約 1,225,105 件
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/671.html
前へ 「つーか、高等部の卒業式なんか見て、楽しいの?わからんわ」 「だって、あの伝説の生徒会メンバーも、これで見納めになっちゃうんだよ。最後の勇姿を目に焼き付けたいと思うのは、当然じゃない?」 見て、とみずきちゃんが指さした在校生の席。 1番前の列を陣取っているのは、さっきの中島さんや鈴木さんたち。 「あそこに座っている皆さんと、これから入場してくる3年生。このメンバーがね、我が校始まって以来の伝説の生徒会って言われてるんだよ」 「てか鈴木さんって人、赤いリボンじゃん。中等部なら、後ろに行かなきゃだめなんじゃない?」 「いいの、最前列は現生徒会メンバーが座るっていうのが慣習だから。 見て、遥ちゃん。一番端っこ。切れ長の目のセミロングの人。あの人が、高等部1年生の有原さん。 文芸部なんだけど、手がける作品がもう、毎回素晴らしいの」 ムホホホ、とおよそお金持ちの家の子とは思えない笑いを漏らすみずきちゃん。・・・まあ、エロい本ってことだろうな。 「その隣で、誰かが落としたしおりを拾ってあげてるのが須藤さん。ああやって、いつも回りを見てるしっかりした方。おまけに、明るくてとても優しいの。 ママ、って呼んでる人もいるみたい。私もいつか呼んでみたいなあ。ママ・・・」 「勝手に呼びゃあいいじゃん」 「やーだ、恥ずかしいもん!」 バシッと私の背中を叩くみずきちゃん。・・・痛い。なぜテンションがあがるんだ、そこで。 「で、次が中島さんに鈴木さん。それから、あの目力の強い人。2つ結びにしてるのが、萩原さん。賢そうなお顔だちでしょう?ものすごく頭がいいんだって」 「例えば?」 「まあ、噂なんだけど・・・初等部の時に暇つぶしで受けた大学受験の模試で、全国トップになったとか」 「おっ、すげー」 「図書館の本はもう全部読んじゃったから、今は広辞苑をあ行から読んでるとか・・・」 「それは単なるアホだな」 でも、今話を聞いた中では一番面白そうな人みたいだ。 それにあの目つき。私と同じ、戦闘民族の予感がする。一戦交えてみたい気がしなくもない。 「あとは・・・あれ、岡井さんがいない」 「おかい?」 「そう。中等部の3年生なんだけどね。あ・・・来た来た。見て」 後ろ側の扉を開けて入ってきたのは、赤いリボンの制服の人。ずいぶん小柄なようだ。 小走りで戻ってきたその人は、さっきの天才さんの横の椅子にちょこんと腰を下ろした。 「あの人が、お嬢・・・岡井さん。今は生徒会補佐なんだけど、来期から書記に就任する事が決まっているんだって」 「へー・・・」 「あ、今日はネクタイなんだ。岡井さんはいつもリボンなのに。卒業式だから、カッチリしたかったのかな?でもネクタイ姿もいいな。ムフ」 「・・・なんでそんなこと知ってんの。引くわぁ」 その岡井さんという人は、座った途端、隣の天才さんにちょっかいを出されているみたいだ。 腕をつつかれて、もぞもぞと体を動かしている。 特に意味もなく、それをぼんやり眺めていたら、ふいに岡井さんが顔を上げた。 「あっ」 思わず、声をあげる。 背が小さいから、自分みたいな子供っぽい人を想像していたんだけれど、目鼻立ちのくっきりした、大人っぽい顔立ちだった。 そして、こんなに場所が離れているっていうのに、岡井さんは私の声に反応したかのように、こっちを見た。 なぜか、目がそらせない。間違いなく、今、私たちは目が合っている。 深い深い、こげ茶色の瞳。泣いてるわけでもないのに、キラキラ潤んでいる。昔、お母さんに見せてもらった、特別な日にしかつけない宝石を思い出す。 心臓が痛い。 いや、違うかも。痛いっていうか、飛び出しそうなぐらいにドクドクと早く動いている。 それがなぜか悔しくて、泣きそうなほど苦しくなって、私は思わず岡井さんを睨みつけてしまった。 それで気まずくなって、視線を外してくれればいいと思った。 なのに、私のガン付けなんてどうでもないことみたいに、岡井さんはにっこりと笑った。 「うっ・・・」 言葉を失う。 体がよろけたのか、みずきちゃんのおっぱいに頭がぶつかった。 「おぶっ。なんだよう、遥ちゃん」 それでも、まだ岡井さんは、優しく目を細めて、私を見ていた。 耐えられない。 先に目を逸らしたのは、私のほうだった。 「・・・みずきちゃん」 もともとハスキーな自分の声が、更に乾いているのを感じた。 「んー?何?」 パシャパシャとカメラを在校生席に向けながら、生返事気味にみずきちゃんが返事をくれる。 「岡井さんって、どんな人」 もう岡井さんは、私の方は見ていない。式のしおりを見ながら、萩原さんと楽しそうに喋っている。 なのに、私はまた、岡井さんから目が離せなくなっていた。 理由なんて、全然わからない。絶世の美人なわけでも、逆に面白い顔をしてるわけでもないのに、岡井さんがくるくると表情を変えるのを、一瞬でも見逃したくないと思ってしまう。 こんな気持ちになったのは、初めてのことだった。 「んー・・・」 そんな私の様子に気づいているのかいないのか、みずきちゃんはカメラを下げて、淡々と喋り出した。 「岡井さんね。・・・フルネームだと、岡井千聖さん」 「ちさと・・・いいね、似合う名前だ」 「お顔が整っているし、仕草の1つ1つに品があるでしょう。実際、おうちも裕福で、学校の近くにある大きなお屋敷に住んでいるらしいの。 でも、わかりづらいところに建っているみたいで、どこにお家があるのかわからないんだけど・・・」 私も3時間ぐらいかけて探してみたんだけどね、なんて恐ろしい事を淡々と言う。 「みずきちゃんちだって、でっかいじゃん」 「うちなんて、比較にならないよ。なんか、御父様がね、大きな会社の重役みたい。」 「なんて会社?」 自分でも、何でこんなに必死に、あの人の情報を集めているんだかよくわからない。 クラスの友達の親の職業だって、別に興味ないのに、まだ話したこともない上級生のことが気になってしかたないなんて。 「わかんない。何か、あんまり千聖お嬢様の情報って外に出ないの。 妹の明日菜お嬢様が私と同学年なんだけど、クラスが違うからよく知らないんだよね。お取り巻きさんも多いし」 「ふーん。・・・てか、何その呼び方。お嬢様とか」 「みんなそう呼んでるよ。初等部の子も知ってるんじゃないかな。遥ちゃん、お友達とそういう話しないの?」 「だって、興味なかったし」 みずきちゃんの言うとおり、たしかに、友達はみんな中等部や高等部の人たちの噂話が好きだ。 誰がカッコイイとか、可愛いとか、そんなんよく言ってる。興味ないから、ポケモンの攻略サイト見たりして流し聞きしてたけど。 大体、そんなことよりも、私は家に帰ってからの弟とのおやつ争奪戦とか、テレビのチャンネル争いの方が重要だったから。・・・よく、仲間はずれにされないもんだ。まあ、されたらされたでそれは別にいいかと思うけど。 「でも、よかったね。遥ちゃんも、千聖お嬢様に興味持ったのなら、クラスの子達とも盛り上がるんじゃない?」 「違う。私のはみんなのそういうのとは違うよ。そうじゃなくて・・・」 のんびりした感じのみずきちゃんの言葉が、なぜか癇に障って、私はちょっとおっきい声で否定した。 近くにいた先生が、ジロッと睨んでくる。 「あ、だから・・・いや、ごめん」 「ふふ」 でも、みずきちゃんは何も言わずに、またカメラを構え出した。 みずきちゃんのこういうとこ、敵わないなあって思う。 私と一緒にバカやってくれるけど、やっぱ3個も上のお姉ちゃんなのを思い知らされるっていうか。 みずきちゃんとの会話が途切れ、また私は無意識に岡井さんを見ていた。 なんなんだろう、これ。自分の考えてることがわからないって、すごく怖い。吸い寄せられるみたいに、岡井さんを目で追うのをやめられない。 岡井さんは相変わらず、萩原さんとお喋りをしていた。 話すとき、じっと人の顔を見るタイプらしい。あの綺麗な瞳で、あんな至近距離で。なんだか萩原さんがうらやましい。 実際、萩原さんは嬉しいみたいで、一人で座っている時はムスッとしてつまんなそうだったくせに、今はほっぺをほころばせて優しい顔になっている。 私がもし、話しかけたら・・・あんな風に見つめてくれるのかな。 笑わせたら、あの三日月型の目を私にも見せてくれる? 今中3なら、私とは5つも離れている。それでも、仲良くなれるのかな。 でも何て話しかければいいんだろう。いつ? 「あ、今はだめだよ遥ちゃん」 「・・・キメーな、みずきちゃん」 腹いせに、みずきちゃんのでっかーなお胸にタックルを食らわしてやると、「ブレるから!」とケラケラ笑って、そのままおふざけで肩をぶつけあってはしゃぐ。 そうこうしているうちに、始業のチャイムが鳴って、同時に、体育館内の電気が絞られる。 体育館の真ん中だけ灯りに照らされて、光の道ができている。 ここを、卒業生が通るんだろう。 “ただいまより、第○○回、卒業証書・・・” アナウンスの声が響く中、私は相変わらず、岡井さんのいる席を見つめていた。 綺麗な茶色い目は、薄闇の中でもキラキラしていて、すぐに居場所がわかる。 「・・・ちゃんと、卒業生も見るんだよ、遥ちゃん」 その声と同時に、後ろの扉が開いた。 “――卒業生、入場” 司会の生徒の声が響き、先頭の卒業生が、体育館の中に入ってくる。 在校生席から、いっせいに歓声が沸く中、私はまだ岡井さんから目が離せなかった。 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/973.html
前へ 彼女の言ったことを推し量っている僕に、続けて彼女が言った言葉。それは、僕にとって待望の話題だった。 実は、僕はいま愛理ちゃんと話しをしながら、その単語が出てくるのをずっと期待していたのだ。 「舞ちゃんに初めて会ったのも寮だったなぁ」 いきなり出てきたその名前。 僕の心臓の鼓動が一気に高まったような気がした。 「ま、ま、舞ちゃんと!?」 「そうですよー。・・・ん?あれ? 知ってるんですかぁ、舞ちゃんのこと?」 舞ちゃん! その話し、もっと掘り下げて詳しく聞きたい! 愛理ちゃんは変わらず僕に微笑みを向けてくれている。 むしろ、僕ごときに必要以上とさえ思えるぐらいの笑みじゃないか。 彼女のこの様子なら、いま僕が舞ちゃんのことに言及したとしても話しを弾ませてくれるかもしれないぞ。 だがしかし、その話題に深入りしようということに対して、いま何故か僕の心の中で警報が鳴り響いたんだ。 何故だろう。 どうしてそんな反応が起きたのか、それを説明するのは難しいんだけど。何か本能的なものなので。 この感覚、あれだ。 サッカーをしている時オフサイドトラップを掛けられそうになったときに感じる、あの感覚と同じなんだ。 このわずかに感じる違和感。そこからはもう、嫌な予感をびんびんに感じる。うん、これ、間違いなく危険が迫ってる。 そんな感じで、身構えてしまった僕。 せっかく出た舞ちゃんの話題、もっともっと聞いてみたいとは思うんだけれど、だから反射的に避けざるを得なくなってしまって。 何だろう、この感じ。 今この場の雰囲気に、僕はなんとなーくブラックな空気を感じてしまっていた。 不意に黙ってしまった僕のことを、いま愛理ちゃんはやっぱり優しい微笑みでもって見てくれている。 だが僕には、彼女のその微笑みに何か別の意味が込められているようにも感じられて。 だって、まるで僕の反応を楽しんでいるみたいじゃないか・・・ そう思ったりしてしまうのは、僕の考え過ぎだろうか・・・ そんなことを考えていたら、何かやけに緊張感が高まってしまった僕。 反射的に、慌てて話題を変えてしまった。 違う話しを振ることで、この緊張から逃れようと。 「あの、、、僕はBuono!のライブがとても好きなんです。今度はいつやるんですか?」 「そうですね、しばらくやってませんねぇ」 「前にも言いましたけど、僕は愛理ちゃんの歌が大好きなんです! だから、是非またライブをやってください!」 「そう言っていただけるのはとても嬉しいです。ライブ、私もやりたいなぁと思ってて。じゃあ改めて言ってみますね、リーダーのももに」 「・・・・・・」 愛理ちゃんの言葉の最後に出たその固有名詞は、心地よい会話で高まっていた僕の気持ちに冷や水をぶっ掛けるものだった。 その名前、今はあまり聞きたくない・・・ こんなところまであの人は僕の邪魔をするのか・・・ さっきから、やたら僕の心を揺さぶるような言葉を連発する愛理ちゃん。 ・・・・ひょっとして、わざとやってるのかな? さすがに疑心暗鬼になった僕がそっと顔を上げると、僕をじっと見ていた愛理ちゃんとモロに目が合った。 僕を見つめているその柔らかい微笑み。 その大きな瞳から感じ取れるのは、ただただ彼女の純粋さだけだった。 こんなにも優しいその穢れ無き笑顔の愛理ちゃんに対して、僕はなんてことを・・・ 目の前の愛理ちゃんのお顔を見て、いま彼女を疑うような下衆なことを思った自分を心から恥じた。 自己嫌悪に凹んでいる僕とは対照的に、一方の愛理ちゃんはと言えばとても楽しげだった。 そんな愛理ちゃんがどんよりと固まっている僕にまた話しかけてきてくれる。 「あのー・・・?」 「・・・・・・・」 「どうかされましたかぁ? もしもーし?」 「・・・・・・え? あ、えと、な、何でしょう?」 「そのカバンの中にあるそれ、大学の資料ですか?」 「え? はい。そうです」 「ちょっと見せてもらってもいいですか?」 「えぇ、いいですよ。どうぞ」 「ありがとうございます」 とある大学のパンフレット。 キャンパスの空撮写真が表紙となっている冊子を手にした愛理ちゃんがボソッと呟く。 「大学かぁ。どうしよっかなぁ・・・」 「愛理ちゃんも高校を卒業したら大学に進まれるんですか?」 「大学には行きたいなーと思ってるのでそのつもりです。でも、具体的な進路はまだ決めかねてて」 パラパラとページをめくっていく愛理ちゃん。 「やっぱり2年生になったらさすがに進路を決めないといけませんよねー」 「成績にもよるんじゃないですか? 僕みたいに優秀じゃない生徒は特に計画をしっかりと立ててやらなきゃいけないそうだけど」 「この大学への進学を希望されてるんですか?」 「希望してるというか、そういうことになったというか。よくわからないです」 「??」 パンフレットを目で追っていた愛理ちゃんの手が、ふと何かに気付いたかのように止まる。 と、そこにあった一枚の紙片をつまんだ。 あ、それはこの間のがそのまま挟まっていたんだ。 彼女が作成した、僕が受験までの間にこなすべき具体的行動指針。 根拠も何もあったものでは無いその指針に沿って僕はやらなければいけないらしい(何故?)。 「あれ、このメモ、熊井ちゃんの字?」 「いや、違うんです、そ、それは・・・」 「ケッケッケッ(↑)」 なんでしょう、その何かを含んだような笑い声は。 最後のページまでめくり終わると、アールグレイのカップを置いた愛理ちゃん。 おもむろに時計を見て、その大きな瞳を更に見開いた。 「あ、もうこんな時間! そろそろ帰らなきゃ・・・」 「ありがとうございました。抹茶メロンパン、本当に美味しかったです」 愛理ちゃんが僕を見て微笑んでくれている。 こんな美少女が僕の目の前で・・・・有り得ない・・・ 改めて思う。これは現実なのか・・・? 彼女のその笑顔は僕にこの上ない幸福感を与えてくれた。 雲の上にいるようなフワフワとした気分になった僕は、だから反射的にこんなことを彼女に向けて口にしていた。 「この抹茶メロンパン、良かったらもう一個差し上げますよ。後で寮に戻られてから落ち着いてゆっくりと味わって下さい」 「ありがとうございますぅ。実はこの後お嬢様ご姉妹とお茶する約束をしているので、その時に頂かせてもらいますね」 「そうなんですか!それなら丁度いい!ここにあと3個ありますから、お茶受けに3個ともお持ち帰りください!!」 僕の言ったことに、両手を開いて驚いたようなリアクションのあとニッコリと微笑んでくれた。どうやら喜んでもらえたみたいだ。光栄ですよ愛理ちゃん!! 愛理ちゃんの目が細められる。見る者全てを癒してくれる彼女の優しい微笑み。 別れ際、愛理ちゃんが紙袋を掲げて僕に会釈をしてくれる。 「これ、ありがとうございました」 「いえ、全然たいしたことないですから、お気になさらず」 「お嬢様たちもきっと喜びますよぅ。ケッケッケッ」 「あ、あの・・・・」 「はい?」 「僕が舞ちゃんのこと知ってるのは、御存知なんですよね?」 「・・・・・・・」 「前にお会いしたとき、そう、あの桃子さんも一緒だったときのこと。あのときにそのことは・・・」 「ケッケッケッ(↑)」 僕の問いに対して、愛理ちゃんの返答は曖昧な笑い声だけだった。 最後にもう一度意味ありげな微笑みを僕に見せてくれたあと、彼女はくるりと身を翻した。 去っていく愛理ちゃんの後ろ姿。 フワフワとしたその姿を、僕は見えなくなるまでずっと見送り続けたのだった。 夢のような時間が終わった僕に、現実が再び戻ってくる。 男ってやつは、可愛い女の子の前ではいい顔をしたくなるもの。 分かってはいるが、今自分がしたことは衝動的すぎるだろ。 愛理ちゃんの笑顔見たさに、後先考えずやってしまったこと。 僕は持っていた抹茶メロンパンを全部渡してしまったんだ。 自分のした事がどういう結果を招くのか、事の重要さを考えると膝が震えだしたのだった。 川*^∇^)||<抹茶メロンパン、ワクワク!! そんな期待をしながら待っているであろう熊井ちゃんのことを考えると、唐突に僕は旅に出たくなった。 「探さないで下さい」と書置きを残して。 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/14.html
お嬢様とベリキュー女子高 登場人物 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 番外編 その1 みやめぐ中学生 01 02 03 04 05 06 その2 ちさかん篭城大作戦! 01 02 03 04 05 06 07 08 09 その3 舞波とお嬢様 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 10 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 その4 熊井ちゃんとお嬢様 01 02 03 その5 ちさまい+αデート!? 01 02 03 04 05 06 07 08 09 その6 さきちゃんとゆりなちゃん 01 その7 お嬢様と愛理の昼下がり 01 その8 生徒会&新聞部の校内肝試し大会 01 02 03 04 05 06 07 その9 バレンタイン2010 01 02 03 04 05 その10 告白してほしいかんな 01 その11 みおんおじょうさま 01 その12 めざせワールドカップ 01 その13 お嬢様お誕生日2010 01 02 03 04 その14 舞ちゃんvs新聞部R 01 その15 明日菜お嬢様と愛理 01 02 その16 お嬢様の試験勉強会 01 その17 チーズタルトと心理戦 01 その18 とある執事の受難 01 その19 大人が飲む苦いアレ 01 その20 クリスマス2010 01 02 その21 続・とある執事の受難 01 その22 自分がしなければいけないこと 01 その23 姉妹校、姉妹の契り 01 02 その24 ないものねだりと手に届くもの 01 その25 サキとアスナ 01 その26 みおんおじょうさま 2 01 その27 姉妹校の昼下がり 01 その28 選択小説 舞様が階段から落ちた 01 02 03 04 05 その29 続続・とある執事の受難 01 02 その30 とあるメイドのとある一日 01 その31 ダイエット大作戦 01 02 03 04 05 06 その32 二人の世界 01 02 03 04 05 その33 少年たちの憂鬱 01 02 その34 あかい実はじけた 01 02 03 04 05 06 その35 続続続・とある執事の受難 01 その36 それぞれのお正月 01 02 03 その37 姉妹校の昼下がり 01 02 03 04 その38 仁義無き豆撒き合戦 01 02 03 その39 選択小説 栞ちゃんがベッドから落ちた 01 02 03 04 その40 とある寮生のとある一日 01 その41 とある執事見習いのとある一日 01 その42 なまえでよぶ 01 02 03 04 05 06 その43 職場体験の見習いメイド 01 02 03 04 05 06 07 08 その44 深夜に聴こえるハーモニー 01 02 03 04 05 その45 オトメゴコロと水着 01 02 03 04 05 06 07 その46 通じるキモチ・伝わるキモチ 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 その47 女社会とお坊ちゃまの憂鬱 01 02 03 04 05 その48 庶民から見たお嬢様の世界? 01 02 その49 女子の着替え、是即ち戦闘 01 02 その50 みぃたんの恋バナ 01 02 番外者さんの番外編 その1 お嬢様の休日 01 02 保全シリーズその1 . . . . . . . . . . . . 番外者さんの番外編 その2 お嬢様の七夕 01 保全シリーズその2 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 番外者さんの番外編 その3 あたらぬも八卦!? 01 02 03 04 05 06 番外者さんの番外編 その4 さきちゃんとゆりなちゃん 01 番外者さんの番外編 その5 バレンタイン2010 01 番外者さんの番外編 その6 君の戦法 01 番外者さんの番外編 その7 ホワイトデー2010 01 番外者さんの番外編 その8 遊んでやる 01 番外者さんの番外編 その9 なっきぃ姉妹校演劇参加 01 02 番外者さんの番外編 その10 ハロウィン2010 01 番外者さんの番外編 その11 たまには独りになりたくて 01 番外者さんの番外編 その12 雪のお屋敷の過ごし方 01 別の番外者さんの番外編 その1 梅さんの進路 01 02 03 04 別の番外者さんの番外編 その2 女の子だよ!? 01 恋する少年 高校編 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 大学編 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 番外編 その1 お嬢様がサッカーを語ると凄い 01 02 03 その2 情けは人のためならず(ただし本人は知らない) 01 02 その3 大地震と一大決心 01 02 03 04 05 その4 海に行こうよ 01 02 その5 アルバイト先での出逢い 01 02 その6 膝の爆弾 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 その7 少年たちの成人式 01 02 03 04 05 06 その8 舞ちゃん18歳の誕生日 01 02 03 別の別の番外者さんの番外編 01 TOP
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/470.html
前へ 「岡井さん。」 呼び止められて振り向くと、すぎゃさんが口をへの字にして立っていた。 「ごきげんよう、すぎゃさん」 「うん。ちょっといい?」 それきり何も言わず、すぎゃさんは私の前を歩いていった。 放課後の学校。今日はまだ生徒会のお仕事が残っていたのだけれど、少しぐらいなら大丈夫だろう。それよりも。 ――私は、また何かしてしまったのだろうか。明らかに、すぎゃさんの表情は硬い。 時々、私は無神経な言動で、彼女から注意を受けることがある。 特別扱いをせず、私のことを一人のクラスメートとして見てくださるのは嬉しいけれど・・・やっぱり、怒らせるのは絶対に良くないと思う。 「あの、すぎゃさん」 「なーに?」 「私、なにかお気に障ることを・・・ごめんなさい、そのようなつもりはなかったのだけれど」 すると、すぎゃさんは長い睫毛をパタパタとはためかせて、「ん?」と小首を傾げた。 「何で?あ、何か早足で前歩いてるから?ごめんごめん、そういうわけじゃないんだ。ちょっと急いでて」 わざわざ私の横まで戻ってきてくれたすぎゃさんは、照れたように笑ってくれた。 「それ、一緒に持ってあげる。そーっとね。大事なもの、入ってるんでしょ?」 「あ・・・ありがとうございます」 普段よりだいぶ荷物の入った私のサブバッグを、取っ手を片方ずつ分けて二人で運んでいく。 「・・・さっきの、ちょっと嘘かも」 「え?」 「いや、だからね・・・その、怒ってないっていうの。いや、全然怒ってないよ?でも怒ってるっていうか緊張っていうかぁだって何かやっぱり梨沙子はあばばばば」 舞が“ふがふが”と表現する私の慌てた時の口調みたいに、すぎゃさんは早口で言葉をつむいでいる。 「うふふ」 何となく親近感が沸いて微笑むと、「笑ったなー」なんて、軽く頬をつままれてしまった。 舞や栞菜が時々するような、軽い戯れ。そういう“普通”のスキンシップが、私には心地よく感じられた。 今でも、強く抱きつかれたり、密着されることはあまり得意ではないのだけれど、若干の肌と肌のふれあいなら、むしろ嬉しいのかもしれない。まして、相手が大好きな人であるなら。 「ちょっとー、そんな笑うとこじゃないんだけどぉ」 「だって、・・・ごめんなさい、私ったら。うふふふ」 キャッキャと笑いながらたどり着いたのは、屋上だった。 「あら、珍しいのね。すぎゃさんもここがお好きなの?舞の居場所なのかと思っていたわ」 「あー、給水塔は舞ちゃんのテリトリーだけど、あそこ以外は結構みんな使ってるんだよ。空気いいし・・・」 「あ、きたきたー。おーい!」 「梨沙子、お嬢様、こっちこっち!」 お喋りに興じていると、突然元気な声が風に乗って流れてきた。 「あら、珍しいお取り合わせなのね」 奥の柵の方から手を振るのは、新聞部の徳永さんと夏焼さん。大きな熊さん。それから・・・ 「お疲れー、お嬢様!本日の生徒会は、こちらで行いまーす!」 「ごきげんよう、茉麻さん」 2人分のスペースを空けてもらって、私は茉麻さんの隣に座った。 「梨沙子、お嬢様を連れてきてくれてありがとう」 茉麻からの御礼の言葉に、梨沙子さんは顔を赤くした。 「もー、緊張しちゃったよ!ママからの(てか夏焼様からの)依頼だから引き受けたけど、生徒会のお仕事に関わるなんてぇ」 「もぉ軍団はナイフみたいに尖った連中のすくつ(ryだからな。ヘイちっちゃな頃から悪ガキで!」 「・・・熊井ちゃん、今度は何に影響受けてるの」 「てかまだ団名もぉ軍団なんだ。もも卒業したのに」 「まあ、ももたまに学園に出没してるって風紀いんちょーさんが怒ってたし、いいんじゃない?」 「それよりよぉそろそろもぉ軍団の部室がほしいぜ!ツッパリの溜まり場にするんだぜ!創設者として、ももの白黒写真額縁に入れて飾ってやんよ!リボンで飾ってな!」 「遺影かよ!」 皆さんのぽんぽんと飛び交う会話を聞いているだけで、とても楽しい気持ちになる。 少し前までは寮の誰かがいなければ、こうして大勢で談笑することもできなかったのに、私は本当にいい出会いに恵まれたと思う。 「・・・あの、ところで千聖は、どうしてこちらに呼んでいただいたのかしら?」 談笑を遮るのはしのびないと思いつつ、話の途切れたところで私は思い切ってそう切り出してみた。 「あー、ごめんごめん!楽しくて脱線しちゃった」 茉麻さんは明るく笑うと、私の頭を撫でて引き寄せてくれた。 「みんな、用意いい?」 「ほーい」 「はーい」 さらに輪を縮めて、皆さんが私に顔を向ける。 「「「「「・・・・せぇーの、お誕生日、おめでとう!!」」」」 パーン!! 拍手とともに、大きな音と火薬のにおいが広がる。 「ちょっとー、千奈美ったら!火薬は危ないっていったじゃーん」 「まあまあまあ、いいじゃん!クラッカーだけに、バレたら謹慎クラウッカー?なんつって」 「・・・ま、それはともかく、お嬢様、改めましてお誕生日おめでとうございます!」 雅さんが、背中に回した手を私の目前に差し出す。 A4サイズの紙バッグ。その中に、ぎっしりとアンケート用紙が入っていた。 細かな文字で埋められたその紙には、ところどころ私の名前が見え隠れしている。 「バースデカードとか、もう個人的にももらってるとは思うんだけど、新聞部でお嬢様への質問とかバースデーメッセージを募ったら、こんなに集まったのね」 いつものお日様みたいな笑顔で、千奈美さんが続ける。 「で、で、で!勝手ながらうちら新聞部で、お嬢様の生誕十六周年インタビューをさせていただくこととなりましたー!」 「いえーい!」 そう、今日は私の16歳の誕生日。 今年も家族は当日に帰ってくることはできなかったけれど、家では執事にメイド、明日菜に寮のみなさんとケーキを食べ、学校でもたくさんの御祝の言葉やプレゼントをいただいた。 「モテモテだねー、岡井さん。イヒヒヒ」 「すぎゃさんたら、もう。ウフフフ」 さっき私のサブバッグを丁寧に持ってくれたのも、プレゼントが入っていることをわかってくださっていたからなんだろう。女性らしくさりげない気づかいに、心が和んでいく。 「あんまり、たいしたことできないですけど、うちらからのちょっとした誕プレってことで!お嬢様のかわゆい写真、がんがん掲載しちゃいますよー!」 「大丈夫ですよ、お嬢様。こんな子ですけど、写真とバドミントンの腕前は一級品ですから!」 「ちょっとー!こんな子ってどういう意味!みや年下の前だとすーぐかっこつけるんだから!」 お2人のやりとりを目にして、一緒に笑っていたはずなのに、ふいに鼻の奥がツンと痛くなった。 「お嬢様?」 「いやだわ、ごめんなさい。私、こんなに幸せ者でいいのかしら・・・」 思わず涙ぐむと、茉麻さんがお母様のように優しく抱き寄せてくれた。 「あはは、泣くな泣くな。みんな千聖お嬢様のことが大好きなんだから、いいんだって。」 「でも私、いつも親切にしていただくばかりで、自分では何一つ出来ないのに」 「そんなことないよ。こうやってみんながお嬢様のために動くのはね、お嬢様がもらった愛情をちゃんと返せる人だからなんだよ」 何と言っていいのかわからなくて、黙って首を振る私の頭を、茉麻さんはいつまでも撫でてくれた。 「はい、それじゃ、インタビュー開始っ!あ、梨沙子ちゃん、そこのノート取ってくれる?」 「はははははい、ただいま!フヒヒヒwwwwナウいノートでゲスなぁwwドプフォwww」 「もー、梨沙子はちょっと落ち着けっ!みやの前だからってさぁ」 たくさんの笑い声が、空に吸い込まれていく。 今の私には、自分が本当にこんなに優しくしてもらって良い存在なのか、やっぱり自信がない。 だからせめて、皆さんからいただいた愛情には、精一杯応えよう。 いつの日か、私もこんな風に、大好きな人たちの笑顔を引き出せるような人間になりたい。 「はい、それじゃさっそく1枚!お嬢様、スマイルちょーだい!」 まずは元気な千奈美さんの声に応えるように、私はカメラのレンズに満面の笑みで向き合った。 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/579.html
前へ 「でね、めぐ。聞いて!」 夏焼先輩の声はまだまだ弾んでいる。 「この、梨沙子ちゃんが、みやの一番のファンなんだー。特別なんだよ」 「ぎえええ」 おおよそ女の子らしさとは外れた、不気味な奇声が飛び出た。 さっきからトクベツ、トクベツと何度も言ってもらってるけれど、こればっかりは一向に慣れない。 「ふーん」 浮き足立ってる私とは正反対に、メイドさんは特に表情を変えることもなく、私のつま先から頭のてっぺんまでを観察するようにじっと見る。 ・・・うう、なんか服装検査みたい。てきぱきした喋り方は先生っぽいし、こんな怖そうな人が、夏焼先輩のスペシャルな人だなんて、不思議な話だ。 「えーと、みやび。それで、私たちは一体どうしたら。・・・ちょっと、勝手に写真撮らないでください!」 ピリッとした声で、周りの不届き者たちを一括するメイドさん。 別に悪いことしてないのに、私まで縮み上がってしまう。 「怖い声ださないでよー。あのね、めぐ。今からのアンコールをね、2人一緒に見てほしいなって思って」 「なんで?」 「梨沙子ちゃんには、今日は悲しい思いをさせちゃった。だから、どうして今日の私があんな状態だったのか、ちゃんとわかってほしいの。めぐの隣にいれば、きっと何か感じてもらえると思うし」 「・・・・・・あのさ、みやび。昔から言ってることだけどさ、人に何か説明するときは、自己完結しないで、誰にでもわかるような言葉で丁寧に」 「あー、もう時間ないし!というわけで、よろしくね!」 メイドさんのお説教もなんのその、夏焼先輩は私の背中をポンと押して、今来た通路へと引き返していってしまった。 「・・・」 「・・・とりあえず、隣、空いてるんで」 「あ、はい!ごめんなさいっ」 促されるままに隣に座って、手持ち無沙汰に夏焼先輩のうちわをそっと指で撫でた。 こんな大騒ぎの後で、周囲の人の注目は私たちに集まってるっていうのに、メイドさんはあいかわらず、涼しい顔して、ほんのり茶色く染めた髪の毛の先っぽをいじくっていた。 ほんと、綺麗な人だなあ。凛々しいって表現がよく似合う感じ。 熊井ちゃんとか岡井さんも、黙ってればかっこいい顔なんだけど、あれは見かけ倒しだからね。中身はとんでもなくぽえーっとしてるし。 「・・・スギャさん、でいいんでしたっけ」 「はいっ」 「あ、ごめんなさい。私、梨沙子さんの名字を伺ってないなと思って。・・・もう、そんなびびらないでくださって。あはは」 びくびくしまくってる私がおかしかったのか、メイドさんは意外なほど明るい声を出した。さっきまでの超怖いイメージとのギャップがすごい。 一緒に笑っていいのかよくわからなくて、下を向いて「・・・スギャじゃなくて、すがやといいます」と小さな声で答えてみる。 「あ、そうなんですか。お嬢様がスギャさんとおっしゃるし、愛理・・・さんに聞いたときも、スギャシャコちゃんですよーなんて言ってたんですけど」 「それは・・・2人とも、かつぜつがヤバいから」 「あー、たしかに」 メイドさんはまた楽しそうにプッと吹き出したから、今度はいいかな、と思って、「イヒヒヒ」と調子を合わせてみた。 少しずつ、空気が柔らかくなっていくのがわかる。 「北欧系のハーフかクオーターで、スギャさんって言う名字なのかと思った。すごく色白で、綺麗な顔だから」 「あばばばあありえないれす!まさか!」 自分の顔が、耳まで真っ赤になっているのを感じて、私は夏焼先輩のうちわで顔を隠した。 「みやびが梨沙子さんのこと、トクベツだっていうの、なんかわかるなぁ」 「え・・・」 「あの子、メンクイだからね。むふふ。美人とか可愛い人を、すーぐえこひいきして特別扱いしたがるの」 ・・・えーと、ということは、同じく「特別」と言われている御自分のことも、美人だってしっかり認識してるってことか。普通言わないぞ、そんなこと。すごい人だ。自分に自信があるんだろうな。 そういう態度って結構、引いちゃうものだと思うんだけど、メイドさんに関しては、ちっとも嫌な感じはしなかった。 この人は自分というものをしっかり持っていて、いいものはいい、悪いものは悪いと言える人なのだと思う。 私のことだって、可愛いと思ったから可愛いって言ってくれたんだろう(多分・・・)。 なんとなくだけど、私は夏焼先輩が、メイドさんを特別だと言う理由がわかったような気がした。 「みやびのこと、好き?」 「もちろんです!」 「あは。だよねー、そのハッピ」 私の着ている、夏焼先輩のお顔がプリントされたハッピを楽しそうに眺めて、メイドさんはふと表情を変えた。 「・・・私とみやびは、中学の同級生だったんだけど」 「は、はい」 そのまま、唐突に語りだすメイドさん。視線は誰もいないステージにぼんやりと向けられている。 「本当に大切な友達だった。毎日一緒にお弁当食べて、一緒に帰って、門限ぎりぎりまでずーっとお喋りして。 もうね、・・・月並みだけど、大好きだったの。この私が、自分を見失うぐらい夢中になってた。 友情とか、恋愛感情とか、そういうカテゴリーを越えて、いつでもみやびが心の中にいた。 もしかしたら、みやびもそう思ってくれてたかもしれない。私たちは、ずっとずっとこのまま、大人になっても一緒だって信じていた。でも、それを私が壊した」 「待ってください、あの」 私はメイドさんの腕を握った。 視線が、私の方に移ったのがわかる。 「あの、」 心臓がズキズキと痛くて、泣きそうになっていた。 どうしよう。続きを聞くのが怖い。 この人は今、とてつもなく大切な事を、私に話そうとしている。 「あ・・・そか、みやびのファンなのに、あんまそういう話聞きたくないですよね」 「違います。そうじゃなくて・・・、それって、わ、わたしなんかに話していいようなことなんですか?」 そう聞くと、メイドさんは小さく首をかしげた。 「なんで?だって、梨沙子さんはみやびの特別なファンなんでしょ?」 「い、いちおう」 「だったら、私にとっても特別な人ってことになるし。ここに梨沙子さんを招いたってことは、ちゃんといろいろ話しといてねって意味だと思うし」 ・・・ ・・・・・ ――ああ、何か。 全然敵わないな、この人には。 夏焼先輩の価値観を無条件に肯定して、夏焼先輩の認めたものなら自分も認める。 それが当たり前なんだろう、メイドさん・・・いや、2人にとっては。 「・・・わかりました、じゃあ、続きを聞かせてください」 私はイヒヒと笑って、メイドさんの手を取った。 不思議と、悔しいとかっていう気持ちはわきあがってこなかった。 だって私はファンだもん。 一番の願いは、夏焼先輩が笑顔でいてくれること。 こんなにも夏焼先輩を理解して、支えになっているメイドさんなら、認めてあげてもいいもん。 「・・・やっぱ、梨沙子ちゃんは間違いなく、みやびの一番のファンだねっ」 「えへへへ」 「それじゃ、さっきの話の続きだけれど・・・」 そう、これでいいんだ。 再び唇を開いたメイドさんをまっすぐ見返しながら、私の心は晴々としていた。 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/24.html
前へ 赤羽橋某所 【岡井千聖キャラチェンジ対策本部】 矢島「えー では会議を始めます 議長の矢島舞美です よろしく」 矢島「看板に書いてあるとおり ちっさーがお嬢様になってしまった件です」 鈴木「これはこれでええやん」 有原「マネージャーから”営業的にどうにかしろ”と苦情もきてます」 中島「でもファンの方には受けがいいと思うけど」 萩原「℃-uteの新境地でしゅね」 梅田「・・・・今日の夕食なにカレーかな・・・」 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/240.html
前へ 「私ね、雅さんの文章が大好き。またお書きになったら教えてくださいね。」 そう言って微笑む岡井さんは、なんていうかすっごく大人っぽくて・・・全てを受け入れて包み込むような優しい笑顔だった。 「お嬢様、私もそんな風に言ってもらえて嬉しいです。では、また今度。」 「ええ、また。」 去っていく夏焼先輩の後姿が名残惜しい。あぁ、でも・・・やっと会話できた!これは超嬉しい! 「ウフフ、すぎゃさんたら、よっぽど雅さんのことがお好きなのね。」 「え?まぁ・・そうだけどぉ。ていうか、何で夏焼先輩と親しいわけー!?ずるぅい!」 前から思ってたけど、岡井さんて年上ウケがいい気がする。ももとか、生徒会の先輩達とか・・・萩原さんは年下だけど、主導権握ってるっぽいし。 「あら、それなら今度、ももちゃんや雅さんとお昼ご一緒する約束をしているから、すぎゃさんもいかが?」 「え・・・萩原さんは?」 「舞?舞は、特にお誘いしていないけれど」 岡井さんはパチクリ目を見開いて小首をかしげた。 「でも、りぃもまぜてもらってもいいの?萩原さん誘った方がいいんじゃない?」 「あら、どうして?私と一緒はお嫌かしら?」 「そうじゃないけど・・・」 ―なんだ。別に岡井さん、萩原さんだけしか見えてないってわけでもないんだ。こうしてちゃんと、ももとの繋がりも大事にしているのか。 お嬢様だから、甘えさせてくれてわがまま聞いてくれるなら、誰でもいいのかと思ってた。でもよく考えたら、あのももがそんな子と仲良くするわけがない。 「・・・ごめん、誤解してたかも。」 「え?」 「りぃも、仲間に入れてくれる?」 岡井さんの顔がパァッと明るくなった。お散歩に連れてってもらうときのわんちゃんみたいな表情で、私の顔をじっと見つめている。 「ええ、もちろん。嬉しいわ。すぎゃさんは、お弁当のおかずは何が好きなのかしら?当日、私のお弁当と一緒に作らせるわ。」 作らせるってあんた。主語はないけど、コックさんとかがいるんだろう。さすがお金持ち! 「ね、梨沙子さん?」 「うーん。」 味噌ラーメン!といいたいところだけど、明らかにお弁当には向いてない。ていうか、下手なこと言ったら召使いの人がわざわざ作り立てを届けに来ちゃうかも。 「考えとく。日にち決まったら教えてね。」 「ええ、もちろん。」 そこまで話したところで、お昼休み終了のチャイムが鳴った。 「お嬢様、今日はちゃんとお手伝いに来てくださいね!最近生徒会室に全然いらっしゃらないんですから!」 残って資料を整理していた副会長さんが、出掛けに岡井さんの席に立ち寄った。 「だって、今月は舞といろいろ約束があるのよ。千聖はお手伝いでしょう?少しお休みをいただきたいの。」 「だめです!お手伝いでも、ちゃんとノルマがあるんですから!お嬢様は楽しいことがあると、すぐそっちばっかりになっちゃうんですから。これはお嬢様のお仕事です。舞ちゃんと遊ぶのはお夕食の後!」 「もう、なっきぃの意地悪!・・・でもわかったわ、千聖にもきちんとお仕事が割り当てられているのね。今日はちゃんとお手伝いに参ります。」 怖ーい!さすが風紀委員長兼・・・じゃなくて、なるほど、あんな感じで打診すればいいんだ。言ってわからないタイプじゃないみたいだし、学園祭の打ち合わせのときもどんどん振ってみようかな。 ぽわっとした世間知らずなおっとりお嬢様なのかと思ってたけど、結構喜怒哀楽が出やすいみたいでなんか面白い。 「岡井さんも何か、食べたいおかずとかあったら考えといて。りぃもママに作ってもらってくるから。」 あら楽しそう!と目を眇めた岡井さんは、カルビクッパが食べたいわ、なんて言いだした。だから、お弁当だってば! お昼後だっていうのに、好物のことを考えて幸せそうな顔をしている。 「やっぱり、岡井さんて天然。」 私がつぶやくと、岡井さんはなぜか嬉しそうにはにかんで笑った。 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/522.html
お嬢様とベリキュー女子高 -... 登場人物 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 156 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 番外編 その1 みやめぐ中学生 01 02 03 04 05 06 その2 ちさかん篭城大作戦! 01 02 03 04 05 06 07 08 09 その3 舞波とお嬢様 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 10 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 その4 熊井ちゃんとお嬢様 01 02 03 その5 ちさまい+αデート!? 01 02 03 04 05 06 07 08 09 その6 さきちゃんとゆりなちゃん 01 その7 お嬢様と愛理の昼下がり 01 その8 生徒会&新聞部の校内肝試し大会 01 02 03 04 05 06 07 その9 バレンタイン2010 01 02 03 04 05 その10 告白してほしいかんな 01 その11 みおんおじょうさま 01 その12 めざせワールドカップ 01 その13 お嬢様お誕生日2010 01 02 03 04 その14 舞ちゃんvs新聞部R 01 その15 明日菜お嬢様と愛理 01 02 その16 お嬢様の試験勉強会 01 その17 チーズタルトと心理戦 01 その18 とある執事の受難 01 その19 大人が飲む苦いアレ 01 その20 クリスマス2010 01 02 その21 続・とある執事の受難 01 その22 自分がしなければいけないこと 01 その23 姉妹校、姉妹の契り 01 02 その24 ないものねだりと手に届くもの 01 その25 サキとアスナ 01 その26 みおんおじょうさま 2 01 その27 姉妹校の昼下がり 01 その28 選択小説 舞様が階段から落ちた 01 02 03 04 05 その29 続続・とある執事の受難 01 02 その30 とあるメイドのとある一日 01 その31 ダイエット大作戦 01 02 03 04 05 06 その32 二人の世界 01 02 03 04 05 その33 少年たちの憂鬱 01 02 その34 あかい実はじけた 01 02 03 04 05 06 その35 続続続・とある執事の受難 01 その36 それぞれのお正月 01 02 03 その37 姉妹校の昼下がり 01 02 03 04 その38 仁義無き豆撒き合戦 01 02 03 その39 選択小説 栞ちゃんが階段から落ちた 01 02 03 04 その40 とある寮生のとある一日 01 その41 とある執事見習いのとある一日 01 その42 なまえでよぶ 01 02 03 04 05 06 その43 職場体験の見習いメイド 01 02 03 04 05 06 07 08 その44 深夜に聴こえるハーモニー 01 02 03 04 05 その45 オトメゴコロと水着 01 02 03 04 05 06 07 その46 通じるキモチ・伝わるキモチ 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 その47 女社会とお坊ちゃまの憂鬱 01 02 03 04 05 その48 庶民から見たお嬢様の世界? 01 02 その49 女子の着替え、是即ち戦闘 01 02 その50 みぃたんの恋バナ 01 02 番外者さんの番外編 その1 お嬢様の休日 01 02 保全シリーズその1 . . . . . . . . . . . . 番外者さんの番外編 その2 お嬢様の七夕 01 保全シリーズその2 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 番外者さんの番外編 その3 あたらぬも八卦!? 01 02 03 04 05 06 番外者さんの番外編 その4 さきちゃんとゆりなちゃん 01 番外者さんの番外編 その5 バレンタイン2010 01 番外者さんの番外編 その6 君の戦法 01 番外者さんの番外編 その7 ホワイトデー2010 01 番外者さんの番外編 その8 遊んでやる 01 番外者さんの番外編 その9 なっきぃ姉妹校演劇参加 01 02 番外者さんの番外編 その10 ハロウィン2010 01 番外者さんの番外編 その11 たまには独りになりたくて 01 番外者さんの番外編 その12 雪のお屋敷の過ごし方 01 別の番外者さんの番外編 その1 梅さんの進路 01 02 03 04 別の番外者さんの番外編 その2 女の子だよ!? 01 恋する少年 高校編 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 大学編 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 番外編 その1 お嬢様がサッカーを語ると凄い 01 02 03 その2 情けは人のためならず(ただし本人は知らない) 01 02 その3 大地震と一大決心 01 02 03 04 05 その4 海に行こうよ 01 02 その5 アルバイト先での出逢い 01 02 その6 膝の爆弾 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 その7 少年たちの成人式 01 02 03 04 05 06 その8 舞ちゃん18歳の誕生日 01 02 03 別の別の番外者さんの番外編 01
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/713.html
前へ 「舞ちゃんって、もしかして、萩原舞ちゃん?」 「そうですよー。ってか、うちの話しちゃんと聞いてたんだー。良かった。小春って人の話しとか全く聞かない人なのかと思ってた」 オマエモナー。 ・・・って、驚くところが違うだろ、熊井ちゃん。 いま小春ちゃんは、「もしかして、萩原舞ちゃん?」って言ったぞ・・・ 「えっ? 小春ちゃん、舞ちゃんのことを知ってるの?」 「うん」 さも当然のことのように頷く小春ちゃん。 「やっぱりあの舞ちゃんなんだ! 懐かしいな。舞ちゃん元気にしてる?」 「舞ちゃん元気ですよー。このあいだも生徒会室で一緒にお弁当を食べてー、うちが舞ちゃんのお弁当おいしそうだねーって言ったらー・・・ そのエピソードは今じゃなくていいよ、熊井ちゃん。 それは後でゆっくり聞かせてもらうから。そんなことより・・・ 「どうして、舞ちゃんのことを? 小春ちゃん」 「もうだいぶ前のことになるんだけど、舞ちゃんとは面識があるの」 小春ちゃんが思い出すように僕らに語り始めた。 あれは今から3年前、私が中学3年生の夏休みのこと。 国が主催する、ある研修合宿に小春は参加したんだ。 小中学生が集まる二泊三日のその研修合宿に参加するには学校の推薦が必要でね。さらに、推薦されても選考に通らなければ参加できないの。 それぐらい権威がある研修らしいんだ。うちの中学校から見事選ばれることが出来たとき、先生からミラクルって言われたぐらい。 研修では、いろいろなところを見学して、いろいろな偉い人にも会えて話しを聞くことが出来たりして、面白かったな。 なんとかっていう知事の人とか、なんとかっていう大臣とか、なんとかっていう会社の社長さんとか。 難しい話しばっかりだったけど、とっても勉強になったんだよ。 そんな研修合宿だったんだけど、そこで私は舞ちゃんと出会ったの。 * * * いろいろな中学の人と交流が出来て楽しいな。 しかも、優秀な生徒が集まっている研修だけに、みんなレベルが高くて話しをするだけでも刺激的で面白い。 私たち中学生の他に小学生も参加していて、小学生たちもわいわいと騒いだりしていた。 あれ? そんな小学生の子たちの中で、ポツンと独りぼっちの子がいる。 人見知りして、みんなに馴染めないのかな。 でも、どうやらそうではないみたい。 その子からは、人を寄せ付けないようなそんな感じのオーラが出ているのが一目で分かったから。 気難しそうな表情で何か近寄りがたい孤高の雰囲気を纏っている。 だから、周りの子達もその子に気軽に話しかけたり出来ないでいるんだ。 その子のことは見覚えがある。 この研修の開会式で小学生の生徒を代表して挨拶の言葉を述べた子だったから。 その役目に抜擢されるってことは、集まっている小学生の中で一番優秀な生徒だっていうこと。 すごいなー。これだけ優秀な生徒さんが集まってるその中で一番優秀だなんて。 無愛想にしてるけど、その目を見ればこの子が只者では無いと言うことがよく分かった。 その目力は、本当に力強くて小学生とは思えないほど大人びていたから。 その第一印象は強烈だった。一目見ただけで私はこの子のことがとても気になってしまった。 だけど、私は中学生組だから、その日の講義ではもうその子に会うことは無かった。ちぇっ、つまんないの。 でも、直感で私はこの子とまた会える気がしたんだ。 研修は泊りがけで行うんだけど、その宿泊場所の部屋は2人部屋だった。 どんな子と一緒になるのかな。楽しみだなー。 ワクワクしながら部屋に入ると、同室の子がすでに先に来ていた。 そこいたのは、なんと、さっきの孤高の少女だー!! 「はじめまして! 私は久住小春だよ。よろしくねー!!」 「萩原舞。よろしく」 「舞ちゃんかー。かわいい名前だね!」 「別に・・・」 「舞ちゃんはどこから来たの? どこの学校? 何年生? 今日行った所どこが一番面白かった?」 舞ちゃん、ビックリした顔してる。どうしたんだろ?? でも、その表情がとてもかわいくて。 なーんだ、やっぱりまだ小学生なんだ。とってもかわいい顔してる。 舞ちゃんの言った学校名。驚いた。 小春もよく知っているあの学園の名前だったから。 「そうなんだ! じゃあ結構ご近所さんの学校だったんだね。それで、今日は楽しかったよねー? ご飯も豪華でビックリしなかった?」 「質問はひとつにしてくれる? あと、話題をころころ変えない」 「小春はねー、今日行ったところで一番面白かったのは国会議事堂のね、あそこの赤絨毯って本当にレッドカーペットみたいだったから思わず笑っちゃってry」 「ねぇ、人の話し聞いてるの?」 話しをしているうちに、だんだん舞ちゃんのことも分かってきた。 舞ちゃんはある有名な学園の初等部の6年生。 この研修に参加できるってことは、あの学園で主席の成績だっていうこと。 研修参加者の中でも一番優秀な生徒さんなんだから、それも当然か。 でも、あの名門校のトップの子に会えるなんて。こんな機会めったにない。 もっともっと話しをさせて貰おうっと!! 話してみると、頷かされることやそれ以上に驚かされることが多かった。 “天才”って、こういう子のことを言うのかもしれない。 さすが、あの学園で一番優秀な子で、しかも全国でも一番だなんていうだけのことはある。 凄いなー、舞ちゃん。 実際、舞ちゃんと話してみると言葉の端々にその天才ぶりが表れていたし。 でも、優秀すぎて悩み事を抱えているみたいだった。 「学校はあまり楽しくない。ガキばっかりだし本当に退屈。中学は違う学校にしようかなって思ってる」 「違う中学って、学園をやめて公立の中学校に入るってこと?」 「うん。どうせどこの学校でも退屈なんだろうから、それなら公立の学校で十分」 「そんなことないよ。せっかく入った学園をやめちゃうなんて勿体無いよ!」 「第一そんな気持ちじゃ、どんな学校に行っても自ら退屈にしちゃうんじゃないかな。大切なのは自分の気持ちだよ!!」 話しているうちに、つい力が入ってきてしまう。 けだるそうに話していた舞ちゃんの目に力がこもってきた。その目で舞ちゃんが私を睨むように見つめてくる。 うん、そうだよ、舞ちゃん! 退屈なんかしている暇はないはずだよ。 「それに、中等部に行けばまた違う環境だから、そこで新しい刺激に出会えるよ」 「新しい刺激?」 「そう、きっとそこで新しい出会いがあるよ。先輩だっているわけだし。ひょっとして運命的な出会いになるかもよ!未来のだんな様とか!!」 「だから、女子校だって言ってるじゃん。人の話し聞いてるの?」 「間違いないよ。だから辞めたりなんかしないで、学園の中等部に進んだ方がいいよ絶対!」 「だから、人の話しをry ・・・もういいや。ふふふ、面白い人だね、小春って」 「え?なに? 何か言った?」 「ううん。舞にそんな熱心に意見してくる人って小春が初めてだから、ちょっとビックリしただけ」 舞ちゃん、いま初めて笑った! その笑顔は何か赤ちゃんみたいでとても可愛らしかった。 舞ちゃん、こんなにかわいいお顔してるんだ。もっと笑えばいいのにー。もったいないよー。 最初は面倒くさそうに私の相手をしてた舞ちゃんだったけど、私の話しにだんだん付き合ってくれるようになった。 気難しそうに見えるけど、意外と素直な子なのかな。 人の話しをしっかり聞いて、内容のある答えを返してくれる。 みんなも、もっとこの子と話しをすればいいのに。取っつきにくいから話しかけづらいんだろうけど。 舞ちゃんも、それだけしっかりと考えてるんだから、それをもっとみんなに伝えればいいのに。 お互いの殻を破らないとダメだよー! なんか、もどかしいなー。小春的に、なんとかしてあげたい気分になる。 「でも、最近うちの学園の中等部や高等部は、なんか雰囲気悪いんだよね。荒れてるっていうか」 「お上品なイメージの学園なのに?」 「うん。ここのところ特にひどくなってるみたい」 「それならさ、なおさら舞ちゃんが入って学園を正常化しないと。今日偉い人が言ってたでしょ、皆さんが回りを引っ張っていって下さい、って」 「やだよ。そんなの面倒くさい」 「きっと学園の人にも同じように考えてる人だっているよ。間違ったことを正しい道に戻そうと頑張ってくれる人がきっといるから!」 「そんな人いるのかな。みんな自分のことしか考えてないんだよ、どうせ」 「いるよ絶対!生徒会だってあるでしょ。真面目に考えてる人は必ずいるから。そういう人達と一緒に舞ちゃんもやればいいんじゃない」 「生徒会とか、そういうの関わりたくない。疲れるから。舞は一人が好きなの」 「舞ちゃんは本当にそう思ってるの?」 「は? なに言ってるの?」 「ひょっとして、本当はこうしたらいいのにって自分では分かってるのに、わざと反対のことを言ってるでしょ?」 舞ちゃんが真っ直ぐに私の目を見てくる。 でも、小春は睨めっこなら絶対に負けないんだから! だから、私も舞ちゃんの目を真っ直ぐに見つめ返した。 「まったく・・・ 面倒くさい人と一緒になっちゃったでしゅ。眠くなったからもう寝る」 「うん、そうだね。そういうときは寝るのが一番! 朝になったらきっと気分も一新してるよー!」 「だから、誰のせいで・・・ ハイハイ。もう喋るのは終わりにしてね、お願いだから眠るときぐらい静かにして」 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/606.html
前へ まずは舞台をお選びください 最初の目線主はなっきぃです 1.お屋敷(岡井家の皆様が帰ってきて…) 2.学園(校門で鉢合わせになったのは…) 2.なっきぃっていったら校門でしょw もぉ軍団とのバトル(?)の場所ですねw 2お願いします 「なっきぃ、大丈夫?」 「え?」 舞ちゃんが頭を打った翌朝、恒例の校門前での風紀チェック。 えりかちゃんから肩をたたかれた私は、自分がボーッとしてたことに気が付いた。 「ご、ごめん」 「ううん、昨日大変だったもんね。無理しなくていいから」 おねえちゃんみたいに優しく笑ってくれるえりかちゃん。 「なっきぃは真面目だからね、何でも頑張っちゃうけど、たまには肩の力を抜いて、ね?」 「・・・うん」 そう、あんな大変な事件があった翌日じゃ、身が入らないのも仕方ない。だって、生徒の制服の着こなしなんかよりも、ずっとずっと気がかりなことがあるんだから。 「おはよーございまぁす♪ウフフ」 ――現れたな、風紀委員の敵め。 「…嗣永さんっ!なんですかそのスカート!みじかすぎっ」 「えー?大丈夫、パンチラしないようにもぉちゃんと研究してるからぁ。見逃してよぉ」 「パンチラとかそういう問題じゃないケロ!」 風紀チェックなんかおかまいなしの嗣永さん。彼女のおかげ…というのはシャクだけど、少しだけ私も元気を取り戻していく。 「でもでもー」 「なんですか!言い訳は聞きませんよ!」 「でもぉ、もぉさっき、林道で舞ちゃんみかけたんだけどぉ」 「えっ…」 反射的に身構える。嗣永さんの目が、キラッと光ったように見えた。 絶対この人、ただものじゃないもん。人のウソとか見抜きそう。悪いことなんかしてないのに、目をそらしそうになる。 「ま、舞ちゃんが何か」 「んー、なんかね、ポッチャマのタオルケットもって、千聖と手つないで歩いてたよ。 制服の着方もなんか変だったし、もぉなんかかまってないで、そっち気にした方がいいんじゃなーい? それにしてもニコニコしちゃって、あの子あんなかわいい顔もできるんだねぇ。なんか、別の人間みたいだった」 1. 嗣永さん、じつは… 2. か、考えすぎじゃない?あれはいつもの舞です! 2で 2ですねw 風紀委員長はもぉ軍団とは馴れ合いませんw 2でSteady go 「べ、別に?何をおかしなこと言ってるケロ。キュキュキュキュ」 「何だその笑い声は」 基本的に、ウソや隠し事が苦手な私。自分でもかなり無理あるなって思うけれど、舞ちゃんの安全のために、ここは何としてでも踏んばらなければ! 「と、とにかく!いいですか、嗣永さん!Yシャツは白!リボンは指定のものを着用!それから」 「…しゅかーとはひじゃたけ、ぴんくのかばんじゃなくて、ちていの黒いかばんをもちなたい、でしゅ」 「うっ」 嗣永さんの背後、大きな双眼をキラキラさせながら、私のセリフを奪ったのは…舞ちゃんだった。 嗣永さんの言うように、右手にタオルケットを、左手に千聖お嬢様の手を取って。 「あら、舞ったら、お利口なのね。なっきぃがいつも口にしている言葉だから、覚えているのね」 「えっへん」 幼児化しているとはいえ、天才少女の頭脳に傷がついてるわけじゃないらしく、素晴らしい記憶力は健在なようで…。だけど、明らかに、誰がどうみてもおかしい。 顔つきもあどけないしゃべりかたも、おまけにお嬢様に「お利口」呼ばわりされてキレないその態度も。 「…嗣永さん、違うの。これは、なんでもないの」 言い訳してみても、自分の声に力がないのが情けない。 嗣永さんは、ぱちぱちと数回まばたきをして、こう言った。 1.どうしたの?何があったの?本当に心配してるんだよ 2.…さ、ホームルーム始まっちゃうし、いこ! うーん、2かなぁ・・・ なんかストレートには心配してることを言わない気がする 嗣永さんは読むべきときは空気読むからなあ 2なのかなあ 「・・・じゃあ、ホームルーム始まっちゃうし、もう行こっか」 「え…」 だけど、意外なことに、嗣永さんはそれ以上突っこんでこなかった。 「あの…」 「ん?」 ちょっと小首を傾げて、目を見開くその仕草。…ああ、この人、やっぱわかっててやってるんだな、って思った。 「舞ちゃん、もぉと手、つなごうか」 「うん、ちゅなぐ!」 もしかしたら、嗣永さんは、舞ちゃんを守ろうとしてくれてるのかもしれない。 誰かが舞ちゃんの異変を騒ぎ立てようとしても、学園一の奇人と、超お嬢様がそばについていたら、それだけでガードになるだろうし。 おそらく、お嬢様も同じ気持ちなのだろう。舞ちゃんの様子にはいちいち触れず、その時々の状況で、守ってあげようっていうスタンス。 嗣永さんとお嬢様は、言葉に出さずとも、お互いの考えを理解しているに違いない。 …なんか、頼もしいだけに、ほんのり悔しいかも。これが、たまに嗣永さんが言う、“もぉと千聖だけの絆”ってやつなんだろう。 「では、なっきぃ。また後で…」 「あ、待って」 親子連れのように、3人して手をつないですり抜けようとするところを制して、舞ちゃんの前に立ちはだかる。 「なんでしゅか」 「…舞ちゃん、制服がちょっと変だからね、なっきぃが直してあげるケロ」 「ぶー、そんなのいいもん。まい、子供じゃないでしゅ」 ふてくされる舞ちゃんを、ウフッと笑いながら、嗣永さんがたしなめる。 「でもぉ、風紀いんちょーさんに制服直してもらうと、すっごいかわいくなるんだよ!ね、千聖!」 ――お前がいうなケロ! 「ええ、そうね。なっきぃは、一番素敵な制服の着方をご存じだから。舞、教えていただいたら?舞みたいに賢い子なら、すぐに自分の技術として、会得できると思うわ」 「んー・・・」 二人がかりの説得に、舞ちゃんはちょっと口を尖らせて、「…なっちぃ、おねがいしましゅ」と「きおつけ」のポーズで答えてくれた。 「キュフフ」 小さな暴君の、素直なリアクションがうれしい。 「まずね、ボタンがずれちゃってるから、直そうね。靴下も、右側が下がっちゃってるね」 ああ、可愛い可愛いケロ!栞ちゃんじゃないけど、美少女のお世話してあげるって、快感かも…。 1.川*^∇^)|<おはよー!もぉ軍団勢揃い! 2.从´∇`从<おやおや? 熊井ちゃんといきたいところだけど何かと舞ちゃんとは因縁のある新聞部を。 2お願いします。 出たなくまいちょーw 新聞部も嗅ぎ付けてきたかw でもせっかく嗣永さんが場をまとめてるからなあ そこであえてのちーの出番かなってことで2を希望します 「・・・はい、できた!」 リボンを整えて、舞ちゃんの制服はかんぺき。 「えへへ」 「舞、とてもすてきよ」 「うんうん、やっぱり制服はこうやって清楚に着こなさなきゃね!」 だから、お前が(ry 「…おはよーおはよー!みなさんおはよー!」 突然、後ろから元気な声。 スラッと長い手足の、ちょっぴりタレ目なにこにこ顔の高等部の生徒さんが、こっちへ歩いてくるところだった。 「風紀委員さんも、おはよー!」 「はぁ、おはようございます。徳永さん」 「チェック、お願いしまーす!」 新聞部の、マニアックなダジャレコラムとかを担当している徳永さん。 …おそらく、今日チェックがあることをキャッチしていたんだろう。いつもはもっと、ラフで自由な感じに制服を着崩してるのに、今日はきっちりしてる。要領のいい人だ。 「問題ないですが、スカートが若干短いですね」 「それはうちの足が長いからぁ」 「自分で言うな、自分で!」 私たちがかしましくおしゃべりしている間に、舞ちゃんたちご一行は、もう先に歩いて行ってしまったようだ。背中が遠ざかっている。…まあ、穏健派とはいえ、この人も新聞部だし、これでよかったのかも。 「あ、待ってようちも一緒に行くし!」 …と思ったら、徳永さんは私の横をすりぬけて、三人のところへ行ってしまった。 「な、何?もぉ、新聞部となれ合うつもりはないんですけどぉ」 「へへ、いいじゃんいいじゃん。お嬢様も、おはよー!萩原さんも、おはよー!」 なにかよっぽどいいこでもあったのか、ハイテンションでしゃべり続ける徳永さん。 私の横で、えりかちゃんも青くなってそれを見守っている。 「聞いてよ!林道の自販でさー、100円拾っちゃってさー!・・ん?なんか萩原さん…」 1. いつもとちがくね? 2. 寝癖ついてるー!あはは、ドジだなあ! どっちもアリだけど2→1の複合かな ここは1ですかねー 話しを展開させたいし この状況での、もぉvsちーも面白そうw (目線変えます) 「…なんか、今日、変じゃね?」 千奈美は舞ちゃんに顔をずいっと近づけて、なめるようにジーッと見つめる。 「な、なんでしゅか」 「いや、だって、なんかもっと普段殺気立ってるじゃんか。新聞部がお嬢様にちょっと近づくだけで、猫みたいにシャーッてやってくるのに」 「舞猫ちゃん嫌いでしゅ」 「は?今なんて?」 「い、いや全然そんなことないから!」 私は舞ちゃんを隠すように、千奈美の前に体を割り込ませた。 「今ももに話しかけてないし」 「もぉは舞ちゃんの保護者だから!」 「その性格で保護者とか、よく言うわ!」 …ったく、ああいえばこう言う! 口げんかじゃ負けることなんてほとんどないんだけど、千奈美みたいに少しだけ話題をずらして、すみっこから攻撃してくるタイプはなかなかねじ伏せられない。 「ねー、萩原さん萩原さん!ちぃとお話しましょうよー!」 「ダメだってば!」 「だから、ももはももでしょ?萩原さんじゃないでしょ?うちは萩原さんに話しかけてんの!もう一回聞くけど、ももは誰?」 「も、もぉ」 「だろ?そして私は千奈美。じゃあいいじゃん」 「うん」 …いや、うんじゃないし!悔しい、千奈美のマシンガン&ズケズケトークに巻き込まれて、この私がはじかれてしまうなんて! 「…まい、やだ」 舞ちゃんはテンションの高い千奈美にすっかりおびえてしまって、千聖の腕にしがみついている。 千聖もどうしたものかと、二人を見比べておろおろしている。 「そんな顔しないでよー、傷つくだろー!ほら、アメちゃんあげる」 1. い、いらないでしゅ 2. イチゴ味はありましゅか 1かなぁ 今日は中野参戦者が多いのかこちらの参加者がちと淋しいですね^^; 1ですかね 千奈美ちゃんw 1でいいと思います 「い、いらないでしゅ」 「なんでよ、私のアメが受け取れないっていうんか」 「…グスッ」 …あー、恐れていたことが。 舞ちゃんはうつむいて、大粒の涙をぽろぽろと地面に落とす。 「な、泣くことないじゃん!ごめん、そんなつもりじゃなかったんだけど」 おろおろする千奈美。こればっかりは、千奈美を責めることはできない。 私だって、舞ちゃんの様子がおかしいことなんて、とっくに気が付いていた。 だけど風紀いんちょーさんは隠したがってるし、千聖はありのままを受け入れてほしそうだったから、あえてスルーしていた。 それが、こういう結果を招いたんだ。 どうも、私はこの類のごたごたを悪化させてしまう傾向があるようだ。仲裁が上手じゃないというか。 「えー、そんな、泣くようなことじゃ…」 「ふえーん」 あまりにも慌てた千奈美は、おもむろに舞ちゃんを抱き上げて、赤ちゃんを寝かしつけるように体を揺すった。 「お…重っ」 「グスッ重くないでしゅ!もっと強く揺するでしゅ」 「はあ?もー、わかったよ。なんなの、いったい」 文句を言いながらも、意外と面倒見のいい千奈美は、言われたとおりにしてあげている。 舞ちゃんはキャッキャッと笑ってはしゃぐ。 「よかったわね、舞。千奈美さんに遊んでいただいて」 「舞があしょんであげてうの!」 「なんだとー、生意気言って!」 ノリが軽い千奈美と、なぜかワガママおこちゃまキャラにチェンジした舞ちゃんは、案外相性がいいようだ。 「しゃっきのアメ、もらってあげるでしゅ」 「えー、いらないっていったじゃん!うち、傷ついたんですけど!」 「舞がもらってあげゆっていったらもらうでしゅ」 なんなんだよー、とか言いながら、千奈美はポケットから、一粒取り出した。 「…何その色」 茶色と抹茶色が混じったような、見るからに怪しいブツ。 「えー別に…こ、これはメロン味だ!」 「いや、絶対ウソだね!なわけないじゃん!」 1.…やっぱりいらないでしゅ 2.ももたんたべゆでしゅ 3.ちしゃとたべゆでしゅ 4.ちにゃみたべゆでしゅ わがままままいまいw 迷うなあ・・・ 2・・・いややっぱ4お願いします! 4だなw 「それ、こっちによこしゅでしゅ」 舞ちゃんはそれを千奈美から受け取ると、吟味するように私たちを見比べる。 「…ちしゃとは、べしょかく。もぉたんは、たべゆふりしてごまかしゅ」 小さな声での分析。なかなか的を射ている。 「…たべゆでしゅ!!!」 「ええ~!?」 もらったばかりのキャンディを、舞ちゃんは千奈美に向かって突き返した。 「せっかくあげたのに、意味不明!」 「舞をなかちたばつでしゅ!食べゆでしゅ」 「やだよそんな…あ、やべ」 「そんなのって、どういうことだ千奈美!舞ちゃんに何食べさせようとしたの!」 うちのくまいちょーと同じぐらい、ノリと感覚で突き進むタイプなもんだから、千奈美は油断できない。 自分が食べたくないものを人に食べさせるとは、何事だ! 「わ、わかったよ、食べればいいんでしょ。…モグモグ、ああこれは最高の味だ」 「手の平に隠してゆでしゅ!ちゃんと食べゆでしゅ!」 「そうだそうだ、もっと言ったれ!」 舞ちゃんと肩を組んで、千奈美を挑発する。 新聞部の号外に、「嗣永桃子終了のお知らせ」とかいって、あくびしながら思い出し笑いしているすごい瞬間を掲載されたことを思い出して、私のボルテージはあがっていく。 「うっざ…わかったよ、食べるって!」 ついに観念した千奈美は、おもむろにビニール包装を破いた。 「…えー、みなさん、手拍子をお願いします!」 私は周りで見守るギャラリーに、そんな呼びかけをして、クラップを促した。 ――パチ、パチ、パチ まばらだった手拍子が、だんだんと足並みをそろえて言って、完全に千奈美の逃げ場をなくす。 「ウフフ」 千聖も楽しそうでなによりです。 「…おぼえてろよ、もぉ軍団」 千奈美はほっぺをひきつらせながら、キャンディを口に放り込んだ。 「まっずーーーー!!!」 間をおかず、そう絶叫すると、大げさに周囲を駆け回る。 さすがムードメーカーといったところか。 周りからも笑いが巻き起こって、意図せず和やかな空気になった。 「くふふ。ちにゃみはてれびにでてゆピン芸人みたいでしゅ」 「あら、千奈美さんのほうが面白くていらっしゃるわ」 失礼な二人の会話も、さらに笑いが広がっていく。 「…ね、それで結局なに味だったの?」 珍しく弱り切ってる千奈美が面白くて、私はニヤニヤを抑えることもせずに話しかける。 「知らないよ!」 「え?」 「熊井ちゃんからもらったんだもん!そんなん、危なくて食べれないじゃん?だからせっかく誰かで実験しようと思ったのに!」 「・・・それは、半分だけごめんね」 それで、さっきのおぼえてろよもぉ軍団だったわけね。 「あのさ、それはそれとして」 私は少し表情を真顔にチェンジして、千奈美の耳元でささやく。 「あのさ、舞ちゃんの。あれ、記事にしないでほしいんだけど」 「あー・・・」 1.わかった、約束する! 2.わかった、約束する!(暗黒微笑) 選択のほうはここは1でいってほしいかな 次へ TOP