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【Burst Synchro Summon】(46) モンスター(24) 3*《ジャンク・シンクロン》 3*《チューニング・サポーター》 3*《レベル・スティーラー》 1*《クリッター》 2*《終末の騎士》 1*《E・HERO エアーマン》 1*《E・HERO オーシャン》 1*《ゾンビキャリア》 2*《クレボンス》 2*《A・ジェネクス・バードマン》 1*《黄泉ガエル》 1*《魔轟神ソルキウス》 1*《クイック・シンクロン》 1*《トラゴエディア》 1*《D-HERO Bloo-D》 魔法(18) 3*《機械複製術》 2*《貪欲な壺》 1*《ワン・フォー・ワン》 1*《増援》 2*《戦士の生還》 3*《シンクロ・キャンセル》 1*《魔法石の採掘》 1*《おろかな埋葬》 1*《サイクロン》 1*《大嵐》 1*《ハリケーン》 1*《緊急テレポート》 1*《未来融合-フューチャー・フュージョン-》 罠(4) 1*《リビングデッドの呼び声》 2*《リミット・リバース》 1*《聖なるバリア-ミラーフォース-》 エクストラデッキ(15) 2*《氷結界の龍トリシューラ》 1*《ダークエンド・ドラゴン》 2*《ジャンク・デストロイヤー》 1*《E・HERO アブソルートZero》 1*《E・HERO The・シャイニング》 1*《スターダスト・ドラゴン》 1*《ギガンテック・ファイター》 1*《ブラック・ロ^ズ・ドラゴン》 1*《ゴヨウ・ガーディアン》 1*《氷結界の龍ブリューナク》 1*《A・O・J カタストル》 2*《アームズ・エイド》
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YUKI burst error Ⅹ どうやらハルヒはこれまでの苦労を思い出したのか、その反芻に身を委ね言葉を発せられなくなったようだ。 俺の腕にしがみつき、しかし涙は見せたくないのか、俺の袖にまぶたを押し付けている。 つってもまあ、袖に液体の濡れた感触がある訳で、本人は気づいていないのだろうが、俺はハルヒが泣いていることを悟ってしまっている。 まあいいさ。 ここで「ハルヒ、何を泣いている?」なんてツッコミを入れようものなら雰囲気ぶち壊しで2010年12月現在の日本の内閣や東京都知事以上の大馬鹿KYだ。 ハルヒは俺に気づかれたくないからこそ、この行為なんだからな。 今はそっとしておいてやればいいさ。俺の腕の袖だってハンカチくらいにはなる。古泉と朝比奈さんが俺たちを守ってくれると信じているからこそ、俺がハルヒを気遣ってくれることを信じてくれているからこそ、ハルヒはこうやって心おきなく泣けるってもんだ。 「それにしてもキョン。今回は災難だったね。いやそれは僕も、かもしれないが」 いつの間に俺の.横に来ていたのか、中学時代のクラスメイト・佐々木は上空の古泉と長門のつばぜり合いを眺めながらどこか感慨深げに話しかけてきた。 と言うことは佐々木、お前も自分の記憶が書き換えられたことを自覚して正気に戻ったということか? 「その通りだ。本当にびっくりしたよ。まさか実際に物理法則を揺るがすような事態に身を置くなど思ってもみなかった。しかしだね、キョン。僕は今思えば結構その災難を楽しんでいたかもしれないと思っているんだ。何故か分かるかい?」 「……俺がお前と同じ学校にされてたことか?」 俺はやや憮然と問いかける。 いやまあ、俺自身、佐々木と同じ学校にされたことに深い意味はまったくないが不満はない。 ただあの学校には大いに不満がある。今も俺には嘘っぱちの記憶が残っている。 アホみたいに年がら年中、勉強勉強で、ある意味、SOS団活動並の怒涛のように過ぎていった一年だった、という記憶がな。 それを思えば俺の表情にも渋面が浮かぶってもんだ。 「ふふっ、その通りだよ。中三時代のクラスの中であの学校に進んだのは僕だけだったからね。知っている人間が一人でもいるというのは気分が違うものさ。しかも僕にもキミがあの学校でどういう風に一年を過ごしてきたかの記憶があるんだ。思い出すだけで笑いがこみあげてくるよ。せっかくだからもう少しあの気分を味わっていたかったが――」 だから、それを思い出させるな。 「しかしまあ、アレは現実じゃない虚構だ。あんなものに身を委ねてしまえば、自分の上限を勝手に決め付けて人生を完全放棄し現実逃避したい人間と同列扱いにされたところで文句一つ言う資格はないだろう。過去が多少苦しいなら未来を明るいものに換えればいい。人はみんな、そうやって頑張っているんだよ。だから僕も世界を元に戻す決意を固めた。いや、世界を元に戻せる可能性を僕やキミ、そして涼宮さん、橘さん、藤原くん、九曜さん、古泉くん、朝比奈さんが持っているんだ。それを放棄したいなんて思わないだろ? キミも、そしてもちろん涼宮さんも」 佐々木……お前…… 「おっと勘違いしないでくれたまえ。僕は何もキミや涼宮さんのために世界を元の姿に戻そうとしたわけじゃない。その気持ちがないという訳ではないが、それよりも一番大きな理由は僕自身のために元に戻そうと思ったからだ。もしこれが逆の立場であったならキミも僕と同じ思いを抱くのではないのかな?」 俺の感謝と感激を足したような表情が目に入ったのか、しかし佐々木は自嘲と苦笑を足したような笑みで付け加えてくる。 まったく焦ることも照れることもなく。 ああ、そうだな。しかし俺はお前の気持ちに感謝しているぜ。 お前が動いてくれなければ橘京子、周防九曜、藤原が動く訳ないからな。動機はどうあれ、お前は俺を助けようとしてくれている。 それだけで充分ありがたい。 って、なんで橘京子の奴はびっくりした表情を浮かべてやがるんだ? 俺が佐々木に素直にお礼を言うのがそんなに不思議なことなのか? 俺だって好意は素直に受け取るし、感謝すべき時はきちんと感謝するんだぜ。佐々木はともかく、いくらお前たちが気に入らないと言ってもな。 「さて、キョン。僕が考えたプランを聞いてくれるかい?」 佐々木が再びマジな顔になって視線を上空の長門と古泉に移して切り出した。 と同時に、俺と佐々木の立ち位置のちょうど中間につま先で軽く線を引く。 どういう意味がある? 「今の事象に対する打開策か?」 「その通りさ。この度の世界改変と言う異常現象は長門さんによって引き起こされたものだ。だとすれば原因である長門さんを元の長門さんに戻すか、あるいは抹消するしかない。長門さんが元に戻れば長門さんが、長門さんがいなくなれば長門さんクラスの力を持つ九曜さんが時空再改変を敢行できるからね」 待て。長門を抹消するなんて容認できないぞ。 「もちろん、キミがそれを望むとは思えないし、僕もキミの望まないことをやりたいとは思わない。しかしだからと言って長門さんを野放しにしておくわけにもいかないだろ。 もし、キミが長門さんを元に戻せる処方箋を持っているならそれを使ってほしい。でなければ僕が考えたプランにキミも従ってもらわざる得なくなる」 俺の強い抗議の念を込めた瞳を真正面から受け止めて、それでも佐々木もまた、強い意志を秘めた瞳で俺に切り返してくる。 長門を元に戻す処方箋…… ないことはない。 去年の三度目の十二月十八日に長門が長門に撃ち込んだあの再修正プログラム入り短針銃だ。 だが、あれはあの日の長門とともに置いてきた。 あの日以後、俺はあの短針銃を見ていない。もしあったとしても今の長門が抹消してしまった気がする。 そして今現在、あの短針銃を手に入れる手段はない。 今、俺たちの前にいる長門は自らの異時間同位体とのリンクが可能の長門だ。自分が未来でどうなるかを知ることを恐れた長門が科した封印を解いてしまった長門なんだ。 つまり、仮に四年前の七夕の日を含めて、どの時間の長門のところに行こうとも、その長門は全て今の、世界改変を断行しようとしている長門有希になってしまうのである。それは今、この世界にいる長門が俺たちの感覚から言って一年前の長門であることで証明されている。 と言うことは―― 「僕の案はこうだ」 黙り込む俺に、佐々木はどこか悲壮感漂う声色で語り始める。もちろん、俺に返す言葉は浮かばない。 「今、僕が引いた線は文字どおり境界線、その目印だ。先ほども少し言ったがこの世界は僕の内面世界と涼宮さんの内面世界を連結させている。その連結点がここだ」 佐々木が視線を落として、さっき自分が引いた線をもう一度見るよう促してきた。 俺がそれに視線を移していると、 「古泉くんにこの地点に長門さんを追い込んでもらう。いや、追い込んでもらうという表現は正しくないかもしれないな。なぜなら古泉くんの能力をもってしても長門さんには及ばない。となれば言い方を変えて誘い込む、ということにしようか」 どっちでもいいさ。 と言うか俺にも分かったぞ。佐々木が何をしようとしているのかを。 「そうだ。長門さんがこの境界線に触れた瞬間、僕は涼宮さんと僕の内面世界の連結を切り離す。そうすれば長門さんを次元断層の挟間へと追いやれる。だからキミはこの線からこっち側に来ないようにしてくれたまえ。僕もこの線からそっち側へはに行かないようにする」 「待って!」 俺が予想し、それを佐々木が言葉にした瞬間、声を上げたのは今の今まで俺の腕にしがみつき泣き続けていた涼宮ハルヒだった。 「違うの佐々木さん! 有希だって今の自分がやっていることは本心からの行動じゃないことを分かってるのよ! 有希も苦しんでる! あたしにはそれが解るの!」 「ハルヒ……?」「涼宮さん……?」 俺と佐々木が戸惑ったような声を上げると、 「そうでしょ? 本当に有希がおかしくなったんなら有希は完璧な記憶操作を敢行してるだろうし、あたしたちに記憶が戻ることはなかった。あたしは有希にそう教えてもらったんだから!」 「じゃあどうすればいいんですか?」 突然割り込んできたのは、佐々木の後ろでへたり込んだままの橘京子だ。疲労感溢れるその表情で、しかしその視線はハルヒを非難しているようでもある。 「そ、それは……」 珍しくハルヒが言葉に窮しているな。 「――――――――――信じる――――――――――それだけ――――――――――」 が、ハルヒをフォローしたのは何とも橘京子の仲間であるはずの周防九曜である。 「長門さん――――――――――が――――――――――エラー部分を――――――――――切り離し――――――――――」 いや長いから。 「――――――――――エラー部分――――――――――だけを――――――――――」 これだけ間延びするとな、逆に何を言っているのか分からなくなるんだって。 頼む、佐々木。お前が説明してくれないか? 「おいおい無理を言わないでくれ。僕にだって九曜さんが何を言おうとしているのかが漠然としか分からないんだ。ただ、はっきり言っておくが今、九曜さんが言おうとしていることはキミや涼宮さんの方がはるかに理解しているのではないかと思うのだが?」 苦笑を浮かべる親友。 俺やハルヒの方が解っているだと? どういうことだ? 「キミが長門さんに望むこと、涼宮さんが長門さんに望むことだ。僭越ならがら僕から言わせてもらえば、キミたち、いやキミたちだけではなく僕たちも同じことを望んでいる。それは長門さんが元に戻ることだ」 「――――――――――次元断層の――――――――――狭間に――――――――――」 佐々木の説明と周防九曜の我関せずの話が交錯して、 そうか――そういうことか――! 俺にも、そしてハルヒにも佐々木の本当の狙いが分かったぞ。 しかしだな。 なら、どうして古泉だけに長門の相手を任せるんだ? さすがに俺やお前、ハルヒに橘京子、藤原には長門に対抗する術を持たないし、朝比奈さんは迎撃で手一杯な訳だが、周防九曜は? この中では唯一、長門相手でも何とかできそうな気がするんだが…… 確かお前は自分たちも元の世界に戻したい、とか言ってたよな? 「そう言えばまだ言ってなかったね」 「何をだ?」 「キミの本体のことさ」 「俺の……本体!?」 「そうだ。キミはどこまで覚えているか分からないが、涼宮さんのおかげで今日、自分に何が起こったのかを思い出したはずだ。おっと、この場合の今日というのはこの涼宮さんの内面世界が本当に発生した今日ではなくて、僕やキミも含めた世界改変が起こった今日のことだ」 確か長門が撃ったレーザー砲にやられて…… って、そう言えば長門は俺の肉体が滅んだとか言っていたんじゃなかったか!? んで今の俺は精神のみをこのときの俺に同期化したとか!? 「その通りだ。ただそれは正解ではない。 はっきり言おう。今のキミはあの後の記憶を失ってここにいる。それは涼宮さんがキミが長門さんの攻撃に飲み込まれて消滅したと錯覚したところまでしか見ていないからだろう。 なぜならキミは僕たちの出現に驚いたろ? そのことがキミが記憶を失っている証拠でもあるんだ。念のため、僕はそれを先ほどのキミとの会話で確かめた。実はさっきの嘘っぱちの記憶を植え付けられた思い出話は一度すでにしているんだよ」 何だって!? 「どういうことよ佐々木さん! まさかキョンは生きているの!?」 割り込んできたのはハルヒだ。 というか俺の記憶しているところまでと長門の言い回しを聞いていると俺も自分の体が無くなってしまったと思ってしまっているぞ! などという俺とハルヒの戸惑いを驚愕にシフトチェンジさせるような佐々木の言葉が続く。 「ああ。キョンは生きている。キョンだけではない、古泉くんも助かったんだ。涼宮さんが十二月二十日に時間遡航した後の話になるんだがね。そしてこれが九曜さんが古泉くんを手助けできない理由でもあるし、僕や橘さんに記憶が戻った理由でもある。またここにいる長門さんも涼宮さんが望んだからこそこの場に居られる。よって、その記憶は涼宮さんが持つ記憶までの長門さんでしかない」 むろん俺とハルヒは絶句した。 YUKI burst error ⅩⅠ
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YUKI burst error Ⅸ おかしい。この世界はあたしとキョンしかいなかったことはあたしもキョンも覚えている。 じゃあどうして有希がここにいるわけ? 「何で、あんたがここにいるのよ?」 あたしはキョンにしがみついたまま問いかけた。 「あなたが望んだから。言ったはず。あなたは何もないところから情報を生み出す能力がある。それがわたしがここにいる理由。あなたがここにいる理由」 「冗談! あたしが望んだのは今のあんたじゃない! 有希よ! 前の有希よ!」 しかし相手はあたしの剣幕に動じる気配を見せない。 そう――普段の物静かで我関せずのいつもの有希のように―― 「その表現には齟齬が生じている。わたしは他の誰でもない長門有希。あなたはわたしを望んだ」 「違う!」 「違わない」 どういう意味よ? あたしがあたしを孤独に追いやったこの有希を望んでいる訳ないじゃない! あたしが望んだのは―― ――! まさか! 有希を望んだ……そして有希は一人しかいない……そういう意味ってこと……? 「理解した? わたし以外に『長門有希』は存在しないことを」 有希の無感動なセリフを聞いてあたしは無言の肯定。 いやだったらもう一つ起こってもおかしくないことがある。 「有希……今、あんたはあたしに何もないところから情報を生み出す力がある、って教えてくれたわよね……?」 「そう」 「じゃあ、どうして古泉くんやみくるちゃんがここにいないのよ? あたしはキョンも含めてみんなで一緒にいることを望んだのよ。本気でね。あんたの言ってることが正しいとするなら古泉くんとみくるちゃんもいないと変よ」 「問題ない。ここにいるわたしはあなたが本来居るべき時間平面上のわたしと同期したわたし。記憶の共有、異時間同位体。しかし古泉一樹と朝比奈みくるは異時間同位体との同期が不可能。なぜならそれは有機生命体の限界を超える能力。そちらの彼だけが直接あなたに触れていた。よって彼だけは情報の提供を受けることができた。また彼の肉体はあなたが本来居る時間平面で消滅した。以前、彼には伏せたが肉体は滅んでも精神は残る。ゆえに彼の精神が今、この場にいる彼と同期することが可能になった。でもそれは例外。だからここに古泉一樹と朝比奈みくるはいない」 つぶやきながら有希がすぅーっとまるで幽霊の動きのようにあたしたちへと手を翳す。 「この空間に来た涼宮ハルヒの選択は正しい。なぜならこの空間のみが涼宮ハルヒの望んだ全ての結果を導くよう設定されている。だからわたしはあなたを抹消する。そうすればもうわたしの邪魔をする者もいなくなる」 ……っ! あたしは焦燥感に駆られたまま、キョンの腕をギュッとつかんだ。 「長門! まさかお前!」 声を荒げながらキョンもまたあたしを力を込めて自分の胸へと引き寄せる。 そうね……今度はもう離さない……あたしもキョンもお互いを…… だって……一人になりたくない…… キョンもそう思ってるはず…… 「やめろ長門! この世界の創造主・ハルヒをここで抹消してしまったら、この世界がどうなるかお前にも分かっているはずだ!」 「知っている。でも構わない。わたしも一緒」 ――!! 有希……あんた……! 「それは涼宮ハルヒが望んだこと。あなたも古泉一樹も朝比奈みくるも望んだこと。だから躊躇わない」 有希の、こちらに向けている掌に光の粒子が集まっていく――掌の光が光度を増していく―― あたしはキョンの腕を、キョンはあたしの肩をギュッと抱く。より強い力を込めて。 分かってる二人とも。もう離れたくない、離したくない。 一瞬たりとも、そして最後の一瞬も……だから……! 「そこまでです――長門さん――」 「そうですよ。今ならまだ間に合います。みんなで帰りましょ」 え――! あたしは自分の耳を疑った。たぶんキョンも、そして有希も。 だって……この二人の声が聞こえるなんて信じられないんだから…… 振り向くことができない。 信じたいけど信じれらないから。 振り向いて、これが幻聴だと知らされたらと思うのが怖かったから…… あたしの耳には大地を踏みしめて歩んでくる二人分の足音が届いてくる。 空耳じゃないの……? 嘘じゃないの……? あたしは自分の目も疑った。 こんな現実があるの? それとも神様があたしの願いをかなえてくれたの? 「なぜ……?」 有希にしてはめずらしく怨念の塊のような声を漏らし、あたしの目の前にいる二人に憎悪の視線を向ける。もっとも一人は有希を睨みつけているみたいだけど、もう一人はあたしたちの方へと柔らかな笑顔を向けて来てくれる。 「相手が誰であれSOS団に仇なすものを放置しておくわけにはいきません。そしてあなたもSOS団の一員ですから僕と同じ思いを抱いているはずです」 古泉くん…… 「大丈夫? 涼宮さん、キョンくん」 みくるちゃん…… みんな……みんな……あたしのところに帰ってきてくれた……あとは…… 「お、お前ら……どうやって……」 「さぁて。説明なら後ろの方が説明してくれると思いますよ。僕はこちらの長門さんの相手をしなくちゃいけませんので」 「後ろ?」 あたしとキョンが振り返る。 「え?」 そこに居たのは―― 「大丈夫かい? キョン、涼宮さん」 佐々木さん? 「ったく、こんなこと二度とご免だぜ。まあこうしないと俺も面倒なことになっちまうから仕方がないんだがな」 「何言ってんの。あんたはまだマシでしょ。たかだか時間移動くらい。あたしなんてもっと無茶なこと言われたんだから」 橘京子さんと――何? この態度悪いいけすかない男は? んでもってもっと分からないのは、 「―――――――――」 確か……周防九曜さんだったっけ……? 普段の有希よりも無口で存在感なさそうなんだけど……? 「簡単――とは言い難かったけど、端的に説明させてもらうと僕の内面世界と涼宮さんの内面世界を連結させた。今この世界は僕たちがいる世界と同期していたからね。涼宮さんの、このときの内面世界に入れたのはキョンだけだったらしいけど僕の内面世界と連結させれば橘さんがこの世界に入ることを許される。となれば後は全員を橘さんに手引きしてもらえばいいってことさ。 もっともこれは涼宮さんが記憶を取り戻してくれたおかげでもあるんだ。でなければ涼宮さんの内面世界の端末を古泉くんに見つけてもらうことができないからね」 いやあの……そんな超科学の不可思議現象をさらっと言われるとあたしとしても何と言うか…… 「でも佐々木さん、本当に今後はこんな無茶は言わないでくださいね。あたしたちの身がいくつあっても足りません」 「分かってるって橘さん。今回のことは特別だってこともね。でもキョンが関わっている以上、僕も親友の彼を放っておくわけにはいかないさ。それに言ったろ? この間の話、前向きに考えるって」 「う゛~~~絶対ですからね」 「ああ」 佐々木さんと橘さんのそんな会話が終わると同時に、 「なら……ここで全員を抹消するのみ……わたしの邪魔はさせない……」 無表情の中にも敢然たる決意を込めて有希がふわぁっと浮き上がる! 「そうはさせません!」 って、え……!? あたしがいぶかしく思ったのも無理ないってもんよ。だって、いきなり古泉くんが赤いオーラの球体を纏ったし! 「前回の僕はこの力を発揮できない状態だったんです――ですが、ここなら話は別ですよ――この世界は僕に最大限の力を与えてくれますので――」 「そう……でも対処可能。想定内」 空中で古泉くんと『有希』がつばぜり合いを開始する! というか何これ!? てことは有希が宇宙人で、みくるちゃんが未来人で、古泉くんが超能力者だったってこと!? いや確かにあたしは望んだけどさ。 もう周りに全部いたの!? 「そういうこった」 「キョン……」 「前にも言ったぜ。もっともお前は信じなかったがな」 「う……」 確かに第二回SOS団市内不思議探索パトロールの時にあたしはキョンからそう聞かされた。 「じゃあまさかキョン……あんたが.異世界人、なんて言わないわよね?」 「いいや。俺はまったく普通の人間。長門と古泉と朝比奈さんが保証してくれるくらいのな。『ただの人間には興味ありません』なんてのたまったお前がどうして俺をSOS団に入団させたのかが分からんくらいだ」 「ふん! 証拠なしで信じろって方が無理よ!」 「そうかい」 ぷいっとあたしはそっぽを向く。キョンは別に何かを気にしたわけじゃないだろうけど何だか腹が立った。 だから、こう命令してやる。 「いいキョン! あんたは古泉くんみたいにスーパー○イ○人モドキになれないんだからせいぜいあたしの盾になりなさい! あいつの攻撃をその身に受けてあたしを守るのよ!」 「なんだそりゃ? 俺に死ね、って言ってんのか?」 「何言ってんの! 死んだら盾の意味無いじゃない! 死なずに頑張りなさいってことよ! 死んでなきゃなんとかなるもんよ!」 「どういう理屈だ。それは」 キョンはため息をついたがあたしはキョンの腕から離れない。 どうしてかって? こいつがあたしの盾だからよ! って、有希ったら本当にこっちに何か撃ってきた!? 古泉くんをあしらいながらこっちを攻撃できるって、これじゃさっき有希が言った「対処可能」ってセリフが正しいと証明されたようなものじゃない! 「あ、心配いらないですよ。あたしも涼宮さんたちを守れますから」 この場に似つかわしくないほどの無邪気な笑い声であたしたちの前に出てきたのはみくるちゃんだった。 さっきは気づかなかったけどよく見たら、左右の瞳の色が違うのね……何でまた? コンタクト? あたしの疑問を気にも留めず、どこか誇らしげな表情で有希を見上げるみくるちゃん。 すぅーっとVサインを作った左手を左目の前に翳しているようだけど…… 「ミクルビーム!」 「ほえ!?」 あたしは素っ頓狂な声を上げた。 だって仕方無いじゃない! みくるちゃんの掛け声と同時に、みくるちゃんの左目から強烈な光の光線が飛び出すんだもん! その光線が有希の気弾っぽい攻撃を迎撃! お互いの攻撃威力が相殺消滅したし! というか、未来人って目からレーザービームを出せるの!? んな改造技術が未来にあるってこと!? 「んな訳ないだろ」 目を白黒させているあたしにかけられた妙に優しい声。 「ここは佐々木の世界と連結させてあるとは言え、お前の世界でもあるんだ。だからお前が考えたことは全て現実になる世界って寸法さ。お前、前に言ってたじゃないか。映画の時、朝比奈さんに目からレーザー光線を出しなさいって」 そ、そう言えば…… 「もっともあんな吹っ切れた朝比奈さんを見たのは初めてだがな。映画の時は泣きながらあれやってたの、お前も覚えてんだろ?」 「ま、まあね……」 なんだか今更ながら映画の時はみくるちゃんに無理難題を押し付けた気がして、思いっきり悪い気がする……ううん……ここは話を逸らしたいんだけど…… 「って、そうよキョン! あんたがジョン・スミスなんでしょ!」 古泉くんとみくるちゃんが有希からあたしたちを守ってくれてるんで少しゆとりができたのか、あたしはキョンに勢い込んで訊いてみた。 「今はそんな話してる場合じゃ――って、どうしてお前が知っている? 誰から聞いた? いや俺は、正確には違うが誰にも話していない。知っているのは……まさか!」 「そうよ――知っているのは去年の十二月二十日のあたし――キョン以外誰も知らないあの日のあたしにキョンがそう名乗っていたのをあたしが聴いたんだから――」 あたしとキョンの間に沈黙が訪れる。 あたしたちだけが別世界に落ちて行くような、周りの風景が遠くなっていくような感覚―― 「まさかハルヒ……お前は……あの日に行ってきたのか……?」 「その通りよ……そこでキョンが必死にあたしたちを取り戻そうとしてくれたのを知ったの……だからあたしも負けていられないと思ってここまで来た……あたしもあんたと同じでSOS団を失くしたくないから頑張った……」 たった一人で、という言葉は危ういところで呑み込んだけどね。 だって口にすると涙が零れそうになるし、キョンにだけはそんなあたしを見られたくない…… 「そうか――そいつはすまなかったな。お前だけに苦労かけちまったみたいで」 ……キョンが優しい言葉をかけてくれるけど、あたしは言葉を返せない。 だって……口を開くと嗚咽が漏れそうだし…… 神様があたしにくれた贈り物―― 一人で頑張ったあたしにくれたご褒美に安心してしまったから…… キョン、古泉くん、みくるちゃんがあたしの傍に戻ってきてくれて…… 四年前からずっと逢いたかったジョン・スミスと再会できて…… YUKI burst error Ⅹ
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Ignited Night burst/ N-driver ( 公式試聴ページ / 採用コメント ) 第1回スピードアップコンテストの第1回配信楽曲 pop n music 18 せんごく列伝からのリミックス楽曲 ( 原曲紹介 ) シルエットはポップンにおける原曲の担当キャラクターの「ダイ」 後にpop n music peaceにて、AUTOMATION PARADISEの機能を使ってMIXした楽曲「SDVX REMIX SELECTION for pop n music vol.01」に組み込まれている、ポップンREMIXのFLOOR採用曲の1曲として本家ポップンに収録された Lv CHAIN 譜面属性 BPM TIME Version Genre Illustrator Effect NOVICE 05 0369 180 BOOTH08 FLOORBEMANI 斑アゲ子 Megacycle ADVANCED 10 0675 EXHAUST 14 1091 鍵盤、階段 +難易度投票 NOVICE 選択肢 投票数 投票 詐称 0 強 0 中 0 弱 0 逆詐称 0 ADVANCED 選択肢 投票数 投票 詐称 0 強 0 中 0 弱 0 逆詐称 0 EXHAUST 選択肢 投票数 投票 詐称 0 強 0 中 1 弱 0 逆詐称 0 攻略・解説 譜面・楽曲の攻略についてはこちらへどうぞ 見辛さ解消の為に改行や文頭の編集、不適切なコメントを削除することがあります [EXH]14では弱い方か。鍵盤の出来次第でスコアが大きく変わる。 -- 名無しさん (2012-08-03 23 33 39) [EXH]「TYCOON」が無理な俺でも初見クリア。直角も曲に合わせた感じで、覚えればノリノリでいける。でも階段が多くスコア難 -- 名無しさん (2012-08-04 11 01 41) [EXH]鍵盤が苦手だとレベル相応~詐称気味に感じるかもしれない。鍵盤が強ければ14弱程度か。16分で叩くところが比較的多いためとにかく打力と指運が問われスコアも個人差が出やすいが、曲にあっただったり同じフレーズが続いたりするので慣れれば伸びると思われる。 -- 名無しさん (2012-08-09 23 09 57) [ADV]10じゃ弱い方?普段9すらクリア出来ないけどこれは出来たwww -- 名無しさん (2012-08-14 21 14 55) [ADV]良曲易譜面。初見は直角エフェクト左右同時に引っかかるかもしれないが、わかってしまえばLV8未満の譜面。 -- 名無しさん (2012-08-17 09 12 36) [ADV]UC狙いなら開幕が最難関、テンポに乗った状態で挑む後半の難所よりも体感難易度上がる -- 名無しさん (2012-08-18 04 43 23) [ADV]は確かに10にしては下の方。ただポップンの方(原曲)に慣れてるとリズムが若干狂ってスコアがうまく伸びない。。。っていう個人的意見。 -- 名無しさん (2012-09-15 04 58 18) [EXH] たった1091CHAINの中にショートの16分が詰まっているスコア難。リズムパターンこそ決まっているものの、複雑なので確認推奨。 -- 名無しさん (2013-06-20 22 06 47) 解禁できねえw -- 名無しさん (2014-02-12 16 26 49) [EXH] とにかくゲージが軽い。ブレイク後にゲージが50%切っててもクリアできるくらいだが、16分の多さでスコアは伸びにくい。 -- 名無しさん (2014-07-09 18 01 25) 名前 コメント ※文頭に[ bgcolor(#aaf){NOV}]、[ bgcolor(#ffa){ADV}]、[ bgcolor(#faa){EXH}]をコピー ペーストすると見やすくなります コメント 楽曲やイラストなどのコメントについてはこちらへどうぞ 階段が多いのは本家譜面意識だな、あの譜面の良さを分かってくれて嬉しいぜ -- (名無しさん) 2012-08-04 21 01 23 赤はやってて楽しい譜面。階段の練習にもなるし曲にノリながらできる -- (名無しさん) 2012-08-14 23 09 45 なんか上の一覧がほとんど、攻略解説じゃなくて個人的なものばっかなんだが -- (名無しさん) 2012-08-17 13 29 55 確かに攻略らしいものがあったりなかったりだな -- (名無しさん) 2012-08-17 14 47 50 普通に鍵盤むずいわ -- (名無しさん) 2012-09-14 01 53 15 せっかくジャケット3つあるんだから3つ合わせてHHHにしてほしかったな… -- (名無しさん) 2012-09-15 05 02 05 ↑そこでジャケット補完MISSIONですよ -- (名無しさん) 2012-09-15 21 15 30 中々満足なスコアが出てくれない譜面。14鳥埋めでは最後の方になる。そこからも長い -- (名無しさん) 2013-02-10 20 48 13 フルコン狙うとなるとロングで拘束された手と逆の手で鍵盤を取りに行かなきゃならない、しかも左手でC、D鍵が頻発。何気に考えられた譜面してる。 -- (名無しさん) 2013-04-20 02 52 30 ヘイッ!!(スカッ -- (名無しさん) 2013-09-26 21 29 56 クリアレート詐称 -- (名無しさん) 2014-02-15 19 55 37 初見で300NEARも出て精度見直さないとなーとか思ってたらサビの部分のリズムを完全に勘違いしてて、個数数えたら150/300がそこのリズム間違いで出ていた事が判明……泣きたい とりあえず「てーてれっててれ○ててれてれてれてー○ててれてれてー」の休符部分を頭に叩き込んでから再挑戦しよう…… -- (名無しさん) 2014-03-25 04 51 05 名前 コメント すべてのコメントを見る
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SkyGOD 我らのクランマスター☆ みんなの盛り上げ役 階段の達人のいい男 ShaLuLu. 元Burstメンバー エロい Mr.AK チーフ* 寝落ちのGOD!裏でクランを操る首領 IFRIT チーフ*Burst変態要員その1 Bon⌒voyage♪ VCでいつも叫んでる、絶叫プレイヤー。 KSMaster.EX 広報担当(多分w)かなりのクラン貢献者。 SuNny*Re T@tH It awakes occasionally. Purin_a sv`Third 元Burstメンバー GELG-VOLG 名前があれだけど、なにかと頼りになるゲルちゃん♪ Ph0en!x_ak 顔 なんだかんだ言って、チームの戦力。 ◆りいたん◆ 普段は設置要因 たまにチート発動 ただし充電式@w@ n Et@^K* チーフ*大佐はSRもARも両方使いこなす、二刀流。ガチで強い。変態。 Zenius 頼りになるMR どっちを使ってもうまい 壁|v`)y~ふぅ 主に囮役 40%の確立でかわりに死んでくれる。 ヒデチへ エロ用語&女の子大好き。むっつりエロジャニーズ ちぃーたん 女の子。あまりしゃべってくれないけど、かわいい。IFRITのお気に。 GAOx 女の子。最近あまりINしないが、覚醒するとガチ。 SkyPeach* HSの達人&MG使い。ももちゃんのMGは本気でふじこちゃん。 みゅな うちの看板娘 みゅなさんの一人Rushはガチ りららっくま かの有名な・・・なんでもないです。酔うと絡みが濃くなる。 Ak^ALЬёЯt 東大生。Burstの特攻要員。
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タグ 明るい 曲名B 歌 遠藤正明 作詞 milktub 作曲 milktub 作品 電激ストライカーOP PCゲーム 電激ストライカー オリジナルサウンドトラック STRYKERS
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YUKI burst error Ⅸ おかしい。この世界はあたしとキョンしかいなかったことはあたしもキョンも覚えている。 じゃあどうして有希がここにいるわけ? 「何で、あんたがここにいるのよ?」 あたしはキョンにしがみついたまま問いかけた。 「あなたが望んだから。言ったはず。あなたは何もないところから情報を生み出す能力がある。それがわたしがここにいる理由。あなたがここにいる理由」 「冗談! あたしが望んだのは今のあんたじゃない! 有希よ! 前の有希よ!」 しかし相手はあたしの剣幕に動じる気配を見せない。 そう――普段の物静かで我関せずのいつもの有希のように―― 「その表現には齟齬が生じている。わたしは他の誰でもない長門有希。あなたはわたしを望んだ」 「違う!」 「違わない」 どういう意味よ? あたしがあたしを孤独に追いやったこの有希を望んでいる訳ないじゃない! あたしが望んだのは―― ――! まさか! 有希を望んだ……そして有希は一人しかいない……そういう意味ってこと……? 「理解した? わたし以外に『長門有希』は存在しないことを」 有希の無感動なセリフを聞いてあたしは無言の肯定。 いやだったらもう一つ起こってもおかしくないことがある。 「有希……今、あんたはあたしに何もないところから情報を生み出す力がある、って教えてくれたわよね……?」 「そう」 「じゃあ、どうして古泉くんやみくるちゃんがここにいないのよ? あたしはキョンも含めてみんなで一緒にいることを望んだのよ。本気でね。あんたの言ってることが正しいとするなら古泉くんとみくるちゃんもいないと変よ」 「問題ない。ここにいるわたしはあなたが本来居るべき時間平面上のわたしと同期したわたし。記憶の共有、異時間同位体。しかし古泉一樹と朝比奈みくるは異時間同位体との同期が不可能。なぜならそれは有機生命体の限界を超える能力。そちらの彼だけが直接あなたに触れていた。よって彼だけは情報の提供を受けることができた。また彼の肉体はあなたが本来居る時間平面で消滅した。以前、彼には伏せたが肉体は滅んでも精神は残る。ゆえに彼の精神が今、この場にいる彼と同期することが可能になった。でもそれは例外。だからここに古泉一樹と朝比奈みくるはいない」 つぶやきながら有希がすぅーっとまるで幽霊の動きのようにあたしたちへと手を翳す。 「この空間に来た涼宮ハルヒの選択は正しい。なぜならこの空間のみが涼宮ハルヒの望んだ全ての結果を導くよう設定されている。だからわたしはあなたを抹消する。そうすればもうわたしの邪魔をする者もいなくなる」 ……っ! あたしは焦燥感に駆られたまま、キョンの腕をギュッとつかんだ。 「長門! まさかお前!」 声を荒げながらキョンもまたあたしを力を込めて自分の胸へと引き寄せる。 そうね……今度はもう離さない……あたしもキョンもお互いを…… だって……一人になりたくない…… キョンもそう思ってるはず…… 「やめろ長門! この世界の創造主・ハルヒをここで抹消してしまったら、この世界がどうなるかお前にも分かっているはずだ!」 「知っている。でも構わない。わたしも一緒」 ――!! 有希……あんた……! 「それは涼宮ハルヒが望んだこと。あなたも古泉一樹も朝比奈みくるも望んだこと。だから躊躇わない」 有希の、こちらに向けている掌に光の粒子が集まっていく――掌の光が光度を増していく―― あたしはキョンの腕を、キョンはあたしの肩をギュッと抱く。より強い力を込めて。 分かってる二人とも。もう離れたくない、離したくない。 一瞬たりとも、そして最後の一瞬も……だから……! 「そこまでです――長門さん――」 「そうですよ。今ならまだ間に合います。みんなで帰りましょ」 え――! あたしは自分の耳を疑った。たぶんキョンも、そして有希も。 だって……この二人の声が聞こえるなんて信じられないんだから…… 振り向くことができない。 信じたいけど信じれらないから。 振り向いて、これが幻聴だと知らされたらと思うのが怖かったから…… あたしの耳には大地を踏みしめて歩んでくる二人分の足音が届いてくる。 空耳じゃないの……? 嘘じゃないの……? あたしは自分の目も疑った。 こんな現実があるの? それとも神様があたしの願いをかなえてくれたの? 「なぜ……?」 有希にしてはめずらしく怨念の塊のような声を漏らし、あたしの目の前にいる二人に憎悪の視線を向ける。もっとも一人は有希を睨みつけているみたいだけど、もう一人はあたしたちの方へと柔らかな笑顔を向けて来てくれる。 「相手が誰であれSOS団に仇なすものを放置しておくわけにはいきません。そしてあなたもSOS団の一員ですから僕と同じ思いを抱いているはずです」 古泉くん…… 「大丈夫? 涼宮さん、キョンくん」 みくるちゃん…… みんな……みんな……あたしのところに帰ってきてくれた……あとは…… 「お、お前ら……どうやって……」 「さぁて。説明なら後ろの方が説明してくれると思いますよ。僕はこちらの長門さんの相手をしなくちゃいけませんので」 「後ろ?」 あたしとキョンが振り返る。 「え?」 そこに居たのは―― 「大丈夫かい? キョン、涼宮さん」 佐々木さん? 「ったく、こんなこと二度とご免だぜ。まあこうしないと俺も面倒なことになっちまうから仕方がないんだがな」 「何言ってんの。あんたはまだマシでしょ。たかだか時間移動くらい。あたしなんてもっと無茶なこと言われたんだから」 橘京子さんと――何? この態度悪いいけすかない男は? んでもってもっと分からないのは、 「―――――――――」 確か……周防九曜さんだったっけ……? 普段の有希よりも無口で存在感なさそうなんだけど……? 「簡単――とは言い難かったけど、端的に説明させてもらうと僕の内面世界と涼宮さんの内面世界を連結させた。今この世界は僕たちがいる世界と同期していたからね。涼宮さんの、このときの内面世界に入れたのはキョンだけだったらしいけど僕の内面世界と連結させれば橘さんがこの世界に入ることを許される。となれば後は全員を橘さんに手引きしてもらえばいいってことさ。 もっともこれは涼宮さんが記憶を取り戻してくれたおかげでもあるんだ。でなければ涼宮さんの内面世界の端末を古泉くんに見つけてもらうことができないからね」 いやあの……そんな超科学の不可思議現象をさらっと言われるとあたしとしても何と言うか…… 「でも佐々木さん、本当に今後はこんな無茶は言わないでくださいね。あたしたちの身がいくつあっても足りません」 「分かってるって橘さん。今回のことは特別だってこともね。でもキョンが関わっている以上、僕も親友の彼を放っておくわけにはいかないさ。それに言ったろ? この間の話、前向きに考えるって」 「う゛~~~絶対ですからね」 「ああ」 佐々木さんと橘さんのそんな会話が終わると同時に、 「なら……ここで全員を抹消するのみ……わたしの邪魔はさせない……」 無表情の中にも敢然たる決意を込めて有希がふわぁっと浮き上がる! 「そうはさせません!」 って、え……!? あたしがいぶかしく思ったのも無理ないってもんよ。だって、いきなり古泉くんが赤いオーラの球体を纏ったし! 「前回の僕はこの力を発揮できない状態だったんです――ですが、ここなら話は別ですよ――この世界は僕に最大限の力を与えてくれますので――」 「そう……でも対処可能。想定内」 空中で古泉くんと『有希』がつばぜり合いを開始する! というか何これ!? てことは有希が宇宙人で、みくるちゃんが未来人で、古泉くんが超能力者だったってこと!? いや確かにあたしは望んだけどさ。 もう周りに全部いたの!? 「そういうこった」 「キョン……」 「前にも言ったぜ。もっともお前は信じなかったがな」 「う……」 確かに第二回SOS団市内不思議探索パトロールの時にあたしはキョンからそう聞かされた。 「じゃあまさかキョン……あんたが.異世界人、なんて言わないわよね?」 「いいや。俺はまったく普通の人間。長門と古泉と朝比奈さんが保証してくれるくらいのな。『ただの人間には興味ありません』なんてのたまったお前がどうして俺をSOS団に入団させたのかが分からんくらいだ」 「ふん! 証拠なしで信じろって方が無理よ!」 「そうかい」 ぷいっとあたしはそっぽを向く。キョンは別に何かを気にしたわけじゃないだろうけど何だか腹が立った。 だから、こう命令してやる。 「いいキョン! あんたは古泉くんみたいにスーパー○イ○人モドキになれないんだからせいぜいあたしの盾になりなさい! あいつの攻撃をその身に受けてあたしを守るのよ!」 「なんだそりゃ? 俺に死ね、って言ってんのか?」 「何言ってんの! 死んだら盾の意味無いじゃない! 死なずに頑張りなさいってことよ! 死んでなきゃなんとかなるもんよ!」 「どういう理屈だ。それは」 キョンはため息をついたがあたしはキョンの腕から離れない。 どうしてかって? こいつがあたしの盾だからよ! って、有希ったら本当にこっちに何か撃ってきた!? 古泉くんをあしらいながらこっちを攻撃できるって、これじゃさっき有希が言った「対処可能」ってセリフが正しいと証明されたようなものじゃない! 「あ、心配いらないですよ。あたしも涼宮さんたちを守れますから」 この場に似つかわしくないほどの無邪気な笑い声であたしたちの前に出てきたのはみくるちゃんだった。 さっきは気づかなかったけどよく見たら、左右の瞳の色が違うのね……何でまた? コンタクト? あたしの疑問を気にも留めず、どこか誇らしげな表情で有希を見上げるみくるちゃん。 すぅーっとVサインを作った左手を左目の前に翳しているようだけど…… 「ミクルビーム!」 「ほえ!?」 あたしは素っ頓狂な声を上げた。 だって仕方無いじゃない! みくるちゃんの掛け声と同時に、みくるちゃんの左目から強烈な光の光線が飛び出すんだもん! その光線が有希の気弾っぽい攻撃を迎撃! お互いの攻撃威力が相殺消滅したし! というか、未来人って目からレーザービームを出せるの!? んな改造技術が未来にあるってこと!? 「んな訳ないだろ」 目を白黒させているあたしにかけられた妙に優しい声。 「ここは佐々木の世界と連結させてあるとは言え、お前の世界でもあるんだ。だからお前が考えたことは全て現実になる世界って寸法さ。お前、前に言ってたじゃないか。映画の時、朝比奈さんに目からレーザー光線を出しなさいって」 そ、そう言えば…… 「もっともあんな吹っ切れた朝比奈さんを見たのは初めてだがな。映画の時は泣きながらあれやってたの、お前も覚えてんだろ?」 「ま、まあね……」 なんだか今更ながら映画の時はみくるちゃんに無理難題を押し付けた気がして、思いっきり悪い気がする……ううん……ここは話を逸らしたいんだけど…… 「って、そうよキョン! あんたがジョン・スミスなんでしょ!」 古泉くんとみくるちゃんが有希からあたしたちを守ってくれてるんで少しゆとりができたのか、あたしはキョンに勢い込んで訊いてみた。 「今はそんな話してる場合じゃ――って、どうしてお前が知っている? 誰から聞いた? いや俺は、正確には違うが誰にも話していない。知っているのは……まさか!」 「そうよ――知っているのは去年の十二月二十日のあたし――キョン以外誰も知らないあの日のあたしにキョンがそう名乗っていたのをあたしが聴いたんだから――」 あたしとキョンの間に沈黙が訪れる。 あたしたちだけが別世界に落ちて行くような、周りの風景が遠くなっていくような感覚―― 「まさかハルヒ……お前は……あの日に行ってきたのか……?」 「その通りよ……そこでキョンが必死にあたしたちを取り戻そうとしてくれたのを知ったの……だからあたしも負けていられないと思ってここまで来た……あたしもあんたと同じでSOS団を失くしたくないから頑張った……」 たった一人で、という言葉は危ういところで呑み込んだけどね。 だって口にすると涙が零れそうになるし、キョンにだけはそんなあたしを見られたくない…… 「そうか――そいつはすまなかったな。お前だけに苦労かけちまったみたいで」 ……キョンが優しい言葉をかけてくれるけど、あたしは言葉を返せない。 だって……口を開くと嗚咽が漏れそうだし…… 神様があたしにくれた贈り物―― 一人で頑張ったあたしにくれたご褒美に安心してしまったから…… キョン、古泉くん、みくるちゃんがあたしの傍に戻ってきてくれて…… 四年前からずっと逢いたかったジョン・スミスと再会できて…… YUKI burst error Ⅹ
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GOD EATER BURST 【ごっどいーたー ばーすと】 ジャンル チーム連携型ハイスピードハンティング 通常版アペンド版 対応機種 プレイステーション・ポータブル 発売元 バンダイナムコゲームス 開発元 シフト 発売日 2010年10月28日 定価 UMD版 4,980円DL初版 4,477円アペンドディスク版 2,000円 プレイ人数 1~4人 レーティング CERO C(15才以上対象) 廉価版 PSP the Best2011年9月15日 UMD版 2,800円 / DL版 2,500円2013年6月6日 UMD版/DL版 1,800円(全て税抜) 判定 良作 (管理人裁定による) 改善 (管理人裁定による) ポイント 主人公がアバターなのに喋るアペンド版は前バージョンの修正ディスクに該当 GOD EATERシリーズ 概要 追加点・改善点 新規ストーリー キャラクター関連 アクション面・難易度の調整 システム周りの仕様改善 問題点 総評 余談 概要 システムやストーリー、音楽などの評価は高かったものの、理不尽なまでの難易度で批判を浴びた『GOD EATER』に新キャラやストーリーなどの追加を行ったアッパーバージョン。 ただ単に新要素を追加しただけでなく、無印をプレイしたユーザーの意見を元にゲームバランス、システムが徹底的に調整・改善されている。 略称は「GEB」または「バースト」。本作の発売を受けて『GOD EATER』は「無印」と呼ばれるようになった。 なお本記事では無印からの追加点・改善点を中心に紹介するため、ゲーム内容・基本システムについては「無印」の記事を参照していただきたい。 追加点・改善点 新規ストーリー キャラクター関連 ストーリー関連 新規ストーリーは無印のエンディング後のストーリーであり、実質続編と言える。 無印で報われなかったキャラクター(主人公含む)にスポットが当たっており、ユーザーからの評価も高い。逆に無印で活躍した第一部隊の面々は出番が少なめ。 ラスボス戦の流れも非常に熱く、BGMと相まってかなり燃える展開となっている。エンディングで泣いたという人も少なくない。 無印では空気だった主人公だが、本作の追加ストーリーでは見せ場が多くちゃんと主人公をやっている。さらに最終盤のムービーではなんと台詞があり、しかも叫ぶ。ムービーの内容や専用BGMの熱さと相まって本作屈指の名場面となっている。 主人公が喋るムービーはわずか3つで、その内ナレーションとして喋っているものと苦悶の声を上げるものを除くと、純粋に主人公が台詞を喋るのはその1回しかない。だがそのたった1回だからこそ強く印象に残り、プレイヤーの心に響く。 ちなみに主人公の声はキャラメイク時に男女それぞれ20パターンから選べるうえに全てのパターンで台詞が存在するので、これらの場面も男女合わせて40パターン存在することになる。 「どうせ大して喋らないんだし」と適当にしたり、ふざけてボイスを設定したりすると大抵ここで後悔する。 主人公であるアバターがイベントなどによるムービーで喋るのは本作が初となる。 今までのゲームでは主人公であるアバターが喋るムービーはなかった。 キャラクター関連 無印に登場していたサブキャラクターがより個性豊かになった。もともと設定されていた性格やキャラ設定もさらに深く掘り下げられ、完全にキャラクターとして独立した。会話やメールも追加され、より彼らの人間性に迫る事が出来る。 特に防衛班の面々はグラフィックも主人公用のモデリングが流用されていたものが固有のものになり、一部キャラの声優変更、ボイス新録などがなされている。モブキャラが一人前のキャラクターになった、といえばわかりやすいだろうか。なお、新規ストーリーにしか登場しない純粋な新キャラも存在する。 中でも「潜在能力は高いが妙に誤射が多い」という設定を持っていた台場カノンは設定がさらに強調されて「普段は弱気なドジっ娘だが戦闘では攻撃的な性格に豹変する」「全体的にNPCの思考パターンが改善されている中で彼女のみプレイヤーが射線に入っても容赦なく射撃する(*1)」「誤射しても謝るどころか誤射相手を邪魔物扱いする」という二重人格気味(*2)な性格に変更され、その性格と可憐な容姿とのギャップからプレイヤーの間で「誤射姫」「大馬鹿ノン」の愛称がつけられて一躍人気キャラとなった。 余談だが、「彼女を連れて行くとレア素材が出やすい」というジンクスがゲーム内の設定で存在し実際にプレイヤーの間でもまことしやかに囁かれており、誤射で吹っ飛ばされるのを覚悟で そして誤射を喰らい毒づかれたくて 彼女を連れて行くドMプレイヤーも多く存在する。 キャラクターのボイスパターンも主人公も含めて大幅にバリエーションが増えた。 誤射したときは謝ってくれたり(悪態をついて開き直るキャラもいるが)、ミッション終了時にはいろいろ喋ったりするので、より共闘感が高まる。 ストーリークリア後に条件を満たせば、ストーリーの都合で使用できなくなったNPCを再度ミッションに連れて行ける。 中には一部プレイヤーから熱狂的な支持を受ける華麗なるあのキャラクターも。 また、初回特典限定のNPCも存在する。内容は既存のキャラクターのコスチュームを変更したものの他、作中ですでにゴッドイーターを引退したキャラの現役時代を再現したNPC、はたまた正体不明の華麗に戦う謎のNPCも使用可能になる。 上記のように、当初は「初回特典限定」であったが、2011年12月よりこれらのNPCが全プレイヤーに解放され、使用できるようになった。しかも無料。 オープニング・ムービー・サウンド関連 オープニングの曲は「Over the clouds -BURST mix-」になり、曲そのものにかなりのアレンジが入った。良曲の良アレンジであり、フルバージョンが聞きたいという声も多い(*3)。 曲に合わせて変更されたオープニングアニメも、相変わらずクオリティは高い。 BGMのコンポーザーは椎名豪氏が続投。 数は少ないものの、新曲のクオリティも高い。 アーカイブとして一度見たストーリームービー・BGM・NPCの戦闘ボイス観賞モードが実装された。さらに無印のオープニングやダイジェストムービー、追加アクションなどが解説されるチュートリアルムービーも閲覧可能という大盤振る舞いである。 アーカイブは「自室のターミナル」でしか見られないため、無印では存在意義がほとんどなかった自室に行く意義ができたとも言える。また、NPCの部屋のターミナルにも、量としては多くないが彼らの趣味や人となりを知ることのできる情報が追加されている。 服装や装備は、現在のものがそのまま反映されるのもうれしいところ。ただし無印同様あまりネタに走るとシリアスなムービーが台無しになるので注意。 アクション面・難易度の調整 装備品関連 新たな装備品が多数追加され、無印版からほぼ倍増している。既存品にも大幅に調整が加わり、無印版で非常に多かったマイナススキルの数は大幅に引き下げられた。 強化が途中で終わってしまうような死んだ装備が存在せず、好きな装備の系列で最後まで戦い抜くことができる。戦術を練れば、ストーリー中でも個性を出した装備で戦って行くことができる。扱いやすい便利な装備も用意されており、初心者への窓口が大きく開かれた。特定の武器防具は最終強化した後にカラーチェンジもできる。 「トリアン」戦法に関わっていたバレット、スキル、アイテムなどが下方修正を受け、それだけを使ってのごり押しはできなくなっている。ただしあくまで無印と比較して弱くなっただけであり、決して死に調整がされたわけではない。 無印で不遇だったブラストはバレットエディットの仕様変更やアラガミバレットの大幅な強化を受け大きく地位を向上させた。逆に無印時代に猛威を振るったスナイパーは相対的に地位を落としたが、前述の通り「使えない」ほどではなく、問題なく活用できる。 バレットも種類が増えており、エディットの幅が大きく広がった。 無印では設定・イベントで登場するだけだった回復弾が正式にバレットとして追加された。回復量はそれほど多くないが実質的に際限なく使える回復手段が追加された(*4)ことになるため、回復アイテムが尽きてもかなり戦えるようになった。 「攻撃力はないがエネルギー消費が非常に少ない」装飾弾が追加された。地形以外に当たり判定がない特性を持ち、使い方次第でバレットの燃費・構成自由度が大きく向上する。 バレット試射時のターゲットが実体化されており、バレットが当たったときの挙動や属性ごとのダメージを確認できるようになった。 細かいことではあるが、バレット名に漢字が使えるようになった。 無印版では一回の効果毎に僅か約0.004%のダメージしか与えられなかったヴェノムが、結合崩壊前にアラガミが倒れる事もあるほどに強化(*5)された。 アクション・ミッション関連 難関ミッションは難易度が調整されたり、クリア必須でなくなったりしたため、無印版と比較してストーリー進行は遙かに容易になった。 無印版で配信されたダウンロードミッションも全て収録されているため、遊び応えも十分。 また、同じバンナム製の『ソウルキャリバーシリーズ』や『太鼓の達人シリーズ』、『とある魔術の禁書目録』や『アニメ店長』など、無料DLCによる他の作品とのコラボレーションも積極的に行っている。 難易度4以降にスタート地点がランダムになる仕様が撤廃され、戦略を立てやすくなった。 剣による攻撃モーションにも手が加えられ、前述の「トリアン」戦法の下方修正もあり相対的に剣モードが強化された。 特に空中ガードとコンボの締めに捕喰行動がとれる「コンボ捕喰」の追加が大きい。これらのおかげでより積極的に空中戦を挑めるようになり、バースト状態を保つことも容易になった。 コンボ捕喰は従来の捕喰(*6)と比べてスキが少ない分バースト時間がチャージ捕喰の半分、アラガミバレットの入手数が1発だけ(*7)と劣る部分も多いため、状況に応じて使い分ける必要がある。 バースト状態でOPが自動回復するようになり、さらにバースト状態時にのみ効果を発揮する「バーストスキル」が追加され、バースト状態の重要性が増した。 バーストスキルには体力自動回復など通常のスキルに存在しない効果も多く、いかにバースト状態を維持できるかが攻略上でも重要なポイントとなっている。 リンクエイド後の復活に15秒の猶予が設けられ、任意のタイミングで戦線に復帰できるようになった。 そのため「復帰した瞬間に敵に攻撃される→再びやられる」といった事故のスパイラルを回避しやすくなっている。 攻撃をくらったときに受け身を取れるようになった。これにより「攻撃を喰らう→ダウン→起き上がったところに攻撃を喰らう」いわゆる起き上がりハメが激減した。 なお多段ヒット攻撃を喰らった場合は、受け身を取ると無敵時間が無くなって逆にダメージが増えてしまう。受け身を使うべき状況と使うべきでない状況がきっちり分かれており、「攻撃を喰らったらとにかく受け身」というパターンになることを防いでいる。 NPCの能力強化 大雑把ながらNPCに対して指示が出せるようになり、敵の分断、各個撃破が行いやすくなった。 指示は全4種類と少ないが敵の誘導、索敵、分断と一通りのことは可能なので、使いこなせるかどうかはプレイヤーの腕次第となる。 NPCの性能も大幅に向上している。 思考ロジックと耐久力が強化され、放置してもかなり長い間粘ってくれる。特にソーマやリンドウは初心者がお手本に出来るほどの立ち回りを行う。 遠距離型NPCの誤射も全体的に減少。ただし台場カノンだけは例外で、プレイヤーが射線上に入っても他のキャラと異なり遠慮なく射撃してくる。(*8) リンクエイド最優先の思考も改善され、ちゃんと状況を確認して回避行動をとりつつ蘇生を試みてくれる。 逆に回避優先の思考になったためになかなかリンクエイドに来てくれないことも。 PCへ合流するためにアラガミに捕捉された場合はその場で戦闘を始め、アラガミを足止めしてくれる。 NPCはPCが近くにいないと回避を優先するため、長時間足止めしていてもダメージはさほど与えられないが。 逃走したアラガミを再捕捉したときは即攻撃を仕掛けず、主人公が初動を起こすまで(たとえばチャージ捕喰を当てるまで)待ってくれるのもポイントが高い。それが裏目に出て戦闘中に敵が逃げ始めたりスタングレネードを使ったりすると即攻撃を止めるのがマイナス点ではあるが。 無印では新型神機使いのNPCはアリサとクリア後使用不可能になるシオだけだった事もあり、リンクバーストの恩恵を感じ辛い部分があった。今作では新型神機使いが増え(*9)、アラガミバレット獲得数の増加、NPC・アバター共にリンクバーストを積極的に行ってくれる思考パターンの構築(特に復帰後のアリサは顕著)といった要素により、ソロプレイでも容易にリンクバーストレベル3になれるようになった。これにより仲間との共闘感がより高められている。 このゲームでは体力が尽きても完全に倒れ伏すまでは戦闘不能とはみなされない仕様だが、回復弾を撃てるNPCは「プレイヤーが倒れ伏す寸前に回復弾を命中させて戦闘不能をキャンセルする」という絶妙なサポートをしばしば行ってくれる。安心して、むしろ積極的にミッションに同行させたい頼れる仲間となった。 ストーリークリア後のチャレンジ・ダウンロードミッションでは、強制的にプレイヤー一人で出撃しなければならないミッションもある。それをプレイするといかに本作のNPCがありがたい存在であるかがわかるだろう。 アラガミ関連 新アラガミ「ハンニバル」およびその亜種とも言える「ハンニバル侵喰種」が追加。どちらもただ追加されただけではなく、追加ストーリーに深く関わる。 本作でもダウンロードコンテンツにて新規アラガミ(骨格を流用したものだけでなく、完全な新規骨格のアラガミも)や装備の配信等が行われている。勿論無料。 他のアラガミの身体を取り込み攻撃手段をコピーした「ヴィーナス」、片腕が銃になった亜人型アラガミの「ヤクシャ」とその上位種「ヤクシャ・ラージャ」など、どいつもこいつも(良い意味で)一癖も二癖もある良敵。中でも両腕のブレードと背中のブースターによる超高速突進を武器とする「カリギュラ」(*10)は対戦時のスピード感、攻撃モーションのカッコよさから非常に人気が高い。 他のダウンロードミッションもただ全ての敵を倒すだけでなく、バレットエディットの駆使や如何にターゲット以外の敵から気付かれないようにして戦うかなど、創意工夫を行わないとクリアが難しいものがある。 既存のアラガミは能力のバランス調整が行われている。異常な攻撃力、防御力、当り判定が修正され、回避困難な攻撃やハメに近い戦法にも修正が入った。 これらの調整によって難易度が引き下げられた本作ではあるが、一部のプレイヤーの間では「難易度が下がりすぎた」と言う声もある。ただしそれはあくまで無印版の地獄をクリアしたプレイヤーの意見であり、決して「ヌルくなった」わけではない。 この手のアクションゲームの初心者にとっては厳しいミッションもあり、ストーリークリア後に挑戦可能になるチャレンジミッションやダウンロードミッションは無印版経験者でも手を焼く難関揃い。チャレンジミッションやダウンロードミッションはミッション説明文を一見するととてもじゃないがクリアできそうに無いもの揃いだが、実際はトライ エラーを繰り返して適切な装備や作戦を考え、腕をほどよく上げればきちんとクリアできる内容である。 システム周りの仕様改善 前作や体験版、今作のキャラデータを引き継いで遊ぶことが可能。コードネーム以外の項目は変更できる。 無印版をプレイしないと出現しない要素はないので、本作から始めるプレイヤーでも安心してプレイできる。 ミッションリタイアやミッション中の一時停止が可能になった。 NPCの能力強化等による相対的な難易度の低下と合わせ、いわゆるマラソンも容易になった。 キーコンフィグが4タイプから選択可能になった。 最重要アクションでもあるガードを1ボタン押しで発動できるようになったのは非常に大きい。 バースト状態の残り時間がゲージとして表示されるようになった。 これにより効果がいつ頃切れるかがわかりやすくなったため、より計画的にバースト状態を運用できるようになった。 一度クリアしたミッションの戦闘BGMを変更できるようになり、特定のミッション限定だった曲も自由に流せるようになった。 上位素材→下位素材への変換(もしくは逆)ができるようになり、素材を集める手間が幾分減った。 アラガミ素材は難易度による素材レアリティでの変換以外にも、原種→堕天種(もしくは逆)といった変換も可能な場合がある。当然ではあるが一部のレア素材は変換不可能。 一部のアラガミ素材はこの変換を活用しないと収集が非常に厳しいものがあった。現在ではDLCにより確定報酬、或いは追加報酬として高確率で入手できるミッションが追加されたため大幅に緩和されている。 モンハンシリーズのギルドカードと『ディシディア ファイナルファンタジー』のフレンドカードを足したような「アバターカード」が追加。 カードにはミッションや装備作成の履歴、武器の使用比率が表示されるほか、マイキャラの武装と服装を「アバター」として登録し、すれちがい通信で他のプレイヤーに配信することが可能。受け取ったアバターはNPC同様ミッションに連れて行けるため、ゲーム攻略の大きな助けとなる。さらに、ミッションに同行させたアバターは一定確率で「素材」を入手し、再度すれちがい通信で更新された時に相手に素材を持ちかえる。レア素材を入手してくる事もあり、非常に嬉しい仕様といえる。 アバターはアバターカードに記載されている装備と交換した時点で所持しているバレットを持って参戦するため、既存NPCにはない個性を充分に発揮してくれる。 所謂「ガチ装備」で固めた構成でもいいし、複数のマイナススキル・台場カノン以上の誤射能力を発揮するバレットのみを持たせたネタ構成でもOKと非常に自由度が高い。 マルチ、シングル(一人プレイ・NPCあり)、ソロ(一人プレイ・NPCなし)で別々にクリアタイムが記録されるようになった。 ソロプレイではノーダメージとノーアイテム、さらにその両方を同時達成した時(パーフェクト)にもタイムが記録される。 その他ゲームバランス全般の調整、不具合修正など多数。 問題点 不具合・バグ・誤植 残念ながら今回も細かいところに粗が残っている。発生率はそこまで高くないとはいえゲーム展開に支障をきたすものもいくつか報告されている。中でも「操作タイプ・Dを選択時にロングブレードの(ゲーム側の設定ミスによる)重大な挙動不具合が発生する」のはどうにかならなかったのだろうか…。 過去に一回フリーズ対策のための修正パッチを配布したのだが、こちらの修正パッチは結局配布されなかった。 操作タイプDの不具合は修正困難だったのか、GE2では操作タイプDそのものが削除されている。 また不具合という程ではないが、アバターカードのすれちがい通信には非常に時間がかかる。 平均して2~40秒もかかるので「すれちがわない通信」と揶揄される事も。カードの情報量が多いため仕方が無いが。 誤植も一部存在する。 また誤植ではないが、使われているフォントの関係で「パ行」と「バ行」の区別がつきにくい。 本編での追加アラガミが少ない 本編で登場する追加アラガミは前述のハンニバル(およびハンニバル侵喰種)のみで、若干物足りない(*11)。 ダウンロードミッションにて新規アラガミが数多く追加されている(*12)ので、それも合わせれば十分な数ではある。 DLCで追加されたアラガミの内、ラーヴァナとヤクシャ系は単体討伐ミッションがない。 両者とも集団戦がコンセプトのアラガミなので、単体討伐がないのは当然であるが。 ラーヴァナのモーションが若干おかしい。 ヴァジュラがベースになっているのだが、全体的にフワフワガクガクしていたり、仰け反った後に一瞬全く動かなくなるなど違和感が凄まじい。 武器のバリエーション 大幅に種類は追加されたもののカラー・属性違いのみというのが多く、目新しさには欠ける。もっとも無印発売から本作の発売まで8ヶ月しか経っていないので、そこまで求めるのも酷な話ではある。 ただカラー・属性違いを一つの系統に纏めたとしても、系統数は無印時代から倍以上に増えているためボリュームはある。 『2』では新武器追加が発表されているので、期待が高まる所である。 武器のカラーチェンジは強化扱いで毎回素材と金を消費しなければならない上、その強化の仕様も3種類の候補から1つ>一度デフォルトカラーに戻す>3種類の候補から1つというローテーションになっていて面倒臭い。 カラーチェンジに使う素材は店でも買えるありふれたものであり、金額についてもそこまでたどり着いたプレイヤーにとってはほとんど負担にならないレベルである。 その他、細かい不満 キャラメイクの関係か、全てのNPCで基本モデルは同一になっている。 そのため設定では頭一つくらい違うキャラでも皆同身長という事に違和感を持つ人も多い。 アイテム使用のショートカットコマンドは今作でも実装されておらず、相変わらずアイテム使用には一手間かかってしまう。 操作に同時押しや長押しが多いので、PSPではボタンの都合上コマンドを割り振る余地が無いと思われる。 スタッフロール前後のムービーはスタッフロールとセットになっており、単独では見られない。 移動速度が速い敵がこちらを追う時にT字路で曲がりきれず同じ場所をウロウロする事が多い。 どうも自分と相手の間に障害物がある場合は一度引き返して再度追うといったルーチンが組まれているようなので、スタングレネードなどでターゲットをリセットしてやればちゃんと行動するようになる。 NPC関連 プレイヤーが近接攻撃を当てないまま時間が経過するとアサルト、スナイパー以外を装備しているNPCが戦闘を放棄する事がある。 単独行動中のNPCが特定の位置に差し掛かると、その付近をウロウロし始める事がある。 これらも思考ルーチン上の問題と思われる。 命令を出せるようにはなったが、索敵、散開命令をした時のNPCの進行ルートはどちらも同じ。 総評 無印版の内容を全て収録した上で新規要素を多数追加。さらに無印の問題点もほとんどが解消・改善されている。 何よりきちんと遊べるバランスになっている点が最大の評価点であり、まさに『GOD EATER』の完成型と言える良作となった。 完全版商法と言えなくもないが、無印版を持っているならば最初から安価なアペンド版を買うという選択肢が用意されている点も特筆に値する。 無印版から改悪された点は基本的に無いので、もし今から始めるのであれば本作一択。 無印版の理不尽さに挫折した人、ドラマチック ハイスピードな狩りゲーを体験したい人はぜひ手にとってみてほしい。 なお、レビューサイト「PSP mk2」での評価も76点のAクラス判定(2011年10月9日現在)とユーザーからの評価も上々。 ミッションランク3の序盤まで=ゲーム全体の約5分の1以上を収録、マルチプレイ可、セーブデータを製品版に引き継げるという豪華な体験版が無料配信されているので、それをプレイしてみて肌に合うかどうか確かめてみると良いだろう。 余談 DLCは2011年9月15日のVer1.51"GRAND FINALE"(*13)で最後と思われていたが2013年6月6日にDLC Ver1.6"NEW ORDER"が、そしてその2週間後ver1.61"NEW ORDER "(*14)が配信された。 最終段階まで強化した装備をさらに強化できるようになるという、『2』へ向けたアップデートとなっている。 そしてその5ヶ月後の11月14日、ついに『GOD EATER 2』が発売された。本作に新たな要素を加えた、正統進化といえる出来上がりとなっている。詳細については当該記事にて。 クロスオーバー作品『PROJECT X ZONE』にアリサ、ソーマ、雨宮リンドウが参戦。時系列は本編ストーリークリア後となっている。主人公はキャラメイク仕様上、登場していない。 ペアユニットであるアリサとソーマは実際に言えば原作での絡みはあまりない。 しかし『PROJECT X ZONE 2 BRAVE NEW WORLD』では『2』準拠になり、アリサはソロユニットに降格するが続投。ソーマ、雨宮リンドウはリストラとなった。代わりにシエル、ナナに交代となった。 何故外されたのかは言及されていないので不満の声が出ていた。一部では研究職で出るタイミングがなかったのではと考察する人もいた。
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起動条件……キーワード検索…… 期限……今日……日没…… それ以上……私は私を抑制できない…… なぜなら私が……消える…… 記憶情報操作完了まであと…… まだ間に合う…… 信じて…… YUKI burst error Ⅱ 妙だな……? 自転車を走らせて五分もしない内に俺の違和感は疑問に変わっていたのである。 自分でも分からん。 しかしまるで何かに引き寄せられるようにペダルをこぐ足と、ハンドルを握る手は迷いもなく一定方向に進路を切っていたのだ。 いったい俺はどこに向かおうとしているんだ? いやそもそも何故、こっちに向かっているんだ? こっちには何かあるのか? あるとすればそれは何だ? 俺は有名私立に通う一高校生だ。中三のとき、おふくろに放り込まれた塾と、そこで出会った同じクラスの佐々木という女のおかげで今や県内有数の進学校にまで上り詰めることができた俺。 …… …… …… おかしい。 本当に俺はそんな奴だったか? それに何かもっと衝撃的なことがあった気がする。 佐々木という女は結構変わっているが、俺はもっと変わった女に出会ってなかったか? いやそんなはずはない。 肯定と否定が交錯する俺の記憶。 何かとてつもなく大事なことがあやふやになっている。 過去にそういうことがあった、などと思っていながら、そんなことはあり得るはずがない、という矛盾が俺の内で大きくなっていっている。 この矛盾という違和感の正体は何だ? その答えは俺が向かっている先にあるとでも言うのか? 頭は忘れてしまっているが体が覚えている、そんな感覚に支配されている。 心の内で自問自答を繰り返しながら、結局、答えが出ないまま俺は気がつけば、地元で有名な急勾配の頂上にある、県立の通称・北高の駐輪場に到着していたのであった。 …… …… …… …… …… …… 私の内のノイズが二人を呼び寄せた…… 本来、再び出会うことのなかった二人…… その方が二人にとって幸福であったにも関わらず…… 幸福……? 本当にそう? それは私の勝手な思い込み…… ……? なぜこんなことを思う……? 私は私の意志のみによって自律行動しているはず…… 違う……? …… …… …… …… …… …… あたしはどういう訳か、私鉄沿線を一つ越えた急勾配の頂上にあることで有名な県立高校の自転車小屋の前、勾配坂道スタートのふもとに立っていた。 どうしてここに来たの? この学校、あたしとは縁もゆかりもないはずなのに…… って、正確には少しだけないこともないけどね。 四年前にこの学校の生徒の人と会って、とある作業を手伝ってもらったことがあったし、あの人に会ってみたくて何度かここに来たこともあったけど…… それでも結局、あの人が見つからなかったからあたしは光陽園学院を選んだんだ。当時、あたしは中学一年生。 あたしが高校生になる頃にはあの人はもう卒業して会うことができないから。 んで、今の学校の方が進学に向いているし何より、この坂を毎日登りたいとは思わなかったもん。 ……? 本当にそうなの? その割にはこの坂を見ても昔見た時に比べればうんざり感がないような気がするんだけど…… 何と言うか……見慣れているって感じ…… そんなはずないのに…… 「どうしました涼宮さん?」 「何でもない。とにかく行くわよ」 「どこへ?」 「この学校の中に決まってるでしょ。そのために来たんだから」 たぶんあたしの後ろで困った笑顔を浮かべている古泉くんにそう言って、あたしは坂を登り始めた。 「ときにこの学校にどのような用事が? どなたか知り合いがいるのですか?」 早足であたしに追いつき、あたしと肩を並べて歩く古泉くんが困惑と苦笑を足したような、それでいてへつらうような笑顔で訊いてくる。 「そんなの行ってみないと分かんないわよ」 「あの……それは単なる気まぐれというやつでは……?」 ますます困った笑顔になる古泉くんに、あたしはようやく彼に視線を向けた。 「ねえ古泉くんは何も感じないの?」 「何をです?」 「何も感じてないならいいわ。しかしまあ」 結局、何の答えも示さない古泉くんに嘆息してあたしは一度足を止めた。 と言うか、やっぱこの長い髪は暑苦しい! 仕方ないのであたしはこの髪を後ろで括る。 「さっさと行くわよ。誰かがあたしを待っているような気がするのよ。それが誰だかは分かんないんだけどね」 古泉くんの答えを待たずにあたしは再び歩き始める。 でもいったい何があたしを待っているんだろう? 正直言って、その答えはあたし自身にもさっぱり分かんない…… …… …… …… …… …… …… 二人が――いや二人と古泉一樹が記憶を取り戻すキーワードは存在する。 彼と涼宮ハルヒがこの学校で出会った時に交わした会話がそれ。 その中のひとつでも同じ言葉を交わせば記憶が取り戻される。 記憶の共有によるフラッシュバック現象が記憶を呼び覚ます。 でもそれに気づくことはないはず。 なぜなら二人はまだ会ったことがないことになっているから―― 単に顔を合わせるだけなら問題はない。 しかしもし、そのキーワードを呟いてしまったなら―― …… …… …… その時は―― …… …… …… …… …… …… 「ひょっとしてキョンかい?」 突然、俺の背後から呼びかける甲高く明るい声。ふと振り返れば懐かしい顔がそこにあった。相手もまた、驚きの中にも旧友に出会えた独特のノスタルジック笑顔を浮かべている。 「よう国木田。そういやお前はこの学校だったな」 もちろん、俺もそう思ったさ。 こいつとは中三時代、佐々木ほどではないが親しかったことだけは確かだ。 「北高に遊びに来たのかい?」 小走りに俺に近づいてくる国木田。 しかしこれは願ったり叶ったりだ。なんたって俺は部外者だからな。学校に侵入する凶悪犯罪が増加している昨今、他校の生徒の出入りすらも厳しい視線を向けられるだろうが、在校生が連れ立ってきたならそうは思うまい。 「まあな。たまたまこの近くに寄ったんだが、そう言えば中学時代の連中はどうしてるかな?と考えてな。気づいたらふらふらと敷地内に入ってしまってたぜ。おっそうだ、ちょうどいい。 国木田、この学校を案内してくれないか? せっかく来たからちょっとは見学したいんでね」 「ああ構わないよ。まあ昼休みももうすぐ終わるんで、全部案内はできなくても僕の所属する教室くらいは見て回れるよ」 「それでいいさ」 言って俺と国木田は肩を並べて歩き始めた。 けどちょっと困ったわね。何か目的がある気はするんだけどそれがなんだか分からないだけに勝手に他校の校舎内に入っていい訳ないだろうし…… あたしは校門を目の前にして立ち止まり、腕を組んで口をへの字にして呻吟していた。 もちろんあたしの後ろには古泉くんがいるんだろうけど彼が妙案を考え付いてくれるとは思えない。 だって彼、いっつもあたしに従うだけで自分から何かを提案したって記憶がほとんどないもんね。 まあおかげで扱いやすことは確かだけどちょっと物足りないのよね。 これじゃ(終わりかけとは言え)彼氏と言うより召使いみたいだし。 「あれ? お前、ひょっとして涼宮か?」 「ん?」 呼ばれたんでふとその声の主に視線を向けてみれば、そこにいたのは中学時代の同級生。 む……頼みもしないのに三年連続クラスが同じだったアホの谷口じゃない……むしゃくしゃしているときに余計むしゃくしゃする相手に会ったものね。 と言ってもまあ、何の目的でこの学校に来たのかまだ分かんないけど、どうやらあたしはこいつに会いに来たんじゃない、と言うことだけは確固たる自信を持って言えるわ。だって、こいつの顔見ても何とも思わないし。 「あんた、この学校だったの?」 「相変わらずキッツイ物言いしてくれるな。で、何の用で北高に来たんだ? まさか俺に会いに来たとか?」 全身に寒気が走る谷口のつまらない冗談はスルーして、 「ちょうどいいわ。あんたがこの学校の生徒ってなら好都合よ。ちょっとこの学校を案内してくれる?」 「……少しは俺の話を聞けっての……」 何かほざいたようだけどどうでもいいわよ。さっさと案内しなさい。 あたしの不機嫌極まる鋭いまなざしを受けた谷口はすごすごとあたしたちを案内し始めた。 「へぇ、お前、結構いい席に座っているんだな。俺だったらこの位置、小躍りして喜ぶところだぜ」 「何言ってんだい。それがその学校に行っている生徒のセリフかい?」 俺の素直な感想に国木田が苦笑を浮かべている。ちなみに国木田の座席は窓際後方二番目と言うなかなかのポジションである。この時期の昼からの授業は間違いなく睡魔との闘いになりそうな場所だ。ちなみに俺はその国木田の席に座らさせてもらっているし、国木田は俺の隣の席から話かけてきている。 「俺は自分の素直な気持ちを言ったまでなんだが――って、それにしてもすごい人だかりだな? そんなに他校の生徒が珍しいのか?」 ふと気がつけば教室は勿論、教室の外の廊下にも人だかりが出来ていてなんだか注目が俺に集まっている。 「ううん、他校の生徒が珍しいというよりも、キョンが通っている学校が学校だからね。羨望の眼差しが集まっても仕方がないと思うよ。その制服じゃ」 「そうか? 俺はあんな勉強づくめの学校が凄いとは思わんのだが……」 「在校生じゃ自覚ないのかもね」 そんなたわいもない会話を俺と国木田は続けている。 まあここまで注目されるというのも何か嫌なもんだな。これはさっさと引き揚げた方が―― しかしどういう訳だろう。 俺の心は早く帰りたい、と言っているのに体が言うことを聞かない。 まだここに留まっていたいのか、全然動かないのだ。 「ふうん。ここがあんたの教室ね」 突然、どうにも傲慢な感想の声が聞こえてきた。 「まあな。っておい、どこへ行く?」 少し何かを言いかけた、見るからにお調子者っぽい男子生徒の声を無視して一人の女子高生がこちらに向かってくる。 よく見れば、この学校の制服じゃなくて、地元の私立、光陽園学院の制服っぽいな。 それにしてもものすごい仏頂面はともかく、目鼻立ちは奇麗に整っていてえらい美人だな。それも無茶苦茶ポニーテールが似合っている。非の打ちどころがないとはまさにこのことだ。 そんな不機嫌女はズカズカと教室の中に入ってきて、しかも何の躊躇いもなく俺の後ろの席に座ったのだ。 いったい誰の席かは知らんが、たぶん、この女はぽかぽか陽気に身を委ねて休憩したいのだろう。 なぜかって? 実は俺もそうなんだが、あの急勾配で結構疲れたんだ。だから、こういう柔らかな日差しは実に気持ちがいいものなんでね。 まあこの女の気持ちは分からんでもないさ。 ん? 少し遅れて、今度は学ランの、よく見れば結構ハンサムな男子生徒がこの女の後ろにびしっと気を付けをして突っ立った。 なんかこの立ち位置だとこの女が社長でこの男が秘書っぽい気もするな。 まあどうでもいいが。 「なによ?」 とと、この不機嫌女が俺に問いかけてきた。どうやら結構長い時間俺はこの女に視線を向けていたようだ。 それにしたってもう少し愛想よく聞けないもんかね? 一応初対面だぞ俺たち。しかもお互いこの学校の生徒じゃないわけだし、いきなり第一印象を悪くしてどうするっての。 …… …… …… ……初対面? 本当にそうか? 俺はこの女とどこかで会ってなかったか? いやそんなはずはない。 これだけ目立つ女であれば一目で忘れるわけがないだろう。初対面、と思ったってことは会ったことはないはずだ。 ……と思う。 思うのだが、どういう訳か、また心の中に矛盾が広がる。 そうこの学校に到着する前の心と体が一致していないかのようなあの感覚。 ん? よく見ればこの仏頂面女もちょっと不思議な視線を俺にぶつけているぞ。 と言うか、俺と同じ目をしてないか? つまりは、何かがのど元まで出かかっているのにそれを言葉にできない感覚というかそんな感じのもの。 俺とこの女はしばらく見つめ合った。 お互いがお互いに何かを確かめ合うように。 もちろん、その答えは出てこないがな。たぶん、この女も見いだせていないことだろう。 そして何かモヤモヤする気持ちの我慢に限界が来たのだろうか。まあ正直言って俺もだがな。 この反則的なまでに似合っているポニーテールの光陽園学院女子は片肘付きながら、しかし真摯的な視線で、 「あたし、あんたとどこかで会ったことある? ずっと前に」 と訊いてきた。 「いいや」 と俺は即答して―― 何かが弾けた。 YUKI burst error Ⅲ
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YUKI burst error Ⅶ 「何? スイッチも押してないのに、びっくりするじゃないの」 「タイマーがセットされていたのでしょうか。それにしても、えらく古いパソコンですね。アンティークものですよ」 『あたし』と古泉くんの言葉で今の電子音がパソコンのスイッチだってことは解ったわ。 …… …… …… パソコン……? ちょっと待って。 よく考えてみたけど、この世界の『あたし』はSOS団を立ち上げていない。 あたしがこの部室に来たときはパソコンなんてなかったし、あたしが使っているパソコンはあんな古いパソコンじゃなくてコンピ研から、当時、最新型のものを寄贈してもらったものなのよ。 てことは、あたしがここに来なければパソコンなんて無いはずよ。 それに有希にしたって読書好きだけど自分で書く、なんて姿を見たことないわ。 じゃあどうしてパソコンが必要になるの? まあもしかしたらこっちの世界の有希は書くこともするのかもしんないけど、それでも変。 あのパソコンは電源コードのみだから、文章と印刷だけならこの部室に元々あったワープロで事足りるわ。あのワープロだってここにあったってことは壊れていないはずだもんね。学校なんだから壊れたものであれば早急に処分するし、そうなるまで新しい機材なんて買ってもらえるわけがない。私立ならともかくここは県立高校なんだからお役所仕事で当たり障りなくが学校経営の方針で当然。 ましてやここは零細部の文芸部室。新しい機材を購入してもらえるほどの予算を回してもらえるなんてとてもじゃないけど思えない。 ……元の世界とこの世界の間違い探しで唯一の回答? でもって、それが意味するところは―― 掃除ロッカーの中、あたしは腕を組み、視線をやや下に向けて、右手人差し指と中指を額に当てて推理する。 そんなあたしの耳にパソコンの周りにみんな集まっていることが容易に予想できる大きさでいくつかの声が聞こえてきた。 「どういう意味? なんの仕掛けなの? ジョン、あんたやっぱりあたしをからかっているだけなの? 説明してよ」 まずは『あたし』の声。 あっそうか。さっきはキョンを見つけたことと全然進展しない『あたし』とキョンの会話にイライラして頭に血が上ってたんで気づけなかったけど、よく考えてみれば、こっちの『あたし』はまったく事情を知らないのよね。 だったら解らないことだらけでも仕方ないってもんだわ。 でもまあ今はいいわ。 あたしは『あたし』に構っていられない。もちろん古泉くんにもみくるちゃんにも有希にもよ。 いったいキョンが今、何をやっているのか、それを知ることの方が重要なんだから。 そしてキョンの声が届いてきた。 「長門、これに心当たりはないか?」 「……ない」 「本当にないのか?」 「どうして?」 有希に何かを聞いている。 何を聞いているかを想像するのは容易いわね。 間違いなくパソコン画面にキョンだけが知っている何かが映っているはず。 それは何? でもこれだけじゃまだ、あたしの求めているものと合致するかどうかなんて判断できないわね。 「ねえ、ジョン。どうしたの? また変な顔してるわよ」 「ちょっと黙っててくれ。今、考えをまとめているんだ」 ふっ――そっちの『あたし』ナイス。 今、キョンはパソコン画面に映っている何かに呻吟していることを知らせてくれて嬉しいわ。 それに何か考えているみたいだし。 とと、あれ? 誰かが深呼吸した。 そうね。例えるなら意を決して何かをふっ切るためのように。 「すまない、長門。これは返すよ」 「そう……」 ――!! キョンはこの世界の有希から何かを受け取っていた。それが何かは分かんないけどそれを返したってことはこの世界と決別を誓ったからに他ならない。 もしかしてこれなの? 世界再改変起動プログラムがあのパソコンなの? 「だがな、実を言うと俺は最初からこの部屋の住人だったんだ。わざわざ文芸部に入部するまでもないんだ。なぜなら――」 キョン――! 「なぜなら俺は、SOS団の団員その一だからだ」 続けてくれたキョンの言葉にあたしの目頭がまた熱くなる。でも今度は違う。これは嬉し涙なんだから。 キョンがあたしのSOS団を取り戻すために真剣になってくれていたことが、普段、ぶつくさ文句言っていたキョンがあたしを、そしてSOS団をこんなに大切に思っていてくれたことが嬉しかったから。 もし違うならキョンは世界再改変をしようなんて思うはずがないから。 ぐらん……! って、え!? 感動の陶酔に浸っていた気分もどこへやら。 いきなり、あたしは周りの風景ごと歪んで―― いったい何が……? などと考えようとして、しかしその思考が働き出す前に再び、周囲が正常な姿に戻る。 一瞬、この部室に何か異変が起こったのかとも思っちゃった。 あーびっくりした。 キョンがキーボードの何かのキーを押した瞬間、視界が一瞬全部歪んで渦巻いたように見えたもんね。 もちろん錯覚だろうけど。 ……って、やけに静かね。 キョンは? 『あたし』は? みくるちゃんは? 古泉くんは? 有希は? 念のためロッカーから出るのは自重して耳を澄ませてみる。 …… …… …… …… …… …… ん~~~何にも聞こえない。誰もいないのかな? …… …… …… 誰もいない……? 誰かが入って来ても出て行ってもこのロッカーの中からでも確認できるのよ。 さっき一瞬、世界が歪んだような気がしたけど意識がなくなった瞬間はなかったはずだから…… …… …… …… ピポ ひゃっ! 何? 何? 何の音? って、さっきも聞いたじゃない。あの古いパソコンの電源が入った音よ。 あたしの予想を裏付けるが如く、今度はジジジという音が聞こえてくる。 でも変ね。 もし誰かいるならあのパソコンに反応しても良さそうなものだけど…… 思い切って出てみる? 考えた瞬間、あたしはロッカーの扉を開けた。 久しぶりに吸う空気のなんと清々しいことでしょう。なんたってこのロッカーの仲は煤煙まみれだし。 うわ。服も髪も埃だらけ。 とりあえずパタパタはたき落としながら、あたしは団長席のパソコンを見やる。 幸か不幸か部室にはもう誰もいなかった。 と言うか、もう窓の外が朱色に染まってるし。まだ4時半前だってのにさすがに十二月ね。 それにしてもみんな、どこに行ったんだろう? ……まあいいわ。誰もいないというのなら好都合よ。 さて、いったいパソコンには何が出てるのかな~~~? 興味津々という表情で大きいモニターを見てみると―― YUKI.N>見えてる? はて? ユキ.エヌってことは有希のこと? もしかしてあの有希がチャットでもしてたのかしら? ううん。そんなはずない。だってこのパソコン、電源コードしかないもん。ネットに繋いであるなんてありえない。 ということはこれは―― 頭の中に閃光が走ると同時に、あたしは椅子に跨りモニターと正対した。 仮説は二つに一つ。 単なる消し忘れか、誰かがあたしにあてたメッセージ。 答えはエンターキーを押せばすぐ判明! YUKI.N>良かった。これを見ているということは間に合ったということ。 間に合った? 何が? YUKI.N>世界再構築プログラムは二つあった。ひとつは今、彼が起動させたもの。そしてもう一つは今からあなたが起動させようとしているもの。そして、このプログラムの起動条件は彼がカギを揃えてEnterキーを押し、かつ、この場にこの時間平面の涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、古泉一樹、彼、そしてわたし・長門有希がいないこと。 ……随分と難しい起動条件ね。特に部室に有希がいないなんてこと、どうやったらあり得るのかしら? YUKI.N>今、この画面を見ているのはおそらく涼宮ハルヒ。あなたは時間遡行してここに辿り着いた。 ――!! 嘘でしょ……未来人のみくるちゃんならともかく、宇宙人の有希にそれが分かるなんてどういうことなのよ……? ま、まあ……今はいいわ……それよりも重要なことがあるんだから…… YUKI.N>あなたは周りにいる者達の協力でここにいるはず。彼は半年後のわたしが抹消したはずだが、彼の意思は古泉一樹に伝えられていたと推測できる。古泉一樹はあなたを守り、朝比奈みくるがここに連れてきたことがあなたがここにいる理由。そうでなければここにあなたは来ることはできないし、またあなた以外にここに来れる者は誰もいない。 どうやらあたしの予想、当たったみたい。間に合ったのが何かなんてのはまだ全然分かんないけど。 あたしはこう予想した。 キョンがこの世界のことを知っていて、それを古泉くんが伝えてくれて、みくるちゃんが連れてきてくれた。 とすればもう一人、あたしにヒントをくれる人間がいる。もちろん、それは有希。 有希も何があったかは分からなくても十二月二十日のことは知っていたし。 YUKI.N>なぜ誰もいないのかと言うと彼が時間遡行したことにより世界が改変前の姿に再構築されることが決定したから。その世界では涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、古泉一樹、そして私、長門有希はこの日、この時間、ここではなく別の場所にいる。 まあね。あたしたちはこの日の夕方はキョンが入院している病院にいる。 おっと、今は思い出に浸るんじゃなくて先に進まなくちゃ。 YUKI.N>あなたが出発した時間平面、すなわちこの時間からおよそ半年後において、わたしに再び異常動作が起こったはず。わたしはきっとまた世界を改変したことだろう。 その通りよ。思い出すと辛くなるけどね…… YUKI.N>しかし、そのわたしに害はない。時空改変を実行するが直接的影響はない。 何言ってんの! あなたはキョンを、古泉くんを、みくるちゃんを…… YUKI.N>害が出たとするならばそれは涼宮ハルヒが記憶を取り戻したため。しかし、それは今のわたしの意識が残したノイズによるもの。本来完璧な改変操作が行われたなら涼宮ハルヒに記憶が戻ることはなかった。記憶が戻らなかった涼宮ハルヒは世界再構築を実行しようとは思わないし、『わたし』の邪魔をしない。悪いのはわたし。 えっ!? じゃあ何!? あたしが記憶を取り戻さなければあんなことにならなかったとでも言うの!? YUKI.N>ただ、その世界はこの世界と同じ。それ以上でも以下でもなく平穏。ただし、それが良いか悪いかは私には分からない。 平穏? んな世界なんて願い下げよ! ただ退屈なだけだわ! 戦争は起こってほしくないけど。 YUKI.N>だから私は今、これを見ているあなたに託す。 何を? YUKI.N>世界を元通り構築するか否か。YesならEnterキー、Noならそれ以外のキー。なお、この選択は一回限りである。もし選択しないまま放置した場合、日没とともにこの画面は消え、あなたの存在も消え失せる。なぜなら彼が世界を再構築のための行動を飛ばされた場所で日没後に開始した。ゆえにこのパソコンの存在も日没をもって消滅するから。そして、あなたはこのパソコンが無くなると元の世界に戻れなくなり、再構築された世界では今のあなたはここに存在しないから。 ふうん。じゃあ選択肢は一つしかないわね。もっともそのつもりしかないけど。 YUKI.N>また忠告しておく。 とと。Enterキーを問答無用で押そうとしたんだけど何かしら? YUKI.N>Enterキーを押した瞬間、あなたはとある世界に飛ばされる。その世界とは連結させてはあるが私には行けない場所だった。その世界とは、人間のみならず、ほとんどの温血動物が見るとされる浅い眠りに陥るレム睡眠中もしくは深い眠りであるノンレム睡眠時にPGO波という鋸波状の脳波が、視床下部にある端網様体や、後頭葉にかけて現れて、海馬などを刺激して記憶を引き出し、大脳皮質に映し出される映像に限りなく近い世界。 ん? 夢の世界ってこと? YUKI.N>その世界であなたは一年分、つまり今日今までの記憶が全て消え失せる。しかし時空再構築のためには今日までのことをその世界で思い出さなければならない。理由は夢の中にまで現実の記憶を持っていくことはほぼ不可能だから そうしないとどうなるのかな? YUKI.N>もしその世界の流れのままに現実世界に戻ったときあなたはその流れで昨年の五月に戻される。逆に今日までのことを思い出せばその世界もまたあなたと同じく、元々あなたが居た時間平面と同期され、絶対という保証はなくまた成功するという保証もできないが世界再構築が可能になる。なお、あなたが昨年の五月まで戻った場合、今日までのことが再びループされる。ひょっとしたらあなたは何度かループしてここに辿り着いているのかもしれない。 ――!! YUKI.N>今一度問う。世界を元通り構築するか否か。YesならEnterキー、Noならそれ以外のキー。 Ready? 末尾でカーソルが点滅するのを眺めながら、あたしは少し茫然としてる。 あたしが何度かループしてここに来ているですって……そんなはずない……そんなはずないと思ってるけど…… でも、それなら有希がこの画面を見ているのがあたしってことを分かってても不思議がないことになる…… …… …… …… ふん。だからどうだって言うのよ。だったら何度でもまたここに来てやるわ。あたしからキョンたちを奪うような未来なんて願い下げ! また戻って来ても何度でも繰り返すだけよ! ゴールに辿り着くまでね! Ready? 聞くまでもないわよ! もちろん行くわ! 吼えて勢いよく、あたしはEnterキーを力いっぱい押した。 YUKI burst error Ⅷ