約 488 件
https://w.atwiki.jp/deruta_sanbaka/pages/131.html
翌朝 午前5時30分 初春はベッドの中でまどろんでいた。 だが。 「おっはよー!!3人とも起きなさ~い!!!」 ガバッ! 「「「ふぇ?」」」 たたき起こされた初春、佐天、絹旗は。 「ムニャムニャ…超早すぎませんか?…zzz」 「ですよね~zzz」 「佐天さん達に1時くらいまでいじられてて…zzzz」 二度寝モードに突入仕掛けるが その幻想をぶち壊すのはもちろん 「ムムム~!?この美鈴さんがはりきって準備しようってのに二度寝とは何ごとじゃ~!!!」 バシバシベチン!!! 「「「痛いっ!!!」」」 「超何すんですか!」「そうですよ…って早!?もう蒲団がない!!」 「美鈴さん元気よすぎですぅ~。なんでそんなにはりきってんですかぁ~??」 それに対して美鈴が答える 「そりゃ両家の父親達が来るからよ!」 「「「(超)なんですって!?」」」 「超こうしてはいられません!」「初春、さっさと着替える!!」 「そういいながら二人して脱がさないでくださいーっ!!!!!」 ちなみにパーティー参加者の「学園都市外出許可証」をいつの間にか準備していたのは… 「母さん早速やってるな。」 「あら父さん早かったわね。」 御坂旅掛である。 美琴の父親と初対面の3人は… 「は、はじめまして!!御坂さんの友達の初春飾利です!!」 「同じく御坂さんの友達の佐天涙子です。」 「え?ああ私はこちらの佐天さんのほうの超友達です!!」 「「「(超)よろしくお願いします!!」」」 なんとかあいさつできた三人だった。 ちょっと時間は飛びまして、こちら上琴 トントントントン… 「ふぁ~あ…」 「あ、当麻おはよ♪」 「おはよう…」 チュッレロレロレロ… 最近の二人の朝である。 「ふう、さてさて、今日の朝飯は何かな?」 「今日はね、ご飯と鮭とお味噌汁よ。」 「今日は和食か」 「そ、はやく食べよ。」 「はいはーい!」 隣の土御門と白雪は… 「にゃぁ~…zzz」「元春、朝だよ、起きなさい!!」 ズッドーン!!! 朝からけたたましい音。 白雪がベッドから土御門を引きずり落とした音である。こうでもしないと起きないからなのだが…。 「痛いにゃー。………zzzzz」 「ムムム、慣れちゃって起きない!どうしようかな~?」 5秒ほど考えて。 白雪は指先に氷の粒(といっても手のひらサイズのボール型)をつくる。 昔はできなかったのだが、最近なぜかうまくできる。 そしてそれを土御門の首筋へ…… 「にゃーーーーっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 金髪グラサン男、起床。 そのころむかいの青ピ宅では…。 「○○様ー!!ああ、○○様○○様○○様○○さっまー!!ああ!!○○様のにおいがあん♪」 「変な声だすんやない!!」 「グフフフ…、遂に○○様と甘ーい夜をすごせましたわ!!」 「んなことしてないやろ!!(確かに一緒には寝たけどね)」 その頃の黄泉川の家では… 「ゲコ太ぁ……ゲコ太ァ……ミサカはミサカは……ムニャムニャ」 「ハシャぎすぎだろぉ、ゲコ太一つでヨォ。結局明け方まで騒ぎやがって……」 「しょうがないじゃんよ。大好きなゲコ太を大好きなあんたから貰ったんだ。オールナイトも当然じゃん」 「それにしても最近のあなた、打ち止めに本当に優しくなったわね。もしかして結婚を視野に入れ始めた?」 一方通行のプレゼントでハッスルしてようやく眠った打ち止めの横で、黄泉川と芳川にからかわれる一方通行。 大声で文句を言いつつも、特に否定もしない一方通行だが本人は全く気づいていない。 するとそこへ黄泉川の携帯に一通のメールが届いた。 「ジャッジメントの初春……ああ、あの花飾りの子じゃん。何々……へえ、嬉しいお誘いじゃんよ」 メールの相手は初春で、内容に目を通した黄泉川は一方通行と芳川に問いかける。 「一方通行と打ち止めは参加決定として、桔梗、今日は何か予定あるじゃん?」 「それって嫌味? 貴女と同じで恋人居ないんだから完全にフリーよ」 「決まりじゃん。さっき知り合いのジャッジメントの子からパーティーのお誘いがあったからみんなで行くじゃんよ」 「ンだとぉ! みんなってどうゆうコトだァ! つーかさっき俺とクソガキは参加決定とか抜かしたよなァ!」 黄泉川の一方的な通告に怒り心頭の一方通行だが、大人の女性二人は全く恐れていない。 そんな一方通行を黙らせたのはまたしても送られてきた一通のメールだった。 (初春……? 誰だァ? パーティーの主催者だとォ! 上等だァ、今からとっ捕まえて………………ッ!) 「どうしたじゃん? 一方通行。もしかして参加しないつもりじゃん?」 「行きゃいいンだろうが畜生がァ!」 「それでいいじゃんよ。時間は追って伝えるらしいから打ち止めが起きるまではゆっくりするといいじゃん」 初春からのメールを見ていた一方通行は絹旗の時とは逆に、顔を紅潮させながらパーティー参加の旨を伝えた。 その頃、神裂と建宮はというと…… 「あの~プリエステス。いい加減許して欲しいのよね……」 「許す? 誰を? ああ、女子トイレの個室で女の子の会話を聞いていた変態のことですか? ダメです」 情報の出所が気になったので何気なく建宮に尋ねた神裂は、目の前の男を徹夜で説教した。 教皇代理を務め上げた男が、魔術をあろうことか女子トイレに入る為に使い、あまつさえ盗み聞きしたのだから当然といえば当然。 「仕方なかったのよね! 禁書目録につられて食いまくってたら腹が痛くなって、しかも限界ギリギリだったからやむなくという事情を察して欲しいのよ!」 「それくらい我慢しなさい! いい歳した大人がそんなことで魔術を……情けない。ですがもういいでしょう。私達もどう動くのか決めないといけませんし」 そう言って神裂は建宮を縛り上げていたワイヤーを解いてやった。 そこへ神裂の最期に言った言葉が気になった建宮はやや真剣な表情で彼女に尋ねる。 「我らがどう動くとはどうゆうことなのよね? そんなの決まってるのよ! プリエステス御自ら大精霊チラメイドでパーティーに乱入するのよな!」 「しません! そもそもそんなもの二度と着ません! それに建宮、私達がいつパーティーに参加すると言いました? そもそも呼ばれても居ないのに」 「……そ、そうなのよね。だったらプリエステスは一体何をお悩みで?」 今日という日が終わったら目の前のバカは病院送りにする、そう誓った神裂だった。 しかし今はそんなことはどうでもいいので建宮の疑問に答えることにした。 「あなたが聞いた女の子のことです。その子がどんなことを言っていたのか覚えていますよね」 「当然なのよね。上条当麻も御坂嬢も大切な人、笑って祝福出来る、私は大丈夫、かいつまんで言うとこんな感じなのよ」 「そうです。これはもしかしたら我々、というか建宮のような人種が乱入して台無しにしていいものでは無いのかもしれません」 「それってどうゆうことなのよ?」 神裂の考えが全く分からない建宮に頭を悩ませながらも、神裂は自分なりの考えを彼に伝える。 少しして神裂の言うことを理解した建宮は、 「そ、そんな考えをまだ見ぬあの子は考えてたのよな! 不味い、非常に不味いのよね! 健気な女の子の願い、絶対に叶えてみせるのよ!」 随分と見せていなかった教皇代理に顔つきになって立ち上がると、熱く熱く自分の決意を宣言する。 その所々に変な引っかかりを感じつつ、神裂も立ち上がって出立の準備をした。 「それはあくまで私の考えです。ですがもし当たっていたら私は騎士団と一戦交えるつもりです。建宮、力を貸してくれますか?」 「当たり前なのよね! この建宮斎字、いや天草十字凄教一同、いついかなる時もプリエステスとまだ見ぬ我が姫君の為に戦う所存なのよね!」 「(後で色々と問いたださねばいけないようですね)ありがとうございます。ですがまずは事実確認です。パーティー会場の御坂家へ向かいますよ」 こうして神裂と建宮は後のことは対馬に任せ、自分達の道を決める為に御坂家へと向かうのだった。 ちょうどその頃、浜面と滝壺はといえば…… 「はまづら、なんか変な手紙が来た。」 「あん?ナニコレ?…招待状!?なんでなんで!?」 「差出人の連名の中に「初春」ってあるからそれだと思う。」 「なんか面白そうだなあ。行くよな?」 「もちろん!」 ついでに言っておこう。 この会話がなされたのは浜面の家である。 そのころ天草式の浦上と対馬は。 第23学区の空港にいた。 そこの国際線ロビー、正確には到着口付近で来る人間をチェックしていたのだが、 ある一人の英国人男性が降りて来るや顔を見合わせ、頷きその男の前に立ちはだかる。 その男とは… 「騎士団長、本当に来たのですか…?」 「フム、私はあなたが残念そうなのが不思議なのだが…」 その時対馬の近くにいて周りをなおも警戒していた浦上が到着口からもう誰も出てこないのを見てホッとしていった。 「よかった。クラッシャーアークビショップは来てないようです。」 だが。 「それなのだがな……」騎士団長が言いよどむ。 「私としても何しでかすかわからないからと再三再四女王陛下にも『アークビショップの務めはロンドンに合って陛下の諮問にお答えすることです』と申したのだが…」 「「ましゃか、まさか?」」 騎士団長は告げる。 「アークビショップからの伝言だ。『超音速何とやらは恐ろしきにつき、普通ので行きけるよ。それまで待ちや。』」 「「えええええええええっ!!!!!?????」」 「それとだな、ロンドンで知り合った御坂旅掛氏から昨日メールが来てな。」 そういうと騎士団長はプリントアウトされた紙を懐から取り出す。 「どうして私と上条が知り合いなのを知ってたのか謎だが……招待状だ。」 「私たちも先ほど受け取りました。」 そう言って対馬達も取り出す。 こちらは普通の便せん。(封蝋がしてあるあたり普通かどうか少し疑問だが…) 「それとなぜかアークビショップにもとどいたらしい。」 「「ななななんですってぇ!!!????」」 「それでは追い返すこともできないです!!」 「追い返す?バカを言うなパーティーだぞ。それに出てこようとした陛下を止めた私に感謝してもらいたいものだ。」 「それは感謝してもしきれません。が!!アークビショップが来る時点でプラスマイナスゼロです。」 「そんなにすごいのか?」 天草式の二人は答える。 「そりゃすごいの何のって…。」 「言葉にするのも恐ろしいです…」 「そ、そんなにか?」 「「そんなに…」」
https://w.atwiki.jp/allrowa/pages/169.html
喜怒哀楽 ◆.pKwLKR4oQ 鈴木イチロウが抱いている感情は『喜』だ。 このような訳も分からないような場所に来て早々に息子と再会する事ができたからだ。 それなのに息子の万吉は自分を見るなり一目散に逃げ出してしまった。 なぜという疑問がイチロウの胸の中で渦巻く。 だがそんな事はどうでもよかった。 再会できた喜びは微かに胸をよぎった疑問を押し流し、イチロウに息子を追いかけるという行動を取らせた。 ◆ 鈴木万吉が抱いている感情は『怒』だ。 恋愛フラグと脱出フラグ支給品を探そうとした矢先に、いきなり親父と再会したからだ。 これでは早々に自分は同作品早期再会の死亡フラグよろしく死んでしまう。 まだ恋愛フラグの「レ」の字も無いうちから死んでたまるか。 そんな理不尽な怒りを覚えて、万吉はイチロウから逃げるべく全力で走りだした。 一方、イチロウと万吉が向かった先にも理不尽な怒りを覚える人がいた。 ◆ カズマ改めカズヤの抱いている感情は『怒』だ。 いきなり見知らぬ人物から「これからお前の名前はカズヤじゃ」と言われたら、抱く感情は怒りしかない。 しかもぶん殴ろうにもマリナンはひょいひょいと避けて一向に拳は掠りもしない。 カズヤの怒りのフラストレーションは上昇する一方だった。 おまけにシェルブリッドでさえ当たらない、何様と尋ねたら神様と答えられる。 カズヤの怒りはさらにヒートアップする一方だった。 ◆ ハオが抱いている感情は『哀』だ。 いや、本当に『哀』かどうか定かではない。 幾度となく繰り返してきた死と転生。 そしてそれに付き従ってきたスピリット・オブ・ファイア。 そのS.O.F.が目の前の訳の分からない奴の力で消滅させられてしまった。 別にS.O.F.はグレート・スピリッツに辿り着くまでの持ち霊、不要になれば捨てるつもりだった。 それなのにこの胸に巣食った空洞はなんだろうか。 そこだけぽっかりと穴が空いたような感じがするのは気のせいだろうか。 ハオはマリナンに殴りかかっているカズヤを横目に見つつデイパックに手を入れた。 取りだしたのは刀身が波紋のように波打っている180cm程もあるフランベルジェ。 とある宗教の教皇代理が愛用している刀だが、そんな事などハオは知らないし、興味もなかった。 ハオはフランベルジェの感触を確かめると、ゆらりとマリナンとカズヤの元へ接近し始めた。 ◆ マリナンが抱いている感情は『楽』だ。 はっきりとそうだとは断言できないが、あえて言うならぐらいの感情だ。 出会った人物の名前を変えて、その人物の様子を見る。 幾度となく繰り返してきた行為だが、場所も変われば抱く感情も変わってくるのだろう。 今まで名前を変えた者は二人。 一人は怒り心頭に殴りかかり、もう一人は一瞬動揺した後は物静かにしている。 そろそろ別の誰かに命名しようか。 そんな事をマリナンが考え始めていた。 ◆ 不意にマリナンはゼロのハオがゆっくりとこちらに近づいてきているのに気が付いた。 一瞬の後ハオはフランベルジェを構え、マリナンの背後に一気に接近した。 そして天上高く掲げたフランベルジェをマリナンにぶつけるべく振り下ろした。 だがそこでマリナンは自身の身体をすっと横に移動させた。 カズヤの乱打を避け続けた要領でマリナンはハオのフランベルジェも軽く―― 「ちっちぇな」 ――避けられなかった。 ハオのフランベルジェはその軌道を途中で横に変え、マリナンの身体を真一文字に斬り裂いていた。 「――ッ!!」 マリナンは自身の身体を支える事ができずに無様に地面へと倒れこんだ。 少し離れたところではカズヤが意外な結末に驚いていた。 説明すれば簡単な事だ。 ハオはマリナンの心を読んで刃の起動を修正した。 唯それだけの事だ。 S.O.F.がなくなっても未だハオの牙は健在だった。 「これで借りは返せたかな。面白い力だったよ」 「お、のれ……よかろう、お前は今からプリンセス・ハオだ! どう――」 「それがどうした」 ハオは何の感情も抱かずに躊躇いなくフランベルジェをマリナンの胸に刺した。 もうそこにあるのはマリナンではなく『血に塗れたマリナンだったもの』である。 マリナンが最後に抱いた感情、それは誰にも分からない。 ◆ 「ひぃっ」 鈴木万吉は目の前で行われた所業に思わず声を上げてしまった。 父であるイチロウを何とか振り切ろうとして我武者羅に走ってきて目に飛び込んできたのがハオによる殺人光景。 いたって普通の高校生の万吉がその光景を見て声を上げるのは至極当然の事だった。 そしてそれをハオは聞き逃さなかった。 「君も死んでくれ」 ハオは瞬く間に万吉との距離を詰めると、その凶刃を再び振るった。 一方の万吉はあまりの突然の事態に身体が動かなかった。 万吉は自身の身体に迫るフランベルジェがゆっくりと見えたが、身体はついに動く事はなかった。 そしてハオのフランベルジェが目の前の人物の身体を無慈悲に斬り裂いた。 しかし、それは万吉ではなく――万吉の父、鈴木イチロウだった。 「親父!? な、なんで」 「……親が、息子を守るのは当然だろ」 イチロウは当たり前のようにそう言ってのけた。 万吉を追いかけてきたイチロウは息子の危機を見るや否や自分の事は一切顧みなかった。 そしてギリギリのところで何の迷いもなくハオと万吉の間に身を割り込ませたのだった。 命の危機にある息子を守る。 イチロウは父親として当然の事をしただけだった。 「おい、そこの奴。万吉を連れて逃げてくれ。頼む!」 「ちっ、分かったよ。行くぞ!」 「――待てって。くそっ」 イチロウの意向を汲み取るとカズヤは渋る万吉の手を強引に引いて走り出した。 ハオはその様子を目に入れつつも敢えて動こうとはしなかった。 ここで自分が殺さなくても別の誰かに殺されるか、或いは時を置いて再会する可能性もある。 そう思ったからこそハオは別段二人を追いかけようとはしなかった。 ハオの目的はここにいる全ての人の皆殺し。 ここに来てもハオのする事に変わりはない。 ハオの周りにはただ二つの死体が転がるだけ。 今のハオは血染めのプリンセス・ハオだった。 【命名神マリナン@ドラクエⅥ 死亡確認】 【鈴木イチロウ@オリジナルキャラ・バトルロワイアル 死亡確認】 【1日目 黎明/I-10】 【プリンセス・ハオ(ハオ)@シャーマンキング】 【服装】普段着(古びたマントを羽織っている) 【状態】健康、S.O.F.喪失 【装備】建宮斎字のフランベルジェ@とある魔術の禁書目録 【道具】支給品一式×3、不明支給品(ハオ:0~2、マリナン:1~3) 【思考】 基本方針:皆殺し。 1:この地にいる者を全て殺す。 【備考】 ※本来の名前はハオです。 ※改名による影響はまだ見られません。 【1日目 黎明/H-9】 【カズヤ@スクライド】 【服装】普段着(くすんだ色の革のジャケット) 【状態】健康 【装備】なし 【道具】支給品一式、不明支給品1~3 【思考】 基本方針:殺し合いに反逆する。 1:とりあえず万吉を連れて離脱。 2:ぶん殴りたい奴をぶん殴る。 【備考】 ※本来の名前はカズマです。 【鈴木万吉@オリジナルキャラ・バトルロワイアル】 【服装】ニート専用パジャマ 【状態】健康、父を失った悲しみ 【装備】なし 【道具】支給品一式 【思考】 基本方針:フラグ重視。 1:お、親父ィィィ!!! 2:恋愛フラグと脱出フラグ支給品を探すが、死亡フラグからは何があっても逃げる。 3:何ロワイヤルなのかを考察する。 4:なんか似た体験をした記憶があるような、ないような? 時系列順で読む Back こんなに近くで…… Next 生還? だが断る! 投下順で読む Back むしゃくしゃしてやった。今は反省している。 Next DARK・IMPACT Returns ゼロ一人追加 プリンセス・ハオ 『これからの身の上』 ゼロ一人追加 カズヤ 湖のほとりで休憩 ゼロ一人追加 命名神マリナン GAME OVER 鈴木家の人々 鈴木万吉 湖のほとりで休憩 鈴木家の人々 鈴木イチロウ GAME OVER
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/245.html
翌朝 午前5時30分 初春はベッドの中でまどろんでいた。 だが。 「おっはよー!!3人とも起きなさ~い!!!」 ガバッ! 「「「ふぇ?」」」 たたき起こされた初春、佐天、絹旗は。 「ムニャムニャ…超早すぎませんか?…zzz」 「ですよね~zzz」 「佐天さん達に1時くらいまでいじられてて…zzzz」 二度寝モードに突入仕掛けるが その幻想をぶち壊すのはもちろん 「ムムム~!?この美鈴さんがはりきって準備しようってのに二度寝とは何ごとじゃ~!!!」 バシバシベチン!!! 「「「痛いっ!!!」」」 「超何すんですか!」「そうですよ…って早!?もう蒲団がない!!」 「美鈴さん元気よすぎですぅ~。なんでそんなにはりきってんですかぁ~??」 それに対して美鈴が答える 「そりゃ両家の父親達が来るからよ!」 「「「(超)なんですって!?」」」 「超こうしてはいられません!」「初春、さっさと着替える!!」 「そういいながら二人して脱がさないでくださいーっ!!!!!」 ちなみにパーティー参加者の「学園都市外出許可証」をいつの間にか準備していたのは… 「母さん早速やってるな。」 「あら父さん早かったわね。」 御坂旅掛である。 美琴の父親と初対面の3人は… 「は、はじめまして!!御坂さんの友達の初春飾利です!!」 「同じく御坂さんの友達の佐天涙子です。」 「え?ああ私はこちらの佐天さんのほうの超友達です!!」 「「「(超)よろしくお願いします!!」」」 なんとかあいさつできた三人だった。 ちょっと時間は飛びまして、こちら上琴 トントントントン… 「ふぁ~あ…」 「あ、当麻おはよ♪」 「おはよう…」 チュッレロレロレロ… 最近の二人の朝である。 「ふう、さてさて、今日の朝飯は何かな?」 「今日はね、ご飯と鮭とお味噌汁よ。」 「今日は和食か」 「そ、はやく食べよ。」 「はいはーい!」 隣の土御門と白雪は… 「にゃぁ~…zzz」「元春、朝だよ、起きなさい!!」 ズッドーン!!! 朝からけたたましい音。 白雪がベッドから土御門を引きずり落とした音である。こうでもしないと起きないからなのだが…。 「痛いにゃー。………zzzzz」 「ムムム、慣れちゃって起きない!どうしようかな~?」 5秒ほど考えて。 白雪は指先に氷の粒(といっても手のひらサイズのボール型)をつくる。 昔はできなかったのだが、最近なぜかうまくできる。 そしてそれを土御門の首筋へ…… 「にゃーーーーっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 金髪グラサン男、起床。 そのころむかいの青ピ宅では…。 「○○様ー!!ああ、○○様○○様○○様○○さっまー!!ああ!!○○様のにおいがあん♪」 「変な声だすんやない!!」 「グフフフ…、遂に○○様と甘ーい夜をすごせましたわ!!」 「んなことしてないやろ!!(確かに一緒には寝たけどね)」 その頃の黄泉川の家では… 「ゲコ太ぁ……ゲコ太ァ……ミサカはミサカは……ムニャムニャ」 「ハシャぎすぎだろぉ、ゲコ太一つでヨォ。結局明け方まで騒ぎやがって……」 「しょうがないじゃんよ。大好きなゲコ太を大好きなあんたから貰ったんだ。オールナイトも当然じゃん」 「それにしても最近のあなた、打ち止めに本当に優しくなったわね。もしかして結婚を視野に入れ始めた?」 一方通行のプレゼントでハッスルしてようやく眠った打ち止めの横で、黄泉川と芳川にからかわれる一方通行。 大声で文句を言いつつも、特に否定もしない一方通行だが本人は全く気づいていない。 するとそこへ黄泉川の携帯に一通のメールが届いた。 「ジャッジメントの初春……ああ、あの花飾りの子じゃん。何々……へえ、嬉しいお誘いじゃんよ」 メールの相手は初春で、内容に目を通した黄泉川は一方通行と芳川に問いかける。 「一方通行と打ち止めは参加決定として、桔梗、今日は何か予定あるじゃん?」 「それって嫌味? 貴女と同じで恋人居ないんだから完全にフリーよ」 「決まりじゃん。さっき知り合いのジャッジメントの子からパーティーのお誘いがあったからみんなで行くじゃんよ」 「ンだとぉ! みんなってどうゆうコトだァ! つーかさっき俺とクソガキは参加決定とか抜かしたよなァ!」 黄泉川の一方的な通告に怒り心頭の一方通行だが、大人の女性二人は全く恐れていない。 そんな一方通行を黙らせたのはまたしても送られてきた一通のメールだった。 (初春……? 誰だァ? パーティーの主催者だとォ! 上等だァ、今からとっ捕まえて………………ッ!) 「どうしたじゃん? 一方通行。もしかして参加しないつもりじゃん?」 「行きゃいいンだろうが畜生がァ!」 「それでいいじゃんよ。時間は追って伝えるらしいから打ち止めが起きるまではゆっくりするといいじゃん」 初春からのメールを見ていた一方通行は絹旗の時とは逆に、顔を紅潮させながらパーティー参加の旨を伝えた。 その頃、神裂と建宮はというと…… 「あの~プリエステス。いい加減許して欲しいのよね……」 「許す? 誰を? ああ、女子トイレの個室で女の子の会話を聞いていた変態のことですか? ダメです」 情報の出所が気になったので何気なく建宮に尋ねた神裂は、目の前の男を徹夜で説教した。 教皇代理を務め上げた男が、魔術をあろうことか女子トイレに入る為に使い、あまつさえ盗み聞きしたのだから当然といえば当然。 「仕方なかったのよね! 禁書目録につられて食いまくってたら腹が痛くなって、しかも限界ギリギリだったからやむなくという事情を察して欲しいのよ!」 「それくらい我慢しなさい! いい歳した大人がそんなことで魔術を……情けない。ですがもういいでしょう。私達もどう動くのか決めないといけませんし」 そう言って神裂は建宮を縛り上げていたワイヤーを解いてやった。 そこへ神裂の最期に言った言葉が気になった建宮はやや真剣な表情で彼女に尋ねる。 「我らがどう動くとはどうゆうことなのよね? そんなの決まってるのよ! プリエステス御自ら大精霊チラメイドでパーティーに乱入するのよな!」 「しません! そもそもそんなもの二度と着ません! それに建宮、私達がいつパーティーに参加すると言いました? そもそも呼ばれても居ないのに」 「……そ、そうなのよね。だったらプリエステスは一体何をお悩みで?」 今日という日が終わったら目の前のバカは病院送りにする、そう誓った神裂だった。 しかし今はそんなことはどうでもいいので建宮の疑問に答えることにした。 「あなたが聞いた女の子のことです。その子がどんなことを言っていたのか覚えていますよね」 「当然なのよね。上条当麻も御坂嬢も大切な人、笑って祝福出来る、私は大丈夫、かいつまんで言うとこんな感じなのよ」 「そうです。これはもしかしたら我々、というか建宮のような人種が乱入して台無しにしていいものでは無いのかもしれません」 「それってどうゆうことなのよ?」 神裂の考えが全く分からない建宮に頭を悩ませながらも、神裂は自分なりの考えを彼に伝える。 少しして神裂の言うことを理解した建宮は、 「そ、そんな考えをまだ見ぬあの子は考えてたのよな! 不味い、非常に不味いのよね! 健気な女の子の願い、絶対に叶えてみせるのよ!」 随分と見せていなかった教皇代理に顔つきになって立ち上がると、熱く熱く自分の決意を宣言する。 その所々に変な引っかかりを感じつつ、神裂も立ち上がって出立の準備をした。 「それはあくまで私の考えです。ですがもし当たっていたら私は騎士団と一戦交えるつもりです。建宮、力を貸してくれますか?」 「当たり前なのよね! この建宮斎字、いや天草十字凄教一同、いついかなる時もプリエステスとまだ見ぬ我が姫君の為に戦う所存なのよね!」 「(後で色々と問いたださねばいけないようですね)ありがとうございます。ですがまずは事実確認です。パーティー会場の御坂家へ向かいますよ」 こうして神裂と建宮は後のことは対馬に任せ、自分達の道を決める為に御坂家へと向かうのだった。 ちょうどその頃、浜面と滝壺はといえば…… 「はまづら、なんか変な手紙が来た。」 「あん?ナニコレ?…招待状!?なんでなんで!?」 「差出人の連名の中に「初春」ってあるからそれだと思う。」 「なんか面白そうだなあ。行くよな?」 「もちろん!」 ついでに言っておこう。 この会話がなされたのは浜面の家である。 そのころ天草式の浦上と対馬は。 第23学区の空港にいた。 そこの国際線ロビー、正確には到着口付近で来る人間をチェックしていたのだが、 ある一人の英国人男性が降りて来るや顔を見合わせ、頷きその男の前に立ちはだかる。 その男とは… 「騎士団長、本当に来たのですか…?」 「フム、私はあなたが残念そうなのが不思議なのだが…」 その時対馬の近くにいて周りをなおも警戒していた浦上が到着口からもう誰も出てこないのを見てホッとしていった。 「よかった。クラッシャーアークビショップは来てないようです。」 だが。 「それなのだがな……」騎士団長が言いよどむ。 「私としても何しでかすかわからないからと再三再四女王陛下にも『アークビショップの務めはロンドンに合って陛下の諮問にお答えすることです』と申したのだが…」 「「ましゃか、まさか?」」 騎士団長は告げる。 「アークビショップからの伝言だ。『超音速何とやらは恐ろしきにつき、普通ので行きけるよ。それまで待ちや。』」 「「えええええええええっ!!!!!?????」」 「それとだな、ロンドンで知り合った御坂旅掛氏から昨日メールが来てな。」 そういうと騎士団長はプリントアウトされた紙を懐から取り出す。 「どうして私と上条が知り合いなのを知ってたのか謎だが……招待状だ。」 「私たちも先ほど受け取りました。」 そう言って対馬達も取り出す。 こちらは普通の便せん。(封蝋がしてあるあたり普通かどうか少し疑問だが…) 「それとなぜかアークビショップにもとどいたらしい。」 「「ななななんですってぇ!!!????」」 「それでは追い返すこともできないです!!」 「追い返す?バカを言うなパーティーだぞ。それに出てこようとした陛下を止めた私に感謝してもらいたいものだ。」 「それは感謝してもしきれません。が!!アークビショップが来る時点でプラスマイナスゼロです。」 「そんなにすごいのか?」 天草式の二人は答える。 「そりゃすごいの何のって…。」 「言葉にするのも恐ろしいです…」 「そ、そんなにか?」 「「そんなに…」」
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/881.html
とある七月の七夕儀式 ――いつも、いつも、五和たんの巻―― ―――イギリスの首都、ロンドン。 そこで活動している多くの人の喧騒と市内を行きかうたくさんの車の排気ガスで満ちているロンドン市内ではあるが、 逆に、人々にとっての憩いの場所、オアシス的な公園も数多く存在する。 いや、都市に暮らしている人間にとっては欠かすことの出来ないものかも知れない。 有名処としては、セント・ジェームス・パーク、ハイド・パーク、リージェント・パーク、バターシー・パーク、などがある。 公園によっては「公園ファンクラブ」なるものが存在し、市民の寄付やボランティアによって公園の清掃、維持管理がなさ れ、オアシスとして成り立っているのである。 そんな公園には早朝にはジョギングをする人、昼間にはベンチでゆったりと過ごしている人、夕暮れにもお散歩をする人 などがいる。 それほど、ロンドンでの生活にとって「公園」は欠かせないものとなっている。 そして、ロンドンを特徴付けているものに、市内を大きく横断しているテムズ川とその上に架かる数多くの橋がある。 川の上流から、バターシー橋、チェルシー橋、ランベス橋、ウォータールー橋、ロンドン橋、そして有名なタワーブリッジがある。 そんな数多くの橋の一つ、ウォータールー橋の上で、一人の男が橋の欄干にもたれて川の水面を見るとはなしに眺めていた。 手に持っているのはイギリスの食べ物として有名な『フィッシュ・アンド・チップス』。 ここにくる途中で買い求めたのであろうそれを口に入れながら広がる夜景を眺めていたが、やがて、手にあったものを 全て食べ終えると、中にあった残りカスを水面にはたき落とし、残った紙袋をクシャクシャと丸めた後、これもまた水面に 投げ落とす。 重力の法則に従い、ゆっくりと落ちていった紙屑はしかし、水面まであと少し、というところで突如として燃え上がった。 火がついた紙屑は一瞬のうちに燃え尽き、灰となったその名残が数片舞い散るのみ。 だがそれも、流れる水に溶けてあっという間に見えなくなる。 「感心しないね、景観を損なうような真似は」 かけられた言葉に男が振り返ると、そこには奇妙な人物が立っていた。 2メートルを越す長身に真っ赤に染めた長髪が特徴的な『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔術師、ステイル=マグヌ スは、男の視線に対し咥えていた煙草を右手に持って灰を落とし、口から紫煙を吐きながら言う。 「誰だって住んでいる街が汚されたりしたら、ましてやそれが余所者によってとなればいい気はしないだろう?」 そう言われて、橋の欄干にもたれていた男は身を起こし、頭をガリガリと乱雑にかきながら答える。 「景観を損なうってんなら、お前さんが歩きながら咥えているその煙草はどうなのよ?」 「ふん、注意に対して反省するどころか食って掛かるとは、天草式というのは随分と恥知らずなんだね?」 反論に対して整然と切り返してくるステイルに対し、ふん、と息を吐くのは天草式十字凄教教皇代理の建宮斎字である。 「わざわざそんなことを言うためにゴミを燃やしたのかよ? おまえさんの仕出かす事のほうがよっぽど大事(おおごと)に なるってもんじゃねえのか?」 「別に問題はないさ、人払いはすでに済ませてある」 答えるステイルの言葉どおり、何故か不自然なほど橋の上からは人も車もその姿を消していた。 もっとも、共に世界の裏側、異端を扱う者として二人とも口調ほどには大して気にも留めずに話を進める。 「時間が惜しいからさっさと答えてくれるといいんだがね? こんなところで何をしていた?」 問いかけに対して建宮は答える。 「別にどうという事もないただの散歩が? それがどうしたのかよ」 「ふん、ただの散歩、か。なら訊くけども、その体の周りに張り巡らせてある人避けの術式は何のためにしているんだい?」 更なる問いかけに対して建宮は、はっ、と小さく笑いながら答える。 「おいおい、こんな格好をしている俺が言うのも何なんだがよ。こんな人目を引く格好で街を普通に歩けると思っているの かよ。大体、そんなものお前さんだってしているってもんよな」 そういう建宮の格好は確かに人目を引くだろう。 もともと黒い髪をさらに真っ黒に染め直したあげく尖った髪やぶかぶかのシャツやジーンズはともかく、首もとに掛けた 四つの小型扇風機や一メートル以上ある靴紐などは人目を引くなと言うほうが無理と言うものであろう。 だが、その答えにステイルは苛立ちを深めたように問いかけを続ける。 「気晴らしの散歩、と言うのなら近くのパークにでも行けばいいだろうに。わざわざここにいた理由はなんだい?」 「わざわざそれをお前さんに答えなくちゃならん義務はないわなぁ」 小馬鹿にしきったようにステイルのほうを見ながら答える建宮。 だが、次の瞬間建宮の頭があった位置を灼熱の輝きが通過する。 慌てて頭を下げてそれを避けた建宮は、ステイルから距離をとろうとしながら慌てたように叫ぶ。 「何をしやがるこの若造が! 何の真似だ!」 その激昂に対して、右手に持っていた煙草から炎剣を出したステイルはむしろ穏やかとも言える口調で語る。 「このテムズ川はね、イギリスを代表する川でね。英国人であれば多かれ少なかれ愛着を持っているものさ」 「?」 唐突に変わる話に戸惑う建宮をよそに話を続けていくステイル。 「ロンドン市内を流れているために都市防衛用の結界術式も組み込まれているから、いろんな意味でなくてはならない存 在と言えるね」 「………」 「そんなテムズ川の術式の一部におかしな点が見受けられると報告があってね。どうも水脈を走る魔力の一部がどこかへ 流れていっているらしいんだ。全体から見れば微々たるものだから気付くのが遅れてしまったそうなんだけども、見過ごす わけにはいかない問題だ」 じりじりと張り詰めていく空気の中、核心となる質問をするステイル。 「ここ数日、夕暮れ時に天草式のメンバー数名がテムズ川周辺で歩き回っているのが確認されているのは何故だい?」 それに対し、建宮は答える。 「さてなあ、たまたま川からの夜景を楽しみたくなったのが増えたってところだろうよ。大体なんでそんなことを俺に訊く?」 憮然としたまま答えた建宮に対し、 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「住んでいる街が余所者に汚されたりしたらいい気はしないと言っただろう!」 手に持つ炎剣を建宮に向けて振りかぶりながら叫ぶステイル。 「流れていく魔力のパターンから仕掛けているのは東洋の術式らしいとの報告だ! それにキミ達にはあの子に向かって 刃を向けたツケもある! 目的を訊くまでは生かしておく必要があるけども、腕の一本くらいはもらっておこうか!」 「チィッ!」 繰り出される炎剣をかわそうとする建宮だが、後ろに下がった足が何故かもつれてバランスを崩す。 そこに迫る炎に対し思わず腕を出してガードしようとするが、 「紙程度にもならないね!!」 ガードした腕をあっさりと炎剣で断ち割られてしまう。 「ふん、イギリス清教の膝元で牙を剥くからどれほどの覚悟かと思えば大した事はないんだね」 ほくそ笑むステイルだが、次の瞬間、その顔をギクリと強張らせる。 腕を切られた建宮の体が一瞬にして崩れ、細かな紙吹雪となって襲い掛かってきた。 「! しまっ……!?」 その波に飲み込まれてそのままテムズ川へ落ちるステイル。 何とか水面に浮かび上がろうとするが、それよりも早く自分の周りが何かによって覆われてしまう。 「これは……、木材……?」 一瞬のうちに自分を取り囲むようにして出来た筒のようなものによって身動きが取れないまま流されてしまう。 「そいつはアレンジの一つで一人用だがよ、水漏れの心配は無いから安心すると良いのよな」 どこからか聞こえる建宮の声。 「貴様! どういうつも……」 「ああ、それとお前さんではそいつの操縦は出来ないと思うから言っといてやるが、橋げたにぶつかったり流れが急に変 わると舌を噛むからな。 ま、頑張れよな」 気楽そうに言う声。 思わず言い返そうとするが、ガゴン! という音と共に衝撃が走り抜ける。 「……! く、くそっ!!」 何とか出ようとするが、建宮の言うとおり動きに翻弄され、そのまま流されていく。 「お、覚えていろ……!!」 何だか悪役のような捨て台詞と共に消えていく大きな樽を眺めながら建宮は大きく息を吐く。 「やれやれだ、まったく」 そして、周りを見ながら呟く。 「くそっ、二割削られたか……」 「何の二割なんだかにゃー?」 その声にピクリ、と反応した建宮がゆっくりと振り返ると、そこには金髪サングラスの土御門が立っていた。 「……っ!」 先ほどステイルを簡単にあしらった建宮の顔から余裕が引いていく。 「なるほど、陰陽博士だったお前さんがいたから知られたって事かよ」 唸るように言う建宮に対して 「まあなぁ。西洋術式の連中じゃ気付けなかっただろうが、『必要悪の協会(ネセサリウス)』には俺もいるからな。加えて言え ば俺の専門は『黒の式』、水脈を使った術式を隠れ蓑にしようとしたのは上手い手だったが相手が悪かったな」 両者はゆっくりと間合いを計りながら情報を語ることで相手の隙を作る機会を窺っている。 建宮にとっては先ほどのステイルと違い、大きな一手を持つ者は確かに脅威だが、ようはその一手を出させないように すればいいのと違って、手札を多く持っている相手では読み合いが必要になってくる。 一方の土御門にとっても状況に合わせて戦術を切り替えていく天草式の使い手である建宮はうかつには仕掛けにくい相 手といえる。 「さて、どうやらあんた達天草式が関わっている事もはっきりしたようだし、何を企んでいるのかさっさと吐いた方がいいん だぜい」 「ひでえ奴だな、今流れていったのはお前さんの仲間だろうがよ。わざと仕掛けさせたって事か」 「能書きはどうでもいい。こっちの庭で好き勝手させたままにしておくわけにはいかんし、このままではあんた達の元女教 皇まで出張ってきちまう。そうならないうちにとっとと片付けたいから協力するんだぜい」 その言葉に、建宮は大きくニヤリと笑いながら 「そいつは出来ない相談なのよ。こっちだって覚悟もなしに動いたわけじゃ無し、いまさら後には引けんのよな。それに、あ の方は元じゃない、今でも我らの女教皇(プリエステス)なのよ」 「だったらなおさらこんな馬鹿げた事を続けさせるわけにはいかないんだぜい」 建宮の言葉に歯噛みしながらいう土御門。 だが、 「覚悟もなしに動いていないと言ったろうが! 我らを止めたければそのつもりでかかってくるのよな!」 建宮の宣言と共にその場の空気が再び緊張に高まっていく。 「……!」 「……!」 そして、一瞬の静寂の後に、二人は戦闘へと突入した。 ―――ステイル、そして土御門と建宮がぶつかってからしばらく後、ロンドンを代表する橋の一つであるタワーブリッジの 上に、一人の少女がいた。 二重まぶたが特徴的な天草式十字凄教の一員である五和は、そこから見える上流の景色を眺めながら思い詰めた様 な表情をしていた。 「本当に、これで良かったのかな………」 呟いて出た言葉。 辺りには他の天草式メンバーはおらず、返事を期待してのものではなかったのだが、 「そのような迷いがありながらこのようなだいそれた行動に及んだのですかあなた方は」 掛かる声にビクリ、と反応する。 慌てて振り返れば、天草式十字凄教の元女教皇にして世界に二十人もいないとされる聖人の一人、神裂火織が静かに 立っていた。 「プ、女教皇(プリエステス)………」 洩れ出た言葉に対して、しかし、返ってくる言葉はあまりにも冷たいものであった。 「わたしはもはや天草式を抜けた身です。そのような称号で呼ぶのはやめなさい」 向けられた眼差しは冷徹、構えた七天七刀の柄には右手がそえられている。 完全に、五和に対して“敵”として対峙していた。 天草式に留まっていた当時はこの上なく頼れる存在としてあったものが、今、こちらを敵と見なしている。 そのことに認識がいき、身動きできずにいる五和に対して神裂は淡々と続ける。 「現在ロンドン市内で動いていた天草式メンバーの殆どはすでにこちらが押さえました。術式の組み立てが特殊な為にそ れ自体を破壊するわけにはいきませんでしたが、起動する場所さえ分かれば問題はありませんでした。あなたが最後で す、五和。おとなしく投降しなさい」 冷たく響き渡る声。 「ど、どうして……」 後ずさりながら言う五和に、 「どうして、とはまた、意外なことを。今のわたしはイギリス清教『必要悪の協会(ネセサリウス)』にある身です。イギリス清教に とって不利益なことが行われるようであればそれを未然に防ぐために動くのは自然なことではありませんか?」 後ろへ下がって行く五和を追いながら歩いていく神裂。 その目はひたりと五和に据えられたままだ。 「それとも、ここが術式の起動場所だと分かったことでしょうか? 離れたとはいえわたしが扱うのも天草式のものです。土 御門から連絡を受けて調べれば何をしようとしているのかおおよそのことは分かります」 その言葉に、後ずさっていた五和の足が止まる。 「流れる川を縦糸に、架かる橋を横糸に見立て、それを渡る術者によって織り上げられていく機織(はたおり)。細かいとこ ろまでは分かりませんでしたが、何をやろうとしているのか大まかに見えればそれで十分です。あなた方は七夕の術式を 行おうとしているのですね」 突きつけられた答えに、固まっていた五和が大きく体を震わせる。 「何を思ってここイギリスで七夕を行おうとしたのかは知りえませんが、通告します。今すぐにこの術式を止めなさい。さも なくばこのわたしが実力を持って排除します」 科学世界における核にも等しい存在である聖人の神裂から、事実上の死刑宣告とも取れる宣言を突きつけられ、五和 は殆ど半泣きになっている。 「今ならばまだ何とか間に合うでしょう。これ以上この地で勝手を通せば天草式にもはや居場所はありません。五和、それ をやめなさい」 「わ、わたしは……」 身動きできないまま震える五和が何かを言おうとしたとき、突然別の声が割って入った。 「おっと、そうはいかんってもんなのよ」 声がしたほうを向けば、何と土御門と戦っていたはずの建宮がそこに現れていた。 衣服はわりとぼろぼろだが素早い動きで五和と神裂の間に入る。 「すまん神裂、抜けられた!」 それに続いて現れる土御門。ただし、こちらは建宮よりも若干疲労とダメージの色合いが大きいように見受けられる。 「何をしていたのですか土御門!」 以外にも声を荒げる神裂を見ながら、後ろにいる五和に向かって振り返らずに建宮は言う。 「五和。お前さんはどうしたいんだ?」 「!? 建宮斎字! まだ諦めないのですか! やめさせなさい!」 叫ぶ神裂に対して一歩も引かず、建宮は続ける。 「いいや。こればっかりはいくら相手が女教皇(プリエステス)様であろうと譲れんのよな。五和、お前が決めろ。舞台に上がる のか上がらないのかを」 「建宮!!」 膨れ上がる緊張感。 お互いに動きを牽制し合う一触即発の様相の中、場を動かす一言が告げられる。 「…………わ、わたし、やります!」 「!」 「くっ、五和!」 「よく言った、それでこそなのよ!」 慌てて飛び出そうとする神裂と土御門。 だが、それよりも早く建宮の手が動き、 そして、術式が発動する。 術式が発動した直後、橋の下を流れるテムズ川に移る夜景が大きく輝きだす。 そして、街並みから照らされる光よりも眩く輝いた次の瞬間、辺りの風景は一変する。 「ここは、……一体?」 「何!? これは……馬鹿な!」 飛び出したものの、激変した状況に足が止まる神裂と土御門。 橋の欄干から広がるのはもはやロンドンの街並みなどではなかった。 「これは……、学園都市?」 あっけにとられて呟く神裂。 そして、その場にいた幾人かには何となく見覚えのある学生寮があった。 時差の関係か、起き抜けで眠たそうな顔をした一人の少年がドアを開け、表に顔を出す。 どうやら、何かで目が覚めてしまい、外の様子が気になって見に出た、といったところか。 だが、ドアを開けたまま、固まってしまっている。 「うわっ、なんだこりゃ?!」 こちらにある橋の欄干に手を伸ばし、触れようとするが、その手はあっけなくすり抜けてしまう。 「あれ? なんか景色が二重に写ってる……って、まさかまたどっかで何かが起きやがったのか?! くそっ、こんな夜中 に何してくれるんだよ!」 途端に表情が一変し、辺りを見渡し始める少年。 本人は至って真面目なのだが、そこに、なんとも言えない声が掛けられる。 「……おーい、カミやーん」 「その声は土御門か? どこにいるんだ……って、あれ?」 対峙している四人を見て、きょとんとした様子で尋ねてくる。 「なにやってるんだ、お前ら? いや、そんなことより丁度いい、何だかまた大変なことが起こってるみたいなんだ、お前ら 何か知ってないか?」 またしてもいつもの調子で事件に飛び込もうとしてくる上条に対し、土御門はあきれた様な口調で話す。 「そんなことよりカミやん。下、下」 「そんなことってお前な! ……って、え、きゃーーーー!!」 指で指されている所に目を向けて慌ててドアの陰に身を隠す上条。 どうやら上条さんは寝るときは下半身にはあまり多く履かないようです。というか、ぶっちゃけ一枚しかTシャツの他には 体に身につけていません。 「…………(真っ赤)」 「ま、まあ、今の季節、そちらの気候では涼を取るのは大変でしょうし……」 「やれやれ、こうなると百年の恋も覚めるってもんよなぁ……」 先ほどまでの緊張感がさっぱり取れてしまった一同は、ドアの陰から顔だけ出している上条を見ながらあきれたように首 を振ったりしている。 「う、うるせえ、寝起きなんだからしょうがねえだろ! っていうかお前らこんな夜も明けないうちから何してやがるんだよ!」 顔を赤くしながら吠える上条。しかし、ドアに隠れた状態では迫力なんかちっともありませんが。 「こらこら、カミやん。夜中に大声出して騒いだら駄目なんだぜい」 土御門がからかう様に掛けた言葉に、うっ、と詰まる上条。 それを横目に見ながら建宮は五和に尋ねる。 「どうやら二割ばかり糸がほつれた影響が出ちまったのよな。どうするよ、予定通りにはいかないようなのよ?」 それに対し、五和は緊張した面持ちながら、いえ! と答えると、上条の姿が映る橋の欄干に向かって近づいていく。 「あ、あのっ……!」 掛けられた声に顔を向けた上条は、見知った顔を見つけて怪訝な顔を向ける。 「あれ? 神裂に、天草式の、建宮? お前らまで何して……?」 近づいてくる五和の姿を見て言葉が途切れる。 そんな五和は緊張で顔が強張ったまま、ギクシャクとした動きで近づいていく。 「あ、あの、その、…………」 緊張で後が続かない五和。 それが伝わったのか上条まで緊張して身構えている。 それを眺める建宮らまでがいつの間にかじりじりと見守る中、意を決したように五和が叫ぶ。 「あ、あのっ! わたし、い、五和と言います! はじめまして、カミジョウさん!」 「あ、はい、こちらこそはじめまして」 ガチガチで声が裏返っている五和と慌ててそれに応じる上条。 「…………」 「…………」 だが、緊張で後が続かないようである。 後ろにいる建宮、さらには神裂までもが手を握って見守る中、ようやく五和が続く言葉を述べる。 「あのっ、そのっ、お、お素麺、お素麺送りましたから食べて下さいっ!」 「え、あ、はあ、ありがとうございます」 「し、失礼しますっ!」 それだけ言うと、バッと大きく一礼して身を翻し走り去る五和。 ポカンとして見送る上条。 それを見ながらやれやれといった感じで引き上げていく神裂たち一行。 「あー、まあ、あんなもんか。五和にしては精一杯ってところなのよなあ」 「まったく、あれだけ大騒ぎしておいてとどのつまりは話をしたかっただけとは。あなた方は話を大きくしすぎなんですよ。大 体建宮、あなたと言う人は……」 「なーねーちん、もう俺帰っていいかにゃー? 今からならまだ今日中には学園都市に帰れるしにゃー。こうなったら俺も 舞夏と七夕を祝わないとやってられないんだぜい」 ぞろぞろと歩いていく一行に向かって上条からは、「え、何、何だったんだよ一体? おい、説明してけよ土御門!」と声 がするが、土御門は一言、 「今のカミやんにはそんなことよりもっと重大なことが差し迫ってるんじゃないかにゃー?」 と切って捨てる。 は? と首を傾げる上条の背後からは、大声で叩き起こされ不機嫌極まりない純白のシスターが素麺という言葉を聞い てさらに上乗せされた攻撃力の歯を光らせながら近づいてきていた。 術式の効果が切れ、薄れゆく学園都市の景色の中にある少年のわりとハンパ無い悲鳴が聞こえたかどうか、定かでは ない。 走り去った筈の五和が橋の出口辺りで他の天草式メンバーに取り囲まれ、 「よくやりました五和!」 「ナイスです!」 「女教皇(プリエステス)様相手に良くぞ一歩も引きませんでした!」 「しかし、結局名前を名乗って素麺を送ったことを言っただけとは……」 「女ならもっとガツンと行くべきだったのでは? 思い切って告白してみるとか」 「馬鹿者! そんな暴挙、女教皇(プリエステス)様の眼前で出来るわけが無かろう!」 「そうです。ここはまず外堀を埋めていくことが大事なのですよ」 などと口々に言われている様子を眺めながら、 「しかし、これほど大騒ぎにする必要は無かったでしょうに」 と、まだ言い足りない様子の神裂とそれをへいへい、と聞き流している建宮。 だが、 「まったく、細かい術式まで調べる時間が無かったわたしにも責任はありますが、七夕の術式を発動させるというからてっ きり棚機津女(たなばたつめ)になぞらえるのかと思ってしまったでは無いですか」 という言葉に思わずぎょっとして神裂を見やってしまう。 ※日本の棚機津女(たなばたつめ)の伝説は『古事記』に記されており、村の災厄を除いてもらうため、水辺で神の衣を織 り、神の一夜妻となるため機屋で神の降臨を待つ棚機津女という巫女の伝説である。(現代電子演算相互互助辞典:Wikiより引用) 「な、何ですか一体。これ、あなた達まで何なんですか一体!」 そんな神裂を横目で見ながらひそひそと話す天草式一同。 「な、なんと、さすがは女教皇(プリエステス)様、我々の発想の数段上を行かれるとは」 「ど、どうしますか。ただでさえ勝ち目が少ないというのにあんな手を考えられていたらどうしようもありませんよ?」 「やはり最後は己の身体を捧げないといけないのでしょうか」 「くっ、こ、こうなったら五和、あなたも身体を張って当たって砕けるのです!」 「いや、砕けちゃ駄目でしょうよ!」 ひそめているつもりでもわりと結構聞こえてくる声を聞いてわなわなと体を震わせていた神裂は 「いい加減にしなさい!」 と顔を赤らめながら追いかけていく。 きゃわー、とクモの子を散らすように逃げていく天草式とそれを追う神裂の姿を見ながら 「平和なのよなあ」 と呟く建宮。 「出来ればこれからはいらん誤解を持たせないようにして欲しいもんだがにゃー」 と返しながらも何かを忘れているような気がするが、まあいいにゃー、と丸投げする下土御門。 ちなみに、北海河口まで流されたステイルが通りかかった漁船に引き上げられて九死に一生を得たのはそれから一日 後の事であり、オルソラ救出戦の折にインデックスが戦闘に巻き込まれかけたことと会わせて建宮個人にさらなる恨みを 募らせるようになったそうである。 さらにさらに、学園都市の上条の部屋にカササギ印の配達業者の手によって五和からの素麺が届いたのはやはり次の 日のことであったが、例によってその殆どは純白のシスターによって消費されたという。
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1293.html
土曜日同時刻、学園都市内某ビルの一室に一人の少女が飛び込んできた。 「なにごとです!?建宮」 少女は世界でも20人程しかいない聖人でありロンドンでも五指に入る実力を持つ魔術師である。 齢18歳にして女教皇として天草式十字凄教をまとめる少女はナイスバディと落ち着いた話ぶりから 実年齢よりも年上に見られることが多く、上条からは「結婚適齢期を過ぎているようにしか見えない」 とまで思われている、ある意味で幸薄い少女である。 「実は我々では対処できない不測の事態が起こりまして。 是非とも女教皇様(プリエステス)のお力をお貸し頂きたいのです」 深刻そうに話し始める建宮斎字につられ、神裂火織もその表情を真剣なものに変える。 「一体何があったのです?」 「実は……………………津島がギックリ腰になってしまいました」 「はあ?…………それは大変…………なのでしょうが…………………… どうしてそれが私を呼び出すほどの不測の事態なのです?」 先が見えない展開につい間抜けな返事をしてしまう。 「我々は今学園都市の依頼で動いている傍ら、我ら独自の判断で上条殿の協力者となって 頂けそうな能力者への対魔術師戦闘訓練を行っているのはプリエステスもご存じのはず」 「ええ。五和が随分と頑張ってくれたと聞いています」 「先日行った模擬戦闘では彼女達は五和を打ち破る程までに成長いたしました。 今回の模擬戦闘では津島に腕を振るってもらうハズだったのですが…………………… このような事態となりどうしたものかと思案していたところなのです」 「そういうことですか。…………では津島の代役を立てるしかありませんね」 「おおッッ!!プリエステスがそう言って頂けるとはありがたい。ではこれをどうぞ!」 「えっ????」 不意に建宮から押しつけられた風呂敷包みを訳も判らぬまま受け取ってしまった神裂火織は 頭の上に?マークをいくつも浮かべてしまう。 「これは………………一体、なんなのです?」 渡された風呂敷包みの結び目に手を掛けた神裂火織であったが、結び目を解いた瞬間その手が ピタッと止まってしまう。風呂敷包みの中からウサギの耳が飛び出したせいなのだが、それをウサギ の耳だと正しく認識するに至り風呂敷に掛けた右手がプルプルと震えだす。 そして下を向いていた顔がクワッ!!とあがり建宮を睨み付けたかと思うと風呂敷包みごとお色気 エロバニーを床に叩き付けた。そして建宮の胸ぐらを掴むと脅すように問いかける。 「建宮!あれは一体何ですか!?」 「はあ? あれは津島の代役を引き受けて頂いたプリエステスに着て頂くコスチュームですが………… 何か問題でも?」 「大ありですッ!!何故私があんな破廉恥なものを着ないといけないのです!?」 「なにを仰る、プリエステス!!これは全て上条当麻殿のためなのですぞ!」 「うっ!」 上条当麻の名を出されると神裂火織も弱い。それを知っている建宮は一気にたたみ掛ける。 「上条殿は今や魔術サイドにおいて最も耳目を集める科学サイドの存在なのですぞ。 我ら天草式十字凄教が公然と上条殿と関わりを持てば魔術サイドにおいて良からぬ憶測をされる 可能性がある。だから我らはキシサクマアという架空の秘密結社を創ったのではありませんか? プリエステスもそのことはご承知のはず!ならば事ここに至ってなにを躊躇なさるのです!?」 「くっ………………ッ」 「先ほどプリエステスが仰ったではありませんか。これは津島の代役なのですぞ。 上条殿のお仲間との模擬戦闘を行うのにプリエステス以上の適任者などおりましょうか!?」 こめかみに青筋を浮かべ怒りに身体を震わせる神裂火織であったが、一見正論にも思える建宮の たたみ掛けに反論の糸口すら見つけることができない。 かといって怒りの炎を鎮めることもできるハズなかった。 「………………………………建宮。これは誰の入れ知恵です? はっ、そうか!土御門ですね。土御門でしょ!こんなことするのは土御門に違いありません。 あん畜生!ごぉぉらあぁぁぁぁあああああ!!土御門ぉぉおおおおおおおおおお! どうせどこかで覗き見して笑ってやがるんだろぉがああああああああああああ! とっとと出て来やがれ! そのニヤけた面ぁぁぁ真っ二つに叩き切ってやらぁぁああああああああああ!」 完璧にブチ切れモードに突入した神裂火織を前にしても建宮斎字は涼しい顔を崩さない。 「はしたないですぞ。プリエステスともあろうお方が。少しは落ち着いて下さい」 「何を呑気なことを言っているのです!こんなことをされて冷静でいられる訳ありません!」 「勘違いをなされているようですが今回はたまたま津島の体調不良のせいでプリエステスに 代役をお願いしただけのこと。この件に土御門殿は関わっておりませんぞ」 「いいえ!きっとあの野郎が裏で糸を引いている筈です!さあ正直に白状なさい!!」 「考え過ぎです。それより、そろそろお覚悟をお決めになって下さい」 「イヤ、それは…………そのッ…………そ、そうです!今すぐ回復魔術で津島を治療しましょう! そうすれば全て丸く収まるではありませんか!?」 「それが申し上げにくいのですが、あいにく津島は今女性の日でもありまして………………」 「な……………………ッ、そっ、それなら………… そう!首領が別に女性である必要など無いでしょう? 建宮!あなたが首領だという設定で予告ビデオを撮り直せば良いのではありませんか!?」 「いえ、既に犯行予告ビデオは発送済みでして………………」 そう言った建宮が指を鳴らすと室内の照明が落ち、壁際に設置されたスクリーンに上条達が見た 犯行予告ビデオが映し出される。 そして首領登場のシーンに差し掛かると神裂火織が大声をあげる。 「なっ!なんですか!?建宮!このシルエットは!?」 「何ですかと言われましてもこれは津島ですが。どう致しました?プリエステス」 「このシルエットは私のものでしょッ!!」 「何を仰います。どこから見ても津島ではありませんか」 「しかし建宮!津島にしては………………その、なんです。少し、胸が豊か過ぎませんか?」 津島に気を遣ったのか、問い詰める声も最後がゴニョゴニョと尻すぼみになっては迫力不足になる のは否めない。建宮もそれを承知しているのかしれっと返答する。 「それは仕立屋が迂闊にも寸法を間違えまして急場をしのぐため仕方なく胸に詰め物をしたから です。まあそのせいもあってシルエットにせざるを得なかったのですが、そのおかげでこうして プリエステルのご協力を得ることができるのですから『人生塞翁が馬』とはよく言ったものです」 「なにを白々しい。 ではなぜポニーテールなのです?しかも七天七刀まで持っているではありませんか?」 「これは上条当麻殿の女性の好みが『寮の管理人のお姉さん』タイプだという情報を入手しました ので急遽津島にロングヘアーと竹箒をセットしただけのことです。 しかし、そう言われて見れば何となくプリエステスに似ている気もしてきました。 何にせよ。これでプリエステスの御出陣になんも問題が無いことが確認できました。 ですからご遠慮なさらずに。さあ!!」 「いえ、それは…………「「「「「「 さ あ 」」」」」」…………」 神裂火織の最後の抵抗は周囲から一斉に掛けられた声に遮られてしまった。 ここに至り神裂火織はいつの間にか建宮をはじめとする浦上、牛深、香焼、諫早、野母崎ら天草式 十字凄教の男衆に取り囲まれていることに気付く。 「どっ、どうしたのですか?あなた達のその迫力は…………」 不退転のオーラをまとわせ神裂火織に迫る天草式十字凄教の男衆。 その迫力に思わず後ずさる神裂火織であったがとうとう壁際まで追い詰められてしまう。 「「「「「「 さ あ 」」」」」」 天草式十字凄教の男衆に逃げ道を全て塞がれた神裂火織はとうとう力無く項垂れてしまった。 それを首肯と判断した男衆は揃って喜びの声を上げる。 「「「「「「おお、それでこそ。我らが女教皇様(プリエステス)」」」」」」 その時、隣室のモニターでその様子を冷ややかに見ていた対馬と五和は呆れたように呟いいた。 「全く!ウチの男どもときたら、この情熱を他の何かにつかえないものかしら」 「はは、まあ、そう…………ですね、はあぁぁ────ぁ」 土曜日19:30 第21学区天文台テラス ようやく夜の帳に包まれた天文台のテラスのベンチに一組の少年と少女が並んで腰掛けていた。 天体観測用に開放されたテラスは一切の照明が落とされており少女の紅潮した頬を照らすのは 星明かりのみだった。その少女が右手を挙げて夜空に輝く一つの星を指差す。 「あれがデネブ。それにあっちがアルタイルにベガ。今の時期でも夏の大三角ってまだ西の空に よく見えるのよね」 「へぇ────!御坂ってなんでも良く知ってるなあ」 「なに言ってんのよ。こんなの常識でしょ!高校生にもなってなんで知らないのよ」 「あのな────ッ!そうそう星座に興味のある男子高校生がいてたまるか!!」 「それじゃ、良いこと教えてあげる! アンタの星座の水瓶座って今の時期だと南の空の低い所にあるのよ。 えーっと、ほらあの背の高い木の少し上の方にあるのがそうよ。」 「はあ?水瓶座って言われても俺にはサッパリ判んねえぞ!? 一体どの星を繋げりゃ水瓶になるってんだ?」 「馬鹿ねッ!水瓶座って言ったって別に星が水瓶の形に繋がってんじゃないわよ。 ほらあそこから星を繋げると2本の流れになるでしょ!あれが水瓶から流れ出る水なのよ。 その右にある星々が水瓶を持つ人の身体になっていてそれが全部集まって水瓶座なのよ」 「そういわれてもなあ?どの星のこと言ってんだぁ?」 「もう!ほら私が指差している星よ!わかるでしょ?」 そう言って御坂美琴は星座を指差す右手を上条の顔の横に近づける。 そこまでされると適当に相槌だけ打って話を切り上げる訳にもいかなくなり、上条も真剣に水瓶座を 探さざるをえなくなってしまった。上条はまるでライフルの照準器の覗くように右目を閉じ御坂美琴 の肩越しに御坂美琴の右手が指す星々を探し始める。ただし、そのシチュエーションが星空の下 寄り添いながら甘い恋物語を語り合う恋人同士のようであることにまだ二人とも気付いていない。 しかし星を探す上条の髪が御坂美琴の耳をくすぐった瞬間、御坂美琴の体内を電流が駆け抜け、 肩がビクン!と跳ね上がる。上条の体温を頬に感じるほど自分達が寄り添っていることに気付いた 途端その小さな胸がキュン!と締め付けられ、ドックンドックンと心臓から送り出される血潮が瞬く 間に全身を火照らしていく。 「おい!今指を動かさないでくれよ。俺だって一生懸命探してんだからさ!」 「お…………ッ、おう!」 思考回路がオーバーヒート寸前の御坂美琴はなんだか訳の判らない返事をしてしまう。 (ダメ!心臓がバクバクする。身体が熱くて汗が止まんない! 汗くさい女って思われたらどうしよう?) すると御坂美琴の横で星を探す上条の動きがふと何かに気付いたかのように不意に止まった。 「あれ?…………変だな?」 「えっ、な何?変な事なんてなぁ──んにもないじゃない!!」 「そう言えばなんで御坂が俺の星座を知ってんだ?」 「え?だって、ほら。…………そう!以前アンタと雑談してる時にそんな話になったことがあるのよ」 「えっ!?そうだっけ?」 「そうよ!だから深く考えない!…………………………ちなみに」 御坂美琴はここで言葉を区切ってフゥ──ッ!と一息入れる。そして覚悟を決めると、 「…………私の星座は 「ちょっと!」座よ」 「??…………ちょっと座?」 「へっ!?ちっ、違うわよ!今のは私じゃなくて」 「ちょっと!…………上条君。御坂さん!」 その声はベンチに座る二人の真後ろから掛けられたものだった。 「なんだ。姫神か!?」 「なんだとはまたずいぶんなご挨拶。ひょっとしてお邪魔だった?」 「ば、馬鹿言え!」 「冗談はさておき。もうすぐ予定の時間。そろそろ配置につかないと」 「えっ?もうそんな時間なのか?」 「でも秋沙。今回はラストオーダーが時間と場所をやけに細かく指定してきたけどの本当に相手は ラストオーダーの言った通りにやって来るのかしら?」 「今回。キシサクマアを迎撃するのは私達じゃない。 私達は天文台に被害が及ばないように対処するのが役目。つまりはサポート役。 天文台から道路を50m下った所で不測の事態に備えて待機しておけば良い」 「まあ、どこの誰が相手するのかは知らないけど、考えられる不測の事態って何なのかしらね?」 「さあ?例えば。その誰かさんがあっさり返り討ちに遭っちゃうとか?」 「まあ、その辺りの情報は御坂妹から逐一連絡が来るはずだからさ!」 「聞こえますか?ミサカは指示された観測ポイントに到着しました。 とミサカはインカムを使ってお姉様達に現状を報告します。 NVゴーグルも正常に稼働中。敵戦力出現予定時間まで後30秒。カウントダウンを開始します」 土曜日19:55 第21学区天文台へ続く道路 天文台へと続く片側1車線の道路には山側に歩道があり街灯が30mごとに設置されている。 道路以外に人工物など何もないその山腹の路肩に一台のオープンカーが駐車していた。 点在する街灯の下だけは明るいものの辺りはすっかり暗闇に包まれている。 そのオープンカーに小さな電子音が鳴り響くと運転席の影がゴソリ!と動く。 リクライニングさせた運転席に寝そべっていた一方通行が視線を向けたバックミラーには暗闇の中 道路を照らす街灯のみが映っている。しかしその一つの街灯の明かりの下に暗闇から1つの人影 が吐き出された。 「ちッ、場所も時間も予定通りか。まあいい。誰が黒幕だか知らねェが今回は掌の上で遊ンでやる」 オープンカーから飛び降りた一方通行の紅い瞳は15m先の街灯の下に佇む人影を捉える。 それは長い髪をポニーテールに括り、Tシャツに片方の裾を根元までぶった切ったジーンズそして 腰のウエスタンベルトには七天七刀という格好をしたウエスタンルックサムライガールだった。 そこから少し離れた林の中ではその様子を覗き見る香焼と建宮が小声で会話を交わしていた。 (教皇代理。プリエステスはホワイトバニーで出撃していただけるって話じゃなかったんすか?」 (そうなのよ。それが相手が上条当麻殿ではないと判った途端、ならばホワイトバニーになる必要 などありません!とか言って嬉々としてあのまま突撃されたのよ。くそッ!詰めを誤ったのよな!) 「天草式十字凄教の神裂火織と申します。故あって貴方とお手合わせさせて頂きます」 「ふン!テメェが誰でもいいけどよォ。本気で俺と殺す(やり)合う覚悟があるなら掛かってきな!」 「参ります!!」 神裂火織が流れるような動作で右掌を前方に差し出すと爆炎が一方通行目指して噴き出した。 噴き出した激しい爆炎は一方通行から見ればあたかも神裂火織が爆発したように見えたはずだ。 しかし一方通行は動じない。 (ふン!そっちが能力を使ってくれるならこっちの手間も省けるってもンだぜ。 これ程の業火ならテメェは骨も残せねェだろうが、恨むならテメエの強すぎる能力を恨むンだな) しかし爆炎が神裂火織の身体を焼くことはなかった。 一方通行に触れた爆炎は相手に反射することなく七色の光の粒に分解されてしまったからだ。 光の粒に分解された爆炎は一方通行の身体にまとわりつく感触を残して左右に流れ、路肩に留め ていた車を歩道へ押し流し激しく横転させた。 (…………何だ?今のは…………) 不可解な現象に一方通行は眉をひそめる。 (さっきの炎は学園都市の能力者の炎とも、今まで闘ってきた雑魚魔術師どもの炎とも違う!) 一方通行が思考をめぐらせようとした時、大気が震えだし突如轟音が鳴り響いたかと思うと上空 300mの何もないハズの場所から真横へと直径50mはある巨大な火柱が噴き出した。 一方通行はその火柱を一瞥するとこの不可解な現象を引き起こした目の前の敵を睨み付ける。 ところがその相手も一方通行同様に今の状況に戸惑っているようだった。 (なンだァ?こいつまでキョトンとしやがって。どういうことだ? クソッ!初めてテレポーターと殺し(やり)合った時のことを思い出しちまった。あン時はまだ3次元 空間限定の演算式しか組んでなかったから5次元空間を通って3次元空間に跳躍してくる攻撃を 上手く反射できなかったからな。5次元空間に拡張した演算式の組み直しにもう少し手間取って いたらヤバかった!だが今度のはテレポーターの攻撃とも何かが違う) 一方、神裂火織も今の現象に戸惑っていた。ただ相手の怪訝そうな顔つきから相手もこの現象が 何であるか良く判っていないことだけは理解できた。 (このままではラチがあきません!もう一度行きます) 今度は冷気の固まりが一方通行を襲う。冷気とは言え神裂火織の放つ冷気はいわば-196℃の 液体窒素の奔流であり生身の人間が喰らえば数秒で氷柱と化すほどの威力だった。 一方通行は右手をかざして迫り来る冷気のベクトルを反転させた。しかし今回も冷気は反射されず にまるで指の間から水がすり抜けていくように一方通行の右後方に七色の光となって流れ、木々を なぎ倒していった。 そして不意に地鳴りが起こりドゴッ!と大きく揺れたかと思うと500m程離れた山腹が突然爆発し、 大量の木々や岩や土砂を空中へ撒き散らした。これが通常の爆発と違うのは明らかであった。 なにせ爆発した山肌の下から何千本もの氷の槍が剣山のようにせり出していたのだから。 (この攻撃もやっぱり今までの能力者とも魔術師とも違う!なんだ一体?) 神裂火織自身も気付いてはいないが神裂火織が繰りだす炎や冷気は7次元世界の炎や冷気であ る。人間が認識できるのはたかだか3次元世界に顔を出したその一部であるが、魔術の真の威力 は高次元世界に隠れたその本体の大きさによって決まる。上位の魔術師ほどより高次元の炎や 冷気を扱うため見た目は下位の魔術師のものと同じでもその威力は桁違いになるのだった。 一方通行は7次元世界の炎を5次元世界で反射したため5次元世界で引きちぎられた7次元世界 の炎がその原型を失い七色の光へと分解されたのだ。しかも一方通行は巨大な氷山を水上部分 だけベクトル変換により押し戻したようなものであるから、その衝撃で水面下にある氷山の本体が 砕け水上に顔を出したのが先ほど空中に生じた火柱や山腹に現れた数千本もの氷の槍であった。 結局、神裂火織も何故このような現象が起こるのか理解できなかったが、このまま一方通行に魔術 攻撃を繰り返せば周りに及ぼす被害が甚大になることだけは容易に理解できた。だから一方通行 に向けていた右手を降ろすと七天七刀の柄を強く握りしめたのだった。 「どうした?もう手品はお終いか?」 「いいえ!まだまだッ!七閃ッッ!!」 神裂火織が操る七本の鋼糸(ワイヤー)がアスファルトを削りながら四方八方から一方通行に迫る。 しかし目標を切り裂くはずの鋼糸は一方通行に触れた途端ギン!と金切り音を立てて弾かれ、 一方通行から四方のアスファルトに亀裂が入ったかと思うと、進行方向ににある街灯や横転した オープンカーをズタズタに切り裂きスクラップに変えていく。 反射してきた2本の鋼糸の先端を神裂火織は両手を振るい鋼糸の根本を操って迎撃する。 僅か0.1秒の間に神裂火織と一方通行の間にいくつもの火花が盛大に散った。そして一瞬遅れて 一方通行の背後の木がなぎ倒された。 「オイ!一体今のは何のお遊戯なンだァ?いい加減、本気を出さねェと速攻でブッ殺すぞ!!」 「時間差をつけた最後の一本が本命だったのですが………… やはり貴方の反射に死角は無いようですね。ではこれではどうです?」 「グダグダ言ってねェで、さっさと掛かってくりゃいいンだよ。三下!」 相手が聖人だろうが何だろうが関係ない。一方通行はあくまで面倒くさそうに言い放つ。 事実、ここで一方通行がすることなど何もなかった。 能力を反射に設定している以上、相手がどんな能力を繰り出そうが一方通行には関係ない。 相手は反射した自身の能力に傷つき倒れていくだけなのだから。 しかし次の瞬間一方通行が予期せぬ事が起こる。 眉間に皺を寄せる一方通行の瞳はスパッと縦に裂けた自身のシャツの右袖を捉えている。身体に 傷が付いた訳ではない。しかし敵の攻撃が反射をすり抜けたという事実は一方通行を驚愕させた。 (なンで俺のシャツが裂けてンだ!?一体何が起こりやがった? 妙なもンは何も通過しなかったハズだ) 一方通行の動揺する表情を見て神裂火織は薄く笑みを漏らす。 同時に自嘲気味にまるで独り言のように言葉を吐き出した。 「ふっ!やはり『西新宿のせんべい屋』のようにはいきませんね。まだまだ未熟です。 でも、この方法ならあなたを傷付けることぐらいはできそうですね」 (何しやがったンだ、コイツは!?未知の能力でも使いやがるのか?) 「種明かしをさせていただくと先ほど貴方のシャツを切り裂いたのは直径1000分の1ミクロン のチタン合金製の糸なんです」 (ざけンな!たとえ目に見えねェぐらい細い糸だろうが俺の反射をくぐり抜けられるハズはねェ! 欺瞞情報で俺を混乱させる気か?こいつァ!?) 「今のをハッタリだと思っているようですね?ではもう一度行きます!」 今度はシャツだけでなく一方通行の左肩までもが音もなく裂けた。 傷は浅いものの鮮やかな切り口から滲む血が一方通行のシャツを赤く染め始める。
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/116.html
―――イギリスの首都、ロンドン。 そこで活動している多くの人の喧騒と市内を行きかうたくさんの車の排気ガスで満ちているロンドン市内ではあるが、 逆に、人々にとっての憩いの場所、オアシス的な公園も数多く存在する。 いや、都市に暮らしている人間にとっては欠かすことの出来ないものかも知れない。 有名処としては、セント・ジェームス・パーク、ハイド・パーク、リージェント・パーク、バターシー・パーク、などがある。 公園によっては「公園ファンクラブ」なるものが存在し、市民の寄付やボランティアによって公園の清掃、維持管理がなさ れ、オアシスとして成り立っているのである。 そんな公園には早朝にはジョギングをする人、昼間にはベンチでゆったりと過ごしている人、夕暮れにもお散歩をする人 などがいる。 それほど、ロンドンでの生活にとって「公園」は欠かせないものとなっている。 そして、ロンドンを特徴付けているものに、市内を大きく横断しているテムズ川とその上に架かる数多くの橋がある。 川の上流から、バターシー橋、チェルシー橋、ランベス橋、ウォータールー橋、ロンドン橋、そして有名なタワーブリッジがある。 そんな数多くの橋の一つ、ウォータールー橋の上で、一人の男が橋の欄干にもたれて川の水面を見るとはなしに眺めていた。 手に持っているのはイギリスの食べ物として有名な『フィッシュ・アンド・チップス』。 ここにくる途中で買い求めたのであろうそれを口に入れながら広がる夜景を眺めていたが、やがて、手にあったものを 全て食べ終えると、中にあった残りカスを水面にはたき落とし、残った紙袋をクシャクシャと丸めた後、これもまた水面に 投げ落とす。 重力の法則に従い、ゆっくりと落ちていった紙屑はしかし、水面まであと少し、というところで突如として燃え上がった。 火がついた紙屑は一瞬のうちに燃え尽き、灰となったその名残が数片舞い散るのみ。 だがそれも、流れる水に溶けてあっという間に見えなくなる。 「感心しないね、景観を損なうような真似は」 かけられた言葉に男が振り返ると、そこには奇妙な人物が立っていた。 2メートルを越す長身に真っ赤に染めた長髪が特徴的な『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔術師、ステイル=マグヌ スは、男の視線に対し咥えていた煙草を右手に持って灰を落とし、口から紫煙を吐きながら言う。 「誰だって住んでいる街が汚されたりしたら、ましてやそれが余所者によってとなればいい気はしないだろう?」 そう言われて、橋の欄干にもたれていた男は身を起こし、頭をガリガリと乱雑にかきながら答える。 「景観を損なうってんなら、お前さんが歩きながら咥えているその煙草はどうなのよ?」 「ふん、注意に対して反省するどころか食って掛かるとは、天草式というのは随分と恥知らずなんだね?」 反論に対して整然と切り返してくるステイルに対し、ふん、と息を吐くのは天草式十字凄教教皇代理の建宮斎字である。 「わざわざそんなことを言うためにゴミを燃やしたのかよ? おまえさんの仕出かす事のほうがよっぽど大事(おおごと)に なるってもんじゃねえのか?」 「別に問題はないさ、人払いはすでに済ませてある」 答えるステイルの言葉どおり、何故か不自然なほど橋の上からは人も車もその姿を消していた。 もっとも、共に世界の裏側、異端を扱う者として二人とも口調ほどには大して気にも留めずに話を進める。 「時間が惜しいからさっさと答えてくれるといいんだがね? こんなところで何をしていた?」 問いかけに対して建宮は答える。 「別にどうという事もないただの散歩が? それがどうしたのかよ」 「ふん、ただの散歩、か。なら訊くけども、その体の周りに張り巡らせてある人避けの術式は何のためにしているんだい?」 更なる問いかけに対して建宮は、はっ、と小さく笑いながら答える。 「おいおい、こんな格好をしている俺が言うのも何なんだがよ。こんな人目を引く格好で街を普通に歩けると思っているの かよ。大体、そんなものお前さんだってしているってもんよな」 そういう建宮の格好は確かに人目を引くだろう。 もともと黒い髪をさらに真っ黒に染め直したあげく尖った髪やぶかぶかのシャツやジーンズはともかく、首もとに掛けた 四つの小型扇風機や一メートル以上ある靴紐などは人目を引くなと言うほうが無理と言うものであろう。 だが、その答えにステイルは苛立ちを深めたように問いかけを続ける。 「気晴らしの散歩、と言うのなら近くのパークにでも行けばいいだろうに。わざわざここにいた理由はなんだい?」 「わざわざそれをお前さんに答えなくちゃならん義務はないわなぁ」 小馬鹿にしきったようにステイルのほうを見ながら答える建宮。 だが、次の瞬間建宮の頭があった位置を灼熱の輝きが通過する。 慌てて頭を下げてそれを避けた建宮は、ステイルから距離をとろうとしながら慌てたように叫ぶ。 「何をしやがるこの若造が! 何の真似だ!」 その激昂に対して、右手に持っていた煙草から炎剣を出したステイルはむしろ穏やかとも言える口調で語る。 「このテムズ川はね、イギリスを代表する川でね。英国人であれば多かれ少なかれ愛着を持っているものさ」 「?」 唐突に変わる話に戸惑う建宮をよそに話を続けていくステイル。 「ロンドン市内を流れているために都市防衛用の結界術式も組み込まれているから、いろんな意味でなくてはならない存 在と言えるね」 「………」 「そんなテムズ川の術式の一部におかしな点が見受けられると報告があってね。どうも水脈を走る魔力の一部がどこかへ 流れていっているらしいんだ。全体から見れば微々たるものだから気付くのが遅れてしまったそうなんだけども、見過ごす わけにはいかない問題だ」 じりじりと張り詰めていく空気の中、核心となる質問をするステイル。 「ここ数日、夕暮れ時に天草式のメンバー数名がテムズ川周辺で歩き回っているのが確認されているのは何故だい?」 それに対し、建宮は答える。 「さてなあ、たまたま川からの夜景を楽しみたくなったのが増えたってところだろうよ。大体なんでそんなことを俺に訊く?」 憮然としたまま答えた建宮に対し、 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「住んでいる街が余所者に汚されたりしたらいい気はしないと言っただろう!」 手に持つ炎剣を建宮に向けて振りかぶりながら叫ぶステイル。 「流れていく魔力のパターンから仕掛けているのは東洋の術式らしいとの報告だ! それにキミ達にはあの子に向かって 刃を向けたツケもある! 目的を訊くまでは生かしておく必要があるけども、腕の一本くらいはもらっておこうか!」 「チィッ!」 繰り出される炎剣をかわそうとする建宮だが、後ろに下がった足が何故かもつれてバランスを崩す。 そこに迫る炎に対し思わず腕を出してガードしようとするが、 「紙程度にもならないね!!」 ガードした腕をあっさりと炎剣で断ち割られてしまう。 「ふん、イギリス清教の膝元で牙を剥くからどれほどの覚悟かと思えば大した事はないんだね」 ほくそ笑むステイルだが、次の瞬間、その顔をギクリと強張らせる。 腕を切られた建宮の体が一瞬にして崩れ、細かな紙吹雪となって襲い掛かってきた。 「! しまっ……!?」 その波に飲み込まれてそのままテムズ川へ落ちるステイル。 何とか水面に浮かび上がろうとするが、それよりも早く自分の周りが何かによって覆われてしまう。 「これは……、木材……?」 一瞬のうちに自分を取り囲むようにして出来た筒のようなものによって身動きが取れないまま流されてしまう。 「そいつはアレンジの一つで一人用だがよ、水漏れの心配は無いから安心すると良いのよな」 どこからか聞こえる建宮の声。 「貴様! どういうつも……」 「ああ、それとお前さんではそいつの操縦は出来ないと思うから言っといてやるが、橋げたにぶつかったり流れが急に変 わると舌を噛むからな。 ま、頑張れよな」 気楽そうに言う声。 思わず言い返そうとするが、ガゴン! という音と共に衝撃が走り抜ける。 「……! く、くそっ!!」 何とか出ようとするが、建宮の言うとおり動きに翻弄され、そのまま流されていく。 「お、覚えていろ……!!」 何だか悪役のような捨て台詞と共に消えていく大きな樽を眺めながら建宮は大きく息を吐く。 「やれやれだ、まったく」 そして、周りを見ながら呟く。 「くそっ、二割削られたか……」 「何の二割なんだかにゃー?」 その声にピクリ、と反応した建宮がゆっくりと振り返ると、そこには金髪サングラスの土御門が立っていた。 「……っ!」 先ほどステイルを簡単にあしらった建宮の顔から余裕が引いていく。 「なるほど、陰陽博士だったお前さんがいたから知られたって事かよ」 唸るように言う建宮に対して 「まあなぁ。西洋術式の連中じゃ気付けなかっただろうが、『必要悪の協会(ネセサリウス)』には俺もいるからな。加えて言え ば俺の専門は『黒の式』、水脈を使った術式を隠れ蓑にしようとしたのは上手い手だったが相手が悪かったな」 両者はゆっくりと間合いを計りながら情報を語ることで相手の隙を作る機会を窺っている。 建宮にとっては先ほどのステイルと違い、大きな一手を持つ者は確かに脅威だが、ようはその一手を出させないように すればいいのと違って、手札を多く持っている相手では読み合いが必要になってくる。 一方の土御門にとっても状況に合わせて戦術を切り替えていく天草式の使い手である建宮はうかつには仕掛けにくい相 手といえる。 「さて、どうやらあんた達天草式が関わっている事もはっきりしたようだし、何を企んでいるのかさっさと吐いた方がいいん だぜい」 「ひでえ奴だな、今流れていったのはお前さんの仲間だろうがよ。わざと仕掛けさせたって事か」 「能書きはどうでもいい。こっちの庭で好き勝手させたままにしておくわけにはいかんし、このままではあんた達の元女教 皇まで出張ってきちまう。そうならないうちにとっとと片付けたいから協力するんだぜい」 その言葉に、建宮は大きくニヤリと笑いながら 「そいつは出来ない相談なのよ。こっちだって覚悟もなしに動いたわけじゃ無し、いまさら後には引けんのよな。それに、あ の方は元じゃない、今でも我らの女教皇(プリエステス)なのよ」 「だったらなおさらこんな馬鹿げた事を続けさせるわけにはいかないんだぜい」 建宮の言葉に歯噛みしながらいう土御門。 だが、 「覚悟もなしに動いていないと言ったろうが! 我らを止めたければそのつもりでかかってくるのよな!」 建宮の宣言と共にその場の空気が再び緊張に高まっていく。 「……!」 「……!」 そして、一瞬の静寂の後に、二人は戦闘へと突入した。 ―――ステイル、そして土御門と建宮がぶつかってからしばらく後、ロンドンを代表する橋の一つであるタワーブリッジの 上に、一人の少女がいた。 二重まぶたが特徴的な天草式十字凄教の一員である五和は、そこから見える上流の景色を眺めながら思い詰めた様 な表情をしていた。 「本当に、これで良かったのかな………」 呟いて出た言葉。 辺りには他の天草式メンバーはおらず、返事を期待してのものではなかったのだが、 「そのような迷いがありながらこのようなだいそれた行動に及んだのですかあなた方は」 掛かる声にビクリ、と反応する。 慌てて振り返れば、天草式十字凄教の元女教皇にして世界に二十人もいないとされる聖人の一人、神裂火織が静かに 立っていた。 「プ、女教皇(プリエステス)………」 洩れ出た言葉に対して、しかし、返ってくる言葉はあまりにも冷たいものであった。 「わたしはもはや天草式を抜けた身です。そのような称号で呼ぶのはやめなさい」 向けられた眼差しは冷徹、構えた七天七刀の柄には右手がそえられている。 完全に、五和に対して“敵”として対峙していた。 天草式に留まっていた当時はこの上なく頼れる存在としてあったものが、今、こちらを敵と見なしている。 そのことに認識がいき、身動きできずにいる五和に対して神裂は淡々と続ける。 「現在ロンドン市内で動いていた天草式メンバーの殆どはすでにこちらが押さえました。術式の組み立てが特殊な為にそ れ自体を破壊するわけにはいきませんでしたが、起動する場所さえ分かれば問題はありませんでした。あなたが最後で す、五和。おとなしく投降しなさい」 冷たく響き渡る声。 「ど、どうして……」 後ずさりながら言う五和に、 「どうして、とはまた、意外なことを。今のわたしはイギリス清教『必要悪の協会(ネセサリウス)』にある身です。イギリス清教に とって不利益なことが行われるようであればそれを未然に防ぐために動くのは自然なことではありませんか?」 後ろへ下がって行く五和を追いながら歩いていく神裂。 その目はひたりと五和に据えられたままだ。 「それとも、ここが術式の起動場所だと分かったことでしょうか? 離れたとはいえわたしが扱うのも天草式のものです。土 御門から連絡を受けて調べれば何をしようとしているのかおおよそのことは分かります」 その言葉に、後ずさっていた五和の足が止まる。 「流れる川を縦糸に、架かる橋を横糸に見立て、それを渡る術者によって織り上げられていく機織(はたおり)。細かいとこ ろまでは分かりませんでしたが、何をやろうとしているのか大まかに見えればそれで十分です。あなた方は七夕の術式を 行おうとしているのですね」 突きつけられた答えに、固まっていた五和が大きく体を震わせる。 「何を思ってここイギリスで七夕を行おうとしたのかは知りえませんが、通告します。今すぐにこの術式を止めなさい。さも なくばこのわたしが実力を持って排除します」 科学世界における核にも等しい存在である聖人の神裂から、事実上の死刑宣告とも取れる宣言を突きつけられ、五和 は殆ど半泣きになっている。 「今ならばまだ何とか間に合うでしょう。これ以上この地で勝手を通せば天草式にもはや居場所はありません。五和、それ をやめなさい」 「わ、わたしは……」 身動きできないまま震える五和が何かを言おうとしたとき、突然別の声が割って入った。 「おっと、そうはいかんってもんなのよ」 声がしたほうを向けば、何と土御門と戦っていたはずの建宮がそこに現れていた。 衣服はわりとぼろぼろだが素早い動きで五和と神裂の間に入る。 「すまん神裂、抜けられた!」 それに続いて現れる土御門。ただし、こちらは建宮よりも若干疲労とダメージの色合いが大きいように見受けられる。 「何をしていたのですか土御門!」 以外にも声を荒げる神裂を見ながら、後ろにいる五和に向かって振り返らずに建宮は言う。 「五和。お前さんはどうしたいんだ?」 「!? 建宮斎字! まだ諦めないのですか! やめさせなさい!」 叫ぶ神裂に対して一歩も引かず、建宮は続ける。 「いいや。こればっかりはいくら相手が女教皇(プリエステス)様であろうと譲れんのよな。五和、お前が決めろ。舞台に上がる のか上がらないのかを」 「建宮!!」 膨れ上がる緊張感。 お互いに動きを牽制し合う一触即発の様相の中、場を動かす一言が告げられる。 「…………わ、わたし、やります!」 「!」 「くっ、五和!」 「よく言った、それでこそなのよ!」 慌てて飛び出そうとする神裂と土御門。 だが、それよりも早く建宮の手が動き、 そして、術式が発動する。 術式が発動した直後、橋の下を流れるテムズ川に移る夜景が大きく輝きだす。 そして、街並みから照らされる光よりも眩く輝いた次の瞬間、辺りの風景は一変する。 「ここは、……一体?」 「何!? これは……馬鹿な!」 飛び出したものの、激変した状況に足が止まる神裂と土御門。 橋の欄干から広がるのはもはやロンドンの街並みなどではなかった。 「これは……、学園都市?」 あっけにとられて呟く神裂。 そして、その場にいた幾人かには何となく見覚えのある学生寮があった。 時差の関係か、起き抜けで眠たそうな顔をした一人の少年がドアを開け、表に顔を出す。 どうやら、何かで目が覚めてしまい、外の様子が気になって見に出た、といったところか。 だが、ドアを開けたまま、固まってしまっている。 「うわっ、なんだこりゃ?!」 こちらにある橋の欄干に手を伸ばし、触れようとするが、その手はあっけなくすり抜けてしまう。 「あれ? なんか景色が二重に写ってる……って、まさかまたどっかで何かが起きやがったのか?! くそっ、こんな夜中 に何してくれるんだよ!」 途端に表情が一変し、辺りを見渡し始める少年。 本人は至って真面目なのだが、そこに、なんとも言えない声が掛けられる。 「……おーい、カミやーん」 「その声は土御門か? どこにいるんだ……って、あれ?」 対峙している四人を見て、きょとんとした様子で尋ねてくる。 「なにやってるんだ、お前ら? いや、そんなことより丁度いい、何だかまた大変なことが起こってるみたいなんだ、お前ら 何か知ってないか?」 またしてもいつもの調子で事件に飛び込もうとしてくる上条に対し、土御門はあきれた様な口調で話す。 「そんなことよりカミやん。下、下」 「そんなことってお前な! ……って、え、きゃーーーー!!」 指で指されている所に目を向けて慌ててドアの陰に身を隠す上条。 どうやら上条さんは寝るときは下半身にはあまり多く履かないようです。というか、ぶっちゃけ一枚しかTシャツの他には 体に身につけていません。 「…………(真っ赤)」 「ま、まあ、今の季節、そちらの気候では涼を取るのは大変でしょうし……」 「やれやれ、こうなると百年の恋も覚めるってもんよなぁ……」 先ほどまでの緊張感がさっぱり取れてしまった一同は、ドアの陰から顔だけ出している上条を見ながらあきれたように首 を振ったりしている。 「う、うるせえ、寝起きなんだからしょうがねえだろ! っていうかお前らこんな夜も明けないうちから何してやがるんだよ!」 顔を赤くしながら吠える上条。しかし、ドアに隠れた状態では迫力なんかちっともありませんが。 「こらこら、カミやん。夜中に大声出して騒いだら駄目なんだぜい」 土御門がからかう様に掛けた言葉に、うっ、と詰まる上条。 それを横目に見ながら建宮は五和に尋ねる。 「どうやら二割ばかり糸がほつれた影響が出ちまったのよな。どうするよ、予定通りにはいかないようなのよ?」 それに対し、五和は緊張した面持ちながら、いえ! と答えると、上条の姿が映る橋の欄干に向かって近づいていく。 「あ、あのっ……!」 掛けられた声に顔を向けた上条は、見知った顔を見つけて怪訝な顔を向ける。 「あれ? 神裂に、天草式の、建宮? お前らまで何して……?」 近づいてくる五和の姿を見て言葉が途切れる。 そんな五和は緊張で顔が強張ったまま、ギクシャクとした動きで近づいていく。 「あ、あの、その、…………」 緊張で後が続かない五和。 それが伝わったのか上条まで緊張して身構えている。 それを眺める建宮らまでがいつの間にかじりじりと見守る中、意を決したように五和が叫ぶ。 「あ、あのっ! わたし、い、五和と言います! はじめまして、カミジョウさん!」 「あ、はい、こちらこそはじめまして」 ガチガチで声が裏返っている五和と慌ててそれに応じる上条。 「…………」 「…………」 だが、緊張で後が続かないようである。 後ろにいる建宮、さらには神裂までもが手を握って見守る中、ようやく五和が続く言葉を述べる。 「あのっ、そのっ、お、お素麺、お素麺送りましたから食べて下さいっ!」 「え、あ、はあ、ありがとうございます」 「し、失礼しますっ!」 それだけ言うと、バッと大きく一礼して身を翻し走り去る五和。 ポカンとして見送る上条。 それを見ながらやれやれといった感じで引き上げていく神裂たち一行。 「あー、まあ、あんなもんか。五和にしては精一杯ってところなのよなあ」 「まったく、あれだけ大騒ぎしておいてとどのつまりは話をしたかっただけとは。あなた方は話を大きくしすぎなんですよ。大 体建宮、あなたと言う人は……」 「なーねーちん、もう俺帰っていいかにゃー? 今からならまだ今日中には学園都市に帰れるしにゃー。こうなったら俺も 舞夏と七夕を祝わないとやってられないんだぜい」 ぞろぞろと歩いていく一行に向かって上条からは、「え、何、何だったんだよ一体? おい、説明してけよ土御門!」と声 がするが、土御門は一言、 「今のカミやんにはそんなことよりもっと重大なことが差し迫ってるんじゃないかにゃー?」 と切って捨てる。 は? と首を傾げる上条の背後からは、大声で叩き起こされ不機嫌極まりない純白のシスターが素麺という言葉を聞い てさらに上乗せされた攻撃力の歯を光らせながら近づいてきていた。 術式の効果が切れ、薄れゆく学園都市の景色の中にある少年のわりとハンパ無い悲鳴が聞こえたかどうか、定かでは ない。 走り去った筈の五和が橋の出口辺りで他の天草式メンバーに取り囲まれ、 「よくやりました五和!」 「ナイスです!」 「女教皇(プリエステス)様相手に良くぞ一歩も引きませんでした!」 「しかし、結局名前を名乗って素麺を送ったことを言っただけとは……」 「女ならもっとガツンと行くべきだったのでは? 思い切って告白してみるとか」 「馬鹿者! そんな暴挙、女教皇(プリエステス)様の眼前で出来るわけが無かろう!」 「そうです。ここはまず外堀を埋めていくことが大事なのですよ」 などと口々に言われている様子を眺めながら、 「しかし、これほど大騒ぎにする必要は無かったでしょうに」 と、まだ言い足りない様子の神裂とそれをへいへい、と聞き流している建宮。 だが、 「まったく、細かい術式まで調べる時間が無かったわたしにも責任はありますが、七夕の術式を発動させるというからてっ きり棚機津女(たなばたつめ)になぞらえるのかと思ってしまったでは無いですか」 という言葉に思わずぎょっとして神裂を見やってしまう。 ※日本の棚機津女(たなばたつめ)の伝説は『古事記』に記されており、村の災厄を除いてもらうため、水辺で神の衣を織 り、神の一夜妻となるため機屋で神の降臨を待つ棚機津女という巫女の伝説である。(現代電子演算相互互助辞典:Wikiより引用) 「な、何ですか一体。これ、あなた達まで何なんですか一体!」 そんな神裂を横目で見ながらひそひそと話す天草式一同。 「な、なんと、さすがは女教皇(プリエステス)様、我々の発想の数段上を行かれるとは」 「ど、どうしますか。ただでさえ勝ち目が少ないというのにあんな手を考えられていたらどうしようもありませんよ?」 「やはり最後は己の身体を捧げないといけないのでしょうか」 「くっ、こ、こうなったら五和、あなたも身体を張って当たって砕けるのです!」 「いや、砕けちゃ駄目でしょうよ!」 ひそめているつもりでもわりと結構聞こえてくる声を聞いてわなわなと体を震わせていた神裂は 「いい加減にしなさい!」 と顔を赤らめながら追いかけていく。 きゃわー、とクモの子を散らすように逃げていく天草式とそれを追う神裂の姿を見ながら 「平和なのよなあ」 と呟く建宮。 「出来ればこれからはいらん誤解を持たせないようにして欲しいもんだがにゃー」 と返しながらも何かを忘れているような気がするが、まあいいにゃー、と丸投げする下土御門。 ちなみに、北海河口まで流されたステイルが通りかかった漁船に引き上げられて九死に一生を得たのはそれから一日 後の事であり、オルソラ救出戦の折にインデックスが戦闘に巻き込まれかけたことと合わせて建宮個人にさらなる恨みを 募らせるようになったそうである。 さらにさらに、学園都市の上条の部屋にカササギ印の配達業者の手によって五和からの素麺が届いたのはやはり次の 日のことであったが、例によってその殆どは純白のシスターによって消費されたという。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1075.html
気絶した佐天と絹旗を放置して、神裂と一緒に地上に上がってきた初春は少しだけ自己嫌悪に陥っていた。 そこに先程までの冷酷な初春はおらず、そこに居るのはいつも通りのいじり甲斐があるようでしっかり者の初春だった。 「……はぁ、自分でもあそこまでやれるなんて思わなかったなぁ。涙子さんと最愛さんに後でちゃんと謝ろう」 「飾利、そこは別に貴女が謝る必要は無いのでは? それよりもやられた張本人の建宮にまだ謝ってませんよ? あの二人」 「それなら分かってますよ。二人がきちんと建宮さんに謝ってくれたら私は笑顔であの二人をハグしてあげたいですね♪」 (どうやら飾利たち三義妹の中で一番お姉ちゃんなのは見た目に反比例した飾利のようですね……。ですが私のがお姉ちゃんです♪) 初春と神裂がリビングに入ると、そこには量こそ減ってるものの未だ形として健在中の五和のウエディングチョコケーキが強い存在感を示していた。 なおウエディングチョコケーキを食べているのはインデックス、ステイル、月夜、途中参戦の美琴、シェリーだった。 「それにしても誰なんでしょうね? このような恥知らずなものを贈るとは。上条当麻、あなたは知らないのですか?」 「贈り主の住所も名前も書いてないから持込だとは思うけど……。最初は五和かと思ったけど、あいつなら本人一緒が当たり前だしなぁ」 真実を知っている土御門は氷の中なので結局真実が当麻に伝わるのは土御門が復活してからのことになる(インデックス、ステイル、月夜は忘れている)。 神裂は当麻の推論を聞いて、否定したいのに否定できない五和の人間性を思い出して落ち込んでしまう。 そんな当麻と神裂をよそに初春はソファーの上で気絶中の建宮の体を引きずり始めると、当麻にちょっとしたお願いをする。 「当麻お兄ちゃん、少し和室借りてもいいですか? 建宮さんを介抱したいので」 「あ、あぁ、別に構わないぞ」 「ありがとうございます。それと火織お姉ちゃん、誰も和室に入らせないように見張ってくれますよね♪」 「……も、もちろんです。何せ私は飾利のお姉ちゃん、貴女の頼みごとならどんなことでも聞いてあげたいんですから……っ」 初春は誰にも邪魔されずに建宮への『お父さんチョコ』を渡す為、神裂の性格を考えた上で行動を起こした。 事実、神裂は先手を打たれて何も言えなくなり初春に頼まれるままに和室の番をする羽目に。 建宮を引きずる初春の後ろを神裂、そして当麻が続く形でリビングを出る。 「どうしてあなたが付いて来るのですか? 上条当麻」 「いいじゃんか、別に。あそこに居たって暇なんだし。飾利も俺が神裂と一緒に見張りしてた方が心強いだろ?」 「ええ♪ でも絶対に誰も入れちゃダメですからね! 私はお二人のこと、とーっても信頼してますから」 当麻がリビングを出た理由、それは単にあのチョコの甘ったるい匂いが充満してるリビングとウエディングチョコケーキから逃げたかったから。 初春と建宮が和室へ入るのを確認した当麻と神裂、二人っきりの和室の門番さんの誕生である。 (……ん? 何でわし寝てるのよな……って思い出した! 確か絹旗のチョコ喰って口の中が爆発した……はずなんだが後頭部に柔らかい感……触……) 「あっ、ようやく目が覚めたんですね、建宮さん。よかったー、このまましばらく起きないかと……建宮さん?」 長い気絶から回復した建宮が感じたものは初春の膝枕、建宮が目を覚まして初めて目にしたのは自分の顔を覗き込んでる初春の久しぶりの笑顔だった。 人間、幸せになりすぎるとパニックになるわけで建宮も例外ではなく、ムックリと起き上がった後でまともに言葉も紡げずにあうあうしてしまう。 「(このまま放っておくのもそれはそれで面白いけど、渡す物渡さないとダメだもんね)こうやってまともに話すのは久しぶりですね、建宮さん」 「か、かかかか飾利姫こそお変わりなく……いやいやそんなことはプリエステスに嫌というほど聞かされたから……ぬぅ、何を話せばいいのか……」 「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ? まずは落ち着いて、そしていつもの私の知ってる建宮さんに戻って下さい。それまで待ってますから」 何だか冷静な対応をする初春に面食らった感じの建宮だが、彼女に言われるがままに深呼吸をし、気持ちを落ち着かせ始める。 初春は初春で建宮を完全に『お父さんのような人』として対処出来てることに安堵していた。 初春と建宮がほのぼのとした雰囲気を作ってる頃、当麻は神裂に突然差し出されたチョコに途惑っていた。 「あ、あの~、か、神裂、さん? 上条さんの目の前にあるこれは……?」 「チョコですが何か? ああ、勘違いしないで欲しいです。そのチョコは義理チョコより上の恩返しチョコですから」 何を勘違いしろとか思った当麻だが、下手なことが言えない相手なだけに黙って包みを開けて、チョコを食べる。 「おっ、美味いじゃん。さっすが神裂って所だな、ありがとな」 「いえ……。でもこれだけであなたに受けた恩を返せたとは思っていませんのでまたいずれ……」 「(ここでそんなの要らねぇって言ったら怒るから言わないでおこう……)そ、そっか、それは楽しみ……なんだが美琴がやきもち焼かないレベルで是非」 「心得てます。私とて御坂美琴を怒らせるのは怖いですから」 神裂の『恩返しチョコ』を齧りながら、和室内で何が起こってるのか気になった当麻は神裂に尋ねる。 「飾利と建宮、今頃何やってんだろうな? まさかとは思うけど」 「そのまさかを口にしたら上条当麻、あなたを病院送りにしますからそのつもりで」 「……はい」 (飾利が建宮になどと……有り得ません。それに建宮が飾利を押し倒すことも無いでしょう。あれでも私の信頼する教皇代理なのですから) 神裂の予想、あくまで『現段階』では無いという意味では合っており、建宮に対する信頼も間違ってはいなかった。 当麻と神裂は世間話をしながら防音が完璧な和室の前に座っていた、他の皆がこちらに来るまで。 その頃、ようやく冷静さを取り戻した建宮の前に初春からシックな感じの包みが差し出される。 状況が全く飲み込めていない建宮は包みと初春を交互に見ながら、バレンタインなのに間抜けな質問をしてみた。 「か、飾利姫。こ、これはま、まさかとは思うけど、この建宮斎字へのチョコでは……」 「そうですよ。これは涙子さんや最愛さん、他の皆さんに内緒で作った建宮さんへの『お父さんチョコ』です♪」 「いーーーやっはーーーーーーーーっ!! とうとう、とうとうわしにも春が、飾利姫から直々にお父さんチョコを……お父……さん?」 「ええ♪ お父さんチョコです♪ 覚えてますよね? 私、建宮さんのこと、お父さんみたいだって言ったこと」 建宮が忘れるはずなど無かった、かつて初春に言われた嬉しいような残念なようなあのフレーズを。 しかし今は少し驚きはしたが、残念な気持ちはまるで湧かず、嬉しさだけが心を占めているという不思議な感覚に陥っていた。 「さすがにその、建宮さんにお、お父さんチョコを他の人が居る前で渡すのは恥ずかしくって……迷惑でしたか?」 「そ、そんなことは絶対に有り得ないのよ! 確かに飾利姫の言うことはごもっとも。父親にチョコ渡すのはそれなりに勇気がいるはずなのよ。では、早速」 建宮は丁寧に包装を取り、中の箱を開けるとそこにはトリュフチョコが入っていた。 見た目の綺麗さに感動を覚えた建宮、少し視覚で楽しんだ後でトリュフチョコを口に入れると涙を流し、それに初春が驚く。 「ど、どうしたんですか! もしかしてすっごく不味かったんですか? あ、味見はちゃんとしたはず」 「ち、違うのよ……。飾利姫の作ったトリュフの美味しさについ感動しちまったのよな。このチョコを絹旗はわしの目の前で食べたのか……ちくしょう」 建宮が喜んでくれて安心したのも束の間、三人で作った自分のチョコを絹旗が食べたことに少し怒った初春だが建宮はそのことに気付かない。 それから初春のトリュフチョコを美味しそうに食べる建宮、それを楽しそうに眺める初春というほのぼの親子空間が形成される、乱入者達が現れるまでの話だが。 一方、五和のウエディングチョコケーキの被害(中毒性という意味で)が少ない美琴は一旦食べるのを止めると、当麻、初春、神裂、建宮が居ないことにようやく気付く。 「あれ?当麻たちはどこ行ったの?」 美琴は当麻たちがどこ行ったのか探すためにリビングから移動した。 そして、数分で当麻を見つけた。 「あ、いたいた。当麻、そこで何しているの?」 「ん?美琴か。いやーこの中で飾利と建宮が居るから邪魔しないように俺と神裂の二人で監視していただけだ。」 「そうなの。じゃあ私も一緒にいて良い?」 「別に良いですけど、あのウエディングケーキはどうなったのでせうか?」 当麻は美琴も初春達の邪魔をしないように監視に入れると、当麻は話を変え、ウエディングケーキがどうなっているか聞いてみた。 「全然減らない。インデックス小いつものように早くないし、インデックスとシェリーさん以外の二人もそろそろ限界だと思うからさらに減らなくなると思う。」 「そうか。本当にあれ今日中に食べれるのか?もう4時半だしな。」 「分からないよ。まあ食べ終わったとしても匂いは当分の間残りそうだけど。」 「そうかもしれないな。とりあえず美琴、立ってると疲れるから座ろうぜ。」 「そうね。そうするわ。」 というと美琴は上条、神裂と同様に和室の前で座った。 その頃、気絶していた絹旗、佐天はやっと目を覚ました。 「……うぅ、超酷い目に遭いました。お仕置き自体よりも飾利に怒られたという事実の方が超精神的に来るものがありますね……」 「ホント、そうだよねぇ……。お仕置きの内容……お、思い出したくも無いけど飾利にはあとで誠心誠意謝らないとね」 お仕置きのダメージよりも初春に怒られたことの方が堪えていた佐天と絹旗、彼女達二人もまた初春バカなのだ。 そんな初春バカの二人だからこそ、建宮に対する結論がまた間違いまくってるわけで。 「ところでさ最愛。あたし達が飾利に怒られた理由だけどさ、一番悪いのは建宮だと思うんだ」 「確かに言われてみれば超その通りです。となると涙子、やることは超決まりましたね」 「飾利に怒られない程度に建宮をケチョンケチョンにする! 行こう最愛!」 「超了解です♪ 建宮を飾利の逆鱗に触れない程度に超ケチョンケチョンにしてやりましょう!」 佐天と絹旗に初春を責めるという言葉は存在せず、代わりに建宮に当たるという選択肢を選ぶことに。 地上に戻る二人だが思いもしないだろう、まさか初春と建宮がほのぼの親子空間を形成していることなど。 「お、二人とも無事か?」 やってきた絹旗たち二人に上条が声をかける。 「思い出すだけで身の毛がよだちます……」「今まで超一番死ぬかと思いました……」 「「「そんなに(やったのですか)!?」」」 神裂は耳栓をしていたので内容は知らなかったのである。 「それもこれも建宮のせいです!」「超そうです!あのおっさんは超今どこですか!?」 「「「ここだけど」」」 今は行かないほうがいいよ と言おうとした3人の話を最後まで聞かず、二人は突入し。 凍りついた。 建宮がこともあろうに初春と仲良くしているからである。 初春はそんな二人を見てにっこりと笑い、無言で耳栓を取り出して建宮の耳にはめ。 「火織お姉さん、そこ閉めてください。それと絶対開か無いように押さえててください。」 「わかりました。」 完全防音の戸が閉じられる。 15分後に初春が携帯で神裂に『もういいです。出ますから開けてください』と言って出てきたとき。 建宮と初春の二人以外は出てこなかったのは言うまでもない。
https://w.atwiki.jp/mobage_index/pages/57.html
第21話「正義と悪」 第22話「偽装する者」 第23話「第三者」 第24話「救われぬ者に救いの手を」 第25話「魔道図書館」 コメント ※このページはネタバレを含みます。 ゲーム中で読みたい方は戻ることをおすすめします。 第21話「正義と悪」 OP 場所:学生寮前 ウサミミ「さて、それでは10万3000冊の魔道書をいただくとするか」 プレイヤー「……」 ウサミミ「……いない?……チッ、確かにそのようだな」 「おい、まさかと思うがまた何かやらかした訳じゃないだろうな」 プレイヤー「……」 ウサミミ「ま、そう何度も楯突くほど馬鹿ではないか」 「お前や学園都市の邪魔者共にそれほど力が余っているとも思えんしな」 「となれば、誰かがインデックスを隠した、という事だろう」 「行くぞ。足取りを追って確保する」 ボス戦前 場所:郊外路地 ウサミミ「やあやあ、珍しいのが手を貸していたものだ。『天草式十字凄教』、だったか」 五和「……ここから先は通しません」 ウサミミ「ははっ!もう負け戦だよ魔術師!逃亡者に必要なのは速度じゃない。ルートを辿られた時点で終わってる!」 五和「それでも……それでも、あなたの横暴は見過ごせません!」 ウサミミ「あなた達、ではないのが涙ぐましいな。だが今のこいつに抗う術はないぞ」 プレイヤー「……!!」 ウサミミ「さあさあ闘技場の開幕だ。その手で守るべきと思った誰かの手にかかるが良い、魔術師!」 ボス戦 戦闘前 戦闘後(勝利) 戦闘後(敗北) ED 場所:郊外路地 ウサミミ「ははは!喜べ、この上ない大勝利だよ!」 プレイヤー「……!!」 ウサミミ「何だ、歯軋りして睨みつければ正義の側に立てるとでも?あれをやったのはどこのどいつだ」 「結局、口先で何と言ってもこれがお前の立ち位置、スタンスってヤツさ」 「幻想片影を手に入れて勘違いしていたのか?元々、お前はヒーローでも何でもないだろうが」 「駄目なヤツは力を持ったって駄目なんだ。お前はどこまで行っても踏み台なのさ」 「さて、では改めて天草式を追い、インデックスを捕獲するとしようか」 第22話「偽装する者」 OP 場所:市街地 ウサミミ「ふん、天草式得意の隠蔽、隠匿の術式か。インデックスの手掛かりが途切れたな」 プレイヤー「……」 ウサミミ「安堵したか?だが期待に添えなくて申し訳ない。だったら別のやり口に切り替えれば良いんだよ」 「天草式は本来、血を好まない集団らしいしな」 プレイヤー「……?」 ウサミミ「簡単さ。ちょっとした脅迫状を贈れば良い。顔を出さなければ一般人に危害を加えるとな」 プレイヤー「!?」 ウサミミ「当然、向こうも罠には罠で対抗しようとするだろう」 「さあて、返り討ちを返り討ちだ。天草式の木っ端を薙ぎ倒してインデックスの居場所のヒントを手に入れよう」 ボス戦前 場所:駅前広場 ウサミミ「ほら来たぞ。流石は慈愛と博愛の天草式だ」 建宮斎字「お前さん達……」 ウサミミ「面倒は省こう。真実は殴って聞き出す。しゃべると言ってもなお殴る。殴って殴って殴って殴る」 プレイヤー「!」 ウサミミ「くく、何だヒーロー?もっと刺激的なルールがなければ退屈で眠ってしまうか?」 「ならこうしよう。お前が勝てばそこで中断。だが敗北すればそいつは私が殺す。完璧に殺害する」 「さあやる気は出たか?彼を助けるために彼を倒してみせろ、ヒーロー」 ボス戦 戦闘前 戦闘後(勝利) 戦闘後(敗北) ED 場所:駅前広場 ウサミミ「ふんふん。なるほど、高度な隠蔽と言っても、ベースが分かればこの程度か」 「行くぞ。インデックスの居場所はもう目と鼻の先だ」 プレイヤー「……」 ウサミミ「ポーズはやめろよ。お前は楽しんでいる。でなけりゃとっくに」 「ちょっと待て」 プレイヤー「……?」 ウサミミ「くそ、誰かが土の底から盗み聞きしていたか。インデックスのところに向かう魔術師がいるな!」 第23話「第三者」 OP 場所:駅前広場 ウサミミ「ふんふん。この辺りにインデックスが隠れているはずなんだが」 「……先を越されたな。バタバタ倒れているのは天草式か」 「インデックスはいない。やられたか、逃げたか」 「どこの馬鹿か知らないが、場を引っ掻き回す迷惑野郎は早々に叩くべきか」 プレイヤー「……」 ウサミミ「何だ、また言語変換が必要か?」 「ならこう言ってやろう。何であれ、第三者はインデックスを狙っている」 「か弱い乙女を助けるために拳を握るのだあ!……とかでどうだ。納得したか?」 「なら行くぞ。インデックスを奪われる前に、『悪い』襲撃者を探すとしよう。クク」 ボス戦前 場所:地下街 ウサミミ「見えたな。あれが……」 シェリー「なぁーんだ。もう追いついちゃったの?」 ウサミミ「人の情報を掠め取っておいて良く言う」 シェリー「火急の用でね。魔道書図書館を他の勢力には渡せない」 「後の混乱を考えれば、いっそ殺してしまった方が安全なほどに」 ウサミミ「ははっ!大したヒーローぶりだ!おい、同類を見かけた気分はどうだ?」 プレイヤー「……」 ウサミミ「だが悪の権化はこう答えよう。\n私は私のためにあれを手に入れる。邪魔者は潰す。分かったか」 ボス戦 戦闘前 戦闘後(勝利) 戦闘後(敗北) ED 場所:地下街 ウサミミ「インデックスはいない、か。だが、これは組織的、計画的な逃走劇ではない」 「天草式にとってもイレギュラーのはず。インデックスはすぐ近くにいるだろう」 プレイヤー「……」 ウサミミ「ふん、文句を言わなくなったな。嫌気が差したのか、腹に何か抱えているのかは知らんが」 「ともあれ、さっさとケリをつけるぞ」 「主導権を握るのは私だ。振り回されるのにはうんざりなんでね」 第24話「救われぬ者に救いの手を」 OP 場所:地下街 ウサミミ「インデックスは近くにいるだろうが、一人で逃げているかは不明」 「また時間と共に増援が来る可能性も否定できない」 プレイヤー「……」 ウサミミ「ふん、言わなくても分かるだろう。インデックス以外は全て排除だ」 「……例え、相手が誰であろうとな」 プレイヤー「……」 ウサミミ「さて、インデックスの足取りを追うぞ」 ボス戦前 場所:ビル街 ウサミミ「みーつけた」 神裂火織「こちらとしても、もはや隠れるつもりはありません」 「……打倒あるのみ。それが最短最速でこの場を収める手段のはず」 ウサミミ「くく、焦るのは背後に控えるインデックスのためか?」 「それとも、ここに来るまでに薙ぎ払った天草式の有象無象のためか?」 神裂火織「……」 ウサミミ「はは!どうやら世界はここらが限界のようだ。お前を助けてくれる者はもういないみたいだな!」 プレイヤー「……」 ウサミミ「そして安いよ聖人。教えてやれ、その程度の信念では、自分の身一つ守れやしない事をな!」 ボス戦 戦闘前 戦闘後(勝利) 戦闘後(敗北) ED 場所:ビル街 神裂火織「がう……!」 ウサミミ「おしまいだよ。私達の立っている場所は、もはやお前の理解を超えている」 神裂火織「あなたこそ……分かっているのですか?」 「あの子の知識は、あなたが思うよりも、ずっと危険なものです。無理に手に入れようとすれば」 ウサミミ「おやおや、私達の心配までしてくれたのか?」 「汚染を恐れては先に進めん。余計なお世話というヤツだよ」 プレイヤー「……」 ウサミミ「行くぞ。インデックスはすぐそこだ」 第25話「魔道図書館」 OP 場所:ビル街 ウサミミ「いるな」 「手こずったが、これでようやく先に進める」 プレイヤー「……」 ウサミミ「ちなみに魔道書の知識は人の精神を蝕むとされるが、どう転ぶかはお前次第だ」 「コケても構わん。その場合はお前を廃棄する。失敗のデータを集め、別の無能力者の強化に役立てるからな」 「行くぞ。インデックスを発見次第、幻想片影で取得しろ」 ボス戦前 場所:市街地 インデックス「そんな、もうここまで……」 ウサミミ「ショックを受けるな。みんなお前のために頑張ったさ。残らず撃破したが」 インデックス「!?」 ウサミミ「そこのお前もだ。増援が到着するたびに犠牲は増えるぞ。流血を望まないなら、手早く済ませろ」 プレイヤー「……」 インデックス「……させない」 「みんなは私を守るために戦ってくれた。だから、それを台無しにはさせない!」 ボス戦 戦闘前 戦闘後(勝利) 戦闘後(敗北) ED 場所:市街地 ウサミミ「終わったな。インデックスを幻想片影で取得しろ」 プレイヤー「……」 ウサミミ「おお、これが10万3000冊の魔道書図書館……」 「そのカードをこちらに渡せ。ようやく計画の半分を達成できる」 プレイヤー「!」 ウサミミ「カードが……!?取得に失敗したか。いや……」 プレイヤー「……」 ウサミミ「わざと、やったのか……?くそ、安定を失った情報がなだれ込んで来る!?」 「くそ……魔道書、汚染……くそおおおおおおおお!」 コメント ボス戦以外追加 -- 管理人 (2013-04-01 22 34 59) 第25話EDの場所が「ビル街」となっているが、背景絵は市街地であること・話の内容から戦闘直後に移動したとは考えにくいことから「市街地」に修正 -- 管理人 (2013-04-01 22 44 04) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/41.html
結標「ちょっと今のこの子の発言は何!?クローンというのは建て前で実は この二人の子供!?あんたらやっちゃてたの!?」 二人は何のことだ?と思ったがすぐに理解して、顔を赤くした。 上琴「「まだやってないわ!!」」 しかし、ショチトルはすこし気になることがあった。 ショチトル「『まだ』と言うことは、これからやるつもりか?」 上琴「「……まあゆくゆくは(////)」」 一青結シ「「「「ブハアアアアアアアアアア!!??」」」」これには一方通行も 吹いた。 一方通行「ダメだァ…こいつら白昼堂々とデレたじゃすまないこと 言いやがった…。」 海原「僕は御坂さんを守ってくれといったんです!!汚せなんていってません!!」 上条「おい!俺を本気で殺そうとするな!!さっさとその物騒なもんしまえ!!」 海原「いえ、僕はやめません!!」 上条「人の物を壊すのは気が引けるが…、とりゃ!!」パキン!! 海原「ああ!!これ手に入れるの大変なんですよ!?」 美琴「え?今なんでこわれた?当麻って確か超能力しか打ち消せないんじゃ…?」 上条「そんなもの関係ないわ!」 海原「こうなったら、原典を使うしか…。」 上条「ええ!!なんでお前がそんな物騒なもん…て待てよ!!お前原典使って 体のほう大丈夫なのかよ!!」 海原「特に問題ありません。それに僕はどうやら原典に好かれてるようでして 二冊ほど所持していますよ。」 上条「二冊も!?ま、まあインデックスもああ見えて十万三千冊の魔道書記憶 してるし、不思議じゃないか。」 ショチトル「いや、禁書目録は例外中の例外だ。」 あれはだな…とショチトルは説明し始めるが、 打ち止め「あの三人ってオカルトマニアなの?ってミサカはミサカはママに 問いかけてみる。」 美琴「その前に話が脱線してる気がするんだけど…。」 結標「そうなのよ、私も魔術っていまいちわかんないのよね…。」 一方通行「グループ入ってから俺も知ったんだけどよォ、魔術師ってやれる こと多すぎだろォがよォ。変装したり光線出したりよォ。」 御坂姉妹「「?????」」 二人の疑問にすら付いていけない御坂姉妹だったのでした。 ~数分後~ 上条「は~、なるほどね~」 どうやらショチトル&海原のQ&Aが終わったらしい。 美琴「あ・ん・た・は!その議題は彼女を待たせるほどのものかああああ!!」ビリビリ!! 上条「すいませんでしたああああああああああ!」ちゃっかり無効化 美琴「ったく当麻ったら…、ん!」そういいながらあごを上げる。 美琴「今ここでしてくれたら許してあげる…。」 上条は少し驚いたが、彼女を前に待たせてしまったのだからしょうがない。 上条「…ったく、美琴には逆らえないな…。」 チュ 二人は長いキスをした。 打ち止め「なんでミサカに見せてくれないの!!ってミサカはミサカは露出狂 に講義してみる!!」 結標「露出狂いうな!!それに子供にはまだはやい!!」 一方通行「バカップルにもほどがあるぜェ…。」 海原「御坂さんが…御坂さんがああ!!」 ショチトル「お前には私がいるだろうが!!」 そしてお決まりの 「エツァリおにいちゃん…。」 そんなこんなうるさいが、 上条と美琴はお構いなしに二人のキスの時間を楽しんでいる。 結局上条は美琴に魔術を軽―く説明する羽目に… 美琴「ふーん、じゃぁ当麻の右手が打ち消せないものって何?」 一方「俺のベクトル操作なしの拳とかどうだァ?」 打ち止め「やめなさいってミサカはミサカはこのロリコンを止めてみるっ!!」 一方「誰がロリコンだァ!?」 結標「全く…バカばっかり…って」 彼女の視線の先にはショチトルに唇を奪われ凍っている海原の姿が。結標以外気が付いていない。と、その時上条が返事をした。 上条「運命の赤い糸とかじゃね?」美琴「ふふふ、そうよねー。」 海シ一打結「「「「「ブハァ!」」」」」 結標「アンタらデレデレしすぎ!!って!!!!」 結標が見たのはまたもキスしている上琴の姿であった。 一方「…なァ、俺ら食い終わったし、どっか行かねェか?」 結標「異議なし。さあ行くわよ海原。」 海原「上条当麻ぁあああああ!!!!!覚えてろおおおお!!!」 ショチトル「お兄ちゃん落ち着いて。」ズルズル 海原を引きずって立ち上がる。 打ち止め「やだーってミサカはミサカはっ!!」一方通行に引きずられる。 上条「あれ??いつの間にかあいつらいなくなったぞ。」 美琴「まあいいじゃない別に。それより早く食べて次行こっ」 建宮「……あの二人すげー」 浦上「!!何すかそのコメント!!??しかも口調忘れてますよ建宮さん!!!」 建宮「ぬっ!!いかんいかん、建宮斎字これしきで我を忘れてはいかんのよな!!」 浦上「…………さっき忘れてましたけどね。…ん?さっきの御嬢さんがたの一人が倒れてますよっ!!」 15072号「しっかりしなさい!!とミサカはミサカの頬を叩いてみます。」 10032号「よくも立ってられますね。とミサカはミサカの落ち着きに驚愕します。」 10090号「積極的になったオリジナルは止められないのです。とミサカはミサカに客観的事実を伝えます。」 10032号「あの方をあきらめろという事ですか!?とミサカは戦慄します。」 15072号「ハッキリ言ってあの方に執着しているのはあなただけですよ。とミサカはミサカの出遅れをあざ笑います。」 10090号「それは言いすぎですよ。とミサカはミサカを諭しつつ、最近付き合いだしたあの青年の事を思い出してうっとりします。」 白井「ところで次はどこまいりますの?」ここは第3エリア。 青ピ「せやなー。アレなんかどう!?」 何だかんだ言ってこっちのカップルも順調である。と、そこに 土御門「よう、青ピー」 白雪「よっすー」 この二人もやってきた。 青ピ「よう、土御門はん。カミやんと一緒じゃないん?」 土御門「にゃー。暑過ぎてあの二人の周囲500メートルは危険だぜい。」 白雪「ホントだよー。あの二人、北極の氷でも全部溶かせるんじゃないかなあ。」 白井「そそ、そんなにすごい事になってますの!?」 白雪「そりゃあもう。見てただけでも3分はのりづけしてたよー。」 土御門「嫌5分だにゃー。」白雪「10分くらいかもー」 白井が倒れて青ピの介抱を受けることになったのは言うまでもない。 こちら、上琴空間… 美琴「はい、あ~ん♪」 当麻「あ~む!」ぱく! 美琴「おいしい?」 当麻「美琴が食べさせてくれると、甘味が増すよ。」 美琴「(////)当麻ったら…はずかしいよ(////)」 当麻「いいだろ別にじゃ次お前な」パクッ 美琴「ちょ…なんでポテト当麻が銜えてるのよ!!」 当麻「ん」あごを突き出す 美琴「当麻ったら…」チュ この後二人は、こんな会話をばっかりしてポテト1セットであらゆる意味で満腹になった。 建宮「…もうこんな『らぶらぶ♪』じゃ、誰も止めることができないのよねええええええええ ええええええええええええええええええええええええええええええ!!」興奮状態 浦上「…あの御坂美琴って女 恋人→通い妻→お泊り→同妻 ほんでもって結婚ですよ絶対!!」妄想状態 10032号「あいつら…ミサカたちの三分の二が新しい出会いを求めているとは薄情者達だと とミサカは切れてみます。そしてお姉様を暗殺し、あの人の心と体はミサカがいただくとミサカは ここに宣言します…」 建宮「この子の執念もなかなかのものなのよね…」 打ち止め「やだ!ってミサカはミサカはパパとママのデレデレップリを見るんだ!!」 一方通行「いい加減諦めろォ!!」 海原「そうだ一方通行さんあれでも使いますか?」 一方通行「お、てめェにしちゃ気が利くなあれ使うかァ!!」 「あれ」とはなにか? 何の事はない。睡眠薬である。 海原が目くばせすると、ショチトルがふっと打ち止めの背後にまわり… 打ち止め「Zzzzzz」 一方「早ェなこいつ。こンなに効くンは初めてだァ。」 ショチトル「いや、それにしても効き過ぎだ。ここの所寝てなかったのではないか?」 結標「それとも誰かさんが寝かせなかったとか?」 海原「なるほど。やはり土御門さんはあの称号をお譲りすべきでしょうねえ。」 一方「……てめェら何こっち見てンだァ?」 海シ結「「「このロリコン軍曹がっ」」」 一方「だから違うって言ってンだろうがァ!!」 海シ結「「「静かになさい!!」」」 結標「さもないとこの子が起きちゃうでしょうが。」 海原「さて、では寝てしまったこの子をどうしましょう?」 ショチトル「やはりここは保護者が責任を持っておぶるべきだと思う。」 一方「……そう言う事になンのかよォ……」 結標「文句でも?」 一方「ねェよ。」ふてくされた顔で言いつつ彼は寝てしまった打ち止めをおぶる。 まあ次のアトラクションで起きンだろ。にしてもコイツ軽いなァとかもいながら。 それを見た結標が一言 「なかなかお似合いよ。アクセラレータ。」 一方「うっせェ。」 海原「おや?赤くなってませんか?」 一方「なってねェ!」両手がふさがっていて思うように反撃できず、この後アクセラレータはグループの面々に散々いじられるのであった。 その頃ミサカネットワーク 先ごろ公開の某映画よろしく御坂15072号が緊急決議第177号を出した。 「ミサカ全軍を挙げての10032号の暴走阻止を決意する」 妹達「「「「「「ラジャー!!!」」」」」」 10090号「10090号より報告。10032号は現在オリジナルたちの東北東560メートルにあり。狙撃準備に入っているのを確認。これよりミサカは10032号を止めるための戦闘行動に入るっ!!」ダダダダッバンバン! 15072号「近辺にいるミサカ18052号・20000号は10090号の援護にまわれ。その他の遊園地内のミサカは現在地点にて別命あるまで待機。」 妹達「「「「「「了解。」」」」」」 15072号「では10032号。最後通牒です。オリジナルへの破壊行動を速やかに停止しなさい。」 10032号「拒否します。とミサカはネットワークからの切断を企図します。」ズダダダダッ 10090号「あの人は喜びませんよ。とミサカは弾倉を交換しながら諭します。」バン!! 10032「なっ!」ドゴン!! 15072号「10090号の言うとおりです。人を想うというのはその方の幸せを願う事。いまの10032号の行動はそれに反しています。とミサカは説得します。」パンパン! 10032号「………それでは…」 18052号「隙ありっ!!とミサカは10032号に対して睡眠弾を撃ち込みます。」パン! 10032号「うぐっ!!ひ、卑怯なとミサカは断固抗議、し……Zzzzz」バタッ 15072号「18052号、よくやりました。とミサカは作戦通りうまく言ったことにホッとします。」 20000号「腹黒っ!!てミサカは戦慄します!!」 15072号「兵は奇道なり。とミサカは決め台詞をはきます。」
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1001.html
「ミサカ、巫女と美琴(7)」 「で?総司令!学園都市に一体どんな危機が迫っているんだ?」 「…………え?」 「何が『えっ?』だ! まっ、まさか。実は何も無いってオチじゃねえだろうな?」 「なっ、何を言うのかな?ちゃんと危機は迫っているんだから ってミサカはミサカは額に吹き出した汗を拭いつつしどろもどろに反論してみる」 「……………………」 「そうだ、学園都市に宣戦布告してきた秘密結社からの脅迫ビデオが届いていたの ってミサカはミサカはすっかり忘れていたことを微塵も悟られないようさりげない 仕草でビデオの再生ボタンを押してみたり」 すると上条達の右側の壁が開き、出てきた巨大モニターに脅迫ビデオが映し出された。 黒い画面には映画のように③、②、①と数字がカウントダウンされている。 そして海岸の岩に荒波が打ち寄せる映像がドドーンと映し出される。 「ジャッ、ジャジャッジャアーーン」とジングルが鳴り終わると一人の男が画面に映し出された。 しかし口元をスカーフで隠した男は正面を向いていなかった。 その男は手鏡をのぞき込みクワガタみたいに黒光りするツンツンした黒髪を整えている。 どうやら撮影が始まったことに気付いていないようで横から小さな声が掛けられた。 「建宮さーん。もうキュー出しちゃいましたよ」 「なにっ! ウォッホン。我々は謎の秘密結社キシサクマアであるのよな! 我々は学園都市に宣戦布告する!恐れおののけ!科学を盲信するものどもよ」 宣戦布告する謎の人物を見て上条の肩が小刻みに震えだした。 「…………ゴォら!天草式!テメーらまで一緒になって何遊んでやがる!」 「何を言う。我々は天草式とは何の関係もないのよな」 「そんなちゃちな変装で何言ったって…………って、おい!お前!今オレに返事したんじゃ?」 「ビデオに問いかけても無駄なことなのよ。ウワッハッハ!」 「おい!総司令。何が脅迫ビデオだ!キッチリ生放送してんじゃねえか!」 「むむっ! ここまでこちらの反応を読み切ってビデオを作っていたとはこの組織は侮れないかも ってミサカはミサカは追求するあなたの視線から目を外しつつ敵の強大さに驚愕したりして」 「…………もういい。追求する気も失せた」 「取り込み中すまんが本題に入っても良いかな?」 「もう好きにやってくれ!」 「では改めて、ウォホン。 我々は学園都市に制裁を加えるために恐怖の新兵器を開発したのよな」 「はあ?新兵器?」 上条がやる気のなさ100%の声で繰り返すと、 謎の男はフリップボードを持ち上げて黒いマジックをキュキュキューッと走らせる。 クワッ!!と男の目が開かれると男はそのフリップボードをドン!と提示した。 「そう、それは恐怖の『ヒヨコ爆弾』ッッッ!!」 「……………………」 「どうだ?恐ろしさのあまり声も出ないか?」 「あのー、総司令。やっぱ俺帰って良いですか?」 「怖じ気づいて逃げだそうっていうの! ってミサカはミサカは男らしくないあなたにプンプン憤慨してみる」 「いや、そうじゃなくて。こいつらもう放っといても良いんじゃないかと……」 「お前達、このヒヨコ爆弾の恐ろしさを判っておらぬな。見よ!この勇姿!」 画面が切り替わるとドーンとヒヨコ爆弾のアップが映し出された。 「見よ!このまんまるフォルム、フカフカの質感、そしてラブリーな表情。 これほどの出来映えのヒヨコ爆弾を見たことあるまい。どうだ恐れ入ったか。 我々はこのヒヨコ爆弾を第13学区のとある小学校のヒヨコ小屋にセットしたのよな。 爆破時刻は12:30だ。 貴様達に本物のヒヨコと我々のヒヨコ爆弾が区別できるかな? 早くしないと何の罪もないヒヨコ達が巻き込まれるぞ。 せいぜい、慌てふためくがよい!ウワッハッハッ!」 ここでビデオ(?)はブチンッと切れてしまった。 上条達は呆れてものが言える状態ではなかった。一人を除いて。 「な、なんて恐ろしい兵器なんでしょう、とミサカは全身の震えを押さえきれずに呟きます。 あんなまんまるでフカフカでラブリーなヒヨコ達が爆弾にされてしまうなんて………… ミサカはあなた達の非道を許しません! ミサカのラブリーなヒヨコ達はミサカが必ず守り抜いてみせます! とミサカは力強く宣言します」 一人熱く燃える御坂妹に上条達はヤレヤレって感じで顔を見合わせた。 「まあ確かに。ヒヨコ達には何の罪もない。」 「そうね。それにたまにはフカフカでまんまるでラブリーなヒヨコ達に囲まれるのも楽しいかもね」 「仕方ねえな。それじゃあ皆さん、行きますか!」 「ミサカ、巫女と美琴(8)」 学園都市の某所にて 「カーーット!」 「お疲れ様でした。建宮さん」 「皆もご苦労であった。しかしこれからが本番なのよな」 「しかし上条さん(あの人)怒ってましたよ。本当に大丈夫なんですか?」 「それは心配せずともよいことなのよ。 我らは学園都市(ここ)の統括理事長からの依頼で動いておるのだからな。 今回のことも例の件の遂行に不可欠だということで統括理事長(あやつ)に認めさせた。 例の件さえ遂行しておけば我らが多少脱線しても大目に見るという約束になっておる。 しかも必要な費用も全て学園都市(あちら)持ちだ。 我らは、外の連中の目を逸らすためにも、奴らが監視する気も起こらぬほど派手に 馬鹿馬鹿しく振る舞えば良いのよ」 「でも学園都市の依頼だっていっても統括理事長って本当に信用できるんですか?」 「ふっ、そんなもの信用できるハズ無かろう。 だがな、こちらでもウラを取ったが今回の依頼に怪しい所は見つからなかった。 ならばこの依頼を断る理由は無いのであるのよな」 「まあ、あの人に関連する依頼ですからねぇ」 「我ら天草式十字凄教は上条当麻殿からひとかどならぬ恩義を受けておる。 我らはその恩義に報いるためにもこの依頼は完遂しなければならんのよ」 「そうですね。 女教皇様(プリエステス)ですらどう恩返ししようかと未だに悩んでいる位ですから」 「上条当麻殿(あの方)は皆も知っての通りその右手に神をも凌駕する力を備えておる。 しかしそれ以外は一般人と何も変わらないのよな。 いや、防御術式や補助魔術が一切効かない分、一般人より危ういかもしれん」 「それでもあの人は他人を守るために真っ先に飛び込んでいきますからね」 「だからこそ、この建宮斎字は秘密戦隊を装ってあの5名を集めたのよな」 「えっ?あの5人を選んだのは建宮さんだったんですか」 「その通り。この学園都市で最も信頼でき頼りになる5人なのよ」 「信頼できる5人ですか……」 「ミサカ、巫女と美琴(9)」 「まず『一方通行』は言うまでもなく学園都市最強の超能力者だ。 きやつは自分のことを悪党だとうそぶいておるがその性根には一本筋が通っておる。 一度約束を交わせばそれを反故にすることは絶対にあり得ん。 だからこそ信頼することができる」 「そういうもんですかねえ?」 「学園都市第三位の『超電磁砲』は、第二位が所在不明の今、事実上のNo.2だ。 その真っ直ぐな性格は十分に信頼できる。 しかも我らの独自の調査によればあの方にホの字のようなのだよ。 もっとも本人は否定しておるがな。 全くあの方の懐の広さには恐れ入るばかりなのよ」 「羨ましいというか何というか……」 「次に『癒之御使』は世界で唯一あの方を治癒できる存在だ。 故にあの方を狙うものからすればその存在は不都合極まりない。 つまり真っ先に狙われる可能性が高い訳よ」 「だから我々の目が届くようにメンバーに誘ったんですね」 「あのーっ」 「残る『欠陥電気』『最終信号』は学園都市が造った『超電磁砲』の体細胞クローンだ。 彼女たちもオリジナルの『超電磁砲』と同様に信頼できる。 残念ながらその能力はオリジナルの1%にも満たぬが、『一方通行』の能力に深く 関わっているから外すことはできん。 さらに『欠陥電気』には9968名の姉妹がいて全員があの方に惚れているようなのだ。 全くあの方の器は我々常人では計り知れぬほど大きいのよな」 「競争相手がざっと1万人ですもんね。五和も大変だな。こりゃ」 「えーっとですね……」 「とにかく、学園都市においてあの方と共に戦ってもらう能力者を集めることはできた」 「建宮さーん!」 「しかし彼女らは魔術について疎すぎるのよな。 魔術を理解する必要は無いが超能力とは違う力がこの世界に存在することをこの機会に 肌で感じて欲しいのよな。 その経験があれば魔術的な配置や魔術が発動する予兆をいち早く感知できるかもしれん。 そうすれば対魔術師戦において足下をすくわれる危険性は格段に下がるはずなのよ」 「ホントは聞こえてるんでしょ!」 「次は右方のフィアンマですか?」 「ふん、それどころかひょっとするとエドワード=アレクサンダーとも闘い(やり)合うかもしれんぞ」 「その人って確か史上最高の魔術師でしたよね。でもずいぶん前に死んだんじゃ?」 「ものの例えだよ。気にするな」 「無視しないで下さい!建宮さん!!」 腕を引っ張られた建宮は初めて気づいたとでも言う風に声の主である五和へ顔を向けた。 「ん?どうした、五和」 「私、ホントにこんな格好しなきゃならないんですか?」 「いまさら何を言う。最近の戦隊ものはヒロインの露出が少ない代わりに 悪の組織の女幹部は露出度が大幅にアップしておるものなのよな」 「だからってなにもこんなビキニ装甲(アーマー)じゃなくても…………」 「五和、我らの話を聞いていなかったのか? 我らの受けた恩義はもう『堕天使エロメイド』と『大精霊チラメイド』の ツープラトンアタックぐらいでは返済できぬ程膨れあがってしまったのよな」 「そっ、そんなァ……」 「だからこそ、その小悪魔エロキャットの出動なのよ」 五和の持っている衣装は黒革製のボンデージ風コスチュームであった。 ただし服の面積は体表面の25%もなく、しかも生地の大半が膝下をカバーするブーツと 肘から先の手袋と鼻から上を隠す猫耳の付きマスクに費やされているため、 ボディーラインを隠すための生地はビキニ程度分しかない。 かろうじてそれがビキニでなくワンピースだと主張するものはチョーカーとブラとパンツ を「とりあえず形だけは繋いどきました」と言っているヒモ状の生地のみである。 そのくせ背中とお尻には悪魔のような小さな羽と尻尾のオブジェが付いている。 「こんなのを着てあの人の前に出なきゃなんないんですか?わたし」 「仕方あるまい。お前がもっと早く大精霊チラメイドを使っておればここまで利子が 膨らむことは無かったのだからな」 「だっ、だからってこんなことして遊んでて良いんですか?」 「ふっ、遊べるのは今の内だけだ。 本物の闘いが始まればこんな軽口をたたくこともできなくなるのよ。 五和は今の内に青春を謳歌していればよいのよな」 「はーっ、コスプレに命を燃やす青春か…………やだなーっ」