約 913,050 件
https://w.atwiki.jp/jewelry_maiden/pages/672.html
長い冬の寒さも一段落し、日を重ねるごとに暖かさが増してくる今日このごろ。 冬場はバス通勤だった俺も、明日から自転車通勤に切り替えだ。 「あ、マスターおかえりなさーい」 自転車の点検を終えて帰ってみると、金剛石が玄関前で出迎えてくれる。 「ただいま。何かあったの?」 「ううん、違う……違いますよ。マスターの自転車を見たいなーって思って」 そう言って、僕の自転車の横に立つ。 宝石乙女には大きすぎるそれは、俺が大枚叩いて買ったちょっといい自転車だ。 「かっこいいー。テレビに出てくるやつみたい」 「ありがと。そうだ、これで散歩でも行こうか」 「えっ、いいのっ!」 喜んだのも束の間、自分の口調に気づき、慌てる金剛石。相変わらずだなぁ……。 「もっとおしとやかに、ね」 「はぁい……じゃあ、後ろに乗っていいですか?」 春の南風を切って、自転車が進む。 後ろには金髪の少女。俺の身体をしっかりと掴み、さっきからはしゃぎっぱなしだ。 「マスターっ、もっと速く! BダッシュBダッシュ!!」 「マリオじゃないっつーの。あと口調」 「あわわっ……こほん。マスター、是非ともここは自転車の最高速度でギネスを目指してみては?」 「無茶言わないの。口調直しても駄目」 結局、口調を直しても金剛石は金剛石だからなぁ。 「暖かくなったなー」 「そうですねぇ。冬に自転車乗ると寒いんですよね?」 「そ。だから雪なくても乗らない」 目の前に、河川敷の遊歩道が見えてくる。 少し坂になった道を気合いで漕ぎ、遊歩道へ。 「わぁ、綺麗ですねー」 「春ごろのこの辺はお勧めの散歩コースだぞ」 季節の花が何でも咲いているわけではないが、春は特別いろいろな花が咲くいい場所だ。 まだまだつぼみが多いが、冬場は漂うことのなかった草の匂いが鼻をくすぐる。 そして、川の流れる音。山からの雪解け水が加わり、普段よりも大きく感じた。 「あー、あそこサッカーしてる……してますよー」 「だな。俺も昔は高校でやってた」 「あっ、なら今度あたしの相手してくださいよぉ」 「あはは……遠慮する」 「えー」 なんだか金剛石とやってたら朝から晩までPKやらされそうだ。 いや、でも宝石乙女全員集めて試合やらせたら結構面白く……駄目だ、絶対修羅場になる。蛋白石ちゃんのドライブシュートとか、ありそうで怖い。 あぁ、置石ちゃんがボールを爆弾にすり替えたり……いや、置石ちゃんなら虎目石ちゃんとスカイラブハリケーン……。 「マスター、何で黙っちゃうんですかー?」 「え、あぁ悪い悪い」 ついつい宝石乙女のデスサッカーを思い浮かべてしまった。 「そうだ、これからどっか昼飯でも食べに行くか」 「ホントっ? じゃああたしオムライスが食べたい……ですっ」 「了解。確か近所に店があったと思うから、そこいってみよう」 「ただいまーっ」 「おかえりなさい。マスター、お疲れ様です。荷物持ちますね」 「あぁ、ありがと黒曜石」 結局、夕方まで自転車であちこちを回ることとなった俺たち。 冬場の運動不足が一気に解消されそうな、そんな疲労が身体を襲う。 「そういえばびっくりだったよー。今日お昼ご飯にオムライスの店行ったんだけどね、そしたらレッドベリルちゃんのマスターが……」 まぁ、金剛石は充分楽しんだみたいだし、よしとするかな……明日筋肉痛にならなきゃいいけど。 「マスター、早く晩ご飯食べよ……食べましょうよー」 「あー、はいはい。今行くよ」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4314.html
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1875.html
741 名前:【SS】:2014/04/30(水) 08 13 51.27 ID Xe4cm/DPI SS 『二回目の二人乗り』 がちゃ。 「ただいまー。」 「あ、やっと帰ってきた。」 大学から帰って来て、扉を開けると、玄関で桐乃が待ち構えていた。 「はい、コレ。」 そう言って、なにやら封筒を渡してくる。 「なに、コレ?」 「ん?ソレ?教習所の申込書。」 、、、。 「知ってるとは思うが、俺はもう免許を持ってるんだけど?」 「うん、知ってる。こないだ一緒にドライブに行ったじゃん。」 「、、、だよな。で、これは?」 「バイクのほうの教習所の申込書。」 「は?」 「人生相談。バイクの免許、取ってきて。今すぐ。」 、、、。 俺はこめかみを押さえながら聞き直す。 「すまん、もう一度言ってくれるか?」 「だからー、バイクの免許を今すぐ取ってきてっつったの。」 どうやら聞き間違いではなかったらしい。 「えーと、、、車の免許は取ったんだから、原付きのバイクならもう乗れるんだが?」 「ダメ!それじゃ!意味無いから!」 「へ?なんで?」 「な、なんででもいいでしょ!いいから、とにかく、すぐに取ってこいっての!いい?わかった!?」 相変わらず理不尽な態度で人にモノを頼むヤツだ。もうちょっと可愛げのある頼み方ができねーもんかね、コイツは。 「、、、てゆーかさ、俺、バイクとか持ってねーし、買う金もないっつーのに、何でわざわざバイクの免許なんか取らなきゃいけないんだよ?」 「沙織がバイクを譲ってくれるって言ってんの!」 「沙織が?なんで?」 「沙織のお姉さんのバイクが使わないままになってるから、譲ってくれるって。」 「じゃなくてだな。そもそも何で沙織が俺にバイクを譲ってくれる、なんて話になったんだ?」 「は?イチイチそこから説明しなきゃいけないワケ?」 「あたりまえだ!はいそうですか、で、取りに行くようなもんじゃねーだろ!金だってかかるんだしよ!せめて理由くらいちゃんと説明しろっての!」 「はいはい、ったく、しょうがないなぁ。じゃあ、ちゃんと説明したげるから、あんた、お茶とお菓子持ってあたしの部屋に来てよ。」 「なんでだよ!」 「だから、説明してあげるからって言ってんでしょ?」 「じゃなくて!なんで俺がお茶とお菓子を持っていかなきゃいけないんだよ!逆だろ!普通!」 「え?だって、可愛い妹があんたにお願いしてあげるっつってんだから、手土産のひとつくらいとーぜんっしょ?」 「日本語がおかしいだろ!」 お願いってのは、いつから『してあげる』ものになったんだよ!? 「うっさいなぁ。じゃあ、あたしがお菓子用意するから、あんた、お茶入れてよ。」 、、、。 はたしてこれを、一緒に手伝うようになった分だけマシになった、と喜んでいいものなのだろうか? 「ったく、お茶くらい自分で入れろっての。」 そんな文句をブツクサ言いながらも、桐乃と一緒にキッチンに向かう俺だった。 「で?どういう経緯でそういう話になったんだ?」 桐乃の部屋に入っていつもの座布団に座り、入れてきた紅茶を一口飲んでから問いかけると、 「はむ。ふぇいいっへ?」 と、クッキーをくわえながら、桐乃がそう聞いてくる。 「沙織がバイクを譲ってくれることになった経緯だよ!」 自分で話しといて、忘れてんじゃねえよ。 「むぐむぐ、、、っん。えーっとねぇ、、、こないだ池袋でぇ、、、」 ------------------------------------- 「へへへー、どう?」 「ぐぬぅ、、、。た、確かにお兄ちゃんは車の免許を持ってないから、こんな写真は撮れないです、、、。でもでも!ほらっ!コレ!見てくださいよ!」 「んー?写メ?どれどれ?、、、なっ!、、、な、、、ん、、、だと、、、!バイクで一緒に、二人乗り、、、だと、、、!?」 「ふふーん、どうです?確かに桐乃ちゃんの写真の先輩もシスコンだと思いますけど!それはあくまで助手席に座らせてるだけの話!」 「ぐ!」 「その点、ウチのお兄ちゃんなんて、妹とくっついて二人乗りですよ!これはもう、ウチのお兄ちゃんの圧勝ですね!今日は!」 「ぎにに、、、。」 ------------------------------------- 「、、、ってワケ。んで、」 「いや、、、その前にだな、、、。お前らはいったい何を競いあっとるんだ?」 「え?どっちの兄貴がシスコンかの対決だけど?」 「くだらねぇ!」 しかも『今日は』って、いつもそんなことやってんの?おまえら?どんだけブラコンなんだよ! 「は?どっちの妹が可愛いかで競いあってたあんたらに言われたくないんですケド?」 、、、。確かにそうですね、はい。 「それにそれに!帰りにせなちーのお兄さん、バイクでせなちーを迎えに来たんだよ!カッコよくない!?」 、、、さすがだな、赤城。友達と遊んでた妹を、わざわざバイクで迎えに行くとは。 まぁ、あいつのことだから、『真壁ごときに大切な妹を迎えになど行かせん!』とか言ってそうだけど。 「えーっと、、、じゃあ、俺もおまえを車で迎えに行けばいいってことなのか?」 「は?あんた車なんか持ってないじゃん。」 「だから親父の車で、、、」 「ありえないってーの!向こうはカッコいい自分のバイクで、こっちはお父さんに借りた車とか!」 「ぐ、、、。」 しかたないだろ!貯めてた貯金はぜんぶ卒業式の日に使い果たしちまったんだからよ! だいたい、大学に入ったばっかりで自分の車に乗ってるやつなんてそんなにいねーっての!普通! 「んでさー、アキバであいつらと遊んでる時にその話をしたらさー、、、」 ------------------------------------- 「、、、ってなカンジで、せなちーのお兄さん、バイクで池袋までせなちーを迎えに来たんだよ!カッコよくない?」 「そうかしら?」 「大勢の人の前で颯爽とバイクで登場して、ヘルメットをせなちーに渡して『ほら、行くぞ』だって。なんかドラマみたいじゃん!」 「だったらあなたも、あの人に車で迎えに来てもらったらどうなの?」 「いや、あいつ、車なんか持ってないし。それに、車で迎えに来てもらうくらいだったら電車で帰ったほうが早いっての。」 「相変わらず素直じゃないわね。」 「なんか言った?」 「別に。」 「ふむ、、、それなら、京介氏にもバイクの免許を取ってもらったらいかがでござるか?」 「は?」 「きりりん氏が『お兄ちゃん、お願いっ♪』と萌えキャラっぽく頼めば、京介氏はすぐにでも免許を取ってきてくださると思いますが?」 「するかっ!」 「というか、あなた、本当は免許を取ってきてほしいのでしょう?」 「ち、違うっての!」 「だいたい、今の話を聞く限り、どこをどう聞いてもそういう結論にしかならないと思うのだけれど?」 「う、うっさい!」 「まぁまぁ。でももし、京介氏がバイクの免許を取得なさるのであれば、拙者の家にあるバイクを1台、提供させていただいてもよいのでござるが?」 「え?なんで?」 「いやなに、拙者の姉が昔使っていたバイクが何台も家にあるのでござるが、最近は全然乗らずじまいで。それでひたすらメンテナンスだけをやっている状態で、困っていたところなのでござるよ。」 「そうなの?」 「はい。ですから、京介氏にメンテナンスしていただけるのであれば、無期限で1台貸し出ししても良いのでござるが、いかがですかな?」 ------------------------------------- 「マジか!?そーゆーことなら、頑張ってバイクの免許取りに行くっきゃねーな!」 「でもやっぱ、あんたには痛チャリのほうが似合ってるかもね。」 「嬉しくねぇ!」 「けどあんた、最近、普通の自転車に乗ってたことあったっけ?」 「ぐ、、、。た、確かに最近、痛チャリにばっか乗っているような気はするが!断じて好きで乗ってるワケじゃねぇ!」 「とか言って、けっこー気に入ってんじゃないのーw?」 「んなワケあるか!」 「まぁ、別にどっちでもいいんだケドー。つーか、頼んどいてなんだけどさー、あんた、取れる自信あんの?バイクの免許?」 「ふっ、なめんなよ、桐乃。すぐに取ってきてやるぜ!」 ビッと親指を立てて見せる俺。 「あっそ。ま、せいぜい頑張ればぁ?」 そう言って、ぷいっとそっぽを向く桐乃。 モノを頼むヤツが言う台詞じゃねぇだろ?それ。 まぁ、翻訳すると『じゃあ頑張って早く取ってきてよね』ってことなんだろうが。 「んで?」 「は?なに?なんかまだあるワケ?」 「『お兄ちゃん、お願いっ♪』は?」 「す、するかぁぁぁぁっ!」 ------------------------------------- で、時は流れて一ヵ月後。 キーンコーンカーンコーン。 『きりのー、じゃあまたねー。』 「うん、ばいばーい、ランちーん。」 ドドドドド、、、キキーッ、ヴォン、ドッドッドッ、、、。 「うぇ?な、なに?」 「よう、桐乃。」 ヘルメットのシールドを上げて声をかける。 「え、、、?も、もしかして、あんた、京介?」 「他の誰に見えるってんだよ?」 「そ、それ、、、?」 「ああ、沙織のバイクだよ。」 「き、昨日はなんも言ってなかったじゃん!いつのまに免許取ったワケ!?」 「へへ、こないだ。おまえを驚かそうと思って黙ってたんだよ。」 『なーに?きりのー?もしかして、彼氏ー?』 「や、えと、あの、、、。」 『かっこいー!さすが桐乃の彼氏だねー!』 『ねー、似合ってるよねー。』 「あ、あはは、、、そ、そう?」 「ほらよ。おまえのメット。」 「あ、う、うん。」 『いいなー。』 『わたしも彼氏に迎えに来てもらいたーい。』 「うう、、、恥ずかしすぎる、、、。」 「なんか言ったか?」 「う、うっさい!は、早く出せってーの!」 そう言って俺のメットをぺちぺち叩いてくる。 「へいへい、分かった分かった。じゃあ、しっかりつかまってろよ?」 「わ、分かってるっての。」 ------------------------------------- そして、近所の公園まで帰って来たところで、桐乃を降ろすために一旦バイクを止める。 バイクの件は親父にも説明してあるのだが、さすがに制服で二人乗りなんかしてるところを見られたら怒られちまうからな。 「あ、あんたねぇ、、、。」 「ん?どうした?」 「ど、どうした?じゃないっ!ったくもう、いきなり学校まで迎えにくんなってーの!びっくりしたじゃん!」 「へへ、どうだったよ?初めてのバイクの乗り心地は?」 「恥ずかしすぎるっての!あーもう、、、あした学校で何て言おう、、、。」 「普通に兄貴に迎えに来てもらったって言えばいいんじゃねーの?」 「簡単に言うな!ブラコンだって思われちゃうじゃん!」 「そーかぁ?」 ブラコンだってバレちゃうじゃん!の間違いじゃね? 「そーなの!あーもー、いーや、彼氏ってことにしとくから!」 「いいのか?それで?」 「仕方ないじゃん!」 「まあ、俺は別にいいけどよ、、、。」 「だからあんた、今度からちゃんと迎えに来てよね!」 「は?なんで?」 「い、一回迎えに来ただけだったら、あたしがフラれたみたいに思われちゃうじゃん!だからちゃんと続けろってーの!」 「ちゃんと続けろって言われてもな、、、。俺だって大学があるんだから、毎日迎えになんて来れないぞ?」 「ま、毎日来るつもり!?どんだけシスコンなワケ!」 「おまえが続けろっつったんだろ?」 「それはそーだけど、、、。さすがに毎日は恥ずかしすぎるっての。」 「じゃあ、どうしろってんだよ?」 「え?えっと、、、えっと、、、じゃ、じゃあ、迎えに来て欲しいときにメッセするから、そんときに迎えに来てくれる?」 「ったく、しょうがねえなあ。わかったよ。ちゃんと迎えに来てやるよ。」 「ホントにいいの?」 「ああ。」 「ぜ、ぜったい?ほんとに、ほんと?」 「絶対の絶対。本当に本当に本当だ。」 そんな懐かしいやりとりのあと。 「へへ、、、約束だかんね。」 嬉しそうに桐乃が笑う。 やれやれ、赤城のことを笑えなくなっちまったな、俺も。 でも、妹のこんな笑顔をみたら、兄貴なら誰だってそうしてやりたいって思っちまうんじゃねぇかな? ただ、それを素直に言葉や態度にできるかできないか、という違いはあると思うんだけどよ。以前の俺と、今の俺みたいにな。 「でもよ?」 「なに?」 「それで、もし兄妹だってバレちまったら、なんて言い訳するつもりなんだ?」 「う、う~ん、、、。」 腕を組んで考え込む桐乃。 「おまえ、ウソがヘタなんだからよ。普通に兄妹だって言っといたほうが、いろいろボロが出なくて良いんじゃねえか?」 「ん~~~でもなぁ~~~~。」 、、、。そんなにブラコンだって思われたくないのか? 「ん~~~~~。」 「、、、桐乃?」 頭を抱え込んだ桐乃に近づいたその瞬間。 「んんん、、、ん!ひらめいた!」 バッと桐乃が顔を上げる。 あぶねぇ!危うく桐乃の頭に顎をぶつけるところだった。 幸い、そうはならなかったのだが、かわりに、鼻先がぶつかりそうになるくらい近くに桐乃の顔が迫る。 「ななな、なにをだ?」 動揺してあせりまくりながら思わず仰け反る。くそっ、どもっちまったじゃねーか! い、いきなり目の前に可愛い顔を見せんじゃねーよ!ドキッとすんだろ! 「ふひひ~。聞きたい?聞きたい?」 そんなことは気にも留めずに、嬉しそうにはしゃぐ桐乃。 ウッゼぇ! 昔の俺なら、そう考えるところだな、たぶん。 でも今では、この笑顔を見て、こっちまで嬉しくなってくるんだから、不思議なもんだ。 「あ、ああ。いったい何をひらめいたんだ?」 俺は素直に聞き返す。 「へへへ~、しょうがないなぁ♪じゃあ、教えたげる♪」 桐乃も嬉しそうに答えてくる。 「もし、、、もしバレちゃってもさ、、、へへ、あんたがあたしの彼氏のフリをしてたフリをすればいいんじゃん!」 「フリをしてたフリ?」 「そう!あたしが彼氏を作りたくないから、あんたに彼氏のフリをしてもらってた、ってコトにすんの!そしたらバレても関係なくない!?」 、、、なるほど。 バレなければそのまま彼氏として、バレても彼氏のフリを続ける兄貴として。 どっちにしても彼氏として振舞い続けておけばいいってことか。 へっ、なかなかどうして、よく考えたもんだな。 「良いんじゃねーか?それ?」 「でしょでしょ!」 お互いに満面の笑みで。 「「ひひひひひ。」」 ------------------------------------- 「うし!じゃあ、帰るか。」 「うん!あ、そーだ!チョット待って。」 「ん?」 ぱしゃ。 「へへへ、初めての二人乗り記念。」 「、、、前にチャリで二人乗りしただろ?」 「バ、バイクでのって意味で!だいたい、あんなんじゃ、思い出にはなっても、記念になんかできないし!」 「まあ、確かにな。あんときは補助輪付きの超恥ずかしい痛チャリだったからな。」 「そうそう、あんたが教会に来たときに、みんなの前で『兄なんで。』とか言う羽目になったり、信号待ちで車に乗ってた親子に『見ちゃダメ!』って言われたりして、すっごい恥ずかしかったんだからね!おまけにあれからランちんにまでからかわれるようになっちゃったし!」 「最後のは俺のせいじゃない気もするが、、、。でも乗ってたら慣れただろ?」 「慣れるかっ!」 「そうか?俺は慣れたけど?」 「慣れんなっ!さすがに引くってーの!はっ!まさかあんた、これを痛バイクにする気じゃないでしょーね?」 「するわけねーだろ!慣れたってのは、あくまでもそんときだけの話だっての!御鏡と一緒にすんじゃねーよ!」 「だよねー。あたしもチョー欲しかったけど、さすがに普段乗ったりはできないかんねー。」 欲しかったのかよアレ!?さすがに引くってーの!はっ!まさかこいつ、そのうち痛チャリを買って俺の部屋に飾ったりするんじゃないだろーな!? 一瞬、有り得ない、、、いや、有り得なくもない考えが脳裏をかすめる。 、、、口に出さなかったのは賢明だったかもしれん。 『するワケないでしょ!』って答えじゃなくて、『その手があったか!』って答えが返ってきていたかもしれんからな。 「てゆーか、あんときのあんた、自転車漕ぐので精一杯で、それどころじゃなかったもんねー。来る途中でコケたとか言ってたし。」 「ああ、そうだったな、確か。あんときは、ぜってー間に合わせるって、必死だったからな。」 「でも加奈子たちのライブには間に合わなかったじゃん。」 「う、、、。で、でも、いちばん見たがってたクラリスのライブには間に合っただろ?」 「まーね。、、、へへ、嬉しかったな、あんときは。」 不意に出てきた素直な言葉とその笑顔に、思わずドキッとしちまう。 「、、、ライブ、楽しみにしてたもんな、おまえ。」 「うん、ライブ見れたのも嬉しかったけど、、、」 「けど?」 「、、、な、なんでもない。」 「?」 「なんでもないっての!そ・れ・よ・り!」 「?」 「せっかくバイクの免許を取ったんだから、今度どっか連れてってよ!」 「あ、ああ、そーだな。じゃあ、今度の休みにでも、どっか出かけるか?」 「うん。」 「決まりだな。んじゃ、そろそろ帰るか?」 「そだね。」 そして、バイクを押しながら、桐乃と一緒に歩き始める。 「ねぇ、、、。」 「ん?」 「あんたは、あんとき、どんなこと考えてたワケ?」 「え?あー、忘れちまったよ、そんなこと。」 「ホントにーw?」 「ああ。あんとき、どんなこと考えてたかなんて覚えてねーよ、さすがに。でも、まぁ、どんなこと考えてたかは想像つくけどな。」 「へぇ?どんなこと?」 「、、、なんでもいいだろ?」 「言いかけてやめんなっての。」 「おまえも言いかけてやめてただろ、さっき?」 「そ、それはそれ!これはこれ!」 そんな妹の態度に、思わず、ぷっ、吹き出す。 やれやれ、、、相変わらずな妹様だな、まったく。 「な、なに笑ってんのよ!」 「別に。あんとき考えてたこと、ね。」 これまで自分自身の行動を『妹だから』とか『兄貴だから』とか、いろいろ理由をつけて考えてきたんだけどさ。 「それはさ、、、」 そんなのは全部、後付けの理由でしかなくて。 「それは?」 本音のところは、結局---。 「、、、おまえの笑顔が見たい、ってことかな。」 「っ、、、!、、、こ、こ、こ、この、シスコン!マジ顔でなに言ってくれちゃってんのよっ!」 真っ赤になった桐乃が大声でまくしたてる。 「うっせ。おまえが聞いてきたんだろ?」 「ふん!このシスコン!、、、シスコン!シスコン!シスコンっ!」 そう言いながらちょっとだけ先回りして振り返り、べーっ、と舌を出す。 「悪かったな!何度も言わなくったって分かってるっての!」 俺はバイクを押しながら、そう言い返す。 「ふん!あんたが恥ずかしいこと言うからでしょ!」 「へいへい。」 そんなことを言い合いながら、俺がそばまでたどり着くと、 「ったくもう。いきなり言うなっての。」 そう言って妹はまた、となりに並んで一緒に歩き始める。 そうやってしばらく並んで歩いたあとで。 「、、、、、、、、、、、、、、、でもね。」 少し間をおいて、彼女は小さく、そう呟いて。 バイクを押す俺の腕に、そっと自分の腕を絡ませる。 「っ、、、!」 「あたしもね、、、。」 あのときの光景を思い出すように、そっと目を閉じて---そして、ゆっくりと言葉を紡いでいく。 「あたしも、、、ホントに嬉しかったよ?、、、あんたがあたしを、教会まで迎えに来てくれて。」 「っっっ、、、、、、!!!」 そう言って、顔を上げて、照れくさそうに優しく微笑む。 「へへ、、、ありがとね、兄貴。」 そんな桐乃の笑顔を見つめながら。 きっとあのとき思ったのと同じように。 俺はまた、こう思うのだった。 俺の妹がこんなに可愛いわけがない、ってな。 ------------------------------------- それからしばらく経った、とある休日。 沙織からの連絡を受けてアキバにバイクでやってきた俺たちは、いつものようにレンタルルームに集まっていた。 少し遅れて沙織がやってくる。 「いやぁ、お待たせし申した。」 「遅かったじゃん。ねぇ、今日はここでなにすんの?」 「いやなに、今日はちょっとした鑑賞会をしようかと思いましてな。」 「鑑賞会?なんの?」 「むふふ、ちょっとばかり準備を致しますので、しばしお待ち下され。黒猫氏、これを。」 「ふふふ、これが闇の記憶を封印せし魔導具ね。はたしてどんな記憶が刻まれていることかしら。」 そんな邪気眼全開の台詞を口にしながら、黒猫は沙織からなにやら受け取ってパソコンにセットしたあとでキーボードを操作する。 「ふっ、これで全てが白日の下に映し出されるわ。さあ、その闇の記憶を呼び覚ますがいい!」 ノリノリだな、あいかわらず。 切り替わったプロジェクタの画面に目を向けると、地図と点線が映し出されていた。 「?これは?」 「おや?お分かりになりませぬか?」 「いや、地図ってのは分かるけど、この点線はなんなんだ?」 「ああ、なるほど。言い忘れておりましたが、あのバイクにはドライブレコーダーが付いておりましてな。」 「それで今日は、きりりん氏と京介氏のバイクデートコースを皆で堪能しようね会を」 「「するなぁぁぁぁっ!」」 Fin ----------
https://w.atwiki.jp/darum/pages/39.html
#blognavi 構造改革特区:「原付き2人乗り」申請 神奈川県逗子市 制度の悪用かと・・・ 「子供の学校の送り迎えなどに車を使わず、渋滞解消になる」と効果を強調する。 つまりですよ。子供を後ろに乗せることが目的だと。 事故って死ぬで。 最近は自転車ですら二人乗り禁止を呼びかけてるのに。 (まぁ、俺は3人乗りで育ちましたがw) しっかし警察もユーモアなコメントだよな。 神奈川県警逗子署の中西康人署長は「喜ぶのは暴走族だけですよ」と苦りきった表情で答えた。 あ、でも 「6月までの半年で管内の交通事故151件のうち、原付きの事故は23件、うち1件は死亡事故だった。リミッターは緊急時にかえって危険ではないか」と市に疑問を投げかける。 つまり、時速30Kmは危ないと。 公のコメントでよくこういうことがいえますな 警察だけに低脳なだけか? カテゴリ [社会] - trackback- 2005年06月28日 14 08 06 名前 コメント #blognavi
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/270.html
894 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 22 03 10 ID Av5FGjqn0 自転車で二人乗りなんてシーンが欲しいな。 922 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 22 52 32 ID fmjn3kMqO [11/11] . 894 『いま、鍵あけるね』 あたしは外に出る。 「よう・・・あ、あれ、ソフトがない」 「どういうことよ、それ」 「・・・ああっ、途中のコンビニで飲み物買った時に置き忘れた。待ってろ、すぐ取りに戻る」 「待って、あたしも行く。乗っけてって」 「分かった、乗れよ。 ちょっと待て、それじゃ寒いぞ」 兄貴は自分の上着をあたしにかけてくれた。 「しっかりつかまれよ」 兄貴とあたしの自転車は夜明け前の道路を進む 「終電なくなってさ、でもなんとかゲーム届けたくてさ、そしたらさ 自転車借りることができてさ、凄いよ」 「まさかゲームが朝までに届くなんて、まだ夢みたい」 自転車は坂道に差し掛かる。 「ねえ、降りようか」 「いいよ、もう少しだから」 「見栄はるなんてばかじゃん、あたしだって、アンタの役に立ちたいんだから」 そう言ってあたしは降りると自転車を押し上げる。 「分かった、頼む」 どうにかこうにか坂道を登りきって、あたしはもう一度自転車に乗る。 見晴らしのいい丘の上のコンビニに到着。幸いにもエロゲは店に保管されてた。 「もうすぐ夜明けだな、おっ、朝日が上る、せっかくだから見てこうぜ」 「うん、とても綺麗・・・」 どうしよう、兄貴への想いがあふれて止まらない・・・ 「ねえ、兄貴。聞いて、あたし、あたしね」 「桐乃、おまえのことが好きだ」 「ちょ、兄貴何言ってんの・・・」 「今度二人きりになったら言おうと思ってたんだ。桐乃が好きだ」 「・・・あたしも、兄貴が好き、大好き」 朝焼けの中で、兄貴があたしを好きになってくれた過程を聞いた。 エロゲーのセーブデーターの中でたくさんの時が止まっている 963 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 01 18 52 ID 817A9waY0 [1/3] オリジナルサイズ
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1645.html
818この名無しがすごい!sage2011/02/08(火) 19 37 19ID rGHjMV/v この時期は自転車の二人乗りも寒いだろうなあ キョンの背中にぴったりくっついてたりしたのかな 849この名無しがすごい!sage2011/02/10(木) 01 10 14ID 9/ykgHH/ 818。こんな姿が頭に浮かんだ 「なんだか、中学の頃の事を思い出すねぇ・・・・」 「ん?何だよ、佐々木。やぶから棒に。」 「くっくっ・・・いや、なに。受験の頃を思い出してねぇ・・・」 「・・・・・ああ・・・・そういや、あの頃もこれぐらい寒かったよなぁ・・・」 「そして・・・・あの時のように、キョン・・・・君の背中は、あったかいね・・・・・」 「・・・・・佐々木・・・」 「ん?なんだい?キョン。君も少し感傷的な気分になったのかな?」 「・・・・俺の背中が暖かいのはだな、その・・・あの時と同じように俺もお前の温もりにドキドキしてるからであってだなぁ・・・」 「・・・・・・え・・・・・?」 「だから!!・・・・その・・・・・そういうことだよ」 「・・・キョン、今更、女の子扱いかい?」 「・・・・迷惑か?」 「ううん。嬉しいよ、僕の事をそんな風に思っててくれたなんて!迷惑だったら、こんなに抱きつかないよ!」 「佐々木・・・あの時のようにお前は、柔らかいな・・・・」 「・・・・キョン・・・・」 「いや、あの頃より、出るものがでてきたというか・・・・」 「・・・・・・・え・・・・・?」 854この名無しがすごい!sage2011/02/10(木) 19 30 15ID FJjwfmwX 851ありがたう ということで 846 849乙でし ところで冬服の上からも感触がわかるものなのだろうか……はっ!?もしy 855sage2011/02/10(木) 21 17 45ID apYmOgal 冬服の上からはわからないの? 856この名無しがすごい!sage2011/02/11(金) 09 41 47ID /I4i7BBu 855 「う~さび~」 と、口を突いては出たものの、剥き出しの顔や手に当たる風こそ乾燥も相まって冷たく感じるが、体の内側から熱が沸いて来るため実際さほど寒いわけではない。 ましてや背中には毛布以上にあったかいカイロを背負ってるようなもんだ、走ってるうちに軽く汗すら滲み出す。 むしろ問題は佐々木の方であろう。いかに正面からの風は俺の体がガードしてるといえ、寒風吹きすさぶ中、自転車の荷台でサドルに掴まり続けねばならんのだ。 「佐々木、寒くないか?」 「心配は無用だよ。女性は子供を胎内に宿し育てるという性質上、皮下脂肪が男性のそれに対して厚く、寒さには比較的強いんだ」 ったく、強情っぱりめ。本当に寒くないやつが、背中にぴったりと体を押し付けてくるかっての。お陰で女性特有の、うちの妹にはまだまだ備わってない柔らかさが丸わかりだ。感触を楽しめるほどじゃないが。 二人の間は、推定6着……いや胸の部分に限っては更にもう一着か?の衣類によって隔てられている。ましてや背中は人体で最も触覚が鈍い場所だ、 突起どころか二つに分かれてるかどうかの区別すらままならないのが残念だと思うのは思春期真っ盛りの男子中学生としては当然の感想だろう? 一計を、案じてみた。 「佐々木、俺暑くなってきたから、塾に着くまでそれ預かっといてくれ。何なら着ててもいい。多少汗臭いかもしれんが」 「え、ちょ、キョン……」 両者を隔てるものあらば、無くしてしまえばいい。即ち、信号待ちで停車した隙に上着を脱ぎ、佐々木に手渡したのだ。 思惑通り佐々木はやや戸惑いつつも袖に手を通し、前のボタンがまだ閉じられてないのを見計らって俺は再び自転車を漕ぎ出した。 背中の感触より、顔のほてりの方が気になったのは言うまでもない。
https://w.atwiki.jp/raisyo/pages/303.html
対戦闘ヘリ戦:Mi-24A メタルギアソリッド ピースウォーカー/攻略に戻る ■カタラタ・デ・ラ・ムエルテ ヘリから兵士が下りてくるので物陰に隠れ、敵のミサイルに注意して倒していきましょう。 敵兵投下の際に、地面に下りる前にロケランを打ち込むのをオススメします。 『いくぞー』『ミサイル準備』の声を聞けば避けやすいです。 ヘリの赤い部分が弱点です。 最終的に隊長がでてくるので倒せば勝利です。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/eatlead/pages/32.html
僕とスナイパーと魔法使いと戦闘ヘリ、サブタイトル長っ! まずは狙撃をする事になる。どっかで見たような狙撃銃だけど、そんな事よりもビルの援護が優先だ! 狙撃マシンを覗くと画面右上にキルレートが表示される。大きい方がビル、小さいのが倒さなければならない奴の量だ。 状況としては青白く光ったビルが左奥におり、右下と左下から敵NPCに包囲されている。 ビルも自身の攻撃でNPCを若干撃破してくれるが頼りすぎるな!モタモタしているとすぐにやられるので見つけ次第NPCの頭をぶち抜くんだ! 小さいキルレート分のNPCを撃破すればとりあえず援護成功になる。(ビルが撃破した分もカウントされる) QAのワインポイント・アドバイス ビルを狙う敵は、身を隠す為に必ずどこかで足を止めるわ。 マットが使う狙撃銃は強力だからどこに当てても一撃必殺よ。超ハザードでもね。 走っている敵に当たらない場合は、相手の移動するちょっと先を狙う「偏差射撃」を試してみて! マット・ハザードの「お悩みハザードタイム!」 Q ちょっと兄ちゃん兄ちゃん、コマンドっちゅー奴がえらいコッチコチで硬すぎやねんけど、どないかならへん?こうポキっと…(30代/大阪府民/男) A 兄ちゃん兄ちゃん気安く言うな!目には目を、歯には歯をだ。奴らが落とす水鉄砲に持ち替えて攻撃してみろ!水鉄砲だからって侮るんじゃない! ※もし間違ってる点やもっといい攻略法があれば加筆・修正をお願いします。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/83452/pages/11143.html
1 唯憂 2011/02/01 http //raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1296557311/ 戻る 名前 コメント すべてのコメントを見る 憂の返事がとっても素敵。つよい -- (名無しさん) 2020-01-15 18 56 56 文としても綺麗。 -- (名無しさん) 2015-01-09 01 00 10 詩的な唯憂。 ありです! -- (名無しさん) 2014-05-07 01 16 25 こういう甘すぎない少女マンガ的な展開もありだな -- (名無しさん) 2012-08-07 09 56 00 憂を梓に…と -- (名無しさん) 2012-06-11 19 51 46 自転車に乗った憂が車にひかれる話があったので、 同じ結果にならずに良かったよ。 -- (名無しさん) 2012-06-09 22 11 46 こういう雰囲気いいね。まさに百合 -- (名無しさん) 2011-10-29 20 36 49 いいな -- (名無しさん) 2011-10-29 00 54 36 どんだけ深読みするんだYO -- (名無しさん) 2011-04-12 08 10 09 紬が勘違いして唯と二人がかりで憂を襲う話かと思ったら本当に自転車の話だった -- (名無しさん) 2011-02-04 09 34 20
https://w.atwiki.jp/83452/pages/11145.html
秋の風が、おだやかに唯たちのそばを流れる。 ペダルをキコキコと踏む音が、たえず憂の耳に届いている。 ゆらゆら揺れる自転車の後輪の上、憂は姉を抱いていた。 交差点に差し掛かり、ブレーキの悲鳴が響く。 見えない力がはたらいて、憂は唯の背中になお強く押しつけられる。 必要以上の安心感が、かえって憂の胸を潰していった。 唯がペダルを逆回りに踏みつける。 空転し、頂点にやってきた右のペダルに足をのせる。 やがて信号が青色を灯して、再び自転車が進み出す。 きぃこ、きぃこ、きこ、きこ。 重たげな歩調から、徐々に駆けるように。 姉と引き離されるような感覚がして、憂は姉の腹に回した腕に力を込めた。 走り出せば離れゆく。 止まれば胸が潰れる。 憂は、姉をきつく抱きしめ続けた。 姉がブレーキレバーを握った時、どれほど苦しむことになろうと覚悟はできていたのだ。 スピードに乗った自転車が、坂道を下っていく。 冷たい風がつよく吹きつけた。 目を閉じて必死に姉を抱く憂とは対照に、 唯はひゅう、とわざとらしい口笛を鳴らした。 烈風となった秋夕の空気が二人を打とうとする。 自転車を縦に揺らしながら、唯は風を裂き、気持ちよさそうに叫んだ。 どれほど風が冷たくとも、自転車が不安定に揺れようとも、 唯は風の音を楽しみ、揺籃で安らいでいる。 だからこそ、憂は姉を離せない。 姉の後ろにいれば、何も恐ろしくはないのだから。 憂は再び、昨夜姉に言われた言葉を頭の中でそらんじた。 ―――― 唯「ねえ、憂」 憂「なあに、お姉ちゃん?」 唯「大事な話なの。ちょっとここに座って、聞いてくれない?」 憂「うん……どうかしたの?」 唯「んー。そうかも。どうかしちゃった」 憂「……?」 唯「驚かないで、怒らないで……それから、真剣に聞いてね?」 唯「わたし、憂のこと好きになっちゃった」 憂「へ……」 唯「ごめんね、急に。でも、冗談では言ってないよ」 憂「それはわかるよ……お姉ちゃんの目を見たら」 唯「ありがと。……それでね、憂の気持ちを聞きたいなって」 憂「……私は」 憂「えっと、う……んっと」 唯「すぐじゃなくていいよ、憂」 憂「わかった……ごめん。ひと晩だけ、考えさせて」 唯「うん。待ってる」 憂「ごめんね……思ってもみなかったんだ」 唯「それは私も同じだよ。びっくりしたんだから」 憂「……あははっ」 ―――― やがて坂道が終わり、平坦な道に戻る。 轍の残るあぜ道が脇に伸びるようになった。 風の逆巻く中、遠くに川の走っている音が聞こえる。 憂が鼻を鳴らすと、姉の髪の匂いにまじり、かすかに潮の香りがした。 ペダルをこぐ音はしない。 代わりに自転車のスピードは、だんだん落ちていく。 それでも憂は抱きしめた腕をゆるめない。 必ず大丈夫だと信じているのだ。 憂の姉に対する信用は、盲信とも言えた。 常識外の速度で走る自転車に乗せられて恐怖を感じたとしても、 ブレーキをかけずに口笛を吹く姉を強く信じ、抱きしめていた。 ただ、憂は自分のそれが些か盲目的であることも、多少なり自覚している。 それは裏を返せば、結果として不幸が訪れようとも、 姉を信じたゆえならば後悔しないという強固な意志の顕れでもある。 そして、だからこそ憂は決意したのだ。 海面が夕陽を乱反射し、眩しく輝いていた。 徐々にホイールが回る音がからからと虚しいように聞こえ始め、 風がおだやかに、静かにおさまりだした。 潮の匂いだけでなく、砂の匂いも分かるようになる。 とろとろ進む自転車がぐらりと揺れ、二人は同時に地に足をついた。 振り向いた唯に憂は笑顔をみせて、自転車を降りた。 ―――― 憂「お姉ちゃん」 唯「憂。答えは出た?」 憂「……あのさ」 唯「?」 憂「今からすこし、お出かけしない?」 唯「お出かけ? どこ?」 憂「坂を降りた先の海岸に行きたいんだ」 唯「坂ってあの坂かな……けっこう遠くない?」 憂「うん。だから自転車で行こう。お姉ちゃんが連れていって?」 唯「ん……うむ、いいでしょう! お姉ちゃんに任せなさい!」 憂「ありがと。じゃあ、早速行こっか」 唯「だね。あ、海行くんだから、もうちょっとあったかい格好にしないとね」 憂「あ、そっか。じゃあ上着……」 唯「私が取ってくるよ。あったかそうなの選んでくるからね」 憂「ありがとう、お姉ちゃん……」 ―――― 憂はやわ砂を踏み、姉の腕に抱きついた。 かちかち歯を鳴らす唯は、それでも微笑みをみせて妹の頬を撫でる。 太陽はほとんど海にひそんでしまっている。 既に背後は夜であった。 細かな砂が舞い上がっては吹きつけたが、 唯と憂は上着のフードを垂らしたまま、しぱしぱと海を見つめていた。 そうしているうち、やがて凪が訪れた。 二人の見ている海も黒い夜に染まり、さざなみの音がしじまによく響いていた。 憂「お姉ちゃん。」 姉の腕を抱いたまま、憂は言った。 憂「答えは出たよ。……けっこう悩んだ」 唯「……うん」 唯は夜空と海の境界を、見えるはずもないのに確かに見つめて頷いた。 憂「わたしはお姉ちゃんのこと、そういうつもりで見たことはなかった」 唯「そうだね。昨日もちょろっと言ってたっけ」 憂はそっと瞼を下ろす。 わずかに頷いたふうにも見えた。 憂「自分でよく考えてみて、気持ちをたくさん掘り返してみたけど」 憂「お姉ちゃんに恋したことは、やっぱりなかったと思う」 唯「そう……」 憂「でもね?」 抱きついていた腕から離れ、 憂は唯の目前に立った。 黒と黒を画す、黒色の境界線を見つめていた唯の視界に、 憂の瞳の色をした光がさした。 憂「私は、お姉ちゃんについていきたいって思う」 唯「憂?」 憂「お姉ちゃんが前に行くなら、私も一緒に前に連れていってほしい」 憂「お姉ちゃんが止まるなら、私も一緒に止めてほしい」 憂「お姉ちゃんが私のこと好きなら、私もお姉ちゃんのこと、好きになるようにしてほしい」 そこまで言って、憂ははにかんだ。 憂「……こんなこと望んじゃう程度には、私はお姉ちゃんのこと愛してるって思うんだ」 憂「だから決めたよ。私の気持ち……お姉ちゃんと付き合いたいって」 だらりと下がっていた唯の両手を握り、憂は小さく微笑んだ。 唯「う……い……」 唯の視界に映っていた光がにじんだ。 にじんで広がり、包み込むようになった。 頬をあたたかい滴が流れていき、くちびるに塩辛い味を感じた。 唯「憂ぃっ!」 唯は妹の両手をふりほどいて、憂の体に抱きついた。 憂「お姉ちゃん鼻水……」 苦笑して厭う憂の言葉にも唯はうまく反応をできずに、 喉を震わしながら憂をつよくつよく抱きしめ続けていた。 おしまい 戻る