約 3,071,631 件
https://w.atwiki.jp/haruhi-2ch/pages/90.html
涼宮ハルヒちゃんの憂鬱(アニメ) 概要 テレビアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』が2006年に放送した後、2007年7月に発売した『月刊少年エース2007年9月号』より連載開始した公式4コマギャグ漫画『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』が原作である。 現在は、『月刊少年エース』『少年エース増刊季刊エースアサルト』偶数月発売『ザ・スニーカー』などで連載中。単行本は2009年2月現在2巻まで発売中。2巻までで累計100万部を売り上げている。3巻は7月発売。 アニメ化が発表されたのは、にょろーん、ちゅるやさんと同日に、2008年8月26日発売の月刊少年エース10月号誌上で発表された。 漫画について詳しく知りたい方は『http //www39.atwiki.jp/haruhi-2ch/pages/39.html』へ。 放送概要 2月13日午後22時より動画投稿サイト『Youtube』上の角川アニメチャンネル内にて配信開始。5月8日配信の第25話、翌週のエンディング配信によって終了、 公式では気まぐれ配信となっていたがそれは前半のみで基本的に、毎週金曜日22時配信となっていた(気まぐれ=不定期配信) 配信は1度に2話分の予定だったと雑誌によると推測できるが、ナイスボート動画の影響か、4話まで1話ずつ公開になっていた。アーカイブは2話のみ。新たに配信されると二つ前以前の話数は非公開に。 配信日 第何話 原作ページ数 時間 ネタ 備考 2009/2/13 第0話 - ナイスボート動画 2009/2/14 オープニング - - - - 2009/2/14 第1話 1巻102P-110P(恨み、羊、キョンの初夢) 5分52秒 2009/2/17 第2話A 1巻23P-24P2本目3コマ目まで(ヒマ、依頼、落下) ABCで2分39秒 2009/2/17 第2話B 1巻17P-18P1本目まで(声、長門の趣味、音量注意) - 2009/2/17 第2話C 1巻7P(助っ人、設定) - 犯人はヤス 2009/2/20 第3話 2巻P136-139(TV、紹介、問題、地域密着、回答、花火、空気) 2分32秒 ハルヒがこなた顔 2009/2/23 第4話A 1巻26P(朝比奈みくるの衝撃、言えません…) ABCで4分30秒 アニメではエロゲ 2009/2/23 第4話B 1巻35P、37P2本目(本vsゲーム、シスター、知らぬ間に…) - 長門のコスプレがゲーム「ななついろ★ドロップス」の高校の制服 2009/2/23 第4話C 1巻38P、41P、56P、77-78P(復活、捕獲、収納、第2の敵、結局、居候、びゅーん、ボケ、ツッコミ) - 2009/2/27 第5話 1巻27P-34P(ハルヒちゃんの熱血ドッジボール) 3分43秒 原作と展開が違う 手書き 2009/2/27 第6話A 1巻54P2本目-55P(危機感、対抗、笑うな) 4分57秒 手書き 2009/2/27 第6話B 1巻75P2本目-76P(クリア、続編、勘違い) - 手書き 2009/2/27 第6話C 1巻P95-96、P113-114(台、結局、プライド、危機回避、ごはん、年越しソバ、お餅、歌の力) - 手書き 2009/3/6 第7話 1巻45P-52P、57P(開会式、チーム分け、借り物競争、心の壁、谷口かわいそう、次の種目、大岡裁き、咲いた) 4分23秒 手書き 2009/3/6 第8話A 1巻129P-130P(節分、歓迎、表、裏) 3分29秒 手書き 2009/3/6 第8話B 1巻149P-150P(トラップ、長門式交渉術、休憩所、お約束) - 手書き 2009/3/13 第9話 2巻140P-143P(企画会議、昼ドラ、ダイジェスト、略奪、余命、愛、メディカルエナジー) 3分30秒 手書き 2009/3/13 第10話 2巻152P-157Pあちゃくらさんの一日(朝、無理、秘技、水責め、恨み、課外活動、お掃除、第二関門、傘と私、天敵、見極め) 2分50秒 手書き 2009/3/20 第11話 1巻117P-120P、131P-132P(収納、バレンタイン大作戦、形にこだわる、再現、復元、トリュフ、活用、忍、収納2、おもちゃ、ケーキ) 4分12秒 手書き 2009/3/20 第12話 1巻121P-128P男達のバレンタイン 3分27秒 手書き 2009/3/27 第13話A 1巻59P-62Pもうすぐハロウィン(情報収集、イメージ、生、きっちり、予定外の物、完成、ハロウィンパーティー) 4分24秒 手書き 2009/3/27 第13話B 2巻158P-159P(買い物、スーパー、シンクロ、就寝) - 手書き 2009/3/27 第14話 2巻25P-29P(風船、鼻の下、穴、尊い犠牲、風船の戦い、素人、決着、風船の遊び方(宇宙人の場合1ページ目まで) 3分53秒 手書き 2009/4/3 第15話 2巻30P-34P風船の遊び方(宇宙人の場合最後まで) 2分30秒 手書き 2009/4/3 第16話 2巻144P-149P(料理、斬る係、簡単、50時間、3分、包丁、自動、匠の技、攻略法、仕上げ、5日) 4分07秒 手書き 2009/4/10 第17話 1巻135P-138P(花見、察し、副団長の実力、わかりやすい解説、イニシャルT、鶴屋さん、いわく) 3分30秒 手書き 2009/4/10 第18話 1巻139P-146P穴は掘っても彫られるな 4分20秒 手書き 2009/4/17 第19話 1巻81P-92P(クリスマスなので、やつら、作戦、加勢、証拠、隠れ場所、決定、谷口と河童最終話 5分31秒 手書き 2009/4/17 第20話 2巻51P-52P(演技、相手にされない、救出劇、後悔) 2分03秒 手書き 2009/4/24 第21話 2巻37P-48P(興味、人気、暇つぶし、なんでもこなす人達、観客、サイン、別行動、鶴屋さんVSメカ森さん(非4コマ)) 5分33秒 手書き 2009/4/24 第22話 2巻71P-72P(こどもの日、主婦モード、褒めて伸ばす、結局) 2分01秒 手書き 2009/5/1 第23話 3巻142P-145P(オープニング、トーク開始、本気、エピソード、特に、シナリオ、選択) 3分12秒 手書き 2009/5/1 第24話A 2巻150P-151P(制服、優先順位、秘策、水風船モード) 4分50秒 手書き 2009/5/1 第24話B 2巻131P-134P(暇人の暇の潰し方) - 手書き 2009/5/8 第25話 2巻1P-19あえてお部屋で(非4コマ-完成度-難易度-出会い-ジャンル)) 8分05秒 手書き 2009/5/15 エンディング - - - - 涼宮ハルヒちゃんの憂鬱 にょろーんちゅるやさんのスタッフ、今回更新したものは下線付きの部分New! 原作=谷川流・いとうのいぢ 漫画=ぷよ(月刊「少年エース連載」)、えれっと(月刊「コンプエース連載」) 監督=武本康弘本編と変わらず武本康弘氏。どちらもギャグアニメになる可能性が高いが、武本氏はギャグアニメ経験は多いので安心してもいいだろう。(ex.ハレグゥ、フルメタふもっふ等) キャラクターデザイン=西屋太志本編のキャラクターデザインの池田晶子氏とは別に2期の総作画監督である西屋太志氏がキャラクターデザインを担当すると発表。 チーフプロデューサー=安田猛角川書店のアニメ部門責任者。伊藤敦氏の上司で1期のハルヒでは製作総指揮などを勤めていた。7,8話以降クレジット。 友情プロデューサー=伊藤敦、八田英明伊藤敦氏は角川書店のプロデューサー、八田氏は京都アニメーション社長。1期本編と変更なし。友情の意味は不明。 演出=坂本一也憂鬱Ⅲのコンテ演出、憂鬱Ⅵの演出補佐、各話原画のほかOP原画も担当。 色彩設定=石田奈央美1期本編の憂鬱と同じく色彩設定を担当。 美術監督=篠原睦雄1期本編の憂鬱の美術監督『田村せいき』氏から変更。篠原氏は1期では参加してはいないが、鍵アニメの美術監督・美術設定を勤めている。 撮影監督=中上竜太1期本編の憂鬱の撮影監督田中淑子氏から変更。 音響監督=鶴岡陽太(楽音舎) 編集=重村建吾(スタジオごんぐ) 音楽=神前暁 音楽プロデューサー=斎藤滋 音響制作=楽音舎 音楽制作=ランティス オンライン編集=板倉玄(キュー・テック) 公式HP制作=旗野篤(山猫) ロゴデザイン原案=佐々木基 番組協力=少年エース編集部(加藤浩嗣)、角川アニメチャンネル(水野寛) 宣伝=西山洋介 アニメーション制作=京都アニメーション以上1期本編の憂鬱と変更なし。 製作=えすおーえす団 クレジット表記=(C)谷川流・いとうのいぢ/えすおーえす団 (C)ぷよ/えすおーえす団※ハルヒちゃんの場合 クレジット表記=(C)谷川流・いとうのいぢ/えすおーえす団 (C)えれっと/えすおーえす団※ちゅるやさんの場合 涼宮ハルヒちゃんの憂鬱 にょろーんちゅるやさんのキャスト}(09/01/23更新)New! 本編アニメである1期憂鬱とキャストは現時点では変更無し 涼宮ハルヒ、涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 長門有希=茅原実里 鶴屋さん、ちゅるやさん=松岡由貴 朝倉涼子、あちゃくらりょうこ、あしゃくらりょうこ=桑谷夏子 谷口=白石稔 国木田=松元恵 キョンの妹=あおきさやか テーマ曲 涼宮ハルヒちゃんの憂鬱OPテーマ:「いままでのあらすじ」作詞:畑 亜貴 作曲/編曲:神前 暁 歌:SOS団 (涼宮ハルヒ:平野綾、キョン:杉田智和、朝比奈みくる:後藤邑子、古泉一樹:小野大輔、長門有希:茅原実里) CD 2009年04月22日ランティスよりYouTube『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』OPテーマ『いままでのあらすじ』として発売。品番はLACA-4610。価格は1200円(税込)歌い手はえすおーえす団(涼宮ハルヒちゃん:平野綾、キョン:杉田智和、朝比奈みくる:後藤邑子、古泉一樹:小野大輔、長門有希:茅原実里)カップリング曲は発売情報から、『あとがきのようなもの』どちらも(作詞:畑亜貴、作曲・編曲:神前暁)。 DVD(全3巻)セル版、レンタル版ともに発売日は同日。 仕様描き下ろしジャケット/トールケース 収録時間:約37分(本編) 画面サイズ:16 9ビスタサイズ/カラー 音声:リニアPCM ディスク:片面一層/MPEG2 涼宮ハルヒちゃんの憂鬱 にょろーん、ちゅるやさん『DVD最初』(第1巻)2009/5/29発売!価格は5040円(税込)収録時間51分。初回特典は特製サウンドトラックCD(初回生産分のみ、なくなり次第終了) 毎回封入特典は、解説カード(4P)、キャラクタープロマイド1枚(全5種類中)※描きおろしシークレットプロマイドが追加で1枚封入されている場合もある。 DVD第1巻はハルヒちゃんがオープニング+1-10話を収録、ちゅるやさんは1-5話までを収録 涼宮ハルヒちゃんの憂鬱 にょろーん、ちゅるやさん(第2巻)2009/6/26発売!価格は5040円(税込)初回特典は「全巻揃えないと中途半端な全3巻収容DVD-BOX(描きおろし仕様)」(初回生産分のみ、なくなり次第終了) 涼宮ハルヒちゃんの憂鬱 にょろーん、ちゅるやさん(第3巻)2009/7/31発売!価格は5040円(税込)初回特典は特典DVD「鬼口はいかがでしょう(実写映像番組)」(初回生産分のみ、なくなり次第終了) ショップ限定特典 京アニショップ:【名場面フィルム】(涼宮ハルヒちゃんの憂鬱」3枚/「にょろーんちゅるやさん」3枚/計6枚)「涼宮ハルヒちゃんの憂鬱」「にょろーんちゅるやさん」各巻収録話数の名場面をフィルム風にして、京アニミニCut袋に入れて届けるとのこと BD-BOX 2010年8月27日発売。映像特典はノンクレジットOP/ED、CMスポットなど。発売は角川書店、販売は角川映画。 各話スタッフ 不明(クレジットされず) 話数 サブタイトル DVD収録巻 オープニング いままでのあらすじ 1、2、3巻 1話 体は鶴でも心は鷹さっ 1巻 2話 ん?長門オンリー? 1巻 3話 あの犬の名前は何でしょう? 1巻 4話 キョンくん、長門さんが、長門さんが… 1巻 5話 どっぢボールで勝負しよう! 1巻 6話 エッチなのは関心しませんっ! 1巻 7話 ドキっ、若干、女の子多めの運動会 1巻 8話 豆でも喰うか… 1巻 9話 登場人物は全員メイドです! 1巻 10話 傘、すげー 1巻 11話 じゃあ、みくるちゃん。さっそく服を脱いでちょうだい! 2巻 12話 男もただもらうだけじゃなくてなんかこう努力しなさい! 2巻 13話 そうだ。ハロウィンをしよう! 2巻 14話 主人公がしちゃいけない顔になってるわよ 2巻 15話 風船、すげー 2巻 16話 まっわーれっ! 2巻 17話 そういうお前はとーさんだっ! 2巻 18話 キョンくん、キョンくん。こんなん見つけたー 2巻 19話 みんな、今日はクリスマスパーティをするわよ! 3巻 20話 キミドリさーーんっ! 3巻 21話 ひげ仮面ーーんっ! 3巻 22話 これを着てもらえれば分かる 3巻 23話 自称、オレの笑いは伝染する 3巻 24話 あのころの私はそれはもう使命感に燃えていました 3巻 25話 PCゲーム?「涼宮ハルヒちゃんの憂鬱」 3巻 エンディング あとがきのようなもの 3巻 ファンブック 涼宮ハルヒちゃん ちゅるやさんの公式 (コンプティーク編集、角川書店発行、全48P、2009年9月25日発売、892円(税込)P04-05、OP『いままでのあらすじ』歌詞掲載 P06-07、ハルヒちゃんとSOS団の365日そのいちっ! P08-09、長門とあちゃくらさんの24時間 P10、ハルヒちゃんとSOS団の365日そのにっ! P11、キョンと古泉のあいまい30センチ P12-14、ちゅるやさんのにょろーん64連発 P15、ちゅるやさんとあしゃくらさんの7日間戦争 P16、Youtubeの数字コレクション P17、涼宮ハルヒから涼宮ハルヒちゃんとちゅるささんへ20のメッセージ(谷川流×いとうのいぢ) P18-19、クロストークぷよ×えれっと P20-23、描きおろしマンガ『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』 P24-25、メイキングインタビュー武本康弘×西屋太志 P26-29、描きおろしマンガ『にょろーん、ちゅるやさん』 P30-32、『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』 『にょろーん、ちゅるやさん』大辞典 アニメーションVer. P33-37、『ハルヒちゃん』と『ちゅるやさん』(平野綾×後藤邑子×茅原実里×桑谷夏子×松岡由貴) P38、鶴屋さんと森さんの1本勝負 P39、みくるのPCゲーム『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』攻略 P40-42、ハルヒちゃんとSOS団の365日そのさんっ! P43 、白石稔と鬼口と谷口とキミドリさん P44-45、イラストレーションギャラリー P46-47、あとがきのようなもの キャスト 1話涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 長門有希=茅原実里 キョンの妹=あおきさやか 鶴屋さん=松岡由貴 2話涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 長門有希=茅原実里 朝倉涼子=桑谷夏子 ゲームの声=あおきさやか 3話涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 無限ライオン=松岡由貴 4話涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 長門有希=茅原実里 朝倉涼子/あちゃくら=桑谷夏子 5話(アニメーションDo制作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 長門有希=茅原実里 コンピ研部長=こぶしのぶゆき コンピ研部員B=ヤスヒロ コンピ研部員D=小野友樹 6話(アニメーションDo制作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 長門有希=茅原実里 あちゃくら=桑谷夏子 メイド長=松岡由貴 挿入歌 『Paradaise Lost』 作詞:畑亜貴 作曲編曲:菊田大介 歌:長門有希(茅原実里) TVアニメ『喰霊-零-』オープニングテーマ、『喰霊-零-』主人公土宮神楽(声:茅原実里)の心情を歌った曲。中の人、プロデューサーつながりのネタ。エンディングまで流れたことから、TVアニメ『喰霊-零-』第3話、第12話のパロディ(クレジットと歌のみで絵なしでエンディング) 7話(アニメーションDo制作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 長門有希=茅原実里 鶴屋さん=松岡由貴 キョンの妹=あおきさやか 谷口=白石稔 国木田=松元恵 コンピ研部長=こぶしのぶゆき 子供=桑谷夏子 パロディ(ゴールしても良いよね=TV版AIR第12話参照) 8話(アニメーションDo制作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 長門有希=茅原実里 鶴屋さん=松岡由貴 あちゃくら=桑谷夏子 谷口=白石稔 9話(アニメーションDo制作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 長門有希=茅原実里 無限ライオン=松岡由貴 10話(アニメーションDo制作協力) 涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 長門有希=茅原実里 あちゃくら=桑谷夏子 (単行本第2巻にありました。) 10話(アニメーションDo製作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 長門有希=茅原実里 あちゃくら=桑谷夏子 11話(アニメーションDo製作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 朝比奈みくる=後藤邑子 長門有希=茅原実里 鶴屋さん=松岡由貴 あちゃくら=桑谷夏子 12話(アニメーションDo製作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 鶴屋さん=松岡由貴 森さん=大前茜 13話(アニメーションDo制作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 長門有希=茅原実里 鶴屋さん=松岡由貴 あちゃくら=桑谷夏子 14話(アニメーションDo制作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 長門有希=茅原実里 15話(アニメーションDo制作協力)あちゃくら=桑谷夏子 長門有希=茅原実里 キミドリさん=白石稔 16話(アニメーションDo制作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 長門有希=茅原実里 17話(アニメーションDo制作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 鶴屋さん=松岡由貴 18話(アニメーションDo制作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 長門有希=茅原実里 鶴屋さん=松岡由貴 新川さん=大塚明夫 森さん=大前茜 19話(アニメーションDo制作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 長門有希=茅原実里 鶴屋さん=松岡由貴 キョンの妹=あおきさやか 谷口=白石稔 パロディ(いっぺん死んで見る=地獄少女、おそらく杉田のアドリブ) 20話(アニメーションDo制作協力)あちゃくら=桑谷夏子 長門有希=茅原実里 キミドリさん=白石稔 21話(アニメーションDo制作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 長門有希=茅原実里 鶴屋さん=松岡由貴 新川さん=大塚明夫 森さん=大前茜 進行役のお姉さん=松元恵 観客=白石稔 22話(アニメーションDo制作協力)あちゃくら=桑谷夏子 長門有希=茅原実里 キミドリさん=白石稔 23話(アニメーションDo制作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 長門有希=茅原実里 無限ライオン=松岡由貴 24話(アニメーションDo制作協力)あちゃくら=桑谷夏子 長門有希=茅原実里 キミドリさん=白石稔 25話(アニメーションDo制作協力)涼宮ハルヒちゃん=平野綾 キョン=杉田智和 朝比奈みくる=後藤邑子 古泉一樹=小野大輔 長門有希=茅原実里 鶴屋さん=松岡由貴 放送されるまでの経緯 2008年8月26日……漫画『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』、二次創作同人である『にょろーんちゅるやさん』がアニメ化すると月刊少年エース10月号で発表された。放送媒体はYoutubeの再生画面からハルヒちゃんが出てくるピンナップから『Youtube配信のみ』になるのではないかと予想されているが、『アニメ化決定』としか公式発表されていないので不明。スタッフやキャストも含めて未定。2008年12月18日に公式サイト上で。『Youtube』の角川アニメチャンネルで配信すると発表されました。 2008年9月8日……月刊ニュータイプ10月号にて『ハルヒちゃん、ちゅるやさん』のアニメ化について続報。制作会社は2期もとい新アニメと同じく京都アニメーションで、監督も同じく武本康弘氏とのこと。なおネタ扱いではなく、真剣に作っているとのこと。版権絵はどちらの絵とも西屋氏が原画で仕上が石田氏であることから、新アニメとはスタッフは被ると考えて良いようだ。監督のほか『涼宮ハルヒちゃん、ちゅるやさん』ともに、キャラクターデザインは西屋太志氏であることも発表され、『両作とも本編とは別に一味違った楽しい画面を作っていきたいと思います。』と意気込みを語っている。ソースはこちら。 2008年11月26日……月刊少年エース1月号にてキョンとハルヒちゃんの設定ラフが発表された。なおクレジット表記も(C)谷川流・いとうのいぢ/えすおーえす団 (C)谷川流・ぷよ/えすおーえす団に変更されている。 2008年12月10日……ニュータイプ1月号の付録に『にょろーん、ちゅるやさん』のクレジットも(C)谷川流・いとうのいぢ/えすおーえす団 (C)えれっと/えすおーえす団と発表された。 2008年12月18日午前4時23分……SOS団公式サイトにて消失イベントが行われ、ハルヒちゃん ちゅるやさんの詳細スタッフとキャスト 配信媒体が発表された。スタッフは色彩設定、撮影監督、美術監督が追加され、一部は1期『涼宮ハルヒの憂鬱』とは異なる。キャストは現時点の発表では、1期『憂鬱』とは変更なし。『Youtube』の角川アニメチャンネルで配信し、『出来たら配信、気が向いたら更新』とされている。 2009年01月17日……『喰霊-零-』、『ハルヒ』のプロデューサーである、伊藤敦プロデューサーによるとレギュラー出演しているランティスネットラジオ「喰霊-零-」超自然災害ラジオ対策室第14回において、『ハルヒ2期』について述べ、脚本の本読み段階に進んでいたが、喰霊の制作のため少し延期していたらしく、京アニに対して申し訳なかったと述べていた。制作中と思われる。なお、ハルヒちゃんはまだやっていない(=放送していない)とのこと。 2009年01月23日……公式サイト上で『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』、『にょろーん、ちゅるやさん』のアニメーション第一回の配信日時が2月13日22時ごろと発表された。テーマ曲も発表されており、キャストの表記が追加されていたり、スタッフが追加されている。 2009年02月08日……公式サイトに涼宮ハルヒちゃん、キョン、長門有希、朝比奈みくる、古泉一樹、朝倉涼子などの設定画が掲載された。 2009年02月10日……月刊ニュータイプ3月号にてハルヒちゃん、ちゅるやさんに関して、スタッフ・キャストの発表ともに、監督、キャスト陣のインタビューが掲載されていた。(平野、杉田、後藤、茅原、小野、松岡、桑谷、白石、あおきさやかなど(松元はインタビュー未掲載))なお、ハルヒちゃん、ちゅるやさんはシナリオはなく、 漫画の四コマから直接コンテを書いている とのこと。谷川氏やプロデューサーも四コマのアイデア出しをしたと監督は述べている。ハルヒちゃんの版権絵は西屋太志が原画を担当している。 2009年02月10日……月刊コンプティーク3月号のほうは、にょろーん、ちゅるやさんのほうに特化していたが、インタビューはニュータイプの増補版。ちゅるやさんの版権絵は坂本一也。2009年02月11日……月刊コンプティーク3月号や月刊ニュータイプ3月号で省略されたキャスト陣のインタビュー部分も含めて全文掲載&1話アフレコしたキャスト陣の写真が掲載された。http //anime.webnt.jp/nt-news/?detail=817 2009年02月13日……予定時間の22時ごろの配信で専用バナーは用意されたものの、そこをクリックすると、タイトルが『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱 第1話』とともに内容はヨットが海で航行している映像いわゆる『Nice boat.』動画だった。(2月14日午前8時)の時点で閲覧回数は20万を突破。コメントも2000を大幅に超えており、関心の高さが伺える。(2期発表を含めて)散々待たされた挙句の「Nice Boat」に失望するコメントが目立つ一方、Youtubeが端緒である「Nice Boat」を大胆に採用したネタを評価する声、『団長の気まぐれにより、配信日時、更新日時はコロコロ変わる可能性があります。ご容赦ください』と予め公式サイトで明言されていたことから、今回のネタを織り込み済みとする声も多く、現時点では評価が真っ二つに割れていると見るべきだろう。 2009年02月14日……-2月14日午後2時ごろ、「ハルヒちゃん第1話」「ちゅるやさんそのいちっ」「ハルヒちゃんOP」が無事公開された。「Nice Boat」は非公開になっている。ハルヒちゃん・ちゅるやさん共に原作を忠実になぞった内容で、全編CGで制作されている。なお、OP映像に第2回以降のものと思われるアニメ映像が使われていることから、すでに複数回の制作が進んでいる模様。 2009年02月17日……午後10時ごろ2話目の配信開始。1話目はハルヒちゃん、ちゅるやさんとともに配信停止。と思われたが、数時間後1話が再配信された。 2009年05月04日……『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』、『にょろーん、ちゅるやさん』の公式ホームページリニューアル。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2522.html
高校を卒業してから、はや1年。 あのうるさいハルヒと別の大学に行ったおかげで 俺はめでたく宇宙人も未来人も超能力者もいない普通の日々を手にいれた ハルヒいわく「SOS団は永久に不滅なのよ!」とのことだが、 活動の根城であった文芸部室では現在、北高の新1年生数名が文芸部として活動している。 あるべき姿に戻ったとも言うべきだが、いまの部室にはガスコンロや湯飲みはない。 朝比奈さんが着ていた華やかな衣装も、コンピ研からかっぱらってきたパソコンもない、 普通の部室になっている。 昔のハルヒなら「ここはSOS団のアジトなのよ!」と部室を強引に不法占拠しただろうが、 楽しそうに活動する現部員、つまり後輩の様子を見ているとそんな気にもならないらしい。 拠点を持たない現在のSOS団にはどこか勢いがないと言うか、ごく普通の仲良しグループとなっている。 いつもの喫茶店に集まり、みんなで市内探索をしたり、イベントに参加したり・・・ そんな活動からも、最近は遠ざかっている。 それぞれの団員が新しい環境で忙しいのだろうか、 あのハイテンションの団長様からは、もう1年も召集命令がかかってこない。 実際、俺も忙しかった。 溜まっていたレポートをようやく仕上げ、自室でシャミセンを抱えてベッドに倒れこんだ。 ああ、疲れたさ。 人間というのは考え込むと突然憂鬱になることがあるそうだが、今の俺もちょうどそんな感じで、 何か釈然としない気分となりながら、激動が続いた高校時代の思い出を頭に描いている。 何気なく外に出た俺は、ハルヒの支離滅裂な行動を苦虫を噛む様な顔で振り返りながら、 朝比奈さんの素晴らしいお姿をもっと堪能していればよかったと後悔の念を抱き、 木漏れ日が射す道を、高校時代、毎朝苦しめられたあの坂を上っていた。 平日の学校だというのにどことなく静かで、相変わらず安っぽいプレハブ校舎が風情を醸し出している。 桜舞い散る校門を、卒業式以来久しぶりに通る。 おもむろに懐かしくなってきた俺は、かつて騒然とした毎日を過ごした場所を1箇所1箇所巡ってみた。 教室に入ることはできないが、セキュリティの欠片もないこの学校を見回るのは造作もないことだった。 古泉に能力を聞かされた中庭のテーブル。文化祭でハルヒと長門が観客の度肝を抜いた体育館。 なんだ、ほとんど何も変わってないじゃないか。 自然と口元が緩む。何もかもが懐かしい。 様々な場所を歩き回った俺は、校門を出る前によく分からない気持ちに駆られ、あの扉の前に来ていた。 そう、現在はSOS団のプレートが外されて、正規の活動を行っているあの、 文芸部部室の扉の前に。 4月の上旬、今は授業中。 かつてのハルヒのように、授業をサボってまでクラブ活動に精を出すような奴はいないだろう。 部室に鍵がかかっているのは当たり前のことである。 しかし、憂鬱というよりは懐古の面持ちが強くなっていた俺は、かつての思い出の1ページをさらうように、 いるはずのない朝比奈さんの着替えを目撃しないために、軽く扉を2回叩いた。 当然、反応はない。 俺が1番に来るとは珍しいじゃないか、と自分に懐かしく言い聞かせ、ドアノブに手をかけた。 ガチャリ・・・ 鍵はかかっていなかった。 まったく、部活動時間外にはしっかり施錠するのが部長の仕事だぜ。 ハルヒもその辺だけはしっかりしていたんだから、そこは見習っておくべきだな。他はともかく。 扉を明けると同時に、懐かしい言葉が浮かんできたのでつぶやいてみた。 世界を大いに盛り上げるための、 「涼宮ハルヒの団。」 つぶやきを言い切る前に、 扉の向こうから俺の高校生活をクソ面白いものに変えやがった声が聞こえた。 どこか色っぽいような顔で俺に微笑みかけたそいつはまさしく、 涼宮ハルヒだった。 なにやってんだお前はこんなところで・・・ と言いたくもなったが、ハルヒの顔を見ていたらどうも言葉が出てこなかった。 どうやら俺が忙しい日常の中で、もっとも再び見ていたいと思ったのは、こいつの顔だったようだ。 おかしい話だよな、こいつと会ったらもっと忙しくて面倒なことに巻き込まれるんだぜ。 でも、ひとつ言えることは、忙しさの中にも楽しさと、そして心のやすらぎを得ることができたということ。 いろんな思いが交差する中、最終的に俺の全思考回路がハルヒに向ける言葉として選んだものは、 「よう」という一言だった。 「あんた、よく覚えていたわね」 とハルヒがつぶやいた。 どちらかと言えば勘が鈍いほうの俺だが、これが何のことかは一瞬で思い当たった。 少しの間をおいて、はにかみながらハルヒにこう返す。 「団長、1周年おめでとうございます」 ハルヒの目が、かつてのように輝いた。 「ふん、相変わらずあんたはバカね」 これは思わぬ反応だった。と、同時に久しぶりに聞くハルヒ節がなぜか心地よく感じた。 「どうせあんたは卒業して1周年とか考えてるんでしょうが違うわよ! 今日はSOS団設立からちょうど4周年でしょ!だいたい1周年だったら卒業式から逆算しても 日にちが合わないじゃないの。ふん、あんたにしてはいい事言ったけど詰めが甘いわねー!」 まぁ、そういわれてみればたしかにそうか。 ただ雰囲気的には1周年って感じはするがな。もう4年経つのか。早いもんだ。 あらためて部室を見回してみると、随分閑散としている気がする。 現文芸部の作成した会誌や読書コンクール作品などが整えられて机の上に置いてあり、 至極まじめに活動している様子が見受けられる。 そういえば俺たちもハルヒ編集長の指示によって文芸部(ではないが)の会誌を作ったっけな・・・ 朝比奈さんのかわいらしい童話や長門の淡々としたエッセイ、鶴屋さんの大爆笑必至のアレ。 コンピ研の部長氏が目を充血させてまで書き上げたようなパソコンゲームなんとかの記事。 そしてできれば忘れたい俺の恋愛(というのかどうか分からんが)小説。 「あんたの恋愛小説にはもうちょっと期待してたんだけどねー、期待して損したわ。」 余計なお世話だ 「そういやお前、大学の方はどうなんだ?また変な団作ってんじゃないだろうな」 相槌を打つ程度に聞いてみるが、返答の内容はだいたい見当が付く。 「作ってないわよ。あたしはSOS団の団長なの。新しい団を作るつもりも入るつもりもないわ」 恐らく、ハルヒの高校生活はとても楽しいものだったのだろう。 そのひとつがSOS団の存在、ひとつというより大きなウエイトを占めているのは間違いない。 はじめて会話したときの、あのどこか不満気で釣り上がった表情だったハルヒはもうどこにもいない。 あいつはおそらく、高校生になって劇的に日常が面白くなるとは考えてなかったはずだ。 期待はするけど、どこかで晴れない気持ちが芽生えてたはずだ。 でも。 それが、この3年間だったもんな。 個性的な仲間たち。数々の不思議な体験、胸が躍る冒険。 地味な事件のひとつひとつさえ、とても面白かったんだろ、なぁ、ハルヒ。 なんで分かるかって? 何度でも言うさ。 俺も楽しかったからだ。 「なーににやついてんのよ!また変なこと考えてるんじゃないでしょうねっ!」 「また」って、俺がいつお前の思う変なことを考えたんだよ。 だいたいお前が思う変なことってのは、一般人にとってどれだけ驚異的な発想なんだろうね。 ・・・とは思うものの、1年の時の冬に雪山で変な空間に閉じ込められたときに、 「風呂を覗くな!」みたいな主旨の事を言っていたっけな。 こういうところでは意外に乙女ちっくというか、古泉に言わせれば常識的な考えを持っているんだよな。 バレンタインデーでもそうだっけか。義理義理義理義理言っておいて毎年ちゃんとくれて、 年々チョコの内容がグレードアップしていったのはなんだったんだろうな。 最後の年のバレンタインデーなんて大きさも凄ければ、 団長様直々にお書きなされたカードみたいのまで入ってたっけな。 まぁ古泉のも同じ大きさでカードが入ってたみたいだが、何て書かれてたは知らん。 ただ、俺に宛てたカードに書いてあった言葉は今でも覚えてるぜ。 1年の時に貰ったのは、チョコにバレンタインデーとぶっきらぼうに書いてあっただけだったが、 あのカードに書かれた文字を俺は生涯忘れることはないんじゃなかろうか。 なんて書かれてたか?それはだな、 禁則事項。ずーっとな。 ちなみに俺はそのカードを今でも大切に財布に入れてる。 クレジットカードやどこぞの会員証よりも優先順位が上な、一番目立つところに。 「ふん、まぁいいわ。でも、あんたよく覚えてたわねぇ。ちょうど電話しようかなーって思ってたんだけどさ。 団長様は授業真っ盛りの学校に団員を集合させる気だったのかよ。 「ちがうわよ。集合場所はここじゃなくていつもの喫茶店。」 喫茶店か、あそこには色々とお世話になったもんだな。 おそらく俺は、この部室に来なかったら図書館か喫茶店に向かっていただろう。 その先でも結局こいつに会ってたことになるんだな。 巡りあわせ、か。 ハルヒに出会ってから、俺はこの言葉をつぶやく機会が減った。 理由はお分かりのとおり、「自分の思いを実現する力が涼宮ハルヒにはある」というバカげた話を、 一般人とはかけ離れた奴から耳にしてしまったからな。 俺の中で、ほぼ必ず「巡りあわせ」はこの言葉に置き換えられた。 ただ、今の状況はハルヒがそう願ったから、というわけではないような気がする。 それとは別に・・・、なんだろうな。言葉にはしづらい内容だ。 「とにかく、せっかくの記念日なんだからねっ!みんなで集まりましょうよ!」 ハルヒの目がまた輝きだした。ホント、楽しそうなときののこいつはいい顔するねぇ。 SOS団専用スマイル。俺は勝手にこう名づけてるんだが、その名のとおり一般生徒には なかなかお目にかかれない特上のハルヒスマイルだぜ。 「それじゃ、喫茶店行くか。みんな集まってのSOS団だからな。」 別に深い意味があって言ったわけでもなく、そんなすぐに急いで行こうという意図があったわけでもないが、 「えっ・・・ちょ、ちょっと待ちなさいって!えっと・・あの、その・・・ふ、風情のない奴ねあんたもっ!」 と、全力で部室から出ることをわざとらしく拒否しやがった。なにがしたいんだ、こいつは。 「とにかく・・・たまにはいいでしょ、あたしとあんた二人で懐かしむのも・・・。あんたは団員その1なんだし・・・」 ハルヒが顔を赤らめている様子を想像した諸君、残念。 いきなり後ろ向いて細い声になるんだから顔までは見れなかった。 どんな顔してたんだろうな。 間髪入れずにハルヒは振り返り、俺のいる方へと近づいてくる。 よくみると、紙袋を後手に隠しながら歩いてくるのが分かった。 「ハルヒ、お前後ろに何隠してんだ?」 頑張って俺に見られぬように隠している紙袋に入っている物体について、 わざと先に聞いてやった。 「!!!!・・・ちょ、ちょっとあんた、そういうのは気付いても言わないのが男心ってもんでしょうが・・・」 立ち止まってハルヒはそっぽを向いた。 予想通り。この反応が見たかった。 たまにはいいだろ?俺のほうがお前を困らせてやっても。 「・・・バカ。」 そう言いながら、ハルヒは紙袋から包装された物体を取り出した。 「なんだこれ?」 おそらく万人がそういう反応をせざるを得ない、意外な代物が飛び出してきた。 年季を感じさせる、例えるならば中学生が3年間一度も買い換えずに使い込んだ筆入れのような、 財布だった。 先ほど意外な代物と言ったが、俺はこの財布に見覚えがあった。 喫茶店の代金を払うのは大体が俺の仕事のようなものになっていたので、見かける機会は少なかったが、 それはハルヒが使っていた財布と見て間違いはなかった。 「・・・お、お礼の言葉はないのっ!?団長直々の贈与品なんだからおとなしく謝辞を述べなさいっ!」 なんだそのめっちゃくちゃな理屈は・・・。 と思いつつも、何でまた財布なんだろうな。それもハルヒ本人の使っていた。 その辺はまた後で聞くとして、まず最大の疑問を投げかけてみた。 なんでまた、これをわざわざ包装してるんだお前は。 「プレゼントってものは普通包装してあるでしょ!当然の事しただけよっ・・・。」 まぁ・・・たしかにプレゼントって物はだいたい包装してあるものだが、 そもそも渡す本人が日常的に使っていたものをプレゼントするってのはかなりのレアケースなんだろうか。 いや、そんなことより根本的におかしいだろ。なんというか。 つーかこいつはもしかして包装紙だけをわざわざ買いに行ったのか? 包装紙を売ってる店なんて聞いたことないから、 大方近所のデパートの店員を脅してかっぱらってきたんだろうな。 そう思ってくしゃくしゃになった包装紙を眺め、さてどこの店の包装紙だ?と店のマークを見回したが、 なかった。店のマークも、特徴も。 それにどこか、一般小売商などのものにしてはやけに包装紙にムラが目立つ。 まさかこいつは、わざわざ包装紙とリボンを手作りしたのか? ・・・聞いたらそっぽ向きそうなので、これは言わないでおくか。 「・・・大学の同級生が財布をくれたのよ。だからそれはもういいの。あんたにあげるわ。」 要するにいらないものを恵んであげますよってことか。 フリーマーケットに売りに行くって選択やそのまま放置しておくって選択肢はないのかよ。 俺ならたぶん捨ててるな。 「けっこう使い込んであるけど、あんたのそのボロい財布よりはマシでしょ」 お前に言われたくはねーな、と言いたいところだが実際俺の財布も年季が入ってるからな・・・ でも一応まだ使えるっちゃ使えるぞ。これでもけっこう愛着あるんだからな。 「えっと・・・今まであんたには色々お金出してもらってたからさ。 その・・・なんというかお礼よお礼。借りた恩はちゃんと返すのが義理人情の世界でしょ。」 いつからSOS団は義理人情の世界になったんだよ、と思いつつ、 俺のハルヒへの投資は金以外にも、睡眠時間とか平凡な生活の終焉とか色々あったな、 お返しは財布1個で足りるもんじゃねーぜ、という気もするといえばするな。などと考えていた。 「そのかわり、あんたの財布はあたしが預かっておくわよ!ちゃんとありがたくあたしの財布を使いなさい!」 ああ、そういうことか。要するに俺の財布が欲しかったんだな、こいつは。 そんな質のいいもんでもないが・・・こいつなりに何か考えがあるんだろう。 ってことは大学の同級生が財布をくれたってのもたぶんデマカセだな。 相変わらず素直じゃないヤツだ。 「まーた!なーにニヤニヤしてんのよ!・・・べ、別に深い意味があるわけじゃないんだからっ!」 ん、またニヤニヤしてたのか?俺は。 別に意識あっての行動ではないんだがな、どうもクセになってるらしい。 外の景色が春らしく、穏やかな陽気で静けさの中にあるように、 文芸部室もまた静かになっていた。この空間には俺とハルヒしかいない。 それにしちゃやけに静かだな。 「さっ!キョン!おとなしく財布を渡しなさいっ!ついでにあんたの財布の中身も拝見させてもらうわよぉ♪」 ハルヒは強引に俺のパーカーのポケットに入っている財布に向かって腕を伸ばしてきた。 全く、ほんとにむっちゃくちゃな奴だなこいつは・・・ ん?俺の財布の中身・・・ これはまずい。 俺が理性を最大限に働かせて、財布の略奪を必死に阻止しようとしたときにはすでに、 ハルヒの手を伸ばした先にあった。 「ふぅーん、さぁーてさてっ!雑用キョン君の財布にはなーにが入ってるのかしらっ!」 俺は一瞬目を覆いたい気分になったが、もうどうしようもないのでハルヒを見つめた。 そもそも略奪を阻止したとして、アレだけを財布から抜くのなんて無理だろう。 これはしてやられた。 「・・・ちょっ、あんた・・・これ・・・」 ハルヒの顔が紅潮していくのが分かった。もうホント、これ以上ないくらいに分かりやすかった。 「あ・・・あたしは別に、それ、本気のつもりじゃ・・・っと、その、冗談よ!2ヶ月はやいエイプリルフールなのっ! あ、あんたもそれ見て冗談にしちゃきついなとか・・・い、いってたじゃないの! もう1年以上経つのに・・・それを・・・財布に入れてるって・・・」 どうしよう、ほんとにこれ。 団長様直々のお言葉だったので入れておきましたとか? どう考えても言い逃れにしかならない。 俺は・・・ 俺が3日間意識を失っていたときに、寝ずに俺を看病してくれていたハルヒ。 世界が改変され、北高から姿を消したハルヒを全力で探し始めた俺。 バレンタインデーで年々グレードアップするチョコを俺にくれたハルヒ。 どこかでポニーテール姿のハルヒを望んでいる俺。 雨の日の帰り道、結果的に相合傘を望んだハルヒ。 ・・・鍵をそろえよ、か。 俺はこの状況とは無関係な、そんな言葉を思い浮かべていた。 あの時、俺は自分で意識したわけでもないのに、気が付いたら仲間を集めていたっけ。 気が付いたら。 もしかしたら、そんなはずはないとは思うが、 俺は全ての騒動や日常の中で、平行してもうひとつの鍵をそろえていたのだろうか。 涼宮ハルヒ、という鍵を。 「なぁ、ハルヒ」 「なによ」 口を開くまで時間がかかった俺の、やっとひねり出した言葉に、ハルヒは間髪入れずに返してきた。 この辺はこいつらしいな、とつくづく思う。 色々な言葉が思い浮かんできたが、なぜか俺は突拍子もないものを選び取ってしまった。 「俺、思うんだけどさ。曜日によって感じるイメージはそれぞれ異なるような気がするんだよ」 ハルヒが「はぁ?」という反応をしている。 まぁ、そりゃそうだろ。この場面でこんな言葉を投げかける奴は宇宙探しても俺ぐらいだろう。 「色でいうと月曜は黄色。火曜は赤で水曜が青で木曜は緑、金曜は茶色、日曜は白、だな」 ハルヒは変な顔を少しゆるませて、「ってことは、月曜が0で日曜が6になるわよね。」と返答する。 懐かしい会話が、立場を入れ替えて喋る形になったが、 俺はこの部分をあえて自分で言った。 「俺は月曜が1って感じがするけどな」 ハルヒはきょとんとした顔で、 「そりゃあんたが日曜になにもしてなくて、学校が始まる月曜が週の始まりのように感じたからでしょ」と答えた。 この場違いな問答で、俺は何かが分かったような気がした。 もちろん、そこまで深い意味を持って投げかけた質問なわけでもない。 「あんたの意見なんか誰も聞いてない、じゃないのな。」 ここら辺は俺の記憶力を素直に褒めるべきだな。 普通は4年前の会話を一字一句覚えているなんて、ありえないことだろうが。 その後のハルヒの一言が、後ほどかなり大きな意味を持つことになってしまったからな。 前後の会話はなんとなく覚えていたよ。ここまで鮮明だとは思ってなかったが。 「え、あたしそんなこと言ったっけ?」 ハルヒが首を傾げながら俺の問いかけに答えた。 ひとつ考察してみると、過去の記憶を探るうえで、局地的な言葉の存在を忘れることは 誰にでも多々あることで、それほど珍しいものでもない。 だが、俺にはハルヒがなぜ、その言葉を忘れてしまったのかがなんとなく分かっていた。 出会い、SOS団を作り、多くの出来事を越え、歳月が経った俺たちの関係。 そこには見えない信頼関係が出来上がっているように思える。 今のハルヒは、俺の意見を無視することはあっても全否定することはなくなった。 初対面と3年の付き合いでは、そりゃ内面の意識も変わるだろう。それは信頼関係とみて間違いない。 でも、ひとつひっかかることがある。それがさっきそろえた「涼宮ハルヒ」という鍵だ。 信頼関係というなら、俺と古泉の間にもあるようにハルヒと朝比奈さんの間にもある。 つまり、部員全員が信頼関係で繋がっているはずだ。それが、SOS団だろう。 じゃあ、俺とハルヒとの間には信頼関係をある意味で越えている何かがあるのだろうか。 そうでないと、ここまで鍵をそろえた理由が説明できない。 そして、何よりも謎になるのはこのカードを財布に入れていた俺である。 今思えば、俺はなんでこのカードを財布に入れているんだろうか。 まずそこが矛盾点になる。 ハルヒの顔が不意にうつむいた。 そして、おもむろにこう呟く。 「あんたも回りくどい奴よね。言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!」 強気に聞こえたその言葉は、どこか恥じらいの成分を含んでいた。 回りくどい、か。脳内の俺を説明するならこれほど端的な言葉もねーな。実に分かりやすい。 ・・・ どうして、もっとはやく気づかなかったんだろうな。 回りくどく考える必要なんてこれっぽっちもないじゃないか。 俺は、ハルヒと2人になった閉鎖空間のときと同じように、手をハルヒの肩に乗せ、ぐっと引き寄せた。 「な・・・なによっ」 ハルヒの顔が、凄く近くにある。 あの時よりももっと近く、遠めに見たら抱き合っているようにしか見えない距離にまで引き寄せた。 今までハルヒと過ごしてきた日常の中で、顔が今くらい近くに来たことは、何回かある。 ただ、今までと違うのは、体も凄く近くにあるということ。 いつぞやハルヒが言った「黙って溜め込むのは精神に悪いわよ」という言葉。 それを倣うように、左脳をフル回転させて思考した考えを忘れ、 ハルヒの言った「はっきり」の一言で浮かんだ思いをヘタクソな言葉に乗せて、俺は言った。 「ハルヒ」 「どうやら俺はお前の事が好きみたいだ」 ・・・ 結局少し回りくどい言い方になってしまった。 どうして俺はこうなんだろうな。まぁ、そこは個性として考えてくれればありがたいよ。 「・・・バカ」 俺の腕の中で、ハルヒはそう呟いた。 「すまん」 これ以上先、言葉は必要なかった。 あの時感じたときと同じように、ハルヒの唇は温かくも湿りをもっている。 ________________________ | |本命、かも。 |________________________ 回りくどくなく、やたらストレートだったこの言葉。最後にやや照れ隠しのように記された団長のキメ台詞。 そういえば渡される前の日にハルヒが国語辞典を読み漁ってたな。こいつに穏やかってのは変だが。 ともかく、こうして俺はここでハルヒを立ちながら抱きしめ、唇を重ねている。 時が止まって欲しいとも感じたさ。体中に幸せを感じていたからな。 そんな状況下で、全く予期せぬ事態が発生した。 ガチャッ! 扉が勢いよく開いた。 こういう間の悪い奴を俺は一人知っている。 そのT君はアホなので変な方向に勘違いしてくれて助かったが、この状況はそうともいかない。 ドアノブをまわす音から扉が開くまで幾分かの間があったので、ハルヒから体を離すには充分だった。 離れるハルヒの顔が、どこか名残惜しそうな、そんな雰囲気を醸し出している。 それにしても、誰だ。いきなり。 だいたい今は授業中だろ。文芸部は今でも実は地下で突拍子もない活動をしてるのか? 授業が終わるまでも、あと30分くらいは時間があるはずだ。 すると、 パァン!という小さな火薬音と共に、これまた見覚えのある顔の奴が出てきた。 今のはおそらくクラッカーだろう。 「おやおや、ちょっと入室するにはタイミングが早すぎましたかね?」 古泉だった。 すると、ガタリ、という音と共に掃除ロッカーから長門が出てきた。 こりゃまずい、古泉はともかく長門は顛末全部分かってるんじゃないだろうか・・・ 古泉の後ろからは、なぜかメイド服を着ている、(大)と(小)の間くらいに成長した朝比奈さんが出てきた。 朝比奈さんの位置づけはとりあえず(中)ってことにしておこう。 「これはいいアダムとイヴですねぇ」 古泉がいつものニヤケ面を100倍増長させたような顔で皮肉を言うと、 「涼宮さんにもこんなところがあったんですねぇ!キョンくんを部室に呼び出すなんてぇ」」 「んなっ!ち、ちょっとみくるちゃん、違うって!これは、あの、その!偶然よ偶然!」 朝比奈さん(中)がほほえみながらハルヒをちょんっと小突いた。 意外な光景だった。 というか、朝比奈さんはわざわざ未来からやってきたのだろうか。 それにしても、ハルヒにちょっかい出すなんて、朝比奈さんは色々と成長していくんだな、と感心した。 体の方も順調に朝比奈さん(大)に向かって邁進しておられるご様子。 「・・・これはドッキリだったのか?」 そうつぶやくしかなかった。そりゃそうだろ。 「いえ、僕たちは特に打ち合わせなんてしていませんよ。」 と古泉が答えた。 じゃあなんだっていうんだ、その準備のいいクラッカーといい朝比奈さんの姿といい。 「よく分かりません。ただ、なんとなくです。クラッカーを用意させていただいたのも、 ただの僕の気まぐれです。なんとなく、皆さんと会える気がする。ただ、そう考えて北高を訪ねただけです」 少し動機は違うものの、古泉がここを訪れた理由はなんとなく俺と似ている。 懐かしい気持ちもあったが、少しだけこいつらに会える気がしていた。 よくもまぁ、とんでもないタイミングで出てきやがったがな。 でもこの理屈じゃ朝比奈さんとお前はともかく、長門の説明が付かないだろ。 掃除ロッカーに入ってるとか、こうなることを知ってないと無理だ。 「長門さんは何かが起こる気はしていたようですよ。もしかして、お二人を驚かせたかったのでは?」 そんなはずがあるかい。 と思いながらも、無表情とは少し違った、どこか笑いの成分をわずかに含んでいる顔つきをしている長門を見た。 長門はピクリとも動かずに、一言 「子供が丈夫に育つ事を願う」 ・・・ こいつ、なかなか痛いツボを突いてきやがる・・・ ハルヒはまだ朝比奈さんとじゃれあってる。いい景色だ。 それはいいとして、この恥ずかしい状況を少しでも逸らすために、この偶然性への疑問を問いかけた。 「・・・古泉。ハルヒはたしかにお前ら全員を集めるつもりでいた。これは間違いない。 ってことは、いつもの通りハルヒがそう望んだからお前らと、そして俺がここに来たという理屈も通る。 だが、あいつはバレンタインデーの時のこともあったが、こういう恥ずかしい結末になるのを 一番嫌がるような回りくどい奴だぞ(俺が言えることではないが)。 だとしたら、この状況はなんなんだ?起こりえないことが起こっているんじゃないのか?」 俺の長い長い問いかけに対し、古泉は意味をすぐに理解したのか、こう返してきた。 「涼宮さんが完全な神ではないから、と説明することも可能でしょうが、私は違うと思いますね。」 じゃあなんなんだよ。いい加減頭が混乱してきた。 「簡単なことです。涼宮さんが望み、あなたが望み、僕が、そして朝比奈さん、長門さんが望んだから。 これで説明がつきますよ。望む、の捉え方を少し変えて考えてみてください。」 俺が望み、他のみんなが望んだこと。 ああ、そういうことなのか。 文芸部の部室。かつてここはSOS団の拠点であり、根城であり、我が家だった。 団員は、すでに全員がこの北高を卒業している。 SOS団は団長の「永久に不滅」の言葉どおり、解散はしていない。残り続けている。 いつもの喫茶店がいつもの喫茶店であるように、この部室もまた、姿かたちは変わっても、SOS団の「家」だ。 俺たちとって文芸部部室は、もう駅のホームのようにただ通り過ぎるだけの場所ではなくなっていた。 みんなで過ごした日々を、決して忘れたくない。 環境は変わっても、その思いがあるからこそ、この部室に来る意味がある。 SOS団の創立記念日。この日だからこそ、みんな特別な思いを抱いているはずだ。 ハルヒが現実にしたわけじゃない。それぞれ思っている思いが合致したからこそ、 こうしてSOS団の面々はここにいる。もう一度、部室でみんなと一緒にいたい。それが「望み」なんだろう。 この不思議な団結力が、信頼関係ってやつなのかな。 それにしても、思わぬ展開になってしまったけど。 「なぁーんだ!電話する手間がはぶけたじゃない!みんな来るなんて!」 ハルヒは何事もなかったように、元気な声で団員を見回した。 「ちょうどいいわ、こんな機会もうないでしょうしね。やーっぱSOS団の活動拠点はここじゃないと!」 そういってハルヒは部室の隅にあった勉強机を自分のホームポジションに移動し、 その机の上であぐらをかいて、「第何回か忘れちゃったけど、定例会議の開始よ開始!」と笑顔で言った。 現在の時刻は3時50分。あと30分もすれば、正規の部員が部室に戻ってくるだろう。 不法侵入で通報されないためにも、30分でここから立ち去らないといけない。 メイド服の朝比奈さんは、どこからともなく水筒と湯飲みを取り出し、団員についで回った。 長門は教室の隅でハードカバーの本を読んでいる。ページをめくる音以外たてずに。 古泉はこちらを向いてニコニコしながらも、ときどきハルヒの意見に相槌を打っている。 30分。わずかな時間であっても、SOS団の活動に支障はない。 団長の名言「時間より中身」、ってな。 この状況を作り出した巡りあわせ、というより団員の不思議な団結力。 俺は心から誇りに思うよ。 SOS団は、最高だってな。 おわり えぴろーぐ 楽しい時間は、あっという間に過ぎた。 チャイムの音が聞こえると、団長の声のもと一斉に俺たちは学校を出た。 ・・・誰かに泥棒と間違われていないことを切に願う。 当初の予定通り、市内探索を行うことになった。 久しぶりだな、この感覚。1人で出歩くことはあるが、団員みんなで回るのはやっぱり楽しい。 そういえば、学校前の坂を全員で下ったことはあんまりなかったな。 「さぁて、ひっさしぶりの探索だから、相手も油断しているでしょうね!チャンスだわ!」 ハルヒは先頭をいつもの大股歩きで邁進している。元気な奴だ、全く。 さらに「本日の予定を説明するわよぉ!」 と高々に声を張りあげ、気の遠くなるようなハードスケジュールを宣言した。 おいおい、喫茶店や図書館、公園はともかく阪中の家って完全に逆方向じゃねーか。 「大丈夫よ!もう阪中さんには連絡しておいて、快い返事をもらったわっ♪」 いや、そういうことじゃなくてな・・・。まぁいいか、ルソーは元気にしてるんだろうかな。 ハルヒの言う場所の1箇所1箇所がそれぞれ思い出の1ページのようで、思わず顔が緩む。 全ての箇所を回り終えたころ、すでに時計の針は9時を過ぎていた。 まだ4月も上旬ということもあってか、夜になると横風が冷たい。 もうちょっと着込んでこればよかったかな、とも思うが、そもそも家を出る時にはこんなことは想定してなかったな。 「今日は楽しかったわねー!やっぱSOS団はこうでなくちゃ!」 ハルヒの顔が今日一番の満面の笑みになっている。ああ、俺も楽しかったさ。 で、いつまでその白ひげを付けてるつもりだ? 「んなっ、ちょっとぉ・・・!あんたもっと早く教えなさいよねっ!」 そういってハルヒは恥ずかしそうな顔をしながら、 口元についているシュークリームの残りカスをぺろんと舐めた。 駅に着いた俺たちは、名残惜しい感情を隠しきれないような顔でそれぞれ別れを告げた。 朝比奈さんは大きく手を振りながら改札の向こうへ、古泉はニコニコしながら駐輪所へ、 長門はそのまま自宅の方角へとテクテク歩いていき、ハルヒは「じゃあねー♪」と言ってみんなを見回す。 「んじゃあな。」と俺は軽く手をあげ、振り返って歩き出した。 5分くらい歩いただろうか。路地を抜けて公園の前を通りかかったとき、 後ろから誰かが俺の服をつまんでいるのが分かった。 そこにいたのは、 さっき駅前で別れを告げたばかりの、 ハルヒだった。 部室の時のように、顔を赤らめながら俺を見上げたハルヒは、消え入るような声で、 「・・・財布、まだ交換してないでしょ。」とつぶやいた。 ああ、そういえばそうだったな。あの時はいきなり古泉たちが現れて・・・ 「それに・・・ま、まだ・・・答えてないでしょ、あ、あんたの・・・こ、こっ、こく・・・」 とりあえず、道の真ん中でそんな話するのもなんだから、どっか座ろうぜ。 そう言った俺はハルヒの手を引き、公園にある大きなベンチに座った。 ハルヒは俺の手を握ったまま、顔を逸らして言葉を続けた。 「まったく・・・あ、あんたもいきなりすぎるのよっ・・・。その・・・心の準備ってものがね・・・」 3年間、俺は心の準備を常にお前によって無視され続けたけどな。 「そ、それとはまた話が別よ・・・!その、あの・・・。」 吹く風にかき消されるような、ハルヒらしからぬ小さく弱い声。 ハルヒの萌え部位がポニーテール以外にもあったということを、もっと早く知りたかったぜ。 谷口の話では、中学生時代、こいつはされる告白をすべて承諾していたらしい。 2週間とか直後に「普通の人間の相手をしている暇はないの」と言ってフッていたみたいだが、 どんなにつまらない奴の告白も受け入れていた。 おそらく、そのときもハルヒらしくサバサバと受け入れていたのだろう。 ところが今はどうだろう。 中学時代のハルヒがいちいちこんな風に恥ずかしそうにしていたとはまったく考えられない。 俺は超能力者でも未来人でも宇宙人でもないから、 ハルヒの頭の中をインチキして覗くことはできない。できたとしても覗こうとは思わないけどな。 でも、ひとつ分かることは、 ハルヒが俺のことを特別な存在だと考えてくれているということ。 それが何よりも、 嬉しかった。 「もう・・・、ひ、ひとの言おうとしていた台詞を先に言うんじゃないわよ・・・」 ハルヒはそう言って、俺に寄り添ってきた。 「あ、あたしのほうが、あ、あの、あんたのことを・・・・」 それ以上は言葉が出なかったみたいなので、俺はちょっとからかってみたくなり、 「団長が団員の心配をするのは当然だよな」と冷静にツッコミを入れた。 「う・・・ち、ちが・・・。そういうことじゃなくて、その、団員とかじゃなくて、あたしは・・・」 これ以上はちょっとハルヒが恥ずかしすぎるみたいで可哀想なので、 そのままぎゅうっと抱き寄せてやった。 「あ、あたしはさっきみたいな中途半端なのは嫌いなんだから・・・ちゃ、ちゃんと心を込めなさいよ」 お前もな。 部室のときよりも、柔らかく。 俺たちは唇を重ねた。 「だ、団長と下っ端のヒラ団員だけで行う特別定例会議は・・・か、必ず週3回以上行うわよ!」 「都合が悪くて週2回しか無理だったらどうするんだ」 「んなことがあったら罰ゲームよ罰ゲームぅ♪団長の命令は絶対なんだからねっ!」 そんなことを話しながら、俺たちは寄り添って夜空を見上げた。 罰ゲームか。 どんな罰を受けることになるんだろうな。 できることなら、一度も罰ゲームを受けないで済むようであってほしい。 谷口よ。 お先に失礼させてもらうぜ、悪いがな。 お前のお得意の女子ランクの判断基準がどういうものなのかは知らん。 でもな、 俺はどんなランクよりも上に来るような、 自慢の子を見つけたぜ。 ハルヒを家まで送り届け、特上の笑顔を堪能したあと、俺は自宅へと向かった。 今ほど幸せな気分であったことは、人生においておそらくなかっただろう。 家に帰る道の途中、長門のマンションの横を通りがかった。 長門、卒業してからなにしてたんだろうな、と気にはなったが、 なにせ今は頭の中がハルヒでいっぱいなので、深く追求するのはやめた。 すると、マンションの入り口に誰かが立っているのが見えた。 遠目には誰だかほとんどわからなかったが、マンションの光で周囲が照らされている位置まで来て、 そこにいる人物が他でもない長門であると分かった。 「お前、なんでまた外に出てるんだ?誰かを待っていたのか?」 「私が待っていたのはあなた」 意外な言葉が返ってきた。 なんだ、せっかくいい気分だというのに、また情報思念統合体だか何だかの騒動に巻き込まれるのか? 「これ」 長門はそう言ってひとつの封筒を俺に渡した。 「家に帰ったらあけてみて」 そう言って長門は、自室へと帰っていった。 _________________________________ | | 無視できない重要な問題が発生した。 | あなたは明日の午後1時13分に、隣町の駅前から南南西徒歩10分の | 距離にある建物の裏口から中に入って、 | その建物の1階にあるコインロッカーを開けなければならない。 | | 涼宮ハルヒを必ず連れて行くこと。ただし、涼宮ハルヒに詳細を伝えてはいけない | |_________________________________ ・・・・・・・・・ ・・・マジかよ、長門。今度は何が起こるんだ? 今までもいろいろなことに巻き込まれてきたが、少なくともこの1年間は平穏だった。 久しぶりにゴタゴタ巻き込まれることになりそうだぜ。 ただ、なんだろう。 このワクワクする気持ちは。 ともかく、長門がそういうなら従うしかない。 それにしてもハルヒを連れて行かなければいけないって、珍しいケースだな。 部屋に戻り電気を消して布団に入った俺は、色々と忙しかった一日を振り返りながら、 枕の下にかつてハルヒとツーショットで撮った写真をおいて、眠りについた。 翌朝。 まずはハルヒを呼び出さないといけない。詳細は隠さないといけないそうだから、そうだな・・・ 名目上は・・・特別定例会議、か。 「もしもし、どしたのキョン?え、今日会いたいって・・・?え、うん・・・別にいいけど・・・わかった、12時半に駅前ね。」 これから何が起こるかはまったく予測がつかない。 ただ、ハルヒと一緒ならなんとかなりそうな気がする。 「おっまーたせっ♪ってあれ、あんたが先に来るなんて珍しいじゃないの」 まぁな。朝から落ち着かなかったから集合時間の30分前にはここに来ていた。 さて、団長さん。一番最後に来た者は罰金、だな。昼飯代が浮いたぜ。 「んなっ、ちょ、キョンズルいわよあんた!まぁ・・・別にいいけど、今日・・・お弁当作ってきたから」 なんという桃色の図式なんだろうかこれは。 ハルヒの料理の腕前がたしかなのはクリスマスパーティの頃から周知の事実なので、これは期待できる。 ありがとな。 「お、お礼なんて別にいらないわよ!それよりも、一体どこに行くつもりなの?」 どこへ、か。詳しくは俺もわからないんだけどな。 とりあえず長門の指示通りに動くしかない。 「はぁ?詳しくわからないってなんなのよそれ。まぁ、たまにはあんたの行きたいところへ行ってもいいけどね」 なんとかハルヒに詳細を話さないように説明し、俺たちは隣町行きの電車に乗った。 「隣町って特に目立つような店も遊ぶようなとこもないわよねぇ、どこかあったかしら」 そんなこと言われても俺も詳しくは知らないし、 そもそも隣町には滅多に行くことなんてないから地理も分からん。 「・・・どうしよっかな、「あーん」ってのはベタよねぇ。うーん、キョンが・・喜ぶような」 ぼそぼそと小さい声でハルヒが何かつぶやいていたようなので、 「ん、なんか言ったか?」と聞いてみたが、 「んな、な、なんでもないわよ、なんでも!」とお茶を濁される。 気になる。これは気になる。 そんな会話をしているうちに、電車は隣町の駅へと到着した。 さて、ここからが本番だ。 時間は現在ちょうど1時。あまりのんびりしているヒマはない。 南南西の方角、詳しい指定はされていないのでまっすぐ、とにかく直進すればいいのだろう。 長門、これからなにが起こるのかはわからないが、 できれば頭を使わなくて済むようにしてくれよ。 レポート仕上げの疲れで頭の方はあまり調子がよくないからな。 ハルヒから特に要求されたわけではないが、 俺たちはお互い手をぎゅっと握り締めながら、指定地点へ向かって歩いた。 1時13分。 おそらく、ここだろう。駅から歩いてきた方角にある建物で、 裏口がこちらを向いてるのはこの大きな教会のような外観の白い建物だけだ。 中に入ってみる。綺麗な内装だな、どこか神秘的な感じさえする。 これはなんの建物なんだろうか。 なぜか、ハルヒは中に入ってからやたらとそわそわしている。 「ちょ・・・ここって・・・ね、ねぇ、キョン、わ、わたしたちにはまだ早いってば・・・///」 ハルヒは突然顔を赤らめた。 ここはどこなんだ? 「バ、バカ・・・。こんなところに連れてくるんだったら、さ、最初からそういいなさいよぉ・・・」 ハルヒはやたらと恥ずかしそうにしているが、とりあえず一刻の猶予もない。 俺はハルヒの手を引いて、コインロッカーがあるというところへ向かって駆け出した。 長門から渡された封筒には同封物として、ここのコインロッカーに対応していると思われる鍵が入っていた。 コインロッカーを発見した俺は、封筒から鍵を取りだし、番号を照らし合わせる。 69番か・・・えーっと、69、69はっと・・・ あった。 コインロッカーというにはあまりに大きなサイズのロッカー。 大きな駅に置いてある、人間1人がなんとか入れるくらいの大きさのロッカー。 って、まさかここから人かそれに順ずる何かが出てくるってことはないよな。 というか、勘弁してくれ、そういうのは。 俺はおそるおそる、ロッカーの鍵を開け、扉を引いた。 とんでもないものが飛び出してくるとか、 異世界への扉が開くとか、何年か前へ遡行するとか、そんな予想をしていた。 中に入っていたのは、また封筒だった。 この中に過去と未来を繋ぐデバイスでも入ってんのか? それとも、また別の場所に行って何かをしろという指令書でも入ってんのか? なにが出てきても驚かない覚悟をもって開いた封筒の中には、 さらに小さな封筒が2つ入っていた。 そのうちひとつには、 「祝電 長門有希」 と書かれている。 封を開けて字面を読んでみると、短く1行でこんな言葉が書いてあった。 「子供が丈夫に育つ事を願う」 ・・・・・っておい。 ・・・そういうことかい。 「・・・なぁハルヒ、ここなんていう場所だか分かるか?」 俺はやれやれとした顔でため息混じりにハルヒに問いかける。 「え・・・あ、あんたが連れてきておいて・・・な、なに言ってんのよ・・・け、結婚式場でしょ・・・」 これは皮肉交じりなんだろうか、それとも、マジで祝福してるんだろうか・・・ 掃除ロッカーの中で顛末を聞いていたとはいえ、的確な皮肉と言うかなんというか。 これは長門の意思なんだろうか。あえてこんなドッキリ作戦で皮肉を言おうと思ったんだろうか。 それにしても、長門。 お前はなかなか痛いところをついてくるな・・・。 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3648.html
「みくるちゃ~ん、また大きくなったんじゃないの~?」 「ふ、ふぇ~!やめてくださぁ~い!」 あたしはみくるちゃんの背後にまわって、胸をつかんだ。 う~んいつ触っても最高の触りごこちね!ちょっとうらやましいわ。 「こらやめろハルヒ。嫌がってるじゃないか。」 そんなあたし達のやり取りを見て、キョンは目を背けながらあたしに注意する。 その向かいに座ってる古泉君は苦笑い。有希は目も向けずに読書。 いたっていつも通りの光景。不思議なことなんて何1つ無い。 だけどあたしはそれでもいいと思ってる。今では不思議なことよりも、SOS団のみんなと過ごすことが1番楽しい。 だけど団長がそんなこと言ったらみんなに示しがつかないから、不思議は探しつづけるけどね! パタン。 有希が本を閉じた。時計を見るともう6時前。もうすぐ学校が閉まっちゃう。 あたし達は荷物をまとめて、帰る支度をする。 何よりも楽しみな時間である団活の時間が終わる。途中まではみんなと一緒に帰るけど、それぞれが別々の道へと別れていく。 「じゃあなハルヒ。また明日。」 そして最後にキョンと別れて、あたしは一人になる。 1日で1番楽しい時間は終わりを告げて、ここからは1日で1番嫌いな時間が始まる。 またあの家に帰らなきゃいけないんだ……そう思うとさっきまでウキウキしていた心が一気に沈んでいく。 家についた。玄関の明かりは……消えている。 ドアを開ける。部屋の中は真っ暗。 「ただいま……」 帰りのあいさつをしてみる。だけど帰ってくる声は、無い。 ああ、今日もか……分かってはいたけど、やっぱり気分は沈んじゃう。 家には誰もいない。お父さんもお母さんも、あたしを出迎えてはくれない。 別に死別してるわけでも別居してるわけでもないけど、二人とも仕事で帰ってくるのは日付を超えてからがほとんどだ。 休日も仕事に出掛けてるみたいだし、朝も起きた時にはもう仕事に行ってる。 あたしはほとんど親と会話することがない。こんな生活が、もう3年近く続いてる。 テーブルの上には、500円玉が置いてあった。今日も、これで夕飯を済ませろということらしい。 これが普通の家なら、机の上にあるのは親が作ったおいしそうな夕飯なんだろうな。 だけどあたしのところにあるのは、無機質な硬貨1枚。 ……まあ、もう慣れっこだけどね。あたしはもう1度家を出た。コンビニのお弁当でも買おう…… コンビニでお弁当を買った後、もうすっかり寒くなった夜道を、あたしは一人で歩いていた。 寒いのは身体だけじゃないのかもしれないけど。 ……やだなあ。なんでこんなにネガティブになっちゃうんだろう。 元気いっぱいで、何事にもポジティブ。それがSOS団でのあたしなのに、キャラ違うわよ。 こんな姿団員には見せられな…… 「あ、あれは……」 前方に見覚えのある人影が見えた。……キョンだ! キョンもこっちに気付いたらしい。あたしの方に向かってくる。 「よお、ハルヒ、また会ったな。」 理由は無かった。悪いことをしてるわけでも無かった。 それでもあたしは、気付いたらその場から逃げ出していた。 「お、おい!待てよ!」 キョンが追い掛けてくる。やだ、来ないでよ。 あたしは元気いっぱいでいつも強気の団長でなくちゃならないの。こんな弱い姿、あんたには見せられない。 いやキョンだけじゃない、みくるちゃんにも有希にも古泉君にも、こんな姿見せちゃダメなの! でも限界だった。いくらあたしが運動神経いいからと言っても女。キョンは男。 先にバテたのはあたしの方で、キョンに追い付かれてしまった。 「な、なんでキョン、追いかけてくるのよ……」 「そりゃこっちのセリフだ、なんで逃げるんだよ……」 「理由なんてないわよ、ただ……なんとなくよ。」 「おいおい、なんとなくで逃げるほど俺はお前に嫌われてるのか?」 違う。そんなこと無い。でもあたしはなんて言い訳すればいいのか分からずに黙ってしまった。 そしてキョンがトドメの一言を言った。 「別にやましいことしてたワケでもないだろ。それ弁当だろ?普通じゃないか。」 もうダメだ。あたしの抑えこんでたネガティブな感情が……爆発した。 「そうよ!悪いの!?あたしの家にはお父さんもお母さんもいないのよ! アンタの家ではおいしい夕飯が食べれるんでしょうけど、あたしはコンビニ弁当よ!! そんな姿を見られたく無かったから逃げたのよ!みじめでしょ!?笑いなさいよ!!」 だけどキョンは笑うことは無かった。真剣な顔で、あたしを見てくれていた。 「……とりあえず、落ちついて話をしよう。あそこの公園でいいか?」 ~~~~~ そしてあたしのキョンは夜の公園のベンチに二人で座っていた。 周りから見ればカップルに見えるかもしれない。だけど今は、そういう気分にはなれなかった。 あたしは、ゆっくりと話し始めた……。 「お父さんもお母さんも生きてるし、別居はしてないわ。だけど、ずっと仕事で家にいないの。」 「忙しいのか。」 「きっとね。だけど昔はそうじゃなかったわ。お母さんは専業主婦だったし、お父さんも休日は一緒に出かけてくれたわ。 優しかったし、厳しかった。あたしは昔からやんちゃだったからね、悪いことしたら、厳しく叱られたりもした。 だけど中1の夏頃から、急に変わったのよ。」 「変わったって、どういうことだ?」 「悪いことをしても叱らなくなった。何をしてもただ笑うだけで、何も咎めたりはしなくなったわ。 それだけじゃないの。なんだかいつもあたしのご機嫌を伺うようになって、ヘラヘラ笑うようになった。 あたしはそれが気に食わなくてね、悪いことをどんどん繰り返したの。犯罪スレスレのこともやったわ。 だけどそれでも怒ってくれなかったわ!」 「……」 「それでバチが当たったのね。今度は父さんも母さんも家に帰らなくなった。 父さんは仕事の量をふやして、母さんも忙しい仕事を始めた。 それからはずっとこんな生活よ。笑っちゃうでしょ。」 「……なんで黙ってたんだ。俺達に相談してくれれば……」 「相談してなんになるのよ!これはあたしの家族の問題なの!アンタには関係ないわ!」 「そうかもしれないが、何か力になれたかもしれないじゃないか!」 「アンタに何が出来るってのよ!!」 怒鳴り終えた後ではっとする。キョンは何も悪くないのに、ただ心配してくれただけなのに。 それなのに、どうしてあたしはこうやって…… 「俺にも出来ることはあるさ。」 え?出来ること? 「俺に少し考えがある。今は言えないが、お前の両親を元通りにすることが出来るかもしれない。」 「バカ、何言ってるのよ、会ったことも無いくせに……」 「俺を、信じてくれないか?」 そう言ってあたしをまっすぐと見つめるキョンの顔は真剣そのもので。 ただあたしを慰めるためのウソでは無いということが伝わってきた。 何をするのか分からないけど……だけど。 「……そんなに言うなら、信じてあげてもいいわよ。期待はしないけどね。」 お願いキョン。お父さんとお母さんを、元に戻して。 ~~~~ 公園での会話が終了した後、俺はハルヒと別れた。 正直なところこれ以上ハルヒに寂しい思いをさせたくは無かったから、ハルヒの家に行くなり逆に俺の家にハルヒを呼ぶなりも出来たのだが、俺にはやることがあった。 「ハルヒ、もう少しだけ、我慢しててくれ……」 俺はポケットから携帯を取りだし、電話をかけた。こういう時にかける相手は決まっている。あの超能力者だ。 『もしもし、珍しいですね、あなたから電話をかけてくるとは。』 「そうだな。それでいきなりで悪いんだが……今時間は大丈夫か?」 『ええ、大丈夫ですが……何か?』 「ハルヒのことについて話がある。今からいつもの公園に来てくれないか。」 『……了解しました。すぐに向かいます。』 その電話から10分後、古泉がやってきた。その表情はいつものスマイルだが、少し固い。 俺は古泉に先程ハルヒが話した内容をそのまま伝えた。伝え終えた時には、スマイルすら消えていた。 「まさか、涼宮さんにそのような事情があったとは……」 「機関は、把握していなかったのか?」 「申し訳ありません。流石に機関と言えど、家族の中まで監視するということは不可能でして。 学校内の様子を僕が見ることが限界なのです。」 「ハルヒの話を聞いて分かった。急によそよそしくなって、ご機嫌を伺うようになったと言う。それも中1の夏からだ。 ……ハルヒの両親は、ハルヒの能力について知っているんだな?」 「ええ。伝えさせて頂きました。しかし今の話を聞く限り、伝えたのはどうやら失敗だったようですね。」 「ハルヒの親と話すことは可能か?出来るだけ早くアイツを救ってやりたい。」 「そうですね……古典的な方法なら1つありますが。」 ~~~~~~ というワケで、俺と古泉はハルヒの家の前で待ち伏せをしている。 あ、もちろん家の前で堂々と立ってはいないぞ。ハルヒにバレたら元も子も無い。 近くに車を泊めて、その中で張り込みをしている。刑事ドラマでよくやってることだ。確かに古典的だな。 その車は「機関」のもので、運転手は新川さんだ。つまり新川さんもこの場にいるということになる。 「しかし彼女にそのような事情があったとは、見抜けなかったのは僕等機関としては恥ずべきことです。」 「涼宮さんはこの状況を誰にも知られたくないと望んだのでは無いでしょうか。だから今まで誰も気付けなかった。」 「そう言えばハルヒも言っていたな。『こんな姿見られたく無かった。』ってな。 ……ん?だとすると何故俺は知ることが出来たんだ?」 「それもまた、涼宮さんが望んだからですよ。あなたになら話してもいい、話を聞いてほしい、ってね。 もちろんこれは無意識下のことであり、本人は気付いてはいなかったようですが。」 「だが古泉、だったら最初からこんな事態起きなかったんじゃないか? 起きたとしても、ハルヒの能力があれば自然解決するはずだぞ?」 「これは私含め機関の中で有力な仮説があるのですが……」 新川さんが口を開いた。仮説?なんだそれは。 「涼宮殿の力は、親しい人間であればあるほど影響力が弱まるのではないかという説です。 私程度では涼宮殿の力によりいくらでも改変されてしまうでしょう。それも知らずのうちに。 しかしあなた方は、改変されたとしてもその事実に気付くことが出来る。これは大きな違いです。 更に親しい、血縁関係にあるご両親には、涼宮殿の能力も干渉することが出来ないと考えられます。」 「涼宮さんは人の心に土足で踏み込んで改変するような方ではありませんしね、その想いは親しい人ほど強いのでしょう。」 ……バカだな。ビームなんかを出すよりも、こういうことに力を使えよ。 不器用な能力だ。今だからこそ思う、こんな能力を持ったとしても、決して幸せでは無い。 そう、そして今回のケースもまた、ハルヒの能力が…… とその時だった。二人の男女がこちらに向かって歩いてきた。 片方はメガネをかけた優しそうな男性、もう片方は見ただけで分かる。ハルヒにそっくりな女性だ。 「あれは、ハルヒの両親だな。」 「ええ、私とは面識があります。私が行きましょう。」 新川さんは車から出て、ハルヒの両親の前に立った。 「あなたは確か……」 「ご無沙汰しております。『機関』の新川で御座います。」 「何か御用でしょうか?」 「はい、すず……ハルヒ殿のことで少々お話が。」 それを聞いて一気に顔が強張る二人。しかし抵抗することは無く新川さんに連れられ、車に入った。 元々が大きな車だから大人5人が入っても余裕はある。 助手席に移った古泉が後ろを向き自己紹介をする。 「始めまして。僕は古泉一樹と申します。涼宮さんの友人であり、機関の一員でもあります。 そしてこちらの彼は○○君、涼宮さんからはキョンと呼ばれております。」 「どうも、始めまして。」 古泉についでに紹介されてしまったので、俺も合わせて会釈をする。 しかし、こんなときに言うのも難だがキョンのくだりは必要なのか疑問である。 車の中で話す内容では無いということで、近くの喫茶店に場所を移した。 どう考えてもカップルや親子連れには見えない集団であり、若干浮いているが仕方が無い。 「さて、では単刀直入に伺います。」 古泉が話を切り出した。 「涼宮さんから話を伺いました。あなた方はずっと、仕事ばかりで家に帰っていないようですね?」 「……はい。」 答えたのは父親だった。とても人が良さそうな人で、悪意があってやったんじゃないということは一目でわかる。 申し訳なさそうな顔をしながら、彼は続けた。 「忙しかったから、と言い訳する気はありません。私達は怖かったのです。あの子のことが。」 「怖かったとは……能力のことですか?」 「はい。今から4年前の夏でしょうか。あなた方機関に呼び出され、あの子に特別な能力があると告げられました。 願望を実現し、時には世界まで変える能力。そして機嫌次第では閉鎖空間を生み出し世界を滅ぼすということ。 元々あの子はやんちゃで、よく叱っていました。しかしこれからはそのことが世界を崩壊させてしまうかもしれない。 ずっとかわいい子供だと思って育ててきたのに、急に世界を滅ぼすことも出来る能力を持っていると聞かされた途端、まるであの子が怪物のように思えてきて……」 「ふざけるな!!」 俺は声を荒げていた。言葉遣いに失礼があるのは分かってる。だが黙ってられるか。 「ハルヒは怪物なんかじゃない!確かにトンデモない能力は持ってる! だけどアイツは普通の人間なんだ!確かに破天荒な性格だけど、根は優しくていいヤツなんだ、それを……」 「落ちついてください!」 俺を抑えつける古泉。それと同時に、母親が泣き出した。 「だけどどうすることも出来なかったんです!機嫌が悪くならないようにしていたら、あの子はもっと暴れ出して…… だけど叱ることなんて出来ない!もう私達は逃げるしか無かったんです!」 「本当にそうですかな?」 今までずっと黙っていた新川さんが口を開いた。 「ハルヒ殿は本当は、叱ってほしかったのでは無いでしょうか。」 「叱ってほしかった……?」 「ええ。聞くところによるとハルヒ殿は、急に親の態度がよそよそしくなり、寂しかったと言っていたようですぞ。」 「……俺が直接あいつの口から聞きました。だから叱ってもらおうとしてもっとはちゃめちゃなことをするようになったって……」 「だけどそれでもし、閉鎖空間が発生したら……」 「心配しないでください。」 古泉は微笑ながらそう言った。コイツの1番得意な顔だ。 「その時は、僕達がなんとかします。我々「機関」は、そのためにいるのですから。」 「それに、アイツはもう叱られたぐらいで世界を滅ぼそうとする空間を生み出すようなヤツじゃありません。俺が保証します! だから、自分を偽って接しようとしないでください。あいつが望んでるのはご機嫌取りなんかじゃない。 悪いことをしたら本気で叱ってくれる、自然なままの親の姿なんです。」 「……わかりました。」 終始うつむいていた父親は顔をあげた。 「あの子と真正面から、向き合ってみたいと思います。以前のように厳しく叱ることもあるでしょう。 だけどもう、あの子から逃げません。約束します。」 その顔からは、先程までのオドオドとした様子は見られなかった。 大きな決意をした、父親としての顔だった。 ~~~~~ 翌日、俺はいつものキツいハイキングコースを登っていた。 昨日は夜も遅かったということもあり、あの後自然解散となった。 ハルヒの両親はそのまま家へ、そして俺は新川さんの車で自宅まで送って頂いた。 俺の親に「こんな時間まで何をしていたの!」と大目玉を食らったが、反省はしていない。 そして、今回のことについて古泉がこう言ってきた。 「今回の落ち度は我々機関にあります。どうか彼らを憎まないでください。 突然自分の子供に膨大な能力があると知らされれば、あのようになってしまうのも仕方ありません。 親と言えど一人の人間ですから。もし僕自身が同じ境遇に立たされても、今回のようにならないとは言い切れません、 言い訳になりますが当時の機関はまだ出来たてで、思慮に欠ける部分があったようです。 ですから、憎むとするならば我々機関の方を憎んでください。」 確かに、あの時は俺も感情が激高して怒鳴ってしまったが、 両親にしてみたって突然トンデモな境遇に立たされればああなってしまうのも仕方ないかもしれない。 だがそれでも俺は機関を憎むようなことはしないぜ。 確かに思うところが無いと言えばウソになるが、機関のおかげでこの世界があるのもまた事実だからな。 それよりも大事なのはこれからだ。本当にあの両親はハルヒと真正面から向き合ってくれるのだろうか。 と様々な思考を繰り広げているうちに、教室についたようだ。 「よお。」 いつものようにハルヒに声をかけ、自分の席に座ろうとした。だがいきなり、 「うおっ!」 首ねっこを掴まれて引っ張られた。おい、むち打ちになったらどうする! 「キョン!来週の不思議探索は中止だから!」 遅刻も許さない探索を自ら中止?どういう風の吹きまわしだ。 それになにやら、そのことがとても嬉しそうである。 「なんだ、何か用事でも出来たのか?」 「うん!父さんと母さんと一緒に旅行に行くことになったのよ! それで父さんも母さんも仕事を減らして、家に居る時間を増やすって!」 その言葉を聞いて俺は心底ほっとした。だからだろうな、なんというか反射的に 「良かったな、ハルヒ。」 そう言いながら、ハルヒの頭のなでていた。 真っ赤になってびっくりした顔を浮かべるハルヒ。だけどその後、にっこりと笑って 「ありがとう、キョン。」 ハルヒにしては珍しい、素直なお礼の言葉だった。 その笑顔はとても穏やかで、俺を安心させてくれるには充分なものだった。 また辛いことがあったら俺に相談しろよな。「強くて元気な団長様」だって、心休める時は必要だぜ? HRが終わった後の休み時間に、この朝のやり取りを見ていた谷口その他大勢から盛大なからかいを受けたのはまた別の話である。 やれやれ。 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5832.html
2012年12月2日…今日というこの日を、俺は一生忘れることはないだろう。多忙的な意味で。 世界を救ったばかりだというのに、昼にはハルヒに叩き起こされ不思議探索。その後、大人朝比奈さんと 長門に会った俺は…今はとある書店の、とある雑誌コーナーの前にて立っていたのさ。カテゴリーは音楽系だ。 ふむ、いろいろ揃ってる。何々…最近話題沸騰のバンド、インディーズからついにメジャーへだと?? 気になる…俺はロキノンを手に取りかける。いや、待て、こっちのCD DLデータも見逃せない… バンプのインタビューが載ってんだから尚更だな。次にリリースする新曲と近々始まる全国ツアーへの 意気込みに関してか。後で読んでみよう。 一方、SHOXはDIR EN GREY特集…どっかで聞いたことあるバンドだな? ほお、欧州で人気確立とは。日本のバンドで海外進出ってのも…なかなか珍しい。 オリスタは、ああ、相変わらずアイドルばっかか。そういうのも嫌いじゃないんだがいかんせん興味が沸かない。 ただ、地味にシンガーソングライターの特集もやってるようだから一応読んでみるか。 …… …というわけで、結局主要雑誌には全て目を通した。いやあ、実に有意義な時間だった。そういや、こうして ゆとり持って音楽誌を眺められたのも随分久しぶりだな。以前はそれなりにチェックしてたはずなんだが… ハルヒとのSOS団が発足してからというものの、そういう日々もすっかりおざなりになっていた。まあ…もっとも、 今回俺がここのコーナーに立ち寄ったのも『あたしに曲を作って提供することよ!!』っていうハルヒの命令が 契機になってんだけどな。つくづく、俺はあいつに振り回されてんだなあと実感したよ、本当。ん?作曲? …… なんと、今の今まで俺は作曲の『さ』の字さえ忘れてしまってたらしい。忘れた上で、 俺は好きな歌手のページばかり見てたらしい。当たり前だが、それに比例して時間も潰しちまったらしい。 無意識のうちに現実逃避とは、これまた高等なテクニックを身につけたものだ。 「さて。」 家に電話する。 「今日は晩飯いらないから…ちょっと今友達の家にいてさ。 そこでとろうと思ってんだ。ああ、遅くとも9時までには帰るよ。それじゃあ。」 伝えるべきことをとりあえず伝えておく。なぜかって?とてもではないが、夕食の定刻ともいえる7時まで 帰れそうにないからだ。というか、今がその7時なんだよッ!!さらにここから作曲本に目を通すのだから… アーユーOK?瞬間移動や情報操作ができる長門でもない限りもはや不可能である。 「じゃ、気を取り直して本来の目的でも遂行しようかね…。」 作曲本は意外と早く見つかった。楽器店ではなく普通の書店だっただけに オーソドックスなものしか見つからなかったが…まあ、立ち読みする程度だし今の俺にはこれで十分だろう。 とりあえず【作曲入門】だの【初心者のためのコード理論】だのいろいろ読みあさってみる。 …… さて、およそ15分が経過したところだろうか。はっきり言おう。わからん! メロディーラインだけでいいと言っていたが…それさえも怪しくなってきたぞ。というのも… わかる人にはすぐわかるはずの基本的音楽用語でさえ、俺には理解しきれてなかったからだ。 つくづくと後悔する。もっと音楽の授業まじめに受けてりゃよかった。…しかし、俺にもプライド というものがある。一度引き受けたからには成し遂げるつもりだ…そう、ハルヒのためにも。 まあ、そういうわけで今日はこのへんにしておくか。帰って中学時代の音楽の教科書でも 引っ張り出して…それでもわからない用語があるようならネットで調べる等して補足しておこう。 粗方の知識が整った上で、また書店に足を運べばいいよな?できれば…今度は楽器専門店で。 去ろうとして、俺は持ってた本を棚に返そうとしたところ…不意に、背後から聞き覚えのある声がした。 「ククク…キョン、君もついに覚醒してしまったんだね。まさかミュージシャン志望とは思わなかったよ。 いや、作曲家志望だったかな?いずれにしろ音楽業界で生き抜いていくのは難しい…それはそれは、 激動の人生を歩むことになるだろう。聞いた話によると、全国でCDを1万枚以上売り上げるような バンドでも、その年収はフリーターと大差ないそうじゃないか。日本では特に、レコード会社や 広告代理店の中間搾取がひどいみたいだからね。必ずしも客観的に成功に見える人、あるいは 才能ある人が報われる世界ではないということさ。しかし、それを知ってもなお、そんな 未知の世界への挑戦をあきらめないというならば、僕はそんな君を全力で応援する次第だ。」 …一言、言っていいか? 「それが今日初めて会った人間に投げかける第一声か…!?長いッ!!長すぎるぞッ!?」 「僕がそういう人間だということは、とっくの昔に君は了承済みのはずだ。 別にそんなに驚くこともないだろう?あとね…ここは本屋だ。声の大きさには気をつけておくべきだね。」 お前がそうさせたんだろうが!?っと、いかんいかん。こいつ相手に本気になっても不毛だということを、 俺が誰よりも一番知ってるはずじゃないか…しかし、まさかこのタイミングでお前に出会うとは 想像だにしてなかったぞ…なぁ?そこでニコニコしてる佐々木さんよぉ? …ホント、今日はいろんな人間と遭う日だ。これも何かの巡り合わせか? 「とはいえ、いきなり話しかけたりしてすまなかったね。久々に君を見てしまったんで、つい…ね。 衝動が抑えきれなかったんだよ。旧友との素晴らしき再会、それに免じて許してはくれないかな? 「それに免じての意味がわからんが、あれこれ考えるのも面倒だからとりあえず許す。」 「そうこなくては。相変わらずノリがいいなぁキョンは。」 お前のノリは特殊すぎて理解不能だけどな。もっとも、相手が女子となると、 途端に口調が普通になるんだから本当…いろんな意味で掴みどころのない人間だお前は。 「まあ、さっきのは冗談としてだ、本当に君は何をしてたんだい?以前からキョンが 趣味としての音楽に熱心なことは知ってたが…ついにその熱意の延長線上として、 作ることさえ趣味の一つとして内包してしまった、といったところなのかな?」 「…そんな大層なもんじゃないぜ。まあ…これには海より深く、空より高い、 それはそれは複雑な事情があってだな…。」 「くっくっく…いや、失敬。君のそのしかめっ面を見て、一発で事情が呑み込めたものでね。 つまりあれだ、また君は涼宮さんたちと面白いことをしてるってわけだ。」 「一発でわかるほどに、俺の顔はひどく単純だったか?」 「おやおや、悲観してはいけないな。それが君の良いところでもあるんだから。おかげで、 僕は退屈することなく、こうやって優雅な時間を君と過ごせてるんだ。むしろ誇るべきじゃないかな?」 なんかもう、もはや喜んでいいのか悲しんでいいのかすら、わからんくなってきた。 しかし、実際のところはどうなんだろうな?思ったことがすぐ表情に出るってのは。それはそれで 円滑なコミュニケーションを…は!いかん!ヤツと本気で対峙してしまった時点で俺の負けだ…っ! 「…まあそんな具合でな、振り回されながらもなんとか生きてんのが俺だ。 そういうお前は何しに来たんだ?」 「それは、君に話さなくてはいけないものなのかい?」 質問を質問で返された。 「おいおい…俺だけ聞いておいてそれはないだろう… それとも、本当に知られたくない理由でもあるのか?」 「ないけどね。」 「じゃあなぜ話さない??」 「だって、そもそもその理由がないんだから話しようがないだろう?」 ニヤッとした表情を浮かべ、今か今かと俺の反応を待ち望む彼女。 ああ…そういうことですか。なんとなく『理由がない』の意味がわかった。 相変わらず、俺はヤツの詭弁に翻弄された哀れな子羊だったのさ。 「あのなぁ佐々木…それならそれで、始めから『なんとなく来た』って言え! ホント、紛らわしい言い方をするよなぁお前は…」 「ククク…そう、それだよ、そんな顔が見たかったんだ。」 「はぁ…」 ため息をつかざるをえない。 「まあまあ。たまにはこういう会話のキャッチボールも悪くないだろう?君も満更ではなさそうだしね。」 キャッチボールどころか、お前が投げる球は変化球ばっかだろ!?ちょっとはそれを必死に追いかけまわす 捕手の身にもなってほしいもんだね…というか改めて思ったが、やはり佐々木とハルヒはどこか似てる。 異なるベクトルで双方とも変人なのには違いないが…前者は意味不明の質問を、後者は無理難題な要求を 突き付ける辺り、立ち位置的にはかなり近いものがあるだろう。…古泉の例の憶測も、強ち間違っちゃ いねーのかもな。まさかこんなしょーもない会話でそれを実感しようとは、人生何が起こるかわからんな。 「ところでキョン。とっくに7時をすぎてるようだが…家のほうは大丈夫なのかい? いつもこの時間に席を囲ってみんなで食事してるのだろう?」 「ああ、いろいろあって遅くなっちまってな。だから家には連絡しといたよ。どっかで食べてくるってな。 お前こそ大丈夫なのか?門限とかどうなってるんだ?」 「おいおいキョン…中学時代ならともかく、高校生にもなってこの時間で門限云々はないよ。 時刻だってまだ7時をすぎたあたりだ。一応9時までとは決まってるけど。 それで…キョンはこれからどこかで外食でもしていくのかい?」 「ん?そーだな…考えてなかったな。まあ、一人で外食すんのもアレだから、 どっかのコンビニで適当に飯でも買って帰ろうと思ってるが。」 「一人で夜食とは、それはそれは寂しいことこの上ないね。」 はぁ…またそれか。何度も何度もそんな煽りに乗せられる俺ではないぞ。 「ああ、結構結構。寂しくて結構さ。」 「ん?反応を変えてきたね。なるほど、これはこれでまた面白い。くっくっく…」 ダメです先生。佐々木さんがどうしても倒せません。あきらめてしまってよろしいでしょうか? というか、俺以外であっても佐々木が倒される姿など想像できん。理論武装した古泉ですら 攻略不能なんじゃないか??とりあえず俺は途方に暮れてみた。 「まあ、そんな君にも朗報がある。実を言うと、僕も君と似たような状況下に置かれてるんだ。」 「じゃあ、俺とどっか食事でもいくか?」 「いいね。そうしよう。」 「ちょ、ちょっと待て?!?!」 ありのまま今起こった事を話すぜ。『冗談で言ったつもりが、いつのまにか既成事実と化していた。』 な、何を言ってるのかわからねーと思うが 俺も何をされたのかわからなかった。 頭がどうにかなりそうだった… ふんもっふだとかセカンドレイドだとか、そんなチャチなもんじゃ断じてねえ。 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ… 「似た状況って、お前家の人は??」 「仕事の都合で2人とも今日は帰ってこれないらしい。だから、僕はこうやって外を歩いてたというわけだ。 買い出しに行って自炊するか、弁当でも買って帰るか、あるいはどこかに行って外食でもするか… 結局どれでもよかったから、とりあえずは本屋に行った後で、そのときの気分で決めようと思ってたんだよ。 どうだい?納得したかな?」 大体の事情はわかったものの…納得するって一体何に??お前と一緒に食べに行くことか?? 「もしかして、本屋で俺に会ったから外食行く気分になったのか?」 「おいおい、何を言ってるんだい?今は僕の意志は関係ないよ。 そもそも、君が僕を食事に誘ったんじゃないか?」 なんということだ。揚げ足を取られてしまった。調子のったツケが返ってきましたよ、 それも物凄い早い時間でッ!こんなのってあんまりじゃね? 「キョンもなかなか殊勝なことを言うなって、僕は感心してたんだよ。 『一人で食べるよりみんなで食べた方が楽しい。』国語の文章にもよくある常套句だね。 そういう国家公認の美徳を自ら体現しようとしてた君が、僕にはまぶしくすら思えたんだ。」 「安いとこでいいよな?じゃあすき家にでも行くか?こっから近いしな。」 「僕はそれで構わないよ。」 俺は闘うことをあきらめた。っていうか放棄した。『ダメです先生。佐々木さんがどうしても倒せません。』逆襲編、 これにて完結。ちなみに続編の予定はありません。たぶん。 偶然客が空いてたこともあって、俺と佐々木は難なく席を取ることができた。 「で、佐々木は何を頼む?」 「キョンはもう決めたのかい?」 「いや…まだだが。」 「僕はキョンが食べるのと同じものにするよ。」 「それまたどうして?」 「気分さ。」 「……」 闘わんぞ…?闘わんと決めたんだ俺は!! 「ははは、これでは何とも抽象的すぎる回答だ。いや、何、久々に君と会ったんだ。 仲を確かめ合うためにも、なんとなく君とは違う料理を頼みたくなかったんだよ。 ふむ、説明したところで抽象的なことに変わりはなかった。ま、あまり深く考えないでくれ。」 仲を確かめ合うって、そんな大げさな。けれど、俺にはそういう佐々木の態度が嬉しくもあった。今となっては 俺は塾に通ってないし、ましてや在籍してる学校も互いに異なる2人だが…そんな希薄な関係であっても、 俺とは親友でいようと佐々木は思ってくれているのだ。そこまでされて何とも思わないような奴は、残念ながら 人間的ともいえる基本的感情が欠落してるとしか思えない。もっとも、俺と佐々木は、厳密にいえば無関係 というわけではなかったのだが。雪山での遭難事件以来、藤原・橘・周防といったSOS団の面々と敵対する 連中が現れ始め、そいつらが佐々木の取り巻き(本人はそうは思っていないが)となってしまっていたのだ。 あのときは本当に驚いた…そりゃあな、宇宙人、未来人、超能力者といったとんでも存在ならまだわかる。 まさかつい最近まで親友であり、そしてごくごく普通な一般生徒であったはずの彼女が(性格はともかく) 一体どうして涼宮ハルヒにまつわる事件の当事者になっていると考えられようか??言うまでもなくありえない。 妄想であってもそんなこと考えもしないだろう。ならば、古泉・長門・朝比奈さんたちからすればハルヒの 重要なカギともいえる存在だった…そんな俺が佐々木とは関係ないなどとは、もはや口が裂けても言えない。 言えるとすれば、あまりにそれは無責任で、そして現実逃避そのものとなろう。 …… ここまで考えてふと思った。いや、単なる俺の思いすごしかもしれんが…どうも、『仲を確かめ合う』この言葉が 引っかかった。もちろん聞いて嬉しかったし、佐々木が今このタイミングで言った理由もわかる。客観的に見れば それで解釈は終了なんだろうが…どうも俺にはそれとは別のニュアンスがあるように思えた。言うなれば、 『これまでの関係が白紙になったとしても、君は僕と親友でいてくれるかい?』こんなふうに…。根拠はない。 妄想かもしれない。しかし、ハルヒの能力が消えたかもしれない今、どうしても勘ぐり深く考えてしまうんだ。 …即ち、【これまでの関係】=【ハルヒを中心とした関係】が終わりつつあるのではないか… いや、もしかしたら終わってしまったのではないか?そんな予感が俺の中にはあった。 これが指す意味は、つまり佐々木の能力も、ハルヒのそれと同様に…ということである。 古泉の例の推論でいくならば、当然そうなるはずだ。もちろん、そうなった場合本人である佐々木も そのことに気付いてるはず。そのとき彼女は一体何を思ったのか…現在俺の向かい側にて 静かにメニューを眺めてる、そんな佐々木の表情からは何も推し量ることはできなかった。 しかし、結果的にはこのとき俺が…佐々木のことを必死になって推察する必要はなかったんだよな。 なぜなら数分後、本人の口から直接それを聞くこととなったのだから。 「で、キョン。もうメニューは決まったかい?」 「え…あ、すまん、まだだ。すぐ終わるから待っててくれ。」 「ふーん?おかしなもんだね君も。僕の顔を執拗に ジロジロ見るもんだから、もうとっくに決めちゃってるのかと思ってたよ。」 「!?」 視線を合わせたりはしてなかったはずなんだが…!? 「そ、それはあれだ、お前は今どんなモノが食べたいのかなーと、表情から伺おうとしてたんだよ!」 「別にそこまで配慮してくれなくていいけどね。基本、僕は何でも食べるから。 君の好きなように選んでくれていいんだよ。」 「そうだよな…ははは。」 「とでも言えば、満足かい?」 ッ?? 「くっくっく、キョン、それで隠してるつもりかい?その焦った感じ、適当に場を取り繕った感じ、 傍から見りゃ丸わかりだよ…?それにしても何をそんなに…くっくっ…どうしてくれるんだいキョン? 君のその二転三転する顔のせいで、こっちは笑いが止まら…くっくっくっ」 「……」 佐々木様には全てお見通しというわけですか。というか、今直感で思った。 こいつは将来検察官になるべきだッ!その頭の回転の速さ、そして鋭い洞察力をもってすれば裁判など、 瞬く間に終了だろう。弁護人の反論さえ許さない圧倒的詭弁術に加え、挑む者の気さえ削ぐ巧みな心理術… 佐々木みたいのが何人もいれば、裁判の長期化という国が抱える日本特有の司法問題も 一挙にして解決だろう!?ヤツの判断力ならば、冤罪が生まれる可能性も低いだろう。 もっとも…そんな量産型佐々木は見たくないが。こんなの一人で十分だ… 「とはいえ、こんなにも僕を笑わせてくれたんだ。その敬意に感謝し、 追求は控えておくとするよ。むしろ追求しないほうが面白そうだからね。」 「佐々木っ」 「ん?何だいキョン?」 「オクラ牛丼を頼もうと思うが、これでいいか?」 「いいんじゃない?しかし、そんな『オクラ牛丼』という突飛な名前だけじゃ、 僕の気はそれないんだなこれが。チョイス自体は悪くなかったと思うけどね。」 「そうですか。」 俺は抵抗することをあきらめた。っていうか放棄した。さっきも似たようなことを言った気がするが、 んな昔のことは忘れた。もう知ったこっちゃねーや。 しばらくして店員の方が来てくれた。さすがに前回みたいに機関の人間… というわけではなかったので、そこは安心した。もしまた森さんだったらマジメにどうしようかと思った。 「ご注文はお決まりでしょうか?」 「ええっと…オクラ牛丼2つで。」 「かしこまりました。サイズはいかがしましょう?」 そういやサイズも選べるんだったな。ちなみに、今の俺には選択肢はこれしかない。 「じゃあ特盛りで。」 「…オクラ牛丼特盛り2つ、以上ですね?しばらくお待ちください。」 厨房へと去っていく彼女。 …… 実は今、俺の腹は極限状態だった。皆さんはお気付きだろうか?今日一日の、 今に至るまでの俺の食事情を…!まず、朝食は食ってない。起きたのが昼の3時だったからだ。 で、そこから急いでハルヒたちSOS団と合流して、まずは喫茶店でオレンジジュースを一杯飲んだ。 そして不思議探索中に古泉・朝比奈さんに断って肉まん、おにぎりを腹に入れた。 そこからまた、いろいろ長いプロセスはあったものの…とにかく、その間は何も食していない。 長門のウチでカレーくらい軽くごちそうさせてもらったらよかったかもしれない…後の祭りだが。 つまりである、おわかりだろうか??今日昼に起きて、そして現在夜8時におけるまで… 俺はオレンジジュース、肉まん、おにぎりの3品しか食っていないのである!! 大人朝比奈さんとの話、そしてさっきの作曲本との格闘では、精神的余裕がなかったことが功を成し、 おかげでそれほど顕著な空腹感は覚えなかった。しかし、外食店に入った今となっては限界だ… 意識せざるをえない…!昨日あんなことがあったばかりで、にもかかわらずハルヒに 叩き起こされ、今の今まで奔走してきた俺を一体誰が咎められようか??いや、むしろ褒めてくれッ!! 食事の到着をまだかまだかと心待ちにしながら俺は 切実に、そんなくだらんことを考えていたのさ。 「なんとも…悲惨なくらいに追い詰められた顔をしているね君は。さすがにこの有り様じゃ、 僕でなくとも君の異変には気付くよ。そんなにも腹が減っていたというのかい??」 俺は心なしにそう頷く。気付けばテーブルの上に顔をうつ伏せているではないか… 空腹というのもあるが、何より昨日からの疲労の蓄積というのも大きな原因だろう。 「なあ…佐々木よ。今日って日曜だよな?」 「ほ、本当にどうしたんだいキョン??さっきまで僕の理不尽な質問に 元気よく付き合ってくれてた君は、一体どこへいったというのか??」 ああ…理不尽って自覚はあったんすか佐々木さん。それは何よりです… 「それより…日曜だよな?今日は。」 「そ、そうだよ。日曜だね。」 さすがの佐々木も俺の途方ないマイナスオーラを感じ取ったのか、 すっかり萎縮してしまっている。なんとも、珍しいものが見れたもんだな。 「ってことは…明日はつまり月曜か…」 「きょ、キョン…」 なんということだ…こんな調子で、明日学校だというのか??宿題は??授業は?? いや、そう焦る必要もねえ…要は宿題はやらなきゃいいわけだし、授業中は寝てりゃいいんだ。 なんだ、簡単なことじゃねえか? …… そうでも思わないと、もはややってられない俺なのであった。 …… 「…1日くらい休んだらどうだい?」 「…え?」 今何か佐々木が言ったような気がする。何を言った? 「1日くらい休んだってバチは当たらないということさ。むしろ、今は12月という最も冷え込む時期。 そんな中無理して体をこじらせたら、それこそ本末転倒というものだろう?それに、そんな事情なのなら 涼宮さんだって決して怒ったりはしないよ。それどころか、SOS団の部員を引き連れ団体訪問のごとく、 君のとこにお見舞いに来るんじゃないかな??」 …意外だ。生真面目なこいつのことだから、てっきり説教をくらうとばかり思ってたが。 「それは曲解というものだよキョン。それに、僕はただ合理的な判断をしたまでさ。」 「…ここは、心配してくれてありがとうと言う場面か?」 「当人にそれを確認してどうするんだい…?けど、そう言われて悪い感じはしないかな。」 「じゃあ言ってやろう。佐々木、ありがとよ。」 「どういたしまして。」 …… 「まあ、とりあえずはこれから来たる食事を存分に堪能することだね。案外、腹を満たせば君のその不調も 回復するかもしれない。病も気から…と言うから。良くも悪くも人間は単純なようにできてるのさ。」 「お待たせしましたー。」 「噂をすればだね。」 「では、ごゆっくり。」 職務をこなした店員が再び厨房へと戻っていく。つまり、今俺の目の前には… …ゴクリ 一体どれだけこの時間を待ち望んでいたことか…!?感動のあまり、つい涙腺が弛むのがわかる…!ダメだ… 気を許せばその瞬間食器にかぶりつき、犬食いしてしまいそうな勢い。とりあえず俺は落ち着く必要がある。 「佐々木…ちょっとそこにあるポットでお茶を注いでくれないか?」 「了解だよ。」 俺が差し出したコップに、そっとポットの口を向ける佐々木。 「はい、あなた。お茶ですよ。」 「夫婦か!?」 「なんとも…!正直、今のは死者に鞭を打つようなマネだったから完全スルーも覚悟してたんだが… なるほど、これが人間の底力ってやつなのかい??」 俺に聞かれても知らんわッ!!というかっ、死者同然だと認識しておき、何ゆえお前は 追い打ちをかけようと思ったのだ??俺にはまずそれが知りたい。切実に知りたい。 死者ってのはな、いたわってやらねえとダメなんだぜ…。 まあ、それとは別にいささか元気が出てきたってのは事実だが。おそらくは目の前に置かれた オクラ牛丼特盛り…つまり、いつでも食おうと思えば食える。そんな環境下にあるという一種の安心感、 そして優越感…それだけで、俺の疲弊した精神状態に一時の安らぎをもたらすには十分といえた。 さて、もういいだろう?今俺が成すべきことをしようじゃないか。 「いただきます。」 付属されたカツオブシを丼の上に振りかけ、後はそれを食べるだけだった。 …… 気付けば容器は空だった。俺ってこんなに食べるの速かったっけ?ましてや特盛りだから量はあったはずだが… 「おいおいキョン…君ってやつは。口にありったけ丼をかきこみ、噛み砕いたか怪しい部分は お茶で一気に流し込む。それはそれは、普段の君からは想像もできない荒業を披露していたよ。 こんな文字通りの暴飲暴食をできる人もなかなかいないだろうね。」 …そんなに俺はひどい有り様だったのか。ヒドイやつがいたもんだな…。そういや、よく味わった記憶がない。 ただ、美味かった!それだけだ。 『美味かった!』それだけで十分ではないか??シンプルイズベストと いうだろう??結果的に、俺は腹が膨れる多大なる幸福感にも包まれた。これ以上どう表現せよと言うのだ!? …ああ、そうだな。最後に言うべき台詞があったよな。俺は手を合わせ、そして言う。 「ごちそうさまでした…!」 農家のみなさん、いつもいつもありがとう。おかげで日本の食卓は今日も平和です。 「うーむ…さすがに食べきれないか。参ったね。」 などと思ってたところ、不意に佐々木の声がする。 「どうしたんだ?」 「そのままの意味さ。どうやら完食できそうにないんだ。」 「なん…だと…」 ついさっき農家のみなさんに感謝したばかりだというのに… 残してしまっては彼らに申し訳ないじゃないか。というか、今気付いたことなんだが… 「佐々木よ…俺と同じ特盛りとは、一体どういうことだ??」 本当にどういうことなんだ??佐々木が大食いだった記憶はねえし… ってか、特盛りサイズならそりゃ残しもするだろう?女の子なんだぜ? 「どうしたもこうしたも、君が頼んだんじゃないか。僕はただ、それを素直に受け入れ黙々と食してただけだ。」 俺が頼んだ…?ちょっと待て、あのときは確か ------------------------------------------------------------------------------ 「かしこまりました。サイズはいかがしましょう?」 そういやサイズも選べるんだったな。ちなみに、今の俺には選択肢はこれしかない。 「じゃあ特盛りで。」 「…オクラ牛丼特盛り2つ、以上ですね?しばらくお待ちください。」 ------------------------------------------------------------------------------ …しまった。佐々木のことを全く考えてなかった…いや、だって仕方がないだろう…? ちょうど飢餓感で思考停止してた時間帯だぞ?ああ、御託を並べたところで どうみても言い訳ですね本当にありがとうございました。 「すまない佐々木…あのときお前のサイズも聞いておくべきだったな。けど、それならそうで お前も店員に横から注文入れりゃよかったのに。『片方は並でお願いします。』とかさ。」 「その意見は至極妥当だと言える。そしてサイズだって、自分に不釣り合いなのはわかってたよ。」 むしろ釣り合ってたら驚愕ものだ。まあだからといって、それで佐々木を嫌ったりは決してないが。 「それでも今日だけは君と同じ…あ、いや、何でもない。とりあえずさ、食べるの手伝ってくれないかな? いくら特盛りだったとはいえさっきがさっきだし、君もまだ満腹というわけじゃないんだろう?」 「まあ、実を言うとそうなんだけどな。じゃあ少々いただくとするぞ。」 …というわけで、結局残さず食べることができた。 「ふーっ、満足満足。さすがにこれ以上は食べれないな。」 「お疲れ様キョン。はい、お茶だよ。」 「おう、サンキュ、佐々木。…今度は『あなた』とは言わないんだな。」 「言ってほしかったのかい?まさか君がそういう属性の持ち主とは思わなかったな。」 「違うっつーの。」 そういう属性が何なのか気になったが、聞けば最後ヤツとのイタチごっこ開始である。 即ちそれは俺の負けなんで、とりあえず否定だけしておく。 しかし…結局いただいたのは少々じゃなかったな。半分は収奪してしまったかもしれない。 そうなると、俺と佐々木が同じ値段支払うってのも何か理不尽だ…ここは俺がヤツの半額は出しておくべきか? いや、そもそもだ。よく考えれば佐々木はまごうことなき女の子だった。断って言っておくが、決してヤツに 女としての魅力がないとかそういうわけではない(むしろ外面だけならかなりのトップレベルのはずだが) あまりに友達としての距離が近かったせいか?口調のせいもあると思うが、とにかく、 これまで佐々木のことを女だと意識したことはあまりなかった。そういうわけでだ、昨今の男女観的に 女子相手に割り勘ってのはちょっとまずいような…?そんな強迫観念があった。 しかれば、ここはヤツの肩をもつつもりで…などと考えていると 「…何を考えてるか知らないけど、奢りとかそういうのはなしだからね。」 いや、知らないけどとかじゃなくてズバリ当ててるし…というか、なぜまたしても考えてることがわかった?? ここまでくると洞察力云々の問題じゃないような気がするんだが…アレか?こいつには何か 千里眼のような特殊能力でもあるんじゃないのか…?と、漫画みたいなこと考えても虚しいだけなんで 妄想はこのへんにしておく。どうせ、俺がそういう表情をしてたとか、そう言うんだろう?こいつは。 ここまでわかりやすいのもある意味特殊能力だな。俺。 「…その諦観しきった表情見ると、やっぱり図星なんだね。まったく、君ってやつは… どうしてそう変なとこでマジメになるかな?言っとくけど、僕はそういうの気にしないよ。 というか個人的に言わせてもらうなら、そういう風潮自体あまり好きじゃないんだ。確かに、 表面上は女性が得するようにできてるけどね。逆を言えば、それは暗に女性は男性より経済力がないと 言ってるようなもんだよ。ましてや君と僕は友達の間柄であって、決して特別な関係ではないんだ。 さすがに、そこまで大人の男女観を持ち込むのはね。もしそれを是とするならば、日本の青年諸君は、 きっと満足な青春すら送れなくなること違いない。日々の動作1つでも金銭が絡んでるとなると、 生活しづらいことこの上ないだろう?男はもちろんだが、相手に払わせたくないと思ってる女だって 気が気じゃないさ。そういうわけで君が僕に奢る必要はないんだよ。もちろん、その気持ちは嬉しかったけどね。 そういうのは恋人や夫婦間でのみ成立するものと、個人的にはそう考えてる。」 「そ、そうか…わかった。じゃあそうしよう。」 すっかり俺は佐々木の語るジェンダー論にひれ伏してしまっていた。 なかなか隙のない考えだったように思う。そりゃ男女観ってのが人によって千差万別なのはそうなんだろうが、 とりあえず本人がこう言ってるんだ。なら、敢えてそれに異を唱える道理もないだろう。 しかし…改めて佐々木には感服した。自分の社会的役割や責任というのを、 この歳にしてヤツはすでに自覚してるように思えたからだ。あー、なんというか、つい比べずにはいられない。 どこぞやの団長様に爪の垢で煎じて飲ませたいくらいだな。そう思うと、不意に笑いが込み上げてくる。 「?何やら楽しそうだね。」 「あ、ああ…すまん。なに、あまりにお前とハルヒが対照的だったんでな。つい。 奴なら間違いなくこの局面で俺に奢らせたろうよ。というか、そう命令するに決まってる。 実際問題、俺はこれまで何度も奢らざるをえない境地に立たされたんだからな。」 「それは…あれだろう?君がSOS団の活動時刻に遅れたからとか、確かそういう涼宮さんが決めた 規則によるものじゃなかったかな?彼女自体は男女どうこうとか、そういうことは考えてなさそうだけど。」 「まあ…そうなんだがな。そうなんだが…俺にはどうしてもハルヒが、 あのハルヒが俺と割り勘する姿が想像できねーんだ…」 「ほう…そこまで強く言うとは。ある意味確信の域に近いのかな?」 「そんな感じだ。」 「それはそれは…なんとも羨ましい限りだ。」 「『羨ましい』??お前は、理不尽にも奢らされる俺の身が羨ましいというのか?どういう了見だ…。」 「くっくっく、何を勘違いしてるんだい君は。君じゃなくて涼宮さんのことだよ。」 涼宮?ってことはつまり、お前は…相手に奢ってもらう立場が羨ましいということか?? まあ、ある意味じゃそれは当然か…だとすると 「佐々木…お前、もしかして本当は俺に奢ってほしいんじゃないか?」 当然こういう帰結になる。 「そうきたか…くっくっくっ、相変わらず君という人間は面白いね。残念だけどキョン、またしてもそれは勘違いだよ。」 「……」 一体どういうことなの? 「僕はねキョン、君に行動原理をしっかりと把握されてる、そんな涼宮さんが羨ましいと言ったんだよ。そして、 そんな彼女も君のことを把握してるからこそ、理不尽な要求が通せるんだ。互いが互いのことをわかってる… なんとも理想的な、仲睦ましい男女じゃないか。」 「ちょっと待て…さすがにそれは飛躍しすぎだろう!?ハルヒはな、別に俺に限らず大体あんな感じだぞ??」 「ほう。じゃあ逆に聞こう。彼女が、涼宮さんが君以外の男子に対し 果たして奢ってくれなどという要求をするかな?」 え…?そりゃあ…するんじゃないか?と一瞬考えて思いとどまった。昔ならともかく、 SOS団の発足から随分の時が経過した今…団員以外のメンツに無理難題を言い渡したりするのだろうか? 特に最近のハルヒはおとなしくなってきてるから尚更だ。あ、ちなみに古泉は論外な。 副団長という階級で優遇されてる上、さらには機関とかいうとんでも組織の協力も得ている。 同じ団員への大号令でも、その質は俺と古泉とでは天と地ほどの差があるのは言うまでもない。 で、結局どうなんだろうな?ふと俺の知らない第三者がハルヒに奢らされてるシーンを想像する。 …胸がムカムカしてきたのはどうしてだろう。食べすぎたか? 「さっき僕は言ったよね?男女における奢るという行為は恋人や夫婦間でのみ成立するって。 もちろん、これは僕個人の勝手な考えだ。ただ、涼宮さんにしたって大きくこの考えから逸脱してるようには 思えないんだ…僕からすればね。彼女がじかにそれを意識してるかどうかは知らないけど、 少なくとも君のことは一人の男性として、特別な価値を置いてると思うよ?」 「あのなぁ…お前は、少々人間というものを過大評価しすぎだ。 世の中にはな、損得勘定だけで奢ってもらおうとする奴だってざらにいるんだぞ。」 「じゃあ聞くけど、キョンは涼宮さんのことをそういう類の人間だと思ってるの?」 「……」 …… 「いや…思わない。」 天上天下唯我独尊その人であり、ただひたすら自分の覇道を突き進んでいく… それが涼宮ハルヒだ。が、言ってしまえばそれだけ。良い意味で…あいつは単純なんだ。 ゆえに権謀術数などとは程遠い所にいる存在…それもまた涼宮ハルヒだ。 …… ところで、ふと思ったのだが…。佐々木が指摘するように、とりあえず俺がハルヒのことを よく知ってる人間なのは間違いない。だが、ある意味では佐々木のほうが詳しく見えるのは 俺の気のせいか?2人はそこまで面識もなかったはずなのだが… 「どうしたんだい?難しい顔をして。」 「いや…やけにお前がハルヒに詳しいと思ってな。」 「おや、君にはそう見えたのかい?仮にそうだとしたら、さて…それはどうしてなんだろうね。 彼女とはあまり会ったこともないから尚更だ。なぜだか君にはわかるかい?」 いや、わからないからお前に聞いたんだが…!?しかし佐々木よ…またそれか。付き合い長いからわかるが… あいつは今、決して自分がわからないから俺に聞いてる、というわけではない。敢えて聞いているのだ。 なぜかって?俺の反応を見たいからに決まってるだろう…? 「はぁ…やれやれだな。佐々木さん、わからんからどうか答えてください。」 「随分と早い降参だね。よしんばこの話題を引っ張ろうと思ってたんだけどな。まあ、わからないなら仕方ないか。 答えはね、僕と涼宮さんが似た者同士だから。そのせいかな、なんとなく考えてることがわかるんだ。」 「……」 似た者…同士…??そりゃあな…ある意味では似てるだろうよ。俺に対する立ち位置的意味でな… 実際、さっきそういうこと考えてたからわかる。しかしだ、俺の考えてる【似てる】と佐々木の言う【似てる】は、 果たして一緒の意味なのか??いや、なんとなくだが違うと思う… 「ふむ、どうやら意味をよく呑み込めなかったらしいね。じゃあもっと砕けた表現をしよう。 つまりね、同じ人を好きになった者同士ってことだよ。」 「え?」 こいつ今、さらりと凄いこと言ってのけなかったか?聞き間違いとかそういうオチ? 「すまん…誰が、誰のことを好きだって??」 「僕と、涼宮さんが、キョンのことを。」 「……」 幻聴?俺の耳はついにいかれてしまったのか?この歳で? いや、だって…ありえないだろ??外食店で、それも平然と言ってのける。 …なんだ、ただの普通の会話か。俺の勘違いか。
https://w.atwiki.jp/cookrobidence/pages/18.html
フルネーム 涼宮ハルヒ 参戦作品 涼宮ハルヒシリーズ※Wikipedia参照 ステータス Lv50時点 HP SP 攻撃力 防御力 精神 素早さ 500 0 205 210 300 300 キャラクター一覧へ 技一覧へ 特殊技能一覧へ 装備一覧へ
https://w.atwiki.jp/ishijimaeiwa/pages/11.html
涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫) メディア:書籍 形式:小説 区分:公式 掲載メディア名:角川スニーカー文庫『涼宮ハルヒの憂鬱』 初出年月日:2003年6月10日 掲載箇所:全て コーナー名:全て 概要:巻末に作者あとがきとスニーカー文庫編集部による解説あり。 備考:角川つばさ文庫版、角川文庫版などあり。背表紙が赤色の旧版と水色の新版あり。パノラマカバー版、『バカとテストと召喚獣』コラボカバー版あり。初版など一部は金帯仕様。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3907.html
5 章 それから数日、長門は会社を留守にしていた。物理学の学会で発表があるとかで遠方に出張していて、今日帰ってくるはずだ。 俺は駅前のケーキ屋でスイス風ケーキを買って長門のマンションを訪ねた。入り口でインターホンを押すと、もう帰ってきているらしくいつもの無言でドアを開けてくれた。エレベータで七階まで上がり、踊り場まで来ると七〇八号のドアだけが少しだけ開いているのが見える。長門はいつも、俺が来るのをドアの前でじっと待ってくれている。 「おう、おかえり」 「……ただいま、おかえり」 「研究会はどうだった」 「……いつもどおり」 「そうか。おつかれさん」 こいつなら四年も五年も待たずにさっさと博士号を取ってしまえそうなのだが、大学院にいるのはハカセくんのためで、本人はさほど学歴を必要とは感じてないらしい。まあ人間の作った称号だか。将来は長門博士と呼ばないといけないかもな。 キッチンに入ると、だいぶ様変わりした雰囲気だった。前は小さな冷蔵庫しかなかったが、三ドアの大型冷蔵庫とか水蒸気で調理するオーブンレンジなんかが揃っていた。食器棚に積まれた食器もカラフルなものが増えたし、コーヒーメーカーやフードカッターなんかも並んでいる。 俺がたびたび来るようになってから料理のレパートリーも増えた。キッチンの棚にフレンチにイタリアンに洋風一式、京料理に中華、メキシカンからハワイアン、アフリカンのレシピ本が並んでいる。すべてをマスターしたのかどうかは分からないが、イボイノシシのケニア風ソテーだといって食卓に出されればポレポレ言いながら食ってしまいそうだ。 俺は棚の上から紅茶の缶を取った。そんなに高いブレンドでもないが、北口デパートの専門店で二人で買ったものだ。その隣にペットのエサの缶詰が積んであるのに気が付いた。キッチンの床に小さな皿が二つ並んでいて、星の形をしたペットフードが入っていた。 「長門、犬か猫か飼ってるのか」 「……猫」 見回してみたが、その気配はない。確かに、シャミセンと同じ猫独特の匂いがする。 「どこにいるんだ?」 「……いつもはいない。ときどき、現れる」 「って、もしかして野良猫?」 「……そう」 マンションの七階の部屋まで登ってくる野良猫って、どんなやつだろう。たぶん他所んちの猫がたまに紛れ込んでくるのだろう、と、俺は勝手に解釈した。だいぶ前にメガネの長門に猫を飼えと勧めたことはあるが、この長門はそれを知らないはずで、それはそうとこのマンションってペット禁止じゃなかったっけ。 紅茶のポットにお湯を注いでいると足元でミャーと鳴き声がした。見ると、小さな黒い仔猫が足にまとわりついている。しっぽをピンと立てて俺の足に体をこすりつけるようにしてぐるぐる回っていた。鼻のまわりと両方の前足だけが白い。 「おう、こいつか」俺は仔猫を抱き上げた。「名前、なんて言うんだ?」 「……言えない」 「言えない?まだつけてないのか」 「名前はある。……でも、言えない」 「なんだクイズか?えーっとだな」 俺は冷蔵庫から牛乳のパックを取り出して猫の皿に少し注いでやった。小さなピンクの舌がチロチロとミルクをなめはじめた。皿の底が見えるまでなめ回し、満足したらしく毛づくろいをはじめた。その仕草がかわいくて、俺は海産物ファミリー的アニメな猫の名前で呼んでみた。 「おい、タマ」 仔猫は耳の後ろを二度ほどかいて、消えた。俺は目の前でなにが起こったのか理解できず、長門の顔を見た。 「今の、見たよな?」 俺が言う、この“消えた”というのはどこかに行ったとかいうんじゃなくて、本当にスッと消えたのだ。 「……この子は、ふつうの猫じゃない」 次の瞬間、仔猫は長門の腕の中にいた。 「……この子は、量子的存在を保持している」 ええとつまり、もっと分かりやすく教えてくれ。 「……名前を呼ぶと、居場所が分からなくなる」 「名前はなんて言うんだ?」 「……ミミ」 ちょっとためらってから長門がその名前を口にすると、仔猫は腕の中から消えた。 「また消えたな」 「……名前を呼ぶと存在が曖昧になる」 「じゃあ、呼ぶときはどうするんだ?」 「イメージを想像すれば現れる。あるいは、この子が自分が気が向いたときに」 試しに姿を思い浮かべてみた。すると、再び長門の腕の中に現れた。まん丸い目が二つ、なにごともなかったかのようにこっちを見ている。 「名前を言っちゃいけないのか」 「……そう」 うちに来て七年になるシャミもかなり妙な猫だが、こいつもまた変な猫だ。 耳の後ろをほりほりしてやると喉をゴロゴロと鳴らした。目の前で指を回すと、前足の爪を出して後を追う。この辺はふつうに猫だな。 ポットの紅茶を持ってリビングのこたつに移った。ミミは長門の膝の上に前足を乗せ、もじもじと足を動かした。長門の細い指がミミを抱えて膝の上に載せ、つやのある毛をなでた。たまに喉を鳴らす音がする。 「生まれて三ヵ月くらいだろうか」 「……それは分からない。さっき見たときは大人だった」 「よくわからんのだが、朝比奈さんとかハカセくんの亀みたいなタイムトラベルか」 「……あれとは理論的に異なる。この子は最初から、時空に対して曖昧な存在」 「もしかしたら十一人、いや十一匹が突然現れたりする?」 「……分からない。ゼロ匹とも、無数に存在するとも言える」 それを聞いて不安になった。どこぞの星の丸っこい動物みたいに増殖しだしたらどうしよう。 ミミは長門の指にじゃれていた。仔猫と遊ぶ長門を見ていると、ほのぼのしていていい絵になると思う。うちのシャミは、最近はもう昼寝をしているだけの肥満猫になってしまった。あれよりはこの子のほうが似合う。 仰向けになってじゃれついていたミミが、何かの気配を感じたのか起き上がって耳をピンと立てた。一心に壁を見つめ、漆黒の瞳孔がまん丸に開いている。長門が手を離すと、ミミは立てたしっぽを左右に振りながら壁に向かって歩き、そのまま壁の向こうへと消えた。 俺は目をしばたいた。 「いま、壁を通り抜けたように見えたが」 「……そう。どこにでも現れる」 ということは、隣の家に忍び込んでサンマを奪ってそのまま逃げることもできるわけだ。便利なやつだな。 俺と長門は、ミミが消えた壁を眺めながらケーキを食った。 「そのうち帰ってくるんだろうか」 「……気が向けば」 静かに紅茶をすすっていた長門が、ふっと呟いた。 「……わたしも、同じことができる」 「その、量子的なんとか?」 「……そう」 そういえば高校のときマラソンで同じようなことを言ってたな。長門はすくっと立ち上がって、バレリーナのようにつま先で立ち、くるりと回った。スカートの裾が舞った。回りながら消えた。俺はしばらくポカンとしていた。数秒後、同じところに現れた。 「思い出した。量子飛躍だったな」 「……そう」 「消えている間はどこにいるんだ?」 「……同じ空間にいる。あなたからは見えないだけ」 長門はそう言って、また消えた。数秒たっても現れなかったので不安になって呼んだ。 「おい……長門?」 気配を感じて振り向くと、真後ろにいた。 「あ、そこにいたのか」 「……捕まえてみて」 ニヤリと笑ったりはしないが、右の眉毛を上げてみせる長門はそんな雰囲気だった。なるほど、こういう遊びは好きだ。俺は笑いながら立ち上がった。 「よーし、捕まえてやるぜ」 俺は部屋の中をむやみやたらに走り回って長門が現れた場所を追いかけた。 「つっかまえた!ってあれそっちかよ」 ゼイゼイと息を切らせながら部屋のあちこちを手探りしていたが、こりゃ作戦がいるな。消えたり現れたりする長門を見ていると、現れるのは正確に三秒後だ。俺は消えた場所と現れた場所に、予測できそうな関係がありそうかどうか考えた。 「……こっち」 微笑を浮かべた長門が、さっきミミが消えたあたりに現れた。これ、かなり高度なもぐら叩きだよな。 長門が消える。三、二、一。「……こっち」声がして振り向くと、また消える。三、二、一。「……あなたの、後ろ」また消える。 手を述べようとするが間に合わず、何度か空振りして俺は宙をにらんだ。ぜったい捕まえてやる。こういうときはもう直感に頼るしかない。そう、頼りになるのは気配だけだ。 現れる直前に空気が少しだけゆれるはずだ、なんて格好つけて考えてみたがまったく分からない。俺は宙を飛ぶ羽虫を捕まえるかのように耳をそばだてた。 長門が再び現れる一秒くらい前だろうか。なんとなく、そこに、いる、ような気がしたのだ。俺は両手を広げ、なにもない空中を大きく囲んだ。 「……あ」 「捕まえたぜ」 背中から俺の腕の中に閉じ込められた長門がいた。 「……どうして、分かった」 少し驚いていた。 「ただの直感さ」 「……興味深い」 ふ。人間には第六感とかヤマ勘とかいう非論理的未来予測機能があるのさ。長門が、ほんとに?という顔をして横目でこっちを見た。ほんとに勘だったのかどうか自分でも分からん。ただの偶然だろう。 俺はじっとそのまま、長門を背中から抱きすくめていた。せっかく捕まえたのを手放すのはなんだか惜しい気がした。このままキスをしようかとふと誘惑にかられそうになったが、足元でミャーミャーと声がした。ミミが俺のズボンに爪を立ててよじ登ろうとしている。仔猫というのは他人が遊んでいると寄ってくるものだ。 「この子を呼ぶ方法がひとつ分かった。俺たちが遊んでいればいいんだ」 「……ときどき、わたしと遊んで」 おう、いつでも遊んでやるさ。俺が遊ばれてる気もするが。 それからミミと長門を追い掛け回す、超高度なかくれんぼに付き合った。ミミには名前を呼んで消えてもらった。壁抜けをする長門より、ミミを捕まえることのほうが存外難しかった。この子には直感が通用しないようだ。 遊び飽きて眠くなった仔猫をなでまわし、俺も時計を見て、そろそろ帰ることにした。長門の膝の上でスヤスヤと眠るミミを起こしたくなかったので、俺は見送らなくていいと言った。 マンションの外に出ると冷たい風が頬を刺した。そろそろ夜が寒い季節だ。帰りの道すがら、俺が長門を捕まえたのは本当に偶然だったのか、それとも長門が狙って現れたのか、ずっと考えていた。 自宅に戻り、部屋に入るとベットに太ったシャミセンが寝そべっていた。 「おい、デブ猫。どいてくれ」 シャミはしぶしぶ場所を空けた。 「今日な、長門んちにかわいい猫がいたぞ。お前も昔はあれくらい器量がよかったのにな」 シャミはいらぬ世話だというように、しっぽを一振りしただけだった。ほとんど家から出ないで食っては寝るだけの生活なんで、まるで歩くハムみたいなありさまだ。もうネズミすら追いかけないだろう。 「少しはダイエットしたらどうだ。肥満は心臓に悪いらしいぞ」 眠そうな目をしたシャミは、腹のたるんできたお前に言われたかねーよという感じなので、俺もどうでもいい感じに放っておいた。 毛布を広げようとしたところ、突然シャミが飛び上がった。ドアに向かって歯をむき出して唸り声をあげている。俺は向こう側に誰かいるのかと思い、ドアを開けてみたが、誰もいない。 「ほら、誰もいないだろ。なにをそんなに怒ってんだ」 なだめてみるが、シャミの戦闘態勢はいっこうに治まらない。しっぽがクリーニング後のセーターみたいにふわふわに毛立って膨らんでいる。 突如、閉まったドアを通り抜けて、一匹の猫が現れた。ミミだった。 「ミミ、お前、ついて来ちまったのか」 ミミはふっと姿を消した。長門に名前を呼ぶと消えてしまうと言われていたことを忘れていた。再びイメージを呼び起こすと、また現れた。あいつの説明によるなら、ついて来たというより直接やってきたというほうが正しいかもしれない。 「シャミ、こいつが長門んちの猫だ。仲良くしろ」 俺がミミを抱いてやると、シャミは警戒しつつ匂いをかいだ。 「ほら、友達だから」 ミミはシャミの鼻先をなめた。猫社会のしきたりは一応知っているみたいだな。 俺は携帯を取り出して、部屋にミミが現れたと長門にメールしてみた。すると返事には「こっちではまだ膝の上で眠っている」と書いてあった。 KYON もしかして異時間同位体みたいなやつ? YUKI.N 厳密には同位体ではなく、量子収束の一形態。 KYON よく分からんのだが。これもミミってことでいいのか? YUKI.N いい。存在が曖昧なだけで、同じ個体。 なるほど。量子世界の話はちょっと理解できん。 「シャミ、そういうことだそうだ。仲良くな」 なにがそういうことなのか俺にも分からんが。シャミは理解したのかしなかったのか、ミミの顔をなめて毛づくろいをはじめた。 オス猫を飼っている人は知っていると思うが、オスというのは季節によっては妙な行動を起こす。二三日ぷいっといなくなったり、傷だらけで帰ってきたり、丁寧に何度もマーキングをやったりする。シャミも若い頃はよく喧嘩傷を残して帰ってきたものだったが。 毛づくろいしていたシャミがミミに向かって嗄れ声で鳴きはじめた。 「おいシャミ、初対面で盛ってんじゃない。この子は長門んちの娘だぞ」 ミミはツンとすました顔で、やって来たのと同じにドアを通り抜けて消えた。まさか夏へと消えていったのではないだろうが。シャミは慌てて後を追いかけ、閉まったままのドアに激突した。鼻を思い切りぶつけたようだ。 「ふられたみたいだな」 俺はくっくっくと笑いを抑えられなかった。 ミミがなぜ長門の部屋に現れたのかを知ることになるのは、数日後のことだ。 何往復かは知らないが、あれから何度か未来とやり取りがあったようだ。分厚い大理石で蓋をしちゃ壊しを繰り返していた。向こうのハルヒからは相変わらず差し障りのない映像くらいしか送られてきてないようだが。 「そろそろ生き物を送ってもいいかもねぇ」 「俺はぜったい行かんぞ。死んでも行かんぞ」 時間移動中に分子レベルまで分解でもしたらコトだ。 「バカね、あんたがこの穴に入るわけないじゃない。もっと小さい、植物とかハムスターとかよ」 それを聞いて安心した。人体実験をやるときには社長自ら志願してくれ。 ハルヒは花束と鉢植えのサボテンを持ち出してきた。このサボテン……。 「あの、長門。ちょっと心配ごとがあるんだが」 「……なに」 「ハエ男って知ってるか」 「……知っている」 「転送中に分子が入り乱れてバケモンになっちまう話なんだが、まさかあんな事故は起こらないよな」 長門は笑いをこらえているようだった。 「……大丈夫。あれとはエネルギー媒体が異なる」 だったらいいんだが。タイムトラベルしてみたらサボテンがハエとかクモと合体してたなんていやだぞ。 「まずはこれ、送ってみましょう。あたし宛にね」 「自分に花束贈るなんて、ちょっと虚しくないか」 「なによ、あんたが贈ってくれるっていうの?」 「ううっ」 「僕が贈って差し上げましょう」 古泉が割って入った。 「うれしいわ、古泉くん。乙女心が分かってるわね。キョンも少しは見習いなさいよね」 よけいなお世話だっつの。 「では、未来の涼宮さんに」 古泉はメモ書きをメッセージカードにして花に添えた。崇高な科学実験だってのになにやってんだこいつらは。 またもや同じように分厚い石の板でフタをしてパテで埋めた。 「思ったんだが、この大理石のフタって意味あんのか」 「蝶番を取り付けて金属製のドアにしてはどうでしょう。毎回壊すのもコストが上がってしまうと思うので」 大量注文した大理石の板で会議室が埋まっている。高く積まれた石が二十枚ほどあり、もし地震でもきたら下敷きになるやつが出そうだ。 「……」 長門がなにか言いたそうだった。後で教えてくれたことだが、ハルヒのかしわ手と、この大理石の分子構造が微妙なマッチングにあり、このワームホールの機能を稼動させているらしい。かしわ手のエネルギーの波が大理石の一部をクォークまで分解して反粒子を生み出している、とか、ふつうにはあり得ないデタラメな現象らしいが。 「手間を惜しんでは科学の進歩はないわ。最初の手順どおりやってちょうだい」 ハルヒの一声で現状継続が決定した。まあ社長自ら肉体労働をやってくれるってんなら止めはしないが。 すぐにメモリカードで返事が来た。今度は小さな包みも一緒に来た。なんだろうこれ。映像には花束を抱えるハルヒが映っていた。 『古泉くん!花束ありがとう。もうあたしったら感激しちゃって(ここで涙を拭く真似)。花もサボテンも、DNA分析してもらったけど異常はないわ。あと、木のタネを送っといたわ。それ、どっか広い場所に、そうね、北高のグラウンドの隅にでも植えといて。あんたが植えてくれたら、あたしが成長した木を見に行けるってわけよ。キョン、これ何のタネだっけ?ああ、そうそう、バオバブ』 「大成功ね」ハルヒがにんまり笑った。 「バオバブって、幹が太いでっかい木じゃないか?」 「アフリカのサバンナに生えてるやつね」 「でかくなりすぎて星を食いつぶしてしまうとかじゃなかったか」 「それは絵本の話でしょ」 相変わらず妙なことを考えつくやつだ。セコイアとか屋久杉じゃなくてよかった。 翌日、ハルヒはペットの移動用ケージを抱えてきていた。中からミャーミャーと鳴く声がする。 「いよいよ動物実験をやるわよ」 「おい、ちょっと待て。大丈夫かそんなことやって」 「植物が大丈夫なんだから、問題ないでしょ」 とは言ってもなぁ。一抹の不安が拭いきれん。 「向こうでバケ猫になって出てきたらどうする」 言ってみて、我ながらバカだと後悔した。 「そんときは送り返してもらえば元に戻るんじゃないの?」 「戻るどころか巨大化したりしないか」 ケージを開けて出てきた猫には、確かに見覚えがあった。ミミだった。俺は長門に目配せをした。 「これ、あの仔猫だよな」 消えてしまうというので、名前は口に出さなかった。 「……DNAは同じ。でも、量子状態が異なる」 「というと?」 長門は仔猫に向かって名前を呼んだ。 「ミミ」 仔猫の姿は消えなかった。 「……この子はふつうの猫。もしくは、量子的変異を起こす前の猫」 「ということは、ハルヒの実験であんな姿になっちまったのか」 「……その可能性が高い」 これはやめさせるべきだ。いくら科学の進歩のためとはいえ、そんな残酷なまねができるか。俺がハルヒにやめろと言おうとすると、長門が袖を引いた。 「……実験を阻止すると、この子の因果律に関わる」 「因果律?」 「この子の未来は、すでにわたしの過去に存在する」 「だとしても、宇宙をふらふらとさまよう姿になっちまうのはかわいそうじゃないか」 「……わたしたちが、面倒を見る」 まあ長門がそう言うなら、命に別状がなければいいか。って今、わたしたちって言ったか。 「わたしたちって、長門と俺?」 「……」 長門は答えなかった。うっかり口がすべったとでもいうような表情をした。ともあれ、物質電送器みたいに細胞が分解したりバケモンになったりするのでなければいいが。 「やってもいいがハルヒ、ひとつだけ条件がある」 「なによ、言ってみなさい」 「時間移動中の心拍と脳波の状態をきちんと記録してくれ」 「なるほどね。あんたもたまにはいいこと言うわね」 たまには余計だ。 ハルヒの命令で獣医が呼ばれた。古泉が連れてきたという獣医のタマゴなんだが、どう見ても機関の人だ。ミミは包帯のようなもので胴体をぐるぐる巻きにされ、そこからコードが出ていた。かわいそうに。俺は自分で提案していて後悔した。しかし異常があったら向こうで治療してくれるだろう。そのための医療用モニタだ。 「そういえばこの子、名前付けてなかったわね」 「……ミミ」 「有希がつけたの?じゃ、ミミ、未来のあたしによろしく」 ミミはケージに入れられたまま、タイムカプセルに押し込まれた。フタが閉められるまでミャーミャー鳴いていた。ハルヒがかしわ手を打ってから数分間は鳴き声が聞こえていたが、突然静かになった。 「おい、そこのマイナスドライバーよこせ!」 俺はまだ乾いていないパテの隙間にドライバを押し込んで、大理石のフタをこじ開けた。 そこには何もなかった。 数分して、メモリカードが返ってきた。 『あんた、いったい何を送ろうとしたの?これくらいの医療機器ならこっちの時代にもあるわ。もっと性能がよくて小型だけど。いちおう残っていた心拍数と脳波のデータをメモリに入れとくわ。次はもっとましなものをよこしなさいよね』 映像のハルヒはコードがぶらんと垂れ下がった医療モニタを持っていた。ケージもそのままだ。 「ミミが消えちまってるぞ」 ハルヒは唖然としていた。 「もしかして、抜け出たんじゃないの」 ケージに入れられるところは全員が見ていたし、それがあり得ないことは分かっている。 「どうしよう……」 ハルヒは真っ青になった。安易に動物なんか使うからだ。 「時間移動中に横穴とか脇道があるんじゃないか」 長門に尋ねてみたが、考え込んでいた。 「……説明がつかない」 長門はメモリ上のファイルを開いて心拍数と脳波の数値を見ていた。 「……大理石のフタを閉じた時間、手を打った時間までは一致している。さらに十三秒後、測定値にエラーを記録。それ以降、データ不詳」 「どこに消えたんだろう」 俺と長門は目を見合わせた。俺はミミが消えたときのことをふと思い出して、試しに姿をイメージしてみた。足元に、やわらかい毛玉がミャーと鳴いて現れた。 「あらっ、ここにいたわ。今、ここに現れた、キョンの足元に」 ハルヒがミミを抱きかかえて頬ずりした。どこも異常はなさそうだ。 「猫ちゃん、ごめんね」 「無事帰ってきてよかったな」 そのとき、返事がもう一通届いた。メモリは手元にあるはずなんだが。封筒を開けると、新品のメモリカードが入っていた。だが容量が俺たちのより千倍以上ある。技術的には向こうのほうが上なんだから、こっちのレベルに合わせてくれないと困るんだがな。 「長門、これ容量が俺たちのよりでかいんだが、読み出せそうか?」 「……やってみる」 長門の超高速タイピングで、いくつかプログラムをいじった後、映像が再生された。 『ごめんごめん、猫ちゃん、後から届いたわよ。いきなり現れたから驚いたわ。今までどこにいたのかしら』 映像の中で、ハルヒの隣で長門がミミを抱えていた。それは届いたんじゃなくて、たぶんそっちにいる長門に会いに行ったんだろう。こっちのハルヒが、自分が抱えた仔猫と、画面に映った仔猫を見比べて、唖然としていた。 「これ、どういうこと?」 「俺には分からん」 「……」 長門はどう説明したものが迷っているようだった。考え込んでいると古泉が分かりやすい答えを披露した。 「未来と過去のエネルギーの総量を保つためにそうなったのでしょう」 つまり、この宇宙にある物質とエネルギーの全体量は決まっている。時間移動したときに勝手に減ったり増えたりするのはおかしい、と。現在でマイナスになった分を埋め合わせるために過去と未来で二匹の猫が生まれた、というのだが、どうやればそういう答えにたどり着くのか俺には分からない。 「なんだ、そういうことなの」 今の説明でほんとに分かったのか、ハルヒ。もし未来に一匹、過去に一匹が行ったんだとしたら、過去と現在の総和は二匹になるんじゃ……いや、やめよう。頭痛くなってきた。俺には長門の言う、曖昧な存在の猫ってのがいちばんしっくりくる。 「これが解決するまで動物実験は中止するわ。それからこの実験結果は社外秘よ、いいわね?」 異議ナシで全員賛成した。こんなことが動物愛護協会にでも知られたらえらいことだ。 ミミは長門が預かることになった。ハルヒのアパートはペット禁止らしい。まあ長門マンションも禁止なんだが。 ハルヒが帰った後、長門と朝比奈さんに尋ねた。 「ひとつ疑問があるんだが、未来のハルヒはなぜ猫が送られてくることを知らなかったんだろう?そのときの記憶がないんだろうか」 「これは別の時間軸が交差しているんじゃないかしら」 「……わたしたちのいる現時点が、別の分岐を生み出している」 「ということは、僕たちが新しい未来を作っているのでしょうか」古泉が口を挟んだ。 「……そう」 「それって、既定事項を真っ向から書き換えてるってことか?」 長門は非常に難しい質問をされたように顔を曇らせた。 「……おそらく、そう。すでにはじまっている」 「わたしが危惧していたのはこれだったの。未来の涼宮さんが知らない歴史が始まっているわ」 「どういうことでしょうか」 「今の涼宮さんが未来の情報を得て、新しい歴史の流れを作ってしまうということなの」 これがどういう状況なのか、俺にはまだピンと来ていなかった。 6章へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5957.html
涼宮ハルヒの切望Ⅲ―side H― 「ありがと……ハルにゃん……みくるちゃん……」 今日もどっぷりと日が暮れている。 あの後、妹ちゃんが起きるまで部室に残っていたあたしとみくるちゃんは妹ちゃんをキョンの家まで連れて行ってあげたんだけど、なんとも妹ちゃんが「今日は泊まっていってほしい」とフリじゃない涙で型崩れしているうるうる瞳で訴えてきたものだからあたしたちも断るなんて真似は出来なかった。 そりゃそうよね。妹ちゃんは標準的な小学六年生と比べるなら明らかに幼く、まだ年齢が二桁に達していないみたいな容姿なんだから。 そんな女の子の泣き顔を無碍にできる人間がいるとしたらその人は即座に鬼畜認定よ。 とと、今、この場にはいない古泉くんのことを少し話しておかなきゃね。じゃないとまるで彼が妹ちゃんをないがしろにしたと思われちゃうし。 …… …… …… …… …… …… 妹ちゃんがあたしの腕の中で寝息を立てている。 あたしは彼女を起こさないように、いつもはキョンが座っているパイプ椅子に腰かけていた。 普段なら、その正面にはキョンとボードゲームを勤しんでいる古泉くんがいるんだけれど。 「涼宮さん、少しよろしいでしょうか?」 今日はあたしの横に、いつもの爽やかな笑顔が消えたなんとも思いつめたような表情で佇んでいる。 「何?」 「僕の知り合いに探偵事務所を営む方がおりますので、その方にも彼の捜索をお願いしようかと思うのですが」 ……妹ちゃんがここに来て、岡部が知っているっぽいところをみるともう警察も探しているでしょうね……でも日本の警察って、ネズミ取りには並々ならぬ使命感を持って励むけど、もっと重大で危険な仕事になればなるほど疎かにする傾向があるし、特に行方不明者捜索となるとあまり役に立っているイメージもないわね…… 遭難者捜索なんかいい例だわ。 見つかる時は不明者当人が自力で脱出するか遺体になってからだもん。 それなら私立探偵の方がまだ信用できるわね。だって民間なら業績を上げることに必死になるわけだから。 「ん。分かった。古泉くんはそれでお願い。実はさっき、有希も自分の知り合いに頼んでみる、って言ってたのよ」 いちおー古泉くんには有希が宇宙人だってことを今はまだ伏せておく。 だって信じられないだろうし。 「そうですか。では僕もその探偵事務所に今から、お伺いします。電話で話すよりも直に話す方が信憑性があるでしょうし、我々の必死さも伝わるでしょうからね」 「お願いよ」 「むろんです。僕も彼がいないと寂しいですから。皆さんと同じで」 言って、爽やかな笑顔が戻った古泉くんも部室を後にした。 もっとも、その笑顔には並々ならぬ決意を感じたけどね。 …… …… …… …… …… …… キョンの両親に挨拶して今日の宿泊を、あたしとキョンの両親両方に承認してもらった後、あたしたち三人はキョンの部屋への扉を開けた。 相変わらず平凡な机とベッドとほとんど漫画かラノベの本棚と洋服ダンスしかないあまり広くない飾りっけない部屋なんだけど何でだろう。どういう訳か、あたしの胸も苦しくなる。この部屋も主を失って寂しくなっているんじゃないかと錯覚を受けるから? 「じゃ、じゃあ中に入りましょう。妹ちゃん、今日もみくるちゃんと一緒に寝る?」 てことで、あたしは自分の気持ちを押し殺して努めて笑顔で問いかける。 妹ちゃんはなぜかみくるちゃんがお気に入り。 この辺りは普段エロい目でみくるちゃんをデレデレ眺めているキョンの血縁者なのかと勘繰ってしまうんだけれど。 隣でもみくるちゃんが宥めるような温かい笑顔を浮かべているんだけれど。 今日の妹ちゃんの反応はまったく違っていた。 「ハルにゃんと……ひっく……一緒がいい……」 御指名はあたしだったり。って、どうして? いつもはみくるちゃんって言うのに? 「だって……キョンくんが好きなのはハルにゃん……だから……キョンくんが好きなものと一緒にいたいし……それならキョンくんが傍にいるみたいだし……」 あの……何かサラリと重要なこと言わなかった……? 標準よりも明らかに幼いこの少女は男女と経験の違いはあれど同じ両親から生まれた云わば、同じ血肉で構成されているもう一人のキョンな訳で、言いかえればこの子はキョンの気持ちを誰よりも察してやれるってことだから…… いやまあ……妹ちゃんのことだから自覚ないんだろうけど…… って、どうしてあたしの顔が熱いのよ! だいたい今はそんなことを呑気に考えていられる状況じゃないんだから! …… …… …… う……文字通り天国から地獄って感じね…… 妹ちゃんからキョンの気持ちを聞いて一瞬、舞い上がったのに、今、現実はキョンが居ないってことを再認識した途端、テンションが180度降下したし…… その日、妹ちゃんはあたしから片時も離れることはなかった。 御呼ばれした夕飯はあたしの隣、お風呂も一緒に入ったし、今、キョンの部屋に戻ってきたときもベッドに腰掛けるあたしの膝の上に座っているし、みくるちゃんはキョンの母親が用意してくれたお客用布団の上にちょこんと可愛らしく座ってこちらを見つめている。 ちなみにみくるちゃんはキョンのほとんど使っていないことが一目瞭然の新品に限りなく近いパジャマを勝手に拝借して着ていたり。胸のサイズはともかく全体像は小柄なみくるちゃんだけに男物のだぶだぶパジャマがなんとも萌え。 え? あたしは何を着ているかって? いやその……妹ちゃんは気を使ってくれて妹ちゃんの同級生から桃色のパジャマを借りてきてくれてそれを着てるの。 ちょっと……じゃないか……結構ショックだったけどね……さすがに胸元のボタンを全部止めると苦しいんで三つある内の二つは外しているけどサイズが思った以上に合うし…… ううん……キョンの言葉に嘘はなかったか…… もうすぐ十二歳の十一歳小学六年生ってことで、他人の家に一人にさせるわけにもいかないってのも本当だった。 もうお分かりよね。 そう、あたしが着ている妹ちゃんの友達のパジャマは、先週土曜日、キョンが連れてきていたあの女の子のものなの。 名前は吉村美代子で、キョンが言った通称はミヨキチ。前にSOS団で機関誌を発行した時のキョンが自分の書いた小説に登場させた子よ。 だ、だって仕方ないじゃない……まさか制服で寝るわけにもいかないし、妹ちゃんの服は着れないし……それにYシャツ一枚は妹ちゃんの教育上、よろしくないんだもん! って、あたしは何で言い訳してるのかしら? 「ホントはね……キョンくんも一緒に行く予定だったの……」 ん? 「土曜日……おばあちゃんの家……」 ああ、それ。 「うん……だけどね……キョンくん……SOS団の活動を優先させたの……おばあちゃんの家に行くのって……一ヶ月前から決まってたのに……」 あ……! あたしが先週の土曜日に市内パトロールを開催することを決めたのは前日の金曜日。 筋としては先に約束した方に優先権があるのが当然なんだけどキョンはそれでもあたし……もとい、あたしたちの活動を優先してくれたんだ…… なんだか罪悪感が胸の内を広がっていく。 もし、キョンが家族の予定通り、土曜日に親せきの家に行く方を選んでいたとしたら? そうすればキョンが土曜日から日曜日にかけて一人になる時間はなかったわけで消息不明になるような何かが起こらなかったかもしれない…… 「ご、ごめん……」 あたしは妹ちゃんに陳謝するしかなかった。 「ううん……ハルにゃんの所為じゃないよ……それにキョンくん……ハルにゃんと話してるときとか一緒に遊んでるときって、すごく嬉しそうだし楽しそうだし……」 「そう……」 妹ちゃんの無理に繕った笑顔にますます落ち込んでいくあたし。 そんなあたしの表情をみくるちゃんはどこか物哀しげに見つめていた。 その後も妹ちゃんはキョンのことを喋り続けた。 キョンがどれだけあたしとSOS団のことを好きなのかを―― 眠気に支配されるまでずっと…… 涼宮ハルヒの切望Ⅳ―side H― 涼宮ハルヒの切望Ⅲ―side K―
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3118.html
5日間熱心に勉学に励んだ後に訪れる束の間の休息。そんな貴重な休日に我々SOS団がどこにいるのかというと── ハルヒが福引で一発で引き当てた温泉旅館に来ている。 開催初日に引き当ててしまったことにより、客引き要素が70%減となってしまったその抽選会はもう悲惨だとしか言いようがなかったが。古泉に言わせれば 「涼宮さんがそう願ったんでしょうね」 とのことで、まぁそれについては初っ端から特賞を引き当てる確率と、 また都合よく5名様のご招待と書かれているその券を見て考えるとと妥当な推測ではある。 普通ならこんなものは家族で行くものだろうと思うのだが、ハルヒは家族に対しては長門が当てたもの (長門が一人暮らしとの説明も踏まえた上で)と言って誤魔化したらしい。 全く、そんな人生に1度、当たるかどうかも分からないような宝くじに匹敵する旅行券を、わざわざ団員で使おうとは。なんて独り言を漏らしたら、 「・・・・・・鈍感」 と後ろから雪融け水のように冷たな長門の声が耳に入った。 さて、旅館やホテルに着くと予想外に子供心というか、とにかく何かが湧き上がってきてウキウキしてくるのは何故だろう。 「探検しに行こう」と言ったのがハルヒではなく俺の口から発せられたものだから他3名は冷蔵庫にあったプリンが食べてみると実は卵豆腐だった、 なんてような顔になっている。まぁ、確かに俺も言い終わった後で多少しまった!とは思ったが。 「あたしが言う台詞でしょうが!キョンはヒラなんだから──」とそれはもう予想していたハルヒの言葉を軽くいなしながら他3名の意見を聞いた。 朝比奈さんはハルヒの機嫌を損ねないような言葉を選ぼうとしどろもどろで、長門はいつもの通り分厚い本を開いて物語の世界へ。 「僕達は・・・遠慮しておきます、2人で行った方が大勢で行くよりも隅々まで探検できるかと」 棄権なんてこのハルヒが認めるはずが無いだろうと思った瞬間 「じゃあいいわ、キョンと2人で行ってくるから、みんなは体を休めてなさい」・・・なんですと? ハルヒ、お前新幹線の中でなにか変なもの食べたんじゃないか、というかお前が一番疲れてるんじゃないかと聞こうとしたがもうすでに握られた手は そのへんの運動部よりも凄い力で引っ張られていき、こうして旅館探索が始まったのだった。 探索、とは言うものの。商店街が用意したような旅館、流石にそれほど広くもなく。地下の遊戯施設に立ち入っては「温泉浸かったら後でみんなで遊びに来ましょう」だとか、 開いてないレストランの前まで来ては「ここ、朝はバイキング形式で食べられるレストランなんだって」とか、つまり極一般的な会話に終わる探検だったわけで。 下見、という言葉の方がしっくりくるなと思うと同時に我が口から「探検しよう」なんて子供のような言葉が出てしまったことを再度後悔していた。 ふと握られたままだった手を見ながら、こんな風にハルヒと2人一緒だったあの日を思い出す。 当時こそ俺はその出来事を考えるたびに、手の届く範囲に拳銃がありさえすれば!なんて思っていたが。 今ではそんなことを考えていた頭の中の自分に鉛玉を撃ち込んでやりたいね。 俺は意外にもハルヒと共にいる時間を楽しいと思えるような性格を手に入れたらしい。と言えば遠まわしだろうか? 流石に俺でも自分の事を一端の健全な男子高校生だと思っているし、女子に全く興味が無いなんて今時の僧侶でも言わない事を、俺が言うわけが無い。 それがこの手を取っているハルヒなのかはまた別として。・・・だがまぁ、一緒にいて楽しい以上俺はハルヒを嫌いではないと自覚している。 「そういえばハルヒ・・・お前1年前と大分変わったよな」・・・1年前は毎日「退屈」、「暇」の言葉を製造し続ける特注機械だったのにな。 「なんか馬鹿にしてる?」っと、心を読まれかねないから少し控えておかないとな。 とはいえ、今でも毎週1回は「退屈」もしくは「暇」と呟きはするのだが。しかし古泉は「今年は例年に比べて本当に閉鎖空間が発生しなくて済んでますよ」と言っていた。 確か最後に発生したのはこの間のゴキブリ騒動の時だったとも言っていたな・・・ このゴキブリ騒動については家庭科の担任教師が入院の為2週間ほど学校を休んでいて・・・ で、それに伴って調理実習室の部屋が2週間閉鎖され、その後「調理実習室から異臭がする」との噂が囁かれはじめてから どういうわけか「調理実習室を調べて対処して欲しい」という話が悩み相談窓口から入ってきたんだよな。それも生徒会から。 生徒会長曰く、「こんな訳の分からない部を黙認させているのだから、たまにはそれに応じた働きも見せてみろ」だとさ。 便利屋じゃあるまいし。とは言うものの「対処してくれればSOS団の正式な承認を前向きに検討する」とのことなので 俺なりにハルヒを説得してさっさとこんな厄介事を片付けようと息巻いていたのだが。 調理実習室前に着くや、漏れ出てくる異臭。マスクを用意していて正解だったと他団員を見回し・・・ 涙を薄っすら浮かべている朝比奈さんに渡し、流石のパーフェクト宇宙人も若干眉を顰めているが・・・長門にも渡し 「ちょっと用事が・・・という訳にはいかないんでしょうね」当たり前だ、古泉。こいつにも渡し 口数が一瞬で0になって少々顔を引きつらせている我らが団長様にもマスクを渡し。 士気が下がりきってしまう前にさっさと開錠してドアを開け──そこから人間の女子2名の記憶は無いようだ。 惨状と言うべきか。2人が床に衝突するのを避ける為に両手が塞がった俺の目の前に表れた光景。 コンセントが外れ、ドアは半開きの冷蔵庫から飛び回る蝿。外からの空気が入ったことによって蜘蛛の子を散らしたように逃げていったがそれでも十数匹は目視できるゴキブリの集団。 長門がいなければこの惨状はあと数週間は惨状のままだったかもしれない。 高速言語を放つと同時にこの閉鎖(されていた)空間にいたゴキブリ、蝿、異臭、異臭元と思われる腐った食材etc・・・は亜空の彼方に消えていったらしい。 「・・・・・・任務遂行完了」マスク姿の長門がそういい終わると同時に鳴り響く古泉の携帯。 「申し訳ございません。・・・久々のバイトのようです・・・」 さて話を戻そう。 確かに四六時中一緒にいて、こいつの機嫌が手に取るように分かるようになった多大な能力を得てしまった俺が見ても、ハルヒは性格が丸くなったと言える。 が、しかしSOS団の活動意義が発足当時から不変であることも分かっているし、それならば何故ハルヒは閉鎖空間を発生させないような性格を得たのか不思議でならない。 「なぁ、毎日楽しいか?」ふと、答えを聞けば全ての疑問が解決される質問をハルヒに聞いてみた。 「あんたはどうなの?キョン」と返されたのは想定外だった。俺か?俺が毎日楽しいかどうかだって? 「・・・まぁ、楽しいと言えば楽しい、かな?」 「じゃあ、そんなもんなんじゃない?」うーむ。ハルヒらしからぬ答えだ。てっきりここで“退屈で暇でどうしようもないことくらいわかるでしょー! そんな質問をする前にあんたが楽しみを提供するよう頑張るのが有意義よー!”なんて罵倒されて、それに対して俺はそれでこそハルヒだと一人感慨にふける展開を考えていたのに。 そんな話を入浴中に古泉に話してみた。こいつならば涼宮の言わんとしていることを俺に分かりやすく教えてくれることだろう。 「それは・・・その通りの意味ですよ」・・・前言撤回。こいつに話したところで俺の脳は疑問を解決することはできなかった。 「フフ、失礼。しかし今まで常に自分の意見を押し通してきた彼女が、あなたに答えを任せた。それがヒントですかね・・・?」 ヒントなんざ言うくらいならとっとと正解を教えろってもんだ。俺はクイズバラエティーで分かりそうも無い難題を吹っかけられて反応を笑われる芸人じゃあない。 なんて言おうとしたがそれはハルヒによって阻まれた。 「お前!ハルヒ!なんで男湯覗いてんだ!」 「おや、体を洗った後で良かったですね、僕達」そういう問題じゃないだろ。 「ふふん、あんたがこっちを覗かないように監視してるのよっ!」俺は紳士だ、見るわけ無いだろうが。 どーだか、とからかうハルヒを俺もついからかいたくなって自分の胸を指差し 「見えてるぞ。」うそっ、という声と同時に崩れる椅子の音。 「あぁ、嘘だ。」 数秒してから返ってくるハルヒの怒声。久々にハルヒの口から「バカキョン」の言葉を聞いた気がするな。 部屋に着くなり用意されていた豪勢な夕食。ガイドブックや旅番組で見るようなまさにそれと全く同じ光景が目の前に広がっていた。 一番乗りで座布団に座ったのは意外にも長門。おそらく初めて見るんだろうな。生まれてまだ・・・4年しか経ってないんだから当然か。 急かすように他メンバーをじっ、と見つめ、全員が座るまでに要した時間は数秒。 ちなみに、長机を2人と3人で挟むように座布団が敷かれ、3人の方に長門、古泉、朝比奈さんの順で座ってしまったので必然的にもう片方には俺とハルヒが並んで座ることに。 長門は火をつけられた小鍋をまじまじと見続けている。分かるぞ、小学生のときの修学旅行で同じ気持ちを味わったもんだ。 ハルヒのいただきますの号令で料理を堪能・・・相変わらず長門の箸は速いな・・・なんて上の空になっていたら。 「ほら、ご飯粒ついてる」・・・まるで長門以外の時間が停止したようだった・・・漫画さながら、俺の頬に付いていたご飯を手に取り食べてしまったのだから。 「フフ。まるで夫婦のようですね」との古泉の声にハッと向こうに顔をやるハルヒ、耳が真っ赤だ。俺も顔が熱い・・・ さっさと食べて遊戯室行くわよ、と話をそらし、急いで飯をかっ込むハルヒ。・・・と俺。結局料理の味を楽しめなかった・・・ 温泉に浸かって腹ごしらえもして。もう快適な睡眠の安全装置は解除されいつでも引き金を引ける状態である。 適度な運動なんてしたらもう完璧に睡魔と書かれた銃弾は俺の頭を貫くね。 「馬鹿なことを言ってないで、次あんたの番よ!」と言うことで、古泉からラケットを受け取り俺なりに奮闘してみたのだが。 こいつはスポーツの神様が背後霊じゃないのかと思える試合だったな。なんで去年の孤島のときよりさらに強いんだよ・・・ ともあれ、何周かすると流石に全員に睡魔と書かれた銃弾は行き渡ったようで、最下位だった俺の奢りのコーヒー牛乳を振舞いつつ、部屋に戻ることとなった。 さて、人間という生き物は不思議なものであり、眠るという目的が別の事象によってなしくずしになる、なんてことはごくありふれた光景である。 この場合の事象とはトランプのことであり、いくつものメチャクチャなローカルルールが絡み合ってしまったそれはもはや大富豪と言えないゲームだったが。 罰ゲームに酒がハルヒの口から提案されたが、流石に高校生だけで来てるのに酒を飲んだ後の領収書を見られたら学校に通報されるかもしれない、 という説得の末これまたお決まりの奢りジュース。もちろんお決まりで俺の奢り・・・ どういう経緯で全員が睡眠という2文字に負けたのかは定かではない。遊びながらそのまま寝られるように放射状に布団を敷きなおしていたから、最後に電気を消した人間でないと知りようがない。 と、考えているのはつまり自分が起きているからである。変なジュースを罰ゲームで飲まされたからだな・・・キュウリ味のサイダーだっけな、うっ、思い出しただけで吐きそうだ。 暗闇にだんだん目が慣れてくると隣の布団が空になっていたのに気づいた。ハルヒだ。 トイレに行ってるのだろうか?という考えはそのまま5分過ぎたところで否定された。外に出て涼んでいるのかもしれない、が、ひょっとしたら。そう考えると既に俺は部屋を出ていた。 何故ハルヒがいないとこうも落ち着かないのだろうか。・・・そういえば世界が改変されていた時も。 まだ20年すら生きていない俺がこんなに1人の女子で心が不安になるのか?生意気すぎるにも程がないか。いや──俺は俺を誤魔化している・・・のか。 ぴたりと足が止まった。 「俺は、ハルヒのことが──好きなのかな」 がたたんとなにかに躓く音。振り返るとハルヒがソファーに尻餅を付いていて、弱々しい非常灯に照らされたその顔はかすかに赤くなっていた。・・・まさか。 「い、今の聞いてたり・・・?」 無言で頷くハルヒ。 「聞かなかったことにしてくれたりは・・・?」 無言で首を振るハルヒ。 ああ、俺の人生はここで終わったな。明日になれば団員全員に、月曜日になれば学校の笑い話のレパートリーに1話追加されるわけだ。 「あ、あたしも・・・同じ」 やれやれ。こういう話で笑われるのは男だけと相場が決まっているな。古泉あたりの端正な顔立ちの奴なら逆に七不思議に追加されそうだがな。 こんな普通さしか取り得の無い男子学生なら普通という項目が異常という項目に書き換えられて別のファイルに入れられるだけだ。 「あたしも・・・好き」 ・・・え?何?今幻聴が聞こえたような・・・ 「あんたのことが大好きって言ってんで・・・モガモガ」 幻聴じゃなかった・・・いや、危なかった。こんな大声を他の宿泊客に聞かれたら即追い出される。・・・しかし。 「これ夢か?」 スッ、と手が伸びて頬を抓る。古典的だが、確かに現実のようである。 「夢じゃない?」 コクコクと頷くハルヒ。ここでいまだに口を塞いだままであったことに気づく。 「おわっ、す、すまん・・・」 「まったく、部下が団長の口を塞ぐなんて、団員にあるまじき行為よ!」・・・まことに仰るとおりでございます。 「塞ぐならこっちでしょうが!」 ・・・俺の唇は、ハルヒの唇で塞がれた。 次に意識を取り戻したのは布団の中だった。あれは夢だったのだろうか。 時計に目をやるとまだ6時半で、みんな熟睡しているようだ。もちろんハルヒも。 ・・・閉鎖空間?いや、あの時俺の隣(ハルヒと逆)には古泉がいたのは確か・・・って、古泉はそれの専門家だからこれじゃ決め手にならん。 しかしその疑問はすぐに解決された。なぜなら、ハルヒの手と俺の手が握られていたことに気づいたからだ。 ・・・その手を離そうとしたがやめておいた。 ハルヒに夢で終わらせたく無かったから。 なぁ、あの時お前はいつから起きていたんだ? 「フフ。やはり気づいていましたか。」 古泉によると今回の件も特殊だというらしい。 神人が存在しない閉鎖空間だったとか、極めて感知するのが難しい空間だったとか、初めから近くにいたことで偶然入り込むことが出来たようだとか 言っていたが、閉鎖空間内での光景がフラッシュバックして大半は頭に入っていなかった。 「あの閉鎖空間の発生で何か世界に困ったことは?」 「起きていないですね。あ、困ったことではないのですがただ一つだけ変化が。」・・・何だ? 「あなたと涼宮さんの絆がより深いものへと変化したようです。」 そのまた次の週。不思議探索の日にまたも俺とハルヒ以外欠席となった。古泉の根回しだろうか。 ハルヒは特に非難することもなく、俺の奢りの缶コーヒーを飲みながら歩いている。 「あ、そうそう。商店街の福引券がまた1回分集まったのよね」と、いつのまにか丁度福引所の前に着いていた。 開幕と同時に特賞を失った福引と言うものはまるで全く弾まないバスケットボールのようである。 弾まないバスケットボールで観客を沸かす試合が出来ないことは商店街の方が一番よく分かっている。 そう、つまり特例として特賞をもう1本入れて客引きを図っていたのである。・・・が、ハルヒが来てしまったものだから大変。 流石に彼らの頭にも一般的な確率論が入っているはずだろうからそんな事態が起きることはまず予想しないであろう。 しかしそれでも“もしかしたら”が同じ比率で彼らの頭を蝕んでいるようであり、またそれが顔色を悪くさせる要因のであることが俺にも分かってしまった。 ここは俺が助けの手を差し伸べてやらなければなるまい。とまたも自分を誤魔化しつつハルヒに耳打ちする。 「3等の映画鑑賞券が当たったら丁度2人で行けるな」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/23.html
キョン「涼宮って頭おかしいんだろ?」 鶴屋「そうね、むこういきましょ?」 ヒソヒソ ハルヒ「・・・・・・・・・・・」 電車が・・・・・・来る・・・・・・・・ あ ハルヒ「団員ども、宇宙人・未来人・異世界人・超能力者その他の不思議を見つけて来た者には 私の唇から直接唾液を与えるーーーッ」 キョン「あぶなーい『何でも溶かしそうな液』だ!」 ハルヒ「(´・ω・`)」 はるひ「………」 ハヒル「………」 八ルヒ「………」 キョン「どうしたんですか?この三人」 朝比奈「なんでも誰がハルヒさんのパチモンかでもめてるんですよ……」 キョン「別にそんなの決めなくても良いじゃん、だって三人ともちゃんとした人間じゃないか」 はるひ「お兄ちゃん」 ハヒル「キョン」 八ルヒ「キョン」 ハルヒ「キョ」 キョン「ただし本物に人権は認められない、だってキモイしwwww」 ハルヒ「………」 ハルヒが鬱病になりました キョン「ハルヒ…」 ハルヒ「うっさい!私に構わないでよ!!」 キョン「おい聞けよ!お前の事なんだよ!大事な事なんだ!これを聞いたらもう口を聞いてくれなくても良い!だから聞いてくれ」 そのキョンの真摯な瞳に私は黙ってしまった ハルヒ「………なんなのよ……」 そして彼の口からつむがれる言葉を待った キョン「授業の妨げになるから学校に来るな」 ハルヒ「………」 ハルヒ「全く、過疎ってどういうわけよ!な~にやってんねんホンマ!」 ハルヒ「そしてわが部室も今日も過疎(´・ω・`)……」 体育の授業で ハルヒ「ねえ!!!・・・誰か一緒にパス練習・・・・」 サッ・・・・・ ハルヒ「あ・・・・・・・」 鶴屋(ごめんね涼宮さん・・・・・) みくる(あいつと話したらゆるさねえかんな?) 朝倉「はい」(・・・・いじめは・・・人間の本能・・・か・・・) 長門(・・・・・・・・) 谷口「あいついつまで持つと思う?」 キョン「かけるか?三週間!」 『涼宮ハルヒの庭球』 ハルヒ「テニスするわよー!」 長門「ぶんぶん!」ナガモーン キョン「長門もう少し手加減しろよ、光速サーブ打つのは良いが全部フォルトだぞ」スパコーン みくる「いくでちゅ、『みくまるビーム』!」ミックルンルン 古泉「さながら『テニスの王女様』という感じですね、次は一人でダブルスですか」ウホホーン ハルヒ「キョン以外は上手いわね!さすが我が団員たち!…………ははは」 ↑上手いことハブられる団長 元祖いじめ ハ「わがSOS団は、文化祭で映画を撮ります!」 キ「古泉ほんとよえぇなお前。はい百円」 古「いやぁ、これでも家で研究してるんですがね」 ハ「配役はもう決めてあるのよ。まずみくるちゃんが戦うウェイトレスで未来人なの」 み「お茶ですよー」 キ「あぁどうも朝比奈さん、今日も似合ってますよ」 み「もう、キョンくんたら。お世辞が上手なんだから」 古「長門さん、何を読んでいるんですか」 長「人間失格」 ハ「それで古泉くんが少年エスパーね。初めは自分の力に気付かないのよ」 古「長門さん太宰ファンですか」 長「けっこう」 キ「あ、お茶っ葉替えましたか?」 み「あ、するどい。あたりー」 ハ「で、有希が宇宙人で古泉くんを狙ってるの」 キ「ひさびさに四人でファミレス行かないか?」 古「いいですね。……奢ってくれるんですか?」 キ「女性限定でな」 み「悪いですよー」 長「感謝する」 涼宮ハルヒの消失(いじめREMIX) キ「はい古泉負けー、100円!」 古「本当にあなたには敵いませんね。実は僕が弱いのではなくあなたが強いのではないですか?」 み「お茶ですよ~。ジャスミンティーでーす」 長「ありがとう」 キ「長門、お前も随分素直になったよな」 長「もうわたしは自分を恐れない」 古「それは喜ぶべき事態でしょうね。SOS団の絆は深まるばかりです」 み「長門さん、クリスマスの予定はありますかぁ?」 長「まだ決まっていない」 キ「じゃぁ今年も四人でクリパすっか」 古「いいですね。今年は国木田君や谷口君、鶴屋さんや部長氏、 多丸さん兄弟に新川さん森さんも呼んで派手にいきましょう」 キ「会長とか喜緑さんも巻き込んじまえ。この際だ」 み「わ~。楽しくなりそうですね!」 長「あなたの妹も忘れちゃいけない」 キ「おっと灯台元暗しだな。折角だし阪中とか中河とかも呼ぶか」 古「舞台の準備は僕におまかせください」 キ「期待してるぜ」 み「あれ、そういえば誰か忘れてませんか?」 キ「ん、誰だっけ、そういや2年前くらいまで5人だった記憶がないでもないな」 長「気のせい」 キ「そうか」 古「ですよね」 み「記憶違いでしたー、えへ」 キョン「ハルヒ好きだ付き合ってくれ」 ハルヒ「ほんと?あたしもよモチロン付き合うわ」 ガバッ(キョンがハルヒを抱きしめた) キョン「うわ!ハルヒ生臭!さんま!?」 ハルヒ「……」 ハルヒ「みくるちゃん!脱がせてあげるわ!」 みくる「わぁーやめてくだしぃー……うわ臭!くっさ!たらこ!」 ハルヒ「転校生が着たわよ!」 古泉「古泉一樹です」 ハルヒ「紹介するわ、あたしが団長の涼宮ハルヒ。こっちが団員1と2と3よ」 古泉「……なんだかここはアソコと同じにおいがします…」 ハルヒ「え?」 古泉「こいつか!団長くさ!くっさ!腐っただいず!」 ハルヒ「…………納豆?」 キョン「キメェ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 ハルヒ「にょろーん(´・ω・`)」 ハルヒいじめ みくる「巨乳でも貧乳でもない凡乳乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 長門「乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 ハルヒ「……」 キョン「よりによって大晦日に全員呼び出しやがって、何の用だ?」 ハルヒ「SOS団の忘年会しましょう!」 みくる「あうう、私は鶴屋しゃん家にお呼ばりぇしてして…」 古泉「すみません、僕も知り合いの人達(機関)との忘年会がありまして」 長門「私は彼の家に呼ばれている」ギュッ キョン「おっと見せ付けるなよ有希りんwじゃあな、皆都合悪いので駄目って事で」スタスタスタ ハルヒ「そんなあ……」グスン 山根「良かったら……家に来るかい?」 ハルヒ「しねっ!」 キョン「おいハルヒ、お年玉やるぞ」 ハルヒ「何で体育館?なんでキョンは二階から話しかけてるの?」 キョン「ほーらお年だ、まッ!」ビシュッ ハルヒ「痛い!これバスケットボールじゃ(ry」 みくる「えーいお年玉でしゅ!」ポイッ ハルヒ「痛っ!えっみくるちゃ」 古泉「ふんもっふお年玉ですよー!」バシュッ ハルヒ「痛い痛い!」 長門「全力でお年玉」ズビシバキッ ハルヒ「有希まで、もういいから!皆止めてよ!」 キョン「うるせえ!ありがたく受け取っとけ!」ドガドガドガ みくる「これは楽しいでしゅ」ドガドガドガ 長門「古泉一樹の能力を少しだけ使える様にした」ドガドガドガ 古泉「これはイイお年玉ですよ、涼宮さん♪」ドガドガドガ ハルヒ「ひいぃ……///」 キョン「なぁ、ハルヒ。こんな話を聞いたことあるか?」 ハルヒ「いきなり何よ。どんな話?」」 キョン「旧校舎の一室に出る幽霊の話だ」 ハルヒ「え? 何々、何よそれ。初耳よ!」 キョン「何だ。お前が知らなんて」 ハルヒ「いいから早く教えなさいよ、何処に出るの!?」 キョン「ここだよ。文芸部室」 ハルヒ「何ですってっ!? 本当に!?」 キョン「あぁ。本当だ。……ほら、もう校舎には誰も居ないはずなのに、足音が……」 ハルヒ「……聞こえる、わね」 キョン「ほら、来たぞ」 ハルヒ「待ってましたぁ!」 用務員「……こら、お前!」 ハルヒ「って、何よ。用務員のおっさんじゃない」 用務員「いったい何をしているんだ、下校しないで」 ハルヒ「何って、部活よ。見て分からないの?」 用務員「……は?」 ハルヒ「……?」 用務員「こんな廃墟みたいな部屋で、明かりもつけずに一人で部活……だって?」 ハルヒ「………………………………」 私はいじめを受けている。残酷で酷いものを・・・ キョンと私は付き合っている。いじめを食止めようと必死だ 古泉君もみくるちゃんも有希も、私のいじめを止めようと必死だ。 嬉しかった。私にここまで親身になってくれる人がいたなんて でもいじめはエスカレートした。SOS団全員がいじめられている。 皆で部室に集まる。鍵を閉める。ここだけが安息した空間だ 「みんな御免ね・・・・・・」 私は謝る。当然だ、私のせいで皆もこんなことになっているんだ 「大丈夫だハルヒ!俺たち5人は友達だろ」 「そうですよぉ私たちも同じ痛みを知っていますから」 「大丈夫・・・気にしていない」 「僕も同じです。いつか元に戻りますよ」 私は涙がでた。とまらなかった。キョンや古泉君はボロボロだ 有希は制服にまで落書きされていてみくるちゃんは顔が腫れている。 こんな状況でも私を見捨てないてくれる人が居てくれるのは嬉しかった。 ありがとう皆・・・本当にありがとう・・・でも・・・ ・・・一週間後古泉君が死んだらしい。原因は事故死、 バイクで丹念に体を潰されて、死因はショック死になっている その通知を知った時、私は涙が流れた。御免ね古泉君・・・ そしてまた安息の場所にみんなで集まる。みんなの表情が暗い。 「御免ね・・・古泉君・・・御免ね・・・・・・」 そう言いながら私は泣く。しだいに声が大きくなっていく。 みんなは私のせいじゃないといってくれる。すごく嬉しい。 悪いのはいじめているほう。有希がそう言ってくれる。本当に嬉しい。 でもいじめは私の問題なのよ・・・それなのに・・・ キョンが抱きしめてキスをしてくれた。すこし血の味がした 私はまた泣いた。悲しさと嬉しさ。冷たい涙と暖かい涙の両方だ。 そして今日は有希の家にみんなで泊まった。 このまま時間がとまればいいと思った。でも学校に行かないといけない。 一週間後、みくるちゃんが自殺した・・・・・・ 私はまた泣いた。御免ね御免ね御免ね。 部室に行く。私は思いっきりみくるちゃんの衣装を千切る カッターでズタズタにする。そこにキョンが駆けつけた。 私のことを抱きしめて「お前のせいじゃないんだ」と言ってくれた。 私たちは一線を越えた、それも部室で・・・ キョンも、もう抱いてやることができないかもしれないから・・・ といって本番をはじめた。その時私はずっと泣いていた。 本当に御免なさい朝比奈みくる先輩・・・・・ 終わった後、私たちは有希の家に行く。嫌な予感がした ドアの鍵が閉まっていない。中を開くと血の臭いがした 有希は体中バラバラにされて居間に転がっていた。 声が出ない。自然に顔色が青くなる。体も小刻みに震える。 声も上げないまま私はその場に倒れた。御免ね・・・有希・・・・・・ 有希の首から上を抱きかかえる。私は声を上げて泣いた。 キョンも声を上げて泣いた。もう限界だ・・・そう思った 私たちは今、学校の屋上に居る。 手を強く握り合いながら。この日を心に決めた昨日 私たちは肉体を求め合い、寝るのも惜しんで繋がっていた。 キョン・・・初めてSOS団を作ったときもこんないい天気だったね。 「そうだな・・・」 キョンが弱弱しい声で答える。 私たちはもう一度手を握り締めあい、そしてキスした。 飛び降りる・・・私が落ちていこうとした時彼は手を離した。 なぜ?キョン・・・一緒に楽になるんじゃなかったの? キョンは笑っている。後ろからSOS団の面々が出てくる。 私の体は下に落ちていく。SOS団の面々は全員が笑っている。 ハハハハハハハ。私も笑いたくなってくる。 いつも通りだ・・・いつも通り私は嫌われている。いつもd・・・・・・・・・グシャ キョン「マリカ(DS)やろうぜ!!!!!」 キョン「あああああ!!落下したああああ!・・・もう、俺の負けだ・・・あ、ハルヒが・・・」 谷口「ハハハッ、やっとキョンに勝てたぜ!練習した甲斐があった!・・・あ、ハルヒが・・・」 古泉「キノコを使うタイミングを誤った!くー、勝てませんね・・・あ、ハルヒが・・・」 ハルヒ「ふふふっ、勝ったわ!やっぱり所詮キョンね!私に勝てるわけないのよ! この調子で逆転するわよっ!私にひれ伏しなさいッ!」 長門「・・・練習しても駄目だった・・・(あ、ハルヒが)」 キョン「まぁまぁ、最下位じゃないんだしさ。上位には食い込めてるだろ?次のレースを頑張れよ、 次を!」 長門「・・・ありがと」 ハルヒ「(!・・・これはキョンに優しくしてもらうチャンス!落下!)キョ、キョン・・・私も落下しちゃった・・・せっかく勝てそうだったのに」 キョン「いや今のはどう見ても不自然だろ・・・あ、素で落下しても慰める気は無いぞ。寧ろ笑う。」 長門「・・・ププッ」 谷口「・・・ハルヒ、お前、ウザいわ・・・」 古泉「好きでもない人のキノコ食いたいですか?食いたくなかったらその態度を改めてください」 ハルヒ「・・・ぐすっ」 キョン「スマブラXやろうぜ!!!!!まずはチーム戦な!」 キョン「ゼルダで」 谷口「なんだと・・・お前、ゼルダ使いだったのか・・・俺はリンクで」 キョン「ゼルダの伝説キャラktkr」 谷口「・・・」 長門「・・・オリマー」 キョン「!!!」 ハルヒ「私は・・・そうね、今日はピカチュウにするわ」 キョン「今日は・・・?お前、使い手は?」 ハルヒ「使い手?何それ?何、ずっと同じキャラ使ってて楽しいの?飽きない?バカじゃないの?」 ハルヒを除く一同「・・・」 キョン「なあ、ハルヒって初心者なんじゃね?」 谷口「使い手がいないからって初心者呼ばわりはどうかと」 長門「・・・あの台詞は私達に対する挑戦」 キョン「・・・じゃあ俺&谷口&長門VSハルヒで・・・」 ハルヒ「ちょっとー?何3人でコソコソ話てるのよ?」 キョン「いや、何でもない。ステージは?」 ハルヒ「・・・アイテムたっぷりで、滝のぼりよ!」 ハルヒを除く一同(・・・うわぁ・・・面倒くさいステージ・・・) キョン「はいはい・・・じゃあさっさと始めるぞ」 ハルヒ「え?ちょ、ちょっと・・・何で私だけ仲間外れなの?ねえ、なんでキョン達が組んで・・・」 キョン「いやー、ハルヒは強いからな!俺達3人がかりじゃないと勝てないぜ!」 ハルヒ「ふ、ふん!かかってきなさい!蹴散らしてあげる!」 ドガッ ピョーン キラキラキラリン・・・ シュシュシュッ カチャッ ピーkドウリャー! ハルヒ「・・・な、何であんたたちそんな上手いのよ!?ヒドいわ!」 キョン「かかってこいって言ったのはお前だろ」 ハルヒ「い、いやそうだけど・・・」 キョン「言い訳無用ッ!」ドゴォーン ハルヒ「あっ、あぁー・・・・」 キョン「次はタイム制だ!」 ハルヒ「・・・許さないわ・・・本気で行くわよ!ドンキーよ!」 キョン「ゼルダたんんんん」 谷口「リーンーク!リーンーク!」 長門「ひっこぬか~れて~♪たたかぁ~ってぇ~♪」 ハルヒ「食らえ!ドンキーの最強パンチを・・・え?」 キョン「残念だ・・・お前は緊急回避を使いこなせていない・・・」 谷口「その技は侮れないからな、先に潰す」 長門「紫投げ」 ハルヒ「ドラグーンゲットよ!これで勝てる!食らえ・・・?」 キョン「ヒント:緊急回避」 谷口「ドラグーンは避けるの簡単だからむしろ隙なんじゃね?」 ハルヒ「スターゲット!キョン!待ちなさい!逃げても無駄よー!」 キョン「スター状態のドンキーに追いかけられて待てと言われて止まるヤツはいないだろ」 長門「・・・」ガシッ ハルヒ「!ちょ、ちょっと!離しなさい!な、投げ!?あ、そっちは・・・うわーっ!」 ドチュゥーン・・・ ハルヒ「・・・ぐすっ」