約 156,108 件
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/4328.html
ゆみ「なぁ須賀」 京太郎「なんですか?」 ゆみ「すまないが、背中の辺りに日焼け止めを塗ってくれないか?」 京太郎「日焼け止めですか?良いですよー」 京太郎「あ、でも俺でいいんですか?」 ゆみ「良いって何がだ?」 京太郎「やーほら、俺男なんでやっぱり背中と言えどもちょっとくらいは躊躇う訳ですよ」 ゆみ「別に気にしないさ」 ゆみ「須賀だって別に気にしないんだろ?」 京太郎「はい!加治木さんくらいのおもちには反応しませんから!」 ゆみ「む」スパーン 京太郎「痛て!?」 京太郎「な、何なんですか!?いきなり!」 ゆみ「いや、ちょっとムカついてな」 京太郎「ムカつくって何にですかもう…」 ゆみ「まぁいい、とりあえず塗ってくれ…」ヒョイ 京太郎「はいはい…」ヌリヌリ ゆみ「んーっと、もう少し右の方も塗ってくれないか?」 京太郎「はーい」ヌリヌリ ゆみ「ひゃんっ…////」 京太郎「ど、どうかしましたか…?」 ゆみ「す、すまん…」 ゆみ「ちょっとくすぐったくてだな、気にするな」 京太郎「はぁ」ヌリヌリ ゆみ「あっ…ん、ぁっ…ゃ、そ、そこ…はっ……」 京太郎「もう少しで終わるんで我慢してくださいねー」ヌリヌリ ゆみ「やんっ……っ…はぁ、はぁ…////」 恭子「爆発せえへんかなあいつら…」ジト カン!
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3472.html
http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1377983742/ 【前回までのあらすじ】 宥「お鍋とか食べたね~」 <食べたいね~ <ね~ この一言が発端となった。 灼(また宥さんがわけのわからないこと言い出した) 尭深「さすがに、屋外でお鍋は無理があるかと」 宥「そっか~」ショボ~ン 京太郎「話は聞かせてもらいました!」 宥「あ、京太郎くん」ポヨヨ~ン 尭深「須賀君?」タプ~ン 灼「いったいどこから」ツルペッターン!! 京太郎「……」 京太郎「俺はいつだって鷺森先輩の味方です」ポン 灼「……」イラッ 京太郎「まぁそれはいいとして、ここはひとつ俺に任されてみませんか?」 宥「?」 京太郎「今日のお昼はお鍋にしましょう」 宥「え、いいの?」 京太郎「問題ありません。俺はいつだって宥さん全肯定の論調で語ってますから」 宥「はわわ///」 こうして俺たちの昼食は鍋パーティーとなった。 京太郎「と、見栄を張ったはいいが準備が大変そうだな」 土鍋はある。何故あるのかとかは気にしていけない。少なくともこの世界観においては。 淡「あ! キョータロー!」タタタッ 京太郎「問題は具材だな。買出しに行かないと材料なんてないしな」ブツブツ そういえば亦野先輩の成果はどうなったろうか。鰤とか釣れてるなら是非とも分けてもらいたいが。 淡「あのね! 向こうですっごいキレーな貝殻拾ってね!」ピコピコ 京太郎「とにかく今から買出しに行かないとな」 淡「買出し? 私も行く!」ピョンピョン 京太郎「しかしさすがに今回は一人だと少し厳しいな援軍を呼ぶか」 淡「ねーねー! キョータローってばぁ!」ブンブン 京太郎「けど仮にも先輩たちに頼むのは気が引けるしな」 京太郎「和とはちょっと2人っきりだと顔合わせ辛いし、理由が理由だけに憧にはからかわれそうだし」 京太郎「穏乃はどこか突っ走って行きそうだし、咲は迷いそうだし、優希はタコスだし、空気はそもそも生命体じゃないし」 淡「キョータロオオオオオオーッ!!」 絶叫に近い高音が俺の耳朶を劈く。 音源を捜すと、いつの間にか傍らには淡が立っていた。 京太郎「あ、淡……お前いつか、」 淡「私ってそんな後?」 京太郎「なにが?」 俯いて髪先を弄っている淡。心なしかいつもの元気がない。 淡「私ってそんな後なんだ。その買出しの手伝いに呼ばれる順番みたいなの」 京太郎「え?」 淡「ちょっと傷付いた、かも」グス え、っと。よくわからないが淡はどうやら自分の名前が挙がらなかったことが不満らしい。 京太郎「いや、違っ、これは違くて淡をハブにしたとかじゃなくて」 淡「ホントぅ?」 その上目遣い! 京太郎「お、おう。じゃあなんだったら一緒に行くか?」 淡「良いの!?」パァァ 俺の提案に途端に破顔する淡。 京太郎「いいって言うか、単なる買出しだぞ?」 淡「良いの! ほら行こう! ね?」グイグイ 京太郎「おい、そんな引っ張るなって!」 淡は急にに俺の手を取ると、急き立てながら走り出した。 先生と部長に軽い連絡を入れ終え、俺と淡は並んで海岸沿いの街道を歩く。たしかこの先に小さなスーパーがあったはずだ。 淡「ところで買出しってなに買うの?」 京太郎「昼飯の材料」 覗き込んで尋ねてくる淡に視線を向けながら返答を返す。 淡「あれ? でもお昼は海の売店で買うんじゃんなかったっけ?」ハテ? 京太郎「まぁそうなんだけどちょっと鍋をやることになってな」 淡「鍋ってお鍋?」 京太郎「ああ」 淡「キョータロー頭大丈夫?」 京太郎「失礼だなお前は」 淡「だって夏だよ! 夏真っ盛りだよ!? なんで海に来てお鍋なの?」 なんかそこまで言われるともっともな気がしてきた。 京太郎「いや、でも宥さんがな」 淡「! ……ふーん。ユーの」 あれ? またなんか機嫌が。 淡「むぅ」プクゥ 京太郎「……」 ほっぺが膨れておられる。 なんか地雷踏んだか? 淡「うぅ……」ブルル いきなり淡が身を震わせた。それから両手で肩を抱き身を縮込ませる。 京太郎「寒いのか?」 淡「わかんない」 京太郎「海から上がってちゃんと身体拭いたのか?」 淡「拭いてない」 京太郎「はぁ、ったく」 俺は自分の羽織っていたパーカーを脱ぎ淡に差し出す。 京太郎「これ着とけ」 俺の言葉に目を丸くする淡。 淡「いいの?」 京太郎「無いよりましだろ?」 淡「……ありがと」 手渡した上着をいそいそと羽織る淡。 淡「……」スンスン 京太郎「ちょ、おおい!? なに嗅いどんじゃ!」 淡「キョータロの匂いがする」 やめて! 羞恥プレイはやめて!! 淡「んふふふ~」ニッコニッコ なんかまた機嫌よくなってるし。ちょっと刹那的に生き過ぎじゃないですかね? 淡「それで買うものは?」 京太郎「ん~、とりあえず水、料理酒、みりん、醤油、和風だし、塩、かつおだし……」 京太郎「寄せ鍋のつもりだからこれと言って決まりは無いけどお前なに入れたい?」 淡「野菜はイヤ」 京太郎「わかった野菜はしこたまぶち込もう」 淡「鬼!」 キングクリムゾン! 淡「いっぱい買ったね」 京太郎「大所帯だしな。まぁ余ったら俺が持って帰るさ」 言いつつ袋を持ち直す。もちろん自前のエコバッグである。 淡「重い……」 同じく袋を持とうとしている淡だが、言葉の通り割と大量に買い込んだのでその分だけバッグも重くなっている。 淡の二の腕がぷるぷる震えている。 京太郎「ほら貸せ」 そういって手を差し出す。 淡「え? でもそれじゃあ一緒に来た意味ないし……」 京太郎「でも、お前持って帰れないだろ?」 淡「そうだけど、あ! じゃあこれで!」 そういって袋の両側に着いた取っ手。その両端をそれぞれ俺と淡で片側ずつ持つ。 淡「えへへ、これなら私も持てる」 京太郎「まぁ、いいけど」 事なきを得て肩を並べて帰路に着いた。 海水浴場に戻り買って来たものを折り畳み式のテーブルに置く。 淡「ふい~疲れた」 凝った手首を振り、具合を確かめながら一息つく淡。 京太郎「おう。ご苦労さん」 淡「……」 俺の労いに返事をせず、黙って見上げてくる。 淡「それだけ?」 え? 京太郎「い、いいいいくら欲しいんだ!?」プルプル 財布を取り出し、小銭と札を確認する。 買出しの手伝いしただけなのにお金要求してくるなんて、淡、恐ろしい子!? 淡「違うわアホー!」タタタッ 怒って走り去ってしまった。 っていうか上着返せよ。 誠子「今、淡が走っていたけど須賀君なにかしたの?」 京太郎「あ、亦野先輩」 そこには釣竿を担いだ亦野先輩の姿が。 京太郎「首尾は?」 誠子「上々。……じゃなくて淡になにかしたの?」 京太郎「いや、なんでそこで疑いの余地も無く俺なんですか?」 誠子「そりゃあ、ここ最近の淡の悩みの種はもっぱら君だからさ」 京太郎「?」 亦野先輩の言い振りはいまいち要領を得ない。 誠子「で、いったいなにしたのさ」 京太郎「なにっていうか、」 俺はここまでの経緯を先輩に説明する。 時折頷きながら聞いていた先輩が、得心が行ったとばかりに口を開く。 誠子「それはたぶん褒めてほしいんだよ」 京太郎「え?」 意外な意見に思わず間抜けな声が漏れた。 京太郎「え~っと、たかが買出しの手伝いですよ?」 誠子「そうだね。でも、たとえば淡は1年からレギュラー入りして部活では常に練習練習」 誠子「基本的に新入生がこなす様なそういった雑用はしてこなかった」 誠子「才能を生まれ持ったばっかりにそういった普通の人が当たり前のように経験することを得ないまま育ってしまった」 誠子「だから私たちにとってはなんでも無いことでも淡にとっては大事なこともあるんだ」 京太郎「はぁ……」 誠子「っとまぁ偉そうなこと言ったけどもっと単純に須賀君の役に立ったから褒めてほしいだけかもね。甘えてるんだよ」 京太郎「けど、逆に怒らないかな?」 誠子「それはどうだろうね。けどそれで本当に怒るかどうかは君のほうがわかってるんじゃないかな?」 俺は背中に鉄板仕込んだかのように背筋を伸ばし、敬礼の姿勢を取る。 京太郎「うっす。さすが亦野先輩、ありがとうございます!」 やはり困ったときは2年生だな。約一名を除いて、真っ当な人材が揃ってる。 京太郎「お~い、淡!」 砂利を蹴って砂浜を走る。目標はあまり移動していなかったのかすぐに見付かった。 波打ち際にしゃがみこんで、なにかやっている。 京太郎「なぁおい淡」 俺の声に一瞬肩を震わせた淡はゆっくり立ち上がり、肩越しにこちらを一瞥してくる。 淡「なに?」 淡らしからぬ酷く平坦な声。 京太郎「さっき悪かったよ謝るから、な? こっち向けよ」 渋々という感じを隠そうともせず身体の向きを変える。後ろ手に両手を組み、いじけた様に打ち寄せる水面を蹴る。 京太郎「え~っと、なんだ。買出し手伝ってくれたありがとな?」 淡「……うん」 京太郎「助かったよ。その、偉かったぞ?」ナデナデ 淡「!?///」 そういって俺は淡の髪を撫でた。その瞬間、淡か頬に朱が差し込む。 淡「あ、あわわわ。ああ、あのね!!」 京太郎「うん?」 淡「こここ、これ!」 差し出された右手、その上に載った小さな欠片。 京太郎「貝殻?」 淡「う、うん。その……綺麗だったからキョータローにも見せてあげようと思って」 京太郎「へえ、ホントに綺麗だな」 淡の手から貝殻を受け取り指先で摘むとそれを太陽に翳す。 京太郎「ありがとな、淡」 淡「うん!」 京太郎「さ、戻ろうぜ。腹減っただろ?」 淡「うん。あはは、実はお腹ペコペコ」 そういって淡は少しだけ恥ずかしそうに微笑んだ。 もと来た砂浜を引き返していく俺たち。 淡「あのね、キョータロー」 京太郎「あん?」 淡「私、毎朝キョータロのお味噌汁が飲みたいかも」 京太郎「え、やだよ。めんどくせぇ」 淡「」 【次回予告】 __ . -'" ̄  ̄` 、 / ヽ、 / . . . . . . . \ / . r . ! | ゙. ヽ .\ / . | . !. | | l! ハ. l .ヽ ,' .. |. l ∠L l| l |l | l | ! l ハ ! . l.. |. | /// / /| /l/リTTヽ ! .i! .| , l . . |.. ! !/ "´'" '" ´ l从 ! | ,'l ! | l . | .| l ,ィ==、 ,ィ=、リ! l / l/ l. ! . . | λ ! { .| ´ !. l . . | / | .l """ , "" l . ! , .| . . .| k ! .l ___ | | , . ! ! ハヽl | r.{_ ;ノ ..イ l . ! | ハ !. ト 、 \ヾ _..ィ´ | j . l |'\∨l ト l ` ァ、 ヾ. . ! . | ./ ' . .! .`゙、ヾ\ヾー‐ァtノニヽ | _!_,' ! . . ;.r‐''ヽ ヽ、r''ヾ!ヽ'_/─, | ト-y'/_ | / \\ ヘ\ 〈 ‐(_!ノ'゙ Y / ヽ ,' .! ヽ.\ ∧ _ /l ヽ .| λ / . l Yヽ K_ }、 } ノ l ゙. , . l } ヽ .ヽ. Y \ / Y !. / . ハ ∨ ヽ ,L/ ヽlヽ ヽ ! / . / .ヽ ヽ Y `l 丶 l クロ中尉[First Lieutenant Kuro Matsumi]. (1995~ 日本) グツグツ 憧「煮立ってる」 和「煮立ってますね」 まこ「なんでお前さんはこれを作ろうと思ったんじゃ?」 京太郎「なんででしょうね? 一時の情念に身を委ねると失敗するということを身をもって体現したというか」 久「よくそういう適当な言い訳即座に思い付くわね」 京太郎「そらもちろん部長の教育の賜物ですよ」 久「その、あなたの人格形成の責任の一端を私になすり付けるのやめて」 宥「あったかそう」ニコニコ 京太郎「どうですかこの笑顔。なんかもう……なんでも許せる感じしませんか?」 まこ「まぁ、こんだけ幸せそうじゃとな」 京太郎「いいですねぇ。美人は特ですねぇ」 京太郎「お前は損だな」ポン 咲「京ちゃん、ちょっと向こうでお話しよっか? 大丈夫少しだけ麻雀を交えながら親睦を深めるだけだから」クイクイ 全員『いただきます!』 誠子「あ、でも美味しい。暑いけど」 灼「暑い。けど美味し」 玄「これなら毎日でも食べたいですね!」 菫「え、いや毎日はちょっと……」 和「すみません。タオル取ってもらっていいですか?」 晴絵「お酒がほしくなる」 京太郎「駄目ですよ。帰りも運転あるんですから」 宥「あったか~い」 京太郎「宥さん、土鍋に手ぇ近付けないでください。危ないから」 京太郎「照さんはご飯のときはお菓子食べない」 京太郎「あ! おい優希、鍋にタコス入れようとするな。美味いものに美味いもの足しても必ずしも美味いとは限らねぇから!」 京太郎「淡は春菊を脇に除けない。野菜もちゃんと食べる!」 京太郎「穏乃! 手掴みで食うな!」 憧「全部つっこんだ」 久「まぁ半分仕事みないなものよね」 咲「京ちゃん、うるさい」 京太郎「あ”あ”!?」 咲「……」ツーン 京太郎「ったく」ブツブツ 和「まぁまぁ須賀君も抑えて抑えて」 玄「仲良く食べたほうがご飯も美味しいよ」 玄「京太郎くんも。はい、あーん」アーン 京太郎「え?」 和「な!?」 憧「ちょ、く、玄!?」 玄「え? あ…………はぁ!?」 咲「……」 京太郎「は!? 今、俺絶好の好機を逃したんじゃないか?」 京太郎「『はい、京太郎くんあーん』、『おい、よせよクロみんな見てるだろ?』」 京太郎「『これじゃまるで俺たち恋人同士みたいじゃないか』、『えーうっそーマジー超キモーい』」 和(ミ○キーみたいな声ですね) 京太郎「みたいなさぁわかるこれ? この感じ」 玄「//////」 憧「いや、その声真似は確かに超キモいけど」 京太郎「玄さんにあーんをしてもらいつつ、それを指摘してテレ顔を堪能する。一挙両得」 京太郎「のはずが、素で返してしまったからな。一瞬の判断ミスで人生を棒に振ったな」 和「そんな重大なことですか?」 玄「あの、それくらいならいつでも」モジモジ 京太郎「いえ、意表を突いてもらわないと面白みが無いので結構です」 玄「」 憧「あんた今、自分の人生盛大に棒に振ってるわよ」 京太郎「俺さ。憧のそういう鋭い突っ込み結構好き」 憧「うっさいわ」 チョイチョイ 京太郎「ん?」 尭深「あーん」 京太郎「……」 京太郎「あーん」モグモグ 尭深「美味しい?」 京太郎「うーん…………美味い!」\テーレッテレー/ 尭深「よかった」ニコ 京太郎「ふむ……」 京太郎「これだよこれ」 憧「なにが?」 咲「……」 京太郎「だから咲。無言なのは怖いよ?」 京太郎「スイカ割りやるべー!」 穏乃「スイカ割りやるべー!」 スイカを掲げながら小躍りする俺と穏乃。 海に来たらなにやる? スイカ割りっしょ! 優希「いつの間にスイカなんて用意したんだ?」 京太郎「ん? ん~……さっか?」 憧「答える気ゼロね」 穏乃「ねー京太郎ー。スイカどの辺に置く?」 アコスとタコスとくだらない問答をしていた俺をよそに穏乃はすでにスイカのポジショニングに入っていた。 穏乃ってなんか自分のやりたい事とかにすごいやる気の生産性を見せるよね。 その瞬発力に乾杯。 穏乃「あ、でも下にシートとか敷いた方が良いよね? 衛生的に」 衛生……だと? 京太郎「なんか似つかわしくない単語来たな」 穏乃「え?」 京太郎「いや、なんでもない」 泥だらけの手で松ぼっくりとか齧ってそうとか言ったら怒られそう。 京太郎「さて、スイカの位置も定まったところでここからが本番」 口元を歪めて笑う。 京太郎「誰を支配下におきたい?」 和「なんで一々そういう言い方をするんですか?」 憧「じゃあ京太郎で」ピッ 優希「犬は常に私の支配下だじぇ」ピッ 穏乃「なら最初は京太郎で良いんじゃないかな?」ピッ 咲「……」スッ」 和「ではここは多数決で須賀君ということで」 京太郎「民主主義なんてクソ喰らえだな」 和「では共産主義の国にでも政治亡命しますか?」 京太郎「バカと俺が同等に扱われる国なんて真っ平ごめんだね」 目隠しをされ、手には木刀……は、なかったので柄に『四万十川工房』と彫られた棒を持って砂浜に立つ。 スイカ割りの戦士、須賀京太郎。すなわち俺。 京太郎「さぁどっからでも来い!」 咲「京ちゃん、こっち。こっち!」パンパン こっちってどっち? 憧「京太郎、前!」 京太郎「……」スタスタ 優希「止まれ!」 京太郎「……」ピタ 穏乃「しゃがめ!」 京太郎「……」スッ 穏乃「バック宙!」 京太郎「出来るかぁ!?」ボスッ 投げ捨てた棒切れが鈍い音とともに砂浜に突き刺さる。 穏乃「次、私ー!」 無能の烙印を押され地面にうな垂れる俺を放っておいて、さっさとゲームを進めていく女性陣。 和「穏乃もっと右です」 穏乃「右ってどっち!?」 優希「お箸を持つほうだじぇ! 穏乃「お箸を持つほうってどっち!?」 和「右です」 穏乃「なるほど!」 大丈夫かこいつ? 憧「シズ! 違うそっちじゃなくて、もっと……ああっ!?」 穏乃「チェストー!」 転瞬、後頭部に鈍痛。 穏乃「あれ?」 俺の身体は真夏の熱い砂浜にノックダウンした。 目を開けると、世界が90度傾いていた。 後頭部に鈍痛。そうか、俺は穏乃の放った誤射で昏倒させられたのか。 …………あの野郎。後で泣かす。 それはそれとしてこの頬っぺたに張り付く柔っこい人肌は……? 京太郎「……」チラッ 咲「……あ」 視線が絡まる。 京太郎「なんだぁ。咲かぁ……」 ドスッ 京太郎「ぐふっ!?」 咲「ふん!」 京太郎「ってなことがありましてね」 誠子「ふ~ん」 近くの埠頭。亦野先輩が釣り糸を垂らすその横で、俺は体操座りをして海を眺めていた。 誠子「で、気が付いたらここにいたと」 京太郎「まぁ、はい」 誠子「便利な場面転換だね」 やだ、辛辣。 京太郎「あ、これスイカです」 誠子「こりゃどうも」 俺たちは並んでスイカを齧る。(俺が寝てる間に)割ったものではなく後できちんと切り分けたものだ。 誠子「うん。冷たくて美味しいね」シャクシャク 京太郎「ですね」シャクシャク 京太郎「ビーチバレーやるべー!」 淡「ビーチバレーやるべー!」 ビーチボールを掲げて小躍りする俺と淡。 憧「私、パース。疲れちゃった」 和「私も少し休憩しますね」 ああ、和がパラソルの下へと去って行く。 京太郎「ちぃ……」 玄「う~む……」 京太郎「……」チラッ 玄「……」チラッ ガシッ 俺たちは硬い握手を交わした。それはおそらく穢れのない天上の風景だっただろう。 菫「はぁ!」スパーン! 菫先輩の放った鋭いスパイクが地面に突き刺さる。 京太郎「く、さすが白糸台のシャープシューター括弧笑い」 菫「京太郎、次言ったら顔面を打ち抜く」 京太郎「はい」 照「ふっ!」ギュルルルルル 高速回転する右腕から繰り出されるサーブ。予測不能な軌道を取るビーチボールが迫る。 玄「させません!」 玄さんの手首が翻り、ボールの乱回転をいなしながら打ち返す。 ボールは上ではなく、横に軌道を取りネットの脇を迂回しながら疾走していく。 照「ポール回し!?」 そんなんありかよ。 玄「名付けて、玄スネイクなのです」キュピーン! なにそのドヤ顔。 淡「あまい!」 意表を突いた玄さんの奇策も、うねり猛る淡の髪に絡め取られていた。 京太郎「いや、ボール持っちゃったらそれ反則だろ」 淡「あわっ!?」ズコーン 熱月の夢! 白熱の終章! これを取った方がマッチポイント。つまりオーラス! 菫「照!」 照「はい!」ポスッ 照さんのナイスアシストを貰い、菫先輩が再び空に舞う。弾むおもち! 菫「せい!」スパーン しまった!? あまりにすばらな光景につい見惚れてしまい、反応が一瞬遅れた! 俺の脇を抜け、ひとつの影が躍る。それは今まで沈黙を保ち、アシストに徹していた鷺森先輩だった。 灼「はっ!」 鋭い一喝とともに突き出される右腕。その先端、親指と中指、そして薬指がビーチボールを貫通した。 ……………………は? 弾力破断限界を越え、ビーチボールが乾いた音を上げて爆ぜる。 灼「ふぅ……間一髪」 なにが? 玄「すごいよ灼ちゃん!」 照「見事な刺突だった」bグッ 菫「出来るなら是非、うちにほしい逸材だ」ウンウン 淡「ねーねーアラタ。もっかい、もっかいやって!」 灼「あ、いや。その……///」カァァ 持て囃す皆々様。照れる先輩。取り残される俺。 俺がおかしいのかなぁ? これ、俺がおかしいのかなぁ? なんかみんなちょっと常軌を逸し過ぎてない? 突込みが追いつかないんだけど。 やめるか。この面子に一々突っ込んでたら切りないからな。 菫「ボールが無くなってしまった」 まぁな。っていうか、菫先輩は常識人の、こちら側の人間だと思ってたのに酷い裏切りだよ。こんなのってないよ。 淡「新しいの取ってくる!」 駆け出す淡。 京太郎「おい、ちゃんと前見ないと」 言うな否や、 玄「きゃうっ!?」 淡「あわん!?」 近くにいた玄さんにぶつかった。 跳ねる肢体。撓む身体。弾むおもち(二回目)。 解れる結び目。零れる、……えっ!? 玄「はうっ!?///」 咄嗟に胸元を押さえる玄さん。吸い寄せられそうになる視線を気合で逸らす。 玄「み、見た……?///」 顔を真っ赤にしながら恨みがましい目で問うて来る玄さん。 京太郎「……」ブンブン 千切れんばかりに首を振る俺。 女性陣「……」ジトォ 疑わしいと言わんばかりにねめつけて来る。これ俺の所為か? 玄「k、京太郎くんはもう大人だから……、玄の裸を見てもいやらしい気持ちになったりは、しないんだよね?///」 ん? いや待て、俺は常識人として振舞いたいね。ここが紳士と変態の分水嶺。 京太郎「大丈夫ッス。僕、そういうの興味ないんで」 完璧。これなら俺に掛けられた嫌疑、も……。 玄「ふ、ふふふ……あはは、興味ないんだぁ?」 あれ? なにこの空気? 京太郎「ってかあれ、みんなどこ行った?」 気付けば、回りには俺と玄さん以外誰もいなくなっていた。普段なら鬱陶しいくらい絡んだ来る淡や照さんの姿もない。 玄「あははははは」 哄笑する玄さん。煌めく銀色。…………え? 玄「ザックリザックリwwwwwザックリザックリwwwwwwザックリザックリwwwwwwザックリザックリwwwwwザックリザックリwwwザックリザックリwww」 玄「ザックリヨイショwwwwwザックリヨイショwwwwザックリヨイショwwwwwwwwコレハドウカナァ?wwwww蛇翼崩天刃!」ザシュザシュザシュザシュ 京太郎「玄さん、それ、蛇違いや……」 玄「千魂冥烙……」 ポロリもあるよ!(俺の首が) けど痛くないよ!(即死だから) 京太郎「はぁっ!?」ガバッ 急激に意識が覚醒。コンクリ床の上で俺は勢いよく上体を起こす。 誠子「あ、起きた?」 京太郎「はぁ……はぁ……あれ?」 そこは亦野先輩が釣りをしていた埠頭。 誠子「大丈夫? すごい汗だけど」 京太郎「え? あぁ……」 頬を伝う雫を手の甲で拭う。 誠子「うなされてたけど、いやな夢でも見たの?」 京太郎「ええ、まぁ、はい。なんか、バタフライナイフと鎖持った玄さんに追い掛け回される夢見ちゃったよ」 俺は頭を振り、悪夢を追い払う。 京太郎「そんなわけないですよね。いつもにこにこしてて優しい玄さんに限って」 誠子「あはは、まぁ、ね?」 京太郎「なんか、ここ来てからおかしな事ばかり起きてる気がする」 誠子「ねぇ須賀君。ここから何が見える?」 京太郎「はい?」 亦野先輩が指差す先。そこに広がるのは……。 京太郎「海、ですか」 誠子「そう。私はね、昔からなにかあると海を眺めに行ってたんだ」 誠子「私は白糸台の中じゃあ凡人な方だし、そうでなくても昔からなにをやるにも失敗は付いて回ったからね」 誠子「だから落ち込んだことがあると、こうやってよく海を眺めてたんだ」 誠子「そうすると、なんだか自分の悩みが酷く小さなものに思えてね。また次もがんばろうってそんな気になれるんだ」 京太郎「それが高じて釣りが趣味になったんですか?」 誠子「はは、まぁね」 誠子「だからまぁ、君もここでしばらく海を眺めて行くと良いよ」 青い空。白い雲。寄せてはかえす潮騒。果てしなく続く水平線。 ささくれた心が凪いでいくようだった。 京太郎「先輩」 誠子「ん?」 京太郎「ありがとうございます」 誠子「これでも年上だからね」 京太郎「はは、ご尤も」 顔を見合わせて笑う。穏やかな笑みだった。 誠子「むっ!?」 柔和だった先輩の表情が引き締まる。それに合わせて俺たちを取り巻いていた空気が帯電して行く。 誠子「掛かった!」 先輩の声に導かれ垂らされていた釣り糸を見る。それは先程のまでの緩んだものではなく、 獲物が掛かったことを告げるように強く張られていた。 誠子「これは、大きそう!」 苦々しく呟きながら先輩の顔が強張る。俺は置かれていた釣り用タモを手に取る。 誠子「それはいいから今はこっちを手伝って!」 先輩の声に俺はタモを投げ出し、竿を握る先輩の手に自身の手のひらを重ね竿を立てる。 獲物も必死で抵抗する。海面に連なる釣り糸が右へ左へと激しく動く。 竿を持っていかれそうになるのを踏ん張りながら耐える。先輩の手は必死で竿を起こしながらリールを手早く巻き取っていた。 海面に魚影が浮かび上がってくる。これはなかなかの大物だ。目算で50cm前後。 ここで一か八か。 京太郎「先輩、ここは俺に任せてください!」 誠子「任せててって?」 京太郎「こうするんですよ! …………とぅ!」 俺は先輩から身を離し迷わず海へ飛び込んだ。 誠子「……………………………………………………へ?」 ワー! キャー! 和「なにやら騒がしいですね」 咲「どうかしたのかな?」 穏乃「大変大変! 海で誰か溺れてるんだって!」 憧「えぇ!?」 晴絵「うちの子たちは全員いる!?」 晴絵「各校の部長は点呼取って」 灼「阿知賀は全員いる」 久「清澄も、あら? 須賀君は!?」 菫「うちに亦野もいない」 照「誠子は埠頭のほうに行ってた。京ちゃんがそっちに行ったのを見たからたぶん2人は一緒に」 淡「そんな! セーコ先輩とキョータローが」 菫「落ち着け、あの2人に限ってそんなことは……」 灼「でも、もしかしたらってことも」 晴絵「私は現場に行ってくる。あんたらはここ待機いいね?」 灼「ん…」コク 久「はい」 菫「わかりました」 晴絵「2人ともどうか……」ボソ タタタタッ 咲(…………京ちゃん) オイ、アレウイテルノヒトジャナイカ!? ライフセーバーマダカヨ!? 晴絵「どいて、どいてください!」 そこで目にしたのは波に揺られる人影。 遠くて見辛いが、それは辛うじて金髪だと判断できる。 晴絵「まさか、ホントに須賀君!?」 咲「そんなっ!?」 思わぬ声に、晴絵は脇を振り返る。 晴絵「宮永さん! 待ってろって言ったでしょ!?」 咲「だって私! 京ちゃんと仲直りしてないんです! なのに、なのにこんなのって……!」 咲は涙を零しながら海水を掻き分け、海へ入って行こうとする。 晴絵「バカ! 素人が勝手なことするんじゃない!」 咲は静止の声を振り切り、大切な人の許へ駆け出していた。 誠子「いやー、須賀君がテトラポットに頭から激突していった時はさすがにどうしようかと思ったよ」 京太郎「あはは、まさか俺も埠頭の先から海まであんな距離があるとは思いませんでしたよ」ダラダラ 誠子「ところでまだ血、止まってないけど大丈夫?」 京太郎「大丈夫大丈夫。こう見えて血の気は多いほうなんで」 誠子「そっかそっか。でもおかげで大物が釣れて良かったよ。これは竿頭は須賀君に譲らないといけないかなぁ」 京太郎「よしてくださいよ。俺はただ手伝っただけなんですから」 ワー! キャー! オンナノコガー! 京太郎「なんか騒がしいですね」 誠子「なにかあったのかな?」 京太郎「ちょっと見てきますね? すみませーん、なにかあったんですか?」 晴絵「どうする。私が行くか? けど私まで溺れたら、誰が……くそっ情けない!」 京太郎「先生? どうしたんですか?」 晴絵「ああ、実は須賀君が海で溺れたらしくてそれは助けるために宮永さんが海に」 京太郎「なにぃ!? 俺を助けるために咲が海に!?」 言うが早いか、京太郎は荷物をその場に放り出し海へと駆け込んでいった。 晴絵「あれ!? 須賀君!?」 誠子「あの、先生。どうかしたんですか?」 晴絵「あれあれ? 亦野さん?」 誠子「はい、亦野ですけど?」 晴絵「あれー?」 咲(京ちゃん! 京ちゃん!!) 咲は必死に泳いだ。 泳ぎどころか、運動すら得意とはいえない自分だけどそれでもなお懸命に手足を動かした。 けれど大自然のうねりの前に非力な少女一人の力など矮小に過ぎた。 日が傾きはじめことにで海面が上昇し、波が高くなっていたのだ。 しかし遂に、咲は水面のに漂うそれへと手をかけた。 大切な人への思いが限界以上の力を発揮したのだ。 咲「京ちゃん! 大丈、……え?」 咲の掴んだそれは、幼馴染の少年でもなんでもなく単なるマネキンだった。 デパートの服売り場で悠然と佇んでいる様などこにでもある人形。 水難事故は誤報だった。 安堵と、それを上回る虚脱感。全身の一気に抜けた。 その瞬間、まるで悪意あるもののように迫る高波が咲の身体を頭上から飲み込んだ。 俺は咲の向かった方角に走り出し、波打ち際の水面を蹴り上げたところで急制動。 視線を巡らせ、目当てのものを探す。 あった。 京太郎「すみません! それ貰っていいですか?」 若い男女の女の方が手に持っていたものを指差す。 女「え? こ、これ?」 それは飲みかけのペットボトルだった。 俺は強く頷く。その剣幕に押されて、女はペットボトルを差し出してくる。 手早く栓を外し中身をすべて地面に流す。そして再び栓をすると、それを握りしめながら駆け出した。 後方からなにやら声が掛かるがすべて無視。 京太郎(待ってろ咲!) 海中を進み、足がつかなくなったあたりから泳ぎに移行。 片手が塞がっているが、染谷先輩に習った古式立ち泳法を混ぜた泳ぎでなんとか進む。 一秒でも早く。咲の許に! 先行していた咲の姿が高波に飲まれる瞬間が目に入る。 焦る気持ちを精神力で抑え、なんとか距離を詰める。 海上に潜水艦の潜望鏡のように出していた頭部を引き下げ、潜水に移行。海中に沈んだ咲の姿を探す。 いた。少し流されたようだがおおよそ右手前方二時十三分の方向、目算で8メートル。 俺は海水を掻き分け、身体を水平に移動。 咲はまだ沈んで間もないため、辛うじて意識が残っているようで必死に手足をバタつかせている。 ここだ。ここからがもっとも神経を使う作業となる。 水難事故で最も恐ろしいのは二次災害だ。 たとえば、よくありがちなケースとして溺れた子供を大人がすぐに飛び込んで泳いで助けに行く。 っというのはよくある話だが、実はこれは最もやってはいけないことである。 水に溺れた遭難者は基本的にパニック状態に陥っているため助けに来た救助者に必死にしがみ付こうとしたりして暴れるため、 それによって救助者が逆に水に引きずり込まれまとめて溺れてしまうことになりかねないからだ。 極論からいえば、遭難者が気を失ってから助けに行くのが安全なのだが生憎、 目の前で苦しんでいる咲を放って置けるほど俺の気は長いほうではない。 俺は手に持っていた500ミリリットルの空のペットボトルの感触を確かめる。 本来なら1,5リットルのくらいの方がいいのだが仕方がない。っというかそもそも浮き輪なりなんなりを借りてくればよかった。 やはり、自分で考えている以上に俺は冷静ではないらしい。 慎重に咲へと近付いていく。 暴れる両手にぶつからない様に迂回しつつ、背中側に周り腰に腕を回す。 鼻先を手の甲が掠める感触に鼻の奥が熱くなるが、懸命の堪えて海上を目指す。 咲の左の肘が俺の脇腹を打つ。肺から気管支を抜けて呼気が抜けていき、俺たちよりも一足先に気泡が昇っていく。 三半規管の混乱を押さえ込み脚で水を蹴ってさらに上昇。 どうやら体力が限界に近いらしく咲の動きが次第に弱まってくる。 ここで手にしていたペットボトルを咲の顎下に添える。 これは所謂、『浮き』の役割で即席の救命具だ。 海面の表面張力を突き破り、俺たちはなんとか海上へと顔を出した。 貪るように酸素を吸い込む。口を開閉させ、肩を上下させながら全身で空気を取り込む。 俺に抱きかかえられた咲は、一度大きくむせ返り鼻と口から海水を吐き出す。 それから一呼吸置いて弱々しいながらもなんとか自力で呼吸していた。 安堵の溜息。なんとか最悪の事態は回避できた。 両手が塞がっているため、バタ足しかできないがそれでなんとか水を蹴って沖を目指す。 腕の中に納まる咲に目をやると、濡れた睫毛が微かに震える。 咲「ん……あれ?」 視界に靄がかかったように焦点が定まらず茫々と宙を泳いでいる。 泳いでるのは俺なんだけどね。なんて冗句が浮かんでくるくらいには心身ともに回復してきた。 いや、身体は疲れきっているが咲の無事がわかっただけでも俺にとっては活力元となる。 京太郎「気付いたか?」 咲「京ちゃ、え!? なんで?」 京太郎「いいから、もうしばらく大人しくしてろ」 咲「う、うん」 いろいろ問い詰めたいんだろうが身体が疲れきっているため今は俺の言葉に従い口を噤む。 問い詰めたいのは俺のほうだと言いたいが、俺もおしゃべりで無駄な体力の消耗は避けたい。 突如発生した高波の身体が煽られる。 咲を放すまいと腕に力を込める。甲高い悲鳴。 咲「ちょ、ちょっと! どこ触って!?」 京太郎「どこも触ってねぇよ! いいから大人しくしてろ」 またも波に飲まれそうになる。波濤が渦を巻き、俺たちに覆いかぶさって来る。 咲「うひゃぁ!?」 顔を真っ赤にしながら溺れかけていたとき以上の勢いで手足を暴れさせる咲。 京太郎「バカ! だから暴れんなって!」 咲「だって京ちゃんがぁ!?」 再び左の脇腹に鈍痛。先程打ち付けられた部分と寸分違わず同位置に打ち込まれた。 わざとでは断じてないだろうが、自分の運の悪さが腹立たしい。 京太郎「落ち着け! なにもしない。もうすぐ陸だ、かっつ!?」 俺の言葉はそこで途切れた。 おわかりいただけるだろうか? 咲の脚が男の人体急所、即ち股間を正確の打ち据えた。 全身を打ち抜く激痛。視界に火花が散る。尾?骨のあたりから力が抜くていく。 普段の俺なら激痛に悶えるだけで済んだだろうが、いろいろ限界が来ていた俺に止めを刺すには十二分に過ぎた。 咲「あ、あれ? 京ちゃん?」 事態が飲み込めない咲が、急に弱まった拘束に疑問を感じこちらを振り返ってくる。 最早、返事を返すことすらできない。 薄れ行く意識の中、目にしたのは泣きそうな顔の咲。 ああ、そんな顔すんなよ。俺は大丈夫だから。 視界の空が減り、減った分を水の青さが増していく。 再び海中に沈んでいき、意識が暗黒へと混濁していった。 頭が頭髪の先まで沈みきり、最後に掲げていた右手を誰から触れた気がした。 ?「京ちゃん!」 誰だ? ?「京ちゃん!!」 誰かが俺の名前を呼んでいる。 暗闇が裂け、光が漏れ入ってくる。 自分が目蓋を開きかけているんだと気付き、そのまま一気に開け切る。 差し込む光量に、一瞬網膜が灼かれるがすぐに眼球が明度調整を行い、それに合わせて視界が戻ってくる。 目の前にあったのは唇。 小皺の見える鼻梁。 シミの浮いた浅黒い肌。 顎先にたくわえた髭。 白んだ眉毛。 禿げ上がった額。 それらをパーツとしたどう見ても中年男性の顔面が俺へと迫った来る。 京太郎「うわああああああああああああっ!?」 その横っ面を盛大に殴り飛ばしてしまった。 いや、だって……おえ、夢に出そう…………。 ?「ほう? 元気そうじゃないか?」 声とともに起き上がってきたのは、 京太郎「大沼プロ!?」 大沼「如何にも、ワシだ」 京太郎「え、あれ? なんで大沼プロが?」 大沼「決まっておるだろう。お前の貞操をいただくためだ」ジュルリ 京太郎「」 次回。 【たった一人の最終決戦】 白い砂浜。青い空。微細な違和感。 大沼「ははは、これー! 待たんかー!」 京太郎「来るなああああああああああああああああっ!?」 追いかけて来るホモ(中年)。 なに? なんなの!? なんで俺がこんな目に合ってるの!? 大沼「聞けぃ小僧!」 京太郎「っ!?」 先程の猫撫で声とは違う大沼のおっさんの突然の恫喝に思わず立ち止まる。 大沼「今、お前は死の危機に瀕しておる」 京太郎「どういう、ことだ?」 大沼「ここは此岸と彼岸の境界。言わばお前さんが見ておる明晰夢のようなものだ」 京太郎「明晰夢?」 確か、見ている本人が夢を夢と自覚しながら見る夢のことだったか? メカニズムとしては思考、意識、長期記憶などに関連する前頭葉が 海馬と連携して覚醒時に入力された情報を整理する前段階において、 前頭葉が半覚醒状態のために起こるとかどうとか。 言われてなるほどと思う。 身体を取り巻く鉛が纏わりついているような、独特の身体感覚のおかしさは夢の中のそれだ。 大沼「お前は今、海で水難事故に遭い生死の境を彷徨っている」 京太郎「……」 そうか、俺は俺を助けようとして海に飛び込んだ咲を追ってなんやかんやあって咲に……。 あの野郎。 大沼「日本とシアトルでは救命率がまるで違う。なぜかわかるか?」 京太郎「?」 大沼「日本の救急車はたとえば、緊急の走行中に目の前に別の車両が現れるとブレーキを踏む」 大沼「だがシアトルの救急車はノーブレーキで突っ込んでくる」 大沼「だから皆、臆して救急車を避けるから日本とシアトルでは救命率がまるで違う」 京太郎「? それとこの状況とどんな関係がある?」 大沼「…………ないな」 京太郎「……」 なぜ俺の周りには会話の前と後で論点がおかしい人間ばかりなのだろうか。 類は共を呼ぶ。ではない。っと思う……たぶん、きっと……。 大沼「ははは、すまんすまん」 大沼のおっさんは照れたように頬を掻きながら笑う。 京太郎「やめろ。中年のおっさんの照れ笑いを微笑ましいと思えるような奇特な趣味はないんだ」 大沼「貴様の引き締まった臀部を撫で回しながら、その菊門にワシのいきり立ったイチモツを捻じ込m」 京太郎「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」 おっさん(ホモ)の汚らわしい腐れ妄想を俺の絶叫が打ち消す。 京太郎「とにかく、そういうことなら俺は帰らせてもらうぜ」 踵を返しその場を後にしようとする。 明晰夢は見るのは難しいが覚めるの簡単だと聞く。このおっさんとの物理的な距離は関係ないが、なんとなくこの場にはいたくない。 大沼「帰ってどうする?」 京太郎「なに?」 大沼の挑むような声に、俺はつい振り返ってしまった。 大沼「帰ったところでお前に居場所はあるのか?」 大沼「すべての人間は部品だ。その部品が組み合わされことで世界が成立している」 大沼「だが、お前はどうだ? 物語の主筋に関わらない」 大沼「人数合わせの背景役の一人でしかないお前があの場に戻ってそれにどれ程の価値があるのだ?」 大沼の言葉に俺は打ちのめされていた。 確かにその通りだった。咲たちが輝かしい栄光をと賛美を浴びる一方で俺は県大会初戦敗退という、 なんの価値もない結果しか残せなかった。 初心者だから、などという言葉は言い訳にもならない。 結果がすべてなのだ。努力した人間すべてが評価されるなどそんなことはありえない。 大沼「戻ったところで辛いだけだ。ならこの場に留まり、ワシと肉欲の限りを尽くすほうが建設的だ」 その言葉はまるで甘露のように俺の身の内に甘く染み込んでくる。 そうなのだろうか? そうすることが正解なのだろうか? 『京ちゃん』 弾かれたように顔を上げる。 中空に気泡が浮かんでいた。その内側には懐かしい思い出たちが投影されていた。 京太郎「悪いなおっさん。やっぱ俺は帰らなくちゃいけないみたいだ」 大沼「ほう?」 京太郎「俺が側にいないとさぁ、咲が泣いちまうんだよ!」 大沼「だが、そうかといってお前を帰すとでも思っているのか?」 話を最後まで聞かず、俺は砂利を蹴り立てて前方へ疾走。 京太郎「こういうわけのわからない状況ってのは、大体その場に現れた奴をぶっ飛ばせば目が覚めるって規約というか相場があるよな!」 一気に間合いを詰め、互いの殺傷圏が衝突。 身を捻りながら背中から肉薄。身体ごと旋回させ右足を軸に裂帛の回し蹴りを叩き込む。 だが大沼は数歩横に移動しただけで俺の蹴りを躱す。 左に上体が流れたその勢いを利用して、地を舐めるよな下段からの右拳の打ち上げを大沼は状態を逸らしただけで難なく回避。 詰め寄った大沼が俺の眼前に掌を翳し、視界を封殺。反射的に動きを止めた俺の右側頭部に、そのまま裏拳が打ち込まれる。 さらにその動きに合わせて、砂利に踏み締めていた俺の軸足を捌く。 空手における禁じ手の一つで、頭部を左側、軸足を右側に弾くことで視界と身体が半回転。 このままでは垂直に頭から地面に落ちる!? ……ことはなく上下を逆さまにされたまま足を掴まれ宙吊りの状態にされる。 見上げる俺の決死の視線と、大沼の余裕の笑みが絡み合う。 そのまま背後へ放り投げられた。空中で内臓が浮く感覚に全身が総毛立つ。 懸命に身を捻り、両手両脚で砂浜を削りながら手負いの四足獣の姿勢で急制動。 視線の先。大沼秋一郎はただ悠然と佇んでいた。 その余裕の態度が癪に障る。 体勢を立て直し、爪先で間合いを詰めながら接近。相手の呼吸に合わせ不意を突いて加速。 颶風を纏いながら疾駆。再び拳と蹴りの旋風を見舞ってやる。 だが大沼はそのすべてに反応し、完璧に対応して見せた。 京太郎「はぁ……はぁ…………」 俺の方だけが一方的に消耗していた。 大沼「わかったろう? お前は現実でも夢でも誰にも勝てない。指一本触れることもできず、ただ敗北に打ちのめされるだけだ」 どうする? 小技で攻めてもすべて対処される。 となれば対処しきれない程の飽和攻撃で一気に攻めきるしかない。 あれをやってみるか。 背筋を伸ばし、深く息を吸い込む。咲、俺に力を貸してくれ。 京太郎「確かに、俺にはこれといって秀でた才能はないし、英雄のような勇ましさも賢者のような賢明さも聖人のような高潔さもない」 京太郎「けどなぁおっさん。そんな平凡な俺のくだらない冗句を笑ってくれる奴が俺の周りにはたくさんいるんだ」 京太郎「そんな奴らが夢の為に懸命に戦ってきた。俺はずっとそれを側で見てきた」 京太郎「俺はこれからもそいつらの手助けをしてやりたい。俺にしか出来ないことだってあるはずだ」 京太郎「そういう在り方ってのも、意外と悪くないもんだぜ?」 憮然とした態度で黙っていた大沼の目がはじめて驚愕に見開かれる。 もう遅い。俺のくだらないおしゃべりに気を取られていたお前はすでに俺の術中に嵌っている。 大沼秋一郎を中心に周囲を、半球状の霞が満ちている。 雲は膨大な数の俺自身。半球内部に向け拳と視線を向けていた。 しかし数を数えようとすると不可能になる。その姿は見えるようで見えないという不可思議な光景。 大沼「なんだ、これは?」 大沼は須臾と、退くか進むか逡巡した。その一瞬が致命的となった。 大沼を包む雲から無数の須賀京太郎が同時に疾走。 迫る俺たちを迎え撃とうと拳や蹴りが放たれるがどれ一つとして捉えられない朧がかった霞の群れ。 無理に迎撃しようとして、体勢の崩れたプロ雀士の身体に俺は打撃の旋風を打ち込んでいく。 顎下、左右のこめかみ、右頬、首、両肩、右上腕部、左前腕部、右手首、左胸、 鳩尾、両脇腹、両太股、両脛、足払いを決めつつ、最後に眉間を打ち抜く。 傾斜していた大沼の身体は後方へ大きく吹き飛んでいった。 不確定性原理によって運動が決定された身体は位置が定まらなくなり、存在する場所を確率でしか現せない粒子の雲となる。 本来なら、身体が対象に接触する確率の総和が時間的に変化しないことを、 確率の保存が保証し空間内の確率密度の総和も必ず1となるしかない。 だが、身体が位置rに存在する絶対確率を表す方程式を操作し、 確率密度の総和を1以上の膨大な数に引き上げてやることで数え切れないほどの須賀京太郎を並行的に同時存在させる。 限定空間内の、自らの意思でコントロール可能な明晰夢という、物理法則が一定に機能しない世界だからこそ出来る芸当。 量子を身体に置き換えて確率保存を破るため、打撃が刺さる瞬間までどの俺も決して捉えることは出来ない。 早い話が分身の術だ。須賀京太郎は分身する。これは世界の共通認識。なーんつってつっちゃって。 大切な人たちを護るためと教わっていたが、現実では扱えないと放棄していたがまさかこんな形で役に立つとはな。 京太郎「けどまだまだ、ハギヨシさんの様にはいかないな」 小さく呟きつつ、警戒心を緩めないよう心掛けながら大沼へと歩み寄る。 大沼「まさか、こんな姑息な手に引っ掛かるとはな」 京太郎「の割には、どこか満足気なのは気の所為か?」 大沼「行くのか?」 京太郎「………………ああ」 大沼「この先、お前自身が報われる保障などどこにもないぞ?」 京太郎「それでもだ。生きる意味や理由付けなんて暇人の思考遊びだ」 京太郎「俺はポンコツの世話で忙しいんだ。一々そんなことを気にしてる暇はないよ」 大沼「そうか」 京太郎「…………ありがとな、おっさん」 大沼「礼などいらん。ああ、だが一つだけ心残りがあるとすれば……」 京太郎「?」 大沼「貴様との腐肉の饗宴を開けなかったこ、ったぶぁわっ!?」 ふざけたことをのたまう中年ホモの顔面を盛大に踏み付けて黙らせ、今度こそ俺はこの世界から抜け出すことにした。 周囲を取り巻いていた風景が歪み、それに代わって網膜を灼く莫光が視界を埋め尽くす。 身体が引き上げられるような浮遊感。目を開けていられない様な閃光の中で俺はあの、懐かしい笑顔と声を感じた。 急激に意識が覚醒する。 見開いた視界に、白い肌。茶色がかった前髪と、瞑られた目蓋の縁の睫毛が意外と長いなと、どうでもいいことに気付いた。 口元に粘膜の感触。合わされた口腔から、肺腑に息が送り込まれてくる。 内側に苦痛が生まれる。 込み上げてくる不愉快な嘔吐感とともに、胃の中から海水が競り上がってくる。 激しく咳き込みながら、身を捩って水を吐き出す。 鼻と口を手の甲で拭いながらようやく一息ついた。 状況に混乱しつつ、周囲を見回す。 俺を取り囲むように、学校の面々が俺を見下ろしていた。 俺はゆっくりと上体を起こす。 傍らに座り込んでいた咲と目が合った。 咲「京、ちゃん……」 京太郎「咲……」 咲「京ちゃん! よっかたよかったよぉ、京ちゃぁぁん!」 弾かれたように縋り付いてくる咲を抱きとめる。その身体の熱さが、俺が生きているということを実感させた。 しゃくり上げる咲の背を優しく撫でる。 京太郎「お礼を言うのは俺の方だ。咲は俺の命の恩人だ」 咲は無言で首を振る。俺は背を撫でていた手を咲の頭に置く。 京太郎「本当に、本当に助かった。もう少しで……」 死に掛けている間に見た夢の内容が脳裏にフラッシュバックする。 目尻に熱い雫が溜まり、零れ落ちて頬を伝う。 京太郎「怖かった……ホモに追いかけられる夢見ちゃった……」 全員「マジ泣きだ……」 みんなの声が妙に優しかった。
https://w.atwiki.jp/nettoucm/pages/4230.html
出演回 プロフィール 誕生日:1999/10/27 出身地:埼玉県 サイズ: 所属:モーニング娘。 グラビアアイドル リンク https //ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%A5%E8%97%A4%E9%81%A5 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/1853.html
http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1362666103/ 「須賀、あの竹井先輩と一緒の部活って本当か?」 ある日の昼食時、友人2人と昼食を取っているとそんな話題が唐突に振られた。 俺は口に含んでいたタコス(優希からメニュー存続のため食べるように言われている)を飲み込みながら頷いた。 「まぁな。というか麻雀部の部長だぞ?」 「マジかよ、知らなかった。知ってたら俺も麻雀部に入ったかもしれねえなぁ」 「竹井先輩、美人だもんなー。こいつ、入学式の挨拶で見てからファンらしいぜ」 羨ましそうに話す友人たちを見ながら俺は部長の顔を思い出す。 確かに、部長は文句なしの美人だ。 スタイルもなかなか。 全校生徒の前で話す姿など凛としていて男女問わず人気があるというのもよくわかる。 俺自身、入部した当初は和だけではなく、あの美人の議長さんも居ると知って胸を高鳴らせた。 だから、友人たちが騒ぎ立てる理由はわかる。 わかるのだが、こいつらは部長の真の顔をよくしらない。 悪戯好きで人をからかうのが大好きな小悪魔な部長を知らない。 そう思うと素直に頷けなくなる。 部長の悪戯やら悪巧みの被害者になっている立場としては心中が複雑である。 そんな俺の内心を知らず、テンションが上がった友人たちは質問を続けてくる。 「やっぱり、いろいろ教えてもらったりしているのか?」 「大会前だから練習の合間を見てって感じだけど、いろいろ教えてもらってるぞ」 「羨ましい! 俺も竹井先輩に優しく指導されてみたいぜ」 騒ぎ立てる友人を見ながら俺は内心苦笑した。 指導と言ってもそんな色っぽいものじゃないし、むしろ遊ばれている感がある。 向こうとしては子供をからかってるぐらいのつもりなのだろう。 俺にもプライドがあるから少し傷つくこともあるが……。 「ほんと、そんな大したもんじゃないって」 皆が憧れる高嶺の花に、みんなより近い位置にいるということにちょっとした優越感もあった。 とは言え、部長からしてみれば俺なんて眼中にないだろうけど。 美人だしイケメンの彼氏の一人や二人ぐらいいるだろう。 何より個人的には和のほうがタイプだし。 その日の放課後、いつものように俺は部室で麻雀を打っていた。 麻雀は麻雀でもネト麻ではあるが。 まぁ、これはしょうがないの。 俺自身まだルールが怪しいところが多い。 動作も遅く、なにかと迷ってしまうことも多く進行を妨げてしまう。 大会も近いので、最近は他のメンバーとは打たずこうやって1人でネト麻を打っていることが多い。 最初はモチベーションが維持できるかどうか若干不安だったが意外とやっていけている。 俺は正念場を迎えたオーラスの手牌を見つめながらそんなことを考えていた。 『京太郎手牌』 3456m1245667s22p ツモ4m ドラ3m 好形変化のツモ。 以前は3456などといった連続系を早めに壊してしまって和に怒られていたが、どうやらその反省を生かせたみたいだ。 マウスを操作して1索を切り出し、進行を見守った。 そして次巡。 『京太郎手牌』 34456m245667s22p ツモ【5】p ドラ3m 想定していなかった赤5引き。 ほとんど手は固まっているが、関連牌を引いたら面子候補を入れ替えるのもいいかもしれない。 そう考えて辺張の片割れである2索を切り出した。 「今はどんな感じかしら?」 つい、熱中しすぎてたようだ。 近づいてきた部長に気付かず少し驚いてしまう。 「あっ、えっと、今はオーラス29,300点持ちの2着です。トップとは4,500点差です」 ツモってきた西をツモ切りしつつ、慌てながらも現状を報告した。 部長はどこかおかしそうに笑いながらも、画面をのぞきこんで小さく頷いた。 「なるほど。とりあえず、続けて」 「あっ、はい……、と」 そうしているとピッ、という効果音とともに聴牌となる牌を引いてきたことを告げられた。 『京太郎手牌』 34456m45667s22【5】p ツモ5m ドラ3m メンタンピンドラ1の文句なしの逆転手。 俺は満足感を覚えながらリーチのアイコンをクリックして、赤5筒を切り出した。 「リーチっと。部長、どうですか?」 「うーん、残念! 100点はあげられないわねー」 「えっ」 それなりに自信があったのに情け容赦ない一刀両断。 思わず言葉を失ってしまう。 「須賀君、赤5筒を聴牌まで引っぱっていたようだけど、なぜかしら?」 俺は若干気まずい感情を抱えながらも宿題を忘れた言い訳をするかのような気分で自分の考えを述べた。 「えっ? だってくっつけば点数が上がるし」 「そうね、ドラを大切にしようって言うその考えは自体はそこまで悪くないと思う。ただ、今の状況は?」 「トップまで4,500点差のオーラスです」 「そう。すでにメンタンピンドラ1で点数が足りているし、待ちが愚形でも枯れてしまっているわけでもない。 なのに赤5筒を引っぱってくっつきを待ち、これ以上点を高くする意味は?」 何も言い返せなかった。 思わず頭が下がる。 「ない、です」 「よろしい。ただ、100点をあげられない一番の理由は須賀君が聴牌チャンスを下げる打牌をしているからよ?」 「えっ、えぇ? これで、ですか?」 自分の手牌と捨て牌を眺めてみる。 『京太郎手牌』 34456m45667s22【5】p ドラ3m 『京太郎捨牌』 北中発九⑨⑧ 12西 どう見ても手牌に関係しそうもない端っこしか切り出していない。 正直納得いかないものを感じつつ俺は思考を巡らせたが、答えが出ない。 そうしていると部長は画面上の2索を指差しつつ、メモ用紙に何かを書き始めた。 「ほら、ここ。8順目、ペンチャン落しからの2索切り、これが問題。この時に赤5筒を切って2索を入れると、こうなるわね」 『久提示』 34456m245667s22p 「ほら、この形だと索子に5索8索の他に3索の受け入れも出来るでしょ? そうすれば、6索切りの聴牌でリーチできる」 「あ、あぁ!」 部長の言うとおりだった。 確かにそのように切っておけば受け入れが4枚増える。 俺だってそこそこに麻雀を打ち込んできた。 4枚増えることの重みだって、それなりにわかっているつもりだ。 なのに自分はミスがないと、ベストの打牌をしたと勘違いしていた。 からかうように笑う部長を見ながら、自分の未熟さと中途半端さに内心ため息をついた。 「あー……。今回はいけると思ったんだけどなぁ」 「まだまだ甘いわね、須賀君」 「……うっす、もっと頑張ります」 とは言え、こうやって丁寧な指導を受けるというのはやはりうれしい。 だから意外とモチベーションが保っていられるんだろうな、と自分で考えている。 「じゃあ、京ちゃん。今日は先に帰るけど、あんまり無理しないでね。ばいばい」 「おう、また明日なー!」 あの後、部長から牌譜について教えてもらえることになり、部長と一緒に居残り勉強をすることになった。 今までネト麻ばかりだったが、少し本格的な、麻雀部員っぽいことを教えてもらえることになり内心心躍っていた。 「さーって、はじめましょうか」 「うっす!」 「あ、変なことしないでね?」 「だからしませんって!」 「ひ、酷い。私に魅力がないって言うのね」 「あー、もう、どうしろっていうんですか!」 泣き崩れる真似をして俺をからかう部長に俺は頭を抱える。 こんなことがしょっちゅう起こるのが困りものだ。 親しい人間にしかこういう面を見せないから余計に性質が悪い。 「ふふふ、じゃあ、始めましょうか。そこに座って。実際に牌を並べながら説明するから」 そう言いって部長は牌譜を広げた。 正直訳が分からなかったが、部長は丁寧にひとつずつ教えてくれる。 俺とは大違いの細くてしなやかな指が牌譜の上を滑る。 白い肌。 綺麗に手入れされた爪。 白魚のような指、とはこういうものをいうのだろうか。 自分の指とは大違いなそれに少しぼうっとして見つめてしまう。 慌てて思考を切り替えて、必死にメモを取る。 部長はそんな俺の姿をなぜか楽しそうに見ながら説明を続けた。 部長が変なことを言うから悪い。 この部室に美人の先輩と二人っきり。 俺だって男だ。 あんなこと言われちゃ、色々と意識してしまうだろう。 いや、もちろん襲うつもりはないけれども。 不埒な妄想をしてしまったことぐらいは許してほしい。 うん。 「疲れた……いや、でもこれからまたさらに疲れるのか……」 一折の説明を受け、DVDと一緒に宿題を渡された後、掃除を済ませて部長と帰途についている。 正直色々と聞きすぎて頭がパンクしそうだった。 その状態で今夜は宿題をこなさなくてはならない。 若干気が重い。 「お疲れ様。今日はよく頑張ったからご褒美にアイスでも奢ってあげるわ」 思わずため息をつく俺の姿を見て部長は気を使ってくれたのだろうか。 そんな提案をしてくれる。 学校帰りの買い食いは楽しいものだ。 その上、先輩に奢ってもらえるというのなら猶更だ。 「ほんとですかっ!? やった!」 思わず手離しで喜んでしまう。 我ながら単純だとは思うが、嬉しいものは嬉しいのである。 「はいはい。じゃあ行きましょうか」 苦笑する先輩と連れ立って学校近くのコンビニまで歩いた。 体育館からはまだ活動しているのか、ボールの跳ねる音が聞こえるがそれを除けば静かな道だった。 連れ立って歩いているこの状況に少しドキドキするがコンビニは目と鼻の先だ。 部長と今日の部活の話をしているうちにあっという間に着いてしまった 「あなたとコンビニ」 「なんちゃらマートっと」 何となく二人で掛け合いのように歌いながら入店する。 部長は楽しそうにアイスを選んでいる。 俺は迷わず国民的アイスバーを選んだ。 これの梨味が好きだったのだが、おいていないのでソーダ味を取る。 まぁ、ソーダ味も相当なうまさなので問題ない。 部長からはもっと他のでもいいよと言われるが丁重にお断りする。 確かに値段は相当安いけど、これ以上に安定してうまいアイスはそうそうない。 そんなことを思いながら、俺と部長はコンビニの前でアイスを口にし始めた。 「しかし、大会までもうすぐですねぇ」 アイスをかじりながら俺は何となくそんなことをつぶやいた。 深い意味はなく、ただの雑談程度のつもりだった。 「ほんと、あっという間ねぇ」 「初めてのインターハイかぁ……」 アイスをひとかじりして何気なく頭に思い浮かんだことをつぶやいた。 部長もアイスをかじりながら返事を返してくれる。 「そうね、そして、私は最後のインターハイ」 そして、軽い調子で返ってきた言葉に俺は一瞬言葉を失った。 当たり前の話だった。 目の前にいる人は3年生。 あと数か月もすれば引退して部からいなくなってしまう。 そんな当たり前なことに俺は気づいていなかった。 「……そうでした。部長、夏が終わったら引退なんですよね」 「そう、だから今年の夏は何が何でも勝ちたいの」 部長は軽く息を吐いてつ、と上を向いた。 俺はその言葉になんと返していいかわからずに口ごもっていると部長は軽く笑って続けた。 「ようやく5人そろったからね。ある意味では最初で最後のインターハイ、かしらね」 「最初で、最後……」 聞いたことがあった。 部長が入部した当時は幽霊部員が居るのみで部としての活動は行われていなかったと。 「最初はひとりで途中でまこが来てくれたけどそれでも2人だけで、部活って言えるのかって言われたこともあるけど」 顔は笑っている。 いつものように悪戯っぽく。 「それでも続けてきて、ようやく臨める団体戦」 口では大したことではないことのように言っている。 表情だって笑っている。 「だから、勝ちたいの。私は」 でも、この先輩はどれほどの苦しみの上でその言葉を吐いているのだろうか。 どれほどの辛さを乗り越えてその言葉を吐いているのだろうか。 「そのために、できることは何でもするつもりよ。最後だから、後悔したくないしね」 最後まで先輩は笑いながら言っていた。 だけど、その笑みはとても悲しく、辛そうな感じがして。 今までどれほど辛い思いをしてきたのかを物語っている気がして。 ずきりと、胸が痛んだ。 俺はいったい何をしているのだろうか。 今すぐ消えてなくなりたい気分だ。 美人の先輩やかわいい同級生に囲まれている状況に浮かれてヘラヘラと麻雀を打っていた。 周りから羨ましいなんて言われてくだらない優越感を抱いていた。 あまりにも愚かだった。 部長はどれほど苦労してこの麻雀部を作り上げたのだろう。 たった一人で始めて、3年生になってようやく5人メンバーが揃って。 凄い執念だと思う。 よほど麻雀が好きでなければこんなこと、できるわけがない。 俺も麻雀に興味があって入部したが、もし麻雀部がなかったとしても自分一人で部を作ろうなどとは思わなかっただろう。 でも部長はそれをやったのだ。 どれほど大変だったのだろう。 どれほど寂しかったんだろう。 どれほど悲しいことがあったのだろう。 どれほど辛いことがあったのだろう。 きっと、俺なんかじゃ考えもつかないような日々だったと思う。 でなければ、あんな顔をするはずがない。 でも、部長はそんなことをおくびにも出さずに飄々として、気軽に接してくれる。 自分たちの練習だってあるだろうに俺みたいな初心者にも優しく教えてくれる。 部長がどれほどの思いをこの夏に賭けているかも知らず、それを俺は当たり前のように享受していた。 ようやく団体戦に出れることになったのに。 これが最初で最後の夏だというのに。 馬鹿か、俺は。 友人に羨ましいと言われてそれを内心誇っていた自分を殴ってやりたい。 部長に指導を受けている際に変な下心を抱いてたことが恥ずかしさで死にたくなる。 そして、何となく興味があったから、タイプの女の子もいるから、なんてくだらない理由で続けている自分に嫌悪感を覚える。 憤りの感情からか、アイスを持つ手に力が入った。 辞めるべきなのだろうか。 実力もなく、皆の足を引っ張るだけなのなら部を辞めてしまうのがいいのだろうか。 部長はこれが最後の夏なのだ。 咲が入部して、団体戦メンバーがそろった今は俺が居ても部にプラスになることはあまりないだろう できる限り、負担は減らすべきなんだとは思う。 一瞬そう考えたが、その考えを実行に移せそうにないかった。 下心もあったし、部長ほど強い思いを抱いて麻雀をやっているわけではないけれども、それでも麻雀は好きだ。 ようやく、楽しさがわかってきてのめりこみ始めてきた。 あの部で麻雀が手離す楽しみを手離したくない。 だから部は辞めたくない。 自分勝手な理由だと思う。 わがままな考えだとは思う。 だけど、言い訳するつもりはないが自分のそんな感情以上に強い想いがあった。 この感情は義憤と呼べばいいのだろうか。 話を聞きながら、部長の悲しそうな笑顔を見ながら憤りを感じながらも強く思った。 部長に、報われてほしい。 今まで苦しんできた分、報われてほしい。 勝ってほしい。 そう思ったのだ。 心から強く。 部長は頑張ってきたのだ。 たくさんたくさん頑張ってきたのだ。 あきらめずに頑張ってきたのだ。 だから報われなきゃだめだ。 辛いこともあったけど、最後の年には仲間とともに全国大会まで行くことができた。 せめて、そう……最低限そうならなければ絶対に駄目だ。 だから、そのための力になりたい。 部長の力になりたい。 部の力になりたい。 だから、辞めたくない。 部に残っていたい。 実力じゃみんなの力になれない。 だけど、その代りそれ以外のことなら力になれるはずだ。 掃除でも牌譜取りでも事務作業でもどんな小さな雑用でも。 そんなことなら、俺でもできる。 そして何より、部長の心から喜ぶ顔を見てみたくなった。 いつもの何か企んでるような笑いでもなく、さっきのような悲しそうな笑みでもなく。 心の底から喜んでいる姿が見たくなった。 幸せな感情に包まれて笑う姿が見たくなった。 そして部長の近くでその姿が見たい。 一緒に喜びを共有したい。 それをするには部を辞めてしまってはすることができない。 だから、辞められない。 ならばせめて、部のためにできることをしよう。 俺ができることを全力で。 心の中で決意を固める。 不思議だった。 恐らく俺がこれからやろうとしていることは傍から見ると非常につまらないことだ。 麻雀もろくに打たず、マネージャーもどきの仕事を自分から買って出ようとしている。 でも、不思議な高揚感があった。 麻雀で高い手を張った時のような胸の高鳴りがあった。 やってろう。 部長のために、部のために。 部長にとって最初で最後の夏、やれるだけのことをやってやる。 そして、絶対に……。 「……うしっ!」 小さく声を上げながら気合いを入れる。 そうと決まれば1分1秒が惜しい。 さっさと家に帰ってこの課題を済ませてしまおう。 まずは牌譜関連の雑務を一手に引き受けるところからスタートなのだ。 俺は手に残ったアイスを一気に口に含んだ。 あまりの冷たさにちょっともがくが無理矢理飲み込んだ。 部長は俺の姿にぽかんとして見ていたが、それに構わず口を開いた。 「部長、俺、頑張ります」 「……えっ?」 事情が呑み込めていないのか、部長らしからぬちょっと間の抜けた声が聞けた。 だがそれに構わず一気に宣言する。 もう止まらない。 言うだけ言ってしまおう。 「俺、麻雀の実力は大したことないし、皆の練習の相手はできないですけど、それ以外のところで皆が勝てるように協力します」 「牌譜取るの頑張って覚えます」 「学校向けの庶務仕事、俺でやれることなら全部やります」 「それ以外に細かい雑用があったら任せてください。その、できる限りのことはします」 部長は俺がまくしたてた言葉に最初は戸惑っていた。 少し気まずい沈黙が流れたが、部長はちょっと恐る恐ると言った感じで俺に尋ねた。 「その……いいの?」 「はい、だから」 何と言えばいいのだろうか。 何も思いつかない。 「だからその」 何かかっこいいことのひとつも言いたいけど何も思いつかない。 部長は俺の言葉を待っている。 結局、心の高揚感に押し出されるように思わず叫んだ。 「絶対、勝ちましょう!」 コンビニから出てきた人が何事かとこっちを見ている。 部長もびっくりした顔で俺のことを見ていた。 言ってから恥かしくなってきた。 顔が熱くなってくる。 部長の視線に耐えられない。 俺は慌ててアイスの某をゴミ箱に捨てて、部長に頭を下げた。 「俺、これから帰って牌譜取りの勉強します! 明日には絶対覚えてきますから! アイスご馳走様でした!」 そう言い残して、俺は部長の返事も聞かず、顔も見ないまま家に向かって駆け出した。 後から思い返しても、この日の出来事はちょっと恥ずかしくなる。 その日から、俺はひたすらに部のために働いた。 日々の牌譜取りから、掃除や買い物なんかの雑用は積極的に引き受けた。 偵察やら情報集めなんかにあちこち歩き回ったりもした。 庶務仕事なんかも引き受けたし、部長の負担を減らすように学生議会なんかの手伝いもした。 たった6人の部活だけど、やろうと思えばやれることはいくらでもあった。 他のメンバーは申し訳なさそうにしていたけど、無理矢理押し切る形で働いていた。 皆、いろいろ負い目を感じているようで、少し心が痛んだが、部のためだと自分の考えに首を振った。 「ここの所、京太郎は雑用ばっかりじゃ。ほとんどわしらと対局しとらんじゃろう? 牌譜はわしが取るけぇ、京太郎が入るといい」 そんな状況の中で、恐らく俺を一番気にしてくれたのは染谷先輩だろう。 今日も俺のためにこう言ってくれた。 「そうだよ京ちゃん、入りなよ。部長、牌譜なら私がとってもいいですよ?」 「そうだなー。たまには犬も可愛がってあげないとなー」 「確かに、ここの所須賀君とはあまり打てていないですね。後ろで見ててあげますよ?」 他のメンバーも一斉に乗ってくる。 勢い付いたその攻勢に一瞬ひるんでしまう。 どう言い返そうか、と考えた時部長が俺に少し苦い笑みを向けた。 ざわりと、胸が騒いだ。 「そうね、ごめんなさい。最近須賀君の対局数が減っていたわね……。焦ってるのかしら」 まずい。 多分、今俺が卓に入ると時間をかけて色々と教えてくれるだろう。 今まで打てなかった分、きっと教えてくれるだろう。 そういう仲間たちだ。 俺に気を使ってくれるのは嬉しいが、大会まで時間がない状況。 そんなことに時間を使っている場合ではないはずだ。 何より、部長のために頑張ると決意したくせに部長に気を遣わせている状況に思わず焦る。 「須賀君、入りなさい。牌譜はまこが取って……」 「いや、大丈夫です!」 その言葉を慌てて遮る。 一度前例を作ってしまうと今後もこういうことが起こってしまうかもしれない。 それはまずいのだ。 部長のために、部のために、今はそうなってはマズイ。 俺はまくしたてるように必死に口を開いた。 「大丈夫ですよ、ほら。大会はもうすぐなんですよ? 初心者に毛が生えた俺より有望株の女子組の練習するのは当たり前じゃないですか?」 「しかし……」 俺の言葉に染谷先輩は納得がいってなさそうだ。 部長だけじゃない、染谷先輩も本当にいい先輩だ。 俺のためにいろいろ気をかけてくれる。 「大会が終わって落ち着いたらゆっくり対局しましょうよ? とりあえず今はみんなの練習の方が優先ですって」 だけど、今だけはその言葉には従えない。 内心ごめんなさいと言いながら、俺は染谷先輩の言葉をやんわりと拒絶する。 染谷先輩は俺の発言にに反論しようとするが、それを止めるように続けた。 「そのかわり、夏が終わったら練習に付き合ってくださいよ。さっ、染谷先輩座って座って」 俺はそういいながら染谷先輩を半ば無理矢理席に座らせた。 そしてすぐに椅子を引いてきて部長と染谷先輩の間に座る。 「それに、こうやって人の打ち筋をいろいろ考えながら見るのも練習のうちですよね?」 これは染谷先輩に実際に言われた台詞。 俺が漫然と牌譜を取っているときに言われたことだった。 「まぁ、確かにそう言ったが……」 やっぱり自分の言ったことに対しては強く否定しにくいみたいだ。 俺はだめ押しとばかりに続ける。 「大丈夫ですって。以前言われた通り、自分だったらどうするとか考えながらちゃんと考えながら牌譜取るようにしますから」 「……わかった。だが、見てる上で疑問に思ったことがあったら遠慮なく聞くようにな?」 ようやく納得してくれたようだった。 ほっと胸を撫で下ろす。 他のメンバーも染谷先輩が納得してしまったので二の句が継げなくなってしまったようだ。 不承不承と言った顔で対局が始まった。 最初はなれなかった2人分の牌譜を取る行為もすっかり慣れた。 そうしているとふと気づいたことがあった。 考えてみれば部長の牌譜を付けるのはあまりなかったな、と。 たまたまかもしれないが、ちょっとした新鮮さを感じながら俺はペンを走らせた。 「ツモ。トイトイ三暗刻で2,000-4,000じゃな」 「あっちゃあ」 ラス前。 トップ目の染谷先輩がダメ押しの一撃をあがった。 親被りした部長が苦笑している。 それを見ながら、俺は状況を確認した。 染谷先輩は当然アガリトップだが、部長は跳満のツモが必要だった。 手元の紙を眺めて点数の差に間違いがないことを確認する。 そうした後、2人の配牌を眺めてみる。 染谷先輩は少々苦しい形。 役牌もなく、愚形ばかり。 そして部長の手牌がこうなっていた。 『久手牌』 3389m3567s13579p ドラ3m 形は少々苦しいがドラ対子。 上手くいけば跳満は見えそうだった。 これからどうなっていくのかを思案しながら、ペンを走らせる。 そして、7順目だった。 『久手牌』 334m356788s345p ツモ4s ドラ3m 強烈な引き。 頭はまだ確定していないがかなりの良型が残るツモだった。 牌譜係の立場としては表情や立ち振る舞いから手の内容を察知されないように ポーカーフェイスで居なけれならないが、思わず声が出そうになった。 だが、俺はそれ以上の衝撃を次のツモで感じることになった。 『久手牌』 334m356788s345p ツモ3m ドラ3m 強烈なドラ引き。 息を飲みそうになるのを必死でこらえた。 好形の3面張でドラ3。 高目3色。 俺は頭の中で点数差を考え、おぼろげな知識で結論を出した。 2-5萬ならダマでもツモリ跳満あるが、4萬では平和が付かず、跳満には届かない。 つまり即リーチの一手。 俺は部長もそう打つと思っていた。 だが、部長は口を開かず、静かに8索を河に投げた。 何故? 何故リーチをかけない? 理由が理解できなかった。 染谷先輩から直撃を狙っているのだろうか。 でも染谷先輩はもう半分オリ気味に打っている。 そう簡単に狙えるものではなさそうだ。 俺でもわかることだ、部長だってわかっているはず。 内心首をかしげながら牌譜を取り続け、変化が起こったのはその3巡後だった。 『久手牌』 3334m3456788s345p 東 ドラ3m 1枚切れの東。 俺は特に意識していなかった。 当然ツモ切りするだろうと思って、本来はマズいことなのだが東ツモ切りを牌譜に記した。 そんな俺の予想とは裏腹に、部長の1手は俺の想像を遥かに超える一手だった。 「リーチ」 『久手牌』 3334m345678s345p ドラ3m ツモ東 打4m 今日一日で1番の衝撃だった。 想定外の1打に思わず体が固まる。 そして、慌てて自分の先ほど書いた内容を消し、牌譜を修正した。 ただ、わからない。 タンヤオも平和も三色消える。 跳満には逆立ちしても届かない。 リーチしてしまった以上、染谷先輩は絶対に当たり牌を切らないだろう。 1枚切れの東だからと言って簡単に放り投げるような人じゃない。 不可解すぎた。 正直部長がおかしくなったのか、もしくは俺が見落としている手役があるのかとかそんなことを悩み始めた矢先だった。 時間としては本当に短い時間だっただろう。 牌が、ふわりと空を舞った。 くるくると回りながら落ちてくる牌を部長は軽くキャッチしてパシリと卓に叩きつけた。 「ツモッ!」 『久手牌』 333m345678s345p東 ドラ3m ツモ東 「立直一発ツモドラ3。裏ドラは見ずとも逆転ね」 部長の淀みない綺麗な発声が部室に響いた。 和が何か怒っている。 染谷先輩が苦笑している。 咲と優希はぽかんとしている。 そして俺も呆気にとられていた。 ありえない。 1発でツモることで跳満ツモを達成する。 しかも1枚切れの単騎で。 全てがありえなかった。 でも、部長がアガったのは事実だった。 たまたまだろう。 よくある、何となくこっちを選んでみた、とかそういうアレなのだろう。 まぐれだ。 ありえない。 頭では考えていた。 だが、それとは裏腹に心は強く高鳴っていた。 体が熱くなる。 変なたとえだが、小さいころに遊園地で見たヒーローショーで感じたような胸の高鳴り。 そう、すごく『格好いいもの』『眩しいもの』を見たかのような。 そんな気持ちだった。 「須賀君、見てた?」 動揺する俺にくるりと椅子ごと振り返り部長は笑った。 「は、い」 俺はかすれる声でそうやって返事をした。 そして部長は何も言わずとても楽しそうな笑みを浮かべて、俺にVサインをした。 その笑顔がとても眩しかった 純粋に綺麗だと、可愛いと思った。 とても口に出せることじゃないけれども。 そしてなんとなく思った。 確証なんて何もないけれども。 だけど不思議な確信があった。 ――この一手と部長のこの笑顔は ――きっと、一生忘れることはない。 そう、思った。 「やっぱり、そうだったんだ」 あの後、部活終了後、牌譜の整理を引き受けて皆には先に帰ってもらった。 咲たちにはいろいろ食い下がられたが、はんば無理矢理追い出す形で俺は1人部室に残っている。 もちろん、今日の分の牌譜の整理をやるというのはもともと予定していたことだった。 ただ、それ以上にやりたいことがった。 「部長は、勝負所で悪い待ちに取ってる」 俺の目の前には牌譜が大量に並んでいる。 それは部長の今までの闘牌の記録だった。 それを眺めると、逆転の一手の時、大物手の時、そんなときに部長はわざわざ悪い待ちに取っている。 両面待ちをシャンポン待ちに受ける。 役を打ち捨てて字牌の単騎に受ける。 3面張を壊して嵌張で受ける。 基本はごく普通の打ち筋だと思う。 デジタル、というのだろうか。 だからこそ、最後の最後で悪く受けるその異質さが際立っていた。 だが、それでも。 「部長は、勝ってる」 そう、どれほどの悪い待ちでも部長はアガっている。 先ほどのように引いたり、誰かが掴んだり。 かなりの確率でアガっているのだ。 たまたまとか、偶然と言ったそれを超えているだろう。 先ほどの光景を思い出す。 あの状況で東単騎を選び1発で狙ったように引き上がる。 そしてオーラスの大まくり。 周りの驚いた顔。 心臓が跳ねる。 脳を直接火にくべたかのように、熱くなってくる。 思わず拳を強く握る。 「すごい。部長は、本当に」 思わず、感嘆の声が漏れた。 なぜこんなことができるのだろう。 確率を超えた何かが部長にあるのだろうか。 「俺も……」 それがすごく眩しく感じた。 小さな子供がヒーローに憧れるかのような。 プロスポーツ選手のスーパープレイを見て心臓を高鳴らせるかのような。 そんな感情に俺は包まれてていた。 「俺も、こんな風に打ってみたい……」 だから俺がそう思うのも当たり前の帰結だった。 俺は部長の闘牌が記されている牌譜一式を手に持つと外に飛び出した。 まず箱の牌譜のコピーを取って家に持ち帰ろう。 部長がどんな時、どんな状況でアガっているのか。 もっと研究してみよう。 そうすれば俺にもできるかもしれない。 部長みたい麻雀が打てるかもしれない。 そう考えるだけで熱に浮かされたような昂揚感に俺は支配された。 ワクワク感で今夜は眠れるか怪しかった。 俺は大量の牌譜を抱えて、学校の近くにあるコンビニへ急いだ。 これからの楽しみに子供のように心を躍らせながら。
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3466.html
http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1377983742/ 久「そう。インターハイも終わって夏休みも残り少ないけど後身育成の為にね」 和「合同と言うことはまた以前の3校ですか?」 久「いいえ。今度は別の学校よ」 まこ「ほう。いったい何処とやるんじゃ?」 久「なんとあの白糸台! そしてもう1校、阿知賀女子が来るわ」 咲「白糸台!? それってお姉ちゃんの」 久「ええ。話を持ち掛けてくれたのは阿知賀の赤土先生なんだけど、じゃあ一緒にどうかって白糸台に連絡を取ったら先方も是非にって」 咲「わぁ、じゃあ久し振りにお姉ちゃんに会えるんですね」 優希「咲ちゃん嬉しそうだじぇ!」 和「よかったですね。咲さん」 咲「うん! ありがとう、優希ちゃん和ちゃん」 咲「あ、でも……合同合宿って事は京ちゃんは……」チラッ 京太郎「あ、はは……まぁ俺に気にせずみんなで行ってきてくれよ」 久「ああ、今回は須賀君にも参加してもらうから」 久以外「えっ!?」 久「言ったでしょう? 後身育成の為の合宿だって」 久「須賀君も立派な部員なんだから。もっと強くなってもらわないとね」 和「けど、私達は構いませんが先方は大丈夫なんでしょうか」 久「その点もだーいじょーうぶ。バッチリ許可を取ってあるから」 久「雑用を任されるって言ったら二つ返事でOKしてくれたわ」 京太郎「あはは、はぁ……雑用するのは確定なんですね」 久「そりゃ唯一の男手なんですもの。頼りにしてるわよ男の子」 京太郎「はぁ……わっかりました! 雑用でもなんでもやりますから是非連れて行ってください!」ペッコリン 久「よし! 良い返事ね」 咲「よかったね京ちゃん!」 和「頑張りましょうね須賀君」ニコ 京太郎「ああ! ありがとな咲、和」 優希「これで少しは成長してくれれば京太郎も練習相手になるんだじぇ! 今のままじゃよわよわ過ぎてただのカモだじぇ」 和「優希、そんな言い方をしてはダメですよ」 京太郎「はん! 見てろよ今にお前より強くなってやるからな!」 優希「ほほう! このゆーき様より強くとは大きく出たもんだじゃ」 まこ「くく、まぁ練習相手云々は置いておくとして合宿の間お前さんをシゴけるのかと思うとなかなか楽しそうじゃの」ククク 京太郎「う、お、お手柔らかにお願いします」 久「はいはい意気込みもいいけどこっち注目」パンパン 久「合宿は3日後。はぐれても行けないからいったん学校に集まること。良いわね咲?」 咲「な、なんでそこで私に振るんですかぁ?」 咲以外(そりゃ……) 京太郎「じゃあ当日の朝は俺が迎えに行ってやるよ」 咲「学校までなら迷わないよ!」プンプン まこ「はいはいじゃれないじゃれない」 咲「じゃれてません!///」 久「と、まぁそう言うわけだから明日から当日まで部活はお休みね準備とかもあるでしょうし。いいわね」 久以外「はい」 久「じゃあこれで今日の部活は終了。解散!」 全員「お疲れ様でした!」 ――――― ――― ― 1年生が帰った後 まこ「のう久、この合宿ってのは」 久「相変わらず聡いわね。そうよ」 久「あの子達のおかげで夢の全国制覇を達成できたこれはそのちょっとしたお礼よ」 まこ「また回りくどい事を、素直に慰安旅行だと言えばよかろうが」 久「嫌よそんなの、なんか……恥ずかしいじゃない///」 久「それに合宿って言うのも別に嘘ってわけじゃないわ。ただそういう言い方も出来るってだけよ」 まこ「はいはい。お前さんがそう言うならそういう事にしとくか」 久「あ、なにその言い方、可愛くない」 まこ「はいはい。さーてわしも帰るとするか」 久「早!? あ、ちょっと待って」 まこ「ほれ、はようせんか」スタスタ 久「言いながら置いていかないでよ! ちょっとまこー!」タタタ ガチャ、バタン!、カチャン 電車に揺られバスに揺られやって来ました合宿場。 京太郎「へぇ、なかなか良いとこですね。落ち着いた感じで」 まこ「なんじゃノスタルジックな感じじゃの」 優希「そんなことより早く行こうじぇ!」 京太郎「そうだな。…………ん?」 優希に促がされながら歩き出そうとするとあるものが目に留まる。 その名も自動販売機。 京太郎「ふむ……」 逡巡、後の閃き。 京太郎「すまん。ちょっと待っててくれ」 咲「京ちゃん?」 咲の声を半ば無視しつつ、俺は自販機に硬貨を投入。 ボタンを押して商品を取り出す。うえぇ熱い。 和「飲み物ですか? それなら私、水筒にアイスティーを入れてきましたけど」 日傘を差した和がそういって少し手荷物を振ってみせる。 優希「うわぁしかもホットコーヒー。京太郎、暑さでとうとう頭までやらっれちゃったじぇ」 京太郎「ああ、これはこれで良いんだよ。その内わかる。和のは後の楽しみにさせてもらうよ」 和「はぁ……」 要領を得ないと言った感じだ。でしょうねぇ。 久「あなた達、しゃべってると置いてくわよ」 1年生「はーい」 旅館前 その玄関先でごろ巻いてるあの集団は、 久「弘世さん」 菫「! ああ、竹井部長か。先週の電話以来だな」 振り返ったのは白糸台の部長である弘世先輩。 照「咲、久し振り」 弘世先輩と並んで咲のお姉さんである照さんが振り返る。 咲「うん。直に会うのは久し振りだねお姉ちゃん」 咲は照さんに会えて本当に嬉しそうだ。 照「咲、少し見ない間にまた大きくなって」 咲「やだお姉ちゃん、親戚のおばさんみたい」クスクス 2人もいろいろあったが今となってはそれも過去。気兼ねなく話せている。 美しい姉妹愛だ。 誠子「お久し振りです!」ペッコリン 尭深「お久し振りです……」ペコ 亦野先輩と渋谷先輩が挨拶とともに会釈をしてくるのでこちらもそれに応える。 そして残りの1人は…… 淡「サキー! ユッキー! ノドカー! 久し振りー!!」 さーてうるさいのが来たぞぉ。 周囲を見て回っていたんであろう一際やかましいのが向こうから突っ走ってくる。 淡「わーい!」ダキッ 咲「わわ、もう淡ちゃんってば」 和「お久し振りです淡さん」 優希「久し振りだじぇ!」 淡「うん! 2人とも久し振り!」 女の子が4人でニャンニャンしている。 微笑ましい。 淡「お?」 再会の挨拶もそこそこに、俺に気付いた淡がこちらに近付いてくる。 淡「よ!」 京太郎「おう」 かっっる…… 淡「ふーん、ほーう……」ジロジロ なんすか? 淡「やーい荷物持ちー」ケラケラ 京太郎「うっせ、力仕事は男の仕事なんだからいいんだよ」 淡「”男の”じゃないでしょ、”キョータローの”でしょ」ケラケラ 淡「それより私喉渇いた。なんか買ってきて」 京太郎「ああ、そんなことを言い出すんじゃないかと思って用意してあるよ。ほれ」 そう言って俺は先程買った缶コーヒーを差し出す。 淡「うえ、コーヒー……しかもホットで無糖。これやだ! 苦いもん」 京太郎「そうだと思ったから買った」 淡「むぅ~!」ブンッ 京太郎「おわっ!? おま、投げるなよあぶねぇな!」 こいつ、中身の入ったスチール缶を全力投球しやがった。 相変わらず無茶苦茶な奴だな。 菫「おい淡、遊んでるなら置いてくぞ」 部長と話をしていた弘世先輩が淡を呼び付ける。 どうやら話は終わったらしい。 って言うかこのやり取りさっき見たな。 淡「あ、待ってよスミレー!」 先立っていた白糸台のメンバーに合流していく淡の後姿を見ながら俺は地面に転がるスチール缶を拾い上げる。 照「じゃあまた後で」 淡「また後でね! サキ!」 咲「うん、また後で」フリフリ 淡「……」 淡「キョータローのアホ! べー!」 あっかんべーをした後そのまま照さん達に付いて建物の中へ入っていく。 まったく、やれやれだぜ。 久「じゃあ私達も部屋に荷物を置きに行きましょうか」 和「はい」 部長に促がされて歩みを進める清澄の面々。 咲「見てたよ京ちゃん。ダメだよああいうの」 京太郎「いやいや咲さん。あれは俺らなりのコミュニケーションでしてね」 和「どこの地域限定のコミュニケーションですか」 京太郎「き、今日の和は突っ込み厳しいね」 prrrrrrr 咲「ケータイ?」 優希「誰だじぇ?」 京太郎「すまん俺だ。ん、っと……」 ズボンの後ポケットに突っ込んでいて携帯電話を取り出そうとするが荷物が邪魔で上手く取れない。 咲「片方持つよ」 京太郎「あ、すまん」 咲に荷物を分担してもらい、俺は取り出した携帯電話の液晶を眺める。そこには『赤土先生』の文字。 嫌な予感がする。 京太郎「はいこちら宇宙大統領。イタズラ電話の場合は銀河的に抹殺……」 晴絵『もしもし須賀君? 私、赤土だけど』 京太郎「あ、はい。須賀です。はい」 もっと乗っかってきてほしかった。 晴絵『悪いねー急に。今どこ?』 京太郎「今ですか? ちょうど玄関前ですけど」 晴絵『お、タイミング良いねぇ。じゃあ裏の駐車場までヨロ』 京太郎「え?」 晴絵『そんじゃね、待ってるから! よろしくー!』ガチャッ、ツー…ツー… そして唐突に切れた。 台風みたいな人だ。 咲「京ちゃん?」 京太郎「デートに誘われましたー」 咲「え!? デートって、ええっ!!??」 久「モテること」 咲「デートって、え!? 京ちゃん私聞いてい、聞いてないよ!?」 和「落ち着いてください咲さん。あれはどう見ても用事を押し付けられただけです」 咲「あ、え、そ、そうなの? 京ちゃん」 京太郎「まぁ、はい。そうなんだけどね」 まこ「で、誰からだったんじゃ?」 京太郎「阿知賀の赤土先生が。なんか駐車場まで来てほしいって」 まこ「駐車場か。地下駐車場じゃなくてよかったの」 京太郎「地下?」 まこ「いや気にせんでいい」 久「駐車場ってことは車までってことね。とするとなにかの荷物運びかしら」 京太郎「おそらく」 和「どうします? 私達も行きますか?」 京太郎「いや特になにも言ってなかったしたぶん俺だけで良いと思う。みんなは先に荷物降ろしてきてくれよ」 咲「じゃあ京ちゃんの荷物は私が運んでおこうか?」 京太郎「いいよいいよ、別に。玄関ホールのどっか適当に置いといてくれれば」 咲「でも……」 久「咲。ここは須賀君を立ててあげましょう。きっと須賀君の1ミリ程のプライドが許さないのよ」 事実その通りだけどそういわれるとなんか悲しい。 咲「わかりました。じゃあ京ちゃん、用事が済んだらお昼、一緒に食べようね」 京太郎「おう!」 女衆が引き上げていくのを見送った後、俺は1人建物の裏手に回る。 コンクリで綺麗に舗装された駐車場にはほとんど車が停まっていない。 俺は視界を巡らせ目当ての人物を探す。いた。 晴絵「やぁ、悪いね。わざわざ」 京太郎「どうも、お久し振りです」 晴絵「はい、お久し振り。で、早速で悪いんだけど」 そう言って先生は車の荷台を開ける。 晴絵「これ、運んでもらって良いかな?」 なんだこりゃ、いや日本人なら誰でも知ってるようなものだけどなんでこれが今ここに? 京太郎「なんですかこれは?」 晴絵「なにって、炬燵だけど」 京太郎「それは把握してます(直伝)」 晴絵「悪いんだけどそれ、上まで運んでってくれない」 京太郎「はぁ、まぁ良いですけど」 なんで炬燵。真夏に炬燵? いや待て、いるだろ。知り合いに1人。真夏でもこれを必要とする人が。 京太郎「これってやっぱり宥さんの?」 晴絵「そーそー、大正解」 っしゃーっ!! なんかやる気出て来た。 京太郎「OK! 任してください」 晴絵「君ならそう言ってくれると思ってた! よ! 男前!」 京太郎「よしてくださいよ! おだてられると調子に乗るタイプなんで」 晴絵(だからおだててるんだけどな~) 京太郎「それじゃあ、よっと」 掛け声で勢いをつけて一気に持ち上げる。あ、あんまり重くない。 京太郎「これなら炬燵布団も一緒に持っていけそうですね。どこですか?」 晴絵「へぇ、素直に驚いた。結構力持ちなんだ」 京太郎「そりゃあ、日々のあれこれの賜物ですよ」 晴絵「じゃあ、ホントに悪いんだけどよろしくね」 京太郎「はい。任されました」 同行していた赤土先生と途中で別れ、宥さんと玄さんの宿泊する部屋に向かう。 京太郎「え、っと確かこっちだよな」 ?「京太郎?」 お、この声は…… 京太郎「鷺森先輩、トゥーッスッ!!(舎弟風)」 京太郎「お久し振りッス!! お変わりないッスか!?」 灼「うん、久し振り。……その荷物、宥さんの?」 京太郎「うッス!!」 灼「ならそこを真っ直ぐ行ったところだよ」 京太郎「アザッリャッスッ!!」 灼「じゃあ私、ハルちゃんの所に行くから。がんばって」フリフリ 京太郎「トゥーッスッ!!(舎弟風)」 去っていく鷺森先輩が見えなくなってから下げていた頭を上げる。 京太郎「さて、行こうか」 コンコン <ハーイ 京太郎「失礼しま~す」ソロ~リ ノックの返事を聞いてゆっくり戸を開く。 宥「あ、京太郎君」 京太郎「どうもどうも、お久し振りです宥さん。本日もご機嫌麗しゅう」 宥「うん。久し振り」ニコニコ そろそろ久し振りという単語がゲシュタルト崩壊してきそうだ。 京太郎「1人ですか?」 部屋で1人座っていた宥さんが立ち上がり出迎えてくれるが、我がベスト・オブ・マイフレンズの姿は見えない。 宥「うん。玄ちゃんは穏乃ちゃんや憧ちゃんと一緒に、和ちゃん達に会いに行ったよ」 京太郎「そうなんですか」 そりゃ残念。 宥「それ持ってきてくれたんだ。炬燵」 京太郎「あ、はい。赤土先生に頼まれて」 宥「そうなんだ。ごめんね? 自分で持って行くって言ったんだけど……」 申し訳なさそうにシュンとしてしまう宥さん。 なぜかこっちまで申し訳ない気持ちになってしまう。 京太郎「おっと、待ってください。俺はお礼を言われこそすれ、謝られるような事をしたつもりはないですよ?」 ちょっとキザったらしかったかな。 俺の言葉にしばしキョトンとした後、口元を押さえてクスクスと笑い出す宥さん。 宥「ふふ、そうだね。ありがとう京太郎君」 ああ、やっぱり女性の笑顔は良いね。明日への活力になる。 それが美人ならなおさらね。 京太郎「じゃあちゃっちゃと組み立てちゃいましょうか」 宥「ええ!? そんな悪いよ」 京太郎「いえ実はこう見えて僕、炬燵の組み立てが趣味でして1日に1回は炬燵組まないと気がすまないんですよ」 宥「ええ~」 京太郎「ほらほら、ちゃっちゃとやりますよ。ちゃっちゃっちゃっと」 宥「わわわ、私も手伝うよ~」 そんなこんなで炬燵完成。 部屋の隅の邪魔にならない場所に設置。そこはまさに宥さんだけの聖域。 宥「よかったら京太郎君もどうぞ」ニコッ 京太郎「あ、これはご丁寧にどうも」ペコ ゴソゴソ あ~ 宥「あったかいね~」ニコニコ …………………………………………あっつ。 やっべぇ、これやっべぇ。 宥「~♪」ホコホコ 京太郎「……」ダラダラ つい流れでご一緒することになってしまった。 いや、宥さんとご一緒するのはやぶさかではないのだがこれはちょっと。 京太郎「……」チラッ 宥「?……」ニコ 微笑まれてしまった。 普段の俺なら「暑い!もうお家帰う!」といって跳び出しているところだが、が! そんな俺を見たら宥さんはどう思うよ? 涙目ぞ? 故意に宥さんを悲しませようと思えるほど俺はまだこの世界に絶望しちゃいないが、はてどうしたものか。 尭深「……」 な ん か 1 人 増 え て る ! 尭深「……」ジョー ティ○ァールですか、なかなか良いポットを使ってますね。 尭深「あの……お茶、どうぞ」スス 宥「あ、どうも~」 尭深「須賀君も」 京太郎「あ、すみません。ありがとうございます」 宥「……」ズズズ 宥「あったか~い」 平然と飲んだ。そしてめっちゃ幸せそうな顔してる。可愛い。 尭深「……」フーフー、ズズズ 湯のみ両手で持ってめっちゃフーフーしてから飲んでる。可愛い。 京太郎「……」ズズズ …………………………………………あっつ。 その後、なんかすごい3人でお茶飲んだり積み木やったり趣味の園芸(録画)を見たり、 治安警察特殊機動隊(ユーバーファルコマンド)との激闘だとか、ラインアーク攻防だとか、第6聖女がうんぬんかんぬんだとか、 俺と宥さんと渋谷先輩の三角関係からなるラブロマンス(願望)だとか、 もうアカデミー賞とかバンバン取っちゃう位の大スペクタクルが展開されたが割愛。 まぁこれで夏休みの絵日記の宿題に書くネタが出来たからよしとするか。そんな宿題ないけど。 で、今は3校全員がホールに集まっている。 咲「京ちゃん、大丈夫だった?」 京太郎「ん? ああ、なんか炬燵運ばされたけどただそれだけ。平気ヘーキ」 優希「この万年発情期の犬はすぐ他所の女の子と仲良くおしゃべりし出すからな。きちんと見張ってないとダメだじぇ」 京太郎「しゃべるのもダメなのかよ。大体ここ俺以外みんな女の子じゃん」 まぁ1人、年季の入った女の子がいらっしゃるけど。 京太郎「逆に俺が1人で壁に向かってブツブツしゃべってたらどう思うよう? 嫌だろ? 同じ部活の仲間的に」 優希「あー……」 咲「ち、ちょっとイヤだね……」 和「咲さんよく考えてください。だいぶ嫌です」 清澄カルテットで相変わらず中身のない雑談に耽っていたが、それも自然に収まりそれに合わせてか場がシンと静まる。 久「コホン、この度は3校合同合宿にお集まり頂き誠にありがとうございます」 穏乃「こう言うのって先生がアイサツとかするもんじゃないんですか?」ヒソッ 晴絵「良いの良いの。先生は生徒達の自主性を重んじる派だから」ヒソ 憧(面倒だっただけじゃないでしょうね……) 久「移動の疲れもあることと思いますので今日は自由行動ということで、よろしいでしょうか」 和「聞き覚えのある挨拶ですね」ヒソヒソ まこ「考えるの面倒じゃったんじゃろ」ヒソッ 久「それと、今回はうちの須賀君が参加することになりましたので。よろしくお願いします」 部長の言葉に自然と全員の視線が俺に集まる。 俺は一歩前へ。ぐるっとみんなの顔を見回 淡「……」ムスー なんかすげー目してる奴がいるんだけど。 穏乃・玄「……」ニコニコ、フリフリ にこやかに手を振ってもらえた。天使や。 淡「ふん……」プイ 京太郎「えっと、この度は俺の参加を認めて頂いてありがとうございます」 京太郎「えー麻雀とかいろいろ不慣れ、不勉強なことも多いでですがご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします!」ペッコリン <ワー、パチパチパチパチ 久「まぁ本人もこう言ってる事ですので、皆さんもビシビシこき使ってあげて下さい」 京太郎「任せてください! やりますよ俺は」 久「お、やる気満々ね男の子」 京太郎「もちろんですよ」 京太郎「なんか前回、長野でやった4校合同合宿で俺だけハブられましたけれど」 京太郎「それでも俺は部長に着いて行くという忠誠心の高さと心の雄大さここぞとばかりにアピールしていくって」 京太郎「そういう気概なんで!」 白糸台「……」ジトー 阿知賀「……」ジトー 久「ちょっ!? 須賀君あなたなに言ってるのよ! 違、みんな違うの! 仕方なかったの!」 久「だって来るのはみんな女生徒なのよ! 今回のが特例なの! やめて、私の悪者にするかのようなそんな目で私を見ないで!」 部長孤立! 経済制裁。 京太郎「……」 久「あなたも黙ってないでなにかフォローしてよ!」 京太郎「え? あー、大丈夫です! 俺、部長のこと尊敬してます!」 久「……」 久「なにが!? あなた連れて来てあげた恩を忘れてるんじゃないでしょうね」 京太郎「や、まぁそうなんですけど。けど言う時は言わないと」 久「良い度胸ね。須賀君は後で反省室に来るように」 え? ここそんなのあんの? まこ「はいはい。そこら辺にしときんさい。お前さんらが漫才始めたら日が暮れるわ」 それを言われたら反論の余地がない。 まこ「それじゃあ、堅苦しい挨拶はこの辺にして解散ということで」 全員「はい!」 染谷先輩が締めてこの場は解散となった。 咲「京ちゃん、さっきの約束」 京太郎「おう。昼飯のな、先に部屋に荷物置いてくるから待っててくれ」 宥さん達の部屋から直でこの場に来た為、俺はまだ自分の部屋すら確認していない。 部屋割りは、清澄、白糸台が5人部屋。阿知賀がティーチャー赤土を含む6人の大部屋らしい。 かく言う俺は1人部屋。まぁ個室って言うのも気楽でいいよね。 誰に気兼ねすることもない自由さと解放感、これは同室の人間がいては味わえない個室ならではですよね。 自己暗示で孤独感を誤魔化していたら俺の泊まる部屋に着いた。 まぁまぁゆーても外観が立派でしたし、きっと内装もなかなか趣のある…… …………………………………………せっま。 べぇ、まじやっべぇ。 これたたみ二畳くらいしかないですやん。これ。 布団敷いたらもうほとんどスペースないですやん。 部屋って言うか倉庫じゃん。 俺は部屋から顔を出して表を確認する。 『犬の間』 っと書かれていた。嫌なネーミングだ。 京太郎「いやいやいや、俺庶民だし? あんま広くても落ち着かないし? むしろこの閉塞感が心地良いし?」 狭い所が落ち着くのってなんでだろうねあれ? 自分を叱咤しつつ、この部屋唯一の特徴と言っても良い窓へと歩み寄る。 京太郎「ほら、窓を開ければこんな自然豊かな景色が……」ガラララ …………。 ガララ、ピシャ 京太郎「崖じゃねぇか」 もうこの時点で先行き不安なんだけど。 ガラッ 淡「……」 京太郎「? ……淡?」 今を生きる俺は部屋の間取りと言う5分前の絶望を過去へと追いやり、飯でも食って気持ちを落ち着けようと部屋を出た。 出た先には壁に凭れ掛かってる淡。 京太郎「どうした? 女子の部屋は向こうだろ? それとも俺になんか用?」 淡「あの、えっと……」 京太郎「ん?」 淡「さっきは、ごめん……」 京太郎「なにが?」 淡「だから、自分でもさっきの態度は酷かったかなって……だから……」 泣きそうな顔で、長く伸びた上質な金糸のような髪を弄っている。 京太郎「ちょっとごめん」ガラッ 断りを入れて一旦部屋に戻る。 淡「あ、え? なんで……!?」 戻ろうとするのを遮られた。 淡「やだ、怒らないで。謝るから! 嫌いになっちゃヤダ!」 京太郎「怒ってないから、ならないから。ちょっとだけ、な? すぐ戻るから」ポンポン 淡「ホントぅ?」 京太郎「ホントホント」 淡「絶対だからね?」 京太郎「おう!」 再び自室(仮)。 俺はわき目も振らずに窓へと駆け寄り盛大に開け放す。 うむ! 改めて見ても崖だ。 俺は肺いっぱいに空気を吸い込み、そして一気に解放した。 京太郎「可愛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」 カワイイイイイイイ イイイイ イイ … おい、なんだあれあんな可愛い生き物おるんかい? ガラ 京太郎「悪い。待たせたな」 淡「///」 京太郎「なにモジモジしてんの? なんかキモいよ」 淡「っ…………もう! キョータローのアホ!」アワー! 京太郎「そーそーお前はそういう風に不遜な感じでいろよ。そっちのがお前らしい」ナデナデ 京太郎「まぁたまにはさっきみたいなしおらしいのも悪くないけどな」 淡「あ、う…………うん///」アワワ… 京太郎「よし! じゃあ飯でも食いに行くか」 淡「うん! えへへ」ダキ 京太郎「おわ!? おおい、いきなりしがみ付いてくるなよ」 さっきと打って変わって上機嫌な淡が腕に抱きついて来る。 淡「いーんだもーん!」アワワ! 京太郎「ったく、現金な奴」 まぁそういうとこ嫌いじゃないけどね。 淡「そだ、ついでにちょっとジュース買ってきて」 京太郎「おい、あんま調子に乗るなよ」 咲「……」 京太郎「買出しですか?」 久「そうなのよ。実はここ、食事は自炊なんだけどどうも備蓄が空みたいなのよ」 京太郎「なるほど。そこで俺の出番ってわけですね」 京太郎「優希、お前なに食べたい?」 優希「タコス!」 京太郎「でしょうねぇ。言うと思ったよ」 京太郎「他のみんなは?」 和「そうですね。なにか軽いものでお願いします」 京太郎「あいよ。じゃあ、そうだなぁ……」 京太郎「今から行って帰ってくるとそんなたいした物作れないし簡単に出来るサンドイッチかなにかにするか」フンフム まこ「すまんの。お前さんにばっかり雑用を押し付けて」 京太郎「気にしないでくださいよ。これはこれで結構楽しいんですよ」 まこ「ありがとうな。……っで、それはそうとさっきから気になっとったんじゃが」 久「ああ、うん。実は私も気になることが1つ」 京太郎「なんですか?」 「なんで、京太郎(須賀君)の腕に大星さんがしがみ付いてるの(んじゃ)?」 淡「えへへ、キョ~タロ~」アワスリスリ 優希「やっぱり京太郎は天然ジゴロだじぇ」 和「麻雀もこのくらい熱心に取り組んでくれればいいんですが……」 京太郎(ボロクソ言うなこいつら) 咲「……」 京太郎「うわ、無言の咲めっちゃコワッ!?」 優和ま久「……」ジトー、シラー 咲「……」 ああ、ing系で俺の信用とかなんかいろいろが低下している…… 照「話は聞かせてもらった」バーン!! な ん か ま た や や こ し い の が 来 た ! 菫「なんというか、その……すまない」 お付の人も来ちゃったよ。しかも第一声が謝罪って…… 苦労なされてるんですね。 久「え、えーっと……宮永さん?」 照「買出しに行くんでしょう?」 久「ええ、まぁ」 照「私も行く!!」ドーン!! 清澄「……」チラッ 菫「うう、すまない……」 京太郎「さ、作戦タイム!」 照「了承」 照さん(と淡)をいったん放置し、弘世先輩を加えた6人で顔を突き合わせて作戦を練る。 京太郎「どういうことですか弘世先輩!?」ヒソ 菫「わからん! 買出しの件で竹井部長や鷺森部長、赤土先生と相談せねばと言ったら突然自分も行くと言い出して」ヒソヒソ 菫「というわけで須賀、申し訳ないがよろしく頼む」ヒソヒソ ええ~また俺ぇ~? 京太郎「あの、そういう面倒ごと俺に丸投げするのやめて頂けません?」ヒソヒソ 菫「あれを制御出来るのお前と、妹さんだけだ。だからお前に頼らざるを得ない」ヒソヒソ まぁもう一方がこれだからな。 照←あれ 咲←これ 咲(今、酷い扱いを受けた気がする) 久「良いじゃない。人手は多い方がいいんだし」 さすが部長。他人を使うことには余念がない。 京太郎「そもそも、危険ですよ。知らない土地で宮永の血族を無闇に歩き回らせるのは」 咲「え? それ私も含んでるの?」 菫「う、うむ。それもそうか……」 京太郎「ダメですよ、きちんと管理しないと。この2人迷子の頻度が多いですから」 京太郎「ちょっと常軌を逸してるんで、その辺管理しないとやばいですよ」 照「まだ?」 しびれを切らした照さんが俺達が囲んでいた円陣を覗き込んでくる。 「……」 淡「~♪」 誰も何も答えない。あ、これ俺が交渉する流れだ。 京太郎「え~っとなんで照さんは自分から買出しを申し出たんですか?」 照「それは、えっと……」ワタワタ ジェスチャーでなにかを必死に伝えようとしている。 ふ~む。なるほどなるほど、なるほど~ 京太郎「お菓子なら買いませんよ」 照「…………え?」テルガーン! そんなこの世の終わりみたいな顔されても。 なんか久々に会ったら嗜虐心を擽られるなこの人。 照「どうしても?」 京太郎「どうしても」 照「なんでいじわるするの?」 京太郎「なんででしょうねぇ?」 黒目の縁の辺りがフルフルしてる。可愛い。 咲「だ、大丈夫だよお姉ちゃん。私がお菓子持ってきたからそれ一緒に食べよう? ね?」ナデナデ 照「うん……」テルテル 京太郎「咲、そうやってお前が甘やかすからいつまで経っても照さんがポンコツなんだぞ」 咲「ううぅ……」 菫(この男、順当に宮永の血統に火をくべているな) 京太郎「なんつって」 照咲「……ふぇ?」 京太郎「お菓子ですね? もちろん買って来ますよ」 照「本当?」 京太郎「本当本当」 咲「よかったね! お姉ちゃん」 照「うん!」 ふぅ、好きな子に意地悪しちゃう系の小学生の心境が少し垣間見えたな。 しかしよかった。これでめでたしめでたしだな、うんうん。 咲「あ、そうだ京ちゃん」 京太郎「うん?」 咲「そう言えば、さ……」 京太郎「お、おう……」 なんだこの、得体の知れない悪寒は…… 咲「な ん で 淡 ち ゃ ん と ベ タ ベ タ し て た の ?」ゴッ 京太郎「え?」 咲「京ちゃんのぉ…………」 咲「バカァァァァァァァァァァーーーーーーーーー!!!!!」ドゴォッ!! 京太郎「どぅごっふぉっ!?」 なんか……魔貫光殺砲みたいなエフェクトのボディブローが腹部に突き刺さった。 お前、ずっと気をためてたんか…… 優希「見え透いたオチだじぇ」 和「予想外という程のものではないですね」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/2271.html
http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1359722728/ 20xx年2月1日 ―清澄高校― 麻雀部部室 京太郎 「失礼しまーす」 久「あら、須賀くんお久しぶりね」 京太郎「久先輩お久しぶりです、今日はどうして部室に?」 久「須賀くんから部長って呼ばれないのも新鮮ねぇ」 久「今日は現部長まこのお願いでみっちり須賀くんを鍛えるわよ!!」 京太郎「だからまこ先輩居ないんですね……ところで他の3人は?」 久「他の3人も今日は来ないわよ」 京太郎「じゃあ俺一人で先輩の相手をするんですか……」 久「不満そうねぇ?」 京太郎「まさか、今日の指導よろしくお願いします」 久「うんうん、いい心構えね」 久「さぁ、ビシバシ行くから覚悟しなさい!」 久(それにしてもどのくらい時間稼げばいいのかしら?聞いとけばよかったわね) ―清澄高校の帰り道にある商店街― 優希「いくじぇいくじぇいくじぇ~」ドタドタ 和「ゆーき!!そんなに走ったらコケますよ」 まこ「相変わらず元気じゃのう」 咲「み、みんな待ってよー」 咲「今日は皆で京ちゃんの誕生日プレゼントを買いに来たんだから」 優希「ごめんだじぇ咲ちゃん」 和「それにしても明日が須賀君の誕生日だったとは、初耳です」 咲「あはは……京ちゃんあんまり自分の誕生日覚えてないから」 優希「しっかし犬も幸せものだじぇ、部活の皆からプレゼントが貰えるんだから」 和「まぁせっかくの誕生日ですから」 咲「みんなはもう誕生日プレゼントは決めた?」 優希「バッチリだじぇ」 和「同い年の男性に贈り物をするのは初めてですけど一応の目処はつけて来ました」 まこ「よし、じゃあ店を回ろうかの」 -タコス屋- 和「な、なんでタコス屋なんですか……」 タコスのおじちゃん(56)「おう!優希ちゃん待ってたぜ!」ビシッ 優希「私は今日この日のためにおじちゃんにあるお願いをしてたんだじぇ」 咲「お願い?」 おじちゃん「ふふふ、嬢ちゃんそれはな………これだよ!」ピラッ 優希「タコス無料券10枚綴り!!」 優希「私がもらって嬉しいプレゼント、第1位だじぇ!!」 おじちゃん「この店だけでしか使えない特別仕様よ!優希ちゃんにだけの限定サービスだぜ」 優希「これを受け取ったらあの犬も涙を流して喜ぶはずだじぇ」 咲「あはは……優希ちゃんらしいというかなんというか」 咲「でもとってもいい誕生日プレゼントだと思うよ!」 優希「ここのタコスは私の中でも1、2を争う名店だじぇ」 おじちゃん「優希ちゃん、なんて嬉しいこと言ってくれるんだ!おじちゃん涙が出てくるよ」 優希「へへ///おじちゃんにはお世話になってるから…」 和「それでは次のお店に向かいますか?」 優希「そうするじぇ、おじちゃ~んありがとー」フリフリ おじちゃん「おーう優希ちゃんこれからもご贔屓にな~」フリフリ まこ「さて、じゃあ次はどこに向かうかのぅ」 和「たしか雑貨屋さんがこの近くにあったと思います」 咲「なら次は雑貨屋さんだね」 -雑貨屋- 咲「和ちゃんは誕生日プレゼントはどんなものにしたの?」 和「私は須賀君の趣味はよくわからないので実用的なものにしようと思ってます」 和「とりあえずフォトフレームかボールペンでしょうか」 まこ「ふむ、ボールペンならこのエトペンがモデルになったやつなんかどうじゃ」 和「あっ、それ自分用に欲しいですね」 咲「和ちゃんなんのために雑貨屋にきたの…」 優希「んっ……あれは………」トトト 咲「京ちゃんにはこのパーカーのボールペンなんかどうかな?」 和「そうですね……値段もそれなりですしこれにしましょうか」 優希「咲ちゃん咲ちゃん」ポンポン 咲「どうしたの優希ちゃ………」 優希「ドヤァ……………」ハナメガネ 咲「プッ………ってあわわわ」グラグラ まこ「おっと、こんなところでコケんでくれよ」ガシッ 咲「あわわ、染谷先輩ありがとうございます……」 和「ゆーき!!」 優希「咲ちゃんごめーんだじぇ」 咲「あはは………優希ちゃん今日は勘弁しないよ!」ゴッ 優希「ダッシュでにげるじぇ~」 まこ「まったく、何やっとるんじゃあの二人は」 和「丁度いいですし、このボールペンの精算してきますね」 まこ「おう、行ってこい………ってそのエトペンボールペンも買うんじゃな」 和「………///」 -本屋- まこ「次は本屋か……ここで買うのは?」 咲「はい!私です」 和「本……ですか?須賀君はあまり読書家には見えませんけど」 優希「犬はバカだからなぁ」 咲「読書用の本じゃなくて、麻雀教本を買ってあげようと思って」 咲「最近京ちゃんも頑張って練習してるし」 和「麻雀教本だと……………このコーナーですか」 『振り込まない麻雀の鉄則:著 大沼秋一郎』 『都内のカツ丼名店集vol1:著 藤田靖子』 『牌のお姉さんが教える-ここから覚える麻雀!-:著 瑞原はやり』 『中級者必携 手配の育て方全集:著 三尋木咏』 『年下の男の子を落とす100の方法:著 小鍛治健夜』 和「なんというか……ここに置いていてはいけないものがいくつかあるような……」 まこ「藤田プロのこれはグルメ雑誌かなにかかのぅ」 和「それにものすごく役に立ちそうにない雑誌が………どれとは言いませんけど」 優希「それで咲ちゃん、この中のどれにするんだじぇ?」 和「初心者向けは瑞原プロですが、最近の須賀君向けとなると……」 まこ「京太郎は振り込んでのトビが多いからのう、大沼プロの本がオススメじゃな」 優希「手配の育て方も興味があるな、日本の打点王だじょ」 咲「いえ、実はどの本を買うかはもう決まってるんです」 まこ「ほう、それはそれは」 咲「京ちゃんに麻雀の本を買うならこれしかないと思うんです!」 『ア◯ギ ~闇に降り立った天才~』 まこ「え…」 和「え…」 優希「え…」 咲「これにします!」 優希「と、とにかくこれで後は染谷先輩だけだじぇ」 まこ「あー、実はのぅ」 まこ「わしはもう用意してあるんじゃ、店の馴染みの客がいい商品を持ち込んでくれてのぅ」 和「そうなんですか?」 まこ「たしか京太郎は麻雀牌を持っておらんかったろう」 咲「家で一緒に打つ人が居ないからですね」 まこ「麻雀部員だったら自前の麻雀牌くらい持っておいたほうがいいじゃろう?」 まこ「もう2ヶ月で一年生も先輩になって新入部員が入ってくるしのぅ」 和「なるほど、確かに後輩の男子部員などに教えるときに麻雀牌を持ってると便利ですよね」 優希「机さえあればどこでも出来るじぇ」 まこ「うむ、じゃからあとは今時間稼ぎをしてくれとる先輩にメールを送らんと」 まこ「よし、送信」ピピッ 和「この後はどうするんですか?」 まこ「明日の準備はもうだいたい済んどるしここで解散じゃのう」 優希「よーし、明日は犬をびっくりさせてやるじぇ」 和「それではゆーき、染谷先輩、咲さんまた明日」フリフリ 優希「咲ちゃーんまた明日だじぇ~」フリフリ まこ「寄り道せずにかえりんさい」フリフリ 咲「はい!お疲れ様でした」 咲「………………」 咲「みんな帰ったよね?……アレ取りに行こうっと」 ―清澄高校― 麻雀部部室 PC「ツモ リーチ風牌混一色ドラ1 跳満です」ネトマッ 久「ちょっと見ない間に随分成長したわねー」 京太郎「そりゃまぁ、そろそろ麻雀を始めてから1年になりますしね」 京太郎「それに、IH終わってから部活の皆にこれでもかと鍛えられましたから」 京太郎「今年の春から入ってくる新入生にも教えないといけませんし」 久「点数計算も出来なかった須賀くんが………時間は過ぎるのはほんと早いわね」 京太郎「先輩そんなこと言ってるとふけて」 久「」グリグリ 京太郎「ちょ、先輩痛いです!頭グリグリするのヤメテ!」 ピピッ 久「っと、私の携帯だわ」チラッ 京太郎「あー、もういい時間ですし切り上げますか?」 久「そうね…ん。そうしましょうか、私の用事も終わったし」 京太郎「誰か待っていたんですか?」 久「そういうわけじゃないんだけどね…。じゃ、須賀くん今日はお疲れ様」 京太郎「いえ、久先輩こそご指導ありがとうございました」ペコリ 久「部屋の鍵は私が返しておくから」 京太郎「はい、お疲れ様です」 久「須賀くん、ちょっと待って」 京太郎「………どうしたんですか?」 久「…………ううん。なんでもないわ」 久「頑張ってね」 京太郎「…?はい、お先に失礼します」ガチャ 久「みんな青春してるわねぇ…」 久「今日は美穂子のところにでも転がり込もうかしら?」 ―清澄高校の帰り道にある商店街― 咲(お店に受け取りに行ったし、もう明日の準備は万端かな……) 咲(京ちゃん喜んでくれるといいなぁ) 咲(去年はあんまりプレゼントを渡せるような関係じゃなかったし…) 咲(もしかしたらプレゼント渡した後あんなことやこんなことも……) 咲(京太郎「咲、誕生日プレゼントありがとうな。俺からの返事はこれだ!」ゼンラッ とか) 咲「……………えへへ///」フラフラ 京太郎「………あの道の真ん中でフラフラ歩いてんの咲だよな…」 京太郎「……………」 京太郎「いや、スルーは無いな。声かけとくか」 咲(もしかしたら明日でいくとこまでいっちゃうかも!) 咲(あ……結婚式とかどうすればよかったんだっけ?) 咲(こないだ読んだゼ◯シィに書いてあったような……) 京太郎「おい!大丈夫かお姫様?」 咲「ひょわぁ!!」 京太郎「おわっ、咲暴れるなって。俺だ、俺!」 咲「きょ…京ちゃん!どどどどうしてここに?」 京太郎「いや、俺としてはお前がここにいることのほうが…」 咲「わ、私はみんなと本屋に行って、それで……」 京太郎「……ああ、新しい本を買ってたのか」 咲「は、はわっ。そ、そうだよ!新しい文庫が出てたから…」 京太郎「はは、相変わらず咲は文学少女だなぁ」ナデナデ 咲「ちょ、京ちゃん///道の真ん中だと恥ずかしいよ………」 京太郎「悪い悪い、ちょうどいい位置に頭があったもんだからさ」 京太郎「もうあたりも暗いし家まで送ってくよ」 咲「あ、ありがとう。京ちゃん///」 咲「ねぇ京ちゃん」 京太郎「どした?」 咲「明日、部活あるの覚えてる?」 京太郎「お前は俺をなんだと思ってるんだよ…土曜で学校は休みだけど午後から部活だろ」 咲「うん、午後3時からだからね!時間を守ってね!」 京太郎「にしても随分中途半端な時間だな…昼からじゃダメなのか?」 咲「う、うん。みんなが揃うのが午後3時らしいから。それに合わせて来て」 京太郎「よし、分かった……話してたら、もう咲の家か」 咲「京ちゃん送ってくれてありがとう、また明日学校でね」フリフリ 京太郎「おう!また明日な!」 ガチャ 京太郎「…………」 京太郎「さて、帰りますかね……」 ―須賀家― 京太郎「母さん、明日部活で学校行くから昼過ぎたくらいに家出るからよろしく」 京太郎母「あら?そうなの。…あ、明日は夕飯までには帰って来なさい。それまでは好きにしていいから」 京太郎「…?ああ、そのつもりだけど」 京太郎母「ちゃんと分かってるのかしら……」 京太郎「分かってるって、夕飯には間に合うようにするから」 京太郎母「それなら良し!」 京太郎「ったく、じゃあ俺もう寝るから」 京太郎母「はーい、おやすみ~」 カピー「キュー」 京太郎「カピーもおやすみ、また明日な」 カピー「キュー」スリスリ ―翌日の午後3時前―清澄高校麻雀部部室前― 京太郎「さて、時間は……約束通りちょうど3時前だな」 京太郎「しっかし、旧校舎にも通い慣れたなぁ」 京太郎「相変わらず『麻雀部』の札はそのまんまだし」 京太郎「なんだかんだ1年間近く頑張ってきたんだ……」 京太郎「俺も少しはあいつらに近づけたかな」 京太郎「…………」 京太郎「よしっ、今日も気合入れて行くか!」 京太郎「おはようございまーす」ガチャ 咲「京ちゃん!!!!」 京太郎「!?」 咲染優和「誕生日おめでとう!!」 京太郎「え…………あっ!」 優希「きょうたろーう!!」ダキッ 京太郎「うわっ、おい優希!急に飛びついてくるなって。倒れる倒れる!」 優希「私からの誕生日プレゼントを受けとれーい!」 京太郎「これは…おっちゃんの店のタコス無料券!あの店こんなことしてたのか!?」 優希「おじちゃんが作ってくれたんだじぇ、特別仕様だじょ」 京太郎「あそこのタコスはウマイからな、ありがとう優希」 京太郎「でも流石に退いてくれ、そろそろ重い……」 優希「おもっ……!このバカ犬!」バシバシ 京太郎「いてぇ、いや本気で痛いから止せ!」 和「それでは次は私から、どうぞ須賀君」スッ 京太郎「これは、今開けてもいいか?」 和「ええ、むしろここで開けてもらわないと困ります…ふふっ」 ガサガサッ 京太郎「これは、ボールペンか!高そうだな…」 和「ごめんなさい、須賀君の好みがよくわからなかったので実用的なものを、と」 京太郎「いや、嬉しいよ。大切に使う」 まこ「わしからはこれじゃ」 京太郎「これは麻雀牌と、マットですね…牌が黒い!かっこいいですねこれ!」 まこ「そうじゃろう、そうじゃろう。そう喜ばれると買うてきた甲斐があったわ」 京太郎「なんというか厨二心をくすぐられます、ありがとうございます染谷先輩」 まこ「これを使って来年度からの新入生の指導も頑張ってくれるかの」 京太郎「男なら黒!ってことですか?頑張ります!」 咲「京ちゃん!私からはこの本だよ!」 『ア◯ギ ~闇に降り立った天才~』 京太郎「ア◯ギさんの本じゃねーか!あの人本も出してたんだな」 咲「この前の秋の大会で京ちゃんあの人とすごく仲良くなってたから」 京太郎「さすが幼馴染、よく見てるな」 京太郎「ありがとう咲、うれしいよ」ナデナデ 咲「えへへ……///」 優希「むー………」 まこ「はいはい、全員プレゼントも渡し終わったしケーキを切り分けるかのぅ」 京太郎「ケーキもあるんですか!?なんというか申し訳ないです」 和「このケーキは元部長からのプレゼントだそうですよ」 京太郎「久先輩が俺に…あとでありがとうって連絡しとこう」 優希「ケーキ食べたら麻雀を打つじぇ!今日の総合最下位は部室に残って片づけな!」 京太郎「おう!乗ってやるよ。今日の俺はひと味違うぜ!!」 優希「ツモ!!おやっぱね!」 京太郎「ぐわぁぁぁぁぁ!」 和「須賀君、その牌です!平和タンヤオドラ1は5200」 京太郎「ぬわぁああ」 咲「カン!カン!カン!……ツモ!嶺上開花三槓子、親だから4000オール!」 京太郎「ファ!?」 咲「一本場だよ、京ちゃん」ニッコリ 咲「カン!カン!……ツモ!嶺上開花対々和タンヤオ、6000オールから6100!」ゴッ 京太郎「」マッシロ 咲「麻雀って楽しいよね!京ちゃん!」 京太郎「」ポロッ 和「ロンです、タンヤオドラ1は2600の3200」 優希「ゴミ手和了ったじぇ、1000、500」 京太郎「」 … ……… …………… 和「それで結局最下位ですか……」 まこ「飛ばなくなっただけでも成長かのぅ…」 京太郎「」プスプス 咲「京ちゃん大丈夫?」 京太郎「」ムクリ 京太郎「くっそー、今日は負けたけど今度は負けねぇ」 京太郎「週明けの部活は覚悟しとけよ!タコス娘!!」 優希「また返り討ちにしてやるじぇ!じゃあまた今度な~バカ犬!」バタン 和「ゆーき待ちなさい!須賀君今日は片付けおねがいしますね」ペコリ 京太郎「おう、負けは負けだしな。そんじゃまた週明けに」 まこ「まったく慌ただしいのう、京太郎あとは頼んだ」 京太郎「おまかせあれ!!」 ガチャ 咲「京ちゃんほんとに一人で大丈夫?」 京太郎「大丈夫だって、去年の雑用生活で体力とかは十分にあるしな」 京太郎「だから先に帰ってくれても大丈夫だぞ?」 咲「………ううん、ここで待ってる」 京太郎「そっか、分かった」サッサッ 咲「ねぇ京ちゃん」 咲「掃除が終わったら大切な話、いい?」 京太郎「それで…話ってなんなんだ?」 咲「その前に私からもう一つの誕生日プレゼントをあげるね」 京太郎「これは…箱か?」 咲「うん、開けてみて」パカッ 京太郎「何が入ってるんだ?……指輪?」 咲「京ちゃんの誕生石のアメジストの指輪、どうかな?」 京太郎「そりゃ嬉しいけど、これは……」 咲「私がさ、京ちゃんに誘われて麻雀部に来てからもうすぐ1年」 咲「辛いことや大変なこともあったけど、和ちゃんとか部活の友達も出来たし。全国の決勝でもお姉ちゃんと話せて」 咲「私、本当に嬉しかったんだ」 咲「京ちゃんがずっと支えてくれたおかげだよ」 京太郎「俺は大したことはしてないって」 京太郎「咲がそこまで頑張れたのは、咲の努力と麻雀の神様が咲を見守ってたからだ」 咲「ううん、それだけじゃないよ」 咲「私の中で家族に並んで大切なものがあったから、ずっと心のなかで一緒だった人がいたから」 咲「だから、私は京ちゃんが………」 京太郎「待った!」 咲「す……ふぇ!?」 京太郎「そっから先を言う前に俺も伝えたいことがあるんだ」 京太郎「…………いいか?」 咲「…………うん」 京太郎「最初お前を誘ったときは俺はただのカモだと思って部室まで連れてきたんだ」 京太郎「その時の俺は咲の家族の問題とか、麻雀に対する思いなんて何も考えちゃいなかった」 京太郎「俺はおもちが好きだったからさ、和に近づくために咲を利用したと言っても過言じゃないと思う」 咲「うん、知ってるよ。だって京ちゃん分かりやすかったから…」 京太郎「でもさ、地区大会で優勝して。全国大会でも強豪校と鎬を削りながら戦ってる咲の姿を見て」 京太郎「あらためて思ったんだ」 京太郎「咲、俺は麻雀部に入る前の教室で小説を読んでた文学少女な咲が好きだ」 京太郎「俺が強引にレディースランチに誘った時のムッとした顔の咲も好きだ」 京太郎「そしてなにより、楽しそうに麻雀を打ってる咲が大好きだ!」 京太郎「だから俺と付き合ってくれ、咲!」 咲「はい………よろこんで!」 京太郎「そうだ、この指輪は咲がつけてくれないか」 咲「えっ!でもこの指輪は京ちゃんにあげたものだよ」 京太郎「俺のものなんだから好きにしてもいいだろ。ほら左手出して」 咲「この指輪は私が京ちゃんに着けてあげたかったのに」ボソッ 京太郎「それではお姫様、お手を拝借」 咲「わっ、強引だよ!京ちゃん」 京太郎「薬指は未来のために取っておくとして、中指かな?」 咲「でも、この指輪京ちゃん用につくったものだからブカブカだよ」 京太郎「いいんだよ、明日一緒にお店に行って咲用に打ち直してもらうから」 咲「もう、京ちゃんはほんとに強引なんだから」 京太郎「そういうとこも含めて好きなってくれたんだろ… 目を閉じてくれるか?」 咲「ん………///」 京太郎「ふっ……ん…」 咲「ぷはっ、……京ちゃん///」 京太郎「はは、顔真っ赤だな咲。そうだ今日は俺の家に飯食いに来てくれよ」 京太郎「母さんや父さんに報告させてくれ、自慢の嫁さんをやっと連れてきたよって」 咲「嫁さん///……まだ嫁さん違います!」 咲「恋人です!!」 カン!
https://w.atwiki.jp/tmagic_teu/pages/20.html
田中 太郎 本人画像 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 スペック 名前/HN : 田中 太郎 学年 : 4年 学部 : コンピュータサイエンス学部 URL : http //www10.atwiki.jp/s_jen/ 出身地 : アメリカ合衆国 在住 : ミラクル八王子タウン 役職 : ムードメーカー 使用ソフト : Adobe Photoshop 6.0 趣味 : 早弁 特技 : じゃんけん コメント : CGほとんどやったことありませんがよろしく
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/4466.html
―麻雀部部室― 京太郎「……」 部室には、俺といつもの5人。 6人の目の前にあるものは。 布団がポツンと1つだけ。 京太郎「あの、古塚部長」 梢「なんでしょうか」 京太郎「今から俺たちは何をするんですか」 梢「そんなこと決まっているではないですか」 梢「あの1つの布団に」 京太郎「布団に?」 梢「6人で寝ます」 京太郎(俺もかよ) 梢「全員全裸で」 京太郎(ファッ!?) 京太郎「ちょっと部長!何言ってるんですか?」 梢「……実は私、とあるサイトを運営しているんです」 京太郎「とあるサイト?」 梢「『裸麻雀大好き!』というサイトなんですが」 なんだそのサイト!? 梢「昨日そこの掲示板にとある書き込みが有りました」 梢「その内容がこれです」 ふむ、どれどれ。 投稿者:はっちゃんですよー 6人全員が全裸の状態で1つの布団に入れば何かいいことがあるらしいですよー 信じるか信じないかは自由ですけどねー 投稿者:1st ↑の話だけど、本当らしいよこの話。 やってみた人の話も聞いたことがあるしね 京太郎「何だこれ」 いや、おかしいだろう。 色々と。SOAだよ。 梢「この書き込みにある内容を、今からやります」 京太郎「え」 梢「布団も人数もしっかり準備しました」 京太郎「いやいや、おかしいでしょ」 京太郎「ほかの皆さんもそう思いますよね!」 京太郎「椿野先輩!」 美幸「……」 京太郎「依藤先輩っ!」 澄子「……」 京太郎「友香、莉子!」 友香莉子「……」 梢「その4人には既に承諾を得ています」 梢「安心してください」 京太郎「いや、安心って言ってもね……」 梢「あなたに拒否権はありませんよ」 梢「これも麻雀部の為です」 京太郎「……」 京太郎(全員全裸になってしまった……) 京太郎(嬉しい反面、恥ずかしすぎる……) 梢「さあ、みんな準備はいいですか」 梢「では、布団に入っていってください」 古塚部長がそう言った途端、俺以外の5人は勢いよく布団の中へ。 いや、すごい異様な光景だ。 5人の美少女がたった一枚の布団に群がっている。 重なり合う肌と肌。 漏れる妖艶な吐息。 京太郎「……」 仕方ない、覚悟を決めるか。 俺は5人がいる布団の中へ入っていった 京太郎「……」 俺は今5人の女性とともに布団に入っている。 今は夏、俺もみんなも汗かきまくりです。 ふと、左手を動かすと。 美幸「あんっ……」 あ、胸だ。椿野先輩の。 次は左足を動かしてみる。 澄子「あっ……」 これは依藤先輩だ。 次は右手を……。 友香「うぅ……」 友香か。 最後は右足を。 莉子「ひゃっ……」 最後は莉子か。 そして目の前には古塚先輩の顔。 気のせいか少し紅潮してる。 梢「須賀くん……どうですかぁ……」 誰だこれ。うちの部長はこんな人じゃないぞ。 梢「さあ、私にも触れてください……」 ああ、もうどうにでもなれ。 俺は薄れてく意識の中、そんなことを考えた。 カン!
https://w.atwiki.jp/miyanagake/pages/27.html
1/3 158 照にあすなろ抱きされて耳元で囁かれる京太郎 159 照の誕生日京太郎独占 181 照の誕生日京太郎独占権プレゼント 永水編、宮守編ときたら次はきっと白糸台編……。 ちなみに今度のインタビューのテロップでは須賀照(予定)。 今日は咲の許可を得て京ちゃん独占の日。 忘れもしない。私と京ちゃんが初めてあった日のこと……。 あれは咲と和解して、咲が彼氏を連れてくると言った日だった。 『須賀京太郎です。 その、宮永咲さんとお付き合いをさせてもらっています』 『……そう。 京太郎くん、君が咲にふさわしいかしっかり見させてもらう』 『は、はい! あとこのゴディバのチョコを挨拶代わりに……』 『京ちゃん。結婚して』 『はいィ!?』 確かに『ハイ』って言ったのを覚えている。うん、言った。 ……冗談は置いておく。うん、冗談。 彼は私たちが出来なかった咲の心の隙間を埋めてくれた。 咲と家族になることによって、咲が求めているものを埋めてくれた。 咲から離れていた私に、何か言う資格なんてなかった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 2/3 「お義姉さん?」 京ちゃんは卑怯だ。 京ちゃんは咲が声をかけて欲しい時に声をかけてくれる。 お父さんが酔って弱っている時に一緒に酔ってあげる。 こうして私が声をかけて欲しいと思ってるときにも、的確に声をかけるんだから。 「なんでもない」 「なんでもなくないです。 ほら、仏頂面やめて」 むにゅ、と私の頬をつまんで横に伸ばす。 京ちゃん、既婚者がやることじゃないよ? 妹の旦那にそんなことされたら興奮しちゃうよ。 「京ちゃん。私を呼ぶときは照でいい。 『おねえさん』は嫌。それが誕生日プレゼントでいい」 「はぁ……。それでいいならそうします。 というかお義姉……、照さんの誕生日なのに咲のやつどこに行ったんだ」 何を隠そう咲との取引で今日は京ちゃんを独占する日なのだ。 咲が京ちゃんと一緒にいると安心するのがよく分かる。 彼は人を安心させる雰囲気を持っている。麻雀しか知らなかった私にも、咲のついででもいい、こうして人の優しさを教えてくれた。 私はただ、誰かに側にいて欲しかった。 一番いて欲しいときに、父親がいなかったから、父親を求めたんだと思う。 でも今日は『お父さん役』を求めてるわけじゃない。 「照さん?」 後ろから抱きしめる。『あすなろ抱き』と言うらしい。 この格好で耳元で囁くとイチコロだって尭深が言ってた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 3/3 ……あれ、なんて囁けばいいんだっけ。 いいや、私の思いをそのまま言葉にしよう。 「京ちゃんお菓子」 「ひいぃゃぁぁぁぁ!?」 京ちゃんがすごい勢いで暴れる。くすぐったかったのかな。 確かにこれはイチコロだ。京ちゃんは耳元が弱いんだ。 「照さん、何を……。 まぁいいです。お菓子ですね」 「うん。帰ってきたら膝枕して」 「はいはい」 うむ、満足。 今日はこのまま一日中甘えよう。 営業スマイルだって疲れるんだから、家でくらいこうしていたっていいはず。 ……あれ、そう言えば私が借りてる家ってどこだっけ? カン
https://w.atwiki.jp/singing/pages/373.html
比較 https //egg.5ch.net/test/read.cgi/streaming/1620009643/869-870 【発声】倫太郎>オタユキ=ノスタルジー ノスタルジー 低音はしっかり鳴らせているし、脱力もレベルは高い 中音域も共鳴と脱力は申し分ない 高音域はhiB付近でプル気味になるのは欠点。個人的にはこのあえてプルする歌い方が、この歌い手の歌唱スタイルに合ってるように感じたが、歌唱で言ったら減点になる 倫太郎 低中音域の響きは良く脱力も問題なし ヴィンテージ・モディファイ(最高音hiD#)でhi域前半の後半を連発してるが、ブリッジング含め非常に安定している 一方でなんにもない(最高音hiG)でhi域後半の高音を連発。こちらもヘッドがブリッジング含め上手く、響きも脱力も問題なし。プルもこの高さ(hiF~hiG)なのにプル感がなくヘッドで綺麗に出せていると思う CRAZYを聴けばわかるように中音域の完成度も強い オタユキ 低音域の強さは2人に負ける。オタユキは低音処理はウィスパーでやることが多く実声で発声することがあまりない hiAまでの中音域が強い。響きもかなり優秀で脱力も上手い 高音域も、hiB以降はほぼファルセットでしか出ない。この音域が強い倫太郎に負ける 低音 ノスタルジー≧倫太郎>オタユキ 中音 倫太郎≧オタユキ=ノスタルジー 高音 倫太郎>オタユキ≧ノスタルジー 【音感】倫太郎=オタユキ≧ノスタルジー ノスタルジー レゾンデイトル・カレイドスコウプでピッチミスがそれなりに見られるが、さすがにこれは難曲すぎるので多少は多めに見る 東京は夜のピッチは良い エンヴィーベイビーはブリッジングでピッチミスが見られる 3人中ではもっともピッチミスが気になる 倫太郎 ピッチミスはたまにあるが、基本的にピッチは良い 特にヴィンテージ・モディファイはアップテンポなかなりの難曲だがピッチミスは少ない 他も外すことはたまにあるくらいで基本は原曲に忠実 オタユキ うろ覚えかアレンジか不明だがたまにピッチミスはある、しかし基本は安定している 【リズム感】ノスタルジー≧倫太郎=オタユキ ノスタルジー レゾンデイトル・カレイドスコウプの早口アップテンポでも頑張ってキープ出来ているし、東京は夜のグルーヴ回しや、1 04~の音ハメやキープ力などは評価できる ジンクスのリズム感も評価できる 倫太郎 まずヴィンテージ・モディファイ、なんにもないは結構リズム刻みにくい曲だが、しっかり音ハメできておりキープ力は抜群 グルーヴも遊びを入れつつもしっかり作れている オタユキ リズムのずらし方とタメ方がかなり上手い。そのためグルーヴ作りという面では優秀だが、「猫」などのポップスでタメをやりすぎてグルーヴとは無関係にもたつく箇所があるため、かえってキープ評価は微妙だと思った グルーヴ ノスタルジー≧オタユキ=倫太郎 キープ ノスタルジー≧倫太郎≧オタユキ 【総合】倫太郎>オタユキ=ノスタルジー 倫太郎 B追加 ノスタルジー C+追加 参考 オタユキ 魔法の絨毯 https //youtu.be/_77XZKLj1e4 猫 https //youtu.be/YuuY9U3Q5Xg Laughter https //youtu.be/PV3av_jap0M ノスタルジー 東京は夜 https //youtu.be/qYPUQdVisuo レゾンデイトル・カレイドスコウプ https //youtu.be/ZTeJJfBraW8 ジンクス https //youtu.be/jb9f0mUJS48 エンヴィーベイビー https //youtu.be/FcmRyw0zTf8 倫太郎 ヴィンテージ・モディファイ 歌ってみた http //nico.ms/sm36041670 なんにもない 歌ってみた http //nico.ms/sm36994758 CRAZY 歌ってみた http //nico.ms/sm36994687