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Twitterで公開されたSSを引用しています。引用元:桜瀬彩香氏Twitter(@kusurinomamono https //twitter.com/kusurinomamono)前 2021-05-04 見知らぬ街後 2021-05-13 我に返って… 徹夜 本日の更新は、お休みとなります。 代わりにこちらで、少しですが薬の魔物のSSを書かせていただきますね! お題は「徹夜」で! https //twitter.com/kusurinomamono/status/1390949691169275909 ネア 「…目がしわしわしますが、私は、絶対にこのお店のクッキーを買うのですよ」 「ご主人様…」 「一眠りしてから挑む予定でしたが、まさかのお仕事続きでした…むぐ、…ぐぅ」 「持ち上げていてあげようか?」 「…は!こ、これは私の我が儘なので、がんばりまふ!」 「持ち上げてあげるのに…」 ディノ 「ディノ、昨晩はきちんと寝ましたか?」 「…寝た」 「まぁ、寝台を使った気配がないのにです?」 「…寝た」 「ダリルさんから、ディノが困ったものを退治してくれたとお礼が来ていますよ?」 「…ご主人様」 「困った魔物ですね!朝寝坊するので、一緒にもう少し眠りましょう」 「ネア!」 ノア 「ありゃ、夜が明けたんだけど」 「…まだ書類が見付からないとなると、これはいよいよ会議が危うくなってきましたね」 「ぼ、僕じゃないよ!本当にココグリスの仕業だからね!」 「狐姿のあなたが追い回したせいで、慌てて開いている窓から飛び込んだと聞いていますが?」 「ごめんなさい…」 ヒルド 「…ヒルド、寝ていないのか?」 「失礼しました。昨晩は、ついつい編み物に集中してしまいまして…」 「休んできてはどうなのだ?今日であれば、ネア達もいるので、私のことは気にしなくていいのだぞ?」 「ですが、この法案についつは…」 「ただいま!僕が戻ったから、ヒルドは寝かせるよ」 エーダリア 「むぅ、さては徹夜したのですね?」 「気のせいだ。魔術書を読みはしたが、ある程度は寝ている」 「エーダリア様は、顔に出るのですよ?ヒルドさんに叱られる前に、回復薬などを…」 「おや、まさかとは思いますが、徹夜などされておりませんね?」 「…っ、…す、すまなかった。つい…」 ウィリアム 「徹夜か…。何日目かまでは数えていないが、十日目…くらいか」「す、すぐに寝て下さい!ええい、もうこの寝台でいいので押し込みますよ、ディノ!」 「ウィリアムを、押し込むのだね」 「ネア?!いや、さすがにこの寝台は…」 「ふぅ!寝かしつけました!」 「その子守唄は、昏倒だろ」 アルテア 「まぁ、徹夜の使い魔さんです?」 「おい、目元に触るな」 「ちょっぴりよれよれなので、子守唄か読み聞かせ絵本などを…」 「いいか、どっちもやめろ」 「朝食は、ディノとおかずフレンチトーストを焼きますが、食べますか?」 「…ったく。仕方ないな、寝る前に少しだけ付き合ってやる」 以上となります。 最後までお付き合いいただき、有難うございました! ▲up ページ登録タグ:薬の魔物SS
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とある部屋のとあるベッドの上。そこに、俺は眠っていた。 「ごめんね、キョン!」 そして、ハルヒは泣きながら謝っていた。 理由?それは今病院に居ることが関係している。そう。俺が居るのは病室のベッドの上だ。 俺は日頃からSOS団との毎日面白いと思いながら過ごしていた。それは偽りの無い楽しさだ。 だが同時にストレスを溜めていた。あれだけ毎日好き勝手に使われればそりゃ溜まる。 朝比奈さんや古泉も非常に溜まっているとは思うが中でも俺は特に酷いと自負できる。 そんなある日だ。俺はハルヒと喧嘩してる最中に倒れたのだ。診断結果はストレスと疲労の蓄積。 ハルヒにはストレスや疲労を与え続けていた自覚があったらしい。 起きるや否や抱きついてきて、こうして泣きながら謝ってきたのだ。 「ごめんね・・・ごめんね・・・」 謝罪の言葉のみを繰り返すその姿にはいつものような100万ワットの輝きの笑顔は無い。 暗く沈んだ泣き顔で、ただ壊れたCDのようにリピート再生し続けていた。 「良いんだ、ハルヒ・・・」 俺はその姿が見たくなくてただ頭を撫でてあやす。 「ごめんね・・・キョン・・・」 しかし、ハルヒはただ泣いていた。珍しいぐらいに泣いてた。 宥めても、ごめんね、しか言わなくなっていた。 「ねぇ・・・キョン。これからは私に何でも言って?私、何でも言う事聞くから」 その言葉にぞくりとした感覚が芽生えた。 唐突に脳内で発現したそれらは瞬く間に意識を乗っ取っていく。そして、 「・・・なら―――」 それが、俺とハルヒの歪んだ主従関係の始まりだった。 第一話「~鎖~」 あれから数週間後。 「最近、閉鎖空間が小さい物も含めてめっきり無くなりましてね」 古泉はいつもどおりの笑顔を浮かべている。最近、疲弊の色がぐっと減っているようだ。 それに比べりゃ、きっと俺の顔は疲弊しきっているいるのだろう。 「とても、疲れたような顔していますが・・・どうかしたんですか?」 あいつがそう尋ねてきた。 「別に・・・」 俺はそう答えて教室をちらりと見る。 そこにはいつも通りのハルヒが谷口を苛めていた。 その横で国木田が笑い、それを見る由良さんなどのクラスメートが谷口を哀れむように見ている。 でも、楽しんでいる。 あたかも、いつも通りであるかのように日常の映写機がカタカタ動いている。 1シーン、1シーンに変化の無い平和。 それが、偽りだとみんな知っているのだろうか。 知る由もないだろう。 だって、異常が表面上に浮かんでいないのだから。 SOS団部室も、教室も、授業中も、廊下も、校庭も。 何が違う?何も違わないさ。だから、誰も知らない。 帰路をハルヒ、長門と一緒に肩を並べて歩く。 長門のマンションが見えて、そこで手を振り分かれる。 途端に今まで笑顔だったハルヒから笑顔が消える。 二人沈黙したまま我が家とは比べ物にならない広さのハルヒの家へと入る。 ハルヒの両親は赴任中。つまりは、ここには二人しか居ない。 唐突に横をすり抜ける陰。ハルヒだ。 扉を開けて一足先に靴を脱いで俺の方向を向く。そして、座ってこう言った。 「お帰りなさいませ」 俺達は、歪んでしまった。あの病院で、全ては狂ったのだ。 ・・・・・・・・。 「・・・なら―――今度から、お前は俺の奴隷だ」 自分でも、何を言ったのか解らなかった。だけど、それがすぽっと口から出たのだ。 悪夢の言葉が。 「え?」 ハルヒも目を丸くして、信じられないような驚き方をしていた。 「何でも言う事聞くんじゃなかったのか?」 負けず嫌いのハルヒのことだ。どうせ、言うことを聞くさ。 今まで生意気な事をしてくれた分だけ仕返しをしてやろうか。 ・・・俺、今なんて事を考えていた!? なんて低く冷たい声だろう。なんて酷く恐ろしい考え。 これが俺なのか?これが。 「・・・解ったわよ」 ハルヒはぼそりを呟いた。駄目だ。このままでは全てが壊れる。 解っていたのに、止めたかったのに、俺の口からは思ってる事とは違う言葉が出ていた。 「口を慎め。俺は、お前の主だ」 俯いたその顔にすまんと言う事も出来ず。ただ次の瞬間に 「すいません・・・ご主人様」 そういわれた事に鳥肌を立てていた。それは背徳感情と入り混じった快楽。 あのハルヒに言われる。ご主人様と言われる。それが快感だった。 だが、そう言ったハルヒ上がった顔の表情を見て絶句した。 ハルヒからハルヒの色が失せていた。まるで除去されたかのように。 「私は、貴方の奴隷、メイドです・・・学校でも何処ででも、ご主人様に尽くさせてもらいます」 「いや、学校では今まで通りで良い」 「ですが・・・」 「良いから!!」 「解りました」 この判断は正しかったと言える。おかげで、日々混乱という日常が保たれているのだ。 混乱に混乱が混じれば、それは恐ろしいことになるからな。 ・・・・・・。 何故俺はあんな事を言った?何故だ?望んだから? なら何でこんなに後悔している?怖いから?何が怖い? 壊れたもの、全てが。日常が。もう壊れている。 だから、怖い。怖い。怖い。ひたすら、怖い。 あれから数日間、ずっと俺はご主人様と呼ばれ続けている。 ハルヒの家に居るのも、こいつが使用人ならば主人についていき世話するのが礼儀と言ってくるからだ。 流石に家族の前で呼ばれるわけにはいかないだろ?ご主人様って。 だから仕方なくこうしてハルヒの家に居るのだ。 「・・・どうしましたか?」 「っ・・・!」 驚いて、覗き込んできた顔から思わず目を逸らした。 いや、冷静であっても顔なんて合わせられない。ハルヒと顔を合わせれない。 どうすれば良い。今の俺達は何がおかしい? この関係がおかしいんだ。 ・・・そうだ。なら、戻れば良いじゃないか! まだ日常はそんなに壊れていない。まだ直せるはずだ。 何でこんな簡単な事を思いつかなかったんだろう。なんて馬鹿者なんだ、やれやれ。 「なぁ、ハルヒ・・・前みたいに戻らないか?団長と団員の関係にさ」 俺の言葉を聞いたハルヒは驚いたような顔をした。 でもすぐに首を横に振って悲しそうに微笑んだ。俺はその笑顔の意味が解らず混乱する。 だが次の言葉に、混乱は失せて代わりに闇を見た。 「私は、貴方の奴隷です。貴方より上には、なれないんです」 ・・・どうしてだ?なんて言った? 俺より上にはなれない?団長にはなれないって事か? じゃあ、戻れないのか?そんな馬鹿な。 ハルヒだったらこの言葉ににやりと笑って俺に今までの仕返しをするものじゃないのか? 俺はハルヒの眼を直視して、その表情を読む。そして理解した。 その目があまりにも真剣な色だったせいで俺は悟ってしまった。 駄目だ。もう、日常は壊れている。たったこの数日で。 表面上は元のまま、誰も知らない土台部分がぶっ壊れている。 やらなくてて後悔するよりやって後悔する方が良いとある奴は言った。 本当に、そうなのか? 「カバンと、コートをお預かりします」 成されるがままに俺はただ絶望に打ちひしがれていた。 あのハルヒが帰ってこない事に。そして、好きだった事に。 「ご主人様、いつまでも玄関に居ると風邪引きますよ?」 「・・・そうだな」 帰ってこない?いや、帰ってこさせるさ。 俺は”鍵”だからな。ただ、ジョンを復活させる訳にはいかない。 ジョンとしてではなく俺としてここに呼び戻さないといけないんだ。 決意と同時に涼宮宅、もとい現在の俺の宿へと入った。 俺の部屋は空き室だった場所だ。広さとしては十分である。 ちなみに俺の本家本元の家にはしばらく友達の家で長期的にお手伝いをすると言っている。 本当は、長期的なお手伝いをされているんだがな。 「さて・・・」 部屋に閉じこもってまず考える事は現在の状況の打破だ。 「まずは、どうしてこうなったかだな・・・」 そんなの理由は一つで俺があんな事を言ったから負けず嫌いなハルヒが従った、という所だろう。 ・・・いや、だが妙だ。俺は喋りたくもないような事を喋ってた。 よく意思に背き、なんて事はよくあるがいくらなんでもあんなにスラスラとは口から出まい。 意思に従わない声帯。意思に従わない口。脳が従わせる事の出来なかったこと。 これは思い過ごしか。いや、可能性としてはあるのではないだろうか。 何らかの力が干渉したという可能性が。 そうすれば、今の状態に関しても言える。 何らかの力が働いていて、ハルヒが元に戻るのを、もしくはこの関係が戻るのを防いでいる、と。 では、考えられるパターンは。 ハルヒの力とか、インターフェースの力か。ビックリな未来の力や機関を用いてもこれは出来ないだろう。 問題はそれらの力の干渉を確認できるか。 「と、なるとアイツに聞くしかない」 長門へ電話をしよう。 つづく
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『恋と二号』 By水瀬 薙さん 一ヶ月が経った。 新しい世界。 ご主人様や愛紗たちと一緒に新しい生活。 最初は覚えることが多すぎて疲れた。 でも、ご主人様がいるから……うん、それだけで楽しい。 恋ことを見てくれる。 恋のことを可愛がってくれる。 それだけで恋は幸せ。 だから、この生活は楽しい。 友達は沢山できた。 学校に、いっぱいみんなが住むところがある。 みんなのご飯も、学校でいっぱい出してくれる。 新しい友達を連れてきても、恋が世話をするから用意してくれる。 みんなと一緒にいると楽しい。 楽しいことでいっぱい。 でも……一つだけ、哀しいことがある。 セキト。 恋の大切な友達。 一番大切な友達。 なのにセキトはいない。 どこにも、どこを探しても……セキトはどこにもいない。 哀しい。 セキトに会えないのは、とてもとても哀しい。 ご主人様に言うと、淋しそうな顔をして頭を撫でてくれる。 恋を抱きしめて、いっぱいいっぱい頭を撫でてくれる。 それは嬉しいことなのに、とても哀しくなる。 ぽっかり胸に穴が空いたみたいで、絞め付けられたように苦しくなる。 一ヶ月もセキトに会っていない。 どこにもいないから、恋はセキトと会えない。 段々段々、恋の胸に空いた穴が大きくなっていく。 すると段々段々、いっぱい苦しくなっていく。 ……そんな、ときだった。 セキトと似た友達に会ったのは…… ◇ 「は~~~~~」 自室のベッドにダイブしながら、身体に溜まった疲れを吐き出すように、肺の空気を全て吐き出した。 事実、疲れたから。 もっと言えば、今の今まで疲れるようなことが置き続けているから。 仕方ない、と言えばそれは仕方ないことだ。 なんたってこれは、俺、北郷一刀が望んだ全ての結果が引き起こしていることなのだから。 皆と一緒にいたいと願った、大きな望みの結果。 俺が皆と戻った新しい外史。そこは俺が通っていた聖フランチェスカがある、皆が知らない常識を基準とした世界。 そんな皆に世界常識や、学校の勉強などを教え続けてきた俺は、心身ともに疲れに疲れ、それでも楽しく幸せな毎日を送っている。 だけど、やはり休養というものは必要なわけで、今日みたいな日曜の昼は、一人でしっかりと休まなければならない。 なぜ、しっかり休むのが夜ではないかというと……毎晩毎晩毎晩毎晩夜這いされるわけで……据え膳食わぬは男の恥という言葉があるわけで……男の性というものがあるわけで……結果的に夜は疲れるわけで……うん、後は察して欲しい。察してください。 そんなわけで、昼は皆からの誘いを上手く躱しながら、ゆっくりと休養をとらなければいけない。でないと持たない。主に夜が。 鍵もしっかりと付けているからおっけ。 鍵をもし外側から開けようとしても、最近紫苑がピッキングもとい、本人曰く愛が成せる鍵開け技術を用いても攻略不可能だ。 なので俺は、ゆっくりと休養を取るため夜までダラダラベッドの中で寝るの―― 「……開かない」 だ……、と考えていた瞬間、ガチャガチャと扉を開けようとする音。そして声。 この声は、恋? 「壊れてる……? なら、壊す」 と、穏やかな声とは裏腹な、とてーも穏やかじゃない言い草。 って、 「れ、恋! 壊すな! 壊すな! 今開けるから!」 「ご主人様? 中にいる?」 「いるいるいるいる! いるから壊したら駄目だぞ! 壊れてないんだから!」 忠告はしたものの、いつ壊すかもわからない恋の行動。 本当に壊してしまう前に、迅速に鍵を開けなければ。 「……ふー。入っていいぞ、恋」 鍵を開け扉を開け、なんとか部屋の扉を壊されずに済み、恋を中に招き入れる。 この瞬間だけで精神力が削られた。星の海3ではMPが0になっただけで死ぬが、その理由、今なら痛いほどわかってしまう。 布団に腰をかけ、ようやく後ろにいる恋に振り返る。 と。 「…………」 恋は、一匹の犬を胸に抱えていた。 「れ、恋。その犬は……?」 またどうせ拾ってきたんだろうが、念のため聞いてみると、 「セキト二号」 なんて、当たり前のように答えが返ってきた。 俺は、その名前に思わず口を開く。 「セキト、だって?」 「…………(フルフルフルフルッ)」 言葉の復唱に、首がもげそうな勢い髪を揺らされた。 「セキト、二号」 「二号、か」 「…………(コクッ)」 今度は頷いた。 どうやら二号という単語は、是非とも必要なよう。 でも確かに、二号の名を冠せるほどに、その犬はセキトに似ている。 「で、そのセキト二号、どうしたんだ?」 「そこで…………会った」 「今絶対説明面倒だから省略しなかったか!?」 「……………………(フルフルッ)」 はい、素直なお答えごちそうさま。やっぱり中身を省略したか。 ……不意に、ドタバタと外が騒がしくなる。 「鈴々! あの犬は見つかったか!?」 「ううん。こっちにはいない! 愛紗のほうにはいないの!?」 「ああ。こっちにはいない!」 「う~~、あの犬め! 鈴々たちのお菓子を食べた怨み、絶対晴らしてやる!」 「そうだ! その粋だ鈴々! あの犬畜生めに思い知らせてやる!」 ……中身は、省略していないな。うん、本当に、ただそこで出会っただけだな。 怖いので中身は省略していないということで、俺はこれから恋と話したいと思う。 「それで、そのセキト二号をどうするんだ?」 「大切な友達」 そんなことは微塵も聞いていない。 「だから一緒に住む」 「住むって……ここって動物飼っていいのか?」 ……ふむ。まずはそこからの疑問に入ってしまうけど……うん、別にいっか。わざわざ聞きにいくのも面倒だ。 「まあ、恋がちゃんと世話をするんならいいけど……大丈夫なのか?」 愛紗とか鈴々とか愛紗とか鈴々とか愛紗とか鈴々とか。 なにやら必死こいて、お菓子を取られた怨みを果たそうと必死になっている武将二人。あの二人から、果たして守りきれるのか、恋は? 「大丈夫。セキト二号は大切な友達」 きっと俺の心意を察しないで大丈夫と言っている恋。 でも……うん。いいか、別に。 恋は新しい外史に来てから、セキトがいないことに相当沈んでいた。 皆がいるのに、とても大切だった友達がいない。その事実は、恋の心に大きな隙間風を作っていた。 それは日に日に大きくなっていく。 恋の淋しそうな顔を見ていると、それが痛いくらいに実感してきた。 だけど新しい恋の友達、セキト二号さえ恋の側にいればその隙間風も塞がっていくかもしれない。 いくら俺が側にいてあげても埋められなかった隙間。 それをこのセキト二号に託したいと思う。 ……まあ、皆にセキト二号を飼うことを言う際、若干俺が某二名により地獄を見せられるだろうが……恋が元気になるためならそれくらい安い物だ。きっと財布が軽くなるだろうが、そのくらい軽い。 「よし、それならセキト二号のことは後で皆に言っておいてやるから、ちゃんと世話するんだぞ?」 「…………(コクコクッ)」 パッと咲く、花のような恋の笑顔。 一見するとただ微笑を浮かべているだけに見えようが、恋にしたらそれは凄い笑顔だ。 「ありがとう、ご主人様」 瞬間、恋がセキト二号を下ろすなり、俺の身体にダイブしてきた。 「れ、恋!?」 セキト二号は犬なのに、猫のように頬同士を擦り合わせてくる。 あんなにも強いのに、筋肉の付が見られない華奢な女の子の身体。 ほぼ条件反射で背中に手を回し抱きしめてしまったが、それが裏目に出た。 数秒間の頬擦り後、すぐに口を重ね俺の口内を貪り始めた。 それから一分。 「っぷぁ!」 恋の味しかしなくなった口内。 いつにも増して積極的にことを行ってきた恋は、ただ一言。 「恋、ご主人様にお礼する。今日は恋が、ご主人様を気持ち良くする」 ……こんな真昼間からですか? こういうのは夜は実践、昼は研究というのがスター理論で成り立っているわけで、さすがの俺もこんな真昼間からやるのはあれかと…… いや、でも恋からだぞ? 恋からしてくれるって言うんだから、それを断るのは勿体無――改め申し訳ない。 今日の夜もどうせ夜這いされるのはわかっているから、今からやるのはきついんだけど……恋のキスにうちの息子が限界なわけで…… 「ぁ~~…………ありがとうございます」 こういうしか無いわけで、 「…………(コクッ)」 されるがままに、チャックが恋の手にかけられた。 同時、 「失礼します一刀……さ――」 「お兄ちゃ――」 二人が、くるわけで…… 「あ……」 そういえば恋が入った後鍵かけ忘れたと思い出すわけで…… 「…………」 気にすることなく恋はチャックを全開にするわけで…… 「わんっ!」 セキト二号が吼えるわけで…… 「か、か、か、か……一刀様! それはもう色々とお話があります!」 ……この後のセキト二号への怒りは一転、全てが全て、不条理な怒りと共に俺に向けられるのであった。 後に俺は語る。 あれは、完全なる修羅場だった。 そしてセキト二号への罰は、全て俺が払うこととなった。財布から。 「わんっ!」 恋のためを思えば……やっぱり安く……安く……やす―― 名前 コメント
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「今日はホント星が綺麗だね」 道重さんのお宅で夕食をご馳走になった後、あゆみんと2人で帰路の途中。 満天の夜空を見上げた私達は、思わず足を止めました。 天空一面に散りばめられた星々。 でも私は、その美しい瞬きに何か言い知れない胸騒ぎを感じたのです。 特に目についたのが、赤く燃えるあの星。 あれは……さそり座。サソリの火。 「!!?」 サソリの火がどんどん輝きを増して、私の視界に大きく迫ってきます。 そして遂には、身体の中に入り込んでくるような不思議な感覚。 これは……。 身体が、熱い!! 燃えるような熱さとともに、急激に意識が朦朧としていきます。 そして呼び覚まされるお方の記憶。 「ご主人様……」 ○ 「道重さん! はるなんが……! はるなんが!!」 黒猫を抱えた亜佑美が駆け込んできたことにより、さゆみ邸は騒然とした空気に包まれた。 「まずは落ち着いて、何があったか話してくれる?」 「帰る途中はるなんと星を眺めていたら、はるなんが急に意識を失って倒れて……。 今もそうなんですけど、はるなんの身体がすごく熱いんです! きっと高熱が出てるんだと思うけど、さっきまですごく元気だったのに なんでこんなことになったのか……」 さゆみの指示によって、テーブルの上に毛布を敷き、その上に春菜を寝かせる。 「ミャオミャオと、ずっとうわ言のように啼いててなんかすごい辛そう……」 「でもなんで猫の鳴き声なんやろ。まるで人間の言葉を忘れちゃったみたいやけど」 「ご主人様、ご主人様って、すごい哀しそうに呼んでるよ」 「まーちゃん猫の言葉解るの?」 「ううん、でもなんとなくそんな気がする」 「ご主人様って……。そういえば倒れる寸前もそんなことを呟いてた!」 周りを囲むようにして、みんなが心配そうに顔を寄せ合い春菜の様子を見守る。 「ご主人様か。……やっぱりね」 「やっぱりって、道重さんははるなんがなんでこんなことになったか 原因がわかってるんですか!?」 「みにしげさん! 早くはるにゃんこを助けてあげてください!! ずっとうなされていてこのままじゃ可愛そう!!」 「原因はだいたいわかったけど、どうすれば一番はるなんのためになるか。 それが難しいんだよね……」 珍しく眉間にしわを寄せて考え込むさゆみ。 次の言葉を待つように、みんなの注目が集まる。 その時だった。 顔を上げたさゆみがスッと立ち上がり、リビングの入り口に向かって頭を下げた。 みんなもさゆみの視線を追って振り向くと、 いつの間に入室したのか、そこには普段見慣れぬ人物の姿があった。 そして衣梨奈が驚きの声を上げる。 「吉澤さん!?」 「久しぶり重さん。いきなりお邪魔しちゃって悪かったね」 「いえ、さゆみの方から連絡しようかと思ってたくらいなので、 こちらこそわざわざ出向いていただきすみません」 突然の来訪に驚愕する一同を前に、ひとみは「大親友」の衣梨奈に一つウインクすると、 テーブルの上に寝かされていた春菜を抱き上げた。 「本当はもう少しゆっくりしていきたいんだけど、そんな余裕もないからさ。 それじゃあこの娘は連れて行くよ」 「はい。後のことはよろしくお願いします」 そして笑顔で軽く手を振ったひとみが、瞬間移動の魔法によって姿を消した。 あまりに急すぎる展開に、みんな呆然とその様子を見送ることしかできなかったが、 気を取り直して里保がさゆみに問いかける。 「道重さん、これはいったい……。はるなんは大丈夫なんですか?」 「後は吉澤さんに任せておけば大丈夫。 きっと一番はるなんのためになる方法を選んでくれるはずだから。 ただ、それがはるなんにとって本当に幸せかどうかは、それこそはるなん次第だけどね」 大丈夫と言いつつも、含みのあるその言葉とどことなく哀しげにも見えるさゆみの表情に、 みんな不安げに顔を見合わせることしかできなかった。 ○ 「どうなの様子は?」 「うん、落ち着いてる」 「そう、なら良かった」 「ここに連れてきたら熱も下がったし、自然に人間の姿に戻ったんだけど……」 「予想通り、原因はそういうことなんでしょうね」 「やっぱりそうだよね……」 遠くからうっすらと耳に届く誰かの会話。 その声に反応するように、春菜がようやく目覚めた。 ぼんやりとしたままゆっくり辺りを見渡す。 窓もない薄暗い小部屋。 自分が簡易ベッドに寝かされていることに気づく。 そしてベッドの側にいたのが……。 「吉澤さん!!」 ひとみの存在にようやく気づき、春菜がベッドから飛び起きた。 「おはよう。うん、その様子なら元気そうだね」 ただでさえ寝起きで頭が回らないところを、 ひとみからイケメンスマイルを向けられ慌てふためく春菜。 「あ、あの、どうして吉澤さんが……。 いえ、それ以前にここはどこですか? なんで私はこんなところにいるんでしょう??」 「まあ、混乱するのも無理ないよね。 あたしが飯窪に用があって来てもらったんだ」 「吉澤さんが、私に……用?」 なんのことだろう、まったく想像もつかない。 「そう。梨華ちゃんが迷惑をかけた時の借りを返そうと思ってね」 その言葉に、春菜の過去の記憶が呼び覚まされる。 以前、聖が思いがけず梨華に連れ去られそうになるという騒動があり、 衣梨奈と里保がどうにか解決した後に、確かにひとみはこう言っていた。 『今回みんなには色々迷惑をかけたし、その埋め合わせはきっとさせてもらうから もしあたしにできることがあれば気軽に言ってよ』 その約束通り、衣梨奈はKYにも頼み込んでひとみの「親友」となり、 里保はリリウムの世界でケメコの助力を得ることができた。 そして春菜もまた、その騒動の現場に立ち会ってはいたのだが……。 「で、でもいいんですか? 私はあの時ほとんど何の役にも立てませんでしたけど」 ほとんど傍観者でしかなかった春菜が、まさか約束の対象者として ひとみに認識されているとは夢にも思っておらず、 逆に申し訳ないような気持ちになってしまう。 「もちろん。だから、もし飯窪が望むのなら……」 微笑みとともにではあったが、ひとみの声は真剣な響きを伴っていた。 「飯窪が今、一番会いたい人に会わせてあげようと思ってる」 一番会いたい人。 その意味を頭で理解する前に、無意識に春菜の口からある言葉が零れた。 「……ご主人様」 「そうだとは思っていたけど、やっぱり記憶の封印が解けてるんだね」 封印されていた記憶。 使い魔としてご主人様と過ごした幸せな日々。そして最後の別れ。 ひとみの確認をきっかけに、それが春菜の脳裏に一気に溢れだしてきた。 軽く頷いてひとみが懐からハンカチを取り出し、春菜の目元を拭う。 そこで初めて、春菜は自分の瞳から涙が流れ落ちていることに気づいた。 「吉澤さん、私……」 「急に記憶が押し寄せてきたんじゃ、溢れ出るその感情をコントロールできないのも仕方ないさ。 涙の言うままに任せて、気持ちの高ぶりを全部出しきっちゃいな」 ぶっきらぼうにも聞こえる物言いとともに、自然な仕草で春菜を抱き寄せるひとみ。 そして春菜は、自分でも訳の分からぬまま、ひとみの胸の中で声を上げて泣いたのだった。 ○ 「すみません、何だかすごい取り乱してしまって」 簡易ベッドに並んで腰掛ける春菜とひとみ。 ようやく涙も収まった春菜の表情は、スッキリと吹っ切れていた。 「いいよ別に。ともあれ気分が落ち着いたようでよかった。 で、話を戻すけど……」 「はい。私が今一番会いたい人、つまりご主人様と会えるって おっしゃってましたけど、それは本当なんですか?」 「もちろん。飯窪が本気でそれを望むならね」 「でもご主人様は今、大いなる災厄をその身に抱えて封印の眠りについているはずでは……」 「そのことについては、もし気になるんなら本人に直接聞いてみるといい。 それと一つだけ忠告しておくけど……」 そこでひとみの声質が、グッと重みを帯びたものに変わる。 「あたしができるのは、飯窪をかおりんと会わせることだけ。 飯窪の心情としては聞かれるまでもなくかおりんに会いたいだろうけど、 それが本当に飯窪の望む結末になるとは限らない。 もしかしたら、知らない方が良かった、記憶を封印されたままでいた方が幸せだったと 後悔するような未来が待ち受けているかもしれない。 そんな可能性も考慮した上で、どうするかしっかり考えて返事をしてほしいんだ」 ひとみから放たれる重厚なプレッシャーに思わず青ざめる春菜。 しかし、春菜の返事は揺るぎないものだった。 「それでも……。私は、ご主人様にお会いしたいです」 春菜の瞳をジッと見つめ、その覚悟を見て取ったひとみが、納得したように笑顔で頷いた。 「うんわかった。ならその願い、叶えてあげようか」 「……じゃあここからはあたしの出番ね」 「キャア!!」 誰もいないはずの背後からいきなり声をかけられ、春菜が簡易ベッドから飛び上がる。 「ちょっとケメちゃん! いきなり驚かせてどうすんのさ」 「ごめんごめん、この頃なんか人をビックリさせるのが快感になってきちゃって」 そして、驚愕の表情のまま振り返った春菜に改めて自己紹介をする。 「ごめんねいきなり出てきて驚かせちゃって。あたしの名前は保田圭。 飯窪も情報屋なんてしてるのなら、名前を聞けばそれ以上細かい説明は不要よね。 それと最初よしこに聞いてた質問に答えると、この場所はあたしの住まい。 飯窪をカオリに会わせるために特別に来てもらったのよ」 「地底奥深くのこの場所に人を呼ぶことなんてほとんどないからと、 怖がらせないように化粧もバッチリして歓迎の準備万端だったはずなのに、 その登場の仕方でビビらせてんじゃ全てが台無しじゃんかよ」 「ハイハイ、あたしが悪かったわよ。 もっとちゃんと謝ればいいんでしょ。なんだっけ? ゆるしてにゃん? これはもう古いんだっけ? ごめんねポーズ? 今時の流行りなんて知らないわよ、いつもこんなとこにいるんだから」 ひとみとケメコの軽妙なトークを前にして、そこでようやく春菜が気づく。 目が覚める前になんとなく聞こえていた会話は、この2人によるものだったことに。 2人の喋りに圧倒されて口を挟むこともできない春菜の姿にようやく気付いたケメコが、 取り繕うように一つ咳払いをすると、口調を改めて春菜に話しかけた。 「それじゃあこれからカオリのところに案内するから、 あたしの後についてきてちょうだい」 手にしていた錫杖でケメコが壁を一つ叩くと、 鈍い音をたてて隠し扉が開き、地下へと続く階段が現れる。 後ろを確認することもなく足を踏み入れるケメコ。 部屋に残るひとみに大きく頭を下げ、慌てて春菜がその後に続いた。 ちょうど人が一人通れるくらいの狭い下り階段。 周囲の壁は明らかに自然岩で、魔法の影響か足元が判別できる程度の青白い光を放っている。 足音も立てず軽快に進んでいくケメコに、 とても声をかけられる雰囲気ではなく黙って後ろをついていく春菜。 はたしてどれくらいの時間が経過しただろう。 何階分かもわからぬほどの距離を下り、ようやくケメコが足を止めた。 下り階段の行きつく先、木製の古びた扉の前でケメコが微笑とともに振り向く。 「さあ、この先にカオリがいる。 ここから先は、あなたの目で真実をしっかりと見極めなさいな」 その言葉とともに、飯窪が返事をする余裕すらも与えず、ケメコは暗闇に紛れて姿を消した。 独りきりで残された春菜が、一つ大きな息を吐く。 そして、意を決して古びた扉に手をかけた。 扉を開けた先に広がる光景。 それは春菜が全く予想しないものだった。 抜けるような青空。暖かな陽光。緩やかに風に靡く草原。遠くから響く小鳥の囀り。 それは本来、地底奥深くのこの場所にあるはずもない広々とした庭園であり、 そして春菜にとっては既視感のある懐かしい空間でもあった。 「これは、こぶしファクトリー……」 春菜の要望に応えて衣替えされた、ご主人様のアトリエ。 その記憶の通りであるのなら、庭園の中央には……。 視線を向けた先には、純白の花をまとった大きな木が植えられ、 その木蔭に設置されたモダンなテーブルと、そして春菜の姿に気づいて ゆっくりと立ち上がり微笑みかけてくる人物の姿が。 「ご主人様!!!!」 思わず声を上げて駆け出す春菜。視界が一気に涙でぼやけてくる。 ケメコの後ろについて黙々と階段を下りながら、 ご主人様と再会した時のことをずっと考えていた。 もしそれが実現するのであれば、私の成長した姿を見てもらいたい、 もうあの頃の泣き虫で何もできない私ではないことを知ってもらいたい。 でも駄目だった。もっと大人びた振る舞いでいたいと思ったのに、 ご主人様の姿を目にした途端、感情が抑えきれなくなって身体が勝手に動き出していた。 「ただいま、はるなん」 その一言とほぼ同時に、春菜が胸の中へと飛び込む。 「ご主人様……会いたかった…………会いたかった!!」 号泣しながら、うわ言のように繰り返すことしかできない自分が情けなくなってくる。 ワシャワシャとかき混ぜるように頭を撫でる、懐かしい掌の感触。 ああ間違いない、本当にご主人様だ。 『涙の言うままに任せて、気持ちの高ぶりを全部出しきっちゃいな』 その時、不意にひとみの言葉が蘇ってきた。 そうだ、たとえ情けなくてもこれが今の私の素直な気持ちの表れなんだ。 だからそれを無理に抑えたりせず、溢れ出るその感情に身を任せればいいんだ。 その事に思いが至るとともに罪悪感にも似た感情がスッと消え去り、 春菜はまた、生まれたての赤子のように圭織の胸に縋り付いたのだった。 ○ 「どう? 特製のハーブティは」 「はい美味しいです。わざわざ私なんかのためにありがとうございます」 圭織が淹れてくれたハーブティで喉を潤し、 口の中に広がる爽やかな風味に、ようやく春菜も落ち着きを取り戻す。 代わってこみ上げてくるのは、痺れるような幸福感。 目の前には優しい瞳で私のことを見つめるご主人様の姿が。 2人でテーブルを囲んでこうしてティータイムを過ごせるなんて、 もう二度とありえないと思っていた時間が現実のものとなっている。 この幸せにどっぷりと浸かりこんで、このまま思考停止してしまいたい誘惑に駆られる。 でも、今のこの状況はわからないことが多すぎる。 それを見て見ぬ振りで放置しておくわけにはいかない。 「ご主人様。いくつかお聞きしたいことがあるのですが……」 「何? 言ってごらん」 「ご主人様はどうして、今ここにおられるのですか? 大いなる災厄をその身に抱えて封印の眠りについていたはずなのに……。 それに私は、なんで急にご主人様の記憶を取り戻すことができたのでしょう?」 「ああそのことね。大いなる災厄ならもう、浄化したわ」 「えっ!?」 何十年、何百年かかるかもわからないと言っていた大いなる災厄の浄化。 まさかそれをもう成し遂げてしまっていただなんて。 「浄化の完了とともに、自らの封印も解除するように設定してたんだけどね。 カオリの目覚めとともに、はるなんの記憶の封印も解かれてしまったことに気づいたの。 別にカオリの封印と連動させてなんかいなかったんだけど、 きっとはるなんのカオリへの想いが考えていた以上に強かったせいじゃないかな。 だからね、いきなり記憶が解放されてはるなんが大変なことになってるんじゃないかと、 圭ちゃんとよっすぃ~にお願いしてはるなんをこの場所に連れてきてもらったのよ」 帰り道に突然、高熱とともに意識を失ったのは、ご主人様の記憶が解かれた影響だったのか。 そしてこの場所に連れてこられてから高熱が治まったというのも、 きっとご主人様と同じ空間にいることによって症状が落ち着いたということなのだろう。 ご主人様がここにいる理由。自分の記憶が解放された理由。 話を聞いてみれば、なんということはないすんなり納得のできるものだった。 「カオリの方からも、はるなんに聞きたいことがあるんだ。 記憶が封印されてから、はるなんがM13地区で一体どんな生活を送っていたか。 今日までのこと、詳しく話を教えてもらえないかな」 圭織に促され、春菜がM13地区で過ごしてきた日々を語り出す。 さゆみの口利きもあり、街の古本屋さんでバイトしながら 魔道士を相手に情報屋を始めたこと。 さゆみとの繋がりから衣梨奈、里保など大切な仲間達と巡り合えたこと。 そして、魔道士協会に向こうを張っての、仲間を取り戻すための大冒険。 圭織の適切な相槌もあり、春菜からスムーズに伝えられるM13地区でのエピソード。 それとともに、自分がどれだけ密度の濃い充実した生活を送っていたのか、 春菜も改めて気づかされる。 楽しげに聞き入っていた圭織だったが、話が一段落するとまた春菜に問いを発した。 「はるなんはさ、未来に向けて胸に抱いてる夢とか願いごとってないの?」 「夢とか願いごと……ですか。 そうだ! 記憶は封印されたままでしたけど、心の奥底でずっとご主人様を助け出したい、 大いなる災厄を取り除いて封印から解放したいという願いは持ち続けていました! 結局は、私の出る幕なんてまったくなかったんですけど。 今振り返ってみると、だからこそ災厄除去のための有益な情報を仕入れようとして 情報屋なんて始めたんだと思い……」 「ううん、そういうことじゃないのよ。 はるなんがカオリのことを想ってくれるその気持ちは嬉しいんだけどね。 カオリとは別の、今のはるなんが抱えているはるなんだけの夢のことが聞きたいの」 春菜の言葉を遮る圭織の目元が、心なしか寂しげな色合いを帯びているような気がして、 訳も分からず春菜の鼓動が大きく高鳴る。 でもそれはほんの一瞬のことで、春菜も考えすぎだとすぐに気を取り直して 自分の抱いている密かな夢を語りだした。 それはM13地区を一つの共同体としてまとめ上げ、協会と対をなすもう一つの 『魔道士の秩序』を形成するという壮大な、いやもっとはっきり言ってしまえば 一笑に付されても仕方ないようなあまりにも現実味に乏しい夢。 しかし圭織は、真剣な面持ちで春菜の話を受け止めると、ニコリと微笑んで大きく頷いた。 「とっても素敵な夢だね、はるなん」 「あ、ありがとうございます! ご主人様にそう言っていただけると、本当に嬉しいです」 「うん、はるなんの話を聞いてカオリも安心したよ。 圭ちゃんとよっすぃ~に無理を言って、この時間を作ってもらって本当に良かった」 何か吹っ切れたような圭織の口調。 それと対称的に、言い知れぬ不安が春菜を襲う。 「それって一体……どういう意味ですか?」 「もうカオリには、何の心残りもないってこと」 そして春菜のその不安は、すぐに現実のものとなった 「だから……。これではるなんとは、本当のお別れをしないといけないんだ」 『もしかしたら、知らない方が良かった、記憶を封印されたままでいた方が幸せだったと 後悔するような未来が待ち受けているかもしれない』 ひとみから釘を刺された言葉が、春菜の脳裏に蘇る。 だからこそ、ただご主人様と再会してめでたしめでたしで終わるとは限らないと、 自分の中での覚悟はできていたつもりだった。 でもやっぱり……。 せっかく再会できたというのに、いきなり別れを告げられても納得できようはずもない。 「どういうことですかご主人様? どうしてお別れしないといけないんですか!? この前は、大いなる災厄から世界を救うという重大な使命があったからこそ、 ご主人様と別れの時を迎えなければならなかった。それはまだわかります。 でも今は、大いなる災厄が取り除かれ、ご主人様の使命も果たされました。 この期に及んで、ご主人様とお別れをしなければいけない理由なんて もう何も存在しないはずですよね!?」 できるだけ感情的にならないように圭織に問いかけたいと努力するが、 どうしても段々と気持ちが高ぶってくる自分を止めることができない。 「そうだ! 大いなる災厄を取り除いたということは、 もうあの研究所に籠って宇宙を監視する必要もなくなったということですよね!? ならば、これからはM13地区で私と一緒に暮らしませんか? 魔道士にとってはとても住み心地のいい街ですし、 道重さんや私の仲間達や、周りにいるのは素敵な人達ばかりですし! ああでも、他人と交流を好まれないご主人様にはやっぱり水が合わないかもしれませんね。 ならばやっぱり以前のようにあの研究所で暮らしましょう! ご主人様と私の2人であの頃のよ……」 「はるなん、はるなん」 哀しげに呼びかける圭織の一声で、激情に呑まれかけていた春菜の感情が 冷水を浴びせられたように一気に沈み込んでいく。 ああ、またご主人様を困らせるようなことをしてしまった。 私はなんて成長のない情けない人間なんだろう……。 「今のはるなんは、新しい人生を確立できて、大切な仲間にも恵まれ、 そして未来への夢もしっかりと見据えているんでしょう。 それを捨ててまで、昔のようにカオリと2人で暮らそうなんて、 今までの自分を全て無にするようなことは言っちゃ駄目だよ」 これまでになく厳しい口調で春菜を叱りつけた圭織だったが、 すぐに安心させるように表情を和らげる。 「はるなんが、カオリとまた一緒に暮らそうと言ってくれるのはとっても嬉しいんだけどね。 でも、その願いはもう叶えてあげることができないのよ」 「……どうしてですか?」 圭織の哀しみを湛えた微笑が、春菜の胸を締め付ける。 そして、圭織の口から決定的な一言が零れ落ちる。 「今のカオリはね、この世の人間じゃないの」 「えっ!?」 「カオリはもう、死んでるのよ」 その瞬間、全ての空気が凍りついた。 それは春菜の覚悟のキャパを越える、あまりに衝撃的な告白だった。 だが、いきなりそんなことを言われて、誰がああそうだったのかと そのまま素直に受け入れることができるというのだろうか。 「で、でも、ご主人様は現にこうして私の前にいらっしゃるじゃないですか! 先ほど抱きついた時、頭を撫でてくださった時の感触も、 それは確かに私の覚えているご主人様そのものでした! そんな死んでるなんて言われても信じろという方が無理があ……」 「そうだね、この身体は確かにカオリのものだし、別に幽霊になってるわけでもない。 そういう意味では厳密にはまだ死んでないと言えるのかも。 でもそれは、圭ちゃんに頼み込んで、特別に冥界の門をくぐるまでの猶予をもらってるからなのよ」 「冥界の門……」 ケメコがこの地底奥深くで監視しているという、あの世へと繋がる門。 春菜にとってもほんの噂でしか耳にしたことがなかったが、実際に存在していたとは。 「大いなる災厄を取り除いて自らの封印を解いた時、浄化のために 持てる全てを費やしたカオリの身体はボロボロで、そのまま力尽きるはずだった。 でもそこで、はるなんの記憶の封印も解かれてしまったことに気づいたの。 すでに新しい人生を歩んでいるはるなんにとって、 過去の記憶がいきなり溢れ出したら大きな混乱と心身の変調に襲われることは避けられない。 このままではカオリの存在がはるなんの足枷になってしまう。 だから、その心残りを取り払うために、圭ちゃんにお願いしてほんの少しの猶予をもらい、 はるなんとの最後のお別れの場を設けてもらったんだよ」 淡々とした口調で説明する圭織。 春菜は半ば呆然としたまま、ただただ話に聞き入ることしかできない。 「カオリのもう一つの心配は、はるなんが新しい生活をちゃんと送れているかということだったけど、 これは完全に取り越し苦労だったようで良かったわ。 大切な仲間と未来への夢。 この2つさえあれば、はるなんはもう過去に引きずられることなく生きていける。 後は、カオリという足枷を外して過去と完全に決別をすることが、 今のはるなんが何の憂いもなく前に進んでいくために必要なこと。 だから、ここでカオリと本当のお別れをしないといけないのよ」 嘘だ! ご主人様が死んでしまっただなんて絶対に信じない!! せっかく再会できたのにお別れなんてそんなの嫌だ!! 私はご主人様とずっと一緒にいるんだ!! 感情のままに泣きわめき、圭織に縋り付くことは簡単だった。 ただ、ご主人様に自分の成長を見てもらいたいとの想いが、 昔のような子供染みた感情任せの行動をとりたくないというストッパーとなり、 残った一片の理性を捨て去ることなく、春菜をギリギリで踏み留まらせていた。 でも……。ご主人様からのあまりにも受け入れがたい告白を前に、 私は一体どうすればいいのだろう。 『ここから先は、あなたの目で真実をしっかりと見極めなさいな』 去り際のケメコの言葉。 どんなに受け入れがたくても、これが目を逸らしてはいけない真実だというのか……。 「いきなりこんな話をされてはるなんが戸惑うのも、 拒絶したい気持ちもよくわかるけど、これだけはわかってほしいの。 貴女のご主人様は、もう、この世には存在しないのよ」 ご主人様は……この世には存在しない…………。 ご主人様…………は………………? その一言は、麻痺しかけた心にストンと納まり、そして春菜の脳髄を強烈に揺さぶった。 これが……見極めるべき真実!? だとすれば、なんでこんなことを……。 いやそれは、私のため。ご主人様が私のためにわざわざ……。 ならば、私ができることは、ただ一つだ。 「わかりました。 これで、ご主人様とは、お別れですね。 今まで、私をここまで育ててくださり、本当にありがとうございました」 圭織の顔をジッと見つめながら、声が震えないよう、途切れないようにグッと腹に力を込める。 よかった。どうにかちゃんと伝えられた。 健気な春菜の返答に一瞬驚きを見せた圭織だったが、すぐに柔和な表情に変わる。 「受け入れてくれてありがとう、はるなん。 強硬に拒絶されても仕方ないかと思ってたんだけど、どうやらカオリは、 はるなんのことをいつまでも子供扱いしすぎちゃってたみたいだね。 本当に成長したねぇ、はるなん」 春菜が一番聞きたかったその言葉。呼応するように涙腺がまた緩みだす。 「ありがとうございます。最後に一つ……いいですか? 最後に、もう一度だけでいいので……ギュッと抱き締めてくださいませんか?」 圭織が微笑んで頷きそして立ち上がると、理性を全てかなぐり捨てた春菜が飛びついた。 「ご主人様……ご主人様!! ……大好きです! 本当に本当に大好きです!!」 「カオリも大好きだよ、はるなん」 溢れだす涙もそのままに、圭織の胸に顔をうずめ、想いの全てをぶつける春菜。 圭織もうんうんと応じながら、春菜の頭をワシャワシャとかき混ぜるように撫でる。 いつまでも続くかと思われたかけがえのない時間。しかし。 俄かに空が掻き曇り、穏やかだったこぶしファクトリーに強風が吹き荒れる。 「名残惜しいけど、そろそろ時間のようだね」 風に煽られてこぶしの花が一斉に散り落ちる。 そして風に舞った花びらは白い輝きに変じて、圭織の身体を徐々に覆っていく。 泣き濡れた顔を上げた春菜に、圭織が光を纏いながら優しく微笑みかけた。 「じゃあ、これで本当のお別れだよ。はるなん」 「ご主人様……。さようなら」 あの時、口にすることができなかった別れの言葉。 ようやく、目を見てはっきりと言えた。 「はるなんの夢が実現するよう、祈ってるよ」 そっと顔を寄せた圭織の唇が、春菜の唇に重なる。 その瞬間、圭織の身体が一際大きな輝きに包まれ、目も開けられないほどの強烈な光を放つ。 それが徐々に収まるとともに、圭織の姿が春菜の前から消え去っていた。 ○ 麗かな午後のひと時、にぎやかな声が道重邸の庭に響き渡っていた。 「へへ~んだ、はるなんこっちこっち~!!」 「はるなんちょっとトロすぎじゃね? 黒猫の姿の方がよっぽど素早く動けそうじゃん」 「ああもう、2人ともちょこまかと本当にすばしっこいんだから! 見てなさい、私の本気はこれからなんだからね!!」 まーどぅーに翻弄されながらも、真剣に鬼ごっこに興じる春菜。 そんな微笑ましい光景を、縁側に腰掛けてぼんやりと眺めている人物の姿があった。 「何してんの里保?」 「ああえりぽん。いや別にどうってことでもないんだけど、はるなんがね……」 「うん。元気になってほんと良かった」 「うんそれもあるんだけど……。 なんかちょっと雰囲気が変わったというか、綺麗になったなぁと思って」 「綺麗に?」 意外な指摘に驚く衣梨奈を尻目に、さゆみが会話に割って入る。 「それはきっとね、はるなんが一つ、大人の階段を上ったからだよ」 「ああなるほど。なんとなくわかる気がします」 腑に落ちたように頷く里保と対称的に、衣梨奈は困惑顔を隠さない。 「うーん、はるなんも別に前と変わったようには見えんし、 大人の階段とか言われても全然ピンとこないっちゃけど」 「お子ちゃまには分からない話よ。ね、りほりほ」 茶化されてふくれっ面になる衣梨奈。 その様子が思いのほか面白く、さゆみと里保が顔を見合わせて笑いあった。 いつもと変わらぬ日常の一コマ。 だけどみんな、一歩一歩着実に成長を続けている。 喜びも哀しみも、全てをその身体に抱え込みながら。 「はるなんの夢、いつかきっと叶うはずだよ」 過去に区切りをつけ新たな一歩を踏み出した春菜。 里保達とともに眩しそうに見守るさゆみが、その背中に向けてそっと呟いた。 (おしまい) ←黒猫の追憶 ~真実を照らす絆~→
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帝國SSについて。 ここではSS資料のまとめを掲載しています。 帝國SSとは何か、というのは、書き手にとっても比較的難しい定義です。 今、おおよそ合意されているのは、 「らっちぇぶむ氏によるオリジナルの世界を基盤に、その世界を共有する努力をはかりつつ執筆された作品群」 ということになります。 実際のSS執筆と、世界共有作業との間に差をつけていません。セッションによって、この世界自体を楽しむことも、書き手にとっては大きなものです。 ここにない物は存在していないのではなくて、世界には存在するのだけれどSSの舞台として利用する水準にはない、と考えています SS世界 ごくラフな提示です。現在のところ卓越した強国である「帝國」と周辺国を舞台にしているため、 世界そのものの詳細設定を必要としていません。 帝國について 帝國SSの主要な舞台「帝國」についてのセッション後のまとめをここに置きます。 更新時期のより新しいものが、より古い解釈より優先されて受け止められています。 後命優先というわけですw 帝國史概況 古代魔導帝國崩壊より現時系列までの千年の概況です。 SSの時代の世界 帝國とその周辺についての概況です。 「帝國」と四つの辺境について 帝都 東方辺境 北方辺境 南方辺境 西方辺境 「帝國」中央政治について 三頭政治 SS世界の貴族たち 「帝國」軍について 帝國軍について 帝國軍の編制 帝國元帥、将軍メモ 帝國軍序列 帝國軍の階級 帝國軍の役職と階級 「帝國」周辺国について ゴーラ帝国 南方王国 西方中原諸国 「帝國」の執筆予定の未来について おおざっぱな時系列 旧未来時系列 ローマンネーム メモ 「帝國」の貴族はローマ的な名を持っています。 日本人になじみの薄いものらについて参考に羅列しています。 萌えレートと萌えポイントについて。 執筆が非常に難しい、との指摘を受けて、書き手内で行われたセッションの中から、 今のところ浮き上がってきた「書くためのリソース」の考え方です。
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「ミッミッ♪」 休日男が部屋でテレビを見ていると、タブンネが可愛らしい鳴き声を上げて足にすり寄ってきた。 ふわふわしたビロードのような毛皮の感触がこそばゆい。 その仕草に思わず笑みが零れ、タブンネの頭を優しく撫でてやる。 「ミィ…♪」 タブンネは気持ちよさそうに目を細め、尻尾をふりふりしている。 しばらく頭や顎を撫でられていたが、もっと甘えたいらしく少し勢いをつけてぴょんとジャンプ。 男の膝の上にちょこんと座った。 肉付きが良く背丈以上に重いタブンネに男は少しだけ表情を歪めたが、タブンネのぷにっとしたお尻の感触と、撫でて撫でて!とミィミィ甘えるその姿に表情が綻ぶ。 そして頭やお腹、尻尾を櫛で解かすように撫で始めた。 「ミィ~ミィミ」 タブンネも男の優しい手付きに全身の力を抜き、心底気持ちよさそうに鳴いている。 そして、耳の触覚をくいっと伸ばし男の手に当てる。 伝わってくるのは自分を愛おしく思ってくれている気持ち、一緒にいたいと思ってくれる気持ち。 変わらぬ男の愛情に、タブンネは幸せいっぱいだ。 「さて、と」 男は時計を見ながら呟くと、夕食の準備にソファーから立ち上がろうとする。 タブンネも触覚で朧気ながら男の意図を読み取り、膝から降りる。 そして台所へ向かう男の後ろを短い足でとてとて付いていく。 少しでもお手伝いをしようと、必要な野菜や食器を小さなお手々で一生懸命運ぶのだ。 時折皿を落としそうになりもたつくタブンネに苛つくこともあるが、微力ながらも役立とうと頑張るタブンネを男もまた愛おしく思っていた。 触覚で読み取る幸せな感情。 それが毎日続くものだとタブンネは思っていた。 「何をやっているんだ!こんな成績では給料泥棒もいいところだぞ!」 事務所に響く怒声。 休み明け、男を待っていたのは1人の人間には処理仕切れない程の激務だった。 それにノルマを達成出来ない故の上司の叱責がプラスされる。 一介のサラリーマンに過ぎない男はそんな日々にストレスをため、精神をすり減らしていった。 残業で帰りも遅くなり、仕事のために家を出ては寝るためだけに帰る生活が続く。 しかし帰れば身の回り、そしてタブンネの世話をしなくてはならない。 疲れから料理をする気力も湧かず自分にはコンビニ弁当、タブンネには乾燥フーズ等と食事も簡単でいい加減なものになってしまう。 「ンミィ…ミィ」 いつもより雑な餌にタブンネは顔をしかめるが、男の辛い気持ちを触覚で読み取り、我慢して精一杯の笑顔を向けるのだった。 男もこんな自分に笑顔を向けてくれるタブンネを嬉しく思い、そのままベッドに沈んだ。 その夜、タブンネは着の身着のまま寝息を立てている男にそっと近づくと、大きな耳についた触覚をぴとっとその頬に当てた。 「ミッ…!?フミィィ…」 伝わってきたのは未だ読み取ったことのないようなネガティブな感情。 その嫌な感覚にタブンネは思わず身体を仰け反らせてしまう。 ご主人様は外にいる間こんなにも苦しんでいる。 何とかして笑顔になって欲しい。 その思いからタブンネは翌日からもっともっとお手伝いしようと決心し、男に寄り添ったまま眠った。 そして、事件は起こった。 深夜、仕事から帰った男を待っていたのはおぞましい光景だった。 廊下にぶちまけられた水とバケツ、電源が入ったまま唸り続けている掃除機。 ぐちゃぐちゃに畳まれた洗濯物と散らばった洗剤。 そして台所に散乱した割れた食器に、その中心で泣きじゃくるタブンネの姿。 特性はぶきようではないものの、短手短足のタブンネに人間用の道具を使うことは無理があったのだ。 「ミィィィィィン!!ミィィィ…ミッ!!?」 大粒の涙を流し泣き叫んでいたタブンネだが、台所の入り口に立つ男の姿を確認すると、絶望の表情を浮かべながら固まる。 しかし男に抱きつくと再び大声で泣き出した。 ごめんなさい!ごめんなさい! そう言わんばかりに大声で泣きじゃくるタブンネ。 しかしミィミィと鳴く声では人間である男には伝わらない。 壊滅状態の部屋に響き渡るタブンネの声。 男は思った。 何をやってるんだコイツは…! この忙しいのに余計なことしやがって。 あんなに可愛かったミィミィ鳴く声が今は不快で仕方ない。 しかし、手伝おうとしてくれた気持ちは痛いほど理解出来たし、幸い明日は休日だ。 男は湧き上がってきたタブンネを蹴手繰り廻したい感情を何とか押さえ込み、一発頭を小突いた後、優しく撫でてやる。 「次は別の形でお手伝いを頑張ってくれな?」 男の笑顔と優しい包容に安堵したが、それでも申し訳なさそうなタブンネはおずおずと触覚を伸ばし、男の手に触れようとした。 瞬間、不味いと感じた男は必死でタブンネ可愛いタブンネ可愛いと念じた。 タブンネはサーナイトやエルレイドのようにテレパシーで感情を読み取る訳ではなく、心臓の音で大まかな喜怒哀楽を感じ取るに過ぎない。 そのおかげもあって男の本心は分からず笑顔を向けたタブンネ。 いちいち触覚を伸ばしてこちらの気持ちを読もうとするタブンネに微妙な感情を抱いた男と、今度こそしっかりお手伝いをしようと決意を新たにするタブンネ。 両者の間には僅かだが、確実な亀裂が生まれつつあった。 翌日、足りなくなった食器や洗剤を買いに行くのと、気分転換を兼ねてタブンネと一緒にショッピングモールを訪れていた。 「仕事も満足にこなせないのに買い物とはいいご身分だねぇ。大体君は…」 しかし出先で上司と鉢合わせ、街中で嫌みをくどくど言われる羽目になっていた。 泣きそうになる感情を抑え、男はひたすら言葉の暴力を耐えていた。 男の背後にいたタブンネはその小さくなった男の背中にこっそり触覚を当てた。 読み取れた気持ちは必死に堪えた怒りとあの男に対する畏怖の感情。 「ミィッ!ミィッ!」 ご主人様を守らなきゃ! 男の前に出たタブンネは上司に向かって可愛い鳴き声で精一杯威嚇した。 「た、タブンネ!?」 「何だこの生意気な豚は。この飼い主あればこの糞豚ありだな」 困惑する男を余所に未だ高慢な態度を取る上司。 「ミィィィィィ!!」 タブンネはご主人様をいじめるな!とばかりに勢いをつけて上司に突進した。 不意の一撃を腹に受けた上司は豪快に転び地面に頭をしたたかに打ち付けた。 顔面蒼白の男。 鬼のような形相の上司。 「ミフーッ!ミフーッ!」 威嚇するタブンネ。 気まずい沈黙の中、タブンネの荒い息遣いだけが聞こえる。 「貴様ぁっ!!ワシにこんなことをしてタダですむと思っとるのか!もう明日から会社に来れると思うなよ!」 その沈黙を破ったのは死の宣告に等しき言葉。 男は必死に弁解するが、完全にキレた上司は聞く耳を持たずに帰っていった。 男の中で、何かが弾けた。昨日生まれた亀裂が広がり、割れた瞬間だっだ。 「タブンネェ!!」 家に帰るなりタブンネに男の拳が飛ぶ。 顔面に拳を受けたタブンネは鼻血を吹きながら豪快に吹き飛んだ。 「ミッ…ミィィミィ…?」 何で?どうして?ご主人様はあの怖い人が嫌だったんでしょ? 何故殴られたか分からないタブンネは涙ぐんだ顔で男を見上げる。 触覚で気持ちは読めても人間の複雑な気微までは汲み取れなかったのだ。 タブンネにお腹に容赦のない蹴りが放たれた。 「ミギャッ!」 小さく悲鳴を上げ、苦しそうに悶絶しているタブンネを更に踏みつける。 「触覚で気持ちが分かるからって俺の全部を理解した気になってるんじゃねぇ!」 言いながら男はタブンネの耳を掴み思い切り引っ張る。 タブンネは短い手で必死に男を払いのけようとするが、勿論届かない。 「もう滅茶苦茶だよ!全部お前のせいだ!!」 男の言葉がタブンネに突き刺さる。 確かにタブンネはことあるごとに男の身体に触覚を当て、気持ちを感じ取っていた。 しかしテレパシーとは程遠いそれで男の求めるものを勝手に自己完結し、自己満足なお手伝いをしていたに過ぎないのだ。 「ミ…ミェェェェェェン!!」 大声で泣き始めたタブンネ。 それも今となっては男の神経を逆なでするだけ。 男はタブンネの尻尾を掴むと、ジャイアントスイングのように左右に振り回した。 「ミギャアァァァアァア!!」 引きちぎれそうな痛みがタブンネを襲い、小さな手足が上下左右に動き回る。 振り回す内にタブンネの身体が机やクローゼットに当たり、そこに血が付着するが男はお構いなしだ。 勢いに任せて振り回した結果、掴んでいた尻尾の毛がブチッという音と共に大量に千切れ、タブンネの身体が男の手から離れた。 「ミギィ!?」 壁に背中からぶつかり、ずるずると倒れ伏すタブンネ。 優しかったご主人様の変貌にタブンネはただただ身体を丸めてガクガクと震えている。 しかし男の怒りは治まらない。 それどころか、タブンネを殴り蹴る度に異様な快感が湧き上がってくるのを感じていた。 男はクローゼットからベルトを取り出すと、それを丸まりお菓子のように見えるタブンネの背中や尻に打ち付けた。 「ミャア!!ミヒッ!ヒィ!ミァァア!!」 打ちつけられる度に軽快な音と悲鳴が響き、タブンネの身体に傷痕が刻まれてゆく。 男はつい昨日までは可愛くて仕方なかったハート型の肉球を特に入念に痛めつけた。 「ミギャ!ミィ!ミギゥ!ピャア!?」 何故かは分からない。 ただ今はその肉球が憎たらしくて堪らないのだ。 ベルトで打ち据える度、血が滲みピンク色が赤黒く変わっていった。 男はベルトを放るとタブンネに馬乗りになり、今度は顔面を何度も殴りつける。 「ミガッ!ハ……ッ!ミィ…ァ!」 次第に弱々しくなり始めたタブンネの声に男は殴るのを辞めた。 もしかして許してくれたの? 急に止んだ暴力に固く目を瞑っていたタブンネのつぶらな瞳が恐る恐る開く。 広がったタブンネの視界に入ったのは薄ら笑いを浮かべてホチキスを持つ男の姿。 「ミ…ミィィィィィィィィィィィィィイ!!」 直後、叫び出すタブンネ。 男のタブンネに対する純粋な暴力衝動に恐怖し、イヤイヤと暴れ出すタブンネ。 しかし、馬乗りになられてはどうしようもない。 男は暴れるタブンネを押さえ込み、ホチキスをその大きな耳にあてがう。 ホチキスを打つ音が複数回響き渡る。 「ミギャアァァァアァアアァァァアァアァ!!!」 甲高く喧しい悲鳴が部屋に反響し、タブンネの耳には幾つものホチキス芯が鈍い輝きを放っていた。 タブンネは口から泡を吹き気絶している。 全ては触覚で読み取れる感情程度で相手の全てを理解した気になって、タブンネが起こした行動が原因。 この後、虐待に目覚めた男は毎日のストレスをタブンネにぶつけるようになる。 タブンネざまぁwwおもしろかったよ。 -- (名無しさん) 2012-01-03 17 36 49 タブンネちゃんに家事は無理そうだな、石運びが良いところだね -- (名無しさん) 2012-01-03 23 20 33 文章うめぇ。タブンネちゃんの虐待楽しそうw -- (名無しさん) 2012-01-10 22 08 28 名前 コメント すべてのコメントを見る
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プレイヤー画像 キャラ名 御主人様 職業 ストライカー レベル 55 愛称 一言 ( アニマ画像 アニマ名 職業 レベル 愛称 一言 名前
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{if、皆がヤンデレだったら…} 俺は今、目の前の驚愕に腰が抜けてしまっている。 おかげで立ち上がって逃げる事も出来ない。 部屋の中はクリナーレ、ルーナ、パルカの残骸がそこらじゅうに散ばっていた。 そして俺の顔近くに返り血を全身に浴びたアンジェラスがいる。 ポタリポタリ、と滴る血が俺の鎖骨の下部分に落ちていく。 目には光が灯っていない。 そんなヤンデる目で俺を見るな。 だが、俺の願いも叶わずアンジェラスはピトッと俺の右頬を撫でた。 ヒィッと声に出したかったがあまりの恐怖に声が出せない。 「ご主人様がいけないんです。私だけを見てくれなかったから…でも、もう大丈夫だよ。これでご主人様が他の女を見る事はないのだから」 「な、何を言って…?」 「あははは!ご主人様はまだ分からないの?こんなに私がご主人様の事を愛してるのに!!」 アンジェラスの光を失った目で笑いながら俺に詰め寄る。 怖い恐い怖い恐い怖い恐い怖い恐い怖い恐い怖い恐い怖い恐い怖い恐い怖い恐い怖い恐い!!!!!!!!!! 俺の脳全体が危険信号を放つ。 こいつは危険だ、今すぐ離れろと。 だが本能が身体全体に命令していても思うように動かない両手と両足。 畜生、なんでこんな事になっちまったんだ。 多分皆がオカシクなり始めた頃は一週間前ぐらいだったはず。 アンジェラスとパルカはストーカー行為してきて、クリナーレとルーナ何かと俺に抱き着いてきた。 そして仕切りにこう言うのだ。 『大好きです、愛してる』とね。 最初は何かの悪ふざけだと思っていたから俺は軽く流していた。 けどこの行為がエスカレートしていき、俺の身体を求めるかのように淫靡に攻めてくる日も多くなってきたのだ。 そんな空間がイヤだった俺は彼女達の事を拒絶した。 この日から確実にオカシクなり彼女達の目からは光を失い、会話は愚かお互い敵意を剥き出したかのように喧嘩をし始めたのだ。 最初は口喧嘩で済んだが、だんだんと殺伐としてきて一番酷い時なんか違法改造武器でもある俺のペンダントを使って殺し合いをしていた。 俺はすぐさま違法改造武器関係を全て取り上げて地下の部屋にしまったが、彼女達の殺し合いは終わっていなかった。 そしてとうとうこの日が訪れてしまった…。 その日は夜。 月は満月でギラギラに光っていた起こった。 ☆ 「もう我慢ならない!ご主人様は私のものです!!」 「いいや、アニキはボクのだ!」 「なに戯けた事を言ってるんですか?ダーリンは最初っからアタシのものですわ」 「ウルサイ!お兄ちゃんは私のものという事は確実です!!」 龍悪の部屋で怒鳴りあう神姫達。 全員フル装備で睨みあう。 この時間帯は龍悪がまだ大学に居る時。 だから我が主が居ない時によく喧嘩…いや、殺し合いをするのだ。 何回も殺し合いしてる内にお互いの憎しみが増幅されピークに達していた。 そして一斉に四人の神姫達はこう思った。 今日こそ誰がオーナーの天薙龍悪の相棒として相応しいのか決着をつける日だ、と。 「ねぇ、クリナーレ。いつもいつもご主人様にベッタリと甘えて遊んでもらってるくせに貴女はご主人様に何かしてあげられましたか?ご主人様は仕方なく付き合ってあげているのも分からないのですか?正直に言って、迷惑です」 「ふぅ~ん、アンジェラスだって毎晩アニキにエッチしてもらってるくせに。人の事が言えないじゃんか!それよりルーナ。お前はアニキのパソコンの中身を覗いたり結構迷惑を掛けてるけど…そこんとこどうなんだ?」 「あらあら。あれはダーリンのパソコンがウイルスに犯されていないか確認してるだけですわ。無知で短気なクリナーレお姉さまには言っても分からないと思いますけど。そういえば、パルカはまたダーリンに料理の事で聞いてましたわね。ダーリンは日頃忙しいので話すのやめた方がよくってよ。猿でも分かる料理の本でも読んでなさい」 「そういうルーナだってお兄ちゃんが帰ってくる度にエッチな事を誘うじゃないですか、まったく猿なのはどちらでしょうね。アンジェラスお姉さまこそ、もうお兄ちゃんのために炊事洗濯はしなくて結構です。今度から専属で私がしますから」 殺伐とした会話。 いつ堪忍袋の緒が切れてもオカシクない状況。 そしてお互い睨み合いしながら沈黙が訪れる。 「………」 「………」 「………」 「………」 そんな時だった。 一本のシャーペンがコロコロと机を転がっていた。 シャーペンはそのまま机の端まで転がってゆき…落ちた。 この時、神姫達は全神経に集中し一瞬でも速く動ける体勢をしていた。 そしてシャーペンは…。 カシャン! プラスチックの音が部屋中に響き渡る。 その音同時に神姫達は。 「「「「殺す!」」」」 四人一斉に叫び殺し合いを始めた。 自分以外は全て敵。 オーナーは誰にも渡さない、自分のだけのもの。 敵は、殺す! 「ヤァアアアアーーーー!!!!」 「死ねーーーー!!!!」 「消えなさい!!!!」 「みんな死んじゃええええぇぇぇぇーーーー!!!!」 叫び合い、斬り合い、殴り合い、蹴り合い、撃ち合い。 自分が一番になる為に殺し合う。 そして丁度決着が着いた頃に龍悪が帰ってきた。 龍悪は何も知らずに二階に上がりダルそうな声で『ただいま~』と言いながら部屋のドアを開ける。 そして自分の部屋がボロボロで血が飛び散った部屋に変わっていた事に驚愕するのだった。 ★ 「アンジェラス…お前はどうしてこんな事を…」 「ご主人様の事を愛してるからこそです」 「そんな!?俺が皆をこんな風にしちまったと言うのかよ!」 「そうです」 もう嫌だ! なんでこんな事になっちまったんだよ! 俺がいけないのか!? 畜生、畜生、畜生、畜生、畜生!!!!! 「ご主人様…」 「な、なんだよ」 「ご主人様は私を愛してくれていますか?」 「え?」 「もう一度言います。ご主人様は私を愛してくれていますか?」 アンジェラスは俺の顔を覗き込むように言う。 瞳の奥にはどす黒い光が灯っているようにも見えた。 どうしよう。 俺はアンジェラスを受け入れる事が出来るのか? それとも受け入れず拒絶する事が出来るのか? 「ご主人様?」 「お、俺は!」 アンジェラスの愛を受け入れる。 アンジェラスの愛を拒絶する。 「(c) 2006 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.当コンテンツの再利用(再転載、再配布など)は禁止しています。」
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【名前】 冬花(とうか) 【所属】 『博愛』の勇者 【職業】 異世界召喚前は無職、現在は孤児院で暮らす 【年齢】 30。現在は外観年齢13程度 【外見】 赤眼、赤みがかった茶髪。ケモ耳。幼い美少女。首輪を付けている。灰色のマフラーがお気に入り 【趣味】 今→ご主人様との生活、観葉植物への水遣り、書き物、日記 昔→ネカマ、アニメや特撮やエロゲ、書き物(当然、書籍化などはしてない)、レスバ 【好きなもの】 ご主人様、孤児院の家族、アニメや特撮で昔見たヒーロー達、美少女 【嫌いなもの】 醜い心をした人間、いじめ、いけ好かないイケメン 【性格】 ご主人様や孤児院の家族が大好きで平和にのんびりと彼らと過ごすのが好きという勇者らしくない性格。警戒心が少し強いが、優しくされると心を開く。ただし悪意などには非常に敏感。人見知りだが、弱者にはなるべく手を差し伸べる。実年齢よりかなり幼い 【加護】 『暁の護衛』 誰かを『守りたい』と想う力により、持ち主に強さを与える加護。 ご主人様や孤児院の家族など、大切な人への想いにより多大な強さを得ている。 彼らは暗い夜から救ってくれた存在。ゆえにその夜明けを守るという加護。 『決して砕けぬ宝石(Lunatic Delusion)』 灰色のマフラー。動体視力、瞬発力、反応速度が格段にアップ。それら程ではないが筋力も上昇。状態異常や精神操作に対する耐性を獲得。 このマフラーは決して外れることも、壊れることもない。 ご主人様にもらったマフラーが後天的に加護へと昇華されたもの 『我ら思う、故に我ら在り』 人々を『守りたい』と想う力により、持ち主に強さを与える加護。 更にこの想いが高まった時、辺り一面の空を、青空に変えることが出来る。如何なる時間帯でも晴れやかな青空に。それは夜明けの訪れを目指すがゆえに。ただしこの青空自体には何の効果もない。 そして背中から大翼が生え、強烈な急降下キックを放つ必殺技。その蹴りは摩擦熱により、自身の足に炎を纏わせる。無論、本人がこれで燃えることはない。 その本質は人々を守り、魔王を討伐することで彼らを夜明けへ導くという博愛の力。 『聖剣ミヤモト』 聖剣ミヤモトを召喚する加護。要するにメインウェポンを任意に出せる。 この聖剣は双剣にすることも可能。更に大剣、小太刀に出来る。双剣、小太刀は反応速度を。大剣は筋力をアップさせる。 【詳細】 元々は男性。学生時代に虐められて不登校になり、そのまま無職になった引きこもり。精神障害で手帳持ち。がっつり知的障害というわけではないが軽度知的で頭も悪い。 親に愛されたこともなく、コミュ障気味で友達もロクにいない。自暴自棄になって「死ねば異世界転生出来るかな?」なんて自殺を画策していたら、何故か異世界召喚された。姿が幼女となったのは少しでも『秘めたる可能性』を引き出すための神の計らい。 その後は異世界でどう過ごせばいいかもわからず、捕まり奴隷に。そこをご主人様に拾われ、そのまま孤児院に引き取られた。 今ではご主人様から不器用な愛を与えられることにより、性格も改善してきている。 異世界転移前は典型的なダメ人間だが、そんな経験のある彼だからこそ。絶望に塗れた虚しい人生を送ってきたから生まれ変わることにより強い愛に目覚めるのではないかと、選ばれた。実際、生前から彼は愛に飢えていたのだ。 ご主人様と引き合わせたところまで含めて神の計画通り。もっともこれは本人もご主人様も気付いてないことなのだが。 【備考】 坂亀 涼介とは別の、ヒーローや異能とは無縁の世界出身。現実世界には近く、ヒーローはアニメや特撮だけの存在。加護を見てわかる通り、近接戦闘特化型。魔法の類は一切使えない。魔力なんてからっきし。弓矢や銃もロクに使えない。だが体術と剣術に限ればこの世界でもトップクラスの技量を誇る。 複数加護がある分、それぞれは圧倒的な強さという程じゃない。それら全てが合わさり、他の勇者に並べる。近接戦闘のオールラウンダーな分、必殺技以外の破壊力は基本的に坂本 竜也の拳の一撃に劣る。威力特化の大剣モードのみ、トロールやオーガの巨木の如く太い骨を砕けるかもしれない 名前は自分で新しく付けたもの。冬に咲いた花で、冬花。
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「ミッミッ♪」 休日男が部屋でテレビを見ていると、タブンネが可愛らしい鳴き声を上げて足にすり寄ってきた。 ふわふわしたビロードのような毛皮の感触がこそばゆい。 その仕草に思わず笑みが零れ、タブンネの頭を優しく撫でてやる。 「ミィ…♪」 タブンネは気持ちよさそうに目を細め、尻尾をふりふりしている。 しばらく頭や顎を撫でられていたが、もっと甘えたいらしく少し勢いをつけてぴょんとジャンプ。 男の膝の上にちょこんと座った。 肉付きが良く背丈以上に重いタブンネに男は少しだけ表情を歪めたが、タブンネのぷにっとしたお尻の感触と、撫でて撫でて!とミィミィ甘えるその姿に表情が綻ぶ。 そして頭やお腹、尻尾を櫛で解かすように撫で始めた。 「ミィ~ミィミ」 タブンネも男の優しい手付きに全身の力を抜き、心底気持ちよさそうに鳴いている。 そして、耳の触覚をくいっと伸ばし男の手に当てる。 伝わってくるのは自分を愛おしく思ってくれている気持ち、一緒にいたいと思ってくれる気持ち。 変わらぬ男の愛情に、タブンネは幸せいっぱいだ。 「さて、と」 男は時計を見ながら呟くと、夕食の準備にソファーから立ち上がろうとする。 タブンネも触覚で朧気ながら男の意図を読み取り、膝から降りる。 そして台所へ向かう男の後ろを短い足でとてとて付いていく。 少しでもお手伝いをしようと、必要な野菜や食器を小さなお手々で一生懸命運ぶのだ。 時折皿を落としそうになりもたつくタブンネに苛つくこともあるが、微力ながらも役立とうと頑張るタブンネを男もまた愛おしく思っていた。 触覚で読み取る幸せな感情。 それが毎日続くものだとタブンネは思っていた。 「何をやっているんだ!こんな成績では給料泥棒もいいところだぞ!」 事務所に響く怒声。 休み明け、男を待っていたのは1人の人間には処理仕切れない程の激務だった。 それにノルマを達成出来ない故の上司の叱責がプラスされる。 一介のサラリーマンに過ぎない男はそんな日々にストレスをため、精神をすり減らしていった。 残業で帰りも遅くなり、仕事のために家を出ては寝るためだけに帰る生活が続く。 しかし帰れば身の回り、そしてタブンネの世話をしなくてはならない。 疲れから料理をする気力も湧かず自分にはコンビニ弁当、タブンネには乾燥フーズ等と食事も簡単でいい加減なものになってしまう。 「ンミィ…ミィ」 いつもより雑な餌にタブンネは顔をしかめるが、男の辛い気持ちを触覚で読み取り、我慢して精一杯の笑顔を向けるのだった。 男もこんな自分に笑顔を向けてくれるタブンネを嬉しく思い、そのままベッドに沈んだ。 その夜、タブンネは着の身着のまま寝息を立てている男にそっと近づくと、大きな耳についた触覚をぴとっとその頬に当てた。 「ミッ…!?フミィィ…」 伝わってきたのは未だ読み取ったことのないようなネガティブな感情。 その嫌な感覚にタブンネは思わず身体を仰け反らせてしまう。 ご主人様は外にいる間こんなにも苦しんでいる。 何とかして笑顔になって欲しい。 その思いからタブンネは翌日からもっともっとお手伝いしようと決心し、男に寄り添ったまま眠った。 そして、事件は起こった。 深夜、仕事から帰った男を待っていたのはおぞましい光景だった。 廊下にぶちまけられた水とバケツ、電源が入ったまま唸り続けている掃除機。 ぐちゃぐちゃに畳まれた洗濯物と散らばった洗剤。 そして台所に散乱した割れた食器に、その中心で泣きじゃくるタブンネの姿。 特性はぶきようではないものの、短手短足のタブンネに人間用の道具を使うことは無理があったのだ。 「ミィィィィィン!!ミィィィ…ミッ!!?」 大粒の涙を流し泣き叫んでいたタブンネだが、台所の入り口に立つ男の姿を確認すると、絶望の表情を浮かべながら固まる。 しかし男に抱きつくと再び大声で泣き出した。 ごめんなさい!ごめんなさい! そう言わんばかりに大声で泣きじゃくるタブンネ。 しかしミィミィと鳴く声では人間である男には伝わらない。 壊滅状態の部屋に響き渡るタブンネの声。 男は思った。 何をやってるんだコイツは…! この忙しいのに余計なことしやがって。 あんなに可愛かったミィミィ鳴く声が今は不快で仕方ない。 しかし、手伝おうとしてくれた気持ちは痛いほど理解出来たし、幸い明日は休日だ。 男は湧き上がってきたタブンネを蹴手繰り廻したい感情を何とか押さえ込み、一発頭を小突いた後、優しく撫でてやる。 「次は別の形でお手伝いを頑張ってくれな?」 男の笑顔と優しい包容に安堵したが、それでも申し訳なさそうなタブンネはおずおずと触覚を伸ばし、男の手に触れようとした。 瞬間、不味いと感じた男は必死でタブンネ可愛いタブンネ可愛いと念じた。 タブンネはサーナイトやエルレイドのようにテレパシーで感情を読み取る訳ではなく、心臓の音で大まかな喜怒哀楽を感じ取るに過ぎない。 そのおかげもあって男の本心は分からず笑顔を向けたタブンネ。 いちいち触覚を伸ばしてこちらの気持ちを読もうとするタブンネに微妙な感情を抱いた男と、今度こそしっかりお手伝いをしようと決意を新たにするタブンネ。 両者の間には僅かだが、確実な亀裂が生まれつつあった。 翌日、足りなくなった食器や洗剤を買いに行くのと、気分転換を兼ねてタブンネと一緒にショッピングモールを訪れていた。 「仕事も満足にこなせないのに買い物とはいいご身分だねぇ。大体君は…」 しかし出先で上司と鉢合わせ、街中で嫌みをくどくど言われる羽目になっていた。 泣きそうになる感情を抑え、男はひたすら言葉の暴力を耐えていた。 男の背後にいたタブンネはその小さくなった男の背中にこっそり触覚を当てた。 読み取れた気持ちは必死に堪えた怒りとあの男に対する畏怖の感情。 「ミィッ!ミィッ!」 ご主人様を守らなきゃ! 男の前に出たタブンネは上司に向かって可愛い鳴き声で精一杯威嚇した。 「た、タブンネ!?」 「何だこの生意気な豚は。この飼い主あればこの糞豚ありだな」 困惑する男を余所に未だ高慢な態度を取る上司。 「ミィィィィィ!!」 タブンネはご主人様をいじめるな!とばかりに勢いをつけて上司に突進した。 不意の一撃を腹に受けた上司は豪快に転び地面に頭をしたたかに打ち付けた。 顔面蒼白の男。 鬼のような形相の上司。 「ミフーッ!ミフーッ!」 威嚇するタブンネ。 気まずい沈黙の中、タブンネの荒い息遣いだけが聞こえる。 「貴様ぁっ!!ワシにこんなことをしてタダですむと思っとるのか!もう明日から会社に来れると思うなよ!」 その沈黙を破ったのは死の宣告に等しき言葉。 男は必死に弁解するが、完全にキレた上司は聞く耳を持たずに帰っていった。 男の中で、何かが弾けた。昨日生まれた亀裂が広がり、割れた瞬間だっだ。 「タブンネェ!!」 家に帰るなりタブンネに男の拳が飛ぶ。 顔面に拳を受けたタブンネは鼻血を吹きながら豪快に吹き飛んだ。 「ミッ…ミィィミィ…?」 何で?どうして?ご主人様はあの怖い人が嫌だったんでしょ? 何故殴られたか分からないタブンネは涙ぐんだ顔で男を見上げる。 触覚で気持ちは読めても人間の複雑な気微までは汲み取れなかったのだ。 タブンネにお腹に容赦のない蹴りが放たれた。 「ミギャッ!」 小さく悲鳴を上げ、苦しそうに悶絶しているタブンネを更に踏みつける。 「触覚で気持ちが分かるからって俺の全部を理解した気になってるんじゃねぇ!」 言いながら男はタブンネの耳を掴み思い切り引っ張る。 タブンネは短い手で必死に男を払いのけようとするが、勿論届かない。 「もう滅茶苦茶だよ!全部お前のせいだ!!」 男の言葉がタブンネに突き刺さる。 確かにタブンネはことあるごとに男の身体に触覚を当て、気持ちを感じ取っていた。 しかしテレパシーとは程遠いそれで男の求めるものを勝手に自己完結し、自己満足なお手伝いをしていたに過ぎないのだ。 「ミ…ミェェェェェェン!!」 大声で泣き始めたタブンネ。 それも今となっては男の神経を逆なでするだけ。 男はタブンネの尻尾を掴むと、ジャイアントスイングのように左右に振り回した。 「ミギャアァァァアァア!!」 引きちぎれそうな痛みがタブンネを襲い、小さな手足が上下左右に動き回る。 振り回す内にタブンネの身体が机やクローゼットに当たり、そこに血が付着するが男はお構いなしだ。 勢いに任せて振り回した結果、掴んでいた尻尾の毛がブチッという音と共に大量に千切れ、タブンネの身体が男の手から離れた。 「ミギィ!?」 壁に背中からぶつかり、ずるずると倒れ伏すタブンネ。 優しかったご主人様の変貌にタブンネはただただ身体を丸めてガクガクと震えている。 しかし男の怒りは治まらない。 それどころか、タブンネを殴り蹴る度に異様な快感が湧き上がってくるのを感じていた。 男はクローゼットからベルトを取り出すと、それを丸まりお菓子のように見えるタブンネの背中や尻に打ち付けた。 「ミャア!!ミヒッ!ヒィ!ミァァア!!」 打ちつけられる度に軽快な音と悲鳴が響き、タブンネの身体に傷痕が刻まれてゆく。 男はつい昨日までは可愛くて仕方なかったハート型の肉球を特に入念に痛めつけた。 「ミギャ!ミィ!ミギゥ!ピャア!?」 何故かは分からない。 ただ今はその肉球が憎たらしくて堪らないのだ。 ベルトで打ち据える度、血が滲みピンク色が赤黒く変わっていった。 男はベルトを放るとタブンネに馬乗りになり、今度は顔面を何度も殴りつける。 「ミガッ!ハ……ッ!ミィ…ァ!」 次第に弱々しくなり始めたタブンネの声に男は殴るのを辞めた。 もしかして許してくれたの? 急に止んだ暴力に固く目を瞑っていたタブンネのつぶらな瞳が恐る恐る開く。 広がったタブンネの視界に入ったのは薄ら笑いを浮かべてホチキスを持つ男の姿。 「ミ…ミィィィィィィィィィィィィィイ!!」 直後、叫び出すタブンネ。 男のタブンネに対する純粋な暴力衝動に恐怖し、イヤイヤと暴れ出すタブンネ。 しかし、馬乗りになられてはどうしようもない。 男は暴れるタブンネを押さえ込み、ホチキスをその大きな耳にあてがう。 ホチキスを打つ音が複数回響き渡る。 「ミギャアァァァアァアアァァァアァアァ!!!」 甲高く喧しい悲鳴が部屋に反響し、タブンネの耳には幾つものホチキス芯が鈍い輝きを放っていた。 タブンネは口から泡を吹き気絶している。 全ては触覚で読み取れる感情程度で相手の全てを理解した気になって、タブンネが起こした行動が原因。 この後、虐待に目覚めた男は毎日のストレスをタブンネにぶつけるようになる。