約 412,581 件
https://w.atwiki.jp/renjodatabase/pages/190.html
分類:短編小説 初出:「小説新潮」1986年6月号 雑誌時挿絵:梶山俊夫 収録短編集:『たそがれ色の微笑』 あらすじ 風ではなく矢の音だ。 子狐は、そう感じながら、ほら穴のすみに小さくうずくまっていた。ふるえるからだをもっと小さく丸めることで、その音から逃れようとした。 母さん狐も父さん狐も、あの武士の放つ矢に射殺されてしまった。残された子狐は、その武士に拾われ、人間の子供の姿に化けて、武士の館で暮らすことになるが……。 登場人物 子狐山に暮らす子狐。家族を失い、武士に拾われる。 父さん狐子狐の父。 母さん狐子狐の母。武士の矢に射殺される。 黒狐両親を失った子狐の面倒を見ていたが、やはり武士の矢に射殺される。 権右衛門武士。狩が得意だが、それ以外は館で日がな一日ごろごろしている。 あさじ権右衛門の妻。狩しかしない権右衛門をなじる。 解題 (スタブ) 各種ランキング順位 オールタイムベスト・連城三紀彦短編 57位 関連作品 矢がモチーフになる作品「火箭」(『瓦斯灯』収録) 『たそがれ色の微笑』収録作「落葉遊び」 「たそがれ色の微笑」 「白蘭」 「水色の鳥」 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/sakurabusho/
このウィキは視聴者&さくら部員の皆様と一緒に作るウィキです これを書いてほしい、これを追加してほしいということがあれば このページヘのコメントにお書きください ※荒らし等があればそのコメントは削除します。 削除3回でその方のコメント書き込み&サイトの出入り禁止ををします。 さくら部しょとは 日本初基礎工事系YouTuber 岡山県を拠点に毎日頑張っている職人YouTuber SY! 基礎動画から日常動画まで幅広く扱ってるコンテンツそれがさくら部しょ 最近は左官アートというアート活動もやっています。 7年間の下積みをへて2023年12月 からセメント系塗りつけ左官アートを本格的に活動してます Youtube https //www.youtube.com/@SakuraBusho ブロッサム https //shouki.official.ec/ ラインスタンプ https //store.line.me/stickershop/product/24256194/ja 。2024年5/1日youtubeチャンネル1万人突破❕
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/645.html
イエローハートの証明 ( 第6話:小さな手がかり(後編) ) 空が青い。解像度の良くない小さな画像で見ても、日の光がさんさんと降り注いでいるのがよく分かる。 (全くこの町は、いつ見てもおめでたいくらいに明るいね。) サウラーは、目の前に並べた複数のモニターを見ながら、今日も角砂糖の隙間から紅茶を啜っていた。 子供たちが元気に駆け回る、緑豊かな公園。人々が笑顔で行き交う商店街。閑静な住宅街に、連休中で今は部活の生徒たちの姿しか見えない中学校――。 モニターに映し出されているのは、四つ葉町の様々な場所の映像だ。 あの世界に居た頃も、実際はこうやってモニターで見ていることの方が多かった、見慣れたのどかな光景。でもよく見れば、商店街の道路には、修繕の跡が醜いつぎはぎを作っており、街路樹も木の大きさが揃っておらず、ところどころに頼りなげな若木が混じっている。 あの町に色濃く残る、ラビリンス襲撃の爪痕――それを、傍から見れば無表情にも見える目つきで眺めながら、サウラーは、それぞれの画像の下に表示された数字をチェックする。その時、トントン、とドアを遠慮がちにノックする音がした。 「どうぞ。」 「失礼します。昨日お借りした本をお返しに・・・」 来訪者の言葉がそこで途切れたので、サウラーがいぶかしげな顔で振り返る。 そこに立っていたのは、分厚い異世界の専門書を何冊も抱えた若い男。どうやらモニターの画像に気を取られて、挨拶が中途半端になってしまったらしい。 「あっ、す、すみません!あの・・・それは、異世界の映像ですか?」 「ああ。異世界に、興味があるのかい?」 我に返って真っ赤な顔で頭を下げる男に、サウラーは小さく笑って問いかける。 「興味、と言うんでしょうか・・・。異世界のことを調べたり、見たことも無いような画像を見たりしていると、どうも周りのことが目に入らなくなってしまって、時間が経つのが、やけに早いんです。 そのうち、オンラインで得られる情報だけでは物足りなくなってしまって・・・。」 「それで、僕の資料室にやって来たというわけか。」 サウラーはそう言って、頭の先から足の先まで、男の姿をもう一度しげしげと見つめた。 中肉中背の痩せ型で、淡いグレーの短髪に、ライトグリーンの瞳の持ち主。ラビリンス人の平均的な容姿と言っていい人物。いや、容姿とは関係なく、ついこの間まで“ラビリンスの国民”という一括りでしか、他人にも、そして自分にも認識されていなかったはずの人物だ。 そんな男が、今は何だかあの町の人間たちに似た光を、わずかながら瞳に宿しているように見える。 それが単なる気のせいなのかを確かめるように、サウラーは椅子をずらして、モニターの前の場所を空けた。 「それは、大いに興味がある、と言うべきだね。ならば、そんなところに立っていないで、こっちに来て近くで見たらどうだい?」 「・・・よろしいんですか?」 本を大事そうに抱えたまま、恐る恐るやって来た男が、今までのおどおどした態度とは一変、身を乗り出してモニターを見つめる。 「うわっ、明るい!それに、とてもカラフルな世界ですね。ここは・・・」 「ついこの間まで、僕たちが居た世界だ。」 サウラーの言葉に、男は不思議そうな顔をする。 「それを・・・もう一度、こんな小さな映像で?」 「ああ。ちょっと心配なことがあってね。あの世界には、知り合いも――仲間と呼んでいいなら、大事な仲間も居るから。」 その呟きを聞いて、男が何か物言いたげな目をサウラーに向けた。 「何だい?」 「・・・いえ。」 「何か言いたいことがあるんなら、ハッキリ言っていいよ。ラビリンスはもう、自分の考えを自由に口に出来る世界になったはずだ。そうだろう?」 「・・・はい。それなら、あの・・・」 男は、本を抱える手にギュッと力を入れてから、意を決したように口を開いた。 「それなら・・・何か心配なことがあるなら、その・・・仲間のいる異世界に、行かなくていいんですか?」 「何だって?」 サウラーが、驚きに目を見開く。その変化にビクリと首を縮めてから、男は上目づかいにサウラーの顔を見て、たどたどしく言葉を紡ぎ始めた。 「・・・前に、プリキュアがやって来て戦ってくれた時のことです。俺、プリキュアの仲間の妖精に頼まれて、手伝ったことがあるんです。いや、手伝いって言っても、大したことはしてないんですが・・・。」 「そうか。タルトとアズキーナが、プリキュアにオルゴールを聴かせようとした時だね?」 あの時、自分はデリートホールの中で、そのオルゴールの音色を聴いた。あの時感じた光のあたたかさを思い起こしながら、サウラーは先を促す。 「妖精たちは必死になって、仲間のために自分に出来ることは何か、って考えてました。力なんて全然無さそうな、戦うことなんてとても出来ない、小さな妖精が・・・。それを見て、俺、仲間って凄いんだな、って思ったんです。 いや、仲間がどういうものなのか、まだよく分かりません。よく分かりませんけど、その・・・仲間が心配なら、行って出来ることをやるのが自然じゃないのかなって・・・。サウラーさんも、本当はそうしたいんじゃないのかなって、俺・・・。」 「分かったよ。ありがとう。」 次第に俯き加減になった男の肩に、サウラーがポンと手を置く。 「あっ、す、すみません!俺、分かったようなことを・・・。」 「謝ることは無いさ。君はもっと、自分の意見に自信を持った方がいい。そして、そのためにもっと色々なことが知りたければ、僕の資料室で良ければ、いつでも好きな時に好きなだけ使ってくれ。」 「あ・・・ありがとうございます!」 男の瞳が、嬉しそうにキラリと輝く。その光が、やっぱりあの町の人間たちに似た光に――似ているけれど、他の誰でもない彼だけの光に、サウラーの目には、確かに映った。 イエローハートの証明 ( 第6話:小さな手がかり(後編) ) 「う~ん、怪物の情報ねぇ。この前、一瞬だけテレビでやってたヤツだろ? 連休中は出前が多くて、ずっと町ん中走り回ってるけど、あれ以外は何も見聞きしてないなぁ。」 バイクの上で首を捻りながら、蕎麦屋のおにいちゃんが、申し訳なさそうな声で言った。ラブは、ちょっと肩を落としてから、そんな彼にニコリと笑いかける。 「そっか。ありがと、おにいちゃん。」 「また何か分かったことがあったら、教えて下さい。」 ラブの隣りから、美希も柔らかな笑みを浮かべて頭を下げた。 「おう、任せときな。でもラブちゃん、美希ちゃん、あんまり無茶するんじゃねえぞ。二人とも、もうプリキュアじゃないんだろ?」 「え?あ、まあ・・・。でも、怪物が出たかもって聞いたら、やっぱり気になるしさ。 大丈夫だよっ!無茶なことはしないから。」 二人の顔を見比べる心配そうな眼差しに、ラブが慌てて胸の前で両手を振る。 「ならいいけどさあ。また怪物がこの町を襲うようなことがあったら、今度はみんなで助け合って町を守ろうって、商店街でも話してるんだ。だから、二人も何か分かったら、俺たちにも教えてくれよ。」 そう言って、じゃあな、と片手を上げて去っていくバイクを見ながら、美希が小さくため息をついた。 「やっぱり、情報は思うように集まらないわね、ラブ。ウエスターからの報告を待つしかないかしら。」 「そうだね。でも、今はあたしたちに出来ることをやるしかないよ。それに、商店街の人たちはみんな、何か分かったら教えてくれるって言ってたし。」 「そうね。」 ここ数日で、すっかり以前のきらめきを取り戻したラブの瞳。それを嬉しく見つめながら、美希も力強く頷く。 その時、もうすっかり聞き慣れてしまった少し上ずった声が聞こえてきて、美希は、やれやれ、とわずかに肩をすくめながら振り返った。 「美希さぁん!お久しぶりっす!」 向こうから満面の笑みで駆けて来るのは、四つ葉中学校三年生の沢裕喜。筋金入りの美希の大ファンだ。野球部のユニフォーム姿のところを見ると、これから練習なのだろう。 そしてその後ろから、スポーツバッグを肩に担ぎ、空いた手をポケットに突っ込んだ少年が、どうにも面白くなさそうな顔つきで歩いてきた。同じく四つ葉中学校三年生の、知念大輔。二人とも、ラブの同級生だ。 「よぉ、ラブ。何やってんだ?こんなとこで。」 「ああ、大輔。三日前にさ、町外れでまた怪物が暴れたって話があって、その情報を集めてるんだけど、大輔、何か知ってること無い?」 もう商店街中を散々訊き回ったお蔭で、ラブがすらすらとよどみなく説明する。ところがそれを聞いて、大輔の仏頂面がさらに険しくなった。 「何だ、ラブたちもかよ。そんな情報、俺たちが持ってるわけないだろ?」 「何よ、あたしたち“も”って・・・。ああ、もしかして健人君と警備員のおじさんたちのこと?あたしたちは、それとは別に・・・って、どうしたの?大輔。」 唇を噛んで下を向いてしまった大輔の顔を、ラブが心配そうに覗き込む。 「ねえ、何怒ってんの?」 「別に、怒ってなんか・・・。」 「怒ってるじゃん。」 「怒ってねーよ!」 「ひょっとして、健人君と喧嘩でも・・・」 「うるせえ!」 大輔が、ラブの声を遮るように顔を上げる。 「ふん、怪物の探索なんて、どうせ俺たちは・・・俺たちみたいな一般人は、出る幕じゃねえんだと。」 「え?一般人って・・・」 「おい、大輔。ラブに八つ当たりしてどうすんだよ。」 大輔の言葉を聞いて、美希は心配そうに眉をひそめ、裕喜は慌てて大輔の肩を掴む。 「健人君が・・・そう、言ったんだね?」 ラブのその問いには答えず、大輔はふぅっと息を吐き出すと、肩から静かに裕喜の手を外した。 「カッとなってわりぃ。ラブ、お前ももうプリキュアじゃないんだから、危ないことすんな。」 そう言って、また俯き加減で歩き去ろうとする大輔の背中に、ラブの声が飛ぶ。 「ねぇ、大輔。あたし昨日、健人君に会ったよ。」 大輔の足が止まった。 「警備員のおじさんたちを指図して、なんか堂々としてたけど、でも・・・なんか苦しそうだった。」 「苦しそうって、何だよ。」 ラブに背中を向けたまま、大輔がぼそりと呟くように問いかける。 「分からない。でも、なんか無理してるみたいだった。」 「・・・・・・。」 「ねえ。それって、大輔と喧嘩してるから・・・友達と一緒に居られなくて、一人で無理して頑張ってるからじゃないのかな。」 じっと立ち止まってラブの言葉を聞いていた大輔が、ゆっくりと歩き出す。 「ねえ、大輔ってば!」 その、焦れたようなラブの言葉が引き金になったように、その歩みが小走りに変わった。 「あ、おい!待てよ大輔。」 裕喜が、ラブに向かって片手拝みをしてから、慌ててその後を追う。 「大輔・・・。」 「ラブ。健人君のためにも、アタシたちは早くあのナケワメーケの正体を突き止めないと。喧嘩の仲裁は、その後よ。」 「うん。分かってるよ、美希たん。」 ラブが、まだ心配そうな顔つきで二人の後ろ姿を眺めながら、小さく頷く。その時、ラブのリンクルンが、軽快な音楽を鳴らし始めた。 ☆ 「・・・それで君は、ここで何をしているんだい?まさか、ドーナツが食べたくてこの町にやって来たってわけじゃ無いよね?」 「馬鹿なことを言うな!サウ・・・いや、瞬。そりゃあ、泊めてもらっている礼に、少しの間は手伝いをしているが、ちゃんと情報収集はしているぞ。お前が来ると言うから、ここを待ち合わせ場所にしただけじゃないか。」 ドーナツ・カフェの椅子に座り、冷ややかな目を向けてくる南瞬――この世界の人間の姿になったサウラーに、カオルちゃんとお揃いのエプロンを着けた隼人が食ってかかる。 (そんな格好でいるから、誤解されるんじゃないか・・・。) 心の中でそう呟きながら、瞬が詫びようと口を開きかけた時、隼人は勝ち誇った声で、こう付け足した。 「それに、俺はドーナツが食べたくてここを手伝っているんじゃないぞ。聞いて驚くなよ?何と俺は、カオルちゃんに弟子入りして、ドーナツの作り方を習っているのだ!」 「・・・・・・。分かった。情報収集にさえ全力を挙げてくれれば、もう何も言わないよ。」 瞬が額に手を当て、深々とため息をつく。その心も知らず、おうっ、と満面の笑みで頷いた隼人の向こう側から、二人の少女が駆け寄って来た。 「お待たせ、隼人さん。あっ、久しぶり!サウラ・・・えっと、瞬さん、だったよね?」 「瞬でいいよ。久しぶりだな、ラブ、美希。二人とも、元気そうじゃないか。」 相変わらずキラキラした目でこちらを覗き込んでくるラブと、その隣りで綺麗な笑顔を見せている美希。 二人に向かって、実に紳士的な挨拶をしたつもりの瞬だったが、それに対する二人の反応に、再び頭を抱えた。 「なんか、あなたにそんな普通っぽい挨拶をされると・・・」 「うん。なんかちょっと、不思議な気がするよね~。」 「全く。せつなといい、君たちといい・・・。僕は一体、君たちの目にどう映っていたんだい?」 「えっと・・・それをここで言うの?」 「まあまあ。ところで瞬、何だ?新しい情報っていうのは。」 隼人の言葉に、瞬が気を取り直して上着のポケットを探る。取り出したのは、一枚の写真。正確には、モニターの画像をプリントアウトしたものだ。 「あのナケワメーケの正体を知るために、何でもいいから何かキッカケになるような情報が無いかと思って、画像を何度も確認していたんだ。そうしたら、ナケワメーケにこんなマークが付いているのを見つけてね。」 瞬がテーブルの真ん中に差し出した写真に、三人の目が釘付けになる。 写真は、ナケワメーケの後ろ姿。ちょうど首に当たる部分を拡大したものだ。そのせいで、画像がかなり荒くなってはいるものの、金色の線で描かれたようなマークが、はっきりと確認できる。植物のようなデザインの真ん中に、“M”の文字が描かれたマークが。 「そのマークに、見覚えはないかい?」 「残念だけど、初めて見る模様だよぉ。」 「アタシも見覚え無いわね。」 瞬の問いかけに、ラブと美希がかぶりを振る。 「そうか。隼人、君はどうだい?」 「うーん、どこかで見たことがあるような、無いような・・・。」 隼人が写真を見つめて、もどかしそうに首を捻った時。 「あっ、ブッキー!せつな!」 ラブが、椅子を蹴倒して立ち上がり、歓声を上げる。 「良かった・・・。ブッキー、元気になったのね!」 美希も、公園の入り口に目をやって、ホッとしたような声を出す。だが。 近付いてきた祈里の姿を見て、二人はギョッとしたように顔を見合わせた。 せつなと肩を並べ、瞳にいつになく強い光を湛えて、真っ直ぐに走って来る少女。だが――何故かその両手は、手術用のゴム手袋に覆われて、さしずめ手術前のドクターのように、指をぴんと立てて顔の横に上げられていたのである。 「ブッキー・・・あのポーズって・・・。」 「前にも一度・・・見たことがあったよね。ほら、シフォンの・・・」 「ラブ!それ以上言わなくていいから!」 目が点になったままで、囁き合う二人。 そんな二人の様子にも気付かず、祈里は穏やかな笑顔を浮かべて、テーブルに駆け寄った。 「ラブちゃん、美希ちゃん、ごめんね、心配かけちゃって。あ、隼人さん、瞬さん、お久しぶり。」 「それよりブッキー、その格好・・・。」 恐る恐る問いかけるラブに、祈里は、ああ、と事もなげに頷く。 「これなら手も見えないし、少しでも動物さんたちに怖がられずに済むかな、と思って。」 「いや、そっちの方が絶対怖いから!って・・・え?それ、どういう意味?ブッキー!」 怪訝そうな顔つきになったラブに説明しようとした祈里が、テーブルの上の写真に気付く。そして、あ、と小さく声を上げると、それを手に取った。 「・・・やっぱり。」 「やっぱりって、見覚えがあるのかい?そのマークに。」 祈里の反応に、瞬が身を乗り出す。祈里は、ポケットの中から一枚の封筒を取り出すと、写真と並べてテーブルの上に置いた。 「ほら。ここに書かれているマークと同じでしょ?」 「ホントだ。えっ?この封筒なら見たことがあるぞ。もしかして、これは・・・」 驚いた表情で封筒と祈里の顔を見比べる隼人に小さく頷いて、祈里はきっぱりとした口調で言った。 「ええ。この封筒は、船上パーティーの招待状が入っていたものなの。このマークは、御子柴家の紋章だわ。」 ☆ 「そっかぁ。ブッキー、そんな酷い目に遭ってたんだ。」 祈里の話を、自分の方が涙目になりながら聞いていたラブが、小さな声で呟く。 「それにしても、だからって手術用の手袋をして来るなんて、ブッキーらしいわよねぇ。」 美希が、重くなった空気を吹き飛ばそうとするように、軽い調子で言葉を繋ぐ。が、それに答えを返したのは、せつなの生真面目な声だった。 「ええ。ブッキーじゃ無ければ、とても思いつかなかった作戦だと思うわ。」 「作戦って・・・え、ええ、そうね。」 目を白黒させて頷く美希に、祈里がクスクスと笑う。そして、何だかさっぱりとした顔つきでラブの顔を覗き込むと、大丈夫だよ、ラブちゃん、と囁いた。 「それで、これからどうするかだが・・・。御子柴家の紋章が入った香水瓶がナケワメーケになったということは、その家に十中八九、ナケワメーケの謎の正体が隠されているということだね。 実際、四つ葉町の中でも、ラビリンスの超科学の反応が一番高いのは、住宅街なんだ。その可能性は、大いにある。」 瞬が、そう言ってからストレートティーを一口飲んで、渋そうに少し口を歪める。いつものように大量の砂糖を投入しようとして、「それじゃドーナツの味が分からないよ~ん」と、カオルちゃんにサングラスの奥から凄まれたのだ。瞬が一言も反論できないような迫力だった。 「そうね。あんなガラスの香水瓶、外に持ち出しては使わないもの。」 「ということは、御子柴家のお屋敷の中でナケワメーケが生み出されたのかもしれないってことね。」 美希の説明を聞いて、せつなが冷静な口調で言った。 「それなら、まずは健人君に訊いてみたらいいんじゃないかなぁ。」 「訊くって、何をよ。まさか、健人君のうちでナケワメーケが生まれたんじゃないの、なんて訊くわけ?」 ドーナツを口いっぱいに頬張ったまま、もごもごとそんなことを言い出すラブに、美希が呆れた声を出す。 「う~ん・・・。だって、健人君だってナケワメーケを何とかしようと一生懸命なんだし、こんな大切な情報、黙っているわけにもいかないでしょう?」 「まぁ・・・そう言われればそうだけど、でも・・・。」 のほほんとした口調ながら核心を突いているラブの言葉に、美希が歯切れ悪く口ごもり、テーブルに視線を落とす。だが、隣りから聞こえてきた穏やかな声に、驚いて顔を上げた。 「美希ちゃん。わたしは、ラブちゃんの意見に賛成だよ。」 「ブッキー・・・。」 「わたしね。」 祈里は、手袋をしたままの手を、胸の前で軽く組み合わせてから、ラブ、美希、せつなの顔を、順繰りに見つめて言葉を紡ぐ。 「動物さんたちに嫌われて、その理由が全然分からなくて・・・凄く、苦しかったの。いろんな可能性を考えて、自分が全部悪いんじゃないかって考えたりして。だから、せつなちゃんが来てくれて、ダイヤのことを話してくれた時、何だかホッとしちゃった。 どんなにつらい現実でも、事実を知らないってことは、やっぱり不幸なことなんだと思う。だって本当のことを知れば、それを変えていくことだって出来るでしょう? それに、周りの人がそれを知れば、助けることだって出来るもの。わたしだって、せつなちゃんが来てくれなかったら、一人じゃとても立ち上がれなかったよ。」 「そうだね。ブッキーの言う通りだよ!」 ラブが、泣き笑いの表情で祈里に頷いてから、そのまま美希の方に向き直る。 「ねっ、美希たん。健人君と、ちゃんと話そうよ。大輔たちと仲直りしてもらうためにも。」 「分かったわよ。その代わり、どういう訊き方にするかは、ここにいるみんなで完璧に考えるのよ?事実をちゃんと伝えるのは大切だけど、物事には言い方ってもんがあるんだから。」 観念したように頷いてから、ビシッと指を立ててみんなを見回す美希に、瞬が穏やかに微笑む。 「ああ。僕たちはそう言うことに関しては非常に疎いから、よく勉強させてもらうよ。なあ、隼人。」 「・・・・・・。」 「・・・隼人?」 そこで瞬は初めて、隼人がさっきから押し黙って何かを考えているのに気付く。だが、瞬以外にそんな隼人の様子に気付いた者は居なかった。 ラブがたまりかねたように立ち上がり、隣りに座っているせつなに、勢いよく抱きついたからだ。 「せつなっ!せつな、ありがとう!ブッキーが元気になったのは、せつなのお蔭だよ。本当にありがとうっ!」 「ちょっと、ラブ!」 不意を突かれたせつなが、見る見るうちに真っ赤になる。その様子に、美希も祈里も顔を見合わせて、ゆっくりと笑顔になった。 笑いさざめく少女たちを見ながら、瞬がさりげなく隼人の肩を叩く。我に返ったように顔を上げた隼人は、照れ臭そうな、苦々しそうな、何とも複雑な表情で瞬の顔を見ると、すぐに視線を逸らして、おもむろにドーナツに手を伸ばした。 ☆ その夜。 夕食が終わり、みんなでデザートのいちごを食べているとき、せつなが静かに口を開いた。 「お母さん。私、またお母さんに料理を教えてもらいたいんだけど・・・いい?」 「もちろん、いいわよ。何を作りたいの?せっちゃん。」 ラブによく似たキラキラした目で自分を見つめるあゆみに、せつなも嬉しそうに微笑む。 「前にラブが作りたいって言ってた、ラザニアっていう料理。調べてみたら、やっぱり作るの難しいのね。だから、お母さんに教えてもらえたらと思って。」 あれは、みんなに黙って占い館に乗り込む前日のことだった。あれからバタバタと日が過ぎて、結局その料理を教わることのないまま、せつなはラビリンスへと旅立ったのだ。 ひとつひとつの経験は、みんな違う――今日、尚子に聞いた言葉が、せつなの胸の中に蘇る。 四つ葉町での経験は、一日一日、いや、一瞬一瞬が、せつなにとって宝物のような時間だった。そしてラビリンスに戻ってから、その素晴らしさを少しでも人々に伝えたいと思っているのに、一番伝えたいことが上手く伝えられないもどかしさを、ずっと感じていた。 でも、もしかしたらそのことが――自分が経験した素晴らしさそのものを伝えようとしていることが間違っているのではないかと、尚子の話を聞きながら、せつなは思ったのだ。 そのことを、あゆみにもう一度料理を教わることで、確かめたいと思った。ラブやあゆみが教えてくれた幸せを、また違った経験として、感じてみたいと思った。 ラブが、隣りからせつなの顔にそっと目をやって、優しく微笑む。そして次の瞬間、テンション高く声を張り上げた。 「せつなったら、よくそんなこと覚えてたね~。それじゃあさ、もっちろん、あたしも一緒だよねっ?」 「当然よ!」 久しぶりの二人のやり取りを微笑ましく眺めてから、あゆみが席を立ち、冷蔵庫の中身を確認する。 「そうねぇ。明日のメニューはもう決めちゃったから、じゃあ、明後日の夕ご飯にしましょう。せっちゃんもラブも、それでいい?」 (明後日・・・。) あゆみに笑顔で頷きながら、ラブとせつなは、それぞれ心の中で呟く。 明後日には、謎はどこまで解けているのだろう。サウラーと祈里が見つけた小さな手がかりで、どこまで真実に迫れるのだろう。 健人とは、今日の夕方に話をした。警備員たちと町を歩いているところを見つけて、みんなで考えた手はず通り、言葉を選んで慎重に話をしたのだ。 思った通り、健人は顔色を変えたが、家に帰って調べてくると、ちゃんと約束してくれた。 あとは健人を信じて待つしかない。場合によっては、健人に頼んで御子柴家を探索させてもらうことになるだろう。それでも何も分からなければ、また次の手を考えなければならない。 (何があっても、絶対に解決してみせるよ。みんなで幸せゲットするために!) (この町と、みんなの幸せを守るためだもの。私、精一杯頑張るわ!) 「明後日か。そりゃあ楽しみだなぁ。」 二人の娘を笑顔で眺めながら、圭太郎がいちごの最後の一粒を、パクッと頬張る。 家族それぞれの想いと願いを乗せて、桃園家の夜は、今日も静かに更けていった。 ~第6話・終~ ダイヤの行方へ
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/1509.html
【検索用 ねむれないひつしのかわり 登録タグ 2008年 VOCALOID なんかP ね 曲 曲な 鏡音リン 鏡音レン】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:白井黒 作曲:白井黒 編曲:白井黒 唄:鏡音リン・鏡音レン 曲紹介 曲名:『眠れない羊の代わり』(ねむれないひつじのかわり) イラストもなんかすごいです。 歌詞 (ピアプロより転載) パヤッホーパヤッホートゥトゥトゥホッホー! パヤッホーパヤッホートゥトゥトゥホッホー! 眠れないのです。 今日も眠れない羊が小さく丸まって震えています。 ベッドの中であなた様を待っています。 部屋中が羊に埋もれるほど数えれば、飛び散った綿からあなた様の香が、微かなれば漂い始めるのです。 今宵は(寝付く事が可能であれば)素晴らしい悪夢を見ることでしょう。 数えた分だけ羊が爆ぜて、飛び散った腸からは鼻を衝く香がすることでしょう。 それなのにあなた様はまだ来ない。 ベッドの揺れは、まだ微かなものでした。 右向け左、ぐるぐる旋回。 小さく前習え。 右向け旋回、小さく左。 ぐるぐるぐるぐる前習え。 眠りたいのです。 フルスイングで枕を投げ飛ばし、頭を掻き乱して転がります。 あなた様はまだ来ないおつもりですか。 声を枯らして泣くような、はしたない真似はいたしません。 が、ゲロゲロと鳴く、あなた様の蛙は潰れました。ごめんなさい。 メェーメェー、切なく鳴いて見せましょう。 あなた様を待つ間、大きく揺れるベッドは如何わしい音を交えて軋みます。 あなた様がまだいらっしゃらない。 羊は切なく鳴いています。 眠れないから。 コメント 曲紹介に吹いてしまったwなんかPの曲ではこれが一番好きだなぁ -- 名無しさん (2008-07-02 22 36 08) 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
https://w.atwiki.jp/mousouvs/pages/517.html
【ラインバレル】出展:鉄のラインバレル 耐久力:550 コスト:450 盾無し、変形無し、抜刀有り ブースト性能の高い格闘戦タイプ。とにかく前に出て戦おう。 メイン射撃【投擲】 弾数×2 リロード:5秒×1 ダメージ:100 刀を投擲する、抜刀状態からでもタイムラグ無しで撃てるが、2発撃つと無手になるので注意。 チャージ射撃【ビーム兵器】 ダメージ:200 ゲロビーム。照射時間が長いのが難だが、上下左右に振れるのでそこそこ使いやすい。 通常格闘 【二刀】右の一振りで唐竹割り→左の一振りで横薙ぎ→さらに右で突き→前蹴りの四段コンボ。2発目でキャンセルすると隙も小さくて吉。 【一刀】袈裟切り→横薙ぎ→パンチの三段コンボ。 【無手】左ストレート→連続パンチ×3。 前格闘 【二刀】刀をクロスさせ、前進しつつⅩ字型に切り裂く。隙が小さく使いやすい。 【一刀】飛び蹴りで仰け反らせて唐竹割り。攻撃直後の硬直が長いので注意。 【無手】飛び蹴り。当たればダウンさせられる。 特殊格闘【今の俺は誰にも負ける気がしない】 左ストレートで相手をダウンさせそのまま馬乗りになってボコり、止めに袈裟切り。 隙はでかいが威力もでかい(総ダメージ300)
https://w.atwiki.jp/fumi23question/pages/117.html
画像作成 PictBear/PictBearSEはどこでダウンロードすればいいの? 普通の画像の大きさは? 画像を作りたい 愛画を作りたい ネム画を作りたい 4枚画を作りたい 歴画を作りたい、PCの画面に表示されたものを画像として保存したい 動画をキャプチャして静止画を作りたい 画像編集・加工 画像の縦横の長さを小さくしたい 画像を他の形式に変えたい 10kb以下など画像の容量を指定して小さくしたい 画像に文字を入力したい 複数の画像を一枚にまとめたい、俗に言う4枚画を作りたい トラブル 色の数が少ない画像をJPGで保存したら汚くなった アニメGIFを保存したけど、一番初めの1コマしか表示されません 画像がBMP以外で保存できません PBXファイルがアップロードできない、PictBear以外のソフトで開けない アップロードしようとしたら形式が対応して無いみたい →画像を他の形式に変えたい ブログの画像がうまく保存できない ├保存したファイルが開けません└エラーが表示されて保存作業が出来ません アップロード 画像のURLはどうやって知るの? おすすめのアップローダーは? 転送 デジタルカメラからPCに画像を取り込みたい 画像を携帯へメールで送りたい
https://w.atwiki.jp/sakurairo118172/pages/1.html
9月13日(火曜日) ハロー♪さくらです☆ もう9月も中旬なのに暑いッス~・・・。 困っちゃうよね。 早く涼しくなってくれればいいのに。 今日は午前中教習所に行ってきました。 頑張って免許取んなきゃ!! そしたら車買って。 ラブVWの昔ビートル♪ あれ絶対買おう! さくらには今付き合って2年と7ヶ月になるダーリンが居るんだけど、ダメなんだよなー。 今までも色々あって、別れようかと思って1ヶ月くらい前に『別れよ。』って言ったらごちゃごちゃになっちゃって・・・。 いまだに付き合ってるけど、次に会ったときにキッパリ別れようかとおもってる。 このままじゃダメダメだもん。 あー、ダンスを始めたい! だってかっこいいんだもん♪ ダンススクールとか通おうかなって思ってます。 ダンスのDVDとかも買って自分で練習したりしたいな。 ただ、今バブルがはじけて経済状態がめっちゃ苦しいんです・・・。 昨日バイトも辞めてきちゃったし。 日払いとか週払いとかのバイトをとりあえず探さなきゃ!!
https://w.atwiki.jp/houoo/pages/25.html
SS投稿 ①まず画像をアップする ↓ 画像アップロード ※1MB までアップ可能 SS画像のサイズが大きい場合は jpg等に変換するかでサイズ変更で小さくして下さい ペイントですると簡単ですb ※ペイントでサイズ削り 1、「ペイント」でSSを開く 2、 ファイル」→「名前をつけて保存」 3、1番下の「ファイルの種類」を「JPEG」にしてそのまま保存 4、これでサイズが小さくなるはずです ヽ|・ム・|ノ ②ページ作成 ページ新規作成 ※タイトルの前に「SS/」をつけて、「SS/●●●」みたいにして下さい 画像はりつけ方 ページを作成したら 1、右上のボタン「プラグイン」→「画像・音声・動画」→「画像表示(image)」 2、「画像のURL]→ うpした画像のURL 「画像サイズ」→ 横サイズだけ入力 (例 400) 「画像のリンク先」→ うpした画像のURL 「別ウインドウで開く」→チェック入れる 3、自動で貼り付け文が入るので、後は下にコメントを入れてで「保存」 ※画像のURL はアップしたページで 画像タイトルを 右クリック→「ショートカットのコピー」 あとは、貼り付けでURL入力できます SS投稿したらメニューの 「ScreenShot」 から見れます(^ω^)
https://w.atwiki.jp/soscomp/pages/144.html
組み込みシステムとは 組み込みシステムとは、平たく言うとパソコンやサーバー以外のコンピューターのことを指します。 携帯電話や家庭用ブロードバンドルーター、自動車のエンジンやエアコンを制御しているコンピューターも組み込みシステムに当たります。 これらは通常、パソコンやサーバーに比べると物理的な大きさ、消費電力、値段、主記憶の容量などは遥かに小さく、衝撃にも強く作られています。 最も高価な組み込みシステムは、人工衛星や惑星探査機に搭載されるシステムでしょう。これらは大抵パソコンやサーバーよりも遥かに高価です。 しかし「軽く、小さく、強く」という基本的な部分はどれも同じです。 Linux 組み込みLinuxの手引き jffs2の仕組み KompressorボードでLinux Windows CE WS003SH用USBホストケーブルの製作 マイコンボード Arduino リンク 日本の組み込み情報 http //1c3.world.coocan.jp/wiki/index.php?Project%20C3%20Wiki http //mes.sourceforge.jp/mes/ 名前 コメント このページへのアクセス数 total - today - yesterday - このページのタグ一覧 Linux WindowsCE 組み込み
https://w.atwiki.jp/910moe/pages/739.html
元カノの元彼 「あ…」 「あ、こんにちは…」 いつもの散歩コースの帰り道、懐かしい姿を見つけ思わず声を上げてしまった。 相手もその声に気づいて小さく会釈を返す。 「コロンちゃんのお散歩…ですか?」 目の前の男性はずり落ちたメガネを直すと、俺の連れていたポメラニアンを遠慮がちに撫でた。 少しだけ戸惑いの入った声。 当然だ。俺の隣に居るはずの彼女の姿がないんだから。 「ええ、飼い主が育児放棄したもので。」 吐き捨てるようにそう呟くと、彼は元々大きな目をますます大きくする。 「別れました…ってかフラれました」 「あ…そう、ですか…」 俺の言葉に彼は目を伏せて、鼻先を指でこする。 「彼女、気分屋でしたもんねー…」 いろんな感情が篭った複雑な表情と、すべてを知っている声。 「はは…貴方から無理やり奪っといてこのザマですよ」 自嘲気味に、大げさに笑ってみせると、彼は悲しそうに眉をひそめた。 そしてまたいつの間にかずり落ちていたメガネを直すと、眉を寄せたまま小さく微笑む。 「お似合いでしたのに、残念です」 「!!」 罵声の一つや二つ浴びせられるかと思った。 それぐらい当然なことを彼にしたのだから。 それなのに彼は俺を慰めるような表情で、優しく犬を撫でていた。 ああ、そうだ。 この人は優しい人なんだ。 彼女が別れ話を切り出した時だって、この人は眉をひそめたまま小さく笑って…。 「ぅ…」 「え!わ!だっ大丈夫ですか!?」 あっという間に視界がゆれて、鼻がツキンと痛む。 「ご…ごめ…ごめんなさい…おれ…お…」 言葉を紡ぎたくても、喉が揺れてうまく声が出せない。 零れ出るのは涙だけだ。情けない。 「辛かったですね。大丈夫、貴方は何も悪くない。」 歪む視界の中、彼は微笑んだまま俺の背中を優しく叩く。 「よかったらココアでも飲みませんか? 悲しい時は甘いものが一番です。温まりますよ?」 彼はそういうとコンビニの袋から小さい缶を取り出す。 「…すみません、いただきます…」 素直に缶を受け取ると、彼はにっこり笑ってメガネを直した。 「あの、優しくしてもらって…こんな事言うのも失礼ですけど…」 「はい?」 「貴方、お人好し過ぎますよ」 「あーそれが原因で振られてんですよねー私」 彼は照れたように頭をかく。 「まあ、そこが貴方のいい所なんでしょうけど」 「そ、そうですかね?」 「はい、おかげでなんか、吹っ切れました。新しい恋が出来そうです」 正直、さっきまでフラれたショックを引きずってたけど、なんか新しい扉を開けそうだ。 俺と、彼をフッてくれた彼女に少し、感謝、かな。 元カノの元彼