約 2,881,217 件
https://w.atwiki.jp/kashiwamochi/pages/21.html
第三十一話の 18さん抽出分 このスレで住人がいちばん驚いた予言系レスがこちら。 今は 200 ◆nsW7hSJzCQさんと名乗っておられます。 別名:御所車さん、御所車の人 ※現在、「200 ◆nsW7hSJzCQ さん発言集」を作成中ですが、 こちらもダイジェスト版として、しばらく残します。 【三十一話より】 18 本当にあった怖い名無し sage 2007/04/03(火) 21 43 09 ID /CV8HxmP0 前々々々々スレから転載 200 名前: 本当にあった怖い名無し [sage] 投稿日: 2007/03/08(木) 11 48 06 ID KYngf8FQ0 皇太子が先に逝くか愛ちゃんが先か・・・ 東宮御所にお迎えらしき御所車行列きてるんですが・・・ 255 名前: 本当にあった怖い名無し [sage] 投稿日: 2007/03/08(木) 19 18 24 ID KYngf8FQ0 218 お迎えは東宮御所です。通過、ではありません。 皇后陛下が御身代わりに・・・というのもありえません。 少なくとも、「御所車」とは無関係。 あれだけ祭祀を真摯にされている陛下に神は無慈悲ではありませんので。 今回お車行列を出されたお引き直衣の御方は とにかく皇太子の行状にお怒りの模様なんです。 頼むから、もうこれ以上怒らせないで欲しい。 326 名前: 本当にあった怖い名無し [sage] 投稿日: 2007/03/09(金) 14 43 15 ID jIBs07pG0 200で東宮に御所車行列が来てるって書いてた方、 ちなみにいつごろからそれが見られるようになりました? 東宮の動静のどこら辺が第?次トリガーになったのか気になる 19 本当にあった怖い名無し sage 2007/04/03(火) 21 43 40 ID /CV8HxmP0 328 名前: 本当にあった怖い名無し [sage] 投稿日: 2007/03/09(金) 15 09 33 ID oPtt9OIe0 326 2月末です>御所車行列 ただ、お怒り状態の「御方」については昨年末から。 かなり耐えてらっしゃった模様ですが。 351 名前: 本当にあった怖い名無し [sage] 投稿日: 2007/03/10(土) 00 07 42 ID PgiWBucJ0 あの状況で悠仁さまが来られたくらいだから、 皇室で何かどうしようもない問題が起きると、それに結果的に 助け舟になるような出来事は起きるような気がする。 だから、正直、誰かさんを御所車が迎えに来てもあまり驚かないかも。 371 名前: 200 [sage] 投稿日: 2007/03/10(土) 11 10 12 ID rn0LbVl40 御所車のお迎え、を書いた者です。 ・お迎えは東宮御所限定 ・赤坂御用邸敷地内の他の宮邸は守護される力が強くなっている ・お迎えをよこされた御方は、お怒りの状態 ・皇后陛下に免じて、引きあげることはない ・雅子のことは完全無視→皇太子妃と認めてない? まずは、噂されるスキー旅行を中止して、皇后陛下のお見舞いに参内することなんですがねぇ。 440 名前: 本当にあった怖い名無し [sage] 投稿日: 2007/03/17(土) 14 13 54 ID t+i2l3GH0 御所車というのは牛車で、普通は牛が牽くんだけど、その牛がいなくて がらがらと走っていく車は死者が死者を迎えにいく、と言われて います。うまく検索できないんだけど、オカルトでは知られた話だと 20 本当にあった怖い名無し sage 2007/04/03(火) 21 44 56 ID /CV8HxmP0 582 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/03/30(金) 18 40 32 ID Lr7FDpTG0 前々スレで「御所車」を書いた者です。 今の御所車の状況を・・・。 ・東宮御所の正面に ・付き従ってきた方々により、宣旨が朗々と歌いあげられるように読まれている 本気で、というかもう、許しすら聴いていただけないくらいに 宣旨を下された御方を怒らせてしまわれています。 594 本当にあった怖い名無し sage 2007/03/30(金) 19 04 03 ID Lr7FDpTG0 588 多分自然な流れでしょう。 三笠長老の宮は赤坂におられても大丈夫です。 秋篠宮邸が今、守りを強くしている最中ではないかと。 (宣旨を下された方の命により) 589 読み上げてますが、長々とかかりますし その間に、行いを改めるなりなんなりすれば すぐに連れて行かれるということはないはずです。 ただ、もっと格の高い方が宣旨というか詔勅携えてお出でになったときは もうどうしようもないかと。 607 本当にあった怖い名無し sage 2007/03/30(金) 20 01 53 ID Lr7FDpTG0 595 実際の時間はつかみにくいのですが 白い花びらが舞終わる頃、のようです。 この「白い花びら」が何かが、はっきりしないものですから・・・。
https://w.atwiki.jp/kashiwamochi/pages/34.html
27話の200 ◆nsW7hSJzCQ さん発言 青色発言が200さんです。 192 本当にあった怖い名無し sage ▼ 2007/03/08(木) 10 32 48 ID /dVuo6KD0 [1回目] 皇室、日本を守る神様は悠仁親王殿下を遣わしてくださったのに、どうして先の大戦で 原爆が2つも落とされるほど多大な犠牲をはらうことから守ってくれなかったんでしょうか。 日本がそのような経験をした意味について考えていきます。 幸い、明治、大正期からの文献を読める環境にいます。 193 本当にあった怖い名無し sage ▼ 2007/03/08(木) 10 37 57 ID pCTU9VuC0 [1回目] 192 だからちゃんと祭祀をやんないと駄目なんだ!って香淳皇后が晩年切れてたとかなんとか 200 本当にあった怖い名無し sage ▼ 2007/03/08(木) 11 48 06 ID KYngf8FQ0 [1回目] 193 祭祀ちゃんとやれ!と切れてたのは貞明皇后 皇太子が先に逝くか愛ちゃんが先か・・・ 東宮御所にお迎えらしき御所車行列きてるんですが・・・ 202 本当にあった怖い名無し sage ▼ 2007/03/08(木) 11 52 37 ID VGObjpL60 [1回目] 200 やっぱり牛が曳いてるんだろうか。>御所車 先頭か最後尾に浜尾さんはいるだろう。 203 本当にあった怖い名無し sage ▼ 2007/03/08(木) 11 52 47 ID vrZQnzMh0 [1回目] どっちも気の毒なんで、できればまs(ry 206 本当にあった怖い名無し sage ▼ 2007/03/08(木) 12 01 54 ID KYngf8FQ0 [2回目] 202 浜尾さんはとりあえず見えません。 お迎えの車からどのような出で立ちのかたが 降り立たれるのかが気になっています。 203 いや、まs(ryだと網代車になるのでは?と・・・ 1月下旬より黄泉比良坂で伊弉冉尊がのたうちまくってます。 当分、何でも起こる状況続きそうです。 218 本当にあった怖い名無し sage ▼ 2007/03/08(木) 13 29 56 ID VGObjpL60 [3回目] 日頃雅子の行状に怒りを覚え、 皇室の歴史と日本の文化に日々再確認し驚愕、 歴史、文化の本を好んでの読み、このスレも書き込んだりする自分が、昨夜 何かに迫られ「トン汁」を必死に作る夢を見た。 俺もちゃんと皇室の動向が探れるような夢を見たい。(涙) 黄泉の国の迎えの車話は面白いなぁ。 東宮御所、なんだね?東宮御所前通過中とかは嫌だよ。 裏日本の大神、大物主とかは何をしているんだろう。 255 本当にあった怖い名無し sage ▼ 2007/03/08(木) 19 18 24 ID KYngf8FQ0 [3回目] 218 お迎えは東宮御所です。通過、ではありません。 皇后陛下が御身代わりに・・・というのもありえません。 少なくとも、「御所車」とは無関係。 あれだけ祭祀を真摯にされている陛下に神は無慈悲ではありませんので。 今回お車行列を出されたお引き直衣の御方は とにかく皇太子の行状にお怒りの模様なんです。 頼むから、もうこれ以上怒らせないで欲しい。 256 本当にあった怖い名無し sage ▼ 2007/03/08(木) 19 36 41 ID 3sEyL/BH0 [2回目] 255 御所車が「カラ」で帰ることはありえますか? 260 本当にあった怖い名無し sage ▼ 2007/03/08(木) 19 49 06 ID KYngf8FQ0 [4回目] 256 カラで帰る可能性、否定はしません。 皇太子がやるべきことを成せば、お引きになるでしょう。 出雲の各神社は徐々に凍り付いたように結界がきつくなってきています。 (黄泉比良坂のこともあるからか?) 皆様方のお近くの神社はいかがでしょうか。 371 200 sage ▼ 2007/03/10(土) 11 10 12 ID rn0LbVl40 [1回目] 御所車のお迎え、を書いた者です。 ・お迎えは東宮御所限定 ・赤坂御用邸敷地内の他の宮邸は守護される力が強くなっている ・お迎えをよこされた御方は、お怒りの状態 ・皇后陛下に免じて、引きあげることはない ・雅子のことは完全無視→皇太子妃と認めてない? まずは、噂されるスキー旅行を中止して、皇后陛下のお見舞いに参内することなんですがねぇ。 418 本当にあった怖い名無し sage ▼ 2007/03/10(土) 18 24 31 ID rn0LbVl40 [2回目] 紀子さまマコカコさま、悠仁さま、今日皇后陛下のお見舞いに行かれたそうです。 皇太子一家は明日だとか・・・はぁ・・・
https://w.atwiki.jp/giurasu/pages/1455.html
公式ページ Q. どこがどうムシャクシャなんですか? A. 武者クシャ という脈絡のないタイトルである端午の節句イベ。 双剣が辿異武器化。 ヴォル「今の新規は知らないだろうなぁ、昔はこの時期に極小個体が暴れていたことを」 クエスト ムシャクシャであった! HR 3~ 目的地 密林 ターゲット クシャルダオラの討伐 特殊条件 節刀【菖蒲】、武者Fシリーズの貸与 普通の上位クシャなのだが、例によって貸与装備のせいでソロだと意外と時間がかかる。HCにはできないので閃光玉は必須。 ガード性能が付いて龍風圧も防げるが耳を塞ぐという、どこぞのフルクシャを彷彿とさせるスキル。 極ノ型なら太刀でもガード性能が有効な時代にはなったが… 武器は火属性。一応クシャには10%通るので、火攻撃カフがあったら付けていこう。 あとは砥石をフルに持ち込んで砥匠効果をなるべく維持しながら戦うと楽。 報酬は過去武器素材(固定)。 笹だんごムシャムシャ GR 200~ 目的地 火山 ターゲット リオレウス(辿異種)の討伐 辿異レウスの討伐クエ。こちらは通常のGR200クエと同様か。 報酬は辿異派生素材。5個で派生、10個で直接生産といういつもの。 武器 双剣「双刀名君・改」 攻撃力 651+龍540 辿異スキル 巧撃強化+1 祭武器のヴォーラ辿異太刀の生産段階と似たり寄ったり。辿異スキルが違う(あちらは属撃強化)。 パートナーに持たせるなら実質同じ武器になる。
https://w.atwiki.jp/jikkyoushugi/pages/203.html
多すぎて全部はまとめきれていないかも。 2人のエルダー小説版 小説版1巻 乙女はお姉さまに恋してる 2 ~二人のエルダー~ (GA文庫) [文庫] 嵩夜 あや, のり太 小説版2巻 乙女はお姉さまに恋してる 2 ~窓越しの異邦人~ (GA文庫) [文庫] 嵩夜 あや, のり太 2人のエルダー漫画版 漫画版1巻 乙女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー (1) (角川コミックス・エース 236-3) [コミック] ういらあくる 漫画版2巻 乙女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー (2) (角川コミックス・エース 236-4) [コミック] ういらあくる 漫画版3巻 乙女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー (3) (角川コミックス・エース 236-5) [コミック] ういらあくる 2人のエルダー アンソロジーノベライズ 処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー 雅楽乃のキモチ (まるち文庫 3) [文庫] 雑賀 匡, konomi 他, キャラメルBOX 処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー 私の嫌いなお姉さま (まるち文庫 4) [文庫] 飯山満 (著), 牧だいきち (イラスト), 水上凜香 (イラスト), 佐倉りお (イラスト), みついまな (イラスト), あらいぐま (イラスト), 卓太郎 (イラスト), キャラメルBOX (監修) 処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー 愛情は最高のスパイス! (まるち文庫 5) [文庫] 雑賀匡 (著), 師走ほりお (イラスト), キャラメルBOX (監修) 2人のエルダー キャラ別ノベライズ 処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー 薫子編 (パラダイムノベルス 475) (PARADIGM NOVELS 475) [新書] 雑賀匡, のり太, キャラメルBOX 処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー 香織理編 (パラダイムノベルス479) [新書] 雑賀匡, のり太, キャラメルBOX 2人のエルダー 4コマ漫画 マジキュー4コマ 処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー(1) (マジキューコミックス) [コミック] マジキューコミックス編集部 マジキュー4コマ 処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー(2) (マジキューコミックス) [コミック] マジキューコミックス編集部 マジキュー4コマ 処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー(3) (マジキューコミックス) [コミック] マジキューコミックス編集部 1作目 キャラ別ノベライズ 処女はお姉さまに恋してる 紫苑編 (パラダイムノベルス 259) (Paradigm novels (259)) [新書] 村上 早紀 , のり太, キャラメルボックス 処女はお姉さまに恋してる 貴子編 (パラダイムノベルス 267) [新書] 村上早紀 , のり太, キャラメルBOX ゲーム攻略 - 処女はお姉さまに恋してる~2人のエルダー~おとボク2攻略 - 七々原薫子 おとボク2攻略 - 神近香織理 おとボク2攻略 - 哘雅楽乃 おとボク2攻略 - 冷泉淡雪 おとボク2攻略 - ケイリ・グランセリウス おとボク2攻略 - 度會史 おとボク2攻略 - スウィート・パニック おとボク資料 - キャラクター一覧 おとボク資料 - 曲名一覧 おとボク資料 - 小説・漫画 ゲーム攻略 - 処女はお姉さまに恋してる~2人のエルダー~ ゲーム攻略 - 涼宮ハルヒの逆転2 ゲーム攻略 - 涼宮ハルヒの逆転3 ゲーム攻略 - フリップニック タグクラウド タケシ クッキングママ もるひね 超魔界村 単発 ゆっくり アメリカ横断ウルトラクイズ ゆとり組 しんすけ ファイナルファンタジー4 リティナ アトランチスの謎 ドラゴンクエスト5 tiger ドラゴンクエスト3 風来のシレン ちょい キミキス クロノクロス 東方アレンジ ロックマン RPGツクール ニコニコRPG ルーツ in those days! データベース 永井先生 アイドルマスター Part1集 ドラゴンクエスト1 ドラゴンクエスト2 ドラゴンクエスト4 ドラゴンクエスト7 ドラゴンクエスト8 ファミコン探偵倶楽部 ARIA D猫殿下 東方風神録 掃除 コラム ふひきー THE推理 ドラゴンクエスト6 りこ けんじろ ファミコン っしー教授 スーパードンキーコング3 してくべ ドグマ風見 ミスピーチワールド ジャック・オ・蘭たん 幕末志士 スーパーマリオ64 はるしげ バイオハザード ゲーム攻略 フリップニック 雪割りの花 あにぃ 桃太郎電鉄 いつもひとり ドリームミックスTV のべるげ メイアン クロノトリガー ペルソナ3 ルカ 朝子 のや ペルソナ4 tpitaru スーパーマリオRPG 処女はお姉さまに恋してる obasan ひぐらしのなく頃に たろちん 突然!マッチョマン ぜろた りーちゃん スパーク マリオカート イボーン テハフ ラジオ ニコ割ゲーム 涼宮ハルヒの逆転 ピクミン 探偵神宮寺三郎 セピア スーパーマリオサンシャイン アニキ 大乱闘スマッシュブラザーズ NewスーパーマリオブラザーズWii ファイナルファンタジー9 ヤス がんばれゴエモン Forget me not -パレット- レトルト かにぱん U1 ICO ゼルダの伝説 神々のトライフォース 汗だく トワイライトプリンセス つわはす クラッシュバンディクー つわはす.ディディーコングレーシング ハローキティといっしょ! ブロッククラッシュ123! ! Rabi 青鬼 ファイナルファンタジー6 ときめきメモリアル クラッシュバンディクー2 学校であった怖い話 Revin ファイナルファンタジー3 ムク 東方神霊廟 スネークズリベンジ 最終兵器俺達 キヨ 名探偵コナン ファイナルファンタジー8 フジ 鬼畜王マリオ 改造マリオ クラッシュバンディクー3 アブ はーとふる彼氏 星のカービィ 終わらざりし物語 自作ゲーム ゲーム音楽 音楽 藤原 タカ ティタン ドラえもん やりこみ 任天堂 2ch系テキスト Multimedia Fusion 2 hsp スーパーマリオブラザーズ2 金田一少年の事件簿 宮助 大魔司教ガリウス 紫苑 せんとす スペースチャンネル5 ニンテンドーDS ソニックアドベンチャー2
https://w.atwiki.jp/allmiccore/pages/163.html
BGMききたい ネタバレ注意! 学怖(S) 『学怖(S)』のBGMはこちら 晦 『晦』のBGMはこちら VNV 『VNV』のBGMはこちら AMC1 『AMC1』のBGMはこちら レンタル 『レンタル家族』のBGMはこちら AMC2 『AMC2』のBGMはこちら 学恋 『学恋』のBGMはこちら 学恋2 『学恋2』のBGMはこちら 特別編 『特別編』のBGMはこちら 情報提供・文章の補足、編集方針の動議その他諸々歓迎します。 もし興味を召されたなら下のコメント欄に書き込みなどされると嬉しいです。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/niconicojikyouplay/pages/1721.html
実況者別(五十音順) 実況者名 「動画タイトル」 [部分編集] ら行 らさ 【ライブアライブ】幼女時代に投げたゲームを実況プレイ 【完結】 【moon】ゲームの中に入るゲームをゲーム実況プレイ Luck 眼鏡がエリア88に挑む 【完結】 眼鏡2匹が徳川埋蔵金に挑む 【完結】 眼鏡がサンサーラ・ナーガ2に挑む 【完結】 眼鏡がクロックタワーに挑む 【完結】 眼鏡が魔獣王に挑む 【完結】 眼鏡がサイレントヒル3に挑む らりお ディズニー好きの俺がアリス イン ナイトメアでウギャアアア 【完結】 血でビビる俺がブラッドレインでイヤァアアア! 【完結】 カオスなフリゲ「シルフェイド見聞録」をラリテンションで実況 ドリルなホラーゲー(笑)「ぐるみん」を楽しくお喋りプレイ りーこ シャドウハーツで実況プレイをしてみた。【完結】 バイオハザードで実況プレイをしてみた。【完結】 バイオハザード2で実況プレイをしてみた。【完結】 バイオハザード2(裏)で実況プレイをしてみた。【完結】 バイオハザード3で実況プレイをしてみた。【完結】 バイオハザードコードベロニカで実況プレイをしてみた。【完結】 バイオハザード4で実況プレイをしてみた。【完結】 バイオハザード0で実況プレイをしてみた【完結】 バイオハザード(GC)で実況プレイをしてみた。 リーゾ ルーンファクトリーフロンティアをツンデレ実況プレイ りこ 【伝説のオウガバトル】ぐだぐだ喋り初プレイ りこ&けんじろ(強欲の嫁) 俺の嫁に実況しながらDQ3をヤらせてみた【完結】 俺の嫁が鞍替えしながらロマサガ2実況プレイ [リティナ] ヘラクレスの栄光3に初挑戦(実況 リトル リトルの実況『 Knight_Night 』【完結】 【リトルの実況】 - 『 ロックマン7 FC 』【完結】 りべ 【ロックマン3】僕は卑怯者なんかじゃない!【藤木の誠実プレイ】 亮 クロノトリガー 噛み倒し実況プレイ 【完結】 スーパーマリオRPG低レベルで噛み倒し実況プレイ 【完結】 女友達とぷよぷよ通二人プレイ 【完結】 噛み倒しの人が女友達にドラクエ5を実況させてみた 痛い人と噛み倒しの人のボンバーマン5実況プレイ 【完結】 RPGツクールの傑作 ラブレジェンド 噛み倒し実況プレイ 【完結】 ロックマンゼロ 噛み倒し実況プレイ 【完結】 諒子 一番不得意ジャンルに挑戦! 実況プレイ タクティクスオウガ 諒子 RYOJOKU-TYPE 友人と『東方風神録』を実況しながらやってみた。 【完結】 友人と『東方永夜抄』を実況風にやってみた。 【完結】 友人と『東方紅魔郷』を実況しながらやってみた。 【完結】 友人と『東方妖々夢』を実況しながらやってみた。 りる* 必死に実況プレイ ドラクエ5【完結】 お嬢が如く、必死に実況初プレイ 龍が如く るーい ロックマン7で初実況プレイ! 【完結】 星のカ-ビィをプレイ(実況つき) 【完結】 星のカービィ2を癒されながらプレイ(実況つき) 【完結】 夢の泉の物語を癒されながらプレイ(実況つき) 【完結】 【SFC】クロックタワーを実況しながら挑戦してみる 【完結】 星のカービィSDXを癒されながらプレイ(実況つき) 【完結】 ワンダープロジェクトJをクリアするまで実況プレイ! 【完結】 負けても頑張るロックマンXクリア目指して実況プレイ(癒しも少量) 【完結】 カービィ64を癒されながら実況してゆっくり楽しみたい 玲印どりる 【玲印どりるの】下手がベタンと聞いてDQMJ2初見実況【実況プレイ】【完結】 【玲印どりるの】下手がクリア後のDQMJ2も初見実況シリーズ【実況プレイ】【完結】 レゲパン 【実況】 慟哭そして・・・ 【完結】 【実況】 黒の断章 【完結】 【実況】 EVE ng recog 【ゲーム実況】勘当覚悟でバイオハザード4をプレイしてみた / recog Revin 学校であった怖い話に屈しない FF3やで 晦~つきこもり~に屈しない 連呼ちゃん ツッコミができないこがバイオハザードをやってみた。 【完結】 ツッコミができないこのバイオハザード3 【完結】 ツッコミができない姉とできる妹がバイオハザードUC 【完結】 ツッコミが微妙にできるこのどうぶつの森e+ 【完結】 ツッコミができないこのバイオハザード0【完結】 ツッコミができないこのクロックタワー3【完結】 ツッコミができないこのFF4 ロウ&ヒロセ イース3を二人で実況プレイ【完結】 SFC牧場物語でスローライフ【二人で実況】【完結】 翼の折れた天使たちがサガフロンティアを実況 罰ゲームでスペランカー実況解説全部俺【完結】 GB名作実況~カエルの為に鐘は鳴る【完結】 【フルボイス気味実況】ワンダープロジェクトJ【2週目】【完結】 【同人ソフト】 ティルキッスを実況するのじゃ。【完結】 【ホラーゲーム】コープスパーティーを実況プレイしてビビる。 よいこの戦国ランス実況 ロジャー ロック 12年ぶりにヒーロー戦記を初実況プレイ 心にふれたいのでシャイニング・ウィンドを実況プレイ ろばおうじ FF1初プレイ(気まぐれ実況) ロフ 【実況プレイ】スプリンターセル コンヴィクション マルチプレーを実況してみた【完結】 【実況プレイ】DEMENTOをビビりながら実況プレー 【実況プレイ】LOST PLANET2 デカブツモンスターは俺が狩る!!実況プレー 【実況プレイ】アーミーオブ ツー 協力プレーを実況していくよ!
https://w.atwiki.jp/city_blues/pages/189.html
ジャバウォック、高槻涼の威容を見て逃げ惑う市民に混じり、ロベルタは街を走っていた。 最早市民は恐慌状態にあると言っても良く、蹌踉とした足取りで場から遠ざかろうとする者が殆どの中に在って、 ロベルタは、実に確固とした足取りでその場から急いで離れていた。もしも、潰乱状態の市民達の中に、ロベルタの今の状態に気付ける者がいたら、 きっと、妙に思える事であろう。そもそもロベルタは、あの化物が攫って来た人物なのではないのか? そんな、一番恐怖の最前線に立たされていた彼女が何故、一番冷静なのか、と。 ウラを明かしてしまえば何て事はない、高槻とロベルタがグルであった、と言うだけだ。 だが、走り方こそ市井の一般住民のそれとは違うが、何かから逃げている、と言うのは本当の話である。 ジョナサン・ジョースター。自らの爪を拳銃並の速度で射出する、異端のアーチャーのマスター。 初めて言葉を交わした時、ロベルタは、何と甘い男なのだろうかと彼を嘲笑していた。 血が香り、死神が魂を刈り取らんと彷徨う、戦場の住民であったロベルタは、ジョナサンはこの聖杯戦争を生き残れはしないだろうと踏んでいた。 理想主義者と平和主義者は、買えないおもちゃを親にねだる駄々っ子と同じである。叶わぬ願いを求めて走る個人など、馬鹿を通り越して愚かである。 ……だと、思っていたが。 糖蜜よりも甘い男だと侮っていた男から、情けも甘えも一切消え失せ、無慈悲で、それでいて激流の様な怒りが露になった瞬間、ロベルタは反射的に、 逃走の姿勢を取ってしまっていた。柔弱な平和主義者だと思っていた男の皮膚が剥がれてみれば、現れたのはロベルタも知ったる戦士の顔。 但し、戦士は戦士でも、彼女が掃いて捨てるほど見て来た、相手を絶対に殺し、自分だけは絶対に生き残って利益を掠め取りたいと言う、 カスにも劣る狗の如き戦士ではない。もっと別の、ロベルタの語彙と経験では表現出来ない程、高尚な物の為に戦う戦士。そんな印象を、彼女は抱いた。 その訳の解らなさと、今まで彼女が見て来た、如何なる男よりも明白な、『殺す』と言う意思をぶつけられた瞬間、彼女は逃げていたのだ。 人生の多くをゲリラとして、殺しと戦いの世界に生きて来たロベルタは、聖杯戦争に参加しているマスターの中で、自身は屈指の実力者だと言う自負があった。 耐えて来た訓練の果てに得た戦闘能力、それをフルに生かした実戦経験。魔力の少なさと言う点が痛いが、他のマスターにはない重要な個性だと強く思ってもいた。 それを、粉々に打ち砕かれた。ジョナサンが放った殺意と敵意は、伊達ではない。こう言った敵意と言うものは、放つ存在の『強さ』に比例する。 先ず間違いなく、あの男と戦って、無事には済まない。ロベルタが下した結論が、これだった。一矢報いる事は、出来よう。 しかし、それでは意味がないのだ。ロベルタは絶対にこの聖杯戦争を生き残らねばならない。汚れた灰色の狐を地獄に叩き落とすその日まで、 ロベルタは、泥水を啜り、野草を喰らってでも生きる覚悟であった。 逃走ルートを、市民が逃げ惑う大通りから、入り組んだ裏路地のルートへと変更する。 いや、逃走、と言う言い方は使うべきではないのかも知れない。より正確に言えば、『高槻涼の回収ルート』と言うべきなのだろう。 聖杯戦争の参加者、否、魔術師の特権と言うべきか。彼らには念話と呼ばれる、会話やノートテイクとは違う、思った事を口に出さず、 心の中で伝達させると言う技術が使えるようになっている。便利である事は言うまでもない、軍事技術に転用出来ればどれ程の変革を齎せるか。 わざと迂遠なルートで 新宿 二丁目を移動し、少々の時間が経過してから、高槻達が戦っている所に戻り、念話を以て高槻に戦闘の終了を報告、この場から立ち去る、と言うのが、ロベルタが考えた計画であった。 しかし、これは危険な綱渡りである。態々火事場に飛び込むと言う事もそうであるが、念話自体にも問題があるのだ。 先ず、引き当てたサーヴァントがバーサーカーと言うのが悪い。狂化により理性が大幅に欠如、言語は喪失と、コミュニケーションに致命的な難がある。 多少の意思疎通は出来る事は確認済みであるが、戦闘の昂揚に入った高槻に、念話による命令が通じるかどうか。 そしてもう一つの問題が、念話が有効に働く距離。ごく簡単な実験で試した事があったが、高槻に念話による命令が有効に働きうる範囲は、 彼を中心とした半径十m程度でしかない。それを超えた範囲での念話は、狂化した高槻にはほぼ意味を成さない。 半径十mにまで近づかねば念話に意味がなくなる。これは、何を意味するのか。それは、高槻を回収するには、ロベルタは鉄火場まで自分の足で行かねばならないのだ。 高槻涼と言うサーヴァントがその暴力を発散すれば、自分自身ですら粉砕しかねない。その暴力が直撃する、その範囲まで彼女は向かうのである。 リスクが、高すぎる。しかし、此処で令呪と言う切り札を切るのも、気が早すぎる。此処は、多少のリスクを覚悟せねばならない時であった。 一年通して陽が一番高く上る夏の時期ではあるが、 新宿 の裏路地では、真昼にでもならない限り日は差さない。 新宿 で聖杯戦争をするにあたりロベルタは、この街の裏路地、と言う名の、彼女自身がその暴威を余す事無く振える場所に既に目星を付けていた。 当然、道順はその際に覚えている。市街戦に於いて、ルートを頭に叩き込むなど基本中の基本。 今ではロベルタは、 新宿 どの道を行けば何処に繋がっているのか、と言う事を完全に把握している。今走るルートで、今のペースで走り続ければ、数分の内にジャバウォックの下へと到達出来る。 もう少し、ペースを上げるか、と思い速度を上げ始めた、その時であった。 ロベルタの前方十m先の地点に、何かが頭上から勢いよく落下して来た。其処で勢いよく立ち止まるロベルタ。 着地の際に一切の音こそ立てなかったが、それは、人間だった。それも、頭が黒く、黒い紳士服を着用した、大柄なアングロサクソン。 ジョナサンは、ロベルタと言う女性が裏路地を通るであろう事は予測出来ていた。 日の当たらない、日陰の世界の住人であるヤクザを狙って襲うと言う手口からの、簡単な憶測である。 仮にそれが嘘だったとしても、今回に限って言えば、裏路地を移動ルートに選ぶであろう事は予測していた。 ロベルタは確実に、バーサーカーのサーヴァントを後で呼び戻すであろうとジョナサンも思っていたのだ。必然的に、ジョナサンを撒いた後、 高槻のもとまで戻る必要がある。だが、今も市井の住民がてんやわんやの状態の大通りで、バーサーカーの下に戻るのは、要らぬ誤解を生む。 だからこそ、一端路地裏を経由する必要がある、こう考えたのだ。結局、この憶測はロベルタの心理を完璧に等しく読み当てていた。 もしもロベルタが、多少のリスクを覚悟で、来た道である大通りからジャバウォックを回収しに行っていれば、きっとジョナサンに出会う事もなかったであろう。 尤も、ジョナサンにしてもこのような移動ルートを辿る様な事になるとは、思わなかった。 ロベルタの移動速度が、見た目の割には想像以上に速かったせいで、予想だにしなかったショートカットを選ばざるを得なくなった。まさか彼女が過去、厳しい軍事訓練の末に人間の限界の閾値に近しい身体能力を得た女などとは、 誰も思わないだろう。この結果、ジョナサンは仕方なく、建物の屋上をそれこそ忍者か猿の様に跳躍して、ロベルタを追い詰めねばならなかった程だ。 「お――」 追い詰めた、そう言おうとしたジョナサンであったが、その続きは、けたたましい銃声がかき消した。 コンマ一秒に迫る程の速度で、ヤクザから奪い取った拳銃を懐から取り出し、ロベルタが躊躇なくジョナサンの額目掛けて発砲したからである。 しかし、ジョナサンはロベルタのこう言った行動を読めなかった訳ではない。ヤクザの事務所を襲撃し、躊躇なく自分達を狙撃する人間である事は確認済み。 不意打ちの一発は、十分予測出来ていた。だからこそ、上体を大きく横に傾ける事でジョナサンは銃弾を回避して見せた。 「君がその気なら、僕は君の影すらも灼いてみせよう」 堅く拳を握り締め、ジョナサンは口にした。 凛冽たる決意に満ちたジョナサンの顔つきとは対照的に、ロベルタの表情には、羅刹と見紛う程の殺意と敵意が鑿を当てて見せた様に刻まれていた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 市街や室内で銃撃戦を行う上で、特に警戒するべきは跳弾である。 跳弾とは一般人が認識している以上に頻繁に起こる現象で、敵に向かって撃った銃弾が、跳弾で味方に直撃すると言う事故は、珍しくも何ともないのである。 銃とは、こと生身の生物相手にはこれ以上とない有効武器であるが、これが物質、特に石や金属に対しての破壊力となると、大きくその有効性が落ちる。 と言うのも、銃は弾道の角度と言うものに恐ろしく左右される武器であり、下手な角度で物に対して撃てば、日干し煉瓦ですら跳弾が起きる程である。 だから本来、 新宿 、特に、ロベルタが今いる建物と建物との幅が三mもなさそうな狭い路地で、銃弾を撃つ事は好ましくないのだ。 この狭いルート、しかも鉄筋コンクリートの壁が両サイドに聳える場所で銃を撃てば、ほぼ確実に跳弾が起きるのだから。 ――そんな事などお構いなし、と言わんばかりに、ロベルタは、ありったけの殺意を秘めてジョナサン相手に拳銃を撃ちまくっていた。 周りに味方がいるのならばいざ知らず、一対一の戦いで、跳弾を恐れて発砲を控えるようならば、殺されるのは自分自身なのだ。 躊躇も何もない。発砲音を恐れて人が集まろうが、知った事か。今は、目の前の敵を殺す事に、ロベルタは全意識を集中させている。 腹部目掛けて銃弾を発砲するロベルタ。 腹部は一般的には急所に類する部位と言う認識は薄いが、人間の腹には大腸と言う部位が当然収まっており、其処には大便が溜められている。 此処を銃弾で撃ち抜かれると体内に便が飛び散り、感染症で死ぬリスクが増大する。戦場で撃ち抜かれればほぼ死んだも同然なのだ。 おまけに的も頭に比べて大きく狙いやすい。狙えるのであれば、頭よりも積極的に狙うべき箇所であった。 しかし、未来でも予測出来ているかのような直感力で、ジョナサンは弾丸を回避。その後、壁の方を『垂直』に駆け上がり、一定の高さまで到達した所で、 壁を勢いよく蹴り、ロベルタの方へと急降下。彼女の頸椎目掛けて、強烈な浴びせ蹴りを見舞おうとする。 彼女は、ジョナサンのこの一撃に、巨大な斧が振り下ろされるイメージを見た。バッと身体を勢いよく屈ませ、寸での所で蹴りを躱す。 髪の毛が数本、彼の靴に持って行かれた。反応が遅れたら持って行かれたのは、髪ではなく首の方であったろう。 毛根が頭皮から引き抜かれた、その痛みの電気信号で、ロベルタは反射的に、膝を勢いよく伸ばし、その勢いを利用して前方に向かって飛び込んだ。 蹴りが躱され、地面にジョナサンが着地する。 飛び込んだ先でロベルタは膝立ちの状態になっており、ジョナサンの背中に銃弾を発砲した。狙いは肺である。 だが、まるで後頭部にも目があるのかと疑る程の勘の良い男だった。着地した、膝の力だけでジョナサンは何mも跳躍。 背面飛びの要領で、彼は銃弾を避け、ロベルタを飛び越し、彼女の三m背後に着地。信じられないものを見る様な目で、ロベルタは背後のジョナサンの方を振り返った。 ジョナサンが地を蹴り此方に向かって来る。 殆ど反射的に飛び退くロベルタ。ジョナサンが拳を引いた。殴り飛ばす気なのだろうか。彼我の距離は四m程も離れている、当たる筈はない。 しかし、軍人として培ってきた彼女の勘が、告げていた、何処でも良いから身体を動かせと。それに従い、右側の壁に身体を動かした、その時だった。 見間違いでも何でもない。ジョナサンの右腕が、直線状に『伸びた』。腕の長さ自体が、それこそ熱したチーズのように、二m程も伸びたのだ。 驚きに目を見開かせた時にはもう遅い、伸びた右拳が、彼女の左肩に突き刺さる。ゴキャッ、と言う厭な音が響いた。肩の骨を、砕かれた痛みが全身に伝播する。 ぐっ、と口から苦悶の声が上がる。拷問された時の訓練も受けている為、この程度では音を上げない。 寧ろ、利き腕が破壊されなかっただけ、まだ好都合だと考えた。伸びた腕――ズームパンチに使用した右腕を元に戻しているジョナサン目掛けて、 ロベルタは発砲。弾丸は、ジョナサンの鳩尾に吸い込まれ――刺さった!! だが、ロベルタの目にはどうにもおかしく映った。 彼の鳩尾に弾丸は命中したが、様子がおかしいのだ。背中を突き抜けた訳でもなければ、体内に残ったと言う訳でもない。 クラシカルな黒い紳士服でどうにも、弾の様子が掴み難い。目を凝らしたその瞬間、ジョナサンが勢いよく飛び出して来た。 ハッとした表情で、彼女は思いっきり身体を屈ませ、不様に横転。その場から距離を離す。彼女が先程まで背を預けていたビル壁に、ジョナサンの左拳がめり込んでいた。 予め、はじく性質の波紋を身体に流しておいて良かったと、つくづくジョナサンは思っていた。 これがなければ、銃弾で致命傷を負っていたであろう。実際、彼に向かって放たれた銃弾は、刺さり、ダメージを受けたが、肉体を突き抜けるには至らなかった。 並の波紋戦士であれば、体内にまで弾が侵入していただろう。それを許さなかったのは、ひとえにジョナサンが極めて優れた波紋戦士だからに他ならない。 そう言った、ジョナサンの素性を知らないロベルタは、化物でも見るような目で彼の事を睨んでいた。この程度のオモチャでは殺すには至らないのかと、歯噛みする。 ロベルタが保有している拳銃は、ベレッタ92F。向こう――合衆国――ではメジャーな現行器である。 警官のみならず軍部でも採用している事で有名で、ロベルタもゲリラ時代使った事がある。そして、好きな銃ではない。 好ましくない国家である合衆国製の物であると言うのもそうだが、そもそもロベルタは重く、威力の高い銃を好む傾向が強い女性だ。 そう言った宗旨を曲げて、この銃を使う理由は、ただ一つ。これしか使える武器がなかったからである。 銃規制が非常に厳重な日本においては、ヤクザやマフィアの類が銃を持ちこむ事すら一苦労だ。ロアナプラと違い治安にはうるさいのである。 サブマシンガンやアサルトライフル、グレネードの保持など以ての外。従って、このようなケチな拳銃しかロベルタは奪えていないのである。 ――金だけはある癖にケチなアウトロー……―― と、何度この国のマフィアの類に愚痴ったかは解らない。 彼女が愛用するミニミやグレネードさえ入手できていれば、目の前の気取った男など、そのまま挽肉であった。 それが出来ない事に、イライラが募って行く。左肩を砕かれた痛みですら、忘れられそうな程であった。 マガジンに込められた弾丸は、残り数少ない。 アジトに行けば数十丁もの拳銃が保存されているが、今は二丁だけ。弾薬もあるにはあるが、目の前の男が相手では、装填している間に殺されるのがオチだ。 だからここは彼女は――逃げる事にした。但し、尋常の方法では逃げられないので――尋常じゃない方法で逃げる事とした 出来るかどうかは微妙な線ではあるが、やるしかない。ロベルタの目線は、ビルに備え付けられたクーラーの室外機に向けられていた。 ジョナサンとロベルタを挟む二つのビルは雑居ビルであるらしく、二階部分にも三階部分にも、室外機は露出されている状態だった。 彼女は、最初の跳躍で一階部分の室外機の上に乗り、其処でまた、室外機が凹む程の勢いでジャンプ。 二階部分の室外機に、片手の力だけでしがみ付いた。彼女の意図する所を知ったジョナサンが、追いかけようとするが、その頃には彼女は二階の室外機の上に上っていた。 其処で彼女は、ベレッタを発砲し、地上のジョナサンを迎撃する。これを彼は回避。再びロベルタが室外機から跳躍、三階部分のそれにしがみ付き、 再びその上に一秒経たずしてよじ登る。追い縋ろうとするジョナサンであったが、ベレッタで牽制射撃をロベルタは行い、行動を封殺する。 両サイドの建物の階数自体は、屋上部分を含めて五階まで。つまり、室外機はあと一つしかない。 其処目掛けてロベルタは最後の跳躍を行い、しがみ付き、室外機の上に降り立つ。此処まで来たら、もうしがみ付く為の室外機を探す必要などない。 これを蹴り抜き、思いっきり跳躍。凄まじい脚部の筋力で蹴り抜かれた室外機は、ガコンッ、と言う音を立てて接続部から外れ、地面へと落下して行く。 ガシッ、と、屋上の柵部分をロベルタが握り締める。片腕の腕力だけで、鉄柵をよじ登って行き、ある高さまで着た瞬間、鉄棒競技の大車輪の要領で、 大きく一回転。雑居ビルの屋上に降り立った。――その瞬間だった。 ガクンッ、と、腰が抜けるよう感覚をロベルタは憶えた。一瞬膝を付きそうになるが、柵を掴む事で何とか免れる。 FARCに志願入隊して間もない頃を思い出す。あの頃は地獄の様なシゴキと訓練にも耐性がなく、訓練が終わったその時など、膝や腰がガクガクになり、 全身を襲う筋肉痛で死ぬような思いであった。あの日の感覚と今の感覚は似ていた。 動くのが気怠い。しかし此処で動くのを止めては殺される。自らの身体に喝を入れ、その場から逃げ去ろうとしたその時――見た。 目線の先百と余m程先の交差点地点で戦う、ジョナサンのサーヴァントと正体不明の乱入者のサーヴァント。 そして、あと一人。自分が全く見た事もない姿をした、巨大な鬼の様な姿をした何かを。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 口から火を吐く生き物、と言うものは、国を問わず、どの人物も昔から抱くイメージの一つである。 あり得ないものを呼気として吐き出す、その事に非日常性と、幻想性を感じるのかも知れない。 アレックスは口から火を吐く生物の典型例、それこそドラゴンやキメラとも戦った事があるが、ジョニィはそう言った存在と対峙するのは、初めてだ。 そしてジョニィは――叶う物なら、そう言った存在と戦うのは今日で最後にしてほしいものだと、心の底から思っていた。 タスクACT3の能力を用い、黄金回転の渦の中に潜航するジョニィ。 渦の中から見える風景は、熾烈と言う言葉ですら生ぬるい、戦場の風景だった。 嘗て高槻涼の姿をしていた、自らをジャバウォックだと名乗るバーサーカーは、その口から紅蓮の炎を吐き出していた。 炎は地面の砂粒を一瞬でガス蒸発を引き起こす程の温度で、この炎が車体に当たった瞬間、内部のエンジンとガソリンに引火、大爆発を引き起こす。 車の爆発につられてまた、後ろの車両も爆発し――と、地獄とは、まさに此処の事を言うのだと言われても、ジョニィは信じる事が出来た。 魔獣が吐き出す地獄の業火を、アレックスは回避し続ける。走る、跳ねる。最早、防げる威力の範疇を超えた温度の為、槍で弾く事すら彼はしていなかった。 黄金回転の時間が切れそうになったジョニィは、渦から飛び出し、その姿を露見させる。 ジャバウォックとの距離は二十m弱も離れており、交差点からかなり先の場所だ。此処からジョニィは、ACT2の爪弾を左手から射出させまくる。 魔獣は、避けない。そして、身体に何の変化もない。銃創すら出来上がっていないのだ。 アーチャーとして現界し、優れた視力を持つに至ったジョニィは、何が起ったのか見えていた。爪弾が、気体になって消滅したのである。 何かの熱を纏っているのか、と考えたジョニィの考えは正しい。今のジャバウォックの体温は、飛来した弾丸すらも一瞬で気化させる、八千六百度。 バーサーカーは本来対魔力を持たないサーヴァントであるが、この熱源により、物理的な干渉力に対する防御力をも兼ねた、天然の対魔力スキルを保有しているに等しい状態と言っても良い。 身体に纏われた温度の故に、アレックスは完全に攻めあぐねている状態にあると言っても良く、接近の為に近付いたその瞬間、 彼は膨大な熱によるダメージを受ける、と言うやり取りを何度も繰り返していた。損傷覚悟での一撃を何度か加えはしたが、ジャバウォックの肉体自身が埒外の耐久力を誇る為に、全く決定打には至らない。 「目障りな羽虫め」 言ってジャバウォックは、その右腕を、竜巻の様な勢いで振るい、アレックスを迎撃する。 攻撃の予兆を読んだアレックスは、何とか数m程飛び退いて攻撃を躱すが、衣服の腹部分をバッサリと斬り飛ばされていた。 攻撃の『おこり』を読んでいて、かつ無造作な攻撃ですらこれなのだ。本腰を入れて攻撃を入れていたどうなっていたのか、解ったものではない。 自らの身体の魔力を燃焼させ、アレックスは、自分が戦っている地点を中心とした直径二十m地点全体に、クリーム色の光を浴びせ掛ける。 アレックスが使う光の魔術は、単体を攻撃するものはセイント、複数体を攻撃するものはスターライトとラベル分けがしてあり、この攻撃は後者のものだった。 これまでアレックスが全体のものを放たなかったのは、ジョニィが近くにいた事もそうなのだが、自分が範囲攻撃を使えないとジャバウォックに誤認させたかったからだ。 目論見通り、不意を打たれた形になった魔獣は、直にスターライトの神秘の熱光を浴びせられ、ダメージを負った……筈である。 ――効いてるのかよ……これ―― 直撃は、絶対にした。客観的に見てもアレックスの目から見ても、それは確実だ。 全くダメージを与えられているように見えないのも、客観的に見てもアレックスの目から見てもその通りであった。 ジャバウォックの灰銅色の身体、その表面の薄皮一枚、溶かす事も出来ていない。スターライトは神聖な熱光で相手を焼く、神秘の一撃と言っても良い。 しかし、神威の光とて目の前の、莫大な灼熱を纏った存在には効果が薄いと言うのか。 接近し、強烈な一撃を叩き込む他ないのだろうが、超高熱を纏っているため、それも難しい。流れは、完全に悪い方向に変えられていた。今やアレックス、そして、ジョニィの共通見解である。 相手の攻撃手段を完全に封殺したと認識したジャバウォックは、右手の爪を大きく開き、その掌を開放させる。 ジャバウォックの掌にはカメラの『絞り』に似た器官が取りつけられており、その事に気づけたのは、その絞り部分をバッと見せつけられたアレックスのみ。 空気の弾丸が放たれる物かと思い、槍を構えるアレックス。しかして、魔獣の右手に収束するエネルギーを見て、何かがおかしいと思い始めた。 光る砂粒めいたエネルギーが、絞りの部分に集まって行くそれを見て、急激に嫌な予感を感じ始める。この間、コンマ二秒にも満たない。 そう思った時には、既にアレックスの身体は横っ飛びに移動せんと砂地の地面を蹴り抜いていた。 それと同時に、ジャバウォックの右掌からエネルギーを収束した光線――俗に、荷電粒子砲と呼ばれる白色の熱線が放たれた。 アレックスの幸運は、荷電粒子砲が放たれるより前に、地面を蹴って跳躍する、と言うアクションを起こせていた事であろう。 そしてそもそもの不幸は、放たれた攻撃が、空気砲ではなく、荷電粒子砲そのものだった、と言う事であろう。 円周六十cm程の荷電粒子砲は、アレックスの右脇腹を半ば近くまで抉り飛ばして消滅させ、背後に列を成して駐車されていた、 嘗て市民が乗り捨て逃げ出した車両を、渋滞の最後尾まで貫いた。焦点温度六十万度を容易く超えるその粒子砲に貫かれ、 それが通った側の車線の車は全て、内部のガソリンやエンジン機構ごと車両が大爆発。あっと言う間にその車線は、ガソリンの燃える臭いと溶けた金属、 そして炎だけが敷き詰められた地獄の回廊さながらの風景に変貌した。 「ごあがっ……!!」 地面に槍を突き立て、バランスを失って倒れそうになるのをアレックスは防いだ。 肉体の一割近くを今のアレックスは消滅している状態と言っても良く、これにより急激に体重が低下。 突如として体重が十%程も消えてしまった事と、体中が燃えあがる様な激痛の為に、直立姿勢を維持する事が難しくなってしまったのだ。 この程度で済む事が出来たのは、せめてもの幸いと言うべきだったろう。 あのアーチャーのサーヴァントは、自身の事をランサーと呼んでいたが、それは間違ってはいない。 今のアレックスは宝具の力で、自身のクラスをランサーに変えているのだから。聖杯戦争の基本七クラスに自由に変身出来、その性質をとっかえひっかえ出来る宝具。 その中で、最も敏捷性に優れたランサーのクラスで戦っていたからこそ荷電粒子砲に反応出来、避ける体勢に移行出来たのだ。 それ以外のクラスであれば、もっと大きな風穴が身体の何処かに空いて、今度こそ本当に消滅していた事は間違いなかった。 しかし、アレックスの幸いなど、その程度だ。九死に一生を、程度に過ぎない。 死に掛けの状態なのは厳然たる事実であるし、そもそも危難は全く去っていない。ジャバウォックは依然として此方に標的を定めている。 腹部の消滅部に治療の為の魔術を当て、痛みを先ずは和らげる。アレックスが出来るのはそれだけで、全力で動くには、圧倒的に治癒に掛けられる時間と魔力が足りない。 クソが、と悪態が口から漏れる。こんな所で死ぬ訳には行かないのだ。あの美貌のアサシンをこの手で葬り去るまで。 北上を元の世界に戻すまでは。聖杯戦争が始まってから一日と経っていない時に退場なんて、したくない。 ジャバウォックが一歩一歩、大地を踏みしめるようにアレックスの方に向かって行く。 八千六百度の体温を持った鉱物の怪物が近付いてくる、と言われればアレックスが直面している状況の絶望さが伝わるかも知れない。 地面は物理法則の埒外にある体温によりマグマ化した後、一瞬で気化し、長い間その体温の持ち主がその場にいるせいか、 新宿 二丁目地点の交差点は酷い陽炎で、酷い立ち眩みでも起こしているかのような歪みが起り始めるのみならず、気温も何十度も上昇していた。 爆熱を伴った死が、アレックスの方に近付いてくる。チリチリと衣服が焦げだし、皮膚が凄い勢いで乾いて行く。 最早これまで、と言った言葉がこれ以上となく相応しい、とアレックスの中の冷静な何かが考え始めた、その時であった。 ――ボグオォンッ!!、と言う音が五度連続で鳴り響いた。 ジャバウォックの方からである。何故、その音が生じたのか、その経過を目を開けて目の当たりにしたアレックスには解る。 地面を移動し、魔獣の足元から胴体部まで伝って行く、渦上の弾痕。それが、胴体に三つ、首に一つ、顎部分に一つ移動した瞬間、 本物の弾痕になり、貫かれたようなダメージを彼に与える事に成功したのである。 これはそれなりのダメージを与える事には成功したらしく、ジャバウォックの表情が歪んだ。 いや、痛がっていると言うよりは、不愉快そうに思っているだけかも知れない。それだけでも十分な成果だ。 周りを見渡すと、ジャバウォック達から十m程離れた地点で、黒い渦から上半身だけを露出させたジョニィが、乱暴にハーブ類を口にしていた。 よく見ると、この爪を射出するアーチャーの両手には、最早爪と言う爪が殆ど存在しない状態であった。 ACT3を自身に使うのに左手の爪を二つ、先程のACT2の弾痕をジャバウォックに全て見舞うのに右手の爪を全部撃ち尽くしたのだ。 ACT2の『爪弾そのもの』を命中させても、爪が到達する前に高熱で燃え尽きる。では、ACT2が生んだ『弾痕』は、その高熱で燃えるのか? 結論を言えば、燃えなかった事はジャバウォックの鉱物の身体に空いた本物の弾痕を見れば明白な事。つまり、損傷を与えられはしたのだ。 全弾命中した事は、客観的にはサルにでも解る。 しかし、それが有効打になったかどうかは、優れた射手、或いは、その弾丸を射出した者にしか解らない。 賭けても良かった。間違いなくあのバーサーカーは、大したダメージを受けていない。ジョニィの見解が、それであった。 「……遊びが過ぎた様だな、我も、貴様らも」 メキ、メキ、と、固着された金属の棒を、絶対に曲がらない方向に無理やり曲げてみた時の様な音が、ジャバウォックから鳴り響いた。 ジャバウォックが纏う超高熱の体温が発生させる、空間の揺らぎが最高潮に達する。 サウナとほぼ同等の温度を得るに至った、 新宿 二丁目交差点。ジョニィとアレックスの身体からはこれでもかと汗が噴き出してくる。 真っ当な人間ならその気温で意識が朦朧として来る所だろうが、今の二人はそれ所ではなかった。 「おためごかしはここまでだ。詰まらぬ破壊ではない――」 言った瞬間、ジャバウォックの右掌の絞り部分に、キィン、と言う音を立ててエネルギーが収束して行く。 直感的に、アレックスは考えた。違う、と。あれは先程放った、荷電粒子砲のエネルギーとは全く異質かつ別次元。 収束して行くエネルギーの一粒一粒に、先程放った粒子砲の全エネルギー量に倍する威力が凝集されており、それが彼の掌に集まって行くのだ。 もしもこのエネルギーを、『破壊』のみに利用したとしたら? もしもこのエネルギーが、自分達に放たれたら? 自分達は、この世に存在したと言う証すらも残さず消滅するだけでなく、この 新宿 と言う街自体が、いや、東京その物が消滅してしまうのではないか。 アレックスの見立ては、全く正しいと言わざるを得ない。 それは科学的な見地から言えば、握り拳一つ分程集める事が出来れば、地球上の全文明を地球ごと消滅させるに足る程のエネルギー体で、 現代技術ではティー・スプーン一杯分生み出すのにも莫大な電力と大層な化学装置がなければならない程の物質であった。 俗にいう、『反物質』。彼はこれを、人間が己の身体の中で血液を生み出すような感覚で、自身の体内で生成させる事が出来るのだ。 「我が本物の破壊とやらを見せてやろう!!」 アレックスはこの攻撃を破壊するには、もしもの力が必要だと悟った。 ジョニィは、このバーサーカーを葬り去るには、自らの切り札である牙の殺意を極限まで高めたあのスタンドが必要だと悟った。 しかし、それらを行うには最早、遅すぎて―――――――― ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ――なんて、力強い姿。 遠くで戦うジャバウォックを見て、ほう、とロベルタは息を吐いた。 高槻涼と言うバーサーカーは、あの人間の時の姿が真の姿だと思っていなかった。彼女が視認出来る、高槻のステータスやスキル、宝具を見ればそれは解っていた。 あれこそが。あの交差点地点で戦う灰銅色の鬼こそが、高槻自身の『真の姿』なのだと、彼女は信じていた。 百m以上離れていても解る、溢れんばかりの殺意。数々の死線を掻い潜って来た、ロベルタの骨の髄をも振わせる程の覇風。 以前ロベルタは高槻を見て、米国の全兵力全兵装と彼の力は同等以上、だと言う認識でいた。今は、違う。 今の彼であれば、地球上の全国家が保有する軍事力に、大きな差を着けられる事だろう。それは夢想でも何でもない。このロベルタ自身が保証している事なのだ。間違いは、全くなかった。 「アレが、魔力消費の……!!」 強力なサーヴァント程、魔力消費が甚大になる。聖杯戦争の基本である。 高槻は基本的にはロベルタに対しては忠実なバーサーカーであった。霊体化をしろと言われればするし、大人しくしろと言われればその殺意の片鱗も見せない。 正真正銘の魔獣と化した高槻の魔力消費量は、平時の倍以上に跳ね上がっており、魂喰いを済ませたロベルタにも相当な負担になっていた。 このままでは、魂喰いして補充した分の魔力も、危ういかも知れない。中々の荒馬のようだと、自身が引き当てたバーサーカーについて考えていたその時だった。 ダンッ、ダンッ、と言う音が、ロベルタが先程、室外機を利用して屋上まで昇って来た側から聞こえて来たのだ。 ――その音が途切れた、と同時に。 ジョナサン・ジョースターが宙を躍った。彼は壁を蹴って上空に、また壁を蹴っては上空を移動を繰り返し、ロベルタが現在佇立するビルの屋上までやって来たのだ。 ジョナサンが着地するよりも速く、腰のベルトに差していたベレッタを引き抜き、セーフティを解除、顔面目掛けて発砲する。マガジンの弾丸はこれで切れた。 そんな事など御見通しであると言わんばかりに、ジョナサンは顔面の辺りを、丸太と見紛う様な太い両手で多い、弾丸を防御。 ロベルタの側からは解らないであろうが、彼女の撃ち放った弾丸はジョナサンの腕に刺さりこそしたが、纏わせた弾く波紋の影響で、 中に食い込むまでには、至らなかった。どちらにしても、弾丸が決定打になっていない事だけは理解したらしく、ジョナサンの着地と同時に、 大きく距離を取ろうと飛び退いた。ジョナサンが疾風の様な速度で迫る。その巨体と搭載した筋肉の量も相まって、鋼の塊が素っ飛んでくるようなプレッシャーを、 ロベルタは感じた。牽制がてらに、ロベルタは右手に握っていた『拳銃自体』をジョナサンの方目掛けて放擲した。 発砲されると思ったジョナサンは慌てて両腕によるガードを行おうとするが、飛来するものが銃弾ではなく、それを放つ為の拳銃であった事を知り、 怪訝そうな表情を浮かべた。その隙を、ロベルタは狙う。懐に隠し持っていた、もう一つのベレッタを引き抜き、ジョナサンの心臓目掛けて発砲する!! これが狙いだったと気付いたジョナサンは、銃口の照準から急いで弾道を計算、右手甲を其処に配置する。 石のようなジョナサンの拳に、弾丸が完全に没入した。じくじくと、血が甲を流れ、伝い落ちてゆく。 破裂するような発砲音が、二回響き渡った。 ロベルタが握る拳銃は、ジョナサンの脚部に狙いを定めていた。急所は当然警戒されている為、余程上手く不意を撃たない限り、 ジョナサンは被弾してくれない。ならば、足を狙撃し、動きだけでも鈍らせておこうと、作戦を変更したのである。 意図に気付いたジョナサンは、やや膝を曲げてから、跳躍。弾く波紋の応用である。人体のちょっとしたアクションだけでも、驚くべき身体能力を発揮出来るのだ。 貫くべき対象を失った弾丸は、地面のコンクリートに当たり、跳弾。チィンッ、と言う音を立てて、屋上の金属柵の一本にカチ当たる。 少しの屈伸運動からの跳躍で、何mも飛び上がったジョナサンは、七m程背後に存在する給水タンクの上に着地――そして。信じられないような表情を浮かべ始めた。 ロベルタは一瞬だけ奇妙に思ったが、ジョナサンの目線の先にあるものが、何だったのかを即座に思い出す。 彼の目にはきっと、力強くて、雄々しい姿に変身した自身のバーサーカーの姿が映っているに相違あるまい。 そして、その極めて暴威的で、圧倒的な、力そのものと言っても良い勇姿に、身震いをしているのだろう。 唖然としているジョナサンの姿に隙を見出したロベルタは、ベレッタを発砲。だが、流石に何時までも呆けているジョナサンではなかった。 弾丸はスカを食い、遥か彼方へと一直線に飛来して行く。弾の軌道から言って、数㎞先まで、貫くべき対象は、空気以外には存在しない。 ジョナサンが如何移動するのかそのルートを即自的に計算。 予測した移動ルートの方へと身体を向けたその時――気付いてしまった。 掠めた視界に映ったのは、自らが操るバーサーカー、高槻涼の姿。狙撃用ライフルで遠方の相手を狙撃する事も多かったロベルタは、視力に非常に優れる。 故に、遠方視には自信がある。と言っても、あの目立つ姿のバーサーカーは、常人並の視力の持ち主でも、数百m以上離れていたとしてもそれと気づけるだろう。 常人の倍以上優れた視力を持ったロベルタが、非常に目立つ姿をした現在の高槻涼の姿を見たからこそ、異変に気づけたのである。 ――彼の右手に収束して行く、莫大なエネルギーを。 それを見た時ロベルタが先ずイメージしたのは、C-4や手榴弾などと言った、軍人にはお馴染みと言っても良い爆弾の類であった。 だがそれでは、まだ威力が足りない。次に浮かび上がったのは、爆撃機が投下する砲弾やクラスター爆弾等の大威力のそれであった。 まだ、足りない。次に浮かび上がったのは、大陸間弾道ミサイルなどいった、一発で首都や国家に甚大な被害を与えられるレベルの火器であった。 それでも、まだ。次に浮かび上がったのは、核弾頭。正真正銘一国、下手したら世界その物を終わらせかねない、人類が生み出したソドムとゴモラの業火。 ――尚、その威力は計れなかった。 核以上のエネルギーが、其処に収束していると、ロベルタは一発で理解出来た。 人類が生み出した神の雷霆、それ以上の威力の兵器とは、果たして何か。それを放てば、どうなるのか。星が割れるのか? そして自分は、無事で済むのか? 確かな予感が、彼女にはあった。あれを放てば、間違いなくジャバウォックは勝利する。 そして、自分を含めた 新宿 の街及び、東京全土が滅び去ると。其処に広がるのは魔獣の勝利と瓦礫の山だけであって、其処には自分がいないのだと言う事を。 彼女は、即座に理解してしまった。 「――令呪を以て命じるッ!!」 理解してからの行動は速かった、 ロベルタの右上腕二頭筋の辺りに刻まれた、三本の爪痕に似た形をした令呪が、激しく光り輝いた。 あれを放たれれば、間違いなく自分は終わる。決して、あれだけは放たせては行けない、空虚な一撃だ。 「その姿を解除した後、私の下まで来いッ!!」 ロベルタの言葉を直に認識したジョナサンも、即座に行動に移った。 右腕前腕部に刻まれた、水面に生じた波紋めいた形をした令呪に意思を込め、彼も叫んだ。 「ジョナサン・ジョースターが命じる――」 波紋の一画が、激しく揮発し始めた。 「この場に来るんだ、アーチャー!!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 急激に、ジャバウォックの右掌に収束して行くエネルギーが、散り散りに消失して行く。 東京を破壊してなお余りある力を秘めた、エネルギーの収束体は、完全に無害なそれに変貌し、虚空へと散って行く。 それと同時に、ジャバウォックが雄叫びを上げ始めた。苦しんでいるとか、痛がっていると言うよりはむしろ、激怒している、と言った印象を、 ジョニィとアレックスは憶えた。魔力切れでも起ったのか、と考えてしまったのも、無理からぬ事であったろう。 「おのれぇ……、我と、我が主の意思を縛る売女めが!! 我が破壊を妨げると言うか!!」 誰に対して言っているのか、即座にジョニィもアレックスも理解した。間違いなく、ジャバウォック自身のマスターについて言及している。 どうやら、人間時のバーサーカーの意思と、今の姿になったジャバウォックの意思は、根本的に違うものであるらしいと、この時になって初めて彼らは気付いた。 「憎し!! 憎し憎し!! 我の破壊は我の意思のみに非ず!! 我と、我が主である高槻涼の――」 其処まで告げた瞬間、ジャバウォックの金属的かつ大柄な身体は、風化した様に粉々になり、宙を舞い飛んで行った。 其処に現れたのは、あの魔獣よりも一回り小柄な、あの青年の姿。ジャバウォックに変身した時に衣服は弾け飛んでしまったらしく、 完全な全裸の姿で、彼は佇立していた。青年の身体つきは決して貧相ではなかったが、先のジャバウォックの姿と比較すると、痩せた子供にしか見えなかった。 青年がジャバウォックに変身していたと言うよりも、ジャバウォックと言う大きな着ぐるみの中に青年が入っていた、と言う言い方の方がまだ信憑性がある。 この青年、高槻涼が、本当に、肺腑を抉る様な恐怖を見る者に与えるあの魔獣に変身していたとは、ジョニィやアレックスには信じられなかった。 そして、彼の姿がまばたきするよりも速く、その場から消え失せた。 移動した、とジョニィは思ったが、アレックスはランサーに変身し、優れた敏捷性と反射神経を保有していると言う現在性から、違うと解っていた。 アレは移動と言うよりも転移と言った方が良い。高槻自体は、何処にも移動しようとする素振りを見せていなかった。佇立した状態のまま消えたのである。となれば、転移以外に、ありえない。 高槻が消えてから、二秒程経過したその時であった。 ジョニィの姿もまた、その場から消え失せていた。ACT3が生み出した、黄金回転の渦ごと、何処ぞに消え失せた。 その場にただ一人、アレックスだけが、残される形になる。よろよろと槍を杖代わりに立ち上がり、右脇腹の傷を、彼は癒し続ける。 「ヘッ、仲間……外れかよ」 今は、それの方が良いかも知れない。 のろのろとした動作で霊体化を行い、アレックスはその場から消え失せる。今は、北上が心配であった。 マグマ化した地面。片側の車道を舐め尽くすように埋め尽くされたガソリンの炎。局所的に凄まじい勢いで跳ね上がった気温。 圧縮空気により砕かれたビル壁の数々。砂地になった交差点。無政府状態の国家宛らのこの風景は、誰が信じられようか。日本の首都の風景の一つであった。 凄惨な爪痕だけが、其処に残される体となった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 高槻が、先ず現れた。 突然の出来事に、狂化した表情なりに混乱した様子が彼に浮かび上がっていた。 事情を把握しているその最中に、ジョニィがジョナサンの近くに現れたのは、僥倖であった。 彼らが、自らのマスターが令呪を用いてこの場に呼び寄せたと気付いたのは、殆ど同時の出来事である。 最初に行動に移ったのは、黄金回転の渦から上半身だけを露出させたジョニィの方だ。 再生を終えていた左手の爪を四本、ロベルタの足元に射出させる。弾丸が床に着弾してから、ロベルタは、自分が攻撃された事を知る。 だが、渦上の弾痕が、コンクリートの剥げた床に刻まれ、それが自身の方に近付いている事を、彼女はまだ知らない。 ジョニィが意図する所を理解した高槻は、即座に彼女を抱き抱え、柵の上にまで飛び上がり、その上に絶妙なバランス感覚で直立する。 彼は先程の交差点で、ACT2の弾痕が地面を這って、生物の身体を伝うのを見た。この弾痕を以て、マスターを殺害しようとした事は御見通しであった。 再生を終えた右手の小指、薬指、親指の爪を射出し、高槻の脚部を狙撃するジョニィ。 ダンッ、と言う音と同時に、高槻が弾丸の射線上から消えていた。足場になっていた金属柵は、圧し折れ破断している。 彼は後ろ向きの状態のまま、建物の屋上と言う屋上を次々と跳躍して移動して行き、その場から離れて行く。 呼吸を三回終える頃には、高槻達は豆粒の様に小さくなって行き、彼我の距離はACT2では最早狙撃が不可能な程の距離にまでなっていた。 「逃げられたな」 ACT3の黄金回転が終わり、渦から全身を引っ張り出すジョニィ。その瞳には、若干の悔しさと、黒い炎の様な殺意が燃えたぎっていた。 「君の落ち度じゃないさ、ジョニィ。僕達には情報が少なすぎた」 それは、ジョナサン自身を戒める言葉でもあった。 予想外に苦戦してしまった。波紋法を習得していないにも関わらず、凄まじいまでの運動神経であった。 今は亡き師から波紋を学ぶ前の自分であったら、どうなっていたかは全く分からない。ツェペリには全く、感謝してもしきれなかった。 ロベルタの身体能力が予想外のそれであったとは言え、もう少し自身にもやり方があったのではないかと、ジョナサンは思わずにいられない。 取り逃した事を悔しがっているのは、ジョナサンもまた、同じ事であった。 「次は僕も、『本気』を出す。彼女らを野放しにする訳には行かないからね」 と、言うのはジョニィの言。彼もまた自分と同じく、大敵を逃した事を悔しがっているのだろうとジョナサンは判断した。 尤も……それは、当たらずとも遠からず、と言った所であり、必ずしも正鵠を射ている訳ではないのだが。 「――そうだ、ジョニィ。あの時一緒に戦っていたサーヴァントは?」 「彼か。あのバーサーカーとの戦いでかなりの重傷を負っていたよ。放っておいたら、拙いかも知れない」 「そうか。直に向かおう、ジョニィ」 言外に、助けに向かおうと言っているような物であった。 一時とは言え、ジョニィの方に加勢してくれたのである。ひょっとしたら、同盟を組めるかも知れないと、ジョナサンは考えたのだ。 ……無論ジョナサンも、あの時アレックスの瞳に燃えていた、個人に対する憎悪の炎を、忘れていた訳ではない。 あれ程強烈な負の意思など、中々忘れられるものではない。だが、何にしても最初に話し合う事は、重要であった。 例え無駄だと解っていても、ジョナサンはロベルタを相手に最初に交渉に移った男である。こう言ったスタンスは、今も変わりはない。 「君がそう言うのであれば、僕もやぶさかじゃあないんだが……中々難しいかも知れないな」 言ってジョニィは親指である方向を指差した。彼が指差す方向に目線をやったジョナサンは、得心した。 主戦場となった 新宿 二丁目交差点付近に、続々と、この国の警察官達が集まって来ているのだ。 更に良く目を凝らすと警察官達がこれから現場検証をしようとしている所を取り巻く様に、たくさんの野次馬達が集まっている。 考えてみれば、当たり前の事であった。 衆目の目線が集まる所で、馬に乗って競争劇を行った挙句、往来のど真ん中でサーヴァント同士の戦いを隠さず披露したのである。人が集まらない方が、どうかしている、と言うものであった。 「……なるべく、人に見つからないように工夫しようか、ジョニィ」 「言われなくても」 言ってジョニィは霊体化を行い、それをジョナサンが確認するや、裏路地方面にビルから飛び降りた。 出来れば、御苑の子供達やその母親に、事がバレなければ良いなと思うも、直にそれは無駄なのだろうな、と諦めるジョナサンであった。 ついつい、十九世紀のイギリスにいるつもりで馬に乗ってしまったが、それが悪手だった事に、漸く彼は気付くのであった。 【歌舞伎町、戸山方面( 新宿 二丁目)/1日目 早朝8:10分】 【ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]左腕、鳩尾に銃弾直撃(鳩尾のものは既に銃弾が抜けたが、左腕には没入)、肉体的損傷(小)、魔力消費(小)、激しい義憤 [令呪]残り二画 [契約者の鍵]有 [装備]不明 [道具]不明 [所持金]かなり少ない。 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を止める。 1.殺戮者(ロベルタ)を殺害する。 2.聖杯戦争を止めるため、願いを聖杯に託す者たちを説得する。 3.外道に対しては2.の限りではない。 [備考] 佐藤十兵衛がマスターであると知りました 拠点は四ツ谷・信濃町方面(新宿御苑周辺)です。 ロベルタが聖杯戦争の参加者であり、当面の敵であると認識しました 新宿 二丁目近辺に、謎のサーヴァント(アレックス)及び、彼のマスターがいるであろうと推測。彼を助けに行こうと思っています 【アーチャー(ジョニィ・ジョースター)@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]魔力消費(小)、両手指の爪を幾つか消失 [装備] [道具]ジョナサンが仕入れたカモミールを筆頭としたハーブ類 [所持金]マスターに依存 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を止める。 1.殺戮者(ロベルタ)を殺害する 2.マスターと自分の意思に従う 3.次にロベルタ或いは高槻涼と出会う時には、ACT4も辞さないかも知れません [備考] 佐藤十兵衛がマスターであると知りました。 拠点は四ツ谷・信濃町方面(新宿御苑周辺)です。 ロベルタがマスターであると知り、彼の真名は高槻涼、或いはジャバウォックだと認識しました ランサーだと誤認したアレックスの下に、現在向っています 【モデルマン(アレックス)@VIPRPG】 [状態]肉体的損傷(大)、魔力消費(大)、憎悪、右脇腹消失、霊体化 [装備]軽い服装、鉢巻 [道具]ドラゴンソード [所持金] [思考・状況] 基本行動方針:北上を帰還させる 1.幻十に対する憎悪 2.聖杯戦争を絶対に北上と勝ち残る [備考] 交戦したアサシン(浪蘭幻十)に対して復讐を誓っています。その為ならば如何なる手段にも手を染めるようです 右腕を一時欠損しましたが、現在は動かせる程度には回復しています。 幻十の武器の正体には、まだ気付いていません バーサーカー(高槻涼)と交戦、また彼のマスターであるロベルタの存在を認識しました 現在北上の下へと向かっています ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「貴方を責めている訳じゃないわ、ジャバウォック」 今自らを抱き抱えて、突風のような速度で移動する全裸の青年に対して投げ掛けられた声は、非常に優しいものであった。 そして熱と同時に、脊椎を突き刺すような凄まじい狂気で、その声が彩られていた。 「ただ少し、驚いてしまっただけ。私をも葬り去る程の火力を持った貴方に、ね」 高槻の表情は仮面の様に動かない。ただ、ロベルタを抱えて、遠くに移動するだけ。 屋根から屋根へ、時には裏路地に降り立ち、また跳躍。再び屋上かその一つ下の階の、転落防止のためのフェンスか給水タンク、クーラーの室外機の上に降り立ち、 再び跳躍。再び遠くへと移動する。一足で二十~三十mもの距離を跳躍する、高槻涼の脚力よ。 ロベルタは全く、高槻、いや、正真正銘の魔獣――ジャバウォック――と化し、破滅の一打を 新宿 に加えようとした事に、怒りの様子を見せていなかった。 寧ろ、脊髄が熱っぽく燃え上がり、陰唇が濡れそぼる程の興奮を覚えていた。このサーヴァントは、自分がまだまだ知らぬ、真の切り札を有していたと思うと。 その切り札が、この 新宿 に集うサーヴァントの中で最強に等しい力を持っていると思うと。怒りよりも先に、褒めて称えたくなるのだ。 核より凄まじい兵器。それは、軍人上がりのロベルタにとってどんな意味を持った言葉であるか。 それは即ち、軍人を含めた諸人が連想する所の、最強の兵器。ありとあらゆる行為に対する抑止力。 高槻涼は、それを個人で成す者。高槻涼は、それを個人で上回る威力の兵器を生成出来る究極の生命体。神とは正しく、このサーヴァントの事を指すのだと、ロベルタは強く信じていた。 高槻涼を上手く操れば、自分は絶対に、この聖杯戦争を勝ち抜ける。 誰が来ようとも、魔獣の圧倒的な暴威で粉砕出来る。そう思えば思う程、ロベルタは酔ってくる。 どんなバーボンやウィスキーよりも、強烈な酩酊感と多幸感を味わえる存在。それこそが、このバーサーカーなのだ。 砕かれた左肩の痛みも、この感情の前には和らげられる。 だが、あの気取った紳士服の男に対する怒りを、ロベルタは忘れていない。今は、状況が悪すぎたから逃げ出した。 しかし、高槻涼の使い方を学び、その力を完璧に理解した瞬間こそが、あの主従の最期である。 あの男は、自分の影すらも灼いて見せると言って見せた。ならば自分は、影すらも破壊して見せるのだ。 今自分を抱き抱える、暴力の権化たる魔獣・高槻涼、もとい、ジャバウォックの爪と炎によりて、だ。 「次は、絶対に殺して見せましょう、ジャバウォック。私と貴方なら、きっと……」 右手で高槻涼の頬を撫でながら、熱っぽくロベルタが言って見せた。 高槻は何も答えない。ロベルタを危難から遠ざける為に、今も跳躍を続ける。……本当に、それだけか? 高槻涼と言う男の人格の一抹、その百分の、いや、千分の一の、人格の一分子が、そんな疑問を抱いた。 自分はもしかしたら、マスターを遠ざける為じゃなく、別の何かからも逃げているのではないのか? 自分の中に眠るのは、あの魔獣だけの筈である。 ――では、瞳を閉じた自分の瞼の裏に映る、自分のマスターの様な狂相を浮かべる金髪の少女は、果たして誰なのか? 【四谷、信濃町方面(四ツ谷駅周辺)/1日目 早朝8:10分】 【ロベルタ@BLACK LAGOON】 [状態]左肩甲骨破壊、魔力消費(中)、肉体的損傷(中) [令呪]残り二画 [契約者の鍵]有 [装備]銃火器類多数(現在所持している物はベレッタ92F) [道具]不明 [所持金]かなり多い [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を獲るために全マスターを殺害する。 1.ジョナサンを殺害する為の状況を整える。 2.勝ち残る為には手段は選ばない。 [備考] 現在所持している銃火器はベレッタ92Fです。もしかしたらこの他にも、何処かに銃器を隠しているかもしれません 高槻涼の中に眠るARMS、ジャバウォックを認識しました。また彼の危険性も、理解しました モデルマン(アレックス)のサーヴァントの存在を認識しました 【バーサーカー(高槻涼)@ARMS】 [状態]異形化 宝具『魔獣』発動(10%) [装備]なし [道具]なし [所持金] マスターに依存 [思考・状況] 基本行動方針:狂化 1.マスターに従う 2.破壊(ジャバウォック) 2.BAKED APPLE(???) [備考] 『魔獣』は100%発動で完全体化します。 黄金の回転を憶えました ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「チッ、見えなくなっちまったな」 目を細めて、般若か鬼女と言われても納得する程の、恐ろしい風貌の女と彼女の馬であるバーサーカーと、 彼らを追うジョナサン・ジョースターとそのサーヴァントのアーチャーの行方を探す十兵衛であったが、全く見つからない。 京王プラザホテル周辺で戦うかと思いきや、そのまま彼らは、自らのバーサーカーに乗り、また呼び出した馬に乗り、此処から遠ざかって行った。 十兵衛は京王プラザの結構高層部分の非常階段から、階下の風景を眺めている。非常階段からでも、その風景は圧巻である。 大抵の建物が、十兵衛の目線の下に来るのだから。そこからでも、馬に乗ったジョナサン組と、ロベルタ組の姿は見えない。 それ程までに彼らは遠くに向かったのである。ある程度の進路方向までは、十兵衛も確認出来ていた。 しかし、 新宿 駅周辺の辺りまで彼らが向かった瞬間、もうお手上げであった。理由は単純明快、建物が入り組んでいて最早物理的に見えなくなったからである。 建物に阻害されては、例え天体望遠鏡を持って来たとて見えはしないだろう。何処か見える所まで移動してくれないものかと、 ジョナサンらが消えて行った方向から推測した、現在彼らがいるであろう地点に向けて十兵衛は目を凝らすが、無理なものは無理だった。 まさかあのお人よしの男に、『自分達の戦いぶりが見られないよう』に、と言った配慮は出来はしないだろう。 一言二言喋っただけだから如何ともし難いが、あのジョナサン・ジョースターと言う男はかなり人が良い。 十兵衛にとって、自分にとって友好的なスタンスの人格者と言う存在は、=骨の髄まで利用してやっても良い人間と言う事である。 もっと言えばただの馬鹿だ。でなければ白昼堂々宝具と思しき馬を展開させ、公道のど真ん中を疾駆させる筈がない。 見た所、あのバーサーカーの移動速度は相当な物であった。対して馬に乗ったジョナサン達の移動速度は、馬の生態的な移動速度相応。 追っている内に、意図せずして十兵衛が視認不可能な所まで向ってしまった、と言うのが真相なのであろう。それが十兵衛にとって厄介な結果を齎してしまった事に、彼らは気付いていなかった。 「はぁ~、クッソ。サーヴァント同士の戦いを見れると思ったんだがな」 無駄な努力はしない、漁夫の利、濡れ手に粟、ゴネ得。 それが、佐藤十兵衛の行動方針である。要するに、自分の手を汚さない。これが一番重要なのだ。 しかも、彼が引き当てたサーヴァントはセイバー、一般的には最優――あれを見る限りとてもそうは思えない――のサーヴァントであり、 その最優のサーヴァントで、このような手汚い作戦を取る事に意味があるのだ。佐藤十兵衛の喧嘩は驚く程考えられており、それ自体が一種の舞台の様なものである。 こう言った喧嘩を展開する上で、最も重要なファクターとなるのが、情報量だ。前もって情報を制している物は、喧嘩の――殺し合いの趨勢すらも制する。 十兵衛は肉体こそは完成されているが、格闘技経験と実戦経験が、『プロ』と呼ばれる存在に比べて希薄である。だからこそ、狡猾に狡猾に進めるのだ。 強いサーヴァントを引き当てました、ならばそのサーヴァントの力を十分に発揮するよう真正面から戦いましょう。 そんな事は十兵衛に言わせれば偏差値二十五の人間がする事であり、勝率を高めたいのであれば、強い上に情報や舞台すらも制する必要があるのだ。 それを初っ端から挫かれた十兵衛は、かなりトーンダウンしていた。 自分達が血と汗を流して、サーヴァント同士の戦いを経験してみよう、等と言う事は十兵衛はしたくない。 他人に血と汗を流させて、聖杯戦争におけるサーヴァント同士の戦いとはどのような物なのか、それを彼は知りたかったのだ。 このような機会、早々訪れはしないだろう。その千載一遇のチャンスを逃してしまった十兵衛は、かなり残念な物であった。 ――と言うか 「あのベニヤ板は何やってんだよオラァ!!!!」(此処に墨文字がフキダシ外に表示される漫画的表現が挿入される) そうである。自分の引き当てた馬である、セイバーのサーヴァント、比那名居天子が来ないのである。 飛行が出来るサーヴァントではあるが、その移動速度は大して速くはない――それでも、十兵衛の全力疾走よりは遥かに速い――事は、確認済みである。 それを加味しても、遅い。あの移動速度で、障害物のない空を移動し続ければ、今頃は十兵衛の下に到着している筈なのだ。 なのに、来ない。なめてんじゃねーぞ。 これはもうセイバーと同棲して、痛いほど解った事であるが、比那名居天子は相当な不良娘である。 この場合の不良と言うのは、非行少女と言う意味でなく、我儘と意味である。 話を聞くに、どうやらあのセイバーは元々はやんごとなき御家の令嬢と言った立場に近しい存在であり、傅く者もそれなりにいた身分であると言う。 早い話が、お嬢様気質であり、箱入り娘であると言うべきか。つまり、外部の事情に特に疎い。 特にこの 新宿 は、そもそも彼女が住んでいた所に曰く、外界と呼ばれる世界に近しい場所であり、常々天子が行ってみたいと思っていた所でもあるのだと言う。 その様な所であるから、彼女は家の中にいるより、外へ外へ、と言ったアウトドア指向の傾向が強いのである。 話だけを聞くのであれば、外に興味を持った深窓の令嬢、と言った風に思えるかも知れないが、実態はそんな可憐なものでなく。 兎に角我儘、兎に角自分の実力に自信あり、兎に角目立ちたがり屋。恐ろしく我が強いのである。 十兵衛のちょっとした発言で臍を曲げる、今は十兵衛の方が金を持ってるのだからなんか奢れ、 自分が目立てるような異変――これの意味が十兵衛には解らない――解決の筋道を立てろだの、かなりの無理難題を吹っ掛けて来る。かぐや姫かお前は。 自身の境遇を語る時に、天子は自分が他の天人達から、不良天人呼ばわりされた事について随分とご立腹だった事を聞いた事がある。 ……その性格を見る限り、そりゃそんな扱いになるだろうとは、面倒くさいから十兵衛は言わなかったが。 いよいよもって、余りにも暇だから、最近携帯に落とし込んだ音ゲーアプリ。 DB69(シックスナイン)でもプレイしようかと思い立ち、スマートフォンを取り出した、その時であった。 「ごめ~ん十兵衛、待った?」 きっと、別れたくなるような彼女と言うのは、自分から待ち合わせの時間に遅れたらこんな事を言うのだろうな、と十兵衛は考えた。 非常階段の手すりの外側を、ふわふわと浮かびながら、布製のハンドバッグを持って、比那名居天子が霊体化を解き始めた。 「今来た所だよ」 誰が聞いても大嘘と解る様な発言。 しかし、此処でマスターの意を汲まないのが比那名居天子と言うセイバーである。 「あそ、ならよかった。いやーごめんね十兵衛、お菓子選んでたのと、サーヴァント同士の戦いを観戦してたら、ついつい忘れちゃった」 「テメーとくし丸に買い出し行ってて遅れた癖に、その上悠長に菓子なんて――っておい、ちょっと待て」 「何?」 「サーヴァント同士の戦いを見てたってのは……」 「言葉の通りよ。此処から結構離れてた所で、サーヴァント同士が戦ってたのよ」 ――捨てる神あれば何とやら。だった 結果的に天子が遅れた事により、自分が一番知りたかった情報を入手出来る機会が得られそうである。 「それで、どんな奴が戦ってたよ」 「ん~、余り遠くを見るのには自信ないけど、全員若い男だったわよ」 手すりの外側から内側に移動し、踊り場部分から上の踊り場に移動する為の階段の一段に腰を下ろしながら、天子は話し始める。 此処までは十兵衛の見たアーチャーとバーサーカーの特徴と完全に一致する。 「んで、遠目から見て、解りやすい特徴とかなかったか?」 「解りやすい? ん~……あっ、一人は何か馬に乗ってたわ。途中で降りたけど」 ビンゴであった。それは確実に、ジョナサン・ジョースターと言う男に従っていたアーチャーのサーヴァントだ。 「一人は確か、凄いうるさい声で叫んでたから、多分バーサーカーじゃないかしら? それで、そのバーサーカーを相手に、二人で――」 「待て」 「何よ、話してる所じゃない」 話を途中で遮られ、むくれる天子。 「単刀直入に言って、セイバーが見たサーヴァントは俺がさっき見たサーヴァントとみて間違いない。だが、俺が見たのは二人だった」 そう、数が合わないのだ。サーヴァントが三人いたなど、と言うのは。 「あそう? でも確かに三人居たし……あの場所にもう一人、サーヴァントの主従がいたんじゃない?」 んな適当な、と思ったが、確かにその通りかもしれない。 東京都二十三区全域ならいざ知らず、新宿区一つに限定するのであれば、佐藤十兵衛が元居た 新宿 も、狭い所であった。 となれば、ジョナサン達が移動した先に新手のサーヴァントがいると言う事も、確かにおかしくはない。 「遮って悪かったな、続けてくれないか」 その後、天子から語られた事柄は、こう言う事になった。 件のバーサーカーを相手に、アーチャーと思しきサーヴァントと、新手のサーヴァントは手を組んで戦っていた事。 途中でバーサーカーが、元の姿とは似ても似つかない、チープな表現であるが、鬼の様な姿をした怪物に変身した事。 それまでは上手く追い詰めていた二名であったが、変身された瞬間戦況が変化した事。 その鬼は火を噴き、マスタースパーク――何の事は十兵衛は解らない――よりも凄まじい光線を放った事。 誰がどう見ても二人を殺せた筈なのに、そのバーサーカーが変身を解き、もう一人のサーヴァントごと何処ぞに消え失せた事。 そんな事を、十兵衛に天子は話した。 「……成程ね」 言って、顎に手を当てて十兵衛は考え込む。 その様子を真顔で、天子は注視していた。……その手に、小ぶりの真空パックを持ちながら。 ビニール製のその真空パックには、『コ口口』と書かれていた。巷で話題の、本物の果実宛らの触感が楽しめる、新感覚のグミ菓子である。 それを噛みながら、天子は今までの事を報告していた。非常階段がまことにグレープ臭い。 先ず天子が語った事柄から解る事の中で兎角重要なのが、そのバーサーカーは絶対に真正面から戦ってはいけない事だ。 人間状態の時の戦闘力は兎も角、その『鬼』と呼ばれる姿をした時には、どうなるものか解ったものではない。 そして次に重要視するべきなのが、アーチャーと共闘した謎のサーヴァントの存在である。ひょっとしたら、このサーヴァントも利用出来るのではと十兵衛は思っていた。 こう思った訳は簡単で、あのお人よしのジョナサンのサーヴァントであるジョニィと、一瞬たりとも共闘したと言う事実があるからだ。 事と次第によっては、互いに手を結ぶ程度の柔軟性があるサーヴァント。と言う事を知れただけでも、十分過ぎる程の収穫であった。 そして、謎も多い。 一つが、ジョナサンが呼び出したアーチャーの存在だ。そもそもアーチャークラスなのに馬に騎乗していた、と言う事も十兵衛には謎であったが、 実際の彼の戦い方も、天子からして見たら謎が多かったと言う。辛うじて爪を飛ばしていた事だけは彼女も理解していたが、 訳の解らない技術でバーサーカーを追い詰めたり、自分に爪弾を撃つ事で、自分の姿を消していた等、その発言は何処か要領を得ない。 尤も、これは例え十兵衛が見たとて、サーヴァントのやる事。原理不明であるのには代わりはないので、責めるのは酷だと思いそれ以上の追及はしなかった。 気がかりな点のもう一つに、ジョナサンとバーサーカーのマスターの行方がある。天子に、二名の行方を聞いても、それは解らないと返って来た。 十兵衛はジョナサンの事を過小評価しているが、それは性格面での話である。正直な話、あの男と本気で喧嘩をした場合――自分は確実に殺られる、と言う確信があった。 それ程までに、ジョナサンと十兵衛の戦力差は掛け離れている。恐らくは師である入江文学ですら、勝てる保証はゼロだろう。 だからこそ、ジョナサンがどんな戦い方をするのか知りたい所ではあったが、天子は見失った、と言う。 恐らくは彼女もまた、複雑に入り組んだ 新宿 の建物に阻害され、マスター同士の戦いを見れなかったのだろう。故にこの話題は、これ以上追求しない事とした。 収穫はゼロじゃない。それだけでも、合格点と言うものであった。 「どう、解ってた事だけど、私ってば凄い役立つでしょ?」 「あぁ、すっげぇ役立つ。イングランドのジョン王並だわ」 「誰それ?」 「イギリスじゃ並ぶ者がいない君主だよ」 「へぇ博識ね」 「その時歴史は動いたを図書館で見まくったからな」 真実を語れば間違いなく激怒するので、十兵衛は黙っておいた。 十兵衛は、天子が持って来た手提げ袋に手を突っ込み、適当な菓子を一つ手に取る。 ハードな触感が売りの、梅味のグミとやらを開封し、それを口に運んだ、その時であった。 カン、カン、と、階段を下りる音が聞こえて来た。【従業員みたいだな、霊体化しとけ】、十兵衛が天子に念話を行う。 これについては特に異論はなかったらしく、大人しく天子は霊体化を始めた。 梅味のグミを噛み締めていると、その人物が、先程まで天子が座っていた階段から降りて来た。 遮光度の極めて高いサングラスを着用した、全身ブラックスーツの長身男性。 タモさんの出来損ないみてーな奴だな、と十兵衛は思っていた。そして同時に、明らかに従業員ではねーな、とも。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ――このホテルにサーヴァントがいる。 そう鈴仙に言われた時、塞は本気で腰を抜かしそうになった。 ホテルを拠点に聖杯戦争の主従が、と言う可能性は当然塞も考えた。 だからこそ、自分達が拠点としている京王プラザは、特に重点的にその存在がいるかどうか炙り出した。 結果は、安心出来るものであった。この主従にとって、此処京王プラザに聖杯戦争の関係者がいないと言うのは、当然の認識であったのだ。 それが、突如として崩された。 新宿 二丁目で起ったと言う、謎の怪奇現象及び、怪人物達の激しい戦闘。 こう言った現象があったと、塞と協力関係にある警察関係者のリーク情報を聞いていた、その最中であった。 鈴仙の口から、このホテルにサーヴァントがいると聞かされたのは。 戦闘を行ったとされる現場に足を運ぶ予定でいた塞であったが、予定を急遽変更。 遠くの鉄火場より、近くの危難だ。この拠点を失うのは、塞としても得策ではなかった。 早急に対策を打つべく、塞達は、そのサーヴァントの気配が感じられる地点――三十九階非常階段へと、実体化した鈴仙を引き連れて足を運んだのである。 そうして足を運んだ先に居たのは、菓子を口に運んでいる、学ラン姿の青年であった。 皮膚の張り具合から言ってハイティーン・エイジである事が解る。だが同時に、そうと感じられない雰囲気にも溢れていた。 簡単な話で、学ランの下からでも解る、その筋肉の量であった。本物の中国拳法を学んだ塞には、解る。 この青年の筋肉が、生来の物であり、それに加えて厳しいトレーニングを積んで得た、本物のそれであると。 この青年を、塞は知っている。 父親は官僚、母親は栃木県の都知事、と言う超エリートの血筋。ちょっとした情報通を突けば、出てくる情報であった。 佐藤十兵衛。それが、この青年の名前である。そして、 新宿 の街に散らばっている、通称佐藤クルセイダーズと言う意味不明な一団のボスであった。 塞は、今の今まで、この青年の事はさして重要ではないと思っていた。 マークするべき対象の一人として数えてはいたが、佐藤クルセイダーズにしたって、単なるガキが粋がっているだけだと思い、その優先順位は下の方に設定していた。 ――今は、違う。何故、このホテルの非常階段に、この男がいるのか? 偶然にしたって、出来過ぎているし、考えられない。 日本はテロにうるさい国である。こう言った著名な宿泊施設は、危険物の持ち込みには神経質なのだ。 不届き者の侵入経路として、下水道と非常階段はオーソドックスかつ鉄板過ぎて、真っ先に警戒される箇所である。当然ホテルの側も、此処に警備を配置している。 それを掻い潜って、この男が此処にいると言うのは、ハッキリ言って、キナ臭いを超えて、限りなく黒に近しいグレーに等しい領域であった。 「子供が遊ぶ所じゃねーぜ、坊や。高い所は好きなのは解るがな」 「良い眺めだろ? 此処で菓子を食うのが好きなんだ」 言って十兵衛が、菓子を口に運びながら塞に対して返した。 「どうやって此処までやって来たんだ、坊や。非常階段に居たら怪しまれるぜ、とっとと帰んな」 「やけに突っ掛って来るな、オッサン。従業員には見えねーが、何もんだアンタ」 「通りすがりの、メン・イン・ブラックって奴だな。このホテルには仕事で来てる」 「へぇ、そりゃド偉い身分で。俺には、オラついたタモリにしか見えなかったぜ」 話して見て、解る事もあるものだとつくづく塞は思う。 かなり生意気で、そして、社会的ステータスに恵まれた両親を持っている為か、かなりイキがっている。 要するに、何処にでもいる、親の威を借りた生意気なガキ、と言う認識であった。 【塞】 【油断はするなよ、アーチャー。此処で戦うのは、正直得策じゃねぇ】 非常階段と言う現在地点からでも解る通り、非常に狭い。 人二人、ギリギリ横に並んで通れるかと言う程狭いのだ。此処でサーヴァント同士の戦いを繰り広げようものなら、双方共倒れになりかねない。 身体能力には自信がある塞ではあったが、流石にこんな最悪のフィールドで戦う程ではない。何とか、落としどころを発見しなければならなかった。 ――そんな、時であった。 「――あ、アンタ思い出した。あの時の兎でしょ」 「えっ」 今の今まで、塞の後ろで大人しく立ち構えていた鈴仙が、素っ頓狂な声を上げ始めた。 は? と、間抜けな声を十兵衛が上げると、彼の隣に、超絶ウルトラ問題児、天界が誇る不良天人、比那名居天子が霊体化を解いて、その姿を現した。 余りにも唐突な出来事だった為に、十兵衛や鈴仙は愚か、努めて大人の態度で振る舞っていた塞ですら、間抜けな表情を隠せない。 腰まで届く、青空の様に透き通った青さをしたロングヘア。 桃の葉っぱと果実の意匠がこらされた特徴的な帽子。そして、オーロラを模した飾りのついたロングスカート。 鈴仙には見覚えのある人物である。と言うより、あって当たり前であった。何故なら嘗て、彼女はこの少女と戦った事があるのだから。 幻想郷で嘗て起った異変の中で、特に自分本位かつ、自作自演の気が強かったあの事件。博麗神社の倒壊事件の黒幕だった天人――比那名居天子その人だった。 「どっかで見た事ある顔だと思ってたけど……思い出してみれば確かにそうだわ。確かえ~っと……あぁ、鈴仙・優曇華院・イナバだっけ? 本当に長い名前よね」 ――真名を、当てられた。 「アーチャーッ!!」 その事を認識した瞬間、バッと塞は飛び退き、踊り場付近まで飛び退いた。 正体を当てられた鈴仙は、直に臨戦態勢を取り、手すりの向こう側の空中を浮遊。瞳を赤く輝かせ、指先を十兵衛の方に向け始めた。 佐藤十兵衛は、黒だった。 自分が今まで保有していた情報の中で、最も優先順位の低かった青年が、ぶっちぎって一番高い序列に変動した瞬間であった。 「馬鹿!! 何でいきなり正体表すのこのペチャパイ!!」 十兵衛としても、自らのサーヴァントが唐突に霊体化を解くとは思ってなかったらしく、心の底から悪態をつきはじめた。 「どうせシラ突き通しても気付かれるわよ。相手は確か、波長を操る能力だった筈だから、サーヴァントの索敵範囲も広いし……って言うか此処に来たって事は、私達が主従だって気付いているからだろうしね。あと、最後の発言は訂正しなさい!! もう聞き逃さないわよそれ!!」 凄まじくどうでも良い事で癇を起こし出す、佐藤十兵衛のサーヴァント。だが、それは本当にどうでも良い事だった。 あろう事か、鈴仙と言うサーヴァントの本質まで当てられた流石に妙に思った塞は、即座に念話を以て鈴仙を問い質しに掛かる。 【アーチャー、目の前の存在を知ってるか?】 【……比那名居天子。私が元々住んでた所の住民の一人よ。恐らく該当クラスは……セイバーか、ライダー。かなり短絡的で我慢が効かない子供だけど、実力だけは確かよ。注意して】 【お前の能力について、どれ程知ってる?】 【紺珠の薬以外の全て、って言う認識で差し支えないわ】 【結構。まともにやり合うのは危険だな】 塞が鈴仙の能力を優秀だと思っている最大の理由は、その能力が一目見ただけでは、どのような能力なのか判別が付き難いと言う事がある。 相手の攻撃を防ぐ宝具、障壁波動だけを見たら、奇特な魔術を操るアーチャーだと錯覚するだろう。 精神干渉を行う面から見たら、極めて強力な精神攻撃を得意とするアーチャーだとも誤認するだろう。 常に実体化をしていてもサーヴァントだと認識されない所からも、認識阻害に優れたアーチャーだとも思うだろう。 しかしその実、それら全ては鈴仙と言うアーチャーが操る特殊能力、『波長を操る程度の能力』の応用であり、結局は一つの能力に収斂されるのだ。 まさか相手は、実は一つの能力で、極めて幅広い分野を賄えている等とは、余程の確証がない限り辿り着けないだろう。 ――その確証を掴まれてしまえば、アーチャーとしての鈴仙の実力が損なわれるのは、当然の理であった。 サーヴァントだと認識され難く、かつ、攻撃の正体が掴み難いのが最大のメリットである鈴仙の長所が、完全に潰されていた。 理由は単純明快。鈴仙と目の前のサーヴァント、比那名居天子が生前知り合いだった、と言う、鈴仙も塞も、そして、十兵衛ですらも予想外のエラーで、 塞の聖杯戦争を潜り抜ける計画は、早速翳りを見せ始めたのだ。確かに、生前から鈴仙と言う存在を知っていれば、秘匿性等無意味極まりない。 こんな現象、予想も出来ないし、回避も出来る筈がなかった。 この場で十兵衛を逃す訳には行かない。 隠密性に特に優れたアーチャー、という利点が、早くも崩れ去ろうとしている分水嶺なのだ。 『千里の堤も蟻の穴から崩れる』と言う言葉があるが、今空いた穴は蟻の穴所ではない。何とかして、塞がねば拙い穴であった。 だが、口封じに殺すのは、この状況下では得策ではない。相手も恐らく、それは同じ事だと考えているだろう。 腹の探り合い状態。 機先を制すべく動いたのは、塞の方であった。 「落ち着けよ坊や、お前も解ってるだろ。此処で戦えば、双方無事じゃすまねーだろ」 まずは、戦闘を回避する事が重要であった。 その為には、この場で戦う危険性に訴える必要があったが、これに関しては、短い言葉で相手も理解するだろう。 こんな場所で戦えば、魔術も何も持たないマスターだ。待っているのは転落死という、これ以上と無くつまらない結末だけだった。 「安心しろよ、タモリのオッサン。こんな場所で戦う程、俺も馬鹿じゃねぇ」 これについては、十兵衛も同意だったらしい。諸手を上げて、従順の意を示した。 ――これで、懸念の一つはクリアー出来た。その次に問題となるのは、この男の処遇だった。 【アーチャー、目の前のサーヴァントは強いか?】 【強いわよ。直接的な戦闘になったら、私ですら敵わないわ。精神を操ろうにも……、変に頑固だし、正直難しいわね】 【成程。つまりは、こう言う事か】 表情には億尾にも出さないが、心の中で塞は、ニヤリと笑って見せた。 【『優秀なサーヴァント』、で間違いはない訳か】 【まぁ、一応はね】 【解った。なら後は確かめるべくは……】 其処でいったん、塞は念話を打ち切った。 「坊や、俺もお前も、結構拙い状況なの、解るかい?」 「何がだ?」 「お前はその気になれば、俺のサーヴァントの能力が何なのか、何が出来るのか知れる。俺もその気になれば、お前のサーヴァントが何なのか、何が出来るのか理解出来る」 「……そりゃそうだな。如何も、俺の所の馬と、アンタの所の馬は同郷出身らしいしな」 「どうだ、此処で、『同盟』を組んでみないか?」 鈴仙が、目を見開いた。十兵衛と天子が、ピクッと反応を見せた。 「悪い事じゃあないだろう。互いに手札が解っちまう状態なんだ。このまま争うのは、馬鹿のする事だ。此処は穏便に手を結ぼうぜ」 「お前の事を信用出来ない」 こんな事を言われる等、塞には織り込み済み。此処からが、塞の手腕の見せ所だった。 「そう言うなよ、『佐藤十兵衛くん』」 「――!!」 こう言う時、フルネームで相手の事を呼ぶ、と言うのは、思わぬ一撃になる。 このような、互いに名前を知らない状況だと、相手が思い込んでいる時には、思考領域に空白を与える、良い一撃になるのだ。 「佐藤クルセイダーズだっけか。十字軍は最終的には失敗に終わっただろ、験が悪いから名前を変えた方が良い」 「……どこで知ったんだ? そんな情報をよ」 「同盟を組んでから教えてやるよ。今は互いに信用が出来ないからな」 其処で塞は、両ポケットに手を突っ込み、十兵衛など興味もない、と言った風情で、階段を上って行く。 つられて鈴仙も、手すりの内側の踊り場へと降り立ち、彼の後を追う。 「意思が決まったら、四十一階の非常階段の所まできな。それで、さしあたっての商談は成立だ」 そう告げて、塞達は非常階段を上って行く。少なくとも、考える時間はやる。それが、大人と言うものであった。 【……本当に、あれと同盟を組むつもり? 塞】 念話で、心配そうな声音で鈴仙が訊ねて来る。 今回の一件で、死にかけていた不安感が呼び戻されたらしい。数多の英霊が登録されていると言う、英霊の座。 その数は千を超え、万にも届こうか。その中から、同郷の者が同じ舞台に呼び出されているのだ。天文学的確率であろう。 そんな、悪い意味で奇跡的な出来事に出くわしたのだ。不安になるのも、無理はない。 【俺だって組みたくはないな。だが、あれは俺達の監視下に置いておかなきゃ、かなり拙い】 先程も述べた通り、鈴仙の能力はかなり攻略も特定も難しい、強力な力なのだ。 特定がし難い、と言う利点が潰されるのは、非常に宜しくない。だからこそ、この利点が潰されると言う恐れを、逆に潰しておく必要があった。 これから築き上げられるのは、同盟ではない。どちらかと言えば、互いに手札を知り尽くした者同士が行う、相互監視に近しい関係であった。 【鈴仙、あのサーヴァントは、間違いなく強いんだな?】 【性格を除けば】 【それで妥協はしてやる。俺がさっき言った、『同盟を行うに相応しい条件』を辛うじて満たしている】 それは、先程塞達の宿泊する部屋で、彼が言っていた、聖杯戦争を潜り抜ける上で、自分達にとって有利になる同盟相手の条件。 『マスターが適度な無能で、サーヴァントが優秀』、と言う組み合わせ。鈴仙はそれを憶えていた。 【あのマスターは、無能だと】 【一言二言喋って解った。官僚の親父さん、都知事のおふくろ。つまりはお坊ちゃんだな。かなりプライドが高い】 それは鈴仙も見ていて思った。波長を観測せずとも解る程、解りやすい性格だ。 【んで、人より優位に立とうとする。俺をタモリだ何だと挑発したろ? あの時から、此処に俺が来る事がおかしい事だって認識してたと思ってる。 だから、カマを掛けてみたんだろうな。ああやって、解りやすい挑発で、俺が馬脚を現すのを期待したんだろうよ】 確かに、真っ当な人間ならば、そんな事を行う必要性がない。 【そして、決定的な事は、やっぱりガキだって事さ。佐藤クルセイダーズの事を当てられた時、かなり驚いてたろ? まぁ解ってた事だが、情報量については、俺の方に分があるって事さ】 比較する事自体が、酷な事であろう。 片やイギリスの調査室に所属する、本物のエージェント。片や何て事はない、ボンボンの子供。 情報収集能力に、どっちが秀でていますかと聞かれて、後者であると答える人間は、百人中四人もいないのではないか? 【プライドが高くて、人より上じゃないと気が済まなくて、そして、情報量に乏しい。だけど、少しは頭が回る。つまりは――適度な無能の条件を満たしたマスターだ】 【……来ると思う?】 【来るさ。ちょっとは頭が回るんだ。情報の重要性位は、解る筈さ】 本当にぶっちぎった馬鹿だったら、この非常階段で戦おうとするだろうし、塞の提案を蹴って此処から逃げ出そうともするだろう。 本音を言えば、そのどちらもが、塞にとって非常に困る選択であり、もしもやられていたら、聖杯戦争から退場していたのは塞達の方だったかもしれない。 それを行う事は先ずないだろうと、塞は踏んでいた。何故なら相手は、適度に小狡い無能だから。それ位のリスク計算位は、出来るから。 適度にリスクが計算出来るよりも、全くリスクが計算出来ない馬鹿の方が、時として予想外の行動をおこし、厄介な結果を招く事が間々ある。 そう言った存在の行動を予測する事は、難しい。だが、適度に頭の良い無能なら、ある程度行動の幅が予測出来る。 これならば――同盟相手としても相応しい。優秀なサーヴァントを動かしつつ、マスターを手練手管で操れる。 同盟を組む理由としては、余りにも予想外のエラーで、塞としても正直不服であったが、そんな事を言っている場合ではない。 一先ずの危難は、クリアー出来そうかと、静かに、ほう、と息を吐く塞であった。 【西新宿方面(京王プラザホテル非常階段41階)/1日目 午前8:15分】 【塞@エヌアイン完全世界】 [状態]健康 [令呪]残り三画 [契約者の鍵]有 [装備]黒いスーツとサングラス [道具]集めた情報の入ったノートPC、 新宿 の地図 [所持金]あらかじめ持ち込んでいた大金の残り(まだ賄賂をできる程度には残っている) [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を獲り、イギリス情報局へ持ち帰る 1.無益な戦闘はせず、情報収集に徹する 2.集めた情報や噂を調査し、マスターをあぶり出す 3.『紺珠の薬』を利用して敵サーヴァントの情報を一方的に収集する 4.鈴仙とのコンタクトはできる限り念話で行う [備考] ・拠点は西新宿方面の京王プラザホテルの一室です。 ・ 新宿 に関するありとあらゆる分野の情報を手に入れています(地理歴史、下水道の所在、裏社会の事情に天気情報など) ・ 新宿 のあらゆる噂を把握しています ・警察と新宿区役所に協力者がおり、そこから市民の知り得ない事件の詳細や、マスターと思しき人物の個人情報を得ています ・その他、聞き込みなどの調査によってマスターと思しき人物にある程度目星をつけています。ジョナサンと佐藤以外の人物を把握しているかは後続の書き手にお任せします ・バーサーカー(黒贄礼太郎)を確認、真名を把握しました ・ 新宿 二丁目の辺りで、サーヴァント達が交戦していた事を把握しました ・佐藤十兵衛の主従と遭遇。セイバー(比那名居天子)の真名を把握しました。そして、そのスキルや強さも把握しました 【アーチャー(鈴仙・優曇華院・イナバ)@東方project】 [状態]魔力消費(小)、若干の恐怖 [装備]黒のパンツスーツとサングラス [道具]ルナティックガン及び自身の能力で生成する弾幕、『紺珠の薬』 [所持金]マスターに依存 [思考・状況] 基本行動方針:サーヴァントとしての仕事を果たす 1.塞の指示に従って情報を集める 2.『紺珠の薬』はあまり使いたくないんだけど… 3.黒贄礼太郎は恐ろしいサーヴァント 4.本当に天子と組んで大丈夫……? [備考] ・念話の有効範囲は約2kmです(だいたい1エリアをまたぐ程度) ・未来視によりバーサーカー(黒贄礼太郎)を交戦、真名を把握しました。 ・この聖杯戦争に同郷の出身がいる事に、動揺を隠せません ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「本当に組んでよかったの? 十兵衛」 天子が此方の顔を見上げて来る。 正直彼女の方は、同盟を組む事について、かなり不服だったらしい。それが、身振りと表情に実に良く表れている。 【念話で話せ、声で話すのは危険だ】 【……わかった】 素直に天子が呑んだ。 【互いに尻尾を掴まれてるからな。掴まれちまった者同士、組んだ方が賢いと思ってね】 【馬鹿ね、向こうの言葉聞いたでしょ? 『佐藤クルセイダーズ』の事、向こうは完璧に把握してたのよ? 情報網は圧倒的にあっちの方が上よ】 天子は不良天人、と言う極めて不名誉な綽名を賜っているが、頭が悪いと言う訳ではない。 あの時塞が口にしていた、佐藤クルセイダーズ。その意味をしっかりと理解していた。 つまりは、十兵衛に同盟を組ませるよう、釘を刺して置く、と言う意味があの言葉にあったのは火を見るより明らかだ。 イニシアチブは、完璧に向こうに握られている状態だ。これは、プライドの高い天子には許せる事柄ではなかった。イニシアチブは、握りたい側なのだ。 【セイバー、一つお前さんのイメージを聞きたいんだがよ】 天子の質問に答える前に、十兵衛がそんな事を言い始めて来た 【一般的に、人間年齢の十七歳って聞いたら、どう思うよ】 【子供】 天子の方が見た目的には子供に見えるだろうが、彼女は天人である。 地上の人間の時間の物差しでは計り難いだろうが、何百年と生きている人物なのだ。そんな彼女にしてみれば、人間の十七歳等、ガキも同然であろう。 【だろうな。お前の認識が正しい。だが人間ってのは妙な奴でよ、高校生は中防をガキって認識して、大学生は高校生をガキと認識する。 んでもって二十歳超えた、特に大学卒業した奴ってのは、自分より年下を押しなべてガキと見做す。向こうのタモリが幾つかは解らねーが、向こうもそう思ったろうよ】 それは、十兵衛の事を坊やと呼んでいた事からも、窺える。 【聖杯戦争に参加した、十七歳のガキ。ついでに質問に付き合ってほしいが、これについてのイメージはどう思うね】 【そりゃもう足手まといの無能よ。何で参戦したの? って感じ】 【そのイメージを利用させて貰ったよ】 ニッと、十兵衛が、恐ろしく厭らしい笑みを浮かべて、更に続けた。 【そりゃそうだよな、俺だって、同じ年齢の奴が聖杯戦争に参加したら、利用しようと努力するさ。大の大人が、そう考えない筈がない。 あのイキったタモリは、何て言った? 佐藤クルセイダーズって言ったよな? 正直言われた時は俺も驚いたが、その意図を考えたらその発言を何でしたか、答えは一つしかねぇ」 【それは……?】 グミを一つ口に持って行き、咀嚼。飲み下してから十兵衛は言った。 【情報面で優位に立っているのは自分の方だと、思わせたいからに決まってるだろ】 あの状況下で、あんな発言をする下心など、一つに決まっている。 自分の方がお前より優位な所にいるのだと、アピールしたいからに他ならない。 そして、そのアピールの末に、何を得たいのか? 佐藤十兵衛と言う主従を操れるイニシアチブ、より言えば、手綱である。 【事実、情報面での優位は、アイツにあるのは事実だろう。佐藤クルセイダーズ何て言う少人数グループの名前を知ってるんだからな。だが、それは悪手だったな】 危機に直面した生物は、通常、闘争、或いは、逃避のどちらかを取る傾向にある。 だが、それが全く同種の生物と対峙した場合、此処に、威嚇と降伏が加わり、実質的には四つの選択肢を取捨する事となる。 あの時塞は、情報面で自分達がどれ程有利だったか、と言う事を十兵衛に示した。これは、四つの分類の内、『威嚇』に相当する事となる。 非常階段と言う狭い空間に於いて、空を飛べる上に、アーチャー、つまり、飛び道具を放てるクラスは、戦闘を行う上で多少なりとも有利の筈。 この利を活かさず、最初に取った行動が威嚇である、と言う事はだ。この時点において、塞達には勝算はかなり低く、楽してこの場を納め、後々有利に事を運びたい、と言う下心があったからに他ならない。 【あの時、あいつらは逃げるか、自滅覚悟で俺を殺してれば、もっと別の結末があったのかもな】 京王プラザホテルから眺める、 新宿 の街並みは壮観であった。何と言うべきか、 新宿 が自分のものになり、全てが己の足元にあるような錯覚すら憶える。 【……何がしたい訳? 十兵衛】 此処で初めて、天子は、十兵衛が意図する所を単刀直入に訊ねに来た。 【忠臣蔵で有名な大石内蔵助は、義に篤い切れ者と言うイメージがある一方で、キチガイみてーな放蕩振りだったと言う。遊郭に行っては女を買って、傍目から見たら狂ってる位女を囲ってたらしいな。つまりは、『佯狂』だ】 空になったグミの袋を放り捨て、十兵衛は更に続ける。 【誰が見たって、とても切れ者には思えない振りを続ける事幾年、油断しきった吉良上野介を、赤穂浪士四十七名引き連れて、見事討ち入り成功しました、とさ】 【馬鹿のフリして、取り入るって訳?】 【出来れば深入りして共依存するような関係は、避けたい所だな。俺が理想とする所はそうだな……】 側頭部を指先でポリポリと掻きながら、十兵衛は、上手い表現を探ろうとする。 【ある程度の日数が経過するまであのタモリと付き合って、んで情報だけをある程度得たら、トンズラこくって所】 【結局、情報だけは利用するのね。……それはつまり】 【タダ乗り】 フリーライダー。要するに、義務を果たさず、利益だけを得ようとする卑怯な人間である。 要するに十兵衛は、塞から情報だけを頂いて、用が済んだら即おさらばすると言うのである。 その用が済んだ時とは即ち――向こうが絶体絶命のピンチに陥った時であろう。つまりは見捨てるのだ。尤もそれは、向こうとしても同じ事なのだろうが。 何せこちらは、サーヴァントの真名と宝具を、掴んでいるに等しい状態なのだ。タダで逃がす訳には、行く筈がない。 【向こうは俺の事を、ガキだ無能だと信頼してくれてるからこそ、同盟を申込んで来てくれた】 十兵衛は一歩一歩、確かな足取りで非常階段を上って行く。 【期待に応えてやらなきゃ、スゴイシツレイ、って奴だぜ? セイバー】 ニヤリ、と言う擬音が付きそうな程良い笑みを、十兵衛は浮かべ始めた。 二秒程真顔だった天子だったが、彼女も、ニヤリ、と言う笑みを浮かべた。 【この悪党】 【褒めても何もでねーよ】 天子も、十兵衛の後を追うように、非常階段を上り始めた。 遥か高みから眺める 新宿 の風景と青空は、とても空闊としていて、清々しい気分にさせてくれるのだった。 【西新宿方面(京王プラザホテル非常階段41階/1日目 早朝8:15分】 【佐藤十兵衛@喧嘩商売、喧嘩稼業】 [状態]健康 [令呪]残り三画 [契約者の鍵] 有 [装備]不明 [道具]要石(小)、佐藤クルセイダーズ(10/10) [所持金] 極めて多い [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争から生還する。勝利した場合はGoogle買収。 1.セイバーと合流する。 2.聖杯戦争の黒幕と接触し、真意を知りたい。 3.勝ち残る為には手段は選ばない。 [備考] ジョナサン・ジョースターがマスターであると知りました。 拠点は市ヶ谷・河田町方面です。 金田@喧嘩商売の悲鳴をDL販売し、ちょっとした小金持ちになりました。 セイバー(天子)の要石の一握を、新宿駅地下に埋め込みました。 佐藤クルセイダーズの構成人員は基本的に十兵衛が通う高校の学生。 セイバー(天子)経由で、アーチャー(ジョニィ・ジョースター)、バーサーカー(高槻涼)、謎のサーヴァント(アレックス)の戦い方をある程度は知りました アーチャー(鈴仙・優曇華院・イナバ)の存在と、真名を認識しました 塞と同盟を組む予定でいます 高野照久@喧嘩商売、喧嘩稼業が所属させられていますが、原作ほどの格闘能力はありません。 【比那名居天子@東方Project】 [状態]健康 [装備]なし [道具]スーパーの買い物袋、携帯電話 [所持金]相当少ない [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を異変として楽しみ、解決する。 1.一旦家に帰ってからマスターと合流する。 2.自分の意思に従う。 [備考] 拠点は市ヶ谷・河田町方面です 時系列順 Back カスに向かって撃て Next 求ればハイレン 投下順 Back カスに向かって撃て Next 死なず学ばず、死んで学ぶ者は誰? ←Back Character name Next→ 16 カスに向かって撃て 佐藤十兵衛 34 太だ盛んなれば守り難し セイバー(比那名居天子) 16 カスに向かって撃て 塞 34 太だ盛んなれば守り難し アーチャー(鈴仙・優曇華院・イナバ) 16 カスに向かって撃て ジョナサン・ジョースター 24 絡み合うアスクレピオス セイバー(ジョニィ・ジョースター) 16 カスに向かって撃て ロベルタ 16 She`s so Happy☆ バーサーカー(高槻涼) 46 It s your pain or my pain or somebody s pain(前編) 16 カスに向かって撃て モデルマン(アレックス) 24 絡み合うアスクレピオス
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/386.html
せめて一度くらい、幸せな夢を見させて 【1】 人形=荒井昭二が目を覚ました頃には、もう福沢も槍を持った怪人の姿も見えなくなっていた。 彼が目覚めてから最初に考えたのは、わずかな時間ではあったものの、自分と行動を共にした「福沢玲子」の事である。 ――彼女は無事に逃げ切れただろうか? ――また別の怪物に襲われてはいないだろうか? 後を追いたいところだが、今の傷の状態からしてそれは不可能だろう。 何しろ、自分はあの怪人の持った槍によって、全身を貫かれてしまったのだ。 いくら自分が人間と違う体の構造をしているからといっても、これ程のダメージを負ってしまえば、行動にかなり支障が出てしまう。 かといって、休んでいれば傷が「治/直」るのか言われると、そうではないのだ。 前に述べた通り、自分は人間ではない。精密に造られた『人形』である。 『木材』と『虫』。それだけが自分を構成する物質。 木材が細胞分裂するわけがないし、かといって、蟲が傷を塞いでくれる訳でもない。 故に、どれだけ時間が経っても、決して傷は「治/直」らないのだ。 傷口から出てくるのは、人間の証である真っ赤な血ではなく、薄汚い色をした小虫達。 荒井の中に押し込められていた生命は、自由を求め外の世界へと旅立っていく。 そして、旅立つ生命が増えるのに反比例して、荒井の生命は弱っていった。 不快感の塊の様な集団でも、彼にとっては生命を持続させるのに必要不可欠な存在なのだ。 しかし、彼はそれを見ている事しかできない。 自分につけられたこの穴は、「治/直」しようがないのだから。 体内に残る虫達が残り半分を切った頃には、荒井の意識は朦朧になっていた。 目は虚ろになり、頭は俯いたまま微動だにしていない。 意識もはっきりとしなくなってきた。何故だか、とても眠いのだ。 今眠ったら、きっと、いや間違いなく、瞼を開ける事は出来ないだろう。 自分に『死』が近づきつつある事は、嫌でも理解できた。 目前に迫っている『死』に対して、荒井は恐怖を感じない。 むしろ、眠るように一生を終えるというのも、悪くはないと思っていた。 少なくとも、人間二人と一緒に焼死するよりかは、遥かにマシだろう。 そして何よりも、自分は『人間』として死ねるのだ。それ以上に嬉しい事はなかった。 【2】 それから数分ほど経った頃だろうか。 荒井の耳が、カツン、カツンという杖を突くような音を捉えた。 どうやら、何者かがこちらに向かって来ているらしい。 残された僅かな体力で、物音の方向にゆっくりと目を向ける。 「また、あなたですか…………」 そこに居たのは――もう此処には居ないと思っていた存在。 三角形の鉄の箱を被り、槍をぎらつかせる、あの男。 自分の身体を穴だらけにした、あの三角頭の怪人であった。 どうしてわざわざ戻ってきたのかを理解するのは――朦朧としていても――容易である。 この怪人は、再び自分を襲うつもりなのだ。 今度は絶命するまで、自分の体に槍を突き立て続けるだろう。 だが、それを回避する術は既に全て失ってしまった。 (罰、なんでしょうかね) 荒井の目からは、槍を構える三角頭が、まるで神の使いのように見えていた。 人間の真似をしようとした愚かな人形を罰する為に、神が差し向けた処刑人。 ――やはり自分には、安らかに死ぬ資格などなかったようだ。 視界に入るのは、三角頭の血に塗れた肉体と、数秒後に自分の額を貫くであろう巨大な槍。 最期の景色がこれというのは、少々もの悲しいものだ。 脳裏に浮かぶのは、自分を人間として見てくれた福沢の後ろ姿。 最後に会ったのが彼女で、本当に良かったと、改めて思う。 ――生きてほしい。 生きて、生きて、生き続けて。 そして、この呪われた土地から脱出してほしい。 それだけが、自分の望みだった。それ以外には、何も望まなかった。 【3】 『断罪』を終えたにも関わらず、三角頭はアパートから立ち去ろうとはしなかった。 額に大きな穴を開けた人形に背を向けて、何も無いはずの通路をじっと見つめている。 ――誰も居ない筈の通路で、何故か『視線』を感じたからだ。 近くに誰かがいなければ、視線などある訳がない。当然の話だ。 にも関わらず、三角頭は『誰かに見られている』という感覚を覚えてしまったのだ。 視線の正体を探ろうと、三角頭は通路を隈なく観察する。 だが、どれだけ眺めていても、それの持ち主は現れない。 諦めた三角頭は、元来た道を折り返していった。 三角頭は気付かなかった。 視線の主は、確かにそこには存在している事に。 気付けなかったのは、それが三角頭には認識できなかったから。 三角頭を、穴だらけの人形を、そこから出て行く虫達を。 『オヤシロさま』は、ずっと見ていたのだ。 【C-5/西側アパート非常階段/夜中】 ※人形の残骸があります 【4】 福沢さんは、僕を『人形』ではなく『人間』と呼んでくれました。 それで、その言葉一つで、僕がどれほど幸福になれたことか。 ……彼女には、こんな魔境で命を落としてほしくありません。 ですが、もう私には彼女を助ける事はできないでしょう。 心残りがあるとすれば、やはりそこでしょうね。 今の僕には、もう願う事しかできません。 『彼女が笑っていますように』と、暗闇の中で独りで願うことしか――――。 【荒井昭二@学校であった怖い話 死亡】 back 目次へ next 犬とふたりとときどき、警察署 時系列順・目次 レギオン エレル――ELEL―― 投下順・目次 その誇り高き血統
https://w.atwiki.jp/tokyograil/pages/275.html
僕らは■■のなかで ◆HQRzDweJVY わかってる 楽しいだけじゃない 試されるだろう その苦しさもミライ ――わかってる? 本当に? * * * 少し肌寒い空気の中、高坂穂乃果は通学路を歩いていた。 だがその足取りはいつになく重く、その表情は沈痛そのもので彼女のトレードマークであるサイドテールも力なく揺れていた。 ……あれからアマテラスの背中にしがみつくようにしてその場を離れた穂乃果は、家に帰っても布団を頭からかぶって震えていた。 瞼の裏に焼きついた、作り物めいた干乾びた死体。 鼻をつく、悪酔いしそうなほどの血の匂い。 そして自分に向けて言葉を放った、槍を構えた髪の長い男の人。 眠ろうとすると浮かび上がる非現実的そのものの光景は、穂乃果に"聖杯戦争"というものを意識させるには十分すぎた。 その光景を悪い夢だと思いたくて、普段は流し見で済ませる朝のニュースや新聞にもじっくりと目を通した。 ただ、『まだ事件が見つかっていない』という可能性に思い当たるのに大して時間はかからなかった。 そう、わずか数時間前の出来事なのだ。 たとえニュースになっていなくても、あれが夢だったという証拠になりはしない。 そのことに気づき、穂乃果は一人大きく肩を落とす。 『――発見された遺体は都内の高校に通う、本田未央さんと見て捜査を進めています』 代わりにニュースキャスターが起伏のない声で読み上あげたのは残酷なニュース。 事件現場は山手線のちょうど反対側あたり。 自分たちの住む場所と近くはない――だが決して遠くない場所で起こった凄惨な事件。 ただ普段ならそんなニュースも、日常の雑多な出来事に追いやられ、無意識の内に記憶の隅へとしまわれる。 けれども今朝は違った。 穂乃果が生まれて初めて接することになった凄惨な"死"そのもの。 昨日までTVの向こう側にしか無いと思っていた死が足元にまで忍び寄ってくるような感覚を覚え、朝食を半分以上残してしまった。 また彼女の足取りを重くしているのはそれだけではない。 今朝の事件が起こる前に、アマテラスが差し出してきた封筒の中身だ ――"ルーラー"という人から送られてきた"バーサーカー討伐クエスト"。 封筒の中に入っていたのは白塗りのピエロみたいな顔写真と簡単なプロフィール。 討伐、狂戦士、殺人鬼……書類の上を踊る穂乃果の日常には似合わない言葉たち。 正直な所、穂乃果は聖杯戦争についてもサーヴァントについても正確に理解できているわけではなかった。 アマテラスが人語を介せないせいでもあるし、穂乃果自身が積極的に触れてこなかったせいでもある。 けれどアマテラスの差し出した封筒の中身に記された情報は、今朝の出来事と合わせて否応なく聖杯戦争を意識させた。 この日常の舞台裏では凄惨な殺し合いが行われているという現実を、否応なく突きつけられた。 廃校なんて噂すら無い音ノ木坂学院。 仲違いしていない二人の大切な友だち。 どちらも自分が望んだものだ。だからここは自分が望んだ世界なんだと思っていた。 代わりに失ってしまったものはあるけれど、優しい夢の様な世界だと思っていた。 けれどもそれは表面を取り作っただけのおぞましい悪夢ではないのか。 そう考えた瞬間、嫌な汗が背中をつうと流れた。 「穂乃果ちゃん、おはよう」 「あ……」 顔を上げた穂乃果が見たのは親友の一人だった。 考え事をしていたせいで近くに来ていたのに気づかなかったらしい。 「穂乃果ちゃん……大丈夫? 顔色悪いよ?」 こちらの様子を察したことりが心配そうに覗きこんでくる。 「そ、それが昨日夜更かししちゃって……ちょっと寝不足なんだ」 とっさに口をついて出た嘘。 本当のことを話しても、信じてもらえないことはわかっている。 ことりちゃんは聖杯戦争のことなんて何も知らないのだから。 「うんうん、わかるよ。私もついつい取り貯めしてたドラマ見ちゃって――」 気づいているのかどうなのか、話を合わせてきてくれる。 そのまま他愛のない話をしながら通学路を進む。 なんて事のない会話。 しかし今まで過ごしてきた日常と何ら変わりないそれは穂乃果の心を癒していく。 「あれ、海未ちゃんじゃない?」 「あ、本当だ。おーい海未ちゃーんおはよ……って、ど、どうしたの海未ちゃん!?」 出会った海未の顔はひどいものだった。 血の気の引いた顔、少し腫れたまぶたとそこから覗く赤い目。 彼女にしては珍しい寝不足の顔であった。 「ごめんなさい……少し、考え事があって寝不足なんです」 悩み事……その言葉に思い出すのは"かつて"のことりだ。 私には言ってくれないのか。 また、私は一人ぼっちになってしまうのか。 そんな恐怖が顔に出ていたのだろう。海未は少し苦笑して答える。 「大丈夫ですよ。でも、これは私が一人で決めなきゃいけないことだから。 決めたら穂乃果にもことりにも……ちゃんと言いますから、もうちょっとだけ待っててください」 あの日もらえなかった一言をもらい、自分でもわかるぐらいに安堵した息を吐き出す。 そんな二人の様子を見てことりが話しかけてくる。 「ねぇ、穂乃果ちゃん、海未ちゃん、放課後気分転換に遊びに行かない?」 「……遊びに、ですか?」 「うん、この雑誌に載ってる"しぶりん"のおすすめコーデのがすごく可愛いの!」 そう言って手渡されたのはティーン向けの情報誌だった。 ポップな字体で描かれた「シンデレラガール オススメコーデ」の文字。 そして表紙を飾るのは切れ長の目をした整った顔立ちの女の子だった。 ――『渋谷凛』 この東京と穂乃果たちの知る東京にはいくつかの違いがあったが、そのうちの一つだ。 シンデレラガール。 何百人といるアイドルたちの頂点に立った灰かぶり姫。 この"東京"で、その姿を見ない日はなかったと言っていい。 街に繰り出せば有線から彼女の歌が流れていたし、クラスでは彼女の出演するドラマで話題が持ちきりだった。 もちろん穂乃果も何回もその姿を見ている。 ――キラキラしていた。 確かに綺麗な子だが、それだけじゃなく人を引きつける"何か"があった。 そしてその"何か"を高坂穂乃果は知っている。 その輝きを、知っている。 「すごいよね……、私達と同い年ぐらいなのにこんなにキラキラしてて……」 私達のやっていたことはプロの彼女たちから見たら子供の遊びみたいなものだったのかもしれない。 でも確かに自分たちはそのキラキラの中にいたのだ。 その輝きを犠牲にして、穏やかな過去を願ったのは自分だ。 でも、それでも……胸に穴が開いたような感覚は消えてはくれない。 「……いいなぁ」 口をついて出た無意識の言葉。 だがその言葉に劇的に反応した人物がいた。 「ことり……ちゃん?」 ことりが穂乃果の手にしていた雑誌をひったくるように取り上げたのだ。 そこに先ほどまでの笑顔はない。 その表情は今朝見た鏡の中に映っていた自分の顔によく似ていた。 何か形のないものに怯えるみたいな、そんな顔をしていた。 「ちょっとことり、どうしたの?」 「え……? あ……」 海未の問いかけに、やっと自分の行動を認識したかのようなことり。 その様子は明らかにいつもの彼女と違って見えた。 三人の間に、戸惑うような空気が流れる。 「あ、おっはよーっ!」 そんな空気を壊したのは後ろからかけられた明るい声だ。 そこにいたのはショートカットの少女とおとなしそうな少女。 星空凛と小泉花陽――彼女たちの後輩だ。 「おはようございます。ことりちゃん、何持ってるんですか……って、"しぶりん"じゃないですか! 穂乃果ちゃん達もしぶりんのファンなんですか!?」 「おお……相変わらず綺麗な髪……同じ"凛"でもこっちの"凛"は女の子らしくて羨ましいにゃ……」 「……私は凛も十分に可愛いと思うけど……」 二人の会話に加わる海未。 そして穂乃果達に投げかけられるアイコンタクト。 この話はここで終わり、という意味らしい。 その合図にはっとした様子でことりは慌てて頭を下げた。 「ごめんなさい……! そ、その学校が近くなってきたから先生たちに見つかる前にしまわなくちゃって思って……」 「う、うん。大丈夫だよ! こっちこそごめんね」 そんなはずはない。 尋常な様子ではなかった。 でも穂乃果はそこに踏み込むことを避けた。 その決断から、逃げ出した。 「……行こう、穂乃果ちゃん。置いてかれちゃうよ」 「……うん」 穂乃果は駆け出しながら、無意識のうちに自身の令呪に手を当てていた。 パスを通じて自身のサーヴァントのひだまりのような暖かさを感じる。 それと同時に自分に向けられた、アマちゃんの何かを訴えかけるような眼差しを思い出す。 何を言いたいかはよくわからない。 でも何かを促そうとしてることだけは明白だった。 (わかってる……でも、もう少しだけ……もう少しだけ、時間をちょうだい……) 周囲を徐々に侵食し始める血の香り。 僅かな、だが確実に軋みを上げ始めた3人の関係。 穂乃果も言葉に出来ないどこかで、日常の崩壊がすぐそこまで迫っていることを理解している。 でも、それでも、もうちょっとだけ彼女の望んだ過去に浸っていたかった。 誰も傷つかない、この優しくて愚かなぬるま湯のような世界に。 ――高垣穂乃果はとにかく行動する少女だった。 何事にもひるまず前へと進む、そのエネルギーがμ'sの中核をなしてきたのだ。 けれども失うことへの恐怖は今や重い足枷となって彼女を縛り付けていた。 いつもなら何も考えずに踏み出せていたはずの足は、まるで縫い付けられたかのように動かなかった。 * * * 「しぶりんもいいですけど楓さんもいいですよね。大人っぽくて――」 「うーん凛は茜ちゃんが一番だにゃ」 「え、てっきり凛ちゃんはみくにゃんが好きなのかと……」 少し遅れてきた穂乃果とことりを加えてはずむ会話。 そんな4人を海未は一歩引いて眺めていた。 その瞳に浮かぶのはいつもの呆れながらも見守るような優しい色ではなかった。 代わりに浮かんでいるのは戸惑いと疑念の色だ。 ――この世界は矛盾している。 それは世間的に見れば大きな矛盾ではないのかもしれない。 だが彼女たちにとっては見過ごせない矛盾だった。 ――この世界には『μ'sは存在しない』、だが『μ'sメンバー同士は知り合いである』のだ。 彼女たちと知り合ったのはスクールアイドルを始めてからだ。 だから本来は『μ'sが存在しない』なら『彼女たちとも知り合いではない』はずなのだ。 けれどもここ数日、この東京で海未は彼女たちとある程度変わらない日常を過ごしている。 西木野真姫からCDを借りた覚えがある。 矢澤にことアイドルのやっているラジオについて会話した覚えがある。 絢瀬絵里や東條希と今度の文化祭について会話した記憶がある。 そして今、凛や花陽とも笑いながら話をしている。 それぞれ強いつながりではないが、先ほどのように出逢えば会話をする程度には仲が良い。 だれも傷つかない、ゆるやかな関係。 ただそれもついさっきまでは"そういう世界"なのだ、と割りきってきた。 ……さっき、ことりの異常な様子を見るまでは。 後輩たちと楽しげに話すその姿はいつもと変わらないように思える。 けれどもさっきのことりは明らかにおかしかった。 そうでなくとも穂乃果を"アイドル"という存在から遠ざけるかのようなさっきの行動は、甘やかす傾向のある彼女らしくない――長い付き合いである海未はそう断言できる。 言ってしまえば異常――そう、異常である。 そして聡明な彼女はそれらから一つの可能性に至ってしまう。気づきたくなかった、目をそらしていた可能性に。 ――すなわち"南ことりが聖杯戦争のマスターである"という可能性に。 音ノ木坂学院が存続しているというだけならばよかった。 それだけならば"学園内に他のマスターがいる"という可能性だけで済んだのに。 けれどμ'sに関する矛盾だけはそうはいかない。 μ'sと関係ないのならば、そのままの関係で存続しているか、それとも最初からなかったかの2択のはずだ。 逆に言えばこんな関係の取捨選択を行うのはメンバー以外ではありえない。 それに何よりあの出来事で傷ついたのは自分だけではない。 ことりも同じように傷ついた。 だからあの紅い月に願ってしまってもおかしくないのではないだろうか。 太陽の輝きがない代わりに、月の光のように優しい世界を。 『……ランサー、聞こえますか?』 『……どうしたの、マスター?』 その声に不意に気づく。 ランサーはあれからずっと話しかけてこなかったのだ。 言いつけ通り、一人にしていてくれたのだ。 そのことに罪悪感を抱きつつも、それを表に出さず頭のなかで語りかける。 『放課後、ことりがマスターかどうかを確かめます』 『えっ……』 『不満があるなら今のうちに言ってください。 それとも今更、"友達を疑うのは良くない"とでも言うつもりですか』 思わず責めるような口調になってしまい、自己嫌悪に顔を歪める。 こんなのは唯の八つ当たりだ。 けれどもランサーに対する苛立ちを止めることができない。 そんな海未に対し、めぐみはおずおずと声をかける。 『ねぇ、マスター……一つだけ聞かせて欲しいの』 沈黙を肯定と受け取り、めぐみは言葉を続ける。 『……もしもことりさんが、聖杯戦争のマスターだったら……マスターはどうするの?』 『それは……』 めぐみの問いに海未はとっさに答えることができなかった。 ……どうするというのだろう。 聖杯戦争というルールに従って、殺しあう? そんなことができる訳がない。 マスターであるということはすなわち彼女は本物の"南ことり"であるということ。 小さい頃からずっと一緒だった、大切な親友なのだ。 『……わかりません。でも、放っておく訳にはいかないでしょう』 今、この街には裁定者(ルーラー)ですら制御できない危険極まりない殺人鬼がいるのだ。 それだけじゃない。他のマスターやサーヴァントからも狙われるだろう。 それにサーヴァント自体が危険である可能性も捨てきれない。 目の前の少女が血だまりに沈む光景を想像してしまい、思わず顔がこわばるのを感じる。 『……わかった。私はマスターに協力するよ。 でも覚えていて。私はやっぱりみんなを幸せハピネスすることを諦めたくないんだ。 マスターも……ことりさんも、だよ』 「……もう、黙っていてください!」 最後の言葉は思わず口をついて出ていた。 これ以上話していたら更にきつい言葉を口にしてしまいそうで、そのまま会話を打ち切った。 正面に目を向ければ笑顔で会話することりたちの姿がある。 ずっと見てきた変わらない日常。けれども今の彼女にとってそれはひどく脆いもののように感じられた。 * * * 南ことりは幸せを甘受していた。 授業が終われば穂乃果や海未と遊びに行ける。 また一つ大切な思い出が増えていくのだ。 さっき自分が何であんな行動をとってしまったのか……自分でもよくわからない。 バイトのし過ぎで疲れているのかもしれない。 お願いして少しシフトを減らしてもらうのもいいかもしれない。 そうしよう。そしてその分彼女たちとたくさん思い出をつくろう。 大丈夫。これから時間はいくらでもあるのだから。 心配することなんて、何もない。 『マスター……確認したいことがある』 『アーチャーさん?』 頭のなかに響く超自然的な声。 あまりにも日常にふさわしくない声だが、今のことりはそれを受け入れている。 『……ルーラーからの手紙はいいのか?』 『え……だって知らない人からの手紙を開けちゃうのはダメじゃないかな?』 今朝、郵便受けに入っていた手紙は封も切っていない。 だってことりは裁定者(ルーラー)なんていう知り合いはいないのだから。 多分、郵便局が配達ミスをしてしまったのだろう。 でも、何も起こるはずがない。 だってこんなにも平和なのだから。 だってこんなにも平穏なのだから。 穂乃果ちゃんがいて、海未ちゃんがいて、誰も欠けることのない優しい日常がここにはある。 ずっとこんな平和な日が続きますようにという――私の願いは叶ったのだ。 『……そうか。いや、何でもない』 そのまま沈黙するヴィンセント。 『? 変なアーチャーさん』 首を傾げながら後輩たちのとの会話に戻る。 いつもと変わらない日常。 血の匂いも、不幸な出来事も全てはTVの向こう側にしか無い。 だから何も心配することはないのだ。 そのはずなのだ。 ……なのに、この胸騒ぎは何なのだろう。 * * * 重なりあったはずの3つの願い。 それはよく似てはいるが、けれども決して同一ではない。 その僅かな違いは違和感となり、次第に日常そのものを軋ませていく。 彼女たちが試される未来――それは、もう始まっているのだ。 【B-3/千代田区 音ノ木坂学院前/1日目 朝】 【高坂穂乃果@ラブライブ!】 [状態]健康、精神的動揺 [令呪]残り三画 [装備]なし [道具]制服 [所持金]一般女子高校生のお小遣い程度 [思考・状況] 基本行動方針:????? 0:どうすればいいのか、わからない。 [備考] ※ ジョーカー討伐クエストについて把握しました。 ※ 聖杯戦争について、資料で把握しています。 【アマテラス@大神】 [状態]健康 [装備]三種の神器 [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:????? 0:穂乃果と穂乃果の大事なものを護る。 【園田海未@ラブライブ!】 [状態]健康 [令呪]残り三画 [装備]なし [道具]制服 [所持金]一般女子高校生のお小遣い程度 [思考・状況] 基本行動方針:????? 1:ことりがマスターであるか確かめる。 【愛乃めぐみ/キュアラブリー(ランサー)@ハピネスチャージプリキュア!-人形の国のバレリーナ- 】 [状態]健康 [装備]プリチェンミラー、ラブプリブレス [道具]なし [所持金]一般女子中学生のお小遣い程度 [思考・状況] 基本行動方針:海未のことは守りたいし、誰のことも犠牲にしたくない。 1:海未に従う。 【南ことり@ラブライブ!】 [状態]健康 [令呪]残り三画 [装備]なし [道具]制服 [所持金]一般女子高校生のお小遣い程度 [思考・状況] 基本行動方針: 1:日常を謳歌する。 ※ ジョーカー&バーサーカーの情報を確認していません。確認する気もありません。 【ヴィンセント・ヴァレンタイン(アーチャー)@FINAL FANTASY Ⅶ】 [状態]健康 [装備]デスペナルティ [道具]なし [所持金] なし [思考・状況] 基本行動方針:マスターを守る。 1:マスターを守る。 BACK NEXT 016 Who is it that she was summoned? 投下順 018 遠き山に日落ちずとも -あるいは命堕ちる家路- 016 Who is it that she was summoned? 時系列順 015 禍々しくも聖なるかな BACK 登場キャラ NEXT 006 俺たちは闇から光を見ている 高坂穂乃果&セイバー(アマテラス) 021:学校であった怖い話。 005 理想と現実! 悲劇の聖杯戦争!! 園田海未&ランサー(キュアラブリー) 021:学校であった怖い話。 000 DAY BEFORE:闇夜が連れてきた運命 南ことり&アーチャー(ヴィンセント・ヴァレンタイン) 021:学校であった怖い話。
https://w.atwiki.jp/allmiccore/pages/197.html
お1 ← 前 次 → お1 索引及川由紀(おいかわ ゆき) 大内光(おおうち ひかる) 大川大介(おおかわ だいすけ) 大川百合子(おおかわ ゆりこ) 大倉和雄(おおくら かずお) 大河内雄大(おおこうち ゆうだい) 大篭哀子(おおごもり あいこ) 大沢先生(おおさわ-) 大滝(おおたき) 大友(おおとも) 大沼繁夫(おおぬま しげお) 大場雅嗣(おおば まさつぐ) 大原(おおはら) 大原(おおはら)② 大原茂子(おおはら しげこ) 大村(おおむら) 大本真美(おおもと まみ) 大山幸二(おおやま こうじ) 索引 [部分編集] 及川由紀(おいかわ ゆき) 登場作品:VNV,学恋2,特,新生,月下美人,鳴七,稲in 種族:人間ほか 職業:鳴神学園高校 三年A組 誕生日:7月12日 身体:174cm/59kg ♀ B型 趣味:ピラティス 好きな/嫌いな食べ物:ベーグル、生ハムサラダ/肉の脂身、カエル 関連人物:岩下明美《クラスメート》,佐藤直之《クラスメート,横恋慕》,本田佐知子《クラスメート,犠牲者》,細田友晴,黒川茂,荻島貫,菊池信彦《部活》,横峰佐登司《クラスメート,部活》 関連用語:嬰児,座敷童子 岩下さんのクラスメートでもある女子生徒。 はっきり言ってしまえば、人として嫌なところを煮詰めてお出しされたような人物である。 近くから見ている分に彼女の性格はわかりやすいといえばわかりやすいのだが、表面上は男に甘えた特徴的な甘ったるい作り声が目立つ。その分、周囲に感情剥き出しで当たる本性とのギャップが激しい。目鼻立ちのしっかりしているタイプで内面を示したようにかなりきつめの風貌をしているとかで、美人というよりは派手な顔立ちだという岩下さんの評に頷いた方は多いかもしれない。 高校生の癖して散々遊んでいるらしく、簡単に言えば及川さんは典型的悪女である。しかし、割り切れば後腐れなく付き合えるタイプらしい。もっとも、それは良くも悪くも我を確立している男子にのみ言える事であり、意志薄弱な男や馬鹿な男はしっかり騙される。 しかも始末に負えないことに及川さん自身の我やプライドも強い。彼女目線の格下相手に恨みを買ってもなんらかの報復に走るなどタチが悪く……、要は悪女であることに変わりはない、そんな女性である。 ただし、悪さも突き抜ければ強さに転じるのか『鳴七』以後は強い女――、ある種の女傑として描かれる機会も増えている。「佐藤直之」という呪いの装備が外れたことによって大きく飛躍したと考えれば、奇しくも本田さんと立場は同じなのかもしれない。 『VNV』『特別編』「偽りの愛」「偽りの愛(改訂)」に登場。 初登場作品。 級友の岩下さんの冷徹な観察眼に従えば、何でも欲しがるような卑しい人で、特に人の持ち物(挙句は人間関係!)に手を出しては喜んでいたらしい。 この人が「佐藤直之」と「本田佐知子」の間に割り込んだことから「偽りの愛」で語られた三角関係の惨劇が巻き起こされることになってしまう。 佐藤くんを誘惑して本田さんから引き離し、しばらく遊んだら飽きて放り出す。佐藤くんが元鞘に戻ったと見たら再びモーションをかけるが、流石に戻っては来なかった。 すると、及川さんは今度は定番の「妊娠」がどうこうで佐藤くんを揺さぶる。 及川さんが予想外なほどに動揺してしまった佐藤くんは「自殺」してしまうが、これで泣きわめいたところで誰も及川さんに同情はしてくれなかった。 だからといって無責任に騒ぎ立てたクラスの皆に裁きが下るということもなかった。 劇的なことも起こらず、事件はひっそりと忘れられ……、 たりはしなかった。 本田さんは佐藤くんの赤ちゃんが欲しかったらしく、及川さんを拉致し、彼女の子宮を手にいれるため解剖実習を行うに至る。 [うん、「カエル」はやり過ぎだと思うんだ。本田さん。] 本田さんは万全を尽くしたのだが、残念ながら及川さんは天に召されてしまった。合掌。 ちなみに旧小説版における彼女の挿絵はかなり丸い。 「赤川哲也」とタメを張るくらい丸い。なぜ彼女をこんなに丸くしたのか疑問は残るが、当時の挿絵担当者「南部佳絵」は後の『藤丸地獄変』にて異形デザインに定評を残すことになる。 『学恋2』風間編「岩下」ルートに登場。 風間さん(マザーカ)が宇宙人特有のズレた感性に従って岩下さんとの交流を深めていくと最後に及川さんの出番がやってくる。 (ネタバレにつき格納) + ... なぜか本田さん謹製の及川さんの解体ショーを風間さんは岩下さんといっしょに見学することになったのであった。 ……要は「偽りの愛」のクライマックスパートの再演といえる。 ただし相違点として今回の及川さんの正体は記憶をなくして自分のことを地球人と思い込んでいるスンバラリア星人であり、「地球破壊爆弾」が胎内に埋め込まれていた。 そんなわけで解除条件を踏まえて、風間さんは本田さんの役割の多くを代わりに担い、首尾よく事を運んでいく。 「長官」から送られてきた高性能の「カッターナイフ」を用い、一気に捌く! 確かに元々のシナリオにもかなりのブラックユーモアは入っている。 が、このイベントでは登場する四人のキャラすべてに、ちょっと・やや・とても・えらく、サイコな要素が入るという輪にかけてとてつもない状況が発生した。当の及川さんを除いて、誰一人として彼女のことを心配していないと言う凄まじさである。 とは言え、及川さんが地球人として最低の行為を働いたのはこのシナリオでも間違いないだろうし、むしろ完全な自業自得なので別に同情はできない。地球の命運がかかっていると言え、同胞をノリノリで切り刻んでる風間さんは自重すべきかもしれないが。 ちなみに『学恋2』攻略本に及川さんのラフな絵が載っており、「ひどい話だわ」とコメントを残している。 確かに酷い扱いである。せっかく身体の奥の奥までさらけ出すエログロ担当なのに、今回はCGが実装されていないのだから。 『新生』「修学旅行の一夜」に登場。 同学年でも有名な美人のようで、岩下さんを筆頭にした三年A組の班員として名前が挙げられた。 ただし、岩下さんが神田さんグループのところに来てくれたというその夜に、及川さんが関わったどうかまでは定かではない。 『月下美人』第一巻「地獄屋敷」に登場。 公私混同した「黒川茂」部長の命による「我慢クラブ」入部試験として細田さんは例の部活への入部を懇願すべく彼女と接触を図る。 そこからの交流は比較的短期間で終わったものの、細田さんをはじめとした「我慢クラブ」のメンバーはいいように振り回される羽目になってしまった。 性格は相変わらずである。特に今回は彼女目線では格下と見なせるうえ、いいように動かせる男たち複数と関わるためか高慢で居丈高、下品な女王様を思わせる言動の下に一貫して動く。 特に細田さんと黒川部長に対してはギャグを疑うレベルで辛辣である。 初対面、というより話しかけてもいないうちから、近づいてきた細田さんに暴言を吐いて寝込ませるのだから徹底している。 一方で、ある程度容姿のレベルが高い、将来性があると察した男子には態度を甘く変えた。 地位や社会的ステータスにも弱いなど、冷徹で気高い岩下さんの目線では見えてこなかった彼女の俗物根性はあけ透けである。 ただし、肝は据わっているようで彼女の主導で「地獄屋敷」に一同が参加した際は、及川さん自身も臆さず屋敷内部に突入している。 その際に明らかな怪奇現象を体験しているのに、意味不明なことを言われただけとして一笑に付して情けない男たちを背に去っていくのだから何ともたくましい。 もっとも、彼女の身に待ち受ける運命は皆さん知っての通りであるのだが……。 『学恋4』に名前のみ登場。 何のとは言わないが、日野さんが候補に挙げた女子の一人。 確かに一見挙げられた女子の中では最も可能性が高いように思えるが、誰からも見向きもされていなさそうな当作品での日野さんたちでは相手にされなさそうである。 『秘密』「このままおとなしく成り行きを見守る」ルートに登場。 そもそもが「夢オチ」だということを先に断っておく。 正体を現した「ヒデブ人」に蜜田さん(とピギーちゃん)共々食べられてしまった犠牲者A。 食べられる様子を坂上くんと荒井さんに実況解説されるのみで、立ち絵もセリフも無い出演だが、七不思議の集会にゆかりのある人物の一人としてこの場に集まっていたようだ。 『鳴七』「ヒナキちゃん」ほか多数のシナリオに登場。 各所に顔を出すが、「悪女」という従来のイメージを崩すことはない。 シナリオ上では硬軟使い分ける不良として動くほか、自分のエゴに忠実な女生徒の役が回ってくることも多い。 作中ではおおむね単独で動くため描写されていないが、そんな及川さんの勇姿(?)に憧れる取り巻きもいるにはいるんだとか。 主としては「自業自得」を絵に描いたような強烈なしっぺ返しを喰らう犠牲者枠なのだが、性格が悪いため読後感を損なうこともない名悪役女優と言えるだろう。 出演頻度がかなり高いうえ、語り部の多くの話中で登場するため、一周回のプレイの中でも複数回死亡かそれに近い結末を辿ってしまうことが多かったりする。及川さんが本当にたどった末路はどれなのか? 考察してみるのもいいかもしれない。 また、初登場の『VNV』以来、因縁深い「本田佐知子」との絡みも印象深い。 本田さんのことが気に食わないのかいじめていることが多いが、そんな本田さんもただ黙って耐えるばかりの女ではなく……。 「ヒナキちゃん」。 某N君の甘言に引っかかって、ド田舎に来てしまった鳴神生のひとり。 なぜこんなところに来たのかは語りの倉田さんが疑問に感じている通りなのだが、同じくクラスメートの本田さんをいじめることでその憂さを晴らしていた。そのくせ雇い主には猫を被っていい顔をしながらババを本田さんに押し付けるのだからたまらない。 しかも本田さんが虐待に耐えかねて弱ると、及川さんはその矛先を下級生である赤川くんと袖山くんに向けることになる。 しかし、本田さんは毎夜「ヒナキちゃん」から教わったと思われる謎の粉(ムカデほか大量の「蟲」を粉末にしたもの)を謎の呪文込みで及川さんの耳に流し込む。結果、及川さんは毎日寝込むことになってしまうが、儀式の本領は別にあるようで……? 「死を招くベッド」。 「緒田」さんのエピソードを踏襲している。 ほぼ無傷で済んだとはいえ、事故に巻き込まれたという事情あってか、やはり機嫌が悪い。態度も悪い。性格はもっと悪い。 謎の「手」による圧搾死という新たなる死因が語られるほか、「無限ループ」する時空間にも不条理に取り込まれてしまう。 一見似通っているようでいて、緒田さんのケースと比べても理不尽度が跳ね上がっているのは気のせいではないだろう。 これらは及川さんについて事前に知っていようとも、残念ながら当然というのもはばかられる仕打ちかもしれない。 ただし自業自得に端を発して凄惨な最期というコンボをキメがちな彼女としては珍しいことに、選択によっては元々の緒田さんの持っている強キャラ設定を引き継ぎ、無双したりもするのだった。 「恋愛教」。 「天音瑞希」さんのエピソードを踏襲している。 本田さんの宝物であるカバンを奪い、仲間と共に旧校舎で指導という名のリンチを行い、本田さんを助けに駆け付けた「中山真美華」さん共々、深手を負わせる。 元のシナリオからの相違点としては、立石さんと天音さんの因縁が本田さんと及川さんという強烈な個性の持ち主のふたりに引き継がれたことにより宿業がより色濃くなったところだろう。 リンチにより命を落とした本田さんは幽霊となって及川さんの前に現れ、及川さんが奪い取ったカバンにあることをするよう要求を突きつける。要求はたったひとつ、極めて短節に語られたものだが及川さんがそれをはねのけるや否や……? そうして辿った及川さんの末路は、「偽りの愛」を想起させる凄惨なものである。 いくら『鳴七』でもこれほど無惨な死にざまを表示するのは無理筋というもので一枚絵が表示されることはない。 プレイヤー各々の脳内で補完されたし、といったところだろうか。 「命の値段」。 「大川百合子」さんのエピソードを踏襲している。 自分の幸せのためなら墓荒らしさえ厭わない強烈なエゴイストっぷりがとても似合う女性であり、報いも含めて大川さんとはやはり共通している。ただし結末が変わっているところも多く、特に「前世」にまつわる奇妙な運命に巻き込まれることが多い。 (執筆者募集中) 「交換日記の怖い話」。 「安条ミルク」さんのエピソードを踏襲している。 安条さんも大概な人だったが、代わりに登板した及川さんは性格の悪さという一点では太鼓判が押せる人物である。 家が火急の危機にさらされていることで切羽詰まっているのだが、元木さんに助けを求めたくだりからしてどうも高飛車さが抜けていない。が、やはりというべきか以後の経緯から続いて陥る悲惨な最期は安条さんと共通している。 こんな人間だろうと向こうから求めてきたならお友達にしたいと考えるのだから、元木さんは危なっかしいやらなんとやら。 他方では及川家の後ろ暗い事情を知っており家の繁栄のために元木さんたちのことを犠牲にしようとする展開が追加されていたりもする。この場合は生き汚さとたくましさで安条さんの比ではない及川さんだからこそ、取れる一手といえるかもしれない。 それと、もし仮に及川さんがお嬢様だとすればこんな性格になってしまった理由も散々甘やかされてきたとかで納得できるかもしれない。もちろん、この七話目で出会える及川さんもあくまで可能性の一つに過ぎないと断った上での話に過ぎないとして。 「殺人クラブ」 このシナリオの探索パートでは、各シナリオで語られたキャラクターたちが鳴神学園の至るところに潜んでいる。 「及川由紀」はその中のひとりであり、三年教室棟一階の女子トイレにいる。 坂上くんは探索中に彼女と遭遇するのだが、場所が場所のためかえらい剣幕で怒られた上に殴られてしまう。 どうもトイレで喫煙していたようだが、負い目がある坂上としては彼女に突っ込めるわけもなかった。 ただ、そんな及川さんをして坂上の顔はちょっとお気に召したようで、自分の机から化粧ポーチを持ってくるよう仰せつかる。 持っていくとそれと引き換えに岩下明美に関する有力な情報を提供してもらえる。 及川さん視点だと岩下さんはいつも取り澄ましたいけすかない女的な認識のようだが、今回は軽く触れられるにとどまった。 また、例に漏れず怖い話を聞いた場合はしっかり教えてもらえる。 見た目通りそういった付き合いをしているようで、ヤンキーをやっているダチの彼氏がS県にある某ガソリンスタンドで遭遇したという恐怖体験について語ってくれる。 登場人物のガラが悪いのがこの話の特徴だが、彼氏が目撃したという異様な「トイレ」と不可解な店員の態度、その後のオチといいオーソドックスに仕上がった怪談話といえるだろう。 『稲in』に登場。 坂上修一の足跡を求め「七不思議の集会」の出席者の居場所を訪ねてあなたは鳴神学園構内を歩く。 そんなあなたが岩下さんの所属クラスである「三年A組」の教室を訪れたところ、向こうの方から因縁をつけてくる。 カツアゲの要求を下手に受け入れても突っぱねてもロクなことにならないが、少し粘っていると同クラスの「緒方真紀」さんが助けに入ってくれるので安心ではある。 緒方さんと二、三鞘当てしたのち、あっさりその場を退いてくれた。どうも及川さんは「鳴神学園」にヤバい怪異や人間が偏在していることを知ったうえで不良として順応しているようだが、それゆえに引き際もわきまえているということなのだろう。 [部分編集] 大内光(おおうち ひかる) 登場作品:ドラマCD,鳴七,アパ殺 種族:人間,鬼 職業:鳴神学園高校 二年生(ドラマCD)/三年F組(鳴七-) 誕生日:7月12日 身体:173cm/60kg ♂ B型 趣味:六面体パズル 好きな/嫌いな食べ物:ふきのとうの天ぷら、石焼ビビンバ/かき氷、パイナップル 関連人物:日野貞夫,朝比奈慎也《部活》,桃瀬毬絵《?》,竹内清《クラスメート》,細田友晴《後輩》 関連用語:新聞部《所属》,宇宙人《敵対》,転校生 『ドラマCD』「鬼ごっこ」に登場。 去年の秋、当時は二十名以上の大所帯だった「新聞部」にやってきた帰国子女の「転校生」。 大手新聞社の海外特派員だった父に連れられて、生まれてからずっと海外を点々としており八ヶ国語を喋る才子に育つ。 そういった縁もあって鳴神学園の新聞部にやってきたようだ。 高い語学能力と、あわよくば新聞社のコネクションを、などと下心を抱えつつも新聞部の一同は当初彼の加入を歓迎する。 しかし、新入部員であるにも関わらず、さっそく彼の裁量で任された企画は「日本の遊び」延いては「鬼ごっこ」というテーマで推移するものの、なかなかうまく行かずにほとんど頓挫してしまう。 周囲の部員の態度も冷笑に一変する中、部長の「朝比奈慎也」は大内のことを非常に気にかけていた。 ひるがえって大内は思いつめたのか数日不登校になってしまうが、再度登校してきた時は雰囲気が一変していた。 そして彼は鬼ごっこに人減らしにまつわる伝承を絡めた企画を提案し、それが学校新聞の内容にそぐわないと部員全員から反対されるや、今度は負けた方が言うことを聞くという内容の「鬼ごっこ」をやらないかと賭けを持ち出すのだった。 大内ひとり対約二十名という圧倒的に有利な状況を向こうから言い出された新聞部部員一同は大乗り気。 ひとり大内のことを説得にかかる朝比奈部長をよそに、深夜の学校に忍び込んでの鬼ごっこが幕を開けるのだが……。 (ネタバレにつき格納) + ... なんと、開幕早々に大内光が本当の本当に二本の角が生えた筋骨隆々の「鬼」になってしまう。 直前まで説得していた朝比奈部長を皮切りに、恐怖で周囲に散った新聞部員たちを一人、また一人と血祭りに上げていく大内あらため「鬼」。その魔の手にかかり新聞部員たちは日野副部長一人を残して全滅してしまった。 と、ここにきて遊び心を出したのか、鬼は日野さんに対して夜明けまで待ってやると恐ろしい声で宣告する。 恐怖に震え上がる日野さんは残された五時間で迎撃の準備を整え、「校門」で待ち受けるのだがやはり一蹴されてしまう。 万策尽きたかに思われた日野さんだったが、ここで旧校舎の壁に空いた謎の異空間を発見、身を隠して鬼の目をかいくぐった上で、鬼を中に押し込んで倒すことに成功したのだという。 九死に一生を得た日野さんだったが、一夜明けて朝比奈部長を含む新聞部員たちの痕跡などはなかった。 そして朝比奈部長が控えめで冷静で驕ることのないすごい人物だ、などと評した大内がなぜあんなことになってしまったのかもわからずじまいとなった。 信憑性に欠けると知った上で「七人目」として以上の話を語った日野さんは、「旧校舎」で話の中で出た現象がまた起きると説明し、語り部たち六名と、数少なくなった新聞部の後輩である坂上と倉田を現地にいざなうのだが……。 (さらなるネタバレにつき格納) + ... 実は上記の話は大筋では合っているが、部分的には嘘であると考察できる。 なぜならば、日野貞夫は自分たち一年前の新聞部員の正体が「寄生型宇宙人」であることを伏せた上で、寄生先となる地球人たち(集会の出席者)を母船に誘導するために、上記の話をしたためである。 具体的には「大内光」は「鬼」の一族であり、正体を隠して新聞部に潜入し地球人にとっての敵対的存在の巣と化した「新聞部」を殲滅にかかったというところまでは確定である。新聞部に馴染めなかった経緯が、嘘か真かまではわからない。 また、実際に鬼と会敵した宇宙人がどのような戦闘を繰り広げたかまではわからない。日野さんの話には脚色が入っている。 結果として、大内は返り討ちに遭ったものの宇宙人たちは日野貞夫一名を残して全滅したこと、それがすべてである。 『鳴七』「実験室の白髪鬼」ほかに登場。 今回は学年を「三年生」に変えての再登板となる。「岩山康夫」の要素・エピソードが取り込まれた。 「実験室の白髪鬼」。 「岩山康夫」の要素・エピソードを踏襲している。 (執筆者募集中) 「鳴神学園思考実験」。 (執筆者募集中) 「殺人クラブ」。 このシナリオの探索パートでは、各シナリオで語られたキャラクターたちが鳴神学園の至るところに潜んでいる。 「大内光」はその中のひとりであり、「三年F組教室」にいる。 坂上からは日野のクラスメートという認識であることから、このシナリオ中では新聞部員ではないことが察せられる。 海外から転校してきた際にも世話になったとかで日野への評価はすこぶる高く、彼の裏の顔には気づいていなかった。 そのため坂上も突っ込んだことは聞けず、話を切り上げている。 [彼の手先の器用さがあれば首輪の鍵を探すまでもない気がするが、坂上が彼の錠前破りの実力を知る機会がないこと、またこのシナリオ中でそういった技能を備えているかどうかも不明なため、そのような話にはならない。 また、首輪の鍵はどう考えても一般的な扉の鍵とはかけ離れた特注のもので、しかも爆発の危険を常に内包している。 もし、大内が全面協力してくれたとしても数時間で解体することはまず不可能だろう。] 例に漏れず怖い話を聞いた場合はしっかり教えてもらえるが、この場合は『ドラマCD』版で彼が語った「鬼ごっこ」のルーツをより詳細な形で触れていく形となる。話の前提や語り手が異なるため、話がそこからの発展を見せることはない、 『アパ殺』「」に登場。 (執筆者募集中) [部分編集] 大川大介(おおかわ だいすけ) 登場作品:VNV,AMC1,学恋,学恋2,特,学恋V,新生2 種族:悪魔(ヤンデレ) 職業:鳴神学園高校 三年H組 関連人物:綾小路行人《恋心》,風間望《好意》,山本三郎《知人》 関連用語:インキュバス《正体》 圧倒的嗅覚の持ち主「綾小路行人」の不幸の根源として彼の前に立ちはだかる肥満体の男。 脂ぎって不潔そうな外見に違わず、全身からこの世とは思えないような悪臭を放っている。外見と体質だけがクローズアップされがちだがその性格も相当なものであり、見た目通りのふてぶてしい立ち振る舞いと妙に女々しい態度が不快感を振りまく。 見目麗しい綾小路のことを明らかな恋愛対象としてみている同性愛者である。 さしずめ「美女と野獣」ではないが、嫌がる綾小路をそっちのけて強烈なアプローチを繰り返している。 そんな彼の正体だが、いまさら隠しても仕方ないし、全作品で彼の設定はほぼ一貫しているので断言しておくが悪魔である。 彼の発言からすると、死後に(おそらくは人間から)悪魔へと変じた存在であるらしい。 人間を消し炭にしたり腹が異次元に繋がっていたりと人外らしさも発揮しているが、上には上がおり「下級」のただし書きが外れることはない。ただ、本人は能天気の極みなのかそれともそういう処世術を身に着けているのか結構自由に振舞っている。 見るからに愚鈍な外見と振る舞いの通り、意外や人間に言いくるめられてしまうこともある。実際の彼が頭が回るのか、綾小路相手に講じた策は渾身の出来だったのか、それともお目当ての人間を手中に入れて以降は慢心しまくっているのは不明である。 そんな大川だが初登場以来、綾小路の出演する作品には彼の影がつきまとうことになり、着実に登場履歴を積み重ねてきた。 ただし、綾小路が独自の個性を発揮し、基本設定から外れていくとセットで出てきた彼の影も薄れていくことになる。 愛しの彼に近づくものを容赦なく炭にしている辺りヤンデレと言えなくもないが、美少年と悪魔(インキュバス)でBLとか誰が得するんだろうか。 実に味のあるキャラである彼だが、お盛んな二次創作でも「ダイノジ×ユッキー(『AMC1』で彼が提唱した互いのニックネーム)」のCPを発見できない辺り、その辺を如実に現しているかも知れない。 一応、色恋沙汰以外ではユッキーの意志を尊重しようと言う気持ちなどはあるため、場合によってはただ愛し方が歪んでいるだけの悪魔と言えなくもないか。 『VNV』『特別編』「かぐわしきにおひ」「かぐわしきにおひ(改訂)」に登場。 初登場作品。 唐突に三年H組に転校してきて、始終図々しい態度で綾小路に付きまとっては彼を何度も天国に送りかけている。 悪臭体質を踏まえて誰も関わりたくないのか、触れたくもないのか、いじめられる対象にさえならなかった。 なぜか豪邸に住んでいるようだ。 ただし、後年の作品でこの設定が触れられることはほとんどない。 なんにしても綾小路は大川の策によって周囲から切り離された孤立無援の戦いを強いられる羽目になる。 大川の行動は天然に見えて半ば計算混じりのものだったのか、綾小路の精神は着実に追い詰められていくことになる。その上で最後に綾小路がすがった手段「悪魔召喚」は実は悪魔だった彼の土俵だったことがラストで判明し、綾小路はとどめを刺される。 綾小路はなんの見返りもなしに死後魂が大川のものになるという詐欺過ぎる契約を結ばされてしまうのだった。 このままでは生前はもちろん死後に至るまで、大川は綾小路のことを愛玩し続けることになる……。 余談ながら「デブ」「眼鏡」「図太い性格」「臭い(口臭)」「親が金持ち」「気になるお相手に死後もなお付きまとうことを企んでいる」……そして「同性愛の気がある(異性に興味のない人)」という性質は「玉井佳子」を彷彿とさせる。 [一応、玉井さんの名誉のために追記しておくと、後年の『極』ではフォローは入っている。] 『AMC1』「新語り部集結」ルート、「人間狩り」ルートに登場。 『VNV』に続き、綾小路が躍進するのだが、その際にセットになっている彼・大川大介もまた出番に恵まれることになる。 ちなみに綾小路は大川から弱みを握られながらも「悪魔召喚クラブ」を立ち上げるなどして悪魔たちの討滅を狙っている。 ただ大川はどこ吹く風で綾小路のことを追い回している。彼が企みを知らないか、知った上で高を括っているのかは不明である。 「新語り部集結」ルート。 (執筆者募集中) 「人間狩り」ルート。 人懐っこい態度を取り、大悪魔である「山本三郎(ベリアル)」からも顔を覚えられており「兄ィ」と慕うなど世渡り上手なところを見せている。ただ、意中の人以外の人間には興味関心が薄いのか、その場のノリで危害を加えてきたりもする。 意外と沸点も低いようで綾小路に害を加えようとした細田友晴相手には激怒し、ついでにそこに居合わせた倉田恵美のことも消し炭に変えてしまう。後者に関しては綾小路の企みを察知して、ついでに山本さんのアシストも兼ねた一手とも考えられるが不明。 天然なのか計算なのか、意外と真意を悟らせない。加えて下級とは言え悪魔の持つ力をプレイヤーに誇示するなどしている。総じて登場した場合はやりたい放題のままこのルートにおける殺人クラブの一番手「細田友晴」の出番を締めくくり去っていく。 ちなみに細田の認識によればイケメンの綾小路と相思相愛なデブのアイドルとして勝手に崇められていた。 が、大川としては知ったことではなかったらしい。暴走した細田の扱いは前述した通りである。 (執筆者募集中) 『学恋2』風間編「細田」ルート、「綾小路」ルートに登場。 風間と綾小路の縁にくっついて登場した大川だが、腹の中が異次元空間に繋がっているなど、変な設定が追加された。 下級悪魔のくせに大邸宅に住んでいるとか原子爆弾にも耐えるとか、スペック高すぎな気がしないでもない。 また、細田さんと体形つながりでコネクションを築くことになった。 細田さんは勝手に彼のことを「デブのアイドル」として崇めているが、正直悪魔悪臭的である。 「細田」ルート。 (執筆者募集中) 「綾小路」ルート。 『学恋V』「倉田」ルート(女性)、「綾小路」ルートに登場。 主人公にとって綾小路をネタにするかお付き合いするかの違いはあるが、大川がその間に立ちはだかる障害としての役割を持つことは変わらない。 前者のルートで、主人公は彼のことをあまり頭は良くなさそうと評しており、実際上手く言いくるめることもできる。 [詐術の才=悪魔の格と捉えるなら納得の話である。] 実際『学恋2』では風間の説得に容易く応じていた。 が、 (執筆者募集中) [部分編集] 大川百合子(おおかわ ゆりこ) 登場作品:学怖,学怖S 種族:人間 職業:鳴神学園高校 三年H組 関連人物:岩下明美《クラスメート》,岡崎幸枝 関連用語:ラピスラズリ《所有》,ルーベライズ《所有,犠牲者》 岩下六話「幸せの石・ルーベライズ」に登場。 「パワーストーン」の神秘の力に魅せられ、絶大な力を持つといわれる「ルーベライズ」の存在に行き当たった女子高生。 岩下さんは彼女をわがままな人などと斬って捨てたが、こう言う人に限って、あり余らんばかりの行動力を持ち合わせていたりするのだから困る。 偶然が手伝ったとは言え、自分が生まれる前の話から情報を集めると親族に渡りを付けて良いように言いくるめ、または墓荒らしを決行してしまう。 そのレベルなら、当然力のベクトルは負に傾くにせよ相当なものだろう。 岩下さんではないが、これだけの労力を自分磨きに使えれば普通に輝けたはずである。ただ、この類の人は普通の努力にすることを考慮に入れない。 単に願いを叶える手段が他力本願の妄想だけなら害は無いのだが、肝心の宝石が願いを叶える本物であったため収拾の付けなさに拍車を駆けた。 死者を冒涜する行為を働いた彼女は自業自得か、所有者だった「岡崎さん」の呪いに巻き込まれて死んでしまうことが多い。 が、首尾よくルーベライズを手に入れても幸せになれるとは限らない。 「最高の幸せ」を祈ると、酷い性格の大川さんは早く死んだ方が幸せとルーベライズに判断され、死んでしまう。 確かに、彼女みたいな人は早く死んでくれた方が人類のためにも幸せだった。 彼女が生き残る唯一の展開は地味に大迷惑である。 石の力を有効活用した彼女はどんどん幸せになっていく。 岩下さんが語りの中でさらりと、石の願いなど関係なく彼女が自分でやった風に流しているのはズルいところである。さり気なくではあるが、「他人を殺してでも幸せになる」と言う岩下さんの哲学を実践しているのも怖い。 挙句の果てにはそれでもまだ幸せになれていない、不幸だと思った彼女はとてつもなくはた迷惑な願いを石に向けてしまう。 どうか、みんなを不幸にしてください 幸福と言う概念には実体がなく、実感だけであるからこそ嫌らしい。 考えれば考えるほどドツボに嵌る「呪い」と言って良いかも知れない。 また、大川さんが現役でこの学園の生徒をやっていることも忘れてはいけない。もし石の力が騙りであったとしても、彼女に近づくのは危険である。 なにせ保険金のためには父親も殺し、素敵な恋人のことも放っておけば別れるほどの傲慢さを持っているのだから。 [また、可能性は低いが大川=岩下と言う仮説も成り立つ。 『学怖S』追加分岐で、岩下さんがなぜかルーベライズを持っていた展開がわかりやすい。もっとも、とある横暴な手段で譲ってもらったと考えても良いが。 どちらにせよ、岩下さんは大川さんの心理を看破している。 さしずめ、荒井昭二と相沢信彦のシンクロのように。 実在の有無を置いたとしても岩下の境地に迫った大川と言う人物は彼女の似姿と捉えても何ら問題ない。それどころか皆の心に巣食うエゴとしても。 自白とも取れる状況はホラーに大きな威を示す。虚と実の境界が揺らぐことによって、モニターと言う安全装置を取り払う。 だれもが持つ感情のひとつであると、プレイヤーに共感を与える。] 『鳴七』 ⇒「及川由紀」の項を参照のこと。 「大川百合子」の要素・エピソードなどは上記の人物へと集約された。 [部分編集] 大倉和雄(おおくら かずお) 登場作品:学怖,学怖S,学恋2,学恋V,極,稲in,アパ殺 種族:人間 職業:鳴神学園高校 三年D組 関連人物:新堂誠《クラスメート》,小林,星野元風,吉川虎之助 関連用語:悪魔《取引》,悪魔のトランプ《犠牲者》,百点塾,茶道部 一応は新堂さんと同じクラスのご学友という設定だが、学生をやりながら高利貸しを営むという、末恐ろしすぎる男子生徒。 財務・金融などを司り、かつては日本の中央官庁の中で最大の力を誇った「大蔵省(現:財務省)」がその名字の由来だろう。 「高利貸し」のほかにも「ギャンブル」という、シリーズでも唯一無二というべき個性を二本も抱える危険な男であるが、いささか詰めが甘い傾向がある。やっていることはあくどいのだが、どこか隙があるため本当の巨悪にまでは至れない立ち位置といえる。 もっと言うならば悪魔だったり「百点塾」だったりと、危険極まる力に手を出して身を滅ぼすという役回りで語られがちだった。 『学怖(S)』新堂五話「ギャンブルトランプ」に登場。 初登場作品。 高利貸しを営んでいることが新堂さんの口から語られている。 しかも彼の利率はミナミの鬼よろしくトイチ(十日で一割)という法外なものである。ご利用は計画的に 悪辣なことに、わざと姿をくらませて時間の経過を待ち金利を膨らませるという、実在した手口まで使いこなす。 その他にも盗品の売買(スキー板やパソコンをどうやって万引きするのかは不明)や賭博(八百長)の元締めなど、本業(?)の傍らで多種多様な違法行為に手を出している。一方で自分の身は用心棒でしっかりガードしているという念の入れようである。 新堂さん曰く「世渡りの上手い男」だが、とある事情を抱えており、事ある度に貯め込んだ金を吐き出していたらしい。 そのため一応は問題を起こさずに過ごせていた模様である。その事情とは大倉がギャンブル好きだったこと。 しかし、大倉は弱かった。悲しくなるほど、とてつもなく弱かった。下手の横好きであった。現に、大倉はギャンブルをするために金儲けをしてるという証言も得られている。 しかし、ある日どこからか手に入れてきた「悪魔のトランプ」を大倉が持ち出すと話は変わってくる。今までの負けを取り返すように強くなってしまったのである。 悪魔と取引して得たアイテムなら納得の効力だが、どう上手く立ち回ってみても所詮は高校生というべきか、経験の浅さは隠せない。悪魔相手に甘い汁ばかり吸えるはずもなく、大倉の運命は暗転するのであった。 そういったわけで、このシナリオにおける「大倉和雄」という男の死亡率は相当高かったりする。話の冒頭で生存を示唆するかのような新堂さんの言質も取れているのに、この始末はあんまりな扱いかもしれない。 具体的にこのシナリオ中で大倉が登場し、彼の末路に焦点が当たる六種類の結末の内訳を簡潔に述べると……、明確な死亡が三種類、まず生きてはいないだろう行方不明が二種類である。つまり生還エンドは一種類とごく限られていたりする。 『学怖S』ではイケメンの役者が演じており、ロンゲが今で言うちょい悪の風味を醸しだす。意外と好評かも知れない。実は「神田拓郎」と演者は同じなのだが、そうと感じさせないのは彼を演じた役者と撮影スタッフの力量かも知れない。 「学怖inよんはち」では彼の話のほとんどが収録されているのだが、唯一「黒井きらら」が助けに来てくれる点で異なる。おかげで一つしかなかった大倉の生存エンドが倍に増えたと言えば、新堂さんと共に奴は感謝すべきだろう。 しかし、島根県で高利貸しの高校生とは、中々シュールかもしれない。 『学恋2』新堂編に登場。 「赤坂陽介」と共に電話越しのアドバイザーとして出演する。 あいにく契約のカウントダウンが迫っているため世渡りが上手いという風評通りとは行かずテンパっているが、それでも謎の情報源を介して手に入れた攻略情報を教えてくれる。 が、彼との会話に合わせて「夜イベント」にてトランプの女達の出現フラグが立つので注意。……一体、新堂さんが何をしたと言うのだろうか。 『学恋V』に登場。 立ち絵を実装し、本格参戦を果たす。 ……のだが、その扱いはかなり悪い。 主人公がS過ぎると「図書室」に現れ、ポーカー勝負を申し込んでくる。 そして散々に負けた挙句、悲鳴をあげて逃げていく。 まぁ、悪魔の援護なしでは無茶苦茶弱いとされている彼なら仕方ないね。 『極』「百点塾」に登場。 「神田拓郎」、「吉田達夫」とともに新堂さんのクラスメートとして顔を連ねる。 意外や成績は良くなかったらしいが、百点塾に参加した動機は成績よりむしろ儲け話の気配を察知したため。 目端の利く性格に変わりはなかったことになる。 ただし、その感性はいたって常識的で、いきなり秘密結社もかくやという入会儀式をはじめ、常識はずれの百点塾と「後藤歩」相手には度々文句を垂れる。そのため、保身から様子を見ることが多い新堂さんに比べ被害に遭いやすい傾向にある。 ただし、参加に至った動機が動機のため比較的自業自得と言える展開が多いようだ。 一方で極限状況にもかかわらず、女の子相手にいいところを見せようと奮起したり、母親思いのあまり神田相手に一歩も引かない闘争を演じるなど、彼の俗っぽさは卑近な親しみやすさに転じる一面として作中では現れている向きも多い。 『稲in』に登場。 坂上修一の足跡を求め「七不思議の集会」の出席者の居場所を訪ねて「あなた」は鳴神学園構内を歩く。 その中のひとり「風間望」が茶道部に顔を出しているという情報を得てあなたが赴いた先で出会った輩のひとりである。 「茶道部」部室を裏で占拠してカジノ(もしくは賭場)に作り替えた張本人であり、不良ふたり(「星野元風」・「吉川虎之助」)を飛車角のごとく引き連れて、来訪者のことを悠然と待ち受けていた。 [誰が呼んだか、トランプを武器にして戦いそうにみえる]実に胡散臭く飄々とした風貌を構え、モノクルをかけている。 大倉はチャラけてはいるが実にフレンドリーな態度で(カモという名の)顔なじみである風間さんと巻き込まれた「あなた」にギャンブルの誘いをかけるのだった。 なお金庫には大枚を抱え込んでいるようで、鳴神の大蔵大臣を自称するだけあり相当の資金力を有していると察しうる。 ただ、その際に大倉の方から風間さんに提示したギャンブルはどう考えても胴元不利の内容だったが……。 風間さんが先走ったこともあって、あっさり大倉に敗退と相成ってしまう。 今度こそ種銭が尽きた風間さんと巻き込まれたあなたは、お帰りいただくことになるのだった。 『アパ殺』「袖山獲物」ルートに登場。 (執筆者募集中) [部分編集] 大河内雄大(おおこうち ゆうだい) 登場作品:特,追加,鳴七,稲in,アパ殺 種族:人間(能力者) 職業:鳴神学園高校 二年C組 誕生日:2月20日 身体:163cm/47kg ♂ O型 能力:万物にとっての絶好の機を見る 趣味:旅行 好きな/嫌いな食べ物:エビフライ、ご当地駅弁/ウニ、牡蠣 関連人物:細田友晴《クラスメート,友人》 関連用語:人面瘡《犠牲者》,予知,自殺 名は体を成すとは言うが、現実でその原則が当てはまらないのは周知の通り。 (大倉や佐久間は当てはまる例である)。太っているのに細田なクラスメート同様、大河内くんは名に似合わない華奢で小さな体格の持ち主だった。 が、漂わせる独特の雰囲気からか、いじめの対象にはならず、同時にクラス内に友人はいなかった。 が、同じくクラスで孤立していた細田からは共感を得ていた。 ちなみにこれは細田さんの片想いに終わらなかった珍しい例であるが、彼の持つ特別な力は心ならずも自身を滅ぼすことが多い。 大河内雄大の持つ力とは「タイミングを見る能力」。 誰もいない時のトイレに行ける瞬間、告白が絶対成立する機会、万物には絶好のタイミングが存在する。それらを全て見ることが出来れば、理想的な人生を送ることが出来るだろう。けれど目立つことを避ける彼は力をさして使わずに日常を送っていた。 『特別編』細田シナリオ「期を見る男」に登場。 細田に気を許したのをきっかけに、彼は人の輪に囲まれるようになる。 が、気を良くして能力を乱発したのが悪かった。 一種の「未来予知」とも取れた絶大な能力にはとんだ落とし穴があった。 彼は代償として人面瘡に取って代わられてしまった(らしい)。 もしくはクラスの爪弾きにされた末思いつめて自殺してしまう。ちなみに力の代償か生気をかなり失っていたようだが、動機にはあまり関係ない。 あまりに強い力は人を堕落させるのか、周囲に集まってきた連中は彼を偶像として祭り上げ、好き勝手な望みを果たせなくなったら放り出す。 彼の最期はどちらもそんな群衆心理の恐怖が招いたものと言える。 後者の結末は相当スプラッター。 「塚本明」のビジュアルや「藤井三枝」とどこか重なるやり方はクラスメート全員に拭い去れない思い出を与えた。 後、細田は彼の力は本当は「タイミングを操作する能力」ではないかと仮説を立てたが、今となってはわからず終い。神の如き力は葬り去られた。 どちらの結末を選ぼうと、細田さんの脳裏には彼には似つかわしくない満面の笑みが残されることになってしまう。 [「細田の友達」が死亡フラグとして機能した例である。] [能力のインパクトと性格の良さ、どっからどう見ても陰のある美形に見える立ち絵が功を奏したのか、『特別編』の面々では一歩抜きん出た存在感を持つ。もしかしたら今後の再登場もアリかも知れない。] 『追加版』「続・期を見る男」に登場。 ユーザーからの好評に応える形での再登場だろうか。 「七人目」として“本人”が新聞部部室に現れ、『追加版』特有の「続」と付く追補録が語られていくことになる。 この場合は力を得るきっかけの話と基本的なところにはじまり、お馴染み主客転倒の種明かしに至ったと思いきや……? 果ては、視点人物を細田友晴に代えて行われる掟破りの幻想恐怖までもが綴られている。 詳細は「小林翔太」の項を参照のこと。 『鳴七』「期を見る男」ほかに登場。 細田さんが属する「二年C組」の男性陣の中では「川辺志道」と「高田護」と並びおそらく中核をなすメンバーのひとり。 従来のいかにも何か持っていそうなグラフィックの印象を崩さないままに、やや青みがかかった髪色をしている。 さしずめ川辺と高田で三人並ぶと青、黄、赤となる点はあたからもこれら三名が同じ枠だと示してくれているようである。 ただし、手番シナリオの「期を見る男」のように自身の特殊能力がクラス内で大いに脚光を浴びた例はむしろレアケースのようでクラスでひとり孤独に佇んでいることが多いようである。 例外的に細田さんとはおおむね良好な関係を築けており、上手く距離を取りながら親密な友人として付き合えている。 ただし、細田さんと仲良くなる機会がない場合は本当に接点がないようで脇目で流し見をする程度の付き合いのようだ。 パラレル設定と言ってしまえばそれまでだが、そういった世界に巡り合って細田さんの孤独と直面するのもまた世の無常といえるだろう。 (執筆者募集中) 「期を見る男」。 基本的に『特別編』版とシナリオに相違はない。 ただし、大河内くんが五体満足な状態で生還した上、細田さんとの友情にも陰りがないというハッピーな結末が新たに用意されている。 (執筆者募集中) 「死を招くベッド」。 「鳴神学園の生徒」名義。 放課後の時間帯、おそらくは学校から帰宅途中だったところで交差点でうずくまる女性「及川由紀」のことを心配した上で肩を叩いて声をかける。 そこで唖然としたまま何も言わない女性を見て、首をかしげながら立ち去って行った。 言ってしまえば、何の変哲もない通行人であり元の『晦』版のシナリオでは「肩を叩く人」以上の情報はない役回りである。 ただし、この後の及川さんの身に待ち受ける運命を思うとよろずのタイミングを読める大河内くんがセレクトされたのは皮肉が効いていて面白いのかもしれない。 事実、その後の及川さんの運命に大河内くんが巻き込まれていないと考えれば、彼はギリギリのタイミングで窮地を脱したという可能性も考えられる。 「魅惑のトイレ」 (執筆者募集中) 「殺人クラブ」。 このシナリオの探索パートでは、各シナリオで語られたキャラクターたちが鳴神学園の至るところに潜んでいる。 「大河内雄大」はその中のひとりであり、「鉄道研究会」部室にいる。 (執筆者募集中) 『稲in』に登場。 (執筆者募集中) 『アパ殺』「竹内獲物」ルートに登場。 (執筆者募集中) [部分編集] 大篭哀子(おおごもり あいこ) 登場作品:新生2 種族:人間 職業:鳴神学園高校 三年A組 関連人物:岩下明美,瓜田茄子,高洞由利《クラスメート》 関連用語:監禁,ポエッター 『新生2』「正義のゴネシエーター」に登場。 最近、岩下さんのクラスで起こった内輪もめ騒動の中心人物である女子生徒。 特に際立った容姿の描写は文中ではされていないが、暗く凝ったような基本の表情と、感情を荒立てる際であってすら不器用としか思えないような怒りの差分が立ち絵として印象的かもしれない。 なお、そんな彼女が引き起こしたか、むしろ巻き込まれたかの事の起こりを語っておくと……。 クラス内で孤高を貫く岩下さんに惹かれて大篭さんが友達になりたいと接触をかけてきたことが発端である。ただし大篭さんが内面に問題を抱えていると即座に判断した岩下さんはにべもなく拒絶。 それを逆恨みした大篭さんがなんらかのアクションを起こそうとするところから展開は派生する。 なお、上記のシナリオ中では当の岩下さんの口から大篭さんの人柄について徹底的に辛辣な評が下されるので、この項目ではその追認を避ける意味であまり触れることはしない。 けれど大篭さんが対人関係に関しては不得手の一言に尽きる、友達のいない孤独な人であること。 それに加えて他者との会話も途切れ途切れでおぼつかないのに、討論の場での熱弁に長け、収集したデータに支えられた説得力ある文章作りにも優れるという意外な側面を持つということ。 最後に、その才能に溺れて浅はかな本質を明け透けにしていることを押さえて損はないだろう。 とはいえ文章力に優れていたというのは本当のようで、展開によっては皮肉交じりとはいえ岩下さんから趣味の小説に没入した方がよかったと、もっともな正論をつぶやかれていたりする。 なお作中では冒頭でも触れられているが、特異な名前も目を引くかもしれない。 その印象を補完するように、彼女の家庭環境も破綻していると語られることも多いようである。 よって、そんな大篭「哀」子さんは、その名前に倣うかのようにして半ば以上は自業自得とはいえ、ほとんどの結末でとてつもなく悲惨な目に遭ってしまう。 一見善意で接近してきた「高洞由利」の人心操作の網に見事にかかって心身が擦り切れるまで追い詰められたり、思いつめた挙句変な病院のヤブ医者に顔を切り刻まれたりといった具合である。 この場合は流石に一方的に騙される側に陥っていることに同情したくなるようだが……。 どうも大半の分岐展開の裏側で大篭さんは岩下さんを陥れようと真偽不明の怪文書をクラスにばらまいて級友たちを扇動し、岩下さんを吊るし上げようとしていたようだ。 ただし、その文書が表に出る展開においても目論見が功を奏すことはない。肝心の岩下さんが全く乗ってこずにほとんど無視を貫いたためである。 悪意も受け取る側がいなければ空回るしかない。 行き場をなくした悪意は「反岩下勢力」というクラス内での小集団の中を駆け巡ることになった。 結果、発生するのは最初は岩下さんのことを上っ面の正義心から弾劾しようとしていた同じくクラスメートの「瓜田茄子」さん達との間で繰り広げられる強烈で滑稽な内ゲバである。 また、一見岩下さんに一矢報いた展開に行き着いたとしても、岩下さんはどこまでも彼女たちの先を見据えた上での一手を打っていたりするのでほとんど痛打になっていなかったりする。 結論としては、流言飛語はやめましょう。 それと他者を貶めるより自分を高める努力をしましょうという当たり前のところに落ち着くのだろうが、それ以上に情報を介して人の心を弄ぶのは危険という教訓にも辿り着くかもしれない。 [部分編集] 大沢先生(おおさわ-) 登場作品:殺クラR 種族:人間 職業:鳴神学園高校 教師 関連人物:真田亮太,緒方麻紀,玄武拓馬《部活》 関連用語:弓道部《顧問》 鳴神弓道部の顧問である大らかな感じの教師。 マネージャーの「緒方麻紀」に指摘されるまで「玄武拓馬」の一年生放置を特に注意しなかった。 落とすためとしか思えない入部試験も本気で落とすわけがないじゃないかと言って見過ごしたりと、随分のんびりした教師である。 しかし「真田亮太」の拓馬に対する大胆発言を熱を持って応援するなど、どうもスポ根的熱い展開が好きらしい。 いざという時は自分がどうにかすると発言している辺りからも、鳴神の中ではかなり珍しい普通の良い教師であるようだ。 [部分編集] 大滝(おおたき) 登場作品:学怖,学怖S,鳴七 種族:人間 職業:鳴神学園高校 一年E組 関連人物:岩下明美《噂》,内山浩太,坂上修一《クラスメート》 『学怖(S)』岩下一話「悪霊に魅入られた少年」に登場。 同じクラスの「内山浩太」が思いを寄せる同じクラスの女子生徒。 しかし、内山くんは「いじめ」によって追い詰められており、クラスメートに「悪霊」が取り憑いていると思い込んでいた。内山くんはそんな状況を憂いて、愛する大滝さんを悪霊から救うだの云々な文面を持って、あえて恋文を出すことにしたのだが……。 いきなり「悪霊」どうこう言われても普通の人は気味悪がるしかないわけで。 大滝さんは大いに弱り、それを察したいじめっこたちは都合の良い義憤に駆られて内山君を「旧校舎」に呼び出し――、 以降の流れは大滝さんにとっては何ら与り知るところでないため記述しない。 それと岩下さんの話の通例として特に咎を負わない人はあっさり解放される風潮があるため、その後が特に触れられない彼女が酷い目に遭った可能性は低いだろう。 『鳴七』「悪霊のいたずら」に登場。 基本的に『学怖(S)』版とシナリオに相違はない。 シナリオとまたいでキャラクターが活躍する『鳴七』中だが、大滝さんの出番は旧来通りにここだけである。 ただし、大滝さんのこのエピソードが別の人物へ統合されることもなかった。 [部分編集] 大友(おおとも) 登場作品:特 種族:人間 職業:鳴神学園高校 生徒 関連人物:鍋島香織《友人》,細川 関連用語:こっくりさん《呪い》 『特別編』岩下シナリオ「図書室の話」に登場。 大人びた容姿の女生徒。同じく「鍋島香織」の友達だった「細川」さんと共に、「こっくりさん」に取り憑かれてしまった。 [部分編集] 大沼繁夫(おおぬま しげお) 登場作品:極 種族:人間 職業:高校生 関連人物:福沢玲子《噂》,蒼樹ローラ,元木葉苗《クラスメート》 関連用語:いじめ 『極』「イノチ」に登場。 福沢の通う学校では恒例となっている「N湖(野尻湖)」で開かれたサマーキャンプの二〇年以上前の回に参加した男子生徒。 とあるルートから彼についての情報を仕入れた福沢によると水恐怖症が祟ってか、歯も髪も服装も常に不潔な風体である上に悪臭を放っていた。加えていじめられっ子を自称する被害妄想に囚われ「人間嫌い(ミザントロープ)」をこじらせていたようだ。 さらに言えば大沼くんをいじめていた加害者が見当たらないこともあって、愚痴とくだを巻く厄介者とみなされていたらしい。 事実、とある伝手から入手した大沼くんの肉声が録音されたテープを聞いた福沢さんは、くどくどとした長ったらしい主張だとして暴言じみた感想を述べている。続いてその感想を元に大沼くんの人格を全否定して話を進めていくのだった。 で、そんな大沼くんだったが、どうやら装飾品作りの才能があったようだ。サマーキャンプで行われる水辺遊びの際に直感的に員数確認ができるシステムおよびそのカギとなるペンダント「イノチ」を素晴らしい出来栄えで作り出す。 ちなみに当時の女子たちにとって「イノチ」は男女間での交換を成立させることで愛の告白の小道具も兼ねるロマンチックなアイテムだった。が、どうもそれ以上に美術品としての価値に目が曇ったか、女子一同はこぞって大沼くんのイノチを欲しがった。 しかし、当の大沼くんはにべもなく激しい言葉で拒絶する。 当然反感を食うが、それとは関係なく大沼くんはサマーキャンプの最初から最後までずっと孤立しており、最終日の肝試しにこれまたひとりで参加したは良いものの行方不明になってしまう。 しかも夏休み明けの二学期になるまでクラスメート全員はおろか両親からもいなくなったことに気づかれなかったという。 (ネタバレにつき格納) + ... ただし、以上の大沼繁夫の人間性についての評はそのほとんどが伝聞に基づくことに注意が必要である。 そもそも伝聞からなる彼の人格のほとんどは福沢さんが持っている彼の肉声テープに立脚している。もっと言えば、その入手ルートが福沢の母であり、大沼の殺害をほのめかす発言と、古ぼけたペンダントという(状況)証拠まで揃っている。 (なお、福沢玲子は気づいたうえですっとぼけているのか、それとも気づかずに天然で残酷なことを言っているのかは不明。) 大沼くんの、これ見よがしに精神を病んだような言葉も、誰も味方がいない孤立無援の状況に晒された結果、本当に精神の均衡を崩してしまったから。いじめの加害者が露見しなかった理由も複数人が結託して口裏合わせをしていた等の理由で説明できる。 テープに吹き込まれた傲慢なメッセージも第三者である福沢の母に言わせられたと解釈すれば、すべてが覆るだろう。 また、長期間息子がいなくなっても親が気にしないというのは普通に考えればあり得ない状況である。 このことから大沼家は「育児放棄(ネグレクト)」などを疑わせる重大な問題を家庭環境に抱えており、大沼繁夫は家から逃げるために参加したくもなかったサマーキャンプに来るしかなかったと考えられなくもない。 一応、大沼くんの性格が本当に悪く、世をはかなんで命を絶った、世捨て人のように姿をくらませたという可能性もなくはないが……。これも読者(プレイヤー)の精神衛生が楽にするというだけの、甘い考えかもしれない。 重ねて言っておくと真相はすべて闇の中である。この一言で故人の名誉が守られたかどうかについては、各人に一任する。 ちなみにテープ自体に注目した場合は、大沼くんのことがどうでも良くなるような恐ろしい声が聴けたりする。繰り返し福沢さんにやめておいた方がいいと念押しされるが、当の福沢さんはノイズに混じった謎の声を聴くことはできないようで……。 つまり、その声の来歴や正体などは、まったく謎のまま集会を進めることを余儀なくされる。 または同じ行方不明になるのでも「原口瑞希」の踏み台にされてというパターンも存在する。こちらの場合は衆前で常の彼には似合わない挨拶をしながら、という釈然としない去り方をしている。 こちらの場合は、どうしても体と命(心)の収支計算が合わない中で絶望の淵に追いやられて差し引きマイナス一を演じたと思われる「蒼樹ローラ」をよそにギリギリ勝ち馬に乗れたと考えられなくもないが、やはりその後の“彼?”の行く先は不明である。 [部分編集] 大場雅嗣(おおば まさつぐ) 登場作品:2008 種族:人間 職業:鳴神学園高校 生徒 関連人物:袋田昭吾《友人,噂》,桐瓦のぞみ《恋人》,関根晃,福山梢《友人》,佐古修司《友人,いじめ》 関連用語:地獄屋敷《犠牲者》 『2008』4話「地獄屋敷」5話「思惑」に登場。 一年前の六月の金曜日に「地獄屋敷」での肝試しを敢行したひとり。 発起人は大場だったが、はしゃぎ回るほか四人の参加者をよそになぜか終始おびえた様子だった。 なお鍵を開けるための事前工作などしていなかったはずなのに、大場が入り口に立った時ドアは自然と開き、自分たちを迎え入れるかのような声を聞いているのだとか。 が、その日のうちに参加者のひとり「佐古修司」がナイフで首を掻き切り自殺したことをはじめに肝試しを敢行した五人はひとりずつ死んでいくことになる。 大場は最後の犠牲者であり、死んでいった者たちに共通する死のサインである「デジカメ」が自分のところに訪れたことによって錯乱し、頼りになりそうな知人の袋田の下にすがりつくのだが一蹴されている。 大場が遺したという真相を記した手紙は死後に袋田の手元にやってきて、続いて七不思議の集会の進行役である「工藤光輝」の手に渡っている。 そんな大場は同じグループの「桐瓦のぞみ」とは交際関係にあったようだ。 その上で例の五人組は同じく付き合っている「関根晃」&「福山梢」と合わせた四人が唯一孤立している佐古のことをグループ内での奴隷に置いた力関係が成立していたのではないか? という旨を語り部のひとり「山本繁」が補足と称して語っているのだが、実際のところは不明である。 [部分編集] 大原(おおはら) 登場作品:晦 種族:人間(ヤンデレ) 職業:看護婦 関連人物:藤村正美《仕事》,池波《恋心,復讐》 関連用語:自白 正美三話「愛する一念が起こす事件」に登場。 藤村正美の同僚の看護婦で、個性的な顔立ちにずんぐりとした体型の持ち主だった。 ……、はっきり言うなら不美人だったらしい。しかし、それを補うかのように性格は優しく、患者にも分け隔てなく接するなど仕事面では有能な人物だったようだ。 が、「池波」さんと言う若くて美しい男性が入院して、彼女は彼に恋をする。その心はすぐに皆の知るところになったが、我が身を思ってただ忍び、その想いを伝えることはなかった。しかし――、 (ネタバレにつき格納) + ... 正美は恋のキューピッド気取りで彼女の恋心を池波さんに伝えた。 その恋は叶わない。池波さんは大原さんのことを嘲笑い、丁度居合わせた彼女にもしっかり釘を刺される。 まるで誰かに狙われたようにその会話を聞いてしまった大原さんは、翌日にも凶行に走る。点滴に劇薬を注入して池波さんを殺害、自身もその毒を仰ぎ自ら命を絶ってしまう。 たとえ、共に命を絶ったとしても冥府で一緒になれはしないと言うのに。 殺す勇気などいらない。自ら死ぬ勇気もまた然り。最期が幸せに見えてもそれは自己満足に過ぎない。 こんなことで二つも命を奪う人間はやはり間違っていたのだろうか。 後日談として、彼女の霊は点滴台を引きずりながら今も病院内をさまよっているのだという。 ちなみに正美にやはり間違っていたと言わしめた場合、真相が明らかになる。 正美は、話を吹き込むことで何が起こるかをしっかり把握していた。 要は彼女、この二人がなんとなく目障りで、これ幸いと大原さんが自滅するように仕込んだようだ。 計画通り←本当に言う。 手口の鮮やかさもさることながら、その動機の身勝手さ、何よりもこんなことを見知った親戚に臆面も無く吹聴できるその神経が何よりも恐ろしい。 [部分編集] 大原(おおはら)② 登場作品:晦 種族:人間→妖怪 職業:小学生 関連人物:前田良夫《友人》 関連用語:人面犬 良夫六話「7つの不思議な話」に登場。 もっと言うなら、良夫六話は「七不思議」と称したショートストーリーの集合と言う体裁を取っているため、その内のひとつと言うことになる。 誰もが知ってる「都市伝説」の「人面犬」を本当に信じてしまい、学校が終わってはドッグフード片手に探して回る小学生。 なぜそんなことをしているかと言えば、彼には病理不明で寝たきりの祖母がいた。 そこに偉い坊さんに犬を生贄とすれば祖母の病気が治るよと吹き込まれたためらしい。 良夫は友人の彼のことを「大バカ」などと言いつつ語ったが、聞き手の葉子ちゃんからは(心の中とは言え)「頭悪男」とか「馬鹿男」などと毒を飛ばされてしまうのだからわからないものである。 確かに、常の良夫ならすぐにでも気付きそうなポイントではある。 いくら才気走る良夫と言え、友人のこととなれば頭が回らなかったのかもしれない。 大原は先に「普通の犬じゃ効かない」と言っている。つまりは、もう試し済みということである。 そんな大原は無理をし過ぎたせいか、自分も病気になってしまう。 この話は病床で彼がしてくれたものである。大原はその日の夜に体調を押して家を飛び出し、心配した良夫と再会するもすぐに消えてしまう。そして本当に人面犬がいたことの実証がなんとも皮肉な形でされてしまう。 翌日の夕方、彼がいた公園に再び行ってみるとそこにいたのは「大原」の顔をした人面犬だった。 泣きそうな顔をして何も言わずに去っていった大原は、この町の噂となってしまったという。 結局、大原の身に何が起こったかは全くの不明のままだという。 [全ての元凶は彼によからぬことを吹き込んだ坊さんだろう。 まともな僧が殺生を勧めるとは考えにくい。インチキの類と考えられる。 通常仏教では「霊魂」の類を認めないのが普通。 「輪廻転生」を説明する上で霊の存在は邪魔になるからである。 一方、因果応報の論法に従えば大原の身に起きたことへの推察も可能となる。 この場合の大原は一度死に、即座に畜生の身に生まれ直したことになる。 時間が短すぎると言うツッコミもあるが、この場合も近くに出産間近の犬がいたと考えればなんとかなるだろう。~『四八』より『仙吉地蔵』説~。 どの道、犬は試しで犠牲に出来ても自分を犠牲にしてまで祖母を治そうとはしなかった辺りが、少々酷な言い方ではあるが彼という人間の限界だったと言える。自分でもそれを理解していたからこそ、彼は良夫を前にして何も言えなかったのかもしれない。] [部分編集] 大原茂子(おおはら しげこ) 登場作品:学怖,学怖S,極 種族:人間 職業:鳴神学園高校 二年生 関連人物:福沢玲子《噂》 『学怖(S)』『極』福沢二話「血なま臭い水の謎」「福沢玲子シナリオ」に登場。 昔、二年にいた女生徒。 神経質かつ潔癖症で水道水などもってのほか、ハンカチとミネラルウォーターを手放せない生活を送っていたらしい。 が、記録に残る猛暑に当てられ、日射病でゆだって朦朧とする頭で慣れない水道の蛇口にしゃぶり付いてみたが、出てきたのはなんとアリ! 実は貯水タンクの中身はとっくに枯れ果てており、内部に入り込んでいたアリが大量に排出されたのだった。 アリは大した実害がないようでいて、不快な生物に挙げられること甚だしく、何より『学怖』名物の蟲の一種でもあることを忘れてはならない。そんなブツが体内に入り込んできたものだから、たまったものでなかった。 幸いにも大原さんは早期の内に発見されたが、ショック症状を起こして入院することになる。 が、精神の均衡を欠いた彼女は「屋上」の貯水タンクに侵入。汚物を消毒しようとでもしたのか大量の漂白剤を投入。足を滑らせたらしく、タンク内に転落しそのまま帰らぬ人になってしまう。 トドメとばかり彼女は全身が漂白された水死体として発見された。驚きの白さ よって、この話では封印された蛇口を開くと、大原さんの無念の呪いか真っ白なアリがざんざか出てくるようになってしまったため、先生の手で封印されたと言うオチとなる。 しかし、自分でも言ってるが、さんざ水道水の安全性で怖がらせといて、こんな話をする福沢さんはイイ性格をしている。水道の話は微妙に現実にありそうなベクトルから攻めて来るため、集会の序盤に聞くにしては結構厳しいところがあるかもしれない。 [部分編集] 大村(おおむら) 登場作品:晦 種族: 職業: 関連人物:真田泰明,鈴木優子,北田裕 泰明四話「録音されていた悲鳴」に登場。 テレビ局の音響部門の長(課長)で、このシナリオ中で視点人物を担う「北田裕」の上司におそらくは当たる人物。 探索パートに入ると「悲鳴に襲われた。」の一言で体に裂傷が走り、体力ゲージをすり減らされていく北田さんだったが、力尽きることなくなんらかの部屋に入ることができれば、この大村さんもしくは監督と出会うことができる。 続いて、事情を知っている大村さんや監督の口からこの超常的な事態がなぜ起こっているのかが明らかになったりする。 なんでも大村さんは制作会社の「監督(姓名不明)」と過去女性を巡ってのトラブルがあったらしい。そこで殺されたかつて大村さんの恋人「鈴木優子」の怨念こそがこの不可思議な「悲鳴」の正体であるという。 または、より良い悲鳴を求めた大村さんがさらってショック死させてしまった、名も語られなかった女性ということもある。 どうも監督、もしくは大村さんはクオリティの高いドラマを作るためなら手段を選ばない危うさを秘めていたようである。 なお、監督もしくは大村さんにとって、恋人の死の真相が場合によっては二十年越しに明かされるとなれば、流石に心穏やかではなかったようだ。下手人に食って掛かる様子を見せ、直後復讐を(見)届けている。 なお、泰明さんはわざか天然かは不明だが、イマイチ釈然としないオチを持ってくることが多い。加えてこの話も北田さんが真相まで辿りつけるかどうか、さらに言えば「悲鳴」という超常現象の説明不足からくるシュールさにダマされがちである。 ただし、話(現象)のオチとしては多少変則的なものも混じるものの、「殺された女性の怨念」でほぼ一貫している。 話の要点としてそれだけ押さえておけば十分である。 そこから女性の名が明かされるかどうか、殺された時期が二十年ほど昔かつい近日か。保存されていた悲鳴を持ちだしたのは監督であり故意に、もしくは北田さんが偶然……などといったバリエーションが展開されていくことになる。 しかし泰明さんにいまさら言っても詮無きことではあるが、数年前に本当に起こった事件という触れ込みで複数人の死傷者を出した職場の話をするのはいささか不謹慎かもしれない。たとえ、それが別部署での話であれ。 ちなみにひとつの結末で言及された犠牲者の数(おそらくは最小限で食い止められたパターン)は「死者三名、負傷者五名」、これが多いか少ないかは各人の判断にお任せする。 一方で、探索パートに移行せず、監督と大村さんのいさかいで話が終わる場合は行方不明一名に留まるのだが。 ちなみに大村さんと北田さんが生還した場合、くだんの悲鳴のテープを処分せずに保管しており、時々仕事で使っているというあんまりな後日談が語られたり、泰明さん自身も保管し続けていることを面白がっている風に話を〆たりもする。 マスコミというかテレビマン、というか泰明さんがどこかねじのハズレた人間だと思わされたプレイヤーも多いかもしれない。 [部分編集] 大本真美(おおもと まみ) 登場作品:VNV,鳴七 種族:幽霊? 職業:鳴神学園高校 一年A組 関連用語:七不思議の集会,七人目《所属》,人形《所有?》,凶夢 『VNV』「学校であった怖い話」に登場。 存在・思考・正体、そのすべてが謎に包まれた「七人目」の語り部。 気弱そうな外見そのままに、今にも泣きそうで弱々しい女子生徒である。 ちなみに『VNV』では語り部の話す噂の中の登場人物のグラフィックは白目だけと、なぜか一貫した描き方をされている。 そんな中で、大本さんの瞳は一応書き入れられており、語り部の話の中の登場人物とは一線を画す立場にあると考えられる。 が、よくよく見ればその目はイッちゃてて怖い。 ちなみに執筆段階では「大元真実」という姓名であり、文字通りこの話のすべての真相を握るキャラクターであったと思われる。実際に世に出た決定稿ではあまりにも直接過ぎるとして現在のものに変更されたという。 本人曰く集会当日は大切な人形を探していて来ることができなかったらしい。 が、前提として坂上が最初に行った(と認識している)集会は、周囲の反応からするとないものとして扱われており、そもそもの前提が食い違っている。加えてそのズレが、坂上修一の精神を狂わせる一因となっている。 よって、そんなことを言われても、怒りの持っていきようがなくて納得もできない坂上は壊れた精神に任せて暴走、大本さんの首を掻っ切るのだが……。 定まった解法を持たない『VNV』であるが、語り部がお馴染みの六人であるなら、まだ解釈の余地はある。 単純にかつての守護霊エンドを彷彿とさせる妄想や憑依として片付けても良い。また、作中で坂上が触れた「パラレル・ワールド」説を採るのも悪くはない。 しかし、始末の悪いことに夢か現かが定かでない痕跡に留まった他六人の語り部と比べ、彼女だけは確固たる存在した証拠を残している。 坂上は名前までは確認していないので正確なところはわからないが、何年か前に転落して死亡した女生徒と言う記録に行き当たった、これは十中八九「大本真美」本人だろう。 ちなみに、坂上修一が「一年A組」に所属するのはほぼこのシナリオのみでの設定である。 これは『VNV』がシリーズの源流でありながら『学怖』から続く本流からやや離れた位置にあることの証明かもしれない。 『鳴七』「坂上修一の学校であった怖い話」ほかに登場。 過去、鳴神学園に在籍していた生徒のひとりだが、ほぼ共通して劇中での扱いは故人である。 得体のしれない過去からやってきた何者かという属性に加えて「七人目」として大きな存在感を示すポジション、それに気弱な性格や臆病な物言いなど、多くの点において同作品中に出演している「包帯の女」と共通した属性を有している。 ただし、包帯の女の場合は自我も不明瞭な正体不明の魔物として語られることが多い。 ひるがえって大本真美の場合は明確な自意識を備えた人間であり、無辜の犠牲者として捉えられている向きがあるようだ。 彼女が悲劇の住人になってしまったのは彼女自身の因果ではなく、なにか巨大な力に巻き取られてしまったからなのだろうか。 (執筆者募集中) 「坂上修一の学校であった怖い話」。 (執筆者募集中) 「交換日記の怖い話」。 「皆川千春」さんのエピソードを踏襲している。 (執筆者募集中) [部分編集] 大山幸二(おおやま こうじ) 登場作品:学怖S 種族:人間→地縛霊 職業:鳴神学園高校 三年生 関連人物:荒井昭二《噂》 関連用語:バスケット部《所属》,地縛霊《犠牲者》,第一体育館《出没》 荒井一話「校内に巣くう地縛霊」に登場。 三年になったに関わらず、レギュラーはおろか補欠すらなれなかった「バスケ部」の雑用部員。目立たず大人しい性分だが、バスケが本当に好きでかける情熱も人一倍だった。 すぐに気付かれたと思うが、彼の境遇や性格は野球部の「浅田茂」とほぼ同じである。細田さん風に言えば「魂の双子」と言う奴かも知れない。 そんな大山くんはある日、禁止されているに関わらず夜遅くまで「体育館」でバスケの練習をしている四人組と出会い、仲間に誘われる。前に、自分の練習で学校側から禁止措置を食らった大山くんだったが、この時ばかりは規則など忘れ、真夜中の交流を深めていく。 しかし、親に気付かれ今度ばかりは駄目だと告げたため、彼ら――正体は体育館に潜む「地縛霊」の仲間に引き込まれてしまった。バスケが五人でやるスポーツである以上、避けては通れない道だったのかもしれない。 ← 前 次 → 情報提供・文章の補足、編集方針の動議その他諸々歓迎します。 もし興味を召されたなら下のコメント欄に書き込みなどされると嬉しいです。 名前 コメント