約 1,992,806 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/25.html
子どもの権利委員会・一般的意見13号:あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利(1) 一般的意見一覧 子どもの権利委員会 第56会期(2011年1月17日~2月4日)採択〔注/実際には2011年2月11日の特別会合で採択〕 CRC/C/GC/13(原文英語〔PDF〕) 日本語訳:平野裕二〔日本語訳全文(PDF)〕 目次 I.はじめに II.目的 III.子どもの生活における暴力 IV.第19条の法的分析 A.第19条第1項 B.第19条第2項 V.より幅広い条約上の文脈における第19条の解釈 VI.子どもに対する暴力についての国家的調整枠組み VII.実施のための資源および国際協力の必要性 I.はじめに 1.第19条は次のように定めている。 1.締約国は、親、法定保護者または子どもの養育をする他の者による子どもの養育中に、あらゆる形態の身体的もしくは精神的な暴力、侵害もしくは虐待、放任もしくは怠慢な取扱い、性的虐待を含む不当な取扱いまたは搾取から子どもを保護するためにあらゆる適当な立法上、行政上、社会上および教育上の措置をとる。 2.当該保護措置は、適当な場合には、子どもおよび子どもを養育する者に必要な援助を与える社会計画の確立、およびその他の形態の予防のための効果的な手続、ならびに上記の子どもの不当な取扱いについての実例の認定、報告、照会、調査、処理および追跡調査のため、および適当な場合には、司法的関与のための効果的な手続を含む。 (訳者注/国際教育法研究会訳を一部修正。) 2.この一般的意見がまとめられた理由。子どもの権利委員会(以下「委員会」)が子どもの権利条約(以下「条約」)第19条に関するこの一般的意見を発表するのは、子どもに対して振るわれている暴力の規模および激しさが憂慮すべき状態だからである。子どもの発達、および、社会が潜在的に有する非暴力的な紛争解決策を脅かすこのような慣行に効果的に終止符を打つためには、暴力を終わらせるための措置が大規模に強化および拡大されなければならない。 3.概要。この一般的意見は、以下の基本的前提および所見を基盤とするものである。 (a) 「子どもに対する暴力はいかなるものも正当化できず、子どもに対するあらゆる暴力は防止可能である」 [1]。 (b) 子どもの養育および保護に対する子どもの権利基盤アプローチのためには、子どもをもっぱら「被害者」として見るのではなく、権利を有する個人としての子どもの人間としての尊厳ならびに身体的および心理的不可侵性を尊重しかつ促進する方向へのパラダイム転換が必要である。 (c) 尊厳という考え方は、すべての子どもが権利の保有者として、かつ、個人の人格、特有のニーズ、利益およびプライバシーを有する、かけがえのない、価値あるひとりの人間として承認され、尊重されかつ保護されることを要求する。 (d) 法の支配の原則は、おとなに対して適用されるのと同様に、子どもに対しても全面的に適用されるべきである。 (e) 意見を聴かれ、かつその意見を正当に重視される子どもの権利があらゆる意思決定プロセスにおいて体系的に尊重されなければならず、かつ、子どものエンパワーメントと参加が、子どもの養育および保護のための戦略およびプログラムの中心となるべきである。 (f) 自己に関係するまたは自己に影響を与えるすべての事柄において自己の最善の利益を第一義的に考慮される子どもの権利が、とくに子どもが暴力の被害を受けた場合に、かつあらゆる防止措置において、尊重されなければならない。 (g) 公衆衛生、教育、社会サービスその他のアプローチを通じた、あらゆる形態の暴力の第一次予防が何よりも重要である。 (h) 委員会は、子どもの養育および保護ならびに暴力防止における家族(拡大家族を含む)の第一義的立場を認める。しかしながら、委員会はまた、暴力の過半数は家族の文脈で生じていること、および、したがって子どもが家族に覆いかぶさっているまたは家族内で一般化している困難および困窮の被害を受けているときは介入および支援が必要であることも、認めるものである。 (i) 委員会はまた、学校、ケアセンター、居住型施設、警察の拘置所および司法施設も含め、国の施設においてかつ国の行為主体によって、子どもに対して広範かつ激しい暴力が振るわれていること(これが子どもの拷問および殺害に至る場合もある)、および、子どもに対する暴力が武装集団および国の軍隊によってしばしば用いられていることも認識する。 [1] 子どもに対する暴力に関する国際連合研究のための独立専門家報告書(A/61/299)、パラ1。 4.暴力の定義。この一般的意見の適用上、「暴力」とは、条約第19条第1項に列挙されているとおり、「あらゆる形態の身体的または精神的な暴力、侵害または虐待、放任または怠慢な取扱い、性的虐待を含む不当な取扱いまたは搾取」として理解される。ここで暴力という用語を選んだのは、子どもに対する暴力に関する国際連合研究(2006年)で用いられた用語法にしたがって、第19条第1項に列挙された、子どもに対するあらゆる形態の危害を表現するためである。ただし、種々の危害を記述するために用いられる他の用語(侵害、虐待、放任〔ネグレクト〕または怠慢な取扱い、不当な取扱いおよび搾取)も同様の重みを持つ [2]。一般的用語法では、暴力という言葉は身体的危害および(または)意図的危害のみを意味するものとして理解されることが多い。しかし委員会は、この一般的意見で暴力という用語を選んだことが、いかなる意味でも、身体的および(または)意図的ではない形態の危害(とくにネグレクトおよび心理的な不当な取扱い等)の影響およびこれに対処する必要性を過小評価するものとして解釈されてはならないことを、最大限の力をこめて強調する。 [2] 他の言語への条約の翻訳では、英語の「暴力」(violence)に正確に対応する文言が含まれているとはかぎらない。 5.国の義務および家族その他の主体の責任。「締約国」への言及は、国レベルのみならず州および自治体のレベルでも子どもに対する責任を担わなければならない締約国の義務を指している。これらの特別な義務とは、相当の注意義務であり、かつ暴力または人権侵害を防止する義務、被害を受けた子どもおよび目撃者を人権侵害から保護する義務、調査を行ないかつ責任者を処罰する義務ならびに人権侵害の救済措置へのアクセスを提供する義務である。暴力がどこで発生するかに関わらず、締約国は、親その他の養育者が、その能力および資力の範囲内で、かつ子どもの発達しつつある能力を尊重しながら、子どもの最適な発達のために必要な生活条件を確保することを支援および援助する、積極的かつ主体的義務を有する(第18条および第27条)。締約国はさらに、仕事の文脈において暴力の防止、暴力からの保護および暴力への対応に責任を有しているすべての者および司法制度に属するすべての者が子どものニーズに対応しかつその権利を尊重していることを確保しなければならない。 6.一般的意見13号の作成経緯。この一般的意見は、締約国報告書の審査およびそれぞれの総括所見、子どもに対する暴力に関して行なわれた2度の一般的討議の勧告(2000年および2001年)、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する一般的意見8号(2006年)ならびに他の一般的意見で行なわれた暴力の問題に関する言及において委員会が示してきた既存の指針をもとに、これを発展させたものである。この一般的意見は、子どもに対する暴力に関する国際連合研究のための独立専門家報告書に掲げられた勧告(A/61/299)への注意を喚起するとともに、締約国に対し、これらの勧告を遅滞なく実施するよう求める。また、「子どもの代替的養護に関する指針」〔PDF〕[3] で参照可能な詳細な指針に対しても注意を喚起するものである。この一般的意見はまた、実践における第19条の実施の追求における、国際連合諸機関、各国政府、非政府組織(NGO)、コミュニティ団体、開発機関および子どもたち自身の専門性および経験も参考にしている [4]。 [3] 国連総会決議64/142添付文書。 [4] 「子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針」(国連経済社会理事会決議2005/20添付文書)参照。 7.第19条の文脈的理解。委員会は以下のことを認識する。 (a) 第19条は、暴力に直接関係する条約の多くの規定のひとつである。委員会はまた、第19条が、子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する選択議定書ならびに武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書とも直接関連していることも認識する。しかし委員会は、第19条が、条約の文脈においてより幅広くあらゆる形態の暴力に対応しかつこれを解消していくための議論および戦略に関する中核的規定であると考えるものである。 (b) 第19条は、暴力に直接関わる規定に留まらず、条約の広範な規定と強く結びついている。条約の原則として特定されている諸権利を掲げた条項(この一般的意見のV参照)に加えて、第19条の実施は第5条、第9条、第18条および第27条の文脈に位置づけられなければならない。 (c) 人間の尊厳の尊重、身体的および心理的不可侵性ならびに法律に基づく平等の保護に対する子どもの権利は、他の国際的および地域的人権文書でも承認されている。 (d) 第19条を実施するためには、国内的、地域的および国際的人権機関、諸機構ならびに国際連合諸機関の内部および相互の協力が必要である。 (e) とくに、子どもに対する暴力に関する〔国連〕事務総長特別代表との協力が必要である。同特別代表は、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利を保護するため、加盟国および幅広いパートナー(国際連合諸機関、市民社会組織および子どもたちを含む)と緊密に協力しながら、子どもに対する暴力に関する国際連合研究の勧告の実施を促進する任務を与えられている。 8.普及。委員会は、締約国が、政府および行政機構内で、かつ親、その他の養育者、子ども、職能団体、コミュニティおよび市民社会一般を対象として、この一般的意見を広く普及するよう勧告する。印刷媒体、インターネットおよび子どもたち自身のコミュニケーション手段を含むあらゆる普及経路が活用されるべきである。そのためには、手話、点字および障害のある子どもが読みやすい形式を含む関連の言語にこれを翻訳することが必要になろう。また、文化的に適切で子どもにやさしい版を利用可能とすること、ワークショップおよびセミナーを開催すること、この一般的意見の意味合いおよび最善の実施方法を議論できるようにするための年齢および障害に固有の支援を実施すること、ならびに、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家の訓練にこれを編入することも必要である。 9.条約上の報告要件。委員会は、締約国が、条約別の報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)、一般的意見8号(パラ53)、および、締約国代表との対話後に採択された委員会の総括所見に掲げられた報告要件を参照するよう求める。この一般的意見は、条約第44条に基づいて提出される報告書で締約国がどのような措置に関する情報を提供するよう期待されているかを集約し、かつ具体的に示したものである。委員会はまた、締約国が、子どもに対する暴力に関する国際連合研究の勧告(A/61/299、パラ116)の実施に向けた進展についての情報も含めるよう勧告する。報告は、暴力を禁止し、かつ暴力が行なわれたときに適切に介入するための法律その他の規則のほか、暴力の防止、意識啓発活動および前向きな非暴力的関係の促進のための措置についても行なわれるべきである。報告書ではさらに、介入(防止も含む)の各段階で誰が子どもおよび家族に対して責任を負っているのか、その責任はどのようなものか、専門家はどの段階でおよびどのような状況下で介入することができるのか、ならびに、さまざまな部門がどのように協働しているのかについても具体的に明らかにすることが求められる。 10.追加的情報源。委員会はまた、国際連合諸機関、国内人権機関、NGOおよび他の資格ある機関に対し、あらゆる形態の暴力の法的地位および蔓延状況ならびにその解消に向けた進展に関する関連情報を委員会に提供するようにも奨励する。 II.目的 11.この一般的意見は以下のことを追求するためのものである。 (a) 締約国が条約第19条に基づく自国の義務、すなわち親、法定保護者または子どもの養育をする他の者(国の行為主体を含む)による養育中に生ずる、子どもを対象とするあらゆる形態の身体的もしくは精神的暴力、侵害もしくは虐待、放任もしくは怠慢な取扱い、不当な取扱いまたは搾取(性的虐待を含む)を禁止し、防止しかつこれに対応する義務を理解する際の指針とすること。 (b) 締約国がとらなければならない立法上、司法上、行政上、社会上および教育上の措置の概略を示すこと。 (c) 子どもの養育および保護に対応するための取り組みが散発的に、ばらばらにかつ対症療法的に行なわれてきたことは、あらゆる形態の暴力の防止および解消に対してかぎられた影響しか及ぼしてこなかったことから、このような状態を克服すること。 (d) 生存、尊厳、ウェルビーイング、健康、発達、参加および差別の禁止に対する子どもの権利――これらの権利の履行は暴力によって脅かされる――を確保することに関する条約の全般的視点に基づく、第19条の実施に対するホリスティックなアプローチを促進すること。 (e) 締約国その他の関係者に対し、子どもの権利を基盤とする包括的な養育措置および保護措置を通じて暴力を解消するための調整枠組みを発展させる基盤を提供すること。 (f) 第19条に基づく自国の義務を履行するためにすべての締約国が迅速に行動する必要性を浮き彫りにすること。 III.子どもの生活における暴力 12.課題。委員会は、子どもに対する暴力を防止しかつこれに対応するために政府その他の主体が発展させてきた無数の取り組みを認知しかつ歓迎する。このような努力にも関わらず、現在行なわれている取り組みは全体として不十分である。過半数の国の法的枠組みは依然として子どもに対するあらゆる形態の暴力の禁止に至っておらず、法律が存在する場合でもその執行は不十分であることが多い。広く蔓延した社会的・文化的態度および慣行が暴力を容認している。とられる措置の効果は、子どもに対する暴力およびその根本的原因に関する知識、データおよび理解が欠如していることによって、取り組みが原因ではなく症状および結果に焦点を当てる対症療法的なものであることによって、かつ戦略が統合されておらず断片化されたままであることによって、かぎられたものにしかならない。問題に対処するために配分される資源は不十分である。 13.人権上の大命題。子どもに対する暴力の広範な蔓延および発生に対応し、これを解消することは、条約に基づく締約国の義務である。あらゆる形態の暴力を防止することを通じて人間の尊厳ならびに身体的および心理的不可侵性に対する子どもの基本的権利を確保および促進することは、条約に掲げられたすべての子どもの権利を促進するうえで不可欠である。ここで提示される他のあらゆる主張は、この人権上の大命題を強化するものであって、これにとって代わるものではない。したがって、暴力を防止しかつこれに対応するための戦略およびシステムにおいては、福祉アプローチではなく子どもの権利アプローチが採用されなければならない(さらに詳しくはパラ53参照)。 14.社会的発展と子どもの貢献。暴力とは無縁な、敬意に満ちた支持的な子育て環境は、子ども個人の人格の実現を支え、かつ、地域コミュニティおよびさらに幅広い社会における、社会性と責任感を有した、積極的貢献を行なう市民の成長を促進する。調査研究の示すところによれば、暴力を経験せずに健康的に発達する子どもは、子ども時代においてもおとなになってからも暴力的に振る舞う可能性が低い。ある世代で暴力を防止することは、次の世代で暴力が生じる可能性を低めることにつながる。したがって、第19条を実施することは、社会におけるあらゆる形態の暴力を少なくしかつ防止するための、そして子どもたちがおとなと同一の地位および価値を有する「人類社会」のために「社会の進歩および生活水準の向上」ならびに「世界における自由、正義および平和」を促進する(条約前文)ための、鍵となる戦略のひとつである。 15.生存および発達――子どもに対する暴力の破壊的影響。子どもの生存ならびに「身体的、精神的、霊的、道徳的および社会的発達」(第27条第1項)は、下記のとおり、暴力によって深刻な悪影響を受ける。 (a) 子どもに対する暴力および子どもの不当な取扱いがもたらす短期的・長期的な健康上の影響は広く認められている。これには、致死性の傷害、非致死性の(障害につながる可能性がある)傷害、身体的健康問題(発育不全、その後の肺・心臓・肝臓疾患ならびに性感染症を含む)、認知機能障害(学業・就労能力が損なわれることを含む)、心理的および情緒的影響(拒否されたおよび見捨てられたという感覚、愛着不全、トラウマ、恐怖、不安、不安定感および自尊感情の崩壊など)、精神的健康問題(不安障害、抑うつ障害、幻覚、記憶障害および自殺未遂など)ならびに健康上のリスクをともなう行動(有害物質濫用および早期の性行動など)などが含まれる。 (b) 発達上および行動上の影響(不登校ならびに攻撃的、反社会的および自己危害ならびに他害行動など)は、とくに人間関係の悪化、退学ならびに触法・不法行為につながる可能性がある。暴力にさらされることにより、子どもがさらなる被害を受け、かつ暴力的経験(その後の親密なパートナー間の暴力を含む)を重ねていくおそれが高まることを示す証拠が存在する。 (c) 子どもの暴力に対して国が高圧的なまたは「ゼロ・トレランス」の政策で臨むことは、それが暴力に対してさらなる暴力で対応することにより子どもに被害を与える懲罰的アプローチであるため、きわめて破壊的な影響をもたらす。このような政策は、市民の安全をめぐって公衆が懸念を表明することにより、かつマスメディアがこれらの問題を大々的に取り上げることにより、形成されることが多い。公共の安全に関する国の政策においては、暴力に暴力で報復する悪循環から脱することができるようにするため、子どもの犯罪の根本的原因が慎重に考慮されなければならない。 [5] パウロ・セルジオ・ピネイロ(子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究のための独立専門家)による World Report on Violence against Children (Geneva, 2006), pp.63-66参照。 16.子どもに対する暴力の代価。保護に対する子どもの権利を否定することの人的、社会的および経済的代価は膨大であり、受け入れられない。直接的代価としては、医療ケア、法的サービスおよび福祉サービスならびに代替的養護が考えられる。間接的代価としては、永続する可能性がある損傷または障害、心理的代価または被害者の生活の質に生じるその他の影響、教育の阻害または中断、および、子どもの将来の生活における生産性の喪失が考えられる。また、暴力を経験した子どもが行なう犯罪の結果生じる刑事司法制度関連の代価も含まれる。女子が出生前に差別的に抹殺されることを原因とする人口動態的不均衡から生ずる社会的代価は大きく、女子に対する暴力(誘拐、早期婚および強制婚、性的目的の人身取引ならびに性的暴力を含む)の増加にとっても何らかの意味を有している可能性がある。 IV.第19条の法的分析 A.第19条第1項 1.「あらゆる形態の」(… all forms of …) 17.例外は存在しない。委員会は、どんなに軽いものであっても、子どもに対するあらゆる形態の暴力は受け入れられないという立場を一貫して維持してきた。「あらゆる形態の身体的もしくは精神的な暴力」という文言は、いかなる水準のものであっても、子どもに対する合法的な暴力が成立する余地を残していない。頻度、危害の深刻さおよび危害の意図は、暴力の定義の前提ではないのである。締約国は、子どもの最善の利益にのっとった比例的対応ができるようにするため、介入のための戦略においてこのような要素を参照することはできるが、定義においては、一部の形態の暴力を法的におよび(または)社会的に許容するような記述をすることにより、人間の尊厳ならびに身体的および心理的不可侵性に対する子どもの絶対的権利が後退させられることは、いかなる形でもあってはならない。 18.子どもの権利を基盤とする定義の必要性。締約国は、子どものウェルビーイング、健康および発達に関する国家的基準を定めなければならない。これらの条件を確保することが子どもの養育および保護の最終目標だからである。すべての環境におけるあらゆる形態の暴力を禁止するため、第19条に掲げられたさまざまな形態の暴力について、運用上の明確な法的定義を設けることが必要となる。これらの定義は、この一般的意見で示された指針を考慮したものでなければならず、用に耐える十分な明確さを備えていなければならず、かつさまざまな社会および文化において適用可能なものであることが求められる。(データ収集および国境を越えた経験交流を容易にする目的で)諸定義の国際的標準化のための努力が奨励されるべきである。 19.暴力の諸形態――概観。暴力の諸形態を概観した、すべてを網羅したものではない以下のリストは、あらゆる環境にあるおよび環境間を移行中のすべての子どもに適用されるものである。子どもはおとなによる暴力を経験する可能性があり、また子ども同士の間で暴力が発生することもある。さらに、自分自身を傷つける子どもも存在する。委員会は、諸形態の暴力が同時に発生することが多いこと、および、それは便宜上ここで用いているカテゴリーをまたぐ可能性があることを認識するものである。女子も男子もあらゆる形態の暴力を受けるおそれがあるが、暴力がジェンダーの要素を有していることも多い。たとえば、女子は男子よりも家庭における性的暴力を経験することが多いかもしれないが、一方で男子は刑事司法制度と接触する――かつ刑事司法制度における暴力を経験する――可能性がより高いかもしれない(暴力のジェンダー的側面についてはパラ72(b)も参照)。 20.放任(ネグレクト)または怠慢な取扱い。放任(ネグレクト)とは、子どもの養育に責任を負う者がそのための手段、知識およびサービスへのアクセスを有しているのに、子どもの身体的および心理的ニーズを満たさず、子どもを危険から保護せず、または医療、出生登録その他のサービスを利用しないことである。これには以下のものが含まれる。 (a) 身体的ネグレクト:子どもを危害から保護しないこと [6] (監督の欠如によるものも含む)、または基礎的な必要条件(十分な食料、居住場所、衣服および基礎的医療ケアを含む)を子どもに提供しないこと。 (b) 心理的または情緒的ネグレクト:いかなる情緒的支援および愛も存在しないこと、子どもに対して慢性的に注意を払わないこと、乳幼児の合図および信号を見過ごすことによって養育者が「心理的に利用不可能」な状態になること、および、親密なパートナー間の暴力、麻薬濫用またはアルコール濫用にさらされることを含む。 (c) 子どもの身体的または精神的健康のネグレクト:必要不可欠な医療ケアを与えないこと。 (d) 教育的ネグレクト:通学その他の手段を通じて子どもの教育を確保するよう養育者に求めた法律を遵守しないこと。 (e) 遺棄:重大な懸念の対象であり、一部の社会ではとくに婚外子および障害のある子どもに不相応なほどの影響を与えている可能性がある慣行 [7]。 [6] 締約国は事故の防止に関して養育者を支援することも義務づけられている(第19条および第24条第2項(e))。 [7] 多くの国では、貧困下で暮らしている親および養育者が養育手段を有していないために子どもが遺棄されている。定義上、ネグレクトとは、親が子どものニーズを満たす集団を有しているのに養育が行なわれないことである。委員会は、締約国に対し、「親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって適当な援助を与え」(条約第18条第2項)るよう、しばしば促してきた。 21.精神的暴力。条約にいう「精神的な暴力」は、不当な心理的取扱い、精神的虐待、言葉による虐待および情緒的虐待またはネグレクトとして説明されることが多い。これには以下のものが含まれうる。 (a) 子どもを相手として執拗に行なわれるあらゆる形態の有害な関わり合い(たとえば、子どもに対し、価値がない、愛されていない、望まれていない、危険な状態にある、または他人のニーズを満たすかぎりにおいてしか存在価値がないと伝えること)。 (b) 恐怖心を煽ること、威嚇すること、および脅かすこと。搾取すること、および堕落させること。ないがしろにすること、および拒絶すること。孤立させること、無視すること、およびえこひいきすること。 (c) 情緒的反応を与えないこと。精神的健康、医療上のニーズおよび教育上のニーズをないがしろにすること。 (d) 侮辱すること、中傷すること、屈辱を与えること、けなすこと、からかうこと、および子どもの気持ちを傷つけること。 (e) ドメスティック・バイオレンスを目撃させること。 (f) 独居拘禁の状態、隔離状態、または屈辱的なもしくは品位を傷つける拘禁環境に置くこと。 (g) おとなまたは他の子どもによる心理的ないじめおよび通過儀礼 [8]。携帯電話およびインターネット等の情報通信技術(ICT)を通じて行なわれるものも含む(いわゆる「ネットいじめ」)。 [8] 「通過儀礼」(hazing)とは、ある者を集団に迎え入れる手段として用いられる、いやがらせ、暴力または屈辱をともあう儀式その他の活動を指す。 22.身体的暴力。これには致死的および非致死的な身体的暴力が含まれる。委員会は、身体的暴力には以下のものが含まれるという見解に立つものである。 (a) あらゆる体罰、および、他のあらゆる形態の拷問、残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰。 (b) おとなおよび他の子どもによる身体的ないじめおよび通過儀礼。 23.障害のある子どもは、以下のような特定の形態の身体的暴力の対象とされる場合がある。 (a) 強制的不妊手術(とくに女子)。 (b) 治療を名目とする暴力(たとえば電気痙攣療法(ECT)、および、子どもの行動を統制するために「嫌忌療法」として用いられる電気ショック)。 (c) 路上その他の場所で物乞いとして搾取する目的で子どもに意図的に障害を負わせること。 24.体罰。一般的意見8号(パラ11)において、委員会は、「体」罰を、どんなに軽いものであっても、有形力が用いられ、かつ何らかの苦痛または不快感を引き起こすことを意図した罰として定義した。ほとんどの場合、これは手または道具――鞭、棒、ベルト、靴、木さじ等――で子どもを叩くという形で行なわれる。しかし、たとえば、蹴ること、子どもを揺さぶったり放り投げたりすること、引っかくこと、つねること、かむこと、髪を引っ張ったり耳を打ったりすること、子どもを不快な姿勢のままでいさせること、やけどさせること、薬物等で倦怠感をもよおさせること、または強制的に口に物を入れることをともなう場合もありうる。委員会の見解では、体罰はどんな場合にも品位を傷つけるものである。体罰の他の具体的形態は、子どもに対する暴力に関する国際連合研究のための独立専門家報告書に列挙されている(A/61/299、パラ56,60および62)。 25.性的な虐待および搾取。性的な虐待および搾取には以下のものが含まれる。 (a) 何らかの不法なまたは心理的に有害な性的活動に従事するよう子どもを勧誘しまたは強制すること。[9] (b) 商業的性的搾取において子どもを使用すること。 (c) 子どもの性的虐待を描いた音声素材または視覚画像で子どもを使用すること。 (d) 子ども買春、性的奴隷制、旅行および観光における性的搾取、性的目的の(国内でおよび国境を越えて行なわれる)子どもの人身取引および売買、ならびに強制婚。多くの子どもは、物理的な力または高速はともわないものの、それでも心理的侵襲、搾取およびトラウマをもたらす性的被害を経験している。 [9] 性的虐待は、おとなによって子どもに押しつけられる何らかの性的活動であって、子どもが刑法によって保護される権利を有しているものから構成される。性的活動はまた、子どもが他の子どもに対して行なう場合であっても、加害者側の子どもが被害者側よりも相当に年長である場合、または力、脅しその他の圧力手段を用いる場合には虐待とみなされる。子ども同士の性的活動は、当事者である子どもが、同意に基づく性的活動について締約国が定めた年齢制限よりも年長であるときは、性的虐待とは見なされない。 26.拷問および非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰。これには、自白を得ること、不法なまたは望ましくない行動について子どもを超司法的に処罰すること、または子どもをその意思に反して活動に従事させることを目的として子どもに対して振るわれるあらゆる形態の暴力であって、典型的には警察官および法執行官、居住型その他の施設の職員ならびに子どもに対して権力を有している者(国以外の武装主体を含む)によって用いられるものが含まれる。被害者は、周縁化され、不利な立場に置かれおよび差別され、かつその権利および最善の利益を擁護する責任を負うおとなから保護されていない子どもであることが多い。これには、法に抵触した子ども、路上の状況にある子ども、マイノリティおよび先住民族の子ども、ならびに、出身国外にあって保護者のいない子どもが含まれる。このような行為にともなう残忍性は、生涯にわたる身体的および心理的危害ならびに社会的ストレスをもたらすことが多い。 27.子ども同士の暴力。これには、子ども(しばしば集団の子ども)によって他の子どもに加えられる、いじめの形をとることが多い身体的、心理的および性的暴力が含まれる。このような暴力は、子どもの身体的および心理的不可侵性ならびにウェルビーイングを即時的に損なうのみならず、中期的かつ長期的に、その発達、教育および社会的統合に深刻な影響を及ぼすことが多い。また、若者ギャング集団による暴力も、被害者としてであれ参加者としてであれ、子どもに深刻な犠牲をもたらしている。子どもが行為者であるとはいえ、このような暴力に適切な形で対応しかつこれを防止するためのすべての試みにおいて、これらの子どもに責任を有するおとなの役割が決定的に重要である。このような試みにおいて措置をとる際には、懲罰的アプローチをとることおよび暴力に対して暴力を用いることにより暴力が悪化しないことを確保しなければならない。 28.自己危害。これには、摂食障害、有害物質の使用および濫用、自傷行為、自殺念慮、自殺未遂および実際の自殺が含まれる。思春期の子どもの自殺は、委員会にとってとりわけ懸念の対象である。 29.有害慣行。これには以下のものが含まれるが、これにかぎられない。 (a) 体罰その他の残酷なまたは品位を傷つける形態の罰。 (b) 女性性器切除。 (c) 四肢の一部または全部を切断すること、身体を拘束すること、傷または火傷を負わせることおよび焼印を押すこと。 (d) 暴力的かつ品位を傷つける通過儀礼。女子に無理やり食事をとらせること。無理やり太らせること。処女検査(女子の生殖器の検査)。 (e) 強制婚および早期婚。 (f) 「名誉」犯罪。「報復」目的の暴力行為(異なる集団間の紛争の影響が関係当事者の子どもに及ぶ場合)。ダウリー関連の死および暴力。 (g) 「魔女」狩りおよび関連の有害慣行(「悪魔払い」等)。 (h) 口蓋垂切除および抜歯。 30.マスメディアにおける暴力。マスメディア、とくにタブロイド紙およびイエローペーパーは、衝撃的な出来事を強調して取り上げ、結果として子ども、とくに不利な立場におかれた子どもまたは青少年について偏見およびステレオタイプに基づくイメージをつくり出す傾向にある。このような子どもは、振る舞い方または着ているものが異なるというだけで、暴力的存在または非行少年として描写されることが多い。このような煽動的ステレオタイプは、懲罰的アプローチを基盤とする国の政策への道を開くことにつながる。当該政策には、子どもおよび若者が行なっていると考えられているまたは実際に行なっている不品行への対応としての暴力が含まれる可能性もある。 31.情報通信技術を通じた暴力 [10]。ICTに関連した子どもの保護上のリスクは、以下のような重なり合う分野から構成されている。 (a) インターネットその他のICTによって容易となった、視覚および音声の双方による子どもの虐待素材製造のために行なわれる子どもの性的虐待。 (b)子ども、および、子ども個人または諸カテゴリーの子どもの真似をする者のみだらな写真または擬似写真(「加工」)およびビデオを撮影し、制作し、その撮影を許可し、配布し、見せ、所持しまたは広告するプロセス。 (c) ICTの利用者としての子ども。(i) 情報の受け手としての子どもは、実際にまたは潜在的に有害な広告、スパム、資金提供の呼びかけ、個人情報、ならびに、攻撃的な、暴力的な、憎悪にあふれた、偏見に満ちた、人種主義的な、ポルノ的な [11]、望まない、かつ(または)誤解を招くコンテンツにさらされる可能性がある。 (ii) ICTを通じて他人と接触する子どもは、いじめられ、いやがらせを受けもしくはしつこく接触を図られ(子どもの「誘惑」)、かつ(または)、威迫、策略もしくは説得により、見知らぬ者とオフラインで会うこと、性的活動に関与するための「仕込み」を受けること、および(または)個人情報を提供することを受け入れさせられる可能性がある。 (iii) 行為主体としての子どもは、他人へのいじめもしくはいやがらせ、心理的発達に悪影響を及ぼすゲームの利用、不適切な性的素材の作成およびアップロード、誤解を招く情報もしくはアドバイスの提供、ならびに(または)、不法なダウンロード、ハッキング、賭博、金銭詐欺および(もしくは)テロリズムに関与するようになる可能性がある。 [12] [10] インターネットおよび携帯電話のような情報技術は、子どもたちの安全を保つのに役立つ前向きな手段として、かつ暴力または不当な取扱いが疑われる場合または実際に行なわれた場合にそれを通報する方法として、大きな潜在的可能性を有している。これらの技術を安全に使えるように子どもたちのエンパワーメントを図ることも含め、情報技術の規制および監視を通じて保護的環境をつくり出すことが必要である。 [11] ポルノグラフィーにさらされることは、子ども同士の性的虐待の増加につながる可能性がある。ポルノグラフィーにさらされた子どもは、年下の子どもまたは接触が容易で自分がコントロールできる子どもを相手に、自分が見たものを実地で「やってみる」からである。 [12] EU〔欧州連合〕キッズ・オンライン・プロジェクトが作成の表(AUPs in Context Establishing Safe and Responsible Online Behaviours (Becta, 2009), p.6で引用されていたもの)を修正。「子どもおよび青少年の性的搾取の防止および根絶のためのリオデジャネイロ宣言および行動呼びかけ」も参照(以下より入手可能 http //iiicongressomundial.net/congresso/arquivos/Rio%20Declaration%20and%20Call%20for%20Action%20-%20FINAL%20Version.pdf)。 32.子どもの権利の制度的および組織的侵害。あらゆる形態の暴力からの子どもの保護について責任を負う、国のあらゆる段階の公的機関は、条約上の義務を実施する効果的手段を欠くことにより、直接間接に危害を及ぼす可能性がある。このような不作為としては、立法その他の規定を採択しまたは改正しないこと、法律その他の規則の実施が不十分であること、および、子どもに対する暴力を特定し、防止しかつこれに対応するための物質的、技術的および人的資源および能力の提供が不十分であることなどがある。子どもに対する暴力を終わらせるための活動の進展または欠点を事前評価し、監視しかつ事後評価するための十分な手段が措置およびプログラムにともなっていない場合にも、不作為である。また、一部の行為を行なう過程で、専門家は暴力からの自由に対する子どもの権利を侵害する可能性がある。たとえば、子どもの最善の利益、意見および発達目標をないがしろにするような方法で自己の責任を遂行する場合などである。 → -あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利(2)へ続く 更新履歴:ページ作成(2011年5月22日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/30.html
国連・子どもの権利委員会の勧告:教育一般関連(日本) 参考:CRC総括所見:競争主義的教育等 第1回総括所見(1998年) (一般原則) 13.……委員会は、高等教育機関へのアクセスにおける不平等がコリアンの子どもたちに影響を与えていること、および社会のあらゆる分野、とくに学校制度において、一般の子どもたちが参加権(第12条)を行使する上で困難に直面していることを、とりわけ懸念するものである。 35.条約の一般原則、とりわけ差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)および子どもの意見の尊重(第12条)の一般原則が、政策に関する議論および意思決定の指針となるのみならず、いかなる法改正ならびに司法上のおよび行政上の決定においても、かつ子どもに影響を与えるあらゆる事業および計画の発展および実施においても適切に反映されることを確保するために、さらなる努力が行なわれなければならないというのが委員会の見解である。……委員会はまた、コリアンおよびアイヌを含むマイノリティの子どもの差別的な取扱いを、それがいつどこで生じようとも全面的に調査し、かつ解消するようにも勧告する。…… (プライバシー) 15.委員会は、とくに家庭、学校およびその他の施設において子どものプライバシーへの権利を保障するために締約国がとった措置が不充分であることを懸念する。 36.委員会は、締約国に対し、とくに家庭、学校、ケアのための施設および他の施設において子どものプライバシーへの権利を保障するために、法的措置も含めて追加的措置を導入するよう勧告する。 (障害のある子ども) → 国連・子どもの権利委員会の勧告:障害児関連 (教育) 22.識字率がきわめて高いことに表れている通り締約国が教育を重視していることに留意しながらも、委員会は、競争が激しい教育制度のストレスにさらされ、かつその結果として余暇、運動および休息の時間が得られないために子どもたちの間で発達障害が生じていることを、条約の原則および規定、とくに第3条、第6条、第12条、第29条および第31条に照らして懸念する。委員会はさらに、学校忌避の事例が相当数にのぼることを懸念するものである。 43.競争の激しい教育制度が締約国に存在すること、ならびにその結果として子どもの身体的および精神的健康に悪影響が生じていることを踏まえ、委員会は、締約国に対し、条約第3条、第6条、第12条、第29条および第31条に照らして、過度のストレスおよび学校忌避を防止しかつそれと闘うために適切な措置をとるよう勧告する。 23.委員会は、条約第29条に従い、人権教育を体系的に学校カリキュラムに導入するために締約国がとった措置が不充分であることを、懸念する。 44.委員会は、締約国に対し、条約第29条に従って、人権教育を体系的に学校カリキュラムに含めるために適切な措置をとるよう勧告する。 24.委員会は、学校における暴力が頻繁にかつ高いレベルで生じていること、とくに体罰が広く用いられていることおよび生徒の間で非常に多くのいじめが存在することを、懸念する。体罰を禁ずる立法、およびいじめの被害者のためのホットラインのような措置も確かに存在するものの、委員会は、現行の措置が学校暴力を防止するためには不充分であることに、懸念とともに留意する。 45.とくに条約第3条、第19条および第28条2項に照らし、委員会は、学校における暴力を防止するため、とくに体罰およびいじめを解消する目的で包括的な計画を作成し、かつその実施を注意深く監視するよう勧告する。加えて、委員会は、家庭、ケアのための施設およびその他の施設における体罰を法律で禁止するよう勧告するものである。委員会はまた、代替的形態によるしつけおよび規律の維持が子どもの人間の尊厳と一致する方法で、かつこの条約に従って行なわれることを確保するために、意識啓発キャンペーンを行なうようにも勧告する。 (参考)人種差別撤廃委員会の勧告(2001年) 14.委員会は、韓国・朝鮮人、主に児童、学生を対象とした暴力行為に係る報告及びこの点に関する当局の不十分な対応に対し懸念を有するものであり、政府に対し、当該行為を防止し、これに対処するためのより毅然たる措置をとることを勧告する。 15.在日の外国国籍の児童に関し、委員会は小学及び中学教育が義務的でないことに留意する。委員会は、更に、「日本における初等教育の目的は、日本人をコミュニティのメンバーたるべく教育することにあるため、外国の児童に対し当該教育を受けることを強制することは不適切である。」との締約国の立場に留意する。委員会は、強制が、統合の目的を達成するために全く不適切であるとの主張に同意する。しかしながら、本条約第3条及び第5条(e)(v)との関連で、委員会は、本件に関し異なった取扱いの基準が人種隔離並びに教育、訓練及び雇用についての権利の享受が不平等なものとなることに繋がり得るものであることを懸念する。締約国に対し、本条約第5条(e)に定める諸権利が、人種、皮膚の色、民族的又は種族的出身について区別なく保障されることを確保するよう勧告する。 16.委員会は、韓国・朝鮮人マイノリティに対する差別に懸念を有する。韓国・朝鮮人学校を含む外国人学校のマイノリティの学生が日本の大学へ入学するに際しての制度上の障害の幾つかを除去するための努力は払われているが、委員会は、特に、韓国語での学習が認められていないこと及び在日韓国・朝鮮人学生が高等教育へのアクセスについて不平等な取扱いを受けていることに懸念を有している。締約国に対し、韓国・朝鮮人を含むマイノリティに対する差別的取扱いを撤廃するために適切な措置をとることを勧告する。また、日本の公立学校においてマイノリティの言語での教育へのアクセスを確保するよう勧告する。 (参考)社会権規約委員会の勧告(2001年) 31.委員会は、あらゆる段階の教育がしばしば過度に競争主義的でストレスに満ちたものとなっており、その結果、生徒の不登校、病気、さらには自殺すら生じていることを懸念する。 58.委員会は、締約国が、委員会の一般的意見第11号および第13号ならびに子どもの権利に関する委員会の一般的意見第1号を考慮にいれながら、教育制度の包括的再検討を行なうよう強く勧告する。このような再検討においては、あらゆる段階の教育がしばしば過度に競争主義的でストレスに満ちたものとなっており、その結果、生徒の不登校、病気、さらには自殺すら生じていることにとくに焦点が当てられるべきである。 32.委員会は、マイノリティの子どもにとって、自己の言語による教育および自己の文化に関する教育を公立学校で享受する可能性がきわめて限られていることに懸念を表明する。委員会はまた、朝鮮学校のようなマイノリティの学校が、たとえ国の教育カリキュラムを遵守している場合でも公的に認められておらず、したがって中央政府の補助金を受けることも大学入学試験の受験資格を与えることもできないことについても、懸念するものである。 59.委員会は、締約国に対し、学校教科書その他の教材において、諸問題が、規約第13条1項、委員会の一般的意見第13号および子どもの権利に関する委員会の一般的意見第1号に掲げられた教育の目的および目標を反映した公正なかつバランスのとれた方法で提示されることを確保するよう、促す。 60.委員会は、言語的マイノリティに属する生徒が相当数就学している公立学校の正規のカリキュラムに母語による教育を導入するよう強く勧告する。委員会はさらに、締約国が、マイノリティの学校およびとくに朝鮮学校が国の教育カリキュラムにしたがっている状況においては当該学校を公的に認め、それによって当該学校が補助金その他の財政援助を得られるようにすること、および、当該学校の卒業資格を大学入学試験の受験資格として承認することを勧告するものである。 第2回総括所見(2004年) 広報および研修 20.……委員会は、子どもおよび公衆一般、ならびに子どもとともにおよび子どものために働いている多くの専門家が条約およびそこに体現された権利基盤型アプローチについて充分に理解していないことを、依然として懸念するものである。 21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 公衆一般および子どもを対象として、条約、およびとくに子どもが権利の主体であるということに関する意識啓発キャンペーンを強化すること。 (b) 子どもとともにおよび子どものために働いているすべての者、とくに教職員、裁判官、弁護士、議員、法執行官、公務員、自治体職員、子どもを対象とした施設および拘禁場所で働く職員、心理学者を含む保健従事者、ならびにソーシャルワーカーを対象として、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修をひきつづき実施すること。 (c) 意識啓発キャンペーン、研修および教育プログラムが態度の変革、行動および子どもの取扱いに与えた影響を評価すること。 (d) 人権教育、およびとくに子どもの権利教育を学校カリキュラムに含めること。 子どもの意見の尊重 27.子どもの意見の尊重を向上させようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、家庭、学校、その他の施設および社会一般における子どもの意見の尊重が制限されていることを依然として懸念する。 28.委員会は、条約第12条にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、裁判所および行政機関、施設および学校ならびに政策立案において、子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して子どもの意見の尊重を促進しかつ子どもの参加の便宜を図ること。また、子どもがこの権利を知ることを確保すること。 (b) 子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して意見を考慮されかつ参加する子どもの権利について、とくに親、教育者、政府の行政職員、司法関係者および社会一般に対し、教育的情報を提供すること。 (c) 子どもの意見がどのぐらい考慮されているか、またそれが政策、プログラムおよび子どもたち自身にどのような影響をあたえているかについて定期的検討を行なうこと。 (d) 学校、および子どもに教育、余暇その他の活動を提供しているその他の施設において、政策を決定する諸会議体、委員会その他のグループの会合に子どもが制度的に参加することを確保すること。 表現および結社の自由 29.委員会は、学校内外で生徒が行なう政治活動に対する制限を懸念する。委員会はまた、18歳未満の子どもは団体に加入するために親の同意を必要とすることも懸念するものである。 30.委員会は、条約第13条、第14条および第15条の全面的実施を確保するため、締約国が、学校内外で生徒が行なう活動を規制する法令および団体に加入するために親の同意を必要とする要件を見直すよう勧告する。 プライバシーに対する権利 33.委員会は、とくに子どもの持ち物検査との関連でプライバシーに対する子どもの権利が全面的に尊重されていないこと……を懸念する。 34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 個人的通信および私物の検査との関連も含め、プライバシーに対する子どもの権利の全面的実施を確保すること。 (b) (略) 体罰 35.委員会は、学校における体罰は法律で禁止されているとはいえ、学校、施設および家庭において体罰が広く実践されていることに懸念とともに留意する。 36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 施設および家庭における体罰を禁止すること。 (b) 体罰に関する態度を変革するため、子どもの不当な取扱いの悪影響について教育キャンペーンを実施すること。また、そのような罰に代わる手段として、学校、施設および家庭において積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけを促進すること。 (c) 施設および学校の子どもを対象とした苦情申立てのしくみを強化することにより、不当な取扱いの苦情が効果的に、かつ子どもに配慮した方法で対応されることを確保すること。 障害のある子ども → 国連・子どもの権利委員会の勧告:障害児関連 教育、余暇および文化的活動 49.委員会は、教育制度を改革し、かつそれをいっそう条約に一致させるために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら、委員会は以下の点について懸念するものである。 (a) 教育制度の過度に競争的な性質によって、子どもの身体的および精神的健康に悪影響が生じ、かつ子どもが最大限可能なまで発達することが阻害されていること。 (b) 高等教育進学のための過度な競争のため、学校における公教育が、貧しい家庭出身の子どもには負担できない私的教育によって補完されなければならないこと。 (c) 学校における子どもの問題および紛争に関して、親と教職員とのコミュニケーションおよび協力がきわめて限られていること。 (d) 日本にある外国人学校を卒業して大学進学を希望する者の資格基準が拡大されたとはいえ、依然として高等教育へのアクセスを否定されている者が存在すること。 (e) とくにドロップアウトした生徒を対象として柔軟な教育機会を提供している東京都の夜間定時制高校が閉鎖されようとしていること。 (f) マイノリティの子どもたちにとって、自己の言語で教育を受ける機会がきわめて限られていること。 (g) 審査手続の存在にも関わらず、一部の歴史教科書が不完全または一面的であること。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 高校を卒業したすべての生徒が高等教育に平等にアクセスできるよう、高い水準の教育の質を維持しつつも学校制度の競争的性質を緩和する目的で、生徒、親および関連の非政府組織の意見を考慮にいれながらカリキュラムを見直すこと。 (b) 生徒および親と連携しながら、学校における問題および紛争、とくに(いじめを含む)学校における暴力に効果的に対応するための措置を発展させること。 (c) 東京都に対して夜間定時制高校の閉鎖を再検討するよう奨励し、かつ代替的形態の教育を拡大すること。 (d) マイノリティ・グループの子どもが自己の文化を享受し、自己の宗教を表明しまたは実践し、かつ自己の言語を使用する機会を拡大すること。 (e) 教科書でバランスのとれた見方が提示されることを確保するため、教科書の審査手続を強化すること。 性的搾取および人身取引 51.パラ3で述べたように、委員会は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(1999年)の制定および実施を歓迎する。しかしながら、委員会は以下の点について懸念するものである。 (a)~(b) (略) (c) 被害を受けた子どもが犯罪者として取り扱われているという報告があること。 (d) 「援助交際」すなわち対償をともなう交際が行なわれているという報告があること。 (e) 〔性的〕同意に関する最低年齢が低いこと。このことは「援助交際」を助長している可能性があり、また子どもの性的虐待の訴追を妨げている。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)~(c) (略) (d) 未成年者の性的虐待および性的搾取に関連する法律についての資料、および教育プログラム(健康的なライフスタイルについて学校で実施されるプログラムを含む)のような、性的サービスの勧誘および提供を行なう者を対象とした防止措置を発展させること。 (e) 性的同意に関する最低年齢を引上げること。 (参考)人種差別撤廃委員会(2010年)〔PDF〕 13.……また、在日韓国・朝鮮学校(Korean schools)に通う生徒を含むグループに対する不適切で下品な言動、及び、インターネット上での、特に部落民に対して向けられた有害で人種主義的な表現や攻撃という事象が継続的に起きていることに懸念をもって留意する(第4条(a)及び(b))。 ……委員会は締約国に以下を勧告する。 (a) 本条約第4条の差別を禁止する規定を完全に実施するための法律の欠如を是正すること。 (b) 憎悪的及び人種差別的表明に対処する追加的な措置、とりわけ、それらを捜査し関係者を処罰する取組を促進することを含めて、関連する憲法、民法、刑法の規定を効果的に実施することを確保すること。 (c) 人種主義的思想の流布に対する注意・啓発キャンペーンを更に行い、インターネット上の憎悪発言や人種差別的プロパガンダを含む人種差別を動機とする違反を防ぐこと。 22.委員会は、バイリンガル相談員や7言語による就学ガイドブックといった締約国による少数グループへの教育を促進する努力に評価をもって留意する。しかしながら、教育制度における人種差別克服のための具体的施策の実施に関する情報が欠如していることを遺憾に思う。さらに、委員会は以下の事項を含め、子どもの教育に差別的な影響を及ぼす行為について懸念を表明する: (a) アイヌの子どもやその他の国のグループの子どもが自らの言語に関する教育や自らの言語による教育を受ける適切な機会の欠如 (b) 締約国における義務教育の原則が、日本が締約国となっている本条約第5条の(e)の(v)、児童の権利条約第28条並びに経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第13条2に適合した形で、外国人の子どもに完全には適用されていない事実 (c) 学校の認定、教育課程の同等性や高等教育への入学に関連する障害 (d) 締約国に居住する外国人及び韓国・朝鮮系(Korean)、中国系の学校に対する公的支援や補助金、税制上の優遇措置に関する異なる扱い (e) 締約国において現在国会にて提案されている公立及び私立の高校、専修学校(technicalcolleges )並びに高校に相当する課程を置く多様な機関の授業料を無償とする法制度変更において、北朝鮮の学校を除外することを示唆する複数の政治家の姿勢(第2条及び第5条) 委員会は、非市民に対する差別に関する一般的勧告30(2004年)に照らして、教育機会の提供において差別がないこと、締約国の領域内に居住する子どもが学校への入学や義務教育就学において障壁に直面しないことを締約国が確保することを勧告する。また、委員会は、この点において、外国人のための学校に関する種々の制度や、国の公的学校制度の外で別の枠組みを設立することが望ましいかについての調査研究を締約国が行うことを勧告する。委員会は、締約国の少数グループが自らの言語に関する教育や自らの言語による教育を受けられるように適切な機会を提供するとともに、締約国がユネスコの教育差別防止条約への加入を検討することを慫慂する。 25.委員会は、本条約において保護されているグループによる日本社会への貢献に関する正確なメッセージを伝えることを目的として教科書を改訂するために、締約国によりとられた措置が不十分であったことを懸念する(第5条)。 委員会は、締約国がマイノリティの文化や歴史をよりよく反映するために既存の教科書を改訂することやマイノリティが話す言語で書かれたものを含む歴史や文化に関する書籍及びその他の出版物を奨励することを勧告する。特に、義務教育において、アイヌや琉球の言語教育及びこれらの言語による教育を支援することを慫慂する。 第3回総括所見(2010年) 差別の禁止 33.……委員会は、男女平等の促進に言及していた教育基本法第5条が削除されたことに対する女性差別撤廃委員会の懸念(CEDAW/C/JPN/CO/6)を繰り返す。 34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)包括的な反差別法を制定し、かつ、どのような事由であれ子どもを差別するあらゆる立法を廃止すること。 (b)とくに女子、民族的マイノリティに属する子ども、日本人ではない子どもおよび障害のある子どもに対して実際に行なわれている差別を削減しかつ防止するため、意識啓発キャンペーンおよび人権教育を含む必要な措置をとること。 生命、生存および発達に対する権利 41.(略) 42.委員会は、締約国が、子どもの自殺リスク要因について調査研究を行ない、防止措置を実施し、学校にソーシャルワーカーおよび心理相談サービスを配置し、かつ、困難な状況にある子どもに児童相談所システムがさらなるストレスを課さないことを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、官民問わず、子どものための施設を備えた機関が適切な最低安全基準を遵守することを確保するようにも勧告する。 子どもの意見の尊重 43.司法上および行政上の手続、学校、子ども施設ならびに家庭において子どもの意見は考慮されているという締約国の情報には留意しながらも、委員会は、……学校において子どもの意見が重視される分野が限定されていること、および、政策策定プロセスにおいて子どもおよびその意見に言及されることがめったにないことを依然として懸念する。委員会は、権利を有する人間として子どもを尊重しない伝統的見解のために子どもの意見の重みが深刻に制限されていることを依然として懸念する。 44.条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、あらゆる場面(学校その他の子ども施設、家庭、地域コミュニティ、裁判所および行政機関ならびに政策策定プロセスを含む)において、自己に影響を及ぼすあらゆる事柄に関して全面的に意見を表明する子どもの権利を促進するための措置を強化するよう勧告する。 体罰 47.学校における体罰が明示的に禁じられていることには留意しつつ、委員会は、その禁止規定が効果的に実施されていないという報告があることに懸念を表明する。委員会は、すべての体罰を禁ずることを差し控えた1981年の東京高等裁判所判決に、懸念とともに留意する。委員会はさらに、家庭および代替的養護現場における体罰が法律で明示的に禁じられていないこと、および、とくに民法および児童虐待防止法が適切なしつけの行使を認めており、体罰の許容可能性について不明確であることを懸念する。 48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a)家庭および代替的養護現場を含むあらゆる場面で、子どもを対象とした体罰およびあらゆる形態の品位を傷つける取り扱いを法律により明示的に禁止すること。 (b)あらゆる場面における体罰の禁止を効果的に実施すること。 (c)体罰等に代わる非暴力的な形態のしつけおよび規律について、家族、教職員ならびに子どもとともにおよび子どものために活動しているその他の専門家を教育するため、キャンペーンを含む伝達プログラムを実施すること。 障害のある子ども → 国連・子どもの権利委員会の勧告:障害児関連 メンタルヘルス 60.委員会は、著しい数の子どもが情緒的ウェルビーイングの水準の低さを報告していること、および、親および教職員との関係の貧しさがその決定要因となっている可能性があることを示すデータに留意する。委員会はまた、発達障害者支援センターにおける注意欠陥・多動性障害(ADHD)の相談数が増えていることにも留意する。委員会は、ADHDの治療に関する調査研究および医療専門家の研修が開始されたことを歓迎するが、この現象が主として薬物によって治療されるべき生理的障害と見なされていること、および、社会的決定要因が正当に考慮されていないことを懸念する。 61.委員会は、締約国が、子どもおよび思春期の青少年の情緒的および心理的ウェルビーイングの問題に、あらゆる環境における効果的支援を確保する学際的アプローチを通じて対応するための効果的措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、ADHDの診断数の推移を監視するとともに、この分野における調査研究が製薬産業とは独立に実施されることを確保するようにも勧告する。 教育(職業訓練および職業指導を含む) 70.委員会は、日本の学校制度によって学業面で例外的なほど優秀な成果が達成されてきたことを認めるが、学校および大学への入学を求めて競争する子どもの人数が減少しているにも関わらず過度の競争に関する苦情の声があがり続けていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、このような高度に競争的な学校環境が就学年齢層の子どものいじめ、精神障害、不登校、中途退学および自殺を助長している可能性があることも、懸念する。 71.委員会は、学業面での優秀な成果と子ども中心の能力促進とを結合させ、かつ、極端に競争的な環境によって引き起こされる悪影響を回避する目的で、締約国が学校制度および大学教育制度を再検討するよう勧告する。これとの関連で、締約国は、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮するよう奨励される。委員会はまた、締約国が、子ども同士のいじめと闘う努力を強化し、かつそのような措置の策定に子どもたちの意見を取り入れるよう勧告する。 72.委員会は、中国系、北朝鮮系その他の出身の子どもを対象とした学校に対する補助金が不十分であることを懸念する。委員会はまた、このような学校の卒業生が日本の大学の入学試験を受けられない場合があることも懸念する。 73.委員会は、締約国に対し、外国人学校への補助金を増額し、かつ大学入試へのアクセスにおいて差別が行なわれないことを確保するよう奨励する。締約国は、ユネスコ・教育差別禁止条約の批准を検討するよう奨励される。 74.委員会は、日本の歴史教科書においては歴史的出来事に対する日本側の解釈しか記述されていないため、地域の異なる国々出身の子どもの相互理解が増進されていないという情報があることを懸念する。 75.委員会は、締約国が、検定教科書においてアジア・太平洋地域の歴史的出来事に関するバランスのとれた見方が提示されることを確保するよう勧告する。 武力紛争選択議定書・第1回総括所見(2010年) 人権教育および平和教育 10.委員会は、平和教育との関連も含め、あらゆる段階のあらゆる学校のカリキュラムで締約国が提供している具体的な人権教育についての詳しい情報が存在しないことに、懸念とともに留意する。 11.委員会は、締約国が、すべての児童生徒を対象とする人権教育およびとくに平和教育の提供を確保するとともに、これらのテーマを子どもの教育に含めることについて教職員を研修するよう勧告する。 性的搾取議定書・第1回総括所見(2010年) 普及および研修 14.委員会は、選択議定書の規定に関する意識啓発活動が不十分であることに、懸念とともに留意する。 15.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)選択議定書の規定が、とくに学校カリキュラムおよびキャンペーンを含む長期的な意識啓発プログラムを通じ、とくに子ども、その家族およびコミュニティを対象として広く普及されることを確保すること。 (b)議定書第9条第2項にしたがい、議定書に掲げられた犯罪の有害な影響および被害者が利用可能な救済手段についての意識を、研修および教育キャンペーンを通じ、子どもを含む公衆の間で促進すること。 (c)選択議定書に関連する諸問題についての意識啓発活動および研修活動を支援するため、市民社会組織およびメディアとの協力を発展させること。 (参考)社会権規約委員会の勧告(2013年) 13.委員会は、締約国で根深く残るジェンダー役割についてのステレオタイプのため、女性による経済的、社会的および文化的権利の平等な享受が妨げられ続けていることを懸念する。委員会はまた、数次にわたる男女共同参画基本計画の採択のような措置がとられたにも関わらず、ジェンダー役割に関する社会一般の態度の変革を狙った十分な措置がとられてこなかったことに、懸念をもって留意する。さらに、委員会は、締約国の称賛すべき努力にも関わらず、労働市場における垂直および水平のジェンダー分離がいまなお徹底していること……に表れているように、進展がなかなか見られないことを懸念する。委員会は、第3次男女共同参画基本計画で締約国が控えめな目標しか設定しておらず、規約上の権利の行使に関する平等の達成が加速されることはないであろう点を遺憾に思う。(第3条) 委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) ジェンダー役割に関する社会のとらえ方を変革するための意識啓発キャンペーンを実行すること。 (b) 伝統的にいずれかの性が多数を占めてきた分野以外の分野での教育の追求を促進する目的で、女子および男子に対して平等な就業機会に関する教育を行なうこと。 (c) 男女共同参画基本計画において男女双方を対象とするいっそう大胆な目標を採択するとともに、教育、雇用ならびに政治的および公的意思決定の分野においてクオータ(割当枠)制等の一時的措置を実施すること。(以下略) (d) コース別雇用管理制度および妊娠を理由とする解雇のような、女性差別である慣行を廃止すること。 (e) 待機児童ゼロの達成をいっそう速やかに進めるとともに、保育が負担可能な料金で利用できるようにすること。 26.委員会は、「慰安婦」が受けてきた搾取により、彼女たちによる経済的、社会的および文化的権利の享受ならびに彼女たちの賠償請求権に対する悪影響が永続していることを懸念する。(第11条、第3条) 委員会は、搾取の永続的影響に対応し、かつ「慰安婦」による経済的、社会的および文化的権利の享受を保障するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、「慰安婦」にスティグマを付与するヘイトスピーチその他の示威行動を防止するため、締約国が「慰安婦」の搾取について公衆を教育するよう勧告する。 27.委員会は、締約国の高校教育授業料無償化プログラムから朝鮮学校が除外されていることを懸念する。これは差別である。(第13条、第14条) 差別の禁止は、教育のあらゆる側面に全面的かつ即時的に適用され、また国際的に定められたすべての差別禁止事由を包含していることを想起しつつ、委員会は、高校教育授業料無償化プログラムが朝鮮学校に通う子どもたちにも適用されることを確保するよう、締約国に対して求める。 28.委員会は、多数の外国人児童が学校に通っていないことに、懸念をもって留意する。(第13条、第14条) 委員会は、締約国に対し、義務教育の状況の監視を、法律上の地位に関わらず締約国の領域内にいるすべての子ども(国民ではない子どもを含む)に対して適用するよう促す。 29.委員会は、規約第13条(b)にしたがって完全無償の中等教育を漸進的に提供するため、締約国が、可能なかぎり早期に、入学料および教科書費を授業料無償化プログラムの対象に含めるよう勧告する。 30.委員会は、アイヌ民族が先住民族として認められ、かつその他の進展が達成されたにも関わらず、経済的、社会的および文化的権利の享受に関してアイヌ民族が不利な立場に置かれたままであることを依然として懸念する。委員会は、アイヌ語が消滅の危機にあることをとりわけ懸念する。(第15条、第2条第2項) 委員会は、締約国が、アイヌ民族の生活水準を向上させるための努力を強化し、かつ、とくに雇用および教育の分野において追加的な特別措置を実施するよう勧告する。委員会は、これらの措置を、北海道外在住のアイヌ民族に対しても適用するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、アイヌ語を保全しかつ振興するためにとられた措置の成果に関する情報を次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年6月3日)。/~/社会権規約委員会の勧告(2013年)を追加(2013年10月31日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/331.html
欧州評議会:18歳未満の子ども・若者の参加についての閣僚委員会勧告 18歳未満の子ども・若者の参加についての加盟国に対する閣僚委員会勧告CM/Rec(2012)2 2012年3月28日、第1138回閣僚代理会合において閣僚委員会が採択。 原文:英語(PDF) 日本語訳:平野裕二 活用のためのツール子ども参加アセスメントツール(2016年3月;概要)/チャイルドフレンドリー版概要/効果測定指標の概要 耳を傾ける-行動する-変革する:欧州評議会子ども参加ハンドブック――子どものために/子どもとともに働く専門家のために(2020年10月;概要) 目次 セクションI-定義 セクションII-原則 セクションIII-措置参加権の保護 参加の促進および参加に関する情報提供 参加のための空間の創設 閣僚委員会は、閣僚委員会は、欧州評議会規程第15条bの条項に基づき、 欧州評議会の目的が、とくに共通規則の採択によって加盟国間のいっそうの統合を達成することにあることを考慮し、 子どもの権利を保護する、拘束力のある既存の欧州文書および国際文書ならびにとくに以下の文書の効果的実施を確保する必要性を考慮し、 人権および基本的自由の保護に関する欧州条約(ETS No. 5) 子どもの権利の行使に関する欧州条約(ETS No. 160) 改正欧州社会憲章(ETS No. 163) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(CETS No. 201) 子どもの養子縁組に関する欧州条約(改正)(CETS No. 202) 子どもの権利に関する国際連合条約(UNCRC) 障害のある人の権利に関する国際連合条約 以下のことを顧慮し、 子どもの権利および若者政策の分野における欧州評議会の目的 第3回欧州評議会国家元首・政府首班サミット(ワルシャワ、2005年)およびそこで表明されたUNCRCの義務を全面的に遵守する旨の誓約 欧州評議会の若者政策についての加盟国に対する閣僚委員会決議CM/Res(2008)23 1985年から2008年にかけて8回開催された欧州評議会若者担当閣僚会議の関連の結論 欧州評議会のプログラム「子どもたちのために、子どもたちとともに構築する欧州」および子ども参加の促進に関する戦略的重点 欧州評議会の閣僚委員会、議員会議および地方自治体会議が採択した子ども・若者の参加に関連する勧告およびとくに以下の勧告を想起し、 入所施設で暮らす子どもの権利に関する勧告(2005)5 若者のシティズンシップおよび公的生活への参加に関する勧告(2006)14 ポジティブな子育ての支援政策に関する勧告(2006)19 子どもを暴力から保護するための統合的国家戦略に関する勧告CM/Rec(2009)10 民主的シティズンシップ教育および人権教育に関する欧州評議会憲章についての勧告CM/Rec(2010)7 子どもにやさしい司法に関する欧州評議会閣僚委員会指針(2010年) 「自己に影響を与える決定への子どもの参加の促進」に関する議員会議勧告1864(2009) 「地方生活への若者の参加」に関する改正欧州憲章についての欧州評議会地方自治体会議勧告128 (2003) UNCRCおよびとくに以下のように規定する第12条を想起し、 「1.締約国は、自己の見解をまとめる力のある子どもに対して、その子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に自己の見解を表明する権利を保障する。その際、子どもの見解が、その年齢および成熟に従い、正当に重視される。 2.この目的のため、子どもは、とくに、国内法の手続規則と一致する方法で、自己に影響を与えるいかなる司法的および行政的手続においても、直接にまたは代理人もしくは適当な団体を通じて聴聞される機会を与えられる。」[1] [1] 国連・子どもの権利委員会(2009)、意見を聴かれる子どもの権利に関する一般的意見12号も参照。 以下のことを確信し、 意見を聴かれ、かつ真剣に受けとめられる権利は、すべての子ども・若者の人間の尊厳および健康的な発達にとって基本的重要性を有すること 子ども・若者の声に耳を傾け、かつその意見を年齢および成熟度にしたがって正当に重視することは、自己に影響を与えるすべての事柄において子ども・若者の最善の利益が第一次的に考慮される権利ならびに暴力、虐待、ネグレクトおよび不当な取扱いから保護される権利の効果的実施にとって必要であること 子ども・若者が有している能力および子ども・若者が行ないうる貢献は、欧州社会における人権、民主主義および社会的結束を強化するためのかけがえのない資源であること 加盟国政府が以下の措置をとるよう勧告する。 1.意見を聴かれる権利、真剣に受けとめられる権利および自己に影響を与えるすべての事柄に関する意思決定に参加する権利をすべての子ども・若者が行使でき、かつその意見が年齢および成熟度にしたがって正当に重視されることを確保すること。 2.地方、広域行政圏、国および欧州の各レベルにおけるならびに市民社会との、この勧告の実施に関する知識および望ましい実践の交流を奨励すること。 3.この勧告の付属文書委掲げられた原則および措置を、自国の立法、政策および実務で考慮すること。 4.この勧告(付属文書を含む)が翻訳され、かつ、子どもおよび若者にやさしい広報手段を活用しながら、子ども・若者も含めて可能なかぎり広く普及されることを確保すること。 事務局長に対し、本機関の基準設定、協力および評価活動への子ども・若者の参加を奨励すること、ならびに、この勧告を欧州評議会の関連の運営委員会、諮問機関および協議機関ならびに条約機構および監視機構に送達し、それぞれの活動においてこの勧告を考慮するよう慫慂することを指示する。 事務局長に対し、この勧告を、欧州文化条約(ETS No. 18)の締約国であって欧州評議会加盟国ではないすべての国に送達することを指示する。 付属文書 セクションI-定義 この勧告の適用上、 「子ども・若者」とは、18歳未満のすべての者をいう。[2] 「参加」とは、個人および個人の集団が、自己の意見を自由に表明し、意見を聴かれ、かつ自己に影響を与える意思決定に貢献する権利、手段、空間および機会を有し、かつ必要な場合には支援を受けられることをいう。その際、これらの者が表明した意見はその年齢および成熟度にしたがって正当に重視されるものとする。 [2] 18歳は、欧州評議会加盟国における通常の成人年齢である。UNCRCは18歳未満の人々を子どもと定義しているものの、日常的言説では、「若者」という言葉は12歳または13歳よりも年長の人々を指して用いられることがしばしばある。また、13~17歳の人々は「子ども」ではなく「若者」と自認しているのが一般的であり、そのように呼んでほしいと考えていることが多い。統計の運用上は、国連は15~24歳の人々を若者と定義している。この定義は、UNCRCおよび他の関連の国際条約で定められた子どもの法的定義を損なうものではない。 セクションII:原則 自己の意見を自由に表明する子どもまたは若者の権利に、年齢制限はない。就学前の年齢層、学齢層および正規の教育を離れた者を含むすべての子ども・若者は、自己に影響を与えるすべての事柄に関して意見を聴かれる権利を有し、かつその意見は年齢および成熟度にしたがって正当に重視される。 子ども・若者の参加権は、人種、民族、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的もしくはその他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、障害、出生、性的指向またはその他の地位のようないかなる事由に基づく差別もなく、適用される。 子ども・若者の発達しつつある能力という概念が考慮されなければならない。子ども・若者の能力が高まるにつれて、大人は、自己に影響を与える事柄に影響力を及ぼす権利をいっそう享受するよう、子ども・若者に対して奨励するべきである。 より少ない機会しか有していない子ども・若者(脆弱な状況に置かれているまたは複合差別を含む差別の影響を受けている子ども・若者を含む)の参加を可能にするため、特段の努力が行なわれるべきである。 親・養育者は子どもの養育および発達について第一義的責任を有しており、したがって、子どもの参加権を出生時から擁護しかつ醸成するうえで基本的役割を果たす。 意味のある形でかつ真正に参加できるようにするため、子ども・若者に対し、その年齢および状況にふさわしいすべての関連情報およびセルフアドボカシーのための十分な支援が提供されるべきである。 参加が効果的で、意味のある、かつ持続可能なものとなるためには、参加が1回かぎりの出来事ではなくプロセスとして理解されなければならず、かつ、時間および資源に関する継続的コミットメントが必要とされる。 自己の意見を自由に表明する権利を行使する子ども・若者は、脅迫、報復、被害化およびプライバシー権の侵害を含む危害から保護されなければならない。 子ども・若者は常に、その参加の範囲(子ども・若者の関与の限界、参加によって生じることが期待される成果および実際の成果、ならびに、子ども・若者の意見が最終的にどのように考慮されたかを含む)について十分に知らされているべきである。 UNCRC第12条に関する一般的意見にしたがい、子ども・若者の意見が聴かれるすべてのプロセスは、透明かつ情報が豊かであり、任意であり、敬意があり、子どもたちの生活に関連しており、子どもにやさしい環境で進められ、インクルーシブ(非差別的)であり、訓練による支援があり、安全でありかつリスクへの配慮がなされ、かつ説明責任が果たされるようなものであるべきである。加盟国は、この勧告を実施するためのすべての立法上その他の措置にこれらの要件を統合するよう求められる。 セクションIII:措置 参加権の保護 子どもまたは若者の参加権を保護するため、加盟国は以下の措置をとるべきである。 子ども・若者の参加権を可能なかぎり最大限に法的に保護すること(憲法および法令における保護を含む)。 現行の法律、政策および実務において子ども・若者の意見がどの程度聴かれかつ真剣に受けとめられたかを定期的に検証するとともに、これらの検証において子ども・若者自身の評価が正当に重視されることを確保すること。 子ども・若者に対し、苦情申立てを行なうための子どもにやさしい手段ならびに司法手続および行政手続を通じた効果的な保障措置および救済措置(これらの措置を利用する際の援助および支援へのアクセスを含む)を提供するとともに、子ども・若者がこれらの機構を利用できることを確保すること。 権利侵害の被害をとくに受けやすい子ども・若者(親から分離されている者、マイノリティ集団出身者、障害のある者ならびに保健ケア施設および監護施設または矯正教育施設で暮らしている者を含む)を対象とする安全確保措置が設けられていることを確保すること。 自己に影響を与えるすべての事柄について意見を聴かれる子どもまたは若者の権利を制限する法律上の規定または実務慣行を見直し、かつ取り除くよう努めること。 子ども・若者の参加の強化に対して調整のとれたアプローチをとり、かつ意思決定・政策立案体制において参加が主流化されることを確保すること。 子どもの権利オンブズパーソン/コミッショナーのような適切な独立の人権機関がまだ存在していない場合、パリ原則 [3] にしたがってこのような機関を設置すること。 公式な場面および非公式な場面の両方で子ども・若者の参加を支援するため、十分な財源の配分および有能な人材の確保を図ること。 [3] 1993年12月29日の国連総会決議48/134。 参加の促進および参加に関する情報提供 子ども・若者の参加に関する情報の普及および知識の増進を図るため、加盟国は以下の措置をとるべきである。 一般公衆、子ども、若者、親および専門家の間で子ども・若者の参加権に関する意識を高めるための広報・教育プログラムを実施すること。 教員、弁護士、裁判官、警察、ソーシャルワーカー、コミュニティワーカー、心理学者、養育従事者、矯正教育施設・刑事施設職員、保健ケア専門家、公務員、出入国管理官、宗教的指導者およびメディア従事者の間でならびに子ども・若者団体のリーダーを対象として、子ども・若者の参加に関する専門的能力の増進を図ること。可能な場合、このような能力構築活動に、子ども・若者自身が講師および専門家として関与するべきである。 子ども・若者に対し、子ども・若者の権利ならびにとくに子ども・若者の参加権、参加のために利用できる機会およびこれらの機会を活用するための支援が受けられる先に関する、その年齢および状況にふさわしい情報(文字以外の形式によるものおよびソーシャルネットワーキングメディアその他のメディアを通じてのものを含む)を提供すること。 18歳未満の子ども・若者の権利(参加権を含む)を学校カリキュラムの構成要素にすること。 子ども・若者とともに働くすべての専門家の養成カリキュラムで18歳未満の子ども・若者の権利について教えることを提案すること。 子ども・若者の意見および経験に関する理解の向上を可能にし、子ども・若者の参加を妨げる障壁およびその克服方法を特定する目的で、子ども・若者に関する調査研究、子ども・若者とともに行なう調査研究および子ども・若者による調査研究を奨励すること。 参加権の行使に関する子ども・若者の能力構築を図るため、子ども・若者の間で同世代による支援および情報ネットワークを促進すること。 参加のための空間の創設 自己に影響を与えるすべての事柄に参加するすべての子ども・若者の機会を最大化するため、加盟国は以下の措置をとるべきである。 親・養育者に対し、法律および親訓練プログラムを通じて、子ども・若者の人間の尊厳ならびに権利、気持ちおよび意見を尊重するよう奨励すること。 相互の尊重および協力を奨励する目的で、世代間対話の機会をつくり出すこと。 とくに、教育・学習実践および学校環境に影響を及ぼすための公式・非公式の手法を通じてならびに学校共同体の運営に学校児童生徒評議会を統合することを通じて、学校生活のすべての側面への、子ども・若者の積極的参加を確立すること。 たとえばインタラクティブな教育方法の活用ならびにノンフォーマル教育および非定型的学習の承認を通じて、子ども・若者の人間の尊厳を尊重し、かつ学校生活における自由な意見表明および参加を可能にするようなやり方で教育を提供すること。 団体生活、コミュニティ生活、異文化間学習、スポーツ、余暇および芸術への子ども・若者の関与を支援するとともに、アクセスしやすい非定型的な参加手法を考案するために子ども・若者と協働すること。 民主主義とシティズンシップの学習および実践のための好ましい空間として、子ども・若者が運営する非政府組織に投資すること。 地域、広域行政圏または国のレベルで、たとえば子ども・若者評議会、議会またはフォーラムのような協議機関を設置すること。 家族および子どもにサービスを提供する機関が、サービスの開発、提供および評価への子ども・若者の参加を支援することを確保すること。 子ども・若者が、メディアを通じて自由に自己表現し、かつ、対面での参加を補足する手段として情報通信技術(ICTs)を通じて安全に参加する機会を増進させるとともに、参加の原則に関する理解をメディアおよびICTsに統合すること。 子ども・若者が公的生活および民主主義機関に参加する機会(代表としての参加を含む)を増加させること。 UNCRCの第12条およびその他の関連条項の実施ならびに欧州評議会の関連文書および子どもの権利に関するその他の国際基準のモニタリングへの参加に関して、子ども・若者およびその団体を支援すること。 更新履歴:ページ作成(2021年1月7日)。/冒頭に「活用のためのツール」を追加(2023年2月3日)。/冒頭の「活用のためのツール」に関連資料へのリンクを追加(8月9日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/335.html
欧州評議会議員会議勧告1864(2009):自己に影響を与える決定への子どもの参加の促進 関連の閣僚委員会勧告:家庭生活および社会生活における子どもの参加(1998年)/18歳未満の子ども・若者の参加(2012年) 自己に影響を与える決定への子どもの参加の促進 起草者:議員会議 採択:2009年3月13日 (原文:英語) 1.議員会議は、個人の生活および個人が暮らしているコミュニティに影響を与える決定に参加するプロセスはその国の民主主義を構築しかつ評価する手段のひとつであると考える。参加は市民の基本的権利であり、そして子どもたちは市民である。 2.参加に対する子どもたちの権利は、国連・子どもの権利条約(第12条)で、また子どもの権利の行使に関する欧州条約(ETS No. 160)のようないくつかの欧州評議会文書で、承認されている。議員会議は、子どもたちとともに暮らす者および働く者ならびに子どもたちに影響を与える決定を行なう者全員に対し、全加盟国が批准済みの国連条約第12条に掲げられた二重の要件に注意を払うよう、緊急に求める必要があると考える。 3.当該第12条に基づき、子どもに影響を与える決定が行なわれるときは常に、その子どもの年齢、ジェンダー、宗教、社会的地位または状況がどのようなものであれ、子どもの意見、望みおよび気持ちが確認されなければならない。第12条は、障害のある子どもを含むすべての子どもにとって、また前掲条約に掲げられたすべての権利の実施において妥当する一般的原則を定めたものである。 4.子どもに影響を与える決定が行なわれるときは常に、その子どもの意見、望みおよび気持ちが、その年齢および成熟度を適正に顧慮しながら正当に考慮されなければならない。年齢と成熟はあわせて考慮されなければならず、またこれらの2つの要素は子どもの知的能力にのみ関係するものではない。子どもが気持ちを表明する方法、子どもの人格の発達、子どもの発達しつつある能力ならびにさまざまな感情および可能性に立ち向かう子どもの能力も、同じぐらい重要である。 5.議員会議は、意思決定に携わるすべての者に対し、ごく低年齢の子どもを含む子どもの意見、望みおよび気持ちを真剣に考慮するよう呼びかける。意思決定に子どもがどの程度影響力を及ぼすかは、その年齢および成熟によって左右されることになろう。参加は常に関連性を有する任意のものであるべきであり、かつ参加のための便宜が図られるべきである。大人には、子どもたちをリスクにさらさず、または子どもが負うことのできない責任を担わせて過度な負担をかけない義務がある。子どもたちは、自分たち自身の生活、ニーズおよび関心事について特有の知識を有している。議員会議は、子どもたちに直接影響を与えるいかなる決定においても、子どもたちの参加が主要な要素のひとつとされるべきであると確信する。 6.議員会議は、参加に関わって、大人が子どもたちに耳を傾けることだけではなく、大人が子どもたちから表明された考えおよび意見を考慮し、かつそれらの意見に基づいて行動することの確保についても議論されるようになっていることに留意する。今日強調されるのは、子どもたちは効果的行動の能力を有していると考えられるという事実である。子どもたちのあらゆる発言または行動が子どもたちにとって前向きな変化につながることを確保する必要がある。 7.したがって、子どもたちは、すべての分野で、とくに家庭生活、保健ケア、養子縁組に関わる問題および手続、教育、コミュニティ生活、司法へのアクセスならびに司法運営に関して、耳を傾けられかつ参加を認められなければならない。子どもたちが、司法手続および行政手続において、敬意、信頼および相互理解の雰囲気のなかで自由にその意見を表明できるようにするため、追加的な努力が必要とされる。子どもたちによる意味のある参加を推進する際には、子どもたちをいかなる形でも危険にさらさないようにするために、また子どもたちに危害を与えること、圧力をかけること、強制することまたは子どもたちを操作することを回避するために、特別な注意が払われるべきである。子どもたちは、その年齢および状況にふさわしい、子どもにやさしい情報にアクセスできるべきである。 8.議員会議は、閣僚委員会に対し、加盟国政府に次のことを促すよう慫慂する。 8.1 子どもたちの意見がどの程度真剣に留意されかつ受けとめられているか評価する目的で、自国のすべての意思決定プロセスにおける子どもたちについての立法、政策および実務を検討すること。このような検討にあたっては、子どもの意見および経験が中心に位置づけられるべきである。たとえば養子縁組または保健ケアの分野で、子どもの同意を得なければ公的機関が行動できない場合には、最低年齢制限を定めることの影響について検討し、かつ、子どもの最善の利益を考慮して必要な場合には是正することが求められる。 8.2 自己に影響を与える決定への子どもたちの参加を強化するために各加盟国がとる行動を掲げた国家的戦略を策定すること。障害のある子ども、機械や権利を十分に享受できていない子ども、ごく低年齢の子ども、刑事施設その他の危険な環境にいる子どもならびに未成年の移住者または庇護希望者の特有のニーズも考慮されるべきであり、またすべての子どもの参加権が差別なく促進されかつ保障されるべきである。 8.3 子どもの最善の利益および子どもの発達しつつある能力を考慮しながら、自国の憲法および人権その他の関連部門(教育、司法運営および移住を含む)に関する国内法などにおける保護も含め、子どもたちの参加権に関する法的保護を可能なかぎり最大限に提供すること。子どもの意見表明権および参加権は、関連性を有し、任意に行使でき、かつ適切な修正および便宜の対象とされるべきである。一般的に、子どもが意見を表明する資格に関して最低年齢が設けられるべきではない。子どもたちに対しては、子どもの権利およびその保護に関する論点ならびに利用可能なさまざまなサービスにアクセスする方法についての子どもにやさしい情報も、地域の言語で提供されるべきである。 8.4 これらの子どもの権利を実施するとともに、自国のすべての公的機関および公的サービスがすべての生活分野においてこれらの権利を実施することも確保すること。特定の領域または職業について免除が認められるべきではない。子どもおよび若者は、既存のサービスの質およびこれらのサービスをすべての子どもにとってよりアクセスしやすいものにする方法についても、協議の対象とされるべきである。 9.議員会議は、閣僚委員会に対し、子どもおよび親を対象とする次のような公衆教育プログラムの開始を加盟国政府に慫慂するよう促す。 9.1 意見を自由に表明する子どもたちの権利について知らせること。 9.2 気持ち、意見、大望および権利を持った人間としての子ども像を提示すること。 9.3 子どもにやさしい資料およびサービスの開発を含むこと。 10.議員会議は、閣僚委員会に対し、加盟国政府に次のことを求めるよう慫慂する。 10.1 民法ならびに親の権利、義務および責任に関する法律において、子どもの人間の尊厳、気持ちおよび意見の尊重が強調され、かつ、子どもの意見をその能力の発達に照らして正当に顧慮する義務が含まれることを確保すること。 10.2 意思決定プロセスに携わるすべての者(とくに裁判官、検察官、弁護士、教育者および医療スタッフ)が子どもの権利および参加に関する研修を利用できるようにするとともに、子どもとともに働く専門家の、さまざまな年齢層の子どもと協議しかつ働く能力の開発を図ること。 11.議員会議は、家庭内を含むさまざまな文脈において法律で容認された暴力が存在し続けていることにより、個人および社会的集団としての子どもが傷つけられており、かつ、子ども参加にコミットするのであれば人間としての子どもたちを貶める法律の解消が必要であると考える。議員会議は、欧州評議会のプログラム「子どもたちのために、子どもたちとともに構築するヨーロッパ」の枠内で開始された、子どもの体罰解消のための汎欧州的取り組みを支持するものである。したがって議員会議は、閣僚委員会に対し、たとえ家庭内におけるものであっても子どもの体罰および品位を傷つける取扱いを明示的に禁止し、かつ、子どもたちがその潜在的可能性にしたがって参加しかつ発達することを妨げるその他の形態の虐待および搾取にも対処することをすべての加盟国の政府に要求するよう、強く促す。 12.議員会議は、閣僚委員会に対し、政治的生活への若者の参加を奨励するため、投票権に課されている年齢関連の制限の再考を加盟国政府に奨励するよう慫慂する。 13.議員会議は、閣僚委員会に対し、加盟国政府に次のことを促すよう慫慂する。 13.1 子どもたちの権利の促進および保護を確保する責任ならびに子どもたちから寄せられる個別の苦情および申請に対処する権限を委ねられた独立の子どもオンブズパーソン事務所を国レベルで(または地方レベルでも)――各国の法体系を尊重しながら――設置すること。 13.2 遺棄された子どもおよび(または)障害のある子どもであって施設に措置されている子どもたちも、施設による子どもたちの権利の保障を定期的に監視する、これらの子どもの権利擁護を担当する独立機関(オンブズパーソンまたは少なくとも特別裁判官)にアクセスできることを確保すること。 14.議員会議は、自己に影響を与えるすべての手続に子どもが参加することは現代的かつ公正な司法制度の重要な要素である旨の欧州司法大臣会議(ランサローテ、2007年10月)の発議および結論を支持し、閣僚委員会に対し、その権限ある機関を通じて子どもにやさしい司法に関する欧州指針を作成するよう慫慂する。〔訳者注/2010年に採択された子どもにやさしい司法に関する欧州評議会閣僚委員会指針参照〕 15.議員会議は、「子どもたちのために、子どもたちとともに構築するヨーロッパ」の枠内で達成された進展を歓迎し、閣僚委員会に対し、加盟国および欧州評議会において、子ども参加の促進を目的として進められている現行プロジェクトを支援しかつ発展させる(欧州評議会文書に関する子どもにやさしい情報の制作を含む)よう慫慂する。 16.最後に、議員会議は、閣僚委員会に対し、加盟国政府に次のことを求めるよう慫慂する。 16.1 子どもおよび青少年が運営する団体の発展および適正な機能遂行に、子どもたちの自主的活動を妨げるいかなる障壁も存在しないことを確保しながら、投資すること。 16.2 全加盟国における国連・子どもの権利条約の継続的モニタリングならびに関連の欧州評議会条約および子どもの権利の実現のために加盟国が表明しているその他のコミットメントの実施の継続的モニタリングに、これらの団体の関与を得ること。 更新履歴:ページ作成(2022年1月17日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/17.html
国連・子どもの権利委員会の勧告:障害児関連(日本) 解説:第16回障がい者制度改革推進会議(2010年7月12日)における平野の報告参照 関連:国連・障害者権利委員会の勧告:子ども・教育(1) 第1回総括所見(1998年) 9.委員会は、子どもの状況、とくに障害を持った子ども、施設に措置された子どもならびに国民的および民族的マイノリティに属する子どもを含めて最も傷つきやすい立場に置かれたグループに属する子どもの状況に関する、子どもからの苦情の登録に関わるものも含めた細分化された統計的データおよびその他の情報を収集するための措置が不充分であることに、懸念とともに留意する。 13.委員会は、とりわけ、国民的および民族的マイノリティとくにアイヌおよびコリアンに属する子ども、障害を持った子ども、施設に措置されたまたは自由を奪われた子ども、および婚外子など最も傷つきやすい立場に置かれたカテゴリーの子どもとの関わりで、差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)および子どもの意見の尊重(第12条)の一般原則が、子どもに関わる立法政策および計画に全面的に統合されていないことを、懸念する。…… 14.委員会は、法律が、とくに出生、言語および障害との関わりで、条約が掲げるすべての事由に基づく差別から子どもを保護していないことを懸念する。…… 20.障害を持った子どもに関して、委員会は、1993年の障害者基本法に掲げられた原則にも関わらず、こうした子どもが教育に効果的にアクセスすることを確保し、かつその社会への全面的インクルージョンを促進するために締約国がとった措置が不充分であることに、懸念とともに留意する。 41.障害者の機会均等化に関する標準規則(総会決議48/96)に照らし、委員会は、締約国に対し、現行法の実質的実施を確保するためにさらなる努力を行ない、障害を持った子どもの施設措置に代わる措置をとり、かつ、障害を持った子どもに対する差別を減らしかつ彼らの社会へのインクルージョンを奨励するための意識啓発キャンペーンを構想するよう勧告する。 第2回総括所見(2004年) 差別の禁止 24.委員会は、法律で婚外子が差別されていること、および、女子、障害のある子ども、アメラジアン、コリアン、部落およびアイヌの子どもその他のマイノリティ・グループならびに移住労働者の子どもに対する社会的差別が根強く残っていることを懸念する。 25.……委員会は、とくに女子、障害のある子ども、アメラジアン、コリアン、部落、アイヌその他のマイノリティ、移住労働者の子どもならびに難民および庇護希望者の子どもに関して社会的差別と闘いかつ基本的サービスへのアクセスを確保するため、締約国が、とりわけ教育および意識啓発キャンペーンを通じて、あらゆる必要な積極的措置をとるよう勧告するものである。 障害のある子ども 43.委員会は、精神障害を含む障害のある子どもが、条約で保障された権利の享受の面で依然として不利な立場に置かれており、かつ教育制度およびその他のレクリエーション活動または文化的活動に全面的に統合されていないことを懸念する。 44.「障害のある子どもの権利」に関する委員会の一般的討議(1997年、CRC/C/66付属文書V)および障害者の機会均等化に関する国連基準規則(1993年12月20日の国連総会決議48/86)を考慮にいれ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもに影響を及ぼすあらゆる政策を、それらが障害のある子どものニーズを満たし、かつ条約および障害者の機会均等化に関する国連基準規則にしたがうことを確保する目的で、障害のある子どもおよび関連の非政府組織と連携しながら見直すこと。 (b) 教育ならびにレクリエーション活動および文化的活動への障害のある子どものいっそうの統合を促進すること。 (c) 障害のある子どものための特別な教育およびサービスに配分される人的および財政的資源を増やすこと。 第3回総括所見(2010年) データ収集 21.委員会は、子どもおよびその活動に関する相当量のデータが定期的に収集されかつ公表されていることを理解する。しかしながら委員会は、条約が対象としている一部の分野に関してデータが存在しないこと(貧困下で暮らしている子ども、障害のある子どもおよび日本国籍を有していない子どもの就学率ならびに学校における暴力およびいじめに関するものを含む)に懸念を表明する。 22. 委員会は、締約国が、子どもの権利侵害を受けるおそれがある子どもについてのデータ収集の努力を強化するよう勧告する。…… 差別の禁止 33.……委員会はまた、民族的マイノリティに属する子ども、日本国籍を有していない子ども、移住労働者の子ども、難民である子どもおよび障害のある子どもに対する社会的差別が根強く残っていることも懸念する。…… 34. 委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 包括的な反差別法を制定し、かつ、どのような事由であれ子どもを差別するあらゆる立法を廃止すること。 (b) とくに女子、民族的マイノリティに属する子ども、日本人ではない子どもおよび障害のある子どもに対して実際に行なわれている差別を削減しかつ防止するため、意識啓発キャンペーンおよび人権教育を含む必要な措置をとること。 障害のある子ども 58.委員会は、締約国が、障害のある子どもを支援し、学校における交流学習を含む社会参加を促進し、かつその自立を発達させることを目的として、法律の採択ならびにサービスおよび施設の設置を進めてきたことに留意する。委員会は、根深い差別がいまなお存在すること、および、障害のある子どものための措置が注意深く監視されていないことを、依然として懸念する。委員会はまた、必要な設備および便益を用意するための政治的意思および財源が欠けていることにより、障害のある子どもによる教育へのアクセスが引き続き制約されていることにも留意する。 59. 委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のあるすべての子どもを全面的に保護するために法律の改正および採択を行なうとともに、進展を注意深く記録し、かつ実施における欠点を明らかにする監視システムを確立すること。 (b) 障害のある子どもの生活の質を高め、その基本的ニーズを満たし、かつそのインクルージョンおよび参加を確保することに焦点を当てた、コミュニティを基盤とするサービスを提供すること。 (c) 存在している差別的態度と闘い、かつ障害のある子どもの権利および特別なニーズについて公衆の感受性を高めること、障害のある子どもの社会へのインクルージョンを奨励すること、ならびに、意見を聴かれる子どもおよびその親の権利の尊重を促進することを目的とした、意識啓発キャンペーンを実施すること。 (d) 障害のある子どものためのプログラムおよびサービスに対して十分な人的資源および財源を提供するため、あらゆる努力を行なうこと。 (e) 障害のある子どものインクルーシブ教育のために必要な便益を学校に備えるとともに、障害のある子どもが希望する学校を選択し、またはその最善の利益にしたがって普通学校と特別支援学校との間で移行できることを確保すること。 (f) 障害のある子どものためにおよびそのような子どもとともに活動している非政府組織(NGO)に対し、援助を提供すること。 (g) 教職員、ソーシャルワーカーならびに保健・医療・治療・養護従事者など、障害のある子どもとともに活動している専門的職員を対象とした研修を行なうこと。 (h) これとの関連で、障害のある人の機会均等化に関する国連基準規則(国連総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)を考慮すること。 (i) 障害のある人の権利に関する条約(署名済み)およびその選択議定書(2006年)を批准すること。 メンタルヘルス 60.委員会は、著しい数の子どもが情緒的ウェルビーイングの水準の低さを報告していること、および、親および教職員との関係の貧しさがその決定要因となっている可能性があることを示すデータに留意する。委員会はまた、発達障害者支援センターにおける注意欠陥・多動性障害(ADHD)の相談数が増えていることにも留意する。委員会は、ADHDの治療に関する調査研究および医療専門家の研修が開始されたことを歓迎するが、この現象が主として薬物によって治療されるべき生理的障害と見なされていること、および、社会的決定要因が正当に考慮されていないことを懸念する。 61. 委員会は、締約国が、子どもおよび思春期の青少年の情緒的および心理的ウェルビーイングの問題に、あらゆる環境における効果的支援を確保する学際的アプローチを通じて対応するための効果的措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、ADHDの診断数の推移を監視するとともに、この分野における調査研究が製薬産業とは独立に実施されることを確保するようにも勧告する。 更新履歴:ページ作成(2010年7月10日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/13.html
子どもの権利委員会:総括所見:日本(第3回)〔前編〕 第1回(1998年)/第2回(2004年)/第4-5回(2019年)OPAC(2010年)/OPSC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/JPN/CO/3 配布:一般 2010年6月11日 原文:英語(PDFファイル) 【日本語仮訳:子どもの権利条約NGOレポート連絡会議】(注:〔 〕およびリンクは訳者による補足である。また、原文では勧告部分が太字になっているが、ここではパラグラフ番号のみを太字とした。) 子どもの権利委員会 第54会期 2010年5月25日~6月11日 条約第44条にもとづいて締約国が提出した報告書の検討 総括所見:日本 1.委員会は、2010年5月27日に開かれた第1509回および第1511回会合(CRC/C/SR.1509およびCRC/C/SR.1511参照)において日本の第3回定期報告書〔PDF〕(CRC/C/JPN/3)を検討し、2010年6月11日に開かれた第1541回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、第3回定期報告書および委員会の事前質問事項(CRC/C/JPN/Q/3/Add.1)に対する文書回答〔PDF〕の提出を歓迎する。委員会は、部門を横断した代表団の出席および有益かつ建設的な対話を歓迎するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2010年6月11日に採択された、子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する選択議定書に基づく第1回締約国報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/JPN/CO/1)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての総括所見(CRC/C/OPAC/JPN/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.締約国によるフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の批准(2004年8月2日)および子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する選択議定書の批准(2005年1月24日)を歓迎する。 5.委員会は、以下の立法措置がとられたことに評価の意とともに留意する。 (a)2004年および2008年の児童虐待防止法改正。これにより、とくに児童虐待の定義が見直され、国および地方の政府の責任が明確化され、かつ虐待事案の通報義務が拡大された。 (b)2004年および2008年の児童福祉法改正。これにより、とくに、要保護児童対策地域協議会の設置権限が地方政府に与えられた。 (c)2005年6月の刑法改正による人身売買の犯罪化。 (d)子ども・若者育成支援推進法の公布(2010年)。 (e)2010年〔2006年〕の教育基本法改正。 6.委員会はまた、人身取引対策行動計画(2009年12月)、および、自殺率削減のための取り組みの調整を促進する目的で2005年7月に採択された「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」も歓迎する。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第2回報告書(CRC/C/104/Add.2)の検討を受けて2004年2月に行なわれた懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.231)の一部に対応するため締約国が行なった努力を歓迎するが、その多くが十分に実施されておらず、またはまったく対応されていないことを遺憾に思う。委員会は、この総括所見において、これらの懸念および勧告をあらためて繰り返す。 8.委員会は、締約国に対し、第2回報告書審査に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないもの(「調整および国家行動計画」に関するパラ12、独立した監視に関するパラ14、「子どもの定義」に関するパラ22、「差別の禁止」に関するパラ24、「名前および国籍」に関するパラ31、「体罰」に関するパラ35、障害に関するパラ43および「若者の自殺」に関するパラ47に掲げられた勧告を含む)に対応し、かつこの総括所見に掲げられた懸念事項に包括的に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 留保 9.委員会は、締約国が第37条(c)に対する留保を維持していることを遺憾に思う。 10.委員会は、締約国が、条約の全面的適用の障害となっている条約第37条(c)に対する留保の撤回を検討するよう勧告する。 立法 11.委員会は、子どもの権利の分野において、子どもの生活条件および発達の向上に資するいくつかの法律の公布および改正が行なわれたことに留意する。しかしながら委員会は、子ども・若者育成支援推進法が条約の適用範囲を完全に網羅しておらず、または子どもの権利を保障するものではないこと、および、包括的な子どもの権利法が制定されていないことを依然として懸念する。委員会はまた、少年司法分野におけるものも含め、国内法の一部の側面が条約の原則および規定にいまなお一致していないことにも留意する。 12.委員会は、締約国が、子どもの権利に関する包括的法律の採択を検討し、かつ、国内法を条約の原則および規定と完全に調和させるための措置をとるよう、強く勧告する。 調整 13.委員会は、子ども・若者育成支援推進本部、教育再生会議および種々の政府審議会など、子どもの権利に関する政策の実施に携わる多くの国家機関が存在することに留意する。しかしながら委員会は、これらの機関間でならびに国、広域行政圏および地方のレベル間で効果的調整を確保するための機構が存在しないことを懸念する。 14.委員会は、締約国が、子どもの権利を実施する目的で締約国が国、広域行政圏および地方のレベルで行なっているあらゆる活動を効果的に調整するための明確な権限ならびに十分な人的資源および財源を与えられた適切な国家機構を設置するとともに、子どもの権利の実施に携わっている市民社会組織との継続的交流および協力を確立するよう勧告する。 国家的行動計画 15.委員会は、子ども・若者育成支援推進法(2010年4月)などの多くの具体的措置がとられてきたことを歓迎するとともに、すべての子どもの成長を支援し、かつ子どもを全面的に尊重するために政府の体制一元化を図ることを目的とした「子ども・子育てビジョン」および「子ども・若者ビジョン」の策定に関心をもって留意する。しかしながら委員会は、条約のすべての分野を網羅し、かつ、とくに子どもたちの間に存在する不平等および格差に対応する、子どものための、権利を基盤とした包括的な国家的行動計画が存在しないことを依然として懸念する。 16.委員会は、締約国が、地方の公的機関、市民社会および子どもを含む関係パートナーと協議および協力しながら、子どものための国家的行動計画を採択しかつ実施するよう勧告する。このような行動計画は、中長期的達成目標を掲げ、条約のすべての分野を網羅し、十分な人的資源および財源を提供し、かつ、必要に応じて成果の管理および措置の修正を行なう監視機構を備えたものでなければならない。委員会はとくに、このような行動計画において、所得および生活水準の不平等、ならびに、ジェンダー、障がい、民族的出身、および、子どもが発達し、学習し、かつ責任ある生活に向けた準備を進める機会を形成するその他の要因による格差に対応するよう勧告する。委員会は、締約国が、国連子ども特別総会の成果文書「子どもにふさわしい世界」(2002年)およびその中間レビュー(2007年)を考慮するよう勧告する。 独立した監視 17.委員会は、条約の実施を国レベルで監視する独立の機構が存在しないことに懸念を表明する。これとの関連で、委員会は、5つの自治体で子どもオンブズパーソンが任命されているという締約国の情報に留意する。しかしながら委員会は、これらのオンブズパーソンの権限、独立性および職務、効果的活動を確保するために利用可能な財源その他の資源、ならびに、(遺憾ながら2002年以来棚上げされている人権擁護法案に基づいて設置予定の)人権委員会との関係のあり方の構想に関する情報が存在しないことを遺憾に思う。 18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)早期に人権擁護法案を通過させ、かつ国内機関の地位に関するパリ原則(国連総会決議48/134)にしたがった国家人権委員会を設置できるようにするとともに、同委員会に対し、条約の実施を監視し、苦情を受け付けてそのフォローアップを行ない、かつ子どもの権利の組織的侵害を調査する権限を与えること。 (b)次回の報告書において、国家人権委員会および子どもオンブズパーソンに与えられた権限、職務および資源についての情報を提供すること。 (c)独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮すること。 資源配分 19.委員会は、締約国の社会支出がOECD平均よりも低いこと、最近の経済危機以前から貧困がすでに増加しており、いまや人口の約15%に達していること、および、子どものウェルビーイングおよび発達のための補助金および諸手当がこれまで一貫したやり方で整備されてこなかったことに、深い懸念を表明する。委員会は、新しい〔子ども〕手当制度および高校無償化法を歓迎するものの、国および自治体の予算における子どものための予算配分額が明確でなく、子どもの生活への影響という観点から投資を追跡しかつ評価できなくなっていることを依然として懸念する。 20.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう、強く勧告する。 (a)子どもの権利を実現する締約国の義務を満たせる配分が行なわれるようにするため、中央および自治体レベルの予算を子どもの権利の観点から徹底的に検討すること。 (b)子どもの権利に関わる優先的課題を反映した戦略的予算科目を定めること。 (c)子どものための優先的予算科目を資源水準の変化から保護すること。 (d)指標システムに基づいて政策の成果をフォローアップする追跡システムを確立すること。 (e)市民社会および子どもがあらゆるレベルで協議の対象とされることを確保すること。 データ収集 21.委員会は、子どもおよびその活動に関する相当量のデータが定期的に収集されかつ公表されていることを理解する。しかしながら委員会は、条約が対象としている一部の分野に関してデータが存在しないこと(貧困下で暮らしている子ども、障がいのある子どもおよび日本国籍を有していない子どもの就学率ならびに学校における暴力およびいじめに関するものを含む)に懸念を表明する。 22.委員会は、締約国が、権利侵害を受けるおそれがある子どもについてのデータ収集の努力を強化するよう勧告する。締約国はまた、条約の実施において達成された進展を効果的に監視しかつ評価することおよび子どもの権利の分野における政策の効果を評価することを目的とした指標も開発するべきである。 広報、研修および意識啓発 23.委員会は、子どもとともにおよび子どものために活動している専門家ならびに一般公衆の間で条約に関する意識を促進するために締約国が行なってきた努力には留意するものの、これらの努力が十分ではないこと、または条約の原則および規定を普及するための計画が実行に移されていないことを依然として懸念する。とりわけ、子どもおよびその親に対して情報をより効果的に普及することが緊急に必要である。委員会はまた、子どものためにおよび子どもとともに活動している専門家の研修が不十分であることも懸念する。 24.委員会は、締約国に対し、子どもおよび親の間で条約に関する情報の普及を拡大するよう奨励する。委員会は、締約国に対し、子どものためにおよび子どもとともに活動しているすべての者(教職員、裁判官、弁護士、法執行官、メディア従事者、公務員およびあらゆるレベルの政府職員を含む)を対象とした、子どもの権利を含む人権に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させるよう促す。 市民社会との協力 25.市民社会組織と多くの会合が持たれてきたことに関する締約国の情報には留意しながらも、委員会は、子どもの権利のための政策およびプログラムの開発、実施および評価のあらゆる段階で重要である継続的協力の慣行がいまなお確立されていないことを懸念する。委員会はまた、市民社会組織が、委員会の前回の総括所見のフォローアップに関与しておらず、または締約国の第3回定期報告書の作成中に意見を述べる十分な機会を与えられなかったことも懸念する。 26.委員会は、締約国に対し、市民社会との協力を強化するとともに、条約の実施のあらゆる段階(定期報告書の作成を含む)を通じて市民社会組織のより組織的な関与を図るよう奨励する。 子どもの権利と企業セクター 27.委員会は、民間セクターが子どもおよびその家族の生活に甚大な影響を及ぼしていることに留意し、かつ、子どものウェルビーイングおよび発達に関わる企業セクターの社会的および環境的責任について締約国が規制を行なっているのであれば、当該規制に関する情報が存在しないことを遺憾に思う。 28.委員会は、締約国に対し、企業の活動から生じるいかなる悪影響からも地域コミュニティ、とくに子どもを保護する目的で、企業セクターが企業の社会的および環境的責任に関する国内外の基準を遵守することを確保するための規制を確立しかつ実施するため、効果的措置をとるよう奨励する。 国際協力 29.委員会は、いまなお相当額にのぼる政府開発援助(ODA)に留意するとともに、2003年の戦略的改定によって貧困削減、持続可能性、安全保障および平和維持措置が優先されるようになったことを歓迎するが、締約国が一貫してODA予算額を削減しており、国内総生産(GDP)の0.7%をODAに支出するという国際合意よりもはるかに低い、対GDP比0.2%という水準であることを懸念する。委員会はとくに、開発途上国における気候変動対策といった特定の目的のために追加的資源の配分を行なうこと、および、アフリカ諸国向けの援助が顕著に増額されること以外には一般的改革は計画されていないと締約国が表明したことを懸念する。 30.委員会は、締約国が、とくに子どもに利益をもたらすプログラムおよび措置に対して提供される資源を増加させる目的で、ODAに関する国際的達成目標へのコミットメントを再検討するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、当該供与相手国に関する子どもの権利委員会の総括所見および勧告を考慮するよう提案する。 2.子どもの定義(条約第1条) 31.委員会は、最低婚姻年齢の男女差(男子18歳・女子16歳)を解消するよう求めた前回の総括所見の勧告(CRC/C/15/Add.231、パラ22)にも関わらず、格差が残っていることについて懸念を表明する。 32.委員会は、締約国がその立場を再検討し、婚姻年齢を引き上げて両性ともに18歳にするよう勧告する。 3.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 33.委員会は、若干の立法措置がとられたにも関わらず、無遺言相続を規律する法律上、婚外子がいまなお婚内子と同一の権利を享受していないことを懸念する。委員会はまた、民族的マイノリティに属する子ども、日本国籍を有していない子ども、移住労働者の子ども、難民である子どもおよび障害のある子どもに対する社会的差別が根強く残っていることも懸念する。委員会は、男女平等の促進に言及していた教育基本法第5条が削除されたことに対する女性差別撤廃委員会の懸念(CEDAW/C/JPN/CO/6)を繰り返す。 日本政府のコメント 男女共同参画の推進に言及した教育基本法第5条の削除に関する委員会の懸念について、日本政府は以下の見解を表明する。 教育上、男女の共学は認められなければならないと定める旧教育基本法第5条の目的は、制定以降の60年間、日本において広く理解・実践されてきた。しかし、社会における男女共同参画は十全に実現されていないことから、男女双方が、互いにその人権を尊重し、責任を分かち合い、性別にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会を実現するためには、相互の尊重および男女の協働によりより豊かな社会を築いていくために必要な能力および才能を、教育を通じて発達させていくことが重要である。これに基づき、「男女の平等」は、日本で教育を行うために求められる不可欠の目標のひとつとして、改正教育基本法第2条でとくに定められている。委員会の懸念は誤解に基づくものである。 34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)包括的な反差別法を制定し、かつ、どのような事由であれ子どもを差別するあらゆる立法を廃止すること。 (b)とくに女子、民族的マイノリティに属する子ども、日本人ではない子どもおよび障害のある子どもに対して実際に行なわれている差別を削減しかつ防止するため、意識啓発キャンペーンおよび人権教育を含む必要な措置をとること。 35.委員会は、刑法で女性および女子しか強姦罪および関連の犯罪の被害者として想定されておらず、かつ、そのためこれらの規定に基づく保護が男子には及ばないことに、懸念とともに留意する。 36.委員会は、男子か女子かを問わず強姦の被害者全員が同一の保護を与えられることを確保するため、締約国が刑法改正を検討するよう勧告する。 子どもの最善の利益 37.子どもの最善の利益は児童福祉法に基づいて考慮されているという締約国の情報は認知しながらも、委員会は、1974〔1947〕年に採択された同法に、子どもの最善の利益の優越性が十分に反映されていないことに懸念とともに留意する。委員会はとくに、そのような優越性が、難民および資格外移住者である子どもを含むすべての子どもの最善の利益を統合する義務的プロセスを通じ、すべての立法に正式にかつ体系的に統合されているわけではないことを懸念する。 38.委員会は、締約国が、あらゆる法規定において、ならびに、子どもに影響を与える司法上および行政上の決定およびプロジェクト、プログラムならびにサービスにおいて、子どもの最善の利益の原則が実施されかつ遵守されることを確保するための努力を継続しかつ強化するよう勧告する。 39.委員会は、子どものケアまたは保護に責任を負う相当数の機関が、とくに職員の数および適格性ならびに監督およびサービスの質に関して適切な基準に合致していないという報告があることに、懸念とともに留意する。 40.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)そのような機関が提供するサービスの質および量を対象とし、かつ公共部門および民間部門の両方に適用されるサービス基準を発展させかつ定義するための効果的措置をとること。 (b)公共部門および民間部門の両方において、そのような基準を一貫して遵守させること。 生命、生存および発達に対する権利 41.「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」などを通じ、子ども、とくに思春期の青少年の間で発生している自殺の問題に対応しようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、子どもおよび思春期の青少年が自殺していること、および、自殺および自殺未遂に関連したリスク要因に関する調査研究が行なわれていないことを依然として懸念する。委員会はまた、子どもの施設で起きている事故が、そのような施設で安全に関する最低基準が遵守されていないことと関連している可能性があるという情報にも懸念する。 42.委員会は、締約国が、子どもの自殺リスク要因について調査研究を行ない、防止措置を実施し、学校にソーシャルワーカーおよび心理相談サービスを配置し、かつ、困難な状況にある子どもに児童相談所システムがさらなるストレスを課さないことを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、官民問わず、子どものための施設を備えた機関が適切な最低安全基準を遵守することを確保するようにも勧告する。 子どもの意見の尊重 43.司法上および行政上の手続、学校、子ども施設ならびに家庭において子どもの意見は考慮されているという締約国の情報には留意しながらも、委員会は、正式な規則では年齢制限が高く定められていること、児童相談所を含む児童福祉サービスが子どもの意見をほとんど重視していないこと、学校において子どもの意見が重視される分野が限定されていること、および、政策策定プロセスにおいて子どもおよびその意見に言及されることがめったにないことを依然として懸念する。委員会は、権利を有する人間として子どもを尊重しない伝統的見解のために子どもの意見の重みが深刻に制限されていることを依然として懸念する。 44.条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、あらゆる場面(学校その他の子ども施設、家庭、地域コミュニティ、裁判所および行政機関ならびに政策策定プロセスを含む)において、自己に影響を及ぼすあらゆる事柄に関して全面的に意見を表明する子どもの権利を促進するための措置を強化するよう勧告する。 4.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 45.委員会は、締約国の多くの規則が、一定の状況下にある親、とくに子どもの出生を登録することのできない、在留資格のない移住者のもとに生まれた子どもの出生登録の可能性を制約する効果を有しているという、前回の総括所見(CRC/C/15/Add.231)に掲げられた懸念をあらためて繰り返す。これらの規則が存在する結果、多くの子どもが登録されず、このような子どもが法律上無国籍となる状況が生み出されている。 46.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)すべての子どもの登録を確保し、かつ子どもを法律上の無国籍状態から保護するため、条約第7条の規定にしたがい、国籍および市民権に関わる法律および規則を改正すること。 (b)無国籍者の地位に関する条約(1954年)および無国籍の削減に関する条約(1961年)の批准を検討すること。 体罰 47.学校における体罰が明示的に禁じられていることには留意しつつ、委員会は、その禁止規定が効果的に実施されていないという報告があることに懸念を表明する。委員会は、すべての体罰を禁ずることを差し控えた1981年の東京高等裁判所判決に、懸念とともに留意する。委員会はさらに、家庭および代替的養護現場における体罰が法律で明示的に禁じられていないこと、および、とくに民法および児童虐待防止法が適切なしつけの行使を認めており、体罰の許容可能性について不明確であることを懸念する。 48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a)家庭および代替的養護現場を含むあらゆる場面で、子どもを対象とした体罰およびあらゆる形態の品位を傷つける取り扱いを法律により明示的に禁止すること。 (b)あらゆる場面における体罰の禁止を効果的に実施すること。 (c)体罰等に代わる非暴力的な形態のしつけおよび規律について、家族、教職員ならびに子どもとともにおよび子どものために活動しているその他の専門家を教育するため、キャンペーンを含む伝達プログラムを実施すること。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 49.子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)東アジア・太平洋地域協議(2005年6月14~16日、バンコク)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b)以下の勧告に特段の注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に関わる同研究の勧告の実施を優先させること。 (i)子どもに対するあらゆる形態の暴力を禁止すること。 (ii)子どもとともにおよび子どものために活動しているすべての者の能力を増進させること。 (iii)回復および社会的再統合のためのサービスを提供すること。 (iv)アクセスしやすく、子どもにやさしい通報制度およびサービスを創設すること。 (v)説明責任を確保し、かつ責任が問われない状態に終止符を打つこと。 (vi)国レベルの体系的なデータ収集および調査研究を発展させ、かつ実施すること。 (c)すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および心理的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの参加を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。 (d)次回の報告書において、締約国による同研究の勧告の実施に関わる情報を提供すること。 (e)子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表と協力し、かつ同代表を支援すること。 → 子どもの権利員会:総括所見:日本(第3回)〔後編〕 注/総括所見原文は6月11日(金)の夜〔ジュネーブ時間〕に公表されたが、その後、修正が行なわれた。ここに掲載したのはその修正を反映した日本語訳である。6月14日(月)の院内集会等で配布された日本語訳とは一部内容・表現が異なるため、注意されたい。 更新履歴:ページ作成(2010年6月17日)。/パラ30「とくに子どもが受益者であるプログラム」を「とくに子どもに利益をもたらす……」に、パラ45「子どもの出生を登録することのできない資格外滞在移住者」を「子どもの出生を登録することのできない、在留資格のない移住者」に修正(2010年6月23日)。/パラ33に日本政府のコメントを追加(2011年10月4日)。
https://w.atwiki.jp/kodomonomachi/pages/23.html
子どもがつくるまちむさしのミニタウン 子どもがつくるまち むさしのミニタウンは、実行委員会形式で行っているため 社会的に認めてもらうために後から“子どもの参画をすすめる会”をつくり管理と継続性を持たせました。現在25名が会員となっておりその中の数名が、むさしのミニタウン実行委員会の事務局を担っています。子どもの参画をすすめる会は、ミニタウンを行うことを基本活動としており、他の活動については市内の他の地域でも行えるようバックアップをしていけたらと考えています。 目次 1概要 2歴史 3仕事ブース 4大人の会議(例) 5子どもの会議(例) 6話題(例) 6.1(始まりの頃の特筆すべき点) 6.2(現在の特筆すべき点) 6.3(外部の協力者) 7参考文献 8関連項目 9外部リンク 概要 子ども実行委員は小学5年~中学3年。半年以上の期間かけ、前半はまち作りを考え、後半は実際のまちを具体化させる。2回目は1回目のいい所・反省を活かし、まち並、大人の対応も随分変わった。 障害児のスムーズな参加を目指し話し合いを重ね、体制をとった。地域のイベントに参加しアピールをすると共に、地域との繫がりを持ち関わる事によって、いろいろな勉強をさせてもらっている。当日は4歳からの参加~大人サポーター84歳までの多世代の関わり、地域との協働で成り立ったまちである。 歴史 第1回 2007年 3月24日・25日 武蔵野市立大野田小学校 第2回 2008年 3月29日・30日 武蔵野市立大野田小学校 第3回 2009年 3月29日・30日 武蔵野市立大野田小学校 (予定) 仕事ブース 当市のこどものまちの仕事ブースは●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●という特徴を持つ。 例年用意される、または少数回でも特徴的に設置された仕事ブースは、次の通り。 【公共系】:市役所、警察、銀行、大学、清掃局、職安、病院、幼稚園、放送局、観光ガイド(大人向け) 【創作系】:アクセサリー屋、花屋、お絵かき屋、工芸社 【娯楽系】:イベント会社、ゲームセンター、映画館 【食べ物系】:駄菓子屋、飲み物屋、ホットボール屋、パン耳スナック屋、石窯焼きピザ屋、お好み焼き屋、タウン汁屋、おにぎり屋、サンドウィッチ屋、お汁粉屋 特徴的ブース:おとな村 大人の会議(例) こどものまちを主催する大人による会議は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 子どもの会議(例) こどものまちの主役である子どもによる会議は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 話題 (始まりの頃の特筆すべき点) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 (現在の特筆すべき点) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 (外部の協力者) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 主催団体 子どもの参画をすすめる会 事務局: 〒180-0001 武蔵野市吉祥寺北町5-6-19 けやきコミュニティセンター内 Tel 080-6809-5843 / Fax 0422-54-8719 musashino-minitown2007@ezweb.ne.jp 参考文献 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 関連項目 この時代に、むさしのミニタウンを経験した当時の子ども達が中心となり、2020年から「Teens Townむさしの」が、同地で開催されています。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/233.html
子どもの権利委員会・一般的意見17号:休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利(第31条)前編 一般的意見一覧 子どもの権利委員会 第62会期(2013年1月14日~2月1日) CRC/C/GC/17(2013年4月17日/原文英語 日本語訳:平野裕二〔日本語訳全文(PDF)〕 目次 I.はじめに(パラ1-6) II.一般的意見の目的(パラ7) III.子どもたちの生活における第31条の意義(パラ8-13) IV.第31条の法的分析(パラ14-15)A.第31条1項(パラ14) B.第31条2項(パラ15) V.条約のより幅広い文脈における第31条(パラ16-31)A.条約の一般原則とのつながり(パラ16-19) B.他の関連の権利とのつながり(パラ20-31) VI.第31条の実現のための環境づくり(パラ32-47) → 休息・遊び等に対する子どもの権利(31条)後編A.最適な環境の諸要素(パラ32) B.第31条の実現において対処すべき課題(パラ33-47) VII.第31条に基づく諸権利を実現するために特別な注意を必要とする子どもたち(パラ48-53) VIII.締約国の義務(パラ54-59) IX.普及(パラ60-61) I.はじめに 1.すべての子どもの生活において遊びおよびレクリエーションが重要であることは、国際社会によってかねてから認められてきた。そのことは、1959年の国連・子どもの権利宣言において、「子どもは、遊びおよびレクリエーションのための十全な機会を有する。……社会および公の機関は、この権利の享有を促進するために努力しなければならない」(第7条)と宣言されていることに明らかである。この宣言は、1989年の子どもの権利条約(条約)が第31条で次のように明示的に述べたことによって、さらに強化された。「締約国は、子どもが、休息しかつ余暇をもつ権利、その年齢にふさわしい遊びおよびレクリエーション的活動を行う権利、ならびに文化的生活および芸術に自由に参加する権利を認める」 2.しかしながら委員会は、条約に基づく子どもの諸権利の実施状況の審査に基づき、第31条に掲げられた諸権利に対する各国の認識が不十分であることを懸念している。子どもたちの生活におけるこれらの権利の意義が十分に認識されていないことから、適切な条件整備のための投資が行なわれず、保護のための法制が薄弱であるかまったく存在せず、かつ、国・地方のレベルにおける計画策定にあたって子どもたちが不可視化されることになっている。投資が行なわれる場合でも、構造化・組織化された活動の提供に対するものであることが一般的であるが、同じぐらい重要なのは、自然発生的な遊び、レクリエーションおよび創造性のための時間と空間を創り出す必要があること、ならびに、このような活動を支援しかつ奨励する社会の態度を促進することである。 3.委員会は、第31条に定められた諸権利の平等な享受および条件について、特定のカテゴリーの子どもたち(とくに女子、貧しい子ども、障害のある子ども、先住民族の子ども、マイノリティに属する子ども等)が困難に直面していることを、とりわけ懸念する。 4.さらに、子どもたちが成長する世界で生じている根本的変化により、第31条に定められた諸権利を享受する子どもの機会に大きな影響が及んでいる。都市人口、とくに開発途上国におけるそれは著しく増加しており、あらゆる形態の――家庭、学校、マスメディアおよび路上における――暴力も、同様に世界中で増加している。これらの現象が持つ意味合いは、遊びの条件整備の商業化ともに、レクリエーションならびに文化的・芸術的活動への子どもたちの参加形態に影響を及ぼしている。富裕国および貧困国双方の多くの子どもたちにとって、児童労働、家事労働、または教育上の要求の高まりは、これらの権利を享受するために利用できる時間の減少につながっている。 5.この一般的意見は、これらの懸念に対応し、すべての子どもの生活・発達における第31条の諸権利の中心的重要性についての各国の位置づけ、意識および理解を向上させ、かつ、当該諸権利の実施を確保するための措置を詳しく明らかにするよう各国に促すために作成された。第31条の諸権利は、世界の多様なコミュニティおよび社会において普遍的に適用されるものであり、かつ文化的なすべての伝統および形態を尊重するものである。これらの権利は、子どもが住んでいる場所、子どもの文化的背景または子どもの親の地位に関わらず、すべての子どもが享受できなければならない。 6.スポーツはそれ自体ひとつの大きな論点であるため、この一般的意見では傍論的にしか触れていない。文化的生活については、自己の文化を享受する子どもの権利に関する第30条で取り入れられているより幅広い定義ではなく、創造的または芸術的生活に関連する側面に主として焦点を当てている。 II.一般的意見の目的 7.この一般的意見は、子どもたちのウェルビーイングおよび発達にとっての第31条の重要性についての理解を増進させ、第31条に基づく諸権利および条約上のその他の権利の尊重を確保しおよびその適用を強化し、ならびに、以下の点について判断するための同条の含意を強調しようとするものである。 (a) 同条に定められた諸権利の実現および全面的実施を目的としたすべての実施措置、戦略およびプログラムの立案に際して国が必然的に負う義務。 (b) 民間セクター(レクリエーション、文化的活動および芸術的活動の分野で活動する企業ならびに子どもたちに対してこのようなサービスを提供している市民社会組織を含む)の役割および責任。 (c) 遊びおよびレクリエーションの分野で行なわれるすべての活動に関する、子どもたちとともに活動するすべての個人(親を含む)を対象とした指針。 III.子どもたちの生活における第31条の意義 8.第31条は、その構成要素の面でも、条約全体との関係においても、ホリスティックに理解されなければならない。第31条の各要素は相互に連携・強化しあっており、実現されれば子どもたちの生活を豊かにすることにつながる。これらの要素は、一体となって、子ども時代が有する比類のない、かつ発展しつつある性質を保護するために必要な条件を表しているのである。その実現は、子ども時代の質にとって、最適な発達に対する子どもたちの権利にとって、回復力の促進にとって、そして他の諸権利の実現にとって、基本的重要性を有する。たとえば、遊びおよびレクリエーションの機会がすべての子どもにとって利用可能な環境は、創造性を発揮するための条件を与えてくれるものである。自ら主導する遊びを通じて能力を行使する機会があれば、やる気、身体活動性およびスキルの発達が増進される。文化的生活に没頭すれば、楽しみに満ちた交流が豊かになる。休息は、子どもたちが遊びや創造的やりとりに参加するために必要なエネルギーおよびやる気を持てるようにすることにつながる。 9.遊びとレクリエーションは、子どもたちの健康とウェルビーイングにとって本質的に重要であり、また創造性、想像力、自信、自己効力感ならびに身体的、社会的、認知的および情緒的な力およびスキルの促進につながる。それは学習のすべての側面に資するものである [1]。それは日常生活への参加の一形態であり、純粋にそこから得られる楽しみと喜びの点で、子どもにとって本質的価値を有する。調査研究で得られた証拠では、遊びは子どもたちの自然発生的な発達動因にとっても中心的重要性を有しており、かつ、とくに乳幼児期には脳の発達において重要な役割を果たしていることが強調されている。遊びとレクリエーションは、交渉し、情緒的バランスを回復し、紛争を解決し、かつ物事を決める子どもたちの能力を促進する。遊びとレクリエーションに参加することを通じて、子どもたちはなすことによって学び、身のまわりの世界を探求しかつ経験し、新しい観念、役割および経験を試し、かつ、そうすることによって、世界における自分の社会的立場を理解しかつ構築していくことを覚える。 [1] UNESCO, Education for the twenty-first century issues and prospects (Paris, 1998). 10.遊びとレクリエーションはいずれも、子どもたちがひとりでいるとき、仲間といっしょにいるとき、または支援的なおとなといっしょにいるときに行なわれうる。愛情と配慮に満ちたおとなが遊びを通じて子どもたちと関わるなかで、子どもたちの発達が支えられる場合がある。子どもたちとともに遊びに参加することは、おとなに対し、子どもの視点に関するかけがえのない洞察および視点を与えてくれるものである。このような参加は、世代間の尊重を築いていくことにつながり、子ども・おとな間の有効な理解と意思疎通に貢献し、かつ、指導および刺激を提供する機会を与えてくれる。子どもたちにとっても、おとなが関与するレクリエーション活動(組織化されたスポーツ、遊戯その他のレクリエーション活動への自発的参加を含む)は利益となる。ただし、おとなによる統制が行き渡りすぎて、遊びの活動を組み立てかつ実行しようとする子ども自身の努力が阻害される場合には、とくに創造性、リーダシップおよび団体精神の発達の面で、これらの利益は減殺される。 11.コミュニティの文化的生活への参加は子どもたちの所属感における重要な要素のひとつである。子どもたちは、自己の家族、コミュニティおよび社会の文化的・芸術的生活を受け継いで経験し、かつ、そのプロセスを通じ、自分自身のアイデンティティの感覚を見出して築き上げていく。子どもたちはまた、文化的生活および伝統的芸術の刺激および持続可能性にも貢献する。 12.また、子どもたちは、想像遊び、歌、ダンス、アニメ、物語、絵、遊戯、路上演劇、人形劇、祭り等を通じて、文化を再生産し、変容させ、創造し、かつ伝達していく。おとなおよび仲間との関係から身のまわりの文化的・芸術的生活を理解するようになるにつれ、自分たち自身の世代的経験を通じてその意味を解釈・修正していく。仲間との関わりを通じて、自分たち自身の言葉、遊戯、秘密の世界、空想およびその他の文化的知識を創造・伝達していく。子どもたちの遊びは、学校やその他の遊び場での遊戯から、ビー玉遊び、フリーランニング、ストリートアート等の市街活動に至るまでの「子ども時代の文化」を生み出していく。子どもたちはまた、新たなコミュニケーション手段や社会的ネットワークを確立するデジタルプラットフォームおよびバーチャルワールドも最前線で活用しており、そこからさまざまな文化的環境や芸術的形態が創り出されつつある。文化的・芸術的活動への参加は、自分たち自身の文化のみならず他者の文化に関する理解を築いていくためにも重要である。このような参加は、視野を広げ、かつ他の文化的・芸術的伝統から学ぶ機会を提供することにより、相互理解および多様性の評価に貢献するためである。 13.最後に、休息と余暇は、基礎的な栄養、住居、保健ケアおよび教育と同じぐらい子どもたちの発達にとって重要である。十分な休息を得られなければ、子どもたちは、意味のある参加・学習のための元気、やる気ならびに身体的・精神的能力を持てない。休息・余暇を否定することは、子どもたちの発達、健康およびウェルビーイングに対してとりかえしのつかない身体的・心理的影響を及ぼす可能性がある。子どもたちには、自らの選択によって思いどおりのことをしながらまたはとくに何もせずに過ごすことのできる、余暇(義務、与えられた娯楽または刺激のない時間および空間)も必要である。 IV.第31条の法的分析 A.第31条1項 14.締約国は、以下のことに対する子どもの権利を認めている。 (a) 休息(rest):休息に対する権利を保障するためには、子どもたちに対し、その最適な健康およびウェルビーイングを確保する目的で、仕事、教育または何らかの努力から一時的に解放される十分な時間が与えられることが必要である。また、十分な睡眠をとる機会の提供も必要となる。活動からの解放および睡眠時間双方に対する権利を充足するにあたっては、発達しつつある子どもの能力および子どもの発達上のニーズが顧慮されなければならない。 (b) 余暇(leisure):余暇とは、遊びまたはレクリエーションが行なわれうる時間をいう。これは、正規の教育、仕事、家事責任、その他の生命維持活動の遂行、または本人以外の者から支持された活動への従事をともなわない、自由時間または何らの義務も負わない時間と定義される。換言すれば、これは、子どもの思いどおりに使用される、主として自由裁量の時間である。 (c) 遊び(play):子どもの遊びとは、子どもたち自身が主導し、統制しかつ組み立てる振る舞い、活動またはプロセスである。それは、機会があればいつでも、そしてどこでも行なわれる。養育者は、遊びが行なわれる環境づくりに寄与することはできるものの、遊びそのものは、非義務的なものであり、内発的動機に基づくものであり、目的のための手段としてではなくそれ自体を目的として行なわれるものである。遊びには、自主性の行使および身体的、精神的または情緒的活動がともない、また、集団遊びであれ一人遊びであれ、無限の形態をとる潜在的可能性がある。このような遊びの形態は、子ども時代を通じて変化し、修正されていく。遊びの主たる特徴は、楽しさ、不確定さ、挑戦、柔軟性および非生産性である。これらの要素があいまって、遊びが生み出す楽しみと、その結果として生じる、遊びを続けたいという動機に貢献する。遊びは必要不可欠なものではないと考えられることが多いが、委員会は、遊びが子ども時代の喜びの基本的かつ枢要な側面であり、かつ身体的、社会的、認知的、情緒的および霊的発達に不可欠な要素であることを再確認するものである。 (d) レクリエーション的活動(recreational activities):レクリエーションとは、非常に範囲の広い活動(とくに、音楽、芸術、手工芸、地域活動、クラブ、スポーツ、遊戯、ハイキングおよびキャンピングへの参加ならびに趣味の追求を含む)を表すのに用いられる包括的用語である。これは、それによって直ちに満足感がもたらされるために、またはそれを成し遂げることによって何らかの個人的・社会的価値を得られると考えるために、子どもたちが自発的に選択する活動または経験によって構成される。こうした活動は、レクリエーションのためにとくに用意された場所で行なわれることが多い。こうした活動の多くはおとなによって組織・運営されるものであるかもしれないが、レクリエーションは自発的活動であるべきである。義務的・強制的な遊戯およびスポーツ、または青少年団体への強制的参加は、レクリエーションではない。 (e) 子どもの年齢にふさわしい(appropriate to the age of the child):条約は、子どもの年齢にふさわしい活動の重要性を強調している。遊びとレクリエーションに関しては、十分な自由時間の保障、利用可能な空間・環境の性質、諸形態の刺激および多様性、ならびに、安全および安心を確保するために必要なおとなによる監督および関与の度合いについて判断するに際し、子どもの年齢が考慮されなければならない。子どもたちの成長につれ、子どもたちが必要とし、かつ望むものは、遊びの機会を提供してくれる環境から、社会化する機会、仲間といっしょにいる機会またはひとりでいる機会を与えてくれる場所へと変化していく。また、あえて危険を冒したり挑戦したりする行為をともなう機会も、徐々により多く探求するようになる。これは青少年にとって発達上必要な経験であり、アイデンティティおよび居場所の発見に資するものである。 (f) 文化的生活および芸術(cultural life and the arts):委員会としては、子どもたちおよびそのコミュニティは、文化的生活および芸術を通じてこそ、自己の具体的アイデンティティを表出し、自らの存在に対して与える意味を明らかにし、かつ、自己の生活に影響を与える外部のさまざまな力との遭遇を説明する世界観を構築していくのであるという見解 [2] を支持する。文化的・芸術的表現は、家庭、学校、路上および公共空間において、またダンス、フェスティバル、手工芸、セレモニー、儀式、演劇、文学、音楽、映画、展示会、撮影フィルム、デジタルプラットフォームおよびビデオを通じて、展開・享受される。文化はコミュニティ全体から生まれるものであり、いかなる子どもも、文化の創造または文化の利益へのアクセスを否定されるべきではない。文化的生活は、上から押しつけられるのではなく文化およびコミュニティの内部から生ずるものであって、締約国の役割は、供給役ではなく促進役としてあることである [3]。 (g) 自由に参加する(participate freely):文化的生活および芸術に自由に参加する子どもの権利を保障するためには、締約国は、子どもの保護および子どもの最善の利益の促進を確保する義務に服するかぎりで、子どもによるこれらの活動へのアクセス、活動の選択および活動への関与を尊重し、かつこれに干渉しないようにしなければならない。締約国はまた、他の者がこの権利を制限しないことも確保しなければならない。これらの権利を行使するか否かの決定は子どもによる選択であり、そのようなものとして承認・尊重・保護されるべきである。 [2] 社会権規約委員会「文化的生活に参加するすべての者の権利に関する一般的意見21号」(2009年)、パラ13。 [3] UNESCO, "Mexico City Declaration on Cultural Policies World Conference on Cultural Policies, Mexico City, 26 July - 6 August 1982参照。 B.第31条2項 15.締約国は、子どもが以下のことをする権利を尊重しかつ促進しなければならない。 (a) 「文化的生活および芸術に十分に参加すること(participate fully in cultural and artistic life):十分に参加する権利には、相互に関係し、かつ相互に強めあう3つの側面がある。(i) アクセスは、子どもたちに対し、文化的・芸術的生活を経験し、かつ幅広い形態の表現について学ぶ機会が与えられることを必要とさせる。 (ii) 参加のためには、個人としての子どもまたは集団としての子どもたちに対し、その人格を全面的に発達させられるよう、自由に自己表現し、コミュニケーションし、行動し、かつ創造的活動に従事する具体的機会が保障されなければならない。 (iii) 文化的生活への寄与には、文化および芸術の精神的、物質的、知的および情緒的表出に寄与し、もって自己が所属する社会の発展および変容を進展させる子どもたちの権利が包含される。 (b) 適当な機会の提供の奨励(encourage the provision of appropriate opportunities):適当な機会の提供を奨励しなければならないという第2項の要件では文化的、芸術的、レクリエーション的および余暇的活動が挙げられているのみであるが、委員会は、条約第4条にしたがい、これには遊びも含まれると解釈する。したがって、締約国は、第31条に基づく諸権利を実現するための機会の便宜を図りかつこれを促進する目的で、参加のために必要かつ適切な前提条件を確保しなければならない。子どもたちが自己の権利を実現できるのは、立法面、政策面、予算面、環境面およびサービス面で必要な枠組みが整備されている場合のみである。 (c) 平等な機会の提供(provision of equal opportunities):すべての子どもに対し、第31条に基づく諸権利を享受する平等な機会が与えられなければならない。 V.条約のより幅広い文脈における第31条 A.条約の一般原則とのつながり 16.第2条(差別の禁止に対する権利):委員会は、子どもまたはその親もしくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、財産、障害、出生またはその他の地位に関わらず、すべての子どもが、いかなる種類の差別もなしに第31条に基づく自己の権利を実現する機会を有することを確保するために、締約国があらゆる適当な措置をとられなければならないことを強調する。一部集団の子どもの権利への対応に対し、特段の注意が向けられるべきである。このような子どもには、とくに、女子、障害のある子ども、劣悪なまたは危険な環境下で暮らしている子ども、貧困下で暮らしている子ども、刑事施設、保健施設または入所施設に措置されている子ども、紛争または人道的災害の状況にある子ども、農村部の子ども、子どもの庇護希望者および難民、路上の状況にある子ども、遊動民族集団、移住者または国内避難民である子ども、先住民族の子どもおよびマイノリティ集団の子ども、働いている子ども、親のいない子ども、ならびに、成績面で相当の圧力を受けている子どもが含まれる。 17.第3条(子どもの最善の利益):委員会は、第31条の諸権利の実現は必然的に子どもの最善の利益にのっとったものであることを強調する。子どもの最善の利益を考慮する義務は、個人としての子どもについても、集合的存在または特定集団としての子どもたちについても、いずれの場合にも適用される。立法上、政策上および予算上のすべての措置ならびに環境整備またはサービス提供に関わる措置であって第31条の諸権利に影響を与える可能性があるものにおいては、子どもの最善の利益が考慮されなければならない。このことは、たとえば、とくに健康および安全、固形廃棄物の処理および収集、住宅および交通の計画、都市景観の設計およびアクセス可能性、公園その他の緑地の整備、就学時間の決定、児童労働および教育に関する法律、計画の適用、またはインターネット上のプライバシーについて定める法律などについて当てはまろう。 18.第6条(生命、生存および発達に対する権利):締約国は、可能なかぎり最大限に子どもの生命、生存および発達を確保しなければならない。これとの関連で、委員会は、子どもの発達および発達しつつある能力を促進するに際して第31条の各側面の積極的価値を承認する必要があることに、注意を喚起するものである。そのためにはまた、第31条を実施するために導入される措置が全年齢の子どもの発達上のニーズにしたがっていることも求められる。締約国は、子どもの発達における遊びの中心性に関する意識および理解を、親、養育者、政府職員ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家の間で促進するべきである。 19.第12条(意見を聴かれる権利):子どもたちは、個人としておよび集団として、自己に関わるすべての事柄について意見を表明する権利を有しており、その意見は子どもの年齢および成熟度にしたがって正当に尊重されるべきであって、また必要なときは子どもたちに対して意見表明のための十分な支援が与えられるべきである。子どもたちには、遊びおよびレクリエーション活動において、また文化的・芸術的活動への参加について、選択および自己決定を行使する権利がある。委員会は、第31条に基づく諸権利の実施を確保するための立法、政策、戦略およびサービス立案の発展に子どもたちが貢献する機会の重要性を強調するものである。このような貢献には、たとえば、遊びやレクリエーションに関連する政策、教育権ならびに学校運営・カリキュラムに影響を与える立法または児童労働についての保護法制、公園その他の地域施設の開発、都市計画ならびに子どもにやさしいコミュニティおよび環境の設計に関する協議に子どもたちが参加することが含まれようし、遊びまたは学校およびより幅広いコミュニティにおけるレクリエーションおよび文化的活動の機会について子どもたちにフィードバックを求めることも考えられよう[4]。 [4] 子どもの権利委員会「意見を聴かれる子どもの権利に関する一般的意見12号」(2009年)参照。 B.他の関連の権利とのつながり 20.第13条:表現の自由に対する権利は、文化的・芸術的活動に自由に参加する権利にとって基本的重要性を有する。子どもたちには、法律が定める制限であって、他の者の権利および信用の尊重を確保するためにまたは公の秩序および公衆の健康もしくは道徳を保護するために必要な制限に服することを条件として、自ら選択するいかなる方法によっても自己表現を行なう権利がある。 21.第15条:子どもたちは、友達関係において、また社交団体、文化団体、スポーツ団体その他の形態の団体のメンバーとなることについて、選択権を行使する権利を有する。結社の自由は、第31条に基づく諸権利の不可欠な側面である。子どもたちは共同して、おとなと子どもとの関係ではめったに実現されることのない諸形態の想像遊びを生み出す。協力、寛容、分かち合いおよび創意工夫を学ぶために、子どもたちには両性の仲間ならびに能力、階層、文化および年齢が異なる人々との関わり合いが必要である。遊びとレクリエーションは、友達関係を育む機会を生み出すとともに、市民社会の強化、社会的・道徳的・情緒的発達への寄与、文化の形成およびコミュニティの構築において鍵となる役割を果たし得る。締約国は、子どもたちがコミュニティ・レベルで仲間たちと自由に集まれるようにするための機会を促進しなければならない。また、結社を設立し、結社に加入しおよび結社から脱退する子どもたちの権利ならびに平和的な集会に対する子どもたちの権利も尊重・支援しなければならない。ただし、子どもたちは団体への参加または加入をけっして強要されるべきではない。 22.第17条:子どもたちは、社会的・文化的価値があり、かつコミュニティおよび国内外の多様な情報源から得られる情報および資料に対する権利を有する。このような情報および資料へのアクセスは、文化的・芸術的活動に自由に参加する子どもたちの権利の実現にとって不可欠である。締約国は、子どもたちが、さまざまな媒体を通じ、自分たちが理解する言語(手話および点字を含む)で、かつ印刷媒体が代替的形態で入手できることを確保するために著作権法の例外を認めることによって、自分たち自身の文化および他の文化に関連する情報および資料に可能なかぎり幅広くアクセスできることを確保するよう、奨励される。その際には、文化的多様性を保護・維持し、かつ文化的ステレオタイプを回避するよう、配慮がされなければならない。 23.第22条:子どもの難民・庇護希望者は、自分たち自身の伝統・文化からの切断ならびに受入れ国の文化からの排除の双方を経験していることが多く、第31条に基づく諸権利の実現に関して甚大な課題に直面する。子どもの難民・庇護希望者が第31条に定められた諸権利の享受に関して受入れ国の子どもたちと平等の機会を有することを確保するため、努力が行なわれなければならない。自分たち自身のレクリエーション的、文化的および芸術的伝統を保持・実践する子どもの難民の権利も承認されなければならない。 24.第23条:障害のある子どもたちが第31条に基づく諸権利を享受できるようにするため、このような子どもたちに対してアクセシブルかつインクルーシブな環境および施設が利用可能とされなければならない [5]。家族、養育者および専門家は、障害のある子どもたちにとっての、インクルーシブな遊びが有する権利としての価値および最適な発達を達成する手段としての価値の双方を認識する必要がある。締約国は、おとなおよび同世代の子どもたちの意識啓発を図り、かつ年齢にふさわしい支援または援助を提供することにより、障害のある子どもたちが対等かつ主体的な参加者として遊び、レクリエーションならびに文化的・芸術的生活に参加する機会を促進するべきである。 [5] 障害のある人の権利に関する条約第7条、第9条および第30条参照。 25.第24条:第31条に定められた諸権利を実現することは子どもたちの健康、ウェルビーイングおよび発達に寄与するのみならず、子どもが病気のときまたは入院しているときに第31条に基づく諸権利を享受できるよう適切な条件整備を行なうことは、その回復を促進するうえで重要な役割を果たすことになろう。 26.第27条:不十分な生活水準、不安定なもしくは過密な生活条件、安全ではなくかつ不衛生な環境、不十分な食事、または有害なもしくは搾取的な労働の強制はいずれも、子どもたちが第31条に基づく諸権利を享受する機会を制約・否定することにつながりうる。締約国は、社会的保護、雇用、住宅、および、子どもたち(とくに自宅で遊びやレクリエーションの機会を持てずに暮らしている子どもたち)にとっての公共空間へのアクセスに関わる政策を策定する際、第31条に基づく子どもたちの権利にとっての意味合いを考慮するよう奨励されるところである。 27.第28条・第29条:教育は、子どもの人格、才能ならびに精神的・身体的能力を可能なかぎり最大限に発達させることを目的として行なわれなければならない。第31条に基づく諸権利を実施することは、第29条に定められた権利の遵守の達成にとって不可欠である。子どもたちがその潜在的可能性を最大限に発揮するためには、文化的・芸術的発達ならびにスポーツや遊戯への参加の機会が必要となる。委員会はまた、第31条に基づく諸権利が子どもたちの教育上の発達にとっても積極的利益を有することを強調する。インクルーシブな教育とインクルーシブな遊びは相互に強化しあうものであって、乳幼児期の教育およびケア(就学前学校)ならびに初等中等学校の全期間を通じ、日常的課程のなかで促進されるべきである。遊びは、すべての年齢の子どもたちにとって関連性および必要性を有している一方で、就学初期においてはとりわけ重要なものとなる。調査研究により、遊びが子どもたちの重要な学習手段であることは実証されてきた。 28.第30条:民族的、宗教的または言語的マイノリティの子どもたちに対しては、自分たち自身の文化を享受し、かつこれに参加することが奨励されるべきである。国は、マイノリティ・コミュニティ出身の子どもたちおよび先住民族の子どもたちの文化的特殊性を尊重するとともに、これらの子どもたちに対し、自分たち自身の言語、宗教および文化を反映した文化的・芸術的活動に参加する、マジョリティのコミュニティの子どもたちと平等な権利が与えられることを確保するよう、求められる。 29.第32条:委員会は、多くの国で、子どもたちが、第31条に基づく権利を否定する重労働に従事していることに留意する。加えて、数百万人の子どもたちが、子ども時代のほとんどを通じて、家事労働者として、または家族とともに危険ではない仕事に従事しながら働いており、十分な休息または教育を与えられていない。締約国は、第31条に基づく諸権利を侵害する労働条件からすべての働く子どもたちを保護するため、あらゆる必要な措置をとらなければならない。 30.第19条・第34条・第37条・第38条:暴力、性的搾取、不法なまたは恣意的手段による自由の剥奪および武力紛争における軍務の強制は、遊び、レクリエーションならびに文化的生活・芸術への参加を享受する子どもたちの能力を深刻に阻害し、または消滅さえさせてしまう条件を課すものである。他の子どもによるいじめも、第31条に基づく諸権利を阻害する重大な要因となりうる。これらの権利は、締約国が、子どもたちをこのような行為から保護するために必要なあらゆる措置をとって初めて実現可能となるのである。 31.第39条:締約国は、ネグレクト、搾取、虐待または他のいずれかの形態の暴力を経験した子どもたちに対し、回復および再統合のための支援がされることを確保するべきである。苦痛や危害をともなうものも含む子どもたちの経験は、遊びまたは芸術表現を通じて伝達される場合がある。第31条に基づく諸権利を実現する機会は、過去を理解し、かつ未来によりよく対処していくために、トラウマ性のまたは困難な人生経験を遊びという形で表出する貴重な手段となりうる。子どもたちは、そうすることによって、コミュニケーションを図り、自分自身の感情や思いについての理解を深め、心理社会的課題を予防・解決し、かつ、自然な、自主的かつ自己治癒的なプロセスを通じて人間関係および紛争に対応していく方法を学ぶことができるようになるのである。 (休息・遊び等に対する子どもの権利(31条)後編へ続く) 更新履歴:ページ作成(2013年5月15日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/27.html
子どもの権利委員会・一般的意見13号:あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利(3) あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利(2)より続く V.より幅広い条約上の文脈における第19条の解釈 59.子どもの権利アプローチの定義。権利を有する者としての子どもの尊厳、生命、生存、ウェルビーイング、健康、発達、参加および非差別を尊重することを、子どもに関わる締約国の政策の際立った目標として確立および擁護することが求められる。これを実現する最善の方法は、条約(およびその選択議定書)に掲げられたすべての権利を尊重、保護および履行することである。そのためには、子どもが、保護に対する不可譲の権利を有する権利の保有者としてではなく、援助を必要とする「客体」として見なされかつ扱われる子どもの保護アプローチからの、パラダイム転換が必要となる。子どもの権利アプローチは、差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益の考慮(第3条第1項)、生命、生存および発達(第6条)ならびに子どもの意見の尊重(第12条)を常に指針としながら、義務の保有者が権利を尊重、保護および履行する義務を果たす能力および権利の保有者が自己の権利を請求する能力を発展させることにより、条約に掲げられた子どもの権利の実現を前進させるアプローチである。子どもはまた、自己の権利を行使するにあたり、子どもの発達しつつある能力にしたがって、養育者、親およびコミュニティの構成員による指示および指導を受ける権利も有する(第5条)。この子どもの権利アプローチはホリスティックであり、子ども自身の、そして子どもがその一員であるすべての社会システム(家族、学校、コミュニティ、諸制度、宗教的システムおよび文化的システム)の強さおよび資源を支えることを重視するものである。 60.第2条(差別の禁止)。委員会は、あらゆる形態の暴力からの保護に対する権利を、すべての子どもに対して、「子どもまたは親もしくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、財産、障害、出生またはその他の地位にかかわらず、いかなる種類の差別もなしに」保障するために、締約国が十分な措置をとらなければならないことを強調する。これには、商業的性的搾取を受けた子ども、路上の状況にある子どももしくは法に抵触した子どもへの偏見に基づく差別、または子どもの衣服および行動に基づく差別も含まれる。締約国は、この一般的意見のパラ72(g)に掲げた子どものような、被害を受けやすい状況に置かれたまたは周縁化された集団の子どもに対する差別に対応するとともに、このような子どもが他のすべての子どもとの平等を基礎として保護に対する権利を保障されることを確保するために積極的努力を行なわなければならない。 61.第3条(子どもの最善の利益)。委員会は、子どもの最善の利益の解釈が、条約全体(あらゆる形態の暴力から子どもを保護する義務も含む)に一致するものでなければならないことを強調する。子どもの最善の利益の解釈を、子どもの人間の尊厳および身体的不可侵性に対する権利と衝突する慣行(体罰および他の形態の残酷なまたは品位を傷つける罰を含む)を正当化するために用いることはできない。子どもの最善の利益に関するおとなの判断により、条約に基づく子どものすべての権利を尊重する義務が無効化されることはありえない。委員会はとくに、子どもの最善の利益は以下の方法を通じてもっともよい形でかなえられることを主張するものである。 (a) 国家的な調整枠組みのなかで第一次予防に焦点を当てる必要性を重視しながら、あらゆる形態の暴力を防止し、かつ前向きな子育てを促進すること。 (b) 子どもの権利を基盤とする統合的な子ども保護・支援システムの実施に振り向けられる人的、財政的および技術的資源に対し、十分な投資を行なうこと。 62.第6条(生命、生存および発達)。あらゆる形態の暴力からの保護は、「生命」および「生存」に対する子どもの権利のみならず「発達」に対する権利の観点からも考慮されなければならず、かつ「発達」は子どもの保護という全般的目標に沿って解釈されなければならない。したがって、締約国の義務には、生命、生存および発達に対する子どもの権利を損なう暴力および搾取からの包括的保護も含まれる。委員会は、各国が、ホリスティックな概念としての「発達」をもっとも広く、すなわち子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的、心理的および社会的発達を包含するものとして解釈するよう期待する。実施措置においては、すべての子どもの最適な発達を達成することが目的とされるべきである。 63.第12条(意見を聴かれる権利)。委員会の見解では、子ども参加は保護を促進するのであり、かつ子どもの保護は参加の鍵である。意見を聴かれる子どもの権利は、暴力の被害をとくに受けやすい乳幼児からすでに始まっている。子ども保護プロセスのあらゆる段階で、義務的措置として子どもの意見が促され、かつ正当に重視されなければならない。意見を聴かれる子どもの権利は、暴力の状況においてとりわけ関連性を有する(委員会の一般的意見12号(2009年)、パラ118以下参照)。家族および子育てに関して、委員会は、この権利が、家庭および家族におけるあらゆる形態の暴力に対する予防的役割を果たすと表明した。委員会はさらに、防止戦略一般および学校における防止戦略の策定、とくに学校におけるいじめその他の形態の暴力の解消および防止への子ども参加の重要性を強調する。子どもたち自身の暴力解消能力の強化を目的とした取り組みおよびプログラムが支援されるべきである。暴力を経験することは本質的にディスエンパワーメントにつながるので、子どもの保護のための介入が子どものさらなるディスエンパワーメントをもたらすのではなく、むしろ慎重なファシリテーションに基づく参加を通じてその回復および再統合に寄与することを確保するため、配慮のある措置が必要である。委員会は、とくに周縁化されたおよび(または)差別された集団が参加の障壁に直面していることに留意する。子どもは暴力の影響をもっとも受ける集団のひとつであることが多いため、これらの障壁に対応することは、子どもの保護にとってとりわけ関連性がある。 64.条約の以下の2つの条項も総括的な関連性を有しており、第19条の実施にとってとりわけ重要である。 65.第4条(適当な措置)。第4条は、締約国に対し、条約上のすべての権利(第19条を含む)を実施するためにあらゆる適当な措置をとる義務を課している。条約第4条の適用に際しては、第19条に掲げられたあらゆる形態の暴力から保護される権利は市民的権利および自由のひとつであることが留意されなければならない。したがって、第19条の実施は、締約国が有する即時的かつ無条件の義務である。第4条に照らし、国は、自国の経済的事情がいかなるものであろうと、子どもの権利の実現に向けてあらゆる可能な措置をとることを要求される。その際、もっとも不利な立場にある集団に特別な注意を払うことが必要である(委員会の一般的意見5号、パラ8参照)。同条は、利用可能な資源が最大限活用されなければならないことを強調している。 66.第5条(発達しつつある能力に一致した指示および指導)。第19条を実施するためには、子どもの養育および保護ならびに暴力の防止における親、拡大家族、法定保護者およびコミュニティの構成員の第一義的重要性を認めかつ支えることが必要である。このアプローチは、条約で認められた権利(第19条を含む)を子どもが行使するにあたって、子どもの能力の発達と一致する方法で適当な指示および指導を行なう養育者の責任、権利および義務の尊重を促進する、第5条と一致している。(国家的な調整枠組みおよび家族に関わるその他の条項の文脈における家族の第一義的重要性について、パラ72(d)も参照。) 67.その他の関連条項。条約には、暴力および子どもの保護に明示的または黙示的に関連する条項が多数含まれている。第19条はこれらの条項とあわせて理解されるべきである。このような包括的言及は、あらゆる形態の暴力が子どもの権利の実施に与えている広範な脅威を考慮に入れ、かつ生活および発達のあらゆる状況において子どもの保護を確保することの必要性を実証している。 VI.子どもに対する暴力についての国家的調整枠組み 68.国家的行動計画を超えて。委員会は、子どもの権利を実施するために締約国が採択した多くの国家的行動計画に、子どもに対するあらゆる形態の暴力を禁止、防止および解消するための措置が含まれていることを認める。とはいえ、このような行動計画は、子どもによる自己の権利の享受の増進に貢献する一方で、その実施、監視、評価およびフォローアップの面で多くの課題に直面してきた。たとえば、このような行動計画は、開発に関わる全般的な政策、プログラム、予算および調整機構との結びつきを欠いていることが多い。より実行可能かつ柔軟な手段を確立するため、委員会は、子どもをあらゆる形態の暴力から保護しかつ保護的な環境を支えるための、子どもの権利を基盤とするあらゆる措置を対象とする、「子どもに対する暴力についての調整枠組み」を提案する [24]。このような調整枠組みは、国家的行動計画がまだ存在しない場合または非実際的であることが明らかになりつつある場合、それに代えて活用することが可能である。国家的行動計画がすでに効果的に実施されている場合でも、調整枠組みは、これらの努力を補完し、議論を喚起し、かつその機能を向上させるための新しいアイデアおよび資源を創出することにつながりうる。 [24] 子どもに対する暴力に関する国際連合研究のための独立専門家による網羅的勧告(A/61/299)、パラ96も参照。 69.子どもに対する暴力についての国家的調整枠組み。調整枠組みを設けることにより、政府省庁間で、またあらゆるレベルにおける国および市民社会の行為主体にとっても、第19条で特定されている一連の措置の全般を通じ、かつそこで明らかにされている介入の段階ごとに、必要とされている措置に関わる共通の参照枠組みおよび伝達機構を用意することができる。また、柔軟性および創造性を促進するとともに、政府およびコミュニティが同時並行的に主導しながらも、凝集性を備えかつ調整のとれた全般的枠組みに収まる取り組みの発展および実施を可能にすることにもつながりうる。委員会はすでに、これまでの勧告および一般的意見(実施に関する一般的実施措置についての一般的意見5号を含む)において、締約国に対し、条約の特定の側面(たとえば少年司法または乳幼児期)に関する計画および戦略を策定するよう促してきた。委員会はこのような流れのなかで、あらゆる形態の暴力からの保護(包括的な防止措置を含む)に関する国家的調整枠組みの策定を勧告しているのである。 70.異なる出発点。委員会は、あらゆる形態の暴力から子どもを保護することはほとんどの国において大きな課題であり、かつ、締約国は、既存の法律上、制度上およびサービス上の基盤、文化的習慣および専門家の力量ならびに資源水準の面で非常に異なる状況を出発点として措置を立案および実施しようとしていることを認知する。 71.国家的調整枠組みの策定プロセス。あらゆる形態の暴力からの自由に関するこのような調整枠組みについて、単一のモデルは存在しない。別個の子ども保護システムに投資してきた国もあれば、子どもの権利の実施に関わる主流のシステムに保護に関わる問題を統合するほうが望ましいと考える国もある。システムの実施の成功にとってその発展プロセスがきわめて重要であるのは、経験が示すところである。あらゆる関係集団の上級代表による参加およびオーナーシップを確保するため、熟練したファシリテーションが必要となる。このようなプロセスは、適当な意思決定権限を有し、定期的に会合し、かつ野心的であろうとする覚悟を備えた分野横断型の作業部会を通じて進めることが望ましい。あらゆる形態の暴力を防止しかつこのような暴力からの保護を提供するシステムは、すでに公式・非公式に存在する態勢、サービスおよび組織の長所を発展させる形で構築されるべきである。第19条およびより幅広く条約全体ならびにその他の国際的・地域的人権文書に掲げられた義務に基づいて、かつ、子どもに対する暴力に関する国際連合研究、この一般的意見および追加的実施支援策に掲げられた指針を裏づけとしながら、欠陥を特定および是正することが求められる。国家的な計画策定は、一般公衆に対して全面的に開かれ、かつ政府、NGO、研究者および職業実務の専門家、親ならびに子どもの参加が保障された、透明かつ包摂的なプロセスであるべきである。このようなプロセスは、子どもおよびおとなの双方にとってアクセスしやすくかつわかりやすいものであることが求められる。国家的調整枠組みの費用見積もりおよび財源手当ては、人的資源および技術的資源も含めて全面的に行なわれるべきであり、かつ可能であれば国の子ども予算で提示されるべきである。 72.国家的調整枠組みの主流に位置づけられるべき要素。以下の要素が、(立法上、行政上、社会上および教育上の)種々の措置および(防止から回復および再統合に至る)介入の諸段階全般を通じて主流に位置づけられなければならない。 (a) 子どもの権利アプローチ。このアプローチは、子どもは権利の保有者であり、おとなによる善意の活動の受益者ではないという宣言に基づくものである。これには、調整枠組みおよびそこでとられる具体的措置の立案、実施、監視および評価に際して、子どもまたは子どもたちの年齢および発達しつつある能力を考慮しながら、子どもとの協議および協力ならびに子どもの主体性を尊重しかつ奨励することが含まれる。 (b) 子どもに対する暴力にともなうジェンダーの側面。締約国は、政策および措置において、さまざまな場面で生じているさまざまな形態の暴力との関連で女子および男子が直面している異なるリスクが考慮されることを確保するべきである。国は、包括的な暴力防止戦略の一環としてあらゆる形態のジェンダー差別に対応することが求められる。これには、家庭、学校および教育現場、コミュニティ、労働現場、施設ならびにより幅広い社会における暴力および威迫の使用を支えかつ永続させている、ジェンダーに基づくステレオタイプ、力の不均衡、不平等ならびに差別への対応が含まれる。男性および男子は、戦略的パートナーおよび同盟者として積極的な励ましの対象とされなければならず、かつ、女性および女子とともに、相互の尊重と、ジェンダー差別およびその暴力的表出に終止符を打つ方法についての理解を高める機会を提供されなければならない。 (c) 第一次(一般)予防。詳しくはこの一般的意見のパラ42参照。 (d) 子どもの養育および保護のための戦略における家族の第一次的立場 [25]。家族(拡大家族およびその他の形態の家族型養護体制を含む)は、子どもの保護および暴力の防止に関して最大の潜在的可能性を有している。家族はまた、子どもが自分自身を守るのを支援し、かつそのためのエンパワーメントを図ることもできる。したがって、家族生活を強化し、家族を支え、かつ課題を有する家族とともに活動することが、介入のすべての段階、とくに(望ましい子どもの養育の確立を通じた)防止および早期介入における優先的な子ども保護活動に位置づけられなければならない。ただし委員会は、子どもが経験する暴力(性的虐待を含む)の多くが家族的文脈のもとで生じていることも認め、子どもが家族構成員による暴力にさらされているときは家族に介入する必要があることを強調するものである。 (e) 回復力および保護的要因。回復力および保護的要因、すなわち人身の安全を促進し、かつ虐待およびネグレクトならびにその否定的影響を少なくする内外の長所および支援を理解することは、このうえなく重要である。保護的要因には、安定した家族、子どもの身体的および心理的ニーズを満たすおとなによる愛情に満ちた子育て、前向きかつ非暴力的なしつけ、少なくともひとりのおとなに対する子どもの確固たる愛着、仲間およびその他の者(教員を含む)との支援的関係、向社会的、非暴力的かつ非差別的な態度および行動を醸成する社会環境、コミュニティにおける高水準の社会的結合、ならびに、豊かな社会的ネットワークおよび隣近所のつながりが含まれる。 (f) リスク要因。子ども個人または子どもたちの集団が一般的にまたは特定の文脈においてさらされている可能性があるリスク要因を少なくするため、積極的な、目的志向型の措置がとられなければならない。これには、親のリスク要因(有害物質濫用、精神保健上の問題および社会的孤立など)ならびに家族のリスク要因(貧困、失業、差別および周縁化など)が含まれる。世界的に、0~18歳の子どもはすべて、その神経的、心理的、社会的および身体的発育および発達が完了するまでは被害を受けやすいと見なされている。赤ん坊および乳幼児は、発達途上の脳が未成熟であることおよびおとなに完全に依存していることから、よりリスクが高い。女子と男子の双方がリスクにさらわれているが、暴力はしばしばジェンダーの要素をともなう。 (g) 潜在的に被害を受けやすい状況にある子ども。暴力にさらされる可能性が高い子ども集団には以下のような子どもが含まれるが、これにはかぎられない。すなわち、生物学的親と暮らしておらずさまざまな形態の代替的養護のもとにある子ども、出生登録されていない子ども、路上の状況にある子ども、実際に法に抵触した子どももしくはそのように見なされている子ども、身体障害、感覚器障害、学習障害、心理社会的障害ならびに先天性、後天性および(もしくは)慢性の疾病または重度の行動上の問題がある子ども、先住民族 [26] その他の民族的マイノリティの子ども、マイノリティである宗教的もしくは言語的集団に属する子ども、レズビアン、ゲイ、トランスジェンダーもしくはトランスセクシュアルである子ども、有害な伝統的慣行を受けるおそれがある子ども、早期婚をした子ども(とくに女子およびとくに強制婚の場合。ただし強制婚だけが問題なのではない)、最悪の形態のものを含む有害な児童労働に従事している子ども、移民もしくは難民として移動中の子どもまたは避難民化した子どもおよび(もしくは)人身取引の対象とされた子ども、すでに暴力を経験したことがある子ども、家庭およびコミュニティで暴力を経験および目撃している子ども、銃、武器、薬物およびアルコールの入手が容易な可能性がある、社会経済的指標が低い都市環境で暮らしている子ども、事故もしくは災害の被害を受けやすい地域または有毒な環境下で暮らしている子ども、HIV/AIDSの影響を受けているもしくは自身もHIVに感染している子ども、栄養不良の子ども、他の子どもから世話されている子ども、自身が養育者および世帯筆頭者である子ども、親自身も18歳未満である子ども、望まれずに、未熟児としてもしくは多子出産の一環で生まれた子ども、監督もしくは養育者との接触が不十分なまま入院している子ども、または身を守るための十分な保護措置、監督もしくはエンパワーメントがないままICTにさらされている子どもなどである。緊急事態下にある子どもは、社会的紛争、武力紛争、自然災害その他の複雑かつ長期的な緊急事態の結果として社会制度が崩壊し、子どもが親と離ればなれになり、かつ養育および安全な環境が損なわれまたは破壊さえされた場合、暴力の被害を極度に受けやすくなる。 (h) 資源配分。さまざまな部門を超えて必要とされる人的、財政的および技術的資源が、利用可能な資源を最大限に用いることにより配分されなければならない。予算配分およびその効率的活用に関わる説明責任を確保するため、確固たる監視機構が整備されなければならない。 (i) 調整機構。中央、広域行政圏および地方のレベルにおける調整、諸部門間の調整および市民社会(経験的調査研究を行なっている層も含む)との調整を効果的に確保するための機構の概要が明示されなければならない。このような機構は前述した行政上の措置による支援を受けなければならない。 (j) 説明責任。締約国、国および地方の機関ならびに関連する市民社会の関係者が、暴力から子どもを保護する義務およびコミットメントを履行するための基準、指標、手段ならびに監視、測定および事後評価のためのシステムを、積極的にかつ協力しあいながら確立および適用することが確保されなければならない。委員会は、説明責任を(とくにデータの収集および分析、指標の構築、監視ならびに事後評価等を通じて)確保するためのシステムに対する支持および独立の人権機関に対する支持を一貫して表明してきた。委員会は、締約国が、暴力の禁止、防止および解消に関わって達成された進展についての年次報告書を公表し、検討および議論のためにこれを議会に提出し、かつそこに掲げられた情報について反応するようすべての関係者に促すことを、勧告する。 [25] 「子どもの代替的養護に関する指針」〔PDF〕も参照。 [26] 一部の社会では、先住民族以外の家族とは対象的に、「虐待」とは区別される「ネグレクト」が、先住民族の子どもをその家族から分離する主たる理由となっている。懲罰的ではない家族支援サービス、および、原因(貧困、居住および歴史的事情など)に直接対応する介入策のほうが適当であることは多い。サービスの供給、および、先住民族その他のマイノリティ・コミュニティが利用可能な介入の選択肢の範囲に関わる差別に対応するための、具体的努力が必要である。 VII.実施のための資源および国際協力の必要性 73.締約国の義務。とくに第4条および第19条に基づく締約国の義務に照らし、委員会は、資源の制約は、締約国が子どもの保護のために必要とされる措置をまったくまたは十分にとらないことの正当化事由にはならないと考える。したがって締約国は、子どもの養育および保護に関する包括的な、戦略的な、かつ期限の定められた調整枠組みを採択するよう促される。委員会はとくに、これらの戦略、枠組みおよび措置の策定にあたって子どもたちと協議する必要性を強調するものである。 74.支援源。パラ70で強調した出発点の違いを背景として、かつ、子どもの養育および保護に関わる戦略のための第一義的資金源は国レベルおよび地方分権化されたレベルの予算であるべきであるという理解に立ちつつ、委員会は、条約第4条および第45条に示されている、国際的協力および援助の諸経路に対して締約国の注意を喚起する。委員会は、以下のパートナーに対し、第19条およびより幅広く条約全体で定められている要件を全面的に考慮した子ども保護プログラム(研修を含む)を財政的にも技術的にも支援するよう求めるものである [27]。開発協力を行なっている締約国、ドナー機関(世界銀行、民間資金提供者および財団を含む)、国際連合諸機関ならびにその他の国際的および地域的機関がこの呼びかけの対象となる。このような財政的および技術的支援は、国内的および国際的レベルの強力かつ公平なパートナーシップを通じ、系統的に提供されるべきである。子どもの権利を基盤とする保護プログラムを、国際援助受領国における持続可能な開発を援助する際の主要な要素のひとつに位置づけることが求められる。委員会はまた、これらの機関に対し、この目標を前進させるため、委員会、子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表ならびに他の国際的および地域的人権機構と引き続き協働するよう奨励するものである。 [27] 国際的な協力および技術的援助の主流に子どもの権利を位置づける必要があること、そのような協力および援助が条約を指針とし、かつ条約の実施の全面的促進につながらなければならないこと、国際援助の相当部分をとくに子どもに配分するべきこと、および、子どもの権利に強く焦点が当てられるようにするために貧困削減戦略ペーパーおよび開発に対するセクターワイド・アプローチが必要であることについて、一般的意見5号(パラ61、62および64)参照。 75.国際的レベルで必要とされる資源。締約国が第19条に関わる自国の義務を履行することを援助するため、以下の分野で国際的レベルの投資を行なうことも必要である。 (a) 人的資源:職能団体(たとえば医療、精神保健、ソーシャルワーク、法律、教育、子どもの不当な取扱い、学術/調査研究、子どもの権利および育成訓練に関わる組織/機関)の内部および団体間の意思疎通、協力および個人的交流を向上させること。市民社会グループ(たとえば調査研究団体、NGO、子ども主導の団体、信仰を基盤とする団体、障害のある人の団体、コミュニティ・グループ、若者グループ、および、知識・実践の発展および交流に携わっている個人専門家)の内部およびグループ間の意思疎通および協力を向上させること。 (b) 財源:ドナーによる援助の調整、監視および事後評価を向上させること。経済学者、研究者および締約国が、ホリスティックな子どもの保護システムを(第一次予防を重視しながら)実施することのコストを、個人、コミュニティ、国およびひいては国際社会のレベルで生じる暴力の直接的および間接的影響(世代間の影響を含む)に対応することのコストとの対比で十全に測定できるよう、金融資本・人的資本分析をさらに発展させること。国際金融機関が「自らの政策および活動が子どもに与える可能性がある影響を考慮するために」[28] その検討を行なうこと。 (c) 技術的資源:さまざまな文脈に応じた修正について指針を示されながらコミュニティおよび専門家が活用するための、科学的根拠に基づいた指標、システム、モデル(モデル立法を含む)、ツール、指針、行動手順および実践基準。情報(知識および実践)の体系的共有およびアクセスを図るためのプラットフォーム。子どもの権利および子どもの保護のための予算を策定する際、ならびに、経済の上昇下降サイクルおよび課題の多い状況の最中に子どもの保護に関わる成果モニタリングを進めていく際の明確性および透明性を世界的に確立すること(情報、モデルおよび関連の訓練を通じた技術的援助は経時的に行なわれるべきである)。 [28] A/61/299, para.117. 76.地域的および国際的な、国境を越えた協力。開発援助に加え、子どもの保護に関わる問題のうち国境を越えて生じるものに対応するための協力も必要とされている。保護者をともなわないか家族とともにいるかに関わらず、また自発的かやむを得ない事情(たとえば紛争、飢饉、自然災害または病気の流行)によるかに関わらず、子どもが危害を受けるおそれが高まりうる子どもの越境移動、労働、性的搾取、養子縁組、身体の部位の切除その他の目的による子どもの人身取引、国境を越えて行なわれ、かつたとえ子どもが出身国内に留まっている場合でも子どもの安全および子どもの保護システムへのアクセスを損なう可能性がある紛争、および複数の国に同時に影響を及ぼす災害などである。子どもの保護に関わる国境を越えた問題に影響を受けている子どもを保護するため、これらの子どもが伝統的な養育状況のもとにあるか、または保護者をともなわずに入国した子どものように国が事実上の養育者であるかに関わらず、特別な立法、政策、プログラムおよびパートナーシップが必要となる可能性もある(たとえばサイバー犯罪、ならびに、旅行・観光を通じて子どもに性的虐待を行なった者および家族・子どもの人身取引を行なった者の域外訴追の場合など)。 更新履歴:ページ作成(2011年5月22日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/232.html
子どもの権利委員会・一般的意見17号:休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利(第31条)後編 (休息・遊び等に対する子どもの権利(31条)前編より続く) VI.第31条の実現のための環境づくり A.最適な環境の諸要素 32.子どもたちは、遊び、かつレクリエーション的活動に参加する自然発生的な衝動を有しており、もっとも好ましくない環境においてもそのための機会を探し出すものである。しかし、子どもたちが第31条に基づく諸権利を最大限に実現するためには、子どもたちの発達しつつある能力にしたがって一定の条件が確保されなければならない。そのため、子どもたちには以下のことが保障されるべきである。 ストレスを受けないこと。 社会的排除、偏見または差別を受けないこと。 社会的危害または暴力の心配がない環境。 子どもたちが地元の地域で自由かつ安全に動き回れるよう、廃棄物、汚染、交通その他の物理的危険が十分に取り除かれた環境。 子どもの年齢および発達にふさわしい休息が得られること。 他の要求が課されない余暇時間が得られること。 おとなによる統制・管理から自由な、遊びのためのアクセス可能な空間および時間。 多様かつ挑戦的な物理的環境のもと、おとなに付き添われることなく屋外で遊ぶための空間および機会(ただし、必要なときは支援的なおとなに容易にアクセスできること)。 自然環境および動物界を経験し、これと触れあい、かつそこで遊ぶ機会。 自らの想像力および言葉を使いながら自分たちの世界を創り出しかつ創り変えていけるよう、自分たち自身の空間および時間に没入する機会。 自分たち自身のコミュニティの文化的および芸術的遺産を探求・理解し、これに参加し、かつこれを創造・形成する機会。 必要に応じて十分な訓練を受けたファシリテーターまたはコーチによる支援を受けながら、遊戯、スポーツその他のレクリエーション的活動に他の子どもたちとともに参加する機会。 第31条に定められた権利が有する価値および正当性の、親、教員および社会全体による承認。 B.第31条の実現において対処すべき課題 33.遊びおよびレクリエーションの重要性に関する意識の欠如:遊びは、世界の多くの地域で、本質的価値がまったくない、取るに足らないまたは非生産的な活動に費やされる「赤字」の時間ととらえられている。親、養育者および行政関係者は、騒がしく、汚く、混乱をもたらし、かつ邪魔になると思われることの多い遊びよりも、勉強または仕事に高い優先順位を与えるのが通例である。さらに、おとなは、子どもたちの遊びを支援し、かつ遊びの精神に満ちたやり方で子どもたちと交流する自信、スキルまたは理解を欠いていることが多い。遊びおよびレクリエーションに従事する子どもたちの権利と、子どもたちのウェルビーイング、健康および発達にとってこれらの活動が有する基本的重要性のいずれもが、十分に理解されておらず、かつ過小評価されている。遊びが承認される場合、それは、たとえば空想遊びやごっこ遊びよりも高く評価されている身体遊びおよび競争的遊戯(スポーツ)であるのが通例である。委員会は、年長の子どもが好む遊びおよびレクリエーションの形態および場所をいっそう承認することがとりわけ必要であることを、強調する。青少年は、仲間たちと会い、高まりつつある自立心や成人期への移行を模索する場所を求めることが多い。これは、アイデンティティおよび所属に関わる青少年の感覚の発達にとっての重要な側面のひとつである。 34.安全性を欠く危険な環境:第31条に定められている諸権利に影響を与える環境上の諸特徴は、子どもたちの健康、発達および安全にとって保護的要因にもリスク要因にもなりうる。年少の子どもに関しては、探求および創造性発揮の機会を提供してくれる空間は、親および養育者が視線および声のやりとり等の手段で監督していられるような場所であるべきである。子どもたちは、不適切な危険がなく、自宅に近く、かつ、子どもたちの能力の発達にしたがって安全かつ自立的な移動を促進するための措置をともなった、インクルーシブな空間へのアクセスを必要としている。 35.世界のもっとも貧しい子どもたちの大多数は、汚染された水、開放された下水溝、過密な都市、統制のとれていない車の往来、街路灯の少なさおよび人や車で混雑した道路、不十分な公共交通機関、安全な地元の遊び場、緑地および文化施設の欠如、そして危険な、暴力的なまたは有毒な環境に設けられた非公式な都市「スラム」街のような、物理的危険に直面している。紛争後の環境では、子どもたちは地雷や不発弾によって被害を受ける可能性もある。それどころか子どもたちは、自然な好奇心および探求遊びによって地雷等に接触する可能性が高まり、かつ、子どものほうが爆発の影響を強く受けるという両方の理由によって、とりわけ危険な状況に置かれるのである。 36.人的要素があいまって、子どもたちが公的環境においてリスクのある状況に置かれることもある。高水準の犯罪および暴力、地域不安および内乱、麻薬およびギャング関連の暴力、誘拐および子どもの人身取引のおそれ、敵対的な若者またはおとなによる開放空間の支配、女子に対する攻撃および性暴力などである。公園、遊び場、スポーツ施設その他の設備が存在する場合でさえ、これらの施設が、子どもたちがリスクのある状況に置かれ、監督を受けず、かつ危険にさらされるような場所に設けられていることが多いこともある。これらのあらゆる要素が突きつける危険は、安全な遊びおよびレクリエーションに対する子どもたちの機会を深刻に制約するものである。伝統的に子どもたちが利用できてきた多くの空間がますます侵食されるようになっていることから、第31条に基づく諸権利を保護するために政府がいっそうの介入を行なう必要も生じている。 37.子どもたちが公共空間を利用することへの抵抗:子どもたちが遊び、レクリエーションおよび自分たち自身の文化的活動のために公共空間を使用することは、公共空間がますます商業化され、そこから子どもたちが排除されることによっても阻害されている。さらに、世界の多くの地域で、公共空間にいる子どもたちへの寛容度が弱まっている。たとえば子どもたちに対する夜間外出禁止措置の導入、立入り制限のためのゲートが設けられた区域または公園、騒音レベルに関する寛容度の減少、「認められる」遊び方に関する厳しい規則が設けられた遊び場、ショッピングモールへの立入り制限は、子どもを「問題」および(または)非行少年としてとらえる見方を引き起こすものである。とくに思春期の子どもたちは、メディアが広範に行なっている否定的な報道および描写によって広く脅威と見なされており、公共空間の利用を思いとどまるようにされている。 38.子どもたちが排除されることは、市民としての発達にとって相当の影響を及ぼすものである。異なる年齢集団の子どもたちがインクルーシブな公共空間の経験を共有することは、市民社会を促進・強化することにつながるとともに、子どもたちに対し、権利を有する市民としての自己認識を持つよう奨励することになる。国は、子どもが権利の保有者であること、および、遊びとレクリエーションに関するすべての子どものニーズに対応することのできる、地域または自治体における多様なコミュニティ空間網が重要であることについての認識の高まりを奨励する目的で、年長世代と若年世代との対話を促進するよう奨励されるところである。 39.リスクと安全のバランス:子どもたちが地域環境のなかでさらされている物理的・人的リスクをめぐる恐れにより、世界の一部地域では監督・監視水準の強化が生じており、そのため子どもたちの遊ぶ自由およびレクリエーションの機会に制約がもたらされている。加えて、子どもたち自身が、遊びやレクリエーション活動のなかで他の子どもたちの脅威になること――たとえば、いじめ、年長の子どもによる年少の子どもの虐待、リスクの高い行為を行なうよう求める集団的圧力――もありうる。第31条に基づく諸権利の実現に際して子どもたちが危害にさらされてはならない一方で、一定のリスクおよび挑戦は遊びやレクリエーション活動にとって不可欠であり、これらの活動がもたらす利益の必要な要素である。子どもたちの環境に存在する容認できない危険を減らすための措置をとること(地域の道路を車両通行止めにする、街路証明を改善する、または学校の遊び場に安全確保用の境界を設けるなど)と、自分たち自身の安全を高めるために必要な用心をするように子どもたちに情報を提供し、備えをさせ、かつエンパワーすることとの間で、バランスが図られなければならない。子どもの最善の利益と、子どもたちの経験および懸念に耳を傾けることとが、子どもたちをどの程度のリスクに触れさせてよいのか判断する際の調整原則とされるべきである。 40.自然に対するアクセスの欠如:子どもたちは、触れること、自発的に遊ぶこと、そして自然の不思議さと大切さを伝えてくれるおとなとともに模索することを通じて、自然界についての理解、評価および配慮を深めていく。自然のなかで遊び、かつ余暇を過ごした子ども時代の記憶は、ストレスに対処するための内的資源を強化し、精神的畏怖の念を抱くきっかけとなり、かつ地球への責任感を奨励するものである。自然の環境で遊ぶことは、敏捷性、バランス感覚、創造性、社会的協力および集中力の強化にも寄与する。園芸、収穫、儀式および静かな観想を通じて自然とつながることは、多くの文化の芸術・遺産の重要な一側面である。都市化と民営化がますます進行する世界において、公園、庭園、森、浜辺その他の自然区域に子どもたちがアクセスする機会は失われつつあり、都市の低所得地域で暮らす子どもたちは緑地に十分にアクセスできない可能性がもっとも高くなっている。 41.成績に関する圧力:世界の多くの地域では、正規の学業面での成功が重視される結果として第31条に基づく諸権利を否定される子どもたちが多い。たとえば次のとおりである。 乳幼児期教育では、学業上の目標および正規の学習にますます焦点が当てられるようになっており、遊びへの参加およびより幅広い発達上の成果の獲得が犠牲にされている。 課外授業および宿題が、自由に選んだ活動のための子どもたちの時間に食いこみつつある。 カリキュラムおよび時間割で、遊び、レクリエーションおよび休息の必要性またはそのための対応が欠落していることが多い。 教室で正規のまたは講話的な教育手法を用いることは、楽しみのなかにある主体的学びの機会を活かしていない。 子どもが屋内で過ごさなければならない時間が増えたことにより、多くの学校で自然とのふれあいが減少している。 学科数を増やすことが優先されるため、一部の国々では学校における文化的・芸術的活動の機会ならびに専門の美術担当教員の配置が侵食されつつある。 子どもたちが学校で行なえる遊びのタイプを制限することは、創造性、模索および社会的発達の機会を損なうことになる。 42.過剰に構造化・プログラム化されたスケジュール:多くの子どもたちにとって、第31条に定められた権利を実現する能力は、おとなが決定した活動を押しつけられること(たとえば強制参加のスポーツ、障害のある子どもを対象とするリハビリテーション活動、またはとくに女子にとっての家事)によって自発的な活動のための時間がほとんどまたはまったく残らないために、制約されている。政府による投資が行なわれている場合でも、そこでは組織化された競争的レクリエーションに焦点が当てられる傾向があり、時には、自分で選んだのではない青少年組織への参加を子どもたちが要求され、またはそのような圧力をかけられることがある。子どもたちには、おとなによって決定・管理されない時間といかなる要求も受けない時間――子どもが望むのであれば基本的には「何もしない」時間――を持つ権利がある。実際、活動を行なわないことは想像力の刺激にもつながりうるのである。子どもの余暇時間の幅を狭め、すべてをプログラム化された活動または競争的活動に向けることは、子どもの身体的、情緒的、認知的および社会的ウェルビーイングを損なう可能性がある [6]。 [6] Marta Santos Pais, "The Convention on the Rights of the Child," in OHCHR, Manual on Human Rights Reporting (Geneva, 1997), pp. 393 to 505. 43.開発プログラムにおける第31条の軽視:乳幼児期のケアおよび発達に関する活動では、多くの国でもっぱら子どもの生存の問題に焦点が当てられており、子どもたちが豊かに成長できるようにする諸条件にはまったく注意が払われていない。プログラムで栄養、予防接種および就学前教育への対応のみが行なわれ、遊び、レクリエーション、文化および芸術がほとんどまたはまったく重視されないこともしばしばある。プログラムの運営担当者は、子どもの発達上のニーズのこれらの側面を支援する適切な訓練を受けていない。 44.子どもたちのための文化的・芸術的機会への投資の欠如:文化的・芸術的活動に対する子どもたちのアクセスは、親の支持がないこと、アクセスのためにかかる費用、交通手段がないこと、多くの展示会、演劇およびイベントはおとな中心の目線であること、内容、設計、立地および提示方法に関して子どもたちの関与を得ていないことを含む一連の要因によって、しばしば制約される。創造性を刺激する空間を創り出すことがいっそう重視されなければならない。芸術・文化施設の運営担当者は、施設の物理的空間にのみ目を向けるのではなく、施設のプログラムが、そこで提示されているコミュニティの文化的生活をどのように反映し、またそのような文化的生活にどのように応答しているかを検討するべきである。子どもたちが芸術に参加するためには、子どもたちの作品を依頼・展示し、かつ展示の組み立ておよび提供されるプログラムについても子どもたちの関与を得る、より子ども中心のアプローチが必要となる。子ども時代にこのような関与を行なうことは、生涯にわたる文化的関心を刺激することにつながりうる。 45.電子メディアの役割の増大:世界のすべての地域の子どもたちが、さまざまなデジタルプラットフォームおよびデジタルメディアを通じた遊びならびにレクリエーション的・文化的・芸術的活動(テレビの視聴、電子メール、ソーシャルネットワークへの参加、ゲーム、ショートメッセージ、音楽の鑑賞・制作、ビデオや映画の視聴・制作、新しい芸術形態の創造、画像の投稿を含む)への参加にますます多くの時間を費やすようになっている。情報通信技術は、子どもたちの日常的現実の中心的側面となりつつあるのである。今日では、子どもたちはオフライン環境とオンライン環境を境目なく行き来している。これらのプラットフォームは――教育的、社会的および文化的に――大きな利益を提供するものであり、各国は、これらの利益を経験する平等な機会をすべての子どもに対して確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、奨励されるところである。インターネットおよびソーシャルメディアへのアクセスは、グローバル化された環境における第31条の諸権利の実現にとって中心的重要性を有する。 46.しかしながら委員会は、これらの環境が〔発展する〕度合いおよび子どもたちがこれらの環境とのやりとりに費やす時間によっては、子どもたちに対する相当の潜在的なリスクおよび危害が助長される可能性もあることを示す証拠が増えつつあることを、懸念する [7]。たとえば以下のとおりである。 インターネットやソーシャルメディアにアクセスすることにより、子どもたちがネットいじめ、ポルノグラフィーおよびネット上の誘いかけにさらされている。アクセスが十分に制限されていない、または効果的なモニタリングシステムが存在しないインターネットカフェ、コンピュータークラブおよびゲームセンターを利用する子どもたちも多い。 暴力的なビデオゲームへの参加の度合いが(とくに男子の間で)高まっていることは、攻撃的な振る舞いと関連しているように思われる。これらのゲームは没入および双方向性の度合いが高く、また暴力的振る舞いに対して報酬を与えるものだからである。これらのゲームは繰り返しプレイされる傾向にあるため、否定的学習が強化されるほか、他者の痛みや苦痛に対する感受性の鈍化ならびに他者に対する攻撃的もしくは有害な振る舞いが助長される可能性もある。オンラインゲーム(そこでは、フィルターや保護措置が用意されていないグローバルなユーザーネットワークに子どもたちがさらされる可能性がある)の機会が増えていることも、懸念の対象である。 メディアの多く、とくに主流の地位を占めているテレビは、社会全体に存在する多様な文化の言語、文化的価値および創造性を反映していない。このような単一文化的な視聴行動は、利用可能な文化的活動の潜在的幅広さからすべての子どもたちが利益を得る機会を制限するのみならず、非主流的文化を下に見ることを肯定する役割も果たしうる。テレビはまた、路上および遊び場で世代から世代へと伝統的に受け継がれてきた子ども時代の多くの遊戯、歌、韻文の喪失も助長している。 ゲーム/コンピューター画面関連の活動への依存の高まりは、子どもの身体活動水準の低下、望ましくない睡眠習慣〔および〕肥満その他の関連疾病の水準の上昇と関連しているように思われる。 [7] UNICEF, Child Safety Online Global Challenges and Strategies. Technical report (Florence, Innocenti Research Centre, 2012). 47.遊びの販売促進・商業化:委員会は、多くの子どもたちとその家族が、玩具・ゲームメーカーによる野放しの商業化および販売促進にますます高い水準でさらされるようになっていることを懸念する。親は、子どもたちの発達にとって有害となる可能性がある、または創造的遊びとは正反対の製品(創造的模索を阻害するお定まりの登場人物および筋書きで構成されたテレビ番組を宣伝する製品、子どもを受け身の観察者にしてしまうマイクロチップ付の玩具、あらかじめ決められたパターンの活動を行なうキット、伝統的なジェンダー・ステレオタイプまたは女子の早期の性的存在化を促進する玩具、危険な部品・化学物質を含む玩具、リアルな戦争玩具・ゲームなど)をますます多く購入するよう、圧力をかけられている。世界的に行なわれる販売促進は、コミュニティの伝統的な文化的・芸術的生活への子どもたちの参加を衰退させる可能性もある。 VII.第31条に基づく諸権利を実現するために特別な注意を必要とする子どもたち 48.女子:家事責任およびきょうだい・家族の世話の相当な負担、保護に関わる親の懸念、適切な便益の欠如、ならびに、女子の期待および振る舞いを制限する文化的想定があいまって、女子が第31条に定められた諸権利を享受する機会は、とくに思春期になると少なくなる可能性がある。加えて、ジェンダーの差異化により、何が女子の遊びであって何が男子の遊びであるかが判断され、それが親、養育者、メディアならびにゲーム・玩具の生産者/メーカーによって広く強化されることにより、社会における伝統的な性別役割分業が維持されることになる。証拠によって明らかにされているところによれば、男子のゲームは、現代社会における広範な職業上その他の場面でうまくやるための備えをさせるものである一方、女子のゲームは、対照的に、私的な家庭領域および妻・母親としての将来の役割を指向させる傾向がある。思春期の男子と女子は、合同のレクリエーション活動に参加するのを抑制されることが多い。さらに、文化的要因による外からの排除もしくは自ら引き受けた排除の結果として、または適切な条件が整備されていないために、身体的活動や組織化された遊戯への女子の参加率は一般的に低い。このようなパターンは、スポーツ活動への参加と関連する身体的、心理的、社会的および知的利益が証明されていること [8] に照らせば、懸念の対象である。第31条に基づく諸権利を女子が実現することを妨げるこのような障壁が広範に広がっていることを踏まえ、委員会は、締約国に対し、差別および機会不均等のパターンを増幅させかつ強化するジェンダー・ステレオタイプに対抗するための措置をとるよう、促す。 [8] UNESCO, International Charter of Physical Education and Sport, 1978. 49.貧困下で暮らしている子ども:諸便益にアクセスできないこと、参加費用が負担できないこと、近隣地域が危険であり放置されていること、働かなければならないこと、ならびに、無力感および周縁に追いやられているという感覚があることはいずれも、第31条に定められた諸権利の実現から最貧層の子どもたちを排除することになる。多くの子どもたちにとって、家庭外における健康・安全へのリスクは、遊びやレクリエーションのための空間または余地がほとんどないしまったくない家庭環境によって増幅される。親のいない子どもたちは、第31条に基づく諸権利をとりわけ失いやすい。路上の状況にある子どもたちは遊びのための条件を与えられておらず、また市街の公園や遊び場から積極的に排除されるのが通例である(もっとも、このような子どもたちは独自の創造性を用いて路上のインフォーマルな環境を遊ぶ機会のために活用している)。自治体当局は、貧困下で暮らしている子どもたちが第31条に定められた諸権利を実現するためには公園および遊び場が重要であることを認識するとともに、警察による取締り、計画および開発についての取り組みに関してこれらの子どもたちと対話を行なわなければならない。国は、文化的・芸術的活動へのアクセスおよびこのような活動の機会の双方をすべての子どもたちに対して確保し、かつ遊びおよびレクリエーションのための平等な機会を確保するための措置をとる必要がある。 50.障害のある子ども:障害のある子どもたちは、複合的障壁によって、第31条に定められた諸権利へのアクセスを阻害されている。このような障壁には、学校からの排除、友人関係が形成され、かつ遊びやレクリエーションが行なわれる非公式な社会的場面〔からの排除〕、自宅での孤立、障害児に敵対的であり、かつ障害児を拒絶する文化的態度および否定的ステレオタイプ、とくに公共空間、公園、遊び場および遊具、映画館、劇場、コンサートホールならびにスポーツ施設・競技場における物理的アクセシビリティの欠如、安全を理由として競技場や文化施設から障害児を排除する方針、コミュニケーション上の障壁および通訳・適応技術の未提供、アクセシブルな交通機関の欠如が含まれる。障害のある子どもたちは、補助技術の活用等も通じてラジオ、テレビ、コンピューターおよびタブレットをアクセシブルなものとするための投資が行なわれない場合にも、自己の権利の享受を妨げられる可能性がある。これとの関連で、委員会は、障害のある子どもたちが、遊び、レクリエーション、スポーツおよび余暇活動(普通学校制度で行なわれるものを含む)に他の子どもたちと平等に参加できることを確保する締約国の義務を強調した、障害者権利条約第30条を歓迎するものである。障壁を解消し、かつ、これらのすべての活動のアクセシビリティおよびこれらのすべての活動に障害児が参加するインクルーシブな機会の利用可能性を促進するために、積極的な措置が必要とされる [9]。 [9] 障害のある子どもの権利に関する一般的意見9号(2006年)。 51.施設の子ども:遊び、レクリエーションならびに文化的・芸術的生活への参加の機会が限られており、または否定される可能性のある施設(とくに入所型の福祉施設および教育施設、病院、拘禁所、少年院および難民収容施設を含む)で子ども時代のすべてまたは一部を過ごす子どもたちは多い。委員会は、各国が子どもの脱施設化に向けて行動する必要性を強調する。ただし、その目標が達成されるまでの間、国は、そのようなすべての施設において、子どもたちが、地域の同世代の子どもたちと交流し、遊び、かつ遊戯、運動ならびに文化的・芸術的生活に参加する空間と機会の双方を保障されることを確保するための措置をとるべきである。このような措置は、強制参加のまたは組織化された活動に限定されるべきではない。子どもたちが自由な遊びおよびレクリエーションに従事するためには、安全かつ刺激に満ちた環境が必要である。可能な場合には常に、子どもたちに対し、地域コミュニティのなかでこれらの機会を与えることが求められる。施設で相当の期間を暮らす子どもたちには、適切な文学、定期刊行物およびインターネットへのアクセス、ならびに、このような資源を活用できるようにするための支援も必要である。施設で暮らすすべての子どもが第31条に基づく権利を実現できることを確保するために必要な環境を創り出すためには、時間、適切な空間、十分な資源および設備、訓練を受けたやる気のある職員ならびに専用の予算が利用可能とされなければならない。 52.先住民族およびマイノリティのコミュニティの子ども:民族差別、宗教差別、人種差別またはカースト差別も、第31条に基づく諸権利の実現から子どもたちを排除することにつながりうる。敵意、同化政策、拒絶、暴力および差別によって、先住民族およびマイノリティである子どもたちが自己の文化的慣行、儀式および祝祭を享受し、かつ他の子どもたちとともにスポーツ、遊戯、文化的活動、遊びおよびレクリエーションに参加することを妨げる障壁が生じる場合がある。国は、マイノリティ集団が、居住地である社会の文化的およびレクリエーション的生活に参加し、ならびに自分たち自身の文化を保全し、促進しおよび発展させる権利を承認し、保護しかつ尊重する義務を有する [10]。ただし、先住民族コミュニティの子どもたちには、自分たち自身の家族的伝統の境界を超えて諸文化を経験・模索する権利もある。文化・芸術プログラムは、インクルージョン、参加および差別の禁止に基づいたものでなければならない。 [10] 国連・先住民族の権利に関する宣言(総会決議61/295付属文書)。 53.紛争、人道的災害および自然災害の状況下にある子ども:第31条に定められた諸権利は、紛争または災害の状況にあっては、食糧、避難所および医薬品の提供よりも低い優先順位しか与えられないことが多い。しかしながら、このような状況において、遊び、レクリエーションおよび文化的活動の機会は、子どもたちが喪失、混乱およびトラウマを経験した後に平常感および喜びの感覚を回復するのを援助するうえで重要な治療的・リハビリテーション的役割を果たしうる。遊び、音楽、詩または演劇は、難民である子どもおよび死別、暴力、虐待または搾取を経験した子どもが、たとえば情緒的苦痛を克服し、かつ自分自身の生活に対するコントロールを取り戻すことを援助しうる。このような活動は、アイデンティティの感覚を回復し、子どもたちが自分の身に起きた出来事を意味づけるのに役立ち、かつ子どもたちがおかしさと楽しみを経験できるようにしうる可能性があるのである。文化的・芸術的活動ならびに遊びおよびレクリエーションへの参加は、子どもたちに対し、経験を共有し、人格的価値の感覚および自尊心を再構築し、自分なりの創造性を模索し、かつ、結びつきおよび所属の感覚を獲得する機会を提供することにつながる。遊ぶための環境はまた、紛争の有害な影響に苦しんでいる子どもたちをモニタリング担当者が特定する機会も提供してくれる。 VIII.締約国の義務 54.第31条は、締約国に対し、そこで取り上げられている権利がすべての子どもによって差別なく実現されることを保障する3つの義務を課している。 (a) 尊重する義務により、締約国は、第31条に定められた諸権利の享受に対して直接間接の干渉を行なわないよう要求される。 (b) 保護する義務により、締約国は、第31条に基づく諸権利に第三者が干渉することを防止するための措置をとるよう要求される。 (c) 充足する義務により、締約国は、すべての必要なサービス、条件および機会を利用可能とするための行動をとることによって第31条に定められた諸権利の全面的享受を促進することを目的とした、必要な立法上、行政上、司法上、予算上、広報上その他の措置を導入するよう要求される。 55.経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約は、経済的、社会的および文化的権利の漸進的実現を規定し、かつ資源の制約から生ずる問題を認める一方で、締約国に対し、たとえ資源が不十分な場合でも「支配的状況下において関連の権利の可能なかぎり広範な享受を確保するために尽力する」具体的かつ継続的な義務を課している [11]。したがって、第31条上の諸権利に関連するいかなる後退措置も認められない。そのような措置が意図的にとられる場合、国は、それに代わるすべての選択肢を慎重に考慮したこと(当該問題に関して子どもたちが表明した意見を正当に重視することも含む)、および、条約に定められた他のすべての権利を考慮しながら当該決定が正当化されることを証明しなければならなくなろう。 [11] 社会権規約委員会「締約国の義務の性質に関する一般的意見3号」(1990年)、パラ11。 56.尊重する義務には、第31条に基づく諸権利を個別にまたは他者と共同して実現するすべての子どもの権利の尊重を達成することを目的とした、以下のものをはじめとする具体的措置をとることが含まれる。 (a) 養育者への支援:条約第18条2項にしたがい、親および養育者に対して、第31条に基づく諸権利に関わる指導、支援および便宜が提供されるべきである。このような支援は、たとえば、遊びの最中に子どもの声に耳を傾ける方法、子どもの遊びを促進する環境づくりの方法、子どもが自由に遊べるようにする方法および子どもと遊ぶ方法に関する実践的指導という形をとることもできよう。また、創造性や器用さを励ますことならびに安全と発見のバランスをとることの重要性や、遊びならびに文化的・芸術的・レクリエーション的活動に指導されながら触れることの発達上の価値について取り上げてもよい。 (b) 意識啓発:国は、第31条に定められた諸権利を低く見る、広く行き渡った文化的態度に対抗するための、以下のものを含む措置に投資するべきである。男子および女子双方にとっての、遊び、レクリエーション、休息、余暇ならびに文化的および芸術的活動への参加に対する権利、および、子ども時代の享受に寄与し、子どものもっとも望ましい発達を促進し、かつ積極的な学習環境を構築するうえでのこれらの活動の重要性に関する、公衆の意識啓発。 第31条に基づく諸権利を享受する機会の制約につながる、広く蔓延した否定的態度(とくに思春期の子どもたちに対するもの)に対抗するための措置。とくに、子どもたちがメディアで自己主張を行なうための機会が設けられるべきである。 57.保護する義務により、締約国は、第31条に基づく諸権利に第三者が干渉することを防止するための措置をとるよう要求される。したがって、国は以下のことを確保する義務を負う。 (a) 差別の禁止:レクリエーション、文化および芸術のためのすべての環境(公共空間および私的空間、自然の空間、公園、遊び場、競技場、博物館、映画館、図書館、劇場を含む)ならびに文化的な活動、サービスおよびイベントへのアクセスを、すべての子どもに対していかなる理由に基づく差別もなく保障するための立法が必要である (b) 国以外の主体の規制:市民社会のすべての構成員(企業部門を含む)が第31条の規定を遵守することを確保するための立法、規則および指針が、必要な予算配分および監視・執行のための効果的機構とともに導入されるべきである。これには、とくに以下のものが含まれる。業務の性質、労働時間および労働日に対する適切な制限、休憩時間ならびにレクリエーションおよび休息のための便益を子どもの発達しつつある能力に一致する形で保障するための、すべての子どもを対象とする雇用上の保護。国はまた、ILO〔国際労働機関〕第79号条約、第90号条約、第138号条約および第182号条約 [12] を批准・実施するようにも奨励される。 遊びおよびレクリエーションのためのすべての施設、玩具およびゲーム機器を対象とした、安全およびアクセシビリティに関する基準の策定。 都市および農村部の開発についての提案に、第31条に基づく諸権利の実現のための対応および機会を編入する義務。 子どものウェルビーイングにとって有害となるおそれのある文化的、芸術的またはレクリエーション的資料からの保護(メディア放送および映画を規律する保護・等級審査制度を含む)。その際には、表現の自由に関する第13条および親の責任に関する第18条の双方の規定を考慮するものとする。 子ども向けのリアルな戦争ゲーム・玩具の製造を禁止する規則の導入。 (c) 危害からの子どもたちの保護:遊び、レクリエーション、スポーツ、文化および芸術の分野で子どもたちとともに活動するすべての専門家を対象とした、子どもの保護のための政策、手続、職業倫理、綱領および基準が導入・執行されなければならない。また、第31条に基づく諸権利を行使する過程で他の子どもたちによって加えられる可能性がある潜在的危害から子どもたちを保護する必要性も、認識されなければならない [13]。 (d) オンライン・セーフティ:オンラインのアクセスおよびアクセシビリティならびに子どもたちの安全を促進するための措置が導入されるべきである。これには、子どもたちがオンラインで安全に行動し、デジタル環境において自信と責任感を備えた市民となり、かつ虐待または不適切な活動に遭遇した場合にはそれを通報できるように、子どもたちのエンパワーメントおよび子どもたちへの情報提供を行なうための措置を含めることが求められる。虐待を行なうおとなが処罰されない状況を、立法および国際的連携を通じて低減させるための措置、有害なまたは成人指定を受けた資料およびゲームネットワークへのアクセスを制限するための措置、暴力的ゲームに関連した潜在的危害についての意識を高める目的で親、教員および政策立案者向けの情報を改善するための措置、ならびに、子どもたちを対象とするいっそう安全なかつ魅力的な選択肢を促進する戦略を策定するための措置も、必要である。 (e) 紛争後の安全:紛争後および災害後の状況において第31条に基づく諸権利を回復・保護するため、とくに以下のものを含む積極的措置がとられるべきである。回復力および心理的癒しを促進するため、遊びおよび創造的表現を奨励すること。 子どもたちが普通の生活を取り戻すための試みの一環として遊びおよびレクリエーションに参加することのできる、安全な空間(学校を含む)を創設しまたは回復すること。 地雷が子どもたちの安全にとって脅威となっている地域では、影響を受けたすべての地域から地雷およびクラスター弾が完全に除去されることを確保するための投資が行なわれなければならない [14]。 (f) 販売促進およびメディア:以下のことを目的とする行動が開始されるべきである。子どもたちに対する玩具・ゲームの商業化〔販売促進〕(子ども向けのテレビ番組および直接関係する広告を通じて行なわれるものを含む)についての政策を見直すこと。その際、暴力を促進するもの、女子または男子を性的に〔描写する〕もの、ならびに、ジェンダーおよび障害に関するステレオタイプを強化するものをとくに考慮すること。 子どもがもっともテレビを視聴している時間帯の広告への接触を制限すること。 (g) 苦情申立て機構:条約第31条に基づく諸権利を侵害された場合に子どもが苦情を申し立てて救済を求めるための、独立した、効果的な、安全かつアクセシブルな機構が整備されなければならない [15]。子どもたちは、誰に苦情を申し立てることができ、そのためにはどのような方法(手続)をとればよいのかについて知っている必要がある。国は、子ども個人が権利侵害の苦情を申し立てられるようにする、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書への署名およびその批准を奨励されるところである。 [12] ILO第79号条約(年少者夜業(非工業的業務))、第90号条約(年少者夜業(工業的業務))、第138号条約(最低年齢条約)、第182号条約(最悪の形態の児童労働条約)。 [13] あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する一般的意見13号(2011年)。 [14] 爆発性戦争残存物に関する議定書(特定通常兵器使用禁止制限条約第5議定書)。 [15] 子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する一般的意見2号(2002年)。 58.充足する義務により、締約国は、第31条に定められたすべての権利の充足を確保するために広範な措置をとるよう要求される。条約第12条にしたがい、そのようなすべての措置は、国および地方のいずれにおいても、かつ計画、立案、策定、実施および監視も含めて、子どもたち自身ならびにNGOおよび地域団体と(たとえば、子どもたちのクラブ・団体、芸術・スポーツの活動をしている地域グループ、障害のある子どもおよびおとなを代表する団体、マイノリティ・コミュニティの代表、遊びに関連する団体を通じて)連携しながら発展させるべきである [16]。とくに以下のことを考慮するよう求められる。 (a) 立法・計画:委員会は、各国に対し、第31条に基づく諸権利をすべての子どもに対して確保するための法律を、実施に関するタイムテーブルとあわせて導入することを検討するよう、強く奨励する。このような法律においては、十分性の原則――すべての子どもに、これらの権利を行使するための十分な時間および空間が与えられるべきである――が取り上げられるべきである。第31条に関する専門の計画、政策もしくは枠組みを策定し、または条約実施のための総合的な国家的行動計画に第31条を編入することを検討することも求められる。このような計画においては、全年齢層の男子および女子ならびに周縁化された集団およびコミュニティの子どもにとっての第31条の意味についても取り上げられるべきである。また、子どもたちの自発的活動のための時間・空間を創り出すことが、組織化された活動のための便益・機会を提供することと同じぐらい重要であることも、認識することが求められる。 (b) データ収集・調査研究:第31条に基づく義務の履行に関する子どもたちへの説明責任を確保するため、遵守に関する指標を開発し、かつ実施の監視および評価のための機構を発展させる必要がある。国は、遊び、レクリエーションならびに文化的・芸術的生活への子どもたちの参加の規模および性質を理解するため、年齢、性別、民族および障害ごとに細分化された住民ベースのデータを収集しなければならない。このような情報は計画プロセスにおいて参考にされるべきであり、また実施における進展を測定する際の基盤となるべきである。子どもたちおよびその養育者の日常生活、ならびに、住居および近隣地域の環境の影響に関する調査研究も、子どもたちが地域の環境をどのように利用しているか、第31条に基づく諸権利の享受に関して子どもたちがどのような障壁に遭遇しているか、これらの障壁を子どもたちがどのようなアプローチによって乗り越えているか、および、これらの権利のさらなる実現を達成するためにはどのような行動が必要とされているかを理解するために、必要とされる。このような調査研究には、子どもたち自身(もっとも周縁化されたコミュニティの子どもたちを含む)の関与を積極的に得なければならない。 (c) 国・自治体政府における部局横断型の連携:遊び、レクリエーションならびに文化的・芸術的活動のための計画を策定する際には、国、広域行政圏および自治体の公的機関間における部局横断型の連携および説明責任をともなった、幅広い包括的なアプローチをとることが要求される。関連の部局には、子どもに直接対応する部局(保健、教育、社会サービス、子どもの保護、文化、レクリエーションおよびスポーツ担当の部局など)のみならず、水・衛生、住宅、公園、輸送、環境ならびに都市計画に関係する部局(これらはいずれも、子どもたちが第31条に基づく諸権利を実現できる環境づくりに相当の影響を及ぼす分野である)も含まれる。 (d) 予算:文化的・芸術的活動、スポーツ活動、レクリエーション活動ならびに遊びの活動に関わる子どもたちへの配分がインクルーシブなものであり、かつ子どもたちが人口全体に占める割合と一致していること、ならびに、全年齢の子どもたちのための対応全体を通じて配分が行なわれていること(たとえば、子ども向けの書籍・雑誌・新聞の制作および普及に対する予算的支援、子どもたちを対象とした公式・非公式のさまざまな芸術表現、アクセシブルな設備・建物ならびに公共空間、スポーツクラブや若者センター等の施設のための資源)を確保するため、予算の見直しが行なわれるべきである。もっとも周縁化された子どもたちに対してアクセスを保障するために必要な措置(障害のある子どもたちに対して平等なアクセスを保障するために合理的配慮を行なう義務を含む)の負担についても、考慮することが求められる。 (e) ユニバーサルデザイン [17]:インクルージョンを促進し、かつ障害のある子どもたちを差別から保護する義務に一致する形で、遊び、レクリエーション、文化、芸術およびスポーツのための施設、建物、設備およびサービスに関わってユニバーサルデザインへの投資を行なうことが必要である。国は、国以外の主体に働きかけることにより、すべての資料および場所の計画・制作にあたってユニバーサルデザインが実施されること(たとえば、学校におけるものも含む、車椅子の利用者が使用するアクセシブルな入口および遊び環境のインクルーシブな設計)を確保するべきである。 (f) 自治体における計画策定:地方自治体は、すべての集団の子どもたちによる平等なアクセスを保障するため、子ども影響評価等も通じ、遊びおよびレクリエーションのための便益の整備について評価を行なうべきである。公的計画策定においては、第31条に基づく義務に一致する形で、子どものウェルビーイングを促進する環境づくりが優先されなければならない。子どもにやさしい必要な都市・農村環境を達成するため、とくに以下のことが考慮されるべきである。安全であり、かつすべての子どもたちにとってアクセシブルな、インクルーシブな公園、コミュニティセンター、スポーツ場および遊び場の利用可能性。 自由な遊びのための安全な生活環境づくり(遊ぶ者、歩行者および自転車が優先される区域の設計を含む)。 子どもたちの安全を脅かす個人または集団から遊び・レクリエーション用区域を保護するための公的安全措置。 美化措置をとられた緑地、広々とした開放空間および自然に対し、遊びおよびレクリエーションのために、安全であり、過度な費用負担を課されない、かつアクセシブルな交通手段によりアクセスできるようにすること。 地域コミュニティで安全に遊ぶ子どもたちの権利を確保するための道路交通安全措置(速度制限、汚染規制、学童横断路の指定および騒音抑制措置を含む)。 全年齢およびすべてのコミュニティの女子・男子双方を対象とした、クラブ、スポーツ施設、組織化されたゲーム・活動のための条件整備。 全年齢およびすべてのコミュニティの子どもたちを対象とした、子ども向けの、かつ過度な費用負担を課されない文化的活動(演劇、ダンス、音楽、芸術展示、図書館および映画を含む)。このような条件整備においては、子どもたちが自分なりの文化的形態を制作・創造する機会、および、おとなが子どもたち向けに創作した活動に触れる機会が含まれるべきである。 文化に関わるすべての政策、プログラムおよび制度について、すべての子どもたちにとってのアクセシビリティおよび関連性を確保し、ならびに、そこで子どもたちのニーズおよび希望が考慮され、および子どもたちの間で生まれつつある文化的慣行が支援されることを確保するため、見直しを行なうこと。 (g) 学校:教育環境は、第31条に基づく義務の履行に際して主要な役割を果たすべきである。これには以下の点が含まれる。教育現場の物理的環境:締約国は、遊び、スポーツ、遊戯および演劇を促進するための十分な屋内・屋外空間が開校時間中およびその前後に用意されること、女子・男子にとっての平等な遊びの機会を積極的に促進すること、男子・女子のための十分な衛生施設が備えられること、運動場、自然の遊び場および遊びのための設備が安全であり、かつ定期的に適正な検査を受けること、運動場に適切な境界が設けられること、障害のある子どもを含むすべての子どもたちが平等に参加できるような形で設備および空間が設計されること、遊び場においてあらゆる形態の遊びの機会が提供されること、遊び場の立地・設計に際して十分な保護措置がとられ、かつその設計・開発に子どもたちが関与することを確保することを、目指すべきである。 日課:子どもたちが、その年齢および発達上のニーズにしたがって十分な休息・遊びの機会を持てることを確保するため、宿題に関するものを含む法令上の対応により、日中に適切な時間を保障するべきである。 学校カリキュラム:教育の目的に関する第29条上の義務に一致する形で、子どもたちが文化的・芸術的活動(音楽、演劇、文学、詩および美術を含む)ならびにスポーツおよび遊戯を学び、これに参加し、かつこれを生み出すための十分な時間および専門的支援が、学校カリキュラムの枠内で与えられなければならない [18]。 教授法:学習環境は積極的かつ参加型のものであるべきであり、かつ、とくに低年齢の時期においては、遊びの要素に満ちた活動および参加形態を提供するものであるべきである。 (h) 研修・能力構築:子どもたちとともにもしくは子どもたちのために働く専門家、またはその業務が子どもたちに影響を及ぼす専門家(政府職員、教育者、保健専門家、ソーシャルワーカー、低年齢児支援ワーカー、ケアワーカー、プランナー、建築家等)は全員、第31条に掲げられた諸権利を含む子どもたちの人権に関する体系的・継続的研修を受けるべきである。このような研修には、第31条に基づく諸権利をすべての子どもたちがもっとも効果的に実現できる環境を創造・維持する方法についての指導を含めることが求められる。 [16] 意見を聴かれる子どもの権利に関する一般的意見12号(2009年)。 [17] 「ユニバーサルデザイン」はロナルド・メイスによる造語であり、あらゆる製品および建築環境を、可能なかぎり美的であり、かつ年齢、能力または生活状態に関わらずすべての人が可能なかぎり利用できるように設計するという考え方を表したものである。障害のある人の権利に関する条約第4条1項(f)も参照。 [18] 教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)。 59.国際協力:委員会は、ユニセフ〔国連児童基金〕、ユネスコ〔国連教育科学文化機関〕、UNHCR〔国連難民高等弁務官事務所〕、国連ハビタット〔人間居住計画〕、UNOSDP〔国連・開発と平和のためのスポーツ局〕、UNDP〔国連開発計画〕、UNEP〔国連環境計画〕およびWHO〔世界保健機関〕を含む国連諸機関ならびに国際NGO、国内NGOおよび地域NGOの積極的関与を通じた、第31条に定められた諸権利の実現における国際協力を奨励する。 IX.普及 60.委員会は、締約国が、政府内および行政機構内において、ならびに、親、その他の養育者、子どもたち、職能団体、コミュニティおよび市民社会一般を対象として、この一般的意見を広く普及するよう勧告する。印刷媒体、インターネットおよび子どもたち自身のコミュニケーション手段を含む、普及のためのあらゆる回路が活用されるべきである。そのためには、手話、点字および障害のある子どもたちにとって読みやすい形式を含む関連の言語への翻訳が必要となろう。また、文化的に適切であり、かつ子どもにやさしい翻案版を利用可能とすることも必要である。 61.締約国はまた、すべての子どもたちのために第31条の全面的実施を奨励するためにとった措置について、子どもの権利委員会に対する十全な報告を行なうようにも奨励される。 更新履歴:ページ作成(2013年5月15日)。/表示がおかしくなっていたため再保存(2016年1月4日)。