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東京ハーレムwiki へようこそ がんばります。 公式サイト:http //game-tsutaya.tsite.jp/_/lp/tokyoharem/ ホームページ:http //game-tsutaya.tsite.jp/game/detail/78 『東京ハーレム』 PV
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ハーレム?22 新ろだ891 エロゲ脳万歳! 一回目 不意に、立ちくらみがした。 その場に立っている事すら出来ず、思わず膝を付く。 グワングワンと世界が揺れる。 一応言っておくが、飲みすぎたなどという事は無い。 酒は飲んでも飲まれるなが座右の銘な俺に限ってそんな事は起こり得ないのだ。流石に鬼や天狗に絡まれれば話は別だが。 数分後、少しはましになったとはいえ今尚揺れる頭を幻想郷生活で培われた根性で抑えつける。 この程度なら屁のツッパリにもならんですよ。鈴仙の無差別にばらまかれる狂気に比べればな……。 それに自室でいつまでもしゃがみ込んでるとなんか俺の右腕よ……静まれ! みたいでアレじゃないか。 そんなところをブン屋こと文にすっぱ抜かれて悶死したくないので、気合で立ち上がる。 健気極まりない俺の目に飛び込んできたのは、一瞬にして余りにも大きく変化していた景色だった。 俺の家から、俺の家へ。 こう書くと日本語で話せ。ここは幻想郷だとか言われそうだがこの言葉に嘘はない。 幻想郷での俺の家から、向こう側での俺の家へ。 細部こそ記憶のそれと違うところはあれども、ここは間違いなく俺の実家の俺の部屋だった。 二十年近く住んだ家であり部屋だ。見間違うはずも無い。 つまりこれはそういう事なのか。 問答無用の強制送還とか聞いてないっすよ紫さん! こっちに帰るのは嫁さんを見つけてからって決めてたし、それを無しにしてもせめて皆に別れの挨拶くらいしてもバチは当たらな いと思う。ご丁寧に服まで新調してくれちゃってまあ。学ランとか嫌がらせ以外の何者でも無いだろ。 あー、結構な期間蒸発してたから家族に会うのも気まずい……。 「……さん、起きてる?」 とまあこんな感じで凹んでいたら、ノックの音と共に聞き覚えのある声が聞こえた。 声は女性のものだが、流石にお袋って事はないと思う。 幾らなんでも声が若すぎるし、向こうは俺が戻った事を知っている筈が無い。 そも俺が向こう側に迷い込んだのは一人暮らしを始めてからだ。この家にいる時期じゃない。 そう、俺の耳が木偶になったのでなければ、この声は。 「咲夜か!?」 「あら、起きてたのね。目覚ましも無しに起きるとか明日は槍でも降るのかしら」 紅魔館が誇るぱーへくとめいど、十六夜咲夜嬢がそこにいた。ただしブレザー着用。 メイド服じゃない姿を見るのは初めてじゃなかろうか。 普段と違い年相応に、もとい外見年齢相応に見える。実年齢何歳なんだろうな。 ……いやいやいやいや。なんでコイツがここにいる。 まさか俺の部屋だけ紅魔館に持ってきたとかそういうオチなのか。すごいよゆかりん! 「なるほどなるほど、そういう事か。流石の俺も自室を召還とは恐れ入ったね。しかしなんで俺に一言もなしに? ていうかなんで 紅魔館に? これからここで住めばいいの? それはともなくブレザー可愛いな」 「義兄さん……寝ぼけてるの?」 「兄さん? 咲夜の? 誰が? どこに?」 続いて衝撃の事実発覚である。咲夜の兄。文でなくとも興味の沸くキーワードだ。 やっぱり銀髪で時間操作とか出来るんだろう。 そして当然の如くイケメン。世界は平等なんかじゃない。 「何言ってるの? 義兄さんは義兄さんでしょ、○○義兄さん」 「……俺かよ。しかも義兄かよ」 「他に誰がいるのよ。それとも私の義兄さんはいつの間にかプラナリアよろしく増殖でもしたのかしら? 私は一人いればそれで十 分なんだけど」 とても嘘や冗談で言っているとは思えない。 義兄という微妙なイントネーションを聞き分ける俺も正直どうかと思うが、咲夜は一体どうしたんだ? 言うまでも無く俺にはリアル妹すらいないのに義妹とかいう珍しすぎる家族を持った覚えは無いし、そんな事実も無い。 それを顔見知りが言ったのだからその驚愕度は倍率更にドン。場所が俺の部屋って事で更にドン。 あ、俺テンパってる。 「……悪い、理解出来ない。罰ゲーム? ドッキリ? なんで咲夜がブレザー着て俺の部屋に?」 「はぁ、珍しく早起きだと思ったらこれだものね。ご飯用意出来てるから早く顔洗ってくること。新学期早々遅刻なんて私は問題無 いけど義兄さんのせいで私がからかわれるのは御免だわ」 そう言って咲夜は出て行ってしまった。 聞きましたか奥さん。遅刻ですってよ遅刻。 ハハッ、ワロス。 俺に学ランまで着せて、最近の流行はそういうプレイなのか? 「こちとら学生生活はとっくにそつ……ぎょ……」 苦笑しながら窓の外に目を向けてみればそこは自然豊かな、どころか自然しかない紅魔館周辺ではなく、閑静という程では無いが どこにでもあるような住宅街。 当然そんなものが幻想郷に存在する筈も無く。 理解不能理解不能。デデデデストローイナーインボー。世界は核の炎に包まれた。 どうしよう、まったくもって意味が分からない。 考えるのを止めれば幾らか楽になれるのかもしれないが、まだ諦めるには早すぎる。 俺達の戦いは始まったばかりなのだから。 そうだ、こんな時こそ魔法の言葉の出番だ。 これ一つで大抵の問題は解決する素敵な魔法。 「なんとかなるよ、絶対大丈夫だよ」 ……。 「えーりんえーりん助けてえーりん!」 ……。 「あのぉ~、ちょっとぉ~、こういう事止めてもらえませんかぁ~? 僕困るんですけどぉ~、まったくぅ~もぉ~」 …………。 自分を捨ててまで祈ったのに反応が無い。欝出し脳。 もういい、知らない。 強制送還とか咲夜が義妹とかいう超展開も傷心の今はどうでもいい。寝よう。 目が覚めたら全部元に戻ってるだろ、多分。 ああでもブレザーの咲夜という希少価値の高すぎるものを見れたのは少し嬉しかった。 魔理沙辺りにでも自慢するとしよう。流石にブレザーは幻想郷に流れてきてないだろうしなー。 「ではお休みなさい。今日も○○が一日をお送りしまし……オーケー冗談だ。冗談だから首筋にナイフを当てるのは止めてくれ。俺 は実は人間だから頚動脈切られたら死ぬんだ。ルミノール反応で部屋中が綺麗になっちゃうんだ」 「……いきなり変な叫び声が聞こえたから何事かと思えば」 背後から溜息と共にこれだから義兄さんは……という咲夜の呆れた声が届いた。 この世界は現実逃避すら許してくれないのか。鬼畜にも程があるだろ。 ええはいはい認めます。認めますとも認めりゃいいんでしょうが。 ここはどういう訳か幻想郷の外でここは俺の家で咲夜が学生でしかも何故か俺の義妹になっていて俺は○○なんですね。 もーなんだよこれ。しまいにゃ泣くぞ。 「で? 親父とお袋は?」 「義父さんと母さんならテーブルで義兄さんが来るのを待ってるわよ」 え、義父さんって……再婚!? なんてこったい。俺はまたてっきり養子か何かとばかり思っていたんだがそっか、再婚か。 親父に限って不倫とかはまず無いだろうし問題無いな。義母さんが美人だと俺によし。 ただまあ……お袋の顔が見れないってのは少し、寂しいな。 ――。 何てことの無い普通の朝食の席。 今日の献立はアサリの味噌汁に焼き鮭にほうれん草のおひたしにおきゅうと。 ……豪勢すぎる。なんだこれは。咲夜の罠か。 だがそれ以上にテーブルの、しかもちょうど俺の対岸で激しく自己主張するものがあった。 それは一組の夫婦のものであろう、遺影と遺牌。 ただどっちも知らない顔な訳ですが。 貴方達は一体どちら様でしょうか。 良かった。本当に良かった。 これが実の両親の遺影だった日には流石に平静を保っていられる自信がない。 「義父さん、母さん、遅くなってごめんなさい……じゃあ、いただきます」 「……いただきます」 遺影にどう反応してよいのか分からないまま炊き立ての白米を口に入れる。 刹那、魂が警告を発した。これは毒だ、と。 これは心を犯し、体を腐らせ、魂を堕落させんとす猛毒だ。 あまりに危険すぎる。これを世に放ってはいけない。 これが……これが紅魔館が幻想郷に誇る完全で瀟洒な従者の力だというのか! 「義兄さん、どうしたの? いきなり立ち上がって」 「ご飯おかわり」 「もう!? どんだけ早いのよ……」 いや実際やばいです。凄い美味しいです。メシウマとかそんなレベルじゃありません。 このままでは俺が咲夜に餌付けされるのも時間の問題かもしれません。 ――ピンポーン。 「ん……出てくるわ」 「ああ義兄さん、気にしないで大丈夫よ」 え、いいのか? まあ咲夜がそう言うのならそうなのだろう。 「しかしなんだな、流石は咲夜と言うべきか」 「どうかした?」 「どれもこれも抜群に美味い。……うん、美味い」 「そう? いつもと同じだと思うけど。まあ義兄さんは起きるのが遅いから味わって食べる機会は少なかったかもしれないわね」 ――ピンポーン。 「いやいや、こんな美味い飯を朝から味わって食えるなら毎日だって早起きしようじゃないか」 「そりゃどうも。褒めても何も出ないしおかずもわけてあげないわよ」 ――ピンポピンポーン。 「これからも毎日俺の為に味噌汁を作ってくれればそれでいいよ」 「……考えておくわ。ていうか偶には義兄さんも手伝いなさいよ」 「別にいいけど、俺が手を加えると折角の晩餐がもれなく漢の手料理になるぞ」 「ふふっ、期待しとくわ」 ――ピンポピンポピンポーン。 「……なあ、本当に出なくていいのか?」 「ええ、また新興宗教の勧誘とかそんな所でしょ。ほんと毎日しつこいわよね。ナイフじゃ足りないのかしら」 ――ピピピピピピピンポピンポピピンピーンポーピピピピピンポピンポピンピピピピピピンポーン。 うわ連打してる。凄い勢いで連打してる。 幾らなんでも宗教勧誘にしちゃしつこすぎる。 まさか俺の家って張り付かれてるのか? 確かに咲夜は時間停止とか並じゃない力持ってるけど。 にしたってこれは折角の飯が不味くなる。 「○○さーん! 起きてくださーい! 朝ですよー!」 ちょっとガツンと言ってくるか、という決意と共に立ち上がった瞬間、またもや聞き覚えのある大声がご近所に響き、咲夜の持っ ていた箸が手の中でベキリと音を立てて真っ二つになった。 声の主の名は恐らく東風谷さん家の早苗さん。 現人神でありながら魑魅魍魎の集う幻想郷では常識的という言葉を体言するような……そう思っていた時期が俺にもありました。 どこをどう間違ったのか、ある日を境に彼女はちょっとアレな子になってしまったのだ。 普段はまともなんだけどな。ミラクルフルーツ。ライスシャワー。 そしてこの世界でもやっぱり彼女はちょっとアレな子らしい。 奇しくも宗教の勧誘といった咲夜の言がある意味間違ってないのが泣ける。 でもきっと彼女の根は優しくて素直ないい子なんだ、そうに決まっている。そうであってくれ。頼む。後生だ。 「○ー○ーさーん!」 「……兄ちゃんちょっと行ってくるわ。勧誘員さんは俺をご指名みたいだし」 「私が出るから義兄さんは座ってご飯食べてて」 そう柔らかく微笑んで咲夜は消えた。咲夜のあんな表情を見たのは初めてだ。 不覚にも見惚れそうになったのは俺だけの秘密にしておこう。 が、消える瞬間の彼女は目が赤かった気がする。 ……念仏でも唱えておこうか。手と手の皺を合わせて幸せ。南ー無ー。 「あ、お早うございます十六夜、さ、ん……? えと、どうしちゃったんです? 私の目がおかしくないのなら、十六夜さんの目の 色が怒り狂う王蟲の如く危険色なんですが」 「お早う、東風谷さん。分かる? 貴女に今の私の気持ちが分かる? 分かってくれるわよね? じゃあさようなら。皆には東風谷 さんは故郷の風の谷に帰ったって伝えとくわ」 「そんな他人行儀に畏まらなくても。いずれ姉妹になるんですから、私の事は早苗お姉ちゃんって呼んでくださいっていつも言って ちょ、待っ、ナイ……多……避っ……無……死!?」 妙に盛り上がってるな。え? 止めろって? またまたご冗談を。軽く10回は死ねるから。 しかし今度は早苗さんと来たか。 いよいよもってどういう世界なんだ。 事ここに至っては俺も鬼札を投入せざるを得ない。このままでは俺の脳がオーバーフローでリミッター解除でAMSから、光が逆流 する……! ギャァァァァァッ! で大変な事になってしまうからだ。 今から俺が曝すのはブン屋との賭けでイカサマを使い巻き上げたとっておきの極秘情報。 これを幻想郷中にばらまけばそれこそ全てが崩壊しかねないほどのもの。 そんな事が俺に出来るのか? 出来るか出来ないかじゃない。やるしか無いんだ。 やぁーってやるぜ! ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ 「大妖怪、八雲紫女史の年齢は――」 ――ピチューン。 ご愛読ありがとうございました。○○先生の来世にご期待ください! 「……はっ!?」 なんだなんだ、今何が起こった!? 確かに俺は何かを言おうとした、いや言った筈なのだが、そこから先の記憶が無い。 この事態を打開するためのとっておきの切り札を使った筈なのに。 果たして俺は一体何を言ったのか。ブン屋から何を巻き上げたのか。今となっては全く思い出せない。 残ったものはポケットの中に入っていた「次は殺す。必ず殺す」と血文字で書かれたメモのみ。 どうやらさっきの俺は恐ろしい事をしでかしてしまったらしい。 ……この件は無かった事にしよう。忘れるんだ。俺の身の安全の為に。 俺が我が身に襲い掛かった戦慄に身を震わせていると、気づけば咲夜は席に戻っており、早苗さんがぷりぷりと頬を膨らませなが ら茶の間に入ってきた。 ……早苗さんもブレザーか。流石は現代っ子とでも言おうか、見事に違和感が無い。 頭に数本ナイフが刺さっているのはきっとスルーでいいんだろう。見たところ血も出てないし。 「酷いですよ十六夜さん。軽いお茶目じゃないですか」 「まあ大変、痴女が不法侵入してきたわ。義兄さん、110番通報お願い」 ういういラジャー。 「○○さん! 何受話器手にとってるんですか!? 十六夜さんも十六夜さんです! 兄妹揃ってそういう笑えない冗談は止めてく ださいっていつも言ってるじゃないですか!」 「え、冗談だったの?」 「まさか。本気も本気よ」 「ああ、諏訪子様、神奈子様、世俗の風は早苗には少しだけ冷たすぎるようです……」 ヨヨヨと泣真似しながら力なく崩れ落ちる早苗さん。 なんだこのテンション。朝からこれはちょっとついていけない。 まさか酔ってんのか? いやでも早苗さん下戸だし。 今の彼女を見ればまさか彼女が現人神という尊い存在だとは誰も思うまい。他ならぬ本人が楽しそうだからいいけどさ。 しかし、比較的まともと言えるこの二人がこんな調子じゃ、他の癖のありすぎる他の連中はどうなってる事やら……。 ○○ 主人公。という設定。 トップクラスにアレ。 十六夜咲夜 ○○の義妹。という設定。 ちょっとアレ。 東風谷早苗 ○○の幼馴染。という設定。 結構アレ。 八雲紫 ??? これ以上無いってくらいアレ。 新ろだ923 「だから~やっぱりあの講義での課題は……」 「そうですかね? あの課題はこの観点から見れば……」 「あら、もしかしたらこうなるかも知れないわ」 早朝、何時もの様に電車待ちの列最先頭に立ちながら大学の課題について話し合う私達。 蓮子は自分の主張が正しいと持論を曲げず、私は蓮子の理論の弱点を突く。 そうするとマエリベリー(メリー)が蓮子を助けながら持論を展開させる。 何時もの大学生の登校風景、私にとって何でもない日々の始まり…… それが誰かの悲鳴によって壊されるまでは。 「だからですねぇ蓮子「キャァァァ!!」……なんだ?」 悲鳴が上がった方を見ると、線路に誰かが転落していた。 ホームの調度中間辺り、階段があって一番混雑する場所だ。 「ちょっと……あれまずいんじゃない?」 「嘘でしょ……いや、まずいとかの問題じゃ……」 落ちたのは子供らしく、半分呆然としている。 ホーム上にいる大人達はうろたえるだけで、誰も助けにいく気配も無い。 間もなく電車が参ります との声が無情にもホームに響く。 「ママー!!」 子供が訳が分からないのか泣き出した。 母親は母親でうずくまるだけで何かする気配も無く、子供の名前を言っている。 押してしまった大人達は俺じゃない! 等青い顔で責任逃れに全力を上げている。 「蓮子、荷物頼みます」 「え、ちょっと○○!?」 ああ、周囲みたいに慌てていれば助かるのに。 自身でも驚く程頭は冷静な呟きを残す。 ただし体だけは意思と切り離された様に走り出していた。 「メリーは非常停止ボタン!!急いで!」 「わ、分かった!」 ホームをかけながら指示を出し、うろたえるだけの大人達を尻目にホームから飛び降りる。 「びぇぇぇ……!!」 「ほらほら……安心しろ、助けてあげるから」 安心したのか、強く泣き出した子供を咄嗟に抱え上げ、 砲丸投げよろしく子供をホーム上にぶん投げる。 よし、後は自分が逃げるだけ…… 「○○!! 横!!」 「っ!?」 急停車しようとブレーキを全力でかけた電車が迫る。 車輪とレールが摩擦で火花を散らせながら抗うが、スピードはそう簡単には落ちない。 退避用の窪みも後ろにあり、今から飛び込むのも無理だろう。 「蓮子! メリー!」 咄嗟に叫んだ言葉は悲鳴でも、断末魔の叫びでもなく、何時も隣に居てくれた彼女達だった。 「ありがとう! すまない」 こんな時まで某ゲームのチャットを言ってしまう私に呆れながら、 迫り来るライトに目を眩ませ…… 世界が真っ黒になった。 翌日の新聞には大きな見出しで 『神隠し? 勇気ある青年、少女を救い忽然と消える』 『目撃者が語る、 空間の歪みとは?』 『現代科学で説明出来ない、大勢の目の前で人が……』 ……生きているよね? あんた、こんな事で死んだりしたら駄目なんだからね? 私……諦めないから、あんたがちゃんと死んだって分からない限り諦めないから。 ……早く帰ってきなさいよ……○○……! 良くやったとか、大変だったねとか、そんな言葉…… 上辺だけで、あの時何もしなかった人達の言葉なんて嬉しくもなんともないよ…… だから、とっとと帰ってきて、お疲れって一言で良いから言ってよ、その方が何万倍も嬉しいよ! 蓮子の願いも空しく、○○はその後も姿を現す事は無かった。 ○○の両親は、訪れた蓮子やメリーを攻める所か、日頃良くしてもらった事に礼を述べ、 彼女達と同じ様に○○の生存を信じていた。 なに、信じていればひょっこり帰ってくるさ。 私達の息子だ、そうそう簡単に死にはしないさ…… だから蓮子ちゃん、マエリベリーちゃん、あいつの事、あんまり気にしないで良いのよ。 そう、○○は生きている。 ただ、彼女達の信じている世界では無く、他の世界に迷い込む形で…… 「あら、何の音かしら?」 そう呟いたのは館の住人。 時の流れに取り残されて、人と違う自身を呪い、そんな世界を捨てた人間。 「何? 今の音……全く、また魔理沙かしら?」 椅子から立ち上がり、糸を手繰り寄せて数体の人形を従える。 人里離れた森の中、あまり他人に干渉せず、一人人形の研究を続ける魔法使い。 「……? 何か物音が……」 走らせていた筆を止め、縁側から見える空に目を向ける。 幻想の出来事を書き留め、見た物、聞いた物を延々と書簡に纏める人間。 さあ、死にゆく運命だった者よ。 貴方の中に見えた『ナニカ』を私は見出したわ。 そのナニカを気に行って、私は貴方をこの世界に連れ込む事で助けたわ。 後は……貴方が…… 言い訳という名のあとがき 正直ごめんなさい、思いつきで書いたらこんなことに…… さ~て、メインヒロイン考えた所上記三人が出来てました。 早苗さんも入れようか迷った所、流石に四人書くのは無理、という事で…… 見ている早苗ファンの方、居たらごめんなさいorz さあ、次回予告逝ってみようか~ 死ぬ筈であった○○、痛みに耐えて木が付くとそこは見慣れぬ天井…… 気が付きましたか? その声に導かれ顔を動かすとそこには居たのは、物静かそうな少女。 果たしてここは何処なのか、そして自分はどうなってしまったのだろうか? 次回第一話 「迷い込んで ここは何処?」 さて、風呂敷広げちまったぞ…… 新ろだ926(新ろだ863続き) 「ほら、早くしなさいよね」 「はいはいわかってるから慌てないの」 「そうやって子供扱いしないでよね!今日はデ、デートなんだから!」 「あー……わかりました」 「それじゃあ、いってきまーす」 「いってきます」 「……いいの?」 「妹に譲るのは姉の務め、でしょ?先手くらいはあげなくちゃ、それ以降は知らないけど」 「そう」 果たしてこの先どうしたものか。 3日前に決められた彼女達とのデート。 最初はリリカちゃんとのデートとなった。 紅魔館でのコンサートに何かしらの影響があるかと思ったが 普段と変わらぬ盛況で安堵した、気になる事といえば 「音が少し変わったわね。最近何かあったでしょ?」 と十六夜さんに言われた事だろうか。 言えるわけがないので適当にはぐらかしたが判るものなのか…… マネージャーとしている癖にそういうのがわからないんじゃ駄目だよなぁ俺。 とか思っていると 「いたっ!?」 腕を抓られた。 無論抓った相手は隣で頬を膨らませているリリカちゃんだ。 明らかに不機嫌そうなのは誰にでもわかるだろう。 「デート中に何を考えてるのよ!」 「す、すみません……ってリリカちゃん!?」 ぶすーっとしつつもぎゅっと俺の腕を抱きながら歩き始めるリリカちゃん。 その手には何やらバスケットが、何が入っているのか。 顔は真っ赤で今にも火でも噴き出さん勢いではある。 しかしぎゅっと俺の腕を掴む力は強い、離さないといわんばかりに。 「い、今は他の事は考えないで私だけを見て。 見てもらえないのは、聞いてもらえないのは……寂しいんだから」 リリカちゃんの表情が曇った。 この表情を見るのは2度目だ、初めて彼女達と会って間もない時と今回。 彼女達の音楽は特殊で3人まとまって初めてまともに人が聴ける物となるらしい。 それ故場所を選び、そしてリリカちゃん自身の演奏もまた技術は高いが心に響かないと酷評を受けた。 そんな時に俺は彼女達と出会った。 俺は音楽の事はわからない、けど彼女達の演奏を聴いて俺は感動した。 何故だかは俺にもわからない。しかし俺は涙ながらに感動したのだ。 それからというものこの感動を誰かに伝えたい、彼女達にどこでも演奏をしてほしいという思いからマネージャーとして行動を決意した。 今では人里での公演も可能となり、彼女達は人に聴かせられる曲を制作している。 酷評を受けたリリカちゃんも今は認められているそうだ、一重に彼女の努力の賜物だと思う。 「○○のおかげだよ?私達がこうしていられるの。 思えばあの時私を元気づけてくれた時から好きになったのかもしれない」 元気づけた……あぁ、あの時か。 霧の湖で一人座り込んで湖面を見ているリリカちゃんを見つけ、声をかけた時の事だ。 彼女は悩んでいた、技術だけでは駄目、でもどうすれば心に響く演奏が出来るのかと。 俺は頭を撫でながら確か…… 「相手の事を思いながら演奏すればきっと伝わるよって言ってくれた時、私は気付いたんだ。 何時の間にか自分の為だけに演奏してた事に。だからそんなのが聴いてくれてる人の心に何か響かない事に」 そうだ、そんなような事を言った。 その時は子供扱いしないで、って手を払い除けられてどっかに飛ばれてしまったけど…… 俺の言葉は彼女に通じていてくれたのか……よかった。 「俺は自分が思った事を言っただけだよ。 そこからはリリカちゃんが頑張ったからさ」 「いいの、○○のおかげで。 それと……今はリリカちゃんって呼ばないで」 真剣な眼差しでこちらを見つめてくるリリカちゃん。 「ねぇ○○……あなたにとって私は妹みたいなものでしかないの?」 末っ子だからという理由ではない。 そう、自然とリリカちゃんをまるで妹のように俺は接していた。 当然彼女は俺を兄のように、とはおそらく思っていなかっただろう。 彼女達の言葉が真実なら、彼女はずっと俺を一人の男として見てきた事になる。 彼女からすればそれは……叶わぬ恋と言われるかもしれない問いである。 しかし、しかしだ。 「……俺は今まで君の事を妹のように思ってたのは事実だ。今更否定しないよ。 でも、ね。この前言った通り今はわからないんだ、自分の気持ちが」 だからこそ、ちゃんと答えてあげないといけない。 「だから、リリカちゃ……リリカを好きなのかも今はよくわからないんだ。 ごめんね?せっかくのデートなのに」 「ううん、そうやって真面目に答えてくれるのも○○のいいところ。 それに、これから私を好きになってくれるかもしれないんでしょ? その為のデートだもん、だから今日はいっぱい甘えるよ?」 笑顔で俺の腕を抱くリリカちゃんに俺は安堵と嬉しさを覚えた。 彼女は強い、これからどんな答えが出るかわからないのにこんな笑顔を見せてくれるんだから。 そんな強さに俺は今惹かれ始めていた。 ……何か節操無く3人に惹かれそうで困る。 「あぁ、どんとこいだ。 素直なリリカを見るのもいい機会だしね」 「むっ、私のどこが素直じゃないのよ」 「……ノーコメントで」 「酷いー!」 はははっと俺も笑う事が出来た。 うん、もう大丈夫だ。 彼女達は真剣に、純粋に俺に告白してくれたんだ。 ならば俺はそれに真面目に答え、そして答えを出せばいい。 それが例えどのような結論であろうとも、出さなきゃいけない事だから。 「○○?何また考えてるのよー!」 「痛いって!ちょっと決意を新たにしただけだから!」 「そういって姉さんとかの事考えてたら許さないんだからぁ!」 腕を離してあっかんべーと先を行くリリカちゃん。 本当なんだがなぁ、と言いながら追いかける俺。 これがデートなのかどうなのかはわからないがこういうのが俺とリリカの場合はちょうどいいかもしれないな。 「はい到着」 「おぉーこんなところが」 リリカちゃんに案内されて来たのは妖怪の山に近い丘だった。 そこは幻想郷の風景を一望できる素晴らしい場所だった。 「いいでしょ?ここは私のお気に入りの場所なの」 「あぁ」 丘の上にちょうど良く立っている木に寄りかかる様に二人で座る。 「ふぅ……なんかようやく落ち着いた感じだ」 最近コンサートの予定だったり家での事だったりであまり落ちつける時間を持てなかった気がする。 「最近コンサート多かったからねぇ……あ、そうだ。そろそろお昼にしない?」 「?あぁ、腹が空いたとは思ったけど食べ物なんて……」 というとリリカちゃんがふっふっふっと言いながらバスケットを取りだした。 そしてじゃーんと言いながらふたを開いた。 中身は何とサンドイッチとサラダなどの料理の数々。 形が崩れていたりしているものの頑張って作ったんだという感じがする。 「もしかしてこれ、リリカちゃ、リリカが?」 「もっちろん!……少しだけルナサ姉さんに手伝ってもらったけど」 少し……じゃないなんだろうなぁ。 リリカちゃんが料理しているところを俺は一度も見た事無いし。 まぁでもわざわざ用意してくれた事には変わらない。 「じゃあさっそくいただかせてもらって」 「ど、どうぞ……形は悪いけど……召し上がれ」 とりあえずサンドイッチを取ってみる。 真っ赤な顔で凝視してくるリリカちゃんが可愛いと思いながら口に運ぶ。 もっきゅもっきゅ…… 「うん、美味しいよリリカ」 「ほ、本当!?よかったぁ……」 ホッと胸を撫で下ろすリリカちゃんにどうぞ、という意味で別のサンドイッチを出す。 「はい、あーん」 「ちょ、そ、そんなはずかし……あう……あ、あーん!」 楽しい昼食は食べさせ合いで流れていった。 真っ赤な顔で食べたり食べさせてくれたりなリリカちゃんは凄く可愛かった。 「ふぅ……いい景色だなぁ本当に」 「一度見せたかったんだ、○○に」 昼食を終え、二人でとりとめのない話をしながらまったりと幻想郷の風景を見ていたら何時の間にか夕暮れに。 こんなまったりと時間を過ごしたことなんてなかったなぁ。 「○○……」 「ん?何だい?」 改まってリリカちゃんの顔を見ると何やら真剣な顔だった。 「あの、その……私は○○が好きです。 だから、あなただけに送る演奏、聞いてほしいの」 真っ赤な顔であるものの、真剣な顔でこちらを見るリリカちゃん。 無論、 「喜んで」 俺が断る理由なんて無かった。 「……」 そして始まったリリカちゃんの演奏会。 幻想の音を演奏できるという能力を持ったリリカちゃんらしく今まで聞いた事がない音による演奏だった。 しかし俺は落ちついて彼女の音に耳を傾ける。 彼女の思いが調べとなって俺に届いてくるのがわかる。 彼女の思いを俺はしっかりと受け止めなくてはならないから。 そして彼女の演奏が終わる。 俺は拍手で彼女を迎えた。 「私の気持ち……受け取ってくれてありがとう」 「礼を言うのは俺だよ、ありがとう。 確かにリリカの思いは受け取ったよ」 「それじゃ最後にもう一つ……んっ」 奇襲的にリリカちゃんに口付けをされた。 絶対に離さないと言わんばかりに俺の頬をロックしながら。 甘んじて俺は彼女の口付けを受ける。 おずおずと舌を入れてくるリリカちゃんに答える。 「んっ……んちゅ、ちゅ、んん…ぷはぁ…これで私の番は終わり」 「ん……積極的になったなリリカ」 「誰のせいだと思ってるのよ。 ○○が気付いてくれないから私達が積極的にならないといけないんじゃない」 面目次第もない。 俺は苦笑しながら頬をかくことしかできない。 「さ、帰ろ。 本当はずっといたいけど約束だものね」 「あぁ、帰ろうかリリカちゃん」 「あー!またちゃんづけ!」 「あーごめん!いや痛い!痛いから!」 ぐーで殴りかかってくるリリカちゃんから逃げるようにして丘を下っていく。 無論リリカちゃんも俺を追いかけて下がってくる。 けれどお互いに笑顔だ。 俺達はこんな感じがあっている。 彼女への好意が果たしてどういったものなのか。 リリカちゃんの思いを受け取り、考える事が増えた今夜は眠れない夜になりそうだな…… 新ろだ1003 プロローグなのに長くなってしまったのは秘密 ※この小説の登場キャラは大抵ショタコンです 覚悟がある人は少年の気持ちになって読み進めてください 劇場版ショタ化○○ 登場人物 ○○ 何のことはない、一般人であるそれだけ 命蓮寺に居候の身である 理由・家が火事で燃えた 寺の善意でお部屋借りてる その他東方キャラ御一行 説明いらねぇ 朝起きたら…ってのはよくあるけど僕はそうとは思わない なにも朝起きた時以外にも自分の体にとてつもない変化は訪れるものだ ○○「あー…よく寝た…」 チュンチュンと小鳥の鳴く声でさえ起きるほど浅い眠りになっていた 上半身をゆっくり起こして、うーんと伸びをする あれ?おかしいな…僕の声が高くなってる、風邪ひいたか? ○○「…ふぁぁ…永遠亭に薬でも貰うか?」 ナズ「失礼するよ、○…○…」 と、ガララっとふすまを開けてナズーリンが入ってきた 僕を見て完全に硬直している、そんなにひどい顔してるのか…? ナズ「…え?君は…○○の子供か誰か?」 ○○「は?何を言ってるんだ?僕に息子なんかいないぞ?」 ナズ「…じゃあ君が○○だって言うのか!?」 なんだなんだ?しっかり者のナズーリンがまだ寝ぼけてるのか? 星「なんですかさわがしいで…す…」 騒ぎを聞いて星さんも来て、僕を見てまた固まった ○○「…え?何?」 さすがに不安になってきた 星「…○○さん…?あの…鏡を見てはどうですか…?」 ○○「はぁ…そうですか…」 さっぱり意味がわからない…とりあえず僕は立ち上がった そして違和感を感じた… ○○「あれ?この部屋こんなにでかかったっけ?」 ナズ「はい○○、鏡」 ○○「え、ああ…え゛!?」 鏡を見て呆然とした… まるっきり少年の顔になっている僕、あわてて体を見たら身長が明らかに低くなっていた まさか俺が朝起きたらの典型的パターンに(以下略 今僕はいつものようにみんなで朝飯食ってる、いつもの風景だ… ○○「…」白蓮「…」ぬえ「…」星「…」一輪「…」水蜜「…」ナズ「…」 みんなが無言で僕を見つめて、僕が少年になったことを除けば ○○「なんで僕小さくなってるんだ…?」 白蓮「さ、さあ…?かわいいからいいんじゃないですか?」 ピシっと…空気が凍った ○○「カワイイ?ハハハゴジョウダンヲ」 男が可愛いといわれるとはこれいかに 白蓮「い、いやその…と、とっても愛らしい姿だと思いますよ!?」 ナズ「聖、追い打ちです」 男のプライドが音を立てて崩れ去った ぬえ「…!(いじめチャンス!)…ほんとかわいいよね~…今のか弱い○○なら食べちゃいたいかも」 プライドが粉になった 水蜜「な、何を言ってるのさ!…あ、でも…里の子たちと比べてみても相当可愛いかも…」 プライドが水に溶かされた 星「やめてあげてください!…しかし、○○が子供の頃、こんなにも愛らしかったのですか…」 プライドが卵と混ぜられた 一輪「純粋にかわいいですねぇ、つやつやの肌でうらやましいです」 プライドがフライパンで焼かれてホットケーキになった 白蓮「ま、まぁ、解決策はそのうち見つかりますし!気を落とさないでください! 私たちが生活の不便はサポートしますから!」 ああありがとう聖さん、ただ落ち込んだのはあなたたちがプライドを料理したからです… ぬえ「ああそれはそうと…○○が元に戻るて言うならそれを私は邪魔するよ?」 ぬぁんだと?聞き捨てならねぇ ぬえ「いや邪魔するのがすきだし、なにもかわいい○○から戻さなくてもいいんじゃない?」 星「一理あるかも…」 一輪「言えてるかもですねぇ…」 ナズ「…ごめん○○、主のほうにつかなくちゃいけないんDA☆」 白蓮「それは駄目です!あるべき姿に戻すべきですよ!」 水蜜「白蓮のほうに賛成ー!」 まさかの二対四で多数決が傾いてしまった 主に俺が不利なほうへ ○○「…え、なにこれ?新手のいじめ?」 白蓮「気にしないでください○○さん!きっとすぐ戻りますよ!じゃあまずは、永遠亭の薬屋さんに状態を聞いてみましょうよ!」 言われるがままに僕は白蓮について行った 白蓮「軽くて楽でした♪」 ○○「…おんぶされるとは思いませんでした」 恥ずかしさで俺死んじゃう 永遠亭のお医者さんの診断結果 スキマパワーで介入できません あのスキマに解除する気がないなら一生このままです ○○「…orz」 白蓮「だ、大丈夫です!あの人もきっとすぐ戻してくれますよ!」 ああ励ましの言葉が温かい、今さっき永遠亭で心が凍った僕に何よりも温かい言葉 具体例 永琳さんの目はまさに肉食動物が獲物を見つけたそれだった うどんげさんが頭をフル活用してくれたから部屋から逃げだせた、が、こんどはうどんげさんが 僕を部屋に連れ込みおしたおされた。そして今度は黒髪のお姫さまっぽい人に連れ去られて あわやあれの危機と思われたその時うさ耳少女が助けてくれた お礼としてお小遣い上げたらセンキューといって安全な白蓮さんのもとまで送ってくれた あのうさ耳少女は名前は知らないけどきっと名高い親切少女に違いない な、なにをいってるか(ry ○○「なんでみんな僕を狙ってきたんだろう…?」 白蓮「それは小さい子がかわいくてついうっかりとか…?」 ○○「…」 ついうっかり押し倒すとな?まさか永遠亭の一部の人以外、ショタコン・・・? おおこわいこわい シャレにならない 寺に戻りました 永遠亭にはもう近寄らないことにしよう ○○「さて…仕事どうするかな…?もう予約はいってるから今日中に届けないといけないんだけどなぁ…」 僕の仕事は運送屋である 重い荷物を遠いとこに運んだりする 本日は大量の紅茶を紅魔館の人たちに頼まれてるからお届しないと… 白蓮「でも今の状態じゃ重いものは持てないし、速く走れない、妖怪の格好の的ですよ」 ○○「でも仕事キャンセルしたらあの館はもう仕事くれないだろうなぁ…」 お得意様だから断りたくないし、風邪でもない以上仕事は休んだらあかん。 ぬえ「なら、私がついてってあげようか?」 ○○「…疑わしい。何か企んでるな?」 ぬえ「いや、今回ばかりはなにも、だって○○に死なれたら白蓮がかなs「わあああああああああ!!!」…」 ○○「…?」 白蓮「な、何でもありません!お、お仕事のほう、だれか手伝いをつけてみればいいのではないですか!?」 ○○「ほう…でも手伝ってくれる人いるかな…」 一輪星ナズ水蜜ぬえ白蓮「はーい、私イイですよー」 ○○「わーいいっぱいいるよでも皆さんに手伝っていただくわけには…だれか一人でも全然構いません」 一輪星ナズ水蜜ぬえ白蓮「私が手伝います!!」 ○○「え…?一人で十分…」 一輪星ナズ水蜜ぬえ白蓮「じゃんけんで!じゃーんけーん…」 数百回のあいこ そし勝者は… ぬえ「というわけで今回は私が手伝います。よろしく!」 ○○「え、あ、ああ…よろしくね。」 その他の方々がひどく落ち込んでいるのが気になったが… まあともかく僕は運び屋さんの仕事を今日はぬえと行うことになったわけです ―続けてほしくないだろう―
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もえろ!ハーレムエースをお気に入りに追加 [PR]債務整理等の無料相談 情報1課 <もえろ!ハーレムエース> #blogsearch2 Amazon.co.jp ウィジェット 保存課 <もえろ!ハーレムエース> 使い方 サイト名 URL 成分解析課 <もえろ!ハーレムエース> もえろ!ハーレムエースの57%は苦労で出来ています。もえろ!ハーレムエースの39%は白い何かで出来ています。もえろ!ハーレムエースの4%は成功の鍵で出来ています。 情報2課 <もえろ!ハーレムエース> #technorati 外部リンク課 <もえろ!ハーレムエース> ウィキペディア(Wikipedia) - もえろ!ハーレムエース ぱちんことは ぱちんこの33%は税金で出来ています。ぱちんこの23%は歌で出来ています。ぱちんこの21%は愛で出来ています。ぱちんこの11%は勢いで出来ています。ぱちんこの6%は成功の鍵で出来ています。ぱちんこの4%は元気玉で出来ています。ぱちんこの1%は白インクで出来ています。ぱちんこの1%は下心で出来ています。 パチスロとは パチスロの26%は祝福で出来ています。パチスロの24%は微妙さで出来ています。パチスロの12%は真空で出来ています。パチスロの10%は赤い何かで出来ています。パチスロの8%は時間で出来ています。パチスロの6%は税金で出来ています。パチスロの6%は下心で出来ています。パチスロの3%は犠牲で出来ています。パチスロの3%は玉露で出来ています。パチスロの2%は電波で出来ています。 攻略とは 攻略の半分はやましさで出来ています。攻略の27%は心の壁で出来ています。攻略の12%は濃硫酸で出来ています。攻略の7%は罠で出来ています。攻略の2%は睡眠薬で出来ています。攻略の1%は苦労で出来ています。攻略の1%は世の無常さで出来ています。 256-5813_02.jpg 無限∞エダマメ豆しばバージョン2 ページ先頭へ もえろ!ハーレムエース このページについて このページはもえろ!ハーレムエースのインターネット上の情報を時系列に網羅したリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新されるもえろ!ハーレムエースに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先には学生・未成年の方には不適切な表現内容が含まれる場合があります。またリンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
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♪君がいない未来 作詞 森月キャス・井上華乃 作曲 大西克己
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目次 【概要】カテゴリージャンル シナリオあらすじ 登場人物主人公 ヒロイングループ知り合いグループA 知り合いグループB 知り合いグループC 知り合いグループD 知り合いグループE 学院Aグループ 学院Bグループ 学院Cグループ 学院Dグループ お嬢グループ エンドパターン個別エンド グループエンド 全員エンド 【参考】モチーフ 関連項目 タグ 最終更新日時 【概要】 カテゴリー 構成 エピソード 思い付き ジャンル 18禁 ハーレムミステリー SF ロストテクノロジー 宇宙・未来 孕ませ 処女 着衣エッチ スカトロなし Wピースなし 白目なし シナリオ あらすじ 主人公はロストテクノロジーの回収に失敗し、ロストテクノロジーと一体化してしまう。 分離させるために40人の美処女とH・孕ませる。 その後毎日子作りH。 主人公は不審がって誰か黒幕がいるのではないかと探るようになる。 登場人物 主人公 男性。 ロストテクノロジーを回収する仕事に就いている 極度の処女厨。 童貞卒業は40人との時。 ロストテクノロジーと一体化することで絶倫になる。 人間不信。 ヒロイングループ 知り合いグループA 主人公の幼馴染。 4人 知り合いグループB 主人公の義理の家族たち。 4人 知り合いグループC 主人公の習い事仲間。 4人 知り合いグループD 主人公のバイト仲間。 4人 知り合いグループE 主人公のサークル仲間。 4人 学院Aグループ 主人公の通っていた学院と同系統の分校。 4人 学院Bグループ 4人 学院Cグループ 4人 学院Dグループ 4人 お嬢グループ 令嬢1人 付き人2人 友人1人 エンドパターン 探り方によって行きつく黒幕(ヒロイン)が変化。 個別エンド グループエンド 全員エンド 主人公以外全員が共謀していた。 【参考】 モチーフ ギャラクシーエンジェル 関連項目 項目名 関連度 備考 創作/シリーズF ★★★ ファンタジー系 創作/ハーレムミステリー ★★★ ジャンル 創作/そうしてこんな嬉しいハーレム応援になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム商談になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム護衛になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム奉仕になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム撮影になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム手術になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム部活になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム監獄になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム看病になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム留学になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム研修になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム遭難になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム監禁になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム式典になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム花見になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム事故になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム聖夜になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム作戦になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム団地になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム挙式になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム要塞になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム戦艦になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム農場になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム事件になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム会社になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム修行になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム冒険になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム合戦になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム喫茶になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム契約になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム学園になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム寄席になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム抗争になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム拷問になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム挙式になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム教会になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム旅館になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム決闘になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム病院になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム神社になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム神話になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム苗床になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム賭博になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム迷宮になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム道場になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム部隊になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム集会になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム集落になった。 ★★★ 創作/どうしてこんな嬉しいハーレム面接になった。 ★★★ 創作/ハーレム工作員 ★★★★ 職業・種族 創作/ハーレム大臣 ★★★★ 創作/ハーレムエンジェル ★★★★ 創作/ハーレム星人 ★★★★ 創作/ハーレム妖精 ★★★★ 創作/学院A ★★★★ 登場組織 創作/学院B ★★★★ 創作/学院C ★★★★ 創作/学院D ★★★★ 創作/モテキスター ★★★★ アイテム 創作/銘酒・鬼孕ませ ★★★★ 創作/ハーレムゲーのシナリオ案 ★★★ タグ 構成 最終更新日時 2013-03-31 冒頭へ
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【分類】 思いつき 独自研究創作 目次 【分類】 【概要】ハーレムメインシナリオタイプ イントロダクションパターン 主人公タイプ メインヒロインタイプ サブヒロイン ライバル エンドパターン 純愛メインシナリオタイプ イントロダクションパターン 主人公タイプ メインヒロインタイプ サブヒロイン ライバル エンドパターン 複合シナリオタイプ イントロダクションパターン 主人公タイプ メインヒロインタイプ サブヒロイン ライバル エンドパターン あれこれシナリオについて イントロダクションについて 主人公について メインヒロインについて サブヒロインについて ライバルについて エンドパターンについて 【参考】モチーフ 関連項目 タグ 最終更新日時 【概要】 ハーレムメイン 基本的に多人数H。 凌辱メイン?バカバカしくすれば和姦ぽくなる? シナリオタイプ カマボコやハンバーグのような感じ。 イントロダクションパターン 主人公タイプ 鬼畜・ゲス? メインヒロインタイプ 顔見知り。 ダブルヒロインを基本にする。幼馴染と義理の家族。 幼馴染と従姉妹。 従姉妹と義理の家族。 サブヒロイン 多人数H・個別Hともにメインヒロインとほとんど同じ量。 顔見知りじゃない方がいい? ライバル なし エンドパターン グッドエンドならハーレムエンド。 バッドエンドならメインヒロインとの純愛エンド。実質バッドエンドが存在しない? 純愛メイン 基本的にメインヒロインとの一対一。 シナリオタイプ フカヒレやステーキのような感じ。 イントロダクションパターン 主人公がメインヒロインと出会い、何かをする。ヒロインがロボットやアンドロイドで開発・修理する展開? セックスをしてヒロインの魔力を回復させる? 主人公タイプ 真面目・熱血?メインヒロインへの執着心があるなら、ストーカーでも可能? メインヒロインタイプ 主人公と接点がないタイプ?暗殺者 護衛 姫の婿探し アンドロイド 悪魔 サキュバス サブヒロイン 多人数Hのみ? 個別H無し? そもそも登場しない? ライバル バトルメインならあり。 部下や上司などに様々なタイプの男キャラが出せる? 好まれる男性キャラ・異種姦の調査も可能? 体型別中肉中背 マッチョ チビ ノッポ デブ ガリ 造形別イケメン 奇形 ダンディ 年齢別少年 青年・アラハタ 半熟・アラサー 中年・アラフォー 初老・アラフィフ 年配 性格別豪快 陰湿 変態 狡猾 無骨 種族別怪人 触手 スライム ロボット 獣人 宇宙人 悪魔 天使 エンドパターン グッドエンドならメインヒロインとの純愛エンド。 バッドエンドならライバルにメインヒロインを寝取られる? 複合 同時攻略は難しい?失敗・死亡しやすい? シナリオタイプ イントロダクションパターン 主人公が顔見知りじゃない方のヒロインと出会う。 顔見知りの方のヒロインが対抗してくる。 主人公タイプ 鬼畜・ゲス? ヘタレ? メインヒロインタイプ 片方が主人公と接点のないタイプ。暗殺者 護衛 婿探し アンドロイド 悪魔 サキュバス 片方が主人公と接点のあるタイプ。幼馴染 義理の家族 従姉妹 サブヒロイン 多人数H多め。 個別H少なめ。 ライバル いてもいなくてもいい。 エンドパターン グッドエンドなら和姦エンド。個別とハーレム。 バッドエンドなら強姦エンド。主人公が闇落ちしてハーレムエンド? 敵にメインヒロイン含め仲間が寝取られ蹂躙されるハーレムエンド? あれこれ シナリオについて イントロダクションについて 話が動くきっかけ。主人公が意思決定をする。 ヒロインやライバルに出会い巻き込まれる。 童貞卒業や処女喪失をここでやってしまえば、細かいことを考えず楽になる?シナリオ管理でどの段階まで童貞・処女かを把握しなくて済む? Hシーンの使い回しがしやすい? 主人公について メインヒロインについて テーマに沿ったキャラであること。 テンプレ的でありながら実験的な要素も盛り込む? 一人だと空気になりやすい?ライバルがいるならあり? 二人だとキャラがハッキリして丁度いい? 三人以上だとキャラがハッキリしなくなる?都合が良過ぎて萎える? ビッチ臭くなる? サブヒロインについて オリジナル性の強い個性的・実験的なキャラに挑戦できると思う。 場合によってはメインヒロインより人気が出てしまう? 同時にオリジナル性の弱いテンプレキャラでわきを固める? ライバルについて 寝取りを意識した場合、必要? 一方的に寝取れる場合はライバルとして扱わない? 特定のヒロインを際立てるのに効果的? エンドパターンについて 【参考】 モチーフ 炎の孕ませシリーズ 昇龍戦姫 天夢 icon ラブリーラブドール 関連項目 項目名 関連度 備考 創作/エロいシナリオ計画 ★★★ 創作/エロコンテンツの評価基準 ★★★ 創作/ハーレムゲーのシナリオ案 ★★★ 創作/セクハラシステム案 ★★★ 創作/産み分け指数 ★★★ 創作/エロゲ向けシステムの相性 ★★★ 創作/パンツ予報システム ★★★ 創作/チェーン・ハーレムHシステム ★★★ 創作/エロ対戦カードゲーム ★★★ タグ 創作 最終更新日時 2013-11-27 冒頭へ
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ハーレム?11 うpろだ1322、1389 「唐突だけど○○、一つ聞いていいか?」 「本当に唐突だな」 「気にするな。それで聞くが、胸は大きい方と小さい方どっちが好みだ?」 「………また随分な質問だな。何で急にそんな事聞いてくるんだよ?」 「実は今日、仕事の仲間内で貧乳派と巨乳派による論争が起きたんだ」 (………何でそんな論争が起こるんだろう?) 「そして数時間の間激しい意見のぶつかり合いとなったんだが、結局平行線のままでな」 (数時間………力を注ぐべき部分を明らかに間違ってる) 「そこで日頃から多種多様な美女美少女に接しているお前の意見を聞こうと思った訳だ」 「それは個人の趣味趣向の話だから僕の意見も何もないと思うんだけど……」 「とにかく答えろ! お前が答えないと話が進まないんだ」 「強引な奴………あくまでも個人的な意見だからな? 僕は…」 友人とそんな会話をした翌日、僕は買い物に行くため人里へと向かっていた。 「こ、こんにちは、○○さん」 その道中、何の前触れもなく妖夢さんと遭遇した。 ほぼ必ずと言っていいほど幽々子さんの傍にいる妖夢さんが一人で出歩いているのは結構珍しい。 幽々子さんから買い物か何かを頼まれたのだろうか? 「妖夢さん、こんにちは………ん?」 そんな訳で挨拶を返したのだが、妖夢さんの様子がどうにもおかしい。 まるでペンキでも塗りたくったかように真っ赤になっている顔。 そわそわとしていて落ち着きがなく、時折こちらの方を向いては目が合いそうになると顔を逸らす。 いつもの彼女とはまるで別人のようだ。 「………………○○さん」 一体どうしたんだろうと思いながらしばらく待っていると、妖夢さんの方から声をかけてきた。 真っ直ぐ向けられた顔は依然として赤いままだが、その表情は何かを決意したかのように真剣そのもの。 しかし、その瞳は清廉潔白な彼女からは考えられないほどに艶のあるものだった。 (妖夢さん、こんな顔もするんだ……) 普段の妖夢さんとはあまりにもかけ離れたこの姿。 僕はまるで金縛りにでもあったかのように身動きがとれなくなってしまう。 それを知ってか知らずか、妖夢さんは次なる行動に出た。 自由自在に刀を振り回せるとはとても思えない小さな手を伸ばし、僕の右手を掴む。 そしておもむろに自身の方へ引き寄せると、僅かなの躊躇の後にそこへ押し当て………え? 「よ、よよよよ妖夢さん?!」 何? 何だ? 一体何が起こったんだ? 何で僕は妖夢さんの胸を触ってるんだ? 何で妖夢さんは僕に胸を触らせてるんだ? もしかしてこれは夢? しかしこの掌から伝わってくる僅かだが確かな柔らかさは? 温かさは? もうなにがなんだか全然わからない。 「……○○さん。○○さんが好きなら、私は……」 って、なんか妖夢さんが聞いてしまったら後戻り出来なくなりそうな事を言おうとしてる!? 「あらあら、随分と大胆な事してるのね」 えっ、大胆? そんな言葉で済むようなレベルじゃないですよ! 大体、妖夢さんの事を一番よく知ってるのは貴女じゃないですか! そんな暢気な事言ってる場合じゃない事くらい解るでしょうに! そもそもなんでいつもと変わらない笑顔でいられるんですか幽々子さ……… 「………もしかして、幽々子さんですか?」 「もしかしなくてもそうよ、○○」 その瞬間、僕は血の気が引いていくと言う比喩表現が現実的に起こりえる現象だと知った。 こういった状況を何も知らない第三者に見られた場合、 それまでの経緯がどのようなものであろうとも99%以上は男性側が悪いとみなされる。 しかも幽々子さんは妖夢さんにとって仕えるべき唯一の主。 つまり僕はこの状況を一番見られてはいけない人物に見られてしまったのである。 だが、意外なことに幽々子が矛先を向けたのは僕ではなく妖夢さんの方だった。 「ゆ、幽々子、これはその…「まったく、妖夢ッたら油断も隙もないわね」…ひぅ!」 即座に僕の手を離し、凄く動揺しながら幽々子さんに弁解を始める妖夢さん。 しかし、幽々子さんは言い訳など許さないと言わんばかりに一刀両断。 いつもと同じほんわかとした笑顔が今は果てしなく怖い。 「悪かったわね、○○。妖夢が迷惑をかけたみたいで」 得体の知れない恐怖によって妖夢さんが完全硬直した後、 幽々子さんは空恐ろしい笑顔を浮かべながらこちらに謝罪してきた。 それを見ただけで背筋が凍りついてしまう。 「い、いえ、別に気にしてませんから」 「そうはいかないわ。従者の不始末は主人である私の責任なんだから」 「でも、役得もあり…「何か言ったかしら?」…何でもありません」 余計な事をいいかけた僕は即座に謝罪。 半端な発言は死を招くと本能が告げていた。 「とにかく、今回のお詫びは後日必ずさせてもらうから」 幽々子さんは硬直している妖夢さんの首をグワシッ! と掴み、そのまま空へと舞い上がる。 その体勢だと妖夢さんの生命に間違いなく危険が生じるだろうがツッコまない。 僕だって命は惜しいのだ。 そんな事を思っていると、ふと幽々子さんがこちらの方を振り向いた。 「本当なら私が妖夢の後押ししてあげないといけないんだけど、私もまだ諦めたわけじゃないのよね」 「えっ、何をですか?」 「だから○○、今度会ったらゆっくりと良さを教えてあげるわ。期待しててね」 イマイチよく解らない事を言いながら今度こそ飛び去っていく幽々子さん。 最後のは一体どういう意味だったんだろう? 思いがけないハプニングに遭遇した後、僕は改めて人里へと向かっていた。 「やっほ~、○○~」 その道中、何の前触れもなく萃香と遭遇した。 相変わらず昼間から酒を飲んでいるらしく、既に出来上がっているのか顔が真っ赤だ。 でも、何となく酔っ払っているのとは違う気がするのはどうしてだろう? 「やぁ、萃香。こんな所で会うなんて珍しいね」 「実は○○を探してたんだ。一緒に飲もうと思ってね」 人懐っこい感じの笑顔を浮かべた萃香はどこからともなくそれを取り出した。 いつもながら一体どこから出てくるのだろうと思う。 まぁ、そんな疑問はどうでもいい。 今考慮すべきなのは萃香の取り出したそれ……封の切られていない瓶についてなのだから。 「前にも言ったと思うけど、僕じゃ萃香のお酒は飲めないよ」 一応言っておくが、僕はお酒に強い方である。 仕事仲間と飲んだりしたときも酔い潰れるような事はまずない。 だが、それはあくまでも一般的な人間を基準とした場合。 人外の方々、まして幻想郷一の酒豪である萃香など比較にもならないのだ。 それを知らずに過去彼女の用意した酒を飲んだ僕は地獄を見たのだから。 「大丈夫。自分用に持ってきたお酒は別にあるから」 僕の返答は予想済みだったのか、別の瓶を取り出す萃香。 どうやら今回は僕が飲めるお酒を別に用意してくれていたらしい。 萃香にしては珍しく気が利いてるな。 「そういう事なら喜んで付き合うよ。 でも、今から買い物に行かないといけないからその後でいいかい?」 「うん、いいよ」 そう言って両手に持っていた瓶を何処かにしまう萃香。 なんだか今日の萃香はみょん…妙に素直だな。 いつもなら『ダメ! 今すぐ飲む!』とか言って駄々をこねる所なのに。 そんな事を考えている隙に萃香は僕の目の前から消えていた。 「あれ? ちょっ…おっと!」 次の瞬間、背中に大きな何かが圧し掛かってきたような衝撃を受ける。 と言うか考えるまでもなく萃香だ。 いきなりの事に焦ったが、それでも飛び乗ってきた萃香を落とすわけにはいかない。 僕は素早く背中に手を回して彼女を抱えあげる。 「おいおい、いきなり飛び乗ってきたら危ないだろ?」 「えへへ。それじゃあ買い物にしゅっぱ~つ!」 何故か萃香をおんぶする羽目になってしまった。 しかもこのまま人里まで行けと? 確かに萃香はそれほど重くないけど、それでも人里までとなるとかなり距離が……… 「ほらほら、早く行こうよ○○♪」 そんな笑顔で言われたら降りろなんて言えないじゃないか。 オマケにがっちり手を回してきて、意地でも離れないって感じだ。 何がそんなに嬉しいのか解らないけどこのまま行くしかないみたいだな、これは。 「まったくもう、仕方がな……あれ?」 苦笑しながらも了承の意を伝えようとしたその時、背中にかかっていた重さが消える。 驚いて振り向くと、つい今の今おんぶしたばかりの萃香が忽然と姿を消してしまっていた。 「萃香? 何処行った?」 慌てて辺りを見回してみるが、萃香の影も形も見えない。 能力を使って霧になったのかとも思ったが、それにしてはあまりにも不自然。 そもそも萃香は何も言わずに消えてしまうような真似は絶対にしないはず。 あんなに嬉しそうにしてたんだし、尚更だ。 「あら、○○さん。こんにちは」 「え?」 誰かが僕を呼ぶ声。 萃香を探していた僕は反射的にそちらの方を向く。 そこにいたのは萃香ではなく、紅魔館メイド長の咲夜さんだった。 「あっ、咲夜さん。どうも、こんにちは」 レミリアさんの御付である彼女が一人で外出しているのは珍しい。 何か用事でも頼まれたんだろうか? って、妖夢さんの時も同じ事考えてたな。 「こんな所で会うなんて奇遇ですね」 完全で瀟洒という二つ名に相応しい素敵な笑顔の咲夜さん。 その笑顔に流されてつい世間話に興じてしまいそうになるが、萃香の事を思い出し我に返る。 「咲夜さん、萃香を見ませんでした?」 「…あら、どうかなさったんですか?」 ん? 一瞬咲夜さんの顔が強張ったような気がしたけど、気のせいかな? 「実はついさっきまで一緒にいたんですけど、急に何処かに行ってしまったみたいで」 「そうなんですか。○○さんを放っておくなんて、もう本当に生きる価値のない屑なんですね」 「え?」 「そんな薄情な鬼の事なんて忘れてしまった方が○○さんのためですよ」 何だか萃香に対して棘…どころではなく確実に悪意の篭った発言をしている咲夜さん。 前の宴会の時はそんな感じしなかったんだけど、咲夜さんって萃香のこと嫌いなのかな? 「いや、でもそういう訳には……」 「あんなアル中にまで優しく接するなんて、さすがは○○さんです。でも……」 そう言って咲夜さんは何故かこちらに接近してくる。 僕は何となく身の危険を感じて距離を取ろうとするも、気付けば抱きつかれ地面に押し倒されていた。 勢いよく倒れこんだので背中がちょっと痛い。 いや、気にするべきところはそこじゃない。 「あの、咲夜さん?」 「○○さん。今はその優しさを私だけに向けてください」 僕の言葉をスルーして事態をどんどん進めていく咲夜さん。 その表情は先に出会った妖夢さんの見せたそれと酷似していた。 そして彼女は僕の服に手を掛けて素肌を……って、ちょっと?! 「咲夜さん?! いくらなんでもまずいですって!」 「うふふっ、愛する二人の前には些細な事です」 真昼間でいつ人が通るとも知れない道のど真ん中での暴挙の何処が些細な問題ですか! それに愛する2人って何です?! 別に咲夜さんの事は嫌いじゃありませんけど、だからって愛す……違う違う! 問題はそこじゃない! 混乱して冷静さを失うな! 「と、とにかく離れてください!!!」 何とかこの状態を打開せんと必死にもがくが、一向に咲夜さんを引き剥がす事が出来ない。 それどころか咲夜さんはより一層身体を密着させてきており、 これでもかと言わんばかりに女性特有の柔らかさやら何やらを意識させられ続けていた。 やばい、妖夢の比じゃないぞこれは! 「咲夜さん、お願いですから離れてください!」 急速に消滅しつつある理性を必死に奮い立たせる僕。 男として情けないけど、腕力で勝てない以上は何とか言葉で説得するしかない。 「それは無理です。予定とは少々違いましたが、こんなチャンスは滅多にありませんので」 しかし、完全にトリップしている様子の咲夜さんには全く通じなかった。 「予定?! それにチャンスって何ですか?!」 「据え膳食わぬは何とやらです。それではいただ…「○○から離れろッ!」…ッ!」 もはやこれまでと諦めた瞬間の出来事だった。 咲夜さんの欲情にまみれた瞳が一転して鋭さを帯び、いきなり僕の上から飛びのく。 直後に僕の真上を通過していく紅蓮の火の玉。 咲夜さんが離れるのが僅かでも遅ければ、それはきっと彼女に命中していたであろう。 「○○、大丈夫!?」 そして火の玉が飛んできた方を向くと、 そこには僕の(ついでにスレ的な意味の)危機を救って恩人、萃香が立っていた。 「ああ。萃香、ありがと…って、ナイフ刺さってるぞ?!」 が、萃香は僕とは違った意味で危機的な状態だった。 簡単に言うと全身のいたるところにナイフがぶっ刺さっていたのである。 しかしこのナイフ……もしかして、萃香を何処かにやったのは咲夜さん? 「これくらい平気だよ、○○。それにしてもやってくれたな」 そんな僕の心配に笑顔で答える萃香だが、 その顔は咲夜さんを見ると同時にたった一つの感情のみを宿したものへと変化。 ついでに口調まで威圧感たっぷりなものに変わっていた。 「あらあら、せっかく○○さんと二人っきりだったのに。無粋な鬼だこと」 まるで萃香に呼応するかのように咲夜さんの様子もまた変化する。 僕を押し倒していたときの名残など微塵も感じさせない氷のような冷たい表情。 しかしながらその本質は萃香と同じ……すなわち『相手に対する絶対的な怒り』のみ。 「最初に邪魔をしたのはそっちだろう? しかも白昼堂々○○に無理矢理関係を迫るという暴挙。 そんな浅ましい女には○○の傍にいる資格などない」 「あら、自分に色気の欠片もないからと言って僻むのは見苦しいわよ。 貴女じゃ精々、兄にじゃれついてるうっとおしい妹ですものね。 単に成長が足りてないだけのチビ鬼さん?」 「日頃から見栄を張って真実を偽ってるような奴に言われたくないね。虚乳メイド」 「………そう、どうやらお仕置きが必要みたいね」 「………人間風情が調子に乗るなよ」 そこで言葉のやり取りは終わった。 代わりに飛び交い始めるのは大量のナイフと火球、そして弾幕。 加速していく事態は留まるところを知らず、ついに一般人の踏み込める領域を飛び越えてしまった。 「………………早く人里に行こう」 そんな人外の争いを目の前にして僕が事はたった一つ。 自分がいなくなった場合に起こるであろうリスクを無視し、全力で立ち去る事だけだった。 早々に脱出を計り人里へと向かった僕だったが、それから後がまた大変だった。 まるで狙ったかのようなタイミングでチルノやらルーミアやらてゐやら輝夜さんやらと次々に遭遇。 オマケに全員が全員と言うわけではないものの、大半が妖夢さんや咲夜さんのような暴走状態だった。 おかげでここに至るまでに多大なる精神的疲労を負う羽目になってしまった。 「………あぁ、やっぱりお店閉まってる」 それでもどうにか里に到着した僕だったのだが、到着時間は予定よりも大幅に遅れていた。 当然買い物をするはずだった店の営業時間は過ぎ去っており、もはや手遅れ。 無理を言えばお店を空けてもらえるかもしれないが、さすがにそれは気が引ける。 「それにしても、どうやって帰ろう?」 そして目的が果たせなかった事以上に問題なのが帰路だ。 既に時刻は夕方から夜へと差し掛かっており、今人里を出たとしても帰り着くのは真夜中。 妖怪の領域でもある夜間の外出は僕のような一般人にしてみれば死を意味していた。 いくらなんでも自分から妖怪達のご飯になりにいくつもりはない。 「こんばんわ、○○さん」 どうしたものかと途方に暮れていたそんな時、思いもよらない人物から声をかけられた。 四季映姫・ヤマザナドゥ様である。 「どうも、こんばんわ」 反射的に挨拶を返したものの、僕は意外な人物の登場に驚いていた。 閻魔という役職上、常に多忙な日々を送っている映姫様。 そんな映姫様がこんな時間に人里にいるなんて考えもしなかったからだ。 「今日はお仕事はお休みなんですか?」 「ええ。大切な用事が出来たので今日から一週間休みを取ったんです」 映姫様の答えで更に驚く。 あの仕事熱心な映姫様が一週間も休みを取るなんて、余程大切な用事なんだろう。 どんな用事か聞いたら失礼かな。 「ところで○○さん。一つ質問をしてもよろしいですか?」 「えっ? あ、はい、どうぞ」 ん、また随分と唐突だな。 映姫様が僕に質問って一体なんだろう? 「この記事の内容は本当ですか?」 そう言って映姫様が差し出してきたのは今日付けの文々。新聞だった。 その一面にデカデカと掲載されている記事を見て僕は絶句。 『驚愕! 外界人○○さんは貧乳フェチ?!』 見も蓋もないどころか侮辱罪で訴えてもよさそうな見出しで始まっているその記事。 それは驚くべき事に昨日友人としていた会話をさらに脚色したものだった。 しかしどこからこの話を聞きつけたのか知らないけど、いくらなんでもあんまりだ。 大きな胸なんて胸じゃない? 貧乳はステータス? 貧乳こそ究極にして至高の存在? 見出しの段階で既にアレなのに、書かれてる内容なんてまるっきり僕の事変態扱いしてるじゃないか。 しかもこの辺の発言は全部僕じゃなくてアイツなのに…… 「○○さん。それでどうなんですか?」 おっと、悲観してる場合じゃなかった。 今はまず確実に誤解しているであろう映姫様に真実を説明しないと。 万が一肯定でもしようものなら徹夜でお説教されかねない。 「あのですね、映姫様。 率直に言いますとこの記事は射命丸さんが面白おかしく大げさに書き散らしているだけです。 確かに僕がスレンダーな体型の方が好みというのは事実ですが、 だからと言ってここに書かれているような事は断じてありません」 「そんな事はどうでもいいのです。 いえ、本当はどうでもよくないのですが、今は置いておきます。 私が聞いているのはこの記事の一番最後に書かれている一文についてです」 「最後の一文?」 映姫様の言葉を受けて僕は記事の一番最後を見る。 そして再び言葉を失った。 『なお、○○さんは現在恋人募集中。 御本人のコメントとして『僕と付き合ってくれるという人はいつでもどこでも大歓迎!』との事です』 確かに今の僕には恋人なんていないけど、だからってこんな事は一言も言ってないぞ? てかなんだこのアホ丸出しなコメントは。 射命丸さん、僕に何か恨みでもあるんですか? 「これは完全に射命丸さんの捏造です。僕はこんな台詞を口にした覚えなんてありません」 ここは完全に事実無根なのでキッパリと否定しておく。 「そう、なんですか………」 が、僕の答えに何故か落ち込んでしまう映姫様。 そして落ち込んだまま、まるで一縷の望みでもかけているかのような目でこちらを見つめてくる。 「ですが、○○さん自身恋人が欲しいと思っている事は間違いではありませんよね?」 「……それはまぁ、やっぱり恋人は欲しいですよ」 懇願するかのような映姫様にクラッときた僕は、おそらく映姫様が望んでいるであろう答えを返した。 もっともこれは嘘ではない。 何しろ昨日僕と話していたアイツにさえも恋人がいるのだ。 この歳になって独り身なのはいい加減に寂しいというか空しい。 「そうですか。それを聞いて安心しました」 今度は一転して嬉しそうな笑顔になる映姫様。 それにしてもどうして僕の言葉でここまで一喜一憂するんだ? 今日の映姫様はどこかおかしい……ハッ、まさか映姫様まで妖夢さん達みたいに?! 「それでは○○さん、行きましょうか」 いつの間にか僕の腕を掴んでいる映姫様。 マズイ、このまま良からぬ場所にでも連れて行かれたら今度こそ本当にアウトだ!!! 何が何でも断らなければ!!! 「あの、映姫様? お気持ちはありがたいのですが僕はもう家に帰らないといけませんので…」 「はい。ですから私が○○さんのお家まで送っていきますよ」 「……え?」 「この時間だと○○さんお一人で帰るのは危険ですから。あっ、それともご迷惑ですか?」 「い、いえ! そんな事ありませんよ!」 映姫様の厚意を勝手に邪推して変な事を………完全に疑心暗鬼に陥っていたな。 すみません、映姫様。 僕の家に着いたらキチンと謝罪させていただきます。 「それじゃあ映姫様、申し訳ないですけどよろしくお願いします」 「いえいえ、お気になさらないでください。それでは行きますよ」 そんな訳で僕は映姫様に手を引かれ、闇に染まっていく空へと舞い上がった。 何にしても無事に帰りつけそうで良かった良かった。 きっと、そんな暢気な事を考えていた所為だろう。 「そうですよ、○○さん。気にする必要なんて何処にもないんですからね……フフッ………」 映姫様がまるで獲物を捕らえた肉食獣のような笑みでこんな事を口走っていたのに、僕は全く気付かなかった。 ──────── 人里で偶然出会った映姫様の厚意に甘え、僕は自宅へと送って貰っていた。 大切な用事のために休暇を取ったという映姫様に余計な面倒をかけてしまい、 僕は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。 そう、申し訳ない気持ちでいっぱいなのだが……… 「映姫様。一つお聞きしたい事があるんですけど、いいですか?」 どうしても腑に落ちない、というか聞かずにはいられない事がある。 「どうしてこの状態で飛んでるんでしょう?」 それは現在の僕達の状態…というか体勢。 人里から出発した当初はただ手を繋いでいるだけだったのに、 いつの間にやら真正面から抱き合うような格好で空を飛んでいるのだ。 おかげで映姫様の綺麗な顔がすぐ目の前に迫っており、 また映姫様の身体がこれ以上ないほど密着しているため、僕は邪念を鎮めるので大変だった。 「この方が安定するんですよ」 微笑みながらさも当然の事のように言う映姫様だが、 自力で飛ぶ事の出来ない僕でもそれはありえないと思う。 どう考えても手だけ引いてもらっていた時のほうが飛びやすいはずだ。 とは言え送って貰っている以上、映姫様の行動に文句をつけるわけにはいかなかった。 映姫様がそう言うのならばそうなのだろうと納得するしかないのである。 「きゃ♪」 「ッ!!!」 そう、咄嗟に身体を押し付けられたりあわやキスされそうになったとしても耐えるしかないのだ。 「ゴメンなさい○○さん。何だか急にバランスが崩れてしまって♪」 「い、いえ。大丈夫です」 映姫様、そう言いながらも悲鳴とか台詞とかが妙にワザとらしい気がするのは何故ですか? 結局そのままの状態で運ばれる事約三十分。 何とか自宅まで耐え切る事が出来たものの、精神的疲労はピークに達していた。 出来る事なら今すぐにでも布団に入って泥のように眠りたい。 だが、その前にわざわざここまで送ってくれた映姫様にお礼を言わないと。 「映姫様、わざわざ送っていただいてありがとうございました」 「気にしないでください、○○さん」 ああ、映姫様の笑顔が眩しい。 こんなにも温かくて純粋な笑顔の出来る人がワザとあんな事をするはずないじゃないか。 そもそも街で会った時だって、映姫様が他の人みたいに変な暴走してるんじゃないかって勘ぐったし。 僕は心の中で映姫様に対する勝手な想像への謝罪を行った。 「……あれ?」 と、ここで僕は足元のある物に気がついた。 それは僕が外出前に描けておいた南京錠の存在。 その鍵が何故か真っ二つにされた状態で転がっていたのである。 「どうかしましたか?」 「いえ、その……これが」 とりあえずボロボロになったそれを拾い上げ、映姫様にも見せた。 周囲に人が住んでいないため、僕は万が一を考えて必ずこの鍵を掛けてから外出している。 それが壊されていると言う事はつまり、何者かが僕の家に無断で侵入したという事だ。 いや、もしかしたら未だに僕の家の中に居座っている可能性だってある。 「有罪です」 「え?」 そんな感じの説明を終えた後、映姫様のそんな呟きが聞こえてきた。 「○○さんの家に忍び込むなど言語道断ッ! そのような不貞の輩はこの四季映姫・ヤマザナドゥの名において見過ごすわけにいきません!!!」 「え、映姫様? ちょっ、落ち着いてください」 「落ち着け? 落ち着けですって!? 何を言ってるんですか○○さん!!! 誰とも知れぬ者が○○さんの家に不法侵入したのですよ?! これが落ち着いていられるわけ無いじゃないですか!!! ○○さんの家に無断で進入するなど、どんな理由があっても許されません! それにもし家の中を物色でもされていたらどうするんです?! いえ、間違いなく物色されているでしょう。 何しろ○○さんの私物という超激レアアイテムの宝庫、見逃す手はありませんよ!!!」 げ、激レア…何だって? 映姫様の口から物凄く違和感のある単語が……いや、きっと疲れてる所為で聞き間違えたんだ。 そうに違いないという事で納得しておこう。 「あの、映姫様? 僕の私物なんて盗んでもどうしようもないですよ?」 「何を暢気な事を言ってるんです!!! もしも犯人が盗み出した○○さんの私物で善からぬ事をしていたらどうするんです!!! そんな羨ましい事断じて認められません! 私だっていつも我慢しているのに!!!」 あ、あれ? 映姫様がさらにトンでもない事を口走った気が……いや、これもきっと聞き違いだ。 今日の僕はどうしようもないくらいに疲れているし、うん、きっとそうに違いない。 清廉潔白を地でいく映姫様が日頃から変態じみた犯罪行為を妄想しているなんてありえない。 「とにかくまずは犯人に繋がる証拠を見つける事が先決ですね。○○さん、行きますよ」 などと軽く現実逃避している間に家へ突入しようとしている映姫様。 それに気付いた僕は慌てて映姫様を止める。 「映姫様、それは危険ですよ! まだ犯人が家の中に居るかもしれないのに……」 「それこそ好都合と言うものです。 神聖な聖域を汚した屑がどんな目にあうのか、魂の奥深くにまで刻み込んであげます。 安易な死など絶対に与えてやるものですか!!!」 だが、今の映姫様にはそんな制止など無意味だった。 むしろ犯人が居た方がいいとまで言い放つ始末。 それ、絶対に閻魔様が言っていい台詞じゃないですよ。 「○○さんの家に侵入した不届き者!!! 居るのならば出てきなさい!!!」 そうこうしている間に映姫様は玄関の扉を開け放って家内に突入してしまった。 仕方なく覚悟を決めた僕も映姫様の後について自宅へと足を踏み入れると、 「お、お帰りなさいませ、○○さん」 「「………………は?」」 何故か三つ指ついて待機していた妖夢さんを前にして言葉を失ってしまうのだった。 全く予想だにしていなかった人物の登場にしばし放心状態だった僕と映姫様。 妖夢さんの呼びかけで我に返った後、彼女に事情の説明をお願いした。 「……なるほど、そういう事だったんですか」 「お騒がせして申し訳ありませんでした」 正座して深々と頭を下げる妖夢さん。 当たり前だが、南京錠を破壊したのは彼女だった。 その理由を要約すると、 『白玉楼に強制連行された妖夢さんは今日の件で幽々子さんと盛大な喧嘩を繰り広げた。 その後カッとなって勢いのまま家出したものの、行く当てがなかったのでとりあえず僕の家に。 しかし鍵が掛かっていて中に入れなかったのでやむを得ず』 との事。 どうして最後がやむを得ずに繋がるのかはさておき、 入った後は鍵を壊してしまったお詫びに掃除や洗濯などの家事をしてくれていたらしい。 しかし、妖夢さんが幽々子さんと喧嘩するとは驚きだ。 今日の事は2人にとってそんなにも大きな問題だったのか。 「ですが、器物破損と住居不法侵入に変わりはありません」 僕の横で映姫様が無表情で言い放つ。 先程までの興奮状態から一転して氷のように冷たく感じられる映姫様。 自分に向けられているわけではないと解っているのに、一言一言聞く度に反応してしまう。 「映姫様。妖夢さんなら知らない間柄でもないですし、僕はもう気にしてませんから」 「○○さん。罪は罪です」 「でも掃除や洗濯とかの家事をしてくれた訳ですし、それでチャラという事にはなりませんか?」 「………………○○さんがそう言うのでしたら仕方ないですね」 明らかに納得していない感じの映姫様だったが、最終的には僕の意見を尊重してくれた。 「ありがとうございます、映姫様」 「ッ!? べ、別にお礼を言われるような事ではありません」 とりあえず笑顔でお礼を述べると、顔を真っ赤にして思いっきり目を逸らされてしまった。 もしかして照れたのかな? 普段は凛とした雰囲気で格好いいけど、こういう仕草は素直に可愛らしいと思う。 まぁ、可愛いなんて口にすると怒られそうだから実際には言わないけど。 「それでは○○さん、私は夕食の準備をしてきますね」 「あ、僕がやるからいいですよ」 「いえ、後は温めるだけですから。 それに私は今日から居候の身なのですから、お気遣いは無用ですよ」 そう言って台所に向かう妖夢さ……ん、居候の身? ひょっとして妖夢さん、このまま僕の家に住むつもりなのか? 「あの、妖夢さ…「貴女が○○さんの家に住むなど、断じて認めるわけにはいきません!!!」……ん」 僕の台詞を掻き消して妖夢さんに詰め寄る映姫様。 さっきまでの冷徹さが一転し、表で騒いでいた時のように熱を帯びていた。 「これは私と○○さんの問題ですので、別に四季様に認めていただく必要はありません」 しかしながら妖夢さんは怯まない。 幽々子さんが相手だった時とは比べ物にならない程の覇気を放ちながら映姫様と対峙している。 「○○さんの身の安全を考慮した上での至極真っ当な意見です!!!」 「身の安全を考えたのならば、私が一緒に居た方がより効果的だと思いますが?」 「戯言を! 二人きりという状況を利用してか弱い○○さんを襲おうという魂胆が見え見えです!」 「お、襲うなんて破廉恥な事言わないでください!!! 私はただこの機会に既成事実を…」 「同じ事です!!! そんな抜け駆け許しません!!!」 何だか男として情けなくなってくる2人の言い争いだが、この流れは非常に危険だ。 このままヒートアップしていけば間違いなく萃香と咲夜さんの二の舞になってしまう。 この二人に暴れられたら僕の家なんかひとたまりも無いだろうし、それ以前に僕の命が危ない。 「ふ、二人とも冷静に、ね? とにかく落ち着いて話し合いましょうよ」 僕は可能な限りの笑みを浮かべて2人の説得に入る。 結論を先延ばしにするだけのような気もするけど、まずは2人を落ち着かせないと。 「○○さん! ○○さんは同居を認めるというのですか?!」 「○○さん! ○○さんは私に出て行けというんですか?!」 しかし、余計な横槍は自らの死期を早めるだけの結果となってしまった。 二人の矛先が揃って僕の方に向けられ、何の覚悟も出来ぬまま究極の選択を突きつけられてしまう。 「「どうなんですか!? ハッキリしてくださいッ!!!」 どうして僕が責められないといけないんだろう、と心の底から思う。 だが、こうなってしまった以上は理不尽な現実を嘆いても意味が無い。 この状況を切り抜ける返しを考えなくては。 何か無いのか? 全てが丸く収まるようなアイデアは…… 「それなら私達皆で○○の家に泊まればいいんだよ」 「……は?」 えっ、何で萃香がここにいるんだ? 萃香は咲夜さんと殺し合いスレスレの弾幕ごっこをしてたはずでは? ハッ、まさか咲夜さんを亡き者に?! 「全員一緒ならば不用意な抜け駆けは出来ません。 もちろん不満は残りますが、○○さんと一つ屋根の下という状況を考えれば妥協できるレベルです」 あっ、咲夜さん死んでなかったんだ。 よかったよかった……じゃなくて、何で咲夜さんと萃香が揃ってここに?! 全然気配とか感じなかったけど、いつの間に入ってきたんだ?! それに映姫様も妖夢さんもどうして驚いてないんですか?! 「そういう事ならば仕方ありません」 「不本意ですが、ここは引き下がった方が良さそうですね」 すっかりパニックな僕をそっちのけで4人は話を進める。 そして僕が我に返ったとき、僕にとって最悪と言って過言ではない条件で話がまとまっていた。 いや、ひとえに最悪というよりは天国と地獄のせめぎ合いという方が正しいかな。 「そういう訳だからさ、○○。今日は宜しくね~」 「「「宜しくお願いしますね、○○さん」」」 「………………はい」 とにもかくにも、こうして僕の長い夜が始まったのだった。 続く
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ハーレム?20 トライアングルその2(新ろだ739) 懐かしい音が聴こえる。 まな板を打つ音と、自分を呼ぶ声。 いつものように談笑しながら朝食を摂り、いつものように行ってきますの挨拶。 通い慣れた道を行き、代わり映えの無い講義を受けて。 その後の予定は決まっている。 馴染みの二人のいる、あの場所へ――― 意識が現実に引き戻される。 我ながら単純だ。里帰り前夜に昔の夢を見るなんて。 遠足前夜の子供か、と一人ごちて眼を開ける。と、 息のかかる距離、 最愛の人の顔がそこにあった。 おいおい、これは恋人の距離だぞ。…ああ、恋人だった。 しかもご丁寧に目も瞑ってる。これじゃあこれからキスしますよって 言ってるようなものじゃないか。 考えている間にもゆっくりと近づく唇。 このまま受け入れてもいいが… 「…魔理沙?」 言った瞬間、跳ねるように顔を離す魔理沙。 その驚きようを見るに、俺の眠っている間に済ますつもりだったようだ。 「お、おはよう」 「ああ、おはよう魔理沙」 体を起こす。窓の外には雲ひとつ無い青空。いやいや、晴れて良かった。 せっかくの旅行だってのに曇天じゃあ気分も盛り下がる。 「で、何で魔理沙が我が家に?」 昨晩泊めた記憶は無い。 問われた魔理沙はあっはっはーと頭をかきつつ、 「今日はいつになく早くに目が覚めちまって」 子供かお前は。いや、人の事は言えないが。 「旅行の事を考えたら居ても立っても居られなくなって」 それで来た、と。 鍵は?とも思ったが、ドアノブのあったはずの所に空いた穴を見て考えるのを止めた。 「まあいいや。コーヒー淹れるからちっと待っとけ」 言って立ち上がろうとする俺を魔理沙が慌てて押し留める。 「私がやるって。起きたばっかで頭働いてないだろ?」 そんな事よりドアノブ直せよ、という言葉を飲み込んで素直に従う。 道具の場所を教えてやると、 「ついでに朝ご飯もご馳走するぜ」 そう言って魔理沙は台所に向か…おうとした足を止めこちらに向き直り、 ちう、と。 キスされたと気付いた時には既に魔理沙は台所に向かっていた。 真っ赤になった耳を見れば照れているのは丸分かりなわけで。 「……結局するのかよ」 鏡を見るまでも無く、自分の顔も赤いんだろうなと思った。 「到着!外・界!!」 朝食を平らげ支度をし(もちろんドアも直させた)、主催者である八雲紫の案内で、外界にやって来た。いや、帰って来たと言うべきか。 数年ぶりに吸った故郷の空気は幻想郷と比べるとお世辞にも美味いとは言い難いが、懐かしい味がした。 「期間とか集合場所とかはさっき渡したしおりに全部書いてあるから。それじゃね~」 そう言い残してスキマに消える紫女史。あれもこれから旦那と外界ツアーを堪能することだろう。 「○○、まずはどこに行くんだ?」 隣に立つ魔理沙が問う。色々見て回りたい所、見せてやりたい所はあるがまずは、 「実家に帰ろうと思う」 二年も連絡一つしなかったから心配してるだろうし、何より魔理沙を家族に紹介したい。 「そか、それじゃあ早速行こうぜ。こうしてる時間も勿体ない」 ついこの間行くのを渋っていたとは思えない張り切りようだ。原因は俺だが。 「……やっぱやめようか」 「ここまで来て何言ってんだよ」 今目の前に、懐かしき実家があるわけなのだが。 ここに辿り着くまでに、靴紐は両方切れ、黒猫一家が三度前を横切った。コーヒーカップも真っ二つに割れたっけ。 正直いやな予感しかしない。しかしまあ魔理沙の言う通り、ここまで来てバックれるわけにも行くまい。 意を決し呼び鈴に手を伸ばし、 「じゃあちょっと出掛けてくるねー」 呼ぶまでも無くドアが開いた。心の準備くらいさせてくれよ神様。あの神々じゃあ期待できないか。 出てきた人物、我が妹といえば俺の顔を見て静止している。そんなに見つめられるとお兄ちゃん照れちゃうよ。 数秒の沈黙の後、 「兄さん…?」 動揺しているのが見て取れる。謎の失踪を遂げた人間が突然目の前に現れれば、誰だって動揺もするか。 「久しぶりだな。相変わらず胸は薄いままか」 俺の声に我に返る妹。と思ったら手を引かれて家の中に連れ込まれる。外見もそうだったけど、中も全然変わってn ……… …… … あ…ありのまま今起こった事を話すゼ! 『俺は久しぶりに妹の顔を見たと思ったらいつの間にか逆さ吊りにされていた』 な…何を言ってるのかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった… 頭がどうにかなりそうだった… 催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃ断じてねえ。 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ… 「久しぶりねえ、○○」 「……お久しぶりです、母上」 頬に手を当て微笑む母。相変わらず笑顔が素敵です、目が笑ってないけど。 それより頭に血が昇るんですが。 「降ろして頂けるとうれしいです」 「それは無理な相談ねえ」 何故にWhy?いや、わかるけどさ。 「二年も連絡一つ寄越さなかったオシオキ♪」 妹が続く。余計な所ばかり似やがって。 自分の頭上、いや、逆さになってるから正確には頭の下には水を張ったバケツが。そして母の手には俺の体を吊るすロープ。これはつまり… 「あら、手が滑ったわ」 「がぼがぼガボ!?」 ちょ、止めて!陸で溺れるとか無いから!! 「何か言う事は?」 引き上げながら問う母の笑顔は絶えない。俺はこの笑顔が怖い。 「す…すんませがぼガボ」 「それだけ?」 上げて!ちゃんと言うから上げて!! 再び引き上がる俺の体。うぁ、鼻に水入った。 「げほっげほっ…はぁ…」 「何か言う事は?」 繰り返される問い。 「……心配かけて、ごめん」 その瞬間、母の手からロープが離れるのを見た。 三度水没する俺の顔。と言っても支えであるロープが放されたからバケツが倒れ、溺死の危険から開放された。 周りは完全に水浸し。逆さ吊りからは開放されたが体は縛られたままなので、さながら芋虫のように体をくねらせながら起こす。 「おい!急に離す…な…」 言い終わる前に、母に抱きしめられた。 今さっきまで水に浸かっていた所為か、ぬくもりが余計に暖かく感じる。 「心配……したんだから」 言葉が胸に刺さる。そりゃそうだ。二年という時間は笑って済ますにはあまりに長い。 だから俺は、心配をかけた事への謝罪と変わらずに受け入れてくれた事への感謝を込めて、 「……ただいま」 「……おかえり」 「そういえば父さんは?」 タオルで髪を拭きながら聞いてみる。 妹がいた事からもわかるが今日は日曜日。てっきり全員いるかと思ったのだが。 「たまたま仕事よ。帰ってきたらちゃんと謝りなさい」 母の返答に唸る俺。雷が落ちない事を祈るばかりだ。 「それで、今までどこで何やってたの?」 妹の問いに、どう説明したものかと考え…… 「あ」 慌てて玄関に向かいドアを開けるとそこには、 「………」 最愛の人(笑)が玄関先で体育座りしていた。 いかん、すっかり忘れていた。 「あの……魔理沙さん?」 無言でこちらを向く。目に光が灯ってない。 「私は……いらない子じゃないよな?」 「……すまん」 不可抗力だけどとりあえず謝っておいた。 「どうしたの兄さ…って、どちらさま?」 奥から顔を出した妹に俺は少しだけ考えて、 「えっと……嫁です」 目が点になるってこんな顔なんだろうな、と思った。 翌朝、目が覚めて最初に目に入ったのは懐かしい天井だった。 嫁と紹介した魔理沙を家族はすんなり受け入れてくれた。馴れ初めだのファーストキスはいつだのやる事やったのかだのまくし立てるように聞く母や妹に呆れたが、真っ赤になった魔理沙が可愛かったのでよしとする。 ちなみに父とも話したが、「後悔していないのならよし」とだけ言われた。全く、感謝してもし足りない。 現在時刻は午前五時ちょうど。 こっそり隣の、妹の部屋を見ると、魔理沙と二人仲良く夢の中。どうやら自分以外誰も起きてないようだ。 わざわざ起こすのも躊躇われるので、散歩にでも出る事にする。 珍しく朝早くに目が覚めた。 今日の講義は三限からなので、自宅で昼食と摂る余裕さえある。だというのに妙に目が冴えてしまい、二度寝は出来そうにない。 降って沸いた空き時間に戸惑ってしまう。友人に電話でもしようかと考えたが、 「こんな時間じゃメリーも寝てるか」 自己解決。しかし現状は変わらない。 「散歩でもしようかな」 考えていても仕方が無い。早朝散歩というのもたまには悪くないか。 十月に入った事もあり、外は随分と冷える。けれど天気はいいので日中はそれほど寒くはならないだろう。 時間が時間なので、辺りは閑散としている。通い慣れた道なのに人気が無いだけで新鮮に見える。 見慣れた建物が見えて来た。意識せずに大学まで来てしまったようだ。そんなに勉学熱心なつもりは無かったけど。 当然のように正門は閉まっている。ため息一つこぼし、踵を返そうとした所で人影に気付いた。こんな時間に変わった人だ。 「はは、変わってないなーここも」 時間が止まった気がした。 忘れるはずが無い。何度も聴いた声。もう一度聴きたいと思っていた声。 息が詰まる。言いたい事が沢山、たくさんあったはずなのに。 それでも声を絞り出す。呼び止めるように、縋るように、求めるように。 「○○!!」 振り返る。二年ぶりに見た彼は、少し大人びて見えた。 「……蓮子、か?」 止まっていた時計が、再び動き出す。 違う時を刻む為に。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 俺は続かないつもりで書いていたと思ったらいつの間にか続きを書いていた。 な…何を言ってるのか(ry 書き終えるまでに、霊夢とアリスと聖おばあちゃんとゆうかりんと咲夜さんに浮気してました。聖さんの膝枕は幻想郷一。 新ろだ780 ――やや、そこにいるのはロリコンと名高い○○さん。 誰がロリコンだゴシップ大好き鴉天狗めッ。 ――あや。でも…… なンだよ、ニヤニヤしやがって。 ――貴方の交友関係を見直してみてはいかがでしょうか。 あン?交友関係……ねぇ。 ――きっと否定はできないはず、ですよ? 神社に行くのは萃香と酒飲むのが目的だし、 ミスティアの嬢ちゃんが酒代メシ代タダにしてくれるっつーから、 よく3バカ+ミスティアの嬢ちゃん相手に遊んでやったりもしてるな。 紅魔館では館主の嬢ちゃんに入場料代わりに血くれてやって、 図書館よるついでに妹ちゃんと遊んでやって。 そういやァこの前は地獄猫の嬢ちゃんに連れられて地底遊びに……あ、あれ? ――ね? いやまて。こ、これはあくまで遊んだりとかする交友関係であってだな! 俺自身は清純なお姉さん系が大好きなんだぞ!? ――ほほーう。例えを出すならどなたが? 例えか……これ、オフレコにしてくれるか? ――えー……折角の美味しいネタを…… 水道水、3本。 ――仕方ないですね、それで手を打ちましょう。 ……チッ、割に合わねぇ。 ――まま、運が悪かったと思って。それで、誰なんです? そうだな、寺小屋の慧音先生とか、以前宴会で見かけた白玉楼の主とか…… ――……それはまた、高嶺の花ばかりですね。 五月蝿ェよ。理想くらい高く持ってたっていいだろうが。 ――思うだけなら自由ですもんねー。 いちいちトゲのある言い方する奴だな、お前。 俺ン中で好感度ランキングがちょっと下がったぜ。 ――あや。ちなみに今私はどれくらいです? ケツから3番目。 ――レディに対してそれはちょっとひどいんじゃないですか。 冗談だ。冗談だからその団扇を下ろせ。 ――もっと誠実に生きれば死後が楽ですよ? 殺す気かよ!俺は理想の恋人と大往生を遂げるんだ! ――……そうですか。で、結局私はどのくらいの順位なんですかー? ……さーて、そろそろ晩飯の準備しなきゃいけない時間だ。それじゃあな! ――あっ、ちょっと、○○さーん!?……行っちゃった。 ――結局私って何番目くらいなんだろ。 トライアングルその3(新ろだ806) 正直、戸惑っていた。 予期せぬ再会。暇つぶしに散歩に出た先で、古い友人に出会ってしまった。 別に会いたくなかったわけではない。むしろどちらかと言えば会いたかったのではあるが。 それにしてもあまりに唐突だった。まさかこんな早い時間に外出しているなんて思いもしなかった。 これがB級恋愛映画のワンシーンならここから二流作家の書いたシナリオのようなラブストーリーが展開されるだろうが、こちとら純100%混じりっけ無しの現実である。そんなラブコメ展開は期待できるはずも無い。そもそも俺には既に嫁が居る。 そんな腹の足しにもならないようなくだらない事が頭の中を駆け巡る間、目の前の少女からは何の声も発せられていない。いつまでもだんまりでにらめっこというわけにもいくまい。 「よお。久しぶり」 右手を挙げて話しかけた。けれど相手は何の反応も無い。聴こえなかったと言うには周りが静か過ぎる。 リピートしようと口を開いたところで、向こうからこちらに歩み寄ってきた。何だ、聴こえてるじゃないか。 元々の身長差と俯いている所為で表情が読み取れない。とりあえず笑顔で話そう。 が、言葉を発する前に頬を叩かれた。痛いじゃないか。 思わず睨んだ蓮子の顔は俺の顔を見上げていて、目にはうっすら涙が溜まっていた。 女とは思えない力で俺の胸ぐらを握り締め、 「馬鹿!!!」 最初に言い放った言葉は罵倒だった。 「いきなり何も言わずに居なくなって!何様のつもりよ!!」 捲くし立てるように言葉を吐き出し続ける。 「それも二年よ!?ふざけんじゃないわよ!!一言ぐらい残していきなさいよ!!」 真っ直ぐ俺の目を見て怒鳴り続ける様から、どれだけ怒っているかが伝わってくる。 いや、怒りだけじゃない。 「心配…したんだから…!」 二回も同じ台詞を言われてしまった。 それだけ心配かけてたんだと申し訳なく思ったがそれ以上に、心配してくれたことに対する嬉しさが込み上げて来た。 相手に失礼だと思っていても、思わず笑みが毀れてしまう。 「……ただいま」 「……おかえり」 所変わってここはメリーことマエリベリー・ハーン宅。 感想の再会の後蓮子は俺を強制的に拉致り、その足でメリー宅へ。携帯電話でたたき起こして家に上がり、現在に至る。 見ればメリーはまだ寝足りないのか、時折欠伸をかみ殺している。こんな時間に起こされたんじゃ無理も無い。 それにしても女の子の部屋というのはどうも居心地が悪い。 「で、今までどこで何をしていたのかしら?」 コーヒーを啜りながらメリーが俺に問う。ちなみにコーヒーは蓮子が淹れた。悔しいが自分で淹れたのより美味しい。 さて、どう説明したものか…… 「……旅?」 「家族にも言伝無しに?」 今度は蓮子が俺を問い詰める。 「タイミングを逃した、というか」 俺の言葉にメリーが呆れたようにため息を零す。 「まあ、誰しも秘密の一つや二つあるものね」 誤魔化せてない。けど全部まるまる話すわけにもいかないし、まあ納得してくれたならいいか。 ふと時計を見ると、短針が七を指している。家の連中も起きてるだろうし、いい頃合か。 「んじゃ、俺はそろそろお暇するわ」 席を立って玄関へ行こうとしたが、何かに躓いてすっ転んでしまった。位置関係と感触から蓮子の足だとすぐに解った。 「どこに行くつもり?」 悪びれた様子も無く話す蓮子。 「いや、そろそろ帰ろうかと」 「却☆下」 そんな笑顔で言われても困るんですが。メリーの方も当然だと言わんばかりに頷いている。 「二年も行方晦ましておいて謝罪の一つも無いのかしら?」 メリーの言葉でこの二人にはまだ謝ってない事を思い出し、二人の前で膝をついた。 「あー、心配かけてごめん」 「私達が欲しいのはそんな上辺だけの言葉じゃないの」 おいおい蓮子さんや、土下座までしたって言うのにそりゃないぜ。 「今日一日私達に付き合って貰うくらいしてくれないと」 「割に合わないわね」 それを実行に移した場合の財布の中身の減り具合を想像したりもしたが、それより俺は 今外界旅行と称してこっちに来ている。つまりこっちに滞在できる期間は限られている。 そんな貴重な一日をこの二人と過ごしてしまったら、肝心の魔理沙との外界巡りの時間が減ってしまう。 最近構ってやれなかった魔理沙への埋め合わせの為でもあったというのに、その上また待たせるというのは流石にまずい。 かといって断ろうにも二人がそれを許すとは到底思えない。 助けて神様。いや、あの神達は当てにならない。 時間だけが刻々と過ぎていく。 「今日は先客が……」 「こっちが優先」 「二年も待たされてるんだから」 ですよねー。 「……家に連絡いれてきます」 怒るだろうなー、魔理沙。 一度外に出て、携帯電話を手に取る。そういえばこれを使うのも久しぶりだ。 電話帳から実家の番号を呼び出して耳に当てる。 一回、二回、三回。 四回目のコール音が途中で途切れ、聞き慣れた声が聞こえた。 「母さん?魔理沙呼んで」 程なくして、 「どうした、○○?」 「実はかくかくしかじかで…」 今日は案内できない旨を伝えた。どんな罵詈雑言も覚悟していた。 が、魔理沙の声は予想に反して優しいそれで、 「そか、じゃあ私は今日は家に居るよ」 「怒ってない……のか?」 「一日くらいで怒るような狭い懐の持ち主じゃあないんだぜ」 それに、と言葉を続ける魔理沙。 「信じてるから、さ」 その一言が胸に響いて。なんか、うん。 「魔理沙の事好きになって良かった」 自然とそう口から出た。 「こんな事でそれを実感するなよ~」 そんな拗ねた声も愛おしく聞こえる。 「じゃあそろそろ切るな」 「ああ。明日から期待してるぜ?」 それじゃ、と通話を切った。 せっかく魔理沙が一日我慢してくれたんだ。旧友との一日を全力で楽しもうじゃないか。 講義の後、私達は繁華街に足を運んだ。午前中は大学で昔話に花を咲かせたので、外に繰り出そうという話になったからだ。 久しぶりに話して改めて感じたけど、背こそ伸びてはいても○○は変わっていなかった。 二年という短いようで長い時が経っても、彼の中身はあの頃のまま。私が好きな彼そのもの。 そう。私は○○が好きだ。 ずっともやもやと朧げな気持ちだったけど、再会して、話をして、確信した。 彼の言葉や仕草、その一つひとつが私の心を掴んで離さない。二流小説のような陳腐な感情が心を駆け巡る。 「蓮子?」 「ひゃ!?な、何?」 「だから、これからどこに行くんだ?」 「えと、どうしようかメリー?」 考えが纏まらずに親友に話を振ってしまう。 自分でも呆れるくらいの狼狽ぶり。暇潰しに読んだ恋愛小説でもこんなやり取りはあったが、まさか実体験することになるなんて思いもしなかった。 「そういえば、欲しいCDがあるって言ってなかったっけ?」 気に入っているアーティストの新譜が最近発売したことを思い出した。 メリーからも○○からも異論は無く、あっさり目的地は決まった。 店内に流行の曲が響いている。 目的の物は新作コーナーですぐに見つかり、今はそれぞれ物色している。 今私の隣には○○が。メリーは少し離れた所でDVDを見ているから、実質二人きり。 嫌が応にも意識してしまう。 「こーゆー音楽も久しぶりだな……」 彼の言葉に驚いてしまった。常にウォークマンを持ち歩く程の音楽好きだった○○が久しぶり、だなんて。 「最近聴いてないの?あれだけ好きだったのに」 「ああ、ちょっとな」 「だったらほら、聴いてみる?」 持っていたウォークマンのイヤホンの片割れを差し出した。○○はそれを左耳に、私は空いた方を右耳にかける。 聴こえてきたのはさっき買ったアーティストの別の曲。 お気に入りの音楽を楽しみながら、ふと思った。 一つのウォークマンを二人で使う。傍から見れば恋人同士に見えるんじゃないだろうか。 「仲のよろしいことで」 「ひゅい!?」 驚いて後ろを見ると、親友が買った物を提げて立っていた。 「め、メリー。もういいの?」 「ええ。掘り出し物も買えたしね。○○は?」 「ああ、俺もいいよ」 満場一致で店を出る事に。ほっとしたような残念なような。 その後も、本屋、ゲームセンター、アクセサリーショップ、エトセトラエトセトラ。色んな所を巡った。霊能サークルらしからぬ活動だったけど、久しぶりの三人での活動は本当に楽しかった。 けれど、楽しい時間はあっという間に過ぎるもの。 「あら、もうこんな時間。そろそろお開きかしら」 メリーがそう切り出した。言われて空を見ると、二十二時四十七分三十秒、三十一、三十二…。 夜更かしは肌の大敵なのよ、というメリーの言葉に苦笑しつつ、今日はこれでお開きに。 メリーとは途中で別れて、○○と二人で歩いている。 夜風が心地いい。 またも二人きり。二年ぶりに再会して、自分の気持ちに気付いたとたんにこんなチャンスが転がり込むなんて。 手でも繋いでしまおうか。 「そういえば、さ」 ○○の言葉にこっそり伸ばした手を引っ込めてしまう。もう少しだったのに。 「どしたの?」 「いや、こうして久しぶりに話して、遊んで思ったんだけどさ。……変わってないよな、二人とも」 「あれから成長してないって言いたいの?」 「そうじゃなくてさ。あの頃と変わらずに接してくれた事が嬉しかったんだ」 当たり前だ、と言おうとしてはたと気付いた。 二年という時間を不安に思うのは何も待つ側だけじゃない。 自分が居ない間に、自分が居た世界が変わらずにいてくれる保障なんて無いんだ。 自分のことを忘れているかも知れない。自分の居た場所に自分じゃない誰かが居るかもしれない。 不安だったんだ。○○も。 そう思うと、自然に○○の手を取れた。 「何言ってるのよ。私達三人で秘封倶楽部、でしょ」 「……ああ」 程なくして、私の家と○○の家のその分かれ道に着いた。 「じゃ、またね」 このやり取りも久しぶり。そう、これからはいつでも会えるんだ。 だと言うのに、 「ああ……またな」 そう言って背を向けた○○から言いようの無い違和感を感じた。 また○○が消えてしまう。そんな根拠の無い焦燥感。 このまま帰しちゃいけない。理由もなくそう感じた。 「○○!」 言葉よりも体が先に動いて。 振り返った○○に飛びついて。 彼の唇を、自分のそれで、塞いだ。 <謝罪会見> 間に合わなかったよ畜生!!!その上まだ続くとか……。 もうむりぽ。書くけど。 その前に豊ねえとちゅっちゅしてくるノシ 新ろだ829 「うむ、こんなものか」 今朝の朝食はじゃがいもと豆腐の味噌汁とだしまき卵、そして沢庵と。 味噌汁の味も中々だ。 プリズムリバー3人に拾われてマネージャーとして居候させてもらって早1年くらい。 今では料理当番も任されてしまい主夫みたいな立場にもなりつつある、独身だが。 まぁ毎日大変だけど楽しくもあるから今の状態に不満はないんだがな。 さて、と。後は…… 「困ったお嬢さん方を起こさないといけないんだよなぁ……」 ため息をつきながら俺は彼女たちの部屋へ向かうのだった。 *ルナサの場合 「ルナサさーん、起きてますかー?」 …………反応がない、珍しいといえば珍しい。 いつもは一人で来てくれるのだが…… 「入りますよー?」 ドアを開けてみる。 さすがというか何というか部屋は綺麗に片づけられている。 楽器の本や道具がしっかりと仕舞われており、 どこぞのお嬢さん二人にも見習ってもらいたいところ。誰とは言わないが。 ベットを見ると膨らみと多少の動きが。 どうやらまだ夢の中のようだ。 とりあえずどんな様子かと顔を窺って見る。 「すぅ……すぅ……ん……」 「……」 どうしたものだろうか、何か幸せそうに寝ていらっしゃる。 これは起こすのを躊躇わされるが朝食が冷めてしまう、どうしたものか。 「ん……○○……」 「うぇ!?」 いきなり自分の名前が出てきてびっくりしてしまう。 その声によってかルナサさんの目が開く。 ちなみに今の状況は顔と顔が結構近い。 覗きこんでいる態勢のままなぜか動けない。 じーっと寝ぼけ眼でこちらを見つめてくるルナサさんの視線から逃れられない。 そして何を思ったか俺の両頬を掴み、 「ん…」 「!?」 キスをしてきた。 突然の出来事に俺はびっくりして何も対応ができなかった。 ただルナサさんの柔らかい唇の感触を感じることしかできなかった。 温かさなんて感じるはずがないのに温かい。彼女の心の温かさを感じているからだろうか。 そしてルナサさんの目が徐々に正気を帯びてきて…… 「!?あ……ご、ごめんなさい!」 ルナサさんの顔が離れる、どうやら寝ぼけていたようだ。 それにしても普段のルナサさんからは想像もできないほどに積極的だったが。 互いに顔を真っ赤にして何も言えない空気になってしまった。 「えーっと、その……朝食、出来てますので」 「あ、うん、ありがとう……」 どうにも気まずい空気をなんとかしようと考えるが今の俺の頭にはいい考えは浮かばなかった。 しかし何かを喋らないといけない、そんな状態だ。 「あ、そういえばファーストキス……」 おい待て何を口走ってる俺。 「……私も」 そうかールナサさんもかぁー……っておいぃ!? 「す、すいません、俺みたいなのが初めてだなんて……」 ルナサさんみたいな綺麗な人(騒霊だが)にはそれ相応な人が似合うと思う。 それなのに俺みたいなのがファーストキスの相手だなんて悪い気しかしない。 「い、いいのよ……夢が現実になっただけだし」 「はい?」 後半が聞こえなかったのだがもじもじとしているルナサさんに聞くのも躊躇われる。 「え、えーとじゃあメルラン達を起こしてきますね?」 「え、えぇ、お願いね」 お互いぎくしゃくしながらも俺はルナサさんの部屋を出てドアを閉めた。 無意識に自分の唇を触っていた。 ……柔らかかったなぁ……っといかんいかん! 両頬をぱんと叩いて気持ちを落ち着かせ、次の目的地へと向かうことにした。 「彼の初めてと私の初めて……か。 駄目ね私、今本当に嬉しくてしょうがないなんて……」 *メルランの場合 「メルラーン、起きてるかー」 ノックをするも返事は無い。 ルナサさんとは違い、これはいつもの事だ。 はぁっと一度ため息をつき、部屋に入る。 相変わらず部屋は荒れていた、この前一緒に掃除したのに…… そして件の子はぐーぐーと熟睡中。 「ほら、起きろメルラン。 もう朝だぞ、朝食が冷めちゃうぞ」 ゆさゆさと揺すると薄目を開けてこちらを見て深く布団の中へ逃げ込むメルラン。 これもいつもの事。どんどん手強くなっていくから困る。 「後10分~」 「駄目だ、もうルナサさん起こしたんだからお前も早く起きろ」 「姉さんが寝てたなんて珍しいわね~後5分~」 「そ、そうだな……ってまて寝るな」 先程の事を思い出してしまった。 いかんいかん今は忘れないと。 「ねぇ、今何でどもったの?」 顔だけ出してこちらを見るメルランの表情が何故だろう、凄い怖いのだが。 ていうか起きてるなら早く起きろと。 「い、いや別に何もないぞ」 駄目だ……これじゃあ何かあったと言ってるようなもんじゃないか。 その証拠にメルランの目尻がさらに下がっている。 そしていきなり布団から出たかと思うと抱きつかれてベッドに押し倒された。 「言わないとこのまま寝ちゃうんだから、姉さんと何があったのか言いなさい」 むふふ~と抱きつかれたままどうしたものかと考える。 朝からテンションが高い事だがこうなると言わないと本当に離さないのがメルランだ。 それにこんな格好他の二人に見られたらどう思われるか…… 「あーその、ルナサさんを起こそうとしたらちょっと事故があってな……」 「どんな事故?」 「起きようとしたルナサさんと……その……キス、しちゃってだな」 覚悟を決めて告白する。 この後殴られるのだろうかそれとも弾幕だろうか…… 「ふーん姉さんのファーストキス奪っちゃたのね」 「は、はい……」 俺も初めてだった、とは言えない。 何か考えるそぶりをし、そしてにこりと笑いながら 「じゃあ私も奪われても……いいよね?」 そういってメルランは俺にキスをしてきた。 おまけに舌まで絡めてくる始末。 離そうと思えば離せたかもしれない。 しかし俺の顔はメルランの手で固定され、俺の意思は彼女の情熱的な舌に持っていかれていた。 「ん……ちゅっ、あむっ……んんっ、はぁっ……」 「んむ・・・はぁっ、はぁっ……なんで?」 彼女の意図がわからない。 責められるならまだしもどうしてこんな…… 「そうしたかったから、じゃ駄目?」 熱っぽい視線でこちらを見るメルランにドキリとさせられる。 今になって彼女の肌蹴た胸元も意識してしまう。 まずい、このままだと何か非常にまずい気がする。 踏み込んだら帰ってこれない領域にまで入ってしまう気がする。 言うならば……そこまでよ? 「さーてと、それじゃあ着替えるわね~」 メルランが立ちあがった。 助かった、とでもいうべきなのだろうか? どこかでこの先に行けない事に残念がる自分もいたが彼方に葬り去ることにした。 「ふぅ……メルランの考える事はよくわからないな」 「……鈍感」 「え?」 今何か言われた気がしたが聞き取れなかった。 「なんでもないわ、それより私の裸に興味あり?」 ウインクしながらちらちらっと胸元を見せるような仕草をするメルラン。 あまりの展開の変わり様に茫然としていたがそういえば着替えるって言ってたな。 「あ、あぁごめん。それじゃあ下で。俺はリリカちゃんも起こしに行ってくるよ」 「姉さんの時みたいに襲っちゃだめよ~」 「襲ってないから!事故だから!」 今の俺の顔は真っ赤だろう、とにかく恥ずかしいのでメルランの部屋から急いで出た。 まったくメルランにはペースを崩されまくりだ。 何か今日は下で二人とまた顔を合わせるのはとにかく気まずいぞ…… 朝から少し憂鬱になりながら最後の目的地へ。 起きてくれていると面倒がないんだがなぁ…… 「本当に鈍いんだから○○は……でもそんな彼だからこうして一緒にいるわけだしね。 それにしても初めて、あげっちゃったなぁ……姉さんには負けないんだから」 *リリカの場合 「リリカちゃーん、起きてるかー?」 「ん~おき~てる~わ~て、いう、か~ちゃんはやめ、なさ~い~」 コンコンとドアをノックしてみたら反応がある。 しかしこの反応は起きてるかどうかわからない、むしろ寝ている可能性が高い。 仕方ない、と思いながら部屋に入る。 すると、目の前にはまさに着替え中のリリカちゃんがいた。 「「あ」」 今まさにパジャマのズボンを脱ぐ瞬間であった。 上のシャツも肌蹴ており胸周りはばっちり見えていた。 さっき起きたばっかりで反応が悪かったのかと気付く俺。 そして今日の下着はピンクか、可愛いのを穿くなと思う俺。 最後に今日は俺の命日かなぁと自分の迂闊さを呪う俺。 リリカちゃんは着替えを中断してパジャマを着直し、ドアをポルターガイストによって閉めた。 この家の防音処理は完璧で、結構な音がしても隣には聞こえないようになっているそうだ。 つまり、この後何をされても気付かれない、というわけで…… 「ばかあああああああああああああああああああああああああああ!!!」 彼女の特大のボディーブローをもろに喰らうのであった……どこにそんな力が…… 「信じられない、着替えを覗くなんて最低っ!」 「はい、すいません……」 正座をさせられ、時折少しグーが飛んでくる。 とりあえず見ないようにと後ろを向かされ、彼女は着替えを再開した。 これはこれで衣擦れの音とかが聞こえてアレなのだが…… 「着替え終わったからこっちを向いて」 向きを直すといつも通りの赤を基調とした服を来ているリリカちゃんの姿があった。 ちなみにまだ顔は少し赤く、いかにまだ怒ってますな感じである。 これはどうやって詫びればいいのか…… 「反省してる?」 「もちろん」 「それじゃあ……一つ、私の言った事をやったら許してあげる」 「何をすればいいんだ……?」 この時俺は絶対に厄介な事だろうと思った。 悪だくみに関してはリリカちゃんは結構な物でその被害はよく貰っていたりする。 そんな彼女が一つ何かしろというのだ、何をやらされるかわかったもんじゃない。 内心びくびくしながら彼女の言葉を待つと…… 「えーと、その、わ、私を抱きしめて」 「は?」 予想外すぎる言葉に俺は間抜け面をしていると思いながらポカーンとしてしまった。 今彼女は何て言った?私を抱きしめてと言ったか? ……なんで?どうして?ホウラーイ?じゃないホワーイ? 「ま、漫画でそういうシーンがあってこういうのっていいのかなぁーて思っただけよ! ほら!さ、さっさとやってみてよ!」 うーむ……まぁ彼女がやれと言うんだからやるけど……いいのかなぁ? 少し戸惑いながら彼女を優しく抱きしめる。 真っ赤な顔をして緊張しているリリカちゃんが可愛い。 不意に目があった、すると何かを考える素振りした後背伸びをして俺の首に手を回し、そして……キスをしてきた。 軽く触れるようなキスだった、それでも彼女を感じるには十分だった。 直ぐに唇が離れると彼女は俺の胸に顔を埋めてきた。 「こ、これも漫画であったからやってみただけなんだから。ファーストキス、だけど…… い、いい?この事は姉さん達には内緒よ?絶対だからね!」 「あ、あぁ……」 言えるわけもないのだが。 しかし頭の悪い俺には彼女の行動の真意がわからない。 漫画で読んだから実行してみたっていうのは本当なのだろうか? うーむ・・・・・・わからない。 そして少ししてリリカちゃんがもういいというまでずっとこの体制のままだった。 先に下に下がらせてもらったが離れてからもリリカちゃんは真っ赤だった、恥ずかしいのならやらなければいいのに。 まぁ格言う俺も凄い真っ赤な顔をしていそうなんだがな。 「や、やっちゃった、どうしょ!?どうしょう!? 抱きしめて貰えればよかっただけなのに抑えられなかった……あうぅ…… い、いやでもこれで私が一歩前進よね!?ふ、ふふふ、姉さん達には悪いけど○○は私のものにするんだから!」 朝食は女3人もいればかしましいと思うかもしれないが比較的静かである。 今までのルナサの方針がよかったのかあまり色々と喋りながら、というのはない。 今朝の朝食も静かではある、あるのだが…… 「……」(顔を真っ赤にしてこちらをちらちらと見て目が合うとすぐに目を背けてしまうルナサさん) 「……」(少し顔を赤くして幸せそうに食べるメルラン、えへへ~とか時折言ってたりする) 「……」(一番顔を真っ赤にしてこちらを睨むような視線を向けつつもどことなく嬉しそうな気配がするリリカちゃん) 何だこの状況は。 いや確かに今朝は色々とあったわけだがこうも妙な感じだと空気が…… 何かとてつもない事をしでかしてしまったような気がする。 彼女たちのファーストキスを貰った事によって何かが動きだしてしまった気がする。 これからの生活に何も起きませんようにと願いながら俺は自分の作った料理を食べるのであった。 夢でルナサとイチャついていたと思ったら3人分書いていた、何を言っているかわからねーと思うが俺もわからない!
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いないいないばあ スペック表 正式名称 PEEK A BOO 種別 レーダー欺瞞用携帯フレア 所属 『正統王国』 全長 15cm 重量 300g 動力系 電池 最高速度 なし 推進機関 なし 連続稼働 1週間 武装 人型欺瞞フレア その他 メインカラーリング:黒 コンセプト 存在しない人型反応の作成 特徴 真ん丸の黒い球体。大きさと重さは林檎ほど。 起動すると成人男性1人分の熱反応を空気中に形成する。 これを赤外線レーダーで見ると男が横に倒れているように見える。 また稼働時間が終了するとゆっくりと死ぬように温度が低下していくように設計されている。 基本的には存在しない遭難者を作り出すことによる囮作戦や撤退戦のための欺瞞などに用いられる。 弱点 使い捨てであり、また連続稼働時間が終了すると自動的に停止するため、バレる時は普通にバレる。 現状「成人男性が倒れている」熱反応の仕様のものしか製造されていないため、慣れた兵士には直ぐに看破される。
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ハーレム?24 新ろだ2-022 ある日突然、あなたに12人もの妹ができたらどうしますか? それも……とびっきり可愛くて とびっきり素直で とびっきり愛らしくて とびっきりの淋しがりやでそんでもってちょっぴり恐い しかも、そのうえ…… 彼女達はみんなみんな、とびっきり! お兄ちゃんのコトが大好きなんです!!! しっかり者でお兄ちゃんに対してはちょっぴり甘えん坊な清純派妹、早苗ちゃん 早苗「お兄ちゃん!この婚姻届に(ry」 ドジっ娘系妹星ちゃん 星「お兄ちゃま、星の大切な宝塔が…宝塔が…」 健康的な魅力を持つボクっ娘妹魔理沙ちゃん 魔理沙「あにぃ!借りてくぜ!」 お兄ちゃんの気を引くため色っぽい振る舞いを見せる小悪魔系の妹紫ちゃん 紫「お兄様♪今すぐ子作りを(ry」 無邪気で人懐っこい性格の妹フランちゃんウフフ フラン「おにいたま♪遊ぼ?」 病弱で読書が大好きな妹パチュリーちゃん パチュリー「兄上様…ゴホッゴホッ」 姫系妹輝夜ちゃん 輝夜「にいさま…って何か私だけ説明が適当な気が」 発明家として類まれなる才能を持つ理系妹にとりちゃん にとり「アニキ!お小遣い頂戴」 魔女のような妖しい魅力を持つ妹アリスちゃん、噂では魔界の住人で親は神だとか… アリス「兄くん…フフフ」 お兄ちゃんを立てることを忘れない淑やかさも兼ね備えたまさに良妻賢母型の妹依姫ちゃん 依姫「あ…兄君さま、床の準備が整いました。で、ですから…ゴニョゴニョ」 何でもかんでもチェキしまくるムードメーカー兼トラブルメーカー妹文ちゃん 文「兄チャマ、チェキ!」 生粋のお嬢様でのんびり屋、そしてちょっと泣き虫。少々世話がかかるタイプでお菓子が大好きな大食い妹幽々子ちゃん 幽々子「兄や…くすん、お腹減った」 紫「お兄様のための12人の妹達ですわ。さぁ存分に萌えてくださいお兄様!」 〇〇「え?」 紫「え?」 〇〇「いもう…と達?」 ざんねん!! 〇〇の ぼうけんは ここで おわってしまった!! 新ろだ2-052 この世の忘れ去られた物や生き物が最後に流れ着く場所、幻想郷。 そこにはあらゆるものを惑わせるほどの竹が生い茂る、迷いの竹林と呼ばれる場所がある。 わずかなものしか知らない隠された道筋を頼りにその竹林を奥へ奥へと進んでいくと、 不意にその場にふさわしくない立派な建物が目の前に現れる。 永遠亭だ。 その屋敷は、幻想郷でも指折りの有力者、月の民とその配下の兎達が暮らしていた。 幻想郷に住まう者にとって、彼らは薬師であり、医者だった。それも得体のしれない。 見たこともない道具、聞いたこともない知識でどんな病も難なく治していくという存在は、 ありがたいと思うとともに、畏るべきものでもあった。 人々は進んでここを訪れるようなことはなく、永遠亭側もときおり薬の行商に人里に赴く程度の距離感で接していた。 ゆえに、永遠亭で見かけるものは月の民や兎たちがほとんどで、なんの力もない普通の人間がいることは稀なことであった。 そしていま、妖怪が時を謳歌する夜中のことである。 永遠亭の中庭に面した縁側に、永遠亭にすれば奇妙な光景が映し出されていた。 永遠亭では普段見かけない人間の青年が、一人縁側に腰かけて、ぼんやりと空を眺めているのだ。 どこか儚げな、そのまま消えてしまいそうな青年だった。 すでに日は沈み、あたりには竹林の夜独特の笹のさわめきを孕んだ静けさが漂う。 空にはやわらかく光を放つ月が浮かぶ。 青年はじっと月を眺めていた。 まるでそこに映る何かをすくい取ろうとするように、もしくはまるで何も考えていないようだった。 「お今晩は。○○」 不意に○○と呼ばれた青年は声をかけられた。彼は特に驚いた様子も見せずに振り向いた。 「ああ、今晩は。輝夜様」 黒く長い髪をたなびかせ廊下の向こうから現れたのは、この屋敷の主にして元月の民の一人、蓬莱山輝夜だった。 どこか気品にあふれるかのような雰囲気で歩く彼女は、○○のそばまで行くと先ほどまで彼が視線を向けていたものを見上げた。 「お月見かしら? 風流ね」 鈴を転がしたような声で、輝夜は彼に話しかける。その声色にはかすかな親しみがこめられていた。 ○○は肩をすくめて、 「いいえ、ただ呆けていただけです。空を見上げるのも、満月も、久しぶりだなあと思っていたらいつのまにか」 そう言って、少しばつの悪そうに笑った。 あらあら、と輝夜もつられて口元に手を当てて笑う。 そして、ちらりと廊下の奥に目を向けると、 「お邪魔じゃなければ、私もご一緒してよろしいかしら」 「ええ、どうぞどうぞ」 山の上に浮かぶ月の下、輝夜と○○は並んで座っている。 ぼんやりとした月明りは二人の影を廊下の向こうまで伸ばした。 「季節とは少し外れているけれど、良い月ね」 ぽつりと輝夜はつぶやいた。目は月のほうにむけられている。 「そうですね。満月には少し足りない気がしますけど。こちらのほうが僕は好きです」 ○○も月を見たまま、そう返す。 「あら、○○も?」 輝夜はうれしそうに○○のほうに振り向いた。月を写す黒髪が軽く波打つ。 「この月はね、十三夜月とよぶの。昔はこの月の下でよく宴を催したのよ」 私も、この月は好きよ。輝夜はクスクスと懐かしそうに笑った。 それを見る○○もどこか嬉しそうにしながら訊ねる。 「宴というと、歌を詠んだりとかですか?」 「そうねえ、お酒をたしなみながら、音楽に合わせて舞ったり、芸をしたり。……今と大して変わらないかも」 「それでは、輝夜さまも?」 「……むかしは歌を詠んだこともあったわ。今はあんまり」 「あ、ごめんなさい。訊いたらいけませんでしたか」 「あら、そうじゃないの。昔の歌って、季語やら、枕詞やらって面倒臭いでしょう? そんなに楽しいことがなくって」 「ははぁ、少し堅苦しいと」 「そゆこと。それに宴会は騒いでなんぼでしょ?」 「ははは。それはお姫様らしくはないですが」 「あら」 「でも輝夜様らしくて、素敵です」 「あらあら、まったくお上手ね」 「あ、いや、そんなつもりじゃあ」 「もう、うふふ」 ……… …… … 一ヶ月ほど前の話だ。その夜、幻想郷は季節外れの嵐に見舞われていた。 人間はもちろんの事、普段は我が物顔で闇夜を跳梁跋扈する妖怪たちも、この日ばかりはさすがに大人しく雨風が通り過ぎるのを酒など嗜みながら、過ごしていた。 しかし、迷いの竹林、もとい永遠亭に住む者たちはわずかに色めき立っていた。 「ねえ、今日のおゆはんは?」 その主を除いては。 話しかけられたのは訳あって永遠亭に居住している月の兎、鈴仙・優曇華院・イナバだ。 彼女は彼女は土間に大きな桶をおいて、何やら洗濯をしているようだった。 風が戸板を挟んでびゅうびゅうと吹き荒んでいた。やや神経質に鈴仙はいちどそちらに視線を向ける。 そして、すぐ彼女の主に向かってやや愛想笑い気味の表情で答える。 「ええと、ごめんなさい姫様。今ちょっと手が離せなくて、今適当な兎を呼ぶので……」 「あら、とうとうイナバを食べる日が来たのねぇ。いつか来るとは思っていたけど」 「違います! 食材の話じゃないです!」 「冗談よ。それで、なにかあったの? なんだか周りが血の気立ってるわ」 目線だけで周りを見渡し、実際その土間には二人しかいなかったのだが、輝夜は不思議そうに訊ねた。 鈴仙は驚いて目を見開いた。 「お聞きになっていないのですか? さっき竹林に凶暴な妖怪があらわれたという報せが入ったんです」 「あらまぁ」 「しかもその妖怪に人間が一人襲われて、今その処置に追われてて……」 「それは大変ね。全然気がつかなかったわ」 輝夜は全然大変そうな様子を見せず言った。 鈴仙は洗濯桶の中の、血まみれの手術衣を見て、心の中でため息をついた。 「暢気で悪かったわね」 はっと鈴仙が顔を上げると、もう輝夜は向こうを向いて廊下に向かっていた。 「永琳は診療所のほうね。今日のおゆはんはいいわ。たまには不死らしく不健康に過ごすから」 そう言葉を残して、あわてる鈴仙をよそに軽快に廊下の向こうへ消えていった。 鈴仙はしばらく落ち着かずにいたが、やがてあきらめるように洗濯板に手術衣を擦りつける作業に戻って行った。 輝夜が部屋の前に着いたと同時に、中から竹林の白兎、因幡てゐが中から出てきた。 「永琳は中かしら?」 輝夜が半分確信していることを問うと、彼女は多少億劫そうにうなずいた。 その拍子に半乾きの短い黒髪が妖しげに灯りを映す。 そしてそのまま一言もなく、すぐにてゐはどこかへと去ってしまった。 その態度にも輝夜は特になにも何も感じず、部屋の中に入って行った。 てゐがこんな調子なのは珍しいことではないのだ。 「入ってくるなら一声かけなさい、はしたないわ」 中にいた女性が静かなよく通る声で言った。 女性の名前は八意永琳。永遠亭の薬師にして輝夜と同じ元月の民である。 彼女は部屋の中の机で書き物をしているところだった。 部屋の中はなぜか廊下よりも薄暗く、そして静かだった。机の上の蝋燭が、部屋の中に闇色の影を朧に映している。 その雰囲気のためか、それとも今叱られたせいか、言葉には答えなかった輝夜だが、静かに戸を閉め、そろそろと暗闇にも浮かぶ銀髪に向けて音も立てずに歩みだした。 「やっぱりイナバの耳にはかてそうもないわね」 輝夜は永琳のそばまで来ると、小さくそう言った。 永琳は顔を上げ、輝夜のほうを見てから小首を傾げた。 揺れる永琳のみつ編みを目で追いながら輝夜は続ける。 「私も知らない永遠亭の大騒ぎを知ってるんだもの。今日のおゆはんがないこととか、その理由とか」 「あら、輝夜にも兎の伝達は出したはずなのに。耳はお上手でも口は下手なのね。まあ薄々わかっていたけれど」 「普段は軽いくせにね。イナバに頼む永琳も永琳だけど。おかげでイナバも食べ損ねるし」 そう不機嫌に眉をゆがめる輝夜だった。 輝夜はただ仲間外れにされて悔しいだけだということ、非は永琳ではなく途中でどこかに行った兎にあること、そもそも輝夜に伝えてもどうにもならなかったこと、兎は緊急の保存食糧ではないこと、 などすべて把握していた。が、 「ごめんなさい。許して頂戴」 永琳は輝夜に詫びた。子供らしく頬を膨らます輝夜を見ながら。 とりあえず感情の区切りがついたのか、まぁいいわ、と輝夜は納得した。 「それで、件の彼はどこかしら」 瞳を灯りで輝かせながら輝夜が訪ねた。 永琳は小さくため息をつつきながらも微笑んで、筆を置く。 「隣の部屋のベッドで眠っているわ。覗くのはいいけれど、騒がしくしないでね」 「あら、そんなはしたないことしないわ。騒ぐのは私の周りの人の仕事だもの」 輝夜はひらひらと袖を振って隣の部屋に入って行った。その後ろに永琳が付き添う。 「そこの彼よ。眺めるなら彼の許可を取るか、内緒でしてね」 広くも狭くもない、清潔な部屋の中にひとつだけあるベッドを指さして永琳が言った。 部屋は暖房が利いていて、壁にはオレンジ色の照明が灯る。風に揺れる窓からは嵐の竹林がうかがえる。 表情の読めない顔で、輝夜はベッドを覗きこんだ。 「その子なんだけど、おそらく幻想郷の外出身の子ね」 窓辺に近づきながら、やや声をひそめて永琳が語りだした。 外をやや見渡してから、カーテンを閉める。そしてベッドの隣の台に置かれているものを手に取る。 「ほら、この服の布地、こんなに繊維が細かい。それにこれは、一種の通信機ね。動かないけれど、いつだったか香霖堂で―――」 「ねえ、永琳」 ぽつり、と輝夜がつぶやいた。 「この人、泣いてるわ」 永琳が驚いて彼を見た。 ベッドで眠る青年は、静かに涙を流していた。 目尻からあふれ出すように滴がこぼれおち、枕に染み込んでいく。 どうしたのかしら、と永琳は涙を傍のタオルで拭いとり、彼の額に手をあてる。 「……特に熱もないし、おそらく夢を見ているのでしょう」 涙は次から次へとあふれていった。それでも青年が目を覚ます気配はない。 それは無垢で危うげな感情の発露のようだった。泣き方を知らない子供のようでも、泣くことのできない大人のようでもあった。 「男の人って」 輝夜は彼の顔に手を伸ばした。そして、 「みんなこんな風に泣くの?」 あふれ出る涙を自ら掬い取った。 … …… ……… 話しこんでいるうちにも夜は更けていく。 月が夜空を渡るにつれて、二人の影も解ける様に移動していく。 「それでは月の方たちは月のことを歌に詠まないのですか?」 「そういえばそうね。今まで考えもしなかったわ」 いつのまにか正面にまで来ていた月が○○の目端に反射した。 それを見つけた輝夜は自然と月に目を向ける。 追って、○○も。 「こうして月を見上げることも……」 「……」 ふと会話が途切れた。はかなくも途切れることのない竹林のさざ波だけが耳に届いてくる。 二人は再び空を見上げていた。 やや光の弱い月明りは、儚い星の瞬きを邪魔することなく夜空に彩りを与える。 「見たままのことを、感じたままのことをありのままに言葉にできれば」 「……」 「それは全部歌になる。下手も上手も、技術も何もいらない、素敵な歌」 「……想いをこめた言葉はすべて歌になる、ですね」 「……ちょっと気取り過ぎたかしらね。恥ずかしいわ」 ごまかすように輝夜ははにかんだ。 ○○は楽しそうな笑みを崩さずに、 「とてもいい歌だと思いますけど?」 にこやかに言った。 「やーね、いじわる」 輝夜は恥ずかしそうにしながら○○の肩をはたく。すみません、と○○は謝りながらもやさしい笑顔。 その余裕が気にいらない、と言わんばかりに輝夜は何度も小突いた。 彼女はふと何かに思い立ったように、はたいたてのひらをそのまま肩に手を添え、ゆっくりなでた。 「傷はもう大丈夫のようね」 そして愁いを帯びた目で見上げるように○○の目を覗きこむ。 ○○は少しだけ困ったように目を細める。 いつの間にか先ほどの楽しげな空気は夜陰に散っていた。 「はい、皆さんのおかげです。記憶のほうはまだ戻らないのですが」 「そう……」 しばらくの間、輝夜はやさしくいたわるように○○の腕をさすっていたが、やがて名残惜しそうに手を離した。 ややあって、意を決したように口を開く。 「ねえ、○○」 そこでいったん区切って、強調するように言った。 「どうしても、ここを出て行くの?」 申し訳なさそうに、○○が顔を伏せた。 表情は見えないが、その沈黙は、輝夜にとっては肯定も同然だった。 またしても、しかし先ほどとは明らかに質の違う沈黙が二人を覆った。 雲が月を朧にし、二人の影は輪郭をなくす。ますます暗い影が○○の表情を隠す。 「いつまでも、ここでただ甘えているわけにもいきません」 しばらくして沈黙を破ると同時に挙げられた○○の顔は笑顔だった。 ただ、かすかに膝の上に置いている手が震えていた。 黙ったままの輝夜に向けて、○○はさらに言葉を続ける。 「輝夜さま、本当に感謝しています。あなたが気さくに声をかけてくれて、どれだけ私の心が救われたか。輝夜さまとの語らいは生涯―――」 「やめて」 輝夜が○○の口に手をやって言葉をさえぎった。 「今出て行くわけではないのでしょう。そんなこと言わないで」 そっと手を離しながら、輝夜は話す。悲しげな、それでいて優しげな瞳は○○の目をまっすぐに見ていた。 そして○○の手をとり、さらに輝夜は付け加える。 「それに、いつだって会いに来てもいいのよ? 私たち、その……お友達、でしょう?」 同意を求めるように、輝夜は軽く力を込めて○○の手を握った。 ○○は何も言わず、ただ感謝するように頭を垂らした。 ----------------------------------------- 輝夜はただ薄暗い廊下を歩いていた。 先ほどまで穏やかに眺めていた月を左に、しかし今は一瞥もせずに黙々と前へ進む。 彼女は、廊下に面する多くの障子の内の一つ、中から光の漏れる部屋ので止まった。 そして無造作に障子を開け、中に入る。 「ノックぐらいしなさいな」 部屋の中で、座布団を敷いて正座していた女性が、輝夜を静かにたしなめた。同じく隣に座る少女が苦く笑う。 女性は永遠亭の薬師にして輝夜と同じく月の民、八意永琳、少女のほうは月兎の鈴仙だった。 一服していたのだろう、二人の間には急須が一つと湯気の立ち上る湯のみが二つ、空の湯のみが一つ。 輝夜は二人の前に座ってもなお口を閉ざしていた。永琳がお茶を注ぎ差し出すもも手に取る気配はない。 鈴仙はそんな彼女をただ黙って見つめ、すぐにはっと息をのんだ。 鈴仙の目には小さく震えている輝夜の肩が映っていた。 永琳のほうを見るが、彼女は力なく首を横に振るだけだった。 「姫様、大丈夫ですか?」 鈴仙がいたわるように声をかけると、 「……か……」 輝夜は呻くように何事か呟いた。 肩の震えが一層ひどいものになり、鈴仙があわてて傍に寄り添う。 「姫様、落ち着いてください!ひめさ」 「 か わ い す ぎ よ ○○~~~ッッ!!!!」 永琳はため息をついて、吹き飛ばされて湯呑みを中の茶をこぼすことなく捕った。 鈴仙は障子を吹き飛ばして廊下の向こう側に消えていった。 「ああもう! ねえ永琳、どうして○○ってあんなに可愛いのかしら! 月明りって卑怯よね! 今日はほんとに襲いかかりそうになったわ!」 「ごめんなさい、輝夜」 「?」 「今何も聞こえないの。もうちょっと待って。よければその間にうどんげを回収してきてちょうだい」 「それで、首尾はいかがかしら?」 輝夜が引きずってきたうどんげを横に寝かしながら、永琳は訊ねた。 「順調よ。沢山お話もしたし、良いことも聞いたし、ね」 輝夜は上機嫌にうなずいた。ややぬるめになってしまったお茶を優雅に飲み、ほっと目を細める。 永琳も自分のお茶をすすり、輝夜が話すのをじっと待つ。 そのとき、微かなうめき声をあげて鈴仙が目を覚ました。 いまだ前後不覚らしい彼女に、永琳が茶を勧める。 「大丈夫かしら?ごめんなさいね。はしたなくて」 「い、いいえ。平気です」 輝夜が詫びると頭をふらつかせながらも鈴仙は答える。 「それで、その、どうだったのですか?」 「そうそう。彼ね、やっぱりここを出て行って里に住む気らしいわ」 鈴仙は目を見開いた。永琳は黙ってお茶を継ぎ足した。 「まあ、多少は安心といったところね」 「ええ!? どうしてですか?」 「いまのところ外界に帰る気はない。そういうことでしょう?」 「ええ、帰る気があるのなら博麗神社を頼るはずだしね」 我が意を得たり、と言わんばかりに輝夜はうなずいた。ついでに空になった湯呑を永琳に差し出した。 ああ、と鈴仙は納得する鈴仙に輝夜は意地悪く笑って、 「だから安心しなさい。あなたもご執心な○○は手の届くところにいてくれるわ」 またしても吹き飛ばんばかりの勢いで、鈴仙は体を反らした。 「だっだっだれがあんな外界の地上人なんかを!」 「貴方が彼の悪口言うのってこういうときだけよね」 「むしろうどんげはいつも彼を心配してるのよ」 「し、師匠!」 涙目で叫ぶ鈴仙をさまあたたかい目で見つめる二人。 そしてぶつぶつと一人愚痴る鈴仙を尻目に輝夜が訥々と語り始める。 「私はうれしいわ。彼がまだこの幻想郷にいてくれて」 「姫様……」 「彼と話すのも好きだし、ときどきはかなげな顔をするのも好き。もっともっと彼と話をしたい。ずっと一緒にいたい。」 こそばゆそうに輝夜は笑った。 「こんな気持ち初めて。なんだか弾けてしまいそう」 その表情を見た鈴仙は恥ずかしそうにそっぽを向いた。 永琳も母性あふれる笑みを浮かべて 「さっきは襲いかかりそうになったと言っていたような気がするけれど?」 「なによ聞こえてたんじゃない」 「読唇術よ」 「別にいいでしょ。無防備な○○が悪いの」 はしたないわよ、注意を促す永琳に輝夜は舌を出して応じた。 そして、輝夜は手を口元で合わせるようにして小さく欠伸をすると、 「もう今夜は眠るわ。なんだか疲れちゃった」 おやすみなさい、と部屋に入ってきたときのように我儘に出て行った。 二人きりになったところで軽く鈴仙はため息をつきつつ、 「……結局、姫様は何をしたかったのでしょうか」 「多分、自慢と鼓舞でしょう。悔しかったら彼の気を引いてみなさいって。でも本命は私なんだからねってところかしら」 「はぁ……って私はだから別に」 「ふふ、あれもまた愛嬌ね」 共感し難そうに愛想笑いする鈴仙を静かな笑みで流す永琳。 ふと鈴仙が口を開いた。 「ところで気になったのですが、○○には話したのですか? この幻想郷や自分の出自を」 もちろん、と永琳はお茶のおかわりを入れながら答える。 「神社のこともその時話したけれど……正直言って実感が湧いていない様子だったわ」 どう転ぶのかしらねぇ、と永琳は手に持つ湯呑を空にした。 ―――つづくかも 新ろだ2-071 これはいったいどうしたことか。 冬からに春に替わりつつある今時分。 夕日の射す人里の小さな一軒屋にて、俺は畳の上で正座し、考え込んでいた。 そんな真剣な顔で考え事をするなんて○○らしくない? なんとでも言え。俺は今、さながら修行僧のように瞑目し、解決策を導き出すための思考を続けねばならんのだ。 しかし、本当にどうしよう。いくら考えても思考がまとまらない。 というよりも、そもそも何故こんなことが起こっているのか、この状況が理解できなかった。 俺の目の前に置かれている、4枚の薄い封筒。 全て白色で、大きさも形も、表面に書かれた『○○様へ』という文字すらも一緒。 けれども裏面に書かれた文字――差出人の名前は全て違っていた。 そう、これらは全て手紙――いわゆる恋文、ラブレター。 俺は今日、それぞれ異なる4人から同時にラブレターをもらってしまったのだ。 「ありえないだろ……」 落ち着け、俺。 ラブレターを貰った嬉しさと、4人から同時という戸惑い、これから起こりうる事態への不安。 それらが入り混じった、なんとも言いがたい悶え苦しむような感情はさておき。 OK、自分の頬を殴ってニヤケ顔を止めよう。身体の震えもこれでおさまるはず。 そして現状の再確認だ。 まず1通目。 これは俺が朝目覚めた時、玄関の扉の下に挟まっていたものだ。 裏面には『さるの』と書かれている……チルノのことだろう。 内容に関しては次の通り(文字が間違ってたりぐちゃぐちゃだったりしていたので非常に読みづらかった)。 『はいけい あたい あんたのこと きになってる なんだか あんたのことかんがえてると すごくからだがあつくなる きっと あんたのせいだ! いっつも あたいをからかう あんたのことだから へんなまほうかなにか かけたにちがいない! このままじゃ あたいがとけちゃいそうだから あんたに いいたいこと いおうとおもう きょうのよる きりのみずうみのちかくの おっきなきのしたで まつ こなきゃ こおらせてやるから! かしこ』 解読した限りではこんな感じで間違いない。 最初と最後にちゃんと頭語と結語があるのは、親友の大妖精あたりに手紙の書き方でも教えられたのだろうか。 何にしろ、これはラブレターだという他ない。 にしても、あのチルノがねえ……あいつとはよく遊んでる仲だが、まさかこんなことになるとは。 俺とチルノはいわゆる喧嘩友達という奴だ。 顔を合わせるといつも口喧嘩になり、悪くすれば弾幕ごっこにまで発展してしまう。 まあ、弾幕勝負になると弾を出せない俺の一方的な負けになるから、極力そうなる前に逃げているけど。 『おーい、チルノー。暑いからちょっと俺の氷嚢になってくんない?』 『な、な、なんであたいが! このばかー!!』 こんな風に、冷たくて気持ち良いからって抱きしめると、その度にあいつは顔を真っ赤にして怒って、俺を凍らせようとしてきたものだ。 そんなチルノがいきなりこんな手紙を送ってくるのだから……正直驚く。 ただの喧嘩友達だと思っていたのに。どうすればいいのだろう。 次に2通目。 この手紙は、俺が昼間、森の中を散歩している間にいつの間にか胸ポケットに突っ込まれていたものだ。 不思議だった。散歩の間に誰とも会った覚えがないし、そもそも人の気配を感じたことすらなかった。 なのに、まるでいきなり現れたかのように手紙がポケットに入っていたのだ。 帰宅後に手紙の裏面を見てみると、そこには『あなたの瀟洒な従者より』とあった。 先の出来事から考えても、これは紅魔館の十六夜咲夜からのものに違いないのだが……どうにも信じられない。あの咲夜さんが? 内容はこうだ。文章はとてもかわいらしい文字で書かれていた。 『私がこんな手紙を送るだなんて、あなたは想像していたかしら? もしかしたら、あなたはこの手紙を笑い飛ばし、破り捨ててしまうかもしれない。 日頃の私があなたに取っている態度を思えば、それも当然のこと。 けど、聞いてほしいの。私の本心を。私の時間がどれだけあなたに奪われているのかを。 この想いを言葉で伝えるために、今日の夜、私は紅魔館前の湖のほとりにある、あの大きな木の下で待ちます。 よければ来てください』 これは本当に「あの」咲夜さんからの手紙なのだろうか。信じられない。 あのちっこい吸血鬼の主人のいたずらだと言われた方がまだ信じられる。 はっきり言って、俺と咲夜さんの仲はそれほど良くない。 俺は運送業という仕事柄、紅魔館を訪れることが多く、そこの主人であるレミリア・スカーレットにはたいそう気に入られている。 よくお茶会にも招かれているし、『深夜のお出かけ』とやらに付き添いを命じられたこともあった。 だがその反面、レミリアの従者である咲夜さんは俺のことを嫌っている。 別に言い争ったり喧嘩をしたりはしない。 だが、俺が話しかけても彼女はすぐに「そう」の一言で会話を終わらせるし、あからさまに俺の視線を避けもしていた。 態度がなんだか冷たいのだ。 なるべく俺と関わらないようにしているのが見て取れて、あんなに綺麗な人が俺のことを嫌っているのか、と一時期は落ち込みもしたものだ。 『あの、咲夜さん。お世話になってるお礼に、お嬢様に紅茶を贈ろうかと思うんですが、どんな茶葉がいいんでしょうか?』 『……好きにすればいいわ。きっとあなたからなら、どんなものでもお嬢様はお喜びになるから』 『え、け、けど苦手な茶葉とかもあるでしょうし……』 『私に聞かないでちょうだい』 こんな感じで、彼女はいつも俺に冷たい(それでも最後はおすすめの茶葉を教えてくれたりした。物凄く嫌そうな顔をしていたが)。 そんな咲夜さんがどうして? あまりにも普段の彼女とのギャップが激しすぎて、どう反応していいか分からない。 よし、3通目だ。 これは散歩から帰る途中、里の守護者である上白沢慧音さんに手渡されたもの。 慧音さんは「よく考えてやってくれ」と真剣な顔でこの手紙を俺の手に掴ませた。 彼女の背中には怒気すら感じられた。ちょっと怖かった。 この手紙の裏面には『健康マニアの焼き鳥屋より』と書かれている。この文句は藤原妹紅のことだ。 妹紅……彼女が? いやはや、妹紅は良き友人なはずで……うーん。 内容は次の通り。毛筆で書かれた、えらく達筆な文字である。 『あなたと出会ってから幾数年。これまで数々の出来事を過ごしてきた。 一緒に遊びもしたし、探検もした。あなたの仕事の手伝いをしたことも何度もあった。 春の花見、夏の水浴び、秋の紅葉狩り、冬のかまくら。 年の暮れも明けも一緒に過ごした。色々なことがありすぎて、思い出の中ではおさまりきれないぐらいに。 けど、私はあなたと始めて出会った時のことだけは忘れられない。 きっと一目惚れだったのだろう。私は長く生きたせいで人の心の内側ばかり見えるようになっていたけど、あなたの内側ほど私の心を惹き付けるものはなかった。 なのに、私が今まで素直に自分の気持ちを表に出せなかったのは、やはり私という存在があなたとは釣り合わないと思っていたから。 私は不死者で、あなたは人間。この壁はあまりにも高かった。私はこの壁を越えることはできないと思っていた。 ごめん。私は今、とても身勝手なことをしていると思う。あなたに負担がかかることをしている。 それでもあなたが私の手を取ってくれるのなら……私は壁を越えられると思うから。 まずは、私の気持ちを聞いてください。その後、私に手を差し出してくれるかどうかを決めてください。 今日の夜、霧の湖の傍、大きな木の下で待っています。 藤原 妹紅』 ……これは本当に妹紅が書いた手紙なのだろうか。 こう言ってはなんだが、妹紅はこんな手紙を書くような人間ではない。 厭世的で、いつも世の中に対して斜に構えている、少し乱暴な少女。 けれど、こっちの話を興味深そうに聞いてくれて、一緒に遊ぶととても明るい笑顔を浮かべてくれる、気の良い少女。 初めて出会った時からそうだった。 何年か前のこと、永遠亭へ荷物を届ける仕事を請け負った俺は、慧音さんの紹介で、藤原妹紅に道中の護衛を依頼した。 その時の彼女は少々無愛想で、話は聞いてくれるけれども反応は薄く、あまり人と話すのに慣れていない様子だった。 けれど、話している内に趣味や興味のあるものに共通点がいくつかあることが分かり、自然と仲良くなっていた。 おかげで永遠亭への行き返りがとても楽しいものになってくれたものだ。 慧音さんなんかは「あんなに楽しそうな妹紅は初めて見た」とも言っていたっけ。 その日以降も、一緒に仕事をすることが何度かあり、俺たちは会う回数を重ねるごとに交友を深めていった。 そして、いつの間にか妹紅は自分自身のことも話してくれるようになり…… 半年もすれば、俺にとって藤原妹紅は幻想郷の中で唯一無二の親友になった。 『おーい、配達屋。暇だろ? 花見に行かないか? 妖怪の山に良い桜があるんだってさ』 『いやいや、俺は普通の人間だぞ? 妖怪の山に入ったら天狗に瞬殺されるって』 『大丈夫。私が守ってやるよ。大事な……友達だしな』 『んー、それでもなあ』 『あの桜をお前と一緒に見たいんだ。な?』 彼女とは友人として色々と一緒に過ごしてきた。花見も紅葉狩りも。クリスマスにパーティをしたこともある。 俺から誘うこともあったし、妹紅が突然俺の家にやってくることもあった。 親友という言葉が本当にしっくりくる間柄だった。 彼女は俺のことを知ってくれている。 俺も彼女が不老不死であることを知っている。 彼女は、俺の幻想郷で過ごすことの寂しさを和らげてくれた。 俺は、彼女の蓬莱人であることの苦しみが和らいでくれたら、と考えたりもした。 友人として、長さの違う互いの人生に彩りを添えられたらと俺たちは思っていた。 だけど、この手紙は……完全に予想外。 彼女は友人としてではなく、恋人として俺と過ごすことを望んでいる。 斜め上から降りかかってきた熱い炎に、俺は混乱することしかできなかった。 4通目。これは郵便で送られてきた。 と言っても、幻想郷の郵便屋ではない。死神の郵便屋で、小野塚小町という女性が直々に家まで届けてくれたのだ。 「本当は、死神の姿が見える特殊な人間に、死期を知らせるために送る手紙なんだけどねえ」と、小町さんは呆れた調子で言っていた。 そして俺に手紙を渡すと、「この幸せもん」とからかうように俺の肩を小突き、帰っていった。なんだか死神のくせにやけに明るい人だった。 さて、この手紙の差出人欄には『幻想郷の裁判官より』とある(というか、皆どうして本名を書かないんだろう)。 これを見て、俺は本当にびっくりした。 まさか裁判所から手紙が来るだなんて、いったい何事かと思った。 『このままだと地獄に堕ちる』とでも言われるのか? ドキドキしながら、手紙を開いたのだが…… 『 告白召喚令状 あなたは裁判官四季映姫様より呼び出しを受けています。つきましては所定の日時・場所にお1人でお越しください。 記 期日:〇月〇日の夜 場所:紅魔館傍の湖の、大きな木の下 ※当日は、あなたと映姫様のご関係および恋愛事情について、映姫様より重大なお話がされる予定です。 ※当日は指定された場所になるべく早くお越しください。映姫様がやきもきしながらお待ちしています。 ※あなたのこれからの生活に重大な変化が訪れる場合がございますので、できる限りのご覚悟をされるようお願いいたします。 以上』 3度読み直してようやく気付いた。 これはラブレターなのだ。裁判所からの呼び出し状に見えるが、確かにこれはラブレターなのだ。 どうしてこんな書式になったのかはさておき、映姫様までラブレターを送ってくるなんて、本当に信じられない。 そもそも、映姫様は幻想郷の裁判官。彼岸の世界でも特に偉い人で、俺との接点なんてほとんどないはずだった。 なのに俺と映姫様が知り合いなのは、俺が幻想郷にやってきた初めの頃のこと、映姫様が突然俺の所にやってきたから。 その用件は……説教。 映姫様は時々下界に降りてくることがあり、罪深い人間達に説教をして回ることがあるのだ。 俺は特に罪深い人間らしく、その説教を何度も受けた。 曰く、 『そう、貴方は少し自分に自信を持たなさすぎる。 身の丈に合わない虚栄心や思い上がりは身を滅ぼすが、己に対して確固とした自信を持たないのもまた身を滅ぼす所以となる。 貴方は幻想郷に来たことで外の世界とのつながりを断ち、新たな自分を見つけ出すチャンスを得た。 そのチャンスを活かさず、外の世界と同じように過ごしてはいけない。 貴方が自分を信じきれないということは、貴方を信じる者達に対しての裏切りともなるのだから。 己を見つめ、己を確立し、そうして私も含めた他者の気持ちにも目を向けなさい。それが今の貴方にできる善行です』 とまあ、こんな感じで云々と。 俺には、外の世界でちょっとしたことがあったせいで、幻想郷に来た当初は生きる理由を持てなくなっていた。それが罪深いことだったらしい。 まあ、映姫様から心に突き刺さるお説教を何度もしてもらったおかげで、今ではなんとか幻想郷にも馴染んできて、自分の居場所を作れるようになった。 それに伴い説教の回数も減った。それでも映姫様は俺のことを心配してくれているのか、忙しいのにちょくちょく会いに来てくれた。 最近では説教ではなくもっぱら世間話をしている。地獄の裁判官である映姫様の苦労話は、なかなか此岸では聞けないものばかりで楽しい。 俺が笑うと、映姫様もとても嬉しそうにしてくれた。『立ち直りましたね』と言ってくれたことが印象的だ。 ただ、立ち直ったと言ってもさすがに自分のことで手いっぱいなので、映姫様が言っていた他人の気持ちに目を向ける、というのがなかなかできていないのは、反省している。 ……ああそうか、こうやってラブレターを貰って驚いているのは、他人の気持ちに目を向けていなかったからなのか。 そういえば、映姫様はこんなことを言っていたか。 『貴方は外の世界に居る頃から、その罪を背負っていましたね。 大罪と言えるほどの罪ではありませんでしたが、貴方の心をきちんと知った私は、なんとか貴方を助けたかった…… 幻想郷に来た貴方の所にすぐにかけつけたのも、それが理由なのです』 はぁ……そうだな。俺は罪深い。確かにそうです、はい。他人の気持ちにまったく無頓着になってました。 けど同時に4通もラブレターを貰って、しかも彼女達が指定してきた場所・時間がまるっきり同じだということも、俺の罪深さゆえの報いなのでしょうか? どうしたらいいんだ俺……このまま、のこのこと湖の傍の大木に行ってもいいのだろうか。 もうすぐ夜が近い。自宅から約束の場所まではそう遠くはなく、歩いて10分もすれば到着する。 なんだかその約束の場所がある方角から爆発音と怒号が聞こえるが、今はそれを気にしないでおこう。 ……決めよう。どうするかを。彼女達の言葉に対し、俺はいったいどんな返事をするのかを。 そうだ。そもそも俺が好きなのは誰だ? これが一番大事なはずだ。 俺は……俺が好きなのは、 1.チルノ 2.咲夜さん 3.妹紅 4.映姫様 5.4人とも好きだぜ、こんちくしょー! 6.俺は常に独りだ! 7.うお! な、なんだ夢か……しかしどうして俺が配達屋なんかになってたんだろ。ん? こ、これは、ラブレター! (7番の選択肢を選んだ方は、あなたの嫁からのラブレターを掲載する義務が生じます。ご了承ください) 続きはあなたの夢の中にあります