約 717,953 件
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/150.html
//同名のページ「わたくしが貴女で、わたしがアナタ!? 」が存在するので、 //こちらは不要です。権限のある方、削除をお願いします。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/83.html
投稿日:2010/01/30(土) かじかんだ指先に血液を通わせるために、手を何度か握って開くを繰り返し、息を吹きかける。 その、空中を漂った白いもやは、迷うようにたゆたっていたが、すぐに霧散した。 時刻は朝の三時過ぎ。御堂桜は、正直後悔していた。 (追加料金貰わなきゃ……これは) 時間外にも程がある。明日――いや、既に今日は、桜が通っている高校は休みだからいいが。 (まさか、三日続けて朝帰りとは思わなかった……昼間は学校あるし……) 「あっ!」 突如、すぐ近くにいた男が声をあげる。桜は、彼に向かって顔の前で人差し指を立てると、 あからさまに責める視線を向けた。 それから、隠れていた物陰から顔を出し、目標の家を見ると、桜と同じ年頃の女が、 門から入るところだった。 それを確認し、物音をたてずに、そっと塀の間から抜け出る。 向かう家の門にたどり着き、鍵を開けようとしている背中に告げる。 「おかえりなさい。上山唯さん」 大げさな挙動で、こちらに振り向く、桜の高校の上級生――上山唯。 もっとも、桜との面識はまるでないが。 「そんなに驚かなくても。こんな時間に帰ってきて、やましいことでもしてたんなら、 仕方ないかもしれませんが」 「……あんたは?」 「藤堂大輔さんに、あなたを元に戻して欲しいと頼まれたものです」 探るような視線の唯だったが、途端に嘲るように言ってきた。 「はっ!あの粗チンか!じゃあ、あんたは探偵かい?にしちゃ随分若いようだけど」 喋っている姿は紛れもなく――写真で確認もした――上山唯のものだし、声も彼女の肉声に間違いない。 しかし、喋り方や雰囲気は、事前に聞いていたように、彼女のものとは大きく異なっているようだ。 「探偵ではありません。わたしは、御堂桜と言います。唯さんの後輩ですよ」 こちらが名乗ると、相手の表情は一変した。今度は、自らの頭の中を探るものに。 「御堂……桜?……二年の?」 「はい」 一歩、足を門の中に踏み入れる。途端に、唯がありえない跳躍をし、塀を飛び越えようとしたが、 空中で何かに阻まれ、地面に落下した。 「噂の祓い屋か!」 「はい」 背を塀に向け、こちらを睨みつける唯――と、その中にいる悪霊に、唯は笑いかけた。 「はい、完了です」 しかし、その言葉を聞いている人物はいなかった。 「唯!唯ぃ!」 「大……ちゃん」 正気を取り戻した彼女と、それに抱きつく一緒に物陰に隠れていた男。 できればそういうのは後にしてもらいたい。 (早く帰りたいんだけど) あくびをかみ殺せず、口から出て行くままにして、その男――藤堂大輔が落ち着くのを待つ。 「あの――ありがとうございました!」 やっと大輔がこちらに顔を向けた時には、ちょうど一番でかいあくびをしていたところだった。 そのため、とても焦った。表情は取り繕えても、口の前にある大きな白いもやは見られただろう。 「い、いいんですよ、先輩。仕事ですから。それで、後払いなんですけども、 今日はもう遅いので、後日ということで」 とっとと終わらせたい。言葉はつい早口になった。 「あ、あと、これ御守りです。持っててください。それじゃ」 ぼっとして、いまいち状況が把握できているのかどうかわからない唯の手に、 小さな袋を押し付けて、唯はそそくさとその場を後にした。 「ただい、まぁ……」 できるだけ音をたてないように扉を開けつつも、つい言ってしまうのは、習慣だからだろうか。 こんな時間に娘が帰宅すれば、普通の親は心配するのだろうが――あの上山唯のように――、 桜は訳あって親元を離れ、従兄の家に住まわせてもらっている。 ならば、その従兄が心配するのではないかという話だが、事前に話は通してあるから問題はない。 どう歩いても音がなる古臭い階段には辟易するが、どうやら従兄を起こすには いたらなかったようだ。 やっと自室にたどり着き、明かりをつけて、羽織っていたコートを脱ぎ捨ててから一息つく。 そのままベッドに直行し、身体を投げ出して仰向けになった。着替えるのも億劫だが、 このまま寝るわけにはいかない。起きてから泣くのは自分だ。 「よっ」 不思議な浮遊感に襲われる頭が飛んでいかないようにこらえつつ、なんとか寝間着に着替えた。 ボタンの一つも、かけ間違えたかもしれないが。 とにかく着替えを終えて、今度こそと布団に潜り込む。 しかし、眠気は襲ってきているのだが、なかなか寝付けない。仕方ないので、 働かない頭は邪魔でしかないが、つらつらと考えごとに意識をかたむけた。 (あの悪霊、強かったな……完全に滅しきれなかったかも……) 気配は完全に消えたし、結界の中にいたのだから、逃げられるわけはないのだが、 妙に手応えがなかった。それに、 (笑っ……てた……) 自分がそう感じただけかもしれない。滅する直前は、既に唯の身体からはじき出していたのだから。 (そういえば……上山さん……なんか……変……だったな……) 悪霊は祓ったというのに。とり憑かれていた直後だから、ぼっとしていたのかと思ったが、あれは、 (寂し……そう……?残念……そう……だった) 彼氏に抱きしめられている時でさえ。 (もう……だ……め……) 疑問は尽きないが、ついに限界がやってきた。続きは明日でも構わないだろう。 桜は安らかな眠りに身を任せ―― 「あんたの想像通りだよ」 眠っているはずの桜の口が突然言葉を発し、口元が唯が浮かべた嘲笑とよく似た形を作ったが、 深い眠りに落ちた桜は気づかなかった。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/32.html
投稿日:2009/02/24(火) <1> 街中を歩く二人の女性。 一人は170cm超の長身。細い手足に革のロングブーツ。 もう一人は150cm前後、ピンクのアンサンブルが可愛い感じだ。そしてその上からはっきり分かる大きな胸。 「こんな店あったっけ…」 「何の店だろう…」 怪しげな仮面や奇妙な形の壷。二人は吸いこまれるように入っていった。 「いらっしゃい。」 中には白髪の老婆が座っていた。 「これは何のお店なんですか?」 小さな瑠美が甘ったるい声で聞く。 「まぁ、一言で言えば骨董品屋ってところかねぇ。」 二人がそんなやり取りをしている中、コツコツとブーツの音を立てながら、さやかが小さな店の中を見回していると、鈍く光る銀色のオブジェを見つけた。幾何学的なデザインで、なんともいえない形をしている。 「それがお気に入りかい?」 老婆が声を掛ける。瑠美も老婆と一緒についてくる。 「ここにおいてあるものはいろいろ言われがあるんだけどね…」 老婆が続ける。 「これは、どこから来たのかよく分からないのよ。何かと一緒に店に置いたんだろうけど。」 「ふぅん、そうなんだ…」 さやかがつぶやく。 「気に入ったなら持っていきなさい。」 「そんな、価値のあるものじゃないの?」 「どこから来たものか分からないんだから、お代をもらうわけにはいかないよ。」 含み笑いをしながら、老婆が答える。 (そこまで気に入ったわけじゃないけど、タダなら持って帰っちゃおうかな…) 「じゃあこれ、いただけますか?」 さやかより先に、瑠美が言った。 「えぇ、今包むから待っててちょうだい。」 老婆はオブジェを両手で持ち上げると店の奥へと消えていった。 「瑠美も気になってたの?」 「うぅん、ていうかどこから来たかわからないってなんだかミステリアスじゃない?」 白い歯を見せながら瑠美が笑う。 (この歳になってこんな無邪気な感じが似合うのも、瑠美だからよね) さやかがそんなことを考えている間に、老婆が店の奥から出てきた。丁寧に布で包んである。 「出所はわからないけど、大事にしておくれ」 「はい。」 さっきと同じ笑顔で瑠美が品物を受け取った。 499 名前:砂漠のきつね[] 投稿日:2009/02/24(火) 19 07 37 ID o2135Cb3 <2> 店から出ると、ずいぶん雲行きが怪しい。遠くでは雷鳴が鳴っている。 「早く帰ろうか。」 さやかは瑠美と帰路に着いた。 その途中、雷鳴が轟いた。 「キャァッ!!」 二人が悲鳴を上げた。 「落ちたわよきっと。早く帰ろう。」 さやかが言った途端、大粒のひょうが落ちてくる。 「何なのこの天気。」 「とりあえず、家に行こ。」 二人は走って瑠美の家へ向かった。 アパートの階段を駆け上がり玄関に入った時には二人はびしょ濡れになっていた。 「こんなの言ってなかったじゃない、晴れだって言ってたのに」 瑠美がふくれながら今日の天気予報に文句を言った。 「とりあえず上がって。」 「濡れてるけどいい?」 「しょうがないよ。上がって。」 瑠美がバスタオルを持ってさやかに近づく。瑠美はもう髪を結わいていたゴムを解いてバサバサと髪を拭いている。 「ありがとう」 さやかも部屋に入り、長い髪を乾かし始めた。ブラウンに染めた髪がしっとりと濡れている。 「服着替える?」 「そうね。でも瑠美の服なんて着られるかな。」 「Tシャツなら大丈夫でしょ。」 そう言いながら瑠美はクローゼットから服を探す。 「先に着替えていい?」 ピンク色のニットのアンサンブルは、濡れたために胸の大きさがより露わになっていた。 (中学の頃から大きかった胸、女の子らしい小さな背丈。いいなぁ、瑠美みたいなかわいい感じ) 「いいよ。」 さやかは長い髪を赤いセーターの上に垂らしながら、瑠美に答えた。黒いパンツは濡れたためにヒップから脚へのラインをそのまま描き出している。 (モデルみたいな長い手足、スラリと伸びた背丈。いいなぁ、さやか。) 500 名前:砂漠のきつね[] 投稿日:2009/02/24(火) 19 09 05 ID o2135Cb3 <3> その時だった。 台所に無造作に置かれていたオブジェが光を放ち出した。 「何だか光ってない?」 先に気づいたのは瑠美の方だった。身震いするような感覚が襲う。 「どうしたの?瑠美」 声を掛けるさやかの目の前で信じられない光景が広がっていく。 袖から出ている手が徐々に細く、そして長く伸びていく。 アンサンブルからあらわになる臍。 グレーのチェックのミニスカートから見える脚は、 むっちりとした太腿とふくらはぎが、 ムチムチとした肉感的なものから細くスラリとした脚に変わっていく。 「い、痛い…」 「瑠美、瑠美!」 「あぅっ!」 声にならない悲鳴を上げる瑠美。 体をよじりながらも一瞬動きが止まる。 少し癖の入った黒いセミロングの髪が さらりとしたブラウンのロングヘアへと変化していく。 胸元で存在を主張していたバストはゆっくりとしぼんでいった。 苦痛にゆがんでいた視点が定まらなくなり、 徐々に瑠美の体は白い光に包まれていく。 「今の、何だったの?」 そうつぶやく瑠美。 目の前の光景に、さやかは目を疑った。 丈の短くなったピンクのアンサンブルに、ショーツが見えてしまうほどのミニスカート。 そこから伸びるモデルのような長い脚。 小さな瑠美の服になんとか身を押し込めたさやかの姿があった。 「どうしたの、さやか。」 目の前に自分がいる… 「なんなの、これ。」 「え、何?」 「瑠美、私になってる。」 「えぇ?」 顔を見合わせる二人のさやか。 鏡の中にも二人のさやか。 一人は、赤いニットに黒いパンツ。 もうひとりは臍出しのアンサンブルにきわどいほどのミニ。 「さやかに、なってる!?」 口を半開きにして驚いた様子の瑠美。 表情の違うさやかが顔を合わせている。 言葉もなく、本物のさやかがうなずく。 思わず瑠美に手を差し伸べるさやか。 右手で左肩をつかむ。 自分で自分の体を抱きしめたような感覚。 (なんなの、これ。なんで瑠美、私になっちゃったの?) 501 名前:砂漠のきつね[] 投稿日:2009/02/24(火) 19 09 51 ID o2135Cb3 <4> 「!!」 「どうしたの?」 さやかの体にも異変が起きる。 細い脚はパンツの中で生き物のようにうねった後、 むっちりとした丸みを帯びる。 はち切れそうに黒いパンツの生地が密着する。 パンツを破きそうなほど、膨張するヒップ。 細い指はふっくらと丸っこくなり、やがてニットの袖から見えなくなった。 腕も肉感を増していく。赤いニットの上からもわかる、やわらかな二の腕。 ブラウンのストレートの長髪が縮み、癖のある黒髪へと変化していく。 「何?何なの、これ。」 さやかの姿になった瑠美があわてている間にも、変化はゆっくりと続いていく。 わずかに生地を押し上げていたバストがゆっくりと、しかし確実にその膨らみを増していく。 ブチッという鈍い音がした。 大きさに耐えられなくなってAカップのブラジャーが切れる。 ようやくバストの変化が止まったときに、また、 光がさやかを包んだ。 眩んだ目が見えるようになった頃、瑠美の目の前にはさやかの服を着た瑠美がいた。 瑠美の眼に映る自分の顔。袖がだぶだぶの赤いニットとは対照的に、 イヤでも視線がいく胸の膨らみ。裾が床に付いた黒いパンツ。 さやかの服を着た自分。 服の違いで辛うじてさやかであるとわかるが、外見はどこから見ても瑠美だ。 さやかも自分の体が瑠美になってしまったことを実感する。 どちらへ向いても視界に入る大きな胸。下から見上げる自分の姿。 「私、瑠美になってる?」 「うん。」 さやかが恐る恐る鏡を見る。 赤いニット、黒いパンツルックの瑠美。いつもより大人っぽく、背伸びをしているように見える。 「瑠美になっちゃった…」 「何なの、これ?さっきあれが光ってたよ」 瑠美がオブジェの元に駆け寄る。 向きを変えるだけで感じていた胸の感触が全くない。 階段に昇ったまま歩いているような目線。 さやかも後をついていく。 歩くだけで胸に感じる違和感。 「これが原因?」 「でもそれしか考えられなくない?」 「まぁね。」 さやかも瑠美の考えに乗ったが、気になることがあった。 「でも、なんで私たち、お互いに変身しちゃったの?」 「なんでだろう…」 「だってさ、なんでこうなったか分からなかったら、元に戻ったりできないじゃない」 鼻にかかった甘い声で言うさやか。 「そっかぁ。」 口調はいつもの瑠美だが、発せられる声は落ち着いたおだやかな声色だ。 「とりあえず、服着替えようか。」 502 名前:砂漠のきつね[] 投稿日:2009/02/24(火) 19 11 30 ID o2135Cb3 <5> 互いの服はまだ濡れたままだ。ゆっくりとお互い服を脱いでいく。 まずアンサンブルを脱ぐ瑠美。 袖を出そうとしたが濡れているせいで生地が伸びきらない。 なんとか脱ぐと、わずかな胸のふくらみ。 フリルの付いたピンクの大きすぎるブラジャーが瑠美であったことの証だ。 何をするにも邪魔っ気だった大きな胸はもうそこにはない。 ほっそりとした、二の腕から手首へのライン。 スカートも脱いでしまう。 ピンクのショーツの下から伸びるスレンダーな長い脚。 (腕も脚もほっそいなぁ…) さやかも服を脱いでいく。 赤いニットを押し上げる大きな胸。 胸元のワンポイントは持ち上げられて斜め45度を向いている。 脱ぐと白くふっくらとした大きな胸。 Aカップの黒いブラジャーはちぎれてしまい、 ニットを脱ぐとだらしなく前に垂れた。 ずっしりと肩に胸の重みがのしかかる。 黒いパンツは濡れて脚にまとわりついているのと 脚自体が太くなったせいでなかなか脱げない。 なんとか脱ぐと、露わになるむっちりとしたふくらはぎ、そして太腿。 黒いショーツは大きくなったヒップを覆いきれず、Tバックのようになっている。 (この丸み、私と全然違う…) 目の前には決して自分が着ないフリルをあしらったピンクの下着を着けた自分の体。 「私の体…」 さやかが瑠美の腕をつかむ。 ほっそりとした二の腕。 つかんだ自分の二の腕は丸みを帯びた肉感的なラインを描く。 声はいつものアルトボイスではなく、甘ったるい瑠美の声だ。 つかまれた瑠美も不思議な気持ちだった。 思わずさやかを抱き寄せる。 ブラジャーがはだけ、直接伝わる柔らかな感触。 肩までしかない背丈。 (私の胸ってこんなんなんだ…) 「なんか変な感じ」 「ちょっとお姉さんになったみたいな?」 「何言ってるの、同い年じゃない。」 抱きしめ合った腕をほどくと、さやかは瑠美に言った。 503 名前:砂漠のきつね[] 投稿日:2009/02/24(火) 19 12 15 ID o2135Cb3 <6> 「とりあえず服着ないと。」 「私の服しかないけど、どうしよう。」 「私は瑠美の服着ればいいけど。」 「そっかぁ。じゃあ私は?」 「私が服取りに行くよ。持ってきてあげる。」 瑠美は自分の服をクローゼットから探し出した。 体が大きくなったせいで、服を探すのも違和感がある。 「こんなんでどう?」 瑠美が出してきたのはピンクのプルオーバーと白のキャミソール そして、白黒チェックのミニスカートと黒のストッキング。 「これ着るの?」 「え、いや?」 「私着ないからこういうの。」 「でも、今はさやかが私なんだから。」 「いつもは瑠美が着ている服だもんね。」 納得するとさやかは服を着ようとしたが大事なことに気がついた。 「瑠美、下着も貸して…」 「そっかぁ…」 瑠美はクローゼットの下の段から下着を探し始めた。 淡いブルーの生地にフリルがあしらわれた上下。 「違うのがいい?」 「大丈夫。あっちで着替えてくるね。」 下着を含めた着替え一式を抱えて、さやかは隣の部屋に入った。 (まぁ、今は私が瑠美なんだからしょうがないよね…) フリフリのかわいい下着にとまどいを感じながらも再び自分を納得させ、 さやかは下着を着け始めた。 ブラジャーを着けると肩にかかっていた重量感がいくらか和らぐ。 黒い自分のショーツを脱ぎ、瑠美のショーツを穿く。 他人の下着を着けているという違和感。 胸にかかる重さも視点も違う。 (これからどうなっちゃうのかな…) さやかは漠然とした不安を抱えずにはいられなかった。 504 名前:砂漠のきつね[] 投稿日:2009/02/24(火) 19 12 52 ID o2135Cb3 <7> その頃、瑠美も着替えを始めていた。 下着を探すが、ブラジャーはどれも大きすぎて役割を果たしそうにない。 「下だけでいいよね…」 淡い黄色のショーツに穿き変え、ベージュのキャミソールを着る。 (脚長くて穿き変えるの大変…脚冷えて寒いし…) 瑠美はクローゼットからレギンスを取り出し穿き始める。 足首までの10分丈のはずが7分丈くらいになっているが 脚にフィットするだけにそのラインの素晴らしさが際立つ。 シャドーグレーのニットを着てデニムのミニスカートを穿く。 やはりミニスカートは膝上10cm以上になり、 その下からは長い脚が伸びている。 しばらくするとさやかが着替えを終えて出てきた。 「ほんと、自分がもうひとりいるみたい。」 「何言ってるの、お互い変わっちゃったんだから。 もうひとりじゃなくて瑠美は私。」 「そりゃそうだけど…」 もっともなことを言いながらも、 さやかも目の前の自分は自分でないような感覚を覚えていた。 瑠美は瑠美なりにさやかっぽい服を選んだのだろうが、 こんなファッションはしないからだ。 505 名前:砂漠のきつね[] 投稿日:2009/02/24(火) 19 22 39 ID o2135Cb3 <8> 「あれが原因だとすると、さっきのお店行かなきゃ。」 「そうだね、すぐ行こっか。」 二人はまた外出の支度を始めた。 さやかは掛けてあったサーモンピンクのコートを取る。 「それ、さやかのコート。私のはこっち。」 瑠美は胸元にファーの付いた白いコートをさやかに渡し、 さやかのコートを自分で着始める。 支度が整うと二人は玄関へ向かった。 さやかが革のロングブーツを手に取る。 「さやか、それさやかのブーツ。」 「そっか。また間違えた。」 「私のそっち。」 白い革のブーツは雨の中を走ってきたために少し汚れていた。 「濡れたし、新しいの出すね。」 「ありがとう。」 瑠美は同じくらいの丈の黒いブーツを取り出した。 さやかが履こうと片足を上げたその時… 「どん」という音がしたと思うと、さやかは バランスを崩して玄関の壁に体を強打していた。 「痛ったぁ…」 「大丈夫? 鈍くさいのもそのまんまなのかな?」 「ううん。まだ瑠美の体に慣れてないからだよ。」 (かがんだらバストが動いてバランスが…大きいと大変なんだな…) エレベーターを待ちながら、さやかは数分前の出来事を思い出していた。 (確かに、胸が大きい人は転びやすいって聞いたことあるけど…) そんなことを思いながらマンションを出る。 道路へ出る小さな階段さえも慎重に降りていく。 (一歩が倍くらいあるみたい。胸がないとなんだか身軽) 瑠美の方は歩きながら、さやかの身体でそんなことを考えていた。 雨は嘘のように上がり虹が出ていたが、 他人の体になって外を歩いている二人には 気づく余裕はまだなかった。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/132.html
アリサがその疑問を感じたのは、不謹慎にも、彼女の兄――ケイイチの婚約者で、義姉になるはずだった女性(ひと)の葬式の、しかも焼香の真っ最中だった。 (あれ……?) これは誰のお葬式だったかしら?なんて浮かんだけれど、それは一瞬のことで、すぐに我にかえったアリサは、何を馬鹿なことをと自分を責めた。 なんとか持ち直して焼香を済ませ、自分の席に戻ってほっと一息。だがこれも不謹慎か、と出かかった吐息を抑える。 それにしても、なんであんなことを思ったのだろう。 これは長瀬リョウコの葬式で、アリサは彼女と本当の姉妹のように親しかったのに。これが茫然自失というものだろうか。 (リョウコさん……) 彼女とアリサは本当に親しかった。よく買い物に一緒に行って、兄が冗談で嫉妬すると言ってくるくらい仲が良かった。 でも、そのいつもの買い物の行きすがら、二人はバスの事故に合い、リョウコは死んだ。アリサを守るように、覆い被さった姿で。 そんなことがあった自分が、正気でいられるとは思えない。 だからこんなことを思ってしまうのか。リョウコの遺影を見て、なんで自分の写真が?などと馬鹿なこを。 リョウコと自分は、似ても似つかない。 兄の部屋にアリサが泊まって、もう一週間になる。四年も同棲し、結婚を誓い合った恋人に先立たれた兄を不憫に思ってと両親には伝えたが、本当は自分が兄と一緒にいたかったからだ。 それは、リョウコが亡くなった原因が、自分にあるからだとアリサは最初は思っていたのだが、長く兄の部屋に留まれば留まるほど、何か違う気がした。何故か、ここにいるのが……自然なような気がして……ならなかった。自分でも上手く説明できないが。 まあとにかく、兄が実家のすぐ近くに住んでいたのは助かった。ここからならアリサが通う専門学校にもいけるし、アルバイト先も近い。 いっそのこと、このままここに住み込んでしまおうかとも考えていた。 兄はもう普通に出社して、何事もないかのように装い、アリサには帰れと言っているが、本当に普通に戻ったわけではないのは、どう見ても明らかなのだから。誰かが近くで支えるべきだし。 両親には兄なりのプライドがあるのか、実家に帰るつもりはないようだから、自分しかいない。 今こそ兄に恩返しをするのだ。昔いじめられていた時に、唯一同級生の中で―― (あれ……?) まただ。また何かおかしかった。 事故にあってから起きる記憶の錯乱。自分が体験したことのない記憶を思い出したり、以前の自分ではあり得ない思考に至ることがある。医者は事故による後遺症で、一時的なものだと言っていたが―― 「学校いこ……」 アリサはぶるっと身を震わせると、そう呟いて慌ただしく動き始めた。 得体の知れない違和感にいずれ飲み込まれて、自分が変わっていってしまうのではないかと、最近よく不安にかられる。アリサはそれを拭うことがいつもできなかった。 兄のアパートから専門学校に通えるとは、つまり実家と最寄り駅が一緒なのだ。アリサは専門学校には電車で登校している。 アリサが通っているのは、ペット業界の人材を育成するための学校で、トリマーコースに彼女は属していた。八月の現在、学校は夏休みを迎えているが、トリマー学科を受けているものは、希望すれば実習を受けられることになっている。 (結構混んでるな) 駅につき、乗り込んだ電車内は、平日のためかそれなりの乗車率だ。 しかし、女性専用となっている車両のほうに回れば座れそうである。しかし。 (ま、いっか) なんとなく面倒臭くなり、アリサはホームの階段からすぐ近くにあった、若干混んでいる車両に乗った。 (兄さん、昨日も帰り遅かったな……) 吊革に捕まって、がたごと揺られながら考えるのは、兄のことだ。 そういう気分になるのは仕方のないこととはいえ、遅くならいっそ…… (お酒でも飲んでくればいいのに) 兄は真面目が服を着たような人だ。 酒を飲まない。煙草は吸わない。賭け事も一切無関心ときたものだ。 趣味は精々、映画鑑賞や読書か?それも人並みに好きという程度だ。 (ほんと、くそ真面目だからなあ……) 意固地といってもいい。 毎日遅くまで何をしているのやら。思い詰めるだけならまだいい。もし―― (自殺なんて……) ぶるっと頭を振るう。縁起でもない。真面目で優しい兄は、遺された人間のことを考えて、そんなことしないはず――普段なら。 (あーあ) こんなとき、無趣味は困る。現実逃避の手段がない。 (でも兄さん。いつも悩んでる時ってどうしてたんだっけ?) いつも……いつもは―― (そっか、リョウコさんだ) いつもリョウコさんが、家でうんうん唸ってる兄を連れ出してた。 兄は無趣味だったが、リョウコさんは出かけるのが好きだったようで、一緒に旅行なんかにも行っていた。 二人の出かける姿を思い出し、ふっと笑みが漏れる。だけど、目頭は熱い。 (リョウコさん……あなたがいないと兄さんは……兄さんは……あれ?) 思い出の中に出てきた兄の顔が、なんかおかしい。 引いているというか……諦めているというか……なんとも言えない顔だ。 (というか、また、わたしの記憶にないって――ん?) 尻に何かが当たっている感触。ぎしっと身体が固まる。さっと血の気は引いたが、鼓動の音が大きくなった。 (ち……ちか……) 痴漢。 しかし。 いや。なんかおかしいぞ?と尻の感触が伝えてきた。 手の感触ではない。固い。四角い。これは、鞄か? 急に押し付けられたからびっくりしたが、勘違いのようだ。ほっと息を吐く。 (なーんだ) 別に当たっているだけで、さらに押し付けてくるわけでもない。 (ざーんねん) …… 残念? 何が? 自分で自分の考えが分からなかった。 いや違う。本当は分かる。 分からないでいたかった。分かったが理解できないことだった。 痴漢を―― (されたかった……?) ――なんて。 (うそ……) 嘘ではない。そのためにこの車両に乗ったのだ、今にして思えば。 (いや……) 嫌と言っても思考は回る。そういえば、夏休みなのだから、通勤時間に巻き込まれるような、ここまで早起き時間に登校する必要もなかった。 ちょっと期待していた、痴漢されることを。 もし、今日痴漢されたら? もし、抵抗しなかったら? これから、卒業まで一年半、同じ時間に同じ車両に乗れば毎回痴漢されるかもしれない。 段々行為がエスカレートして、エッチなビデオにあるみたいに、最終的には犯されるかもしれない。 もしそれを友達が知ったら?親が知ったら?兄が――ケイイチが知ったら? ぞくぞくとした悪寒が背中を走る。想像上のケイイチが侮蔑の表情で自分を見ていた。 先程下がった血がどんどん頭に上り、全身を駆け巡る。頭が痺れるこの感覚は脳内麻薬でも出ているのか?そして一番、お腹の下辺りが熱い。 (はああああ) びくっと身体が震えた。声には出さなかったから周りは気づかれていないだろうけど、もし自分が発情しているなんて知られたら。 (えへえへへ) おっと危ない。涎が垂れる。口を拭う。 (あーあ) それにしても惜しい。いつの間にか感触が消えた先程の鞄が、もし、前方から当たっていれば…… (こすりつけて、見せつけて――) ふんふんとそんな風に鼻息を鳴らしている中で、下車駅の駅名を聞いたのは奇跡かもしれない。 はっと我に帰り、人混みをかき分ける。なんとかぎりぎり降りることができた。 が。 息つく暇もなくアリサは階段を早足で下った。トイレに入る。 さらに一番奥の個室に入り、急に慎重になって手をスカートの中に入れ、陰部に触れた。果たして。 「濡れてる……」 尿漏れではない。原因は分かっている。当然、先程の…… 「なにこれ」 分かっていても、そう言うしかない。 あんなこと、初めてだ。 痴漢を期待したことも。その妄想に耽ったことも。それが人の大勢いる電車内だったことも。それで、こんなことになったことも。 勿論、アリサだって自慰くらいはする。それが、色々忙しくてここ一週間ほどできなかったけど、溜まっていたと思うほどじゃない。大体、アリサはそこまで性欲は強くはなかった。 なのに。 「なんで、こんな、わたし……」 今日ほど自分が分からなかった日はない。 アリサはただ呆然と呟くことしかできなかった。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/169.html
273 マジックペンですげ替わり・6 ◆cW8I9jdrzY [sage] 2011/04/13(水) 22 53 32.86 ID qLx+Nap3 Be よく晴れた休日の朝、春奈が待ち合わせの時間の十分前に広場に行くと、 既に友人の二人は先に到着して彼女を待っていた。 「二人とも、遅れてごめんなさい」 「いいえ、滅相もございませんわ。 わたくし達も今来たところですから、お気になさらず」 そう言って久美は爽やかに笑った。 今日の彼女の格好は夏らしい薄手のシャツとショートパンツ姿で、 いかにも快活な印象を受ける。短く切られた髪と子供っぽい表情が、 久美を年頃の少女というよりも朗らかな少年のように見せていた。 「ダメじゃないの、奥さん。喋り方がまた元に戻ってるわよ。 今の私たちは高校生の女の子なんだから、もうちょっと気をつけないと」 上機嫌ではしゃぐ久美を、もう一人の友達の智香がたしなめた。 しかし、彼女の発言の内容もどこか奇妙だ。 注意された久美は両手で口元を押さえ、 「あらあら、わたくしったら……いやだわ。おほほほ」と、 中年女性のような仕草で恥ずかしがる。 春奈はそれを見て引きつった笑いを顔に浮かべた。 滑稽だが、ただ笑っていられない事情が春奈にはある。 智香の服装に目をやると、 膝丈のスカートと六分袖のカーディガンという、春奈と似通った装いだった。 同じような服装でも、春奈よりも上品で大人っぽく見える気がした。 じろじろ見つめていると、智香はおもむろに ポケットから煙草とライターを取り出し、その場で喫煙を始めた。 満足げに煙を吐き出す清楚な女子高生の姿に、春奈は目を見開いた。 「チ、チーフっ! 煙草なんて吸わないで下さい!」 「え? ああ、そういえば今はダメなんだっけ。 でも、最近の若い子だって、煙草くらい隠れて吸いそうなものだけどねえ」 智香は悪びれるでもなく、火のついた煙草を地面に落として踏み消した。 三人の中でただ一人眼鏡をかけている智香は、春奈や久美よりも真面目な性格で、 成績優秀な優等生だという。そんな彼女の両親が、もしもこんな姿を見たら、 卒倒してしまうのではないかと春奈は思った。 久美も智香も、新しい体にまったく適応していないのがよくわかる。 「じゃあ、揃ったことだし行きましょうか。今日は目一杯遊ぶわよ。 何しろ、もう旦那や子供たちの心配をしなくていいんだから、気分が楽ってものだわ」 出発を宣言する智香に、久美が調子を合わせる。 「そうですね。うふふ、今日はとっても楽しくなりそうだわ。 若いお嬢さんの体になって、頭の中まで若返ったみたいにいい気分なんですの。 それに、この子の体ってとってもスリムで動きやすくて…… ああ、わたくし、もう最高の気分です。おほほほ……」 「奥さん、あんまりはしゃいでると目立っちゃうから気をつけなさい。 それと、最近の女の子はそんな喋り方はしないから、それも注意ね」 「はい、わかりました。それじゃあ、北島さんの奥様も参りましょうか」 「え、ええ……」 戸惑う春奈の手を久美が引き、三人は残暑が厳しい九月の街中を歩いていく。 どうしてこんなことになってしまったのだろうと嘆きながら、 春奈は会話に花を咲かせる友人たちを眺めていた。 274 マジックペンですげ替わり・6 ◆cW8I9jdrzY [sage] 2011/04/13(水) 22 54 34.76 ID qLx+Nap3 Be 「それにしても、春奈ちゃんの手は本当にすべすべして綺麗ですこと。 ああ、こんな素敵な娘さんと入れ替わった奥様がうらやましいわ」 路上で信号待ちをしていると、久美が唐突に春奈の手を握りしめてきた。 春奈はやめろとも言えず、困り顔で嘆息することしかできない。 「いやね、最初は私も娘のミカと入れ替わろうと思ったんですのよ。 でも、いくら小生意気な娘でも、やっぱり私がお腹を痛めて産んだ子ですし、 あまり可哀想なことはできませんでしょう。 それに、せっかく新しい体で人生をやり直すんでしたら、 元気で活発なお嬢さんの方が面白いかと思いまして。 こんな素晴らしい体をくれた久美ちゃんには本当に感謝していますわ。 それに、もちろん今回のことをお膳立てしてくれた直紀君にも」 「そ、そうですか……」 まるで娘と入れ替わった自分が責められているような気がして、春奈は顔を歪めた。 今の自分がこの二人と同類であることは否定のできない事実だった。 現在、久美の肉体を動かしているのは、彼女とは何の関係もない赤の他人だ。 なんでも春奈の昔の友達の母親だとかで、 たまたま近所で出会った直紀が面白がって久美と入れ替えてしまったのだという。 その話を聞いたとき、春奈になった陽子は驚愕した。 (私たちの他にも被害者を出すなんて、ナオ君はいったいどういうつもりなの) 怒りと悲しみが改めて春奈を襲ったが、無力な彼女に何ができるわけでもない。 春奈は暗澹たる思いで、女子高生としての慣れない生活を続けるほかなかった。 もう一人、春奈と仲の良かった智香も犠牲者に加わった。 智香も久美と同じく、一面識もない陽子の職場の責任者と心を入れ替えられてしまい、 彼女の代わりに婦人服売場で働きながら、夫と子供の世話に忙殺されているという。 高校生になったばかりの少女が、 突然子持ちの中年女になってしまうという悲劇に、春奈は胸を痛めた。 思えば、最近の直紀の行動は、ますます悪魔めいたものになってきている。 春奈と陽子の肉体を入れ替えたこと、 困惑する二人を巧みに篭絡して性交渉に及んだこと、 そして無関係な人間を面白半分でもてあそんでいること。 聡明で優しいはずの少年が、一体どこで道を間違ってしまったのだろうか。 おそらく、その原因の一端は自分にあるに違いないと春奈は思っていた。 (私が母親としてしっかりしなかったから、ナオ君はあんな風になっちゃったんだわ。 ああ、私はこれからどうすればいいの) 暗い気分でうつむいていると、横断歩道の向こうで 久美と智香が振り返って春奈を呼んだ。 「どうしたの、北島さん。早く来ないと置いていっちゃうわよ」 「ご、ごめんなさい、今行きます」 春奈は慌てて道路を渡った。二人は再び歩きだし、大きな声で楽しげに談笑を始める。 外見こそ可憐な女子高生の一行だが、今の彼女らの頭の中身は世慣れた中年女だった。 有頂天になって笑い転げる久美や智香と街中を歩きながら、 陽子の心を持った春奈は良心の呵責に苛まれ続けた。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 275 マジックペンですげ替わり・6 ◆cW8I9jdrzY [sage] 2011/04/13(水) 22 55 30.28 ID qLx+Nap3 Be 友人たちと遊びに出かける春奈を見送ったあと、陽子は直紀の部屋に連れ込まれた。 「ダ、ダメっ。こんな朝からいけないよ……」 「別にいいじゃない。今日は休日だし、 春奈は出かけちゃったから、僕たち二人っきりなんだよ」 嫌がる陽子を直紀は布団に押し倒し、服を脱がせて肌に舌を這わせた。 カーテンの隙間からこぼれる朝の光の中、陽子は首筋を伝う少年の舌づかいに悶える。 「待って、お兄ちゃん。まだ食器を片づけてないし、お洗濯だって──ああんっ」 にわかに強い刺激を感じて、陽子の唇から甘い声が漏れた。 強く吸われた胸元に赤い跡が残っていた。こんな姿を春奈にでも見られたら、 どんな顔をすればいいのだろうか。陽子は羞恥に頬を染めた。 「いけないよ、ママ。お兄ちゃんと呼んだら駄目だって、何度も言ったでしょ。 今の春奈は僕のママなんだから、息子の僕のことは名前で呼んでくれなきゃ困るよ。 わかってるの?」 「ご、ごめんなさい、ナオ君。気をつけます……」 鋭い視線で自分を射抜いてくる息子から顔をそむけ、 陽子は蚊の鳴くような声で答えた。 かつて春奈という名前の少女だった自分が、母の肉体と入れ替わって 既に数ヶ月が経っていた。この新しい体にも随分と慣れたが、 それでもまだ自分が娘で妹だという意識は残っている。 特に直紀と二人きりでいるときは、最愛のこの少年に甘えたいという心情から、 つい「お兄ちゃん」と呼んでしまうのが常だった。 「頼むよ、ママ。ママは僕だけのママじゃないんだ。 春奈のママでもあるし、それにお腹の中にいる赤ちゃんのママでもあるんだから。 自分の年齢と立場を自覚して、三十八歳のおばさんらしい振る舞いを心がけてよね」 「うん、わかってる」 直紀の言い方は意地悪だった。暗い気分と共に、自然と声のトーンも落ちてしまう。 陽子はまだ膨らみの目立たない自らの孕み腹をそっと撫でて、彼の愛情の証を確かめた。 (結局、あれからあたしもママも元の体に戻ってない。 もしかして、ずっとこのままなのかな……) 数ヶ月前に自分たちが入れ替わったときのことを思い起こす。 母の体で肉欲を貪った愚かな自分は、あれ以来 直紀の思うがままにもてあそばれる奴隷と化した。 それは彼女と入れ替わった陽子も同じで、陽子だった春奈は主に学校で、 春奈だった陽子は家で、それぞれ直紀との相姦を強要され続けている。 最初はどちらも自分の体を奪われたことに憤り、互いに激しく罵り合ったものだが、 二人揃って直紀に叱られてからは、特に対立することはなく、 お互いの立場を交換して生活している。 それから半年近い月日が経過しているが、直紀は二人を元に戻すつもりはないようで、 いつの間にか春奈も陽子も新しい肉体に抵抗を感じなくなっていた。 無論、元に戻りたいという気持ちが消え去ったわけではない。 直紀が元の優しい心を取り戻し、家族三人でまた元通りの平和な生活に戻れたら どんなにいいだろうか、という思いは当然あった。 (やっぱり元の体に戻りたいよ。それに、困ってるのはあたしたちだけじゃない。 久美ちゃんも智香ちゃんも、みんなひどい目に遭わされてる。 お兄ちゃん、いったい何を考えてるの) 陽子は憂いの瞳を直紀に向けたが、悪魔に魂を売った少年は 陽子の体を愛撫することに夢中で、義母の不安など気にも留めない。 日の光に照らされて明るいはずの視界が、絶望で暗くなった。 276 マジックペンですげ替わり・6 ◆cW8I9jdrzY [sage] 2011/04/13(水) 22 56 35.79 ID qLx+Nap3 Be 「さあ、ママ、お尻を出して。こないだ教えたように、自分からおねだりしてごらん」 直紀に促され、陽子は下着を脱いで布団の上でうつ伏せになった。 どんなに嫌がったところで、自分たちがこの暴君に逆らうことは許されない。 この数ヶ月の間に、陽子たちは身をもってそれを思い知らされていた。 「は、はい、お願いします。ナオ君のおチンポをママのお尻に入れて下さい」 豊かな尻を大きく振って、少年の慈悲を乞う。 長期に渡って躾けられた義母の浅ましい姿に、直紀は満足げな笑みを浮かべた。 「ふふっ、いい子だ。じゃあ、ママが欲しがってるものをあげよう。 たっぷり味わうんだよ」 直紀の硬い一物が陽子の肛門をかきわけ、直腸に侵入してくる。 あらかじめローションを塗ってあるとはいえ、 排泄器官に太い肉の棒を突き込まれる圧迫感は凄まじい。 口紅に彩られた陽子の唇から、悩ましげな息が漏れた。 「ああっ、ふ、太いよぉっ。お尻の穴がめくれちゃう……」 「すごいね。いやらしいママのお尻が、僕のチンポを飲み込んでヒクヒクしてる。 ああ、いい眺めだ」 「い、いじめないで。そんなこと言われたら──あんっ、ああんっ」 ズルリと音をたてて男性器が引き抜かれ、腸壁を摩擦する。 甘美な痺れが下腹部に広がった。 (ああっ、あたし、お尻の穴で感じてるんだ。なんていやらしいんだろう) 陽子の心に自嘲のかげりがよぎる。 妊娠が判明してから、彼女の性器は一度も使われていない。 アナルセックスに興味を抱いた直紀によって、 陽子の不浄の穴は新たな性感帯にさせられてしまった。 有無を言わせず自分の体を開発する悪魔に、陽子はなすすべもなかった。 たわわに実った尻の肉をわしづかみにして、直紀は母の肛門を穿つ。 力強いピストン運動が陽子から理性を奪い、清純な母親を淫蕩な女へと変えてゆく。 「あっ、ああんっ、あんっ。す、すごいっ。お尻が気持ちいいのっ」 「ああ、いい締めつけだ。ママのいやらしい体は、 どこの穴でも僕のチンポをくわえ込めるんだね。 入れ替わったときからスケベだったけど、 今のママはあのときよりもずっと淫乱になったと思うよ。 何せ、僕専用の牝奴隷だからね。ふふふっ」 「いやあっ、そんな言い方……あんっ、あああっ。ダメ、おかしくなっちゃうっ」 直紀の言葉が陽子の心を嬲り、自分が彼に従う奴隷でしかないことを再確認させる。 だが、嫌悪の情はまったくなく、愛する男の所有物になった幸福感で胸が一杯だった。 (あたしの体、いやらしいんだ。 今までママのせいにしてきたけど、このいやらしい体が今のあたしの体なんだ) 胎内を前後する陰茎の感触をより深く味わおうと、陽子は鼻息荒く腰を動かす。 肉感的なボディを振るって禁忌の快楽を貪る中年女の表情に、 半年前まで無垢の乙女だった少女の面影を見つけることはできなかった。 「ああっ、お、お尻、気持ちいいっ。 イク、イっちゃうっ。お尻でイクのっ。おおっ、おおおおっ」 不浄の穴を犯される快感に歓喜しながら、 三十八歳の妊婦になった元女子高生は、背筋を弓なりにそらして絶頂を迎えた。 頃合いと見た直紀が精を放ち、母の肛門に隷属の証を注ぎ込む。 温かで心地よい感触が腹の奥に広がった。 「ママも春奈も愛してるよ。これからもいっぱい僕を楽しませてね」 なおも直紀は陵辱をやめない。 尻の穴に埋め込まれた男性器がみるみるうちに硬さを取り戻し、再び陽子を犯し始める。 淫らな親子の一日は、まだ始まったばかりだった。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/128.html
その言葉に、麻由美は少女が着ている着物が先ほどまで祖母が着ていたものと同じであること、そしてその話し方がこの年頃の女の子にはそぐわない、別の言い方をすれば祖母のそれにそっくりであることに気づいた。 「そ、そんな、まさか…」 脳裏に浮かんだ想像を麻由美は信じられなかった。 確かに祖母はあんなことを言っていたけど、現実に起こるなんて。 「まだ信じられないみたいだね。けど、おばあちゃんは言っただろ。年齢を交換するって。」 その言葉に、麻由美は少女の顔を見つめなおした。 確かにその顔は、16、7歳、麻由美と同じくらい。そして鏡に映っていた老婆の顔は70歳ぐらい。これは祖母の年齢だ。 「じゃあ、本当にあなたおばあちゃんなの?」 「分かったみたいだね。でも若いだけあって呑み込むのが早いねえ。」 「で、でも、こんなことが本当に起きるなんて、おばあちゃん、何をやったの?」 「うふふ、麻由美には悪いけど、それはちょっと秘密だよ。それより麻由美にも分かってもらえたわけだし、一度元に戻そうかい。ほら、ここに座って目をつぶって。」 言われるがまま、少女の前で目をつぶる麻由美。再び1分ほど経過し 「麻由美、もういいよ。」 聞き覚えのある声に目を開ければ、あの少女はおらず、かわりに祖母の姿があった。 「おばあちゃん、あ、そういえば!」 まだ床においたままになっている手鏡を覗き込めばそこには見覚えのある自分の顔。 「も、元に戻ってる。で、でもこれって夢じゃないんだよね。」 「さっきまでのことは夢でも目の錯覚でもないよ。本当におばあちゃんと麻由美の年齢を交換してみせたのよ。」
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/197.html
325 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/23(日) 00 32 05.24 ID /g3QpHVr Be 「あら、良かった、時間通りね。ちょうどパイも焼けたところなのよ」 フミ子が一軒家の呼び鈴を鳴らすと柔和な表情の老婦人が現れた。 彼女は年配ではあるが、感じのいい表情を湛えた上品な女性で、初対面の フミ子の緊張をほぐす空気を持っていた。 「紅茶は、そうねえ、アールグレイでもいいかしら」 もともとそんなものには格別の拘りのないフミ子だった。首をこくこくと 縦にするばかりだった。 美しい木目のローテーブルに焼き立てのアップルパイと強い香気の紅茶と が給仕されると、フミ子は思わず喉を鳴らしてしまう。 婦人は小さく微笑んで、「どうぞ、ご遠慮なく」とフミ子に茶とお菓子と をすすめてくれた。フミ子はそれをなるべくお上品に見えるようにと注意し ながら、それらをもくもくと口に運んでいった。 「大変に、おいしかったです。奥様」 わずか2、3分ほどでそれらをぺろりと平らげてしまった彼女に、 「まあまあ、お若い方は食がすすみますことねえ」 紅茶をポットから注ぎ足し、さきほどのものよりもう少し大きめにカット したパイをフミ子に差し出しながら、 「さて、それじゃあ……」 話の本題を切り出した。 フミ子はむぐう、と口の中のパイを飲み下すと、ポーチの中から小さく畳 まれたタウン誌の切り抜きを取り出して、テーブルの上に広げた。 「この記事について、お聞かせいただけないでしょうか、奥様」 フミ子は丸っこい顔に緊張をはしらせて婦人に視線を投げ掛けた。 すると、婦人はええ、と小さく頷いて、 「はい、なんでも。あなたのご生活をより豊かで実りあるものにする、その 一助になるのであれば、それはとても素晴らしいことね」 切り抜きの記事にはこう書かれていた。 『せめて特別な日には、美しく輝いたあなたでいませんか?」と。 326 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/23(日) 00 32 57.19 ID /g3QpHVr Be 「これは、つまり特別な美容法をご伝授いただけるということなのですね」 フミ子が食いつくと、婦人は首を小さく傾げて、 「うん、そうねえ、そうであるとも言えるし、そうではないとも言えるのよ ねえ、さてさて、どう言ったものかしら」 次にフミ子は、 「だとしたら、洋服やアクセサリー、化粧品などの頒布なのですか」 すると、婦人は、 「それは完全にNOですわね、そういった類いの商法ではないのです」 さらに、フミ子は、今度は控えめに、 「だとしたら、その……費用はまったくかかりません、と謳っているのも、 それは本当なのですか?」 すると、その問いにはすぐに婦人も頷いて、 「ええ、お金は一切いただきませんわ。誰かを勧誘させたり、労働を強いた り、といったものでないことについても信じてくださればありがたいことで す。むろん、今後に話を聞いていただいて、信用ならないと判じられた場合 にも、そのままお帰りいただいて結構です。お引き留めもいたしません」 淀みなく話す婦人。だが、セールスの巧手というものはそうしたものだと 知っているフミ子は、警戒の念を心の一隅に留め置いたままに話の先を求め ていた。 「ええ、それならば、まったくそれは慈善事業のようですね?」 相手に不快感を与えないように気を遣いながら、それでもフミ子はそこを 糺さずにはいられなかった。旨い話に裏がない筈はないのだ。 すると、婦人は今度は手を振ってそれを否定して、 「ううん、そうじゃないのよ。やはり加入者にはそれなりの代償を拠出して もらうことになるのだし、美味しい思いばかりをできるといった類いのもの ではないの。それははっきりと先に言っておきますね」 そして、にっこりと微笑んで、 「それよりも、あなたも、どうしてこんなに小さくわかりづらく紹介してい るような記事に目を惹かれたものか、そこを教えてくださるとありがたいも のね」 327 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/23(日) 00 33 38.52 ID /g3QpHVr Be すると、フミ子は視線を一度二度、宙に迷わせたあとに、 「あ……はい、その、私、ほら、こんなですから」 こんな、とはつまり彼女の体型のことである。中学時代くらいから着実に 肥満していった彼女は26歳の当年には実に77キロという体重をかかえて いたのである。ただし、身長も165センチとわりと高い方ではあったし、 顔立ちもやや幼さが残るとはいえ整ったほうだったので、まったくもてなか ったというわけではなく、友達の紹介で付き合った彼と見事二年前にゴール インしたというわけである。 「その、ヤイチ君……あの、主人も、その優しくはしてくれるんですけど、 なんだか最近少し……夜のほうなんかも淡白になりがちでして、はい」 しどろもどろのフミ子に優しい視線を向けながら、 「いいわね、新婚さん。初々しくて、可愛くて……それで、月に何回くらい しているの」 わりと突っ込んだ質問を投げ掛ける。 「はい、それがだいたい2月に1回くらいのペースなんです」 顔を紅潮させながら、フミ子は素直に答える。 「あらぁ……そんなに若いのに、そんな少なくちゃ、かわいそうね。ご主人 はそっちのほうはあまり強くないの?」 フミ子は、ずずっと音を立てて紅茶を啜って、ふう、と一息ついてから、 「うーん、どうなんでしょうか。いつも穏やかでいい人だとは思うんですけ ど、なんだかお兄さんと妹みたいな雰囲気になるというか、とても仲良しの 友人の関係というか、その、そういうふうなムードにになることってほとん どないんです。その、将来、新しい家族を迎えるための練習のつもりで、と か、そんな感じでしか……はい」 すると、婦人は同情の優しさを言葉にこめて、 「ああ、それはとてもお気の毒なことね。女の子が相手に求められていない のではないか、なんて悩むのは人生の辛苦のうちでも最も大きなもののひと つなのじゃないかしら」 すると、弾かれたようにフミ子は、 「はい、だからこそ、私はここに来たんです。そして、聞いてみたかったん です。いつもじゃなくていい、少しの間でもいいから主人を私に夢中にさせ てみたいって……思ったから」 自分の言葉が心に反響したのか、フミ子はひくっと嗚咽を漏らしていた。 涙はやっとのことで堰を作ってはいたけれども。 328 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/23(日) 00 34 20.96 ID /g3QpHVr Be 「そうね、それがあなたの望みというのならば、いいかもね、私があなたの 力になってあげられるかもしれないわね」 婦人は椅子から立ち上がり、優しくフミ子の背中をひとしきりほどさすっ てやり、それからおもむろに彼女に問いかけた。 「さて、それじゃあ本題をお話しする前に、ねえ、フミ子さん。あなたは私 がだいたい何歳くらいに見えるかしら?」 やや下がり気味の目の縁に悪戯心をしのばせながら、婦人はフミ子の解答 を待っていた。 フミ子としては、こうした値踏みがあまり得意なほうではない。婦人はた しかに背筋もしゃんとしていて、体型もさほど緩んだところはないが、眼窩 には衰えからくる窪みが見て取れたし、目尻も下がり、輪郭もぼやけた印象 だった。灰がかった毛髪も綺麗に整えてはいたが、細い撚糸のような弱弱し さが現出していた。手足の肉も削げていたし肌にも張力が備わっていないこ とがありありとあらわれていた。 「ええ、と、50とちょっとくらいのところでしょうか?」 無論、いくつかのお世辞をしのばせての解答である。おそらくは60がと ころではないかと思われたが、これで70近くというのであれば、それは驚 嘆すべき若さであっただろう。 すると、婦人はにっこりと 「まあ、50そこそこだなんて、ずいぶんと嬉しいことを言ってくださるわ ねえ」 フミ子は胸をほっと撫で下ろし、彼女の解答が婦人の意に沿ったものであ ることを確信していた。 婦人はにこにこと、 「でも、私、まだ30歳なんだけれどもねえ」 329 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/23(日) 00 34 58.04 ID /g3QpHVr Be フミ子は思わず噴き出した。鼻水もほんの少し混じっていたのはご愛嬌の うちだっただろうか。 「うふふ、いい反応ね。からかい甲斐があるわ」 老婦人はふたたび温和に目を細める。ああ、これは冗談だったのか、とフ ミ子も思い直して、 「ええ、意表をつかれてしまいました」 再び、和やかな空気が流れはじめた矢先に、 「じゃあ、本当の歳はおいくつなんですか?」 フミ子の問い掛けに、ん、と首を傾げた婦人は、 「え? だから、さっき言った通りよ。30歳。お仕事は不定期だけどモー ターショウなんかでコンパニオンをしているわ」 ぽかん、とフミ子は呆けるばかり。これも冗談のうちなのか、と婦人の目 の動きを追って、話の真意を掴もうとしたが、 「うふふ、それじゃ、証拠を見せてあげましょうね」 言いつつ、戸棚に立て掛けたアルバムを取り出し、テーブルに開け広げて それをフミ子に提示した。 「これね、いつも私の追っかけをしてるカメコの子が撮ってくれたんだけど ね、どう、なかなか上手に写ってるでしょ、私」 写真の中で、豊満な身体の線を強調するメタリックな水着に身を包み、片 腕を抱く格好でポーズを決めて艶然と微笑む美女は、たしかに婦人にも通じ る面影を持っていた。 「でも、若すぎますよ。これ?」 フミ子が声を裏返すのも無理からぬことで、どう見ても写真の女性は20 歳かそこそこの若さである。 一緒に写っている車が最新鋭のものであるのならば、これが昔の写真の焼 き直しということもできない。あるいは合成写真か、それとも婦人の娘か姪 あたりの写真を使って自分をからかっているのか、とフミ子は小さな不快感 を抱いたのである。 「あら、そうかしら。一緒だと思うんですけどもね、私は」 おもむろに、婦人は上着の前のボタンを外してそれを脱ぎ去った。 330 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/23(日) 00 35 50.48 ID /g3QpHVr Be 「ふあっ、何をするんですか、いったい?」 「ああ、まあ、いいからいいから」 さらに婦人はスカートのホックも外してそれを脱ぎ去って、上下ともに下 着姿になってしまった。 「うふふふ、さあ、御覧なさいな。私もプロですから、慣れていますからね 遠慮はいりませんよ」 どこまで婦人は冗談を貫くつもりだろうか。唖然となったフミ子は否応な しに婦人のやせ衰えた半裸身を観察する羽目になってしまった。 浮き出た鎖骨から延長する胸元の膨らみは半ば失われ、項垂れたままに白 いブラジャーの中に収まっている。お腹回りも衣服を取り去ってみるとその 弛みが浮き彫りになっており、ショーツの上に乗っかった格好になっている。 脚線には女らしさが喪失していて、ごつごつとした部位とだらしなく肉の 垂れ下がった部位とが交互するばかりである。 これで、水着コンパニオンとはどういう料簡だろうか、それとももしや、 この婦人は正当な判断を失ってしまっているのだろうか、とフミ子が危ぶん だその時である。 ポーン、ポーン、ポーンと壁掛けの仕掛け時計が午後3時の時を告げた。 「ふふ、さあ、ここからが本番ですよ」 婦人の言葉が紡がれたその瞬間に、彼女の全身を金属のようなぎらりとし た光沢が覆い尽くしていた。 フミ子は言葉を無くして口をぱくぱくとさせるだけ。その間に、金属の彫 像と化した婦人の肉体には劇的な変化が現れていた。 さきほどまで頭一つくらいフミ子よりも低かった身長がフミ子と並ぶくら いにまでに伸張し、背筋がぐんと反り返る。 胸と腰が張り出して、重力に屈していた肉がせりあがり、大迫力の起伏を 演出する。むろん、腹まわりにこびりついていた無駄肉は消失し、美しいラ インを形成していく。 四肢にはしなやかさと伸びやかさが蓄えられ、女性的なフォルムは一個の 芸術にまで高められていた。 「んぐ、ッ……ふう」 婦人の表皮が金属的なそれから、蜂蜜色の健康的な肌へと戻った時、彼女 はまさしく写真の中にいた美人コンパニオンへと変身していたのであった。 「ふふふ、どうかしら、このカラダだったら私、いくつくらいに見えるかな」 艶やかな黒を取り戻した髪を手で梳きながら、婦人はにやり、と笑った。 胸は重力に逆らうように張り出し、腰も女性的な丸みを強調し、ショーツ を押し上げてその曲線の意義を主張していた。 「……ええと、その、じゃあ20歳くらいですか」 フミ子にはもう、何がなんだかわからない。すると、婦人はくっくと口を にぎりこぶしで押さえて、切れあがった目尻を軽く細めながら、 「でも、私、もう30歳なんだけれどもねえ」 331 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/23(日) 00 36 25.88 ID /g3QpHVr Be 『肉体拠出による相互扶助制度』というのが、婦人の肉体の秘密であった。 「つまりはね、特別な日のために、私はいつも実年齢よりも30歳ほど齢を 重ねた姿でいるわけよ。そして、特例が無い場合には週に二日だけ、その供 託してあった若さを取り崩して、10歳の若返りと、バストの2サイズアッ プ。それから身長の9センチアップを実現できるってわけなのよ」 そして、今日はフミ子にその具体的な例を示すために三時間だけ、特別な 姿へと変身したというわけなのである。 「は……はあ、にわかには信じがたい話ではあるんですけど」 フミ子の羨望を伴った視線は、嵩増しされて大きく張り出し、ブラウスの 前ごろの線を歪めるほどの径を持つ婦人の双の豊乳へと注がれていた。 「でも、こうして目で見てしまった以上は信じざるを得ないですよね……」 先ほどまでは自分よりもはるかに年長者だったのに、今は自分よりも若く なってしまった婦人にどう接していいものか、考えるのを放棄したフミ子は 半ば投げやりに言い放った。 「そうよ。誰かのものを奪うのではなく、金銭で取り上げるのではなく、あ くまでも自分の積み立てた分だけを受け取るという制度なの。生命保険のそ れを想像してもらってもいいかもね」 そして、婦人はちらりとフミ子を見やって、 「でも、それを利用するかどうかはあなた次第よ」 やんわりと退路を示して、フミ子の反応をうかがった。 「私は正直にこのシステムには大きな魅力を感じますけど、歳を取って皺だ らけの顔になるのはひどく怖いです」 フミ子は戸惑いの表情を浮かべて、こつこつとテーブルを指で軽く弾いた。 すると、婦人はさもありなん、と頷いて、 「もちろん、そうよね。私だってこのつるつるツヤツヤの顔から一度に若さ を取り上げられて還暦のお婆さんに整形される時には、いつものことながら 泣きたい気分なのよ」 と、そこで暗い声を一転させて、 「でも、この弾力抜群のEカップに胸が膨らんで、全身に張りと潤いがみな ぎって、おまけに脚までこの通り長くなった瞬間にはもう、そんなことはど うだっていいわ」 そして、フミ子の眼前にその美しく張り出した胸を見せつけて、 「どうかしら、あなたのご主人はこういう大きな胸は嫌いかしらね」 332 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/23(日) 00 36 56.01 ID /g3QpHVr Be 婦人の説得力のある胸と言葉に弾かれて、 「私……やります」 フミ子は決断した。 「ええ、よかったわ。あなたもこの制度の主旨に賛同していただけるのね」 婦人は言いつつ、複数枚のパンフレットを持ち出して、 「それでは、契約のために、いくつかのプランを私も用意させていただくわ ね。ええ、供託するのは何も若さに限ったことではないわ。たとえば、それ がスリーサイズであったり、身長であったり、体重であったり、ね」 そこで、ぴくん、と眉を動かしたフミ子は、 「ふえっ、体重でそれを賄うことができるんですか」 婦人は、こくりと頷いて、 「ええ、可能よ。とは言っても、もちろん体重を普段増やすことによって特 別な日に利益を受け取ることにはなるのですけどね。……うん、はじめての 人だったら年齢や身長なんていうものよりは恐怖も少なくて済むかもね」 そこで、婦人が提案し、フミ子が検討の上で契約したのが次のプランであ あった。 『契約者および受益者たる三杉フミ子は月間26日に体重5キロ増を受け入 れることにより、残る月末の日数を、体重25キロ減、胸の1サイズアップ およびウエスト2センチ収縮の姿で過ごせることとする。なお、途中解約の 際には無償による上の負担を5日間果たすことで相殺とする』 フミ子は小さく呟くように、 「これくらいの負担だったら、別にそんなに大きくないですよね。だって私、 もともと太ってますし」 すると、婦人は首を横に、 「いいえ、そんなに甘く見ていてはいけないわ」 眼差しをきゅっと細めながらフミ子に釘を刺した。 「わりとね、あるのよ。中途解約って。歪められた自分の姿に辛抱ができな くって、それで利益を得る事ができずに終わる人ってね。利用者全体の20 %くらいはいるんじゃないかしら」 フミ子は息を飲んだ。 「いいこと、どんな制度もね、正しい認識で用いなければ真価を発揮できな いものなの」 333 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/23(日) 00 37 24.70 ID /g3QpHVr Be 「じゃ、じゃあ、私はどうしたらいいんですか?」 すると婦人は少し語気を緩めて、 「そうね、そうならないようにあなたの契約は比較的緩めに作ってあるの。 利益享受を短めに、負担を長く小さめに、ってね。でも、5キロのお肉は言 うほど軽くはないんじゃない?」 言いつつ婦人はフミ子のお腹に目を配った。 「とりあえず、あなたは契約開始になる8日後までに、少しでも運動して身 体を絞っておくことね、そうじゃないと膝や腰なんかをやられてしまうわ」 婦人の忠言にふんふんと鼻息を立てて頷くフミ子。 「……わかりました。なんとかしてみます」 と、契約書を取り交わして婦人に礼を言い、その邸宅を後にしたフミ子は 帰り道にスーパーへと立ち寄り、夕飯の材料を探していたのだが、 「お肉……こんなに入ってても700グラムなんだあ」 ラップにくるまってぎちぎちに平皿に盛り込まれた豚バラ肉の、半ば白い 塊が、フミ子の腹へと吸い込まれていく。それも、一つだけではなく三つ、 四つと、吸い込まれて彼女の腹へ、足へ、首筋へ、と。 「……ひっ」 手にしかけたパックをぽろりと取り落としたフミ子は足早にそのコーナー を後にする。 『5キロも増えたら私、82キロかぁ、いったいどんなふうになっちゃうん だろ』 買い物かごに放り込んだのは、青菜に春雨に蒟蒻と海老と。少しでもカロ リーを減らそうと、フミ子も考えているのだ。 行きはバスで四つの停留所の距離を移動したけれども、帰りは歩いて少し でも身体を引き締めておこう。そして、最愛の主人に喜んで貰うのだ、と。 フミ子の挑戦は、ここにはじまった。 340 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/26(水) 21 59 28.63 ID sa4xUPpX Be 「ん、じゃあ行ってくるね」 「はい、がんばってね、ヤイっちゃん」 と、アパートの戸を開けて仕事に出ていく主人を見送ったフミ子は、そっ と振り返り、壁掛けのカレンダーに目をやった。 「……今日から、はじまるんだよね」 10月が始まるというのと同時に、契約期間がはじまるのだ。フミ子は緊 張に少し震えた。 契約の始まりは本日の午前10時からとなっている。 手早く掃除と洗濯を済ませて朝食と弁当作りの片づけを終えたフミ子は、 戸を閉めた洗面所の中で一人、その時を待っていた。 およそ5分、ゆっくりとその時を待っていたフミ子に、 「ううっ……来たっ」 じわり、と不快な感触が全身を覆った。 みちみちと、肩口から上腕にかけて、その径が太まっていく。背中にさら なる厚みが生じていく。 「ああっ、きつい、きついよぉ」 ただでさえ大きく張り出していた臀部はさらに肥大化し、ゆるやかだった メンズの3Lサイズのジーンズの容積を埋め尽くし、ぎしぎしと軋み出す。 慌ててフミ子はホックを外し、半ばまでジッパーを下ろして難を逃れた。 ひとしきりの変化が終わり、はあはあ、と息を吐くフミ子は鏡の中の自分 の変貌後の姿に愕然とした。 「いやだ、なにこれ……ひどい」 鏡の中に映った女は、頬まで脂肪が迫り出して、目が半ばまで押しつぶさ れていた。それが、自分と同調した動きをとっていなければ、フミ子にはそ れが自分だとはとても認識出来なかった。 「たった5キロで、こんなにも変わるものなのぉ……」 セーターにしてもパンツにしても、この日のために特にゆるやかなものを 選んだはずだったのに、それが完全にジャストフィットしてしまっているの だ。太ももはぱんぱんに膨れ上がり、ハムとか大根どころの話ではなかった。 上下を脱いだフミ子は怖々と体重計に乗ってみる。 デジタルの体重計は、81.2キロのセグメントを表示していた。実は、 ここに至るまでにフミ子はなんとか自己流で0.8キロというささやかな減 量を成し遂げていたのであった。 「……そうよねえ、本来あるべきカラダに5キロも無駄肉のっけるんだもん、 こうなるのはむしろ自然なことなんだよね」 丸々とした二重の輪郭をさすりながら、フミ子はむしろ、内心に決意の塊 のようなものを結晶化させていた。 がんばって、一か月に1キロずつ痩せよう、そうすれば5か月後にはもと の姿に戻れている計算だ。それならば、その後は負担なしに配当を得ること ができるのだから、と。 その意志が、その後の彼女を、そして夫婦仲を劇的に変化させることにな るとは、その時の彼女にはまだ思いもつかないことであっただろう。 341 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/26(水) 22 00 10.47 ID sa4xUPpX Be 「……おかえりなさい、お疲れさま」 「ん、ただいま」 フミ子はちらちらと少しづつ角度を変えて、夫の顔をのぞき見る。 「んあ、どうかしたのかい、フミ」 戦々恐々と夫の帰りを迎えたフミ子だったが、その反応がまったく無い事 には、失望混じりに拍子抜けの感があった。 『まあね、そりゃあそうでしょうけどね』 考えてみれば、顔が丸々として顎が二重なのも、お腹のお肉が段々畑にな っているのも、足が桜島大根級なのも、もともとだったよね、と。 溜め息をこぼしつつ、なんでもないの、と一言断ってからどすどすと台所 へと戻り夕飯の支度をするフミ子であった。 しかし、実は夫の弥一は、愛妻の変化にはちゃんと気付いていたのである。 『……はあ、またアイツ。一段と肥えたんじゃないのか?』 思ってはいたけれども、口には出さない。弥一は妻を傷つけまいと、それ なりの思慮は持ち合わせていたのだった。 「今日はヤイっちゃんの好きな唐揚げだよぉ、ちょっとだけ待っててねえ」 おいおい、それは自分の好物だろうが、と内心では苦笑いしながら、それ でもまあ、いいか、とネクタイを外し、背広をカウチに放ってぱちぱちと油 のはぜる音と香ばしい匂いのする台所へと歩をすすめるのであった。 コンロに向かってフミ子が動くと大きなお尻がぼよんぼよんと揺れる。コ ミカルに映るその光景は、いつも弥一を和ませるのだった。 弥一は、惚れてフミ子と添い遂げたのである。 しかし、それはあくまでも、フミ子の外見ではなく、人間性に惚れて、で あった。 事実、フミ子は優秀な主婦であった。けっして高給取りとは言えない弥一 であったが、家計のやりくりを巧みにしてくれるおかげで、それなりの蓄え を毎月、計画的にすることができている。また、舅や姑にもよくなついてく れて、険悪な雰囲気を作ったことさえないというのも特筆ものである。 性格も明るく、思いやりがあり、自分のことを後回しにしても他人のため に働くといった気質は清廉で、弥一も感心させられることがしばしばあった。 ただ、一点。大きく弥一がフミ子に失望せざるを得ないことは、彼女の肉 体が肥満していて性的な魅力に欠けていたということである。 弥一は至ってノーマルな性欲の持主である。幼女にも老女にも、男の娘に も興味がない。成熟した女の身体に刺激を感じる彼は、無論、ぽちゃ専でも なかった。 342 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/26(水) 22 01 01.46 ID sa4xUPpX Be 弥一にも妻に対しての愛情は、あると断言できた。しかし、性欲となると 話は別であった。妻の過度な肉置きを実感するたびに途端にげんなりとして しまうのだった。 結婚当初は、愛情さえあれば性欲は後からついてくるものだと信念を持っ ていた弥一も、次第にその見通しの甘さを後悔せねばならなくなってしまっ たわけである。 次第に性交渉の頻度も減り、夜の営みはどんどん淡白になっていってしま う。そして、いつか近い将来にそれは夫婦間の大きな溝となるだろうことは 安易に想像できた。しかし、その原因をフミ子の身体にある、とつきつける ような残酷な真似は弥一にはとてもできなかったのである。 『……はあ、どっかの妄想話じゃないけどさ、帰ってきたらいきなりフミ子 のやつがナイスバディになっていたらいいのになぁ』 そんなとりとめもないような妄想が、一月ともしないうちに実現できると は、神ならぬ身には予見する術すらなかったのである。 5キロ増の身体にもようやく慣れてきた月半ばのフミ子は、ある日、雑貨 店のパーティグッズのなかにこんなものを見つけた。 『飛んでも発奮、コスチュームシリーズ一号、ミニスカ婦警さん』 いつもなら、そんなものに反応したりはしない。けれどもその日のフミ子 の視線は、そこに固定されてしまったのである。 いつか、弥一のパソコンの画像の中のひとつに、このコスチュームの女の 子が写っていたのをフミ子は鮮明に覚えていた。 弥一は、フミ子に意識させまいと、さっさと画像を消してしまっていたが、 そういうわけにはいかなかった。自分が持っていない細く、かつ魅力的な身 体の女の子に主人の心が奪われていたかと思うと、なんだかせつなくて、悲 しくて、気取られぬように心を痛めていたわけなのである。 しかし、だ。 『着られるようになるのよねぇ……私だって』 黒い情念が心裡に渦巻いた。 そうだ、月末4日限定ではあるが、自分だってこれを着られるサイズにな れるではないか、と思った瞬間には、フミ子はそのパッケージをレジへと突 き出していた。 レジ係の金髪の若者は、きょとん、としながら商品とフミ子とを見比べて、 「あのう、これってサイズはこの一種類しかないんすけど……」 明らかに咎めるような口調で、フミ子に問うた。 「いいえ、これでいいんですよ。間違いじゃないです」 若者は、さらに付け加えて、 「いや……でも、これってビニールを破かれたら、たとえ袖を通してなくて も、もう返品できないすから」 ちらちらと、フミ子の目を覗いながら、念を押した。 「だから、これでいいんですっ、て!」 自分が発した言葉が予想以上に大きかったことに思わず口を押さえたフミ 子であったが、 「ああ、そうっすか。すみませんでした。それじゃ、いいんですよね」 ようやく商品を購入することができたフミ子は、心の中に、小刻みに震え る何かを感じながら、携帯電話のカレンダーを読んで、 「……あと、10日」 呪文のように言葉を繰り返して、早歩きに帰路へとついたのだった。 343 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/26(水) 22 01 51.28 ID sa4xUPpX Be そして、果たせるかな、その日。10月27日がやってきた。 「じゃあ、今日もたぶん、定時には帰れると思うからね」 「うん、わかった。気をつけて行ってきてね、ヤイっちゃん」 いつも通りににお見送りを言ったその後に、フミ子は付け加えてもう一言、 「今日は配当が入る日なんだから、楽しみにしててね」 意味不明な妻の言葉に首をひねりつつ、出掛けていく弥一。 そして、お見送りを終えたフミ子は、いつもの数倍の速さで洗濯と掃除を 済ませると、戸に施錠をし、その上で洗面所へと籠っていた。 着衣をはらり、と脱ぎ捨てると、フミ子は下穿き一枚の姿になっていた。 鏡に映るその姿は、立体ルノワールとでも言うべきか、とにかく肥った女 性の裸像であった。 ぎちっ、と音を立てて体重計に乗ると、デジタルのセグメントは80.4 キロを示して静止していた。 「がんばったほうよね、一か月に1キロ近く落としたんだもの」 もしもフミ子が先月初めの初期値のままにこの体重計に乗っていたなら、 82キロが正しい数字ということになっただろう。1.6キロの減量はたし かに悪くない減り幅であった。 しかし、ここからはじまるのは、そんな僅少な変化ではないのだ。フミ子 はきっ、と眉をいからせて、鏡の中の自分を覗きこみながら、午前10時の 魔法の時を待った。 そして、そのまま待つこと20分あまり。役場のチャイムがポーンと鳴っ て、10時を報せていた。フミ子はぐっと身構える。 しかし、 「あれ……なんにも変わらないじゃない」 何も変化がない事にフミ子は唇を尖らせて、卓上の電波時計を確認する。 と、時刻は9時59分50秒を示している。 「……って、なによぉ、ちょっと時報がズレてたのかぁ……」 と、息を吐こうとした瞬間に、全身にぎゅわんっと、震えが訪れた。 「うわっ、うわわわわ」 フミ子の全身に金属的な光沢が生じ、両手が鋼鉄のそれに変わっていく。 本当ならば、これを鏡で確認しながら、と思っていたのに、フミ子は少 し残念な気がしたが、それどころではない。 344 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/26(水) 22 02 29.40 ID sa4xUPpX Be みきいっ、と音を立てて臀部の膨らみが半分に収縮する。もちろん、シ ョーツはずり下がってしまう。 「ひっ、わひゃひゃっ!」 あわてて下穿きをたくし上げ、両手でお尻を押さえるフミ子だったが、 変化はまだ、序の口だった。 べこん、と膨らんでいた腹部がへこんで、腰部が締まり、段々になって いた 肉の層が消失し、なだらかな曲線になっていく。 「いっ……嫌ぁ……じゃなかった、いいのか、いいけど、いいのにさあ!」 痛みはないが、揺さぶられる感覚もまた半端ではない。急激な変容に戸 惑ってパニックを起こすフミ子。しかし、それでも変化は滞りなく、捗っ ていく。 肩口が狭まり、足首が締まり、頬のカーブが鋭角になっていく。みるみ るうちに全身のシルエットが細くなっていく。 「ひゃあんっ! ひっ……ひゃうっ」 ようやく変化が終息を迎えようとするところで、身体がもともとの肌色 に戻り、眩暈を起こすほどの震えも収まってきた。そこで、ようやくフミ 子も立ち上がり、洗面所の全身鏡に映る自分の姿を見る事ができたのであ る。 「嘘……これが私なの……」 陶然とした面持ちで、フミ子は鏡に映る自分に溜め息を吐いた。 先ほどまで全身を覆っていた贅肉は消失し、女優にも比肩するほどに引 き締まった肉体を持つ女が、鏡面には映っていた。 痩せたことでヒップが持ち上がり、長身のフミ子は足が長く見えるよう になっていた。 「すごい……足の隙間から向こう側が見えるよ、こんなのはじめて」 勢いこんで体重計に乗ってみる、フミ子の計算だと、今の彼女は55. 4キロにまで体重が減っているはずだった。 と、体重計の数値はさらにそれを下回り、50.4キロのそれを示して いたのである。 「ええっ、どうしてそんなに減ってるの?」 と、フミ子が気付いてなかったことは、最初に彼女には5キロの加重が されていたことである。そこから解き放たれて、さらに25キロの減量が 成されるわけだから、当然彼女の体重はそこまでのものから30キロ少な くなるわけなのである。 「……んふうん、身体が軽いの」 ふんふん、と腰を回せばくるりくるりと今まで考えられなかった角度に まで腰が回る。今までお腹につっかえていたものが消え失せた作用だった。 「それに……このおムネ、固くてぱっつんってしてるの」 余計なものが消え失せた分、多少は小ぶりになっていたが、アンダーが 細くなった分、相対的に大きく張り出した胸。あの婦人ほどに非常に大き いというわけではなかったが、弾力も、そして形も文句無しであった。お そらくはバストカップ1アップの恩典がそこに働いているのだろう。 345 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/26(水) 22 03 04.47 ID sa4xUPpX Be そして、 「あははぁっ、これが私のカオなんだぁ……まるで別人ねっ」 頬の弛み、輪郭のぼやけから解き放たれたフミ子本来の顔は、童顔など ではなく、真正の美形であった。目じりの切れ上がった瞳は大きく四辺に わかたれて、輝いていたし、鼻筋はくっと通り、顎は尖り、女優とさえ比 較できるほどに整った横顔を形成していた。 背筋を伸ばし、口元に微笑をたたえ、鏡に向かって半身に構えると、そ こにはしなやかに伸びる肢体の、性的な魅力あふれる裸身の女神の姿が映 し出されていた。痩せたことで、女らしさが失われたわけではなく、むし ろ、脂肪の深海から本来の魅力がサルベージされたといったところだった。 「えへへへ、どうしよう、ショーツもブラも全然サイズが合わないしなあ、 いっそのこと、上から下まで新調してもいいのかも……」 興奮に胸を上下に躍らせるフミ子は、ふと、あのグッズを思い出した。 フミ子はバスタオル一枚を巻き付けただけの格好で、台所の納戸に隠し てあった『ミニスカ婦警さん』のコスチュームの封印を破った。 胸元二つのボタンを意図的に無くしたヘソ丸出しの白いワイシャツに、 青いビニール製のブレザー。そして同じくビニール製の光沢のあるミニス カートを、フミ子は苦も無く着込んでいく。 「なによ、これ、膝上どころか太ももの付け根まで丸出しじゃない」 言いつつもまんざらではないフミ子は急遽、用意したベルトを6割方切 りつめてそれを締め込み、やや緩めのスカートを腰穿きにし、制帽まで被 り、前かがみにポーズを決めてみる。 「はぁい、お兄さん、アタシとイイコトしましょ」 予行演習とばかりに甘やかな声を出してみると、なにやら不思議な自信 が全身に漲ってきた。 「ふふん、いいわあ、これならきっとヤイっちゃんもめろめろよぉ」 フミ子は、熱い夜を思って、きゅうんと身を這うような昂りに、小さく 吐息を洩らすのであった。 361 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/11/04(金) 23 54 04.34 ID RWCueB15 Be 午後6時半。仕事を終えて帰ってきた弥一は、アパートの鍵がかかって いることに首を傾げた。 『ん? いつもなら、帰ってくるときには開いてるんだけどな』 暗がりの中でかちゃかちゃと鍵を開けて玄関に入る弥一だったが、どう やらリビングは電気が点いているようだった。人の気配もある。 「おい、フミ子。いるんだったら返事くらいしてくれたらどうなんだい?」 言いつつ、リビングの戸を開けた弥一の目に、信じ難い光景が広がった。 「うふふ、お邪魔してますわ」 見知らぬ美女が、あろうことかタイトな婦警コスでチェアに腰掛けてい たのである。 化粧はわりと濃い目だけれども悪趣味ではなく、目元に強い誘引力を生 じさせている。細身の長身は、出るところは出て、締まるべきところは締 まっている。女優にも勝るとも劣らない容姿を誇る若い女であった。 「んぐっ、誰ですかあんたは? それに、俺の嫁さんは……」 「知らないわ、そんな人。私がここに来た時には誰もいなかったもん」 弥一は、口をニシキゴイのようにぱくぱくさせるばかりだった。 その様子をにやにやと眺めていた女は、意図的に胸の膨らみをアピール すべく、前屈みにぴっと敬礼をひとつ。 「ホステスの出張サービスです。本日はご利用ありがとうございます」 黒いブラジャーから豊満な白い膨らみが半ばこぼれているのをちらちら と視認しながら、弥一は息を飲んで、 「いやいや、いや、俺はそんなもん頼んでないっすから!」 かすれる声を絞ってそれだけを早口に女に伝えた。すると、女は、へえ、 そうなんだぁ、と一つ息を吐いて、それからゆっくりと立ち上がり、弥一 の方へと近づいてきて、 「残念ねえ、お兄さんってアタシのタイプだったんだけどなあ……」 くすり、と笑って、半回転。細く引き締まった腰と、形よくせりあがっ たヒップとを十分に弥一の網膜に焼き付けた上で、 「ふふふ、それじゃ、どうかしら。奥さんが帰ってくるまでの間に、ちょ っとだけサービスしてあげるっていうのは?」 言いつつ、口の端から淫靡にちろりと赤い舌をのぞかせて、女は媚びた 視線を弥一に注いだ。 「はいいっ? サービスって」 女はにやり、と、 「サービスって言ったらサービスよ。奥さんが帰ってくる前に、そうね、 手がいいかしら、それとも口でしてほしい?」 弥一の股間にそっと手を添えた。弥一の身体がぎこちなく、くの字に折 れ曲がる。 「んふふ、パンパンじゃないの、キツそうねえ」 と、弥一の肩によりかかるように身を預けて、豊満で弾力ある胸を押し つけながら、 「大丈夫よぉ、私上手だから、すぐに気持ち良くしてあげるから、ねえ、 それにいつも、あんなつまらない女の相手させられてて可哀そうだもの、 たまにはつまみ食いくらいしたって罰はあたらない……わ」 隠した瞳に、悲しみを湛えて、女は弥一に抱かれるときを待っていた。 362 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/11/04(金) 23 54 39.46 ID RWCueB15 Be ところが、である。 「いや、悪いけどね、本当に間に合っているから、帰ってくれないか」 弥一はぐいっと女を押しのけて、椅子にどっかりと腰掛けてしっしっと 手を振った。女はふいに怯えたような目になった。 「うちの嫁さんはね、たしかにあんたみたいにセクシーでもないし、太い し、美人じゃないかもしれないよ」 そこで、だんっとテーブルを叩いて、 「だがね、それでも俺の惚れて添い遂げた女だ。他の誰にも悪くなんて言 わせないよ」 ぎゅっと眉間を寄せて、普段使わないような強面で、弥一は言ってのけ た。 すると、女はふるふると身体を震わせて、両手で顔を覆ったまま、小さ く、「ああっ」という悲鳴ともつかない感嘆をもらしつつ、床にへたりこ んでしまった。 弥一は、この反応に慌てて、 「いや、そうじゃなくって、さ。あんたを怒ったわけじゃなくて……あの、 その、ううん、なんと言っていいものか……」 すると、女はぼろぼろと涙を頬から滴らせながら、何度も「そうじゃな い」と首を横に振った。 「違うの……違うのよぅ、ヤイっちゃん」 口調の変化にはっ、とする弥一。女は泣き崩れたために目元のマスカラ が落ち、シャドーが散ってしまったため、たたっ、と洗面所に駆け込んで 化粧を落としていた。 ややあって、洗面所から出てきた女の顔からは妖しさが消えて、素直な 心情が投影された親しげな表情に変わっていた。 「ヤイっちゃん、私だよ……フミ子なんだよぅ」 ばつの悪そうな女、フミ子の言葉に弥一は言葉を失った。 「フミ子……はえっ、ななな、なんだよ、そんな馬鹿なことって、そんな お前、どういうことだよ、それはさ」 狼狽しながら身をもじらせるフミ子は、かくかくしかじかの経緯を弥一 にひとしきり説明した。 363 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/11/04(金) 23 55 15.76 ID RWCueB15 Be ソファに胡坐をかいて座る弥一は、困惑しつつもようやく合点がいった。 「はあ、拠出制度による相互扶助制度ねえ、それで今までお前、ひと回り 大きくなってたんだ」 「あれ、やっぱり気付いててくれたんだ。まるで関心無しみたいな態度を 取られてて、内心傷ついてたんだよ」 フミ子が口を尖らせると、弥一は、 「じゃあ、『また一段と肥ったね』とでも言ってほしかったのか」 すると、フミ子はふんふん、と首を横に振って、 「いや、そんなこと言われたら私、きっと立ち直れないもん」 弥一にすり寄って、その腕にしがみつく。弥一は、その腕に伝わる膨ら みの質感に局部を硬質化させつつ、 「それにしても、そのムネ。ちょっとずるし過ぎな感があるよなあ」 照れ隠しに眉をひそめると、フミ子もぶーっと声をあげて、 「ふんだ、そんなことないもん。サイズだって1カップしか増やしてない んだもん。これが私の隠された実力ってやつだよう」 たしかにフミ子の言葉通り、元来フミ子は豊かな胸を保持していたのだ が、あまりにもわき腹や背中といったアンダーバストに脂肪が蓄積されて いたために、それらが埋もれて目立たない状態だったのが事実だった。 「ずるしてるっていうのなら、それよりもこのウエストだよ、見てよ見て、 今、私のウエストって60センチを切ってるんだよ。これって反則的なプ ロポーションだと思わない?」 形良いヒップとしなやかに伸びた背中とを結ぶウエストは綺麗に引き締 まり、くびれていた。 「……じゃあ、お前ってもともとはどれくらいのサイズだったんだよ?」 疑問を口にせずにはいられない弥一。 「……測りたくなかったから、知らない。それに知ってても言いたくない」 乙女心に顔を赤らめながら、フミ子はまた口を尖らせた。 「ねえ、それで、どうするの。ヤイっちゃん。ご飯を先にする? それと もおフロがいい? 今日なら、一緒に入ってあげてもいいよ」 フミ子の提案に、弥一は少しだけ思案したふりをして、 「……風呂がいいかな……」 本能に忠実な解答を導き出していた。 364 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/11/04(金) 23 55 46.63 ID RWCueB15 Be 「……まだ、か」 髭剃りと洗髪まで済ませた弥一は、焦っているのを悟られまいと繕いな がらも、遠慮がちに催促をフミ子に飛ばしていた。 いつもならば、風呂は別々である。一緒に入れるほど湯船は大きくはな いし、第一、入れたとしても湯が全てこぼれてしまうのがオチだから、そ んな恥ずかしい思いをするのもさせるのも、お互いが望むところではなか った。しかし、今は違う。 「お待たせね、ヤイっちゃん」 引き戸を滑らせて浴室に入ってきたフミ子はバスタオル一枚を胸元に寄 せた両腕から下に垂らすばかりの姿であった。 思わず、弥一は瞠目し、ごくん、と喉を鳴らしてしまう。その様子を見 て取ると、途端にフミ子は上機嫌になる。 「えへへ、どう。ヤイっちゃん、私ってセクシーかな?」 軽く身を左右に揺すって、フミ子はアピールする。 「ん……その、まあ、そうだよな」 どぎまぎしてうまく言葉が紡げない弥一は、心拍数を上げるより他にす ることがなかった。 「えへへ、ありがと。じゃ、一緒に入るね」 2ピースのショートケーキを小箱に詰めるような格好でするりと湯船に 身を沈めたフミ子は、とろんとした表情で眺め上げるように弥一に笑みか けた。 「ねえ、ヤイっちゃん。私、さっきのやつ、嬉しかったなあ」 「ん、なんだよさっきのって」 自分の視線を悟られまいとわざと遠い目をしながら弥一も応える。 「あれよ、『悪いけど、俺には惚れて惚れぬいた女がいるんだ』ってやつ」 少しだけ表現が誇張されているが、要旨は変わってはいない。思わず、 弥一も照れくささに横を向いてしまった。 「ああ、いつもは素っ気ないくらいに穏やかなこの人も、本当は私のこと 強く想っててくれたんだなあって実感したら、急に胸が苦しくなってきち ゃったのよ」 そして、フミ子は夫の胸板に顔を寄せると、 「好きよ、もう、私の事ぐちゃぐちゃにしちゃっていいから、この身体を もう、思う存分、好きにしてよ!」 顔を正面に向け直した弥一に目がけて濃厚なキスをひとつお見舞いして から、 「……ねえ、今夜は疲れたからゆっくりと寝ようよ、なんてつれないこと 言わないわよね」 応えて、こっくりと首を縦にする弥一。 唇から伝わるひとすじの唾液を呑みこんだフミ子は、女としての性を包 み隠す事無しに弥一に抱きついた。 365 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/11/04(金) 23 56 16.37 ID RWCueB15 Be 風呂の中でのひとしきりの抱擁を終えた二人は、 「食事はどうしよう……?」 「んなもん、後だ、後」 お姫様だっこで軽量化した妻を抱きあげながら、弥一はまだ乾ききって いない身体のままで寝室へと歩をすすめていく。 バスタオル一枚に包まれたフミ子からは甘い匂いが漂い、上気した肌は じっとりと湿り、光灯に照らされて白く輝いていた。 どさり、とベッドの上にフミ子の身体を横たえると、弥一はその上にの しかかる。 「あはん、ヤイっちゃんったら、目が怖いよ」 怯えたフリを装いながらも、フミ子も燃えていた。 無言のままで、弥一はフミ子の引き締まった腰に手を這わせた。 「んっ、やん……くすぐったいよ」 フミ子は言いつつも、弥一の手を自分の秘所へと誘導する。 じんわりと熱い、フミ子のその昂りを感じた弥一は脈動する鉄塊を一気 にその繁みへと突き立てた。 「ひ……あんっ」 いつもとは違う感覚がフミ子の全身を走りぬけた。かつてないほどの快 感に身を捩じらせると、結合した箇所には、さらなる電撃が迸る。 「う……おおぅ!」 弥一も吠えた。眼前に獣のようによつん這いになって快感に蕩けるフミ 子を名乗る美女は、はたして幻のものであるのか、しかし、そんなものを 考える余裕などは彼には無かった。 「私が、上に……なってもいいよね」 フミ子の言葉に弥一はこっくりと頷く。最初期に、挑戦したが、あまり の重圧に断念した体位であった、が、今なら話は別である。ゆっくりと結 合を解くと、妻を腹上へと据え直す。軽々と、事が運ぶことに溜め息さえ 漏らしてしまう。 「さ、おいで」 弥一のそそり立つ孤塔に跨ったフミ子は、波間に揺れるように、ゆっく りとその身を上下させた。 「ああ……素敵」 両手で口元から感激がこぼれてしまうのを押さえながら、フミ子は快楽 に身を委ねた。 366 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/11/04(金) 23 56 45.54 ID RWCueB15 Be フミ子が身体を揺らすたびに、弾力ある胸はしたたかに揺れた。フミ子 は本来は、肥満している割に胸はつつましやかであったのだが、腋や上腹 部の脂肪が消失したことにより、相対的に胸は大型化し、そこに加えて1 カップ分、トップバストに2.5センチの増量を受けたことでDカップに までなっていたのである。弥一も、これには手を伸ばさない法はない。 「い……や、いたずらぁ……駄目」 下から突き上げられるのと同時に乳房を弄ばれ、フミ子の息も絶え絶え となった。 はあはあ、と息も荒い弥一であったが、まだまだ欲求は冷めるところを 知らなかった。上の体位を下に変え、さらには身体の前後を入れ替える格 好で弓の弦のようにフミ子を引き絞ってみたり、と。絶頂を四度も五度も 迎えながら、夜は激しく営まれていった。 ようやく、その激しい行為にも一応の収まりがあったところで、 「凄かった……ヤイっちゃんって、本当はこんなこともできたんだね」 と、フミ子は弥一の胸に顔を近付け、瞳に荒んだ閃きをたたえつつ、唇 をきゅっと噛みしめる。 「ねえ、それならどうして今まで一度もこんなことしてくれなかったの」 弥一は思わず閉口する。 「ねえ、今まで私としてきたことって苦痛だった? 優しくしてくれてた のは単なる慰めだった? それなら、どうして私のことを選んだの……」 フミ子は訥々と心の内の澱を吐き出していた。 姿が変われば激しく愛されるというのは、やはり女としては辛いものが あるのだ。 「じゃあ、なんだ。お前は八十の婆さんになっても俺に激しく愛されたい っていうのかよ?」 すると、フミ子はそうだ、と首を縦にする。はあ、と弥一も溜め息を混 じらせながら、 「いやいや、そうしたら俺も八十の爺さんだよ。無理だって、あんまり激 しくしようもんなら動悸息切れ、腰痛に高血圧、入れ歯も外れるおまけつ きだよっ」 フミ子はぽかん、と口を開けて呆気にとられる。 「肉体的に結び付ける時なんて、本当は短いもんだぜ。長くて人生の三分 の一。それだってその時に応じてどんどん変化していくもんなんだから」 「でも、私はいつだって一番に愛して貰いたいし、ヤイっちゃんの視線を 釘付けにしていたいのっ」 甘えて顔をすり寄せるフミ子の肩を、弥一は軽く抱きとめながら、 「まあ、その気持ちは嬉しいよな。俺のこと大事に思ってくれてるのは幸 せなことだし、そのために努力してくれたってのも、尊いことだと思うよ」 考えながら喋ることは困難だが、男にはそれでもやらなきゃならない時 が必ず来るものだ。 367 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/11/04(金) 23 57 19.86 ID RWCueB15 Be 「性欲と愛情は別もんだよ。それくらいのことはわかってくれよな」 言いつつ、弥一はフミ子の首筋から頬まで舌を這わせて鼻息を吹きかけ る。と、これが功を奏した。 「ん……わかる、ってかなんだかわかったほうがトクな気がしてきた」 もしも、この台詞が先ほどの「惚れて添い遂げたうんぬん」というのが ないままに語られていたものだったら、ただの節操無しと罵られて、最悪 手近な電気スタンドかなにかでぶんなぐられてバッドエンドもやむなしで あったろう。そのあたりの手管が男女の中には必要なのだ。 「だろう」 にんまりと、弥一。まんまと煙に巻いた格好であった。 「さ、そうとわかったらさ、さ、続きだよ続き。俺、実は女医さんとかに も興味あるんだけど、今度お願いできないかな?」 「ん、いいわよ。女教師とか、女囚とか、若奥さんと米屋とか、いろいろ 楽しもうよね。なにしろ月末限定なんだから……」 と、なんとか険悪な空気も未然に回避したところで、その後のフミ子の ことであったのだが、彼女はそれから約一年後にこの制度から脱会するこ とになっていた。 と、いうのも彼女自身が20キロのダイエットに成功し、さらには待望 の長子受胎とあいなったからなのだ。 家庭内はさらに円満になり、たまには喧嘩をしつつも、お互いを信頼し 合い、ひとつづつ、弥一とフミ子は成長していくだろう。 夫婦の間には本当に悩みの種は尽きないものであるけれど、だけど、そ れらを乗り越えていくことで、より実りのある人生が全うされるものでは ないだろうか。 さてもさても、それは本来、こんな拙筆に語りつくせる題目ではないの だろうけれど。 おしまい 368 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/11/05(土) 00 04 16.86 ID RWCueB15 Be と、こんな感じで最後は端折ってしまいましたが、これで完結です。 いつも一気に投稿するので気が楽なんですが、分割するとなると本 当に気が急く感があって大変なんだな、と痛感しました。 また、面白そうな題材があったら、焦らずに煮詰めて、ご提供させ ていただけたらと思っています。 末筆ながら、この作品のネタをふっていただいた「81」の方に感 謝しつつ、ご家庭の円満を祈念させていただいて、このあたりで失礼 させていただきます。ありがとうございました。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/192.html
295 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/14(金) 22 59 39.13 ID aAizlTWZ Be 【おばあちゃんの日】 「こら!危ないじゃないか!」 声変わりは済んでいるが、まだ若干の幼さが残る声が店内に響いた。 事の張本人である子供達は、子供なりに危険を察知したらしく、いつのまにか遁走してしまった中、麻由美をおそるおそる声をした方向へ視線を向ける。 青年と少年の入り交じった顔。麻由美と同い年か若干上…せいぜい二十歳といったところか。 と同時に、今の自分がこの青年に抱きかかえられる様にして支えられていることに気づく。 「あ、大丈夫ですか?突然だったからあまく巧く支えられなかったかもしれないけど…」 申し訳なさそうな顔をする青年。 人気アイドルなどとは比べるまではないにしても、それほど悪くない顔だち。 中の上か上の下か。 少なくとも麻由美の好みの範疇に入る部分はかなりある。 そもそも彼氏どころか、男友達といえる存在すらいない麻由美にとって身内以外の異性に抱きかかえられるということ自体、初めての体験といってもいい。 危うく今の自分の身体が、本来の女子高生ではなく、80前後の老婆であることを忘れそうになるが、着物姿そして袖から伸びる手の節クレと皺に、際どいところで今の自分を再確認する。 「え、あ、大丈夫ですよ。ちょっとビックリしたけど、支えてもらったので転ばずにすみましたし。けど、これぐらいで転びそうになるなんて歳はとりたくないですねえ。」 どうにか如何にも年寄りらしく聞こえる返答を返す麻由美。 「ったく…店の中を走り回るなんて…」 忌々しげに店の外に視線を向ける青年。 「あ、大丈夫かも知れないけど、ちょっと休んだ方がいいですよ。脚とか腰、捻っていると危ないから。」 青年が視線を向けた先には、椅子の列。 先ほどのラッピングあるいは在庫検索などでの待ち時間で座ってもらう為のものだ。 言われてみれば、まだ不慣れなこの身体。 今は大丈夫だと思っても、後から何が起こるか分からない。 麻由美はこの青年の好意にもう少し甘えてみることにした。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/271.html
その9スレで、「下手くそ」って書き込みをしている人は荒らしでしょうかね? -- (名無しさん) 2017-02-27 05 23 11
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/94.html
投稿日 2010/03/28(日) 中身は一緒。 私は榊。榊(見せられないよ!)という。 今は下校中だが、今日学校で(私は高校生だ)驚くべきことがあった。 私には、ちよちゃんという友人がいる。彼女は十歳で高校に編入された天才少女なのだが、 そのちよちゃんと私の身体が入れ替わったのだ。 原因は一緒に階段を転げ落ちたことのようだが、同じく友人の滝野智にもう一度 突き落とされても、元には戻らなかった。 仕方がないので、今日はお開きになったのだが……私は少し、今の状況に期待していた。 自分とはまるで違う、可愛らしい少女になっている。見える世界がまるで違う。 これなら、今までは諦めていた可愛い格好もできるかもしれない。 ついつい跳ねるような足取りになって、私は歩いていた。すると、 「あ」 一匹の猫がいた。 (かみねこ!) その名の通り(私が名付けた)、私が撫でようとするといつも手に噛みついてくる猫だ。だが、私は諦めない。 (でも……) 今はちよちゃんの身体だ。もし噛まれたら…… (いや、でも) むしろ、ちよちゃんの身体なら噛まれないのでは? 私が迷っていると、寝転がっていたかみねこが徐に身体を起こした。 !? かみねこから私のほうに近づいてきた! (よ、よし、今なら!) にゃーんとすり寄ってくるかみねこ。今だ! がぶっ! ………… (なんで!?) 違いのわかる猫。 はぁ、大変なことになったなあ。今日、なんと私――美浜ちよと、友達の榊さんの 身体が入れ替わってしまいました。元に戻る方法はわかりません。 (うーん……) どうしたらいいんだろう。とりあえず今は榊さんちに向かっているけど、頭は今日のことで いっぱいです。すると、 (あ、ねこだ!) 一匹の猫がいました。 猫は、私の姿を目撃するなり臨戦態勢。身を低くしてふしゃーと声をあげてきます。 「大丈夫、大丈夫だよ」 そこで私はしゃがみこんで、手のひらを出して話しかけました。怖くない。怖くないよ。 にゃーん。私の気持ちが伝わったようです。猫は威嚇をやめて寄ってくると、 私の手を舐めてくれました。えへへ、可愛いなあ。 次の日。 はあ、と私はため息をついた。視線の先には、包帯が巻かれた手がある。 結局、咬まれてしまった。はあ。 「あれ、榊さんどうしたんですか?その手」 「ち、ちよちゃん……ごめん。実は……」 私は、ちよちゃんの大事な身体を傷つけてしまったことへの罪悪感に襲われながら、 昨日の説明をした。 「ええ!?ねこに咬まれたんですか!」 「うん、ごめんなさい……」 「いいんですよ、榊さんが悪いんじゃないんですから。榊さんが会ったねこさんは、 機嫌が悪かったんですかねえ」 私が?ちよちゃんが腕を組んで頭をひねっている。 「私も昨日、下校中ねこに会いましたけど、手をなめてくれたのに――あれ、榊さんどうしたんですか?」 「なんで……」 体育で。 わーわーという歓声が聞こえる。今、私たちのクラスの女子は徒競走の最中だ。 走っているのは私……の姿をしたちよちゃんだ。 あ、また一人抜いた。スタートで失敗したものの、ちよちゃんはどんどんこぼう抜き。 ゴール直前で最後の一人を追い越すと、一位のままゴールをした。周りの歓声が、 一段と大きくなる。 「きゃー!榊さんかっこいー!」 事情を知らない生徒たちは当然といった雰囲気のようだが、事情を知っている わずかな友人たちは少し驚いていた。 「へー、流石榊の身体だねえ。あのちよちゃんが一位とは」 「いや、ちよちゃんががんばったからだ」 私はそう言い残し、肩で息をしているちよちゃんの元へと向かった。 「良かったね、ちよちゃん」 「はい!榊さんのおかげです!」 こちらが声をかけると、まだ苦しいだろうにばっと顔をあげて、ちよちゃんは 笑顔を見せてくれた。 身体の持ち主である私すら見たことがない、満面の笑みだ。 「可愛い……」 「はい?」 私の身体なのに。私の、身体なのに。