約 488 件
https://w.atwiki.jp/deruta_sanbaka/pages/133.html
「すっきりした? 初春」 「はい、もう大丈夫です。新生初春飾利、上条さんと御坂さんに最高のクリスマスを祝福と共に届けます!」 泣き終えた初春は詩菜に涙を拭いてもらいながら、高らかに今日のパーティーの成功を宣言した。 そこでいよいよパーティーの段取りを組もうとした5人だが、 「よく言ったのよね健気な愛しき我が姫君! この建宮斎字、全身全霊を以って貴女をバックアップするのよ!」 ガラスを突き破って乱入し、どさくさに紛れて初春の手を握ってきた建宮に阻止されてしまう。 初春は建宮に迫られたことで怯え、残る4名も呆気に取られて即座に反応できなかった。 「ヒ、ヒイッ! な、何ですかあなたは!」 「怖がることは無いのよ我が愛しき飾利姫。我ら天草式十字凄教が貴女の願いを必ずホウッ! ゴフッ!」 「初春から離れなさいよこの変態!」 「超キモいです。浜面と超いい勝負のキモさです、この超おっさん」 初春を救い出したのは佐天の金的と絹旗の『窒素装甲』による右ストレートだった。 派手に吹っ飛ばされた建宮を警察に突き出そうとした美鈴と詩菜だったが、旅掛に止められる。 「みんな驚かなくてもいいし、警察を呼ぶ必要も無いよ。彼も私が呼んだパーティーの客人だから」 「そ、そうだったんですか? ごめんなさい!」 「気にする必要はありません、初春飾利さん。あの馬鹿にはちょうどいい仕置きです」 旅掛の後ろから現れたのは刀夜と神裂だが、神裂は浮かない顔だ。 それもそのはず、パーティーに乱入するはずの騎士団長が旅掛に呼ばれた客だったのだから。 戦う覚悟を決めていた神裂、しかし自分もパーティーに呼ばれているので肩透かし感一杯である。 「建宮のことは思う存分こき使って構いません。それと私も微力ながら力になります。上条当麻には恩がありますから」 「そうなのよね! 愛しき飾利姫の為ならたとえ火の中水の中なのよな!」 「建宮さん、でしたっけ。初春にあまり近づかないで下さいね。この子には刺激が強すぎますから」 「もし初春さんを超怖がらせたら病院送りだけでは済みませんよ」 神裂のことは受け入れた女性陣だが、建宮は明らかに初春を狙っているので子供達からは警戒されていた。 とはいえこのままでは何も始まらないので美鈴がパーティーの確認を始める。 「えーっと主賓だけど当麻君と美琴ちゃん、それとハワイで会った3組のカップル、それと」 「浜面さんと滝壺さんです。この5組をお披露目&祝福するのが目的です」 「基本的にはその五組をいじりながらみんなで楽しくお喋りしたり料理をつついたりするのよね~」 「そうね。料理は私と詩菜さんだけで大丈夫だと思ったけど参加者多そうだから神裂さん、手伝ってくれる?」 美鈴からの突然の指名に神裂は驚きながらも、快く了承した。 パーティーの飾りつけや力仕事は基本、男性陣(時々絹旗)で決定した。 次に初春が自分の中で目玉と考え、一番やりたいことを発表する。 「じゃあゲームとかは佐天さんと絹旗さんに考えてもらうとして、私から二つ提案があります!」 「よっ! いいぞー初春ー♪」 「一つは昨日の女性陣の恥ずかしいコスプレ以上に恥ずかしいコスプレを男性陣にしてもらいます!」 「……それは女性陣は喜ばないんじゃないかな?」 初春の提案に異を唱えたのは刀夜で横では旅掛と建宮も頷いている。 しかし初春は慌てることなく、 「心配いりません。御坂さん、白井さん、白雪さん、アホ毛ちゃん、滝壺さんなら恋人さんがどんな格好でも萌えてくれます!」 「……なるほど。それで衣装のチョイスは誰がするんだい?」 「建宮さん、お願いできますか?(何だか変態さんの匂いがするから期待出来そう)」 初春に指名されたことで建宮は顔が見えないくらい何度も何度も首を縦に振り続けた。 そして初春はこれがメインとばかりにこんなプランを提示した。 「二つ目は5組のカップルの女性の方にはウエディングドレスか白無垢を着てもらいます! そこでみなさんに誰がどっちが似合うか決めてもらいます♪」 と初春が力説している所に… 「「「騎士団長!!」」」 「よお!!久しぶりだな!!しかしお前の娘と上条当麻が付き合っているとは驚いたぞ!!」 「まあな、そういやお前はどうして上条当麻のことを知っていたんだ?」 「そんな情報どっから持ってきたか知りたい物だが…まあいいか、将来はお前の息子になるかもしれないのだからな。」 「おっと、その前にこちらが上条刀夜、上条当麻の父親だ。」 「どうもはじめまして、よろしくお願いいたします。」 「いやいやこちらこそよろしくお願いします。」 と握手を交わした。 「では、少々息子について知りたいのですが…」 待ってました!!と全員振り返る。 「んん…彼はよくイギリスに貢献してくれた…いや、これは世界に貢献したと言ってもいいか…」 とそんな時に騎士団長の電話が鳴った。 「ちょっとすいません…はいこちら騎士団長…何!?女王達に例の招待状が届いただぁ!? …わかった、今すぐ空港に行く。」 「どうした?」 「どうして女王達のアドレスがわかったか聞きたい所だが…また空港に行ってくる。 どうやら女王達が日本にまもなく来るらしい。ではまた後で…」 そう言うと騎士団長は一瞬のうちに消えた。 (あのバカ団長!!素人の前で人並み越えた速さで動いたら怪しまれるに決まってます!!) 「では!!気を取り直してウェディングドレスと白無垢、どっちが似合うか選びましょう!!」 (助かった…) 神裂は心の奥底から安心した。 「超白無垢です!!」「いやウェディングドレスです!!」 「白無垢なのよゴギュ!!」「変態オヤジは黙っててください!!」 (なんか、騎士団長の素早さに突っ込んでくれなかったのはよかったのですが……) 別の話題でヒートアップしている初春たち&バカ騒ぎがアークビショップ並みに好きな建宮をみながら神裂は思う。 (何か心配です。ちょっと仕切りますか。) 18歳のはずだが精神年齢は面倒見のいいおばちゃん教皇は咳払いをして言う。 「えーっと…ところで結局何人くらい呼んだんですか?」 「20人くらいですよね?旅掛さん」 「へっ!?君が把握してるんじゃなかったのか?」 「いや~、途中から数数えるの面倒になっちゃって…大体20人です。」 「しかし招待客の名前がすごすぎませんか?」 「確かに…。英国女王へのは騎士団長にも出したから『一応』程度に出したんだが……。」 「女王陛下はパーティーとかその他大騒ぎがお好きなので…今はクリスマスで公務も少ないですし、それで来たんでしょう。」 「それもお忍びのようなのよ。」 建宮が言う。 「空港に配置した浦上達の報告によればやけに上機嫌のものすごい恰幅の良い女性が連れとともに降りてきたと思ったらそれが女王だったということなのよな!」 「なんですって!?もう着いたのですか?パーティーは夕方からのはずでは。」 「女王は昔から日本が好きだと聞いたことが有る。観光でもするのだろう。」 「はぁ…ところで『連れ』とは…まさか…??」 神裂の問いに追加報告を受けた建宮が答える! 「最大宗教なのよね!!後、王女三人も来てるらしいのよな!!」 「「「「「「「「「何いいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」」」」」」」」」 「まさかそこまで凄い人種が一気に来るとは…」 「「「「スゴいですよね…」」」」 親達が呆然としてる間に中学一年生達は… 「私!!お姫様と話す権限があるはずです!!何てったって、私がパーティーに呼んだんですから!!」 「そうだよ初春!!次いでにこの写真のことバッチリ聞いといてね!!」 「そうですよ!!絶対に超聞いて下さい!!」 「任せて下さい!!絶対に聞き出します!!」 なんか燃えていた… 「ちょっと、盛り上がってるところ悪いんだけど・・・」 「なんですか?美鈴さん」
https://w.atwiki.jp/deruta_sanbaka/pages/60.html
当麻「観覧車?」 美琴「そ、遊園地の最後はこれでしょ!!」 当麻「定番だな。」 美琴「それに…」 当麻「?」 美琴「頂上でキスするの…」 当麻「定番だがもうどこでキスしても変わらないのでは…?」 美琴「だって、当麻とロマンチックなキスしたいんだもん(////)…」 当麻「…ったくしょうがねえなー!!んじゃいきますか!!」 美琴「うん!」 キスしなくてもこの二人は誰にも止められない。 建宮「ベタなのにあそこまでいちゃつけるとはなのよね…。」 浦上「ベタだからこそじゃないですかね?」 神崎「インデックス…、なぜそこまで歯を磨く必要があるんですか?」 インデックス「それはね、とうまと短髪を噛み殺すためだよ…。」 神崎「では、五和はなぜ海軍用船上槍を強化してるんですか?」 五和「そんなあたりまえのこと聞かないでください…勿論御坂美琴という 世間知らずのお嬢様をメッタメタのグッジョグジョにするために決まってるじゃないですか…。」 神崎(すいませんが自分の命は自分で守ってください…。) 神崎たちが着くまで、あと43分29秒… 上条「さすが、学園都市。」 美琴「何が??」 現在二人は観覧車に乗ろうという所。 上条が感心しているのはある注意書き。 「こちらの観覧車は自動姿勢制御システムを採用しており、カップルの方が片一方に乗られても快適にお過ごしいただけます。」 とりあえず、科学的?な説明。 この観覧車のゴンドラには水銀柱などを組み合わせた『傾斜感知計』が付いている。 これが感知した傾斜に合わせて水が注排水装置よろしく移動し、ゴンドラを常に水平に保つ。 ちなみにこの水銀柱を使った傾斜感知は1944年ころ日本海軍が開発した「自動空戦フラップ」と同じ様なものだが、学園都市のものはさらに精度・コストパフォーマンスを高めてある。 美琴「うわぁああ……(科学ってやっぱりこういう事のためにあるべきよっ♪)」 上条「そんなに感激するもんか?」 美琴「あったりまえじゃん」ムギュ。 建宮「定番なのよな。」 浦上「定番ですね。」 建宮「しかし定番、ベタであればあるほど強力なのよ。」 その時、建宮の通信霊装が震えた。 プリエステスからの連絡。 建宮「(もしかして上条当麻の護衛と言って遊んでたのがばれた!?)」 浦上「(やっぱり遊んでたんですかこのバカ!!一緒にしかられるこっちの身にもなれってんだ!!)」 ヒソヒソ声であわてる二人だがプリエステスからの通信を無視できるはずもなく。 建宮「もしもし、プリエステス。私 建宮斎字は決して遊び呆けてたわけでは……」 神裂「良いですか建宮、落ちついて聞きなさい。」いや慌ててるのはむしろそっちの方ですよ、神裂さん。 神裂「今すぐ上条当麻から離れなさいっ!!」 建宮・浦上「「へっ?」」 神裂「五和があなたたちの位置を元に上条当麻、いえ御坂美琴の位置を割り出して襲撃しようとしています!ですから急いでそこから離れなさい!!」 建宮・浦上「「りょっ、了解ぃいいいい!!!!!!」」 彼らとて馬鹿ではない。 とくに建宮は教皇代理を務めたほどの男である。 3.5秒で撤収準備を完了。(早やっ!!) スタコラサッサー と大の大人が二人して見えない恐怖におびえて逃げ出すさまは滑稽にも見えた。 しかし、ぶち殺しモードに入った五和の恐ろしさを知ってる二人は真剣そのものである。ここ重要。 打ち止め「わーい、パパママのデレデレが見られるってミサカはミサカは興奮してみたり。」 一方「まずいなァ。あいつらもいンのかよ…ん?」見るとショチトルが小声で話しかけている。 ショチトル「(大丈夫。たぶん我々の乗る所からあの二人の醜態は見えない。)」 結標「(もし見えたら、打ち止めの拘束お願いね一方通行。)」 一方「(テメェは何すンだよ?)」 結標「(もちろんショチトルのフォロー。海原を止めるのは2人くらいいないと心配よ。)」 ちなみに件の海原は現在放心状態。ショチトルからの逆告白(キス)と上琴のデレっぷりがよほど堪えたらしい。 建宮「い、五和ちゃーん?いつ日本におもどりかなー?」 五和「しらを切っても無駄ですよ建宮さん。」 建宮「なななんのことでせう?」 五和「当麻さんの護衛についてたのは知ってるんです。まあ建宮さんの場合、そう言って殆どグウタラしてたんでしょうけどー。」 うわっ、五和さんの言い方が辛辣だーっ!!ぶち殺しモードの最強ランク=レベル5に行ってるのよなーっ!! 良いからはきなさいこのツンツン頭!!! という二人から少し離れた物陰。 五和から逃れた浦上が二人の様子をうかがいつつ、プリエステスに連絡中。 神裂「つまり、建宮は捕まったのですね。」 浦上「はいっ、プリエステス、助けて下さいましっ!!このままじゃ早晩建宮さんは陥落します。」 神裂「そうしたいのは山々ですが、いま噛み殺しモードに入ったインデックスをステイルと二人がかりでどうにか抑えているところです。……浦上、あなたが五和を止めなさい。では」通信は切られた。 プリエステスの命には逆らえない。 しかも天草式にとっても恩人である上条当麻の彼女を守るためである。 ここに浦上の特攻が決定した。 目標はぶち殺しモードに入った五和。勝ち目はない。 しかし男には負けるとわかっていても戦わねばならぬときがある!! 浦上は自分そう言い聞かせ、死を覚悟するのであった。 死を覚悟した浦上に天啓が舞い降りる。 浦上「1人では無理だが30人くらいいるという「あの子たち」の助力があれば?」 緊急決議第178号 「ミサカ全軍を挙げてのオリジナル援護を決意する。」 シスターズ「「「「「「了解。」」」」」」 15072号「現状報告を。」 20000号「現在決議177号後散会したミサカの一部は遊園地を退去せり。現在オリジナル援護に駆け付けられるのは21体のみ。それで十分か否か?」 16254号「21人ほどしか出せませんが、十分ですか?とミサカは尋ねます。」 浦上「21人ですか、微妙ですね。(て言うかこの人何ぶつぶつしてるんだ?体内に通信用霊装でも内蔵してるのか??)」 16254号「十分と言っています。とミサカは報告します。」 浦上「???いっ、言ってねええええええ!!!!」 10081号「こちら10081号。五和、建宮両名を確認。建宮が五和の尋問に屈した模様。現在オリジナルの方へ向かいつつあり。」 15072号「こちらも確認。現スピードにて20分ほどでオリジナルと接触す。」 10090号「オリジナルへこの危機を伝えるべきでは?とミサカは意見具申いたします。」 20000号「それは不可能です。とミサカは答えます。あの二人は現在観覧車に乗って頂上付近でのりづけ中。……おそらく窓に警告メッセージを載せても気づかないでしょう。」 10090号「オリジナルも恋には盲目と言う事ですか。とミサカはDNAレベルでおなじオリジナルの醜態に顔を赤らめます。」 20000号「20分という事は……ちょうどあの二人が降りてきたころです。とミサカは報告します。」 16254号「状況は極めて困難なり。しかしオリジナルへの恩返しのためにも退却は許されません。」 シスターズ「「「「「「ラジャーッ!!」」」」」」 だがしかし、浦上はあっさり敗北した…。 五和「さあ、二人とも吐いてください…。それとも死にます?」 建宮「わ、分かった!!でぅばでぱあ!!何するのよね浦上!!」 浦上「今ここであの二人の為にできるのは黙ることです!!」 建宮「しかしこのままでは…!」 浦上「天草式の恩人には幸せになってほしいじゃないですか!!その為なら ぼくは肉片の塊になってでも口を割りません!!」 建宮「は!!そうだったのよね!!浦上!!お前の言葉で目が覚めたのよね!!」 浦上「そうです!!頑張りましょう!!」 五和「うるさいですよ浦上さん。まずあなたから死にます?」 声だけで殺せそうな五和、それはまるで死神に鎌を突きつけられた様…。 いま上浦には五和の海軍用船上槍が死神の鎌に見えた。 浦上「第6学区の遊園地です!!」 建宮「貴様裏切りおったなああああああああああああああああああああああああ!!」 インデックス「離すんだよ二人とも!!私はあの二人を噛み殺すんだよおおおおお!!」 神崎「ステイル!!まだ術式は完成しないのですか!!(拘束術)」 ステイル「うるさい!!あと少しなんだ!!」 神崎とステイルは絶賛奮闘中 16254号「ちっ、あの野郎あっさり陥落しやがった。とミサカはオリジナルの位置をはいた二人への失望をあらわにします。」
https://w.atwiki.jp/deruta_sanbaka/pages/141.html
同時刻 英国王室ご一行&ノリノリの最大主教&ヨレヨレの騎士団長はというと。 「なぜ私がウィリアムを担がないといけないんですか?」 ウィリアム絶賛気絶中。 「この機会にな、上条当麻にウィリアムとヴィリアンの交際報告だ。」 「女王陛下、それならさっき証拠の画像を送りましたが?」 「母上はただ単に楽しんでるだけじゃねーの?」 「やっぱりかこの年がら年中お祭り野郎が!!」 「騎士団長が怒った怒った!!」 「さっさと逃げるにつき!!」 女王陛下と最大主教は何時になったらこのお祭り気分が抜けるのだろうか?と、担がれつつ思うウィリアムだった… 同時刻。広島 「教皇直々の連絡とは。アックアの奴に何かあったか?」 『そうではない。フフフ。』 「リアルに死の淵から這い上がってきた教皇のその笑いは右席たる私でもちょっと怖いんだが。」 (あのフィアンマの野郎の攻撃まともに受けて生きてられた『普通の』一般人はあんたぐらいだろうさ。) 『貴殿に怖がられるとは、フフフ。私は歴代のローマ教皇の内でも最強かもしれんな。』 「そこで悦にいるのが玉にきずだね。ところで用件はなんだったっけ?」 『そうそう。アックアなんだがね、イギリスのほうから要請があってな2,3日休暇ということになった。』 「はぁ!!??右席はあの一件以来【年中無休 無給奉仕】って事になったんじゃなかったか!?」 『そうはいってもイギリスの【王室派】以下全3派閥 連名での要請だしな。それに悪い話ではない。』 「どういう意味だ?」 『気にしなくてもよい。それとアックアがするはずだった明日と明後日の分の下見も頼むよ。』 「なんだと!?」 『おかしいな、右席は10月の一件以来【年中無休 無給奉仕】それと【教皇への絶対忠誠】をモットーにしたのでは?』 「くそっ。わかったよ。やればいいんだろ。」 『話が早くて助かる。』 「そのかわり後でアックア殺っていいか?」 『私は構わんが英国が黙ってはいまい。』 「なんで?」 『フッフッフッ。仕事が終わってからゆっくりと話そう。では』 通信用霊装がとかれた。 真っ黄色の女は立ち上がる。 仕事はさっさと終わらせるに限る。 移動中の5バカップルはというと…… 「結局パーティーって何やるんだろうな? 美琴は美鈴さんから……聞いてないよな」 「当たり前じゃない。当麻が知らないことを私が知ってるわけないんだから。でも当麻と一緒だから嬉しいよ♪」 「美琴、愛してる」 「私もだよ、当麻」 電車の中でも構わずいちゃつく上琴を羨ましそうに見てるのは打ち止め。 「チッ、万年発情バカップルがァ……。おいクソガキ、あんなモンまじまじと見てんじゃねェ」 「えーっ? パパとママのラブラブっぷりも見ちゃダメなのってミサカはミサカはぶーたれてみたり」 「……まァ、見るだけならいいけどよォ。しっかし初春ってのは何モンだァ?」 「初春おねーちゃんはいい人だよってミサカはミサカは説明する」 (いい人ってのはなァ、他人を脅したりしねェンだよォ!) 一打の横では月夜の問い詰めが続いていた。 「元春、本当にその神裂さんとは何も無いのよね?」 「だから何度も言ってるにゃー! ねーちんとそんなことには絶対にならないぜよ! 俺は月夜一筋です!」 「ま、信じてあげるよ(でも本当に信じるのは実物を見た後だからね)」 その更に横では暴走しかけてる黒子を必死で青ピが抑えている。 「お姉さま達には負けてられません! さあ○○様! わたくし達もあのお二人以上にハッスルしますわよ!」 「落ち着きぃな黒子はん! 服は脱いだらアカン! ジャッジメントが捕まるなんてシャレにならんで!」 その喧騒を離れた場所で見ているのは眠ってる滝壺を膝枕している浜面。 「あー、うるせぇな……。滝壺が起きちまうだろうが、ったくよぉ」 「はまづら……バニーの耳はたべられないよ……ムニャムニャ……」 「ま、この様子なら大丈夫か。にしても来年からはこいつらと一緒の学園生活か……不安だ」 五組のバカップルが思い思いの時を過ごしてる頃、パーティー会場では…… 「みんな、女性陣のウエディングドレスと白無垢、男性陣のタキシードと紋付袴羽織が届いたぞ」 旅掛が発注していたウエディングドレスと白無垢、タキシードと紋付袴羽織を天草式の男衆が運び入れる。 ウエディングドレスと白無垢を目を輝かせながら初春、佐天、絹旗が眺めていた。 「すっごく素敵です! 旅掛さん、ありがとうございます!」 「いやいやお礼なんていらないよ。娘の花嫁姿を先取りできたんだ、こちらこそお礼を言いたいくらいさ」 「男性陣の恥ずかしいコスプレの後にコレでしょ? みんなすっごく感動しますよ!」 「笑いの後の超感動、初春さんはこれを超狙ってたわけですね! なんという超策士っぷりでしょう! 浜面以外が超楽しみです!」 その盛り上がってる所に女性として気になってることを対馬と神裂が呟く。 「でもこういった衣装を着ると婚期が遅れるって言いますよね?」 「ええ、確かにそうですね。もしこれで彼女達の婚期が遅れてしまったら……」 「大丈夫ですよお二人とも。そんなの男性の甲斐性があれば打ち破れるジンクスです! 愛の力で出来ないことは殆ど無いんですから♪」 「よく言った初春くん。まあ、うちの当麻ならその辺は心配いらないがな」 (それ以外は超心配な気がしますけど……) 初春が力強く愛の力をアピールし終わった頃、こちらも料理の準備を完了させた美鈴と詩菜が合流した。 「これで全ての準備は終了ね。みんな、本当にお疲れ様! じゃあ火織ちゃんのお友達はパーティーが始まるまで休んでてちょうだいね」 「ちなみに飾利さん、涙子さん、最愛さん、火織さん、斎字さんはとっても頑張ってくれたから私達からお礼がありますよ~」 「「「「「何ですか?」」」」」 「みんなにはパーティーの為の素敵なドレスをプレゼントよ♪」 ドレスのプレゼントに手伝ってくれた天草式メンバーに悪いと思い断ろうとした神裂だが、彼らの方が頷いて賛成していた。 しかしその申し出を心苦しそうに断ったのは初春だった。 「ありがとうございます美鈴さん、詩菜さん。でも……私は主催者としてパーティーを楽しむ側じゃなく最期まで盛り上げる側でいたいんです!」 「あたしもです! 最初は誘われるままでしたけど、ここまで来たらパーティを成功させる為に頑張りたいです!」 「超同じくです! 新しい超友達の初春さんと佐天さんと最期までやり通したいです!」 「だそうです、建宮。子供達がこう言ってるのです。私はもとより裏方に回るつもりでしたが貴方はどうしますか?」 「それこそ愚問というものなのよなプリエステス。愛しき飾利姫の為にこの不肖建宮斎字、最期まで彼女達を支えるのよね!」 5人の決意に感心を抱く天草式メンバーと刀夜、旅掛。 ドレスのプレゼントを断られて落ち込んでると思われた美鈴と詩菜だが、 「そう言うと思ってたわよ♪ 飾利ちゃんと火織ちゃん以外はちょっと意外だったけど。でもね、そんなこともあろうかとっ!」 「みなさんの分のメイド服と執事服、とびっきりのを用意しておきました~♪」 「「「「「「えええええええええええええっ!!!」」」」」 お見通しとばかりに次の手をちゃんと打っていたのだ。 こうして5人の衣装チェンジが始まるのだった。 その際、建宮が初春と神裂に大精霊チラメイドと堕天使エロメイドをそれぞれに勧めたが却下されたのは言うまでもない。 「「「「「「「「「「お邪魔しまーす!!」」」」」」」」」」 「「「「「「「「「「「キター!!」」」」」」」」」」 「あ、私たちの新居なのにお邪魔しますって言っちゃった。」 「まあ、初めてくるんだし、しょうがないだろう。」 そんな所にドタバタと足音がやって来る。 「「「「「お帰りなさいませ」」」」」 メイド 執事たちがそこにいた。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/312.html
同時刻 英国王室ご一行&ノリノリの最大主教&ヨレヨレの騎士団長はというと。 「なぜ私がウィリアムを担がないといけないんですか?」 ウィリアム絶賛気絶中。 「この機会にな、上条当麻にウィリアムとヴィリアンの交際報告だ。」 「女王陛下、それならさっき証拠の画像を送りましたが?」 「母上はただ単に楽しんでるだけじゃねーの?」 「やっぱりかこの年がら年中お祭り野郎が!!」 「騎士団長が怒った怒った!!」 「さっさと逃げるにつき!!」 女王陛下と最大主教は何時になったらこのお祭り気分が抜けるのだろうか?と、担がれつつ思うウィリアムだった… 同時刻。広島 「教皇直々の連絡とは。アックアの奴に何かあったか?」 『そうではない。フフフ。』 「リアルに死の淵から這い上がってきた教皇のその笑いは右席たる私でもちょっと怖いんだが。」 (あのフィアンマの野郎の攻撃まともに受けて生きてられた『普通の』一般人はあんたぐらいだろうさ。) 『貴殿に怖がられるとは、フフフ。私は歴代のローマ教皇の内でも最強かもしれんな。』 「そこで悦にいるのが玉にきずだね。ところで用件はなんだったっけ?」 『そうそう。アックアなんだがね、イギリスのほうから要請があってな2,3日休暇ということになった。』 「はぁ!!??右席はあの一件以来【年中無休 無給奉仕】って事になったんじゃなかったか!?」 『そうはいってもイギリスの【王室派】以下全3派閥 連名での要請だしな。それに悪い話ではない。』 「どういう意味だ?」 『気にしなくてもよい。それとアックアがするはずだった明日と明後日の分の下見も頼むよ。』 「なんだと!?」 『おかしいな、右席は10月の一件以来【年中無休 無給奉仕】それと【教皇への絶対忠誠】をモットーにしたのでは?』 「くそっ。わかったよ。やればいいんだろ。」 『話が早くて助かる。』 「そのかわり後でアックア殺っていいか?」 『私は構わんが英国が黙ってはいまい。』 「なんで?」 『フッフッフッ。仕事が終わってからゆっくりと話そう。では』 通信用霊装がとかれた。 真っ黄色の女は立ち上がる。 仕事はさっさと終わらせるに限る。 移動中の5バカップルはというと…… 「結局パーティーって何やるんだろうな? 美琴は美鈴さんから……聞いてないよな」 「当たり前じゃない。当麻が知らないことを私が知ってるわけないんだから。でも当麻と一緒だから嬉しいよ♪」 「美琴、愛してる」 「私もだよ、当麻」 電車の中でも構わずいちゃつく上琴を羨ましそうに見てるのは打ち止め。 「チッ、万年発情バカップルがァ……。おいクソガキ、あんなモンまじまじと見てんじゃねェ」 「えーっ? パパとママのラブラブっぷりも見ちゃダメなのってミサカはミサカはぶーたれてみたり」 「……まァ、見るだけならいいけどよォ。しっかし初春ってのは何モンだァ?」 「初春おねーちゃんはいい人だよってミサカはミサカは説明する」 (いい人ってのはなァ、他人を脅したりしねェンだよォ!) 一打の横では月夜の問い詰めが続いていた。 「元春、本当にその神裂さんとは何も無いのよね?」 「だから何度も言ってるにゃー! ねーちんとそんなことには絶対にならないぜよ! 俺は月夜一筋です!」 「ま、信じてあげるよ(でも本当に信じるのは実物を見た後だからね)」 その更に横では暴走しかけてる黒子を必死で青ピが抑えている。 「お姉さま達には負けてられません! さあ○○様! わたくし達もあのお二人以上にハッスルしますわよ!」 「落ち着きぃな黒子はん! 服は脱いだらアカン! ジャッジメントが捕まるなんてシャレにならんで!」 その喧騒を離れた場所で見ているのは眠ってる滝壺を膝枕している浜面。 「あー、うるせぇな……。滝壺が起きちまうだろうが、ったくよぉ」 「はまづら……バニーの耳はたべられないよ……ムニャムニャ……」 「ま、この様子なら大丈夫か。にしても来年からはこいつらと一緒の学園生活か……不安だ」 五組のバカップルが思い思いの時を過ごしてる頃、パーティー会場では…… 「みんな、女性陣のウエディングドレスと白無垢、男性陣のタキシードと紋付袴羽織が届いたぞ」 旅掛が発注していたウエディングドレスと白無垢、タキシードと紋付袴羽織を天草式の男衆が運び入れる。 ウエディングドレスと白無垢を目を輝かせながら初春、佐天、絹旗が眺めていた。 「すっごく素敵です! 旅掛さん、ありがとうございます!」 「いやいやお礼なんていらないよ。娘の花嫁姿を先取りできたんだ、こちらこそお礼を言いたいくらいさ」 「男性陣の恥ずかしいコスプレの後にコレでしょ? みんなすっごく感動しますよ!」 「笑いの後の超感動、初春さんはこれを超狙ってたわけですね! なんという超策士っぷりでしょう! 浜面以外が超楽しみです!」 その盛り上がってる所に女性として気になってることを対馬と神裂が呟く。 「でもこういった衣装を着ると婚期が遅れるって言いますよね?」 「ええ、確かにそうですね。もしこれで彼女達の婚期が遅れてしまったら……」 「大丈夫ですよお二人とも。そんなの男性の甲斐性があれば打ち破れるジンクスです! 愛の力で出来ないことは殆ど無いんですから♪」 「よく言った初春くん。まあ、うちの当麻ならその辺は心配いらないがな」 (それ以外は超心配な気がしますけど……) 初春が力強く愛の力をアピールし終わった頃、こちらも料理の準備を完了させた美鈴と詩菜が合流した。 「これで全ての準備は終了ね。みんな、本当にお疲れ様! じゃあ火織ちゃんのお友達はパーティーが始まるまで休んでてちょうだいね」 「ちなみに飾利さん、涙子さん、最愛さん、火織さん、斎字さんはとっても頑張ってくれたから私達からお礼がありますよ~」 「「「「「何ですか?」」」」」 「みんなにはパーティーの為の素敵なドレスをプレゼントよ♪」 ドレスのプレゼントに手伝ってくれた天草式メンバーに悪いと思い断ろうとした神裂だが、彼らの方が頷いて賛成していた。 しかしその申し出を心苦しそうに断ったのは初春だった。 「ありがとうございます美鈴さん、詩菜さん。でも……私は主催者としてパーティーを楽しむ側じゃなく最期まで盛り上げる側でいたいんです!」 「あたしもです! 最初は誘われるままでしたけど、ここまで来たらパーティを成功させる為に頑張りたいです!」 「超同じくです! 新しい超友達の初春さんと佐天さんと最期までやり通したいです!」 「だそうです、建宮。子供達がこう言ってるのです。私はもとより裏方に回るつもりでしたが貴方はどうしますか?」 「それこそ愚問というものなのよなプリエステス。愛しき飾利姫の為にこの不肖建宮斎字、最期まで彼女達を支えるのよね!」 5人の決意に感心を抱く天草式メンバーと刀夜、旅掛。 ドレスのプレゼントを断られて落ち込んでると思われた美鈴と詩菜だが、 「そう言うと思ってたわよ♪ 飾利ちゃんと火織ちゃん以外はちょっと意外だったけど。でもね、そんなこともあろうかとっ!」 「みなさんの分のメイド服と執事服、とびっきりのを用意しておきました~♪」 「「「「「「えええええええええええええっ!!!」」」」」 お見通しとばかりに次の手をちゃんと打っていたのだ。 こうして5人の衣装チェンジが始まるのだった。 その際、建宮が初春と神裂に大精霊チラメイドと堕天使エロメイドをそれぞれに勧めたが却下されたのは言うまでもない。 「「「「「「「「「「お邪魔しまーす!!」」」」」」」」」」 「「「「「「「「「「「キター!!」」」」」」」」」」 「あ、私たちの新居なのにお邪魔しますって言っちゃった。」 「まあ、初めてくるんだし、しょうがないだろう。」 そんな所にドタバタと足音がやって来る。 「「「「「お帰りなさいませ」」」」」 メイド 執事たちがそこにいた。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/599.html
「うわあ!?なんだこの音!!」 「これはいきなり俺が相手でせうか?ってなわけで、行ってきます。」 「おお、カミヤン随分とよゆうだにゃー。」 「いえいえ、足に支障が出たらそこでバットエンドでせうよ?」 そういい残してさっさと行ってしまった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「ん?おお!!久しぶりだなにーちゃん!!」 「やっぱりあなたでせうか…あっ、あのときはお世話になりました!!」 「いいってもんよ!!それより上条当麻という男は知らんか?どうやら他のレベル5を二人制したと聞いた!!しかもレベル0!!すんげえ根性あるやつなんだ!!早く会いたいんだが!?」 「ああ…それ俺です。」 削板は口をO型になって驚いていた。それとそうだ、今まで何故か多い人に追われているという認識しかないのだから。 「そ、そりゃすげえ!!にーちゃんどんだけ根性あるんだよ!!わくわくしてきた!!よし、にーちゃんの根性ってやつを見せてもらおうか!!」 「いいぜ?そのかわりお前の根性(幻想)をぶっ殺すから覚悟しとけ!!」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー その頃土御門はある異変を感じていた。 (待てよ?この魔力は四人魔術師がいるんじゃ!?ん?しかも一人は知らない奴…。にゃー、たまには俺も一暴れしてくるかにゃー。) いきなり立ち上がる土御門に驚く面々。 「どうしたの元春?」 「にゃー、たまには遊ぼうと思ってにゃー。」 「確かに遊ばないとつまらないかも、ってミサカはミサカは寝ぼけているのを自覚して外にさっさと飛び出してみる!!」 「寝ぼけてる事自覚してるンなら出るんじゃねェ!!」 そんなことお構い無しに打ち止めはさっさと行ってしまった。それは一方通行の鬼ごっこともうひとりのロリコンと遭遇する事を示していた。 「さてと、ってあれ誰かがこっちに来るのよね」 建宮は誰かがこっちに来るのでフランベルジェを構えたが、こっちに来るのが打ち止めだったので構えるのを止めた。 「あれ、ここで何やっているのよね?」 「さっきまで暇だったから遊んでいるの、ってミサカはミサカは言ってみたり。ところで君の名前って何だっけ?ってミサカはミサカは聞いてみたり」 「建宮斎字だけど…」 その時、もう一人こっちに近づいていることに気づいた。 「くそガキ!!勝手に動くんじゃねェ、ってなんでテメェが居るんだァ?」 「ハンターだからって言えば分かるよね。でも、俺は君とは戦う気は無いのよね。」 「テメェが戦う気は無くても俺は戦う気だぞォ。」 一方通行が建宮と戦おうとした時、 「なら、俺の後ろに居る二人が戦ってくれるのよね。」 「あァ?」 建宮の後ろにはステイルとシェリーが居た。 「じゃあ、俺は行くよね。」 「オイ、ちょっと待t「君の相手は僕達だよ。」」 途中でステイルに遮られた。 「チッ、しょうがねェなァ。テメェらを倒さなきゃ先に行け無さそうだなァ」 「そういうことだ。でも、倒すのは私達だけどな。」 そういうことで、ステイル&シェリーvs一方通行の戦いが始まる。 「オイクソガキ、陣地に戻ってろ。」 「いやいや、あそこは居ても居なくても一緒だよ。ってミサカはミサカは地下壕の荒んだ姿を思い出してみたり…」 「ンじゃ俺と一緒に居た方が安全かァ?」 そんなことを言うと電極にスイッチを入れて杖を収納する。 そして左腕で打ち止めを抱え、 右手にベクトルを集中させた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 一方、もう二組はと言うと 削ぎ板は思いっきり拳を振り上条に『すごいパーンチ』を叩き付ける。 が、上条の右手によって打ち消される。 「にーちゃん!!何で俺のすごいパーンチが効かないんだ!?」 「説明すると思うか?」 「思わねえなぁ。」 二人はニヤリと笑うとまた『すごいパーンチ』を繰り出す。だが削板は上条の能力に疑問を持ち始めていた。 (このにーちゃん…もしかして俺みたいな原石か?どんな能力かは分からねえがちっとばかし楽しめそうだなあ!!) また、上条も思索し始めていた。 (能力はよくわかんねえけど拳が飛んでくるみたいだな…他にもかくし球がないといいんだが…) 「おいにーちゃん!!なかなかいい拳持ってんじゃねえか!!」 「こんな拳がなかったら今頃死んでるな。まあこっちも負けられない理由がありましてね……だから本気でかかってこい」 「それはおもしれぇ、ここはちょっと根性出す。まぁ、そんな訳だから……本気で潰すぞ」 直後、世間のナンバーセブンがとろうとした行動はシンプルだった。 上条の元にカツッと踏み込み、その胸を掴み、手近な大木に叩きつけようとした。 それらの行動を、音速の二倍の速度で。 が、掴もうとした腕を逆に掴まれ、力が出せなくなる。 「にーちゃん…なにモンだ…?」 「何故かと事件に巻き込まれやすいレベル0の一般的な高校生だ。覚えとけ。」 そして当麻は削板の頭に強烈な頭突きを食らわせると、すかさず掴んでいた腕を離して距離を取る。 削板は目の前の少年の強さに驚きを感じると共に、今までに無い高揚感を覚え、高笑いする。 「だーーーーーはっはっはっ! いいねいいねぇ! すっげえ根性入った頭突きじゃねーか! 頭突きだけじゃねぇ、攻撃全てに根性が詰まってやがる!」 「アンタこそ強ぇな。けどその強さも根性って奴も俺の右手でぶち殺させてもらう。そんで勝つのは俺だ」 「そうかいそりゃあ楽しみだ。こっからは小難しいこたぁ考えるのは止めだ! 俺の力の全てでてめぇに勝つ! 覚悟しろ上条当麻!」 当麻VS削板、彼らの考え無しの本気の殴り合いが再開される。 その様子を見て、削板を当麻に任せて正解だと判断した土御門は二手に分かれるように促した。 「じゃあ浜面、半蔵、郭で滝壺を守りながらハンターと戦ってくれ。守りながらの戦いはキツイだろうけど、最後まで生き残れよ」 「任せとけ! 滝壺は俺が最後まで守り抜いてやるぜ! 半蔵、郭も一緒なんだ、ある程度の奴なら大丈夫だ! 油断だけはしねーけどよ」 「それならいい。半蔵、郭、相手がどんな奴でも気を抜くなよ」 「分かってる。手を抜くとかそんなことしてたら命に関わるしな。行くぞ郭」 「はいっ半蔵様」 土白、浜滝と半蔵と郭の二班で行動することに。 ちなみに土御門、すでにいつもの口調を捨ててシリアスモードになっている。 そして土白の前に現れたのは結標。 「結標か……。お前一人で俺達二人と戦うつもりか?」 「まさか。土御門、あんたの相手は別にいるわよ。今からそいつの所まで送ってあげるわ♪」 「しまっ……!」 結標は土御門を『座標移動』で建宮を最後に見かけた辺りに移動させる。 いきなり土御門を飛ばされたことに怒りを覚える月夜だったが、結標はそれに全く動じた様子は見せない。 「あんたさ、わざわざ私達の世界、ああ、暗部とか魔術側のことだけどさ、首突っ込んできたんだ」 「それが何? あなたには関係ないことだと思うよ」 「関係ない、ねぇ。それがそうでも無いのよ」 結標がそう言うと、彼女の姿は月夜の視界から消え、気付けば警棒が喉元に添えられていた。 初めて感じた『本物の殺気』に怯えを感じた月夜は力任せに吹雪を巻き起こすが、すでに結標は吹雪から逃げていた。 「あんたがどんだけ覚悟を口にしたって、実戦で使えなかったら『グループ』のメンバーの私にも迷惑かかるのよ。覚悟が口だけじゃないってとこ、見せてみなさい」 「……いいよ。私は元春の為にこの世界に足を踏み入れた。その覚悟をあなたを倒すことで証明してあげるよ!」 「だったら余計なお喋りはこれでお終い。あんたの覚悟ってのを形にして見せることね!」 月夜は思い知る、結標淡希という少女の暗部という凄惨な世界で得た強さというものを。 結標もまた思い知る、白雪月夜のこちら側に足を踏み入れた覚悟の強さというものを。 「あんた誰だよ……?」 「アルバイトだ。」 「って事は……」 「ハンターだ。」 「「「「「………………」」」」」 しばしの沈黙、そして、 「「逃げるぞ!!」」 そんな状況でも闇咲は冷静である。 「断魔の弦」 その場で風が吹き荒れた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「ったく、テメェらは巨人マニアですかァ?」 「僕はそんな趣味はないんだけどね?」 「私はコイツが気に入ってるだけだけどね?」 ステイルの炎剣は一方通行の右手で虹色になって弾けとんでしまうのでイノケンティウスver,天草式とエリス最強形体が出された。 「君のその右手は嫌味かい?」 「全くだね。」 「人の勝手だろうがァ(やっぱオレには右手は似合わねェのか?)」 いつか右手の似合う男になってやると一方通行は密かに誓うのだった。
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1488.html
土曜日15:45 学園都市某所 「あ、あッ、あんの女(あま)ぁぁぁぁぁぁあああああああああ!」 学園都市某所に五和の咆吼が響き渡る。 その怒れる大魔神(五和)に引きつった愛想笑いを浮かべる男が恐る恐る声を掛ける。 もみ手でご機嫌をとろうとする男は天草式十字凄教教皇代理建宮斎字その人である。 「あのーっ、五和さん、一体どうなさったのです?」 「中学生だと思って油断した!! あんのエロ餓鬼!調子にのりやがってぇぇぇぇええええええ!」 「ちょ、ちょっと、五和さん。お言葉が非常に粗暴なのですが……」 ブチ切れモードで怒髪天を突く五和とその怒りを収めようと必死に媚びを売る建宮斎字 を天草式のメンバーはヤレヤレって感じで眺めている。 「まったく建宮さんももう少し学習して貰いたいっすね」と香焼。 「まったくじゃ。今回も五和をちょいとばかり焚きつけようとしたんだろうが、よりにも よってあのお嬢ちゃんが上条殿の部屋で一夜を過ごしたなどと告げ口するとは馬鹿なこ とを言ったもんじゃ」と諫早。 「今回はもう石油化学コンビナートに大引火どころの話じゃなくなりましたね」と牛深。 我が身に火の粉が飛んでくるのを恐れ、部屋の隅でヒソヒソと会話する天草式の男衆。 そこに五和が声高らかに宣言する声が響き渡る。 「これでようやく決心が付きました!私。あのエロ餓鬼と果たし合いをします!」 「いっ、五和さん。それは一体どういうことなのでしょうか?」 「いいですか!建宮さん。1時間以内に私の果たし状をあのエロ餓鬼に届けるんですよ!」 「そっ、そんな。いくらなんでも……唐突すぎるんじゃ……」 「わ・か・り・ま・し・た・ね」 「…………はい」 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 土曜日16:39 常盤台中学学生寮208号室 陽も少し傾き始めた頃、ベッドで微睡んでいた美琴は気怠げに上体を起こす。そして 眠気を追い出すようにベッドに腰掛けた姿勢で大きく伸びをする。 (あーあ!今日もこれからRAILAR司令室に集合かあ? でもなんか面倒になってきちゃったし今日は休んじゃおうかな?…………でも 私が居ないとその隙に秋沙や妹がアイツにちょっかい出しそうだし……どうしよう?) とはいえ既に答えは決まっている美琴は勢いよくベッドから立ち上がると両手で顔を 叩いて気合いを入れる。 「グダグダ言っても仕方ない。シャワーでも浴びてシャキッとしよっ!」 クローゼットの前でブレザーのボタンを外し始めた美琴であったが3つめのボタンに手 をかけた時、僅かな違和感に指を止め室内をぐるりと見回した。 「今、誰かの視線を感じたような……黒子……かしら?」 ルームメイト(黒子)なら美琴に気付かれずにベッドの下にだって潜り込むことができる。 目を爛々と輝かせ涎を垂らしながら美琴の生着替えを覗き見するルームメイトの姿を想像 するに至り念のため室内の死角をチェックする。黒子の不在を確認し一安心した美琴は脱 いだブレザーをクローゼットに掛け代わりにスーツを取り出すとユニットバスへと向かう。 ザーザーとユニットバスにシャワーから流れ落ちる水音が響き渡る。 美琴は降り注ぐシャワーを胸元に受け温水の心地よい感触に身を包んでいた。 降り注ぐ温水は雫となって美琴の張りのある肌を滑らかに伝い落ちる。 その雫を追うように美琴は掌を身体の上から下へとゆっくり這わせていく。 だが、その掌が胸元に差し掛かったときふと手の動きが止まった。そして、 降り注ぐシャワーの中で美琴の白い指だけが未発達な膨らみを包むように動いていた。 そして美琴の薄く開いた唇から吐息とともに声にならない声がこぼれ落ちる。 「んっ。はあぁぁぁぁぁぁ」 だがそれは官能的な嬌声ではなかった。 「はあぁぁぁ、やっぱり全然成長してない。 なんでこんなに小っちゃいんだろ。私の胸。 アイツ……アイツもやっぱり胸の大きな女の子が好き……なのかな? アイツの周りには私より胸の大きな女がいっぱい居るし………… 私が勇気を出して声を掛けてんのにアイツったら何時だって私のことスルーするし、 何かにつれ子供扱いするし、 ひょっとして私の胸が小さいからかしら? どうして私の気持ちに気付かないのよ。アイツったら。 あぁぁぁもう!アイツが悪い!アイツがああだからついこっちも電撃浴びせちゃうのよ。 でも……もう少し私の胸が大きかったら……女としてみてくれたかな? はあぁ、早く大人になりたい」 美琴はシャワーを止めると上気した肌を転がり落ちる雫をバスタオルで丁寧に拭き取る。 そして秘密戦隊RAILARのバトルスーツに手足を通しファスナー引き上げた時、鏡に映る 自分と目が合ってしまった。すると美琴は鏡に顔を近づけ目の前の御坂美琴に話しかける。 「こら!なんでアンタはアイツの前だと素直になれないのよ!」 そう言われた鏡の中の御坂美琴は少し困ったような表情(かお)をしていた。 そんな御坂美琴に美琴はたたみ掛けるように語りかける。 「グズグズしてると他の娘(こ)にアイツを盗られちゃうよ。判ってる!? だからそんな顔しないでシャキッとなさい!チェンジ!ノーマルモード」 バトルスーツが変身時に発する眩い光がバスルームを一瞬満たすが、その光が治まると 鏡にはいつと同じ制服姿(ノーマルモード)の美琴が映っていた。 「そう、それで良いの!」 鏡の中の自分にそう言い部屋に戻った美琴はそこで室内に生じた違和感の正体に気付く。 (あれ?机の上に封筒…………なんて在ったっけ?シャワーに行く前には無かったはず。 ドアも窓も鍵はちゃんと掛かってるし……やっぱ、黒子だったのかな? ……って、果たし状?何なのこのアナクロな展開。どこのどいつよ?まったく! 五和!…………ってことはあの巨乳女!?) 取り出した果たし状に目を通すうち果たし状を持つ両手がワナワナと震え出す。 『果たし状 そろそろ貴女との決着を付けたく、ここに果たし合いを申し込みます。 本日17:30中央本線第3鉄橋の西側のたもとの河原にてお待ち致しております。 ただし来るも来ないも貴女の自由です。 怖じ気付いたのなら逃げても構いません。誰も責めたりしませんからご安心下さい。 五和』 (なんですって……ふざけんな!なんでこの美琴さんが逃げなきゃなんないのよ。 あの女とは一度話を付けないといけないと思ってたから好都合よ!) 御坂美琴は果たし状をグシャリの握りつぶすと時計に目をやる。 今から向かえば指定された時刻には間に合いそうだ。 握りつぶした果たし状をゴミ箱に投げ捨てると御坂美琴は夕暮れに染まる部屋を飛び出した。 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 土曜日16:48 第7学区とある学生寮の一室 「…………というわけで、変な誤解しちゃった五和ちゃんが常盤台のお嬢ちゃんにお茶目 にも果たし状を出しちゃったのよ。多分、大丈夫だとは思うんだけど……万一、五和が 暴走しちゃってお嬢ちゃんに怪我でもさせたら大変だから、是非とも上条殿に二人の仲 裁に入って欲しいわけなのよ」 「はああぁぁぁぁぁ!お前ら、ホントに一体何やってんだよ!! 今日もお前達キシサクマアのせいでこんな時刻にRAILARに招集されてタダでさえ気が 重いって言うのに」 ブツクサ文句を言う上条当麻だが、顔見知りである二人のことを放っておく訳にもいか ずもう一度大きな溜息をつくとヤレヤレと重い腰をあげた。 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 土曜日17:27 第7学区 中央本線第3鉄橋西の河原 指定された場所に到着した美琴は夕陽に赤く染まる河原を見渡し眉をひそめる。 「あれ?どこだろ…………って人っ子一人いないじゃん! 人を呼び出しといてその本人がまだ来てないなんて一体どういうことよ!!」 不自然なほど人の気配がしない河原に一人待ち惚け喰らったようで美琴は悪態をつく。 「失礼な!ちゃんとここにいますよ!」 「ッ!!」 突然背後から掛けられた声に美琴はビクリ!と肩を震わせる。振り返ると3メートル程 後に五和が立っていた。今日は秘密結社『キシサクマア』の女幹部『ブラックキャット』 のコスチュームではなく明るいトレーナーの上にタンクトップを重ね着し濃い色の細いパンツにサンダルという学園都市においてもごくありふれたファッションに身を包んでいる。 だからこそ右手に持つ3メートル超の海軍用船上槍(フリウリスピア)の異様さが際立つ。 「逃げずにここにやって来たことは素直に褒めて差し上げましょう」 「あんたこそ、この前小学生の目の前で無様に尻尾を巻いて逃げ出したのを憶えてないの」 「ご心配なく今日は私が貴女をギッタンギッタンに叩きのめして差し上げます。 さあ、掛かってらっしゃい!」 「言われなくたって!!」 美琴の前髪が青白く発光したかと思うと全身から這い出た数十匹の電気のヘビ達が牙を 剥き一気に五和に襲いかかる。 「甘い!」 フリウリスピアの一閃で電気のヘビたちを霧散させると、反撃とばかりに海軍用船上槍 の穂先を美琴に向け雷光のような刺突を繰りだす。 「チェンジ!バトルモード!!」 美琴のスーツから閃光が迸り莫大な光量が五和の視界を白く塗り潰す。スーツ変形時に 生じる閃光を利用して五和の目を眩ませた美琴は後方に飛び退きつつ再び雷撃の槍を五和 目掛けて撃ち放つ。そして閃光に白く塗り潰された河原の一角に激しい爆音が鳴り響き、 黒い爆煙が空高く舞い上がる。 五和がこの程度で決着がつく相手ではないことを知っている美琴は5メートル後方に着 地しても気を緩めることなく爆煙に隠れた五和の気配を素早く探る。その時、目の前の爆 煙を突き抜け一本の氷の槍が美琴めがけて飛来する。 「フン!」 反撃を予期していた美琴は風切り音を立てて飛来する氷の槍を左へのサイドステップで 難なく躱す。だがそれは囮であり本命は時間差を付けて美琴の予想着地点目掛けて放たれ ていた。ヒュンヒュン!と黒い爆煙をちりぢりに切り裂いて無数の氷の槍が雨霰となって 美琴めがけて降り注ぐ。 「ちぃっ!!」 そして美琴を取り巻く大気がフワリと揺らいだかと思うと地面に円を描くように黒い線 が現れる。その直径が2メートル程ある円周に沿って地面からブワッ!!と黒い影が吹き 上がると高速で旋回し始め美琴を取り囲むように黒い防御壁を構築する。降り注ぐ無数の 氷の槍は砂鉄の防壁に触れた瞬間その全てが粉々に砕け散っていった。そして砂鉄の防壁 を地上1メートルまで引き下げ美琴は薄くなった爆煙の向こうに立つ五和に話しかける。 「その程度の攻撃でお終いなの!?そんなんじゃ私に傷の一つだって付けらんないわよ」 しかし不敵な笑みを浮かべる五和は唐突にドバン!とフリウリスピアの刺突を繰り出す。 雷光の速度で繰り出した海軍用船上槍が砂鉄の防壁に衝突した瞬間、五和はその刃先に込 めた術式を一気に開放する。 ズバァッ!!と閃光が迸ると槍の穂先を起点として衝撃波が四方に奔り一瞬遅れて凄ま じい爆風が河原を吹き荒れる。美琴を防御する砂鉄の防壁でさえ地面から削り取られた大 量の土砂と共に高く舞い上げられてしまった。だが五和は立ちこめる土煙の中で攻撃態勢 のまま舌打ちする。 「ちっ!私としたことが踏み込みが甘かったみたいです!」 美琴は10メートルも後方に吹き飛ばされていたが無傷であった。正確には衝撃を和ら げるためにあえて自ら後方に跳躍したのだ。美琴に反撃の機会を与えないように五和はす ぐさま足下に水の魔術を施すと氷上を滑るような勢いで一気に間合いを詰め美琴目掛けて フリウリスピアを繰りだす。 ガキィィィィ!と夕暮れの河原に金斬り音が鳴り響く。 五和のフリウリスピアの一撃を受け止めたのは美琴の砂鉄の剣である。高速で振動する 砂鉄をフリウリスピアの穂先が盛大な火花を上げている。一瞬の隙を突き美琴はその穂先 を巻き込むように砂鉄の剣を螺旋状に回してその穂先を跳ね上げると鋭い足捌きで五和の 懐に踏み込む。そして砂鉄の剣を横薙ぎに振り抜くが、この一撃はフリウリスピアの柄で 防がれてしまう。鍔迫り合いをする美琴と五和の互いの顔は50センチも離れていない。 そんな中、突然五和が美琴に問い掛けた。 「貴女に問います!覚悟はありますか!?」 唐突な五和の問い掛けに美琴は素っ頓狂な声をあげてしまう。 「はあ?」 「当麻さんを狙う敵は貴方が想像もできないほど強大です。 それでもあなたは当麻さんと一緒に闘う覚悟がありますか?」 『闘う』。その単語に美琴の脳裏にあの時の上条の姿がフラッシュバックする。腕や頬に 付いた電極から伸び地面にまで垂れていたコード、体中に巻き付けられ所々に血が滲んだ 包帯、氷の海に浸かっていたかのように青ざめた顔、焦点の合っていない瞳。その姿を思 い出すだけで今でも美琴の胸は苦しいほど締め付けられる。 手術衣を纏っただけのアイツはまともに歩けもしないのにボロボロの身体をひきずって、 それでも何かに立ち向かおうとしていた。それまでは気付かなかったアイツの闘い。それが生きるか死ぬかの瀬戸際で繰り広げられる闘いだったことに気付いたのがあの日だ。 そして論理や理性や世間体や体裁すら粉々に打ち砕くほどのエネルギーが自分の内側に 眠っていて、超能力者(レベル5)としての『自分だけの現実(パーソナルリアリティー)』 でさえ易々と打ち砕くその圧倒的な感情の名前に気付いたのもあの日だ。 (もうあんな思いをするのは嫌ッ!)美琴は心の底からそう思う。 だからそんな当たり前のことを尋ねられたことが無性に腹が立つ。 「あるに決まってんでしょ!私の命に替えても当麻は護ってみせる!」 だが、雄叫びのような美琴の返事を聞いた五和の目に嘲笑するような光が浮かぶ。 「では、なおさら貴女には任せられません!」 「なっ!?なに屁理屈言って……」 「軽々しく『命』なんて言わないで下さい! もし貴女の犠牲で当麻さんが助かったとして、それを当麻さんが喜ぶとでも思っている のですか?当麻さんがそんな自分を許せるとでも本気で思ってるんですか?貴女は!」 「うっ!」 五和の指摘に美琴は言葉を詰まらせる。 そう。上条はいつもそうだった。 困ったときは相談しろって他人には言うくせに、それどころか頼んでもないのに勝手に 首突っ込んで来て死ぬしかなかった私と妹達を助けたくせに、自分の時は全てを自分一人 の中に背負い込んで、絶体絶命のピンチだろうが他人を巻き込まないよう助けを求めもし ないし弱音すら吐きやしない。他人を助けたせいで自分が不幸になってもへらへら笑って いるくせに、赤の他人だろうが目の前で人が不幸になるを見過ごすのが許せない。そう。 それが……私が大好きな上条当麻なのだ。 「もう一度尋ねます。 貴女は最後まで戦い抜く覚悟がありますか? どんな困難に直面しようと決して諦めないと約束できますか!? 必ず生き抜いて当麻さんに『お帰りなさい』って言ってあげると誓えますか? 貴女にその覚悟がないなら、今すぐ当麻さんの前から消え去りなさい!」 五和の言葉が美琴の胸にグサリ!と刺さる。 そして五和という少女が本当に上条を愛しているのだということを美琴は痛感する。 でも…………、納得いかない。納得できる訳がない。 そう。たとえ目の前の少女が上条を心の底から愛しているとしても納得できる訳ない。 だからこそ砂鉄の剣を握る手に力がこもる。 「私だって。 私だってあんた以上に『当麻を愛してる』んだからああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 もはや咆吼といってもよい叫び声をあげ美琴は鍔迫り合いする五和をはね飛ばし、全身 全霊を込めて砂鉄の剣を袈裟懸けに振り降ろし五和のフリウリスピアに叩き付ける。美琴 の渾身の一撃は後方のアックアが振るうメイスの一撃にも耐えたフリウリスピアを斬り裂 いた。穂先がゆっくりと落下していく様子を目を丸めて見つめる五和に美琴は勝利宣言の ように言い放つ。 「どう!?これで…………」と美琴が言いかけた瞬間、河原に甲高い警報が鳴り響く。 (えっ、何?)と戸惑う美琴であったが直ぐにその音源が自分の間近であることに気付く。 それが自分のスーツから発せられる警告音だと認識した時スーツから電子音声が流れる。 「スーツ装着者『御坂美琴』による『破滅の言葉』コード入力を確認。 機密保持規定3条2項に従い、本スーツは5秒後に自壊します。4……3……」 「ちょっ、ちょっと待って。違うの!今のはナシ!お願い、待って」 『破滅の言葉』によりスーツが分子単位にまで分解されることを思い出した美琴はスーツに向かって必死に弁解するもののスーツが美琴の言い訳に耳を貸すはずも無い。 「2……1……ゼロ」 無情にもカウントゼロで美琴のスーツから爆発的な閃光が迸る。瞼を閉じた五和ですら 網膜を焼かれそうな光量が周囲を白く塗り潰し、光の中でスーツが分子単位へと分解する。 閃光が収まり恐る恐る目を開けた五和の前にはなぜかタ○シ○ド仮面のコスプレをして いる上条当麻が立っていた。 「み、御坂さん!?」 素っ裸の美琴は上条のマントに正面から抱きかかえられるようにくるまれていたのだが、 予測不可能な事態の連続に正常な判断ができず、美琴は(なんでタ○シ○ド仮面?)など とピント外れの思考に囚われていた。しかし美琴の顔から10センチも離れていないタ○ シ○ド仮面の素顔が上条のものだと気付いた途端美琴は顔を真っ赤に染め叫び声を上げた。 「きゃあぁぁっ!」 上条の胸板に両掌を押し当て上条を押し離そうと両腕に力を込める美琴であったが上条 の両腕がそれを許さない。上条に抱きしめられているという事実に軽いパニック上体に陥 った美琴は思い切り力を込め30センチほど上条から身体を引き離すと上条を睨み付け文 句を言い放つ。 「こら!なんで離さないのよ。あんたは!!」 「ちょっと待て!落ち着け!御坂。お前今自分がどんな格好なのか判ってるのか?」 上条を睨み付けていた美琴はそう言われてようやく視線を下に向ける。視線が自分の両 腕を通過し上条との間に空いた30センチの隙間に落ちた時、視界の半分をスーツの赤色 ではなく肌色が占めていることに気付く。そして赤かった顔から一気に血の気が引いた。 美琴の瞳には鴇色の先端をもつ自分の慎ましやかな胸の二つの膨らみと、その僅かばか りの谷間の向こうにあるおへその窪みまで映っていた。そしてようやく気付く。スーツが 自壊し一糸纏わぬ姿となった自分を上条がマントで隠してくれていたことに。 あわてて両腕を引き戻し両掌で胸の膨らみを隠した美琴がハッと視線を上げると自分の胸元を見下ろしている上条に気付き、真っ青になっていた顔が再び真っ赤に染まる。 「み、見た?」 「えっ?あーっ、そのーっ、ゴメン」 美琴の瞳にジワッと涙が浮かぶと声をあげて泣き始めた。 「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁん!」 「スマン御坂、スマン。謝るから、だから、頼むから落ち着いてくれ!」 「うわあぁぁぁん!(こんな小っちゃいおっぱいを当麻に見られちゃった。もう死にたい)」 「スマン!つい見とれちまった。謝って済む問題じゃないけど、ゴメン。えーっと、何で もするから泣き止んでくれ」 「ひっ、ひっく(えっ?今見とれてって言った?)…………う……うん」 コクリと頷くと美琴は上条の肩口に顔を埋めるようにしなだれ掛かる。そして、上条の 背中に両手を回すとギュッと強く抱きしめる。今度は逆に美琴に抱き付かれた上条が狼狽 える番になった。 「み、……御坂!?」 「なによ!あんたが落ち付けって言うからこうしてんのよ!?」 「えっ!いや、俺達今抱き合っているんだけど大丈夫なのか!?」 「いいからこのまま…………もう少しだけ」 上条の胸板に押しつけた小さな胸にスーツ一枚隔てた上条の鼓動が伝わってくる。 「どうだ。そろそろ落ち着いたか!?」 「うん」 「さっきは本当にゴメン」 「こっちこそゴメン!助けて貰ったのに泣いちゃったりして」 「いや、それでもやっぱり俺が悪い…………でも…… なんで御坂のスーツは自壊したんだ?御坂の『破滅の言葉』って一体何だったんだ?」 そう言われて美琴は僅かに顔を伏せ身を固くする。ギュッ!と唇を噛み締めると意を決 して顔を上げる。真っ直ぐ上条の顔を見つめたまま心に溜まった思いのたけをぶつける。 「それは……私のスーツの『破滅の言葉』は……『当麻を愛してる』なの!! それに本当に私は当麻が好き!今まで黙ってたけどずっと前から当麻が好きだった!」 「そっか。ありがとな。 でもさ御坂は知ってるだろ。俺なんかと付き合ってるとろくなこと無いぞ」 「そんなことない。アンタがとっても危険なことに巻き込まれているのは判ってる。 でもね。私だって戦える。私にあなたの背中を護らせて欲しいの! ううん、そんなことじゃないの。 帰ってきた当麻に『お帰りなさい』をいうのは私でありたいの! 誰がなんと言おうとそれだけは誰にも譲れない。譲りたくないの!」 「そうか『お帰りなさい』……っか、なんか嬉しいな。その言葉。ありがとう。御坂」 「私は最高の笑顔でお帰りなさいって言ってあげる。 だから約束して、これからどんなことがあったって必ず私の所に帰ってくるって」 「ああ、約束だ」 そして上条は美琴を強く抱きしめた。 「ところでアンタのスーツの『破滅の言葉』は一体なんなのよ?」 「それはさ、俺の今の気持ちを表す言葉だよ。 まあ、ラストオーダーの奴もよく考えたもんだ。 (『俺って幸せだな』なんて言葉は)普段の俺なら絶対口にしない言葉だからさ」 「???」 「それに今俺が『破滅の言葉』を言ったら二人揃って素っ裸で抱き合うことになるぞ。 いや……それも一興かな?」 「なっ、なに馬鹿なこと言ってのよ!アンタは!」 「はははっ、冗談だよ。冗談」 「なにが可笑しいのよ。アン……コホン!とっ、と……当麻ったら……」 その呼び方にボッと頬を朱色に染める御坂美琴であるが上目づかいに見あげるその瞳は 真っ直ぐ上条の瞳を見つめていた。そして見つめ合う二人の顔を夕陽がさらに赤く赤く染 めあげていった。 「「でもこれからどうしよう?」」 「どうぞ!」 どうしようかと顔を見合わせている二人に声をかけたのは五和であった。 「これは私の着替えです。癪だけど私からの御坂さんへのプレゼントです。使って下さい」 「えっ……あ、ありがとう。五和さん」 「良いんですよ。別に気になさらなくても。 でも当麻さん。 これからも私のこと……天草式十字凄教の一員としてよろしくお願いしますね」 そして元気よくペコリとお辞儀するとクルリと当麻達に背を向けて歩き始めた。 「ありがとう。五和。それとゴメン!」 上条の言葉に五和は振り返らずに右手を挙げて応えた。否。振り返りたくても五和は振 り返ることができなかった。なぜならその頬を止めどなく流れ落ちる涙を上条に見られた くないから。 堤防を登り切るとそこに一人の男が立っていた。夕陽を背にした男は少しだぶついた服 を着てクワガタのように黒光りするツンツンした髪をしていた。五和は慌てて涙を袖でゴ シゴシ拭うと努めて明るくその人物の名前を口にした。 「建宮さん」 「ご苦労であった。五和」 「えへっ、私…………ふられちゃいました……………………」 「そうか…………」 気丈に振る舞おうとしていた五和だったがそこが限界だった。堪えきれなくなった感情 が堰を切って溢れ出す。 「ふっ、ふっ、ふえぇぇぇ─────ん」 五和は建宮に抱きつくと胸に顔を埋め大きな声を出して泣き続ける。 そんな五和の肩に優しく手を乗せて建宮斎字は静かに話しかける。 「五和、今は心ゆくまで泣けばよい。 でも心配するな。今のお前は正真正銘世界一良い女なのよ。 こんな良い女を世の男どもが放っておくはずがないのよな」 「うわあぁぁぁ───────────────ん」 夕陽が二人の姿を赤くそして優しく染め上げていた。 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 土曜日18:05 第7学区 中央本線第3鉄橋西の河原 「あ、あ、あんの女(あま)あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 河原に御坂美琴の咆吼が響き渡る。 「あのーっ、美琴さん、一体どうなさいました?」 「うっさい!アンタはあっち向いてなさい!」 御坂美琴は五和から受け取った服に着替えていた。 五和から渡された服はぴったり目のパンツと胸元が大きく開いたニット地の服である。 ただしその服は胸ものがダブついているというか、それよりは明らかに間違ったサイズを 無理して着ているという表現がよく似合う。 きっとDカップ以上のバストを持つ女性ならば胸の谷間を強調するその服のデザインは 街の男達の視線を胸元に釘付けにしただろう。しかし悲しいかな、御坂美琴はAカップ。 ダブついた胸元はセクシーさどころか滑稽さを醸し出していた。しかもパンツのウエスト が少しきつめだった事が御坂美琴に追い打ちをかける。 (あっ、あ、あの女、こんな服を使って私とのスペック(バスト)差を見せつけるなんて!) 「あのーっ、御坂さん!?」 「どうせ、私はAカップよ! でも2年後よ!2年後を見てなさい。あの女よりもっと良い女になってやるんだから! 当麻が私を選んだことを後悔させないぐらい、すっごくいい女になってやるんだから。 だから、アンタは期待して待ってなさい。イイ!」 「ああ。でもな、今でも美琴は俺には勿体ないぐらいのいい女だよ」 「とっ、当麻ァァ」 「でも、まあ。2年後に今よりもっといい女になるっていうなら期待して待ってるよ」 おしまい。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2804.html
とある科学の執行部員 改訂版 はこちら。 第2章(2)「凄まじいね、彼は…」美琴とステイルとインデックスは美琴が用意したモニターから上条の戦いの様子を眺めていた。今回は美琴に魔術師との戦いの様子を見せるという目的があった。そこで上条には常に付き添うように小型のカメラが付随している。それがリアルタイムで上条の戦闘を映し出してるのだ。「これは魔術の法則を知って対処してるんじゃなくて、 経験則から最適な答えを導き出してるのかも。 でも一体どれだけの魔術師との戦闘を行えばこんな動きが出来るの!?」上条の動きは相手の動きを予知してるとしか思えないような圧倒的なものだった。それに加えてその動きは洗練されていて無駄なく確実に天草式の意識を刈っていく。上条は初め、天草式に対話を呼びかけた。しかしながら信じて受け入れてもらえることが出来ずに、止むを得ず戦闘となっていた。天草式は魔術師でありながら肉弾戦も得意とする文武両道の集団だ。上条にとって魔術のみで戦う魔術師と比べて相性がいい相手とはいえなかった。にも拘らず上条は臆することなく、天草式の構成員を倒しながら進んでいく。「みことはとうまと同じ場所で働いてるんだよね? とうまがどうしてこんなに強いか知ってる?」インデックスの答えに美琴は答えることが出来ない。美琴は上条について何も知らなかった。いつも自分の話ばかりして、それを優しく受け止めてくれる上条に甘えていた。良く考えれば上条が何故こんな危険なことをしているかも知らなかった。(私は当麻に甘えてばかりいた、当麻のことを知ろうともしなかった。 これじゃあ当麻が私を連れて行ってくれないのも当然だ。 だって私と当麻は同じ場所にすら立っていないんだもん)やがて上条はくわがたみたいな髪型をした男と対峙した。雰囲気で分かる、この男が天草式のリーダーだ。上条と男は対峙する。男は刃の部分が波打った長剣の切っ先を上条に向けた。男の後ろには一人の女性がいる。漆黒の修道服に身を包んだ彼女がオルソラ=アクィナスに間違いないだろう。しかし上条と男の戦闘が始まろうとしたまさにその時、美琴の放つ電磁波のレーダーに反応があった。美琴が反応のした方へ顔を向けるとそこにいたのは…「全くコソコソと動き回られたせいで、こっちの計画は台無しってもんです。 まあでもアンタ方を人質に取れば忌々しい『幻想殺し』も駆除できるってもんです」一人の小柄なシスターの後ろからゾロゾロと大量のシスターが溢れ出てくる。その数はおよそ250人…「…ちょろっと、面倒なことになっちゃったみたいね」・・・ 上条は天草式と激闘を繰り広げたパラレルスウィーツパークから薄明座に向かう道を天草式の教皇代理である建宮斎字とオルソラ=アクィナスと共に歩いていた。「全くイギリス清教からの使いなら、さっさと言って欲しかったのよな」「言おうとしたら、そっちが問答無用で襲い掛かってきたんじゃねえか!!」建宮との戦闘の後に事情を説明した上条は特に天草式の面々に大怪我を負わせた訳でもなかったので、すぐに和解しオルソラの身を預かることになった。そして念のためということで建宮も同行してるのであった。「それにしても、お前さんの強さは反則なのよな。 一体どういう鍛え方をしてるんだ?」「まあ、それは色々と…」上条がそう言い掛けた時、前方から一人のシスターが歩いてきた。そのシスターを見た瞬間、オルソラの表情が凍る。そのシスターが着ている修道服はオルソラのものと似通っていた。「ローマ正教の人間か、思ったよりも早かったな」その言葉に建宮はパニックを起こして激昂した様子で言った。「なっ、お前さんやっぱりローマ正教と繋がってたんじゃ!?」しかし建宮の言葉を否定するようにシスターは淡々と言った。「電撃を使う少女とイギリス清教の二人の人間は預かった。 交換条件は『幻想殺し』、貴様が一人で薄明座まで来ることだ」「どういうことなのよな? 狙いはオルソラ嬢じゃないのか!?」天草式がオルソラを攫ったのは『法の書』の解読が出来るオルソラを科学と魔術の戦闘に利用されないようにするためだった。だからローマ正教はオルソラを狙ってくるものだとばかり思っていた。「上からの命令だから詳しいことは私も知らない。 ただ上は『幻想殺し』、貴様を必要としているようだ」「…美琴は無事なんだろうな?」「感謝して欲しいものだ。 こちらは150人以上の仲間が戦闘不能に陥らされたのに、 人質には傷一つ負わせていない、ただ眠らせているだけだ」「…そうか」シスターの言葉から嘘を感じられなかった上条は黙ってシスターの後に続いて歩いていく。そんな上条を建宮が呼び止めた。「ちょっと待つのよな、本気で一人で行くつもりなのか!? 人質がいるってことは、お前さんは必ず相手の言うことを聞かなきゃならん。 どんな目に遭うか分からんぞ!!」「大事な人が人質になってるんだ、退くわけにはいかないだろ」そして上条は薄明座へ続く道を歩いていくのだった。・・・ 上条が薄明座に着くと美琴はステージの上で横になっていた。急いで駆け寄ろうとする上条の行く手を数十人のシスターが阻む。見たところ本当に美琴が怪我を負った様子はなかった。恐らく魔術か何かで昏睡させられてるのだろう。美琴の横にはステイルとインデックスが雁字搦めの状態で縄で縛られている。「よく来やがりましたね、『幻想殺し』… 大丈夫、アンタの大切なお姫様は眠ってるだけで怪我一つ負っちゃあいませんよ。 尤もこれからのアンタの態度次第じゃどうなるか分かりませんけどね」そう小柄なシスター…アニェーゼが口にすると、美琴の首筋に剣が突きつけられる。美琴の首筋から一滴の血が流れた。「目的は何だ?」「上の人間がどうやらアンタとの対面をご所望みたいなんで、 大人しく私達と一緒にバチカンまでご同行願いましょうか?」上条に拒否権はない。上条はただ黙って頷いた。「ただね、上はアンタが生きてさえすりゃあいいみたいで、 アンタをどんな状態でつれて来いとまでは言われてないんですよ。 そしてここには同胞をアンタに傷つけられ怒りに満ちてる人間がたくさんいる。 この意味は分かりますよね?」上条はようやくアニェーゼが意図していることが理解出来た。ガキの癖に随分と歪んだ性質を持ってると心の中で毒づきながら、上条は一歩一歩前へと進みでる。そして100人のシスターによる異教の徒に対する圧倒的な暴力が振るわれるのだった。・・・ 「ちっ、悲鳴を上げるどころか気絶すらしない。 気に入らねえったらありゃしませんよ」アニェーゼは上条の脇腹を蹴り続けながら、つまらなそうに呟いた。上条は顔が苦痛に歪んでいるものの、その表情から力は消えていなかった。「これだったら目の前で人質を傷つけた方が、こっちも楽しめる…」しかしアニェーゼがそう言った瞬間、アニェーゼはドッと汗が噴出すのを感じた。アニェーゼだけでない、中にはガタガタと震えだすシスターまでいる始末だ。それが上条から放たれた殺気だと気付くのに時間は掛からなかった。かつて上条が土御門に向けたものとは比較にならない殺意…使いようによってはそれだけで人を殺せるような鋭いものだった。「じょ、冗談に決まってるじゃないですか… 人質は傷つけないでいるからこそ意味があるんですから」アニェーゼは震える肩を押さえつけるように腕を組みながら押さえつけていた。もしかしたら自分達はとんでもない相手を敵に回してしまったのではないか?「そろそろ移送する時間です、立てますか?」知らず知らずの内に上条に対して丁寧な扱いになってることにアニェーゼ自身、気付いてはいないのだった。「ああ」あれだけ痛めつけられたにも拘らず上条はよろつきながらも、自分の足でしっかりと立ち上がった。そして上条をアニェーゼ部隊が連れて行こうとした、その時…薄明座の建物全体を揺らすような衝撃が襲った。アニェーゼが思わず音のした方を見ると、ステージに外から風穴が開いている。「な、何事ですか!?」すると風穴から二人の男女が出てきた。「ありゃ、上条ったら随分と派手にやられやがって」「甘いからそういうことになるのよね」上条は声の主の方を見ると思わず声を上げた。「垣根、麦野!!」垣根と呼ばれた少年は上条に向かって何処か悪戯っぽい笑みを浮かべると、「ったく、わざわざ俺がお前の尻拭いをしに来てやったっていうのに、 周りにいるのは雑魚ばかりかよ。 第四位、手を出すんじゃねえぞ!! 俺が一瞬で終わらせてやるからな!!」「はいはい、お好きにどうぞ」垣根の言葉に対し、上条に麦野と呼ばれた少女はどうでもいいように答えた。そして学園都市第二位による数などものともしない、圧倒的な蹂躙が始まるのだった
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1587.html
「ミサカ、巫女と美琴(御坂END その1)」 土曜日15:45 学園都市某所 「あ、あッ、あんの女(あま)ぁぁぁぁぁぁあああああああああ!」 学園都市某所に五和の咆吼が響き渡る。 その怒れる大魔神(五和)に引きつった愛想笑いを浮かべる男が恐る恐る声を掛ける。 もみ手でご機嫌をとろうとする男は天草式十字凄教教皇代理建宮斎字その人である。 「あのーっ、五和さん、一体どうなさったのです?」 「中学生だと思って油断した!! あんのエロ餓鬼!調子にのりやがってぇぇぇぇええええええ!」 「ちょ、ちょっと、五和さん。お言葉が非常に粗暴なのですが……」 ブチ切れモードで怒髪天を突く五和とその怒りを収めようと必死に媚びを売る建宮斎字 を天草式のメンバーはヤレヤレって感じで眺めている。 「まったく建宮さんももう少し学習して貰いたいっすね」と香焼。 「まったくじゃ。今回も五和をちょいとばかり焚きつけようとしたんだろうが、よりにも よってあのお嬢ちゃんが上条殿の部屋で一夜を過ごしたなどと告げ口するとは馬鹿なこ とを言ったもんじゃ」と諫早。 「今回はもう石油化学コンビナートに大引火どころの話じゃなくなりましたね」と牛深。 我が身に火の粉が飛んでくるのを恐れ、部屋の隅でヒソヒソと会話する天草式の男衆。 そこに五和が声高らかに宣言する声が響き渡る。 「これでようやく決心が付きました!私。あのエロ餓鬼と果たし合いをします!」 「いっ、五和さん。それは一体どういうことなのでしょうか?」 「いいですか!建宮さん。1時間以内に私の果たし状をあのエロ餓鬼に届けるんですよ!」 「そっ、そんな。いくらなんでも……唐突すぎるんじゃ……」 「わ・か・り・ま・し・た・ね」 「…………はい」 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 土曜日16:39 常盤台中学学生寮208号室 陽も少し傾き始めた頃、ベッドで微睡んでいた美琴は気怠げに上体を起こす。そして 眠気を追い出すようにベッドに腰掛けた姿勢で大きく伸びをする。 (あーあ!今日もこれからRAILAR司令室に集合かあ? でもなんか面倒になってきちゃったし今日は休んじゃおうかな?…………でも 私が居ないとその隙に秋沙や妹がアイツにちょっかい出しそうだし……どうしよう?) とはいえ既に答えは決まっている美琴は勢いよくベッドから立ち上がると両手で顔を 叩いて気合いを入れる。 「グダグダ言っても仕方ない。シャワーでも浴びてシャキッとしよっ!」 クローゼットの前でブレザーのボタンを外し始めた美琴であったが3つめのボタンに手 をかけた時、僅かな違和感に指を止め室内をぐるりと見回した。 「今、誰かの視線を感じたような……黒子……かしら?」 ルームメイト(黒子)なら美琴に気付かれずにベッドの下にだって潜り込むことができる。 目を爛々と輝かせ涎を垂らしながら美琴の生着替えを覗き見するルームメイトの姿を想像 するに至り念のため室内の死角をチェックする。黒子の不在を確認し一安心した美琴は脱 いだブレザーをクローゼットに掛け代わりにスーツを取り出すとユニットバスへと向かう。 ザーザーとユニットバスにシャワーから流れ落ちる水音が響き渡る。 美琴は降り注ぐシャワーを胸元に受け温水の心地よい感触に身を包んでいた。 降り注ぐ温水は雫となって美琴の張りのある肌を滑らかに伝い落ちる。 その雫を追うように美琴は掌を身体の上から下へとゆっくり這わせていく。 だが、その掌が胸元に差し掛かったときふと手の動きが止まった。そして、 降り注ぐシャワーの中で美琴の白い指だけが未発達な膨らみを包むように動いていた。 そして美琴の薄く開いた唇から吐息とともに声にならない声がこぼれ落ちる。 「んっ。はあぁぁぁぁぁぁ」 「ミサカ、巫女と美琴(御坂END その2)」 だがそれは官能的な嬌声ではなかった。 「はあぁぁぁ、やっぱり全然成長してない。 なんでこんなに小っちゃいんだろ。私の胸。 アイツ……アイツもやっぱり胸の大きな女の子が好き……なのかな? アイツの周りには私より胸の大きな女がいっぱい居るし………… 私が勇気を出して声を掛けてんのにアイツったら何時だって私のことスルーするし、 何かにつれ子供扱いするし、 ひょっとして私の胸が小さいからかしら? どうして私の気持ちに気付かないのよ。アイツったら。 あぁぁぁもう!アイツが悪い!アイツがああだからついこっちも電撃浴びせちゃうのよ。 でも……もう少し私の胸が大きかったら……女としてみてくれたかな? はあぁ、早く大人になりたい」 美琴はシャワーを止めると上気した肌を転がり落ちる雫をバスタオルで丁寧に拭き取る。 そして秘密戦隊RAILARのバトルスーツに手足を通しファスナー引き上げた時、鏡に映る 自分と目が合ってしまった。すると美琴は鏡に顔を近づけ目の前の御坂美琴に話しかける。 「こら!なんでアンタはアイツの前だと素直になれないのよ!」 そう言われた鏡の中の御坂美琴は少し困ったような表情(かお)をしていた。 そんな御坂美琴に美琴はたたみ掛けるように語りかける。 「グズグズしてると他の娘(こ)にアイツを盗られちゃうよ。判ってる!? だからそんな顔しないでシャキッとなさい!チェンジ!ノーマルモード」 バトルスーツが変身時に発する眩い光がバスルームを一瞬満たすが、その光が治まると 鏡にはいつと同じ制服姿(ノーマルモード)の美琴が映っていた。 「そう、それで良いの!」 鏡の中の自分にそう言い部屋に戻った美琴はそこで室内に生じた違和感の正体に気付く。 (あれ?机の上に封筒…………なんて在ったっけ?シャワーに行く前には無かったはず。 ドアも窓も鍵はちゃんと掛かってるし……やっぱ、黒子だったのかな? ……って、果たし状?何なのこのアナクロな展開。どこのどいつよ?まったく! 五和!…………ってことはあの巨乳女!?) 取り出した果たし状に目を通すうち果たし状を持つ両手がワナワナと震え出す。 『果たし状 そろそろ貴女との決着を付けたく、ここに果たし合いを申し込みます。 本日17:30中央本線第3鉄橋の西側のたもとの河原にてお待ち致しております。 ただし来るも来ないも貴女の自由です。 怖じ気付いたのなら逃げても構いません。誰も責めたりしませんからご安心下さい。 五和』 (なんですって……ふざけんな!なんでこの美琴さんが逃げなきゃなんないのよ。 あの女とは一度話を付けないといけないと思ってたから好都合よ!) 御坂美琴は果たし状をグシャリの握りつぶすと時計に目をやる。 今から向かえば指定された時刻には間に合いそうだ。 握りつぶした果たし状をゴミ箱に投げ捨てると御坂美琴は夕暮れに染まる部屋を飛び出した。 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 土曜日16:48 第7学区とある学生寮の一室 「…………というわけで、変な誤解しちゃった五和ちゃんが常盤台のお嬢ちゃんにお茶目 にも果たし状を出しちゃったのよ。多分、大丈夫だとは思うんだけど……万一、五和が 暴走しちゃってお嬢ちゃんに怪我でもさせたら大変だから、是非とも上条殿に二人の仲 裁に入って欲しいわけなのよ」 「はああぁぁぁぁぁ!お前ら、ホントに一体何やってんだよ!! 今日もお前達キシサクマアのせいでこんな時刻にRAILARに招集されてタダでさえ気が 重いって言うのに」 ブツクサ文句を言う上条当麻だが、顔見知りである二人のことを放っておく訳にもいか ずもう一度大きな溜息をつくとヤレヤレと重い腰をあげた。 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 「ミサカ、巫女と美琴(御坂END その3)」 土曜日17:27 第7学区 中央本線第3鉄橋西の河原 指定された場所に到着した美琴は夕陽に赤く染まる河原を見渡し眉をひそめる。 「あれ?どこだろ…………って人っ子一人いないじゃん! 人を呼び出しといてその本人がまだ来てないなんて一体どういうことよ!!」 不自然なほど人の気配がしない河原に一人待ち惚け喰らったようで美琴は悪態をつく。 「失礼な!ちゃんとここにいますよ!」 「ッ!!」 突然背後から掛けられた声に美琴はビクリ!と肩を震わせる。振り返ると3メートル程 後に五和が立っていた。今日は秘密結社『キシサクマア』の女幹部『ブラックキャット』 のコスチュームではなく明るいトレーナーの上にタンクトップを重ね着し濃い色の細いパンツにサンダルという学園都市においてもごくありふれたファッションに身を包んでいる。 だからこそ右手に持つ3メートル超の海軍用船上槍(フリウリスピア)の異様さが際立つ。 「逃げずにここにやって来たことは素直に褒めて差し上げましょう」 「あんたこそ、この前小学生の目の前で無様に尻尾を巻いて逃げ出したのを憶えてないの」 「ご心配なく今日は私が貴女をギッタンギッタンに叩きのめして差し上げます。 さあ、掛かってらっしゃい!」 「言われなくたって!!」 美琴の前髪が青白く発光したかと思うと全身から這い出た数十匹の電気のヘビ達が牙を 剥き一気に五和に襲いかかる。 「甘い!」 フリウリスピアの一閃で電気のヘビたちを霧散させると、反撃とばかりに海軍用船上槍 の穂先を美琴に向け雷光のような刺突を繰りだす。 「チェンジ!バトルモード!!」 美琴のスーツから閃光が迸り莫大な光量が五和の視界を白く塗り潰す。スーツ変形時に 生じる閃光を利用して五和の目を眩ませた美琴は後方に飛び退きつつ再び雷撃の槍を五和 目掛けて撃ち放つ。そして閃光に白く塗り潰された河原の一角に激しい爆音が鳴り響き、 黒い爆煙が空高く舞い上がる。 五和がこの程度で決着がつく相手ではないことを知っている美琴は5メートル後方に着 地しても気を緩めることなく爆煙に隠れた五和の気配を素早く探る。その時、目の前の爆 煙を突き抜け一本の氷の槍が美琴めがけて飛来する。 「フン!」 反撃を予期していた美琴は風切り音を立てて飛来する氷の槍を左へのサイドステップで 難なく躱す。だがそれは囮であり本命は時間差を付けて美琴の予想着地点目掛けて放たれ ていた。ヒュンヒュン!と黒い爆煙をちりぢりに切り裂いて無数の氷の槍が雨霰となって 美琴めがけて降り注ぐ。 「ちぃっ!!」 そして美琴を取り巻く大気がフワリと揺らいだかと思うと地面に円を描くように黒い線 が現れる。その直径が2メートル程ある円周に沿って地面からブワッ!!と黒い影が吹き 上がると高速で旋回し始め美琴を取り囲むように黒い防御壁を構築する。降り注ぐ無数の 氷の槍は砂鉄の防壁に触れた瞬間その全てが粉々に砕け散っていった。そして砂鉄の防壁 を地上1メートルまで引き下げ美琴は薄くなった爆煙の向こうに立つ五和に話しかける。 「その程度の攻撃でお終いなの!?そんなんじゃ私に傷の一つだって付けらんないわよ」 しかし不敵な笑みを浮かべる五和は唐突にドバン!とフリウリスピアの刺突を繰り出す。 雷光の速度で繰り出した海軍用船上槍が砂鉄の防壁に衝突した瞬間、五和はその刃先に込 めた術式を一気に開放する。 ズバァッ!!と閃光が迸ると槍の穂先を起点として衝撃波が四方に奔り一瞬遅れて凄ま じい爆風が河原を吹き荒れる。美琴を防御する砂鉄の防壁でさえ地面から削り取られた大 量の土砂と共に高く舞い上げられてしまった。だが五和は立ちこめる土煙の中で攻撃態勢 のまま舌打ちする。 「ちっ!私としたことが踏み込みが甘かったみたいです!」 美琴は10メートルも後方に吹き飛ばされていたが無傷であった。正確には衝撃を和ら げるためにあえて自ら後方に跳躍したのだ。美琴に反撃の機会を与えないように五和はす ぐさま足下に水の魔術を施すと氷上を滑るような勢いで一気に間合いを詰め美琴目掛けて フリウリスピアを繰りだす。 ガキィィィィ!と夕暮れの河原に金斬り音が鳴り響く。 「ミサカ、巫女と美琴(御坂END その4)」 五和のフリウリスピアの一撃を受け止めたのは美琴の砂鉄の剣である。高速で振動する 砂鉄をフリウリスピアの穂先が盛大な火花を上げている。一瞬の隙を突き美琴はその穂先 を巻き込むように砂鉄の剣を螺旋状に回してその穂先を跳ね上げると鋭い足捌きで五和の 懐に踏み込む。そして砂鉄の剣を横薙ぎに振り抜くが、この一撃はフリウリスピアの柄で 防がれてしまう。鍔迫り合いをする美琴と五和の互いの顔は50センチも離れていない。 そんな中、突然五和が美琴に問い掛けた。 「貴女に問います!覚悟はありますか!?」 唐突な五和の問い掛けに美琴は素っ頓狂な声をあげてしまう。 「はあ?」 「当麻さんを狙う敵は貴方が想像もできないほど強大です。 それでもあなたは当麻さんと一緒に闘う覚悟がありますか?」 『闘う』。その単語に美琴の脳裏にあの時の上条の姿がフラッシュバックする。腕や頬に 付いた電極から伸び地面にまで垂れていたコード、体中に巻き付けられ所々に血が滲んだ 包帯、氷の海に浸かっていたかのように青ざめた顔、焦点の合っていない瞳。その姿を思 い出すだけで今でも美琴の胸は苦しいほど締め付けられる。 手術衣を纏っただけのアイツはまともに歩けもしないのにボロボロの身体をひきずって、 それでも何かに立ち向かおうとしていた。それまでは気付かなかったアイツの闘い。それが生きるか死ぬかの瀬戸際で繰り広げられる闘いだったことに気付いたのがあの日だ。 そして論理や理性や世間体や体裁すら粉々に打ち砕くほどのエネルギーが自分の内側に 眠っていて、超能力者(レベル5)としての『自分だけの現実(パーソナルリアリティー)』 でさえ易々と打ち砕くその圧倒的な感情の名前に気付いたのもあの日だ。 (もうあんな思いをするのは嫌ッ!)美琴は心の底からそう思う。 だからそんな当たり前のことを尋ねられたことが無性に腹が立つ。 「あるに決まってんでしょ!私の命に替えても当麻は護ってみせる!」 だが、雄叫びのような美琴の返事を聞いた五和の目に嘲笑するような光が浮かぶ。 「では、なおさら貴女には任せられません!」 「なっ!?なに屁理屈言って……」 「軽々しく『命』なんて言わないで下さい! もし貴女の犠牲で当麻さんが助かったとして、それを当麻さんが喜ぶとでも思っている のですか?当麻さんがそんな自分を許せるとでも本気で思ってるんですか?貴女は!」 「うっ!」 五和の指摘に美琴は言葉を詰まらせる。 そう。上条はいつもそうだった。 困ったときは相談しろって他人には言うくせに、それどころか頼んでもないのに勝手に 首突っ込んで来て死ぬしかなかった私と妹達を助けたくせに、自分の時は全てを自分一人 の中に背負い込んで、絶体絶命のピンチだろうが他人を巻き込まないよう助けを求めもし ないし弱音すら吐きやしない。他人を助けたせいで自分が不幸になってもへらへら笑って いるくせに、赤の他人だろうが目の前で人が不幸になるを見過ごすのが許せない。そう。 それが……私が大好きな上条当麻なのだ。 「もう一度尋ねます。 貴女は最後まで戦い抜く覚悟がありますか? どんな困難に直面しようと決して諦めないと約束できますか!? 必ず生き抜いて当麻さんに『お帰りなさい』って言ってあげると誓えますか? 貴女にその覚悟がないなら、今すぐ当麻さんの前から消え去りなさい!」 五和の言葉が美琴の胸にグサリ!と刺さる。 そして五和という少女が本当に上条を愛しているのだということを美琴は痛感する。 でも…………、納得いかない。納得できる訳がない。 そう。たとえ目の前の少女が上条を心の底から愛しているとしても納得できる訳ない。 だからこそ砂鉄の剣を握る手に力がこもる。 「私だって。 私だってあんた以上に『当麻を愛してる』んだからああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 もはや咆吼といってもよい叫び声をあげ美琴は鍔迫り合いする五和をはね飛ばし、全身 全霊を込めて砂鉄の剣を袈裟懸けに振り降ろし五和のフリウリスピアに叩き付ける。美琴 の渾身の一撃は後方のアックアが振るうメイスの一撃にも耐えたフリウリスピアを斬り裂 いた。穂先がゆっくりと落下していく様子を目を丸めて見つめる五和に美琴は勝利宣言の ように言い放つ。 「どう!?これで…………」と美琴が言いかけた瞬間、河原に甲高い警報が鳴り響く。 「ミサカ、巫女と美琴(御坂END その5)」 (えっ、何?)と戸惑う美琴であったが直ぐにその音源が自分の間近であることに気付く。 それが自分のスーツから発せられる警告音だと認識した時スーツから電子音声が流れる。 「スーツ装着者『御坂美琴』による『破滅の言葉』コード入力を確認。 機密保持規定3条2項に従い、本スーツは5秒後に自壊します。4……3……」 「ちょっ、ちょっと待って。違うの!今のはナシ!お願い、待って」 『破滅の言葉』によりスーツが分子単位にまで分解されることを思い出した美琴はスーツに向かって必死に弁解するもののスーツが美琴の言い訳に耳を貸すはずも無い。 「2……1……ゼロ」 無情にもカウントゼロで美琴のスーツから爆発的な閃光が迸る。瞼を閉じた五和ですら 網膜を焼かれそうな光量が周囲を白く塗り潰し、光の中でスーツが分子単位へと分解する。 閃光が収まり恐る恐る目を開けた五和の前にはなぜかタ○シ○ド仮面のコスプレをして いる上条当麻が立っていた。 「み、御坂さん!?」 素っ裸の美琴は上条のマントに正面から抱きかかえられるようにくるまれていたのだが、 予測不可能な事態の連続に正常な判断ができず、美琴は(なんでタ○シ○ド仮面?)など とピント外れの思考に囚われていた。しかし美琴の顔から10センチも離れていないタ○ シ○ド仮面の素顔が上条のものだと気付いた途端美琴は顔を真っ赤に染め叫び声を上げた。 「きゃあぁぁっ!」 上条の胸板に両掌を押し当て上条を押し離そうと両腕に力を込める美琴であったが上条 の両腕がそれを許さない。上条に抱きしめられているという事実に軽いパニック上体に陥 った美琴は思い切り力を込め30センチほど上条から身体を引き離すと上条を睨み付け文 句を言い放つ。 「こら!なんで離さないのよ。あんたは!!」 「ちょっと待て!落ち着け!御坂。お前今自分がどんな格好なのか判ってるのか?」 上条を睨み付けていた美琴はそう言われてようやく視線を下に向ける。視線が自分の両 腕を通過し上条との間に空いた30センチの隙間に落ちた時、視界の半分をスーツの赤色 ではなく肌色が占めていることに気付く。そして赤かった顔から一気に血の気が引いた。 美琴の瞳には鴇色の先端をもつ自分の慎ましやかな胸の二つの膨らみと、その僅かばか りの谷間の向こうにあるおへその窪みまで映っていた。そしてようやく気付く。スーツが 自壊し一糸纏わぬ姿となった自分を上条がマントで隠してくれていたことに。 あわてて両腕を引き戻し両掌で胸の膨らみを隠した美琴がハッと視線を上げると自分の胸元を見下ろしている上条に気付き、真っ青になっていた顔が再び真っ赤に染まる。 「み、見た?」 「えっ?あーっ、そのーっ、ゴメン」 美琴の瞳にジワッと涙が浮かぶと声をあげて泣き始めた。 「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁん!」 「スマン御坂、スマン。謝るから、だから、頼むから落ち着いてくれ!」 「うわあぁぁぁん!(こんな小っちゃいおっぱいを当麻に見られちゃった。もう死にたい)」 「スマン!つい見とれちまった。謝って済む問題じゃないけど、ゴメン。えーっと、何で もするから泣き止んでくれ」 「ひっ、ひっく(えっ?今見とれてって言った?)…………う……うん」 コクリと頷くと美琴は上条の肩口に顔を埋めるようにしなだれ掛かる。そして、上条の 背中に両手を回すとギュッと強く抱きしめる。今度は逆に美琴に抱き付かれた上条が狼狽 える番になった。 「み、……御坂!?」 「なによ!あんたが落ち付けって言うからこうしてんのよ!?」 「えっ!いや、俺達今抱き合っているんだけど大丈夫なのか!?」 「いいからこのまま…………もう少しだけ」 「ミサカ、巫女と美琴(御坂END その6)」 上条の胸板に押しつけた小さな胸にスーツ一枚隔てた上条の鼓動が伝わってくる。 「どうだ。そろそろ落ち着いたか!?」 「うん」 「さっきは本当にゴメン」 「こっちこそゴメン!助けて貰ったのに泣いちゃったりして」 「いや、それでもやっぱり俺が悪い…………でも…… なんで御坂のスーツは自壊したんだ?御坂の『破滅の言葉』って一体何だったんだ?」 そう言われて美琴は僅かに顔を伏せ身を固くする。ギュッ!と唇を噛み締めると意を決 して顔を上げる。真っ直ぐ上条の顔を見つめたまま心に溜まった思いのたけをぶつける。 「それは……私のスーツの『破滅の言葉』は……『当麻を愛してる』なの!! それに本当に私は当麻が好き!今まで黙ってたけどずっと前から当麻が好きだった!」 「そっか。ありがとな。 でもさ御坂は知ってるだろ。俺なんかと付き合ってるとろくなこと無いぞ」 「そんなことない。アンタがとっても危険なことに巻き込まれているのは判ってる。 でもね。私だって戦える。私にあなたの背中を護らせて欲しいの! ううん、そんなことじゃないの。 帰ってきた当麻に『お帰りなさい』をいうのは私でありたいの! 誰がなんと言おうとそれだけは誰にも譲れない。譲りたくないの!」 「そうか『お帰りなさい』……っか、なんか嬉しいな。その言葉。ありがとう。御坂」 「私は最高の笑顔でお帰りなさいって言ってあげる。 だから約束して、これからどんなことがあったって必ず私の所に帰ってくるって」 「ああ、約束だ」 そして上条は美琴を強く抱きしめた。 「ところでアンタのスーツの『破滅の言葉』は一体なんなのよ?」 「それはさ、俺の今の気持ちを表す言葉だよ。 まあ、ラストオーダーの奴もよく考えたもんだ。 (『俺って幸せだな』なんて言葉は)普段の俺なら絶対口にしない言葉だからさ」 「???」 「それに今俺が『破滅の言葉』を言ったら二人揃って素っ裸で抱き合うことになるぞ。 いや……それも一興かな?」 「なっ、なに馬鹿なこと言ってのよ!アンタは!」 「はははっ、冗談だよ。冗談」 「なにが可笑しいのよ。アン……コホン!とっ、と……当麻ったら……」 その呼び方にボッと頬を朱色に染める御坂美琴であるが上目づかいに見あげるその瞳は 真っ直ぐ上条の瞳を見つめていた。そして見つめ合う二人の顔を夕陽がさらに赤く赤く染 めあげていった。 「ミサカ、巫女と美琴(御坂END その7)」 「「でもこれからどうしよう?」」 「どうぞ!」 どうしようかと顔を見合わせている二人に声をかけたのは五和であった。 「これは私の着替えです。癪だけど私からの御坂さんへのプレゼントです。使って下さい」 「えっ……あ、ありがとう。五和さん」 「良いんですよ。別に気になさらなくても。 でも当麻さん。 これからも私のこと……天草式十字凄教の一員としてよろしくお願いしますね」 そして元気よくペコリとお辞儀するとクルリと当麻達に背を向けて歩き始めた。 「ありがとう。五和。それとゴメン!」 上条の言葉に五和は振り返らずに右手を挙げて応えた。否。振り返りたくても五和は振 り返ることができなかった。なぜならその頬を止めどなく流れ落ちる涙を上条に見られた くないから。 堤防を登り切るとそこに一人の男が立っていた。夕陽を背にした男は少しだぶついた服 を着てクワガタのように黒光りするツンツンした髪をしていた。五和は慌てて涙を袖でゴ シゴシ拭うと努めて明るくその人物の名前を口にした。 「建宮さん」 「ご苦労であった。五和」 「えへっ、私…………ふられちゃいました……………………」 「そうか…………」 気丈に振る舞おうとしていた五和だったがそこが限界だった。堪えきれなくなった感情 が堰を切って溢れ出す。 「ふっ、ふっ、ふえぇぇぇ─────ん」 五和は建宮に抱きつくと胸に顔を埋め大きな声を出して泣き続ける。 そんな五和の肩に優しく手を乗せて建宮斎字は静かに話しかける。 「五和、今は心ゆくまで泣けばよい。 でも心配するな。今のお前は正真正銘世界一良い女なのよ。 こんな良い女を世の男どもが放っておくはずがないのよな」 「うわあぁぁぁ───────────────ん」 夕陽が二人の姿を赤くそして優しく染め上げていた。 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 土曜日18:05 第7学区 中央本線第3鉄橋西の河原 「あ、あ、あんの女(あま)あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 河原に御坂美琴の咆吼が響き渡る。 「あのーっ、美琴さん、一体どうなさいました?」 「うっさい!アンタはあっち向いてなさい!」 御坂美琴は五和から受け取った服に着替えていた。 五和から渡された服はぴったり目のパンツと胸元が大きく開いたニット地の服である。 ただしその服は胸ものがダブついているというか、それよりは明らかに間違ったサイズを 無理して着ているという表現がよく似合う。 きっとDカップ以上のバストを持つ女性ならば胸の谷間を強調するその服のデザインは 街の男達の視線を胸元に釘付けにしただろう。しかし悲しいかな、御坂美琴はAカップ。 ダブついた胸元はセクシーさどころか滑稽さを醸し出していた。しかもパンツのウエスト が少しきつめだった事が御坂美琴に追い打ちをかける。 (あっ、あ、あの女、こんな服を使って私とのスペック(バスト)差を見せつけるなんて!) 「あのーっ、御坂さん!?」 「どうせ、私はAカップよ! でも2年後よ!2年後を見てなさい。あの女よりもっと良い女になってやるんだから! 当麻が私を選んだことを後悔させないぐらい、すっごくいい女になってやるんだから。 だから、アンタは期待して待ってなさい。イイ!」 「ああ。でもな、今でも美琴は俺には勿体ないぐらいのいい女だよ」 「とっ、当麻ァァ」 「でも、まあ。2年後に今よりもっといい女になるっていうなら期待して待ってるよ」 おしまい。
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1285.html
「紹介?」 上条が、疑問を口にする。 「はい。一人一人の名前、写真、性別、サイド…これをもとに、所属している組織や能力名、得意な魔術、個人の戦闘能力などなどを紹介させてもらいます」 「オイオイ。そりゃ、本人たちに了承は得てンのかァ?」 一方通行(アクセラレータ)が、まともな意見を述べる。 「いいえ。なので、この場で了承を得たいのですが…反論がある方は、ご自由にどうぞ」 そんな事を機械が言ってくるが、先程のことも含め、何かいえるはずはない。 「では、皆様の了承を得た、という方向で話を進めますが、よろしいでしょうか?」 なんかもうみんな疲れたような表情を浮かべる中、機械だけが淡々と喋っている。 「了承を得た、とみなしました。よって、個人の紹介に入らせてもらいます」 もう勝手にしてくれ、と全員の表情が語っていた。 「…以上で、主要人物の紹介を終わらせてもらいます」 突然部屋に現れた、巨大モニターで説明していた機械が、唐突にそんな事を言った。 今機械が言ったとおり、紹介したのは主要人物。上条や一方通行(アクセラレータ)、インデックスや美琴、神裂とかだ。 (自分も含まれているのか、上条にはよく分からないが)そんなポピュラーな人間を知らない者はいないらしく、上条にいたってはもう寝かけていた。 「それでは、次からは組織となっているものを紹介させてもらいます」 機械がそう言うと、次にモニターに写ったのは天草式の一同だった。 「天草式十字凄教の皆様です。魔術サイド所属、イギリス清教の必要悪の教会(ネセサリウス)の傘下にあります」 組織になると、主要人物の顔しか写さないらしい。 最初に神裂、次に建宮、最後に五和が写った後は、3人くらいまとめて写った写真がスクロールされていた。 「総員は50名程度。現在では神裂火織がリーダーを務めています。副リーダーとなるのは建宮斎字。そのほかの戦闘能力は、あまり差がないものと見ています。神裂火織がリーダーを務める前、副リーダーであった五和に関しては、通常戦闘要員のトップ、という扱いです」 組織図が今度はモニターに写った。簡単な上下関係を表しているものらしい。 「では次に、元アニェーゼ部隊の皆様です」 巡るましく変わっていくモニター。 それに写ったのは、三つ網のシスターだった。 「魔術サイド所属、以前はローマ清教傘下でしたが、『法の書』事件後はイギリス清教に入りました」 アニェーゼの写真が写し終わると、早くも集団写真が写されていく。 「リーダーとなるのは、アニぇーゼ=サンクティス。そのほかは役職が振られているだけです」 役職が振られている、という言葉を聞いた上条は、じゃあこの写真もそれが関係してるのか…?とか考える。 「総員は250名に上ります。戦闘方法は個人によって違いが見受けられます」 その言葉が終わるとともに、やはり写真も切り替えられる。 次に写ったのは、見慣れた少女。 「次は、組織、とはいえないのですが…」 唐突に、機械が口ごもる。 まぁ、仕方がないだろう。 馬鹿正直に、「クローンの皆様の紹介です」なんて言えないだろうから。 「…団体名のようなものも決まっておりません。通称、『妹達(シスターズ)』と呼ばれています」 無理矢理に話を進めていく機械。 そのモニターに写ったのは、最初は美琴。次に妹達(シスターズ)が集まっている写真が映し出される。 「科学サイドに所属。総員は1万弱。各自の能力は、異能力者(レベル2)、強能力者(レベル3)程度の電撃使い(エレクトロマスター)。『欠陥電気(レディオノイズ)』で通っています」 紹介されているはずの御坂妹の表情は、一つも変わっていない。 「リーダーのようなものも存在していません。変わり、『安全装置』としての役目を持ったものは1名います」 そう機械が言った後に映し出されたのは、笑顔満点な打ち止め(ラストオーダー)だった。通常時なら結構騒ぐだろうが、打ち止め(ラストオーダー)は寝ていた。 美琴が何か突っかかってくるか、と思っていた上条は、特に美琴がアクションを興さないのを見て少し驚く。 「…今更、何言ったって仕方ないでしょ」 上条の視線に気づいた美琴が、小声で言った。 「では次に、残った科学サイドの者を紹介させてもらいます」 無理矢理妹達(シスターズ)の話を終わらせた機械が言った。 「葛城妖夜。男性。長点上機学園2年、超能力者(レベル5)の第6位」 映し出されたのは、長点上機の制服を着て、以外にかしこまっている妖夜だった。 「能力は、学園都市内で3人しか所持していない『肉体変化(メタモルフォーゼ)』。自分の肉体を好きなように変化させる能力です。基盤(データ)があれば、原子から作り変えることも可能、といわれています」 「ハッ。そこまで大層な能力じゃねぇよ」 妖夜が、右手をひらひら振りながらいうが、やはり機械は無視して続ける。 「削板軍覇。男性。長点上機学園3年、超能力者(レベル5)の第7位」 と、次に映し出されたのは、妖夜と同じ制服を着ているが、きついのか第2ボタンまであけている軍覇だった。 「能力は、おそらく念動力関連であると思われる『念動砲弾(アタッククラッシュ)』。その存在はいまだ詳しくは解明できていません。そして、世界最大の『原石』が持つ能力でもあります」 「…原石?」 説明を適当に聞いていて、うつらうつらとしていた軍覇が唐突に言った。 「って?自分のことじゃねぇのかよ」 隣に座っている妖夜が、突っ込みを入れる。さっきの紹介だと妖夜のほうが年下のはずだが、おそらく年齢ではなく能力で上下関係が成立しているのだろう。 「…さっぱりだな」 自分のことを言っているとは思えないほど、あっさりという軍覇。 「原石については、あまり研究が進んでいないのでこの場での発言は控えさせてもらいます」 機械はそう言ってごまかしたが、上条は直感的に違うな、と感じた。 「そして次は…この場には居合わせておりませんが」 と、機械がそこまで言ったところで、 「この私が、自分のことを説明されているのにその場にいない、なんて状況を作るとお思いで?」 という声が聞こえた。 直後、 ドゴッ!と、 美琴が何かを殴り飛ばした音が響いた。 「…さ、さすがお姉様…わたしの『空間移動(テレポート)』を予想していたのですわね」 「…こんな公衆の場でも、あんたはあんたのまんまななのね…」 美琴が、ハァ、とため息をつきながら、立ち上がった反動で倒れた椅子を戻しながら席に座る。 「…白井か」 「御機嫌よう殿方さん。まさかとは思いますが、こんな公衆の場でもお姉様にちょっかいを出す、なんてことはしていませんわよね?」 美琴に殴られたのにもかかわらず、ダメージを感じさせない仕草で立ち上がりつつ言う黒子。 「申し訳ございません。昨日の戦闘にかかわった風紀委員(ジャッジメント)として、事情を話しておりました」 みなに頭を下げる黒子。こういうところはお嬢様って感じがするのにな…、と上条は思う。 「では、本人も来ましたので…」 「あ、ちょ、まつんだにゃー!この際この俺も登場させてもらうぜい!!」 「…まさか」 黒子が椅子に座ったのを見計らった機械が話を続けようとしたところで、妙な口調の男の声が部屋の外から響いた。それに上条は、頭を抱える。 「土御門元春様のご登場だにゃーッ!」 全く場の雰囲気を呼んでいない声が響き、『バーン!』という効果音つきで一人の男が部屋に入ってくる。 「…」 なぜか、全員がその男を冷たい視線で見つめる。 「…何故?何故にそんな視線?俺のことを知らない人はともかく、『グループ』の奴とか五和とか、そしてカミやんとかは少しは突っ込んでくれないと困るんですが?」 ヒーローの登場シーンのようなポーズを決めたまま、カチコチに固まって汗を流し始めた土御門が言うが、もちろん誰も突っ込んでくれない。 「…すみません僕が悪かったです…」 土御門がなぜか謝り、顔を思いっきり俯けたまま…アステカの魔術師の隣に向かう。 「あ、あれ?お前、何でそこなの?」 いい加減かわいそうになってきたので、上条がとりあえず土御門に言葉を投げる。 「…カミやん…やっぱりカミやんだけが俺を救ってくれるんだにゃー…」 涙を流しそうな表情で言う土御門。上条の質問には答えずに席についてしまった。 「そのことについては…多分、こいつが説明してくれる」 突然、それまでの口調と表情を切り替えて機械の方に言う土御門。 「土御門元春の紹介は後にさせてもらいます。まずは、白井黒子の紹介にさせてもらいます」 そう機械が言い、モニターには黒子の写真が写った。
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/451.html
天草式十字凄教のとある拠点 見た目高校生ぐらいの少女が、まるで赤ん坊のようにキョロキョロと辺りを見回す。 意識を取り戻したフルチューニングに、建宮が笑顔で話しかけた。 「まあ、混乱するのも無理は無いのよな。お前さんは誘拐されかかっていたんだぜ?」 「…誘拐?」 「はい。とある魔術結社によって、船で外国まで連れて行かれるところだったんです」 五和も笑顔で説明するが、フルチューニングは意味不明な事を聞いたように困り顔をした。 「『魔術結社』とやらはよく分かりませんが…ミサカは確か先方に売却されたはずでは?」 「え…」 「すでに代金も受け取っていたという情報も、インプットされています」 「様子を見る限り、あなたたちはその取引先相手ではないのですね。…むしろ誘拐犯は、この場合あなたたち…」 「ちょ、ちょっと待つのよな!」 平然として自分が売られたと語るフルチューニングに、建宮が慌てて詰めよった。 「お前さん、自分から売られたのかよ!?」 「いえ。ミサカを作った研究者、天井が売買契約を結んだという事ですが」 「…作った?どういう意味ですか?あなたは一体…?」 困惑気味に尋ねる五和に、フルチューニングは平然と答えた。 「ミサカは『量産型能力者計画』の試作型クローン、検体番号00000号です」 計画は凍結されているので、符丁(パス)の確認は要りませんね、とフルチューニングは呟いて話し続ける。 「『量産型能力者計画』のため、試作されたのがこのミサカです」 「ところが『量産型能力者計画』は実現不可能と判断され、ミサカが作られた後中止になりました」 「そのためそれを主導していた天井は金策に困り、廃棄されたこのミサカを売却した」 「だから相手先の指示に従え」 「という情報を、売却前に彼から直接インプットされています」 「ますます意味が分からんな」 難しい顔をして建宮が座り込んだ。 「つまり、その、お前さんは実験の為に作られたクローン…なのよな?」 「はい。ちなみにミサカの素体となったのは、レベル5の第3位『超電磁砲』御坂美琴です」 「なんでその人のクローンを作ったんですか?」 「レベル5を人工的に作り出し、量産するためです。それが計画の目的ですから」 「そりゃまたスゴい話なのよな」 「ですが、試作型のこのミサカが製造された直後、レベル5をクローンから作りだすのは不可能だと分かりました」 フルチューニングは淡々と話を続ける。 徐々に険しい顔をしていく五和には気づかなかった。 「責任者の天井は、あれこれ弄ってミサカをレベル5にしようとしましたが、結局能力の上昇はレベル4止まりでした」 「実験中止で借金だけが残った天井は、必要無くなったこのミサカを外部の人間に売ってお金にすることに…」 「そんなの、間違ってますよ!」 突然五和が怒って大声をあげたので、フルチューニングはキョトンとして話を止めた。 「例えあなたを作った人だからと言って、勝手に売り払っちゃうなんて酷いです!」 「五和、落ち着け」 「建宮さんは落ち着いていられるんですか!?」 五和の迫力に、思わず建宮が後ずさった。 「何故、あなたは怒っているのですか?」 「どうしてあなたは怒らないんですか!?」 質問を質問で返されて、フルチューニングは無言になった。 「良いですか、あなたはもう少しで非道な魔術結社に連れて行かれるところだったんですよ!?」 「あのままだったら、きっと体をバラバラにされたり、危険な魔術を掛けられたりしていたんです!」 「どうしてもっと自分の身を考えないんですか!?」 ハーハー、と息が荒い五和に、冷静にフルチューニングが答えた。 「ですが、ミサカはただのクローンです」 「!」 「しかもすでに存在意義を無くしている以上、売却されるのは仕方ありません」 「!…そんなこと、言わないで下さい!」 五和は目に涙を浮かべて、その場を走って後にした。 「やれやれ、こいつはどうにも厄介な話になりそうなのよな」 頭を抱える建宮に対し、今まで無言だった対馬が声をかけた。 「で、結局この子どうするの?」 「取りあえず、我らで保護するしかないのよ」 「?」 「いいかいお前さん」 建宮がフルチューニングにズイ、と顔を近づけた。 「まだ状況が全部分かった訳じゃないが、これだけはハッキリしている」 「我ら天草式十字凄教は、お前さんをあの連中に渡すつもりはないのよのな」 「ついでに言うと、その天井っていう大バカ者の所へ返す気も無い。そんな事をしたらまた売られちまうだろう」 「ですが、ミサカはクローン…」 フルチューニングの言葉を遮って、建宮が稲妻のように断言した。 「これはお前さんがクローンだなんだ、っていう話とは無関係なのよ!」 「意味が分かりませんが…」 「簡単な話よ。地獄へ行くお前さんを、みすみす見捨てるわけにはいかないっていう意味よな」 「何故ですか?」 「“理由なんてねえのよ”」 その真っ直ぐな意思に、フルチューニングは思わず目を見張る。 「我らは、昔からそうやってきた。その生き方を女教皇様が先頭に立って教えてくれた」 「人はどこまでも強く、優しくなれるとその身をもって示された」 「…だから、我らも救われぬ者に救いの手を差し伸べる」 建宮の語る言葉には、誇りと悲哀が込められていた。 そこに偽りは全く無い。 (こんな人は、初めて見ました) (理由もなしに、廃棄されたクローンを助けようとするなんて…) 初めて自分に向けられた『感情』に圧倒され、フルチューニングは返事が出来なかった。 そしてそれ故、建宮の言葉に隠された後悔の念までは感じ取ることは出来なかったのだ。 かつてその女教皇の居場所を、自分たちの未熟さゆえに失ったという懺悔の思いまでは。 「…ミサカは、どう判断していいか分かりません…」 「だって、廃棄されたクローンに居場所などないのですから…」 「お前さんは、五和…さっきの女の子の話を聞いていたのかよ?」 「えっと…」 建宮はフルチューニングの顔を両手でガシッと挟み込み、目を合わせた。 「俺もあいつと同じでな、そのクローンとやらに用は無いのよ」 「…」 「助けたいのは、クローンじゃなくてここにいるお前さんという1人の人間なのよな」 「!」 「安心しろ。ここに居場所を作ってやる」 「あ、え…」 混乱するフルチューニングに、建宮はニッ、と歯を見せて笑いかけた。 「とりあえず、お前さんをみんなに紹介しないとな」 「…紹、介?」 「あ。大事な事を忘れていたのよな」 そう言うと、建宮はフルチューニングに手を差し出した。 「俺の名前は建宮斎字って言うのよ。一応この天草式十字凄教の教皇代理なのよな」 そして返事も聞かずに、他のメンバーのいる場所に手を引っ張って連れていく。 当然ながら、フルチューニングが一度にこんなに大勢の人間から自己紹介をされたのは初めてだった。 先ほど真剣に怒って泣いてくれた「五和」、 説明を受けるなり、なんてひどい話だ!と歯噛みした初老の「諫早」、 よしよし、と頭を撫でてくれた金髪女性の「対馬」、 既に結婚していて、指輪を自慢げに見せてくる「野母崎」、 大柄な割にとても優しげな笑顔の「牛深」、 小柄な割に生意気そうな少年の「香焼」、 50人以上の紹介が終わるころには、フルチューニングの体調もすっかり回復していた。 そして段々とフルチューニングがその空気に慣れてきたとき、建宮が突然あ!と声を上げた。 「お前さんの名前を、教えてもらわなくちゃいけないのを忘れてた」 「ミサカの名前は、検体番号00000号ですが?」 と言っても、結局ミサカ以外にクローンは作られませんでしたが。という呟きと一緒に当たり前のように返答。 ところが、それを聞いて全員が渋い顔をした。 「そんな長ったらしく呼べるわけないのよな」 「じゃあ、新しく名前を考えましょうか」 「対馬先輩は、センスがないすから辞めた方が…」 「如何にも。ここは俺が…」 「待て待て。貴様らよりもこのわしが…」 途端に賑やかになる天草式のメンバーたち。 「皆さん、私に任せてください!」 その場を静まらせたのは、握りこぶしの五和だった。 「検体番号00000号なら、ゼロちゃんでどうでしょうか!」 全員が「えー、それは無いわー」という感じで黙り、一気にシーンとなった。 フルチューニングも、どう反応していいか分からずにオロオロする。 「五和、ゼロじゃ外国人みたいだろう。――レイ、で良いと思うのよな」 その空気を戻そうとして、建宮がフルチューニングの頭をポンポン、と叩きながら宣言。 (ゼロよりはマシでしょうか) 「分かりました。これからレイでお願いします」 「おう、ヨロシクなのよレイ」 名前が決まって再び場が盛り上がり、一気にフルチューニングの歓迎パーティーへとなだれ込むことに。 パーティー用のジュースやお菓子をみんなが用意している間に、フルチューニングはそっと建宮に近づいた。 「…ところで、ミサ…レイは疑問に思っていたのですが」 「疑問?なんなのよ?」 「天草式十字凄教とは、一体何のグループなのですか?」 建宮はなんだそんなことか、と笑って説明。 「ああ、我らは十字教宗教団体の魔術結社なのよ」 「なるほど」 あっさり頷こうとして、フルチューニングはピシリと固まった。 「…十字教?魔術結社?」 「おうよ」 「…良く分かりました。どうやら新興宗教の信徒たちが、このミサ…レイを生贄にしようとしているのですね?」 「何でそうなる!?」 「今時、魔術なんて堂々と言い張るとはナンセンスです」 ジリジリと後ずさりし、逃げようとするフルチューニング。 結局、天草式十字凄教の説明はそれから3時間以上もかかる事になった。 ここでちょっとフルチューニングについて説明を 外見は番外個体(ミサカワースト)の目つきが普通バージョンを想像してください 他の妹達と目的が違い、レベル5を目指して作成されたため、無理な改造が施されてレベル4になっています 『絶対能力進化計画』の実行前に廃棄されたので、他の妹達や一方通行の存在を知りません ミサカネットワークについても同様です(接続も不可能ですが、その理由はそのうち本編で)