約 717,953 件
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/92.html
投稿日 2010/03/08(月) それが起きた原因は、間違いなく、私の言葉だろう。 だから、あれは自業自得なのかもしれない。しかし、あんなことになるなんて、 それを口にした当時の私はもとより、他の誰にも予想はつかなかったはずだし、 そもそも自業自得と言うには、理不尽すぎる。 その言葉とは―― 「あんなの、気持ち悪いだけでしょ」 というものなのだが、これだけでは、当事者以外にはなんのことか分からないのは、 仕方のないことだ。TPOをわきまえた結果である。しかし、 「それは咲ちゃんが、気持ちいいセックスをしたことがないからだよ!」 ……馬鹿じゃないだろうか、この子は。人が、わざと言わないようにした単語を、 べらべらと。 「咲ちゃんが今までどんな経験してきたのか知らないけど、わたしと健ちゃんの 愛の営みに比べたらままごとよ!セックスっていうのはねぇ――」 ああ、馬鹿だ。間違いなく馬鹿。本当に馬鹿。常々感じていたけれど、やっぱり 馬鹿だった。頭と背の養分を、胸に取られているという噂は伊達じゃない。 科学的な根拠はなにもないのに、私もついうっかり信じかけた話だったが、 今こそ確信できる。 その馬鹿に、私は冷静に対処した。悲しいかな、彼女の反応は予想の範疇だったからだ。 未だ熱弁をふるう篤子に向かって、私はきっぱりと告げる。 「ここ、教室よ」 「それが――え?あ、あう……」 途端に身を縮める篤子。胸は出っ張ったままだが。 そう、私たちがいるのは、クラスメイトひしめく、休み時間の教室である。 幸い教師は不在だが、いつ来てもおかしくない時間だ。 その中で、篤子は声高に先ほどの台詞を叫び、あまつさえ机を強く叩いて身を乗り出した ものだから、教室中の視線を一身に集めた。 当然、話し相手の私にも視線は注がれているが――まあ、どうでもいい。もう慣れた。 とにもかくにも、これが全ての始まりだった。 「だからぁ、セックスっていうのはねぇ――」 再び休み時間――次の授業が終われば、昼休みだ。 篤子は、口に手を当てて、声をひそめているつもりらしいが――意味がない。 彼女の声はよく通る。 また、こちらをちらちらと覗いてくるクラスメイトらの視線が、気にならない わけではないが、彼らを含め、周りの全てを無視して私は空を見ていた。 どんよりとした雲は、朝から降り出しそうで、なかなか降らない。帰りまでもてばいいけど。 「咲ちゃんって、西野君も斉藤君も向こうから告白してきて、咲ちゃんに自分は 必要ないんだって向こうから離れていったんでしょ?いくらもてるからって、 自分も愛する努力をしなきゃ」 「なんなら、健ちゃんに誰かいい人いないか聞いてみようか?咲ちゃんって どんな男の子が好みなんだっけ?」 昼休み――もはや誰も気にしない。 私は取り出した弁当のおかずに一通り口を付けて、その出来に満足していた。 毎朝お弁当を作るのは面倒だが、もはや習慣だから仕方ない。まあ、大体は昨夜の 夕食の残りだ。 それに一番の理由は、離婚して、幼い私を女の細腕ひとつで育て上げた母の負担を 軽くするためだし。 その母も、今頃私が作った弁当を食べている頃だろうか。 「健ちゃんと同じバスケ部ならねー、山田君とかわたしの一番おすすめだね!あとはー」 「そうだ、咲ちゃんにも彼氏できたら、みんなでどっか出かけようよ。泊まり込みでさ」 今日、最後の授業――数学だ。教師も生徒も、みんな集中している。たった一人を除いて。 中間テストはもうすぐそこだ。高二最初のテストに、皆張り切っているのだろう。たった一人を除いて。 私語など誰もしない。たった一人を除いて。 「それでさあ、夜はみんなで……やだ、恥ずかしい。でも、ちょっとらん――」 「先生、黒板の記述が間違っています」 「あ、ああ、すまんな、早川」 早川。私だ。 「あーん、でもぉ、健ちゃん以外に裸見られるなんて」 「とにかく、咲ちゃんは早く彼氏作って、愛のあるセックスを経験すべきだよ!」 「じゃ、私部活あるから」 放課後――やっと解放される。 私は、水泳部員だ。屋外に存在するプールにはまだ入れないが、もうすぐ解禁。 それまでは、体力作りがメインである。 「え?あ、ちょっと待ってよ。部活終わったらうち来て。今日バイトないんでしょ」 「なんで」 とっさに出た言葉だった――なんで。疑問は後からついてくる。 なんで篤子の家に? 帰宅部の篤子は、わざわざ彼氏の健児が部活を終えるのを待ってから、一緒に帰る。 その後何をしているのかは知らないが(想像はつくが)、わざわざ彼氏との時間を 割くような用事? 「うち来たら教えてあげるからさ。ね?」 十中八九、先ほどまで続いていた(彼女の中だけで)話題についてだろう。断る方が 懸命だ。しかし、 「ね?」 なんで、手を合わせて片目を閉じるなんて可愛いことができるかな。実際可愛いし。 「……わかったわ」 ため息をつく。仕方ない。私が彼女のこういう頼みを断れないことも、もう慣れた。 なんで、断れないのか。彼女と私が、幼なじみだからとしか、言いようがない。 篤子とその彼氏、健児が付き合い始めて、二ヶ月ほどになる。 もっとも、付き合い始めたのは二ヶ月前だが、それまでに紆余曲折があった――一年ほど。 ほとんど恋愛漫画のようなイベントをこなし、二人は結ばれた。彼女らをくっつけるため、 私も少なからず尽力したので、当然自分のことのように喜んだが――こちらの 世話まで頼んだ覚えはない。 毎日、篤子からのろけを聞かされるのも面倒だというのに。 だいたい、今のところ私は、恋人など必要としていない。部活やアルバイトで手一杯だ。 『咲は、好きじゃないんだろ』 突如脳裏に浮かんだ言葉に、走っている足がもつれそうになる。今日の部活動は、 結局雨は降らなかったので、学校横の土手をマラソンだ。 『いつも、俺のことなんて二の次三の次じゃないか。結局、俺の片思いだったって、 思い知らされたよ』 それは、西野だか斉藤だか、もはや顔もよく思い出せない相手が、別れ際に 吐いた言葉だった――勝手なことを…… 私は、強く歯を食いしばると、自らの余力も気にせず、振り払うようにスピードをあげた。 篤子の家は裕福だ。彼女自身は、問われても否定するだろうが。 広い庭に一戸建て。家屋は、地下一階から地上三階まである。だが流石に、 家政婦などはいないらしい。 部活を終えて、気が乗らないまま自転車を押して歩き続け、本当なら10分で着く 道のりに30分かけた。 そして私は今、篤子の家――松岡邸の門前にいる。 さて、どうしたものか。もちろん、チャイムを鳴らして知らせるべきだが、 このまま帰るという選択肢もある。今日がアルバイトや、母が早く帰ってくる日なら、 即断できるのだが。 少しの間悩み、意を決して―― 「咲ちゃんおそーい」 「え、ああ。うん」 見計らったように出てきた篤子に連れられて、私は間違った選択肢の方へ歩みを進めた。 篤子が私を案内したのは、篤子の部屋ではなかった。地下だ。 「なにする気?」 意図が分からないので、聞いたのだが、篤子ははぐらかすだけだった。 そして、地下の一室に私は招かれた。 暗闇に包まれたその部屋は、とても不気味だ。いったいここで何をする気だろう。 篤子は『楽しいこと』だと言っていたが。 室内に入るよう促され、ついに足を踏み入れる。篤子が先陣を切っているため、 変なことはないと思いたい。そんな中、篤子は気楽に言ってきた。 「実はね、咲ちゃん」 「なに?」 「わたし、魔法が使えるようになったの」 「……は?」 「今から、見せてあげるね」 その言葉とともに、こちらが訝しむ間もなく、床が光り出す。その光は、幾何学的な 模様を描いていた。 光が、次第に強くなり――私の意識すら、真っ白に染め上げた。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/268.html
新スレをpinkなんでもに立ててみました。意見ある方も一旦こちらにお願いします。 http //mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1484750206/l50 -- (名無しさん) 2017-01-18 23 40 57
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/35.html
投稿日:2009/02/20(金) 「………… !!」 下の階から聞こえてきた大声に、ジュリアンはすくみあがった。 ここ最近は比較的平和だったのに何事だろう。 彼は端正な、だが線の細い顔に不安を浮かべ、階段を下りていった。 「――冗談じゃありません !!」 食堂のドアを通して女の金切り声がびりびりと響いてくる。 さすがに開けるのはためらわれ、ジュリアンは扉の前で立ち止まった。 部屋の外であっても会話は充分聞こえてくる。 「会った事もない人と、結婚などできますか !!」 「――しかしな、エリザベート……」 恐れをなしてか、父の声も小さくなっていた。 「相手は公爵家のご長男、王家の血も引いていらっしゃる。 言うまでもないが、うちの家などよりはるかに格上なのだよ」 「それが何だと言うんですか !!」 「しかも聡明でかなりの美男子、宮廷での評判も高い。 となれば、喜びこそすれお断りする理由がないのだ」 「私には輿入れする理由などありません !! ちゃんと自分のお相手は自分で探します !!」 父は困り果てているようだが、引き下がりはしない。 「エリザベート……お前は賢いし、父の目から見ても、その、 充分に可愛い顔をしている。 しかし、いまだ浮いた話一つないではないか」 父の指摘に、エリザベートのキンキン声が鳴り響く。 「だからと言って、知らない男性に嫁げと言われれば 誰だってうなずくはずがありません !! お父様は、私を政略結婚の道具にするつもりですか !!」 「い、いや……そうではないのだが……」 「もういいです !! とにかくお断りしてください !!」 バン !! 蝶つがいが吹き飛びそうな勢いでドアが開けられ、 ジュリアンは避けようと尻餅をついてしまった。 逃げる暇もなく、エリザベートと目が合ってしまう。 「――ジュリアン、聞いていたの」 「う、うん……」 静かな姉の迫力に押され、座り込んだままうなずく少年。 エリザベートはそんな弟を立たせてやると、 「心配しないで。私はお嫁になんて行かないから」 と優しく抱きついてきた。 姉弟共に金髪碧眼、典型的な貴族の子女である。 「私の好きなのはジュリアン、あなただけだもの。 これからもずっと一緒よ。ジュリアン。」 「う……うん……」 父と同じ、困り果てた顔で少年はうなずいた。 部屋に戻ると、既にベッドが整えられている。 悩んだ様子のジュリアンを心配したのか、 アンが果実のジュースを作って持ってきてくれた。 「……ありがとう、アン」 まだ幼さの残る小さなメイドが、短い黒髪の頭を下げる。 今年入ったばかりの新米でジュリアンより2、3歳年下のはずだ。 彼とて背の高い方ではないが、小さな体でパタパタ忙しく動き回る アンを見ていると、何となく微笑ましく思ってしまう。 「しかし姉ちゃんにも困ったもんだよ……」 「そ、そうなんですか?」 他に言う相手もいないため、ついアンにこぼしてしまう。 「恋人もいなくて、僕にばかり構ってくるんだもん。 やれ乗馬だの、やれ買い物だの、結構疲れるんだよ? そのたびにこっちは好き勝手な姉ちゃんに付き合わされてさ」 「はあ……」 「今回の話だって、相手は公爵家なんだから大したもんじゃないか。 うちみたいな端くれ貴族にはもったいないくらいだよ」 聞いているアンも返答に困った顔をしていた。 嫌がるエリザベートだったが、縁談の話は急速にまとまっていった。 何でも舞踏会で一目惚れしたとかで、 向こうの公子がどうしてもと強く言ってきているのだ。 伯爵家でも反対の声をあげるのは本人だけで味方はいない。 一月ほどして、とうとうエリザベートの輿入れが本決まりになった。 「あ~ん、ジュリアン~っ !!」 弟を抱きしめて涙を流すエリザベート。 「……ま、まあ仕方ないよ。結婚しても姉ちゃんは姉ちゃんでしょ? またいつでも戻っておいでよ」 心にもない慰めは、もちろん姉を感動させはしなかった。 「はあ……やっぱりあなたも、私を厄介払いしたいのね。 私はこんなにあなたを愛しているのに……」 「――むっ !? ん……む……」 突然唇を奪われ、ジュリアンは目を白黒させた。 いつもより力強く濃厚なキスに呼吸が苦しくなる。 たっぷり1分ほど唇を貪られ、やっと彼は解放された。 「……見てなさい。絶対何とかしてやるんだから。 私がこのまま終わると思ったら大間違いよっ !!」 拳を握り締める姉にかける言葉は、思いつかなかった。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ――キラリ……。 まさしく、そんな音が聞こえてきそうなきらめきだった。 日の光に照らされた銀の糸が幾筋も宙に舞い、 見る者は妖精の機織りではないかと錯覚してしまうほどだ。 「――ふむ……」 輝きの主、美しい銀髪の少女が言った。 「お話はよくわかった。わたくしの力ならば容易い事だが、 貴女は本当にそれでいいのか?」 幼い鈴の音の声に似つかわしくない、大人びた口調である。 王家の威厳を目の当たりにし、エリザベートは戦慄した。 「……はい、構いません。 ぜひ、王女様のお力を貸して頂きたいと――」 「そうか、ならばやってみせよう」 心なしか少女は喜んでいるようだった。 秘められた魔術の力を久々に発揮できるのだ。 なぜこの美しい王家の娘が、怪しげな魔導などに通じているのか。 エリザベートには知る由もなかったが、今はこの王女を頼るしかない。 「――では、その者をここへ」 既に連れてきている。娘は王女を前にしてガチガチに固まっていた。 事情も知らず連れてこられたのだが、彼女の知った事ではない。 何も知らない娘を、エリザベートはためらいもなく王女に差し出した。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 日がのぼり、傾き、沈み、そしてまたのぼる。 気の遠くなる昔から続いている、一日の流れだった。 そして今は――日がのぼったところだ。また平穏で退屈な一日が始まる。 そろそろ起きないといけないな――。 ジュリアンはまだ大部分寝ている頭で、ぼんやりとそう考えた。 ――くちゅ……ぴちゃ、くちゅ……。 何だろう、とても気持ちがいい。 温かくて柔らかい何かが口の中を優しくなで回している気がする。 くちゅくちゅという音と共に甘い液体が彼の中に入ってきて、 それを飲み込むとジュリアンの乾いた喉が歓喜の声をあげた。 「ん……?」 薄目を開けるといつもの天井ではなく、 大きな影が視界を覆っているのに気づいた。 あまりに近すぎてわからなかったが、それはいつも見慣れた顔だった。 (ああ、アンか……) 可愛らしい黒髪のメイドの少女が彼に覆いかぶさり、 唇を塞ぎ熱い舌をジュリアンの口中で蠢かせている。 先ほど飲み込んだ液体は、どうやらこの少女の唾液らしい。 (ああ、アン、とっても温かい――) ……。 …………。 ………………。 「――ぶはあっ !!?」 あまりにも唐突に、ジュリアンが跳ね起きた。 その勢いでアンは吹き飛ばされ、床に尻餅をついてしまう。 「……痛~い……」 「な、ななな、何してるんだよアン !!」 白い顔をこの上なく真っ赤に染めてジュリアンが叫ぶ。 「ああ、起きたのね。 キスくらいで慌てちゃって、ホントに可愛いんだから」 少女はニヤリと笑い、主人の少年に言った。 いつもの遠慮がちで内気な様子はどこにもなく、 腰に手を当てて偉そうにこちらを見上げていた。 「――だから何で、こんな事するんだよっ !!」 相手を指す手がブルブル震え、真っ直ぐに向かない。 アンはそんなジュリアンを鼻で笑ったようだった。 「だって、今の私はあんたのメイドでしょ? 朝、起こしてあげるのは当たり前の事じゃない」 「それで何でキスなんだよ !?」 「……おかしいわねえ。昔ならとにかく、ここ最近は キスくらいで文句言われた覚えがないんだけど……。 あんた、ひょっとしてまだ寝ぼけてる?」 「―――― !?」 年下のメイドの失礼すぎる物言いに返す言葉も思いつかず、 ジュリアンは真っ赤になってアンをにらみつけた。 「まあいいわ、とりあえず顔洗ってきなさい。朝食の時間よ」 伯爵家の朝食には家族全員が揃う。 この日も父と母、それにジュリアンがテーブルに着いた。 今までは姉のエリザベートも同席していたのだが、 先日公爵家に嫁いでしまったため今は三人しかいない。 「――はい、あ~ん」 「…………」 こちらに向けられるスプーンにジュリアンが言った。 「あのさあ……アン……」 「何よ? 早く食べなさいよ」 「何で、僕が、君に、ご飯を、食べさせて、もらうのかな?」 「そんなのいつもの事でしょ。ほら口開けて」 当然のように言い放つ小柄なメイド。 もちろん彼はアンに食事を食べさせてもらった覚えは絶対ない。 いつもは嫌がる彼に姉のエリザベートが――。 「……わかったわかった。やり方が気に入らないのよね?」 そう言い、アンはスプーンを自分の口に運び咀嚼すると、 ジュリアンの唇に自らのそれを重ねた。 「――――っ !?」 口移しで入ってくる柔らかい肉の感触に、彼はアンを突き飛ばす。 「――やめろっ !!」 再び尻餅をついて、アンはこちらを見上げてきた。 目は細くなり、静かな怒りを込めてジュリアンをにらみつけてくる。 「……何するのよ、ジュリアン」 「何って、おかしいだろ、アン !? 今日は一体どうしたのさ、いつものアンじゃない !! おかしいよ、全部おかしい !! 全部だ !!」 彼は呼吸も忘れてまくし立てた。 だがアンはまた唇の端を吊り上げ、笑顔を彼に返す。 「うーん、やっぱりわからないか。まあ当然よね」 「――何がだよ !? 一体何なんだよ !?」 「それじゃあ、お父様に説明してもらいますか」 「父さんに……?」 ずっと二人の様子を見ていた両親に、アンは視線を向けた。 伯爵は先日と全く同じ、困った表情を浮かべている。 「あー……それがな、ジュリアン」 「はい」 「実は、お前に許婚ができた」 「……はい?」 唐突な重大発言に目が点になる。 ジュリアンは父親に食ってかかった。 「――許婚 !? そんな話聞いてませんよ !!」 「うむ、ついこの間決まったばかりだからな」 怒鳴り続ける息子に対し、両親はあくまで平静を装っている。 「エリザベートも望まぬ相手と結婚させられたのだ。 お前も伯爵家の跡取り、覚悟していなかった訳でもあるまい」 「……確かにそうですが……。 で、誰なんです、その許婚とやらは」 先日パーティで仲良く話した子爵令嬢だろうか。 それとも従姉妹で歳の近いイネスだろうか。 「それがな、お前の隣にいる」 「え……?」 とっさに反応できず、何気なく横を見るジュリアン。 そこには小柄な黒髪のメイドがニヤニヤと彼を見つめている。 「という訳で、今はまだ許婚 兼 専属メイドだけど、 何年かしたら私があんたの奥さんになるから。 いやあ、あんたも国一番の幸せ者よねえ」 「………………」 絶句するジュリアンに、穏やかな伯爵の声が聞こえた。 「そういう訳だから、朝食を続けようか」 「何でだぁあああぁあっ !!!!」 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 猛烈なジュリアンの主張により、食事は自分の手でとる事ができた。 もちろん給仕はエプロン姿の黒髪の少女だったが。 「あんた、まだ気づかないの?」 「――何がだよ」 カップにお茶を注いでくれるメイドに聞き返す。 それを受けて伯爵が続けた。 「それがな、実はそれエリザベートなのだ。実の姉と結ばれるのは 嫌かもしれんが、体はアンに間違いないから安心してくれ」 「――な、ん、だって !?」 血圧の急激な上昇でジュリアンは気が遠くなった。 「……それでね、王女様に体を入れ替えてもらったのよ。 だから今は私がアンで、アンが私ってわけ」 「…………」 説明を聞いて、少年は頭を抱えていた。 王女が魔導に通じているというのは公然の秘密だったが、 まさかこんな事が現実に起きようとは思ってもみなかった。 「――これでうちは公爵家に繋がりができるし、 私は晴れてあんたと結婚できるし、万々歳ね」 「…………」 頭痛がする。 いつからだっただろう。 幼い頃、浴場で姉に全身を舐め回されたときだったか。 好きだった子の目の前で姉にディープキスをされたときか。 夜這いされ、全裸の姉に一晩中抱き締められたときだろうか。 「……う、うう――」 生まれた時から、姉の好意は感じていた。 その感情が姉弟の関係を超えたものだとも、薄々気づいていた。 だが名ばかりとはいえ伯爵家、やがて姉はどこかに嫁ぎ、 自分も適当な貴族の令嬢を妻に迎えるはずだった。 「――はあ……」 結局、出るのはため息だけだ。 「てことは、アンが姉ちゃんの代わりに嫁入りしたのか……」 婚礼を前に泣き喚くエリザベートの姿が蘇る。 『――ち、違います !! あたし、結婚なんて…… !!』 「アンに可哀想だと思わないの? 姉ちゃん」 「別に? 絶世の美女の私の体で公爵公子のお嫁さんになって、 平民の娘には身に余る光栄じゃない」 「身勝手とは思わないの !?」 「――その身勝手で、私は結婚させられたのよ?」 「…………!」 アンが黒い瞳でジュリアンを見据えて言う。 「私は体を公爵家に差し出す。あんたは妻の座を私に差し出す。 ほら、姉弟で平等じゃない。まさか人には結婚しろって 言っといて、自分だけ嫌とは言わないわよね?」 「…………」 長い会話の末明らかになったのは、 もう自分に逆らう余地は残されていないという事だった。 両親も承知している以上、話は決まったも同然だ。 姉の心が入ったこの年下のメイドを、許婚に迎えるしかない。 やがては正式に妻にし、ベッドで交わり、何人も子を作るのだろう。 だが彼の中では冷たい風が吹き続け、 長い冬が永久に終わらない事に心が凍りついていた。 「――わかったら、こっち向きなさい」 上機嫌のアンに言われ、逆らう気にもなれずそちらを見やる。 今にも触れそうな距離に、黒い瞳の年下の少女の顔があった。 「ん……」 そのまま唇と唇が触れ合い、たっぷり唾液の混ざった食物が 舌と共にジュリアンの口内に送られてくる。 ――ごくん。 今度は拒絶せず、熱い塊が喉を通過する。 「……はあ……」 少女の味は、いつもの食事よりも少しだけ酸っぱかった。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/226.html
小粒の雨がアスファルトを叩いていた。 太陽を覆い隠す分厚い雨雲を見上げていると、いっそう気が滅入りそうだ。 校舎の軒下に立ったまどかは、憂鬱な表情でカバンから携帯電話を取り出した。 アドレス帳の中から目当ての番号を探し出し、耳に当てる。 長いコール音のあと、ようやく少年の声が聞こえた。 「はいはい、哲也っす。まどか先生、試験は終わりましたか?」 「ええ、終わったわ。約束通り、私の体を返してちょうだい」 まどかは強い口調で言った。その声はまどかの声ではなく、 彼女が担当しているクラスの女生徒、木下杏奈のものだった。 声だけではない。顔や身体、立場といったまどかのあらゆる外面的要素が、 木下杏奈という女子高生のものと置き換わっていた。 この電話の相手、哲也が持ってきた怪しげな飲み物のせいで、 まどかと杏奈の身体が入れ替わってしまったのだった。 「へへへ……わかってますよ。そんなに慌てないで下さい」 哲也は下品な笑い声をあげ、すぐ学校に迎えに来る旨、まどかに告げた。 まどかは「わかった。お願い」と短く答えて電話を切った。 小さくため息をついて、己の姿を見下ろす。 紺のブレザーと茶色のプリーツスカートという女生徒の服装が視界に入った。 けばけばしい金色の髪が頬にまとわりつき、 自分の体が不真面目な少女のものになってしまったことを思い知らせる。 無理やり杏奈と身体を交換させられ、彼女の代わりに追試を受けさせられるという 悪夢のような出来事が、潔癖な女教師の心を苛んでいた。 (でも、これでようやく終わる。私の体を返してもらえる) 今のまどかにとって、それが唯一の希望だった。 杏奈の代わりにまどかが受けた試験は、先ほど全て終わった。 出来は言うまでもない。全ての科目で合格しているはずだ。 まどかは杏奈と哲也の期待に応えた。したがって、今度は哲也が約束を守る番である。 通話を終えてから十分ほどして、その哲也がまどかの前に姿を現した。 「やあ、先生。どうもお疲れ様でした」 「よっ、まどかちゃん。替え玉ありがとな」 哲也の隣にいる女が、まどかに笑いかけた。やけに露出の多い服を着た黒髪の女。 その顔は本来、まどかのものだった。まどかは憎々しげな目で女をにらみつけた。 「またそんな格好をして……何を考えてるの !? 皆が見てるじゃない!」 「別にいいじゃん。せっかくこんないいカラダしてるんだから、 学校の連中にも見せてやらなきゃもったいねーよ」 まどかの顔を持つ女は、おどけた様子で身をくねらせた。 この女は木下杏奈。まどかと身体を交換した、素行不良の女子生徒だ。 今の杏奈の格好は、昨日とほとんど変わっていない。 せいぜいショートパンツがミニスカートに変わっただけで、 やはり首筋や肩、腿をさらけ出している挑発的な服装だった。 謹厳な女教師が普段まったく見せない姿を、 下校途中の生徒たちが物珍しげに眺めている。まどかは赤面した。 「や、やめなさい! 早く私の体を返して!」 「はいはい、返してあげますとも。今から俺の家まで一緒に来て下さい」 そう言ったのは哲也だった。黒く大きな傘を差し、不敵な笑みを浮かべている。 「え、あなたの家まで? 今、ここで元に戻してくれるんじゃないの」 まどかは一刻も早く元の姿に戻りたいと訴えたが、哲也はかぶりを振った。 「いや、あの入れ替わりのジュースは俺の家に置いてきました。 せっかくだから昨日みたいに三人で飯を食って、それから元に戻ることにしませんか」 「そーだよ、まどかちゃん。慌てたっていいことないぜ。まずは飯だよ、飯」 杏奈が傘を投げ出し、まどかの頭を馴れ馴れしく撫で回す。 「わかったわ。行けばいいんでしょう、行けば」 気の乗らない提案に、まどかは嘆息してうなずいた。 何しろ、今のまどかを元に戻せるのは哲也しかいないのだ。 下手に機嫌を損ねては、元に戻るのが遅れてしまうおそれもある。 二人のペースに乗せられていることを自覚しつつも、ここは大人しく従うしかなかった。 哲也の家は、学校からほど近い場所にあるマンションにあった。 昨日と同じファミリーレストランで食事を済ませたまどかは、 哲也に招かれて彼の部屋に上がり込んだ。 とても汚い家で、あちこちに空いた酒瓶や煙草のパッケージが散らばっていた。 哲也はここで一人暮らしをしているという。 「あなた、いったいどういう生活をしているの。まだ高校生なのに、こんな……」 「そう目くじらたてないで下さいよ。健全な男子高校生の部屋じゃないですか」 哲也はへらへら笑い、まどかと杏奈をリビングのソファに座らせた。 そして冷蔵庫から、オレンジ色の液体が入ったペットボトルを取り出す。 まどかは目を見開いた。 それは、まどかと杏奈の体が入れ替わる直前に口にした液体だったからだ。 「それね。私たちの体を入れ替えたジュースは……」 「へへへ、約束は守らないとね。 さあ先生、飲んで下さい。これが欲しかったんでしょう?」 哲也に促され、まどかはグラスに注がれた液体を口に運んだ。 やはり、風変わりな味はしない。ただのオレンジジュースとしか思えなかった。 「じゃあ、あたしももらおうかな。あーあ、まどかちゃんの体ともこれでお別れか……」 横ではまどかの顔をした杏奈が、液体の入ったグラスを残念そうな表情で眺めていた。 まどかは険しい顔で杏奈を凝視し、早く飲め、早く飲めと心の中でせきたてた。 (見ていなさい。元の体に戻ったら、二度とこんなふざけた真似はさせないから) 生徒の模範たるべき自分が、これ以上赤っ恥をかかされるわけにはいかない。 本来の身体を取り戻しさえすれば、教師としてこの二人を厳しく指導し、 今まで自分に対して行った非道な行いを反省させることができる。 まどかが見守る中、杏奈はグラスのジュースを喉に流し込んでいく。 やがて全て飲み干した杏奈は、「ぷはあっ」と大きく息を吐いた。 「ふう、飲んだぜ。これでいいんだろ、まどかちゃん?」 「ええ、それでいいのよ。これで私たちは元の体に戻れる!」 まどかは大喜びしたが、期待に反して、いつまで待っても体が元に戻る気配はなかった。 入れ替わったときに経験した、あの強烈な眠気も訪れない。まどかはだんだん焦り始めた。 「ど、どういうこと? どうして元に戻らないの」 「なんでって、そりゃ当たり前ですよ、先生」 「当たり前? 一体どういうことなの」 怒気をみなぎらせるまどかに、哲也は空になったペットボトルを見せつけた。 「だって、これは入れ替わりのジュースなんかじゃないんですからね。 ただのオレンジジュースですよ」 「ひひひっ、楽しー。哲也にすっかり騙されてやんの、まどかちゃん」 「な、何ですって !?」 まどかは戦慄した。自分が騙されていたことに気づいて歯噛みした。 「二人とも、一体どういうつもり !? 木下さんの代わりに追試を受けたら 私の体を返してくれるって約束したじゃない! 約束を破る気なの?」 「いや、返すのはいいんですよ。返すのは。ただ……」 「ただ、何よ?」 まどかの疑問に答えたのは杏奈だった。 杏奈はソファに座るまどかの前に立ち、威圧的な態度でまどかに言った。 「まどかちゃんの体を返して、それでハイ終わりってわけにはいかねーなあ。 また今回みたいに時々あたしと入れ替わって、試験とか受けてほしいんだよ」 「そんなことは二度とできないわ。私は教師なのよ? 不正行為に加担するなんて許されない」 「でも、もう一回やっちまってるよな。 一回やれば、あとは何度やっても同じことじゃねーの」 「駄目よ! いい加減にしなさい、木下さん! 私の体を返して!」 「ダメだね。あたしたちの言うことを聞いてくれたら返してやるよ。 じゃないと、ずっとあたしたちは入れ替わったままだぜ? ま、あたしはそれでも構わねーけどな。まどかちゃんの体でも」 「そ、そんな……」 「先生、これを見て下さい」 青ざめるまどかに、今度は哲也が携帯電話を突きつける。 その画面に映し出された映像を見て、まどかの顔から血の気が引いた。 そこに映っているのは、他ならぬまどか自身の姿だったからだ。 「ああっ、すごい。哲也君のが、まどかをグリグリしてるの。ああんっ、気持ちいい」 画面の中の「竹本まどか」は衣類を一切身につけず、 薄汚れたソファの上で金髪の男子生徒と抱き合っていた。 浅ましい声をあげて快楽を貪るその姿は、まぎれもなくまどかのものだ。 だが、その中身はまどかではなく杏奈。まどかと肉体を交換した杏奈が、 まどかのふりをして哲也と情事に及んでいたのだった。 「な、何よこれ……どうしてこんなことしてるの。なんでこんなの撮ってるの」 「くくく……何の準備も無しに頼みごとをしても、先生は聞いてくれないでしょうからね。 どうです? この映像が学校の連中やネットにバラまかれたら大変だと思いませんか。 それが嫌だったら、先生……俺たちの言うこと、聞いてくれますね?」 「わ、私を脅す気 !? 卑怯者! 最低よ、あなたたち!」 「なんとでも言ってください。もう先生は俺たちから逃げられないんですから。 なあ、まどか? お前は生徒のためなら何だってする、 生徒思いの素晴らしい先生だよな?」 「う、うう……」 まどかの目の前が真っ暗になった。二人がその気になれば、 まどかの教師生活を終わらせるのはいとも簡単だ。 まどかは床に這いつくばって嗚咽した。もはや彼女に選択肢はなかった。 これからは、どんな内容であれ哲也と杏奈の命令には絶対に従わなくてはならない。 こうして、まどかは卑劣な生徒たちに陥れられ、服従を強要されたのだった。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「こっちに来い、まどか」 ベッドに腰かけた哲也が、犬でも呼ぶようにまどかを呼んだ。 決して哲也に逆らうことのできないまどかは、ふらふらと少年のもとに歩み寄った。 哲也はまどかの小柄な身体を抱きしめ、顔を近づけてくる。 顔を背けたが無駄だった。無理やり正面を向かされ、唇を奪われた。 太い舌が口の中にぬるりと入ってきて、悪寒に身が震えた。 (まだ子供なのに、こんないやらしいキス……) 年下の少年にいいようにされる屈辱が、まどかの羞恥心を煽る。 哲也はそんなまどかの反応を楽しむように、彼女の口内をなめ回し、 生温かい唾液をすすって味わった。下品な音がまどかの聴覚を苛んだ。 「へへっ、恥ずかしがることはねえよ。今のお前は杏奈の体だからな。 自分の体じゃないんだから、どんなにエロいことをしても気にならねえだろ?」 (そんなわけないでしょう。こんなの嫌) まどかは身をよじって抗ったが、哲也は彼女を放さない。 さんざん口の中を犯したあとは、頬から首筋にかけてついばむようなキスを浴びせてきた。 「や、やめて……」 「やめるわけないだろ。バカだなあ。杏奈の体になったからって、 頭の中まで杏奈みたいにバカになっちまったのか?」 「何だと、てめえ」 と、横から食ってかかる杏奈。 彼女は二人の隣に腰を下ろし、哲也にもてあそばれるまどかを面白そうに観察していた。 自分の顔をした杏奈に恥ずべき痴態を見られているという事実が、 年長者としてのまどかのプライドをより深く傷つける。 「まあ、そう怒るな、杏奈。見てるだけじゃ退屈だろ? お前もこいつを可愛がってやれ」 「そうだな、そうすっか。まどかちゃん、こっち向きなよ」 杏奈の長い指がまどかの顎を持ち上げた。肉体を交換した二人の女が向かい合った。 まどかの目に映るのはまどかの顔だった。杏奈の心に支配された女教師の美貌が、 唇の端を醜くつり上げてまどかをあざ笑っていた。 「なあ、哲也。こうして見ると、あたしって可愛くね? すっげー美少女じゃん」 「ぷっ。自分で言うかよ」 哲也は呆れたように言い、まどかを後ろから抱くような位置に移動した。 服に手をかけられ、彼が自分を脱がせようとしているのに気づく。 一方、杏奈は怯えた表情のまどかにさらに近づいてきた。 鏡でしか見たことのない自分の顔が、ごく至近に迫る。 「な、何をするの……んんっ」 驚くまどかの口を、杏奈のそれが塞いだ。 哲也のものとは明らかに違う、柔らかな女の唇の感触がまどかを襲う。 女同士でのキス──それも体が入れ替わっている状態でのキスという、 奇怪このうえない体験が、まどかの心を乱した。 (やだ。自分自身となんて……) まどかの動揺を知ってか知らずか、 杏奈は舌をまどかの中に差し入れ、淫らな接吻に没頭する。 女子高生と女教師の口づけは、息が苦しくなるまで続いた。 「ぷはっ。はあ、はあ……や、やめて。ああっ」 頬を赤く染めたまどかの口から、かん高い悲鳴が漏れた。 決して豊かとは言えない胸の膨らみを、哲也が五指で刺激していた。 「せっかく杏奈の体になってるんだ。思いっきり気持ちよくしてやるよ」 言いながら、哲也はまどかの乳房を外側から中央へと搾るように握り込んできた。 痛みを覚えるほどに強い刺激が、まどかを喘がせる。 「や、やだ、痛い──ああっ、あっ」 「痛いだけか? 正直になれよ、まどか。気持ちいいだろ」 耳元で囁かれる哲也の言葉が、まどかにこれ以上ない嫌悪をもたらした。 (誰がこんなことをされて喜ぶもんですか……) まどかは歯を食いしばって耐えようとしたが、その口にまたも杏奈の唇が重ねられ、 ぬるりとした舌がまどかの前歯を執拗になめ回す。 (ううっ、やめなさい。こんなの間違ってる。早く私の体を返してっ) いくら視線で訴えかけても、まどかのものだった美貌は邪悪な笑みを浮かべて 元の持ち主の苦しみをあざ笑うだけだ。 まどかの体はもはや完全に杏奈の所有物になっていた。 嬲られるのは上半身だけではなかった。キスの合間に杏奈の手がまどかの下着を脱がせ、 あらわになった秘所を無遠慮にまさぐってくる。股を閉じることもかなわなかった。 「や、やめて。やっ、そこはダメっ。ああっ、あっ」 「気持ちいいだろ、まどかちゃん。その体のことは、あたしが一番よくわかってるんだぜ」 杏奈の長い指が秘裂を擦り、まどかの股間に得体の知れない疼きをもたらした。 悲鳴をあげるまどかを、哲也が後ろから押さえつけ、花の蕾のような乳頭をこね回す。 二人がかりの淫らな責めに、まどかは翻弄されるばかりだ。 彼女の意思とは無関係に借り物の少女の体が火照り、呼吸が荒くなっていく。 「はあ、はあっ。もうやめて……お願い……」 「やめるわけないだろ? まだ始まったばかりじゃねえか。 誰がお前のご主人様なのか、これからたっぷり体に教えてやるよ」 「やめ、やめてっ。ああっ、やめてえっ」 自分が完全に二人の玩具になっていることをまどかは悟る。 救いを求める彼女の訴えは、誰にも届かなかった。 哲也と杏奈は時間をかけてまどかを慰み者にし、徐々に彼女から反抗心を奪っていった。 はじめは手や口でもてあそぶだけだったのが、途中からは淫らな道具や怪しい薬物も加わり、 正気を失うほど散々に苦しめた。まどかは恥も外聞もなく泣きわめいて許しを乞うたが、 残忍な陵辱者たちは新しく手に入れた玩具を手放そうとはしなかった。 時おりまどかの肢体が痙攣するのを見て、下品な笑い声をあげるだけ。 「へへっ、だんだんよくなってきたみてえだな。杏奈、ここ見ろよ。ぐちょぐちょだぜ」 まどかの性器を貫いた哲也の指が中で曲がり、肉の壺を乱暴にほじくる。 か細い体がびくんと跳ねた。 「やあっ、ああっ。ひいいっ」 「おー、またイった。まどかちゃん、さっきからあたしの体でイキまくりじゃねーの。 ヤベえ、すっげー楽しい。 自分がイクとこなんて、こんな風にゃ見れないしな。けけけ……」 「うっ、ううっ。もう、もうやめて下さい……」 いつ終わるとも知れない責めが、まどかの内にあった教師の矜持を削り取っていた。 相手がひと回りも年下の生徒たちということも忘れ、まどかは敬語で懇願した。 「許してほしいか、まどか。だったらこれをしゃぶるんだな。やり方は知ってんだろ?」 すっかり抵抗する意思を失った無力な彼女に、黒々とした肉の凶器が突きつけられる。 「は、はい……わかりました」 何もかもを奪われた哀れな女は、少年のものに自分から口づけた。 雄々しくそり返った男子高校生のペニスは圧倒的な威容を誇っていた。 口に含むことが困難なサイズのそれに、 まどかは必死で舌を這わせ、年下の主人の機嫌をうかがう。 (ううっ、どうして私がこんなことを……) 救いのない状況に置かれた自分が、この上なく哀れだった。 なぜ教師の自分が、このような惨めな立場に甘んじなければならないのか。 哲也の男性器に口を塞がれ悶えながら、まどかはひたすら涙した。 「いいぞ、まどか。ククク……あれだけ嫌がっておきながら、熱心になめるじゃねえか。 いつもはお堅いお前も、本当はこんなスケベな女だったってわけだ。 おう、そこだよ、そこ。その裏のところがいいんだよ。 へへっ、さすがは先生だな。フェラのテクニックも冴えてやがる。 まったく、スケベなまどか先生は今まで何人の男をくわえ込んだんだ?」 (そ、そんなこと……) 言葉を発せられないまどかは、男子生徒の勝手な言い分に反論することもできない。 そんな彼女の背後から笑い声があがる。杏奈の声だ。 「スケベなまどか先生の体は、あたしが楽しく使わせてもらってるぜ。 あははは……んんっ、スケベなアソコをぐちゅぐちゅするの、気持ちいい……」 先ほどまで哲也と共にまどかをいたぶっていた杏奈は、男性器を模した淫具を取り出し、 己の陰部に抜き差しして法悦を貪っていた。哲也によってそちらを向かされたまどかは、 自分のものだった体が見るに堪えない醜態をさらしていることに打ちのめされる。 「ああ、私の体が……うぐっ」 「自分のオナニーを見るのはそそられるだろ? へへへ、こっちも最高の気分だぜ」 少年の嬉しそうな声と共に、口に含んだペニスの先端からとろりとした液体が漏れ出し、 まどかの舌の上に溜まっていく。若い牡の脈動がまどかを震わせ、射精が近いことを告げた。 「そろそろ出すぞ。いやらしいまどかに、俺のザーメンをたっぷり飲ませてやる」 たくましい手がまどかの頭を押さえつけた。もはや逃れることはできない。 哲也は雄々しい声で叫び、口内に熱いエキスをぶちまけた。 濃厚な精の迸りに喉を焼かれ、まどかは声にならない悲鳴をあげた。 「ううう……げほっ、げほっ!」 「おいおい、吐き出すなよ。せっかく出してやったんだから、全部飲め」 「そうだぜ、まどかちゃん。出してもらったらちゃんと飲まねーとな。ほら、こっち向けよ」 と、横から割り込んできたのは杏奈だ。まどかの顎をつまみ、ぐっと上向かせる。 唾と精液でべとべとになった顔を、杏奈の舌がべろべろと這い回った。 「い、いや、やめてえ。舐めないでえ……」 「へへ、この臭い……哲也のくっせえザーメンだ。たまんねえ」 淫靡な表情で精液を舐め取る女教師と、汚れた顔を舐められ涙を流す女子高生。 肉体を交換した二人の女の痴態を、哲也は嬉しそうに眺めていた。 「おいおい、お前らのそんなところを見てたら、また勃っちまったじゃねえか。 見ろよ、これ。今出したばっかりだってのに」 彼の言葉通り、その股間では たった今射精したはずのペニスが、再び勇ましく立ち上がっていた。 精力溢れる牡の象徴をちらりと見て、杏奈はにやりと唇を歪める。 「まだまだいけそうじゃねえか、哲也。 じゃあ、最初はあたしがハメてもらおうかな。まどかちゃんはその後だ」 杏奈は大きく股を広げ、恥じらいもなく陰唇を広げて哲也を誘った。 まどかのものだった肉感的な肢体が、電灯の光を浴びて艶かしい輝きを放っていた。 「待て、杏奈。今は俺のやりたいようにさせろよ」 「あん? どーする気だよ。先にまどかちゃんからしたいのか?」 「いや、こうするんだよ。そらっ!」 哲也はまどかの腕をつかむと、彼女の小柄な体を杏奈の方へ投げ出す。 突然のことにか細い悲鳴をあげるまどかを、杏奈がしっかりと抱き止めた。 「二人とも、そのままこっちにケツを向けて横になれ。お前らの味比べをしてやる」 「なんだ、いっぺんにすんのか? 面倒臭えやつだな。まあいいけど」 哲也の意図を察した杏奈が仰向けになり、まどかの体を下から支える。 二人の女は密着して抱き合い、仲良く尻を哲也に向けることになった。 哲也に尻をつかまれ、まどかはようやく彼が何をしようとしているのかに気づく。 「ま、まさか二人同時に……いやああっ」 「暴れるな。待ちかねたチンポがやっと味わえるんだから、もっと喜べよ」 「い、いやっ、こんな──ああっ、は、入ってくる……」 体の中にわけ入ってくる肉の凶器の硬さに、まどかの背中が小刻みに震えた。 ズン、という重々しい音が骨の髄まで響き、 自分が哲也に犯されていることをはっきりと自覚する。 (こ、こんな格好で……ああっ、なんてことなの……) 二人がかりで押さえつけられ、獣のようなバックスタイルで 挿入される羞恥がまどかの身を焦がした。 だが、それも一瞬のこと。少年のものが体内で動き始めると、 半ば崩れかけていたまどかの理性を新たな衝撃が襲った。 「駄目、動かないで……ああっ、あんっ、んんっ」 野太いペニスが濡れそぼった膣内を往復し、まどかの敏感な肉をえぐる。 哲也が腰を突くたび、まどかは声にもならぬ声をあげ、新たな涙を流した。 「ああんっ、やめてっ。やめてってばあっ」 「こんなにギュウギュウ締めつけといて、やめてくれはねえだろう。 ああ、たまんねえ……腰が勝手に動いちまうぜ」 力強いピストン運動が、まどかの秘部を執拗に穿つ。 まどかは下になった杏奈の身体にしがみつき、小さな子供のように泣き叫んだ。 激しい突き込みのあと、ようやく哲也はまどかの中から抜け出る。 「待たせたな、杏奈。次はお前の番だ」 「おう、いいぜ。ああっ、これだ。これがいいんだよ」 歓声をあげ、上になったまどかと一緒になって揺れ動く杏奈の体。 その顔は火照り、醜悪な喜びに歪んでいる。 何が起きているのかは言うまでもない。今度は杏奈が哲也に貫かれているのだ。 「ああ、すごいっ。あっ、あっ、ああっ。哲也、最高っ」 「ククク、杏奈も興奮してやがる。それにしても、このトロトロ具合はすげえな。 まどかはきつく締めつけてくるが、杏奈のは柔らかくてトロトロだ。ひひひ……」 すっかり調子に乗った哲也は二人の女の膣内を比較し、そう評価した。 そうしてしばらく杏奈の体を味わったのち、またしてもまどかを犯す。 三人分の汁にまみれた肉棒が秘部にずぶりと入ってきて、女の芯をしたたかに揺さぶった。 「ま、また私の中に……うっ、ううんっ。こんなの耐えられない……」 「へへっ、いいだろ。我慢しなくていいぜ。皆で一緒に楽しもうじゃねえか」 「そ、そんな──あんっ、ああんっ。すごい、すごいのおっ」 まどかの口から甘えた声が漏れ始めた。自分でも不思議なことだったが、 こうして杏奈と二人でかわるがわる哲也に抱かれていると、 今まで自分の内にはなかったはずの愉悦や満足の念が、 少しずつ心の底から湧き上がってくるような気がするのだ。 まるで、この状況を楽しんでいる杏奈の思いが 自分の中にまで入ってくるかのようだった。 (どうして? どうして私、こんなことをされて気持ちいいなんて思うの) まどかは訝しがったが、激しい哲也の突き込みがそんな疑念をすぐに吹き飛ばしてしまう。 「ひいっ、すげえっ。こんなにされたらあたし、おかしくなるうっ」 「ふふふ……おかしくなっちゃえばいいのよ、まどか」 とうとう自ら腰を振り始めたまどかの唇を、杏奈がぺろりと舐めた。 「私もとってもいい気分だわ。単にエッチなことをして気持ちいいってだけじゃない。 なんだか、急に自分が賢くなっていく気がするのよ。今まで私が知らなかったことが 頭の中にすうっと入ってくるような感じ。いったいどうしてかしらね?」 ぎらついた目で哀れなまどかを凝視する杏奈。 その表情や口調がもはや粗野な少女のものではなくなっていることに、まどかは気づかない。 「おおっ、おっ。哲也のチンポすげえっ。チンポ最高っ」 「どうした、まどか。そんなに嬉しそうな声を出して。壊れちまったか?」 二人の異変に哲也は気づかず、頬を紅潮させてまどかと杏奈の味比べを続ける。 「そうみたいね、ふふふ……よかったわ。私たち、これで好き勝手できるわね。 ああっ、たくましいわ。もっと奥を突いてちょうだい、哲也。 こうしてあなたと繋がってると、とっても気持ちいいの。心も体も満たされるみたいよ」 「よしきた、いくぞ。ククク、二人の女を交互に……ああ、最高だあっ」 やがて哲也は盛大に精を撒き散らし、まどかと杏奈の体に白濁を塗りたくる。 狂った宴はそれで終わりではなかった。野獣と化した三人の男女は 理性も羞恥もかなぐり捨て、夜が明けるまでベッドの上で踊り続けたのだった。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「木下杏奈さん」 不意に自分の名を呼ばれ、まどかは顔を上げた。黒いスーツを着た女が目の前に立っていた。 女は鋭い視線でまどかをにらみつけ、彼女の机の下に手を伸ばした。 「授業中にこんなものは使わないようにと、いつも言ってるでしょう。没収です」 そう言って、まどかが隠していた携帯電話を取り上げてしまう。 まどかは肩をすくめ、派手に染まった金色の髪をかきあげた。 「やれやれ。勘弁してくれよ、まどかちゃん」 「駄目です。してはいけないことをしてはいけないと、いつになったら学習するの?」 いつもの二人のやり取りを聞いていた級友たちの間から、失笑が漏れる。 最後に「放課後、職員室に来なさい」と言い残し、女は教壇へと戻っていった。 (ちぇっ。杏奈のやつ、少しは大目に見てくれてもいいじゃねーか。 今までお前がやってたことなんだからよ) まどかは舌打ちし、窓の外に顔を向ける。くだらない授業を聴くつもりなど毛頭なかった。 秋の木々は赤や黄に色づき、季節の移り変わりをまどかに教えてくれる。 「そういや、もう二ヶ月だっけか……あたしがこうなってから」 「よそ見しないで、木下さん! 先生の話を聴きなさい!」 「ちっ、わかったよ。はいはい、聴いてまーす」 誠意のない返事をしながら、まどかは今の自分の境遇に思いを馳せる。 以前は自分が叱る側だったというのに、今ではこのありさまだ。 だが、この環境にまどかが適応しつつあるのも、また確かな事実だった。 携帯電話もなしに過ごす放課後は、退屈のひと言だった。 全ての授業が終わり、部活動の生徒以外が校内からいなくなった頃、 指定された時刻にまどかが職員室に行くと、あのスーツの女が彼女を待っていた。 「ふふっ、ちゃんと来たわね。じゃあ、これは返してあげる」 先ほどの剣幕はどこへやら、上機嫌でまどかの携帯電話を差し出してくる。 まどかは謝罪ひとつせず、それをひったくった。 「まったく、没収することはねえだろ。おかげで哲也に連絡とれなかったじゃん」 「連絡ならこっちでしておいたわ。私の仕事も終わったし、そろそろ行きましょうか」 女は立ち上がり、杏奈を先導して廊下を歩き出した。 途中、すれ違った用務員が会釈する。「お疲れ様でした、竹本先生」 その光景を目にしてまどかは一瞬、不快な感情が湧き上がるのを自覚した。 丁寧に挨拶を返して颯爽と歩く女の名は「竹本まどか」。 以前は自分がそう呼ばれていた名前だった。 まどかが立ち尽くしていると、スーツの女は振り返って怪訝な表情を見せる。 「どうしたの? 早く来なさい、木下杏奈さん」 「ああ、わかってるよ」 まどかは何も知らない用務員をにらみつけ、乱暴な足取りで女のあとを追った。 校舎を出た二人は、駐車場にとめてあった青い軽乗用車に乗り込んだ。 まぶしいほどの夕陽を浴びて、車は街を駆ける。 ハンドルを握って鼻唄をうたう女に、まどかは助手席から視線を投げかけた。 「なあ、杏奈」 「なに? まどか」 周囲の目がなくなり、二人の女はようやく互いを本来の名で呼んだ。 竹本まどかと木下杏奈。 肉体を交換した両者が本当の名前で呼び合うのは、他人がいない場所でだけだ。 「あたしの体、返してくれよ」 「それは無理だって、何度も言ってるでしょう」 ぽつりとつぶやいたまどかを、杏奈は優しく諭す。 「元はといえば、哲也君が私たちに飲ませたあのジュース。あれが全部悪いのよ。 ただ飲んだ人の体を交換するだけのものだったはずなのに、 私たちはなぜか頭の中身まで入れ替わってしまった。 まさかこんなことになるなんて、哲也君にとっても予想外だったみたいね。 おまけに、元に戻れる見込みはなし。とんだハプニングだわ」 「あのジュースのせいで、あたし、すっかりバカになっちゃった。 入れ替わる前は、あたしが周りのやつらに先生として勉強を教えてたのに……」 「そうね、私だって驚いてるわ。今まで私のことを馬鹿にしていた生徒たちが、 今は休み時間になると私のところにやってきて、 わからないところを教えてほしいって熱心に頭を下げてくるんだもの。 ふふっ、楽しいわ。これもまどかがくれた記憶のおかげよ。 頭の中身が以前のままだったら、私、先生なんてできなかったでしょうね。 でも、あのハプニングのおかげで助かってるのは、あなただって同じでしょう? 私の記憶があるから、学校で何も不自由せずに済んでるじゃない」 「まあ、そりゃそうだけどさ……」 あの保護者面談の日に、哲也がまどかと杏奈に飲ませた不可思議な液体。 あの液体のせいで入れ替わってしまったのは、二人の肉体だけではない。 心も変わってしまったのだ。 生まれ育った故郷や、充実していた学生時代、そして念願叶って教職に就いてから 現在に至るまでのまどかの大事な記憶のほとんどが、杏奈に奪われてしまった。 代わりにまどかが得たのは杏奈の記憶。おかげで杏奈として生活するのに支障はないが、 一般常識や勉強に関する知識まで杏奈のものになってしまったため、 授業がまるで理解できない。 特に、今まで自分が勉強を教えていた生徒たちに劣等生として侮られるのは、 かすかに残ったまどかのプライドを深く傷つけていた。 浮かない顔のまどかに、身も心も女教師へと変化した杏奈が笑いかける。 「こら、なにをションボリしてるの。女の子がそんな顔してちゃダメじゃない。 ひょっとしたら、いつかまた元に戻れるかもしれないでしょう? それに、もし元に戻れなかったとしても、あなたの進路は 教師の私がきちんと面倒見てあげるわ。だから安心して」 「うん……」 「せっかく馬鹿でいられる身分になったんだから、もっと肩の力を抜きなさい。 入れ替わっても、ストレスばかりためるところは変わらないわね。そういうのは損よ」 大人の余裕を見せながら、まどかを慰める杏奈。 まるで歳の離れた姉妹のようだとまどかは思った。無論、まどかが妹だ。 (あたし、これからどうしたらいいんだろう……) まどかは疑問に思ったが、もはや自分に 選択の余地はほとんど残されていないことに気づいた。 杏奈と入れ替わる前、確かにまどかは「竹本まどか」だった。 自分の名前がまどかだったことは覚えている。 杏奈の担任として教鞭をとっていたことも覚えている。 だが、教師として授業で何を教えていたかについては、ほとんど記憶にない。 それは日常生活や人間関係についても同じことで、今のまどかは 以前のまどかのことをほとんど知らない。記憶を交換したために忘れてしまったのだ。 その代わり、杏奈から得た「木下杏奈」としての十数年分の記憶がある。 まどかの肉体は杏奈のものだ。そして、考え方や知識も以前の杏奈とほとんど変わらない。 ならば、少なくとも元に戻るまでは、今のように杏奈として生活するしかない。 もちろん、まどかが元の体に戻れるかどうかはわからない。 最悪、一生このまま杏奈として過ごさなくてはならないかもしれない。 しかし、今のまどかにはどうすることもできない。 いくら考えてもどうにもならないことは、考えない方がいい。 複雑な思考がすっかり苦手になってしまったまどかは、そう結論づけるしかなかった。 「そうだな。あんまりイジけたってしょうがねーし、あたし、今の自分を楽しむよ」 新たな決意を口にするまどかに、まどかの外見をした杏奈がうなずき返す。 「そうそう、その意気よ。その体だって可愛いし、何よりも若いんだから。 さあ、そろそろ着くわよ。私たちをこんな酷い目に遭わせたご主人様のところにね」 杏奈が視線で示した先には、見慣れたマンションが建っていた。 二人が乗った軽自動車は、その向かいの駐車場にとまる。まどかは勢いよく外に飛び出した。 「早く行こうぜ、杏奈。あいつ待ちくたびれたみたいでさ、 さっきからあたしの携帯が鳴りっぱなしだよ」 「待ちなさい、まどか。そこのスーパーで買い物をしてからじゃないと。 あの子の家、どうせ食べるものなんて何もないだろうから」 「けっ。すっかり面倒見がいいお姉ちゃんになっちまって、まあ……へへへ」 まどかは微笑み、杏奈の手をとって歩き出した。 夕暮れの街には肌寒い風が吹いていたが、 二人で身を寄せ合っているとほとんど気にならなかった。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/240.html
「……大人になりたい、ですって?」 ジェシカの言葉に、エリザベスは力強くうなずいた。 「ええ、なりたいですわ。わたくし、まだ子供ですもの」 「まだ子供って言ったって……そんなの当たり前でしょう。あんた、今いくつよ」 「先月で十三歳になりました」 そう答えるエリザベスの青い瞳を、ジェシカはじっと見つめた。 彼女はこのアイザック王国の王女で、三人いる姫君の末娘である。 長いストレートの髪は見事な黄金色。瞳はつぶらで目尻はほんの少し垂れ下がっており、いかにも淑やかな深窓の令嬢らしい、繊細な容貌を持つ。性格は大人しく控えめで、王女という高貴な身分でありながら周囲に威張り散らすことはまったくない。それゆえ城にいる人間からはもちろん、国の誰からも敬われ、愛される姫君だった。 「十三歳……そういえば、ベスももうそんな歳なのね。早いもんだわ。ほんのちょっと前まで、ぬいぐるみを抱きながらあたしの後ろをついて回っていたのに」 ジェシカはフォークの先に載ったチョコレートケーキの欠片を口に放り込み、しみじみと言った。 ジェシカは十七歳。宮廷魔術師カリオストロの娘で、エリザベスとは幼馴染みの付き合いである。 四つ下のこの愛らしい姫君を、ジェシカは実の妹のように可愛がっており、現在はエリザベスの家庭教師として学問の手ほどきを任されていた。 その立場上、家族以外で唯一エリザベスと対等に口をきくことを許されており、城の中でこの麗しい第三王女を、「あんた」呼ばわりできるただひとりの存在である。 そんなジェシカがかぐわしい紅茶の香りを堪能していると、エリザベスは珍しく大きな声をあげた。 「少しはわたくしの話を聞いて下さい、ジェシカ!」 普段は雪のように白い姫君の頬が、今は薄紅色に染まっている。どうやら、今はただの茶飲み話として聞き流していい話ではないようだ。 ジェシカは紅茶のカップを皿に戻し、容姿端麗な王女に視線を向けた。 「ああ、聞いてる聞いてる。大人になりたいんだって?」 「そうですわ。わたくし、まだまだ子供ですの。魔法使いのジェシカなら、わたくしを今すぐ大人にしてくださるんじゃないかと思って……」 「エリザベスを大人に、ねえ……」 ジェシカは軽く首をかしげ、ひと呼吸おいてからエリザベスに問いかける。 「何かあった? またお姉さまに子供扱いされたとか?」 「そ、そんなことは……!」 図星だったようだ。テーブルを挟んだ向かい側で、小柄なプリンセスの顔が紅潮していた。 あまりにもわかりやすい反応に、ジェシカは声をあげて笑った。 「あっはっはっは……何度目よ、それ。あんたがマリア殿下に子供扱いされて、あたしに泣きついてくるの。気にするなっていつも言ってるでしょう?」 「そんなこと言われましても……」 「もう、あんたも繊細というか、しょうもないことを気にしすぎというか……」 ジェシカはエリザベスの心中を察した。おそらく、第二王女のマリアが原因なのだろう。 マリアはエリザベスの三つ上の十六歳。とても明るく朗らかな性格で、妹のエリザベスのことを日頃から可愛がっている。 だが、幼い頃からの癖で、エリザベスを子供扱いしてしまうことがしばしばあった。 無論、本人に悪気はないのだが、エリザベスは気に入らないらしく、ほんの些細なことで、今のようにジェシカに言いつけに来るのだ。 何しろ、思春期を迎えて多感、かつ複雑な年頃である。 背伸びしようとするエリザベスの心理は、幼馴染みのジェシカとしては微笑ましくもあるのだが、そのたびにいちいち機嫌を直してもらわねばならず、困った話でもあった。 「はあ。わたくし、早く大人になりたいですわ……」 「そんなもん、ほっときゃ嫌でも大人になるわよ。で、今度は何? あのマリアお姉さまに何を言われたの」 「小さいって……」 「え? 何?」 「胸が小さいって言われました……」 「ああ、そう」 ジェシカはしばらく王女の顔を眺めたのち、席を立ってテーブルの向こう側に回り込んだ。 「ジェシカ?」 訝しげにこちらを見上げてくるエリザベスの白いドレスに両手を伸ばし、そっと肌を撫でる。 今年で十三歳になる少女の乳房はほとんど膨らんでおらず、まるで洗濯板だった。 「うん、小さいなんてもんじゃないわね。まったいら。あんたのお姉ちゃんたち、どっちも大きいものねー。本当に姉妹か疑わしくなるわよねー」 「や、やめて下さい! うう、ジェシカまで……ぐすっ、うえええん……」 とうとう王女が泣き出してしまい、ジェシカは慌てて彼女から離れる。 (こりゃあ、大変だわ) 慌てずとも、まだ十三歳なのだから、これからいくらでも成長するはずである。 今は蕾のような少女の身体が、やがて華やかな女の肉体へと開花するさまを思い描くと、誰であろうとエリザベスの将来が楽しみになる。だが、本人にはそれが待てないらしい。 「しょうがないわね……可愛いお姫様のために、ひと肌ぬいでやるとしますか。ほら、泣きやみなさい、ベス。あたしがあんたを大人にしてあげるから」 ジェシカがなだめると、エリザベスは涙で汚れた顔を上げた。 「え? 本当にそんなこと、できますの?」 「できるできる! このあたしを誰だと思ってるの? 王国一の天才魔術師、ジェシカ・カリオストロ様よ! 不可能なんてあるわけないじゃない!」 ジェシカはぴんと親指を立て、これ以上ない笑顔で請け負ってみせた。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ジェシカはエリザベスに言って、メイドのヒルダを部屋に呼ばせた。 王女の部屋に入ってきたヒルダは、主人に向かってうやうやしく一礼した。 「姫様、御用でございますか」 「よくいらしてくれました、ヒルダ。実は、あなたに折り入ってお願いがありますの」 エリザベスは椅子に座ったままヒルダを見つめた。 ヒルダはエリザベスに仕えるベテランのメイドで、歳は二十八。理知的な表情に細い眼鏡がよく似合う。 女性にしてはかなりの長身で、肉づきのいい柔らかなボディラインが人目を引いた。白いエプロンの胸元を豊かな乳房が押し上げ、そのボリュームは同性のジェシカでさえ意識せずにはいられない。 「姫様のおっしゃることでしたら、どんなことでもお引き受けしますが……」 「そう、それはよかったわ。実はあなたのそのムチムチの体を、しばらくお姫様に貸してあげてほしいのよ。いいわね?」 「は? 体を……」 こちらの言葉を理解できずにいるヒルダに構わず、ジェシカはエリザベスを彼女の前に立たせた。 杖を掲げて呪文を詠唱すると、エリザベスの小柄な身体がかすかに光り始める。 「姫様、ジェシカ様、何をなさるおつもりですか?」 光はどんどん強くなっていく。ただならぬ気配にヒルダの表情が強張ったが、忠誠心が篤いメイドは決して主人の前から逃げ出そうとはしない。 「それじゃ、いくわよ。ベス」 「はい、お願いします」 了承の返事を受け取り、ジェシカは呪文の詠唱を終えた。それと同時に、エリザベスの体から白い光が放たれ、ヒルダの身を撃った。 「ひ、姫様っ!? きゃあああっ!」 ヒルダは悲鳴をあげて倒れ伏す。エリザベスも同様に、膝をついて横になった。意識を失った二人の間で、白い光がまるで生き物のように揺らいでいた。 「さて、うまくいくかしらね。初めての魔法だから、あんま自信ないんだけど……」 固唾を呑んで見守るジェシカの前で、やがて魔法が効果を現しはじめた。 エリザベスの細い首に光がまとわりつき、怪しい文様が首を取り巻く。 やがて、驚くべきことが起きた。エリザベスの首が音も無く身体を離れ、宙に浮いたのだ。 それは奇妙な光景だった。首を切り離された王女の体からは、血の一滴も流れていない。首の切断面はハムの切り口のような肉の色を晒しており、そこに血管や骨の断面はなかった。 生きているのか、死んでいるのか。 目を閉じた姫君の表情は実に安らかで、眠っているようにしか見えない。 エリザベスの生首は長い金髪を揺らしてゆっくりと宙を舞い、ヒルダに近づいていく。 そのとき、ヒルダにも同じことが起きていた。 ヒルダの首が体を離れ、ひとりでに宙を舞っていた。 エリザベスとヒルダ。二人の頭部は空中ですれ違うと、それぞれ相手の体に接近した。 白い光に包まれたエリザベスの首は、向きを変えてヒルダの胴体に接触した。ちょうど、エリザベスの首の切り口と、ヒルダの体の切り口とが合わさる位置である。 白い光は再びエリザベスの首を覆い、そこを怪しい文様が取り巻いた。 少女の首と、女の胴体。大きさの異なる肉の切り口は形を変え、一つに繋がった。 魔術の文様は光と共に少しずつ薄れ、やがて光が消えたときには、エリザベスの頭がヒルダの体と完全に結合していた。 とても、今切り離して繋げたばかりとは思えない。最初から繋がっていたかのように、二人の肉の境目には傷一つなかった。 「オッケー、うまくいったみたいね」 エリザベスの間近で経過を観察していたジェシカは、満足の笑みを漏らした。 メイド服を身にまとったエリザベスの首に指を当てると、確かな脈動が感じられる。首が繋がった証だ。彼女の魔法は、どうやら成功したようだった。 ヒルダの頭の方も、ジェシカの思い通りにエリザベスの胴体と融合していた。 念のため、そちらも触診して確認する。やはり、何も問題はなかった。 「やったわ。さっすがあたし! こんな難しい魔法を成功させるなんて、そこらの魔術師には不可能だわ。あたしってつくづく天才よねー」 「う、うう……ジェシカ?」 大騒ぎするジェシカの声に意識を取り戻したのか、エリザベスが目を開けた。 はしたなく床に寝そべっているのに気づいて、少女は慌てて立ち上がる。聡明な少女は、すぐに自分の身に起こった異変に気づいた。 「こ、この格好は……それに、この体つき……!」 「お目覚めね、ベス。新しい自分の体はどう? 気に入ってくれたかしら」 ジェシカは部屋の隅に置いてあった大きな姿見を魔法で運び、エリザベスに見せてやった。 そこに映っているのは、白い絹のドレスを着た小柄な姫君の体ではなかった。三十路を控えたメイドの成熟した女の体が、エリザベスの繊麗な顔の下にあった。 エリザベスは食い入るように姿見をのぞき込み、驚愕の表情で己の口を押さえた。 「わ、わたくし、大人になってます! 大人になって、メイドの服を着ています!」 「ええ、そうよ。あたしの魔法で、ベスとヒルダの体を取り替えっこしたの。だから今のあんたの首から下は、ムチムチボディのメイドさんの体になってるのよ」 ジェシカはエリザベスの背後に立ち、豊満な乳房を後ろからわしづかみにした。二十八歳のメイドの肉体が刺激され、十三歳の王女の脳に未知の感覚をもたらす。 「ああっ、やめて下さい。へ、変な感じがします……」 「ふふっ、いいじゃない。せっかく大人の女になれたんだから、楽しまないと」 ジェシカは、今や自分より背が高くなった姫君の身体を玩具にしていた。 そんな幼馴染みの悪行を受けて、戸惑い、恥らうエリザベス。 無理もなかった。いまだ初潮を迎えていない生娘が、突然、女盛りの成人女性の体にされたのだから、困惑して当然だ。 二人が姿見の前で騒いでいると、突然、悲鳴があがった。 「きゃあああっ! これはどうなってるの!?」 「あ、起きたわね。ふふふ……気分はどう? お姫様」 不敵な笑みを浮かべるジェシカの視線の先には、高級なドレスを身にまとった小柄な少女の姿があった。 しかし、顔は少女のものではない。そこには短い黒髪に眼鏡をかけた、古参のメイドの顔があった。 「ど、どうして私がこんな格好を……こ、これは姫様のドレスではありませんか!」 「ええ、そうよ。あなたが着てるのは間違いなく、第三王女エリザベスのドレス。でも、ただ着替えさせただけじゃないわ。自分の身に何が起こったか、わかる? あなたは、王女様と首から下の体を取り替えっこしたのよ」 「と、取り替えた?」 信じがたいジェシカの説明に、ヒルダは目を白黒させた。 だが、本来ならば一番長身のはずの彼女がジェシカとエリザベスを見上げているのは、ただ服を取り替えただけでは説明がつかないことだった。 ヒルダは白い手袋に包まれた自分の両手を目の前に掲げ、その小ささに唖然とする。 「こ、この手、私の手じゃない。でも、体を取り替えただなんて、そんな馬鹿な……」 「まだ信じられない? じゃあ、その証拠を見せてあげる」 困惑するヒルダのきゃしゃな手をとり、ジェシカは彼女を姿見の前に連れてくる。変わり果てた自分の姿を己の目で確認したヒルダは、腰を抜かさんばかりに仰天し、呼吸を引きつらせた。 「ひいいっ!? わ、私、本当に姫様の体になってしまったの……」 「そうよ。やっとわかった? 今はあなたとベスの体が入れ替わってるのよ。顔はそのままだけどね」 ジェシカはヒルダの肩に手を置き、そう耳元で囁いた。 ヒルダは再び自分の両手を見つめる。その小さな手は、本来ならばエリザベスの手だ。だが今は二十八歳のメイド、ヒルダの手だ。 アイザック王国第三王女、エリザベスの身体に忠実なメイドの頭部が結合し、敬愛する姫君の手足を我が物としていた。 「も、元に戻して下さい! 私ごときが姫様のお体を使うなんて……」 血相を変えて取りすがってくるヒルダを、ジェシカはなだめすかす。 「まあまあ、落ち着いて。心配しなくても、ちゃんと元に戻してあげるわよ。そうね……一日経ったら、元の体に戻してあげる。それでどう?」 「い、一日……私に一日中、姫様の体で過ごせというのですか。そんなことできません」 ヒルダは青ざめ、ふらついて壁にもたれかかった。そんなヒルダを、大柄なメイドの体になったエリザベスが支えてやった。 「ごめんなさい、ヒルダ。わたくし、どうしても大人になりたかったの。だから一日だけ、あなたの体をわたくしに貸してくださいませんか?」 「ひ、姫様……」 ヒルダは渋ったが、王女直々に頼まれては断れるはずもない。結局、二十四時間だけという約束で、肉体交換を了承してくれた。 「こうなっては仕方ありません。姫様のお体は、私が責任もってお預かり致します……」 「ありがとう、ヒルダ。あなたの今日の仕事は免除するよう、わたくしから言っておきますから、安心してこの部屋で休んでいて下さい。既に人払いはしていますわ」 「ありがとうございます……」 「じゃあ、あたしたちは行きましょうか。ヒルダ、お留守番をお願いね」 「え? どこに行きますの、ジェシカ」 ジェシカの言葉に、エリザベスは顔に疑問符を浮かべた。そんな彼女の手を引き、若い女魔術師は窓の外を見やった。 「どこって、決まってるでしょ。せっかく大人の体になったんだから、その体をたっぷり楽しめる場所に行くのよ」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ベッドに寝転がり、ヒルダは何度目かの嘆息をした。 彼女が今寝そべっているのは、使用人館にある彼女の平凡なベッドではない。平民の彼女が使うことは一生ないであろう、豪奢な天蓋つきのベッドだった。 ベッドだけではない。この部屋にある家具は、いずれも腕のいい職人に作らせた最高の品だ。 視線を下方に転じると、そこには白い絹のドレスを着た自分の体があった。 肘から先を包んでいるのはドレスと同じ色の手袋で、いずれも自分が身に着けることはまずないだろうと言っていいほど高級な衣類だった。 だが、真の問題はそこではない。今、ヒルダが動かしている肉体にあった。 「はあ……何度見ても、姫様の体だわ。小さくてとっても可愛らしい……」 ベッドから離れ、大きな姿見の前に立つ。そこに映っているのは、いつもと同じヒルダの顔だ。 だが、顔の下は普段の彼女とはまったく異なっていた。 白いドレスを身にまとった、十三歳の少女の体。それはヒルダの主、この国の第三王女エリザベスのものだ。 なんと宮廷魔術師の娘ジェシカの魔法によって、二人の首が挿げ替えられてしまったのである。 一介のメイドに過ぎない自分が、姫君の肢体と融合させられ、好き勝手に動かしている。 その恐ろしい事実に比べれば、高価なドレスやベッドなどものの数ではなかった。 彼女と首から下の体を交換したエリザベスは、「大人の体を堪能する」と言って、ヒルダを置いてジェシカと二人だけで街に行ってしまった。 慣れない王女の体で、一人取り残される不安は耐え難いものだった。 「姫様は人払いしてるって仰ったけど、いつ誰かやってくるかわからないし……。こんな姿でいるところを、もし陛下や姉君に見つかったら……」 鏡の前でヒルダは恐怖した。背筋が悪寒で震え、青い顔がますます青ざめる。一刻も早く元に戻してもらわなくてはならなかった。 「とにかくバレないようにしないと……ここでじっと待ってるのが良さそうね」 プリンセスの体を持つ二十八歳のメイドは、そう決心して再びベッドに寝転がった。ノックの音がしたのは、ちょうどそのときだった。 (ええっ!? 今日は誰も来ないって聞いてたのに!) ヒルダは飛び上がった。ここはエリザベスの寝室で、出入りする人間は限られている。エリザベスが人払いしていると名言した以上、今日は誰も入ってこないはずだった。 だが、無情なノックの音は再び鳴らされ、ヒルダの心臓を激しく打った。 (ど、どうしよう!? とにかく隠れなくちゃ……!) 咄嗟に身を隠せそうな場所は、一つしか思いつかない。 ヒルダはベッドの下に潜り込み、息を殺した。小柄な王女の身体だからこそ、隠れられる場所だ。 やがてドアが勢いよく開かれ、ノックの主がずかずかと部屋に踏み込んできた。 「ベス! いないのー!?」 (この声は……マリア様!) エリザベスの部屋に入ってきたのは、彼女の姉に当たる第二王女のマリアだった。 「あれ、いない……おかしいわね。今日は気分が悪いから部屋で寝てるって聞いたのに。ひょっとしてかくれんぼしてるのかな? ベスちゃん、まだまだ可愛いもんねー」 ヒルダから細い足しか見えないマリアは、妹の部屋の中をうろうろしはじめた。 (ヤバい……見つかる!) ヒルダはぶるぶる震えたが、マリアの目を誤魔化すことは不可能だった。すぐに見つかってしまう。 「あ、こんなところにいたのね! もう、ドレスが汚れちゃうじゃない」 マリアはヒルダの腕を引っ張り、彼女をベッドの下から引きずり出した。 そしてヒルダの顔を持つ妹の姿をまじまじと見つめ、小首をかしげた。 「あれ? その顔……あなた、ヒルダ……よね。 でも、どうしてエリザベスのドレスを着ているの? それに、そんなに小さくなっちゃって。いったい何がどうなってるの?」 「も、申し訳ありません……じ、実は私……」 ヒルダが半泣きになってことの次第を説明しようとしたとき、異変が起きた。ヒルダの体を白い光が包み、室内を照らしたのだ。 「きゃあああっ!? な、何!?」 ヒルダとマリア、二人の女の悲鳴があがる。どこかで見た覚えのある光に包まれて、たちまちヒルダの意識は闇に沈んだ。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ それからしばらくして、マリアは城の廊下を歩いていた。その足取りは、快活な彼女らしくない重いものだった。 「おかしいわね……どうしてかわからないけど、頭がくらくらするわ」 ヒルダの身体から出た光を浴びたマリアは、気がつくと廊下に倒れていた。 訝しがる彼女を襲ったのは、原因不明の頭痛と意識の混濁だった。 それは再び発動したジェシカの魔法のせいなのだが、事情を知らぬ彼女にそれがわかるはずもない。 エリザベスとヒルダの体を入れ替えた、肉体交換の魔法。本来であれば、その効果は一度だけ発動するものだ。 だが、ジェシカはミスをしていた。あの魔法をかけられたエリザベスの肉体は、一定の時間ごとに、そばにいる女性と強制的に頭部を交換するようになっていたのである。 「ああ、頭が重い……なんか体と胸が小さくなってる気がするし、病気かしら? それに、このドレス……これは私のじゃなくってエリザベスのものじゃない。さては、着せるときに間違えたわね? まったく、うちのメイドはドジなんだから……」 毒づきつつ、マリアは自分の部屋を目指す。 その首から下は彼女の体ではなく、妹のエリザベスのものになっているのだが、意識が朦朧としている今の第二王女にとっては、どうでもいいことだった。 時おり壁にぶつかりながら自室に向かうマリアのもとに、一人の少女がやってきた。 「あ、姫様! どうしたの?」 「誰……?」 やってきたのは、まだ四、五歳の幼い娘だった。 ミンティという庭師の娘で、時々父親の仕事の手伝いと称して城に連れてこられている。マリアとも面識があり、何度か言葉を交わしたのを覚えていた。「ううっ、ミンティ……」 「マリア様、ご病気なんですか? 今、お父さんを呼んでくるね!」 「お、お願い……うっ」 マリアがその場に崩れ落ちると同時に、身体から白い光が放たれる。 「な、なに!? これ、なんなのぉっ!?」 光は驚く幼女と王女を包み込み、二人の首を胴体から切り離した。 そして意識を失ったミンティの頭部を、知らぬ間にマリアの胴体と繋げてしまう。庭師の娘の頭と第三王女の肉体が結合し、新しい命になった。 それに対して、第二王女の生首は、本来の彼女の背丈の半分ほどしかない童女の身体と連結させられ、アンバランス極まりない姿で床に倒れ込んでしまう。 全てが終わったあと、先に目を覚ましたのはミンティだった。 「う、ううん。あれ? あたし、どうしたんだろ……」 王族しか着ることを許されない高価なドレスを身にまとった庭師の娘は、自分の足元に倒れているマリアのことにも気づかず、ぼうっとした顔でその場をあとにする。 「そうだ、お父さんに言わなくちゃいけないことがあったんだ。お父さんのところに行かなくちゃ……」 エリザベスの肉体を手に入れたミンティは、おぼつかない足取りで城の廊下を歩きだす。 ますます被害者が増え、事態は悪化していた。
https://w.atwiki.jp/samgame/pages/53.html
能力値(無印) 体力(スタミナ) 5 ジャンプ力 4マス分 身長 2マス分 攻撃 砲撃 特殊能力 2段憑依 能力値(10th) 体力(スタミナ) 6 特殊能力 - スペシャルスキル 重装甲 体重 1350.0 【解説(無印)】 デビルキッドが乗り込んだ小型戦車。 機動性はそれほど高くないが頑丈に出来ていて、 射程の長い砲撃で広範囲を攻撃出来る。 緊急脱出装置により、いざという時は安全に脱出できる。 憑依した場合は、憑依が解けるとデビルキッドになる。 【完全クリア後(クリックすると開きます)】 + ... デビルキッドでも操縦が出来るように、 操作系は至ってシンプルに設計されている。 パワフルで悪路に強いが、小回りはきかない。 中からデビルキッドが顔を出しているのは、 小さく作りすぎてしまったためだったりする。 【操作(無印)】 砲撃 ・・・・地上で'Z'を押し続けて離す 威力の高い砲撃で攻撃する。 'Z'を押すとマトが現れて前方~上方を動き回り、 'Z'を話すとマトの方向に向かって砲弾が発射される。 発射時は反動で少し後ろに下がってしまう。 【解説(10th)】 機体を小さく作りすぎたせいで、デビルキッドが 頭を出さないと運転することができない。 過去の期待に比べて、連射速度が大きく向上している。 小回りは効かないが、パワーがある。 【操作(10th)】 体当たり 移動するだけで敵にダメージ 威力 20 備考 バランスが悪いのか、簡単に転倒してしまうのが難点。 砲撃 攻撃ボタン 威力 15 備考 爆風が連続ヒットするためとてつもないダメージになる。ちゃんと命中させればゴールデンアーマー2号すら一撃。水中でも発射できるが、一定距離までしか飛んで行かない。 【スペシャルスキル(クリックすると開きます)】 + ... 名称 重装甲 解説 ダメージを受けてもひるまなくなった! 効果 高いスタミナと合わさって非常にタフになり、砲撃でのゴリ押しもやりやすくなる。 【備考】 ジャンプ力は高くないものの、憑依を解除するとデビルキッドになることから、2段憑依解除ジャンプが出来る。 最高速に達するまでが遅いが、実は移動スピードがトップクラス。 10thでは大型化され、体当たり攻撃で敵を攻撃出来るようになり、火力も大幅に向上した。 砲撃も敵を自動でサーチするようになり、適当に連射するだけでボスも瞬殺。 しかし2段階憑依効果は無くなっており、憑依解除してもデビルキッドにはならない。 今作では水中版キッドタンクともいうべき、キッドサブマリンが登場した。
https://w.atwiki.jp/inagawa/pages/65.html
<<1ターン目後手>> 1号車の提出行動 小竹アキカン 移動C4 能力発動 SS・イラスト 10 失敗 鳳まつば 移動D3 能力発動 イラスト 11 失敗 ララガ・丹羽 移動E3 能力発動 対象不適正 小泉ヒズミ 移動D2 霊魂憑依 対象不適正 結昨日空 移動A3 出鯉あJ 移動C3 暁のジョージ 移動C1 暁の瞳 移動B3 能力発動 イラスト 13 転校生フェイズ 稲川淳二 待機 1ターン目後手終了時 1 2 3 4 5 6 7 A ジョージ 結昨日空 B 暁の瞳 大樹 C 出鯉あJ 稲川淳二アキカン 堂島焦香佐藤一歩峰水子白金 すごい男稲田連子リマインド D 小泉 鳳まつば 大樹 E ララガ ジュード 地形効果マス 冥界の門 この地形で死亡したキャラクターは霊魂を発生しません。 無縁仏 この地形にいるキャラクターは味方から孤立します。 サルガッソ樹海 ZOCを持つ地形です。 1号車 DP:0 名前 攻 防 体 精 FS OP 特殊能力 発 状態 性 小泉ヒズミ 8 15 7 3 0 憑依 小泉 Go with me 76 班長制約:霊魂消費1 男 結昨日空 19 1 6 3 1 憑依 空断(からたち) 98 制約:霊魂消費1 女 鳳まつば 16 0 5 7 2 憑依 孔雀色十三夜 90 制約:霊魂消費1 女 ララガ・丹羽 0 0 4 6 20 おっぱいが~ 90 制約:霊魂消費1 男 小竹アキカン 1 9 9 3 3 ガス漏れ・改 69 制約:霊魂消費1 男 暁のジョージ 0 0 6 9 15 シクレ 夜明けの戦旗~ -- 制約:霊魂消費1 男 出鯉あJ 0 14 7 1 8 シクレ 性転換Ⅸ -- 制約:霊魂消費1 男 暁の瞳 0 0 7 3 20 シクレ 俺の両目は写輪眼 -- 一回金縛り制約:霊魂消費1 男 2号車 DP:0 名前 攻 防 体 精 FS OP 特殊能力 発 状態 性 白金鏡一桜 10 8 5 4 6 吸収 極死夢葬 88 班長戦線離脱(1)斜め移動(1) 男 佐藤一 20 0 6 4 0 憑依 先々の先 90 戦線離脱(1) 男 稲田連子 15 6 6 3 0 憑依 平和主義者の~ 83 戦線離脱(1) 女 堂島焦香 0 11 7 4 8 憑依 とりあえずビーム 81 戦線離脱(1) 女 ジュード・ボトム 10 5 8 5 0 憑依 スタンド・バイ・ミー 75 一回金縛り 男 すごい男 0 0 10 7 10 吸収 超惑星十字配置 90 戦線離脱(1)一回金縛り 男 歩峰水子 8 0 8 4 10 シクレ 怒怨歌 霊感飛行 -- 戦線離脱(1) 女 リマインド・ハット 0 7 10 5 8 シクレ サイコ・コロネード -- 戦線離脱(1) 女 稲川淳二 名前 攻 防 体 精 FS OP 特殊能力 発 状態 性 稲川淳二 0 0 3 3 20 稲川淳二七不思議 100 制約:霊魂消費1 男
https://w.atwiki.jp/olgn/pages/151.html
《祖龍の卵》魔 永続魔法 1ターンに1度、フィールド上に存在する「霊使い」と名のつくモンスター1体を選択して発動する。 選択したモンスターと同じ属性の「ネイティブエッグトークン」(ドラゴン族・星3・攻0/守1500)を1体特殊召喚する。 「ネイティブエッグトークン」はアドバンス召喚のためのリリースにすることはできず、シンクロ素材にする場合他のシンクロ素材に「霊使い」と名のつくモンスターが存在しなくてはならない。 「ネイティブドラゴン」と呼ばれる龍の卵。そこからは大きなエネルギーが感じ取れる。 憑依幻龍のサポートカードで、シンクロ召喚の際霊使いを実質レベル6として扱える。 《デブリ・ドラゴン》で霊使いを呼び出したり、《幼生グリモア》で相手フィールドにレベル3モンスターがいなかった場合に使える。 また、憑依装着の特殊召喚にも一役買う。
https://w.atwiki.jp/tsfelysion/pages/141.html
デッキレシピテンプレ デッキ名称: ガーディアン コスト1 コスト2 コスト3 × × サポート 変身 入れ替わり 憑依 × × TSエフェクト 変身 入れ替わり 憑依 × × イベント 変身 入れ替わり 憑依 × × コンセプト、使用感など
https://w.atwiki.jp/ascalon/pages/19.html
国名 正統災厄公社 # 国名からの派生で、国王が「社長」と呼ばれるハメに……w 王国環境 【騎士団】【ギルド(肉弾)】/技術3(Hermit) 民の増加。11人/資源2(抱月) # 《民》は貴重な社員だそうです 【ホール】/施設1(里村) # 応接室が豪勢な公社 【特産物】素材は情報/国風5(しんごろ) # “平穏な生活”のためには正確な情報が必要不可欠 同盟国「深階グランドゼロ公国」【特産物】は木/資源4(Ascalon) # 王国名GMが振っちゃってごめんね >< 文化レベル+1/国風2(Ex) # ヤックデカルチャー 人口 130名 民:103人 ランドメーカー:11人 モンスター:14人小鬼:4人 マヨネーズキング・ピュアセレクト:1人 首無し騎士:1人 マッハペンギン:1人(内1人はクラパドーラの憑依スキルで取得) みみず:1人(内1人はディードリットの憑依スキルで取得) 二面人:1人(内1人はディードリットの魔物使いスキルで取得) 小鬼呪術師:1人(内1人はエロイカの憑依スキルで取得) ヴォーパルバニー:1人 恋のぼり:1人 レーシィ:1人 闇エルフ:1人 逸材:2人“目に入れても痛くない”メトロノーム:神官/星術師 “花も恥じらう”ミヤコ:料理人,マニャーナの幼なじみ 王国レベル 3 国力 生活5、文化2、治安1、軍事1 予算 0MG(「天使の国に散った薔薇」の繰り越し予算) 以上