約 3,071,704 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4645.html
「……あなた、一体何をしているの?」 凶刃を停止させて、朝倉は自分を遮る俺の長門に話しかける。 「あのね、今のあなたには何の能力もないの。何をやろうともそれは無駄なことでしかないわ。邪魔だから、早くそこをどきなさい」 俺の長門はわずかずつ後退し、後方のハルヒを守らんとする姿勢を崩さない。しかし、それは何処かプログラムを遂行しているかのような動きだ。 ……正体不明の頭痛も治まり、俺は緊迫した空気のなかにある朝倉と長門の姿を目にいれながら、必死にこの状況を打開する方策を探っていた。……すると自分の記憶とポケットの中に小さな引っ掛かりを感じ、それにゆっくりと手をやってみる。 ――金属棒。いつかこれを使う日がくるのかもしれない、と過去に俺が無根拠にそう感じた代物がそこにはあった。その正体はTPDDの部品で………周防九曜を制御した髪飾りの原料だ。だが……。これはこのままだと意味がないはずだ。何か情報操作のようなものを施すことによって髪飾りへと変貌するのだし、それに、確かその髪飾りも朝倉には効果がなかったように記憶する。しかしながら、現在はこれの存在に頼るよりないのも確かだよな。どうする? あまり賢い方法ではないが、試しに朝倉に投げつけてみるか? それをやるなら石つぶての方が効果はありそうだが。 「うう……。長門さん、涼宮さん……」 俺が懊悩としている隣で、実に不安そうに朝比奈さん(小)が呟く。今にも泣き濡れてしまいそうな横顔は、まるで己の無力さを嘆いているような…………。 ――って、ちょっと待て。そうだ、朝比奈さんは無力でも何でもないじゃねえか。むしろ、このお方ほど現時点において頼りに出来る人物は他にいやしない。多少反則的な感もあるが、あの無敵状態を誇る朝倉には文句を言われる筋合いなど皆無だ。 ……なんとか出来るかもしれない。そう。未来人なら――この状況を過去に乗り越えたことのある、朝比奈さん(大)だったら。 俺が大人の朝比奈さんに顔を向けようと思った、そのときだった。 「……わかった。もういい。あなたにもどのみち消えてもらうんだし、順番が変わっちゃうだけのことよ。それにわたしだって、あの長門さんにはあなたの姿をこれ以上見ていて欲しくない。丁度良いわ。あなたから先に消してあげる。安心して? あなたには痛みなんか感じさせないから。――じゃあね」 「な……!」 「え……? そ、そんな! 嘘……長門さんっ!」 ――朝倉涼子はハルヒを守る長門へと手を伸ばし、その頬を軽く一撫でする。 途端に長門の姿は淡く白い光に包まれ始め、次第にその輪郭を失っていく。 「――待て! ……長門!」 俺は長門の元へと駆け寄りながら、消えていく長門を絶対に手放したくないと片腕を伸ばした。……そして長門が俺へと向けた手は、俺の手のひらをすり抜けて―――姿もろとも、消失してしまった。 「うそ……。ちょっとあんた、なんてことすんのよ! なんで……こんな……」 眼前で起こった事態にうろたえながらハルヒが叫ぶと、朝倉は薄く笑って、 「……これれちゃった人形にはもう何の価値もないの。むしろそのままじゃ、あの長門さんを悲しませてしまうじゃない。だから何も問題なんてないわ」 「ふざけるんじゃないわよ! そんなの絶対におかしい――」 と、朝倉は責め立てるハルヒを睥睨し、 「――うるさいなあ。あんたは黙って恐怖だけしてればいいのよ。しゃしゃり出てきたあんたの王子様にだって、何にも出来ることはないんだから」 朝倉たちの間に介入した俺はハルヒをかばいつつ、凶行に及んだ朝倉の顔をハルヒと共に睨みつけていた。朝倉は俺たちの視線を真っ向から受けつつ、 「生まれ変わった長門さんにはあんたたちなんていらない。……そろそろ死になさい」 「……く」 ――もう、駄目なのか。 殺意表明の後で朝倉がナイフを腰元に構えるのと同時に、俺は後のハルヒへと素早く振り向き……ぐっと小柄な体を抱きしめる。 ……この日に再び訪れてから、俺はどこかで選択を誤ってしまったのかもしれない。背中にはまたあのナイフが突き立てられちまいそうだ。ああ、なんてバッドエンドを迎えちまったんだろうね。そのせいで、長門は……。 ――せめて、ハルヒ。こいつにだけは手を出させたりはしない。 中学生姿のハルヒを俺が強く抱きしめていると、背中への不快な感触の代わりに――思わぬ声が耳に飛び込んできた。 「――――な、」 ナイフをこの身に受け入れる覚悟を決めて身体を強張らせていた俺は、ゆっくりとその緊張を解き、なにやら驚きの声を漏らした朝倉へと振り向いてみる。 「……長門?」 やれ刺さんとばかりにナイフを構えた朝倉の腕を、眼鏡の長門がそれを阻止するかのように掴んでいた。 「長門さん……あなた……」 思わぬ人物からの干渉に戸惑いを隠せない朝倉。俺も同様に目を丸くし、眼鏡の長門の様子が今までと違っているのを感じていた。 「――朝倉涼子。みんな……ごめんなさい」 若干の哀愁を帯びてそう言う長門の表情は、頬を赤らめたりするあの長門のものではなく、俺の知る長門にもう少し感情の色を足したような感じだった。 「もしかして長門、記憶が……戻ったのか?」 俺が問いかけると眼鏡の長門は少し悲しそうに、 「わたしはわたし。だが……残念ながら、このわたしはあなたの知るわたしではない」 理解出来ないでいると、 「でも、あなたたちの知っている長門有希と同じ気持ちをわたしは持っている。だから、今から話すわたしの気持ちをみんなに聞いて欲しい」 すっと朝倉から手を離し、神妙な面持ちで話す長門。その言葉に従うように俺はハルヒの隣へと立ち、朝倉さえも、俺たちを襲うことを忘れてその場で長門に注視していた。 「――涼宮ハルヒの情報創造能力は真実を否定するものではなく、この世界に矛盾の存在をも認める……とても優しい力。それと同じように人は矛盾を許容することによって、他の有機生命体とは性質を異にする存在へと成り得たのだと思われる。だからわたしは、進化の可能性は涼宮ハルヒの生き方にこそあるのだと思う。……そして情報統合思念体の進化への希望となる一人の女の子を、わたしは知っている」 「……それって、朝比奈みゆき、か?」 「そう。人に育てられたインターフェイスである彼女は、人の心を持ったことによって、既に単なる端末を超越した存在となっている。人の心という矛盾するものを得た彼女は、それを自身の内にある真理と併合することによって、人にも思念体にもない……新たな可能性を導き出した。わたしは情報統合思念体も『心』を持つことによって、進化への道を踏み出せると考えている。それはどういうことなのかといえば、つまり……人の感情を思念体が持つということ」 ここで朝倉はハッとした表情を見せ、その後で秀麗な顔に影を落とした。 長門は続けて、 「わたしは……人間になって『死』というものを取り入れれば、人の感情が理解できるかもしれないと思ったからこの日を生み出したのだろう。……でも、そうではなかった。感情は死を回避するためだけのものでも、ウイルスのようにその者を蝕んでしまうものでもない。人の『心』は……人類が言語とは違う方法で己以外の存在と繋がり合おうと努力し、その進化の過程で組み上げられてきた一つの結晶。他の存在と繋がりあおうとする行為にこそ、進化への歩みを進める理由がある。それは感情によってなされるもの。だから――」 ……やめてよ、と朝倉は不意に呟き、俺たちの意識をその身に集めると、 「人の感情なんて……自分を害するものを拒絶して、脆い自分を保護するために作られてきたものなの。あなたが言ってるのとは正反対のシロモノよ。わたしには、それが進化を助長するものとは思えない」 長門は若干視線を落として、 「そういう部分もあるかもしれない。だけど、わたしはそれが人間の本質だとは思わない。何故なら、人は笑顔を作るから。悲しいとき、自分の弱さが表に出て無防備な状態のときでさえ、人は涙を流してそれを伝えようとする。それは、人が他者を利用して生きるものであれば矛盾すること。つまり人の感情は、人が自分の気持ちを伝えることによって互いに補完しながら生きてきたという証」 「そうだとしても……!」と朝倉はたまりかねたように「人間の中に他人を食い物にする奴がいるのは確かなことじゃない! それだけじゃないわ。どんなに人が手を差し伸べたって、頑として自分の世界を貫くだけの奴だって腐るほどいる。そいつらには、どんなにこちらが繋がりを持とうとしても何も解りはしない。そんな人間がいるから世界は乱れるのよ。それにね、あなたが好きだって言うSOS団はどうなの? あなたたちはちゃんと繋がっているとでも言うの? もしあなたがそれを肯定するとしても、それを証明するものなんてないじゃない!」 「……自分と他人が繋がっているかを証明するものは存在しない。だけどわたしは……それを信じることが出来る。でも、それは本当はとても怖い。全ては自分の独りよがりかも知れない、相手が本当は自分を嫌っているのかも知れないという可能性は決して消えたりなどしないから。――それでもわたしがそれを信じているのは、彼等と一緒に過ごしてきた時間があるから。人は人と手を取り合うことによって、互いの歪みを解消することが出来る。そして……」 長門は俺をゆるりと見つめ、朝倉の方へと向きなおすと、 「現在の情報統合思念体は……彼等を、大切な友だちだと思っている。思念体が彼等に意見を求めたのもそのため。そして未来からの来訪者も、全てを知る悲しみ、何も知らないことの苦しみに耐えながらこの時代の人と共に同じ『今』を作っている。涼宮ハルヒに異能力を授けられた者たちが仮面を被っていることも人と繋がるための一つの方法であり、その仮面の下には、わたしのことを思って泣いてくれる素顔がある。……今のあなたと同じように」 そう言って長門が視線を向ける先には……粒々と涙を溢れさせている、朝倉の姿があった。 朝倉はそれに気付いていなかったように手を自分の頬へと寄せ、その指に触れる水を確認したのと同時に、ストン。という音が地面へと滑り落ちたナイフによって奏でられた。 ……そうか、そうだよな長門。正直俺だって、最近まで宇宙人や未来人や超能力者のまとまりについて疑問に思うところがあったんだ。だがそれは、だんだん話を重ねていくにつれて……一緒に過ごしていくことによってその繋がりが確認出来たんだよな。今の俺は、長門の親玉だって、未来だって、機関だって信じることが出来る。 そう。本当に全部ひっくるめて、SOS団のみんなを。 「――でも、人が笑っていられるのは……そのとき、泣いている人がいることを忘れているからじゃない。だったら、最初から悲しみなんて……」 なおも大粒の涙をこぼしながら、消え入りそうな声で朝倉が言う。するとそこに、 「……いいえ。それは違うって、わたしは思います」 大人の朝比奈さんが双眸からポロポロと落涙する朝倉の肩に手をかけ、朝倉がその母のように優しい顔を見つめると、 「この世界には知らなくても良いことだってたくさんあります。……でもね、人は悲しみを知っているからこそ、幸せの姿を見つめることが出来るの。悲しみを知らない人は笑いながら人を傷つけてしまい、そして悲しみを知らなければ、自分が傷つけられていることさえ愛情だと錯覚してしまうわ。それぞれに幸せの形はあるけれど、悲しみを知らないことで幸福を感じている間は……いつだって悲劇でしかないんです」 「あ……」と朝倉は泣き崩れる数瞬前の顔で「じゃあ……わたしは……わたしがやったことは……」 すると朝比奈さん(大)はにっこりと微笑みかけ、 「いいえ。あなたを咎める理由なんて何もありません。だってあなたの長門さんを思う気持ちに偽りなんてないでしょう? それはね、結果があなたの考えたものとは違っていても、あなたのやったことに間違いはなかったっていうことなのだから」 キョンくんを傷つけてしまったのはいけないことだったけど、と俺への刺突行為を軽く諫める大人の朝比奈さん。 ……その言葉を受けて遂に朝倉の激情は霧消し、そこには、泣き咽ぶ少女とそれを抱きしめる女性の姿だけがあった。 ………… ……… …… 「そう。……長門さん、それがあなたの答えなのね」 すっかり落ち着きを取り戻した朝倉が、やさしい学級委員長のような気配で眼鏡の長門へと尋ねる。そして長門がこくりと頷いたのを確認すると、 「……でも、どうしてあなたは記憶を――」 俺も不思議に思い長門を見つめていると、思いっきりばっちり長門と目が合った。朝倉は不審そうに俺を見やると、 「―――まさか。そうだったなんて……」 何かに驚き、かつ何かを理解したような声を朝倉は漏らしたが……何なんだ? 俺にはさっぱりわからんが。 「……あと、もう一つ疑問があるわ」今度は俺の方を見つつ「あなた、どうやってここにやってきたの? いえ、あなたたちじゃなくて、そこで寝てるあなたの方」 俺は安らかに地面で寝転んでいる己の姿を一瞥すると、 「……ああ、俺は最初に変わっちまった世界を奔走して、三日後に長門の脱出プログラムを起動させたんだ。その後で過去の七夕へと跳んで、大人の朝比奈さんと長門に連れられてここにきたのさ」 「脱出プログラム……?」朝倉は思案顔で「……どういうことかしら。長門さんが作り変えた世界にはそんなものなかったはずなんだけど。それに脱出ってなに? あなた、長門さんから何も聞かされてなかったの?」 「なにいってるんだ?」 本当に理解しかねることを言っている。俺は長門から事前に劇的世界大改造について、ビフォアにもそういえばアフターにも説明を受けた覚えなど特にないし、改変後の世界に脱出プログラムがあったのも事実だ。 なので俺は何も嘘なんか言っちゃいないし全ては体験による情報なので勘違いでもないのだが、朝倉が勘違いしているという線も考えにくい。このズレは何が原因で発生しているのだろうか? ……と、思い悩むまでもない。ここにはそれの答えを出してくれそうな人物が二人ほど居てくれている。 俺は少し考え、 「朝比奈さん」 に質問することにした。もちろん大きい方の。 「これはどういうことなんです? それに、この後世界はどうなっちまうんですか? これから俺が走り回った三日間が始まるのなら、世界はいつ正気を取り戻すんですか?」 「……世界が元の姿に戻るのは、キョンくんが脱出プログラムを起動させた後です。それでね、本来長門さんは、世界改変後キョンくんにその理由を伝えるつもりだったの」 じゃあなんでそれが俺の体験したものと違っているのか、と聞くと長門の方が、 「これから世界を整えるためには、再度情報を調整しなければならない」 寝ている俺を一瞬目に入れ、すぐさま俺を見直すと、 「まずはわたしのデータを改変直後のものに再修正し、わたしが作った世界を再現しなければならない。そしてここで寝ているあなたには、これからの三日間をずっと眠っててもらうことになる。そして三日間を体験したあなたが脱出プログラムを起動させたとき、眠っているあなたは代替の記憶と共に元の世界で目覚めるようにする」 ……つまり、俺が三日間を過ごした世界は、最調整された後の世界だったのだ。……俺が一番最初に過去の七夕へと時間遡行をしたのも、この未来を固定するためだったというわけか。そう考えれば、長門が俺に知らせもせずに世界の情報を改竄したのも納得がいく。 それは、今の俺が頼んだことなのだ。 何故ならば、もし俺が世界改変の事情を知っていれば、心からSOS団の大切さに気付くなんてことはなかっただろうからだ。何故期限を示したのは。何も知らない俺が改変後の世界を果てしないものだと思ってしまえば身が持たないだろうし、こういうのは集中して行うべきで、それで無理だったらそれまでということなんだ。 「……そっか。多分、その調整はわたしがやることになるのよね」 喋り出した朝倉を俺が反射的に見ると、 「わたしは改変後の世界を見守ることにするわ。そしてあなたが三日後に七夕へと向かった後、わたしが世界を元通りに修正する。そういうことで良いんでしょ?」 「それが一番望ましいと思われる。朝倉涼子、すまないがお願いする」 「いいえ。かまわないわ。……それより、涼宮さん」 ハルヒが虚をつかれたように反応すると、 「さっきはごめんね。あなたを傷つけるようなことを言っちゃって。あれは間違いだったわ。あなたも長門さんも、一人なんかじゃなかったのだから。だから……長門さんをよろしくね」 「ん……あったりまえじゃないっ! 安心してあたしに任せてちょうだい。これはあたし自身のためでもあるんだしね。だって長門さんは、未来のあたしにとって大事な――」 ……ああ。欠かすことの出来ない大事な団員だよな――。 と心の中で先読みしていたのだが、その予想は外れてしまった。 そう、ハルヒは頼もしい声でこう言い放ったのだ。 「――友達なんだからね!」 そんな朝倉とハルヒのやりとりを見て、俺には一つの考えが浮上してきた。 もしかして先程のハルヒの宣誓がこの時間軸以降のハルヒに影響を及ぼし、冬の合宿で見受けられた過剰なまでの長門に対する気配りへと繋がったのではないだろうか? もしそうだとしたら、もう一つ疑問が解消される。 それはハルヒの手が加えられた朝比奈さんの小説の内容のことだ。 三日後に目覚める王子。そこはハルヒが手を加えた部分の一つで、一際無意味さを醸しだしていた箇所だったのだが……きっとそれも、この中学ハルヒがこの日を目撃していたことに起因するのだろう。この出来事がハルヒの無意識だか識閾下だかに残存していたのだ。三日目に目覚めるというのは、つまり、ここで寝ている俺のことで、俺が王子だという点にはあえて触れないでおく。 そして人魚姫。これは……ある意味で、朝倉のことだったのかも知れない。 「…………」 俺は沈黙する。俺はもう、朝倉に対して嫌悪感は抱いていない。むしろ、こいつはこいつで一生懸命長門のことを思いやっていたのだ。だが、王子をナイフで刺すことの出来なかった人魚姫の結末は…………。 そう思って一つ、つつましやかに朝倉へと尋ねてみる。 「――朝倉。お前は、また学校に戻って来る気はないのか?」 「あら、なんでそんなことをあなたが言うのかしら」 俺は報われない結末を迎える人魚の話を頭に浮かべつつ、 「……実のところ、進級したクラスの面子がそう代わり映えしなくてな。かつてのお前ほどみんなを取り仕切れる奴がいないんだよ。だから……カナダから帰ってきたことにでもして、またお前が来てくれるのも良いんじゃないかと思ってな」 朝倉は驚き眼をして、次に柔和な笑みで「ありがとう」と俺に言うと、 「でもごめんなさい。それは無理なの」 何故だと聞くと、 「わたしの行動が上のほうにも伝わっているから。二度までもあなたを脅かしたわたしは、もうあなたの近くにはいられないわ。だから、あなたの気持ちだけ受け取っておくね」 そんなのは関係ない、と食い下がる俺に朝倉は少々困った顔を見せ、 「……じゃあ、もしまた会う機会があったら、そのときはあなたになにかご馳走でもするわ。そうね、なにか好きな料理を教えてくれない? 頑張って作ってみることにするから」 「――そうか」と流石に俺は朝倉の意を汲み取り「……じゃあ、冬といえばやっぱり鍋だな。クリスマスにはSOS団でいろんな具材が入った鍋をやるから、なにか他の……そうだな、鍋と言えば我が家ではおでんだと決まってるんだが」 「じゃあ、そのときはおでんを振る舞ってあげる。美味しく出来上がるかはわからないけど」 「ああ、すまないな朝倉。……美味しかったよ」 と、朝倉はクスクスと微笑し、 「なに言ってるの? まだ食べてなんかないじゃない。感想を言うには気が早すぎるよ」 なに、不精な俺のことだ。もしかしたら馳走の礼を忘れるかも知れないからな。それに朝倉が作るおでんは、俺の舌をウマいと絶叫させるって決まってるようなもんだ。 「ありがと」 朝倉は目を細くして言うと、大人の朝比奈さんに顔を向けて、 「後はわたしに任せてもらうとして、あなたたちはどうするの?」 「そうですね」朝比奈さんは小さな自分を見ると「あなたはこのまま、古泉くんを迎えに行ってください。そして、またあの公園で落ち合いましょう」 「わかりましたっ。それじゃあ、あたしは先に古泉くんのところへ向かいますね」 すると朝比奈さん(小)は朝倉の名を呼び、 「ホントに……ほんとうに良かった。色々あったけど、これでよかったんだってあたしは思います」 「……そうね。わたしもそう思うわ」 ニコリと笑った朝比奈さんに、ちょっと待って、と長門が呼びかけ、 「その七夕の日のわたしに、全てが完了した後でパーソナルデータは初期の状態へと戻して置くように伝えて欲しい。そのままでは、以後の活動に支障をきたしてしまう恐れがある」 「はい。ちゃんと伝えておきます。……ではキョンくん、涼宮さん。目をつむってもらってていいですか?」 そうだった、と俺とハルヒは目をつむり、そして目を開けたときには、朝比奈さんは既に古泉の元へと飛び立った後だった。 ……朝比奈さんの言う通り、俺もこれで良かったんじゃないかと思っている。今までの経緯にはマイナス要素も含まれていたが、それはいわば計算式の一部であり、現在の結果となる答えにはそれも不可欠なのだ。終わりよければ全てよしという言葉はまさにそのことを表しているのだろう。 「そしてキョンくん。元の時空へと戻る前に、あなたに説明しておきたいことがあるの」と朝比奈さん(大)は「まず……長門さんが病気だと言って学校を休んだときから続いていた、彼女と情報統合思念体とのトラブルについて」 ……ああ、それもまだ明かされていない謎だったなと思いながら、俺は話を聞く体勢に入る。 「長門さんはね、世界が分裂していたことを最初は認知していたの。だけどその異常事態をわたしたちに教えることは、それの観測を重要視していた思念体から禁止されていました。そこで長門さんはとある仲間の思念体を自分の管理下に置き、その仲間を通してわたしたちに知らせようとしたのだけど、それが上のほうにばれてしまって阻害されてしまったんです。そこで長門さんは自身の力を振り絞ってなんとかその仲間の身体を保持することに成功したんだけど、個人の力では赤ん坊の身体を構成するので精一杯だった。そこで長門さんはその子に死の概念……えっと、普通の人間のように肉体的な成長を授けて、思念体の精神的干渉を防ぐようにしたんです。そしてわたしにその子を託して、未来の時の中で成長させようと考えていたの」 ……つまり、それが朝比奈みゆきだってことなのか。 「そうです。そしてもう一つ。今回長門さんのパーソナルデータが消去されてしまったのは、わたしが原因なの」 「それ、どういうことなんですか?」 「わたしが前日にみゆきを連れてキョンくんに会いにきたでしょう? みゆきを連れてきたことこそが、長門さんに死を思わせるキッカケとなったんです。何故かといえば、みゆきの存在を長門さんが感知したとき、長門さんはひどく動揺したんです。みゆきの元となった思念体の構成情報が変化して、まるで人と同じような精神構造を持っていたから。……そこで長門さんは、強く思ってしまったの。やはり、死というものによって感情は形成されるんじゃないかって」 じゃあ、あの時の会話を長門が聞いていたからじゃなかったのか。 「ええ。思念体は長門さんたちを通してでなければ人と触れ合うことが出来ませんし、長門さんにそんな機能はありませんから」 ちょっといいかしら、と朝倉が急に話へと加わってきて、 「……その思念体って、誰だったの?」 大人の朝比奈さんは、申しわけないのか何なのか分からないような微妙な表情で、 「――それは、禁則事項です」 「……そう。まあいいわ、興味本位で聞いてみただけだから」 どこか切なそうに言う朝倉に、 「ふふ。ほんとに、なんでみゆきは朝倉さんみたいな子にならなかったのかな。……わたしの育て方が悪かったのかしら?」 若干本気で心配するような顔を見せ、 「――じゃあ、この世界と長門さんをよろしくお願いします。また……お会いしましょう」 ん? 長門はここに残るのだろうか? と眼鏡の長門は、 「わたしはここに残らなければならない。あなたたちの傍にいるべきわたしは、あなたたちが元の時空に帰還した後身体を再構成したうえで、パーソナルデータが消去される直前のわたしのデータを入力してくれるといい」 「そうなのか。……でも、そうするとまた記憶を消されるんじゃないのか?」 安心して、と長門は俺に言い放つと、 「……わたしはもう死を願ったりはしない。わたしは、わたしとして生きていく」 そして俺の瞳をじっと見つめ――、 「みんなと一緒に」 「じゃあ、そろそろみんなともお別れね。……色々ごめんなさい。あなたにはいくら謝っても足りない程だけど、そう悠長にしている時間もないかな」 「ん? どういうことだ?」 訝しがる俺に朝倉がAAランクプラスの笑顔を披露しながら言った言葉は、まるで登校中の一ページを見ているかのようで、あの頃の優しい委員長が戻ってきたような懐かしさに満ちていた。 「――急がないと、学校が始まっちゃうよ?」 第十三章
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3477.html
2.レトロウイルス それはわかってたさ。倒れた状況、長門の態度、どれを取っても普通じゃない。 おおかた長門の話を聞いた古泉が、先に病院に連絡をしていたのだろう。 「だろうな。とりあえず何が緊急事態なのか教えてくれ」 長門はまっすぐに俺を見据えていった。その表情はわずかに暗い気がする。 「涼宮ハルヒの精神が、浸食されつつある」 浸食? 何かがハルヒに入り込んでいるってことか? 「そう」 それは何だ? そう聞く俺に、長門は表情を変えずに答えた。 「珪素構造生命体共生型情報生命素子」 またその長ったらしい名前か。久しぶりに聞いたよ。未だに全部覚えられないけどな。 あれだな。1年生が終わるってころに阪中が持ち込んだ事件。 阪中の、あの哲学者と同じ名前を持つ何とも愛らしい犬に憑依した存在。 あれと同じか。ウイルス、と定義してたな。 「そう」 「ハルヒも陽猫病にかかったってことか??」 俺はシャミセンの頭に宿っているはずの何かを想像しながら言った。 確か、消し去ることは許可されなかったからそんなことになったんだったな。 だったら、ハルヒもどっかに圧縮保存しておけば治るんじゃないのか? 少し希望が見えた気がした。 「今回はルソー氏と少し状況が違うようです」 笑顔の消えた古泉が口を出した。 お前には聞いてない、と言いたいところだが、長門が説明するより簡単な言葉で話してくれそうだ。 ここは大人しく聞いておくことにする。 「情報生命素子は、どんな珪素構造体にも寄生できるわけではないそうです。 どんなハードウェアにでもインストール出来るOSがないようなものですね」 わかったようなわからないような。それが何の関係がある? 「普通の情報生命素子は、宿主を選択して自分が寄生出来る構造体を選びます。 しかし、今回の情報生命素子は宿主の構造を探索して自分を変化させる能力を 有していた。そうですね、長門さん」 「そう」 長門がわずかにうなずく。 「大気圏突入により珪素構造体は自身の大部分を失った。 情報生命素子は新しい宿主が必要」 長門が後を続ける。 「情報生命素子は涼宮ハルヒの脳神経回路を始めとするネットワークを探索中」 探索? SOS団が週末に行っているあれ──なわけないな。 「涼宮さんの精神は、探索をかけられることによって過負荷がかかっている 状態です。それで他の機能──と言うべき部分に反応出来ない。 それが意識不明という結果です。本能的かどうか、生命維持の部分は 動いているようですが……。パソコンで一度にスペック以上の大量処理を させたときと同じ状態、と言えますね」 相変わらずお前の例えはよくわからん 「探索中に消去を実行した場合、涼宮ハルヒに及ぼす影響は未知数」 「そこでいきなり負荷を除いたらまずいってことか?」 「未知数。避けるべき」 「今回、お前のパトロンは消去には賛成なのか」 長門は軽くうなずいた。 「涼宮ハルヒの観察に支障を来す」 その探索とやらが終わったらハルヒは目覚めるのか? 「探索が終わると更新を開始する」 「更新?」 「涼宮ハルヒの精神が、情報生命素子に書き換えられる」 ──つまり 「目が覚めたとき、彼女は涼宮ハルヒではなくなる」 頭を殴られたような衝撃を受けた。 なんてこったい。ハルヒがハルヒでなくなる? バカな。冗談だろ? あのハルヒが別物になっちまうなんて考えられるか。 『神聖にして不可侵な象徴たる存在、それがSOS団の団長』 そう言っていただろ? ハルヒ。 「大丈夫ですか?」 気がつくと手を握りしめていた。暑くもないのに全身汗をかいている。 「そちらに座ってください。今にも倒れそうですよ」 古泉が指した椅子に素直に腰掛けた。 頭がくらくらする。異常にのどが渇いていることに気がつくと、古泉がコーヒーを差し出した。 「とりあえず飲んで落ち着いてください」 これが落ち着いていられるか? 「すみません」 古泉はあっさり引き下がった。俺も素直にコーヒーを飲むことにした。 「そう言えば朝比奈さんは?」 タクシーに同乗していたはずの彼女が見あたらない。 「涼宮さんのご両親に事情を話して貰っています。 女性からの方がいいと判断しましたので」 確かに、こんな訳のわからない状態で男が一緒だと、何か疑われかねない。 「まさか本当のことを言うわけにはいかんだろうが」 「大丈夫です。彼女は頭を打って意識不明ということにしています」 俺たち全員がその場にいたこと、学校の階段から転がり落ちたことにする、と説明を受けた。 あのときの俺と同じか。しかし何でわざわざ全員いたことにしたんだ? 「貴方と2人きりだと、何か疑われるかもしれません」 本当に抜かりがないな。だが詳細にこだわるとかえってボロがでるぞ。 コーヒーの効果はあったようだ。冷静にこんな会話が出来るほどにはな。 「すまん、古泉。ありがとう」 ここは素直に礼を言った。古泉は驚いた顔をしたが、今日始めてニヤケ面を見せた。 「貴方に素直にお礼を言われるとは」 しかし、直ぐに真顔に戻った。 「長門さん、聞きそびれていたのですが、情報生命素子を消去出来るタイミングは あるのですか」 「今は無理。探索が終了し、更新を開始する直前のみ」 「チャンスは1回ってことですか……」 「更新が開始されると涼宮ハルヒの一部となり、消去とともに涼宮ハルヒの情報も 消去される」 それは大問題だろ。 「私は涼宮ハルヒにつきそう。探索は1週間程度かかるとみられるが、 正確に判断はできない」 そうか。また長門に負担をかけちまうな。 「問題ない。SOS団の保全が私の使命」 俺は少し驚いた。以前は俺とハルヒの保全が使命だと言った。今はSOS団の保全と言い切った。 それだけ、長門にとってSOS団が大切になっているということか。 「長門、すまん、頼む」 今はただありがたい。 「僕たちは学校に戻りましょう」 古泉に促されるが、俺はハルヒについていてやりたい。 「長門さんもおられますし、もうすぐ涼宮さんのお母様も見えますから」 俺は眠っているようなハルヒを見た。精神に負荷がかかっている状態のはずだが、苦しそうには見えない。 そういう表情を表に出す余裕もないということか。 ハルヒ、必ず助けるからな。 心の中でそうつぶやくと、俺たちは病室を後にした。 「キョンくん、古泉くん!」 病院の入り口で朝比奈さんに会った。知らない人を連れているが、ハルヒに似ている。 「こ、こちら涼宮さんのお母さんです」 朝比奈さんが紹介してくれた。 「はじめまして、古泉です」 古泉が頭を下げる。俺も倣って、はじめましてと言って頭を下げた。 「涼宮さんはどうですか」 不安げな顔で朝比奈さんが聞いてきた。 「まだ意識不明です。長門さんがついています」 「そうですか……」 暗い顔でうつむいてしまった。そんな顔は似合いませんよ、と言いたいがそんな場合ではない。 「すみません、俺のせいです」 ハルヒの母親にむかって、俺は頭を下げた。 「え? でも、これは事故でしょう。頭を上げて」 朝比奈さんから嘘の説明を受けているハルヒ母は、そう言ってくれた。 しかし、俺は責任を感じずにはいられない。 今回の事件、俺は最初からハルヒ的変態パワーを疑っていた。 そうじゃなくても、何が起こるかわからない、とわかっていたはずだ。 それにもかかわらず、俺はハルヒがあの隕石に触れるのを止めなかった。 UFOとかそんな物じゃなかったということで気を抜いた。 あのとき止めていれば。せめて長門を呼んでいれば。 俺は今までの経験をまるで役に立てることができなかったじゃないか。 それが悔やまれる。 「失礼します」 俺は言って、その場を去った。 「僕はこれで失礼させて頂きますよ。バイトが入りましたので」 バイト、を強調して古泉が言った。 「閉鎖空間が? こんな状況でか?」 「こんな状況だからですよ」 古泉が深刻な顔をしていった。今日は、いつものニヤケ面をほとんどしていない。 さっきコーヒーの礼を言った一瞬だけだった。こいつに取ってもそれだけ緊急事態なんだろう。 「今回は普通では考えられない程の負荷が涼宮さんにかかっている訳ですから」 なるほど、確かにそうだ。ただ、閉鎖空間を作れるほどの余裕が、むしろないと思っていた。 「それは僕にもわかりません。が、現に今閉鎖空間は発生している。 正直に言いましょう。 既に涼宮さんが倒れてから3回、閉鎖空間が発生して います。 規模も今までにない規模です。何度神人を倒しても、また発生する。 こんな事態は初めてです」 「お前らは大丈夫なのか」 「おそらく、涼宮さんに寄生する素子が除去されるまではこの状態でしょう。 僕も学校には行けないと思います。休憩などの調整も含めて、機関で僕らの スケジュールが埋まっていますから。」 僕ら、と言ったのは、超能力者たちのことか。ご苦労なこったな。 「ええ、しかし後手に回るしかできません。 僕が一番恐れているのは、情報生命素子が涼宮さんの持つ能力に気付くことです。 おそらく情報統合思念体もそれを恐れているでしょう。もう気付いているかもしれない」 そうするとどうなるんだ? 「わかりません。情報生命素子がそれをどう考えるかは長門さんにも解らない そうです。いずれにしても、影響は『更新』が行われた後でしょう」 すべてが未知数か。確かに後手にしか回れないな。 「今は僕にできることをするまでですよ。それでは」 古泉は片手をあげて去っていった。 できることをするまで。そんなことは解っている。でもな。 俺にできることって何だ? そこまで考えて、俺は部室においた鞄に財布を入れっぱなしなことを思い出した。 くそ、学校まで歩かなきゃならんのか。 そう思ったが、見覚えのありすぎる黒塗りのタクシーが俺を迎えてくれた。 俺が自分の無力さに半ば打ちひしがれたような気分で学校に戻ると、2時間目が終わる頃だった。 そのまま部室に鞄を取りに行く。 ハルヒが持っていたはずの鍵を長門が渡してくれていたので、それで部室の鍵を開ける。 俺の鞄と、ハルヒの鞄がそのままおいてあった。ああ、これを届けなくちゃな。 俺にはそんなことしかできないのか。 「……っ」 思わず涙がこみ上げてくる。朝はあんなに元気だったのに。 隕石の落下を目撃して、UFOと決めつけてはしゃいでいた。何ともハルヒらしい。 「ハルヒ……っ」 やばい、今は泣いている場合じゃないんだ。 ──泣いてんじゃないわよ、バカ!!── ハルヒが見たらそう言われそうだ。 いっそ怒鳴りつけられたいね。元気なハルヒに会いたい。 ふと、以前の失われた3日間を思い出した。長門によって改変された世界。 あのときも必死になってハルヒを捜したな。 あのときと違って、ハルヒは病院にいる。 それは解っているのだが、長門の言葉が胸に突き刺さったままだ。 『目が覚めたとき、彼女は涼宮ハルヒではなくなる』 これじゃあの3日間よりタチが悪い。 あのとき、見つけたハルヒは変態パワーこそ失っていたが、あくまでも涼宮ハルヒだったじゃないか。 「畜生……」 授業を終えるチャイムがなり、俺は無力感を引きずったまま部室を後にした。 ふらふらと教室に入ると、谷口と国木田が話しかけてきた。 「キョン、朝は大変だったみたいだね」 「涼宮が怪我するとはな。大丈夫なのか?」 この2人なりに心配してくれているらしい。 「まだ意識は戻らんが、怪我はないらしい」 そう言っておいた。本当のことも言えるわけないし、要らん心配もかけたくない。 「そうか、お前も元気出せよ」 そう言って自分たちの席に戻っていった。俺はそんなに顔に出ていたのか。 思わず苦笑した。 3.役割へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5830.html
家に帰る途中、ふと見慣れたマンションを目にする。 あれは…長門の住んでる所だ。そういえば、今日は長門と全然話せなかったな。 昨日のことに関しても…まともに礼も言えてない。ちょっくら挨拶してくるか。 1階の玄関へと入り、インターホンを鳴らすべく3桁の部屋番号を入れる。 …いや、入れようとした。 …… 長門の部屋番号…何だったっけか?…忘れた。なんたる不覚!これでは呼び出せないではないか… とはいえ、このまま帰るのも癪だったので、携帯で長門に番号を聞くことにする。 …ガチャ ドアが開いた。はて、俺はまだインターホンすら鳴らしていないのだが。 それどころか長門に番号すら聞いていないのだが。これは一体どういう原理だ? すると、中から顔を覗かせている人物がいる。どうやら、彼女がカギを開けてくれたらしい。 1階に降りてまで、いちいち開けに来てくれたっていうのか?なんともご苦労様なこった。 「…長門!?」 「カギは開けた。これであなたも入れる。」 「そ、それはいいんだが…どうして俺がココに来てるってわかったんだ??」 「部屋の窓から、あなたがマンションの中へと入っていくのが見えたから。」 「そうなのか…それは運が良かったぜ。…ん?」 俺は違和感を覚える。 「そういや…何で1階にまで降りてくる必要があったんだ? お前の能力を持ってすれば、玄関のロックを遠隔操作で外すことくらい造作な…」 言いかけて気付く。…バカだ俺は。なぜ今になって気付いた…、 こいつは俺のせいで、しばらくの間、情報統合思念体として力を行使できないんだろうが…! 「…すまん長門。」 「いい。それより、入って。」 素直に従い、マンションへと入れさせてもらうことにする。 …… 長門の階に着き、部屋へと入る俺。 別に、ちょこっと話す程度だったから、外での立ち話でも全然構わなかったのだが… とはいえ、今は12月。寒冷化に見舞われる時期の上、時は夕刻だ。中で話そうという 長門さんの判断は正しかったのかもしれない。案の定、暖房がつけてある。…なかなか心地よい。 …相変わらず殺風景な部屋だな。と言おうと思ったが、今回は少し違った。 本棚が置いてあったのだ。もちろん、中には書物が敷き詰められている。 「長門…こんなにも大量の本、一体どこから持ち込んだんだ…??」 「…秘密。」 「……」 そうですか…そうきましたか長門さん。まさかの黙秘権行使というわけだ。 おおよそ例の能力でも使ったんだろうが…。もっとも、本自体を情報連結で作り上げたのか。それとも、 元々これらの書物は部屋にあったということで情報操作されたのか。いずれかは俺の知るよしもない。 テーブル手前の座布団にて、とりあえず座る俺。…お茶を持ってくる長門。 「…どう?」 「……、おお、なかなか美味しい緑茶だな!」 「…そう。」 いや、マジで悪い味はしない。一度、部室でみんなに披露してみたらどうだろう? 朝比奈さんとは違った、また別の良い味を出せるかもしれないぞ。 …… 「それで、要件は何?」 「え、ええっとだな…。」 面と向かって聞かれてもな…あ、いや、これが長門のキャラだってのはわかってるぜ。 「今日、お前と全然話せなかったじゃないか?だから、ちょっとしゃべろうと思ってな。」 「…そう。」 「とりあえず長門…、今までどうもお疲れ様。ハルヒが倒れてからというもの…気が気じゃなかっただろう?」 「…あなたこそ、よく頑張ったと思ってる。同じくお疲れ様と言いたい。」 「そして…改めて言わせてもらう。長門、いろいろとありがとな。」 「……」 「お前が与えてくれた情報に、俺は幾度となく助けられた。何より俺の命を救ってくれたもんな。 だから、本当に感謝してる…ありがとう。」 「…いい。むしろ感謝するのは私のほう。あの局面で、世界を救ってくれたあなたは称賛に値する。 重要観察区域である地球の秩序が守られたことで、私を含む情報統合思念体の面々は あなたに感謝している。と同時に、私はSOS団の一人としても、あなたに感謝したいと思ってる。 涼宮ハルヒを助けてくれて…本当にありがとう。」 「長門…。」 「それともう一つ、あなたに礼を言っておかねばならないことがある。」 「…?」 「今日の不思議探索のときは…ありがとう。」 「??何のことだ?」 「私のことを…あなたはかわいいと言ってくれた。」 !! 「それを聞いたとき私は…嬉しかった。だから、ありがとう。」 …… ------------------------------------------------------------------------------ 「…待て。今のが不思議とどう関係あるんだ?」 「それはね、有希が予想外にかわいかったってことよ!」 「…全然意味がわからないんだが…。確かに長門はかわいい、俺もそう思う。だが、それのどこが不思議だ??」 ------------------------------------------------------------------------------ 『確かに長門はかわいい、俺もそう思う。』 『確かに長門はかわいい、俺もそう思う。』 『確かに長門はかわいい、俺もそう思う。』 『確かに長門はかわいい、俺もそう思う。』 全然自覚してなかった… 本人を目の前に、俺はこんな台詞を吐いてたんだな…、 「まあ、その…なんだ、礼を言われる所以はどこにもないぜ。事実、お前はかわいいんだし。」 ッ! また… 俺は何を言ってるんだ…?? 「そう言ってくれると…、嬉しい。」 うーむ…思ったことをすぐ口に出す俺の癖、直したほうがいいかもしれんな。 「…それにしても、今日はどうだった?ハルヒと一緒にいて楽しかったか?」 「楽しかった。いろんな服を着れて…私は凄く満足。」 「そりゃよかったな。」 最近、長門が変わってきてるように見えるのは…決して気のせいではないだろう。 オシャレを気にしたり、『かわいい』という言葉に反応してみたり…なんというか、随分と女の子らしくなった。 それだけじゃない。文化祭が終わってからというもの、彼女はギターに興味津津だ。これまで趣味といえば 読書くらいだった長門…加えて、今じゃ料理までその範疇か。それだけに今の長門は、見てて何か微笑ましい。 「あなたは…今日はどうだった?楽しかった?」 「いや…図書館で調べ物をしていただけに、そんな楽しくはなかったな。」 「…嘘。」 「…え?」 「古泉一樹のあの発言は嘘…本当は調べ物なんかしていない。適当に涼宮ハルヒを繕っただけ。」 「…どうしてわかったんだ?」 「勘。」 「く…ふふっ、あははは!長門には全てお見通しだったってわけだ!」 後で長門には本当のことを話すつもりだったのだが…まさか、第一声で『嘘。』と断じられるとは。 あのとき能力が使えなかった長門ではあるが…そんなのお構いなしだったということかい。さすが長門さん。 「それにしても、勘…ね。いやに漠然としてるじゃないか。」 「涼宮ハルヒと朝比奈みくるの会話に彼が…古泉一樹が割って入ってきた時点で怪しかった。 何か意図があると感じた。古泉一樹の行動が不自然だった。判断材料としては、それで十分。」 …… どうやら長門さんの分析力・洞察力の前では、あの古泉とはいえど歯が立たなかったらしい ダメじゃないか古泉!そんなことじゃ一流の詐欺師にはなれないぜ!?…何を言ってるんだ俺は。 「今日はな、こんなことがあったんだ。」 俺は、長門に事の全てを話した。 古泉・朝比奈さんと話したこと。藤原・橘に会ったこと。大人朝比奈さんに呼び出されたことetc.... …… 「…私は」 「…ん?」 「私は、謝らねばならないことが二つある。」 「な、長門??」 「一つは、藤原一派の件。」 「…!」 「私の勘違いで、私はあなたちを窮地へと追いやってしまった。 不必要な争いをしてしまった…本当に申し訳なく思ってる。」 「長門…、」 ------------------------------------------------------------------------------ 「そうかよ…ならいいんだがな。それにしたって、俺は忘れたわけじゃねえぞ! よくも…朝比奈さんを血まみれにしてくれたな!?」 「ああ、あれか。あのことで僕たちに文句言われても困るんだがな。やったのは九曜だし。」 「もっとも、その九曜さんは今ここにはいませんけどね。」 「そういう問題じゃねえだろ!?九曜とか何とか関係ねえ、連帯責任だ!」 「うるさいやつだな…第一、九曜にそうさせたのはどこのどいつだ?」 「あれって言わば正当防衛みたいなものですからね。私たちが非難される所以はどこにも ありませんよ?誰かさんが家を爆破したりしなきゃ、こんなことにはならなかったんですから。」 ------------------------------------------------------------------------------ …… 「いや、お前が責められる言われはどこにもないさ。もとはと言えば、偽朝比奈さんに唆されて 藤原たちを犯人だと決めつけてた俺が悪いんだからさ…お前は俺の言葉を信じてくれてたわけだし むしろ謝るのは俺のほうだ。気にする必要なんか、どこにもないぞ?」 「…優しい人。」 「ん?何か言ったか?」 「…なんでもない。」 …… 「もう一つは、一度でも朝比奈みくるのことを疑ってしまったこと。 彼女の事情を知ってしまった今となっては、酷くそれを後悔している…。」 「…ありゃ仕方ねえよ。お前だって、朝比奈さんが犯人だなんて思いたくなかったんだろ?? ただ、状況証拠ゆえに…そう思わざるを得ない事態へと追い込まれたんだ。」 「…でも、私は…、」 …… 「謝ったとして…彼女は私のことを許してはくれるだろうか?」 「……」 …… 「…そこに居合わせた古泉も朝比奈さんに謝ってたんだがな、 彼女は…ヤツに対して、決して酷いことは言わなかったぜ?」 俺は、朝比奈さんが古泉に対し言った言葉を長門に伝えた。 『…確かに、それを聞いたときはショックでした。でも!それを言うなら私にも非があります…! だって…考えてもみれば、世界がどうなるかもわからないこの局面で…みんなに何の相談もせず、 勝手に時間移動をしてしまった。状況的に疑われても仕方ないことを…私はしてしまいました。 だから、責められるべきは迂闊で軽率な行動をしてしまった…私にあります。古泉君は…涼宮さんのことを、 みんなのことを一生懸命考えてた…!だから、一つでもあらゆる不安要素は潰しておきたかった! 仲間想いの優しい副団長さんだと…私はそう思いますよ…?』 …… 「彼女は…そんなことを。」 「ああ…、そんなわけだからな。朝比奈さんは、決してそんなこと気にしちゃいないぞ。」 「……」 「だから、俺は別に謝る必要はないと思うがなぁ…もっとも、 それじゃお前の気が済まないっていうのなら、そのへんは好きにすりゃいいさ。」 「…そう。」 …… 「ところで長門…体のほうはどうだ?大丈夫か?」 「…?なぜそんなことを?」 「だってお前…今、能力とやらが使えないんだよな? そのせいで、何か体に異変でもきたしてないかって心配になったんだよ。」 「…情報の操作と改変における力は基本、身体機能とは独立したもの。 凍結されたところで、この個体に変調をきたしたりはしない。」 「そうか…それならいいんだが。 しかし、一切の能力が使えないっていうのは いろいろと大変だろう…何かと不便なんじゃないか?」 「…不便かと聞かれれば、否定はしない。」 「だからさ、何か困ったりきついことがあったりしたら いつでも俺を呼んでくれよな。携帯にはいつも出られるようにしとくからさ!」 「…それではあなたに迷惑がかかる。」 「何言ってんだ…??もとはと言えば、俺のせいでこんなことになってるんだろう!? なら、お前の能力が戻るまでの間、いろいろと支えてやるのは当然のことだろ?」 「…ありがとう。」 「礼なんかいらねえぜ。…そういうわけだから、能力が回復するまでの間は何かと気をつけろよ。 今のお前は普通の人間なんだから…間違っても、夜遅く一人で出歩いたりするんじゃねーぞ?」 「…わかった、気を付ける。同時に、自身が【広義で言うところの人間】であることも自覚しておく。」 「おう、よろしく頼むぜ。」 そういや…能力で思い出した。 「長門…聞きたいことがあるんだ。」 「何?」 「今回の一件でハルヒの能力が失われつつあることは…、お前は知ってるか?」 「知っている。近いうち、涼宮ハルヒの能力は完全に消滅する。」 「そうか…古泉の言ったとおりだったな。…それでだな。」 …… 「もしハルヒの能力がなくなったとしたら、お前はどうすんだ?」 「……」 「やっぱ…宇宙へ帰っちまうのか…?俺たちと一緒には…いられないか?」 「それについては何とも言えない。」 「…わからないってことか?」 「…涼宮ハルヒの能力が消滅、即ち彼女が一般有機生命体としての存在を確立したとき。 それは、彼女が情報統合思念体の観察対象から外れることを意味する。その場合、 有機ヒューマノイドインターフェイスとしての私の役割は終了する。同時に、存在意義もなくなる。 そんな私が地球に留まれる可能性は極めて低い。上からの許可が下るとも、到底思えない。」 「…お前の意志を聞かせてくれ。お前自身は…どうしたい?」 「立場上の制約を無視し、私という個体のみに意見を求めるならば」 …… 「私は…あなたたちと一緒にいたい。」 「…長門…!」 「あなたたちは、私にとってかけがえのない人たち。」 「……」 『長門さん…ですか。そればかりは本人に聞いてみませんと… わかりませんね。おそらく、内心は僕らと近いはずです。』 内心は僕らと近いはずです…か。古泉、やっぱお前の言ったとおりだったよ。 長門も…俺たちSOS団のことを大切に思ってくれている。お前や朝比奈さんみたいにな。 「…もし、上がどうしてもお前の独立を認めなかったとき…そのときはどうする?」 「そのときは、あきらめざるをえない…。」 「…顔が不服そうだぞ?本当は、嫌でも抵抗したいんじゃないか?」 「抵抗など無理。私という個体がそれを感じている。」 「…勝てないと思ってるのか?」 「勝つ勝たないの問題ではない。上と戦うなどという発想自体、私にはない。」 「…何あきらめてんだ!?必死に思いを上連中にぶつけてみたら、万一にもわかってくれるかもしれないぞ。」 「逆らってまでも、自己主張することは許されるの?」 「誰が許さないって決めたんだよ…。お前が決めたんならともかく、そうじゃないなら… まずは自分の意志を突き通すことから始めようぜ?ダメならダメで、またそのとき考えりゃいいさ。 そんときは俺も助太刀してやる。…もっとも、俺なんかじゃ力にもならんだろうが… でもな、少なくともお前の背中を押してやれることくらいは、できると思ってるからな。」 「…優しい人。」 「ん?」 「あなたは…以前の世界でも、そうやって涼宮ハルヒを助けだした。…違う?」 「……」 ------------------------------------------------------------------------------ 「…バカなことを。仮にも神の化身であるあたしが、そんな考えをすることは許されないわ…。」 「誰が許さないって決めたんだよ?」 「え?」 「確かにお前自身は神の意志で生まれてきたのかもしれない。でもな、 別個体で生まれたって時点でもう神だの何だの関係ねーんだよ!!好きに生きりゃいい。」 「あんたは何を言って…それはね、無責任というものよ!?第一、化身である以上 これからもずっと神の意志に束縛されて生きていくのは自明で…。」 「単にお前が勝手に束縛されてると思ってるだけなんじゃねーのか。 自分の意志で生きることを諦めてるようにしか、俺には思えない。」 「……っ!」 「自分がしたいと思えばそれをすればいい、やろうと思えばやれる…お前は十分そういう立場にあるんだからな。 それを忘れるなよ…俺という人間が世界中で俺一人しかいないようにお前もお前でしかねえんだからな。 なら、束縛だの何だの難しいことは忘れて胸張って好きなように生きりゃいいんだよ。」 ・ ・ ・ 「じゃあさ…もしあたしが自分の意志で、一人の人間として生きたいと願ったとして、 もしそれを神が妨害してきたら…そのときはどうすんのよ…??」 「そんときは…俺がお前を助けてやる。」 ------------------------------------------------------------------------------ …… はははっ…何だこりゃ?あのときと…言ってることが見事に一緒じゃねえか。 何か既視感めいたものを感じると思ったら、そういうことだったんだな。 あの世界の俺とは…思考パターンまで同じだったわけだ。 『いくら自分とは対の異世界人だとしてもね…、何もかも違うってわけじゃないの。 性格や思考パターンといった、そんな内面的・本質的なものは…基本変わらない…。』 自分という例に当てはめ、初めてこの朝比奈さん大の言葉に実感が沸いた。 第三世界の【俺】と第四世界の俺…まあ、厳密に言えば 朝比奈さんの言う『対の異世界人』とは意味が違うんだがな。 「まあ…ハルヒのことは置いといてだ。お前自身は結局どうするんだ?」 「そのときは異議を唱える。あなたに言われ、私はそう決心した。」 「!そうか、決心してくれたんだな…。」 「確かに、何事もやってみなくてはわからない。私はそれを…あなたから教わった。 だからもし、私がそれを躊躇してしまったときは…そのときはあなたにも協力してほしい。 …あのときの涼宮ハルヒのように。」 「ん?最後何て言ったんだ?」 「…なんでもない。」 「そうか。まあ何はともあれ、お前もこっちの世界に残ってくれるようで安心したぜ!」 本当に良かった。これで…ハルヒの能力が消えるにしろそうでないにしろ、 SOS団は全員続投というわけだ。…改めて、みんなの絆を確認できたような気がする。 …… …もうすぐ6時半か。そろそろ家に帰る…かな。夕飯を家族に待たせでもしたら大変だ。 「長門、今日はお前といろいろ話せてよかったぜ。」 「私も…同じ。」 …… 「じゃぁな長門。また明日!」 「また明日。……ぁ…、」 「ど、どうした?」 「曲作り…頑張って。」 「お…おう。頑張らなきゃな!はははは…。」 俺は長門の家を後にした。 …… ホント、作曲どうすんだ俺… 家まで直進するつもりだったが…ちょっと寄り道すっか。ゴメン家族のみんな… 本屋行って、早速そのあたりの本をチェックだ!善は急げ…だな。 本当は楽器店がいいんだろうが…こっからは遠い上、今日はもう遅い。また明日考えるとしよう。 そんな慌ただしい様子で、この日は幕を閉じたのさ。 後で気付いたんだが、今日の不思議探索…何で集合が3時だったんだろうな? いつものハルヒなら12時や1時を指定していただけに謎だ… もしかしてあれか?ハルヒも…俺と同じだったのか?そういやメールの発信時刻が2時をすぎてた記憶がある… なるほど、いくら前後の記憶がなくなってるとはいえ、疲れは健在だったというわけだ。 …あぁ、そういうことか。駅で会ったとき、いつも以上に俺の遅刻を咎めてるように感じたのは… 気のせいじゃなかった。俺への戒めを隠れ蓑に、強引にも悟られまいと、画策したんだなあいつは!? 自分の寝坊を …… そんなハルヒも、なかなかカワイイと思った。 それから2週間がすぎた。 今日は12月23日。 …… 時は夕刻。俺は最寄りの店へと寄っていた。いろんな人形やぬいぐるみを手にとり凝視する俺。 「おいおいキョン、まさかお前にそんな少女趣味があったとはなあ…正直失笑もんだぜ!!」 はてはて、特にこいつは影が薄いキャラ設定でもなかったはずだが…俺はこいつの気配に 今の今まで気づかなかった。ここ最近ハルヒの閉鎖空間云々といった騒ぎに巻き込まれず、 温和な日々が続いていたせいだとでもいうのか?すっかり外的要因を感知する能力が衰えていた。 「外的要因??キョン、そりゃあんまりじゃねーか?俺はお前の親友だろ?」 悪友といったほうが正しいような気もするが。とりあえず、少女趣味云々イミフなことを言うヤツは放置に限る。 「あーあー、さっきのは悪かったって!あれだろ?妹ちゃんにやるクリスマスプレゼント探してたんだろ??」 わかってるんじゃねーか…ったく、別に俺がからかわれるのには構わないんだけどな。 そういうことを鶏が朝一番に鳴くようなレベルの大声で言うなと… もし側に俺の知人がいたら、こいつはどう責任をとるつもりだったんだ。 「だから悪かったって言ってるだろ… す み ま せ ん で し た ! 」 …わかった。わかったから!とりあえず大声出すのはやめてくれ…頼むから…。 …… 「ところで谷口、お前はこんなとこで何やってんだ?」 「あ?単にココア買いにきたってだけだぜ。」 「ココア程度なら外の自販機でいくらでも買えるだろう?なぜ、わざわざこんなデパートに?」 「だって寒いじゃねえか…外。暖房の効いた店に避難して何が悪い? そのついでにココアも買っちまおうってわけだ。別におかしくもなんともねーだろ?」 なるほど、筋は通ってる。 「はぁ…それにしたって、どうにか暖かくならないもんかねぇ…。」 「おいおい、今は冬至だぞ??そんなバカなことあるか。」 「今って地球温暖化の時代だろ?冬くらい暖かくならねえのかなってさ。」 「そんな都合良くいくかよ…人類だってバカじゃないぜ。日々日々、 温暖化に向けた対策を打ち出してんだからよ。その効果が表れてるのかもな。」 「へいへい…人類は賢いでございますこと。」 地球温暖化…か。 炭素税、クリーン開発メカニズム、国内排出証取引、排出権取引、直接規制によるCO2削減義務、 気候変動枠組条約、京都議定書……数えればきりがない。それくらい、俺たちは現代社会等で 温暖化対策を強く教わってきたし、各国もそれなりの規模で取り組んできた。 こんなにもやってんだ…そりゃぁ、ある程度の効果は出ねえと、泣きたくなるわな…。 「あぁー!今年ばかりは暖かくなると思ったんだけどな俺は!」 「…まだ言ってんのか。懲りねえヤツだな。」 「キョンだって見ただろ!?ちょうど、一か月前くらいのニュースでやってたじゃねえか! 12月は夏みたいな気温になりますってよぉ…。」 「そんだけ天気予報も当てになんねえってこった。文句なら気象庁にでも言うんだな。」 「文句言ったって暖かくなんねーよ!」 そんなバカ話をしながら、俺は妹へのプレゼントを買い終えた。 「それにしても楽しみだよな~ 明日が終われば、ようやく冬休みだぜ!」 …そう。明日は終業式である。 「授業を受けなくていいってのがポイントだよな。いや~幸せ幸せ。」 「宿題は出るんだろうけどな。」 「そんくらいわかってんだよっ!少しは夢くらい見させろ!」 …… 明日で今学期も終わり。 …ああ、わかってるぜ。何か約束あったよな…そういえば。 ------------------------------------------------------------------------------ 「そうそうキョン!忘れないでよね!!」 「…ん?何をだ?」 「作曲よ!作曲!!」 ・ ・ ・ 「じゃあ、今学期中には作ってくるぜ。」 「そう?わかったわ。じゃ、絶対作ってきてよね!また明日~」 ------------------------------------------------------------------------------ その直後、俺は後悔したわけだが。(時期的な意味で) …… なんとしても、今日中に完成させねえとな…ッ!! さて、この2週間の中で…1つわかったことがある。 …… それは 世界が救われたということである …… これでは言葉足らずか 『世界が救われたということ』が【確認できた】と、と訂正しておこう 12月2日 俺たちは世界を救った …だが、この時点ではまだ 神の消滅は確認されていない つまり 世界は一時的に助かっただけで、再び危機に瀕す可能性も考えられたということ 12月13日 この日、ようやく長門の力が回復する 12月14日 長門が 神・フォトンベルト・涼宮ハルヒの能力 この3要素の完全消滅を発表 12月15日 閉鎖空間の観測不可、および超能力者たちの能力消失が 機関から正式に通達される 涼宮ハルヒの能力の消滅が確定 12月21日 機関が以下の内容を発表 ・地球磁場の減少停止 ・地球気温上昇率の鈍化 ・太陽風や宇宙線の観測頻度の低下 ・地震頻度の低下 ・火山活動の沈静化 ・海流の安定化 長門もこれらを確認したことにより、フォトンベルトの消滅が確定 逆算的に神の消滅も確定 …それもそのはずだ 本来、ハルヒの能力無しでは 【フォトンベルト】とかいう空想の産物は実在しえないのだから 『未来の時間軸が安定しました。』 トドメは朝比奈さんのこの一言 当たり前だが、朝比奈さんのいる未来では第四世界の崩壊は確認されていない つまり…俺たちの世界が危機に晒されることは二度とない 世界は 救われた …… とか何とか言われても、いまいち実感が沸かねえってのが正直なとこだ…。 だが、確かに俺は聞いたんだ。長門・古泉・朝比奈さんが口を揃えて言ったことを… 『世界は救われた。』ってな。世界の危機に奔走したのは数日間だったが…俺には長く感じた。 …本当に、本当に終わったんだ。 …… 長門、古泉、朝比奈さん…そしてハルヒ どうもありがとう…!!
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/5830.html
登録日:2009/10/27(火) 21 32 44 更新日:2024/08/04 Sun 14 31 45 所要時間:約 5 分で読みなさい! ▽タグ一覧 00年代後半の覇王 20代ホイホイ CQD団 SOS団 どえらい美人 もう一人の主人公 わがまま アホのピラミッドの頂点 カチューシャ ジャイアニズム ジョーカー セクハラ大魔神 ツァラトゥストラ・ヒト型形態 ツンツン ツンデレ トラブルメーカー ハルヒの駅 バニー ヒロイン ホームズ役 ポニーテール メインヒロイン リボンちゃん 世界の破壊者 傍若無人 唯我独尊 団長 変人 女ジャイアン 巨乳 平野綾 概念系能力者 涼宮 涼宮ハルヒ 涼宮ハルヒの憂鬱 真の主人公 破壊神 神 自己中 行動力のあるバカ 頭のいいバカ 高校生 ただの人間には興味ありません。 宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、 あたしのところに来なさい。 以上! 涼宮ハルヒシリーズのメインヒロイン。 (CV 平野綾) ◆概要 北高1年5組→2年5組 SOS団の団長。 カン違いしている人が非常に多いが、少なくとも原作小説においては主人公ではない。 というか彼女が主人公であったら、原作小説は成立しえない。あくまで「観測される側」でなければこの突飛で複雑な物語は成り立たないからである。 まあ、一人称視点が薄めのアニメ版ではちょくちょく雑誌などで「主人公の涼宮ハルヒが~」などと記載されたりするのでその辺はあやふやだが。 アニメ版では身長158cmと設定されている。 『涼宮ハルヒの戸惑』では体重44㎏、AB型、誕生日は10月8日とされている(誕生日は中の人ネタ) 出典:涼宮ハルヒの追想、ガイズウェア、バンダイナムコゲームス、2011年5月12日、(C)2009 Nagaru Tanigawa・Noizi Ito/SOS団 (C)2011 NBGI 主人公のキョンと同じクラスで、キョンのすぐ後ろの席に座ることになる(何回席替えをしても、後述するハルヒの能力のためか位置関係は不変)。 入学当初は腰まで伸びるストレートヘアで、曜日ごとに髪形を変えていたが、 キョンに指摘されて以降は肩にかかる程度の長さで揃え、黄色いリボン付きカチューシャを着けている。 また、髪を切ってからも一度だけポニーテールにした(キョンからはひっつめただけ、と言われた)。 万人が認める美形であり、タクシーの運ちゃんからキョンが「その子は将来絶対美人になるからツバつけとけ」とか揶揄われる始末。 黒髪黒目(アニメ版では茶色っぽい黒髪)でプロポーションはキョン曰く「スレンダーだが、出るとこは出ている」。 実際客観的に見てもかなりのグラマラスであり、アニメ版や『長門有希ちゃんの消失』では全体的な平均点上昇もあって顕著。 特にバストは全女性キャラ中でもトップクラス。あくまでもみくるが大きすぎるのだ。 アニメ『らき☆すた』の第20話でTVCMにカメオ出演した際には、頭身が8頭身くらいに伸び、それはもう凄まじくダイナミックな大震撃を見せた。 成績は学年上位で、身体能力も高く入学当初はどの運動部からも熱心に勧誘されていた。 しかし一応一通りは体験入部してみたもののつまらなかったらしく、キョンの一言に自分で部活をつくることを思いつき、 文芸部部室を乗っ取って「SOS団」を作る。 性格は唯我独尊・傍若無人・猪突猛進かつ極端な負けず嫌いで、「校内一の変人」としてその名は知れ渡っている。 感情の起伏が激しく、情緒不安定になりやすい。 退屈を嫌っており、面白いことをいつも探している。 目的のためには手段を選ばず、時には恐喝や強奪に及ぶこともある。 "地"が露呈する以前の東中時代は、多くの男子に告白され、また必ずOKしていたがことごとく振っていた。本人は「みんなありきたりだった」と説明した。 自分の都合のいい言葉しか耳に入らず、それ以外の言葉は聞き流す。 普段は良くも悪くも自分勝手でエキセントリックな言動が目立つが、根底には少なからず常識的な感覚を持ち合わせており、 宇宙人等の不思議な存在がいて欲しいと思う反面、そんなものはいるはずない(少なくともそう簡単に見つかるはずがない)とも思う矛盾した思考形態を持っている。 また、キョンが倒れたと聞いて見舞いに現れたり、調子の悪い有希を気にかけるなど、他人を思いやる優しい面も持ち合わせている。 『ライブ・ア・ライブ』でコスプレをしたまま急遽バンドのボーカル代理を務めたエピソードも、言動はエキセントリックだが根は優しいところがあるという性格の現れである。 「恋愛感情は一時の気の迷いで精神病の一種」という持論を持つ。 ちなみに下ネタが苦手であり、キョンのエロ本発言に激怒した。二次創作でハルヒ「AVを作るわよ!」というネタが流行ったが、あくまで二次創作だった。 実は「願望を実現させられる」という、神にもなぞらえられるほどの力を持っており、様々な組織が彼女に関心を抱いている。 しかし本人はその力に全く気付いておらず、願望が本人の知らない内に具現化され、その度にキョン達は事態の収拾を付けるために奔走している。 願望がどういった範囲で、また、いつまで具現化しているかはハルヒの機嫌や願望の強さに影響されるため、規則性はまったくない。 うっかり彼女が自分の持つ力に気がついたら彼女によって世界は好き勝手に変えられてしまう危険がある。 なので周りの人間はハルヒの望みを表面的に叶えつつ、この力や超常現象による騒動をハルヒからは気づかれないよう隠し通す、というのが『涼宮ハルヒ』シリーズの基本ストーリーであるのだ。 故にシリアスな展開になると表立って登場出来ないという、ヒロインとしての欠点もある……。 そんな力を持つハルヒを抱えながらも世界がいまだにバランスを保っている点について、 古泉一樹は、「彼女自身は普段の奇抜な言動に反して至極常識的であり、不可思議な出来事が起こることを心のどこかで否定しているため」と推測している。 実際、キョンが一度SOS団の仲間達の正体を話した時も全然信じず笑い飛ばしたり、超常現象に巻き込まれた際もエキセントリックさはそのまま常識的な考えで動いている為概ね正しい。 過度とも言えるスキンシップや傍若無人な振る舞いも、弱い自分を見せたくない見栄と臆病さからなのかもしれない。 実際には超常現象や「特別」に憧れるだけの普通で平凡な女の子なのである。 その点で言えば、ある意味彼女の本質に近い性格なのはキョンなのだと思われる。 ◆渡橋泰水 「分裂」で意味ありげに登場し、「驚愕」で本格的に登場したSOS団の元気な後輩。 主にα世界で登場し、ハルヒも驚くくらいの体力を持ち、『MIKURUフォルダ』を発見するなど有能な少女。 その正体はハルヒの無意識がキョンと長門の危機を予知したため、それを回避するために生み出した分身。 泰水は自身が介入するα世界と本来通るはずだったβ世界を生み出した。 彼女の名前は『ワタシハスズミヤ』のアナグラムになっている。 古泉は説明するとき何故かアルファベットに変換していたが、これは驚愕が世界同時発売だったからという説がある。 仮に約束の設定を踏まえた場合、泰水はリボンちゃんに生み出されたか、古泉が無意識の実体化と言っているためほぼ同一の存在なのかもしれない。 ちなみにリボンちゃんとは違いキョンに無関心だったり敵意を持っていたりせず、むしろ興味津々。 泰水はハルヒの無意識の存在なため、SOS団に入部するとき受けたアンケートで答えたことはハルヒが普段SOS団に対して思っている事なのかもしれない。 超能力者、宇宙人等の中でどれが一番かという問いで、「一番喋ってみたいのが宇宙人」、 「一番仲良くしたいのが未来人」「一番儲かりそうなのが超能力者」「一番何でも有りなのが異世界人」らしい。 好きな四文字熟語は『空前絶後』 ◆リボンちゃん 出典:涼宮ハルヒの約束、ガイズウェア、バンダイナムコゲームス、2007年12月27日、(C)2006 谷川流・いとうのいぢ/SOS団(C)2007 NBGI 『涼宮ハルヒの約束』で登場した神人の一種でハルヒの無意識が具現化した存在。 ハルヒの無意識は古泉たちの正体に気付いており、一向に気づく気配がない表意識の自分に苛立っていた。 詳しくは項目参照。 ■涼宮ハルヒの約束 出典:涼宮ハルヒの約束、ガイズウェア、バンダイナムコゲームス、2007年12月27日、(C)2006 谷川流・いとうのいぢ/SOS団(C)2007 NBGI 北高祭前日がハルヒの力によってループしてしまう。 実際にループさせているのはハルヒの無意識……つまりリボンちゃんであり、 ループさせているのは、宇宙人たちと遊ぶという夢を叶えていないのに楽しんでいる自分に苛立ちながらも、 リボンちゃん本人も文化祭前日を楽しいと感じてしまったから。 バッドエンドではキョンが本物を見抜けなかったり、 行方不明の古泉たちへの心配やらが重なったのか世界を滅ぼす。 ちなみにキョンとキスして終わる結末もある。 ■涼宮ハルヒの戸惑 出典:涼宮ハルヒの戸惑、アクリア、バンプレスト、2008年1月31日、(C)2006 谷川流・いとうのいぢ/SOS団 (C)BANPRESTO 2008 コンピ研に対抗するためにゲームを作るが素人の集まりであるSOS団に作れる訳もなく、ハルヒは一ヵ月を何度も繰り返すことに。 今の時代は女性向けだと言い出し、キョンにボーイズラブのシナリオを書かすことがある。 少なからずBLに興味があるようだ。 キョンがBLを書いているのを古泉が見つけて、少し引きつつもノリノリでキョンとやり取りをするのだが、 古泉曰く、ハルヒの興味がBLに向いたのなら明日にでもキョンが同性愛に目覚めても可笑しくはないらしく、 キョンはハルヒの力に深刻な恐怖を感じていた。 完成したゲームでは勇者ハルヒとして魔王退治に行ったり、ハルヒを攻略出来たりする。 ■涼宮ハルヒの並列 福引で10人分の豪華客船への招待券を当てたハルヒは、いつものメンバーを引き連れて豪華客船に乗り込む。 しかしハルヒは何かしらの心残りがあるようで、1日がループするように。 作中でループが発覚したのが769回目のため、少なくてもこれ以上ループさせている。 今回のループは些細なことで大きく内容が異なり、船が空を飛んだり殺人事件が起こったり、果ては豪華客船が沈没したり……。 ハルヒの心残りは船の船首でSOS団でハルヒポーズをする事。 ■涼宮ハルヒの追想 出典:涼宮ハルヒの追想、ガイズウェア、バンダイナムコゲームス、2011年5月12日、(C)2009 Nagaru Tanigawa・Noizi Ito/SOS団 (C)2011 NBGI このハルヒは消失時と同じ一般人であり、光陽園学園に通っている。 キョンの企みによって一緒にジョン・スミスを探すことになる。 最初はキョンとは知り合いでは無かったものの、世界の修正によって関係が変化しキョンとは知り合いだったことに。 作中では長門の同人誌や朝比奈さんのミスコンのために必死になって行動するが、皆を振り回すのも忘れない所がハルヒらしい。 他にもキョンに言われポニテをしてくれたり、バトン部のために『これしきのことでくじけるなドンマイ団』、 略して『CQD団』でエアバンドを組んでメインステージに挑んだり、 古泉とキョンのナンパ対決でキョンを見下しつつも一緒に証拠写真を撮ってくれたりしてくれる。 『次元ブックマーカー』はいつもつけているカチューシャ……って追想のハルヒのはカチューシャのようなリボンか。 追想は消失の掘り下げをするゲームなので長門がメインなのだが、最序盤から登場し話を引っ張るハルヒは普通にメインヒロインだった。 有希ちゃんはハルヒちゃんのスピンオフなので、実質消失ハルヒの掘り下げがあるのはこの消失のスピンオフゲームである追想だけ。 有希ちゃんで消失のハルヒに興味を持った方は一度プレイしてみてもいいかもしれない。 ■涼宮ハルヒちゃんの憂鬱 基本的には原作と同じ性格だが、ギャグ漫画である性質上原作よりも突拍子もない思いつきをすることもある。 その反面傍若無人さや唯我独尊さは薄れており、SOS団の面々(特に古泉)に振り回されてしまうことも。 キョンを異性として見ているかは不明だが、主に古泉の策略でキョンとラブコメさせられて真っ赤になることも少なくない。 なお、谷川流先生曰く「こちらのハルヒちゃんの方が原作よりもハルヒっぽい」らしい。 ■長門有希ちゃんの消失 『消失』世界のため、光陽園学園に通う生徒という役割は変わっていない。 ストーリー開始時以前にメガネを外して外出していた有希をサンタ降臨のための下準備に初対面にもかかわらず付き合わせている。 その時の自信に満ち溢れた言動が有希に文芸部存続に対するやる気を起こさせたため、有希には感謝されている。 有希と再会してキョンたちとも知り合ってからは他校にもかかわらず古泉と共に文芸部に入り浸る。 なお、有希たちが起こした騒動を同人誌(薄い本ではない)としてまとめているのは彼女であり、キョンと有希が「文芸部」でいられるのは彼女のおかげだったりする。 キョンを異性として意識しているようだが、有希に遠慮してその感情を表には出さないようにしている。 ただの追記・修正には興味ありません。 この項目をもっと面白く追記・修正できる人はあたしの所に来なさい。 以上!! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- 煽り、誹謗中傷等のコメントはIP規制の対象になりますのでご注意ください ▷ コメント欄 [部分編集] コメント欄をリセットしました。 -- 名無しさん (2014-09-19 16 11 35) 彼女の能力と関連して、こんな話を見たことがある。「願望を実現させられる」という能力がある以上、彼女の外見は「こうだったらいいのに」という願望により変形したものである可能性が高い。つまり、元々彼女は別の容貌、別の体型をしていたはずだというのだ。 -- 禁句:ギニュー隊長 (2014-09-19 16 32 31) それは違うよ!「中学時代から美少女だった」+「3年前から始まった異変」 -- 名無しさん (2014-09-19 16 37 12) 「厨二的頭脳」と「厨二になりきれない常識人的側面」を同時に持ってしまった悲劇。 -- 名無しさん (2014-09-19 18 02 32) 誰もが一度は気持ちのわかる時期があった筈の人。 -- 名無しさん (2014-09-19 18 10 06) 本人の知らないところで望むことが起きているってのも彼女にとってはかわいそうなことなのかも… -- 名無しさん (2014-10-29 16 33 56) SSだと西園寺世界化や間宮リナ化が激しい -- 名無しさん (2015-07-01 22 28 11) ↑ヤンデレ化かクズ化の二択かよwそれ読んでるSS偏ってるだけじゃね?俺の知ってるやつだとハルヒちゃん並みのアホっぽさだったり普通にツンデレってたりしてるのも結構あるぞ -- 名無しさん (2016-01-31 16 52 00) 中指突き立てて、「まーかせて!」とか言いそうw -- 名無しさん (2016-01-31 17 41 29) すーぐアンチが出て荒らすんだからもー しかしまあもう半分以上諦めてるけど新作は出ないのかなあ… -- 名無しさん (2016-11-29 18 29 15) スポーツも勉強も人並み以上に出来る、優秀だから世の中つまんなく感じたっぽいな。ダンロンの黒幕がそういう奴だったし -- 名無しさん (2017-01-18 15 48 22) いわゆる能力の高すぎる子供って印象。キョンは平凡すぎる大人 -- 名無しさん (2017-01-20 12 24 27) ↑2よく第二の江ノ島にならなかったなぁ……あいつに比べたら『自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪』はひどくないか?タグの訂正をお願いしたい所 -- アト (2017-03-06 19 45 00) 無自覚生粋のトラブルメーカーではあるけど悪ではないよね -- 名無しさん (2017-03-06 19 49 41) ↑当初は「自分が楽しければ~」の節はあったけど、物語が進むにつれて「皆も楽しめれば」という風に変わった感じ。映画の時キョンが怒ったのと、ライブの代行で感謝されたのが大きなターニングポイントに見えた -- 名無しさん (2017-03-06 21 02 41) ↑5 江ノ島「さすがの私様も宇宙人や超能力者などと、妄言を喚き散らしている様な方と同類にされるのは、ご勘弁願いますので」 -- 名無しさん (2017-05-05 20 01 11) なりきりセリフやめちくり〜 -- 名無しさん (2017-05-20 15 52 37) 何だろう、どうせなら監督や編集長だけでなく、自分で主演女優や自作小説をやればもっと共感できるんだが。アニメの朝比奈みくる編を見てると「これをハルヒがみくる役やりゃ同じ完成度でも面白くなりそうだな」って気がするし、文芸誌だってさ、編集・改定や解説だけでなく「彼女の世界観が出た小説」を書いてりゃ、「世界を書き換えたくなるほどの欲求不満」が分かりやすくなる気がする。同じ声のヲタ貧乳ロリが人生満喫してるのにさ。 -- 名無しさん (2018-02-19 22 14 02) なまじ全能神であるがゆえに仲間内から蚊帳の外(というか問題の根源)扱いされ、他の女はハルヒが無意識下で起こしたトラブルによって想い人と色々な思い出を共有できてしまっている。恋愛面では作中最高クラスで不遇。救いはキョンがハルヒにベタ惚れしてるところくらいだな… -- 名無しさん (2018-05-07 17 21 35) ↑2自作小説では無いが未来で時間移動の基礎となる方程式を作っていた。まあハルヒ自身の世界観は出てないのかもしれんが… -- 名無しさん (2020-11-08 22 59 25) ↑3を見て思ったんだが、未来人がみくるを送った理由は、「ハルヒが書くフィクションの主演をみくるにすることで、ハルヒ自身に不可思議現象が発生するのを防ぐ」かもしれない -- 名無しさん (2020-11-08 23 42 51) シリーズは角川文庫にも収録されるようになったが、いとう先生のイラストが無ければ全く意味が無いと思う。 -- 名無しさん (2020-12-09 22 34 01) ハルヒちゃん終盤の、若干開き直ってイチャコラしてる感あったの好きだったなあ -- 名無しさん (2021-05-12 23 35 28) 観たことないけれど、嫌いな人はてってきに嫌いな性格っぽいのが謎 -- 名無しさん (2022-01-25 21 56 53) 人を道具としてしか見てないような行動ばっかするからな、内心では~とか言われても理解できないのは無理ないよ。外伝作品だと混ざって和気あいあいとするいいキャラになってるんだけどね -- 名無しさん (2022-07-08 14 59 34) 00年代後半の同期と言えるひぐらしのゲームでは令和の世にてコラボを果たす。世界融合現象によって雛見沢の部活メンバー、雛見沢大災害から10年後の世界から来た訳あり少女3人と楽しいひと時をSOS団と共に過ごす。ハルヒの能力をも欲した事件解決後、決して会う事のない部活メンバーと少女3人との再会を望んだため、生まれた年が近く、ハルヒが魅音と交戦、2人に翻弄されるキョンと圭一達が同時に存在する世界も構築された可能性が高い。虚構を現実にするハルヒの能力の設定上、00年代ユニバースも決して夢ではない。 -- 名無しさん (2023-05-13 23 17 54) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/768.html
古泉「駄目です・・・完璧に精神が向こうの方に行ったようですね。僕の呼びかけを妄想だと思ってしまっていました。」 みくる「そんな・・・・!それじゃぁキョン君は・・・!」 長門「精神離脱。この世界で言う、植物人間状態。」 植物人間となった病室に突然ハルヒが入りこんできた。 ハルヒ「キョン・・・ねぇどうしたのキョン、何で動かないの?」 古泉「涼宮さん・・・残念ながら、植物人間となっています。」 ハルヒ「そんな・・・私のせいで・・・・うぅ・・・う、うわぁぁぁん!」 大粒の涙を流しながら、ごめんねごめんねと呟くハルヒ。 みくる「(小声で)なんで・・・涼宮さんが望めばキョン君は復活するんじゃ・・・)」 古泉「どうやら彼女自身、諦めてるようです。間近にキョン君がはねられるのを見てしまいましたからね。」 古泉「(しかし皮肉なものです・・・涼宮さんはキョン君に守られたいと願った。 その結果、長門さんの親玉の一派が涼宮さんを殺そうと車で轢こうとし、それをキョン君はかばって轢かれた。)」 長門「・・・世界が・・・終わる。」 数日後、キョンを失ったハルヒの悲しみと自分への怒りの力は閉鎖空間として暴走し、やがてそれは現実に表れた。 地球は壊滅状態に陥り、ハルヒもまた力の暴走で気を失い、植物人間となった。 ハルヒが植物人間となり力が無くなったことで、朝比奈みくるは未来に帰った。 待っていた大人版朝比奈を見て、なんでこんなことになるって教えてくれなかったんですかと泣きながら叫んだと言う。 古泉は力を失い、壊滅した地球を生き延びる一介の青年となった。 古泉、朝比奈との別れ際の長門によると、涼宮ハルヒの精神は、キョンの精神と寸分の狂いもなく一致したと言う。 今頃、2人の精神の中でSOS団は復活しているのだろうか。 ごめんなさい無理ありすぎですorz
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/696.html
ストーリー参考:X-FILESシーズン1「ディープ・スロート」 ハルヒがX-FILE課を設立して3ヶ月がたった。 元々倉庫だったところをオフィスにするため机を運んだりなんだりと 最初のうちはバタバタと忙しかったが、最近はようやく落ち着いてきた。 その間にもハルヒは暇を見てはX-FILEを読み漁っていた。 なお、X-FILE課は副長官直属の課となったため、事件性が見出せれば アメリカ中どこにでも出張できる。 まあ、この点に関しては退屈なデスクワークから開放されたことを ハルヒに感謝しなきゃな。 そうそう、ハルヒの世界に与える能力だが、古泉曰く高校卒業時には もはや消失していたらしい。 ハルヒ観察の任務であった長門がいなくなった点から見てもその通り なんだろう。 結局、最後の最後まで各自自分の正体をハルヒに明かさず、長門に 至っては「任務」と言う言葉をハルヒに伝えただけだった。 ハルヒとしてはどこかの諜報員とでも思ったに違いない。 それで政府が存在を隠しているとか考えたのかもしれないが。 故にハルヒ自身はまだ宇宙人・未来人・超能力者に会ったことが無いと 思ってるわけだ。 しかし、気になることがある。 古泉の「機関」はハルヒの後始末などを目的とした組織なのに未だ 健在、長門に至っては「別の任務」と言っていた。 そしてそれは意外な形で俺たちの前に現れることになる・・・ ワシントンD.CのFBI本部から少し離れたバーでハルヒと待ち合わせをしていた。 「遅いぞハルヒ。」 「キョンにしちゃ早いじゃない。なんなら1杯奢ってあげようか?」 「おいおい、まだ昼間だぞ。」 そんなやり取りをし空いた席に着き注文を済ませた。 その後ハルヒが1束の書類を俺に手渡してきた。 「なんだこれは?」 「エレンズ空軍基地の軍人の1人が行方不明になっているという情報よ。」 「軍のことなら軍に任せておけばいいじゃないか。」 「それがそうでもないのよ。この件に関しては軍は家族にすら詳細を 明かしてないの。それを不審に思った家族がFBIに捜索願を出してきたのよ。」 「軍にも何か事情があるんだし、怪我とかで治療してるんじゃないか? で、家族に心配かけまいと何も言わないように本人が言ってるとか。」 「それじゃもっと変よ。それに、私この件について1ヶ月間捜査してたの。 もちろん軍からは何も得られず。それに妙なことに先日上から捜査中止 命令が出たわ。」 破天荒な捜査をしているから中止命令が出たんじゃないかと言おうと思ったがやめた。 「それにこのエレンズ空軍基地ではおかしなことに63年から6人の飛行士が 行方不明になってるのよ。どう考えたっておかしいでしょ。」 「それに関しては噂を聞いたことがあるな。ロシア領空を誤って通過して 撃墜されたとか・・・まあ、噂の域を出ないが。」 「とにかく、何かを隠蔽しようとしていることは確かだわ。だから2人で アイダホに向かうわよ!」 「ちょっとまて。この件とX-FILEとどう関係がある?お前の守備範囲は 宇宙人など超常現象だろ。ただの失踪事件じゃないか?」 「なんとなく勘が働くのよ。絶対に何かあるわ!」 そういうとハルヒは席を立ちトイレのほうへ向かっていった。 しかし、勘だけで動くところはSOS団にいたころとまったく変わって ないな・・・などと懐かしく思ったりもした。 私がトイレに入ろうとしたとき、初老の男性がいきなり声をかけてきた。 「失礼、涼宮捜査官。率直に言おうこの事件から手を引いた方がいい。 その方が身のためだ。」 「なんですって?」 「軍はFBIの介入を望んでいない。」 「あなたは一体何者?」 「私は・・・君達の仕事に関心を抱いている者だ。力になりたいと 思っている。」 「どうして私達のことを知っているのかしら?」 「立場上政府に関することは何でも知っている。いろいろな情報が 入ってくるのだよ。」 「あなた一体誰?職業は?」 「そんなことはどうだっていい。君とキョン捜査官の身を案じるから こそ言うんだ。残念だが事件のことは忘れたまえ。」 「それは出来ないわ。」 「君達にはもっと大切な仕事があるだろう。せっかくの才能を無駄に するもんじゃないな。」 そういうと男性は人ごみの中へ消えていった。 わたしが呆然と立ち尽くしていると近くからキョンが、 「おい、ハルヒどうした?」 「ううん、何でもないわ。」 (あの男性は一体何者なのかしら・・・敵?味方?) そう考えながら私はトイレに向かった。 どうも気になる。 あのハルヒが普通の失踪事件に興味を見出すとは思えない。 そう思った俺はFBI本部の資料室で過去の新聞を調べてみた。 --エレンズ空軍基地 UFOのメッカに-- やはり超常現象か・・・ 確認するためハルヒに電話をかけてみた。 「もしもし、ハルヒか。」 『何よ、キョン』 「おまえ、俺に何か言い忘れてるだろ?」 『言い忘れてることって?』 「おまえ、アイダホに行くのはUFOが目的じゃないだろうな?」 キョンからの電話に雑音が入ってる!私は電話に雑音が入っているのを 聞いた後家の窓の外を見た。 黒いバンが外に止まっていた。 (盗聴されてるわ・・・) 「聞いてるのか?出張旅費が下りたのは捜査の為だぞ。科学雑誌に 投稿するような報告書書くのはごめん被るぞ。」 『キョン、電話ではまずいわ。明日飛行機の中で説明するわ。』 そういうとハルヒは電話を切った。 次の日、アイダホに着いた俺たちは早速依頼人の家に向かった。 そこでは失踪した軍人が以前からかぶれのような症状を訴えて いたこと、またある日から急に性格が変わり奇妙な行動を取ったり どなりちらすなどをするようになったことを伝えられた。 また、依頼人と同じような現象にあったという人を教えられ 依頼人と共にその人の家に向かった。 そこで見た光景は、まさに精神疾患にあった男性だった。 その男性の夫人話ではストレスによるものだろうと言っていたが・・・ その後、依頼人から軍の連絡先を教えてもらい、こちらも 泊まっているモーテルの電話番号を教えておいた。 「キョン、あれってどう思う。」 「やはり夫人の言うとおりストレスによるものなんじゃないか。」 「でも、彼らはベテランのパイロットでしょ?ストレスに対する 免疫は一般の人に比べればはるかに高いと思うけど。」 「聞いた話なんだがこのあたりでは『オーロラ計画』と言う名前で 新型飛行機のテスト飛行を行ってるらしい。その計画の重要性から 重圧に負けてストレスがたまったんじゃないか。」 「それはありえないと思うわ。だって依頼人の家の写真見た? 大統領からも表彰されるほどの腕前のパイロットよ。それほどの 腕なら何だって乗りこなせると思うわ。」 確かにハルヒの言うとおりだ。 男性の症状から見ても極度の恐怖や拷問などで無いとならないような ものだった。 一体ここでは何が起こってるんだ・・・ 「とりあえずエレンズ基地に行ってみましょう。」 ハルヒはそういうと車をエレンズ基地へ向かわせた。 車をエレンズ基地のフェンスのそばに置き近くの高台からエレンズ 基地を観察してみた。 「特に目立ったものは無いな。」 「あたりまえじゃない。そんなものがあったら全然秘密じゃないわよ。」 ハルヒの言うとおりだ。 俺とハルヒは夜までエレンズ基地を観察していた。 途中、SOS団の時の活動などの思い出話もしたりした。 「結局、有希はなんだったのかしらね。」 「さあな・・・」 いまさら宇宙人でしたと言っても納得しないだろうな。 と、まあ話し込んでいるうちに深夜になった。 眠りこけていると突然ハルヒが、 「ちょっとキョン起きなさいよ!」 「なんだよ・・・何かあったのか?」 「基地の上空を見てみて。」 基地の上空の空を見ると2つの光が空を舞っていた。 「普通の飛行機なんじゃないのか?」 「よくみてなさいよ。ほらあれ!」 ハルヒが指差すと2つの光はおおよそ普通の飛行機では考え 付かないような動きで飛び、最後に交互にきりもみ飛行しながら雲の上に消えていった。 「なんなんだありゃ・・・」 「とにかく中に潜入できないかしら・・・」 そうハルヒが言った瞬間、フェンスの中から男女がフェンスの 裂け目と思われるところから急ぎ足で出てきた。 逃げようとする男女をハルヒが、 「FBIよ、止まって!止まらないと撃つわよ。」 と威嚇し男女のカップルと話をすることが出来た。 カップルの話によると今日見たような光景は日常茶飯事で見られ、 中にはもっとすごい飛行をするときもあったという。 また、行った事はないがフェンスから15Kmほど離れたところに 格納庫らしきものがあるとも言っていた。 ただ、今日は普通ではヘリで追いかけられることもないのに、 なぜか突然ヘリが現れ一目散に逃げてきたと言う。 ある程度話を聞いた後2人別れ、ハルヒと共にモーテルへ戻った。 戻ったときにはすでに朝だったが。 フロントに行くと、依頼人から夫が家に帰ってきたと言う伝言を受けた。 さっそくハルヒとともに依頼人の家に行くと、依頼人である夫人は 「この人は夫じゃない!」と泣きはらしていた。 俺とハルヒは色々と質問をして本人かどうか確かめてみたが、やはり 本人らしい。 しかし夫人は「どこか夫とは思えない」という。 釈然としないままとりあえず失踪人は帰ってきたので依頼者宅を後にする。 「キョン、どう思う?」 「わからん。おれには普通にしか見えなかったのだが・・・」 「でも、基地でのことを質問するとなぜか不自然な答えが返って きたわよね・・・」 「そういえばそうだな・・・」 「もしかして、記憶を操作されたんじゃないかしら。」 「そんなば・・・」 「そんなば・・・なに?」 「いや、ありえんだろう。」 「そうかしら。キョン、早速今日の夜にエレンズ基地に潜入して みましょう。なにかわかるかもしれないわ。」 「ああ、そうだな・・・」 記憶操作か・・・長門たちの専門分野だったな・・・まさかとは思うが・・・ 俺は一抹の不安を胸に車へと乗った。 夜、ハルヒと共にエレンズ基地に潜入した。 情報通り15Kmほど離れた場所に格納庫らしきものがあった。 一筋の光が漏れている。そこから中を覗けそうだ。 早速ハルヒは中を覗きこんだ。 「なによこれ・・・凄いわ・・・」 ハルヒは驚愕しながらもカメラのシャッターを押し写真を撮っていた。 「キョン見なさいよ、これ。」 ハルヒに言われ中を覗くと・・・UFOらしき物体があるではないか! 「これは一体・・・」 「UFOに間違いないわ。写真に収めたし物的証拠もばっちりよ。」 「テストパイロットたちはこれを操縦したためにあんな目にあった のか・・・」 「たぶんね。」 俺たち2人は隙間からUFOと思しき物体をまじまじと見ていた。 そのため近づいてくる人影に気がつかなかった・・・ そうあの人影に・・・ 「そこまで....」 小さな声が聞こえ俺とハルヒは後ろを振り向いた。 そこにいた人物は・・・長門有希そのものだった! 「有希・・・有希じゃない!なぜこんなところに?」 長門は何も答えない。 「どうしたんだ長門!俺達のこと忘れちまったのか?」 俺がそう言うと、 「あななたちは見てはいけないものを見てしまった....」 「よってこの場で抹殺する....」 ハルヒがあっけに取られた顔で長門を見ている。 「なぜ・・・なぜなの有希・・・」 そうハルヒが言った途端、長門の両腕にブレードのようなものが 出現した。 早く逃げなければ!恐らく別の兵士もすぐに迫ってくるに違いない。 俺は呆然とするハルヒの手を取り元来た道をダッシュで逃げようとする。 「ハルヒ逃げるんだ!今の長門には俺たちの言葉は通じていない!」 「でも・・・でも・・・」 「いいから速く!」 俺とハルヒは猛ダッシュで逃げた。 途中ハルヒはカメラを落としてしまい、 「あ、カメラが!」 「今回は諦めろ!今は命が大事だ!」 カメラを見た瞬間長門が呪文を唱えている光景が見えた。 やばい!空間封鎖でもするつもりか! と、驚愕していると途中で呪文が途切れ、 「舌かんだ....」 俺とハルヒはその言葉を聞くとあっけに取られた。 が、すぐに我に返り逃げる。 「逃がさない....」 そういうと長門はこっちに向かってダッシュしてきた! 長門のスピードでは追いつかれるのも問題だ!まずい!まずい! そう思いながら走り続けていたが一向に長門が迫ってくる様子が無い。 恐る恐る後ろを見ると最初の長門のいた位置から10mほどのところで 長門がこけて倒れている。 どうやら絡まった雑草に足を引っ掛けたようだ。 「うかつ....」 チャンスだ!俺はハルヒの手をつかみ猛ダッシュで走った。 「戦闘モード変更。長距離狙撃モード....」 そうつぶやくと長門の手はバズーカー砲のようになっていた。 げ!あんなのに撃たれてはまず助からない! そう思った瞬間前方に人影が見えた。 よく見ると意外な人物・・・それは喜緑江美理だった! 両方に囲まれ万事休す!そう思ったとき、 「2人とも早くこっちへ遮断フィールドを張ります!」 その言葉を聞き俺とハルヒはすぐさま喜緑さんの元に向かった。 遮断フィールドが張られた直後長門からすさまじいビーム砲が フィールドに当たった。危機一髪だった。 「あなた方を車まで転送します。そのあとは出来る限り迅速に逃げて!」 「なぜあなたが俺たちを助けてくれるんですか?なぜ長門は俺たちを・・・」 「今は説明している時間はありません。いずれ分かるときが来ます。」 そう喜緑さんがいうと次の瞬間には俺とハルヒは車の中にいた。 「ハルヒ!車を出せ!急ぐんだ!」 「わかってるわよ!」 そういうとハルヒは猛ダッシュで車を基地とは逆の方向へ走らせた。 その頃基地では長門の下に兵士が集まっていた。 「追いますか?」 「いい....物的証拠は何も無い。」 「わかりました。では各自引き上げます。」 そういうと兵士はカメラを取り上げフィルムを出し燃やした・・・ そして喜緑江美理の姿も消えていた。 次の日、俺たちはワシントンD.CのFBI本部のオフィスにいた。 「なんで有希が私たちを殺そうと・・・しかも初対面みたいな 態度で・・・」 ハルヒは自分の席で悲嘆にくれていた。 「しかもまるで宇宙人みたいな感じで・・・喜緑さんも・・・」 ハルヒは自分の力を失った後も長門たちの正体を知らなかった からな・・・ 「ハルヒ、多分長門には何か事情があるに違いない。喜緑さんも 言ってたじゃないか『いずれ分かるときが来ます。』と。」 しばしの沈黙の後ハルヒはいつもの元気な声で、 「そうね!私達がX-FILEを追う限りきっと答えは見つかるわ! 絶対にね!」 「そうだな。俺達で真実をつかむんだ。」 「あたりまえでしょ!私を誰だと思ってるのよ!涼宮ハルヒよ!」 妙な自信を持ってしまったハルヒだが、まあこれでいいんだろう。 しかし、長門の「別の任務」とは一体・・・ 次の休日、私は家の近所のグラウンドでジョギングをしていた。 そこへ以前現れた初老の男性がまた姿を現した。 「命を落とすところだったな。これからはもっと慎重に行動するんだな。」 「そうね、考えておくわ。」 「まあ聞け、今後も利害が一致する場合には君に情報を提供しよう。」 「あなたの目的はなんなの?」 「君と同じ、『真実』さ。」 「あそこで見たもの、一体なんだったの?」 「UFOの技術・・・かな。」 「涼宮捜査官、1つ教えてもらいたい。君は確固とした証拠も無いのに なぜ宇宙人の存在を信じてるのかね?」 「それは・・・存在を否定する証拠もまた無いからよ。」 「そのとおり。」 「やっぱり彼らはいるのね?」 「もちろんだとも。ずっとはるか昔の時代からね。」 そういうと男性はグラウンドから姿を消した。 「有希や喜緑さんもやはり宇宙人なの・・・?」 私は一人グラウンドの真ん中で放心状態で考えていた・・・ <再会・終> 涼宮ハルヒのX-FILES おまけ2 ハルヒ「まさか有希が本当に襲ってくるとはね。」 キョン「喜緑さんが出てくることも意外だったな。」 ハルヒ「あの男って一体何者なのかしら。」 キョン「作者設定では最後には正体は;y=ー(゚д゚)・∵. ターン」 ハルヒ「キョン!いやあ!死なないで!」 ???「このスモークチーズで助かるにょろよ!」 ハルヒ「あなたは・・・鶴屋さん!」 鶴屋 「あたしって出てくる役割あるのかなぁ・・・」 キョン「というドリームをみた。」 ハルヒ「たぶん鶴屋さんには出番無いかもね。」 鶴屋 「にょろーん・・・」 キョン「作者はヘボで気まぐれなんで大目に見てやってください。」 次回 涼宮ハルヒのX-FILE あったらお楽しみにw 次へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1944.html
プロローグ 日常生活の回想 「なぜ、俺たちはこんな所で怪物と戦っているんだ?」 「今はそれを気にしている余裕は無い、目の前の状況をなんとかするべき」 確かに長門の言う通りだが、 今の状況を受け入れられていない、 俺にとって長門のセリフには非常に不安を感じていた まず、今の状況を話そう 簡単に言えばゲームのRPGの世界に迷い込んだというな感じだ そこで、スライムらしき物体と、いかにも凶暴そうな狼と戦っている 俺は剣を持っているが、正直戦闘は初めてで不安だ 長門が後ろから情報操作(魔法?)で援護してくれているが 長門の情報操作による回復もできなくなりそうで、非常にやばい状況だ 朝比奈さんと鶴屋さんはどこに居るのか? それにハルヒをこれからどうするのかもわからない 「長門!狼は倒したが、このスライムまったく攻撃が効かないぞ!!」 「解析の結果、火に弱い事が判明、こちらで攻撃する。」 そういったあと長門はまたあの呪文を唱えた 「bmobemalfcigamedomlliks」 スライムが蒸発していく・・・ とりあえず助かったみたいだ。 落ち着いたところで、なぜこんな事になったのか、昨日を思い出してみるか 金曜日の放課後 俺と古泉はチェスをしていた 今のところは俺の優勢だがまだまだ油断はできない状況だ、 そういえばさっきから視線を感じるのだが・・・ ふと横を見ると長門がチェス盤を見ていた いつの間に横に居たんだ、お前は 「なんだ、長門もやりたいのか?」 「見てるだけ」 「あなたの番ですよ」 「じゃあ、ここにポーンを動かして・・・」 ばーーーん!! 部室のドアを勢い良くあけたのは・・・ 「明日は怪物を探すわよ!!」 ハルヒだ・・・ いつもこいつに振り回されている しかも話が急すぎる!! 「おいハルヒ、怪物探すってあてがあるのか?」 「もちろん!この近くの森に怪物が出たって噂が流れてきたのよ」 やれやれ・・・ 誰だ?そんな噂をながしたのは? 「あなたは重大なミスを犯している。それに気付かなければ、あなたはこの勝負に負ける」 え?俺がミスしているって?そんなはずないのだが・・・ もう一度戦況を確認してみる・・・ 「ちょっと、きいてるの!?」 「あの~、お茶はいりましたけど~」 半ば無視してるようにみえるが メンバーみんながちゃんと内容を把握してる場合が多い なぜだろう?ハルヒの言う事は大して価値が無いのに 「さーてこれから計画を話すわよ」 「なにぃぃぃ!?そこから攻めてくるのか!?」 「明日は、森の中を探索して」 「まだ驚異ではない。攻められた所を守るべき」 「おやおや、汗が出てますよ」 「ハァハァ・・・あせって興奮しただけだ・・・」 「弁当は絶対必要ね、後は何が必要かしら?」 「今度はこちらが攻められていますね」 「そうだ、双眼鏡がいるわね、あとは・・・」 「あつい・・・帰ってシャワー浴びなきゃな」 「おや、本格的にやばくなってきましたね」 「いまはキョンくんが攻めているんですか?」 「こら!!あんたたち聞いてるの!?」 「聞いている」 俺が口を開く前に先に口を開いたのは長門だった 「何がどう聞いているのか説明してみなさいよ」 「明日森で弁当と双眼鏡をもって探索」 少ない文字で、必要な事を言う長門にはいつも助けられている ハルヒは話が長いんだよ!! 「やっほー、みくるいるっ?」 そういいながらドアを勢い良く開けたのは鶴屋さんだ 「あれ?みくるはいないにょろか?」 鶴屋さん・・・ドアの後ろ・・・ 「いたいですぅ・・・」 「にょろーん・・・」 めがっさ空気が和んだ・・・って何言ってんだ俺は!!! 非日常的なシーンに何度も巻き込まれているせいか精神が若干不安定なようだ・・・ 明後日ゲーセンでも行くか・・・ 「そうだ、鶴屋さんも明日、森の探索に行かない?」 「おい、ハルヒ何も巻き込む必要ないじゃないか」 「別にいいにょろよー、明日ちょうど一人で出かけようと思ってたっさ」 なんか、俺のことなんてまったく気にせず会話してるな・・・ その後、鶴屋さんが来てから話がとんとん拍子に進み、あっという間に計画が決まった どうやら鶴屋さんは話をまとめるのがうまいらしい とりあえず、古泉をチェスでとどめを刺し、 ついでに長門を相手に戦ってみたが、流石宇宙的アンドロイド、俺の戦略はまったく通じず 三個しか駒を取れなかった上ポーンでとどめを刺された 「さーて、明日は森の前公園に10時集合!!遅刻したら罰金よ!!」 次の日、地獄のような日になるとはこのときの俺はまだ知らなかったんだ。 公園の名前が適当だが、作者の都合と言う事で勘弁してくれ 次の日・・・ 集合場所に一時間前に来たおれはみんながまだ来てないのを見て少しほっとしていた 罰金だけは避けたかったからだ もうポケットマネーがそこを尽きた・・・ 十分後ハルヒと鶴屋さんが来た 「やっほー」 「あなたにしてはめずらしいわね、さては金がなくなったんでしょ。」 いちいち気に障る事いうなよ 「あっ、誰か来たわよ」 振り返ると朝比奈さんが走ってきていた 「はぁはぁ・・・、最後ではないですよね?」 「まだ二人が来てませんが、僕たちもさっき来たばかりですよ」 それから三分後 古泉が余裕の表情で歩いてきていた こいつにはあせる状況というものが無いのか? さらにその十分後、長門が来た。 珍しい、長門が遅刻する事なんて無かったのに まあ、厳密に言えば遅刻じゃないのだが 「バスが遅延した」 「バスが遅れた理由は?」 長門は何も言わずポケットからペッパーとかかれたビンを取り出した なるほど、胡椒したのか・・・ って、誰がうまい事言えって(ry 長門の冗談はさておき 森の探索を始めた俺たちだが あたりには木がうっそうと生えており いかにも何かが出てきそうな雰囲気だ 本当にでてこないよな!? 「ここ、怖いですぅ・・・」 朝比奈さんが手を握っているがそれを気にしている余裕が無かった 冗談抜きで怖いぞ 一番前を歩いていたハルヒが突然止まった 「何か居る・・・それも只者じゃない・・・」 「明らかに私達とは仲良くしてくれなさそうですね。」 冷静な解説をするのはやめてくれ しかもさっきから恐怖が胸の奥から沸いてくる。 ここは危険、そんな言葉が頭をよぎっている 「ここは嫌な感じがするにょろ・・・」 「怪物を怒らせちゃったんじゃないか?今からでも遅くない、戻ろうぜ。」 しかし足が動かない。 ほかのみんなも同じみたいだ 周りを警戒しながらその場から動かない 完全に動きを封じられている・・・そのまま五分くらい経っただろうか? ダメだ恐怖でおかしくなりそうだ メンバー皆も不安な顔や真剣な表情で周りを見ている 「フハハハハハハ!!」 誰だ、不気味な声をあげたのは? 後ろを振り返ると ハルヒがナイフを持ち、長門がそれを受け止めているという光景が目に入った どこかで見たことあるぞ、このシーン 「あなたは、肉体は涼宮ハルヒしかし、人格は別人格、何らかの方法で操っていると推測される」 「なにがどうなってるさっ!?」 「おい、長門!どうなってる!?」 「原因は不明。しかし現在の涼宮ハルヒはまったくの別人格。」 「閉鎖空間が発生!!急速に拡大しています!!」 「こんな事既定事項にはないですっ!」 さっぱり状況が理解できない。 唯一わかるのはいままで一番最悪な状況だということだ 急展開すぎだろ!! 「この力、大いに使わせてもらうわ。」 「この状況を何とか出来んのか!!」 「今の涼宮ハルヒは別人格とはいえ肉体は彼女そのもの。傷つける事は出来ない」 どうすれば良い!! 一体どうすれば!? パシーン!! 「目を覚ますにょろ!!」 鶴屋さん・・・ 今の状況を簡単に説明すると鶴屋さんが,横に回り頬を叩いたという状況だ(わかりにくいな 「気が変わったわ・・・この先の小屋で待ってる。覚悟が出来たら、来なさい。」 ハルヒはそのまま森の奥に消えていった いや、別人格なんだからこの表現はおかしい ハルヒ(偽)とでも呼ぶべきか 「今の状況はまずいですね・・・閉鎖空間の拡大はしてないものの、涼宮さんが何者かの手に落ちるとは思っても見ませんでした」 「情報統合思念体も、今の状況に絶望している。これから彼女を正常化に向かうのが最優先。」 状況がいまいちわからない鶴屋さん(俺もだが)は少し困惑している様子だったが 「じゃあ、ハルにゃんにも一度会いにいくにょろ!!」 といつもの元気な声に変わっていた しばらく森を進んでいくと、いかにも崩れそうな小屋があった。 こんな所で何をするんだ? 「長門、ハルヒは一体どうなったんだ?」 「先ほどから異常空間の発生を確認している。それが涼宮ハルヒの精神に直接アクセスしたと考えられる」 「長門さんは、涼宮さんの精神に何者かがいると考えているようです。」 「解説するのはいいんだが、顔が近い!離れろ!」 その後、長門と古泉の解説を聞いていたのだが長すぎて半分くらいしか理解できん まあそれでもいいほうだと思うが。 俺なりに話をまとめてみると、 ハルヒは何者かに操られている 原因は異常空間の先の何者か 相手はハルヒの能力が目当て じゃまになる俺たちをさっき葬ろうとしていたなどなど・・・・ 「じゃあ何故、偽ハルヒはこんな小屋に呼び出した?」 「私達が、只者じゃない事に気付いたのでしょう。そこで別の方法を考えたのでは?」 「彼女の正常化がされなければ、この問題が解決することはない。」 とりあえず俺たちは小屋に入る事にした。 がちゃ・・・ 誰も居ない? 全員が小屋の中に入ったが、ハルヒが現れる様子は無い もしかして・・・ バタン!! 後ろで大きな音を立ててドアが閉まった。 しまった!罠だ!! 次の瞬間には変なにおいがして、皆が倒れていくのが見えた。 そしてそのまま俺の意識もブラックアウトした・・・ プロローグ終わり 第一章に続く
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3330.html
「今日はこれで終わり! みんな解散よ!」 窓から入ってくる夕焼けに染められたわけではないだろうが、ハルヒの黄色く元気の良い声が部室内に轟く。 この一言で、今日も変わったこともなく、俺は古泉とボードゲームに興じ、朝比奈さんはメイドコスプレで居眠り、 長門は部屋の隅で考える人読書バージョン状態を貫き、年中無休のSOS団の一日が終わった。 正直ここ最近は平凡すぎる日常で拍子抜け以上に退屈感すら感じてしまっているのだが、まあ実際に事件が起これば二度とご免だと思うことは確実であるからして、とりあえずこの凡庸な今日という一日の終了に感謝しておくべき事だろう。 俺たちは着替えをするからと朝比奈さんを残しつつ、ハルヒを先頭に部室から出ていく。どのみち、朝比奈さんとは昇降口で合流し、SOS団で赤く染まったハイキング下校をするけどな。 下駄箱に向かう間、ハルヒは何やら熱心に長門に向かって語りかけている。 それをこちらに注意を向けていないと判断したのか、古泉が鼻息をぶつけるぐらいに顔を急接近させ、 「いやあ、今日も平穏無事に終わりましたね。こうも何もないと返って不安になるほどですよ。 まだまだあの神人狩りに明け暮れていたときのくせが抜けていないようでして」 「ないことに越したことはないね。犬が妙な病気になったことを相談されたりされるぐらいならちょうど良い暇つぶしにはなるが、事と次第によってはとんでもない大事件の場合もあるからな」 俺は古泉と数歩距離を取りつつ返す。古泉はくくっと苦笑を浮かべると、 「何かが起こった方が楽しい。だけど、その影響範囲を含めた規模や自分にとって利益不利益どちらになるかわからないなら、いっそどちらとも起きない方が良いというわけですか。実にあなたらしい考え方と思いますよ。 恐らく涼宮さんとは正反対の思考パターンですが」 「あいつの場合は、自分にとって楽しいことだけ起こればいいと思っているんだろ。世の中そんなに甘くはねぇよ。 ま、命を狙われたり世界を改変されて孤立したりしたことがないんだから、当然っちゃ当然だな」 大抵、人間ってモノはどこかで何かが起こることを期待しているもんだ。俺だって昔は宇宙人とか未来人とか超能力者がいてくれればいいなぁとか、映画並みのスペクタクルが起きたりしないかと思っていたしな。ただ、実際に目の前でそんなことが起これば考え方も変わる。少なくとも、もう俺はタヒチのリゾートにあるような透明度の高い純真な期待感なんて持たないだろう。 そんな俺に古泉はさらに苦笑いして、 「おや、ひょっとして今まで多くのことを経験しすぎて、一生分のインパクトを消化してしまったんですか? 前途ある十代の若者にあるまじき枯れっぷりな考え方ですよ」 うるせえな。一度ヒマラヤの頂上に届きかねないびっくり仰天事やマリアナ海溝以上に深いどん底に突き落とされる経験しちまうと、何だかんだで海抜ゼロメートルプラスマイナス数百程度が一番いいと思い知らされただけだ。 そんな話をしている間にようやく下駄箱に到着だ。ハルヒの長門に対する語りかけは、もうヒトラーの演説、テンション最高潮時な演説と化している。もっとも当の長門は相づちを打つように数ミリだけ頭を上下させるだけなんだが。 しかし、そんな自分に酔っているような話し方をしながらも、ハルヒはちゃっちゃと下駄箱から靴を取り出し下校の準備を進める。全く口と身体が独立して稼働しているんじゃないか? もう一つの脳はどこにある。やっぱりあそこか。 「遅れちゃってごめんなさい」 背後から可憐ボイスが背中にぶつかる。振り返れば、いそいそと北高セーラ服に着替えた朝比奈さんが小走りに現れた。 背後にある窓から夕日が入り、おおなんと神々しいお姿よ。 俺がそんな神秘的情景を教会で奇跡がおきるのを目撃した神父の如く感涙して(していないが)いたところへ、 「ほらっキョン! なにぼーっとしてんのよ! とっとと靴履いて帰るわよ!」 いつの間にやら演説を停止したハルヒ団長様からの声で、幻想的光景から強引に引きずり出された。 全くもうちょっと堪能させてくれよな。まあ、当の朝比奈さんもとっとと俺を追い越して、靴をはき始めているから俺も続くかね。 そんなわけで俺は自分の下駄箱を開けて―― 「…………」 すぐに気がついた。俺の靴の上に一枚の紙切れ――手紙じゃない。本当にただの一枚紙である――があることに。 朝比奈さん(大)の仕業か? またいつもの指令書か…… しかし、違うことにすぐ気がつく。朝比奈さん(大)はもっとファンシーで可愛らしくいい臭いがしそうな封筒入りを使うが、今ここにあるのはぴらぴらの紙一枚。こんな無愛想なもので送りつけるような人じゃない。それに書いてある内容が 『あと30分以内に●●町の公園に来なさい。一人で』 とまあ何とも一方的な内容である。しかも命令口調。まるでハルヒからの電話連絡みたいだ。 ふと、これはハルヒが書いて何か俺に対してイタズラでもしようとしているのでは?と思ったが、 「なーにやってんのよ! さっさとしなさい!」 当のハルヒは俺につばを飛ばして急かしてきている。大体、こんな手紙なんていう回りくどい手段をあいつがとるはずもなく、誰もいなくなったところで俺のネクタイ引っ張って行きたいところに走り出すだろうな。 じゃあ、これはなんだ? ラブレターの可能性は否定できないのも事実。せっかくだから行ってみるのも悪くないか。 時計を確認する。ここから指定された場所まではゆっくり歩いて30分もかからない。帰りに道に寄ってみるかね。 俺は他の団員に見つからないように、その紙をポケットにねじ込んだ。 ◇◇◇◇ さて、下校途中に他の連中と別れた俺は、とっとと目的の公園に向かう。初めて行く場所だったので、 その辺りにあった看板の地図を見ながら向かった。 が。 「……全く」 おれは嘆息する。さっきから背後をハルヒたちが付けてきているからだ。どうやら、あの紙をもらってからの俺の挙動が不審だとハルヒレーダーが捕らえていたらしい。相変わらずの動物並みの嗅覚だよ。 しかし、別に俺はやましいことをしているわけでもないんだから、このまま放っておいてもいいか。 俺はそう割り切ると、俺は背後のストーカー集団を無視して目的地に向かった。 ◇◇◇◇ 俺はようやく目的地にたどり着いた。時計を見ると、あの紙切れを読んでから20分程度。指定された時間には間に合っている。 平日夕方でぼちぼち日が落ちつつあるためか、指定された公園には人一人おらず、閑散とした静けさに覆われていた。 どこからともなく流れてくる夕飯の香りが俺の空腹感を刺激する。 ふと、背後を突けていた連中がいなくなっていることに気が付いた。なんだ? 捲いたつもりはなかったから、 途中でハルヒが尾行に飽きたのか? 俺はそんなことを考えながら、あの紙切れをポケットから取り出して―― この時、初めて俺はここに何の警戒心も持たずのうのうとやってきてしまったことを後悔した。見れば、その紙の文面が 『付けていた連中はいないわよ。邪魔だったから追っ払っておいたわ』 そう変わっていた――ちょっと待て。この紙はずっと俺のポケットに入ったままになっていたはずだ。 それを書き換えるなんていう芸当ができるのはごくごく限られた特殊能力を持つものしかあり得ない。 つまり、俺を呼び出した奴は一般人ではなく、宇宙人・未来人・超能力者――あるいはそれに類する奴って事だ。 ちっ。これで呼び出したのが朝倉みたいな奴だったら、洒落にならんぞ。 すぐに携帯電話を取り出し、とりあえず古泉に―― しかし、時すでに遅し。俺の周りの景色が突然色反転を起こしたかのようになり、次第にぐるぐると回転を始める。 やがて、俺の意識も落下するように闇に落ちていった…… ◇◇◇◇ 「いて!」 唐突に叩きつけられた感触に、俺は苦痛の悲鳴を上げた。まるで背中から落ちたような痛みが全身に走り、 神経を伝って身体を振るわせる。 そんな中でも、俺は必死に状況を探ろうと密着している地面を手でさすった。切れ目のようなものが規則的に感じられ、コンクリートや鉄ではなくそれが木でできている感触が伝わってくる。 ようやく通り過ぎた痛みの嵐に合わせて、俺は閉じたままだった目をゆっくりと開けた。まず一面に広がる教室の床が視界を覆う。同時についさっきまで俺に浴びせられていた夕日の灯火が全くなくなっていることに気が付いた。 俺を月明かりでもない何かの弱い光を包み込んでいる。その光のせいか、俺のいる部屋の中は灰色に変色させられ―― 気が付いた。この色合い、以前に見たことがある。あのハルヒが作り出す閉鎖空間と同じものだ。 俺は痛みも忘れ、飛び上がるように立ち上がり、辺りを見回した。 出入り口・黒板・窓の位置。俺がいるのは文芸部室――SOS団の根城と同じ構成の狭い部屋だった。 ただし、ハルヒの持ち込んだ大量のものは一つとして存在せず、空き部屋の状態だった。ただ一つ、見慣れた団長席と同じように窓の前に置かれた一つの机と、その上に背中を向けてあぐらをかいて座っている一人の人間を除いて。 「……誰だ?」 自分のでも驚くほど落ち着いた声でその人物に語りかける。窓から見える景色は、薄暗い闇に包まれた灰色の世界だった。 やはりここは閉鎖空間なのか? しかし、誰だと語りかけた割には、俺はその机の上に座っている人物に見覚えがあった。いや、そんな曖昧な表現ではダメか。 北高のセーラ服に身を包み、肩に掛かる程度の髪の長さ、そして、あのトレードマークとも入れるリボンつきのカチューシャ。 該当する人間はたった一人しかいない。 こちらの呼びかけに完全に無視したそいつに、俺は再度声をかける。 「俺を呼び出したのはお前なのか? ここはどこだ?」 「黙りなさい」 ドスのきいた声。しかし、殺気に満ちたそれでも、俺はその声を知っていた。 ………… ………… ………… 長らく続く沈黙。俺はどう動くべきか脳細胞をフル回転させていたが、さきに目の前の女がそれを打ち破った。 「――よしっ!」 そう彼女は威勢のいい声を放つと、机から身軽に飛び降りてこちらをやってきた。そして、問答無用と言わんばかりに俺のネクタイをつかむと、 「成功したわ。奴らにも気が付かれていない。今回はちょっと難易度が高かったから、失敗するかもと思っていたけど、案外簡単にいったわね。そういうわけで協力してもらうわよ」 おいちょっと待て。なにがそういうわけだ。その言葉には前後のつながりがなさすぎるぞ。 「そんなことはどうでもいいのよ。あんたはあたしの質問に答えれば良いだけ。簡単でしょ?」 「状況どころか、自分が一体全体どこにいるのかもわからんってのに、冷静な反応なんてできるわけねぇだろうが」 ぎりぎりとネクタイを締め上げてくるそいつに、俺は抗議の声を上げた。 だが、この時点で俺は確信を持った。今むちゃくちゃな態度で俺に接してきている人物。容姿・声・性格全て合わせて、完全無欠に涼宮ハルヒだった。ああ、こんな奴は世界中探してもこいつ以外一人もいないだろうから、 そっくりさんということはないだろう。 俺の目の前にいるハルヒは、すっとネクタイから手を離すと、腰に手を当てふんぞり返って、 「全く情けないわね。少しは骨があるかと思っていたけど、どっからどうみてもただの一般人じゃない」 「当たり前だ。今までそれは嫌というほど見せつけてきただろ」 俺の返した言葉に、ハルヒはふんと顔を背けると、 「あんたとは今日初めて合ったんだから、そんなことわかるわけないでしょ」 あのな、初対面の人間に一方的に問いつめるのはどうかと――ちょっと待て。なんだそりゃ、俺の記憶が正しければ、お前とはかれこれ一年以上の付き合いになるはずなんだが。しかも、クラス替えまでしてもしっかりと俺の後ろの席に座り続けているじゃないか。 「それはあんたの所のあたし。あたしはあんたなんて知らないし、こないだ平行時間軸階層の解析中に見つけるまで存在すら知らなかったわ」 このハルヒは淡々と語っているんだが、あいにく俺には何を言っているのかさっぱりだ。しかも、話がかみ合ってねえ。 このままぎゃーぎゃー言っても時間の無駄だろう。 俺は一旦話をリセットすべく両手を上げてそれを振ると、 「あー、とりあえず話がめちゃくちゃで訳がわからん。とにかく、まず俺がお前に質問させてくれ。 それで状況が把握できて納得もできたら、お前に協力してやることもやぶさかじゃない」 俺の言葉にハルヒはしばらくあごに手を当てて考えていたが、やがて大きくため息を吐くと、 「わかったわよ」 そう渋々承諾する。よし、とにかくボールはこっちが握った。まずは状況把握からだ。 真っ先に俺が聞いたのはこれである。 「お前は誰だ?」 俺の質問に、ハルヒはあきれ顔で、 「涼宮ハルヒよ。他の誰だって言うのよ」 「巧妙に化けた偽物って可能性もあるからな。俺の周りにはそんなことも平然とやってのけそうな連中でいっぱいだし」 「それじゃ、証明のしようがないじゃん。どうしろっていうのよ」 ハルヒの突っ込みに俺は返す言葉をなくす。確かに疑えばどうとでも疑えるのが、俺を取り巻く現在の環境だ。 となると、これ以上追求しても意味がない。それに俺の直感に頼る限り、今目の前にいるのはあのわがまま団長様と人格・容姿ともに完全に一致しているわけで、それを涼宮ハルヒという人間であると認識しても問題ないだろう。 だがしかし、先ほどの言い回しを見ていると、俺が知っている『涼宮ハルヒ』ではない。 「えー、聞きたいのはな、お前がハルヒであることは認めるが、俺の知っているハルヒじゃなさそうだって事だ。 なら俺のつたない脳を使って判断すると、ハルヒが二人いるって事になるんだが」 「そうよ」 そうよ、じゃねえよ。そこをきっちり説明してくれ。 「あー。あんたの頭に合わせて言うと、別の世界のあたしってことよ。平行世界って言葉ぐらい聞いたことあるでしょ? ここはあんたのいた世界とは似ているけど別の世界ってことよ」 簡単すぎてかえってわからんような。まあいい、いわゆる異世界人ってことにしておこう。このハルヒから見れば、俺の方が異世界人なんだろうが。 ……しかし、ついにでちまったか、異世界人。しかもよりにもよって別の世界のハルヒとはね。こいつは予想外だったぜ。 ここでふとハルヒが口をあんぐりと開けて呆然としているのが目に入った。 「ちょっと驚いたわ。随分あっさりと受け入れるのね」 「最初は本意じゃなかったが、いろいろ今までそういう突拍子もない話は聞かされまくったから、 いまさらここは異世界で自分は異世界人ですっていわれても、今更驚かねえよ。異世界人については今まで伏線もあったからな」 俺の言葉にハルヒは興味深そうに目を輝かせている。何だ? こいつも宇宙人・未来人・超能力者のたぐいを求めているのか? まあいい。俺は次の質問に移る。 「ここはどこだ?」 「時間平面の狭間よ」 ……何というか、ハルヒが真顔で朝比奈さんチックなことを言うと違和感がひどいな。それはさておき、それじゃわからん。 わかるように説明してくれ。 「何よ、そんなことぐらい直感でピンと来ないわけ? 呆れたわ。未知との遭遇体験に慣れているだけで、 肝心の理解能力は本当に凡人なのね。まあいいわ、ざっと説明すると、あたしが作った空間で誰も入って来れず、誰も認識できない場所。これくらいグレードを落とせばわかるでしょ」 いちいち鼻につく言い回しなのもハルヒ独特だよ。確かにわかりやすいが。って、なら俺が今ここにいるのは、 お前が招待したからってことなのか? 「そうよ。もっとも周りの人間に悟られずにやるのには、それなりに細工が必要だけどね」 なら次に聞くことは自然に出てくる。 「で、一体俺を何のためにここに連れてきたんだ? 何が目的だ?」 これが核心の部分になるだろう。自己紹介は終わった以上、次は目的についてだ。 ハルヒは待ってましたと言わんばかりに、にやりと笑みを浮かべ、 「それは今から説明してあげる。長くなるから、そこの椅子に座って聞きなさい」 そうハルヒは、また窓の前にある俺的に団長席の上に座る。そして、すっと手を挙げると、床から一つのパイプ椅子が浮かび上がってくる。 ここまでの話で大体予測していたが、このハルヒは普通じゃない。いや、確かに俺のよく知っているSOS団団長涼宮ハルヒも変態的神パワーを持ってはいたが、自覚していないため自由にそれを操ることはできない。しかし、この目の前にいるハルヒは自分の意思で長門レベルのことを今俺の目の前でやってのけたのだ。 やれやれ、これはちょっと異世界訪問という話で済みそうにない気がしてきた。 俺はハルヒの頼んでもないご厚意に甘えることにして、パイプ椅子に座る。 「さて……」 ハルヒはオホンと喉の調子を整えると、 「あんた、宇宙人の存在は信じる?」 このハルヒの言葉に何か懐かしいものを感じた。あの北高入学式のハルヒの自己紹介。ただ、いくつか欠けてはいるが。 俺は当然と手を挙げて、 「ああ信じるよ。少なくとも俺の世界ではごろごろ――とはいかないが、結構遭遇したしな」 「……情報統合思念体の対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインタフェースに?」 返されたハルヒの言葉に、俺は驚く。何だ、このハルヒは長門のパトロンのことを知っているのか? 「当然よ。あいつらの存在、そして、どれだけ危険な連中かもね。実質的にあたしの完全無欠な敵よ」 ――敵。ハルヒの口から放たれた声には明らかに敵意が混じっていた。 どういうことだ。俺が知っている限り、奴らは内部対立はあるとはいえ、主流派は黙ってハルヒを観察することにしていたはず。 あからさまな敵意を見せてはいないんだよ。 「何ですって……? まさか……いや……」 ハルヒは予想外と言わんばかりに思案顔に移行するが、軽く頭を振ると、 「まあいいわ。とにかく、あたしと情報統合思念体は対立関係にある。というよりも、情報統合思念体が一方的にあたしを敵視して排除しようとしているだけなんだけどね。こっちとしても、敵意さえ見せなければ別に相手にする気もないんだけどさ」 ハルヒはあきれ顔でふうっとため息を吐いた。 排除しようとしているとは、まるで俺の世界とは正反対の行動じゃないか。 「何で対立しているんだ? いや、どうして情報統合思念体はお前を排除しようとしているんだ?」 「細かいレベルでの理由は知らない。とにかくあたしの存在を勝手に危険と認識して、襲ってくるのよ。 それも狙うのはあたしだけじゃない。この星ごと消滅させようとするわ。そんなの許せるわけないじゃない」 「星……ごと?」 何だか話がSF侵略映画っぽくなってきたぞ。情報統合思念体が地球を攻撃するとは、まさにハリウッド映画。 ――ここでハルヒは思い出に浸るように天井に視線を向けると、 「三年前――いや、あんたのいた時間から見れば四年前か。その時、あたしは自分が持っている力に気が付いた。野球場に連れられていったあの日、自分の存在がどれだけちっぽけな存在であるか自覚したとたん、体内で何かが爆発したような感覚がわき起こり、この世の全ての存在・情報がどっとあたしの中に流れ込んできたのよ。当然、その中に情報統合思念体についてのこともあった」 ここで気が付く。さっきまで俺は灰色に染まった教室の中にいたはずなのに、いつの間にかまるで360度スクリーンの映画館のような状態になっていることに。そこには野球場の人数に圧倒されるハルヒ・電卓で野球場の人間が地球上でどのくらいのわりあいなのか計算するハルヒ・ブランコで物思いにふけるハルヒの姿が映し出される。 「きっとその時に向こう――情報統合思念体も気が付いたんでしょうね。あたしはその巨大な存在に触れてみようとした。 そのとたん……」 ハルヒの言葉に続くように、今度は宇宙から眺める地球の姿が映し出される。そして、 「嘘だろ……」 俺は驚嘆の声を上げた。まるで――そうだ、長門が朝倉を分解したときみたいに、地球が一部が粉末のように変化を始めた。 それは次第に地球全土へと広がっていき、最後には風に飛ばされるようにちりぢりにされ消滅してしまった。 呆然と見ることしかできない俺。と、スクリーンに星以外に一つだけ残されているものがあった。 「無意識に自分のみを守ろうとしたんだと思う。気が付いたとき、あたしは宇宙から消えていく自分の星を眺めていた。ただその恐ろしさと悲しさに泣きじゃくりながら何もできずに」 ハルヒだった。まだ幼い容姿のハルヒが宇宙空間で座り込むような格好で泣きじゃくっている。 目の前で淡々と語るハルヒは決してそのスクリーン上の自らの姿を見ようとせず目を閉じながら、 「何でこんな事になったのか、この時は理解できなかった。いや、今でも完全に理解できた訳じゃないけど。 あたしはただ情報統合思念体という大きく魅力的に見えたものに触れようとしただけ。なのに、奴らはあたしどころか、周囲全てを巻き込んで消し去ろうとした――許せるわけないじゃない。あたしは何の敵対行動も取っていないのに」 その声には怒気どころか殺気すら篭もっていた。確かに、なにも悪いことをした憶えもないのに、いきなり攻撃されてしかも無関係な人たちまで抹殺したんだから怒って当然か。しかし、何でそこまでして情報統合思念体はハルヒを消そうとする? 「知らないわよそんなこと。とにかく、その後あたしは情報統合思念体からの次の攻撃に備えていた。 あたしの抹殺に失敗した以上、また仕掛けてくると思ったから。でも、いつまで経っても襲ってくる気配はなく、 ただ時間だけが過ぎたわ。おかげでその長い時の間に大体自分ができることがわかったわ。奴らへの対抗措置もね」 「何で連中は追撃してこなかったんだ?」 「あとで奴らの内部に侵入して確認したときにわかったんだけど、最初の攻撃時にあたしは無意識に情報統合思念体に対してダミー情報を送り込んだみたい。あたしは強大な力を手にした。だけど、あたしはそれを自覚していないという形でね。 だから、奴らは地球を抹殺した理由がなくなり、どうしてそう言った行為を取ったのかわからない状態として処理されていた。 そこにあたしは目を付けた」 ハルヒの言葉に続き、周囲のスクリーンに無数――数えることのできないほどのガラス板のようなものが並列で並んでいる映像が映し出される。その一枚一枚には無数のカラフルな丸い点が描かれ、様々な形に変化・縮小・拡大・消滅・発生を繰り返している。 「あたしは地球抹殺の理由の接合性がなくなっていた情報をさらに改ざんした。あたしは自分の力を自覚していない、だから情報統合思念体は何の行動も起こさなかった。だから地球は消滅していないと。 地球自体は消滅前の時間軸に残されていた情報をコピーしてあたしが再生した。幸い、連中も脇が甘いのか、 そういったことは多々にあるのか、あっさりとあたしの情報改ざんは成功したわ。おかげであの日の惨劇はなかったことにできた。 ただあたしが力を得たという情報まで奴らから消去することはできなかった。結構希少な情報だったせいか、前例として広域な情報に関連づけられていたから、これを改ざんすると他への影響範囲が大きすぎて、全部改ざんなんて不可能だったから」 あまりのスケールの大きさに呆然と耳を傾けることしかできない。 「……ここじゃそんなことがあったのかよ」 俺は聞かされた衝撃的な話に疲れがたまり、パイプ椅子の背もたれに預ける体重を増加させる。 ハルヒは続ける。 「とりあえずリセットはできたわ。状況はあたしは力を得たが、それを自覚していないと情報統合思念体は理解している。 この状況下でどうすれば奴らの魔の手から逃れることができるのか、次はそれを模索する必要ができたのよ。 あたしが力を得たことで奴らに目を付けられた以上、うまくやり過ごなければならない」 ここでスクリーンに映し出された一枚のガラス板がアップになる。 「一度でうまくいくとは思っていなかったあたしは、一つの時間平面――このガラス板一枚があたしたちのいうところの『世界』と認識すればいいわ――を支配することにした。こうしておけば、いざ奴らにあたしが力を自覚していることに気が付かれてもいつでもリセットできるし、情報統合思念体には同じようにダミー情報を送り込めばごまかせるから」 「で、どうなったんだ?」 俺の問いかけに、ハルヒはいらだちを込めたように髪の毛を書き上げ、 「それがさっぱりうまくいかないのよ。どこをどうやっても途中で奴らに力を自覚していることがばれて終わり。 その度にリセットを続けて来ているけどいい加減手詰まり状態になってきて……」 ここでハルヒはびしっと俺を指差し、 「そこであんたを呼び出したって訳よ」 「何でそうなるんだよ?」 俺が抗議の声を上げると、ハルヒは指を上げて周囲のスクリーンに別のガラス板――時間平面とやらを映し出す。 「手詰まりになったあたしは別の時間平面に何かヒントがないか調べ始めたのよ。そこであんたたちの存在を知った。 同じようにあたしが力を得ながら、情報統合思念体が何もせずにずっと歩み続けている。力を自覚した日から、 4年も経過しているってのに。それはなぜなのか? どうしたらそんなことができるのか? 詳しく別の時間平面を調査していると奴らに気が付かれる可能性があったから、とりあえず一人適当な奴を こっちに連れてきて教えてもらおうってわけ。とはいってもあたし自身を連れてくるとややこしいことになりそうだから、事情を知っていそうな奴を選んだけど」 そういうことかい。で、唯一の凡人である俺が選ばれたって事か。 ここでハルヒは机を飛び降り、また俺のネクタイをつかんで顔を急接近させると、 「さあ、白状なさい。一体あんたの世界のあたしは何をやったわけ? どうやったら情報統合思念体は手出しできなくできる?」 「何もやっていない。少なくとも俺の知っているハルヒは自分の力を自覚していないからな」 「は?」 ハルヒの間の抜けた声。が、すぐに眉間にしわを寄せて額までぶつけて、 「そんなわけないじゃない! 例えなんかの拍子で自分の力に自覚していなくても、周りに情報統合思念体がいるならどこかでちょっかい出してくるに決まっているんだから、すぐに気が付くはずよ!」 「だが、事実だ。情報統合思念体はハルヒがその状態を維持することを望んでいるし、それに俺をここに呼び出す前に俺を付けていたハルヒと一緒にいた小柄な女の子はその対有機生命体ヒューマノイドインターフェースだ」 「バカ言わないで! あたしがあいつらと一緒に仲良く歩いていられるわけがないじゃない!」 ハルヒはつばを飛ばして言ってくるが、そんなこと言われても知らんとしかいいようがない。 それにしてもこのハルヒが持っている情報統合思念体への敵意は痛々しいまでに強く感じる。 「じゃあなんであんたはあたしの力について知っているのよ!」 「長門――情報統合思念体とかその他周囲から教えてもらった」 「じゃあなんであたしに教えようとしないわけ!?」 「一度言ったが、信じてくれなかった」 とりあえず事実だけ淡々と返してやると、ハルヒの顔がだんだん失望の色に染まっていった。やがて、ネクタイから手を離し、机の前まで戻ると、 「……だめだわ。それじゃだめよ。ただ運良くそこまで進んだだけじゃない。とくにあたし自身が自分の力の自覚がないのは致命的だわ。自覚したとたん、情報統合思念体に星ごと抹殺されて終わり。そして、リセットもダミー情報による偽装もできない。 あんたの世界も長くはないわね」 そうため息を吐く。 このハルヒの言葉と態度に、俺の脳天に少し血が上り始めた。まるでいろいろあった俺のSOS団人生を 簡単に否定された気分になったからだ。 「おい、俺のやってきたことをあっさりと否定するんじゃねえぞ。確かにお前みたいに壮絶じゃなかったかもしれないが、俺は俺で色々やってきたんだ。大体、俺のいる世界を全部見たって言うなら、俺たちのその後もわかっているんじゃないのか?」 「あのねぇ、時間平面ってのは数字に表せないほど大量にあるのよ。そこから無作為に検索をかけて、 偶然見つけたのがマヌケ面のあんたがあたしと一緒に歩いている姿を見つけただけ。その後の様子まで確認している余裕はなかったわよ。あまり長時間の時間平面検索は奴らに察知されかねないから」 それを先に言えよ。ってことは、このハルヒは俺たちSOS団についてもさっぱり知らないって事になる。 そこで俺はこのハルヒに対して、俺を取り巻く環境についてかいつまんで説明してやった。 情報統合思念体の対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインタフェースである長門有希。 未来からハルヒについての調査・監視を命じられてやってきた朝比奈みくる。 ハルヒの感情の暴走を歯止めする役目を与えられた超能力者古泉一樹、そしてそれを統轄する組織、『機関』。 ………… だが、ハルヒは話自体は信じたようだったが、やはり俺たちがその後も平穏に進むということについては 懐疑的な姿勢を崩そうとしなかった。 「まさかあたし自らそういう連中とつるんでいたとはね。それも自覚がないからこそできる芸当なんでしょうけど、 とてもじゃないけどリスクが大きすぎてできそうにない。それに皮一枚でぎりぎりあたしに気が付かれていないだけにしか感じられない以上、いつ自覚してもおかしくないわね。その時点であんたの世界は終わりよ」 「なぜそんなに簡単に否定できるんだよ?」 ハルヒはわからないの?と言わんばかりに嘆息し、 「まず『機関』とやらは、情報統合思念体に逆らえるだけの力があるとは思えない。あんたと一緒にいた色男――古泉くんだっけ? ――が、機関の意向よりあたしが作ったSOS団とやらを優先すると言っても、個人で何ができるわけもなし。 未来人については、同じ時間平面上なら移動可能ということは使えそうだけど、そもそも情報統合思念体はそんなことなんて朝飯前。対抗手段としては物足りないわね。最後の情報統合思念体の対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインタフェースについては論外。 奴らの支配下から離れて独立しつつあるとか言われても、信じられるような話じゃない。所詮は操り人形なんだから」 その言葉に俺はいらだちを募らせるばかりだ。まるで外部の人間にSOS団の存在意義を必死に説明してみせているような気分になってくる。いや、このハルヒは確かに俺たちについてまるっきり知らない――それどころか、情報統合思念体に対して明確な敵意を見せているので余計たちが悪い。 だが、俺はSOS団として満足して生きてきていたし、危険も感じていない。長門のパトロンはさておき、 長門自身には信頼を寄せているし、古泉はSOS団副団長という立場の方がすっかり似合っている状態。 朝比奈さんはもうマスコットキャラが板に付きすぎて抱きしめて差し上げたいぐらいだ。そして、皆ハルヒとともに 平穏無事にいたいと願っている。 それの何が問題だというのだ? このハルヒは自分の力を自覚していないとダメになるということを 前提に語っているようにしか見えない。 その後も必死に説明した俺だったが、ハルヒは聞く耳を持たない。 「悪いけど、これ以上議論しても無駄よ。あんたを元の時間平面に送り返すわ。一応礼を言っておくけど、 そっちもかなりぎりぎりの状態ってことはわかったんだから――」 「そうはいかねえよ」 「え?」 元の世界への機関を拒否した俺に、ハルヒはきょとんとした表情を浮かべた。 俺は正直このまま元の世界に戻るような気分じゃなかった。このままSOS団を完全否定されたっきりでは、 気分が悪いことこの上ないし、そもそもこのハルヒのいる世界は破滅とリセットのループを繰り返している。 だったら、俺の世界と同じようにSOS団を作れば同じように平穏に過ごせる世界が作れるはずだ。 俺にはその絶対の確信があった。 「何度でもリセットできるんだろ? だったら、俺の言うとおりに動いてくれ。そうすりゃ、俺たちの世界が どれほど安定しているか教えてやれるし、ここの世界の安定化も図れる。お前だって手詰まり状態だって言っているんだから、 試す価値はあるはずだ。少なくともお前が到達できない場所に俺たちは到達できているんだからな」 「…………」 ハルヒはあごに手を当てて思案を始めた。 ふと、他人の世界にどうしてそこまでするんだという考えが脳裏に過ぎる。しかし、すぐにその考えを放り捨てた。 ここまであーだこーだな状態になっておめおめと引き下がるほど落ちぶれちゃいない。 「……わかったわよ」 ハルヒは渋々といった感じに了承の言葉を出した。しかし、すぐにびしっと俺に指を突きつけ、 「ただし! 条件付きよ。あんたのいう宇宙人・未来人・超能力者にまとめて接触はしない。一つずつ試していくわ。 情報統合思念体の目はどこでも光っているんだから、変に手を広げて取り返しの付かない事態にならないよう 石橋をハンマーで殴りつけながら進ませてもらうわ。あと、あたしは自分の力の自覚はそのままにする。 この一点だけは譲れない。これがダメというなら即刻あんたを元の世界に送り返すから」 条件付きというわけか。はっきり言って、3勢力がそろわないとSOS団には成り立たないが、この際贅沢はできない。 一つずつ接触しても俺のいた世界のSOS団と同じぐらいの平穏な関係は築けるはずだ。 力の自覚については仕方ない。ハルヒは自分がそれを理解していない状態を極端に恐れている節がある。 それに、これに関してはうまい具合にハルヒが黙っているだけで済むから大丈夫か。 「わかった。それで構わん」 「じゃ、決まりね」 こうして別の世界でSOS団再構築という壮大なプロジェクトが始まった。 ――そして、俺がどれだけ甘い考えをしていたのか、嫌と言うほど思い知らされることになる。 ~~涼宮ハルヒの軌跡 機関の決断(前編)へ~~
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6543.html
新川「涼宮ハルヒのお願い!ランキング!!」 多丸兄「今回のテーマはこちら!!」 森「本当に可愛い北校生がしりたーい!!」 多丸弟「そしてそれらの美少女たちを審査する美食家アカデミーはこちらぁっ!!」 キョン「どうも、キョンです。座右の銘はポニーテールは人類の宝です」 古泉「これはこれは……古泉です。今回はよろしくお願いしますよ、んっふ」 谷口「女の審査は任せろ!!!なんなら俺的北校美少女ランキングを公開してm」 国木田「国木田です。始めまして」 多丸弟「以上の四人の美食家アカデミーが、それぞれ10点ずつの持ち点、合計40点満点で審査してランキングを作成するぞ!!」 新川「機関のブレインたちが汗水垂らして作成した予想ランキングはこちらぁっ!!」 第一位 涼宮ハルヒ 第二位 朝比奈みくる 第三位 長門有希 第四位 鶴屋さん 第五位 喜緑江美里 第六位 朝倉涼子 第七位 阪中 佳実 森「上位三位はやっぱりSOS団が占めてるみたいね」 多丸兄「果たして一番可愛い北高生の称号は誰の手に!?それでは参りましょう!!まず第七位はこの方!!」 新川「阪中さん!!さて、美食家アカデミーたちの反応は?」 キョン「うーん……普通なんだよな」 古泉「普通ですね……」 谷口「うん、これといった特徴がねえんだよなあ……たしかに顔も可愛いし、スタイルだって悪くないんだけど……なんだかなあ」 国木田「普通に見てもかなり可愛い方だと思うけど、やっぱりこれだけ個性の多い北高生の中ではなんだか見劣りするものがあるよね。あと特徴的な口調だけど……僕的にはかなりマイナスかな。普通のしゃべった方が可愛いと思う」 多丸弟「早速美食家たちの厳しい指摘の声!!さて、開発者……もとい、美少女たちの反応は!?」 阪中「みんなひどいのね」 ハルヒ「どうどう」 みくる「ていうかなんですかぁこの企画……」 長門「普通に引く」 森「番組の内容自体に不満が集中しているぞ!」 新川「……」 多丸弟「さあ、気になる得点は!?」 キョン「7点です」古泉「5点です」谷口「4点です」国木田「6点です」 合計 22点 ハルヒ『うわぁ……厳しいわね』 みくる『涼宮さん、そんなこと言ってる場合じゃないですよう』 朝倉『谷口君にこんな点数付けられる筋合いないと思うわ』 長門『そう。あれは人類の最下層に位置する個体。採点する資格も無ければ、気にする必要も無いものと思われる』サスサス 阪中『うう……』 長門(ここで媚売っとけばシュークリームが) 新川「さて、ここまでは機関の予想通りの結果に!!続いて第六位に美食家アカデミーの選択した美少女は!?」 多丸兄「涼宮ハルヒ!!これは機関予想を大きく覆しての第六位だ!!美食家アカデミーたちの反応を見てみると?」 キョン「ハルヒか……黙っていてなおかつポニーテールにしてたらかなりいいんだけどな……でも最近髪短くしてるし騒がしいし……」 古泉「うーん……立場上言えませんでしたが、彼女あなたがいないときよく団室で放屁されるんですよ」 キョン「マジか」 古泉「えらくマジです。……そんなこともあって残念ながら僕もあまり高評価は下せませんね」 谷口「俺は一度振られた女には低評価を付ける事にしているんだ。それに性格も腐ってやがるしな」 国木田「そんな事誰も聞きたくないし、言っちゃだめだよ谷口。涼宮さんか……僕はそこまで悪いとは思わないけどな……でも、文化祭の映画のときのことキョンから聞いたんだけど、朝比奈さんにあんなことするのは良くないと思うな。でも最近はそんなことしないみたいだからそこまで悪い評価は上げられないよ」 多丸兄「世界が滅びそうな厳しいコメント!!美少女達の反応は!?」 ハルヒ『むきー!!!!』 みくる『涼宮さん落ち着いて……』 長門『正当な評価』 ハルヒ『有希!?』 長門『今のは腹話術。朝倉涼子改めまゆりんの陰謀』 朝倉『ちょっと長門さん!?まゆりんってなによ!?』 長門『ユニーク』 ハルヒ『……ともあれキョンと古泉くんにはおしおきが必要ね』 鶴屋『あははっ、キョンくんにげてー!!にょろ!!』 喜緑『なかなか厳しいようですね』 森「あまりに厳しい審査に、動揺が隠せないようだぞ!」 多丸弟「それでは気になる点数は!?」 キョン「6点です」古泉「6点です」谷口「3点です」国木田「8点です」 合計23点 ハルヒ『ぬがああああ!!!!!!!』 みくる『涼宮さん!!握りしめすぎて爪が掌に刺さって血がだくだく出てます!!危ないです!!』 長門『ユニーク』 ハルヒ『有希!?』 長門『見ざる聞かざる言わざる。まゆりんの陰謀』 朝倉『知らないわよ!?』 鶴屋『知らざるだねっ!!』 森「なんだか本人以外特に気にしてないみたいだぞ!」 ~この番組は世界の明日を作る、機関の提供でお送りしています~ CM中 キョン「………そろそろ説明してもらおうか」 古泉「なにがですか?」ニコッ キョン「とぼけんなって。あと古泉スマイルとかそういうのマジでいらないから」 古泉「んっふ、これは手厳しい」 キョン「だれの陰謀だ。ハルヒか?」 古泉「いや、今回は涼宮さんとは無関係ですよ。ついでに言うと貴方の親友の佐々木さんも無関係です」 キョン「じゃあなんでこんなことを」 古泉「分からないのかね?」キリッ キョン「え?」 古泉「そっちの方が、面白いだろう」ダイハツッ キョン「………」 古泉「いや、止めましょうって。無言で鉄パイプとか振りかぶっても面白いことなんてありませんから」 ~ここからは神人たちから世界を守る、機関の提供でお送りします~ 新川「予想一位のまさかの六位転落!!大波乱のまま続いて第五位に選ばれたのは!?」 多丸兄「朝比奈みくる!!またしても機関予想を大きく裏切る結果に!!美食家アカデミーたちは一体どのような反応を示したのか!?」 キョン「この人は……可愛らしいな。そして巨乳なんだが……」 古泉「貴方の仰りたい気持ちは理解しました……何かが足りないんですよね?」 キョン「ああ、そうだ……そして、言っちゃ悪いが影が非常に薄い。……残念だ」 谷口「俺的美的ランクで言えばAAAなんだが……たしかにキョンたちが言うとおり、何かが足りないんだよな」 国木田「すごく阪中さんとケースが似てるんだけど……やっぱりこの人の場合、お茶汲みメイドのキャラ設定とか、様々なキャラが涼宮さんによって後付けされたものだから 微妙なんじゃないかな?やっぱり個性ってものはその人自身でつけるものだし……」 多丸弟「北高のマドンナと称される朝比奈みくるの評価に意外すぎる厳しい声が!!これを受けて美少女たちの反応やいかにっ!?」 みくる『殺す。[禁則事項]で[禁則事項]して殺す』 ハルヒ『はっ!!みくるちゃんからドス黒いオーラが立ち上ってるわ!!』 長門『当然。意味のない脂肪をつけていたらだれでもこうなる』 ハルヒ『有希!?』 長門『まゆりん、いい加減にしてほしい』 まゆりん『長門さん?いい加減にしないと、今日のハンバーグあなたのだけ豆腐のやつにするわよ?』 長門『なぜあんなことをしてしまったのか自分にも理解できない。深く反省している。もうしない』 朝倉『よし』 森「どうやらSOS団の女性陣は怒ると人格が変わるようだぞ!」 新川「さて気になる点数は!?」 キョン「7点です」 古泉「6点です」 谷口「7点です」 国木田「7点です」 合計27点 みくる『でも涼宮さんより4点も上なんだぁ……ふふっ』 ハルヒ『みくるちゃん!!それどういう意味よ!?』 長門『超低空飛行な争い。ゆきりん見てられない』 ハルヒ『有希!?』 長門『まy……喜緑江美里改めわかめ星人は少し自重してほしい』 喜緑『長門さん?今なんと?』ニッコリ 長門『ご……ごめんなさい。ぶたないで。わたしの髪の毛をわかめに変えないで』ガタガタ 森「どうやらSOS団内の友情に亀裂が生じてきたようだぞ!」 多丸弟「さて!!大波乱が続くなか、お次は第四位!!ランクインしたのは……」 多丸兄「喜緑江美里!!美食家アカデミーの感想は?」 キョン「おお……喜緑さんか…!!美人だ……ただ」 古泉「ええ………この美貌には、朝比奈さんや涼宮さんとは違った何かを感じます。本当に気品があって上品そうな美人ですね……ですが」 谷口「うほっ、この人ってあの生徒会きっての美人の喜緑江美里さんじゃねえか!!お綺麗だなぁ……惚れ惚れするぜ!!……だが」 国木田「やっぱりこの人は上級生だけあって大人っぽさがあるよね。この人にも僕憧れてるんだ。ちょっとね。……けど」 キョン「わかめだ」 古泉「わかめですね」 谷口「わかめだな」 国木田「わかめだね」 喜緑『パーソナルネーム「キョン」「古泉一樹」「谷口」「国木田」の情報連結の解除を申請』 朝倉『ちょ、落ち着いてよね』 長門『そう。貴方がわかめなのはもはや避けようのない規定事項』 ハルヒ『有希!?』 長門『阪中佳実、出番がないからといってわたしにアフレコをするのは推祥できない』 阪中『はひっ!?』 鶴屋(出番がないのはわたしも同じっさ) 森「出番争いという新たな争いが起こっているようだぞ!」 新川「さて、気になる得点は!?」 キョン「8点です」 古泉「8点です」 谷口「8点です」 国木田「7点です」 合計31点 森「ついに大台の30点突破!!これに対して美少女の反応は!?」 みくる『くそワカメが。わたしの方が絶対可愛いわ』(すごいですぅ喜緑さん) 鶴屋『みくる、逆、逆』 喜緑『……まあ、わかめと言われたのは癪に障りますが、30突破は気分がいいですね』 長門『』スック トトトト 喜緑『あら、長門さん。なんですか?』 長門『TFEI最弱が』ボソッ 喜緑『』ピクッ 長門『』トトトト ペラッ 朝倉『は、は、ははは……』 阪中(帰りたいのね) 森「女の争いは恐ろしいぞ!」 新川「続いては第三位!!と、その前に……」 森「涼宮ハルヒの番外!ランキング!!」 多丸弟「ノミネートされたのはこちらのメンバーだ!!」 機関予想 第一位 佐々木 第二位 渡橋泰水 第三位 周防九曜 第四位 橘京子 多丸兄「こちらの佐々木団+αも美食家アカデミーに審査してもらおう!!」 森「本当は妹ちゃんやミヨキチちゃんもいれたかったけど、妹ちゃんはキョンくんの肉親だし、ミヨキチちゃんはあまりにも資料が無かったのでカットさせてもらったぞ!」 新川「さて番外編第四位は……この人だあっ!!!」 多丸弟「佐々木さん!!さて、美食家アカデミーたちの反応は!?」 キョン「佐々木か……可愛いんだけどなあ……なんかもうひとつ」 古泉「んふ、そうですね……非常に魅力的なんですがね」 国木田「やっぱり男性だけに僕っ娘ってキャラはいいんだけど……なんだか無理してる感じがあるよね。無理してまで個性を作っちゃいけないよ」 谷口「ああ……それに言っちゃ悪いが胸が小せえな。かなり可愛いけど」 新川「さて、気になる得点は!?」 キョン「8点です」 古泉「8点です」 谷口「8点です」 国木田「6点です」 合計30点 森「本編と同じく大波乱!!でも一発目にして30点の大台を突破したぞ!」 新川「非常にレベルの高い番外編!!続いては第三位!!選ばれたのは……」 多丸弟「周防九曜だあっ!!さあ、美食家アカデミーたちはどのような感想を抱いたのか!?」 キョン「なんだかんだ言っても九曜も可愛いよな、結構」 古泉「そうですね。彼女には彼女の魅力が多大にあります」 キョン「実は、俺踏切で襲われてアイツが微笑んだとき『耐えられたのは俺でこそだ』とか偉そうな事いってたけど正直昇天するかと思ったよ」 古泉「んふ。それは興味深い。またいつか詳しくきかせていただくといたしましょう」 谷口「す、周防さん……」 国木田「大丈夫、谷口?顔、酷い事になってるよ」 谷口「……ほっといてくれ」 新川「さて、気になる点数は!?」 キョン「9点です」 古泉「9点です」 谷口「6点です」 国木田「8点です」 合計32点 森「どうやら谷口くんはいきなり振られたのが相当ショックだったみたいだぞ!」 多丸兄「さあ番外編第二位は……この人!!」 藤原「渡橋泰水!!さて、気になる美食家アカデミーたちの反応は……?」 キョン「ヤスミか……可愛かったなあ」 古泉「ええ……もう二度と会えないのが残念でなりません」 キョン「……なあ、古泉よ」 古泉「なんですか?」 キョン「どうせ幻だったんなら……一回ぐらいやってても誰にも気付かれなかったよなあ……勿論警察にも」 古泉「おやおや……まさかこのような事で貴方と考えが一致するとは思いもしませんでしたよ」 キョン「……やっぱりお前とは親友だ」 谷口「可愛いなぁ……うん。可愛い。でもちょっとムネが小さいか?」 国木田「死になよ谷口。うん、でも涼宮さんが言ってたんだけど彼女って中学生なんだって。だから胸が小さいのは当然じゃないのかなあ」 谷口「JCだって…… み な ぎ っ て き た ぜ ! ! !」 国木田「ほんと帰りなよ」 新川「さて、気になる点数は!?」 キョン「9点です」 古泉「10点です」 谷口「8点です」 国木田「8点です」 合計35点 森「遂に古泉から満点が出たぞ!」 藤原「さあ!!残る第一位はこの人!!橘京子だぁっ!!!」 多丸兄「さて、美食家アカデミーたちの感想は!?」 キョン「おうふ……いやはや、朝比奈さん誘拐事件の犯人とはいえ……可愛いよなぁ」 古泉「この純真無垢な笑顔は……敵対組織ながら、かなり来るものがあります。そして仕事時にする子悪魔的笑みもまてbeautifulですぞ」 谷口「可愛いなあ……うん、このぽやーっとした感じがなんとも」 国木田「なんだか天然っぽい子だね。それもこの笑顔は作った天然じゃなくて真の天然だ。いまどき珍しい子だと思うよ」 新川「さて!!番外編第一位の点数は!?」 キョン「9点です」 古泉「9点です」 谷口「9点です」 国木田「10点です」 合計37点 森「惜しくも40点には届かなかったものの、本日最高得点をマークしたぞ!」 藤原「さて、CMの後は遂に本編ベスト3の発表だ!!」 ~この番組は●<マッガーレ印の機関でお送りします~ CM中 キョン「いやー……九曜に橘。そしてヤスミに佐々木……前回の事件の女性陣は実に素晴らしい!!」 古泉「全くです。いやはや、橘さんに至ってはあの事後思わずメールアドレスと電話番号を聞き出してしまったくらいですから」ハナタカダカー キョン「古泉……威張ってるつもりかもしれんが、俺だって橘のメールアドレスくらい持ってるぜ。そしてお前のとは文字列が違う……これがどういう意味だか分かるか?」 古泉「いえ……」 キョン「古泉。俺のとお前のと、ドメインを見比べてみろ」 古泉「はいはい……貴方のは……codomo.ne.jp……僕のは……orz」 キョン「そいつはサブアドだ」 古泉「ちくしょう」 ~ここからは世界の明日を担う機関の提供でお送りします~ 新川「さて!!遂に本家第三位の発表だ!!第三位は……この人!!」 藤原「長門有希だぁっ!!」 長門『……不服』ガンガン 朝倉『ちょ、長門さん、落ち着いて』 長門『黙れまゆりん』 藤原「さあ!美食家アカデミーたちの反応は!?」 キョン「長門か……正直、消失世界での長門の微笑み、それに帰ってきた後のありがとうはかなり俺の胸にくるものがあったな」 谷口「一年の最初こそ俺的美的ランクA-に留まっていたが……キョンたちと一緒にいるようになってからは雰囲気も柔らかくなったし、普通にAAランクくらいなら上げれるレベルになってきてるぜ」 国木田「そうだね……うん、谷口の言うとおり、かなり印象が柔らかくなったと思うな。今までは少し近寄り難かったんだけど……最近は接点こそ無いにしろ、接点さえあればかなりフレンドリーになることが出来ると思う」 藤原「ここまではかなりの好評価だ……しかし、ここにきてあの男が牙をむく!!」 古泉「あのー、確かに最近……特にこの12月から春にかけてかなり近寄りやすく、人間らしくなってますが……その、彼女少し黒いような印象を受けますね。なんだか自分というものを確立して、自信が出てきたのは結構だと思うんですが……少しそれを前面に出しすぎかなといった印象を受けますね」 藤原「ここまで同調同調を繰り返し、あまり自分の意見を出さなかった古泉がまさかのダメ出し!!これを受けて女性陣は!?」 長門『パーソナルネーム「ガチホモ」の情報連結の解除を申請』 朝倉『長門さん落ち着いて……ほら!!そんなことするから阿部高和さんがいなくなっちゃったじゃない!!』 長門『うかつ』 喜緑『うふふ、偉そうなことを言っていたわりには張り合いの無い順位ですね』 長門『たった一番とはいえわたしはあなたの上。あなたにわたしを皮肉る資格は無いものと思われる』 喜緑『おや、皮肉に聞こえましたか?そんなつもりはさらさら無かったんですけど』 森「皮肉というよりは、ただの悪口だぞ!」 藤原「さて、気になる得点は!?」 キョン「9点です」 古泉「8点です」 谷口「9点です」 国木田「9点です」 合計35点 長門『あなたより4点も上』ドヤアアアアアアアアアアアアア 喜緑『くっ……』ギリッ 鶴屋『有希っこすごいねっ!!』 長門『まだ出ていないあなたが言っても嫌味にしかきこえない』 ハルヒ『それにしてもSOS団の女性陣がこんな順位までなんて……鍛えなおしよ!!』 みくる『六位が何言っても説得力ないですよう』 ハルヒ『みくるちゃん!?』 みくる『ひえー!禁則事項ですぅ!!』 阪中(わたしなんてもう面目丸つぶれなのね) 森「なんだか知らないけど殺伐としているぞ!」 藤原「さて第二位発表の前にスタジオ予想だ!!」 森「朝倉涼子と鶴屋さんのどっちが一位か、スタジオで決めて欲しいぞ!」 佐々木「ふむ……とりあえず藤原くん、こちらにもどっておいで」 藤原「ふんっ、禁則事項だ」 橘「意味が分からないのです!」 九曜「――――チーム――――佐々木は――――橘京子と―――――佐々木某――――――チーム――――藤原は――――わたしと――――――シスコン未来人――――――――」 佐々木「九曜さん説明ありがとう。ふむ……僕の順位が最下位だったのは後でキョンにじっくり訊いてみるとして……やっぱり勝つのは鶴屋お嬢さんではないかな?」 橘「きっとそうなのです!!わたしに亀さんくれたのです!!」 佐々木「橘さん……言っては悪いが、そのう……なんだかアホの子になってないかな?」 橘「気のせいなのです!!天才の指輪も持ってるのです!!雑誌で売ってたのです!!」 佐々木(うわぁ……真性のアホだこいつ) 藤原「ふん、僕は癪だがあのTFEIに賭けてやろう」 九曜「―――どう――――して――?」 藤原「ふんっ、僕は太ももが好きだからd………あ」 佐々木「…………」 橘「…………」 九曜「…………」 藤原「いっそ殺せよ」 佐々木チーム……鶴屋さん 藤原チーム……朝倉 新川「さて、どちらの予想が正しいのか!?」 藤原「運命の瞬間!!第二位は……この人だ!!」 多丸弟「鶴屋さん!!!さて、美食家アカデミーは、どのようなジャッジを下したのか!?」 キョン「おお……鶴屋さんか……この人は正真正銘の天才だ……!!そして何よりもお美しい……」 古泉「んふ。まさかこれほどまでとは……いやはや、鶴屋家もあと50年、いや70年は安泰ですね」 谷口「いや、素晴らしい。マジですごい。それしか言い表す言葉がねえな」 国木田「流石、僕の進路……いや、人生を変えた人だよ」 多丸兄「美食家アカデミーのこの高評価!!女性陣の反応は!?」 鶴屋『みんな……こんな風に思っていてくれてたなんて……お姉さん感激だよっ!!』 みくる『すごいですぅ鶴屋さん』 ハルヒ『流石はわがSOS団の名誉顧問ね!!ううん、貴女には名誉顧問なんて肩書きは生ぬるいわ!!永世最高名誉顧問に任命します!!』 鶴屋『ハルにゃん、ありがとっ!!』 長門『』シュッシュッ 朝倉『どうしたの、長門さん?』 長門『次に呼ばれる不届き者を抹殺するための特訓。まさか情報統合思念体はそのような不届き者は抱え込んでいないと思われるが、例え抱え込んでいたとしても大丈夫。その場でスタッフがおいしくいただきました』 朝倉『ぴいっ!』 森「やっぱり恐ろしいぞ!」 藤原「さて気になる点数は……これだ!!」 キョン「10点です」 古泉「10点です」 谷口「10点です」 国木田「9点です」 合計39点 新川「一見完璧を思われた高評価に国木田氏が待ったをかけた!!その理由は!?」 キョン「国木田……?どうしてお前が9点なんだ?」 国木田「違うんだよキョン……確かにあの人は天才だ。でもね……まだ高みに昇る事ができる天才なんだ」 国木田「今彼女は天才の中の頂上にいるんだ。でも、まだだ。あの人ならまだそこから新しい頂上を積み上げて作っていくことができるんだ……そして、頂上の頂上まであの人が行き着いたとき……そのときに僕は10点を付けたいんだ」 谷口「国木田……」 古泉「国木田くん……」 キョン「ものさしが……違うんだな」 国木田「……そういうこと」 鶴屋『決めた。わたし国木田くんと結婚するよっ』 みくる『ちょ、そんないきなり』 鶴屋『わはは、冗談さっ……でも、そんな風にみてくれてる人がいるって、凄く大切なことだよねっ!!』 朝倉(どうしよう、なんか……とてもじゃないけど言い表せないエラーがどんどん湧き出てきてる) 森「あまり評価が高すぎるのも考え物だぞ!」 新川「そして遂に第一位!!朝倉涼子さんだ!!!」 藤原「さて、美食家アカデミーたちの反応は?」 キョン「なんてこった…………」 古泉「この眉毛………そしてこの眉毛……」 谷口「そしてこの健康的な太もも……」 国木田「鶴屋さんとはまた違う美しさがここにある……」 キョン「……なんだろう、二回刺されたのがなんだか光栄に思えてきた」 古泉「機関の見解は大きく間違っていました……彼女こそ、真の神です。それ以外にありえません」 谷口「AAランク+なんてヤワなもんじゃねえ……こいつは、いや、このお方はAAAAAランクだ!!」 国木田「うん!非のうちどころがないよ!」 藤原「さて、点数は!!」 キョン「10点です」 古泉「10点です」 谷口「10点です」 国木田「10点です」 合計40点 新川「満点だああああ!!!本日最初の満点に女性陣の反応は!?」 ハルヒ『朝倉!!アンタ凄いわ!!本日をもってアンタをSOS団副団長に任命します!!』 朝倉『あ、ありがとう!……あれ?でも古泉くんは?』 ハルヒ『ああ……古泉くんは 13の時点でキョンの前任ポストの雑用係に降格よ』 みくる『前任……?あのぅ、キョンくんは?』 ハルヒ『奴隷に降格』 朝倉(ひどっ) 朝倉『……ていうか長門さん』 長門『なに』 朝倉『どさくさに紛れて眉毛剃ろうとするの止めてちょうだい』 長門『そう』 鶴屋『まあ何はともあれおめでとう!!』 一同『おめでとう!!(なのね)』 朝倉『うう……ありがとう!!』グスッ 森「というわけで、ランキングは以上のものとなったぞ!」 機関予想 結果 一位 涼宮ハルヒ |一位 朝倉涼子 ↑ | 二位 朝比奈みくる |二位 鶴屋さん ↑ | 三位 長門有希 |三位 長門有希 → | 四位 鶴屋さん |四位 喜緑江美里 ↑ | 五位 喜緑江美里 |五位 朝比奈みくる ↓ | 六位 朝倉涼子 |六位 涼宮ハルヒ ↓ | 七位 阪中 |七位 阪中 → シャミセン「というわけで、藤原チームの勝利ー!!!」 藤原「ふんっ当然だ」 佐々木「そういえば藤原君司会だからそりゃ当たるよね」 橘「ズルなのです!!」 九曜「―――――――ズル」 藤原「俺、泣いてもいいかな?」 森「次回の涼宮ハルヒのお願い!ランキングは!」 新川「一番強い組織をしりたーい!!」 藤原「というわけで、皆さま、また来週!!」 ~この番組は明日を守る●<ふんもっふ! 機関の提供でお送りしました~ <後日談> ~数日後~ ハルヒ「キョン!!これ焼却炉に捨ててきて!!」 キョン「へいへいただいま」 長門「古泉一樹」 古泉「はい、なんでしょう」 長門「このへんの空気が悪い。恐らく肩が凝っているせいだと思われる。早くこの辺の空気の肩を揉むことを推奨……いや、命令する」 古泉「いや……空気に肩はないかと」 長門「逆らう気?」 古泉「めっそうもございません閣下」モミモミ 長門「……なぜ空中で手を動かしているの?あなたのような変態は即刻立ち去るべき」 古泉「……了解しました」 朝倉「なるほど。こうやってお茶っ葉を蒸らすのね」 みくる「そうですよ……うまくなってきましたね」 ~部室の外~ 古泉「……しくしく」 キョン「お、どうしたんだ古泉……またアレか?」 古泉「そうですう……めそめそ」 キョン「そうか……それはそうと、国木田と鶴屋さん、付き合い始めたらしいな」 古泉「そうなんですか?それはおめでたいですね」 キョン「……お互い親友どうし、この辛い状況を乗り切っていこうぜ」 古泉「………はい!!」 完
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3906.html
6 章 出社するとハルヒが雑誌を読んでいた。 「フフン~」 やけに上機嫌だ。雑誌を眺めるハルヒは、野郎がえっち本を見るときにでもしないような気味の悪いニタニタ笑いをしていた。見たところ、OggiとかMOREとか、ふつーに本屋の店頭にありそうな女性ファッション誌だが。 「なんか面白い記事でも書いてあったのか?なんでゴム手袋なんかはめてんだ?」 恐る恐る尋ねてみる。 「まあね、ちょっと見てよこれ」 二つ目の質問には答えてないぞ。なんだ、俺には女性誌を見るような趣味はないんだが。俺はハルヒの脇から雑誌の写真を覗き込んだ。 「あ、触っちゃだめよ。指紋つけないで」 「なんだ、いつから潔癖症になったんだ」 「このモデルの後ろに写ってる車、トヨタの新型よね」 「あーん?こんな流線型の車見たことねえぞ。プロトタイプとかじゃねえの?」 「そりゃそうよ。まだ出てないもの」 ハルヒはそう言って雑誌の表紙を見せた。モデルの服装は前衛的といか超機能的というか、シンプルというかそっけないというかそんな服だった。最近の流行ってこんななのか。と、どうでもいいような感想を述べようとしたところ、ハルヒはそんなことはどうでもいいのよという感じで発行年月の数字を指差した。 「おい、なんだこりゃあ、十年後だぞ!」 「あーもう、指紋つけないでって言ってるのに」 「未来の雑誌なんてどこで手に入れたんだ」 「あたしに頼んで送ってもらったのよ」 なるほど、頭いいな。 「未来の情報はおいそれとはあげられないとか言ってたから、せめてファッション誌くらい見せなさいと手紙を書いたの」 「それでこのファッションデザインなのか。どうりで時代離れしてると思った」 まあそれくらいの情報なら問題ないだろう。 「それだけじゃないのよねえ」 ハルヒはまたさっきと同じニタニタ笑いを浮かべた。机の上には化粧品のパウダーっぽいやつ、虫眼鏡、なんだか分からない液体の入った小瓶があった。 「なんだそれ?」 「まあ見てなさい」 ハルヒは卓上ライトをつけて、雑誌の表紙を覗き込んでアイシャドウの粉をふり撒いていた。化粧用の小さなブラシっぽいやつ、虫眼鏡を見ながら粉を塗っていた。それから雑誌を持ち上げてふっと吹いた。 「ぶ……ぶえっくしょん!!は、鼻に、えーくしょい!!」 ひとりでなにやってんのお前。ずずっと鼻をかんだハルヒが見せたものは、表紙に浮かび上がった指紋だった。ハルヒは黒いシールみたいなやつを取り出し、透明の部分を指紋の上に貼ってゆっくりとはがした。ゼラチン紙とかいうらしい。 「どう?バッチリでしょ」 そういや長門もやってたな、あんときはエンピツの芯の粉だったか。 「ああ、エンピツの粉は白いモノについた指紋を取りたいときね」 「やけに詳しいなお前」 「当然でしょ、あたしが名探偵だったのを忘れたの?」 探偵バリに推理を聞かされたことはあったが、まさか鑑識をやるとは聞いてないぞ。 「キョン、あんたの指貸しなさい」 「お、俺がなにかの犯人みたいじゃないか」 「いいから見せなさい、はぁやくぅ」 ハルヒは俺の腕をむんずと掴んでガラスの板に押し付けた。 「古泉くん、有希、あんたたちも見せてくれるわよねぇ」 ハルヒがニコニコ顔で言うと、古泉は苦笑しつつ、付き合ってやるかとしぶしぶ承諾した。ハルヒを名探偵に仕立て上げたのはそもそもこいつなんだからな。長門はなにも言わずに指紋を取らせた。 「うーん、キョンじゃないわねぇ。有希でもない。どう見てもあたしの指紋しか、ああーっ!!」 熱心にルーペを覗き込んでいたかと思うと奇声を上げた。 「どうした!?」 「古泉くんの指紋発見!!」 「え……」 別に驚くようなことじゃないんじゃないか?古泉が読んでたのかもしれんだろ。 「問題はそこでしょ。古泉くんがなぜ女性誌なんか手にしたのか」 「し、知りません。僕にはまったく心当たりありません」 当たり前だろ。なに焦ってんだ、返って怪しいぞ。 「古泉くんの指紋、右の親指ねこれは。切り傷があるわ、かなり深い。予言するわ、古泉くんは十年以内に親指に怪我をする」 それは予言じゃなくて指紋検出の結果を述べただけだが。古泉はまじまじと自分の親指を眺めた。そんな十年先の指の具合なんて今から心配してもはじまらんだろうに。 「そういうわけだから、親指には注意してね古泉くん」 「ご忠告ありがとうございます」 古泉はまた苦笑を浮かべた。こいつが親指をザックリ切っちまうのは、まだ先の話だ。 ハルヒがなにごとか思い立ったように出て行った隙に、古泉が耳打ちした。 「もしも僕が怪我をしなかったら、どうなるでしょうね」 「それくらいの未来は変わっても問題なさそうだが」 「もしもこれが既定事項なら?どんな些細なことでも変更すると大変なことになります」 ハルヒと入れ違いに朝比奈さんがやってきた。 「ごめんなさーい、遅れちゃって」 「朝比奈さん、ちょうどいいところへ。これを見てください」 俺はハルヒの机の上にある雑誌を指差した。 「これファッション誌ですよね。ふつうに本屋にある。わたしもときどき読んでますよ」 「ええ。十年後の発行ですけど」 「あらあら、まあ。どうしたんですかこれ」 「未来から送ってきたらしいんです」 「涼宮さんにも困ったものね。いくら雑誌でも未来の情報には変わりないのに……へー、こんなの流行ってるのね」 朝比奈さんがパラパラとめくりはじめた。そこで立ち読みしないでくださいよ。 「それにしても、なんで僕が女性誌なんか持ってたんでしょうかね」 古泉がいつまでも首をかしげていた。ドアが開いてハルヒが戻ってきた。 「あら、みくるちゃん来てたのね」 「おはようございます、遅れちゃってごめんなさい」 「それより見て見て、未来の雑誌よ。流行の最先端の百歩くらい先を行ってるわ」 先を行き過ぎて道を踏み外しそうだがな。 「見ました。こんな服、わたしも欲しいなぁ」 「タイムマシンが完成したらみんなで買い物に行きましょう」 「あ、いいですねぇそれ」 素直に賛同してみせている朝比奈さんが冷や汗を垂らしていることは、俺にはお見通しだ。 ハルヒがジャラジャラと音がする布袋を置いた。小銭の音か? 「なんだそれ、小銭の貯金か」 「銀行に行って五万円を五百円玉に両替してもらったのよ」 「な、なんでそんな大量に」 「未来に買い物リストとお金を送って買ってきてもらうのよ」 「なんで五百円玉なんだ。お札でいいじゃないか」 「バカね、十年も先ならお札のデザイン変わってるかもしれないじゃないの。こういうときはデザインの寿命が長い補助貨幣のほうがいいのよ」 なるほどな。って五万円分は重いだろう。 「まあまあいいから。あんたたちも買って欲しいものがあったら五百円玉よこしなさい」 俺は、と考えてはみたが別に欲しいものなんてなかった。ほんとに欲しけりゃ朝比奈さんに頼めばいい。 「なあ、思ったんだが、別に現金でなくてもいいんじゃないか?」 「どういうことよ」 「十年先くらいなら銀行に預金して通帳かカードを送ればいいだろ」 「あ……」 さすがにそこまでは頭が回らなかったか。突っ込みどころが的を得ていたらしく、ハルヒは顔を赤くして重たい袋をえっちらおっちら背負って出て行った。また銀行に行ったらしい。 「たっだいまぁ!」 「おう、おかえり。通帳にしたのか」 「普通預金はやめたわ。銀行の人が十年動かさないなら長期国債がいいっていうからそれにしたわ。これもひとつの投資よ」 猫型ロボットの漫画でそういうネタがなかったか。 「買い物頼むだけじゃなかったのか」 「あたしへの投資よ。利子の分はあたしのお小遣いよ、キヒヒヒ」 俺はハルヒが持ち帰ったパンフレットを読んだ。年率にして0.85パーセントくらいか。ハルヒがタイムトラベルを使った財テクに走り始めたな。よくない傾向だ。俺はこっそり朝比奈さんに尋ねた。 「これまずいですよね」 「いいんじゃないかしら?銀行の定期預金に十年眠らせておくのとあまり変わらないでしょう」 「それはそうですが。金儲けのためにタイムトラベルを使うのは問題がある気が」 「まあ会社は金儲けのためにあるわけだし、それにまだ時間移動管理の組織が生まれるまではいいんじゃないかしら」 未来人の朝比奈さんがそうおっしゃるならいいんですが。 「わたしは知らなかったことにしますね」 朝比奈さんは人差し指を立ててウィンクしてみせた。そ、そんな。なんだか犯罪の共犯っぽいことをしてるようで俺は不安になった。今に未来警察とかがやってきてガサ入れされるんじゃないだろうか。 「うーん、株を買うのもいいかもねぇ」 ハルヒのブツブツいう声が聞こえて俺は朝比奈さんを見た。朝比奈さんは困ったような顔をして笑っていた。 ハルヒはまだ虫眼鏡で雑誌を調べている。 「まだやってんのか。なにか分かったか」 「ふふっ。あたしはあたしの経営者としての能力を甘くみてたようね」 なんか微妙に矛盾してないかそれ。 「こういうファッション誌は四半期くらいで流行ネタが変わるから、このデザインをまねして売れば儲かるわよ。パリコレを先取りできるわ」 「なんという盗作」 「人聞き悪いわね。まねをすることは最高のお世辞なのよ」 まあ服飾業界の流行ってのは、誰かがはじめてみながそれをまねして広がっていく感じだろうけど。 「ちょっと生地を買いに洋裁店に行ってくるわ。有希も一緒に来て」 副社長にして我が社のコスプレイヤーはいそいそとハルヒについていった。次はどんな衣装になるのか楽しみである。 「おはようございます」 「朝比奈さん、どうしたんですその格好は」 「これがどうかしたかしら?」 「だって昨日までOLっぽい服装だったでしょう」 それまで新聞を広げて読んでいた俺は、古泉と朝比奈さんのやり取りに目を上げた。そこには流行を二十年くらい先取りしそうな、フィギュアスケートとゴスロリを合体させたようなきわどい格好の朝比奈さんがいた。 「朝比奈さんはもうコスプレしないんじゃなかったですか」 長門のコスプレがあんまり似合うんで考え直したのか。 「これはコスプレじゃありません、時間常駐員の制服ですよ。昨日もこの格好だったじゃないですか」 朝比奈さんが怒ったように言った。 「え、いつからそんな」 「いつからって、わたしが十五歳のとき常駐員になってからずっとですよ」 いつもと違う朝比奈さんに妙な違和感を覚えて、俺は禁則中の禁則を破る質問をしてみた。 「ちなみに今は何歳なんですか?」 「今年で二十五よ」 俺とその他二人は顔を見合わせた。朝比奈さんの年齢って確か禁則事項だったんじゃないですか。 「そんなことはないわ。二二九二年三月九日生まれの二十五歳。ほら、ね」 図らずも急に解禁になった鮎漁を知った釣り人でもここまで驚いたりしないくらいに、正直、俺は驚いた。朝比奈さんの歳は俺にとっちゃ鉄の壁だったのに。 ちょうどそのとき、ドアが開いてハルヒが出社した。 「おっはよ。有希、新しいドレスできたわよ」 打ち合わせで遅れるとか言ってなかったかこいつは。 「いいじゃないの、これが新しい事業展開になるかもしれないんだし」 ハルヒがトートバックから取り出した長門の新しい衣装は、漆黒のワンピースに白の派手なフリルを飾りつけたものだった。 「……」 「これ、あたしが苦労して縫ったのよ」 見るからに未来の雑誌からパクったもんだが、これは萌えるに違いない。アニメのキャラクタが着そうなド派手で誇張されたデザインだった。 「あれれ、みくるちゃん。その衣装どうしたの?似てるわね」 ハルヒが長門のために縫製したというドレスに非常によく似ている。スカートの丈が短くなっただけで、そこは進化したと表現するべきか。え……、進化? ハルヒは早速長門に着せて、朝比奈さんと並べてみた。 「二人とも似合うわ。アニメキャラの姉妹みたいね」 「確かに。長門さんはボリュームのある衣装が、朝比奈さんは露出度の高い衣装が似合いますね」 「露出度って……あんまりはっきり言わないで」 朝比奈さんが裾を押さえて顔を赤くしていた。もう古泉も遠慮なしだな。 このとき、なにかがおかしいということに俺たちは気がついていなかった。 次の日のことだ。 「あ、朝比奈さん、その髪いったいどうしちゃったんですか!?」 あの美しい、少しだけカールした長い髪がバッサリと短くなってしまっている。もしかして失恋でもしたんですか。 「やだキョンくんったら。わたしは元々この髪型でしょ」 朝比奈さんが苦笑した。俺は口を開いて、もっと長かったでしょうと言おうとして、「も」のところでやめた。これはまずい。平安京でうぐいすが鳴かない規模の歴史を書き換える事態が起こっている。古泉と長門の表情を見ると、同じ危険信号が浮かんでいた。頭に回転灯を乗せたら黄色いやつがピコピコ回りそうだ。これはいったい何が起こっているんだ。 「朝比奈さん、その髪型が短くなった経緯を教えていただけませんか」 「ええっと、時間常駐員はみんな短めなんです。長い人は束ねるか、結うかしないといけないの」 「その規則が出来たのはいつなんです?」 「わたしがこの仕事に就いたときにはこうでした。生まれるずっと前のことだと思うわ」 「敢えてお聞きしますが、この会社は未来ではどうなるんです?」 「時間移動技術を管理していますよ。一社独占で涼宮さんが初代社長です。わたしはそこの社員です」 この言葉が朝比奈さんの口から出てくるとは。俺たちが知る朝比奈さんと一致しない。 「もっと早く気がつくべきでした……」 古泉が思案げに言った。 「どういうことなんだ?俺にも分かるように説明してくれ」 「……因果律が歪んでいる」 「僕たちが知っている朝比奈さんから、様子が少しずつ変化しています。つまり歴史が書き換わっていると」 それってハルヒのタイムカプセルのせいなのか。 「……それはまだ不明」 「原因を突き止めないといけませんね。朝比奈さんはこの時間平面に泊まっていないんですか?」 「ええと、夜は未来に帰って日報を出して、次の日の朝また時間移動でここに来ています。時差ボケにならないように」 「ということは帰った後の朝比奈さんが時間の歪みの影響を受けているということになりますね」 「なにか変なことありました?」 「ええ。いろいろと、僕たちが知っている朝比奈さんとはだいぶ変化しているように見受けられます」 朝比奈さんの赤道上にはクエスチョンマークの衛星がいくつも回っているようだった。時間の歪みの渦の中にいる本人が知るはずもあるまい。 「みんなぁ、おっはよ!」 全員がそっちを見た。ドアを開けて満面の笑顔で入ってきたハルヒの髪は、バッサリと短く切られた上に、目も覚めるようなオレンジ色に染め上げられていた。 「ハルヒ、何があったんだ。その髪どうしちまったんだ!?」 「なによ、雑誌に載ってたヘアスタイルにしてみただけよ」 美的レベルAランク以上の女三人がそろってショートカットになるという、前代未聞のハプニングを見たわけだが、俺と古泉は三人を見比べながら、これはこれで趣があっていいななどと呑気に感想を述べ合っていた。 「おはようございます」 「あらキョンくん、おはよう」 翌朝、珍しく朝比奈さんが一番に出社していた。メガネをかけてパソコンの雑誌を読んでいる。ハイヒールを脱いでこともあろうに俺の椅子の上に足を乗せていた。もしかしてこれもコスプレの一種なのだろうか、細い銀縁のメガネをかけたちょっとインテリっぽい朝比奈さんは萌えた。 「キョンくん、お茶お願い」 「え、は、はいはい」 もしかして今日はすごく機嫌悪いのかもしれないと、俺は給湯室でお茶を入れて朝比奈さんに差し出した。 「お、お口にあいますかしら……」 なんで俺が朝比奈さんの口調をまねしてるんだ。 「ありがとう。うん、よく煎れてあるわ」 ホッ。よかった。突然、ぬるい!とか叫んで湯飲みを放り投げられたらどうしようかと。 朝比奈さんは読んでいた今日発売の雑誌をぽいとくずかごに放り込み、パソコンのモニタに向かってタッチタイプでカタカタとなにかを入力していた。未来にはこんな古い技術のネットワーク機器は存在しなくて、いまいち使い方も分からないとか言ってませんでしたっけ。 「おは……」 「おは、」 「……」 長門に勝るとも劣らぬ超タイピングスピードでキーボードを叩く朝比奈さんを目にして、ハルヒも古泉も、それから長門も、ドアを開けるなり言葉を失っていた。いったい何事が起こったのかと俺に尋ねる視線をくれるが、肩をすくめるか首をかしげてみせるしかなかった。 全員が呆然と朝比奈さんを見つめるなか、まあそういう日よりなのだろうと各々の机で自分の仕事に目を戻した頃、部屋にうっすらと煙が漂い始めてそっちを見た。俺は我が目を疑った。こともあろうに朝比奈さんがくわえタバコでキーボードを叩いている。 あれ、ここ違うわ、これじゃ効率悪いわね、などとブツブツ呟いていた朝比奈さんが、灰皿がわりの空き缶にタバコを押し付けてから長門に言った。 「長門さん、バグ直しといたわ」 ええっ。今なんとおっしゃいました。 「……そんなはずはない」 「いえ、ここの入力のところね、引数の型にひとつだけ例外があるのよ」 「……むぅ」 「あらごめんなさい、余計だったかしら?」 「……あなたは正しい。修正に感謝する」 「ほかのソースも見ておくわ。余裕あったらリファクタリングもしといてあげる」 いったい何が起こったのであろうか。文系の俺のために自ら説明すると、リファクタリングというのはすでに動いているプログラムのソースコードを修正して、見た目の動作はそのままにパフォーマンスを上げたり最適化したりする手法を言う。つまり一度誰かが書いたプログラムを再設計して、もっと効率を上げようというとてつもなくめんどくさい作業なのだ。最初に書いた人も、自分が書いたソースコードを勝手にいじりまわされるのは感情的に嫌らしい。 ともあれ、問題は朝比奈さんが今までやったことがないようなことを平気でこなしていることである。 「朝比奈さんってプログラマだったんですか?」 「あら失敬ね。わたしはこれが本業じゃない。ソフトウェア開発技術者の資格も持ってるわ」 斜に構えた朝比奈さんは、いつもと違って新鮮だ。ってそういう問題じゃない。 「知らなかった。いつからそうなんです?」 「あれ?だって専攻で情報工学を勧めてくれたのキョンくんじゃない」 「そうでしたっけ?」 これはなんだかおかしいぞ。そんな歴史、どう考えてもありえん。 「朝比奈さ~ん、ケーキお持ちしました!」 開発部の連中が近所で買ってきたらしい箱入りケーキを朝比奈さんにうやうやしく献上した。 「あらありがとう。気が利くのね」 「いえいえ、朝比奈さんのためならたとえ火の中水の中」 お前らいつから朝比奈さんの親衛隊になっちまったんだ、長門はどうした長門は。と、長門のほうを見ると、うさぎに畑を荒らされて頭を抱える農民のようなありさまで机に突っ伏していた。 俺は緊急会議を開いた。 「朝比奈さん、たいへん申し上げにくいんですが、どうやら歴史がかなりの部分で歪んでいるようです」 「あら、それはどういう意味かしら?」 眉毛をピクリと持ち上げる朝比奈さんに、どういうと問い詰められて俺が言葉に詰まっていると古泉が助け舟を出した。 「まだTPDDは持っていますか?」 「TPDDってなにかしら」 あれれ、TPDDのない朝比奈さんってただの人じゃないですか。あ、今のは言い過ぎました。 「僕たちの知っている歴史では、朝比奈さんは未来から来た時間調査員のはずなんです」 「またそんな冗談を。古泉くんらしくないわ」 一笑に付す朝比奈さんだった。 「僕は至極まじめです。いいですか、このままですと朝比奈さんの存在そのものが危うくなってしまいます」 古泉の気迫に押されたのか、朝比奈さんは笑うのをやめた。 「ええっと、TPDDって何の略かしら」 「確かタイムプレーンデストロイドデバイス、だったと聞いています」 「タイムトンネル、なら知ってるけど」 「それは時間移動するためのものですよね?」 「ええ。未来では電車みたいにあちこちにターミナルがあって、そこから乗るの。でもわたしは調査員なんかじゃなくて、プログラマの仕事に来ただけよ」 「妙な具合になってますね」 「どういうことかしら?」 「朝比奈さんの記憶が大部分において変わってしまっている、ということです」 「なぜそんなことに?」 「たぶん涼宮さんのタイムマシンのせいではないかと」 古泉は同意を求めるように長門を見た。 「……そう。未来からの情報が漏洩したため、この時間軸の延長線上にある新しい過去が交錯している」 「長門さんまで。みんな、本気なのね」 「……涼宮ハルヒのワームホールが、未来におけるTPDDの開発を阻害している」 「ってことはワームホールが時間移動技術の代表格みたいになっちまうのか」 「……そう。STC理論のような技術理論は廃れてしまう未来になる」 困ったな。ハルヒが会議室の壁に穴を開けちまったときやばい予感はしていたんだが。 「しかし、今になってハルヒにやめろと言うとまた神人が暴れだすぞ」 長門は一言だけゆっくりと噛んで含めるように呟いた。 「……わたしが、守る」 「守るって、どうやるんだ?」 「……ワームホールを閉じる」 「閉じてもたぶん、涼宮さんは何度もワームホールを作るでしょう」 「そうだな。あいつがあきらめることはまずない」 「……ワームホールを二重化する」 「つまり?」 「……一旦向こう側に届いた物質は、即時に別のワームホールを通って戻ってくる」 「郵便があて先不明で戻ってくるアレか」 「……そう。……?」 俺の例えが微妙にズレていたようで、長門は首をかしげていたが。 「朝比奈さんにTPDDがないとすれば、どうやって未来へ行けますか」 「あら、タイムトンネルのターミナルはこのビルの屋上にもあるわ。わたしがパスを持っているから入れるわよ」 「そ、そうだったんですか。いつの間にそんなものが」 「パスがないと入り口が開かないようになってるの。過去から侵入されると困るらしいから」 なるほど、そのへんは用心しているわけだ。 「じゃあこうしよう。長門と朝比奈さんが未来へ行ってワームホールを閉じる。俺と古泉がワームホールに手紙を入れて確かめる」 「……分かった」 「その場合、時間移動技術の歴史上でワームホールの利用が終わってしまいますが、お二人は無事戻ってこれるんですか?」 「……問題ない。この流れが修正されれば、TPDDが戻るはず」 長門がOKを出したので俺たちはさっそく穴の封鎖に取り掛かることにした。長門と朝比奈さんを見送るために屋上まで行った。 ビルの屋上はガランとしてなにもなく、乾いた冷たい風が流れているだけだった。朝比奈さんがブレスレットをはめた左腕を空中にかざすと、丸いシャッターのような円盤が現れて真っ暗な穴がぽっかりと開いた。覗き込むとはるか下のほうに青白い光が渦巻いている。俺と古泉は底なしの穴に足がすくんで、うわと声を上げた。 「タイムトンネルよ。行き先を入力したからそのまま飛び込めばいいわ」 「えらく簡単なんですね。この技術が消えてしまうのはちょっともったいない気がしますが」 俺はいまさらなにを言ってるんだという目で古泉を見て、二人をせかした。 「朝比奈さん、じゃあよろしくお願いします」 「分かったわ」 「時計を合わせましょう。今から五分くらいしてからワームホールを閉じてください。長門、後を頼む」 「……分かった」 二人が穴の中へ飛び込むと、シャッターを切るように入り口は閉じた。その空間を手で触っても、もうなにもなかった。 「俺も行けばよかったかな」 「同感です。もったいないことをしましたね」 まあしょうがない。誰かが残って確かめないことには。 俺と古泉は会議室に戻った。 「ハルヒ、個人的にタイムカプセルの実験をしてみたいんだが」 「もう、あたしは洋服のデザインで忙しいのに」 計画どおり大理石を埋め込み、パテで隙間を詰めた。なんとかごまかしてハルヒにかしわ手を打たせ、部屋の外に追い出した。今ごろ向こうでは長門と朝比奈さんが、この同じ空間でワームホールを閉じているに違いない。どうだろう、ちゃんとうまくいっただろうか。 それから五分くらいして、白く光る人の形をした影が現れ、長門と朝比奈さんが戻ってきた。いつもの服装に戻っているところを見ると、どうやらTPDDは戻ったらしい。 「ただいまキョンくん、わたしなにかいろいろ変なこと言ってたそうね」 「いえいえ、たまにはああいうのもいいんじゃないでしょうか。新鮮でよかったですよ」 などと言いながら、もうあんな朝比奈さんは二度とごめんだという表情を隠し切れない俺だった。 「実は未来で長門さんに会ったの。わたしたちを待っていたみたい」 「なにか言ってましたか」 「……」 長門は俺の顔を見つめ、なにか言いたいことがありそうなのに言葉にならないような、複雑な表情をして口を開けてはやめ、口をパクパクしてなにかを言おうとしている。それ、禁則事項? 「長門、どうしたんだ?未来でなにかあったのか」 長門はいきなり走り寄り、飛び上がって俺に抱きついた。細い腕を背中に回してきつく抱きしめてきた。 「きゃっ、長門さんったら」 朝比奈さんが信じられないという様子で口に手を当てている。 「これはこれは、お熱いですね」 古泉がカメラを取り出して写真に収めようとしたのだが、朝比奈さんに睨まれてやめた。 「な、長門、み……みんなが見てるって」 かつてないほどの激しい長門の衝動に俺は戸惑って、顔が真っ赤になるのを感じた。でも、こういうところを長門が見せるのは嬉しかった。長門は俺の肩に顔を埋めてピクリとも動かない。俺はそのまま長門の体を抱えて、会議室のドアを背中で押して外に出た。その間にも長門は離れようとはしなかった。 ハルヒがぽかんとした表情で俺たちを見ていた。俺と目が合うと、顔を真っ赤にして、 「あ、あたしタバコ買ってくる。あたし吸わないんだったわ。じゃあハッカパイプとかシガレットチョコとかキセル乗車とか……」 意味不明なセリフをつぶやいて出て行った。 俺は長門が落ち着くまでじっと抱いていた。ほんのりとリンスの香りがする薄紫色の髪をなでた。未来でなにを見たんだろう。もしかして、俺が死んでたとか。 「なにを見たのか、話してくれ」 「……自分の、未来」 七年前、長門は自分で選択して異時間同位体との情報リンクを断った。それが久しぶりに未来を見たということなのだろう。 「なにを見たんだ?」 「……あなたと、わたし」 なるほどな。未来の俺が死にでもしたらたぶん、長門は今ごろ暴走している。この長門の反応は、俺が描いている二人の未来に近かったんだろう。俺は長門の耳元でささやいた。 「じゃあその未来は、俺には内緒にしといてくれ」 俺は俺で、自分の未来を作る。 「……分かった」 俺は唇で長門の頬に軽く触れた。どうやら感電はしなかった。 会議室のドアを開けると朝比奈さんと目がかち合った。俺も朝比奈さんも顔が真っ赤になった。 「あ……朝比奈さん」 「あ、あの、ごめんなさい、別に立ち聞きしてたわけじゃなくて……」 「すいません。長門が未来の俺たちを見て感激したらしくて」 「わたしも見ました。ちょっとうらやましかったですよ」 なにを見たのか気になるところだが、知らないほうがいいだろう。 「それで、わたしたちは涼宮さんに遭遇してしまったんです」 「見られたんですか」 「ええ。ちょうどタイムカプセルを開けようとしたところを見つかっちゃいまして」 「ありゃ。それで、うまくごまかせましたか」 「いいえ。向こうの涼宮さんはわたしたちがやっていることを既に知っていたみたいです。因果律が壊れ始めていることを伝えると、分かってくれました」 「ハルヒにしては物分りがいいですね」 「ええ。もうタイムカプセルを使って対話するのは中止することになりました」 「それはよかった。ハルヒも多少は成長したみたいですね」 「それから、これを言付かりました」 朝比奈さんは例のメモリカードを差し出した。 「未来の涼宮さんからの、最後のメッセージです」 俺は一度内容を確認したほうがいいかとも思ったが、いちおう私信なのでハルヒの机の上に置いておいた。 「返事が来たわよ!」 ハッカパイプを吸い込みながら戻ってきたハルヒが素っ頓狂な声を上げた。 「みんな、再生するわよ。はやく見に来なさい」 これを待ちあぐねていた四人がハルヒのパソコンの前に集まった。映像に映るハルヒは、いつもより少し落ち着いて見えた。 『あんたと話すのはこれが最後よ。実は社屋を引っ越すの。今度新しく研究施設を建てたの。SOS団時間移動技術研究所よ。ここのタイムカプセルは大家さんに見つかる前に埋め戻さないとね。ああ、別のタイムカプセルをまた作ろうなんて考えてもだめよ。未来の情報はタダじゃないの。あんたが自分で、苦労して手に入れるものよ』 未来の自分から説教めいたことを言われて、ハルヒは眉間にしわを寄せた。余計なお世話だと言いたいのだろう。 『でも安心しなさい、あんたがほんとに欲しがってたものはちゃんと手に入れたから。ねっ』 画面の中のハルヒは、カメラのこちら側にいるらしき誰かに向かって親指を立て、ウインクした。映像を見ていたハルヒの顔がぱっと輝いた。 「よかった。やっと手に入れたのね」久しぶりに見るハルヒの笑顔だった。 『ほら、恥ずかしがってないであんたも映りなさいよ。過去のあたしに見せてやりたいの』 そこからの映像は途切れて砂の嵐になっていた。ハルヒが画面をガンガンと叩いた。 「もう!いいとこなのに。どうなってんの、このパソコン」 「おい、そんなに叩くと液晶が割れるぞ」 「キョン、なんとかしなさい。続きを見たいのに」 ハルヒは夕方五時アニメの続きが待ちきれない子供のように俺をせかした。ファイルを開こうとするが、読み込みエラーが表示されるだけだった。どうやらメモリカードそのものが壊れているようだ。俺はなんとかならないだろうかと長門を見たが、そっぽを向いて我関せずを決め込んだ。あの映像の続きには、なにか見てはいけないものがあったらしい。 朝比奈さんにも聞いてみた。 「映像の続きは見ました?」 「いいえ。メモリカードを受け取っただけで」 「カメラのこっちにいたの、誰なんです?」 「分かりません。あらかじめ用意してあったみたいなの」 結局、ハルヒが欲しがってたものがなんだったのか、ハルヒ以外の誰にも分からずじまいだった。 「キョンくん、ひとつ忘れていました。メモリカードの中に時間移動基礎理論の論文が入っているはずなんです」 その後、メモリカードはどこへということもなく消えた。ロッカーにしまっておいたはずなのだが、なくしたのか誰かが持っていったのかは分からない。俺が覚えている限りでは、さらに過去へとタイムトラベルしたのだろう。あれがいつ誰を経由してハカセくんの元に戻ってくるかは分からないが、今現在はとりあえず必要ないんだと思う。 エピローグへ