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前へ っていうか、もう既に見抜かれているようだ。 「男のくせに怖いのぉ? でもホラー映画って言っても、これは心理ホラーだから、いわゆるホラー映画の怖さはあまりないよ」 「いや、それでも怖いんですよ。夢に出てきそうで。最近はいい夢を見れることが多いから、その流れを止めたくないし・・・」 慌てて口をつぐむ。言わなくても言いことを喋りそうになった。 それを桃子さんが見逃すわけが無い。 「いい夢を見るってなーに? どういう夢を見てるの? それ、もぉに詳しく話してみて」 ほらね。この人は本当に鋭いんだから。 適当な話しを作って誤魔化してもいいんだけど、嘘をつくのは苦手なんだよなあ。 それに、桃子さんはそういう嘘を一発で見抜きそうだし。 まぁ、別に本当のことを言っても問題は無いだろう。別に恥ずかしいことは何も無いんだ。 「最近、舞ちゃんの夢をよく見るんですよ」 「やだー! どうせ変な夢なんでしょ・・・ 女の子にそんな話しないで!」 わざとらしく目を見開いて、握った手で口元を押さえる桃子さん。 全っ然、違います! 勝手に変な夢にしないで下さい。僕を見くびらないでもらいたいです。 彼女のそんなリアクションにあきれながらも、思わず立ち上がって声に力を込める 「違いますよ! 変な夢なんて見てません!!」 気を取り直して、持っていた本のページを開いて桃子さんの前に差し出す。 ここを読めば分かってもらえるはずだ。僕の気持ちを代弁しているかのようなこの一節。 僕は、ゴホン!とわざとらしく咳払いをして、荘厳な面持ちを作り桃子さんに諭すように話しかけた。 「桃子さん、“こころ”の、この一節を読んで欲しいです。僕の気持ちは正にここに書いてある通りなんですから」 -----引用ここから----- 私はお嬢さんの顔を見るたびに、自分が美しくなるような心持がしました。お嬢さんの事を考えると、気高い気分がすぐ自分に乗り移って来るように思いました。 もし愛という不可思議なものに両端があって、その高い端には神聖な感じが働いて、低い端には性欲が動いているとすれば、私の愛はたしかにその高い極点を捕まえたものです。 -------ここまで------- 主人公のお嬢さんに対するこの気持ち、これには共感を覚えてならない。 まさに僕の心境はこの文章の通りなのです。僕の場合は相手がお嬢様ではないけれど。 でも、お嬢様のことを考えると気高い気分が乗り移ってくるっていうのには、自分の気持ちを重ね合わせてしまいそうにもなる。 これは千聖お嬢様のことにも当てはまるんだから。 この本を読んでいると、何か錯覚も感じてしまうのだ。 だんだんとお嬢さんに恋心を寄せるようになる先生と呼ばれる主人公。 その気持ち、分かるんだよね、何となくだけど。 読んでいるうちに感情移入してしまい、現実と虚構の世界の区別がつかなくなりそうになる。 そんな感じでまた虚構の世界に入り込みそうになっていた時、僕の視線と意識がある一点に集中した。 桃子さんに力説するために立ち上がったことで、さっきまでテーブルで見えなかった桃子さんの制服のスカートとニーソのその間、そこがばっちり僕の視界に入ってきたのだ。 いわゆる、絶対領域。 はい、俗物の僕は一瞬で虚構の世界から目の前に広がる素晴らしい現実世界に戻ることができました。 僕の目は釘付けになる。桃子さんスカートみじかすぎ・・・ そこに見とれてしまうのは、男の性なのだ。それはしょうがないことだ。 でもだからと言って、そんなところに見とれていることがバレてもいいということにはならない。 ましてや、相手は桃子さんなのだ。それがバレたら、僕にどんな制裁を下されるのか考えるだけで恐ろしくなる。 いいものが見れた・・・ いやいやそうじゃなくて、今すぐそこから視線を外さなければ。 いやいや、もう少しくらいいいでしょ。いやいや、バレたら大変なことになるからすぐにやめろ。 いやいや、そうは言いましてももう少しくらい見ていたいし。いやいや、相手が悪すぎるだろバレないわけがない。 いやいや、別に見てはいけないものをこっそり覗いてるわけじゃないんだからいいじゃないか。いやいや・・・ (ここまで考えること所要時間0.2秒) 気付くと、桃子さんは僕のことをじっと見ていた。 な、なんですか、その顔は。 これはやはり僕の葛藤を見抜かれてしまったのだろうか。 だが意外な事に、桃子さんはそこには触れてこなかった。どういうわけだかスルーしてもらえたみたいだ。 しかしそこには、これは貸しにしとくからね、という無言のメッセージも感じられるような。 やはりバレちゃったのかな、そこがはっきりしなくて何とも落ち着かない。 桃子さんは、あらためて先ほど僕の言ったこと、そっちの方に言及してきた。 「つまり、見ているのは神聖な内容の夢だってこと?」 皮肉っぽい笑顔が浮かんでる。やっぱり見とれてたの完全にバレてるよ。 それでも僕は動揺を悟られないように、あくまでもキリッとした顔を保って真顔で答えた。 「そうです。最近舞ちゃんの夢をよく見るんですよ」 「それは分かったから、二度も言わなくていいよ」 「高い極点を捕えてる、とか何とか立派なこと言ってる割には舞ちゃんの夢を見てニヤニヤしてるんだ」 「ですから、ニヤけてなんかいません。今言ったように、僕の彼女への想いは神聖なものなんですから」 「いや、だから、実際ニヤけてるんだって。それ自覚してないのぉ、ひょっとして?」 そうなのか、それは素で気づいていなかった。 このあいだ栞菜ちゃんにも同じこと指摘されたっけ。 そんなにいつもニヤケてる顔してるんだろうか。気をつけよう。 あの時は、なかさきちゃんを目の前にして、そりゃ彼女のかわいさについニヤケちゃったのかも知れないなあ。 ・・・なかさきちゃん? そうだ、思い出した! 「ところで桃子さん、最近なかさきちゃんに何か言われたりしましたか?」 「風紀委員長さん? 最近? 何か言われたかなあ?特に覚えて無いけど」 「そうですか。それならいいんですけど、あの時なかさきちゃん凄い剣幕だったから」 「いいんちょさんにはしょっちゅう色々言われてるから、そんなのいちいち覚えてないよ。ウフフフ」 なかさきちゃん、桃子さんに別に何も言わなかったのかな。 それっきり、桃子さんはそのことには特にこれ以上触れようとはしなかった。 僕の言ったことに、“凄い剣幕ってどういうこと?”とかさえ聞いてこないんだな。 これが例えば熊井ちゃんだったら、こういう発言は聞き逃さずがっつり食いついてくるだろう。 彼女は自分が納得するまで、徹底的に物事をハッキリさせないと気がすまない人だから。 対照的に、桃子さんはいちいち気にしないんだ。 こういうことには淡白だよなあ、桃子さんって意外と。自分のすること以外には、あまり興味を示さないというか。 他人から何を言われたとかそういうことは全く気にしないんだろうな。男らしい態度だなあ、見習いたいものだ。 「そんなにしょっちゅう、いろいろ言われてるんですか?」 「風紀委員長さん、もぉのこと大好きだからね」 「はぁ」 なかさきちゃんのあの口ぶりからは、とてもそんな感じには聞こえなかったけど・・・ 「もぉが卒業しちゃったら、いいんちょさん寂しさのあまり元気なくなっちゃうんじゃないかと思って、それがとても心配で心残りなの」 ウフッ、と笑った桃子さんが続ける。 「でも、くまいちょーがいるから、いいんちょさんも元気なくしてるヒマないだろうね」 そうですね。 きっと、そうなるんでしょうね。その光景が目に見えるようです。 「ところで、少年は何でいつもくまいちょーの言うことを聞いてるの?」 「え、どういうことですか?」 「こうやって席を取っておいたりとかさ、くまいちょーの言った事はその通りにするでしょ」 何でって言われても。そんなこと疑問に思ったことも無いけど。 わざわざ聞いてくるってことは、僕の取ってる行動はちょっとおかしいのかな。 「それは・・・ 熊井ちゃんの言うことは絶対ですから」 ちょっと違う気もするけど、説明するのが難しい。 「よく分からないんだけど、くまいちょーに何か弱味でも握られてるの?」 「あ、そういうのとは全然関係無いです。確かにそんなものはいくらでも握られてそうだけど、それとはちょっと違います」 「ひょっとして少年、くまいちょーのこと大好きだったりなんかしちゃったりして?」 「ち、ち、違いますよ!」 な、なんですかそのニヤニヤ顔は。 ここで僕が動揺してはまた桃子さんに格好のネタを与えてしまう。だから僕は真面目な表情をつくる。 「熊井ちゃんの言うことはいつも正しいんです。だから彼女の言うことには従ってしまうわけで」 その僕の答えがピンと来なかったのか、ん? って感じで小首を傾げる桃子さん。 その仕草は、不覚にもかわいい!と思わされてしまった。 「そうかなー? くまいちょーってけっこう天然な子だなと思うけど」 「彼女の言ってることは、見当外れのこと言ってるようでも、実は本質を突いていたんだって後から分かることが多いんですよ」 ちょっと力を込めてそう言った僕に、桃子さんはうんうんと頷いてくれた。そして予想外に優しい顔を見せてくれる。 その顔は、妹を褒められたお姉さん・・ちょっと違うか・・メンバーを褒められたリーダーかな、そんな感じの顔だった。 その表情からはお互いの信頼感が感じられて、そういう関係にあるのっていいなあと思ってしまった。 もぉ軍団とはお互いを尊重しあう崇高な団体なんだYO、って言ってたのを思い出した(その時は話し半分にしか聞いてなかったけど)。 「あとは、条件反射ですね」 「条件反射?」 「昔のクセで。昔は熊井ちゃんの言うことに逆らうことの出来るやつなんかいなかったですから」 「みなさんが彼女と接するときの感じを見て、熊井ちゃんのこと、ほえーっとした温厚キャラだと思われてることがちょっと意外でした」 「うん、確かにそういうイメージ持ってる人が多いかもね」 「そりゃ確かに元から天然な人ですけど、昔はもっと怖かったのに。熊井ちゃん丸くなりましたよね、性格」 昔は本当に怖かったんですよ。 ま、今もじゅうぶん怖いけどさ、いろいろな意味で。 昔の彼女の怖さは、睨み付けられたり恫喝されたりはたまた殴られたり、ストレートに言えば暴力的な意味の怖さだったのに。 そうだよな。あの頃に比べると、熊井ちゃん本当に穏やかになってるよな。 「丸くなったかなぁ? 今でも怒ってる顔を見せることもあるけどね。筋の通ってないこととかは大嫌いみたいだから」 さすが桃子さんは熊井ちゃんのことを知り尽くしてるんだろう。 もうちょっと、熊井ちゃんのこと桃子さんがどう思ってるかそれを聞きたい。 「正義感(無駄に)強いからねーw でも、そういうところもくまいちょーらしくていいんじゃない」 「でもさ、ひょっとしたら変わったのはくまいちょーじゃなくて、周りの人達の方なのかもしれないよ」 「くまいちょーが大人になったんじゃなくて、周りの人達自身が大人になったから、そういう風にイメージが変わって見えるんじゃない?」 なるほど。 桃子さんの言うことには目からウロコが落ちた。 熊井ちゃんの感情の起伏っていうのは、周りのひとの人間性を映し出している鏡のようなものなのか。 つまり、熊井ちゃんが温厚なキャラに見えるとしたらそれは、この学園の人達自身が柔和な人達だっていうことの証明なんだ。 昔は相手が誰であろうと、お構い無しに感情をぶつけるような気性の激しい女の子だったのに。 今考えてみると、それはいわゆるクソガキな子供っぽい男子の相手をしてたからってことなのか。 その実害を受けてきた人間からすると、あんなに恐ろしかった女の子でも穏やかになるものなんだな、っていうのが正直な気持ちです。 大人になるってこういうことか。 でも、「三つ子の魂百まで」ってことわざにもあるように、人の性格っていうのはそう簡単には変わらないと思うんだよなあ。 つまり、今の熊井ちゃんは休火山のようなもので、落ち着いていても次いつ噴火するか全く分からないような状態っていうことなのだろうか。 怖すぎるだろ、それ・・・ それを想像して、僕は一人で背筋を冷やすのだった。 次へ TOP
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前へ 視界に入っているのは桃子さんのその可愛らしい姿だけだった。 そしてその桃子さんの表情に僕は捉われてしまっていたのかもしれない。よく憶えていないけれど。 僕の両手が桃子さんの両肩へ20cmぐらいまで近づいたそのとき、部室のドアが突然開いた。 「おっ!もも!! 来てたんだー」 乱暴にドアを開けて入ってくるという登場をしたのは、もちろんこの部室の主であるリーダー(自称)さん。 「よっ、くまいちょー、来たよ♪」 「なんか楽しそうだねー、もも」 「うふふ。今ね、ちょっと少年と遊んでたんだ。うん、とっても面白かったよw」 桃子さんの表情。たしかにとても楽しそうだ。 熊井ちゃんの登場で我に返った僕は、何事もなかったかのように冷静さを取り戻すことが出来た。 だから、桃子さんのその表情の意味を一瞬で悟った。 そうか、さっきの僕に対して妙に優しい態度はそういうことだったのか・・・ 「自分の立場ってものを思い知らされて落ち込んでるこいつを、優しいふりしてからかって遊んだってことかー。 ホントそういうの好きだねー、ももは」 「落ち込んでる少年を見たらついw」 僕はまたまた軍団長の手のひらで遊ばれてたんだ。 すっかり騙されたよ・・・ 純情な僕の心を弄んだりして・・・ この人・・・ 「えー、でもそれって危険じゃない? そんな優しくしたらこいつ勘違いしちゃうよ? 部室の中で2人っきりだったんでしょ。もも大丈夫だったのー?」 「ん? どういうこと?くまいちょー」 「だってさー、なかさきちゃんがよく言ってるよ。“男子っていうのはいきなりその気になったりするんだから!絶対に気を許しちゃダメだケロ!!”ってw」 「そなの? さぁ?どうだったんだろw ウフフフ」 桃子さんが意味ありげな微笑を僕に向ける。 その表情、僕を凍りつかせるのに十分だった。 そういうことか・・・ うわー・・・・ 全部お見通しだったってことか・・・ は、恥ずかしすぎる!! と、とてもじゃないが顔を上げられないこの状況。 僕が耐えられないほどのショックを受けているとき、こういうとき必ず追い討ちをかけてくるのが大きな熊さん。今回もその例に漏れなかった。 「そうだよー。もも危機一髪だったんだよ。気をつけないと!」 「はぁい、気をつけますぅ。でも何でそんなことまでわかるの、くまいちょー?」 「そりゃわかるよー。うちの設置してるスパイウェアの解析によると、こいつこのところちょっと溜まってるみたいだからさー」 ちょ・・・ おま・・・ 何を言って・・・・ 何でそんなこと知ってるんだよ!! って、そうじゃないのかもしれない。 いつだって大きな熊さんの話しはどこまで真面目に聞くべきなのか判断に困るんだ。 熊井ちゃんの言ったこと。それはいつもの戯言に過ぎないんだろう。(そうだよね!?) 大体、いま彼女が言ったことが仮に(仮にですよ?)当たっていたとしても、そんなことで僕が理性を失うような行動をするわけもない。(ほ、本当ですって!!) でも、僕の脳は今、少し混乱を来たしていたんだ。 熊井ちゃんの言ったことは関係無いにしても、僕はさっき何をしようとしてた? 桃子さんに対して。 さっきの自分の行動、それは熊井ちゃんの言ったようなこととは全く関係ないんだ。もちろん。 繰り返すけど、本当に違うから! そんな理由で衝動的になったんじゃない! そこは意味が違う!! って、意味が違うのか? 僕はさっき確かに桃子さんを見て危うく衝動的になりそうになっていた、、、 どうして僕はそんな行動を取りそうになったのか。 その理由について、いま自分で「意味が違う!」とムキになって否定した。 変な意味で衝動的になったんじゃなかったとしたら、じゃあそれはどういう意味なんだ? その疑問。 そこから導き出される答え・・・ 自分で言った言葉がブーメランとして戻ってきてしまった。 予想もしていなかったその答えに、僕は言葉を失う。 ひょっとして、僕は桃子さんのことが・・・・ ・・・・・・ なーんてね。 うん、考え過ぎ。 そうだよ。考え過ぎだw 第一そんなのは言葉のアヤに過ぎないだろ。 何かしようとなんてしていなかった。そう、実際に何もしていない。 だから、桃子さんに対しても何も特別なことを思ってなんかいない。 そもそも、何をしようとしたって言うんだよ。 考えすぎにもほどがあるw ・・・僕は疲れてるんだな。 何と言っても、徹夜明けなんだ。それに、今朝の舞ちゃんとのことが本当に負担になってるみたいだし。 いま僕に必要なのはゆっくりと心身を休める安息の時間だろう。(今それが許される状況に無いのは明らかだけど・・) 僕が務めて平穏を取り戻そうと必死になっている心の中の混乱をよそに、明るく会話を続ける軍団の偉い人2人。 おかげで僕は次の瞬間には憑き物が落ちたように、いま考えていたそんなことなんか無かったかのようにすっかり忘れることができた。 「なかなかいい部屋じゃない。入学してすぐに部室を確保しちゃったなんて、さすがくまいちょーだね」 「親切な人達がいてさー。良かったらここを半分使うといいよってうちらに言ってくれてー」 「そうなんだ。ウフフフ。親切な人に出会えて良かったね、くまいちょー」 「うん。やっぱり普段の行いを良くしておくといいことがあるんだねー」 熊井ちゃんの言う言葉にいちいちツッコんでいたらキリがない。 だからもう全てスルーして流すことにするが、彼女にはひとつ聞きたいことがある。 「あの、、、熊井ちゃん、このソファーのことだけど、これは一体?」 「買ってきたんだよー。いいでしょー、これ」 「これ、結構モノが良さそうだけど・・・」 「うん、寝心地なんか最高だよー。もぉ軍団の部室で使うんだからね。それなりのモノじゃないと」 なるほど、朝から姿が見えないと思ったら、これを運び込んでいたのか。 そしてさっそくそれで居眠りをしていたという訳だ。 ここが居眠り部屋になることは予想されていたが、そのためにここまで環境を整えるとは。 思い立ったら本当に気の早い人だ。 しかし、こんな高級そうなソファーを買ってきたとか。いったいどこにそんな資金が? ま、まさか、これも僕の・・・ それ以上考えたくもない僕のその疑問に、熊井ちゃんは何故か桃子さんの方を向いた。 「まぁ、あのライブUSBではだいぶ儲かったじゃない? だから、これも買えたってわけw こうやって軍団の資金が潤うのも、Buono!のボランティア精神のお陰だよねー。さすがだね、もも!」 「えっ?」 「えっ?」 お互いそう言ったのち無言で見つめあう軍団の偉い人たち。 部室の中の空気が固まった。 笑顔のまま動きが止まってしまっているこの2人。 その光景に僕の背筋が凍りつく。 これ、怖すぎでしょ! ぼ、僕は何の関係も無いですからね! 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/259.html
「……………」 あまりの事に言葉が出なかった。それほどまでに強烈過ぎた。 と同時に少し羨ましく思った。 (後悔しないって決めたのになぁ。 自分で決めて自分で進んだ道だからって) あの日、千聖は私に抱きついたかと思うとなかなか離してくれなかった。 手紙を毎週書くからという約束でなんとか納得してもらい今でも続いている関係。 変わったのは手紙からメールになった事くらいかな。 (いろいろあるみたいだけど千聖も自分の道を進み始めてるんだよね。 私も負けてられないな) メールを返信し終えると私は勉強机に向かった。 この関係だけは絶対に変わる事がないことを強く願いながら。 それにしても…… 从; ’w’)<この人にだけはあまり会いたくないかも保全。クゥ~ン。 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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アーカイブ @wikiのwikiモードでは #archive_log() と入力することで、特定のウェブページを保存しておくことができます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/25_171_ja.html たとえば、#archive_log()と入力すると以下のように表示されます。 保存したいURLとサイト名を入力して"アーカイブログ"をクリックしてみよう サイト名 URL
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十一日目。 トンッ。 目の前に置かれた夕食を見て、私は夕食を置いた張本人を見る事なく溜め息を吐きました。 中華スープとれんげが置かれた時点でもう分かり切っているもの……。 「……………」 「……………」 「め…村上さん」 「何でしょうか? 千聖お嬢様」 「今日はどちらの名産品なの?」 「今日は『神奈川のチャーハン』です。お下げしますか?」 「……いいえ、食べるわ。味付けに使用した調味料はご存知?」 「塩、胡椒、コンソメ、あとは……(やばいでしょ。これ)」 「あら? どうかした?」 「……た、たまには当ててみるのもいいかと思いますのでこれ以上は」 め…村上さんの対応を軽く流しながら私は『神奈川のチャーハン』を頂く事にしました。 こ、この甘ったるい味の感じは…ピ、ピーナッツバターかしら? (何故かしら? 一瞬、舞美さんのご友人の顔が浮かんだ様な気が……) 从´∇`从<ピーナッツバターがないのでピーナッツば食ーべたよ 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/294.html
四日目。 トンッ。 目の前に置かれた夕食を見て、私は夕食を置いた張本人を見る事なく溜め息を吐きました。 中華スープとれんげが置かれた時点でもう分かり切っているもの……。 「……………」 「……………」 「め…村上さん」 「何でしょうか? 千聖お嬢様」 「今日はどちらの名産品なの?」 「今日は『千葉のチャーハン』です。お下げしますか?」 「……いいえ、食べるわ。ちなみに何チャーハンなのかしら?」 「ゴーヤをふんだんに使用したゴーヤチャーハンです」 「ゴーヤ……」 「胡瓜とゴーヤ、どちらにするか迷われたと伺っています」 め…村上さんの対応を軽く流しながら私は『千葉のチャーハン』を頂く事にしました。 胡瓜とゴーヤを悩むって一体どういうセンスの料理人さんなのかしら? (何故かしら? 一瞬、カッパの着ぐるみを着た愛理の顔が浮かんだ様な気が……) 州*´▼v▼)<胡瓜チャーハンも美味しいよ。ケッケッケッ 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/314.html
八日目。 トンッ。 目の前に置かれた夕食を見て、私は夕食を置いた張本人を見る事なく溜め息を吐きました。 中華スープとれんげが置かれた時点でもう分かり切っているもの……。 「……………」 「……………」 「め…村上さん」 「何でしょうか? 千聖お嬢様」 「今日はどちらの名産品なの?」 「今日は『神奈川のチャーハン』です。お下げしますか?」 「……いいえ、食べるわ。味付けに使用した調味料はご存知?」 「塩、胡椒、コンソメ。至ってシンプルな味付けと伺っています」 「でも具材は大きめに切られてるわね」 「料理人の個性……ですから」 め…村上さんの対応を軽く流しながら私は『神奈川のチャーハン』を頂く事にしました。 けど本当に具材が大きめだわ。何か意図があるのかしら? (何故かしら? 一瞬、とてもとても大きな方の顔が浮かんだ様な気が……) 川*^∇^)||<ぬわ~んで名前覚えてないんですか! って自己紹介したっけ? 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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カチャ カチャ カチャ カチャ カチャ カチャ…… 慌ただしい朝の時間。私は朝食の準備に追われていた。えっ? 料理出来るのかって? 流し込んで差し上げましょうか? カチャ カチャ カチャ カチャ カチャ カチャ…… 一難去ってまた一難と言うべきなのか最近のお嬢様の周りは忙しい。 けどそれによってお嬢様が成長されているのも確かで私としては少し寂しかったりする。 カチャ カチャ カチャ カチャ カチャ カチャ…… 何だかんだで心配性なんだよね、私って。 今回に関しては高みの見物でも大丈夫そうだけど。むしろその方が楽しそうだし。 あっ、そろそろお見えになる時間だわ。 「おはようございます。お嬢様」 リ|*‘ヮ‘)|<過剰な期待は禁物です保全 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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額に巻いた三角の布。真っ白な着物に乱れた髪。 なかなかのオバケっぷりだと自負していたのに、さっきから私は、道行く人たちに「かーわいー!」とか言われて、頭をナデナデされたりしている。 「中等部の子?オバケ屋敷?遊びに行くからクラス教えて」 「ち、違いますっ!私高3なんで!」 「またまた御冗談をー」 クラスの出し物、肝試しの呼び込みで廊下をうろついてたけれど・・・誰も怖がってくれない! 舞美の“頭に釘が刺さった血まみれ女子高生”は、大学生ぐらいの男の人が腰抜かして逃げてく程なのに、私の女幽霊は、せいぜいちびっ子が3秒ぐらい驚いたあと「へへーん、怖くないよばーか!」とか言って絡んでくる始末。 「まあまあ、佐紀のおかげで結構お客さん来てるみたいだよ!ろうなくにゃんにょ安心して入れるお化け屋敷ってことで!ゴフッ」 口に含んだ血糊をダラダラ零しながら、舞美が微笑む。・・・ごめん、知り合いだってわかってても怖すぎる。 「佐紀ー?どこ行くの?」 「んー、せっかくだから、ちょっと新規開拓してくる。うちら対になって客引きするより、それぞれターゲット絞った方が効率的じゃない? 舞美はホラー好きそうな大人層、私はファミリー層担当みたいな」 そう提案すると、舞美は「さっすが佐紀!ゴバブシャ」と深紅の霧を撒き散らしつつ喜んでくれた。うん、そこ後で掃除しといてね。 261 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/06/11(金) 17 26 08.22 0 舞美と別れて、私は裏庭の方へ回ってみた。 「うーらーめー・・・いててて」 「わー、おばけだー!遊んでー!」 「ねーねー、何で生きてるのにゆうれいなのー?へんなのー!」 ――ちょっとは怖がってくれ、チビっこたちよ!小さな拳でボカボカ殴るんじゃない! とはいえ、任務は任務。まとわり着いてくるチビっこたちのパパママにオバケ屋敷を紹介しつつ、教室までの道を丁寧に説明。 「じゃあ、後で寄ってみるわね」 「はーい。どうもー。リタイアしなかったら、景品の贈呈もあるんでー。」 よし、10組程約束を取り付けた。 自分で言うのもなんだけど、私は年上の人との折衝が結構上手いと思う。 調子に乗って、今度は生徒も誘ってみようかと、キョロキョロ辺りを見回した。 「おっ」 ちょうど、見覚えのある後ろ姿。ぼーっと立ち止まっているその人物に、私はそっと近づいていった。 そして、耳元に顔を近づける。 「うーらーめーしーやー・・・」 262 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/06/11(金) 17 27 17.25 0 「きゃああああ!!?」 彼女――千聖お嬢様は、ものすごい悲鳴をあげたかと思うと、ぴょーんと飛びのいて私と距離を取った。 「フガガフガフガフガ」 「ちょ、落ち着いて!ごめんごめん、私だよ、清水佐紀!」 本当に誰だかわからなかったのか、千聖お嬢様は何度も私の全身に視線を向けた後、やっとぎこちなく笑ってくれた。 「まあ、佐紀さんだったのね。ごきげんよう・・・、ウフフ、小さな子どもの幽霊なのかと思ったわ」 「・・・お嬢様ったら、可愛い顔して傷をえぐるんだから」 「そういえばさっき、凄惨な姿の舞美さんともすれ違ったわ。佐紀さんと舞美さんのクラスで、オバケ屋敷でもなさるのかしら?」 「ええ、そうです・・・っていうか、舞美は怖くなかったんですか?」 「佐紀さんの方が、幽霊らしくて怖かったわ」 ――ふむ、座敷わらし系幽霊>>>血まみれ女子高生とは。わかっていたことだけど、お嬢様はなかなかの変人だ。 「お嬢様、今、売り子さん?」 よく見ると、お嬢様は小さな籠を小脇に抱えていた。 中にはカラフルにデコレーションされた串刺しのドーナツが、2,3個だけ入っている。 食べ歩きしやすそうだし、結構売れてるってことかな? 263 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/06/11(金) 17 28 30.40 0 「ええ、先ほどまでは妹と行動していたのだけれど、言い争いをして、別行動をすることになって。 教室に戻ったら、すぎゃ・・クラスのお友達から、売り子さんを頼まれたの。繁盛していて忙しいみたいだから、千聖もお手伝いをさせてもらうことにしたのよ」 「・・・へー、千聖お嬢様でも口ゲンカとかするんですねぇ」 「うふふ、妹とはいつも喧嘩ばかりよ。舞ともよくするけれど」 「そーなんだ」 お嬢様は生徒会のお仕事をやってるときは、どっちかといえば受け身でぽわーんとした・・・そう、愛理みたいな感じ。そういう姿しか見てなかったから、何か意外だなあと思った。 妙にかまってあげたくなるタイプなのは間違いないけど・・・私は寮にいるわけじゃないから、舞美やえりかほどお嬢様のことをよく知らない。 こうして話してると、いろんな面が見えてきて面白いかも。 「・・・お嬢様、それ、全部買っていい?」 「え?」 私は籠の中からドーナツを纏めて取って、金額分の小銭をお嬢様のポケットに入れた。 「まあ、いいのかしら?」 「うん、小腹がすいてたとこだし。それより、これで完売でしょ?売り上げクラスの子に預けてさ、ちょっと私に付き合ってくれない?」 「でも、」 「いいからいいから。これ、佐紀のおごりね」 私は買い上げたドーナツを一つお嬢様に手渡すと、腕を取って歩き出した。 「こーやって食べて歩くと、またそれも宣伝になるからね。うん、おいしい!」 「ありがとうございます」 口の周りにカスタードクリームをつけたまま、お嬢様はにっこり笑った。 TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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特別枠1 裏側 急遽参加する事になった今回の決定戦。 参加するからには高評価を狙う。メイドだろうが何だろうがこの際一切関係なしッ! 「けど……参考にならなかったなぁ」 “秘”と表紙に書かれたメモ帳。中身はこれまでのチャーハンを試食した結果一覧。 お嬢様に召し上がって頂くのに万が一があってはと毒見をしたの……は嘘でみんなの チャーハンがどんな味なのか興味本位でこっそり一匙分頂いてました。 実際に食べたのは勤務が終わってからだからすっかり冷めてしまっていたのだけど。 「それにしても……“あれ”は強烈だったわ」 使った材料はまだしも調味料が……ね。口の中がジャングルな味で一杯になったもの。 調味料といえば親父向けの味付けのチャーハンは美味しかったわ。 ふと彼女を思い出してしまったんだけど彼女が千聖と知り合いなのか曖昧なのよね。 「……食べ慣れているチャーハンでいいか。ここは普段通りで行った方が良さそうな 気がしてきたわ」 変り種が多かったのだから普段食べているチャーハンが食べたくなっている筈。 そうだ! 寮生のみんなにも食べてもらおうっと。舞美に連絡、連絡。 リ|*‘ヮ‘)|<で、試食の結果はというと? リl|*´∀`l|从 ・ゥ・从ノソ*^ o゚)<特別枠1 『埼玉のチャーハン』 州´・ v・)(o・v・)ノk|‘-‘)<総合評価……12点中12点(持点一人2点) 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -