約 798,813 件
https://w.atwiki.jp/zaizen/pages/44.html
ジャパネットたかたへ この手紙をもって、弊社の企業としての最後の仕事とする。 まず、弊社の責任を全うするために、ヤフーにeMacの発送をお願いしたい。 以下に、ゴネ厨駆逐についての愚見を述べる。 ゴネ厨の根絶を考える際、第一選択はあくまで無視であるという考えは今も変わらない。 しかしながら、現実には弊社の場合がそうであるように、起訴された時点で虚偽や取り返しのつかない重大過失がしばしば曝け出される。 その場合には、全社を挙げた隠蔽工作が必要となるが、残念ながら、未だ満足のいく成果には至っていない。 これからのゴネ厨駆逐法の飛躍は、無視以外の対処法の発展にかかっている。 弊社は、貴社がその一翼を担える数少ない企業であると信じている。 能力を持った企業には、それを正しく行使する責務がある。 君にはゴネ厨駆逐法の発展に挑んでもらいたい。 遠くない未来に、ゴネ厨による倒産が、この世からなくなることを信じている。 ひいては、弊社の裁判記録を精査した後、貴社のケーススタディーの題材として役立てて欲しい。 屍は生ける師なり。 なお、自らシステム開発業の第一線にある弊社が早期発見できず、再起不能の価格表示ミスで倒産することを、心より恥じる。 カテナ株式会社
https://w.atwiki.jp/touhourowa/pages/169.html
うたかたのゆめ(中編) ◆Sftv3gSRvM 「……何だか、外が騒がしいわね」 幽々子と妖夢が香霖堂に辿り着いてから、半刻ほどの時を刻んだ頃。 妖夢の世話を一通り終えて、ようやくの一息を入れていた幽々子の耳に、誰かががなり合う声が聞こえた。 当然、それは妖夢にも聞こえていたらしく、すぐさま布団から飛び起き、緊張した面持ちで傘と牛刀を構える。 「……短気を起こしては駄目よ。もしかしたら味方になってくれるかもしれないわ」 「いえ。幽々子様に『もしも』が起こるなど、万が一にでもあってはならないのです。 警戒するに越したことはありません。……どうかお聞き分けを」 「妖夢……」 従者の使命感に取り憑かれた妖夢は、据わった双眸をギラギラ、と滾らせている。 そして、怪我などなかったかのような素早い動作で、居間を囲む襖を取り外し始めた。 視界を開けることで相手の奇襲に備えるそれは、適切な段取りであるとはいえ、どこか時代錯誤的なものが感じられる。 その様子を黙って見ていた幽々子の顔が曇る。妖夢の行動には、明らかに一戦交える構えが見受けられたからだ。 沈痛な面持ちで目を伏せる幽々子の視界に入ったのは、自分の親指に巻かれている包帯。 結局、彼女には妖夢を説き伏せることが……出来なかった。 ―――香霖堂につくなり、幽々子がまず始めたことは、救急箱を探すことだった。 居心地悪そうに佇む妖夢を店の奥に座らせると、棚に陳列されている商品から、店主の指定席である勘定台まで念入りに調べた。 何とかそれらしいものを見つけた後は、妖夢の服を脱がせ、傷口を水で洗い、薬草をすり潰した軟膏を塗りつける。 ついでに、と汗だくだった妖夢の身体を手拭いで拭こうとしたのだが、それは流石に「自分でやります!」と止められた。 左肩の噛み跡も、胸元の裂傷もそれほど重い傷ではなかった。処置も早かったし、これなら傷口が膿む心配もないだろう。 最後に慣れない手付きで晒木綿を巻きつけ、その上に箪笥から見つけた大きめの肌襦袢を着せる事で、簡単な手当は終わった。 その後は、居間の中央に手早く布団を敷き、しばらく横になっているよう言いつける。 半ば放心していた妖夢を力づくで寝かせると、今度は自分のスキマ袋から水と握り飯を取り出し、これを口に入れて精をつけなさい、と差し出した。 下女のように忙しなく動き、甲斐甲斐しく世話を焼く白玉楼の主人に、妖夢は頭がおかしくなりそうなほどに混乱していた。 最早、心地良いなどとは微塵も思わない。あるのは恐縮、困惑、そして―――どうしようもない苛立ち。 甘やかされれば自分は付け上がる。それなのに、幽々子は上に立つ者としてやってはいけない行動を繰り返している。 (幽々子様はそんなに私を堕落させたいのですか。優しくされればされるほど、惨めになるのに……) それでも、柔らかな微笑で労わる幽々子に表立って逆らえるはずもなく、妖夢は渋々ながらも頷いていた。 だが、妖夢にもこれだけは譲れないというラインがある。決して聞き入れられない事がある。 それが、床についた妖夢に話掛けた主人からの、一つの申し出だった。 「……妖夢、聞いて頂戴。今の貴方の体調は、正直芳しいとは言えないわ。 おまけに得意の得物もない。……自分がまともに戦える状態でない所まではわかっているわね?」 「……はい」 「妖夢が私を守りたいと思ってくれる気持ちは、本当に嬉しいのよ。頼りにもしてる。 でもね。貴方の身体が回復し、楼観剣のような刀を手に入れるまでは、貴方に戦う事を禁じます」 「……それは、命令ですか?」 「命令よ」 「私の代わりに、……幽々子様が戦うというのですか?」 「……ええ。だって私には誂え向きな武器があるんですもの。それとも、貴方に銃が扱えるのかしら?」 幽々子はそう言って、脇に置いてあった64式小銃を手に取り、掲げてみせた。 本当のところは幽々子とて、近代武器の知識など無いに等しい。実際に撃ったこともない。 銃の外観を一通り調べて、漠然と撃ち方を覚えた気になっている程度だった。 だが、妖夢を納得させる材料になるというのなら、ハッタリでもなんでも使うべきだろう。 「……」 妖夢は何も喋らない。暗い表情で顔を俯かせて、僅かに拳を震わせているだけだ。 (……悔しいでしょう。悲しいでしょう。無力な自分を呪ってさえいるのかもしれない。 だからこそ、これを糧に一層精進なさい。武芸に励み、未熟な精神を鍛え、過去の己に打ち克ちなさい。 貴方はこれから強くなるの。だから今は、私に頼るのも決して恥ずかしい事ではないのよ) 若い妖夢にはこれから輝かしい未来が待っている。その為にも、目の前の新芽をここで無碍に摘ませるわけにはいかない。 自身に課した誓いを新たにしながら、幽々子が少女の反応を静かに待っていると、突然妖夢が自分のスキマ袋に手を伸ばした。 その突発的な行動に幽々子は思わず面食らってしまう。 スキマから牛刀を手にした妖夢は、両手で柄を持ち直し、目一杯上まで持ち上げた後、そのまま自分の喉笛目掛けて、返す刃を振り下ろ――― 「よっ! 妖夢ーーっ!!」 ―――される前に、絶叫を上げた幽々子が組み伏せることで妖夢の凶行は止められた。 二人の身体はそのまま縺れ、遂には刃物の奪い合いに発展した。 「は、放してっ! 放してくださいっ!!」 「……っ!」 興奮しきっている妖夢の決死の抵抗に、手を伸ばした幽々子の指先が刃に触れてしまう。 反射的に手を引っ込める幽々子の丸めた親指からは血が滴り、真紅の細い川が手首を伝って流れた。 それを見た妖夢の顔が蒼白になる。牛刀を取り落とし、ガタガタ、と全身を震わせ、半泣きになって幽々子の元に跪いた。 「ごっ、ごめんなさい! ごめんなさい幽々子様!! 今、傷の手当を……」 ―――パシンッ!! 慌てた体で、救急箱を探そうとする妖夢の頬に、幽々子の平手打ちが飛んだ。 呆然、と自分が何をされたのか理解しきれないまま、半人半霊の少女は熱くなった頬を抑える。 その耳に飛んだのは、柔和な普段の主人からは考えられない程の激しい叱責だった。 「……このっ、うつけ者! 大馬鹿者っ!! 貴方今、自分が何をしようとしたのかわかってるの!?」 「も、もうしわけ」 「謝る前に申し開きなさい! 何故……なんでこんな……馬鹿なこと……っ」 幽々子のあまりの剣幕に、妖夢は更に怯えの色を強くして、額を低く畳に擦り付ける。 止め処なく溢れる涙は、ポタポタ、と畳にいくつものシミを作った。 しかし、泣いているのは妖夢だけではなかった。 怒鳴り散らす幽々子の喚声も、次第に涙声に変わって行き、言葉尻の方になると嗚咽で詰まり、言葉にならなくなる。 傷ついていない方の掌で顔を覆い、咽び泣く幽々子。妖夢は涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げ、意を決して己の不遜を貫いた。 「分別も弁えず、出過ぎた真似を請うているのは重々承知しています。……ですが! 幽々子様の助けになれないのなら、足を引っ張るくらいなら私は喜んで死を選びますっ!!」 「ふ、巫山戯ないで! 貴方が死んでしまったら何の意味もないじゃない!」 「ふざけてなどいません! 私が使えないというのであれば、どうぞ遠慮なくお切捨て下さい。 私は、幽々子様のお背中に隠れてまで、生き恥を晒すつもりなどありません!!」 「……どうして、どうしてわかってくれないの? こんな殺し合いの場で主従を持ち出した所で、それが何になるっていうの? 私はただ……、貴方と一緒に平和だった日常に帰りたいだけなのに……」 「……私とてその思いは同じです。でも、これだけはどうしても譲ることが出来ないんです。 幽々子様に守られるだけの立場に甘んじてしまったら、私はきっと……」 ……幽々子の警護役でいられなくなる。傍に仕える理由を失ってしまう。 妖夢にとって、それは死ぬよりも辛い恐怖だった。 確かに幽々子は自分よりも強い。彼女に全てを任せれば、二人とも無事に帰れるかもしれない。 少なくとも、満身創痍の自分がしゃしゃり出てくるよりは可能性が高いだろう。 しかし、それでは駄目なのだ。例え無事に帰れたとしても、幽々子の傍にはもういられない。 ここぞの有事に盾にすらならず、脇に隠れて主人の戦いを見守るだけ。どこの世界にそんな警護役がいるというのだ。 例え幽々子が許したとしても、自分の信念がそれを許せそうになかった。 それに、誇り高き魂魄の家名に泥を塗るような不名誉を、我が師も許してくれるはずがない。 幽々子の命令は、妖夢の身体を生かす為だけのもの。これを受け入れれば、魂魄妖夢は死ぬ。 守護者としての矜持が、士の魂が、己の居場所が失われる。それは少女にとって、殺されるのと何ら変わりないのだから。 ―――親の心子知らず 正確に言うと親子ではないが、今の幽々子と妖夢の関係はまさにそれだった。 融通の利かない妖夢は、妥協という言葉を好まない。特に今は自分の進退が懸かった正念場。 何を言おうと折れるはずもなく、幽々子の説得は遂に、……徒労に終わった。 お互い真っ赤に泣き腫らした瞳。ごめんなさい、と何度も謝り倒しながら、幽々子の指の治療をする妖夢。 気まずい空気が流れ、こんなにも近くにいるのに、幽々子にはお互いの心の距離がどんどん離れてしまっているように思えた。 妖夢を諭すのは最早諦めるしかなかった。無理に従わせようとすれば、今度こそ自刃しかねない。 ならば自分は一体どうすればいいのか? ……その答えはもう決まりきっている。 (……仲間を探しましょう。妖夢や私の負担を減らしてくれる同志を集め、大人数で行動するしかない。 紫、藍、閻魔様、小町、霊夢、魔理沙。思い当たるだけでも信用のおける者はそれなりにいるわ。 彼女達が見つかれば、妖夢だってそうそう無茶はしないはず。とにかく今は人手が欲しい。 ……そう考えると、美鈴や静葉と別れたのは早計だったかもしれないわね) 初志貫徹。行動指針は何も変わらない。 いや、最初は死を振り撒く自らの存在を懸念し、誰彼構わず行動を共にするのは憚っていた。 だが今はもうそんなつもりは毛頭ない。妖夢を止められないとわかった以上、相手を選べるほどの余裕がないのだ。 その事に不安を覚えないわけではないが、死の誘いはあくまでも己の意思で操る力。自分が気を付けさえすればそれで済むこと。 願わくば、頭数が揃うまで大きな戦闘は避けたいものだが、そればかりは神のみぞ知る。 ……先の事ばかり考えていても仕方ない、と幽々子は俯いていた顔を上げ、悄然として正座する妖夢の方に向き直った。 「……とにかく、今は休みなさい。足手纏いになりたくないなら、ね」 「……はい」 主人を傷つけた負い目からか、妖夢は素直に頷くと、そのまま用意されていた布団に改めて横になった。 よっぽど疲れていたのか、すぐに浅い寝息が聞こえてくる。 (……せめて今ばかりは、この愚かしいほどに高潔な従者に、どうか一時の安息を) 妖夢の安らかな寝顔を見下ろしながら、幽々子はそう祈らずにはいられなかった。 それから幾許かの時が経ち、幽々子たちは第三者の声を拾うに至る。 距離が離れているからか、誰の声までかはお互いわからなかったが、複数の参加者がここに向かっていることは間違いない。 襖を全て外し終えた妖夢は、次に相手の確認をしようと、店の窓の前に半身だけ乗り出した。 ……ッ、と妖夢の息を呑む音が聞こえた。その尋常でない反応に、幽々子の瞳が不安げに揺れる。 「誰が近づいてるの?」 「……八雲藍と霧雨魔理沙が。その後ろに見たことのない妖精もついてきています」 「……本当?」 ああ、何て僥倖なのだろう、と幽々子の顔が花のように綻んだ。 あの二人……特に藍は、文武共に申し分ないし、何よりあの紫の式だ。十分信用に値する。 妖夢のフォローにうってつけの存在が、向こうから現れてくれたのだ。 突然、降って湧いた事態の好転に、幽々子は見るからに喜色満面の様相でホッ、と胸を撫で下ろした。 「それと」 「まだ何かあるの?」 だが、そんな幽々子の脱力を遮るかのような強い調子で、妖夢は話の続きを切り出した。 蛇足かと思い何の気なく問うたものの、妖夢の顔を見て幽々子は眉を顰めざるを得なかった。 桜色の唇を強く結び、虎視眈々と獲物を狙う鷹のような鋭い瞳で、ある一点を凝視している。 声を掛けられても幽々子の方には振り向きもせず、掠れた声で最後の一人の名前を叫んだ。 「―――フランドール・スカーレットっ!!」 ここ香霖堂は、幻想郷で唯一、魔法の道具から外の世界の道具まで、幅広い分野の商品を取り扱っている古道具屋である。 ただ、店主である森近霖之助の気質に難ありなのか。 売れない、売らない、拘らないの三拍子によって店は大量の用途不明品で溢れ返っていた。 尤も、店主だけにはその名前と用途がわかっているので、それも気にしていないが。 しかし、何も知らない傍から見れば、使い道のないガラクタを後生大事に溜めているとしか思えない。ちなみに魔理沙もその一人だ。 店内だけでは納まらず、店の外にまでガラクタの山を築き上げる香霖堂を前にして。 「……ゴミ屋敷ね。まるで」 フランドールが辛辣な評価を下すのも無理なきことであった。 「まー、その意見には大賛成だが、あれで店の中は意外と居心地がいいんだぜ? 小休止するにはもってこいの場所さ」 魔理沙の微妙なフォローに、フランドールは「ふーん」とあまり興味なさげに相槌を打つ。 その間にも、藍とスターサファイアは、侵入する前に少しでも情報を得ようと、じっ、と香霖堂の全貌を見据えていた。 「……確かに誰かいるな。だけど、匂いも音も薄すぎて特定が難しい。……そっちはどうだ?」 「一人はウロウロ歩き回ってて、もう一人はあまり動いてないね。でもそれ以上のことは」 「十分だ。……それにしても本当に大した制限だな。この白面金毛九尾の狐に、まさか人間の視点を味合わせてくれるとは、ね」 そう言って、スターサファイアの頭を撫でながら、藍は皮肉げに口元を歪める。 柔らかな猫っ毛の黒髪に触れた藍の目が、一瞬だけ悲しみの色を帯びていたことに、スターサファイアは気付かなかった。 「結局、詳しいことはわからず終いか? だったらもうさっさと入っちまおうぜ。実際に会ってみないことには何も始まらないだろ」 「馬鹿を言うな。出会い頭に攻撃されたらどうするつもりだ。 ……とはいえ、忍び込むような真似をすれば、余計な不興を買うしな。さて、どうするか」 「あなたって物事を複雑に考えて、遠回りするのが好きなのね。……狐だからかな? こんなの簡単なことじゃない。敵だったら壊しちゃえばいいだけなんだから」 三者三様の意見は、平行線を辿ったまま、一向に咬み合う気配を見せない。 そんな中、今も香霖堂の気配を探っていたスターサファイアが、突然素っ頓狂な声をあげた。 「……きっ、きた! みんな! 二人ともこっちに向かってる!!」 こっち、とは香霖堂の玄関先のことだろう。つまり謎の人物は、自分たちと邂逅を果たす意思があるという事。 それはこちらを味方に引き入れるためか、それとも……。 「向こうから御出座しってわけか! 話が早くて助かるぜ!」 そう言いつつも、ポケットに入ってるミニ八卦炉を震える手でギュッ、と握り締め、臨戦態勢を取る魔理沙。 「皆、油断するなよ。スターはどこかに隠れてるんだ!」 「う、うん」 スターサファイアに避難を促し、こちらも鋭利な爪をギラリ、と伸ばして、いつでも飛び掛かれるよう構える藍。 「私はとりあえず観戦ね。外じゃあまり戦いたくないし」 日傘を手放せないからか、二人から一歩引いて、それでも弾幕だけはいつでも放てるよう力を蓄えるフランドール。 そして、香霖堂の引き戸がガラガラ、と音を立てて開かれ。 その奥から姿を見せた人物は――― 「いらっしゃい、藍、魔理沙。……そして、悪魔の妹。歓迎するわ」 目元が少し腫れているものの、それ以外はいつものおっとりとした微笑みを讃えた西行寺幽々子と。 「……」 傘と牛刀を構え、血走った目でフランドールを睨み付ける魂魄妖夢の両名であった。 「幽々子様……か!」 「お、お前ら何でこんなところに」 思わぬ人物の登場に目を丸くした藍と魔理沙が、警戒を解いて驚きの声をあげる。 「あなた……あの時の辻斬り魔?」 「……」 一方、フランドールは見覚えのある顔に、片眉を吊り上げて不機嫌そうに呟いた。初対面があれでは印象が最悪なのは無理もない。 だが、妖夢は何の反応も返さない。ジリジリ、と二つの得物を腰溜めに構えて、親の仇を見るようにフランドールを睥睨しているだけだ。 そのあからさまな喧嘩腰の態度が、フランドールの癪に触った。 「……そう。あの時の続きがしたいっていうのね。……いいわ。遊んであげるっ!」 「フランドール・スカーレットォォォ!!」 その言葉を引き金に、激昂した妖夢が地を蹴り、フランドールに襲い掛からんとした、まさにその時だった。 「おやめなさい! 妖夢っ!!」 「……ぐっ」 幽々子の叱咤にピタリ、と妖夢の足が止まる。フランドールも襲撃者ではなく、その主人の方に冷ややかな視線を向けた。 蚊帳の外の魔理沙と藍は、因縁めいた二人のやり取りに、唖然とするしかなかった。 「……うちの従者が大変失礼しました。この異変の熱にあたって、少し混乱しているだけなの。 前回の無礼も含めて、どうか許してあげてくれないかしら?」 「ゆ、幽々子様っ!!」 「貴方は黙ってなさい」 慇懃に礼を取り、午睡の亡霊嬢は破壊の化身に謝罪した。 妖夢が何か言おうとする前に、その後頭部を抑え付け、半ば無理矢理に低頭させる。 それを見ていたフランドールがクスッ、と幼さの残る無邪気な笑顔で、今までのお返しとばかりに目の前の主従を扱き下ろした。 「つまり、犬の躾も出来ていないってこと? だったらあなたはお姉様以下の愚かな主人ね。 咲夜なら頭を下げさせられる、なんて無様を晒したりはしないもの」 「いっ、言わせておけばッ!!」 「妖夢! ……返す言葉もないわ。今後はよく言い聞かせます。……だからここはどうか」 「……ふん」 あくまで許しを乞う幽々子に張り合いを失くしたのか、フランドールは興がそがれたとばかりにそっぽを向いた。 争いを諌めようとする主人の意を汲んだ妖夢も、無言のまま牛刀をスキマの中に納める。 今もフランドールに睨みを利かせているが、幽々子の目もあるせいか、表立った敵視は控えることにしたようだ。 緊迫した空気がようやく薄れたところで、魔理沙と藍が幽々子たちの元へと歩み寄った。 フランドールとスターサファイアは、暇つぶしのつもりか、香霖堂に置いてあるガラクタの山を繁々と眺めていた。 「幽々子様、ご壮健で何よりです」 「貴方もね、藍。その様子だと紫はまだ見つかっていないのかしら」 「……はい。あの方のことですから、そうそう大事には至らないと思うのですが」 「信頼しているのね。……彼女が羨ましいわ」 「は?」 「……独り言よ。気にしないで頂戴」 憂い顔の幽々子と、戸惑い顔の藍が挨拶を交わしているその隣では、魔理沙が少々遠慮がちに妖夢に話し掛けていた。 「……なあ、さっきのあれは一体何だったんだ? フランに個人的な恨みでもあんのか?」 「あんたこそ、どうしてあんな危険な奴を連れて歩いてるの?」 「お、おいおい。そりゃ噂だけ見りゃ警戒すんのもわかるけどさ。それにしたって、さっきのはちょっといきすぎだぞ? これから皆で力を合わせなきゃって時に、わざわざ輪を乱すような真似してどうすんだよ」 先ほどの蛮行をやんわりと窘める魔理沙に、妖夢の顔が険しくなる。 自由を象徴するかのような、勝手気侭な生き方をしている魔法使いと、その双肩に自分の命よりも重い責任を担っている従者。 対照的な両者の思想が交差するはずもなく、妖夢は眉間に皺を寄せたまま、吐き捨てるように呟いた。 「……魔理沙、あんたは何もわかってない」 「あん?」 「魔理沙や霊夢はいいわよ。異変解決の為に沢山の幻想郷の住人と関わってきたんですものね。 皆と力を合わせるって、参加者のほとんどと顔見知りだからこそ言える台詞だって自覚しているの?」 「……そ、そいつは……」 「よく知りもしない相手に、幽々子様の命を預けるなんて、私には出来ない。 あの方たっての願いだから、今はこうしてあんた達と顔を合わせてるけど、本当は……」 「待て。それ以上は言うな。……その先を聞くと、私までお前を信用出来なくなっちまいそうだ」 「……」 片手をあげて、妖夢の吐露を制する魔理沙。 顔を俯かせて黙りこくる妖夢を、幽々子は心配そうに、藍は表情を面に出さずに見守っている。 気まずい沈黙が漂う間も、魔理沙は決して妖夢から目を逸らそうとはしなかった。 頭を冷やすために、すぅ、と一呼吸。普段よりもどこか大人びた顔で、魔理沙は再度の説得の言葉を紡いだ。 「……お前が幽々子を守りたいのはわかってる。 だからこそ、だ。使えるモンは全部使っとけ。……私たちを利用しちまえ。 妖夢が何を思おうが、この戦いはお前らだけで終わらせられるほど甘くない、ってのはわかってるんだろ? 持ちつ持たれつやっていこうぜ。信用云々は後からついてくるもんだ。今ないなら、これから作っていきゃいい」 「……うん」 心を通じ合わせる。それにはまず、その者と関わることから始めなければいけない。 誰だって最初から信頼し合っていたわけではない。 魔理沙と霊夢にも、妖夢と幽々子にも、そこに至るまでの過程がある。思い出がある。 それがないというのなら、新たに作っていけばいいだけなのだ。 ニッ、とはにかむ魔理沙の笑みを見て、妖夢も小さく頷いた後、釣られるように、少しだけ……ほんの少しだけ笑顔を浮かべた。 そんな二人を傍らで見ていた幽々子が、その朱色の瞳をゆっくりと細める。 「……眩いわね。星の光というものは」 「ええ。種族や立場に関係なく、その者のありのままを受け入れ、いつの間にか心を開かせてしまう。 私たち妖怪にはない、非常に稀有な才能と言えるでしょう。……このような殺し合いの場においては、特に」 と、そこへ微妙に口を尖らせたフランドールと、妖夢の存在にびくびく、と怯えるスターサファイアが戻ってきた。 「……ねぇ、話まだ終わらないの? いい加減、ここにいるのも飽きてきたんだけど」 妖夢は、視界に入った吸血鬼を睨み付けようとして、そこで思い直したように、視線を逸らした。 それでも、さりげなく幽々子の前に立つなど、常に一定レベルの警戒心を以って接している。 さして気にした素振りも見せないフランドールは、ふと浮かんだ疑問を妖夢に訊ねる事にした。 「そういえば、あなた……あの『霊魂みたいなもの』はどうしたの? 最初会った時は、周りにふよふよ浮いていたのに、今はないじゃない」 「……ッ!」 ―――その時。魔理沙は見た。藍も聞いた。スターサファイアも、感じた。 妖夢の顔色が明らかに変化した瞬間を。ゴクリ、と白い喉が鳴る音を。 そして、半人半霊の少女の気配が以前のものと比べ、僅かながら変化しているという事実を。 (フランに言われるまで気付かなかったけど、そういえばこの人、最初会った時と気配が違う? 何か足りないような、弱々しくなっているような……、あ~! なんだろうこのモヤモヤ感!) スターサファイアは、心の中でう~ん、と頭を捻る。知恵はあっても知識に乏しい妖精には、これが限界だった。 むず痒い背中に手が届かないような、そんなもどかしさ。違和感は感じているのに、それをはっきりと伝える事が出来ない。 更に妖精は集中力が持続しない。 風船のように膨らんだ違和感は次第に萎んでいき、最後の方になると「ま、いいか」の一言で片付けられた。 「……あ、ああ。多分、この殺し合いの制限のせいだと思う。最初は残っていたんだけど、いつの間にか消えてたんだ。 その事で特に不自由はしてないし、気にしてもいない。……それに、そんな事お前にはどうでもいい話でしょ」 「……確かにどうでもいいけどね」 「ちょっと待て。確か半霊ってお前の一部っていうかお前自身のはずだよな? それなのに、気にしてないってのはどういう事だよ?」 「う、うるさいな! 私は幽々子様をお守りする為にここにいるの! 自分のことなんか考えてる余裕がないのよっ!」 「わ、わかった! わかったから耳元で怒鳴るな!」 魔理沙の質問に対し、必要以上に噛み付く妖夢を見て、藍は疑念を抱かずにはいられなかった。 隣に立つ幽々子をチラリ、と流し見る。 案の定、そこには従者の未熟さに疲れた顔で溜め息を吐いている、亡霊嬢の姿があった。 84 うたかたのゆめ(前編) 時系列順 84 うたかたのゆめ(後編) 84 うたかたのゆめ(前編) 投下順 84 うたかたのゆめ(後編) 84 うたかたのゆめ(前編) フランドール・スカーレット 84 うたかたのゆめ(後編) 84 うたかたのゆめ(前編) 霧雨魔理沙 84 うたかたのゆめ(後編) 84 うたかたのゆめ(前編) 八雲藍 84 うたかたのゆめ(後編) 84 うたかたのゆめ(前編) 西行寺幽々子 84 うたかたのゆめ(後編) 84 うたかたのゆめ(前編) 魂魄妖夢 84 うたかたのゆめ(後編)
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/1893.html
912 :うたかたのユメ ◆6l0Hq6/z.w:2009/05/25(月) 12 10 54 ID VTsS/jPU0 「私は迷惑だと言っているのですが」 「……あのですね。わたし自分の体を兄以外の男の人にさわられたくないんですけど」 ……もう笑うしかないという事態というものが、人生には往々にある。 「はは、言峰のヤツ……こんなに可愛らしい妹が二人もいた事を黙ってるなんて、水臭いにもほどがあるよね?」 言って慎二は可憐の腰と桜の肩を抱き寄せる。 この光景、余人なら『また慎二か』で済ましてしまう光景だろうが、俺の結論は違う。 「へえ、君は可憐……言峰可憐って言うんだ? まったく言峰も困ったものだね。家の事情を知られたくないのは分からないでもないけど、親友の僕にまで黙ってる事ないじゃないか、ね?」 ……彼は勇者だ。 否、勇者なんて表現など生温い。 間桐慎二こそ全ての勇者の頂点に立つ勇者王慎二である。 「ああ、もちろん言峰に含むところがあったなんて思っていないよ? なにしろコイツは教会の孤児上がりだからね。複雑な事情は僕の方から察してやらないとさ」 だから祈らずにはいられない。 間桐慎二に言峰可憐と遠坂桜を受容する度量があらん事を。 「───まあ無理なんだろうけどな」 可憐が天使のように悪魔のように邪悪な笑みを浮かべる光景にたまらず溜め息をもらす。 ……結果は見えている。 見えているのに止めないあたり、言峰士郎は間桐慎二に対してのみ薄情な性格なのか。 それともアイツのように『娯楽』を期待しているのか、言峰士郎の心理はこの俺にも判別が付かない。 「……いいんですか?」 「いいんですかって、なにがだよ」 「だからお兄さんの友人を止めなくていいんですかって」 「慎二だからな」 心配そうな顔をするお子さまに即答する。 この博打、所詮は結果如何によっては俺の利益となる他人事である。 ならばノーリスク・ハイリターンの割の良い賭け事だと納得できようものを。 「お兄さんとあの人がどんな関係か知りませんけど、今のうちに止めないと酷い事になると思いません?」 「かかっているのは慎二の妹萌えっていう幻想というか、傷つきやすい純粋な心というか、まあ手遅れになっても困らないものぐらいだからな。はっきり言って俺の知った事じゃない」 「……やっぱり。お兄さんって身内には冷たい人なんですね」 その評価に、なるほど、と感心する。 言峰士郎の関心は、救わなければならないモノに対してしか働かない。 ならばもう十分に救われているモノ───わざわざ救ってやる必要の無いモノに食指が動くはずがない。 「────────」 ……だったら、俺はなんで。 救わなければならない存在である凛との時間をあんなにも息苦しいと感じ。 救う必要のないモノである可憐や慎二。 そしてこの手で救ったモノである桜との時間をこんなにも愉しいと感じているのか。 その答えが脳裏を掠めるのに気が付いて思考をカットする。 今のは永遠に沈めておくべきものだ。 俺はこの道を選んだ。 綺礼には信仰が無い事を理由に閉ざされた道だったが。 それでも俺は自己の意思を押し通した。 ならばこの道に迷いなんてあってはならないのだから──── 「────、な」 自分の目が信じられないような気持でそれを見る。 気が付けば視界の中心にある正門には一人の少女がいた。 小柄で痩せぎすな肢体を包むのはこの学校の制服。 色素の抜けた金髪の少女は、枯れ果てた聖緑のような瞳を俺に向けて佇む。 『────────』 それは品定めをするような視線だった。 思わず見惚れるほど美しい少女が浮かべるに相応しくない、ひどく冷淡な表情とその視線。 それはまるで独裁者が目の前のモノを生かすべきか、それとも殺すべきかを判別しているような冷酷さで。 「なんで、っ……」 ……ワケが分からない。 どうしてあの子はあんな目で俺を見ているのか。 どうして俺はこんな気持ちであの子を見ているのか。 そして、どうして激しく動悸する心臓が不吉な声で囁くのか。 ドクドクと脈打つ音。 毒々と塗りつぶす声。 アレは敵だ。 アレが敵だ。 アレがオレたちの敵だ。 サーヴァントは全て敵だ。 敵は殺せ。 七体の生贄を炉心にくべて燃料とせよ。 人類最強の魂を養分とする事でオレたちは完成する。 まだ足りない。全然足りない。 あと七体。最低でもあと七体は人柱がいる。 手始めはあの娘だ。 十年前に食いそこなった小娘を食らえ。 なんなら■しても構わない。 それがオレたちの望みだろうに、いつまで自分を偽れば気が済むのだ、と──── 「───大丈夫ですかお兄さん?」 その声で我に返る。 周囲には変わる事のない世界。 見覚えのある校舎と生徒たちの姿。 それはこの俺の世界が反転していないことの証明。 そうだ、俺は何一つ変わってはいない。 その結論を祈るように繰り返して埋没した自己から帰還する。 「やだなあ、そんなに汗かいちゃって……本当に大丈夫ですか?」 目の前には心配そうに見上げてくるアーチャーがいて。 その先の正門には、眩しいほどに金色の髪と吸い込まれるほどに透き通った碧色の瞳の女の子が、知り合いらしい銀髪の女の子に微笑みかける姿しかなかった。 「……今の、は……」 本当にどうかしていた。 綺礼は俺が矛盾していると言っていたが、たとえ時々でも反転した自己を認識すると否定できなくなる。 「なにかよくないモノが見えたみたいですけど───どうせお兄さんとは関係ない人たちなんですから気にしない方がいいですよ?」 その言葉に考える事無くうなずく。 確かに俺には関係のない話だ。 外国からの移民が多いこの街では特に珍しくもない外人の女の子が二人。 言峰士郎にあの二人と関わる理由は存在しない。 「何を見てるんですか?」 「……いや。別に何も見ちゃいないんだが」 「あれ? あの二人わたしと同じクラスの生徒さんたちですよ?」 だと言うのにそれが世の腐れ縁とでもいうのか、呼んでもいないのに口を出してきた妹分はよく分からない説明を続ける。 「たしか銀色の妹さんが衛宮イリヤさんで、金色のお姉さんが衛宮クマ子さんでしたよね?」 「俺に訊くな。指を差すな。変な物を押し付けるな」 なんとも失礼な妹分の頭を叩いて立ち去る姿を見送る。 桜と同じクラスだという女の子が二人。 だがそれだけは関わる理由にはならない。 実際これまで桜の友人だという他人と関わることはなかった。 だからこの時も彼女たちと関わることはないと思っていたのだが。 「すみませんお兄さん、すみません遠坂のお姉さん」 俺たちと一緒に立ち去る姿を見送ったアーチャーが他人事のように続ける。 「急用を思い出しました。マスターには今日中に帰ると伝えてください」 ただの一度も振り返らずにそう言ったアーチャーが、それじゃ、と駆け足で立ち去る。 それは特に気にかける事でもないのに何故か気にかかる。 「……二人とも綺麗でしたよね?」 「二人ってさっきの二人か?」 そんな悩みは露知らず、俺の背中に抱きついた遠坂桜は不機嫌そうに続ける。 「間桐先輩───言峰先輩が鼻の下を伸ばしていた女の人も綺麗でした」 「で……なにが言いたいんだおまえは?」 「……不潔です」 「なんでさ!?」 なぜか剥れる意味不明な妹分を背中から引き剥がして振り向き脱力する。 見れば「むー」と肩を怒らせる桜と意地悪く笑う可憐の中間には、ダンボールに隠れていじける慎二の姿があった。 「やっぱりこうなったか……」 まさに多事多難。 どうしてコイツらは俺を困らせるのかと呆れる一方で、言峰士郎が他人と関わる理由であるトラブルの発生を歓迎する気持ちもある。 とりあえず何を措いても片付けなければならないのは──── ●言峰士郎のステータス(現在凛ルート寄り??ルート) *遠坂桜の言峰士郎に対する好感度初期値(+8)より+1 *間桐凛の言峰士郎に対する好感度初期値(+10)より+6 *間桐慎二の言峰士郎に対する好感度初期値(+10)より+4 *美綴綾子の言峰士郎に対する好感度初期値(+6)より+1 *柳洞一成の言峰士郎に対する好感度初期値(+8) *言峰可憐の言峰士郎に対する好感度初期値(±0) *タイガースタンプ四個獲得 ●遠坂桜ステータス *言峰士郎の遠坂桜に対する好感度初期値(??)より+1 *間桐凛の遠坂桜に対する好感度初期値(??)より+2 *間桐慎二の遠坂桜に対する好感度(+12)より+4 ●間桐凛のステータス *言峰士郎の間桐凛に対する好感度初期値(+6)より+2 *遠坂桜の間桐凛に対する好感度初期値(±18)より-6 *間桐慎二の間桐凛に対する好感度初期値(+12) *三枝由紀香の間桐凛に対する好感度(+6)より+2 ●間桐慎二のステータス *言峰士郎の間桐慎二に対する友情度初期値(+6)より+4 *遠坂桜の間桐慎二に対する軽蔑度初期値(±0)より+1 *間桐凛の間桐慎二に対する哀れみ度初期値(+6) *言峰可憐の間桐慎二に対する嗜虐度初期値(-256)より+512 【慎】何はともあれ慎二の健闘を称えて立ち直らせる(士郎視点、間桐慎二の言峰士郎に対する好感度変動不明) 【妹】慎二はまあ放っておいても大丈夫なので危険ブツの処理を優先する(士郎視点、遠坂桜と言峰可憐の言峰士郎に対する好感度変動不明) 【子】何か嫌な予感がするので金ぴかお子さまの後を追いかける(第三者視点、アーチャーVS.セイバー、凛VS.イリヤの前哨戦勃発、タイガースタンプ一個獲得) うたかたのユメ 第11話 うたかたのユメ
https://w.atwiki.jp/promathiamisson/pages/22.html
第3章<うたかたなる夢> - A Transient Dream 3-1 龍王の導き - The Call of the Wyrmking 3-2 主のなき都 - A Vessel Without a Captain 3-3 ふたつの道 - The Road Forks3-3-A1 瑠璃色の川 - Emerald Waters 3-3-A2 流転 - Vicissitudes 3-3-A3 累家の末裔 - Descendents of Line Lost 3-3-A4 ルーヴランスという者 - Louverance 3-3-B1 をとめの記憶 - Memories of a Maiden 3-3-B2 をかしき祖国 - Comedy of Errors 3-3-B3 をかしき再会 - Comedy of Errors 3-3-B4 をかしき旅立ち - Exit Stage Left 3-4 戦慄き - Tending Aged Wounds 3-5 神を名乗りて - Darkness Named 第4章へ 3-1 龍王の導き - The Call of the Wyrmking バストゥーク共和国の近くに現れたプリッシュは、飛空艇を追っていってしまった。 彼女を追いかけよう。 攻略 南グスタベルグに飛ばされるとイベント、第3章のミッション開始。 バストゥーク港F-7に行くとイベント。 次に大工房H-8にいるCidと話すとイベント。 3-2 主のなき都 - A Vessel Without a Captain ジュノの天晶堂に向かったプリッシュ。 しかし天晶堂で待っていたのは……。 事実をはっきりさせるためにも大公宮へも行かなければならない。 ジュノ下層J-7にあるDoor "Neptune's Spire"を調べるとイベント。 次にル・ルデの庭H-7にある大公宮に行くとイベント。 3-3 ふたつの道 - The Road Forks 少年を捕らえるためには、彼の先回りをしなくてはならない。北の地にあるという 4つ目の母なるクリスタルを探せ。 サンドリア、バストゥーク、ウィンダスへ向かい、30年前に北の地に向かった合同調査隊の[[メンバー]]を訪ねよう。 「瑠璃色の川」か「をとめの記憶」、どちらか好きな方から進めていく。 + 瑠璃色の川 3-3-A1 瑠璃色の川 - Emerald Waters サンドリアから合同調査隊へ選出されたのは、フランマージュ・M・ミスタル。 彼のことを調べなくてはならない。 北サンドリアにエリアチェンジするとイベント。 3-3-A2 流転 - Vicissitudes ウルミアは、サンドリア大聖堂に向かったようだ。彼女を追ってみよう。 北サンドリアM-6にいるArnauに話すとイベント。選択肢はどれでもOK。 次にL-6にいるChasalvigeに話すとイベント。 3-3-A3 累家の末裔 - Descendents of Line Lost フランマージュ・M・ミスタルは、ジャグナー森林の奥、ギルド桟橋付近を治めていた伯爵家の党首だったらしい。 そこにいる使用人に話を聞いてみよう。 ギルド桟橋H-10(ジャグナー森林E-6からギルド桟橋へ)にいるGuilloudに話すとOvergrown Ivy(Morbol族)というNMが出るので倒す。 倒した後再度Guilloudに話すとイベント。 敵名称 魔法/アビ Overgrown Ivy Morbol特殊技 3-3-A4 ルーヴランスという者 - Louverance ルーヴランスという者の助言に従うならば、南サンドリアのヒナリー夫人が、前教皇のことをよく知っているらしい。 南サンドリアB-6にいるHinareeに話すとイベント。 一連の瑠璃色の川終了。 + をとめの記憶 3-3-B1 をとめの記憶 - Memories of a Maiden ウィンダスから合同調査隊へ選出されたのは、鼻の院の研究員イルクイル。 彼のことを調べなくてはならない。 ウィンダス水の区にエリアチェンジするとイベント。 3-3-B2 をかしき祖国 - Comedy of Errors ウィンダスに現れたタルタル3人組は、お父さんを探しているようだ。 それはさておき、イルクイルの話を聞くのならば、鼻の院に行ったほうが良さそうだ。 ウィンダス水の区 南J-9にいるOhbiru-Dohbiruに話すとイベント。 ウィンダス石の区E-5にいるYoran-Oranに話すとイベント。 ウィンダス水の区 北F-10にいるKyume-Romehに話すとイベント。 3-3-B3 をかしき再会 - Comedy of Errors タルタル3人組のせいで、ヨランオランはすっかり混乱状態にあるようだ。 タルタル3人組は次に、金持ちのところにいったようだが…… ウィンダス水の区 南E-7にいるHonoi-Gomoiに話すとイベント、壊れた再生の鏡を入手。 ウィンダス石の区E-5にいるYoran-Oranに話すとイベント。 アットワ地溝K-8にあるLoose Sandを調べるとLioumere(Antlion族)というNMが出るので倒す。 倒した後再度Loose Sandを調べると再生の玉を入手。 J-9にあるCradle of Rebirthを調べると再生の羽と再生の羽2枚目と再生の羽3枚目を入手。 パラダモの丘を登るのに時間がかかりすぎると再生の玉は消えてしまうので注意が必要。 ウィンダス石の区に戻りYoran-Oranに話すとイベント。 敵名称 魔法/アビ Lioumere Antlion特殊技 3-3-B4 をかしき旅立ち - Exit Stage Left ヨランオランが「再生の鏡」を直し始めた。 いまのうちに、あのタルタル3人組を探し出しておこう。 ウィンダス港M-6にいるYujujuに話すとイベント。 ウィンダス水の区 北G-8にいるTosuka-Porikaに話すとイベント。 ウィンダス石の区E-5にいるYoran-Oranに話すとイベント。 一連の「をとめの記憶」終了。 「瑠璃色の川」と「をとめの記憶」を終えたら大工房H-8にいるCidに話すとイベント。 3-4 戦慄き - Tending Aged Wounds もとはといえば、バストゥーク共和国が北の地の調査を発案したようだ。 シドならばなにか知っているだろうか?そして、ジュノの者たちも動き出す。 ジュノ下層にエリアチェンジするとイベント。 次にJ-7にあるDoor "Neptune's Spire"を調べるとイベント。 3-5 神を名乗りて - Darkness Named 突然現れ、医者のところに運ばれたというプリッシュ。 彼女の病とはいったいなんなのか、そしてそれを 治すためには? ジュノ上層G-10にいるMonberauxに話すとイベント。不思議なアミュレットを貸す。 ジュノ下層I-7にいるGhebi Damomoheに話した後、カーマインチップかグレーチップかシアンチップを渡すと500ギルとソ・ジヤ識別札を入手。 + チップの収集方法 カーマインチップ → ソ・ジヤ「Snow Lizard」「Frost Lizard」 グレーチップ → ソ・ジヤ「Diremite Assaulter」「Diremite Dominator」「Diremite Stalker」 シアンチップ → ソ・ジヤ「Treasure Chest」「Archaic Chest」 異界の口にあるMemento Circleを調べるとバトルフィールドに入りイベント。 異界の口への行き方 ボスディン氷河H-8からソ・ジヤへ 赤H-7から次のマップへ 紫I-7から次のマップへ 赤H-7から次のマップへ 紫I-7から次のマップへ I-8から次のマップへ バトルフィールドはLv40制限で人数6人制限。 バトルフィールド名「神を名乗りて」。 バトルフィールドではDiabolosというNMが出るので倒す。 戦闘開始するとパーティ全員が引き寄せられる。 戦闘中に床が抜けていき落ちるとDiremite(Diremite族)というNM6体に攻撃される。 倒すとイベント、称号「夢を断つ者」になる。 敵名称 魔法/アビ Diabolos 引き寄せ アルティメットテラー[範囲/ダメージ無/能力値吸収] カミサドー[単体/ダメージ有/ノックバック] ナイトメア[範囲/ダメージ無/睡眠/バイオ] ノクトシールド[敵単体/ダメージ無/ファランクス] アスピル / スリプガ / スリプルII / ドレイン / バイオII / ブライン Diremite ×6 Diremite特殊攻撃 ジュノ上層に戻りMonberauxに話すとイベント、称号「うたかたなる夢を見し者」になる。 第4章へ
https://w.atwiki.jp/jubeat/pages/1354.html
HAPPY☆きたかた #ref error :画像URLまたは、画像ファイル名を指定してください。 BASIC ADVANCED EXTREME LEVEL 2 5 8 Notes 167 245 457 BPM 172 Time Artist KIRA☆GIRL Version saucer fulfill 動画 -譜面動画 譜面動画 -プレー動画 プレー動画 攻略・解説 各譜面の攻略に関する情報はこちらへ。 [EXT]457ノーツ。S・L・Hなど文字ネタ多数。 -- 名無しさん (2014-05-21 19 08 38) [EXT]文字ネタもそうだが道中には縦スライドと横スライドがある。少ノーツであることを考えるとスコア難易度は高め。 -- 名無しさん (2014-05-21 22 40 55) 遅ズレ…?? -- 名無しさん (2014-05-22 02 34 40) [BSC]Aメロに⑥⑦⑩⑪の真ん中4個押しが3回、Bメロに裏拍リズムが来るので注意。②③⑥⑦4個押しもある。 -- 名無しさん (2014-05-22 20 59 42) [ADV]裏拍でフワッと入る箇所が多い。歌合わせの8分配置も所々に見られる。前半では付点8分の縦3連、後半では8分横移動を叩かされ、全体的にややリズム難。 -- 名無しさん (2014-05-22 21 24 33) [EXT]終盤、「ミラクルタイム」の辺りに⑦⑫⑮同時押しがあり、誤爆しやすい。フルコン狙いは要注意。 -- 名無しさん (2014-05-24 19 50 50) 名前 コメント ※攻略の際は、文頭に[BSC] [ADV] [EXT] のいずれかを置くと、どの譜面に関する情報かが分かりやすいです。 ※体感難易度を書き記す際は、クリア難度・スコア難度のどちらかなのかを明記してください。 また、攻略と関係ない投稿・重複した内容は削除の対象になります 攻略とは無関係の話は該当する欄(情報交換&雑談) にてどうぞ。
https://w.atwiki.jp/galgerowa/pages/404.html
うたかたの恋人(後編) ◆tu4bghlMI 病院に向かう足が無意識に速くなる。 駄目だ……焦ってはいけない。急いては事を仕損じるというではないか。 悠人と別れてから私は一路病院を目指していた。 武がゲームに乗っている、という佐藤良美の台詞は苦し紛れにしてはあまりにも陳腐。 口から出任せを言うにしてももう少しマトモな発想は無かったものかと失笑を隠し得ない。 例えば武が積極的に殺し合いに乗る、と仮定すればその理由は何だろうか。 恐怖に脅え、ただ生き残る為に周りの人間を攻撃する? 私を生き残らせる為に他の人間を皆殺しにする? 馬鹿馬鹿しい。どちらも在り得ない。彼に限ってなら100%、という冠詞を付けても構わない。 武はそんな臆病な人間でもないし、私と彼の関係も一方的な依存から成る薄っぺらいものではないのだ。 互いに相手の力を認め、全幅の信頼で結ばれているのだから。 病院への道の途中、一つアクシデントが発生した。 エリアで言うとE-6に差し掛かった辺りで耳に入った凄まじい轟音、北側から聞こえて来た何かが崩壊する音が聞こえたのだ。 その方向とは高嶺悠人が向かった方角。あのショベルカーが移動していった方向だ。 当然私は逡巡した。ここまであからさまな異常が発生したのだ。何か……策を打つべきではないか、と。 特に情を感じる関係に無いとはいえ、あそこまでの爆音を無視しろ、と言うのは逆に不可能に近い。 しばらく私はその場で立ち尽くしていた。 どうするべきだ、どうする―― 「……はぁっ……ひ……と?」 ■ 「……悠人……が?」 「……ああ。出来れば……少しでも多くの人に、この事を……伝えて欲しい」 彼女、いや現れた少女の身体はボロボロだった。 いや、外傷自体はおそらく大したことは無い。 私基準ではあるが、肩に銃を一発貰っているだけだ。とはいえ、弾丸は貫通しているし、適切な応急処置も施してある。 問題はそれ以上に疲労。 何度も無理やり戦いに狩り出された兵士のように、体中の筋肉が悲鳴を上げている事が簡単に分かった。 加えて心的な疲労も相当なものらしく、心だけが彼女を支えていた。 彼女は私と出会ってすぐ、高嶺悠人に関する話を始めた。 そう、つまりは、彼が凄まじい力を持つ剣に身体を乗っ取られてしまった、という類の、だ。 確かにあの電撃を発するハリセンなど、島内に摩訶不思議な力を持つ道具が存在する事は実際この眼で目撃している。 これを聞いた私はもちろん驚いた。 "永遠神剣"が"永遠神剣の使い手"に渡る事の恐ろしさを説明する彼女は真剣そのもの。 加えて北上したパワーショベルや高嶺悠人、佐藤良美の存在などありとあらゆる情報が、私の持っている情報と一致する。 彼女は――嘘を付いていない。 「分かったわ。私はこのまますぐに病院へ向かう。あなたも――気をつけて」 「ああ……悪いね。そうだ、コレを……」 そう呟くと彼女はデイパックの中から銃器の予備弾を取り出して私に押し付ける。 それはウージーの予備マガジンだった。 私がゲームに乗っていないのを見て、気を回してくれたようだ。 「ありがとう……そうだ。私は小町つぐみ、あなたの名前は?」 「ああ……忘れる所だったよ。……千影だ」 「……え?」 千影。それは忘れたくても忘れられない、だけど実際に出会った経験は無い名前の一つだった。 鷹野三四の話の中で登場した四姉妹。その生き残りのうちの片方。 彼女の台詞がフラッシュバックする。 『彼女達の一番上の姉に火を付けて殺したのが、あなたの大切な人――倉成武だと知ったらどう思う?』 「あなたは捕まった方? それとも、誰かに恋をしている方?」 「…………意味が分からないが……私達姉妹の事を言っているのならば……捕まった方だよ。それに、もう衛くんは……」 "千影"は目を伏せる。そして――私は衝撃を受けた。 『恋をしている方』という曖昧な質問で、彼女はそれを"衛"と結び付けた。 つまり彼女の証言と合わせて、鷹野の四姉妹の記述は間違いではなかった、という事実に繋がる訳だ。 「もう一つ、聞いてもいい?」 「?」 「あなたの一番上のお姉さんの名前を……教えて貰えるかしら」 「!! ……咲……耶だ。でも……何故?」 千影は酷く悲しそうな表情を浮かべた。 その中には明らかに不可解だ、というニュアンスも込められている。 咲耶、という人物が死亡したのは丁度十二時間程前。今更、彼女が争点に挙がるのは珍しい事だろう。 「……それだけ。聞ければ十分だわ。 ごめんなさい……もしかしたら、もう一回謝らなければならなくなるかもしれないけど」 私はそれ以上彼女の顔を見ていられなかった。 それはつまり業。 武が人殺しをしただなんて信じられない。 咲耶、その名前が願わくば武の口から出ない未来を私は祈る事しか出来なかった。 ■ 私が病院に到着した時、もう空は明るく太陽が半ば顔を出していた。 二日目の早朝、もうゲームが開始してから三十時間近く経過した訳か。 病院には悠人達の仲間が集まっていると聞いた。 それはつまり、誰もが鷹野三四を妥当する意志があるもの、という意味だ。 主に島の北部から西部で行動をしていた私と純一にとって、未だ出会った事の無い参加者が多数存在する。 早いうちに彼らとコンタクトを取っておくのは非常に重要な事だろう。 でも可笑しいわね。何人もの人間が集まっている割には静か過ぎるような気もするし。 もしかしてまだ誰も到着していない、とか? ……まさかね。 そんな冗談にもならない事を考えつつ、私は大きな方の建物を目指してその途中にある広場へ足を踏み入れた。 中央に設置された噴水が非常に綺麗だ。この島がとんでもない状況にある事を忘れさせてくれる。 ――ん? 丁度広場の中央辺りに誰かがいる。私は百メートル程先までじっと目を凝らす。 そこにいたのは……髪の長い少女だ。身長も多分170近くあるのではないだろうか。 背中に背負った少年が小さく見える。 そして北と南から走ってくる二つの影。 南から駆けて来るのは青い閃光。 旗のように棚引く長髪と金属の煌き。 まるで足に車輪でも付いているような非常識なスピードの……少女!? 一方北から迫って来るのは―― 「嘘……」 私は思わず持っていたミニウージーを取り落としてしまった。 目の前の光景はそれ程衝撃的で、それ程……信じられない光景だった。 だって、北から刀を上段に構え、中央の少年少女を今にも切り殺そうとしている男は……紛れもなく倉成武その人。 ずっと探し続けていた最愛の人の変わり果てた姿だったのだから。 そして私は目撃してしまった。 スクリーンに映し出される古い映画のワンシーンのような光景。 コマ送りのように時間が流れる。 それはカメラでシャッターを連続で切っているのに似た世界だった。 青髪の少女は走る。だが、間に合わない。 黒髪の少女は声を振り絞り、叫ぶ。足はフラフラで今にも倒れてしまいそうだ。 最初に二人組の少年少女に追いついたのは、武だった。 武は刀を振り翳す。 そして無防備な背中を晒す少年を、明確な殺意で持って――切り伏せた。 ■ 衝撃で少女は前のめりに倒れる。 背負われていた少年は真っ赤な血を背中から噴出し、そしてずり落ちる。 更に一歩踏み込み、武は少女に追撃を加えようとする――が。 「タケシッ!!!!」 ここでついに、青の少女が追い付いた。 地面を蹴り、数メートルの高さまで上昇。そして全体重を掛けて手にしたバットを武に叩き付ける。 しかし、その攻撃は通らない。 すぐさま少女の接近に気付いた武は迎撃体制を取り、刀でソレを受け止める。 「アセリアぁああああああああ!!!! お前も俺を殺そうってのか!!」 「黙れ……ッ!!!」 そして乱激戦。キン、キンと二つの金属が早朝の空気に乾いた音を響かせる。 だが、刀とバットという圧倒的な獲物の差は大きかった。 加えて――力量では遥かに武を凌駕するであろう少女は何故か、"武器を両断される"と言う可能性を考えて戦っているようなのだ。 これは少し不思議な考えだった。 金属バットの材質はジュラルミン。刀は……おそらく鋼鉄だろう。 だが純粋な打ち合いになった場合、壊れるのは刀。刀は切り裂くものであり、衝撃自体にはあまり強くない。 叩き付けるものであるバットとぶつかり合った場合、バットを切断するという展開だけにはならない事は容易に想像出来る。 私は戸惑っていた。 普通に考えれば武に加勢するべきなのだろう。 だが武は今目の前で、中学生程度の少年を切り捨てたのである。 ソレは佐藤良美や鷹野三四が言っていた台詞をそのまま肯定する行動ではないだろうか。 しかも戦っている人間はアセリアというらしい。それは悠人が言い残した信頼出来る仲間の名前。おそらく、ゲームに乗っていない人間だ。 これらから導き出せる結論はつまり――倉成武はゲームに乗っている、これ以外に無くなってしまったのだ。 私は信じたくなかった。 心の底からその過程を拭い去ってしまいたかった。だから――居ても立ってもいられなくなった。 「クソッ……!!!」 「おいおいおいおい!? その程度か、アセリアッ!!! この前より弱くなってるんじゃないかぁ!?」 「武ッッッッッッッッ!!!!!!!」 剣撃がぶつかり合う音を掻き消す――銃声。 地面に落としてしまったミニウージーを拾い上げ、それを天に向けて発砲した。 その場にいた人間、全ての視線が集まる。 「つぐ……みか?」 ■ 戦闘は一時中断。"生きている人間は"全員が私を見ていた。 鉈とウージーを構えつつ、ゆっくりと歩を進める。 目前、十メートル程先にアセリアと武。 切り結んでいた二人は一度距離を取り、睨み合っている。 そんな二人から離れた所に黒髪の少女と学生服を自らの血で真っ赤に染めた少年。 そして、見た限り……少年はもう、息絶えている。 彼が、武が殺したのだ。 「武……どうして……」 私は不安だった。何故、彼がこんな事をするのか分からなかったから。 本当にゲームに乗ってしまったのだろうか。 だとしたらその理由は? そしてそれはあんな少年を殺してしまう程、立派なものなのか。 「やっと会えたか……つぐみ。いやぁ、丁度良かった。手を貸してくれ」 「……? どういう……こと?」 「簡単な事さ――今から、こいつら全員皆殺しにする」 「な……ッ!!!」 期待は、脆くも打ち砕かれた。 『こいつら全員皆殺しにする』 それは純然たる殺意の表れ。しかもソレを私にまで手伝わせようと言うのか。可笑しい変だ間違っている。 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……嘘だ。 「嘘……」 「ん?」 「嘘だって……言ってよ、武!! 冗談なんでしょう? 皆殺しなんて、どうして――ッ!!」 「どうしてって…………妙な事を――ああ、そうか」 彼は少しだけ、考えるような仕草を見せ、数秒後ニヤっと笑った。 醜悪で他人を心の底から不快にさせるような、見たことも無い表情を浮かべる。 「お前、偽者か」 それは残酷なまでに単純な響きだった。 偽物、フェイク、贋作、摸造品。オリジナルの否定。所謂虚偽認定。 武は何気なく、九九を暗唱する小学生のようにその台詞を呟いた。 意味が、分からなかった。 偽者、偽者って何? 私はここにいる。月海つぐみは今、ちゃんと倉成武の目の前にいるのに。 どうしてそんな事を言うの? 何で? どうして? 「……そうか。何だ、佐藤良美の言った通りだった訳ね。"本物"はどこかに捕らえられてるって事か」 彼は自分の中で何かに納得したのだろう。うんうんと数回頷くとペロリと唇の周りを一度嘗め回した。 その結論に何故イエス、と言えるのか私には理解出来なかった。 そしてもう一度こちらを向いた。 「お前、いらないよ」 「目障りだ、不愉快だ。つぐみの姿で現れるなんて、そんな子供騙しが俺に通用するとでも思ったのか? 無駄無駄無駄無駄、もう少し頭を使うべきだったな。 俺とつぐみは深い深い深い深い絆で結ばれているんだぜ? 見た目だけじゃない。心で、な。 俺達は信じあっているんだ。 アイツが殺せと言えば、俺も殺す。俺が殺すんならアイツも殺す。 そういう関係だ。最高の女なんだ、アイツは。だから、アレだ、そうだうん――お前は、死ね」 キュレイウィルスはどんな傷でさえすぐさま治癒する、脅威の力を秘めている。 たとえ刀で切り刻まれようと、銃撃の嵐に身体を抉られても、少し時間を置けば元の健康な身体が修復される。 そう、私には暴力は通用しない。 ナイフもマシンガンもピストルもグレネードも何もかもだ。 ただ一つ、万全な私を傷つける事が出来るものがあるとしたら、それは多分――心に対する暴力だけなのだから。 ■ 武は刀を私に向け、それを軽く振り下ろした。幼い不良がやるような不快な挑発にた下衆びた仕草だ。 私は堪らなく悲しくなった。苦しくなった。 彼はそして一歩、また一歩とこちらに向かって距離を詰める。 「おいアセリア、ちょっと待っててくれ。先にこの偽者、片付けるから」 「…………」 「駄目……下がってッ……彼は……はぁッ……危険、です!!」 彼女は"アセリア"で私は"偽者" もはや一つの個としての存在すら彼には認められていないのだろうか。 黒髪の少女が声を振り絞って危険を促す。ゲームに乗った人間には到底見えない。 それは純粋に私の身の危険を案じた、真摯な叫びだったように思う。 私は、どうすればいいのだろう。 ああ、分かり易い言葉が簡単に頭の中に湧いて出た。『絶望』だ。 ずっと探していた筈の武に、自らの存在を真っ向から否定された。 だけどその姿形声は紛れもなく、彼本人。"偽者"だと言う事を疑う余地もないくらい完全に武だ。 だから考えたくも無いが、恐怖か何かで頭がイカレてしまったとしか思えない。 このまま、素直に彼に殺されてしまおうか。 ……それもいい気がする。そうだ、もうどうでもいい。全部無くなってしまえばいいんだ。 でも――私の身体はそうは思わなかったらしい。自然と銃を彼に向けていた。 どうしてだろう? 疑問に思った。 しばらく考えて分かった。 つまり私は武を愛していた、という事だ。 彼が人を殺す姿はこれ以上見たくないし、誰かに殺される姿も見たくない。 何だろう、この妙な独占欲は。うん、そうだ。こんな……変わり果てた彼を見ていたくない。 「――あなた達には関係ないわ。部外者は口を出さないで」 「えッ……!!」 だから、私はその申し出を断った。 これは二人の問題。いかにこの島で出来た仲間とはいえ、絶対に譲れない領域がある。 「……仲間を殺されて黙っている訳にはいかない」 青の少女が一歩前に出た。どうもコチラに加勢、いや自分が戦おうと言うつもりらしい 小柄な体躯。鎧、青髪。悠人が言っていた同じ世界から呼び出された最後の仲間。 卓越した剣技と強い心を持つ戦士。 仲間を想う心。そんな純粋な感情が今の私には苦痛だった、羨ましかった。 彼の身に何が起こったのかは分からない。 だけど彼はゲームに乗った。それは事実、それは真実。 彼は――変わってしまった。 「アセリア……さん? ゴメンなさい、でもこれだけは私がけじめを付けなきゃならない問題だから」 彼女は不思議そうな顔をしてコチラを見る。 そして数秒後「ユート」と呟いた。私は小さく頷く。 「あなたは……一体……?」 黙ってしまった少女、ではなく腹部に傷を負った背の高い少女が尋ねる。 「……分かり易く言えば」 私は軽く髪の毛を掻き揚げ、武へと向き合った。 彼はそんな私を見て、何故かニヤッと笑った。 それは今まで見た事も無い、邪悪で醜悪で心臓を磔にするような笑顔だった。 私の中の武はそんな風に笑わない。 私の中の武はそんな顔をしない。 目頭が熱くなった。でも涙はまだ溢れない。だって……やらなければならない事があるから。 「子供も……いるくらいの関係。しかも二人。これなら納得する?」 「!? いくら何でもそれは――」 「……普通よ。それに私、四十のおばさんだもの」 背後の少女達に向けて軽く冗談交じりで一言。 返って来た反応は絶句。 ああ絶対に信じてないな、と確信出来る表情を刻んでいる事だろう。 まぁ、普通信じられないだろう。誰が聞いてもおかしいと思うに違いない。 言葉では極めて説明し難い。そんな……関係なのだから、私と武は。 「だから……これは殺し合いなんかじゃないの。ね、武」 「その話、つぐみから聞き出したのか? 良く知っているな。 俺は今からお前を殺す。お前を殺して俺は本物のつぐみを探しに行く――それだけの関係だ。 それに殺し合いじゃないなら、今から俺達がするのは何だって言うんだ?」 次の言葉は武に向けて。だけど返って来た言葉は酷く無常なものだった。 彼が一息に吐き出されたその台詞は私の心を何度も突き刺した。 熟した果実がグチャグチャに潰されて、見るに耐えない物体に変わっていくような、そんな心象風景を垣間見たかもしれない。 「そうね、言うなれば……」 瞬間、耳にノイズが走った。 ああ、もう放送の時間なのかと頭の中の冷静な部分が察知する。 丁度良い、タイミングだ。 だってあと少し遅かったなら、私か武の名前をその場で聞かされる羽目になったかもしれないから。 左手に大鉈、右手にウージー。 対する武は一本の綺麗な装飾を施した刀。 私はほぼ無傷。彼は全身傷だらけ。 鬼が出るか蛇が出るか、厳密には心の柔らかい部分はその結末を予言しているような気もするけれど。 多分、私が死神に憑り付かれてその手を血で染めたとしても、彼は易々と殺されるような選択は絶対にしないだろう。 彼もきっとこうすると思う。だから私もそうする。うん、それでいい。 一歩、足を前へ踏み出す。 そしてどこか虚ろげに、そして、何かを噛み締めるように呟いた。 「単なる――夫婦喧嘩かしら」 【前原圭一@ひぐらしのなく頃に 祭 死亡】 【F-6 病院(広場)/2日目 早朝 放送直前】 【小町つぐみ@Ever17 -the out of infinity-】 【装備:鉈@ひぐらしのなく頃に祭、スタングレネード×6、ミニウージー(24/25)】 【所持品:支給品一式x3、ベレッタ M93R(18/21)、天使の人形@Kanon、バール、工具一式、暗号文が書いてあるメモ、ミニウージーの予備マガジンx4、 バナナ(台湾産)(3房)、倉成武のPDA@Ever17-the out of infinity-、倉田佐祐理の死体の写真】 【状態:健康、肉体的疲労小】 【思考・行動】 基本:武と合流して元の世界に戻る方法を見つける。ゲームを終わらせる。 1:自らの手でけじめを付ける 2:病院に到着後、協力者を連れてホテルに戻る 3:高嶺悠人が暴走した事に対する危機感 【備考】 赤外線視力のためある程度夜目が効きます。紫外線に弱いため日中はさらに身体能力が低下。 参加時期はEver17グランドフィナーレ後。 ※純一 とは音夢の死を通じて絆が深まりました。 ※音夢とネリネの知り合いに関する情報を知っています。 ※北川、梨花をある程度信用しました。 ※投票サイトの順位は信憑性に欠けると判断しました。 ※きぬを完全に信用しました。 ※鷹野の発言は所々に真実はあっても大半は嘘だと思っています。 ※悠人と情報交換を行いました ※千影と報交換を行いました ※武がH173に感染している事を全く知りません。 【倉成武@Ever17 -the out of infinity-】 【装備:永遠神剣第六位"冥加"@永遠のアセリア -この大地の果てで-、貴子のリボン(右手首に巻きつけてる)】 【所持品:支給品一式 ジッポライター、富竹のカメラ&フィルム4本@ひぐらしのなく頃に、投げナイフ2本、ナポリタンの帽子@永遠のアセリア、可憐のロケット@Sister Princess、首輪(厳島貴子)、鍵】 【状態:L5発症、疑心暗鬼最高潮、頭蓋骨に皹(内出血の恐れあり)、頬と口内裂傷(ほぼ回復)、頚部に強い痒み、脇腹と肩に銃傷、刀傷が無数、服に返り血】 【思考・行動】 基本方針:??? 0:L5発症 1:目の前にいる小町つぐみの偽者を殺して本物を助けに行く 【備考】 ※キュレイウィルスにより、L5の侵蝕が遅れていましたが、H173投与後20時間が経過し、戦闘のダメージ、及び気絶後緊張の糸が途切れたため一気に症状が進行し現在L5相当です。キュレイの力が弱まる代わりに、雛見沢症候群によって身体能力が上昇しています(罪滅しのレナ状態) ※前原圭一、遠野美凪の知り合いの情報を得ました。 ※富竹のカメラは普通のカメラです(以外と上物)フラッシュは上手く使えば目潰しになるかも ※所有している鍵は祭具殿のものと考えていますが別の物への鍵にしても構いません ※救急車(鍵付き)のガソリンはレギュラーです。現在の燃料はごく僅かです。何時燃料切れを起こしても、可笑しくありません。 ※キュレイにより僅かながらですが傷の治療が行われています。 ※スピリットの場合、冥加の使用には、普段の数倍の負担がかかります。 ※神剣魔法は以上の技が使用可能です。 アイアンメイデン 補助魔法。影からの奇襲によって、相手の手足を串刺す。 ダークインパクト 攻撃魔法。闇の力を借りた衝撃波で攻撃する。 ブラッドラスト 補助魔法。血をマナに変換し、身体能力を増強する。 【アセリア@永遠のアセリア】 【装備:悟史のバット@ひぐらしのなく頃に】 【所持品:支給品一式 鉄串(短)x1、鉄パイプ、国崎最高ボタン、ひぐらし@ひぐらしのなく頃に、フカヒレのコンドーム(12/12)@つよきす-Mighty Heart-、情報を纏めた紙×2】 【状態:肉体的疲労中、右耳損失(応急手当済み)、頬に掠り傷、ガラスの破片による裂傷(応急手当済み)】 【思考・行動】 基本:ゲームには乗らない 1:二人の戦いを見守る。つぐみが危なくなったら戦いに割り込む。 2:頃合を見て瑞穂とことみとの合流地点(海の家)に向かう。 3:無闇に人を殺さない(但し、殺し合いに乗った襲撃者は殺す) 4:強者と戦う 5:存在を探す 6:ハクオロの態度に違和感 7:川澄舞を強く警戒 【遠野美凪@AIR】 【状態:腹部打撲、背中に血の跡、疲労大、悲しみ、髪の毛ボサボサ】 【装備:永遠神剣第四位「求め」@永遠のアセリア】 【所持品1:支給品一式×2、包丁、救急箱、人形(詳細不明)、服(詳細不明)、顔写真付き名簿(圭一と美凪の写真は切り抜かれています)情報を纏めた紙×2、永遠神剣第六位冥加の鞘@永遠のアセリア -この大地の果てで-】 【所持品:支給品一式×2、折れた柳也の刀@AIR(柄と刃の部分に別れてます)、キックボード(折り畳み式)、大石のノート、情報を纏めた紙×2】 1:??? 【備考】 ※春原陽平、小町つぐみの情報を得ました ※武がH173に感染していることに気が付きました ※永遠神剣第四位「求め」について 「求め」の本来の主は高嶺悠人、魔力持ちなら以下のスキルを使用可能、制限により持ち主を支配することは不可能。 ヘビーアタック 神剣によって上昇した能力での攻撃。 オーラフォトンバリア マナによる強固なバリア、制限により銃弾を半減程度) □ 「はぁっ……はぁっ……」 小町つぐみと別れてから少しの時間が経過。千影は疲労で震える身体を引き摺りながら病院を目指していた。 その心を濡らすのは仲間を想う心、そして一握の不安。 ――悪い予感がする。 今の自分には時詠は無く、明確な未来視を行う手助けとなる道具は存在しない。 元来持ち合わせているある程度の予言能力に頼るしかない。 ひとまずつぐみ君にはミニウージーの予備マガジンを渡しておいたが、逆にその行動が何か最悪の結末を呼び起こす引き金となってしまった気がしてならないのだ。 もしかして『他に何か渡すべきものがあった』のではないか。 そんな信憑性の無い予感が先程から拭い切れない。 一度落ち着いたら、タロットを使って占いをやっておくべきかもしれない。 この疑惑と硝煙の匂いに満ちた島で確信となり得る様子はごく僅かしか無い。 私達は迷う。 私達はもがく。 私達はそれでも必死に光を目指す。 たとえその先に待ち受けている未来がどれほど残酷なものだろうと。 最後に待ち受ける希望のため、歩みを止める訳には行かないのだから。 【E-6上部 /2日目 早朝 放送直前】 【千影@Sister Princess】 【装備:トウカのロングコート、ベネリM3(7/7)、12ゲージショットシェル96発、ゴルフクラブ】 【所持品1:支給品一式×7、九十七式自動砲の予備弾95発、S W M37 エアーウェイト弾数0/5、コンバットナイフ、タロットカード@Sister Princess、 出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭 イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×7 9ミリパラベラム弾68発】 【所持品2 トカレフTT33の予備マガジン10 洋服・アクセサリー・染髪剤いずれも複数、食料品・飲み物多数】 【所持品3 朝倉音夢の生首(左目損失・ラム酒漬け) 朝倉音夢の制服 桜の花 びら コントロール室の鍵 ホテル内の見取り図ファイル】 【所持品4:謎ジャム(半分消費)@Kanon、『参加者の術、魔法一覧』、デザートイーグルの予備弾92発】 【所持品5:C120入りのアンプル×8と注射器@ひぐらしのなく頃に、各種医薬品】 【所持品6:銃火器予備弾セット各100発(クロスボウの予備ボルト80、キャリバーの残弾は50)、 バナナ(フィリピン産)(5房) 】 【状態:洋服の上から、トウカのロングコートを羽織っている。右肩軽傷、 両手首に重度の擦り傷、左肩重傷(治療済み)、魔力残量微量、肉体的疲労極大、深い深い悲しみ】 【思考・行動】 基本行動方針:罪無き人々を救い、殺し合いに乗った者は倒す。 1:病院へと向かう(疲労のため進行速度遅め) 2:アセリアと合流して、悠人への対処法を考える 3:また会う事があれば智代を倒す 4:永遠神剣に興味 5:北川潤、月宮あゆ、朝倉純一の捜索 6:舞を何とかしたい 7:つぐみを心配 【備考】 ※四葉とオボロの事は悠人には話してません ※千影は原作義妹エンド後から参戦。 ※ハクオロを強く信頼。 ※所持品3の入ったデイパックだけ別に持っています。 ※まともな体力が残っておらず、すぐにでも休憩した方が良い状態です。 181 うたかたの恋人(中編) 投下順に読む 182 第五回定時放送 181 うたかたの恋人(中編) 時系列順に読む 182 第五回定時放送 181 うたかたの恋人(中編) 小町つぐみ 184 Ever――移ろいゆく心 181 うたかたの恋人(中編) 千影 184 Ever――移ろいゆく心 181 うたかたの恋人(中編) 一ノ瀬ことみ 187 偽れぬ真実 181 うたかたの恋人(中編) 宮小路瑞穂 187 偽れぬ真実 181 うたかたの恋人(中編) アセリア 184 Ever――移ろいゆく心 181 うたかたの恋人(中編) 前原圭一 181 うたかたの恋人(中編) 遠野美凪 184 Ever――移ろいゆく心 181 うたかたの恋人(中編) 倉成武 184 Ever――移ろいゆく心 181 うたかたの恋人(中編) ハクオロ 185 どんなときでも、ひとりじゃない 181 うたかたの恋人(中編) 大空寺あゆ 185 どんなときでも、ひとりじゃない
https://w.atwiki.jp/uramon/pages/25.html
HN:たんたかたん(*´∨`) 性別:女性 血液型:B型 職業:羽○空港に勤務
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/1895.html
937 :うたかたのユメ ◆6l0Hq6/z.w:2009/06/01(月) 19 18 04 ID mh.Ko94A0 『動かないで! 手当てをするから動かないでください!!』 『……うるさいわね。わたしに拘わるんじゃないわよ、この莫迦……』 他人事のように見つめる先で、鮮やかな朱が怠惰に飛沫を上げる。 赤い地面に吸い込まれるそれは、静かにはじける水滴ではなく無造作に流れる滝のように。 バシャバシャとふざけた音をたてて、鮮血は、彼女の右肩から止め処もなく毀れおちていた。 「────────」 意味もなく熱を帯びた肉体とは裏腹に、思考はひどく冷静に現実を俯瞰する。 冷え切った思考。現実なんて所詮はこんなもんだ、という諦観。 命は塵芥。人間はなんの意味もなく生まれてきて、なんの意味もなく死んでいく。 それが現実というものである事を、言峰士郎はあの火事の中で理解した。 『……っ、今はそんな事を気にしてる場合じゃ───』 『だからうるさい────いいからさっさと退きなさい! 邪魔するならあんたも殺すわよ』 だから当り前のように理解できる。 この女は助からない。 右手を付け根から切り落とされているのが致命的だ。 これでは傷口を縛ることもできない。 それは止血が不可能という事を意味している。 今はただ蛇口と化した少女の肩から、彼女の命は刻一刻と失われていく。 「─────、……」 出血は一リットルに達しようとしている。 それが二リットルを超えた時が彼女の最期。 つまり彼女の余命は残り半分。 そしてその半分を繋ぎ止めるのも絶望的。 『ふんだ、なによその顔? やめてよね、そういう人の無神経に傷ついたっていう顔』 『だめー! くじけそうになる発言は禁止────じゃなくって! どうして貴女はそうなんですか!? いつもいつも……いつもそうやって人に嫌われるような事ばかり言って!!』 赤い女の前に立つ幼馴染は無意味に言い争っていて、 教会の女は目の前の女が敵か味方か判別が付かず、助けるべきかの判別も付かないためこちらを見て待機しているが。 ────たとえこの二人が適切な処置を施しても、既に手遅れの女を助ける事は不可能だ。 「……………………」 確かに魔術を使えば治療も不可能ではない。 先ほど女の兄を治療した教会の女なら止血に必要なスキルを所有しているし、顔を真っ赤にしてわめいている幼馴染が握っている不細工な宝石には、多少の無茶なら押し通せるだけの魔力が蓄えられている。 ならば成る程、右手は元に戻らないかもしれないけど止血ぐらいはできるだろう。 ……だがそれは相手が普通の人間だった場合だ。 この女は普通ではない。彼女の肉体が何らかの魔術で維持されている事を『俺』だけは知っている。 魔術に魔術を重ねる事はできない。 既に魔術がかけられているこの女に魔術をかける事はできない。 故に修復が不可能なほど壊されたこの女を助けるなら────彼女を壊しているものと同じ魔術をもって助けるしかない。 『嫌われたって構やしないわよ……わたしはね、誰の助けも借りないで生きていくんだって、子供の時に決めたんだから……って、なによ士郎? あんたもわたしの邪魔をするわけ!?』 『わたしも決めました……それも3回。子供の時に3回も決めたんです。もう傷ついたふりをして何もしないのは嫌だって……ちょ、ちょっとなんですか言峰先輩!?』 だから俺は躊躇わなかった。 口ではそんな事を言いながら肩を押さえて立ち上がる事もできない彼女。 遠坂桜を押しのけて間桐凛の前にひざまずいた俺は、たった一つしかない魔術回路を『向こう側』と繋げて必要な魔力を汲み上げる。 「…………投影、開始」 そうして起動の呪文を口にする。 言峰士郎は魔術師ではない。言峰士郎は何の魔術も使えない。 だが異能はあった───偽物を組み立てる贋作者の業だけが、言峰士郎に許された唯一の取り柄。 「『────────』」 諦めたように口を閉じる遠坂を例外に、誰もが驚きに目を剥いて俺を見る。 ……当然だ。これは綺礼が俺にした事の再現。 そしてそれを可能とするのは、魔術でありながら等価交換を無視した超能力みたいなものだ。 今の俺を生かしているものを燃料として、それ以外の“何か”を組み立てる能力。 設計図もなくイメージだけで組み立てられるガラクタ───それが失われた右手の代替品となる。 所詮は偽装。この場合、俺の何かを凛の右手に変換しているだけの詐称。 だがそんな魔術でも───そして自分から大切な“何か”が失われる事になったとしても。 それでもこんな自分と引き換えにする事で彼女が助かるなら、言峰士郎にとってこれほど安い取引は、ない。 「────随分不格好な右手ね」 「俺にイメージできるのは自分の右手だけだからな。不格好なのは勘弁してくれ」 不思議と喪失感は無かった。 外郭だけの投影と違って、確実に自分の部品と引き換えにした投影なのに充足感があった。 「まあ教会の代行者に訊いたところによると、人形の手とか使い魔の手でも繋げてしまえば馴染むって言うし大丈夫じゃないかな?」 「……馬鹿ね。わたしに訊いてどうしようってのよ」 くすくす、という笑い声。 間桐凛は憑き物がとれたような顔で笑った。 「まあ、その、なんだ……とりあえず繋げるものを繋げただけで血液は補充してないけど、輸血すれば大丈夫だから……」 「だから?」 魔術的に『繋がった』俺だけに伝わる限界に耐える少女の耳元で囁く。 「これ以上我慢しないで眠っちまえ。痛みとか眠気とかそういうのは訴えなきゃ伝わらないんだからな」 「ふん、言われなくたって寝させてもらうけど……」 「けど、なんだよ凛?」 「……あの子に謝っといてもらえる?」 「あの子ってアイツか?」 「そう、理由は言えないけど……おねがい」 「わかった。理由は訊かないけどおまえが謝ってたって伝えておく」 「よろしくね……ああそれとわたしの寝顔をジロジロ見たら犯すからよろしく」 「……なんでそういう話になるんだおまえは?」 「目には目をって話よ。女の子の寝顔をジロジロ見るなんてどう考えてもそういうコトじゃない……わたしだってそういうのは────」 それで限界だったのか、凛は疲れた子供のように俺の胸に倒れ込んで穏やかな寝息をたてた。 「……もういいんですか?」 「ちぎれた右手をどうにかしただけだ。どこか休める場所に運んできちんと手当をしないとまずい」 荒事は終わった勘違いしたのか、魔術師のスイッチをオフにしたぼんやり風味の幼馴染に答える。 ……まだ何も終わっていない。 凛は右手以外も負傷しているし、彼女がこんな怪我をするにいたった理由───俺たちがここに来た原因でもある戦闘の経緯もようとして知れない。 故にそれらとどう向き合うにせよ、今は安全な場所に移動する必要がある。 「ここから一番近いのはわたしの家ですけど……」 どこか羨ましそうな視線を向けてきた幼馴染は言いにくそうな顔をする。 「……その、理由は詳しく言えないんですけど……わたしの家にその人を運び込むのはちょっと……」 「ああ、あの家は余所者に敏感だからな。俺もさんざん酷い目に遭ったし、最初から考えてないから安心しろ」 端から論外と言わんばかりに決めつけると不満そうな顔をするが、そんな事まで気にしている余裕はない。 周辺には忌避と防音、認識疎外という極めて高度な三重複合結界が張られているが、それは急場凌ぎの簡易的なものだ。 既に綻びが目立ってきた結界が完全に消えるまでに凛の移送と事後処理───アスファルトが剥がれて陥没だらけの道路を調べる事になる警察への根回しをしなければならない。 「なら自分の家だし、凛を運ぶのは間桐の家でいいな」 桜はそれが極めて不適切な対応だと言わんばかりに難しい顔をするが、構ってはいられない。 凛の体を慎重に抱えて立ち上がった俺は、事後処理を頼もうと可憐の方を向いたところで第三者の存在に気がついた。 「…………その女をあの家に運ぶのはまずい」 震える膝に手をついて体を支えるその姿。 「慎二、おまえ……」 「今は理由は説明できないけどね……その女をあの家に戻すのはやめてもらえないかな……」 汗でびっしょり濡れた顔を上げて、間桐慎二は息も絶え絶えにそんな台詞を口にする。 俺は慎二が凛を追い出そうとしているのかと誤解しかけたが、これはどうやらそういう話ではないらしい。 「今は説明できないって言ってたけど、いつか説明してくれるんだろうな、慎二」 「ふん、どうしても知りたきゃその女に訊けよ。……いいから行こうぜ言峰んちにさぁ」 疑問を保留して納得するが、そうすると別の問題が生まれてしまう。 ここは深山町南西部の路上で、俺の家は隣町の新都郊外。 時間にして一時間はかかる距離を、どうやって人目に付かず移動しろというのか……? 「そういう事ならハイヤーを呼びます。教会の息がかかった車ですから安心してください」 そんな俺を見かねて助け船を出す可憐。 助けてくれたコトは嬉しいのだが、そういう笑顔は止めてほしいのが正直なところ。 「……僕も行くけど構わないよね?」 「ああ、おまえは凛の兄貴なんだから、妹についてやるのは当然だろ」 「わたしも行きますけど構いませんよね?」 「いやおまえの出入り禁止は解けてないから自分の家に帰れ。明日は遅刻するなよ遠坂」 顔を真っ赤にして抗議する桜の相手をしながらある終焉を受け入れる。 今日という一日の終り。 それはこれまでの終わりも意味するのか。 アーチャーの不在と凛の負傷───多くの不安を残しての終焉だった。 ○アナウンス *うたかたのユメの初日(昼の部)が終了しました。 *全体ルート『聖杯戦争【序】』を解放。今後の選択肢次第で五回目の聖杯戦争が始まる可能性が生まれました。 *個別ルートは『間桐凛』がヒロインの凛ルートで、物語は彼女を中心として進行しています。 *なお個別ルートは誰の物語を重点的に描くかというものなので、選択肢の積み重ねによって変動します。 *タイガースタンプは規定数(五個)に達しなかったために初期化。今回のタイガー道場はお休みとなります。 *ちなみに藤ねえルートはありませんし、想い人とくっつけようとするだけ無駄です。 *虎はなぜこういう扱いだと思う? もともとそういう扱いだからだというコトで納得のほどを……。 ●言峰士郎のステータス *遠坂桜の言峰士郎に対する好感度初期値(+8)より+2 *間桐凛の言峰士郎に対する好感度初期値(+10)より+8 *間桐慎二の言峰士郎に対する好感度初期値(+10)より+6 *美綴綾子の言峰士郎に対する好感度初期値(+6)より+1 *柳洞一成の言峰士郎に対する好感度初期値(+8) *言峰可憐の言峰士郎に対する好感度初期値(±0)より+2 *タイガースタンプ獲得数初期化(0個) ●遠坂桜ステータス *言峰士郎の遠坂桜に対する好感度初期値(??)より+1 *間桐凛の遠坂桜に対する好感度初期値(??)より+3 *間桐慎二の遠坂桜に対する好感度(+12)より+4 ●間桐凛のステータス *言峰士郎の間桐凛に対する好感度初期値(+6)より+6 *遠坂桜の間桐凛に対する好感度初期値(±18)より-4 *間桐慎二の間桐凛に対する好感度初期値(+12) *三枝由紀香の間桐凛に対する好感度(+6)より+2 ●間桐慎二のステータス *言峰士郎の間桐慎二に対する友情度初期値(+6)より+6 ←これは高ければ高いほどいい *遠坂桜の間桐慎二に対する軽蔑度初期値(±0)より-4 ←これは低ければ低いほどいい *間桐凛の間桐慎二に対する哀れみ度初期値(+6)+1 ←これは高くても低くてもどうにもならない *言峰可憐の間桐慎二に対する嗜虐度初期値(-256)より+2048 ←これはどうあっても天井知らずに跳ね上がる 【幕間『再来』】第四次聖杯戦争秘話、千年の終りと十年の始まり(第三者視点、理想を裏切り理想に裏切られた主従の物語) 【幕間『確執』】十年の溝、引き裂かれた姉妹の隔たり(第三者視点、望まれたものと望まれないものの物語) 【幕間『執着』】そのころウェイバーは恥ずかしい恰好でポージングをしているのを二人のお嬢さまに見られて困っていた(第三者視点、勝ち組だか負け組だかよく分からない青年の物語) 【幕間『キャス子の受難』】そのころ健気に小姑のいじめに耐えていた葛木メディアは地脈の異変に気がついた(第三者視点、負け組なんて気にしない健気な女の子(笑)の物語) うたかたのユメ 第13話 うたかたのユメ
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/1896.html
952 :うたかたのユメ ◆6l0Hq6/z.w:2009/06/08(月) 21 20 05 ID vi0UjRMw0 「……はあっ」 気が付けば溜め息を漏らしていた。 鬱積した胸の内を吐き出す理由には事欠かない。 「キャスターさん、よろしいですか」 本堂の掃除を終えたキャスターを呼び止める声。 きたわね、と身構えた彼女は振り向いて答える。 「はい、なんでしょう?」 やっぱり、と気付かれぬよう溜め息を吐き出す。 まだ肌寒い山の外気に冷やされて、白く結露するそれを憂鬱に見送ってお叱りを待つ。 「障子の桟に誇りが溜まっています。こちらもしっかり掃除しておいて頂きたい」 その叱責に悪意はない。 そもそもこの寺での生活は、自分に割り当てられた仕事を果たすことを前提としている。 「はい。申し訳ありませんでした、一成さん」 故に今の生活を円満に送りたいキャスターは健気に振る舞う。 とても殊勝に申し訳なさそうな顔をして、せいぜい健気に謝罪してみせるのだ。 それは特に耐えられない事ではない。 陰湿な小姑のいじめも、健気な新妻のキャラ立てに必要だと考えれば許容できる。 だから彼女が耐えられないのは──── 「宗一郎兄の近辺をお任せしているのですから、丁寧に。 妹さんの掃除であればこんな手抜かりはありません」 「……はいっ」 …………これだ。 あきれ顔の一成が口にした『妹』という単語が、繊細なキャスターの神経にやすりをかける。 「昨日の事もそうです。なんですかあの味噌汁は、キャスターさん」 「な、何が悪かったのでしょうか!?」 「宗一郎兄の味噌汁は、昆布出汁の白味噌と決まっています。 それを赤出汁、しかも煮干し出汁で腹も取っていない粗野な味。 あんな物を宗一郎兄に飲ませていたとは、あきれて物も言えません」 「もっ、もうしわけありません」 「まったく妹さんに比べれば貴女の味噌汁は『ミッソスープ!』としか言いようのないちぐはぐな代物。 彼女もこの寺に来た頃は散々でしたが、宗一郎兄の為にの一念でここまで上達したのです。 彼女の味噌汁は鰹出汁と合わせみそと木綿豆腐が織りなす、まさに和の原点にして究極。 ああ、それに比べれば貴女のアレはまさにやっつけ仕事っ、少しは妹さんの姿勢を見習いなさい!」 「ああ、もうしわけありません……」 ……そう。優秀な『妹』との比較。 それがキャスターには耐えられない屈辱だった。 「……やはり不満そうですねキャスターさん」 あの女ぁと呪詛をもらして、ハンカチを噛んでいるのを見咎めて一成は続ける。 「掃除も駄目、料理も杜撰! そして洗濯も最悪!!」 「あ、あの……」 「あれも昨日でしたか。 あなたが皺だらけにした宗一郎兄のワイシャツを一点の染みもなく、襟にいたってはアイロンと糊でしっかり立てたのが誰か貴女は知っていますか!?」 「……いえ」 「はあ、やはり貴女は自分のいい加減な仕事を妹さんがフォローしたことを知らないとおっしゃる───不甲斐ないことっ、少しは妹さんを見習いなさい!」 「はうっ……」 妹。妹、妹妹妹妹妹妹いもうといもうとおぉぉおおお……! 「なんですかその目はっ! そもそも貴女は私どもの方から頼んでここに居てもらっているわけではない。 貴女がどうしてもこの寺に置いてほしいと頼むから特別に許可したのですよ!?」 「も、もうしわけ……」 「そんなに嫌なら出ていってももらって構いません。 だいたい食うに困って妹を頼っておきながらなんたる態度! 下がりなさいこのウクライナの田舎女っ!」 「すみませんすみません、お許し下さい一成さんっ!」 「妹さんと宗一郎兄には私から伝えます。あの二人の傍らに貴女は相応しくありませんっ、さっさと荷物をまとめて黒海沿岸の芋くさいコルホーズにお帰りっ!」 「ああ、それだけは、それだけは後生ですお止め下さい一成さん……」 ……などと、まあ。 キャスターの脳内で大いに脚色された上記のようなやり取りを経て、へとへとになった彼女が境内でたそがているところに問題の人物が登場する。 「いま帰った」 ぼそりと呟かれたその言葉にキャスターのとがった耳が反応する。 濃緑色のスーツを纏った痩身。 「そっ……」 「宗一郎さまっ!」 宗一郎さま、と敬愛するマスターに駆け寄ろうとしたキャスターが硬直する。 ぽふん、と可愛らしい音をたてて枯れた長身に飛び込む少女。 年のころ十四歳ぐらいの無邪気な女の子。 キャスターと同じ水色の髪、尖った耳、そして紫紺のローブ。 「────────」 これが妹。 問題の妹。 自分の妹という事になっている少女。 「いま帰った。私の留守中に何事もなかったか、メディア」 「はい特になにも。お帰りなさいませ、宗一郎さま」 憂鬱に見つめる先で、その少女は照れ臭そうにはにかむ。 無表情に訊ねる葛木宗一郎に、頬を赤く上気させて答える少女。 その正体が葛木メディアというのだから世の中侮れない。 「っ……!」 この寺に訪れる参拝客にも評判なおしどり夫婦。 それがこの世界における『自分たち』の姿かとキャスターは憤慨する。 それはもう歳老いた老婆のような心境で世の無情を呪うのだった。 「ふむ、キャスターも息災であったか」 「……はい、お帰りなさいませ宗一郎さま」 かつての自分と連れ添い訊ねる男に返す言葉は重い。 重くならざるをえない。 所詮いまの自分は余所者と理解しても、納得するには程遠い。 納得できるはずがない。 どうして彼の隣に昔の自分がいるのか。キャスターの疑問はその一点に集中する。 虚構の住人であるキャスターがこの時代、この場所に現界している事には理由がある。 そもそもの発端は、魔法少女を自称する人外のキワモノに己が武装を奪われたこと。 自身の英雄としての象徴である宝具ではないが、生前にまだ恋も知らぬ乙女であった頃から愛用していた魔術礼装たる杖。 それが「なんか月っぽいデザインがわたしにぴったりよね」という理由で強奪されてそのままにしておけるはずがない。 故にキャスターは追撃した。ついでだからパンツ見せちゃえ、そっちの方が人気出るだろうし、などと寝言をほざくあーぱー娘を。 だがキャスターは知らなかった。魔法ではなく魔術でもなく魔法少女という概念を織りなす意味不明な法則を。 追いついた先で彼女が目撃したのは、不思議系魔法少女が軍事系魔法少女と仲良くケンカする姿だったのである。 ……この時点でキャスターの命運は尽きていた。 パンツじゃないから恥ずかしくないもんとばかりに空中戦を繰り広げる少女たちが、どんなひいき目で見ても縮退砲とか加粒子砲としか思えないビームを撃ち合う『魔法少女の世界』におけるキャスターのキャラは、魔女。 ただ女性魔術師であるというだけで魔女と略され敵役にされるこの現実。 新たな強敵───ただし二番目か三番目に登場してあっさりとやられる幹部役───を前にタッグを組む二人のヒロイン。 白き月姫ファンタズムーンエクリプスは必殺の真祖ビームを。 魔法少女カレイドルビーは必殺のシュバインシュタインを問答無用でぶっ放し。 二人の色物が放った怪しい光線は、それを浴びたキャスターを魔弾として無限に連なるとされる並行世界の境界をぶち抜いたのであった。 そうして彼女はこの世界の住人となった。 キャスターのサーヴァントとしてではなくキャスターという名前の人間として。 「ところで宗一郎さま……その、今夜も一緒に居ていただけますか?」 「傍に居てほしいというなら傍にいよう」 「あの……実は傍にいるだけじゃなくて、その……」 「それは優しくか? それとも激しくか?」 葛木宗一郎の妻・葛木メディアが存在するこの世界で、皆が呼ぶところの『キャスターさん』は今日もすごい顔をしてかつての自分を睨んでいた。 「やだ、そういう事は他の人がいる所でしないでください!」 「キャスターなら他人ではあるまい」 「えー……たしかにこの人はわたしの姉というコトになってますけど」 ちらり、と口裏を合わせた『姉』のすごい顔を一瞥したメディアは言うのだ。 「なんかこの人ってそういう話をオカズにして自分を慰めてそうじゃないですか! ほら、デバガメとかストーキングとか好きそうな顔だし!!」 “こぉぉおおのぉぉおぉぉんなぁぁ” 自身を知る素晴らしい発言に、キャスターの神経が焼き切れる。 どちらも英霊。望まれた性質が異なるだけの同一人物ではあるが、もし争うとなればキャスターに分がある。 いや正確にはメディアに勝算がない。 所詮は未熟な過去と老成した未来の力関係。キャスターにはメディアを三分で始末する自信があった。 “────────” キャスターは脳内でけちょんけちょんに打ち負かしたメディアを這いつくばらせて「ごめんなさい」と泣き叫ぶ姿を思い浮かべる。 ボロボロに破れたローブの裾を手繰り寄せて、白い素肌を恥ずかしそうに隠して泣き濡れる少女の姿。 それはキャスターの留飲を下げるにとどまらず、彼女の特殊な性癖を刺激せずにはいられない姿だった。 “────うふふ” 暴走したキャスターの思考がバラ色に染まる。 舞台は地下聖堂。かつて降した聖女を幽閉するその地下へ、白いドレスに着換えさせたかつての自分を放り込む。 したたかに打ちつけた腰を撫でて周囲を確認したメディアは、獄中の聖女の哀れな姿に絶句し、これから自身に降り注ぐ運命の過酷さを悟って後ずさる。 少女が聖女の末路を察したように、聖女もまた少女の運命を察して魔女を罵倒する。 囚われの騎士はまだ堕ちていない。 こんな仕打ちに負ける私ではないと気高くある聖女は、だが新たに囚われた少女が自分と同じように扱われる事を容認できないのだろう。 彼女はあらん限りの罵詈雑言を叩きつけるが、しかしその抵抗は魔女を徒に悦ばせるだけだった。 “うふふ、ふふふ” ───この二人を卑しい性奴にする。 キャスターの脳内で炸裂する陵辱は、それを知った見当違いの集団が抗議すること間違いなしのシロモノで。 この世界に流れ着く以前から色んなものを溜めこんでいたキャスターを大いに満足させるが──── “うふふ……って、だからなんだって言うのよ、バカ” 所詮は現実逃避。 あまりの虚しさに脱力したキャスターが顔を上げた時、そこには誰もいなかった。 「……………………」 そういえば「キャスターが何をしているのか判るかメディア?」とか「この人は病気ですから放っておくのが一番です宗一郎さま」とか「そうか、ならば放っておこう」という台詞を耳にしたような気もする。 だがだとしたら余計に虚しい。二重の意味で虚しい。あまりの虚しさにローブをかぶってゴミ袋になりたくなる……というかゴミ袋になった。 そんなキャスターの奇行に最後の女性客がそそくさと退散して無人となった境内で、回収拒否間違いなしのゴミ袋は、現実逃避の延長としてこの世界に来てからずっと感じていた疑問と向かい合う。 この世界はどこかおかしい───それがキャスターの疑問だった。 疑問だったと過去形なのは、彼女がその疑問を確信に変えたからだ。 つまり彼女は気が付いていたのだ。 この世界の成り立ち。この世界の異常さに、彼女ほどの魔術師が気づかない筈がない。 「……そうね。この世界はあの世界の並行世界じゃない事だけは確かね」 並行世界とは、文字通り並び行く世界の事だ。 この世界ではこうだったけれど、もしあの時こうしていたらどうなったのだろう、という疑問が生み出す『この世界』とは一つだけ異なる隣の世界。それが並行世界という『もしもの可能性』の本質。 ここで重要なのは、合わせ鏡の差異は『一つだけ』しか存在しないということ。 なぜなら疑問が生じた瞬間に発生した新たな世界は、基本的に『その可能性』」以外は生み出した世界とまったく同一───少なくとも枝分かれした時点においては。 たとえば「もしあの火事の日に赤い髪の少年を助けたのが衛宮切嗣ではなく、言峰綺礼だったら」という可能性によって生み出された世界があるとしよう。 その場合、その可能性がゼロでない限り、衛宮士郎が誕生する世界が確定する直前に言峰士郎が誕生する世界が枝分かれする。 その分岐を促した要因と、それを取り巻く環境の変化を除いて基本的に同一の合わせ鏡の世界。 そうして分裂した世界からまた新たな可能性が提示され、世界という大樹は無限に枝分かれする───それが並行世界の理。 後世に持ち込まれたこの二番目の奇跡に詳しくないキャスターだったが、その本質を捉えそこなう彼女でもない。 繰り返すがここで重要なのは、合わせ鏡の差異は『一つだけ』しか存在しないということだ。 「だったらここまでふざけた世界はあの世界からどれだけ遠いのかって話よね」 もはやあの世界の人間にはタチの悪い冗談としか思えないほど変貌した世界。 それがこの世界───最低でも十一年前に枝別れして、その間に数えきれないほどの枝葉を挟む最果ての世界。 紫紺のローブを裏返したキャスターは、その中で、ある書類の写しを懐から取り出す。 薄闇のなかキャスターが目を通した書類にはこう書かれている。 曰く、穂群原学園全生徒住所録と──── 「……言峰士郎に、間桐凛、遠坂桜、ね……」 紡がれた不快な響きに顔をしかめる。 それはあの世界の人間に肩入れする自分ならでは反応か。 「……どちらにしろこの世界があの世界の隣ということは無さそうね」 妹の夫に無理を言って手に入れたこの書類に不備がなければ、疑問の発生は十一年前に遡ることになる。 だがそれはあまりに遠い隔たり。 隣り合う世界の差異が一つだけなら、一体ここまで違う世界の間にどれほどの世界があるのか。 たしかにあの時の光は世界の境界に“路”を穿った。 だがさすがにこれほど遠い世界まで───それも間にある世界を悉く貫いたとは思えない。 故にキャスターの結論はこの一点に集約する。 「なら答えは────」 簡単だわ、と続けようとしたキャスターが厳しい顔つきで立ち上がる。 やはり彼女は見逃さなかった。 妹と共同で運営する地脈の異常。 それはこれまで流れ落ちるものだけを集積してきた回路が、足りない分を強引に搾取しようとするものへ変わろうとする瞬間。 「───やっぱりこの世界は誰かの願いをカタチにしようとする世界なのね」 それは微睡の淵に築かれた揺り籠のような虚構。 神代の魔術師は己の手に浮かんだ聖痕を悲しげに見やって嘆息した。 ○アナウンス *キャスターに令呪の予兆が浮かんで『聖杯戦争勃発フラグその1』が成立しました。 *それにともない『深淵に潜むもの登場フラグその1』も成立。 *そして今回この幕間から続く選択肢はなく、他の幕間の中から『正解』を選ぶことでうたかたのユメは初日・夜の部へ続くことになります。 【幕間『再来』】第四次聖杯戦争秘話、千年の終りと十年の始まり(第三者視点、理想を裏切り理想に裏切られた主従の物語) 【幕間『確執』】十年の溝、引き裂かれた姉妹の隔たり(第三者視点、望まれたものと望まれないものの物語) 【幕間『執着』】そのころウェイバーは恥ずかしい恰好でポージングをしているのを二人のお嬢さまに見られて困っていた(第三者視点、勝ち組だか負け組だかよく分からない青年の物語) うたかたのユメ 第14話 うたかたのユメ
https://w.atwiki.jp/ddrdp/pages/1718.html
HAPPY☆きたかた(踊) 曲名 アーティスト フォルダ 難易度 BPM NOTES/FA(SA) その他 HAPPY☆きたかた KIRA☆GIRL 【福島】 2014 踊7 172 218 / 5 STREAM VOLTAGE AIR FREEZE CHAOS 47 43 9 17 5 楽譜面(4) / 踊譜面(7) / 激譜面(10) / 鬼譜面(-) 属性 渡り、リズム難 プレイ動画 https //www.youtube.com/watch?v=0lVfbgv5JRc (x2.0, NOTE) 解説 踊足7らしく8分は少なめ。但しサビの音合せは激以上に合わせ難いので注意 -- 名無しさん (2014-05-23 04 17 50) 名前 コメント コメント(私的なことや感想はこちら) 名前 コメント