約 488 件
https://w.atwiki.jp/gods/pages/65455.html
タケノミヤユキヒトシンノウ(建宮敬仁親王) ユキヒトシンノウ(3)の別名。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1112.html
所変わって友愛高校、翔太の能力制御の訓練だが『二体の人形を一体ずつ焼く』という課題を一度もクリアー出来ていない状況だった。 訓練を開始してはや一時間、十回のチャレンジをして成功ゼロという現実に落ち込んでいる翔太を結標が慰めている所だ。 「木山先生?翔太ちゃん落ち込んじゃってますから、少し休憩したほうがいいんじゃないですかー?」 甥っ子を心配した小萌先生の言葉で、月夜も少し息を切らしながら提案してみる。 「はぁ、はぁ、私も賛成です。・・・彼の炎を消すのは結構集中力が要りますから・・・」 「うむ・・・、そうだな少し休憩にするか。ハァ、それにしても・・・暑い!」 休憩宣言の後の暑い宣言で服を脱ぎだす『脱ぎ女』こと木山先生。 「だからって脱がないでください!ここ学校の校庭ですから!」 小萌がそう言ったも、木山は服を脱ごうとするのを止めなかった。 「仕方ないですね。じゃあ月夜ちゃん、いつもどおり凍らせてください。」 「分かったよ。とりゃ!!」 小萌が月夜に木山を凍らせるように言うと、月夜は木山を凍らせた。 ちなみに、月夜が木山を凍らせるのはいつものことになっている。 「あの、木山先生を凍らせて良かったのですか?」 「翔太ちゃん、別にいつもの事ですから気にしないでいいですよ。」 「「いつもの事なの!?」」 転校してきた月結は木山を凍らせるのがいつものことだという事に驚いてた。 「とりあえず二人も休憩しといてください。特に翔太ちゃんはまだこの後もやるんですから。」 「分かりました。」 というと月結は木の下で日陰になっているベンチに座った。 「ふう。あ、そうだ。淡希ちゃん♪」 「何?月夜」 「ただ特訓をみてるだけで飽きないのかなーと思って」 「別に飽きないわよ。翔太のがんばり見てるのは結構楽しいからね♪」 「そっか、それならいいんだけど♪」 10分後 木山先生を氷から出した後、特訓を再開した。 さらに一時間が経過したのだが特訓の成果も出ず、またしても翔太は落ち込みだし、他の皆も疲れが顔に表れてきた。 そんな中またしても木山先生の暑い宣言。 「だから、脱がないでください!!」 木山のいつもの行動を目の前で行われた為、小萌が叱咤したのだ。その返答は 「いや、まわりが炎で熱せられて暑いじゃないか」 「たしかに暑くなりましたが、だからってここで脱いで涼もうとしないで下さい。生徒の目があるんですから」 その生徒の目のうち翔太は落ち込んでいたため、結漂は翔太を慰めていたため気づいていない。 真夜は木山の暑い宣言直後に赤音によって目隠しされている。 つまり、今ストリップを見ているのは月夜と学校に残っていた僅かな生徒たちと先生たちだった。 「つ、月夜ちゃん、木山先生を凍らせて!早く!」 「む、無理・・・赤音ちゃん、疲れて力出せなーい」 「えーじゃあどうするのこの状況?」 「白雪さんがダメなら、赤音さんが収めるしかないと思うんだけど」 「あ、そっか♪じゃあ二人とも耳栓してー」 「「オッケー」」 「スゥゥゥゥゥl、ワッ!!」 二人は赤音に合図を送り、それを確認した赤音が木山先生めがけて力を行使した。のだが・・・ 耳栓をするように言われた二人と赤音以外にいた学校の生徒&先生たちが気絶してしまった。 「あ、あれ?」 「あ、赤音ちゃん・・・何気に力あがってなーい?」 「あーこれじゃあ、今日の特訓続行不可能だね・・・」 「でも、この状況どうするの?」 「わたしたち以外全員気絶したとなると、真夜くん一人じゃどうしようもないよね」 「うん、さすがに無理」 「うーん。あっそうだ。今、元春が黄泉川先生と一緒にいるはずだから連絡すればいいんだよ」 「「あ、そっか」」 その頃、『打ち止め見守り隊』と言うと、 「キスは一日何回しますか!!」 「そのシロモヤシは美咲華様のなんですの!!」 「出会いはどんな感じ何ですか!!」 「同居してますか!!」 「親公認ですか!!」 「どんな感じに恋人まで進みましたか!!」 質問攻めだった。 「待て待て!!お兄さん達が困ってるだろう?今黒板に書いてやるから、大人しく手を上げて発言しろ」 「「「「「「「「「「「「はーい!!!!!!」」」」」」」」」」」」 さすが井ノ原家、すぐに子供たちを静める事が出来たのだった。 そこにちょうど土御門に月夜からの電話がかかってきた、間の悪いことに。 「月夜、なんつータイミングの悪い時に電話掛けるんだにゃー……」 『え? どうかしたの? 黄泉川先生に代わって』 「あーっ! チンピラ兄ちゃんが電話してるー。もしかしてくみちょーさんからの電話ー?」 「絶対そうだよ! きっとてっぽー玉になれって言われたんだよ! ところでてっぽー玉ってどうゆう人なんだろ?」 見た目から完全なチンピラ扱いな土御門、子供達の悪意ゼロの質問に心底困り果てることに。 月夜は月夜で状況がさっぱりなので慌てながらも土御門に尋ねる。 『え? え? どうゆう状況なの? 何だか子供が一杯いるよね? ……まさか』 「月夜は考えすぎですたい! 決して浮気とかじゃないから信用するにゃー! 俺には月夜しか居ないんだぜい♪」 『もうっ、元春ったら♪』 「あれれー? もしかしてチンピラ兄ちゃん、彼女と電話してるのー? ていうか彼女いたんだねー」 「バーカ、ちがうって。あれは見栄を張ってるだけだよ。あんなサングラスに金髪のいかにもチンピラな兄ちゃんに彼女なんて居るわけないって」 せっかくのいい雰囲気をぶち壊された土御門、さすがに我慢の限界を超えてしまったが、 「こんのクソガキ共、大人しくしてりゃつけ上がりやがって……。俺にだって恋人だって居るんだよ! いい加減にしねぇウゴッ!!」 「いい加減にするのはお前の方だ。子供達相手にいちいちムキなるな、まったく。ホラ、お前達もこのお兄ちゃんに謝るんだぞ。いくら何でも言い過ぎだ」 井ノ原母のヤクザキックを脇腹にモロに喰らい、その場に蹲って動けなくなってしまう。 足癖最悪の井ノ原母だが、子供達にも非があることは理解しているので謝罪するように促す。 子供達が素直に言うことを聞き、土御門に「ごめんなさい」をしたその光景に真昼と黄泉川以外の『打ち止め初登校見守り隊』の面々は驚くのだった。 「しかしまだ彼女が居ることに納得してないようだな……よし、ちょっと電話借りるぞ。もしもし、お前、この電話の男の恋人か?」 『……え? お、女の人? あ、あなた、元春の一体何なんですか?』 「あー、こいつは元春って言うのか。心配するな、私は元春とは会ったばかり何の関係も無い。私は井ノ原朝陽(あさひ)、41歳の小学校教師だ」 「い、井ノ原? えっと、もしかして井ノ原くんや井ノ原さんのお母さんだったりします?」 井ノ原母こと井ノ原朝陽(以降は朝陽)は土御門に恋人が居ることに納得していない生徒達に気付く。 朝陽は子供達のため、ひいては土御門の名誉の為に行動を起こす。 「なんだ、あんたも私の息子と娘を知ってるのか。まあ、それは後で聞くとして悪いがウチの学校に来てくれ。元春の名誉を守る為に」 『元春の名誉、ですか? それは別に構いませんがあの、黄泉川先生にこちらに来てもらうようにお願いしたいんですけど……』 「黄泉川? 何だかダメっぽいな。さっきから美咲華に夢中でそれ所じゃないらしい。私の学校は真夜でも捕まえて聞くといい、じゃあ待ってるぞ」 そうして朝陽は一方的に電話を切ると、脇腹の痛みから回復した土御門に携帯を返した。 「みんなー、いいお知らせがあるぞー♪ 今からこの元春の恋人も来てくれることになったぞー♪」 「ちょ、そんな横暴、人の許可なアダッ!!」 「後でメシ代くらいは払ってやることを前向きに考えといてやる、それで我慢しろ。それとも何か? お前はあの子供達の楽しそうな笑顔を曇らせたいのか?」 抗議しようとした土御門を子供達に見えないように足を思いっきり踏みつけた後で、土御門の説得を始めた朝陽。 結局、土御門は朝陽の頼みを了承、子供達の特別授業の対象、しかも大トリを勤める羽目に。 「井ノ原さん……貴女たち姉弟ってとんでもないご両親に育てられたのね。私も打ち止めをあんな風に育てた方がいいのかしら?」 「やー、それは止めた方がいいっすよ、芳川先生。あの母ちゃんの教育方法で非行に走らないのって俺と真夜しかいませんから」 一方、電話を切られた月夜は少しボーっとした後で土御門の名誉を守る為に彼の居る小学校の場所を真夜に尋ねる。 「黄泉川先生だけど来られないって井ノ原くんのお母さんが言ってたよ。それと私もその小学校に行くから井ノ原くん、場所教えて」 「な、何で母さんの小学校……まあ、後で母さんに聞けばいっか」 (真夜君と真昼ちゃんの事情をあまり詮索しない大らか過ぎる性格って絶対おばさま譲りだよね……。私達の付き合いも気にせず大歓迎だったし) 真夜が月夜に事情を聞かずに朝陽が勤める小学校の場所を教えてるのを見て赤音は思った、双子の大らかな部分は母親譲りだと。 小学校の場所を教えてもらった月夜は雪の翼を展開、宙へと浮かぶと針路を取り始める。 「じゃあ私、行くね。元春の名誉が掛かってるみたいだから。後のことは二人に任せても大丈夫?」 「うん、もしかしたら助っ人を頼めるかもしれないから当たってみる。白雪さんは何も気にしなくていいから」 「ま~、真夜君がこう言ってることだし行ってらっしゃい♪」 「ありがと♪ いつかちゃんとお礼するから」 月夜は真夜と赤音に一礼をした後で雪の翼をはためかせ、土御門の居る小学校へと向かうのだった。 意気揚々と月夜を送り出した赤音だったが、二人で気絶してる生徒をどうにかすることに頭を悩ませ始める。 「ところでどうするの? 私と真夜君だけでこの惨状を片付けるの? いくら真夜君でも一人じゃ無理があると思うよ、私」 「うん、俺だってキツイって分かってるよ。だから助っ人を頼むんだ。今日は始業式だけど部活もあるし、食堂は開いてるはずだよ」 「食堂? あ~、建宮さんね。ちょーっと気は引けるけどこの際ワガママ言ってる場合じゃないもんね」 (赤音さんも真昼さんも建宮のおっさんのこと、あまり良く思ってないけどどうしてなんだろう? 気のいいおっさんなのに) ポリアモリーな関係になったばかりの頃、建宮は彼らのことを悪意は無いが冷やかしまくっていた。 真夜は気にしていなかったが、真昼と赤音はそんな建宮に好印象は持てず、冷やかされなくなった今でもちょっと苦手だったりするのだ。 早速建宮の所へ向かおうとしたが、そこに意外すぎる二人組が校舎から現れる。 「あれ? 姫神さんと闇咲先生? どうして校舎から? 無事だったのは良かったんですけど」 「なに、今まで生徒指導室で姫神に色々と相談されててね、ようやく解放された所だ。ところでこの惨状はどうゆうことだ?」 「これは。皆を華麗に助けて。私が一躍。スターになるチャンス?」 「姫神さん、私が起こした不祥事でスターになろうとしないでお願い」 現れた闇咲と姫神に今の状況を説明した真夜、ついでに建宮が居るかどうかも闇咲に尋ねた。 その結果、建宮が食堂に居ることを確認した真夜は建宮に助っ人要請をしに食堂へと向かった後で、 「私も手伝おう。君達、それに建宮だけでは追いつきそうにないだろうからね」 「もちろん私も。安心して。下心はこれっぽっちも無いから」 「二人とも、ありがとうございます!」 闇咲と姫神の二人も気絶した生徒と教師の介抱を始める赤音であった。 そしてこの二人の協力、更には真夜と建宮が合流することで介抱は加速度的にペースを上げることになる。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/287.html
「何ですか建宮さん?」 『もしも、もしもなのよね!!上条当麻に似合うこっ恥ずかしいコスプレって何なのよね!?』 「上条さんに似合うコスプレ?そうですね…♂∴∞$§@*#%♀>◆□◎※(その時までのお楽しみ!) 何てどうでしょう?って言うか何でそんなこと聞くんですか?」 『おお!!成る程!!さすが五和なのよね!!』 「一体どういう意味ですか?って切れちゃいました…」 「はまづら、またういはるからメールがきた。」 「何だって?」 「『ドレスと着物どっちがいいですか?』だって、ちなみにバニーは選択肢にない。」 「ん~着物が似合うんじゃないか?」 ちなみに浜面は郭の事を思い出した。 「じゃあ着物って送っておこう。」 滝壺白無垢に決定♪ 昼ごろ。 学園都市の外へと通じる出口で。 「「「「「「「「「「何であんたらがここにいる!?」」」」」」」」」」 10人=5バカップルは偶然同じゲートから同じタイミングで外に出ようとしていた。 「「「「「「「「「「帰省あとパーティーにお呼ばれ。」」」」」」」」」」」 「あン?テメエラもかよォ。うちらにはこんな感じのメールだけどよォ。あの初春ってやつなンで知ってたンだァ??」 「にゃにゃ?差出人内容ともうちらとおんなじだぜい。」 「こっちもだ。」 「…って事は…全員同じパーティーに出席ですの??」 「そうなるわね。」 「はまづら、そういえば何でうちらも呼ばれたんだろ?」 「なんでだろうなあ…絹旗あたりが原因じゃね?」 「ったくよォ。クリスマスまで同じ所かよォ。」 「まあまあ。なんか面白そうだしいいんじゃないでせうか。」 そんな会話をしつつ彼らは外へ出る。 「そういや時間までだいぶあンぞォ。俺はこのガキが『東京ってとこ行きたい』ってからちょいと行って来るンだけどよォ。テメエラはどォすンだァ??」 「「「「「「「「東京ねえ…」」」」」」」」 ちなみに上条と美琴の実家は神奈川県である。 「「「「行ってみたい!!」」」」 と言ったのは女性陣で理由は簡単、おしゃれな服ゲットである。 「「「賛成!!」」」 と言ったのは上条以外の男性陣である。理由はもちろん秋葉原!! 「上条さん的には不幸な予感がしますが…OK!!」 ちなみにこの不幸な予感は観光中のとある団体に会うことになる。 「「「「「「「「「「じゃあレッツゴー!!」」」」」」」」」」 その頃とある二人は… 「一方通行め~!!トイレ行ってくるって言ったと思ったら先行ってるって素っ気ないメールがきたじゃんよ!!」 「外は警備委員の権限使えないからパーティーで落ち合うことになるわね。」 置いてかれた。 「あっ、みなさんからの返事が来ました」 「それでそれで? 結果は?」 「慌てないで下さい佐天さん。今はおかわりを貰うのが先ですから。美鈴さんおかわりお願いします」 パーティー前の腹ごしらえをしていた主催者一同、そこに初春が送ったメールの返事が返って来た。 すぐに結果を言うかと思われたが、お腹がとても空いていた初春は美鈴にご飯のおかわりをねだった。 その食べっぷりに料理を作った美鈴、詩菜、神裂は感心し、それに釣られるように佐天、絹旗もおかわりを求める。 「いやー、それにしてもいい食べっぷりねー♪ 作る甲斐があるってものだわ」 「あらあら~、美鈴さん的には新しい娘を持った気分なのかしら~」 「あ、それいいわね。じゃあ当麻君と美琴ちゃんに『新しい妹が出来ました』ってメール送らないと♪」 「「「「ええええええええええっ!!!!」」」」 幸いなことに食べ物を口に含んでいなかったので惨事は免れたが、美鈴の行動に大いに驚いた3人+神裂。 慌てて取り消しを求めようとしたが、主犯の母親達だけでなく父親達も嬉しそうにしているので諦めることにした。 「ところでさっきのメールの件なんだが結果を教えてくれないか?」 「は、はい! 御坂さん、白雪さん、アホ毛ちゃんがウエディングドレス。白井さん、滝壺さんが白無垢です」 「ウエディングドレス派のパートナーにはタキシード、白無垢派のパートナーには紋付羽織袴でいいんだね? 初春さん」 「はい、よろしくお願いします旅掛さん」 勘のいい旅掛は男性陣に着せる衣装のことにすでに気付いており、すぐさまどこかに電話をかけ始めた。 「じゃあみんなこの辺でお昼は終わり! さあいよいよ忙しくなるから頑張るわよー」 「「「「「「おーーーーっ!」」」」」」 「ところで建宮君はどこだい? 旅掛も電話に行ってしまって男手は私一人なんだが」 「あ、私が見てきます。絹旗さんは建宮さんを連れて来るまで刀夜さんを手伝って下さい」 旅掛が電話のために席を外してる為、男は刀夜一人になってしまったので新居に到着してない建宮を呼びに行こうとした初春。 しかしそれを佐天、絹旗が真剣な表情で止めに入る。 「ダメだって! 建宮さんに一人で会いに行ったら初春が汚されちゃうよ!」 「そうです! あの浜面クラスの超キモいおっさんを呼びに行くなら私がボディーガードになります!」 「ダメですよ二人とも。二人にはパーティーのゲームを考える役目があります。初春のことは私に任せて下さい」 佐天、絹旗の代わりに初春のボディーガードを買って出た神裂は、美鈴と詩菜に説明をした後で初春と共に建宮を呼びに行った。 取り残された佐天、絹旗は神裂に軽いやきもちを焼きつつも、自分達の担当のゲームを考える為に、 「よーっし! いいゲームを考えるには新居探検が一番! 行こう絹旗♪」 「超了解です佐天さん! それではパパさん一号にママさんズ、今から新居超探検に行って来ます!」 上琴の新居探索に乗り出した二人、特に絹旗は上琴の両親をそれぞれパパとママと呼ぶほどノリノリに。 刀夜は絹旗のはしゃぎように自分の手伝いのことは何も言えなかったものの、その表情には柔らかな笑みが浮かんでいた。 ちょうどその頃、美鈴からのメールを貰った上琴の反応は…… 「「はいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」」 「何だよォ!!電車の中では静かに知ろって親に言われなかったのかァ!!」 そんなことお構い無しに 「美鈴さん妊娠してたのか…」 その言葉を聞いた8人は 「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」」」」 大変な勘違いをしていた…。 「そうなると…産着でも買ってあげなきゃなんないわね…」 話の流れとは恐ろしいもので 『美鈴に子供ができた』 は完全に事実として認識されてしまっていた。 「う~ん、そのあたりよくわかんないからさ、美琴とか白雪あたりで頼むわ。」 「にゃー。おっカミやんそろそろ駅に着くぜい。」 「ヤッホー!!着いたで着いたでー」 そこは・・・・・・・・・・・
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/475.html
第7学区のとある病院 とある病室 その病室にベッドは存在しない。 代わりに、巨大な培養器が部屋の中央で稼働している。 その中で死んだように眠るフルチューニングを、シェリーが無言で見つめていた。 「……」 やがて培養器の中のフルチューニングが、ゆっくりと目を開けた。 「やっと起きたか。この装置やら何やらは良く分からないけど、私の声は聞こえてるのよね?」 「…?」 自分の状況すら把握できないフルチューニングは混乱するが、とりあえずシェリーの声は聞こえるので頷いた。 その頷きを見てとると、シェリーはゆっくりと説明を始めた。 ――フルチューニングの置かれた状況と、これからの事を。 第7学区のとある病院 待合室 「ハッキリ言おう。もうあの子に能力を使わせてはいけないね」 カエル顔の医者の言葉に、建宮は呼吸すら出来なくなる。 あの時海辺で気絶した建宮は、シェリーと一緒にこの学園都市まで連れてこられていた。 そしてようやく意識を取り戻した時には、すでにフルチューニングが培養器で治療中だったのだ。 だから慌ててフルチューニングの容体を確認すると、突然こんな事を言われた。 「どういう意味…なのよな?」 建宮は混乱するばかりである。 だが、そんな建宮にカエル顔の医者は冷静に説明した。 「あの子が試作型クローンだと言うのはもう知っているね?」 「あ、ああ。…本人から聞いた」 「その製造目的は、人工的にレベル5と呼ばれる超能力者を作り出すことだ」 「……」 「ところが、試作されたあの子は精々レベル3程度の能力しか持っていなかった」 「……」 「どうにか能力を強化しようとして、研究者はあの子に能力補佐用の部品をあちこちに取り付けたらしい」 「……クッ」 「その甲斐あって、あの子の能力はレベル4まで上昇…」 「が、あまりに不自然な強化は当然あの子の体をズタズタにした」 「……そんな、ことが…!」 「あの子には、検体番号00000号というナンバー以外にも、『フルチューニング』というコードネームが存在している」 「文字通り、『フルチューニング(限界まで改造)』されたという意味を持つ、悪趣味な名前がね」 カエル顔の医者の言葉に、建宮はギリギリと歯を食いしばる。 「そんな綱渡りをしていたあの子から、強引に部品を奪ったらどうなるか予測が付くだろう?」 「…ギリギリ保っていたバランスを大きく崩し、機能停止するのは時間の問題だ」 「しかも、その製造者である科学者は行方不明だ」 「結論を言えば、これ以上能力を使うならあの子は後3日も生きられない」 「…!」 「このまま大人しく培養器で調整を続けるなら、半年は持たせられる」 「半年!?」 次々に語られる衝撃的な言葉に、遂に建宮はカエル顔の医者へ掴みかかった。 「レイの自由を奪っても、それでも半年後には死ぬって言う事か!?」 「そうだ」 「……レイ…」 建宮の全身から力が抜けて、その場にへなへなと座り込む。 「話は終わっていないよ。何のために僕ら医者がいると思っているんだい?」 その言葉に、建宮が思わず上を向いた。 「その半年以内に、必ず延命方法を見つけ出してみせる」 「あの子は僕の患者だ。見捨てはしない」 その言葉は希望と決意に満ちていた。 ――あるいは。 このままフルチューニングが半年間調整を受けたのなら。 もしかしたら彼女は、カエル顔の医者の手で完璧に治療を施されて延命できたかもしれない。 だが、そうはならなかった。 第7学区のとある病院 とある病室 建宮が受けた説明と全く同じ事を、フルチューニングはシェリーから説明された。 「…つまり、今後レイはみんなと一緒に過ごす事は出来ないのですか?」 「医者の話だと、大体半年はな。…当然魔術の使用も禁止って事になるわね」 「そうですか」 「…オイ、何で“笑って”るんだよ?」 シェリーが訝しげに疑問を口にする。 それに対し、フルチューニングは笑みを浮かべたまま答えた。 「初めて師匠に会った時にも言いましたが、レイは元々実験用のクローンです」 「そもそも存在しないはずのこの命を、惜しいと思った事は一度もありません」 「それなのに、たった半年我慢すればレイは生きてまだみんなの役に立てる」 「これほど嬉しい事はありません」 その言葉に、シェリーは目を丸くした。 それから自分の頭をガシガシと掻きむしり…やがてフッと吹き出した。 「妙なところでポジティブだな、この馬鹿」 「ムッ…何故レイは馬鹿にされたのですか?」 あーあー、もう良い。とシェリーは手を振って一方的に話を終わらせた。 「とりあえず、私は英国へ戻る。いつまでも学園都市にはいられないしね」 「そうですか」 「また半年後に、魔術の講義はしてやるよ」 「よろしくお願いします…あ」 そこでフルチューニングは、ふと気付いたお願いを口にする。 「でも師匠の使う術式の、理論体系ぐらいは半年の間に覚えきりたいので、教本だけはください」 「意外なところでちゃっかりしてるのね」 かつてシェリーが使っていた、もうボロボロのカバラ魔術の理論書だけは部屋に置いて行ってもらう事にした。 こうして、“2人”の魔術師は互いに分かれた。 シェリーが退室し完全に無音になった部屋で、フルチューニングは1人で笑う。 ただしその笑みは、今まで彼女が浮かべた笑みとは全く異なるものだった。 (…嘘と言うのは、思ったよりも簡単なのですね) (ごめんなさい、師匠) (レイの命を惜しいと思った事は、たったの一度もありません) (…だからこそ、役立たずのまま半年も待つ事は我慢できそうにないんです) (いざとなれば、いつでも戦えるようにしなければ…!) (あのローマ正教が、これで引き下がるとは思えませんから) その通りだった。 目まぐるしく進む事態は、フルチューニングを再び戦場へと駆り立てる。 この決意のわずか2日後、9月30日。 ローマ正教の最暗部『神の右席』の1人、前方のヴェントが学園都市へ侵入。 全面的な攻撃を開始することになる。 9月29日、第7学区のとある病院 とある病室 その前方のヴェントが来襲する日の前日。 培養器で調整されながらも魔術理論を覚えていたフルチューニングに、珍しい人物がお見舞いにやってくる。 シェリー以外では建宮がお見舞いに来ただけであったので、フルチューニングは驚いた。 「あー、ようやく会えたねーってミサカはミサカは感動して走り寄ってみたり!」 「病院で走るンじゃねェよ、クソガキ」 「あなたたちは…!」 いや、そうでなくてもフルチューニングが絶句するのは仕方のない事かもしれない。 なぜなら、そこに現れた見舞客は――。 元気いっぱいに培養器に飛びついた打ち止めと、それを煩わしそうに注意する一方通行の2人だったからだ。 第7学区のとある病院 とある病室 目の前で騒ぐ打ち止めに、フルチューニングはため息交じりに声をかけた。 「…初めまして、ですね」 「そうだねー!ってミサカはミサカは初めて会ったあなたに手を振ってみる!」 「……」 会話終了。 フルチューニングは打ち止めをマジマジと見つめなおした。 (あの時、教会で私に話しかけてきたのは間違いなくこの子でしょうが…) そもそも同じタイプのクローンが量産されたはずなのに、何故この子は他の『妹達』より幼いのだろう。 疑問を口にすると、一方通行が説明してくれた。 曰く、打ち止めは『妹達』の上位個体である。 研究者が反乱防止用に特別に造り、いざという時にはミサカネットワークを通じて他のクローン全てを掌握する事が出来る…らしい。 その生きたキーボードを管理しやすいように、あえて彼女は幼く未成熟な状態にされているとの事だった。 「つかよォ、このガキが行きたいって言うからこンなトコまで付いてきたが…お前は一体何なンだ?」 「…この子から聞いていないのですか?」 「聞いてねェンだ。はぐらかされたからな」 今度はフルチューニングが説明する番。 一方通行と打ち止めは、最後まで黙って耳を傾ける。 ただしフルチューニングは、天草式十字凄教を含む魔術関係の出来事については詳細を語らなかった。 説明するのが大変だし、多分理解してもらえないと思ったからだ。 おまけにあの時フルチューニングと繋がったはずの打ち止めは、何故かすでに天草式の事だけは忘れている。 (まあ、それならそれで好都合なのですが…) (記憶封鎖…何者かによって“調整”されたのでしょうかね?) (この子に魔術の事を知られると、マズイ人間…) (レイが魔術を使えるようにした張本人と、そいつが同一人物かもしれない…と言うのは、考えすぎでしょうか) そうフルチューニングが考えていると、今まで黙っていた一方通行が話しかけてきた。 「『絶対能力進化計画』じゃなく、『量産型能力者計画』の試作型…ね」 「1万人もぶっ殺した俺が言うのもなンだがよォ、全くもって数奇な人生歩ンでンじゃねェかオイ」 自嘲気味に呟く一方通行。 「挙句天井に捨てられて、たまたま拾ってくれた善人の連中と一緒に暮らしてたら、外国の戦闘に巻き込まれて大怪我とはなァ」 「確かに結構壮絶かも…ってミサカはミサカはあなたに同意してみる!」 ここにきてようやく、フルチューニングは最も重大な疑問に気が付いた。 殺される者と殺す者。 実験が中止になったとはいえ、何故標的と狩人が一緒にいるのだろうか? この質問には、打ち止めがキラキラとした笑顔で答えてくれた。 打ち止めが興奮気味に、一方通行がウイルスから助けてくれた時の事を説明する。 (まさか一方通行が、命懸けであの子を救ってくれたなんて…!) (しかもその所為で失った演算能力を失い、ミサカネットワークで補助しているとは) 何となく照れ臭いのか、一方通行は打ち止めに背を向けて関係無いかのように装っている。 (一方通行もまた、救われぬ者に救いの手を差し出した人間) (打ち止めの保護者として、これ以上適切な人はいないのでしょう) フルチューニングは“長女”として、この“末っ子”を任せられる人がいる事に嬉しくなった。 (彼女はミサカネットワークの管理者として、狙われるかもしれませんしね) (…ミサカネットワーク…) (……ネットワーク?) 心残りも無くなり、喜んでいたフルチューニングの胸に一つの違和感が訪れた。 彼女はポツリと一方通行に問いかける。 「便利ですよね…ミサカネットワークは」 「…あン?」 「1万人の能力者を自由に管理し、学園都市第一位のあなたの演算能力すら補えるネットワーク」 (それに…恐らくはレイが魔術を使えるのも、そのネットワークのおかげ) 「しかもそのアンテナたる『妹達』は、世界中に拡散されました」 「何が言いてェンだ?」 「このネットワーク…あまりにも優秀すぎませんか?」 「なに…」 「これでは、ミサカネットワークの構築を目的にして『妹達』が造られたと言われても、なんら不思議ではありません…!」 「おい少し落ち着けよ。そンな言い方だと、まるで…」 「はい。根拠も理屈も有りませんが」 フルチューニングが、培養器越しに一方通行の目をしっかりと見て言い放った。 「レイが造られた後凍結された『妹達』が、再び製造されたのは“一方通行をレベル6にする”為では無く…」 「世界中で繋がった『ミサカネットワーク』を手に入れる為かもしれねェって事か」 「そうです。馬鹿げた理論の飛躍だと言う事は承知していますが…」 「確かにあまりにも吹っ飛ンだ話だなァ」 そう言う一方通行の目は、言葉と裏腹にひどく真剣な色を帯びていた。 「打ち止めを、守ってください」 「え、え?ってミサカはミサカは軽く混乱中…」 「いずれにせよ、ネットワークを唯一管理出来るこの子は、これからも確実に狙われることになるはずです」 その時、面会時間の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。 「……チッ」 その音に軽く舌打ちをすると、一方通行は打ち止めを引っ掴んで歩き出す。 一方通行がこの部屋を出る直前、フルチューニングの耳に一言だけ声が届いた。 「言われるまでもねえンだよ」 「――このガキは、必ず守って見せる」 この言葉を最後に、一方通行は2度と這い上がれない闇の底へ落ちる事になる。 何故ならば。 フルチューニングの願いも空しく、翌日打ち止めは木原数多率いる『猟犬部隊』に狙われたからだ。 そして彼女を守るため、一方通行は死闘を繰り広げ――深く傷つきながらも勝利する。 だがその代償は、あまりにも大きかった。 学園都市の暗部組織『グループ』の一員として、上層部の首輪に繋がれたのだ。 それでも一方通行は闇の象徴『グループ』で戦い続ける。 その胸に自らが抱いた決意を、必ず守るために。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/539.html
―数時間後― 「パーティーの始まりだッ!!」 「「「「「「「「「「白雪レベル5昇格おめでとう!!」」」」」」」」」」 「いやー、みんなありがとう!!」 上条達クラスは盛り上がるときは徹底的に盛り上がるのだ!! 「ったく、さっきまでシリアスな話をしてたと思ったら、月夜の切り替えには恐れ入るぜい…」 「(それ入ったら土御門だってそうだろうが)」 「(そうだそうだ!!テメェは人を殺した後によくハンバーガーなんか食えンナァ!!)」 「(それ言ったらアクセラだってそうだにゃー!!)」 「こらー!!元春達ー!!私のパーティーなんだから参加しろー!!」 「「「はーい」」」 端っこにこそこそ喋っていた三人もやっと入ってきた。 「ねえねえ月夜ちゃん」 「ん?なあに赤音ちゃん?」 「あのさぁ、レベル5になった月夜ちゃんのチカラを見せて!!」 その言葉を聞きクラスメイトの視線はもちろん月夜に向いた。それはもちろん期待の眼差しだった。 「でも、建物の中だよ」 「なら外でやれば良いじゃん」 「分かったよ」 白雪の能力を見たく、ほとんどの人が店を出た。 「じゃあ行くよ」 「「「「「「「「「「早く見せて」」」」」」」」」」 「とりゃー!!」 まず、前にもあったようにそのまま吹雪にした。 このあと白雪が今日覚えた新たなる技を使った。 しかし、システムスキャンを見ていた人も驚くものだった。 「とりゃー!!」 白雪は雪の竜巻をなぜか四個も作っていた。 見ていない人たちはもちろん驚いていたが、見ていた土御門達も驚いた。 「月夜、一体何個雪の竜巻を作れるんだにゃー」 「わかんない。でも、システムスキャンの時は三個が限界だったよ」 「うそー。じゃあ、なんで四個作ろうとしたの?」 「できるかなーっと思ってやってみた」 あきらかにレベル5になっても成長している白雪だった。 月夜のショータイムを見に、パーティー参加者の殆どが店の外に出て行ていった中、上琴は残っており、同じく残っていた初春にお礼を言っていた。 「ありがとな飾利。五和がこっちのパーティーに来ないように仕向けてくれてさ」 「仕向けるだなんて当麻お兄ちゃんったら人聞きの悪い。五和さんは最初から繚乱家政女学校の歓迎会があったんですから」 「でもあの人、月夜さんのパーティーに当麻が参加するって聞いてこっちのパーティーに参加しようとしたのを飾利が上手くやってくれたんでしょ? ホントにありがと♪」 五和は当初、繚乱家政女学校の歓迎会を断り、こちらのパーティーに参加を目論んでいた。 しかし初春との交渉(説得と当麻の幼少時代の写真一枚)の甲斐あって、繚乱家政女学校の歓迎会に向かったのだった。 当麻の少年時代の写真が決め手と思われているが、実は初春のこの言葉に心を動かされていたのだ。 ―護衛対象と仲良くなるのも護衛のうちです。五和さんのことは私も信頼してますから。どうか舞夏さんを護ってあげて下さい。それが当麻お兄ちゃんの世界を護ることにもなるんですから 当麻の名前を出すのはずるいと思いながらも、初春の評価(五和基準)を少し上げた五和だがそのことは誰にも悟られないようにしていた。 このようなやり取りがあったことは上琴は知らないが、初春に感謝の意を表すように初春の頭を撫でていた。 「う~、何だか当麻お兄ちゃんと美琴お姉さんに頭を撫でられるのってくすぐったいけど気持ちいいです~♪ でもちょっと恥ずかしいですね」 「二人とも、その辺にしてあげて下さい。飾利が困ってるではないですか」 上琴の初春いじりを諌めたのは初春の学校の教師達の歓迎会を断って、こちら側に参加している神裂だった。 またしても初春を自分の膝の上に乗せているが、上琴はツッコんだら恐ろしいことになりそうなのでスルーすることに。 「神裂さんって飾利達の学校の教師になったんですよね? そっちの歓迎会は行かなくて良かったんですか?」 「ええ、丁重にお断りさせてもらいました。なにせ飾利が参加しないのですからね。この子のお姉ちゃんとしては当然のことです♪」 (神裂、本当に何ていうか変な方向にバカになってるような……) (最初にあったころのクールなイメージはもう見る影も無いわね。飾利限定でシスコン……分からなくもないけど) ここに来て初春を愛でるのに照れとか一切見せない神裂に上琴は呆れると共に、妙な親しみを覚え始めていた。 4人が『喰わせ殺し』でのんびりとしている中、外では月夜のショータイムが更なる盛り上がりを見せていたのだった。 「ハッハッハ!!とりゃー!!」 空中に氷の塊を作り雪を動力にロケットの様に飛ばし、月夜自身が飛んでいる氷の塊に乗っかり夜の空を飛んでいる。 「いえ~い!!」 飛び方は危なっかしいのだが月夜自身余裕である。 「うぅ……、月夜ちゃんが…ヒッグ…すっかり立派に…ヒッグ…なっているんですよよ~…ヒッグ」 「いやー、白雪の奴、すっかりレベル5やってるじゃん。誰かさんと違ってキレイな能力じゃん」 「オイ待てゴラァ!!お前はケンカでも売ってるんですかぁ!?」 「暴力はダメ!!ってミサカはミサカは上目遣いでお願いしてみる…」 「うっ…」 輝いている、この少女は誰よりも何よりも輝いている。一方通行は本気で思った 「やっぱロリコンじゃん」 「…うっせェ」 特に否定はしないロリコンツンデレ一方通行だった。 そんなころ、少し経つと店の中にぞくぞくと人が戻ってきた。 その中に浜滝、青黒、絹旗、佐天も戻って来た。 そして、浜面の危機的状況が着々と近づいていた。 それは、滝壷のある一言から始まった。 「そういえば、はまづら。わたしを置いておいてどこに寄り道してたの?」 「えーとそれはですね…」 「滝壷さん、それは何時ごろの話なのよね?」 店の中にずっといた建宮がいきなり乱入してきた。 「えーと確か、三時頃から四時頃だった気がする」 「その時って、浜面は絹旗と白井が謝っている近くに居たのよね」 そのとき、遠くから聞こえていた絹旗と黒子が近づいてきた。 「浜面それは私達の謝っているところを超見たというのですか?」 「ち、違う。俺はただ単にその近くに居ただけだ!」 「では、なんでそんなに汗が出ているのですか?」 「そ、それは……」 何も言い返せなくなっていた。 さらに… 「はまづら、わたしを置いてそんなところに行っていたの」 滝壷も今回は絹旗、黒子の方についた。 「「(超)ぶ・ち・こ・ろ・し・か・く・て・い・で・す(・わ・ね)。浜面(さん)♪」」 浜面は転校初日に不幸な人生を送ることになった。 さて、月夜のレベル5の祝宴に教師の小萌と黄泉川がどうしてこちらにいるか、それはいたってシンプルな理由だった。 当初は芳川、木山、建宮の新入りトリオの歓迎会を午後7時から別の居酒屋で行っていたが、午後八時になったのでこちらのパーティーに来た、それだけだった。 ちなみに新入りトリオ以外は完全に出来上がっていたので教師が二人抜けたことには全く気付いていない。 そして芳川、木山、建宮も『喰わせ殺し』に向かうことを決めたのは時間を少し遡った、午後八時前のことだった。 「黄泉川も月詠先生も白雪さんたちの所に行ったわよね、間違いなく」 「そうだろうね。あの二人、彼女のレベル5昇格を我がことの様に喜んでいたからな。顔を出したくなる気持ちも分からなくもない」 芳川と木山も小萌や黄泉川同様に、月夜のパーティーに参加して彼女の能力について色々見たいと思っていた。 そこへ二人とは違う目的で月夜のパーティー参加をしたがっていた建宮から提案がなされる。 「だったらわしらも土御門の彼女のパーティーに行くのよな! この様子だと主賓がいなくなっても気にせず盛り上がってるに違いないのよね」 「言われてみれば確かにそうね。見た目と違っていい案出すじゃないの建宮さん」 「それは願ってもない提案だ。何だ、君はなかなか話の分かる男じゃないか。髪の毛は暑苦しいが」 (……くっ、褒められるのか貶されてるのか判断に迷うところなのよな。だがこれで飾利姫と一緒なのよね!) 3人は同意した後で気付かれないように……する必要も無く堂々と店を出て行った。 途中、芳川は木山に対して気になっていたことを尋ねる。 「そういえば木山先生は学校で何を教えるんです?」 「教えるのとは少し違うな。私は能力者の心理カウンセラーとして赴任してきた。あの花飾りの少女の言う通り、あの学校は面白い子たちが多くて楽しみだよ」 「花飾りの少女ってもしかして初春って子のこと?」 「ああ。ちょっと訳有りでな。彼女には色々と便宜を図ってもらっている。感謝してもし切れない位にな」 芳川と初春はクリスマスの時に会っているので、木山の発言に対しても特に気にした様子は見られない。 あの子なら何があってもそんなにおかしくない、芳川はそんなことを失礼と思いながらも考えてしまっていた。 「ま、その辺のことはパーティー会場についてから話せばいいのよね。……ところで会場ってどこなのよな?」 仕切った建宮だが『喰わせ殺し』の場所が分からず困り果てていた時、チラシを持っていた木山に助けられることに。 こうして芳川、木山、建宮も小萌と黄泉川から遅れること30分、無事に『喰わせ殺し』に到着したのだった。 「なんなのよな?……これは。」 「わけがわからない。ほんとに一体なにがあったんだ?」 「レベル5が3人集まるとこうなるということかしら?」 遅れて到着した芳川、木山、建宮を絶句させたその光景とは……! 浜面が地面に突っ伏している。 これは隣にいる絹旗、白井、滝壺の仕業だと理解できる。 だが! 「なんでほぼ全員ぶっ倒れているじゃん??」 白井達も浜面のすぐ近くで。 立っているのは 上条、御坂、一方通行、打ち止め、白雪 である。 「何でこういうことになったのか、説明してくれるか?」 「なンかよォ、気がついたらこうなってたンだァ。」 「「「ありえない(じゃん)だろそれ!!!」」」 「じゃあ一番まともそうな白雪か御坂さんに説明してもらうじゃん。」 「「私達も気がついたらこうなってました。」」 「「「ぬぁぬぃ!?」」」 「じゃあこうなった理由は永遠に謎なわけね…。」 「非常に気になるが、仕方あるまい。」 「ほんとに困ったもんじゃん。」 「ちょっと待って!!上条さん忘れられてませんか!?」 「「「まともな答えしてくるとは思えない(じゃん)」」」 「酷っ!!!上条さんはちゃんと説明できますのことよ!」 「じゃあ説明するじゃん。」 上条は説明する。 「そこらに倒れてるバカどもが『エキシビションだーっ!!』とか言ってレベル5の3人の技の競演をさせたんです。」 「ほう。」 「そしたらなんか変なことになって…こうなりました。」 「変なこととは何かな?非常に気になる。」 「雷のような形をした吹雪?が吹き荒れて…」 「月夜と御坂さんの能力が合わさった!?」 「「気になる!非常に気になる研究者として!!!!!!」」 「吹雪だけかと思ったら電気も入っていて…。」 「雪遊びしようとしたやつがそれでぶっ倒れてたなァ。」 「で、一方通行は何してたじゃん?」 「「「途中から打ち止めを抱きかかえて逃げ回ってました!!!」」」 「言うンじゃねェ!!!!!」 「「「やっぱりかこのロリコンモヤシ!!!!!!」」」 「モヤシじゃねェえええええ!!!!!!!!!!!」前半は否定しない。 「ところで土御門は?」 「いやー、一番安全な所に隠れてもらったよ。」 「「「「「「どこ?」」」」」」 「たぶんそこにある雪山のどれかの中。」 「それって『埋めた』の間違いじゃね?」 「しかもよォ、6つあるぞォ雪山…。」 「うん♪5つダミー♪」 「探すのが面倒になりそうね。」 「そんなことはないよ、それっ!」 白雪が雪山を制御すると。 それは見る見るうちに消えてなくなった。 パーティーが再開し、来るとまずい人間が到着するまで5分17秒。 「大丈夫ですか? 飾利。すみません、手が塞がってさえいなければあの雪くらい七閃で蹴散らしていましたのに」 「でも火織お姉ちゃんはあの雪の中、私を暖めてくれました。おかげで気を失わずに済みましたよ(抵抗する気が無いのは気のせいだと思うけど)」 「~~~~~っ! 飾利は何てお姉ちゃん思いのいい子なんでしょう!」 神裂がその気になれば月夜と美琴の合作、雷混じりの雪から初春を護ることは出来たが敢えてそうしなかった。 理由は簡単、すっかり初春のお姉ちゃんが楽しくなってる彼女は、初春から離れたくなかっただけである。 仲良し姉妹と化した初春と神裂、正確には初春の言葉に嬉しくなった神裂がハグしたのを見た建宮が、嫉妬全開で二人に詰め寄る。 「あーーーっ! 何してるのよなプリエステス! 飾利姫から離れるのよね! むしろそのポジションをわしに譲ることを所望する!」 「ごめんなさい建宮さん。男の人とこうゆう風になるのはまだ慣れないので却下です♪」 「建宮、寝言は寝てから言うものです。それに私はあなたと違って邪な気持ちなどこれっぽっちも持ってません。お姉ちゃんだから当然ですね」 「申し訳ないけど今のプリエステスに説得力は皆無というものなのよな! どうか後生ですからわしとブフォッ!!」 初春の優しい(?)否定と神裂の容赦ない物言いに、建宮はなおも食い下がるが後ろから殴り飛ばされてしまう。 殴り飛ばしたのは初春の親友にして姉妹(義理)の絹旗と佐天、そして流れのままに加わった黒子だった。 「また建宮は超性懲りも無く。飾利に手を出すとしても最低でも10年は超早いんですよ。無事ですか? 飾利」 「飾利大丈夫だった? 建宮さんに泣かされたりとか変なことされなかった?」 「最愛さんも涙子さんも心配しすぎですよー。建宮さんはそんなことしませんよ。ちょっと変わってるけどいい人じゃないですかー」 (何だか佐天さんも絹旗さんも初春を中心に動いてるような気がしますわね……。初春、いつの間にこんな恐ろしい子にっ!) 初春の周りに集まった神裂、絹旗、黒子を見た当麻のクラスメート達はざわつき、そして震え上がった。 それもそのはず、彼らは当麻シメる会ならびに浜面狩りにおいて彼女達にボッコボコにやられ、心に恐怖を刻み付けられたのだから。 ちなみに神裂にやられた男共は彼女とお近づきになりたかったが、絹旗と黒子が怖くて話しかけられない。 「気のせいでしょうか? 私達に向けられている視線に怯えが多く見られるのは」 「そうなんですの? わたくしたち、特に何かした覚えはないのですが」 「そんなの超気のせいですよ。私達のような人畜無害な女の子がそんなこと思われるわけ無いじゃないですか」 当の本人達は昼間のことなどすっかり忘れているので、周りに怯えられている理由は永遠に分からなかった。 その様子を見ていた当麻、土御門、青ピ、一方通行、浜面はクラスメート達を情けない思いで見ることしか出来なかった。 「……中学生の女の子と18歳のお姉さんに怯えまくるウチのクラスって情けないよな、普通に考えて」 「せやな。ボクが言うのもなんやけど、ちょっとヘタレが過ぎるような気ぃするで」 「でもまだ幸せだぞ、あいつら。あの中で一番おっそろしい初春の存在を知らねェんだからよォ」 「アクセラの言う通りにゃー。初春ちゃんに睨まれたらロクでもない目に遭わされるのは必至なんだぜい(情報屋は手遅れだけどな)」 「絹旗が人畜無害ってどのツラ下げて言ってんだあいつ? あん中じゃ一番ガフッ!」 浜面の一言は絹旗が投げ飛ばした椅子がヒットしたおかげで最後まで言えずじまいに終わった。 舞夏を連れた五和が『喰わせ殺し』に到着するまで後1分。 「何するんだよ。絹旗!」 「浜面は今言ったことを超分かってますよね。どう見ても私達は超人畜無害な女の子ではないですか」 「嘘だ!!お前らのどこが人畜無害な女の子なんだ!!」 「浜面さんそれは聞き捨てなりませんわね」 「白井さん、浜面は超懲りていないようです。どういたぶりましょうか♪」 浜面は、本日二度目の不幸を味わうことになった。 そのとき!! 「当麻さ~~~~~~~~ん」 五和と舞夏がやって来た。 五和の脅威を知っている者達は彼女の登場に言葉を失う。 そして五和の背中に乗っていた舞夏が降りると、そのまま土白の所へ向かった。 「おー月夜ー。このたびはレベル5昇格おめでとうだぞー。兄貴は本当にイイ女を彼女にしたなー」 「ちょっと待て舞夏。なんでお前がここに……というか五和まで連れてきたにゃー!」 「五和がな、私達の方の歓迎会が終わった後でこっちのパーティーで実地研修したいって言ってなー。わたしもそんな気分だったから連れて来ただけだぞー」 シスコンの土御門としては舞夏が来てくれたことは心から嬉しかったが、五和まで来たのにはパーティーの危機を本気で感じていた。 その頃、五和は初春と皆から離れた場所で話し込んでいるが、二人が醸し出す雰囲気に寒気のようなものを感じ始めていた。 「どうですか初春さん? 護衛対象の舞夏さんも一緒なら文句無いですよね? あくまでメイド研修の一環なわけですし」 「いやまあ、来るとしたらそんな理由ですから別に驚いてませんよ、私。出し抜いたって思われるのは心外です。帰れとは言いませんよ、ここまで来てくれたなら」 「(か、可愛げのない……!)じゃあ早速ですけど当麻さんへのご奉仕を始めてもいいですよね?」 自分の中で考え抜いたここに来る口実は初春に読まれていたことに、悔しさを覚える五和。 メイド研修の名目で当麻に接近しようと思っていたが、初春に止められることに。 「条件を飲むなら許可します。このパーティーはあくまで白雪さんの為のパーティーです。パーティーを台無しにする行為だけは控えて下さい。それとメイド研修の本分を忘れず、ご奉仕を一人に限定しないように」 「……分かりました。それに怖い人たちが私のことを睨んでますし。でもこっちも条件があります。そうしたら初春さんの条件を飲むことにします」 「いいですよ。ただし当麻お兄ちゃんと美琴お姉さんを別れさせろみたいなふざけた内容だったら即刻帰ってもらいますので」 「(チッ、残念)じゃあ、当麻さんと御坂さんのイチャイチャをパーティー終了まで禁止させて下さい。いいですよね?」 五和としても月夜の為の祝宴を壊す気は無いので、初春の提案を受け入れることにしたが、決して上琴、神裂、建宮、一方通行、ステイルの視線が怖かったわけではない。 しかし転んでもタダでは起きない五和の提案に初春は少し考え込んだ後で、了承することにした。 その旨を初春は上琴に申し訳ないと思いつつも伝えることに。 「……というわけなんです。お二人には申し訳ないんですけど、白雪さんの為にも我慢してもらえますか?」 「う~ん、しょうがないか。五和に白雪主賓のパーティーをぶち壊されるのは俺としても困るし、ここは受け入れるとすっか。美琴もそれでいいよな?」 「本当は釈然としないけど当麻と飾利の頼みだから私も受け入れる。それにこの時間イチャイチャ出来なかった分は後で取り返せばいいだけだしね♪」 こうして上琴はパーティー終了までイチャイチャ禁止を言い渡されるのだが、バカップル二人はこの状況さえも楽しむ余裕があったりする。 五和と舞夏、二人のメイドによるご奉仕がこのパーティーで炸裂することに! 「なあ土御門?」 「なんだにゃー、カミやん?」 「舞夏は結構エリートだと聞いてはいたが…凄すぎじゃね?」 「失礼ですたいカミやん!我が妹ですからこれくらいのことはできて当然なんだにゃー。」 「むしろ凄いのはあの五和って人じゃない?」 土上の会話に白雪も加わる。 「まあ一度料理を作ってもらったことあるけど凄かったぞ。」 「にゃー。舞夏がライバル認定した数少ない一人だぜい。聖人よりも少ないにゃー。」 「「なるほどねえ。」」 白雪も魔術については土御門から教えてもらってるので「聖人」の意味はわかる。 本来ならここで上条さんが突っ込みそうなものだが。 そこに上条が突っ込む暇はなかった。 なぜなら。 「当麻、料理作ってもらったってどういうこと♪」 上条は恐る恐る振り返る。 そこには。 怒れる学園都市第三位のお姿が。
https://w.atwiki.jp/gods/pages/65454.html
ユキヒトシンノウ(3)(敬仁親王) 皇族の系譜に登場する人物。 関連: ムツヒトシンノウ (睦仁親王、父) ヤナギワラナルコ (柳原愛子、母) 別名: タケノミヤユキヒトシンノウ (建宮敬仁親王)
https://w.atwiki.jp/toaruindexpsp/pages/153.html
なんで建宮はでなかったんだろう? 技とかないから? -- (ヤミテタ=ジイサ) 2011-04-12 02 45 20
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1403.html
やはり神裂も、その『少年』の姿を見ていた。 だが、それをすぐに信じることなどは、到底無理だった。 海原さえも驚いたような表情を見せ、他の天草式のメンバーも、開いた口が塞がらない、とでも言いたげな顔をしている。 当たり前だろう、さっきまでは確実に確認できていなかったその少年が、神裂の攻撃をいとも簡単そうに防いで見たのだから。 いや、神裂たちには、もはや何が起こったのかは理解できていなかった。 ただ、事実を事実として突きつけられているだけ。 神裂の攻撃は、触覚壊し(センサーブレイク)には当たらなかった。 その原因は、おそらくあの少年にある、ということ。 そしてその少年は、あたかも天使のような翼で、神裂の七閃を防いだらしい、ということ。 だがその少年は、先ほども言ったとおり、それまでは一切確認できていなかった、ということ。 最後に、その少年は神裂の攻撃を防いだ後、何事もなかったかのように、その場を一瞬で消え去った、ということ。 「……何が」 神裂は、戦闘態勢をとるのも忘れ、呟く。 「何が起こったんですか、一体」 「それはこっちの台詞だっての」 大地を、まるで翼が生えている鳥のように駆け抜ける少年が言った。 「ッたく、わけわかんねぇ。突然攻撃されて、とっさに防ぐこっちの身にもなれってんだ」 そう愚痴を吐きながらも、その足は止まらない。もはや足を使って移動しているのかも疑いたくなるような速度で移動しているのだが。 そしてやはり、その少年は足を使って移動しているわけではないようだ。 その背中に実際に生えている、禍々しいほど神々しい、天使が持っているかのような翼。 それを少年は羽ばたかせて、低空飛行を行っているようだった。足は、せいぜい地面を蹴って反動をつける程度のものだろう。 そんな、もうその姿を直視できさえすれば大問題に発展しかねない少年は、しかし誰にも目撃されることなく高速で移動していく。 その原因としては、単純に目撃する人物がここにはいないから、というものもあるだろう。 だが仮に、彼が人ごみの中に放り込まれても、それを確認できるものはいないはずだ。 それどころか、彼が今のように移動をしていても、周囲の人間は何も感じないはずである。 それがその少年―――学園都市第二位の能力者、未現物質(ダークマター)、垣根帝督に施された処置なのだから。 それについて考えた帝督は、 「……チッ。それにしても、何考えてやがんだ、あいつらは」 二人の男性を思い浮かべ、顔を歪めた。 その内の一人は、この学園都市を収める統括理事会の長、アレイスター=クロウリー。 そしてもう一人は、 「……まぁ、何でもいいか。俺は、あの野郎に言われたことを実行するしかねぇんだからな」 垣根帝督の実の父親―――垣根聖督だった。 「……まぁ、分からない事を延々と考えても無駄なだけですね」 神裂は先の少年と、それが起こした現象を一切無視する事に決めた。今までも不可思議な現象などいくらでもあったのだ、いくらか耐性はついているのだろう。 そして、 「さて、問題は」 そう呟き、聖人の瞳で触覚壊し(センサーブレイク)を見つめようとする。 が、 「……ふむ?」 神裂が、その目をさらに細めながら、そう言った。 「……どっ、どうしましたか……女教皇(プリエステス)」 その神裂に、少しはショックが和らいできた対馬が、途切れ途切れの言葉で聞いた。 それに神裂は、 「いえ……」 少し口ごもってから、告げた。 「見付からないんですよ、先ほどの女性が」 見付からない? と海原も会話に混ざってきた。 「ええ。本当に、まるでどこにも存在しないように……あの者に、移動能力があるとは思えないのですが」 神裂が、海原の言葉を受けてそう言う。 「それなのに、確認できない、か……」 諫早が、しわがれた声で言う。もうショックからは回復しているようだ。 ……、と沈黙が辺りを支配する。 と、その時、 『んじゃぁ、作戦会議は終わったか?』 どこからか、声が聞こえてきた。 それが誰のものなのか、神裂たちには分からない。 だが、この状況から鑑みれば、自然とその答えは出てくる。 「……超能力者(レベル5)、ですね」 海原が、一人冷静に言った。やはり、学園都市に潜在している魔術師の方が、そういった判断は早い。 といっても、これくらいなら誰にでも分かっただろうが。 『正解正解~。でも、だからなんだよ?』 心底どうでもいい、と言いたげなその声は、いちいち神裂たちの精神を揺さぶる。魔術以外でのこのようなことには、神裂たちは不慣れなのだろう。 思わず身構える天草式を見据え、触覚壊しが嘲笑うように言った。 『身構えてどうする? お前らに、こっち(科学)が理解できんのかぁ?』 「……こっちの事を掴んでいますね。どうやって情報を入手したんだか」 海原が、やはり冷静に分析する……のだが、確実に海原の顔にも冷や汗が浮かんでいる。 『テメェらもこっちのこと分かってんだろ? んじゃぁ、こっちもお前らのこと分かってなきゃ、不釣合いでしょ』 男言葉と女言葉が混じった、妙な口調で触覚壊しが言う。 その言葉に、 「……どっちの方が、この状況で有利だと考えますか」 神裂が、虚勢を張って、確認もできない触覚壊しに対し脅しをかける。 だが、それを触覚壊しは「ハッ」と一蹴し、応えた。 『そりゃぁ、お前らだろうなぁ。だけど、あんたらはこの状況で何が出来る。ただ黙っている事しかできないだろ?』 触覚壊しの言うとおり、黙り込んでしまう神裂たち。 『確かに今はそっちの方が優勢だろう。けど、今後はどうなる? 私がお前らを攻撃しても、あんたらは反撃できない。そのうち、流石に耐えられなくなるでしょうね』 クククッ、と笑みを漏らす触覚壊し。 それに思わず神裂は抜刀しそうになるが、今ここでそんな事をやっても見方に被害が出るだけだ。神裂は、帯刀したままの状態を保つ。 それを見た触覚壊しが、 『ハッ! だよなぁ、そうするしかできねぇよなぁッ!! お前らは黙ってヤラれてりゃいいんだよッ!!』 そう高らかに叫び、そして、 ギュゥォンッ!!! と、突然神裂たちの目の前に、青白い閃光が迸った。 いや、迸る、と言う表現は性格ではないかもしれない。 どちらかといえば、『在った』、というべきだろうか? それほどまでにそれは高速で、ただ顕現するべきものとして存在するだけのようなものだった。 そして、どこからか、女の声がした。 「……なぁにでしゃばってんのよ、アンタ? ぽっと出の馬鹿女が、人様の上に立てるとでも思ってんのかぁ?」 それは、まるで他者全てを見下しているような、絶対感を催す声で。 それは、まるで自分の力を信じきり、それに勝るものはないと宣言しているような声で。 それは、まるで―――――― 「そういう台詞はね、学園都市第四位様……原子崩し(メルトダウナー)とかをぶっ飛ばしてから、言うべきだよなぁ? え?」 ―――学園都市の最高レベル、原子崩しが放つような声だった。 それに触覚壊し(センサーブレイク)は、 『……アア? んだてめぇ、勝手にこっちの会話に混ざりこんでくるんじゃないわよ』 やはり男言葉と女言葉が混ざった奇妙な口調で、原子崩し……麦野沈利に問う。 そして麦野は、 「そっちこそ、勝手に人んとこで暴れてんじゃないわよ。それになんだ、超能力者(レベル5)ぅ? ハッ、舐めてんな、こりゃ。ッてことで潰す。ただそれだけだ」 随分と無理矢理な理論を唱え、それを触覚壊しに叩きつけた。 とそこで、やっと神裂が、近づいてきた麦野に聞いた。 「……ええと、まず……あなたは何者ですか?」 戸惑いながらの神裂の言葉に、麦野はただこう言うだけだ。 「気にしなくていいわよ。ただの通りすがりの女の子、ってとこ」 神裂はその言葉にいろいろと突っ込みたかったのだが、そうしたらちょっと怖いことになりそうだったので、そこでとどまった。超能力者と聖人、どうやら勝ったのは超能力者のようである。非常にどうでもいい戦いだが。 そして、その麦野が言った。 「いいから、あんたらはどっか行ってな。死にたいんだったら、ここに残ってもかまわないけど」 その急展開すぎる麦野の言葉に、さすがに神裂たちはうろたえる。 その様子を見た麦野がため息とともに、海原にこう言った。 「ちょっとアンタ。こいつら連れてさっさとどっか行きなさい」 「……何故にそうなりますかね?」 その言葉に、海原は困ったような笑みを浮かべる。 それに麦野は、 「アンタ、魔術師でしょう? それなのに、こっちの暗部やってるんだから、これくらいのことには対応できるでしょ?」 その麦野の言葉に、海原は思わず絶句してしまった。 それを無表情に見つめた麦野は、馬鹿か、と思いながらこう言った。 「グループ所属の野郎が、何考えてる? 他の組織を把握しとくなんて、定石ってレベルじゃないわよ」 さらりと言われた、麦野のかなりの爆弾発言に、海原は冷や汗を掻く。 それをやはり、馬鹿を見るような目で見つめた麦野は、 「いいから、ほらさっさと行く行く。死にたくなけりゃ、ね」 それだけ言い、さっさとその場を去って行ってしまった。 それに野母崎が、 「……今の、一体なんなんだ……?」 その質問に、さぁ? と首をすくめることしかできない海原だった。 14 と、その時、 (……きましたか) 精神操作(メンタルコントロール)は何かを感じ取り、そして、 「全ての能力を、開放する」 そう呟いた。 それに、『あ?』と土御門は目を細めたが、 次の瞬間、 フッ、と、唐突に目の前にいた精神操作が、忽然と消え去った。 「ッ!? 構えろッ!!」 その事態に対し、みなにそう叫ぶ土御門。もちろん周りは、すでに構えを取っている。 (……何が起こった) 土御門は、銃口を様々な方向へと向けながら考える。 が、考えても分からない。 (やはり、能力か) 仮定的に断定する土御門。 「……とりあえず、バラついているのはマズいな」 そう呟き、そしてまた土御門が大声で叫ぶ。 「一度、全員一箇所に集まれ! 俺のところにこいっ!!」 やはり個々がかなりの戦力を持っているため、お互いが離れている状況での土御門の言葉。 それに全員が、周囲に気を配りながらジリジリと土御門の下に集い始める。 と、その時、 パァン! と、れっきとした銃声が響いた。 それに全員が反応し、誰に向けて放たれたのか分からないので、各々回避行動をとる。 が、 「ぐぁッ……」 土御門の右腕の二の腕辺りに、ポッカリと円が空いていた。 そして、その円から、次々と赤い液体が流れ始める。 土御門はその打たれた部分を左手で押さえつけ、無理矢理に出血を少しでも止めようとする。 と、その事態をきちんと目撃した建宮が、 「チッ! リーダーに死なれちゃ困るのよな!!」 しっかりと注意を配りながら、土御門の下に駆け寄る。おそらく、魔術でその傷を防ごうとでも考えているのだろう。 が、 「走るなっ! 自分を優先して考えろ。他人は二の次だ!」 その光景を見た土御門が、建宮に対し一喝する。 それに思わず建宮は立ち止まり、少し戸惑うように動かなくなる。 (バ、カ野郎ッ!!?) その建宮に対し、土御門は言葉を放とうとしたが、 遅かった。 またしても、銃声が響いた。 今回の銃声の対象は、誰が考えても一人しか存在しないだろう。 あの状態の建宮には、回避行動を行う術などない。 ある程度の傷なら魔術でどうにかなるかもしれないが、即死だったら話にならない。 「た、て宮ぁッ!!」 思わず叫んでしまう土御門。 それに、 「……まるで死人を目撃したように叫ぶよな。こっちにとっちゃはた迷惑だぜ」 「あ?」 思わず聞き返してしまう土御門。 そして後ろを振り向くと、 「だから、俺は死んじゃいねぇのよ。ほら、この通り」 まったくいつもどおりの(といっても、付き合いが短い仲だが)、建宮がそこに建っていた。 ……、と思考が止まりかける土御門の下に、また一人その場に集う。 「感謝しなさいよ。さっきの空間移動(テレポート)も含め、今ので6万」 それは、非常に元気……と言うか現金な声の、結漂淡希のものだった。 「……結漂、こういうときは、金のことは話題にするもんじゃないぜぃ……」 その言葉に、なぜか肩を落とす土御門。 と、その時、 「つっても、まだどこかしらに敵さんはいるんだろ? ちょっとは張り詰めようぜ」 土御門たちをかばうようなポジションに立った、葛城妖夜が言った。 「ちょっとアンタ……的になってるわよ? 蜂の巣になりたい?」 その妖夜に、結漂がやはり冷たい言葉をかける。土御門はこっそり、「……これにデレが入っても、ツンデレにはならない気がするにゃー」とか思ってたりする。 その結漂の言葉に、妖夜が後ろを振り返って言う。 「ご心配ありがとうございますお嬢様……とでも言えばいいのか? ってか、俺が誰だか覚えてんのかテメェ」 と、突然結漂に荒い言葉をかけた。 当然結漂は、それに驚いたような顔になる。 が、それも束の間。 「……ねぇ、知ってる? 座標移動(ムーブポイント)は、戦い方次第では、超能力者(レベル5)とも互角に殺りあえるらしいわよ?」 「へぇ……それは一度見てみたいな。結果が楽しみだ」 それに思わず結漂が、本文本気で手近な石を妖夜の腕に空間移動させようとする。 が、それは実行されない。 またしても響いた、パンッ! という銃声に、結漂の精神が揺らいだからだ。 (なっ……まずッ!?) 土御門が、とっさに身体を庇おうとする。誰が標的になっているのか分からないのは、今でも同じだ。 そして今回は、土御門には当たらなかった。 だが、今回は直撃した者がいた。 格好の的と化していた、妖夜の頭脳に、しっかりと弾は着弾した。 (……まずは一人、殺りましたか) 銃口から少しもずれなかった妖夜の頭を見つめ、精神操作(メンタルコントロール)は思った。 (それにしても、馬鹿なものですね。あれじゃ自分から『打ってください』と言っているようなものです) そして倒れ行く妖夜を、感情の篭っていない目で見つめる精神操作。 (この気に、一気に掃射が効率がよさそうですね……予備の拳銃は) そう考えた精神操作は、彼らのことを一度無視して防護服の中を漁る。 そして、予備の拳銃を左手に構え、一気に乱射しようと彼らの方に向き直った。 その彼女の目に映ったものは、 「なッ!!?」 確実に着弾し、それを確認して倒れて行ったのにもかかわらず、寝起きのように後頭部をすさりながら立っている、葛城妖夜だった。 「っ痛ぇ~な……今の、普通だったら死んでたぞ?」 妖夜が、あからさまにボケた言葉を真面目な顔で言う。もちろん冗談だろうが。 その妖夜を、土御門は顔面を蒼白にして見上げている。サングラスが少しずれ、意外に良い方の顔が合間見える。 結漂の方は、チッ、と舌打ちしてからこう言った。 「だったら、今ので死んどきなさいよ」 「おいおい、それはひでぇな。だけど、俺は生憎死ぬのは嫌いでね」 その冷たすぎる結漂の言葉に、妖夜は笑みをこぼしながら返す。 そして建宮といえば、なぜか笑顔全開でぼけっと突っ立っているだけだった。おそらく、今起きた現象をはなから放棄し、それでも事実を理解しようとした結果だろう。 そんな仲間……というべき存在を見回した妖夜は、はぁ、とため息をついてから、こう告げた。 「だから、テメェら俺が誰だか忘れてねぇか? 学園都市第6位、肉体変化(メタモルフォーゼ)の葛城妖夜だぞ?」 ……、と口を閉ざす土御門と建宮。 だが、結漂の口は達者なようで、 「へぇ~。でも、いくら肉体を強化したところで、空間移動(テレポート)は避けられないわよね?」 「どうだろうな? やってみなきゃ分かんないぜ」 ……いまだに、超能力者(レベル5)と口げんかをしているようだった。というか、このまま殺し合いに発展しそうな感じもする。 「……お前たちの所為でいちいち締まらないが、体勢を立て直すぞ」 土御門はそれを傍観してから、よっこらしょ、と立ち上がった。 そして、 「は?」 思わず、彼はそう声をあげる。 「なによいきなり。まさか腕が一本取れてたとか?」 結漂が、まったく土御門の方を見ずに、どーでもいい、と言いたげな口調でそう言う。 それに土御門は、 「……いや、腕の傷が完璧に塞がってて」 そう言いながら、土御門は自分の右腕を掲げる。 その腕には、確かに銃で貫かれたような痕跡など、一つも存在しなかった。 と、そこで建宮がやっとまともになり、土御門に言った。 「だから言っただろ、リーダーに死なれちゃ困るのよな。俺が治しといた」 なんでもないことを言うように言われた、意外に結構爆弾な建宮の台詞。 「忘れたのよな? 俺は天草式・元教皇代理。天草式の魔術発動が、大それたものではないことくらい、あんたには分かってるだろ?」 建宮が、呆れたように土御門を見ながらそう言った。 「……まぁ、考えてみればそうだな……悪い。手間かけさせたな」 土御門がそう言って、建宮に謝罪する。 実際のところ、確かに魔術発動自体は気付かれずに行うのが、天草式の実態なのだが…… やはりその分、普通に行われる魔術よりは、威力や精度が落ちる。 だが、それでも建宮は即効で魔術を発動させ、あの土御門の傷を完治させていた。 (……これくらいやってのける奴だとは思ってはいたが……実際に目の当たりにすると、やっぱり凄いな) かくいう土御門も、かなりの手慣れなのだが、もちろん本人は、そんなことは気にしていない。 「さて、まずは自分の安全の確保だ。相手はむやみやたらに突っ込んでくるタイプじゃない。俺たちが隙を見せなければ撃ちこんでは来ないだろうが、隙を見せたらその瞬間にでも殺されていそうだしな」 その土御門の言葉に、さっきまでのあんたらに緊張感はあったの? と結漂が言ってくるが、誰もそんな言葉は気にしない。 かくして、土御門と建宮は各々の魔術で安全を確保し、妖夜は肉体変化で身体を補強してあり、結漂は特にやることもなくただ突っ立っていた。 (……パッと見れば、緊張感などかけらもない) そんな光景を見つめ、精神操作(メンタルコントロール)は思う。 (だが、実際のところはそんなはずはない。おそらくあの場面で私が撃ちこんでも、かわされるのがオチだった) そう考える要素は、結漂淡希にある。 (彼女の座標移動……対象と接触していなくとも、空間移動することができるという高度な能力) 実際、結漂の座標移動は確かに高度だが、銃声が響いてからではもはや何の役にも立たない。 だが、精神操作が建宮に撃ちこんだとき、結漂はその座標移動を使用して、建宮をその銃弾から守ってみせた。 (何らかの方法で、こちらの攻撃を察知している……そう考えるのが妥当ですね) 精神操作はそう考え、次の行動に対して思考を張り巡らせる。 (では、このままダラダラとやっていても時間の無駄……どころか、学園都市からの応援が来て、こちらが不利になりかねない。さて、どうしたものでしょうか) そう考えた精神操作は、 「……結局は、能力者は能力を使って闘わなければならないのですね」 そう言って、二丁の拳銃をほうり捨てた。 15 「ようやく状況が落ち着いてきたかも、ってミサカはミサカは、実は心細かったりするけど虚勢を張ってみる」 「その発言の意図が分かりかねます、とミサカは上位固体の発言に対し冷静な分析を行います」 二人の少女の声が、その空間に木霊した。 といっても、その部屋にいるのは二人だけではないのだが。 「むー……なんなの一体てれぽーとって? 学園都市は、転移魔法までもを模造してるっていうのかな?」 「模造じゃなく人為的に作成。それが学園都市」 10万3000冊を脳内に納める少女と、順調に行けば第八の超能力者(レベル5)にもなれると言われていた少女だ。 彼女たちは、今はとある事情のもと、どこかの部屋に監禁……もとい保護されている。 どこかの部屋、という表現なのは、彼女たちは結漂淡希の座標移動(ムーブポイント)でこの部屋に飛ばされたからだ。一体ここがどこなのか、彼女たちには見当もつかない。 「もうほかのミサカたちはここの部屋の周りに配置されてたのね、ってミサカはミサカはあの人の周到さに少し驚いてみたり」 「大体のミサカの配置も完了してきたところですので、20001号もそろそろ準備を、とミサカは上司に指示を出します」 彼女たちはミサカネットワークでの会話が可能なはずなのに、なぜか肉声で言葉のやり取りを行っている。まぁ、やはりそちらの方がやりやすいのだろう。 とそこで、 「おーい滝壺、なんか状況うんぬんとか、今どうなってる?」 ここ一帯の空間で唯一の男性が、滝壺にそう話しかける。 それに滝壺は能力を張り巡らせて、 「……まだ、何もなし。心配しなくていいと思うよ、浜面」 眠たそうな目を少し見開いて、そう言った。 そしてこの場で唯一の魔術サイドである白銀のシスターが、落ち着きなく回りを見回しながら言う。 「結構ボロッちいところに移されたかも……こんなところで、その反乱因子とかいう人たちの襲撃を防げるの?」 彼女たちが匿われているのは、べつに新しくも古くもない、それなりに広い空間を持つ一室だった。 だがインデックスにとっては、古い部類に入るだろう。上条の学生寮は比較的新しいし,イギリス凄教の方だって、彼女が呼ばれるような所は綺麗なものだ。 ……といっても、そもそもインデックスが日常的に生活している場所は考えられないほど限られているので、比べるべきものが少ないのでその意見はあまり力は成さないだろう。 だが、 「確かにそうですね、とミサカは彼女の意見に賛同します」 「まぁ、超能力者とかの襲撃を防げる建物なんてほとんどないと思うんだけど、ってミサカはミサカは大人な視線で言ってみたり」 「それでも、ここよりはまともな施設なんて、どこにでもあると思う」 そこに集う少女たちは、全面的にインデックスの意見に賛同らしい。一人は違うことを言ってはいるが。 一人一人が各々の価値を分かっている分、やはりこの状況は疑問に思うのだろう。 といっても、彼女たちだけでここから動くわけにもいかない。動いた先に敵がいたりなどしたら、滝壺がいても10秒と持たないであろう。 と、そんな状況下のインデックスに、 『おいインデックス、俺の声が聞こえているか?』 唐突に、声が落ちてきた。 それは直接脳に響いてくるような声であり、日常では考えられない現象だ。 だがインデックスは、それにまったく動じない。 なぜならば、それは彼女が最も得意とする、魔術だったから。 『……確か、あなたは……』 インデックスも同じように相手にそう伝え、自分の記憶を引っ張り出す。 そして、彼女の完全な記憶から取り出された答えは、 『……陰陽道を究めた魔術師……土御門元春、だね』 確定的なインデックスのその思想に、ふふっという声がインデックスに届いた。
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/1090.html
8月20日午前9時40分、胤河製薬学園都市支店 「君の作った『幻想御手(レベルアッパー)』は脳波のネットワークを利用した演算機器ということだけど……」 幻生は問う。 「そのアイディアを教えたのは、一体誰かね?」 この歪んだ世界のカギを握る、とある事実を。 「……」 しかし、木山は答えない。 否。 答えられない。 「……アレは……っ」 そのまま“何か”から逃げるようにほんのわずか後ずさる。 彼女の震える手から落下した拳銃が、空しく音を立てた。 しかし彼女は、自らの肩を抱いて震えるだけ。 「落ち着きなさい、木山君」 優しく声をかける幻生。 だがその声には、軽い失望の響きが含まれている。 「今日はこれでオシマイだねぇ」 「また会いに来なさい、待っているから」 その言葉に木山がハっと顔を上げた。 だがすでに、鉄格子の中では。 「い、ない……?」 囚われの身であるはずの幻生の姿が、煙のように消滅していた。 同時刻、第7学区の地下街 天草式の教皇代理、建宮は完璧に表情を隠蔽しながら諫早と歩いている。 けれどそれは、裏を返せば隠蔽すべき動揺が心中に存在しているということだ。 突如として連絡を絶った対馬と香焼。 即座に浦上と野母崎など12名を応援に向かわせたが、その彼らからも連絡はない。 それでも、と建宮は思う。 まだ若い香焼はともかく、対馬はメンバーの中でも優秀な実力者だ。 そうそう簡単にやられはしない。 (――本当に?) 女教皇と一緒に、さらに危険な出来事を何度も乗り越えてきた。 ここが敵地なのは承知の上だが、それでも勝ち目はある。 (――本当に?) そこまで考えて、建宮は自分を欺くのを諦めた。 (畜生、不安で仕方がないのよな!) (俺の独りよがりの復讐に、こいつらを巻き込んじまった) (女教皇を失った天草式をまとめ上げる必要があったっていうのにな) (クソッタレが) (自分たちの矜持を投げ捨てることになると分かってて、それでもこの足は止まらねえのよ!) 『救われぬ者に救いの手を』 かつて神裂と共に歩んでいた天草式は、その信念を胸に戦っていた。 その姿は、弱者に手を差し伸べるヒーローそのもの。 多くの人を救い、助けてきた彼らは誰に恥じることのない正義の味方だったのだ。 だが今は違う。 彼らは、自分たちの掲げる信念の別の意味に気づいてしまった。 すなわち。 すでに彼らは、誰も救えないのだと。 悪に怯える人を助けるから、ヒーローなのだ。 自らの力の無さを悔いる人間と、共に立ち上がれるから正義の味方たり得るのだ。 困っている人間に手を差し伸べるから、天草式十字凄教なのだ。 いつだって、彼らの力は他者を救うために振るわれてきた。 しかし今、彼らが復讐によって救おうとしているのは――自分自身の行き場のない気持ち。 救いの手を差し伸べるというその思いは、自分達が“救われぬ者”となった事で自らへと向けられた。 自分の力を、自分のために使う。 もはや彼らは、ヒーロー(あまくさしき)ではない。 血と闇の溢れる世界へ足を踏み入れた、1つの戦闘集団へと成り下がった。 (女教皇……どうしてあなたほどのお人が……!) 建宮の慟哭は、それ以上続かない。 (……? この気配は何だ?) 付近に人が潜んでいる感覚とは違う。 そもそも潜入を得意とする天草式は、同種の行動をされても的確に察知する。 今彼らが感じているのは、より得体のしれない破滅の気配だ。 「教皇代理、これは!?」 諫早が思わず刀を抜いた。 と同時、それは飛来してきた“あるモノ”によってあっさりと切り落とされる。 ヴィィィィィィ!!と刃を回転させる、直径70センチほどの金属製円盤。 その名を、『エッジ・ビー』と言う偵察及び殺戮用の無人兵器だ。 「マズイな、どうやって我らの居場所を把握したってのよ!?」 30個の殺人ディスクが建宮と諫早に襲い掛かる。 それを遠くで操る人物が、退屈そうにこう漏らした。 『ようこそ、こちら側の世界へ。私とて「新入生」の身ではあるが、せいぜい歓迎しよう』 血と闇の溢れる世界には、当然『先達』がいる。 木原の策によって引っ張り出された悪意が、天草式に容赦なく襲いかかった。 8月20日時刻不明、『猟犬部隊』32番待機所 暗闇の中、五和は意識を取り戻した。 (ここは……私、一体……?) 自分の身に何が起きたのか、思い出すのにかかったのは数瞬。 (そうだ、あの人と戦ってて) 敵の施設へ入り込み、駆動鎧を着た女性と戦った事は覚えている。 (確かに七教七刃を当てたのに……突然意識を失ったんだ) つまりは、敵に捕らわれたのだ。 そう判断した五和が、逃げようとして固まった。 (目が見えないし体も動けない……拘束されてる?) 外部からの拘束にしてはどうも“妙”な感じがする、と五和は思う。 ベッドに寝かされているらしいのは分かるが、まるで自分の位置がつかめないのだ。 視界に至ってはそれ以上に違和感がある。 目隠しをされているはずなのに、“まぶた”の重みを感じない。 「あら、ひょっとして起きたのかしら?」 「!」 もぞもぞと動く五和に気づいて、隣にいたテレスティーナが楽しそうに笑った。 「……!」 自分を放せ、と訴えようとする五和。 そこで彼女は、初めて自分の声が出ないことに気が付いた。 「ああ、喚かれると嫌だから声帯は取っちゃったの」 「!?」 ギョッとする五和を無視して、テレスティーナはさらに衝撃的な事実を告げる。 「麻酔が効いてるから分からないのね。性能がいいのも考え物だわ」 その言葉は、心のない機械よりもなお冷たく感じられた。 「すでにあなたからは、眼球と四肢も切り取ってあるんだけど」 もしも五和に声があったなら、あらんかぎりの絶叫をしたに違いない。 「だってモルモットに、逃げるための機能は必要ないでしょう?」 そう言い放つと、テレスティーナは『学習装置』のスイッチを入れる。 「……、……!」 「だからぁ、声は出ねーっつてんだろーがよ!」 尚も叫ぶ五和にいらだったテレスティーナが、彼女の無防備な腹にひじ打ちを食らわした。 「!?」 あまりの痛みに痙攣する五和を見て、テレスティーナが嬉しそうに笑う。 「心配しなくても、あなたの言いたいことは脳波を読み取ってモニタリングしているわ」 「じゃないと、さすがに面白くないものね?」 精神の限界を超えたのか、それを聞いた五和が今度こそ完全に沈黙した。 「じゃ、実験開始よ。256の段階を用意してあるんだけど、せっかくだから最高記録の8は超えて頂戴」
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/1120.html
ステイル=マグヌスは専守防衛に長けた魔術師である。 一定のエリアにルーンを刻んで己の『陣地』とし、 その内側を戦場に選べば聖人や超能力者といった怪物たちともどうにか、伍する事ができる。 しかし長所を裏返せば短所になるのは至極当然のことで 彼は追跡戦を最たるものとし、討って出る戦闘ではその戦術的価値を大きく下げてしまう。 ただ一人を守れる力。 それは彼が渇望しているものであり、終着点に着いたのだと諦めてしまっても良かった。 だが、ステイル=マグヌスはそこでは終われなかった。 『ただ一人を守れる力』では、彼女の笑顔までは守れないのだ。 ならばどうする。どうすればいい。 方法は二つあった。 一つ、『陣地』を動かしてしまう。 フィアンマの『ベツレヘムの星』は極端にすぎる例だが 常に陣地として機能する動く要塞があれば、ステイルの求める力は手に入るかもしれない。 そして、もう一つは―――― ステイルとエツァリを見送った土御門は、タイミングを見て背後の暗がりに声を掛ける。 「もう出てきていいぞ」 「ったく、なーにカッコつけてんですかグラサン」 現れたのは戦闘修道女の部隊を統括する、アニェーゼ=サンクティスである。 「ま、ちょっと嬉しくなってな。……配置は終わってるか?」 「完了したから来てんですよ。それとさっきのアレですけど、 私たちは『必要悪の教会』にもイギリス清教にも鞍替えした覚えはありゃしねーんですが」 「十年経ってまだそんな事を言うのか……。だがどっちみち、助けてくれるんだろ?」 「ぬぐっ……ここでツンデレキャラになっちまうのは、何だか負けた気分になりそうです」 『別にアンタ達のためじゃねーんですからね!』というテンプレートをなんとか飲み込みはしたものの 十年慣れ親しんだこの街を守る、というアニェーゼの覚悟に揺らぎはない。 「素直で結構。さあ、おっぱじめるか」 「ま、私たちの出番が来ちまうほどの相手は、今のところ皆無ですが」 路地裏を抜け、陽が中天にかかっているにも関わらず 猫の子一匹――このタチの悪い二匹は例外だが――いないロンドンの街路に出る。 「……嬉しいってのは何の事なんです?」 周囲への警戒を怠らず、アニェーゼが徐に問いかける。 「…………ん、ああ。ステイルのことでな……」 「まさかあの早漏状態が好ましい、とか言うんじゃねーですよね」 まったく見習いたい口の悪さだ、と苦笑しつつ土御門はいらえを返す。 「言ってしまえば、そういうことだな。オレはアイツを昔から知ってるが、 十三になるかならないかって頃に一人の女に人生を捧げる覚悟を決めちまったんだ。 それだけでも大したイカレぶりだろう?」 「……私だって、そのぐらいで神にこの身を捧げてやすよ」 「そりゃあ失礼」 もちろんまったく悪びれずに大男は続ける。 「まあそういう経験を通して、あまりにも早く『自分を殺す』ことを覚えちまった。 ……考えてみれば昔からその辺は異常だった。だってそうだろう? 惚れた女が自分など眼中にもない事をわかっていながら、 それでも守る決意は一度だって揺らがなかったんだからな」 「…………美しい話です。良いか悪いかは別として」 自信の過去も悲惨なものであるゆえか、アニェーゼも神妙な顔で聞き入る他ない。 「ところが今はあのザマだ。インデックスを守れるのは自分だけだと先走って、 この大事な時に体調不良。…………完全に護衛失格だ」 「おお、辛辣辛辣ぅ」 「守る相手が遠くから近くに来た分、視野が明らかに狭くなってるんだな。あれは」 「……の割には嬉しそうじゃねーですか。最初の質問に逆戻りです」 「まあつまりだな…………」 土御門が結論に入ろうとした、その時。 「この話はまた後で、ってことだ」 「…………そのようですね」 土御門とアニェーゼの前に、十を超える影がぬうと現れる。 魔術でも科学でもなく、そのどちらでもある――――作戦コード、『半端者』の集団だ。 「おうおうおめでとさん、アンタらが最初の『通過者』のようだ。ここまでの旅路はどうだった?」 しかし彼らは一様に決して浅くない負傷を負っている。いずれも――火傷である。 「いやー長旅御苦労さまでしたぁ。お疲れなんじゃねーですか?」 それを見たアニェーゼの顔が嗜虐心に揺さぶられて凶悪に歪む。 隣の土御門が思わず一歩引くレベルの残念加減である。 「そんじゃぁまあごゆっくりできるように――」 パチンに彼女が指を鳴らすと、こちらも十人以上のシスターが ルチアとアンジェレネに率いられて姿を現し、『半端者』を取り囲んだ。 「防衛を重視、退却を禁止! 不退転の覚悟で、異教の友人を守り抜け!」 「し、シスター・アニェーゼ、ほどほどにしてくださいね……」 数の上で互角であろうと、アニェーゼ達と敵方には埋められない差がある。 それは体力であり、装備であり、練度であり――戦う理由だ。 「――豚肉市場に送ってあげちまいますから、よーろこんでくださいねぇぇええ!!!」 「聞いてないですよね……」 「だにゃー」 ------------------------------------------------------------- 女子寮についたステイル達を出迎えたのは、 火織、シェリー、オルソラ、五和、トチトリの五人だった。 「始まったのですね、ステイル?」 移動中も矢継ぎ早に使用していた携帯電話を耳から離すことなく、ステイルは火織の問いに頷く。 「僕の『陣地』の欠点を補うには君とシェリーの力が不可欠だ。行ってくれ」 「任せときな」 「私は建宮さんたちに合流します」 「ああ、頼むよ」 その時、階段から二人分の足音が聞こえてきた。 インデックスとショチトルも事態は把握しているようだった。 「連中め、もう来てしまったのか……」 「ショチトル、思い詰めてはいけないぞ」 「しかしだな、トチトリ!」 責任を感じずにはいられないのか、ショチトルが声を荒げる。 そこに、落ち着き払った声がかかった。 「ショチトル。深呼吸、してみましょうか」 「え、エツァリ……」 「いま自分たちにできるのは、自らの身の安全を確保し彼らを闘いに専念させること、ですよ」 張り付けたものではない、なによりもショチトルの不安をほぐす笑顔が向けられる。 「う、うん……お兄ちゃん…………」 「「「「…………」」」」 そのかわり、周囲の空気は何とも言えない味付けとなったが。 「ふふ、良かったねショチトル」 「これは……ご挨拶が遅れました。この度は誠、お世話になりました」 事の成り行きを微笑ましく見守っていたのはインデックスのみである。 ショチトルにばかり意識の行っていたエツァリは彼にしては珍しく、慌てて一礼した。 「あなたには、他にお話ししておきたい事もありますが……」 「すまないが後にしてくれ。事態は急を要する。最大主教、早急、に…………」 「……あ…………」 「…………ん」 「…………えと」 向こうが落ち着きゃ今度は此方で、ステイルとインデックスは視線を合わせようとしない。 いや正しくは、互いにチラチラ見合っているのにすぐに逸らしてしまうのだ。 「………………やってる場合ですか、この非常時に……!」 火織のぶつけどころのない嘆きはこの場の残り全員の、 「あらまあ、オセキハンをご用意した方がよろしいのでしょうか?」 「「「「………………」」」」 ……残り全員マイナス1の意見を代弁したものだった。 「……ゴホン!! とにかくそちらの三人とオルソラは、 最大主教と共に最も安全な場所に移る。四人分の『許可』は土御門が手配済みだ」 「…………ステイルは、どうするのかな?」 「……僕も、護衛としてランベスに詰めます」 インデックスが安堵のため息をつくのを見て、ステイルは内心の苛立ちを押し殺す。 (彼女にまで心配されるようでは…………僕は、何をやってるんだ) -------------------------------------------------------- 「終わりました、教皇代理」 「『元』、なのよな」 「……ふふ、仕事中と思うとなかなか昔の癖が抜けませんね」 ロンドン東端部の民家密集地帯。 とある一軒の屋根上に陣取るのは天草式十字凄教の建宮と対馬であった。 十年も昔の肩書で今なお男が呼ばれるのは、彼らの『女教皇』に 負けず劣らず建宮が慕われ、信頼を集めている証左でもある。 「五和がこちらに合流するという連絡も入りました」 「ん、了解。……しーっかしこれだけの範囲を人払いするのは一苦労だったのよ」 「王室の戒厳令がなければ現実味すらなかった話ですからね」 彼ら天草式が担当したのは今回の戦闘に市民を巻き込まないための工作である。 とはいえそこまで大がかりな術式を使ったわけでもないし、 外敵の侵入を戦闘前から完璧にシャットアウトしても意味が無い。 王室が鶴の一声で家の外に出るな、とのお達しを出して後は民家の入口を一軒一軒『人払い』。 ロンドン外周部の、更に狙われやすそうな位置に絞ったとはいえ ひたすら地味で根気のいる作業ではあった。 「土御門もどうやって戒厳令なんて引き出したのよなぁ?」 「……あの男のことですから、なにがしかの取引があったのでしょう」 まさかその材料が『ステイルくん弄くり認可権』とは誰も思うまい。 暫くすると、建宮のふところの端末が震えて着信を知らせた。 「おっと、はいはい建宮なのよなー」 『七人抜けた。そこから西北西に約百五十m』 電話越しに事務的な声が響き、すぐに切れてしまう。 「……そっけないのよな」 「建宮さんが彼に被せた損害を考えれば、ごく当然だと思いますけど」 「はっはっは、そんじゃあお前ら始めるぜ!」 無理矢理誤魔化した彼の言葉に呼応して、そこかしこに潜んで居た天草式の精鋭メンバーが動き出す。 五和も、いつの間にやら愛用の海軍用船上槍(フリウリスピア)を携え到着していた。 建宮と目が合うと慌てて逸らす挙動不審に、生温かい視線が注がれる。 「き、緊張感を持ってください!」 ( ( (それはこっちの台詞だ) ) ) 「……? なにやってんのよな、お前ら」 「教皇代理には関係ありません!!」 「だから『元』だっての……」 首を傾げた建宮は、まあいいかと切り替えて号令を掛ける。 「……んじゃあ、行くぞ! 『我らが女教皇様から得た教えは?』」 苦笑していた対馬、牛深、野母崎、香焼、諫早、浦上が、 そして憤慨から覚めた五和が鬨の声に代えて、一斉に応じた。 誰かに利用されるだけだった、あの三人の人生を変えるために。 ――――救われぬ者に、救いの手を!!―――― 第一の解答ですが、続きます