約 488 件
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/423.html
佐天「えっと、地上のビルがこうだから……」 答えに近づいたとて、相手は秘匿機関である。そう簡単には入口を提示してくれない 地下空間と言うのは、人の空間認識能力をかなり歪める。大阪梅田の地下街は、頻繁に工事などで経路が変更になることに加 え、その地上の街並みと相成って慣れているハズの人間ですら時折迷う程だ 当然、一般的に使用する人間が迷うようでは不便なので、地下駐車場の到る所に地図は掲載されている 毎日のルーチンとして使う人間はその様な地図を見ることは少なく、駐車して付近のエレベーターを使うので不便さを感じることは無い こうしてこの地下に何かあるはず、と探す人間にだけ牙をむくのだ もう何回目になるだろうか、壁にかかったこの地図を見るのは。ため息が出る 周りには車が多く停車されており、また入口 へ堂々巡りをしたという落胆が彼女を苦しめる 佐天(隠す目的があるならこの地図が正確に描かれているはず無いもんね) 佐天(しかし車多いな。深夜だってのに、みんな残業?お疲れ様すぎるなぁ) 広い上に無駄に区切りが多いこの空間は、幾度となく既視感を感じさせる。わざとそういう風に造っているのであろう 佐天(考えろ。この学園都市にはたくさんの能力者が居るんだ。私にはそれが無いんだから、考えて答えを見つけるしかない んだ) 佐天(でも御坂さんとかは自分の能力使って空間構造把握とかできるんだよね。やっぱり無能力者と違いがあり過ぎる) 佐天(はぁ、こんなところでコンプレックス出しても仕方が無いか。考えなきゃ。向うは能力者の襲来も考えてるはずなんだし) 佐天(そうだ、ここは学園都市なんだ。能力者の対策が無いわけないじゃん。構造を把握することが出来る能力者への対策装置があるハズ) 佐天(でも能力そのものをどうこうする装置じゃ、気付かれて偶然にここに何かが有るのが分かってしまう可能性もある) 佐天(てことは、無意識的に関係の無い方向へ誘導させるような仕組みが有るはず) 佐天(つまり、能力者への対策にもなって無能力者にも気付かれない) 佐天(そしてそれは、もし何かの影響を受けていると感じた能力者が居ても、簡単には気付かれない様に、あっても全く不思議の無いような隠れ蓑をしていると) 佐天(その上、仮にゴールが近くなると意識を強引に捻じ曲げるために、その効果を当然増やすように出来ている……) 自分の周りを見渡した。今自分が居る場所は車両が多く正確には分からないが、一見すれば、入口の付近だろう どんな駐車場でもそうだが、利便性の高い場所に多くの車が集まっている。この場合は地上へのエレベーターが近かったり、地下駐車場の入り口付近がそれに当るだろう。これは少しでも親などと一緒に巨大総合小売店に行った経験があればおのずと身に付く常識だ もう一度、地図を見る。付近には地上へ出る経路は近くにない。ということは、ここは出入り口の付近となる。地図上も、そのように描かれている 少女自身も、さっきまではそう思っており、また迷って同じところに出たのか、という感覚に陥ったのだ 思わず口がにやける。無能力者にとっては単純な罠だったのだ 佐天(わかっちゃいました分かっちゃいました分かっちゃいました!!もぉし能力者なら、きっとこの辺に設置されてる車に偽装した装置とかで干渉受けて見つけることが出来ない様になってたんだろうけど、) 停車している車両を膝で蹴る。普通の車両なら表面が凹むだろうが、へこみは見られず、足に伝わる感覚は重く固い感触だった 痛いが、嬉しい 佐天(アタシ、無能力者ですから!そんな物には引っ掛かからないのだ!!) 思わず出た笑みを何とか押さえて、道路にあるタイヤ跡を探す。もしここが本当に入り口付近ならば、タイヤ跡は目立たない だが、もしここが地下施設の出入り口の付近ならば、大型車のタイヤ跡が目立つハズだ 際立つ太く曲がりの無いゴムの跡が目に留まる 押さえられない笑みを浮かべて跡に沿って足を向けた 彼女にとって幸いだったのは、高度な電子機器を使用しなったこともある。相互情報共有装置を標準搭載している警備員以上の、つまり都市の部隊の大半は、防衛のシステムに完全に知らずの内に掌握され、彼女の様に手掛かりを発見することなく通り過ぎてしまうのだ どうせ地下駐車場だしと、手元にある高性能機器、携帯なんて時計がわりにしか使わなかったため、その仕組みにも引っ掛からない だが、彼女は見落としていることがあった。自らに付けられた、発信器の事を 乗っ取り対策を施された機器ですら紛れさせる空間で、そのような単調なシステムはもちろん無効化されてしまう 彼女を泳がせて探っていた側からすれば、これでは意味が無い。当然、人間を派遣して追いかけさせるという判断を下す 彼らからすれば、噂話程度しか考えていなかった地下施設の事実は、他の理事員を攻め立てる取引カードになり、噂どおりなら脅威である そこがアメリカとつるんでいるならば、なおさら見過ごすことは出来ない 破壊兵装を整えた少数精鋭部隊として、ブロックと呼ばれる部隊が、彼女の足跡を辿るべく、招集を受けていた 表面的には唯の睨みあいで終わったドーバー海峡での戦いの講和は、思った以上に早く終わった イギリス側であったアメリカが関与国の思惑通りに、第三国としての立場で場を仕切ったことが一つの大きな要因である イギリスもアメリカが味方に居なければ魔術師戦闘で押し切ることもできなかったし、フランスもそのアメリカが仲立ちして、イギリスに肩入れせず、無条件で終える事が出来るなら望ましいことである 表面的には事も無しで終わった戦いだが、イギリスとしては勝利国としてゴネたい所であるし、フランスとしても街が一つ焼かれた代償をどうにかしたい所ではあった つまり、裏の事情を知っている人間からすれば、簡単には終わらないだろうという予測が立っていたのだ しかし、それはことのほか早く終わった そのことが病院の一室で身を休めていた騎士団長に伝えられた時、当然彼も驚いた。だが、その理由として伝えられた情報が更に彼を驚かせる 騎士団長「IRAのテロだと?」※IRA=アイルランド共和軍 「はい。規模から、現在武装の確認されているリアルIRA150名以外の活動も見られます。可能性としては、武装解除して時間の経ってない暫定派の関与もあるかと」 団長「魔術師系統の動きはどうなっている?」 「確認が取れている者から予測するに、およそ100名規模のバックアップよう魔術師が有るかと。現在は陸軍SASが対応しております」 団長「IRAと長年戦ってきたSASは対IRAの専門家とも言える。故に血生臭い過去を持つ為、相手を挑発させることにならなければいいのだが」 「我々が戦っている間は大人しかったのですが、向うにも魔術に精通する者も居ます。恐らく我々が傷ついて動けないと知っての事かと」 団長「それでも、女王陛下と議会の寛容対話政策で近年ようやく力を削ぐことに成功したばかりだ。有る程度の備蓄武装があるとはいえ、まともにぶつかり合っては今のSASにIRAは対抗できない。それを補うために人道的でない方法を取れば世論が付かず自滅するだけだというのに」 「それが、彼らは公共機関を占拠し主張を繰り返し発表してはいるものの、人質などは採っていない模様で」 団長「馬鹿な!?いくら魔術師の援護があるとはいえ、彼らの武装程度ではすぐにSASに押しつぶされるはずだ!SASは何をやっているのか?!」 腹部に力が入り、傷口から溢れた血が滲むが彼は気にしない 「……どういう経路で入手したのか判明しておりませんが、SASの突入を6回凌ぐ程度の装備を持っていることだけは事実です」 6回という数字を聞いて、驚きは更に大きくなった。なるほど、それだけの戦力があれば人質など必要ないだろう。そしてSAS側には結構な被害が出ていることになる。現場は及び腰になって慎重になり、能動さに欠けるようになってもおかしくない 「北アイルランドは騒然としています。突入6回失敗という情報はまだ押さえられていますが、メディアに漏れるのも時間の問題。これまでIRAのテロ行為はイングランドでも行われました。もしメディアにSASの苦戦が伝われば、少なからず本島の市民をも混乱させることは確実かと」 団長「女王陛下やリメエア様は講和に加え、早期にそれらにも対応せねばならぬというか。これでは申し訳が立たない。今すぐにでも現地へ向かう」 「お待ちを。騎士団長殿がその様におっしゃられるであろうとあらかじめ予測しておられた様で、陛下からお言葉が。”ともかく先に傷を癒せ。最前列に怪我人を加えるほどの余裕は、我が国には無いからな”とのことです」 彼の傷は、科学的に見れば十分に重傷だがそこまでのものでは無い。しかしフランス方の装備していた剣や槍・矢じりなどの直接傷を付ける部位に込められた魔術が、彼の傷の治りを妨げている 団長「……そこまで仰られていては、動けんな。だが、軍事を統べる者としてただ休むわけにもいかない。今ある限りの情報をここへ。頼めるか?」 「了解。参謀官と共に用意いたします。しばらくお待ちを」 頼んだ、という言葉を背に広い病室から部下の騎士が出てゆく。彼もまた傷ついていた 皆疲弊しているのだ、騎士として頂点に配列する者がこの様でどうする、などと考えていたところへ、ノックの音。準備にしても早過ぎる どうぞ、と定型文を述べると、男が入ってきた 団長「確か、天草式の」 建宮「教皇代理、建宮斎字です。少々熱心にお話していたようですが、今、お時間は?」 団長「先程の者はしばらく戻ってこない。その間程度なら大丈夫だ。要件を聞こう」 建宮「それでは。この度は、内の女教皇を守りぬいて頂き、ありがとうございました。参ったのは、その礼です」 団長「そう固くならなくていい。それに、淑女を守るのは騎士の役割でもある」 建宮「いえ、我々も参戦していたんですが、他に手を取られていたので」 団長「天草式の奮戦は聞いている。感謝の言葉を言うのはこちらの方だ。私を含め、後方のアックア率いる相手に生き残っただけでも十分な戦果だろう」 自らが述べた後方のアックア、という言葉が頭のなかで反響する。あいつは一体何をしているのだろうか。まさか停戦と同時に帰った訳でもないだろう。イギリスに目的があるようだったが 団長「そう言えば、彼女、神裂火織の様子はどうなっている?意識は回復したのか?」 尋ねた騎士団長の言葉に、建宮斎字の表情が変わる 建宮「そのことで、少し。というよりそれが今日来た本当の目的でして」 団長「どうした?……まさか」 建宮「いえ、騎士団長殿が恐らく考えている様な状態では無いでしょうな」 団長「ならば、どうしたというのだ?」 建宮「……ひとつ、質問をば。我らの女教皇は 一 体 誰 の 手 で 前線から後退しました?」 団長「誰の手、と言われてもな。あの場に駆け付けた、恐らく米国の駆動鎧兵の一人としか言えん」 建宮「やはり、ですか」 考えるように視線を僅かに動かして、数秒の後彼は言葉をつづけた 建宮「実はですね、全英どの病院や教会にも帰還していないのです、我らの女教皇は」 タイヤの跡を辿った先に有った大きなシャッターの側の非常口の扉を潜ると、短い廊下があった 持っていたライトを点けて照らすと先にまた扉がある その扉には取っ手のようなものは存在していない。横に何かのパネルがあるだけだ。おおよそ、非常口にあるべきではないロック機構と言えるだろう 佐天(映画とかだったら、こう、銃弾で壊したら大概開くんだけど、ありえないよなー) 試しに銃を向けたが、これで壊れて二度と開かなかった場合が恐ろしく、諦める さりとて、持ってきてもいない爆薬などで吹き飛ばすことも出来ず、少女は立ちつくし、なんだかよくわからないパネルを操作する 佐天(こんなとき御坂さんが居ればちゃっちゃと開けてくれるんだろうけど。いや、どう考えてもそういうのは対策されてるよね。電気系統能力者は結構数が居るんだし) 佐天(初春なら、あー、いやあのこはコンピュータには強いけど機械に直接触れるのは向いてないよね) 佐天(ふむ、これ、指紋認証?いや、違う。指の血管で判別するタイプとの複合型?全然わっかんないけど、本人以外駄目なやつだよねぇ) 音ともに唐突に電子パネルに浮かんだ Matched and just opening please wait の文字 お、お、あぇ?とだらしのない気の抜けた声を挙げ、彼女の目の前で扉が動きだした 恐らくは廊下の一つなのだろうが、両側の壁で光の線がリズミカルに踊っている。聞こえる重い機械駆動音 明らかに異質な空間であるが、彼女はそれを不思議にも違和感なく受け入れる。まるで経験したことがあるかのように。まるで知っている場所であるかのように 少し複数に道が分かれる場面もあったが、迷わず廊下を抜けて次に有ったのは少し広い空間。そこは薄暗く何かの支柱が多く突き出ている 持ってきた懐中電灯でその中の一つを照らし上げる。無機質な金属の円柱 佐天(なんだろう、これ。知らないはずなのに 中 身 を あんまり見たくないような) 彼女自身、なぜ中身が有るということを知っていたのか分からなかったが、そこまで頭が回らなかった 小さなモニターに浮かぶ幾らかの英語の中から適当に選択・操作し、円柱が動き出した 金属で覆われていた部分が上がり、現れたのは何かの培養液に浸かった複数の脳。各脳には電極と線が刺さり、それが上下に走っている 佐天(あ、あ、あ、やっぱり見たいものじゃなかった。この部屋に有る奴、きっと全部こうなんだろうな) 視線を円柱から避けて、他の部屋に繋がる扉のようなものが無いか見まわす。有った その扉をくぐって有った先は同じように広い空間 所々に同じような円柱形のものが見えるが、大きさは所々違っていたりする 複数のモニターと一つの大きなデスクに向かって、白衣を着た何者かが座っていた 少女にはその見た目に覚えが有る その人物へ向けて、左脇から取り出した拳銃をまっすぐに向ける 銃なんて扱うのは初めてのはずだが、右腕を少し伸ばし目にして左手を右手に添えるその持ち方は、命中率と即応性を備えた持ち方であり、少なくとも中学生の1少女が知るべきものではない だが、そんなことは当然彼女の脳内で疑問としても浮かばない ?「予測より随分と早いが、やはり来たのだな」 白衣の老人がゆっくりと呟き、佐天の方を向く。その顔はやはりあの老人だった。恐らく、木原幻生と呼ばれる老人 幻生「その動作まで予想通り。だが時間は早過ぎる。内積した疑問も少ないのだろうなぁ。なぜ、私に銃を向ける?」 佐天「とぼけないで欲しいですね。私のクローン使って研究したり、戦いの道具にしてるのは一体誰ですか?」 幻生「……それが君をここまで連れてきた理由かい。ふむ、時間的には相応だ、仕方ない。それでも予想を破ったのは興味深いといえるか」 佐天「とにかく、今すぐに研究と製造を止めなさい!!既に生まれた子は解き放って!!」 幻生「こんな狭い空間じゃ、怒鳴らずとも聞こえている。もっと賢くなるべきだ」 何かの飲み物をすすり、マイペースに老人は口を開く 幻生「今の君では程度が低すぎる。ふふ、外はもう朝方か。鈍った思考ではなおさら気付きもしないだろうさ」 振り返って、老人は簡単にキーを叩く。同時に、佐天の意識は急速に睡眠状態へ移行した 太陽が昇り始める時間帯。文字通り頭がお花畑の少女は目を覚ます どうやら随分と長い時間寝ていたようで、記憶があやふやだ。自分は一体いくら寝ていたのだろうか 初春(えっと、昨日は非番で佐天さんと一緒に……?) 初春(あれ、そこからの記憶が無いや) 起きた状態が机の上のパソコンを前にしてうつ伏せだったので、いわゆる寝落ちしたのだろう しかし不自然だ。寝落ちならば、なぜ目の前のパソコンは落ちているのだろうか 少し汗臭い自分の体も気になったが、まずは目の前の端末に電源を入れる 数秒で立ち上がったそれを操作して、異変に気が付く 初春(おかしいなぁ。昨日このPC立ち上げてないことになってますね) 基本的に毎日立ち上げているので、学校から帰っての数時間にログが残っていないことなどまず無いのだが、そうなっていた 違和感を感じて、パソコンの履歴では無く、ネットワークの履歴を調べる 同じように昨日の使用履歴は無かった。だが、それでも違和感は拭いきれない 初春(なら、使用ログの編集履歴は……) 当り。本来の彼女なら、完全に使っていないことにするならば、ここも分からない様に手を加えて有るはずだ 手抜きとも考えられるそれは、自分らしくない。というより命取りだ こんなことをする場合と言うのは確実に学園都市の機密内容に踏み込んだときということになる だが余程眠かったのか、全く記憶が残っていない。何を調べたのか。どうして調べたのか。なぜ中途半端な工作をしたのか。なぜ 起きたときPCが落ちていたのか 記憶が無いにしては不自然すぎる。せめて昨日何を調べたのか分かればコレは解決するだろうか とりあえず書庫にアクセスしてみる。今まで対ハッカーの手法として確立させた方法で自分の動きを洗い出す 書庫で佐天涙子についての情報に触れ、そこから全く権限の違う場所へとんだようだ 初春(なんでわざわざ書庫まで開いて佐天さんの情報なんかを調べたんでしょう?) 調べた先に現れた組織名には見覚えがある。異様に権限が厳しく、というよりこのサーバー管理者しかアクセスできない様に設定されているデータベースに辿り着いた こんな所へアクセスした記憶は、やはりなかった。どうして佐天涙子などというどこにでもいる無能力者から、こんな堅牢に辿り着くのか 昨日行ったことをもう一度繰り返し、それでも思い出されない記憶 こうなってくると残す手掛かりは佐天涙子本人だ。学園都市の機密に手を付けた証拠を片っ端から消し去り、可能性的には起きているかもしれないので、友人に電話をかける。だが 『おかけになった番号は、現在電波が……』 「せっかく俺様が手をかけた術式を援護に出したというのに、使えんな」 言葉に怒気を孕んで、右方と呼ばれる男はなじる 傾国「使えないのはどちらでしょうか。指揮をとっていた側にも問題があるのでは?」 負けじとその前にたたずむ女も言葉を突きつける フィアンマ「自国戦力の不甲斐なさを押し付けるな。だが、確かに俺様の予想に反してメリケン野郎が強力だったのは事実だ。それは認める」 傾国「……わざわざ貴方がこんな戦いに参加したのは、ローマ正教の援護という形式だけでない理由が有ると見受けていましたが」 フィ「あぁ、それな。どこかの不甲斐ない部隊が原因で潰れた、と言えるかな」 目の前の女が、腰にかかる剣に手をかけた フィ「そんなどこの国にでもあるナマクラなんぞ俺様には脅しになんねぇよ。抜いてはそこが知れるぞ、フランスの切り札さんよ」 瞳に怒りを浮かべるも、その可能性は否定できない。フランスの聖剣がこの物には通じないという可能性は 傾国「バチカンの動きはこちらも把握しております。が、二度目の戦火は期待できぬかと。外圧に対処していたら、内政が疎かになったようで」 フィ「面倒だな、移民の国も。例え7割がカソリックでも、2割のイスラムに乱されるようでは」 講和が早期にまとまったのは、英国同様仏国も国内で問題が起きたからだ。旧仏領からきたイスラム系アフリカ移民の不満の爆発したというのが原因だが、どうも背後に大きな影を窺う事が出来る 傾国「それら不満の方向性を変えるための戦いでも有りましたから、一都市を焼かれたままで賠償も無しでは、悪化もおかしくは無いかと」 フィ「まぁ、馬鹿馬鹿しい両者無条件なんてものの原因のアメリカも欧州での海軍戦力を同じ攻撃で焼かれたようだがな。関与しなければ被害などなかったろうに」 傾国「あら、ご存じないので?撃沈とみられた第6艦隊の旗艦、同型艦が大西洋を本国へ向けての航行途中を確認されていますよ」 無論、無傷で。一体どこ所属の船なんでしょうねと付け加える フィ「……やってくれやがった。いや、乗せられたのは俺様じゃないが、間接的には含まれるか。思い通りにされるというのも気に食わないな」 フン、と息を吐いて頭脳を回転させる フィ「どうやら時代遅れの大国って評価は改める必要が有るようだな。姑息とも言えるがこの時勢だ、評価を改めた以上、回りくどい方法はかえって危険か」 女の前から身を離す。それを止めるかのように女が声をかけた。最大の疑問の真意を問いたかったのだ 傾国「……この戦いの事といい、バチカンが躍起になっているようですが、やはりあれは事実と?」 フィ「馬鹿か?フランスの聖女様が聞いてあきれるぞ。そうでなければ俺様が慌てて出てくるような羽目にはならないだろう。どこぞの教皇は必死になってまとめを図ろうとしているが、急過ぎる。イギリスとの戦いもこの様だ。間に合わないだろうな。せいぜい巻き込まれない様に、いや、結果は同じか。ま、頑張ることだ。じゃあな」 蛙医師「やぁ、おはよう。10時半、うん、予測より少し早いくらいかな」 医師の問いかけに、だが、彼の目の前の上条当麻は答えない もう一度体を見回し、脈や内臓の有るべき場所を擦る。元通りだ。恐ろしいほどに 頭をひねって原因を考えていると、目の前の男はようやく意識が有るような仕草をする 上条「あー、すんません。ちょっと集中してて」 蛙「ふぅん。まぁ、意識がはっきりしてるんなら良いんだけど……大丈夫かい?」 上条「まだ万全、って訳じゃないけど、こうやって会話する程度は」 蛙「予定より早いんだ、当然かな。ん、その様子なら大丈夫そうだ。面会謝絶も解除しておこう。表向き、君は階段から落ちて検査入院しているということになっているから、それで対応してくれるかい」 言って、ふと、上条の横にある総合的に人間の生命反応を示す機器にもう一度視線を移した 蛙「……質問していいかい?」 上条「っ、はい」 蛙「君はまだ、だね?」 上条「………………、はい」 蛙「そうか。ま、ここは君の部屋みたいなものだから好きなだけ居ると良いよ。何か協力できることとか、欲しい物とか有るかい? 」 上条「いや、そんな長居する訳でもないんで」 蛙「うーん。君からは偉く良い物を貰ったんだし、その対価だと思ってくれていいんだがね」 上条「えっと、んじゃあ、付近の無線ネットワークに接続できるような端末とか、そんなやつを。有ったらでいいです」 蛙「君のスペックじゃあ、既製品はついていけないだろうからね。そうだ、彼に作った物の予備があったから、それを調整したものを譲ろう」 上条「じゃあ、それで」 蛙「今日中には調整を終えるから、待ってくれるね?動きたいのは分かるけど、この数字じゃあ退院は認められない。君の驚異的な回復幅を見積もっても、とりあえず完成するまではここで休んでで欲しい。なに、退屈はしないだろうさ」 言い残し、部屋を出る蛙面の医師 残された上条は、さりとてやることも無く、ただ視線をうろつかせるだけ 部屋にノックの音が響く。看護師だと思ってどうぞと述べる 「お、お邪魔します。気分は良いでしょうか?とミサカは具合を窺います」「ちょっと、抜け駆けは許しませんよ、とミサカ は単独行動に目を光らせます」「ち、考えることは同じですか、とミサカは」「あの、私も居ますからねと(ry」 一方「ほォう。そいつはめでてェなァ」 打止「それで私もわざわざ病院で定期健診する回数が減らせるの、ってミサカはミサカは大喜び! 」 彼にとっては久々の休日だった どこかへ消えた第二位の削除が当面不可能となり打ち切られた為に休みとなったのだ 一方「他にも患者ばっかりなハズなンだが、片手間でそンな微小機械を開発しちまうたァ、流石としか言いようがねェな。先端機械開発者としてもトップクラスだ」 打止「でも開発に専念されると私達の調整してくれる人が減っちゃう事になるし、貴方のそれが壊れたとき、捕まらなくてどうしようもなくなっちゃうかもね、ってミサカはミサカは真面目に考えてみたり」 首にかかるチョーカーを指差しながら、幼い少女は応えた 一方「こいつの調整、ねェ。そう言えば、昨晩瞬断が頻発してたが、なンか有ったのか?」 打止「え、ホントに?!ってミサカはミサカは新事実に驚きを隠せない!」 頭に指を当てて、軽く左右に振る。どうやら少し考えているようだ 打止「ホントだ。学園都市の妹達だけネットワークから切り離されてる瞬間が所々に有ったみたい。でもなんでだろうってミサカはミサカは原因不明って顔に表してみる 」 一方「管理者のお前が理由分かンねェなら、どうしようもねェな。まァ、微笑機械を打たれる時についでに頭、見てもらうことにしろよォ」 打止「あれ、心配してくれてるの?ってミサカはミサカはあなたのちょっとした気配りに喜んでみたり」 一方「ハァ?お前が不調だとMNWに影響出て俺の行動に支障が出るかもしらねェからに決まってんだろ」 明らかに視線を逸らして言った一方通行を見て、打ち止めは頬を緩める 打止「素直じゃないなぁ。そんな悪い子にはお仕置き、ってミサカはミサカはネットワーク管理者権限を乱用してみる」 一方「天下の往来で死んだ魚のモノマネさせようってか?止めろ馬鹿、止めてください」 打止「それじゃ、今日一日は私の言うこと聞いてね、ってミサカはミサカは脅してみたり」 一方「ハァ、仕方ねえな。付き合ってやらァよ」 打止「わぁい。見たい映画があったんだよーってミサカはミサカははしゃいでみる」 一方「あーあー、でもまずは病院に行きましょーねェ」 元気な子供の後ろ姿を見守るように、彼はすごすごとその子供の後ろをついて歩いた 上条「おお、妹達か。ちょうどいいや、暇なんで話し相手になってくれるか?」 部屋の入り口で留まる賑やかな妹達を、上条当麻は招き入れた 土御門「この都市自体の破壊を狙う連中?冗談にしても、もっと捻ってほしいぜよ 」 アレイスター「残念ながら冗談のつもりは無いのだよ」 土御門「そんなことが可能なら今頃バチカン連中が大挙して押し寄せてる。冗談でなければ何だ」 アレ「君たちも心当たりは有るだろう?」 土御門「クローンみたいな連中を言ってるなら筋違いだ。あのレベルの兵隊をそろえるのが都市外で無理なのは一番お前が知っているはずだろう」 アレ「……ふむ。では少し外堀から説明しようか。私は統括理事長という肩書きで彼らを管理している。彼らのパワーバランスを操作する事で維持している保守構造は君も理解している通りだろう」 アレ「しかし、そのバランスを保って来れたのは、私という権限に肩を並べる存在が無かったから、という限定下だったからでね」 土御門「つまり、比類する者が現れると、統括理事達を抑え込めないとでも言いたいのか」 アレ「その通りだ。察しが良いな」 土御門「それこそ冗談だろう。この地球上、どこにそんな奴がいる。造反が増えているのは事実だろうが、だからと言ってこの都市自体の破壊をもたらすような戦力が背景であるとは言えないだろう」 アレ「そう言えるのは、学園都市がこの世界中で最も科学が発展し、巨大魔術組織に狙われても押し返すことが出来る程の戦力と経済力を保持している、という前提を君が持っているからだな」 土御門「なにが言いたい? 」 アレ「君の想像を超える存在がこの学園都市に干渉している、と言えば話が早いか」 アレ「その存在は最近科学に飽き足らず、魔術にも食指を伸ばしている。土御門元春、君は先のイギリスとフランスでのいざこざについて詳しく知っているかな?」 土御門「お前の言う存在が原因の仕事がせわしなくあったおかげで、その辺の学生と変わらない程度だ」 アレ「ではまず、君の本国と連絡を取ることだな。そうすれば、君にも見えてくる現実があるだろう」 土御門「じゃあ、そうさせてもらう。呼び出しておいて、核心を隠した言い方。全く持っていちいち気に障る」 アレ「すまない。だが、君はあまりにも情報不足のようだ。少々この場所に染まり過ぎたか」 ビーカーの中に浮かぶ人間が視界から消えた。というよりむしろ、土御門の方が彼の目の前から消えたのだ 結標「今日は結構長かったんじゃない?」 土御門「ここの住人と話をすると気疲れするのが難点だにゃー」 結標「私も話してる間中待たなきゃならないし、面倒ったらありゃしないわ。こっちもこっちの用事があるっての」 土御門「本当にアイツは他人に迷惑をかけるのが得意ぜよ。ま、俺も話終わったし、あわきんもよーじとやらに行けばいいんじゃないかにゃー」 結標「そうさせてもらうわ。これでまた急に呼び出し食らったら、私が乗り込んで奴の心臓に杭を埋め込んでやる」 土御門「物騒だにゃー。だが女の子を急に呼び出すなんてアイツも良い御身分ぜよ。ま、俺も俺でやることできたっし、駅まで飛ばしてくれ ると助かるんだがにゃー」 結標「人をタクシー代わりに利用しようとするあんたも十分良い身分だと思い知りなさい。ま、特別に許したげるわ」 海原「人払い、ですか」 某女子中学生の登校を見送って、やることも無くなった海原(仮)は消費しかねた生活雑貨を捨て、買い換えようと街を歩い ていた そして、あからさまに周りの人間がいなくなった空間に突入した 海原「わざわざ自分を狙うなんて。さて、誰でしょうか。出てきたらどうです」 彼の後ろに有った建物の自動ドアが開く ドアの駆動音が聞こえるとすぐに懐に隠し持つナイフ形の霊装に手を伸ばした 正確に標的だけを絞らなければならない彼の装備は、性質上一発の攻撃を外すわけにはいかない ドアから距離を取るように前へ跳びつつ体を反転させて自動ドアの有る建物の方へ体を向ける ?「簡単に背中を取らせすぎだ。貴様を頼るのはやはり無駄なようだな、裏切り者」 海原「その声は、ショチトルでしたか。良かった。もう少しでバラバラにしてしまうところでしたよ」 言葉を聞いて少女は彼の左脇の辺りを見る。なるほど、黒曜石のナイフの先端が少しだけ上着を切り裂き、その切っ先は彼女に向いていた ショチトル「なるほど、組織を裏切るだけの技量は有るということだな」 海原「眼鏡にかなってうれしいところですね。それで、あなた今頼る、と言いましたか?」 ショ「そうだ。組織を裏切り、学園都市で安穏と暮らしているだけの貴様にな」 海原「寝首を掻くにしても、もっといいやり方があるでしょうに」 ショ「その通りだ。だが、頼る、と言ったのは間違いではない」 海原「自分は組織の裏切り者なんでしょう?なぜ頼ることに?」 ショ「……組織の連中が前にアメリカの学芸都市を襲撃したのだ。それは成功したが、報復が先日あって…… 」 ショ「国境沿いの前線基地はもちろん、本部まで一気に制圧された」 ショ「場所は完全に秘匿のハズだったのだが、資金源の麻薬取引から手が伸びてきて」 ショ「奴らの開発した駆動鎧で一気に、だそうだ。そして私と同様に学園都市に潜入していたテクパトルとトチトリからも、本部陥落の連絡の後からずっと音信不通になった」 ショ「彼らがやられたとすると、持っていた原典が奪われた可能性もある」 海原「原典?!なんでそんな代物を持って前線に繰り出したりしだんです?なにが起きたらそんなことに」 ショ「老人は死んでテクパトルが実権を握ってしまったからな。本拠地を失い、迷走していたとはいえ指導者を失い、翼ある 者の帰還は事実上完全崩壊だ」 ショ「身分自体は貴様も私も同じものとなった。……だが、私はこれを持っている」 少女が褐色の肌をグイッと押し付ける 皮膚に覆われている肉が有るであろう部分が怪しく光を発し、皮膚の内側に書かれた文字が海原の衣服に照らし写される 何気なく、その文字を読もうと脳が行動を起こした瞬間、彼の頭脳に途方も無い衝撃が走る 「ぐ、う、ァァあああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」 耐えられず、彼は叫び、文字から視線をそらす 海原「ッ、な、なぜあなたがこれを、こんなものを!?」 ショ「全て貴様を粛清する為だ。だが、皮肉にもこれを貴様に使わずに済んだことで、安心しているんだ、私は」 海原「こんな物の力を借りれば、自己崩壊します。あなたは私を殺す為に自分をも殺すつもりだったんですか?! 」 ショ「そんなこと、決まってるじゃない……。貴様が、お兄ちゃんが裏切ったから、こうなった!!私はどうしようもなかった!!」 海原「……テクパトルですか?いや、もう誰が原典に体を取り込ませるなんてことをやったかなどは関係ないですが」 ショ「……貴様を殺す為に、学園都市に入ったテクパトル達をわざわざ追って殺したとすれば、アメリカの連中は原典に目を付けて ることになる」 ショ「裏切り者を粛正する為ならともかく、私達に益無く奴らにただ奪われるだけなんて許されない、許したくない」 ショ「だから貴様を頼ったんだ。もう、私には貴様しか居ない。……だから助けて、お兄ちゃん……」 少女の最後の呟きのような声は、だが確かに、男には伝わった 土御門を移動させて別れた後、結標は連絡のあった所へ向かっていた 連絡の主は不明。しかしその内容が、彼女の心を揺らす 【仲間を解放したくは無いか】 たった一言のその内容が、彼女は無視できない 彼女の事を調べれば、それなりの力のある組織ならば、彼女がなぜ暗部などに居るのかわかる。それは不思議でない だが、少し考えればわかることだが、学園都市内の組織が彼女にこのように言ってくること自体が危険なのだ 彼らは彼女にとって最高の人質であり、学園都市最高クラスの空間移動能力者を好き勝手できるツールとして、学園都市は失いたくない 故に、彼女にそんな連絡をとってくる組織は学園都市にはない。仮に現れても、その組織は一瞬で潰れてきた 彼女の能力に目を付けた連中はたくさんいたが、故に目を付けられ、暗部の手によってこの世から消されてきた。彼女自身、暗部の仕事で自分を引き抜こうとしてきた組織を潰したこともある そういうことがいくらかあり、最近では彼女にそういった手を出してくる組織などいなくなった。同時にそれは彼女に学園都市の管理下でしか彼らを救う事が出来ないという確固たる事実を知らしめる働きをももたらした 結標(ほんと久しぶりだわ。またどうせくだらない結果に終わりそうだけど) 結標(手紙、なんて古典的な方法を取ってきたのはあなた達が初めてよ。ご丁寧にサラシの中に捻りこんでくるなんて、一体 どうやったのかしら) つまり、彼女が気になったのはそこだった 自分が女性であるということを圧倒的に他人へ知らしめるその部位へ、メモのような紙が入っていた事である 彼女自身、そんなところを触れられたことなどここしばらく無い 手品のようななんらかの方法で無いならば、それはかなりの精度を持った空間移動能力者が勧誘側にいるということだ そんな存在が居るとすれば、もちろん結標という存在は改めて必要でないということになる つまりその組織の目的がグループの結標淡希を、つまるところ学園都市を牛耳る者たちの結標淡希を奪い、その戦力を低下させようとたくらんでいるということになる 自分を戦力に取り入れることが目的では無く、敵の戦力を削ぐためという目的は今までにない そこまで胸元に挟まっていたメモから考えて、そこに同時に記されていた場所へ、彼女は向かった 結標(もしかしたら、今回は本当にうまくいったりなんて、期待するだけ無駄よね) その程度に彼女は考えを留めていた 昼。昼食が終わったころに後輩は現れた 「御坂ー。またあの子来てるわよー」 そう言われて教室の入り口を見ると、後輩がうれしそうな表情で手招きしていた 御坂「はいよー、何の用?」 白井「いえちょっと。こんなところで立ち話もなんですので、すこし歩きませんか?」 御坂「うーん。まーいいわよ。次の授業移動教室じゃないしね」 白井「それでは」 白井に連れられ、しばらく他愛のない会話を続ける すこし人が少なくなったところで、白井が話題を変えた 白井「お姉さま、当麻さんの面会謝絶が、今朝解除されたようですわ」 御坂「え、ホントに?! 」 白井「はい。表向きは階段から落ちたので頭脳検査の為に入院したということになっていますが」 御坂「その方がアイツらしいけど、それなら逆に今朝まで面会謝絶だった理由にならないわね」 白井「ええ。あの現場で大怪我をして入院、の方がよっぽどしっくりきますわ」 御坂「だと今度は、大怪我ってのが噛み合わないのよね。こんなに早く面会謝絶が解かれる訳ないし」 白井「まぁ、それは実際に会って見て、判断をしたらいいではありませんか」 御坂「そうね。放課後にでも会いに行きましょ。黒子、今日は非番だったわよね」 白井「私の予定を覚えていて下さるなんて感激ですの。放課後は校門でお待ちしておりますわ」 御坂「わかったわ。で、それで、こんな人気のないところに連れてきた理由は何?」 白井「佐天さんが、今日登校していないそうです 」 御坂「そう。それで?」 白井「初春の調べでは、昨日、第一学区で男性と共に路地裏から出てくるのをカメラがとらえております。ちなみに佐天さんは私服で」 御坂「……状況だけで考えたら、買春して帰れなくなってのが妥当ね」 白井「性格を考えたらそんなことは無いと思うんですがね。でもそれだけじゃありませんの」 白井「昨日学校から佐天さんと共に帰った初春が、今朝までの記憶を無くしており、その間に初春自身と思われる者の手で第一学区について調べていたそうです」 御坂「……それも聞いたら、まるで三流の推理小説じゃない。最悪なのは、佐天さんが何かに巻き込まれたことが現実ってことね」 つづく
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2376.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある世界の名作劇場 シンデレラ的なヤツ むかしむかし、シンデレラという とてもうつくしい むすめがいました。 ですがシンデレラは、いつもいじわるな ままははと あねたちに いじめられていたのです。 シンデレラ 「あ~もう! 何で私がこんな事【いえのそうじ】しなくちゃいけないのよ!!」 意地悪な継母 「ほう…口答えとはいい度胸だな御坂。門限を破ったのはお前のはずだが?」 シンデレラ 「あ…すみません……あと一応、私の名前はシンデレラでお願いします……」 意地悪な姉A 「おいシンデレラ、部屋の隅に埃がたまってるわよ。 ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね」 意地悪な姉B 「くすくすっ。 掃除もろくにできないなんて、シンデレラは本当に役立たずねぇ。 居候のくせに、ちょっと奉仕力が足りないんじゃないかしらぁ?」 シンデレラ 「いや、ハマりすぎでしょアンタ等!!」 意地悪な継母 「まあいい。私達はこれから、城の舞踏会に行ってくる。お前は掃除を終わらせておけ」 そう、いまおしろでは ぶとうかいがひらかれているのです。 うわさでは、おうじさまが およめさんを えらぶために かいさいしたのだとか。 こんきを のがした ままははは、たまのこしに のろうと ひっしです。 3にんが いえを でたあと、シンデレラは おおきく ためいきを つきました。 シンデレラ 「はぁ~…私も舞踏会行きたいなぁ…… あっ、いや、べ、別に王子のお、おおおお嫁さんとかそんなのには興味ないんだけどね!!? ただ私は、綺麗な服を着たり、豪華な料理が食べたいだけなんだから!! それだけ!! それだけよ!!!」 だれに たいしてかは わかりませんが、シンデレラは いいわけを しました。 シンデレラは ツンデレラ だったのです。 シンデレラ 「……何て言っても無理か…綺麗なドレスなんて持ってないもんね……… でも…やっぱり行きたいな………」 ??? 「その願い、叶えてあげるんだよ」 シンデレラが ポツリとつぶやくと、どこからともなく こえが きこえてきました。 ふりむくと、そこには しろいふくをきた まほうつかいが たっていたのです。 魔法使い 「今から短髪を、お城に連れてってあげるんだよ」 シンデレラ 「えー…? アンタが…?」 魔法使い 「むっ! そこはかとなく馬鹿にしてるね? 私の頭の中には、10万3000冊の魔道書が入ってるんだよ!」 シンデレラ 「じゃあ、本当にアンタが何とかしてくれるの?」 魔法使い 「それは無理。魔力がないから、私には魔法は使えないの」 シンデレラ 「……………」 魔法使い 「そ、その代わりに私の弟子が魔法を使うんだよ!!」 シンデレラ 「弟子…?」 魔法使いの弟子A 「……カボチャの馬車のお婆さん。ガラスの靴をくださいな」 シンデレラ 「ダメダメその人は!」 魔法使い 「何で? シンデレラなら、これ以上の人材はいないかも」 シンデレラ 「いやいやいや! その人がでてきたら、私の存在意義がなくなっちゃうから! どっちがシンデレラか分かんなくなっちゃうから!!」 魔法使い 「むぅ…短髪はワガママなんだよ。 まぁ、仕方ないから、もう一人の弟子を紹介するんだよ」 魔法使いの弟子B 「当然。禁書目録の頼みとあらば、無碍にする訳にはいかんな」 シンデレラ 「えっと…こちらは?」 魔法使い 「彼は『黄金練成』っていう、自分の思い通りに現実を歪める魔法を使うんだよ」 シンデレラ 「うわぁ……」 まほうつかいのでしBは、くびすじに はりを さしながら じゅもんを となえました。 魔法使いの弟子B 「カボチャを馬車に。用途は移動。車輪は四輪。外装は絢爛豪華に。 ネズミを白馬に。毛色は佐目毛。スタミナは極力無限大。 ボロの服をドレスに。種類はイブニングドレス。生地はサテン。細かく宝石を散りばめよ。 トカゲを浜面に。髪は茶髪。服装はジャージ。顔は適当で十二分」 すると、カボチャはばしゃに。 ネズミははくばに。 ボロぬののようなふくはどれすに。 トカゲはけらいの はまづらになりました。 浜面 「いやいやいや! 俺だけ何で名指し!? 顔が適当ってのもおかしくね!?」 シンデレラ 「別にいいじゃない。運転手が必要なんだから。アンタ乗り物運転するの得意でしょ?」 浜面 「こんなローテクでアナログなもん、運転した事ねぇよ!!」 魔法使い 「ついでにこれもあげるんだよ。 はい、ガラスの靴」 シンデレラ 「あっ、綺麗……」 魔法使い 「あ、そうそう短髪。 魔法は12時になったら解けちゃうから、急いだ方がいかも」 シンデレラ 「ゲッ!マジで!? ちょっと!急いで出発して!!」 浜面 「ちくしょう分かったよ! どうして女ってのは、こう人使いが荒いんだ!?」 シンデレラは、おおいそぎで おしろへと むかいました。 いっぽう、おしろの ぶとうかいかいじょうでは、おうじさまが ためいきを ついていました。 王子 「不幸だ…」 メイド 「おいおい、どうかした王子ー? これはお前の為に開かれた舞踏会だぞー」 王子 「結婚相手探すったってなぁ…自分がモテない事ぐらい自分で分かってますよ。 それに、ここに集められた人たちだって、迷惑だろうしさ」 メイド 「……王子は少し、自分を過小評価しすぎだぞー」 おうじさまは じぶんに じしんがありません。 招待客A 「王子様。私と。踊って欲しい」 招待客B 「私の手を取って頂けると、大変嬉しいのでございますが……」 招待客C 「お、お、お、王子様!! おしぼりをどうぞ!!」 なので、かのじょたちに なんど さそわれても、「どうじょうしてくれている」としか おもえなかったのです。 しねばいいのに。 と、そのときです。 おしろの とびらが ギギギッとあきました。 浜面 「いいか? もう一度確認しとくけど、12時までだからな」 シンデレラ 「分かってるわよ!」 かいじょうに シンデレラが あらわれると、「あのむすめはだれだ」と まわりは ざわつきはじめました。 王子 「え~と……どちらさんでせうか?」 シンデレラ 「べ、別に誰だっていいじゃない。それよりもアンタ、舞踏会なのに誰とも踊らない訳?」 王子 「あ、いや、そういう訳じゃないんだが―――」 シンデレラ 「し、し、仕方ないわね!! と、特別に私が、あああ相手になってあげてもいいけど!!?」 シンデレラは、おうじさまを めのまえにして うえからめせんです。 王子 「…いや、別にいいよ。そもそも俺、このパーティーにあんまり乗り気じゃn」 おうじさまが ことわろうとしたしゅんかん、 シンデレラは おんそくの 3ばいいじょうの はやさの コインをとばしてきました。 (これを せんもんようごで 「レールガン」といいます) おうじさまは あわてて それを みぎてで うけとめます。 シンデレラ 「特別に! 私が! 相手になってあげてもいいけど!?」 王子 「あ…はい……お願いします………」 ふたりは てをとりあいながら ダンスをしました。 ですが、おうじさまは しゃこうダンスが あまり とくいではありません。 シンデレラ 「ちょ、ステップ違うわよ!」 王子 「し、仕方ないだろ!? あまり慣れてないんだから!」 シンデレラ 「…アンタ王子よね?」 そのとき、おうじさまが うっかりシンデレラの ドレスのすそを ふんでしまったのです。 ふたりは たいせいをくずし、うしろに たおれこみそうになりました。 シンデレラ 「キャッ!」 王子 「危ね!」 ですが かんいっぱつ、ふたりはもちこたえました。 しかし そのかわり…… シンデレラ (ち、近い!! 顔が近い~~~!!!) ふたりの かおが ほぼ0きょりまで ちかづいていたのです。 まるで このまま キスできそうなじょうきょうに、シンデレラは ギュッとめをつぶりました。 ですが、そのときです。 ゴーン!という かねのねが むじょうにも なりひびきます。 それは、12じをしらせる とけいのおとでした。 シンデレラはハッとして、いそいで はしりだしました。 王子 「お、おい! 急にどうしたんだ!?」 シンデレラ 「ゴメン! もう帰らなきゃ!!」 ほうとうは かえりたくありません。 ですが じかんは まってくれません。 もうすでに まほうは とけかかっていて、ドレスも ボロのふくに もどりつつあります。 とちゅうで ころんでしまい、ガラスのくつが かたほうぬげてしまいましたが ひろっているひまはありません。 シンデレラは いそいでばしゃに のりこみました。 王子 「おい! ちょっと、忘れモン!!」 おうじさまは おとした ガラスのくつを ひろいました。 みぎてで。 すると ガラスのくつは こなごなに くだけてしまったのです。 おうじさまは まっさおになりました。 王子 (ヤ、ヤバイ! まさか異能でできた靴だったなんて…… やっぱり弁償しなきゃだよな…けど、すげぇ高そう……) すると シンデレラが ぜんそくりょくでもどってきました。 シンデレラ 「ゼィ…ゼィ……アンタ何やってんのよ!!! ゼィ…こっちはもう時間がないんだから!!! ハァ…ハァ…余計な事しないでよね!!!」 王子 「わ、悪い!! 必ず弁償するから!!」 シンデレラ 「んなこといいから!! はいこれ!!」 そういうと、シンデレラは もうかたほうの くつをさしだしました。 シンデレラ 「今度は壊したりしないでよ!? もう予備はないんだから!」 そういいのこし、シンデレラは ふたたび ばしゃに のりこみました。 王子 「な、何だったんだ…?」 つぎのひ、おしろのつかいが くにじゅうを かけまわっていました。 もくてきは あのガラスのくつの もちぬしを さがすことです。 このことは くにじゅうでわだいとなり、 「そのくつに ピッタリあった おんなのひとは、おうじさまと けっこんできる」 なんて ウワサまで とびかっているほどでした。 そして おしろのつかいは、シンデレラのいえまで やってきました。 城の使い 「…ふむ。 どうやらこの家にいるご婦人方には、この靴は合わないようですね」 ままははと あねたちが いくら ギュウギュウおしこんでも、ガラスのくつに あしが はいりません。 おしろのつかいが あきらめて かえろうとした そのときです。 シンデレラ 「ちょ、ちょろ~っと待ってくれないかしら? も、もしかしたらなんだけど…私なら履けるかもしれないんだけど?」 じしんまんまんにいうので、おしろのつかいは シンデレラに ガラスのくつを はかせてみました。 するとなんと、ピッタリだったのです。 城の使い 「おお! 貴方こそ我が主の探している御方に間違いない! 申し訳ないが、城までご同行願えるか?」 シンデレラ 「ま、まぁ仕方ないわよね! 向こうが会いたいってんだから!」 こうして、シンデレラはおしろへと つれていかれました。 このまま うまくいけば おうじさまと けっこんして ハッピーエンド… となるはずなのですが、そう かんたんには いきません。 おしろにつくと、シンデレラは とんでもないものを まのあたりにします。 なんと シンデレラのほかにも、ガラスのくつの サイズが ピッタリあう じょせいが、9968にんも いたのです。 しかも みんな、シンデレラと かおがそっくりだというから おどろきです。 シンデレラのそっくりさんA 「王子と結婚するのはミサカです、とミサカは宣戦布告をします」 シンデレラのそっくりさんB 「フザケンナ、とミサカは怒りをあらわにします」 シンデレラのそっくりさんC 「まぁまぁ落ち着いてください。 どうせ選ばれるのはこのミサカなのですから、とミサカは余裕でたしなめます」 シンデレラのそっくりさんD 「残念ですがそれはありえません。 何故ならこのペンダンの分、ミサカの好感度が一番高いからです、 とミサカはあの人との愛の結晶を見せびらかします」 シンデレラ 「なにこれ……」 ほんものもふくめ、9969にんの シンデレラ。 おうじさまは このなかから、ほんとうの シンデレラを さがすことはできるのでしょうか。 王子 「う~わ~……」 メイド 「どうするんだー? 全然見分けがつかないぞー」 おうじさまは たりないあたまで かんがえました。 そのけっか、ひとつ めいあんが うかんだのです。 王子 「そっか! この中で、レールガンを使えるヤツが本物だ!」 あのときの レールガンを おうじさまは わすれていませんでした。 きょうふというのは、からだに しみつくものなのです。 さすがの そっくりさんたちでも、レベルは2~3ていどです。 レベル5の ひっさつわざ、レールガンはうてません。 こうして、おうじさまは ほんものの シンデレラをみつけたのでした。 王子 「やっと…見つけたよ……」 おうじさまの しんけんなかおに、シンデレラは ふにゃーすんぜんです。 なぜなら あとは、おうじさまの プロポーズを のこすのみだからです。 王子 「実は…その……お前に渡したいモノがあってさ……」 シンデレラ 「なななな何かしら!!?」 おうじさまが とりだしたのは エンゲージリング ではなく、ガラスのくつでした。 シンデレラ 「えーと……これは?」 王子 「ほら、昨日お前の靴を壊しちゃっただろ? だから職人に頼んで直してもらったんだよ。 一応、ウチにも優秀な魔術師がいるからさ」 職人 「ちなみに、直したのは俺なのよ」 シンデレラ 「…………つまり、これを渡すためにわざわざ私を呼んだと…?」 王子 「あー…俺が悪いのに、そっちから来てもらったのは、本当に申し訳ないと思ってる。 けど、一応俺王子だからさ、城を出るだけでも、手続きがかなり面倒なんだよ」 シンデレラ 「あーなるほどねー。そりゃ仕方ないわよねー」 シンデレラのあたまから バチバチとひばなが はじけとびます。 さぁ、そろそろ オチのじかんのようです。 シンデレラ 「ふっっっざけんなぁぁぁ!!! くそ馬鹿ああぁぁぁぁ!!! 何のためにもう片方の靴を残したと思ってんのよおおぉぉぉぉ!!!!!」 王子 「ぇぇぇええええ!!? いやだから、靴を直してもらうためだろ!!? サンプルがあった方が直すのにも手間取らないし!! てかマジでやめて!!! そんなにたくさんのコイン、王子さんの右手一本じゃ防ぎきれませんのことよ!! 死んじゃう!!! 俺死んじゃうから!!!!!」 シンデレラ 「一遍死ねぇぇぇ!!!!!」 王子 「ギャー!! 不幸~だぁ~!!!」 こうして、おうじさまと シンデレラの おいかけっこが はじまりましたとさ。 めでたしめでたし。 CAST シンデレラ 御坂美琴 王子 上条当麻 意地悪な継母 寮監 意地悪な姉A 麦野沈利 意地悪な姉B 食蜂操祈 魔法使い インデックス 魔法使いの弟子A サンドリヨン 魔法使いの弟子B アウレオルス=イザード 浜面 浜面仕上 メイド 土御門舞夏 招待客A 姫神秋沙 招待客B オルソラ=アクィナス 招待客C 五和 城の使い 騎士団長 シンデレラのそっくりさんA ミサカ19822号 シンデレラのそっくりさんB ミサカ10353号 シンデレラのそっくりさんC ミサカ15467号 シンデレラのそっくりさんD ミサカ10032号 職人 建宮斎字 舞踏会での 青髪ピアス 一方通行 アックア エキストラの皆さん アニェーゼ=サンクティス アンジェレネ (五十音順) 諫早 ヴァリアン ヴェント 牛深 エイワス エリザード オッレルス オティヌス 垣根帝督 上条詩菜 上条刀夜 木原数多 木原病理 テレスティーナ=木原=ライフライン キャーリサ 黒夜海鳥 駒場利徳 災呉 杉谷 ステイル=マグヌス 削板軍覇 滝壺理后 竜神乙姫 月詠小萌 土御門元春 テッラ 服部半蔵 ビアージヲ=ブゾーニ フィアンマ フレメア=セイヴェルン 冥土帰し マーク=スペース マリアン=スリンゲナイナー マタイ=リース 御坂旅掛 御坂美鈴 結標淡希 闇咲逢魔 横須賀 芳川桔梗 黄泉川愛穂 打ち止め ルチア レッサー 学園都市の学生達 イギリス清教の魔術師達 企画・脚本・監督 アレイスター=クロウリー 助監督 ローラ=スチュアート 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある世界の名作劇場
https://w.atwiki.jp/45kssos/pages/177.html
と、決意と同時にサーベルが総一の頭を狙っていた。 「うわぁっ……!」 総一はそれを後ろに吹っ飛ぶようにして避け――実際は転んだだけだが――事なきを得た。 しかし脅威は終わっていない。 狂った椎名の標的は、未だ総一のままだ。 総一は起き上がって、椎名からの攻撃に備える。 椎名は、サーベルを大上段に構えて勢いよく振り下ろそうとしている。 万事休す、ただの学生である総一が避けられる道理はない。 だが、幸運の女神が微笑んだのか。 総一は今度の攻撃も避けることができた。 「……っくそ!」 それが分かるとすぐに体勢を整え、総一は椎名に背を向けて走り出す。 椎名も遅れはしたが、素早く総一の背中を追い始める。 森の中、2人だけの追いかけっこが始まった。 ◇◇◇ 森の中を横に並んで歩く影が2つ。 黒神めだかと、桂ヒナギク。 眉目秀麗、才色兼備、文武両道といった言葉が良く似合う、2人の見目麗しい女性がいた。 2人は殺し合いには乗らず、参加者を集めて主催者に対抗することを考えている。 「めだかさん、あれ!」 「……ふむ、参加者か」 そんな彼女たちは、森の中で走っている2人を発見した。 めだかは2人の名前を確認し、悠然と総一たちに近付いて行く。 常識人のヒナギクはそんなめだかを急かすのだった。 ◇◇◇ 森の中を縦に並び歩く影が2つ。 北条かりん、そしてイカロス。 ボーイッシュな少女と、おとなしげな少女の、似合わないとも言えるコンビ。 しかして2人は、この島においては主従関係を結んでいた。 「マスター。参加者です」 「……2人ね」 殺し合いに乗っている彼女たちは、獲物となる参加者を発見した。 かりんは慣れない手つきで手元の銃の残弾を確認して、男の元へと駆け寄ろうとする。 イカロスはあくまで従者として、かりんの後から歩いて行った。 ◇◇◇ 俺は椎名さんから逃げるために、必死に走っていた。 これまで同行して、彼女の強さはよく分かっている。 年は近いのだろうが、少なくとも戦闘に関しては俺よりも数段上だ。 出会ったとき、俺が襲われたときのことを思い出す。 拳銃を持った少女の元へと恐れずに走っていき、俊敏な身のこなしで少女を無力化。 そして第三者が介入するや否や、俺との逃走を瞬時に選択した。 まったく、信じられなかった。 まるで映画のアクションシーンを見ているかのようで。 流れるような、ともすれば美しくも見える戦闘だった。 あの男も言っていたが、本当に彼女は「くノ一」と呼ばれる、本物の忍者なのか。 でなければ、格闘技でも習っているのだろう。 どちらにしても、俺みたいなごく普通の高校生では相手にもならない。 さらに、正気に戻す方法もまったく考えつかない。 くそっ、どうすればいいんだ! なんて考えた次の瞬間にも、サーベルが背中を掠める勢いで向かってくる。 今は逃げることに集中した方が良い。そんな単純なことに今更気づく。 そして、もう何度目になるか分からない全力疾走をしようとして―― 突然、4人の女の子が出てきた。 ◇◇◇ 「……」 互いに予期せぬ人たちが表れたため、6人は固まってしまった。 椎名は現れた4人に戸惑いサーベルを構えもせず。 かりんは拳銃を誰に向けるかを考えて。 ヒナギクは全員の挙動に目を光らせ。 総一は椎名が攻撃をしてこないことに安堵し。 イカロスは2人の女性の戦闘能力を推し量っていた。 そんな硬直した場を崩したのは。 「私は箱庭学園生徒会長、黒神めだか。24時間365日、私は誰からの相談でも受け付ける!! そこの貴女、なにか思うことがあるのならば、悩み事があるのならば、私に吐き出すがいい!!」 という、荒唐無稽な言葉だった。。 もちろんめだかとしては、総一を攻撃する椎名への発言で。 攻撃をやめろ、私と話をしろ、という意思表示だったのだが。 その場にいた誰も予想しない人物から、声がかかった。 ◇◇◇ 黒神と名乗る女性から、急に発せられた言葉。 私はそれに、なぜか怒りと嫌悪感が湧いてきた。 何を無責任なことを言っているのか。 だったら今ここで、私の妹を助けてくれと言ったら助けてくれるのか。 無理に決まってる。 殺そうとした男のことも忘れ、黒神めだかへの殺意に心を委ねる。 「……だったら相談です、黒神さん」 と言いながら、後ろの手に持った拳銃を握りしめる。 「む?貴方は……北条かりん殿か」 「……はい」 そしてめだかの方を向く。 「ああ、何故名前を知っているのか不審に思われたなら申し訳ないな。 しかし勘違いしないでくれ、支給品に参加者の詳細名簿が入っていただけだ」 「そんなことは、どうでもいいから……」 ゆっくりと拳銃をめだかに向け。 「……死んでくれる?」 殺意を込めて、引き金を引いた。 ◇◇◇ 発砲音が聞こえても、めだかさんは動かなかった。 撃たれたのかと思ったけど、そうではないらしい。 「……くそっ、イカロス!」 北条かりんが外しただけのようだ。 拳銃にも慣れていないところを見ると、ただの少女なのだろう。 「全員、殺して!」 ――かなり、精神面が危ないようだけど。 「はい、マスター」 イカロスと呼ばれた少女がめだかさんに向かっていく。 手には波打つような刃の剣――確か、フランベルジェといったはず――を持っている。 大きく振りかぶって、薙ぎ払う。 ぶうん、と風を切る音。 身の丈以上の長さがあり、かなり重いはずの剣を、少女は軽々と振る。 しかし、めだかさんはそれを扇子で止めていた。 2人とも、相当な馬鹿力らしい。 (……どんなアクションゲームよ!) 心の中でツッコミを入れる。どうやらこの島では常識は通用しないようだ。 例えば。何もしていないのに、斬りかかられたりする。 サーベルの一撃をバットを構えて防ぎ、跳ね返す。 「まったく、早く知り合いと合流したいっていうのに!」 多少の怒りも含ませながら、ヒナギクは山本のバットを振って刀にする。 狂った忍者との戦いが始まった。 ◇◇◇ 追われていたはずの総一は、いつの間にか置いてけぼりにされていた。 ここに居たのが自分第一の現実主義者だったなら、助かる為にすぐに逃げただろう。 けれども総一は、その場から動こうとはしなかった。 (北条かりん……やっぱりあの子だったのか) 同じゲームの参加者『だった』、総一を襲ったこともある少女。 死んでしまったはずの少女が生きていることは不思議だったが。 少女が再び殺し合いに乗っていることが、総一にはショックだった。 (止めさせないと!) 少女に再び道を間違えさせるわけにはいかない。 ある種の使命感すら持って、総一はかりんに近付いた。 ◇◇◇ (くっ、うまくいかない……) かりんは内心、舌打ちをした。 (運がいいと思ったのに……) 数時間前のスタンド使いもそうだが、この島には強い人間ばかりだ。 この2人の女性は、とても楽に殺せる相手じゃない。 イカロスの馬鹿力でも敵わないのだから。 (どうする!?) 焦りが心を支配する。 自分だけが逃げれば、イカロスは捕まってしまうだろう。 そうなると1人きりになって、最初に逆戻りだ。 かといってイカロスと共に逃げれば、間違いなく女――黒神めだかは追って来る。 修羅場を潜り抜けてきたわけでもないかりんは、機転を利かせることもできず。 今の状況は、まさに八方ふさがりだった。 (どうする?どうする?どうする?) 「大丈夫?」 「!?」 唐突に声をかけられて、背筋が凍る。振り向くと、最初の標的だった男がいた。 「……何?」 「君を助けたい。俺は君を知っている。殺し合いに乗るような子じゃない」 早口で話す男の真意が分からなかった。 こんな男は知らないし、分かったような事を言われるのも腹が立つ。 「あなたにどうこう言われる筋合いはない!」 拳銃を男に向ける。脅しと本気が半々だ。 しかし男は動じない。 「……死にたいの?」 「君は撃たない」 断言される。拳銃を持つ手が震えた。 なんで、なんで拳銃を怖がらないんだろう。それが不思議で、怖かった。 「君は撃たない。優しい子だから」 男は子供をあやすように、私に優しく声をかける。 殺し合いだということを感じさせないその声が、なんだか、とても、心に響いた。 「殺し合いに乗ったのも、誰かの為なんじゃないのか?」 男が聞いてくる。 そうだ、かれん――。私はかれんの為に。 「そうよ!私はかれんの為に、優勝しなきゃいけな」 「だったら!」 言葉を遮られて、うっ、と詰まる。それくらい、男の声には有無を言わさぬ迫力があった。 「俺が協力する。元の世界に戻ったら、その子を助けるために何でもする」 力強く、言葉を続ける男。その目は真剣そのもので、そして―― 「だから――人殺しなんて、やめてくれ」 男は泣いていた。 情けない、と思う反面、かっこいい、とも思った。 今まで、私のことをここまで考えてくれた人はいなかった。 「わ、私、は……」 泣きそうになる。拳銃を持つ手は震えまくっている。 この男が、怖かった。私の事を知らないくせに、心配してくる男が。 「人殺しをして、そのかれんちゃんは喜ぶのか?」 男は私の心を覗き込んでくる。ズカズカと、遠慮なく。 けれど、と心が揺れる。つまりこの男は、本気で心配しているんだ。 初めて会った、名前も知らない筈のこの私の事を。 「……銃を渡してくれないか」 男は再び、優しく声をかける。 その言葉で決心した。今はこの男を、信じてみよう。 この人なら、どうにかしてくれる。そんな期待を込めて、銃を渡そうとして近寄った瞬間。 男の胸から、剣が生えた。 ◇◇◇ 「大丈夫ですか、マイマスター」 後ろから、そんな声が聞こえる。 この声はイカロスと呼ばれた少女か、と激痛に耐えながら考える。 視線を下に向けると、自分の血に染まった剣が見えた。 自分の胸から剣が生えているところを見るなんて、夢にも思わなかった。 あるいは、今この瞬間が夢なのか。 いや、夢じゃない。俺の前には確かに――北条かりんがいる。 泣きそうな顔をして、俺を見ている。信じられない、といった顔だ。 「……気に、しないで、くれ」 どうにか言葉を発する。気にするな、君のせいじゃない、そう伝えたかった。 しかし、その言葉を聞いたかりんは、余計に顔を歪ませた。 そして俺に背を向けて走り出す。何かを吹っ切るように、何かから逃げるように。 「マスター!」 この少女、イカロスが俺を刺したのは、恐らくかりんの為なのだろう。 なんでかは知らないがかりんに忠誠を誓っていて、そしてかりんに近寄った俺を敵と認識して刺した。 そんなところだろう。 お互いかりんを心配しての行動だったとしたら、報われないなと薄く笑った。 だがすぐに痛みが走り、顔が引きつる。 「マスター!待ってください!」 どうにかイカロスを目で追うと、かりんの消えていった方向を見ている。 走ってかりんを追おうとしたのだろうが、それは黒神めだかさんが許さなかったようだ。 「邪魔をしないでください!」 と言いながらも、武器なしで倒せる相手ではないと踏んだのだろう。 イカロスは俺の体から、剣を引き抜いた。 「ぐっ、あああ!!」 強引に引き抜かれたせいで、強烈な痛みが神経を伝わり、筋肉が、脳が、悲鳴を上げる。 地面に膝をつく。力を入れようにも入らない。そのまま前に倒れ込んだ。 分かる、自分はもう死ぬのだと。血と共に力が無くなるのを感じる。 ああ、北条かりんは、大丈夫だろうか。殺し合いに、乗ることはないだろうか。 考えてみれば、自分はこのバトルロワイアルで何一つ達成しないまま死ぬ。 麗佳にも二度と会えない。 主催者に対抗することも叶わない。 椎名さんも、結局正気に戻せなかった。後悔ばかりが頭をよぎる。 そういう運命だったなんて、割り切ることは出来ないけど。 いまさら何を言っても遅いのだろう。もう、眠くなってきた。 つまり、これは。 「……ゲームオーバー、ってことかな。はは……」 自嘲めいた笑いと共に、少年はその一生を終えた。 【御剣総一@シークレットゲーム-KILLER QUEEN- 死亡】 ◇◇◇ 「ふう、やっと倒れた」 桂ヒナギクは、自分にサーベルを向けてきた少女を見下ろす。 忍者のような身のこなしには苦戦させられたものの、相手も疲労が溜まっていたようだ。 激しい戦闘の末、少女は電池が切れたように倒れて気絶した。 狂ったように攻撃してきたことも含めて、この少女には聞きたいことが多くある。 だがそれも、少女の目が覚めてからになるだろう。 「さて、と……」 周りを見ると、未だにめだかさんはイカロスと闘っていた。 そのそばには、少年――詳細名簿には御剣総一とあった――が倒れている。 「あれって……死んでる!?」 戦闘に巻き込まれないよう静かに近付いてみると、確かに死んでいた。 胸には酷い傷があり、そこから大量の血が流れ出ている。 おそらくは、イカロスの剣によるものだ。よく見れば、今も血が付着している。 許せない。けれど、今はめだかさんと闘っているから手出しは出来ない。 一応、御剣総一の物だろうデイパックを回収しておく。 「……あれ?」 そういえば、イカロスがマスターと言っていた、北条かりんがいない。 いきなり発砲するあたり、彼女もそうとう精神が参っているに違いない。 話を聞きたかったが、いったいどこへ行ったのだろうか。 そして、一番の問題は、この先どうするか。 めだかさんとイカロスの闘いに、どう決着がつくかにもよるのだが。 あと数十分もすれば、放送が始まるはずだ。それを聞いてから決めるのもいいだろう。 戦闘音が響く中、桂ヒナギクは今後のことについて思考することにした。 【E-4 森/早朝】 【北条かりん@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】 【装備:S W M37エアーウェイト3/5@現実】 【所持品:支給品一式、S W M37の弾丸45/45@現実、ランダム支給品×2】 【状態:健康、精神的ショック】 【思考・行動】 0:????? 1:優勝してかれんの元に賞金を持って帰る? 2:イカロスと共に参加者を皆殺し? 【備考】 ※本編開始前からの参戦。 ※黒神めだかの名前と容姿を記憶しました。 【イカロス@そらのおとしもの】 【装備:フランベルジェ@とある魔術の禁書目録】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:マスターの命令に従う。 2:命令通り参加者の皆殺し。 3:めだかを殺して、マスターと合流。 【備考】 ※本編開始前からの参戦。 ※桜井智樹ではなく北条かりんがマスターです。 ※武器は没収、羽根で飛ぶ事は制限です。 ※馬鹿力は制限されていません。 【黒神めだか@めだかボックス】 【装備:原初の海@ペルソナ4】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×1】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:桂二年生と行動。 2:主催者から参加者全員に謝らせる。 3:イカロスを捕える。 【備考】 ※オリエンテーション開始直前からの参戦。 ※参加者全員の顔と名前を一致させています。 ※乱神モードは3時間待って10分、改神モードは制限で1日1回の制限です。 【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】 【装備:山本のバット@家庭教師ヒットマンREBORN!】 【所持品:支給品一式×2、羽根の付いたランドセル@Kanon、こけし@そらのおとしもの、 サーベル@ハヤテのごとく!参加者全員の全身写真@その他、ランダム支給品×2】 【状態:疲労(小)】 【思考・行動】 1:めだかさんと行動。 2:このゲームを止める。 3:少女(椎名)が目を覚ました後、話を聞く。 【備考】 ※アテネ編終了後からの参戦です。 ※めだかの知り合いの事を教えてもらいました。 ※参加者のある程度の顔と名前を一致しました。 ※北条かりん、イカロスを危険視しています。 【椎名@Angel Beats!】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:気絶、疲労(大)】 【思考・行動】 1:……。 【備考】 ※ユイ消滅前からの参戦。 ※ギアスは解けたようです。 【フランベルジェ@とある魔術の禁書目録】 イカロスに支給。 一八〇センチを越える巨大な剣で重さも相当。 両刃の刀身は波状に作られており、肉を引き裂き、止血しにくくする。 治りづらい傷を作るため、「死よりも苦痛を与える剣」として知られる。 天草式十字凄教に所属する建宮斎字は、これを片手で振りまわしている。 剣ツルギ物モノ語ガタリ 時系列 つぎへの方向 仮面は微笑む。 投下順 つぎへの方向 堕ちないネイロ 御剣総一 DEAD END 椎名 HEROES 生徒会の一存 黒神めだか 桂ヒナギク fallen down 北条かりん イカロス
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/257.html
東京西部に学園都市と呼ばれる場所がある。名前は仰々しいが、早い話教育機関の塊である。 詳しい特徴は割愛するが、名前が指すように、住んでいる人口の9割は学生だ。 故に、日が傾いている夕暮れ時は学生の帰宅ラッシュが集中する。 物語の主人公である上条当麻もそんな一学生であり、群れる群集に埋没しながら帰路に着くつもりだったのだが、 「何だかよくわからないプレッシャーを感じるような…感じないような……」 彼は軍人でもなければ格闘技の達人でもない。それでも感じとれるだけの違和感を、彼は学校を出てから背中に受け続けていた。 最初はまた御坂か、と何度か振り返るも、視界に入るのはただの見知らぬ学生ばかり。すわ何かまた厄介な事件に巻き込まれるのか、と汗を一筋たらしながら溜め息を吐き前を向く。 そして、俯きながら厄介事のエキスパートである、友人で魔術師で能力者であり、二足のわらじを苦もなく行っている土御門に連絡するかどうか真剣に考え出していたところに――― 「おいおいお兄さん。そのストレートなスキンシップは嫌いじゃないけど、それでも恥ずかしいもんは恥ずかしいのよなぁ」 ぽふっ、というか、ふにゃっというか、とにかく気づけば柔らかな感触に上条は頭から突っ込んでいた。 「うわッ!?え、あ、とても柔らか――じゃなくて、うれし――でもなくて、とにかくごめんなさい!!」 後ろに滑る勢いで後退すると、上条は自分がぶつかった人の全貌が明らかになった。 服の上からでもわかる細身の体に不釣り合いなほどぶかぶかのTシャツとジーンズの上下。そのぶかぶかなTシャツの上からでもわかるほどの双璧を携え、異常なまでの黒さをほこる髪を何房か髪の上にツンツンと立てている。意外と後ろ髪が長いからか、余った部分は下に無造作に垂らしたままだ。首から下げられたいくつかの小型扇風機が意味不明ではある。 顔つきも、どことなく引き締まっているのに対し、その目元の緩やかな印象がなんとなくミスマッチだった。 色々と奇抜な部分があるが、彼女を一言で表現するなら美女だ。そして上条にこんな知り合いは一人しかいない。 「建宮!?なんでお前が!?」 上条の目の前でニヤリと笑ったのは、現天草式教皇代理である、建宮斎子(たてみや さいし)だった。 「何でも何も、私は朝からお前さんの近くにいたのよな。気づかないなんて、あんまりじゃねえの?」 ニヤニヤと、意地が悪そうな笑顔で上条を見下ろしてくる。 「朝ぁ!?ちょっと待て!!また何か事件でも―――!!」 「まぁ落ち着け。一応往来なんだから、あんまり騒ぐのは感心しないぞ」 納得しない上条を腕を担ぐように引っ張りながら近場の喫茶店へ入って行く。その際肘にあたる柔らかな感触に、上条は頭の中に電流が流れたのを感じた。 「最初に言っとくけどな、事件とかそんなのは関係ないのよ。ついでに言うと、これはイギリス清教も関与しとらんのよな」 つまり、斎子が学園都市にいるというのは、あくまで天草式による独断ということになる。 何時の間に頼んだのか、上条が妄想の世界から帰ってきた時には、既に斎子の前にはアイスコーヒーと心太が置いてあった。はたしてこの組み合わせに魔術的な意味があるのかどうか、上条にはまったくわからない。 「というか、それならなんで意味もなく学園都市に来る必要があるんだ?しかも“必要悪の教会”が関係してないとなると、上条さんはさらに頭に疑問符が浮かび上がるのですがー?」 いまいち復帰しきれていない頭で考えたにしては、上条の言い分は最もだ。今は世界情勢が危ういバランスで成り立っている。そんな中で、目的もなく科学サイドの頂点たる学園都市に侵入するというのは、上条にはデメリットしか見つからない。なぜなら、科学サイドの情報を流すパイプは既に存在しているからである。 隠密性に特化してるとはいえ、危険を侵してまでくる意味はないのだ。 しかし――― 「いや、意味ならあるのよな、これが」 先ほどまでの気の抜けた雰囲気を消して斎子は真剣な表情で上条を見つめる。 それについついドキッとしてしまった上条だが、そればかりは仕方がない。彼も健全な男子学生なのだから。何より斎子自身、この陰陽のギャップが自身の魅力の一つであることに気づいていないから何もいえない。 「学園都市は関係ないのよ。我らが来た目的はお前さんだ」 え?俺??と、上条は内心狼狽する。 「2つの世界がぶつかり合ってはいるが、その中心はいつもお前さんだ。だから我ら天草式は、いつでも動けるようにお前さんの近くきたわけなのよな」 最近起こった事件といえば、やはり左方のテッラによる『C文書』事件だろう。 あぁもしかしてあの時五和に何かしちゃったのか、いやいや確かに透けて見えた下着は見たし替えの服がないからってブラウスだけとか危うい格好でつい谷間に目がいったりしたしパイプライン切断の術式で使うからってパンツを見たり、うわ結構やばいかも責任問題とかなっちゃうかもいやいや俺個人なら責任問題はないかでもやっぱり罰せるのか魔術世界の拷問とか怖すぎるって誰か弁護士を呼べー!! 上条が一人で悶えているのを見つめながら、斎子は内心ため息をつく。 (とまぁ意味ありげに言っても、本当の事は言えないのよなあ) 確かに上条は今2つ勢力の中心人物である。しかし、だからといって何も上条の側にずっといる意味はない。むしろ諸外国で起きた時などは、かえって動き辛くなるというデメリットを抱える。 だが、そんなものを擲ってまで学園都市に来た理由というのが――― (女教皇が、もうちょっと素直に行動してくれれば、苦労せんのよなあ) 今天草式の人々は、ある工作にあちこちを走り回っている。ここまでくると、もはや異常といえようものだが、彼らは少しでも不器用な聖人が幸せになれるなら、いかなることでもするのである。 しかし――― 「教皇代理、変な気は起こさないでくださいね」 未だ悶える上条を、斎子が面白げに見ていると、いつからいたのかすぐ隣にウェイトレスが立っていた。 「変な気って、一体私が何を起こすってえのよ、五和?」 そう。そこには天草式の五和が、お盆を抱えながら、訝しげに斎子を見ていた。 「起こさないなら、いいんです。少しだけ滞在してわかりましたが、彼にはライバルがとても多い事がわかりました。これ以上増えられたら、困ります」 それだけ言うと、彼女は今までの表情からぐるりと変わって、溢れる笑顔を上条に向けながらお絞りをそっと手渡していた。上条は、急に現れたのが彼の絶賛悩みの種であった五和であったため、大いに慌てたものの、その笑顔な当てられたのか、なんだかだらしなく笑っていた。 そんな上条を見つめながら、斎子は思う。 (変な気なんか起こせんのよ。“今は”、な。まぁミイラ取りがミイラに、ってのは、ありきたりすぎるかもしれんのよな) あまりに馬鹿馬鹿しくも、ありえないといいきれない自分がいることに、ついつい微笑んでしまう。それが上条の目に入り顔を真っ赤にさせた上条に五和が怒り、斎子は更に笑うのであった。 後日上条が通う学校に、三年生の転校生と、臨時の体育教師がやってくることになる。 そして、その転校生と体育教師を目の当たりにした上条が卒倒し、そこでもトラブルが起こるのだが、今は関係がない。 「学業……ですか?」 「そう、学業。女教皇はどれくらいの学を積んでるのか気になったのよ」 そう言って現天草式教皇代理―――建宮斎子(たてみや さいし)は不適に笑う。その質問を受けた人物―――女教皇こと神裂火織は、最初なぜ彼女がこんな質問をしたのか意図をはかりかねていた。 なにせ小さい頃よりやれ聖人だ、やれ教皇様だ、と崇め持ち上げられていたのだ。正直な話、彼女は学校というものには行った記憶がない。行かせてもらえなかった、と言うべきなのだが、故に、学業というか学歴というか………とにかくそういったものは一切持っていないのだ。 だが、そんなことは何より当時から女教皇の側近であった斎子が“知らないはずがない”のである。 だからわからない。最近天草式がそわそわしていると聞いたが、はたしてこの質問にそれらを暗喩する部分があるのかどうか、判断できなかった。 (そもそも私、天草式とは連絡とか接触とか全部避けてたはずなのに、普通に話しかけられてます?) ますます混乱ばかりが増すのだが、斎子は特に気づいた様子はない。 「いや、女教皇が阿呆の子、ってわけではないのよ。我らがいる世界で、無学は罪故、誰しも研鑽しとるのはわかってますしな」 ここまで自分から説明されたら、神裂は益々わからない。とうとう頭がおかしくなったのか、と神裂が不安げな表情をし出した頃、ようやく斎子は本題を言った。 「つまり青春をしようってことなのよな」 「起と結から全く話が噛み合っていませんから!!」 「いやいや、女教皇が日頃から18歳に見えないだの、老け……だのはやっぱり同年代との交流がないからだと思うのよな。だから、ここはいっそ学生でもさせてみれば変わるんじゃないかと、我らは結論つけたわけなのよ」 「余計なお世話です!!」 あぁ天草式はもうおしまいか、と神裂が頭が頭痛な感じで落ち込んでいると、斎子は一枚の髪を神裂につきつけてきた。 「………これは?」 「転校手続きですよ。いや、学園都市ってのは本当に苦労するとこなのよ。最近なぜか理事会トップの判断が適当な時があるらしく、やっと書類を造りあげたわけなのよな」 「学園……都市………?」 「それじゃさっそく日本に行きますかぁ。あ、拒否権とかないからねえ」 ずりずりと、未だ放心している神裂の襟元を引っ付かんで、斎子は嬉々として女子寮を後にした。 「今日も不幸だ、元気に行こう」 少しでも前向きに考えようとして言った言葉が、あまりにも致命的な一言を含んでいたため、今日も上条当麻は悲しさを抱えて学校を登校するはめになった。 「む、上条じゃないか。いつにも増して不幸そうだな」 教室のドアを開けると、開口一番から人が気にしている事を仁瓶もなく突きつける神聖ロリっ子、天井亜衣がいた。 「うるせぇ神聖ロリのくせに、上条さんは変態がつかない紳士だから許してやらないこともないかもしれないけど、次あたりは青髪突きつけてやる」 (天井ー、いくらなんでもそれはないんじゃないかなぁ、って上条さんは優しく教えてあげるんだぁ) 「……定番で言えば、本音と建て前が逆になってるぞ。いや、お前の心の中の声とか聞こえないけどさ」 うわ定番かよ!?っていうか何言いたい事ベラベラ話してますか俺やっぱ馬鹿だ、っと頭を抱えながら近くの机に頭を何度も打ちつける。 ちなみに席の住人は遠巻きに彼を哀れな目で見ていた。 ついにギャグキャラ突入なのか、と絶望一色に染まっている上条を見据えながら、天井が一言洩らす。聞こえるギリギリの声で、 「あいつをけしかけたらひのをお前の家に突貫させてやる」 それを聞き取ったのか、上条の動きがぴたりと止まる。やがて、小刻みに動きだしたと思ったら――― 「天井ー!!それだけは、それだけは平にご容赦を――――!!!!」 「だぁー!!寄るな触るなすがりつくなついでに涙と鼻水は絶対に近づけるな!!」 シュール。ただただ幼女の如きルックスの天井に抱きつくようにしている上条は、警備員に殴り飛ばされとも文句は言えないだろう。 天井の必死な表情も、なんだか犯罪臭さを感じさせる。 しばらく続いた農民がお上に年貢引き下げを頼み込むかのごとくの珍騒動も、ひのが途中で木板振り上げながら突っ込んできてさらに混沌としたものの、小萌先生による可愛らしい仲裁のおかげで終結した。 落ち着いた頃に、上条はふと疑問に思うことがあった。吹寄が介入しなかったのは、単純に彼女がいなかったからだが、こと天井が関わると必ずというくらい介入してくる、愛すべき馬鹿がいなかったのだ。 ちなみに土御門は欠席が確定している。どうやら賞味期限が切れたシチューが当たったそうだ。それでも全部食べきったあいつは、賞賛すべき馬鹿である。 「なぁ天井、青髪は?」 「ん?あぁ奴なら―――」 「カミやんカミやんカミやーん!!!」 「―――今日も頭が狂っている」 短く吐き捨てた天井を恐ろしく思うも、事実だよなぁと思ってしまったことは、悪くないと思う。 ドアを軋ませる勢いで入ってきたのは上条も天井も馴染み深い友人である青髪ピアス(本名不詳)は、なぜだかひどく興奮していた。 少し気持ち悪い。 「もー、青髪ちゃんも、そんな風にしたらドアが壊れちゃいますよ!」 「先生、僕だけなんで名前とちゃうんですか?」 よくわからないやり取りをしながら席につく青髪ピアスに、上条は仕方なさそうに声をかける。 「なぁ、青髪。なんでそんなに嬉しそうなんだよ?」 「ふふふ、やっぱりカミやんも僕の新情報が気になるみたいやね」 いや、実にどうでもいいんだが、聞いてやらないと独り言をしそうだったから先に手をうっただけである。 「実は―――!!」 「青髪ちゃんは補修確定ですよー」 「小萌先生堪忍や――!!!」 話が先に進まない。 HR後にわらわらみんなが集まってくると、青髪は自慢げに話だした。 「実はね。今日転校生が来たんよ!!」 「へぇ」 「うん。それで?」 「どうでもいいんだけど」 「……だからなんなんだ」 「エンゼル様エンゼル様、今日は彼にどんなアタックをしたら……」 「みんなひどいし一人は聞いとらへんってどういうことやー!!」 どうやら青髪情報によると、新たに上級生が転校してきたそうだが、同じ学年ですらあまり興味関心が沸かないというのに、他学年ではなおさらだ。ある意味、彼らの反応は正しかった。 「もうごっつ美人やねん!!僕は一瞬で恋してしもうたんやあ!!」 みんなから白い目で見られているのに気づかず、青髪ピアスはどこまでも年上の良さを熱弁していた。 こうして、上条は苦せず転校生の存在を知ることができた。しかし、過ちとして彼は、この時『名前』を聞かなかったことが、後に後悔するはめになる。 昼休み、上条としてはこのまま何もないまま終わってくれることを切に願いながら、なぜだか最近昼食を一緒に取るようになった天井とひのに疑問を感じながらも、手作りのスキルが上がってきた弁当を机の上に乗せる。青髪は戦場へと向かったのでまだ帰ってこない。 しばらく他愛もない会話と、ひのによる電波な会話を交えつつ、昼食を食べていると、ガラッとドアを開けて、教室に訪問者がやってきた。 別段これだけなら珍しくない。他クラスの友人や、部活の先輩後輩がくるなど、よくある事だからだ。 しかし――― 「あー、この教室に上条当麻って奴はおらんかなぁ、いや、無礼なのはわかってんだけどなあ、まぁとにかくいない?」 とても変な前口上だった。 その声は、子供らしい声ではなく、どこか呑気そうな大人の女性のものだった。 こと女性関連に関しては録なことがない上条だが、むしろ教室に残っていた男子達は“女性が”“上条を”という2つのキーが揃った時点で殺気立っていた。彼らは上条の苦労を知らないのだ。知っていても変わらないだろうが。 「ん?俺か?」 考えなしに教室の入口を見た上条は、瞬間的に口に残っていた飲み物を吹き出した。 着弾地点は、天井の顔面。 「上条……お前何か私に恨みでもあるんだろう?」 「うわ違うんだ天井――!!っていうか何で!?!?」 バタバタと慌てる上条をよそに、件の人物を見つけた女性は教室に入ってきた。 「おぅおぅいたいた。なんだお前さん。“やっぱり”予想した通り『こっちサイド』でもモテモテってえのかい」 気さくそうに話かけてきた人物―――建宮斎子(inスーツ)はニヤニヤとしながら上条のそばまでやってくる。 普段ダボダボの服を着ている彼女だが、スーツまではそうはいかなかったのか、本来の、線の細いスラッとした体のラインが印象的だった。 「がほ、ごほ、なんで、えっふげふ、お前が…?」 息も絶え絶えに言ってくる上条に、斎子はいたずらが成功した子供ねように笑う。 「前に言ったよなあ?私はお前さんのすぐ側にいるって、確かにいったのよなあ?」 「はぁ!?お前だからって、えぇ!?!?」 混乱している上条をよそに、教室内はどんどん殺気に包まれていく。 誤解を完全に生んでいるが、ここでいう私は、天草式全部を指す。もちろん斎子は誤解するだろうことは、わかっていて言ったのだが。 上条は、気づかない。 「あぁそうだ。まだ紹介してない人がおるのよ」 嫌な汗が背中を伝うが、上条は割り込めない。どちらにしろ状況がわかっていないのだ。身勝手に動いたらどうなるかわかったものじゃない。 斎子の言葉に反応したのか、教室のドアが再度開く。 そして入ってきた人物が――― 『『うおおおぉぉぉ!!!』』 と、教室の男子が興奮し、一部の女子も、なぜだか頬を赤く染めた。 「な、な、な、ななな、なん、な、なんで………」 そこにいたのは、服の下から制服に反逆するか如きの二つの宝を携え、髪は後ろ高くくくったポニーテール。その整った顔も、凛々しい瞳がさらに際立たせる。若干頬が赤いのは恥ずかしいからだろう。 そこには、世界でも二十人といないまさしく『聖人』神裂火織がいた。 「犯罪だろ――――!!!!」 直後、『聖人』の素晴らしき力をもって、上条は宙に浮くという体験をしたのち、意識を手放した。 「う、あ―――?」 ぼーっとする意識の中、頭の上に何か重さを感じるものがあった。 (なんか暖かい……) うつらうつらしていた意識だが、一度意識してしまうと、覚醒へと導くのかそのまま目を開ける。最初に見えた物は、天井。あまいではなく、てんじょうである。 そして、誰かの手だった。 「お。起きたみたいだなあ。どうだい?気分はどんなもんなのよ?」 そこでその手が、斎子のものであることにようやく気づく。 「腹が痛いんですが…」 「そりゃ物理的に体が浮くほどの衝撃を受けたんだあ、仕方のないことなのよな」 若干同情が混じった声だが、自業自得なのでそれ以上言わない。ただ頭を撫でながら、優しい表情の斎子は、とても“聖母”という表現が似合っていた。 「あう……えと、その……」 カーテン越しにこちらを覗き込んでくるのは神裂。どうやら人を傷つけるのが何より嫌いな彼女にとって、いくら上条が悪くても、やはり気落ちしてしまうものがあるのか、落ち込んでいる。 ここで上条は、自分が保健室で寝ていることに気がついた。自業自得とはいえ、恐らく運んだのはこの目の前にいる斎子であろうことは容易に想像がついた。なにせ両手剣であるフランベルジェを軽々振り回すのだ。人一人くらい容易いだろう。 「建宮が運んでくれたんだろ?すまん。助かった」 「ん?ははは、気にするなってえの。まぁ私も少し悪ふざけが過ぎたかもしれないから、おあいこでどうよ?」 「そ、そもそも上条当麻!貴方があんなこと言わなければよかったのですからね!!」 思い出したのか、恥ずかしそうにしながらも、ちょっと落ち込んでいる。それに気づいたのか、上条は内心自分を責める。 いくらなんでも、姿をみた途端に犯罪だ、などと言われたら、誰しも傷つくというものだ。 「ごめん神裂。いくらなんでもあれはひどかった」 素直に謝られて、神裂自身やぶさかではないが、急に言われてしまい、なんだかひどく内心焦ってしまった。 その二人のやり取りを、斎子は微笑ましげに見ていた。 やがて、チャイムが聞こえたことで、未だに学校が終わってないことを思い出した。 「やばっ!!今の五限?まずいなぁ。次の数学で上条さん当てられるの確定してるのに、何にもやってないのでした!!」 誰にともなく解説口調の上条を、斎子は仁瓶もなくベッドに押し戻す。 「がはっ。ちょ、建宮さん?これは一体どういうことでせうか?」 混乱する上条をよそに、斎子はただただ笑う。 「安心しな。私が説明しといたから、お前さんは好きなだけ休んでいけってことなのよ」 そういうと、斎子と神裂は立ち上がる。 「私は授業があるので戻りますが、貴方はゆっくり休んでいてください」 「一応私も教師なんでなあ、失礼させてもらうのよな」 「ちょ、だからちょっとま―――」 「なんだお前さん。あんまり我が儘言って、お姉さん達を困らせちゃいけないな」 そういいながら、再び上条の近くまで行くと、斎子は上条の右手と頭を抑えつけ――― ちゅ 「なー!なー!なぁ――――!!!!」 「ほら、保健室では静かにしなきゃいけんのよ」 真っ赤になった上条を枕に押し込む。そのまま踵を返すと、同じく顔を真っ赤にした神裂がいた。 「あ、ああああ、貴女一体何を―――!!!」 動揺しまくりの神裂を押し出すようにしながら、苦笑いのまま保健室を後にする。 斎子自身、なぜあの場であのようなことをしたのかは理解できない。 ただ斎子と神裂が部屋を出ようとしたときの、上条の寂しそうな表情に釣られてしまったのかもしれない。 後日談。保健室の近くで監視していた透視能力者(in上条クラスメイト)の密告により本部が行動を起こす。 後、上条当麻がボロボロになって保健室のベッド下に転がっていたのを、保健医に発見されたことを明記しておく。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1949.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少年の帰還記念祭 第3話『パーティ開始!』 再び現在に戻ってホテルの一室。 上条と美琴はベッドではなく2人用ソファに腰掛けていた。 実は2人もさっき気づいたのだがこのホテルの部屋は2つに別れていた。 今上条と美琴がいるのはベッドの置いてあった部屋ではなくその奥の部屋だ。 奥といっても8畳~10畳ほどの広い洋室でテレビやらパソコンやらいろいろ置いてある。 移動した理由だがベッドには洗面所で眠っていた4人の女の子達を寝かせるためだ。 黒子と番外個体はなんだか幸せそうだったので毛布をかけて浴槽に放置しっぱなしだ。 ちなみに浜面はというと上条が洗面所に放り込んだ。 そして今2人がどういう状況かというと (ち、近い!もんのすごく近いって!!肩当たってるし!!!) それくらい美琴と上条の距離は近かった。 普通に座れば肩が当たることなどないのだがなぜか上条が少し美琴寄りに座っているので肩が当たるのだ。 しかも今こっちの部屋には上条と美琴の2人っきり。 おかげで美琴の心拍数はハンパないくらい上昇していた。 (そりゃベッドで寝てたときはもっと密着してたけどさ…あれは寝ぼけてたし……) しかし今ははっきりと意識がある。上条がすぐ隣にいるということがはっきり認識できる。 美琴はただ上条の隣に座るということがすっごい嬉しかったが同時にすっごく恥ずかしく感じた。 そのためさっきから雑念だらけで中々続きが思い出せなくなっている。 「御坂?それで……どうなったんだ?」 「え!?え~と……とりあえずアンタが挨拶するとこまで思い返したわ。」 「……挨拶は忘れてもらってもいいんだけど……」 「アンタすっごい緊張してたでしょ。」 「う、うるせーよ!!思い出したくないこと思い出させんな!」 どうやら上条にとって始まりの挨拶は思い出したくない出来事らしい。 「いいじゃないのそれくらい。」 「よくねぇよ…あーもう……忘れようとしてたのに思い出しちまったじゃねーか……」 すると上条は力が抜けたようにコテン、と美琴のほうにもたれかかってきた。 「ッッッ!!??!?ちょちょちょ!アンタなんで急に……!?」 「なんでって……何が?」 「だ、だからなんで急にもたれかかってきてんのよ!!」 「え……御坂にもたれたかったから。……ダメ?」 上条は美琴にもたれかかったままそう答えた。 「う…ダ、ダメじゃない。」 上条に『ダメ?』と聞かれたら美琴は『ダメじゃない』と返事するしかできない。というか美琴としてはもたれてほしい。 美琴は気持ちよさそうにもたれかかってくる上条にドキドキしていた。 上条の頭は美琴の肩にのせられツンツンの髪が美琴の顔に少し当たる。内心パニックものである。 (何これどーなってんのよ!なんで!?ってコイツ私にもたれたかったって言ったわよね……そういえばさっき寝てたときも私の頭なでてたし……ソファに座ろうって言いだしたのもコイツからだし…なんかおかしくない?いつものコイツと違うような……) 美琴は先ほどからの上条の行動に疑問を感じていた。何かがおかしい。 もたれてくることなどはいつもの鈍感な上条なら気にせずにやりそうな行動だが何か違和感があった。 しかし美琴は少し考えたのち (……ま、幸せだから別にいいかな…) 気にすることを完全に止めた。 まるで今の状況は恋人同士、正直美琴はずっとこのままでいたかった。 思わず表情にでてしまうので上条とは顔を合わせられない。 「それでもうこれ以上は思い出せないのか?……ってなんでそっち向いてんの?」 「それは気にしないで!!え、えと……それでえーと……確か緊張した様子のアンタがでてきて……」 「…それ何度も言われると俺も舞台裏とかも思い出しちまうな……」 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 先ほど美琴が思い出していた時より時間は数十分さかのぼる。 ここは7番会場舞台裏、小道具や予備のマイク、資材などが置かれているところだ。 舞台裏といってももちろん暖房設備は完備している。 そんな舞台裏の小さめのイスに今回のパーティの主役、不幸少年上条当麻が座っていた。 が、様子がいつもと違う。 上条は想像を絶するくらい緊張していた。 先ほど1度舞台裏から会場を見渡したのだがそこには何百という人がいたからだ。 上条「な、なんでこんな大規模なことになってんだ……」 というのも本当はクラスメイト&小萌先生だけで行うつもりだったからだ。 ところが青髪ピアスの『女の子をもっとたくさん呼んで盛大にやろやー!』という発言からおかしくなった。 その発言を真に受けた土御門が学園都市にいる知り合いを全員誘おうと提案しさらにはステイルと神裂を通じてイギリス清教もパーティーに誘ったのだ。 そこからどんどん話が広がっていき今に至るのである。 上条「おい土御門……なんでこんなに簡単に学園都市に魔術師達が入れたんだよ……」 土御門「それは気にするな。さあ上やん始めるぜよ。俺が呼んだら舞台に出てきて挨拶をするんだにゃー。」 そう言うと土御門は照明係りに何か合図をし舞台へと出て行った。 それと同時に会場がやや静かになった。 上条「この人数の前で挨拶するのか……不幸だ…」 エリザード「不幸不幸言ってんじゃないよ!こんなにアンタのために人が集まってくれてるんだから。よし、じゃあまずは私が行ってくるからね。」 それだけ言ってエリザードは舞台上へと出て行った。その数秒後会場内からは驚きの声が聞こえてきた。 上条「……まあ…確かに今のは正論か……で、あと問題は御坂だよな……」 今上条には挨拶以外にも不安があった。 それは今の言葉通り今日このパーティに美琴が来ているかどうか、ということだ。 上条「御坂とはロシアから帰ってきてから全然話せてないしな…今日来てくれてると話せるからいいんだけど…」 実は上条は美琴とのみ未だまともに話せていない。 上条はロシアの海で引き上げられ学園都市に戻ってくる前に魔術サイドの人と、戻って来てからは科学サイドの人と短いながらだいたい一通り話しを交わしていた。 だが美琴とは常盤台の寮でのあの一件があり、また美琴が上条を避けていたこともありまともな会話はできていない。 上条「常盤台の寮に行った時は白井がすぐに御坂を回収しちまったからなー…」 上条としてはロシアまで来てもらったお礼や心配をかけたということで謝罪もしたいので是非とも会って話がしたい。 と、あれこれ考えているうちに上条の出番がやってきた。 上条「はぁ……まあみんな俺のためにきてくれてるんだし……頑張るか。」 そう独りつぶやいて上条は座っていたイスから立ち上がり舞台へと足を進める。 と、舞台から戻って来たエリザードがすれ違い様に エリザード「私が盛り上げといたから後は頑張んな。」 上条「う、うっす!!」 元気よく返事したつもりが少し声が裏返った。 そして上条が一歩分舞台に姿を出すと大きな歓声と拍手が沸き起こった。 眩しいくらいの光に照らされ舞台の真ん中まで進むと拍手は一段と大きくなる。 上条は改めて舞台上から会場内を見渡したが、見渡す限り人で埋め尽くされている。舞台裏から見たときよりはるかに多く感じた。 土御門「それでは上やん!開始の挨拶をよろしく頼むぜい!」 それだけ言って土御門は舞台裏へと引っ込んでいった。 舞台上に一人取り残された上条は緊張がMAXになる。 上条「あ~……っと……今日はわざわざワタクシ上条当麻のためにお集りいただきまことにありがとうございまふ。」 緊張のあまり当初考えていた挨拶より馬鹿丁寧になった上噛んだ。 会場からは若干の笑いが生まれ上条の顔は真っ赤になる。 やらかしたと思い、頭の中が真っ白になりかけるがとりあえず落ちきを取り戻そうと深呼吸を何度か行った。 心拍数も少し下がり、顔の赤さが元に戻るのがわかるくらい落ち着き挨拶を続ける。 上条「みんなのおかげで無事帰ってくることができました!それに俺のためにこんなに多くの人が集まってくれるとは……素直に嬉しいです。まあ挨拶を長々と言っても退屈だと思うので早速始めたいと思います!」 そういうと上条はマイクの横の机に置いてあるグラスを手に取る。入っているのは当然ジュースだ。 それを見た会場のみんなもテーブルの上に用意されていたグラスを手にする。 上条「じゃあ……みんな心配かけてごめん!でもってありがとう!!乾杯!!!」 上条の合図とともに全員が乾杯する。 こうして大歓声の中、『上条当麻帰還記念祭』という大規模なパーティーが始まった。 ◇ ◇ ◇ パーティが始まると参加者達はそれぞれ行動を始める。 隣の人と雑談するもの、初めて知り合った者同士挨拶するもの、早速料理を食べるもの、何もせずただ座っているもの、ナンパするもの、 そんな中一番多く見られた行動、それは上条に話しかけようとすることだった。 もちろん美琴もその1人。 上条が挨拶を終え舞台からおりてくるのを見ると美琴はすぐさま上条の元へと走った。黒子に何か言われたような気がしたがそんなこと一切気にしない。 ここに来るまでの心配事は消えさり、一刻も早く上条と話したいという想いがあふれた。 もうこの想いは止まらない。 だがさすがは世界的ヒーロー、上条に話しかけようとしている人の数はハンパなく多い。 さらに上条をよく知らない人が近くで一目見ようと集まってきている人がいるため余計に数が増えている。 まるで上条は有名人のようだった。 美琴(うわっ……人多っ……これじゃアイツが見えないじゃないの……) 美琴はそこそこ後ろの方の席に座っていたため少し出遅れていた。 それでもなんとか人ごみをかき分けてようやく上条の姿をとらえた。 話しかけられる距離までもう数メートル。だが上条は美琴に気づいていない。 美琴(もう……ちょい……!!ってあれは……) するとここで上条の側にはインデックスがいることがわかり、それが美琴の嫉妬心をかき立てる。 自分も早くその位置に行きたい、そんな思いから思わず周りの人々に対して電撃を使いそうにもなる。 そんな中一人の少女がインデックスを押しのけ上条の背中に飛びついた。 ???「上条当麻ー!!あなたなんで私には話しかけずにイギリスを去ったのですか!?他の人とは話してたくせに!!」 美琴「えッッ!!?」 そう言って上条に飛びついたのは…… 上条「レ、レッサー!?ちょ、離れ……」 レッサー「忘れたとは言わせませんよ、ロシアで共に過ごした情熱的な日々を!」 ピキッ。 美琴の足は止まり何か頭で音がした気がする。 上条「そんな日々送ってねえよ!誤解招くような発言はやめろって言ったでしょーが!!」 上条の首に腕を巻き付け背中にぶら下がるレッサーを必死に引きはがそうとしていると ???「上条当麻ぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!昔年の恨みじゃあああああ!!!」 上条「おふっう!!!」 上条は後ろからキックをくらった。 叫びながら上条にドロップキックを食らわしたのは黒子……ではない。 そのキックの衝撃でレッサーは上条から離れ、吹っ飛んだ上条は誰かの胸にきれいに突撃する。 まるで予定していたかのような一連の動作だった。 美琴「なッッッ!!??!?あ・の・バ・カ・は……」 それを見た美琴は帯電を始める。 上条が突撃したその相手とは運び屋オリアナ=トムソン、金髪で巨乳の持ち主である。 オリアナ「あ~ら坊や、こんなところで積極的ね。お姉さんといいことしたいの?」 上条「い、いやちがっ、違う、違いますぅ!!おい誰だよ蹴ったの!!」 上条は勢いよくオリアナから離れ蹴られた方向を振り返る。そこには腕組みしたフロリスが立っていた。 上条「お前か!!なんでいきなり蹴るんだよ!!」 フロリス「アンタが悪いんでしょうが!!あのとき私の話も聞かずに強引に私に抱きついて川に飛び込もうとしやがって!仕返しよ、仕返し!!」 上条「あ、あれは川が浅いって知らなかったから……つーかお前も誤解を招くような言い方止めろ!!」 すでにまねいていた。 帯電が強くなる美琴の周りには人がいなくなり始めている。 すると美琴の周りとは対象に上条の周りにはさらにどんどん人が集まってきた。 しかも女の子ばかり。見たことある子からない子まで様々だ。 しばらくは呆然とその状況を見ていたがもう限界。美琴は上条めがけて勢いよく電撃の槍を投げつけた。 ◇ ◇ ◇ 建宮「おーう上条!久しぶりなのよ!そして相変わらずの女たらしっぷりなのよな。」 依然としてフロリスと言い合いをしている上条に天草式十字凄教の建宮斎字が声をかけてきた。 相変わらずの格好でやはり首から小型の扇風機をいくつも下げている。 だが流石にフランベルジェは持っていない。 フロリス「あのね、私はコイツにたらされてなんかいないわよ?」 インデックス「そ、そうだよ。私もたらされてなんかないんだよ!!」 レッサー「……インデックス、あなたあやしいですね。」 上条「ていうかたらされてって日本語なんか変じゃね?それに建宮、上条さんは女たらしなどではありませんよ……?」 建宮「そんなことより上条!お前に会わせたい人がいるのよな!おーい!!もう来てもいいのよな。」 建宮はやたら機嫌がいいようでにやにやしながら後ろの人ごみからその人の手招きしている。 会わせたい人、上条にはもちろんそれが誰かわからない。 俺の知らない人か?などと思ったが次の瞬間上条の目には衝撃が飛び込んで来た。 上条「ッッッ!!??!?」 五和「か、上条さん……お久しぶりです……」 それは顔を真っ赤にした五和。 衝撃なのはその格好、なんとあの大精霊チラメイドを着ているではないか!! 上条「ちょ、い、いつ、五和……さん?……その格好は……?」 五和「あ、いや、せっかくの…パーティーだから……」 その服はパーティだからって着る服じゃない、上条は全力でそう思った。 ここでふと五和が出て来た方向をよく見てみると建宮以外の天草式メンバーがおり、何かを応援しているように見える。 上条「あいつらがやらせたのか……ん?」 オルソラ「上条さん、お久しぶりでございますよ。」 今度上条の元に姿を見せたのはイギリス清教のオルソラ=アクィナス、相変わらずの笑顔だ。 何も問題はないと思われたが 上条「………え?」 オルソラ「どうしたのでございますか?」 上条「どうしたのでございますか?じゃねぇよ!!なんでお前までそんな服着てるでせうか!!?」 オルソラの服装はいつもの修道服ではなかった。大女神ゴスメイドだ。 胸の部分でとんでもないことになっている。 オルソラ「なぜって……久しぶりに上条さんにお会いできると思ったからでございますよ?イギリスで会って以来お会いしていませんでしたから。」 上条「え……それ「おいこらオルソラァ!!」って……」 上条がオルソラの言葉から何かに気づきそうになっているところに怒った様子のシェリー=クロムウェルが登場。 シェリー「アンタなんでそれ着てるんだよ!!絶対に着るなって言っただろうが!!どこで着替えたんだよ!!」 周りの人を押しのけてオルソラの元へやってきた。 だがオルソラはシェリーのことなどスルーして笑顔のまま五和と火花を散らし合っている。 というか『着るな』って言うくらいなら持ってこさせないでほしいと上条は思った。 さらに ???「ちょ、本気で止めてください!!ぶった切りますよ!?」 ???「まーいいじゃないの、こんなチャンスこれからはないと思いけるけど?」 何か大きめの声がしたかと思えば人ごみが一気に騒がしくなった。 上条(今度はなんだ?もう嫌な予感しかしねぇな……) その予感は的中する。 人ごみの中から1人の女性が押し出され上条の目の前に姿を現した。 メイドだ。しかしただのメイドとは格が違う。 上条「…………神裂…その格好は………」 神裂「ち、ちち違いますよ!?今回は私が自分から着たのではなくてですね、このバカがさっき魔術で無理矢理……」 建宮「……ま、まさかここで女教皇様がこの格好で来るとは…予想外なのよ!!」 そう、あの伝説の『堕天使エロメイド』だ。いろんな部分がいろいろとハンパない。 ローラ「ちょっと神裂!上司に向かってバカはとはどういう「うっさい!!!」……」 神裂「テメェは黙っとけ!!後で絶対斬る!!って、そういうわけで着たくてきたわけじゃないですからね!?ほんとですよ!?」 神裂は結構キレていた。素で怖い、と上条は感じた。 それにしてもこのありえないような状況に上条は困っていた。 上条(め、目のやり場に困る……) 全国の男子が聞いたらぶち切れるような困り事だ。 だがなんたって目の前には堕天使エロメイド、大精霊チラメイド、大女神ゴスメイドの3大メイドが集結しているのだ。 特に胸、嫌でもそこに目がいってしまっている。 ???「……アナタはさっきからどこを見てやがるんですか?」 上条「へ?ど、どこってどこも見てませんよ!?」 急にツッコまれたことに上条の心拍数は急上昇、心臓がバクバク聞こえる中、声のしたほうを見てみる。 そこには見覚えのある赤髪を三つ編みにした少女が立っていた。 上条「アニェーゼかよ……驚かせんな…」 その少女とは元ローマ正教で今はイギリス清教の傘下に入っているアニェーゼ=サンクティス。 五和とオルソラと違い着ている服はいつも通りのミニスカート並に短い修道服だ。 アニェーゼ「何も驚かすつもりはなかったんですがね、その反応を見る限り図星なんですね。正直に言っちまってください。」 上条「ッ!?正直に言うも何もそんなこと紳士上条さんにありえるわけないのでございますよ!?」 インデックス「とうま……あやしいんだよ…」 フロリス「ほんとサイッテーなやつね。」 レッサー「ええ、さすがにひどいですね。」 上条「お前ら口々に何言ってんだ!そ、それでアニェーゼ、何か用なのか?」 4人にモロに指摘され焦りを隠しきれていない。 五和とオルソラと神裂も話を聞いていたようで五和はすこし顔を赤くして、オルソラはニコニコしながら、神裂は何かぶつぶつつぶやいてこちらをジーっと見ていたので上条は強引に話を切り替えた。 するとアニェーゼは表情を変え少し顔を赤くした。 アニェーゼ「え、いや、その用というかですね、せっかくのパーティなんですし、声をかけてみようかなと……」 上条「?どうした?」 何やらその質問には答えにくいようでアニェーゼの声はだんだん小さくなっていき、後半は聞こえるかどうかがあやしかった。 アニェーゼが上条に声をかけた理由は明白だが鈍感な上条が気づくわけもない。 ここでふと上条は右側がなにやら別で騒がしいことに気づき目線をやると 上条「ん……ってぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」 電撃が飛んできていた。上条は超反応で右手を突き出し電撃をかき消した。 フロリスが上条を蹴ったことにより周りにはスペースができていたので周りに被害はでなかったが騒然とする。 こんな電撃を放ってくるやつは1人しか思い浮かばない。 上条「御坂……だよな?あいつ来てくれてたのか……」 上条は電撃が飛んで来た方向を見たがすでにそこには誰もいなかった。 辺りには焦げくさい臭いだけが残っている。 神裂「……最大主教?服こげてますよ?」 ローラ「え?……ッ!!?ちょ、神裂!こげてるっていうか燃えたりけているのよ!水!水!!無視しないでお願いだから水!!」 ◇ レッサー「それにしてもフロリス……上条当麻に抱きつかれたって本当ですか?」 フロリス「本当よ!!こいつもう1回蹴ってやろうかしら!」 レッサー「他の人が聞いたら羨ましがられますよ。競争率かなり高いんですから。」 フロリス「え……それマジ……?こいつって…もてるの?」 レッサー「大マジですしびっくりするくらいもてます。」 それを聞いたフロリスは上条に目をやる。 フロリス(そういやこいつ……あの電車では私を助けるために川へ飛んだのよね……) フロリスに見られていることに気がついた上条はまた蹴られてはたまらんと思いこちらに敵意はないですよー、と笑顔を見せる。 これが決定打となりフロリスは顔を赤くする。 上条当麻、フラグメーカーと呼ばれる彼はここに新たにフラグをたてた。 もちろんこのことは上条も美琴も知る余地はない。 ◇ ◇ ◇ 美琴「全くなんなのよあの馬鹿は!!」 美琴は怒りが収まらないまま目的もなく会場内を歩き回っていた。 上条の元へ走って行った時に黒子たちとははぐれてしまっているため今は1人だ。 まあ元の席に戻れば多分いるだろう。 美琴「せっかく久しぶりに話そうと思ったのに……他の女の子とばかり話しちゃってさ……」 美琴は立ち止まると小さくつぶやいた。本当は上条とちゃんと話がしたかったのにこんなことになってしまって残念で仕方がない。 ここでふと横の丸いテーブルを見ると高校生くらいの男女がいた。 少年は茶髪で女の子はピンクのジャージを着ている。 滝壺「はまづら、これおいしいよ。」 浜面「お、くれるのか!ありがとな滝壺!」 仲のよいカップルのようだ。 さらにその横では1人の少年がきわどい着物姿の女の子にひっぱられていた。 ???「ね~女王様とか王女様を見に行きましょうよ~半蔵様!こんなチャンスないですよ?」 半蔵「いや俺はいいから!俺はさっき愛穂さんを見つけたからそっちへ行きたいんだよ!郭、お前はフレメアと行ってこい!!」 郭「嫌です、私は半蔵様と行きたいんです!ほら早く!」 半蔵「おい、引っ張るなそんなに!それに浜面!お前も見てないで止めてくれよ!」 こちらはカップルではなさそうだが美琴から見れば実に楽しそうだった。郭という女の子のような態度で上条に接したいとさえ思った。 美琴はこの2組の男女の姿をついつい自分と上条に置き換えて想像しまう。 もし上条とあの2人のような関係になれたらどれほど幸せだろうか。 自分で想像する幸せを遥かに超える幸せに違いない。 美琴(私もいつかアイツとあんなふうに……なれたらいいな……………あ) ここで美琴はあることに気づいた。 まずい、上条がとられる。 さっきの女の子たちを見てわかったが今日は鈍感な上条の気を引こうとしているのかかなり積極的だ。 このままでは上条がとられかねない。 もし万が一上条が自分以外の誰かと付き合ってしまったら今のカップルのようなことができなくなってしまう。 美琴「や、やばい、アイツの周りには可愛い子とか胸の大きい女の子しかいないし……」 本気で美琴は焦り始めた。 このままではいけない、もう1度上条とちゃんと話をしよう。 電撃など放たずに素直に、そう考えた美琴は再び上条の元へと向かう――――― 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少年の帰還記念祭
https://w.atwiki.jp/index-index/pages/64.html
【種別】 スレがはじまるときに起こる一番初めのカオス 住人が己の誇りを賭けて作り上げたネタが羅列される ちなみにスレ違いネタはメイドにより掃除される 【元ネタ】 ありとあらゆる原典より生み出される 【初出】 初めての 1乙は 鎌池和馬スレッド4 「とある魔術の禁書目録」より生まれた ちなみにミサカネタである 6 名前: イラストに騙された名無しさん 04/10/31 03 10 58 ID KJbsDcu0 [ 1] 誰も言わないので乙です、とミサカはねぎらってみます 【解説】 禁書スレならず、2チャンネルの全スレで行われる儀式である が、ここまでネタに特化する例は珍しい 乙レルス、乙ィヌス、乙宮斎字などの派生系もある 【関連】 1への乙を保存するスレ ( 禁書板 )
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1406.html
「ミサカ、巫女と美琴」(第4話その19) 神裂火織は臨戦態勢のまま注意深く一方通行のダメージを観察する。 (手応えありッ!!学園都市第一位といえども唯閃を受けて無傷で済むはずがありません!! …………否ッ! 唯閃を受けてなおまだ立っているという事実にこそ驚愕すべきですね。 先ほどの虹色に光る衝撃波…………あれはきっと反射された唯閃なのでしょう。 身体に受けたダメージは大きいようですが目の輝きに一点の曇りも見えません。 ならば私のすべきことはただ一つ!!) そして神裂火織は七天七刀に手をかけた右手に力を込め一方通行の言葉に応える。 「応(おう)ッッ!!唯閃ッッッッッッッッ!!」 再び神裂火織と一方通行の間の空気が引き裂かれる。 ズバァッ!!と。 無数の未知なる力(ベクトル)が一方通行の身体に叩き付けられる。その瞬間、一方通行の身体 は地面に叩き付けられ2度、3度とバウンドしながら後方へ転がされていた。だが同時に反射した力 (ベクトル)が叩き付けられる力(ベクトル)と激突し稲妻のような閃光が迸る。そして轟く爆音を追い 抜き虹色の衝撃波が周辺を蹂躙する。しかし今回、その一部がまるで自らの意志を持つかのように 軌道を変え威力も性質も軌道もタイミングも異なる3721種類の力(ベクトル)となって神裂火織に襲 いかかる。 「──────は、ァアア!!」 神裂火織は気を吐き迎撃に移る。『神を殺せるように』組み替えられた身体が振るう七天七刀は 僅か100分の1秒の間に次々と襲い来る数千もの力(ベクトル)を次々と撃ち落とす。しかし天草式 十字凄教の粋を集め一時的に人の領域を越えた存在となった身体にも限界はある。3694の力を 撃ち落としたものの27の力を撃ち漏らし、その内13の力が神裂火織の身体を直撃する。 ドガガガガッ!!と神裂火織の周囲に落ちた力が轟音とともに土煙を大量に巻きあげる。 「く──ッッ!!」 轟(ごう)ッッ!!と吹き荒れる土煙の中で神裂火織は苦悶の声を漏らす。 もはや直撃は避けられないと判断した力に対しては回避を諦め己の強化された身体を信じ正面 から受け止めた。ズガガグギガギギッッ!!と13の衝撃が歯を食いしばる神裂火織の腕を、腰を、 肩を、そして頭を容赦なく叩く。 ヌルッ!と汗が一筋額を流れ落ちる。 いやそれは汗ではない。前髪を濡らし額をつたわる赤い滴りは右目の視界を徐々に塞ぎ始める。 だが神裂火織は血を拭おうともせず唯閃を受けて地面に転がっている一方通行を凝視する。 倒れたまま、地面を掴むように伸びていた指がピクリと動いた。そして地面を這わせる指が大地を 握りしめると一方通行は起き上がる。ボロボロになった身体に残ったわずかばかりの力を全て注ぎ 込み立ち上がる。血まみれの身体は右に傾き右手はダラリと力無く垂れ下がっているものの、神裂 火織を睨み付ける赤い瞳は光を失っていない。 「どォしたァ!?…………もうおしまいか!? さっきから俺ばっか愉しく踊ってるみてェだからよォ。 今度はオマエを愉快に踊らせてやるよ。オマエの血の海でな! どうした!?掛かってきな!」 (唯閃を2度も受けたはずなのに、どうして立ち上がることができるのです!? 私より遥かに大きなダメージを受けているはず…………なのに どうしても勝っている気がしません。これが学園都市第一位ッ!!) 神裂火織は独特の呼吸法をもって再び魔力を極限まで練り上げる。たった1度受けただけで唯 閃に対応し始める高い適応能力を見せつけた一方通行に対し、このまま単発で唯閃を放っていて はいずれ唯閃ですら弾き返されると判断した神裂火織は次の一撃に全てを託す。 (先程は唯閃の反射も不完全でした。ならば唯閃を反射した衝撃波を出すタイミングに合わせて 唯閃を連続で叩き込むのみ。唯閃に対応しきる前に叩き伏せなければ私の負けです) 七天七刀に掛けた指先にまで気を充填させ神裂火織は決戦に備える。 体内にため込んだ気がまさに爆発寸前にまで高まった瞬間、建宮斎字の声が頭に響き渡った。 『プリエステス!!11時の方向。距離400メートルの鉄塔に狙撃手!』 「!」 「ミサカ、巫女と美琴」(第4話その20) 霊装を通じて直接頭に鳴り響く建宮の警告に神裂火織は視線を僅かにずらし400メートル離れ た鉄塔からこちらを狙う狙撃手を確認する。神裂火織の視力は人間の足首ぐらいの金属筒に鋼の 箱やケーブルをゴチャゴチャ取り付けた巨大過ぎる奇妙な銃の形状も狙撃手が引き金に掛けた指 の動きすら正確に捉えていた。 同時にその銃口が自分を狙っていないことにも気付く。ならば標的は一つしかない。一触即発の 状況で敵から注意を逸らすことは敗北(死)に直結する。だが神裂火織はためらうことなく一方通行 を狙う狙撃手に向けて唯閃を放った。 引き金が引かれるより早く狙撃手の足場となっている鉄塔の根元が真っ二つに切断される。異常 事態に慌てた狙撃手が退避動作に入る頃には既に神裂火織は七天七刀を鞘に収めて一方通行 に対峙し直していた。もし狙撃手がスコープを覗いていたなら困惑する神裂火織の表情を伺い見 ることができただろう。 (どうして?) 目の前でカハッ!!っと胸を押さえて咳き込む一方通行の姿に神裂火織は困惑する。神裂火織 は狙撃を完全に防いだ訳ではなかった。狙撃手はもう一人いたのだ。彼らは学園都市統括理事の 一人トマス=プラチナバーグが雇った傭兵崩れの狙撃手だ。学園都市製の磁力狙撃砲MSR-001 と一方通行用に開発された特殊な成形炸薬弾を与えられた彼らは一方通行の頭と心臓をそれぞ れが狙撃する計画だった。 使用弾頭は対戦車榴弾(HEAT) として使われる成形炸薬弾を一方通行専用に改良したもので ある。もともと対戦車榴弾はモンロー/ノイマン効果によって生じた超高速金属噴流(メタルジェット) に戦車装甲を貫通させるものである。例え鋼鉄であろうとユゴニオ弾性限界を超える動的超高圧下 では塑性流動を引き起こすためセラミックを用いた複合装甲でなければ対戦車榴弾を防ぐことはで きない。 とはいえただの対戦車榴弾(HEAT)が一方通行に通用するはずはない。だが学園都市の科学者 達は一方通行の反射に引っ掛からないはずの酸素分子に目をつけた。そして弾頭内の金属板(ラ イナー)を固体酸素に置き換え、炸薬の爆発で生じる爆轟波により秒速数千メートルという超高速 で酸素噴流を噴出させる新たな成形炸薬弾を開発した。ただし一方通行の反射により弾頭が弾き 返される瞬間に正確に炸薬を起爆させる信管技術、凝固点が-218℃の固体酸素を炸薬の起爆 まで融解させない断熱技術そして酸素分子に十分な貫通力を与える技術の開発に莫大な予算と 人員が費やされたことは言うまでもない。 だが莫大な予算をかけて開発されたもののその有効範囲は着弾点から前方わずか5cmまでしか 伸びなかった。それでも科学者達は心臓あるいは頭部を正確に狙えば一方通行に致命傷を与え ることは可能だというレポートを提出し、それを信じたトマス=プラチナバーグは一方通行の狙撃に ゴーサインを出したのだ。 一方通行以外に使い道が無い弾丸に莫大な私財をつぎ込んだことはトマス=プラチナバーグが この時点でいかに9月30日の私怨に囚われ冷静な判断能力を失っていたかを示している。そうで なければ後日ステファニー=ゴージャスパレスに無惨に殺されることもなかっただろう。 法外な報酬と引き替えに狙撃を引き受けた二人の狙撃手の内、頭を狙った狙撃手は神裂火織に 阻止されたが、心臓を狙った狙撃手の磁力狙撃砲は特殊成形炸薬弾を秒速290メートルで射出し た。放たれた成形炸薬弾は一方通行の反射膜に触れた瞬間その運動ベクトルを変換され狙撃手 へと正確に打ち返される。しかしその直前に信管は炸薬を起爆させ超高速酸素噴流を一方通行の 心臓に叩き込んでいた。 トマス=プラチナバーグの執念の一撃は一方通行の反射を突き破ることに成功した。しかし唯一 のそれでいて致命的な誤算は直前に神裂火織の攻撃を受けた一方通行が反射の演算式を書き 換えていたことだろう。本来なら酸素噴流は体表から心臓まで直径1mmの穴を穿ち心臓を内部か ら破裂させ一撃で致命傷を与えるはずが、直前に書き換えられた演算式のせいで噴射質量の内 の82%が反射フィルターに弾かれてしまった。だが残りの18%の高速酸素噴流は錐のように一方 通行の身体に喰い込みその牙は肺の一部を噛み千切り心臓にまで届く傷を与えた。 「ミサカ、巫女と美琴」(第4話その21) 常人ならば即死する深手を負った一方通行は悲鳴を上げる心臓の鼓動をベクトル操作で強引に 整え、心臓の傷口から噴き出すハズの血流すら操作し全身を巡る血液の流れを確保する。また穴 が空き萎んでしまうはずの左肺も息の流れをコントロールし呼吸を確保する。だがそれは能力で最 低限の呼吸と血流を確保しただけであり、傷が治った訳でも痛みが治まった訳でもない。傷は未だ 致命傷のままであり能力を打ち切れば数十秒で一方通行は絶命するだろう。 ようやく事態を悟った神裂火織は一方通行に慌てて駆け寄る。もう一人の狙撃手を見逃したこと は神裂火織が狙撃手を一人倒したことにより生じた油断が原因だといえなくもない。だが一方通行 という強大な相手と対峙している最中に周囲に割ける注意力を考えれば神裂火織の油断であった と責めることはできないだろう。しかし全てのものを救うと心に決めた神裂火織は自分の油断が許せ なかった。 「大丈夫ですか?一方通行」 『うるせェ!決着はまだついてねェぞ!!』 「傷をお見せなさい。今すぐ治療します」 『ざけンな!』 前方の空気を振るわせ声を作っていることからも心肺機能にどれほど大きなダメージを受けてい るかが判る。神裂火織は急いで回復術式を組みあげ発動させる。すると一方通行を取り囲むように地面に緑色に輝く光の輪が現れゆっくりと上昇し始める。 だがその途端、バチン!!と光の輪が一方通行の反射フィルターに弾かれ四散する。 「一方通行。今だけで良いですから私の回復術式を受け入れて下さい」 『こんなかすり傷に、オマエの助けなンかいらねェンだよ!』 「無茶です。一方通行!痛ッッ!」 一方通行の肩に掛けようとした神裂火織の手はその運動量を反射され弾き飛ばされる。 『続きを始めッぞ!さっさと準備しやがれ!』 そう言った途端ガクン!と一方通行の両足が力を失う。 (なンだ?一体…………くそっ、打ち止めのヤツが俺の能力をブロックしやがったのか!?) 能力によって辛うじて身体を支えていた一方通行は地面に片膝を付く。同時に失血を防いでい た能力も失い、途端に穴の空いた心臓は再び悲鳴を上げ、破れた肺は呼吸を拒み、体中の傷口 からは大量の血液が流れ出る。神裂火織は再び回復術式を組みあげると一方通行を囲むように 緑色に輝く光の輪が現れゆっくりと上昇する。 意識を失う寸前だった一方通行は思わず目を瞬(しばたた)かせる。先ほどまでの激痛が嘘のように治まっていた。力を失ったはずの右手すら思い通りに動いてくれる。 (これが魔術…………なのか!?) 身体のダメージをチェックしつつゆっくりと立ち上がる一方通行が顔を上げると目の前に神裂火 織と目が合ってしまった。柔和な表情を見せる神裂火織から目を逸らすと一方通行は右手で髪の 毛を掻きむしる。 「あ…………」 何かを言い掛けた一方通行の言葉はその腰に体当たりしてきた幼女によって断ち切られた。 「ゴメンナサイ!痛かったでしょ。でもあなたを助けるためにはあそこで能力をブロックするしか方法 はなかったの、ってミサカはミサカはいつも無茶ばかりするあなたに涙目で訴えたり」 「どうします?一方通行。まだ続けますか?」 「こンな邪魔が入っちゃ、もォやる気なンて無くなっちまったぜ! まあ、どうしてもオマエが闘いたいって言うンなら付き合ってやってもイイぜ!」 「いいえ、遠慮します。あなたには何故か勝てる気がしませんでしたから」 「フン!謙遜しやがって。まあイイ。じゃあ俺は帰るからな」 「あっ、待って待って!ってミサカはミサカはあなたの腕にしがみついて久しぶりに一緒に帰りましょ って駄々をこねてみたり」 腕にまとわりつく打ち止めを適当にあしらいながら一方通行は今日の戦闘を思い出していた。 (今まで雑魚ばかり相手していて気付かなかったが魔術っていうのもどうやら侮れねェみてェだ。 しかし9次元での反射をデフォで展開しておくにはミサカネットワークへの負担が重すぎる。 俺の頭が元通りなら問題ねェが、ミサカネットワークに頼るならもっと演算式をスリム化しねェと。 仕方ねェ。経験を積む必要がありそうだからコイツらに少しぐらい付き合ってみるか?) 「ミサカ、巫女と美琴」(第4話その22) 学園都市某ビル内の一室 「この映像は永久保存版としてミサカネットワークのアーカイブに保管する必要がありそうです とミサカはまるで傷口に塩を塗りつけるようなわざとらしい口調で呟きます」 「…………、ぷっ…………くっ、くくく、苦しい」 「御坂さん。肩が揺れてる。ほら。…………笑ったら失礼。…………ぷっ」 ここは学園都市某ビル内の秘密戦隊RAILARの作戦司令室。 RAILARのメンバー全員が揃うのは上条達が初めて招集された日以来である。 上条達はその日と同じようにバトルスーツに身を包んでいた。只一人の例外を除いて。 「おい、クソチビ!オマエが死ぬ前に一つだけ聞いておきてェことがある」 「一つだけで良いの?ってミサカはミサカはあなたのコメカミに浮き出た青筋に身の危険を感じつ つ怒りの矛先を逸らそうととびっきりの営業スマイルで答えてみる」 「こいつァ何の真似だ?」 「だってあなたは昨夜の戦闘でキシサクマアの首領と互角に戦って撃退したでしょう! ってミサカはミサカは昨夜のあなたの凛々しい姿を脳内再生し改めてあなたに惚れ直してみたり」 両手を頬に当て身体をくねらせながら打ち止めは答える。なおも青筋を立てたこめかみをヒクつ かせながら一方通行は今にも爆発しそうな怒気を込めた声で打ち止めにもう一度問い直す。 「なら!!それがこれとなンの関係があンだ!?なンのバツゲームだ!こりァ!?」 「ぷっ、…………くっ、くふふっ、ふぁっははははははは──────!」 御坂美琴は必死に堪えてきたがとうとう限界がきてしまった。溢れ出した笑い声はもはや止めるこ とができない。腹を抱えてうずくまる御坂美琴をギロリ!!と睨み付けるが今の一方通行には御坂 美琴を黙らせる迫力が少しばかり欠けているようだ。それはひとえに一方通行の着ているスーツに 原因がある。 そう。今一方通行が着ているスーツは紛れもなく、どこからどう見ても、誰がなんと言おうともセーラ ー服以外の何ものでもなかった。おまけに頭には白い花の髪飾りまで着けている。 「RAILARで最も活躍した人はブラック(上条)と一日デートができるのよ、ってミサカはミサカはなに 今さらご託を並べてんの?って感じでRAILAR結成当時に決まったルールを当然のように確認し てみる」 「あァ!?なンの話だ!そりゃァ!?」 「ほら、あの日あなたが怒って司令室から出てった後に決まったでしょ。憶えてない? ってミサカはミサカはふざけた素振りを微塵も見せずに質問に対して質問を返してみる」 「ッざけンな!つきあってらンねェ、俺は帰るぞッ!」 「でもスーツはバトルモードに戻さないと脱げないよ、ってミサカはミサカは親切にも忠告してみる」 司令室の出口に向かっていた一方通行だが、後ろから掛けられた打ち止めの声に立ち止まると ちっ!と舌打ちし面倒くさそうに言い放つ。 「チェンジ、バトルモード」 「あっ、言い忘れてたけど、今スーツ変形機能はこちらでブロックしているから叫んでも無駄かも って、ミサカはミサカはわざとらしく追加説明してみる」 「テメエ、そっちがそのつもりなら、こンなスーツ、俺の能力で引き裂いて…………」 チョーカーに手を当て能力使用モードにスイッチを切り替えようとする一方通行にまたしても打ち 止めは涼しい顔で通告する。 「ちなみにあなたの能力もミサカネットワークの代理演算をブロックしているからスイッチを能力使用 モードに入れ替えたって無駄かも、ってミサカはミサカは余裕の表情で宣言してみる」 「ふっ、ふざけやがって!なら、こンなスーツはナイフで切り裂いて…………」 「残念でした。学園都市製の防弾防刃防爆スーツはナイフや銃なんかで傷つくほど柔じゃないよ ってミサカはミサカは学園都市の技術水準の高さをことさら自慢してみたり」 プルプルと全身を小刻みに震わせる一方通行に打ち止めはさらにたたみ掛ける。 「ミサカ、巫女と美琴」(第4話その23) 「無駄な抵抗はもう終わりかな、ってミサカはミサカは上から目線で宣言してみたり。 でもね。そのスーツを脱ぐ方法がまだ一つ残ってるんだよって耳寄りな情報を打ち明けてみる」 「なンだ!それは!?」 「そのスーツって一つ一つに違った『破滅の言葉』がセットされていて装着者がそのキーワードを 宣言するとスーツは5秒後に自壊する仕組みになってるの、ってミサカはミサカは衝撃の事実を あなたに伝えてみたり」 「ほ────ッ、でもその言葉は俺に教える気はねェンだろ!どォせ」 「そんなこと無いよ、あなたのスーツのキーワードは『ラストオーダー、愛してる』だよ。さあ大きな声 で言ってみよう、ってミサカはミサカは喜色満面であなたにキーワードをせっついてみる」 「ッざけンな!誰がそンなこと言うかよ!」 「えっ、そうなの!あなたはそんなに、そんなにブラックとの一日デートが良いの!? ってミサカはミサカはあなたの意外な趣味にハンカチで涙を拭いながら嗚咽を漏らしてみる。 ついでにもう観念してキーワードを言うしかないよねってさりげなくあなたに迫ってみたり」 「もうその辺で許してやれよ。司令官(ラストオーダー)」 「あァァァああ?許してやれだあ?なンで俺がこのクソチビに頭下げなきゃなンねェンだよ!? ほら、オマエはなにボサッとしてンだよ!さっさと支度しやがれ!」 「…………え?」 「えっ、じゃねェだろ!デートだよ。で・え・と!!」 「じょ、冗談言うんじゃねえよ!!一方通行(アクセラレータ)」 「馬鹿野郎!誰がアクセラレータだ!?百合子って呼びやがれ!! さっきからオマエも俺のことを散々笑ってくれたよな。 こうなりゃ、オマエも道連れだ!今日は地獄の底まで付き合って貰うぜ」 「えっ、ちょっ、ちょっと待って、心の準備が、まだ、きゃ──────────────ッッッ!」 悲鳴を上げる上条を引きずるように一方通行は出口へと向かう。そして、 「不幸だああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 上条の絶叫を絶ち切るかのように無情にも司令室の扉が閉じられた。 その日、不可思議なカップルが学園都市のあちこちで目撃されたという。 そしてこの日を境に『一方通行=鈴科百合子ちゃん』伝説が都市伝説として学園都市内でまこと しやかに囁かれることになったのだという。 「ミサカ、巫女と美琴」 おしまい
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/553.html
英国 聖ジョージ大聖堂 「はぁ…」 煙草を咥え、煙と共にステイルは溜め息をついた。 溜め息の理由は 「おなかすいた…」 「…」 「おなかすいたって言ってるんだよ!」 服の裾をぐいぐいと引っ張るのは、暴食シスターインデックス。 彼女は霊装を運ぶステイルの後ろを歩きながら 「せっかくお手伝いで来たっていうのに、大したおもてなしもされないまま、すぐに掃除なんて酷いかも」 「君は元々イギリス清教のシスターなんだから、掃除を手伝うのは当然だろう。 それに、さっき昼食を食べたばかりじゃないか」 「もうおやつの時間なんだよ!」 はぁ、とまた溜め息をつく。 しばらく地下通路を歩いていると少し開けた広場へ出た。 あちらこちらに霊装やら書物が置いてあり、それを整理する人員もちらほらといる。 今、ステイル達は地下の霊装保管庫から霊装を運び出しているところだ。 聖ジョージ大聖堂はとある一戦により地下まで崩落しており、復旧作業が行われているが地下はとても使える状態ではない。 しかし、地下保管庫には普段使う霊装から貴重な物まであるので、復旧するまでそのまま… というわけにはいかない。 そして霊装の中には配置を覚えとかなければならないとか、厄介な物もある。 そんなわけでステイルはインデックスと霊装を運び出しているのだが 「これが運び終わったらおやつにしてほしいかも!」 「はいはい、わかったよ」 途端にインデックスの表情が明るくなる。 「やった!それじゃぁさっさとするんだよ!」 今まで後ろを歩いていたインデックスだが、ステイルの服を引っ張りながら前を走る。 両手に霊装を抱える彼からすれば正直迷惑な話だが、実際は満更でも無いようだった。 「これはここで、その箱はこっちなんだよ!」 霊装を並べる広場に、インデックスの元気な声が響いた。 そんな元気な声の響く広場の一角。 「う~ん」 男たちが何かを考えているのか、難しそうな呻き声を上げていた。 「この服…どう考えても、考案者と俺たちには同じ血が流れていると思うんよな」 建宮斎字は、静かに呟く。 「これはやっぱり、着てもらうしかないんよな」 周りの男たちもうんうんと頷く。 彼らは天草式十字凄教(の男衆)である。 イギリス清教の傘下に入った彼らもまた、例外なくこの大掃除に参加させられていた。 そして今、彼らが円形に立つ中心にあるのは… 「どう見てもメイド服よな」 そう、いつの時代のものか、古ぼけたメイド服があった。 しかもどこかの義妹が着ているような由緒正しきメイド服とは違う。 胸の辺りは大きくひらけていて、付属品では頭の上に着けるわっかのような物がある。 それは… 「これこそ堕天使エロメイドの元祖だったのよな!」 おぉ…と、その場にいる男衆がざわめく。 「でも、どうやって女教皇様に着てもらうんすか?」 男衆の中でも小柄な少年、香焼が尋ねる。 「それを今から考えるんよ。よし、班をわけるぞ」 おぉ!と無駄な団結力を示す男衆を対馬は遠巻きに見ていた。 「ったく…くだらないことで時間を…って五和?」 隣に目線をやると、対馬の隣にいた五和はなにやらモジモジと胸のあたりを見ていた。 「はっ…そうですね!さっさと片付けましょう!」 そそくさと去っていく五和。 対馬は小さく溜め息を付いた後… 「…」 チラリと、 自分の胸に視線を動かした。 「はぁ…」 こちらの一角では金髪碧眼の少女が溜め息をついていた。 彼女の格好は、別に運動をするわけでもないのにラクロスで使うような服を着ている。 「なーんで私たちがこんなことしないといけないかなぁ」 「仕方ないわ、むしろこれくらいで済むのなら安いものでしょ」 銀髪の少女は荷物を抱えながら言う。 彼女たち『新たなる光』のメンバーは、ある年齢詐欺女から 「あれほどの騒ぎを起こしけるのだから、これくらいは手伝いべくものよ」 と、笑顔の威圧を受け今に至っている。 「あんの女狐め…」 「それよりフロリス、ランシスは?」 「ん、くすぐったさと戦ってる」 フロリスの指差す方向では、ランシスがピクピク肩を震わせながら他の修道女と荷物の整理をしていた。 「危なっかしくて荷物を運べないからねぇ」 「困ったものね…レッサーは?」 あれ?とフロリスは首を傾げる。 「さっきベイロープと一緒にいたじゃない」 「見失ったの。まったく…あんまり仕事しないくせにすぐどこか行くんだから… ま、後ででいっか」 ベイロープは溜め息をついて、荷物運びを再開した。 「それじゃぁよろしく頼むよ」 「はい。よろしくお願いします」 上条は差し出された手を強く握った。 黄泉川の車で警備員の支部に到着した後、ふらふらな足取りのまま連れられたのは支部長室という部屋。 そして、さっきの校長室と同じようにソファーに座らせられ、いくつかの書類を記入させられた。 初めはここの支部長の男性からいくらかの謝罪を受けたが 上条はむしろ感謝していると言うと、困ったように笑われ黄泉川からは拳骨を食らった。 「ったく…そう思ってるのはアンタぐらいじゃん」 ともあれ、書類を記入した後簡単ながら規則などの説明を受けて今に至る。 「まぁ習うより慣れろです。以後のことは黄泉川に従ってください」 支部長は言いながら黄泉川のほうを見た。 「さ、それじゃさっさと行くじゃん。失礼しました」 「あ、失礼しました」 何やら書類を見ながら歩く黄泉川の後ろを上条は付いて行く。 「っと…まずはココじゃん」 黄泉川が立ち止まる。 自動扉には「男子更衣室」と書かれていた。 「さて…と」 黄泉川は上条に視線で何かを促す。 「?」 何かを求められているようだが、何をすればいいのか分からない上条は首を傾げた。 「私は女だから男子更衣室のIDは無いじゃん。さっさと手出して」 「あ、あぁはい」 上条が扉の横に付いていたパネルに手を触れるとロックが解除される音がして扉が開く。 「誰もいないか見てきて欲しいじゃん」 中に入るとロッカーがいくつも並んでいて、人は誰もいなかった。 誰もいませんよー と入り口に声を掛けると黄泉川も入ってきた。 「アンタのロッカーは…ここじゃん」 黄泉川はロッカーの一つを指差した。 上条が手を掛けると、ここでも指紋か何かを読み取っているのか自動的にロックが解除される音がした。 ロッカーの中には警備員が普段の警邏活動で使用しているジャケットと、有事の際に着ている戦闘服が入っていた。 「へー手際がいいじゃん。サイズ合ってるか、着てみるじゃん」 「はい…」 と、上条が着替えようとして止まる。 「どうかしたじゃん?」 「あのー黄泉川先生は出るか、少なくともむこうを向いてくれないのでせうか?」 「なんでじゃん?今の男子はそんなに人目を気にする程デリケートだったっけ? ウチのクラスの奴でも女子がいるところで堂々と着替えてるじゃんか」 「それは他の男子もいるし、女の子だってまじまじと見ないからいいんです!」 上条は叫びながら黄泉川を回れ右させた。 黄泉川は納得がいかないようで、何やらぶつぶつ言っていたが聞かないことにした。 「着替えました」 「お、まぁまぁ似合ってるじゃん」 上条は近くにあった鏡を見る。 警備員の戦闘服。 「重い…」 「何言ってるじゃん?今は装備付けてないからいいけど、作戦時はそれより更に重くなるじゃん。 あとアンタにはあまり持たせたく無いけど、場合によってはライフルだって装備するし…」 あぁそれと…と黄泉川は言って。 「これ、現場に行く時は付けるじゃん」 「フェイスマスク…」 「警邏活動の時は第七学区から離れるから付ける必要は無いじゃん。 でも緊急の時はそうはいかない、第七学区かもしれないし、カメラだってある」 要するに、知り合いに警備員をしているのを知られないための措置らしい。 とはいえ、別学区で知り合いに会わないとも限らない。 御坂美琴が22学区の温泉へ通っていたように、土御門元春が諜報員として様々な学区を駆け巡っているように、学区の移動は自由だ。 加えて、上条は知らないが風紀委員は都市内のカメラを自由に見れる。 頭に花畑を営む少女が所属する風紀委員の支部でも例外は無い。 むしろ一般の支部よりも深部の情報を手にしている。 「でも俺だけコレ付けてたら不自然じゃ…」 「隊員の中には付けてる奴もいるからそうでもないじゃん」 ま、いざと言う時は何とか言い包めるから安心するじゃん。 という答えを聞いて、案外知られたくないのは一部の警備員だけで、上層部はそうではないのかもしれないという適当な予想をする。 気休め程度だろう。 「サイズが大丈夫なら次行くじゃん。着替えて」 「…」 この後、上条はもう一度突っ込みを入れることになった。 更衣室を出た後もいろいろな所に案内された。 広い施設だったので、少し歩き疲れたなーとか上条が思っていると。 「ま、だいたい案内するところはしたじゃん。あとは使う時に教えるじゃん」 黄泉川は腕時計で時間を確認しながら言う。 「今日は以上、もう帰るじゃん」 上条も携帯電話で時間を確認する。 気がつけばここに着いてから2時間以上も経っていた。 「明日から訓練所でみっちり鍛えてやるじゃん。 だから今日は早く帰って明日に備えて寝る!」 「は…はい」 あ、それと。 と黄泉川は何かを思い出し、手元の書類をあさる。 「これ、IDカードじゃん。 この支部やアンチスキル関連施設に入るのに指紋と声紋とこれが必要だから、無くさないように。 あと身分証明証にもなるじゃん」 IDカードと言われたが、定期入れのような物を渡された。 つまりはドラマのように相手に、警備員だ!と言って見せる物にもなるらしい。 IDカードには書庫に登録されていた写真を使われたのか、やる気のない目でレンズを見る自分に、さっきの警備員の制服が合成されていた。 「明日からは学校終わったら第二学区の訓練所に来ること。 あ、明日は学校休みか… とにかく、電車ならそのIDでタダじゃん」 「わかりました」 「まぁ…学校のある日なら私が送ってやったほうがいいんだけど、どうする?」 「えっと…」 上条はしばし考える。 毎日のように黄泉川の車に乗るところを青髪や土御門が黙って見ているわけがない。 「電車にします…」 本当なら黄泉川に車で送ってもらったほうが楽なのだが、ここは泣く泣く電車を選んだ。 (不幸だ…) 上条がいつもの言葉を心で呟いていると、ピピピピピと無機質な電子音が鳴った。 音のするほうを見ると黄泉川の携帯電話が音を上げていた。 黄泉川は携帯電話のサブディスプレイで相手を確認すると、ニヤリと笑う。 「アンタの担任からじゃん。 多分アンタを心配してのことだろうけど」 2つ折りの携帯電話を開け、黄泉川は電話に出る。 「はい、黄泉川」 『あっ…あのっ!黄泉川せんせー!ウチの上条ちゃんは…』 声が高いためか、焦っていて大きいためか電話から声が漏れて上条にも聞こえる。 「大丈夫じゃん。 別にやましい事したわけじゃないし…」 と、ここで黄泉川は黙って何かを考える。 電話から何か声が漏れるが、相手はもう落ち着いているためか上条は聞き取れない。 ただ、この状況からして相手も困惑しているだろう。 「月詠先生、話したいことがあるじゃん。 この後、いつもの場所で」 『え…えぇ!?あの、状況が少し』 再び焦ったのか、声が鮮明に漏れていた。 だが、黄泉川は電話を耳から離し通話を切る。 黄泉川の行動に上条も怪訝な表情で見ていたが、黄泉川は上条に笑いかけながら。 「前言撤回。今日は帰りが遅くなるじゃん」 「はぁ?」 突然の前言撤回と共に意味の分からないことを言い出す黄泉川に、上条は間抜けな顔でしか反応できなかった。 「こんなのまだあったのか…」 上条が黄泉川に連れて来られたのは、 昭和の雰囲気漂う屋台、赤い提灯、頑固そうな親父、おでんと書かれたのれん。 黄泉川愛穂御用達のおでん屋だった。 「何してんのさ、早く席着くじゃん」 屋台を見て呆然と立っている上条に、黄泉川は席に着きながら声を掛ける。 「あ…あぁ、はい」 「じゃ、親父。まぁいつもどおり適当に頼むよ」 頑固そうな親父は無言のままカチャカチャと食器を準備し始める。 しばらくして、おでんと一升瓶が出された。 「ちょ、先生車じゃ…」 「代理頼むじゃん。 あぁ、アンタはどうしようか」 「水で大丈夫です」 コップとボトルに入ったミネラルウォーターが出される。 「あの、黄泉川先生… さっきの電話で小萌先生に言ってたことは…」 コップに入れた水を飲みながら上条は聞く。 「んー?」 黄泉川はおでんを頬張っているのですぐには答えてくれない。 ハフハフと熱さを我慢しつつ、途切れ途切れに話す。 「じき…に、あつっ…わかる、じゃん」 答えになってない答えに、上条は納得しないながらも、自分も出されたおでんを食べようとする。 すると 「黄泉川せんせー!」 遠くから聞こえる幼い声。 「ほらな」 しばらくすると、学園都市七不思議とされる幼女先生がのれんを揺らさず登場した。 「あれ?上条ちゃん!どうしてこんな所に?」 「私が連れて来たじゃん。ホラさっさと座って」 よいしょ、という可愛らしい掛け声。 「今日は一体何事だったのですか?」 小萌も黄泉川と同じように親父におでんを頼みながら首を傾げる。 「ま、そのことで呼んだわけじゃん」 「まさか…上条ちゃんが留年? でも先生はそんなこと聞いてないのです!」 早くも涙目になる小萌。 「違う違う。 上条、自分から言うじゃん」 「え、いいんですか?」 さっきあれほど周囲に知られるのを嫌っていたので、上条は少し驚いた。 「月詠先生はアンタの担任。 そうでも無い私が知ってるのに、一番近い先生が知らないのはおかしいじゃん」 それに、と黄泉川は続け 「こういう心配性な人がいれば、アンタ少しは無理しないじゃん?」 「…」 黙って考える上条を見て、小萌はオロオロする。 「あの、上条ちゃん? そんなに言いにくいことなら、無理して先生に言う必要は無いのですよ?」 「先生!」 「はっ…はい!」 まるでプロポーズを受けるかのごとく、背筋をピンと張る小萌。 「俺、今日呼ばれたのは…」 そこまで言って、上条はカウンター越しにいるおでん屋の親父を見た。 親父は上条に目を合わせなかったものの、黙って小型ラジオを取り出し耳にイヤホンを挿し込んだ。 イヤホンから音が漏れて聞こえたところで、上条はさっき貰ったIDカードを見せる。 「アンチ…スキル?」 小萌は不安そうに呟いた。 「臨時ですが… アンチスキルになったんです」 「…どうして、ですか?」 小萌は下を向いたまま、机の上でキュッと小さな手を握りしめる。 「上条ちゃんは…ただの生徒なのに…」 「その経緯に関しては私から説明するじゃん」 その後、黄泉川から上条が臨時警備員として選ばれた経緯が話された。 上層部からの命令であったこと。 支部も含めて必死に抗議したこと。 激情したあまり上条を殴ってしまったこと。 中には上条に伝えられていないこともあった。 そして、最後に黄泉川は上条を責任を持って護ることを約束した。 小萌は話を聞いている間、ずっと俯いたままだった。 「そう…ですか…」 話が終わり、しばらくの沈黙があったが小萌がそれを破った。 「先生からは何も言うことは無いのです」 顔を上げる小萌、いつもの笑顔を見せるがその目は潤んでいた。 そんな小萌を見て、妙な罪悪感に駆られる二人。 「確かにとても不安です。 でも、上条ちゃんはいつも誰かを助けるために全力を尽くして、今回だってこうして立ち上がってくれました。 それは先生にとっては凄く嬉しいことなのですよ」 小萌はコップのお酒をぐい、と飲み。 「いつも通り独りで突っ走っちゃうのなら、先生は止めていたかもしれません。でも…」 目が潤んでいるのに気付いたのか、ごしごしと両手でこする。 「今回は、黄泉川先生がいるので安心なのです!」 ぐっと手に力を込めて、自分に言い聞かせるように言う小萌。 それを見て、黄泉川は上条を全力で護らなければならないということを、改めて実感した。 「黄泉川先生、ウチの上条ちゃんをよろしくお願いします」 黄泉川に向き直り、丁寧に頭を下げる小萌。 対する黄泉川は自信に溢れた笑みを漏らした。 「まかせるじゃん。 私だって、こんな生徒が持ちたかったんだ」 「さ、それでは今日はお祝いってことで先生の奢りなのです!」 「何言ってるじゃん。 私だってお祝いするじゃんよ」 がやがやと騒ぎ出す二人を見て上条は、自分は不幸とは言ってられないな、と思いながらコップに手を伸ばす。 黄泉川が説明している間は水を飲む気が引けたので我慢していた。 その結果、乾いた喉を潤すためにコップを一気に傾けたのだが。 「あ、上条。そのコップは私の…」 小萌との話に夢中になっていた黄泉川は、上条が自分のコップを取ったのに反応が遅れた。 「ぶっ!」 上条は口に入って初めて酒だと気付いたが、吹き出すのも汚いので必死に堪える。 口に入った酒を徐々に喉に通していく、アルコールがキツイのか、喉元が焼けるように熱い。 「お、案外いける口じゃん?」 「教師兼アンチスキルが未成年者飲酒を公認でせうか!?」 ぜぇぜぇと息を荒くしながら上条は叫ぶ。 なんとか言ってくれよと小萌を見るが。 「うへぇ今日は無礼講なのですよ」 既に潰れ始めていた。 彼女の横には既に空になった一升瓶。 「え、あのしんみりとした空気から何分経ちましたよ? 明らか小萌先生コップで飲んでませんよね! なんとか言ってください!お願いします!」 頭を抱える上条を尻目に、黄泉川は特に気にした様子もなく 「親父、もう一本頼む」 顔を青く(なった気がした。実際は赤い)する上条。 親父は何の気兼ねも無く、黄泉川に一升瓶を手渡した。 おい親父、未成年者の飲酒を黙認するっていうのなら、 まずはそのふざけた幻想をさっそく警備員という立場を使ってぶち殺そうか、 とか上条は考えながら親父を睨むが。 親父のほうは、 若い頃を思い出すわ、ちなみにコイツらの感性はわしが育てた。 と目で語っていた。
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/801.html
禁書シリーズの用語 このページはまだ全然まともに使えません 単語リストへジャンプ ページの一覧はこちら 組織科学サイドの組織学園都市の暗部組織 科学サイドの学園都市外の組織 魔術サイドの組織魔術結社 地名・施設学園都市の地名・施設 日本国内の地名・施設 海外にある地名・施設 専門用語科学サイドの専門用語 魔術サイドの専門用語 その他の専門用語 武器・道具科学サイドの武器・道具学園都市の超科学兵器 学園都市外の武器・道具 魔術サイドの武器・道具霊装 その他の武器・道具 事件・計画・事象科学サイドの事件・事象学園都市暗部での実験・計画 魔術サイドの事件・事象 その他の事件・事象 その他の用語 組織 科学サイドの組織 学園都市の暗部組織 科学サイドの学園都市外の組織 魔術サイドの組織 魔術結社 地名・施設 学園都市の地名・施設 日本国内の地名・施設 海外にある地名・施設 専門用語 科学サイドの専門用語 魔術サイドの専門用語 その他の専門用語 武器・道具 科学サイドの武器・道具 学園都市の超科学兵器 学園都市外の武器・道具 魔術サイドの武器・道具 霊装 その他の武器・道具 事件・計画・事象 科学サイドの事件・事象 学園都市暗部での実験・計画 魔術サイドの事件・事象 その他の事件・事象 その他の用語 未分類リスト 禁書wikiからそれっぽいのをリストアップしています分類してくれる人募集中 大英博物館(アーセナル) イギリス清教] 異端審問官(インジショナー) 禁書目録(インデックス) 英国 エルブラーゼ 学園都市(がくえんとし) 虚数学区・五行機関(きょすうがっく・ごぎょうきかん) 警察(けいさつ) 苦瓜と蝸牛の地獄ラザニア(ゴーヤとエスカルゴのじごくラザニア) コロンブスの卵 コンピエーニュ古城 身体検査(システムスキャン) 七天七刀(しちてんしちとう) 十字教(じゅうじきょう) すけすけ見る見る 聖人(せいじん) 超能力(ちょうのうりょく) 超能力者(ちょうのうりょくしゃ) 樹形図の設計者(ツリーダイアグラム) 天使の力(テレズマ) とある高校 とある高校の学生寮(とあるこうこうのがくせいりょう) 常盤台中学(ときわだいちゅうがく) 必要悪の教会(ネセサリウス) 能力者(のうりょくしゃ) バチカン図書館 書庫(バンク) ファミレス 魔術結社(マジックキャバル) 魔術(まじゅつ) 魔術師(まじゅつし) 魔神(まじん) 魔道書(まどうしょ) 魔導師(まどうし) 魔法名(まほうめい) クロウリーの書(ムーンチャイルド) メトセリン モン=サン=ミシェル修道院 雷撃の槍 霊装(れいそう) 強度(レベル) 超能力者(レベル5) ルーブル美術館 薔薇十字(ローゼンクロイツ) 鋼糸(ワイヤー) Bennys 黄金夜明(S∴M∴) ゴルゴダの十字架(The_ROOD) 数字・記号 四大属性 大英博物館(アーセナル) 上条当麻の記憶喪失 演算型・衝撃拡散性複合素材(カリキュレイト=フォートレス) 隠秘記録官(カンセラリウス) 吸血鬼 恐怖!舌噛み(ギロチン)アッパー 騎士団 グレゴリオの聖歌隊(ぐれごりおのせいかたい) 偽・聖歌隊(グレゴリオ=レプリカ) 黒蜜堂(くろみつどう) 世界の力(せかいのちから) セキュリティランク 窓のないビル 三沢塾(みさわじゅく) ローマ正教 ローマ正教十三騎士団 数字 先槍騎士団(1stLancer) ウィンザー城 お姉様(おねえさま) 金崎大学付属・筋ジストロフィー研究センター(かなさきだいがくふぞく・―) 缶ジュース 虚数学区に関する噂 きるぐまー 近衛侍女(クイーンオブオナー) 完全なる知性主義(グノーシズム) 妹達(シスターズ) 高崎大学(たかさきだいがく) 学習装置(テスタメント) オモチャの兵隊(トイソルジャー) 常盤台中学学生寮(ときわだいちゅうがくがくせいりょう) 常盤台中学内伝 おばーちゃん式ナナメ四五度からの打撃による故障機械再生法 二五〇年法 自分だけの現実(パーソナルリアリティ) 捜索部隊(ハウンドドッグ) 樋口製薬・第七薬学研究センター(ひぐちせいやく・だいななやくがくけんきゅうせんたー) 必殺猫爆弾 高電離気体(プラズマ) ミサカネットワーク 水穂機構・病理解析研究所(みずほきこう・びょうりかいせきけんきゅうじょ) メイドロボ計画 鋼鉄破り(メタルイーターMX) 寮監 量産型能力者計画(レディオノイズけいかく) 絶対能力進化(レベル6シフト) HDC.Cerberus 電子(NV)ゴーグル 神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの(SYSTEM) 数字・記号 アインソフオウル、アインソフ、アイン(000 00 0) ウェストミンスター寺院 おみやげ 神の力(ガブリエル) 木彫りの男性器(きぼりのだんせいき) 偶像の理論(ぐうぞうのりろん) 古森(こもり) サザーク大聖堂 陽気な女神(シーラ=ナ=ギグ) 獣王(じゅうおう) 新感覚日本刀つっこみアクション スカラベ 聖人(せいじん) 星座の魔術 捜査零課(そうさゼロか) 大魔術(だいまじゅつ) 竜神乙姫(たつがみおとひめ) 土御門元春(つちみかどもとはる) 掌サイズの石像(てのひらさいずのせきぞう) 天使 店主 発信機(ナノデバイス) 二重人格 ねーちん 必殺☆家族のキズナ大作戦 プランシェット 麻黄(まおう) 魔法陣(まほうじん) 無痛注射針(モスキートニードル) 夜明けの目覚ましフライングボディアタック ロシア成教 わだつみ 殲滅白書(Annihilatus) 数字・記号 四界 梓弓(あずさゆみ) アステカの魔術師 警備員(アンチスキル) 上条勢力(かみじょうせいりょく) 源蔵(げんぞう) 幸せ指数(しあわせしすう) 風紀委員(ジャッジメント) 衝槍弾頭(ショックランサー) 警備強度(セキュリティコード) 不幸指数(ふこうしすう) 抱朴子(ほうぼくし) 超機動少女カナミン(マジカルパワードカナミン) ミサカネットワーク 繚乱家政女学校(りょうらんかせいじょがっこう) エリス 虚数学区・五行機関(きょすうがっく・ごぎょうきかん) 霧ヶ丘女学院(きりがおかじょがくいん) ゴーレム=エリス シェリー=クロムウェル 神の如き者(ミカエル) 神の薬(ラファエル) AIM拡散力場 最大主教(アークビショップ) アエギディウスの加護 アニェーゼの寝言 天草式十字凄教(あまくさしきじゅうじせいきょう) 対十字教黒魔術(アンチゴッドブラックアート) 一端覧祭(いちはならんさい) 伊能忠敬(いのうただたか) 王室派 オルソラ教会(おるそらきょうかい) 海流操作魔術 騎士派 英国女王(クイーンレグナント) 口移し(くちうつし) 縮図巡礼(しゅくずじゅんれい) 安眠妨害系(スペシャルスペーシー) 清教派 聖ジョージ大聖堂(セントじょーじだいせいどう) 象徴武器(シンボリックウェポン) 大覇星祭(だいはせいさい) 建宮斎字(たてみやさいじ) 騎士団長(ナイトリーダー) 薄明座 パラレルスウィーツパーク 法の書 ランベスの宮 徒労系(ロングラン) 一方通行の杖(アクセラレータのつえ) 演算補助デバイス 女には負けると分かっていてもドロップキックしなくてはならない時がある 帰様の浴院(かえりさまのよくいん) 第一七七支部 開発官(デペロッパー) 必殺バタ足攻撃 淑女の嗜み(レディライクマナー) 残骸(レムナント) 科学結社(Asociacion de cienia) あつあつシープさん 干渉数値(かんしょうすうち) 五本指(ごほんゆび) 衝撃拡散(ショックアブソーバー) 占術円陣(せんじゅつえんじん) 大覇星祭(だいはせいさい) 大覇星祭競技一覧 長点上機学園(ながてんじょうきがくえん) バチカン メイド弁当(めいどべんとう) お姉様エナジー(おねえさまえなじー) お姉様オーラ(おねえさまおーら) オルソラからのメール カミやん病 擬似五次元万華鏡(ぎじごじげんまんげきょう) 擬人化兵器の純潔乙女(ぎじんかへいきのじゅんけつおとめ) 鉄身航空技術研究所付属実験空港(てつみこうくうぎじゅつけんきゅうじょふぞくじっけんくうこう) 礎を担いし者(Basis104) アガター アドリア海の女王 カテリナ 神の右席(かみのうせき) スキルアタック 聖霊十式(せいれいじゅっしき) 聖バルバラの神砲(セントバルバラのしんほう) 堕天使メイド 超音速旅客機(ちょうおんそくりょかっき) チョコラータ・コン・パンナ 発信機(ナノデバイス) 必要悪の教会の女子寮(ネセサリウスのじょしりょう) 海軍用船上槍(フリウリスピア) メノラー 来場者数ナンバーズ ローマ教皇 愛玩奴隷上条当麻(あいがんどれいかみじょうとうま) 叡智研 肩揉みホルダー君 ガントリット 虚数研 霧ヶ丘付属(きりがおかふぞく) 暗闇の五月計画(くらやみのごがつけいかく) ゲコ太 ケロヨン 現象管理縮小再現施設(げんしょうかんりしゅくしょうさいげんしせつ) 高性能空気洗浄機(こうせいのうくうきせんじょうき) 武装無能力集団(スキルアウト) 洗濯機 置き去り(チャイルドエラー) クラスの三バカ(デルタフォース) 特殊開発研究室(とくべつクラス) 特例能力者多重調整技術研究所(とくれいのうりょくしゃ たじゅうちょうせいぎじゅつ けんきゅうじょ) 処女の寝室(ネイルベッドルーム) 猟犬部隊(ハウンドドッグ) ハンディアンテナサービス ヒューズ=カザキリ ピョン子 ファミリーサイド プロデュース 暴走能力の法則解析用誘爆実験 マイクロマニピュレータ ランベスの宮 ロシア成教 処刑塔(ロンドンとう) ワシリーサ 酸性浄化(アシッドスプレー) オリャ・ポドリーダ 嗅覚センサー 鈴山高等学校 第三資源再生処理施設(だいさんしげんさいせいしょりしせつ) 第八四支部 デニス 駆動鎧(パワードスーツ) ヒューズ=カザキリ 病院車 光を掲げる者(ルシフェル) ロッド グループ 演算銃器(スマートウェポン) 断崖大学(だんがいだいがく) 攪乱の羽(チャフシード) 低周波振動治療器 騎士団長(ナイトリーダー) 脳を活性化させる十二の栄養素が入った能力上昇パン 発条包帯(ハードテーピング) 吹寄おでこDX らくらく英語トレーニング 地殻破断(アースブレード) 一日一〇〇回ニギニギするとα波が促進される健康ボール 神上(かみじょう) 教皇庁宮殿 ドローリコーヒー 光の処刑(ひかりのしょけい) C文書 HsB-02 HsPS-15 神上(La Persona superiore a Dio) アイテム アホ毛ちゃん 滞空回線(アンダーライン) ウィルス保管センター 妨害気流(ウィンドディフェンス) オジギソウ 回収運動 外部接続ターミナル 学園都市統括理事会 暗闇の五月計画(くらやみのごがつけいかく) 携行型対戦車ミサイル 航空宇宙工学研究所付属 衛星管制センター スクール 空から落ちてくる系のヒロイン 素粒子工学研究所 体晶(たいしょう) ドラゴン ひこぼしⅡ号 避暑地 ピンセット ファミリーサイド 摩擦弾頭(フレイムクラッシュ) プロデュース ブロック 暴走能力の法則解析用誘爆実験 マクアフティル メンバー AIMジャマー HsAFH-11(六枚羽) MSR-001 MPS-79 数字 『0930』事件 移動鉄壁 盾の紋章(エスカッシャン) オルレアン騎士団 スパリゾート安泰泉(あんたいせん) スペイン星教派 スレイプニル 聖人崩し(せいじんくずし) 聖なる右 聖母崇拝術式(せいぼすうはいじゅつしき)(未編集) 聖母の慈悲 占星施術旅団(せんせいせじゅつりょだん) 聖ゴスティーノ教会 第三の天使 堕天使エロメイド ダルクの神託 超電導リニア二輪 聖ピエトロ大聖堂 フィアンマ 超起動少女カナミンインテグラル(マジカルパワード カナミンインテグラル) その涙の理由を変える者(Flere210) 念動砲弾(アタッククラッシュ) ヴァルキリー 打ち根(うちね) オーパーツ歴史資料館 オメガシークレット 神々の設計図本部 不出の才能(キャラクター) 原石(げんせき) 高次コンタクト協会 黄道アクセスライン普及委員会 抗電波救済委員会 国際優良遺伝子バンク 国立夢占い解析所 心の宇宙調査室 新エネルギー採掘研究機関 人体スポーツ解析センター 人類進化委員会 人類の英知総本山 スターゲート計画 精密ミクロ信仰会 世界知的倶楽部 全世界覚醒連合 先端科学研究所 第七世代兵器研究所 第六の感覚本社 地球外カオス観測所 超常紹介辞典 特殊エネルギー研究所 忍者(にんじゃ) 脳分布解明センター 人の怒りは自らを焼く ミサカ00000号(フルチューニング) 未来への翼中心核 横須賀(よこすか) 霊長の証 UMA生態解明倶楽部 アーチェリー アスカロン 新たなる光 エーカー=ルゴーニ カーテナ=オリジナル カーテナ=セカンド カヴン=コンパス 機長 知の角杯(ギャッラルホルン) 金髪ナイスバディのフライトアテンダント 撃墜術式 結社予備軍 スカイバス365 大船の鞄(スキーズブラズニル) スマートヴェリー セイズ魔術(未編集) 大精霊チラメイド 鋼の手袋 バッキンガム宮殿 バンカークラスター 貫通の槍(ブリューナク) 魔女の薬 マスターレコード ミュッセ リッチモンド ロビンフッド ロレートの家 ワッシュ 一本足の家の人喰い婆さん ウィンブルドン ヴェルサイユの聖女 エリザリーナ独立国同盟 グリフォン=スカイ 主神の槍(グングニル) 小悪魔ベタメイド スクーグズヌフラ セルキー=アクアリウム 全次元切断術式 ソーロルムの術式 パターン魔術 空飛ぶ剣(フラガラッハ) 貫通の槍(ブリューナク) フルンティング ベイヤード マーベラスロック社 雷神の槌(ミョルニル) 女神様ゴスメイド モックルカールヴィ 連合の意義(ユニオンジャック) 『自動書記』の遠隔制御霊装 レイチェル 一方通行の杖(アクセラレータのつえ) 学芸都市(がくげいとし) 軽機関散弾銃 個室サロン 迎電部隊(スパークシグナル) 雑貨稼業(デパート) 同権限者視察制度 ドラゴン フラフープ ヴォジャノーイ 亀山琉太(かめやまりゅうた) グラストンベリ クレムリン・レポート 傾国の女 第三次製造計画(サードシーズン) シート シェルター セレクター 第三次世界大戦 デュランダル 封の足枷(ドローミ) プライベーティア ブリテン・ザ・ハロウィン プロジェクト=ベツレヘム(未編集) ベラッギ ログハウス ロンギエ HsF-00 アパースナスチ スチームディスペンサー フルングニルの石材 ベツレヘムの星 豊穣神の剣 Nu-AD1967 明け色の陽射し アンナ=シュプレンゲル 硫黄の雨は大地を焼く エクス=ヴォト オティヌス 神浄(かみじょう) 木原一族 クランス=R=ツァールスキー コリシュマルド 死の水 素養格付(パラメータリスト) 衝撃の杖(ブラスティングロッド) ペクスヂャルヴァの深紅石 マーク 雷切(らいきり) Equ.DarkMatter VTOL機 エッジ・ビー エネミーブラスター エマージェンシー オブジェクト ガトリングレールガン カメレオン(未編集) サードウォー症 サイボーグ シールドAED 新入生(未編集) 滑走補助(スリップオイル) 電動補助式ブロウパイプ ドラゴンライダー ハイウェイチーター 駆動鎧(パワードスーツ) ビーランチャー ファイブオーバー モデルケース・レールガン ヘヴィーオブジェクト メタルイーターM5 野人Nのゾンビ脱出大作戦(未編集) ライフアーマー レイヴィニア=バードウェイ Edge_Bee(ヤイバのハチ) Emergency FIVE_Over.Modelcase_”RAILGUN” Gatling_Railgun HsLH-02 HsSSV-01 MAV 明け色の陽射し ウサギの前足型虐殺マッサージグローブ 主神の槍(グングニル) 召喚爆撃(しょうかんばくげき) スキールニルの杖 風の一四枚(ソード) 時間稼ぎ(タイムロス) テオドシア=エレクトラ ドナーティ彗星 ドナーティのホロスコープ 黒小人(ドヴェルグ) 碑文の欠片 ブルーリサーチ(未編集) ボス 宵闇の出口 ラティの錐(ラティのきり) 破滅の枝(レーヴァテイン) アップヒル島 アルファル 海より来たる覇者 ヴィーダルの靴 エーラソーン オーレンツ=トライス 海洋牢獄(かいようろうごく) 神の剣の文字を知る者 乾杯 希望峰 グレイプニル 主神の槍(グングニル) スラッパール セアチェル 聖ジュリアン大聖堂 セイリエ=フラットリー セートルア 世界樹を絶やさぬ者 タルンカッペ 地の中で黄金を鍛える槌 知を刻む鉄杭 ナグルファル ビフロスト ブリュンヒルド=エイクトベル 混ぜ物(ヘル) 魔術生命体(まじゅつせいめいたい) 赤き洪水(ユミルズオーシャン) レアシック レンガ埠頭 マラキの予言 暗闇を拭う夜明け テジャス フレイス 火星の土(マーズワールド) 密着微生物 とある魔術の禁書目録 (PSPゲーム版) 学園都市の貨幣 禁書世界の時間論 天使の涙 0次元の極点(ぜろじげんのきょくてん) アンデレ十字 震災術式(しんさいじゅつしき) テルノア 学園都市の区分 偽典・超電磁砲 禁書目録カルトクイズ 第○○学区 出番表 とある科学の超電磁砲(とあるかがくのレールガン) とある科学の超電磁砲 アーカイブス とある科学の超電磁砲SS とある魔術の禁書目録 アーカイブス(未編集) とある魔術のいんでっくすたん とある魔術の禁書目録ノ全テ(とあるまじゅつのインデックスのすべて) とある魔術の禁書目録SS とある魔術の禁書目録SS SPECIALEDITION とある予言の禁書目録(とあるよげんのインデックス) とらドラ!vs禁書目録 ドラマCD 年表(ねんぴょう) ラジオドラマ ルビ 帰様の浴院(かえりさまのよくいん) 学園都市(がくえんとし) 缶ジュース 虚空爆破事件(グラビトンじけん) ゲコ太 身体検査(システムスキャン) 風紀委員(ジャッジメント) セブンスミスト 第一七七支部 超能力(ちょうのうりょく) 超能力者(ちょうのうりょくしゃ) 常盤台中学(ときわだいちゅうがく) 常盤台中学学生寮(ときわだいちゅうがくがくせいりょう) 常盤台中学内伝 おばーちゃん式ナナメ四五度からの打撃による故障機械再生法 能力者(のうりょくしゃ) 書庫(バンク) ビリビリ ファミレス 学舎の園(まなびやのその) 水穂機構病院(みずほきこうびょういん) 雷撃の槍 強度(レベル) 幻想御手(レベルアッパー) AIM拡散力場 Bennys Seventh mist アケミ 警備員(アンチスキル) 共感覚性(きょうかんかくせい) マコちん むーちゃん ウォーター・パーク 学園都市統括理事会 虚数学区 置き去り(チャイルドエラー) 暴走能力の法則解析用誘爆実験 幻想猛獣(AIMバースト) 広域社会見学 武装無能力集団(スキルアウト) 長点上機学園(ながてんじょうきがくえん) 樋口製薬・第七薬学研究センター ラ・マンチャ 量産型能力者計画(レディオノイズけいかく) 絶対能力進化(レベル6シフト) 足軽 衛星誘導車 将軍 ひこぼしⅡ号 追加実験棟モジュール オーバー 学芸都市(がくげいとし) 経営陣 広域社会見学 サーモンレッド 太陽の蛇(シウコアトル) 翼ある者の帰還 巨乳御手(バストアッパー) フレーヴ 雲海の蛇(ミシュコアトル) ラージランチャー ラヴィーゼ飛行隊 B-02 ヴァイナー エクレック=ソボージュ オレンジ ショッピングセンター とても価値のあるオレンジ ニホンダルマ 半公開型AR ピーター=ウェイルゴ ブリーダー プロジェクト=コードEIC ベニオオアシグンタイアリ ヘンスイ村虫害事件 保安員 嵐緑珠(らんりゅうしゅ) あすなろ園 キャパシティダウン 能力体結晶(のうりょくたいけっしょう) ビッグスパイダー 火の玉引越センター(ひのたまひっこしせんたー) ムサシノ牛乳 RSPK症候群 磁力戦線(オーロラガード) 海賊ラジオ AIM拡散力場制御義体 木原一族 紅咲絵李(べにさきえり) 神の火(ウリエル) すごいパンチガード 七教七刃(しちきょうしちじん) 魔滅の声(シェオールフィア) 強制詠唱(スペルインターセプト) 偽装能力(ダミースキル) 竜王の顎(ドラゴンストライク) 唯閃(ゆいせん) 七閃(ななせん) 西瓜割り(ヘッドクラッシュ) 後頭部攻撃(ブレインシェイカー) すごいパーンチ 超すごいパーンチ ミサカ完全武装(ミサカフルブースト) 我が身の全ては亡き友のために(Intimus115) 背中刺す刃(Fallere825) 我が名誉は世界のために(Honos628) 献身的な子羊は強者の知識を守る(dedicatus545) 我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931) 救われぬ者に救いの手を(Salvere000) 天使の力(テレズマ) 創作魔法陣(オリジナルサークル) 黒ノ式(くろのしき) 禁糸結界(きんしけっかい) 神戮(しんりく) 水翼(すいよく) 戦術魔法陣(タクティカルサークル) 赤ノ式(あかのしき) 天体制御(アストロインハンド) 御使堕し(エンゼルフォール) 歩く教会 魔女狩りの王(イノケンティウス) 炎剣 回復魔術 首輪 瞬間錬金(リメン=マグナ) 自動書記(ヨハネのペン) 竜王の殺息(ドラゴンブレス) 聖ジョージの聖域(セントじょーじのせいいき) 神よ、何故私を見捨てたのですか(エリ・エリ・レマ・サバクタニ) 使い魔(アガシオン) 黄金練成(アルス=マグナ) 神隠し(AnsuzGebo) 水よ、蛇となりて剣のように突き刺せ(メム=テト=ラメド=ザイン) 理派四陣(りはしじん) 付文玉章(つけぶみたまずさ) 全テヲ始メシ合図ヲ此処ニ!眩キ光ト鋭キ音ト共ニ!(へいわボケしたクソッたれども!しにたくなければめをさませ!) 禁色の楔(きんじきのくさび) 刻限のロザリオ 黒キ色ハ水ノ象徴。其ノ暴力ヲ以テ道ヲ開ケ(さあおきろクソッタレども。ぜんぶこわしてゲラゲラわらうぞ) 天罰術式(てんばつじゅつしき) 青キ木ノ札ヲ用イ我ガ身ヲ守レ(デクのボウどもせめてタテとしてヤクにタて) 九人祝い(ナインサポート) 北欧王座(フリズスキャルヴ) 暦石(こよみいし) 女王艦隊(じょおうかんたい) トラウィスカルパンテクウトリの槍 使徒十字(クローチェディピエトロ) 速記原典(ショートハンド) 刺突杭剣(スタブソード) 神様殺しの槍(ロンギヌスのやり) ドレスソード フランベルジェ 蓮の杖(ロータスワンド) 処刑塔の七つ道具(ロンドンとうのななつどうぐ) 大日本沿海與地全図(だいにほんえんかいよちぜんず)
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/666.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Daily Life 12月24日 世間はクリスマスイブ、学園都市を含めた日本全国が無意味に浮かれる日である。 昨夜、晴れて想いが届き、念願の上条との恋愛が始動したはずの御坂美琴は、朝からイライラとしていた。 あの後、走り回って久々に電池切れになり寮まで戻ったのだが、美琴がイラついているのは、それが理由ではない。 理由は朝交わした上条とのメールにある。 『当麻、クリスマスの予定は?』 『24日はイギリス清教(インデックスの所属してるやつな)のパーティーに参加予定』 『まぁ、今日は私も予定あるからいいわ。明日よ明日』 『明日は忙しい。無理。じゃ、これからパーティの準備だから』 それ以降、上条からの連絡はない。 「なんなのよ、アイツ!せめて理由くらい教えろっつーの!」 1人の部屋でビリビリとしてみる。同室の白井は朝早くからジャッジメントのお仕事らしい。 夜は佐天の部屋でパーティが開かれる。寮監には家族と過ごすなんて嘘をついていたりするのは内緒だ。 美琴としては、25日くらい恋人同士で過ごしてみたいと思うところだ。 まだデートすらしていないのだから、目の前にイベントがあればそれに飛びつくのは当然であろう。 告白の答えをもらった後も、なんだかんだで甘えることすらできなかった。キスさえも……… 美琴は未遂に終わってしまった上条とのキスを思い出す。恥ずかしくて死にそうだ。 なんとか気分を変えないと夜のパーティの空気を悪くしそうだ。 「………あの馬鹿」 上条は英国式の教会にいる。つまりはイギリス清教の教会だ。今日の夜、イギリス清教のパーティが開かれる。 とは言っても、学園都市内であるので、出張してきた『必要悪の教会』のメンバー一部のみの参加である。 参加者は神裂をはじめとした天草式のメンバーにステイル、土御門である。 オルソラやアニェーゼ部隊も来たかったらしいが、いくらなんでもシスターさんが大量に来れるわけはないので、彼女らは英国本国で楽しんでいるだろう。 神裂に聞いた話では毎年、騎士団長が色々と苦労しているらしく、そのお手伝いもさせられるらしい。 そうまでして学園都市で開かれる理由は学園都市で生活しているインデックスを考慮した結果である。 「美琴には悪いことしたかな……」 上条は携帯を閉じる。 上条としても恋人である美琴と一緒に過ごすクリスマスは魅力的である。そこは絶対だ。 (あとで何でも埋め合わせはするから、許してくれ) 閉じた携帯を握りしめる。理由も告げずに美琴に断りを入れた。責任感の強い、彼女を苦しめないために。 「馬鹿だな……俺は」 美琴は白井達4人とやセブンスミストに来ていた。今夜行うクリスマスパーティ用に、プレゼントを買いに来たのだ。 と言っても、お互いに交換し合うのだから内容が分からないように個人行動ではある。 その後、合流して買い出しを済ませ、佐天の寮で準備に取り掛かる予定である。 準備と言っても、美琴が自宅から取り寄せてきたツリーを飾って、夕食を作るだけだ。 美琴は店内をプラプラと歩きながら目ぼしいものをピックアップしていく。 「うーん、他人にあげるものとなると……難しいわね」 美琴は顎に手をやりながら頭を捻る。 値段関して言えば、2000円から3000円くらいと初めに決めてはあるので困ることはない。 だが、見た目で『いいな』と思ったものは大概予算オーバーだし、予算で探せばショボイものばかりである。 もちろん予算内で良いものもあるのだが、そこは常盤台のお嬢様。感覚が違うのである。 2000円ではホットドッグくらいしか買えないわ、とは美琴の談である。 この感覚の違いが、上条との生活において後々問題となってくるのだが、それはもう暫し先の話である。 「黒子相手ならフザケたものでもいいけど……初春さん達にはねぇ」 美琴はランジェリーショップの前まで来ると、布があるのか分からないような紐パンを手に取る。 「………うまく初春さんに回れば面白いんだけど……」 美琴は佐天にスカートを捲られている初春を想像する。 「さ、流石に………可哀想かなぁ」 美琴は紐パンを返すと、となりの店へと歩く。小洒落た雑貨屋さん。 ゲコ太を始めとしたファンシーグッズは置いてないので、美琴はあまり御世話になっていないお店だ。 「んー、なかなかいいお店じゃない」 今度から来てみようか、と思いながら、プレゼントになりそうなものを探す。 「御客様、なにかお探しでしょうか?」 「あ、はい。ちょっとクリスマスプレゼントを探してるんです」 キョロキョロとする美琴を見かねて、店員さんが声をかけてくる。 他人の意見も取り入れてみようか、と美琴は店員さんに見繕いをお願いする。 「予算は3000円くらいまでなんですけど、可愛いものありますか?」 「そうですねー。あ、お相手は……彼氏さんですか?」 「あ、いや……友達の女の子にです」 美琴にとって振られたくない話題であった。顔に出なかったか心配になる。 (たぶん、すごく嫌な顔してる) 美琴は店内にあった鏡に目をやる。鏡に映った自分は酷く疲れた顔をしていた。 昨夜は幸せの絶頂にいたのに。今は……… 「どうしてよ、当麻」 美琴は自分が弱くなった気がした。想えば想うほど、辛くなる。こんな思いをするなら恋なんてするんじゃなかったかな、と思えるほどに。 「久しぶりだね、上条当麻」 「おう、ステイル。どうしたんだよ、そんな怖い顔して。お前、インデックスと飾り作ってたんじゃねぇのかよ?」 上条が教会で飾り付けをしていると黒い不良神父こと、ステイル=マグヌスがやってきた。 「別に。どうにもこの飾り作りとやらは性に会わなくてね。神裂に代わってもらったよ」 ステイルは溜息をつきつつ、上条に折紙が鎖状になった飾りを手渡す。 インデックスと2人きりなのに耐えられなくなったのでは……ない。 「お、さんきゅー。神裂なら……あれだな、過保護すぎて作業が進まないんじゃねぇか?」 不器用なりにも懸命に作るインデックスと、それを必死に手直しする神裂を想像し、上条は吹き出してしまう。 「どうだろうね?神裂は聖人だからね。すごい速度で作ってるかもしれないな」 そう言いながら、ステイルは懐からルーンのカードを取り出して手で弄ぶ。 「さて、上条当麻。ちょっと来てもらおうか」 「な、なんだよ」 「いいから来い」 ステイルは上条を連れて教会の外に出る。ポケットからルーンの紙切れを投げると、あたりに妙な空気が流れる。 「……人払い、か」 「そうだ。あまり聞かれたくない話なもんでね」 ステイルはそう言うと上条の目の前に立つ。 「上条当麻。これを、左手で持ってもらおうか」 ステイルはラミネート加工されたルーンのカードを上条に差し出す。 「左手?あぁ、右手じゃ『幻想殺し』で壊れちまうからか」 上条はそれを受け取り、興味深そうに見る。 「そんなに面白いものをでもないだろう?」 ステイルは興味深そうな上条に、何を今さら、という顔を向け新しい煙草に火をつける。 いやいや面白いって、と上条は言う。 「この右手でいくつもの魔術をぶっ殺してきたけどよ。こうやってゆっくり見るのは初めてだしな」 これが天使の名前か?と言いつつ、裏表をじっくりと観察する上条にステイルは溜息をつく。 「本題に入るぞ。インデックスの事だ……」 「………」 「僕は言ったはずだ。彼女を泣かせる者は誰であっても許さないと」 ステイルの目が本気になる。上条はその目を真っ直ぐと見返す。 「君は彼女の想いに答えなかった……そうだな?」 「ああ。そうなっちまうな」 上条は僅かに目を伏せると、右手を握りしめる。もしかしたら、ステイルと殴りあうかもしれない。 「確かに俺はインデックスを泣かせちまったかもしれねぇ!それでも、俺は俺のしたことに後悔はしてねぇ」 上条の持つルーンのカードがひしゃげる。それくらい上条には力が入っていた。 「その事に関しては、例え誰にも文句は言わせねぇ。お前にも、インデックスにもだ」 「…………分かった。もういいぞ、上条当麻」 ステイルは人払いを解除すると、上条に興味が失せたかのように教会へと戻っていく。 「ステイル…」 「勘違いするな、僕と君は仲良しさんじゃないんだ」 ステイルは足を止めたはしたものの、上条に振り返ることなく続ける。 「さっき君が僕に謝ったなら、その程度の覚悟だったなら、君の左半身を吹き飛ばすつもりだったんだが……」 上条は左手に持たされたルーンのカードに目をやる。『魔女狩りの王』をも呼びだす、ステイルの作った『大切な人』を護るためのルーン。 上条は思う。ステイルは本気で自分を吹き飛ばそうとしただろうか。 もし本気だったなら、わざわざ潰されるかもしれないカードを――左手であるとはいえ――渡したであろうか? ステイルなりに、上条を信じてくれていたのではないか。共に、インデックスを思う人間として。 「なぁ、ステイル。このルーン、記念に貰っていいか?」 「……好きにするといい。ただ1つ言っておくぞ、上条当麻。そのルーン、僕はいつでも吹き飛ばせるんだぞ?」 さも、危険なものだと言わんばかりに。気に入らなければ吹き飛ばすぞと言わんばかりに。 「あぁ、分かってる。じゃぁ、貰っとくぜ」 「ふん。何の記念かは知らないが、僕は君の友人じゃないからね。誤爆したときは恨まないでくれよ」 そう言ってステイルは教会に入っていく。 「馬鹿野郎」 上条は思う。何がいつでも吹き飛ばせるだ。何が誤爆だ。ステイルはステイルなりに自分を信じてくれている。 わざわざこんな茶番みたいな事をしてまで、自分の心の内を聞きだして。 (そういうのを、友達っていうんじゃねぇのかよ) 上条は頬を緩めると教会に戻った。 「お客様、これなんてどうでしょうか?」 店員さんは店の奥から小さな黒い球体を持ってきた。 「1世代古いものですので、お値段もご予算の範囲内です」 あまりお洒落とは言えない、何に使うかもわからない。 「あの、これは?」 「あぁ、これはですね。お風呂用のプラネタリウムなんですよ」 店員さんはにっこりと商業スマイル全開で、スイッチを入れる。 明るい店内では良く分からないが、小さな穴から光が漏れているように見える。 「あー、なるほど。お風呂に入りながら見れるってやつですね」 美琴は暫く考えた後、勧められた通りお風呂用プラネタリウムを購入する。 「では、包装致しますので少々お待ち下さいませ」 店員さんは丁寧にお辞儀をすると、カウンターの裏へと入っていく。 美琴はポケットから携帯を取り出し、時間を確認する。 (まだ時間はあるみたいだけど、どうしようかな) ブラブラと何かを見て回ってもいいし、ジュースでも飲んで待ってるのもいい。 お待たせしました、と笑顔で出てきた店員さんから紙袋を受け取り、美琴は店の外に出る。 クリスマスイブという事で、カップルもちらほらと見える。 美琴は、ほぅっと息を吐く。 (あーあ、なんでこんなにイライラしてるんだろう) 美琴は右頬をパシッと叩き、首を振る。 (気持ちを入れ替えないと。他の3人にまで辛い空気を撒かないように) 「御坂さーん!」 美琴が声の方に振り向くと、佐天が元気よく駆け寄ってきた。 「御坂さんは、もう決まりましたか?」 「うん、一応ね」 美琴は手に持った紙袋を掲げる。 「佐天さんは?」 「あたしも決まりましたよ―。いやー、良いものがありました」 佐天は天真爛漫な笑顔で手に持った袋を見せる。ニヤニヤとしてるあたり、良いものというより面白いものな気がしないでもない。 「あ、御坂さんはこの後どうされるんですか?」 まだ集合までは時間ありますけど、と付け足し、佐天が問いかける。 「うーん。喫茶コーナーにでも行こうかな。佐天さんは?」 「ご一緒してもいいですか?」 「うん。じゃ、行きますか」 はーい、と元気良くついてくる佐天に顔を見られないように、美琴は目を伏せた。 (気持ちを切り替えなきゃいけないのは分かってるんだけどね) 美琴は上条との一件を引きずったままの自分の弱さを嫌悪する。 「御坂さん?」 気付けば佐天が心配そうな顔で見ていた。 「あ、ごめんね」 「いえいえ。御坂さん、なにかお悩み事ならお聞きしますよ?」 いつものからかう様な感じではなく、本当に心配そうな顔の後輩に甘えようかとも思う。 今まで、何度か佐天の気持ちを考えない発言をしてきたというのに。そんな自分を本気で友達だと言ってくれ、心配までしてくれる。 (後輩に面倒みて貰うようじゃ、私もまだまだね) そんな事を言えば『そんなの先輩・後輩なんて関係ないですよ』なんて言われそうだ。 「ありがとう、佐天さん」 「さって、大体こんなもんか」 上条は額の汗を拭い、脚立から降りる。 「あとは料理くらいか……」 この手の作業で全く使えない子状態のステイルは相変わらず煙草をぷかぷかとやっている。 神裂はインデックスのつまみぐいを防ぎつつ、バカでかいクリスマスツリーと格闘している。 残る天草式のメンバーは各々料理を作ったり掃除をしたりと忙しそうだ。 そんな中、教皇代理の建宮斎字だけはちらちらと上条の方を見ている。 「な、なんなんだ?」 まるで恋する女の子がやるような建宮の目線の送り方に、上条は冷や汗をかく。 (どうせなら五和や神裂なら良かった) そこまで考えて、上条は何を想像したのか、恐ろしいものを見たような顔をした後肩を落とす。 (いや、いかんっ!俺としたことがあの堕天使を思い出すとは……不覚っ) 堕天使とは、間違っても『御使堕し』の時のミーシャ=クロイツェフの事ではない。 「うおぉぉぉぉっっ!この幻想もぶち殺したいっ!」 上条はそのトラウマになりかねない記憶を末梢すべく『幻想殺し』を頭部に持ってくる。 バキンッ!なんて音がするわけもなく、図らずも脳裏に残されてしまった堕天使の姿は消えることはなかった。 上条はブンブンと首を振って気を取り直す。口元がぴくぴくと緩んでしまうのを必死で我慢する。 「今、神裂に会ったらダメだ。絶対に―――」 「女教皇様がどうかしましたか?」 「のうわぁっ!?」 ぶはっ、と変な声をあげ、上条は背後の人物から距離をとる。 「いいいいいい五和サン?いつから聞いてらっしゃったんでせうか?」 「『この幻想も…』ってあたりからですけど」 「……………不幸だ」 がくんっ、と肩を落とし、気の毒になるくらい落ち込む上条に、五和はきょとんとするしかない。 「あ、すいませんっっ!もしかして、聞いちゃいけない事でしたか?」 「いいやっ、五和さん!気にすることなんかないですのよっ!紳士である上条さんが五和や神裂がエロい天使さんや精霊さんになるなんて想像もしておりません!」 沈黙。 上条の口から放たれた言葉によって、重苦しい空気が流れる。 言った上条は真っ青に。言われた五和は真っ赤に。間にオレンジでもおけば信号になりそうである。 「あわわわわわわわっ!?わ、私がですか?」 「いいいいいいい五和さん、それは幻想、じゃない幻聴ですっ。忘れてくださいませ……」 上条は真っ赤になった五和の前で土下座の体勢に入る。上条にとって慣れてしまったその姿にはもはや貫禄すら漂う。 「…………その、あなたが見たいって言うなら………着てもいいですけど」 「はい?」 五和は真っ赤な顔で体の前で手をもじもじとしながら呟く。 「えっと………五和さんはあのエロい精霊さんに興味があるとおっしゃるのでせうか?」 「きょ、興味なんてないです!それに、エロくなんてっ」 上条が顔をあげると、五和は手はもじもじ、顔は真っ赤、眉は吊り上げの器用な状態を維持していた。 (あれ、怒ってんのか……照れてんのか……あの姿はエロくないんかよ?) 上条は頭の上にクエスチョンマークを大量に飛ばしながら、思いついたままの事を言う。 「五和的にはあの格好はエロくないとっ!?もっとハードなのをっぐえっ―――」 ぷんぷんと怒る五和が後にした部屋には、気を失って横たわる上条の身体があった。 「でね、理由も告げずに逃げられちゃったのよ」 あーもうイラつく、と美琴は空になった紙コップを握る。怒りの矛先となった不憫な紙コップは、クシャっという音と共に綺麗に握りつぶされた。 (なるほどー。それでですか) 佐天は目の前で愚痴る美琴を宥めながら、この後どうすべきかを考える。 あれだけ悩み事を打ち明ける事を渋っていたというのに、喋りだすと聞いてもいない惚気話を挿みながら教えてくれる。 佐天はそんな美琴の一面を見れた事に喜びを感じる。 「御坂さん、その話って直接、上条さんから聞いたんですか?」 「そうよ。今日の朝にメールで」 美琴は佐天に話すことでイライラが復活したのか、さっきまでコップの形をしていたものは球体となっている。 「うーん。上条さんには、御坂さんにも言えないような理由があるってことですよね」 佐天は目の前の恋するレベル5が噴火させないように言葉を選びながら喋る。 「えっと、ご自宅はご存知なんですよね?お話してみられてはどうでしょうか?」 「えっ………」 (考えもしなかった) 美琴は固まる。上条からの断りのメールを見た瞬間からイライラしっぱなしだった美琴は思いつきもしなかった。 確かに、面と向かって問い正せばメールより効果はあるだろう。 だが相手は上条だ。頑なに口を割らないかもしれない。 「本当はすぐにでも送り出したいところなんですが、上条さんも今日はご用事なんですよね」 だったら今夜にでもお部屋に伺えば良いと思います、と佐天は続ける。 (答えてくれないかもしれない。言いたくない事は聞くべきじゃないのかもしれない。それでも) 美琴は肩の力を抜き、怒りを鎮めるように大きく息を吐く。 (話だけでも聞いてみる) その決意が表情に出たのか、佐天は美琴を見て微笑んでいた。 美琴はそんな佐天を見つめ返する。 (ほんとうに、助けられっぱなしだわ) 美琴は微笑む。何もできない自分への笑いか、佐天への頬笑み返しか。 「ありがとう、佐天さん」 もう一度、繰り返す。レベル0でも、能力が使えなくても、強い目の前の少女に。 「いえいえ。御坂さんには『幻想御手』ののときに御世話になりましたし」 お互い様ですね、と笑う。美琴はそんな佐天に心が落ち着いていくように感じる。 「ほんとうに、御世話になりっぱなしだわ。貴方達には頭が上がらなくなるわね」 「レベル5の、お嬢様なのにですか?」 佐天は皮肉ではなく、その事実が可笑しいようにクスクスと笑っている。 「なにかお礼しないとね。何がいいかな?」 「そうですねー。ファーストネームで呼びあうとかは?」 いつもの冗談を言う調子で佐天が提案する。 (ふふん。偶にはお返ししておきますか) いつもからかわれている美琴にとって、めったに訪れない好機。逃す手はない。 「おーけー。これからは涙子、って呼べばいいかしら?」 「うっ、みみみ御坂さんっ」 「み・こ・と・さ・ん!なんなら呼び捨てでもいいけど?」 美琴は佐天の目の前でピッと人差し指を立ててたしなめる。 「わわわ、冗談のつもりだったんですけど」 「あれ、涙子は私を名前で呼びたくないの?距離感じるわね」 美琴はわざとらしく目を伏せる。視界の端の佐天の顔は真っ赤で、目はおろおろとしている。 「そ、そんな事はないですよ、み……美琴さん」 ずきゅーん。 そんな音が聞こえたような気がするくらい、美琴の心に何かが突き刺さる。 普段は天真爛漫な佐天の恥じらう姿。 (当麻……なんか、良くわかんないけど、ごめん) 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Daily Life