか?) 少なくとも前に2人の会話を見たときはもっとよそよそしかった筈だ。 なのに、今の会話からはなんとなく甘い雰囲気すら漂っているように思える。 「何でお前らそんなに仲良くなってるんだ?」 霖之助はアリスとの会話を一時中断、魔理沙の質問に答える。 「そりゃ毎日顔を合わせてれば嫌でも相手のことを理解するようになるさ」 「あら、霖之助さんは私のことなんか分かりたくないって言うわけ?」 「今のは言葉のアヤというか極端な例えを提示しただけだよ。いくら僕でも嫌いな相手に部屋まで貸すほど酔狂じゃない」 「あ~、待て待て待て!」 放っておけばすぐに2人で話を進める。なんとなく自分が蚊帳の外のように思えてイライラする。 おまけに聞き捨てならないことが聞こえた。 「毎日顔を合わせて部屋を借りてる? いつからアリスはここに引っ越してきたんだ?」 「いや、別に住んでるわけじゃないよ。ただ、最初に日本人形を作ってるときは事あるごとに質問しに来てたからね。 ほとんどうちで作ってたせいか体がこっちに順応してしまったらしい。今では一人で閉じこもっているよりここで作ったほうがはかどるんだそうだ。 部屋は人形作りの道具や材料の置き場所として提供しているだけさ」 「……ふーん……つまり通い妻か。香霖にそんな甲斐性があったとはなぁ?」 「「通っ……!?」」 アリスだけならまだしも、霖之助までそろって顔が赤くなる。 これが他のやつならニヤニヤとしつこいくらい笑ってやるところだが、今回ばかりはそうはいかない。 自分がからかったのは認めるが、その反応はなんだ。 自分がいくら好意を匂わせても歯牙にもかけなかったくせに。 ストレートに伝えても、回りくどくほのめかしても全く動じなかったくせに。 だから、 「……なんでだよ」 気がつけば、不満が口からあふれ出して止まらなくなっていた。 「なんで!? なんでアリスなんだよ!? ついこの前まで赤の他人だったのに! その他大勢の客の一人でしかなかったくせに!! 私のほうがずっと昔から香霖の近くにいたんだ! 実家で修行してるときも! この店を建てたときも! 私が実家から出てった時だって! 途中でふらっと出てきたくせに私の場所を取らないでくれよ! そこはお前の場所じゃない!! 今までもこれからも死ぬまでずっと! 香霖に一番近いところにいるのは私なんだ!!! 他のやつに取られるなんで耐えられないんだ!!! だから……だからっ……」 「……魔理沙」 声が詰まって俯いてしまった魔理沙になんと言って良いか分からず、霖之助はただ名前を呼んだ。 ビクッと肩を震わせ、顔を上げた魔理沙の両目は、今にも涙が溢れそうになっていた。 「……う……うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」 耐えられなくなったのだろう。魔理沙は箒をつかむと、叫びながら香霖堂から飛び出していった。 「魔理沙……」 こちらはアリス。 考えたこともなかった。いつも自分勝手で人の迷惑を顧みないあの魔理沙がこんなに取り乱すことがあるなんて。 魔理沙は強いわけではなかった。弱い自分を一生懸命隠して、それを他人に絶対に悟らせないようにしていただけなのだ。 気付かなかった? 違う。気付こうともしなかった。 思えば霊夢は魔理沙の内面をなんとなく察していたような節がある。だからこそ、魔理沙と上手くやっているのだろう。 「……やれやれ」 そんなアリスの思考は、もう一人の当事者によって中断することになった。 「霖之助さん……」 「驚かせてしまったようだね。だいぶ成長したようだが、あの子もまだまだ子供のようだ」 なぜ……そんなに落ち着いているんだろう? 「多分、父か兄が取られて悔しいような気分なんだろう。しばらくそっとしておけばまた元気に……」 パァン! 「あなた……本気でそんなこと言ってんの……?」 考えるより先に、全力で目の前の男を張り飛ばしていた。 ずれた眼鏡を直すことすら忘れているのだろう、呆然としてこちらを見ている霖之助にさらに苛立ちを増す。 「朴念仁だとは思ってたけどここまで救いようがないとは思ってなかったわよ! お父さんが取られた!? お兄さんが取られた!? ふざけんじゃないわよ! そんなことで女の子が、あの魔理沙が! あそこまで取り乱すわけがないでしょうが! 人の感情に疎いのも大概にしなさいよ!」 ああ、さっきの魔理沙と同じことをしてる。 どこかで冷静な自分がささやくが、止められない。 「他人の気持ちなんて気にならないような顔をして! 気にならないんじゃないわ。分からないのよ! 勝手にああだろう、こうだろうって結論付けて、それを疑いもしない。 普段なら笑って済ませてあげるけどね、今回だけは絶対許さない! 自分が何をしたのか、なんで魔理沙が泣いてるのか、悩んで悩んで悩みぬきなさい! それが分かるまではそのとぼけた顔を見せないでちょうだい!」 そう言い残すと、アリスもまた香霖堂から出て行ってしまった。 「荷物……置きっぱなしだったなあ……まあいいか……」 怒鳴り散らして出てはきたが、少し言い過ぎたかもしれない。 そもそも魔理沙の内面を見ようとしていなかったのは自分も同罪だ。 それなのに自分だけは分かっていたような言い方。 自己嫌悪で足が止まりそうになるが、それを押し込めてでもやるべきことが残っている。 とにかく足を進めるアリスが辿り着いたのは、魔理沙の家の前だった。 大きくノックするが、返事はない。 それでも、今の魔理沙が他の誰かのところに転がり込むことは考えられない。 深呼吸して、家の中の魔理沙にも聞こえるよう声を上げる。 「魔理沙……いるんでしょう?」 「まずは謝っておくわ……。 そんなつもりはなかったけど、結果として私はあなたから霖之助さんを奪おうとしている。 しかもあなたが研究でいない間にこそこそとね。 卑怯といわれても構わない。それだけのことをした自覚はあるもの」 やはり返事はない。だが間違いなく聞いているはずだ。 そして、アリスは決定的な言葉を口にする。 「それでもこれだけははっきりさせておくわ。 私は霖之助さんが好き。今までに出会った誰よりもね。 だから誰にも渡したくはない。例えあなたや他の誰かに恨まれたとしても。 あなたはどうなの? こうして一人で閉じこもって泣いてるだけなの? 失いたくないなら、奪われたくないなら……立ち上がりなさい。 それができないなら、あなたの思いは所詮その程度のものだったということになるわ。 どういう結果になるかはまだ分からないけど、あなたの想いが本物なら、また私の前に立ちふさがりなさい。 ……待ってるから」 勝手なことを言っている。謝っているのか喧嘩を売っているのか分かったものじゃない。 魔理沙にはすまないと思う。それは間違いない。 それでも霖之助を失うのは嫌だ。 ……自分は一体何がしたいのか。 霖之助に怒鳴ったのも意味が分からない。魔理沙の方を向いて欲しいわけではないのに、魔理沙の気持ちを考えろなどと。 とにかく、自分も気持ちを整理する必要があるだろう。 アリスが遠ざかる足音が聞こえる。 声は聞こえていた。 だが、答える気にはならなかった。 自分がいない間に霖之助を取ろうとするアリス。 自分の気持ちになんて気付こうともしてくれなかったのに、知り合ったばかりのアリスといちゃついてた香霖。 2人とも大嫌いだ。 そして、そんなことを考えている自分はもっと大嫌いだ。 ベッドにうずくまったまま、とにかく今は何もしたくなかった。 アリスが飛び出していった香霖堂。 霖之助は魂が抜けたような顔をして座り込んでいた。 思い出すのはアリスの言葉。 ―――自分が何をしたのか、なんで魔理沙が泣いてるのか、悩んで悩んで悩みぬきなさい!――― かつては、自分がすでに男としては枯れているものと思っていた。 だが、アリスと触れ合ううちにそれは自分の思い込みだと気付いた。いや、アリスが気付かせてくれたのだ。 ……魔理沙の顔が頭に浮かぶ。 小さいころは甘えん坊だった。 年の割りに賢かった。 魔法を志してからは父親とそりが合わず、自分が何度も仲裁に入った。 自分が霧雨の家を出てからも縁は切れていない。 研究に行き詰ればここに来て一言二言口をこぼし、帰っていく。 うまくいったら嬉しそうに自慢しにくる。 店のものを持っていく代わりに差し入れをもらうことも多い。 料理を振舞ってくれることもしゅっちゅうだ。 ここまでなら仲の良い兄妹と言っても差し支えないだろう。 だが、 ―――安心しろ。香霖を好きになる物好きな女がいなくても私がもらってやるぜ――― ―――貰い手がなかったらよろしく頼むぜ――― こんなことは兄妹同士で言ったりしない。 なのに、本気に取ったことは一度もなかった。 自分に見せる彼女をそのまま彼女の本質だと思って疑いもせず、ただの軽口と切って捨てた。 どんなに年が経っても、言葉遣いや表面上の性格が変わっても、魔理沙は魔理沙だったというのに。 小さいころのまま、甘えん坊で寂しがりやな女の子だったのに。 今ならわかる。彼女が軽口に見せかけて、その裏でどれだけの緊張と不安を押し殺していたのか。 「最低だな……」 「ええ、本当にね」 独り言に対する、ありえないはずの返答。 こんなことをするのは一人しかいない。 「見ていたのかい……? 紫」 「ええ、あの人形遣いがここに通うようになってからさっきの顛末までずっと」 背後に気配を感じる。スキマから上半身を出して話しかけているのだろう。 「いまさら覗いていたことをどうこう言う気もないが……情けないところを見られてしまったね」 「そうね。さっきのはちょっといただけなかったわ」 ふぅ、とため息を吐く。 手厳しいことだが、今はその率直な物言いが心地よい。 「それで? あなたはどうするつもりかしら?」 「どう……か」 「まさかここまで来て選べないなんて事は言わないでしょうね? 事態をここまでこじらせたのは間違いなくあなたの責任。ならこの問題はあなたが片をつけないといけない」 「そう……そうだね。わかってはいるつもりさ」 わかっている。これは自分が答えを出さないといけない問題だ。 そんなことは痛いほどわかっているのに、それでも自分の気持ちははっきりしていない。 情けなくて腹立たしくて自分を殴りつけたい心境だが、そんなことをしても何にもならない。 「一つ……簡単に済ませるほうがあるわよ?」 その言葉が耳に届くと同時に、両肩に重みを感じる。 しなだれかかって来た紫は、霖之助の耳元でさらに言葉をつむぐ。 「私を選んでくれたら、全部きれいに収めてあげる。 私の持つありとあらゆる力を持って、元の鞘に必ず戻してあげる。八雲の名において誓うわ。 ……そのかわり、私をあなたのものにして」 それは、抗いがたい甘美な誘惑。 確かに、彼女の能力を持ってすればこの問題はすぐにでも解決するだろう。 しかも幻想郷最高の妖怪を伴侶に持つ。これ以上の名誉は幻想郷に存在しない。 だが、その選択はありえない。 「君にそこまで言ってもらえるとは光栄だが、受けるわけにはいかないな」 「あら、やっぱり? まああなたならそういうと思っていたけど」 そういうと、紫はあっさり霖之助から離れた。 「じゃあ、しっかり考えて答えを出すことね。 この八雲紫を振った男が生半可なことをしたら、永劫許さないからそのつもりでね」 「紫、君は……」 彼女なりに励ましてくれたのか。それとも……。 そんな思いがよぎった瞬間、唇を指で押さえられた。 「変なこと考えるんじゃないの。それじゃあね霖之助。頑張りなさい」 そういい残して、紫はスキマに戻っていった。 「ああ、もちろんだ。ありがとう、八雲紫――」 さあ、ここからは自分の仕事。 ――紫の自室にて―― 「はぁ……私も完全には悪役にはなりきれないのね……」 たったいま香霖堂から戻ってきた紫。 霖之助が考えたとおり、彼女も霖之助に淡い思いを抱いていた。 そんな彼女がアリスの接近を許したのは、ひとえに楽観と自信が原因だった。 客観的に見て自分は美人だと思う。 妖怪や人間を問わず言い寄る男はいくらでもいた。 だから焦る必要はない。 アリスのような1000年も生きていない小娘に自分が遅れをとることなどありえない。 そう思って放置していた。 もっと早く、自分から積極的に動いていればこんな事態にならなかったであろうことも知らず。 気付けば女にあれだけなびかなかった霖之助がアリスと懇意になっていた。 そのときにはもう手遅れで、なまじ明晰な頭脳を持つだけに、自分にはもうチャンスが訪れないことを理解してしまった。 これは自分の自業自得。 相手を侮り、自惚れていた自分の落ち度。 だから、泣くのはこの一回きりだ。 ぎゅっと目を瞑る。目じりにたまっていた涙は頬を伝い、ぽろぽろとこぼれ落ちた。 だがそのまま落とすことはしない。涙の落ちる先にスキマを開き、回収する。 自分の式は優秀だ。涙の跡でもあれば簡単になにがあったか察してしまうだろう。 いや、おそらくはもう気付いているのだろうが。 さあ、もうすぐ式の式が食事の時間を伝えに来るだろう。 それまでには、悲しみも後悔も心の奥に封じ込めてしまわないと。 「藍さま。まだ紫さまをお呼びに行かなくていいんですか?」 「もう少し、もう少しだけ待ってくれ橙」 妖怪は精神的な病に弱い。つまり心の傷の治りが遅いということだ。 たとえ霖之助がどんな答えを出したとしても、今現在人間の魔理沙や元人間のアリスはそう長くないうちに立ち直ることだろう。 だが妖怪の紫はそうはいかない。表には出さなくても、10年、20年、いやもっと長く心の痛みは残る。 だから今は、もう少しだけそっとしておきたい。 その日、マヨヒガの夕食はいつもより少しだけ遅かったという。 一体どれくらいの時間がたったのだろうか。 部屋を閉め切っているから、今が昼か夜かもわからない。 ずっとベッドにうずくまっていたせいか、体中が硬くなっているのがなんとなくわかった。 霖之助とアリスに対する負の感情はピークを越え、今は小康状態だ。 代わりに、自己嫌悪が心をじわじわと侵食していた。 「……やっちまったなあ……」 もっと賢い方法があったかもしれない。 あの時点での行動次第では、今のような未来が訪れはしなかっただろうに。 合わせる顔がないというのはこういうことかと、体験して初めてわかった。全く嬉しい経験ではないが。 「……はは」 そんなことを考えている自分がおかしくて、声に出して笑ってやった。 今考えることはそんなことじゃないだろう。 少し冷えた頭は、アリスの言葉を浮かべてくる。 ―――あなたの想いが本物なら、また私の前に立ちふさがりなさい――― 最初は、諸悪の根源が何を、と思った。 しかし、よく考えてみればおかしな話だ。 アリスが霖之助を奪いたいなら、そんなことを言いに来る必要はない。 兄を取られたようで悔しいんだろうとでも言っておけば、あの朴念仁は簡単に騙される。そして自分が沈んでいるうちにまんまと篭絡すればいい。 これ以上簡単な話はないはずなのに、アリスはわざわざ恋敵を激励しに来た。 そもそも今から対等な勝負を挑んだって結果は目に見えている。 店での反応を見れば一目瞭然。霖之助の気持ちが誰にあるのかわからないほど短い付き合いではない。 だがアリスはそんなことを微塵も考えていないのだろう。本気で正々堂々と戦う気だ。 (あいつらしいと言うかなんと言うか……) そうだ。アリスはそういうやつだった。 普段は斜に構えたような態度で、自分の好意を意地でも悟らせないような言動が目立つ。 なのに、人が迷惑かけても文句は口先ばかりで、困っていたら損得抜きで助けてくれる。 ひねくれもののおせっかい。 今回もきっとそうだ。 「……やれやれ」 気がつけば口元が緩んでいる。 ああ、全くこんなの自分らしくない。 勝ち目なんかないに等しい。立ち上がったところで、また打ちのめされ一敗地にまみれるだけだろう。 それでも、膝を屈することは許されない。 せめて、あの不器用で真っ直ぐな友情だけは失わないために、決着だけはきっちりつけてやる。 「悲劇のヒロインなんて、真っ平ごめんだぜ」 一方、アリスはいまだに自己嫌悪の渦から抜け出してはいなかった。 魔理沙にはああ言ったものの、この件で自分に何ができるというのか。結局のところ、自分か魔理沙かを選ぶのは霖之助だ。 自分はただそれを待つだけ。いまさら霖之助の気を引くことなどできるわけがないし、これ以上魔理沙に塩を送るような真似もできない。 結局全て自分のエゴだ。霖之助を魔理沙から掠め取るような真似をしたくない。それなのに、霖之助を失うのが怖い。 「アリスーーー! 出てこーーーい!」 ああ、ついに幻聴まで聞こえ出したか。 いまあいつがここに来るわけなんてないのに。 「いるのはわかってんだ! 出てこないならこの家吹っ飛ばすぜ!?」 うるさい。今はそっとしておいてくれ。 「よーし良い度胸だ! さーん! にー! いーち!」 ああもう、幻覚までが自分を追い詰めるというのか。 「うるさいわね! 用事があるならそっちが勝手に入ってくれば良いでしょ!?」 怒鳴りつけると声は聞こえなくなった。 やはり幻聴か。自分もなかなか追い込まれている。 そう思った瞬間、 ガチャ 「人が折角立ち直ってきたってのに。全くご挨拶なやつだ」 あれ? 「ほらさっさと立て。香霖のとこに行くぞ」 「何……で……?」 なぜこいつがここにいるんだろう。 「何でってお前が言ったんじゃないか。また立ちふさがりに来いって。それともありゃ嘘か? ほら、早く立てって。」 「あ……うん」 「よし、じゃあ香霖のとこにいくぞ。あいつにはきっちりカタをつけてもらわないとな」 「ねえ」 「あん?」 「あんたはそれで良いの? なんなら私は何日かじっとしてるからその間に……」 「おいおい、私をなめるのも大概にしろよ」 睨みつける魔理沙。 「そんなお情けをかけてもらって、それで勝ったからって何も嬉しくないぜ。 どんなに不利な状況でも構わない。自力で勝ち取ってこそ意味があるんだ お前が私の立場でもそうだろう?」 言葉が詰まる。そうだ。もう自分にできることなんて何もない。 威勢のいいことを行っておいて情けない限りだが、霖之助の選択を甘んじて受け入れよう。 「わかったわ。あんたは本当にそれで良いのね?」 「くどいぜ。女に二言はないって言うだろう?」 魔理沙がここまで言うのならば、もう何も言うまい。 後は霖之助がどのような選択を取るのか、ただそれだけだ。 2人の魔法使いが並んで空を舞った。 「……」 最近ここまでひとつのことを考え続けたことがあっただろうか。 自分に好意を寄せる2人の少女、アリスと魔理沙。 魔理沙とは彼女が物心ついたときからの付き合いだ。 人前では常に明るく振舞い、陰で血のにじむような努力を続ける少女。 自惚れかも知れないが、彼女の支えになってきた自信はあるし、そのことを誇りに思う。 アリスとはつい最近一気に距離が縮まった。 皮肉屋で素直じゃないが、思いやりのある優しい少女。 ここ1ヶ月ほどの、彼女がいる生活はとても充実していた。 どちらかが選ばれ、どちらかは選ばれない。 残酷なようだが、2人とも幸せにするなんて言っても彼女たちは納得しないし、そんな都合の良いことは口が裂けてもいえない。 審判を下すのは自分だ。理屈ではなく、2人のうちどちらと生きていきたいのか、自らの感情を問う。 そして、その答えはすでに出ていた。 「入るわよ」 「じゃまするぜ」 件の2人が店に訪れる。 「用件はもうわかっているよな?」 「はっきり聞かせて頂戴。あなたの口からね」 「……ああ」 2人の顔を交互に見つめる。 もう一度だけ、目を閉じて心に浮かぶ少女の顔を確認する。 心臓はこれ以上ないほど早鐘を打ち、手のひらは汗がじっとりにじんでいる。 だが、逃げ出すわけにはいかない。 「……魔理沙」 2人の反応は異なる。 魔理沙はさらに顔を険しくし、アリスは唇をかみ締め、顔をそらす。 ああ、おそらく2人はわかっている。次に続く言葉を。 「すまない。僕は君を選ぶことはできなかった」 目を閉じ、息を吐く。 ―――ああ、やはりそうか――― 覚悟はしていた。予想もしていた。 なのに、面と向かって言われると想像以上に堪える。いっそ崩れ落ちてしまいたいくらいだ。 それでも、今度ばかりは取り乱すわけにはいかない。 「はあ~あ、やっぱりな」 「やはりわかっていたんだね」 「まあな。何歳からの付き合いだと思ってんだ? 香霖の考えなんてお見通しだぜ」 「……」 「なに辛気臭い顔してんだよ全く。あれだけ女っ気がなかった香霖がこんな良い女に言い寄られるなんて金輪際ないぜ。 それも2人同時にだ。もっと喜べよ」 「魔理沙……」 今度はアリス。 なんともいえない顔をしている彼女にも声をかける。 「お前も同じだよアリス。たった今想いが通じたんじゃないか。笑わないなんてそれこそ私に対して失礼だぜ」 自分自身よくこんなに口が回ると思う。 多分、ごまかしているだけなんだろうが。 「さて、そうと決まればこんなとこに用はないな。若い2人に任せて退散させてもらうぜ」 「……ああ」 「じゃあな香霖。これでアリス泣かしたら許さないぜ」 さあ、一刻も早く外へ出よう。取り繕うのはもう限界だ。 そして店には2人が残る。 しばらく沈黙が続き、それをアリスが破った。 「霖之助さん」 「なんだい?」 「これでよかったの? 本当に私でいいの?」 その表情からは喜びを見て取ることはできない。 魔理沙のことが気になっているのだろう。 「ああ。いつものように理屈でどうのこうのとは考えなかった。 僕が店にいて、その傍らにいて欲しいのが誰か。それを考えたとき、真っ先に浮かんだのが君だったんだ」 「……そう」 そうしてまた続く沈黙。 「ねえ」 「うん?」 「今日は帰ることにするわ。まだ気持ちの整理ができなくて。 あ、嬉しくないわけじゃないの。でも、まだ素直に喜べないから……」 「ああ。急ぐ必要はないさ」 そうして店を出ようとするアリスの背中に声をかける。 「そうだ、一つ伝えないといけないことがあった。 次に君が来たときには、是非とも渡したいものがあるんだ。 ……待っているよ」 香霖堂を飛び出した魔理沙は、とにかくスピードを上げて箒を飛ばしていた。 歯はきつく食いしばられ、目は前を見ていない。 山から一本だけ突き出た大木。それに向かって突っ込んでいくが、顔を伏せている魔理沙は気付かない。 あわや激突かと思われた瞬間、魔理沙は目の前に開かれたスキマに飛び込んでいった。 気がつけば、布団の中にいた。 見覚えのない部屋。一体ここはどこだろうと思った瞬間、声をかけられる。 「危ないわね全く。自殺なんかされたら霖之助さんが悲しむわよ」 「……お前か、紫」 「ええ、久しぶりね」 「……見てやがったのか」 「もちろん、一部始終をね」 「それで? 惨めな私をあざ笑いに連れてきたってのか?」 「命の恩人に失礼なことね。それに、私にはあなたを笑うことはできないわよ」 「……」 その言葉を聴いてなんとなく察する。 「で、その大量のつまみと酒はなんだ?」 「わかってるんでしょ? こういうときは呑んで呑んで呑みまくるものよ」 「……まあいいや。どうせ呑むつもりだったしな。ここか家かが違うだけだ」 「そうそう。じゃあ乾杯ね。」 それから数十分後。 「随分呑んだわねえ」 「なあ~にまだまだこれからよお~」 2人で次々瓶を開け、気付けばすでにかなりの量を飲んでいた。 そろそろ溜め込んだものを吐き出させようと、紫は魔理沙の本心を尋ねる。 「で、どうなの? まさかすっぱり諦めきれたわけじゃないんでしょ? 言いたいことがあるなら吐き出してしまいなさいな」 少し目を左右にやる魔理沙。酔いはやや醒めたらしく、迷いつつもぽつぽつと話し始めた。 「最初はさ……あいつらが憎くて仕方なかったんだ。 私のいない間にこそこそしやがって……って。 でも段々、自分に対する後悔のほうが大きくなってくのがわかったんだ。 何でもっと積極的に行かなかったんだろう。 貰い手がなかったら頼むなんて軽口でごまかして、そんなんで香霖が気付いてくれるわけないって知ってたのに。 まだ私は大人になってないから、もっと大人にならないと香霖とは釣り合わないからって、本気になるときを『今』から 『いつか』にすり替えてた。 そんなことをしているうちに、『今』本気になってるアリスが香霖を動かし始めたんだ。 気がついた時にはもう手遅れで、香霖はすっかり私の方を向いてなかった」 その言葉に思うところはあったが、今はとにかく聞き手に徹する。 「なんで『いつか』なんて考えてたのかなあ。チャンスなんかいくらでもあったはずなのに。 やりたいこともいっぱいあったんだぜ。 唐突に『愛してるぜ』とか言って香霖を赤面させたり、 新しい料理を覚えて『おいしいよ』って言わせたり。 祭に2人で手をつないで出かけたり、 花見や月見でのんびり酒を酌み交わしたりもしたかった。 同じ布団で寝て、香霖の腕を枕にして。寒いからぴったりくっついて『これで寒くないぜ』ってささやいたり。 つい何ヶ月か前まで、手を伸ばせば届いたかも知れなかったのに、今じゃもう届かないんだ。 どんなに泣き喚いても、力づくで奪い取っても、それは私が欲しかった香霖じゃない。 ……私を一番愛してくれる香霖じゃないんだ……」 そこまで言うと、魔理沙は肩を震わせて俯いてしまった。 自分もこの子と同じだ。 その気持ちは手に取るようによくわかる。 だから、魔理沙の頭を優しく胸に抱いた。 「泣いたっていいのよ。あなたはまだ若いんだから。 こういうときは、泣いて泣いて全部吐き出しなさい。 そうして成長していけばいいの」 そう言いながら魔理沙の頭を撫でる。 「うっ……ぐっ……うわああああああああああああああ!」 いちど決壊してしまえば、もうあとは吐き出すだけ。 爪のあとが残るほど強く紫を抱きしめ、魔理沙はいつまでも泣きじゃくっていた。 2日が経過した。 しかし、まだアリスはやってこない。 (もう少し時間がかかるのかもな……) そんなことを考えつつ、霖之助は先ほど届いた文文。新聞の号外を開く。 その目に飛び込んできたのはこんな記事だった。 『熱愛発覚! 香霖堂店主森近霖之助と、七色の人形遣いアリス=マーガトロイド!』 同じころ、アリスもその記事を目にしていた。 つい先ほど、この新聞を作った本人、射命丸文が直接渡しに来たのだ。 「この号外はあなたが見なくちゃダメなんです! 今回情報をくれた人から頼まれたんですから!」 何が言いたいのか良くわからなかったが、どの道今は何も手につかない。 まあ気を紛らわすくらいのことはできるだろう。 そう思って新聞を開いた瞬間、アリスの頭は一気に覚醒した。 新聞の内容を要約するとこうだ。 『いつものようにネタを探していたところ、急遽取材の申し込みがあった。 渡りに船とその人物にあえば、なにやら人知れず咲いた恋があったとのこと。 しかもそれが有名な魔法の森に住む2人、森近霖之助とアリス=マーガトロイドと聞けば、これは記事にせざるを得ないと判断した』 その後は2人の馴れ初めについて記されている。 情報提供者の名前を見ると、こう書いてあった。 『霧雨 魔理沙』 「……ここまでお見通しってわけね」 どこまでも世話焼きなやつだ。 自分が失恋した直後だというのに、アリスが魔理沙のことを気にして動けなくなることまで考えていたのか。 ここまでされては、自分も腐っているわけにはいかない。 人の恋路を勝手にばらすのは不届き千万だが、背中を押されたのも事実だ。 この記事を見た読者が押し寄せる前に、霖之助の下へ。 バタン! 勢いよく戸が開く音を聞きつけて目をやると、ここ2日待ち焦がれた少女の姿があった。 「……見た?」 何を、とは聞かない。 「ああ。全くあの子らしいな」 「そうね。私もようやく覚悟が決まったわ」 2人で笑いあう。どちらかといえば苦笑に近い笑みだったが。 「それでは僕の思いを伝える前に、この前話したものを渡そう」 そう言って奥に引っ込む霖之助。 戻ってきた霖之助の手に乗せられていたのは紙の包み。 「開けてごらん」 言われるがままに包みを開く。 出てきたのは、非常に細かな刺繍が施され、生地も糸も高級な品を使用した『振袖』であった。 「これを……私に?」 「ああ。……それは僕の、母の形見なんだよ」 「え?」 目を丸くするアリスを眺めつつ、話を続ける。 「僕が人間と妖怪のハーフということは知っているだろう? 人間だったのは母のほうでね。それなりの良家の一人娘だったらしい。 父は母が僕を身ごもったあと、親族たちに追われ、今は行方知れずだ。 母は妖怪の子を宿したために家を勘当されたそうなんだが、そのとき母親、つまり僕の祖母からこの振袖を 渡されたそうだ。 祖母も曾祖母から譲り受けたもので、母が嫁に行くときに着せたかったそうだが、今話したような事情でそれも 適わなくなってしまった。 だからせめて、まだ見ぬ孫が女なら孫に、男ならその伴侶となる女性に受け継いで欲しい、とね。 この話を聞いたのは母が他界する直前だった。もう何十年も前の話さ」 「……そんな大事な物を私がもらうわけには「アリス」」 軟らかくアリスの発言をさえぎる霖之助。 「僕と君が、初めて和服について語った時の内容は、まだ覚えているかい?」 当然忘れてなどいない。 確か、和服は着る人間が代わっても大丈夫なように厳密な採寸をしない。 そしてその理由は 「……あ」 大事な着物を、子へ、孫へ。 何年も何年も大事にしてきた着物だからこそ、それを授けることによって、 相手に愛情の深さを伝えるのだ。 「……」 言葉もないアリスに、霖之助が声をかける。 「その着物以上に大切なものは、僕の店にもない。値打ちの問題ではなく、ね。 これが僕の答えだ。 ……受け取ってくれるかい?」 ともすればあふれそうになる涙を必死に抑える。 今は泣くときじゃない。笑うときだ。 そうしてアリスは霖之助に応える。 「はいっ!」 その顔は、見るもの全てを魅了する最高の笑顔だった。 魔法の森の入り口に存在する店、香霖堂。 そこを訪れた客に、店の名物は何かと問えば、皆が口をそろえてこう言った。 それは、いつ見ても仲睦まじい銀髪と金髪の夫婦である、と 了 前の話 おまけへ
https://w.atwiki.jp/restartmatome/pages/106.html
夏の23日(雑談所18スレ)時点 ┏■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓■□■ 名前:森近霖之助 《東方projectシリーズ》┣■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛┃ ,,.. -―- ..,,__ }'、┃ ,,. ''´ `´ヽ/__〉┃ / ',`ヽ┃ / / / ヽ ヽ┃ ∠、_ノ / / l } ', '、┃ {∠ノ / l /r=、lヽl/ } ヽ┃ ヽノ/|ノ  ̄l /';弋r/ヽ'l /从/ |┃ } { 从 l//`ヽ、 /l /-‐/ } l |┃ ∧ ヽ,l / `''⌒/テヽ';/ l l┃ ,. -、_ _,,..ゝ∧l ./ ヽ、 }ヽ、/l/ //'}┃ /´ ヽ/`l''ーv' ´ /l/ l/ヽ、 `ヽ ´´ ,.ノ l/l/ ┃ 〈ヽ l ヘ l l〉〉 {\\ \_ ,,.. ィ´ | / ┃ } \ l ∧ l 〈 〈l l ヽ, ' ..,,_/\´ /l //┃ // ヽ | ,/ } l 〉 ',、 ヽ`''ー// 〉ヽ、/ノ/´┃ . /_ノ ヽ ´ | l l lヽ`' / 〈 / `ヽ,_┃ l l ゞ '; / ヽ \ ヽ / 〈 / //l l `ヽ┃ //''‐-、-、 l, / ヽ ∨´ / /// l |┃ l`'''- ..,/`ヽ、ヽ,/ノ __,,.ゝ-\ ', </ { v /, ヽ┃ / / `'' ..,,`v、''´ ー- -- `ヽ、_,,..ノ ` ´l /ノ/、┃ / l , ' ー----‐'''´ ̄ ̄`''ヽ ''´`ヽ /' / / ヽ┃ . / l _、_ / / ,l_ノ ̄,____ `'l'ヽ`ヽ、 `ヽ// / `l┃ . / ,l ,..,_ヽ{ l_ノ_ソ,'´ l;.;.;.;.;.;.;.;. ̄`'ー-、., ヽミ 〉 / ,. -'´';┃ // {/ `ヽ、} || ||_|;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.`ヽ、{`ヽ /ヽヽ/ヽ┃ l / \ \ || |/|| |ヽ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.ヽ ''ヽ/___ ,/ / \┃ { ' ` \| ,'| l `ヽ__;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.} ,.. / / ヽ┃ \ ヽ _ゝ-----、;.;.;.;.;.;.;`'''ー----t´ ヽ / / \┃三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三┃――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――┃ - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -┃ ローゼン村を作るときに集まった開拓者の一人。若く見えるが年齢はローゼンや[[エンジュ]]等と同年代…以上?┃ - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -┃ 【職業】@酒屋(キムシジャン店主)┃ 【交友値】 ☆☆☆ (3)┃ - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -┃ □所持スキル┃ - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -┃ 【商人:LV.03 @05】┃ 【酒造:LV.09 @10】┃ 【錬金術:LV.05 @09】┃ 【道具の名前と用途が判る程度の能力】 スキル名通り。用途は分かるが使い方はわからない。┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◆
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/280.html
柴とはそこいらにいる柴犬、または八雲紫を揶揄して使われた言葉である。 そもそもの発端は霖之助スレ15の 860が 「紫」 の字を打とうとして今まで 「し」 で変換していたのであろう、間違って 「柴」 と打ってしまい、字が似ていることもあり、住民のツボに嵌ったのが由来である。 その後しばらく八雲紫=柴のような用法がなされ、次第に業を煮やした住民が是非を問い出し、問題は収束する。 以後はたまに香霖堂の近くをうろつく犬程度の使い方になったが、反射的に八雲紫を思い浮かべる人もいるため無闇に使うのはあまりよくない。 そもそも霖之助スレ住民は長らく二次設定に頭を悩まされており、スレ内でも度々 「霖之助さえまともなら他のキャラはどうでもいいのか」と問題になる。 とはいえ面白いことが好きな人間なのだから、このような問題が発生するのは完全には防ぎようがない。 予防も大事だが、真に大事なのは二次設定が発生したときにどう対処するかである。 花は半開を看、酒は微酔に飲む。人生に必要なことだと思いませんか?
https://w.atwiki.jp/thlabyroth2/pages/17.html
森近 霖之助 ステータス Lv1 Lv30 成長率 HP 103 531 ? MP 9 10 ? TP 16 16 ? 攻撃 40 267 ? 防御 40 267 ? 魔力 40 267 ? 精神 40 267 ? 敏捷 102 109 ? 回避 4 4 ? 状態異常耐性 猛毒 10 10 麻痺 20 20 鈍重 30 30 衝撃 40 40 恐怖 50 50 沈黙 60 60 即死 70 70 能力低下 80 80 属性相性 炎属性 132 132 冷属性 132 132 風属性 80 80 然属性 80 80 魔属性 80 80 霊属性 80 80 冥属性 100 100 物属性 144 144 HP回復率:16 SP回復率:2 レベルアップ難度:56 加入条件:最初から加入 スペル 名前 消費MP 対象 属性 攻撃種類 効果 使用後ゲージ量 備考 応急処置 1 味方単体 物 補助行動 HPを微回復し、更に猛毒と恐怖を回復 7000 スキルレベル上昇により、治療可能な異常状態が増える 戦闘指揮 2 味方単体 物 補助行動 対象の全能力を僅かに上昇 6600 SLv1で+10% スキルリスト 名前 現状Lv 上限Lv 必要SP HPハイブースト 取得不能 Lv5 6Pts MPハイブースト 0Lv Lv5 3Pts TPハイブースト 0Lv Lv5 6Pts 攻撃ハイブースト Lv0 Lv5 6Pts 防御ハイブースト Lv0 Lv5 6Pts 魔力ハイブースト 0Lv Lv5 6Pts 精神ハイブースト Lv0 Lv5 6Pts 敏捷ハイブースト 取得不能 Lv5 6Pts 回避ハイブースト 取得不能 Lv5 6Pts 命中ハイブースト 取得不能 Lv5 6Pts 属性ハイブースト 取得不能 Lv5 6Pts 状態ハイブースト 取得不能 Lv5 6Pts 名前 現状Lv 上限Lv 必要SP 効果 補足 向上心 Lv0 Lv2 5Pts 経験値が(SLv*10)%上昇する 必須条件:探索メンバー(12人)に加わること。「実戦経験」との効果複重はしない 実戦経験 Lv0 Lv2 5Pts 経験値が(SLv*25)%上昇する。 必須条件:前衛4人に加わること。「向上心」との効果複重はしない。 幻想郷の古道具屋店主 Lv0 Lv10 1Pts 戦闘終了後の敵ドロップ率が(SLv*4)%上昇する。 連戦ボーナスも含めると更に効率UP。 目聡い店主のサガ Lv0 Lv10 1Pts 戦闘終了後の取得金額が(SLv*2)%上昇する。 連戦ボーナスも含めると更に効率UP。 隊列変更効率化 Lv0 Lv2 5Pts スキル取得者が「隊列変更」で後衛の味方を前衛に配置した場合、その味方の行動値が7500+SLv*800に設定される。 前衛での活躍も期待できる。 ヘンな生き物の知識 Lv0 Lv2 5Pts スキル取得者が前衛にいる場合、敵他種に与えるダメージが上昇する。 同スキル取得者が複数人いる場合、効果は復重しない。 行動時敵攻撃低下 Lv0 Lv2 5Pts スキル取得者に行動が回ってきた際、敵全員に(SLv*4)%の攻撃低下効果を付与する。 行動時敵魔力低下 Lv0 Lv2 5Pts スキル取得者に行動が回ってきた際、敵全員に(SLv*4)%の魔力低下効果を付与する。 備考 戦力としては全くの役立たず なので、「目聡い店主のサガ」と「幻想郷の古道具店主」をマスターさせ後衛に控えさせて雑魚戦はもちろん、ボス戦のドロップ吟味もだいぶ楽になるお助けキャラとしての運用がメインに思われる。 また、「行動時敵魔力低下」「行動時敵攻撃低下」や「隊列変更効率化」で戦闘の補助をさせることもできる。 ステータス振りについて ステータスは攻撃等に振ってもしょうがないので、敏捷に振って「隊列変更効率化」のスキルを活かすのが精いっぱいか。 序盤はHPに振ることで多少の壁とはなる。 スキル振りについて やはり「目聡い店主のサガ」と「幻想郷の古道具店主」を真っ先にとるといいだろう。 今のところはレベルを上げても、ボス戦時にはどうせレベル1で後衛待機となってしまうので、向上心や実戦経験の取得はそれほど重要ではない……か?
https://w.atwiki.jp/touhouvision/pages/479.html
《森近 霖之助》 No.1490 Character <第十六弾> GRAZE(1)/NODE(2)/COST(1) 種族:人間/妖怪 (自分ターン)(0): 〔あなた〕はカードの種類を1つ宣言し、〔あなたのデッキの上のカード1枚〕を公開する。公開したカードの種類があなたの宣言したカードの種類と同じだった場合、公開したカードを手札に加える。異なっていた場合、公開したカードを破棄する。この効果は1ターンに一度、メンテナンスフェイズにしか使用できない。 攻撃力(3)/耐久力(2) 「まだ、開店まで随分と時間が有るんだが…いったい何の用だい?」 Illustration:鳥居すみ コメント 香霖堂の店主。 今回も後衛から戦線をサポートすることに努めている。 長々と書いてあるが、要はデッキトップの種類を当てればそのまま手札に加えられる効果。 このゲームのカードはキャラクターカード、スペルカード、コマンドカードの三種類に区分されているので、ただ使用するだけでは1/3の確率でしか手札を増やせない。 おまけに単体での戦闘力は著しく低く、とどめと言わんばかりにルーミア/14弾の圏内なので、何の策もなく漫然と投入しただけではデッキ枠の圧迫にしかならない。 そのため、確実に効果を活かせるようなデッキに投入して積極的にアドバンテージを稼ぐ必要があるだろう。 分かりやすい策としては逆転「リバースヒエラルキー」デッキのような特定の種類を排するデッキに投入してヒット率を水増しすること。 いっそのこと明羅/9弾や河城 にとり/11弾と合わせてキャラクター以外のカードを最小限に抑えたデッキを構築してもいいかもしれない。 自身の店の商品である河童の五色甲羅との相性は抜群、宣言を行う前にデッキの上のカードを操作できるので最低でも1枚は手札に加えられる上に運がよければ2枚まで追加で手札に加わる可能性がある。(QA-320) また、宏観前兆のようなデッキトップを調節できるカードと組み合わせて確実に効果をヒットさせていくのも有効である。 この場合、見たカードの中に小野塚 小町/11弾のように冥界にいてほしいカードが混ざっていた場合、あえて効果を外して冥界を肥やしていくという荒業もある。 上手く使えばノーコストでカードを引くことができるが、最大の敵は効果発動までのタイムラグ。 コマンドを駆使して相手ターンを生き残れるようにしたいが、デッキ構築次第ではそれすらままならないのが悩ましいところ。 また、引くカードを一度相手に見せるという性質上相手に対策を取られやすく、姫海棠 はたて/PRのようなカードに弱い点にも気をつけた方がいいだろう。 関連 第十六弾 森近 霖之助/1弾 森近 霖之助/7弾 森近 霖之助/12弾
https://w.atwiki.jp/tohorpg/pages/757.html
[部分編集] 霖之助と愉快な仲間達の紹介ページです。 タイトル 霖之助と愉快な仲間達 作者 幼舐め男氏 サイト キャタピラーの巣窟 ダウンロード pass yukai ツール RPGツクールVX Ace ジャンル RPG 最新ver 誤字修正版(2013/5/22更新) 動作環境 Windows 8/7/Vista/XP/Me/2000 メインキャラ 霖之助、他7名 価格 無料 ストーリー ○月××日、幻想郷は滅ぶ寸前になっていた。 侵略者は弾幕が通用しない謎の生命体。 まったく歯が立たない紫は草薙の剣を持つ霖之助に幻想郷を任せるのであった。 特徴 東方では珍しい原作の男キャラだけを掻き集めたという異色のRPG。 中にはトランプキングのように他ではまず見ないようなキャラまで登場しており、 普段と変わったメンバーでのプレイが可能。 一方でゲーム自体は至って普通のデフォ戦である。 コメント ▼コメント投稿欄へ wikiを隅々まで見て載ってなかった情報や、記述内容の誤りの指摘などを寄せて頂けると助かります。 バグ報告があれば作者のサイトへどうぞ。その際はバージョンを記述しておきましょう。 レスをしたいコメントのトップにあるラジオボタン【◯】をクリックしてから コメントを書き込んで下さい。 そうするとログが流れず、どのコメントへのレスかもすぐに分かるのでやりとりがスムーズに出来ます。 (表示は10件分に設定してますが変更は可能です) ※コメントを書き込む際、以下の点を確認して下さい※ 質問をする場合、一度コメントログやコンテンツに目を通して既に同じ内容が載っていないか確認して下さい。 wikiや攻略情報と関係の無い以下に該当するコメントは、削除対象となります。 雑感・雑談・愚痴 誹謗中傷 プレイ日記 特定キャラでの攻略や低レベル攻略といった縛りプレイ全般 一般常識を逸脱するようなコメント 1 - 名無しさん 2013-07-11 18 38 21 2 - 名無しさん 2014-07-26 14 11 21 具体的にキャラは何が出るんですか?(プレイしろと言われたらそこでお終いですが) - 名無しさん 2014-10-04 21 14 27 プレイしろ - 名無しさん 2014-10-05 13 38 59 ですよね~・・・ - 名無しさん 2014-10-05 20 19 35 タイトル画面に出てる8人全員だけど二人は設定だけのキャラだし一人は超マニアックだからやらねえと多分分からん - 名無しさん 2014-10-06 02 34 32 まぁ一応七人は知ってるんですが、真ん中のトランプみたいなのが分かりませんw - 名無しさん 2014-10-06 18 54 11 確か左からおまけに俺の偏見で書いてます。すいませんw - 名無しさん 2014-10-06 19 13 38 プレイしてて分かったが、間違えてまくってるなww - 名無しさん 2014-10-09 21 28 16 さっきクリアしたが、一時間ほどでクリアできるお手軽な内容だった - 名無しさん 2016-01-21 01 00 53 あと、人里の前のエリアに隠し通路発見w一気に最強になれるアイテムがあったw - 名無しさん 2016-01-21 01 02 23 名前 全てのコメントを見る ▲ページ上部へジャンプ
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/223.html
前の話へ 次の話へ あらすじ 無縁塚で拾ったブルマを運動量の多そうな美鈴に勧めた霖之助。 穿いてみた美鈴は気に入るあまりに服をたくし上げ、霖之助に履いてるブルマを見せる。 目が離せない霖之助(赤面)を見て冷静になった美鈴、真っ赤になって硬直。 「あぅぅぅぅぅぅ」 あの後なんとか意識を取り戻し、とりあえず穿いているブルマの代金だけは払って紅魔館の自室に戻った美鈴。 思い出すだけでも顔から火が出そうだ。調子に乗るとろくなことをしない自分が恨めしい。 はしたないと思われただろうか。それとも頭が弱い子だと思われただろうか。 それともその両方か。 考えれば考えるほど恥ずかしくて消えてしまいたくなる。 無論、どんなに祈ったところで消えることなどできず、ひたすら悶える美鈴だった。 「はぁううううううううううううう~~~~」 「美鈴の様子がおかしい?」 数日後、紅魔館の主レミリア=スカーレットは、午後の紅茶を嗜みつつメイド長の十六夜咲夜に聞き返した。 「ええ、どうにも門番の仕事に身が入っていないようで」 「それはいつものことでしょう」 「それはそうなんですが、いつもとサボり方が違うと言いましょうか。 いつもは大概昼寝ばかりしているのですが、最近はボーっと宙を眺めては真っ赤になってうつむいたり、 ぶんぶんと頭を振ったりと。 しかも5分おきにです」 「……なにか変わったことはなかったの? 変なものを拾って食べたとか」 「そうですね……強いて言えば、様子がおかしくなったのはこの前の休日からでしょうか。 メイド妖精が赤い顔をして帰宅する美鈴をみたとか」 「となるとその日に出かけた場所が怪しいわね……。咲夜は聞いてないの?」 「はい、少々お待ちください」 頬に手を当て、考え込む咲夜。 思いついた! という顔をしたのも束の間、やけに神妙な面持ちで告げる。 「確か……香霖堂、だったかと……」 「「……」」 「あの店主となにかあった、そういうこと?」 「信じがたいことですが他に考えられません。その前日は休日がもらえたと喜んでいましたから」 「これは放っておくわけには行かないわね」 「ええ、根掘り葉掘り聞かせてもらいませんと」 2人の視線の先には、帽子を顔に当ててうずくまる美鈴の姿があった。 ちなみに2人からは見えないが、やはりその顔は真っ赤であったという。 その夜、美鈴はレミリアの部屋に呼び出されていた。傍らには咲夜の姿もある。 「美鈴。単刀直入に聞くわ。香霖堂の店主と何があったの?」 「ふぇっ!?」 いきなりそう切り出されてあわてる美鈴。しつこいようだがその顔は真っ赤である。 ――カマをかけたつもりだったが大当たりか―― アイコンタクトで意思の疎通を完了したレミリアと咲夜は、さらに畳み掛けに入る。 「図星ね。どうも様子がおかしいと思ったら。 で、何があったのか聞かせてもらえるわよね?」 言えるわけがない。 「い、言えません!」 「美鈴。あなたの主は誰? このレミリア=スカーレットが教えなさいと言っているのよ?」 「そ、それでもこればっかりは言えないんですっ!」 ――これはただ事ではないようね―― ――ええ、この子がここまで言うなら力づくでは無理でしょう―― ――ならばあの店主ね―― ――賢明です、お嬢様―― 再び交わされるアイコンタクト。 「そう。そこまで言うならもう聞かないわ。下がっていいわよ」 「え……? あ、はい。わかりました。失礼します」 助かった、という心境を隠しもせず、美鈴は部屋に戻っていった。 「……ああ、もうこんな時間か……」 一方の霖之助も、いつもと様子が違う自分を自覚していた。 何せいくら字を追っても内容が頭に入ってこない。 気がつけばブルマを履いた美鈴の下半身が頭をちらつき、必死に振り払う。 そんな堂々巡りがここ数日続いていた。 そしてまたいつものように眠れぬ夜を迎えようとする霖之助だったが、 バゴーン! 「店主はどこ!? うちの美鈴に何をやらかしてくれたのかきっちり話してもらうわよ!!」 今日はそれすらもできなさそうだ。 「……というわけで、別に君たちが考えてるようなことは何もしていないよ」 何とか事情を説明し終わり、息を吐く霖之助。 「あの子らしいと言うかなんと言うか……」 こめかみを押さえてため息をつくのは紅魔館の主、レミリア=スカーレット。 確かにそんなことで悩んでましたなどと言えるわけがない。主に情けないとかそういう理由で。 一方霖之助はレミリアがあけた大穴を見て赤字を計算しつつ、美鈴をフォローする。 「まあそういうわけだから、この件の事情に関しては知らぬ存ぜぬを通してあげてくれないか? いくら穿いてるブルマが気に入ったからとはいえ、 一応は男性の僕に服をたくし上げて下半身を見せるなんてことをしたんだ。 君たちに知られたとわかったら、恥ずかしくてショック死してしまうかもしれない」 「心配しなくても言わないわよ。こっちもこんなことで真面目に説教なんてしたくないわ。 咲夜には私から上手く言っておくから」 「ありがとう。そう言ってもらえると助かるよ。お礼にこの穴はなかったことにしておこう」 内心修理代を請求されるのではないかと思っていたレミリアはその言葉に安堵する。 それにしてもなぜこの店主は美鈴にここまでするのだろうか。 自分が顛末を知ったことなど、美鈴に言おうが言うまいがこの店主には何の関係もない。 それなのに頭を下げて頼んだ上、店に開いた穴のことまでなかったことにするなどと。 「あなた……もしかして美鈴のことが好きなの?」 「は!?」 なぜそうなるのかわからない霖之助は、予想外の発言に取り乱してしまう。 レミリアからすれば、まさに図星を衝かれたようにしか見えないというのに、だ。 口の端を吊り上げてニヤニヤと笑うレミリア。 「ふ~ん。女に興味なんてないような顔してねえ? まああの子は気立ても顔も良いし、出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んでるから無理もないけど。 それともそのブルマとやらが気に入ったのかしら?」 いかん、このままではブルマ好きという噂を立てられかねない。 それの何が悪いのかはわからないが、理性ではなく本能が危険を訴えてくる。 それを感じた霖之助は、何とか目の前の悪乗りしかかっている少女をなだめようとする。 「……彼女が魅力的だということは認めるが、僕の発言はあくまで親切心と責任感から来るものだ。 そもそも、僕があんなものを勧めなければこんな事態にはならなかったわけだしね。 あと、人が特殊な性癖を持っているかのような言動は勘弁してくれ」 「つまらないわね……。まあ良いけど。少なくとも美鈴が魅力的とは認めてるわけだし?」 さらに霖之助を弄ろうとするレミリア。 (く、いらない一言だったか) もっと咄嗟に上手く取り繕う話術を磨こう。 霖之助が随分久しぶりに向上心を確かにした瞬間だった。 「さて、いつまでもこうしてたって仕方ないわね。 事情は良くわかったけど、とにかくアレじゃ門番の仕事に支障が出てしょうがないわ。 今度美鈴をよこすから、なんとか説得してあげてくれないかしら?」 正直こんなことまで頼むのは心苦しいが、自分や咲夜では事情を知らないことになっているので強気に出れない。 無理なら仕方ない、とダメ元で聞いたレミリアだったが、霖之助の返事は意外にも肯定だった。 「僕が何とかできるのならやぶさかじゃないな。わかった、引き受けよう」 「すまないわね。迷惑をかけっぱなしで」 「君たちが説得するわけにもいかないだろうしね……。 僕としても、彼女とは良好な関係を維持していきたいと思っている。 まあ貸し1つと言うことで手を打っておくよ」 「それならその穴を直してもいいようなものだけど?」 「その提案に心惹かれるものがないわけじゃないが、この穴の修理は僕でもできる。 それなら、僕の手に余る事態が起こったときに君たちの手を借りる権利を持っておいたほうが有意義というものさ」 そんなこんなで話はまとまり、レミリアは自分の館に帰って行った。 「そうでしたか…… 全くあの子らしいと言うかなんと言うか……」 やはり主従だけあって考えることは一緒のようだ。 「まあそういうわけだから、今度の休みに美鈴を香霖堂へやることにしたわ。 私たちが何を言ってもダメだろうしね。それに、あの店主も美鈴を憎からず思ってるみたいだし」 はて? このお方は美鈴に手を出された(かも知れない)のが気に食わなくて香霖堂に行ったんじゃなかったか? そう思いつつ釘をさしておく咲夜。 「しかし、それであの店主と美鈴が上手くいったら、それこそ門番に身が入らなくなるのでは?」 「んー、まあ良いじゃない。人の恋愛ほど傍から見てて面白いものはないし」 悪戯っぽく笑うレミリアに、ああ、これは何を言っても無駄なパターンかと早々に白旗を振ることにした咲夜。 今後の展開を考えると、内心でため息が漏れるのだった。 前の話へ 次の話へ
https://w.atwiki.jp/suifuden/pages/356.html
動かない古道具屋、森近霖之助 動かない古道具屋、森近霖之助 コスト:(2)(U)(U) タイプ:クリーチャー - 人間・妖怪 P/T:2/3 キャラクター(森近霖之助) アーティファクトが場に出るたび、動かない古道具屋、森近霖之助の上に識別カウンターを1個置く。 (T)、動かない古道具屋、森近霖之助の上から識別カウンターを1個取り除く:占術1を行い、カードを1枚引く。 コメント 関連 第三弾『随喜信仰』
https://w.atwiki.jp/th_maze/pages/103.html
森近霖之助 ステータス Lv1 成長率 消費SP HP 124 16 SP 102 16 TP 2 攻撃 83 16 防御 51 10 魔力 62 12 精神 51 10 敏捷 100 11 回避 2 3 状態異常耐性 猛毒 15 0 麻痺 15 0 沈黙 15 0 即死 15 0 パラ低下 15 属性相性 熱属性 163 0 冷属性 169 0 風属性 165 0 然属性 166 0 魔属性 167 0 霊属性 69 0 SP回復率:6% レベルアップ難度:144 加入条件:18Fで霖之助を倒す スペル 名前 消費SP 対象 属性 倍率 攻撃力 防御力 効果 使用後ゲージ量 備考 緋々色金の一刃 52 敵単体 無 175% 攻200% 防25% 命中+25 48% 敵防御反映率が低い 驚天動地の覇道 188 味方全体 - - - - 攻撃、防御、魔力、精神+150% 0% 自分のTPが0になる自分のTPが0のときに使用しても効果発動しない 世界の合言葉は森 88 敵全体 然 200% 攻200% 防50% 命中+100 30% 綺羅星トロイメライ 88 敵一列 魔 250% 攻150%魔150% 防50%精50% 命中+65 30% 複合スペル 天つ終焉の開闢 132 敵全体 無 200% 攻150%魔150% 防50%精50% 命中+200 20% 複合スペル 備考 全体的に超高性能。TPのドーピングは必須だが、複数体に攻撃できて命中補正が高い技もあり、非常に優秀。 驚天動地の覇道は攻撃・防御・魔力・精神を実質+100%の状態にするが、 使用後にTPが0になる、一度の戦闘で一回のみ、霖之助を控えに戻せない、など欠点も多い。 しかし開幕に覇道を使うことで、ボス戦での速攻や即時防衛ライン形成を実現したりすることが出来る。 もちろんピンチに陥ったときに使用し、霊夢の魔浄閃結と合わせて体勢を整えたり、 ここぞという時やスパートをかけたりする時などにも非常に役に立つ。 緋々色金の一刃は属性耐性による減衰を受けずかつ防御反映率が小さいため、相手を選ばず安定したダメージが取れる。 また消費SPも持ち技の中では最小なので、ボス戦では緋々色金の一刃がメインとなるだろう。 ザコ戦での複数相手はもちろん相手が単体であっても、属性相性次第では森やトロイメライを使った方がダメージ効率は上がる。 良性能の技が揃っているのだが、天つ終焉の開闢だけはかなり使い所が制限される印象。 よほど敵を選ばない限り十分なダメージは取れないし、コストパフォーマンスも悪い。 ボス戦ではレミリア等と同じく、居座りつつ攻撃を行うポジションが一番輝けるだろう。 SP回復率の低さから後列待機の恩恵があまりなく、また覇道の性質的にも前線に留まる事が多いので、 HP回復の出来るキャラと組ませ、常に前線で戦えるようにしたい。 全キャラの中で最もLVアップに必要経験値が多い。(LV1→100への必要経験値は5933866) その為、このキャラを活用するならしっかりとPTにいれて経験値を稼がせておかないと、 ステータス上昇量は高くてもレベルが低くなってしまい、結局他のキャラと大差がなくなってしまう。 背伸び狩りの際に開幕覇道を使うだけでも十分利用価値はあるので、 Lvアップが遅れて敏捷が追いつけなくならないように、使う気がなくてもPT枠が開いているのなら入れておくとよい。 ステータス振りについて 回復率が悪いのでSP、もしくは集中している間も前線で壁として働けるように耐久面を振るのがお勧め。 攻撃のメインとなる緋々色金の一刃は性能自体が良いので、攻撃にはさほど振らずとも火力は取れる。 開幕覇道を使うだけであれば敏捷に振っておくと良い。
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/179.html
※慧音の努力により人里が人外に寛容になったのは霖之助が店を構えた後という設定です。 ※霖之助が修行しているのは香霖堂を立てる数年前からであり、店の人間以外は彼が半妖とは知りません。 以上の設定を踏まえてご覧ください。 「……糸も布も残り少ないわね……また買いに行かないと……」 七色の人形遣い、アリス=マーガトロイドの艶やかな口から漏れる声。 本来ならば同性であっても聞き惚れるような美しく儚いその声も、倦怠の色が混ざっては魅力半減である。 これは、森近霖之助が霧雨の店で修行していたころのお話。 魔理沙や霊夢が、まだ無邪気に遊んでいたころのお話。 【彼が気付かせてくれたもの】 自分の生活に問題などない。 アリス=マーガトロイドはそう自覚しているつもりだ。 目標である完全自立人形の完成を目指して、研究と研鑽を重ねる日々。 そのことに全く問題はない……が、人形を作る以上、材料をどこかで手に入れる必要がある。 できれば家に篭っていたいのだが、自分で布や糸まで作っていては時間の無駄だし、そこまでの技術もない。 そういった理由で、たまに人里へ買出しに行くことだけは楽しいこととは言えなかった。 傍らに人形を浮かべ、人里で必要なものを調達するアリス。 すでに何度も訪れているため、商談はスムーズに進んでいく。 そう、商談"は"。 「……」 道を歩くとき、商品を受け取るとき、嫌が応にも感じる。 道行く人間たちの、店員たちの冷たい視線。ひそひそとささやく声。 歓迎されていないことを承知で来る自分も自分だが、いい加減同じことばかりして飽きないのだろうか。 刺さる視線に負けない冷ややかな心で、アリスは淡々と材料を買い込んでいく。 ……今度はもっと人形をつれてきて、大量に買い込むとしよう。 別に人間にどう思われようが知ったことではないが、好き好んで味わうような雰囲気でもない。 実際の疲労以上に疲れを感じながら、アリスは家に帰っていった。 ちなみに材料を買う資金は、人形を里の店に卸すことで調達している。 無論、製作者がアリスということは伏せてあり、受け渡しは人の目のないところで行われる。 店の人間も、里の人間である以上アリスを快く思ってはいないが、実際人形の出来が良い上に売れ行きも上々。 面構えだけはにこやかなその店員をくだらないと思いつつ、利害の一致によりアリスの売買は続いている。 次に里を訪れるのは何ヵ月後か。計算している自分が面白くない。 まあ、考えてもその時が先に伸びるわけではないか。 そう自分に言い聞かせ、アリスは人形作りに没頭していった。 祭りの日。 アリスは道端の一角で人形劇を披露する。 まるで生きているような動きに加え、通常ではありえないほど大勢の登場人物。 しかし、文字通り魔法のようなその光景に目を向ける人間はほとんどいない。 まれに目を輝かせる子供がいるにはいるが、そばの大人が諫めるためにすぐどこかへ行ってしまう。 曰く、あれをやっているのは人間ではない。 曰く、あれを見ていたら魂をとられる。 それでなくても、なぜお前なんぞがここにいる、という視線が常について回る。 めでたい祭りに紛れ込んだ異物に一瞬敵意を向け、直後まるでアリスの存在など見えない体を装う人間たち。 ふん、と内心でアリスは鼻を鳴らす。 別に馴れ合いにきているわけじゃない。 一人で家に篭って人形を操るのと、他人の目があるところで人形を操るのとはでやはりどうしても感覚が違う。 だから、これはあくまで自分のため。別にこれをきっかけに人間に近寄ろうとは思わない。 むしろ今はそれでいい。いつか自分を白い目で見ている人間たちが、目を離せなくなるような劇を演じてみせる。 そんなことが幾度か続いたある日。 いい加減いつもの店に行くのが面倒になったアリスは、違う店を探して歩いていた。 すると、一軒の店が目に入る。 『霧雨店』 どうやら生活用品などを売る雑貨屋のようだ。 ちょうどいい、人間の店などどこでも同じだし、ここで買い物を済ませて帰るとしよう。 アリスが店に入ると、眼鏡をかけた銀髪の店員が話しかけてきた。 「いらっしゃいませ。 おや、はじめてのお客さんですね。何をお探しで?」 「布と糸。できれば丈夫なものを」 にこやかな店員とは違い、アリスのほうに愛想良くする理由などない。 そっけなく用件を伝えると、店員は少々お待ちを……と言って引っ込んでいった。 「これでいかがでしょう?」 「……。いただくわ」 品質を確かめ、満足するアリス。 普段使っている店よりは上等なものを扱っているようだ。 「それでは御代を……おや、その人形は……」 「……この子がなにか?」 気付かれたか。顔には出さないが内心で舌打ちするアリス。 どうやら自分の悪名は思っていたより人里に広まっているらしい。 どうせこの店員も手のひらを返したように迷惑そうな態度をとるのだろう。 浮かんでいた人形を、念のために腰元に下げて入店したが、徒労に終わったようだ。 また次の店でも探すかな、と思っていたアリスだったが、 「もしかして、あなたがアリス=マーガトロイドさんですか? いやあ、お会いできて光栄です。 ああ、申し送れましたが、僕は森近霖之助。この店で商売人の修行をしているものです。 それにしても素晴らしい人形だ。お一人で作られているというのは本当ですか? できれば手にとってじっくりと見せていただきたいのですが。 ああ、それに……」 森近霖之助と名乗る店員は、鮮やかに予想を裏切ってくれた。 「僕がなぜアリスさんのことを存じているかというと、気晴らしに向かった人形屋で作品を拝見しまして。 あまりに精巧かつ繊細にできているものですから、そこの店員に製作者について聞いてみたんです。 ところが、その店員が頑として口を割らない。 これは何かあると思って絶対他言しないことを約束した上、袖の下まで使って聞き出してしまいました。 道具はどのようなものを? やはり魔法を使って? それとも純然たる技術の結晶ですか?」 ……何だこいつは。 今の言い方なら自分が魔法使いだということくらい知っているのだろうに。 まあいい。拒絶されてはいないようだし。 むしろ問題はこの口か。 「あの、早く作業に戻りたいのでお勘定を……」 「ああ、これは失礼。ついつい話に夢中になってしまいました」 一応人の話を聞く余裕はあったらしいその店員に代金を支払い、店を出るアリス。 「今度は時間のあるときにいらしてください。是非人形の話を聞かせていただきたい。」 「……そうですね。考えておきます」 前向きな返答に喜ぶ霖之助。 変なやつ。 そう思うアリスだが、不思議と悪い気はしなかった。 人形を評価してもらったからだろうと結論付け、アリスは自宅へと帰っていった。 それから、アリスは霧雨店で買い物をするようになった。 人形の材料だけでなく生活用品まで揃っているため、何件も回る必要がないからだ。 何より、この店の店員は自分を嫌がっている様子がない。 特に森近霖之助と名乗った若い男。 会うたび会うたび人形を褒めちぎり、製作のことについて質問してくる。 挙句の果てに、人形屋の店員は魔法使いが作った人形だからといってあれほどの作品の手入れを嫌がっているが、 そんなことで品物の扱いを決めるとは全く商売人失格だなどと、アリスの味方をするような言動まで平然と吐く。 一度彼の不在時に店を訪れた事もあったが、次に来店したときには『勿体無いことをした』を10秒に1回は言う始末である。 気がつけば、アリスは人里での買い物が重荷ではなくなっていた。 そうなると1度に買い込む量も減り、月に1度ほどの間隔で定期的に店を訪れるようになる。 霖之助と話し込むうち、知らず知らずのうちに笑顔になることもあった。 それを見ていた別の客は、 「いやあ、あの氷みたいに無表情な魔法使いでも、あんなふうに笑うことがあるんですなあ」 と、驚きを隠せず、会う人会う人にその事を語ってまわったと言う。 ようやく、アリスにとって本当に充実した日々が訪れた。 唯一の心掛かりがなくなり、心置きなく人形作りに集中できる。 出来上がった人形を見せると、霖之助をはじめ、霧雨店の面々は手放しで賞賛してくれた。 中でもその店の子供である小さな少女は、毎回目を丸くして人形に見入り、別れ際には何度もいつ来るのかと聞いてくる。 自分を正しく評価してくれる存在がいるだけで、こうも違ってくるものか。 アリスの頑なだった心は、徐々に溶け始めていた。 祭りでの人形劇も、気がつけば足を止めてみている人間がちらほら出始めた。 見ているのは、子供や面白いものに飢えた若者がほとんどだ。 もしかしたら、霖之助が霧雨店を訪れる客に自分のことを語って聞かせたからかもしれない。 そう思うと、なんだか心が温かくなるアリスだった。 優しい微笑を浮かべるアリスが水面下の噂となって、観客にやや男たちが増えもしたが。 しかし、そんな生活も唐突に終わりを告げる。 「出て……いった?」 「ああ、いつか自分の店を持ちたいって言ってたからなあ。 直接あんたに告げられないのが残念だって言ってたぜ。 たしかあいつの店は……あ、ちょっと!」 「っ!」 最期まで話を聞くことができず、アリスは自宅へ向かって飛び出していた。 もう会えなくなったことも、そのことについて何も言ってもらえなかったことも、何もかもが辛かった。 自宅の椅子に座り込み、ぼうっと考えこむアリス。 なぜ自分はここまで取り乱しているのだろうか。 別に彼がいなくなっただけで、かつての生活に戻るだけではないか。 大丈夫。今までそうして生きてきたんだから。 言い聞かせることで胸の痛みは小さくなる。 小さくなりはしても、消えてはくれなかった。 それは、アリスが他者と触れ合うことの楽しさに気付いてしまったから。 気付かせてくれた彼が、なんの断りもなく一方的にその触れ合いを絶ってしまったから。 もう、かつてのように生きていくことはできなかった。 ちくちくちく。 布に糸を通す音が聞こえる。 が、 「……集中できない……」 音の発生源ことアリスは、この1ヶ月というもの人形作りに身が入っていなかった。 人形を作ることで霖之助との繋がりが絶たれたショックを振り切ろうとするのだが、人形を作るということはその完成形をイメージするということ。 イメージするたび浮かんでくるのだ。完成した人形を褒め称える霖之助の姿が。 どこに居るのかわからない以上、彼が褒めてくれることなどありえないというのに。 結局、彼のことを忘れるための人形作りで、自分にとって彼の存在がどれほど大きかったか痛感する破目になる。 心に刺さった針は、いまだに抜けてくれない。 「はぁ……気晴らしに外を歩いてこようかな……」 どの道このまま家に居ても何も変わらない。家に居て何とかなるならこの1ヶ月で何とかなっている。 アリスは珍しく散歩に出ることにした。 しばらく森の中を歩くアリス。 鳥の囀り、木々の葉からこぼれる日の光、清清しい空気。 心の痛みがさらに小さくなっていくのがわかる。小さくなった分鋭くもなったが。 だがまあ、たまにはこういうのも悪くない。 新しい楽しみを見つけた喜びを味わうアリス。 と、ここで1ヶ月前にはなかった物に気がついた。 「なんて読むんだろう……こう……??……どう?」 名前からしてどうやら何かしらの店らしい。 こんな森の入り口に店を立てるなど、どんな変わり者なのだろうか? ……まあどうせ暇だし、冷やかすのもいいか。 なにやら興味を引かれたアリスは、香霖堂と看板のかかった店の戸を開けた。 「いらっしゃい……おや、アリスじゃないか。 折角開店したのに1ヶ月も来ないからどうしたのかと思っていたよ」 「……え、なにこれ」 店の中にいたのは、もう会えないと思っていた男、森近霖之助だった。 店に入ってくるなり疑問の声を上げ、ぽかんとしているアリスを見て、随分表情豊かになったなあなどと考える霖之助。 アリスは2~3回ほど目をパチパチさせると、 「なんで? どうしてこんなところに霖之助さんが?」 と聞いてきた。 霖之助はそれを聞いて、どうやら1ヶ月も訪れなかったのは愛想をつかされたのではないらしい、と内心安堵する。 「ふむ、霧雨の親父さんに聞いていなかったのかい? しっかり伝えてくれるように何度も念を押したんだけどなあ」 「……そういえば最後まで聞かずに出ていったんだったっけ」 「ん? 何か言ったかい?」 「え、う、ううん、なんでもないわ」 「そうかい? まあ折角だし、僕が店を持つに至った経緯を説明しておこうか。 一応これでも、僕は商売人の端くれだ。 いつかは自分の店を持つ。そんな目標を持ってはや幾歳。 霧雨店で修行を積んではいたが、なかなかその機会に恵まれなかった。いや、正確には自分の持ちたい店がわからなか ったんだ。 そもそも僕が店を持ちたいのは、僕の『道具の名前と用途がわかる程度の能力』を生かしたいがため。 ならば普通の店では意味がない。 そんな時、外の世界の道具が流れ着くという無縁塚のことを思い出した。 試しに無縁塚に行ってみればあるわあるわ。見たこともない道具でいっぱいだ! これはこの道具たちを扱えという天からのお達しに違いない。 そう思った僕は、人も妖怪も来れる場所、無縁塚にも近いこの場所で外の商品を扱う、それが僕の使命だと悟ったのさ!」 やたらテンションが高く、なにやら芝居がかった話し方をする霖之助。 もう会えない……とか考えていた自分が情けないやら恥ずかしいやらで、一気に力が抜けるアリス。 「はあ……一体この1ヶ月は何だったのかしら……。まあ、いいか……」 そんなアリスの言葉は当然のように聞いていない霖之助は、ここで常連を1人作っておこうと話しかける。 「そうそう、一応普通生活用品なんかも取り扱っているから、良かったら糸や布などひいきにしてもらえるとありがたいんだ が」 こいつこっちの様子はお構いなしか、と半眼で睨みつつ、アリスはここに来てから抱いていた疑問をぶつける。 「……ええ、まあそれは構わないわよ。人里に下りるより楽だし。 それより、前とかなり話し方が変わってるのはどういうことかしら?」 「ああ、霧雨店では、僕は修行の身だったからね。 お客さんへの対応は霧雨式でやっていたんだ。 しかしここは僕の店だ。よって僕は僕の思うがままに応対させてもらう」 「お客さんとして言わせてもらえば、品揃えが同じでも店員の態度がいい店を選びたいものよ。 と言いたいところだけど……この店と競争する店なんかないわよね……」 「まあそういうわけだ。これからもよろしく頼むよ」 「ああ、それともう1つ。 ここがいくら入り口と言っても魔法の森よ。 人間のあなたにはちょっと危険すぎない?おまけに無縁塚にまで行ってるんでしょ?」 心配してくれるアリスを見て、この子も本当に変わったなあ、と思いつつ霖之助は答える。 おそらく出会ったときのアリスなら、例え目の前で襲われていても素通りだったろうに。 「そう言えば君には言ってなかったかな。 僕は半分妖怪だから、妖怪に襲われることはめったにないよ」 「……ちょっと、何でそんな重大事項教えてくれなかったのよ? それとも霧雨店の人たちに知られたくなかったとか?」 「いや、彼らは皆僕が半妖だということを知っているよ」 「……あ、そう……」 随分懐の深い人間もいたものだ。 それなら魔法使いの自分を嫌がる様子がないのも当然か。 しかし自分は彼のことを何も知らないのだな、といまさらながらに実感するアリス。 まあ自分から人付き合いを遠ざけていたのだ。自業自得というものか。 そんな自分を反省しつつ、アリスは右手を差し出した。 「それじゃあ、今後いろいろとひいきにさせてもらうわ。よろしくね」 「ああ、こちらこそ」 そういえば誰かと握手するなんて初めてかもしれないな、とアリスは思う。 そして、かつての自分がどれだけ勿体無いことをしていたのかようやく理解した。 人と触れ合うことはこんなにも楽しいのだ。 他人に評価される楽しみも、別離の悲しみも、再会の喜びも味わった。 その感情の起伏こそが、生きているということをまざまざと感じさせてくれる。 これからはもっと積極的に他人とかかわっていこう。 そう決意するアリスの前途は、これまで以上に輝いていた。 後日談へ