約 3,048,522 件
https://w.atwiki.jp/lucifuge/pages/108.html
「風邪を引く」 "catch cold"くらいは中学生でも分かる。 "catch a cold"のように冠詞がついても「風邪を引く」の意味。 違いは、一般的な意味での「風邪を引く」行為が無冠詞、ある人が風邪を引く状態が不定冠詞"a"付き ってことか? 今の場合だと、会話の中で発話者が相手に対して~ということだから、"a"付きのほうを選択。 「風邪を引く」「気をつける」のどちらがメインの述語かは、当然、後者。 この述語を修飾する形で、「風邪を引く」を表現するには、副詞的な用法を選択する。 この場合、不定詞か接続詞を用いる。但し、接続詞で今の表現に該当しそうなものは、"lest ~." となって、やや難しいので、ここでは不定詞を選択。否定表現なら "not to do ~." Be careful not to catch cold. 回答例 Do be careful not to catch cold.
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/354.html
「コーホー……コーホー……」 マスクも着けてないのにシスの暗黒卿みたいな呼吸を繰り返しながら、ひよりは自室の机に向かっていた。目の前には完成したばかりの原稿。同人ではなく、アニ研の部誌の方だ。 本来なら脱稿直後の清々しい気分に満たされているはずなのだが、ひよりの表情は冴えなかった。むしろ苦悩を絵に描いたように歪んでいる。 そのうち頭からぶすぶすと煙が上がってきた。やがて卵を電子レンジに掛けた時のように、ボンッと爆発する(イメージ映像)。 「……あ゛~」 呻きを上げて机に突っ伏す。 漫画を描いているうちはいい。ひたすら作業に没頭して、頭の中を真っ白にできる。 だがそれを止めると、どうしても思い浮かべてしまうのだ。クラスメイトで友達で、今まで散々漫画のモデルにしてきて、そして今はひよりの脳内で盛大な悩みの種になっている、小早川ゆたかのことを。 ゆたかの笑顔を思い浮かべると、胸が締め付けられたように苦しく、それでいてどこか切ない幸福感を覚える。 あの小柄な体を抱きしめたい。柔らかそうな髪を撫でてみたい……妄想は広がっていく。あくまでプラトニックな範囲でだが。 「いやだからこういう妄想をしてる時点で重症だってばーっ!!」 ガリガリと頭を掻きむしり絶叫する。 以前は傍観者の立場で、みなみとゆたかの仲睦まじい様を妄想していたのだが、今はそれが自分主観になっている。 ひよりの理性としては許せず、また困った事態であった。 「次だっ! 次の作品に取り掛かろう!」 そんなわけで最近のひよりは、意識が朦朧とするまで徹底的に漫画を描くのに専念するのが夜の日課になっていた。 「最近のひよりんは猛烈というか何というか……」 原稿を渡されたアニ研部長の八坂こうの言葉は、感嘆と呆れが混ざったような調子だ。 「では確かに、部誌の原稿は受け取ったよ」 「はい……」 「……執筆速度と裏腹に元気無いじゃん。どうしたの?」 問われ、ひよりは一瞬躊躇したが、結局何も言わなかった。しかしその態度が明白に「何かある」というのを物語っていた。 「何? 言えないような悩み?」 「えーと……まあ、そんなとこっス」 歯切れの悪いひよりの言葉に、こうはそれでも納得したように頷く。 「なるほど。それで、漫画描くのに逃避してるわけか」 「!」 図星であったからこそ、その言葉に反感を覚えた。 「そっ、そんなことないっス! 私は今、絶好調なんスよ!」 「寝不足と精神疲労丸出しの顔で言われても説得力無いよ。漫画家は体が資本。プロでもアマでもそれは同じ。ひよりんだって分かってるでしょう」 「う……」 「無理して自分をいじめるようなこと続けてたら、近いうちに描けなくなるよ。何にも」 こうの言葉は、忠告というより予言のような響きでひよりの胸を刺した。 「ひよりん」 「は、はい?」 「しばらく漫画描くのやめろ」 「え……」 それは……何だろう。鳥に向かって「飛ぶのをやめろ」と言うものではないのか。 「別に筆を折れって言ってるわけじゃないよ。だけど、しばらく漫画から離れて、しっかり悩み事を解決した方がいい」 「あのっ、でもっ……」 「いいから。ほら、行った行った」 ひよりはまるで邪魔者扱いのように、部室を追い出される。ピシャリと閉め切られた部室のドアが、やけに冷たく見えた。 失意のどん底というのは、まさに今のような状態を言うのだろうか。ひよりはゾンビのような足取りで廊下を歩いていく。 「はぁ~……」 肺腑からひり出すようなため息をつく。 こうの言っていることは分かる。自分が漫画に逃避しているのも分かる。今のままだと体にも心にもよくないのも分かる。 だけど、他にどうしようもないではないか。悩みを解決って、具体的にどうすればいいのか。 まず自分がゆたかを本気で好きなのかも判断できていない。仮に本気だとして、ゆたかに告白するか? 漫画のような展開は漫画でしかあり得ない。良くて普通に断られる。最悪変態扱いだ。よしんばゆたかにそっちの気があったとして、既にみなみという伴侶がいる。 「はぁ~……」 自分の本当の気持ちすら判然とせず、開き直ったとしても横恋慕の片思いに行き着くわけだ。 笑ってしまいたくなるほど、どうしようもない状況ではないか。これをどう解決しろというのだ。 「ハロー! ヒヨリ~!」 急に背後からハイテンションな声を掛けられ、振り返る。 「あ、パティ」 ひよりのクラスメイトで交換留学生のパトリシア=マーティン(愛称:パティ)。アニメ・ゲームなど日本のオタク文化に並々ならぬ関心を抱くアメリカ人だ。 「んん~? ヒヨリ、どうしましタ? なんだかゲンキないでス」 「まあ……色々あってね」 「いけませんッッ!!」 「どわっ!? ……いきなり耳元で怒鳴らないでよ」 「ヒヨリはこの国が誇る『萌え』のショウライをになう一人ではないですカ! そのあなたがそんなブルーなカオをしているなんて、これはコッカテキソンシツでス!」 「いやいや、ただの同人作家に大げさすぎ」 「ノー! 大は小を兼ねるでス!」 「間違ってるからそれ」 ひよりの突っ込みも意に介さず、パティは一切テンションを落とすことなく捲し立てていく。普段のひよりなら付いていけないこともないのだが、今は相手をするのが辛かった。 「……ヒヨリ、ホントにチョウシわるそうですネ」 ひよりの様子に気付き、パティは声のトーンを落とした。暴走しがちだが空気は読めるらしい。 「ひょっとして何かビョーキですカ?」 「そういうわけじゃないけど……気持ちの問題、かな」 「なるほド。メンタルがモンダイなのですネ……」 しばらく顎に手を当ててマンダムしていたパティは、何か思いついたかポンと手を打った。 「そういうときはキブンテンカンがヒツヨウでス!」 「気分転換って……」 「善は急げでス! Let's go!!」 「ど、どこに?」 「決まってまス! 萌えの聖地・アキハバラですヨ!」 「ええっ、今から!?」 「もちのろんでス! ワタシはほぼ毎日通ってますヨ」 そう言ってパティは秋葉原までの定期券を見せてくれた。気合いの入ったオタクぶりには頭が下がる。 スイッチの入ったパティに引っ張られながら廊下を駆け抜け、昇降口に到着。 「さあさあ、聖地に行くですヨ~☆」 「うーん……まあ、それもいいかな」 多少は気晴らしになるかもしれない。せっかくなのでひよりはパティに付き合うことにした。 とその時、 「あれ、田村さん?」 「!?」 聞き慣れた、しかし今は色んな意味で刺激の強すぎる声。 ゆたかとみなみが連れ立ってそこにいた。今から帰る所だろうか。 「今日はもう部活終わったの?」 「う、うん。ちょっと事情があって早引けというか……」 「あ、ひょっとして具合悪くなったとか? 田村さん、最近あんまり顔色よくなったから……」 ゆたかの心配そうな表情を、ひよりは真っ直ぐ見ることができない。見ると顔が熱くなって赤くなって、とても平常心ではいられないだろうから。 客観的に見て、これが恋以外の何なのだろう。 「そういうのじゃないから……えっと、それじゃあ」 ひよりは逃げ出すようにその場から駆け出していた。 いきなり走り去るなんて、きっと変に思われただろう。だがどうしようもなかった。 最近はまともな会話を交わすことすら少ない。このままではいずれ友人関係すら消えるだろう。むしろきっぱり疎遠になってしまえば、今のように思い煩うこともなくなるのだろうか。……いや、余計悪化しそうな気がする。 「ヒヨリ~!」 校門を出てとぼとぼ歩いていたひよりの背後から、呼びかける声が聞こえた。振り向くと、パティが走ってきていた。 「どうしたですカ? ワタシをおいていくなんてひどいでス」 「ああ、ごめん」 「きゅうにはしりだしたりしテ、ユタカもミナミもおかしがってましたヨ」 「……だろうね」 重い気分で頷いた時、携帯電話の呼び出し音が鳴った。ひよりの携帯だ。 「……岩崎さん?」 表示された番号は、さっき昇降口で別れたばかりのみなみのものだった。 「……もしもし」 『今、どこにいますか?』 「校門出て少し歩いた所だけど」 『じゃあすぐに追いつきます。話があるので』 「え、あの、小早川さんは……」 『私一人です。それでは』 一方的にそれだけ告げると、電話は切られた。みなみの口調はいつも通り、抑揚の少ないクールなものだった。しかしどこか、険のようなものを感じた。 「パティ、悪いんだけど、岩崎さんが話があるって……」 「わかりましタ。テキトーにひまをつぶしてるので、おわったらレンラクしてくださイ」 しばらくして、みなみが小走りにやってきた。 「岩崎さん、話って?」 「単刀直入に聞きます。あなたは最近、ゆたかを避けていませんか?」 「!!」 いきなり単刀を直入される身にもなってほしいと、しゃっくりしたような表情になりながらひよりは思った。みなみは話を続ける。 「ゆたかは……気に病んでいる。田村さんに嫌がられるような、怒らせるようなことをしたのではないかと」 「そ、そんな……」 「私から見ても、最近の田村さんはゆたかを避けているように見えます」 確かに、分からないはずがない。気付かないはずがない。こうなるのは必然と言えた。 「答えて下さい。田村さん」 本物の射抜くような眼光というものを、ひよりは初めて見た。それなりに付き合いを経た今なら分かる。ほとんど無表情で、みなみは怒っていた。正確には怒りかけていた。もしも、ひよりがゆたかを傷付けるようなことがあれば、みなみは許さないだろう。絶対に。 「あの、私は……」 ひよりは逡巡する。何と言えばいいのか。ゆたかを避ける意図は無かった。だが結果的にはそれをしていた。言い訳のしようもないほどに。 「私は……小早川さんを…………」 何も言えない。 「…………ごめん」 「……何故そこで謝るんですか?」 「今はまだちょっと待って欲しい。自分でも整理できてないから……」 「わけが分かりません。私はあなたがゆたかを避けているのか、と聞いています。答えて下さい」 「……避けるつもりはなかったけど、結果的にそうなってた、かも」 「それは何故ですか?」 もはや詰問だ。無表情だが、みなみは明らかに苛立っている。だが同時に、友達のひよりにこんなことをしていることを悲しんでもいた。ひよりは俯いたまま、首を横に振る。 「……言えない」 「……」 みなみは目を閉じ、ゆっくりと息を吸い、そして吐いた。 「田村さん、あなたは――」 「岩崎さん」 ひよりがみなみの言葉を遮った。 「私は小早川さんを傷付ける気は絶対に無い。だから何とかする。何とかするから……今は待って」 「……」 二人は真っ直ぐに目を合わせたまま、しばらく沈黙していた。 「……分かりました」 頷いたみなみの目に、猜疑の色は無かった。 「ではまた明日、学校で」 みなみはひよりに背を向け、歩いていく。ひよりはただ黙ってそれを見送った。「また明日」と、今はまだそう言ってくれる。これから事と次第によっては、そんな言葉も掛けてくれなくなるかもしれない。 「……嫌だな」 友達を無くすというのは、辛い。 みなみと別れたひよりは、とぼとぼと俯き加減に一人で歩いていく。 不吉なことに、脳裏では今までのゆたかとみなみとの思い出が走馬燈のようによぎっていた。多分、死にはしないと思うのだが。 (……そもそも、何で私はあの二人と友達になったんだっけ……?) 『蜜にすいよせられる蝶のような』……というフレーズを思い出す。他でもない自分で言っていたことだ。 「……そうか」 元々はあの二人が、あんまり仲睦まじくて、あんまりネタとして美味しすぎたから、接触することが多くなったのだ。友達になった理由としては、あまり上等でないと思う。 事実、あの二人をモデルにした漫画も何作か描いてきた。 ひょっとすると自分は、あくまで観察者を気取りながら、あの二人を羨ましいと思っていたのだろうか。 「ヒ~ヨ~リ~」 不意に後ろからかけられた恨めしげな声。 「あ……パティ」 「あ……パティ、じゃないですヨ! 今日だけでおいてけぼり二回はひどすぎまース!」 「ごめん……」 謝る言葉にも元気がない。 「あともう一つごめん。アキバ行きだけど、今日はもう気力が続きそうにないや。また今度ってことで」 「そうですカ? それならしかたないですネ……」 「うん。それじゃ……」 「ストップ! 途中までご一緒するでス」 「え、でも……」 「ヒヨリ、さっきよりワをかけてつかれたカオをしてまス。ワタシ、ベリーベリー心配でス」 「……そう」 そんなわけで、ひよりはパティと二人、並んで家路を歩いていく。 「ひょっとしてミナミとケンカしたですカ?」 「ううん。そうじゃないけど……」 いっそ喧嘩でもした方がよかったかもしれない。そんなことを思いながら言葉を濁す。 「ヒヨリ、それはよくないでス」 「え……」 「なにか言いたいことがありそうなのに、なにも言わずにだまってしまいまス。そういうのすっきりしないでス」 「……ごめん」 「あやまられてもしょーがないですヨ」 「……そうだね」 力なく笑う。お節介でも色々と気を遣ってくれているパティに、こんなことしか言えない。自分で自分が情けなくなる。 「ヒヨリ。なにかなやみがあるなら、イッパツぶっちゃけてみたらどうですカ? 案ずるより生むがキヨシ、というコトワザもありまス」 「使い方は間違ってないけど、肝心な諺自体が間違ってるから」 どこでヤスキヨが混同したのかと呆れながら、肩の力はいい感じに抜けた。 イッパツぶっちゃける……確かに、腹に溜め込むよりよほどいいかもしれない。 「……急に変なこと聞くけど、パティには好きな人っている?」 「イエ~ス! たくさんいるですヨ。ヒヨリのことも好きでス」 「いやそうじゃなくて……その……別の意味でさ」 「ステディですカ? ん~……いますヨ」 「いるんだ。どんな人」 「ずばり『萌え』でス!!」 「へ……?」 「『萌え』こそがワタシのステディ! この国でめぐりあった愛しいヒトなのでス!」 「いや、萌えは人じゃないっていうか……」 「こまかいことはきにするなでス!」 まあ、本人が満足ならそれでいいのかもしれない。 「ヒヨリのなやみは恋のなやみなのですカ?」 「……うーん……」 しばらく悩んだ末、ひよりは口を開いた。 「……これから私が話すことはさ、全部、仮のこととして聞いてくれるかな」 「ンー? たとえ話、というやつですカ?」 「そう。例えばの話。出来れば聞いた後、忘れてくれたら嬉しい」 「OKですヨ」 パティは笑いながら頷く。しかし態度は軽くない。ひよりも小さく笑って頷き、そして話し出した。 「自分でもよく分からないけど、多分、好きと思える人がいる」 「What? それは好きでいいんじゃないですカ?」 「まあね。好きな人だよ。でもその人には、もう私以外にとても好きな人がいて……つまり、片思いなわけ」 「ふむふむ……」 「あと、その好きな人っていうのは……何というか、結ばれようが無いっていうか、好きになってもどうしようもなくて……」 「つまりそれは……禁断の恋、というやつですカ?」 「うん、そう。それで」 飲み込みが早いというより、パティは元々そっちの気があるから分かり易いのかもしれない。 「つまり二重に障害のある恋をしているわけ」 「なるほど。萌えるテンカイですネ」 「他人事なら私もそう思うよ。でも、実際こうして悩む身になるとさ……きついよ。色々と。考えてもしょうがないのに考えちゃって、頭の中がぐちゃぐちゃになる」 そのお陰でゆたかともみなみとも疎遠になりかけ、危うく普通の友情すら壊れるかもしれない。 一体どうすればいいのか。考えても考えても―― 「ヒヨリ。だれかを好きになるのは、そんなに苦しいことなのですカ?」 「え……」 パティの問いはごく普通に、常識を聞く調子でしかなかった。 「人でもモノでも、何かを好きになるのはとてもハッピーなことのはずでス。ハートがうきうきして、おどりたくなるようなそんな気持ち、それが好きということではないですカ」 「いや、でも……」 「余計なことはあとでどうとでもすればいいでス」 今まで散々悩んできたのを「余計なこと」の一言で切り捨てられた。呆然とするひよりをよそに、パティは話を続ける。 「まずヒヨリの気持ちでス。ヒヨリはそのヒトが好きなのですネ?」 「う、うん……」 「じゃあまずその気持ちをつたえるですヨ」 「伝えるって言っても……だってその人は――」 「ああもうっ、まどろっこしいことを言うなでス! ラヴ・即・斬!!」 「斬ってどうする。……ってパティ、その台詞、るろ剣じゃなくて漢式の方?」 「萌え系だけではなくタカクテキに日本の文化をまなぶこともタイセツですからね」 それでも漫画・アニメ・ゲームに偏りまくっているが。それはさておき。 「かんがえてどうにもならないなラ、いちかばちかぶつかるしかシュダンは無いのでス」 「……」 確かに、パティの言うことは分かる。恐らくそれだけが現状を動かす唯一の方法。 だが問題が一つある。 その方法を取るには、多大な勇気が必要ということだ。 「ヒヨリ。昔の日本人が、こんなときにふさわしいコトバをのこしているですヨ」 「……どんな?」 「『考えるな。感じるんだ』」 「いやそれ隣の国の人だよ」 「OH! まちがえましタ。えーと……あ、そうそう。『我、事において後悔せず』でス」 「宮本武蔵か……よく知ってるね」 「空手バカ一代のマス・オーヤマも、このコトバにユウキづけられてまス」 「ホントに色んな漫画読んでるなぁ……」 「ワタシもアキバでショッピングをするとき、このコトバになんどもあとおしされましタ。このDVDを買えばあのドラマCDは買えない……どっちを選べばいいのか、まさに究極の選択! そんなときワタシのあたまのなかでみえないだれかがささやくのでス! 『逆に考えるんだ。両方買っちゃえばいいやと考えるんだ』と……ごはん代とかへらせばわりとなんとかなるものですネ」 「それ、宮本武蔵あんま関係ない……っていうか……」 何か、ひよりにとって激しくデジャヴを感じるエピソードだ。しかし深く考えるのはやめておく。 「とにかくワタシが言いたいのは、なやむひまがあったらトッカンするのでス! 奇跡を待つより捨て身の努力! ヒヨリにはきっと萌えの神様の御加護があるでス!」 パティは手の平で勢いよくひよりの背中を叩いた。痛くもあったが、小気味よい感触だった。 「……そうだね。やってみるよ。ありがとうパティ」 「どういたしましてでス。ではワタシはこのへんでシツレイするでス」 「うん。また明日、学校で」 「はい、また明日」 カラリとした笑みとともに手を振って、パティは歩いていった。 ひよりは携帯を取り出し、番号を選び、コールする。呼び出し音がしばらく鳴った後、相手が出た。 『もしもし、田村さん?』 「急にごめん。小早川さん、今どこにいるの?」 『駅のすぐ前だけど……』 「それじゃあ、悪いんだけど少しだけ待って貰える? 話があるの」 『電話じゃダメなの?』 「うん。直接話したいから。それから、岩崎さんはいる?」 『ううん。何か学校で、用事があるって別れたから』 「そう……」 ひよりを問い詰めようとしたのは、ゆたかに黙っていたのだろう。 『みなみちゃんもいた方がいい?』 「いい。話は小早川さんにだから。一人でいて。それじゃ、すぐそっちに行くね」 電話を切るやいなや、ひよりは駆け出した。会って、ゆたかに何と言うのか、ほとんど何も考えてはいない。考えても分からないのだから、当たって砕ける他にない。 生まれて初めて本格的な漫画を描こうとした時に、少しだけ似た気持ちで、ひよりは駅へ向かい走っていった。 ゆたかは律儀に駅前のベンチに座って待っていてくれた。ほとんど全力疾走してきたひよりは、息を荒げながらもまず謝る。 「はぁ……はぁ……ごめん、待たせて」 「ううん。それより話って何なの?」 「ちょっと待って……」 ひよりは体を曲げて膝に手を当て、呼吸を整える。ここまで走ってくるのは、完全文化系・インドア派なひよりにとって、かなりきつかった。 「田村さん、これ」 「え……」 顔を上げると、ゆたかがつめた~い缶ジュースを差し出していた。ひよりがへばっている間に買ってくれたらしい。 「あ、ありがとう……」 おずおずとした手付きでそれを受け取る。 「どういたしまして」 相変わらず、ゆたかの笑顔は見ている側の頬まで緩むようだ。だが今のひよりにはその笑顔があまりに眩しい。思わず目をそらしてしまいそうになる。 ひよりは受け取ったジュースを一気に飲んで人心地つく。もちろんちゃんとジュース代は払った。待たせた上におごって貰うなどさすがに出来ない。 「それで田村さん、話って?」 「うん……あのね……」 唾を飲み、小さく深呼吸。 「最近、私さ……小早川さんを避けてるみたいな所があったでしょ」 「……えっと、それは……」 どう答えるべきか困った様子で、ゆたかは頬をかく。否定しないあたりが正直だった。 「その原因は、小早川さんの側には何も無いの。全く、私の個人的な事情で……理由はとにかく、嫌な気分にさせてたと思う。本当にごめんなさい」 深く頭を下げる。 「…………」 何秒か、何十秒か。お互い何も言わないまま時間が過ぎていく。頭を下げているため、ひよりからゆたかの表情は見えない。 (……こ、この沈黙はきつい……) ひよりの背中に嫌な汗が流れる。ゆたかは怒っているのではないだろうか? ひょっとするとこのまま背を向けて去ってしまうのでは……辛い想像が脳裏をよぎる。 「……良かった」 「え?」 呟いた声に顔を上げると、ゆたかはホッと胸をなで下ろしていた。 「私、ずっと田村さんに何か嫌なことしたんじゃないかと思ってて……」 「そ、そんなことない! ホント、こっちの事情だから」 「それって、どんな事情だったの?」 「うっ……そ、それは……その」 言葉に詰まる。 ここで言ってしまうべきか。自分の気持ちと、今までの葛藤を。そうすればもう引き返せない。 「……くっ」 額に脂汗が流れる。 いちかばちか、賭けるか。勝負に出るか―― 「……いいよ。田村さん」 逡巡していたひよりに、ゆたかがそう言った。 「言いにくいことなんだよね? 無理には聞かないから」 「そ……それは、確かに、そうなんだけど……」 「じゃあ、もういいよ。気にしてないから」 「……そう? 怒ったり、してない?」 「うん。だから田村さん。これからも友達でいてね」 にっこりと無邪気に笑い、ゆたかは手を差し出した。 (…………ああ、そうか――) ひよりの胸中に、何とも言えぬ感慨が浮かぶ。今さら、自分が何を望んでいたのかに気が付いた。 これでよかったのだ。 友達でよかったのだ。 自分が一番怖かったのは、こんな当たり前の関係でなくなること。そしてもうこの笑顔を向けて貰えなくなることだったのだ。 ゆたかのことは好きだ。それはもう疑わない。だけどゆたかが自分のものにならなくても構わない。 今まで通り、ゆたかとみなみが仲睦まじく、自分はそれを眺めている、そんな関係でいい。 たまに羨ましく思うかもしれない。 だけどそれでもいい。 自分には漫画がある。 そんな感情は全て創作の熱に昇華してしまえばいい。 「……うん。これからも、友達でいたい。小早川さんとも、岩崎さんとも」 ひよりはゆたかの手を取り、優しく握り合った。 「……小早川さん」 名前を呟いた途端、ひよりの目から涙が零れた。自分でも全く不意に溢れ出ていた。 「た、田村さん、どうしたの?」 「あれ……何で涙……」 眼鏡を外し、何度か袖で拭うが、涙は止まらない。 「あの、これ使って」 ゆたかがハンカチを差し出す。何だか今日は色々な物を差し出されてばかりだ。 「あ、ありがとう……」 ゆたかから受け取ったハンカチを目に当てる。花柄がプリントされた布地に、じわりと涙がにじむ。 「ねえ、小早川さん」 両目にハンカチを当てたまま、ひよりが話をする。 「私、小早川さんのこと好きだよ」 全く自然に、それだけを伝えることが出来た。 「私も田村さんのこと好きだよ」 だからゆたかも自然に、それだけを返してくれた。 その「好き」でいい。今のひよりは素直にそう思えた。 涙は止まっていた。眼鏡を外した視界に映るゆたかの顔は、微妙にぼやけている。だけど、笑ってくれているのは分かった。 「ハンカチありがと。明日、洗って返すね」 「別にいいよ。それぐらいなら」 「いいからいいから」 涙と一緒に、心の中でわだかまっていた色々なものが、流され、消えていったのだろう。 ひよりはようやく、自分に戻れた気がした。 「それじゃあ小早川さん。また明日、学校で」 「うん。また明日」 翌日の放課後。ひよりはアニ研の部室を勢いよく開いた。 「こんちはっス、先輩」 「おっすひよりん。……と」 こうは入ってきたひよりを一瞥するなり、読んでいた雑誌を机に置いた。 「何? 一日でずいぶんいい顔になっちゃって」 「昨日は久々によく眠れたっスから。体調ばっちりっスよ」 グッと親指を立てるひより。その晴れやかな表情を見て、こうはこっそり安堵の息をついた。 「悩み事は意外に早く解決したみたいだね」 「お陰様っス。というわけで、例の命令なんスが……」 「ん? 何?」 「だから漫画禁止令を解いてほしいっス」 「ああ、そういやそんなの出してたね」 「そんなのって……」 ひよりにとって、下手すれば禁断症状を起こしかねない事態だったのに、軽く言われて唖然となる。 「もう全然大丈夫みたいだし、今まで通り好きなだけ描いていいよ。そもそも本気で描きたい人には、誰が何と言っても止めようが無いしね」 「自分は昨日、先輩の言い付けを守って描かなかったスよ……」 「その分のバネを今日活かせばいいじゃん」 「もちっスよ! 今の私は絶好調っス! 描きたいことがいっぱいあるっス!」 「おお、言ったな。じゃあ次の部誌は大増ページでいこうか。もちろんひよりんの負担で」 「い、いや……そのへんは現実的なスケジュールとか気力体力諸々を考慮してもらえればありがたいかなー、と……」 「何言ってんの。脳内麻薬と脳内神が降りればそれくらい余裕でしょうが」 「そう都合よくは降りてこないっスよ!」 出来ると押すこう、無理と引くひより。果たして勝敗はいずこに。 兎にも角にも、頑張れひよりん。 おわり コメントフォーム 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/bargain/pages/175.html
■二〇禾予ほんとうのプロローグ・前編「パルプが蟹を視た」■ 「そんなことないよ。パルプちゃんは十分メイン・ヒロインっぽいよ!」 最近知り合いになった二〇三七二三さんは、そう言ってくれた。 本当に、そうだろうか。 魔法王国マジカニアの第一王女、パルピューラ・マジカニア・レガリス。通称、パルプ。 一年間の人間界修行を終え、愛する人と結ばれ、順当にいけば次期女王となるはずである。 奇跡の真魔法『パルプ☆マジカニカ』の使い手であり、さらには“転校生”となって全てを見通す<未来視>を手に入れた。 カタログスペック的にはメイン・ヒロイン級と言っても差し支えないはずである。 だが、パルプが愛した少年はハーレムの主であった。 本命は<女王蜂>こと“鬼嫁”埴井葦菜。 対抗馬は“所有者”紫ノ宮緒子。 少なくともこの二人には、現状では明らかに遅れを取っている。 他にも恋敵は多く、パルプの席次はどれだけ甘く見積もっても5~6位だろう。 少年の愛を受ける、ただ一人の女性となるべくパルプは奮闘を続けているが、<未来視>に映るのはハーレムエンドばかりだ。 もしかしたら、自分はサンシタ・ヒロインなのではないだろうかと、パルプは思いはじめていた。 たわむれに。 ほんのたわむれに。 パルプは<未来視>を使って、もし自分が二家の一員となったらどうなるのかを視てみた。 パルプは、ありえない未来を視た。 その世界では、パルプは「二〇禾予」と名前を変え、両腕をサイバネ☆クローに置換してサンシタ全開で暴れていた。 王家の誇りも失い、頭脳指数も深刻に低下しているようだ。 恐るべし、サンシタ・イニシエイション。 「うわー、これはない。こんな未来もありうるなんて酷いなぁ」 パルプは使い魔のマリンモンキー、リミラヴと一緒に予知の内容を話し合った。 「アカン。このルートは絶対に選んだらアカンわー」 「そうだよねー」 「でも『蟹ちゃん』もこれはこれで結構かわいいやん?」 「えー、やだよう」 「一応、『蟹ちゃん』でもハーレムエンドは行けるらしいで。ハジメはんは心が広いなぁ」 「それだけが取り柄ですからね」 「“それだけ”は酷いやろ」 「ふふふ」 「あははは」 ■「パルプが蟹を視た」■ おわり・後編に続く ■二〇禾予ほんとうのプロローグ・後編「パルプが闇を視た」■ 未来を見通すパルプの目に映るのは、絶望ばかりだった。 繰り返される天変地異。蔓延する悪疫。地球全土を焼き尽くす核戦争。絶滅寸前の人類は、十束学園の魔人たちに支配され虐げられる。 ……そんなことは、パルプにとって些細なことだった。 もとより人類滅亡は大魔法使いエリオーンが予言した「ありうる未来」にすぎず、それゆえマジカニアは地球から切り離された異世界に退避しているのだ。 たとえ地球が消滅しようとも、マジカニアは滅びない。 パルプの絶望は、世界でただ一人の愛する少年が死ぬことである。 希望崎学園で起きた、武器バーゲンセールによるハルマゲドンに巻き込まれ、一一は死亡する。 それが、未来を見通すパルプの目に映った暗黒の未来であった。 あらゆるルートを検討した。 金光不動を殺しても、希望崎学園を爆破消滅させても、ハルマゲドンの阻止こそできるものの彼の死だけは覆せなかった。 埴井葦菜の手を借りても、紫ノ宮緒子の手を借りても、“転校生”の誰の手を借りても、彼の死だけが不動の特異点であった。 あらゆる場面で『パルプ☆マジカニカ』を撃ってみるデバッグ作業じみたルート検証すら試してみた。 ハーレムエンドが嫌だなんて、私はなんて贅沢だったんだろう。 何だってする。どんな犠牲も厭わない。 彼の命が助かるのなら、私が死のうとマジカニアが滅びようと構わない。 最後に幸福な未来が視えたのはいつだったろう。 記憶を手繰り、パルプは「蟹ちゃん」に辿り着いた。 完全なるサンシタ・ヒロインに姿を変えて希望崎学園に介入することで、時の流れを擾乱する。 それが、パルプが見つけ出した、ハッピーエンドに至る唯一のルートだった。 王家の誇りを捨てるだけで彼の命が助かるのなら、それこそバーゲン(お買い得)そのものだ。 パルプの胸には、自分が自分でなくなることに対する不安はほとんどなかった。 愛する人のことを救える喜びに満ち溢れていた。 ……そして、マジカニア第一王女、パルピューラ・マジカニア・レガリスは、二家の扉を叩いた。 ■二〇禾予ほんとうのプロローグ■ おわり
https://w.atwiki.jp/freedamhg/pages/32.html
駅のホーム 【具現化系】 ニヤ笑いしている兄ちゃんの話から始まる 一人の女の子に電車の飛び降り自殺の霊障が起きたらしい トラックタイム0 05 17に巨大な女の顔が映りこむ これが霊より怖い・・・。 霊現象は電車の隙間に手が写りこんだもの OPにしてはまぁまぁの出来。 さぁここで検証してみる 手の形からして「男性」ではないだろうか? 長さ的に少し大きいので身長は175~180といったところか・・・ 女性ではないのがやや不満?w
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/290.html
夜中に部屋で一人書きつづった文章というのは、朝になって読み返すと顔から火が出るほど恥ずかしいということがよくある。手紙にしろ何にしろ。文章とも限らないかもしれない。 とかく、夜というのは人の心を惑わせる。 「な……なんじゃこりゃあー!?」 軽やかな小鳥の声がどこからともなく響き、清々しい空気が染み渡る朝、ひよりは松田優作ばりの叫びを上げた。 昨夜は久々に脳内麻薬ビンビンで、通常の三倍の速度で原稿執筆が進んだ。が、あまりにナチュラルハイだったためか、どういう内容を描いていたのか、大半の記憶が抜け落ちている。 記憶がなくても、出来上がった原稿は今手元にあるから問題は無いのだが。 「大ありっスよ!」 ひよりは原稿を震える手で持ちながら再度叫ぶ。 「なんなんスかこのあり得ないカップリングは!?」 どうやらカップリングに難ありらしい。どんな内容かちょっと覗いてみよう。 + + + 茜色の光がじんわりと差し込んでいる、放課後の教室。グラウンドに練習を終えた運動部員の姿がちらほらと見られるぐらいで、校舎に人気は無い。 じきに下校時刻を告げるチャイムが鳴る。夕暮れ特有のアンニュイな空気が漂う中、小早川ゆたかは微妙に困惑した表情で立っていた。 「あの……大事な話って、何かな?」 問われて、窓の傍、夕日を背にして立つ生徒――田村ひよりは、ゆっくりとゆたかに向かって歩を進める。 眼鏡の下の表情は真剣そのものだ。ゆたかが気押されたように身を引きかけると、ひよりはその肩を掴んで止めた。 「小早川さん……いきなりこんなこと言って、怒るかもしれない。岩崎さんにも、悪いと思ってる」 いつものひよりらしからぬ切迫した声音は、抜き身の刃を突きつけられたような錯覚すらゆたかに感じさせた。 「田村さん……?」 「小早川さん……あなたが、好き」 その言葉と同時に、ひよりはゆたかの体を引き寄せ、抱きしめた。小さな体は力を込めれば壊れそうに華奢で、それでいて柔らかくしなやかな感触がした。 「! あっ、あのっ……」 有無を言わさず拒否されるかもしれないと、ひよりはそう覚悟もしていた。だがゆたかは拒否するよりもまず、驚き、戸惑っていた。ひよりに抱きしめられながら、本気で困っている。 まだ何も知らない少女のようにあどけなく、うぶな反応。こんな純心さが、ひよりには何よりも愛しい。 ひよりは本気だった。本気でゆたかに告白して、今、本気でゆたかを抱きしめている。 「た、田村さん……っ!」 ようやく事態の緊急性が飲み込めてきたのだろう。顔を真っ赤にしたゆたかは微かに震える体をよじり、逃れようとする。ひよりはすんなり腕を緩め、解放した。 「あの……田村さん、私は……――っ!?」 言葉を継ごうとしていたゆたかの唇を、ひよりのそれが塞いでいた。 強引で、卑怯でもあった。後悔も、するかもしれない。 だけど我慢は出来なかった。無理矢理に唇を重ねたまま、ひよりはもう一度ゆたかの肩を引き寄せた―― 「何で小早川さんと私なんだよ何で小早川さんと私なんだよ!?」 何で二回言うんだよ何で二回言うんだよ。 「ここは岩崎さん入れてみな×ゆたで決まりでしょうが! 夕焼けに映える放課後の教室! 雰囲気満点なロケーション! それが何で――……馬鹿か私はーっ!」 朝からテンション高く絶叫するひよりだが、防音は割としっかりしてあるので近所迷惑にはならない、はず。家族は迷惑だろうが、末っ子の奇行にはある程度理解があるというか、慣れている。 ゆたかやみなみに限らず、身近な人間をモデル(あくまでモデル)に漫画のネタを作るのは今まで何度もやってきた。 しかしガチ百合で自分×ゆたかのカップリングというのはもう、想定の範囲外もいいところだ。素面では絶対に描けない。 それを描いてしまった。悪魔の囁きとでも言うべきか、無意識だったとはいえ、己のペンで己とゆたかの情事を。恥ずかしさで言えば中学時代に設定だけ作ったファンタジー(黒歴史)に匹敵する。 「しかも手前味噌だけどクオリティ高ぇーっ!」 デッサンなどの基本的な所から、表情の描き分け、コマ割、全体の構成なども今まで描いてきた自作品の中でトップクラスと自負していい出来映えだ。ビバ脳内麻薬。凄いぞひよりん。 「褒められても嬉しくないっス! こんなの人に見せられないしーっ!」 喚きながら頭を抱え、ひよりはベッドに突っ伏し、枕に顔を埋めた。 神:人がせっかく褒めてるのにその言い草は何ですか。 ひ:あっ、妙だと思ってたら神様だったんスか。 神:神様だったんスよ。それにしてもさっきから何を騒いでいるのです。 ひ:だって……さすがにこんな、自分を主人公にした百合漫画を人目にさらすわけには……。 神:私小説と似たようなものではないですか。 ひ:いや、そういう問題じゃないっス……ああ、何で私はこんなの描いちゃったんだろ。 神:それはあなたが描きたいと思ったからです。 ひ:へ? ……いやいやいや。確かに描いたのは私っスけど、昨日は何か憑いてたみたいな状態だったから、ほとんど無意識で―― 神:つまり無意識下に、あなたはこういう願望を抱いていたのですよ。表面に現れたのが、その漫画です。 ひ:……そ、それってつまり、私が……無意識に小早川さんを……? 神:そういうことですかね。ところでいいんですか? ひ:え? 何がっスか? 神:時間。 「あ゛ーっ!?」 時計を見ると、普段ならとっくに朝の準備を済ませている時間だった。だというのにひよりは寝間着のまま、着替えも洗顔も歯磨きも朝食も何も済ませていない。 こんな時にこそ通常の三倍で動けるといいのだが、世の中はそう都合よく出来てはいなかった。 「セーフっ!」 どうにか始業ベル前に教室に飛び込んだひより。肩で息をしながら自分の席へ歩いていく。 「おはよう」 「あ、岩崎さんおはよー」 いつも通りにみなみと挨拶を交わす。続いて―― 「田村さん、おはよう」 「!!」 過剰に反応して、ひよりはうっかり椅子からずり落ちそうになる。 「あれ? どうかしたの?」 「い、いや、何でも無いから……おはよう小早川さん……」 ひよりは視線を明後日の方向へ向けながら、ゆたかに挨拶した。 怪訝な顔をする二人に、ひよりは平静を装おうとする。しかし内面では滅茶苦茶に焦っていた。 (うあああ、何か小早川さんの顔が真っ直ぐ見られないーっ!) ゆたかの顔を見ると、あの漫画の内容がフラッシュバックして、どうにもこうにも居たたまれない気持ちになってしまう。 「田村さん、どうしたの?」 「っ!」 俯かせていた顔をゆたかに覗き込まれ、心臓が止まりそうになる。何か言おうとするが、口をパクパクするだけで言葉が出てこない。 「もしかして体調がよくないとか……」 保健委員でもあるみなみが心配そうに声を掛ける。 「えっ、そうなの?」 「い、いやそんなことは――」 「ちょっとごめんね」 「へ……?」 ゆたかはひよりのおでこに手の平を当てた。熱を計る、それだけのありきたりな行為なのだが、ひよりの顔はたちまち紅潮していく。 「ちょっと熱があるみたい」 「いやいや、それはほら、さっきまで遅刻しないよう走ってきたから、それでだよ! うん!」 「でも――」 念のため保健室に……と言いかけたゆたかだが、ひよりは大丈夫だと言い張る。折良く、チャイムが鳴った。 「それじゃあ、無理しないようにね」 「うん、ありがと……」 ひよりはどっとため息をついた。 (確かにそっち系の漫画は描くし、読みもするけどさぁ……リアルでそういう趣味は無かったはずだよね、私……?) 頭の中を思考が渦巻く。 確かにゆたかは可愛らしい。容姿も性格も魅力的と言っていい。だがひよりはあくまで友達として見てきた。そのはずだ。 それがどうして、ゆたかの顔を見るだけで体が熱くなり、ひたすら狼狽してしまうという、絵に描いたような状態になっているのか。 本当にあの漫画の内容は、自分が無意識に願望として抱いていたものなのだろうか。 (あ~……分かんないよぅ……) 自分の気持ちが自分で分からず、ひよりは頭を抱える。悩んでいた。ひたすら悩んでいた。 悩んでいたが、頭の片隅には、一つのプラス思考が働いていた。 即ち、この葛藤も漫画のネタに出来るのでは、と。 何はともあれ、この先しばらくの間、ひよりは自分が散々漫画のネタにしてきた世界と向き合い、悩むことになりそうだった。 おわり コメントフォーム 名前 コメント 自分をネタの生贄にできてこそ真のクリエイターなのだよ、ひよりん☆(ヌフフ -- 名無しさん (2011-04-11 23 01 31)
https://w.atwiki.jp/chicken_shio/pages/19.html
組織? ランジア シジウム 空木 ロワ・マージュ メルキオール その他 枝垂
https://w.atwiki.jp/asuenokioku/pages/37.html
だあだ
https://w.atwiki.jp/freedamhg/pages/34.html
誘拐 大阪までご苦労さん!女性スタッフ・・・ 確か2ちゃんねるを荒らしている奈美も鎌田も女だったな・・・。 この綺麗な顔しているヤツはたぶん裏では結構やってるな! いやそっちの意味では無く・・・ ドSってことですな・・・言い方や仕草などでわかる。 あ・・・スタッフの女性ってMOVIEに出ていたあの子じゃない? 違うかもw しかし投稿者の母親の髪型に気になる。 投稿者の友達(まいちゃん)は神隠しと言っているが 北朝鮮路線も考えていただきたいな・・・ それにしてもこの失踪したお母さん若そうだなカッカカカカカカ 心霊現象は顔が歪むシリーズらしいが そのシリーズのナンバー1は「タイムマシン」だぜフォフォフォフォ 勝てるのか? それではご覧いただく!!! おぉ!なんじゃこりゃ!!! この子完璧に何者かに憑依してるな!!! なぜならローソクを消した後隣の子がぶつかって 「あれ?・・あれ?」ってな感じに少し戸惑う神隠しのまいちゃん なぜそうなったのか??
https://w.atwiki.jp/progolf/pages/1898.html
春日居ゴルフ倶楽部をお気に入りに追加 楽天GORAでゴルフ場を探す 北海道・東北 関東 北陸 中部 近畿 中国 四国 九州・沖縄 海外 春日居ゴルフ倶楽部とは 春日居ゴルフ倶楽部の44%は気合で出来ています。春日居ゴルフ倶楽部の30%は利益で出来ています。春日居ゴルフ倶楽部の10%は真空で出来ています。春日居ゴルフ倶楽部の8%は歌で出来ています。春日居ゴルフ倶楽部の7%は知恵で出来ています。春日居ゴルフ倶楽部の1%は砂糖で出来ています。 春日居ゴルフ倶楽部の報道 春日居ゴルフ倶楽部後編 - ゴルフ体験主義 - ゴルフコラム 日刊スポーツ - 日刊スポーツ 春日居ゴルフ倶楽部@ウィキペディア 春日居ゴルフ倶楽部 掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る 春日居ゴルフ倶楽部のリンク #bf ページ先頭へ 春日居ゴルフ倶楽部 このページについて このページは春日居ゴルフ倶楽部のインターネット上の情報を集めたリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新される春日居ゴルフ倶楽部に関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
https://w.atwiki.jp/freedamhg/pages/22.html
余命 【特質系】 S タイトルからしてやばそうな感じw 外に移っているマンションから高い位置にある病室であることが伺える でもそんなに高く建っている病院って数少ない 病棟が個室なところから余命の予感も? 入院中の彼は今は旧式となったDSを大事そうにみている 今はもっと小さくなって見やすくなったと天国の彼に言ってあげた