約 1,992,806 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/31.html
子どもの権利委員会・一般的討議勧告:子どもの権利のための資源配分――国の責任 一般的討議勧告一覧 (第46会期、2007年10月5日採択) 原文:英語(ワード) 日本語訳:平野裕二 III.勧告 法的枠組み 22.委員会は、第4条において、条約で認められた権利を実施するために立法上の措置および他のあらゆる適当な措置をとる締約国の義務が強調されていることを想起する。子どものための資源が十分に優先されることを確保するため、一部の国は、とくに子どものためのものとして使途を指定された資源が十分に用意されるようにするため、国家予算のうち具体的に何パーセントを子どもに配分しなければならないか、国内法そのもので定めるところまで踏みこむに至った。公的機関が子どものための資源の利用について説明責任を果たすよう、子どものための予算配分について国内法に法的編入を行なうというこのアプローチを、子どもへの投資に対する各国のコミットメントを奨励すべく、委員会も支持するものである。 23.十分な法的枠組みを設けることが子どもに対する公正かつ効果的な資源配分の不可欠な前提条件であることを認め、委員会は、すべての国に対し、子どもに配分されるべき公的支出の具体的割合の法制化を検討するよう奨励する。このような立法とあわせて、子どもに関する公的支出の体系的かつ独立の評価を行なえるようにする機構も設けられるべきである。 「利用可能な資源」の概念 24.委員会は、条約が定義する子どもの権利を実施するために資源を配分するのはまずもって国の責任であることを再確認する。「利用可能な資源(手段)」には国際援助を通じて国際社会から入手する資源も含まれるが、これは国レベルで利用可能な資源を補完するべきものである。資源は、財源のみならず、経済的、社会的および文化的権利の実現に関連する他のタイプの資源(人的資源、技術的資源、組織的資源、天然資源および情報資源等)も包含するものとして理解されなければならない。資源はまた質的観点からも理解されるべきであり、量的観点からのみ理解されるべきではない。 25.委員会は、締約国に対し、子どもの権利を達成するために利用可能な経済的、人的および組織的資源ならびに子どもの権利の実施のために実際に利用されている資源を定期的に特定するとともに、利用可能な資源の評価において両者を結合させるよう奨励する。委員会はとくに、締約国に対し、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施に寄与する財政措置を超えて「利用可能な資源」の評価を行なうよう奨励するものである。これとの関連で、委員会は、子どもにとってもっとも重要な「利用可能な資源」に数えられる親および家族を体系的に支援することの重要性を強調する。 予算策定プロセス、社会政策および人権 26.委員会は、予算政策および金融政策を含む公共政策の究極的目的は権利の普遍的履行でなければならないこと、および、経済的成長および安定はそれ自体が目的なのではなく人間開発に向けた手段と見なされるべきであることを、強調する。委員会は、経済政策と社会政策との間でバランスを確保することがきわめて重要であると考えるとともに、社会投資は、社会サービスへのアクセスおよびその質の向上を達成することのみならず、長期的には、教育、健康および栄養への投資による人的資本の向上を通じて生産性および競争力の増進に直接的に比例することを、力をこめて強調するものである。 27.「子どもにふさわしい世界」において、各国は、国内的にも国際的にも新たな追加的資源を動員しかつ配分すること、ならびに、条約を指針としながら予算配分で子どもを優先することに対するコミットメントを再確認した。「子どもへの投資」は、公正かつ持続可能な人間開発を達成するための最善の保障として、またあらゆる政府の社会的および経済的優先順位の基本的要件として、広く受け入れられるようになった概念である。これとの関係で、委員会はまた、すべての人権は相互に依存しておりかつ不可分であること、ならびに、経済的、社会的および文化的権利の享受は市民的および政治的権利の享受と分かちがたく結びついていることも強調する。 28.委員会は、地方分権化の進行度、国および地方の計画プロセス、行政裁量ならびに市民社会の役割のような諸要素がどのような形で資源配分の大きな決定要因または影響要因になるか、ならびに、これらの配分がどのような形で実際に子どもに届き、かつその経済的、社会的および文化的権利の享受を増進させるかを、強調する。 29.委員会はさらに、よい公共財政管理システムはある国で十分な資源配分を行なうための前提であることを強調する。これとの関連で、締約国は、予算策定の方法論に関する適切なシステムおよび予算分析のための高い能力が自国の行政内に存在することを確保するべきである。 30.子どもへの投資は経済的見返りが大きいことに鑑み、かつ子どものために配分される投資その他の資源が子どもの権利を履行するための手段となることを確保するための努力の一環として、委員会は、締約国が以下のことをするよう勧告する。 (a) 利用可能な限られた資源が最大の見返りをもたらすことを確保するための手段として、予算配分において子どもを優先すること。また、子どもに配分される資源を詳細に積算することを通じ、国家予算において子どもへの投資を可視化すること。 (b) 権利を基盤とする予算のモニタリングおよび分析、ならびに、いずれかの部門への投資がどのように「子どもの最善の利益」にかなっているかに関する子ども影響評価の活用を検討すること。 (c) とくに、子どもに対応する省庁を特定し、かつ、他の省も自省の予算およびプログラムがどのように子どもの経済的、社会的および文化的権利の実現に合致しているかを実証できるようにすることにより、子どもの経済的、社会的および文化的権利に対して包括的アプローチをとること。 31.委員会はまた、経済成長を目的とした配分が社会部門支出を犠牲にして重視されないようにすることを勧告する。これとの関連で、成長目標に関するマクロ経済的枠組みは、子どもの権利条約ならびに差別の禁止、子どもの最善の利益、参加、普遍性および説明責任の原則を基盤とする人間開発枠組みと調和するものとされるべきである。この枠組みの策定においてはまた、ミレニアム開発目標(MDG)、「子どもにふさわしい世界」、権利を基盤とする貧困削減戦略書、および、条約にしたがって策定された国家的行動計画も考慮に入れることが求められる。 資源の配分・利用における透明性および説明責任 32.国家予算は政府の優先順位を反映する中心的政策文書であるから、予算がどの程度子どもの権利の実現のための手段として機能しているかは、予算がどの程度効果的かつ効率的に運営され、かつ子どものための投資を優先しているかということと密接に関係している。したがって、締約国が内部的にも外部的にも予算配分プロセスの透明性を一貫して確保することは、きわめて重要である。内部的透明性とは、歳入および歳出に関する情報が、支出に関する主要な決定がどのように子どもに影響する可能性があるかについての影響評価を実施しているすべての政府機関に利用可能とされることを含意する。外部的透明性とは、予算は市民社会を含むすべての関係者に対して公開されかつアクセス可能とされるべきであり、かつ、予算上の選択および配分に関する情報が、公衆に対し、子どもにやさしい方法により、包括的かつ理解が容易な言葉で利用可能とされるべきであることを意味するものとして理解される。 33.予算データは入手および検証が困難な可能性があり、かつ、場合によっては予算に関わる能力が貧弱なことによって、またときには汚職によって影響を受けている可能性もある。したがって、データおよび指標を正確に体系化し、かつ予算を効果的に分析することは、子どものための経済的、社会的および文化的権利の実現に向けた努力を監視するうえでとりわけ重要な要件である。 34.委員会は以下のことを勧告する。 (a) 締約国が国家予算に関する公の対話を奨励すること。予算プロセスは透明かつ参加型であるべきである。国家予算の編成および実施の指針となる基準(資源配分の指針となる優先順位を含む)についての情報は、説明責任および公の吟味を奨励するため、理解が容易な言葉で公に利用可能とすることが求められる。 (b) 資源の配分および利用に関する効果的な資源追跡システムならびに子どもに関する包括的なデータ収集システムを開発および実施すること(金融データ、および国際比較が可能でありかつ定期的審査の対象とされる共通指標も含む)。 (c) 締約国が子どものための予算策定をどの程度重視しているかについて委員会が十分に評価できるようにするため、条約に基づいて提出される締約国報告書に、さまざまな予算配分に関する分析的な統計情報を記載すること。これらの統計データにおいては、利用可能な資源および子どもへの配分率を部門別に示すことが求められる。このような情報においては、政府の他の優先課題(軍事予算の配分および軍事支出を含むが、これに限られない)に対する子どもに関する配分および支出の割合が明確に示されるべきである。 (d) とくに予算分析に関するリテラシーを促進および奨励するための努力を通じ、国レベルのあらゆる関係者が予算プロセスに関与するようにすること。 (e) 締約国、政府省庁および政府職員ならびに子どものための予算策定に関与している他の関係者の、一貫したかつ制度的な説明責任が確保されるべきであること。このような説明責任が一貫して適用されるようにするため、締約国は、非効率および資源の無駄を是正するための措置をとり、かつ公職者に対して自己の行動に関する説明責任を果たさせるための効果的機構を確立するよう、奨励される。 (f) 条約に基づく締約国報告書を委員会の前で説明する代表団に財務省の代表を含めること。 子どもその他の関係者の参加 35.委員会は、条約の他の規定の実施の不可欠な一部として条約第12条を実施する締約国の義務を再確認する。これとの関連で、委員会は、資源配分のプロセスができるかぎり参加型のものであること、および、子どもおよびその親が予算プロセスの策定、実施および監視に最初から関与することを確保することの重要性を強調するものである。委員会はまた、適切な場合には政策および予算の策定プロセスに市民社会が効果的に関与することの重要性も強調する。 36.「意見を聴かれる子どもの権利」に関する2006年9月の一般的討議に照らし、かつ、国家予算に関する透明かつ民主的な決定プロセスが経済的、社会的および文化的権利に与える肯定的影響を認め、委員会は、締約国に対し、とくに親、教員、養育者および子ども自身が予算上の決定に参加できるようにすることを通じて予算プロセスへの子ども参加を促進するよう奨励するとともに、参加型プロセスを通じて達成された結果について委員会に情報を提供するよう要請する。 37.委員会は、締約国が、第4条に関わる予算配分に関してのみならず、このような配分がどのようなプロセスを通じて行なわれたのか、および、子ども、親およびコミュニティが意思決定プロセスにどの程度関与したのかに関しても、委員会に報告するよう勧告する。報告書にはまた、子どものための国家的行動計画および子どもに関するその他の政策文書が国レベルの予算プロセスにどのように関連しているのかに関する情報も含まれているべきである。 資源の「最大限」の利用 38.委員会は、「利用可能な資源(手段)を最大限に用いることにより」が正確なところ何を意味するのか、および、それをどのように測定できるのかという問題が、締約国、子どものために活動している国際社会および委員会自身にとっての難問であることを認識する。委員会はまた、統計変数には限りがあり、かつ、人権指標ではさまざまな文脈における個々の人権の複雑性および個別性をとらえられないことも認識するものである。しかし委員会は、資源の利用における評価手段の重要性を強調するとともに、締約国が条約によって定められた子どもの権利の実施における進展を監視および評価することを援助するため、測定可能な指標を開発することの必要性を認識する。 39.委員会は、包括的かつ細分化された共通人権指標を開発するためにOHCHRが現在進めている取り組みを称賛しつつ、ユニセフに対し、子どもの権利を実施するための政策の策定、監視および評価を向上させることに関して各国を援助する目的で、子ども固有の指標を開発するよう促す。このような指標システムは、期限を定めた具体的目標(ミレニアム開発目標のような国際的に承認されたものを含む)とあいまって、人権にかかわる課題を明らかにするうえで役に立ち、かつ子どもの権利の実現における進展または後退の評価を可能とするであろう。 子どものための資源の配分・利用における優先順位 40.委員会は、条約に掲げられた差別の禁止の原則により、条約で保障されたすべての権利がすべての子どもに対して認められるべきであることが要求されていることを想起する。これとの関連で、委員会は、締約国が条約に基づいて受け入れた義務をいかなる意味でもないがしろにしまたは減殺することなく、周縁化された集団および不利な立場に置かれた集団の子どもを特定しかつ優先する必要があることを認識するものである。 41.委員会は、締約国が、それぞれの国内的文脈のなかで子どもの権利の実施を優先させるための努力を進めていくにあたり、資源配分に関して条約の4つの一般原則を指針とする国家的優先順位を定めることを検討するよう勧告する。このような優先順位は、もっとも周縁化された集団および不利な立場に置かれた集団の子どもに特別な注意を払いながら、権利基盤アプローチを用いて定められるべきである。 42.国は、子どもに関する国家的優先順位が、実際に効果を発揮するようにすべく、定期的に独立の立場から監視されうることを確保するべきである。議会審査の文脈でこのような監視を行なうことも可能であろうが、委員会は、国が、子どもが実施にどの程度権利を享受しているかとの関連で国家的優先順位の外部的審査を行なえるようにする監視機構を設置し、かつこれに勧告権限を与えるよう強く勧告する。国家的優先順位の審査の結果は、委員会に対する定期報告書に記載されるべきである。 子どもの経済的・社会的・文化的権利の裁判適用可能性 43.立法(前掲パラ22および23参照)に加え、国は、経済的、社会的および文化的権利を含むあらゆる人権に関して司法的救済が利用できることを確保することも要求されている。委員会は、条約で定められた経済的、社会的および文化的権利の多くが、法的に執行可能な権利としてすでに広く受け入れられていることに留意する。たとえば、無償のかつ義務的な初等教育は多くの国の国内法および実行に反映されている権利のひとつである。しかし、子どもの全面的発達およびウェルビーイングにとって根本的重要性を有する経済的、社会的および文化的権利の多くを、裁判所で適用可能なものとしてまだ認めていない国も多い。委員会は、条約で掲げられた子どもの経済的、社会的および文化的権利に全面的効果を与えるために、これらの権利が国内的かつ実際的に裁判適用可能なものとされなければならないことを認識する。 44.委員会は、締約国が、子どもの経済的、社会的および文化的権利の全面的実現を確保するため、国内の裁判機関がこれらの権利に全面的な裁判適用可能性を与えられることを確保するよう勧告する。 45.締約国は、司法手続が子どもに配慮しかつ子どもにやさしいものであること、および、適切な場合にはとくに子どもオンブズパーソンまたは国家人権委員会を通じ、アクセスしやすくかつ独立の立場からの法的助言を子どもおよびその代理人が利用できることを、確保するべきである。 漸進的実現 46.経済的、社会的および文化的権利の「漸進的実現」の問題に関して、委員会は、漸進的実現の原則がしばしば、これらの権利は即時適用されるものではなく希望的性質のものにすぎないことを意味するものとして誤解および解釈されていることに留意する。 47.委員会は、漸進的実現が、条約締約国に対し、子どもの経済的、社会的および文化的権利の全面的実現に向けて可能なかぎり迅速にかつ効果的に進んでいくために的を絞った措置をとる即時的義務を課すものとして理解されるべきであることを勧告する。委員会はとくに、利用可能な資源の水準に関わらず即時的実施が要求される義務、すなわちこれらの権利の享受において差別されないことを保障する義務およびこれらの権利の実施に向けて即時的措置をとる義務があることを強調するものである。また、経済的、社会的および文化的権利の享受を阻害する可能性があるいかなる後退的措置もとらない義務も、これらの権利の漸進的実現に向けた義務に内在すると考えられる。 48.漸進的実現の概念に並行して存在するのが、国の「最低限の中核的義務」という考え方である。中核的義務とは、少なくとも人が尊厳をもって生活できる最低条件を確保することを意図している。経済的、社会的および文化的権利に関する委員会(CESCR)はこの義務、すなわち不可欠な食料、プライマリーヘルスケアへの平等なアクセス、基礎的な居住場所および住居、社会保障または社会扶助の適用、家族の保護ならびに基礎教育の提供に関して最低水準の保護(最低限の中核的内容)をいかなるときでも保障する国の義務を系統だった形で強調してきた。すべての国は、その発展水準に関わらず、これらの義務を実施するために優先事項として即時的措置をとるよう要求される。利用可能な資源が目に見えて不十分である場合でも、当該国はなお、自国で支配的な状況下において関連する権利が可能なかぎり広く享受されることを確保するために尽力することを要求される。このように、権利の中核に関わる義務の遵守は資源の利用可能性に依存するものとして理解されるべきではない。 49.委員会は、締約国は少なくとも経済的、社会的および文化的権利の最低限の中核的内容を充足させる義務を負うと考えるとともに、締約国が、子どもの経済的、社会的および文化的権利を保護、尊重および充足するためにとった措置が「十分」であるかどうかの自己評価を行なうにあたり、経済的、社会的および文化的権利に関する委員会が「利用可能な資源の最大限の利用」に関する声明で定めた基準を綿密に検討し、かつ子どもとの関連でこれを適用するよう勧告する。 国際協力の役割 50.委員会は、第4条における国際協力への言及が国際開発援助、とくに第4条で述べられている権利の実現のための援助を行なう締約国の法的義務まで課すものかどうかについて、多様な意見が存在することに留意する。 51.委員会は、子どもの権利については先進国および開発途上国が責任を共有していると信じるものである。締約国は、例外なくすべての国の子どもの経済的、社会的および文化的権利を尊重および保護しなければならず、かつ――協力を行なう立場にあるときは常に――開発協力を通じてこれらの権利を充足するためにあらゆる可能な措置をとらなければならない。同時に、資源面で深刻な制約を有している国には、国際的な協力および援助を求める責任がある。このように、外部からの支援に依存しているというだけで不作為を正当化することはできないのであって、このような国は少なくとも、自国で支配的な状況下において関連する権利が可能なかぎり広く享受されることを(とくに社会でもっとも不利な立場に置かれたおよび周縁化された構成員または集団を対象として)確保するため、能力の及ぶかぎりであらゆる可能な努力を行なったことを実証する責任を負わなければならない。 52.委員会は、「条約の実施に関する一般的措置」についての一般的意見5号(2003年)[4] で述べた見解を想起および補強し、以下のことを勧告する。 (a) 締約国は、国際的に合意された目標(国内総生産の0.7%を国際開発援助に充てるという国連の目標を含む)を達成するとともに、開発途上国およびドナー諸国の共通の責任として、すべての人が最高度の質の基礎的社会サービスに持続可能な形でアクセスできることを達成する目的で、20/20イニシアチブの目標を追求するためにあらゆる可能な措置をとること。 (b) ドナーである締約国は、子どもに直接間接に関わる国際開発援助の枠組みとして条約を考慮すること。ドナー諸国のプログラムは権利を基盤としたものであるべきであり、かつ、国際支援の一定割合は子どもの権利の実施のために用いるよう使途指定が行なわれるべきである。これとの関連で、委員会は、締約国が行なう二国間および多国間の開発協力で対象とされているすべての部門で子どもの権利が尊重および保護されることを確保すべく、条約の原則および精神にしたがって国際的な援助および協力に関する立法が制定されることを歓迎および奨励する。 (c) 国際援助を受領している締約国は、優先課題として、その十分な部分をとくに子どもに対して配分すること。 (d) 国際金融機関は、恒常的かつ組織的に、その国際支援の一定割合を子どもの権利の実施のために用いるよう使途指定を行ない、かつコンディショナリティーを含むその活動が子どもの権利に与える影響を評価すること。また、その政策の策定および実施において子どもの最善の利益が第一義的に考慮されるようにすること。 (e) 国際金融機関その他の国際政府間機関ならびに非政府組織は、国家予算において子どもの権利を基盤とする予算策定を実施する受領国政府の能力を増進させ、かつ援助が効果的に調整されることを確保するため、受領国政府と協働するべきであること。 (f) 二国間および多国間の国際援助には、子どもならびに他の周縁化されたおよび不利な立場に置かれた集団の権利に否定的または有害な影響を及ぼす可能性のあるいかなる条件も付されるべきでないこと。 [4] 一般的意見5号(2003年、CRC/GC/2003/5)、パラ61-64。 委員会がフォローアップすべき勧告 53.委員会は、条約に基づく義務の実施についての報告に関して締約国を援助する目的で報告ガイドラインを発展させるため、継続的に尽力することの重要性を認識する。 54.委員会は、このイベント中に議論された問題に関わる条約第4条の実施に関連した問題について一般的意見を作成する可能性を追求する。 更新履歴:ページ作成(2011年6月11日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/334.html
子どもの権利委員会・一般的意見25号:デジタル環境との関連における子どもの権利 一般的意見一覧 関連資料一般的意見25号最終草案(有料記事) 参考資料欧州評議会 デジタル環境と子どもの権利ガイドライン(2018年) CRC/C/GC/25 配布:一般 2021年3月2日 原文:英語 日本語訳:平野裕二(日本語訳PDF) 子どもの権利委員会 デジタル環境との関連における子どもの権利についての一般的意見25号(2021年) I.はじめに 1.この一般的意見のための協議に参加した子どもたちは、デジタルテクノロジーは自分たちの現在の生活および未来にとってきわめて重要なものだと報告している――「デジタルテクノロジーで、世界中から情報を手に入れることができる」、「(デジタルテクノロジーは)自分のアイデンティティをどう考えればいいかについて、大切な視点を与えてくれた」、「悲しいときには、インターネットが楽しめそうなものを見つけるのに役に立つ」[1] 。 [1] “Our rights in a digital world”, summary report on the consultation of children for the present general comment, pp. 14 and 22. https //5rightsfoundation.com/uploads/Our%20Rights% 20in%20a%20Digital%20World.pdf より入手可能。子どもたちの意見に関するすべての言及は同報告書による。 2.デジタル環境はやむことなく変化・拡大しており、情報通信技術(デジタル化されたネットワーク、コンテンツ、サービスおよびアプリケーションを含む)、インターネットに接続された機器および環境、バーチャルリアリティおよび拡張現実、人工知能、ロボティクス、自動化システム、アルゴリズムおよびデータ分析、バイオメトリクスならびに人体埋め込み型テクノロジーが含まれる [2]。 [2] 用語集は委員会のウェブページより入手可能である。https //tbinternet.ohchr.org/Treaties/CRC/Shared%20Documents/1_Global/INT_CRC_INF_9314_E.pdf 3.デジタル環境は、教育、政府のサービスおよび商業を含む社会的機能が徐々にデジタルテクノロジーに依存するようになりつつあるなか、危機の時期を含め、子どもたちの生活のほとんどの側面を通じてその重要性を増しつつある。デジタル環境は、子どもの権利の実現のための新たな機会を提供すると同時に、これらの権利が侵害されるリスクをもたらすものである。子どもたちは、協議の際、デジタル環境は自分たちの安全かつ公正な関与を支援し、促進しかつ保護するようなものであるべきだという意見を表明した――「政府、テクノロジー企業、先生たちには、オンラインの当てにならない情報に対応する手助けをしてほしい」、「自分のデータが実際どうなるのかについて、はっきりさせてほしい。……誰がデータを集めるの? どんなふうに集められるの?」、「自分のデータがシェアされることが心配」[3]。 [3] "Our rights in a digital world", pp.14, 16, 22 and 25. 4.デジタル環境においてはすべての子どもの権利が尊重され、保護されかつ充足されなければならない。デジタルテクノロジーの革新は、子ども自身はインターネットにアクセスしない場合でさえ、子どもたちの生活および権利に広範かつ相互依存的なやり方で影響を及ぼす。デジタルテクノロジーに意味のある形でアクセスできることは、子どもたちが自己の市民的、政治的、文化的、経済的および社会的権利を余すところなく実現することの支援につながり得る。しかし、デジタルインクルージョンが達成されなければ、すでに存在する不平等がますます大きくなる可能性が高く、かつ新たな不平等が生じかねない。 5.この一般的意見は、締約国報告書を審査してきた委員会の経験、デジタルメディアと子どもの権利に関する一般的討議、人権条約機関の先例、人権理事会および特別報告者の勧告、コンセプトノートおよび発展版草案に関する各国、専門家その他の関係者との2度にわたる協議、ならびに、複数の地域の28か国において多種多様な状況下で暮らしている子どもたち709人との国際的協議を踏まえたものである。 6.この一般的意見は、委員会が発表した他の関連の一般的意見、および、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する条約の選択議定書の実施に関する委員会のガイドラインとあわせて読まれるべきである。 II.目的 7.委員会は、この一般的意見において、デジタル環境で子どもたちの権利の促進、尊重および保護を図る際の機会、リスクおよび課題に照らし、各国がデジタル環境との関係で条約をどのように実施すべきかについて説明するとともに、条約およびその選択議定書に基づく自国の義務の全面的遵守を確保するための関連の立法上、政策上その他の適切な措置に関する指針を示している。 III.一般原則 8.以下の4つの原則は、条約に基づく他のすべての権利の実施の際に持つべき視点を提供するものである。これらの原則は、デジタル環境との関連における子どもたちの権利の実現を保障するために必要な措置を決定するための指針とされるべきである。 A.差別の禁止に対する権利 9.差別の禁止に対する権利により、締約国は、すべての子どもが、子どもにとって意味のあるやり方で、平等かつ効果的にデジタル環境にアクセスできることを確保するよう要求される [4]。締約国は、デジタル面での排除を克服するためにあらゆる必要な措置をとるべきである。これには、専用の公共空間において子どもたちが無償でかつ安全にアクセスできるようにすることや、すべての子どもが、教育現場、コミュニティおよび家庭において負担可能な費用でデジタルテクノロジーにアクセスし、かつこれらのテクノロジーを賢く利用することを支える政策およびプログラムに投資することが含まれる。 [4] 一般的意見9号(2006年)、パラ37-38。 10.子どもたちは、デジタルテクノロジーの利用から排除されることによって、またはこれらのテクノロジーの利用を通じてヘイトスピーチ的な通信または不公正な扱いを受けることによって、差別される可能性がある。情報フィルタリング、プロファイリングまたは意思決定につながる自動化されたプロセスが、バイアスのかかった、部分的なまたは不正に入手された子どもに関する情報に基づいて進められる場合、その他の形態の差別が生じる可能性もある。 11.委員会は、締約国に対し、性、障害、社会経済的背景、民族的もしくは国民的出身、言語または他のいずれかの理由に基づく差別、ならびに、マイノリティおよび先住民族の子ども、庇護希望者、難民および移住者である子ども、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインタセックスである子ども、人身取引または性的搾取の被害者およびサバイバーである子ども、代替的養護下の子どもならびにその他の脆弱な状況に置かれた子どもに対する差別を防止するため、積極的措置をとるよう求める。 B.子どもの最善の利益 12.子どもの最善の利益は、特定の文脈にふさわしい評価を必要とする動的な概念である [5]。デジタル環境は、もともと子どもたちのために設計されたものではないが、子どもたちの生活で重要な役割を果たしている。締約国は、デジタル環境の整備、規制、設計、管理および利用に関するすべての行動において、すべての子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するべきである。 [5] 一般的意見14号(2013年)、パラ1。 13.締約国は、このような行動に、子どもの権利の充足を監督する国および地方の機関の関与を得るべきである。締約国は、子どもの最善の利益を考慮するにあたり、情報を求め、受けかつ伝える権利、害から保護される権利および自己の意見を正当に重視される権利を含むすべての子どもの権利を顧慮するとともに、子どもの最善の利益の評価および適用された基準に関する透明性を確保するよう求められる。 C.生命、生存および発達に対する権利 14.デジタル環境によって提供される機会は、子どもたちの発達にとってますます決定的な役割を果たすようになりつつあるとともに、とくに危機の状況下においては子どもたちの生命および生存にとってきわめて重要なものとなる可能性がある。締約国は、子どもたちをその生命、生存および発達に対する権利へのリスクから保護するため、あらゆる適切な措置をとるべきである。コンテンツ、接触および契約に関連するリスクには、とくに、暴力的および性的コンテンツ、ネット上の攻撃およびハラスメント、賭け事、搾取および虐待(性的な搾取および虐待を含む)、ならびに、自殺または生命を危うくする活動(犯罪者によるものまたはテロリストもしくは暴力的過激主義者の指定を受けた武装集団によるものを含む)の促進または扇動が含まれる。締約国は、子どもたちが直面している特有のリスクの性質に関して子どもたちの意見を聴くことなどの手段により、多様な状況下で子どもたちが直面する新たなリスクの特定およびこれへの対処を図るべきである。 15.デジタル機器の利用は、害をともなうものであるべきではなく、また子どもたち同士のまたは子どもと親もしくは養育者との直接の相互交流にとって代わるべきでもない。締約国は、脳がもっとも可塑性に富んでおり、かつ子どもの認知的、情緒的および社会的発達のあり方の形成において社会環境(とくに親および養育者との関係)がきわめて重要である乳幼児期におけるテクノロジーの影響に、具体的注意を払うべきである。乳幼児期には、テクノロジーの設計、目的および利用のあり方によって、予防的対応が必要になる場合がある。デジタル機器の適切な利用に関する訓練および助言を、デジタルテクノロジーが子どもの発達(とくに乳幼児期および思春期の神経学的成長加速の臨界期における発達)に及ぼす影響についての調査研究を考慮しながら、親、養育者、教育者その他の関係者に対して提供することが求められる [6]。 [6] 一般的意見24号(2019年)、パラ22および一般的意見20号(2016年)、パラ9-11。 D.意見を聴かれる子どもの権利 16.子どもたちは、デジタル環境が、自分たちに影響を与える事柄について声が聴かれるようにするためのきわめて重要な機会を与えてくれていると報告している [7]。デジタルテクノロジーの利用は、地方、国および国際社会のレベルにおける子ども参加の実現に役立つ可能性がある [8]。締約国は、子どもたちが個人としておよび集団として自分たちの権利を効果的に唱道する存在になれるよう、子どもたちが意見を表明するデジタル手段についての意識およびこれらの手段へのアクセスを促進し、かつ、子どもたちが大人との平等を基礎として、必要な場合には匿名で参加するための訓練および支援を提供するべきである。 [7] "Our rights in a digital world", p.17. [8] 一般的意見14号(2013年)、パラ89-91。 17.デジタル環境との関連における子どもの権利についての法律、政策、プログラム、サービスおよび訓練を発展させる際、締約国は、すべての子どもたちの関与を得て、そのニーズに耳を傾け、かつその意見を正当に重視するべきである。締約国は、デジタルサービスの提供者が、製品およびサービスの開発にあたり、適切な保障措置を適用しながら積極的に子どもたちの関与を得て、かつその意見を正当に考慮することを確保するよう求められる。 18.締約国は、関連する立法上、行政上その他の措置について子どもたちと協議するためにデジタル環境を活用するとともに、子どもたちの意見が真剣に考慮されること、および、子ども参加が、プライバシー、思想および意見の自由に対する子どもたちの権利を侵害する不当な監視またはデータ収集につながらないことを確保するよう奨励される。国はまた、協議のプロセスが、テクノロジーへのアクセスまたはテクノロジーを利用するスキルを欠いている子どもたちを包摂するようなものであることを確保するべきである。 IV.発達しつつある能力 19.締約国は、子どもが能力、理解力および主体性を徐々に身につけていくプロセスを扱った、権利行使を可能にする原則としての子どもの発達しつつある能力 [9] を尊重しなければならない。このプロセスは、子どもが親および養育者の監督からいっそう独立して参加できるデジタル環境においては、特有の重要性を有している。デジタル環境への子どもの関与に関連するリスクおよび機会は、子どもの年齢および発達段階に応じて変わっていく。締約国は、デジタル環境で子どもたちを保護し、または子どもたちによるデジタル環境へのアクセスを促進するための措置を立案する場合には常に、これらの考慮事項を指針とするべきである。年齢にふさわしい措置の立案に際しては、さまざまな学問分野から得られる、利用可能な最善かつ最新の調査研究を参考にすることが求められる。 [9] 一般的意見7号(2005年)、パラ17ならびに一般的意見20号(2016年)、パラ18および20。 20.締約国は、現代世界における子どもたちの変化しつつある位置づけおよび子どもたちの主体性、スキルおよび活動の諸分野全体で不均等に発達する子どもたちの能力および理解力、ならびに、関連するリスクの性質を考慮するべきである。これらの考慮事項については、支援のある環境において自己の権利を行使することの重要性ならびに個人のさまざまな経験および状況との衡量が図られなければならない [10]。締約国は、デジタルサービスの提供者が、子どもの発達しつつある能力にふさわしいサービスを子どもたちに提供することを確保するべきである。 [10] 一般的意見20号(2016年)、パラ20。 21.子どもの養育責任の履行にあたって親および養育者に適切な援助を与える国の義務にしたがい、締約国は、子どもの発達しつつある自律性、能力およびプライバシーを尊重する必要性に関する親および養育者の意識を促進するべきである。締約国は、デジタル環境における子どもたちの権利(保護に対する権利を含む)の実現に関して子どもを援助することに関して親および養育者を手助けするため、デジタルリテラシーおよび子どもたちにとってのリスクに関する意識の獲得に関して親および養育者を支援するよう求められる。 V.締約国による一般的実施措置(第4条) 22.デジタル環境における子どもの権利の実現および子どもの保護のための機会は、広範な立法上、行政上その他の措置(予防的措置を含む)を必要とする。 A.立法 23.締約国は、デジタル環境が条約およびその選択議定書に掲げられた諸権利と両立することを確保するため、国際基準にのっとって国内法の見直し、採択および改定を図るべきである。立法は、テクノロジーの進歩および新たな慣行の誕生のなかで妥当であり続けることが求められる。締約国は、デジタル環境に関連する法律、予算配分およびその他の行政決定に子どもの権利を確実に位置づける目的で子どもの権利影響評価の活用を指示するとともに、デジタル環境に関連する公的機関および企業の間でその活用を促進するべきである [11]。 [11] 一般的意見5号(2003年)、パラ45、一般的意見14号(2013年)、パラ99、一般的意見16号(2016年)、パラ20。 B.包括的な政策および戦略 24.締約国は、子どもの権利に関連する国家的政策においてデジタル環境が具体的に取り上げられることを確保するとともに、規制、業界規範。設計基準および行動計画(これらはすべて定期的な評価および改定の対象とされるべきである)を実施するよう求められる。このような国家的政策においては、デジタル環境への関与から利益を得る機会を子どもたちに提供すること、および、子どもたちによるデジタル環境への安全なアクセスを確保することが目的とされるべきである。 25.オンラインにおける子どもの保護が、子どもの保護に関する国家的政策に統合されるべきである。締約国は、子どもたちをリスク(ネット上の攻撃、ならびに、デジタル技術によって促進されるおよびオンラインで行なわれる子どもの性的な搾取および虐待を含む)から保護するための措置を実施し、このような犯罪が捜査されることを確保し、かつ被害者である子どもたちに救済および支援を提供するよう求められる。締約国はまた、(必要な場合には関連のマイノリティ言語に翻訳された)子どもにやさしい情報を提供するなどの手段により、不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちのニーズにも対応するべきである。 26.締約国は、子どもがデジタル環境にアクセスするすべての現場(家庭、教育現場、ネットカフェ、ユースセンター、図書館ならびに保健ケアおよび代替的養護の現場を含む)において、オンラインにおける子どもの保護のための効果的なしくみおよび安全確保方針が運用されることを確保するべきである。 C.調整 27.デジタル環境が子どもたちの権利に及ぼす分野横断的な影響に網羅的に対処するため、締約国は、中央政府の諸部局および各レベルの行政機構の間で子どもの権利関連の政策、指針およびプログラムの調整を図る任務を委ねられた政府機関を指定するべきである [12]。このような国家的調整機関は、部門横断的にならびに国、広域行政圏および地方のレベルにおいてデジタル環境に関連する子どもの権利を実現するため、学校および情報通信技術部門との連携ならびに企業、市民社会、学界および諸団体との協力を図るよう求められる [13]。このような機関は、必要に応じて政府内外の技術的専門性および他の関連の専門性を活用できるべきであり、かつ、その義務の履行における有効性に関して独立の評価の対象とされるべきである。 [12] 一般的意見5号(2003年)、パラ37。 [13] 前掲、パラ27および39。 D.資源配分 28.締約国は、デジタル環境における子どもの権利の全面的実現およびデジタルインクルージョンの向上を目的とする法律、政策およびプログラムの実施のため、公的資源の動員、配分および活用を図るべきである。このような対応は、デジタル環境が子どもたちの生活に及ぼす影響の高まりに対処し、かつ、サービスおよびコネクティビティへのアクセスの平等および負担可能性を促進するために、必要とされる [14]。 [14] 一般的意見19号(2016年)、パラ21。 29.資源が企業セクターから拠出されまたは国際協力を通じて獲得される場合、締約国は、自国の委任事務、歳入動員、予算配分および支出に関して第三者による干渉または阻害が行なわれないことを確保するべきである [15]。 [15] 前掲、パラ27(b)。 E.データ収集および調査研究 30.恒常的に更新されるデータおよび調査研究は、子どもの権利にとってのデジタル環境の意味合いを理解し、デジタル環境が子どもたちに及ぼす影響を評価し、かつ国の介入の有効性を事後に評価することにとって、きわめて重要である。国は、しっかりした包括的なデータが十分な資源を得たうえで収集されること、および、データが年齢、性別、障害、地理的所在、民族的および国民的出身ならびに社会経済的背景によって細分化されることを確保するよう求められる。このようなデータおよび調査研究(子どもたちとともにおよび子どもたちによって実施された調査研究を含む)は、立法、政策および実務の参考とされるべきであり、かつ公有物とされるべきである [16]。子どもたちのデジタル生活に関するデータ収集および調査研究では、子どもたちのプライバシーが尊重され、かつ最高度の倫理基準が満たされなければならない。 [16] 一般的意見5号(2003年)、パラ48および50。 F.独立の監視 31.締約国は、国内人権機関および他の適切な独立機関の委任事項においてデジタル環境における子どもの権利が対象とされ、かつこれらの機関が子どもおよびその代理人からの苦情申立てを受理し、調査しかつこれに対応できることを確保するべきである [17]。デジタル環境関連の活動を監視する独立の監督機関が存在している場合、国内人権機関は、子どもの権利に関する委任事項を効果的に遂行するため、当該機関と緊密に協力することが求められる [18]。 [17] 一般的意見2号(2002年)、パラ2および7。 [18] 前掲、パラ7。 G.情報の普及、意識啓発および研修 32.締約国は、とくに子どもたちに直接または間接の影響を及ぼす行動に従事している人々に焦点を当てながら、デジタル環境における子どもの権利に関する情報の普及および意識啓発の実施を進めるべきである。締約国は、子どもたち、親および養育者ならびに一般公衆および政策立案に携わる人々を対象とする、デジタル製品およびデジタルサービスに関連した機会およびリスクに関わる子どもの権利に関する知識を増進させるための教育プログラムを促進するよう求められる。このようなプログラムには、子どもたちがデジタル製品およびデジタルサービスからどのように利益を得られ、かつデジタルリテラシーおよびデジタルスキルをどのように発達させられるか、子どもたちのプライバシーの保護および被害化の防止をどのようにして図るか、ならびに、オンラインまたはオフラインで加えられる害の被害を受けた子どもをどのように認識し、かつどのように適切に対応するかについての情報が含まれるべきである。このようなプログラムにおいては、調査研究ならびに子どもたち、親および養育者との協議を参考にすることが求められる。 33.子どもたちおよび企業セクターのためにならびに子どもたちおよび企業セクター(テクノロジー産業を含む)とともに働く専門家は、デジタル環境が複合的状況下で子どもの権利にどのように影響を及ぼしているか、子どもたちがデジタル環境でどのように自己の権利を行使しているか、および、子どもたちがテクノロジーにどのようにアクセスしかつそれを利用しているかに関するものを含む研修を受けるべきである。これらの専門家はまた、デジタル環境への国際人権基準の適用に関する研修を受けることも求められる。締約国は、あらゆる教育段階で働く専門家を対象として、その知識、スキルおよび実践の開発支援を目的とした、デジタル環境に関連する着任前研修および現職者研修が実施されることを確保するべきである。 H.市民社会との協力 34.締約国は、子どもの権利に関連する法律、政策、計画およびプログラムの策定、実施、モニタリングおよび評価に、市民社会(子どもの権利の分野で活動している子ども主導のグループおよび非政府組織を含む)およびデジタル環境に関係している人々の組織的関与を得るべきである。締約国はまた、市民社会組織が、デジタル環境に関連する子どもの権利の促進および保護に関わる活動を実施できることも確保するよう求められる。 I.子どもの権利と企業セクター 35.非営利組織を含む企業セクターは、デジタル環境関連のサービスおよび製品の提供に際し、子どもたちの権利に直接・間接の影響を及ぼしている。企業は、子どもたちの権利を尊重し、かつ、デジタル環境との関連で子どもたちの権利侵害の防止および救済を図るべきである。締約国には、企業がこれらの責任を履行することを確保する義務がある [19]。 [19] 一般的意見16号(2013年)、パラ28、42および82。 36.締約国は、自社のネットワークまたはオンラインサービスが子どもの権利(プライバシーおよび保護に対する権利を含む)の侵害を引き起こしまたは助長するようなやり方で利用されることを防止する義務、ならびに、子ども、親および養育者に対して迅速かつ効果的な救済を提供する義務が企業によって遵守されることを確保するため、法律、規則および政策の策定、モニタリング、実施および評価などを通じた措置をとるべきである。締約国はまた、企業に対し、子どもたちによる安全かつ有益なデジタル活動を支援するための公的情報およびアクセシブルで時宜を得た助言の提供も奨励するよう求められる。 37.締約国には、企業体による権利(デジタル環境におけるあらゆる形態の暴力から保護される権利を含む)の侵害から子どもたちを保護する義務がある。企業が有害な行為の実行に直接関与するわけではない場合もあるとはいえ、企業は、デジタルサービスの設計および運用などを通じ、暴力からの自由に対する子どもたちの権利の侵害を引き起こしまたは助長する可能性がある。締約国は、暴力からの保護に対する権利の侵害の防止、ならびに、デジタル環境に関連して生じる権利侵害についての捜査、判決および救済を目的とした法令を整備し、モニタリングしかつ執行するべきである [20]。 [20] 前掲、パラ60。 38.締約国は、企業セクターに対し、デジタル環境が子どもたちに及ぼす、それぞれ異なった、かつ時として深刻になることもある影響をとくに考慮しながら子どもの権利デューディリジェンス(相当の注意)を履行すること、とくに子どもの権利影響評価を実施しかつ公衆に開示することを求めるべきである [21]。締約国は、企業による子どもの権利侵害を防止し、モニタリングし、調査しかつ処罰するために適切な措置をとるよう求められる。 [21] 前掲、パラ50および62-65。 39.締約国は、法律および政策の策定に加え、デジタル環境との関連で子どもの権利に影響を及ぼすすべての企業に対し、自社の製品およびサービスの設計、エンジニアリング、開発、運用、流通およびマーケティングに関する最高水準の倫理基準、プライバシー基準および安全基準にしたがった規制枠組み、業界規範および利用規約を実施するよう求めるべきである。これには、子どもたちをターゲットとする企業、エンドユーザーに子どもたちがいる企業またはその他の形で子どもたちに影響を与える企業が含まれる。締約国は、これらの企業に対し、高水準の透明性およびアカウンタビリティを維持するよう求めるとともに、子どもの最善の利益にのっとった革新のための措置をとることを奨励するべきである。締約国はまた、子どもたちに対するまたは乳幼児の親および養育者に対する、利用規約についての年齢にふさわしい説明を要求することも求められる。 J.商業広告およびマーケティング 40.デジタル環境には、収益創出コンテンツまたは有料コンテンツのターゲティングを目的とする個人データの処理に財政的に依拠している企業も含まれており、このような処理が、意図的か否かにかかわらず、子どもたちのデジタル経験に影響を及ぼしている。これらのプロセスの多くに複数の事業提携先が関与していることから、子どもの権利侵害につながる可能性がある商業活動および個人データ処理の供給網がつくり出されている。このような子どもの権利侵害には、子どもがより過激なコンテンツに向かうことを想定しかつ誘導する広告デザイン上の特徴、睡眠を妨げる自動通知、または商業的動機によるコンテンツであって有害である可能性があるもののターゲティングを目的とする子どもの個人情報もしくは位置情報の利用を通じて行なわれるものが含まれる。 41.締約国は、子ども向けのおよび子どもがアクセスできる広告およびマーケティングを規制する際、子どもの最善の利益を第一次的に考慮するべきである。スポンサーシップ、プロダクトプレイスメントおよび商業的動機による他のあらゆる形態のコンテンツは、他のあらゆるコンテンツと明確に区別されるべきであり、かつ、ジェンダーまたは人種に基づくステレオタイプを固定化させるようなものであるべきではない。 42.締約国は、実際の属性または推定された属性のデジタル記録(グループデータもしくは集約データ、相関分析によるターゲティングまたは嗜好性プロファイリングを含む)に基づいて子どもたち(年齢を問わない)を商業目的のプロファイリングまたはターゲティングの対象とすることを、法律で禁止するべきである。製品、アプリケーションおよびサービスの販売促進を目的としてニューロマーケティング、感情解析、没入型広告ならびに仮想現実および拡張現実の環境下における広告に依拠する慣行についても、子どもたちに直接または間接に働きかけることを禁止することが求められる。 K.司法および救済措置へのアクセス 43.子どもたちは、さまざまな理由により、デジタル環境との関連で司法にアクセスする際に特段の課題に直面する。このような課題は、とりわけ、デジタル環境にとくに関連する子どもの権利侵害について制裁を科す法律が存在しないこと、証拠の取得および加害者の特定が難しいこと、またはデジタル環境における子どもの権利についてもしくは何が子どもの権利の侵害に当たるのかについて子どもたちおよびその親もしくは養育者が知らないことから生ずるものである。子どもたちが機微なまたは私的なオンライン活動の開示を求められる場合、または仲間からの報復もしくは社会的排除に対する恐れを理由として、さらなる課題が生じる可能性もある。 44.締約国は、デジタル環境に関連する子どもの権利侵害についての適切かつ効果的な司法的および非司法的救済の仕組みが、すべての子どもおよびその代理人にとって広く周知され、かつ容易にアクセスできることを確保するべきである。苦情申立ておよび通報のための仕組みは、無償で、安全で、秘密が守られ、応答性が高く、子どもにやさしく、かつアクセシブルな形式で利用可能であることが求められる。締約国はまた、クラスアクションおよび公益訴訟を含む集団的苦情申立て、ならびに、デジタル環境においてまたはデジタル環境を通じて権利を侵害された子どもに対する法的その他の適切な援助(専門サービス機関によるものを含む)についても定めるべきである。 45.締約国は、このような事案を付託し、かつ被害を受けた子どもに効果的支援を提供するための枠組みを確立し、調整し、かつ定期的にモニタリングおよび評価を実施するべきである [22]。枠組みには、被害を受けた子どもの特定、治療およびフォローアップケアならびに社会的再統合のための措置を含めることが求められる。付託のための仕組みには、被害を受けた子どもの特定に関する研修(デジタルサービス提供者を対象とするものも含む)が含まれるべきである。このような枠組みのなかでとられる措置は、捜査過程および司法手続を背景として生じる子どもの再被害および二次被害を防止するため、複数の機関が関与する、子どもにやさしいものであることが求められる。そのためには、秘密を保持しかつデジタル環境に関連した害を是正するための特別な保護措置が必要となる場合もある。 [22] 一般的意見21号(2017年)、パラ22。国連総会決議60/147付属文書〔訳者注/著しい国際人権法違反および深刻な国際人道法違反の被害者の救済および賠償に対する権利に関する基本的原則および指針〕も参照。 46.適切な被害回復措置には、原状回復、補償および満足が含まれ、かつ、謝罪、是正措置、不法なコンテンツの削除、心理的回復サービスへのアクセスその他の措置が必要となる場合もある [23]。デジタル環境における権利侵害との関連で、救済のための仕組みにおいては、子どもたちの脆弱性ならびに継続的および将来的被害を迅速に終了させる必要性が考慮されるべきである。締約国は、関連の法律および政策の改革ならびにその効果的実施などを通じ、侵害が再発しないことを保証するよう求められる。 [23] 一般的意見5号(2003年)、パラ24。 47.デジタルテクノロジーは、国境を越えて行なわれる場合もある子どもに対する犯罪の捜査および訴追をいっそう複雑なものとする。締約国は、デジタルテクノロジーの利用が子どもに対する犯罪の捜査および訴追をどのように容易にしまたは阻害し得るかについて対処するとともに、国際的パートナーとの協力なども通じ、防止、執行および救済のために利用可能なあらゆる措置をとるべきである。締約国は、デジタル環境ととくに関連する子どもの権利侵害に関して、国際協力なども通じ、法執行官、検察官および裁判官を対象とする特別研修を実施するよう求められる。 48.子どもたちは、デジタル環境において企業体による権利侵害を受けた場合に、とくに当該企業が世界的に操業している状況下では、救済を得ることに関して特段の困難に直面する可能性がある [24]。締約国は、企業による域外での活動および操業との関係で、自国と当該行為との間に合理的な結びつきがある場合には、子どもたちの権利を尊重し、保護しかつ充足するための措置を検討するべきである。締約国は、企業が効果的な苦情申立ての仕組みを提供することを確保するよう求められる。ただし、これによって、国を基盤とする救済措置に子どもがアクセスできなくさせられるべきではない。締約国はまた、子どもの権利に関連する監督権限を有する機関(健康および安全、データ保護および消費者の権利、教育ならびに広告およびマーケティングに関連する機関など)が、デジタル環境における子どもの権利侵害に関する苦情申立ての調査および十分な救済措置の提供を行なうことも、確保するべきである [25]。 [24] 一般的意見16号(2013年)、パラ66-67。 [25] 前掲、パラ30および43。 49.締約国は、子どもたちに対し、子どもの権利、ならびに、デジタル環境に関連して自己の権利が侵害された場合に利用可能な通報および苦情申立ての仕組み、サービスならびに救済措置についての子どもに配慮したかつ年齢にふさわしい情報を、子どもにやさしい言語で提供するべきである。このような情報は、親、養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家に対しても提供することが求められる。 VI.市民的権利および自由 A.情報へのアクセス 50.デジタル環境は、子どもたちが情報にアクセスする権利を実現するための、比類のない機会を約束するものである。この点に関しては、デジタルコンテンツおよびオンラインコンテンツを含む情報通信メディアも重要な機能を果たす [26]。締約国は、子どもたちがデジタル環境で情報にアクセスできること、および、当該権利の行使の制限が、法律で定められており、かつ条約第13条に規定された目的のために必要な場合以外には行なわれないことを確保するべきである。 [26] 一般的意見7号(2005年)、パラ35および一般的意見20号(2016年)、パラ47。 51.締約国は、子どもの発達しつつある能力にしたがった、年齢にふさわしくエンパワーメントにつながる子ども向けのデジタルコンテンツを提供しかつその制作を支援するとともに、子どもたちが、文化、スポーツ、芸術、健康、公民・政治問題および子どもの権利に関する多種多様な情報(公的機関が保有する情報を含む)にアクセスできることを確保するべきである。 52.締約国は、多様な形式を活用し、かつニュースメディア、放送事業者、博物館、図書館および教育・科学・文化組織を含む国内外の多数の情報源から発信される、このようなコンテンツの制作および普及を奨励するべきである。締約国はとくに、障害のある子どもおよび民族的、言語的、先住民族その他のマイノリティの子どもを対象とする多様な、アクセシブルなかつ有益なコンテンツが提供されることを増進するために努力するよう求められる。子どもたちが理解する言語で関連の情報にアクセスできることは、平等に対して相当に肯定的な影響を及ぼし得る [27]。 [27] 一般的意見17号(2013年)、パラ46および一般的意見20号(2016年)、パラ47-48。 53.締約国は、すべての子どもたちが、オンラインの多様かつ良質な情報(商業的または政治的利益集団から独立したコンテンツを含む)についての情報を提供され、かつこれらの情報を容易に見つけられることを確保するべきである。締約国は、自動化された検索・情報フィルタリング(推奨システムを含む)において、商業的または政治的動機を有する有料コンテンツが、子どもたちの選択よりも、または情報に対する子どもたちの権利を犠牲にする形で、優先されないことを確保するよう求められる。 54.デジタル環境には、ジェンダーのステレオタイプを反映した情報、差別的、人種主義的、暴力的、ポルノ的および搾取的な情報のほか、虚偽の言説、誤情報および偽情報ならびに不法なまたは有害な活動への関与を子どもに奨励する情報(武装テロ集団による情報を含む)が含まれている可能性がある。このような情報は、他のユーザー、商業的コンテンツ制作者、性犯罪者またはテロリストもしくは暴力的過激主義者の指定を受けた武装集団を含む、多様な主体から発信されている場合がある。締約国は、有害コンテンツおよび信頼できないコンテンツから子どもたちを保護するとともに、関連の企業その他のデジタルコンテンツ提供者が、子どもたちをその権利および発達しつつある能力にしたがってこのような有害な資料から保護しつつ、情報および表現の自由に対する子どもたちの権利を認識して、子どもたちが多様なコンテンツに安全にアクセスできるようにするためのガイドラインを策定しかつ実施することを確保するべきである [28]。情報普及のためのインターネットを基盤とするシステム、電子的システムその他のシステムの運用に対するいかなる制限も、第13条にのっとっていることが求められる [29]。締約国は、いかなる地域においても、部分的にか全体的にかを問わず、電力供給、移動体通信ネットワークまたはインターネット接続を意図的に妨害しまたは他者に対してそのような妨害を認めるべきではない。このような妨害は、情報および通信に対する子どものアクセスを阻害する効果を有する可能性がある。 [28] 一般的意見16号(2013年)、パラ58および一般的意見7号(2005年)、パラ35。 [29] 自由権規約委員会、一般的意見34号(2011年)、パラ43。 55.締約国は、子どもたちが利用するデジタルサービスの提供者に対し、たとえばコンテンツの年齢へのふさわしさまたは信頼性に関する、簡潔明瞭なコンテンツのラベリングを行なうよう奨励するべきである。締約国はまた、子ども、親および養育者、教育者ならびに関連の専門家集団を対象とする、アクセシブルな指針、訓練、教育資料および通報機構の提供も奨励するよう求められる [30]。年齢にふさわしくないコンテンツから年齢またはコンテンツに基づいて子どもたちを保護するためのシステムは、データの最小限化の原則に一致しているべきである。 [30] 一般的意見16号(2013年)、パラ19および59。 56.締約国は、デジタルサービス提供者が、関連のガイドライン、基準および規範を遵守し [31]、かつ法律にのっとった、必要かつ比例的なコンテンツモデレーション規則を執行することを確保するべきである。コンテンツ管理、学校フィルタリングシステムおよびその他の安全指向技術は、デジタル環境における情報への子どもたちのアクセスを制限するために用いられるべきではない。これらの技術は、有害な資料が子どもたちに供給されることを防止するためだけに用いられるべきである。コンテンツモデレーションおよびコンテンツ管理においては、子どもたちのその他の権利、とくに表現の自由およびプライバシーに対する権利とのバランスを図ることが求められる。 [31] 前掲、パラ58および61。 57.ニュースメディアその他の関連組織が定める職業行動規範には、子どもたちに関わるデジタル関連のリスクおよび機会についての報道のあり方に関する指針が含まれるべきである。このような指針は、被害者およびサバイバーである子どもの身元を明らかにせず、かつ国際人権基準にしたがった、エビデンスに基づく報道につながるようなものであることが求められる。 B.表現の自由 58.表現の自由に対する子どもの権利には、自ら選択するすべての媒体を使って、あらゆる種類の情報および考えを求め、受けかつ伝える自由が含まれる。子どもたちが報告するところによれば [32]、デジタル環境は、子どもたちの考え、意見および政治的見解を表明する相当の機会を提供するものである。不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちにとっては、自分の経験をシェアしてくれる他の子どもたちとの、テクノロジーによって容易になる相互交流は、自分自身を表現する一助となり得る。 [32] "Our rights in a digital world", p.16. 59.デジタル環境における表現の自由に対する子どもたちの権利のいかなる制限(安全措置を含むフィルターなど)も、法律にしたがっており、必要であり、かつ比例性を有するものであるべきである。そのような制限の根拠を透明なものとし、かつ子どもたちに対して年齢にふさわしい言葉で伝えることが求められる。締約国は、他者の権利および尊厳を尊重し、かつ法律(憎悪および暴力の扇動に関連するものなど)に違反しないようにしながらこの権利を効果的に行使する方法(とくにデジタルコンテンツを安全に制作しかつシェアする方法)についての情報および訓練の機会を、子どもたちに提供するべきである。 60.子どもたちがデジタル環境で自己の政治的その他の見解およびアイデンティティを表明する際には、批判、敵意、脅迫または処罰の対象とされる場合がある。締約国は、ネット上の攻撃および脅迫、検閲、データ漏洩およびデジタル監視から子どもたちを保護するべきである。子どもたちは、デジタル環境で意見を表明したことを理由として訴追されるべきではない(ただし、条約第13条と両立する刑事法で定められた制限に違反した場合、このかぎりではない)。 61.特定の世界観を推進しようとする商業的および政治的動機が存在することに鑑み、締約国は、情報フィルタリング、プロファイリング、マーケティングおよび意思決定に関する自動化されたプロセスの利用が、デジタル環境において自己の意見を形成しかつ表明する子どもたちの能力を代替し、操作しまたはこれに干渉しないことを確保するべきである。 C.思想、良心および宗教の自由 62.締約国は、デジタル環境における思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利を尊重するべきである。委員会は、締約国に対し、デジタル環境で(たとえば感情の解析または推論によって)思想および信条の自由に対する子どもたちの権利を操作しまたはこれに干渉する慣行を特定し、定義しかつ禁止するデータ保護規則および設計基準を導入しまたは改定するよう、奨励する。自動化システムは、子どもの内心に干渉するために利用される可能性がある。締約国は、子どもたちの行動または感情に影響を与えもしくはこれを左右すること、または子どもの機会もしくは発達を制限することを目的として自動化システムまたは情報フィルタリングシステムが利用されないことを確保するべきである。 63.締約国は、子どもたちがその宗教もしくは信条を理由として処罰されず、または他のいかなるやり方によっても将来の機会を制限されないことを確保するべきである。デジタル環境において自己の宗教または信条を表明する子どもたちの権利の行使に対しては、法律にのっとった、必要な、かつ比例性を有する制限しか課すことができない。 D.結社および平和的集会の自由 64.デジタル環境は、子どもたちが自己の社会的、宗教的、文化的、民族的、性的および政治的アイデンティティを形成し、かつ、仲間として結びついたコミュニティならびに熟議、文化交流、社会的結束および多様性のための公的空間に参加することができる [33]。子どもたちが報告するところによれば、デジタル環境は、関心を共有する仲間、意思決定権者その他の人々と会い、交流しかつじっくりと議論する、貴重な機会を与えてくれるものである [34]。 [33] 一般的意見17号(2013年)、パラ21および一般的意見20号(2016年)、パラ44-45。 [34] "Our rights in a digital world", p.20. 65.締約国は、自国の法令および政策において、部分的にまたはもっぱらデジタル環境で活動している団体に参加する子どもたちの権利が保護されることを確保するべきである。デジタル環境における結社および平和的集会の自由に対する子どもたちの権利の行使には、法律にのっとった、必要でありかつ比例性を有するもの以外のいかなる制限も課すことができない [35]。このような参加が、それ自体として、これらの子どもたちに対する否定的な結果(停退学、将来の可能性の制限もしくは剥奪または警察による個人ファイルの作成など)につながることがあるべきではない。このような参加は、安全であり、プライバシーが守られ、かつ官民の機関による監視から自由であるべきである。 [35] 自由権規約委員会、一般的意見37号(2020年)、パラ6および34。 66.デジタル環境における公的な注目およびネットワーキングの機会も、子どもが主導する行動主義を支え、かつ人権擁護者としての子どもたちのエンパワーメントにつながり得る。委員会は、デジタル環境によって、人権擁護者である子どもたちおよび脆弱な状況に置かれた子どもたちが、相互にコミュニケーションを図り、自分たちの権利を擁護し、かつ結社を結成できるようになることを認識する。締約国は、特別なデジタル空間の創設を促進するなどの手段によりこれらの子どもたちを支援し、かつその安全を確保するべきである。 E.プライバシーに対する権利 67.プライバシーは、子どもたちの主体性、尊厳および安全ならびに権利行使にとってきわめて重要である。子どもたちの個人データは、子どもたちに教育上、健康上その他の利益を提供する目的で処理されている。子どもたちのプライバシーに対する脅威は、公的機関、企業その他の組織によるデータの収集および処理からも、個人情報の不正な取得・利用のような犯罪活動からも生じ得る。脅威はまた、デジタル環境における子どもたち自身の活動からも、家族構成員、仲間その他の者の活動(たとえば親が写真をオンラインでシェアすることまたは見知らぬ者が子どもに関する情報をシェアすること)からも生じ得る。 68.データには、とくに子どもの身元、活動、位置情報、通信、感情、健康および人間関係に関するデータが含まれる場合がある。生体データを含む個人データのある種の組み合わせは、子どもを一意的に特定するために利用し得る。自動データ処理、プロファイリング、行動ターゲティング、義務的本人確認、情報フィルタリングおよび大量監視のようなデジタル慣行が、当たり前に行なわれるようになりつつある。このような慣行は、プライバシーに対する子どもたちの権利への恣意的または不法な干渉につながる可能性がある。このような慣行は子どもたちに悪影響をもたらす可能性があり、子どもたちは人生のその後の段階においても影響を受け続ける場合がある。 69.子どものプライバシーへの干渉が認められるのは、それが恣意的または不法でない場合のみである。したがって、このようないかなる干渉も、法律で定められ、正当な目的の達成を狙いとし、データの最小限化の原則を維持し、比例性を有しており、かつ条約の規定、目的および趣旨に抵触しないものでなければならない。 70.締約国は、子どものデータ処理を行なうすべての組織によっておよびそのようなデータ処理が行なわれるすべての環境において子どもたちのプライバシーが尊重されかつ保護されることを確保するため、立法上、行政上その他の措置をとるべきである。法律には、強力な保障措置、透明性、独立の監督および救済措置へのアクセスを含めることが求められる。締約国は、子どもたちに影響を及ぼすデジタル製品およびデジタルサービスへの、プライバシー・バイ・デザインの統合を要求するべきである。締約国は、プライバシーおよびデータ保護に関する法律を定期的に見直すとともに、手続および実務によって、子どもたちのプライバシーの意図的または偶発的侵害が防止されることを確保するよう求められる。暗号化が適切な手段であると考えられる場合、締約国は、子どもの性的搾取・虐待または子どもの性的虐待表現物の発見および通報を可能にする、適切な措置を検討するべきである。このような措置は、法律適合性、必要性および比例性の原則にしたがい、厳格に限定的なものとされなければならない。 71.子どものデータ処理に対する同意が求められる場合、締約国は、同意が、子どもによって(または、子どもの年齢および発達しつつある能力に応じてその親もしくは養育者によって)、十分な情報に基づいてかつ自由に与えられ、かつ当該データの処理の前に取得されることを確保するよう求められる。子どもの個人データを処理するのに、子ども自身の同意では不十分であると考えられ、親による同意が必要とされる場合、締約国は、同意が十分な情報に基づく意味のあるものであり、かつ子どもの親または養育者によって与えられたことを、このようなデータの処理を行なう組織が確認するよう要求するべきである。 72.締約国は、合理的かつ法律にのっとった制限に服することを条件として、子どもおよびその親または養育者が、保存されているデータに容易にアクセスし、不正確なまたは古くなったデータを訂正し、かつ、公的機関、私人またはその他の機関によって不法にまたは不必要に保存されているデータを削除できることを確保するべきである [36]。締約国はさらに、データ管理者がデータ処理のための正当なかつ優先されるべき理由を示せない場合には、子どもが同意を撤回しかつ個人データ処理に異議を唱える権利を確保するよう求められる。締約国はまた、子ども、親および養育者に対し、子どもにやさしい言葉およびアクセシブルな形式で、このような事柄に関する情報を提供するよう求められる。 [36] 自由権規約委員会、一般的意見16号(1988年)、パラ10。 73.子どもたちの個人データへのアクセスは、定期的監査およびアカウンタビリティ措置のような適正手続上の保障を遵守しながら当該データを処理することについて法律に基づく指定を受けた公的機関、組織および個人に対してのみ、認められるべきである [37]。定められた目的のために収集された子どもたちのデータは、いかなる場面(デジタル化された犯罪記録を含む)においても保護され、かつ当該目的のためにのみ用いられるべきであり、また不法にもしくは不必要に保持されまたは他の目的のために利用されるべきではない。ある場面で提供された情報を他の場面で(たとえば学校教育および高等教育の文脈で)利用することが子どもにとって正当な利益となり得る場合、そのようなデータの利用は透明であり、説明責任が確保され、かつ子ども、親または養育者の同意に適宜服するものであることが求められる。 [37] 前掲および子どもの権利委員会、一般的意見20号(2016年)、パラ46。 74.プライバシーおよびデータ保護に関する法律および措置によって、子どもたちのその他の権利(たとえば表現の自由または保護に関連する権利)が恣意的に制限されるべきではない。締約国は、データ保護法がデジタル環境との関連で子どものプライバシーおよび個人データを尊重することを確保するべきである。継続的な技術革新を通じてデジタル環境の範囲は拡大しつつあり、ますます多くのサービスおよび製品(衣服・玩具など)も含むようになっている。自動化システムに接続された埋込センサーの利用を通じて、子どもたちが時間を費やす環境が「接続した」状態になっていくなか、締約国は、そのような環境に寄与する製品およびサービスが、データ保護およびその他のプライバシーに関わる確固たる規制および基準の対象とされることを確保するべきである。これには、路上、学校、図書館、スポーツ・娯楽施設および商業施設(店舗や映画館を含む)のような公的な場所ならびに家庭が含まれる。 75.子どもたちを対象とするいかなる監視も、関連する自動化された個人データ処理とともに、プライバシーに対する子どもの権利を尊重して行なわれなければならず、かつ、日常的に、無差別に、または子どもが(もしくは乳幼児の場合にはその親もしくは養育者が)知らないところで実施されるべきではない。そのような監視は、商業的場面ならびに教育およびケアの場面において、当該監視に反対する権利が認められないまま行なわれるべきでもなく、かつ、所期の目的を果たすために利用可能なもっともプライバシー干渉度の低い手段が常に考慮されるべきである。 76.デジタル環境は、プライバシーに対する子どもの権利の尊重に関して、親・養育者に特有の問題を生じさせる。安全目的でオンライン活動をモニターするテクノロジー(追跡デバイスや追跡サービスなど)は、慎重に運用されなければ、子どもがヘルプラインにアクセスしたりデリケートな情報を検索したりすることの妨げとなる可能性がある。締約国は、子どもたち、親および養育者ならびに公衆に対し、プライバシーに対する子どもの権利の重要性について、また自分自身の対応が当該権利をどのように脅かしかねないかについて、助言を提供するべきである。どのように対応すれば、子どもたちの安全を保ちつつ、デジタル環境との関連で子どもたちのプライバシーを尊重しかつ保護できるかについても助言を提供することが求められる。親および養育者による子どものデジタル活動のモニタリングは、比例性を有しており、かつ子どもの発達しつつある能力にしたがって行なわれるべきである。 77.身元を保護するオンラインアバターまたはオンライン名を使用している子どもたちは多く、このような対応は子どもたちのプライバシー保護に関して重要なものとなり得る。締約国は、匿名による実践が有害なまたは不法な行動(たとえばネット上の攻撃、ヘイトスピーチまたは性的搾取・虐待など)を隠すために常用されないことを確保しつつ、匿名性に対するセーフティ・バイ・デザインおよびプライバシー・バイ・デザインを統合したアプローチを要求するべきである。デジタル環境における子どものプライバシーの保護は、親もしくは養育者自身が子どもの安全にとって脅威となっている場合または子どもの養育をめぐって紛争中である場合に、きわめて重要になり得る。このような事案では、プライバシーに対する子どもの権利を保護するため、さらなる介入および家族カウンセリングその他のサービスが必要となる場合がある。 78.デジタル環境における子どもたち向けの防止サービスまたは相談サービスの提供者は、子どものユーザーが当該サービスにアクセスするために親の同意を得なければならないとするいかなる要件からも免除されるべきである [38]。このようなサービスは、プライバシーおよび子どもの保護に関する高い基準の遵守が求められる。 [38] 一般的意見20号(2016年)、パラ60。 F.出生登録およびアイデンティティに対する権利 79.締約国は、保健、教育および福祉を含むサービスへのアクセスを促進するため、すべての新生児が国の公的機関によってその出生を登録されかつ公式に承認されることを可能にする、デジタル身元確認システムの活用を促進するべきである。出生登録が行なわれないことは、条約およびその選択議定書に基づく子どもたちの権利の侵害を助長する。締約国は、とくに遠隔地の子ども、難民および移住者である子ども、危険な状況にある子どもならびに周縁化された状況にある子どもを対象として出生登録へのアクセスを確保するため、移動登録班を含む最新のテクノロジーを活用するとともに、デジタル身元確認システムの前に出生した子どもも対象とするべきである。このようなシステムが子どもたちにとって有益なものとなるようにするため、締約国は、意識啓発キャンペーンを実施し、モニタリング機構を設置し、コミュニティの関与を促進し、かつ、民事登録担当官、裁判官、公証人、保健担当官および子どもの保護機関要員間の効果的調整を確保するよう求められる。締約国はまた、プライバシーおよびデータ保護に関する確固たる枠組みが整備されていることも確保するべきである。 VII.子どもに対する暴力 80.デジタル環境は、子どもが暴力を経験する状況や自分自身または他者に害を与えるよう感化される可能性がある状況を助長することにより、子どもたちに対して暴力が加えられる新たな道を開く可能性がある。パンデミックなどの危機にあっては、このような状況では子どもたちがバーチャルプラットフォームで過ごす時間が増えることに鑑み、オンラインにおける害のリスクが高まるおそれがある。 81.性犯罪者は、性的目的で子どもを勧誘したり、オンラインでの子どもの性的虐待に(たとえばライブビデオストリーミングによって、子どもの性的虐待表現物の製造および頒布によってならびに児童エロチカを通じて)参加したりする目的で、デジタルテクノロジーを利用する可能性がある。デジタル化で容易になる諸形態の暴力および性的搾取・虐待は、子どもが信頼する人間関係のなかで、家族もしくは友人によってまたは思春期の子どもの場合には親密なパートナーによって行なわれる場合もあり、またネット上の攻撃(いじめおよび名誉への脅威を含む)、同意を得ずに行なわれる性的テキストまたは画像の作成またはシェア(誘惑や強要による自製コンテンツなど)および自傷行動(刃物による自傷、自殺行動または摂食障害など)の促進などが含まれ得る。子どもがこのような行動をとった場合、締約国は、可能な場合には常に、関係する子どもを対象とする予防、安全確保および修復的司法のアプローチを追求するべきである [39]。 [39] 一般的意見24号(2019年)、パラ101およびCRC/C/156〔子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の実施に関するガイドライン〕、パラ71。 82.締約国は、デジタル環境における暴力から子どもたちを保護するための立法上および行政上の措置をとるべきである。これには、デジタル環境におけるあらゆる形態の暴力に関わってすでに認識されているリスクおよび新たに生じつつあるリスクから子どもたちを保護する確固たる法令上および制度上の枠組みを定期的に見直し、改定しかつ執行することが含まれる。このようなリスクには、身体的または精神的暴力、傷害または虐待、ネグレクトまたは不適切な取扱い、搾取および虐待(性的搾取・虐待を含む)、子どもの人身取引、ジェンダーに基づく暴力、ネット上の攻撃、サイバーアタックならびに情報戦が含まれる。締約国は、子どもたちの発達しつつある能力にしたがって安全措置および保護措置を実施するべきである。 83.デジタルテクノロジーは、テロリストまたは暴力的過激主義者の指定を受けた武装集団を含む非国家集団が、暴力への関与または参加を目的として子どもたちを募集しかつ搾取するための新たな道を開き得る。締約国は、テロリスト集団または暴力的過激主義者集団による子どもの募集が法律で禁じされることを確保するべきである。このような文脈で刑事上の罪を問われた子どもは第一次的には被害者として扱われるべきだが、告発される場合には子ども司法制度を適用することが求められる。 VIII.家庭環境および代替的養護 84.多くの親および養育者は、デジタル環境との関連で子どもたちを援助するための技術的理解、能力およびスキルを発展させるために支援を必要としている。締約国は、親および養育者がデジタルリテラシーを獲得し、テクノロジーがどのように子どもの権利の支えになり得るかを学び、かつオンラインの害の被害を受けた子どもを認識して適切に対応するための機会を持てることを確保するべきである。不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちの親および養育者に対し、特別な注意を払うことが求められる。 85.デジタル環境に関する支援と指針を親および養育者に提供するにあたり、締約国は、子どもの発達しつつある能力にしたがって子どもたちの自律性の高まりおよびプライバシーの必要性を尊重することに関する意識を促進するべきである。締約国は、子どもたち(親および養育者が想定するよりも低い年齢の子どもたちを含む)はデジタルな機会をしばしば積極的に利用して実験するものであり、かつリスクに遭遇する可能性があることを考慮するよう求められる。子どもたちからは、とくに親および養育者のアプローチが懲罰的であり、過剰に制限的であり、または自分の発達しつつある能力にあわせて修正されていない場合に、自分たちのデジタル活動に関してもっと支援と励ましがほしいと報告する声もあった [40]。 [40] "Our rights in a digital world", p.30. 86.締約国は、親および養育者に提供される支援と指針が、親子関係の特殊性および特有の性質に関する理解に基づくものであるべきことを考慮するよう求められる。このような指針は、親が、禁止または管理よりも相互の共感と尊重に基づき、子どもの保護と高まりつつある自律性との間で適切なバランスを維持することを支援するようなものであるべきである。親および養育者が親としての責任と子どもの権利とのバランスを維持する一助とするため、子どもの発達しつつある能力の考慮とあわせて適用される子どもの最善の利益を指導的原則とすることが求められる。親および養育者向けの指針では、デジタル環境における子どもたちの社会的活動、創造的活動および学習活動が奨励されるべきであり、かつ、デジタル機器の利用が、子どもたち同士のまたは子どもたちと親または養育者との、応答性に満ちた直接の相互交流にとって代わるべきではないことが強調されるべきである。 87.家族と離れ離れになった子どもがデジタルテクノロジーにアクセスできることは重要である [41]。科学的知見が示すところによれば、デジタルテクノロジーは、たとえば親が別居している場合〔もしくは〕子どもが代替的養護に措置された場合に家族関係を維持するうえで、子どもと養親または里親の候補との関係を確立するうえで、または人道危機の状況下にある子どもが家族と再会できるようにするうえで、有益なものとなる。したがって、家族が離れ離れになっている状況下で、締約国は、子どもの安全および最善の利益を考慮しながら、子どもたちおよびその親、養育者またはその他の関係者を対象として、デジタルサービスへのアクセスを支援するべきである。 [41] 一般的意見21号(2017年)、パラ35。 88.デジタルインクルージョンを増進させるための措置は、親もしくは他の家族構成員または養育者(同居しているか別居しているかを問わない)が子どもを危険な状況に置く可能性がある場合には、子どもを保護する必要性とのバランスが図られるべきである。締約国は、このようなリスクが、デジタルテクノロジーの設計および利用を通じて(たとえば人権侵害を行なう可能性のある者に対して子どもの位置情報が明らかにされることによって)発生する可能性があることを考慮するよう求められる。締約国は、これらのリスクを認識して、セーフティ・バイ・デザインおよびプライバシー・バイ・デザインを統合したアプローチを要求するとともに、親および養育者がこのようなリスクおよび子どもを支援しかつ保護するために利用可能な戦略について十分に認識していることを確保するべきである。 IX.障害のある子ども 89.デジタル環境は、障害のある子どもたちが他の子どもたちと社会的関係を結び、情報にアクセスし、かつ公的意思決定プロセスに参加する新たな経路を開くものである。締約国は、このような新たな経路を追求するとともに、新たな障壁が生み出されることを防止し、かつデジタル環境に関連して障害のある子どもたちが直面している障壁を克服するための措置をとるよう求められる。 90.さまざまな態様の障害(身体障害、知的障害、心理社会的障害、聴覚障害および視覚障害を含む)がある子どもたちは、コンテンツの形式がアクセシブルではないこと、家庭、学校およびコミュニティにおける負担可能な支援テクノロジーへのアクセスが限られていること、学校、保健施設その他の環境でデジタル機器の使用が禁じられていることなど、デジタル環境へのアクセスに関してさまざまな障壁に直面している。締約国は、障害のある子どもたちがアクセシブルな形式のコンテンツにアクセスできることを確保し、かつ、これらの子どもたちに差別的影響を及ぼす政策を廃止するべきである。締約国は、とくに貧困下で暮らしている障害のある子どもを対象として、必要な場合には負担可能な支援テクノロジーへのアクセスを確保するとともに、障害のある子どもたち、その家族および教育施設その他の関連の現場の職員がデジタルテクノロジーを効果的に活用するための十分な知識およびスキルを身につけられるよう、意識啓発キャンペーンおよび訓練の実施ならびにリソースの提供を図るよう求められる。 91.締約国は、さまざまな態様の障害がある子どもの必要を満たす技術的革新を促進するとともに、デジタル製品およびデジタルサービスが、すべての子どもが例外なくかつ調整を必要とせずに利用できるよう、ユニバーサルアクセシビリティを目指して設計されることを確保するべきである。デジタル環境における障害のある子どもたちの権利の実現に影響を及ぼす政策、製品およびサービスの設計および提供には、障害のある子どもたちの関与を得ることが求められる。 92.障害のある子どもたちは、デジタル環境において、ネット上の攻撃および性的搾取・虐待を含むリスクにいっそうさらされる可能性がある。締約国は、障害のある子どもたちが直面するリスクを特定しかつこれに対処して、これらの子どもたちが直面する過剰な保護または排除につながりかねない偏見に対抗しつつ、デジタル環境がこれらの子どもたちにとって安全であることを確保するための措置をとるべきである。デジタル環境に関連する安全情報、保護方策および広報情報、サービスならびにフォーラムは、アクセシブルな形式で提供することが求められる。 X.基礎保健および福祉 93.デジタルテクノロジーは、保健サービスおよび保健情報へのアクセスを促進し、かつ妊産婦、新生児および児童期・思春期の子どもの身体的および精神的健康ならびに栄養のための診断・治療サービスを向上させ得る。デジタルテクノロジーはまた、不利な立場もしくは脆弱な状況に置かれた子どもたちまたは遠隔地の子どもたちにサービスを行き届かせる重要な機会を提供するものでもある。公の緊急事態または保健上もしくは人道所の危機の際には、デジタルテクノロジーを通じた保健サービスおよび保健情報へのアクセスが唯一の選択肢となる場合もあり得る。 94.子どもたちが報告するところによれば、子どもたちは、健康およびウェルビーイングに関連する情報および支援(身体的健康、精神的健康、セクシュアル/リプロダクティブヘルス、第2次性徴および避妊に関わるものを含む)をオンラインで検索することを重視している [42]。とくに思春期の子どもたちは、精神保健およびセクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する、無償で、秘密が守られ、年齢にふさわしくかつ差別的ではないサービスにオンラインでアクセスしたいと考えている [43]。締約国は、子どもたちが、信頼できる保健情報および保健サービス(心理相談サービスを含む)に安全に、安心してかつ秘密が守られる形でアクセスできることを確保するべきである [44]。これらのサービスは、サービス遂行のために必要な限度を超えて子どもたちのデータを処理するべきではなく、かつ専門家または適切な訓練を受けた者によって提供されるべきであり、また規制された監督の仕組みをともなっていることが求められる。締約国は、デジタル化された保健製品および保健サービスによって、対面型保健サービスへの子どもたちのアクセスにおける不平等が生じまたは強化されないことを確保するべきである。 [42] "Our rights in a digital world", p.37. [43] 一般的意見20号(2016年)、パラ59。 [44] 前掲、パラ47および59。 95.締約国は、子どもたちの特有の保健ニーズに焦点を当て、かつ技術の進歩を通じて子どもたちにとっての肯定的な健康アウトカムを促進するような調査研究および開発を奨励し、かつこのような調査研究および開発への投資を行なうよう求められる。デジタルサービスは、子どもたちに対する対面型保健サービスの提供を補完しまたは向上させるために利用されるべきである [45]。締約国は、規制の導入または改定により、保健テクノロジーおよび保健サービスの提供者に対して、その機能、コンテンツおよび頒布の中心に子どもの権利を位置づけるよう要求することが求められる。 [45] 前掲、パラ47-48。 96.締約国は、誤情報ならびに子どもの精神的または身体的健康を害する可能性がある資料およびサービスの拡散を防止するため、既知の害に対して規制を行なうとともに、公衆衛生セクターで新たに判明した調査研究の結果およびエビデンスを積極的に考慮するべきである。デジタルゲームまたはソーシャルメディアへの不健康な関与を防止するための措置(子どもたちの発達および権利を阻害するデジタルデザインの機制など)も必要になる場合がある [46]。 [46] 一般的意見15号(2013年)、パラ84。 97.締約国は、身体活動および社会的活動を含む健康的なライフスタイルを促進するためのデジタルテクノロジーの利用を奨励するべきである [47]。特定の食料品および飲料品、アルコール、薬物ならびにタバコその他のニコチン製品を含む不健康な製品の販売促進に子どもたちがさらされることを防止するため、締約国は、ターゲティングによるまたは年齢にふさわしくない広告、マーケティングまたは他の関連のデジタルサービスを規制するよう求められる [48]。デジタル環境に関連するこのような規制は、オフライン環境における規制と両立しかつ足並みを揃えるようなものであるべきである。 [47] 一般的意見17号(2013年)、パラ13。 [48] 一般的意見15号(2013年)、パラ77。 98.デジタルテクノロジーは、休息、運動ならびに仲間、家族およびコミュニティとの直接的相互交流の必要性とのバランスがとられている場合には、子どもたちが健康およびウェルビーイングを向上させる多くの機会を与えてくれる。締約国は、子どもたち、親、養育者および教育者を対象として、デジタル活動と非デジタル活動および十分な休息との健康的バランスの重要性に関する指針を策定するべきである。 XI.教育、余暇および文化的活動 A.教育に対する権利 99.デジタル環境は、質の高いインクルーシブな教育(フォーマルな学習、インフォーマルな学習、子どもたち同士の学習および独学のためのリソースを含む)への子どもたちのアクセスをおおいに可能にしかつ増進させることにつながり得る。デジタルテクノロジーの活用により、教員・生徒間および学習者間のエンゲージメントも強化される可能性がある。子どもたちは、教育へのアクセスを向上させ、かつ学習および課外活動への参加を支えるうえでデジタルテクノロジーが重要であることを強調している [49]。 [49] "Our rights in a digital world", pp.14, 16 and 30. 100.締約国は、多様かつインタラクティブなデジタル学習リソース(先住民族に関するリソースを含む)および子どもたちが理解できる言語でのリソースに子どもたちがアクセスできるようにするため、文書館、図書館および博物館のような教育・文化施設を支援するべきである。これらのものをはじめとする貴重なリソースは、子どもたちが自分たち自身の創造的、市民的および文化的実践に従事することの支えとなり、かつ他者の実践について学べることにつながる可能性がある [50]。締約国は、オンライン学習および生涯学習のための子どもたちの機会を増進するべきである。 [50] 一般的意見17号(2013年)、パラ10。 101.締約国は、学校その他の学習現場における技術インフラに対して公平な投資を行ない、十分な数のコンピューター、良質かつ高速なブロードバンドおよび安定した電源、デジタル教育テクノロジーの活用に関する教員研修、アクセシビリティならびに学校テクノロジーの時宜を得たメンテナンスが利用可能でありかつ負担可能であることを確保するべきである。締約国はまた、多様かつ良質なデジタル教育リソースが子どもたちの理解できる言語で制作されかつ普及されることを支援し、かつ、既存の不平等(女子が経験している不平等など)が悪化しないようにすることも求められる。締約国は、デジタルテクノロジーの活用が対面型教育を阻害しないことおよび教育目的のために正当なものであることを確保するべきである。 102.学校に物理的に出席していない子どもたちや、遠隔地に暮らしておりまたは不利な立場もしくは脆弱な状況に置かれている子どもたちにとっては、デジタル教育テクノロジーによって遠隔学習または移動学習が可能となり得る [51]。締約国は、遠隔学習のために必要な基本的便益(機器、電気、接続環境、教材および専門的支援へのアクセスを含む)にすべての子どもたちがアクセスできるようにするための適正なインフラが整備されることを確保するべきである。締約国はまた、学校が親および養育者に対して家庭での遠隔学習に関する指針を示すための十分な資源を有すること、ならびに、デジタル教育のための製品およびサービスが、対面型教育サービスへの子どもたちのアクセスに関する不平等を生じさせまたは悪化させないことを確保するべきである。 [51] 女性差別撤廃委員会の合同一般的勧告31号/子どもの権利委員会の合同一般的意見18号(2019年)、パラ64ならびに子どもの権利委員会、一般的意見11号(2009年)、パラ61および一般的意見21号(2017年)、パラ55。 103.締約国は、学校と、価値のある教育上の利点の提供を増進させることを目的として教育テクノロジー・教材の調達および利用に責任を負うその他の関連機関を対象とする、エビデンスに基づいた政策、基準およびガイドラインを策定するべきである。デジタル教育テクノロジーに関する基準においては、これらのテクノロジーの利用が倫理にかなっておりかつ教育目的にとって適切であること、ならびに、子どもたちが暴力、差別、個人データの悪用、商業的搾取またはその他の権利侵害(子どもの活動を記録し、かつ子どもが知らないまままたは子どもの同意を得ずに当該記録を親または養育者と共有するためにデジタルテクノロジーを利用することなど)にさらさないことを確保するよう求められる。 104.締約国は、デジタルリテラシーが、就学前の段階から全学年を通じて基礎教育カリキュラムの一環として学校で教えられること、および、このような教育方法がその成果に基づいて評価されることを確保するべきである [52]。カリキュラムには、幅広い範囲のデジタルツールおよびデジタルリソースを安全に取り扱うための知識およびスキル(コンテンツ、制作、合作、参加、社会化および市民的関与に関連するものを含む)を含めることが求められる。カリキュラムにはまた、批判的思考、信頼できる情報源を見つけ出しかつ誤情報およびその他の形態のバイアスがかかったまたは虚偽のコンテンツ(セクシュアル/リプロダクティブヘルス関連の問題を含む)を判定する方法に関する指針、デジタル環境における子どもの権利を含む人権ならびに利用可能な形態の支援および救済措置も含まれるべきである。締約国はまた、コンテンツ、接触、行動および契約に関連するリスク(ネット上の攻撃、人身取引、性的搾取・虐待その他の形態の暴力を含む)にさらされることによって生じる可能性のある悪影響と、害を低減させるための対処方策ならびに自分自身および他人の個人データを保護する方策および子どもたちの社会的・情緒的スキルとレジリエンスを構築するための方策に関する意識を、子どもたちの間で促進するべきである。 [52] 一般的意見20号(2016年)、、パラ47。 105.子どもたちが、デジタル環境(そのインフラ、事業慣行、巧みな誘導戦略ならびに自動化処理および個人データの利用ならびに監視を含む)と、デジタル化が社会に及ぼす可能性のある悪影響について理解することは、ますます重要になっている。教員、とくにデジタルリテラシー教育およびセクシュアル/リプロダクティブヘルス教育を行なう教員は、デジタル環境に関わる安全確保についての研修を受けるべきである。 B.文化、余暇および遊びに対する権利 106.デジタル環境は、子どもたちのウェルビーイングおよび発達にとって不可欠である、文化、余暇および遊びに対する子どもたちの権利の促進につながる [53]。すべての年齢層の子どもたちが、自ら選んださまざまなデジタル製品およびデジタルサービスに関与することを通じて喜び、興味および気晴らしを経験したこと [54] とともに、他方で、デジタル環境での遊びがどれほど大切か、またそれを友達とどのように共有できるかについて大人がわかってくれないかもしれないと心配していることを報告している [55]。 [53] 一般的意見17号(2013年)、パラ7。 [54] "Our rights in a digital world", p.22. [55] 一般的意見17号(2013年)、パラ33。 107.デジタルな形態の文化、レクリエーションおよび遊びは、子どもたちの支えおよび利益になり、かつ子どもたちのさまざまなアイデンティティ、とくに文化的アイデンティティ、言語および遺産を反映しかつ促進するようなものであるべきである。このことは、子どもたちの社会的スキル、学習、表現、音楽・芸術などの創造的活動、帰属感および共有された文化の促進につながり得る [56]。オンラインでの文化的生活への参加は、創造性、アイデンティティ、社会的結束および文化的多様性に貢献する。締約国は、子どもたちが、情報通信技術を試し、自己表現し、かつオンラインで文化的生活に参加するために自由時間を利用する機会を持てることを確保するべきである。 [56] 前掲、パラ5。 108.締約国は、デジタルテクノロジーおよびデジタルサービスであって余暇時間の子どもたち向けのもの、余暇時間に子どもたちがアクセスするものまたは余暇時間の子どもたちに影響を及ぼすものが、文化、レクリエーションおよび遊びに関する子どもたちの機会を増進させるようなやり方で設計され、頒布されかつ利用されることを確保するため、規制を行ない、かつ専門家、親および養育者向けの指針を示すとともに。デジタルサービス提供者と適宜連携するべきである。これには、子どもたちの自律、人格形成および楽しみを支えるデジタル環境での遊びおよび関連の活動に関する革新を奨励することも含まれ得る。 109.締約国は、デジタル環境における文化、余暇および遊びの機会の促進と、子どもたちが生活している物理的場所での魅力的な選択肢の提供とのバランスがとられることを確保するべきである。とくに乳幼児期には、子どもたちの言語、協調、社会的スキルならびに感情的知性は、もっぱら身体運動および他者との直接の対面型相互交流をともなう遊びを通じて獲得される。年長の子どもたちにとっては、身体活動をともなう遊びおよびレクリエーション、チームスポーツならびにその他の野外レクリエーション活動は、健康上の利益ならびに機能的および社会的スキルの獲得をもたらし得るものである。 110.余暇時間をデジタル環境で過ごすことにより、子どもたちは、たとえばそれとはわかりにくい広告もしくは誇大広告または著しく誘導的もしくは射幸的なデザイン上の特徴を通じて、害を受けるリスクにさらされる可能性がある。締約国は、データ保護、プライバシー・バイ・デザインおよびセーフティ・バイ・デザインのアプローチならびにその他の規制措置を導入しまたは活用することによって、企業が、これらの技法および子どもの利益よりも商業的利益を優先させることを目的としたその他の技法を用いて子どもたちをターゲットとすることがないようにするべきである。 111.締約国または企業が、デジタル環境における特定の形態の遊びおよびレクリエーションに関して指針の提示、年齢によるレーティング、ラベリングまたは認証を行なう場合、それらの指針等は、デジタル環境全体への子どもたちのアクセスを縮小し、または子どもたちの余暇機会もしくはその他の権利に干渉しないような形で作成されるべきである。 XII.特別な保護措置 A.経済的、性的その他の形態の搾取からの保護 112.子どもたちは、デジタル環境との関連で、その福祉のいかなる側面にとっても有害なあらゆる形態の搾取から保護されるべきである。搾取は、児童労働を含む経済的搾取、性的搾取・虐待、子どもの売買、取引および誘拐ならびに犯罪活動(サイバー犯罪を含む)に参加させるための子どもの募集など、多くの形態をとって行なわれる可能性がある。子どもたちは、コンテンツを制作しかつシェアすることによってデジタル環境で経済的主体となり、その結果として搾取される可能性もある。 113.締約国は、子どもたちが経済的、性的その他の形態の搾取から保護され、かつ、デジタル環境での仕事に関わる子どもたちの権利および関連する報酬の機会が保護されることを確保するため、関連の法律および政策を見直すべきである。 114.締約国は、適切な執行の仕組みが設けられることを確保するとともに、適用される保護へのアクセスに関して子どもたち、親および養育者を支援するべきである [57]。締約国は、子どもたちが有害な物品(武器もしくは薬物など)またはサービス(賭け事など)から保護されることを確保するための法律を制定するよう求められる。子どもたちが自己所有または自己使用のために不法な製品およびサービスにアクセスすることを防止するため、しっかりした年齢認証システムが利用されるべきである。そのようなシステムは、データ保護および安全確保に関わる要件に一致したものであることが求められる。 [57] 一般的意見16号(2013年)、パラ37。 115.人身取引(その構成要素である行動および関連の行為を含む)を捜査し、訴追しかつ処罰する国家の義務を考慮し、締約国は、人身取引対策法を策定しかつ更新して、テクノロジーによって容易になる犯罪集団による子どもたちの募集が禁止されるようにするべきである。 116.締約国は、デジタル環境で発生する犯罪(詐欺および個人情報の不正な取得・利用を含む)子どもたちを保護し、かつデジタル環境における犯罪が捜査および訴追の対象とされることを確保するために十分な資源を配分することを目的とした、適切な法律が整備されることを確保するべきである。締約国はまた、このような犯罪のリスクを最小化するため、子どもたちが利用するデジタルサービスおよびデジタル製品に関して高水準のサイバーセキュリティ、プライバシー・バイ・デザインおよびセーフティ・バイ・デザインを要求することも求められる。 B.子ども司法の運営 117.子どもたちは、サイバー犯罪法に違反したとして申し立てられ。罪を問われまたは認定される可能性がある。締約国は、政策立案者が、このような法律が子どもたちに及ぼす影響を考慮し、防止に焦点を当て、かつ、刑事司法上の対応に代わる選択肢を設けかつ活用するためにあらゆる努力を払うことを確保するべきである。 118.子どもたちによる自撮りの性的表現物であって、本人の同意を得て、かつ自分たち自身の私的利用のみを目的として所持しかつ(または)シェアするものは、犯罪化されるべきではない。性的にあからさまな自撮りコンテンツに関して子どもたちが安全に助言および援助を求められるようにするための、子どもにやさしい回路が設けられるべきである。 119.締約国は、犯罪の防止、捜査および訴追において配備されているデジタルテクノロジー、監視機構(顔認証ソフトウェアなど)およびリスクプロファイリングが、刑事犯罪について容疑をかけられまたは告発されている子どもを不公正に対象とする目的で使用されず、かつその権利、とくにプライバシー、尊厳および結社の自由に対する権利を侵害するようなやり方で使用されないことを確保するべきである。 120.委員会は、裁判手続のデジタル化によって子どもとの対面での接触が行なわれなくなる場合、子どもとの関係の発展を踏まえた更生措置および修復的司法措置に悪影響が生じる可能性があることを認識する。このような場合には、また子どもが自由を奪われている場合にも、締約国は、裁判所に意味のある形で関与する子どもの能力および子どもの更生を促進するため、対面での接触を行なうようにするべきである。 C.武力紛争下の子ども、移住である子どもおよび他の脆弱な状況に置かれた子どもの保護 121.デジタル環境は、脆弱な状況下で暮らしている子どもたち(武力紛争下の子ども、国内避難民である子ども、移住者、庇護希望者および難民である子ども、保護・養育者に付き添われていない子ども、路上の状況にある子どもならびに自然災害の影響を受けている子どもを含む)に対し、その保護にとってきわめて重要な死活的情報へのアクセスを提供し得る。デジタル環境はまた、これらの子どもたちが、家族との接触を維持し、教育、保健その他の基礎的サービスにアクセスし、かつ食料および安全なシェルターを手に入れることも可能にし得る。締約国は、このような子どもたちがデジタル環境に安全に、確実に、秘密が守られかつ有益な形でアクセスできることを確保するとともに、あらゆる形態の暴力、搾取および虐待からこれらの子どもたちを保護するべきである。 122.締約国は、子どもたちがデジタル環境を通じて紛争(武力紛争を含む)で徴募されまたは使用されないことを確保するべきである。これには、たとえばソーシャルネットワーキングプラットフォームまたはオンラインゲームのチャットサービスを通じてさまざまな形態で行なわれる、テクノロジーによって容易になる子どもたちの勧誘およびグルーミング〔性的目的での勧誘〕を防止し、犯罪化しかつ制裁の対象とすることが含まれる。 XIII.国際的および地域的協力 123.国境および国家を超えるデジタル環境の性質により、国、企業その他の主体がデジタル環境との関連で子どもたちの権利を効果的に尊重し、保護しかつ充足することを確保するためには、強力な国際的および地域的協力が必要となる。したがって、締約国が、国内的および国際的非政府組織、国連機関、企業ならびにデジタル環境との関連における子どもの保護および人権を専門とする組織と個別かつ多面的に連携することは、きわめて重要である。 124.締約国は、専門的知見および優れた実践の国際的・地域的交流を促進しかつこれに貢献するとともに、デジタル環境における子どもたちの権利のすべての国による実現を可能とする能力構築、資源、基準、規則および保護措置を、国境を越えて確立しかつ促進するべきである。締約国は、デジタル環境における犯罪の共通定義の策定、共助ならびに証拠の共同収集および共有に努めるよう求められる。 XIV.普及 125.締約国は、この一般的意見が、デジタルテクノロジーも活用しながら、すべての関係者、とくに議会および政府機関(横断的および部門別デジタルトランスフォーメーションを担当する機関を含む)ならびに司法機関、企業、メディアおよび市民社会の関係者、公衆一般ならびに教育舎および子どもたちに広く普及され、かつ、複数の形式および言語(年齢にふさわしいバージョンを含む)で利用可能とされることを確保するべきである。 更新履歴:ページ作成(2021年4月28日)。
https://w.atwiki.jp/kodomonomachi/pages/16.html
全国子どものまち一覧 ☆URLはすべて新しいウインドウで開きます。 総合ナンバー 都道府県別ナンバー 都道府県名 都市名 子どものまちの名前 URL 1 1 北海道 札幌市 ミニさっぽろ http //www.mini-sapporo.com 2 2 北海道 函館市 はこだてキッズタウン https //www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2014012700146/ 3 北海道 小樽市 4 3 北海道 旭川市 あさひかわキッズタウン https //www.city.asahikawa.hokkaido.jp/kurashi/218/262/263/p004606.html 5 北海道 室蘭市 6 4 北海道 釧路市 くしろキッズタウン https //www.city.kushiro.lg.jp/kyouiku/kyouiku/seishonenikusei/page00015.html 7 5 北海道 帯広市 おびひろキッズタウン2018 https //www.city.obihiro.hokkaido.jp/kodomomiraibu/seishounenka/obihiro-kidstown.html 8 北海道 北見市 9 北海道 夕張市 10 北海道 岩見沢市 11 北海道 網走市 12 6 北海道 留萌市 キッズビジネスタウン http //www.sng.hokkaido-c.ed.jp/?action=cabinet_action_main_download block_id=12 room_id=17 cabinet_id=5 file_id=30 upload_id=64 13 7 北海道 苫小牧市 とまこまいキッズタウン http //www.city.tomakomai.hokkaido.jp/kyoiku/seishonenikusei/kids_town.html 14 北海道 稚内市 15 北海道 美唄市 16 北海道 芦別市 17 北海道 江別市 18 北海道 赤平市 19 北海道 紋別市 20 北海道 士別市 21 北海道 名寄市 22 北海道 三笠市 23 北海道 根室市 24 北海道 千歳市 25 北海道 滝川市 26 北海道 砂川市 27 北海道 歌志内市 28 北海道 深川市 29 北海道 富良野市 30 北海道 登別市 31 北海道 恵庭市 32 北海道 伊達市 33 北海道 北広島市 34 北海道 石狩市 35 北海道 北斗市 36 北海道 当別町 37 北海道 新篠津村 38 北海道 松前町 39 北海道 福島町 40 北海道 知内町 41 北海道 木古内町 42 北海道 七飯町 43 北海道 鹿部町 44 北海道 森町 45 北海道 八雲町 46 北海道 長万部町 47 北海道 江差町 48 北海道 上ノ国町 49 北海道 厚沢部町 50 北海道 乙部町 51 北海道 奥尻町 52 北海道 今金町 53 北海道 せたな町 54 北海道 島牧村 55 北海道 寿都町 56 北海道 黒松内町 57 北海道 蘭越町 58 北海道 ニセコ町 59 北海道 真狩村 60 北海道 留寿都村 61 北海道 喜茂別町 62 北海道 京極町 63 北海道 倶知安町 64 北海道 共和町 65 北海道 岩内町 66 北海道 泊村 67 北海道 神恵内村 68 北海道 積丹町 69 北海道 古平町 70 北海道 仁木町 71 北海道 余市町 72 北海道 赤井川村 73 北海道 南幌町 74 北海道 奈井江町 75 北海道 上砂川町 76 北海道 由仁町 77 北海道 長沼町 78 北海道 栗山町 79 北海道 月形町 80 北海道 浦臼町 81 北海道 新十津川町 82 北海道 妹背牛町 83 北海道 秩父別町 84 北海道 雨竜町 85 北海道 北竜町 86 北海道 沼田町 87 北海道 鷹栖町 88 北海道 東神楽町 89 北海道 当麻町 90 北海道 比布町 91 北海道 愛別町 92 北海道 上川町 93 北海道 東川町 94 北海道 美瑛町 95 北海道 上富良野町 96 北海道 中富良野町 97 北海道 南富良野町 98 北海道 占冠村 99 北海道 和寒町 100 北海道 剣淵町 101 北海道 下川町 102 北海道 美深町 103 北海道 音威子府村 104 北海道 中川町 105 北海道 幌加内町 106 北海道 増毛町 107 北海道 小平町 108 北海道 苫前町 109 北海道 羽幌町 110 北海道 初山別村 111 北海道 遠別町 112 北海道 天塩町 113 北海道 猿払村 114 北海道 浜頓別町 115 北海道 中頓別町 116 北海道 枝幸町 117 北海道 豊富町 118 北海道 礼文町 119 北海道 利尻町 120 北海道 利尻富士町 121 北海道 幌延町 122 北海道 美幌町 123 北海道 津別町 124 北海道 斜里町 125 北海道 清里町 126 北海道 小清水町 127 北海道 訓子府町 128 北海道 置戸町 129 北海道 佐呂間町 130 北海道 遠軽町 131 北海道 湧別町 132 北海道 滝上町 133 北海道 興部町 134 北海道 西興部村 135 北海道 雄武町 136 北海道 大空町 137 北海道 豊浦町 138 北海道 壮瞥町 139 北海道 白老町 140 北海道 厚真町 141 北海道 洞爺湖町 142 北海道 安平町 143 北海道 むかわ町 144 北海道 日高町 145 北海道 平取町 146 北海道 新冠町 147 北海道 浦河町 148 北海道 様似町 149 北海道 えりも町 150 北海道 新ひだか町 151 北海道 音更町 152 北海道 士幌町 153 北海道 上士幌町 154 北海道 鹿追町 155 北海道 新得町 156 北海道 清水町 157 北海道 芽室町 158 北海道 中札内村 159 北海道 更別村 160 北海道 大樹町 161 北海道 広尾町 162 北海道 幕別町 163 北海道 池田町 164 北海道 豊頃町 165 北海道 本別町 166 北海道 足寄町 167 北海道 陸別町 168 北海道 浦幌町 169 北海道 釧路町 170 北海道 厚岸町 171 北海道 浜中町 172 北海道 標茶町 173 北海道 弟子屈町 174 北海道 鶴居村 175 北海道 白糠町 176 北海道 別海町 177 北海道 中標津町 178 北海道 標津町 179 北海道 羅臼町 ☆番外編☆ 子どものまちは「売り手と買い手に分かれて物品を購入するなど、子どもの市民同士で交流がある」という特徴があります。 ここでは、職業体験に重きを置くものを紹介します。 (つくりかけです。メモ程度に。) せきっずタウン たきかわキッズタウン キッズワーク イオン余市店 ママナビキッズ職業体験 花銀こども商店街 Kids Zoo Town
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/29.html
子どもの権利委員会・一般的意見11号:先住民族の子どもとその条約上の権利(1) 一般的意見一覧 子どもの権利委員会 第50会期(2009年1月12日~30日)採択 CRC/C/GC/11(原文英語〔PDF〕) 日本語訳:平野裕二〔日本語訳全文(PDF)〕 目次 はじめに 目的と構成 第30条と国の一般的義務 一般原則 市民的権利および自由 家庭環境および代替的養護 基礎保健および福祉 教育、余暇および文化的活動 特別な保護措置 締約国の義務および条約の実施の監視 はじめに 1.子どもの権利条約の前文で、締約国は「子どもの保護および調和のとれた発達のためにそれぞれの人民の伝統および文化的価値の重要性を正当に考慮」するとしている。条約に掲げられたすべての権利は、先住民族であるか否かに関わらずすべての子どもに適用されるが、子どもの権利条約は、先住民族の子どもへの具体的言及が多くの規定に含まれている、初めての中核的人権条約である。 2.条約第30条は次のように述べている。「民族上、宗教上もしくは言語上の少数者、または先住民が存在する国においては、当該少数者または先住民に属する子どもは、自己の集団の他の構成員とともに、自己の文化を享受し、自己の宗教を信仰しかつ実践し、または自己の言語を使用する権利を否定されない」 3.さらに、条約第29条は、子どもの教育が、「すべての諸人民間、民族的、国民的および宗教的集団ならびに先住民間の理解、平和、寛容、性の平等および友好の精神の下で、子どもが自由な社会において責任ある生活を送れるようにすること」を目的として行なわれると規定している。 4.条約第17条も、締約国は「マスメディアが、少数者集団に属する子どもまたは先住民である子どもの言語上のニーズをとくに配慮することを奨励する」として、具体的言及を行なっている。 5.条約における先住民族の子どもへの具体的言及は、これらの子どもがその権利を全面的に享受するためには特別な措置が必要とされているという認識を示すものである。子どもの権利委員会は、条約締約国の定期報告書の審査において、先住民族の子どもの状況を一貫して考慮してきた。委員会の見るところ、先住民族の子どもは自己の権利の行使において相当の課題に直面しており、委員会はその総括所見においてその旨の具体的勧告を行なってきている。先住民族の子どもは、条約第2条に反し、保健ケアおよび教育へのアクセスを含むさまざまな分野で深刻な差別を経験し続けており、そのためにこの一般的意見を採択することが必要となったのである。 6.先住民族の子どもの状況およびこれらの子どもが差別を受けない権利への対応においては、子どもの権利条約に加え、さまざまな人権条約が重要な役割を果たしてきた。とくに、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(1965年)、市民的および政治的権利に関する国際規約(1966年)ならびに経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約(1966年)がある。 7.独立国における先住民族および種族民に関する国際労働機関第169号条約(1989年)には、先住民族の権利を前進させる規定が含まれており、かつ、教育の分野における先住民族の子どもの権利が具体的に強調されている。 8.国連人権委員会は2001年に「先住民族の人権および基本的自由の状況に関する特別報告者」を任命し、これはその後2007年に人権理事会によって追認された。同理事会は、特別報告者に対し、先住民族の子どもの状況に特段の注意を払うよう要請してきており、特別報告者の年次報告書および現地訪問報告書に掲げられたいくつかの勧告では、これらの子どもの具体的状況に焦点が当てられている。 9.2003年、国連・先住民族問題に関する常設フォーラムは先住民族の子どもと若者をテーマとする第2会期を開催した。同じ年、子どもの権利委員会は、恒例の一般的討議を開催して先住民族の子どもの権利について取り上げ、主として締約国を、しかし国連機関、人権機構、市民社会、ドナー、世界銀行および地域開発銀行も対象とする具体的勧告を採択した。 10.2007年、国連総会は「先住民族の権利に関する宣言」〔市民外交センター仮訳(PDF)〕を採択した。同宣言は、多くの分野で先住民族の子どもの権利に具体的に言及していることを含め、先住民族の権利に関する重要な指針を提供するものである。 目的と構成 11.子どもの権利条約で規定されている先住民族の子どもの権利に関するこの一般的意見は、これまでに概観した法的発展および取り組みを参考にしたものである。 12.この一般的意見の第一義的目的は、各国に対し、先住民族の子どもとの関連で自国の条約上の義務をどのように実施したらいいかという点に関する指針を提供するところにある。委員会がこの一般的意見の基盤としているのは、先住民族の子どもとの関連で条約の規定を解釈してきた自らの経験である。さらに、この一般的意見は、先住民族の子どもに関する2003年の一般的討議後に採択された勧告をもととし、先住民族の子ども自身を含む関係者との協議のプロセスを反映している。 13.この一般的意見は、先住民族の子どもが自己の権利を全面的に享受できることを阻害する具体的課題について探求し、かつ、先住民族の子どもの権利の効果的行使を保障するために国がとる必要のある特別な措置を浮き彫りにしようとするものである。この一般的意見ではさらに、望ましい実践を奨励し、かつ先住民族の子どもを対象とした権利の実際的実施における積極的アプローチを強調しようと試みている。 14.条約第30条ならびに文化、宗教および言語の享受に対する権利が、この一般的意見の主要な要素である。しかしその目的は、先住民族の子どもとの関連で実施するさいに特段の注意が必要とされるさまざまな規定について探求するところにある。とくに重視されるのは、関連する規定同士の相互関係、とりわけ委員会が特定した条約の一般原則(すなわち差別の禁止、子どもの最善の利益、生命、生存および発達に対する権利ならびに意見を聴かれる権利)との関係である。 15.委員会は、条約ではマイノリティの子どもおよび先住民族の子どもの両方に言及されていることに留意するものである。この一般的意見で言及している内容の一部はマイノリティ集団の子どもにも関連する場合があり、委員会は今後、マイノリティ集団に属する子どもの権利について具体的に述べた一般的意見を作成する可能性がある。 第30条と国の一般的義務 16.委員会は、子どもの権利条約第30条と市民的および政治的権利に関する国際規約第27条との緊密なつながりを想起するものである。いずれの規定も、自己の集団の他の構成員とともに、自己の文化を享受し、自己の宗教を信仰しかつ実践し、または自己の言語を使用する権利をとくに定めている。ここで確立された権利は個人的権利でも集団的権利でもあるととらえられており、先住民族の文化における集団的伝統および価値を認めた重要な規定である。委員会は、先住民族同士で文化的権利を行使する権利が、伝統的領域の使用および当該領域の資源の利用と密接に関係する場合があること[1]に留意する。 [1] 自由権規約委員会・第27条に関する一般的意見23号(CCPR/C/Rev.1/Add.5、1994年)、パラ3.2、7、ならびに子どもの権利委員会・先住民族の子どもに関する一般的討議勧告(2003年)、パラ4。 17.第30条は否定的文言で表現されているが、にも関わらず、同条は「権利」の存在を認め、かつその権利が「否定されない」ことを要求している。したがって、締約国には、この権利の存在および行使が否定されまたは侵害されることのないよう保護されることを確保する義務があるのである。委員会は、締約国自身の行為(立法機関、司法機関または行政機関のいずれによるものであるかは問わない)のみならず、締約国内の他の者の行為にも対抗するための積極的な保護措置が必要であるという点について、自由権規約委員会[2]と見解を一にするものである。 [2] 自由権規約委員会・第27条に関する一般的意見23号(CCPR/C/Rev.1/Add.5、1994年)、パラ6.1。 18.この文脈において、委員会はまた、先住民族の際立った文化、歴史、言語および生活様式を、国の文化的アイデンティティを豊かにするものとして、かつその保全を促進する目的で認識しかつ尊重するよう締約国に求めている点について、人種差別撤廃委員会も支持するものである[3]。 [3] 人種差別撤廃委員会・先住民族に関する一般的勧告23号(1997年、A/52/18 Annex V所収)。 19.先住民族の存在は自己認識によって確定されるのであり、これは先住民族の存在について判断する基本的基準である[4]。先住民族がその権利を行使するためには締約国が先住民族を公式に承認しなければならないという要件は存在しない。 [4] 独立国における先住民族および種族民に関するILO第169号条約第1条2項。 20.締約国報告書を審査してきた経験にもとづいて子どもの権利委員会が見るところによれば、多くの締約国は、条約上の自国の義務を実施するにあたり、先住民族の子どもの権利およびこれらの子どもの発達の促進に対して十分な注意を向けていない。先住民族の子どもを保護するために立法および政策を通じてとる特別措置は、当該コミュニティと協議しながら[5]、かつ条約第12条で定められているとおり協議のプロセスに子どもの参加を得ながら、とられるべきであると委員会は考える。委員会は、締約国の公的機関その他の機関が、文化的に適切であり、すべての当事者に情報の入手可能性が保障され、かつ双方向的なコミュニケーションおよび対話が確保されるような方法で、積極的に協議を行なうべきであると考えるものである。 [5] ILO第169号条約第2条、第6条、第27条。 21.委員会は、締約国に対し、条約の実施において第30条に十分な注意が向けられることを確保するよう促す。締約国は、条約に基づく定期報告書において、先住民族の子どもが第30条で定められた権利を享受できるよう保障するためにとられた特別措置についての詳しい情報を提供するべきである。 22.委員会は、条約第30条に定められた文化的慣行は条約の他の規定にしたがって実践されなければならないのであり、子どもの尊厳、健康および発達にとって有害であると見なされる場合にはいかなる状況下でも正当化できないことを、強調する[6]。有害な慣行、とくに早期婚および女性性器切除が存在するのであれば、締約国は、その根絶を確保するために先住民族コミュニティと協働するべきである。委員会は、締約国に対し、態度の変革を目的とした意識啓発キャンペーン、教育プログラムおよび立法を発展させかつ実施するとともに、有害な慣行を助長するジェンダー上の役割およびステレオタイプに対応するよう、強く促す[7]。 [6] UNICEF Innocenti Digest No. 11, Ensuring the Rights of Indigenous Children, 2004, p.7. [7] 子どもの権利委員会・「思春期の健康」に関する一般的意見4号(2003年)、パラ24。 一般原則 (条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 23.第2条は、自国の管轄内にある子ども一人ひとりの権利を、いかなる種類の差別もなく確保する締約国の義務を定めている。差別の禁止は、委員会によって、条約に掲げられたあらゆる権利の実施にとって基本的重要性を有する一般原則のひとつに挙げられてきた。先住民族の子どもは、差別から自由である不可譲の権利を有する。子どもを差別から効果的に保護するため、差別の禁止の原則がすべての国内法に反映されること、ならびに、それが司法機関および行政機関を通じて直接に適用され、かつ適切に監視および執行されうることを確保することは、締約国の義務である。効果的な救済措置が時宜を得て提供され、かつアクセス可能であるようにすることが求められる。委員会は、締約国の義務は公的部門のみならず民間部門にも及ぶことを強調するものである。 24.以前に実施に関する一般的措置についての委員会の一般的意見5号で述べられたように、差別の禁止の義務は、各国に対し、権利を認めかつ実現するために特別な措置が必要となる可能性がある子ども個人および子どもの集団を積極的に特定することを要求している。たとえば委員会は、とくに、差別または潜在的差別が特定できるように細分化されたデータ収集の必要性を強調してきた。差別に対応するためには、さらに、立法、行政および資源配分の変更ならびに態度を変革するための教育上の措置が必要になる可能性もある[8]。 [8] 子どもの権利委員会・「実施に関する一般的措置」についての一般的意見5号(2003年)、パラ12。 25.委員会は、多数の締約国報告書の審査を通じ、差別の原因となる状況を解消することおよびこのような子どもが他の子どもと平等な水準で条約の権利を享受できるようにすることを目的とした積極的措置を必要とする子どもに、先住民族の子どもも含まれることに留意する。締約国はとくに、先住民族の子どもが保健、栄養、教育、レクリエーションおよびスポーツ、社会サービス、居住、衛生ならびに少年司法の分野で文化的に適切なサービスにアクセスできることを確保するため、特別措置の適用を検討するよう促されるところである [9]。 [9] 先住民族の子どもの権利に関する一般的討議(2003年)の勧告、パラ9。 26.締約国がとることを要求される積極的措置のひとつに、先住民族の子どもの差別が現に存在するまたはその可能性がある分野を特定する目的で細分化されたデータを収集することおよび指標を開発することがある。先住民族の子どもの権利の享受に関わる欠陥および障壁を特定することは、立法、資源配分、政策およびプログラムを通じて適切な積極的措置を実施するために不可欠である [10]。 [10] 前掲勧告、パラ6。 27.締約国は、先住民族の子どもの差別に対処するために広報措置および教育上の措置がとられることを確保するべきである。条約第17条、第29条第1項(d)および第30条とあわせて解釈した場合の第2条に基づく義務により、各国は、先住民族の子どもの権利、および、差別的な態度および慣行(人種主義を含む)の解消に焦点を当てた広報キャンペーン、配布用資料および教材(学校教材および専門家向け教材の双方)を発展させることを要求される。締約国はさらに、先住民族の子どもおよび先住民族ではない子どもが異なる文化、宗教および言語を理解しかつ尊重するための、意味のある機会を提供するべきである。 28.委員会に提出する定期報告書において、締約国は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画との関連で先住民族の子どもの差別に対処するためにとった措置およびプログラムを明らかにするべきである [11]。 [11] 先住民族の子どもの権利に関する一般的討議(2003年)の勧告、パラ12。 29.特別措置の立案にあたり、締約国は、多面的な差別に直面している可能性がある先住民族の子どものニーズを考慮するとともに、農村部および都市部の先住民族の子どもが置かれている異なる状況も考慮に入れるべきである。女子が男子との平等を基礎としてその権利を享受することを確保するために、女子に対して特別な注意を払うことが求められる。締約国はさらに、特別措置において、障害のある先住民族の子どもの権利への対応が行なわれることを確保するべきである [12]。 [12] 障害のある人の権利に関する条約前文。国連・先住民族の権利に関する宣言(A/RES/61/295)〔市民外交センター仮訳(PDF)〕第21条および第22条。 子どもの最善の利益 30.先住民族の子どもに対して子どもの最善の利益の原則を適用する際には、特段の注意が必要である。委員会は、子どもの最善の利益は集団的権利としても個人的権利としてもとらえられていること、および、この権利を集団としての先住民族の子どもに適用する際にはこの権利が集団的文化権とどのように関連しているかについて検討する必要があることに、留意する。先住民族の子どもについては、本来対象とされるべき別個の検討が常に行なわれるわけではない。場合によっては、先住民族の子どもの特有な状況が、先住民族にとってのより幅広い関心事に関わるその他の問題(土地に関わる権利および政治的代表のあり方を含む)によって曖昧にされることもあった [13]。子どもの場合、集団の最善の利益を優先させることによって子どもの最善の利益をないがしろにしまたは侵害することはできない。 [13] UNICEF Innocenti Digest No. 11, Ensuring the Rights of Indigenous Children, 2004, p.1. 31.立法機関を含む国の機関がある先住民族の子どもの最善の利益を評価しようとするときは、先住民族であるその子どもの文化的権利、および、これらの権利を自己の集団とともに集団的に行使する必要性を考慮することが求められる。先住民族の子ども一般に影響を及ぼす立法、政策およびプログラムに関しては、先住民族コミュニティが協議の対象とされるべきであり、かつ、先住民族の子ども一般の最善の利益を文化的配慮のある方法でどのように決定できるかのプロセスに参加する機会を与えられるべきである。このような協議には、可能なかぎり、先住民族の子どもの意味のある参加が含められるべきである。 32.委員会は、子ども個人の最善の利益と集団としての子どもたちの最善の利益が異なる場合もあると考える。子ども個人に関する決定、典型的には裁判所による決定または行政決定においては、第一義的関心事となるのは特定の子どもの最善の利益である。しかし、子どもの集団的文化権を考慮することは、その子どもの最善の利益を判断することの一部である。 33.子どもの最善の利益の原則は、国に対し、自分たちの決定および行動が子どもの権利および利益にとってどのような意味合いを持つかを検討することによってこの原則を体系的に適用する立法制度、行政制度および司法制度全体を通じ、積極的措置をとることを要求する [14]。先住民族の子どもの権利を効果的に保障するため、このような措置には、子どもの最善の利益について判断するにあたり集団的文化権を考慮することの重要性について、関連する専門職の研修および意識啓発を行なうことが含まれよう。 [14] 子どもの権利委員会・「実施に関する一般的措置」についての一般的意見5号(2003年)、パラ12。 生命、生存および発達に対する権利 34.委員会は、人口比に照らして不相当に多くの先住民族の子どもが極度の貧困、すなわちその生存および発達に悪影響を及ぼす条件下で暮らしていることに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、先住民族の子どもの乳幼児死亡率の高さならびに栄養不良および疾病の多さを懸念するものである。第4条は、締約国に対し、利用可能な資源を最大限に用いて、かつ必要な場合には国際協力を得て、経済的、社会的および文化的権利に対応するよう義務づけている。第6条および第27条は、生存および発達ならびに十分な生活水準に対する子どもの権利を定めている。国は、とくに栄養、衣服および住居に関して文化的に適切な物質的援助および支援のプログラムを提供することにより、親および先住民族の子どもに責任を負う他の者によるこの権利の実施を援助するべきである。委員会は、先住民族の子どもが十分な生活水準に対する権利を享受すること、および、これに関する措置が、進展を測定するための指標とあわせて、子どもを含む先住民族とのパートナーシップに基づいて発展させられることを確保するため、締約国が特別措置をとることの必要性を強調する。 35.委員会は、子どもの発達とは「ホリスティックな概念であり、子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的、心理的および社会的発達を包含するものである」という、一般的意見5号で述べた理解 [15] をあらためて繰り返す。条約前文は、とくに子どもの保護および調和のとれた発達に言及しながら、各人〔ママ、条約では「各人民」〕の伝統および文化的価値の重要性を強調している。先住民族の子どものコミュニティが伝統的生活様式を維持している場合、伝統的土地の使用は、子どもの発達および文化の享受にとって相当の重要性を有する。締約国は、生命、生存および発達に対する子どもの権利を可能なかぎり最大限に確保しつつ、伝統的土地および自然環境の質の重要性を緊密に考慮するべきである。 [15] 前掲。 [16] UNICEF Innocenti Digest No. 11, Ensuring the Rights of Indigenous Children, 2004, p.8. 36.委員会は、ミレニアム開発目標(MDG)の重要性を再確認するとともに、各国に対し、先住民族の子どもとの関連でMDGの全面的実現を確保するため、子どもを含む先住民族と交流するよう求める。 子どもの意見の尊重 37.委員会は、第12条との関連で、自己の意見を表明する個人としての子どもの権利と、自分たちに関係する事柄についての協議に子どもたちが集団として関与できるようにする、集団的に意見を聴かれる権利との間には違いがあると考える。 38.先住民族の子ども個人との関連では、締約国には、自己に影響を与えるすべての事柄について直接または代理人を通じて自己の意見を表明し、かつこの意見を子どもの年齢および成熟度にしたがって正当に重視される子どもの権利を尊重する義務が存する。この義務はいかなる司法上または行政上の手続においても尊重されなければならない。先住民族の子どもによるこの権利の行使を妨げる障壁を考慮し、締約国は、子どもの自由な意見表明を奨励する環境を提供するべきである。意見を聴かれる権利には、代理人を指名する権利、文化的に適切な通訳および意見を表明しない権利も含まれる。 39.この権利が集団としての先住民族の子どもたちに適用される場合、締約国は、このような子どもたちの参加を促進するうえで重要な役割を果たすのであり、このような子どもたちが自分たちに影響を与えるすべての事柄について協議の対象とされることを確保するべきである。締約国は、このような子どもたちの参加が効果的なものであることを保障するための特別戦略を立案するよう求められる。締約国は、この権利がとくに学校環境、代替的養護の現場およびコミュニティ一班で適用されることを確保するべきである。委員会は、締約国に対し、条約実施のためのプログラム、政策および戦略を策定、実施および評価するために先住民族の子どもおよびそのコミュニティと緊密に協働するよう勧告する。 市民的権利および自由 (条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 情報へのアクセス 40.委員会は、条約第17条(d)および第30条にしたがい、メディアが先住民族の子どもの言語的ニーズにとくに配慮することの重要性を強調する。委員会は、締約国に対し、先住民族の子どもが自分自身の言語によるメディアにアクセスできることを支援するよう奨励するものである。委員会は、先住民族の子どもが意見を聴かれる権利を効果的に行使できるようにするため、情報(自分自身の言語によるものを含む)にアクセスするこのような子どもの権利を強調する。 出生登録、国籍およびアイデンティティ 41.締約国は、すべての子どもが出生後直ちに登録されることおよび国籍を取得することを確保する義務を負う。出生登録は無償であり、かつすべての人にとってアクセス可能であるべきである。委員会は、先住民族の子どもが先住民族ではない子供よりも出生登録されないままであることが多く、かつ無国籍となるおそれが大きいことを懸念する。 42.したがって、締約国は、先住民族の子ども(遠隔地に住んでいる子どもを含む)が滞りなく登録されることを確保するために特別措置をとるべきである。関係コミュニティとの協議後に合意されるべきこのような特別措置には、移動班を設けること、定期的に出生登録キャンペーンを行なうこと、またはアクセスしやすさを確保するために先住民族コミュニティ内で出生登録所を指定することなどが含まれうる。 43.締約国は、出生登録の重要性、および、出生登録の欠如が登録されていない子どもにとっての他の権利の享受に悪影響を及ぼす可能性について、先住民族コミュニティが十分な情報を提供されることを確保するべきである。締約国は、先住民族コミュニティが自分たち自身の言語でこの旨の情報を入手できること、および、関係コミュニティと協議しながら公的意識啓発キャンペーンが行なわれることを確保するよう求められる [17]。 [17] UNICEF Innocenti Digest No. 11, Ensuring the Rights of Indigenous Children, 2004, p.9. 44.さらに、条約第8条および第30条を考慮し、締約国は、先住民族の子どもが、その文化的伝統およびアイデンティティを維持する権利にしたがい、その親が選択する先住民族名を得られることを確保するべきである。締約国は、先住民族の親が自分の子どもに望みの名前を選べる旨を定めた国内法を設けることが求められる。 45.委員会は、子どもがそのアイデンティティの要素の一部または全部を違法に剥奪された場合、そのアイデンティティを速やかに回復するために適当な援助および保護が提供されなければならないことを確認した条約第8条第2項に、各国の注意を喚起する。委員会は、締約国に対し、国連・先住民族の権利に関する宣言〔市民外交センター仮訳(PDF)〕第8条を念頭に置くよう奨励するものである。そこでは、先住民族(子どもを含む)の民族的アイデンティティを剥奪するいかなる行為をも防止し、かつそのような行為に対して救済措置を与えるための効果的機構が用意されなければならないと定められている。 家庭環境および代替的養護 (条約第5条、第18条(第1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(第4項)および第39条) 46.条約第5条は、締約国に対し、親、または適用可能な場合には拡大家族もしくはコミュニティの構成員が、この条約で認められた権利を子どもが行使するにあたって、子どもの能力の発達と一致する方法で適当な指示および指導を行なう責任、権利および義務を尊重するよう求めている。締約国は、条約第3条、第5条、第18条、第25条および第27条第3項にしたがい、先住民族の家族およびコミュニティが子ども養育責任を果たすのを援助することによってこのような家族およびコミュニティの一体性を保護するために、効果的な措置がとられることを確保するべきである。[18] [18] 先住民族の子どもの権利に関する一般的討議(2003年)の勧告、パラ17。 47.締約国は、先住民族の家族およびコミュニティと協力しながら、先住民族の子ども(里親託置および養子縁組の手続中の子どもを含む)の家族状況に関するデータを収集するべきである。このような情報は、先住民族の子どもの家庭環境および代替的養護に関わる政策を文化的に配慮された方法で立案するために活用することが求められる。子どもの最善の利益ならびに先住民族の家族およびコミュニティの一体性を維持することは、先住民族の子どもに影響を及ぼす発達プログラム、社会サービス・プログラム、保健プログラムおよび教育プログラムにおいて第一義的に考慮されるべきである。[19] [19] 前掲。 48.さらに、国は常に、先住民族の子どもが代替的養護に措置されるいかなる事案においても子どもの最善の利益の原則が至高の考慮事項とされることを確保し、かつ、条約第20条第3項にしたがい、子どもの養育に継続性が望まれることについて、ならびに子どもの民族的、宗教的、文化的および言語的背景について正当な考慮を払うべきである。家庭環境から分離される子どものなかで先住民族の子どもが過度に多い締約国では、代替的養護の対象とされる先住民族の子どもの人数を減らし、かつその文化的アイデンティティの喪失を防止するため、先住民族コミュニティと協議しながら、とくに対象を明確にした政策措置を策定することが求められる。具体的には、先住民族の子どもがコミュニティ外へ措置されるときは、締約国は、その子どもが自己の文化的アイデンティティを維持できることを確保するために特別措置をとるべきである。 基礎保健および福祉 (条約第6条、第18条(第3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(第1~3項)) 49.締約国は、すべての子どもが到達可能な最高水準の健康を享受し、かつ保健ケア・サービスにアクセスできることを確保しなければならない。先住民族の子どもは、とくに保健ケア・サービスが劣等であるためまたは保健サービスにアクセスできないために、先住民族ではない子どもよりも健康状態が悪いことがしばしばある。委員会は、締約国報告書の審査に基づき、これが先進国にも開発途上国にも当てはまることに懸念とともに留意するものである。 50.委員会は、締約国に対し、到達可能な最高水準の健康の享受に関して先住民族の子どもが差別されないことを確保するために特別措置をとるよう促す。委員会は、先住民族の子どもの死亡率が高いことを懸念するとともに、締約国には、先住民族の子どもが保健サービスに平等にアクセスできることを確保し、かつ栄養不良ならびに乳幼児、子どもおよび妊産婦の死亡と闘う積極的義務があることに留意するものである。 51.締約国は、先住民族の子どもが保健ケア・サービスに養育にアクセスできることを確保するために必要な措置をとるべきである。保健サービスは、可能なかぎりコミュニティを基盤とし、かつ関係民族と協力しながら計画および運営することが求められる [20]。保健ケア・サービスが文化的配慮を備えたものであることおよび当該サービスに関する情報が先住民族の原語で利用可能とされることを確保するため、特別の考慮がなされるべきである。農村部および遠隔地もしくは武力紛争地域に居住している先住民族、ならびに、移住労働者、難民または避難民である先住民族を対象として保健ケアへのアクセスを確保することに、特段の注意を払うことが求められる。締約国はさらに、障害のある子どものニーズに特別な注意を払い、かつ関連のプログラムおよび政策が文化的に配慮したものとなることを確保するべきである [21]。 [20] ILO第169号条約第25条第1項および第2項。 [21] 子どもの権利委員会・「障害のある子どもの権利」に関する一般的意見9号(2006年)。 52.先住民族コミュニティ出身の保健ケアワーカーおよび医療スタッフは、伝統的医療と通常の医療サービスとの懸け橋として機能することによって重要な役割を果たすのであって、地元の先住民族コミュニティのワーカーの雇用が優先されるべきである [22]。締約国は、通常医療が先住民族コミュニティによってその文化および伝統に目配りしたやり方で活用されることを可能にするため、必要な手段および訓練を提供することによってこのようなワーカーの役割を奨励することが求められる。この文脈において、委員会は、伝統的医療に対する先住民族の権利についてのILO第169号条約第25条第2項ならびに国連・先住民族の権利に関する宣言〔市民外交センター仮訳(PDF)〕第24条および第31条を想起するものである [23]。 [22] ILO第169号条約第25条第3項。 [23] 国連・先住民族の権利に関する宣言(A/RES/61/295)〔市民外交センター仮訳(PDF)〕第24条および第31条。 53.国は、先住民族の子ども、家族およびそのコミュニティが、栄養、母乳育児、産前産後のケア、子どもおよび青少年の健康、予防接種、感染症(とくにHIV/AIDSおよび結核)、個人衛生、環境衛生ならびに農薬および除草剤の危険性など、健康および予防ケアに関わる問題についての情報および教育を受けることを確保するために、あらゆる合理的措置をとるべきである。 54.思春期の健康に関して、締約国は、性および生殖に関する情報およびサービス(家族計画および避妊法、若年妊娠の危険性、HIV/AIDSの予防ならびに性感染症(STI)の予防および治療に関するものを含む)に先住民族の青少年がアクセスできるようにするため、具体的戦略を検討するべきである。委員会は、締約国に対し、この目的のため、HIV/AIDSと子どもの権利に関する一般的意見3号(2003年)および思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年)を考慮に入れるよう勧告する。 [24] 子どもの権利委員会・「HIV/AIDSと子どもの権利」に関する一般的意見3号(2003年)および「思春期の健康」に関する一般的意見4号(2003年)。 55.一部の締約国では、先住民族の子どもの自殺率が先住民族ではない子どもよりも有意に高い。このような状況にある締約国は、影響を受けているコミュニティとの協議の後、予防的措置のための政策を立案および実施し、かつ、先住民族の子どもの精神保健ケアに対して追加的財源および人的資源が文化的に適切な方法で配分されることを確保するべきである。根本的原因を分析しかつそれと闘うため、締約国は先住民族コミュニティとの対話を確立および維持することが求められる。 教育、余暇および文化的活動 (条約第28条、第29条および第31条) 56.条約第29条は、すべての子どもの教育の目的が、他の目標のなかでもとくに、子どもの文化的アイデンティティ、言語および価値ならびに自己の文明と異なる文明の尊重を発展させることを志向するべきであると定めている。さらなる目標には、すべての諸人民、民族的、国民的および宗教的集団ならびに先住民族出身者の間の理解、平和、寛容、性の平等および友好の精神の下で、子どもが自由な社会において責任ある生活を送れるようにすることも含まれている。教育の目的はすべての子どもの教育に適用されるのであり、締約国は、これらの目的がカリキュラム、教材の内容、教授法および政策に十分に反映されることを確保するべきである。締約国は、さらなる指針として、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号 [25] を参照するよう奨励される。 [25] 子どもの権利委員会・「教育の目的」に関する一般的意見1号(2001年)。 57.先住民族の子どもの教育は、その個人としての発達およびコミュニティの発展にも、より幅広い社会へのこのような子どもの参加にも寄与する。良質な教育は、先住民族の子どもが、個人的利益のためにかつコミュニティの利益のために経済的、社会的および文化的権利を行使および享受することを可能とする。さらに、人権の保護の向上のために政治的政策プロセスに影響を与えるべく市民的権利を行使する子どもの能力も強化される。このように、教育に対する先住民族の子どもの権利を実施することは、個人のエンパワーメントおよび先住民族の自決を達成する不可欠な手段である。 58.教育の目的が条約と一致することを確保するため、締約国は、条約第2条に掲げられたあらゆる形態の差別から子どもを保護することおよび人種主義と積極的に闘うことについて責任を負う。この義務は、先住民族の子どもとの関係でとりわけ妥当するところである。この義務を効果的に実施するため、締約国は、カリキュラム、教材および歴史教科書において先住民族の社会および文化が公正に、正確にかつ豊かな情報とともに描写されることを確保するよう求められる [26]。文化的および伝統的服装の利用の制約のような差別的慣行は、学校現場では回避されるべきである。 [26] ILO第169号条約第31条。国連・先住民族の権利に関する宣言(A/RES/61/295)〔市民外交センター仮訳(PDF)〕第15条。 59.条約第28条は、締約国が、平等な機会に基づいて初等教育が義務的なものとされかつすべての子どもに対して利用可能とされることを確保しなければならない旨、定めている。締約国は、中等教育および職業教育がすべての子どもにとって利用可能でありかつアクセスできるようにすることを奨励されている。しかし実際には、先住民族の子どもは先住民族でない子どもよりも就学する可能性が低く、かつ中退率および非識字率も依然として高い。ほとんどの先住民族の子どもは、教育上の便益および教員の不十分さ、直接間接の教育費負担、および、第30条にしたがった文化的対応済みの二言語カリキュラムの欠如を含むさまざまな要因により、教育へのアクセスを減殺されている。さらに、先住民族の子どもは学校現場で差別および人種主義に直面することがしばしばある。 60.先住民族の子どもが先住民族ではない子どもと平等な立場で教育への権利を享受できるようにするため、締約国は、そのための一連の特別措置がとられることを確保するよう求められる。締約国は、先住民族の子どもによる教育へのアクセスを向上させることをとくに目的とした政策およびプログラムを実施するため、対象を明確にした金銭的、物質的および人的資源を配分するべきである。ILO第169号条約第27条で定められているように、教育上のプログラムおよびサービスは、関係民族の具体的ニーズに対応するため、当該民族と協力しながら策定および実施することが求められる。さらに、政府は、先住民族が自分たち自身の教育機関および教育施設を設置する権利を認めるべきである(ただし、当該機関が、これらの民族との協議に基づき権限のある公的機関が定めた最低基準を満たすことを条件とする)[27]。国は、先住民族コミュニティが、教育の価値および重要性ならびに就学に対するコミュニティの指示の重要性を認識することを確保するため、あらゆる合理的な努力を行なうよう求められる。 [27] ILO第169号条約第27条。 61.締約国は、先住民族の子どもが暮らしている場所で学校施設に容易にアクセスできることを確保するべきである。必要であれば、締約国は、教育目的のラジオ放送および(インターネットを基盤とした)遠距離教育プログラムのようなメディアの活用を支援し、かつ、遊動生活の伝統を実践している先住民族のために移動学校を設置することが求められる。学校の年間スケジュールは、文化的慣行ならびに農繁期および儀式の期間を考慮に入れ、かつこれらに合わせることを追求するべきである。先住民族コミュニティから離れた寄宿制学校は、先住民族の子ども、とくに女子の就学をためらわせる可能性があるので、締約国は必要な場合にしかこれを設置するべきではない。寄宿制学校は、文化的に配慮された基準を遵守し、かつ定期的監視の対象とされるべきである。また、自分のコミュニティ外で暮らしている先住民族の子どもが、当該民族の文化、言語および伝統を尊重するやり方で教育にアクセスできることを確保するための試みも求められる。 62.条約第30条は、先住民族の子どもが自分自身の言語を使用する権利を定めている。この権利を実施するためには、子ども自身の言語による教育が必要不可欠である。ILO第169号条約第28条は、先住民族の子どもが、国の公用語を自由に操れるようになるための機会を提供される以外に、自分たち自身の言語で読み書きを教えられなければならないことを確認している [28]。二言語のおよび文化横断的カリキュラムは、先住民族の子どもの教育にとって重要な基準である。先住民族の子どもの教員は、可能なかぎり先住民族コミュニティから採用され、かつ十分な支援および訓練を与えられるべきである。 [28] ILO第169号条約第28条。 63.条約第31条に関して、委員会は、スポーツ、伝統的ゲーム、体育およびレクリエーション活動への参加に多くの積極的利益があることに留意し、締約国に対し、先住民族の子どもがこれらの権利の効果的行使を享受することを確保するよう求める。 特別な保護措置 (条約第22条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)および(d)、第30条ならびに第32~36条) 武力紛争における子どもおよび難民の子ども 64.締約国報告書の定期的審査を通じ、委員会は、武力紛争の状況または国内不安の状況では先住民族の子どもがとりわけ被害を受けやすい立場に置かれるという結論に達した。先住民族コミュニティは、天然資源のために狙われている地域、または遠隔地にあるため国以外の武装集団の本拠地となっている地域に居住していることが多い。他に、先住民族コミュニティが、複数の国の紛争の対象となっている国境または辺境の付近に居住している状況もある。[29] [29] UNICEF Innocenti Digest No. 11, Ensuring the Rights of Indigenous Children, 2004, p.13. 65.そのような状況下にある先住民族の子どもは、死亡、強姦および拷問、強制避難、非自発的失踪、残虐行為の目撃、ならびに、親およびコミュニティからの別離という結果をもたらす、自己のコミュニティに対する攻撃の被害者となってきたし、そのような被害を受けるおそれに直面し続けている。軍隊および武装集団が学校を攻撃対象とすることによって、先住民族の子どもは教育へのアクセスを否定されてきた。さらに、先住民族の子どもは軍隊および武装集団によって徴用され、時には自分自身のコミュニティに対してさえ残虐行為を行なうことを強要されてきている。 66.条約第38条は、締約国に対し、人道法の規則の尊重を確保すること、文民を保護すること、および、武力紛争の影響を受けている子どもをケアすることを義務づけている。締約国は、敵対行為において先住民族の子どもが直面するリスクに特段の注意を払い、かつ、関係コミュニティと協議しながら最大限の予防措置をとるべきである。先住民族の領域における軍事的活動は可能なかぎり回避されるべきであり、委員会は、この点に関わって、国連・先住民族の権利に関する宣言〔市民外交センター仮訳(PDF)〕第30条を想起する [30]。締約国は、18歳未満の先住民族の子どもの徴兵を要求するべきではない。締約国は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書を批准しかつ実施するよう奨励される。 [30] 国連・先住民族の権利に関する宣言(A/RES/61/295)〔市民外交センター仮訳(PDF)〕第30条。 67.武力紛争への徴用の被害を受けた先住民族の子どもに対しては、家族およびコミュニティへの再統合のために必要な支援サービスが提供されるべきである。条約第39条に一致する形で、締約国は、あらゆる形態の搾取、虐待、拷問または他のあらゆる形態の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰、または武力紛争の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を促進するために、あらゆる適当な措置をとらなければならない。先住民族の子どもの場合、このような対応は、子どもの文化的および言語的背景を正当に考慮しながら進められるべきである。 68.避難民または難民となった先住民族の子どもに対しては、文化的に配慮したやり方で特別な注意を向けかつ人道的援助を提供するべきである。安全な帰還ならびに集団的および個人的財産の回復を促進することが求められる。 経済的搾取 69.条約第32条は、すべての子どもが、経済的搾取から、かつ危険がありもしくはその教育を妨げ、またはその健康または身体的、心理的、精神的、霊的、道徳的もしくは社会的発達にとって有害となるおそれのあるいかなる労働に就くことからも、保護されるべきであると定めている。加えて、ILO第138号条約(最低年齢条約)および第182号条約(最悪の形態の児童労働条約)は、一方で廃止が必要とされる児童労働と、他方で子どもによって行なわれる容認可能な仕事(先住民族の子どもが生計手段を獲得する技能、アイデンティティおよび文化を習得できるようにするための活動を含む)とを峻別するための要素を掲げている。児童労働とは、子どもからその子ども時代、潜在的可能性および尊厳を奪い、かつその身体的および精神的発達にとって有害な労働のことである [31]。 [31] ILO, Handbook on Combating Child Labour among Indigenous and Tribal Peoples, 2006, p.9. 70.子どもの権利条約の諸規定は、薬物の不法な製造および取引における子どもの使用(第33条)、性的搾取(第34条)、子どもの人身取引(第35条)、武力紛争における子ども(第38条)に言及している。これらの規定は、ILO第182号条約に基づく最悪の形態の児童労働の定義と密接に関連するものである。委員会は、先住民族の子どもが、人口比に照らして不相応に貧困の影響を受けており、かつ、児童労働、とくに奴隷制、債務労働、子どもの人身取引(家事労働を目的とするものも含む)、武力紛争における使用、買春および危険な労働のような最悪の形態の児童労働で使用されるおそれがとくに高いことに、重大な懸念とともに留意する。 71.先住民族の子どもの間で生じている搾取的児童労働を(他のすべての子どもの場合と同じように)防止するためには児童労働に対する権利基盤アプローチが必要であり、またこのような防止は教育の推進と密接に関連している。先住民族コミュニティで生じている搾取的児童労働を効果的に解消するため、締約国は、教育を妨げている既存の障壁、ならびに、学校教育および職業訓練に関わる先住民族の子どもの具体的権利およびニーズを特定しなければならない。そのためには、教育の重要性および利益に関して先住民族のコミュニティおよび親との対話を維持するために特別な努力を行なうことが必要である。搾取的児童労働と闘うための措置をとるためには、さらに、子どもの搾取の構造的な根本的原因の分析、データ収集ならびに防止プログラムの立案および実施が必要となる。これは、締約国が財源および人的資源を十分に配分し、かつ先住民族のコミュニティおよび子どもと協議しながら進めなければならない。 性的搾取および人身取引 72.第20条の規定とあわせて考慮されるべき条約第34条および第35条は、国に対し、子どもが性的搾取および虐待から、ならびにいかなる目的による誘拐、売買または取引からも保護されることを確保するよう求めている。委員会は、貧困および都市への移住の影響を受けているコミュニティに属する先住民族の子どもが性的搾取および人身取引の被害者となるおそれが高いことを懸念するものである。若い女子、とりわけ出生時に登録されなかった女子はとくに被害を受けやすい。先住民族の子どもを含むすべての子どもの保護を向上させるため、締約国は、子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する選択議定書を批准しかつ実施するよう奨励される。 73.国は、子どもを含む先住民族コミュニティと協議しながら防止措置を立案し、かつその実施のために対象を明確にした財源および人的資源を配分するべきである。国は、侵害のパターンの記録および根本的原因の分析も含む研究を基盤として防止措置を立案することが求められる。 少年司法 74.条約第37条および第40条は、国の司法制度内および当該司法制度との相互作用における子どもの権利を確保するものである。委員会は、先住民族の子どもの拘禁件数が人口比に照らして不相応に高いことが多く、かつ一部の事例ではその原因が司法制度および(または)社会の内部から生ずる組織的差別である可能性があること [32] に、懸念とともに留意する。このような高い拘禁率に対応するため、委員会は、締約国が条約第40条第3項に注意を向けるよう促すものである。同項は、国に対し、刑法に違反したとして申し立てられ、罪を問われ、または認定された子どもを、適当な場合には常に司法的手続によらずに取り扱う措置をとるよう求めている。委員会は、少年司法における子どもの権利に関する一般的意見10号(2007年)および総括所見で、子どもの逮捕、勾留または収監は最後の手段として以外には用いてはならないことを一貫して確認してきた [33]。 [32] 子どもの権利委員会・「少年司法における子どもの権利」に関する一般的意見10号(2007年)、パラ6。 [33] 前掲パラ23。 75.締約国は、先住民族による伝統的な修復的司法制度の立案および実施を、これらのプログラムが条約に掲げられた諸権利、とくに子どもの最善の利益にしたがうかぎりにおいて支援するため、あらゆる適切な措置をとるよう奨励される [34]。委員会は、少年非行の防止のためのコミュニティ・プログラムの発展を奨励する「少年非行の防止に関する国連指針」[35] に対し、締約国の注意を喚起するものである。締約国は、先住民族と協議しながら、先住民族の子ども、その家族およびコミュニティのニーズおよび文化を考慮した、コミュニティを基盤とする政策、プログラムおよびサービスの発展を支援しようと努めることが求められる。国は、先住民族が発展させかつ実施するものも含む少年司法制度に対し、十分な資源を提供するべきである。 [34] 先住民族の子どもの権利に関する一般的討議(2003年)の勧告、パラ13。 [35] 少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)(1990年)。 76.締約国は、条約第12条にしたがい、子どもに影響を与えるいかなる司法手続または刑事手続においても、直接にまたは代理人を通じて意見を聴かれる機会をすべての子どもが有するべきであることを想起するよう促される。先住民族の子どもの場合、締約国は、必要なときは通訳者が無償で提供されること、および、子どもが文化的に配慮されたやり方で法的援助を保障されることを確保するための措置をとるべきである。 77.法執行および司法府に関与する専門家は、先住民族の子どもおよび他の特定の集団のために特別な保護措置をとる必要性も含め、条約およびその選択議定書の規定の内容および意味に関する適切な研修を受けるべきである。[36] [36] 子どもの権利委員会・「少年司法における子どもの権利」に関する一般的意見10号(2007年)、パラ97。 締約国の義務および条約の実施の監視 78.委員会は、締約国が、子どもの権利条約を批准したことにより、その管轄内にあるすべての子どもに対して条約上のすべての権利の実現を確保するための措置をとるよう義務づけられていることを想起するよう促す。尊重しかつ保護する義務は、各締約国に対し、先住民族の子どもの権利の行使が、立法機関、司法機関もしくは行政機関による締約国のいかなる行為からも、ならびに締約国内の他のいかなる主体もしくは人の行為からも、全面的に保護されることを確保するよう要求するものである。 79.条約第3条は、締約国に対し、子どもに関するあらゆる行動において子どもの最善の利益が第一義的に考慮されることを確保するよう求めている。条約第4条は、締約国に対し、自国の利用可能な資源を最大限に用いて条約を実施するための措置をとるよう要求している。第42条は、締約国はさらに、子どもおよびおとなが条約の原則および規定に関する情報を提供されることを確保するよう要求される旨、定めている。 80.先住民族の子どもを対象として条約の権利を効果的に実施するため、締約国は、条約にしたがって適切な立法を採択する必要がある。先住民族の子どもが先住民族ではない子どもと平等な水準で自己の権利を享受できることを効果的に確保するため、一連の分野で十分な資源が配分されるべきであり、かつ特別措置がとられるべきである。先住民族の子どもの権利が実施されている度合いを評価する目的でデータを収集および細分化しかつ指標を開発するため、さらなる努力を行なうことが求められる。文化的配慮のあるやり方で政策およびプログラム展開の取り組みを発展させるため、締約国は、先住民族コミュニティと、かつ先住民族の子どもたちと直接、協議するべきである。先住民族の子どもとともに活動している専門家は、子どもの権利の文化的側面をどのように考慮すべきかについて研修を受けることが求められる。 81.委員会は、締約国に対し、適用可能な場合には、先住民族の子どもの権利の実施およびこの点に関わる特別措置の採択についての情報を、委員会に提出する定期報告書によりよい形で統合するよう求める。さらに委員会は、締約国に対し、監視プロセスに先住民族が積極的に参加できるようにするため、条約およびその選択議定書ならびに報告プロセスに関する情報を翻訳し、かつ先住民族コミュニティおよび先住民族の子どもの間で普及するための努力を強化するよう要請するものである。さらに、先住民族コミュニティは、条約を、自分たちの子どもの権利の実施を評価するための機会として活用するよう奨励される。 82.最後に委員会は、締約国に対し、条約ならびに他の関連の国際基準(ILO第169号条約および国連・先住民族の権利に関する宣言〔市民外交センター仮訳(PDF)〕など)に基づき、先住民族の子どもに対して権利基盤アプローチをとるよう促す。先住民族の子どもの権利の実施が効果的に監視されることを保障するため、締約国は、先住民族コミュニティとの直接の協力を強化し、かつ、必要なときは国連機関を含む国際機関の技術的協力を追求するよう、促されるところである。先住民族の子どものエンパワーメント、および、文化、宗教および言語に対する先住民族の子どもの権利の効果的行使は、人権法上の義務と調和しかつこれを遵守する文化的に多様な国の、欠かせない基盤である。 更新履歴:ページ作成(2011年5月30日)。/2つに分けていたページを統合(2015年3月6日)。
https://w.atwiki.jp/wiki14_tk/pages/7.html
第二章 子どもの発達 乳幼児期は子どもの心身の発育・発達が著しく、また、基礎が形成される。しかし、一人一人の子どもの個人差は大きいため、保育に当たっては、発達の過程や生活環境など子どもの発達の全体的な姿を把握しながら行う必要がある。 1 子どもと大人との関係 子どもは、身体的にも精神的にも未熟な状態で生まれ、大人に保護され、養育される。その際、大人と子どもの相互作用が十分に行われることによって、将来に向けての望ましい発育・発達を続け、人間として必要な事柄を身につけることができる。中でも重要なことは、人への信頼感と自己の主体性を形成することであり、それは、愛情豊かで思慮深い大人の保護・世話などの活動を通じた大人と子どもの相互関係の中で培われる。子どもは、大人によって生命を守られ、愛され、信頼されることによって、自分も大人を愛し、信頼していくようになる。大人との相互作用によって情緒的に安定し、大人の期待に自ら応えようという気持ちが育ち、次第に主体的に活動するようになり、さらに、きょうだいを始め周囲の者に対して関心を持ち、関わりを広め、増やしながら、自我が芽生えてくる。 このように発達初期に自分の行動を認めてくれる大人と相互関係を持つことにより、その後の一層の発達が促される。子どもは自発的に身近な事物や出来事に興味や関心を示して働きかけたり、積極的に特定の大人との関係をつくろうとするなど、自分の気持ちを明確に表現し、自分の意思で何かをするようになる。 このようにして、自分が主体となって選択し、決定して行動するという自己の能動性に自信を持つようになり、言葉や思考力、自己統制力を発達させていく。 2 子ども自身の発達 子どもの発達は、子どもと子どもを取り巻く環境内の人や自然、事物、出来事などとの相互作用の結果として進んでいく。 その際、そこに主体的に関わっている子ども自身の力を認めることが大切である。すなわち、発達とは、子どもが心身の自然な成長に伴い、それぞれの子どもに応じた自発的、能動的な興味、好奇心や、それまでに身につけてきた知識、能力を基にして、生活環境内の対象へ働きかけ、その対象との相互作用の一結果として、新たな態度や知識、能力を身につけていく過程である。 特に、中心となることは人との相互作用である。子どもは、乳幼児期を通じて、大人との交流、応答や大人から理解されることを求め、自分が大人に理解されたように自分からも大人を理解しようとする。この大人との関係を土台として、次第に他の子どもとの間でも相互に働きかけ、社会的相互作用を行うようになる。 このような大人との相互作用とは違って、自分とよく似た視点を持つ他の子どもとの間で行われる社会的相互作用は、子どもの情緒的、社会的、道徳的な発達のみならず、知的発達にとっても不可欠な体験である。 子どもが思考力をはじめとした多くの能力を発達させるために必要な論理の展開も、子ども同士の社会的相互作用なしには経験し得ない。すなわち、自分の考えを相手に理解してもらいたいという気持ちを持ったり、相手に説明しようという気持ちを持つのも、仲間との社会的相互作用によるからである。また、大人との上下の関係とは違う横の対等の関係の中で、自己主張や自己抑制の必要性や方法を学び取っていく。 また、子どもは、その生理的・身体的な諸条件や養育環境の違いによって、その発達の進み方や現れ方が異なってくることを認識することが重要である。 3 子どもの生活と発達の援助 子どもの発達は、子どもとその環境内の対象との相互作用を通してなされるものであり、子どもの発達を促すためには、大人の側からの働きかけばかりでなく、子どもからの自発的、能動的な働きかけが行われるようにすることが必要である。 したがって、保育所においては、一人一人の子どもが、安心して生活ができ、また、発達に応じた適切な刺激と援助が与えられることにより、能動的、意欲的に活動ができるような環境が構成されなければならない。 このため家庭や地域と連携を持った安定した子どもの生活と、子どもをありのままに見て、それを深く理解して受容しようとする保育士との信頼関係が必要となる。 子どもの活動には、大別して、食事、排泄、休息、衣服の調節などの生活に関わる部分と遊びの部分とがあるが、子どもの主体的活動の中心となるのは遊びである。 子どもの遊びは、子どもの発達と密接に関連して現れるし、また逆にその遊びによって発達が刺激され、助長される。つまり、遊びは乳幼児の発達に必要な体験が相互に関連し合って総合的に営まれていることから、遊びを通しての総合的な保育をすることが必要である。この際、保育士は子どもと生活や遊びを共にする中で、一人一人の子どもの心身の状態をよく把握しながら、その発達の援助を行うことが必要である。 また、様々な条件により、子どもに発達の遅れや保育所の生活に慣れにくい状態がみられても、その子どもなりの努力が行われているので、その努力を評価して、各年齢別の発達の一般的な特徴を押しつけることなく、一人一人の子どもの発達の特性や発達の課題に十分に留意して保育を行う必要がある。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/261.html
子どもの権利委員会・一般的討議勧告:デジタルメディアと子どもの権利 一般的討議勧告一覧 (参考)国連人権理事会・意見および表現の自由に対する権利の促進および保護に関する特別報告者の報告書:表現の自由に対する子どもの権利(2014年) (第67会期、2014年) 原文:英語 日本語訳:平野裕二 VI.勧告 84.各国が自国の政策およびプログラムにおいて考慮すべき問題を特定する目的で子どもの権利に関する意識の喚起および討議を図る場であるというDGD〔一般的討議〕の趣旨に照らし、またデジタルメディアの文脈における子どもの権利の尊重、促進および充足に関する指針を他の関連の主体に提示する目的で、委員会は以下の勧告を公にする。以下の勧告は、第一義的に義務を負っている国を名宛人とするものである一方、家庭、学校、市民社会および民間セクターを含む他の関係者の積極的関与および参加も要求するものである。 一般的勧告(立法、政策および調整に関するものを含む) 85.国は、デジタルメディアおよびICT〔情報通信技術〕にアクセスしかつこれを利用することの子どもにとっての重要性、ならびに、すべての子どもの権利(とくに表現の自由、適切な情報へのアクセス、参加、教育ならびに休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する権利)の促進にとってのこれらのメディアおよびテクノロジーの可能性を認識するべきである。加えて、国は、インターネットを含むデジタルメディアおよびICTへの平等かつ安全なアクセスがポスト2015年開発アジェンダに統合されることを確保するよう求められる。 86.国は、デジタルメディアおよびICTへの子どものアクセスについて統合的に定め、かつ、デジタルメディアおよびICTを利用する際に条約およびその選択議定書に基づく全面的保護を確保する、人権を基盤とした包括的な法律および政策を採択しかつ実施するべきである。この問題が変化を続けていることに照らし、国はまた、法律および政策の実施状況の定期的監視ならびに法律および政策の評価を確保することも求められる。 87.国は、法律、政策、戦略およびプログラムを採択する前にならびに被害を受けた子どものためのサービスを設置する際に、恒常的な公的議論と、あらゆる関係者、とくに子ども、親およびその他の養育者、子どもとともにまたは子どものために働く専門家(教育分野の専門家を含む)、市民社会ならびにICTおよびその他の関連産業の積極的関与を促進しかつ容易にするよう、求められる。さらに、国は、デジタルメディアおよびICT関連の政策、プログラム、実務および決定がすべての子どもの権利、福祉および発達に及ぼす影響の効果的評価を行なうよう勧告されるところである。これによって国は、条約の基本原則(差別の禁止に対する権利、子どもの最善の利益を第一次的に考慮される権利、生命、生存および発達に対する権利ならびに自己に影響を与える事柄について意見を表明する子どもの権利を含む)が効果的に優先され、かつ意味のある形で実施されることを確保するよう求められる。 88.国は、子どもの権利とデジタルメディアおよびICTに関連するすべての活動を部門横断的にならびに国、広域行政権および地方のレベルで調整し、かつ国際協力を推進する明確な任務および十分な権限を備えた、国家的な調整枠組みを採択するべきである。国はまた、当該調整機関に対し、その効果的活動のために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保することも求められる。 データ収集および調査研究、監視ならびに取り組みの評価 89.国は、子どもによるデジタルメディアおよびソーシャルメディアへのアクセスおよびその利用ならびにそれが子どもの生活に及ぼしている影響についての理解を深めるための調査研究、データ収集および分析を継続的に行なうべきである。データは、子どもにとってのリスクおよび機会の双方を対象とするとともに、すべての子ども(とくに被害を受けやすい状況に置かれた子ども)の状況に関する分析を促進する目的で、年齢、性別、地理的所在、社会経済的背景、障害、マイノリティ集団および(もしくは)先住民族集団の構成員であること、民族的出身または適切と考えられる他のあらゆる属性によって細分化されていることが求められる。 90.委員会は、これらのデータを、進展を測定できるようにするための基準線の設定、関連の法律、政策、プログラムおよびプロジェクトの立案および評価ならびにその実施状況の監視のために活用することを勧告する。国はまた、これらのデータが、公的機関によって、検閲または他のいずれかの政治的および経済的干渉を奨励するために利用されないことを保障するための保護措置も確保するべきである。 91.委員会はさらに、締約国が、あらゆる関係者(とくに子ども)との考え、情報、経験および優れた実践の交流を、国レベル、国際地域レベルおよび国際的レベルで、プラットフォームの創設等も通じて促進するよう勧告する。 独立の監視 92.国は、人権の保障に責任を負う国内機関(国内人権機関、オンブズパーソンまたは平等機関など)に対し、条約およびその選択議定書の遵守状況の監視において主要な役割を果たせるよう、権限および十分な資源を与えるよう求められる。このような機関は、デジタルメディアおよびICTに関連する子どもの権利に対応する具体的任務を委ねられるとともに、子どもからの苦情を子どもに配慮したやり方で受理し、調査しかつこれに対応すること、被害者のプライバシーおよび保護を確保すること、ならびに、被害を受けた子どものために監視、フォローアップおよび確認の活動を行なうことができるべきである。 市民社会との協力 93.委員会は、子どもがICTおよびデジタルメディアにアクセスできることを確保し、かつこれらの手段を利用する際に子どもの権利を保護するうえで非政府組織(NGO)が果たしている重要な役割を認識する。委員会は、国が、関連の法律、政策およびプログラムの策定、実施、監視および評価ならびに調査研究およびデータ収集に、デジタルメディアと子どもの権利の分野で活動しているすべてのNGOの関与を組織的に得るよう勧告するものである。 意識啓発および研修 94.委員会は、締約国が、ICTおよびデジタルメディアの利用に関連する機会およびリスク(自作コンテンツがもたらす意図せざる結果を含む)について公衆一般およびとくに子どもの感受性を高めるための、年齢にふさわしい意識啓発プログラムを実施するよう勧告する。国は、子ども向けにとくに制作された関連の情報資料、ならびに、特定の年齢層および親その他の養育者ならびに子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家向けに制作された関連の情報資料を配布するとともに、意識啓発プログラムの組織化および実施に際して市民社会との緊密な協力を求めるべきである。 95.委員会はさらに、デジタルメディアおよびICTの責任ある利用ならびに子どものリスク回避能力および危害から身を守る能力を増進させる目的で、国が、子どもに対し、そのそのデジタルリテラシーおよびソーシャルリテラシーに関わるスキルの発達を確保するための十分な訓練および支援を提供するよう勧告する。国はまた、親その他の養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家(教育分野の専門家を含む)に対しても、その技術的スキルを増進させ、リスクおよび潜在的危害についての情報を提供し、子どもがテクノロジーをどのように利用しているか学び、かつ、責任ある安全なやり方によるデジタルメディアおよびICTの利用に関して子どもを支援できるようにするための十分な訓練および支援を提供するべきである。 子どもの権利と企業セクター 96.企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務についての委員会の一般的意見16号(2013年)ならびにこの分野における他の国際的規範および基準に照らし、国は、締約国で操業するICTその他の関連産業に対して子どもの権利の尊重を要求する、明確かつ予測可能な法的環境および規制環境を確保するべきである。国はまた、ICTその他の関連企業の説明責任を向上させる目的で子どもの権利侵害の調査および救済を行なう監視機構を設置するとともに、子どもの権利とICTに関連する基準の策定に関する規制庁の責任を強化することも求められる。 97.委員会は、国が、企業に対し、デジタルメディアおよびICTを利用する際の子どもの権利に企業が及ぼす影響を特定し、防止しかつ緩和する目的で子どもの権利に関する相当の注意(デュー・ディリジェンス)を払うことを要求するよう、勧告する。さらに国は、ICTその他の関連産業の慣行が条約およびその選択議定書ならびに他の国際的規範および基準に全面的に一致することを確保するため、ICTその他の関連産業による、自発的、自主規制的、職能的および倫理的な指針および行動基準その他の取り組みの発展(オンライン上の安全を促進する技術的解決策を開発し、かつICTおよびデジタルメディアの利用に関する子どもにやさしい取引条件を採用すること、ならびに、年齢にふさわしいコンテンツを発展させることなど)を奨励しかつ促進するべきである。加えて、国が、ICTその他の関連産業との討議および協力のための空間を確保することも勧告される。 差別の禁止 98.国は、自国の管轄内にあるすべての子ども(とくに女子、障害のある子ども、遠隔地に住んでいる子ども、貧困下で暮らしている子ども、マイノリティに属する子ども、先住民族の子ども、路上の状況下で暮らしている子ども、施設で生活している子どもならびに被害を受けやすい状況および周縁化された状況に置かれたその他の子ども)が差別なくデジタルメディアおよびICTにアクセスできることを確保するべきである。とくに委員会は、締約国がとりわけ以下の措置をとるよう勧告する。 (a) インターネット・インフラが利用できる範囲を拡大して農村部も含まれるようにするための措置をとること。 (b) 年齢を考慮しつつ、デジタルメディアおよびICTにインクルーシブな形でアクセスできることならびにテクノロジーおよびデジタルコンテンツが金銭的に負担可能な形でデザインされることを促進するとともに、知的所有権が、子ども(とくに障害のある子どもおよびマイノリティまたは先住民族集団に属する子ども)が文化的資料にアクセスすることにとっての不合理または差別的な障壁とならないことを確保すること。 (c) デジタルコンテンツの言語的および文化的多様性を促進すること。 (d) 女子に対するあらゆる形態の差別の効果的撤廃を確保し、かつ、意識啓発プログラム等を通じ、女子によるテクノロジーへのアクセスおよびその利用を制限しているジェンダー・ステレオタイプおよび社会的規範に対応するための取り組みを強化すること。 (e) コンピューター設備および接続の費用をまかなうための援助を学校およびコミュニティに提供するとともに、低コストな技術的解決策の開発を促進すること。 (f) 反差別の法律、政策、戦略およびプログラムに、デジタルメディアおよびICTへの子ども(とくにもっとも被害を受けやすい立場および不利な立場に置かれた集団に属する子ども)によるアクセスに対応する見地を含めること。 これとの関連で、委員会は、国が、とくに国際連合児童基金(ユニセフ)、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)、国際電気通信連合(ITU)および国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)の技術的援助を求めるよう勧告する。 子どもの意見の尊重 99.国は、デジタルメディアおよびITCに関連する法律、政策およびプログラムの策定ならびにサービスの立ち上げその他の措置において子どもたちの意見および経験を考慮に入れる目的で、子どもたちが協議の対象とされることを確保するべきである。これには、男子のみならず女子も、また被害を受けやすいまたは周縁化された状況に置かれた子どもも含めることが求められる。デジタルメディアおよびICTの安全な使用(オンライン上の安全を含む)を促進するための取り組みの立案および実施にも、子どもたちの積極的関与を得るべきである。とくに、国は、子どもたちが責任のある安全なやり方で意見および見解を表明できるオンライン上の空間を設置するよう奨励される。 表現の自由、適切な情報へのアクセス、結社および平和的集会の自由に対する権利 100.委員会は、各国に対し、条約ならびにその他の国際的な人権規範および人権基準との整合性を図るため、いかなる場面(オンライン環境を含む)においても、表現、適切な情報へのアクセスならびに結社および平和的集会の自由に対する子どもの権利を制限する国内法令および政策を改正するよう求める。 101.国はさらに、あらゆる場面(オンライン環境を含む)において、表現、適切な情報へのアクセスならびに結社および平和的集会の自由に対する子どもの権利を積極的に促進するべきである。とくに、国は、子どもが主導する活動の回路の創設ならびにさまざまな年齢の子ども向けの教育的および娯楽的コンテンツ(子どもたち自身が制作するコンテンツを含む)を促進するよう求められる。 プライバシーに対する権利 102.国は、デジタルメディアおよびICTとの関連でプライバシーに対する子どもの権利の保護を保障するとともに、条約で定められた子どもの権利の全面的享受を不当に誓約することなく、濫用に対する効果的な保護措置を発展させるべきである。国はまた、デジタルメディアおよびICTの利用ならびに自作コンテンツに関連したプライバシー上のリスクに関する子ども向けの意識啓発プログラムを発展させかつ強化することも求められる。 103.委員会はさらに、すべての子どもが、自己のデータがどのように収集され、保存され、かつ利用されているかおよびどのように他人と共有される可能性があるかについて、意味のある、かつ子どもにやさしい情報を得ることを国が確保するよう勧告する。これとの関連で、国は、デジタルメディアおよびICTを利用する子どものために、明確な情報および警告を付記した年齢にふさわしいプライバシー設定が利用可能とされることを確保するべきである。 適切な情報へのアクセス 104.国は、プライベートメディアを含むマスメディアに対し、子どもにとって社会的および文化的利益がある情報および資料(たとえば健康的なライフスタイルに関するもの)を普及するよう奨励するべきである。 暴力、搾取および子どもの虐待を含む危害からの保護 105.国は、条約およびその選択議定書で定められた子どもの権利の全面的享受を確保するホリスティックな戦略を通じて、デジタルメディアおよびICTが子どもの安全にもたらすリスク(オンライン上のいやがらせ、子どもの性的搾取、暴力的および性的コンテンツへのアクセス、性的目的での勧誘および自作の性的コンテンツを含む)に対応するべきである。国は、そうすることによって、デジタルメディアおよびICTが提供する機会の促進と危害からの子どもの保護との間で常にバランスを確保することが求められる。とくに、国は以下の措置をとるべきである。 (a) 子どもたち、かつての被害者、関連のNGOおよびICTその他の関連産業の関与を得る等の手段により、危害を防止することならびにデジタルメディアおよびICTがもたらすリスクに対処することを目的としたプログラムを発展させかつ強化すること。 (b) 子どもがリスク管理を行ない、かつどこの助けを求めればいいか知ることができるよう、子どもたちに対し、デジタルメディアおよびICTを利用する際の安全に関する年齢にふさわしい情報を提供すること。 (c) ICT産業との調整を図ることにより、当該産業が、暴力的資料および不適切な資料ならびにデジタルメディアおよびICTが子どもにもたらすその他のリスクから子どもを保護するための十分な措置を発展させかつ整備するようにすること。 (d) デジタルメディアおよびICTを利用する際のリスクの防止およびこれへの対応に関する子ども向けの意識啓発プログラムおよび教育プログラムを、子どもたちの関与を得ながら、子どもにやさしい広報資料の開発等も通じてさらに強化すること。 (e) 法執行要員、司法機関の構成員ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象として、その技術的スキルの増進を目的とした、十分かつ継続的な研修を実施すること。 (f) デジタルメディアおよびICTに関連する子どもの権利侵害を通報するための、アクセスしやすく、安全で、秘密が守られ、年齢にふさわしく、子どもにやさしく、かつ効果的な通報経路(子どもホットラインなど)を確保すること。 (g) 子どもを対象として、自作の性的コンテンツを関連の公的機関に報告するための安全な、子どもにやさしい、かつ秘密の守られる窓口を提供すること。 (h) 子どもを巻きこんだ有害な資料を削除するための迅速かつ効果的な手続を用意すること。 (i) 条約および選択議定書で対象とされているすべての犯罪について、被害者の特定ならびに責任者の摘発、捜査、訴追および処罰を強化すること。 (j) 事案の付託および被害を受けた子どもへの効果的支援を確保する保護制度における、あらゆる主体および部門間の調整を強化すること。 (k) 適用される法的枠組みの効果的執行を確保するための国際的・地域的調整および連携を促進しかつ推進すること。 効果的な救済措置および賠償ならびに被害者への援助 106.国は、適切な場合には国家賠償を通じ、被害を受けた子どものために効果的な救済措置(こうむった危害に対して迅速かつ適切な賠償を求めるための援助を含む)へのアクセスを確保するべきである。国はまた、デジタルメディアおよびICTに関連する人権侵害の被害を受けた子どもに対し、その子どもの全面的な回復および再統合を確保するための包括的サービスを含む十分な支援および援助を提供するとともに、被害を受けた子どもの再被害を防止することも求められる。 家庭環境 107.国は、親、他の養育者および法定保護者に対し、デジタルメディアおよびICTの責任ある安全な利用について、子どもをその発達しつつある能力を尊重しながら指導できるようにするための訓練、援助および支援のサービスを提供するべきである。訓練および支援は、技術的能力に関するものに限定されるべきではなく、一般的な子どもの養育責任の履行における支援も含めることが求められる。 障害のある子ども 108.委員会は、国が、民間セクター、国際協力および公共調達に関連する政策にアクセシビリティ要件を編入する等の手段により、障害のある子どもがデジタルメディアおよびICTにアクセスできることを確保するための法律および政策を策定し、実施しかつ監視するよう勧告する。この文脈において、国は、公的資金がデジタルメディアおよびICTの享受および利用を促進するためにもっぱら活用されることを確保するとともに、サービスおよび製品にアクセスできないことから生じる差別を生み出しまたは固定化しないようにするべきである。さらに国は、障害のある子どもたちと積極的に協議する等の手段により、インクルーシブなコミュニティおよび教育制度の創設を強化し、かつ否定的なステレオタイプの流布と闘うためのデジタルメディアおよびICTの利用を促進するよう求められる。委員会はまた、国が、障害のある人の権利に関する条約および「盲者、視覚障害者または印刷物を読むことに障害を有するその他の者による公刊物へのアクセスの便宜を図るためのマラケシュ条約」を批准することも勧告するものである。 教育 109.委員会は、国が、子どもの発達しつつある能力にしたがい、基礎教育カリキュラムの一環としてデジタルリテラシーの発達を促進するよう勧告する。訓練および教育は、技術的能力に関するものに限定されるべきではなく、倫理的原則および価値観に関する意識の喚起も含まれるべきであり、またオンラインでおたがいに交流および関係を持つ際に責任あるやり方で振舞い、かつリスクに対して適切かつ安全に対応するスキル(ソーシャルリテラシー)を子どもに教えるようなものであるべきである。加えて委員会は、国が、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育が学校の義務的カリキュラムの一環として位置づけられ、かつ思春期の女子および男子を対象として行なわれることを確保するよう勧告する。 CRC〔子どもの権利条約〕およびOP〔選択議定書〕に基づく定期的報告 110.委員会は、締約国が、条約およびその選択議定書に基づく定期報告書に、子どもの権利とデジタルメディアおよびICTに関する情報を体系的に記載するよう勧告する。 更新履歴:ページ作成(2015年5月17日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/337.html
国連・子どもの権利委員会・一般的意見26号:とくに気候変動に焦点を当てた子どもの権利と環境(2023年) 一般的意見一覧 関連資料一般的意見26号に関する国連・子どもの権利委員会の声明(日本語訳)(2023年8月29日付) 一般的意見26号チャイルドフレンドリー版(2023年9月18日;抄訳)第1次草案チャイルドフレンドリー版日本語訳 CRC/C/GC/26(委員会によって第93会期(2023年5月8日~26日)に採択されたもの) 配布:一般(2023年8月22日) 原文:英語 日本語訳:平野裕二(日本語訳PDF) このページには一般的意見26号の第1次草案の日本語訳を掲載していましたが、一般的意見26号が正式に発表されたことにともない、そちらの日本語訳と差し替えました。noteの記事からPDFを購入できるようにしていますので、関心のある方はご利用ください。(2023年9月1日) 目次(訳者が付したもの) I.はじめにA.環境に対する子どもの権利基盤アプローチ B.国際人権法の発展と環境 C.世代間衡平性と将来世代 D.目的 II.条約の具体的権利と環境との関係A.差別の禁止に対する権利(第2条) B.子どもの最善の利益(第3条) C.生命、生存および発達に対する権利(第6条) D.意見を聴かれる子どもの権利(第12条) E.表現、結社および平和的集会の自由(第13条・第15条) F.情報へのアクセス(第13条および第17条) G.あらゆる形態の暴力からの自由に対する権利(第19条) H.到達可能な最高水準の健康に対する権利(第24条) I.社会保障および十分な生活水準に対する権利(第26条および第27条) J.教育に対する権利(第28条および第29条(1)(e)) K.先住民族の子どもおよびマイノリティ集団に属する子どもの権利(第30条) L.休息、遊び、余暇およびレクリエーションに対する権利(第31条) III.清浄、健康的かつ持続可能な環境に対する権利 IV.一般的実施措置(第4条)A.子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する国の義務 B.子どもの権利影響評価 C.子どもの権利とビジネス部門 D.司法および救済措置へのアクセス(第4条) E.国際協力 V.気候変動A.緩和 B.適応 C.損失および損害 D.ビジネスと気候変動 E.気候資金 I.はじめに 1.気候緊急事態、生物多様性の崩壊および汚染の蔓延から構成される3重の惑星危機の広がりと規模は、世界中で、子どもの権利にとっての差し迫った全体的脅威となっている。持続不可能なやり方による天然資源の採取と利用は、汚染物質の排出および廃棄物を通じた広範な汚染とあいまって自然環境に甚大な影響を及ぼしており、そのために気候変動が加速し、水、待機および土壌の毒性汚染が激化し、海洋酸性化が生じ、かつ、生物多様性が、そしてすべての生命を支えかつ維持させる生態系そのものが荒廃しつつある。 2.これらの環境危機への注意を促そうとする子どもたちの努力こそ、この一般的意見を作成する動機およびはずみとなった。この一般的意見は、子どもの権利と環境に関して委員会が2016年に開催した一般的討議における子どもたちの貢献から、はかりしれないほどの利益を得た。11~17歳のアドバイザー12人から構成される多様かつ献身的な子どもアドバイザリーチームが、オンライン調査、フォーカスグループおよび対面の国内的・地域的協議を通じて実施された、121か国の子どもたち16,331人との協議のプロセスを支援してくれた。 3.協議に参加してくれた子どもたちからは、環境劣化と気候変動が自分たちの生活およびコミュニティに及ぼしている悪影響が報告された。子どもたちは、清浄、健康的かつ持続可能な環境で暮らす権利を次のように主張した。「環境は私たちの命です」「汚れた環境と汚染のせいで、幸せに暮らせない」「私たちの自由、生活の自由、健康を要求してください。私たちは、みなさん〔大人〕が小さかったころのようには〔生活を〕楽しめないんです」「大人は、自分たちが経験しない未来のことについて決めるのをやめる〔べきです〕。〔私たち〕こそが、気候変動を解決する鍵となる存在です。脅かされているのは〔私たちの〕生活なんですから」「あの人たち〔大人〕にこう言いたい。私たちは未来の世代で、あなたたちが地球を壊してしまったら、私たちはどこで暮らすんですか?!」[1] [1] https //childrightsenvironment.org/reports/ 参照。 4.人権擁護者である子どもたちは、変革の担い手として、人権と環境保護に歴史的貢献をしてきた。その地位が認識されるべきであり、世界的な環境危害に対処するために緊急のかつ断固たる措置をとるべきであるというその要求が実現されるべきである。 5.この一般的意見では気候変動に焦点を当てているものの、その適用範囲はいずれかの特定の環境問題に限定されるものではない。今後、たとえば技術的・経済的発展や社会の変化と結びついたものなど、新たな環境課題が生じる可能性もある。各国は、この一般的意見が、関連のすべてのステークホルダー(とくに子どもたち)に対して広く普及され、かつ、複数の言語および形式(年齢にふさわしくアクセシブルなバージョンを含む)で利用可能とされることを確保するべきである。 A.環境に対する子どもの権利基盤アプローチ 6.環境との関連で子どもの権利基盤アプローチを適用するためには、子どもの権利条約およびその選択議定書に基づくすべての子どもの権利を全面的に考慮することが必要である。 7.子どもの権利基盤アプローチにおいては、子どもの権利を実現するプロセスが結果と同じぐらい重要である。子どもたちは、権利の保有者として、環境危害から派生する自己の権利の侵害から保護される権利および環境のために行動する主体として認められかつ全面的に尊重される権利を有する。このようなアプローチをとる際にあたっては、不利な状況に置かれている子どもたちが自己の権利を享受・主張する際に直面する多数の障壁に、特段の注意が払われる。 8.清浄、健康的かつ持続可能な環境は、それ自体が人権であるとともに、広範な子どもの権利の全面的享受のために必要である。逆に、気候危機によってもたらされるものを含む環境劣化はこれらの権利の享受に悪影響を及ぼすのであり、不利な状況に置かれている子どもたちまたは気候変動にいちじるしくさらされる地域で暮らしている子どもたちにとってはなおさらである。子どもたちが、表現、平和的集会および結社の自由に対する権利、情報および教育に対する権利、参加しかつ意見を聴かれる権利ならびに効果的救済措置に対する権利を行使することは、権利がより遵守される、したがってより野心的で効果的な、環境政策へとつながりうる。このようにして、子どもの権利と環境保護は好循環を形成するのである。 B.国際人権法の発展と環境 9.条約は、第24条第2項(c)(「環境汚染の危険およびおそれを考慮しつつ」疾病および栄養不良と闘うための措置をとることを各国に義務づける規定)と第29条第1項(e)(「自然環境の尊重を発展させること」を目的として子どもの教育を行なうよう各国に求める規定)で、環境問題を明示的に取り上げている。条約が採択されて以降、子どもの権利と環境保護との間には広範な相互関係があることがますます受け入れられるようになってきた。前例のない環境危機と、その結果として生じている子どもの権利の実現にとっての課題は、条約の動的な解釈を要求するものである。 10.委員会は、その解釈に関連する努力として、(a)総会および人権理事会による、清浄、健康的かつ持続可能な環境に対する人権の承認、(b)人権と環境に関する枠組み原則、(c)国際環境法に基づいてすでに定められかつ発展しつつある規範、原則、基準および義務(国連・気候変動枠組み条約およびパリ協定など)、(d)人権と環境の関係を承認する地域レベルでの法的発展および先例、ならびに、(e)国際的協定、地域裁判所・国内裁判所の先例、国内憲法ならびに大多数の国による法律および政策における、清浄、健康的かつ持続可能な環境に対する一定の形態の権利の承認などに留意する。 [2] 総会決議76/300。 [3] 人権理事会決議48/13。 [4] A/HRC/37/59付属文書。 [5] A/HRC/43/53参照。 C.世代間衡平性と将来世代 11.委員会は、協議の対象とされた子どもたちが圧倒的に言及した、世代間衡平の原則および将来世代の利益を認識する。すでに地球に存在している子どもたちの権利については即時的かつ緊急の注意が必要とされる一方、途切れることなくやってくる子どもたちにも、自己の人権を最大限に実現される権利がある。各国は、条約に基づいて負う環境関連の即時的義務に留まらず、国による現在の作為または不作為の結果として生ずる予見可能な環境関連の脅威(そのような脅威の意味するところが完全に明らかになるのには数年、または数十年の期間さえ要する場合もある)についても責任を負う。 D.目的 12.この一般的意見における委員会の狙いは次のとおりである。 (a)気泡変動にとくに焦点を当てながら、環境劣化が子どもの権利の享受に及ぼす悪影響に対処する緊急の必要性を強調すること。 (b)環境保護への適用に関わる子どもの権利のホリスティックな理解を促進すること。 (c)条約締約国の義務を明らかにするとともに、気候変動にとくに焦点を当てながら環境問題との関連でとられるべき立法上、行政上その他の適切な措置についての有権的指針を提示すること。 II.条約の具体的権利と環境との関係 13.子どもの権利は、すべての人権と同様に、不可分であり、相互依存性および相互関連性を有している。環境劣化によってとりわけ脅かされやすい権利もあり、環境との関連で子どもの権利を保全するうえで有用な役割を果たす権利もある。たとえば教育に対する権利は、両方の側面を有する権利である。 A.差別の禁止に対する権利(第2条) 14.国は、直接・間接双方の環境差別を防止し、これらの差別から保護し、かつこれらの差別について救済を提供する義務を負う。子どもたちは全体として、また一部の集団の子どもたちはとりわけ、複数のおよび交差的な形態の差別を理由として、自己の権利の享受に関していっそうの障壁に直面している。これらの自由には、条約第2条でとくに禁止されているものおよび同条で言及されている「その他の地位」が含まれる。環境危害の影響は、一部の集団の子どもたち、とくに先住民族の子どもたち、マイノリティ集団に属する子どもたち、障害のある子どもたちおよび災害が生じやすい環境または気候に対して脆弱な環境で暮らしている子どもたちに対し、差別的な効果を及ぼす。 15.国は、もっともリスクにさらされている集団の子どもたちとくに注意を払いながら、環境関連の危害が子どもに及ぼす差異化された影響を明らかにするために細分化されたデータを収集するとともに、必要に応じて特別な措置および政策を実施するべきである。国は、環境問題を扱うすべての法律、政策およびプログラムが、その内容または実施において子どもたちを故意にまたは意図せずに差別することがないようにしなければならない。 B.子どもの最善の利益(第3条) 16.環境に関する決定は一般的に子どもに関わるものであり、子どもたちに影響を与える環境関連の決定の採択および実施に際しては、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されなければならない。これには、法令、政策、基準、ガイドライン、計画、戦略、予算、国際的協定および開発援助の提供が含まれる。環境に関するある決定が子どもたちに相当の影響を及ぼす可能性があるときは、子どもの最善の利益の評価および認定を行なうための、より詳細で、子どもたちの効果的かつ意味のある参加の機会を提供する手続を実施することが適切である。 17.子どもの最善の利益の認定には、環境関連の文脈において子どもが特有の脆弱性を有することにつながる具体的事情の評価が含まれるべきである。子どもの最善の利益を評価する目的は、清浄、健康的かつ持続可能な環境に関連するすべての権利の全面的かつ効果的な享受を確保することでなければならない。国は、環境危害から子どもを保護するのみならず、将来のリスクおよび危害の可能性を考慮しながら、子どものウェルビーイングおよび発達も確保するべきである [6]。 [6] 自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)、パラ16(e)、71および74。 18.あらゆる実施措置をとるにあたって、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保する手続にもしたがうことが求められる。子どもの権利影響評価が、子どもに関わって提案されるすべての政策、法令、予算その他の行政決定などのあらゆる実施措置を評価するために活用されるべきであり、かつ、諸措置が子どもの権利に及ぼす影響の継続的モニタリングおよび評価を補完するものとして位置づけられるべきである。 19.子どもの最善の利益と他の利益または権利との相反の可能性は、当事者全員の利益を注意深く比較衡量しながら、事案ごとに解決されるべきである。意思決定を行なう者は、子どもの最善の利益の優位性を適切に重視しながら、関係者全員の権利および利益を分析・衡量するよう求められる。国は、個々にはかつより短期的には合理的と思われる環境決定が、累積的には、かつ子どもたちに対してそのライフコース全体を通じて引き起こすであろう危害を十全に考慮した場合には、非合理的なものになりうる可能性を考慮するべきである。 C.生命、生存および発達に対する権利(第6条) 20.生命に対する権利は、気候変動、汚染および生物多様性の劣化を含む環境劣化によって脅かされている。これらの影響は、この権利の実現を阻害する他の根本的課題(貧困、不平等および紛争を含む)と緊密に関連している。国は、作為および不作為ならびにビジネス関係者の活動によって引き起こされる可能性のある予見可能な早すぎる死もしくは不自然な死および生命に対する脅威から子どもたちが保護されることを確保するため、積極的措置をとるべきである[7]。このような措置には、環境基準(たとえば、大気および水の質、食品の安全性、鉛への曝露ならびに温室効果ガス排出に関連するもの)および生命に対する子どもの権利の保護につながる他のすべての十分かつ必要な環境措置の採択および実施が含まれる。 [7] 自由権規約委員会、生命に対する権利についての一般的意見6号(2018年)、パラ62。 21.条約第6条に基づく国の義務は、生命に対する権利への直接の脅威につながるおそれがある環境条件から生ずる構造的および長期的課題にも適用されるのであり、これらの条件に対処するための適切な措置(たとえば、基礎的ニーズを満たすために必要な資源の持続可能な利用、健全な生態系および生物多様性の保護)をとることを要求する。環境条件によって生じる子どもの死亡を防止・削減するために、また脆弱な状況に置かれている子どもたちを対象として、特別な保護措置が必要である。 22.環境劣化は、子どもたちが、武力紛争の際、避難、食料不足および暴力の高まりを理由とする重大な権利侵害に直面するリスクを高める。武力紛争との関係で、国は、国際的コミットメントにのっとり、生物・化学・核兵器の開発または保有を禁止するとともに、これらの兵器の不発弾および残留物によって汚染された地域の浄化を確保するべきである。 23.環境劣化は、自己の発達上の可能性を全面的に発揮する子どもの能力を危うくし、条約に基づく他のさまざまな権利にも影響を及ぼす。子どもの発達は子どもが暮らす環境とからみあったものである。健康的な環境の発達面での利益には、屋外活動を経験する機会や、動物の世界を含む自然環境と交流しかつこのような自然環境のなかで遊ぶ機会と関連するものが含まれる。 24.低年齢の子どもは、特有の活動パターン、行動および生理機能のため、環境上の危険の影響をとりわけ受けやすい。脆弱性が高い発達期に有害汚染物質に暴露させられると、たとえ低水準の曝露であっても、脳、臓器および免疫系の成熟プロセスが容易に阻害されて、時として相当の潜伏期間を経た後に、子ども時代におよびその後に疾患や機能障害が引き起こされる可能性がある。環境汚染物質の影響が将来世代まで残る可能性さえある。国は、乳幼児期における有害物質および汚染への曝露の影響を一貫してかつ明示的に考慮するべきである。 25.国は、子ども時代の各段階、次の成熟・発達段階にとっての各段階の重要性および各段階における子どもの多様なニーズを認識するべきである。国は、発達に対する権利にとって最適な環境をつくり出す目的で、すべての年齢の子どもが可能なかぎり最大限に生存し、成長しかつ発達するために必要なすべての要素を明示的にかつ一貫して考慮するとともに、ライスコース中に存在するさまざまな環境上の決定要因に対処する、エビデンスに基づく介入策を立案・実施するよう求められる。 D.意見を聴かれる子どもの権利(第12条) 26.子どもたちは、自分たちの生活にとって高い重要性を有する問題として、環境問題を位置づけている。子どもたちの声は環境保護を求める強力な世界的勢力となっており、子どもたちの意見は、あらゆるレベルで、環境問題に関する意思決定に関わって関連性の高い視点と経験を付加している。子どもたちは、低年齢のころからでさえ、たとえば環境上の危険に関する早期警報システムの有効性といった論点について貴重な知見を提供することなどにより、環境問題の解決策の質を高めることができる。子どもたちの生活を根本的に形づくる重要かつ長期的な環境課題に対処するための措置の立案および実施において、子どもたちの意見が積極的に求められ、かつ正当に重視されるべきである。子どもたちは、参加および意見表明のために、アートや音楽のような創造的な表現手段を活用することもできる。不利な状況に置かれている子どもたち(障害のある子どもたち、マイノリティ集団に属する子どもたちおよび被害を受けやすい地域で暮らしている子どもなど)が意見を聴かれる権利を行使できるようにそのエンパワーメントを図るため、追加的な支援および特別な方策が必要になる場合もある。デジタル環境およびデジタルツールは、デジタルインクルージョンに関わる課題に正当な注意を払いながら慎重に活用すれば、子どもたちとの協議を増進させうるとともに、集団的アドボカシーなども通じて環境問題に効果的に関与していく子どもたちの能力および機会を拡大しうる [8]。 [8] デジタル環境との関連における子どもの権利についての一般的意見25号(2021年)、パラ16および18。 27.国は、子どもたちの意見が常態的に、かつ、地方・国・国際社会の各レベルで行なわれる、子どもたちに影響を及ぼす可能性がある立法、政策、規則、プロジェクトおよび活動に関する環境関連の意思決定プロセスのあらゆる段階で聴かれるようにするための、年齢にふさわしく、安全かつアクセシブルなしくみが設けられることを確保するべきである。自由な、積極的な、意味のあるかつ効果的な参加のため、子どもたちに対し、環境・人権教育、年齢にふさわしくアクセシブルな情報、十分な時間および資源ならびに支援的で力の発揮を可能にするような環境を提供することが求められる。子どもたちは、環境関連の協議の結果に関する情報および子どもたちの意見がどのように考慮されたかについてのフィードバックを提供されるべきであり、また環境との関連で意見を聴かれる権利がないがしろされた場合には子どもに配慮した苦情申立て手続および救済措置にアクセスできるべきである。 28.国際的レベルでは、各国、政府間機関および国際非政府組織が、環境に関連する意思決定プロセスへの子ども団体および子ども主導の組織またはグループの関与を促進するよう求められる。各国は、意見を聴かれる子どもの権利についての自国の義務が環境に関する国際的な意思決定プロセス(交渉および国際環境法文書の実施におけるものを含む)に編入されることを確保するべきである。環境関連の意思決定への若者参加を増進させるための努力は、子どもたちを包摂するものであることが求められる。 E.表現、結社および平和的集会の自由(第13条・第15条) 29.世界中の子どもたちが、気候変動の帰結を強調するなどの手段により、環境を守るために個別におよび集団的に行動を起こしている。国は、表現、結社および平和的集会の自由に対する子どもたちの権利を、環境との関連で尊重しかつ保護しなければならない。そのための手段には、子どもたちがこれらの権利を効果的に行使できる、安全で力の発揮を可能にする環境および法的・制度的枠組みを提供することも含まれる。表現、結社および平和的集会に対する子どもの権利は、法律にしたがって課され、かつ民主的社会において必要とされるもの以外の制限の対象とされてはならない。 30.環境問題に関して表現の自由に対する権利を行使する子どもたちまたは抗議に参加する子どもたち(環境人権擁護者である子どもたちを含む)は、脅迫、威嚇、ハラスメントまたは他の深刻な報復に直面することが多い。国は、人権擁護を目的として子どもたちが学校その他の場面で組織する取り組みのための安全でエンパワーメントにつながる環境を提供することなどにより、これらの子どもの権利を保護するよう要求される。国、警察など国の関係機関および教員を含むその他のステークホルダーを対象として、子どもたちの市民的・政治的権利に関する研修(子どもたちがこれらの権利を安全に享受できるようにするための措置に関するものを含む)が実施されるべきである。国は、結社の結成および結社への加入ならびに環境抗議への参加に関して、法律で定められかつ必要であるもの以外のいかなる制限も課されないことを確保するため、あらゆる適切な措置をとらなければならない。名誉毀損に関連するものを含む法律は、子どもの権利を抑圧する目的で第三者によって濫用されるべきではない。国は、人権擁護者である子どもを国際人権基準にしたがって保護するための法律を採択しかつ実施するべきである。国は、表現、平和的集会および結社の自由に対する権利の侵害に対して効果的救済措置を提供するよう求められる。 31.国は、市民的・政治的関与の重要な手段のひとつとして、環境の持続可能性および気候正義に対する子どもたちの積極的な貢献を推進し、認識しかつ支援するべきである。子どもたちは、このような関与を通じて、健康的な環境に対する権利を含む自己の権利の実現のための交渉および唱道を行ない、かつ国の責任を問うことができる。 F.情報へのアクセス(第13条および第17条) 32.情報にアクセスできることは、環境危害が子どもの権利に及ぼす可能性のある影響を子どもとその親または養育者が把握できるようにするために、不可欠である。それはまた、環境問題に関して自己の意見を表明し、意見を聴かれ、かつ効果的救済措置にアクセスする子どもの権利を実現するための、きわめて重要な前提でもある。 33.子どもたちは、正確で信頼できる環境情報にアクセスする権利を有する。このような情報には、気候・環境危害の原因、影響ならびに実際のおよび現実の危害源、適応対策、関連の気候・環境法令、気候・環境影響評価の知見、政策および計画、ならびに、持続可能なライフスタイルに関するものが含まれる。このような情報は、廃棄物管理、リサイクルおよび消費行動に関連して身のまわりの環境でできることを学ぶための、子どもたちのエンパワーメントにつながる。 34.国は、環境情報を利用可能とする義務を負う。普及の手法は、子どもの年齢および能力にとって適切であり、かつ非識字、障害、言語の障壁、距離および情報通信技術へのアクセスの制約といった障害の克服を目指すものであるべきである。国は、マスメディアに対し、環境に関わる正確な情報および資料(たとえば、気候変動関連災害に関わるリスク管理のために子どもやその家族がとりうる方策など)の普及を奨励するよう求められる。 G.あらゆる形態の暴力からの自由に対する権利(第19条) 35.気候危機を含む環境劣化は、子どもたちに対する構造的暴力の一形態であり、コミュニティおよび家族における社会的崩壊を引き起こしうる。貧困、経済的・社会的不平等、食料不足および強制された避難は、子どもたちが暴力、虐待および搾取を経験するリスクを高める。たとえば、より貧困な世帯は、気候変動によって引き起こされまたは悪化させられるものを含む環境関連の衝撃(海面上昇、洪水、サイクロン、大気汚染、極端気象現象、砂漠化、森林崩壊、干ばつ、火事、暴風雨および生物多様性の喪失など)への耐性がいっそう低い。このような衝撃によってもたらされる金銭的困難、食料および清潔な水の不足ならびに子ども保護制度の弱体化により、家族の日課が阻害し、子どもの負担が増し、かつ、ジェンダーに基づく暴力、児童婚、女性性器切除、児童労働、誘拐、人身取引、避難、性的暴力・搾取ならびに犯罪集団・武装集団・暴力的過激主義集団への勧誘への子どもの脆弱性が高まる。子どもたちは、あらゆる形態の身体的・心理的暴力から、かつドメスティックバイオレンスまたは動物への暴力のような暴力にさらされることから、保護されなければならない。 36.子どもサービスへの投資は、世界中で子どもたちが直面している全般的な環境リスクを相当に低減させうる。国は、環境劣化と関連した子どもに対する暴力の助長要因に対処するため、部門横断的な措置をとるべきである。 H.到達可能な最高水準の健康に対する権利(第24条) 37.健康に対する権利には、到達可能な最高水準の健康の実現のために必要とされるさまざまな便益、財、サービスおよび条件(健康的な環境を含む)の享受が含まれる。この権利は、条約に基づく他の多くの権利の享受に依存していると同時に、これらの権利を享受するために欠かせないものである。 38.条約第24条(2)(c)で明示的に認められているとおり、環境汚染は子どもの健康に対する主要な脅威のひとつである。しかし、多くの国では汚染がしばしば見過ごされており、その影響が過小評価されている。飲料水の欠如、不十分な衛生設備および世帯内空気汚染は、子どもの健康を深刻に脅かすものである。過去・現在の産業活動に関連する汚染(有害毒性物質および有害廃棄物への曝露を含む)は、健康にとってより複雑な脅威となるものであり、曝露から長期間を経ても影響が残ることが多い。 39.気候変動、生物多様性の喪失および生態系の劣化は、健康に対する子どもの権利の実現を妨げる障壁である。これらの環境要因は相互に作用し、すでに存在する健康格差を悪化させることが多い。たとえば、気候変動が引き起こす気温上昇は、節足動物媒介性疾患および動物由来感染症のリスクや、脳・肺の発達を妨げて呼吸器系の病態を悪化させる大気汚染物質の濃縮リスクを高める。気候変動、汚染および有害物質はいずれも、生物多様性の憂慮すべき喪失や、人間の健康の土台となる生態系の劣化の主要な助長要因である。具体的な影響としては、子どもの免疫系の発達にとってきわめて重要な微生物多様性の減少や、長期的影響を及ぼす自己免疫系疾患の有病率の上昇などがある。 40.大気汚染、水質汚染、毒性有害物質(化学肥料を含む)への曝露、土壌劣化その他のタイプの環境危害は、子どもの死亡率、5歳未満児の死亡率を高めるとともに、疾病の万円、脳の発達不全およびその後の認知障害を助長する。水不足、食料不足、節足動物媒介性疾患および水系感染症、大気汚染の激化、ならびに、突発的現象と緩やかに進行する現象の双方に関連して生ずる身体的・心理的外傷といった気候変動の影響を不均衡にこうむっているのは、子どもたちである [9]。 [9] たとえばIntergovernmental Panel on Climate Change, Sixth Assessment Report, Summary for Policymakers, figure SPM.1 参照。このデータは、気候変動が2020年に生まれた人々に及ぼす不均衡な累積的・長期的影響を明らかにしている。 41.もうひとつの懸念は、子どもたちが現に抱えておりかつ今後抱えることが予想される、環境危害(気候変動関連現象を含む)を原因とする心理社会的・精神的健康問題である。環境危害と子どもたちの精神的健康との間にある、明確かつ新たに明らかになりつつある関係(抑うつや環境不安症など)に対し、公衆衛生当局および教育当局が、対応面でも予防プログラムの面でも緊急の注意を向けることが必要とされる。 42.国は、環境および環境の双方に関わる自国の国家的計画、政策または戦略に、子どもに関連する環境保健上の懸念に対処するための措置を統合するべきである。立法上・規制上・制度上の枠組み(ビジネス部門に対応する規制を含む)は、子どもたちが生活し、学び、遊びかつ働く場所で子どもたちの環境保健を効果的に保護するようなものであることが求められる。環境保健基準は、利用可能な最良の科学およびあらゆる関連の国際的ガイドライン(世界保健機関が定めるものなど)合致したものであるべきであり、かつ厳格に執行されるべきである。条約第24条に基づく国の義務は、子どもの健康にとっての越境的・世界的脅威に対処するための環境協定を策定しかつ実施する際にも、適用される。 43.健康に対する権利には、環境危害の影響を受けている子どもが公衆衛生・保健ケアのための質の高い便益、財およびサービスにアクセスできることも含まれるのであり、かつ、サービスが行き届いていない層およびサービスを届けにくい層に対して、また質の高い出生前妊婦ケアを全国で提供することに対して、特段の注意が向けられるべきである。便益、プログラムおよびサービスには、環境保健に関わる危険に対応する体制が備わっていることが求められる。健康の保護は、子どもたちが健康的な生活を送るために必要な諸条件(安全な気候、安全かつ清浄な飲料水および衛生設備、持続可能なエネルギー、十分な住居、十分な栄養価のある安全な食料ならびに健康的な労働条件など)にも適用される。 44.質の高いデータが利用できることは、気候・環境保健上のリスクからの十分な保護のために、決定的重要性を有する。国は、子どものライフコース全体ならびに子どもが各ライフステージで直面する脆弱性および不平等を考慮しながら、環境危害がもたらす地方的・全国的・越境的な健康面への影響(死亡および疾病の原因を含む)の評価を実施するべきである。優先すべき懸念、気候変動の影響および新たに生じる環境保健上の問題を明らかにすることが求められる。通常の保健情報システムを通じて収集されるデータに加え、たとえば発達の臨界期におけるリスクを捕捉する縦断的コーホート研究および妊婦・乳児・児童研究のための調査が必要である。 I.社会保障および十分な生活水準に対する権利(第26条および第27条) 45.子どもは、その身体的、精神的、霊的、道徳的および社会的発達のために十分な生活水準に対する権利を有する。清浄、健康的かつ持続可能な環境は、この権利(十分な住居、食料安全保障ならびに安全かつ清浄な飲料水および衛生設備に対する権利を含む)を実現するための前提である [10]。 [10] 社会権規約委員会、水に対する権利についての一般的意見15号(2002年)、パラ3、および、子どもの権利委員会、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見 15号(2013年)、パラ48。 46.委員会は、十分な住居、食料、水および衛生設備に対する権利が、材料消費、資源およびエネルギーの利用ならびに空間および自然の占用との関連も含め、持続可能な形で実現されるべきであることを強調する。 47.環境危害への曝露には直接的原因と構造的原因の両方が存在し、このような曝露によって子どもの多元的貧困の影響が悪化する。環境との関連でとくに関連してくるのは、条約第26条で保障されている社会保障である。国は、社会保障政策および社会的保護の土台に、気候・環境関連の衝撃および緩やかに進行する危害(気候変動によるものを含む)からの保護を子どもたちおよびその家族に提供するような機能を導入するよう促される。国は、環境リスクに対してもっとも脆弱な地域で、子ども中心の貧困緩和プログラムを強化するべきである。 48.避難民である子どもを含む子どもは、国際人権基準に合致した十分な住居にアクセスできるべきである。住居は持続可能性と耐性を備えたものであるべきであり、汚染地区または高い環境劣化リスクに直面している地域に建設されるべきではない。住宅は、調理、暖房、照明および適切な換気のための安全かつ持続可能なエネルギー源を備え、かつカビ、毒性有害物質および煙から自由であることが求められる。廃棄物やゴミの効果的管理、交通、過度な騒音および過密からの保護、ならびに、安全な飲料水および衛生・個人衛生設備へのアクセスが備わっているべきである。 49.子どもは、事前に十分な代替的住居を提供されることなく強制立退き(エネルギー対策や気候緩和・適応対策に関連する移転を含む)の対象とされるべきではない。子どもの権利影響評価がそのようなプロジェクトの前提とされるべきである。先住民族の子どもの伝統的土地を保全すること、および、これらの子どもの権利(十分な生活水準に対する権利を含む)を享受するための自然環境の質を保護することに対し、特段の注意を払うことが求められる [11]。 [11] 先住民族の子どもとその条約上の権利についての一般的意見11号(2009年)、パラ34および35。 50.委員会は、気候・環境関連の現象に関連する国境を越えた避難および移住の状況における国際協力の重要性、および、自国の管轄内にあるすべての子どもに対して差別なく条約上の権利を確保するためにすべての適切な立法上、行政上その他の措置をとる各国の義務を強調する。 J.教育に対する権利(第28条および第29条(1)(e)) 51.教育は、環境に対する子どもの権利基盤アプローチの土台となるもののひとつである。子どもたちは、子どもの権利および環境を保護するうえで、また環境損害に関する意識および備えを強化するうえで教育が有用であることを強調してきた。しかし、教育に対する権利は環境危害の影響を非常に受けやすい。そのような危害は、学校の閉鎖・中断、学校からの脱落、学校や遊び場の破壊をもたらしうるためである。 52.子どもの教育が自然環境の尊重を発展させることを目的として行なわれるよう求める条約第29条(1)(e)の規定は、環境に関する価値観を反映した教育を受ける権利をすべての子どもが有することを確保するため、条約第28条とあわせて解釈されるべきである [12]。 [12] 教育の目的(第29条1項)についての一般的意見1号(2001年)、パラ13。 53.権利を基盤とする環境教育は、変革につながる、インクルーシブな、子どもを中心とした、子どもにやさしくかつエンパワーメントにつながるようなものであるべきである。そこでは、子どもの人格、才能および能力の発達を追求し、自然環境の尊重と条約第29条(1)に掲げられた倫理的価値との緊密な相互関連性を認知し、かつ、地域志向およびグローバル志向の両方を備えることが求められる [13]。学校カリキュラムは、子どもたちが置かれている特有の環境的・社会的・経済的・文化的背景にあわせて調整され、かつ、環境劣化の影響を受けている他の子どもたちの背景に関する理解を促進するようなものであるべきである。教材は、科学的に正確で、最新の、かつ発達段階および年齢にふさわしい環境情報を提供するようなものであることが求められる。すべての子どもが、人生のなかで生じることが予想される環境課題(災害リスクおよび環境関連の健康上の影響など)に向き合うために必要なスキルを身につけられるようにするべきである。このようなスキルには、そのような課題について批判的に熟考する能力、問題解決能力、バランスのとれた決定を行なう能力、および、持続可能なライフスタイルおよび消費などを通じ、発達しつつある能力にしたがって環境上の責任を担っていく能力が含まれる。 [13] 前掲、パラ2、12および13。 54.教育に従事するすべての専門家の教育および研修に、教授法、テクノロジーおよび教育において使用される諸アプローチ、学校環境ならびに子どもがグリーンジョブに向けた準備をできるようにすることを包含する形で、環境に関する価値観を反映させることが求められる。環境教育は、正規の学校教育に留まらず、幅広い範囲の生きた経験および学習を包含するものである。屋外学習のような、探求型の形式ばらない実践的手法は、このような教育目的を実現する望ましい方法のひとつとなる。 55.国は、効果的な学習のための、物理的に安全かつ健康的な、耐性のあるインフラを構築するべきである。これには、徒歩・自転車による通学路および学校への公共交通機関が利用できるようにすること、学校および代替的学習施設の設置場所と汚染、洪水、土砂崩れその他の環境上の危険の発生源(汚染地域を含む)との間に安全距離が確保されるようにすること、ならびに、十分な冷暖房、十分な量の安全かつ受け入れ可能な飲料水 [14] および衛生設備を備えた校舎および教室を建設することが含まれる。再生可能エネルギーによる照明・暖房および食用植物園を備えたもののような環境にやさしい学校設備は、子どもたちにとって利益となり、かつ国による環境関連の義務の遵守の確保につながりうる。 [14] 社会権規約委員会、一般的意見15号(2002年)、パラ12(c)(i)および16(b)。 56.水不足、砂嵐、熱波その他の荒天現象の最中およびその後に、国は、とくに遠隔地または村落部の子どもを対象として学校への物理的アクセスを確保し、または移動式教育施設や遠隔学習のような代替的教育手法を検討するべきである。サービスが十分に行き届いていないコミュニティを、学校の気候変動耐性強化および改修の優先的対象とすることが求められる。国は、学校がシェルターとして利用されないようにするため、避難民のための代替的住居を可能なかぎり早期に確保するべきである。すでに武力紛争の影響を受けている地域で荒天現象により引き起こされた緊急事態に対処する際には、国は、学校が武装集団の活動の標的とならないことを確保するよう求められる。 57.国は、環境劣化が子どもたちの教育に及ぼす不均衡な間接的効果およびドミノ効果を認識し、これに対処するべきである。その際、環境関連の衝撃およびストレスに直面している世帯で、追加的な家事負担・経済的負担のために子どもが学校を離れることのような、ジェンダー固有の状況に特別な注意を払うことが求められる。 K.先住民族の子どもおよびマイノリティ集団に属する子どもの権利(第30条) 58.先住民族の子どもたちは、生物多様性の喪失、汚染および気候変動の影響を不均衡に受けている。国は、生命、生存および発達に対する先住民族の子どもの権利を確保しつつ、森林崩壊などの環境危害が伝統的な土地および文化ならびに自然環境の質に及ぼす影響を綿密に考慮するべきである。国は、緩和・適応措置において先住民族文化および伝統的知識の諸概念を正当に考慮しかつ統合しながら、環境危害(気候変動によって引き起こされる危害を含む)への対応に、先住民族の子どもたちおよびその家族の関与を意味のある形で得るための措置をとらなければならない。先住民族コミュニティの子どもたちは、特有のリスクに直面している一方、地元の危険の影響を低減させかつ耐性を強化するための伝統的知識が受け継がれかつ支えられるのであれば、これらの知識の適用に関して教育者および唱道者として行動することもできる。その権利、生活様式および文化的アイデンティティが自然と密接に関連している非先住民族マイノリティ集団に属する子どもたちの権利に関しても、同等の措置がとられるべきである。 L.休息、遊び、余暇およびレクリエーションに対する権利(第31条) 59.遊びとレクリエーションは子どもの健康およびウェルビーイングにとって不可欠であり、創造性、想像力、自信、自己効力感ならびに身体的・社会的・認知的・情緒的な強みおよびスキルの発達の促進につながる。遊びとレクリエーションは学習のあらゆる側面に貢献し、子どものホリスティックな発達にとってきわめて重要であり [15]、かつ、自然界および生物多様性を探求・経験する重要な機会を子どもたちに提供して、子どもの精神的健康およびウェルビーイングのために役立ち、かつ理解力、評価能力および自然環境への配慮に貢献するものである。 [15] 休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利についての一般的意見17号(2017年)、パラ9および14(c)。 60.逆に、安全性を欠いた危険な環境は条約第31条(1)に基づく権利の実現を阻害するものであり、子どもの健康、発達および安全にとってのリスク要因である。子どもたちは、自宅に近くて環境上の危険がない、インクルーシブな遊びの空間を必要としている。気候変動の影響によってこのような課題が悪化する一方、世帯所得にかかる気候変動関連のストレスにより、休息、余暇、レクリエーションおよび遊びのために子どもたちが使える時間が減り、かつこれらの活動に従事する子どもたちの能力が減衰してしまう可能性がある。 61.国は、すべての子どもが、安全、清浄かつ健康的な環境(自然空間、公園および遊び場を含む)で差別なく遊び、かつレクリエーション活動に携われることができるようにするため、効果的な立法上、行政上その他の措置をとらなければならない。村落部・都市部の双方における公共計画においては、子どもたちの意見が正当に重視されるべきであり、また子どもたちのウェルビーイングを促進する環境づくりが優先的に取り組まれるべきである。次のことを検討するよう求められる――(a)遊びやレクリエーションのための緑化区域、広い開放空間および自然に、安全、負担可能かつアクセシブルな移動手段によってアクセスできるようにすること、(b)汚染、危険な化学物質および廃棄物がない、自由な遊びのための安全な地域環境をつくること、ならびに、(c)世帯、学校および遊び場の近くにおける汚染水準を低減させるための道路交通措置(遊ぶ子ども、歩行者である子どもおよび自転車に乗る子どもが優先される区域の設計によるものを含む)をとること。 62.国は、第三者が条約第31条を遵守することを確保するための法令およびガイドラインを、必要な予算配分および効果的な監視・執行のしくみとあわせて導入するべきである。第三者による遵守を確保するための手段には、すべての玩具ならびに都市部・村落部の開発プロジェクトにおける遊びおよびレクリエーションのための施設について、安全基準(とくに毒性有害物質に関するもの)を定めることが含まれる。気候変動関連災害の状況においては、安全な空間の創設または復旧ならびにレジリエンスおよび心理的癒しを促進するための遊びおよび創造的表現の奨励などの手段を通じ、これらの権利を回復・保護するための積極的措置がとられるべきである。 III.清浄、健康的かつ持続可能な環境に対する権利 63.子どもたちは、清浄、健康的かつ持続可能な環境に対する権利を有する。この権利は、とくに生命、生存および発達に対する権利(第6条)、到達可能な最高水準の健康(環境汚染の危険およびおそれを考慮されることを含む)に対する権利(第24条)、十分な生活水準に対する権利(第27条)ならびに教育(自然環境の尊重を発展させることを含む)に対する権利(第29条)に黙示的に含まれており、かつこれらの権利と直接結びついているものである。 64.この権利の実体的要素は、そこに清浄な大気、安全かつ安定した気候、健全な生態系および生物多様性、安全かつ十分な量の水、健康的で持続可能な食料ならびに有害ではない環境が含まれることに鑑み、子どもたちにとっていちじるしい重要性を有している [16]。 [16] A/74/161、A/75/161、A/76/179、A/HRC/40/55、A/HRC/46/28およびA/HRC/49/53参照。 65.子どもたちのためにこの権利を実現することに向けて、委員会は、各国が次の行動を直ちにとるべきであると考える。 (a)子ども、とくに5歳未満児の死亡を防止するため、屋内外の空気汚染を低減させることによって空気の質を改善すること。 (b)水系感染症が子どもの間で広がることを予防するため、安全かつ十分な量の水および衛生設備ならびに健全な水界生態系へのアクセスを確保すること。 (c)栄養不良を防止し、かつ子どもたちの発育および発達を促進する目的で健康的かつ持続可能な食料生産を図るため、工業型農漁業を変革すること。 (d)気候危機に対処するため、石炭、石油および天然ガスの使用を段階的に廃止し、公正かつ正当なエネルギー源の移行を確保し、かつ再生可能エネルギー、エネルギー貯蔵およびエネルギー効率に投資すること。 (e)生物多様性を保全し、保護しかつ回復させること。 (f)子どもたちの健康および海洋生態系にとって有害な物質を海洋環境に直接的または間接的に投下することを禁止することにより、海洋汚染を防止すること [17]。 (g)子どもたちに健康面で不均衡な悪影響を及ぼす毒性有害物質(とくに発達神経毒性を有する物質)の製造、販売、使用および排出を綿密に規制し、かつ適宜撤廃すること [18]。 [17] 北東大西洋の海洋環境の保護に関する条約、第2.2条(a)。 [18] A/HRC/49/53参照。 66.情報へのアクセス、意思決定への参加および子どもにやさしい司法へのアクセス(効果的な救済措置をともなうもの)を含む手続的要素は、教育なども通じた、自分自身の運命の担い手となるための子どもたちのエンパワーメントにとって、同様に重要である。 67.国は、説明責任を強化するため、清浄、健康的かつ持続可能な環境に対する子どもの権利を国内法に編入し、かつその実施のために十分な措置をとるべきである。この権利を、子どもたちに関わるすべての決定および措置(教育、余暇、遊び、緑地へのアクセス、子どもの保護、子どもの健康および移住に関する政策ならびに条約の実施のための国家的枠組みを含む)全体で主流化することが求められる。 IV.一般的実施措置(第4条) A.子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する国の義務 68.国は、子どもの権利の尊重、保護および充足のために、清浄、健康的かつ持続可能な環境を確保するべきである。子どもの権利を尊重する義務に基づき、国は、環境危害を引き起こすことによって子どもの権利を侵害しないよう要求される。国は、企業の規制などの手段により、他の危害源からのおよび第三者による環境被害から子どもたちを保護しなければならない。締約国はまた、子どもたちの権利に対する環境上の危険の影響を、たとえそのような脅威が不可抗力によるものであっても、たとえば包摂的な早期警報システムを設置することにより、防止・緩和する義務を負う。国は、クリーンエネルギーに移行することならびに水資源の持続可能な利用を確保するための戦略およびプログラムを採択することなどの手段により、子どもたちが清浄、健康的かつ持続可能な環境に対する権利を含む自己の権利を享受できることを容易にし、促進しかつそのための体制を整える義務を充足するため、緊急の措置をとらなければならない。 69.国は、合理的に予見可能な環境危害および子どもの権利侵害から子どもたちを保護するため、予防原則を正当に考慮しながら適切な防止措置をとるデューディリジェンス(相当の注意・配慮)の義務を負う。これには、政策およびプロジェクトの環境面での影響を評価すること、予見可能な危害を特定しかつ防止すること、そのような危害の防止が不可能である場合にはその緩和を図ること、および、予見可能な危害と現在の危害の双方を是正するための時宜を得た効果的な救済措置を設けることが含まれる。 70.国はまた、環境との関連で行使される子どもたちの権利を尊重し、保護しかつ充足する義務も負う。権利を尊重する義務は、国に対し、環境関連の事柄に関する子どもたちの意見表明権を制限するいかなる行動もとらず、正確な環境情報へのアクセスを阻害せず、かつ、環境リスクに関わる誤った情報および暴力またはその他の報復のリスクから子どもたちを保護することを要求するものである。充足する義務は、国に対し、意見を聴かれる子どもたちの権利に対する社会の否定的な態度と闘い、かつ、環境に関する意思決定への意味のある子ども参加を促進することを要求する。 71、国は、環境に関連する子どもたちの権利(健康的な環境に対する権利を含む)の全面的かつ効果的享受を達成することに向けて、計画的、具体的かつ焦点化された措置をとらなければならない。そのための手段には、科学に基づいており、かつ環境保健・安全に関する関連の国際的ガイドラインに合致した法律、政策、戦略または計画を策定すること、ならびに、子どもの保護を低下させる後退的措置をとらないことが含まれる。 72.国は、環境との関連で子どもたちの権利を実現するために、自国の利用可能な資源を最大限に利用して、かつ必要なときは国際協力の枠組みのなかで、財源、天然資源、人的資源、技術的資源、制度的資源および情報資源を振り向ける義務を負う [19]。 [19] 子どもの権利実現のための公共予算編成についての一般的意見19号(2016年)、パラ73。 73.国は、国際法上のすべての義務(自国が当事国となっている多国間環境協定に掲げられた義務を含む)にしたがうことを条件として、利用可能な資源に照らし、環境保護の適切な水準を決定することとその他の社会的目標を達成することとの間で合理的バランスを定める裁量権を維持する。ただし、そのような行動の余地は条約に基づく国の義務によって限定される。子どもたちは、環境劣化による深刻な危害(不可逆的で生涯にわたる影響および死亡を含む)をこうむる可能性が大人よりもはるかに高い。したがって国は、いっそう高度な配慮義務に鑑み、このような不均衡かつ長期的な影響から子どもたちを保護する環境基準を設定しかつ執行するべきである [20]。 [20] A/HRC/37/58, paras. 56 and 57. 74.国は、環境危害(気候変動関連の危害が子どもたちの権利に及ぼすリスクおよび実際の影響を含む)についての、信頼でき、定期的に更新されかつ細分化されたデータおよび調査研究の収集を確保するよう求められる。これには、子どもたちの権利、とくにさまざまな年齢の子どもの健康、教育および生活水準に及ぼす影響についての縦断的データが含まれるべきである。これらのデータおよび調査研究は、あらゆるレベルにおける環境関連の法律、政策、プログラムおよび計画の策定および評価において参考とされるべきであり、かつ公に利用可能とされなければならない。 B.子どもの権利影響評価 75.環境に関連して提案されるすべての法律、政策、規則、予算および決定ならびにすでに効力を有しているこれらの法律等について、条約第3条(1)にしたがい、しっかりした子どもの権利影響評価が実施されなければならない。国は、環境および気候が子どもたちの権利の享受に及ぼす可能性がある直接間接の影響(越境的影響、累積的影響および製造・消費面双方の影響を含む)についての評価を、事前および実施後のいずれにおいても要求するべきである。 76.子どもの権利影響評価が、環境影響評価もしくは統合的影響評価の枠組みに含まれているか、独立の評価として実施されるかにかかわらず、そこには、環境関連の決定が子どもたち(とくに低年齢の子どもたちおよびもっともリスクの高い状況に置かれているその他の集団の子どもたち)に及ぼす、条約に基づくすべての関連の権利に照らして測定される差異化された影響への特別な考慮が組みこまれるべきである。このような影響には、短期的・中期的・長期的影響、複合的影響および不可逆的影響、相互的影響および累積的影響ならびに子ども時代の異なる段階における影響が含まれる。たとえば、相当規模の化石燃料産業を擁する国は、関連の決定が子どもたちに及ぼす社会的・経済的影響を評価するべきである。 77.子どもの権利影響評価は、意思決定プロセスの可能なかぎり早い段階、意思決定の重要な段階およびとられた措置のフォローアップ段階で行なうことが求められる。このような評価は子どもたちの参加を得て実施されるべきであり、子どもたちの意見およびテーマ別専門家の意見が正当に重視されるべきである。その知見は、子どもにやさしい言葉遣いおよび子どもが使用する言語で公表することが求められる。 C.子どもの権利とビジネス部門 78.事業者には、環境との関連で子どもたちの権利を尊重する責任がある。国は、事業者を含む第三者による子どもの権利侵害からの保護を提供する義務を負う [21]。 [21] 企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)、パラ28、42および82。 79.事業者の活動は、子どもの権利侵害を助長する相当な環境被害の源である。このような被害は、たとえば、危険物質および毒性有害物質の製造、使用、排出および処分、化石燃料の採取および燃焼、大気・水質汚染ならびに不適切な農業・漁業慣行などから生じる。事業者は、子どもたちの権利に悪影響を及ぼす温室効果ガスの排出も、気候変動の影響と関連する子どもの権利の短期的・長期的侵害も助長している。事業者の活動および操業の影響は、たとえば土壌劣化の場合など、気候変動の影響に適応する子どもたちおよびその家族の能力を損ない、それによって気候ストレスを高める可能性がある。国は、気候変動の防止、緩和および気候変動への適応をもう敵として、既存の技術を共有しかつアクセスしやすいものとし、かつ事業者の操業およびバリューチェーンに影響力を行使することによって、子どもたちの権利の実現を強化するべきである。 80.国には、効果的で子どもに配慮した立法、規制、執行および政策ならびに是正、モニタリング、調整、連携および意識啓発のための措置を通じ、事業者が子どもたちの権利を尊重することを確保するための枠組みを提供する義務がある。国は、事業者に対し、事業者が環境および子どもの権利に及ぼす影響を特定し、防止し、緩和し、かつそれに関する説明責任を果たすための、子どもの権利デューディリジェンス手続を実施するよう要求するべきである。このようなデューディリジェンスはリスクベースのプロセスであり、特定の集団の子どもたち(働く子どもたちなど)のリスク曝露にとくに注意を払いながら、環境被害によるリスクが深刻であって実体化する可能性が高い場面に努力を集中させることをともなう。子どもが環境面の影響の被害者であることが明らかになったときは、その健康および発達へのさらなる危害を防止し、かつ時宜を得た効果的なやり方で十分かつ効果的な被害回復を図るための、即時的措置がとられるべきである。 81.委員会は、事業者が、子どもたちを含むステークホルダーと提携して、自社の操業に子どもの権利影響評価を統合するデューディリジェンス手続を開発するよう勧告する。マーケティング基準においては、事業者が、環境危害の防止または緩和のための努力を不正に描写するグリーンウォッシングまたはグリーンシーニングの慣行によって消費者(とくに子どもたち)を惑わさないことが確保されるべきである。 D.司法および救済措置へのアクセス(第4条) 82.権利侵害を是正し、かつ社会正義を促進するため、効果的救済措置が利用可能とされるべきである [22]。子どもたちは、いくつかの環境・気候変動訴訟の先駆者となり、かつ条約に基づいて権利の保有者として認められているにもかかわらず、その地位ゆえに、多くの国で原告適格を得る際に障壁に遭遇しており、そのため環境との関連で自己の権利を主張する手段を制限されている。 [22] 子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)、パラ24、および、市民的および政治的権利に関する国際規約第2条(3)。 83.国は、子どもが、環境危害に関連する自己の権利の侵害について効果的な効果的な司法的、準司法的および非司法的しくみ(子ども中心の国内人権機関を含む)に関与できることを確保するため、司法にアクセスするための経路(子どもにやさしく、ジェンダーに敏感でかつ障害についてインクルーシブな苦情申立ての仕組みを含む)を提供するべきである。これには、子どもたちが自ら手続を開始する際の障壁を取り除くこと、原告適格に関する規則を調節すること、および、国内人権機関に対して子どもからの苦情を受理する権限を付与することが含まれる。 84.切迫したまたは予見可能な危害および過去または現在の子どもの権利侵害を主張するためのしくみが利用可能とされるべきである。国は、自国の領域内で生じた国の作為または不作為による越境危害の被害を受けた領域外の子どもたちも含め、自国の管轄下にあるすべての子どもが、これらのしくみを差別なく容易に利用できることを確保するよう求められる。 85.国は、クラスアクション(集合代表訴訟)や公益訴訟のような集団的苦情申立てのための体制を整備し [23]、かつ、環境危害を原因とする子どもの権利侵害についての消滅時効期間を延長するべきである。 [23] 一般的意見16号(2013年)、パラ68、および、一般的意見25号(2021年)、パラ44。 86.環境危害が関わる事案は国境を越える影響、因果関係および累積効果のために複雑な性質を有しており、弁護士による効果的な代理が必要である。訴訟は長期的プロセスであることが多く、また超国家的機関では一般的に、申立てを提起する前に国内救済措置を尽くすことが要件とされている。子どもたちは、無償の法的援助その他の適切な援助(法律扶助および弁護士による効果的な代理を含む)にアクセスできるべきであり、かつ、自己に影響を与えるいかなる司法手続または行政手続においても意見を聴かれる機会を提供されるべきである。国は、たとえば、環境問題に関して公益にかなう訴訟を提起する子どもにとっての金銭的リスクを限定する目的で不利益費用負担命令から保護することなどの手段を通じ、救済措置を求める子どもにとっての負担を軽減する追加的措置を検討するよう求められる。 87.環境問題に関する説明責任の増進および子どもたちによる司法へのアクセスの促進を目的として、国は、無数の変数および情報の欠如に直面しながら因果関係を立証する困難な挙証責任を子どもの原告から転換させる選択肢を模索するべきである。 88.子どもたちは、自己の権利侵害を引き起こしまたは助長する可能性のある事業者が関与する事案(とくに越境的・国際的影響に関わる事案)で救済を得ることに関して、特段の困難に直面する場合がある。国は、事業者による子どもの権利侵害(領域外での活動および操業の結果として生じたものを含む)について、国と当該行為との間に合理的関係があることを条件として、効果的な救済措置にアクセスできるようにするための非司法的・司法的しくみを設置する義務を負う。国際基準にのっとり、事業者は、そのような権利侵害の被害を受けた子どもを対象とする効果的な不服申立てのしくみを設け、またはそのようなしくみに参加することを期待される。国はまた、規制庁が利用可能とされることを確保し、人権侵害を監視し、かつ環境危害関連の子どもの権利侵害について十分な救済措置を提供するべきである。 89.適切な被害回復措置としては、環境および当事者である子どもの双方に関わる原状回復、十分な賠償・補償、満足、リハビリテーションおよび再発防止の保証などがあり、これには医療的・心理的援助へのアクセスも含まれる。救済のしくみにおいては、環境劣化の影響に対する子どもたちの特有の脆弱性(危害は不可逆的である可能性および生涯にわたって続く可能性も含む)が考慮されるべきである。被害回復は、継続的侵害および将来の侵害を限定させるため、迅速であることが求められる。気候変動の影響を緩和しかつこれらの影響に適応するための措置を決定してその迅速な実施を監督する、子どもたちも主体的に参加する世代間委員会の設置命令など、新しい形態の救済措置の適用が奨励されるところである。 90.通報手続に関する選択議定書の批准なども通じて、適用される国際的・地域的人権機構へのアクセスが可能とされるべきである。このような機構およびその活用方法に関する情報を、子ども、親、養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家に対して広く知らせることが求められる。 E.国際協力 91.各国は、子どもたちの権利を尊重し、促進しかつ充足するために、国際協力を通じ、個別にかつ共同で行動をとる義務を負う。条約第4条は条約の実施が世界の国々の協力に基づく取り組みであることを強調しており [24]、条約に基づく子どもの権利の全面的実現は、部分的には各国がどのように関わりあうか次第である。気候変動、汚染および生物多様性の喪失が。各国の協働が必要な、子どもたちの権利に対する世界的脅威の喫緊の例であることは明らかであり、すべての国ができるかぎり広範な協力を行なうことおよび効果的かつ適切な国際的対応に参加すること [25] が求められる。各国の国際協力義務には、その国の状況次第の部分もある。気候変動との関連では、そのような義務に関しては、それぞれ異なる国内的事情を踏まえ、これまでのおよび現在の温室効果ガス排出量への考慮ならびに共通だが差異のある責任の概念およびそれぞれの国の能力が適切に指針とされる [26] 一方、条約第4条にのっとり、先進国から開発途上国への技術的・資金的援助の提供が必要となる。各国は、子どもの権利・環境デューディリジェンス手続の策定および実施に関する基準の一致を確保するための国際協力に取り組むべきである。 [24] 一般的意見5号(2003年)、パラ60。 [25] 国連気候変動枠組み条約前文ならびに人権理事会決議26/27および29/15。 [26] 国連気候変動枠組み条約前文および第3条(1)、パリ協定第2条(2)ならびに人権理事会決議26/27および29/15。 92.全体として、先進国は、国際的に合意された気候資金・生物多様性資金拠出目標にしたがってグリーンテクノロジーの移転を推進しかつ財政的環境措置に貢献することにより、開発途上国における、交差的性質を有する世界的な環境課題に対処するための行動を支援することへのコミットメントを表明してきた。条約は、諸国の国際的な緩和・適応戦略および損失と被害戦略におけるものを含む世界的な環境決定において、中核的な考慮事項のひとつとされるべきである [27]。ドナー国の環境関連プログラムは権利を基盤とするものであるべきであり、また国際的な気候資金・援助を受ける国は、当該援助の相当部分を、子どもたちに焦点を当てたプログラムにとくに配分することを検討するよう求められる。実施ガイドラインは、子どもの権利に関わる各国の義務を考慮するために再検討と改訂が行なわれるべきである。 [27] 国連気候変動枠組み条約第4条(5)およびパリ協定第9条(1)。 93.各国は、国際環境資金機構および国際機関の支援を受けた適応・緩和措置において、子どもの権利が尊重・保護されかつ子どもの権利の充足が積極的に追求されることを確保するべきである。各国は、条約および選択議定書にのっとり、子どもたちへの危害のリスクを評価するための基準および手続を新たな環境関連プロジェクトの計画および実施に統合するとともに、危害リスクの緩和措置をとるよう求められる。各国は、このような文脈における子どもの権利侵害に関して効果的救済措置にアクセスできるようにする手続としくみの設置および実施を支援するため、協力するべきである。 94.各国は、もっとも脆弱な状況に置かれた人々がこうむる環境危害に対処する国際的対応の確立およびそのための資金拠出について、誠実に協力するべきである。その際、子どもが環境関連のリスクに対する特有の脆弱性を有していることに照らして子どもの権利の保護に特段の注意を払い、かつ、突発的形態および緩やかに進行する形態双方の気候崩壊が子どもたち、そのコミュニティおよび国に及ぼす破壊的影響に対処することが求められる。各国は、武力紛争によって生じる可能性のある子どもたちへのあらゆる環境危害の緩和にとって前向きな貢献となるであろう紛争防止および平和維持の努力に協力して投資するとともに、和平および平和構築において子どもたちの意見を考慮するべきである。 V.気候変動 A.緩和 95.委員会は、人権上の義務にのっとり、すべての国が、温室効果ガスの排出を緩和するために緊急の集団的行動をとることを呼びかける。とくに、歴史的なおよび現在の主要な排出国が緩和の努力を率先して行なうべきである。 96.地球温暖化を制限するという国際的コミットメントの達成における進展が不十分であるために、子どもたちは、温室効果ガス排出濃度の高まりおよびその結果としての気温上昇に関連した、継続的かつ急速に増大しつつある危害にさらされている。科学者らは、一定の影響がもはや避けられない閾値である「ティッピングポイント」(転換点・臨界点)が、子どもたちの権利に対し、差し迫った、不確定なリスクを突きつけていると警告している。ティッピングポイントを回避するには、温室効果ガスの大気濃度を減少させるための緊急かつ野心的な行動が必要である。 97.緩和のための目標および措置は、利用可能な最良の科学に基づいたものであるべきであり、子どもたちへの危害を防止するようなやり方で遅くとも2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにすることへの道筋を確保するため、定期的に見直されるべきである。気候変動に関する政府間パネルは、気温上昇を工業化以前の水準に比べて1.5℃度未満に制限するためには、短期間のうちに緩和のための努力を加速させることが喫緊の課題であり、かつ、野心的な気候変動緩和目標の達成にとって、国際的な協力、衡平性および権利基盤アプローチがきわめて重要であることを明らかにしてきた [28]。 [28] https //www.ipcc.ch/assessment-report/ar6/ 参照。 98.条約にしたがって緩和措置の適切さを判断する際、かつ、これらの措置によって生じる可能性があるいかなる悪影響も防止しかつそれに対処する必要性に留意しながら、国は次の基準を考慮するべきである。 (a)緩和のための目標および措置においては、それによって条約に基づく子どもの権利がどのように尊重され、保護されかつ充足されるかが明示されるべきである。国は、自国が決定する貢献策を作成し、通知しかつ維持する際 [29]、透明性のあるやり方で、かつ明示的に、子どもの権利に焦点を当てるよう求められる。この義務は、2年ごとに更新される報告書、国際的な評価および検討ならびに国際的な協議および分析にも及ぶ [30]。 (b)国は、条約および国際環境法に基づく自国の義務(世界平均気温の上昇を工業化前に比べて2℃を十分に下回る水準まで抑制し、かつ2030年までに気温上昇を工業化前に比べて1.5℃までに制限するための努力を追求するという、パリ協定に掲げられた誓約を含む)を充足するために気候変動を緩和する個別的責任を負う [31]。緩和措置には、子どもの権利の継続的な侵害およびその悪化からの保護を提供するために必要な総削減量を踏まえて各国が負う、気候変動緩和のための国際的努力の公正な負担分が反映されるべきである。各国は、また協働するすべての国々は、できるかぎり高い野心ならびに共通であるが差異のある責任および各国の能力にのっとり、気候コミットメントを継続的に強化するよう求められる。高所得国は、経済全体にわたる排出絶対量の削減目標に取り組むことによって引き続き先頭に立つべきであり、またすべての国が、子どもの権利を可能なかぎり最大限に保護するようなやり方で、異なる国内的事情に照らして緩和措置を増進させるべきである [32]。 (c)継続的な緩和措置および更新される誓約は、破滅的な気候変動および子どもたちの権利に対する危害を防止するための時間枠はより短く、緊急の行動を要求するものであることを念頭に置き、経時的な前進 [33] における各国の努力を示すものであるべきである。 (d)短期的な緩和措置においては、化石燃料の急速な段階的廃止を遅らせれば累積排出量が増加し、したがって子どもの権利に対する予見可能な危害も大きくなることが考慮されるべきである。 (e)緩和措置は、証明されていない技術を通じて将来的に大気から温室効果ガスを除去することだけに依拠するものであるべきではない。各国は、可能なかぎり短期間で子どもたちが自己の権利を全面的に享受できるようになることを支援し、かつ自然に対する不可逆的な損害を回避するため、迅速かつ効果的な排出量の削減に、いま、優先的に取り組むべきである [34]。 [29] パリ協定第4条(2)。 [30] 前掲第14条〔訳者注/第13条の誤り〕4項。 [31] 前掲第2条(1)(a)およびSacchi et al. v. Argentina (CRC/C/88/D/104/2019)、パラ10.6。Sacchi et al. v. Brazil (CRC/C/88/D/105/2019)、Sacchi et al. v. France (CRC/C/88/D/106/2019) およびSacchi et al. v. Germany (CRC/C/88/D/107/2019) ならびにSacchi et al. v. Turkey (CRC/C/88/D/108/2019) も参照。〔訳者注/これらの決定の概要は筆者のnote〈国連・子どもの権利委員会、国は気候変動の有害な影響について国境を越えて責任を負うと裁定(OHCHR)〉参照〕 [32] パリ協定第4条(4)。 [33] 前掲第3条および第4条(3)。 [34] 国連気候変動枠組み条約第4条(1)(h)―(j)および(2)(b);パリ協定前文および第4条(8)、第12条および第13条。 99.国は、さらなる損害およびリスクを防止するための緩和措置として、温室効果ガス排出量削減のための道筋に合致しない活動およびインフラ整備への投資に関して、官民の主体への補助金を打ち切るべきである。 100.先進国は、もっとも脆弱な状況に置かれている子どもたちを支援する目的で、緩和措置の計画および実施に関して開発途上国を援助するべきである。このような援助としては、資金および技術的専門性の提供、ならびに、気候変動によって引き起こされる子どもたちへの危害の防止に具体的に寄与する情報提供その他の能力構築措置などが考えられる [35]。 [35] パリ協定第13条(9)。 B.適応 101.子どもたちの権利に対する気候変動関連の影響が激化しつつあることから、子どもに配慮し、ジェンダーに敏感でかつ障害についてインクルーシブな適応措置の立案および実施ならびに関連の資源を急激かつ緊急に強化することが必要とされる。国は、子どもを対象とする必須サービス(水・衛生設備、保健ケア、栄養および教育など)の利用可能性、質、公平性および持続可能性に関わる、気候変動関連の子どもたちの脆弱性を明らかにするべきである。国は、自国の法的・制度的枠組みの気候耐性を強化するとともに、自国の国家的適応計画ならびに現行の社会政策、環境政策および予算政策において、自国の管轄内にある子どもが回避不可能な気候変動の影響に適応できるよう援助することにより、気候変動関連のリスク要因への対処がなされることを確保するよう求められる。このような措置の例としては、リスクが生じやすい状況下で子どもの保護制度を強化すること、水、衛生設備および保健ケアならびに安全な学校環境に十分にアクセスできるようにすること、ならびに、生命・生存・発達に対する子どもたちの権利を優先的に位置づけながら、社会的セーフティネットおよび社会的保護の枠組みを強化することなどが挙げられる。健全な生態系および生物多様性も、耐性および災害リスク低減を支えるうえで重要な役割を果たす。 102.災害リスクの低減、災害への備え、災害対応および災害復旧を含む適応措置においては、子どもたちの意見を正当に重視することが求められる。子どもたちは、気候関連の決定が自分たちの権利に及ぼす影響について理解する態勢を身につけ、かつ、意思決定プロセスに意味のある形で効果的に参加する機会を持てるべきである。適応措置の立案および実施のいずれにおいても、いっそう大きなリスクにさらされている子どもたちの集団(低年齢の子ども、女子、障害のある子ども、移動の状況にある子ども、先住民族の子どもおよび貧困または武力紛争の状況下にある子どもなど)への差別が行なわれるべきではない。国は、脆弱性の根本的原因に対処することなどの手段により、気候変動の影響を受けている脆弱な状況下の子どもが自己の権利を享受できることを確保するために、追加的措置をとるべきである。 103.適応措置においては、生計手段の維持、学校の保護および持続可能な水管理システムの開発などにより、短期的影響および長期的影響の両方を低減させることが目標とされるべきである。極端気象現象などの切迫した脅威から生命・健康に対する子どもたちの権利を保護するために必要な措置には、早期警報システムを確立することや、気候変動関連の災害リスクを低減させる目的でインフラ(学校、水・衛生設備および保健インフラを含む)の物理的安全性および耐性を高めることが含まれる。国は、すべての人を対象としてインクルーシブな早期警報システム、人道援助ならびに食料および水・衛生設備へのアクセスを提供するための措置のような緊急対応計画を採択するよう求められる。適応措置を策定するにあたっては、「仙台防災枠組み2015-2030」に掲げられているもののような、関連の国内的・国際的基準も考慮されるべきである。適応のための枠組みにおいては、気候変動を誘因とする移住についても取り上げ、かつ、これらの問題に対する子どもの権利基盤アプローチを確保するための規定を含めることが求められる。極端気象現象のような気候変動関連の危害の脅威が切迫している場合、国は、子どもたちおよびその養育者ならびにコミュニティが身を守るための措置をとれるようにするためのあらゆる情報が直ちに流布されることを確保するべきである。国は、災害リスクの低減・防止措置に関する子どもおよびそのコミュニティの意識を強化するよう求められる。 C.損失および損害 104.パリ協定において、締約国は、気候変動の悪影響に関連する損失および損害を回避し、最小化しかつこれに対処することの重要性を取り上げている。人権の視点から見れば、気候変動の悪影響は、とくに開発途上国で暮らす人々にとって、相当の損失および損害をもたらしてきた。 105.気候関連の損失および損害が子どもたちおよびその権利に及ぼす影響は、直接的なものと間接的なものの両方がありうる。直接的影響には、突発的な極端気象現象(洪水および豪雨など)と緩やかに進行する現象(干ばつなど)の両方が条約に基づく権利の侵害につながる場合が含まれる。間接的影響としては、国、コミュニティおよび親が、意図していたプログラム(教育や保健ケアのためのプログラムなど)から環境危機への対応に資源を再配分することを余儀なくされる状況などが考えられる。 106.この点に関して、損失および損害を、緩和および適応と並ぶ気候行動の第3の柱として認めることがきわめて重要である。各国は、人権の視点から見れば、損失および損害は救済措置に対する権利および被害回復(原状回復、賠償・補償およびリハビリテーションを含む)の原則と緊密に関連していること [36] に留意するよう、奨励される。各国は、国際協力なども通じ、条約に基づく子どもの権利の享受に影響を及ぼす損失および損害への対処のために資金的・技術的援助を提供する措置をとるべきである。 [36] A/77/226, para. 26. D.ビジネスと気候変動 107.国は、事業者によって引き起こされまたは固定化される気候変動に関連する子どもの権利への危害からの保護のために、必要、適切かつ合理的なあらゆる措置をとらなければならない。その一方、事業者には、気候変動との関連で子どもたちの権利を尊重する責任がある。国は、事業者による迅速な排出量削減を確保するとともに、事業者が、子どもの権利に対する気候変動関連の実際の悪影響および潜在的悪影響(生産・消費関連の活動ならびにサプライチェーンおよび世界的操業に関連する活動に由来するものを含む)を特定し、防止し、緩和し、かつこれらの悪影響への対処のあり方に関する説明責任を果たすことを確保するため、金融機関を含む事業者に対し、環境影響評価および子どもの権利デューディリジェンス手続の実施を要求するべきである [37]。 [37] 一般的意見16号(2013年)、パラ62。 108.本拠国は、領域外における事業者の活動および操業を背景として生じる子どもの権利へのいかなる危害および気候変動関連のリスクについても、自国と関係する行為との間に合理的なつながりがあることを条件として対処する義務を負うのであり、権利侵害について効果的な救済措置にアクセスできるようにするべきである。これには、国境を越えて操業する事業者が、気候変動関連の危害から子どもたちの権利を保護することを目的とする適用可能な環境基準を遵守することを確保するための協力や、他国における調査および手続執行に関する国際的な援助および協力も含まれる [38]。 [38] 前掲、パラ43および44。 109.国は、とくに国有企業および国の管理下にある企業ならびに国家機関から相当の支援およびサービスを受けている事業者による、再生可能エネルギー、エネルギー貯蔵およびエネルギー効率への持続可能な投資ならびにこれらの活用のためのインセンティブを提供するべきである。国は、累進課税制度を執行するとともに、公共調達契約に関して厳格な持続可能性要件を採用するよう求められる [39]。国はまた、とくにコミュニティレベルで再生可能技術へのアクセスを強化し、その負担可能性を高め、かつ持続可能なエネルギー製品・サービスの提供を増進させるための、エネルギーの生成、運用、移動および配分に関するコミュニティ管理を奨励することもできる。 [39] 前掲、パラ27。 110.国は、貿易協定または投資協定に基づく義務によって人権上の義務を満たす自国の能力が損なわれないこと、ならびに、それらの協定により、温室効果ガス排出量の急速な削減と、気候変動の原因および影響を緩和するためのその他の措置(再生可能エネルギーへの投資の促進によるものを含む)が促進されることを確保するべきである [40]。協定の実施に関係する子どもの権利への気候変動関連の影響について、是正措置を適宜とることができるよう、定期的評価を行なうことが求められる。 [40] ビジネス活動の文脈において経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約に基づき国家が負う義務についての社会権規約委員会の一般的意見24号(2017年)、パラ13。 E.気候資金 111.国際気候資金の提供者および受領国の双方が、気候資金機構が条約およびその選択議定書に合致する子どもの権利基盤アプローチに根ざしたものになることを確保するべきである。各国は、いかなる気候資金機構も子どもの権利を侵害するのではなく擁護することを確保し、子どもの権利に関わる義務とその他の目標(経済開発など)との政策的整合性を高め、かつ、気候資金に関わるさまざまなステークホルダー(政府、銀行を含む金融機関、事業者および影響を受けるコミュニティ、とくに子どもたち)の役割の区別を強化するよう求められる。 112.共通であるが差異のある責任および各国の能力の原則にのっとり、気候変動に対処するための努力においては各国の国内事情が考慮されなければならない。先進国は、各国が行なってきた国際的な気候関連の誓約にのっとり、子どもたちの権利を擁護する気候行動のための気候資金の提供に関して開発途上国と協力するよう求められる。とくに、さまざまな資金拠出機構(持続可能な開発に関するものを含む)との間に存在するつながりにかかわらず、先進国が提供する気候資金は、透明であり、子どもたちの権利を支える他の資金フローに加えて提供され、かつ、二重計上のような追跡上の課題を回避することなどによって適正な説明が可能とされるべきである。 113.先進国は、現在の気候資金ギャップに対し、緊急かつ集団的に対処しなければならない。現在の気候資金の配分は、適応措置および損失・損害措置を犠牲にする形で緩和に過剰に偏っており、いっそうの緩和措置が必要な環境に暮らしている子どもたちおよび適応の限界に直面している子どもたちに、差別的効果を与えている。各国は、国際的な気候資金ギャップを埋めるともに、諸措置に対する資金が、適応、緩和、損失・損害およびいっそう幅広い実施手段(技術的援助および能力構築など)に関する措置を考慮しながら、バランスのとれたやり方で拠出されることを確保するべきである。必要とされる国際的気候資金の総額を諸国が決定する際には、記録されたコミュニティのニーズ、とくに子どもたちおよびその権利を保護するためのニーズを踏まえることが求められる。開発途上国への気候資金は、子どもたちの権利への悪影響を回避するため、融資ではなく贈与の形態で提供されるべきである。 114.国は、影響を受けるコミュニティ、とくに子どもたちが、気候資金で支援される活動についての情報(子どもの権利侵害を訴える苦情申立てを行なう可能性に関するものを含む)にアクセスできることを確保しかつ促進するべきである。国は、受益者コミュニティ、とくに子どもたちの参加を強化するため、気候資金に関する意思決定の委譲を図るとともに、子どもたちの権利侵害につながりうる措置への資金拠出を防止しかつこれに対処するため、気候資金の承認および執行について子どもの権利影響評価を条件とするよう求められる。 115.子どもたちは諸国の集団的行動を求めている。この一般的意見のための協議に参加してくれた2人の子どもの言葉を借りれば、「各国の政府は気候変動を軽減するために協力すべき」であり、「私たちのことを認めて、『みなさんの声を聴いています。これが、この問題について私たちがやろうとしていることです』と言ってもらわないといけない」のである [41]。 [41] https //childrightsenvironment.org/reports/ 参照。 更新履歴:ページ作成(2023年1月1日)。/日本語訳を差し替え(9月1日)。/関連資料に委員会の声明およびチャイルドフレンドリー版の日本語訳へのリンクを追加(9月22日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/19.html
子どもの権利委員会・一般的意見10号:少年司法における子どもの権利(中編) 前編 D.公正な審判のための保障 40.条約第40条2項には権利および保障の重要なリストが掲げられているが、これらはいずれも、刑法に違反したとして申立てられ、または罪を問われたすべての子どもが公正な取扱いおよび審判を受けることを確保するためのものである。これらの保障のほとんどは、市民的および政治的権利に関する国際規約(自由権規約)第14条にも見出すことができる。同条については、自由権規約委員会が一般的意見13号(1984年)(司法の運営)において詳しい見解と意見を明らかにしているところである(現在、同一般的意見の見直しが進められている)。しかし、子どもを対象としてこれらの保障を実施することには若干の特有の側面があることも確かであり、本節ではその点について述べる。その前に、委員会は、これらの権利または保障を適切かつ効果的に実施するための鍵となる条件は少年司法の運営に従事する者の質であることを強調したい。警察官、検察官、弁護士その他の子どもの代理人、裁判官、保護観察官、ソーシャルワーカー等の専門家の訓練はきわめて重要であり、体系的かつ継続的に行なわれるべきである。これらの専門家は、子どものおよびとくに思春期の青少年の身体的、心理的、精神的および社会的発達について、ならびに、もっとも被害を受けやすい立場に置かれた子ども(障害のある子ども、避難民の子ども、ストリートチルドレン、難民および庇護希望者である子どもならびに人種的、民族的、宗教的、言語的その他のマイノリティに属する子ども等)の特別なニーズ(前掲パラ6-9参照)について、十分な情報を得ておくことが求められる。少年司法制度における女児の存在は、女児が少数しかいないために容易に見過ごされる可能性があるので、たとえば過去の虐待および特別な健康上のニーズとの関連で、女児の特別なニーズに特段の注意が払われなければならない。専門家および職員は、あらゆる状況において、子どもの尊厳および価値に一致し、他の者の人権および基本的自由に対する子どもによる尊重を強化し、かつ、子どもが社会に再統合しかつそこで建設的な役割を果たすことを促進するような方法で行動することが求められる(第40条1項)。第40条2項で認められている保障(以下で取り上げる)はいずれも最低基準である。すなわち締約国は、たとえば法的援助の分野および司法手続への子ども・親の参加の分野でより高い基準を設けかつ遵守することが可能であるし、そのように努めることが求められる。 遡及的少年司法の禁止(第40条2項(a)) 41.条約第40条2項(a)は、何人も、実行のときに国内法または国際法により犯罪を構成しなかった作為または不作為を理由として有罪とされることはないという規則が、子どもにも適用されることを確認している(自由権規約第15条も参照)。すなわち、いかなる子どもも、実行のときに国内法または国際法によって禁止されていなかった作為または不作為を理由として、刑法にもとづいて告発されまたは刑を言い渡されることはない。近年、多くの締約国がテロリズムを防止しかつこれと闘うために刑事法の規定を強化しかつ(または)拡大したことに照らし、委員会は、締約国が、これらの変更によって子どもの遡及的処罰または意図せざる処罰が行なわれないことを確保するよう勧告する。委員会はまた、何人も、犯罪が行なわれたときに適用されていた刑罰よりも重い刑罰を科されないという、自由権規約第15条に定められた規則が、条約第41条に照らし、自由権規約の締約国の子どもに適用されることを締約国が想起するよう求めたい。いかなる子どもも、刑法に違反したときに適用されていた刑罰よりも重い刑罰によって処罰されてはならないのである。ただし、行為後の法改正でより軽い刑罰が定められた場合には、子どもは当該改正の利益を受けるべきである。 無罪の推定(第40条2項(b)(i)) 42.無罪の推定は、法律に抵触した子どもの人権の保護にとって基本的重要性を有する。その意味は、子どもに対してかけられた容疑の立証責任は検察側にあるということである。刑法に違反したとして申立てられ、または罪を問われた子どもには灰色の利益が認められ、これらの容疑が合理的な疑いを超えて立証された場合にのみ当該容疑について有罪とされる。子どもはこのような推定にしたがって取り扱われる権利を有しており、審判の結果について予断を抱かないようにするのはあらゆる公的機関その他の関係者の義務である。締約国には、このような無罪の推定が実際に尊重されることを確保するため、子どもの発達についての情報を提供することが求められる。手続の無理解、未成熟、恐怖心その他の理由によって子どもは疑わしい行動を示す場合があるが、当局は、合理的な疑いを超えて有罪が証明されることなしに、子どもが有罪であると推定してはならない。 意見を聴かれる権利(第12条) 43.条約第12条2項は、子どもに対し、国内法の手続規則と一致する方法で、自己に影響を与えるいかなる司法的および行政的手続においても、直接にまたは代理人もしくは適当な機関を通じて意見を聴かれる機会が与えられることを求めている。 44.刑法に違反したとして申立てられ、罪を問われ、または認定された子どもにとって、意見を聴かれる権利が公正な審判のために基本的重要性を有することは明らかである。同様に、子どもには、それがその最善の利益に合致するのであれば、代理人または適切な機関を通じてのみならず直接に意見を聴かれる権利があることも、また明らかである。この権利は、手続のすべての段階において遵守されなければならない。それは審判前の段階から始まり、この段階において子どもは、黙秘権ならびに警察、検察官および予審判事から意見を聴かれる権利を有する。しかしこのことは、裁決の段階および科された措置の実施段階にも適用される。換言すれば、少年司法手続全体を通じて、子どもには自己の意見を自由に表明する機会が与えられなければならないし、その意見は子どもの年齢および成熟度にしたがって正当に重視されなければならないのである(条約第12条1項)。すなわち、子どもが手続に実効的に参加するためには、被疑事実のみならず(後掲パラ47-48参照)、少年司法手続そのものおよび科される可能性がある措置についても情報が提供されなければならない。 45.子どもに対しては、科される可能性がある(代替的)措置についての意見を表明する機会が与えられるべきであり、この点について子どもが有している具体的な希望または選択は正当に重視されるべきである。子どもに刑事責任があると主張することは、その子どもには、刑法違反の訴えに対するもっとも適切な対応についての意思決定に実効的に参加する能力が認められるべきであることを、言外に意味している(後掲パラ46参照)。言うまでもなく、決定を行なう責任を有するのは担当の裁判官である。しかし、子どもを受身の客体として扱うことは、子どもの権利を認めないことになるし、子どもの行動に対する効果的な対応に寄与することにもならない。このことは、科された措置の実施についても当てはまる。調査研究の示すところによれば、子どもがこのような実施に積極的に関与することは、ほとんどの場合、前向きな結果に寄与するのである。 手続に実効的に参加する権利(第40条2項(b)(iv)) 46.公正な審判のためには、刑法に違反したとして申立てられ、または罪を問われている子どもが審判に実効的に参加できることが必要であり、したがって子どもは、法定代理人に指示を与える目的で被疑事実ならびに生じうる結果および処罰について理解し、証人に異議を申立て、出来事について陳述し、かつ、証拠、証言および科されるべき措置について適切な決定を行なわなければならない。北京規則第14条は、手続が、少年の参加と自由な自己表現を可能とするような、理解に満ちた雰囲気のなかで行なわれるべきであると定めている。子どもの年齢および成熟度を考慮に入れるためには、審判廷における手続および慣行の修正も必要となる場合がある。 被疑事実に関する迅速なかつ直接の情報(第40条2項(b)(ii)) 47.刑法に違反したとして申立てられ、または罪を問われているすべての子どもは、自己に対する被疑事実を迅速かつ直接的に告知される権利を有する。迅速かつ直接的とは可能なかぎり早期にという意味であり、これは検察官または裁判官がその子どもに対して最初に手続上の措置をとった段階のことである。ただし、公的機関が司法的手続によらずに子どもを取り扱う旨の決定をしたときにも、子どもに対し、このようなアプローチを正当化するだけの被疑事実について告知が行なわれなければならない。これは、法的保障が全面的に尊重されなければならないという、条約第40条3項(b)の要件の一部を構成している。子どもは、その理解する言語による告知を受けるべきである。このため、情報を外国語で提示することのほか、刑事上/少年手続上の告発においてしばしば用いられる正式な法的専門用語を子どもが理解できる言葉に「翻訳」することも必要となろう。 48.子どもに公式書類を提供するだけでは十分ではなく、口頭による説明が必要なこともしばしばあろう。公的機関は、これを親もしくは法定後見人または子どもの弁護人その他の援助者に委ねておくべきではない。子どもが自己に対する各被疑事実を理解するようにすることは、公的機関(たとえば警察、検察官、裁判官)の責任である。委員会は、親または法定後見人に対する情報提供をもって、このような情報を子どもに伝達することに代えるべきではないとの見解に立つ。子どもおよび親または法定後見人の双方が、それぞれが被疑事実および可能性のある結果を理解できるような方法で情報を受け取るのであれば、それがもっとも適切である。 弁護人その他の適切な者による援助(第40条2項(b)(ii)) 49.子どもは、自己の防御の準備および提出にあたって弁護人その他の適当な者による援助を保障されなければならない。条約は子どもに援助が提供されることを要求しており、この援助は必ずしもあらゆる状況において法的なものである必要はないが、適切なものであることは求められる。このような援助がどのように提供されるかを決定するのは締約国の裁量に委ねられているが、当該援助は無償であるべきである。委員会は、締約国が、専門の弁護士またはパラリーガル職のような十分な訓練を受けた者による法的援助を、可能なかぎり提供するよう勧告する。その他の適切な援助者も考えられるが(たとえばソーシャルワーカー)、そのような援助者は、少年司法手続の種々の法的側面に関する十分な知識および理解を有していなければならず、また法律に抵触した子どもを対象として活動する訓練を受けていなければならない。 50.自由権規約第14条3項(b)で求められているとおり、子どもおよびその援助者は、子どもの防御の準備のために十分な時間および便益を与えられなければならない。子どもとその援助者との交渉は、書面によるものか口頭によるものかを問わず、当該交渉の秘密が、条約第40条2項(b)(vii)に定められた保障およびプライバシー・通信への干渉から保護される子どもの権利(条約第16条)にしたがって、全面的に尊重される条件下で行なわれるべきである。この保障(条約第40条2項(b)(ii))に関して留保を行なっている締約国が多いが、これは、当該保障がもっぱら法的援助、すなわち弁護士による援助の提供を要求しているとの理解に立つものと思われる。そのようなことはなく、これらの留保は撤回が可能であって、かつ撤回されるべきものである。 遅滞のない、かつ親の関与を得ての決定(第40条2項(b)(iii)) 51.国際的に、法律に抵触した子どものためには、犯罪遂行時と当該行為への終局的対応との間の期間は可能なかぎり短いべきであるという合意が存在している。この期間が長いほど、当該対応が所期の積極的かつ教育的影響を失う可能性は高まり、かつ子どもが負うスティグマも強いものとなろう。これとの関連で、委員会は、条約第37条(d)も参照するよう求めるものである。この規定により、自由を奪われたすべての子どもは、その自由の剥奪の合法性を争う訴えについて迅速な決定を受ける権利を有する。「遅滞なく」(条約第40条2項(b)(iii))という文言は自由権規約第14条3項(c)にいう「不当に遅延することなく」という文言よりも強いが、「迅速な」という文言はこれよりもさらに強い。自由の剥奪の重大性を踏まえれば、これは正当である。 52.委員会は、締約国が、犯罪の遂行から警察による捜査の完了、子どもを告発する旨の検察官(または他の権限ある機関)の決定ならびに裁判所その他の権限ある司法機関による終局処分および決定までの期間について期限を定め、かつこれを実施するよう勧告する。これらの期限は、成人について定められたものよりもはるかに短いものであるべきである。しかし同時に、遅滞なく行なわれる決定は、子どもの人権および法的保障が全面的に尊重される手続の結果であることが求められる。このような遅滞なき意思決定手続には、弁護人その他の適切な援助者が立ち会わなければならない。このような立会いは、裁判所その他の司法機関における審判に限定されるべきではなく、警察による子どもの事情聴取(尋問)に始まる手続の他のあらゆる段階にも適用される。 53.親または法定保護者も、子どもに対して一般的な心理的および情緒的援助を提供しうることから、手続に立ち会うべきである。親が立ち会うからといって、親が子どもの防御のために行動し、または意思決定手続に関与できるというわけではない。ただし、裁判官または権限ある公的機関は、子どもまたはその弁護人その他の適切な援助者の求めにより、または子どもの最善の利益(条約第3条)にかなわないという理由で、手続における親の立会いを制限し、制約しまたは排除する旨の決定をすることができる。 54.委員会は、締約国が、子どもに対する手続に親または法定後見人が最大限どこまで関与できるかについて、法律で明示的に定めるよう勧告する。このような関与は、一般的には、子どもの刑法違反に対する実効的対応に寄与するはずである。親の関与を促進するため、親は、その子どもの逮捕について可能なかぎり早期に告知されなければならない。 55.委員会は同時に、子どもが行なった犯罪を理由とする親の処罰を導入する傾向が一部の国で見られることを、遺憾とするものである。子どもの行為によって引き起こされた損害に対する民事上の責任は、一部の限られた事案、とくに子どもが若年(たとえば16歳未満)である場合には適切なものとなりえよう。しかし、法律に抵触した子どもの親を犯罪者として扱うことは、親が子どもの社会的再統合における積極的なパートナーとなることに寄与しない可能性がきわめて高い。 自己負罪の強制からの自由(第40条2項(b)(iii)〔訳注/(iv)〕) 56.条約は、自由権規約第14条3項(g)と調和する形で、子どもが証言することまたは罪を自白しもしくは認めることを強制されないよう求めている。このことは、第一に――そして自明の理として――、自認または自白を引き出すための拷問、残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いは子どもの権利の重大な侵害であり(条約第37条(a))、まったく受け入れられないことを意味するものである。このようないかなる自認または自白も、証拠として認めることはできない(拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約第15条)。 57.他にも、これほど暴力的ではない形で、子どもが自白または自己負罪的証言をするよう強制しまたは誘導する方法は数多く存在する。「強制され」という文言は広く解釈されるべきであり、有形力その他の明らかな人権侵害に限定されるべきではない。子どもの年齢、子どもの発達、尋問の期間、子どもによる理解の欠如、どうなるかわからないという恐怖または収監の可能性を示唆されることによる恐怖が、真実ではない自白への誘導につながる可能性もある。このような可能性は、「本当のことを言えばすぐに家に帰してやる」のように報酬が約束される場合、またはより軽い制裁もしくは釈放が約束される場合には、いっそう高まることになろう。 58.事情聴取を受ける子どもは、弁護人その他の適切な代理人にアクセスできなければならず、かつ、事情聴取中に親が立ち会うことを要請できなければならない。状況を総合的に判断すれば証言が任意のものであって威迫によって引き出されたものではなく、かつ信頼できるものであることを確保するため、尋問手法に関する独立の立場からの検証が行なわれなければならない。裁判所その他の司法機関は、子どもによる自認または自白の任意性および信頼性を検討するにあたり、その子どもの年齢、勾留および尋問の期間、ならびに、子どもの弁護人その他の助言者、親または独立の代理人の立会いの有無を考慮に入れなければならない。警察官その他の捜査機関は、強制されたまたは信頼性を欠く自白または証言をもたらすような尋問技術および実務を回避するための、十分な訓練を受けているべきである。 証人の出廷および尋問(第40条2項(b)(iv)) 59.条約第40条2項(b)(iv)に掲げられた保障は、武器の平等(すなわち、防御側と検察側とが平等なまたは衡平な条件下にあること)の原則が、少年司法の運営においても遵守されなければならないことを強調したものである。「尋問し、または尋問を受けさせる」という文言は、諸法体系において、とくに弾劾主義的裁判と職権主義的裁判との区別が存在することを指している。後者においては、被告人は証人尋問を認められることが多いものの、被告人がこの権利を自ら行使することはめったになく、証人尋問は弁護人、または子どもの場合には他の適当な機関に委ねている。ただし、弁護人その他の代理人が、証人を尋問できることについて子どもに告知するとともに、子どもがこの点に関して意見を表明できるようにすることは依然として重要である。当該意見は、子どもの年齢および成熟度に応じて正当に重視することが求められる(第12条)。 上訴権(第40条2項(b)(v)) 60.子どもは、自己に対する被疑事実について有罪と認定された場合に、その決定に対し、かつこの有罪評決の結果として科される措置に対し、上訴する権利を有する。この上訴についての決定は、上級の、権限ある、独立のかつ公平な機関または司法機関、換言すれば第一審において事件を扱った機関と同一の基準および要件を満たす機関が行なうことが求められる。この保障は自由権規約第14条5項のそれと同様のものである。このような上訴権は、もっとも重大な犯罪に限られるものではない。 61.これこそが、少なからぬ締約国がこの規定に関して留保を行ない、このような子どもによる上訴権をより重大な犯罪および(または)収監刑に限定している理由だと思われる。委員会は、自由権規約の締約国に対し、同規約の第14条5項で同様の規定が置かれていることを想起するよう求めるものである。条約第41条に照らし、同条は、裁決を受けたすべての子どもに上訴権を認めるべきであるということを意味している。委員会は、締約国が、第40条2項(b)(v)の規定についての留保を撤回するよう勧告するものである。 無料の通訳の援助(第40条2項〔(b)〕(vi)) 62.少年司法制度で用いられる言語を子どもが理解できないときは、子どもは無料で通訳の援助を受ける権利を有する。このような援助は法廷における審判に限定されるべきではなく、少年司法手続のあらゆる段階でも利用可能とされるべきである。また、通訳が子どもとともに活動する訓練を受けていることも重要となる。子どもの母語の使用および理解は、成人のそれとは異なっている可能性もあるからである。この点に関わる知識および(または)経験の欠如により、自らに対して行なわれた質問を子どもが全面的に理解することが妨げられ、かつ公正な裁判および実効的参加に対する権利が阻害される可能性もある。「子どもが使用される言語を理解することまたは話すことができない場合は」として、「場合は」という限定が行なわれているのは、たとえば外国系のまたは民族的出身を有する子どもが――その母語とは別に――公用語を理解しおよび話せるときは、無料の通訳の援助を提供しなくてもよいということである。 63.委員会はまた、言語障害その他の障害を有する子どもに対して締約国の注意を促したいと考える。第40条2項〔(b)〕(vi)の精神を踏まえ、かつ障害のある子どもについて第23条で定められている特別な保護措置にしたがって、委員会は、言語障害その他の障害を有する子どもが少年司法手続の対象とされた場合に、十分な訓練を受けた専門家による、たとえば手話等の十分かつ効果的な援助を提供されることを、締約国が確保するよう勧告するものである(この点に関しては、子どもの権利委員会の一般的意見9号(障害のある子どもの権利)も参照)。 プライバシーの全面的尊重(第16条および第40条2項(b)(vii)) 64.手続のすべての段階においてプライバシーを全面的に尊重される子どもの権利は、条約第16条に掲げられた、プライバシーの保護についての権利を反映するものである。「手続のすべての段階」には、法執行との最初の接触(たとえば情報および素性の照会)から権限ある機関による最終決定、または監督、収容もしくは自由の剥奪からの解放までが含まれる。この権利は、このような特定の文脈において、不当な公表またはラベリングのプロセスによる害を回避するためのものである。罪を犯した子どもの特定につながる可能性がある情報は、いかなるものも公表されてはならない。このような情報には、スティグマを付与する効果があるとともに、罪を犯した子どもが教育、仕事〔および〕住居にアクセスし、または安全を保つ能力に影響を及ぼす可能性もあるからである。すなわち公的機関は、子どもが行なった疑いのある犯罪についての報道発表に関してはきわめて謙抑的な姿勢をとるべきであり、これをごく例外的な事件に限定するべきである。公的機関は、これらの報道発表資料を通じて子どもが特定されないことを保障するための措置をとらなければならない。法律に抵触した子どものプライバシー権を侵害するジャーナリストは、懲戒措置による制裁、および必要な場合には(たとえば常習犯の場合など)刑法上の制裁の対象とされるべきである。 65.子どものプライバシーを保護するため、ほとんどの締約国は、刑法を違反したとして罪に問われている子どもの、法廷その他の場所における聴聞は、非公開で行なわれるべきことを――例外の余地を残している場合もあるが――原則としている。このような規則は、裁判所の特別許可による専門家その他の専門職の立会いを認めるものである。少年司法における公開の聴聞は、詳細に定められた事件において、かつ裁判所による決定書面がある場合を除いて、認められるべきではない。当該決定に対しては、子どもによる異議申立てが認められるべきである。 66.委員会は、あらゆる締約国が、法律に抵触した子どもの法廷その他の場所における聴聞は非公開で実施される旨の規則を導入するよう勧告する。この規則に対する例外は、きわめて限定された、かつ法律で明確に述べられたものであるべきである。評決/量刑は、子どもの素性が明らかにされないような方法で、公開の法廷で宣告されるべきである。プライバシーについての権利(第16条)により、裁判所または他の権限ある機関がとる措置の実施に携わるすべての専門家は、外部とのあらゆる接触において、子どもの特定につながる可能性のあるあらゆる情報の秘密を保持するよう要求される。プライバシーについての権利はまた、罪を犯した子どもの記録は厳重に秘密とされるべきであり、かつ、事件の捜査および裁定ならびに事件についての判決言渡しに直接携わる者を除き、第三者に対して非開示とされるべきことも意味する。スティグマおよび(または)予断を回避するため、罪を犯した子どもの記録は、その後の事件で同一人物が罪を犯した場合の成人手続で利用されるべきではなく(北京規則の規則21.1および21.2参照)、またはそのようなその後の事件における量刑を加重するために用いられるべきではない。 67.委員会はまた、罪を犯した子どもが18歳に達すると同時にその犯罪記録が自動的に削除されるようにするための規則、または、一定の重大犯罪については、必要であれば一定の条件(たとえば最後の有罪判決から2年間、犯罪を行なわなかったこと)のもとで、子どもの申請に応じて削除が可能となるような規則を、締約国が導入するようにも勧告する。 E.処分(前掲IV章Bも参照) 審判前の代替的手段 68.刑法上の正式な手続を開始する旨の決定が行なわれたからといって、必ずしも、当該手続が、子どもに対する、裁判所による正式な刑の言渡しをもって修了しなければならないというわけではない。前掲Bで明らかにした所見にしたがい、委員会は、権限ある機関(ほとんどの国では検察官事務所)は裁判所による有罪判決に代わる手段の可能性を継続的に模索するべきであることを、強調したいと考える。換言すれば、前掲Bで挙げたもののような措置を提示することにより、事案を適切な形で終結させるための努力が続けられるべきである。検察機関が提示するこれらの措置の性質および期間はより過酷なものとなる可能性があり、その場合は子どものための弁護人その他の適切な援助を行なう者が必要となる。このような措置を遂行することは、刑法/少年法上の正式な手続を一時停止するためのひとつの手段であり、当該措置が満足のいく形で実施されればこれらの手続も終了することが、子どもに対して説明されるべきである。 69.裁判所による有罪判決に代わる手段を検察段階で提示する過程においては、子どもの人権および法的保障が全面的に尊重されるべきである。これとの関連で、委員会は、前掲パラ27に掲げた勧告を参照するよう求める。これらの勧告はここでも同様に適用されるものである。 少年裁判所/裁判官による処分 70.条約第40条を全面的に遵守した公正かつ正当な審判(前掲IV章D参照)が行なわれた後は、申立てられた犯罪について有罪と認定された子どもに科すべき措置についての決定が行なわれることになる。法律は、裁判所/裁判官またはその他の権限ある、独立のかつ公正な機関もしくは司法機関がとりうる、施設ケアおよび自由の剥奪に代わる広範な手段について定めておくべきである。これらの手段は条約第40条4項に例示的に列挙されているが、その目的は、自由の剥奪が最後の手段として、かつもっとも短い適当な期間でのみ用いられるようにするところにある(条約第37条(b))。 71.委員会は、犯罪への対応は常に、犯罪の状況および重大性のみならず、子どもの年齢、有責性の低さ、状況およびニーズ、ならびに、社会の種々のニーズおよびとくに長期的ニーズにも比例したものであるべきであると、強調したい。厳格に懲罰的なアプローチは、条約第40条1項に掲げられた少年司法の主導的原則に一致しない(前掲パラ5-14参照)。委員会は、制裁としての体刑が、これらの原則、および、あらゆる形態の残虐な、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いまたは処罰を禁じた第37条に違反するものであることを、あらためて指摘するものである(委員会の一般的意見8号(2006年)(体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利)も参照)。子どもによる重大犯罪の事案では、罪を犯した子どもの状況および犯罪の重大性に比例する措置を、公共の安全および制裁の必要性に関する考慮を含む形で検討することができる。子どもの事案では常に、このような考慮よりも、子どもの福祉および最善の利益を保護し、かつその再統合を促進する必要性が重視されなければならない。 72.委員会は、刑事的処分が子どもの年齢と関連している場合であって、子どもの年齢について矛盾する、決定的でないまたは不確実な証拠しか存在しないときは、子どもには灰色の利益の原則を享受する権利があることに留意する(前掲パラ35および39も参照)。 73.自由の剥奪/施設ケアに代わる手段の面では、このような措置の利用および実施については幅広い経験が蓄積されている。締約国は、このような経験を役立てるとともに、それを自国の文化および伝統にあわせて修正することによって、これらの代替的手段を発展させかつ実施することが求められる。言うまでもなく、強制労働または拷問もしくは非人道的なおよび品位を傷つける取扱いに相当するような措置は明示的に禁じられなければならないし、これらの不法行為の責任者は司法により裁かれるべきである。 74.以上の一般的見解に続いて、委員会は、条約第37条(a)で禁じられている措置について、また自由の剥奪について注意を促したいと考える。 死刑の禁止 75.条約第37条(a)は、犯行時18歳未満だった者が行なった犯罪に対して死刑を科すことはできないという、国際的に受け入れられた基準(たとえば自由権規約第6条5項参照)を再確認したものである。この規定は明確であるが、この規則は18歳未満の者の処刑を禁じているにすぎないと考えている締約国が存在する。しかし、この規則における明示的かつ決定的な基準は犯罪遂行時の年齢である。すなわち、審判もしくは刑の言渡しまたは制裁の執行時に何歳であるかに関わらず、18歳未満の者が行なった犯罪に対して死刑を科すことはできない。 76.委員会は、いまなお18歳未満の者が行なったあらゆる犯罪について死刑を廃止していない少数の締約国が、このような廃止に踏み切るとともに、子どもの死刑を廃止する必要な立法措置が完全にとられるまで、これらの者を対象とするあらゆる死刑の執行を停止するよう勧告する。死刑が言い渡されているときは、条約に全面的に一致する制裁へと変更されるべきである。 仮釈放のない終身刑の禁止 77.犯罪を行なったときに18歳未満であったいかなる子どもも、釈放または仮釈放の可能性がない終身刑を言渡されるべきではない。子どもに科されるあらゆる刑について、釈放の現実的可能性があるべきであり、かつ当該可能性が定期的に考慮されるべきである。これとの関連で、委員会は、ケア、保護または治療の目的で措置されたあらゆる子どもに対して定期的再審査の権利を保障している、条約第25条を参照するよう求める。委員会は、釈放または仮釈放の可能性がない終身刑を実際に子どもに言い渡している締約国に対し、このような制裁を科すにあたっては条約第40条1項に掲げられた少年司法の目的を全面的に遵守し、かつその実現に向けて全力を尽くさなければならないことを、想起するよう求めるものである。このことは、とくに、このような収監刑を言い渡された子どもを対象として、その釈放、再統合、および社会において建設的な役割を果たす能力の構築を目的とした教育、処遇およびケアが提供されるべきであることを意味する。また、子どもの釈放の可能性について決定するために、子どもの発達および進歩を定期的に審査することも求められる。子どもに終身刑を科すことは、釈放の可能性があったとしても、少年司法の目的の達成を、不可能ではないにせよ非常に困難にする可能性が高いことを踏まえ、委員会は、締約国に対し、18歳未満の者が行なった犯罪についてあらゆる形態の終身刑を廃止するよう強く勧告するものである。 → 後編に続く 更新履歴:ページ作成(2011年4月24日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/33.html
欧州評議会・性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する条約(2007年) 原文英語(平野裕二仮訳〔日本語訳全文PDF〕)チャイルドフレンドリー版(PDF、英語) 解説:平野裕二「ヨーロッパで子どもの性的搾取・性的虐待に関する新条約が誕生~日本でも求められる包括的視点~」〔PDF〕(2007年執筆) 目次 前文 第1章-目的、差別の禁止の原則および定義第1条-目的 第2条-差別の禁止の原則 第3条-定義 第2章-予防措置第4条-原則 第5条-子どもに接して働く者の採用、訓練および意識啓発 第6条-子どもの教育 第7条-予防的介入のプログラムまたは措置 第8条-一般公衆を対象とする措置 第9条-子ども、民間部門、メディアおよび市民社会の参加 第3章-専門の公的機関および調整機関第10条-調整および連携のための国内措置 第4章-被害者に対する保護措置および援助第11条-原則 第12条-性的搾取または性的虐待の疑いの通報 第13条-ヘルプライン 第14条-被害者への援助 第5章-介入のプログラムまたは措置第15条-一般的原則 第16条-介入のプログラムおよび措置を受ける者 第17条-情報および同意 第6章-刑事実体法第18条-性的虐待 第19条-児童買春に関わる犯罪 第20条-児童ポルノに関わる犯罪 第21条-ポルノ的パフォーマンスへの子どもの参加に関わる犯罪 第22条-子どもを堕落させる犯罪 第23条-性的目的での子どもの勧誘 第24条-幇助または教唆および未遂 第25条-裁判権 第26条-法人の責任 第27条-制裁および措置 第28条-加重事由 第29条-過去の有罪判決 第7章-捜査、訴追および手続法(以下、CoE 子どもの性的搾取・虐待条約(2))第30条-原則 第31条-一般的保護措置 第32条-手続の開始 第33条-時効 第34条-捜査 第35条-子どもの事情聴取 第36条-刑事裁判手続 第8章-データの記録および保管第37条-有罪判決を受けた性犯罪者に関する国内データの記録および保存 第9章-国際協力第38条-国際協力のための一般的原則および措置 第10章-監視機構第39条-締約国委員会 第40条-その他の代表 第41条-締約国委員会の職務 第11章-他の国際文書との関係第42条-国際連合の子どもの権利に関する条約ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する同条約の選択議定書との関係 第43条-その他の国際文書との関係 第12章-条約改正第44条-改正 第13章-最終条項第45条-署名および発効 第46条-条約への加入 第47条-領域的適用 第48条-留保 第49条-廃棄 第50条-通告 前文 欧州評議会の加盟国およびこの条約の他の加盟国は、 欧州評議会の目的が、加盟国間におけるさらなる統一を達成することであることを考慮し、 すべての子どもが、その未成年者としての地位によってその家族、社会および国に対して要求されている保護措置に対する権利を有していることを考慮し、 子どもの性的搾取、とくに児童ポルノおよび児童買春、ならびにあらゆる形態の子どもの性的虐待(海外で行なわれる行為を含む)が子どもの健康および心理社会的発達にとってきわめて有害であることを認め、 子どもの性的搾取および性的虐待が、とくに子どもおよび加害者の双方が情報通信技術(ICT)をますます利用するようになっていることと関わって国内的にも国際的にも憂慮すべき割合に達してきており、かつ、このような子どもの性的搾取および性的虐待を防止しかつこれと闘うためには国際協力が必要であることを認め、 子どものウェルビーイングおよび最善の利益はすべての加盟国が共有する根本的価値であり、かついかなる差別もなく促進されなければならないことを考慮し、 第3回欧州評議会国家元首政府首班サミット(ワルシャワ、2005年5月16~17日)で採択された行動計画が、子どもの性的搾取に終止符を打つための措置の策定を求めていることを想起し、 とくに、子どもおよび若年成人の性的搾取、ポルノおよび買春ならびに人身取引に関する閣僚委員会勧告R(91)11号、性的搾取からの子どもの保護に関する勧告Rec(2001)16、ならびに、サイバー犯罪に関する条約(ETS No.185)(とくにその第9条)および人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約(CETS No.197)を想起し、 人権及び基本的自由の保護に関する条約(1950年、ETS No.5)、改正欧州社会憲章(1996年、ETS No.163)および子どもの権利の行使に関する欧州条約(1996年、ETS No.160)に留意し、 また、子どもの権利に関する国際連合条約(とくにその第34条)、子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春に関する選択議定書、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人、とくに女性および子どもの取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書、および、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する条約にも留意し、 子どもの性的搾取および児童ポルノとの闘いに関する欧州連合理事会枠組決定(2004/68/JHA)、刑事手続における被害者の地位に関する欧州連合理事会枠組決定(2001/220/JHA)、および、人身取引との闘いに関する欧州連合理事会枠組決定(2002/629/JHA)〔日本語訳PDF〕に留意し、 この分野における他の関連の国際的文書およびプログラム、とくに第1回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議(1996年8月27~31日)で採択されたストックホルム宣言および行動のための課題、第2回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議(2001年12月17~20日)で採択された横浜グローバル・コミットメント、第2回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議準備会議(2001年11月20~21日)で採択されたブダペスト・コミットメントおよび行動計画、国際連合総会決議S-27/2「子どもにふさわしい世界」、ならびに、第3回サミットで採択されかつモナコ会議(2006年4月4~5日)で正式に開始された3か年計画「子どものための、かつ子どもとともに進めるヨーロッパの構築」を正当に考慮し、 加害者が何者であれ性的搾取および性的虐待から子どもを保護し、かつ被害者に援助を提供するという共通の目標に効果的に寄与することを決意し、 あらゆる形態の子どもの性的搾取および性的虐待との闘いの予防的、保護的および刑事法的側面に焦点を当て、かつ具体的な監視機構を設ける、包括的な国際文書を作成する必要があることを考慮し、 次のとおり協定した。 第1章-目的、差別の禁止の原則および定義 第1条-目的 1.この条約の目的は、次のとおりである。 a.子どもの性的搾取および性的虐待を防止し、かつこれと闘うこと。 b.性的搾取および性的虐待の被害を受けた子どもの権利を保護すること。 c.子どもの性的搾取および性的虐待に対抗する国内的および国際的協力を促進すること。 2.この条約は、締約国によるその規定の効果的実施を確保するため、特定の監視機構を設置する。 第2条-差別の禁止の原則 締約国によるこの条約の規定の実施、とくに被害者の権利を保護するための措置の享受は、性、人種、皮膚の色、言語、宗教、政治的その他の意見、国民的もしくは社会的出身、国民的マイノリティとのつながり、財産、出生、性的指向、健康状態、障害またはその他の地位等のいかなる事由による差別もなく、確保される。 第3条-定義 この条約の適用上、 a.「子ども」とは、18歳未満のすべての者をいう。 b.「子どもの性的搾取および性的虐待」には、この条約の第18条から第23条までにおいて掲げられている行動を含む。 c.「被害者」とは、性的搾取または性的虐待の対象とされたすべての子どもをいう。 第2章-予防措置 第4条-原則 各締約国は、あらゆる形態の子どもの性的搾取および性的虐待を防止しかつ子どもを保護するため、必要な立法上その他の措置をとる。 第5条-子どもに接して働く者の採用、訓練および意識啓発 1.各締約国は、教育、保健、社会的保護、司法および法執行の部門ならびにスポーツ、文化および余暇活動に関わる分野において子どもに日常的に接する者の間で子どもの保護および権利に関する意識啓発を図るため、必要な立法上その他の措置をとる。 2.各締約国は、1に掲げられた者が、子どもの性的搾取および性的虐待、それを特定する手段ならびに第12条第1項で述べられている可能性について十分な知識を有することを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 3.各締約国は、職務遂行が子どもとの日常的接触を意味する職に就くための条件において、これらの職に就こうとする者が子どもの性的搾取または性的虐待の行為について有罪判決を受けたことがないことが確保されるようにするため、その国内法に一致する方法で、必要な立法上その他の措置をとる。 第6条-子どもの教育 各締約国は、初等中等教育期間中の子どもが、性的搾取および性的虐待の危険性ならびに自衛手段に関する、その発達しつつある能力に適合する情報を受け取ることを確保するために、必要な立法上その他の措置をとる。適当な場合には親と連携しながら提供されるこの情報は、セクシュアリティに関する情報のより一般的な文脈の中で与えられるものとし、かつ、リスクの高い状況、とくに新しい情報通信技術の利用をともなう状況に特段の注意を払う。 第7条-予防的介入のプログラムまたは措置 各締約国は、この条約にしたがって定められたいずれかの犯罪を行なってしまうのではないかと恐れる者が、適当な場合に、犯罪実行の危険性を評価しかつ予防するための効果的な介入プログラムまたは介入措置にアクセスできることを確保する。 第8条-一般公衆を対象とする措置 1.各締約国は、子どもの性的搾取および性的虐待の現象ならびにとりうる予防措置についての情報を提供する、一般公衆向けの意識啓発キャンペーンを促進しまたは実施する。 2.各締約国は、この条約にしたがって定められた犯罪を広告する資料の配布を防止しまたは禁止するため、必要な立法上その他の措置をとる。 第9条-子ども、民間部門、メディアおよび市民社会の参加 1.各締約国は、子どもの性的搾取および性的虐待との闘いに関する国の政策、プログラムその他の取り組みの策定および実施に、子どもがその発達しつつある能力にしたがって参加することを奨励する。 2.各締約国は、民間部門(とくに情報通信技術部門、観光旅行産業部門および銀行金融部門)ならびに市民社会に対し、子どもの性的搾取および性的虐待を防止するための政策の立案および実施に参加し、かつ自主規制または共同規制を通じて内部規範を実施するよう奨励する。 3.各締約国は、メディアの独立および報道の自由を正当に尊重しながら、メディアに対し、子どもの性的搾取および性的虐待のあらゆる側面に関する適切な情報を提供するよう奨励する。 4.各締約国は、適当な場合には基金を創設することも含め、性的搾取および性的虐待を防止しかつ子どもをこれらの行為から保護することを目的として市民社会が実施するプロジェクトおよびプログラムに資金が提供されることを奨励する。 第3章-専門の公的機関および調整機関 第10条-調整および連携のための国内措置 1.各締約国は、子どもの性的搾取および性的虐待からの保護、その防止およびこれとの闘いを担当する諸機関、とくに教育部門、保健部門、社会サービス機関ならびに法執行機関および司法機関との間で国レベルまたは地方レベルでの調整が行なわれることを確保するため、必要な措置をとる。 2.各締約国は、次の機関を設置しまたは指定するために必要な立法上その他の措置をとる。 a.子どもの権利を促進しおよび保護するための、独立した、権限ある国または地方の機関。その際、これらの機関に対して具体的資源および責任が与えられることを確保するものとする。 b.子どもの性的搾取および性的虐待の現象を観察しおよび評価することを目的として国または地方のレベルに設けられ、かつ市民社会と連携して活動する、データ収集機構または担当部署。その際、個人情報保護に関わる要件を正当に尊重するものとする。 3.各締約国は、子どもの性的搾取および性的虐待の防止およびこれとの闘いを改善するため、権限ある国の機関、市民社会および民間部門間の協力を奨励する。 第4章-被害者に対する保護措置および援助 第11条-原則 1.各締約国は、被害者、その近親者およびこれらの者のケアに責任を負ういかなる者に対しても必要な支援を提供するために、効果的な社会プログラムを確立しかつ分野横断型の体制を設置する。 2.各締約国は、被害者の年齢が確定されておらず、かつ被害者が子どもであると考える理由があるときは、被害者の年齢の確認を待たず、子どもに対して提供される保護および援助の措置が当該被害者に与えられることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 第12条-性的搾取または性的虐待の疑いの通報 1.各締約国は、子どもに接して活動することが求められる一定の専門家に対して国内法で課されている守秘義務の規則により、これらの専門家が、子どもが性的搾取または性的虐待の被害者であると考える合理的理由があるいかなる状況についても子どもの保護に責任を負う機関に通報する可能性が妨げられないことを、確保する。 2.各締約国は、子どもの性的搾取または性的虐待が行なわれていることを知っているまたはそのように善意で考えるいかなる者に対しても当該事実を権限ある機関に通報するよう奨励するため、必要な立法上その他の措置をとる。 第13条-ヘルプライン 各締約国は、電話またはインターネットによるヘルプラインのような、相談者に対し、たとえ秘密裡にであってもまたは相談者の匿名性を正当に顧慮しながら助言を提供する情報サービスの設置を奨励しおよび支援するため、必要な立法上その他の措置をとる。 第14条-被害者への援助 1.各締約国は、身体的および心理社会的回復の面で被害者を短期的および長期的に援助するため、必要な立法上その他の措置をとる。この項にしたがってとられる措置においては、子どもの意見、ニーズおよび関心事が正当に考慮される。 2.各締約国は、国内法で定められた条件のもと、被害者への援助に携わっている非政府組織、その他の関連の団体またはその他の市民社会関係者と協力するための措置をとる。 3.親または子どもを養育する者がその子どもの性的搾取または性的虐待に関与しているときは、第11条第1項を適用してとられる介入手続において以下の可能性も考慮する。 a.加害者とされる者を退去させること。 b.被害者をその家族環境から分離すること。当該分離の条件および期間は、子どもの最善の利益にしたがって決定されるものとする。 4.各締約国は、被害者に近しい者が、適当な場合には治療的援助、とくに緊急心理ケアから利益を受けられることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 第5章-介入のプログラムまたは措置 第15条-一般的原則 1.各締約国は、子どもに対する性的性質の再犯を予防しかつそのおそれを最小限に留める目的で、国内法にしたがい、第16条第1項および第2項に掲げられた者を対象とする効果的な介入のプログラムまたは措置を確保しまたは促進する。当該プログラムまたは措置には、国内法に掲げられた条件にしたがい、手続中のいずれの時点でも、刑務所内外でアクセスできるものとする。 2.各締約国は、国内法にしたがい、権限ある公的機関(とくに保健ケア・サービス機関および社会サービス機関)ならびに司法機関、および、第16条第1項および第2項に掲げられた者の事後対応に責任を負うその他の機関との間のパートナーシップその他の形態の協力の発展を確保しまたは促進する。 3.各締約国は、適切なプログラムまたは措置を発見する目的で、国内法にしたがい、第16条第1項および第2項に掲げられた者がこの条約にしたがって定められた犯罪をふたたび行なう危険性およびこの点について考えられるリスクの評価を行なえるようにする。 4.各締約国は、国内法にしたがい、実施されたプログラムおよび措置の有効性の評価を行なえるようにする。 第16条-介入のプログラムおよび措置を受ける者 1.各締約国は、国内法にしたがい、この条約にしたがって定められたいずれかの犯罪を理由として刑事手続の対象とされた者が、被告人の権利および公正かつ公平な裁判の要件を害しまたはこれらに反することのない条件のもとで、かつ、とくに無罪推定の原則に関わる規則を正当に尊重されながら、第15条第1項に掲げられたプログラムまたは措置にアクセスできることを確保する。 2.各締約国は、国内法にしたがい、この条約にしたがって定められたいずれかの犯罪を理由として有罪判決を受けた者が、第15条第1項に掲げられたプログラムまたは措置にアクセスできることを確保する。 3.各締約国は、子どもの性的行動の問題に対処する目的で、国内法にしたがい、性犯罪を行なった子ども(刑事責任年齢に達していない子どもを含む)の発達上のニーズに応じる形で介入のプログラムまたは措置が開発されまたは修正されることを確保する。 第17条-情報および同意 1.各締約国は、国内法にしたがい、第16条に掲げられた者であって介入のプログラムまたは措置の提案を受けた者が、当該提案の理由について十分に情報を提供され、かつ、事情を十分に承知したうえでプログラムまたは措置に同意することを確保する。 2.各締約国は、国内法にしたがい、介入のプログラムまたは措置の提案を受けた者が当該提案を拒否できること、および、有罪判決を受けた者の場合には拒否がどのような結果につながりうるかについて知らされることを確保する。 第6章-刑事実体法 第18条-性的虐待 1.各締約国は、故意に行なわれる次の行為が犯罪とされることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 a.国内法の関連規定にしたがって性的活動に関する法定年齢に達していない子どもと性的活動を行なうこと。 b.次のいずれかの場合に子どもと性的活動を行なうこと。威迫、有形力または脅迫が用いられるとき。 子どもとの信頼関係、子どもに対する権威または影響力を有すると認められている立場(家庭内におけるものを含む)が濫用されるとき。 とくに精神的もしくは身体的障害または依存の状況を理由として子どもが置かれている特別に脆弱な状況が悪用されるとき。 2.1の規定の適用上、各締約国は、当該年齢に達していない子どもと性的活動を行なうことが禁じられる年齢を決定する。 3.1aの規定は、未成年者同士の同意に基づく性的活動の規制を意図したものではない。 第19条-児童買春に関わる犯罪 1.各締約国は、権限なしに故意に行なわれる次の行為が犯罪とされることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 a.売春目的で子どもを募集し、または子どもを売春に参加せしめること。 b.子どもを威迫して売春させること、または当該目的で子どもから利益を得ることもしくはその他の形態により子どもを搾取すること。 c.児童買春を利用すること。 2.この条の適用上、「児童買春」とは、金銭その他のいずれかの形態の報酬または対価が与えられまたはその供与が約束された状況で、子どもを性的活動のために用いることをいう。このような供与、約束または対価の提供が子どもまたは第三者に対して行なわれるかどうかは問わない。 第20条-児童ポルノに関わる犯罪 1.各締約国は、権限なしに故意に行なわれる次の行為が犯罪とされることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 a.児童ポルノを製造すること。 b.児童ポルノの提供を申し出、またはその利用を可能にすること。 c.児童ポルノを頒布しまたは送信すること。 d.自己または他人のために児童ポルノを取得すること。 e.児童ポルノを所持すること。 f.情報通信技術を通じ、情を知って児童ポルノにアクセスすること。 2.この条の適用上、「児童ポルノ」とは、現実のもしくは擬似のあからさまな性的活動に従事する子どもを視覚的に描写したあらゆる資料または子どもの性器を主として性的目的で描写したあらゆる表現をいう。 3.各締約国は、1aおよびeの規定の全部または一部を、次のポルノ的資料の製造および所持について適用しない権利を留保することができる。 当該ポルノ的資料が、実際には存在しない子どもの擬似描写または写実的画像のみによって構成されているとき。 関与する子どもたちが第18条第2項を適用して定められた年齢に達しており、かつ、当該画像がその同意を得ておよび自分たち自身の私的利用のみを目的として製造および所持されるとき。 4.各締約国は、1fの規定の全部または一部を適用しない権利を留保することができる。 第21条-ポルノ的パフォーマンスへの子どもの参加に関わる犯罪 1.各締約国は、権限なしに故意に行なわれる次の行為が犯罪とされることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 a.子どもを募集してポルノ的パフォーマンスに参加させ、または子どもをそのようなパフォーマンスに参加せしめること。 b.子どもを威迫してポルノ的パフォーマンスに参加させること、または当該目的で子どもから利益を得ることもしくはその他の形態により子どもを搾取すること。 c.子どもが参加するポルノ的パフォーマンスの場に情を知って出席すること。 2.各締約国は、1cの規定を、子どもが1aまたはbに一致する形で募集されまたは威迫された場合に限って適用する権利を留保することができる。 第22条-子どもを堕落させる犯罪 各締約国は、第18条第2項を適用して定められた年齢に達していない子どもに故意にかつ性的目的で性的虐待または性的活動を目撃させることを、たとえ参加を強要しない場合でも犯罪とするため、必要な立法上その他の措置をとる。 第23条-性的目的での子どもの勧誘 各締約国は、成人が、第18条第2項を適用して定められた年齢に達していない子どもに対し、情報通信技術を通じ、第18条第1項または第20条第1項aにしたがって定められたいずれかの犯罪をその子どもに対して行なう目的で会うことを故意に提案することを、このような提案後に実際に会うことにつながる実体的行為が行なわれたときは犯罪とするため、必要な立法上その他の措置をとる。 第24条-幇助または教唆および未遂 1.各締約国は、この条約にしたがって定められたいずれかの犯罪の遂行を幇助しまたは教唆することを、当該幇助または教唆が故意に行なわれたときは犯罪とするため、必要な立法上その他の措置をとる。 2.各締約国は、この条約にしたがって定められたいずれかの犯罪の未遂が故意に行なわれたときはこれを犯罪とするため、必要な立法上その他の措置をとる。 3.各締約国は、2の規定の全部または一部を、第20条第1項b、d、eおよびf、第21条第1項c、第22条ならびに第23条にしたがって定められた犯罪に適用しない権利を留保することができる。 第25条-裁判権 1.各締約国は、次のいずれかの場合において、この条約にしたがって定められたいかなる犯罪についても裁判権を設定するため、必要な立法上その他の措置をとる。 a.当該犯罪が自国の領域内で行なわれるとき。 b.当該犯罪が自国を旗国とする船舶内で行なわれるとき。 c.当該犯罪が自国の法令に基づいて登録された航空機内で行なわれるとき。 d.当該犯罪が自国の国民のいずれかによって行なわれるとき。 e.当該犯罪が自国の領域内に常居所を有する者によって行なわれるとき。 2.各締約国は、この条約にしたがって定められたいずれかの犯罪が自国の国民のいずれかまたは自国の領域内に常居所を有する者に対して行なわれる場合に当該犯罪について裁判権を設定するため、必要な立法上その他の措置をとるよう努める。 3.各締約国は、署名時または批准書、受託書、承認諸もしくは加入書の寄託時に、欧州評議会事務総長に宛てた宣言により、この条の1eに掲げられた裁判権に関する規則を適用しない権利または特定の場合もしくは条件においてのみ適用する権利を留保する旨、宣言することができる。 4.この条約の第18条、第19条、第20条第1項aならびに第21条第1項aおよびbにしたがって定められた犯罪の訴追のため、各締約国は、1dに関わる自国の裁判権が、当該行為がその遂行地において犯罪とされていなければならないという条件に服させられないことを確保するために、必要な立法上その他の措置をとる。 5.各締約国は、署名時または批准書、受託書、承認諸もしくは加入書の寄託時に、欧州評議会事務総長に宛てた宣言により、第18条第1項b第2インデントおよび第3インデントにしたがって定められた犯罪に関わるこの条の4の規定の適用を、自国民が自国の領域内にその常居所を有している場合に限定する権利を留保する旨、宣言することができる。 6.この条約の第18条、第19条、第20条第1項aおよび第21条にしたがって定められた犯罪の訴追のため、各締約国は、1dおよびeに関わる自国の裁判権が、被害者からの申告または犯罪実行地である国からの告発がなければ訴追を開始することができないという条件に服させられないことを確保するために、必要な立法上その他の措置をとる。 7.各締約国は、容疑者が自国の領域内に所在し、かつ容疑者の国籍のみを理由として他の締約国に当該容疑者の引渡しを行なわない場合においてこの条約にしたがって定められた犯罪についての裁判権を設定するため、必要な立法上その他の措置をとる。 8.この条約にしたがって定められた犯罪が行なわれたとされる場合において、二以上の締約国が当該犯罪についての裁判権を主張するときは、関係締約国は、適当な場合には、訴追のためにもっとも適した裁判管轄国を決定するため協議を行なう。 9.この条約は、国際法の一般規則を損なわないかぎりにおいて、締約国がその国内法にしたがって行使するいかなる刑事裁判権も排除するものではない。 第26条-法人の責任 1.各締約国は、個人としてまたは法人の機関の一部として行動するいずれかの自然人であって当該法人内部で指導的地位にある者が、次のいずれかの権限に基づき、かつ当該法人の利益のためにこの条約にしたがって定められた犯罪を行なう場合に、当該犯罪に関する責任を当該法人に負わせ得ることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 a.法人の代表権。 b.法人のために決定を行なう権限。 c.法人内部で管理を行なう権限。 2.すでに1で規定されている場合とは別に、各締約国は、1に掲げられた自然人による監督または管理の欠如により、法人の権限に基づき活動する自然人が当該法人の利益のためにこの条約にしたがって定められた犯罪を行なうことが可能になる場合に、当該犯罪に関する責任を当該法人に負わせ得ることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 3.法人の責任は、締約国の法的原則にしたがって、刑事上、民事上または行政上のものとすることができる。 4.法人の責任は、犯罪を行なった自然人の刑事上の責任に影響を及ぼすものではない。 第27条-制裁および措置 1.各締約国は、この条約にしたがって定められた犯罪が、その重大さを考慮に入れた効果的な、均衡のとれたかつ抑止効果のある制裁によって処罰されることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 2.各締約国は、第26条の規定にしたがって責任を負うものとされる法人に対し、効果的な、均衡のとれたかつ抑止効果のある制裁が科されることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。当該制裁には、刑罰としてのまたは刑罰以外の金銭的制裁を含むものとし、かつ、その他の措置、とくに次の措置を含むことができる。 a.公的な給付金または補助金の受給資格を停止すること。 b.商業的活動を行なう資格を一時的または恒久的に停止すること。 c.司法的監督のもとに置くこと。 d.裁判所による解散命令を発すること。 3.各締約国は、次の目的のために必要な立法上その他の措置をとる。 a.次のものの押収および没収について定めること。この条約にしたがって定められた犯罪を行なうためまたはその便宜を図るために用いられる物品、文書その他の道具。 当該犯罪から生じる収益または当該収益に相当する価額の財産。 b.この条約にしたがって定められたいずれかの犯罪を行なうために用いられるいずれかの施設を、善意の第三者の権利を侵害することなく、一時的または恒久的に閉鎖できるようにすること、または、加害者に対し、犯罪が行なわれた過程で生じた子どもとの接触をともなう職業上の活動もしくはボランティア活動を行なうことを一時的または恒久的に禁ずること。 4.各締約国は、加害者に関して、親としての権利の喪失宣告または有罪判決を受けた者の監視もしくは監督のような他の措置をとることができる。 5.各締約国は、この条約にしたがって定められたいずれかの犯罪の被害者を対象とする予防プログラムおよび援助プログラムの資金とするため、この条にしたがって没収された犯罪収益または財産を特別基金に配分することができる旨、定めることができる。 第28条-加重事由 各締約国は、この条約にしたがって定められた犯罪に関わる制裁の決定において、次の事由を、当該事由がすでに犯罪の構成要件の一部となっている場合を除き、国内法の関連規定に一致する形で加重事由として考慮できることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。 a.当該犯罪が被害者の身体的または精神的健康を深刻に損なったこと。 b.当該犯罪に先行しまたは並行して拷問または重大な暴力行為が行なわれたこと。 c.当該犯罪がとくに脆弱な状況にある被害者に対して行なわれたこと。 d.当該犯罪が、家族構成員、子どもと同居している者または子どもに対する権威を濫用した者によって行なわれたこと。 e.当該犯罪がともに行動する複数の者によって行なわれたこと。 f.当該犯罪が犯罪組織の枠組みのなかで行なわれたこと。 g.加害者が過去に同じ性質の犯罪を理由として有罪判決を受けていること。 第29条-過去の有罪判決 各締約国は、制裁の決定において、この条約にしたがって定められた犯罪に関わって他の締約国が言い渡した終局判決を考慮できるようにするため、必要な立法上その他の措置をとる。 CoE 子どもの性的搾取・虐待条約(2)へ続く 更新履歴:ページ作成(2011年7月28日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/28.html
子どもの権利委員会・一般的意見11号:先住民族の子どもとその条約上の権利(2) → 先住民族の子どもの権利(1)に統合