約 2,231,872 件
https://w.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1952.html
http //japanese.joins.com/article/article.php?aid=113859 servcode=A00 sectcode=A00 極右派の歴史わい曲教科書、新たに検定合格/日本 極右派の歴史わい曲教科書、新たに検定合格/日本(1) (2) (1) 韓国侵略を正当化し植民支配を合理化する歪曲(わいきょく)された内容を盛り込んだ日本の教科書が2種類に増えることになった。 日本の文部科学省(文科省)は9日、教科書検定で、日本の極右勢力からなる「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)が自由社を通じ発行する中学社会科(歴史的分野)の教科書(写真)に対し、合格判定を下した。扶桑社版の教科書に続き2度目の「歴史を歪曲した中学校教科書」となる。 外交通商部(外交部)の文太暎(ムン・テヨン)スポークスマンは声明を出し「過ちを合理化、美化する誤った歴史観に基づく歴史教科書が、日本政府の検定を通過したことに対し、強力に抗議し、抜本的な是正を求める」と促した。外交部はまた、在韓日本大使館の高橋礼一郎公使を外交部に呼び、口頭で抗議した。 自由社版の歴史教科書は各自治体の教育委員会と国公私立の校長が採用するかどうかを判断、来年新学期から導入されることになる。「つくる会」は、これまで扶桑社を通じ教科書を作ってきた。しかし、著作権や筆陣の選定を含む運営方針の対立などから、一部メンバーが分かれ、自由社版の教科書を作った。残りのメンバーらは年内に、扶桑社版の検定承認を文科省に申請する予定だ。 自由社版は昨年12月の検定で、516カ所と多くの修正点が指摘され、不合格となったことがある。これによって、「旧日本軍が(第2次世界大戦)侵略地域で捕虜になった敵国の兵士と非武装の民間人に対し、不当な殺害と虐待を完璧に予防できなかった」という部分は「不当な殺害と虐待を起こし、大きな惨禍を残した」に修正された。 「日本が韓国の近代化を助けた」という記述も「誤解の恐れがある」と指摘され、「軍制改革を支援した」に修正された。しかし、侵略の歴史を縮小または歪曲した部分は、従来の扶桑社版とほぼ同じだ。 自由社版は、韓日両国の学界が否定する「日本府(大和朝廷が朝鮮南部を支配するために任那に置いたという官府)」を記述し、東アジアで日本だけが独自の年号を使ったとしている。また、19世紀の江華島(カンファド)事件を挑発した主体と目的・経緯を隠蔽し、日本が試みた韓国侵略の意図を故意に否定している。 (2) http //japanese.joins.com/article/article.php?aid=113860 servcode=A00 sectcode=A00 このほか、地政学的な観点に基づく「韓半島が脅威になる」という見方を強調し、日本の帝国主義による韓国侵略と支配を合理化しようとした。 旧日本軍従軍慰安婦に関する記述も扶桑社版と同じく省略された。朝日新聞は「自由社版は“つくる会”が出版社だけ変えて作ったものであることから、文章の詳細や表現まで扶桑社版とほぼ同じ」と報じた。 韓国の北東アジア歴史財団は「自由社版の教科書を分析したところ、扶桑社版の目次(82項目)に2つが追加されただけで、歴史歪曲で一貫する大同小異な内容」とし「文部科学省が扶桑社版をやや書き替えたレベルの教科書を審議対象にしたのは、常識的に理解しにくい。日本社会全般に広がる右傾化のレベルから注視すべき必要がある」という立場を表した。 01年4月から2回にわたり検定審査を通過した扶桑社版は、皇国史観に基づく日本の帝国主義を美化し、韓国侵略を正当化するなどの内容を盛り込んでいる。そのため、初めて検定を申請する段階から、韓国・中国はもちろん日本内でも大きな反発を買うなど物議をかもしていた。 現在、扶桑社版の教科書を採用している中学校は全体の0.4%だ。教科書検定は4年に1回ずつ行われる。 沖縄戦ニュース
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5134.html
「涼宮ハルヒの鬱憤」の続編です。 狼が牙を研がせる襖から 蕾み開いた蓮の花。 散っては散っては夢の中。 暴れる時の移ろいは もはや誰にも止められぬ――― 先週までのハロウィン調査(正確にはパーティー)も当たり前の事だが、 特に成果もなく一旦中止となり、俺は期末テストに向けて部室で 鬼教官・ハルヒの超スパルタ教育を受けている。 「ハルヒ。お前、その竹刀どこから持ってきたんだ?」 「つべこべ言わずに覚える!」 鼻先に突きつけられた竹刀に怯みながら俺はようやく ハルヒの鋭い剣筋を教科書で受け止める反射神経を身に付けたようだ。 今日は日本史。 俺の最も苦手な教科の一つだ。 「日本史は覚えようと思っても頭に入ってこないんだよな。 教科書の文字が漢字ばっかりで…。 大体、試験範囲は幕末、明治維新だけって言ったってこの時代の奴ら、 色んな面倒事を起こし過ぎだ。」 「覚えられないのはあんたに気合いと根性と脳みそが足りないだけ!」 くそっ…反論の余地無し…。 目の前にいる古泉はニヤニヤしながらお茶を飲んでいる。 「しばらく一緒にゲームが出来ないのが実に残念です。」 勉強しなくても余裕と言った古泉の佇まいが許せない。 神様はなんて不公平なんだ。いや、神様はハルヒだからえ~と…? 「はい、今から10分の休憩を入れるわ。」 最初で最後の休憩時間。 「キョン!はい、これ。」 手渡されたのはカカオ99%の苦~いチョコと緑茶。 ハルヒは「チョコと緑茶は記憶力を良くしてくれるの!」と言っていたが、 俺は胸焼けを起こして集中力を刈り取られそうだ…。 朝比奈さんの入れてくれるお茶が恋しい…。 長門はいつものように読書をしている。 まぁ、こいつに試験勉強は必要無いだろう。 「今回は何を読んでるんだ?長門。」 長門はそっと本を上げて表紙をこちらに向けた。 しまざき…ふじむら?なんで名字が2つ並んでるんだ? 「ほぅ…島崎藤村の『夜明け前』ですか。」 良かった…口に出さなくて…。 「キョン、どうせあんたの事だから『どっちが名字だ?』とか思ったんでしょ?」 そういう勘は本当に鋭いな、ハルヒ。 苦いチョコを緑茶で流し込もうとしたその時、部室の扉が開き、 最近またグッとセックスィ~さを増したSOS団のプレイメイツッ!!こと、 朝比奈さんのご登場だ。 「こんにちは。新しいお茶の葉も見つけたんで皆にも、と思って。 だから今日はここでお勉強しようかなって。」 と、何故かメイド服を手に取る朝比奈さん。何故!? 朝比奈さんが「今日は珍しいお茶の葉が手に入ったんです~。」と 入れてくれたのは蓮(はす)の花茶という最高級品らしく、 なんでも舟で池に咲いてる蓮の花の蕾みを一つずつ摘んで作るものらしい。 う~ん、フローラルな香り…。 さっきまで「歴史っていうのは流れで覚えるの!」と 解説用のノートを竹刀で差しながら叫んでいたハルヒは 俺が黙々と教科書に向かっているのをジーッと見ていたか思うと 夕陽の暖かさに耐えられなかったのか頬杖を付きながら ちょっと遅めのお昼寝タイムに入っていた。 俺もさっきの蓮の花茶の香りに当てられたのか眠くなってきた…。 「ここでサボったら後で涼宮さんに何をされるか分かりませんよ。」 俺の心を見透かしたように古泉はニヤついていた。 分かってるよ…俺もハルヒに竹刀でぶっ叩かれるのはごめんだ…。 その時、部室内がフッと暗くなったので窓の外に目をやると さっきまでの夕陽が消え、灰色の空間が押し迫ってきていた。 「古泉、これは…」 古泉に目をやるとさっきまでのニヤケ顔と違い、真顔で驚いたような表情をしていた。 「閉鎖空間のようですね。しかし、涼宮さんは眠り込んでおいでのようですが…」 と、古泉が喋り終わらないうちに眩しい光が部室を包んだかと思うと、 俺は気絶しそうな目眩に襲われた。 業火に焼かれる月の都の闇の中。 踊る金魚は池の中。 降り注ぐ血の色煙る雨の音。 想う心は一つでもあちらこちらと相容れぬ――― 「ぐおっ!!」 なんか思いっきり腹を踏まれた。痛い…。 「おめぇ何者じゃ?妙な格好しおってからに。」 何だ?ここはどこだ?あれ?谷口???ハルヒ達はどこ行った? 「何しやがんだ?谷口。大体、お前こそ変な格好しやがって…」 「お前、何故わ、わ、わしの名を?怪しい奴じゃ!どこのもんか知らんが、 毛唐みたいな服着よってからに不届千万!攘夷じゃ!この奸賊めが!」 はぁ?と思う間もなく、この着物とちょんまげ姿の谷口は でっかい刃物を取り出し、俺の鼻先に突きつけてきた。 朝倉の時といい、今といい、俺は先端恐怖症にでもなってしまいそうだ…。 冷や汗が背中を伝う、まさにその時だった。 「いたぞ!!こっちだ!!」 と、何人もの集団が大声を出しながらこちらに向かってくる。 「しもうた…。」 一言呟いてちょんまげ谷口は刀を納め、逃げ出していた。 「おい!待てよ!」 俺はとりあえずこの場の空気を読んでちょんまげ谷口と一緒に走っていた。 「お、お前!何故ついてくるんじゃ!?」 「うるせぇ!とりあえず逃げとけみたいな流れだったからだ!」 狭い路地裏に飛び込み、弁慶と牛若丸が出てきそうな橋を渡り、 寺の境内を抜け、走り続けているとそこは昔、修学旅行で行った 太秦映画村のセットのような屋敷の裏門だった。 「くそっ!袋小路か…お前のせいじゃぞ、毛唐!」 表の大通りから声が聞こえてくる。 どうやら相当な人数が追い掛けてきているようだ。 お前は一体、何をやらかしたんだ?谷口。 と、その時、屋敷の通用門が開くと俺と谷口は襟首を掴まれて引きずり込まれた。 これは一体、何の冗談なのでしょうか? まぁ、百歩譲って長門有希と朝比奈みくるに挟まれているのはまだ理解出来ます。 しかし……何故、僕らはちょんまげを付けて妙なはっぴを着た連中に 大人数で囲まれているのでしょうか? 「お前ら、何者だ!?」 それはこちらの台詞ですよ。 「いきなり目の前に現れよって!妙な格好をしている所を見ると毛唐か?」 「この人達は一体、何なんですか~!?」 会話が噛み合ってませんね。この方達が何者なのか僕が知りたい所です。 「…新撰組。」 おやおや? 「日本において残存する歴史的資料のデータと彼らの姿形が一致している。 理由はわからないが、今は彼らが新撰組だと認識するのが妥当。」 「ふぅ~…理由はわかりませんし、信じたくもありませんが、 確かに彼らは新撰組としか見えない格好をしていらっしゃいますね。」 「そして彼らはこちらを敵性と判断している。」 「キョンくんと涼宮さんはどこにいるんでしょうか~?」 「まずはこの場を切り抜けるのが先決。その後、2人の捜索を開始する。 2人の存在も微弱ながら感知出来る。」 「長門さん、どうやらここでは僕の能力が僅かながらですが、発揮出来るようです。 何故かはわかりませんが、少々お力添えは出来そうです。」 「…助かる。」 「先程から何をごちゃごちゃと!!」 キラリと光ったと思うと四方八方から刃が切り込んできた。 「私が障壁を作る。攻撃はあなたに任せる。 ただし、殺さない程度に力を抑えて。」 「分かっていますよ!」 障壁に雷のような電気が走ったと同時に逃げ道を作る為、攻勢に転じた。 「さぁ、長門さん、朝比奈さん。この爆発の煙幕に紛れて逃げましょう。」 この山、登りゃ何見える? あの谷、降りりゃどこへ行く? 誰にも分からぬ獣道。 草をかき分け、野を抜けて道なき道をただひたすら――― 「不逞浪士に逃げられただと?馬鹿野郎!」 屯所内に怒号が響く。 「すみません…しかし、一緒にいたのが妙な格好をした奴でして 西洋人だと思うのですが何故、攘夷浪士が毛唐共と話をしていたのか? 何か繋がりでもあるのかと思いまして…」 その時、外の廊下から誰かが走ってくる足音が聞こえた。 「副長!副長はおられますか?」 激しく襖が開くと一人の小柄な美男子が立っていた。 彼は八番隊組長・藤堂平助。 北辰一刀流の使い手で常に闘いを一番手で先んじる所から 隊士達の間では『魁(さきがけ)先生』と呼ばれている。 「うるせぇな。今度はなんだ?」 不機嫌な顔と鋭い眼光を藤堂に向けながら目の前に座っている男は答える。 この周囲を沈黙せしめる威圧感と凄みを振りまいている男こそ、 京の攘夷浪士から新撰組隊士までをも震え上がらせる 新撰組・鬼の副長、土方歳三その人である。 「それが副長。先程、三条大橋の辺りで 毛唐みたいな妙な格好をした3人組を見つけやして…。 連行しようとしたところ、抵抗していざこざになりそうな時に それがまた奴ら、天狗みたいに不思議な術を使いやがるんでさ。 突然、目の前に現れたかと思うと、火の玉出したり、雷が落ちたみたいに 影も形もなくなって消えちまったり…。 あいつらは天狗みたいな鼻してると聞いた事がありますが、 本当に天狗みたいな妖術を使いやがるんですね。」 副長は溜息を付いてやれやれ…という顔をしながら 「お前もまたそんな訳の分からん報告を入れんのか、と言いたい所だが、 さっきの島田の話と合わせると攘夷浪士達が何らかの理由で方針を変えたのか、 その妙な格好をした西洋人共と何らかの繋がりがありそうな雰囲気だな。 この前の桝屋古高俊太郎への取り調べや山崎の報告から 今はこの京に不逞浪士が多数、潜伏し、何かを企てているらしい。 浪士と毛唐が手を組むなんざ考えられんし、考えたくもないが…。 ちっ…。ったく、面倒臭ぇ。 そいつらも浪士共と一緒にふん捕まえて縛り上げるか、叩っ斬るか、 徹底的にやらねぇといけねぇみたいだな。」 風もなく、太陽がギラギラと輝いている。 メイド服を冬用に衣替えしていたのでとても暑いです。 3人でなんとか狭い路地の片隅に身を潜める事が出来ました。 「情報統合思念体とのコンタクトに成功。 私の持つデータと情報統合思念体の持つデータの間に生じている齟齬は改善された。 侵入コードを解析…。 やはり時間と空間の位相がずれている。 現在の日付は地球時間に換算して、1864年7月7日。 空間座標は京都。 涼宮ハルヒの力により何らかの原因で、 5人がこの時空間に転送されたと考えるのが妥当。」 その言葉を聞き、私は自分でも驚くような大声を出しました。 「そんなはずありません!」 古泉君にシッと声を沈めるように促されながら、2人に説明しました。 「そんなはずありません…。涼宮さんが原因となった時間震動により 時間平面同士の間に大きな時間の断層が出来ているはずです。 私達がいたあの時間より4年以上過去には行けない状態だったはずです!」 そう、そんな過去には行けない。これはもう何回も確認されている事。 「でも、これは事実。恐らく、涼宮ハルヒの力により その時間の断層を飛び越えて転送されたと考えるべき。 元の時間平面上に戻るには…」 「…涼宮さんの力が必要と言う訳ですね。」 「…そう。」 「と言う事はまずはやはりあの2人の捜索が肝要。」 「…そう。」 「原因の究明はその後ですね。」 「あんちゃん達!」 急な背後からの声に3人の動きが止まった。 くそっ…今日は踏んだり蹴ったりの厄日だ。 俺は上に乗っかった谷口をはね除けて、服に付いた泥を払った。 「おい谷口。さっきから言おうと思ってたんだが、お前、袴の帯、解けてるぞ。」 「えっ!?くそっ!お前のせいで今日は踏んだり蹴ったりの厄日じゃ!」 その時、ふと横目にちらりと入ったものに気を取られた。 ポニーテール……ハルヒ!? しかし、目の前に立っていたのはハルヒと同じくらいの眩しい笑顔をした大男だった。 「おまんら、さっきから大騒ぎし過ぎじゃきに。ちくっと大人しゅう出来んかえ。」 あれ?この人ついさっき、どっかで見たような…。 「行ったようじゃの…。しっかし、おまんら…新撰組相手に何やらかしたんじゃ?」 し…新撰組? 「あんな大人数に追い掛け回されるっちゃよっぽどの極悪人かいのぉ~?」 言葉とは裏腹にこの状況を楽しんでいるかのような笑顔をしている。 「き、貴様こそ何者じゃ!?」 谷口は虚勢を張ったが、目の前の大男に威圧され、逃げ腰になっている。 「おんや?おまん、長州の桂んとこに、よう出入りしちょう谷口じゃなかか?」 「か、か、桂さんを呼び捨てとは何たる無礼者!!」 「まっ、ええわ!ところでおまん…」 大男の鋭い眼光に睨まれて俺は少し怯んだ。 「変な格好しちょるのぉ~!ひょっとして、こんが西洋のジャケッツっちゅう着物かい? あ!エゲレス人には英語しか通じんかの?あぁ~…アーユージャケッツ?」 あ…いえ…日本語で大丈夫ですから…。 むしろ、日本語しか通じませんから。 それに「あなたはジャケットですか?」ってどういう意味ですか? 「いっや~!あんちゃん達のさっきのアレ、めがっさ凄かったにょろ!!」 聞き覚えのある声に見覚えのある顔。 ただその人は着物姿で、こちらを好奇心いっぱいの目で見つめていた。 「鶴屋さん!?」 3人は何故、ここに?と思ったに違いない。 「あっれ~?あんちゃん達、うちの事知ってんのかいっ!?」 彼女はニコニコと微笑んでいる。 「…彼女はこの時代の有機生命体。恐らくは私達の時代にいる彼女の祖先。」 なるほど…あのハイテンションは遺伝だったんですね。 「3人だけでごにょごにょ内緒話とは聞き捨てならないさっ! 何で新撰組に追われてたんだいっ!? そんな悪そうな人達には見えないっけどな~! まっ!こうして会ったのも何かの縁さっ! うちに来なよ!あんちゃん達みたいな変わった人達は大歓迎にょろ!」 3人は顔を合わせた。 「ほらっ!早くっ!そんなとこに突っ立ててまた見つかっても知んないよっ! 大丈夫っ!ここらへん一帯はうちの庭みたいなもんさっ!」 3人の背中を押しながら鶴屋さんはずんずん進んで行く。 「ところであんちゃん達のあの雷や火の玉みたいなのってうちにも出せるのかいっ!?」 「…それは不可能。」 「そっかい!あんなの出せたらやりたい放題にょろ?」 何をやりたい放題なんですか? 煩悩は花の種。 人の心に咲く花は悩みの種から芽を吹いて 育つは人煩いの涙の雨と笑うお天道様の声。 煩悩を捨ててはつまらぬ人生。 時は移ろい全てのものは変化する。 それが諸行無常と言うならば、 我を捨て空に達しては開いた悟りも過去のもの――― 「いやっはっはっ!!すまんぜよ! まっさか、言葉の通じるエゲレス人がおるとは思わんかったきに!」 いや、だから…なんか、つっこむのも面倒臭くなってきた…。 「おい!お前、何者じゃ!桂さんやわしの事まで知っとるとは看過出来ん!」 大声を張り上げながら谷口は刀の鍔に手を掛けていた。 「おまん、何をいきっとるんじゃ?わしは…」 谷口は刀を抜き、俺達に剣先を突きつけてきた。 「やめとき…。おまんの腕じゃわしには勝てんぜよ。」 2人は世界を止めたように静かに睨み合っている。 その一瞬、火花が散ったかと思うと、 谷口は転がされ逆に鼻先に剣を突きつけられていた。 「の?言うたじゃろ?」 刀を納めると彼はまた太陽のようにニカッと笑い、 「さぁ~て、おまんら変な奴らじゃきに、ちくっとわしについてこい。 な~に、悪いようにはせんて。」 俺はこういうマイペースな人に巻き込まれてしまう性分なんだろうか? この日、土方歳三は苛立っていた。 「場所は祇園にある実成院という寺の門前にある会所。 隊の羽織から防具に至るまでなるべく全て今日中に運び込んでおけ。 目に付かないよう一遍にではなく、いくつかに分けてな。」 そのように屯所内を動かしながら三条通付近に隈無く探索方の配置を徹底していた。 日の暑さと相まって精神的にピリピリしているだろう。 なにせ京は盆地の為、風が無い。 「少しでも多くの報せが欲しいが…しかし、妙な毛唐共とは一体、何者なんだ?」 庭で子供の笑い声が聞こえる。また、あいつか…。 縁側に出ると子供達に混じって少し猫背の男が大はしゃぎしていた。 「おい、何やってやがる?」 猫背の男がボーッとした顔でこちらを振り返ってきた。 子供達は雀のように飛び散っていった。 「あ~ぁ…土方さんがそんな鬼のようなしかめっ面で出てくるから 皆、怖がって逃げちゃいましたよ。」 ニヤニヤと笑いながらゆるりとこちらに歩いてきた。 気が抜けて隙だらけのようにも見えるが、底を読ませない怖さがある。 「俺も気が張ってんだ。少し気を落ち着けたいんで碁に付き合ってくれんか?」 「良いですよ。ところで先生は?」 「ここでは先生ではなく、局長と呼べ。近藤さんは会津の藩邸だ。ところでな、 探索に出していた島田と巡回中の藤堂から入った報告なんだが、 何でも三条近くで妙な毛唐共が攘夷浪士共と一緒にウロウロしていたらしい。 何の因果か知らんが、もし毛唐と不逞浪士が手を組むなんて事になったら一大事だ。 しかもそいつら、変な火の玉や雷を出すんだとよ。」 「土方さん、熱でもあるんですか?」 「真面目に聞け、馬鹿。」 「フフ…じゃあ、斬っちゃえば良いんじゃない?」 「無茶言うな。」 この時代、幕府は開国させられただけでなく、外国と不平等ながら条約を結んでいた。 いわば攘夷運動はゲリラ的なテロ活動である。 京都守護職である会津藩の預かり、新撰組も外国人の横柄な態度を すんなり受け入れている訳ではないが、立場上、外国人を斬りつけるような 行動は取れない組織である。 ただ、この2人が話している怪しい奴らは宇宙人、未来人、超能力者であるのだが…。 「あぁ~!駄目だ。総司、俺はちょっと散歩してくる。」 「いってらっしゃい。」 碁の相手をしていたこの飄々とした男。 新撰組の中でも一、二の使い手と言われた一番隊組長・沖田総司である。 城? 「ここがうちの屋敷にょろ!さっ!入った入った!」 門をくぐり、様々な季節の木や草花の生い茂る庭を歩いている。 玄関はまだ見えない。 「無駄にだだっ広い家さっ!うちでも時々、迷子になるからね!アッハッハッ!」 人影が見える。…も、森さん? 「お帰りなさいませ、お嬢様。」 「やっほ~!また池の掃除してんのかいっ!」 「旦那様お気に入りの池でございますから。」 鶴屋さんは鼻歌交じりに庭の飛石を一足飛びで駈けていく。 「さっ!入りなよ!たっのも~!」 自分の家に何を頼むんだろうか? 「お帰りなさいませ、お嬢様。」 居並ぶ人、人、人。 「そんな堅っ苦しい挨拶は抜きさっ!この人達を居間に通しておっくれ! あと、お腹空いたから何か食べ物も出して欲しいにょろ!」 「畏まりました。」 凄っ…。 池に小舟を浮かべましょ。 折り紙折った小さな舟を。 蓮の小島に辿り着きゃ 仏と居眠り暇潰し。 もじゃもじゃ頭でポニーテールの大男は2人を引っ張って歩いていく。 そういや…SOS団の皆は、ハルヒは今、どこで何をやってるんだろうか? そもそもこれは夢か?それとも俺だけ閉鎖空間に飛ばされたのか?等と思案していると 大男は俺を問い質した。 「ところでおまん、名はなんと申す?」 今更ですか…。 「なんじゃ言えんのか?エゲレス人の名くらい儂にだって分かるきに。 ジョン・スミスとかそんな感じじゃろ?」 本当に人の話、聞いてませんね。 じゃあもう、それで結構です…。 「ほぅ~!正解か!?ジョンじゃな!ジョン!」 なんか犬みたいで小馬鹿にされてる気分だ…。 大男は立ち止まった。 「さぁ!入るぜよ。」 促されるように小さな門をくぐると庭で2人の男が話をしていた。 「いや~!勝さん、陸奥。ただいま帰ったぜよ。暑い暑い! 海軍操練所の新しいスツーデンツを連れて来たきに。」 この、もじゃポニー男の突然の言葉に俺も含めた4人は呆れたような顔をしている。 ハルヒ並みに無茶苦茶な人だ。 「龍さん、おめぇはまたこんな訳の分からん輩を…」 「いや、勝さん。こいつらは見込みあるきに。のぅ!谷口!ジョン!」 谷口は暴れている。 「なんだ?ジョンってぇのは?」 「この変な服着たエゲレス人の名ぜよ。ジョンじゃ!」 「そいつぁ西洋人には見えんが…」 「ところで陸奥、ここにはおまんしかおらんのかえ?亀達はどうした?」 「望月さん達は人に会う約束があるとかでどっか出て行きましたよ。」 「ほぅか…今の京は危ないきに。あんまウロウロしてたらいかんぜよ。 ちくっとあいつらにお灸据えとかんとな。」 あなたはどうなんですか?もじゃポニーさん。 「おめぇの言えた事かい!龍さん。おめぇも色んな嫌疑掛けられて追われる身だ。」 「儂ゃ何もやっとらん。ただ船で海に出たいだけぜよ。あ!ところで勝さん、 新しい船の話はどうなったきに?黒船が欲しいぜよ!」 「無茶を言うない!まっ、黒船とはいかんが、それなりに当てはあらぁ。 その話はまた後でするとして、それよりもだ、龍さん。 おめぇ、薩摩の西郷って知ってっかい?」 「あの寺の釣り鐘みたいな男じゃろ?」 「よくわっかんねぇ例えだな。俺も会った事はねぇんだが、 おめぇは土佐の脱藩浪士で色んな厄介事も抱えちまってる。 もし、これから京で動き辛くなったらそいつを頼んな。 薩摩が守ってくれるさ。話は付けといた。」 「そりゃありがたいのぉ~。さぁて!おまんら、とりあえず飯じゃ!陸奥も食うぞ。」 未だに俺はこの状況が飲み込めん…何なんだ、一体。 「これから私達はどうしましょう~?」 朝比奈みくるはお茶を飲みながら話を切り出した。 「あ!このお茶、美味しい♪」 「…この時空間は特殊。私の能力もいくつか制限されている。 …あの2人の位置座標までは特定出来ない。でもこの時間にいるのは確か。」 「どうにかして捜索しないと、こんな物騒な所に飛ばされたとあっては 僕らが襲われたと言う事から考えると、彼らの身にも危険が迫ってると 考えてもおかしくはないでしょう。」 「…そう。」 その時、襖が凄い勢いで開いた。 「食べてっかい!御三人。おっや~、なんだか随分と暗い顔してっけど!?」 ここはやはりこの方に頼るしか手はありませんね。 「鶴屋さん。実は僕ら、外国から来た旅の者なのです。」 鶴屋さんは目をぱちくりさせながらこちらを見ている。 「5人でここへ来たのですが、一緒に来たあとの2人とはぐれてしまいました。 どこへ行ってしまったのか皆目、見当も付かないのです。 あとの2人の捜索のお手伝いを頼んでも宜しいでしょうか?」 鶴屋さんは何かを考え込むような顔をして、 「私が知ってる外の国の人達は雷や火の玉を出したりはしなかったにょろ? あんちゃん達の顔も西洋の人より私達に近いし、言葉も通じるし、 うちはまた、妖術使いかなんかだと思ってたさっ! まっ!深い事情がありそうだから詳しくは聞かないでおくよっ!」 あの異常に勘が鋭いのも遺伝ですか…。 「その2人ってのもあんちゃん達と同じような格好してんのかいっ!?」 「えぇ、まぁ…。」 「じゃあ、簡単さっ!そんな格好してる人なんて他にいないから目立つしさっ! すぐに見つかると思うにょろ!森ちゃん!皆に言ってこのあんちゃん達と 同じような格好した2人を探して欲しいにょろ!頼んだよっ!」 やはりいつの時代も只者ではありませんね、鶴屋さん。 「ぷっはぁ~!食った食った!ん?どうした?谷口。 おまん、ほとんど箸を付けとらんな。要らんなら儂が貰うぞ。」 谷口は急に立ち上がって大声を張り上げた。 「儂ゃ、これから大志をなさんといかんのじゃ!大切な用事もある! こんな所で呑気に飯を食っとる時じゃないんじゃ!」 もじゃポニーさんは呆気に取られたような顔をしたかと思うとポツリと語り出した。 「おまん…大志の為に死ぬんか?おまんらが何をするつもりかは大体、分かっちょう。 その覚悟はえぇ。しかし、死んだら元も子もない。 全て終わりじゃ。おまんらがやろうとしちょるんは大志じゃなく、ただの無謀じゃ。 事を成すなら生きて事を成すべきじゃ。 こんな狭い島国の中で仲間同士、いがみ合っておってもせんない。 陸奥や望月、おまんらみたいな若い者がこの先の日本には必要なんじゃ。 1人でも多くの有能な人材が必要なんじゃ。 儂ゃそういう奴らを集めて外国と貿易するんじゃ。 その貿易で得た財で私設艦隊を作り、こん国を外国にも負けん強い国にしちゃる。 まっ、その前に船を手に入れにゃいかんがの! 時代は否応なく変わるぜよ…。 そん時を見られんっちゅうはつまらんじゃろ?」 谷口は拳を握り締めた。 「さきほどの小男は幕府軍艦奉行の勝であろう? あの西洋かぶれと通じておるとは貴様、何者じゃ!?」 もじゃポニーさんは頭を掻いている。 「ありゃ?まだ名乗っとらんかったかのぉ~?そりゃすまんかったわい。 儂ゃ、土佐脱藩浪士、今は神戸海軍操練所の塾頭をしちょる坂本竜馬っちゅうもんじゃ。 ところでおまん、舟は大丈夫か?あれは体が揺れて酔うけんのぉ~。 儂も未だに船酔いには慣れん。そんな奴が海軍の頭っちゅうのもおかしな話じゃがの!」 彼は快活に笑い飛ばした。 この、もじゃポニーさんが坂本竜馬?どっかで見たと思ったのは日本史の教科書か…。 ますます事態が呑み込めん…。 「さぁ~て、と。じゃ、行くか。」 もじゃポニーさんこと、坂本竜馬は刀を手に立ち上がった。 谷口はさっきから黙って俯いている。 「あの坂本さん…どちらへ?」 「船じゃ。ジョンと谷口もついてこい。陸奥はここで待っちょいてくれ。 勝さ~ん、行ってくるぜよ!」 奥からの『おぅ!』という声に見送られ、俺は坂本さんについていった。 太陽がギラギラと輝いている。 谷口は未だに納得がいかないのか、少し離れて歩いている。 その時、バラバラと男達に囲まれた。新撰組だ。 「おい、貴様。名を名乗れ!」 坂本さんはニコニコしながら 「薩摩藩士、才谷梅太郎じゃ。」 と、ネーミングセンスゼロな名前を名乗った。 「訛りが薩摩の者とは違うようだが…。」 「ふ~ん…きっとずっと京におったからでごわす。」 怪し過ぎです。無理矢理過ぎですよ、坂本さん。 「そうか、ところで才谷とやら。おまん、ここで何しちょうぜよ?」 「ちくっと知り合いの所に顔を出しに行くきに。」 「やはり、土佐の者か!!」 バレバレ過ぎです、単純な罠に引っ掛かり過ぎです、坂本さん。 「あっちゃ~…なんで分かったんじゃ?」 この人、アホだ…。 「見た所、妙な格好の毛唐もいるな。副長が言っていた不逞浪士と毛唐というのは こやつらの事か。とりあえず斬っとくか。」 一斉に刃が斬り掛かってきた。 俺はひたすらに避けては逃げる。 期末テストの鬼教官・涼宮ハルヒの竹刀に鍛えられた反射神経、舐めんな! 坂本さんは刀を縦横無尽に舞わせている。 「ジョン!谷口!逃げるぞ!」 必死で走っていた。夢ならそろそろ覚めてくれ!!! 「永倉隊長、逃げられましたね。」 「あのもじゃもじゃ頭、あいつはきっと強いぞ。やり合ってみたかったわ。」 鶴屋さん…何をやってらっしゃるのでしょうか? 「だって、これ凄いよ!何なのさっ!この乳!」 朝比奈みくるはどこの時代に行っても同じ扱いを受けるんですね。 「止めて下さ~い!」 「良いではないか、良いではないか。ウッヒッヒッヒッ。」 ふと襖に影が降りたかと思うと声を掛けてきた。森さんだ。 「お嬢様。」 「どったぁ~?」 「ただいま、旦那様に御客人が御出でなのですが、その中に 偶然なのか、旅の御三方とよく似た格好をした者がおりまする。」 3人は顔を見合わせた。 「キョンくんと涼宮さんです!」 「これは凄いですね!探す手間が省けたと言うものです。 それにしてもどうして彼らは僕らがここにいるのが分かったのでしょうか?」 「行ってみりゃ分かるさねっ!」 僕らは鶴屋さんについて応接間に向かった。 応接間の中には3人の人間が座っていました。そこには確かに彼の姿がありました。 しかし… 「キョンくん!」 「朝比奈さん!長門!古泉!お前ら、どうして!?なんでここに?」 「なんじゃ?ジョン、おまんの知り合いか?」 「こちらの方につれられてここにお邪魔しています。」 「鶴屋さん!」 「あっれ~!君もうちの事、知ってんのかいっ!? 有名になったもんだね、鶴屋さんも!」 「涼宮さんはいないようですね…とりあえず、詳しくお話しましょう。」 浮き世の旅は当ても無く、 時の縛りも無い故に ちょっと一服、笹団子。 見つめる先は鈴の音と旅人行き交う東海道。 朝比奈さんの「禁則事項です♪」と言う言葉に従い、 他の皆さんには席を外して貰う事も考えたのだが、 この時代の彼らの協力無しにはハルヒの捜索は行えない、 という古泉の意見を採用し、俺達は外国から旅をしてきた人間だ、 という設定で、まずはお互いの状況を簡潔に説明し合った。 まずここが1864年7月7日の京都だと言う事、 ハルヒもここのどこかにいるが行方不明だと言う事、 3人は新撰組に追われた事、そこでここの鶴屋さんと出会った事、 家に隠まってもらってた事、 鶴屋さんに2人の捜索を依頼した事。 そして俺はクラスメイトの谷口にそっくりな男と一緒に新撰組に追われた事。 その時この、もじゃポニーの坂本さんなる男に助けられた事。 その坂本さんに無理矢理、勝という人の所に連れて行かれ、海軍に入れと言われた事。 今も新撰組に追われている事。 坂本さんの船購入に出資してくれるのが鶴屋さんである事。 「僕は涼宮さんはてっきりあなたと一緒にイチャついてるのかと思っていたのですが…」 「誰がイチャつくか!?俺もハルヒはお前らと一緒なんだと思ってたよ…。」 また振り出しか…ハルヒ、お前は一体、どこに行っちまったんだ? 「ジョン!おまん、人探ししとったんか!?なら、はよ言や良かったんじゃ!」 坂本さん、あなたが喋らせてくれなかったんでしょうが…。 坂本さんは長門に興味を惹かれたようだ。 「ところで、そこのおなご。おまん、航海士かぇ!? その着物、セーラーじゃろ!?セーラーは海軍の証拠じゃきに! どうじゃ!?儂の海軍に入らんか!?しっかし、随分と破廉恥なセーラーぜよ! 外国じゃ、おなごはこげに肌を露にするもんかぇ!?」 話がややこしくなる。静かにしといて下さい、坂本さん。 あとスカートの中身をあまりジロジロ見ないで下さい、坂本さん…。 「それにしても俺達はなんでこんな所に…朝比奈さんの話では、えぇ~と、 ここらへんに来るのは不可能だったんじゃないんですか?」 「それが私にも不思議なんです~…。」 古泉が笑いながら制止した。 「それはまた後ほど。」 「しっかし、おまんらの話はどっか、芯のよう掴めん話じゃのぉ~…。 なんか気になるし、面白そうぜよ!儂もおまんらについていこうかの!」 えっ!? 「じゃあ、うちも行くにょろ!」 「谷口、おまんはどうする?」 谷口は返事をしなかった。 「ふ~ん…まぁ、納得いかんのに無理矢理引っ張るのもあれじゃきに。 おまんの好きにせぇ。」 谷口は無言で何かを思案しながら、俺達と別れた。 古泉が俺の耳元に囁きかけてきた。気持ち悪っ!!あ…息は吹きかけるな…。 「先程の何故、僕らがこの時代に飛ばされたのか?というお話ですが、 恐らく…涼宮さんが願ったからではないか、と。 あなたの覚えがあまりに悪いのを改善するにはどうすれば良いのか? と、涼宮さんは思案し、あなたの身体に覚え込ませる為に ここへ直接、放り込めば良いのではないか?と彼女は考え、 そして、閉鎖空間とはまた違う世界が構築された。 それに部室にいた全員が巻き込まれたのではないかというのが僕ら3人の意見です。 この世界では不完全ながら僕の力も有効化されますし。」 ハルヒ…あんまり無茶させんな…。 「ところであの天然パーマの方、ひょっとしてあの坂本竜馬ですか?」 「あぁ、みたいだな。どうやら本物らしい。色んな意味で信じられんがな。」 「これは凄い!坂本竜馬、勝海舟、新撰組と、 本当に歴史の教科書の中に飛び込んだ世界のようだ。」 笑ってる場合じゃないだろ…。 「あんちゃん達は皆、三条大橋の近くで離ればなれになったにょろ? じゃ、もう1人もその近くにいるかもしんないよ?皆で行ってみようさっ!!」 次の行動が決まらない俺達は鶴屋さんの提案に賛同したが1人、 坂本さんだけは渋い顔をしていた。 「三条大橋の周りは今はちくっと危ないぜよ。 京にいる攘夷志士から新撰組まで一斉にあの辺り一帯に集まっちょる。 それにジョン達の格好は目立ち過ぎる。服だけでも着替えておくべきじゃきに。」 確かにこの時代にセーラー服やメイド服は目立ち過ぎる…。 それにもうこの格好であの町には出たくない…。斬られるのはごめんだ。 「じゃ、うちにある着物を貸してやるさっ!その服は風呂敷にでも包むんだね!」 まるで夏祭りにでも行くようですね、と古泉は笑いながら呑気な事を言っている。 「あん破廉恥なセーラー服も堪らんけんど、それもなかなか悪くないっちに。」 と、坂本さんは長門に冗談を飛ばしている。 森さん達にも捜索してもらっている事もあり、ひとまず全員で固まって動き、 現地で二手に分かれる事とした。 ハルヒ~…早く出てきてくれ…。 アケビ、椎の実、銀杏(いちょう)に蓮の実。 供物捧げる盂蘭盆(うらぼん)にゃ、 仏様の蓮の葉座布団、摘んどけ、買っとけ、載っけとけ。 言う事聞かないお転婆娘は蓮の葉女にされちゃうよ――― 京都は夏真っ盛りである。 風鈴も音を鳴らさないほど風もなく、制服で歩き回るのは確かにしんどい。 6人は三条大橋に着いたものの、東海道の終点である宿場町と言う事もあり、 人がごった返していた。 「凄い賑わいですね~。」 朝比奈さんは物珍しそうな顔をしながらキョロキョロしている。 落ち着きの無い俺に古泉がニヤニヤと笑いながら話し掛けてくる。 「涼宮さんの捜索という目的がなければ、京の風情を味わいたい所ですね。 まぁ、心配しなくても涼宮さんなら大丈夫ですよ。僕には分かります。 正確には分かってしまうと言った方が正しいのですが…。」 長門が呉服屋の店先に置いてある鈴の付いたかんざしを見つめている。 「お!おまん、仏頂面の割には可愛いもん欲しがるの!買っちゃろか?」 「…ユニーク。これは何という武器?」 武器じゃありませんっ!! 6人でどう二手に分かれようか相談していると、急に町が騒がしくなった。 喧嘩でも起きているのだろうか? 「どうやら新撰組がおるようじゃ…。また攘夷の連中が暴れちょるんかの?」 おいおい…また斬り掛かってこられるのは勘弁だ…。 遠くの方で土煙と怒声が舞っている。 「こりゃ大捕物さねっ!」 人のごった返す通りをかき分けながら何十人という大所帯の 新撰組が抜き身の刀を振り回し、こちらへ駈けてくる。 「ここは危ないようです。ひとまず身を隠しましょう。」 横の路地に入ると大声で喚き散らしているのが聞こえる。 「副長!!副長!!」 「あっちに逃げたぞ!!!」 「待て!コラッ!!!」 「囲め!逃がすな!!」 「叩っ斬れ!!」 こりゃあ、ヤバいんじゃないか?やれやれ…物騒な所に来ちまったもんだ…。 「儂ゃ近眼じゃきに、よう見えんがどうやらこっちに来るようじゃの。」 「バレてしまったのでしょうか?」 「いんや!誰かが追われてるようにょろ!」 俺はふと大通りに目をやり、騒ぎの中心を覗いてみるとあまりの驚きに目を疑った…。 ハルヒッ!? 「……どうやら涼宮さんのようですね…。」 ………………。 今度は何をしでかしやがったぁぁぁあああ~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!??? ハルヒィィィイイイ~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 土方歳三は沖田総司の一番隊を借りて京の街を歩いていた。 ここの所、探索や暗殺、拷問と立て続けに面倒事が舞い込み、 諸々の準備にも時間を取られるのと蒸し暑いのとが相まって 気が張って苛立っているようだ。 だが、これも新撰組を最強の武士集団とする為には仕方の無い事。 ちょっとでも気を抜いて取り締まりを緩めれば何が起こるか分からない。 こっちの命があっさり取られかねない事も重々、承知している。 「副長!!」 声を掛けられて振り向くと永倉新八率いる二番隊の連中がそこにいた。 「ちょうど良い所で会いました。先程、妙な浪人2人と西洋人に出くわしました。 やはりあいつら、毛唐共と手を組み、何かを企んでいるやもしれません。」 ちっ…。ったく、つくづく面倒臭ぇ…。 どうも攘夷の連中は俺の神経を逆撫でする為だけに 生きているような連中が多いようだ。 「斉藤の三番隊も今日はこの辺りを巡回中だったよな? 一度合流して配置し直すか…。」 三条大橋の近くで斉藤一率いる三番隊と合流すると、こいつらは何人か 斬ってきた後のようだった。気が荒れて、ささくれ立っている。 「おめぇら、息を整えろ。これから一番隊、二番隊、三番隊の配置を決める! どうやら攘夷志士の連中は毛唐共と手を組んで何かを企てているという 報告が入っている。いいか!!怪しい輩は生かしておかんでもいい!! 局中法度を思い出せ!気を引き締めろ!!俺達の任務は京都の治安を守る事! 面倒な奴らは徹底的に根絶やしに…ん??………はべしっ!!!!!!!」 「…副長??…副長!!!!」 目を覚ますと私は見た事もない川縁の土手に寝転んでいた。 部室にいたのは夢だったのかしら?あれ?こっちが夢? しぱしぱした目でキラキラ光る川を見ると一枚の葉っぱが流れてきた。 「ここ、どこ!?」 周りを見渡すと変な格好をした人達で溢れかえっていて私をジーッと見つめていた。 「何、見てんのよ!?」 手元にあった竹刀を振りかざすと皆、散っていった。 「キョンはどこ?自分から頼んどきながら勉強サボって 私を一人にするなんて、マジあいつ罰金と死刑をダブルで宣告するわ!」 立ち上がって歩いてみると本当に不思議な町だった。時代劇のセットのような町。 むぅ~…なんかジロジロと視線が気になる…。 「おい!そこのおなご!」 声を掛けられて振り向くと全員お揃いのダッサいはっぴを着た男共がいた。 アイドルオタクか何かかしら?気持ち悪いわ…。 「何よ?」 「お前、何者だ?何だ、その格好は?」 あんた達に言われたくないわよ。 「何よ?文句あんの!?マジ殺すわよ!!」 そう言うとそいつらは無礼者だなんだ言い掛かりを付けてきて刀を突きつけてきた。 そんなおもちゃの刀でこのSOS団団長、涼宮ハルヒ様に逆らおうなんて 良い度胸じゃないのよ!?目にもの見せてやるわ!! 30秒もかからなかった。 雑魚ばっかね…そんな腕で私に挑んで来ようなんて100万年早いのよ!! 倒した連中を踏んづけてるとアイドルオタクの仲間らしき連中が 30人近くの大人数でこちらへ向かってきた。 さすがにあの人数を相手に真正面から1人で闘うのは戦略的に不利だわ。 ここはゲリラ的戦術の採用決定ね。 引いては押し、押しては引いて、 路地に身を隠しては迂闊に飛び込んでくる馬鹿の鳩尾に一発! 屋根に上って近付き下でうろちょろしてるアホの脳天に一発! 身を伏せ通り過ぎた所を背後からフルスイングで顔面に一発! 「ふぅ~…何とかかなりの人数を仕留めるのに成功したわ。 全く何なのよ?あいつら、SOS団を脅かす悪の組織か何かで 真っ先に団長たる私を狙ってきたのかしら? それとも、ただ単に気持ち悪いアイドルオタクとして 可愛い女の子に襲い掛かってるってのなら可愛いのも罪よね。」 屋根の上であぐらをかきながら次の戦略を練っていると アイドルオタク達はどこかへと去って行った。 「ふん!逃がさないわよ!この私に喧嘩をバーゲンセールで売りつけるなんて とことん敗北と後悔にまみれさせて服従させてやらないと気が済まないわ!」 屋根伝いにアイドルオタク達を尾行すると 集まって何やら話し合いの真っ最中のようだった。 「私を倒す為の相談かしら?どうやらあの一番前で偉そうに突っ立ってる 陰気そうな奴がアイドルオタクのリーダーって訳ね。」 屋根の上からそ~っと近付き、アイドルオタクのリーダーの真上にまで来た。 「ふふん…まだまだ甘いわね。隙だらけだわ!」 竹刀の構えに力を込めた。 「ていやっ!!!」 「…ん??………はべしっ!!!!!!!」 「…副長??…副長!!!!」 何よ?副長って事は二番手?じゃあ、真の黒幕はまだ他にいるって事ね! 見てなさい!アイドルオタク共! この涼宮ハルヒ様を敵に回した事を後悔させてやるわ!! 俺が今、頭痛と目眩で倒れそうなのはこの町の暑さのせいだけではないだろう。 何故なら、あの涼宮ハルヒが目の前で大人数の新撰組を相手に 大立ち回りを演じているからだ。 「助けに行きましょうか?」 あぁ…そうだな…。 「あれがおまんらの探しちょう者かぇ?こん大人数の新撰組を相手にあん体裁き。 只者じゃないぜよ。」 えぇ…確かに只者じゃありません…。 「ひゃ~!凄い暴れっぷりさっ!」 「でも、涼宮さんが危ないです~。」 「…私が前線に出て障壁を張る。その隙にあなたは涼宮ハルヒを保護して。」 ラジャー、長門。 「行くぞ!」 さすがに緊張するよ…俺は何の術も持たない一般人なんだ。 6人で一気に飛び出し、暴れるハルヒの元に駆け寄った。 「何すんのよ!?離しなさい!」 助けに来てやったのに竹刀で殴られるとは…。 「キョン!?あんた何やってたのよ!?遅いわよ!」 お前こそ何やってんだよ、ハルヒ…。 「SOS団では遅刻は厳禁!罰金よ!」 やれやれ…。 長門が前線を抑え、坂本さんと古泉が襲いかかってくる新撰組を撃退してくれている。 「さぁ!ハルヒ行くぞ!」 「ちょっと!!待ちなさいよ!!真の黒幕はまだ存在してるの!! SOS団を脅かす悪の組織たるアイドルオタク達との闘いはまだ終わってないわよ!」 何を言っとるんだ、こいつは…とりあえずさっさと行くぞ。 俺達は布と剣を目の前にして暴れる闘牛のようなハルヒを 俺と朝比奈さんと鶴屋さんの3人は力ずくで鶴屋さんの家まで引きずっていった。 遅れて長門と古泉、坂本さんが走ってきた。 「何とか撒いてきたぜよ。もうあんな大人数に襲われるのはごめんじゃきに。」 古泉はまたニヤニヤ顔に戻っていた。 「でも、さすが涼宮さんですね。あの人数を相手に一歩も退かないとは。」 「何なのよ!?あともう少しで全員ぶっ倒す必殺技でも出そうだったのに!!」 こいつは本気で言ってるんだから困る…。 「ハルヒよ…お前、今度は一体、何やらかしたんだ? あんな大人数に追い掛けられて逃げ回るなんて余程の事だぞ。」 ハルヒは竹刀を俺に突きつけ叫んだ。 「私はあんなアイドルオタクの雑魚共から逃げてた訳じゃないわよ! さすがの私にもあの大人数相手に1人では多勢に無勢だったから 体勢を立て直す為の戦略的な一時撤退よ! 前にも言ったでしょ!SOS団に敗北主義者は要らないの! それをあんた達が邪魔するから! 次やったら全裸になって校庭で組み体操の刑よ! 八本足の宇宙人に連れ去られる~!って叫びながらね! あのアイドルオタク共、次、会ったらボッコボコにしてやるんだから!」 おいおい、こいつは日本最恐と言われた暗殺集団にまで喧嘩を売るつもりかよ…。 鶴屋さんの家の居間でこれからの善後策を練る事にした。 ハルヒは汚れた制服を着替える為に鶴屋さんと奥へと入っていった。 とりあえずさっさと元の時代に戻りたい…。 「ふふ…どうやら涼宮さんは随分と楽しんでいらっしゃるようですね。」 古泉、呑気な事を言ってる場合じゃないだろ。 長門と朝比奈さんは何事もなかったかのようにお茶を飲んでいる。 2人共、違う意味で鈍感だから羨ましい。 坂本さんは森さんと何やら話をしている。 「それは失礼しました。ですが、涼宮さんは過去に飛ばされたというのに 気が付いていらっしゃらないのが救いです。 悪の組織か何かの陰謀に巻き込まれたと本気で信じているようですから。」 長門がぽつりと口を開いた。 「…大丈夫。ここは改変された世界。元の時代に帰還した際、 完全とは言えないまでも情報統合思念体の力により ある程度の記憶の情報操作、改変、再構成、再構築する事は可能。 例え、涼宮ハルヒが時空間移動の事実を認識したとしてもそれは消去出来る範囲。 但し、行動の記憶までは消去出来ない。 あくまで認識の部分に於いてのみ、改変可能。」 って事は悪の組織と闘った~、みたいな記憶だけ残るって事か? 「…そう。だから戦闘等の行動に問題は無い。」 いや、大有りだ。生まれるよりも前の時代で死ぬなんざ、ごめんだからな! 「ところで俺達が元の時代に戻るにはどうすれば良いんだ? 朝比奈さんの力でも無理なんでしょうか?」 「そうなんです…。私達がいた時代より4年前の涼宮さんを中心とした 時間震動による時間断層が存在しています。 私達が過去に飛ばされてしまったので今度は あの時間より未来にはどうしても行けなくなってしまっています。」 「長門はどうにか出来ないのか?」 「やってはみる。ただし、初めての事例で保証は出来ない。 結局は涼宮ハルヒの力を利用するしか無い。」 「涼宮さんに元の時代に戻りたいと願ってもらう以外に方法はなさそうです。 と言う事はやはり、今回もあなたの力が不可欠な訳です。」 3人の視線が一斉に俺に突き刺さる…そんなに期待しないでくれっ! ハルヒが楽しそうな笑顔で居間に入ってきた。 黄色地にピンク色の蓮の花が施してある着物に着替えたハルヒは 茶道か華道でも習う着物美人なお嬢様にしか見えない。 竹刀さえ持ってなかったら、の話だが…。 隣に座った坂本さんが声を上げた。 「いんや~!さっきの破廉恥なセーラーも悪うなかったけんど、 浴衣着て竹刀を持つおなごとはなかなか。剣の腕と言い、気迫の強さと言い、 まっこと、さな子さんにそっくりなおなごぜよ!」 さな子とはかつて龍馬が通っていた江戸にある北辰一刀流桶町千葉道場の当主、 千葉定吉の娘、千葉さな子の事であろう。 「ジョン!おまんもおなごにゃ尻に敷かれる男かぇ!?」 古泉が意味ありげに笑う。 「さぁ!これからSOS団緊急ミーティングを開始するわよ!」 闇夜に蠢く蛇一匹。 池に浮かぶや蓮一輪。 泳ぐ蛙は睨まれて慈悲を乞う為、蓮の上――― 頭が痛ぇ…。 くそっ…あのアマ!一体全体、何者だ? 大衆の面前で人の脳天に思いっきり一本振り下ろしてきやがって! 次、見つけたらただじゃおかねぇ! 「どうした?歳。随分と苛立ってるようだが…。」 近藤勇は笑顔で訊ねる。沖田総司が代わりに、からかうように答えた。 「今日、土方さんね、三条大橋なんて人の大勢いる目の前で 女の人に竹刀で脳天かち割られてぶっ倒れちゃったらしいんですよ。」 近藤は豪快に笑う。 「歳、お前は昔から女たらしのくせに冷たくあしらう所があるからな。 またどこぞの女にでも手を出して恨みでも買ったんだろうよ。」 土方は益々、不機嫌になった。 「要らねぇ事くっちゃべってんな、総司。それよりも明日の事だ、近藤さん。 桝屋古高俊太郎への取り調べから明日、攘夷浪士共の会合があるのは確かだ。 長州、土佐、肥後あたりの面子だろう。ただはっきりした場所が分からねぇ。 探索に出している山崎や島田からの報告によるとやるとすれば四国屋丹虎か池田屋。」 近藤は先程までの笑顔を解き、真顔になっている。 「隊を二手に分けておくか。」 「あぁ、そうした方が良いだろう。 会津や桑名だけに手柄を持ってかれるのはごめんだからな。」 「しかし、事実なのか?歳。いくら過激な攘夷浪士共とは言え、 御所に火を放ち、一橋公と容保公を暗殺、天子様を長州に連行するなど 正気の沙汰とは思えんぞ。」 「事実かどうかは問題じゃねぇ。事は始まってからじゃ遅ぇんだ。」 ハルヒは 「SOS団の未来を守る為、敵対する悪の組織は徹底的に根絶やしにすべきだわ!」 と強く主張していたが、全員の説得でなんとか踏みとどまらせた。 「じゃあ、仕方ないわね。今日は一旦補給の為、休戦!明日の決戦に備えなさい!」 どこの何と決戦なんだ…教えてくれ。 俺は坂本さんが浮かない顔をしながら言った 「明日か…。」という言葉が引っ掛かっていた。 眠りにつきながら俺は祈った。 目が覚めたら部室かベッドの上に戻っていて欲しい…… ……俺の祈りは通じなかったようだ。 低血圧で目覚めの悪い俺は一番遅い目覚めだったようだ。 ハルヒは物凄い勢いで白飯をかき込んでいる。 「今日は決戦よ!長い一日になるわ。十分に補給しときなさい!」 お前が何もしなかったら何も起きん。 ボーッとした頭で朝飯に手をつけていると森さんの声が聞こえた。 「皆様、おはようございます。坂本さん…少々お時間を。」 坂本さんは森さんと話し込んだかと思うと、浮かない顔つきで戻ってきた。 「…儂と同じ土佐者で今は共に海軍操練所におる亀と北っちゅうもんがおるんじゃが、 昨日、見当たらんかったきに、ここの者に捜索を願ったんじゃ。」 望月亀弥太と北添佶摩の事であろう。 「どうやらあんの阿呆共、面倒な厄介事に首を突っ込んどるようぜよ。 過激な尊王攘夷の連中とは手を切れと何遍も言うたんじゃが…。 おまんも知っちょる谷口もおるらしい。 ジョン、すまんがこの後、ちくっと手伝うてくれんかの?」 「手伝う?」 「あいつらをここに引っ張ってくる。」 新撰組の屯所では土方が部隊を2つに分け編成を行い、一人一人に指示を出していた。 「何度も言うが、場所は祇園にある実成院という寺の門前にある会所。 固まっては動くな。通常の巡回や町に遊びに出てきた態を装ってそこへ集まれ。 今夜は生死を分つ時になるやもしれん。覚悟と準備を怠るな。 全員集まった後、もう一度そこで編成の確認をする。」 三条大橋で出会った妙な輩共とあばずれ女の行方も気にはなるが、 隊士の言う所では攘夷浪士と一緒にいた毛唐共とはあいつらの事らしい。 そう言えば確かに見慣れない妙な格好をしていた。 女に至っては肌を露出させたふしだら極まり無い着物だ。 もし、攘夷浪士と毛唐が手を組んでいるのならば 今夜の会合にはあいつらの姿もあるだろう。 まとめて叩っ斬っちまえば良い。 今夜は新撰組の浮沈を懸けた決戦だ。 土方は刀を持って屯所を出た。 ハルヒは目を輝かせていた。 「事件の匂いがプンプンするわ!その依頼、我がSOS団が引き受けましょう!」 こいつが出てくると何でも無い事まで大事件に発展する。 「ほぅか!おまんみたいな、強かおなごの力が必要かもせん! おなご2人が破廉恥なセーラー着て航海士やって戦闘員まで兼ねるとは 外国はほんに不思議な所ぜよ!」 面倒だ…誰か、俺とツッコミ役を代わってくれる方、メールしてくれ。 「まっ、とりあえず飯じゃ!」 長門はこういう和食の朝は初めてなのだろうか、 興味を惹かれたのかしきりにおかわりしている。 朝飯が終わり、一服しているとハルヒが袖を引っ張ってきた。 「ねぇ、キョン。あのもじゃもじゃの人、坂本さんだっけ? なんであの人、あんたの事、ジョンって呼んでるの?」 そうか…ハルヒにジョン・スミスの事は言えないな…。 「いや、なんか聞き間違えをそのまま勘違いしてるみたいだ。 キョンとジョンって響きが似てるからな。」 納得したようなしてないような顔をしている。 「まっ、良いわ。さぁ!SOS団捜索隊、任務開始よ!」 頭の中で坂本さんの言葉が鳴り響いていた。 『事を成すなら生きて成せ。死んだら終わりじゃ。時代は変わる。』 儂ゃ何がしたいんじゃ…。 「…口。おい、谷口!!」 ハッと顔を上げると座を占めていた面々がこちらを見つめている。 「お前は普段から締まりの無い男じゃが、こういう場くらいしゃきっと出来んか? これから長州藩のひいては尊王攘夷の行く末が決まる時なんじゃ。」 上座に座る男が鋭い言葉を放つ。 「今夜にでももう一度集まろう。その時には桂もおるじゃろうて。」 その言葉で各々、散って行った。 尊王攘夷、か…。 はっきり言うと尊王攘夷とはどんなものなのか自分自身、未だによく分かっていない。 なんだか祭りの熱に乗せられて京まで出てきてしまった気がしている。 「里に帰ろうかのぉ~…。」 そんな事を考えながら歩いていると、見覚えのある集団に取り囲まれた。 「その亀とか言う変な名前の奴らをふん捕まえれば良いのね!楽勝だわ!」 とハルヒは楽しそうに鼻歌を歌いながら歩いている。 またあの橋の所まで行くのか?絶対に襲われる…絶対に新撰組に捕まる。 俺の勘はもはや百発百中なのか、そりゃそうだろう。 こんな怪しげな集団が7人連なって歩いていたら 誰だって気になるに決まっている。 「お前ら、どこへ行く?」 坂本さんと古泉はニコニコと笑っているが、 ハルヒは今にも竹刀で飛び掛かって行きそうな勢いだ。 「このあんさんらが、ちょいと祇園はんにでも顔出そか、言わはりましてなぁ~。」 気が付くと鶴屋さんが艶っぽい京訛りで新撰組の連中にしなだれかかっていた。 「もうすぐ祇園祭でっしゃろ?舞妓はんらの踊りもそりゃ幽玄なもんでっせ? どや?お侍はんらも、うちと一緒に来はりまへんかぇ?」 くっ…朝比奈さんとはまた違うセックスィ~さだ…。 「い、いや。遠慮しておく。任務があるからな。あまりうろちょろするなよ!」 と、新撰組は立ち去って行った。 「アッハッハッ!!東のお芋さんは京訛りの女に弱いのさっ! ちょいと色で仕掛けるとすぐにこうさねっ!ちょろいもんにょろ!」 確かにあれは男としては堪らない…。 「ちょっと、キョン!何、鼻の下伸ばしてんのよ!?このスケベ面!」 …悪かったな! 望月と北添は会合が一旦解散となった後、京の町をブラブラと練り歩いていた。 「龍さんにはなんと言おうかの?」 亀こと望月亀弥太はぽつりと口を開いた。 「おまん、そげに気になるかぇ?確かに海軍を作るっちゅう龍さんの言には 一理も二理もある。けんど、今すぐやらにゃいかんっちゅう事もあるぜよ。」 北添は身近な仲間が抜けて1人になるのが嫌だったのであろう。 引き止めるように言葉を続けた。 「確かにおまんは龍さんから航海術を習い、腕もよう磨いちょう。 でんも、その術を活かすには活かすだけの世が必要じゃ。 今の海は毛唐共に支配されちょる。 こん国から海に出るにはまずこん国から毛唐を追い出し、 天子様を芯に据えた強き国を作らにゃいかんぜよ。」 亀はその意見も分かるし、龍馬の言葉も分かる。 要は優先順位の問題だ。 「とりゃっせぃ!!」 亀と北の脳天に衝撃が走った。 「坂本さん、とジョン。」 はいはい…ジョンですよ。 そしてハルヒ、暴れるな。 「まだ生きちょったの、谷口。」 坂本さんはにこやかに話し掛けた。 「あれ?土佐の亀と北じゃ。」 亀と北はさっき、ハルヒの竹刀を脳天に喰らって気絶している。 「ちくっとこいつらとおまんに話があっての。少し行き違いがあったが、 まぁ、こいつら儂の仲間じゃ。そして、おまんもな。来い。」 坂本さんはぶらりと歩き出した。 「何よ?3人に話があるから引っ張ってくるっていうのは のして無理矢理連れてくるって意味じゃなかったの?」 そんな訳ないだろ、ハルヒ。 気絶して抱えられている亀と北の目を覚まして 突然、脳天をかち割った事を何とか誤魔化し、鶴屋さんの 「さっ!歩いて喉も渇いたし、団子とお茶で一休みにょろ!」 の言葉により、茶屋に入った。 「さぁ!おまんら。これからどうするんか、ちゃっと決めぇ!ちゃっと!」 坂本さんは珍しく熱くなっている。 「悩む事は良ぇ事ぜよ。悩み考えんと出てこんもんもある。 しっかし、何も考えんと事を始めるのはただの馬鹿じゃきに。」 その言葉に北が、 「儂らは今やるべき事をやって、きっちりけじめを付けたいぜよ。」 と言い返した。 「亀、おまんもか?」 という坂本さんの言葉に亀は眉間に皺を寄せて頷いた。 「谷口は?」 谷口はうんともすんとも言わずにただ黙って俯いている。 それにハルヒがイラついたらしい。 「あんた、男らしくないわね!さっきから黙ってないで何か言ったらどうなの!? どうせそんなんじゃどこ行ったって使いっ走りがせいぜいなんでしょうけど!」 お前は黙っとけ。話がややこしくなる。 しかし、ハルヒの煽りに谷口は我慢出来なかったらしい。 「儂ゃ元々、坂本さんとは昨日初めて会っただけの縁じゃ。 助けて貰った恩はある。それはいつか必ず返す。でも、それとこれとは別じゃ!」 坂本さんは大きく溜息をついた。 「おまんら、揃いも揃って頑固者ばかりぜよ。分かった。もう何も言わん。 ただ、一つだけ覚えとけ。必ず生きて帰ってこい。 おまんら、帰ってきたらまた海で遊ぼうぜよ。」 坂本さんは少し寂しそうな笑顔を浮かべていた。 唸る狼、群れをなし、 牙を尖らせ、鼻磨き、 眼は爛々と輝いて 闇夜の獲物を取り囲む――― 昼に3人の探索をしたせいで着物を汚してしまった事を謝って 俺達は制服に着替えた。(朝比奈さんだけはメイド服だが…) 夕方、鶴屋さんの家に戻ると坂本さんは縁側で寝仏のように横になりながら 微動だにしなくなった。何かを考え込んでいるようだった。 俺達も考えなくてはいけない。元の時代に戻る方法を。 蒸し暑い夜だった。 長門は漢字ばかり並んでいる鶴屋家の蔵書を読みふけっている。 ハルヒと鶴屋さんは朝比奈さんに 「みくるちゃんが着物を着てると帯を回したくなる悪代官の気持ちが分かるわね。」 等と、セクハラ三昧のいたずら放題をしている。なんて羨ましい…。 俺と古泉は将棋を指している。3連勝中。 森さんが勢い良く駆け込んできた。 「皆様!どうやら新撰組の方々が三条木屋町の池田屋さんに踏み込んだようです。 尊王攘夷の方々が多数、集まり会合を開いていたようですが、 坂本さんのお知り合いもいらっしゃるのではないかと思いまして…」 その話を聞いた坂本さんは刀を手にして縁側からもうすでに外へと駆け出していた。 「僕らも様子を見に行ってみましょう。」 「ハルヒ!」 ハルヒはもう竹刀を手に外に出ていた。 「分かってるわよ、みくるちゃん!有希!行くわよ!」 「はい!」「……。」 5人で走り出した。………戻ってきた。 「鶴屋さん!森さん!池田屋ってどこ!?」 森さんと野次馬根性丸出しの鶴屋さんに案内され、池田屋のある方向へと来たのだが、 闘いの真っ最中なのだろう、街中の路地と言う路地に兵が蠢いていた。 森さんの話では新撰組だけでなく、会津、桑名の藩兵も出てきているらしい。 「こちらです。」 森さんが全員を近くの家の屋根の上へと導いた。 この時代の森さんも得体の知れない人だ。 騒がしい大声の聞こえる方へと進み、屋根の上から池田屋の見える位置に移動した。 入り口で一人の男が抜き身の刀を手に仁王立ちしている。 新撰組の人間以外は敵だろうが、味方だろうが入れる気はないらしい。 「あぁ~!!あいつよ!アイドルオタクの副リーダー!!」 飛び出していきそうなハルヒを全員で押さえつけた。 坂本さんはどこだ? 「一度、三条大橋に行ってみましょう。」 森さんの言葉に一斉に屋根の上を動き出した。 こちらにも何百何千という藩兵が道を固めていた。 坂本さんはどこだ? 「…待って。」 突然、長門が立ち止まった。 「…こっち。」 長門が歩き出した方角へ進んで行くと 路地の陰に坂本さんに抱えられた谷口と亀が見えた。 2人とも重傷のようだ。 坂本さんにも多少の切り傷が付いている。 「おぅ…おまんら、やっと来たかぇ…。さすがに2人抱えて逃げるのはしんどいぜよ。」 しかし、長門。なんで居場所が分かったんだ? 3人を屋根の上へ乗せようとしたその時であった。 側面から火が噴いた。 「キャッ!!」 「ハルヒッ!!」 一番手で屋根に登ろうとしたハルヒは屋根の上から 真っ逆さまに地面へと叩き落とされた。 「ハルヒッ!!大丈夫か!?ハルヒッ!!」 「こっちだ!!」 藩兵が駆け込んできたのが見えて俺は倒れているハルヒを抱えて 全員で大通りに逃げると三条大橋の目の前で四方全てが囲まれてしまった。 くそっ…万事休すか。 「…橋の上を突破する。」 長門が一歩前に出てきた。 「では、僕が後方の抑えを担当しましょう。」 「…助かる。」 「おい!大丈夫か、長門。」 「…問題無い。 対有機生命体コンタクト用インターフェースの力は物質を介在する事で増幅され、 更に一方向に集中させる事で拡散しているエネルギーを圧縮する事が可能。」 どういう事だ? 「…大丈夫。…本気を出すから。」 ちゃりんと鈴の音がした。 あれは…坂本さんに買ってもらってたかんざしだ、と思った瞬間、 朝が来たのかと思う程の眩い光が辺りを包み込んだ。 突然の眩しい光に眼を開けていられなかった。 ようやく眩しさに慣れて眼を開くとそこには信じられない光景が広がっていた。 橋の上にいた何百人、何千人という人間が跡形もなく、消えていたのである。 いや、一人だけ橋の手前で倒れていた。 長門である。 「長門っ!!」 くそっ…ハルヒと長門、2人も…。 「古泉っ!!!!!!!長門を頼む。逃げるぞ!!撤退だ!!」 「はい!」 全員で逃げようとした時だった。 「亀っ!!」 坂本さんに抱えられた望月亀弥太の背中に刀が突き刺さっていた。 「……何しょるんじゃ、貴様ら!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 刀を抜いて斬り掛かって行こうとした坂本さんに誰かが飛びついた。 谷口だ。 「行かせんぞ…。生きて事を成せ、言うたのはお前じゃろうが…。 時代が変わるのを見せてくれるんじゃろうが…。 お前がおらんのうなったら誰と一緒に海で遊ぶんじゃ!!」 「坂本さん!!」 坂本さんは歯噛みしながらこっちへ駈けてきた。 横を走っていた古泉の息が乱れている。 「ここまで来れば何の問題もなく、逃げられそうですね。」 と、橋を渡り終えた瞬間、急に身体が重くなって倒れて込んでしまった。 目を覚ますと、橋の横の土手にいた。 しかし、後ろから追ってきていた藩兵達はいなくなっている。 鶴屋さん、森さん、坂本さん、谷口の4人の姿も見当たらない。 夜の帳が下りて物音一つしない。 「どうやら僕らだけのようです。」 声を掛けられて振り向くとドキッとした。 目の前に古泉のニヤケ顔があったからだ。近いんだよ、顔が! 「そうだ…皆は!?」 「…問題無い。」 うおっ!長門。 「涼宮ハルヒは落下の衝撃により気絶しているだけ。特に損傷等は見られない。 朝比奈みくるも、じきに目を覚ます。」 「お前も倒れてたが、もう大丈夫なのか?長門。」 「…問題無い。瞬間的に全エネルギーを開放した為に起きた反動。 動作用のエネルギーが注入されれば問題は無い。」 「ところでさっき、橋の上で人が消えたのって…」 「…空間座標を移動させただけ。命までは取っていない。 数が多かったのでエネルギーを消耗した。」 こいつのエネルギーの源って何なんだろう?飯は普通に食ってるよな? 「ふぁ~い…。あれ~?どうしたんですか~?」 朝比奈さんがお目覚めだ。 「ところで一体全体、何が起きたんだ? 坂本さんとか鶴屋さんや森さんはどこに行った?」 古泉と長門が目を合わせた。 「どうやらここは先程までいた時代とはまた別の時代に来てしまったようです。」 は? 「空間の位置座標に変化は無い。但し、時間の位相がずれている。 地球時間に換算すると1867年12月10日。先程の時間座標から3年後の未来。」 …嘘だろ。 「なんで、今度はそんな時間に飛ばされちまったんだ?」 「長門さんのお話ですと、あの時、三条大橋を渡り終えた時にですが、 何でも僕らの元々いた時代に戻る時空間移動の震動が波形として現れたらしいのです。」 じゃあ、なんで…。 「…そう。理由が分からない。 何故、時空間移動の最中にこの時間座標に落下してしまったのか。 涼宮ハルヒの力によるものなのか、外的要因によるものなのか、原因は不明。」 朝比奈さんが真剣な顔つきで聞いている。 「それはひょっとすると…」 「何かご存知なんですか?朝比奈さん。」 「う~ん……禁則事項です♪」 おい…。 これからまた面倒事に巻き込まれるごめんだぞ…。 と思っていると、長門が歩き出した。 「…こっち。」 え? 長門は何も言わずにどんどん進んで行く。 俺はハルヒを背負ってついていった。 「ちょっと待てよ、長門。どこへ行く気だ?」 「…すぐに分かる。」 そのまま5人で歩いて行くと、とある店の前についた。 醤油屋さん???どうした、長門。また腹減ってんのか? 長門がその店の番頭と話をしたかと思うと、二階の部屋へと通された。 そこにいる人を見て驚いた。 「坂本さん!!」 確かに坂本さんである。もう一人、見た事の無い人がいた。 「おぉ!!ジョン!!久し振りぜよ!!」 久し振り?あぁ~…そうか、坂本さんにとっては3年振りか…。 「おぉ、中岡!!こいつらはジョンとその航海仲間じゃ。以前、話した事があろう?」 その中岡という人は頷いた。 「こいつは中岡。同じ土佐者で一緒に色々、やっちょうきに! いんや~!懐かしい!おまんらとは三条大橋で離ればなれになったきりぜよ。 ところでおまんら、今日はなんじゃ?」 長門、何かあるんじゃないのか? 「おぉ!そうじゃ!そこの仏頂面の女航海士!」 と、坂本さんは懐から何かを取り出した。 「おまんから預かっちょったかんざしの鈴、返しとくぜよ。」 綺麗な鈴の音が長門の手の平で鳴った。 「実は儂、女房を持ってのぉ~!さすがに女房の前で他のおなごからの贈り物じゃ なんて言うたら何されるか分からんきに!」 と、坂本さんは快活に笑った。 俺達は知らなかったのだが、かんざしには二つ鈴が付いていたらしい。 長門が坂本さんに買って貰った時に一つ、お礼としてあげていたらしい。 実に長門らしいお礼の仕方だ。 「あっ!そうそう!ところでエゲレス人のジョンなら知っちょるじゃろ。 実はの……今日はこの坂本龍馬のバースデーなんじゃ!!」 へ? 「それはおめでとうございます。」 「バースデーとは西洋では、なんじゃ祭り開いて盛り上がるんじゃろ?」 中岡さんが口を出してきた。 「龍さん、いかんぜよ。風邪引いちょる言うちょったじゃろ?」 「中岡はほんにつまらん男じゃきに。」 俺はふと思い付きを口に出してみた。 「でも、鍋とかだったら身体も暖まりますよ。」 「おぉ!それじゃ、ジョン!藤吉!藤吉!」 と、坂本さんが誰かを呼ぶと階段を登って相撲取りのような巨漢の男が入ってきた。 「藤吉。すまんが、鶏を買うてきてはくれんかの? 儂のバースデーに皆で鶏鍋をしたいぜよ!風邪にも効くしの!」 と、中岡さんの顔を見た。仕方が無いと言う感じだ。 すみません、余計な事言ってしまって…。 随分とお世話になったのだし、俺が言い出してしまったと言う事もあり、 せめて俺達で買い出しくらいには行こうとその藤吉さんに 鶏を売っている店の場所を教えてもらった。 「いんや~!ジョン、すまんの!積もる話はまた鍋の時じゃ!」 眠っているハルヒを置いて行こうとしたら朝比奈さんに止められた。 「いつまた何が起こるか分からないんだから 涼宮さんをひとりぼっちになんかしちゃ駄目です!」 と、怒られた。反省…。 疲れた…本当に疲れた…。 眠たい…布団に入ったら思いっきり寝てやる。 通りの向こうから提灯の灯りが歩いてくる。 今夜は鶏鍋か、美味そうだ。 提灯の灯りがすれ違った瞬間、ふと何かが引っ掛かった。 あれ?坂本龍馬の誕生日って…。 「なぁ、長門…。」 「…何?」 「今日って何月何日だったっけ?」 「…さっきも言った。1867年12月10日。」 「もう一回。」 「1867年…」 「違う!旧暦で!」 「…旧暦に直すと…慶応3年11月15日。」 俺は振り返って、今来た道を引き返そうとした。 しかし、朝比奈さんが必死にしがみついて俺は止めていた。 「駄目です!!キョンくん!!」 無視だ…関係無い…今はそんな言い争いをしている場合じゃない…。 「絶対に駄目です!!それにキョンくんが行っても何も変わらない!! これから起こる事は規定事項なんです!!」 規定事項という言葉に心臓を掴まれたような衝撃が走った…。 「さっきから規定事項だなんだって……… 大切な人1人、守れもしないで何が規定事項ですか!!!」 「規定事項なんです!!!!!」 朝比奈さんは泣いていた…。 「ごめんなさい……。でも、あなたが今やろうとしている事は、 禁則事項なんてレベルの問題じゃない。歴史の改変です。 皆で坂本さんを助けたのも規定事項なら今日の事も規定事項なんです。 あなたがどうしようとやっぱり歴史は変えられない……。」 霞む目の前で坂本さん達がいた部屋の灯りが消えた…。 冷たい風に長門の持つかんざしの鈴が鳴り響いていた――― 全員押し黙って歩いている。 冷たい風が身に染みる。 ハルヒが目を覚ました? 「ねぇ、キョ~ン…今日はもう帰りましょうよ…。皆、疲れてるのよ…。」 またハルヒの寝言か…… いずれ、この身が滅ぶとも 魂までは滅びやせん。 終わり結末、如何なれど 運命共にし、一蓮托生――― ……はべしっ!!! 「ちょっと、キョン!!あんた、何サボってんのよ!?日本史覚えたの!?」 …舌が噛んだ…目の前がチカチカする…涙出てきた。 「痛ぇな!!何しやがんだ!?」 パンッ!! 「へぇ~…この私にいつからそんな大口叩けるようになったのよ? 言ってご覧なさい!キョン!」 「おやおや、またですか?」 頼む!とめろ、とめてくれ、古泉。 「暖かいお茶入れますね♪」 ハルヒ、竹刀で顔をグリグリするな! ―ちゃりん。 新しく読み始めた本に合わせて、 新しいしおりを手に入れました。 二つの鈴が付いた澄んだ綺麗な音の鳴るかんざし。 島崎藤村『夜明け前』ページは今、開かれたばかり――― 「キョン。随分、元気ないわね。テストやっぱり駄目だった?」 「いや。今回の日本史は覚えるのにまさに命を懸けたからな。 ハルヒのお陰でほぼ完璧だ。」 ハルヒは満面の笑顔になった。 「じゃあ、もっと嬉しそうな顔しなさいよね!」 今回のテスト勉強はいつも以上に疲れたんだよ…。 「私に感謝しなさい! お礼はきっちりして貰うから!さっ!行きましょ!」 と、ハルヒは俺の手を取って歩き出した。 「どこへ?」 「どこでも良いわ!お礼!」 また何か奢る羽目になるのか。 ん?雪か…。 「今日は冷えると思ったら雪が降ってきたわね。天気予報も当てにならないわ…。」 「あぁ…そうだな…。」 「ねぇ、キョン。雪って下から見上げると幻想的で綺麗よね…。」 「あぁ…綺麗だな…。」 もうすぐクリスマスか…。 The End 涼宮ハルヒの歓喜~サンタが町にやって来た~へ続く
https://w.atwiki.jp/kodomoteate/pages/501.html
詳細未定。 現在、東京本部しかないため、 支部立ち上げメンバーを募集中です! 連絡はメールフォームよりお願いいたします。 あとメーリングリストも作りましたので、 どんどん参加しちゃってください。 メーリングリスト ※匿名、メアド非公開で参加可能 また、 現段階で賛同していただける方は、 よろしければコメントをお願いいたします! 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/kodomoteate/pages/508.html
詳細未定。 現在、東京本部しかないため、 支部立ち上げメンバーを募集中です! 連絡はメールフォームよりお願いいたします。 あとメーリングリストも作りましたので、 どんどん参加しちゃってください。 メーリングリスト ※匿名、メアド非公開で参加可能 また、 現段階で賛同していただける方は、 よろしければコメントをお願いいたします! 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/kodomoteate/pages/523.html
詳細未定。 現在、東京本部しかないため、 支部立ち上げメンバーを募集中です! 連絡はメールフォームよりお願いいたします。 あとメーリングリストも作りましたので、 どんどん参加しちゃってください。 メーリングリスト ※匿名、メアド非公開で参加可能 また、 現段階で賛同していただける方は、 よろしければコメントをお願いいたします! 岡山でもデモを! -- (たける) 2010-04-17 00 08 28 ぜひやっとくれ -- (crp) 2010-04-19 04 53 58 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/nekotoenpitu/pages/13.html
避難支援を行なっている団体 疎開の輪 URLhttp //sokainowa.jimdo.com/ 子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク URLhttp //kodomozenkoku.com/ オペレーション・コドモタチ URLhttp //ameblo.jp/opchild/ mama to mama URLhttp //www.mamatomama.info/entries/recent ふくしまのこどもたちを、まもりたい URLhttp //www45.atwiki.jp/childreninfukushima/ 福島の子どもたちを放射能から守るプロジェクト@ちば URLhttp //d.hatena.ne.jp/chiba-sokai/ 仮り住まいの輪 URLhttps //www.karizumai.jp/ 東京里帰りプロジェクト URLhttp //www.satogaeri.org/ 母子疎開支援ネットワーク「hahako」 URLhttp //hahako-net.jimdo.com/ 大阪でひとやすみ URLhttp //osakadehitoyasumi.web.fc2.com/index.html 心援隊 URLhttp //www.shinentai.net/ 空き家バンクプロジェクト http //tomga.jimdo.com/ 子ども疎開ネットワーク徳島 URLhttp //kodomotatinet.jugem.jp/ 絆プロジェクト北九州 URLhttps //sites.google.com/site/kizunakitakyushu/home/uketsuke
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/32.html
国連・子どもの権利委員会の一般的意見/一般的討議勧告 一般的意見 「条約のさらなる実施を促進し、かつ締約国による報告義務の履行を援助するために」(子どもの権利委員会暫定手続規則73条)作成される文書。他の人権条約機関も一般的意見または一般的勧告と呼ばれる同様の文書を採択してきており、それらは主に以下の2つの機能を果たすとされる(Alston, P., et. al., International Human Rights in Context, Clarendon Press, Oxford, 1996, pp.522-535)。 (1) 特定の条項について締約国報告書に記載されるべき情報を具体的に挙げること (2) 特定の条項の意義や機能、その実施のために必要とされる措置等について条約機構としての正式な解釈を示すこと 一般的意見は、締約国の選挙によって選ばれた委員で構成される条約機関が、多数の締約国報告書を審査してきた経験にもとづいて採択した正式な文書であり、国際人権法の発展の重要な要素を構成するものである。そこに示された見解は、厳密な意味での法的拘束力こそ有しないものの、条約の規定に関するひとつの権威ある解釈として、締約国の政府や裁判所等によって正当に尊重されなければならない。日本の裁判所においても、少数ではあるものの、自由権規約による一般的意見が「〔自由権規約の〕解釈の補足的手段」として用いられた例がある(外国人登録法にもとづく指紋押捺の拒否を理由とした逮捕に対する国家賠償請求事件に関する1994年10月28日の大阪高裁判決〔判例タイムズ868号59頁・判例時報1513号71頁〕)。 一般的意見1:第29条1項:教育の目的(2001年) 一般的意見2:子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割(2002年) 一般的意見3:HIV/AIDSと子どもの権利(2003年) 一般的意見4:子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達(2003年) 一般的意見5:子どもの権利条約の実施に関する一般的措置(2003年) 一般的意見6:出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱い(2005年) 一般的意見7:乳幼児期における子どもの権利の実施(2005年) 一般的意見8:体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利(2006年) 一般的意見9:障害のある子どもの権利(2006年)(関連)国連・障害者権利委員会・一般的意見4:インクルーシブ教育を受ける権利(2016年) (関連)国連・障害者権利委員会との共同声明「障害のある子どもの権利」(2022年3月) 一般的意見10:少年司法における子どもの権利(中編・後編)(2007年)〔日本語訳全文(PDF)〕注/一般的意見10は一般的意見24(2019年)によって置き換えられた。 一般的意見11:先住民族の子どもとその条約上の権利(2009年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見12:意見を聴かれる子どもの権利(その2・その3)(2009年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見13:あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利(その2・その3)(2011年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見14:自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利(第3条第1項)(後編)(2013年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見15:到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利(後編)(2013年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見16:企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務について(後編)(2013年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見17:休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利(後編)(2013年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見18:有害慣行(後編)(2014年;女性差別撤廃委員会との合同一般的勧告/一般的意見)〔日本語訳全文(PDF)〕〔内閣府仮訳PDF〕 一般的意見19:子どもの権利実現のための公共予算編成(第4条)(後編)(2016年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見20:思春期における子どもの権利の実施(後編)(2016年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見21:路上の状況にある子ども(2017年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見22:国際的移住の文脈にある子どもの人権についての一般的原則(2017年:移住労働者権利委員会との合同一般的意見)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見23:出身国、通過国、目的地国および帰還国における、国際的移住の文脈にある子どもの人権についての国家の義務(2017年:移住労働者権利委員会との合同一般的意見)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見24:子ども司法制度における子どもの権利(2019年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見25:デジタル環境との関連における子どもの権利(2021年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見26:とくに気候変動に焦点を当てた子どもの権利と環境(2023年)〔日本語訳PDF〕 一般的意見27(予定):司法および効果的救済措置にアクセスする子どもの権利(20XX年)〔コンセプトノート日本語訳〕 OPSC実施ガイドライン(子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の実施に関するガイドライン、2019年)〔日本語訳全文(PDF)〕(参考)子どもの売買および性的搾取(児童買春、児童ポルノその他の性的虐待表現物を含む)に関する国連特別報告者:子どもの売買および性的搾取の防止、子どもの保護ならびに被害を受けた子どものリハビリテーションに関するチェックリスト(2022年) 子どもの権利条約第5条に関する子どもの権利委員会の声明(2023年) 移住労働者権利委員会一般的意見2号:非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利(2013年) 一般的意見3号(子どもの権利委員会の一般的意見22号) 一般的意見4号(子どもの権利委員会の一般的意見23号) 一般的意見5号:身体の自由および恣意的拘禁からの自由に対する移住者の権利ならびにこれらの権利と他の人権との関係(2021年) その他の人権条約機関の一般的意見(勧告)日本語訳全般:日本弁護士連合会(日弁連)・国際人権ライブラリー 女性差別撤廃委員会:内閣府男女共同参画局・女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(CEDAW) 人種差別撤廃委員会:ヒューライツ大阪・委員会の一般的意見 障害者権利委員会:JDF(日本障害フォーラム)・障害者権利条約に関連した動き 一般的討議の勧告 「条約の内容および趣旨に関するより深い理解を促進するため、……条約のひとつの特定の条文または関連する主題」(委員会暫定手続規則75条)をテーマに選んで委員会が開催する討議。「テーマ別討議を行なう日」という意味でTheme Dayと呼ばれることも多い。 おおむね年に1回、秋の会期(9~10月)に開かれるのが通例。関連の国際機関、NGO、専門家等が幅広く参加し、2つ程度の分科会に分かれて議論するのが最近の慣例である。その議論をもとに、委員会は、国際機関、締約国、NGO等がとるべき措置について勧告を採択する。 1992年:武力紛争における子ども 1993年:子どもの経済的搾取 1994年:子どもの権利の促進における家族の役割 1995年:女子 1995年:少年司法の運営 1996年:子どもとメディア 1997年:障害のある子ども 1998年:HIV/AIDSが存在する世界で暮らす子ども 1999年:子どもの権利条約10周年記念会議:達成と課題(国連人権高等弁務官事務所との共催) 2000年:子どもに対する国家の暴力 2001年:家庭および学校における子どもへの暴力 2002年:サービス提供者としての民間セクターおよび子どもの権利の実施におけるその役割 2003年:先住民族の子ども 2004年:乳幼児期における子どもの権利の実施 2005年:親のケアを受けていない子ども 2006年:意見を聴かれる子どもの権利 2007年:子どもの権利のための資源配分――国の責任 2008年:緊急事態下における子どもの教育への権利 2009年:子どもの権利条約採択20周年記念会議(※とくに勧告なし) 2011年:親が収監されている子ども 2012年:国際的移住の文脈におけるすべての子どもの権利(第61会期〔2012年9~10月〕に行なわれた決定により、今後の一般的討議は隔年開催とされた) 2014年:デジタルメディアと子どもの権利 2016年:子どもの権利と環境 2018年:人権擁護者としての子どもの保護およびエンパワーメント一般的討議日への子ども参加に関する作業手法 2021年:子どもの権利と代替的養護 更新履歴:ページ作成(2011年7月28日。トップページよりコピーし、解説を追加)。/~/一般的意見26号の第1次草案の日本語訳へのリンクを追加(2023年1月1日)。/移住労働者権利委員会の一般的意見5を追加(1月25日)。/一般的意見26号の日本語訳へのリンクを追加(9月1日)。/一般的意見一覧の下に「子どもの権利条約第5条に関する子どもの権利委員会の声明」を追加(10月13日)。/一般的意見27(予定)について記載(2024年2月8日)。
https://w.atwiki.jp/srtud656/pages/97.html
【オフライン大会でのコース別最高記録】 BL -40[14780PP] Fate(うる)(第9回全国ネットカフェオープン) 西. -40[12944PP] BRAVE_PHOENIX(第7回全国ネットカフェオープン) PW. -40[12724PP] せりえー(天下統一戦山陰瀬戸内軍団代表決定戦) IS -45[14213PP] サイクロンpsgp(第4回全国ネットカフェオープン) LS -39[10477PP] Waltz(ばら)(第31回NEWNEWカップ) SS -40[13046PP] Brunel(第6回Moopa!杯) IC -40[15012PP] ろんばー(第12回全国ネットカフェオープン) EV -39[14606PP] ☆☆コウ☆☆(第11回全国ネットカフェオープン) 白 -36[10350PP] せりえー(第34回NEWNEWカップ) BW -40[17328PP] サイクロンpsgp(第11回IT-CAT杯) SW -35[11015PP] あるちゃん@(第20回NEWNEWカップ) BM -38[13781PP] (てんし)一輝(第3回全国ネットカフェオープン) WW. -37[13590PP] サイクロンpsgp(第19回 IT-CAT杯) SC -41[18405PP] ▼SYM▲(第10回IT-CAT杯) WH -30[13726PP] Хикару(第20回IT-CAT杯) DI. -37[14720PP] せりえー(第1回全国ネットカフェオープン)
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/249.html
総括所見:バチカン(第2回・2014年) 第1回(1995年)OPAC(2014年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/VAT/CO/2(2014年2月25日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2014年1月16日に開かれた第1852回(CRC/C/SR.1852参照)において法王聖座(Holy See)の第2回定期報告書(CRC/C/VAT/2)を検討し、2014年1月31日に開かれた第1875回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、法王聖座の第2回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/VAT/Q/2/Add.1)の提出を歓迎する。しかしながら委員会は、報告書の提出が相当に遅延したことにより、委員会が、法王聖座による条約の実施を14年間審査できなかったことを遺憾に思うものである。 3.委員会は、法王聖座の他部門型代表団との間に持たれた、開かれた、かつ建設的な対話、および、多数の分野について代表団が行なった積極的な誓約を歓迎する。とくに委員会は、態度および慣行を変革することについて法王聖座の代表団が表明した前向きな姿勢に、積極的側面として留意するものである。委員会は、これらの誓約を具体的に実施するために迅速なかつ確固たる措置がとられることを期待する。 4.委員会は、法王聖座に対し、この総括所見は、いずれもやはり2014年1月31日に採択された、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づいて法王聖座が提出した第1回報告書についての総括所見(CRC/OPAC/VAT/CO/1)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく法王聖座の第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/VAT/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 5.委員会は、以下の立法措置がとられたことを歓迎する。 (a) 「刑事上の問題に関する補完的規範-第2編:子どもに対する犯罪」を掲げた、2013年7月11日のバチカン市国法第8号。 (b) 刑法および刑事訴訟法の改正を掲げた、2013年7月11日のバチカン市国法第9号。 6.委員会はまた、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の批准(2012年1月25日)も歓迎する。 7.委員会は、以下の制度上および政策上の措置を歓迎する。 (a) 子どものための安全な環境プログラムの発展に関する新たな取り組みを提案し、かつ世界中の虐待被害者のパストラルケアのための努力を向上させることを目的として、未成年者保護司牧委員会を創設したこと(2013年12月5日)。 (b) バチカン市国が当事国である国際的取り決めの実施を監督するための特別部局をバチカン市国政庁内に設置したこと(2013年8月10日)。 III.条約の実施における特殊性 8.委員会は、法王聖座による子どもの権利条約の批准が、バチカン市国政府としての行為であるとともに、いかなる領域的権力または司法権力からも独立した原有的かつ非派生的法人格を有する国際法の主権的主体としての行為でもあるという、二重の性質を有するものであることを承知する。司教および宗教施設の主要な高位者がローマ法王の代理人または代表として行動するわけではないことは十分に承知しながらも、委員会は、カトリック修道会に所属する者が、カノン法典第331条および第590条にしたがい、法王に対する忠誠に拘束されていることに留意する。したがって委員会は、法王聖座に対し、条約を批准するにあたり、法王聖座は、条約を、バチカン市国の領域内のみならず、カトリック教会の最高権機関として、その権威のもとにある個人および施設を通じて世界中で実施することを誓約したことを想起するよう、求めるものである。 IV.主要な懸念領域および勧告 A.一般的実施措置(条約第4条、第42条および第44条(第6項)) 委員会の前回の勧告 9.委員会は、法王聖座の第1回報告書に関する1995年の総括所見(CRC/C/15/Add.46)に掲げられた勧告のほとんどについて十全な対応がとられていないことを遺憾に思う。 10.委員会は、法王聖座に対し、条約に基づく第1回報告書についての総括所見に掲げられた勧告のうちまだ実施されていないものまたは十分に実施されていないもの(とくに差別の禁止、自己の意見を表明する子どもの権利および家族問題に関するもの)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 留保 11.委員会は、条約に付した留保を撤回する可能性について現在検討中である旨の、法王聖座の代表団による発言を歓迎する。前回の勧告(CRC/C/15/Add.46、パラ10)に照らし、委員会は、権利の主体としての子どもの全面的承認を妨げ、かつ、条約の適用についてバチカン市国の法源との両立性を条件としている、法王聖座が条約に付した留保についての懸念をあらためて表明するものである。 12.委員会は、法王聖座が、条約に付したすべての留保を撤回し、かつ条約が国内法令に優越することを確保するために必要な措置をとるよう勧告する。 立法 13.バチカン市国の法律が条約に一致することを確保することに対する法王聖座のアプローチは歓迎しながらも、委員会は、カノン法を含む内部法との関係で同じアプローチがとられていないことを遺憾に思う。委員会はまた、カノン法の一部の規定が条約の規定、とくに差別、暴力ならびにあらゆる形態の性的搾取および性的虐待から保護される子どもの権利に関連する規定と一致していないことも懸念するものである。 14.委員会は、締約国が、条約との全面的一致を確保する目的でその規範的枠組み、とくにカノン法の包括的再検討を行なうよう勧告する。 調整 15.委員会は、条約の実施を調整する任務を委ねられた機構の設置を法王聖座として検討する旨の代表団の発言に、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、そのような機構がまだ設けられていないことを遺憾に思うものである。 16.委員会は、法王聖座が、すべての評議会および司教会議を横断して、かつ法王聖座の権威のもとに活動している個人および宗教的性格を有する施設との関連で子どもの権利の実施を調整する任務および能力を有する機構を、高いレベルに設置するよう勧告する。この機構に対しては、その任務を履行するための十分な人的資源、財源および技術的資源が提供されるべきである。 資源配分 17.委員会は、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもを支援しおよび保護し、ならびに、このような子どもに対し、とくに教育の機会、保健ケア、社会的ケアおよびその他の家族支援サービスを提供する目的で、草の根レベルで行なわれ、かつ世界中のカトリックの教会、財団および団体によって資金が拠出されている多数の活動を評価する。しかしながら委員会は、子どもを支援するための資源配分について包括的な子どもの権利基盤アプローチがとられておらず、かつ、法王聖座ならびに法王聖座が勢力および影響力を有している締約国の教会関連団体・施設が行なっている子どもに関する支出を追跡するシステムが存在しないことに、留意するものである。 18.「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する委員会の一般的討議(2007年)に照らし、かつ条約第2条、第3条、第4条および第6条を強調しながら、委員会は、法王聖座が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) バチカン市国における子どもの権利の実施ならびに他の締約国においてカトリックの団体および施設が行なう子どもの権利の促進および保護のために必要な資源の包括的評価を実施すること。 (b) 被害を受けやすい状況に置かれた子どもにとくに注意を払いながら、子どもの最善の利益に奉仕するために配分された資源の効果を評価するシステムを確立すること。 独立の監視 19.委員会は、バチカン市国が当事国である国際的取り決めの実施を監督するための特別部局が2013年8月に設置されたこと、および、2013年12月に創設された委員会に、性的虐待に関する子どもの苦情を受理する権限が与えられる予定であることに留意する。しかしながら委員会は、法王聖座が、その権威のもとに世界中で活動している個人および施設(すべてのカトリック学校を含む)による、かつバチカン市国における、子どもの権利の遵守および尊重を監視するための機構を設置していないことを懸念するものである。 20.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮に入れながら、委員会は、法王聖座が、子どもの苦情を、子どもに配慮したやり方で、かつ被害者のプライバシーおよび保護を正当に尊重しながら受理しかつ調査する明確な任務を与えられた、子どもの権利を監視するための独立機構を設置するよう勧告する。法王聖座はまた、カトリック教会が提供する学校、サービスおよび施設に出席しまたは関係しているすべての子どもが当該機構にアクセスできることも確保するべきである。法王聖座の特別な性質に鑑み、この機構と国内法執行機関との関係および連携に関する指針も定められ、かつ広く普及されるべきである。 普及および意識啓発 21.委員会は、法王聖座の報告書で説明されている意識啓発の取り組み、とくにインドのカトリック学校で設けられている人権についての教育講座を歓迎する。しかしながら委員会は、法王聖座が、報告対象期間中に、1995年に委員会が勧告したとおり(CRC/C/15/Add.46、パラ11参照)、条約の幅広い普及および世界中で話されている言語への条約の翻訳を促進するための十分な措置をとっていないことを懸念するものである。 22.委員会は、法王聖座が、とくに具体的かつ長期的な意識啓発プログラムを策定しかつ実施すること、ならびに、子どものためにとくに作成された適切な教材を活用しながら、あらゆる段階のカトリック教育制度の学校カリキュラムに条約の規定を含めることを通じ、条約のすべての規定を、とくに子どもおよびその親に対して広く知らせるための努力を強化するよう勧告する。 研修 23.カトリック学校の教員を対象として子どもの権利についての研修を行なう、オーストリアで2007年以降実施されている取り組み等のプロジェクトが進められていること、および、法王聖座が、研修は子どもの根本的保護のための望ましい実践であると認めていることは歓迎しながらも、委員会は、法王聖座が、その権威のもとに活動しており、かつ子どもとともにおよび子どものために働いている個人および施設(カトリック学校の教員および神学校の聖職者を含む)を対象として条約に関する研修を組織的に行なうための措置をとっていないことを、依然として懸念する。 24.委員会は、法王聖座に対し、すべての聖職者ならびに子どもとともにおよび(または)子どものために働いているカトリック修道会およびカトリック施設の構成員を対象として条約の規定に関する組織的研修を実施し、かつ、教員養成プログラムおよび神学校に子どもの権利についての必修単位を含めるよう、促す。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 25.委員会は、法王聖座が、カノン法(とくに第1139条)に掲げられた「非嫡出子」という差別的表現を撤回する目的で法律の見直しを開始した旨の、双方向的対話の際に法王聖座の代表団から提供された情報を歓迎する。2013年に法王が行なった進歩的発言にも積極的対応として留意しながらも、委員会は、同性愛に関して法王聖座がこれまで行なってきた発言および宣言が、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーの青少年ならびに同性カップルによって育てられている子どもへの社会的スティグマおよび暴力を助長していることを懸念するものである。 26.委員会は、法王聖座が、すべての法律および規則ならびに政策および実践を条約第2条に一致させるとともに、婚外子を非嫡出子として差別的に分類することを速やかに廃止するよう、勧告する。委員会はまた、法王聖座に対し、子どもの性的指向またはその親の性的指向に基づく子どもへのあらゆる形態のいやがらせ、差別または暴力を非難するためにその道徳的権威を全面的に活用し、かつ、同性愛の非犯罪化のために国際的に行なわれている努力を支持することも促すものである。 27.ジェンダーの基づく差別についての前回の懸念(CRC/C/15/Add.46、パラ8)を参照しつつ、委員会は、法王聖座が引き続き、補完性および尊厳の平等の促進を重視していることを遺憾に思う。この2つの概念は、条約第2条で定められた法律における平等および慣行とは異なるものであり、かつ、差別的な立法および政策を正当化するのに利用されることが多い。委員会はまた、法王聖座が、委員会から1995年に要請されたように、女子と男子の平等を促進し、かつカトリック学校で使用されている教科書からジェンダー上のステレオタイプを取り除くためにとられた措置に関する正確な情報を提供しなかったことも遺憾に思うものである。 28.委員会は、法王聖座に対し、女子と男子の間にある差別に対応し、かつ、女子と男子の平等に異議を唱えることになりうる用語の使用を行なわないため、権利基盤アプローチをとるよう促す。委員会はまた、法王聖座に対し、カトリック学校で使用される教科書で、男子および女子の才能および能力の発達を制限し、かつその教育上の機会および人生の危害を阻害しかねないジェンダー上のステレオタイプ化が行なわれないことを確保するために積極的措置をとることも促すものである。 子どもの最善の利益 29.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての法王聖座の対応が、立法上、行政上および司法上の手続において、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて不十分であることを懸念する。委員会は、子どもの性的虐待の訴えに対応するにあたり、法王聖座が、いくつかの国内調査委員会から指摘されているように、教会の信用の維持および加害者の保護を子どもの最善の利益よりも一貫して優先させてきたことを、とりわけ懸念するものである。 30.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利に関する委員会の一般的意見14号(2013年)に対して法王聖座の注意を喚起するとともに、法王聖座が、この権利が立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関連し、かつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合され、かつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。これとの関連で、法王聖座は、子どもの最善の利益があらゆる分野で(子どもの性的虐待の事案に対応する場合を含む)第一次的に考慮されることを確保するため、あらゆる関連の権威者に指針を示すよう奨励されるところである。委員会はまた、法王聖座に対し、そのような指針を世界中のあらゆるカトリック系の教会、団体および施設に配布することも促す。 子どもの意見の尊重 31.委員会は、法王聖座が、自己に影響を与えるあらゆる事柄について意見を表明する子どもの権利ならびに表現、結社および宗教の自由に対する子どもの権利について制限的解釈を行なっていることを懸念する。委員会はまた、法王聖座が引き続き、条約第12条に掲げられた権利は親の権利および義務を損なうものであると考えていることも、懸念するものである。 32.委員会は、法王聖座に対し、自己の意見を自由に表明する子どもの権利は子どもの尊厳のもっとも本質的な要素のひとつであり、かつ、この権利を確保することは条約に基づく法的義務であって締約国の裁量は認められていないことを想起するよう、求める。委員会はまた、子どもが自己の意見を自由に表明でき、かつ子どもの意見がもっとも幼いころから正当に重視される家庭は重要なモデルであって、子どもがいっそう幅広い社会で意見を聴かれる権利を行使するための準備につながることも強調するものである。意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)を参照しつつ、委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 意見を聴かれるすべての子どもの権利の実現に対する否定的態度と闘い、かつ、子どもが権利の保有者として認められることを促進すること。 (b) 関連の法的手続において、意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律が効果的に実施されることを確保するための措置をとること。 (c) 親および子どもの保護者が子どもに耳を傾け、かつ子どもに関係する事柄について子どもの意見を正当に重視する機会を、立法および政策を通じて奨励するとともに、すでに存在する積極的な行動および態度をもとにした親教育プログラムを促進すること。 (d) カトリック系の団体および施設が家族および子どもに対して提供しているすべてのサービス、ならびに、カリキュラムおよび学校プログラムの計画における子どもの積極的役割を促進するとともに、意見を聴かれる子どもの権利が規律に関わる事柄において全面的に尊重されることを確保すること。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条および第13~17条) 親を知り、かつ親によって養育される権利 33.委員会は、カトリック司祭が父親である子ども(多くの場合は父親の身元を知らない)の状況について懸念を覚える。委員会はまた、子どもが経済的に自立するまで教会から定期的給付を受ける計画を母親が獲得できるのは、子どもの父親または当該計画についていかなる情報も公にしない旨の秘密保持契約に母親が署名した場合のみであることも、懸念するものである。 34.委員会は、法王聖座が、カトリック司祭が父親である子どもの人数を評価し、それが誰であるのかを調べるとともに、父親を知り、かつ父親によって養育されるこれらの子どもの権利が適宜尊重されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、法王聖座が、今後、子どもを扶養するための金銭支給計画を母親に付与する条件として教会が秘密保持契約を課さないことを確保するようにも勧告するものである。 アイデンティティに対する権利 35.法王聖座が、親とともに暮らし、かつ自己の身元を知る子どもの権利を重視していることは歓迎しながらも、委員会は、いわゆる「赤ちゃんボックス」の利用を通じていくつかの国でカトリック団体が行なっている、匿名による赤ん坊の遺棄の慣行が続いていることを懸念する。 36.条約第6条、第7条、第8条および第19条に照らし、委員会は、法王聖座に対し、匿名による赤ん坊の遺棄の慣行の根本的原因を明らかにするための研究に協力するとともに、条約第7条で定められているとおり、自己の生物学的な親およびきょうだいを知る子どもの権利を全面的に考慮に入れながら、これに代わる手段を速やかに強化しかつ促進するよう、強く促す。委員会はまた、法王聖座に対し、子どもの遺棄および(または)死亡を防止する最後の手段として病院で秘密に出産する可能性を導入しながらも、家族計画、リプロダクティブヘルスケア、ならびに、計画外の妊娠を防止し、かつ困窮している家族を援助するための十分なカウンセリングおよび社会的支援を提供することにより、赤ん坊の遺棄への対応に貢献するよう促すものである。 D.子どもに対する暴力(条約第19条、第24条(第3項)、第28条(第2項)、第34条、第37条(a)および第39条) 拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 37.委員会は、4つのカトリック女子修道会が1996年まで運営していたアイルランドのマグダレン洗濯所に家族、国家機関および教会によって恣意的に措置された女子を保護し、かつこれらの女子に対して正義を確保するために必要な措置を、法王聖座がとってこなかったことを懸念する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。 (a) これらの施設に措置された女子が、奴隷のような条件下で働くことを強制され、かつ、非人道的な、残虐なおよび品位を傷つける取扱いならびに身体的および性的虐待をしばしば受けていたこと。 (b) 女子が、そのアイデンティティ、教育、ならびに、しばしば食料および必須医薬品を剥奪され、沈黙の義務を課され、かつ、外界との接触を禁じられていたこと。 (c) 洗濯所への入所前または洗濯所での監禁中に出産した未婚の女子が赤ん坊を強制的に取り上げられていたこと。 (d) 関係する4つのカトリック修道会は法王聖座の権威のもとで活動していたのに、洗濯所を運営する修道女らの行為を調査するための措置、または当該人権侵害の責任者、および、女子の無償労働を組織し、かつ事情を承知のうえでそこから利益を得ていた者の責任を問うにあたって法執行機関に協力するための措置がなんらとられていないこと。 38.加害者を訴追し、かつ行なわれた犯罪の重大性にふさわしい刑罰をもって処罰するとともに、すべての被害者が救済措置の対象とされ、かつ補償を受ける執行可能な権利を有することを確保するべきである旨の、拷問禁止委員会が2011年にアイルランドに対して行なった勧告(CAT/C/IRL/CO/1、パラ21)を参照しつつ、委員会は、法王聖座が以下の措置をとるよう促す。 (a) アイルランドのマグダレン洗濯所およびこのような制度が存在していたすべての国で活動していた宗教関係者の行為について内部調査を実施するとともに、このような犯罪について責任を負うすべての者が制裁の対象とされ、かつ訴追のために国内司法当局に通報されることを確保すること。 (b) 被害者およびその家族に対し、修道会自身を通じて、または教会の最高権機関であってその権威のもとにあるカトリック修道会の構成員について法的責任を負う法王聖座を通じて、完全な補償が行なわれることを確保すること。 (c) これらの犯罪の被害を受けた者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を確保するためにあらゆる適当な措置をとること。 (d) このような慣行をもたらした事情および理由についての評価を実施するとともに、今後、いかなる理由があっても女性および子どもがカトリック施設に恣意的に監禁されないことを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 体罰 39.あらゆる場面における子どもの体罰の禁止について検討するよう法王聖座に提言する旨の代表団の発言は歓迎しながらも、委員会は、子どもの儀式的殴打を含む体罰が一部のカトリック系施設で広く行なわれてきており、かつ依然として広く行なわれていること、および、とくにアイルランドのライアン委員会によって明らかにされたように、一部の国々ではこのような体罰がエンデミックの水準に達していることを懸念する。委員会はまた、法王聖座が、体罰が条約によって禁じられているとは考えておらず、したがって、カトリック学校または子どもとともにおよび子どものために活動しているカトリック系施設ならびに家庭における子どもの体罰を明確に禁じた指針および規則を定めていないことも、懸念するものである。 40.委員会は、法王聖座に対し、子どもに対するあらゆる形態の暴力はいかに軽いものであっても受け入れられないこと、および、条約は子どもに対していかなる水準の暴力を振るう余地も残していないことを想起するよう求める。委員会はまた、法王聖座に対し、あらゆる形態の身体的または精神的暴力から子どもを保護するためにあらゆる適当な措置をとる、条約第19条に基づく自国の義務を想起することも求めるものである。委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰に反対するのと同様に、子どもに対する体罰に明示的に反対すること。 (b) カノン法およびバチカン市国法を改正し、子どもに対するあらゆる体罰(家庭におけるものを含む)を明示的に禁止すること。 (c) カトリック系のすべての学校ならびに子どもとともにおよび子どものために活動している施設(バチカン市国の領域内の学校および施設を含む)でこの禁止規定を実効的に執行するための機構を設置するとともに、子どもに対する暴力について責任が問われることを確保すること。 (d) その権威を活用して積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育てを促進するとともに、聖書は体罰を容認していないという解釈が、教会の教育その他の活動に反映され、かつあらゆる神学教育および神学研修に編入されることを確保すること。 虐待およびネグレクト 41.委員会は、法王聖座が、世俗の公的機関について、親の義務および権利に干渉しないよう、虐待が行なわれたことが証明された場合以外は過程の現場に介入するべきではないという立場をとっていることを懸念する。このような立場は、子どもの虐待およびネグレクトを防止するための国際的な努力および措置を深刻に阻害するものである。委員会はまた、法王聖座が、カトリックの家族に相当の影響力を有しているにもかかわらず、家庭における虐待およびネグレクトを防止するための包括的戦略をまだ採択していないことも懸念する。 42.委員会は、子どもの保護はあらゆる形態の暴力の積極的防止から開始されなければならないこと、ならびに、虐待およびネグレクトから保護される子どもの権利が親の特権によって損なわれることはけっしてあるべきではないことを強調する。したがって委員会は、法王聖座が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもの虐待およびネグレクトを防止し、かつこれと闘うための包括的な戦略を策定するとともに、子どもの関与を得ながら、意識啓発および教育のためのプログラム(キャンペーンを含む)をさらに強化すること。 (b) 元被害者、ボランティアおよびコミュニティの構成員の関与を得て、かつこれらの者を訓練する等の手段も用いながら、ドメスティックバイオレンス、子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれに取り組むことを目的とした、コミュニティを基盤とするプログラムを奨励すること。 (c) 子ども、その代理人その他の者が子どもに対する暴力を通報できるようにするため、これらのものを対象とした、安全な、十分に広報された、秘密が守られ、かつアクセスしやすい支援機構を発展させること。 (d) 虐待およびネグレクトの事案をいつ、どのように捜査機関に付託すべきかについての明確な指針および研修を発展させること。 性的搾取および性的虐待 43.委員会は、すべての子どもの尊厳および全人格を不可侵なものにする旨の、法王聖座の代表団によって表明された誓約に留意する。にもかかわらず、委員会は、法王聖座の権威のもとに活動するカトリック教会の構成員によって行なわれた子どもの性的虐待(聖職者が世界中で数万人にのぼる子どもの性的虐待に関与していた)について、深い懸念を表明するものである。委員会は、法王聖座が、行なわれた犯罪の規模を認めることも、子どもの性的虐待の事案に対応しかつ子どもを保護するために必要な措置をとることもせず、聖職者による性的虐待の継続および加害者の不処罰を可能にする政策および慣行を採用してきたことに、重大な懸念を覚える。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 子どもの性的虐待を行なっていることをよく知られた者が、そのような犯罪を隠蔽しようとする教会の試みにより、教区から教区へまたは他の国へと転任させられてきたこと。この慣行の証拠は多数の国内調査委員会によって記録されている。加害者を移動させるというこの慣行により、多くの聖職者は子どもとの接触を維持して子どもを虐待し続けることができ、かつ、多くの国の子どもが聖職者から性的虐待を受ける危険性が高い状態に置かれている。子どもに対する性的犯罪を行なった数十名の加害者がいまなお子どもと接触しているという報告がある。 (b) 法王聖座が、聖職者による子どもの性的虐待事件に関する全面的裁判権を1962年に設定し、かつ2001年には教理省がこれらの事件について排他的権限を有するとしたにもかかわらず、法王聖座が、報告対象期間中に把握したすべての子どもの性的虐待事件およびこれらの事件に関する内部手続についてのデータを委員会に提供しないこと。 (c) 子どもの性的虐待について法王聖座による対応が行なわれた事案で、当該虐待が、懲戒措置について定めた内部手続を通じて道徳に対する重大な違背として扱われており、その結果、虐待を行なった者の圧倒的多数および子どもの性的虐待を隠蔽した者のほぼ全員が、当該虐待が行なわれた国の司法手続を免れ得てきたこと。 (d) 聖職者全員に、違反すれば破門という条件のもとで沈黙の掟が課されていることから、子どもの性的虐待事件について当該犯罪が行なわれた国の法執行機関に通報が行なわれた例がほとんどないこと。それどころか、委員会のもとには、沈黙の義務を尊重しなかったという理由で修道女および司祭が追放され、降格されまたは聖位を剥奪された事案が報告されている。カストリヨン・ホヨス枢機卿がピエール・ピカン司教に宛てた2001年の書簡で述べられている、子どもの虐待を行なった者の告発を拒否したという理由で司祭が祝福を受けた事案についても同様である。 (e) 国内法執行機関への通報が義務的とされたことは一度もなく、かつ、マヌエル・モレノ司教およびルチアーノ・ストレロ大司教がアイルランド司教協議会の構成員に宛てた公式書簡(1997年)でこのような通報が明示的に否定されたこと。多くの場合、法王聖座の最上級段階にある機関を含む教会機関は、司法機関および国内調査委員会への協力について消極的であり、かつこのような協力を拒否した例も複数ある。 (f) 性的虐待から身を守れるよう、カトリック系の学校および施設に登録されている子どものエンパワーメントを図るために、限られた努力しか行なわれてこなかったこと。 44.委員会は、過去に何が起きたかの真実を確実に明らかにすること、再発防止のために必要な措置をとること、正義の原則が全面的に尊重されることを確保すること、ならびに、とくに、被害者およびこれらの言語道断の犯罪の影響を受けたすべての者に癒しをもたらすことの重要性に関する法王聖座の発言を認知する。このような観点から、委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう強く促すものである。 (a) 2013年に創設された委員会が、あらゆる子どもの性的虐待事件およびこれに対応する際のカトリック全聖職団の行為を独立の立場から調査することを確保すること。市民社会および被害者団体に対して委員会への参加を呼びかけること、および、国際人権機構に対して同委員会の活動への支援を呼びかけることを検討すること。調査の結果は公開され、かつカトリック教会の構成員による子どもの性的虐待の再発の防止に役立てられるべきである。 (b) 子どもに性的虐待を行なったことがわかっている者およびそのような疑いがある者全員を直ちに職務から外すとともに、捜査および訴追のために事案を関連の法執行機関に付託すること。 (c) 子どもに性的虐待を行なった者、ならびに、そのような犯罪を隠蔽した者および事情を承知のうえで犯罪者を子どもに接触する立場に置いた者全員の責任を問うために使用できる公文書が透明な形で共有されることを確保すること。 (d) 子どもの性的虐待が「道徳に対する違背」ではなく犯罪とみなされるようにし、かつ、被害者およびそのような犯罪について知るに至ったすべての者に沈黙の義務を課している可能性があるすべての規定を削除する目的で、カノン法を改正すること。 (e) 子どもに対する性的な虐待および搾取が疑われるすべての事案を法執行機関に義務的に通報することについて、明確な規則、機構および手続を確立すること。 (f) 法王聖座の権威のもとに活動するすべての司祭、宗教関係者および個人が、自己の通報義務について、かつ抵触がある場合には当該義務がカノン法の規定に優越することについて、知っていることを確保すること。 (g) それぞれストックホルム、横浜(日本)およびリオデジャネイロ(ブラジル)で開催された子どもの〔商業的〕性的搾取に反対する世界会議(1996年、2001年および2008年)で採択された成果文書にしたがって、このような犯罪の防止ならびに被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムおよび政策を発展させること。 (h) 性的虐待に関する子どもの意識を高め、かつ自分のみを守るために必要なスキルを教えるための教育的防止プログラムを発展させること。 (i) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約の批准を検討すること。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 45.委員会は、法王聖座が女性および女子の尊厳の促進にとくに注意を払っていることの表れが見られることを歓迎する。しかしながら、ドメスティックバイオレンスが大規模に行なわれており、かつ子どもに破壊的な影響を与えていること、および、ドメスティックバイオレンスにはジェンダーの要素がしばしばあることに鑑み、委員会は、2013年の女性の地位委員会の際、宗教、慣習または伝統は、国が女性および女子を暴力から保護する義務を免れるための弁明として用いられるべきではない旨を提案した最終草案に法王聖座が反対したことを深刻に懸念するものである。 46.子どもに対する暴力に関する国連研究(A/61/299)を想起しつつ、委員会は、法王聖座が、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むよう勧告する。委員会はさらに、法王聖座が、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) あらゆる形態のドメスティックバイオレンスおよびジェンダーに基づく暴力と闘うことを目的とした努力および措置(これらの形態を正当化するものとしてしばしば機能する態度、伝統、慣習および行動習慣に対応する措置を含む)を支援するため、その権威および影響力を活用すること。 (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための包括的な国家的戦略を策定すること。 (c) 子どもに対するあらゆる形態の暴力に対応するための調整枠組みを採択すること。 (d) 暴力のジェンダーの側面にとくに注意を払って対応すること。 (e) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表および他の関連の国連機関と協力すること。 ヘルプライン 47.委員会は、法王聖座が、諸締約国におけるヘルプラインの創設を促進し、その存在に関する意識を高め、かつ子どもにその利用を奨励するよう勧告する。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(第1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(第4項)および第39条) 家庭環境 48.近い将来、カノン法の家族関連規定の改正に歩を進める旨の、法王聖座代表団によって提供された情報は歓迎しながらも、委員会は、法王聖座および教会運営施設が、多様な形態の家族の存在を認めておらず、かつ、家庭の状況を理由として子どもをしばしば差別していることを懸念する。 49.委員会は、法王聖座が、カノン法の規定が家庭環境の多様性を認め、かつ子どもが暮らしている家庭の態様を理由として子どもを差別しないことを確保するよう勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 50.委員会は、法王聖座が、子どもの人格の全面的かつ調和のとれた発達のために家庭環境のもとで成長することの重要性を重視していることを歓迎する。しかしながら委員会は、「キリストの軍団」(Legion of Christ)および他のカトリック系の施設に勧誘され、徐々に家族から引き離されて外界から孤立させられる青少年の状況について懸念を覚えるものである。子どものために学校および神学校を選択する親の権利および義務を強調する法王聖座の回答には留意しながらも、委員会はまた、2013年11月、フランス司教協議会の会長が、カトリック系の一部の施設および修道会における個人の道義心の操作を認めたことにも留意する。 51.委員会は、法王聖座に対し、心理的操作によって家族から引き離された子どもおよび青少年に関するすべての訴えを適切に調査するとともに、青少年を操作した責任者がその責任を問われ、かつ活動をやめることを確保するよう、促す。 52.委員会は、カトリック系団体において子どもの施設措置がいまなお広く行なわれていること、および、多くの国で新たな施設が開設されていることに表れているように家庭型の代替的選択肢がいまなお優先されていないことを、懸念する。委員会はまた、法王聖座が、カトリック系の代替的養護施設における子どもの措置およびモニタリングについてのガイドラインを採択しておらず、かつ、カトリック系団体に措置された子どもの脱施設化のための政策をいまだに定めていないことも懸念するものである。 53.委員会は、法王聖座に対し、カトリック系の施設に措置されている子どもの脱施設化を図り、かつ可能なときは子どもが家族と再統合できるようにするための政策を採択するよう促す。委員会はまた、法王聖座が、3歳未満の子どもが施設に措置されないことを優先的に確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。法王聖座はまた、基準が適用されることを確保し、かつ虐待を防止する目的で、カトリック系のすべての代替的養護現場における子どもの措置、十分な定期的再審査およびモニタリングについてのガイドラインも採択するべきである。その際法王聖座は、子どもの代替的養護に関する指針(2009年12月20日の総会決議64/142付属文書)を考慮に入れるよう求められる。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(第3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(第1~3項)および第33条) 健康 54.委員会は、ブラジルの9歳の女子が義父から強姦された後に緊急救命妊娠中絶手術を受けた事件(2009年)で、ペルナンブーコ(ブラジル)の大司教が女子の母親および中絶を行なった医師を処罰したことに、このうえなく深い懸念を表明する。当該処罰はその後、ローマカトリック教会司教省長官によって承認された。 55.委員会は、法王聖座に対し、妊娠した女子の生命および健康に明らかなリスクを付加している、中絶に関する法王聖座の立場を再検討するとともに、中絶サービスへのアクセスが認められうる状況を明らかにする目的で中絶に関するカノン法第1398条を改正するよう促す。 青少年の健康およびHIV/AIDS 56.委員会は、避妊手段ならびにセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する〔サービス〕および情報に対する青少年のアクセスを否定する法王聖座の立場および実践の悪影響について深刻な懸念を覚える。 57.到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利に関する一般的意見15号(2013年)、思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年)およびHIV/AIDSと子どもの権利に関する一般的意見3号(2003年)を参照しつつ、委員会は、法王聖座が、とくに思春期の女子の妊産婦有病率および妊産婦死亡率を高めることにつながる若年妊娠および望まない妊娠ならびに非公然の中絶の危険性、ならびに、思春期の女子および男子がHIV/AIDSを含む性感染症(STD)に感染しかつその影響を受ける特別なリスクを想起するよう求める。委員会は、法王聖座が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 到達可能な最高水準の健康を青少年が享受することに対して法王聖座の立場が及ぼす深刻な影響について評価を実施するとともに、性および生殖に関する情報(家族計画、避妊手段、若年妊娠の危険性、HIV/AIDSの予防ならびにSIDの予防および治療に関する情報を含む)への青少年のアクセスを妨げている、思春期のセクシュアリティを取り巻くすべての障壁およびタブーを克服すること。 (b) 青少年の健康および発達意影響を与えるすべての決定(青少年の健康を左右する根底的要因に影響を与える政策および介入策の実施に関する決定を含む)の中心に青少年の最善の利益を位置づけること。 (c) 自己の健康および発達にとって必要不可欠な十分な情報にアクセスする青少年の権利を確保し、かつ、青少年が社会に意味のあるやり方で参加できるようにすること。これとの関連で、法王聖座は、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育ならびにHIV/AIDS予防が、カトリック学校の必修カリキュラムの一部とされ、かつ、若年妊娠およびSTDの予防にとくに注意を払いながら思春期の女子および男子を対象として進められることを確保するべきである。 (d) 妊娠した10代の最善の利益を保障するとともに、リプロダクティブヘルスの分野で、妊娠した10代の意見が常に聴かれ、かつ尊重されることを確保すること。 (e) 早期婚および若年妊娠が引き起こしうる害についての情報の普及に積極的に貢献し、かつ、カトリック系の団体が妊娠した子ども、思春期の母親およびその子どもの権利を保護することを確保するとともに、これらの子どもに対する差別と闘うこと。 (f) 男子および男性にとくに注意を払いながら、責任ある親のあり方および性行動についての意識を高め、かつこれを促進するための措置をとること。 G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32~33条、第35~36条、第37条(b)~(d)、第38条、第39条および第40条) 売買、取引および誘拐 58.委員会は、とくにスペインにおいておよびアイルランドのマグダレン洗濯所においてそうであったように、数千人の赤ん坊が、多くの国のカトリック修道会の構成員により母親から強制的に引き離され、かつ孤児院に措置されまたは国外の養親に引き渡されてきたことを深く懸念する。委員会は、責任のある修道会が法王聖座の権威のもとに活動していたにもかかわらず、法王聖座がこれらの事件について内部調査を実施せず、かつ責任者に対する行動をとらなかったことをとくに懸念するものである。委員会はまた、法王聖座が、これらの子どもの所在を追跡し、かつ可能なときは生物学的母親と再会させるためにとられた措置についての情報を提供しなかったことも懸念する。 59.委員会は、法王聖座に対し、赤ん坊が母親から引き離されたすべての事件について内部調査を開始し、かつ、責任者の責任を問うにあたって関連の国内法執行機関と全面的に協力するよう、促す。委員会はまた、法王聖座に対し、関係のカトリック修道会が、可能なときはこれらの子どもを生物学的母親と再開させる目的で、その所在について有しているすべての情報を全面的に開示することを確保するとともに、今後同様の慣行が生じないようにするためにあらゆる必要な措置をとることも、促すものである。 犯罪の被害者および証人である子ども 60.委員会は、法王聖座が、さまざまな形態の虐待の被害を受けた子どもに対応するにあたり、被害を受けた子どもの保護よりも教会の信用の維持および加害者の保護を組織的に優先させてきたことに、深刻な懸念を表明する。委員会は、法王聖座が、文書回答においておよび双方向的な対話の際に国内司法機関の第一義的権限を認めながらも、引き続き、被害を受けた子どもの保護、支援、リハビリテーションおよび補償について定めていないカノン法上の手続を通じて虐待事件に対処していることを、とりわけ懸念するものである。委員会はまた、以下のこともとりわけ懸念する。 (a) とくにウェストチェスター郡の大陪審(アメリカ合衆国)、ライアン委員会(アイルランド)およびウィンター委員会(カナダ)が留意しているように、被害を受けた子どもおよびその家族が、宗教的権威を有する機関によってしばしば非難されかつ信用を貶められ、告発の継続を思いとどまるよう促され、かつ、場合によっては屈辱を与えられてきたこと。 (b) 被害を受けた子どもおよびその家族に対し、金銭的補償の前提条件として秘密保持および沈黙が課されてきたこと。 (c) 法王聖座が、法王聖座自らが関わる事件については時効を延長したにもかかわらず、場合により、子どもの性的虐待についての時効を延長しようとする一部の国の努力を妨害してきたこと。 61.委員会は、法王聖座が、被害者および証人である子どもの取扱いに関わる事柄について、子どもの最善の利益の尊重および「子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針」(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を指針とするべきである旨、勧告する。委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 性的虐待その他の形態の虐待の被害を受けた子どもを早期に発見するための包括的手続を発展させること。 (b) 性的虐待の被害者または証人である子どもを対象とした、アクセスしやすく、秘密が守られ、子どもにやさしく、かつ効果的な通報のための回路を確保するとともに、性的虐待または他のあらゆる犯罪の被害を受けた子どもが、虐待を通報した際、将来の虐待および報復から保護されることを確保すること。また、親に対し、その子どもが受けた虐待について裁判所に訴えを起こす際の援助を提供すること。 (c) 犯罪の被害者および証人である子どもに対し、その身体的および心理的リハビリテーションならびに社会的再統合のための支援が提供されること、ならびに、このような措置について、子どもが国内法執行機関に虐待を通報することの妨げとなる秘密の和解が条件とされないことを確保すること。 (d) 法王聖座の権威のもとにある個人および機関によって行なわれた性的虐待の被害者に対し、いかなる秘密保持または沈黙の義務も課さずに補償を行なうとともに、これとの関連で被害者のための補償制度を確立すること。 (e) 子どもの性的虐待の被害者が正義および救済を求めることが時効によって阻害されている国々において、時効制度の改革を促進すること。 (f) 性的な搾取および虐待の被害者に対するスティグマと闘うための意識啓発活動を実施すること。 H.国際人権文書の批准 62.委員会は、法王聖座が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ当事国となっていない中核的人権文書、とくに通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、市民的および政治的権利に関する国際規約および両規約の選択議定書、ならびに、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約およびその選択議定書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する条約、障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約ならびに拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書を批准するよう、勧告する。 I.フォローアップおよび普及 63.委員会は、法王聖座が、とくにこれらの勧告を法王、法王庁、教理省、カトリック教育省、カトリック保健ケア関連施設、家庭評議会、司教協議会ならびに法王星座の権威のもとに活動する個人および機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 64.条約第45条(a)および(b)に照らし、委員会は、法王星座が、性的虐待および性的搾取に関連する委員会の勧告の実施にあたり、とくに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者、子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表ならびに拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する特別報告者に対して専門的助言を求めることを検討するよう、勧告する。 65.委員会はさらに、条約ならびにその実施および監視に関する議論の喚起および意識の促進を図る目的で、法王星座が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびにこの総括所見を、インターネット等を通じ、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 J.次回報告書 66.委員会は、法王聖座に対し、第3回~第6回統合定期報告書を2017年9月1日までに提出し、かつこの総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、法王聖座が、今後の報告書は当該ガイドラインを遵守すべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、法王聖座に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 67.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。条約別報告書および共通コア・ドキュメントは、子どもの権利条約に基づく調和化された報告義務を一体となって構成するものである。 更新履歴:ページ作成(2014年4月28日)。
https://w.atwiki.jp/netrhyme/pages/417.html
大会を開催する際のルールフォーマット あくまで大会のルールであり、ネットライムのルールではないので悪しからず Sルール MAGE式(1)