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ハーレム?1 2スレ目 382 ふと、寝苦しさに目が覚める。 確か、昨夜は宴会をして、酔い潰れて寝てしまったのか。胡乱な頭で記憶を辿る。 そして気付く。すぐそばに何者かの気配。 というか右腕が重い。 何かと思って見てみたら、そこには萃香が寝ていた。俺の腕を枕にして。 姿は少女…いや幼女。 その寝顔も幼い。 異なることは頭の角。彼女はこの地で一二を争う実力者、鬼だ。 ……こうして見ていると信じられないがな。 そしてようやく気付く。 左腕も動かない。そしてなにやら柔らかい。 大体予想はつくが顔を向ける。 目が合った。いや、眠っているので実際は合ってないが。 綺麗な黒髪、あどけない寝顔、穏やかな寝息。 一人の少女が、俺の腕を抱えて眠っていた。 射命丸文。この少女が今度は天狗だというんだから、わからないものだ。 しかしこれでは寝苦しいわけだ。身動き一つ取れない。 でもまあ、こんな幸せそうな寝顔を崩すこともあるまい。俺ももう一眠りしよう。 でも、一つだけ愚痴らせてくれな。 「酒臭ぇ……」 ゴスッ!!! 右から小さな拳、左から細い膝が体にめり込む。 ああ、俺が、悪かっ……(ブラックアウト 261 … …… ………うぷっ… も、もう飲めない… 「萃香…文…もう、帰っていいか?さすがにもう飲めないよ…」 「「だめ(だよ)(です)」」 「今日はとことん付き合うって約束したのは○○じゃないの。私たちがいいって言うまでだめだよ」 「そうですよ。麻雀で負けたら酒に付き合ってやるって言ったのは○○さんですよ」 「うう…にしても限度があるだろ…これで一升瓶何本空けたんだ…」 「ええーっと…23本ありますけど…」 「紫に頼んでいくつか処分してもらってるからもっと飲んでるでしょ」 「…絶対飲みすぎだろ…」 「何言ってんの?まだまだ足りないよぉ~」 「まだ序の口ですね」 「…ありえねぇ…」 ちなみに僕がこの二人に付き合う羽目になった原因である麻雀だが… もともと、紫も入れてやって僕が二人より下位になったら何でも言うことを聞くというルールで始めたその麻雀。 …南三局と南四局を回想してみよう。 南三局 親 萃香 「うーんと…⑨捨てっ」 「悪いな萃香、それだよ。ロン!立直、平和、純チャン、二盃口、ドラドラ。三倍満の24000だ」 一一二二三三①①⑦⑦⑧⑧⑨ ロン⑨ 「えぇーっ!?今日ツキすぎだよ○○…」 「ハッハッハッ、二位と9万点差でトップか。もう勝ったも同然だな」 「まだわかりませんよ。勝負は時の運とはよく言ったものですから」 南四局 親 ○○ 「うーん…發を捨てないと役が進まないな…」 四四四五五五六六六④⑤⑥發 ツモ④ 「よし、發を捨てて立直だ!」 「「ロン!」」 「…え?ダブロンかよ…」 「大三元、役満です!」 一二三④④白白白發發中中中 ロン發 「まぢかい…これで文には抜かれたのか…」 「国士無双、役満だよ!」 一九①⑨19東東南西北白中 ロン發 「え゛っ…萃香も役満かよ…って役満のダブロンってことは-68000…負けた…」 「「やったーっ!!」」 「あらあら、○○ツいてないわねぇ」 「全くだよ…トホホ…」 … …しかし、本当に役満のダブロンなんてあるんだな… …ハァ…気持ち悪くなってきた… 「○○さんの盃がぜんぜん減ってないですねぇ」 「こらぁーっ、○○ーっ、どんどん飲めぇーっ、キャハハハハハハ」 「おい、萃香やめろって。もう勘弁しt、ガババゴボゴボ…」 「盃に注ぐのもまどろっこしい、ラッパで行けーっ!」 「一気!、一気!、一気!、一気!」 「ガバババ、やめてくrゴボボボ、もういいかrゴボッゴボッ」 「キャハハハハハ、もっと飲め飲めぇーっ!」 「○○さん、今日は昼まで飲み明かしますよぉーっ」 「ゴボッ、ゴボッ…がはぁっ…ハァ、ハァ、ハァ…」 結局この幻想郷の大酒豪二人に囲まれて(半ば強制的に)飲まされた○○は、急性アルコール中毒で3ヶ月ほど寝込む羽目になったという… あとがき はい、"駄作製造機"30人目です。 今回は…イチャってません(ダメじゃん 多分萃香&文に酒に誘われたらこうなるのかな?って思って書いてみたんですが…うん、微妙。 287 「○○ーっ」 「ん?なんだい、萃香?」 「これから文と一緒に一杯やんない?」 「文と?」 「そうそう、知ってると思うけど文ってお酒強いからね。多分持ってくるお酒も美味しいよ」 「なかなか魅力的な話だな…だが断る」 「えぇーっ、何で?」 「この前麻雀で負けて飲まされたときにそのあと3週間急性アル中で寝込んだからな、お前らと一緒に飲むと癌やら肝硬変やら起こしかねない」 「別にいいじゃん、○○が飲む量を調整すれば」 「…前回はお前らが無理やり飲ませたんだろうが…」 「ん~…忘れた」 「ぉぃ…」 「じゃあこれから飲みにいくことで決定ね。さぁ行こうか!」 「いや、僕はまだ了承してない…」 「知らん!早く行こう!」 「…おっとそうだ、今日は早く帰らないといけないんだ!じゃあな、萃香!(逃走)」 「あっ、逃がすかーっ!酔夢『施餓鬼縛りの術』!」 「うわっ、鎖が巻きついて…ち、力が…抜けて…(へなり)」 「へっへーん、捕まえた~♪(引き寄せ)」 「うぅ…痛っ!萃香…引きずらんでくれ…」 「さぁ!飲みに行こうか!」 「いやーっ!攫われるーっ!」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「文~、お待たせ~♪」 「遅いですよ、危うく先に飲んでしまうところでした」 「ゴメンゴメン、今日は○○も連れてきたから(親指立て)」 「…グッ(親指立て)」 「「ふっふっふっ」」 「…帰りたい…」 「さて、今日はスピリタスっていうお酒を持ってきたんですが…」 「スっ、スピリタスって…人間界では世界一アルコール度数が大きいお酒…確か96度…」 「おぉ、いいじゃん。早速飲もう飲もう!」 「か、勘弁してくれ…」 「さぁ、○○、グビッと逝こう(盃になみなみ注いで)」 「ムリムリムリムリ!絶対ヤヴァイって」 「○○さ~ん…せっかく私が持ってきたのに飲んでくれないんですか?(上目使い)」 「うっ…でも前みたいにアル中で寝込むのは勘弁…」 「○○さ~ん…(潤み目)」 「うっ……わかったよ…飲みゃいいんだろ…」 「おっ、そうこなくちゃ!さぁさぁ飲んだ飲んだ!」 「うーん…(グビッ)」 「おぉ…流石○○、一気飲みで逝った!」 「…ッ!!!!!!!!!!ゲホッゲホッ」 「だ、大丈夫ですか!?○○さん!」 「の、喉が…焼け…ぐぁぁっ…」 「うわぁー…そんなに強いのかね?このお酒」 「○○さんが言うには人間界最強のお酒とか…」 「ゲホッゲホッ…うぐっ…がはっ(吐血)」 「「!!!!!」」 「ぐ…(倒れ伏す)」 「ちょっ、○○さん!?大丈夫ですか?しっかりしてください!」 「ちょっとこれヤバイんじゃない!?早く永遠亭連れて行こう」 「は、はい!!」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ -永遠亭 永琳の研究室- 「急性の脳溢血ね…どれだけ飲んだかは知らないけどかなり危ない状況よ」 「えっ!?死ぬかもしれないんですか?」 「最悪の場合ね…出来るだけの処置はするけど…今夜が峠ね…」 「うぅ…○○…」 「わ、私が…こんなお酒を持ってこなければ…こんな事には…」 「違うよ、文は悪くない。私が無理に誘ったから…」 「はいはい、二人とも罪の被りあいはまだ早いんじゃないかしら…ってどんなお酒を飲ませたの?」 「えっ?スピリタスというお酒を…」 「…ストレートで?」 「うん、しかも一気飲み」 「…ハァ…人間がそんな強いお酒を一気飲みしたらどうなるかぐらいわかるでしょう?確かに○○は酒に強いけどあなた達と違って弱い人間なんだから…」 「「は、はい…」」 「スピリタスは人間界では果実汁と混ぜてカクテルで飲んでいるのよ。ストレートで飲むだけでも危ないのにましてや一気飲みなんてもっての他よ」 「「…はい」」 「まぁ、薬が効いてくれれば助かるけどね…しばらく○○にはお酒を飲ませないで」 「「…わかりました…」」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「ん…」 「あら、目を覚ましたわね。もう大丈夫ね」 「あれ、僕は一体…てかなんでこんなところにいるんだ?」 「あなた、スピリタスをストレートで一気飲みしたそうね」 「うっ…あれは…その…」 「わかってる。文と萃香に無理やり飲まされたんでしょ?」 「…はい、まぁ…」 「でもねぇ…あなたもいけないのよ。一気飲みするなんて」 「…スミマセン…早く飲めば大丈夫かな?って思ってしまって…」 「全く…女の子の前でいいとこ見せたいのはわかるけどもう少し考えてね」 「…返す言葉もありません…」 「二ヶ月はお酒を飲んじゃだめよ。もし飲んでしまったら再発の恐れがあるからね」 「…ハイ…」 「「○○(さん)!!」」 「ん、文と萃香か…すまないな、心配させてしまったようで…っておわっ(抱きつかれ)」 「良かった…生きてて…(ぎゅーっ)」 「死んだら…許さないんだから…(ぎゅーっ)」 「ちょっ…君たち…苦しいって…」 「あらあら…モテる男は辛いわね…」 「そんな、ちょっと永琳さん…助けてくださいよ」 「うーん…拒否」 「ハハハ…はぁ…」 あぁとぉがぁきぃ(黙れ ども、駄作製造機の二つ名がピッタシ当てはまる30人目です 今回のは前回の続きっぽいものです。 ~チラシの裏~ 実は先日、スピリタスの一気飲みをマジでやった先輩が脳溢血で死にそうになったから…このネタは不謹慎なんですけどね… その先輩は…自分の住んでいる地域では一番酒に強いって言われてましたから… 皆さんもスピリタスに限らずアルコール飲料の一気飲みはなるべく控えてください… ~チラシの裏~ 290 ―その後、さすがに脳関連の病気だったということで、 大事をとってしばらく永遠亭に入院(?)することになった。 …なったのだが…、 文「あ、食事ですか? なら私が持ってきますよ」 鈴仙「え、でもこれちょっと食べ方が特殊な…」 萃香「はい○○、薬とお水」 ○○「いや、それ座薬だから、つかどこから持ってきたそんな毒々しい色のやつ!?」 必ずといって良いほどどっちかが見舞いに来ている。 …内容はご覧のとおりだが。 てゐ「…男冥利に尽きる?」 ○○「場合によるよ…」 まあ、これもあれだ、 永琳「本当は頭の良いこの二人がここまでねぇ… 恋は盲目とはよく言ったものね」 ということだろう。 文「あれ!? ○○さんが泡吹いてますよ!?」 萃香「うわ~ん、えーりーん!」 …だから天国のばあちゃん、向こう岸からそんなイイ笑顔で手振んなや、頼むから。 …(。∀ ゚)アレレ? ぶち壊しスマソorz 310 少し早い(?)けどクリスマスネタをば …そういえば今日はクリスマスだったな…今日の酒盛りはあの二人にプレゼントでも持っていってあげよう。 うーん…何がいいのかな? 萃香には…何がいいんだろう… 文には…うーん…… … …… ……… …………そうだ! ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ -酒盛り会場(○○自宅)- 「「「乾杯!そしてメリークリスマ~ス!」」」 「まぁ、クリスマスとか関係なしにいつも結構飲んでるけどな…」 「○○さん、そこは突っ込んじゃ駄目です」 「カタイ事言うなっての。今日は朝まで飲むぞーっ!」 「ちょっと待った、今日はクリスマスだ。だから二人にプレゼントを用意したよ」 「「えっ?」」 「ちょっと待ってて」 「なになに~?」 「○○さん、早く見せてくださいよ」 「まずは、萃香からだな」 「なんだろう…ん?毛糸の…帽子?」 「…なんか穴が開いてません?」 「萃香、君には角というものがあるだろうが…まぁ、かぶってごらん」 「おぉ…あったか~い♪」 「僕の手製だ。今日の昼からずっと編んでたんだよ。間に合って良かった」 「○○、ありがとうっ!(抱きつき)」 「おわっ、おいおい喜び過ぎだって…(頭撫で)」 「ん~♪」 「あ…萃香さんいいなぁ…」 「さて、次は文だな」 「何なんでしょう…(ワクワク)毛糸の…手袋ですか」 「新聞配達のときに使うといいよ。この時期は文ほどの速さで飛ぶととても寒いだろう。もちろん僕の手製だよ」 「○○さん…嬉しいですっ!(飛びつき&抱きつき)」 「おぅっ、文も過剰に喜びすぎだよ…やれやれ…(額をこつん&撫で)」 「う~…○○、私も撫でてよ!」 「駄目です。今は私の番ですから。んふふふ…」 「…猫みたいだな…烏だけど…(顎撫で)」 「んゅ~…ごろごろ…」 「おいおい…」 「あーっ、文やりすぎだよっ!むーっ!(抱きしめ)」 「あっ、負けませんよ萃香さん!(抱きしめ)」 「うーん…参ったなこりゃ…」 -その状態で一刻…- 「そうだ、私たちも○○さんにプレゼントをあげましょう」 「うん、そうしよっか!」 「おっ、なんだろなぁ…」 「ふふふ…○○さん、目をつぶって下さい」 「で、ちょっとしゃがんでよ」 「わかった…はい、いいよ」 「「ちゅっ(両頬にキス)」」 「ッ!!」 「…ふぅ、いいよ(真っ赤)」 「…ふふっ、恥ずかしいですね(赤らめ)」 「…うん、最高のプレゼントだったよ…さて、宴会の再開と行こうか!」 「うんっ!」 「はいっ!」 聖夜の夜…その家は翌朝の光が差し込むまで騒ぐことをやめなかった… あとがきですたい(何故博多弁? ども、クリスマスは家で一人で妄想を繰り広げる予定の"音速駄作製造機"30人目です。 今回はクリスマスということで、いつもの二人に主人公がプレゼントをする…といった設定の下、書きました。 「俺の萃香はこんなんじゃねぇ!」、「私の文はこんなものじゃないわ(?)」という方は…その文句をぜひSSにぶつけてください(何 -クリスマスツリーの裏- 290氏、どんどん幻視しちゃって下さい。僕が書くよりも名作が生まれますのでw …実はこの酒豪コンビのSSをシリーズ化しようと考えていたりする… -ここまでクリスマスツリーの裏- 315 文 「あ、そういえば永遠亭の皆さんからもプレゼントが届いてるんですよ」 萃香「へえ、なになに?」 文 「永遠亭一同の連名で…私たち3人にですね。中身は…」 ガサゴソ ○○「…マフラー?」 文 「でもそれにしては…」 萃香「何か…長い…」 「これで3人、暖かな冬をお過ごしください。永遠亭一同・代表鈴仙」 文 「って言われても…」 萃香「無駄に長いマフラー1本でどうやって…?」 ○○「まさかどこぞのカップル用マフラーみたくこの1本を3人の首に巻いて…とk(顔真っ赤)」 文 「ああ…(イイ笑顔)」 萃香「なるほどぉ…(イイ笑顔)」 ○○「あー、うー…(汗)」 文&萃香「「○○ー(さーん)(はぁと)」」 ○○「あー、多分すごく恥ずかしいと思うんだが…だめ?」 文&萃香「だめー(はぁと)」」 文 「お披露目は新年の宴会のときにしましょうか」 萃香「あ、いーねー。それなら…」 ○○「おーい…」 文 「あ、じゃあ今使い心地を試しておきましょう!」(抱きつき) 萃香「さんせーい」(抱きつき) ○○「え、今? いや暑いから、確実に暑すぎるから、ね?」 文&萃香「だめー(はぁと)」」 ○○「あー…(赤面)」 鈴仙「てゐー、この前あんたが名前を貸してくれって言ってたあのプレゼント、 結局中身なんだったのー?」 てゐ「新年が楽しくなるものですよー」 …ではいつもの (。∀ ゚)アレレレ? 329 最近…思いっきり過疎化しましたね… 「ここの掃除はこれで終わりだな。さて次は台所だ」 「○○さんの家は毎回酒盛りに使ってますからね」 「ぱっと見は結構綺麗だけど…よく見ると汚れているところがあるしね」 「まったく…今年は365日中310日酒盛りをやったからな…」 「えっ?そんなに少なかったの?」 「うーん…まだまだでしたね」 「ぉぃ…」 というわけで、今僕はいつもの二人と家の大掃除をしている。 三人寄れば文殊の知恵だっけ?そんなような言葉もあった気がしたから二人に手伝わせることにしたんだが… 「○○~?埃を萃めておいたよ」 「おう、サンキュ…っておい!こんなところ(居間)に集めずに外でやってくれ!」 「○○、埃は外へ出したよ」 「そうか…ってこらぁっ!玄関先に捨てても何の意味もないだろ!」 …萃香のやることはワザとなのかよくわからないが…どっか抜けている… 結局そのおかげで二度手間なのである… 「○○さん、これはここでいいですね」 「おう、すまないな」 …文は結構気が付くほうなんだがな… ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「ふぃ~…ようやく終わったな…」 「お疲れ様でした」 「ふーっ…掃除って疲れるねぇ」 「…萃香は結局は何もしなかったろうが…」 まぁ、二度手間が重なっても面倒なので…萃香には途中から外れてもらっていた。 「ふふふ…で、○○さん、約束ですよ」 「そうそう、家の手伝いをしたら一緒におでかけをするって約束だよね」 「…そんな約束したっけなぁ…?(目逸らし)」 「「○○(さ~ん)、や・く・そ・く」」 「…わかったよ…はぁ…」 「じゃあ永遠亭からもらったマフラーを着けていきましょうか(ニヤリ)」 「おっ、いいねぇ(ニヤリ)」 「いやちょっと待て、本当に外であのマフラーを使うのか?(滝汗)」 「「当然(です)♪」」 「…どうしても?(げっそり)」 「「どうしても(です)(はぁと)」」 「…逃げるか…(脱兎の如くDASH!)」 「あっ、逃がすかぁーっ!」 「待って下さい○○さん!」 「待てといわれて待つ奴はいないっ!逃げろーっ!」 「むぅーっ、酔夢『施餓鬼縛りの術』!」 「ぬぁっ、鎖がっ!?ち、力が…」 「へっへ~ん、捕まえたぞぉ~♪」 「…なんだか即視感(デジャヴ)を感じるんだが…」 「多分作者がネタに詰まったんでしょう。後でお仕置きですね♪」 「…そういう裏の話はしないように…」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「うう…恥ずかしい…」 結局3人用の長いマフラーを着けて出ることに… しかもそれだけでも恥ずかしいのに二人が○○に密着して腕を組んでいるから恥ずかしさ倍増なのである… しかし、やはり3人でマフラーを着けるには…身長差という敵が… 「く、苦しい…(頸部圧迫中)」 「あったかいね~、これからはずっとこれだねっ!」 「心も体もぽっかぽかです♪」 「ううーっ…(圧迫度増し)」 「○○さんも暖かいですよね?」 「○○~?もちろん貴方も暖かいよね?」 「…きゅぅぅ…(落ちた)」 「○○?おーいっ」 「○○さ~ん?生きてますよね?」 「ぶくぶくぶく(泡吹き)バタンキュー(倒れ)」 「きゃあっ!?○○さん、しっかりしてください!」 「早く永遠亭に連れて行こう!」 「はいっ!」 -永遠亭 永琳の部屋- 「…まったく、3人用のマフラーを着けるのはいいけど外の二人が引っ張り合ったら真ん中の人は苦しいに決まってるじゃないの…」 「「しゅーん…」」 「心配しなくても○○は"落ちた"だけだからもうすぐ目を覚ますわ」 「よ、よかったぁ…」 「…あの、○○さんが起きたら…周りの世話は私たちがやっていいですか?」 「ええ、かまわないわ。○○もそのほうがいいと思うわ」 「「やったぁ!」」 「ふふふ…○○も大変ねぇ…二人の恋女房に押しかけられて…」 さてと、世話するシーンは他の人に(特に 315氏に)任せるとしますか…(ぉぃ しかし…最近ネタがマンネリ化しつつあるなぁ… 「そのことについてお話があるんですが(怒)」 …あ、文… 「ちょっとこっちまで来てくれませんかねぇ(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ)」 …THE 脱兎!(逃走) 「逃がしませんよ!疾風『風神少女』!」 うわちょっとまt…ギャー 333 ○○「いや、任されてもっ!?(がばっ!)」 文 「あ、起きましたね」 ○○「え…? ああ、ここは永遠亭か…」 萃香「よかったぁ…。でも、任されるって何を?」 ○○「え、あー…いや、何か知らない場所でパソコンいじってる誰かがいてさ、 そいつと電波っつーかチャンネルがつながったって言うか…」 文 「…」 萃香「…」 (´;ω;`)ぶわっ(×2) 文 「かわいそうに、酸素欠乏症にかかって…」 萃香「うあーん! 私達のせいだー」 ○○「いや待て待て、俺正常だから、まともだから、真面目だから、無事だから! つか俺はどこぞのニュータイプの父親か!?」 文 「真面目な顔でそんな話ができる時点で手遅れなんです! てゆーかニュータイプって何ですか!?」 萃香「うあーん!! 手遅れー! ○○がバカになったー!」 文 「落ち着いて、バカはもともとです!」 ○○「…ああ、わかっててやってるのか(落ち着き)」 文 「…ち、耐性ができてきたみたいですね…(悔しげ)」 萃香「つまんないなぁ…(がっくし)」 ○○「あのな…(ひきつり)」 文 「ともあれ大事をとるにこした事はありません、今日は休んでてください」 萃香「私達が世話するから、大船に乗った気でいなよ」 ○○「大きな泥舟じゃあるまいn」 萃香 文「何か言った(言いましたか)? ○○(さん)」(←イイ笑顔) ○○「イエナニモ(ガタガタブルブル)」 萃香「私達だってそうそう何度もへまはしないよ。…はい、あーん」 ○○「あー、むぐむぐ…。いやそれはいいんだがさ、単なる気絶で こういうことまでする意味あんの?」 文 「…いやですか?(ごそごそ)」 ○○「いやじゃないけど大げさって言うか、別に一人で食えるっつーか…。 …いやちょっと待て文、何で俺の服を脱がす?」 文 「体を拭こうと思っただけですよ? この前(入院したとき)だって やったじゃないですか」 ○○「え!? いや待てマジ? いつ!?」 萃香「あー、それやろうとしたら○○が恥ずかしがって抵抗したから、 永琳が睡眠薬使ってその間にやってたんだよ」 ○○「!!?」 文 「ま、細かいことは沖になさらず、さ、脱いで脱いで(ハァハァ)」 ○○「いやなんか鼻息荒いから! 怖いから!」 萃香「覚悟を決めろー(フゥフゥ)」 ○○「いやぁぁぁぁぁっ!!??」 鈴仙「師匠、○○さんの部屋から久々に絶叫があがってますけど」 永琳「ほっときなさい、どうせバカップルの戯れだから」 鈴仙「いえ、何かてゐがカメラとマイク持ってその部屋に…、 お正月宴会のいい話のネタだとか言って…」 永琳「…連れ戻してきて」 鈴仙「ラジャ」 萃香「あ、じゃあ寒くないように暖かさを萃めとこう」 ○○「言いつつ何故布団に入ってくるかな!?」 文 「熱を逃がさないためです」 ○○「かえって暑いわぁぁぁぁっ!?」 鈴仙「師匠、てゐが今度は盗撮用小型カメラを…」 永琳「捕まえて、私はてゐの部屋のそういう機器を破壊しとくから」 鈴仙「いえ、もう捕まえときました」 永琳「ならてゐの目の前で壊しましょうか」 てゐ「ひどっ!?」 てるよ「○○ー、なぜかあんた宛にメールよー」 ○○「うーす…(げっそり)何々…『これが限界、ごめんなさい by315』…何これ」 てるよ「私が知るわけ無いでしょ、あ、更新キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!」 ○○「???」 てるよ「どうでもいいけど両手に花ね」 ○○「…(赤面)」 萃香 文「○○~(さ~ん)…(すぴー)」(←しっかと両側からホールド) (。∀ ゚)アレレレレ? つか長ぇよorz 376 あけましておでめとうございます(ぉぃ ずぞーっ、ずぞぞーっ …ふぅ…年越し蕎麦が美味いなぁ… しかし…あの二人が飲んで年を明かそうって言ってこなかったのが不思議だなぁ… 絶対誘ってくると思ったんだが…まぁ、一人で静かにやるのもそれもまた一興だな… ふぅ… …お、眠くなってきた。 水道水(酒の銘柄)を飲みすぎたかな…? ちょっと寝るか… 初詣は明日の昼にでもゆっくりと行k…(zzz… ……………… ……ん?朝か… …なんか暑いような…?ってうをい!文!萃香!いつの間にお前ら入ってきたんだ? 「zzz~♪」 「zzzzzz…」 っていっても…寝ているのか… …まいったなぁ… トイレにも行けやしないぞ…(Wホールドで固められてる+足まで巻きつけてる) … …… ……… …………起こすか… 「おい、文、萃香、朝だぞ」 「んみゅ~…(寝ぼけ)」 「んむ…(ネボケ)」 「おいこら起きろって。雑煮食べるぞ」 「……んふ♪(抱きつき+押し倒し)」 「っておいこら文!寝ぼけるなっての!」 「……えへへ~♪んむ…(覆いかぶさるようにKiss!)」 「むぐっ!?んーっ!むーっ!ぷはっ!す、萃香…お前寝ぼけすぎ…(赤面)」 「……ん~っ…(頬擦り×n)」 「…ぉ~ぃ…」 「…ん…(頬にKiss×n)」 「…これを誰かに見られたら…恥ずかしい…(あきらめ)」 ……………… 「…はぁ…なるほど、つまり朝の3時頃に僕の家に来て飲もうと思っていたけど僕が寝てたから一緒に寝たと…」 「そうなんですよ」 「○○さぁ、寝るの早すぎなんだよ」 「僕は毎年寝正月を決め込むって決めているんだから…まぁ、飲み正月でも良かったけどな…はむ(餅食べ)」 「私たちは1時ごろから二人で飲んでいたんですけど…やっぱり○○さんがいないと…張り合いがないんですよ。む、結構伸びる(餅食(ry)」 「そうそう、やっぱり○○がいないと話が盛り上がらないね。くちゃくちゃ(餅(ry)」 「そうか…で、僕はこれから初詣にでも行こうと思っているんだが…一緒に「「行くーっ!(行きますっ!)」」…まぁ、そうだよな」 「あのマフラーを着けて「却下」なんでですかぁ?(涙」 「この前死にそうな目にあったのは他でもないこの僕だっつぅの…」 「ねぇ~、○○~…(涙目+上目遣い」 「着けていきましょうよぉ~(涙目+上(ry」 「いやちょっと待て、そんな目で僕を見ないでくれ」 「「ねぇ~(はぁと)(顔近づけ」」 「…わかったよ…はぁ、僕って弱いなぁ…」 「「やったぁ!」」 -博麗神社- 「あら○○さん、ラブラブね」(紅白) 「おやおや、目も当てられないぜ」(白黒) 「…いつか私も魔理沙と…」(七色) 「…えーっと…目の前のバカップルを無視する方法は…」(パチュ萌) 「仲睦ましいことですね」(みょん) 「まさに両手に花ね~」(ゆゆ) 「…てゐの言ってた正月が楽しくなる物って…これかぁ…」(饂飩) 「…あの三人も懲りないわねぇ」(えーりん) 「…さて、盗撮の用意を…」(詐欺兎) 「も、妹紅っ!私たちもあれをやるぞ!」(けね) 「えっ、ちょっ、何を言って、慧音…(赤面)」(もこ) 「咲夜、私にもあのマフラーを用意しなさい。霊夢とやりたいから」(う~) 「お、お嬢様…私は…お嬢様と…くぅっ!(血涙+鼻血)」(瀟洒) 「…うわぁ、みんな見てるよ…なぁ二人とも、やっぱりやめな「「駄~目っ(です)(はぁと)」」…はぁ…」 「どうせならもっと見せ付けてやりましょうよ(腕組み+体密着)」 「そうそう、みんなが嫉妬するぐらいね(腕組み+体(ry)」 「「「「「「「「「「「「「おぉ…」」」」」」」」」」」」」 「いや、勘弁してくれないか…(真っ赤)」 「「いや(です)(はぁと)ちゅっ(両頬にWkiss)」 「「「「「「「「「「「「「おおーっ!!!」」」」」」」」」」」」」 「はぅ…(ゆでだこの如く(ry)」 あとぐゎき(ぇ どうも、音速駄作製造機の30人目です。 今回は…正月をテーマに露骨にもほどがあるイチャイチャぶりを発揮させて見ました 最初の場面…あわやネチョになるところだった… 妄想をふっとばし、理性をギリギリまで保って作った作品ですw あ、37氏、どうぞ続きをお願いしm(百万鬼夜行 378-379 霊夢「あら○○さん、この前はすごかったわね」 魔理沙「お、○○、その後あいつらとはイチャイチャしてるか?」 アリス「こ、今度意中の人と仲良くなる秘訣とか教えてくれない?」 ○○「てな感じで、あれから会う人会う人にからかわれまくってるんですよねぇ…」 永琳「まあ、しょうがないわね。…最後のはちょっと微妙だけど」 ○○「これというのも鈴仙があんなものを送ってくるから…」 永琳「あら? あれを送ったのはてゐよ? 鈴仙は名前を貸しただけ」 ○○「そうなんですか? あの詐欺兎…!」 永琳「ちなみに編んだのは私」 ○○「あんたですかいっ!」 ○○「迷惑って訳でも無いですけど、さすがに恥ずかしいですよあれは…」 永琳「まあ、いいんじゃないの? そのうち慣れるわよ …慣れないなら慣れないで、いつまでも初々しいって事でいいと思うけど」 てるよ「助けてえ~り~ん、ノーパソの容量が~」 永琳「だからデスクトップを主にしてくださいと…。追加のハードディスクが向こうの部屋にありますから!」 てるよ「ありがとえ~り~ん」 ○○「今の手際…慣れは慣れでもいやな慣れですね…」 永琳「どこでもパソコンできるからって手放さないのよ…あのノートパソコン」 ○○「真性ニート…」 永琳「あなたはああはならないでね、あの二人のためにも」 ○○「はい」 永琳「じゃ、これ今回分の肝臓の薬。一日一回飲むように」 ○○「どうm「○○肝臓病気なの!?」…って、萃香?」 萃香「どういうこと永琳、何で隠してたの!?」 ○○「いや、別に病気じゃ…つかどこから?」 萃香「ずっと○○の回りに散ってた! でも薬って!」 ○○「まとわりつかれてたっ!?」 永琳「落ち着きなさいな、本当に病気じゃないわ。それは予防薬よ」 萃香「予防?」 永琳「○○は酒に強いわ、酔う酔わない以前に、内臓の面でね。 でも、それはあくまで人間の域。…それは分かってるでしょ? 去年のスピリタス一気飲み事件とか」 萃香「あ…うん」 永琳「何事にも限界はあるのよ。でも、彼はあなた達との酒を楽しみたかったの 酒豪であるあなた達との酒をね。…で、頼まれたのがその薬」 萃香「これ?」 永琳「肝機能を助けて、肝硬変とかの発症を可能な限り防ぐ効果があるわ あなた達と張り合うほど…とまでは行かないけど、少なくとも今までよりは 酒に強くなってるはずよ。…さすがにあのときのような無茶は無理だけどね」 萃香「…」 永琳「あの事件以後あなた達もセーブできてるようだから大丈夫とは思うけど… まあ保険のようなものよ。まさか大好きな酒で思い人を亡くしました なんてのはいやでしょ?」 萃香(こくこく) 永琳「彼も、そう思ってるわ。そんな思いをあなた達に抱かせたくないから、 内緒で今回の事を頼んだの。…もし応えてあげるなら、これから変に お酒を制限するより、いつもどおりに楽しむ事。彼はそれがしたいから こんな事をしてるんだからね」 萃香「うん」 ○○(赤面) 永琳「ただし、変に制限はしなくて良いけど、節度は守ること。 この前みたいな事にならない様にね。…まあ、今の時点でそれが 出来てるあなた達なら問題ないでしょうけど」 萃香「うん! …よ~し今日は帰って宴会だ! ○○んちで新年会だ! 飲むぞ~!」 ○○「お~う!」 永琳「ふふ、これなら心配なさそうね」 夜 萃香「え~り~~~~ん!!(泣)」 文 「○○さんがまた倒れました~~~~~!!!(泣)」 えいりんは つくえに あたまをぶつけた! えいりんに 35の ダメージ! 永琳「あなた達ねぇ…(汗)」 永琳「さっき話してたばかりなのに…今度は何したの?」 文 「えっと、その…」 萃香「鼻血出して倒れた」 永琳「何やったのあなたたち!?」 ○○「う~ん、う~ん、もやが…ピンク色のもやもやした何かが…」 鈴仙「○○さんどうしたんですかね」 てゐ「何気に満ち足りた顔してるし」 383 …○○気絶中… 永琳「で、どうしてこうなったのかしら?」 文「それは…その…(真っ赤)」 萃香「あ、あのね…(真っ赤)」 ~回想~ ○○「うー…酔ってきたかな…」 萃香「あははははは!○○ペース落ちてるよーっ!(激酔)」 文「ほらほら、もっと飲みましょうーっ!(爆酔)」 ○○「…ははは…まだマシか…」 萃香「いやーっ、暑いねぇ」 文「私も暑いです…」 ○○「そりゃあ…そんなに飲むからだろ…っていっても僕も暑いな…上着を脱ぐか…」 萃香「おっ、○○のストリップショーか?」 文「いいぞー、やれやれー」 ○○「いやいや、僕は裸を見せるつもりはないぞ…暑いから上着を脱ぐだけだ(Tシャツ姿に)」 萃香「なるほど…じゃあ私も脱ぐね」 文「私も脱ぐことにします」 ○○「…二人ともそれって上着だったのか…」 萃香&文「「違うよ(違いますよ)」」 ○○「…へ?じゃ、じゃあその下には何を着てるんだ?」 萃香&文「「下着(です)」」 ○○「ほぉ…やっぱりそうだよな…………ってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」 萃香&文(脱ぎ中) ○○「いや、ちょっと待て!お前らはここで下着姿になるつもりか!?」 萃香&文「「うん、そうだよ(はい、そうです)」」 ○○「いやちょっと待てコラ!Hey Aya Suica! Stooooop! Please Stop taking it off! Stoooop!」 萃香&文「「えっ?何か言った?(言いました?)(脱ぎ終わり)」 ○○「…い、いや、何でもない…(視線逸らし)」 萃香「あれっ、○○?なんでこっち向いてくれないの?」 文「○○さーん…こっち向いてくださいよ」 ○○「い、いや……そっちを見たら…僕は男として終わる気がする…」 萃香&文「「○○(さ~ん)(はぁと)(近づき)」」 ○○「な、なんだい?(滝汗)」 萃香&文「「えいっ(抱きつき)」」 ○○「ッ!!!!!ブッハァァァァァァァ(吐血&鼻血ブーッ)バタンキュー・・・(倒れ)」 萃香「えっ!?ちょ、ちょっと○○!?」 文「は、早く永遠亭に!」 ~回想終わり~ 文「ということがありまして…(赤面)」 萃香「うー…(赤面)」 永琳「…(絶句)」 ○○「う゛~…下着がぁ…下着が迫ってくるぅ~…」 鈴仙「…なんだかものすごい悪夢にうなされてるわね…」 てゐ「(マイクを持って来ようかな)」 385 これは、避難所383における30人目氏の作品に 「勝手に続きを作っちゃえ企画」でつくった作品です。ご注意を。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 永琳「さすがにこれは薬の処方の仕様が無いわね…」 文 「うう…」 萃香「○○…」 永琳「まあでもある意味喜ばしい事じゃない? 少なくとも、彼にとってあなた達のあられもない姿は効くという事だし」 文 「こういう展開だと喜んで良いのか…」 萃香「微妙だよぅ…」 永琳「二人とも… そんな(´・ω・`)ショボーンとしてないで(`・ω・´) シャキーンとしなさい(`・ω・´) シャキーンと! そんなんじゃ目が覚めたら○○さんに笑われるわよ? むしろ心配かけるかしら?」 文 「そんな輝夜さんに毒されまくった言い方で励まされても…」 萃香「ニートがうつったみたい…」 つうこんの いちげき! えいりんのこころに 999の ダメージ! こうかは ばつぐんだ! 永琳「姫と同類…(ひざかかえ泣)」 鈴仙「ししょー、○○さん少し落ち着いたみたいってうわあ!? 何ですかこの引きこもりチックなドクオ空間は!(ぐさあっ!)…ぐさ?」 永琳「ドクオ…(さらに滝涙)」 文 「永琳さーん」 萃香「私達が悪かったからー、元に戻ってー」 鈴仙「…何があったんです?」 鈴仙「…はあ、事情は分かりました(赤面)」 萃香「落ち着いたって言ってもまだうなされてるんでしょ? どうしたらいいかなぁ?」 鈴仙「師匠が壊れたまま戻らないんで意見が聞けないのが何なんですけど… いっそのことお酒と同じ手で行ってみたらどうです?」 文 「同じ手…って?」 鈴仙「うわばみ仲間の間じゃこういうんでしょ? 『二日酔いには迎え酒』って。 実際健康にいいかときかれたらどうかとは思いますけど…」 萃香「それは確かに言うけど…この場合どうするの?」 鈴仙「そうですね…」 文 「ほんとにこれで良いんですかねぇ…」 萃香「さっきはこれでこんな事になったんだよ? かえってひどくなるんじゃ…」 鈴仙「それは格好が格好だったからですよ。 それで彼の許容量を超えちゃったんです。 ほら、よく『薬も過ぎれば毒となる』って言うでしょう? 逆に言えば、彼の許容量を超えない範囲であれば、効き目はあると思います」 文 「そういうものですか…?」 鈴仙「多分」 萃香「たぶんかぁ…」 鈴仙「とにかく、ちゃんと寝巻きは着てくださいね」 文&萃香「はーい」 …昨夜は酒を飲みすぎたようで、頭の痛みの割には何があったかとんと思い出せない。 あえて言うなら悪夢を見ていた…様な気がする。 本当に悪夢か? と聞かれたら、ちょっと微妙な気がするが。 それは『怖い』というよりむしろ、『穢してはいけない』大事なもののようにも思えて、 だから逃げていたようにも思う。よく分からないけど。 …いつの間にか、夢は終わっていて、代わりに何か暖かいものに、包まれてる感じがした。 心の底から安らげるゆりかごの中、そんなイメージ。 だからだろうか、今日の目覚めは、すごく気持ちのいいものだった。 …すぐ頭痛が来たけどね ○○「…ああ、納得」 体を起こしてみると、左右にはやっぱり二人がいた。 僕のパジャマのすそを握って、すやすやと眠っている。 二人の寝顔を見ていると、今ガンガン響くこの頭の痛みさえ、なんだかひいていく気がする。 …場所がなんだか見覚えがあるのは…まあ、またいつものパターンだったんだろうなあ、と。 鈴仙「おはようございます。…よく眠れたみたいですね」 ○○「おはよう。うん、すごく良く眠れた」 鈴仙「それはよかった。…アドバイスした甲斐がありました(ぽつり)」 ○○「ん、なに?」 鈴仙「いえ、何でも。じゃあ、ご飯持ってきますね」 ○○「ああ、ありがと」 そういって出て行く鈴仙を見送った後、再び二人に視線を向ける。 幸せそうな寝顔の二人、その頭を軽くなでて一言。 ○○「ありがとな、二人とも」 なんだか二人が、笑ったような気がした… 永琳「さて、ウドンゲ、覚悟はできているわね?」 鈴仙「い、いや師匠、何の覚悟ですか!? 私身に覚えが全く…」 永琳「言うに事欠いてドクオねぇ…、ねえ、私はそんなに引きこもりっぽいかしら?」 鈴仙「ええっ!? い、いえ、あれは別に師匠に言ったわけじゃ…」 永琳「自分でも珍しいと思うけど、あの時は打ちひしがれていたのよ。本当に… そこえ追い討ちをかけるように…あなた鬼? ねぇ、あなた鬼なの?」 鈴仙「いえ、う、兎です。そ、それに、あの時は私何にも分からな…」 永琳「問答無用よ、ウドンゲ。憂さ晴らしに付き合ってもらうわ…」 鈴仙「八つ当たりじゃないですかぁ!?」 永琳「逝って良し!」 鈴仙「きゃあぁぁぁぁぁぁ~っ!!!!? っていうか何か台詞が姫っぽい~~っ!?」 永琳「まだ言うかぁ~っ!!!!」 鈴仙「これがはじめてですよぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― …(。∀ ゚)アレレレレレレ? どんどん長くなった挙句とうとううpろだ行き… だから短くまとめる努力をと何度もorz 何気に『(。∀ ゚)アレレレレレ?』が欠番になってたり(爆) て言うか一言で言うなら○○俺と代われ(核爆)。 特に下着姿の二人に抱きつかれるあたりぜひかw(大鬼) 途中無駄にシリアスになっちゃったので最後にオチ。鈴仙ゴメス。
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ハーレム?24 新ろだ2-022 ある日突然、あなたに12人もの妹ができたらどうしますか? それも……とびっきり可愛くて とびっきり素直で とびっきり愛らしくて とびっきりの淋しがりやでそんでもってちょっぴり恐い しかも、そのうえ…… 彼女達はみんなみんな、とびっきり! お兄ちゃんのコトが大好きなんです!!! しっかり者でお兄ちゃんに対してはちょっぴり甘えん坊な清純派妹、早苗ちゃん 早苗「お兄ちゃん!この婚姻届に(ry」 ドジっ娘系妹星ちゃん 星「お兄ちゃま、星の大切な宝塔が…宝塔が…」 健康的な魅力を持つボクっ娘妹魔理沙ちゃん 魔理沙「あにぃ!借りてくぜ!」 お兄ちゃんの気を引くため色っぽい振る舞いを見せる小悪魔系の妹紫ちゃん 紫「お兄様♪今すぐ子作りを(ry」 無邪気で人懐っこい性格の妹フランちゃんウフフ フラン「おにいたま♪遊ぼ?」 病弱で読書が大好きな妹パチュリーちゃん パチュリー「兄上様…ゴホッゴホッ」 姫系妹輝夜ちゃん 輝夜「にいさま…って何か私だけ説明が適当な気が」 発明家として類まれなる才能を持つ理系妹にとりちゃん にとり「アニキ!お小遣い頂戴」 魔女のような妖しい魅力を持つ妹アリスちゃん、噂では魔界の住人で親は神だとか… アリス「兄くん…フフフ」 お兄ちゃんを立てることを忘れない淑やかさも兼ね備えたまさに良妻賢母型の妹依姫ちゃん 依姫「あ…兄君さま、床の準備が整いました。で、ですから…ゴニョゴニョ」 何でもかんでもチェキしまくるムードメーカー兼トラブルメーカー妹文ちゃん 文「兄チャマ、チェキ!」 生粋のお嬢様でのんびり屋、そしてちょっと泣き虫。少々世話がかかるタイプでお菓子が大好きな大食い妹幽々子ちゃん 幽々子「兄や…くすん、お腹減った」 紫「お兄様のための12人の妹達ですわ。さぁ存分に萌えてくださいお兄様!」 〇〇「え?」 紫「え?」 〇〇「いもう…と達?」 ざんねん!! 〇〇の ぼうけんは ここで おわってしまった!! 新ろだ2-052 この世の忘れ去られた物や生き物が最後に流れ着く場所、幻想郷。 そこにはあらゆるものを惑わせるほどの竹が生い茂る、迷いの竹林と呼ばれる場所がある。 わずかなものしか知らない隠された道筋を頼りにその竹林を奥へ奥へと進んでいくと、 不意にその場にふさわしくない立派な建物が目の前に現れる。 永遠亭だ。 その屋敷は、幻想郷でも指折りの有力者、月の民とその配下の兎達が暮らしていた。 幻想郷に住まう者にとって、彼らは薬師であり、医者だった。それも得体のしれない。 見たこともない道具、聞いたこともない知識でどんな病も難なく治していくという存在は、 ありがたいと思うとともに、畏るべきものでもあった。 人々は進んでここを訪れるようなことはなく、永遠亭側もときおり薬の行商に人里に赴く程度の距離感で接していた。 ゆえに、永遠亭で見かけるものは月の民や兎たちがほとんどで、なんの力もない普通の人間がいることは稀なことであった。 そしていま、妖怪が時を謳歌する夜中のことである。 永遠亭の中庭に面した縁側に、永遠亭にすれば奇妙な光景が映し出されていた。 永遠亭では普段見かけない人間の青年が、一人縁側に腰かけて、ぼんやりと空を眺めているのだ。 どこか儚げな、そのまま消えてしまいそうな青年だった。 すでに日は沈み、あたりには竹林の夜独特の笹のさわめきを孕んだ静けさが漂う。 空にはやわらかく光を放つ月が浮かぶ。 青年はじっと月を眺めていた。 まるでそこに映る何かをすくい取ろうとするように、もしくはまるで何も考えていないようだった。 「お今晩は。○○」 不意に○○と呼ばれた青年は声をかけられた。彼は特に驚いた様子も見せずに振り向いた。 「ああ、今晩は。輝夜様」 黒く長い髪をたなびかせ廊下の向こうから現れたのは、この屋敷の主にして元月の民の一人、蓬莱山輝夜だった。 どこか気品にあふれるかのような雰囲気で歩く彼女は、○○のそばまで行くと先ほどまで彼が視線を向けていたものを見上げた。 「お月見かしら? 風流ね」 鈴を転がしたような声で、輝夜は彼に話しかける。その声色にはかすかな親しみがこめられていた。 ○○は肩をすくめて、 「いいえ、ただ呆けていただけです。空を見上げるのも、満月も、久しぶりだなあと思っていたらいつのまにか」 そう言って、少しばつの悪そうに笑った。 あらあら、と輝夜もつられて口元に手を当てて笑う。 そして、ちらりと廊下の奥に目を向けると、 「お邪魔じゃなければ、私もご一緒してよろしいかしら」 「ええ、どうぞどうぞ」 山の上に浮かぶ月の下、輝夜と○○は並んで座っている。 ぼんやりとした月明りは二人の影を廊下の向こうまで伸ばした。 「季節とは少し外れているけれど、良い月ね」 ぽつりと輝夜はつぶやいた。目は月のほうにむけられている。 「そうですね。満月には少し足りない気がしますけど。こちらのほうが僕は好きです」 ○○も月を見たまま、そう返す。 「あら、○○も?」 輝夜はうれしそうに○○のほうに振り向いた。月を写す黒髪が軽く波打つ。 「この月はね、十三夜月とよぶの。昔はこの月の下でよく宴を催したのよ」 私も、この月は好きよ。輝夜はクスクスと懐かしそうに笑った。 それを見る○○もどこか嬉しそうにしながら訊ねる。 「宴というと、歌を詠んだりとかですか?」 「そうねえ、お酒をたしなみながら、音楽に合わせて舞ったり、芸をしたり。……今と大して変わらないかも」 「それでは、輝夜さまも?」 「……むかしは歌を詠んだこともあったわ。今はあんまり」 「あ、ごめんなさい。訊いたらいけませんでしたか」 「あら、そうじゃないの。昔の歌って、季語やら、枕詞やらって面倒臭いでしょう? そんなに楽しいことがなくって」 「ははぁ、少し堅苦しいと」 「そゆこと。それに宴会は騒いでなんぼでしょ?」 「ははは。それはお姫様らしくはないですが」 「あら」 「でも輝夜様らしくて、素敵です」 「あらあら、まったくお上手ね」 「あ、いや、そんなつもりじゃあ」 「もう、うふふ」 ……… …… … 一ヶ月ほど前の話だ。その夜、幻想郷は季節外れの嵐に見舞われていた。 人間はもちろんの事、普段は我が物顔で闇夜を跳梁跋扈する妖怪たちも、この日ばかりはさすがに大人しく雨風が通り過ぎるのを酒など嗜みながら、過ごしていた。 しかし、迷いの竹林、もとい永遠亭に住む者たちはわずかに色めき立っていた。 「ねえ、今日のおゆはんは?」 その主を除いては。 話しかけられたのは訳あって永遠亭に居住している月の兎、鈴仙・優曇華院・イナバだ。 彼女は彼女は土間に大きな桶をおいて、何やら洗濯をしているようだった。 風が戸板を挟んでびゅうびゅうと吹き荒んでいた。やや神経質に鈴仙はいちどそちらに視線を向ける。 そして、すぐ彼女の主に向かってやや愛想笑い気味の表情で答える。 「ええと、ごめんなさい姫様。今ちょっと手が離せなくて、今適当な兎を呼ぶので……」 「あら、とうとうイナバを食べる日が来たのねぇ。いつか来るとは思っていたけど」 「違います! 食材の話じゃないです!」 「冗談よ。それで、なにかあったの? なんだか周りが血の気立ってるわ」 目線だけで周りを見渡し、実際その土間には二人しかいなかったのだが、輝夜は不思議そうに訊ねた。 鈴仙は驚いて目を見開いた。 「お聞きになっていないのですか? さっき竹林に凶暴な妖怪があらわれたという報せが入ったんです」 「あらまぁ」 「しかもその妖怪に人間が一人襲われて、今その処置に追われてて……」 「それは大変ね。全然気がつかなかったわ」 輝夜は全然大変そうな様子を見せず言った。 鈴仙は洗濯桶の中の、血まみれの手術衣を見て、心の中でため息をついた。 「暢気で悪かったわね」 はっと鈴仙が顔を上げると、もう輝夜は向こうを向いて廊下に向かっていた。 「永琳は診療所のほうね。今日のおゆはんはいいわ。たまには不死らしく不健康に過ごすから」 そう言葉を残して、あわてる鈴仙をよそに軽快に廊下の向こうへ消えていった。 鈴仙はしばらく落ち着かずにいたが、やがてあきらめるように洗濯板に手術衣を擦りつける作業に戻って行った。 輝夜が部屋の前に着いたと同時に、中から竹林の白兎、因幡てゐが中から出てきた。 「永琳は中かしら?」 輝夜が半分確信していることを問うと、彼女は多少億劫そうにうなずいた。 その拍子に半乾きの短い黒髪が妖しげに灯りを映す。 そしてそのまま一言もなく、すぐにてゐはどこかへと去ってしまった。 その態度にも輝夜は特になにも何も感じず、部屋の中に入って行った。 てゐがこんな調子なのは珍しいことではないのだ。 「入ってくるなら一声かけなさい、はしたないわ」 中にいた女性が静かなよく通る声で言った。 女性の名前は八意永琳。永遠亭の薬師にして輝夜と同じ元月の民である。 彼女は部屋の中の机で書き物をしているところだった。 部屋の中はなぜか廊下よりも薄暗く、そして静かだった。机の上の蝋燭が、部屋の中に闇色の影を朧に映している。 その雰囲気のためか、それとも今叱られたせいか、言葉には答えなかった輝夜だが、静かに戸を閉め、そろそろと暗闇にも浮かぶ銀髪に向けて音も立てずに歩みだした。 「やっぱりイナバの耳にはかてそうもないわね」 輝夜は永琳のそばまで来ると、小さくそう言った。 永琳は顔を上げ、輝夜のほうを見てから小首を傾げた。 揺れる永琳のみつ編みを目で追いながら輝夜は続ける。 「私も知らない永遠亭の大騒ぎを知ってるんだもの。今日のおゆはんがないこととか、その理由とか」 「あら、輝夜にも兎の伝達は出したはずなのに。耳はお上手でも口は下手なのね。まあ薄々わかっていたけれど」 「普段は軽いくせにね。イナバに頼む永琳も永琳だけど。おかげでイナバも食べ損ねるし」 そう不機嫌に眉をゆがめる輝夜だった。 輝夜はただ仲間外れにされて悔しいだけだということ、非は永琳ではなく途中でどこかに行った兎にあること、そもそも輝夜に伝えてもどうにもならなかったこと、兎は緊急の保存食糧ではないこと、 などすべて把握していた。が、 「ごめんなさい。許して頂戴」 永琳は輝夜に詫びた。子供らしく頬を膨らます輝夜を見ながら。 とりあえず感情の区切りがついたのか、まぁいいわ、と輝夜は納得した。 「それで、件の彼はどこかしら」 瞳を灯りで輝かせながら輝夜が訪ねた。 永琳は小さくため息をつつきながらも微笑んで、筆を置く。 「隣の部屋のベッドで眠っているわ。覗くのはいいけれど、騒がしくしないでね」 「あら、そんなはしたないことしないわ。騒ぐのは私の周りの人の仕事だもの」 輝夜はひらひらと袖を振って隣の部屋に入って行った。その後ろに永琳が付き添う。 「そこの彼よ。眺めるなら彼の許可を取るか、内緒でしてね」 広くも狭くもない、清潔な部屋の中にひとつだけあるベッドを指さして永琳が言った。 部屋は暖房が利いていて、壁にはオレンジ色の照明が灯る。風に揺れる窓からは嵐の竹林がうかがえる。 表情の読めない顔で、輝夜はベッドを覗きこんだ。 「その子なんだけど、おそらく幻想郷の外出身の子ね」 窓辺に近づきながら、やや声をひそめて永琳が語りだした。 外をやや見渡してから、カーテンを閉める。そしてベッドの隣の台に置かれているものを手に取る。 「ほら、この服の布地、こんなに繊維が細かい。それにこれは、一種の通信機ね。動かないけれど、いつだったか香霖堂で―――」 「ねえ、永琳」 ぽつり、と輝夜がつぶやいた。 「この人、泣いてるわ」 永琳が驚いて彼を見た。 ベッドで眠る青年は、静かに涙を流していた。 目尻からあふれ出すように滴がこぼれおち、枕に染み込んでいく。 どうしたのかしら、と永琳は涙を傍のタオルで拭いとり、彼の額に手をあてる。 「……特に熱もないし、おそらく夢を見ているのでしょう」 涙は次から次へとあふれていった。それでも青年が目を覚ます気配はない。 それは無垢で危うげな感情の発露のようだった。泣き方を知らない子供のようでも、泣くことのできない大人のようでもあった。 「男の人って」 輝夜は彼の顔に手を伸ばした。そして、 「みんなこんな風に泣くの?」 あふれ出る涙を自ら掬い取った。 … …… ……… 話しこんでいるうちにも夜は更けていく。 月が夜空を渡るにつれて、二人の影も解ける様に移動していく。 「それでは月の方たちは月のことを歌に詠まないのですか?」 「そういえばそうね。今まで考えもしなかったわ」 いつのまにか正面にまで来ていた月が○○の目端に反射した。 それを見つけた輝夜は自然と月に目を向ける。 追って、○○も。 「こうして月を見上げることも……」 「……」 ふと会話が途切れた。はかなくも途切れることのない竹林のさざ波だけが耳に届いてくる。 二人は再び空を見上げていた。 やや光の弱い月明りは、儚い星の瞬きを邪魔することなく夜空に彩りを与える。 「見たままのことを、感じたままのことをありのままに言葉にできれば」 「……」 「それは全部歌になる。下手も上手も、技術も何もいらない、素敵な歌」 「……想いをこめた言葉はすべて歌になる、ですね」 「……ちょっと気取り過ぎたかしらね。恥ずかしいわ」 ごまかすように輝夜ははにかんだ。 ○○は楽しそうな笑みを崩さずに、 「とてもいい歌だと思いますけど?」 にこやかに言った。 「やーね、いじわる」 輝夜は恥ずかしそうにしながら○○の肩をはたく。すみません、と○○は謝りながらもやさしい笑顔。 その余裕が気にいらない、と言わんばかりに輝夜は何度も小突いた。 彼女はふと何かに思い立ったように、はたいたてのひらをそのまま肩に手を添え、ゆっくりなでた。 「傷はもう大丈夫のようね」 そして愁いを帯びた目で見上げるように○○の目を覗きこむ。 ○○は少しだけ困ったように目を細める。 いつの間にか先ほどの楽しげな空気は夜陰に散っていた。 「はい、皆さんのおかげです。記憶のほうはまだ戻らないのですが」 「そう……」 しばらくの間、輝夜はやさしくいたわるように○○の腕をさすっていたが、やがて名残惜しそうに手を離した。 ややあって、意を決したように口を開く。 「ねえ、○○」 そこでいったん区切って、強調するように言った。 「どうしても、ここを出て行くの?」 申し訳なさそうに、○○が顔を伏せた。 表情は見えないが、その沈黙は、輝夜にとっては肯定も同然だった。 またしても、しかし先ほどとは明らかに質の違う沈黙が二人を覆った。 雲が月を朧にし、二人の影は輪郭をなくす。ますます暗い影が○○の表情を隠す。 「いつまでも、ここでただ甘えているわけにもいきません」 しばらくして沈黙を破ると同時に挙げられた○○の顔は笑顔だった。 ただ、かすかに膝の上に置いている手が震えていた。 黙ったままの輝夜に向けて、○○はさらに言葉を続ける。 「輝夜さま、本当に感謝しています。あなたが気さくに声をかけてくれて、どれだけ私の心が救われたか。輝夜さまとの語らいは生涯―――」 「やめて」 輝夜が○○の口に手をやって言葉をさえぎった。 「今出て行くわけではないのでしょう。そんなこと言わないで」 そっと手を離しながら、輝夜は話す。悲しげな、それでいて優しげな瞳は○○の目をまっすぐに見ていた。 そして○○の手をとり、さらに輝夜は付け加える。 「それに、いつだって会いに来てもいいのよ? 私たち、その……お友達、でしょう?」 同意を求めるように、輝夜は軽く力を込めて○○の手を握った。 ○○は何も言わず、ただ感謝するように頭を垂らした。 ----------------------------------------- 輝夜はただ薄暗い廊下を歩いていた。 先ほどまで穏やかに眺めていた月を左に、しかし今は一瞥もせずに黙々と前へ進む。 彼女は、廊下に面する多くの障子の内の一つ、中から光の漏れる部屋ので止まった。 そして無造作に障子を開け、中に入る。 「ノックぐらいしなさいな」 部屋の中で、座布団を敷いて正座していた女性が、輝夜を静かにたしなめた。同じく隣に座る少女が苦く笑う。 女性は永遠亭の薬師にして輝夜と同じく月の民、八意永琳、少女のほうは月兎の鈴仙だった。 一服していたのだろう、二人の間には急須が一つと湯気の立ち上る湯のみが二つ、空の湯のみが一つ。 輝夜は二人の前に座ってもなお口を閉ざしていた。永琳がお茶を注ぎ差し出すもも手に取る気配はない。 鈴仙はそんな彼女をただ黙って見つめ、すぐにはっと息をのんだ。 鈴仙の目には小さく震えている輝夜の肩が映っていた。 永琳のほうを見るが、彼女は力なく首を横に振るだけだった。 「姫様、大丈夫ですか?」 鈴仙がいたわるように声をかけると、 「……か……」 輝夜は呻くように何事か呟いた。 肩の震えが一層ひどいものになり、鈴仙があわてて傍に寄り添う。 「姫様、落ち着いてください!ひめさ」 「 か わ い す ぎ よ ○○~~~ッッ!!!!」 永琳はため息をついて、吹き飛ばされて湯呑みを中の茶をこぼすことなく捕った。 鈴仙は障子を吹き飛ばして廊下の向こう側に消えていった。 「ああもう! ねえ永琳、どうして○○ってあんなに可愛いのかしら! 月明りって卑怯よね! 今日はほんとに襲いかかりそうになったわ!」 「ごめんなさい、輝夜」 「?」 「今何も聞こえないの。もうちょっと待って。よければその間にうどんげを回収してきてちょうだい」 「それで、首尾はいかがかしら?」 輝夜が引きずってきたうどんげを横に寝かしながら、永琳は訊ねた。 「順調よ。沢山お話もしたし、良いことも聞いたし、ね」 輝夜は上機嫌にうなずいた。ややぬるめになってしまったお茶を優雅に飲み、ほっと目を細める。 永琳も自分のお茶をすすり、輝夜が話すのをじっと待つ。 そのとき、微かなうめき声をあげて鈴仙が目を覚ました。 いまだ前後不覚らしい彼女に、永琳が茶を勧める。 「大丈夫かしら?ごめんなさいね。はしたなくて」 「い、いいえ。平気です」 輝夜が詫びると頭をふらつかせながらも鈴仙は答える。 「それで、その、どうだったのですか?」 「そうそう。彼ね、やっぱりここを出て行って里に住む気らしいわ」 鈴仙は目を見開いた。永琳は黙ってお茶を継ぎ足した。 「まあ、多少は安心といったところね」 「ええ!? どうしてですか?」 「いまのところ外界に帰る気はない。そういうことでしょう?」 「ええ、帰る気があるのなら博麗神社を頼るはずだしね」 我が意を得たり、と言わんばかりに輝夜はうなずいた。ついでに空になった湯呑を永琳に差し出した。 ああ、と鈴仙は納得する鈴仙に輝夜は意地悪く笑って、 「だから安心しなさい。あなたもご執心な○○は手の届くところにいてくれるわ」 またしても吹き飛ばんばかりの勢いで、鈴仙は体を反らした。 「だっだっだれがあんな外界の地上人なんかを!」 「貴方が彼の悪口言うのってこういうときだけよね」 「むしろうどんげはいつも彼を心配してるのよ」 「し、師匠!」 涙目で叫ぶ鈴仙をさまあたたかい目で見つめる二人。 そしてぶつぶつと一人愚痴る鈴仙を尻目に輝夜が訥々と語り始める。 「私はうれしいわ。彼がまだこの幻想郷にいてくれて」 「姫様……」 「彼と話すのも好きだし、ときどきはかなげな顔をするのも好き。もっともっと彼と話をしたい。ずっと一緒にいたい。」 こそばゆそうに輝夜は笑った。 「こんな気持ち初めて。なんだか弾けてしまいそう」 その表情を見た鈴仙は恥ずかしそうにそっぽを向いた。 永琳も母性あふれる笑みを浮かべて 「さっきは襲いかかりそうになったと言っていたような気がするけれど?」 「なによ聞こえてたんじゃない」 「読唇術よ」 「別にいいでしょ。無防備な○○が悪いの」 はしたないわよ、注意を促す永琳に輝夜は舌を出して応じた。 そして、輝夜は手を口元で合わせるようにして小さく欠伸をすると、 「もう今夜は眠るわ。なんだか疲れちゃった」 おやすみなさい、と部屋に入ってきたときのように我儘に出て行った。 二人きりになったところで軽く鈴仙はため息をつきつつ、 「……結局、姫様は何をしたかったのでしょうか」 「多分、自慢と鼓舞でしょう。悔しかったら彼の気を引いてみなさいって。でも本命は私なんだからねってところかしら」 「はぁ……って私はだから別に」 「ふふ、あれもまた愛嬌ね」 共感し難そうに愛想笑いする鈴仙を静かな笑みで流す永琳。 ふと鈴仙が口を開いた。 「ところで気になったのですが、○○には話したのですか? この幻想郷や自分の出自を」 もちろん、と永琳はお茶のおかわりを入れながら答える。 「神社のこともその時話したけれど……正直言って実感が湧いていない様子だったわ」 どう転ぶのかしらねぇ、と永琳は手に持つ湯呑を空にした。 ―――つづくかも 新ろだ2-071 これはいったいどうしたことか。 冬からに春に替わりつつある今時分。 夕日の射す人里の小さな一軒屋にて、俺は畳の上で正座し、考え込んでいた。 そんな真剣な顔で考え事をするなんて○○らしくない? なんとでも言え。俺は今、さながら修行僧のように瞑目し、解決策を導き出すための思考を続けねばならんのだ。 しかし、本当にどうしよう。いくら考えても思考がまとまらない。 というよりも、そもそも何故こんなことが起こっているのか、この状況が理解できなかった。 俺の目の前に置かれている、4枚の薄い封筒。 全て白色で、大きさも形も、表面に書かれた『○○様へ』という文字すらも一緒。 けれども裏面に書かれた文字――差出人の名前は全て違っていた。 そう、これらは全て手紙――いわゆる恋文、ラブレター。 俺は今日、それぞれ異なる4人から同時にラブレターをもらってしまったのだ。 「ありえないだろ……」 落ち着け、俺。 ラブレターを貰った嬉しさと、4人から同時という戸惑い、これから起こりうる事態への不安。 それらが入り混じった、なんとも言いがたい悶え苦しむような感情はさておき。 OK、自分の頬を殴ってニヤケ顔を止めよう。身体の震えもこれでおさまるはず。 そして現状の再確認だ。 まず1通目。 これは俺が朝目覚めた時、玄関の扉の下に挟まっていたものだ。 裏面には『さるの』と書かれている……チルノのことだろう。 内容に関しては次の通り(文字が間違ってたりぐちゃぐちゃだったりしていたので非常に読みづらかった)。 『はいけい あたい あんたのこと きになってる なんだか あんたのことかんがえてると すごくからだがあつくなる きっと あんたのせいだ! いっつも あたいをからかう あんたのことだから へんなまほうかなにか かけたにちがいない! このままじゃ あたいがとけちゃいそうだから あんたに いいたいこと いおうとおもう きょうのよる きりのみずうみのちかくの おっきなきのしたで まつ こなきゃ こおらせてやるから! かしこ』 解読した限りではこんな感じで間違いない。 最初と最後にちゃんと頭語と結語があるのは、親友の大妖精あたりに手紙の書き方でも教えられたのだろうか。 何にしろ、これはラブレターだという他ない。 にしても、あのチルノがねえ……あいつとはよく遊んでる仲だが、まさかこんなことになるとは。 俺とチルノはいわゆる喧嘩友達という奴だ。 顔を合わせるといつも口喧嘩になり、悪くすれば弾幕ごっこにまで発展してしまう。 まあ、弾幕勝負になると弾を出せない俺の一方的な負けになるから、極力そうなる前に逃げているけど。 『おーい、チルノー。暑いからちょっと俺の氷嚢になってくんない?』 『な、な、なんであたいが! このばかー!!』 こんな風に、冷たくて気持ち良いからって抱きしめると、その度にあいつは顔を真っ赤にして怒って、俺を凍らせようとしてきたものだ。 そんなチルノがいきなりこんな手紙を送ってくるのだから……正直驚く。 ただの喧嘩友達だと思っていたのに。どうすればいいのだろう。 次に2通目。 この手紙は、俺が昼間、森の中を散歩している間にいつの間にか胸ポケットに突っ込まれていたものだ。 不思議だった。散歩の間に誰とも会った覚えがないし、そもそも人の気配を感じたことすらなかった。 なのに、まるでいきなり現れたかのように手紙がポケットに入っていたのだ。 帰宅後に手紙の裏面を見てみると、そこには『あなたの瀟洒な従者より』とあった。 先の出来事から考えても、これは紅魔館の十六夜咲夜からのものに違いないのだが……どうにも信じられない。あの咲夜さんが? 内容はこうだ。文章はとてもかわいらしい文字で書かれていた。 『私がこんな手紙を送るだなんて、あなたは想像していたかしら? もしかしたら、あなたはこの手紙を笑い飛ばし、破り捨ててしまうかもしれない。 日頃の私があなたに取っている態度を思えば、それも当然のこと。 けど、聞いてほしいの。私の本心を。私の時間がどれだけあなたに奪われているのかを。 この想いを言葉で伝えるために、今日の夜、私は紅魔館前の湖のほとりにある、あの大きな木の下で待ちます。 よければ来てください』 これは本当に「あの」咲夜さんからの手紙なのだろうか。信じられない。 あのちっこい吸血鬼の主人のいたずらだと言われた方がまだ信じられる。 はっきり言って、俺と咲夜さんの仲はそれほど良くない。 俺は運送業という仕事柄、紅魔館を訪れることが多く、そこの主人であるレミリア・スカーレットにはたいそう気に入られている。 よくお茶会にも招かれているし、『深夜のお出かけ』とやらに付き添いを命じられたこともあった。 だがその反面、レミリアの従者である咲夜さんは俺のことを嫌っている。 別に言い争ったり喧嘩をしたりはしない。 だが、俺が話しかけても彼女はすぐに「そう」の一言で会話を終わらせるし、あからさまに俺の視線を避けもしていた。 態度がなんだか冷たいのだ。 なるべく俺と関わらないようにしているのが見て取れて、あんなに綺麗な人が俺のことを嫌っているのか、と一時期は落ち込みもしたものだ。 『あの、咲夜さん。お世話になってるお礼に、お嬢様に紅茶を贈ろうかと思うんですが、どんな茶葉がいいんでしょうか?』 『……好きにすればいいわ。きっとあなたからなら、どんなものでもお嬢様はお喜びになるから』 『え、け、けど苦手な茶葉とかもあるでしょうし……』 『私に聞かないでちょうだい』 こんな感じで、彼女はいつも俺に冷たい(それでも最後はおすすめの茶葉を教えてくれたりした。物凄く嫌そうな顔をしていたが)。 そんな咲夜さんがどうして? あまりにも普段の彼女とのギャップが激しすぎて、どう反応していいか分からない。 よし、3通目だ。 これは散歩から帰る途中、里の守護者である上白沢慧音さんに手渡されたもの。 慧音さんは「よく考えてやってくれ」と真剣な顔でこの手紙を俺の手に掴ませた。 彼女の背中には怒気すら感じられた。ちょっと怖かった。 この手紙の裏面には『健康マニアの焼き鳥屋より』と書かれている。この文句は藤原妹紅のことだ。 妹紅……彼女が? いやはや、妹紅は良き友人なはずで……うーん。 内容は次の通り。毛筆で書かれた、えらく達筆な文字である。 『あなたと出会ってから幾数年。これまで数々の出来事を過ごしてきた。 一緒に遊びもしたし、探検もした。あなたの仕事の手伝いをしたことも何度もあった。 春の花見、夏の水浴び、秋の紅葉狩り、冬のかまくら。 年の暮れも明けも一緒に過ごした。色々なことがありすぎて、思い出の中ではおさまりきれないぐらいに。 けど、私はあなたと始めて出会った時のことだけは忘れられない。 きっと一目惚れだったのだろう。私は長く生きたせいで人の心の内側ばかり見えるようになっていたけど、あなたの内側ほど私の心を惹き付けるものはなかった。 なのに、私が今まで素直に自分の気持ちを表に出せなかったのは、やはり私という存在があなたとは釣り合わないと思っていたから。 私は不死者で、あなたは人間。この壁はあまりにも高かった。私はこの壁を越えることはできないと思っていた。 ごめん。私は今、とても身勝手なことをしていると思う。あなたに負担がかかることをしている。 それでもあなたが私の手を取ってくれるのなら……私は壁を越えられると思うから。 まずは、私の気持ちを聞いてください。その後、私に手を差し出してくれるかどうかを決めてください。 今日の夜、霧の湖の傍、大きな木の下で待っています。 藤原 妹紅』 ……これは本当に妹紅が書いた手紙なのだろうか。 こう言ってはなんだが、妹紅はこんな手紙を書くような人間ではない。 厭世的で、いつも世の中に対して斜に構えている、少し乱暴な少女。 けれど、こっちの話を興味深そうに聞いてくれて、一緒に遊ぶととても明るい笑顔を浮かべてくれる、気の良い少女。 初めて出会った時からそうだった。 何年か前のこと、永遠亭へ荷物を届ける仕事を請け負った俺は、慧音さんの紹介で、藤原妹紅に道中の護衛を依頼した。 その時の彼女は少々無愛想で、話は聞いてくれるけれども反応は薄く、あまり人と話すのに慣れていない様子だった。 けれど、話している内に趣味や興味のあるものに共通点がいくつかあることが分かり、自然と仲良くなっていた。 おかげで永遠亭への行き返りがとても楽しいものになってくれたものだ。 慧音さんなんかは「あんなに楽しそうな妹紅は初めて見た」とも言っていたっけ。 その日以降も、一緒に仕事をすることが何度かあり、俺たちは会う回数を重ねるごとに交友を深めていった。 そして、いつの間にか妹紅は自分自身のことも話してくれるようになり…… 半年もすれば、俺にとって藤原妹紅は幻想郷の中で唯一無二の親友になった。 『おーい、配達屋。暇だろ? 花見に行かないか? 妖怪の山に良い桜があるんだってさ』 『いやいや、俺は普通の人間だぞ? 妖怪の山に入ったら天狗に瞬殺されるって』 『大丈夫。私が守ってやるよ。大事な……友達だしな』 『んー、それでもなあ』 『あの桜をお前と一緒に見たいんだ。な?』 彼女とは友人として色々と一緒に過ごしてきた。花見も紅葉狩りも。クリスマスにパーティをしたこともある。 俺から誘うこともあったし、妹紅が突然俺の家にやってくることもあった。 親友という言葉が本当にしっくりくる間柄だった。 彼女は俺のことを知ってくれている。 俺も彼女が不老不死であることを知っている。 彼女は、俺の幻想郷で過ごすことの寂しさを和らげてくれた。 俺は、彼女の蓬莱人であることの苦しみが和らいでくれたら、と考えたりもした。 友人として、長さの違う互いの人生に彩りを添えられたらと俺たちは思っていた。 だけど、この手紙は……完全に予想外。 彼女は友人としてではなく、恋人として俺と過ごすことを望んでいる。 斜め上から降りかかってきた熱い炎に、俺は混乱することしかできなかった。 4通目。これは郵便で送られてきた。 と言っても、幻想郷の郵便屋ではない。死神の郵便屋で、小野塚小町という女性が直々に家まで届けてくれたのだ。 「本当は、死神の姿が見える特殊な人間に、死期を知らせるために送る手紙なんだけどねえ」と、小町さんは呆れた調子で言っていた。 そして俺に手紙を渡すと、「この幸せもん」とからかうように俺の肩を小突き、帰っていった。なんだか死神のくせにやけに明るい人だった。 さて、この手紙の差出人欄には『幻想郷の裁判官より』とある(というか、皆どうして本名を書かないんだろう)。 これを見て、俺は本当にびっくりした。 まさか裁判所から手紙が来るだなんて、いったい何事かと思った。 『このままだと地獄に堕ちる』とでも言われるのか? ドキドキしながら、手紙を開いたのだが…… 『 告白召喚令状 あなたは裁判官四季映姫様より呼び出しを受けています。つきましては所定の日時・場所にお1人でお越しください。 記 期日:〇月〇日の夜 場所:紅魔館傍の湖の、大きな木の下 ※当日は、あなたと映姫様のご関係および恋愛事情について、映姫様より重大なお話がされる予定です。 ※当日は指定された場所になるべく早くお越しください。映姫様がやきもきしながらお待ちしています。 ※あなたのこれからの生活に重大な変化が訪れる場合がございますので、できる限りのご覚悟をされるようお願いいたします。 以上』 3度読み直してようやく気付いた。 これはラブレターなのだ。裁判所からの呼び出し状に見えるが、確かにこれはラブレターなのだ。 どうしてこんな書式になったのかはさておき、映姫様までラブレターを送ってくるなんて、本当に信じられない。 そもそも、映姫様は幻想郷の裁判官。彼岸の世界でも特に偉い人で、俺との接点なんてほとんどないはずだった。 なのに俺と映姫様が知り合いなのは、俺が幻想郷にやってきた初めの頃のこと、映姫様が突然俺の所にやってきたから。 その用件は……説教。 映姫様は時々下界に降りてくることがあり、罪深い人間達に説教をして回ることがあるのだ。 俺は特に罪深い人間らしく、その説教を何度も受けた。 曰く、 『そう、貴方は少し自分に自信を持たなさすぎる。 身の丈に合わない虚栄心や思い上がりは身を滅ぼすが、己に対して確固とした自信を持たないのもまた身を滅ぼす所以となる。 貴方は幻想郷に来たことで外の世界とのつながりを断ち、新たな自分を見つけ出すチャンスを得た。 そのチャンスを活かさず、外の世界と同じように過ごしてはいけない。 貴方が自分を信じきれないということは、貴方を信じる者達に対しての裏切りともなるのだから。 己を見つめ、己を確立し、そうして私も含めた他者の気持ちにも目を向けなさい。それが今の貴方にできる善行です』 とまあ、こんな感じで云々と。 俺には、外の世界でちょっとしたことがあったせいで、幻想郷に来た当初は生きる理由を持てなくなっていた。それが罪深いことだったらしい。 まあ、映姫様から心に突き刺さるお説教を何度もしてもらったおかげで、今ではなんとか幻想郷にも馴染んできて、自分の居場所を作れるようになった。 それに伴い説教の回数も減った。それでも映姫様は俺のことを心配してくれているのか、忙しいのにちょくちょく会いに来てくれた。 最近では説教ではなくもっぱら世間話をしている。地獄の裁判官である映姫様の苦労話は、なかなか此岸では聞けないものばかりで楽しい。 俺が笑うと、映姫様もとても嬉しそうにしてくれた。『立ち直りましたね』と言ってくれたことが印象的だ。 ただ、立ち直ったと言ってもさすがに自分のことで手いっぱいなので、映姫様が言っていた他人の気持ちに目を向ける、というのがなかなかできていないのは、反省している。 ……ああそうか、こうやってラブレターを貰って驚いているのは、他人の気持ちに目を向けていなかったからなのか。 そういえば、映姫様はこんなことを言っていたか。 『貴方は外の世界に居る頃から、その罪を背負っていましたね。 大罪と言えるほどの罪ではありませんでしたが、貴方の心をきちんと知った私は、なんとか貴方を助けたかった…… 幻想郷に来た貴方の所にすぐにかけつけたのも、それが理由なのです』 はぁ……そうだな。俺は罪深い。確かにそうです、はい。他人の気持ちにまったく無頓着になってました。 けど同時に4通もラブレターを貰って、しかも彼女達が指定してきた場所・時間がまるっきり同じだということも、俺の罪深さゆえの報いなのでしょうか? どうしたらいいんだ俺……このまま、のこのこと湖の傍の大木に行ってもいいのだろうか。 もうすぐ夜が近い。自宅から約束の場所まではそう遠くはなく、歩いて10分もすれば到着する。 なんだかその約束の場所がある方角から爆発音と怒号が聞こえるが、今はそれを気にしないでおこう。 ……決めよう。どうするかを。彼女達の言葉に対し、俺はいったいどんな返事をするのかを。 そうだ。そもそも俺が好きなのは誰だ? これが一番大事なはずだ。 俺は……俺が好きなのは、 1.チルノ 2.咲夜さん 3.妹紅 4.映姫様 5.4人とも好きだぜ、こんちくしょー! 6.俺は常に独りだ! 7.うお! な、なんだ夢か……しかしどうして俺が配達屋なんかになってたんだろ。ん? こ、これは、ラブレター! (7番の選択肢を選んだ方は、あなたの嫁からのラブレターを掲載する義務が生じます。ご了承ください) 続きはあなたの夢の中にあります
https://w.atwiki.jp/orz1414/pages/330.html
ここは幻想郷で唯一の梅ノ木が咲いているところ。 ここには○○という一人の男が梅ノ木を世話していた。 これはとある日のこと ○○「今日もいい天気だな~」 ???「そうね~」 ○○「誰ですか?そこにいるのは?」 近くの草むらから西行寺家のお嬢様、西行寺幽々子が出てきた。 なぜお供の魂魄妖夢をつれていないのだろう? 幽々子「あなたが育てたこの梅ノ木も立派になったわね~」 ○○「そうですね。幽々子さんたちのおかげですよ」 最近この幻想郷に迷い込んだ○○は、突然現れたスキマから梅ノ木の苗を渡されたのだった。 スキマから「あなたはなかなか見所がありそうね~。どう?この梅ノ木を育ててみない?」 ○○「あなたは誰なんですか?それにここはどこでどうすれば帰れるんですか?」 スキマから「私の名前は八雲 紫。ここは幻想郷。妖怪と人間の住む場所。そしてあなたはもう元の世界には戻れないわ」 ○○「じゃあどうすれ「だ~か~ら梅ノ木を育ててみない?」……何でですか?」 紫「何でって……暇だからよ!最近霊夢も相手にしてくれないし。藍や橙も忙しいみたいだし…」 ○○「霊夢や藍って誰ですか…でも、場所とか水や肥料の問題もありますし、まず僕が生きていけないと…」 紫「場所ならここから見えてるあの小高い丘にすればいいじゃない。たぶんあそこなら元気に育つわ。 しかも、ちょうど良く小屋があるじゃない」 …僕は見ていた。大きなスキマから小屋が落ちてくるのを… 紫「食べ物だったらここを下っていって人間の里から分けてもらえばいいわ。この辺なら妖怪もあまり出ないみたいだし 上白沢って人に言えば食べ物や道具とかもどうにかしてもらえるわ。 ○○「さいですか…」 こんな感じで僕はこの場所で梅ノ木を育てることになったのである。 幽々子「回想が長いわよ~」 ○○「そうですね。少し長すぎました」 幽々子さんたちに出会ったのは、一度、鴉天狗の取材があって次の日にこの事が新聞でばら撒かれていたからだ。 その後、評判を聞きつけて幽々子さんやいろんな人がこの木を見に来た。 緑色の腋巫女からは、食べ物をもらったり、元の世界で住んでいるところが近かったらしく、話し込んだりした。 くしゃくしゃの耳をしているブレザーのウサギからは、病気になるといけないからといって永琳印の救急箱をもらった。 ⑨は梅ノ木を折ろうとしたのでなぞなぞを出して追い払った。 そして幽々子さんからは、虫がつかないようにする肥料のようなものをもらったり、こうしてここで話していたりする。 不思議なのはこの梅ノ木で苗から三ヶ月で立派な木になり、今では蕾もつけている。 幽々子「この調子ならもう少ししたら花が咲くわね。」 ○○「蕾もたくさんついてますし、咲いたらお花見ができますね」 そう言って幽々子さんは涎をたらしている。花より団子ですか。 こうして一時間ほど話した後唐突に幽々子さんがこう切り出してきた。 幽々子「ねぇ○○、あなたはこの梅の花が咲いた後どうするのかしら?」 ○○「そうですね……梅ノ木の世話ですかね。あとはゆっくりと過ごすつもりです」 幽々子「ね、ねぇ、良かったらだけどうちの桜たちの面倒も見てもらえないかしら。もちろん三食昼寝付きで、庭師よりもいい待遇をしてあげるわ」 ○○「それもいいかm「ちょっとまったー!!」 そういって話に飛び込んできたのは、妖怪クラスでトップの力を持つ、風見 幽香であった。 幽香「○○は西行寺には渡さないわよ!」 幽々子「どうしてあなたがそんな事を言えるのかしら?」 怖いですよ。お二人さん なんか殺気が立ちこもって来てますよ 幽香「なぜならうちの花たちの世話をしてもらうんだから。それに……」 なんで顔を赤くしてるんですか? 幽々子「ダメよ○○。あなたは私、この西行寺幽々子と共に、桜たちの世話をしなきゃ」 なんでこちらも顔を赤くしていて、しかも幽々子さんの名前のところを大きな声で強調しているんですか? 幽香「これはもうあれね」 幽々子「そうね。あれよね」 あれってもしかして…… 幽香&幽々子「「弾幕ごっこよね!!」」 色とりどりの弾幕が展開されていく。そのうちスペルカードを使い始めて流れ弾がこっちに当たるようになり 僕は意識がなくなっていった。 どうしていたのだろう。まさか僕は死んだのだろうか。 ○○「うぅ、イタタタ」 幽々子「○○大丈夫?生きてる?」 幽香「意識ある?」 目を開けると梅ノ木の下でぼくは横たわっていた。 目の前には幽香さんと幽々子さんがいた。 幽々子「良かったわ。あなたが死ぬなんて私、考えられないわ」 幽香「怪我とかしてない?ふぅ、大丈夫そうね」 ○○「僕はどうしたんですか?」 幽香「あなたは私たちの弾幕の流れ弾に当たって気を失っていたのよ」 幽々子「あなたが寝ている間に私と幽香は話し合っていたんだけどね~」 ○○「何を話していたんですか?」 そこで二人はまた顔を赤らめて、 二人同時に 幽々子&幽香「「あなたのことが好きなの!!」」 はい? 二人が俺を好き? なぜ?why? 幽々子「だからあなたに私か幽香をどちらかを選んでほしいの」 選ぶ?僕が?幽々子さんか幽香さんを? 幽香「さぁどっちを選ぶ?私?西行寺?」 そして僕が選んだのは…… 続く? 一応幽香エンド… ○○「幽香さんだよ」 幽香「本当なの?私でいいのね…」 ○○「ああ、俺は幽香のことを愛している」 幽々子「そうなの…妖夢帰るわよ」 妖夢「わ、待ってください幽々子様~」 幽々子「○○、あなたに一言だけ言っておくわ。例え自らと存在が違おうとも愛することは永遠にできるのよ」 ○○「わかりました。俺は永遠に幽香さんを幸せにすることを誓います!!」 幽香「○○…」 幽々子「そのいきよ。もし間違っても白玉楼に来たら消滅させるから。ふふふh」 幽々子さんその笑顔でそれを言うのは反則だと思います 幽々子さんと妖夢はそのまま宙に浮き、飛んでいった 幽香「そうね。白玉楼なんかに○○は行かせないわ」 ○○「幽香…」 幽香「さぁ早く帰りましょう?私たちの家へ」 そういって幽香は手を差し伸べてきた 俺はその手をやさしく手に取る ○○「ああ、帰ろっか」 二人はその手を離さぬようにしっかりとつないだ …二度とその手が離れぬように… 13スレ目 201 うpろだ962、1001 ─────────────────────────────────────────────────────────── 少女は幸せだった。 端から見たらさぞかし不気味だったんだろうが・・・・それでも少女は幸せだった。 そう、目の前に飾られている雛人形を見るだけで。 ―――今日は雛祭り。 人形師である私は当然、自分で雛人形を造り、自分で飾る。 毎年のことである。 だけど、今年はデザインを変えた。 そう、お雛様と、・・・・・お内裏様を。 お雛様を・・・・・私、お内裏様を・・・・・・○○に。そう、似てるようにデザインした。 少女趣味にも程があるのは自覚している。 でも、やっぱり見ているだけで幸せになれる。自分でもまさか、これほど効力があるとは思っていなかった。 ほんの、ちょっとしたアイデアというか、・・・・・・そんな感じだったのに。 ―――○○は最近、幻想郷に迷い込んできたらしい。 第一発見者は魔理沙。森の木の上で昼寝している○○を見つけ、そのまま仲良くなったらしい。 そして、私にも紹介してくれた。 最初はなんだか冴えなさそうな印象だった。 けど・・・・・・・私は、いつのまにか彼にしか目が行かなくなってしまっていた。 いつからかはわからない。でも、この気持ちは紛れもなく本物だった。初めてだった。 ―――ピンポーン! 「え?」 呼び鈴の音が鳴った。 どういうことだろう。今日は来客の予定なんて無かったはず・・・・・・・・ 急いで窓から外を見る。するとそこには・・・・・・ 「霊夢に・・・・・・魔理沙に・・・・・・○○・・・・・・・?」 「やっぱりいないんじゃないか?」 呼び鈴を鳴らしても出る気配がない。 なんで俺達が、アリスの家に来ているかというと、魔理沙が突然、アリスの家でパーティーやろうぜ!とか言い出したのである。 他人の家前提なのが魔理沙らしいと言えば魔理沙らしい。 「いーや、いるはずだぜ。予定無いとか呟いてたし」 「だからってアリスの家でやらなくても」 「私の家はガラクタだらけだし、霊夢のところはもう飽きたし」 「そりゃ、あんたらがあれだけ宴会やってれば飽きるわよ・・・・・・」 「ちなみに、言うまでもなく俺の家は無理だからな?」 俺の家は森の奥のほうにあった廃屋。 不便さ全開だが、野宿よりは数倍マシである。 「仕方ない。強行突破だぜ」 「おいおい、破壊する気か?」 「出ないアリスが悪いぜ」 「やめといたほうが・・・・」 「無駄よ、○○。こうなった魔理沙は止まらないわ」 「そういうことだぜ。ほんじゃま、ちょっくら・・・・」 窓から3人をボーっと見ていると突然魔理沙の手元が光りだした。 あ、まずい!まだ雛人形が飾ったまま・・・・・! 「こ、こら!魔理沙!私はいるから、もうちょっと待ちなさい!」 窓からそう叫び、急いで雛人形を片付ける作業に入る。 だが、流石に短時間でこれだけの台や人形を片付けるのは無理だ。長引くと怪しまれる。 止むを得ず、○○の姿をしたお内裏様を上海と蓬莱に託し、隠すよう命じた。 急がないと、魔理沙にドアを破壊される・・・・ 窓からアリスの声が聞こえたと思ったら、すぐ引っ込んでしまった。 何をしているのだろうか。 「やっぱりいたぜ」 「でも、あれだけ鳴らしたのに、なんですぐ出なかったんだろう?」 霊夢が答えた。 「人形でも作ってたんじゃない?今日は雛祭りだしね」 「そういや今日は雛祭りだったか。でも、なんか慌ててたようだったけど」 「魔理沙にドアを破壊されるところだったからでしょ」 ガチャリ 「・・・・・・はぁ。まったく、一体何の用よ・・・・」 何秒かした後、ドアからアリスが出てきた。 なぜか息を切らしているが。 すると、アリスを横切るように魔理沙が先に行った。 「お邪魔するぜー」 「ちょっと魔理沙、勝手に入らないでよ!」 「いつものことじゃないか」 「それとこれとはちがーう!」 そう言って、二人は家の奥のほうへ駆けていった。 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 俺と霊夢は二人そろって「やれやれ」のポーズで、遅れてアリスの家の中へと入った。 「へえー。立派な雛人形だな」 家に入ると、まずそこになんとも立派な台に綺麗な装飾が施された人形達。 見入ることは間違いない。 「でも、お雛様はいるのに、なんでお内裏様がいないんだぜ?」 確かにそうだ。 主役と言っていいお内裏様がいないのには、何か理由があるんだろうか。 「う、うるさいわね・・・・えーと、その・・・・・・・・失くしたのよ」 「失くした?」 「そ、そうよ!失くしたの!」 「なんでそんなに怒ってるんだぜ・・・・」 「怒ってないわよ!・・・・・・・はぁ、それで、ここに何の用なの?」 これには霊夢が答えた。 「魔理沙がここでパーティーをしたいらしいのよ」 「はい?」 「今日は雛祭りだし、どんちゃん騒ぎやろうぜ!ってことらしいわよ。魔理沙が。」 「なんで私の家で・・・・・・・」 「かくかくしかじか・・・・・だぜ」 「便利だねぇ」 「勝手に決めないでよ・・・・・」 「どうせ、何も予定無かったんだろ?」 「そうだけど・・・・・」 「じゃあいいじゃないか。減るもんじゃないぜ。じゃ、○○、材料よろしく」 突然の名指しである。 「え、なんで俺?持ってきてるわけないだろ」 「買い物よろしくだぜ」 「自分勝手だな」 「気にしたら負けだぜ」 なんか騙された気分になりながらも、俺は一人寂しく人里へ材料の買い物に出かけることにした。 つーか、考案者なら用意しとけよな・・・・・・。 「あら?」 ○○が買い物に出かけた後、突然霊夢が妙な声を出した。 もしや隠してた人形が見つかった・・・・? 隠し場所は上海と蓬莱に任せてしまったのでどこにあるかはわかってない。 「このお雛様・・・・よく見たらアリスに似てない?」 「え?」 しまった、こっちも隠しておくべきだった・・・・・ 「そ、そうかしら?」 「ほら、この黒髪を金髪にして、顔をもうちょっと丸くして・・・」 「気のせいよ、気のせい」 「ん?上海と蓬莱、こんなところで何やってるんだ?」 「!?」 今度は向こうから魔理沙の声。 上海と蓬莱・・・・? 「ん?何か隠してる・・・・?」 「ああああああああああ、そ、それはダメなの!ね!」 「な、なんだ急に・・・・」 こら、上海と蓬莱、同じところで固まってたら普通バレるでしょ! もうちょっと上手く隠しなさい! 「そうされると意地でも見たくなるぜ・・・・・」 「ダメ!これはダメなの!」 「なんでダメなんだぜ?」 「それは・・・・・・」 「別に見られたって死ぬわけじゃないでしょ?」 「霊夢、いいところにきたぜ」 「ダメ!」 「まぁまぁ、運が悪かったと思って」 霊夢に腕を掴まれる。 「やめて!」 「さーて、上海と蓬莱、吹っ飛ばされたくなかったらどいてなー」 そう言われて帰ってくる上海と蓬莱。 この臆病者ー!! 「ん・・・・・・人形?」 「人形ね」 この世から消えてしまいたい。 「あれ・・・・この人形・・・・・」 「・・・・○○・・・・・・よね・・・・・・」 この世から消えうせてしまいたい。 ごめんなさい、お母さん。私、もう無理かも・・・・・・ 「アリス・・・・・お前まさか・・・・・」 「・・・・・・そうよ。魔理沙の思ってる通りよ・・・・・・○○のことが好きなの、私」 「な・・・・・・・」 下手に否定するほうが不自然だから、もう認めるしかない。 なかば、ヤケクソだ。 「なんで・・・・・・お前も・・・・・・」 ・・・・・・・・・お前「も」? 「魔・・・理・・・沙・・・?」 「あ、いや、今のは違うんだぜ!言葉のアヤってやつで・・・・」 真っ赤な顔で否定されても説得力に欠けている。 「魔理沙・・・・・あんたまで○○のことが・・・・」 「うう・・・・・・」 「霊夢?あなたまでそんなこと言うんじゃ・・・・・」 「・・・・・・・・・・」 ちょっと。 どんな状況よ、これ。 まさか3人・・・・・・・・? 「雛さーん、いい加減はなれてくれよ~」 魔理沙に頼まれた買い物帰り、俺は途中の道で雛さんに遭遇した。 雛さんは魔理沙の次に幻想郷で出あった人(?)だ。 その日は、迷い込んでた森でたまたま雛さんと出会い、なぜか気に入られてしまった。 雛さん曰く、「あなたの厄は数え切れないほどある。心配なの」 とのこと。 そんな、まだ俺若いのに・・・・・・この先の人生やっていけるのかな・・・ ところで、さっきの「離れてくれよ」はなんだったのかというと、 「あなたには、今、かなり大きい女難の厄がとり憑いているわ」 とか言って背中に雛さんが抱きついて離れないのである。あなたは蝉か。 それにしても、女難ってなんだろう・・・・・魔理沙辺りの話ならもう何回もそんな目に会ってるが・・・・・ちょっと違うか? 「この厄は・・・・かなり大きいし、近いわ」 「あのー、離れて欲しいんだけど」 「お気になさらず」 「重いんだけど」 頭にゲンコツがとんできた。両手には荷物を抱えているので守ることが出来ずクリーンヒット。 かなり痛い。 「レディ相手に失礼ね」 「(・・・・・・鬼だ・・・・・)」 「なんか思った?」 「めっそうもございませーん!」 なんだかんだしている内にアリスの家が見えてきた。 結局雛さんまで憑いてきてしまったけど。 「近い・・・・近いわ」 「雛さん?」 「今・・・・・あの家に入るのは危険よ」 「・・・・・・・どうしてだ?」 「危険だと脳が告げてるわ」 「でも、あの家が目的地なんだけど」 「危険よ」 「・・・・・・・どうすればいいんだ?」 「・・・・・私から離れないようにしなさい」 「この状態で行けってことかい?」 「そう」 ・・・・・まぁ、客が一人増えるぐらいなら大丈夫だろう。 そう思い、俺はアリスの家へと入った。頭に雛さんを乗せて。(流石に背中に抱きつきっぱなしは疲れたらしい) ―――まず思ったこと。 ・・・・・・・・・何事かと思った。 俺が買い物に出るまでは確か和気藹々(?)してたはずだった。 なのに、今のこの部屋の惨状はなんだろう。 部屋は荒れに荒れ、壁がところどころ破壊されてるわ、テーブルが壊れてるわ・・・・・まるでここで弾幕バトルが起きたみたいじゃないか。 「おーい、霊夢に魔理沙にアリス~?どこいったんだ~?」 荷物を置き、雛さんを頭に載せたまま3人を探すが、どうやらここにはいないようだ。 強盗・・・・・なわけないよな。むしろ返り討ちだろう。 となると、やはりこれは・・・・ 「・・・・・・さっきまでここで弾幕勝負があったようね。それもかなり大きい」 「でも・・・・なんで突然?」 「・・・・・・・・それは自分で知りなさい。私からはなんとも言えないわ」 「・・・・?」 「(まったく、朴念仁なんだから・・・・これだから私の気持ちも・・・・・・)」 家を探し回っていると、ここから出たと思われる窓があり、その外には荒れた草や木が倒れていた。 「いくらなんでも激しすぎだ・・・・」 「まずいわね。かなりオーバーヒートしてるみたい」 「行くしかないか」 森を進み、平地を進み、湖のほとりを渡り、ようやっと、3人の影らしきものが見えてきた。 いや、よく頑張ったよ、俺。飛ばずに歩いてここまで来れるなんてさ。 というか頭の上の雛さん、あなた飛べるでしょう。 「今頃気づいたの?」 「いつのまにか違和感が無くなってたんだよ・・・・・多分明日は首と肩が筋肉痛だな・・・・・」 やれやれだ。 周囲に起こるのは旋風。砂塵。 ここだけ別世界なんじゃないかと思うほど、この3人の周囲は荒れていた。 これ以上の激しさを伴った弾幕勝負が、かつて幻想郷で起こっただろうか。 「それに・・・・しても・・・・・!」 弾幕を放ち、あるいは避けながら、3人は思い思いに叫ぶ。 「まさか・・・・・アリスや・・・・・・!霊夢までが・・・・・・!あいつのことを好きだとは・・・・思わなかったぜ・・・・・!!」 叫ぶと同時に強調するかのようにそれぞれのスペカ・技が繰り出される。 魔理沙の場合はスピード感溢れる星型弾幕だ。 だが、今のような本気モードはスピード感では表現できない。威圧感がこもっている。 「魔理沙は・・・・前から妖しいとは思ってたけど・・・・・・・・・アリスまでそうだとは思わなかったわよ!」 霊夢は魔理沙と正反対の弾幕だ。 だが、彼女の弾幕はどこまでも相手を追いかけ、確実に、致命傷とまではいかないまでも少しずつ体力を削りとる。 そして、霊夢はワープを駆使し、弾幕を寄せ付けない戦い方をする。 「こうなるとは・・・・思って無かったわ・・・・・本気で・・・霊夢や魔理沙と戦うのは・・・・・初めてよ!」 惚れた男が絡むと女は恐ろしいというのは本当のことのようだ。 アリスの弾幕は綺麗な模様美。人形師らしい、魅せ、テクニックにこだわった弾幕だ。 だが、本気が絡むと、魔理沙に勝るとも劣らないスピードの弾幕が重なってくる。 まさに、この地帯は戦争状態だった。 「す、すげえ・・・・」 岩陰に隠れながら、俺は3人の戦いを見ていた。 3人が何て言っているかは聞こえないが、完全にあそこだけ別世界だ。 あんなところに放り込まれたら、どんな妖怪も一瞬で蒸発するんじゃないだろうか? 「でも、これじゃ近づけないな・・・・雛さん、何とかできない?」 「・・・・・・・」 返事が無いと思ってたら、隅で何故かブルブル震えていた。 どうやら、弾幕勝負をしたことがある奴にしかこの恐怖はわからないらしい。 「無理よ・・・・・私でもこれ以上の厄を見たことが無いわ・・・・・・・・ものすごい量が渦巻いているわ・・・・・」 雛さんをここまで震え上がらせるとは・・・・ 「それにしても、なんでこんなことになってるんだろう?」 基本的にあの3人は仲がいいはずである。 俺が買い物に出かけてから戻るまでに、何か友情破壊するような事件でもあったのだろうか。 いや、あったとしても理由がまったく考え付かない。それに、あのバトルを見ている限り相当の理由っぽい。 なんだ、一体なんだ・・・? 「○○!前!前!」 「え?」 雛さんが珍しく叫んでいた。 あれ・・・・流れ弾・・・・・? そう認識する前に、目の前がテレビの電源が切れたように真っ暗になった、 ・・・・辛うじて、俺が地面に倒れたということはわかった・・・・・。 「お、おい、あれ、○○じゃないか?」 「「え?」」 魔理沙の声に釣られて振り返ると、地上に・・・・・確かに○○がいた。 でも、地面に倒れている。 「まずい、巻き込んじまったか!」 「しまった、すっかり夢中で見えてなかったわ・・・・」 「こんなことしてる場合じゃないわ!」 ・・・・後にその場の生き証人で、第三者であった鍵山 雛はこう語る。 3人がこっちに向かってくる際、そのスピードが恐ろしく速かったこと。 私も傍にいたはずなのに、思いっきり無視されてたこと。倒れた○○にしか目がいってなかった事。 まるで別人のようだった。「愛は盲目」という言葉を体の奥まで理解させられた、と。 でも、私は諦めない、と、最後に語ってくれた。雛さん頑張れ、超頑張れ。 ―――あの騒動から一ヶ月。 今のあの3人と○○は・・・・・ 「○○、この人形どう思う?」 「ん?ああ、綺麗に出来てるじゃないか」 「そうでしょ?だから、○○も一緒n「そんな人形なんかほっといて、○○、キノコ狩りに行こうぜ!」 「・・・・・昨日も行かなかったか?」 「気のせいだぜ」 「ちょっと魔理沙、まだ私の話は終わってないわよ!」 「人形の話なんて、聞かなくても退屈であくびが出るぜ」 「そうよ。○○は私とお茶を飲みながらゆっくり過ごしたいって言ってるじゃない」 「ふん。霊夢なんかあのAAのセリフでも吐いて勝手に一人でゆっくり過ごしとけばいいぜ」 「「「なによ!!!」」」 「はぁ・・・」 ここんところ毎日である。 いつからこうなったのやら。 またもこの騒がしい少女達は以前ほどのバトルとまではいかないまでも、また外で弾幕バトルを始めた。 流石に以前のは反省したらしい。 だが、あの日以来、俺の家にこの3人以外のお客さんが増えた。 そう、雛さんである。 「・・・・・・・」 3人が弾幕勝負をしに外へ出て行った後、無言で入ってくる。 これも、毎日のことだ。 「ああ、雛さん。今日も来たんだね」 「・・・・うん」 赤くなる雛さん。どうしたのだろうか。 「それにしても、ホント変わったよなぁ、あの3人。あそこまで活発的だったっけ?」 「・・・・・・大丈夫。今度はずっと私がいるから・・・・もうあんな危ない騒動なんかには会わせないから・・・」 「・・・・?」 ちなみに、あの騒動は当然、ブン屋の記事のネタにされた。 それ以来、どこかでひっそりと、スキマ妖怪主演の、「誰が最終的に○○とくっつくか?」賭博が行われているそうな。 それによると、意外にも鍵山 雛の相場が高いそうなのである。 果てさて・・・・・どうなるのやら。 13スレ目 328 うpろだ975 ─────────────────────────────────────────────────────────── 昼下がり。縁側で茶を啜ってたら黒猫がやってきて、俺のひざの上で欠伸をかき始めた。 春も近いぽかぽかした日だったので、一緒に昼寝するかと思い座布団を枕に横になる。 それから一時間くらい経ち、人の気配を感じてふと目を覚ます。 目の前3cmまで接近した春妖精リリー(白)がいた。 何してんだと尋ねる前にわが身を振り返る。すると胸板あたりに猫化が解けた橙が寝ぼけて俺に抱きついてた。 …なる程。寝てたらうっかり変身が解けたか。こりゃ人目引くな。 起こすのもなんなのでその態勢のままでいると、動けないのをいい事にリリー(白)までこっちに抱きついてきた。 こりゃ暖かいを通り越して暑いな。とのんびり考えていると、頭上を闇が通り過ぎていった。 丁度いいやと思いその闇を呼び止め、闇の主に戸棚の干し肉と引き換えにしばらく留まって日光を遮って貰う事にする。 三分ぐらいはじっとしていたルーミアだが、干し肉を食い終えるとこれまた俺を抱き枕にして昼寝し始めた。 …これで計三人の人外をぶらさげて昼寝してる事になる。どういう状況だ。 で、結局その日は気づいたら夜になっていた。 三人に夕食を奢り、俺のなんてことのない休日は終わりを告げたのであった。 13スレ目 455 ─────────────────────────────────────────────────────────── 春の陽気とは人や妖怪関係なしに昼寝に誘う魅力があるらしい。 川辺でうとうとしていたらにとりが寄りかかってくるし、 森で木にもたれていたらいつのまにか白黒リリー二人に挟まれていたし、 野原で大の字に寝転がっていたらいつのまにかチルノや大ちゃん等々妖精と雑魚寝していたし、 向日葵畑が見える丘で寝ていたら何故か幽香が腕ひしぎ十字固めしながら寝てるし、 ほんと、みんな寝るのが好きだなぁ 13スレ目 456 ─────────────────────────────────────────────────────────── まぁやってきたといっても気付いたらいたというだけで幻想郷の住人のみんなからするとたまに現れる外からの迷い人なだけでしかないわけだが。 外の世界に帰ることも出来たんだけど外での生活に特に未練も無かった俺はあっさりと幻想郷に永住することを決めた。 基本的に外からの迷い人はみんな帰ってしまうのか、俺があっさりと「こっちで暮らすよ」って言った時にはみんな驚いていたのが印象的だった。 それからはいろんなことがあったが、特筆するような出来事といえば博麗神社の巫女さん、霊夢と恋人同士になったことだろう。 まぁその経緯はいつか話すこともあるかもしれない。 と軽く過去の話をしたところで現在 縁側で霊夢と一緒にお茶を飲んでいる。年寄り臭いとか言うな 「平和だなぁ……」 「平和ねぇ……」 俺の何気ない呟きにそのまんまの返答をする霊夢 「そろそろなにか異変が起こりそうな時期じゃないか?」 「縁起でもない事言うのやめてよ、めんどくさい」 「博麗の巫女がそんなことを堂々と言ってるのも問題だと思うが……」 「異変なんてない方がいいのよ。誰にとってもね」 「まぁそれもそうか……」 とまぁこんなゆるいやり取りもいつものこと。 本当に平和だなぁなんて思ってたらいつの間にか霊夢が俺の膝を枕に寝転がりだした。 男女が逆じゃないのか?普通だと俺が霊夢にしてもらう立場だと思うが…… 「だらしないぞ、おい」 「いいのよ」 一体何がいいのか疑問だったが俺としても悪い気はしないし放っておこう。 そんな感じにまったりと過ごすこと30分くらいした頃 「○○さーん!」 聞き覚えのある声に見上げるとつい先日幻想郷に神社ごと引っ越してきたという守矢神社の巫女さん、東風谷早苗がやってきた。 「また来た……」 途端に不機嫌になる霊夢、別に遊びに来るくらいで怒るなよ 「ん?早苗じゃないか。どうした?」 ちなみに俺と早苗は普通に仲がいい。 つい先の異変の際に霊夢が守矢神社に殴りこんだとのことで保護者の俺としてはご迷惑をおかけしてすみませんでした的な意味で菓子折りを持ってお詫びに行った時に意気投合したのである。 お互いに外からの移住者であることが大きかったのかもしれない。 まぁ決定的だったのは 「あのですねー、今ゼ○ダやってるんですけど、ここの謎解きがよくわからないんですよ。○○さんならわかるかと思って」 ……これだ。流石現代っ子、D○を取り出してずずいっと寄ってくる。 「んー、ちょっと見せてくれ。……霊夢、悪いが頭どけてくれ」 流石にこの体勢でD○やるのは辛い 「いや」 「いやってお前……いいからどけ」 「いーや」 (駄々っ子かお前は……) そんなことを考えていると 「えい☆」(ガスッ) いつの間に後ろに回り込んだのか、俺の膝を枕にしていた霊夢の脇腹を早苗が蹴り飛ばした。 「ぐえっ」 潰れたカエルみたいな呻き声を上げて霊夢は縁側から庭に転げ落ちていった 「れ、霊夢ー!」 「さあさあ邪魔者もいなくなりましたし」 「いや、邪魔者って……」 とりあえず早苗は俺の話を聞く気は無いらしい、というか霊夢のことはもはや眼中に無いらしい。 「まぁいいか……うーん、ここは……多分爆弾を上手く使って時間差で通るんじゃないかな?」 「そうなんですか?ちょとやってみてくださいよ」 そう言いながら何故か密着してくる早苗、近いって!というか胸当たってる! 「ちょ、近すぎだろ早苗……」 「だってこれくらい近づかないと携帯ゲームなんて画面見えませんよー」 「それもそうか」 納得したところで再開 「くぉら」(ゴスッ) 再開しようとしたら後頭部にものすごい衝撃が来た。隣を見たら早苗も頭を押さえている。 「自分の恋人が地面を転げ回ってるのに『まぁいいか』で済ませてあまつさえ他の女とイチャイチャしてるってのはどういうことよ!」 ごもっともな話です。今は反省している。 「そんなの決まってるじゃないですか」 え、早苗サン? 「何がよ」 「霊夢さんは○○さんにとって『まぁいいか』で済ませられるような存在なんじゃないですかー?」 「さ、早苗……?」 なにやら雲行きが怪しくなってきた気がしなくもない。 「どういうことかしら……?」 聞き捨てならなかったのか頬を引き攣らせながら霊夢が聞き返す。 鼻で笑いながら早苗は 「大体その程度のことで暴力を振るうような恋人なんて御免ですよねー○○さん?」 「お、俺にここで振るのか!」 どう答えろというのか、ほらー、霊夢もすごい顔で睨んでるし…… 「ま、まぁ殴られるよりは殴られない方がいいのは確かだが……」 「ですよね!じゃあうちの神社に住めばいいですよ!それだったら私もわざわざ○○さんに会うためだけにここまで来る必要もなくなりますし!」 それが目的かい 「ちょっと!なに勝手なこと言ってんのよ!○○は私の恋人なのよ、それがどうしてあんたの神社に住む話になるのよ」 そらそーだ 「簡単な話ですよ。霊夢さんと○○さんが別れて私と付き合えばいいだけの話じゃないですか」 Ω<な、なんだってー! 「ふん、なにを馬鹿なことを、○○、この女に言ってあげなさいよ、俺が愛してるのは霊夢だけだって……あれ?」 「○○さん、いい機会ですから全部言いたいこと言っちゃいましょうよ、俺は今日から早苗との愛に生きるって……あら?」 「冗談じゃない、あれ以上あの場にいたら何が起こるかわかったもんじゃない……」 というわけで某ジョースター家に伝わる戦いの発想法を発動した。 まぁただ逃げただけなんだけどね! (にゅ)「……で、どうするわけ?」 まるで図ったようなタイミングで出てくるなこの人は…… 「どうするもこうするもないでしょう紫さん。今頃神社じゃ弾幕ごっこが行われてるはずでしょうしほとぼりが冷めた頃に帰りますよ」 俺のその答えに紫さんはそうじゃないというように首を振る 「そうじゃなくて、霊夢と山の神社の巫女、どっちを選ぶの?」 「核心を突きましたね」 「女ってのはいくつになっても他人の色恋沙汰ってのは大好物なのよ」 外の世界でも幻想郷でもそれは変わらないんだなぁ 「霊夢のことは大切ですよ、恋人ですしね。でも……」 「でも?」 「早苗のことも嫌いじゃない。むしろ好きだと言っていいかも知れませんね」 「あらあら」 なにが楽しいのかニヤニヤとムカつく笑いをし出す紫さん 「何が面白いんですか何が……」 「ほら、あれ」 そう言って紫さんは俺の後ろを指差した。倣って振り返るとそこには霊夢と早苗がいた。 「○○、今の話は本当なの……?」 恐ろしいまでの負のオーラを纏った霊夢と 「○○さん、嬉しいです……」 真っ赤な顔をした早苗がいた。 「え、ちょ、ちょっと待て!今の全部聞かれてたの!?紫さん?っていねぇ!」 絶対ハメられた! 「……それで、どうするの?」 「さあさあうちの神社に行きましょう!神奈子様と諏訪子様も喜びますよ!」 対照的な反応の二人だが、俺はどうしたらいいんだろう 収拾つかなくなってきたから唐突に終わり うpろだ1019 ─────────────────────────────────────────────────────────── 正座状態の俺の頭を足蹴にしながら霊夢が言う。 「それで式はいつにします?」 早苗は早苗で頭の中が春になってるようだ。 それにしてもどうしてこうなってしまったのか。 まぁ俺が全部悪いんですけど。 あ、ありのままに説明するとこうなる 霊夢と付き合っていながら早苗のことも好きになったのがバレた。 「だ、だけどまだ早苗とはなにもしてませんよ?」 「いきなりなにを言い出してんのよあんたは」 いかん、動揺しすぎて思わず声に出してしまったようだ。 「あ、いや、あれですよ。もしかすると覗いてるかもしれない天狗や鬼にもわかりやすく……」 我ながらどういう誤魔化し方なんだか。 「それはどうでもいいんだけど、さっきも言ったようにどうするつもりなの?」 やっぱり誤魔化されてはくれませんか。 女って怖いなぁ。 「○○さん!子供は何人がいいですか!?」 早苗はもう少し落ち着いてくれ。 ともあれそろそろ真剣に話をする頃合だろう。 「とりあえず二人とも、落ち着いてくれ」 「「…………」」 え、霊夢はともかくさっきまで春爛漫状態だった早苗まで? 「まず最初に、俺が紫さんに言ったことは事実だ」 「まぁ紫に嘘は吐かないわよねあんたは、どういうわけか」 だってあの人嘘吐いてもすぐ見破るし…… 「でも霊夢、お前のことが好きじゃなくなったとかそういうわけじゃないのも事実だ」 ここまでは問題ない。 ここから先を言うのがとても気が重いだけだ。 「ただ早苗のことも好きになった。それだけの話だ」 ここで弱気になると大変なことになる、出来る限り堂々と宣言した。 「そ、それだけって、あんたねぇ!」 やっぱり霊夢さんは怒りますよね。 だがまだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ! 「逆に考えるんだ、好きな人が二人いてもいいやって考えるんだ(AA略」 ふ……、決まった…… さすがの霊夢もジョー○ター卿の言葉には敵うまい。 ……ってあれ? 「そう……言い残す言葉はそれでいいのね……?」 ってなんでスペルカードを取り出してるんですか? ちょ、リアルに生命の危機? 逃げようにもずっと正座だったせいで足が痺れて立ち上がれねぇ! 短い人生だったなぁ。 妖怪に殺されるんじゃなくて博麗の巫女に殺されるとは思ってませんでした。 そんなことを考えていると 「ということはあれですか?霊夢さんと○○さんの関係は解消、ってことでいいんですか?」 ここまで黙って成り行きを見守っていた早苗が爆弾発言をしやがりました。 「「……え?」」 重なる俺と霊夢の声 「だってそうですよね?そこまで怒るんですから」 「いや、あんたは腹立たないの?ハッキリと二股宣言よこれは!?」 ご尤もな話ですね いやはや本当に申し訳ない。 「私は別に構いませんよ?だって私のことも好きだって言ってくれましたし」 なんて懐の広い…… まさに大和撫子ってやつじゃないですかね? 普段俺とマ○オカートで対戦中に嬉々として赤甲羅をぶつけてくる子とは思えん。 ……あと雷で小さくなった所を狙って踏み潰しに来たりもしたな。 「で、でも、最初に付き合ってたのは私なのに……」 やっぱ納得いかないよなぁ…… だって俺が霊夢の立場でも気に食わないと思うもん 「別に霊夢さんも○○さんのことが嫌いになったわけじゃないんですよね?」 「と……当然じゃない!そもそもそうだったらこんなに怒らないわよ!」 お、なにやら雲行きが変わって来たっぽいぞ? 具体的に言うと俺にとって都合がよくなりそうな空気だ。 「ここで提案がある」 流石に全てを早苗に任せるのも当事者として情けない。 「なによ」 「二人には悪いが、少しだけ時間をくれないか?」 「時間って、どうする気よ?」 「俺が結論を出す時間だ」 「つまり私と霊夢さんのどちらを選ぶかってことですよね?」 「まぁ……そんなこと言える立場じゃないけど、そうなるな」 「「…………」」 俺の真剣な表情に二人とも考えこんでるようだ。 先に口を開いたのは早苗の方だった。 「私は構いませんよ。負ける気がしませんし」 なんでこんなに強気なんだろう。 「なっ……、わかったわよ……『私も』負けるつもりはないしね」 霊夢も対抗意識バリバリだなぁ…… 「二人とも、すまん、そしてありがとう」 「いえいえ、○○さんは私の将来の旦那様ですからー♪」 「ふん、今回は許してあげるけどこれ以上「好きになった」とかいう女増やしたら今度こそ殺すわよ?」 「その辺はもう重々承知しております……」 あえて早苗の脳内妄想トークはスルー 「とりあえず今日の所は私は帰りますね。お二人とも、お邪魔しましたー」 と以外にも早苗はさっさと帰ってしまった。 「随分あっさりと帰ったなぁ……」 「気を使ってくれたんでしょ、正々堂々と勝負ってところね」 俺の何気ない呟きに霊夢が返す。 「さーてと、晩御飯の準備しようっと」 霊夢は霊夢でさっきまでの修羅場空間が嘘のようにいつもの生活に戻ったようだ。 俺は料理をする霊夢の後姿を眺めながら どうにかして片方じゃなくて両方と付き合う方法はないかなぁなんて考えていた。 少々gdgdになった気がしなくも無いが終わり うpろだ1021 ─────────────────────────────────────────────────────────── 少し前に、○○という男が幻想郷に迷い込んだ。 ○○は幻想郷に残ることを決め、外の世界でやっていた司書の経験を生かして紅魔館の図書館に住み込みで働くこととなった。 意外なことに、ただの人間であるはずの彼のもとを訪れる人妖は多かった。紅魔館の住人は勿論のこと、図書館を訪れる魔法使いや外の世界を知る隙間妖怪、新聞記者の鴉天狗に○○と同じく外の世界からやってきた山の上の巫女。 純粋に好意を抱いているのか、ただの興味本位なのかは本人達にしか分からない。しかし、これだけ多くの人妖のと交流を持つ人間は幻想郷でも数えるほどしかいないのは事実である。 ○○が過労で倒れたそうだ。 これは千載一遇のチャンスだぜ。 本を借りるとかこつけて○○にイロイロとアピールをしてみたが、鈍感なのかまったく気づいてもらえなかった。 けど、今回は状況が違う。 必死に看病をすれば○○も私の魅力に気づいて 「魔理沙が本を盗むなんて、ウソだったんだな」 「そんなホラ話信じてたのか?」 「魔理沙は俺のハートを盗んでいった。返してほしい」 「……返してもいいけど、私もついてくるぜ?」 「喜んで受け止めるよ」 「○○……」 「魔理沙……」 検閲削除 という展開になるはずだ。 そうと決まれば早速実行だぜ。 ちょっかいを出す連中がいるかもしれないし、念のために媚薬でも服用させておくか。 ○○が過労で倒れてしまったみたい。 鈍感なせいか今までは色仕掛けも通じなかったけど、この状況は逆にチャンスとも言えるわ。 看病し続ければいずれ○○は私に依存して、私なしでは生きられなくなるはず。 「アリス、俺、司書やめるよ」 「どうして?」 「俺、アリスに恋してるんだ。アリスなしでは生きられない。アリスの操り人形なんだ」 「……○○、ずっと一緒よ? ずっと操ってあげる」 「アリス」 「○○」 検閲削除 ふふ。ふふふ。 今までみたいな人形での予行演習はもう終わり。はやいとこ既成事実を作らないと。 邪魔されるといけないし、念のために媚薬でも服用させよう。 ○○が過労で倒れてしまったようね。 ○○は真面目すぎるところが欠点だわ。 まあ、これで傍にいられる時間が増えるのだけれど。 「パチュリー、俺、動かない大図書館パチュリー・ノーレッジの専属司書になるよ」 「○○……」 「パチュリー……」 「こんなところで駄目よ。本が汚れちゃう……」 検閲削除 鼻血で本が汚れるところだったわ。危ない危ない。 一番近くにいるのが私とはいえ、邪魔者がこないとは限らないから、念のために媚薬でも飲ませておこうかしら。 古来より、イモリの黒焼きは媚薬に使われる。 食事などにまぜて相手に食べさせれば、相手は必ず自分の虜になるという。 「「「出来たッ!!」」」 三人の魔女はイモリの黒焼きを用いて媚薬を作り上げた。 三者三様、それぞれが自身の経験と知識を限界まで活用し、オリジナルの媚薬として昇華させたのだ。 「「「あとはこれを○○に飲ませるだけ……!!」」」 我ながら不覚だ。 司書として働いてきた経験から体力には自信があったのに、過労で倒れるなんて。 あまり知られていなが、司書という仕事は結構体力を使う。百科事典や或いはそれ以上に分厚くて重たい本を何冊も持って移動したりすることがあるからだ。 ましてやこの図書館は異様に広く、ブックトラックがないうえに未製本のものや知らない言語で書かれたものもある。 空も飛べない、魔法も弾幕も使えない。そんな俺からすれば、この図書館での業務はまさに体力勝負だというのに。 でも、倒れたおかげでいいことがあった。 パチュリーさんや魔理沙さん、アリスさんが看病してくれたことだ。男としてこれほど嬉しいことはない。外の世界にいたら、こんな経験はすることがなかっただろう。 ただ、ひとつだけ疑問がある。 三人共俺のために薬を調合してくれたが、何故か三つとも黒い液体だった。しかも揃って微妙に粉っぽかった。 だだの偶然だろうか。それとも、魔女の作る薬というのはみんなあんなものなのだろうか。 とにかく、今日はもう寝よう。 数日後。 先日復帰した○○は今までのように司書として働いていた。 この図書館にもちゃんとした分類がほしいな、といつものように呟きながら○○は本を本棚に納めていく。 「○○」 そんな○○に声をかけたのは隙間妖怪――八雲紫――だった。 「紫さん。今日も来たんですね」 「少し話したいのだけれど、いいかしら?」 「じゃあどこか適当な場所を……」 椅子がないかと○○は周囲を見渡す。 「あ、そのままでいいから」 「そうですか?」 「○○、倒れている間に何かあった?」 「何かと言われても、抽象的すぎて分かりませんよ……」 ○○は首を傾げて紫を見る。 「そうね。じゃあ具体的に言うわ。永遠亭の薬師以外が調合した薬を飲んだ? それか、何か食べた?」 「ああ。それなら――」 ○○は自分が倒れている間に三人の魔女が看病してくれたことを紫に伝えた。 「そう。どうせそんなことだろうとは思ったわ。それなら、責任はあの三人に押し付けても問題ないわね」 言葉と同時に紫が消える。 「ゆ――!」 紫を見失い、声を出そうとした○○だったが後ろから抱きしめられたことに驚いて声が途中で途切れた。 「いつもそうだけど、今のあなたはとても魅力的よ」 紫の手が○○の顎に添えられる。 「食べてしまいたいわ」 「え、ちょ……紫さん?」 「安心して。妖怪としてじゃなくて、女性として、あなたを食べてしまいたいの。私の言葉の意味、分かるでしょ?」 ○○は唾を飲み込んだ。 「大丈夫よ。私がリードしてあげるから。あなたに本当の絶頂を教えてあげる」 紫は蠱惑的な瞳で○○を見つめ、唇を奪った。 「声なんて誰にも聞こえないわよ。さあ、力を抜いて……」 濃密にして抗いがたい妖艶な色香を醸し出しながら、紫の手が○○の下半身へするりと伸びていく。 「そこまでよ!」 「動くと撃つ!」 「待ちなさい!」 突如聞こえてきた声に○○は驚き、手にしたままだった本を落とした。 その場に乱入してきたのは、三人の魔女。 「あらあら、もう見つかってしまったのね。お楽しみはこれからだったのに」 紫はふわりと飛び上がり、三人の後ろに着地する。 「○○を攫ってもいいんだけど、それじゃあ面白くないわよね」 魔女達は既に臨戦態勢となり、紫を包囲陣を展開している。 「原因を作ったのはあなた達なんだから、なんとかしなさいよ。それじゃあね」 紫は微笑み、いつものように隙間に消えていった。 「○○、大丈夫だった?」 「○○、何かされなかった?」 「○○、変なことされなかったよな?」 頷く○○を見て三人は安堵し、それぞれに視線を送る。 「○○、今日はもう休んでていいわよ」 「え、でも……」 「「「 い い か ら ! ! ! 」」」 三人に気おされ、○○は落とした本のことも忘れて自室へ引っ込んでしまった。 山の上の巫女はそろそろ来る時間だし、どこぞの白狼天狗は境界をいじっておいたからそのうち乗り込んでくる。新聞記者はけしかけておいたから問題なし。 あとは誰を送り込んだら面白くなるかしら。 ……永遠亭の姫にしましょう。薬師なんか送り込んで解決されたらたまったものじゃないわ。 ふふ……。面白くなりそうね。 あら、一番乗りは山の上の巫女のようね。 「あのー、東風谷さん」 「 さ な え 」 「あー、早苗さん」 「どうしました?」 早苗は○○の頭を撫でる。 「どうして俺は早苗さんに膝枕をされてるんですか?」 「いいじゃないですか」 早苗が○○の顔を覗き込んだことにより、二人の距離がぐっと近づく。 「……」 「……」 早苗は○○の顔を両手でがっしりと掴んだ。 「○○さん、ごめんなさい。頂きます」 「え? ちょ……!!」 早苗はうっとりとした表情で○○の唇を奪った。 「恋愛において、共通の価値観や趣味、話題というものはとても大事だと思います。その点、私は○○さんと同じ外の世界出身ですし、年齢も近いですから大丈夫ですよね」 早苗はにこやかに微笑んでみせる。 「初めて見たときから、○○さんのこと素敵だと思っていました」 肝心の○○はどういう態度を取ればいのか迷っている。先ほどの紫の行為も影響しているのだろう。 「私の能力は『奇跡を起こす程度の能力』です。ですが、私にも起こせない奇跡はあります」 「……?」 両手が離されたことを確認し、○○は立ち上がる。 「恋という名の奇跡です。けど、○○さんはその奇跡を起こしました」 「小娘が大層な口をきくものね」 突如聞こえた声に振り向けば、そこには紅魔館の主とメイド長。時間を止めて現れたのだろう。 「○○は私と愛し合う運命なのよ」 「いえいえ、お嬢様。お嬢様に人間の男は不釣合いです。ここは同じ人間である私が○○を引き受けますから」 紅魔館の権力者二人が○○に向けて手を差し伸べた瞬間、壁を突き破って白狼天狗の犬走椛と彼女を抑えようとしたであろう紅魔館の門番紅美鈴が飛び込んできた。そしてその後ろからは幻想郷最速の鴉天狗射命丸文が。 「○○さん、私と愛という名の一局を打ちませんか?」 「私があなたの心の門番になります!」 「文々。新聞の一面を私と○○さんの結婚記事で飾りませんか?」 それぞれがそれぞれを睨み、お互いを牽制する。中心人物であるはずの○○がこの場で最も浮いていた。 「殿方の扱いがなっていない人達ね」 ○○はいつの間にか空を飛んでいた。蓬莱山輝夜の腕に抱かれて。 「○○、私があなたに永遠に続く快楽を教えてあげる」 輝夜の美しい黒髪が○○の頬に触れ、芳しい香りが鼻腔を刺激する。 後ろを見れば、風にたなびく輝夜の黒髪の間に青いメイド服が見え隠れする。メイド長の十六夜咲夜が猛烈なスピードで追いかけてきているのだ。輝夜は咲夜を確認すると、これだから、と小さな声で文句を言った。 「どうしたものかしらね」 「○○を見失った!?」 非常に濃い面々が集まっている○○の部屋で、パチュリーはぐったりと壁によりかかった。そしてそのまま気を失ってしまう。 今回の騒動の原因は、三人の魔女がそれぞれ調合した媚薬を○○が全て摂取してしまったことにある。○○の体内で全ての媚薬が混ざりあって異常反応を示し、○○を見た者全てが○○に惚れてしまうという効果にかわってしまったのだ。 「解決方法はあるの?」 全力で壁の修復をしている美鈴を尻目に、レミリアが魔理沙とアリスに問う。 「紫か永琳か閻魔ならなんと出来ると思うぜ」 「一週間くらいで効き目は切れると思うけど、それまで放置しておくわけにはいかないし」 「ライバルが増えるというわけね」 魔理沙とアリスはレミリアの呟きを拾ったが、今はその時ではないと判断して触れないことにした。 「解毒剤か何かはないんですか?」 早苗の問いに魔理沙とアリスは、そんなものは作っていない、とない胸を張って自信満々に答えた。 「紫はこういうことを楽しむだろうから、ちょっかいは出しても解決はしないだろうな」 「なら永遠亭ですね!」 言葉と同時に文は飛び出した。ご丁寧にも美鈴が直したばかりの壁をぶち抜いて。 「とにかく、はやく○○を見つけないとまずいぜ」 「まかせて」 アリスが胸元から取り出したのは、一枚の白紙だった。 「○○の服には私が魔法をかけた布が縫い付けてあるの。私が呪文を唱えれば、どの服を着ているか、私からみてどの方向にいるかがこの紙に浮かび上がるわ」 「アリス、それってすとーかーってやつじゃないのか?」 「完全にストーカーですね」 魔理沙の疑問に早苗が答える。 「い、今はそれどころじゃないでしょ!!」 何気なく散歩をしていると、少し前にこっちに迷い込んできた○○という青年が倒れているのを発見した。 周辺にナイフや衣類の切れ端は落ちていたから、弾幕勝負にでも巻き込まれたのだろう。勝負をしていた人物達はどこかに移動したか、弾に当たって飛ばされてしまったか。 なんにせよ、こんなところで気絶していては妖怪に食べられてしまうので、介抱するため店に連れて帰ることにした。 それにしても、なかなかいい顔をしていると思う。インドア派だと聞いていたが、その割りには体つきもいい。 あの媚薬って同性にも効果があるのね。……って、関心している場合じゃないわ。 このままだと少しまずい展開じゃないかしら? そういう趣味の男性がいるのは理解しているし、その逆もまた然り。 けど、二人とも知り合いで片方はついさっき媚薬の効果云もあってか本気で手を出そうとした人。 そもそも、媚薬の効果であって二人にそんな趣味はないはず……よね? ここは少し境界をいじってしまいましょう。 「お、気が付いたようだね」 「ん……ここは……」 ○○が身を起こすと、そこは見たこともない店だった。店内には○○が見たことのあるものから初めて見るものまで、商品が乱雑に並べられている。 「ここは香霖堂。まあ、細かい説明は割愛させてもらうよ。散歩していたら君が気絶しているのを見つけてね。一応ここまで運んだというわけさ」 「あ、ありがとうございます」 「そのうち迎えが来るだろうから、ゆっくりしていくといい」 そう言って香霖堂の店主は店の奥に消えてしまった。 「今日はいったい何が……」 ○○は今日一日の出来事を振り返る。が、一日に二度も女性に唇を奪われたことを思い出して赤面してしまった。 「なんだか凄く疲れた……」 「「○○ーー!!」」 香霖堂の入り口を吹っ飛ばして突入してきたのは魔理沙とアリスだった。アリスの背中にはぐったりとしたパチュリーがおぶられている。 「ッ、○○……、何もされなかったか……?」 息も切れ切れの魔理沙は店内の壁にもたれかかった。 「えーと、輝夜さんと咲夜さんの弾幕勝負に巻き込まれて、気が付いたらここにいた」 「「よかった……」」 魔理沙とアリスの声が重なった後、数泊遅れてパチュリーの声がかすかに聞こえてきた。 「迎えにきたようだね」 姿を消していた香霖堂の店主が盆に急須と湯飲みを載せて現れた。壊された入り口を見て一瞬顔をしかめたが、すぐに元の顔に戻る。 「やかんごと持ってこようか? いや持ってきた方がいいみたいだね」 店主は魔理沙に目配せをし、再び店の奥に消えてしまった。 「○○、本当にごめん」 突然誤りだす魔理沙に、理由が分からない○○は戸惑う。 「今日の事件の原因を作ったのは私達なの」 「この前私達が○○に飲ませた薬、覚えてる?」 アリスの言葉を引き継ぎ、ゆっくりと紡がれるパチュリーの言葉に○○は頷いた。 「○○の体内で混ざって異常な反応をしちゃったみたいなの」 「さっき紫が境界を操っておいたって言ってたから、もう心配はないと思うぜ」 「ちょっかいを出したのはからかっただけだと思うから安心して」 「あの、それで……私達がこんなことを言うのは間違ってると思うんだけど、許してくれる?」 パチュリーは責められることを覚悟して○○を見やる。 「許すも何も、看病してくれたのは嬉しかったし、なんだかんだで楽しかったから俺は構わないよ。流石に連日はいやだけど」 「「「よかった」」」 三人の魔女は揃って安堵の息をついた。 「流石に今日は疲れたぜ」 「私もよ」 「ほんと。これだけ激しく動いたのは久しぶり」 「隙間郵便の出張サービスよ~」 隙間が開き、紫が姿を現した。 「みんなお疲れさま。今日は特別に隙間を使ってみんなを自宅に送り届けてあげるわ」 「悪いな、紫」 「いいわよ。充分に楽しませてもらったから」 三人の魔女は苦笑交じりに紫を睨む。 「やーん、こわーい。○○、助けて~」 わざと甘ったるい声をだしながら、紫は○○に抱きついた。 「ちょっと、紫さん……」 「冗談よ冗談。三人共得物をしまってよ。ね? ゆかりからの お ね が い 」 紫は○○を盾にするように移動した。そこで○○から身を離し、いつもの表情に戻る 「明日は今回の騒動の終了を祝って神社で宴会よ。四人は必ず出席すること。いいわね?」 紫は四人の答えを聞かずに隙間を閉じた。 ふふふ。 また面白くなりそうね。 私が操った境界は媚薬の対象だけ。 同性への効果はなくなったけど、異性に対する効果はまだ残っているのよ。 ふふ。 フフフ……。 明日が楽しみだわ……。 ─────────「 適当な時間まで○○と談笑しようと思っていたら、○○を神社へ連れて行く、と言って隙間妖怪が○○を連れていった。 正直なところ、不安でしかたがない。 媚薬の効果なのか単純に場を引っ掻き回そうとしたのかは分からないけど、昨日○○にちょっかいを出そうとしたのは事実。しかも図書館内で。 けど、任せるしか方法がなかったのも事実。 空を飛べない○○と一緒に歩く体力も、○○をおぶって神社へ向かって飛ぶという体力も私にはないわ。だからといって○○一人で神社にいかせれば、妖怪に襲われるという最悪の結果になりかねない。 昨日の媚薬騒動を解決してくれた借りもあるから、無碍に断ることも出来ない。 結局のところ、隙間妖怪が軽々しい行動に出ないことを祈るしかない。 「○○は異類婚姻譚のことを知っているかしら?」 博麗神社へ向かう道すがら、八雲紫は○○に問う。 「確か、人間と人間以外が結ばれる、っていう話でしたよね。悲劇で終わることも多いとか」 「そう。世界各地に多く頒布し、説話の類型として知られているわ。ホオリとトヨタマヒメ、白蛇伝、メリュジーヌ……」 「それで、異類婚姻譚がどうしたんです?」 ○○は首を傾げて紫を見る。 「人外が多く存在する幻想郷では、異類婚姻は簡単に行うことが出来るの」 紫は○○の後ろに回り込み、手を掴んだ。 「妖怪の私と異類婚姻してみない?」 ○○の耳元で、そっと、甘く甘く、情欲を込めて紫は囁いた。 「か、からかわないでくださいッ!」 昨日図書館でからかわれたのを思い出し、○○は紫から離れようとする。しかし、人間と妖怪では身体能力の差は歴然で、紫はびくともしなかった。 「冗談よ。本当、可愛い人ね」 だからみんなに好かれるのよ、という最後の言葉を飲み込んで紫は笑う。 「さあ、いきましょう」 ○○を解放し、紫は歩き出だした。 本当、○○がきてから葛藤が増えたわ。○○のおかげで魔理沙が本を返しにくるようになったのはいいことだけど。 それに、館内も以前と比べて大分明るくなった。来客も増えた。 悪魔の棲む館と言われた紅魔館が明るく、来客が多いというのも妙な話だけど。 これも○○のおかげかしら……? っと、物思いに耽っている場合じゃないわ。私もいい加減準備をしないと。 ……そういえば、粉末にしたイモリの黒焼きがまだ余ってるのよね……。お酒に混ぜればバレないわよね……? 昨日解決したばかりだし、きっとみんな油断しているはずよ。昨日の今日で同じことが起きるはずがない、と。 ○○と紫が博麗神社につくと、二人の巫女と上白沢慧音が宴会の準備に奔走していた。黒白の魔法使いと鬼は箒を使って戯れている。 「お、○○。来たか」 「ひさしぶりだな、○○」 「こんにちは。伊吹さん、慧音さんお久しぶりです」 「○○、久しぶりだな。っと、悪いけど私は準備で忙しいからまた後でな」 挨拶もほどほどに、慧音は巫女二人の後を追っていった。 「私のことは無視? ひどいわ。ゆかりん泣いちゃう」 紫は○○の胸に顔を埋め、泣き真似を始めた。 「何がゆかりんだよ。そんな歳でもないくせによく言うよ」 ゆっくりと振り返り、紫は発言主の萃香を見る。 「伊吹萃香さ~ん、向こうで私と少しお話ししましょうか。ねっ?」 「え、いや、その……なんだ。言葉の文ってやつだよ。分かるよな?」 「鴉天狗の新聞記者がどうしたの?」 にっこりと微笑む紫。勿論、目は笑っていない。 「た、たまには霊夢を手伝ってくるぜ!」 魔理沙は顔を引きつらせながらその場から逃げ出した。 「○○さーん、ちょっと来てくれませんかー?」 「え、あ、はい」 早苗に呼ばれたのを好機として、○○もその場から逃げ出した。 「紫」 二人が完全に離れたのを確認すると、萃香の表情が真剣なものになる。 「今日の○○、随分と雰囲気が違わないか? なんかこう……前に会ったときよりも魅力的というかなんというか……」 「あら、気づいた?」 「誰だと思ってるんだよ。お前が何かやったのか?」 「まさか」 ふっ、と笑い、紫は肩をすくめた。 「私はけしかけただけよ。原因は魔女達」 「いったい何をやらかしたんだ?」 隙間が三つ開き、それぞれの先に魔理沙、アリス、パチュリーの姿が見える。 「過労で倒れた○○に三人が媚薬入りの薬を飲ませたのよ。それが見事に混ざって妙な反応を示しちゃったみたいなの。しかも同性にも効果があるというスグレモノ。まあ、同性への効果は私がなんとかしておいたけどね」 「つまり、異性への効果は現在も継続中、と」 「そういうこと。薬に媚薬が入っていたことも○○には伏せてあるわ。それに、あの三人がそんなそんなことを説明するはずがないし」 扇で口元を覆い、紫は笑う。 「あなたも○○をからかいたいのなら、構わないのよ? 何かあったら私が何とかするから。それに、今日はワーハクタクと薬師も呼んでいるし、事情も伝えてあるから大丈夫よ」 ワーハクタクも○○に好意を抱いていたみたいだから好機と判断したみたいね、と紫は口にしなかった言葉を反芻した。 「ところで、さっきの話の続きなんだけど」 「エッ!?」 「昨日は迷惑をかけてしまってすいません」 「あ、いや、そんなに謝らなくてもいいからっ」 ○○を呼んでから、早苗は何度も頭を下げて謝っている。それに対して○○は、昨日早苗に強引に唇を奪われたことを思い出していたたまれくなっていた。 「お詫びと言ってはなんですけど、これを受け取ってください」 早苗が恥ずかしがりながら胸元から取り出したのは薄い紙袋。中には紙のような薄いものが入っているようだ。 「これは?」 「見てください」 早苗に勧められて袋の中身を取り出し、○○は愕然とした。 中身は早苗の写真だった。それも、セーラー服やブレザー、メイド服などを着ている。 「あのー、東風谷さん」 「 さ な え 」 笑顔で凄みをきかせる早苗。 「――早苗さん。これは?」 「男性は異装――特に制服フェチが多いですから、頑張ってみました」 あながち間違いでもない意見を述べる早苗は恥ずかしそうにしながらも笑顔を見せる。 「……」 「……もしかして、気にいりませんでした? 靴下は白の方がよかったですか? それとも、絶対領域がないのが原因ですか?」 「あ、いや、そうじゃないけど……」 妙な方向に向かっている早苗の真面目さについていけず、○○は曖昧な返事をして誤魔化した。 「その写真、ヘンなコトに使わないでくださいよ? けど、○○さんが望むなら写真なんかじゃなくて私が直接、その……」 言葉の進行と同期して早苗の顔が赤くなる。そしてついに、顔が真っ赤になったところで早苗は境内の方へ駆け出してしまった。 「ちょ、早苗さん……!!」 呼び止めようとしたが、○○が反応した時には既に遅し。取り残された○○は誰かに見られても困るので写真をポケットに入れておくことにした。 「○○」 早苗の次に現れたのはもう一人の巫女、博麗霊夢。 「霊夢さんお久しぶりです」 「久しぶり。ところで、早苗に何か言った? 凄い勢いで走っていったけど」 「いや、俺は何も。寧ろこっちが聞きたいですよ」 「そうなの?」 まあそれは置いといて、と言いながら霊夢は○○の腕を掴んで引き寄せた。 「人手が減ったんだし、○○も手伝ってよ」 「手伝いますけど、魔理沙さんは?」 「魔理沙が手伝うなんて、それこそ異変よ。解決しない方がいい異変なのかもしれないけど」 霊夢は肩をすくめ、そんなことより準備をするわよ、と○○を引っ張る。 「そ、そんなに引っ張らないでください」 霊夢のない胸が腕に当たりそうになり、○○は気づかれないように必死で抵抗する。 「○○、どうしたの?」 ○○の腕を更に引っ張る霊夢。その目は血走っており、鼻息も明らかに荒い。 「え、ええと、手を握られてると手伝えないんですけど」 「ああ、ごめんないさい」 霊夢は残念そうに手を離した。 「俺は何を手伝えばいいんです?」 「そうね……それじゃあ料理でも手伝ってもらおうかしら。味見と称したつまみ食いは駄目よ? ……私なら今すぐに食べてもいいんだけど」 最後の言葉は照れて小さくなってしまい、○○の耳には届かなかった。 まさか私の媚薬のせいでこんなことになるとは……。 というか、アリスとパチュリーも○○に気があったとは予想外だ。 しかも二人共媚薬を○○に飲ませたなんて、考えが一緒にもほどがるぜ。 類は友を呼ぶ、ってやつなのか? まあ、考えても仕方ないか。それよりも今はこの残ったイモリの黒焼きをどうするかだ。どれくらいの人数が参加するかはわからないけど、これを酒に混ぜることくらいはできるよな……? 昨日の今日だし、みんなきっと油断してるよな。 木の幹にもたれかかる○○。そして、その正面には輝夜。昨日○○を部屋から無理矢理連れ出したように、霊夢の元から連れ出したのだ。 「○○、昨日はごめんなさい。メイドとの弾幕勝負にあなたを巻き込ませてしまうなんて、我ながら情けないわ」 輝夜は申し訳なさそうに呟き、○○の手を取った。 「○○、知っている? 身分の高い者にはその身分に伴う務めがあるということを」 「えっと、確か……ノブレス・オブリージュ……でしたよね」 「私に何か出来ることはないかと考えたの」 輝夜は○○の手を自身の胸元へと導いた。 「私に出来るのは、あなたを導くこと。あなたを永遠に続く快楽へ誘うこと」 ○○を抱きしめ、輝夜は口付けをする。 「――ッ!?」 相手からの強引な口付けは、昨日の分も含めればこれで三度目。しかし、舌を絡められたのは初めて。 輝夜はそのまま○○を押し倒し、馬乗りになる。唇を離した際に唾液が糸を引いた。 「か、輝夜さん……!!」 「静かにして」 長く美しい黒髪が○○の頬を撫でる。その髪の隙間から月光が薄く差し込み、輝夜の体が淡いシルエットとなって浮かび上がった。 輝夜は強く艶かしい声で囁き、再び口付けをする。そして、器用にも片手で○○がしていたベルトをはずした。 「○○……」 「か――」 ○○の唇を自身のそれで塞ぎ、片手をズボンにかける。 「姫様」 いつの間にか傍に佇んでいた従者――八意永琳――の声に輝夜は振り向く。 「どうしたの?」 冷たく、恨みの籠もった目で永琳を見た。 「○○に不満でも?」 「不満はありません。ただ、ここは野外です。それに、ここは博麗神社ですよ」 「永琳、気にしているの?」 輝夜の問いに永琳は首を激しく縦に振った。 「それとも、姫様は他人に見られたいのですか?」 一瞬呆けたような顔をした輝夜だったが、その表情はすぐに笑顔にかわる。 「そんな趣味ないわ」 手際よく○○のベルトを締めなおす輝夜。視線はずっと○○に向けられている。 「○○、この続きは今度にしましょう。あなたが望むなら、私はいつでも構わないから」 「姫様、宴会の用意が整ったようです」 「ちょうどいいタイミングね。さあ○○、行きましょう」 「昨日は永遠亭で無駄な時間を過ごしてしまいましたけど、今日はそうはいきませんよ」 輝夜の逃亡先=永遠亭と判断して○○を見失ってしまった文は、どこぞの不老不死の如く体から炎を出しそうな勢いで勝手に燃えている。 「ご苦労なことね。まあ、想像するのは自由だから、私と○○の結婚記事を書く時まで好きにさせておきましょう。そうでしょう、咲夜?」 「いえ、お嬢様に人間の男は相応しくありません。スカーレット家の名に傷をつけてしまいます。ですから、同じ人間である私が責任を持って○○を引き受けます」 意欲に満ちて燃え盛る文の視線と、たっぷりと余裕を含んだレミリアの視線が重なる。隣の咲夜はスカーレット家の名を建前にして淡々と自分の意見を紡ぐ。 「○○、私と一緒に愛の歴史をつくらないか? いや、やっぱり、私の寺子屋で愛の授業をうけないか? の方がいいか?」 少し官能的すぎるか、と呟きながら慧音は他の台詞を考えては頭をひねるを繰り返していた。 「○○さん遅いですね……。まさか、早速私の写真でそんなコトを……! もう、私がすぐ傍にいるのに……!」 早苗は自分の世界に入り込み、相変わらず顔を赤い絵の具のように真っ赤にしている。 まさか、桜の散ったこの季節に宴会とはね。まあ、花見じゃないんだから季節は関係ないけど。 それにしても、あの青巫女はなんであんなに顔を真っ赤にしているのかしら。ワーハクタクもさっきから妙なことをぶつぶつ言ってるし。 ……いけないいけない。他人のことなんて気にしてる場合じゃないわ。 この予備のイモリの黒焼きをどうやって○○のお酒に混ぜるか。それが大事なのよ。 昨日の今日だから、みんな油断しているはず。予備を作っておいて正解だったわね。 今度こそ人形での予行演習は終わりよ。 「○○はどこいったんだ? せっかくいい酒が揃っているのに」 萃香は待ち遠しそうに両手で酒瓶を弄んでいる。 「そろそろ戻ってくるんじゃないかしら? ほら、噂をすればなんとやら」 紫が扇で示した方向から、輝夜と○○、そして二人につき従うようなかたちで永琳が現れた。 「「「げぇっ、永琳!!」」」 魔理沙、アリス、パチュリーの声が重なり、三人共、最悪、と言わんばかりの表情で永琳に視線を向けている。しかし、当人達はまったく気づいていない。 「人の顔を見て驚くなんて失礼ね。私は汚物でもなければバケモノでもないわよ。それとも、私がいると何か困ることでもあるのかしら?」 永琳は笑ってみせるが、目は笑っていない。明らかに事情を知っている者の目だ。 「そ、そんなことないわよ……。ね、魔理沙?」 「そそそ、そうだぜ。な、なあ、パチュリー?」 「え、ええ。な、何もやましいことなんて考えてないわよっ」 三人共笑顔で答えるが、その表情は引きつっており永琳から目をそらしている。 「じゃあ、これはいったい何なのかしらね」 扇で口元を隠す紫が片手で弄んでいるのは三つの小瓶。それも、中身は揃って黒い粉末。 「「「あッ!!?」」」 「あら、知っているの? ゆかりん詳しく教えてほしいわ」 三人の反応を見て、紫はしてやったり、といった表情で笑う。 「わ、私は何も知らないぜっ!? ぱ、パチュリーなら知ってるんじゃないのか!?」 「ななな、何言ってるの。私はあんもなの知らないわよっ!!?」 「わ、私もまったく、こ、これっぽっちも身に覚えがないわ」 「ふーん。そう。じゃあ、こうしてもまったく問題がないわけね」 紫の掌から小瓶が零れ落ちる。それを見て三人は声を上げたが、時は既に遅し。小瓶は隙間の中へ消えていった。 「さてさて。ようやく主役も全員揃ったことだし、宴会を始めましょうか」 紫はしょんぼりとしている三人の魔女に向かい、何か言うことがあるでしょ、と言葉をうながした。 「あー、えっと、その、何だ。昨日は騒動を起こして悪かった」 魔理沙は、場を引っ掻き回したお前も悪いんだぞ、という目で紫を見る。 「まあ、細かいことは抜きにして乾杯しましょう」 かんぱぁ~いっ!! 女声の中にひとつだけ混じる男声。そして声に一瞬遅れて杯のぶつかり合う音が響く。 花見の季節はとっくにすぎているが、そんなことは関係ない。 花より団子。 ただただ飲んで騒ぐだけ。 ただただ騒いで夢を見る。 「○○、飲んでるかぁ~?」 既に酒のニオイを全身から漂わせている萃香が○○の膝の上にちょこん、と座る。他の参加者は萃香を睨んでいるが、鈍感な○○は気づかずにレミリアから勧められる咲夜謹製ヴィンテージワインを味わっていた。 「はい。飲んでますよ」 「よぉーし、もっと飲め!」 萃香は近くにいた早苗の杯を奪い、中身を○○に飲ませた。 「これ、ひょっとして間接キスってやつか?」 萃香の言葉で○○の顔が赤くなる。早苗は早苗で、頼んでくれたらキス以外にも何でもしてあげます、と顔を真っ赤にしている。その姿はまさにトマトだ。 「○○、こっちのお酒も飲んでみない?」 好機と見た霊夢は飲みかけの酒が入った杯を差し出した。丁寧にも、自分が口をつけた部分を○○に向けて。 「あー、いや、その……」 「霊夢、○○はワインの方が好みなのよ」 レミリアは自分が使っていたグラスにワインを注ぎ、○○に向けて差し出した。 「「さあ!!」」 「え、えーと……」 ○○は助け舟を出してもらえないかと周囲に視線を送る。 「無理矢理飲ませて急性アルコール中毒になったらどうするおつもりです?」 「その通りだ」 咲夜の言葉に慧音が同意し、二人がかわりに酒を飲みほした。 「○○、困ったことがあったら私に相談してくれよ。そ、その、なんだ……。ずっと……隣で……さ、サポートするからな?」 酒のせいなのか自身の発言のせいなのか、慧音の頬は少し赤くなっている。 「先ほどのものより上質のワインが出来ましたよ。さあ、ゆっくり味わってください」 ついさっき自分が言ったことを無視し、咲夜は○○のグラスに能力で作り上げたばかりのヴィンテージワインを注いだ。私の体を肴にしてもいいんですよ、と口にして。 「ちょっと咲夜!?」 「紅魔館の主とメイド長、ひとりの男を取り合い大喧嘩、と。いいネタですね。そして○○さんは私のものです」 写真を撮ってさらりと問題発言をする文。 「○○さん。あんな二人はほうっておいて私としっぽりと飲み明かしましょう」 文がぐいと引っ張ると、○○の腕が霊夢のなかったそれとは別のものに当たる。 「お酒の勢いに任せて、文字通り密着取材とかもアリですね」 「ちょ、ちょっと射命丸さん」 「心配しないでください。私が口ぞえをしておきますから、山での働き口は安心ですよ。ああ、専業主夫なんてのもアリですね。こどもは何人にします? サッカーの試合が出来るくらいにしましょうか」 どんどんと飛躍していく文の妄想とそれについていけない○○。 「○○はどういう女性が好みなのかしら?」 少し離れたところにいる紫の発言でその場の空気が完全に破壊された。全員が○○に向けて一斉に視線を向ける。 「確か、外では『しゅうがくりょこう』と言ったかしら? お酒を飲んだ時としゅうがくりょこうの時は好きな異性のことを暴露するのが慣わしなのよね?」 早苗は自分に向けられた紫の視線から意図を汲み取り、はい、そうです、と大きく頷いた。 「○○、教えてくれるかしら?」 参加者全員の双眸が答えろ、という色を宿して○○を見ている。 「お、俺が好きな女性は……」 ○○の視線は右へ左へと面白いように動いていく。 「勿論、人間に決まっているわよね」 今まで黙って様子を見ていた輝夜が微笑んで言った。魔理沙、咲夜、早苗、霊夢はそれに同調してうんうん、と頷いている。 「○○は博識だから異類婚姻譚は知っているわよね……?」 紫が同じことを話していたとも知らず、パチュリーが異類婚姻譚の例を挙げていく。 「このまま傍観しているつもり?」 「何か問題でもあるのかしら?」 永琳の問いに答えながら紫は酒を飲む。 「いいえ。姫様のあれほど楽しそうな顔は滅多に見れるものじゃないわ」 「媚薬の効果かもしれないわよ?」 「姫様の○○への好意は以前からのもの。これは確かよ」 初耳だわ、と言いながら紫は杯に酒を注ぎ、永琳に手渡した。 「言ってないもの」 「そりゃそうようね」 二人は苦笑し、酒を呷る。 「あなたはいかなくていいの?」 「○○への好意はあるけど、姫様が抱いている感情とは別物。まあ、○○だったら悪い気はしないけど」 永琳は嬉しそうに笑い、紫の杯に酒を注いだ。 「○○が永遠亭にきたら、みんな喜ぶでしょうね」 永遠亭に限った話じゃないでしょうけど、と付け足して再び微笑む。 「そっちは混ざらなくていいの?」 「私はもう充分楽しんだわ。……まあ、もう少し先にいってもよかったんだけど」 紫はふふ、と笑い自分達の方へ向かってくる慧音のために酒を杯に注いだ。 「○○~それでお前好みの異性はこの中でいうと誰なんだ? 言ってみろよ~?」 ニヤニヤと笑いながら萃香は○○に詰め寄る。それを止めようとする者は誰もいない。全員が○○の答えを期待しているのだ。 「先に言っておくけど、みんなが好き、なんて答えはなしだからな」 ずい、とさらに詰め寄る萃香。それにあわせて他のメンバーも○○を包囲するように前に進む。 「えっと、その……」 ○○は助けてもらおうと紫を見るが、紫は笑顔で手を振るだけ。両隣にいる永琳も慧音も同じ。 「さぁて、助太刀してくれるやつはいなくなったぞ。観念するんだ。安心しろ、みんなお前のことを気にいっているから、告白したくらいじゃ嫌われないさ」 萃香の言葉を聞き、○○の顔が呆けたものになる。 「俺が……気に入られている……?」 「なんだ、ひょっとして気づいていなかったのか? 鈍感なやつだな」 ○○の予想外の反応に萃香は大きく笑った。 「みんな! ○○のことが気に入っている。そうだろ?」 萃香が同意を求めると、周囲の人妖達がそれぞれ肯定の意見を述べる。 「な? だから、イロイロと吐いちまえよ。おっと、酒を吐くのは勘弁してくれよ」 ○○は目を閉じ、胸に手を当てて深呼吸を始めた。 「おい、ちょ、まさか本気でリバースする気じゃないだろうなッ!?」 萃香は慌てて○○から離れ、様子を伺う。十秒ほど様子を伺っていると、○○が目を開けて立ち上がった。 「言います。俺が憧れているのは――」 ――(自分の嫁の名前を入れよう!)さんです! 「あらあら。爆弾発言が出たわね」 紫は片手で弄んでいた扇をぱちん、と閉じる。 「本当ね」 「さて、それじゃあいろいろと処理しようか」 紫が立ち上がるのと同時に、永琳と慧音も立ち上がった。 ○○にとって、幻想郷でのこれからの生活はどうなるのかしら。 幸せなものになるのか、はたまたその逆か。 これからがすごく楽しみだわ。 うpろだ1105、1125 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「なにしてんだ?」 慌てて飛び起きた。 「まっ――!」 「静かに。○○が起きちまうぜ」 魔理沙はさっきの霊夢と同じように○○の顔を覗き込む。 「あどけない顔してるなー。こうして見ると○○もかわいいな」 そして靴を脱ぐと○○の隣りに寝転がった。 「おー、お日さまのいいにおいー。こりゃ特等席だ」 「ちょ、魔理沙!」 「なんだよ、いいじゃないか。さっき霊夢だって同じようなことしようとしてたじゃないか」 「う……」 「それにまだ反対側に特等席は残ってるぜ。それじゃおやすみー」 目をつぶった魔理沙はあっという間に眠りについてしまった。一人取り残された霊夢は暫く考えた後、○○の隣りに寝転がった。 「……う、んん? そっか、少しだけってことで眠っちゃったんだっけ」 ○○が目を覚ますと両脇に誰かが眠っていることに気がついた。 まだ寝ぼけたままの○○は片方の人影に手を伸ばすとゆっくりと頭を撫で始めた。 さらさらと指にからまることなく絹のような手触りに○○は傷めないようにやさしく手を動かす。 撫でられている方も心地よいのか胴に腕をまわして首をこすりつけている。まるでもっと撫でてと催促しているみたいだ。 「んぅ……ふにゃ……にぅ」 子猫のような声を聞きながら○○はだんだんと意識がはっきりしてきた。 「……そういえば今頭撫でてるの誰なんだろ?」 視線を下に向けると胴に首をこすりつけている霊夢の姿が目に飛び込んできた。 「――!?」 驚いて頭から○○は手を頭から離してしまった。 「あ……やめちゃやだ……」 顔をあげた霊夢は自分を見つめている○○に気がつき、はっきり分かるくらい顔を赤くした。 そして二人ともしばらくぴくりとも動かなかったが、おずおずと○○が口を開いた 「えっと、霊夢?」 「○○」 「な、なに?」 「今言ったことは寝言よ。深い意味はないわ」 「で、でも今は起きてるし」 「いいの! そういうことにしておくの! ……そ、それでまた撫でてほしいんだけど」 そう言い終わると○○の方に頭を向けて目を閉じてしまった。 そのしぐさに苦笑した○○は頭に手を乗せて撫で始めようとしたが、反対側から服を引っ張られるので そちらに視線を移すとこちらも撫でてくれといわんばかりに見つめてくる魔理沙がいた。 「……魔理沙も起きてるだろ」 「何言ってるんだ? 私は眠っているぜ。そしてこれは寝言だ」 「はいはい、魔理沙も撫でて欲しいんだろ」 「ああ、頼むぜ」 ○○は二人の頭に手を置くとゆっくりとやさしく撫で始めた。 (ふぁ……ただ撫でられるのになんでこんなに気持ちいいの……?) (あぅ……のーみそとろけちまいそうだぜ……) どこか上気した顔でごろごろと擦り寄ってくるのを見て○○はまるでわがままな子猫だなと思いながら二人が満足するまで頭を撫で続けた。 うpろだ1107 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「突然ですが僕も身を固めることになりました」 「ほんと突然ね。急にどうしたの?」 「実はね、慧音様が…」 『お前も成人したんだ、生涯の伴侶を得るには丁度良い時節だな。 しかし、お前に想いを寄せる輩は人妖問わずゴロゴロしている。 誰にでも優しく接してしまうお前だからな、簡単には決められない だろう。そこで、掟破りの一夫多妻制を採ってみないか?責任は 私が取ろう』 「慧音らしくもない爆弾発言ね…で、一夫多妻制って言うからには 正妻と側室が付き物だけど、もう決めた?」 「それなんだけどね…」 ズザザザーッ 「お前の正妻を決めると聞いて速い音速で飛んできたぜっ!」 「あややややっ、これはスクープです、文句なしの大スクープ! そしてその話題の中心には、この私、射命丸 文がっ!」 「おぉ?久方ぶりに面白そうだから私も付き合うかねぇ~、酒の 肴にゃあちょうどよさそうだし」 「これは運命なのよ。彼の隣に立つ正妻、その名はレミリア。 永遠の紅い月、紅魔ことレミリア・スカーレット!」 「失礼ですが、お嬢様に彼は分不相応と言うもの。汚れ役として この咲夜が出向かせていただきます(お嬢様と言えども正妻は… 譲りませんわ!)」 「パチュリー様ぁ、大丈夫ですか~?」 「喘息が何よ、太陽光が何よ、何が何でも私は彼の隣に立つの!」 「むーっ!私一人でいいのに、美鈴までどうして来るのよぅ!」 「そりゃ決まってるじゃないですか、彼の正さ…ゴホン、妹様の お目付け役です(何回壊されても、穿たれても、私は負けません からっ!)」 「ねぇ、人形でごっこ遊びしていても面白くないから本当の夫婦に ならない?」 「この妖夢、半人前ですが全身全霊で愛させていただきますっ!」 「いやいや妖夢、私が彼を本当の愛の巣へと誘ってあげるのよ」 「い、いや、私は、紫様がどうしてもと仰るので…」 「隙間を弄らなくたって、あなたを虜にすることなどわけないわ。 退屈などない、刺激的な毎日にしてあげる」 「し、師匠がどうしても付き合えって言うから、えっと、その…」 「ウドンゲ、私が正妻になった暁にはあなたを彼の側室にするよう 取り計らってあげるわ。だから正妻は諦めなさい」 「イナバ、永琳、揃いも揃って主人に反旗を翻す気?私こそが彼の 正妻に相応しい姫君に決まってるじゃないの」 「ふざけろ輝夜っ!お前には絶対に渡さないんだから!正妻は私 一人でいい!」 「あら、私の夫になりたい身の程知らずな人間はこちら?いいわよ、 死ぬほど愛してあげる」 「四季さまぁ、ほんとにあたいも同行していいんですかね?」 「彼の側室になれば流石にサボることもなくなるでしょうからね。 そして何より私が正妻…」 「姉さんを側室にして私が正さ「穣子を側室にして私が正さ」」 「厄…一緒にいていくらでも取ってあげるから」 「人間~、正妻にしてくれれば毎日がテクノライフだよ~」 「せせっ、正妻ですか!?い、いけませんっ、私達まだ契っても いないじゃないですか!ああっ、駄目ですっこんなのっ」 「あーこらこら早苗、熱暴走しないの。早苗を娶るんだったら、 私らも側室にして頂戴」 「あーうー、ケロちゃん毎日大喜び!雨がなくても外跳ね回るわ!」 「空気を呼んで参上しました。正妻にするのですね、わかります」 「こら衣玖!抜け駆けするなと何度言ったら分かるのよ!」 「妬ましい、こんなにも想われるあなたが妬ましいわ」 「おや、萃香がいるのかい?気に入った、私も付き合おう!」 「お空、お燐、私が彼を地霊殿に迎えた時はあなた達を側室に するよう取り計らってあげるから…って、引く気ないわね!」 「そりゃあ~、当然じゃないですかぁ」 「毎日をメルトにフュージョンしたいんだもん!」 「お姉ちゃん達はほっといて…私のこと、お嫁さんにして?」 「凄く壮観な光景だな…」 「オーケー、いきなりだがこいつの正妻は私、霧雨魔理沙だ!」 『Boo!Boo!』 「やかましい!だが私もおと、もとい!女だ。側室の席も用意した。 残りの席が欲しかったら幻想郷の流儀に従い、スペルカード戦で私を 倒して行けぇぇーッ!!」 ゴッ!!←回し蹴りが綺麗に決まった音 「はぁうッッ!!」 「これで邪魔者は消えました。正妻には是非とも私を、紅美鈴を よろしくお願いしま」 ドゴーン←賢者の石 「ウボァー」 「役にも立たない門番なんかよりも私を選びなさい。知識は豊富 だし、今なら小悪魔もついてお得よ」 「パチュリー様ぁ~、嬉しいですっ」 プシュー←ぜんそくスプレーの逆バージョン 「くぁwせdrftgyふじこ!!!!!!!??????」 「これは運命なの、私があなたの正妻になるのも、あなたが私の 夫になるのも、全て運命のうちなのよ。さぁ、愛の口付けを…」 「だぁーめ!お姉様は『手垢』つきだからバッチくていけないわ! 495年も地下にいたけど、垢のない綺麗な私がいいよね!」 「ちょっとフラン、聞き捨てならないことを言ってくれたじゃない。 どっちが偉いか教えてあげるわ」 「ふんだ!壊れちゃっても知らないからね!いきなり喰らえー!」 「妹と言えども容赦しないわ、しばらく大人しくしてなさい!」 「この咲夜、従者の経験を生かして炊事洗濯、掃除に護衛と何でも できます。退屈も不自由もさせませんわ…」 「それだったら従者でも側室でも別にいいじゃない。そんなことは 全部人形がやってくれるし、それらを制御できる私なら言う事無しよ」 「そ、そうじゃなくて大事なのは真心ですよ!本人がやらなくちゃ 意味ないじゃないですか!幽々子様のお目付け役として続けてきた ことを、あなたに全身全霊でぶつけます!」 「そんなのだったら、咲夜とやること大して変わらないじゃない」 「…あなた達とは、一度決着をつけるべきかしら。すみません、 少々お時間を頂きます。この埋め合わせは後で必ずしますので」 「この二人を叩きのめしてくるからお茶の用意をして待っててね」 「叶わぬ愛など全然ない!お二人が相手でも負けませんから!」 「妖夢ったら、ぶつけてどうするのかしら。壊れちゃうかもしれない じゃない。まぁ壊れちゃったら、その時こそこちらに来て貰うのが 一番よねぇ」 「幽々子、彼はマヨヒガの我が家でこれ以上ない素晴らしい生涯を 送るのよ。貴女といえども、邪魔はさせないわ」 「西行寺様、紫様のご命令は絶対ですので。ご無礼!」 「永遠に咲かない桜の下で眠るがいいわ、亡霊の娘!」 「底なき隙間の闇の中に消えるがいいわ、紫色の妖!」 「わ、私は師匠の元で薬師として修行をしたし、輝夜様の面倒も 見てきたから、あなたの役に立てると思うの」 「あらウドンゲ、私を差し置いて下克上のつもりかしら?」 「月のイナバも随分と生意気言うようになったわねぇ。お仕置き してあげるからそこになおりなさい」 「普段暇そうにしているお前が言うか!あー、気にしないで。要は 私が正妻になればいいんだから」 「何か言ったかしら?妹紅。邪魔はさせない、今日こそ完璧に 死なせてあげるわ」 「実はあなたは非常に重い罪を背負っています。このままいけば 地獄確定どころか、存在そのものが消滅しかねません!対処法は 只一つ、私を正妻として…」 「四季様、それじゃただの脅迫ですって!」 「えぇーい小町、邪魔はさせないわ!そこになおりなさい!」 「きゃん!きゃん!(1UP)まだ何もしてないじゃないですかぁ!」 「黙りなさい、まだってことはこれから、ってことじゃないの!」 「中立公平な閻魔を自称する癖に色気違いね。私の向日葵畑近くの 別荘にいらっしゃいな。死ぬほど愛してあげるわ。そう、末永くね…」 「こんな危険度極悪指定の妖怪に着いて行ってはいけません。稗田の 娘が書き記した求聞史紀にも書いてあったでしょう?着いて行ったら 即地獄どころか消滅確定です」 「あら、閻魔様ともあろうお方が他人の誹謗中傷とはね。丁度良い、 そこのヘタレた死に神と一緒にまとめて苛めてあげるわ。少しの間 待っていなさい、後で存分に愛してあげる」 「あんた、あたいはともかく四季さまを見下すのはいただけないねぇ」 「すみません、少々お待ちを…これより四季映姫・ヤマザナドゥの 元、被告人風見幽香の裁判を行います!」 「このカニ飾り持ちの駄目姉「この芋くさい田舎っぺな愚妹」」 「ぱっと見て分かるくらい、今のあなたは厄に塗れているわ。私と 契れば、この厄から逃れられる」 「ちょっと厄神さま、人間は今それ所じゃないんですよ。私との テクノライフを楽しむための準備があるんで借りていきますねー」 「あやっ!駄目です駄目です、彼は私とお空の散歩、空中で夫婦の 契りを交わす…うーん、ロマンティック!」 「ごめんね、この二人をまず払いのける必要があるわ。終われば あなたの厄も大分薄くなるはずだから。その後で、ね」 「人間、これから素敵なテクノライフの邪魔者達を吹っ飛ばすから 首を長くして待っててねー」 「むむむ、これは大ピンチですか?否!これも愛の試練、見事に 乗り切って見せましょう!待っててくださいねー」 「こら、そこの蒼白地上人!私を天人と知って彼を寝取ろうなんて いい度胸じゃない!」 「私は風祝(かぜはふり)です!これでも現人神なんです!毎日が エクササイズです!そっちこそ天人だって言うわりには毎日毎日 暇してばかりで、何にも仕事しちゃいないじゃないですか!」 「ああーっ、地上人のくせに言ってはいけないことを!」 「だから現人神なんですってば!」 「総領娘様、事実ですので否定は出来ません」 「やっぱり!天人だって言うのに怠け者じゃ、あの人が振り向いたり するわけないんです!私は信仰集めに毎日忙しいんですから、愛を 囁かれる資格は十分、いえ十二分ですよ!」 「うるさいうるさーい!衣玖、あんたはどっちの味方なのよ!」 「あのお二人を相手にするとろくなことがありません。私と共に 天界へ行きませんか」 「って、シカト!?」 「こら、神の私らをシカトするとはいい度胸じゃないナマズっ子」 「ケロちゃん様はお怒りだー!ミシャグジ様もお怒りだぞー!」 「2対1、非効率的ではありますがお相手させていただきます」 「この生意気地上人!」 「この怠け者天人!」 「妬ましい…」 「まーまー、一杯やんなよパルパル。落ち着いて落ち着いて」 「誰がパルパルよ、ん…きゅう」 「さぁーて、邪魔者はいなくなった。どうだい、私と飲み明かさない?」 「こらゆーぎ!あんた私を差し置いて何やってんのさ!鬼たるもの、嘘と ズルはいけないんだぞ!」 「どーやらアンタとは決着をつける必要があるねぇ…鬼同士。来な!」 「お空、お燐、二人とも自重しなさい!」 「さとり様のご命令とは言え、譲りませんよーだ」 「フュージョン!フュージョン!一緒にフュージョン!」 「…再教育が必要かしら。二人ともそこに座りなさい」 「お姉ちゃん達のことはほっといていいから…ほら、早く契ろ?」 「こら、こいし!あなたも抜け駆けするのやめなさい!」 「あああ…何だか収拾がつかなくなってきた」 「ねぇ」 「うん?」 「私のこと、正妻にして?あなただったら、その…構わないわ」 「えっ…」 「霊夢、抜け駆け禁止!!」 「うっさい!私の邪魔をするなら叩き潰すまでよ!」 『死ねよやぁー!!』 「…はぁ。決まらないなぁ…」 幻想郷縁起・異変の項目に追加 神社崩壊変 某月某日、博麗神社に幻想郷の名だたる人間と妖怪達が殺到。 それから程なくして、同神社の半径百メートルが弾幕の嵐に 見舞われたという異変である。その騒ぎは通常の異変ならば一日で 終わる(※1)と思われたが、予想を裏切り三日三晩続いた(※2)。 被害は人里へは及ばず大したことはなかったが博麗神社が倒壊、 現在有志の元復旧工事が行われている(執筆終了後の現在復旧完了)。 嵐の中心にいたのは、湖近辺にそびえる紅い館の主でも冥界の 亡霊達が地獄へ旅立つ瞬間までを過ごす楼閣の亡霊嬢でもなく、 竹林の奥にある屋敷の姫君でもない。鬼でもなければ天界の天人 でもなく、妖怪の山にある神社の神でもなければ地底にある殿堂の 姉妹でもない(※3)。 寺子屋の上白沢氏の弟子である。 彼が直接何かをしたわけではなく、成人したことから身を固める ことを氏から勧められたと博麗の巫女に語った際、その会話に前途の 彼女達が反応、大集合となった。 当然丸く収まるはずもなく、彼女達の激情が神社の境内のいたる ところで炸裂、大喧嘩に発展。スペルカード戦に則って決闘開始、 そして今回の異変に至った(※4)。 上白沢氏の弟子の所在は現在不明(※5)、調査中とのこと。異変の 詳細を詳しく知る意味でも、彼の安否が気遣われる。 ※1) 長続きしないところから異変を起こした張本人は余程の暇人と推察。 ※2) やはり暇人の集まりである。その能力をもっと有用なことに使うと 言う選択肢はないのだろうか? ※3) これだけ並べられるほどの要注意人物、妖怪がいるということ。 ※4) 恋は盲目、近所迷惑とはまさにこのことである。 ※5) 決闘に使用される流れ弾に被弾した可能性がある。最悪死もありうるが。 「お待たせしました、夕飯の時間ですよ」 「ごめんね阿求さん、突然押しかけちゃったりして…」 「いえいえ、困ったときはお互い様ですから」 (このまま信頼を勝ち取っていけば彼と契るところまで…うふふふ) …この後彼の気配を嗅ぎ取った少女達が稗田邸に押しかけてきて ますますグダグダになるのは言うまでもないであろう。 新ろだ23 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ふぁ……」 夏の終わりを感じさせるような柔らかな日差し、秋の冷たい風が吹き抜ける博麗神社。 縁側に座る青年は欠伸を隠すことなく、目の端に涙を浮かべながらボンヤリとしている。 「あら、頭の中はすっかり春ね」 艶やかな黒髪に赤いリボン、特徴的な巫女服に実を包む少女が両手に湯飲みを持ち、青年の隣に座る。 ここ――博麗神社の巫女である博麗霊夢。 霧雨魔理沙と並ぶちょっとした有名人。 「ありがと……ふぁ……」 「この陽気じゃあ仕方ないわね……ふぁ……」 欠伸は移るというが、移ったようだ。 霊夢は目を細め、○○と言う青年を見る。 ―事故で迷い込んでしまったらしい。 ―どうもこの青年は眠るのが好きらしい。スキマ妖怪と気が合いそうだ。 ―料理も趣味でするらしい。趣味の域をでないよ、ははは。というのは本人の談。 ―ボンヤリとしている。 ―見様によっては“頼りないお兄ちゃん”に見える。 「……霊夢、どしたの?」 「ううん、何でもないわ」 二人同時にお茶をズズッと。 「あ~お茶が美味しい」 目を細め○○ 「お茶が美味しいわ」 同じく目を細め霊夢。 駄目だこいつら。早くなんとかしないと。 「こんにちわ~」 「早苗ちゃんこんにちわ」 傍目から見てもボンヤリとしていると分かる、○○の声。 「あら、何か用?」 「はい。大切な用事です。」 心なしか早苗の目に炎が灯っている。 「一体何かしら」 巫女の勘と言うべきか。その目は鷹のように鋭く。 「ふぁ……秋だなぁ……」 これから切って落とされるだろう巫女二人の舌戦など、まるで気にしないように独り言を呟いている。 巫女巫女が壮絶な睨み合いをしている頃、また乱入者が一人。 箒に跨る黒い帽子に黒いエプロンドレスの少女。 「邪魔するぜ……おっとぉ!」 「魔理沙もこんにちわ。今日はお客さんが多い日だなぁ~」 はい、お茶。と言い、湯飲みにお茶を注ぐ○○ 「お、サンキュー」 ズズッとお茶を飲む魔理沙。 「で、コイツは一体何なんだぜ?」 「ん……何?」 相変わらず舌戦を繰り返す巫女二人を尻目に、瞼が重たくなったのかほわほわとしている○○ 「まるで赤ん坊だぜ」 「俺赤ちゃんじゃないよ」 「だったらこんな時にうとうとしないぜ」 と言うのも、巫女二人が弾幕ごっこで決着をつけようとしているからだ。 「……痛ぁ……気持ち良いんだから仕方ないよ~」 もたれている柱に後頭部をぶつけ、お茶を飲む○○ 「それもそうか。私も眠たくなってきたぜ……」 コテン、と○○の右太ももを枕代わりに眠り始める魔理沙。 「魔理沙も人のこと言えないね」 と、今度は左太ももに重みを感じる。 何時の間に現れたのか、八雲紫が眠っていた。 「紫様がすまない」 「こんにちわ、藍さん。こんな日ですもん。仕方ないですよ」 二人を起こさないように小声で。 お茶を淹れたいが立ち上がれず、顔の前で両手を合わせる○○ いや、良いよ、と言いたげに手で制する藍。 彼女もこの陽気にやられたのか眠たそうだ。 「それより藍さんも一眠りどうです?」 「……紫様もこの様子だ。少しくらいなら構わんだろう」 ○○と背中合わせになるように座り、うつらうつらとし始める藍。 藍の膝の上には二本の尻尾を持つ黒猫がいる 「尻尾が暖かくて気持ちいい……」 この陽気を存分に吸い取った九尾の狐色の尻尾を堪能する○○ 今にも瞼が閉じそうだ 「そうか……それは良かった……」 藍と○○、肩をあわせるように眠り始めた。 ○○の手は魔理沙と紫の頭に乗せられている。 ○○・魔理沙・紫・藍の四人が○○を中心に惰眠を貪る中、二人の巫女は弾幕ごっこを続けていた。 ~~巫女巫女弾幕中~~ 引き分けとなった弾幕勝負。 お互いの服は所々破けており、その若さ溢れる柔肌を見せ付けている。 二人の目には、既に満員御礼になり、眠る○○達の姿。 「…………!?」 「…………!?」 二人同時に目を見開いたと思えば、残り一席を求めて駆け出す! 二人から○○まで約30メートル。 霊夢は並走する早苗に目をやる。 早苗の目から燃え上がる炎を幻視する霊夢。 「(……本気のようね)」 残り20メートル 今度は早苗が霊夢に目をやる。 「(流石です。ですが渡しません)」 残り10メートル 「「はぁっ!!」」 同じタイミングでお払い棒を打ち合う二人。 二人のお払い棒がぶつかり合った箇所には火花が散る。 そんな馬鹿な。 残り5メートル 「「今度こそ!」」 互いが互いの足を引っ掛け、ガッと音が鳴り、地を抉る。 残り4メートル ザッ! 止める事は困難なと判断したのか二人は踏みとどまる 「あら、今度こそ“弾幕”で決着をつける?」 「望むところです!」 空中に飛ぶ二人、今にも弾幕が張られようとしている。 スペルカードを取り出し、いざ…… 「……ニャーン」 お燐こと、火焔猫燐が猫形態で○○の膝の上で丸くなっていた 「「( ゚д゚)……」」 「「(つд⊂)ゴシゴシ」」 「「(;゚д゚)……」」 「「(つд⊂)ゴシゴシゴシ」」 _, ._ 「「(;゚ Д゚)……!?」」 「「( ゚д゚ )」」 コクリと頷き合った二人。 二人は懐からスペルカードを取り出し 「夢想封印」 「八坂の神風」 ちゅどーん!! 新ろだ36 ─────────────────────────────────────────────────────────── ある日起きると穣子が静かな顔で枕元に座っていた。 しかしその気配は殺気に満ち、下手を打てば心中せんという勢いである。 何をそこまで怒っているのかと思うが、やはり身に覚えが無い。 仕方が無いので尋ねてみるとそこで寝ている女は誰かと言う。 横を見ると何時の間に入ったのか、同じ布団で眠る天子がいた。 早急に説明をしなければ酷いことになるのは目に見えている。 既に穣子の右手には煌く何かが握られており、事の深刻性を示していた。 ここは正直に天人で以前家を壊した張本人と話すべきだろうか。 だがそう簡単に信じてもらえるとも思えない。 天子が起きて自分で説明してくれればそれが一番いいのだろうが、生憎起きる様子が無い。 考えている最中にも右手のそれは序々に近づき、胸元まで迫っている。 これはいよいよ以って終わったかと思っていると、竜宮の使いが現れた。 有り難い事に彼女は期待以上の働きをしてくれた。穣子は判ってくれたようで、泣きながら謝ってくれる。 このようなときに現れる奴は引っ掻き回すだけだろうなと半ば諦めていたが、どうやら空気を読んでくれたらしい。 胸の肉は幾らか抉れており、あと少し遅れていれば大惨事だったろう。全く背筋が凍るとはこのことか。 穣子は反動の所為か稚児のように泣いたまま胸の中で甘えている。 しかし右手にはまだ硬く鋭いものが握り締められている辺り、依然怒っているのかもしれない。 その様を竜宮略は生温かい目で見ていた。 なお天子はまだ起きていない。 無事に家からの脱出を果たす。生きているというのはそれだけで素晴らしいことだ。 家で休んでいようというのは朝方常に考えることだが、まさか早く家を出たいと願う日が来るとは露にも思わなかった。 だが朝から一波乱あった所為で仕事をする気になれない。ずっと準備中にしている。 弁当も忘れたが里中に食いに行く気力も無い。余剰の炸薬でも川に放り込んで魚を取って食っていようか。 川下の住人やら河童やらから苦情が来そうだが、常用するわけでも無し一回こっきりと思って我慢してもらおう。 さて爆薬、雷管の準備をしている時に客が来た。 準備中としているのにやって来るとはどういう了見をした連中だろうと出てみると穣子御一行であった。 曰く弁当を持ってきたということだが、今日に限っては全く嬉しくない。 持ってこられた弁当のおかずは好物が多いが、寧ろ多すぎて不安にさせる。 しかもいざ食おうとすると箸を取り上げられ、右手にいた穣子に口を開けろと半ば命令される様に言われた。 恐らくこれはよく聞く奴をやろうとしているのだろう。勘弁してくれ。 凡そ地獄のような食事であった。 凄まじい緊張感の中、一つ一つ食物が口に放り込まれる。 茶を飲むのにも穣子が椀を持つ始末で、果ては口移しで飲まされるのではなかろうかと思えた。 それを見て面白そうだと思ったのか、天子も自分の口に桃を近付けてやれ食えと言ってくる。 しかもそれが水蜜桃なのだから性質が悪い。蜜で口の周りが気持ち悪いことになった。 食事の後、天子がどこかに遊びに連れて行けとせがみ抱きついてくる。 穣子はそれを射殺さんばかりの眼光で睨みつけている。 竜略はそれらをまだ弁当を食いながらただ黙って見ている。 生きた心地が全くしない。誰か助けてくれ。 仕事があるといって何とか追い返せた。 今なら言える。神は死んだ。 帰ってみると天子が穣子の膝の上に座ってくつろいでいた。 昼の剣幕はどこへやら、穣子も顎の下などを掻いて楽しんでいる。 時折天子が穣子の胸に頬を擦り付けて気持ち良さそうな顔をしていた。 何があったのかは判らないが随分な仲の良さだ。だが険悪よりよっぽど良い。 どうしたのかは聞かないでおこう、またいらぬことを思い起こさせても厄介だ。 それよりかは戻ってきた平穏を楽しんでおこう。 夕飯を食っていると天子が片膝の上に乗ってきた。こいつは膝の上が好きなのだろうか。 何か言うのも面倒なので、自分も頭を撫でてやりながら酒を呑む。天子はどうにも気持ち良さそうに目を細めていた。 それを見ていたのだろうか穣子が脇まで寄ってくる。催促する様に頭を差し出されては撫でるより他に無い。 幾らかの間撫で続けていると、頭を膝の上に乗っけて猫の様に丸くなった。 忘れていた天子のほうを見ると、こちらも肩に顎を乗せて寝息を立てている。 多少重いが仕方が無い、随分幸せそうな顔をしているのだからこれを起こすのは酷と言うものだ。 柔らかな荷重を受け、後に来るだろう痺れを恐れながら一息に酒を呷った。 うpろだ1236 ─────────────────────────────────────────────────────────── ~アリス・マーガトロイド家~ 「うーむ、やっぱ酒はいいぜ。なんかこう、どうでも良くなってくるよな」 「人んちで食べ散らかす程にまでどうでも良くならないでよ魔理沙・・」 「いいじゃないか、久々に遊びに来てやったんだし、今日くらいは無礼講といこうぜ」 「・・いつもそう言ってるような気がするわ」 「ははっ、そうだっけ、覚えてないぜ」 「・・・あー、二人とも、ちょっといいか?」 「どうしたんだ○○?」 「なあに?」 「・・・何で俺まで居るんだ?」 ここに来てから、30分程経ったが、ようやく俺はツッコミを入れた。 そう、何故か俺は今、魔理沙と一緒にアリス家におじゃましているのだ。 「そこにお前が居たからだぜ」 「・・・・。」 「まあ細かい事は気にすんな。暇だったんだろ?」 「・・まあ」 俺がのんび~りと歩いてる時に遠くで魔理沙がホウキにまたがってこっち向かってるな~と思ったら そのまま低空飛行で、すれ違いさまに俺を攫っていくのは正直どうかと思ったが もうあえて突っ込まない事にした。いつもの事だしな。 「普通に聞こえてるぜ」 「う、うるさいな。俺は高所恐怖症なんだから本当に死ぬかと思ったぞ・・」 「あはは、あんた達ホントに仲が良いのね」 「よしてくれ。・・それより、ちとキツすぎじゃないか?これ」 「何言ってんだ、これくらいが普通だぜ、アリス、もう一本くれ」 何本目だ?魔理沙のやつ・・っていうかアリスもそれ以上魔理沙に飲ますなよと 1時間後 「なぁ~○○~」 「こ、こら、くっつくなよ魔理沙」 「キスしようぜキス」 「・・完全に出来上がってるな・・お前、酒弱いくせに呑みすぎなんだよ」 「私は強い方だぜ。ほらよ、んちゅー」 んぐ・・い、息が・・こいつ舌まで絡めてきやがった 「あ~こらぁ、魔理沙ずるいよ~」 そういいながらアリスが近づき、腕にしがみついてきた。 って、しっかりアリスまでおかしい事になってるじゃーありませんか。つか息が・・・ 「ぷはっ、酒くっさ!」 「ひどいなお前・・女性に言う言葉じゃないぜ」 「じゃあ次は私が――」 「はいはいちょっとタンマ。お前らストップ!」 「なんだよ○○、せっかく盛り上がってきたってのに」 「いや盛り上がってるのはお前らだけじゃないか」 「お前も両手に花だというのに贅沢なやつだな」 ぜぇ・・ぜぇ・・このまま好きにさせると何されるか分かったもんじゃない・・ さらに1時間後 「くかー、くかー」 魔理沙のやつ、結局酒に飲まれてダウンか。 ・・しかも俺の膝の上で。子供かよ アリスの方は、さっき若干おかしかった割には今はえらく落ち着いて紅茶を飲んでいる。 「魔理沙、完全に寝た?」 「ああ、こりゃ暫く目が覚めないな。」 「そう、良かった。」 「・・?」 かちゃん。とアリスは紅茶のカップをテーブルに置き、 俺の方へと近づいてきた。 ずぃ 「ねえ、○○」 顔近っ! 「な、なんでしょうか」 「魔理沙の事、どう思ってるの?」 「・・どういう意味でしょうか。(←ビビってる時は敬語)」 突然何を言い出すのだ 「どうって言われても・・お前もやっぱり酒で・・」 「酔ってないよ。私は最初から呑んでないもの。・・呑むフリはしたけど」 「なんだ、お前って酒ダメだっけ」 「そういう訳じゃないけど、シラフでいておきたかったのよ、今日は」 「なんだそりゃ・・」 「で?」 「な、なんだよ」 「どうなの?好きなの?」 いやだから顔が近いです。 「・・・」 俺は爆睡している魔理沙をチラっと目をやって溜息を混じりつつ答えた 「・・こいつは、いつもしょーも無い事にすぐ首を突っ込んでは面倒を起こすわ、人の言うことを無視するわで 色々苦労はしているが、一度何かやると決めたら最後までやるヤツなんだ。 それはアリスも付き合い長いから分かるだろ?」 「ええ、昔からそうね、魔理沙は」 「何だろうね。興味が沸くっていうのかな、こいつの努力が最後にどう結果をもたらすか。 まあそれに付き合って苦労はしてはいるんだが、こいつと居ると退屈しないね。 ・・好きかどうかはいきなり聞かれても分からん。あまりそういう風に考えた事無かったんだ」 「・・そう。」 「・・・」 そんな事を聞いてどうするのかと思ったら、 今度はまたおかしな事を聞いてきた。 「じゃあ、私と魔理沙どっちが好き?」 「はい?」 お前は何を言っているんだ。(ミルコ略) 「ま、聞くまでもないわね。あなたが魔理沙の話をした時の顔を見れば分かるわ・・」 「どんな顔だよ。」 「ふふ、爽やかな顔だったわよ」 ・・そんな顔してたのか俺。 「・・ねえ、さっきの続きしていい?」 「続きってなんだ?」 「言わせる気・・?さっき私できなかったから・・」 顔を染めながら目を逸らせて言う姿を見て何の事かを把握してしまった。 「できなかったから、何だよ・・」 「・・ずるい。」 「・・・」 「な、なに呆れたような顔してるのよ、いいじゃない別に~」 「・・お前あのときからずっとシラフだったんだよな?」 「ええ♪いいチャンスだったから勢いに乗ろうと思って、ね」 「・・どうしても酒が入ってない状態でしたかったの。忘れたくないから・・。」 「・・・私の我侭、聞いてくれる?」 「うーん・・」 「ダメなら、・・無理にとは言わないわ」 「・・分かった、お前がそれで満足するなら。・・だがちょっと心の準備させてくれ。 俺も殆ど呑んでないからもう酔いが覚めて今は思いっきりシラフなんだ。」 酔った勢いなら出来てたが、シラフ同士は流石に照れくさい・・。 魔理沙には酔った時に何度かされていたから多少は慣れていたが・・ ていうか、何でこんな展開になってるんだ? ・・俺は魔理沙が本当に好きなのか? アリスはどうだ?魔理沙ほど親しかったわけじゃないが、 今こうやって初めて二人で話してみたけど、これで前より気になってしまったかと言われて、 NOと言えば嘘になる。いやそれ以前にアリスの動きが色々とやらしいんだよ畜生。 ハッ!男なんて所詮そんなもんさ。ああ畜生。畜生だとも。 「こないならこっちから行くよ」 「え?・・んむ」 ちゅーっ ちょ、準備できてないのにいきなり。。 ちょっと・・深いっす。アリスさん そのままされるがまま押し倒される。 やばいな・・ こんなに気がはっきりしてる時のキスは初めてだから、 ・・頭がとろけそうだー 長いキスのあと、ゆっくり口を離され、ようやく開放された。 つつーっと、口と口が糸で繋がったのが見えた。 「ん・・ありがとう・・。」 「・・・いや。」 「私ね、あなたをずっと見ていたの。でもあなたの傍にはいつも魔理沙がいた。」 人形遣いが言うと背筋がぞわぞわっとするな・・。 「・・・だから私には入り込む隙間はないって諦めてた。 けど、やっぱり気持ちはだけは伝えたかったの。」 「アリス・・。」 「あ~、なんだか、身体が火照ってきちゃった。呑んでないのに。」 ・・これはやばい空気・・! 「ねえ。○○」 「お、俺、そろそろ帰るわ、夜遅いし、あ・・ははは」 「えー」 「またくるさ。今日はありがとな。菓子美味かったよ。」 「あ、コレ(魔理沙)も送ってってあげなさい。」 「え、もうこいつ起きないだろ」 「おぶってあげなさいよ、男でしょ?」 「・・いやこいつ飛べるから、目が覚めたらすぐ帰れるんじゃないか?」 「ああもう、まったく・・そんなんじゃフラれるわよ? ま、私はそれでいいけど。ふふ」 「仕方ないな・・んしょ。・・じゃあなアリス、おやすみ。」 「またね。もしフラれたら、いつでも私の所に来てね」 「・・・アリスゥ」 「あは、冗談よ。おやすみー」 ギィーバタン ~魔法の森~ まだ半分か・・。遠いなあ。 魔理沙はいいよな、寝てるだけで起きたら自分の家だもんな。 「くかー・・んーむんに、そいつぁ、めくるめく文鎮だぜ・・」 ・・何の夢見てんだ。 ったく、弱いくせに呑みすぎなんだよ、お前は。 飛べない俺にはかなり距離あるってぇのに・・・。 しかし重いなこいつ。ポケットに何かいっぱい入ってるみたいだが、それのせいか。 どうせどこからか盗んだり拾ったりした物だろうな。 ・・・もうすぐか。 「うーん・・○○・・」 ・・起きたか? 「・・・いつも・・ありがとな・・むにゅん・・」 ・・・寝言・・か。 『何だろうね。興味が沸くっていうのかな』『こいつと居ると退屈しないね。』 『じゃあ、私と魔理沙、どっちが好き?』 『ま、聞くまでもないわね。あなたが魔理沙の話をする時の顔を見れば分かるわ・・』 『私ね、あなたをずっと見ていたの。』 だぁーーー!! なんでさっきの会話が今、脳内再生されるんだ。。 「くー、くー」 ・・お前は、どうなんだ?魔理沙。 ただの暇つぶしの友達か? それとも・・ ・・・こいつだけは本当に読めないな。 ポロッ 「あ。」 魔理沙のポケットからケースらしきものが落ちた。 カシャーン あちゃ、落ちた衝撃でケースから色々中身が散乱しちまった。 ん、これ・・ 魔理沙がヴワル図書館から本を盗んでる決定的瞬間が写ってる写真か。 はは、なさけねー 思いっきり誰かに見つかっとるやないか。 こっちは、博麗神社から饅頭を盗んでる瞬間だな。 記事にされる前にどうにかして例の鴉天狗から奪ってきたんだろうな。 ん?この写真だけ別で綺麗に紙で包まれてるな。 ・・・これは、 俺と魔理沙が写ってる写真・・・か。 そういえば前に1度無理やり連れて行かれて共犯させられたな・・。 魔理沙・・・ 「・・ん、寒い・・ぜ」 魔理沙が、ぎゅっと力を入れてきた。 「んぐ、苦しい・・ぜ」 喋り方がうつっちまったぜ・・ あともう少しで魔理沙の家に着く。 まずはこいつを家に放り込まなければ。 ・・色々考えるのは、それからにしよう。 うpろだ1273 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「唐突だけど○○、一つ聞いていいか?」 「本当に唐突だな」 「気にするな。それで聞くが、胸は大きい方と小さい方どっちが好みだ?」 「………また随分な質問だな。何で急にそんな事聞いてくるんだよ?」 「実は今日、仕事の仲間内で貧乳派と巨乳派による論争が起きたんだ」 (………何でそんな論争が起こるんだろう?) 「そして数時間の間激しい意見のぶつかり合いとなったんだが、結局平行線のままでな」 (数時間………力を注ぐべき部分を明らかに誤ってる) 「そこで日頃から多種多様な美女美少女に接しているお前の意見を聞こうと思った訳だ」 「いや、それは個人の趣味趣向の話だから僕の意見も何もないと思うんだけど……」 「とにかく答えろ! お前が答えないと話が進まないんだ」 「強引な奴………解ったよ。でもあくまでも個人的な意見だからね? 僕は…」 友人とそんな会話をした翌日、僕は霊夢さん達に誘われて博霊神社での宴会やって来ていた。 (何でだろ、いつもの宴会の雰囲気と違う気がするぞ?) いつものように和気藹々とした楽しい宴会。 だけど、その中に僅かながら異質な空気があった。 ピリピリしているというか何と言うか、何処となく張り詰めている気がする。 中でも特に咲夜さんや萃香、映姫様などからそれを感じる。 「○○~♪」 「おわっ……幽々子さん?」 いきなり横から衝撃を受け、持っていたコップを落としそうになる。 すぐに体勢を立て直して横を向くと、幽々子さんが僕の腕に張り付いていた。 密着と言っても差し支えないくらいにベッタリと。 「○○、楽しんでる?」 「も、もちろんですよ?」 「そう? その割には何か動揺してない?」 「そ、そんな事ないですよ?!」 そんな事ない訳がなかった。 ハッキリ言って幽々子さんはスタイル抜群だ。 もちろん素肌を見た事はないが服の上からでも十分に見て取れる。 そんな幽々子さんにこの位置で密着されれば、必然的に僕の腕が幽々子さんの豊満な胸に挟まれて…… 「うふふっ♪ 嘘はいけないわよ、○○」 「ゆ、紫さん?!」 幽々子さんに色々な意味で全神経を使っていた僕だが、 突如として反対側からに新たな感触が伝わってきた。 それは幽々子さんに負けず劣らず抜群のスタイルを誇る紫さんの仕業だった。 「べ、別に僕は嘘なんかついてないですよ?」 ごめんなさい、嘘ついてます。 ただでさえ幽々子さん一人で限界だったのにこの上紫さんまでなんて。 普段からこういったスキンシップ?の多い二人だが、ここまで過激なのは初めてだった。 あっ、紫さん耳に息吹きかけないで……ゆ、幽々子さん身体を揺すらないで…… 気持ちいいやら柔らかいやら温かいやらでもう何が何だか…… 「あらあら、○○ったら顔が真っ赤になってるわね。具合でも悪いのかしら?」 「○○、無理をしてはいけないぞ」 「え、永琳さん?! 慧音さん?!」 意識と一緒に何か大事な物まで飛びそうになっている僕だったが、そこへさらなる追い討ちが下された。 僕の胸に顔をうずめるようにしてしがみついてくる慧音さん。 そして僕の首に手を回し、思いっきり背中に密着してくる永琳さん。 前後左右から絶え間なく襲い掛かってくる圧倒的なそれら。 もはやこれ以上まともに言葉を話せるような状態ではない。 「み、みみみ皆さん揃って一体どどどどういうつもりなんですか?!」 それでも最後の理性でもってこれだけ口にする。 まともに喋れていないが口に出せただけでも褒めてもらいたい。 いや、そもそも褒めてもらうとかそういう事じゃなくて。 自分でも何を考えてるのかよく解らなくなってきた。 「決まってるじゃない。○○の喜ぶ事をしてあげてるのよ」 限界ギリギリの僕の言葉に紫さんが笑いながら答え、 何処からともなく一枚の紙を取り出して見せてくれた。 『衝撃! 外界人○○さんは巨乳好き!?』 そんな見も蓋もない一文で始まっていたのは今日の日付の文々。新聞。 そう、驚いた事に僕が昨日友人と話していた内容が脚色されて記事になっていたのである。 射命丸さん、こんなこと記事にして一体何がしたかったんだ…… 「それで○○、誰の胸が一番かしら?」 「……はっ?!」 射命丸さんのとんでもない暴挙に愕然としたものの、生憎とそれに浸っていられる余裕はなかった。 依然として僕を取り囲む4人は健在で、しかも事態は現在進行形で悪化していたのだから。 「○○は胸の大きな女性が好きなんでしょう」 「なら、○○が一番気に入った胸をしてる者が○○の恋人よね」 「○○、誰の胸が一番なんだ」 「え、そ、それは……あの、え、なんで?」 押し当てられる二対八個の凶悪兵器に思考回路はショート寸前。 もはや僕は紫さん達が何を言っているのかさえ判断できないほどの混乱に陥っていた。 そこへ紫さんからトドメの一撃が繰り出される。 「なんなら、直に触ってもいいわよ?」 「!!!!!!!!!!!!!!」 それが、意識を失う前に聞いた最後の言葉だった。 ○○が気を失った瞬間、取り決めによって我慢に我慢を重ねていた平均以下の連中がついにキレた。 その隙を見計らって私は藍に事態の収拾と足止めを任せスキマを使用。 その場にいた全員を出し抜き、気絶している○○を連れてマヨヒガへと戻ってきた。 うふふ、全て計算どおりだわ。 「………ん、ここは……?」 せっかくなので○○に膝枕をし、滅多に見られない寝顔を至近距離で思う存分眺めていた私。 そうし始めてからどれくらいの時間が経っただろうか。 ようやく○○が目を覚ました。 「やっと起きたのね?」 「………ゆかりさん?」 まだ意識が覚醒しきっていないのか、半分眠っているような目で私を見つめてくる○○。 そんないつもと違うあどけなさ全開の○○に見られているだけでもうお腹いっぱいだわ。 「………………エッ?! 紫さん?!」 そのまま見詰め合っていること約十秒、○○は目を見開いて驚き私の膝から跳ね起きた。 ……反射的に顔を引いて避けてしまったけど、あのままにしていれば合法的に○○とキスできたわね。 勿体ない事をしたわ。 「へ? ここは…あれ? 僕は博霊神社で宴会を……」 「落ち着きなさい○○。今から説明してあげるわ」 慌てふためく○○を見るのもいいけど、今は説明する事が先決。 私は○○の正面を向いて座り直し今回の経緯についての説明を始めた。 発端となった文々。新聞の記事の事。 それを読んで○○に対するちょっとした悪戯を思いついた事。 悪戯を実行するために宴会を仕組み、○○を招待した事。 悪戯そのものは成功だが、直後に一部の者達が暴れて宴会がメチャクチャになった事。 気絶した○○を私がスキマを使ってここまで連れてきた事。 多少都合の良いように誇張や脚色を織り交ぜたが、概ね真実を伝える。 「………酷いですよ。みんなで僕をからかって遊ぶなんて」 話を聞き終えた○○は非難するような視線を向けてそう言ってくる。 でも、○○の態度は怒っているというよりは拗ねている感じ。 そんな○○がたまらなく可愛いから、私はついつい悪ノリしてしまうのだ。 ううん、ノリなんかじゃないわね。 「○○、一つ勘違いしてるわ」 「えっ………ちょっ?!」 私はしなだれかかるようにして○○に抱きついた。 そして○○の瞳をまっすぐに見つめながら言葉を紡ぐ。 「私はね、悪ふざけだけで好きでもない男に抱きついたりはしないわ」 全ては貴方が貴方だから。 貴方と出会うまでは考えもしなかったこんなの行動。 貴方だからこそ、この大妖怪たる八雲 紫がこうやって無防備に身を委ねたりするのよ。 「ゆかりさん、それって……」 だからこそ、貴方は誰にも渡さない。 貴方と一緒にいる時に感じるこの心地よさ、温かさは私だけのもの。 ずっと傍にいてもらうってこの私が決めたんだから。 「愛してるわ、○○」 うpろだ1303 ─────────────────────────────────────────────────────────── ジョイン ジョイン トキィ テーレッテー ・序、終 ~引き続き何事も無かったかのように本編~ 人里のワーハクタクこと慧音の弟子であるあいつは、何をどう すればそうなるのかさっぱりだが人妖問わず大人気らしい。 私に言わせりゃ霊夢も真っ青なくらいのマイペース、ある意味 この美しくも残酷な幻想郷で生きてられることが一つの奇跡だ。 しかし私までもがあいつの独特な雰囲気に惹かれているのもまた 事実。ライバルは多いというか多すぎだ。恋は先手必勝、あいつに なら私の初めてをうふ、うふ、うふふふふ… はっ!?い、いかん、一瞬先祖がえりしかけた… さっき慧音から聞いたがあいつは今博麗神社にいるとのことだ、 アウェー戦か、受けてたつぜ霊夢! 「れーいむー!遊びにきた…ぜぇぇっ!?」 ズザザザザー 私は勢いよくヘッドダイビングする羽目になった。何故なら… 「お、お前ら!」 「やぁ魔理沙」 「あらいらっしゃい。素敵な賽銭箱はそこよ」 「こんにちは魔理沙さん」 奴の右腕を霊夢が、左腕を早苗ががっちりホ-ルドしていた… 「…お前に一つどころか二つ三つほど聞きたいことがあるんだが」 「何だい魔理沙?」 そう応える奴の顔は憎らしいほど爽やかだ。悪意も煩悩も一切 無縁だと言わんがばかりに。ちょっとは恥らえよ。 「お前の右にいるのは霊夢だよな」 「そうだね」 「見ての通りじゃない」 「お前の左にいるのは?」 「早苗だね。守屋神社の早苗」 「私です」 単純に考えたら男どもが号泣して羨ましがりそうな光景が私の 目の前で展開されている。 私が言うのも何だが霊夢は単純に可愛いタイプで、早苗は綺麗 と可愛いが半々で同居したタイプだ。 そんな二人を侍らせているようにも見える光景は同性の男から してみれば血涙ものの羨ましい光景、異性の私からは別の意味で 羨ましい。くそッ、先手を取られるなんて… 「今の自分の姿に疑問は無いのか?」 「別に…って、僕、何か可笑しな格好してるかな」 「至って普通ね。魔理沙じゃないけど」 「身嗜みも整ってますね」 「いや、だからな…」 これ以上禅問答のようなやり取りを続けても無意味だ。どこぞの 誰かも言っていた『欲しければ奪い取れ!』を今こそ実行する時。 そのガラ空きな膝枕は貰ったァァァァァァ!! 「邪魔するぜー!」 「あら、お客さまですか?」 「何なのよ、騒々しいわね」 げぇっ、咲夜とレミリア!そんなところにいたのかよ!背中か、 盲点だった…!結構美味しいポジション…って、そうじゃない! こいつらまで狙ってるのか!? 「咲夜たち、寄りかかれる場所が欲しいって言うからね…」 「お恥ずかしいですわ。ところで魔理沙、騒がしいけどどうしたの?」 「魔理沙、私は今気分が最高に良いの。邪魔せず立ち去りなさいな」 そんな私のことなど気にせず、至ってマイペースで語るあたりが 実に憎たらしいぜ…いっそこのまま真っ白に燃え尽きてしまうか… ! いあいあ、じゃない、いやいや! ここで諦めたら何のための恋色魔法使いだ! それにまだ膝枕のスペースはガラ空きのまま! 貰ったァァァァァ!! ごっすん♪ 「んなぁ!?」 突然私の後頭部に間抜けな効果音つきで鈍い一撃が襲い掛かった。 い、痛いぜ…しかしこんな音を出せるような攻撃方法を持っている 奴は幻想郷狭しといえど… 「何してるの魔理沙。ちょうどいい膝枕見つけたんだから、大人しく してなさい」 「私たちの素敵な時間を邪魔しないの」 やっぱりアリスか!しかもパチュリーまでいるなんて。こいつら まで…やはりライバルは多すぎ、しかも何でこんな一箇所に密集して いるんだ!? おまけに狙うべき膝枕はものの見事に二人で塞がれ、残ったのは あの一箇所、タイトなあの部分!これはかなり恥ずかしいぜ…だが、 ここまで来たら形振り構っていられるか! 立て私!最後の力を振り絞って、最後の一箇所にダイブだ! ススス… ん?どこかで見たような…って、これは紫のスキマか!ええい 構うものか、行くぜ! ひょこっ ぽふっ 「お腹は私ー」 「すわっ!?」 「おおっと、諏訪子さん?」 ひょこっ ぽふっ 「むー。駄目です祟り神さま!私もここはお気に入りなんです!」 「あっきゅんっ!?」 「わっ、阿求さんも来ちゃったの?」 な、何で関連性の無い奴らがここにいるんだよー!?しかも残る 一箇所にすっぽり収まったし! 「頭は私の枕よ。スキマから上半身出してるだけだから、邪魔には ならないわ。おやすみ~」 「ゆあきんっ!?」 -私、霧雨魔理沙は-二度と争奪戦へは参加できなかった…。 そして何か言うべきなんだろうと思っても何も思いつかなかったため、 ―そのうち私は考えるのをやめた。 (むぅ、やるわね諏訪子、阿求…そこはガマンしてたのに)ぎゅっ (負けませんよ、霊夢さん!いい所取られちゃいましたが)ぎゅう (やるじゃないの二人とも。でも背中ゆえの長所もあるわよ)きゅっ (咲夜、私にも寄越しなさい。独り占めするんじゃないの)きゅ (膝枕はアピールが楽でいいわ。暖かくて安心できるし)さわさわ (ええと、こういう時の彼に対するアピールの仕方は…)すりすり (ふわぁ、温かいなぁ)ふかふか (何だか落ち着くんですよね)ふわふわ (す~) 「どうしたのかなぁ、今日はみんな甘えん坊さんだね…」 「気のせいよ」 「気のせいです」 「何時も通りですわ」 「何時も通りね」 「何も変わらないわよ」 「変わらないわね」 「ん~♪気のせい気のせい」 「うにゃー♪そうですそうです」 「す~…」 今日も至って幻想郷は平和である…多分。 うpろだ1316 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【商品名】 ハーレム大好き!Chu王様! 【種類】 R元服商品 【詳細】 R元服対象のエロゲタイトル。 2巻上、p73で葵・トーリがこの作品の初回限定版付属クリアファイルを持ってきた。 トーリ曰くレアらしい。 元ネタは『封神演義』の昏君「紂王」ではないかと思われる。
https://w.atwiki.jp/hiten_miraieigou/pages/62.html
未来永劫ニュース!? このページは未来永劫のニュース・ハプニング・お知らせなどなど・・・私が自由に書いていくページです★書いてほしいと言われたことはもちろんのこと!あーんなことやこーんなことまで私がまとめて書いちゃうから要注意♪未来永劫のメンバーの人も見ないと自分のこと書かれちゃってるかも・・・!?お気をつけてくださいね(笑)因みにこのページ担当してるのはシェリルなんでちょーっと危ないかもよ?いろいろと♪テンション上げて書いていくので皆もこれ見たらどんどんコメかいてね★ お知らせ ほのちゃんこと♪ほのか♪ちゃんが新入りで今日29日入りました!!!これもやはり鏡童で・・・!可愛い可愛いw可愛すぎてクラクラwまぁ・・・可愛いから何してもOKだなw(ぇ)例え悪さをしてもw ♪シェリル情報局♪ この未来永劫流派は意外と仲が良いね?他の流派の情報を聞いてみたけど7流派中5個は荒れてるところがあることが判明しましたよ;まぁ少なくとも私の情報だけどね?♪あんまりあてにしないほうが良い気もしますが・・・一人でも荒れてる人いれば皆が荒れちゃう!そんな流派にはこのシェリルがぜーったいにさせません♪まぁこの流派にそんな人いないけどね?(笑)安定した流派なので今を未来永劫たもって行こう☆ メンバーの真実!? この未来永劫のメンバーの中の真実をだんだんと書いていくこの暇ーなコーナーを作ることにしました♪どんどん書いていきますのよぉ―――――――♪( ̄Oノ ̄*)オ~ほっほっほォ リザちゃん リザちゃんはイケメンで・・・しかも1千万人未満のファンがいるらしい!?(未満に注意してね♪)自意識過剰な部分があると皆でふざけて遊んでいた・・・リザちゃんはケロとか巨大ウネなどの敵を脅すのが好きらしい!普段巨大ウネなどはリザちゃんに脅されて暮らしている――!?趣味範囲?★どういう趣味をもったものか;カエルを盗む技術?をもっているらしく・・・次々とカエルを盗みまわり・・・!? アウスラ アウスラは・・・墓のゾンビに何度も倒されたというなんとも哀れな人だと言うことが判明した!?しかも・・・絵を描く、小説を書く、ネトゲをする・・・の趣味以外にも、レイバードを倒すのが大好きらしい!そうして・・・いつもいつも狩っていて・・・レイバードには目をつけられてだんだんと攻撃される回数が増えてきてる・・・!レイバードだけにはドSらしく、倒すのが楽しいらしい!?レイバードが可愛そうだ・・・下のコメントに注目するとドM・・・!?本当か?・・・微妙なんですの♪; 桜蒼 なんと・・・!姫は影分身が出来るらしく!旅団組んでいるとき、目の前に姫はいるのに、左上に表示される旅団メンバー情報(?)にはしっかりと青海湖盆地と書かれていた!そして・・・青海湖盆地に行くと姫はいないのに地図に表示されている!なんで!?ミステリー♪姫の影分身・・・正体不明!!!これから捜索!?誰が見てもそう表示される!リザちゃんが見てもそう表示されていた!バグではないかな?☆これは・・・亡霊!?(違)何か情報を知っている人はこの私に是非お伝えくださいね!?♪ シェリル・ノーム 私のキャラが崩れた!!!この前、25日土曜の夜にキャラが崩れた―――――!!!!!!素直っぽくなってた・・・ガクゥ━il||li(っω`-。)il||li━リ… 私としたことが・・・orzキャラがぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁ!アウスラにはとてつもない誤解?をされたwんー・・・誤解・・・?うん・・・誤解!アレは誤解だ!今まで頑張ってキャラを崩さないようにツンツンしてたはずが・・・ってか冷たいキャラのはずが・・・(さっきのツンツンは取り消し)はぁ・・・私何をしていたんだ!眠いとあぁなるんだ・・・(独り言)知らない人は知らなくて良いよwこの話題はその場にいた人にしかわからない話題だ☆^^; らん丸 らんちゃんがステイッチのことをあの最近水曜日の7:00(もともとブリーチがやっていた時間)にやっているスティッチと間違えた!もしやらんちゃんはあの映画「リ○ア○ドスティッチ」をみている!?見てちゃだめなわけじゃないけど・・・間違えたのはかっこ悪い!私はすかさず突っ込んだwらんちゃんめっちゃ困ってたwだけどそんなことをするのが私だったんだ。人をからかう?w(最低だ♪) ◆◇◆コメントコーナー◇◆◇ このコーナーは・・・暇で暇でしょうがない暇人のための暇人の作った暇なコメントコーナー♪暇じゃない人は無理して書かなくてもwコメントも何もあったものじゃないこのページだけど付け足したいお知らせなんかがあった場合ここに書くなどしてください★そうすれば私が書きたしておきますのでお願いします(´∀`*)因みに・・・これ、コメのかき方わかんないんで超!適当にこの下の辺りにリスト的な感じて書いちゃってください♪リストのやり方わかんない人のために5個くらいリスト出しておきますね★あっ言っておきますが・・・このコメントコーナーゎ・・・反論とか・・・かなり自由なコーナーだよw何書いても構わないからね♪ まあ、荒らすような奴は、入れないように勧誘の時点で判断したいけどね^^;もしもの時が来ない事を祈るよーw-・・・フェルグス ちょw僕のレイバ大好きだがドSとは違うぞw(どっちかというとドM?(オィ・・・アウスラ
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「唐突だけど○○、一つ聞いていいか?」 「本当に唐突だな」 「気にするな。それで聞くが、胸は大きい方と小さい方どっちが好みだ?」 「………また随分な質問だな。何で急にそんな事聞いてくるんだよ?」 「実は今日、仕事の仲間内で貧乳派と巨乳派による論争が起きたんだ」 (………何でそんな論争が起こるんだろう?) 「そして数時間の間激しい意見のぶつかり合いとなったんだが、結局平行線のままでな」 (数時間………力を注ぐべき部分を明らかに間違ってる) 「そこで日頃から多種多様な美女美少女に接しているお前の意見を聞こうと思った訳だ」 「それは個人の趣味趣向の話だから僕の意見も何もないと思うんだけど……」 「とにかく答えろ! お前が答えないと話が進まないんだ」 「強引な奴………あくまでも個人的な意見だからな? 僕は…」 友人とそんな会話をした翌日、僕は買い物に行くため人里へと向かっていた。 「こ、こんにちは、○○さん」 その道中、何の前触れもなく妖夢さんと遭遇した。 ほぼ必ずと言っていいほど幽々子さんの傍にいる妖夢さんが一人で出歩いているのは結構珍しい。 幽々子さんから買い物か何かを頼まれたのだろうか? 「妖夢さん、こんにちは………ん?」 そんな訳で挨拶を返したのだが、妖夢さんの様子がどうにもおかしい。 まるでペンキでも塗りたくったかように真っ赤になっている顔。 そわそわとしていて落ち着きがなく、時折こちらの方を向いては目が合いそうになると顔を逸らす。 いつもの彼女とはまるで別人のようだ。 「………………○○さん」 一体どうしたんだろうと思いながらしばらく待っていると、妖夢さんの方から声をかけてきた。 真っ直ぐ向けられた顔は依然として赤いままだが、その表情は何かを決意したかのように真剣そのもの。 しかし、その瞳は清廉潔白な彼女からは考えられないほどに艶のあるものだった。 (妖夢さん、こんな顔もするんだ……) 普段の妖夢さんとはあまりにもかけ離れたこの姿。 僕はまるで金縛りにでもあったかのように身動きがとれなくなってしまう。 それを知ってか知らずか、妖夢さんは次なる行動に出た。 自由自在に刀を振り回せるとはとても思えない小さな手を伸ばし、僕の右手を掴む。 そしておもむろに自身の方へ引き寄せると、僅かなの躊躇の後にそこへ押し当て………え? 「よ、よよよよ妖夢さん?!」 何? 何だ? 一体何が起こったんだ? 何で僕は妖夢さんの胸を触ってるんだ? 何で妖夢さんは僕に胸を触らせてるんだ? もしかしてこれは夢? しかしこの掌から伝わってくる僅かだが確かな柔らかさは? 温かさは? もうなにがなんだか全然わからない。 「……○○さん。○○さんが好きなら、私は……」 って、なんか妖夢さんが聞いてしまったら後戻り出来なくなりそうな事を言おうとしてる!? 「あらあら、随分と大胆な事してるのね」 えっ、大胆? そんな言葉で済むようなレベルじゃないですよ! 大体、妖夢さんの事を一番よく知ってるのは貴女じゃないですか! そんな暢気な事言ってる場合じゃない事くらい解るでしょうに! そもそもなんでいつもと変わらない笑顔でいられるんですか幽々子さ……… 「………もしかして、幽々子さんですか?」 「もしかしなくてもそうよ、○○」 その瞬間、僕は血の気が引いていくと言う比喩表現が現実的に起こりえる現象だと知った。 こういった状況を何も知らない第三者に見られた場合、 それまでの経緯がどのようなものであろうとも99%以上は男性側が悪いとみなされる。 しかも幽々子さんは妖夢さんにとって仕えるべき唯一の主。 つまり僕はこの状況を一番見られてはいけない人物に見られてしまったのである。 だが、意外なことに幽々子が矛先を向けたのは僕ではなく妖夢さんの方だった。 「ゆ、幽々子、これはその…「まったく、妖夢ッたら油断も隙もないわね」…ひぅ!」 即座に僕の手を離し、凄く動揺しながら幽々子さんに弁解を始める妖夢さん。 しかし、幽々子さんは言い訳など許さないと言わんばかりに一刀両断。 いつもと同じほんわかとした笑顔が今は果てしなく怖い。 「悪かったわね、○○。妖夢が迷惑をかけたみたいで」 得体の知れない恐怖によって妖夢さんが完全硬直した後、 幽々子さんは空恐ろしい笑顔を浮かべながらこちらに謝罪してきた。 それを見ただけで背筋が凍りついてしまう。 「い、いえ、別に気にしてませんから」 「そうはいかないわ。従者の不始末は主人である私の責任なんだから」 「でも、役得もあり…「何か言ったかしら?」…何でもありません」 余計な事をいいかけた僕は即座に謝罪。 半端な発言は死を招くと本能が告げていた。 「とにかく、今回のお詫びは後日必ずさせてもらうから」 幽々子さんは硬直している妖夢さんの首をグワシッ! と掴み、そのまま空へと舞い上がる。 その体勢だと妖夢さんの生命に間違いなく危険が生じるだろうがツッコまない。 僕だって命は惜しいのだ。 そんな事を思っていると、ふと幽々子さんがこちらの方を振り向いた。 「本当なら私が妖夢の後押ししてあげないといけないんだけど、私もまだ諦めたわけじゃないのよね」 「えっ、何をですか?」 「だから○○、今度会ったらゆっくりと良さを教えてあげるわ。期待しててね」 イマイチよく解らない事を言いながら今度こそ飛び去っていく幽々子さん。 最後のは一体どういう意味だったんだろう? 思いがけないハプニングに遭遇した後、僕は改めて人里へと向かっていた。 「やっほ~、○○~」 その道中、何の前触れもなく萃香と遭遇した。 相変わらず昼間から酒を飲んでいるらしく、既に出来上がっているのか顔が真っ赤だ。 でも、何となく酔っ払っているのとは違う気がするのはどうしてだろう? 「やぁ、萃香。こんな所で会うなんて珍しいね」 「実は○○を探してたんだ。一緒に飲もうと思ってね」 人懐っこい感じの笑顔を浮かべた萃香はどこからともなくそれを取り出した。 いつもながら一体どこから出てくるのだろうと思う。 まぁ、そんな疑問はどうでもいい。 今考慮すべきなのは萃香の取り出したそれ……封の切られていない瓶についてなのだから。 「前にも言ったと思うけど、僕じゃ萃香のお酒は飲めないよ」 一応言っておくが、僕はお酒に強い方である。 仕事仲間と飲んだりしたときも酔い潰れるような事はまずない。 だが、それはあくまでも一般的な人間を基準とした場合。 人外の方々、まして幻想郷一の酒豪である萃香など比較にもならないのだ。 それを知らずに過去彼女の用意した酒を飲んだ僕は地獄を見たのだから。 「大丈夫。自分用に持ってきたお酒は別にあるから」 僕の返答は予想済みだったのか、別の瓶を取り出す萃香。 どうやら今回は僕が飲めるお酒を別に用意してくれていたらしい。 萃香にしては珍しく気が利いてるな。 「そういう事なら喜んで付き合うよ。 でも、今から買い物に行かないといけないからその後でいいかい?」 「うん、いいよ」 そう言って両手に持っていた瓶を何処かにしまう萃香。 なんだか今日の萃香はみょん…妙に素直だな。 いつもなら『ダメ! 今すぐ飲む!』とか言って駄々をこねる所なのに。 そんな事を考えている隙に萃香は僕の目の前から消えていた。 「あれ? ちょっ…おっと!」 次の瞬間、背中に大きな何かが圧し掛かってきたような衝撃を受ける。 と言うか考えるまでもなく萃香だ。 いきなりの事に焦ったが、それでも飛び乗ってきた萃香を落とすわけにはいかない。 僕は素早く背中に手を回して彼女を抱えあげる。 「おいおい、いきなり飛び乗ってきたら危ないだろ?」 「えへへ。それじゃあ買い物にしゅっぱ~つ!」 何故か萃香をおんぶする羽目になってしまった。 しかもこのまま人里まで行けと? 確かに萃香はそれほど重くないけど、それでも人里までとなるとかなり距離が……… 「ほらほら、早く行こうよ○○♪」 そんな笑顔で言われたら降りろなんて言えないじゃないか。 オマケにがっちり手を回してきて、意地でも離れないって感じだ。 何がそんなに嬉しいのか解らないけどこのまま行くしかないみたいだな、これは。 「まったくもう、仕方がな……あれ?」 苦笑しながらも了承の意を伝えようとしたその時、背中にかかっていた重さが消える。 驚いて振り向くと、つい今の今おんぶしたばかりの萃香が忽然と姿を消してしまっていた。 「萃香? 何処行った?」 慌てて辺りを見回してみるが、萃香の影も形も見えない。 能力を使って霧になったのかとも思ったが、それにしてはあまりにも不自然。 そもそも萃香は何も言わずに消えてしまうような真似は絶対にしないはず。 あんなに嬉しそうにしてたんだし、尚更だ。 「あら、○○さん。こんにちは」 「え?」 誰かが僕を呼ぶ声。 萃香を探していた僕は反射的にそちらの方を向く。 そこにいたのは萃香ではなく、紅魔館メイド長の咲夜さんだった。 「あっ、咲夜さん。どうも、こんにちは」 レミリアさんの御付である彼女が一人で外出しているのは珍しい。 何か用事でも頼まれたんだろうか? って、妖夢さんの時も同じ事考えてたな。 「こんな所で会うなんて奇遇ですね」 完全で瀟洒という二つ名に相応しい素敵な笑顔の咲夜さん。 その笑顔に流されてつい世間話に興じてしまいそうになるが、萃香の事を思い出し我に返る。 「咲夜さん、萃香を見ませんでした?」 「…あら、どうかなさったんですか?」 ん? 一瞬咲夜さんの顔が強張ったような気がしたけど、気のせいかな? 「実はついさっきまで一緒にいたんですけど、急に何処かに行ってしまったみたいで」 「そうなんですか。○○さんを放っておくなんて、もう本当に生きる価値のない屑なんですね」 「え?」 「そんな薄情な鬼の事なんて忘れてしまった方が○○さんのためですよ」 何だか萃香に対して棘…どころではなく確実に悪意の篭った発言をしている咲夜さん。 前の宴会の時はそんな感じしなかったんだけど、咲夜さんって萃香のこと嫌いなのかな? 「いや、でもそういう訳には……」 「あんなアル中にまで優しく接するなんて、さすがは○○さんです。でも……」 そう言って咲夜さんは何故かこちらに接近してくる。 僕は何となく身の危険を感じて距離を取ろうとするも、気付けば抱きつかれ地面に押し倒されていた。 勢いよく倒れこんだので背中がちょっと痛い。 いや、気にするべきところはそこじゃない。 「あの、咲夜さん?」 「○○さん。今はその優しさを私だけに向けてください」 僕の言葉をスルーして事態をどんどん進めていく咲夜さん。 その表情は先に出会った妖夢さんの見せたそれと酷似していた。 そして彼女は僕の服に手を掛けて素肌を……って、ちょっと?! 「咲夜さん?! いくらなんでもまずいですって!」 「うふふっ、愛する二人の前には些細な事です」 真昼間でいつ人が通るとも知れない道のど真ん中での暴挙の何処が些細な問題ですか! それに愛する2人って何です?! 別に咲夜さんの事は嫌いじゃありませんけど、だからって愛す……違う違う! 問題はそこじゃない! 混乱して冷静さを失うな! 「と、とにかく離れてください!!!」 何とかこの状態を打開せんと必死にもがくが、一向に咲夜さんを引き剥がす事が出来ない。 それどころか咲夜さんはより一層身体を密着させてきており、 これでもかと言わんばかりに女性特有の柔らかさやら何やらを意識させられ続けていた。 やばい、妖夢の比じゃないぞこれは! 「咲夜さん、お願いですから離れてください!」 急速に消滅しつつある理性を必死に奮い立たせる僕。 男として情けないけど、腕力で勝てない以上は何とか言葉で説得するしかない。 「それは無理です。予定とは少々違いましたが、こんなチャンスは滅多にありませんので」 しかし、完全にトリップしている様子の咲夜さんには全く通じなかった。 「予定?! それにチャンスって何ですか?!」 「据え膳食わぬは何とやらです。それではいただ…「○○から離れろッ!」…ッ!」 もはやこれまでと諦めた瞬間の出来事だった。 咲夜さんの欲情にまみれた瞳が一転して鋭さを帯び、いきなり僕の上から飛びのく。 直後に僕の真上を通過していく紅蓮の火の玉。 咲夜さんが離れるのが僅かでも遅ければ、それはきっと彼女に命中していたであろう。 「○○、大丈夫!?」 そして火の玉が飛んできた方を向くと、 そこには僕の(ついでにスレ的な意味の)危機を救って恩人、萃香が立っていた。 「ああ。萃香、ありがと…って、ナイフ刺さってるぞ?!」 が、萃香は僕とは違った意味で危機的な状態だった。 簡単に言うと全身のいたるところにナイフがぶっ刺さっていたのである。 しかしこのナイフ……もしかして、萃香を何処かにやったのは咲夜さん? 「これくらい平気だよ、○○。それにしてもやってくれたな」 そんな僕の心配に笑顔で答える萃香だが、 その顔は咲夜さんを見ると同時にたった一つの感情のみを宿したものへと変化。 ついでに口調まで威圧感たっぷりなものに変わっていた。 「あらあら、せっかく○○さんと二人っきりだったのに。無粋な鬼だこと」 まるで萃香に呼応するかのように咲夜さんの様子もまた変化する。 僕を押し倒していたときの名残など微塵も感じさせない氷のような冷たい表情。 しかしながらその本質は萃香と同じ……すなわち『相手に対する絶対的な怒り』のみ。 「最初に邪魔をしたのはそっちだろう? しかも白昼堂々○○に無理矢理関係を迫るという暴挙。 そんな浅ましい女には○○の傍にいる資格などない」 「あら、自分に色気の欠片もないからと言って僻むのは見苦しいわよ。 貴女じゃ精々、兄にじゃれついてるうっとおしい妹ですものね。 単に成長が足りてないだけのチビ鬼さん?」 「日頃から見栄を張って真実を偽ってるような奴に言われたくないね。虚乳メイド」 「………そう、どうやらお仕置きが必要みたいね」 「………人間風情が調子に乗るなよ」 そこで言葉のやり取りは終わった。 代わりに飛び交い始めるのは大量のナイフと火球、そして弾幕。 加速していく事態は留まるところを知らず、ついに一般人の踏み込める領域を飛び越えてしまった。 「………………早く人里に行こう」 そんな人外の争いを目の前にして僕が事はたった一つ。 自分がいなくなった場合に起こるであろうリスクを無視し、全力で立ち去る事だけだった。 早々に脱出を計り人里へと向かった僕だったが、それから後がまた大変だった。 まるで狙ったかのようなタイミングでチルノやらルーミアやらてゐやら輝夜さんやらと次々に遭遇。 オマケに全員が全員と言うわけではないものの、大半が妖夢さんや咲夜さんのような暴走状態だった。 おかげでここに至るまでに多大なる精神的疲労を負う羽目になってしまった。 「………あぁ、やっぱりお店閉まってる」 それでもどうにか里に到着した僕だったのだが、到着時間は予定よりも大幅に遅れていた。 当然買い物をするはずだった店の営業時間は過ぎ去っており、もはや手遅れ。 無理を言えばお店を空けてもらえるかもしれないが、さすがにそれは気が引ける。 「それにしても、どうやって帰ろう?」 そして目的が果たせなかった事以上に問題なのが帰路だ。 既に時刻は夕方から夜へと差し掛かっており、今人里を出たとしても帰り着くのは真夜中。 妖怪の領域でもある夜間の外出は僕のような一般人にしてみれば死を意味していた。 いくらなんでも自分から妖怪達のご飯になりにいくつもりはない。 「こんばんわ、○○さん」 どうしたものかと途方に暮れていたそんな時、思いもよらない人物から声をかけられた。 四季映姫・ヤマザナドゥ様である。 「どうも、こんばんわ」 反射的に挨拶を返したものの、僕は意外な人物の登場に驚いていた。 閻魔という役職上、常に多忙な日々を送っている映姫様。 そんな映姫様がこんな時間に人里にいるなんて考えもしなかったからだ。 「今日はお仕事はお休みなんですか?」 「ええ。大切な用事が出来たので今日から一週間休みを取ったんです」 映姫様の答えで更に驚く。 あの仕事熱心な映姫様が一週間も休みを取るなんて、余程大切な用事なんだろう。 どんな用事か聞いたら失礼かな。 「ところで○○さん。一つ質問をしてもよろしいですか?」 「えっ? あ、はい、どうぞ」 ん、また随分と唐突だな。 映姫様が僕に質問って一体なんだろう? 「この記事の内容は本当ですか?」 そう言って映姫様が差し出してきたのは今日付けの文々。新聞だった。 その一面にデカデカと掲載されている記事を見て僕は絶句。 『驚愕! 外界人○○さんは貧乳フェチ?!』 見も蓋もないどころか侮辱罪で訴えてもよさそうな見出しで始まっているその記事。 それは驚くべき事に昨日友人としていた会話をさらに脚色したものだった。 しかしどこからこの話を聞きつけたのか知らないけど、いくらなんでもあんまりだ。 大きな胸なんて胸じゃない? 貧乳はステータス? 貧乳こそ究極にして至高の存在? 見出しの段階で既にアレなのに、書かれてる内容なんてまるっきり僕の事変態扱いしてるじゃないか。 しかもこの辺の発言は全部僕じゃなくてアイツなのに…… 「○○さん。それでどうなんですか?」 おっと、悲観してる場合じゃなかった。 今はまず確実に誤解しているであろう映姫様に真実を説明しないと。 万が一肯定でもしようものなら徹夜でお説教されかねない。 「あのですね、映姫様。 率直に言いますとこの記事は射命丸さんが面白おかしく大げさに書き散らしているだけです。 確かに僕がスレンダーな体型の方が好みというのは事実ですが、 だからと言ってここに書かれているような事は断じてありません」 「そんな事はどうでもいいのです。 いえ、本当はどうでもよくないのですが、今は置いておきます。 私が聞いているのはこの記事の一番最後に書かれている一文についてです」 「最後の一文?」 映姫様の言葉を受けて僕は記事の一番最後を見る。 そして再び言葉を失った。 『なお、○○さんは現在恋人募集中。 御本人のコメントとして『僕と付き合ってくれるという人はいつでもどこでも大歓迎!』との事です』 確かに今の僕には恋人なんていないけど、だからってこんな事は一言も言ってないぞ? てかなんだこのアホ丸出しなコメントは。 射命丸さん、僕に何か恨みでもあるんですか? 「これは完全に射命丸さんの捏造です。僕はこんな台詞を口にした覚えなんてありません」 ここは完全に事実無根なのでキッパリと否定しておく。 「そう、なんですか………」 が、僕の答えに何故か落ち込んでしまう映姫様。 そして落ち込んだまま、まるで一縷の望みでもかけているかのような目でこちらを見つめてくる。 「ですが、○○さん自身恋人が欲しいと思っている事は間違いではありませんよね?」 「……それはまぁ、やっぱり恋人は欲しいですよ」 懇願するかのような映姫様にクラッときた僕は、おそらく映姫様が望んでいるであろう答えを返した。 もっともこれは嘘ではない。 何しろ昨日僕と話していたアイツにさえも恋人がいるのだ。 この歳になって独り身なのはいい加減に寂しいというか空しい。 「そうですか。それを聞いて安心しました」 今度は一転して嬉しそうな笑顔になる映姫様。 それにしてもどうして僕の言葉でここまで一喜一憂するんだ? 今日の映姫様はどこかおかしい……ハッ、まさか映姫様まで妖夢さん達みたいに?! 「それでは○○さん、行きましょうか」 いつの間にか僕の腕を掴んでいる映姫様。 マズイ、このまま良からぬ場所にでも連れて行かれたら今度こそ本当にアウトだ!!! 何が何でも断らなければ!!! 「あの、映姫様? お気持ちはありがたいのですが僕はもう家に帰らないといけませんので…」 「はい。ですから私が○○さんのお家まで送っていきますよ」 「……え?」 「この時間だと○○さんお一人で帰るのは危険ですから。あっ、それともご迷惑ですか?」 「い、いえ! そんな事ありませんよ!」 映姫様の厚意を勝手に邪推して変な事を………完全に疑心暗鬼に陥っていたな。 すみません、映姫様。 僕の家に着いたらキチンと謝罪させていただきます。 「それじゃあ映姫様、申し訳ないですけどよろしくお願いします」 「いえいえ、お気になさらないでください。それでは行きますよ」 そんな訳で僕は映姫様に手を引かれ、闇に染まっていく空へと舞い上がった。 何にしても無事に帰りつけそうで良かった良かった。 きっと、そんな暢気な事を考えていた所為だろう。 「そうですよ、○○さん。気にする必要なんて何処にもないんですからね……フフッ………」 映姫様がまるで獲物を捕らえた肉食獣のような笑みでこんな事を口走っていたのに、僕は全く気付かなかった。 ──────── 人里で偶然出会った映姫様の厚意に甘え、僕は自宅へと送って貰っていた。 大切な用事のために休暇を取ったという映姫様に余計な面倒をかけてしまい、 僕は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。 そう、申し訳ない気持ちでいっぱいなのだが……… 「映姫様。一つお聞きしたい事があるんですけど、いいですか?」 どうしても腑に落ちない、というか聞かずにはいられない事がある。 「どうしてこの状態で飛んでるんでしょう?」 それは現在の僕達の状態…というか体勢。 人里から出発した当初はただ手を繋いでいるだけだったのに、 いつの間にやら真正面から抱き合うような格好で空を飛んでいるのだ。 おかげで映姫様の綺麗な顔がすぐ目の前に迫っており、 また映姫様の身体がこれ以上ないほど密着しているため、僕は邪念を鎮めるので大変だった。 「この方が安定するんですよ」 微笑みながらさも当然の事のように言う映姫様だが、 自力で飛ぶ事の出来ない僕でもそれはありえないと思う。 どう考えても手だけ引いてもらっていた時のほうが飛びやすいはずだ。 とは言え送って貰っている以上、映姫様の行動に文句をつけるわけにはいかなかった。 映姫様がそう言うのならばそうなのだろうと納得するしかないのである。 「きゃ♪」 「ッ!!!」 そう、咄嗟に身体を押し付けられたりあわやキスされそうになったとしても耐えるしかないのだ。 「ゴメンなさい○○さん。何だか急にバランスが崩れてしまって♪」 「い、いえ。大丈夫です」 映姫様、そう言いながらも悲鳴とか台詞とかが妙にワザとらしい気がするのは何故ですか? 結局そのままの状態で運ばれる事約三十分。 何とか自宅まで耐え切る事が出来たものの、精神的疲労はピークに達していた。 出来る事なら今すぐにでも布団に入って泥のように眠りたい。 だが、その前にわざわざここまで送ってくれた映姫様にお礼を言わないと。 「映姫様、わざわざ送っていただいてありがとうございました」 「気にしないでください、○○さん」 ああ、映姫様の笑顔が眩しい。 こんなにも温かくて純粋な笑顔の出来る人がワザとあんな事をするはずないじゃないか。 そもそも街で会った時だって、映姫様が他の人みたいに変な暴走してるんじゃないかって勘ぐったし。 僕は心の中で映姫様に対する勝手な想像への謝罪を行った。 「……あれ?」 と、ここで僕は足元のある物に気がついた。 それは僕が外出前に描けておいた南京錠の存在。 その鍵が何故か真っ二つにされた状態で転がっていたのである。 「どうかしましたか?」 「いえ、その……これが」 とりあえずボロボロになったそれを拾い上げ、映姫様にも見せた。 周囲に人が住んでいないため、僕は万が一を考えて必ずこの鍵を掛けてから外出している。 それが壊されていると言う事はつまり、何者かが僕の家に無断で侵入したという事だ。 いや、もしかしたら未だに僕の家の中に居座っている可能性だってある。 「有罪です」 「え?」 そんな感じの説明を終えた後、映姫様のそんな呟きが聞こえてきた。 「○○さんの家に忍び込むなど言語道断ッ! そのような不貞の輩はこの四季映姫・ヤマザナドゥの名において見過ごすわけにいきません!!!」 「え、映姫様? ちょっ、落ち着いてください」 「落ち着け? 落ち着けですって!? 何を言ってるんですか○○さん!!! 誰とも知れぬ者が○○さんの家に不法侵入したのですよ?! これが落ち着いていられるわけ無いじゃないですか!!! ○○さんの家に無断で進入するなど、どんな理由があっても許されません! それにもし家の中を物色でもされていたらどうするんです?! いえ、間違いなく物色されているでしょう。 何しろ○○さんの私物という超激レアアイテムの宝庫、見逃す手はありませんよ!!!」 げ、激レア…何だって? 映姫様の口から物凄く違和感のある単語が……いや、きっと疲れてる所為で聞き間違えたんだ。 そうに違いないという事で納得しておこう。 「あの、映姫様? 僕の私物なんて盗んでもどうしようもないですよ?」 「何を暢気な事を言ってるんです!!! もしも犯人が盗み出した○○さんの私物で善からぬ事をしていたらどうするんです!!! そんな羨ましい事断じて認められません! 私だっていつも我慢しているのに!!!」 あ、あれ? 映姫様がさらにトンでもない事を口走った気が……いや、これもきっと聞き違いだ。 今日の僕はどうしようもないくらいに疲れているし、うん、きっとそうに違いない。 清廉潔白を地でいく映姫様が日頃から変態じみた犯罪行為を妄想しているなんてありえない。 「とにかくまずは犯人に繋がる証拠を見つける事が先決ですね。○○さん、行きますよ」 などと軽く現実逃避している間に家へ突入しようとしている映姫様。 それに気付いた僕は慌てて映姫様を止める。 「映姫様、それは危険ですよ! まだ犯人が家の中に居るかもしれないのに……」 「それこそ好都合と言うものです。 神聖な聖域を汚した屑がどんな目にあうのか、魂の奥深くにまで刻み込んであげます。 安易な死など絶対に与えてやるものですか!!!」 だが、今の映姫様にはそんな制止など無意味だった。 むしろ犯人が居た方がいいとまで言い放つ始末。 それ、絶対に閻魔様が言っていい台詞じゃないですよ。 「○○さんの家に侵入した不届き者!!! 居るのならば出てきなさい!!!」 そうこうしている間に映姫様は玄関の扉を開け放って家内に突入してしまった。 仕方なく覚悟を決めた僕も映姫様の後について自宅へと足を踏み入れると、 「お、お帰りなさいませ、○○さん」 「「………………は?」」 何故か三つ指ついて待機していた妖夢さんを前にして言葉を失ってしまうのだった。 全く予想だにしていなかった人物の登場にしばし放心状態だった僕と映姫様。 妖夢さんの呼びかけで我に返った後、彼女に事情の説明をお願いした。 「……なるほど、そういう事だったんですか」 「お騒がせして申し訳ありませんでした」 正座して深々と頭を下げる妖夢さん。 当たり前だが、南京錠を破壊したのは彼女だった。 その理由を要約すると、 『白玉楼に強制連行された妖夢さんは今日の件で幽々子さんと盛大な喧嘩を繰り広げた。 その後カッとなって勢いのまま家出したものの、行く当てがなかったのでとりあえず僕の家に。 しかし鍵が掛かっていて中に入れなかったのでやむを得ず』 との事。 どうして最後がやむを得ずに繋がるのかはさておき、 入った後は鍵を壊してしまったお詫びに掃除や洗濯などの家事をしてくれていたらしい。 しかし、妖夢さんが幽々子さんと喧嘩するとは驚きだ。 今日の事は2人にとってそんなにも大きな問題だったのか。 「ですが、器物破損と住居不法侵入に変わりはありません」 僕の横で映姫様が無表情で言い放つ。 先程までの興奮状態から一転して氷のように冷たく感じられる映姫様。 自分に向けられているわけではないと解っているのに、一言一言聞く度に反応してしまう。 「映姫様。妖夢さんなら知らない間柄でもないですし、僕はもう気にしてませんから」 「○○さん。罪は罪です」 「でも掃除や洗濯とかの家事をしてくれた訳ですし、それでチャラという事にはなりませんか?」 「………………○○さんがそう言うのでしたら仕方ないですね」 明らかに納得していない感じの映姫様だったが、最終的には僕の意見を尊重してくれた。 「ありがとうございます、映姫様」 「ッ!? べ、別にお礼を言われるような事ではありません」 とりあえず笑顔でお礼を述べると、顔を真っ赤にして思いっきり目を逸らされてしまった。 もしかして照れたのかな? 普段は凛とした雰囲気で格好いいけど、こういう仕草は素直に可愛らしいと思う。 まぁ、可愛いなんて口にすると怒られそうだから実際には言わないけど。 「それでは○○さん、私は夕食の準備をしてきますね」 「あ、僕がやるからいいですよ」 「いえ、後は温めるだけですから。 それに私は今日から居候の身なのですから、お気遣いは無用ですよ」 そう言って台所に向かう妖夢さ……ん、居候の身? ひょっとして妖夢さん、このまま僕の家に住むつもりなのか? 「あの、妖夢さ…「貴女が○○さんの家に住むなど、断じて認めるわけにはいきません!!!」……ん」 僕の台詞を掻き消して妖夢さんに詰め寄る映姫様。 さっきまでの冷徹さが一転し、表で騒いでいた時のように熱を帯びていた。 「これは私と○○さんの問題ですので、別に四季様に認めていただく必要はありません」 しかしながら妖夢さんは怯まない。 幽々子さんが相手だった時とは比べ物にならない程の覇気を放ちながら映姫様と対峙している。 「○○さんの身の安全を考慮した上での至極真っ当な意見です!!!」 「身の安全を考えたのならば、私が一緒に居た方がより効果的だと思いますが?」 「戯言を! 二人きりという状況を利用してか弱い○○さんを襲おうという魂胆が見え見えです!」 「お、襲うなんて破廉恥な事言わないでください!!! 私はただこの機会に既成事実を…」 「同じ事です!!! そんな抜け駆け許しません!!!」 何だか男として情けなくなってくる2人の言い争いだが、この流れは非常に危険だ。 このままヒートアップしていけば間違いなく萃香と咲夜さんの二の舞になってしまう。 この二人に暴れられたら僕の家なんかひとたまりも無いだろうし、それ以前に僕の命が危ない。 「ふ、二人とも冷静に、ね? とにかく落ち着いて話し合いましょうよ」 僕は可能な限りの笑みを浮かべて2人の説得に入る。 結論を先延ばしにするだけのような気もするけど、まずは2人を落ち着かせないと。 「○○さん! ○○さんは同居を認めるというのですか?!」 「○○さん! ○○さんは私に出て行けというんですか?!」 しかし、余計な横槍は自らの死期を早めるだけの結果となってしまった。 二人の矛先が揃って僕の方に向けられ、何の覚悟も出来ぬまま究極の選択を突きつけられてしまう。 「「どうなんですか!? ハッキリしてくださいッ!!!」 どうして僕が責められないといけないんだろう、と心の底から思う。 だが、こうなってしまった以上は理不尽な現実を嘆いても意味が無い。 この状況を切り抜ける返しを考えなくては。 何か無いのか? 全てが丸く収まるようなアイデアは…… 「それなら私達皆で○○の家に泊まればいいんだよ」 「……は?」 えっ、何で萃香がここにいるんだ? 萃香は咲夜さんと殺し合いスレスレの弾幕ごっこをしてたはずでは? ハッ、まさか咲夜さんを亡き者に?! 「全員一緒ならば不用意な抜け駆けは出来ません。 もちろん不満は残りますが、○○さんと一つ屋根の下という状況を考えれば妥協できるレベルです」 あっ、咲夜さん死んでなかったんだ。 よかったよかった……じゃなくて、何で咲夜さんと萃香が揃ってここに?! 全然気配とか感じなかったけど、いつの間に入ってきたんだ?! それに映姫様も妖夢さんもどうして驚いてないんですか?! 「そういう事ならば仕方ありません」 「不本意ですが、ここは引き下がった方が良さそうですね」 すっかりパニックな僕をそっちのけで4人は話を進める。 そして僕が我に返ったとき、僕にとって最悪と言って過言ではない条件で話がまとまっていた。 いや、ひとえに最悪というよりは天国と地獄のせめぎ合いという方が正しいかな。 「そういう訳だからさ、○○。今日は宜しくね~」 「「「宜しくお願いしますね、○○さん」」」 「………………はい」 とにもかくにも、こうして僕の長い夜が始まったのだった。 続く うpろだ1322、1389 ─────────────────────────────────────────────────────────── 話は2時間ほど前に遡る。 永遠亭には現在男性一名が収容されている。入院、ではなく収容である。 その彼が脱走したのだ。 これにたいそう驚いたのが、永遠亭の当主蓬莱山輝夜。 随分彼に良くしてやっていたものだから、逃げるとは夢にも思わなかったのである。 「イナバ、捜索状況はどうなってるの!」 効果音と集中線を伴いながら、輝夜が言う。 「機械化兎兵中隊二個で探索に当たらせています」 「少ないわ、もっと出しなさい!」 「いや、これで全力ですので」 黄昏時に竹林外まで遠征できる兎は少ない。 遠征能力のある兎でも、群れていないと食われる危険性があるので全く安心できない。 「永琳は何処に行ったのかしら、こんなときに」 「師匠は里まで出張しています。もうじき帰ってくると思いますが……」 「うーん、永琳が居ないと発信機が使えないのよね」 「いつの間にそんなの埋め込んでいたんですか……」 ため息をつく輝夜と鈴仙。しかし両者のそれの意味は大分異なるものであった。 「ただいま戻りましたー」 「永琳お帰りなさーい」 作戦会議の最中に永遠亭のブレイン、八意永琳が帰ってきた。 彼女が帰ってきたならもう安心。てゐの能力と合わせてポコロコ永琳となり、きっと彼を見つけてくれるだろう。 「姫、こんなの捕まえました」 「捕まえられました」 その手の中には奴が居た。どうやら早速見つけてきたらしい。 「どうしましょう。拓でも取りますか?」 「とりあえず、真ん中に持っていきましょう」 そう言って輝夜は彼の右手を取る、なので永琳は左手だけを持つ。 「なんていうか捕まったグレイみたいね」 「宇宙人にそんなこと言われるとは思わんかったぜよ」 輝夜の軽口に適当に付き合う。しかし、輝夜はそれ以上は付き合ってこなかった。 「それで、何で脱走なんてしたの?」 「脱走? 誰がそんなことしたんだ?」 全員の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。 脱走したのではない? 「じゃあ何で居なかったの?」 輝夜が聞くと、彼は平然と答えた。 「いや、屋台から竹串の大量注文をもらったんで材料調達に」 そういう彼の右手には鋸と、背中の籠にはぶつ切りにされた竹が入っている。 「ああ、だから竹を選んでいたの」 「なあんだ、じゃあ姫様の早とちりだったんですね」 「あら私としたことが、しくじっちゃったわ」 一同大笑い。これにて大団円と相成りまする。 「……ところでその屋台って妹紅のじゃないわよね」 と言うわけには行かない。瞬時に場が凍り、皆の視線が一点に集中する。 「Oooooops!」 「ごまかそうとするんじゃないの!」 輝夜が頬を引っ掴んで伸ばす。輝夜は常々良く伸びるこの頬を気に入っていた。 「大体なんでそんなことやってるのよ」 「なんでって、シノギをみつけないと里で暮らせないでしょ」 里と言う言葉に、輝夜は更に激昂する。 「里? 何で里に行く必要があるの! ずっとここに居ればいいじゃない!」 「いやいや、いつまでもここで微温湯に浸りながら暮らすって言うわけにも行かないでしょう」 言うと、輝夜は愕然とした表情になる。 「そんな……じゃあここを出て何処にいこうって言うの」 「んー、それほど考えていたわけじゃなかったけど、慧音さんと妹紅さんが世話してくれるって言うからちょっと甘えてみようかと」 「永琳、ちょっと妹紅殺してくるわ。あとお願い」 言うや否や駆け出す輝夜。それにかしこまりましたと答える永琳。 「まあ体も良くなったみたいだし外に帰ってもって、あれ何処行った?」 彼は輝夜の足跡を即座にロストしていた。それだけ輝夜の移動速度が速かったということだ。 「とは言われたものの、どうしようかしら」 「師匠、やっぱりこういうときは再教育じゃないですか?」 「再教育ね、まあ自己反省と総括というのもたまにはいいでしょうね」 ゆっくりとした足取りで、永琳が近づいてくる。それと合わせるように鈴仙も近づいてくる。 「さて、何から反省させてやりましょうか」 「それなら軍隊仕込みのいいのがありますよ。これでもう逃げる気も無くすというのが」 ニヤリと口の端を吊り上げて哂う鈴仙。 「ウドンゲ、ウドンゲ」 それにひらひらと手を振りながら、軽い調子で永琳が言う。 「それは敵前逃亡兵が言う台詞じゃないでしょ」 さすが永遠亭一のSと言われる女。古傷抉りも躊躇が無い。 「大体こういうことなら私に任せておきなさい。オルグもアジもなんでもござれよ」 胸を張って言う永琳。確かにこの手のことは得意だろう。 「でも師匠大丈夫なんですか?」 「あら私のことを信用しないのかしら」 多少不機嫌そうに永琳が言う。鈴仙はそれに物怖じせずに返す。 「だってまだ地上の兎達を思ったより懐柔出来てないじゃないですか。てゐ頼りで」 「それを言われるとちょっとつらいわね」 永琳も兎の統括がてゐなのは事実なので反論はしない。、 「師匠、それに彼をオルグするなら私のほうが適任だと思いませんか?」 鈴仙がスカートを少したくし上げ、その真白い太腿を露にする。 「あらそれはどういう意味かしら」 永琳が腕を組み―無論胸を誇示するためにだ―鈴仙を詰問する。 「率直に言わせてもらえば、師匠はもう古いんですよ。ここは新しい人材に任せてください」 そういう鈴仙も、ネクタイをはずし、シャツの第二ボタンまでをあけている。 「私の何が古いって言うのでしょうねえ」 永琳は目を大きく見開き、まさしく威圧するように鈴仙を見下ろす。 鈴仙も鈴仙で狂気の瞳を常時強力に発動させ、永琳を狂わせようとしている。 永琳も狂気耐性があるが、その精神保護をトンネルするか大出力で破壊して発狂させようという魂胆のようだ。 「まずは今更自己反省とか言っている事ですねえ」 鈴仙は不必要に語尾を延ばし、煽る様に話している。 「あら、肉体オルグなんていうのも十分古いんじゃないかしら?」 永琳も声に十二分の威圧感をこめて鈴仙に言う。 この一声だけでも、一発殴られるよりもよっぽど精神に堪えるのではなかろうか、と言う声色だ。 「どうでしょう。誰がやるかによるんじゃないですか?」 鈴仙はあくまでも視線を外さず、永琳に挑戦的な目つきで言い返す。 「それは私が年寄りだといいたいのかしら? ウドンゲ」 言いながら永琳がゆっくりと傍らにあった鞄に手を伸ばし――そして戦闘が開始された。 「ひでえなこりゃあ」 その言葉のとおり、今永遠栄の一室は台風でも通過したような有様になっている。 主な原因は鈴仙の精神攻撃の余波が物理世界に侵出してきたのと、永琳の直接攻撃だ。 「なんか、今日はみんな性格が変わったみたいだな」 ぼやきながら、とばっちりを食わないように部屋の端のほうに移動する。 さてどうしたものかと辺りを見回していると、ちょいちょいと襖の奥から手招きをする者が居る。 はて誰かねと思い襖を開けると、てゐといくらかの妖怪兎がいた。 「なに、どうしたの?」 「ねえ、ミスティアの屋台にヤツメウナギ食べに行かない?」 てゐからの食事の誘いは奏珍しいことではない。今までもちょくちょく誘われては少しつまみに行っていた。 ただ、そのたいていを奢らされると言うことが問題なのだが。 「ん、そうだな、行くか」 きょろきょろと襖の内側を見て決めた。今ここに自分が居るのはあまりにも危険すぎると言う判断だ。 妖怪兎達も嬉しそうに飛び跳ねる。 「おごりだー」 「おごりだー」 「いや、奢んないって」 妖怪兎達が残念そうに飛び跳ねる。 「おごれー」 「おごれー」 「ああもう、一杯だけだぞ」 「みんな、いっぱい奢ってくれるって」 てゐによって単語の意味を刷りられると、皆から歓声が上がる。 「たくさんじゃないのよ、ひとつだけだって」 「さー行こっかー」 その歓声の意味を打ち消そうと手を振るがなんらの意味は無く、てゐは号令をかけて出発する。 仕方が無い、大した金額にもならないし奢ってやろうと財布を確認する彼。 これがてゐと駆け落ちしたと誤解される2時間前の出来事である。 ──────── Q 目の前に蓬莱山輝夜がいます。どうしますか? A 妹紅が燃やす前に逃げる。 「燃えろー!」 猛火が空気を喰う音と共に輝夜の体から勢いよく火柱が上がる。 妹紅のファイア16を食らって、すぐに輝夜は表面からこんがり炭と化していった。 「更に燃えろー!」 もう一発ファイア16を放つ妹紅。俺はと言うと、すぐ近くで頭を抱えてうずくまっている。 「とどめに燃えろー!」 妹紅がまたファイア16を使う。地面はぐずぐずに融け、あたりには嫌な臭いが広がっている。 周りにあった竹はすでに焼け、影も形も見えない。 それは輝夜も同じ事で、着物は無くなり、体も真っ黒に炭化している。 それを妹紅が蹴りつけると、グスリという音と共にあっけなく輝夜の体だったものは崩れていく。 何度か炭の塊を踏みつけ散らすと、妹紅はこちらを向いて歩いてきた。 なぜこんなことになったのかというと、だ。話は少し前に遡る。 激戦地となった永遠亭を離れ、てゐや妖怪兎と共にヤツメウナギの屋台にやってきた。 そこでは兎達が串の取り合いをした以外何事も無く、おおむね平和なものである。 しかし、その後が拙かった。喧嘩をする輝夜と妹紅に出会ってしまったのだ。 爆音と焦熱から嫌な予感はしていたし、回避行動はとったが、それも間に合わなかった。 そして接触したとき、輝夜は一瞬こちらに気を取られ、その隙を逃さず妹紅は輝夜を燃やした。 それが今の顛末だ。 「大丈夫だったか」 手を差し出しながら妹紅が言う。 危険に晒したのはお前だろうが、という言葉を必死で飲み込んで、妹紅の質問に首を縦に振る。 妖怪兎達は一目散に永遠亭に向かって走り去っており、すでにいない。 ここにいるのは俺とてゐ、妹紅に輝夜だった炭だけだ。 ちりちりと灼ける皮膚を無視しながら、ゆっくり立ち上がる。 「おかげさまで」 精一杯の皮肉を込め返答する。妹紅はそれでも満足そうに頷いた。 「怪我も無いね」 その問いにも頷いて返す。てゐも何事も無いらしい。 ただ、必死に腕を引っ張っているのはここから早く逃げ出したいためだろう。 俺を置いて行かないのは、置いて行ったとき永琳に何をされるか判らないからか。 「それじゃ、うちらは永遠亭に帰りますかね」 手を引っ張るてゐを先導に、一路永遠亭に向かって歩き始める。 そのはずだったのだが熱気にやられたか体がよろけ、地面に膝を着く。 多少驚いたが、頭がふらつくということはないし問題は無いと判断して立ち上がろうとする。 しかし、それを遮る様に妹紅が俺の体を突き飛ばす。 「ふらふらじゃないか! 本当に大丈夫か」 つくづくお前のせいだろうが、と思うが口にはしない。怖いから。 「ちょっと行けば私の家があるから、そこで休んでいこう、なっ!」 言いながら妹紅が俺の体を起こし、抱えようとする。 血走った妹紅のその目は、俺の心に恐怖心を植えつけるのには十分すぎた。 しかし、俺を抱き上げるという妹紅の目論見は成就することは無かった。 「だめよ妹紅、彼は渡さないわ」 ぞくりと背筋が震える。今確かに殺されたはずの輝夜の声は、全く真後ろからした。 輝夜の真白い腕が首に回される。そのか細い指が俺の喉笛を撫で上げる。 「た……確かに今死んだはずじゃあ」 「そうね、一回死んだわ」 そんなことは瑣末事だとでも言いたげな口調で輝夜が言う。 「でも、一回死んだだけなのよ。蓬莱人にはそんなのどうって事ないでしょう」 蓬莱人。そうだ、こいつらは不死化しているんだった。 なのに何で殺しあっているんだろう。無駄なのに。 輝夜は他方の手で妹紅の首を掴んでいる。 対する妹紅は俺が盾になってるために輝夜を燃やせずにいる。 「さよなら、妹紅」 そして妹紅の首元ゼロ距離で、弾幕になるはずだったものが弾けた。 「大丈夫だった? 妹紅に何か変な事されたりしてない?」 輝夜が俺の頭をがくがくと揺さぶる。傍らには首の肉の大半を削ぎ落とされた妹紅の死体が転がっている。 なんでもないと手を振り、肩を掴んで揺するのを止めさせる。 その動作に納得したのかは知らないが、輝夜は無事でよかったとでもい痛げに抱きついてきた。 「それでてゐ、こんなところで何をしていたのかしら?」 抱きついている最中に話と声色のベクトルが180度反転する。 話の矛先が自分に向くと、明らかに動揺した様にてゐは身をすくませた。 「え…、永琳様と鈴仙が喧嘩しているから逃げるついでに食事し痛たたた」 てゐの話を遮ってぎりぎりと輝夜のアイアンクローが炸裂する。 「私を差し置いて二人っきりで食事なんていい度胸してるじゃない」 「いや、他にも幾らか兔がいたぞ」 「あらそうだったの」 言って輝夜はてゐのこめかみから手を離す。 「そう。おかげで財布がすっかり寒くなった」 「なら暖めてあげようか。勿論働いてはもらうけど」 真横から声がする。同時に背中に荷重がかかる。どうやら妹紅が復活したらしい。 「離れなさい、妹紅」 輝夜が冷たい声で言う。 「お前とは話してないだろ。割り込んでくるな」 妹紅が返す。言いながら頬擦りをしているあたり抜け目無い。 「どうする? いつから働く? 別に明日からでもいいよ。もち住み込みで」 ごろごろと甘えた声を出しながら妹紅が言う。輝夜はその間に殺意を充填していた。 「うふふ、妹紅あなたどうあっても邪魔をしたいようね」 大量の殺気を振りまきながら輝夜が言う。 妹紅はそれをちらりと見ると、また俺の頬に頬擦りしてきた。 「いいから離れなさい! 邪魔そうでしょ」 「邪魔なのはお前のほうだろ」 返す返す言うが、俺は前から輝夜に、後ろから妹紅に抱きつかれている。 つまりは怒鳴り声がステレオで聞こえてくるということだ。 「あー、喧嘩するなら離れてくれ」 堪り兼ねてそう言うと輝夜と妹紅は素直に俺を放し、少し離れたところで相対した。 「妹紅、率直に聞いておくわ。あなた彼のことどう思ってるの?」 「明日にでも祝言を挙げたいと思ってる。お前はどうなんだ」 「すでに婚姻届にサインしてスタンバイしているわ」 そして二人でため息をつく。 「つまり私達は恋のライバルということね」 「そういうことだ。嬉しいな、殺しあう理由がまた増えたぞ」 息を整えるように一拍置くと、二人息を揃えたように叫んだ。 「人の恋路を邪魔する奴は!」 「馬に蹴られて死んじまえ!」 両者共に左足を前に出し大見得を切る。つかお前ら仲いいんじゃねえか。 「でもここに馬はいないので!」 「代わりにあんただ!」 『上白沢慧音!』 「誰が牛か!」 言うや否や妹紅の頭に強烈な手刀が振り落とされる。 憐れ妹紅は死んでしまった。しかし即座にリザレクションした。 「お前達はパンピーのいる前で何をやっているんだ!」 「恋の鞘当て?」 輝夜が小首をかしげながら答える。 その仕草が癇に障ったのか慧音は握り締めた拳を震えさせると、やがて諦めたように言った。 「もういい、奴はうちで預かる」 「ちょっと彼は永遠亭預かりよ。何勝手に決めてるのよ!」 「慧音、今日から泊まってっていい?」 三者三様のいいざまだが、その実俺は何処に居るなどと決めた覚えはない。 成る程、ということは連中の言う奴は別のところにいるんだろうなあ、と適当に現実逃避をしてみる。 「駄目だ。二人とも近寄っちゃならん。里に定着させる」 「何を言ってるのよ。彼はこのまま永遠亭で暮らすのよ」 「人間なんだから、人里で暮らすのが道理だろう」 ここまで何かを考え込んでいた妹紅が口を開く。 「じゃあ何で私も駄目なんだ?」 「なんとなく」 そのあまりといえばあんまりな答えに一同絶句する。 しばしの沈黙の後、妹紅がため息交じりに言う。 「幾ら慧音の言うことでも、こればっかりは受け入れられないな」 「ならどうするんだ、妹紅」 「当然、実力行使だ」 身構えながら妹紅が言う。同様に輝夜も戦闘態勢をとる。 すると慧音は腕組みをし、二人を傲慢に見下ろす構えを取った。 その戦いには似つかわしくない構えに二人とも攻撃するのを躊躇し、しばし様子を見る。 先に動いたのは妹紅だった。動かなければどうにもならないとでも思ったのだろうか、強力な火炎を放る。 それはすぐに慧音までの地面を舐めつくし、慧音もそれに飲まれるように見えた。しかし、 グ レ ー ト ホ ー ン 『!?』 二人が驚いたのも無理はない。なにせ慧音が何もしていないのに独りでに妹紅の火の鳥が消え失せたのだ。 「その程度で、この私が倒せるとでも思ったのか!!」 その迫力に気圧される様にじりじりと後ろに下がる輝夜と妹紅。しかし意を決したようにまたも妹紅が飛び掛る。 「明日の屋台には牛串焼きも並べてやる!」 こうして戦いの火蓋は切って落とされた。 「……もう無茶苦茶だな」 「今のうちに永遠亭に帰るウサ」 てゐが俺の腕を必死の形相で引く。 俺もそれに逆らわず、てゐに従って歩き始めた。 てゐとの駆け落ち疑惑まであと30分の時の事だ。 うpろだ1387、1397 ─────────────────────────────────────────────────────────── 荒れ果てた永遠亭の一室に佇む女が二人。 両者とも荒く息をつき、その息がこの惨状を作ったのが誰であるかを物語る。 「ところで師匠、てゐは何処に行ったんでしょうね」 片方の女、鈴仙が目を見開きながら言う。 「さあ、そこいらにでも隠れているんじゃないかしら」 他方の女、褐色瓶を持った永琳が答える。 「でもあの人もいないんですよね」 「あらあの人だなんて随分親しそうな呼び方じゃない」 露骨に怒りを浮かべながら鈴仙の言に永琳が返した、と思っていると直ちに永琳は平静な顔に戻る。 それにつられて鈴仙も落ち着いた表情に戻った。 「でも本当に何処に行ったんでしょ。部屋で不貞寝でもしてるのかしら」 「それより外に出ていたら大変じゃないですか?」 「大丈夫よ、一応武装はさせてるから」 鈴仙はあまり結び付けたく無い事柄を言う。 「でもそれがてゐとだったら?」 「前言撤回。ウドンゲ、発信機の座標を逐次送信するからそこに向かいなさい」 「了解。直ちに現場に急行します」 永琳の決定は迅速だった。鈴仙もその決定に即座に従う。 かくして保護・捕縛作戦が開始された。 永遠亭へと続く竹林の道を、てゐと二人歩く。 「大丈夫かな、永遠亭に戻って」 きょろきょろと辺りを見回しながら言う。 「もう二人とも落ち着いてると思うよ」 てゐは随分と冷静なもので、涼しげな顔をしている。 永遠亭の門扉まで来たが、爆音轟音は聞こえず静寂としている。 「確かに、もう大丈夫なのかな」 「そうそう。そんな鈴仙がいつまでも対抗できないって」 楽観的にてゐが言う。 「今日は散々な目にあったな。風呂でも入って早く寝るか」 「その前に姫様のこと言わないとダメだよ」 それもあったかと思って、気が重くなる。 いくら向こうも共闘していないとはいえ、それでも全員等しく二対一なのだ。 たぶん何か言われるんだろうなあと思いながら、俺は永遠亭の門をくぐった。 永琳がどこかの部屋に行き、程なくして一つの大きな箱を持ってきた。 中に入っているのは受信機一式だという。 「それで師匠、何処に行けばいいんでしょうか」 ヘッドマウントディスプレイとインカムを装備した鈴仙が尋ねる。 永琳が答える代わりに、操作説明を行う。 「まずHMDの中央に光点が見える? それがあなたよ」 「はい、見えます」 鈴仙が問いかけに答える。 「それで、そのほかの光点が大きな生命体。赤い光点が目標、つまりは彼よ」 「えー、はい判りました。じゃあ少し離れたところにある光点が師匠なんですね」 「そのとおり。それじゃ行ってらっしゃい。いい報告を頼むわ」 そう言って永琳は鈴仙を送り出す。 そのとき鈴仙が気付いた。 「師匠、赤い光点があります」 「本当ね、近づいてきてるわ」 モニタの倍率を操作しながら、永琳が言う。 「もうじき敷地の中に入ってくるわね。迎えに行きましょうか」 「そうですね。これ外しちゃいます」 そう言って鈴仙がヘルメットを取り、救急箱を取る。 「あら用意がいいわね」 永琳がそれを見て言う。 「ええ、四部屋に一箱常備してるんです」 何かあったら大変ですから、と鈴仙。 「いい心がけね、それじゃあ行きましょう」 白衣を着ながら、隣のふすまから出てきた鈴仙と合流し永琳が言う。 「師匠、その白衣何か入ってるんですか? 妙に重そうですけど」 その問いに、永琳は得意げな顔をするとおもむろに裾を翻す。 するとブラックジャックよろしく、裏地にぶら下がっている注射器が露になる。 「師匠、その薬は何なんですか?」 冷や汗を書きながら鈴仙が言い、永琳が答える。 「国士無双の薬四積みよ。ほかにも賦活再生薬があるわ」 その異常な装備に、鈴仙は何も言えなかった。 「静かすぎるな」 それが敷地に入っての第一声であった。 あんまりにも静かすぎる。普段ならもっと兎達の騒ぎ声が聞こえてもいいのだ。 だのに今は何の音もしない。まるで墓場だ。てゐも黙りこくってしまっている。 「!」 不意に何処からか足音が聞こえた。周囲を見回すが、特に何も見当たらない。 てゐも怖がったのか、背中に隠れてしまった。 周辺警戒を厳にして徐々に玄関口に近づいていくと、足音が止んだ。 怪しんで進行をとめると、突然に永琳と鈴仙が現れた。 「じゃじゃーん」 妙な効果音付きで。 消えていたのは鈴仙の波長変化なのだろうが、この永琳のはしゃぎようは何なんだろうか。 「おかえりなさい」 あんまりにもあんまりな登場に驚きを隠せなかったが、もうまともになっている。 それに少し安心しながら、ただいまと返す。 何処に行っていたのかと聞かれて、屋台に呑みにと答える。 ここで呑めばいいじゃないと言われたが、ドンパチやってる横じゃ呑めないというと反省したようだ。 「あれ、でもあなた一人で呑みに行ってたの? 迷わなかった?」 「いや、てゐもいるよ」 言って後ろに隠れているてゐに出てくるよう促す。 おずおずと出てくるてゐの姿を目にすると、永琳と鈴仙の目の色が変わった。 「そう。ところでてゐ、あなたは何をしていたのかしら」 ぎりぎりと本日二度目のアイアンクローを永琳から貰うてゐ。 てゐがタップして降参の意を示すと、永琳は手を緩めた。 「それで何処に行っていたのかしら、二人っきりで」 あくまでも緩めただけで、頭から手は離さない。つまりは返答次第ではいつでも握り潰せるという事だ。 「一緒にミスティアの所に飲みに、二人じゃなくてほかにも幾らか痛た痛いぃぃぃ」 「いや、その辺で。輝夜にもやられてるから」 「あらそう……今姫は何処にいるのかしら?」 やはり頭から手を離さずに、永琳が聞いてくる。 「向こうで、輝夜妹紅慧音で正真正銘デスマッチやってる」 「仕方が無いわねえ。ウドンゲ、ちょっと姫を連れ戻してきてくれる」 「はい、わかりました。……ところで何処にいるんです?」 「向こうって言ってたじゃない」 鈴仙の疑問は真っ当なものだ。そんなもので居場所が通じれば苦労しない。 「いや、向こうとだけじゃあ。ちょっと案内してくれますか」 「多分近づいたら爆音がするはずだから判るわよ。いってらっしゃい」 「小康状態になっていたら判らないじゃあないですか。案内は必要です」 また永琳と鈴仙が小競り合いを始める。きな臭いことになる前に俺はてゐを回収して家に入った。 部屋に戻り、洗面用具や着替えを用意していると、徐々に辺りが騒がしくなってきた。 屋敷の一部に荒れがあったので戦闘があったようだが、そのせいで兎達が引っ込んでいたらしい。 今は戦闘も収まり、安心したようで皆普段の平穏無事を取り戻している。 活気があるのはいいことだ、と思いながら風呂に向かった。 この風呂は時間によって男女用に分かれる。今の時間なら男向けだ。 服を脱いで風呂場に入り、体を洗って湯につかる。 もうじき男女切り替わる時間なので早いところ上がらないといけない。 「畜生、今日は疲れたなあ」 思っていた事が思わず口から出てしまう。年寄りくさいとは思うが仕方が無い。 腕だけで体を支え、全身を湯に浮かべる。他に誰かいればこんなことは出来ない、一人だから出来る芸当だ。 「今日はなんだったって言うんだいったい」 ぼやいても一人。淋しいが人に聞かせられる話でもない。 適当に一人で遊んでいると衣擦れの音が聞こえてくる。 あれもう時間かと思うまもなく、からからと戸が開き誰かが入ってきた。 その人物はまだ俺がいることに驚いた声を上げることも無く、体と髪を洗っている。 俺はそれを誰何もせずにただ見守る。無視というほうが近いかもしれない。 どうやら体を洗い終わったようで、蛇口から水の出る音が消えると湯船に近づき、入ってきた。 「……恥ずかしがったりしないのね」 少し離れたところに入ってから数分後、話しかけてくる。その声と髪の色から永琳だと判った。 彼女は拍子抜けをした様な、期待外れだったとでも言いたげな様な声で言う。 「眼鏡外してると碌に見えないし」 視力0.1を切ると顔なんてまるで見えない。加えて湯気と湯の色もあるので体つきもほぼ見えないと言っていい。 色で誰かいるかの判断はできるが、それ以上の情報は目だけでは大分接近しないと得られない。 「そう、それじゃあこうすれば恥ずかしがったりするのかしら」 言いながら背中に密着してくる永琳。 「うんにゃ、気持ちいいとは思うが、恥ずかしいとは思わんねえ」 「ならずっとこうしていようかしら」 「まあのぼせないうちは構いやせんよ」 そう言ってやると、永琳は抱きつく腕にさらに力を込めてくる。 気にはしないが、こそばゆいのはどうにかならんかなあと思いながらされるがままになっていた。 多少経ってからまたからからと戸の開く音がして、誰かが入ってくる気配がした。 「あれ師匠、こんなところで何やってるんですか?」 入ってきたのは鈴仙であった。彼女は真っ黒い何かを右腕に抱えている。 訝しんだのは永琳も同じで、彼女に対して問いかけている。 「ウドンゲこそ何してるの? 今は男用の時間よね」 「姫をお湯で戻しにきたんです」 「……姫を? あら本当干からびてるわ」 何を言ってるんだろうかこいつらは。見えないのが非常にもどかしい。 「大浴場で戻すわけにはいきませんし、こっちに来たんです」 「まあしょうがないわねえ。本当は水から戻したいのだけど」 永琳がため息をつきながら言う。 「大鍋に入れるって言うわけにもいきませんから」 「そうね。姫が入ってたらみんなびっくりするわ」 いってけらけら笑う二人。取り残される俺。 そして着物を着たまま湯に投入される輝夜。なんとカオスな。 輝夜を放り込むと鈴仙はすぐに風呂場を出て行った。 混浴に慣れていないのだろうか。初心な奴め。 「はー、生き返るわあ、文字通り」 湯に漬けること数分、輝夜が復活した。その暢気な様に俺は頭を抱える。 「どうしたの? そんな顔して」 「蓬莱人って死んでる間も意識があるの?」 浮かんできた疑問を投げつけるとすぐに返事が返ってきた。 「あるわけ無いじゃない、死んでるんだから」 「そうそう。なんでそんなこと聞くの」 「いや、なんだか随分都合よく生き返るんだなあと思って」 俺の疑問に輝夜が答える。 「生き返りやすくなるときはあるわ、状況によって」 「状況ねえ」 半信半疑といった体で俺が言うと輝夜が続ける。 「そう、精神寄りの存在になってるから生き返りやすいな、って言うときに生き返りやすいのよ」 更に永琳も続ける。 「詳しいこと知りたい? それなら後で部屋に来なさい。準備して待ってるわ」 「あら永琳、手伝ったほうがいい? 一人で大丈夫?」 輝夜の提案に永琳は迷い無く答える。 「そうねえ、出来れば姫も一緒でお願いします」 どうにも二人何をしたいのか通じ合っているようだが、それがなにかが判らない。 とはいえまあ、問題というのは他の所にもありそうで。 「じゃあお風呂から上がったら永琳の部屋まで来てね。来なきゃダメよ」 あれよという間に俺のこの次の行動が決定させられてしまった。暇だからいいんだが。 輝夜がツツと近寄って来る。 「じゃあ上がるまでは」 近寄りながら言って来る。 「永琳みたいにさせてもらうわね」 そう言って座ってる膝の上に乗ってきた。 「輝夜、重い。着物重い」 言うと前と背中の両方から打撃が来る。 「女の子にそんなこと言わないの」 永琳が言い、 「じゃあ脱いだ方がよかった?」 輝夜が言う。 「いや脱がないでもいいよ」 生地が痛みそうだがどうなるんだろうか、と思うが俺の関与することでもない。 「そう、それじゃ抱きしめて頂戴、永琳がやってるみたいに」 言われるがままに輝夜の腰に腕を回し、力を込めてやる。 着物越しにも判る華奢な腰周りに少し驚いていると、輝夜が嬉しそうに言った。 「そうそう、ずっとそうしててね。いいって言うまで」 少しして輝夜が頭をこちらに預けて、目を閉じた。 永琳は仕方が無いという風な顔をすると、俺の体から手を離し輝夜の腰に手を回す。 そうして俺がのぼせるまで、永琳と二人で輝夜を抱きしめていた。 うpろだ1429 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「永琳、○○が欲しいわ」 月の姫様は無理難題を仰る。 また始まった、と彼女は溜め息をついた。 「彼に会いたいなら、また連れてくればいいじゃない。いつものように問答無用で」 「手元に置いて、問答を愉しみたいのよ。ずっと。十日に一度は貸してあげるから」 「まったく冗談ばかり。……二日に一度」 「彼から習ったの。週一」 「その割には面白くありません。……週に三日」 「貴女ほどじゃないわ。……週一」 貸し出し交渉に粘るその身は一見、主従ともどもケチ臭いことこの上ないがしかし。 「……わかりました。では最初の五日間は姫の日。残りは私ということで」 「ふーん、5―2か。まあいいわ。たまにはイナバ達にも貸したげなさいね」 「御意に」 流石は月の頭脳、といったところか。 その後、人里から○○という男の姿が消えたのが次の日のこと。 さらにその後、輝夜が散々に彼を弄くり弄び味わいつくして、たまに弄られ五日間。 そのまた後日、永琳が良きこと良からぬことを、愉しみ愉しまれ愉しみ合い二日間。 その次の日、彼女は漸く騙されたことに気がついた。 「えーりん! 謀ったわねえーりん!」 輝夜は最初の五日間、彼を手にする。 そして永琳は残り。 だが彼女は、決して一週間のうち五日とは言っていないのだ。 足音も荒く踏み込んだ輝夜。 そこにはやたらに艶々とした部屋の主がいるだけで。 「○○は何処! さっさと出しなさい!」 両手には何やら得体の知れない道具の数々。 二日の充電期間(彼女は当初そう受け取った)の間に彼と愉しもうと準備した小道具である。 「○○でしたら、姫の下知の通り。今日は因幡たちに貸し与えていますわ」 「くっ……」 しれっと永琳はのたまう。 己の発言全てを手玉に取られ、彼女は。 「──くケええぇぇぇ!!」 それはもう、凄いことになった。 鈴仙・優曇華院・イナバは帰路を急いでいた。 師に命じられた使いを漸く済ませたところだった。 「うぅ、なんで今日に限って……」 今日は○○がイナバ達に貸し与えられた日だというのに。 ○○が永遠亭に引っ越し(ということになっている)て一週間。 輝夜と永琳の相手ばかりさせられていて、彼女らは挨拶一つろくに出来やしない。 せっかくの機会、だというのに。 朝方、貸出許可を告げられた彼女は同時にこうも宣告された。 『ウドンゲ、貴女は人里までお使いね』 波は一気に急転直下。 彼女は気づいているだろうか。 彼と逢えると言われた時の己が目に浮かんだ悦びに。 それを見て取った師の目に潜む粘ついた輝きに。 恐らく気づいてはいない、彼女は少し迂闊だった。 「ああ! もう夕方じゃない」 すでに半日が過ぎようとしている。 べそをかきながら、鬼気迫る勢いで仕事を終わらせた彼女ではあるが、それでも出遅れは如何ともし難い。 許された一日の、半分しか彼と一緒にいられない。 「……待てよ?」 しかしここでふと思いついた。 自分は今日の今まで大変に厳しい仕事をやらされている。 だというのに、その報酬ともいえる時間が半分とは余りにも酷い話だ。 その半分、イナバ全員に与えられた筈の時間。 その残り全部を自分が独占してもいい、いやそうするべきではないか? 「……うん、そうよね。私、苦労したし、頑張ったし」 イナバのなかでは一番偉いんだし。 それぐらいは許されて然るべき、寧ろそうするのが自然じゃないか? 残りの半日、つまり今夜は○○を独占。 その権利はある筈。 「うわ、うわ、どうしよ。夜に、○○と――」 二人っきり。 ちょっと遅めの夕餉を食べて、○○の背中を流して。 それから、それから。 夜で、一晩中なんだから。 一緒の布団に……。 「うわ、うわ、うわぁ――」 想像するだけで頬が火照った。 首まで瞳と同じ色に染まる。 どうしよう、恥ずかしい、けど。 でもそれは凄く、かなり――イイ。 もはや彼女の中では確定事項となったそのアイディアに後押しされ、弾むような足取り。 そのおかげもあってか夕日が沈む前に、彼女は永遠亭に到着した。 「只今もどりましたー、っと」 浮かれた兎、夢みて跳ねる。 その目は月など見ていない。 「あ、姫様。○○見ません、でした、か……」 少し注意してみれば察しはついたはずだ。 偶然通りかかった輝夜の、鬼気迫る様子が。 今、彼女の前でその名前を出すのがどれだけ危険なことなのか。 しかし残念ながら、彼女は少々迂闊に過ぎた。 「○○……」 「え、ちょ、姫様? 顔とかが怖いですよ?」 「○○を出しなさい」 「いや、私も見ての通り今帰って……」 「○○は何処だーーーー!!」 「ぴぎゃーーーー!!」 同刻、永遠亭の一室。 そこにはイナバがみっしりと詰まっていた。 その中心に男、○○がいる。 人型をとったもの、兎の姿のままのもの。 それら全てに枕か布団代わりにされて彼は埋もれていた。 朝からずっと食事中でさえも遊び構い続けて、漸く人心地ついた所なのだ。 イナバ達も大半が遊び疲れて眠ったり、あるいは静かに寛いでいる。 「……いま、鈴仙の悲鳴が聞こえたような」 「いつものことだよ」 流石に息苦しいのかややくぐもった声。 それに答えたのは彼が枕代わりにしているものからだった。 イナバ達皆が彼に身体を貸りている中で彼女、てゐだけは彼に膝を貸していた。 所謂、ひざまくらという体勢である。 「……それもどうかと思うけどね」 とは言うものの彼も助けに行こうとはしない。 以前の経験とそしてこの一週間で、永遠亭の日常と役割は概ね把握できるようにはなった。 そこに自分が入るとは、思いもよらなかったろうが。 「○○は、さ――」 「うん?」 ぽつりと、膝の上の顔を撫でながらてゐは呟いた。 凡庸な、取るに足らない人間の男の顔。今は。 「○○は、しあわせ?」 「んー……」 只の人間の癖にホイホイ誘いに乗って、やって来たは永遠亭。 そこで毎日毎日、輝夜の相手やら永琳の実験やらに付き合わされて。 今日だって動けなくなるまでイナバに引っ張りまわされて。 「輝夜の相手は楽しいし、永琳もあんまり無茶はしないし。鈴仙の愚痴だって酒の肴になる。 酒は旨いしメシも美味い。なんでこんなにも待遇がいいのか不思議だけど、それでもまあ――」 割としあわせだと、彼は笑った。 「それにてゐもいるし」 「……ふん、だ」 彼女の能力が故か、いやそれとも。 問い詰めれば聞きだせるだろう。 しかし、胸の上に乗せたイナバに引っ張られて「ああ、みんなもいるしな」などとニヤける彼に聞くのは癪だった。 そっぽを向いて紛らわすものの、その頬が僅かに赤いのはご愛嬌。 「馬鹿正直な人間は、嫌い」 「嘘吐きな兎は、大好きだな」 「~~~~っ!」 こんな風なことばかり言うから、彼女は彼が大嫌いだった。 ずんずんと近づいてくるプレッシャー。 殺気を感じ取り逃げ出すイナバ達に続いたてゐは、振り返っても一度だけ訊ねた。 「本当に、ほんとーに、しあわせ?」 「これから起こるだろう不幸が恐ろしく思えるくらいには、しあわせだよ」 ○○ただ一人となった部屋の前。 足音が、止まる。 襖が、開け放たれる。 「こぉこかあ~~~~っ!!」 一歩間違えれば死合わせだけど。 隣にあなたがいるから、まあ、倖せ。 結局、騒動の末に正式なローテーションが組まれることとなった。 輝夜が3、永琳が3、因幡に1の七日間を繰り返し。 ただし独占権は夕餉の後から次の日の朝餉までに限られる(それ以外はあくまで優先権)。 「なあ永琳、俺に休みは? 安息の日は?」 「あら、面白いこと聞くのね○○は」 「あの師匠、イナバの日に決まって私に仕事が入ってるのは?」 「あら、面白いこと聞くのねウドンゲも」 「判りきっていることに、答える必要があって?」 「……ですよねー」 うpろだ1438 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「なぁ、巫女って昔は情婦の役割だったってホントかな?」 「いきなり脈絡のないこと言いだすわね」 「だって二人の巫女さんが並んでるから何故かそんな記憶が呼び覚まされたんだい」 まぁ我ながらおかしなこと言ってるとは思うけどさ。 「でもそれはでキリスト教に因って迫害された中世の魔女ってことだったと思いますが……」 「……うちの神社には似たような変な決まりがあるけどね」 そう言って霊夢は早苗さんに巻物を手渡した。 「なんですかこれ? お賽銭の金額による巫女のおもてなし……二千円、参拝者にお茶を振舞う……二千五百円、参拝者に食事を振舞う……ふぇっ!? いいい、一万以上はっ!?」 「まぁ滅多にお賽銭なんて入れる奴なんていないから忘れていたわよ。実際蔵の中で埃被っていたし」 「はぁ……ま、いいじゃないですかこんな変なことしないで済んでいるんですから」 しかし霊夢は早苗さんの言葉を受けジト目で俺の方を見た。 「ここに十万叩き込んだバカがいるけどね」 「えええっ!? ○○さん本当ですかっ!?」 「えーと本当だけど早苗さん、俺の名誉のために言っておくがそんな掟俺知らなかったからね。知ってたらやらなかったし」 神社に居候させてもらっている身としては世話になっている霊夢に生活費ってことで里で手伝いして貰った給金を渡そうとしたんだが お賽銭として入っていたら霊夢喜ぶだろうなって思ったのが間違いだった。 賽銭箱にお金を入れて霊夢を呼んで中を確認させたその晩霊夢に神社の奥の部屋に連れていかれて部屋の中のもの見せられて絶句したし。 「ででで、そのまさか……」 「そう、そのまさかよ」 あっさり肯定すんな。 だってさすがにそんな無体なこと出来なかったけどせめて一万円分のおもてなしをさせろって聞かないし 最終的には軽く涙目で首輪つきの霊夢が『私なんかじゃ抱く気になれない……?』なんて言われたらさぁ、逃げる訳にもいかんだろ。女の子にそこまで言わせて逃げたらヘタレだ、ヘタレ。 そういう訳で俺と霊夢はその晩大人の階段を昇ったのだ。 「……ううう」 呻き声をあげてる早苗さんは勢いよく縁側から立ち上がるとズビシッて霊夢に指を突きつけた。 「じ、常識で考えてはいけません! お二人が、に、肉体関係を持ったとしても相性が合わなくて別れる人はいるんですっ!」 「あら、相性は良いみたいよ、私たち。お互い初めてでも○○はやさしくしてくれたし、果てる時はいつも一緒だし。一昨日も、ね?」 こっちに振るなよ。どう答えていいか困るじゃないか。 でも確かにシてる時の霊夢はかわいいし優しくしてあげたくなるし、未だに果てた時の表情が瞼に焼きついている。 確かに相性はバツグンだ。 「うううううう~……」 あー早苗さん涙目だよ。やっぱりこういう話苦手なんだろうか? そう思っていると後ろから声が聞こえた。 「あーやっぱり霊夢に先越されたか」 「あーうー、早苗は奥手すぎるんだよ」 「ふふふ、賭けは私の勝ちだね。ほら早く賭け金出しな」 いつの間にやって来たのか神奈子と諏訪子、それにもう一人緑髪の魔法使いみたいな恰好の人がいた。……だれ? 「あーこうやって姿を現すのは初めてか。私は魅魔。この神社の祟り神みたいなもんさ。よろしく○○」 「ああ、よろしく……」 「み~ま~! あんた急に出てきたと思ったら賭けごとなんかしてるんじゃないわよ!」 怒る霊夢を余所に神様達はまた賭けの話をしていた。 「じゃあ今度は○○が誰を娶るか賭けようじゃないか」 「いいよ~。私はまた早苗にする。とりあえず一万!」 「私も早苗にだね。五万」 「か、神奈子様に諏訪子様! 勝手に賭けの対象にしないでください!」 そこに魅魔様がとんでもない爆弾を落としてきた。 「……そういえば娶るなら一人だけじゃなくてもいいんじゃないか? そこの早苗って娘が言っていたじゃないか。常識に囚われるなって」 「……そうだね。昔は長が何人もの女性を抱えていたし」 「あーそういえばそうだったね」 マズい。話がヤバい方向に進んでいる。俺はこの場から逃げ出そうとしたが勘付かれていたらしく神奈子と魅魔にしっかり取り押さえられた。 「ふふふ、なら私も参戦させてもらうかね。久しぶりの若い男だ。たっぷり可愛がってあげるよ」 「あ、あのな、実を言うとそんなに経験はないんだ。やさしくしてくれな?」 「ちょ、二人とも本気ですか?」 「「ああ」」 ああ、俺の貞操の危機。他の三人に助けを求めようとしたら、霊夢も早苗さんも、ケロちゃんまで本気で俺を食べる気でいた。 俺を助けてくる神も仏もいないのか……。ここにいる神はみんな敵だし。 「ふふふ……私の舌使いは凄いよ~何分持つかな~」 「あ、あの○○さんっ! ふつつかものですがよろしくお願いしますっ!」 「……○○、私以外にイカせられたら許さないからね」 原人に狩られたマンモスのように五人に抱え上げられて神社の奥の部屋にドナドナされていく俺。 ……どこで選択肢を間違えたのだろうか? いや、たぶん最初からこうなる運命だったんだろうなぁ……。 はぁ、紫からもらったエビ○ス錠まだ残っていたかな……。 うpろだ1482 ─────────────────────────────────────────────────────────── ロリっ紅魔郷 1.ぷろろーぐ 「あれ、留守か」 博麗神社の石段を登り、ようやく社の前に着いた俺は、肩透かしをくらった気分だった。 外の世界から来てから世話になっているし、たまにはおすそ分けでもと里でもらった西瓜を持ってやってきたのだが、肝心の霊夢がいない。 いつもここにいてまったりとお茶を飲んでいる霊夢が、今日に限っていないとは、ついていない。 「しかし霊夢が留守なんて珍しいな……ん?」 向こうから何かが空を飛んでくる。豆粒のように見えたそれはあっという間に大きくなり、見慣れた魔理沙の姿になった。 「よう、○○じゃないか」 急ブレーキで止まった魔理沙は、こちらを向いて声をかけてくる。 「お、魔理沙。霊夢なら留守だぞ」 「知ってるぜ。さっきまで一緒だったからな」 「へえ。霊夢が出かけてるなんて珍しいけど、どこ行ってたんだ」 「……霊夢が異変の解決に行くって言うから、紅魔館までついていったんだけどな」 なるほど、異変の解決か。聞いたところでは他の誰も代わることのできない、博麗の巫女の務めだというけれど。 「そうか。じゃあ何日か帰ってこないんだな」 「いや、私の方が速かっただけで、すぐに後から来るぜ」 もう解決したのだろうか。だとしたらさすがだ。 それにしてもさっきから魔理沙は何かにうんざりしたような表情をしているが、そんなにすごい異変だったのだろうか? そうこうしている内に、霊夢が帰ってきた。 「ただいま。……あら、○○じゃない。ちょうど良かったわ」 こちらも疲れきった顔で飛んできた霊夢は、俺に気付くとおもむろに近づいてきた。 「ちょうど良かったって、何が」 「貴方、私の代わりに紅魔館行って異変を解決してきなさい」 「異変を……ってえええええええっ!?」 何を言い出すかと思えば、いきなりそんな。 「何で俺なんだ。それって霊夢の仕事だろう?」 「私じゃ無理だわ。その点、○○はこの異変に向いてるし」 「そうだな。お前向きの異変だぜ」 口をそろえて言う紅白巫女と白黒の魔法使い。俺向きの異変ってどういうことだ? 「魔理沙、湖まで送ってあげなさいよ」 「そうだな。暗くならない内に出発するか」 「ちょっと待て、俺はまだ引き受けるとは」 「あ、その西瓜は置いていきなさいね。魔理沙が戻ったら二人でいただいておくわ」 そう言って、俺の手から西瓜を持っていく。 この状況に抗議しようとする俺を、魔理沙が半ば無理やり箒の後ろに乗せる。 「おい人の話を」 「心配しなくても向こうでお茶くらい飲めるわよ」 「異変が起こってるんじゃなかったのかー!?」 抵抗もむなしく、まだ流れが把握できていない俺を乗せて箒は急発進した。 2.宵闇の妖怪と氷精 全速力で飛ばしたらしく、俺たちを乗せた箒はあっという間に紅魔館が見える辺りまでたどり着いた。 魔理沙は俺を地面に降ろすと、すぐに飛んでいってしまった。 せめて異変の内容を教えろと言ったら、返ってきた答えは「行けばわかる」とだけ。 「はあ、全くどうなってるんだ……」 途方に暮れる俺の元に、二つの影が近づいてくる。 「あー、○○だー」 「あんたこんなところで何やってんのよ?」 空からやって来たのはルーミアとチルノだった。 やや遅れて、二人の後ろから大ちゃんが飛んでくる。 「もう、チルノちゃん速すぎるよ……あ、○○さん?」 三人は俺の前に降りてきた。 「ふふん、○○ったらあたいに遊んでほしくてここまで来たのね?仕方ないから遊んであげるわ!」 「チルノちゃんったら……○○さん、チルノちゃんたちがいつもお世話になってます」 「ねー、今日は何して遊ぶの?」 寄ってくるチルノとルーミアの後ろで、大ちゃんが困ったような顔をしている。 自慢じゃないが、俺は面倒見がいいとよく言われる。 この二人とも時々遊んでやっていたら、何だか懐かれてしまった。 「残念だけど今日は遊べないんだ。紅魔館に用事があってさ」 「……紅魔館に?」 二人の頭を撫でながら言う俺に、大ちゃんが眉をひそめる。 「行くなら気をつけてくださいね。中に入ったわけじゃないけど、今の紅魔館って何だか普段と違う感じがするから」 「そう?あたいよくわかんないけど」 「わたしもわかんない」 やはり、異変なのか。その割には幻想郷全体がどうこうという感じはしないのだが。 ……いや、これからどんどん影響が広まっていくところなのかもしれない。 ああ、不安になってきた。本当に、俺なんかが来てよかったんだろうか? 「……○○、遊んでくれないのー?」 寂しそうにこちらの顔を覗き込むルーミアを見て、我にかえった。 「ごめんな。今日はちょっとだめなんだ。また今度な?ほら、これあげるから」 そう言って、ポケットに入っていた飴を口の中に入れてやる。 「ありがとー!」 「そんなんであたいがごまかせるとでももぐもぐ」 「はい、大ちゃんにも」 「ありがとう。……本当に、気をつけてくださいね」 三人の見送りを受けながら、俺は目的地へと歩みを進めた。 3.小華人小娘 ほん めいりん 足元が赤く染まり始めた。紅魔館の領地に足を踏み入れたわけだ。 普段の紅魔館になら、何度か来たことがある。 人手が欲しいからと掃除や図書館の整理に借り出されるとか、退屈だからと連れてこられるとか。 ……まあ、ろくな理由がない気もするが、ついでにお茶をごちそうになったり、フランちゃんの遊び相手になったりと、 割合とけ込ませてもらっている。 だがそれは、あくまでも普段の話。 今の紅魔館は異変の中にある。 いや、そればかりか意図的に異変を起こしているのだとしたら、当然侵入者は排除しようとするだろう。 弾幕ごっこを挑まれたりしたら、弾一つ撃てない俺に何ができるだろうか。 「あー!」 突然聞こえた声に身を固くする。 見れば一人の妖精メイドがこちらを指差している。あの制服は門番隊か? 「みんなー!おきゃくさんだよー!」 「ほんと?やったー!」 わらわらと妖精メイド達が集まってくる。ざっと二、三十はいるだろうか。 いつの間にか俺は取り囲まれていた。しまった、この状態で弾を撃たれたら…… 「かかれーっ!」 「わーい!」 思わず目をつぶり、身構えた俺に弾幕の嵐が降り注ぐ― かと思ったのだが。 「あそぼー!」 「あそんでー!」 「うわっ!?」 弾は飛んでこなかった。代わりに、妖精メイドたちが一斉に飛び掛ってきた。 体当たり、ではないらしい。 「ねーねー、なにしてあそぶ?」 「おにごっこ?かくれんぼ?」 何かおかしい。確かにここのメイドは普段から、「一応仕事はするけど、本質的には賑やかで遊び好きな妖精」だった。 だがこれはいつもと違う。行動があまりにも幼い。幼いというより、もはや子どもそのもの。 「ねー、あそんでよ。さっききたおねーちゃんたちすぐかえっちゃうんだもん、あそぼうとおもったのに」 おねーちゃん―霊夢と魔理沙か。確かにこりゃ弾幕でふっとばすわけにもいかないし、さぞ困ったろう。 ……ああ、それですぐ帰ってきたのか。 異変が起こった時解決しにくるのが大抵あの二人だということを思えば、意外と有効な防衛手段なのかもしれない。 「ねー、おんぶしてー」 「あ、ずるい。じゃあわたしだっこ!」 「はいはい、順番順番……じゃなくて!」 とはいえ、かなりしまらない状態なのも確かだ。 こんな手を使ってまで起こそうとする異変っていったい…… 俺をよじ上ってくる妖精メイドたちを構いながら、思わず考え込んでしまった。 「ああほら、おんぶでもだっこでも肩車でもいいけど暴れると落ちちゃうって、ちゃんとつかまって……ん?」 ふと気付くと、門を正面に見据えて両脇にそびえる変なオブジェ(来るたびに思うが、あれは何なんだろう?)の陰から、誰かがこちらを見ている。 「……ねえ、きみ」 「!!!!!」 人影は俺に気付かれないように見ていたつもりらしく、声をかけられて思いっきり驚いたようだった。 「は、はいすいのじんだ!」 背中を向けて、屋敷の方に走っていく人影。緑色を基調にした中華っぽい服装、赤くて長めの髪。 「美鈴?」 一つ一つの要素は、美鈴に見える。だが何か変だ。何だ、この違和感は? 気になった俺は、逃げていくその影を追いかけることにした。 「よーし、今から鬼ごっこだ!俺が鬼!さあ鬼をつかまえろー!」 「えー、そんなのおにごっこじゃないよー!」 「まてー!」 ……何とか撒いた。 いつの間にか、紅魔館の門の前まで来ている。 目の前には、両腕をいっぱいに広げて門にぴったり背中を付けている女の子。 服装といい、髪型や顔立ちといい、全てが美鈴そのものだ。 だが、何というか、その、いつもの美鈴と比べて…………平べったい。 出るところも出ていないし、引っ込むところも引っ込んでいない。 普段が普段だから、なおさらそれが際立つ。 ついでに言えば、結構あったはずの身長も低くなっている。頭が俺の腰ぐらいまでしかない。 誤解を招くことを恐れず、端的に言えば……ロリ。 「つ、ついてくるなよ~」 涙目でこちらを見ている美鈴、っぽい幼女。 「あの、つかぬ事を訊くけどお嬢さんお名前は」 「……ほん めいりん!」 ……確定。 妖精メイドたちは普段から小柄だから、わからなかった。 だが、これで事態がある程度把握できた。 恐るべき事実!メイドたちも、美鈴も、心身共にロリ化しているのだ! 俺は何となく悟った。これは異変を起こすにあたっての防衛手段なんかじゃない。 これが、このロリ化こそが、異変そのものなのだ! 「おにいちゃんひとりでなにやってるの?」 「……気にしないでくれ。ところで美鈴、そこを通してくれないかな? お兄ちゃん中に大事な用があるんだ」 「だめ!めいりんはばんにんするひとだから、だれもなかにいれちゃだめなの!」 短い手足をいっぱいに伸ばし、大の字になって門に張り付く美鈴。 「うーん、お兄ちゃん何度も入れてもらったことあるんだけどな。 ほら、○○っていうんだけど、わかんないかな?」 「……だめ!しらないひとはいれちゃだめなんだもん!」 ……くそう、この融通の利かなさも子どもならではか。 いつもの美鈴なら、中に掛け合ってくれたりしそうなところだが。 しかし、俺のことはわからない一方でしっかり門番をやっているあたり、 記憶や認識はあいまいになっているものの完全に時間を逆行して幼くなっているわけでもないらしい。 いずれにしても、このままでは埒があかない。元凶を突き止めるためにも中に入らなければならないが、無理に通るわけにもいかない。 とりあえずどこか別の入り口がなかったか探そうと、踵を返したその時だった。 きゅっと、服が引っ張られた。 「……かえっちゃだめ」 振り向くと、美鈴が俺の服の端を握っている。 「……どうしろと」 「…………だって、だって……」 それだけ言うと、美鈴の両目にじわじわと涙があふれてきた。 そのまま手を離し、ぺたんと座り込んでしまう。 「だって、ずっとだれもこないし、でもばんしなきゃいけないし、だれもいないし……」 しゃくり上げ始めた美鈴をなんとかなだめようと、俺は彼女の前にしゃがみこむ。 「……寂しかったんだ?」 「うっ、すんっ、う、うん……ぐすっ」 「よしよし、寂しかったね」 「うん……さびしかったよぅ……」 小さな頭を俺の肩に押し付けるようにして、美鈴を抱きかかえた。 美鈴はしばらくそのまま泣いていたが、ようやく落ち着いたらしい。 泣きはらした目でこちらを見上げた。 「だいじょうぶかい?」 「うん……ありがと」 「そうか……美鈴、門の中に入れてくれるかい? うまくいったら、美鈴が寂しくないようにしてあげられるかもしれない」 そうだ。どこまでいけるかわからないけど、もし俺がこの異変を解決できたら、いつもの紅魔館に戻る。 そうすれば、美鈴も一人でいるのが寂しい小さな女の子ではなくなるのだ。 美鈴は少し考えていたが、にっこりと笑った。 「いいよ。……とくべつだからね」 そう言って門の前からどいてくれたロリ美鈴の頭を軽く撫でてやってから、俺は扉を開けた。 霊夢が、俺向きの異変だと言った理由が分かってきた気がする。 弾幕ごっこをするわけにもいかないこの状況、比較的子どもの扱いに慣れている俺なら ロリ化した館の住人を傷つけずに真相にたどり着けると踏んだのだろう。 どこまで期待に添えるかわからないが、行けるところまで行ってみよう。 決意も新たに、俺は館内への第一歩を踏み出した。 「……はっくしゅん!」 急にくしゃみが出た。夏風邪か?確かに屋敷の中は外よりだいぶ涼しいが…… 3.5 いんたーばる 「○○、どうしてるかしらね」 博麗神社の縁側に腰掛け、霊夢は西瓜を食べていた。 時折吐き出す種を遠くまで飛ばそうとするが、なかなかうまくいかない。 「まあ、なんとかなってるんじゃないか?」 ○○を送って戻ってきた魔理沙が、隣にいる。 霊夢に続いて吐き出した種は、飛距離を伸ばして草むらに落ちた。 「来年あたり生えてこないかしら」 「実がなったら半分もらうぜ」 二人はそのまま無言になり、しゃくしゃくという音だけがしばらく響いた。 遠くで蝉が鳴いているのが聞こえる。 「……しかしあれだな、ブン屋から紅魔館がおかしいって聞いて行ってみたら、 まさかあんなことになってるとはなあ」 口の周りについた西瓜の汁を手の甲でぐいとぬぐうと、魔理沙は言った。 「そうね。一方的に弾幕で蹴散らすのもあれじゃ寝覚めが悪そうだし」 霊夢が答える。比較的丁寧に食べているため、あまり顔は汚れていない。 「でもほんと、○○向きの異変だよな」 「そうよね、だってほら、○○って」 『ロリコンだし』 二人が声をそろえていた頃、○○は紅魔館の入り口でくしゃみをしていた。 ──────── 4.七幼の魔女 ぱちゅりー・のーれっじ 背後で扉が閉まった。何とはなしに室内を見回す。人影はない。どうやらメイド妖精たちのほとんどが外へ遊びに行ってしまったらしい。 それにしても、いつ来ても広い屋敷だ。だが心なしか、前来た時よりは狭いような気がする。目の錯覚だろうか? 「さて。どうしたものかな」 入ったはいいが、どこへ行けばいいのかがわからない。 変な捻りを加えずストレートに考えるならば、ここ紅魔館で起きている異変の元は当主のレミリアさんだ。 しかし、肝心の彼女の自室がどこにあるのか俺は知らない。闇雲に探すには広すぎるし…… 「……きゃあああああっ!」 悲鳴!?……聞いたことがあるような、ないような声だ。 何があったのか知らないが、とにかく放ってはおけない。俺は声のした方に向かって走り出した。 図書館に来てしまったが、こっちで良かったのだろうか。 薄暗い室内に立ち並ぶ巨大な本棚の間を歩いていく。下手をすると迷ってしまいそうだが、ここまで来たら進むしかない。 古い本の香りが漂う中、さっきの声の主を探す。 「おーい、誰かいるのかー?」 返事は返ってこない。自分の声だけがは反響している。 「……たすけてー」 その中にかすかに、か細い声が混じった。 慌ててそちらに駆け出す。 しばらく走ったところで、床に積みあがった本の山が目の前に現れた。 「たすけてくださいー」 よく見ると、本の下から小さな足が突き出ている。 とりあえず無事らしいが、重くて動けないようだ。 「だいじょうぶかい?今どけるから」 「すみません……おねがいします」 結構な量の本をどけていく内、黒い翼や赤い髪が見えてくる。 発掘作業が終わると、本に埋もれていた少女はスカートの埃を払いながら立ち上がった。 「おかげで、たすかりました。ありがとうございます」 彼女も、異変の影響からは逃れられなかったらしい。変わらず礼儀正しいけれど、その姿は普段と比べてあまりにも幼い。 この図書館の司書である小悪魔。今は子悪魔、といった感じだ。 「怪我はない?」 「はいっ、だいじょぶです。あ、でもほんが……」 床に散乱した本を見回し、困ったような顔をする。 「ひとつだけとろうとしたら、たくさんおちてきちゃって……」 「……片付け、手伝うよ」 なんだか気の毒になってきたので、声をかける。 「いいんですか?……じゃあ、よろしくおねがいしますっ!」 小悪魔はほっとしたような笑顔で応えてくれた。 「はい、そのほんを、そこのあいてるところにいれて……、はい、これでぜんぶです!」 ようやく片付け終わった。結構な量の本だったな。 「ありがとーございました」 ぺこりと頭を下げる小悪魔。 「いえいえ、どういたしまして」 つられて俺も頭を下げる。 それにしても、外面的にはともかく内面にはあまり変化が見られない。 美鈴と違って、小悪魔は異変の影響が少なかったのだろうか? ……と、向こうの方からぺたぺたと足音が聞こえてきた。 「こぁー、こぁー、どこー?」 不安で仕方がないといった感じの呼び声が、足音と共にだんだん近づいてくる。 やがて奥の暗がりから、小さな人影が姿を現し 「こぁー、おいてかないでー……むきゅ」 ―あ、こけた。どうも裾を踏んづけたらしい。 慌てて駆け寄る小悪魔と俺。 うつぶせに倒れているので顔は見えないが、リボンを結んだ紫色の長い髪はいつもどおりだ。 予想を裏切らず、人影はパチュリーさんだった。例によって、縮んでいる。 「ぱちゅりーさま、だいじょぶですか?もう、おかたづけするからまっててってゆったのに」 「痛くしなかったかい?」 動かないロリパチュリーさんを後ろから抱きかかえて起こす。……いかん、ちょっと泣きそうになってる。 心配そうに側にいる小悪魔は、こうして見ると何となく、手のかかる妹を持った面倒見のいいお姉ちゃんのようだ。 「ほらぱちゅりーさま、ないちゃだめですよ。ないたらわらわれちゃいますよ?」 「う……うん、なかない」 「さすがぱちゅりーさまです、さ、おへやにもどってやすみましょうね?」 「うん」 小悪魔にあやされて何とか落ち着いたらしいパチュリーさんはふとこちらを振り向くと、俺の服の裾をぎゅっと掴んだ。 「……だっこ」 「……ん?いいよ」 抱き上げたパチュリーさんは、びっくりするほど軽い。 すまなそうな顔をしている小悪魔に笑いかけると、歩き始めた。 図書館の続き部屋になっているパチュリーさんの私室は、確かこっちだったと思う。 ベッドにパチュリーさんの小さな身体を横たえる。 「さ、ぱちゅりーさま、ねましょうね。 ちゃんとやすまないとぐあいがよくならないってゆったでしょう?」 「や」 ベッドサイドの簡素な椅子に腰掛けた小悪魔の言葉に、パチュリーさんはふるふると頭を振った。 「ごほんよんでくれたらねる」 「……もう、しょうがないですね」 「何か読んであげようか?」 「あ、いいですよ。わたしがよみますから」 小悪魔は側の棚から、何冊か本を取り出し、中の一冊を開いた。どうやら絵本のようだ。 この図書館にも絵本なんかあったんだなあ。 ―ん?何か表紙に書いてある字が見たこともないような字なんだが。 「じゃあ、よみますよ……んと……くおん、に、ふしたるもの、しする、ことなく、かい?な、る、えいごうの……」 「ちょっと待った」 何だろう、よくわからないが、背筋がざわざわするような気がする。 「それ、なんていう本?」 「えと、『たのしい ねこのみけ……』ううん、『たのしい ねこの みくろん』かな? ぱちゅりーさまねこさんがすきだからとおもったんですけど……」 開かれたページを覗き込んでみる。少なくとも猫の絵本ではないようだ。 何か……強いて言うなら蛸っぽいものが寝ている絵なんだが…… 選んだ小悪魔自身、あまりわかってはいないようだが、どことなく得体の知れない雰囲気がただよっている。 SAN値が下がりそうな予感だ。 「うん、それはちょっと違うみたいだし、よしておこうか」 「はい……そうですね」 「ねー、つづきは?」 パチュリーさんは布団の中で足をぱたぱたと動かしているらしく、掛け布団が波打っている。 俺はベッドの隅に座ると、パチュリーさんの頭をそっと撫でた。 「じゃあ何かお話してあげるから、一つお話したらちゃんと寝るんだよ?」 「うん……たのしいおはなしがいい」 「はいはい、昔々、あるところに―」 背中をゆったりしたリズムで軽くとんとんと叩きながら、俺はうろ覚えの昔話を始めた。 「―でした、めでたしめでたし」 「……すー、すー」 ようやく眠ってくれた。さて、レミリアさんの部屋を探しに行くか。 「あの……」 「ん?」 小悪魔がこちらを上目遣いで見上げている。 「もひとつ、おはなししてくれませんか?」 何となく、中身はあまり幼くなっていないのかな、と思っていたが、 どうもそれはパチュリーさんの面倒を見るためにお姉さんらしく振舞っていたかららしい。 やっぱり、小悪魔も心身ともに縮んでいたようだ。 「いいよ。じゃあ、どんなお話にしようか」 抱き上げて膝に乗せると、小悪魔は嬉しそうな顔で体を預けてきた。 ちょうど話が終わる頃には寝付いてしまった小悪魔に予備の毛布をかけ、俺は部屋を出ようとした。 ―ふと、机の上に広げられたままの便箋に目がいく。 他人の手紙を盗み読みするつもりはないが、出しっぱなしになっているだけかもしれない。 もしそうなら片付けておこうと思い、近づいた。 「これは……」 パチュリーさんのものと思しき字で書かれたそれは、異変が起こる直前に記されたらしかった。 『……不覚だった。珍しく図書館で調べ物をしている時点で、変に思うべきだった。 差し当たり生命その他に危険はないだろうが、巻き込まれて動けないのは性に合わない。 まあ、実害はないと思うけど、これを見た人は早めの解決を。ああ、意識が、というよりは知性が遠のく……むきゅー』 うん、割と楽しんでる気もするが、がんばって早めの解決を目指すか。 解決……できるのか? 5.かんぜんでしょーしゃなさくやちゃん 真っ赤な廊下を進んでいく。いつもながら、目が痛くなりそうだ。 妖精メイドがいつにも増して仕事をしていないので、動くものが全然見えない。 窓の少ない屋敷だが、それでもこの廊下には窓があり、光が差し込んでいる。 「よいしょ、よいしょ」 視界の隅で何かが動いた。 あれは、脚立だろうか。 床を引きずるように前方からゆっくり近寄ってきた脚立は、窓の下まで来て止まった。 小さな人影が、一歩一歩上に上っていく。 「あー、おそうじがすすまない!」 人影は文句を言いながら、窓の桟にはたきをかけ始めた。 あれは― 「咲夜、さん?」 「なあに?」 おなじみのメイド服―サイズは一回り以上小さいが―に身を包んで一生懸命掃除している咲夜さんは、例によってロリ化している。 普段がしっかりしているから、余計にあどけなく見えるようだ。 細身で背が高いいつもの咲夜さんと比べて、何だかぷにぷにした印象を受ける。 「いや……掃除、手伝おうか」 レミリアさんの部屋を探さないといけないのだが、咲夜さん一人に任せるのが気の毒で、ついそんな言葉が口をついた。 窓だけでも、まだ俺の後ろに結構な数が並んでいるのだ。 普段ならまだしも、縮んだ咲夜さんじゃ大変だろう。 「んと、それじゃあおねがいしようかしら。えーっとねえ……」 「ん、もうちょっとみぎね」 「はいはい」 で、何を頼まれるかと思ったら脚立の代わりに咲夜さんを肩車することになった。 確かに、いちいち脚立を運ぶよりは効率がいい。これだと、咲夜さんの方が手伝いをしたがる子どものようだけど。 片手でしっかりと俺につかまりながら、もう片方の手ではたきをかけるのは、心温まる光景だ。 「……よし、このまどでさいごね」 「はい、お疲れ様。じゃあおろすよ」 しゃがもうとしたら、ぎゅっと頭にしがみつかれた。 「ま、まって」 「?」 「てつだってくれたおれいにおちゃをごちそうするから、きっちんまでのっけてってくれる?」 甘えられている、のだろうか。何だか微笑ましい。 「ちょっと、まっててね」 妙にサイズの合わないエプロンを着けた咲夜さんは、紅茶を淹れる準備をしてくれている。 手際はいいけれど、その小さな背中に違和感を覚えた。 (ああ、そうか) いつもなら、こういったことは時間を止めてやるところなんだろう。 だから普段咲夜さんが紅茶を淹れているところを見た覚えがないのだ。 そういえば館が狭い気がしたが、これも咲夜さんの空間操作がなかったせいか。 「はい、おまたせ」 考え事から我に返ると、目の前には紅茶のカップと、クッキーの載った皿があった。 「……いただきます」 カップから紅茶を一口啜った。 味も温度もちょうどよく、とてもおいしい。普段の咲夜さんと比べても遜色のない完璧さだ。 クッキーに手を伸ばす。甘すぎず、紅茶に合う味。 よく見ると犬の形をしている。顔を上げると、エプロンも可愛い子犬柄だった。 「どう?おいしい?」 心配そうに聞いてくる。普段の咲夜さんなら決してしない質問だ。 こちらから賛辞を伝えれば軽く微笑んで会釈してくれたりはするが、自ら出来を尋ねたりはしない。 きっと問うまでもなく万全を期しているからなのだろう。それでこそ完全で瀟洒な従者、なのだろうが…… うん、これはこれで新鮮。 「うん、すごくおいしいよ」 「よかった。このくっきーもわたしがやいたんだよ。おゆはんだってちゃんとつくれるよ」 「そうか。偉いね」 ついつい頭を撫でてしまった。 「えへへ。ねえ、さくやいい になれるかな?」 ちょっとよく聞こえなかったな。何になれるか、だって? やっぱりメイド長とかかな。 「そうだね、いいメイド長になれると思うよ」 「ちがうよー。いいおよめさんになれるかなってきいたんだよ」 危うくクッキーをのどに詰まらせるところだった。 小さくなっているとはいえ、咲夜さんからこんな質問が来るとは。 「……うん、大丈夫。きっといいお嫁さんになれるんじゃないかな」 「ありがと!」 突然目の前にいた咲夜さんが消えた。 「あ」 「……あ」 消えたと思った咲夜さんが、俺のすぐ横に現れる。 一瞬恥ずかしそうな顔をした咲夜さんだったが、俺の頬に軽くキスすると、キッチンから走り去っていった。 どうも時間を止めている間にキスをしようとして、タイムリミットが予想より早く来てしまったらしい。 能力が使えないわけではないけれど、いつものようには上手くいかないらしい。 「……あのエプロン、ぶかぶかだったな」 ということは、あの可愛らしいエプロンは咲夜さんが小さくなる前から持ってたわけか。 そんなことをしみじみ考えながら、俺はもう一枚クッキーを口に運んだ。 6.永遠に幼すぎるれみりゃ 廊下を進んでいくと、一際立派な扉の前にたどりついた。 おそらくここがレミリアさんの部屋だ。 この中にたぶんこの異変の張本人であるレミリアさんがいるに違いない。 ついにここまで来てしまったが、どうしたものか。 頼んだら異変を元に戻してくれるだろうか? 弾幕ごっこを挑まれたらどうしよう? 緊張が走る。カリスマに満ちた紅魔館当主、これまで顔を合わせた時はそれでも友好的な雰囲気だった。 果たして、今扉の向こうにいるレミリアさんはどうだろうか。 意を決して扉を……開ける! 「ぎゃおー!」 「うわっ!?」 何かふかふかしたものが、いきなりぶつかってきた。 目の前が真っ白に、いや、真っ赤、か? とにかく視界がふさがれたと気付いた時には、押し倒されていた。 「たーべちゃうぞー!」 頭を打つかと思ったが、床が柔らかい絨毯だったのでそれほど痛くない。 仰向けに倒れた俺の上から、声が聞こえてくる。 「ねえ、ちゃんとにげなきゃだめだよー。もけーれにたべられちゃうよ?」 「……レミリアさん?」 聞き覚えのある声だとは思っていたが。 扉を開けると同時に飛び掛ってきて、俺の顔に覆いかぶさったのはレミリアさんだった。 まさかと思ったけれど、俺の胸の上にちょこんと座っている姿を見てしまった以上もはや疑いようもない。 そしてこの反応。外見が幼いのは普段からだが、内面も他のみんなと同じように幼くなっている。 しかし、しかしだ。 じゃあこの異変は誰が起こしたんだ?自分までも巻き込んだ壮大な現実逃避だとでも言うのか!? 「いったい……いっひゃいひょうなっへ」 「ねー、あそんでよー!」 俺が無視して考え込んでいるのに痺れを切らしたのか、レミリアさんは俺の頬を引っ張り始めた。 「ふぁ……わかった、遊んであげるから!まずはそこから降りてくれないかな?」 「わーい!」 ようやく降りてくれた。立ち上がると、レミリアさんはわくわくした目でこちらを見上げている。 こうなりゃやけだ。 「よーし、何して遊ぼうか?」 「もけーれごっこ!」 「……もけーれ?」 「にげなきゃたべちゃうぞー!」 「わー、食べられるー!」 走り出す俺、追いかけるレミリアさん。 「……えい!つかまえた!」 ひとしきり走ったところで、背中に飛びつかれた。 さっきは不意打ちだったので倒れてしまったが、軽いので落ち着いていれば大丈夫だ。 「わ、捕まっちゃった」 「走れー!」 「まだ走るの!?」 レミリアさんをおんぶし、さらに部屋の中を走る。 「ふぅ……お嬢さん、どちらまで?」 「…………」 「レミリアさん?」 「……くー」 どうやら遊び疲れて眠ってしまったようだ。 ……俺も疲れた。 「やれやれ」 ベッドにレミリアさんを降ろし、布団をかける。 「それにしても、この異変はいったい―」 「ご苦労様だったわね、○○。子守は大変だったでしょう?」 「―誰だ?」 振り返ろうとした瞬間、身体が宙に浮くような感覚に襲われた。 6.5 いんたーばる 2 「あら?萃香じゃないの」 「よお、萃香」 ○○がレミリアとの死闘(?)を繰り広げていた頃。 霊夢は、神社の縁側に見慣れた顔がやってきたことに気付いた。 「やっほ~、霊夢。あ、魔理沙も~」 いつものごとく酔っ払った萃香は、二人の傍らに詰まれた西瓜の皮に目をやった。 「あ、西瓜!ねえ、私の分は~?」 「……ごめん、もう食べちゃったわ」 「残念だったなー、共食いできなくて」 「え~!?」 不服そうに口を尖らせた萃香は、縁側に腰を下ろした。 「いーもん、お酒分けてあげないから」 取り出したのは、いつもの瓢箪―ではない。 明らかに年代物の、ワインの瓶だった。 「珍しいわね、萃香がワインだなんて」 「へへ~、昨日紅魔館でもらったんだよ~」 その言葉に、霊夢と魔理沙は顔を見合わせる。 「おい霊夢、異変の知らせをブン屋が持ってきたのいつだった?」 「……一昨日よ。萃香、まさか盗んできたわけじゃないわよね」 「人聞きの悪いこと言わないでよ~、魔理沙じゃあるまいし。 ちゃんと渡してもらったんだよ……あ」 萃香は、自分の発言が拙いものだったことに気付いたらしい。 もはや後の祭り、ごまかそうにも鬼が嘘をつくわけにはいかないのだ。 「あんた、『昨日』紅魔館からそのワインもらったわけね? まともな応対なんかできないようなあの状態の紅魔館から」 「異変のこと、何か知ってるんだろ?きっちり吐いてもらうぜ」 二人は、萃香に詰め寄った。 EX.ふりゃんちゃん 「ここは……?」 気がつくと、俺は見たことのない部屋の中にいた。 「ここは、私の部屋よ。紅魔館の地下にある、私の部屋」 さっきの声が答える。声のした方には、紅い人影。 聞いたことのある、しかし聞き覚えのないその声は、 今日この屋敷に足を踏み入れてからついぞ聞かないような、しっとりと落ち着いた大人の女性の声だ。 目の覚めるような真紅のドレスを着た彼女の顔は誰かに似ていた。 「君は……フラン、ちゃん?」 「そう。フランドール・スカーレットよ」 確かに目の前の人物は、フランちゃんの面影を備えている。 だが、少なくともいつものフランちゃんではない。何故なら。 「大人、だ」 高い背丈。落ち着いた、大人びた顔つき、物腰。 驚いている俺に、彼女は微笑んだ。 「立ち話もなんだから、座らない?」 そう言って、しつらえてあった小さなテーブルに着く。 吸い込まれるように、俺は向かい側に座った。 テーブルの上には年代物のワインの瓶と、グラスが二つ載っている。 「いかが?」 「……いただこうかな」 フランちゃんが手ずから注いでくれたワインを、少し多めに口に含む。 重厚な香りがのどを通り抜けていったが、今は味よりも気付けとしてアルコールが必要な心境だった。 「何から話せばいいかしらね……○○は、新月の時にここへ来たことはなかったわね?」 「うん、ない」 「お姉さまを見たでしょう?新月の時はいつもああなの。 詳しい理屈は知らないけれど、外見はそのまま、中身が幼くなってしまう。私は、その逆」 「外見はそのまま、中身は大人になる?」 だが目の前のフランちゃんは、外見も大人だ。加えて今日は、新月ではない。 確か数日前だったはずだ。 「この間の新月の晩に、あの鬼に頼んだの。 新月の魔力を、私に萃めてくれって。このワインと引き換えにって言ったら承知してくれたわ」 鬼……萃香か。あいつ酒好きだからなあ。 「萃めた魔力は、図書館で調べた術式で固定してある。パチェに気付かれなくて助かったわ」 ああ、あのメモ書き。寸前で気が付いたけど、時既に遅し、だったわけか。 「目論見通り、私は身体も心も大人になった。私を媒介に起こった魔力の反動で皆小さくなってしまったのも計算通り」 「なぜ、こんなことを」 「……○○、貴方がそれを訊くの?」 フランちゃんは、自分のグラスからワインを一口含むと、こくりと飲み込んだ。 白いのどが、艶かしく動いた。 「私が、貴方を好きだからよ」 俺は混乱していた。この異変の黒幕がフランちゃんだったこと、フランちゃんが俺を好きだと言ったこと、 そして、質問の答えが理解できないことにも。 「時折屋敷にやってくる貴方のこと、私は好きになった。 思考が幼い普段も、新月の時も、貴方が好きだった。 ただ一つの誤算は、貴方が」 「俺が?」 「ロリコンだったことよ」 思わず俺はテーブルに突っ伏した。 「違うの?魔理沙から聞いたんだけど。 ○○って優しくていい人ね、って言ったら 『あー、あいつロリコンだからなあ』って」 出掛けに魔理沙と霊夢が、俺にぴったりの異変だと言った真の理由がわかった気がする。 「確かに普段の私は心身共に幼いけれど、それで○○を惹きつけるのでは困るの。 新月の時のお姉さまだって似たようなものだし、私だっていつかは大きくなるもの」 「……いつ?」 「……いつかはなるの!」 怒った顔を見せるフランちゃん。だってなあ、五百年近く生きて今の状態なわけだし。 「その頃には自分はいないと思ってるなら大間違いよ。 無事両想いになれたら、貴方には眷属になってもらうから」 くい、とフランちゃんはグラスを乾した。 おそらくは、これから核心に触れるために。 「今回の異変を起こせば、魔理沙や霊夢には不向きのこの状況、必ず貴方を解決によこすと思ったわ。 やってきた貴方は、ここまでたどり着く頃にはさすがにロリに食傷しているはず。 そこで私が、大人の魅力でロリコンを矯正しつつ貴方を魅了する。 貴方が『小さい子だから』ではなく、『ただ一人のフランドールだから』私を好きになることで、私の目的は達成されるわ」 「……その計画には前提の段階で重大な欠陥がある」 「何?」 「俺はロリコンじゃない」 全くひどい言いがかりだ。 「『仮に』そうだとしても」 妙に力を入れて応えるフランちゃん。あれは絶対信用していないな。 「変わらないわ。紅魔館の住人はみんな貴方のことを憎からず思っている。 美鈴も、小悪魔も、パチェも、咲夜も、それからお姉さまも。 ずいぶん懐かれたでしょう?私はそんな魔法はかけていないの。 例え記憶があやふやでも、幼く素直になったみんなの無意識下の気持ちが現れたのがあの状況よ」 「……信じられないな」 「ほんと、鈍いわね。そんなところも好きだけれど」 そう言って席を立ち、ゆっくりとこちらに近づいてくる。 逃げられない。吸血鬼のプレッシャーだけではない、情念の網に絡め取られたように脚が動かない。 どうやら俺は獲物であるらしかった。 「だからこそ、私はこの異変を起こしたの。新月の時の理性が続く内に計画を整えるのは、大変だったわ。 この状況下で、誰にも負けないように、私は貴方を― ―○○を、墜としてみせる」 蟲惑的な笑みを浮かべて歩を進めてきたフランちゃんの表情が 「っ!そんな!」 突然凍りついた。 「どうしたんだ!?」 状況も忘れて立ち上がる。 自分の両肩を抱きしめるようにして膝をついてしまったフランちゃんの様子は、 それほどまでに唐突で、辛そうだった。 「どうして!?力が、ぬけてく、新月の魔力が、散って」 「フランちゃん?しっかりして!」 霧が晴れるように何かが消えていくのが、ただの人間の俺にも感じられる。 目の前のフランちゃんは、少なくとも外見だけはいつも通りのフランちゃんに戻っていた。 「やだ……ここまできたのに……これじゃ、○○のロリコンを直せないよ……」 「……だから、違うってば」 どうしてわかってもらえないのだろう。何か悪いことでもしただろうか。 「じゃあ、勝負よ。私を襲わなかったらロリコンじゃないと認めてあげる。 一気に魔力を手放したショックで、私はしばらく動けないから、今なら無抵抗よ?」 とんでもない難題を出しているつもりらしいが、そもそも俺はロリコンではないのだから手を出したりはしない。 だいたい、動けない女性を襲うような真似などするつもりはない。 ただ― 「あ」 悔しそうに、悲しそうに涙を流すフランちゃんが、かわいそうで 「さ、もうおしまいにしよう」 「○○……」 そっと、抱きしめた。 「あったかいね……」 疑惑は晴れないかもしれないけれど、その時はその時。 がんばって、無実を証明することにしよう。 フランちゃんは、糸が切れたように俺によりかかると、やがて眠りについた。 えんでぃんぐ あれから数日。俺は紅魔館に招待されていた。 あの時フランちゃんから魔力が抜けたのは、萃香が事情を知った霊夢たちに叱られて、 萃めていた魔力を疎の状態にしたからだったようだ。 「あ、○○さん!」 門の前まで来た。辺りを門番隊の妖精メイドたちが飛び回っている。 美鈴がこちらに気付いて手を振っている。 「やあ、美鈴」 「いらっしゃいませ、○○さん」 笑顔で迎えてくれた美鈴は、ちゃんと元に戻っていた。 いつものナイスバディな美鈴だ。 「ささ、広間へどーぞ」 「ありがとう」 扉を開けてもらい、中へと進む。 「あの、○○さん?」 「ん、何?」 「い、いえ!なんでもないです!」 美鈴は顔を赤くして、俯いてしまった。 「あら、○○」 「こんにちは、○○さん」 館内を歩いていると、パチュリーさんと小悪魔に出会った。 「レミィに呼ばれたのね」 「はい、広間に来るようにって」 「私も後から行くわ。ところで○○」 「なんですか?」 「魔導書の読み方とか、覚える気はないかしら?」 なんか既視感を覚える流れだな。 「えーっと、何でまた急に」 「……横で内容を口述してもらうと、研究がはかどるかと思ったのよ」 「小悪魔がいるじゃないですか」 「いや、私も図書整理とかがありますから。ねっ、パチュリーさま」 「……まあ、考えておいて」 そう言い残すと、二人は歩いていった。 「いらっしゃい、○○」 咲夜さんだ。子犬のエプロンは、普段も使うことがあるのだろうか。 「今日はこの後何か予定はあるのかしら?」 「いえ、特には」 「そう。じゃあおゆはん食べていきなさいな」 「ありがとうございます。楽しみにしてますね」 「ええ、腕によりをかけて作るから。さあ、お嬢様がお待ちかねよ」 そう言うやいなや、咲夜さんの姿が消える。 気がついた時には、少し離れたところを歩いている咲夜さん。 俺の頬には、柔らかな感触がうっすらと残っていた。 紅魔館の広間。 テーブルに着いた俺の正面にはレミリアさんが、その隣にはフランちゃんが座っている。 しばらくして、美鈴、パチュリーさんと小悪魔、そして咲夜さんが入ってきたところでレミリアさんは話し始めた。 「○○、今回はフランが迷惑をかけてしまったようね。 当主として、姉として申し訳なく思うわ。ほら、フランも」 「うん……○○、色々とごめんね?」 威厳あふれる態度のレミリアさんと、すまなそうにしているフランちゃん。 俺としては、異変解決の役目を背負ってしまったという緊張感こそあったが、 さほど迷惑を受けたという感じもしないので、かえって恐縮してしまう。 「いえ、別にそんな、気にしてないですから」 「……お詫び、と言っては何なのだけれど」 言葉を切ったレミリアさんは、一呼吸置いて、 「○○を紅魔館に迎えようと思うわ」 「……へ?」 予想もしなかった言葉を口にした。 「どのように、かはあなたに任せるけれどね」 一瞬あぜんとしていたところに、それまで黙っていた他の皆も口を開く。 「その、私の隣で門番やりませんか!」 「司書の仕事もやりがいがありますよ?」 「私の専属サポート、でもいいわね。就寝前に何か一冊読んでもらったりするのも、悪くないわ」 「その……お嫁さん、とか……いやいや、執事として一緒に働くというのはどうかしら?」 ……縮んでいた時のことは、どれほどまで覚えているものなんだろうか。 「まあ、ゆっくり考えるといいわ。あなたは私を選んでもいいし、私以外を選ばなくてもいい」 「あー、お姉さまそれじゃお姉さまが○○独り占めじゃない! ○○、フランの遊び相手でもいいんだからね?」 異変を解決しても、必ずしも平和になる、というわけではない。 でもそれで帰ってくる日常は、とてもいとおしく、騒がしく、楽しいものだ。 俺は霊夢たちの気持ちが、ちょっとだけわかったような気がした。 「まあ、いずれにしても、ロリコンは直しなさい」 「……だから俺はロリコンじゃないですってば」 うpろだ1306、1376 ─────────────────────────────────────────────────────────── ある日の白玉楼、夕食時。 あの人の何気ない一言が、全ての始まりだった。 八畳程度の畳部屋の真ん中で、ちゃぶ台を囲んで夕飯を食べる三人。 庭師の私としては主と食卓を共にするのは少し不本意だが、 大勢で食べた方が美味いだろうという○○さんの意見と幽々子様の同意によって、少し前からこうして食べている。 「妖夢、おかわりちょうだい」 幽々子様がもう何度目か分からないおかわりを、これが二杯目だと言わんばかりに要求する。 最早私の背丈くらいになったおひつの蓋をよいしょと開き、中を覗き込んで─── 「…幽々子様、もうお米がありませんよ」 おひつの中は、数えるほどの米粒を残してほとんど空っぽになっていた。 「え~~~……」 「え~~~……じゃありません。ない物は出せません」 「今度からもっと炊いておいてよ。これじゃお腹空いて夜も眠れないわ」 「そんな事ばっかり言うからおひつがこんな大きさになったんでしょう…第一、幽々子様は毎回ご飯を食べすぎです。お米だって無限じゃないんですから、もう少し考えて───」 丁度その時、さっきから口を閉ざしていた○○さんが不意に笑い出した。 なんだか気恥ずかしくなって思わず顔を伏せてしまったが、何も私のことで笑ってる風ではないようだった。 「どうしたの?」 「いや、なーんか二人が親子みたいだなと思ってね…」 微笑ましいと言う風に私達を見る○○さん。その一言を聞くや否や、幽々子様は○○さんの腕を取って自分の腕と絡めて言った。 「あら、それじゃ私達が夫婦で妖夢が子供かしら?」 照れたようになる○○さんを見て少しムッとなる私。 …もう、幽々子様は○○さん相手になると慎みが無くなるのがちょっと…………羨ましい、です。 「い、いやいや。どっちかって言うと妖夢が母さんで幽々子さんが娘って感じかな…」 ハハハ…と笑う○○さん。……え?そそそそれじゃ夫は○○…さん?あ、いや、そんなまだ早いですよ私にも心の準備が… …と、私があらぬ妄想の世界へ身を浸している隙に幽々子様は新たに一手を指していた。 「あら、○○が子供っていうのもいいんじゃない?ほら、貴方って結構───」 そう言って、幽々子様は○○さんの頬についたご飯粒を箸で取ってそのまま優雅に自分の口へ運んでしまう。 「───子供みたいな所、あるしね」 そして妖艶に微笑む幽々子様。 ああもう、どうしてこうも私にないものばっかり使って○○さんを誘惑するんですか貴方は。 しかしそこは○○さん。軽く笑って何もなかったかのように受け流しました。 「ハハハ・…ま、どうでもいいかな。母さん、おかわり」 「……だからご飯無いんですってば。あと母さんはやめて下さい」 「そうよ○○。妖夢は母さんじゃなくて、「妖夢」もしくは「おまえ」って呼ばれたいんだからね?」 「ゆっゆゆゆゆゆ幽々子様何言ってるんですかもう!」 ────と、まあ、そこまでは日常的な風景だったのです。……お二人が私の事を母さん母さん言ってくる以外は。 問題はその後です、後。 そろそろ寝ようと思って座敷に敷かれた布団に横になり、掛け布団を被った刹那。 障子が開いて、小脇に○○さんを抱えた幽々子様が入ってきたんです。 そして、ああそして、あろうことか私の布団に○○さんとご自分の体を横たえて、そのまま布団を被ってしまったのです! 「……………何してるんですか幽々子様ーーーーっ!」 思わず声が荒くなりました。早いでしょ、誰がどう大目に見たって。 幽々子様が○○さんに並々ならぬ感情を抱いてるのは知ってますけど同衾って。しかも私の布団でって。 「何…って、寝ようとしてるだけだけど?」 「…なんだか知らんが、家族三人で川の字になって寝たいらしい」 布団の中から解説を加える○○さん。…あ、私の布団で○○さんが寝て…っと、いけないけない。煩悩退散。でも役得。 「川の字…ですか」 「そ。私が右端、○○が旦那様役で左端、妖夢は一番小さいから真ん中ね♪」 私の脳は考えるより早くその状況を想像してしまう。 三人が私の小さな布団の中、身を寄せ合って……………ああまるまるさんそんなにおしつけないでわたしどうにかなってしまいますー。 そうして赤面五秒の後に、現実に戻る。 正気に返った私がいた場所はお二人の間──つまり、布団の中でした。 「えっ…えええええええっ!?」 「妖夢、思いのほかノリノリでしたね幽々子様」 「そうね。もっと渋るかと思ったのに…あんな笑顔でお布団に飛び込んで来るなんてねえ」 あの五秒間で何をやったんだ私っ! 「あー…でもまあ、こういう寝方も悪くないかなあ。暖かいし」 この状況下であくまでマイペースな○○さんはどうかしてると思います! 「ふふ…それじゃ、明日はもっと熱い夜にしてみる?」 さりげなく誘わないで下さい幽々子様!私が間にいるのに○○さんにひっつこうとしないで!ああ!胸板が!○○さんの体が私にぴったりくっついて─────っ! その晩妖夢は、結局一睡もできなかったという。 うpろだ1508 ─────────────────────────────────────────────────────────── 博麗神社の縁側で昼寝中、甘ったるい匂いで目が覚めたら目の前に橙がいた。 うん、橙がうちに来ることはいつものことなんだ、紫さんや藍さんもよく来るし。 ただ問題なのは・・・・ 「○○~」 「・・・うわぁ!!ちぇ・・橙?」 「うふふ~」 橙の様子がいつもとおかしかったのだ。 いつもの橙なら「わーい○○遊ぼう~」と寝ている俺の上に飛び込んでくるぐらい元気でおてんばな子なのだが・・今日の橙はいつもと違った。 そう、いつもの橙を子供と例えるなら、今の橙は・・・ものすっごく色っぽい。 衣服はいつもと同じなのにとてつもなく色っぽい・・。 「橙・・だよな?」 「そうだよ~」 間違いなく橙だ、しかしどうなっているんだ一体・・。 「えへへ・・○○」 「な・・なんだい?」 「子作りしましょ」 静寂・・・そして橙は服を脱いで・・・・ 「この泥棒猫!!!!」 「わぁ!!霊夢!!」 いきなり霊夢が乱入してきた。 「人の居ないところで何乳くり合おうとしてるのよ!!」 「してないしてない!!」 「なー、邪魔しないでよ~」 「するわよ!!というか人のうちで何しようと」 「子作り」 「即答!!!・・霊夢落ち着け、とりあえずその陰陽玉をしまえ!」 「落ち着いていられるか!もう・・紫ったら式の教育がなってないわね」 「あらそんな事ないわよ」 と、スキマから現れた紫さん。 「紫!!ちょっとあの子何とかしなさいよ」 「何とかって・・無理♪」 「なんでよ!」 「何とかしたら面白くないじゃない」 紫さんの言葉に俺と霊夢は目を丸くした、まったくこの人は・・ 「・・・霊夢・・俺頭が痛い」 「私も・・・」 「だってぇ~今の橙は発情期なのよ」 「は・・発情期?」 「そう、私は一切ノータッチ、この時期の橙って大変なのよ・・いつもはスキマに閉じ込めておくんだけど・・今回は先手を打たれたようね」 「ぼやっとしないで早く橙をスキマに閉じ込めなさいよ!!」 「だからそれじゃつまらないじゃない・・」 この人は・・・霊夢も青筋が浮かびっぱなし、目つきも悪くて・・うわっ!霊夢ちゃん目怖っ!! 「というわけで橙、○○を好きにしていいわよ」 「はーい!」 「こら紫!!!」 俺に向かって走ってくる橙を抑える霊夢。 俺はとりあえず逃げようとしたそのとき、風が吹いた・・・ 「え?」 「無事でしたか○○さん!」 「あ・・文?」 気がつけば俺の体は文に抱きかかえられ、空を飛んでいた。 眼下には「泥棒鴉!!!」と叫んでいる霊夢と橙の姿が。 流石幻想郷最速、あっという間に博麗神社から離れ山の麓にあるとある小屋へ到着。 「文・・助けてくれたのは嬉しいけど・・」 「はい、お礼は子作りで結構ですよ」 ・・・はい? 「文さーん、射命丸さーん?」 「明日のトップは私と○○さんの婚約会見で決まりですね!」 「え?だから・・」 あ・・甘い匂い・・・まさか文も発情期ってか? というかこの小屋の中、何故かラブホテルのような内装になってるし!! 「さぁ、○○さん」 「脱ぐな脱ぐな!!!」 「えー・・仕方がないですね」 と残念そうに体操着+ブルマを着た。 「まてまて、それを着るな」 「ヱー」 と再び全部脱ぎだしたので・・ 「全裸になるな!!!」 「はーい・・」 と、今度はセーラー服を着だした。 「次の衣装が気になるけど自重して・・・」 「えー、とにかく・・・子作りしましょう♪」 「いやだー!!人生の墓場はまだ早い!!」 「そこまでです!!!」 ばーん!!! 「大丈夫ですか○○さん!!」 「椛!」 救世主現る!! 「椛・・」 「そこまでです!○○さんと子作りするのはこの犬走椛です!!!」 「な・・なんだってー!!!」 わーお事態悪化、とりあえず逃げるべ。 「逃がしません!!!」 椛先手必勝、○○は拘束されてしまった。 「文さん、○○さんは私が頂きます」 「駄目!私よ!!」 「あたしだよ!!!」 いつの間にか橙も加わっていました。 ということは橙を追って霊夢が・・・いや、過度な期待はよしたほうがいい。 目の前では3人がじゃんけんをして誰が一番かを決めている、何の一番かって? 聞くなよ・・・とりあえずここから脱出する手立てを考えねば。 「あややキリがないですね」 「むぅ」 「やはり弾幕で決着を・・」 「おーい外で頼むぞ弾幕は」 「いいこと思いついた!三人同時に子作りすればいいんだ!」 「あやっ!ソレは俗に言うら・・らん・・」 「は・・破廉恥です!!」 いや、そんな破廉恥なことを君たちがやろうとしているわけで。 とりあえず、脱出の手立てを考えなきゃ・・・。 魅力的な少女が言い争っている中、俺は拘束をはずそうと四苦八苦していた。 「じー・・・・」 「あら霊夢、そんな玩具の犬耳付けて何してるの?」 「なんでもないわよ!あっち行って!」 「まさか、それで「私も発情期~」って混ざりたいの?」 「な・・そんなわけないでしょ!!」 新ろだ162 ─────────────────────────────────────────────────────────── ―某月某日、香霖堂にて… 外界から流れ着く幻想入りした物品が陳列している雑貨店、その 名は香霖堂。確かにここで取り扱われる物品は珍しいものばかり。 ですが立地場所が博麗神社と人里のちょうど中間点のため、里の 人間達は妖怪に襲われることを恐れて近寄ろうとしません。 立ち寄るのは自力で妖怪退治が出来る僅かな人間か、ここ幻想郷 でもトップクラスの実力を持つ勢力下の者達ばかりで、余計に人が 近寄れなくなっています。 …ですが、何事にも例外というものは存在するようです。 そう、あなたなのです。 ひょんなことから幻想入りして、慧音の庇護の下人里で暮らして いるあなたにとってここ香霖堂は、時折陳列している懐かしい物品に 出会える唯一の場所。 今日も香霖堂の扉を叩いては陳列している商品を眺めています。 そんなに欲しいんだったらせめて一品くらい買っていってくれよ と人と妖怪のハーフである香霖堂の店主、森近霖之助は言いますが、 ここの商品に『真っ当な』値段がついたためしはありません。 …!……?………! おや?向こうにできている人だかりで何やら談笑しているようです。 幻想郷の権力家達がみんな揃って我が子の自慢合戦をしているのさ、 不用意に近づくと危ないよと霖之助は教えてくれましたが、あなたは こっそりと様子を伺うことにしました。すると… 「私の自慢の娘、咲夜は時を止めることができるわ。家事一般は 当然のこと、ナイフ捌きもお手の物よ。瀟洒で完全、を自称する のに相応しいわね」 「光栄ですわ」 紅茶を一口、その後に傍らに佇むメイドのことを自慢するのは 紅魔館の主にして吸血鬼のレミリア・スカーレット。 「あら、うちのアリスちゃんはそんな程度のこと人形さんたちに 任せてすぐにでも片付けちゃうわよ。伊達に一人暮らしをしてる わけじゃないの」 「まぁ、一人暮らしだからその程度のことは出来ないとね」 普段はここ幻想郷に顔を出すことはありませんが、自慢の娘の 様子を時折見に来る魔界の神、神綺。 「その程度ではまだまだね魔界神さん。私の自慢の娘である藍は 式神の身でありながら、式神を扱うこともできるのよ。私の身の 回りの世話もしてくれるし」 「紫さま…(普段からこう言ってくれればなぁ…)」 外界で言われる事象『神隠し』の主犯にして幻想郷の管理人、 従えている式神を称えるスキマ妖怪八雲 紫。 「うちのイナバは狂気の瞳を持っていて、並大抵の者が力任せに 襲い掛かってきても余裕で撃退できるほど強いんだから。永琳に 薬学も師事してもらっているから、将来が楽しみね」 「そ、そんな輝夜さま、私なんか師匠に比べたら全然…」 御伽噺「かぐや姫」のモチーフとなった月人、不老不死の罪を 背負い…という肩書きはどこへやら、兎自慢する永遠亭の象徴、 蓬莱山 輝夜。 「妖夢は剣術に秀でていて、庭師としても雑用係としても優秀よ。 以前あなたの兎さんに一度勝利しているじゃないの」 「ゆゆっ、幽々子さま、そんなに挑発しないでくださいよぅ。 鈴仙さんだって困っているじゃないですか」 冥界にあると言われる白玉楼の管理人西行寺幽々子は、お庭番 にして抜刀術に秀でる妖夢を褒めちぎる。 「あーうー、その程度大したこと無いわよ!うちの早苗だって 私と神奈子の面倒を見てくれているし、仕事熱心だし、奇跡を 起こして見せる能力持ちなんだぞー!」 「洩矢さま、そう興奮しないでください。私は当然のことをして いるだけなんですから」 最近妖怪の山に現れた守矢神社の裏管理人、洩矢 諏訪子は子孫 であり自慢の娘である風祝の少女のことを負けじとアピール。 「衣玖は空気を読んで必要に応じて的確な行動をとることで私に 尽くしてくれてるわ。時々歯向かうのが珠にキズなんだけどね…」 「私はいつも必要に応じて行動しているだけです、総領娘さま」 天界に住む天人くずれの比那名居 天子も自分の使者の有能さを アピールします。さりげなく皮肉られているのは気のせいでしょう。 さぁ一通り出尽くしたか、と思ったところにまだ一人いました。 地霊殿の主、古明寺さとりです。彼女はまだ一言も喋っていません。 「『さぁ、貴方のご自慢の妹さんはいかが?』とでも仰る?」 第三の眼、で他者の心を読み取るさとりは、誰の心を読んだか 知りませんがそれを言葉にした後、ふっ、と得意げに笑いながら 語りだしました。 「家事が得意だ?弾幕を構築するための魔力が高い?特殊な能力 持ち?そんなものワケないわ。私の自慢の妹、こいしは床上手よ。 妹の魅力の前にあらゆる異性は文字通り骨抜きにされるわ!」 「お、お姉ちゃん!?それって物騒すぎるよぅ…」 そんなことを言われると思ってもいなかったか、思い切り動揺 しておろおろとうろたえる妹のこいし。しかし、さとりは続けます。 「最終的には殿方を喜ばせられるような技術が無ければ、ねぇ? 貴方達の従者はそこまで能がないのかしら?」 突然空気が変わるのを感じました。おやおや、と霖之助が溜息 一つついています。 そしてそこから凄まじい自慢合戦に発展してしまったのでした… 「この地底人は何を言っているのかしらね?うちの咲夜に不満を 抱く者など一人もいるとは思えないわ。ほどよい若さ、これが命よ」 「お嬢さま?」 流石の咲夜もただならぬ空気を感じ取り、 「アリスちゃんだって指先鍛えているから、どこをどうすれば殿方を 喜ばせることが出来るか良く分かっているわよ?」 「お母さん!?」 アリスは母親の暴走に驚き、 「藍が昔何人もの殿方を篭絡させた手練れであるということは、 皆さんご存知のはずでしょう?男の一人や二人、楽勝よ」 「紫さま、お戯れを!(ああっ、やっぱりこうなるのか!?)」 藍は語りたくない過去を無残にも主人に抉られ、 「イナバも負けちゃいないわよ。この兎の耳、尻尾、そしてこの ほっそりとした体からは想像もつかないほどの熟れたかじt…」 「わぁわぁ輝夜さま、やめてくださいよぉ!」 鈴仙は露骨にセクハラにはしる主を止めようと必死になり、 「年がら年中発情期の兎さんよりも、控えめで一生懸命に尽くす 妖夢のほうがウケがいいわよ。この未成熟なところが逆にそそr」 「駄目ぇ!幽々子さま、そんな風に言っちゃ駄目ですっ!」 妖夢は自慢する傍らで露骨に挑発する主を止めようとして、 「それじゃあうちの早苗はその要素を全て併せ持った、文字通り 存在が奇跡ね!若いし、控えめだし、体つきもいいし!」 「よ、喜ぶべきか恥ずかしがるべきか複雑です…」 早苗は主の自慢話に赤カブのように真っ赤になり、 「地上人如き、大したことなど無いわよ!衣玖の空気を読む程度の 能力の前に、男達は皆死屍累々になること間違いなしだわ!」 「総領娘さま、それでは意味が無いと思いますが」 衣玖は主に冷静に突っ込みました。 ―彼女達の自慢合戦が継続中です、しばらくお待ちください― それからどれほど時間が経ったのでしょうか?全員が喋り疲れて グロッキー状態になった頃、紫が切り出しました。 「不毛な自慢合戦をしていてもキリがないわ。いっそのこと、誰が 真に優れているか素敵な殿方に決めてもらいましょうか」 ああちょうどいい、そこにいるじゃないのとレミリアがあなたの ことを指差すと、全員の視線があなたに向けられました。視線上には 霖之助も入っていましたが 「二重の意味で遠慮するよ。厄介ごとは御免だし、彼女達の視線は はっきりと君に向けられているようだからね」 柳に風、といった感じでかわされてしまいました。 主はボクシングのセコンドのようにそれぞれの従者、自慢の娘に つき一言檄を飛ばしています。 「咲夜!」 「お任せくださいお嬢さま。咲夜に不可能などありませんわ」 「アリスちゃん、大丈夫よね?」 「大丈夫よお母さん、今度そっちに行ったら結婚報告するわね」 「妖夢、負けちゃ駄目よ」 「いつだって全身全霊です、大丈夫、負けたりなんかしません!」 「藍、わかっているわね?」 「紫さまご心配には及びません。必ず勝ちますとも」 「イナバ、負けたらおしおきどころじゃ許さないからね」 「ううっ、どうしてこうなるんだろう…で、でも勝たなくちゃ」 「早苗、今こそ奇跡の力でゴールインよ!」 「帰ったらお二人に次世代の風祝をお見せします…!」 「衣玖、空気を読みなさい」 「空気を読んで勝利、その後駆け落ちなんて…ああっ」 「こいし、今こそ本気になるときよ。無意識の力を存分に活用なさい」 「え、えーっと…う、うん、やってみる!」 文字通り逃げられない状態です。 観念して誰か一人を選ぶべきだよ、幻想郷の少女達はタフだからね と霖之助が肩を叩いて言いました。 さぁ、あなたならどうしますか? コマンド? 新ろだ168 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ですから、元々外の人間なんですから外から来た守矢神社に住まわせるのが良いでしょう!」 「いいえ、稗田が預かったんですから、このまま稗田で預かります!」 ぼんやりと縁側に座っている自分の目の前で、二人の女子が言い争いをしている。 切欠は何だったのだろうか、途中から観戦している自分には知る由も無いが、文脈からそれが自分に関しての戦いだと推測された。 ただ自分の何でそんなにも争っているのかが皆目見当も付かない。 だから仕方無しにその争いを見守ることしか出来なかった。 渡り廊下が軋んだ音を立て、誰かがやってきたことを告げる。 だがその存外大きな音も目の前で白熱した少女たちには届かないらしく、依然言い合いは続いていた。 「久しぶりだな。変わりないか」 「おや、慧音さん」 一つ頭を下げて挨拶すると向こうも同じようにして返してきた。 そのまま慧音は自分の隣に座り、話を続ける。 「どうしたんです? こんなところに」 「いや、寺子屋で使う教科書について話し合おうと思っていたんだがな。妙な場面に出くわした」 妙な場面。確かに全く妙である。そもそもこの二人の喧嘩自体が想定できない。 恐らくは苦虫を噛み潰したような顔をしていただろう自分に慧音は言う。 「止めないでいいのか、あのまま争わせておいて」 「構わないでしょう。手を出すような人種じゃありませんし」 「それもそうだが。それにしたって、まあ」 彼女はそこで一旦区切ると、じろじろと自分の顔を覗き込みながら言った。 「なんだか、随分と人事のような顔をしているじゃあないか」 自分はそこで一つ溜息を吐き答える。 「それはまあ、余り関わりの無い争いですし。怪我をしないのなら放ってても良いでしょう」 「でもお前のことで争っているんだろう」 すかさず言い返され、若干たじろぐ。 「とはいえ実感が湧かないのでどうにも。それに……」 言い難い事、この場では特にだ、なので言い澱むが言う他無いので仕方無しに言う。 「それに直に向こうに帰りますしね」 「ああ、やっぱり帰るのか。いつぐらいになるんだ?」 多少驚いたような調子で訊いてきたので、博麗の巫女との少し前の会話を思い出して答える。 「いつかは未定ですが、準備が出来たら連絡が来るようです」 「準備?」 怪訝な顔をして問うてくる慧音に答える。 「ええ準備らしいです。それが帰らせる準備なのか、それとも自分の冬の準備なのかは判りませんが」 それを聞いて納得したような表情を慧音はし、その話をやめて他の話を始めた。 そして二人は向かい合って話をしていた為、阿求と早苗が自分たちのほうを向いて微動だにしていないことなど気付いてもいなかった。 「どういうことですか? 私を置いて居なくなるつもりなんですか?」 空が暗くなったと思ったら、不意にそのようなことを言われた。 どうやら太陽が雲で隠れたのではなく、阿求の体で隠れたらしい。 「前にも帰る心算だって言わなかったっけ」 「ええ言われました。言われましたとも」 阿求の発した問いに答えると、自棄になった口調で言い返される。 「でも本当に帰る心算とは思いませんでしたよ。私にあんなことまでしておいて」 慧音が不信げな目つきでこちらを見てくるが、この場では無視しておく。 「そうですよ、何で帰るんですか。ずっとこっちに居れば良いじゃないですか」 「いやだって、こっちいろいろ怖いし」 「妖怪が怖いなら、幻想郷縁起読んで勉強すれば良いじゃないですか。何ならきっちり教えますよ」 自分が答えるとすかさず阿求が言い、早苗もそれに続いて言う。 「大丈夫です。神徳で護身しますし、術も教えます。早く神社に行きましょう」 怖いのはお前らだよとは言え無い。言ったら後が怖いからだ。 「だから、神社に連れて行こうとしないで下さい。大体あそこじゃあ里に降りられないでしょう」 「空だって飛べるようにちゃんと教えます。何も不便になるようなことはありません」 阿求と早苗の言い争いは先ほどにも増して白熱して行き、そこに自分の意思の介在する隙は無かった。 「こら、お前達やめないか」 「慧音さんは少し黙ってて下さい」 余りの白熱振りに慧音が慌てて仲裁に入るが、阿求に即座に沈黙させられる。 「そうです。関係ないですから向こうでお茶でも飲んでてください」 早苗にも言われ、慧音は縁側で不貞腐れたように壁に凭れて足を投げ出してしまった。 「もういいです。このまま神社に連れて帰ります」 言って早苗は首を引っ掴むと、風を起こして空を飛ぼうとする。 それを見て阿求は慌てて胴を掴み、浮遊を阻止しようとした。 「待って、早苗さん首絞まってる!」 「ちょっと辛抱してて下さい。もう少し上がったら抱えなおしますから」 息を振り絞って悲鳴を上げるが、早苗には聞き入れられない。 すると阿求が自分の腰に抱きつきながら煽るように言い放った。 「早苗さんですって、それが限界なんですよ。私には呼び捨てです。あなたとは違うんです!」 それを聞くと、負けじと早苗も応戦する。 「友達程度にしか思われていないんじゃないですか? 親しき仲にも礼儀有りって言うでしょう!」 だんだんと目の前が暗くなっていくのを感じながら、そんな喧騒を聞いていた。 気が付くと布団の上に寝かされていた。 見渡してみると畳敷きに障子戸、回廊と稗田邸と同じ造りの様だが部屋が少し大きい。 こんな部屋があったのかと思いながら起きると、傍らに居た女性に声をかけられる。 「あら、もう大丈夫なの?」 医者の類だろうか、それにしてはそれらしい服には見えないが、と内心訝しみながら返答する。 「ええ、なんとか助かりました。ありがとうございます」 しかし彼女は小さな溜息を吐くと言った。 「残念だけど、助かってないのよ」 「幽々子様、紫様がお見えです。急ぎだそうですが」 障子の外から声がかけられた。ここは―― 新ろだ179 ─────────────────────────────────────────────────────────── 妖怪の山の中にある川。深くはないが、決して浅いとも言えないそこ。 そのすぐ傍にある石場に腰掛ける、三人。白狼天狗の椛と、河童のにとり、そして人間である○○。 種族もばらばらの三人だが、それと関係なくこの三人は仲が良い。暇があれば○○は妖怪の山までやってくる し、にとりと椛もそれを歓迎する。 「それにしても、今日は暑いね」 自分達を燦々と照らす太陽を見上げて、○○は呟いた。その頬には一筋の汗。 「そうだね、こんな日は川の中でキュウリを食べたら気持ち良いだろうね」 「にとりはいつもじゃない。でも、確かに今日は川で泳ぐと気持ち良さそう」 そういう二人の顔にも、うっすらと汗が流れている。その視線は、じっと川の中を見ていた。 「じゃあ、泳ごう」 言うやいなや、○○は着ていた服を脱ぎ始める。唐突に始まるストリップに、椛とにとりは手で顔を覆う。 流石に下まで脱ぐ気はないらしく、○○は上半身裸で川へと飛び込んだ。ばしゃんと、水が跳ねて椛とにとり に微かにかかった。 「ぷは、気持ちいいよー。二人も泳ごうよ」 水から顔を出し、○○は二人を誘う。河童であるにとりならともかく、椛には替えの服がない。それを言えば ○○も同じだが、男と女では少々勝手が違う。 「いいなぁ」 「椛に悪いし、私も遠慮するよ。○○だけ泳ぎなー」 「そう? 気持ち良いのに」 残念そうに呟き、○○は水の中に潜る。その姿に椛とにとりは顔を見合わせて、笑う。普通なら下心があるの ではと疑う所だがこの○○、天然なので本当に水の中が気持ち良いから入ればいいのに、という考えしかない。 そんな○○だからだろう、二人は○○が人間にも関わらず好意を寄せている。 「元気だねぇ」 「そうだね」 楽しそうに泳ぐ○○。それを眺めて、にとりは苦笑して呟いた。リュックから取り出したきゅうりを、一口齧 る。ぽりぽりという咀嚼音に釣られてか、椛も一つ頂戴と言ってもらう。 それから暫く、○○が泳ぐ音と二人のきゅうりを齧る音だけが聞こえる。 「あ、二人ともきゅうり食べてる。ずるいなー」 「○○も食べるかいー?」 「食べるー」 誘われて○○は泳いで岸へと近づいていく。しかし、その途中で不意に○○の姿が水中へと消えた。 『?』 きょとん、として状況を見守っていた二人。次に○○が顔を出したとき、ばしゃばしゃと手で水を叩く音でよ うやく溺れているのだと気付く。 『○○!』 服が濡れることなど構わず、慌てて川へと飛び込み溺れている○○を岸まで引っ張っていく。出来るだけ平坦 な地面に○○を寝かせる。川から岸へと上がるとき、既に○○の身体はぐったりとしていた。溺れたときに水 を飲み込んでしまったらしい。 手に口をあてるが、息をしていない。このままではまずいと、椛はすぐに○○の気道を確保。鼻をつまみその まま顔を近づけて唇を――― 「ちょっと待った!」 それを止めるにとり。なんで止めるのかと、椛はにとりを睨んだ。 「人工呼吸なら河童の私に任せな。その道に関してはプロだよ」 そういい、椛を押しのけて○○に顔を近づけていく。その頬が、やけに赤く染まっているのに気付いた椛はそ ういうことかと気付き、にとりを押し退けた。 「にとりはただ○○にき、き、キスしたいだけじゃない! そんな不純な理由でするのなら、私がやる!」 「それは椛だって同じじゃない! ちょ、私がやるから椛は引っ込んでなさい!」 「わーたーしーがーすーるーのー!」 ぎゃあぎゃあと、今にも死にそうな○○の横で椛とにとりは人工呼吸をする権限を巡って騒ぐ。その間も、○ ○は刻一刻と死へと近づいているというのに。 次に○○が目を覚ましたとき、そこは白玉楼の一室だったとかなかったとか。 新ろだ187 ─────────────────────────────────────────────────────────── ここは幻想郷の博麗神社。 今日も今日とて宴会が行われている。 騒ぐことが好きな連中が集まっている中、一人少し離れたところでちびちびと酒を飲む男がいた。 彼の名は○○。外の世界からきた外来人でここの住人たちを気に入り外界に戻ることをせず、この幻想の地で骨を埋めようと決意した。 彼も騒ぐことは嫌いではないのだが酒の席ではちょっと距離を置いている節がある。 そんな○○に二人の少女が近づいた。 「○○、飲んでる?」 「ああ、そこそこにな」 「そのわりには杯が空いてないぜ?」 紅白の腋の開いた独特の巫女服と白黒の魔女のような格好をしている。 博麗霊夢と霧雨魔理沙だ。 「あんまり酒は強くないんだ。自分のペースで飲みたいんだよ」 「まぁ、無理に飲んでも楽しくはないからね」 「でもそれじゃつまらないんだぜ。一回自分の限界を知るのもいいと思うぜ」 「でもなぁ、飲み過ぎると記憶が飛んじゃうから……その時の俺の行動を知る人はみな口を噤むから……」 「へぇ、面白いこと聞いたわ」 「そうだな。へべれけになった○○か。ちょっと見てみたいな」 「やべ、やぶへびだったか。じゃ俺は別のところで飲んでるから。じゃっ!」 「魔理沙!!」 「言われるまでもないぜっ!」 霊夢の呼び声で○○を羽交い絞めにする魔理沙。 「んふふ……さぁ覚悟しなさい。だぁいじょうぶ、ここには医者も居るから大事にはならないわ」 「ちょっ、待て、誰か助けて……ってみんな無視!?」 一同考えは同じなのかニヤニヤとしている者、すまなそうな顔でこちらを見ている者、誰一人止めようとはしなかった。 精一杯の抵抗として口を固く閉じ首を振る○○。 「んもぅ、いい加減観念しなさいよ。こうなったら……」 「んぶっ!?」 霊夢は○○の顔を掴んで口移しで口内に酒を流しこむ。 こくりこくりと喉が動き、酒を飲み込まされているのが分かる。 ぷはっと息をつき霊夢は○○を見つめる。 「ふぅ、どう? ○○?」 問いかけに答えず、だんだんと顔が赤くなり力尽きたように○○はぐったりと魔理沙に体重を預けてしまう。 「お、おいっ! 大丈夫かっ!?」 「た、大変っ! まさかこんなことになるなんてっ!?」 自分たちを基準にしていたためか○○が酒に弱いという可能性を忘れていたのだ。 慌ただしくなる中、むくりと○○は起き上がった。 どうやら大丈夫だと分かり一安心する少女達だが、○○の目が完全に座っていることに気が付くべきだった。 「……れいむぅ」 「え? なに○○、うむぅっ!?」 ○○は霊夢を抱きしめると唇を重ね合わせた。 急なことに霊夢は目を白黒させるが、状況はさらに悪化し始めた。 (えっ!? そ、そんなっ! し、舌が入ってくるぅ!) ぴちゃぴちゃくちゅくちゅと水っぽい音が聞こえ時折霊夢の身体がひくんと震える。 (う、うそ……○○ってこんなにキスがうまいの……?) 「ちゅ……ちゅぷ、んん……はぁ、んっ」 最初は流されるままだった霊夢も○○の背中に腕を回してしがみつく。 ○○も頬に掌を当てて彼女をもう片方の腕で抱きしめる。 そんな二人の様子をギャラリーは赤面しつつも目が離せなかった。 ――ちゅっ……ちゅぱっ……ちゅっ、ちゅっ、ちゅぷ……ちゅぷ…… (ふあぁ……らめぇ、らめなのぉ……このままじゃ、○○に全部吸われちゃうよぉ……) そう考えていてもむしろこの心地よさに流されていたいという欲求が勝り、腕の力を強めて○○に更にしがみつく。 その姿はもっとしてと哀願しているようだ。 「あむ……はぁ、む……んっ、ちゅ、ちゅく……んふぅ……ちゅぷっ、あむ……ちゅっ、――んんぅっ……!」 びくびくっと霊夢の身体が震えると腕の力が抜け崩れ落ちるように倒れこむ。 その顔は赤く呼吸が荒い。目の焦点が結ばれていなく唇が艶めいているのが妖しい魅力を醸し出している。 周囲の野次馬はそろってこう思った。 (さ、最強の酔っ払いが降臨した!!) そうこうしているうちに○○は魔理沙を陥落し次に近くにいた咲夜をも撃墜した。 のちに彼女はこう語る。 『私は最初何をされたのか分からなかった。……頭がどうにかなりそうだったわ。 ……超スピードとかそんな単純なものじゃなかったわ。まるで私がいつもしている時を止めたかのように…… いえ、それ以上の恐ろしいものの片鱗を味わったわ……』 それ以上彼女は語ることができなかった。身体が震えて顔が桜色に染まっているのはあの時のことを思い出しているからだろうか。(取材者 射命丸文) 一歩ずつゆっくりと近づいてくる○○に対し戦慄を覚える幻想郷の少女達。 幽々子が思い出したように叫ぶ。 「紫! スキマよ! 彼をスキマに閉じ込めるのよ!!」 「そ、そうね! ごめんなさい○○!」 足元に開いたスキマに吸い込まれる○○。 これで一安心と思った瞬間紫は後ろから抱きしめられた。 「ふふふ……ひどいなぁ、ゆかりんは。そんなに俺を独り占めしたかったのかい?」 「そ、そんな……ありえない……」 彼は紫の後ろのスキマから上半身を出し彼女の背後から抱きしめる形になっている。 その姿はまるで第12使途から這い出てきた初○機のよう。この酔っ払い恐るべし。 背筋に指を這わして首筋に息を吹きかける○○にぞくぞくっと身体を震わせ、甘い声をあげる紫。 「かわいいなぁ……ゆかりんは。そんなに気持ちいいのかい?」 「あぁ……いいの……私、そこ、弱いのぉ」 身もだえる彼女には普段の威厳はまったくなかった。 耳を甘噛みされ、首を反らされてキスをされる。 お互いの顔が逆になるような格好だが全然苦にしていない。 某決戦兵器のようにきっかり5分キスをされて、あっさりスキマ妖怪は撃墜された。意外にウブらしい。 新たな獲物を求めて再起動する○○を見て幽々子は悲しげな声を出す。 「ああ、もうお終いよ……○○によって幻想郷は桃色ピンク空間に変えられてしまうのね……」 「幽々子様……」 「……でもそれも悪くないかもね」 「みょん!?」 あっは~ん♪ 次に○○が記憶を取り戻したのは布団の中だった。 頭が痛み、やはり記憶がない。 霊夢にむりやり酒を飲まされたところまでは覚えているのだが…… と、自分の上に誰かが眠っているのに気がついた。 布団を捲り自分の胸元を見ると漆黒の髪が呼吸に合わせて揺れている。 体中にキスマークがつけられ、下着姿に袖だけという何とも扇情的だ。 ○○が目を白黒させていると寒さで身震いした霊夢が目を覚ました。 「……おはよ」 「おはよう。で、何でそんな恰好で俺の布団の中にいるの?」 「……昨日のこと覚えてないの? あんなに情熱的にしてくれたのに……?」 「えぇええっ!?」 「……まぁ覚えていないならいいわ。ただ、責任はとってね♪」 (お、俺は何をしてしまったんだ!?) その後あの宴会に参加していたメンバーに話を聞こうとしても顔を赤くして逃げて行ってしまう。 そして酒の席で新たなルールが加わった。 『○○を決して潰させないこと』と…… 新ろだ192 ───────────────────────────────────────────────────────────
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2021年2月20日 出題者:従業員よっしー タイトル:「リモートハーレムの男」 【問題】 男はアレを女のアソコに入れた。 アレを女のアソコからヌイた男は、 時間がそんなに経っていないのに、 固いアレを別の女のアソコにも入れた。 一体どういうことだろう? 【解説】 + ... 歯科医の男は歯科検診で訪れた学校で、虫歯や歯の腫れなどを確認するために、 口内鏡を女子児童の口の中に入れた。 次の番号の児童も女子で、交換した口内鏡を口の中に入れたのだった。 最初にイヤらしい質問をした人が、本日のエロチャンピオンです。おめでとうございます。 《エロ》 配信日に戻る 前の問題 次の問題
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……ふぅ、大体こんなものでしょうか。 ん? はい、どうぞ? ああ、ありがとうございます……もうそんな時間ですか。 そうですね、では少し休憩するとしましょうか。 ん……美味しいですね、この羊羹。 程良い甘さがなんとも……はい? ああ、それですか? 少し幻想郷縁起に載せる人物を追加しようと思いまして。 ええ、その資料はそのためのものです。 いいえ、妖怪じゃありません、人間の方です。 いえ、只の人間ですよ? 外の世界から来たことを除けば、空を飛んだり魔法を使うことも出来ない一般人です……しいて挙げるとすれば、逃げ足が物凄く速いことぐらいでしょうか。 なんでそんな人を載せるのかって? 確かに彼は、我々人間の間では無名です。 ですが、人間以外の間ではとても有名な人なんですよ。 現在、名の有る人外達が対立していることはご存知ですか? ……そうですね、あれだけ大っぴらにやっていれば知る気が無くても知ってしまいますね。 その人外の方達、正確には……紅魔、西行寺、八雲、永遠亭、風見、伊吹の鬼、天狗、閻魔、魔界、そして洩矢の神々。 どれもこの幻想郷では知らぬ者は居ない程の方達ばかり。 この方達の対立の原因が、彼なんです。 ええ、私も驚きました。 何故これほどまでに強大な力を持った方達が、こんな、なんの変哲も無い只の一般人を奪い合うのかと…… 答えは単純にして明解。 所謂、恋の多角関係というものです。 はい呆けないでください、気持ちは分かりますけど。 残念ですけどこれ本当なんです。 紫様にお会いした時に、直接聞きましたから。 彼のことを話す時の彼女は、正に恋する乙女といったところでしょうか。 幾ら強力な妖怪と言えども心は少女、ということですかね。 おや? 誰かいらっしゃったみたいですね。 ……あら、これはこれは。 貴方も大変ですねぇ……離れが空いていますから、どうぞそちらへ。 ……彼も相変わらず大変みたいですね。 え? ああ、貴女は会ったことが無かったんでしたっけ? 偶に痴話喧嘩から逃げて、此処に匿って貰いに来るんですよ。 まあ、相手をするには分が悪すぎですからねぇ…… それでですね、何故彼女達が彼に惹かれたのかが気になった私は、彼についての情報を集めたんです。 ええ、あなたの予想通り、烏天狗の彼女からです。 彼についての情報が欲しいと言った時の彼女の形相と言ったら……もう凄かったですよ~。 いつも笑顔で好奇心旺盛な彼女の顔から笑みが消えて、一瞬無表情になった後、突然般若のような顔になって睨みつけてきましたからね。 もう殺意剥き出し、殺す気満々。 あの時、あと数秒理由を話すのが遅れていたら……私、今この世に居ないんじゃないでしょうか? いやはや、恋をするとああも変わるものなんでしょうかねぇ…… まあ、すぐに誤解を解いて資料をお借りすることは出来たのですが、その後がまた大変でした……言わなくても分かりますよね? 彼との出会いから始まり、彼に恋をした時の心境、寝顔を覗き見た時の胸の高鳴りなど、その他色々と…… 資料の恩が有るとはいえ、流石に惚気話を半日は辛かったです…… ま、その話はこれくらいにしておいて……で、それがこの資料です。 大半が彼女の私的な資料でしたが、先程なんとかまとめることが出来ました。 この資料によると、どうやら彼は彼女達以外の人外からも好かれているみたいなんですよ。 例に挙げると湖の氷精や夜雀、宵闇の妖怪などですね。 彼女達も彼のことを慕っているみたいです。 ですが彼女達の場合、幼さも相まってか恋愛感情ではなく純粋な好意だと思われます。 優しい人ですからね、女性や子供には特に。 それに相手が人間だろうが人間以外だろうが差別しない。 そこに皆さん惹かれたんじゃないでしょうか? そういう事には疎そうな方達ですからねぇ……恋に落ちたらラブラブ街道一直線!みたいな感じでしょうか? ……すみません、忘れてください。 なんにせよ、もてる男は辛いってことですね。 ま、彼に自覚がないっていうのが、そもそもの原因なんでしょうけど。 朴念仁とは良く言ったものです。 え? 何故彼が誰にも捕まらないのか、ですか? そうですね、理由を挙げるなら二つ。 一つ目は、彼に出来るだけ被害を与えたくないため。 想い人ですからね、怪我などは避けたいのでしょう。 相手に嫌われること、相手を傷つけること程、辛いことはありませんから。 なら何故争っているのかって? そんなの、ライバルは一人でも少ない方が良いからに決まっているじゃないですか。 そして二つ目は、彼を守護する者がいるためです。 ええ、それはもう、とびっきりの守護者が。 幻想郷最高クラスの彼女達も、本気になった彼女と戦うのは不利と分かっているのでしょう。 ですから彼の傍に彼女が居る場合は滅多に彼に近づかない、もとい近づけないという訳です。 当然、捕まえるなんてもってのほか。 彼女が彼の傍を離れるまで我慢するしかないんです。 ……と言っても、あの二人は大抵一緒に居ますから、捕まえるチャンスなんて滅多に無いんですけどね。 守護者ですか? 貴女も良く知っている人物ですよ? というか、この幻想郷で知らない人はまず居ないでしょう。 ほら、あそこの神…………ん? また誰か来たみたいですね? ……あら、これはいつも御苦労様です。 彼ですか? こちらには来ていませんよ? ええ、本当に。離れになんて居ませんよ? いえいえ、どういたしまして。 はい、それでは。 ……ふぅ。 え? 彼の居場所を教えて良かったのか、ですか? 被害は少しでも減らしたほうが良いでしょう? ……ふぅ、御馳走様でした。 さてと、一息入れたところでそろそろ作業を再開しましょうか。 ええ、ありがとうございます。 では、また夕御飯の時に。 …… ………… ……………… さて、そろそろでしょうか…… 『何処かに出かける時は私を呼べっていつも言ってるでしょうがこの馬鹿ーーーーーーっ!!!!』 『わかった! わかりました! 今度から気をつけます! だから……』 『心配ばかりかけさせるなーーーーーーっ!!!!』 『ギャーーーーーース!!!』 <チュドォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!> ……後で離れの修理を頼んでおきましょうか。 さてと、執筆執筆…… 『幻想郷縁起』 英雄伝・追記 「異邦人・○○」 外界から来た青年で、誰に対しても差別なく接する優しい性格の人物である。 その対象は人外にも及び、よく氷精や宵闇の妖怪、夜雀などと遊んでいるのが目撃されている。 能力はこれと言って保有していない、いわゆる一般人である(しいて言えば、逃げ足が物凄く速いことだろうか) だが、一般人だからといって甘く見てはいけない。何故なら彼の周囲には最上級の危険が山程あるのだから。 彼という人間は、何故か妖怪・その他、人外の者達に好かれてしまう体質(もしくは人柄)であるらしく、その影響(注:1)は甚大であり、 常に彼女達から注視されているのである(注:2) なので、彼に接触する際には不貞を働かぬよう注意が必要だ。 もし不貞を働いた時、その先に待っているものは、死、のみである(注:3) 彼自身、そのことを不満に思っているらしく、最近では若干改善されたようである(注:4) しかし、彼女達が何故そのようなことをしているのかを理解していない模様(注:5) 幻想郷に来た当初は村に住んでいたのだが、周囲の環境が変わったため、現在はその現状を見かねた巫女の計らいによって、 博麗神社にて生活をしているらしく、巫女と一緒のところが度々確認されている(注:6) 時折、様々な場所で彼と巫女の喧嘩(というより私刑?)が見られるが、見かけた場合は速やかに退避するのが得策であろう。 触らぬ神に祟り無し、である。 (注:1) 所謂恋の病。 強大な力を持つ者故、そのような事柄には不慣れであったのだろう。 突然湧き出した感情に戸惑いながらも彼女達は現在、彼に対して求愛活動真っ最中である。 ちなみに、今起こっている人外達の対立はこのことが原因。 恋は盲目と言うが、少しは程度というものを知って貰いたいものである。 (注:2) 主な例として、紅魔館の面々、西行寺の亡霊嬢とその庭師、八雲一家、永遠亭、風見幽香、伊吹の鬼、烏天狗と白狼天狗、 閻魔とその死神、魔界神、洩矢神社の神々などが挙げられる。 (注:3) 特に女性は要注意。 女性の嫉妬というものは、どの種族にも存在するものだが、いかんせん相手が相手。 (注:4) だが油断は禁物である。 (注:5) 朴念仁とは彼の為にある言葉であろう。 (注:6) 巫女との関係は現在調査中。 これは私見だが、もしや巫女も彼に好意を抱いているのではなかろうか? ……ふぅ、こんなところでしょうか。 では、これを清書に…… あ、お帰りですか? え? ああ、いえいえ、そんなお気になさらずに、いつものことですから。 はい、はい……ええ、わかりました。 それでは、また、お気をつけて。 お大事に~。 10スレ目 572 ─────────────────────────────────────────────────────────── 穏やかな日差しが窓から射しこむ。 俺は気持ちの良い暖かさのせいでついウトウトとしていた。 ガンガン! その眠気を吹き飛ばすような音が玄関の方から聞こえてくる。 おそらく来客だろう。 そう思った俺は玄関の方へ行き、扉を開けた。 「また、来てやったわよ! ○○!」 そこにいたのは、バカ四人+保護者。 偉そうに腕を組むチルノ。 チルノの態度に申し訳なさそうにしている大妖精。 相変わらず、何を考えているのかわからないルーミア。 蝶やら蜂やらいろんな虫を侍らせたリグル。 俺が出てきたのに、気にせず歌っているミスティア。 「ホント、いつもと変わらないよな」 「すみません、○○さん……」 「いや、君のせいじゃないよ」 「何で大ちゃんが謝ってんのさ?」 「お前は少しは遠慮ってもんを覚えろ、このバカ」 「むきー! バカって言った方がバカなんだぞ!」 「はいはい。じゃ、中に入れよ」 五人にそう告げ、俺は家の中へと引っ込んだ。 五人が俺の家に来るのはこれが初めてではない。 いや、実を言うと何回目かすら覚えてない。 まぁ、それぐらい多いってことだ。 俺は外の世界にいたとき、小説家の真似ごとをしてた。 だからこっちに来てから、外の世界にあった物語とか、自分で作った小説なんかを話したり書いたりした。 それを目の前の連中にもやったところ、どうやら大ハマリしてしまったらしい。 それ以来、こいつらは俺の家に入り浸っているってわけだ。 「それで、この前はどこまで話したっけ?」 机の上にいろんなお菓子を置きながら聞く。 「実は主人公の相棒が敵だった、ってとこまでだよ」 リグルが答えてくれた。 「ああ、そこか」 一息吸い、五人の方を見る。 皆が皆、真剣に聞こうとしてくれている。 これほど真剣だと、こっちも熱が入るってもんだ。 「じゃあ、始めるか。『そいつの言葉に俺は衝撃を隠せなかった』……」 「『そして、主人公は新たな任務につく。仲間達とは別れることになったが、それでも彼は寂しくはなかった。 だって、彼らの間にはちゃんとした絆があるから』……。おしまいっと」 充足感を感じながら、彼らの方を見る。 興奮冷めやらぬ、といったところであろう。 これなら甲斐があったというものだ。 いや一人だけ、チルノが何やら難しそうな顔でうつむいている。 腹でも壊したか? そう思った瞬間、何を決意したのか急に顔を上げた。 「ねぇ、○○……」 その言葉にはいつもの元気さはなかった。 「○○は……どこかにいなくなったりしないよね?」 しんみりとした声でつぶやく。 その途端、周りの空気が急激に重くなった。 全く、このバカは本当に空気が読めないな。 なんて軽くおちょくってやろうとした瞬間、ミスティアが口を開いた。 「外の世界に帰ったりとか……しない、よね……?」 不安げな声だった。 見れば他の四人も一様に泣きそうな悲しい顔をしていた。 いや、大妖精などは既に涙が見えている。 「はぁ……」 大きな溜息を吐いてしまう。 本当に俺って愛されてんだな。 少なくとも、ここにいて欲しいと思われる程には。 俺は立ち上がり、チルノの髪をくしゃくしゃにしてやった。 「な、何すんのさ!」 「やかましい。帰る気があるならとっくに帰ってるわ」 それは俺の偽らざる本音だった。 つまるところ、俺は幻想郷が、こいつらのことが気に入ってしまったんだ。 そう、外の世界よりも。 「だから、そんな顔すんな。お前らにはそんなのよりもバカっぽい顔のが似合う」 「むー、バカじゃないもん……」 目の前でチルノがうめいているようだが無視する。 「さーてと、こんなにいい天気なんだから外で遊ぼうぜ」 「「「「……うん!」」」」」「……はい!」 ようやくこいつらの顔に笑顔が戻った。 やっぱ、何だかんだで俺はこいつらのこういうところが好きなんだな。 「じゃ、戸じまりするから先に出てろ」 そう言い、キッチンの方へ火が止まっているか確認しに行く。 ホント。俺って恵まれてんなぁ。 こんなにいい奴らに囲まれて。 思わず笑ってしまいそうだった。 「火元はオッケーっと。じゃ、行きますか」 俺は満ち足りた気分で、あいつらの待つ外へと、その足を踏み出した。 12スレ目 549 うpろだ846 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「十三、十四、十五……これくらいかな」 早苗さんが大豆の数を数えている。 もう節分なので、皆豆を食って無病息災やら願うということだ。 「八坂様は大豆いくつ召し上がられますか?」 「バケツ一杯」 「なら俺は二杯で」 「じゃあ私は三杯」 「早苗、やっぱり四杯にして」 「「どうぞどうぞ」」 「おま、謀ったなコワッパーズ」 背中のオンバシラを叩きつけながら神奈子様が言う。 ズドーンと良い音を立てるオンバシラと、 直後鈍い音を立てて神奈子様の延髄に叩きこまれる早苗さんの蹴りの対比は非常に怖い物があった。 「皆さんバケツ何杯分も豆がありませんよ」 ずれた袴を直しながら早苗さんが言う。 「いや本当に作らなくても良いよ」 「そうね、それより酒のほうが良いわね」 「……いっとく?」 くいっとグラスを傾ける仕草をしながら諏訪子様が言う。 「でも発泡酒より麦酒のほうがいいわね」 「よーし、それなら蔵から出してこようか」 意気揚々と蔵に行く二柱、大してこちらの一柱は頭を抱えている。 「はぁ……、○○さんはいくつですか?」 「二十三頂戴」 「はい二十三……あれ? 今二十三歳ですか?」 「そう、今年二十四になる」 「じゃあ今年本厄ですね。厄除けは……まだですね」 「うん、まだだね。ここじゃやってないし、ここ以外には行ってないし」 「ほうほう○○は今年が大厄か」 神奈子様が麦酒片手にやってくる。 「それじゃきっちり厄払いしておかないとね」 つまみに何かの干物を齧りながら諏訪子様が来る。 「それでは今から厄払いしましょうか? もう結構遅い時間ですが」 「うん、俺は構わないけど」 「それじゃあ早苗、準備のほうはお願いね」 普段妙なことばかりやっている神様なのだから、お祓いも随分妙なことになるのだろう、 そう思っていたがそういうことは無く、粛々と神事は進められた。 でも神奈子様の膝の上に諏訪子様が座るのは無しだろ。 「それでは最後にこのお神酒を飲んでください」 中に少しの透明な液体の入った小さな椀を渡される。 ぐっとやるまでも無く、少し傾けただけで中身はすぐに空になった。 「おおいい呑みっぷり。じゃあ、その意気でこっちも行こうか」 そういって神奈子様がもう一つ、漆塗りの盃を差し出してくる、角隠しをして。 「えー神奈子様、この盃はどういった意味を持つ物なんでしょうか」 「もちろん固めの盃だ。三々九……」 途中まで言うと神奈子様の手の中の盃は諏訪子様に取られ飲み干されてしまった。 「ちょっと何するのよ諏訪子!」 「一人で抜け駆k……し……」 諏訪子様も途中で言を止める。その目の前には…… 「鬼っ子じゃ、鬼っ子がおる!」 「まずいぞ、いつにも増して袴が青くなっている! あれは攻撃色だ!」 「ま、待つんだ早苗さん! 話し合おう! そ、そうだ。飴を――飴を上げるから!」 「どうして八坂様は最後まできちんと締められないんでしょうね……」 酷く怒気を孕んだ笑顔を見せる早苗さんがいた。 (神奈子、何とかしなさいよ) (何とかってどうすりゃいいのよ) ひそひそと皆で相談する。実際には生贄を選んでいると言ったほうが良いのだが。 (なんか早苗さんの頭に角が見えてきたよ) (角……よし、その角隠してしまおう) (いや比喩だから、喩えだから。意味ないですよそれ) (よし手伝うよ。○○、早苗ちゃんの気を引いといて) (やるの!?) 言いながら○○を押し出し、その後ろに陣取る諏訪子。 それより数瞬遅れて動き出す神奈子。 「OK、落ち着くんだ早苗さん。まず落ち着いて、その大幣っぽいものを下ろすんだ」 「落ち着いています、私は十分に冷静です。さあ、そこをどいてください」 「そんな物を振りかぶっちゃいけない、ああ絶対にいけないんだ」 早苗にクリンチしつつ、冷静になるよう声をかける。しかしあまり意味がない。 「早苗ちゃん落ち着いて!」 そんな時に真後ろから諏訪子が突進しつつ説得に来る。 全く慮外の行動だったため○○は為す術無く、早苗を下に巻き込む形で地面に倒れる。 かろうじて腕を下に敷くことが出来、早苗を下敷きにすることは避けられた、 しかし妙な体勢なのと、上に諏訪子が乗っかっているため一度腕を抜かなければ立つことが出来ない。。 「早苗さん、とりあえず一旦そこから退いて。あと諏訪子様降りて」 「え、ああはい、分かりました」 驚いたせいか落ち着きを取り戻し、体を上に引き摺りながら出す早苗。 対して諏訪子は背中の上で寝たまま、動く気配は無い。 その時―― 「隠したー」 テンション高く、角隠しを早苗にかぶせる神奈子。 「神奈子ー、もう終わっちゃってるよー」 それに突っ込む諏訪子。うなだれる神奈子。 「八坂様、これはどういうことです?」 そして追求する早苗。 「え、それは」 「つまり、私と○○さんの結婚を認めてくれる、と言うことですね」 「違うよまだ何も言ってないよ」 「でも、角隠しを直に被せたというのはそういう事なのではないですか?」 「いやその理屈はおかしい」 結婚を認めさせようとする早苗と認めまいとする神奈子。 普通は嫁の父と婿のすることだが、ここでは嫁とその母役のすることらしい。 「早苗さん、いいから早く脱出して。あと諏訪子様降りて。もう腕痛い」 震える腕で体を支える○○。 ここで力尽きれば事態はより訳の判らない方向に進むことは必至なので、その点に関しては彼は必死だ。 「えいっ」 しかし掛け声と共に早苗が○○の腕を引き倒す。 支えを失った体は当然早苗の上に倒れ、伸し掛かり、押し倒す。 「早苗さん何するのん」 「押し倒されちゃいました。これは責任とって貰うしかありませんね」 「早苗…恐ろしい子!」 ○○は非難の声を上げるが早苗は聞かず、むしろ体を抱きしめ離さずにいる。 そして何故か神奈子は慄いている。 「よし……早苗、そこまで言うなら結婚を認めましょう」 ○○の意思は全く無視して話が進んでいく。 別に早苗さんを迎えるのに不服があるというわけではなく、むしろ願わしいことであるが。 「でもその前に私を娶ってもらいましょう」 「!」 「そして私も娶ってもらいましょう!」 「!?!」 眼前で神奈子様が、背中の上で諏訪子様が言う。 「というわけで早苗、式の準備を」 「神奈子ー、そこら辺は霊夢に頼んだほうが良いんじゃない。早苗ちゃんも出るんだし」 「んーそうか。そうだね。じゃあ明日依頼してくる」 「神奈子様、着物はやっぱり白無垢なんですか? それともウェディングドレス?」 「着物は考えてなかったねえ。明日一緒に里で仕立ててもらおうか」 「そうなると時間結構かかりますね」 「いいじゃない。その間に色々考えてようよ」 「あれ、また俺ハブられてる?」 ○○のぼやきを聞く者は誰もいない。 「いや、結婚するとかはいいんだけどさ、こういう決め方はどうなのかなあ」 「なに暗い顔してるのよ。かわいいお嫁さんが三柱いるのよ」 「……かわいい?」 神奈子様が首に腕を回して言ってくるが、諏訪子様がそれを笑い飛ばす。 それを機に両者威嚇を始め、早苗さんに鎮圧される。 「まあこれでいいのか」 騒がしい彼女らが好きなのだから、求婚も結婚も騒がしいほうがいいのだろう。……一柱例外もいるが。 これからもずっと振り回されることになるんだろうな、と思いつつ○○は銚子の酒を飲み干した。 12スレ目 636 うpろだ861 ─────────────────────────────────────────────────────────── その時俺は風呂に入っていた。事件はその時起こった。 「○○一緒に入ろー」 突然諏訪子様が風呂場の床を持ち上げて入ってきたのだ。 「!? ??!?」 俺がうろたえるのも無理はないはずだ。 そんな俺を尻目に諏訪子様は平然とこう言ってきた。 「そんなにびっくりしないでよ。ちょっとお風呂場の床をもう一枚作っただけだから」 「え? どういうこと?」 「だから、」 床に手を伸ばし何かを引き上げ下を指差す諏訪子。 「床は『2枚』あったッ!」 「はぁ?」 「さっき○○が乗っていたのは私が作った偽物よ」 「ど……どうやって?」 「このくらい私の力を使えばどうってことないわ」 と、胸を張って答えてくる諏訪子。 眼鏡が無いから良く見えなかったが、確かに普段より浴槽の縁が低かった気もする。 ううむ、諏訪子様の作戦勝ちか。 「というわけで入れてねー」 「駄目ですって諏訪子様、もう入りきりませんよ」 「へへ、このお湯を被っちゃえば、もう入れざるをえないよ。温まらないとだし」 そういって浴槽脇のケロヨンを手にする諏訪子様。しかし俺はあの桶で湯など汲んでいない! 「ヒィッ!」 ああ、やっぱり水だったのか。両肩抱いて震えてるよ。 「お願いだからちょっと入れて。温まらせて……」 仕方がない。ここで入れなければまさしく外道である。 端に寄って、反対側に入れる分のスペースを作る。 しかし諏訪子様はそんな配慮は何のそので、股の間に割り入ってくる。 これは危ない。この配置は危ない。 耐えろ俺のケロちゃん。くれぐれも舌を伸ばさないでくれ。 「はーあったかいねー」 「そーですねー」 正直言ってそれどころではない。 「いい気持ち。歌の一つでも歌いたい気分」 「そーですねー」 「かーえーるーのーうーたーがー」 「輪唱はしませんよ」 「かーえーるーのーうーたーがー」 「どっから!?」 浴室を見、天井を見、諏訪子を見る。 しかし諏訪子様は私も知らないという風に首を振る。 きょろきょろともう一度見回していると、ふと気づいた。 窓に! 窓に!! 「諏~訪~子~、何抜け駆けしてるの!」 窓にすごい不機嫌そうな顔の神奈子様が! 「もう怒った。私も一緒に入る」 「やめて」 言うや否や猛然とダッシュする神奈子様。 それを引き止めようとして全く止められなかった俺。 「早いところ上がりましょう」 幸い体も髪も洗ってある。まだ暖まりきっていないが背に腹は代えられない。 風呂から上がって寝巻きに着替えてしまえば、闖入者は増えないだろう。 「上がる必要は無いよ」 「?」 諏訪子様が妙なことを言う。風呂から失せないと事態の収拾は無理だろうに。 恐らくは神奈子様乱入風呂釜崩壊早苗さん大激怒ルートだろう。 そう思っていると突如水の中に何かが出来た。 「『坤を創造する程度の能力』! いま水から風呂の底を作ったッ!」 「なッ!」 「これに隠れて神奈子をやり過ごすッ!」 遠くからドンドンという床を踏み抜かんばかりの疾駆音がする。 早く隠れろと腕を引かれ、水中に顔も体も全く没する。 水に潜れない俺が、だ。 「ぬうっ。諏訪子め何処に消えた」 何処の戦国武将かと思うような声で神奈子様が言う。 俺は板二つに挟まれて、水中で身動き取れない状態になっている。 体の下には諏訪子様。上には板越しに神奈子様。 そして俺のオンバシラはエクスパンド済み。 加えて泡で居場所がばれるので、うかつに息も吐けない。 「上がったのかな。早苗に聞いてみるか」 神奈子様がそう漏らし、俺もほっとして息を漏らしてしまう。 泡は掴むことも出来ず、板の隙間を通り抜け面に上り、 「そこかーッ!」 無情にも居場所をばらしてしまう。 神奈子様が掛け声と共に振り下ろした足は板の端、頭のあるほうとは反対側を踏み、 どうやら諏訪子様が立てていた膝を支点にきれいに宙返りをして、神奈子様にクリーンヒットしたらしい。 ゆっくり崩れ落ちる神奈子様と、勝ったとばかりに両腕を掲げる諏訪子様、 どたどたと音を立てながらこちらに向かってくる早苗さん。 十中八九最悪だ。 「どういうことですかッ!」 見られたのは床に大の字で寝ている神奈子様と、裸で抱き合う俺と諏訪子様。 そして散乱した浴室と風呂の床。 事態の把握など出来るはずも無い。 「○○さんは私だけを愛してくれるんじゃなかったんですか」 なんでだ。あとそっちからか。 「あの日布団の中で愛しているのは早苗だけだって言ったのは嘘だったんですかッ!」 「いや言ってねえよ。大体一緒に寝たこと無いでしょう」 早苗さんが残念そうな顔をして一瞬の間が開く。 既成事実でも作るつもりだったか、それとも言質を取りたいのか。 「それで、何でこんな風になっているんですか?」 「ワカラナイ」 「判らないじゃないでしょう。なら○○さんと諏訪子様、先に入っていたのはどちらなんですか」 「シラナイ」 「それならこの床は何なんですか」 「コムギコカナニカダ」 叩かれました。 「本当に○○さんは目を離すとすぐに騒動を起こしますね」 早苗さんが言い、横で神奈子様と諏訪子様が頷く。 俺は皆の対面で正座させられ、この家族? 会議の主役に仕立て上げられている。 あれあれ悪いの全部俺なんですか? 「だが待って欲しい。乱入したのはそこなお二方なのだから、自重していれば事件は防げたのではないか」 ……。 「まあ何にせよすぐ騒動を起こすと言うことで」 早苗さんごまかすな。 「これはあれですね、皆でいつも監視していないとということで」 「そうだね、それじゃ当番決めようか」 「日曜はみんなではいるの?」 「それじゃあお風呂場も大きくしてもらわないといけませんねえ」 「露天風呂ならすぐ作れるよ」 これはあれか? しっとマスクが来る様な事態か? 工事屋の代わりに工兵の杉本君が来るのか? 「あの……みんな落ち着いて」 「私お風呂の順番後のほうがいいなあ」 「諏訪子、風呂で何する気よ」 「何って……いろいろよ」 「こやつめハハハ!」 「ハハハ」 だめだこいつら、早く何とかしないと。 「それじゃあ○○さん、諏訪子様が露天風呂を御造りになられるそうなので、外に行きましょうか」 俺の蛇がもたねえ。 12スレ目 476 ─────────────────────────────────────────────────────────── リグル「見て!カブトムシ形とクワガタ形を作ったの!」 ○○「妙にリアルでキモイぞ」 みすちー「はい鰻チョコ!」 ○○「いらない」 慧音「あ、あの、これ・・・」 ○○「なにこれ歴史書?すごいチョコの匂いがってインクがチョコかよ!食えるかよ!!」 てゐ「はい○○!愛情たっぷり手作りチョコだよ!」 ○○「アーモンドチョコ形消しゴム懐かしいな」 鈴仙「は、はい、○○、これ・・・」 ○○「この滑らかな流線型は座薬ですね」 永琳「はい、どうぞ」 ○○「なんかカプセルはみ出してるぞ」 輝夜「○○、私のが一番おいしいわよね?」 妹紅「燃えろー!」 輝夜「ああ!私が愛情こめて作らせたブリリアントドラゴンチョコレートが!!」 ○○「人に作らせたのかよ」 妹紅「あああ私のも溶けちゃったああ」 輝夜「バーカwwwwwwww」 ○○「うわああっちいい水!水ー!!」 12スレ目 482 ─────────────────────────────────────────────────────────── れみりゃ「ぅー」 ○○「……どうした? お腹でも痛いのか?」 れみりゃ「○○、ほかのひととはなしてばかりであそんでくれない……」 ○○「うわ、ごめん! そんな約束してたっけ」 れみりゃ「おままごとするってやくそくしたのに……」 ○○「今! 今からやろう!」 れみりゃ「……! じゃあ、れみりゃがままで○○がぱぱね」 ○○「OK、把握した」 れみりゃ「それでね、それでね、こどもがふらんどーるね!」 ○○「……!」 フラン「パパ、お外で私と遊んでー?」 ○○「おま、いつから……」 れみりゃ「ちがうもん、ぱぱはままといちゃいちゃするの! ねー?」 ○○「ね、ねー?」 フラン「ふーん、じゃあ私もパパとイチャイチャする!」 フラン s「「「イチャイチャだー! イチャイチャだー!」」」 ○○「いやちょっと待て二人だけならわかるけどなんで五人になってrうあわはああああああ」 ○○はスカーレット姉妹にもみくちゃにされました。 12スレ目 571 ─────────────────────────────────────────────────────────── なんだか凄く困った事になっていた……。まぁ、見ようによっては羨ましいかもしれないが 「ねぇ、どっちが好きなの?ハッキリしなさいよ!私なの?妹紅なの?」 「お前が大声だすから可哀相に○○がビビってるじゃない。殺すよ、輝夜……」 俺がビビってるのはそんな理由じゃない となんか陽気な雰囲気が流れるいつもの神社での宴会の中、右に居られるは永遠亭のニート姫こと輝夜。 左で殺気剥き出しなのは近所の竹林に住んでる妹紅。 あれだ、こんな状況になったのは宴会で「○○さんっていっつも妹紅さんか輝夜さんといますよね~、一体どっちが本命なんですかぁ?」 と酒の入ったどこかの馬鹿天狗に聞かれたからだ。 ちなみにその馬鹿天狗はとっくの昔に姿を消した。流石幻想郷最速を名乗るだけはある、最低だ。 抑止力になろうはずの永琳さんは意外にも既に酔いつぶれていて慧音さんも今夜は寺小屋の野外授業で生徒さん達と星を見に行っていない。 二兎にはもう何の期待もしてないしギャラリーは見て見ぬ振りするか酒の肴にしている 「うるさいわね、嫉妬は見苦しいわよ妹紅、私と○○の仲を邪魔するならあなたこそ死んでもらうわ」 「あ゛?誰と○○の仲だって?お前こそ私と○○の絆の深さに入る余地なんかないんだよ」 何か知らんがどんどんヤバい方向に……。誰かに助けを求めなくては……。 ふとこっちを見ていた霊夢に視線を送ったら目があったが少しばつの悪そうな顔をして霊夢は目を逸らした。 あ、無理?無理なの? 「じゃあ、本人に聞いてみるってのはどうだ?」 「あなたにしてはいい考えね妹紅。聞いてたわね、○○?」 「あ、あのさ、二人とも落ち着いて……。せっかく宴会の席なのに、な?」 「「いいから、どっち?」」 マズい、マズすぎる……。どっち選んでもちぬ、確実に死んでしまう。 「そ、そんなすぐには決めらんないっていうか……」 A.実は輝夜の事が…… B.実は妹紅の事を…… C.君達二人とも僕の可愛いにゃんこさ ここは普通に考えてC以外だろ、でもどれ選んでも死にそう。 「…優柔不断ね、○○は」 「○○は優しいんだよ、お前みたいな箱入りと違ってな」 「何ですって!?」 どんどんヤバい方向に流れていく気がしたその刹那、俺は急に冷静になり目を閉じる。 周りの喧騒が徐々に聞こえなくなっていく。 こんなどさくさで言うのも気が引けたが、閉じた闇で見えたのは確かに、確かに笑ってたのは彼女だった。 「俺が好きなのは---」 二人とも途端に黙り、俺のことを不安と期待を込めてまじまじと見る。 当たり前だ、きっと俺が彼女達の立場でもこんな感じになるに決まってる……。 【A.実は輝夜の事が……】 「え……、うそ……」 と輝夜は信じられないような顔をして呆けていた。 「あぁ~あ、失恋かぁ。全く○○は女泣かせだな」 「ごめん、妹紅…。」 「謝んないでよ、私が余計惨めになるじゃない、…でもね、○○そこまで腹括ったんだ」 そこで一区切りすると妹紅は不意に耳打ちして宙に舞った。 「それじゃあたしはお邪魔みたいだからね、慧音のとこにでも行くよ」 「あ……、妹紅」 と今更のように輝夜が妹紅の事をたどたどしく目で追う。 「何シケたツラしてんのよ幸せ者。○○の気持ち粗末にすんじゃないよ、○○が好きなのはお前なんだからな」 そういうと妹紅は三日月が照らす薄闇の中へと消えていってしまった。 「ねぇ、○○。私の事好きだって言ってくれたのよね、確かに」 妹紅が消えていった方を見ながら輝夜は俺に背を向け言う 「あぁ、俺は輝夜のことが好きだよ。ごめん、こんな勢いだけで言って」 と後ろから輝夜に手を廻してそっと呟いた。少しビクッとなる輝夜に慌てて手を解く 「うぅん……、良いの別に。それよりもっと○○の話が聞きたい」 そういって輝夜は引っ込みかけた俺の手を引く。その白く美しい手に思わず俺は見とれる。 「ねぇ、○○……、私何で貴方が妹紅でなくて私を選んだのか、わからないの」 「輝夜……」 「いや、あのね、○○のこと嫌いとかそんなんじゃなくて……○○、ホラ、妹紅と仲良しだし、その……○○は妹紅を選ぶと思ったから……」 「俺は輝夜の事が好きだから、じゃ駄目なのか」 「…だめ。私恐いのよ。からだの痛みだけならいくらでも耐えられるけど心のはそんなに強くないから……、言葉が欲しいのよ」 顔は見えないが輝夜の肩が小刻みに揺れていたので輝夜を一層強く抱き寄せ童を安心させるような感じで語りかける。 「輝夜……」 輝夜は一瞬ビクッとしたがすぐに体を預けこっちを向いた。心なしか輝夜の頬はほんのり朱に染まっていた 「○○……、ちょっと、」 「嫌か?」 「嫌じゃない、嫌じゃないけど……見られてるじゃない、恥ずかしいのよ////」 「輝夜のさ、そういう可愛らしい所が好きなんだよ」 「ばか……、もう知らないわ」 と輝夜は体を俺に預けてきたのでしっかりと抱き止めてやる。 「輝夜、好きなんだ、俺とずっといてくれ」 「……じゃあコレ飲んでよ……」 輝夜は懐からおずおずと不思議な色をした液体の入った小瓶を取り出す 「ずっと私を愛して、文字通り永遠に……」 しばらく静寂があった、そして互いが互いを見据えて…… 「輝夜……、」 「ごめんね、意地悪だったね」 「違うって、」 「うぅん、いいの忘れて!永琳が言ってたの、いつか貴方と共に歩んでくれる人が!きっと来るって! でも私、私○○に私の理想ッ、押し付けて安心しようとしてたッ!」 輝夜はパニックを起こし自暴自棄になっていた。眼には涙が溜まり始め顔はくしゃくしゃに……。 違う、俺が見たいこいつの顔は、そんなんじゃないッ! ー大切にしてやりなよ、○○ー 俺は泣きじゃくる輝夜から瓶を引ったくりそのまま垂直一気に飲み干した。 一瞬、あたりがシンとした。汗にぎり観ていたギャラリーは勿論、輝夜も声が出ないようで口をパクパクさせて目を見開いていた。 「もう泣かなくていいから、笑っておくれ」 「貴方、本当に馬鹿ね……」 輝夜はそう言ってクスクス笑いながら拳を作りトン、と俺の胸を叩いた 「あぁ、筋金入りの大馬鹿さ」 その瞬間神社は大歓声に包まれた。 弾幕を花火替わりにする奴、激励してくれる人妖問わずの友人たち、「ついでに神社だ、結婚しちまえ!」と茶化す白黒魔砲使い 酔いつぶれて「末永くお幸せに~ぃ」とベロンベロンの永琳さん なんか褌の裾噛み締めて睨みつける古道具屋の店主 そしてもう一度輝夜を見る 「後悔なんかしないしさせない、俺と共に永い道を歩んでいこう」 「クサすぎるわよ…。でも嬉しい、愛してるわ○○……」 翌日の文々。新聞は言うまでもなくスポーツ新聞並みの下世話な見出しと共に即日完売だった -完- 【B.妹紅が好きなんだ】 「……ばか、○○の馬鹿ァーーーッ!」 そう言って輝夜は泣きながら夜の闇に消えていった かける言葉はない、自分から絶望を与えておいて慰めを考えるなんて愚の極みだ。 「○○、てっきり私は輝夜だと思ってたんだけどなぁ」 「おれは妹紅の事が好きなんだ、輝夜が好きなのはあいつの人柄が好きで」 「男女の関係では見れないのか?」 と少し悲しそうな目で俺を見る妹紅。俺には少し引っかかるものだった。 「私は○○の事は好きだ、だけどもっと入れ込んでる奴がいるのも知ってる。だから今回は諦めと焚き付けを込めて天狗と芝居を打つつもりだったんだけどな、はは、参ったな」 妹紅は肩をすくめて苦笑した 総てのからくりがわかった。俺と輝夜の関係を深めようとして、そして言葉通りにとらえるなら妹紅は自分の意志を殺してまで取りはからってくれたのだ。 予想外は俺の答えだけ……。 「でも、それでも俺は……」 「今更輝夜とくっつけようとしても無駄そうだね、でも、私は○○の気持ちを素直に受け入れられないよ」 「なんでッ!?」 妹紅は俯きながら話す 「ホラ、○○は私にとって弟みたいな感じなんだよ。 それに輝夜と○○をくっつけようとしたのに私が○○を横どりしたら今までの関係が壊れるんじゃないかって思う。」 妹紅は辛そうに時々目を瞑りながら淡々と語っていた。 傍目から見ても仲が悪そうに見えてもお互い永年付き合ってきた縁なんだという事は解っていた。 「でも、それでも俺は妹紅の事が好きなんだ。ちっちゃい頃から妹紅お姉ちゃんと遊んでもらってた頃から、……初恋なんだと思う」 「○○、初恋は散るものなんだよ。そして過去は色褪せていくものなんだ」 と妹紅は俺を悲しみを含んだ瞳でみる。瞳がもうやめてくれと言っているようだった。 でも関係ない、俺はここで伝えきれなかったらきっと後悔する。周りの奴らに後で馬鹿にされても構わない、妹紅に呆れられても構わない、後悔だけは……、したくなかった。 「あの時だってそうだった、俺の父さんと母さんが妖怪に殺されたって聞かされた時誰よりも早く俺の所に来てくれた」 「……」 「俺のことを抱きしめて泣いてくれたんだ、それまで堪えてた涙を俺は出してオンオン泣いたよ。 泣きつかれて眠ってしまった俺を慧音さんに預けて無力な俺のために怒ってくれた」 「○○、それは、「憧れ」だよ……」 「俺は嬉しかったよ、朝起きたらその妖怪がつけてたっていう呪い道具を握りつぶした妹紅が俺の前に現れた時には……、俺はその時誓ったよ」 「あぁ、そうだな……。『つよくなる!』って言ったな、そしてお前は強くなったよ、そして真っ直ぐに育った」 「それから村のみんなに支えられながら一人で暮らしてたけどしょっちゅう妹紅も慧音さんと一緒に俺の様子を見に来てくれた」 「心配だからに決まってるだろう」 「いつからか俺の中じゃ『憧れの妹紅お姉ちゃん』、じゃなく『いつか一緒に肩を並べたい妹紅』になっていたんだ……」 「なぁ……、○○、私はお前よりずっと生きるんだ。お前が先に死ぬと、きっと泣くだろう……。今だってそうだ。もっと親密になったらもっと悲しくなる……。 だから夫婦にはなる気は、無い。ありがとう○○、お前は普通の人間と幸せになるんだ。意味もなく人外に交わるな、一人暮らしし始めた時いったろ?」 「それでも俺は、妹紅の事を好きでい続けたい、妹紅が迷惑だって言ったって!妹紅が俺のこと嫌いだって言ったって!」 きっと蓬莱の薬を俺が飲もうとしても妹紅は俺のことを止めるだろう、だから俺は人でありながら妹紅をずっと慕って死んでいこうと思う。 言いたい事は総て言った、気持ちの細微は伝えられないだろうけど伝わったはずだ。 「妹紅、それでも好きなんだ」 そういった瞬間、妹紅は一筋の涙を流した。 「ばか、ワザとお前を拒絶したのに……。好きな気持ちを、隠しきれないじゃないか、心底惚れてしまったじゃないか!」 「え……、それじゃあ」 「あぁ、お前の求愛に答えてやるよ。お前が死んでも、お前は私の中で生き続ける。……そう考えることにしたよ」 「妹紅…」 妹紅は顔を朱に染めながらはにかんだ笑顔を俺に見せた。 「よろしく頼むぞ、○○」 その時神社中から拍手と大歓声があがった、見てた側も緊張してたのか?というか初めっから見られていたと考えると……照れる 「まったく……、お前は。今じゃ人妖問わず好かれてるんだな」 と妹紅は周りのどんちゃん騒ぎを傍目に笑った 「この神社を介して大分人付き合いが広がりましたが」 と苦笑を漏らしながら返す 「そっか、お前色になら染められてもいいな……」 「え?妹紅今何か言った?」 「いや、何でもないぞ。至って何でも無い!」 凄く気になるが慌ててる妹紅の姿が妙に滑稽でどうでも良くなった 「妹紅さ~ん、どうでした~?」 とその時どこかに行ってた天狗の新聞記者が戻ってきた 「ん~、あれだ。手伝ってもらってなんなんだがな……、こうなった」 と妹紅は俺の腕に抱きついてきた 「うわっ」 「何だよ、恥ずかしがることはないだろ。人生短いんだ、遠慮する事はない」 「あの……、そういう展開になっちゃったんですか」 と文は驚きながら撮り終えたカメラをしまった。それはもちろん新聞で使うんだろうな、止めても無駄そうだからスルーすることにした。 「何はともあれめでたいんだ、今夜は付き合ってくれ文」 俺は杯を手に文にも酒を勧めた。 「えぇ!交際決定後にすぐ浮気ですかッ!?」 「馬鹿か?○○は一杯付き合えって言ってるんだよ、大体浮気は私が許さない」 「ですよね~、そういうことなら私もいただきましょう。酔いつぶれる覚悟は出来ていますか?私は出来ていますよ」 「「「よーーし、今夜は呑み明かすぞぉ!おーーーーーー!」」」 こうして今宵も幻想の夜は更けていく、今宵俺は幸せを感じながら祝杯を挙げた。 ~Fin~ 【C.君達二人とも僕の可愛いにゃんこさ】 「オーケイ!俺は来るもの拒まずさ、二人ともカマン!」 やっぱこれしかねぇよ!円満にこの場を収めるにはこれしかない!! バキ!ドカ!ボキゴキ!グシャ! 「最低、女の敵ね。なんていうか求愛してきた貴族にこんなのいたわ」 「○○、おまえがそういう考えの持ち主だったとは思わなかったよ」 そういって二人はどこかにいってしまった・・・。なぜだ、何がいけないんだ……。 そんなとき誰かの影が俺に落ちた。ふと顔を挙げてみると裸一貫のふんどし姿の霖之助さんが優しく微笑んでいた。俺は泣いていた 「もう、女なんか信じられない……」 「共に逝こうか?漢の道へ、辛く険しい茨の道だけどね、ははっ」 そういって霖之助は手を差し出した、その優しくすべてを包み込んでくれる笑顔に思わず高まってくる気持ちがそこにはあった。 「霖之助さん/////」 「もっとフランクにこーりん、でいいよ」 俺達はまだこの男坂を登り始めたばかりだ ~終~ 12スレ目 812 うpろだ890 ─────────────────────────────────────────────────────────── ワイワイ ガヤガヤ 「おーい、これどこに置けばいいの?」 「それは向こうにセットしてくれ」 「おいしそうな匂いがするお酒だね~~」フラフラ 「飲むなら式が終わってからにしなさい」 「ねぇ妖夢」 「なんですか幽々子様」 「これだけご馳走が並んでるんだから一つぐらい食べてもいいわよね?」 「駄目です、もう少し我慢してください」 「妖夢のいけず~~~」 「リリカ、メルラン今日は賑やかな曲でいくよ」 「こんなこともあろうかと結婚式用の曲を用意しておいたかいがあったねルナ姉」 「なんだかやる気が出てきたわ」 今、俺の目の前では結婚式の準備が行われている ちなみに花婿は俺だ 俺なんかの為に知りあい総出で式の準備をしてくれるのは素直に嬉しい しかし一つ問題があってその問題は…… 「霊夢、おめでとう、とりあえず言いたい事は一つだけ、幸せになりなさい」 「当然じゃない…………ありがとう、紫」 「いいなーいいなー私も白無垢着たいなー」 「ふふふふ、それにはまず相手を探さないと駄目よ橙」 「はーい」 「わ、わわわわ私は橙がお嫁に行くなんて反対だぞ!あと500年は早い!」 「綺麗だね早苗、私も鼻が高いよ」 「そんな、八坂様……恥ずかしいですよ////」 「本当のことだよ、ねぇ?諏訪子」 「うんうん、本当に綺麗だよ早苗 それにしても結婚式かー、懐かしいな 私もあの人と結婚する時は国を挙げての盛大な結婚式を挙げたんだよ」 花嫁が二人いるということだ 「……何でこんな状況になってるんだろう」 確か事の発端は約3時間前、なんのたわいの無い世間話から始まったんだ ~約三時間前~ 「そういえば霊夢さんはどうするんですか?」 「なによ唐突に」 「跡継ぎのことですよ、幻想郷での結婚年齢適齢期がいくつか分からないですけど 霊夢さんって私と同い年ぐらいですし、そろそろお婿さんとって跡継ぎとか考えないといけないと思いますよ」 「跡継ぎねー、正直考えた事無かったわね、まあ婿のあては一人いるけど そういう早苗こそどうなのよ、私が跡継ぎ考えないといけない年齢なら早苗だってそうでしょ」 「私はちゃんと考えてますよ お婿さんになってくれそうな人もいますし」 「…………私の勘なんだけどもしかして早苗と私の言う婿って同一人物なんじゃない」 「…………恐らくそうでしょうね、最初に言っておきますけど私は譲りませんよ」 「私だって譲る気なんかさらさら無いわ」 「どちらも譲る気がない、かといってお互い心当りは一人しかいない となると最後の手段ですけどこれしかありませんね」 「そうね、私たちの婿になってもらうしかないわね」 「そういうわけですからお願いしますね○○さん」 「…………はぁ?」 俺には関係ない話だと思ってのんびりと聞いてたら何を言い出すんだこいつらは ってか俺が二人の婿?行き成り過ぎて脳が処理できん 取り合えず……逃げるか ○○は逃げ出した 霊夢の攻撃 夢符「封魔陣」 ○○は捕まった 神社から脱出しようとした俺に霊夢が封魔陣を放ちあっけなく拘束された 「ちくしょー!放せー!」 「大人しくしたら解放してあげるわよ それより、紫、いるんでしょ」 ニョキッ 「はいはーい、よばれてとびでてじゃじゃじゃじゃーん」 「どうせ話し聞いてたんでしょ?それなら言いたい事分かるわよね」 「式の準備でしょすぐにでも皆に知らせて準備させるわ」 「ありがとう」 「おい!結納とかいろんなことすっ飛ばしてなんでいきなり式なんだよ! ってかまだ俺は納得してないぞ!」 「大丈夫ですよ○○さん、「嫌よ嫌よも好きのうち」って言うじゃないですか」 全然大丈夫じゃあねー!ってかなにいってんだこの青腋巫女 くそぅ!このままでは人生の墓場×2に行き着いてしまう なんとかしてこの封魔陣から抜け出さないと 「私らの巫女じゃ不満だと?」 「いい度胸してるね○○」 …………このこの威圧感はまさか 「式の準備を今から急ピッチでするからこれ以上人手は割きたくないんだよ だから、大人しくしてなさい、分かった?」 「逃げようとしたら問答無用で タ タ ル ヨ 」 この目は本気だ、俺が少しでも逃げようとすれば確実に祟られる 殺されはしないだろうがどんな目に合うか分かったもんじゃない 「イ、イエス、マム」 「よろしい、それじゃあ準備が整うまでそこで大人しくしててね 逃げちゃ……嫌だよ?」 嗚呼、こりゃ逃げれんわ ~現在~ 現在も着々と準備が進められて終わるもの時間の問題だ 「本当にどうしようか……」 結婚するのに絶対に嫌だって訳じゃない あの二人こと好きだし 正直な所婿の話が出たときは表面的にはどうでもいいと思ってたが内心では結構あせってた だから二人が俺を婿にしたいと言ってくれた時は素直に嬉しかった、でも…… 「俺に二人を幸せにできるのか?」 何の力も無い俺が二人を幸せにできるのかと聞かれたら正直自信が無い 「……こういうのをマリッジブルーって言うのか?」 なんか違う気がしないでもないが大体合ってるだろう 「覚悟を決めろ、前を見ろ、最初から無理だと決め付けてたら何もできない」 そうだ、今更うだうだ言っても仕方が無い 「覚悟は決めたようね、それならそろそろ式を始めてもいいかしら?」 「うぉ!?紫さん、後ろからいきなり声をかけないでください それにまだ俺服を着替えてませんよ」 「そういうことなら」 パチンッ! 紫さんが指を鳴らすと俺のジーパン、シャツ、コートの格好がたちまち袴姿になった 「さ、ここからは貴方のステージよ、頑張ってらっしゃい」 「はい、ありがとうございます」 紫さんに頭を下げ準備ができてる霊夢と早苗に向き直り 「霊夢!早苗!二人とも絶対に幸せにするからな!」 「お願いします」 「当然よ」 未来がどうなるかは分からない、だけど俺は二人といっしょに生きていく 12スレ目 818 うpろだ891 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○、ちょっといいか」 庭の掃き掃除をしている時に神奈子様に呼び止られ、そのまま呼び寄せられるままに納屋のほうへ向かう。 「なんでしょう。何か御用ですか」 「うん、今日は14日だろう。受け取って欲しい、オンバシラポッキー」 「なんだこりゃあ」 それはポッキーというにはあまりにも大きすぎた。大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた。 それはまさに木塊だった 「それは外箱だ。ちゃんと中身がある」 「そりゃそうですよね。さてどんなのでしょ」 アジャスターケースのような外箱をあけると、数本の棒のようなものがあった。 それは長く、とても長く身の丈程はあろうかと言うほどで、太さも親指より大きそうだ。 「ポッキー、ですよね……。大きすぎやしませんか?」 「ご当地ポッキーだって大きいんだし、これくらいいいじゃないか」 けらけらと鷹揚に神奈子様は笑うが、食べるほうはそれどころではない。 なにせ重いうえに長いのだ。端から食べればチョコレートのかかっていない所にはどうやっても届かない。 しかも太いので大口開けなければ口に入らない。それか齧りとるしかない。 とりあえずチョコレートの付いているほうの端から食べ始める。 コーティングされたチョコレートは意外にも柔らかく厚みもあり、ポッキーと言うよりはフランといったほうが良い。 中のプレッツェルも大きいながら火が通っていて、生ということは無くサクサクしている。 「あ、結構おいしい。でかいから大味かと思ったのに」 「結構とは何だ。でもまあ、気に入ったようでよかったよ」 ――5分後―― 「疲れた……しかも喉が渇く」 「流石に大きすぎたかね」 四半分程度食べきったところで顎が痛くなってきた。 これがもっと細ければ満腹するまで食べられるのだろうが、 大口開けて齧りつかなければならないのだから、どんどん口がつらくなってくる。 「残りはおやつにします」 「それじゃ、後でみんなで食べましょう」 「何を食べるの?」 脇から不意に諏訪子様が現れる。心なしか今日は帽子が大きい気もするが、きっと気のせいだろう。 「諏訪子様どうなさったんですか? 普段はこちらまで来られませんのに」 「んー二人がここに入るのが見えたから、つけてきたんだけどね、」 「尾行せんでください」 「面白い神奈子が見れたよ」 瞬間、神奈子が動く。 左足を大きく出し、右掌底を諏訪子に叩き込もうとする、が、敢え無くガードされる。 「神奈子ったら、いつ反対側に齧りつこうかってずっと見てたのよ」 本当に面白そうに諏訪子が笑う。対して神奈子は顔を抑えてうずくまってしまっている。 「初心な乙女みたいにずっと見てて、見てるこっちが恥ずかしかったわ」 恥ずかしいのか不覚と思っているのかは分からないが、神奈子は返事もせずに、地面にへたり込んでしまった。 なにせ普段とまるで違う神奈子の姿であるから、このまま囃し立てるのが続けばいずれ噴出してしまいかねない。 それでなくても当事者の片割れなのだから、助け舟程度に話を遮っておく。 「えー諏訪子様、それで何用ですか」 「そうそう、これを渡そうと思ってね」 と言うと、おもむろに帽子を取りその中を探る。 幾らかして中から手を出すと、その手には数個のカラフルな卵が握られていた。 「諏訪子、なにそれ?」 「それよりあの帽子の構造のほうが気になるんですが」 立ち直った神奈子が訊く。 「これはあれよ、外国のお祭りで使う、トースターだかコンスタンタンだか……」 「イースターエッグ? ですか?」 「そうそれ。中に何か入ってるから、いいものが入ってたら幸せになれるよ」 何か色々とごちゃ混ぜになっている気がするがまあいい。それより気になったことがある。 「山葵とか入っていませんよね」 「空籤無し、当たりのみだよ」 「それならひとつ」 「ひとつと言わず全部持ってっちゃっていいよ」 「それじゃ私もひとつ」 神奈子様もひょいと一つ摘み上げ、自分とほぼ同時に口に放る。 食べていると違和感がした。口から取り出してみると紙がある。 「大吉?」 「当たり。いいことあるよ」 「辛いッ!」 「神奈子も当たり~」 「山葵じゃなくて辛子ですか」 「ううん、ウィスキー。ストレートで」 ウィスキー? 戦車戦? うん、違うな。 「ウィスキーボンボンは原液使わないでしょう、というかどうやって入れたんですか?」 あれは糖蜜か何かに溶かし込むようにして作ったはずだ、と言うか液じゃあ取扱いが面倒すぎる。 「シリンジでチューっと注入したの、結構いっぱい」 「何故そんなことを……」 「バレンタインだしバランタインを使ってみようと思って」 駄目だこの神様。早くなんとかしないと。 「ま、それより次行っちゃって」 軽い感じでまた手渡してくるが、こちらはオンバシラポッキーのこともあり、すでにおよそ満腹である。 「諏訪子様、すみませんがもう満腹な物で……」 「えーもう食べてくれないのー」 「……それじゃもう1個だけ」 上目使いに潤んだ目は反則だろ常考。 結局、更に2個ほどのエッグを食べたあたりで神奈子様が復活した。 普段なら水無しストレートの一杯ぐらいなら30秒あれば余裕で復活しているのに、 今回大分時間がかかったということは、よっぽど見られたことが堪えたのだろうか。 ちなみにエッグの中身は指輪と鶉の卵だった。 「諏訪子、中に入ってゆっくり話をしましょう」 そう言った神奈子様の声にも表情にも生気は無く、顔も幾らかやつれた風に見えた。 釣られて俺も中に入る。寒明けを迎えたとはいえ、山の上にある神社はやっぱりまだまだ寒いのだ。 「あ、○○さん。結構時間かかってましたね。そんなに汚れてましたか?」 中に入ると、すぐに早苗さんが声をかけてきた。 「いやそれとは別件で」 後ろを親指で示しながら答える。示す先には本殿に向かう神奈子様と諏訪子様がいる。 「何かあったんですか?」 「ちょっと込み入ったことが。これから話し合いだそうな」 「……長引きそうですね」 「きっとそうだろうね」 心配そうに見つめる早苗さんに答える。そこには暗鬱な表情を浮かべる神奈子様がいた。 手を洗い、炉辺で暖をとっていると早苗さんに呼ばれた。 呼ばれた先には濃厚なチョコレートの匂いが漂っている。 正直、またチョコか……という思いで歩を進めていると、 卓の上に鍋とビスケットや果物の類が置いてある皿が見えた。 「チョコレートフォンデュ?」 「はい。先日、秋の神様からドライフルーツをたくさん頂きましたので、それを使ってみようと」 隠れて見えなかった皿には干し芋や干し柿、レーズンに干しりんご、更に栗まである。 「早苗さん、干し芋とかレーズンは違うんじゃないの?」 「一緒に貰いましたし、まあ物は試しです」 意外にチャレンジャーなところのある早苗さん。いや、ゲテモノ趣味か? しかしレーズンの食べにくさはきっとエクストリーム級だろう。 「今何か失礼なこと考えませんでした?」 「イイエソンナコトアリマセン」 女の勘は鋭い。気をつけなければ。 しかしもはやチョコレートの一欠けも腹に入る隙は無いと言うのに、更にこんな物が用意されている。 およそ苦行僧に近い心境で椅子に座る。 「早苗さん、さっきいろいろあってお腹一杯なんだけど」 「えー、じゃあどれくらいでお腹空きます?」 「1時間くらいかな」 不満そうな声を上げるが、猶予の時間をとってくれる早苗さん。 その間にどっか逃げてしまおうかとか考えている駄目な俺。まあ止めておいたほうが無難だけど。 20分ほどしたら小腹が空いたので甘栗をつまみ食いしたら怒られた。 代わりにレーズン食べてなさいと口に放り込まれたが、私はレーズンは好物なのだよ早苗さん。 ……すいません、自分で食べますから、一粒ずつ口に入れるの止めて下さい。 大体1時間過ぎたあたりで、チョコレートを溶かし始めようと、早苗が動き始める。しかし、 「直接火にかけるのはまずくない?」 「やっぱりですか。でもお鍋のままで湯煎も難しいでしょう」 「まあやりにくいだろうけど、大鍋に入れれば何とかならないかな」 「そうですねえ……ああよさそうなのがありました」 そういって早苗さんが持ってきたのは、昔外で使った道具。 そして一般家庭にはまずないであろう道具。 「なぜウォーターバスがこんなところに……スターラーまで」 こうして疑問に思っている間に早苗さんは着々と準備を進めていく。 もう既にウォーターバスに水を入れ終え、スターラーの上に置き、鍋を入れようとしている。 「早苗さん、鍋の下に敷くものがないとスターラーバーに当たるよ」 「あーそうですね。なにかいいものは……」 「四隅に置ければなんでもいいでしょ」 「積み木で平気ですか?」 「溶けたり駄目にならないなら大丈夫だろうけど……」 だから何でそんな物があるんだよ。 かくしてスターラー、ウォーターバス、アルマイト鍋の訳の分からない三段重ねが完成する。 鍋の中身はチョコレートなので真っ茶色だが、それがオイルバスを思い出しどうにも食欲をそそらない。 それを知らない早苗さんは竹串やらフォークやらを持ってきて食べる気満々で座っている。 「○○さん、どうぞ」 俺に対面に座るように示す。 卓を見ると鉢に蓮華が備わっているが、これは根本的に違うような気がする。 食べてみると存外意外なことがあった。 干し芋にチョコレートは意外と合うし、甘栗とはなおさらだった。 果物類とはもともとの組み合わせなので、言うまでも無い。 「○○さん、はいどうぞ」 早苗さんがチョコレートをつけた栗をこちらに差し出してくる。 これは食えということか。 一瞬逡巡するが、ずっとこのままというわけにもいくまいと思い、一息に食べてしまうことにした。 咀嚼する俺を早苗さんがニコニコと見ているが,何か悪い予感を俺の第六感が告げている。 「じゃあ○○さんも」 早苗さんが口をあけて待っている。これは俺にやり返せという事か。 そう思い脇の大皿を見ると、まずバナナが目に付いた。 いや、これはちょっと……ねえ。 「酸っぱいのと甘いのがちょうどいいですねえ」 よく蜜柑を選んだ俺。バナナだったら今頃命は無かったぞ。 そんなやり取りを何度か繰り返しているうちに、こもっていた神奈子様達が出て来た。 神奈子様は大分すっきりした表情、対照的に諏訪子様は幾らかげんなりした風だ。 ナニシテタカナンテシラナイヨ。 チョコレートを囲む卓に二柱が加わり、場は混沌の限りを極める。 「ああ! 甘栗がやられた!」 「落ち着け! 諏訪子、あんたは干し柿食え」 「チョコが減ってきたよ」 「シシカバブ投入」 いいながら、神奈子様がオンバシラポッキーのチョコを削ぐように鍋に入れていく。 「さなえー空いてるところで熱燗あっためていい?」 「あ、私のもおねがい」 場の雰囲気はもはやチョコレートでは無く酒の臭いが支配的になっている。 「結構あったのにもう無くなってきてる」 「まだドライフルーツはありますよ。はいあーん」 出されて思わず食いついてしまったが、今非常に軽率なことをしたように思える。 他二柱の目つきが鋭くなったからだ。 「はい口あけて」 諏訪子様が膝の上に座って、さっきのチョコエッグを口元に押し付けてくる。 「続いていきましょう。あーんして下さい」 早苗さんも肩にしだれかかって干し柿を口に押し当てている。 さっきバナナ食わせとけばよかった。 「やらないか」 神奈子様はもう押し付けてくるのはチョコでなく、酒とかになっている。 もはや脱出するには全て食べ切るより他ないのだろう。 さて誰から食ってやろうかしら。 12スレ目 936 うpろだ907 ─────────────────────────────────────────────────────────── さて、俺は今、窮地に立たされている。 目の前にはチョコが二つ。 どっちもトリュフチョコだ。 何が問題かと言えば、二つとも、唇に咥えられていること。 「…」 「…」 やめてくれ妹紅も慧音もそんな潤んだ目で俺を見るな… どちらかに視線を少し動かすと、片方の目に涙が溜まる。 かといって少し距離を置こうとすると、両方の目に涙が溜まる。 「…二人とも、目を閉じろ。」 素直に閉じる二人。 俺は一気に二人を抱き寄せて、その唇とチョコを同時に奪った。 「ま、○○、どういうことだ!」 「…お前、優柔不断にも程があるだろ!」 だが、二人のその顔は、少し、安堵の相が見えた。 「どっちかを選べと言われても俺には無理だ! どっちかと離れると考えただけで、心臓が止まりそうだ! だから両方を選んだ! 俺は二人を愛している!」 我ながらむちゃくちゃだ。ただの馬鹿だ。だが本心だ。 「…ぷっ…」 え? 「…あ、あっはっはっはっはっはっはっはっはっ!」 え?え? 「○○、お前がそういうのは分かっていたよ。」 「私達も、同じ気持ちだったから…」 そう言うと、二人は俺の頬にキスをした。 「「不束者達ですが、よろしくお願いします」」 「ああ、って途中色々すっ飛ばしてそこですか!?」 12スレ目 949 ───────────────────────────────────────────────────────────
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ハーレム?17 彼女たちは心配性 ~永遠亭編~(新ろだ508) 一つしかない幻想郷 でも一人一人違うのです 神隠し 迷い込む先 その世界 いろんなあなたはいろんな彼女たちと触れ合うのでしょう 激しくて、情熱的な愛情を、求めるのでしょうか 穏やかで、優しい時間を求めるのでしょうか そのうちの一つ。でも、一つだけ他と違うことは この幻想郷の彼女たちは心配性だったのです ・彼女たちは心配性 ~永遠亭編~ 1.かぐや♪かぐや♪ 卯月と皐月の境界。気温の変化が安定しない時期。 あー、昨晩は少し肌寒かったわ。○○は大丈夫だったかしら? そう思いながらこの永遠亭の主、蓬莱山輝夜は長い廊下を歩いていた。 どこで手に入れたかは分からない、夜用のジャージ姿。 だらしない、けどこの格好の楽さはたまらない。 今朝は○○が人里にいるのでこれでいい。 眠い。まぶたをこすりながら、ふと○○とのこれまでを振り返った。 ……… …… … 「じゃあ、僕が泊まりましょうか?」 その発言は永遠亭そのものを凍りつかせた。 ……… …… … 永夜事変、○○の永遠亭入り等イロイロあった永遠亭。 ある晴れた昼下がりのこと。里の守り手、上白沢慧音から 「小屋が一つ空いているので診療所をつくってみないか?」 という提案があった。 何でも手違いで空き家になってしまったところがあるらしい。 要となる八意永琳は「確かに便利ね」と言った。 薬のためにいちいち飛んでいったり永遠亭に来させたりするのは不便だからだ。 あらかじめ薬や器具を里に置いておけばいい。 が、盗まれたらとんでもないことになるという問題が残る。 当然、劇薬なども中には混じっているためである。 治安はよくても全く盗みがないわけではない。 慧音がいるからといって四六時中見張っていることは現実的に不可能だ。 じゃあ誰かがそこにいればいいのではないか。では誰が? 当然ながらトップ2人が永遠亭にずっといないのは困る。 よって鈴仙・てゐを初めとする因幡(イナバ)を店の留守番にしなくてはならない。 が、そんなに人里にいてもいい因幡の少女もいない。 確かに月都万象展等、少しずつ竹林の外との交流も段々と広がってはきている。 しかし元々永遠亭は「隠れ家」で、彼女たちは「身を隠す者」なのだ。 ひっそり暮らす妖怪の彼女たちがずっと人里にポツリといるのは、イロイロまずい。 この最後の問題がなかなか手ごわい。 なんとか6日は埋めることができたのに、あと1日が埋まらない。 やはり時期尚早。 今回は無理だと永琳が判断を下そうとした矢先、○○は申し出た。 ……… …… … 『ダメよ(ね)』 永遠亭住人が再起動してからすばらしいユニゾンを示す。 「あらら。ダメですか?」 「ダメ、絶対!!!」 「そんな、標識じゃないのですから」 「ダメなものはダメなの!屋敷の主の私が許しません!!」 普段○○の前では「姫様」として振舞っている彼女が珍しく素に戻る。 (無論、○○は気づいているが、そこは大人の事情) 「いや、でも人の里ですよ?」 「人の里だからよ、何かあったらどうするの!? 大体、○○は何の力も持っていないじゃない!」 普通の人は何の力も持ってないのでは? そう○○は思った。慧音の方を見ると、苦笑している 「普段から白黒etc...と屋敷はまれに襲撃を受けていますから、それに比べたら…」 「ダメ」 「いや、でも普段から皆さんにお世話になっていますし…」 「ダメ」 「やっぱり人の里ですから、非凡ながら人の僕が…」 「ダメダメダメ!!!」 一歩も譲らない輝夜。 「○○」 「はい?」 「○○はこの屋敷…私たち、いや私といるのが嫌なの?(涙)」 いや、涙目になられても(今生の別れではないのですから)。 「竹取物語はかぐや姫を引き止めるお話ですよ。 輝夜さんが引き止めるお話ではないですよ?」 「むー!そんなこと言ってもダメよ」 「輝夜、とりあえず落ち着きなさいな」 「でも!」 彼の言い分も一理ある、と永琳は思った。 兎といえど、妖は妖。 妖怪よりも人間が人の里にいる方が摩擦も少ないかもしれない。 「慧音、無論彼はそこにいる間『里の人間』として扱われるのよね?」 「それは当然。妖怪はルールに拘束される」 なら妖怪は襲えない、『里の人間』を襲えば何より重いルール違反になる。 怖いのは人、つまり強盗の類。 それでも背後に得体の知れない月のナンチャラがいるから近づかない…。 もちろん、「宇宙人が何ぼのもんじゃい!」という例外もないとはいえないだろうが。 「えーりん!!」 「まあまあ姫様」 「任せてみてもいいんじゃないの?」 鈴仙とてゐは永琳の考えでもいいのではないかと思い始めていた。 「イナバ!てゐまで!!」 「輝夜さん」 じっと輝夜を見る○○。 「どうでしょう?一週間のうち、一日です。 僕とて何かこの永遠亭のためできることをしたいのです。 でも輝夜さんが心配して気を病めば、僕も…」 最終判断は私に委ねられた。 そして私は…。 ……… …… … 今思い返すと、私も意固地になりすぎていたのかもしれない。 彼とは違うのだ。私は醜い永遠、彼は美しい刹那。 でも私たちは出会った。前に少しずつ進むこと、時を止めないことを同じく選んだのだ。 それをあの時、忘れていたのかもしれない。 (「…ふふっ。だらしない格好で何を考えているのだろう」) ○○が戻ってくるのは昼過ぎ。 一週間ずっと姫様をやっていたらつかれるわー(「ばれてるわよとっくに」by スキーマ) …何か聞こえた?いや、何も聞こえなかったわ!! ふすまを開ける。 「ふぁ~あ~ぁ~。はよ~、えーりん、みんな」 「あらオハヨウ、輝夜」 「おはようございます、輝夜さん」 「あ~ら~、○○も……………○○?」 その時カリカリっと、普段の数%しか起動してなかった輝夜の脳が働き始めた。 「そろそろ変え時かなー」 と思っている彼女のゲーム用パソコンのHD音が何故か今聞こえる。 「輝夜、○○なんだけど…」 「…ッギャー!!!!!!!!!!!!!!!!」 永遠亭に響く、輝夜の絶叫。 あー、やっぱり姫でも叫ぶことはあるのかー。 そんなことをぼけっと思っていたら輝夜はえーりんの手を取り駆け出した。 マンガのように水平になっていた気がする。 ~あ・ふゅー・みにっつ・れーたー~ (「ちょっとえーりん、どうして○○が今いるのよ!!!!!!!」) とかまくし立てる声が聞こえた気がするが、気にしない。 「おはよう○○。今日は早く戻ってきたのね、何かあったのかしら?」 (なるほど、これがあの「竹取物語」の…) 朝露のように美しく、その髪をなびかせる蓬莱山輝夜その人が(再)登場した。 『シャララララーン♪』と擬音が聞こえてきそうである。 (美しさは当社比三倍増し) 周りの兎さんや、永琳、鈴仙&てゐは思った。 (「気合入りすぎですやん!!」) 「どうしても朝に戻る用がありまして、大したことないといえばないのですが」 「そう、それならいいのよ」 優雅だなー。墨染め…は違うけれど。 「あ、その、輝夜さん」 「アナタは何も見ていなかった、そう、何も!!(必死)」 「いや、そうじゃなくてですね」 ポリポリと頬をかいて、照れながら○○は言う 「おはようございます、輝夜さん。 月並みですが、今日もお綺麗ですよ」 ハッとすると、輝夜は微笑んだ。 「おはよう○○、何当たり前のことを言っているのよ♪」 2.えーりん♪えーりん♪ 「○○、そこの玉子焼きの皿をとってもらえるかしら?」 「あ、はい。えっと…」 永遠亭朝食。何故か朝食は皆そろって食べる。 別にそろう必要はない…が、なぜか習慣になった。 まぁ、悪いことではないわね。 八意永琳は○○がもってきた魚を口にした。 ……… …… … 先の騒ぎ、何で○○は戻ってきたのか? 幻想郷に海はない(らしいのだが…)。 なんでも、珍しくて美味しい川魚が結構な数取れたそうだ。 そこで捕った里の方が、前に世話になったのでおすそ分けをしてくれた。 しかし生ものなので、できれば今すぐに食べて欲しいそうだ。 一応夜は明けた。里の朝は早いので人もポツポツ行き来している。 本来はもう少ししたらてゐ→永琳の順にこの診療所にやってくる。 (「それまで待つか…。 いや、魚を今から持っていったら朝食で食べられるかな?」) 何かあったら戻ってくること、「夜が肝心」とは言われていた。 …戻ろうか、そう○○は判断した。 ……… …… … (「この魚、美味しいけれど少し苦い部分があるのね…。 …苦み、か。そういえば○○が診療所に待機する初めての日…」) 永琳は思い返していた。あの時は自分らしくない、かなり恥ずかしいことをしたな、と。 ……… …… … 『シュッ!!!シュッ!!!シュッ!!!』 「あのー、師匠?」 『ジャキ!!ガシャガシャガシャン!!!!』 「師匠ってば~!」 「チャキン!!!!ウィーン、ウィーン!!!!!!!」 「ですから、し・しょ・う!!!」 「あらいたのウドンゲ?」 八意永琳研究室。永遠亭最危険区域としてしられる場所。 いや、なんだかんだで半分は冗談なのだ。 だから残り半分も冗談にしたい!!! そのために鈴仙・U・イナバは自分の師匠に問い詰めたい。 「師匠、幻想郷相手に戦争でもするんですか!?」 兵器・兵器・兵器 愛用の弓の手入れはいいとして。 その他イロイロ、すごいのが並んでいた。 今なら、 「諸君、私は戦争が(ry」 といっても違和感が全くない(冗談抜きに!!!!)。 「何を言っているのよ、疲れているの?」 「おかしいのは師匠ですよ!何を狩るんですか今更!!」 「通常業務の一環よ。手入れは大切でしょう?」 おかしい。やっぱりおかしい。 私の知っている師匠は、まるで聖戦に望む騎士のような顔をしない。 どんな相手にも、常に不敵に微笑んで、余裕を崩さない。 それが師匠だ。 「…あれ?そういえば今日○○が」 『System Clear』 そうか、そういうことか!! 「師匠、○○が今日」 「あら、ちゃんと覚えていたのね」 「…まさか、これって…」 「…」 ちょ、ちょっとまってよ。 「師匠、師匠は○○の待機に賛成したんですよね」 「ええ、したわ」 「そして話し合いの結果、○○単独で、ということでしたよね?」 「ええ、そのとおりよ」 でもね、と永琳。 「裏でやらないといけないことがあるのよ、イロイロ」 そう、イロイロと、ね。 ……… …… … 幻想郷の夜は妖怪の時間である(おそらく)。 これは裏を返すと、人はとっとと寝るに限るということを意味する。 それが正しい。脅威との境界はすぐそこだが、脅威を押し付けられるわけではない。 そんな中、怪しげな2人がコソコソと診療所に近づいていた。 白黒「まさかこの私がコッソリと入るなんて、お釈迦様でも思わないだろう!!!」 黒烏「今日こそは単独インタビュー、いただきますよ!!!」 白黒はチャンスだと思っている。 ここは人里、とある図書館のようにド派手に入るわけにはいかない。 しかしコッソリ入ると。兎や宇宙人に気づかれてしまう。奴ら気配を読むのには長けているからだ。 でも今日は違う。○○という普通の人間なのだ。 まずこのパパラッチに○○の相手をさせる。 その間にこっそり忍び込んで何か珍しい物をぬs…借りていける! 万が一ばれても○○相手ならごまかせる! …というわけで今しかないだろうjk!!!!!!!!! 黒烏はチャンスだと思っている。 外の世界から来たと言う○○さん。 どうにかして「単独」インタビューをとりたい!! 皆興味があるのだが、○○さんは一人で竹林の外に出(られ)ない。常に住人の誰かが傍にいる。 仕方がない。永遠亭へ赴いて、直接アポを取りに行った。 そうしたらまるで誰が「お姫様」なのか分からないじゃないですか! あのグータラ姫とMADサイエンティストが○○さんの両脇にいて、 「「(下手なことをしたらどうなるかわかっているわよね♪?)」」 といってにらみを聞かせているじゃありませんか!! 違う、違うのです!!! もっと、でっちあg…ではなく自然な彼のインタビューが欲しいのです!! 今日の噂を聞きつけたのは、とある情報筋から。 特上のにんじんを積みました、ええ積みましたとも。 「にんじんの前では嘘はつかないウサ♪」 高かったです(涙)。 が、単独で訪れて、里ルールの違反になると天狗といえどまずいのです。 『…スケープゴートがあればいいか♪』 何かあったら人間、つまりこの白黒に押し付けてしまおう!! …というわけで今しかないだろうjk!!!!!!!!! ……… …… … 「ちょっとあんた、何やっているのよ?」 「え、紅白!?いや、これは、その…」 ふふっ、作 戦 通 り!!!!!!! 最後まで○○の待機に反対していたのは輝夜だけだとウサウサ筋からの情報がある。 そもそも『診療所に待機できる人員の不足』が、○○待機の原因だ。 つまり、他の永遠亭の奴らは今ごろ竹林。 ここであの輝夜の性格だ。まさか「○○が心配で見に来ました」なんて言えまい(おそらく)!! 「違う、違うのよ!! ただ…えっと…」 「あーもう、また悪さしようとしているのね!!」 そして霊夢にはこう言ってある。 『輝夜が人里で何かやらかそうとしているらしい、しかも夜中に』 そしてあの面倒くさがりの霊夢のことだ。 すぐ終わらせたいからそのうち弾幕言語になるだろう…予想通りに(ニヤ さて、見回り中のハクタクもあっちに向かっていることだし、次の作戦に… そして黒烏は白黒に目で合図をしてチャイムを鳴らそうとした。 (緊急時のため、家の中の人間が訪問をすぐ分かるようえーりんがつけている) 『シュッ、『撃撃撃撃撃』!!!!!!!!!!』 「「なっ!!!」」 突如足元に矢を打ち込まれた。 直接刺さっていないが、起用にもなかなか抜け出せない角度だ。 「さて…、」 『カツン、カツン』 「小便は済ませたか?」 「ちょ、ちょっと、ちょっとまて(汗」 「神様にお祈りは?」 「あや、あや、あややややややや(汗」 「部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする準備は…いや、」 『ジャキン!!!!』 明かりの消えた、人の里。 わずかな星と弾幕の光に僅かに照らされて、 確かにそれは、そこにいた。 「する必要ないわね」 「そ、それは、対某神父様用の銃、東方に出してはいけないものDA☆ZE?」 「豚のような悲鳴をあげろ」 「私は烏です~(泣」 『撃撃撃撃撃撃!!!!!』 二人は無理やり一気に離脱、そのまま雲を突き抜けた。 流石は幻想郷で1、2を争う速さ、ということだろうか。 「あやや、どうしましょう!?」 「落ち着け、まだだ!まだ終わっちゃいない!!」 箒を片手で起用に操り、烏の手を取る白黒。 「奴は今日、威力重視の兵器、スペカのように弾数で追い詰めることはできない」 「どういうことですか?」 「確かに威力は怖い、それは私が一番よく知っている でも大切なのは『弾幕の網で狭めて追い詰める』ことだ」 ここで華麗にゆーたーん。 「ふっ、焦ったな月の頭脳!今回は鳥目だった、もう少し広く見るべきだったんだ!」 「ま、まさか」 「そうだ」 ぶれいじんぐすたー。 「逆にスペカ戦では通用しない、ストレートに突っ込むことには弱いってことさ!!!!」 ちょ、着弾点は人里ですよ!!! ていうかそれ弾幕じゃないのでは!!(公式)。 烏はそう思ったが、もう遅い。白黒も先の気迫に当てられて錯乱しているのだろう。 (言動が支離滅裂だし) 彗星は間もなく雲を上から突き抜ける。 「(でも着弾のドサクサにまぎれてインタビュー…は…)」 『『ジャキーン!!!!!』』 なるほど、今日のパターンから結末は見えていた。 雲の向こう、空中で、無理やりなんかガ○ダムっぽいものを持っているえーりんが待ち構えていた。 後に白黒は語る。 「月の技術は世界一ィ!!!!!!!!!!!!!」 あー、飛行船落としてたなー。 ていうかあの幸福兎、何バックパックを持っているんですか!!!! 「(ちょ、アナタ、永琳さんは賛成していたって言ったじゃないですか!!)」 「(言ったよ、でも誰も心配してないなんていってないウサ♪)」 「(う~そ~つ~き~~~)」 目でのやり取り後、てゐサムズアップ! これは…死んだ。 「撃撃撃撃撃撃!!!!!…(以下、結構続く)」 『『ピチューン!!!』』 「(ふっ)天網恢恢疎にして洩らさず、ね」 「でもいいのかな?」 「このくらいやっておかないと、○○は人がいいから心配なのよ。特にあの二人相手だと」 さて、そろそろ姫を拾って撤収するか。 薬莢入れ(下に落としたらマズイので)をはずして、帰るとしよう。 自分でも珍しい。多少ギャグだったとはいえ、ここまでやるのは。 もう何歳になるかわからないはずの自分が、青い。 でも○○のことを思うと…なんでだろう。 なんだか気恥ずかしくなる永琳だった。 「(さて、おやすみなさい○○…あれ、何か忘れてないかしら?)」 そう思ったがまあいい、あまり考えずにてゐと一緒に撤収する永琳だった。 ……… …… … 「(あの後、ウドンゲがまた一悶着起こして…まぁ、いいわ。でも恥ずかしいなぁー)」 自分にはまだそんな感情があった、そして今も。 ふと、向こうから皆のお茶をおぼんに乗せて持ってくる○○が見えた。 ○○は食べるのが早いので持ってきてくれる。 そのとき、何故か足元に人参が!!!!!!!!! 「っうぁあああ!!!」 「(もう、しょうがないわね。注意してもいつも湯のみギリギリまでお茶を入れるんだから)」 「シュッ」「トス」「チャリン!」 『ふよんふよん』 瞬間移動、中身をこぼさず、かつ胸で○○をキャッチする永琳。 『オー!(パチパチパチ)』 「ほら、拍手してないで、おぼんを持ってちょうだい」 タタタと駆け寄って、お盆をもつ鈴仙。 「あの、ありがとう、ございます」 『ふよんふよん』もあるのだろう。顔が真っ赤な○○。 本当、どこか抜けていて、いつも心配な人。 でも、心配性になっても、いいか♪ 「どういたしまして♪」 あーあ、湯気がでてるわでてるわ。 「ところで、まだ私の胸を堪能するの?」 『ハッ!』とした顔で、○○、撃沈。 さて、介抱が必要な、今日一人目の患者ね♪ 3.うどんげいーん♪ もう、○○ったら。ありえない、ありえないわ!! 大体、××歳の男っていったら、もっと耐性があるでしょう? この前某ルートで入手した外の本とか見たら、そうかいてある(らしい。なぜか文字がよめたということで)のに。 どうするのよ、この幻想郷で! 何故か(少)女だらけなのよ!!! もう!!ここは私が耐性を…耐性を… ほわわわわーん♪ 『ダメだよ鈴仙、そんな、僕もう』 『ダーメ♪これは、訓練、そう、訓練、なん、だから(息が何故か荒い)』 『もう、ぴょんぴょん跳ねちゃ…ダ…メ…(只今、スキマを潜り抜けようと『アー!!!!!!!!!!!』)』 少女妄想中~Now Dreaming~ 「鈴仙」 「(ふっ、ふふっ、ふふふっ)」 「鈴仙?」 「だめでしょう、もっとぴょんぴょんしちゃうんだから♪(口に出てる)」 「鈴仙ってば、永琳さんが呼んでいますよ!」 「ぴょん…へ?○○。あれ?」 ○○以外の全員が、白い目で鈴仙を見ていた。 「え?○○、さっき倒れたんじゃない」 「いや、さっき回復したのですが…」 「あ、そう、えっとー」 「疲れていらっしゃるのでは?」 じっと心配そうに鈴仙を見る○○。 うっ、今の私をそんな純粋な瞳で見ないで(汗 「○○、此方にいらっしゃい。その狂気兎、頭の中まで狂っているから近寄ってはダメよ」 「いい度胸ねうどんげ。妄想は頭の中でとあれほど…」 しまった!! ていうか姫様!!何どさくさにまぎれて○○を抱き寄せて… 「その前にアナタにはぴょんぴょん働いてもらうわ」 …はい。ごめんなさい師匠(涙 ……… …… … 少女労働中 ~Now Working~ 「鈴仙、調合用の器具を永琳さんの部屋に。この前どおり用意もしてみました」 「どれどれ…よし。こっちもやっと一段落よ~」 さて。最近慣れてきたなー○○。 ちょっと前までは「あー!!それはダメ~~」って感じのNGばかりだったのに。 ちょっと前の○○。そう、前から凄く抜けていて心配な男(の子?)。 私のことだけは「さん」を付けずにで呼んでくれる。 「鈴仙さん」の「せんさん」が、音が言いにくくて詰まるから、って。 自分ながら下手な言い方よねー。 でもてゐだって「てゐさん」だし、ふふ、これは一歩リードかな? いや、もう一つあるかもしれない。そう、あれは○○がはじめて待機の当番になった日。 ……… …… … 「へー、アレが噂の『弾幕ごっこ』なんですねー」 「え、ええ。そーなのよ」 師匠から「玄関から○○を遠ざけなさい」という指示を受けてやってきた診療所。 というわけで、手っ取り早く反対側の庭に○○をつれて来た。 「星を見ない?」 「うん、見るよ」 ○○は外の世界からやって来ているので、此方に来てから星が好きになったらしい。 急須にお茶をいれて、お茶請けも添える。 高価な物なんかじゃない。でもお手軽に幸せになれる。 …で?誰が『弾幕ごっこ』しているのよ!! 幸いにして音が聞こえないので近所迷惑にならないのはいい。 結構離れているのは分かる。 「でも、誰が夜に勝負しているのかな?」 「さ、さぁ?雑魚の妖怪じゃないかしら??(ホホ)」 と笑ってごまかす。ごめんなさい姫様! それからしばらくは、○○と他愛もない雑談をしていた。 姫様が無理して○○に上品なところを見せたり、 師匠の私を無理やり新薬の実験台にしようとしたり、 てゐがいたずらしたり、 「○○はまだいいよ~。てゐ、私に対してはもっとひどいのよ~」 「そうなんですかー」 てゐめ~、魂胆がミエミエなのよ。 …とかいっている間に、あら、時間をもう30分も過ぎている。 おかしいわね…師匠がもうとっくに迎えに来てもいいはずなのに…。 「鈴仙、どうしました?」 「いや、おかしいのよ…もう師匠が迎えにきてもいいはずなのに」 私は○○に理由(もちろん永琳と一緒につくった嘘)を話した。 「でも、夜も遅いですし…此方に泊まりますか」 「いやん○○、そんな『今晩とまらないか』なんて、エッチ♪」 冗談でいったのよ?こんなテンプレートのセリフ。 でも○○の顔は、この夜と星の光の中でも分かるぐらいに沸騰していた。 「あ、その、ごめん、なさい…(シュー)」 「冗談、冗談なのよ○○!」 必死に○○をなだめる(?)私。 私たち、若いのかな~? ……… …… … 「じゃあ今晩はここにいるわ、ちょっと着替えてくるわね」 そういって診療所の一室に入る私。 予備の寝巻が用意されていたのでそれに着替えることにした。 ちょっと着物タイプの、普段私は着ないタイプ…帯とか大丈夫かな? 「まぁ、何とか着られましたよ、と」 「(コンコン)鈴仙、入ってもいいですか?」 「ええ、いいわよ」 ○○はハンガーを渡しに後で来てくれるといっていた。 でもこのとき、私たちは運命のイタズラに巻き込まれる。 『ガチャ』 『ハラリ』 「「へ?」」 見事なユニゾンね♪ 「…………ッギャアアア!!!!!!!!!!!!!!!」 鈴仙の絶叫。 そしてこのとき、パニックになっていた。 「(いや、○○でもはずかしいよ!!今は(まだ)見ちゃダメ!!!!!!!!)」 その羞恥心が彼女のあることを忘れさせてしまった。 そう、彼女の目は、 「アレ、鈴仙、見えない…、急に暗くなってしまいました…」 ……… …… … 「「本当にすみませんでした」」 二人合わせて頭を下げる。 といっても○○は目が見えないので声だけだが。 「ゴメンね。 そういえば○○が来てから、私の「眼」を説明してなかったわ…」 狂気の瞳。 普段は抑えているこの能力。 何の能力もない○○には厳しかったみたいだ。 「多分視神経の一時的な麻痺だとは思うの」 仮に失明していたとしても直せる(永琳効果)から心配しないで。 「うん…」 「あ、あのね。ただ、○○をつれて今から永遠亭に戻るのは不可能なの。 だから一晩、大丈夫かしら?」 流石に○○を抱えて飛ぶのは不可能だ。 徒歩だと更に障害があるだろうし…。 「鈴仙。実は、僕も言ってなかったことがあるんです」 「へ?」 「実は僕、暗いのが何よりも苦手なんです!!!!」 そういえば○○が此方に来てすぐのころ。 ワガママを聞いてお願いと頭を下げた、ただ一つのこと。 「光を下さい」 そういって師匠にランプをもらったんだっけ… あの時は何故か分からなかった。 「どう、しましょう、鈴仙…」 眼は見えないけれど、少し涙ぐんだ声。 「こわい、よ…(フルフル)」 『ズキューン!!♪』 そのとき、母性本能だか、保護欲だかは分からない。 ただ一つだけいえるのは、鈴仙の謎のたがをはずしてしまったということだ。 「いいのよ○○、私に任せて(ハァハァ)」 そっと、○○を抱き寄せた。 さて、寝るぞという状態になった。 イロイロ(○○の着替えetc)あったが、とりあえず何とかなった。 「やっぱりいいですよ、僕は別の部屋で」 「何言っているのよ、何かあったらどうするの」 何かって何が?と思わないこともない。 でもダメ。今○○は 全 力 で 保 護 し な け れ ば ! !(力説) 「さ、おいで♪」 ゆっくりと布団に入る。 二人一緒、抱き合うように。 「鈴仙」 「ん?何?」 「ありがとう、本当に」 そういって珍しく自分から、○○は鈴仙を抱きしめた。 「いいのよ、気にしなくて。でも夜、怖いんだね」 「うん、そうなんだ」 そうか、そーなのかー。これはいいことを聞いた。 「ねぇ、○○、もしよかったら、戻ってもたまに…」 「……スゥ…スゥ…」 お約束なのね。 …まぁ、いいわ。これはアドバンテージ!!♪ この感情が、恋なのかは分からない。 でも、今彼を、愛しく思うことは、真実。 「お休み、○○♪」 そう囁いて、私は頬に軽く口つけた…。 ……… …… … 「もー、○○(ムニャムニャ)。だめなんだからー」 朝。鈴仙が寝言を言っている朝になりました。朝ですよー。 「隠してもダメよ、お見通しなのよ~」 だから朝ですってばー。 何で布団に体をこすり付けているんですかー。 「フ、フフ、そうよ♪ ○○は何もしなくていいのよ~♪」 「でもアナタは何かする必要があるようね?」 『ガバ!!!!!!!!!!!!!!!!!』 アー、ダカライッタノニー。 「し、師匠!!!」 「何で私がここにいるかって?心配だから様子を見に来たのよ。 夜遅くなってしまったから、もうそのまま二人で泊まるだろうって昨夜は思ったわ。 でも朝食にもあなたが現れないから、一応差し入れを持ってきたわ」 「あの、その、こ、これは海より」 「幻想郷に海はないわね。 で?来てみたら力を暴発させて○○の視力を奪ってしまったと… 百歩譲ってそれはいいとして…○○の面倒を見ている、という名義だったそうじゃない?」 「と、ところで○○は…?」 「何が傑作だったかって? アナタ、○○にしがみついて離れなかったそうじゃない。 おかげで抜け出せなくてたいそう困っていたわ。 『起こしてもおきません』って、どういうことなのかしら?」 『ジリジリ』と追い詰められている鈴仙。 「いや、あの、その」 「さて、とりあえず、オ・シ・オ・キ♪」 『うどんげいーん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』 「ぐすん(涙)、ごめんなさい」 「もう、ちゃんとやることやらないとだめでしょう!?」 「はい…トホホ。そういえば○○は?」 「てゐも来ていたから、一歩先に帰らせたわよ」 ……… …… … 「最後はてゐに美味しいところを持っていかれた気がするけれど、まあいいわ♪」 「へぇ…○○、夜が怖いのね」 「それはいいことを聞いたわ…部下がそんな大事なことを報告しないことはどういうことかしら?」 「うどんちゃん、それは機密情報ウサ♪」 「へ?って、皆どうしてここに!?」 「何故ここにいるか、ですって?(輝夜)」 「それは○○が呼びに来たからに決まっているでしょう?(永琳)」 「○○が来てから、妄想ばっかりだね?(てゐ)」 じりじりと追い詰める二人(てゐはちょっと後ろにいる) 「さて、鈴仙。○○は永遠亭でも特に丁重に扱わなければならない住人」 「丁度新型の自白剤をテストしたかったのよね~♪」 「「さぁ、残りも吐くのよ!!!!!!!!!!!!!!」」 「し、しりませんよぉ~」 ダダダと駆けていく鈴仙。それを追いかけるトップ二人。 「私はやっぱりこんな扱いなのね~」 うん、ごめん。 ……… …… … 4.ってゐ!!てゐ!!てゐ!! 「あれ、皆さんは」 「あ、○○。鬼ごっこしてるよ」 「そうなんですか…何故???」 「いや、知らない方がいいウサ♪」 永遠亭のとある和室。広いので食事はここでとる(さっきもここで)。 「○○、休憩中じゃなかったの?」 「ああ、いや、ちょっと数値がおかしくて、気になっているんですよ」 ○○の仕事の一つにパソコンなるものを使って資材や薬などの出入を管理するものがある。 コレが使えるのは屋敷で3人だったりする。 別に○○が特別、というわけではないのだけれど。 相性の関係なのか、何故か兎はあまりつかえない。 「あんまり根をつめるといけないよ?」 「いや、何故か気になってしまうことって、ありませんか?」 たしかに気になってしまうことってある。 「あるウサ。例えば、姫が風呂上りに体重計に乗ると何故毎回絶望するのか?」 「…」 「永琳が笑いながら近づいてくる時、何故いつも薬をもっているのか?」 「……」 「うどんちゃんは寝るときに」 「すみません、なんだかこれ以上は」 おっと、○○の唯でさえ白い顔が青くなってきたウサ。 「ごめんごめん。とりあえずそれ、止めた方がいいウサ」 「え?」 「なんだかこれ以上やると、不幸になりそう」 「そ、そうなんですか?」 「うん」 もちろん嘘。でもちょっとかまって欲しかったから。 そうですね、そういってそのフタを閉じる○○。 「さて、まだお昼までには時間があります」 「散歩、どう?」 うーん、とのびをする○○。散歩は健康にいいウサ。 「…そうですね。散歩にいきましょうか」 「そいじゃ早速出発ウサ」 ……… …… … 竹林。一本一本は細くても、重なりが全てを穏やかに隠す場所。 静寂とか平穏だとか、見た目はそんな感じ。 いや、日々闘争があるのは間違いないのだろうけど…。 「迷ったり置いていかれたら、食べられちゃうでしょうかね?」 「じゃあ試してみるウサ?」 もちろん冗談だけれど。 「そ、それだけは」 「嘘だよ。ただ、もし私が迷ったら…」 「迷ったら?」 「残念だけれど、だれもこの竹林を行き来できないウサ。 私が一番詳しいからね」 そう、別にそうなりたいわけではないけれど。 「すごいですねー」 「褒めて褒めて」 そういって○○を見上げるてゐ。 「えっとー、どうしたらいいですか?」 「どうしたらいいと思う?」 「…ナデナデ?」 「ナデナデ、ウサ」 ゆっくりとてゐをなでる○○。 「どう、ですか?」 「気持ち良いよ~。う~ん、もっと」 「わかりました」 少女ナデナデ中。しばらく堪能した後、もういいよとてゐは言った。 「ありがとう、○○」 「…てゐさんは、」 「何?」 「やっぱり、誰かに褒められると、うれしいですか?」 すこし遠い目をする○○。何を思ったのだろう? 「どういうこと?」 「てゐさんは妖怪だから、もしかしたら当てはまらないかもしれないけど、 でも、いくつになっても誰かに褒められたい、誰かに喜んでもらいたい。 無償の愛のつもりでも、本当に無償ならさびしく思ってしまう。 これって、僕が変なのでしょうか?」 気持ちって複雑なものだから。 「うーん、そうだね。でもその気持ちがなかったら。 やっぱり生きていても楽しくないかもしれない。 誰かに見て欲しい、誰かに自分を見て欲しい。 そう思うことは、生きることの一部だと思うよ」 そればかりじゃないけどね、とてゐ。 思えば長く生きてきた自分。 それでもその気持ちはある。 「どうしたの急に?さびしくなった?」 「ええ。まるで景色においていかれたように」 「でも大丈夫ウサ」 手をつなぐ2人。 「私たちは、ちょっとだけ時に許してもらっているから。 季節が○○を置いていっても、この手を掴むよ」 「ありがとう、てゐさん」 「さて、ちょっとしんみりしたけれど、かえるウサ」 「そうですね、なんだか不思議な気分です」 「○○、もっと気楽にいこうよ、そうじゃなきゃつまらないよ」 「恥ずかしい限りですね…」 そういってお気に入りの散歩コースを歩く2人。 まだ大丈夫。まだ許してもらえると。 でも、いつか終わってしまっても。 それでも思いはのこるから。 5.エピローグ 「ふぇ~ん、姫様も師匠もひどいですよ~(目が真っ赤という冗談)」 「何よ、大体イナバがそんなことを黙っているから悪いのよ!」 「まぁ私は大体分かっていたけれど」 お屋敷に戻ると、泣いている鈴仙と姫様&永琳を見かけた。 「だ、大丈夫ですか?」 「大丈夫よ。今戻ったのね、○○」 「はい、輝夜さん…汗だくですね」 「ちょ、ちょっとね(ホホホ)」 そういって、笑ってごまかす輝夜。 「○○、あなたに昔明かりをあげたことがあったわよね?」 「ええ、いただきました。ありがとうございました永琳さん」 「○○…どうして医者の私に相談しなかったの?『バッ!!!』」 「な、なにをですか?」 思わず後ろに下がる○○。 「いい、誰にでも怖いものはあるの。でも克服しないとダメよ」 「すみません…」 「そこで、今日から私が添いn…治療します」 『何!!』と3人。 「ちょっと永琳!!!…○○、夜は私の元にいらっしゃいな。住人の面倒をみるのも主の役目」 「姫様ダメです!! ○○?最初に打ち明けてくれたのは私よね?なら私が最後まで」 「おっと、新参ホ○ホイはそこまでウサ♪当然漁夫の利を」 言い争いをはじめるみんな。 『で、誰がいいの(かしら)?』 「うーん、そうですね…でも明かりがあるから…」 『そんな~』 「まだ昼ですよ?」 先に歩き出す○○。 「それに、夜でも皆がいてくれますから。 怖さは消えません。それでも皆がいてくれますから」 「ありがとう、永遠亭のみんな」 彼女たちと微笑みあう。それだけで幸せだから。 とりあえずまだ昼ね、そう言ってみんなで屋敷に戻っていく。 笑いながら、微笑みながら。きっと永遠の中で彼女たちと…。 彼女たちは心配性 ~永遠亭編~ fin 新ろだ509 ○○が幻想郷に居ついてから半年がたった。 ふと○○は、面白半分でくじを作ってみて・・・ ○「1等の人は1ヶ月間俺と一緒に同棲生活が楽しめますよう~!」 て文々新聞に書いたら。翌日なぜか大量の人妖神問わず行列が並んでいた。 ○「それでは、くじ引きを始めます!(なんでこんなにいっぱいいるのかな~?)」 フラン「なんでこんなにいっぱいいるのかな?外って変態だらけだったんだ?」 霊夢「1等手に入れてみせる!(そしてそのまま押し倒して・・・うふふふ・・・)」 魔理沙「(もういっそのこと・・・このまま借りるかな・・・死ぬまで!)」 アリス「○○との同棲生活・・・○○との同棲生活・・・○○との同棲生活・・・」 紫「スキマを使ってでも手に入れてみせるわ!」 美鈴「もしも他の人が当てちゃったらどうしましょう・・・(今の私なら誰であっても勝てる気がします・・・うふふふふ)」 レミリア「私に1等手に入らない運命なんてものは存在しないわ」 咲夜「時を止めてでも手に入れて見せますわ(そして他の人が一等手に入れてたら殺してでも奪い取るわ・・・たとえお嬢様でも・・・)」 パチェ「えーと一等を手に入れるコツはっと・・・」 幽々子「1等手に入れたら生き返っちゃうかもね~」 妖夢「○○さん!私とあんなことやこんなことモスクァ!」 鈴仙「わわわわ私がててて手に入れて見せます!(邪魔するものは全て殺す!)」 永琳「一ヶ月間楽しみにしているわよ」 輝夜「暇つぶし程度にはなら無いわねこれは・・・」 妹紅「輝夜なんかに渡すもんか!」 慧音「(もしも妹紅が引いてしまったら・・・そのまま○○と一緒に頂くのもありだな)」 幽香「一ヶ月間飽きさせない程度楽しみましょ」 小町「(映姫様がひいたらそのまま頂くか・・・)」 映姫「私と一緒にいることがあなたが最もできる善行です!」 早苗「奇跡の力で引き当てて見せます!(私と○○さんの間の子供を作るために!)」 神奈子「信仰も必要だからね・・・(夫を迎えるために!)」 諏訪子「生け贄も必要だよね!(相手は私!)」 椛「耐久一ヶ月間将棋するのもいいですね!」 文「いや、やめなさいよ椛・・・」 雛「厄の力を使ってでも手に入れてみせるわ」 静葉・穣子「「一ヶ月間楽しみに待っています!」」 ヤマメ「一ヶ月○○と一緒にいるなんて楽しそうだね!」 パルスィ「一ヶ月間あなたと一緒にいるのが妬ましいわ」 勇儀「一ヶ月間酒で飲んで楽しもうじゃないか!」 萃香「お酒、お酒、お~さけ」 さとり「1等のある場所なんて丸わかりです」 お燐「んふふ・・・お兄さん一ヶ月楽しもうよう!」 お空「一ヶ月○○とフュージョン、フュージョン!」 こいし「一ヶ月間一緒にいよう・・・」 天子「一ヶ月間・・・んふふふふふふ」 衣玖「空気を呼んで一ヶ月間フィーバーしっぱなしですね」 1等以下の物 2等:○○のキス 3等:○○の寝ぼけ写真 4等:○○の一週間なでなで権利書(ただし1等当てた人の期間中だったらその人の優先) 5等:その場でなでなで ハズレ:○○の握手
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ハーレム?23 新ろだ1004(新ろだ1003続き) スキマがぼくをショタにするだけで満足するはずなかった これで満足する器じゃなかったらしい 紅ショタ異変前篇 ○○「ッこれでよし…と…」 ぬえ「…これだけの量の紅茶、いつも運んでたの…素直に関心…」 大人の時の俺が運んでた量より今日は少ないくらいなんだ だけど子供状態の俺からみると、蝶☆たくさんだ 人里にて運ぶ品(紅茶+何冊かの本)を荷車に積み終えた僕は試しに荷車を押してみようと試み無理でした ○○「・・・男として素直に情けないです」 ぬえ「その量の荷物を子供に運ばせる姿を私が眺めている…これじゃいじめみたいじゃない。」 荷車の(リヤカータイプ)弾き手をうんうん引っ張っていたが微動だにしない これでは運ぶ以前の問題…と… ぬえ「どれ…よっと…」 ○○「…あ、ありがとう、たすかる…」 ぬえが一緒に押してくれた。さすが妖怪、すごい力だ、二人で押して紅魔館を目指すこととしよう… そうして僕たちは歩き始めた ほら、リヤカーってさ、引き手の内側に入って前方に全体重かけて押して行くじゃない だから必然的に私と○○が密着した体制で押していくことになるわけ 役得ね、超役得 ああもう!必死に顔紅くしてリヤカー押してる○○がかわいい! だってさ…ほら…小さい子って可愛いじゃない、母性本能くすぐられるのよ! ぬえ(ハッハッハー、これは予想以上においしいぜー、今の○○にお姉さん的な魅力を押しつけて○○を私が手にする!他の者には負けぬ!) ○○(子供になると体力も落ちてるなー…うー…) 相当温度差がある二人だった 押して押して氷精を無視してやっとこさたどり着いた紅色の館 ○○はいつもの数倍疲労がたまっているがぬえはぴんぴんしている ○○「うっわ…いつもよりもさらに大きく見える…」 そびえたつ紅色の館は普段見る館よりはるかに大きく感じた ぬえ「うっわ―…立派だなー、相変わらず」 とまあ見とれていても仕方がないので門番の美鈴さんに会いに行こう ○○「もしもしー?」 美鈴「ZZZ…ZZZ…」 あっちゃー…寝てるよこの人… ぬえ「立ちながら寝てるねー…器用で妬ましい、安眠の邪魔をしたい…そうだ!」 ○○「まいったな…この人は寝たら起きないぞ…」 僕が途方に暮れていると突然… ぬえ「昼寝してるーいけないんだー!」 ○○「あ!それを大声で言ったら…!!」 隣のぬえがいきなり大声でそれを叫んだ いや、これで起きるわけじゃない…ただ…僕の予想が正しいならば… サクン♪ 美鈴「いったあああああああああああああああ!!?」 ああやっぱり頭にナイフが刺さった 咲夜「まったく、また寝ていたの中国、罰として今日は晩御飯抜き」 美鈴「そ、そんなー!?」 頭にナイフ刺さったまま会話しないでください 咲夜「さて…あら?誰と誰かしら?」 咲夜さんが僕とぬえを見て頭に?マークを浮かべた ○○「あ、えーっと…今日頼まれたものを持ってきました、○○です」 ぬえ「臨時手伝いのぬえでーす。」 咲夜「!?○○さん!?どうしてそんなちっこくなってるんですか!?」 ○○「スキマ」 咲夜「ご愁傷様です…」 美鈴「あうー…」 美鈴さんは頭を壁につけて絶望感を味わっていた 後咲夜さん、同情ありがたいけど鼻にティッシュ詰め込まないでください。 咲夜「…(やばいかわいい…)ええと…はい、注文した荷物です、ありがとうございました…代金です… 荷物はいつもの通り私が運びますので…」 ○○「あ、どうも、じゃあ今後ともよろしく」 ぬえ「よし、かえろうかー」 そうして僕とぬえが踵を返して里に戻ろうとしたとき… 咲夜「…あ、お待ちください」 と、咲夜さんに呼びとめられた ○○「はい?なんですか?」 ぬえ「なんぞやー?」 咲夜「お嬢様がお呼びです、今より○○様とぬえさまをお客としてお出迎えさせていただきます」 いきなりでおらびっくりしただー ○○「拒否権は?」 咲夜「…申し訳ございません、微塵たりとも拒否権はございません…」 懐にナイフをちらつかせるなこんちきしょー いやまあ断る理由はないけども? ぬえ「…(…)…」 ○○「そのかっこに意味はあるのか?…」 咲夜「はい?」 ○○「いやぁ…別に…」 文につっこんでしまった…しかし話の流れが強引だ…ごういん、だめ、ぜったい キンクリの効果により現在大広間です 咲夜「では、お嬢様が車でおくつろぎくだ「待たせたわね」…すいませんくつろげません」 寛ごうと思った矢先ドアをガチャリと開けてここのお嬢様が入ってきた 実は見るのは初めて、見た感想、今現在同年代の外見だ、以上 え、ぼく?ロリコンじゃないよ レミリア「ふむ…お前がこの紅魔館に荷物の輸送をしている○○か 私はレミリア・スカーレット、紅魔館の主だ」 この人カリスマオーラが全開だ、鼻から その鼻血は、紅く、拡散していて、それはまさに紅霧異変小規模タイプだった ○○「お願いですから鼻栓してください、服が真っ赤になっちゃった」 ぬえ「うわー!紅茶が真っ赤になってる!」 咲夜「紅茶はもともと赤色です、あとお嬢様、これをお使いください」 うわこの人懐からティッシュ箱取り出しやがった、どこに入れてるんだ? レミリア「ふむありがとう…さて、私がお前をここに呼んだのはほかでもない、暇だ」 ○○「すいません僕言語理解能力低いんでもうちょっと詳しく」 レミリア「ふぅん…まあ要約するとだ、幼児後退したお前は暇つぶしになるかなー?って思った」 鼻にティッシュを詰めながらその犬歯を光らせにやっと笑うその姿にカリスマなんてなかった ぬえ「ふん、カリスマゼロのカッコつけのくせに人呼びつけて暇つぶしなんてなめた真似して~、 無理はしないほうがいいよ?おぜう」 レミリア「…今何て言った?」 急にズシッと辺りの空気が重くなった、借りでなく吸血鬼、このプレッシャーは僕には耐えがたい… ぬえ「聞こえなかった?カリスマつけてから出直してきなさいよおぜうさま~」 レミリア「殺す!ぶっ殺しつくす!」 十字架型の紅いオーラを発した吸血鬼のお嬢様の後ろに最強の個人へ移送を背負った牧師が見えた気がした ○○「ってぬえ!喧嘩やめてよ!」 ぬえ「わいら神やないねん、ときには鬼にならなあかん…」 誰の真似だよ!? ああこっちもバトルモードにぃ!どーしよう…僕死ぬ、巻き込まれたら終わる、トンガリ助けて と思ってるうちに視界がガラッと変わった ○○「…フー?」 その部屋はちょっとほこりっぽくてものすごく背の高い本棚が所狭しと乱立していた 本が好きな人にとっての桃源郷だろう…でも力仕事の僕に効果なんてなかった パチェ「あら?誰かしら…?」 声がして後ろを振り向いたら、本を読んでいる女性がいた ○○「ああ…気が付いたらここに…」 パチェ「咲夜の言ってたのは、この子ね、ここは紅魔館の図書室、私はパチュリー・ノーレッジ、魔女よ」 ○○「はぁ…突然おじゃましてすいません…意味も話からなくて気が付いたら…」 パチェ「…小さい子なのに礼儀正しいわね、魔理沙よりよっぽど礼儀正しいわ…」 あ、この人僕がもう二十歳すぎてるってこと知らない…い言う必要ないか、混乱させる意味はない パチェ「しばらくここにいたら?ここにいたらレミィとあなたの連れの戦闘にも巻き込まれないでしょ 俺より、立ってないで座ったら?あなたも読書どう?」 ○○「あ…じゃあ、お言葉に甘えて…」 ああ良識ある人でよかった、きっとこの館のブレインに違いない ところでこのショタ声での敬語をしゃべってる僕、気持ち悪くない? と、よっけなこと考えていたら、躓いて、転んだ ○○「あぅ…いたた…」 なるほど、ぼくの子供のころの転び癖、まだ直ってない パチェ「…大丈夫?」 心配してくれたらしい、近くまで来て手を差し出してくれた ○○「あ、ごめんなさい…」 膝の痛みで涙腺が緩んだ、ああ、幼いと涙腺って緩いんだ とか思いながらその手をつかむ パチェ「…いいえ、気にしないで、ほら、あなたも椅子に座って」 ○○「え、ちょ、わわわ!」 軽々と抱えあげられてその大きいいすに座らされた そう、言い忘れていたけど今の僕の身長は132くらいだ 低すぎだろとか言わないで、ぼくもともと身長低いんだ 後体重も30いってない気がするけど、力はなまじあるから厄介 小悪魔(馬鹿な!?パチュリーさまが本より重い物を持ち上げるなんて!? しかも何架橋えらく友好的…) 本棚の陰からのぞいていた小悪魔は愕然としていた 無理もないね パチェ「この魔道所ならあなたでも読めるとおもうわ、今近くにそれしか簡単なのないから それ読んでてくれる?安全になったら咲夜が呼びに来るでしょうし、それまでは我慢して」 ○○「すいません…では失礼します」 小さい子供に語りかけるがごとき優しい話し方に若干罪悪感を覚えながら、 渡された本に僕は目を通し始めた…ふむ、確かに僕でも読める ○○(ふむふむ…なになに?拘束術講座そのⅠ、手っ取り早い方法はこの本を読ませること 耐性のない相手はそれだけで拘束状態に…!?) そう、本に書いてあった、あわてた僕は本を放した、が時すでにお寿司 首から下が動かな…い… パチェ「ようし作戦成功」 ○○「助けて…え!?」 助けを求めようとした直後に聞こえたその声に思わずドッキリ パチェ「これで抵抗手段はないし…そこまでよ!の役割は私だし、スキマのせいってことにすれば今後の私に影響はない…」 なんかぶつぶつ呟きながら僕の服に手をかける…!?オイオイアウトだから! ○○「な、何してんですか!?」 パチェ「図書館では静かに…ほら、痛くしないから…」 おぅい、なんと妖絶なほほえみのことか、地味に幼くなった僕の精神はノックアウト寸前よ パチェ「体にたぎる魔力を鎮めさせて…」 蒼言ってその唇を近づけてきた ああなんか、ぼくもう生きていけないなーとか思った矢先に… チュドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!! と、大爆発とともに若干見えた図書館の門らしきものが吹っ飛ばされた パチェ「!?…な、何…?」 さすがにびっくりしたらしい、その爆音の方向をにらむように見ている… フラン「…ここかな…?なんかいつもと違う感じがしたんだけど…」 崩れたがれきの中からガラガラと音を立てて出てきた、ここのお嬢様にそっくりの金髪の女の子 パチェ「…なんでフランがここに…」 じゃっかんの焦りを顔に浮かべているパチェさん フラン「あーいたいた気配の人…わー!かわいい男の子ー!」 フ゜ライト゛は 1056 のタ゛メーシ゛を うけた ○○は ショックて゛ たおれた! その同じ頃… レミリア「褒美もろうて逝きさらせ!!」 ぬえ「わかりにくいネタばっかり連発してんじゃないわよ!」 二人の弾幕バトルは壮絶の一言に尽きる 何がすごいって…部屋に傷一つないこと レミリア「うるさいわね!大体あの○○とかいう奴を私のものにする計画が台無しじゃないの!」 ぬえ「初対面の男を襲うとは、、吸血鬼も落ちたものね!」 レミリア「かわいいものがほしいのよ!」 ぬえ「対象をまずは人形に落ちつけろや!」 もう弾幕がじゃなくて言い争いになってた 咲夜「だ、駄目だ…○○さんの姿がかわいすぎて鼻血が…」 水蜜「あれ?○○用の湯呑みが割れてる…」 白蓮「不吉ですねぇ…」 新ろだ1005(新ろだ1004続き) 赤ショタ異変完結編 すべてを終わらせるとき ショタをあまり活かせてないのは秘密 フラン「むぅ…全然起きない…てい!」 フランは 自己流ザオリクを 唱えた!(デコピン) ○○「痛い!…ああ…シャレにならない…」 バスン!という音と激痛が僕のおでこ付近で炸裂、転げまわる気すら失せるほど痛い フラン「ああ起きた起きた…起きないから心配しちゃったよ」 目を覚ましたら…確か図書館で見た金髪の子が… フラン「いきなり気を失ったから、びっくりしちゃった」 ○○「気を失ったのか…なんで気を失ったんだろう…」 うーん…わからない 僕のメンタルに原因があるのはなぜかわかったが フラン「そういえば、あなた名前なんて言うの?私フランドール・スカーレット、フランでいいよ!」 ○○「あ…僕は○○…」 元気だなぁ…と思った。あ、待てよ?スカーレット…?この人は先ほどのレミリアさんの姉妹か何かかな? フラン「○○って言うのね!…うーん…弱そうだし…弾幕ごっこ、できる?」 ○○「無理ですすいません」 フラン「だよねー…」 なんか急展開すぎてわからないから、話を聞きながら今自分の状況をまとめてみた 紅魔館に来た→お客さんにランクアップ→超☆弾☆幕→図書館にワープ→貞操がやばい→フランさんの部屋 (いまここ) すいませんどうしたらこうなるのか原理を説明してほしいです ぬえ助けて その頃のぬえ レミリア「レミリア☆インパクト!うーーーーーーーーーーーーーー!!」 ぬえ「自棄か!?自棄なのか!?」 困っていました パチェ「…のがしたか…次は必ずものにしてやる」 小悪魔「小さい子を無理やり押そうって…犯罪ですよ?」 パチェ「ここに法律はないの」 フラン「へー、ここに荷物を運んだりしてるんだー…じゃあ今飲んでる紅茶も○○が運んできたの?」 部屋にあった紅茶セットを使わせてもらって二人分の紅茶をいれた 僕も紅茶くらいは入れられる、それなりに自信はあるほうだ ○○「うん、運送業してるんだ、需要が多くて供給少なかったからいいなーと思って」 フラン「今紅茶飲めるのも○○のおかげなんだ、ありがと!」 ええ子やなーと、幼心ゲフンゲフン…二十歳の心に思った なんか精神年齢下がってる気がする… フラン「でも、人間でそんなに小さいんなら、すっごく若いんでしょ?」 ○○「いやあ実はね、呪いをかけられて姿が若くなってしまって実際は二十歳すぎてるんだ」 そういえばぼくは一人称俺だった気がする フラン「へー…よくわかんないけど大変だね…」 やばい、今までで一番心に来る同情った フラン「それよりも、何かして遊ばない?弾幕ごっこは無理でも、おままごととか…そうだ!パズル一緒にやらない?」 なるほど、姉のほうとは違って(あっちもある意味幼いけど)純粋な幼い子らしい ○○「(図書館のお礼もあるし…)うん、いいよ、じゃあ僕にできることならいっしょに遊んであげるよ」 フラン「本当!?ありがとう!じゃあこのパズル一緒に解いて!」 今はちょうど三時ごろだった気がする あれ?なんでこんなこと気にしたんだ? レミリア「はぁはぁ…やけくそになってまで戦ったかいがあったわ…」 ぬえ「弾幕ごっこでよけられない弾幕は禁止でしょうがー!」 こちらは戦闘が終了したようです ぬえが必死に他人の館を傷つけまいと戦ってきたのにおぜうの暴走のせいで大広間はフルボッコ ぬえもぼろ絵状態 咲夜「やっと終わりましたか…もう夕暮ですよ?○○さんとお茶を楽しむんじゃなかったんですか?」 そこへ咲夜登場 夕暮れっていうかもう薄暗いね やりすぎだね ぬえ「いたたたた~…」 弾幕→言い争い→弾幕(レミリャ暴走) なんとも複雑な経過だ 咲夜「そういえば○○さんは?」 ぬえ「あ!忘れてた!!○○ともう寺に帰らないと!」 レミリア「ふぅ…○○ならフランおと一緒にいるみたい…フラン!?」 ぬえ「耳元で大声出さないでよ…」 咲夜「○○さん死んでないでしょうか…?というよりなぜ図書館に避難させて妹さまのとこにいるのでしょうか…?」 ○○「…(やだ、何このパズル、合計七万ピースとかパネェ…)お、これここかな?」 フラン「あ、そうか!じゃあこれがここでこれここで…やったー完成ー!」 出来上がったパズルに絵がかれた絵は、もうハイビジョンクラスの精巧さだった ○○「ああ疲れた…ッて時間もうやばい、もう帰らないと…」 フラン「えーもう帰っちゃうのー?じゃあまた今度遊ぼう!約束だからね!」 ○○「うん、わかったよ…あ、帰り道わからねぇ…」 フラン「じゃあ私が案内してあげる!」 こんな感じで二人で玄関に向かうことになったわけ でさ、行く途中で僕を探してた三人とばったり出会ったんだ ぬえ「勝手に単独行動しないでよ!○○に何かあったらと思って心配したじゃない!バカァ!」 怒られた…あれ?僕が悪いの? レミリア「咲夜、いい?今度○○がここに来た時強制奪取作戦を開始するから今のうちに計画を練るわよ フランと相性いいみたいだしね」 咲夜「わかりました、ではパチュリーさまと合同で計画しましょう」 フラン「あ、面白そーだから私も!」 聞こえてるんですけど…? もう二度とここには来ないことにしよう、生命が危ない ぬえ「まったく、こんな吸血鬼の館で私から離れるなんて信じられない!」 ○○「あぅ…ごめんなさい…」 確かに危なかっただろう(たぶん僕のせいじゃないけど) しかしぬえのあまりの怒りっぷりにひるんで思わず僕は涙声+涙目になってしまった うん、やっぱり精神後退してる ぬえ「…ちょ、タンマ…」 鼻を押さえて後ろを向かないでよ ぬえ「…わ、わかったならよろしい!じゃあ帰ろうか、聖もきっと心配してるよ」 鼻栓しないでよ まあそんなわけで僕とぬえはリヤカー押して紅魔館を離れたわけだ 終始話の進みが速すぎて、すっごく疲れた 寺に帰ったら白蓮さんにしかられた 帰りが遅い あれ?普段より一時間早く帰ってきたぞ? 白蓮「子供は早く帰ってくるものです!今の○○さんは子供ですからね 私には保護者としての責任があるんです…!!」 わぁ、完璧に子供扱いだー ぬえは逃げたし… ○○「っていうか何?保護者って…」 水蜜「ああ、慧音さんに事情話して、○○が元に戻るまでは子供として扱うだってさ 保護者約聖を筆頭としてとして○○の肉体はこの寺の住人がしっかり護ります!精神はむしろいただく、モノにしてやる」 お願いですスキマさん、ぼくを元に戻して 夕食はすごくおいしかったが、辛かった 味覚も子供になっている ていうか子供扱いってことは仕事できないのではないか? いやだ、仕事したい 僕は働きたいでござる 働いて家の再建急がないといけないです ただでさえ原因不明の物質に何度も家が襲われてるんだし… 大工さんたちが何度作っても壊される、不思議だ… その夜、ぼくは夕食を終えた後に風呂に入って、寝た。 それいがいのアクションは起こさなかったし、フラグも立てなかった だが、朝に強制イベントが待ち受けていた ○○「…フーアーミー?私は誰?○○ ホワットアーユードゥーイン(個人的訳・これはどういう状況?)」 朝起きたらナズとぬえと星さんが僕をがっちりとホールドしていた ○○「…」 白蓮「…」 いやそれだけならまだましだったが、僕が呆然としている中、その光景を白蓮さんが見ていた ○○「どうしてこうなった…?」 白蓮「さあ?それより布団から出てください、今すぐ、即刻」 ○○「はいわかりました」 なんという威圧感 その日の朝ごはん、その三人と白蓮はいなかった 一輪「どうしたんでしょう、姐さん…」 水蜜「ほかの三人もね…」 ○○「…あの4人はどこか遠いところにいったよ」 終始グダグダだったね 新ろだ1012 今宵は満月がとても綺麗です。 只今、ごく一般的な世間では標準的な立ち位置的にもど真ん中、典型的日本人である ところの立派なややあっち向きの私こと○○。極々普通の平凡な生活を送っていたので はありますが。 立派な塀、その後ろには生まれ育った場所ではまず見ない竹林。 私が腰掛けているのは、綺麗に掃き清められた縁側。 ついでに言えば、大和撫子の理想系を体現した少女さんが寄り添っておいででござい ます。その反対側には儚そうだけど姉御肌な少女さんが寄り添っておいでです。 ここはぼったくり和風何とかクラブなんでしょうか? 人間性クイズなんでしょうか? ドッキリカメラなのでしょうか? ところがどっこい! 現実なんですよ! 奥さん! ここに至る経緯は聞くも涙、語るも涙なのですが、要点だけを掻い摘んでいくと。 ・冬眠前のスキマ妖怪(通称、個体名不明)に餌として拉致られる。 ・ところが間抜けなことに寝ぼけていたらしく、途中で私幻想郷と言う名のファンタジー な世界へリリース。 ・リリースされた先がこの大和撫子嬢とそのライバルである姉御嬢との決闘現場。 ・突然現れた私にビックリして魔法の弾(弾幕と言うらしい)の制御を大和撫子嬢間違える。 ・制御不能な弾幕、姉御嬢の脇腹を抉る。 ・呆然として開いた口に肉片ジャストミート!思わず、ごっくん☆ ・その肉片はレバー、姉御嬢は蓬莱人と言う人種(ついでに言えば大和撫子嬢ともう1人、 女医嬢、ああ言い辛い)でその生き胆を食べるともれなく不老不死に! 女医嬢曰く、 「こんな間抜けた理由で蓬莱人になってしまったケースは初めてだわ。まぁ、蓬莱人になる ケース自体物凄く稀少だけど」 ええ、自分でもそう思います。 で、ここからが本題。 蓬莱人の生き胆を食べれば不老不死になる=私の生き胆を食べれば不老不死になる。 ごく一般的かつ典型的日本人で、ごく普通で平凡な生活を送ってきた私には「戦闘能力」 なんて物は皆無に等しいのであります。よって、私が蓬莱人であるとバレた瞬間、即座に生 きる不老不死製薬工場になってしまう危険性が高いらしいのです、ええ。 なんかギリシア神話にありましたよね? 延々と鳥に自分の体内の生ホルモン喰われる話 が。ぞっとしませんよ、ハードMじゃあないんですから。 なので、 「彼は私が育てるわよ? ええ、どこに出しても恥ずかしくない立派な殿方にしてみせるわ!」 この魑魅魍魎が跋扈する(メッシュ教師嬢・談)幻想郷で、生き残る術(つまりは戦闘方面) を身に付けさせる為のコーチを誰がするのか。その話し合いの最中だったのですが。 「アイツは私の肝食ったんだろ? だったら私が責任を取るのが筋じゃないのかい?」 最初に「私の処に来ない?」と、お誘いしてくれたのが大和撫子嬢こと、蓬莱山輝夜さん。 しかし、姉御嬢こと、藤原妹紅さんが「そんな阿婆擦れよりも私の処は実戦的だぞ?」と食っ て掛かった結果がこれなんです! 「最初に見初めたのは私なんだからね! 初恋よ! 乙女の初恋! 邪魔される筋合いは無い わよ!」 あー、女の子の香りってこんなに甘い物だったんですね。現実逃避じゃないですよ? 現状 を鑑みて、何も考えずに感じただけなんです。 「そ、そんなの私だってそうさ! それに食べられたんだから、責任取ってもらうのが筋じゃ ないのか?」 あと女の子って柔らかいんですね、とても。接触と言うかほぼ密着なんですよ、ああ人の温 かさが染入りますよ。 もう一度、月を見ようと顎を上に上げると、四つの丘が。 「ねぇ? 私は家庭教師をしていたのよ? 人に教えるのは別にあなただけの特技じゃないもの」 「寺小屋現役教師の私に対する挑発か? 私であれば子供に教えるように優しく時には激しく、 親身になって出来るのだぞ?」 女医嬢こと八意永琳さんと、教師嬢こと上白沢慧音さんが睨み合っていました。 太陽の馬鹿野郎。ではなく、 月の馬鹿野郎! と、心の中で叫びながら、今宵はここまでにしとうございます。 新ろだ2-009 …朝、私はいつものように命蓮寺の境内を掃除している。 もう少し日が昇れば、参拝客がやってくるだろう。 それまでに、少しでも綺麗にしておくのが私の仕事だ。 この命蓮寺が建ってから暫く経ったが…最近は一人、この寺の住人が増えた。 それが…… 「…ふー、こんな所かな。一輪おねーちゃん、雑巾がけ済ませたよー」 外の世界から迷い込んだ子供、○○だ。 やってきた当時は戸惑いこそあったものの、今ではすっかりここに馴染んでいる。 今でこそ人間と妖怪はある程度仲良くやってはいるが、まだ溝があるのも事実だ。 人里の人間の一部は、ここを薄気味悪がって近付こうともしないのが、その最たる例だろう。 では、外の世界の人間である○○はどうなのだろうか? …答えは『全く気にしていない』だ。 おそらく、大抵の人間なら恐れおののく妖怪であっても、彼は何事も無く普通に接してくれていた。 そんな性格を姐さんは気に入ったのだろう、ここに住まわせる事に決めたのだ。 でも、それはおそらく建前でしかない。 本当の理由は誰もが分かっていた。 それは……○○が、とても可愛いと言う事。 素直で言う事をよく聞いてくれるのはもちろん、細かい所で気が利くのもある。 そして何より… 「ご苦労様。…うん、綺麗になってるわね。いい子いい子…」 「えへへー…」 この笑顔だ。 褒められた時に見せるこの笑顔…正直、たまらない。 こんな素晴らしい子を見つけてきたナズーリンには、正直感謝しなくてはならないだろう。 あの雲山でさえ、『○○は人間にしてはとてもよく出来た子だ』と評価している。 「あ、そうだ。お掃除は済ませたけど、他にボクに出来る事はある?」 「ん、そうねー…じゃあ、ちょっと必要な物があるからお使いをお願いしてもいいかしら?」 「うん、任せてよ!」 こうして自ら率先して、あれこれやってくれるのはありがたい。 …もっとも、姐さんからは『あまりこき使わないように』と釘を刺されているのだが。 「それじゃ、これとこれとこれをお願いね」 「分かったよー。じゃ、行ってきまーす!」 買い物籠を手に、人里へと走っていく彼の姿を見送る。 ……さて、そろそろ再開するとしよう。 私は箒を片手に、掃除に戻った。 ……はぁ、相も変わらず人間は驚いてくれないなぁ。 色々な方法を試したりもしたのに、出会う人間はただ私を冷たい視線で一瞥するのみ。 夜中は外を出歩く人間が少ないから意味も無いし…うう、なんて言うか現在進行形でひもじい…。 私は人間を食べる訳じゃないけど…って、ん? ふと、地上を見ると見知った顔…あれは確か○○くん? 唯一私に対して驚いてくれる貴重な存在だ。 初めて遭遇した時、物凄い驚いてくれたけど…あの時は凄い体がゾクゾクしたのを覚えている。 これって、さでずむって言うのかなぁ? でも、しょうがない。 だって○○くんがとっても可愛いから、ついいぢめたくなっちゃうって言うか(でも、以前一度だけやりすぎたせいで、入道相手にひどい目に遭ったけど…)。 …うん、決めた。 ちょっと脅かそう。 ○○くんにちゃんとした理由を話せば許してくれるもんね。 と言う訳で、見つからないように後ろからそーっと近付いて……傘の舌でべろーんと同時に… 「うらめしやー」 「ひゃ、ひゃわぁっ!?」 素っ頓狂な声を上げて、派手にその場に尻餅を付く。 あぁ、これこれ…心と体が満たされるわー。 「あ、あうぅぅぅ…小傘おねーちゃん…ひどいよぉ……」 あ、ちょっと涙目…うう、そう言う所がまた私のさでずむを…っと、いけないいけない。 弁解しないとまた入道にこっぴどくやられるし…。 「あはは…いきなりごめんね、でも私…お腹が空いてたから」 「うー…」 「ひもじくて、あと少しで死ぬかもしれなかったんだよ?」 「え、え…ホントに……?」 嘘だけど。 でも、こんな反応がまた可愛いのよね。 「むー…ならしょうがないけど……」 「でも、○○くんのおかげで私、助かったんだよ?」 「それなら…いいのかなぁ。……あ、お使いの途中だったんだ。急がなきゃ…」 「じゃあ、人里まで連れてってあげる。いきなり驚かせちゃったお詫びって事で、ね?」 あのお寺から人里までは割と離れている。 空を飛べる私なら、歩いていくよりも時間はかからない。 ……まぁ、本音は○○くんともう少し一緒にいたいんだけどね。 「じゃ、じゃあ…お願い……」 「おっけー、それじゃ…行こっ♪」 ○○くんの手を取り、空へと飛ぶ。 うふふ、今度はどんな方法で驚かせちゃおうかなー♪ ……まったく、ご主人の物を無くす癖はどうにかならないのだろうか。 先日、古道具屋で買った宝具を移送中にうっかり無くしてしまったのを聞いて、私は『またか』と内心呆れていた。 いつぞやの時もそうだったが、何故ああもうっかりしているのだろう。 私には理解出来ない。 更に困った事に、落とした場所の範囲が広すぎて捜索にも時間がかかりすぎていた。 こうなってしまうと、しらみつぶしに探す他無い。 子ネズミもあちこちを探すが、思うようにいかないのが現状だ。 さて、どうしたものか…… 「あれ?ナズーリンおねーちゃん?」 後ろから声をかけられる。 この声は○○? 「おや、○○じゃないか。こんな所でどうしたんだい?」 「一輪おねーちゃんのお使いで、人里に行ってたんだよ。…ナズリーンおねーちゃんは?」 「ああ、ご主人がまたいつもの癖で物を無くしてね……」 「じゃあ、ボクも探すの手伝うよ!」 …なに?今、何て…… 「だって、困っている人は助けなさいって星おねーちゃんが言ってたもん。ナズーリンおねーちゃんは探し物が見つからなくて困ってるんでしょ?」 「あ、ああ…確かにそうだが……」 「なら、手伝う!手は多い方がいいって言うでしょ?」 う、うむむ…ここまで行くと、やんわり断ってもやると言うのが○○だ。 ここまで来るとテコを入れても動かないだろう。 とは言え、人間の手を借りたいのも現状だ。 「わかった…じゃあ、手分けして探そうか。私はこっちを調べるから、○○は向こうを探してきてくれ」 「向こうだね。…よーし、探すぞー!」 買い物籠を置いて、意気揚々と探しに行く○○。 宝探しでもするような勢いだ。 ……まぁ、実際に宝探しなのだが。 さて、私も仕事をしよう…。 そう言えば、2-3週間くらい前だったろうか。 この近隣にて、私のペンデュラムに反応があった先に倒れていたのが○○だった。 最初はただの人間かと思ったのだが、すぐさま命蓮寺へと連れ帰った。 あのまま放置して妖怪のエサになるよりかは、連れ帰って保護した方がいい。 そう直感したのだ。 結果的にはそれが正解だった。 その…あまり大きな声では言えないが、○○はとても可愛い子だ。 私に『その耳と尻尾、可愛いね』と言ってくれた時には心を撃ち抜かれた気分だった。 ……まったく、私らしくもない。 「…あれ?これ、なんだろう?……ナズーリンおねーちゃーん!何か見つけたよー!」 おっと、いつまで感傷に浸っている訳にもいかないか。 ○○の所へ向かおう。 「なんか綺麗な物なんだけど、ほらこれ」 「…!ここにあったのか。…○○、よくやったぞ」 こんな事くらいしか出来ないが、私は褒める意味で○○の頭を撫でる。 「あ、あうぅぅ…」 嬉しさと恥ずかしさが入り混じったような表情になる○○。 か……可愛い…!って、いかんいかん。 ともかくこれを早くご主人に届けに行こう。 「よし、それじゃあ戻るとしよう。ご主人にこれを届けなければならないからね」 「…ねえねえ」 「どうした?」 「それ、ボクが星おねーちゃんに届けてきてもいい?」 な、何?今、何て…って、さっきも言ったなこれ。 いや、そうじゃない。 宝具を○○がご主人に届ける、だって? そんな事をしたら…… 宝具を届ける ↓ ご主人歓喜 ↓ ○○独り占め …いかん、これはいかん! 適当な理由を付けてでも、最悪二人で届けなくてはならない。 「…だが、これはご主人の不始末で無くした物だ。部下の私が届けに行くのが筋と言うだろう?」 「うーん、じゃあ一緒に届けに行く…でいい?ボクも誰かの役に立つ事をしたって証拠を見せたいし……」 「そう…だな。なら、そうしよう」 よし、これで最悪の事態は回避出来た。 …むしろ冷静に考えれば、命蓮寺へ帰る途中は○○と一緒じゃないか。 ふふ…短時間ではあるが私が独り占め出来ると言う訳だな。 少々面倒な事になったが、結果的にこうなった事をご主人には少し感謝しておくとしよう。 「そう言えば、その綺麗なのって何?」 「これかい?これはだね……」 これは帰り道が楽しくなりそうだ。 さて、どうしようかな……。 私とした事が、宝具を無くしてしまうなんて…。 ナズーリンにまた文句を言われてしまいそうだ。 寺を飾る為に古道具屋から買った宝具を、ちょっとした事故で落としてしまうとは不覚もいい所。 ……どんな事故かは、私の名誉もあるので秘密とさせて頂く。 ただ、最近命蓮寺の住人となった○○の事を考えてたら、つい…って、これじゃ答えを言っているような物だ。 いけないいけない……けれど、それは仕方の無い事だ。 ○○は可愛い。 それが命蓮寺に住む全員の総意なのだから。 出来る事なら、独り占めして可愛がりたいくらい……いや、そうではなくて。 それよりも宝具は無事に見つかるのかどうか、それが不安でならない。 もし○○にこの事が知られたら何て思われるのか…考えただけでゾッとする。 『星おねーちゃん、うっかりしすぎだよ…』と軽蔑の視線で言われてしまうのだろうか? いや、○○はそもそもそんな事を言う子ではないはず。 けれど、そう言う子ほど逆に……ん? 廊下をドタドタと走る音が聞こえる。 こんな事をするのは、私が知る限り二人しかいない。 ぬえと、もう一人は…… 「星おねーちゃん、ただいまーっ!」 ○○だった。 「ああ、○○。元気なのはいいけれど、もう少し静かに……」 そう言えば、確か雲居が○○を人里へお使いに出したと聞いたような。 用事は済ませたと言う事なのだろう。 「あう、ごめんなさい…。あ、そうそう…これ、探してたんでしょ?ほら」 そう言って、○○が私に差し出した物。 それは…… 「ああ、これは……!」 「ナズーリンおねーちゃんから聞いたよ。それを落として困ってたんだって?」 「え、ええ…そうよ」 …なんて事だ。 恐れていた事が現実となってしまった。 この毘沙門天の弟子たる私の誇りが、一気に崩れ落ちてしまうではないか。 どうすれば…… 「星おねーちゃん、ボクにこう言ったよね。『困っている人を見かけたら、例えそれが妖怪であっても助けなさい。見過ごしてはなりません』って」 確かに○○にはそう教えたけれど… 「星おねーちゃんが、その綺麗な物を落として困ってたって聞いたから…ボクもそれを探すお手伝いをしてたんだよ」 「まったく、ご主人には呆れた物だよ……物を無くすのはこれで何度目なのか…」 う、うぅ…ナズーリンにそう言われると、全く反論すら出来ない…… 「でも、誰にだってそう言う間違いとかはあるんじゃないの?あんまり悪く言っちゃいけないよ?」 「う、○○がそう言うのなら仕方ない、か……」 さすがにナズーリンも○○には弱いのか、私への文句もそこまでで止めた。 …いや、それよりも○○は私を擁護してくれたのか? その優しさに、少しだけジーンとなる。 「と、ともかく…よくぞ見つけてくれました。ありがとう、○○」 「えへへ、どういたしましてっ」 ああ、可愛い。 元々は私が○○の事を考えるあまりに引き起こしたミスだったけれど、結果的にはその○○に助けてもらったとも言うのだろうか。 やはり、○○はいい子だ。 …ナズーリンがジト目で私を見ているような気もするが、気にしないでおこう。 ──夜。 一日が終わる。 …夕飯には今日の当番だったムラサが(主に○○絡みの事で)暴走したり、お風呂に○○が入ってる所へぬえが乱入して一悶着あったりもしたが、概ね今日も平和に終わった。 そして、私の横には○○が寝息を立てている(保護者特権として毎日一緒に寝ているとは、あまり大きな声で言えないのだが)。 最初、ナズーリンが○○を見つけてきた時は驚いた。 外の世界の人間がこの世界に紛れ込む事は、さほど珍しくはないにせよ…こんな小さな子供がどうして?と思った物だ。 だが、それよりも先に気付いた物…それは体中がボロボロで、ところどころに痣のような痕が残っていたのだ。 何かの事件に巻き込まれた?それとも事故?或いは…? 理由は分からないにせよ、私は彼を命蓮寺で保護する事に決めた。 この事には誰も反対する者はおらず、満場一致でそうなったとも言うのだけれど。 …それからと言うもの、○○はすっかりここに馴染んでいる。 本当に彼はいい子で、とても可愛い。 私の事を「お姉ちゃん」と呼ばせているのは…まぁ、その、年のやたら離れた可愛い弟のような感覚と言うか。 ともかく、そう呼ばせたかったのだから仕方ない。 「ん、ぅ……ぁ、あぁ…」 ふと、○○の声に気付く。 何かにうなされている様子…これは”また”悪い夢を見ているのか。 「やだ…やめ、やめてよ……おかあさん…。なにも、わるいこと、してない、のに…」 …最初はただ、悪い夢を見ていただけなのだろうと思った。 だが、それが何度か続く内に私はある事に気付き、確信した。 ○○の体中にある痣……寝言を聞く限り、おそらく彼は外の世界で親から日常的な虐待を受けていたのだろう。 私は覚りではないので心の奥底を覗く事は出来ない。 だから詳しい事は分からないし、何があったのかを聞く事など出来る訳がない。 一つ、確かに言える事があるのなら…彼は深い心の傷があり、それを表に出さないよう私達に振舞っている。 それだけだった。 「……っ、ぅ……」 目は涙に濡れている。 よほど辛い仕打ちを受けていたのだろう…。 私に出来る事は…… 「……ぅ?…お、ねーちゃん……?」 ただ、優しく抱き締めるだけ…。 少しでも心の傷が和らぐのならば、それでいい。 「また…悪い夢を見ていたの?」 「……うん…」 母が子をいたぶるなど、そんな事は到底許される物ではない。 可能なら、私が直接外に世界に出向いて彼の母親を説教したいくらいだ。 何故、こんないい子が虐待を受けなければならないのか? 人間は昔から何も変わっていないとでも言うのだろうか? 「でも、大丈夫…だよ。おねーちゃんが、こうしてくれるから……」 本当は泣きたいだろうに、○○は無理に笑ってみせる。 それが私には悲しく思えた。 「ここのみんなは…ボクにいっぱい良くしてくれるから……。向こうにいた時なんかよりも、ずっと…」 「それはそうよ。だって、みんな○○の事が大好きだもの。もう、家族のようなものだから……」 「……ねえ、おねーちゃん」 ふと、○○と目が合う。 汚れを知らない、純粋な眼に引き込まれそうになる―― 「ホントにボクはここにいてもいいの…?」 「もちろんよ。…○○はどうなの?いつまでもここにいたい?」 「うん…。帰りたくなんてないよ……」 それを聞いて、私は安心した。 仮に外の世界に帰ってしまうとすれば、また虐待される日常に逆戻りとなるだろう。 そんな事をされるくらいなら、私が責任を持ってこの世界で保護した方がいい。 …そう思うのは身勝手な事なのだろうか? 「ボク、おねーちゃんの事…大好きだし……離れたくない…」 彼の一言に、私の心は大きく揺さぶられる。 こんな小さな子だと言うのにドキドキするなんて…自分でもどうかしていると思う。 せめて○○がもう少し大きければ……って、私は何を考えているのか。 そんな不埒な事を考えているようでは、保護者失格だ。 冷静にならなくては…。 「くすくす…私も○○は大好きよ?」 と、○○の頭を撫でる。 …いつか彼が大きくなった時にも、私に同じ事を言う日は来るのだろうか? もし、その日が来るのなら私は…… 「…おねーちゃん、もう少し…このままでいてもいい……?」 「ええ、いいわよ。だから、早くお休みなさい」 …それから程なくして、○○は再び眠りに付いた。 彼がこの世界で暮らす内に、心の傷が癒える日は来るのだろうか? ……いや、きっと来るだろう。 そう信じたいものだ。 これから騒がしくも平和な日々が長く続く事を願いつつ、私も目を閉じた。