約 997,492 件
https://w.atwiki.jp/gununu/pages/4329.html
小悪魔〔こあくま〕 作品名:東方紅魔郷 作者名:[[]] 投稿日:2008年4月4日 画像情報:640×480px サイズ:103,325 byte ジャンル:[[]] キャラ情報 このぐぬコラについて コメント 名前 コメント 登録タグ 2008年4月4日 個別こ 東方紅魔郷
https://w.atwiki.jp/dokusenroku/pages/27.html
小悪魔 サプライ 基本セット 分類 キャラクター 攻撃 20 体力 30 コスト ③ キャラクター能力 - 援護効果 【地下図書館の司書】「体力+20」カードを1枚引く。 イラスト Lv.10 処理 キャラクター能力 なし 援護効果 「体力+20」を得て、山札からカードを1枚引く。 使い方 共通山札戦 援護カードとして使っても山札からカードを引けるため、事実上手札損をしない援護カード。 援護効果も特別強いわけではないため、使えるタイミングで使って手札を入れ替えていこう。 コストが低いため、とりあえず土地に配置して使ってもいい。 デッキ構築ルール 援護で得られる「体力+20」は援護カードの中では比較的低い方。 このカードを採用する理由としては「カードを1枚引く」方を重点として使いたい。 『レティ・ホワイトロック』や『宮古芳香』などカードを引く効果を持つキャラクターと『綿月依姫』を組み合わせるなど、工夫して使いたい。 関連するQA 相性のいいカード 『綿月依姫』 小悪魔 サプライ 図書館と霧の湖 分類 キャラクター 攻撃 20 体力 30 コスト ⑤+1枚 キャラクター能力 【蒐集】このキャラクターを設置しているプレイヤーは、周回ボーナスを得る時にカードを1枚引く。 援護効果 「司書のお仕事」「体力+30」 カードを1枚引く。戦闘終了後お互いのプレイヤーは手札からカードを3枚捨てた後にカードを3枚引く。 イラスト スプライト 処理 キャラクター能力 このカードを配置しているプレイヤーが周回ボーナスを得るとき、山札からカードを1枚引く。 2枚、3枚と複数配置している場合、効果は重複し、山札から2枚、3枚と引くことができる。 条件が「周回ボーナスを獲得する時」のため、通常の周回による周回ボーナスのほか、 EVENTマス、『財宝「ゴールドラッシュ」』、『ナズーリン』『橙』などのキャラクター能力などでもこの効果は発動する。 援護効果 侵略側、防御側両プレイヤーは手札を3枚捨て、山札からカードを3枚引く。 『蓬莱山輝夜』などの手札に戻る効果も同時に発動した場合、先に手札に戻った後に、手札を捨てる効果を処理する。 手札の枚数が2枚以下の場合は、すべて捨て、3枚引く。 それぞれのプレイヤーが捨てるカードを選択する 「援護効果の処理」⇒「コストの支払い」の順番になる。 使い方 共通山札戦 周回ボーナスを獲得する機会は多く、配置する時に手札を1枚使うがそれ以上のリターンが見込める。 体力も30と『禁弾「スターボウブレイク」』を耐え、防衛可能な最低ラインは確保している。 手札が多いという事はそれだけ選択の幅が広がるということなので、きっちりと配置して有利を気づいていこう。 援護効果は地味ながらもトップのプレイヤーへの妨害に使える。 中盤以降は、防衛用のカードや切り札を手札に温存していることが多く、それらを問答無用で捨てさせることができる。 トップとの差を縮めるために使っていこう。 デッキ構築ルール 基本的な使い方は共通山札戦と同じ。 『小悪魔』を複数配置し、『財宝「ゴールドラッシュ」』や『ナズーリン』のキャラクター能力を発動させるなどのコンボを 意図的に発生させる事ができる。 逆にいえば、相手も同じことができるので、相手の手札アドを稼がれる前に早々に倒してしまいたいカードでもある。 関連するQA 相性のいいカード 『財宝「ゴールドラッシュ」』『ナズーリン』『因幡てゐ』『秋穣子』『橙』
https://w.atwiki.jp/orz1414/pages/119.html
■小悪魔2 さて、今日は世に言う一年の締め括り、大晦日と言う奴である。 とは言え、我等が紅魔館は先週のクリスマスパーティー以降、軽い燃え尽き症候群に陥っていた為、 特に何かしようという動きも無く、まったりとしたムードになっていた。 レミリアお嬢様が、「どぅもー――! ハードレズでぇー――す!! 今宵は霊夢とオールナイトで年越しフォー――――!!!」 とか叫びながら、咲夜さんを伴って夕方頃から博麗神社に出掛けてしまった事も、館の空気を弛緩させるのに一役買ってしまっている。 『晦日(つごもり)』の名に相応しく、今夜の月の光は人間の目では捉えられない程に弱々しい。 まあ、咲夜さんも傍らについている事だし、あのお嬢様に限って身の危険を案じる必要も無いだろう。 ……それよりも、だ。 「げほっ、げほっ!!」 「あぁっ、パチュリー様、しっかりして下さい」 本当は、俺とリトルも含めたパチュリー御一行もお嬢様に同行する予定だったのだが、 パチュリーが寒気に中てられて喘息を拗らせてしまい、大人しく館でお留守番、という事になってしまったのだ。 「……御免なさいね。貴方たちも神社に行きたかったでしょう」 「お母さん、それは言わない約束でしょ」 リトルが病床の母をいたわるような目でパチュリーの手を取った。 ……誰がお母さんだ、誰が。 「けほっ、……あぁ……本当にいい子ね、リトルは」 ――なでなで。 「ああ……お母さん、こんなに手が冷たくなっちゃって……」 ……二人とも結構余裕があるようで、何よりだ。 何だかひと昔の昼メロみたいになってきたので、俺も一役買う事にした。 「あ~~あっ、さっさとババアの遺産で放蕩三昧してぇなあぁ~~~!?」 現代風味の不幸者チックな馬鹿婿を演じてみた。 「なっ、何言ってるんですかあなたっ!!」 ――ばちこーんっっ!! リトルに勢いよく頬を張られた。 ……かなり気持ちい……じゃなかった、かなり痛い。 「ううっ……ゲホッ、ゲホッ、この鬼婿……呪ってやる、呪ってやるわ……ゴホッ!」 細く生気の無い目を険しく吊り上げて俺を睨むパチュリーの背後に、どす黒い般若の形をしたオーラが浮かび上がっていた。 (ひぃっ、あ、あれは……何て事なの……!) 寝室の入り口の物陰から、家政婦ならぬ門番が見ていた。 「なんだ美鈴か。どうした?」 何だか昼の連ドラというより火曜幻想郷サスペンス劇場みたいになってきたので、いい加減に切り上げて素面に戻る事にした。 「いえその、お客様がいらしていますので、ご報告に」 「客? こんな時間に?」 パチュリーがベッドから上体を起こし、眉を顰める。 もう二時間もすれば年号がひとつ繰り上がるような時刻で、厨房の人たちがそこに向かって猛ピッチで蕎麦を湯掻きまくってくれている最中だ。 「……まったく。不躾にも程があるわ」 そう吐き捨てて、嫌悪も顕わに頭を掻く。 レミリアお嬢様と咲夜さんが不在な現状、この館の最高責任者は彼女という事になる。 「何処のどいつかしら。面倒事は真っ平御免よ」 「それなら心配は御無用だと思いますよ。皆さんよく知った人たちです」 「?」 何故か苦笑交じりに頬を掻く美鈴に、三人揃って首を傾げる。 まあ、ここでジッとしていても埒が開かないので、病床の主に代わって俺とリトル、美鈴の三人の裁量で応対する事となった。 ………… 「……何やってんの、君ら……」 門前に集まっていた顔触れに、思わず頭を抱えてしまった。 輝夜姫様に永琳、鈴仙とてゐに、数十名のイナバの子たち。 永遠亭の面子一同が、どでかい風呂敷を抱えて、夜逃げさながらの様相でその場に佇んでいた。 「……話せば、長くなるんだけどね」 輝夜姫が、ゲンナリした表情で重々しく口を開いた。 「それは、今朝の事だったわ……」 少女回想中…… 「姫さまっ、師匠っ!! た、大変です!! 巫女が腹肉を弛ませながら、羅刹のような形相で押し入って来ました!!」 「何ですって!?」 ――スパー――ンッッ!! 「ゲエェーッ!! お前は博麗の巫女!! は、早過ぎる?」 「あんた達ッ!! こんなブヨ腹じゃ元旦の演舞もロクに出来ないじゃないのよ!! さっさと解毒剤とお詫びの豊胸剤を作りなさいケヒヒィィー―――ッッ!!!」 ちゅどどどどどどどー――――んっっっ。 ………… 「という訳で、屋敷がフッ飛んじゃったのよ」 「それは何と言うか……」 流石に怒らせた相手が悪かった。 「最初はスキマ妖怪を頼ろうとしたんだけど、考えてみればあの女、住処がさっぱり分からないのよね」 まあ、神出鬼没を絵に描いたような人だからなあ。 それに、どの道彼女はあの後すぐに冬眠に入ってしまったと聞いている。 この間のパーティーの時は、少々無理をして来てくれていたのかも知れない。 目を覚ました暁には、気付けに俺の得意料理『デスソース混入不惜身命ライチ味チャーハン』を、あの時頂いた中華鍋で振舞う事にしよう。 今日も今日とていい事を考えていると、輝夜姫が勢いよく頭を下げてきた。 「この間あんなにお世話になっておいて申し訳無いのだけど、もう此処しか思い当たる宛てが無いの。 こちらからも無事に残った食糧を提供するから、今夜一晩、寝床を提供して頂けないかしら」 「分かりました。困った時はお互い様です」 リトルの即答。 「……いいのかな。俺たちで全部決めちゃって」 「だって、こんなに寒いのにまた放り出すなんて、可哀相じゃないですか」 確かに。 見渡すと、元々寒さに不得手であろうイナバの子たちが、皆涙目になって唇を青くしながら、ガタガタと小さな体を震わせていた。 「う~~~ん、寒い、寒いよぉ~~~」 てゐがブルブルと身を縮こませながら、段ボール箱の捨て犬のような上目遣いでこちらを見ている。 ……途端に、全てが嘘臭く視えてきた。 「ちょうど良かったです。今あったかいお蕎麦を作って頂いているところなので、みんなで食べましょう」 「決まりですね。それじゃどうぞ、入った入った」 これで決まりとばかりにリトルがポンと手を叩き、美鈴が門を開けて永遠亭ご一行を先導した。 「ありがとう……この恩は、覚えている限りは忘れないわ」 輝夜姫が、色々な意味で当たり前の事を言いつつ頭を下げてきた。 「ほらほら寒かったでしょう? もう大丈夫だからね」 保母さんよろしく、リトルがにこにことイナバの幼な子たちの手を引いている。 そんなあたたかな背中に、永琳さんが呆れたような苦笑を見せた。 「……あの子、本当に小悪魔なのかしらねぇ」 俺も常々そう思う。 ………… 「……という事になった」 「お世話になります」 永遠亭代表の永琳さんを伴い、パチュリーに報告を済ませた。 リトルと美鈴には、メイドさんや厨房の人たちへの伝達を頼んである。 「まあ、仕方が無いわね……今更文句を言うのも面倒だし、節度を守ってくれれば構わないわ」 「ええ。そこはきつく言い聞かせておくわ」 「あとは、そうね……今少し喘息の調子が良くないから、ここに兎の子たちを近づけないように」 そこまで言って、ごほ、とパチュリーの喉が痛々しく鳴った。 皆あんな姿をしているので兎である事を失念しそうになるが、確かにアレルギーが出る可能性も否定出来ない。 「分かったわ、くれぐれも留意しておきます。……本当にありがとうね。 あの使い魔の子、ウチに欲しいくらいのいい子だわ」 「「だが断る」」 即座に俺とパチュリーの拒絶の声が重なった。 最初から冗談のつもりでしか無かったらしい永琳さんの顔に苦笑が浮かぶ。 「冗談よ冗談。流石に大事な使い魔兼婚約者を連れ出したりは出来ないわ」 「う……」 「見たわよ、彼女の左手。おめでとう」 あの短いコンタクトで全てお見通しとは、まったくもって恐れ入る。 あれ以降、館の人々から散々玩具にされて慣れてきてはいたが、外の人から言われるのにはまた違ったダメージがあった。 「あ~もう。俺、リトルを迎えに行って来るよ」 気恥ずかしさに負けて席を立ち、慌ただしくその場を退散する事にした。 「ご馳走様~」 永琳さんのからかうような声が、背中にこそばゆかった。 ………… 「……ふふ、青いわね」 遠ざかる彼の背中に永琳が軽く微笑む。 「あんまり面白がって弄らない方がいい。反動で凄まじい変態行為が来るわ」 「あら。刺激的なのは結構好きよ」 ……この月人の思考は、相変わらず何処かピントがずれている。 ほう、と一つため息を吐いた瞬間、激しい咳嗽の発作が来た。 「げほっ、げほっ!! ……っ、ぐっ、ごほっ」 気管を灼くような痛みに肺腑を圧迫され、目尻に涙の粒が浮かぶ。 「大丈夫?」 「……、五月蝿い。何でもないわ、こんなの」 差し伸べられた永琳の手を、明確な意思を以って拒絶する。 私が取るべき手は、この紅魔館と魔法の森にしか無く、今この場には存在しない。 天井を仰いで荒い息をつく私に、永琳は何処かいけ好かない微苦笑を寄越し、持ち込んできた風呂敷をごそごそと漁り始めた。 「仕様が無いわね。そんな強情な魔法使いさんに、意地悪なお姉さんからプレゼント」 そう言って永琳が風呂敷から引っ張り上げてきたのは…… 「? 何なの、これ」 「マスクよマスク。煩わしい雑菌や粉塵を完全シャットアウト、その上で抜群の保湿性と通気性。 夏場に所用でこしらえた、天才永琳印の特別製よ」 「……要らない。そんな大層な物、頂いちゃ悪いわ」 「いいのいいの。お邪魔させて貰ってるんだから、せめてこの位のお礼はさせて頂戴」 「…………いいの?」 「最初からそう言ってるじゃないの。受け取ってくれる?」 「そう…………ありがとう」 消え入るような小さな声で礼を言い、永琳からマスクを受け取る。 指と指が、軽く触れた。 ………… 「♪兎美味しい、彼の山~~~♪」 パチュリー様が何時か教えてくれた残虐童謡を口ずさみながら、軽い足取りで廊下を歩く。 静かな年越しというのも良いけど、お客さんと一緒に賑やかに迎える新年というのも、魅力的な話だ。 メイドさん達に、永遠亭の皆さんの寝床の用意をお願いしないといけない。 「あ、いたいた。すみませ~~~~ん」 曲がり角の方に、咲夜さんが居ない間メイドさん達の指揮を任されているチーフさんの姿を見つけ、声を飛ばす。 私の声に振り向くと、彼女はおっとりとした笑顔を見せた。 「あら、あのクソ忙しい時間に二人のうのうとイチャついていたリトルちゃんじゃないの」 「え゛」 「え、なになに。皆クタクタに疲れて眠りこけていた夜中に構わず二人バーニングしていたリトルちゃんですって?」 「まあっ、ご主人様を差し置いて一人春爛漫、人生大絶頂期なリトルちゃんのお出ましよ、みんな!!」 ――ぞろぞろぞろぞろ。 「えっ、あ゛、そのっ」 一体何処から湧いて来たのか、曲がり角の向こう側から続々とメイドさんが現れ、あっと言う間に取り囲まれてしまった。 「ねえリトルちゃん、あれから彼とはどう?」 「式はいつ挙げるの?」 「その指輪、幾らぐらいしたの?」 「子供は何人くらい作る予定なの?」 嫉妬の炎を背後に揺らめかせながらメイドさん達が肩を組んで円陣を組み上げ、グルグルと私を中心にして回転し始めた。 「う、うぅ……」 お客さんの来訪に浮かれて、失念していた。 あのパーティー以来、私たち二人の姿を見るなりずっとこの調子なのだ。 いつもは彼が神殺ビューティフル空手(彼命名)で撃退してくれているけど、今この場にいるのは、折悪く私独りだ。 『さあさあリトルちゃん、観念なさい!!?』 回転数が上がり幾つもの顔面の残像がぶれまくって、ハッキリ言って無茶苦茶気味が悪い。 「あぁ……助けて……」 予期せぬ窮地に、半べそになってこの場に居ないあの人に助けを求めた瞬間、 ――ずどどどどどっっ!!! 「くおおぉらお前ら!! イジメ、カッコ悪い!!!」 私の大事な人が、何故か白黒模様のボールを蹴り転がしながら颯爽と現れた。 彼は足元にボールをぴたりと留めると、メイドさん達に人差し指を突きつけ、 「あの日の誓い以降も、俺たちの生活は不沈艦大和の如く大安泰なり!! だけど式なんて挙げる金も立場も無えよアホンダラ!! あと、指輪はセオリーどおり、給料の三ヵ月分!! 子供は、リトルに似た女の子が二人は欲しいと思います!!」 ……律儀にも全ての質問にしっかりと答えた。 「くっ、出たわね変態亭主!! みんな気をつけてっ、迂闊に近付くと妊娠させられるわ!!」 酷い言われようだった。 「ぃやかましいっっ、見損なうな!! 唯一人の伴侶を定めた以上、貴様ら有象無象に差し向ける性欲など、1ナノグラムも存在せんわ!! 喰らえ我が一世満身の大スペル、屁符『ヘルスカンク・マッドジャイロ』!!」 そう叫ぶと、彼は前屈姿勢になって尻を突き出し、 ――ぷぷぷぷぷぷぷっっ。 放屁音を轟かせ、そのままの体勢でプロペラのように回転しながらメイドさんの集団に突っ込んで行った。 「…………うぅ、ぐすっ」 言っている事は凄くカッコ良く、不覚にも涙がこぼれるくらい嬉しかったけど、 やっている事が致命的にカッコ悪かった為、今度は情けなくて涙が出てきた。 「きゃあああああっっ、キモくて臭い要するにキモ臭いっっ!! たっ、退散、退散っっ!!!」 チーフさんの撤収命令に、さっとメイドさん達の波が退く。 「はっはっはお前ら、お客さんが来てるから寝床の用意を夜露死苦!!!」 軽やかに着地を決め、泡を食って遠ざかる背中の群れに、ようやく本来の目的の一声。 私たち二人と、温く酸っぱい匂いだけがこの場に残った。 「……ふっ、悪は去った。大丈夫か、リトル」 彼が一仕事終えた爽やか極まりない表情で汗を拭う。 「…………ぐすっ」 臭気が目に染みて、またひとつ涙がこぼれた。 ………… 厨房への伝達は美鈴が問題なく済ませてくれていたようで、程無く十分な量の年越し蕎麦が完成した。 ほかほかと出汁の香りの効いた湯気を立てる特大鍋を二つばかりロビーに構え、 美鈴とリトルの二人が、行列を作ったイナバの子たちに戦時中の配給所さながらの様子で配膳している。 まさに師走の名に相応しい慌ただしさだったが、皆楽しそうで何よりだ。 「はいっ、どうぞ。熱々だよ~~」 「ありがとう、門番のお姉ちゃん!」 うんうん、ちゃんと礼が言えるのはいい事だ。 額に玉のような汗を浮かべながら忙しなく働く二人の顔にも、にこにこと笑みが浮かんでいる。 上機嫌で目の前の風景を眺めていると、リトルの方の列で、てゐの出番が巡って来た。 「はい、どうぞ。熱いから気をつけてね」 「うふふ、幸せそうね。ところで、いい保険の話があるんだけど、興味は無いかしら?」 「えっ?」 二人の間に慌てて駆け出し、 「当館での詐欺行為は、その全てを禁止させて頂いております!!」 ――どばばばばばっっ!! 場を弁えない詐欺兎の椀に、地獄唐辛子を山盛りぶち込んだ。 「な、何すんのよっ! 体に悪いじゃないの!!」 「やかましい!! 唐辛子は脂肪を燃やしてくれるありがたい香辛料だから、俺に感謝しながらたんと食え!!」 まあ、紅魔の館の名に相応しい特製ブレンドではあるが。 「う゛~~~~~」 ジト目でブー垂れながらも、てゐは大人しく仲間の元に戻って行った。 ……かと思ったら、何やら物言いたげな視線で、指を咥えながら鈴仙のお椀を覗き込んでいる。 「? どうしたの、てゐ」 「……いいな。鈴仙のお蕎麦、私のよりちょっと多い」 「あら、そうなの? いいわよ、交換してあげる」 何も知らない哀れな月の兎が、てゐに向かって花のような笑顔を見せた。 「ありがとう! だから鈴仙の事、大好き」 「ふふ。本当にしょうがないわね、てゐは」 ま さ に 外 道 ! はてさて、永遠亭の人々への配給も無事終了し、あとは俺たちの分を残すのみである。 後ろの方から何だか火を吐く轟音と悲鳴が聞こえるが、そんな細かい事をいちいち気にしていては、良い新年を迎える事など出来はしない。 「お疲れ様。それじゃ俺たちの分も用意して、早いとこ部屋に戻ろうぜ」 「そうですね。きっとパチュリー様も永琳さんも、首を長くして待ってらっしゃいます」 主人と客人を待たせたとあっては、従者失格もいいところだ。 四つの椀を盆に抱え、迅速に主の寝室へと赴く事にした。 「お待たせ」 「ただ今戻りました……あら?」 部屋に戻るなり、リトルが主の出で立ちに目を丸くした。 「どうなさったんですか? 今まで、薦めてもマスクなんてして下さらなかったのに」 「別に何も。貰った物を活用しているだけの事」 何とまあ、永琳さんからの贈り物とな。 素っ気無い物言いではあったが、先程よりも少しは楽そうに見える。 前面に書かれた『地獄上等』の筆文字が、とてもチャーミングだった。 「今日は喘息の調子もいいから、とっておきの反社会魔法、見せてあげるわ」 「そ、そんなの見せないでいいです」 何だか変な方向に元気になっていた。 「ほら、年越し蕎麦。パチュリーの分も用意してきたけど、食べられるか?」 「……少しだけなら」 「十分」 やはり、これが無いと一年の締め括り、という感じがしない。 四人揃って手を合わせ、 『いただきます』 湯気薫る蕎麦を、箸で突付き始めた。 「ん、美味い」 「はあ、沁みるわね」 「はふっ、はふっ、温かいです」 「……美味しい」 マスクを顎にずらして露を啜ったパチュリーが小さく息を吐いた瞬間、 ――ぼーん。ぼーん。ぼーん………… 暦の移ろいを告げる鐘の音が鳴った。 全員一旦箸を置いて、 『あけまして、』 深々と頭を下げる。 『おめでとうございます』 ……昔から思っていた事なんだが。 「何でこう新年の挨拶ってのは、こんな白々しいのかしらねえ……」 思っていた事を、先に永琳に言われた。 さて、いい大人が夜更かしという訳にもいかない。元日の朝でもいつもの仕事が待っている。 蕎麦を食べ終え、永遠亭の人たちの寝床が準備できたところで、早々と眠りにつく事にした。 ……良い初夢(出来ればややエッチ風味)が視れるといいのだが。 ………… お客さんが来たところでそこは変わりない、二人だけの寝床。 同じベッドで、既に整った息を立ててしまっている彼の寝顔を、何とは無しに眺めている。 彼の育った所では、初夢をその一年の運勢の暗示として、重要視していたらしい。 ……私の夢、視てくれたらいいのにな。 そんな気恥ずかしい事を考えていると、 「…………う~ん…………リトル~~…………」 「っ?」 彼の口がむにゃむにゃと動き、まさしく私の名前を紡いだ。 (わっ、本当に私が出てるんだ……) 喜んだのも束の間、途端に彼の寝言が苦しげな呻きに変わる。 「う、う~ん……だ、ダメだリトル……そんな……」 ……せっかく自分を視てくれているのに、悪い夢になどして欲しくない。 彼の額に浮かんだ汗を拭おうと指を伸ばした瞬間、 「…………そんなマニアックな道具、俺たちにはまだ早い……!」 「年の初めから、何て夢視てるんですかっ!!」 ――ばちこーんっっ! 「…………はっ」 つい、思いっ切り彼の頬を張ってしまった。 「ああっ、ごめんなさいっ」 「う、う~ん……リトル?」 赤く腫れた頬をゆるゆると撫でながら、呆、と瞳が開かれる。 「……何だ、まだ眠れないのか? ……しょうがないなぁ」 まだ寝惚けているのかもごもごと呟くと、彼は私の後頭部を掴んで、一気に胸板に引っ張り込んできた。 「きゃっ!……も、もうっ、寝惚けてますね」 「ん~~? 起きてるよ~~……」 半目を開けて鼻提灯を膨らませながら喋る姿は、ある意味芸術的だった。 「ほら、こうしてると安心して眠れるだろ?」 そう言って、夢見の悪い子供をあやすように、おでこをそっと胸板に押し付けられる。 「……はい……」 初めてお互いの気持ちを確かめ合ったあの日、泣きじゃくる私を受け止めてくれたあの時から。 ここが私の一番大切な、貴く暖かい、帰るべき場所だった。 「……はい……ここなら、私はいつでも何煩う事無く眠れます……」 一切の悲嘆も不安も、今ここには無い。 今年最初の夜は、蕩けるような甘いまどろみに身を委ねる事で、静かに幕を閉じた。 ………… ――そして翌日、めでたき元旦。 しっかりと朝食が雑煮とお節になっている辺り、ここは本当に悪魔の洋館なのかと、疑問を抱かずにはいられない。 まあ、旬の料理を何処に在っても美味しく頂けるのは、とてもありがたい事だ。 「う゛っ……も゛、餅が喉に゛…………」 サツマイモのように顔をど紫色にするパチュリー。 「あーもう絶対やると思ったよこの気管支狭窄ラクトガール!!」 「わ、私に任せて下さいっ、ていっ!!」 ――ズバッッ!! すぽーんっ!! 手馴れた様子でリトルがパチュリーの首筋にチョップを落とし、喉から餅の塊を叩き出した。 デビルチョップはパンチ力。まったく惚れ惚れする手際だった。 ……そんな比較的平時どおりの朝食を終えて、俺たちは永遠亭の兎たちを遊びに誘ってみる事にした。 「なあ、せっかく元旦だし月の兎も居る事だから、みんなで餅つきしようぜ」 「「「さんせー――――いっっ!!」」」 「えー……」 イナバの子たちのノリノリな反応と裏腹に、鈴仙が心底ゲンナリした表情をしている。 「何だ鈴仙、餅のつけない月の兎なんて、乳の小さいウチの門番みたいなもんだぞ?」 「いやその、何時かみたいに一人で延々つき続けるのが嫌なだけで」 「それなら心配ないわよ。最初に少し手本を見せてくれたら、あとはみんなで交代しながらにするから」 「……そんな大層なものでもないわよ?」 パチュリーの説明に謙遜気味に苦笑を返すが、何はともあれ交渉成立。 何故か館に置いてあった木臼と杵を持ち出し、ぞろぞろと連れ立って庭に出た。 「よっし。それじゃ行くわよ、てゐ」 「ん、いつでも」 杵を軽く揺らして肩を慣らす鈴仙に、介添えに就いたてゐの平坦な声が応える。 「……せぇーのっ」 ――ぺたんっ。どすんっ。 ――ぺたんっ。どすんっ。 ――ぺたんっ。どすんっ。 杵と平手が蒸し米を叩く音が、軽快なリズムで交互に響く。 教科書に載せてやりたいくらいの完璧なコンビプレイだった。 「……と、こんなところね。そんな難しい作業じゃないでしょ?」 「そうね。肝は、パートナーとの呼吸かしら」 「そういう事。さ、次は誰がやる?」 『はーいはいはい!!』 イナバの子達と、何故か近くを通ったメイドさん達が元気良く手を挙げる。 「ほらほら、順番順番」 もうすっかりイナバの子達に懐かれたリトルが、上手い事状況をまとめていた。 ……しかし俺の愛の眼差しは、実はリトルも餅をつきたくてウズウズしている事を見逃す筈も無かった。 杵が多くの手を巡り、そろそろ昼食に十分な量の餅が出来上がってきた。 ……と言うか、出来た先からメイドさん達が醤油を塗ったくって振舞っているので、既に満腹を訴えている子もいるくらいだ。 「う~~ん、えーり~~ん。もう満腹で動けないわ~~」 「こらこら姫。食べてすぐ横になるのはだらしないですよ」 部下たちを差し置いて一人満腹絶頂の竹取ニート姫が、芝生の上でだらしなく大の字になっている。 ……色々といい頃合だと思ったので、リトルの肩をぽんと叩いた。 「よし、トリは俺たちで飾らせて頂こう」 「……は、はい!」 顔を喜色に弾ませ、リトルがイナバの子から杵を受け取る。 「ふっふっふ。お前ら、俺たちの愛のワンダープレイを観て、腰を抜かすんじゃないぞ?」 「……貴方が言うと、どうにもいやらしい意味にしか聞こえないのよねぇ」 パチュリーが要らんツッコミを入れてくるが、無論この胸を炙り焦がすのは、それしきで消えるような朧げな炎ではない。 「それじゃ、始めようか」 「はっ、はい、頑張ります!!」 「ん。……せーのっ」 ――ぺt ズドンッッ!!! ――ぺt ズドンッッ!!! ――ズドンッ、ズドンッ、ズドンッッ!!!!! 「痛いわ阿呆おおおおおお!!!」 「きゃっ!!?」 リトルが一心不乱に打ち下ろしまくった杵が全弾余たず俺の右手を直撃し、餅をついているのか俺の右手をついているのか分からない状態になった。 「ある意味、完璧なシンクロニシティね……」 永琳がうんうんと頷き、あれだけリトルの事を慕っていたイナバの子達が、一転してガクガク怯えまくっていた。 「わざとかっ、わざとやっているのかお前はっっ!!!」 ――ぽよんぽよんぽよんっっ。 キャッチャーミットのように腫れ上がった右手で、童顔に似合わぬ84のDカップに往復ビンタを見舞った。 「やっ、きゃっ、ご、ごめんなさいっ」 切なげな悲鳴に溜飲を下げて右手をフーフーしていると、珍しい姿がこちらに向かって駆けて来るのが見えた。 「ねっ、ねっ、私も混ぜてっ!!」 「い、妹様っ、走ると傘からはみ出しちゃいますよ!」 元気一杯に手を振りながら走って来る妹様に、あたふたと美鈴が日傘を宛がっていた。 「……妹様。勝手に外に出たら……って、もう遅いか。ちゃんと加減は出来る?」 一瞬表情を引き締めて身を乗り出したパチュリーだったが、すぐに諦観のため息をついた。 「大丈夫、任せてよ」 「いいんじゃないの? この時間この天気じゃ、どの道ロクに力も出ないだろ」 「それもそう……かしらね。それじゃ妹様、くれぐれも気をつけて頂戴ね」 「分かってるって」 妹様は片手で杵をブン回して肩を慣らし始めた。 背後で必死に杵を避け回りながらも決して傘を動かさない美鈴のプロ根性には、まったくもって恐れ入る。 「ふふ、それじゃ私も混ぜて貰おうかしら」 意外にも永琳さんが声を上げ、介添えの位置に陣取り、珍しく邪気の無い笑顔を妹様に向けた。 「どうぞお手柔らかにね? 悪魔の妹さん」 ………… 「ふうっ、やっぱりこの時間は辛いわね。もう少し神社に居れば良かったかな」 「まあまあ、我が家はもうすぐそこですよ。……あら?」 訝しげな咲夜の視線を追ってみると、庭先に随分多くの人手が集まっていた。 『よいっ、しょっ! よいっ、しょっ!』 ――ぺったんっ、ぺったんっ。 妹と蓬莱人が、メイドや兎に囲まれて、楽しそうに餅をついている。 「……いつから私の館は純和風の兎小屋になってしまったのかしらねえ」 だが、不思議と、怒る気にはなれなかった。 私達の帰還に真っ先に気付いたフランが、大声を上げた。 『あっ、お姉さま~~~!!』 ――どかんっっ。 振りかぶるモーション中にいきなりこちらを向いたので、大きく逸れた杵の尻が、美鈴の顔面にめり込んだ。 『ふぐっ、ぐぐぐぐぐ……』 鼻血を吹き出し、ダメージに膝をガクガク言わせながらも、美鈴は日傘をフランの頭上に気合で押し留めていた。 ……気に入った!! 地下室に来て、妹をフ×ックしていいぞ!! 不具合を押してでも、この時間に帰って来て良かった。 「咲夜、急ぐわよ」 「……はいはい」 何だか、とても楽しそうではないか。 「何やってるの貴方達! 私達も混ぜなさい!!」 ――A Happy new year! 湖のほとりの紅き館に、どうか今年も幸あれ。 358 ─────────────────────────────────────────────────────────── 2月14日って知ってるかい? 昔、撲師が牧殺されたって言うぜ! 今は奈良のお祭りだ。ボヤボヤしてっとたいまつでボウボウだ! どっちもどっちも……どっちもどっちも! 1(アインス)!2(ドゥエ)!3(ドライ)!4(ドゥティーレ)! 5(オウ)!6(リュウ)!7(ジェット)!8(エイト)! 究極…… 「何やってんですかアンタは」 いわゆるイントロ(現実逃避)をやってる最中に、突然の突っ込み。 「……いやな。ちょっと、電波と言う物が入ってな」 「それと牧師と撲殺の文字が違います」 「そこには突っ込むなわざとやったんだから」 そこまで言って、ようやく声のした方を向く。 そこには、まさに司書!と叫びたくなるような服を着たまいらばー小悪魔がジト目で立っていた。 楽助ぼお氏、本当にGJでした! 「って、また電波が入ったな。……どうも最近ワイヤレスが多くて困る」 「困るのはあなたの馬鹿な発言を聞いてる私です。それと仕事を溜め込まないで下さい」 彼女の腕に光る腕章。そこには「私は読書狂です」とでかでかと書いて 「ありません。話を逸らさないで下さい」 「むう。いやな、世間にはこういう言葉がある。『マイペース、マイペース』と言う言葉が!」 「それってあの人の言葉じゃないですか。あれは悪い意味で使われてますよ」 「いやいや。俺は感動したぞ。……そうだ小悪魔、お前も少しは休憩をとった方がいい」 「休憩を取れない原因が何言ってるんですか」 ジト目に少々殺気を匂わせているが気づかないふりをして一言。 「だからそんなに胸がちいさ」 (大玉+クナイ弾=凶悪弾幕) 「少しは反省したらどうなんですかこの阿呆人間」 「ああんもっと罵ってぇ」 久々に小悪魔の弾幕を食らったせいか体がついていけず、すぐに落とされてしまった。 「……まあ、ふざけるのはこれくらいにして。仕事を再開しますよ」 「あいよ母ちゃん」 頭部ギリギリで大玉が飛んでいった。 「……冗談だ」 これ以上ふざけたら命はないだろう。 そういうわけでとっとと仕事に戻る事にした。 * * * ここに勤めて何年になるだろう。最低でも……一年も過ぎてないか? まあいい。とにかく俺は何とかこの紅魔館で働いてる。 最初は外の警備だったんだが、あまりにも過酷なため別の部門に転属を願ったところ、この図書館勤務が出てきた。 正直言って最初は『よっしゃ楽に仕事が出来る』と思ってたんだが…… 「あ、こら待て!」 急に飛び上がった魔道書を追いかけ、すぐに空に浮かぶ。 「捕縛『投網攻撃』!」 正確な狙いもつけずにスペルを発動。……だが、見事に魔道書をキャッチ成功。 『投網攻撃』はいわゆる全体攻撃のような物だ。方向さえ決めていれば視界全域をカバーできる。 ……俺が配置されているのは『魔道書部門』。意思を持った、もしくは本自体に魔法がかけてある物たちを取り扱う部門だ。 「ほんと、なんだかなぁ。何で俺がこんなところに……」 もうちょい静かに仕事が出来る(本音:楽にサボれる)と思ったのに…… 「おう、お疲れさん」 「ああ、ほんとに疲れるよ……」 そう言いかけてもう一度『投網攻撃』のチャージを開始する。 「って、出たなコラ」 「おう落ち着け落ち着け。私は何もしてないぜ」 それもこれも今目の前にいるこの白黒魔法使いが原因だったりする。 「これからするんだろう?魔理沙」 「……やれやれ。ただ本を借りてるだけじゃないか。何でそんなに目くじら立てるんだよ」 ……網じゃ足らんな。スペルを捕縛用から攻撃用に変換する。 「まあそうだよな。館長の断りもなく禁書指定区域に行っては読みふけった本をそのままにしてたり本を整列させずにばらばらに並べて入れたりさらにはお前のは借りてるんじゃなくて持って行ってるって言うんだこの白黒姫」 「待て待て。私は黒姫(あいつ)ほど自分勝手で鬼畜じゃないぞ」 うん。限界。なんか館長に止められてるっぽいけど知らん。 「双斧『デュアルトマホーク』」 俺の両手に斧状の魔力塊が握られる。 「ライチ汁っぽい物ブチ撒けろこのデモン・ザ・キッチン!」 斧を思いっきり振りかぶって…… 「待ちなさい」 殴りかかろうとした瞬間に向かい風の強風にあおられる。 「か、館長……」 突風を吹かせ、台所の悪魔の前に浮いているのはこの図書館の館長、パチュリー=ノウレッジ。 「今日の彼女は正式な客人として来ているわ。ゆえに手荒な歓迎はしないように」 ……なるほど。どおりで魔理沙専用トラップの類が静まってるわけだ。 「……失礼いたしました、お客様」 すぐにスペルを解除し、一礼。 「うむ、ご苦労」 「それと魔理沙。ごめんなさいねうちの従業員があなたに……」 まあ、客として招かれたのなら俺が咎められなければなるまい。暴走したのは俺だし。 「正当防衛を……いえ、略奪阻止を働いて」 ……へ?何気に本音が混じってませんか館長? 「どっちにしろ悪いのは私か……まったく、交換条件じゃなかったのか?」 「誰も魔道書を……アレの代価として渡すなんて言ってない」 「……なんだ、じゃあこの件は無しでいいんだな」 魔理沙の言葉を聞いた瞬間、館長の顔色が変わった。 「ちょっ……魔理沙!?」 「お前が言ったんだぜ?『代わりにこの図書館の書物を二、三冊持って行っていい』って」 「確かにそう言ったけど!でも魔道書は持って行っていいって言ってないじゃない!」 「……まあ、その辺は私に頼んだお前自身を恨むんだな。私は高いんだ」 ……なんか修羅場っぽいな…… 「小悪魔、小悪魔」 「なんですか?」 ちょうど近くを通った小悪魔を呼ぶ。 「アレ、どういった経緯で……ああなった?」 「私も知りませんよ、パチュリー様は教えてくれるはずもないし、そもそも聞けません」 そうだよな。小悪魔は形としては館長の奴隷だし。 「……今、何かすっごくフケツな妄想しませんでした?」 「いやいや小悪魔」 確かに館長と浣腸って似てるなとは思ったが。それはともかく。 「館長、俺は仕事に戻ります」 すでに俺の事を忘れて魔理沙と話していた館長に一言断り、すぐに仕事を再開した。 * * * 結局魔理沙は魔道書を少し持っていき、館長の『もってかないでー』がまた聞こえた。 小悪魔が慰めていたが、ずっとぶつぶつ言い続けていてかなり不気味だ。 さらに魔理沙が仕事を増やしていったせいで、仕事時間がかなり長引いてしまった。 ……今度来たら絶対に剥く。 「ういじゃ、お疲れ様。……って、夜の点検があったな」 「あ、それについてパチュリー様からの伝言があります。 『点検は小悪魔に任せて、あなたは私の部屋にいらっしゃい』との事です」 「ふむ。……わかった。じゃあ点検よろしく」 「早急の用らしいですので、今すぐ行った方がいいですよ」 あいよと言い残し、俺は館長の書斎へ向かう。 館長の書斎は図書館と直結しているので、本棚から少し移動するだけですぐに扉の前に着く。 ノックをして、ドアを開け…… 「ちょっと待って」 られない。よく見たらドアの下に根っこが生えていた。 扉越しに聞こえてくるガタンバタンという音が少し経ってから静かになり、ようやく扉の根っこが消えた。 「どうぞ」 ……館長の部屋ってそんなに片付いてなかったのか? そう思いながらもドアを開けると、館長は自分の椅子に座っていた。 ここに入るのは大抵が小悪魔なのでこの部屋の中は少ししか知らなかったが、やはりここも本が多かった。 「それで、用件は何でしょうか」 とりあえず単刀直入に聞く事にした。 「今日は聖ヴァレンタインデーということなので」 机の上にあった数個の箱を取り、それを俺に渡した。 「紅魔館のみんなから渡すように頼まれてね。チョコレートよ」 「……ありがとうございます」 館長から渡されたチョコを見て、しばしの間立ち尽くす。 「どうしたのかしら?」 「……いえ、こうやってチョコをもらえたのが嬉しくて」 そう言いながら箱を壊さない程度に握りしめて、ふと気づく。 「あれ、この箱生暖かい……」 「……それは私のね」 館長の言葉にえ?と思わず濁点付きで返してしまう。 「……仕方ないじゃない、チョコを渡すなんて外の世界の事は昨日初めて知ったんだから」 あ、それで魔理沙を呼んだわけか。 「魔理沙に教えてもらって、ついさっき完成したのよ。水と風をフル使用して冷ましたんだけど……」 それはまたかなりの能力無駄使いですね。 と言うわけにもいかず、黙ってチョコの箱を見る。 「……あれ、数が違いませんか?」 そういえば紅魔館の人達……メイドさん達を除く人数は6人。 「一個足りませんね」 俺の手にあるのは一人分少ない5個。 「それはそうよ。私がつい材料のつぎ足しに……というのは冗談」 館長は静かに笑う。 「残りの一人は、決まっているじゃない」 * * * 「よう」 そして、しばらくしてから。 俺は図書館に戻り、左手を後ろに隠しながら点検中の小悪魔と顔を合わせた。 「用は済みましたか?」 「ん、向こうでの用はな」 そう言って、左手を小悪魔に向ける。その手には花束。 「ほい、バレンタインプレゼントだ」 「……え」 あっけに取られた顔をする小悪魔。 「俺んとこの世界の一部じゃ、男がプレゼントを渡す国もあるんだ。それがこいつさ」 ……まあ、俺もつい先ほど館長に教えてもらったんだが。 「あ、ありがとう、ございます」 「すまんな、数が少なくて」 プレゼントを渡すのも貰うのも初めてだったのでなんか恥ずかしいが。 「……あの」 「なんだ?」 「顔、変わってます」(http //scapegoats.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/dust/box/dust_0405.jpg) 「え、あ、そう」 むう、恥ずかしさのあまりイメージ画像まで変わってしまったか。 「それで、催促するようだが……チョコは……」 「あ、その」 突然な事を言われてあたふたする小悪魔。 「……やっぱり、いいや。チョコの代わりにお前を貰うから」 「はい?」 ……うん、恥ずかしい。こりゃやばい。でも言ってしまったなら仕方ない。 恥ずかしいついでに一気に言いきった。 「だからさ、俺はお前が欲しい。お前を好きなんだ」 *** *** はい尻切れトンボです(ぇ 答えを書く勇気がありません。 おまけ(ボツ文 「開けても、いいですか?」 いいわよという答えを待たずに包みを開ける。 ……って。 「何か妙に赤いですね」 「その包みは咲夜のね。何かしら」 臭いを嗅ぐ。……こ、これはっ!?と思い一欠け口に入れると…… 「……かさぶただ」 モロに血の味。……かさぶたというよりはむしろ凝固血液? 「あら、どうやらレミィへの物と間違えたらしいわね」 「なんちゅうもんを食わせてくれるんや十六夜はん……」 512 ─────────────────────────────────────────────────────────── 紅魔館の夜は遅い。 ある意味朝が早いとも言える。 まあ当主が吸血鬼だからな。無理も無い。 ――コンコン。 「はーい。起きてますよー」 誰だこんな時間に。 具体的に午前2時。 草木も眠るなんとやらだ。よく知らんが。 「こ、こんばんわ」 時間を考えない来訪者に文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、なんと小悪魔だった。珍しい。 てっきり美鈴あたりが食料を貰いに来たのかと思ったのだが。 「で? こんな夜更けにどした? 人生相談なら他所でやってくれよ」 「えっと……その、怖い夢を見ちゃってですね。大変申し上げにくいんですけど……今晩止めてくれませんか?」 ――キミ、悪魔じゃなかったっけ? てかこれなんてエロゲ? などと無粋極まりない事を、上目遣い且つ涙目で訴えてくる彼女に言えるわけも無い。俺は健全な成人男性なのだ。 が、流石に同じ布団で寝るのは俺の理性が危険でピンチなので、大人しく床で寝ようとしたのだが、当の小悪魔はお気に召さなかったらしい。 仕舞いには「私も床で寝ます」とか言い出す始末。同じ部屋にいる女性を床で寝かせられるか。 で、数十分後。早々彼女は眠ったわけだが。 「~~♪」 ――ぎゅっ。 何故か俺に絡まってくる小悪魔さん。それも嬉しそうに。 柔らかいフトモモとか二の腕とか胸をこれでもか、と言わんばかりに押し付けてくる。 どうやら彼女は眠ってる時、何かに抱きつく癖があるようで…… これはアレですか? 俺に襲えと? いや、寧ろ誘ってるのか? いかん。落ち着け。ここで俺が狼になってしまえば俺の好感度が大変な事になってしまう。 そうだ。羊だ、古典的だが羊を数えろ。心頭滅却以下略! 「んうっ……ふあっ」 (寝れるかーー!) ――夜はまだ始まったばかり。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「すぅ、すぅ……」 あれから一体どれほどの時間が経過しただろう。一年? 十年? それとも永遠? それほどの体感時間だった。 とても悪魔とは思えない安らかな寝息をBGMに、いろんな意味でイッパイイッパイな俺が数えた羊は既に5桁を超えた。 しがみ付いたままの彼女を直視する勇気は無い。 更に言うと、このギリギリの精神状態で彼女のあどけない表情を見て、無事正気を保っていられる自信が無い。 そんな中、ずっとあった心地いい感触が離れる。 思わず、小悪魔の方を、向いてしまった。 「あ、おはようございます」 目が、合った。 ……パジャマがはだけてました。なんと彼女ノーブラでした。 さらに保護欲と嗜虐心をくすぐる、ホニャリとした安心しきった無垢で無防備な笑顔。 トドメにパタパタと子犬のように動く耳と羽と尻尾。 なにが、何がそんなに嬉しいと言うのか――! ――ぷちん。 あ、もう駄目だ。 ナニかが臨海を超えた事を悟る。 なにしろこちとら徹夜明けで妙にハイ。しかも美少女生殺し状態で数時間。 寧ろここまで我慢し続けた自分を褒めたいね。マジで。 「あは! あはははははははははははは!」 「○○さん!? どうしたんですか!?」 驚き、俺から離れようとするが…… 遅い! 遅すぎる! ――ぎゅっ。どさっ。 「!?!?」 いきなりの俺のプッツンに困惑した彼女を正面から抱きしめ、押し倒す。あー、やーらけー。 ――さわさわ。 その体勢のまま髪を撫でる。よく手入れされているのか、絹のような手触りだ。 「んうっ……あ、あの……○○さん?」 ――かぷ。こりこり。 「ふあっ! み、耳は駄目ですっ! 駄目ですってば!」 陸に上がったマグロの如くベッドの上で暴れるが、色々見失った今の俺には儚い抵抗でしかない。 ――数分後。 「あ、あの……」 「……」 「初めてなので、優しく、お願いします……」 「……」 無言で肯定。胸に手を伸ばす。 そして、遂に眼を瞑ったまま真っ赤な顔で抵抗しなくなった彼女の唇に…… 「○○さーん! 今日も朝御飯をいただきに……って朝っぱらからナニしてるんですかー! 美鈴キーック!」 ――ごしゃあ! 「……という夢を見た。図書館の主としてどう思う?」 「酷いオチね。安易な夢オチは各方面から非難の嵐よ?」 「全くだ。しかし続きがある」 「?」 「起きたら重度のムチウチになってた上に、何故か小悪魔が俺の顔を見てくれなくなった。眼が合ったら真っ赤な顔で逃げられる。はぐれメタルも真っ青だ」 「……ご馳走様」 3スレ目 862 877 ─────────────────────────────────────────────────────────── ちょっとした小ネタのつもりが、力不足でコンパクトにまとめられませんでした… 「小悪魔を、僕にください!」 図書館の床に手をつき、頭を下げる相手は、 複雑な表情を浮かべた紫魔女パチュリーさん。 顔を床に向けていても、傍らに立つ小悪魔の落ち着かない心の内が、空気を介して伝わってくる。 「外」から迷い込んだ僕は この紅い館の図書館で司書を務める小悪魔と出会い いつしか互いに想いを寄せ合うようになっていた。 しかし、小悪魔はパチュリーさんの使い魔。 そんな身の彼女に求婚するには 使役主たるパチュリーさんの許しを得る事がスジだと考え 今、こうして頭を下げて願い出ているのだ。 「少し……考えさせてもらえるかしら…」 パチュリーさんがそう言ってから 異様に長く感じられる一週間が過ぎたある日、僕は呼び出しを受けた。 館のメイド長・咲夜さんに案内されて、紅魔館玉座の間に入る。 かなりの広さを持つその部屋には、館の主レミリア様と、滅多に図書館から出ないはずのパチュリーさん そして――小悪魔が居た。 「ほら、パチェ。二人に話があるのでしょう?」 レミリア様に促され、パチュリーさんは小さく溜息をついてから 手前に横たえられた縦長の箱を指して口を開く 「……その中には、貴方達二人への『お祝い』が入っているわ」 『祝い』という主の言葉に、小悪魔が微かに身を震わせる。 その言葉の意味に思いを巡らせ、僕の鼓動も一度、大きく高鳴った。 「それが私の返答よ ……小悪魔、開けてみなさい」 「は、はい……」 少しだけ不安な表情で僕を見る小悪魔に、頷いて見せる。 小悪魔も頷き返し、そっと箱のフタに手をかける。 ギ…… ギギギギ…… カパァ 「え…………………」 小悪魔が開けた箱の中には、 「…………………わたし?」 小悪魔が入っていた。 純白のウェディングドレスを身に着けた状態で。 「!?」 自分の身に何が起きたのかわからず箱の中で固まる小悪魔 「ど……どうして箱を開けた小悪魔が箱の中にッ! 僕は一瞬たりと目を離さなかったッ! い……いや、見えなかったッ! ・・・・・・・・・・ 『しっかりと見ていたが』気がついた時にはすでに中に入っt―――って、こんな事ができるのは」 視線の先で、瀟洒な従者がにっこりと微笑む。 こんな真似ができるのは、時を止める能力を持つ咲夜さんだけだ。 超スピードとか!催眠術とかじゃあ断じてねー! 時間を止めて、小悪魔をドレスに着替えさせてから箱の中に入r… ん?…着替えさせ……き、着替え…!? イカン ハナヂガ……。 「演出は咲夜からの、ドレスは私からの手向けよ。 外の世界では、花嫁がコレを着る慣わしなんでしょう?」 一人で興奮している僕に、レミリア様が柔らかな表情で言う。 「私としては有能な司書を手放したくは無いのだけれど……小悪魔の気持ちも、決まっているみたいだしね」 パチュリーさんは少し寂しそうな、でも、微かに嬉しそうな表情で小悪魔を見つめる。 「箱の中の『お祝い』は、『私の使い魔でなくなった自由な身の貴方』よ」 「え……」 箱の中から身を起こし、小悪魔は主の方を向く。 「私と貴方の主従の契約は、今日でお終い。 これからは、彼と夫婦の契約を結びなさい……今までありがとう、小悪魔。 幸せになるのよ」 「パチュリーさ…ま…」 感涙にむせぶ小悪魔を愛しそうに見つめてから、パチュリーさんは僕の方へ向き直る。 「この娘を、大切にしてあげてね…」 「……はいっ!」 滲んでよく見えない眼で、パチュリーさんの視線をまっすぐに受け止め、僕は力強く頷いた。 「あいつは、とんでもないものを持っていったな。 ―――しかも、一生返さないつもりだぜ」 扉の隙間からこっそりと覗いていた黒白い蒐集家が呟いた。 4スレ目 501-502 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「えーっとですね、後は冬虫夏草と、トリカブトと、えーっと……」 「俺はそんなに記憶力良くないんだが……」 時刻は丁度日が傾き始めた頃、大体二時ぐらい。 ここの森は普段は静かなのが売りらしいが、現在は気の抜けた声が飛び交っている。 その張本人 sが俺と小悪魔だ。 なんでこんな辺鄙な場所までキノコを取りに来たかというと、話は午前まで遡る。 日が照り始めて適等に熱くなり始めた午前。 しかしそれは外とかが対象なので、窓が少ない紅魔館のさらに窓が無い図書館で仕事をしている俺には関係なかった。 図書館は適度に温度設定されているらしく、夏だろうが冬だろうが快適なのだ。 いやはや魔法の力って素晴らしいね。俺はここらへんのみパチュリーに感謝した。 それ以外はイマイチ感謝できないがな。 現在もパチュリーの命令で徹夜で本の整理に当たっていて、丁度終わらせたところだった。 最近生活のリズム崩れ始めているんですけど。……元からか。 と、まあ眠いせいか脳が春になり始めてきた俺はさっさと寝ようと図書館を跡にしようとした。 そしたら何故か大きな籠を持った小悪魔に出会ったわけだ。 「お疲れ様です」 「お疲れ」 このまま何も言わずに去っていたら俺は今頃夢の中だろう。 だが俺は、小悪魔に話しかけてしまった。 「……時に小悪魔、そのやけにデカイ籠は何だ。デカ過ぎて羽が動かしずらそうだぞ」 「実はパチュリー様に植物採集を頼まれまして……」 「大変だな……」 「そうなんです……」 二人ともパチュリーの下で働いているため何かと同じような苦労が多い。 そんなこんなで俺と小悪魔は仲がいいのだ。 「それで……お手伝い頂けると嬉しいのですが……」 止めてくれ、そんな上目遣いで俺を見ないでくれ。 そんなふうに言われたら断れないじゃないか。 「……わかった」 その上目遣いが意図的だったらかなり腹黒いぞ小悪魔。 だがそんな俺の疑心なんて吹き飛ばすような屈託の無い笑みで小悪魔は答えた。 「ありがとうございます!」 まぁ、可愛かったからいいか。 眠気? んなもん吹き飛んだわ。 って言う事で、俺たちは植物採集に来たわけです。 他に質問は? 答えないけど。 「そもそも全部この森にあるんディスカー?」 「知ってるわけ無いじゃないですか……」 ご尤もです。 その後俺たちは適度に冗談込みで散策を続けたが、目当ての物は見つからない。 残り一つなのに……。 途中、妖怪とか肉食植物とか出たときは死にそうになったが小悪魔が撃退した。 そしてその余波で毎回俺も吹き飛ばされた。 一応護身用として持っているものがあるが、これはあんな奴らにつかうもんじゃない。 「大丈夫ですかー?」 「大丈夫だー」 そして毎回交わすこの言葉。 うーん、やっぱり人間って非力だなぁ。 なんてため息をつきながら体を起こす。 と、小悪魔の持っているものに目が行った。 「こ、こあさん? その手に持ってるのはなにかね?」 焦りすぎて小悪魔といえずに『こあ』で止まってしまった。 だって手に持ってるのが妙にでかくて切った部分から液体が滲み出てるんですよ!? 「これですか? 目当て物ですよ」 あっさり言ってしまう小悪魔。 図書館の面々は根性があるな。俺は例外だが。 「目当てのものって、あれから手に入れるものなのか?」 「ええ。剥ぎ取りました」 そう言って小悪魔はナイフらしきものを取り出して見せた。 ……それ使って倒せよ。魔法使って俺を吹き飛ばさずに。 勿論口には出さない。セオリーなんだし。切れ味無いし。 「ま、まぁ見つかってよかったな。帰ろうか」 「はい」 そう小悪魔は答えて手に持った謎のものを背中のカゴへと放り投げた。 ……わざわざ見せなくても良かったんだぞ、小悪魔。 さて帰ろうか、そう思った矢先。 「お? お前らがいるなんて珍しいな」 いやーな声が背後からした。 『ギギギギギ……』という音が似合う動きで首を動かすと、そこには――― 「やっぱり魔理沙か……。はぁ……」 図書館から奪った(本人は借りたと言っている)本を返さない黒白魔法使いが居た。 ちらりと小悪魔の方を見てみると、小悪魔も若干『うわぁ……』って顔をしていた。 ……そりゃそうか。 「おいおい、会っていきなりため息とは酷い奴だな。礼儀がなってないぜ」 「借りた本を返さない礼儀知らずには言われたくない台詞だ」 「まぁ、それはそれでな。処で、小悪魔が背負ってるのは何だ?」 あ、こいつ負けそうになったから話題変えたな。 そして質問された小悪魔は普通に答えた。 「ええと、パチュリー様から頼まれた物です」 「ふぅん……パチュリーがなぁ」 そう言って少しブツブツ言い始めた。 魔理沙は無駄に頭の回転が早いからな……嫌なことにならなければいいが。 「よし」 思考が終わったのか不敵に笑って此方を見た。 「それは私がいただくぜ」 「却下」 何を言うか予想していた俺は即答した。 ここで奪われたら俺の苦労はどうなる。 「そういうと思ったぜ」 「なら言うなよ……」 「だから、私は交換条件を出す事にした」 この黒白。一体何を考えているのか。 「お前達がコレを渡してくれるのなら、私は今まで借りた本を全部返す」 「……むぅ」 「どうだ? 決して悪い話ではないはずだが」 魔理沙はなんでこのかごの中の物がほしいのだろうか。 本を返してまで。ってか返すの普通なんですけど。 色々考えた俺は即答はやめておくことにした。 「少し小悪魔と考えさせてくれ」 そう言って小悪魔を引っ張って奥のほうに移動した。 因みに小悪魔は何も喋らなかったのは話し合いを俺に任せたから……なのだろうか。 「どうする?」 「本が返ってくるのなら私はそうしたいのですが……」 「そうすると俺と森に居る時間が長くなってしまうが」 「むしろそちらの方を……。あ、いえいえいえなんでもありません」 なんかブツブツ言って急いで言う小悪魔に俺は心の中で首をかしげた。 「しかし、魔理沙が本を返す可能性があるとは思えんが……」 「そ、そうですね……」 「ここは素直にお引取り願わないといけないな」 「でも魔理沙さんが素直に応じるとは思いませんよ?」 「そこが問題なんだが、俺に考えがある」 「考え……ですか?」 鸚鵡返しに聞いてきた小悪魔に俺は答える。 「だがな、それには準備が要るんだ。そこで小悪魔」 「……?」 「魔理沙相手に弾幕ごっこで少し時間稼いでくれ」 俺の一言に一帯が凍りついた。 少しして、ようやく理解が出来たらしい小悪魔が口を開く。 「む、無理ですって!」 「元気があれば何でもできる!」 「理不尽です!」 「とにかく頼む。俺の五回目くらいのお願いだ」 そう言って俺は手を合わせて懇願する。 そのぐらいしないと撃退できないから魔理沙は困る。 「……わかりました。できるだけやってみます」 渋々頷く小悪魔。毎回こうやって最終的に拒否できないのは小悪魔の悪いところであり良いところだ。 「じゃあ、頼んだぞ」 そういうことで俺たちは魔理沙の場所へと戻った。 「で、答えは? それをくれたら本は返すぜ?」 「甘いな魔理沙っ!」 ビシッと人差し指を魔理沙に向けて答える。 「そんな餌に俺がつられるクマー!」 「○○さん、それって……」 何か言おうとした小悪魔は無視。 「ほぅ……。素直に渡せないのなら奪うだけだぜ!」 この黒白、こんな奴だったっけ。 まぁ、敵には変わりないから別にいい。 「……じゃあ小悪魔頼んだ。知っているとは思うが俺は弾幕ごっこできねぇし」 普通の人間だからな。 さっさと逃げるに限る。 「……はぁ」 それに対して小悪魔は何も答えずにため息一つ漏らしただけだった。悪い。 「覚悟は出来たか?」 そう言って魔理沙は攻撃を開始した。勿論小悪魔に。 騒音があたり一帯を支配して、現在の俺には植物が倒される音ぐらいしか聞こえてこない。 時折飛んでくる星弾にビビリながら着々準備をしていく。 畜生、結構難しいなこれ。 そしてそのまませっせか仕事して数分。 「できたあっ!」 出来た例のものに喜びつつ。肩に担いで小悪魔の場所へと急ぐ。 そして魔理沙に狙いを定め。叫んだ。 「まーりーさー! 一応言わないとダメみたいだから言ってやる!」 その声に魔理沙は此方をちらりと見て、視線を戻し、驚愕の表情でまた此方を見た。 此方というか、今俺が肩に担いでいるバズーカらしきもののほうだ 「なんだそれはぁ!」 「霧之助から貰った!」 「な、なんだってー!?」 「内容は百聞は一見にしかずだっ! スペルカードじゃないけど宣言! 音速『黄色い謎の物体X』!!」 そして俺の肩に乗っけていたバズーカもとい、“ワカモトランチャー”が火を噴いた。 ―――ぶるるぁあああーーー!! 普通のバズーカとは違う発射音が鳴った後、何かしらの黄色い物体が魔理沙へと向かった。 「うおっと! 私に当てようなんて百年早いぜ」 そこらへんは魔理沙だ、避けるだろうと思っていた。 しかしその黄色い物体は突如Uターンをしてまた魔理沙へと向かった。 「なっ!?」 「甘いな! そいつは音速。そしてホーミング性能が半端じゃないから一度狙われたら逃げるしか手は無い!」 「くそっ!」 箒に乗り、凄まじい速度で逃げ出す魔理沙。そしてそれを追いかける黄色い物体。 そして二人はどんどん小さくなっていった。 うーん、やっぱ強烈。 因みに今の解説は霧之助から言われただけなので本当のことかどうかは不明だった。 なんてのんびり思っていると小悪魔がやってきた。 服がところどころ破けたり破けそうになっているものの、たいした傷ではないようだ。 良かった良かった。 「あのう……さっきのなんですか?」 そう小悪魔に言われては答えないわけにはいかない。ってか聞いてなかったのか。 「ワカモトランチャー。細かい事は気にするな」 「……はあ」 未だによくわからない小悪魔に声優なんて説明しても混乱するだけだしな。 とりあえず籠は死守完了。後は帰るだけ。 「じゃあ帰ろうか。今度は巫女なんて事があったら俺は逃げるぞ。本気で」 そう言った後歩き出そうとしたが、小悪魔が何故か歩き出さないので俺は止まってしまった。 「ええと、あの」 「どうした? 歩けないとか?」 「そうではないくて、言いたい事があるんですけど」 言いたい事? ワカモトランチャーについては言いたくないんだがなぁ、俺もわからないし。 「実は、前から思ってたんですが、ええと」 中々本題を切り出さないので俺は小悪魔を見続けた。 よく見なくてもわかるほど顔が赤い。まぁ死闘だったしな。 「○○さんのことが……す」 そこで小悪魔は何も言わずに立ち尽くした。 俺のことが……す。ってなんだ? ストライキか? 意味わからんな。 とりあえず何事かと問いただそうと思ったが――― 「おおっ! 大丈夫か小悪魔!?」 こっちに小悪魔が倒れこんできたのでそれどころではなかった。 怪我のせいでぶっ倒れたか!? とりあえず調べる。 ケガ よし 脈 よし 性格よし 格好よし 匂い よし すべてよし すげえよし ……って何言っているんだ俺は。 なんて自分を突っ込んでいると、小悪魔からゆっくりとした寝息がした。 「なんだよ……、ビックリさせるな」 大方徹夜していたんだろう。小悪魔が寝ているところ見たこと無いからな、永久保存しておくか。 「小悪魔も大変なんだな」 まぁいいか、今は寝かせておこう。 そう思った俺は小悪魔を何とか担いで歩きだした。 籠のせいか重かったけど。 なんとか図書館に帰ってきた俺は小悪魔をベッド(小悪魔の部屋ではない)に運んでパチュリーのところに居た。 「はい、これ」 そしてパチュリーの近くに重い籠をおろした。 まったく、何につかうんだよこれ。 そう思っているとパチュリーから俺の頭を混乱させる一言が発せられた。 「……なにこれ?」 「パチュリーが小悪魔に頼んだんだろ……」 呆れて言い返す。まだ俺は気付いていない。 「私、こんなの頼んでないわよ」 「……は?」 頼んでない? 嘘付け。 小悪魔が頼まれたって言っていたぞ。 「小悪魔? 彼女には何にも頼んでないわよ」 ……全く持って訳がわからん。 とりあえずこの混乱した頭を静めるためにこの籠を――― 「そおい!!」 ひっくり返してパチュリーの頭に叩き込んだ。 混乱した上に(そういえば)徹夜明け込みの眠い俺は気力がなく、もう寝てしまえと言う気分で歩いていた。 気分じゃないな、寝るんだ。 そう思っていると、おきたての小悪魔に出くわした。 「あの、私、寝てました?」 「ああ」 眠いせいで返事も素っ気無い。仕方が無い。 「じゃあパチュリー様には……」 「安心しろ、渡しておいた」 引導をな、とまでは言わない。 言ってもいいけど言わないのは俺のやさしさからだ。 「そうですか……」 しゅんとなっている小悪魔を見ていると何か言わなければいけないことがあると思うが、思い出せない。 眠いもん。 「あ、あの」 恐らく本日六回目の『あの』。 何回言ったら気が済むんだろう。 「私、寝ているときになんか言いました?」 「寝ているとき……ねぇ」 眠い頭をなんとか動かして記憶を探る。 「言ってたな、たしか」 「ど、どんなことを!?」 「ええとだなぁ、言いたくないんだが……」 お茶を濁そうとする俺に対して小悪魔は詰め寄ってきた。 勿論詰め寄られたら下がるしかない。本能的に。 「言ってください! お願いします!」 「わかったわかった、だからそんなに近づくな」 近づかれたらなんか言いづらい。よくわからんけど。 「まぁ、小悪魔に魔が差したとは思うけどさ……」 そう前置きした後俺は言った。 「冬虫夏草と宇宙仮想……だっけか」 あたりに冷たい風が吹いた。 ちなみに――― ワカモトランチャー黄色い弾仕様を食らった魔理沙は数日間外に出れなかったらしい。 「なんでですか?」 「あれはストーカーで変体だからな」 4スレ目 575(うpろだ0035) ─────────────────────────────────────────────────────────── 名月。 特に、ここ、図書館の屋根から見る月は格別だ。 酒も何もないけれど、 月があれば十分だ。 屋根の出っ張りに腰を下ろして、月を眺める。 俺がここに来て3ヶ月。 市立図書館の帰路に放り込まれたせいで、 日本での図書の整理方法をグダグダながら教えたら、 そのまま、魔法図書館なるところに勤務することになってしまった。 でも、それなりにうまくやってきたと思う。 パチェやこぁとの関係も良好だし、 最近のこぁとの書棚整理コンビネーションは、パチェも目を見張るほど。 今のところホームシックにかかってない辺り、結構適応しているのかもしれない。 「あれ、こんなところにいたんですか?」 いつの間にか、こぁが屋根に上がってきていた。 「ああ、こぁか。どうしたんだ?」 この少女がこぁ。 赤髪の、司書をやっている女の子。 みんな小悪魔と呼んでいるが、それではあまりにも味気ないので、 こぁ、と呼ばせてもらっている。 「パチュリー様が、探してましたよ?」 「なんだって?」 「分類がどうとか、言ってましたけど。 ――やぁっ」 一筋の風が、こぁの髪をなびかせる。 髪が乱れないように、軽く髪を抑えるこぁ。 「やめだ。始まると長いんだ、あの人」 「いいんですか?」 「いいんだ。明日、説教も含めて長話に付き合うさ」 「言いつけますよ」 「信じてるぜ、こぁ」 軽くウィンク。 それを見たこぁは、顔を赤くして目を逸らす。 そのときまた、一陣の風。 スルッ 「きゃあっ!」 バランスを崩したこぁが落ちそうになる寸前。 「こぁ!」 何とか俺の手が間に合い、引っ張り上げる。 そのまま、俺の横にこぁを座らせた。 女の子の手って、こんなに柔らかくてサラサラしているんだ……。 「ありがとう、ございます……」 「ああ、まあ、気にするな」 照れてしまう。 こぁの顔が見られない。 「あの、手……」 「ああ、すまない……」 慌てて、手を放す俺。 辺りは闇。 虫の音のさえ聞こえない。 無言、無音の状態が続く。 それを破ったのは、こぁの声だった。 「前に、私の本名を聞いたこと、ありましたよね」 「そう言えば、言ったな」 「あれは、私を召喚するときにその名前を知っていた、 パチュリー様しか、知らないんですよ。 でも、教えてあげます。 私の、本当の名前は、――です」 「あ、ああ、ありがとう。 でも、どうして急に?」 顔をそちらに向ければ。 妖艶な微笑を浮かべるこぁ。 「知っていますか? 悪魔の名は、人に知られてはいけないんです。 知られてしまうと、その人に逆らえないから……。 そして、悪魔に名前を教えられた人は、その悪魔を自由にできるんです」 「そんな大事な名前を、俺に教えていいのか?」 「いいんです。あなたには。 私の、身も心も、支配して欲しいから……」 いきなりの告白に戸惑ってしまう。 でも、なんでそんなすまなそうな目をしているんだ……? 「覚悟して、下さいね。 私、アスモデウス様の配下、色欲の悪魔ですから。 手強いですよ」 「覚悟なんかしないさ。 それより、そっちこそ覚悟しろよ。 俺の愛は激しいからな」 その言葉に、眼を見開くこぁ。 「受け止めて、くれるんですか……?」 「ああ、こぁのこと、愛してるから」 「私、悪魔なんですよ……?」 「今さら、だろ。 俺は悪魔じゃなくてこぁを好きになったんだから、関係ないさ」 「嬉しい!」 抱きついてくるこぁ。 その眼には、涙が光っている。 「ぐすっ。 ずっと、ずっと、大好きだったんです。 でも、私、悪魔だから、受け止めてくれないと、思っていたんです。 だから、えぐっ、実は、呪いをかけてしまいました。 ごめんなさい――」 「呪い?」 「はい、呪いです。 悪魔自らに名前を教えられた人は、生涯を悪魔と過ごさなくてはいけない。 私が死なない限り、死ねないし、年も取れないんですよ。 それが、私を好きにできる、代償なんです。 どうしても、あなたと、つながりが欲しかったんです。 勝手な事して、ひくっ、ごめんなさい……」 堰を切ったように話し出す。 そんなこぁに、 「ありがとう」 俺は、心から、お礼を言った。 「え……」 「だって、これからずっとこぁと一緒なんだろう? それに、こぁが、そこまで俺を純粋に慕ってくれたのは嬉しいし。 俺にとっては、何も問題ないな」 「うぇぇぇぇーーーーん。 ありがとう、ぐすっ、ございます」 胸の中で泣きじゃくるこぁ。 俺は、その形のいいあごを持ち上げると、 「誓いのキス」 軽く、キスをした。 「あ……。 うれ、しい、です。 不束者ですが、心も、カラダも、髪の毛1本に至るまで、 この私は、すべてあなたのものです。 末永く、可愛がってくださいね」 嬉し涙を流しながら微笑むこぁを。 俺は。 世界で一番、愛しいと思った。 5スレ目 612-613 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「あ~ぁ。司書の仕事も楽じゃねぇなぁ……パチュリーもどこにいるものやら」 片方の手に紅茶セットの入ったバスケットを持ち、だだっぴろい図書館の中をパチュリーを探す。 紅茶持ってきてやったのにそんなときに限っていつもの場所にいないとは猫度アップだな。 しかし果たしてパチュリーは猫だろうか? 猫耳だけではきついな。眼鏡を足せば……うむ! 合格だ! じゃあ小悪魔に猫耳は……いや、悪魔羽と猫耳は共存しないなやはりそのままの君でいて などと自分でもよく分からない妄想を垂れ流したまま広大な図書館を彷徨い歩く。 今日も平和だ。 主に俺の頭が。 やっと見つけたパチュリーは、図書館の端にある小さな部屋にいた。 部屋と言ってもたいした大きさではなく、ちょっとした調理が出来る台所と言った感じの部屋である。 薬か何かを作っているらしく、かまどに火が焚かれている。 そのおかげで薄寒く暗い図書館もこの部屋だけ紅明るく、ほのかに暖かい。 火にくべられてくつくつと煮える中華鍋の中からは、おそらく薬草か何かだろう、不思議な匂いが漂う。 ……って、中華鍋? 中華鍋って、主に炒め物に使う道具じゃなかったろうか。 そもそも製薬中の魔女と言って中華鍋に向かう魔女を思い描く者はおるまい。 肉体言語魔法少女並に何か間違ってる。 「なに」 こちらの気配に気づいていたのだろう、背中越しに声をかけられる。 「魔女と中華鍋というミスマッチ具合が実にパチュリーらしいな」 ひとまず思ったことを口にするとぴたりと手が止まり、 いつもよりわずかに目を大きくして、しかしいつも通りめんどくさそうに振り返った。 「あら。あなただったの」 誰だと思ったのやら。 「てっきり小悪魔だと思ったわ。今気づいたけど、あなた達、色がよく似てるのね」 色? なんだそりゃ。 「五味はね、五行に繋がっているの。 五味を統べるとも言える中華鍋は、七曜の魔女である私に最も似合っている調理道具だと思わない?」 「思わない」 あ、むくれた。即答しすぎたか。 いつも以上に不満憤懣たるやといったジト目で見られるが気にしない。 「悪いが俺は製薬理論を聴きに来たんじゃなく、紅茶を持ってきただけなんだ。ほれ、飲もうぜ」 テーブルにポットと三つカップを並べて紅茶を注ぎ、勝手に自分のを飲み始める。 パチュリーは仏頂面で頬を膨らませたまま、鍋に蓋をしてぺたぺたと近寄ってきた。 「カップ、一つ多いんだけど」 「ん。んん、あー。小悪魔も誘ったんでな。後で来るとさ」 「ふーん、そう」 ごくなにげない調子でパチュリーは続けた。 「あなた、あの子のこと好きよね」 「んぐっっ! げふっ、げほっ、えほっ………えへんえへん。ん゛ん゛っ、ん゛っ。 フッ……何を言い出すかと思えば」 「紅茶噴いた顔でかっこつけ直しても遅いわよ、ほら、良いからちょっと耳貸しなさい」 顔を近づけあってぼそぼそと声をひそめる。 「(なぜ気が付いたッ!? 他人の色恋沙汰に気づけないほどは鈍感だと思っていたのにッッ)」 「(五月蝿いわね。咲夜から聞いたの。 紅魔館のメイド長は世界一ィィィィィィィィィ! 知らん事などナァァァァァァァァイ! だそうよ)」 「(市はr……あー……うん、ごめん。謎の敗北感と共にすごい納得した)」 「(って、そんなことはどうでもいいわ。あなた、今のままで良いの? さっさとくっついちゃいなさいよ?)」 「(簡単に言ってくれるのな……そりゃ俺だって是非そうしたいが)」 「(私が近いうちにセッティングしてあげるから、そこで……! というのはどう?)」 「(マテマテマテ、そもそもなんでそんなに積極的なんだよ)」 「(楽しいから。)」 うむ。新しいおもちゃを目にした子供のような、実に期待に満ちた楽しそうな表情だ。腹立つほど。 「はぁ。それにしても意外だな。本にしか興味がないと思ってたのに」 「そうだったんだけどね。私も色々変わってきたのよ。主に人間の所為で」 妖怪は人間に比べて寿命が長く、それゆえ変わりにくい。 しかし、人間――魔理沙だとか、咲夜さんだとか、俺だとか――と接するようになったことで、変わってきた。 そういうことらしい。 確かに『楽しいから』なんて俺や魔理沙が言いそうなセリフである。光栄な話だ。 「あなたのことは……性格はかなり変だけど、買っているわ。 あなたも、同じくらい本を愛してくれている。 そして本と同じくらいお互いに好意を持っている。 だから。あなたは二人で幸せになる義務があるわ」 そう言ってぬるくなりはじめた紅茶を啜る。 「……そこまで思われてたとは、心強い話だ。 ご期待に添えるよう、努力する。やってみるぜ」 全く。 全く、実に心強い話だ。 さらにしばらくして、やっと小悪魔は来た。 「すみません、遅くなりました~、って、あれ? なんだか焦げ臭くないですか」 「「あ」」 パチュリーの製薬成功率がまた下がった。 BadEnd 01、火にかけた鍋からは離れないようにしよう! 予定外の精製失敗のおかげで、パチュリーは早くも“セッティング”をその日の午後にもってきた。 俺と小悪魔に薬草の収集を命じ、魔法の森の近くにある花畑に向かわせたのだ。 ぽかぽかと陽気が漂う昼下がり。 それは、まぁ、確かに一日中カビ臭い薄暗い図書館にいては一生得られそうにない絶好のシチュエーションだった。 ああ、それにしても今日はいい天気だなぁ……やっぱ小悪魔綺麗だよなぁ…… 何もかもが美しい、天使のような小悪魔。 瑪瑙のように煌めく瞳、柔らかそうにふくらんだ唇、 落ち着きと知性を漂わせる表情、ぱたぱたと動く羽。 しかし何と言っても少しウェーブのかかった、ふわっふわの紅く煌めく長い髪が素晴らしい。 こんな日に、踊るように花を摘む小悪魔に見とれないヤツなんているわけがないね。 そして事実俺は自分が摘むべき草も忘れて小悪魔に魅入られていた。 直前にパチュリーにつつかれていた所為も、場所のおかげもあったかもしれない。 けれどそんな綺麗な横顔を見ていると、俺の気持ちはごく自然に口をついて出ていた。 日々寝る前に顔から鳳翼天翔するくらいキザなセリフを練習していたのが嘘のようだった。 「小悪魔」 「はい?」 「好きだ。愛してる」 「はい。ありがt……ぇ? はれ? ほぁぇぇっ??」 元から大きめな瞳がさらに大きく見開かれ、頭と背中の羽も尻尾もピン!と直立し、 両手を口元に当てて驚いたままの表情で固まってしまった。 そしておずおずと両手を胸元あたりに降ろすと、うつむきかげんで視線を彷徨わせ始めた。 「あれ? ぇっと、本気…です、か? あ、ごめんなさい変なこと聞いちゃって。失礼ですよね」 「突然だったことは謝る、ごめん。でも、もちろん本気で言ってる」 ぱたぱた、ぶんぶんぶん 「そっかー、そですか……」 「うん」 ぱたぱたぱたぱた、ぶんぶんぶんぶんぶんぶん 「うーんと、えーっと、ぅーん……?」 音がするほどのあの尻尾と羽の振り様、顔の赤らみようなどから言って、小悪魔は喜んでくれていた。 誰より小悪魔を愛している俺が言うんだ間違いない。 しかし、同時に怒っているようにも見えたし、悲しんでいるようにも見えた。 しばらくそんな難しい顔をしたあと小悪魔が絞り出した答えは。 「あの……ごめんなさい、返事は……しばらく待ってもらってもよろしいですか?」 「おかえり、って……えーと……」 俺の渋い表情を見て良い結果でなかったことは悟ったのか、パチュリーが開きかけた口を噤む。 「まだわかんないけど…保留だってさ。どうかな、ダメなのかな」 パチュリーは眉間にしわを寄せて、何か言おうと口を開いては何も出てこずに口をへの字に曲げることを何度か繰り返した後、一言だけ、ありえないわ、と呟いた。 どうにも合点のいかない小悪魔の対応を訝しみながら、その日は足早に自分の部屋へと引き籠もった。 3日経った。 何も変わらなかった。 1週間経った。 何も変わらなかった。 10日経った。 何も変わらなかった。そう、何も変わらなかった。 毎日顔を合わせているが、何事もなかったかの様に接してくる小悪魔に覚えた感情は、苛立ちだったか、哀しさだったか、それとも感謝だったろうか。 そんなある日のこと。 いつものように図書の整理をしていた俺は、ぼーっとしていてうっかり、 「痛っ!」 「どうしたの?」 「本の金具で指切ったみたいだ。おーいてぇ」 血ぃ出てきたー、とぼやきながら切れた人差し指をパチュリーに見せる。 するとパチュリーは、 「あら、大丈夫? 痛くない?」 「ああ、ま、これくらないなら舐めてりゃ治るかな」 「ええっ!? あ、ああ、貴方が舐めるのね」 「おいおい、なんだと思ったんだ」 「な、なんでもないっ! なんでもないのっ!」 ツンと怒ったように顔を赤くして言うと、読んでいた本に顔を隠すかのように、ばっとうずめた。 と、 「あら何でもないんですか? 残念ですぅ」 「うおっ、小悪魔!? どっから現れた?」 いきなり背後から声をかけられびっくりする。この辺はさすがに紅魔館にいるだけあって神出鬼没だ。 後ろから肩口を覗きこむように抱きつかれ、ケガした指を両手で包み込んでくれる。 こんなに距離が近づいたのは実は初めてかもしれない。 というかなんかふっくらと当たってる。当てられてるのか! ……いやいやその前に。何がしたいんだ小悪魔。泣くぞ俺。 「ふふっ、パチュリー様がやらないのでしたら私が代わりにやっちゃいますよ?」 ……小悪魔? 「別に良いわよ」 「あら残ね……」 けらけらとまんま小悪魔の様な笑いを上げかけて――あれ? とそのままの表情で固まった。 「あの。今なんておっしゃいました?」 「ダメって聞こえたかしら? 好きにしたら?」 「…………あれあれ? いいんですかパチュリー様? そんなこと言って。 もらっちゃいますよ、○○さん」 「良いわよ。それで満足したら早く仕事に帰ってちょうだい」 「…………」 「MPが足りなかったかしら」 「いえ、あの。えと、ホントに良いんですか? 何があったか知りませんが些細なことで喧嘩しちゃダメですよ? 後になってから『やっぱり○○のこと好きだったの』とか言ってももう譲りませんよ?」 「……?」 「あなた、何言ってるの?」 パチュリーが俺と顔を見合わせて不思議そうに首をかしげる。 「いや、だから…あれ? あの、パチュリー様。好きだったんじゃないんですか? ○○さん」 そんなことは初耳も良いところなんだが……そして謎はほぼ解けた。 パチュリーはパチュリーで、ふふぅん、と小馬鹿にしたような呆れ顔を浮かべて小悪魔を見やる。 「あなた何十年私の下で働いてるの? 私が本の知識以上に心惹かれるものなんかあると思って?」 いや、ありがたいことに本の知識以上には俺達のことは気にしてくれていたような気もするが。 「ほぇ……あ……れ……あの日だったか…パチュリー様告白してたじゃないですか……。 そう、私、厨房のそばで聞いてたんですよ?」 「?? 何のこと?」 「そんなこと悪魔に誓って無かったわ」 「ありましたよ! だから私は告白してもらって嬉しかったけど、 それ以上に○○さんが二股かけるような人だと思ってすごく残念だったんですよ!」 パチュリーと二人で難しい顔をして記憶の糸をたぐり寄せる。……ん~? 「あっ。ねぇ、○○。そう言えば小部屋に二人でいたとき……」 「あー。ああ、なんだっけ。たしかに告白した時のセリフとも聞こえる会話だったような」 あ、小悪魔が真っ白になって、みょん侍のように半分魂が抜け出てる。 耳を澄ますとエクトプラズムと共に こ あ ぁ ぁ ぁ ぁ、とかいう苦悶の音をはき出している。 呆然とする小悪魔を尻目に、事件解決ね、後は任せたわ、と言ってパチュリーはすぅっと図書館から出て行こうとする。 その背中に向けて、慌てて小悪魔が我を取り戻して声をかける。 「ちょ、あの! ホントにホントに良いんですね!? 私の勘違いだったことは50歩くらい譲って認めますけど、 もっと後になってから『ホントは○○のこと好きだったの』とか言ってももう譲りませんよ!」 「それさっきも言ったわよ。好きになさい」 と、扉を開けたところでパチュリーが肩越しに振り返って口を開く。 「小悪魔。細かいことは言わないわ。今ここに、たった一つだけ私と契約しなさい。 ――幸せになること。」 「え、あ、は、はい。はいっ! 絶対幸せになります! ありがとうございます!」 それを聞いて満足そうに笑みを浮かべたパチュリーは、今度こそ扉の外へと姿を消した。 ばっ、と弾かれた様に俺に向き直る。 胸の前で手を組んで、眼を潤ませて 「○○さん……ごめんなさい、勝手に勘違いして、怒って、返事もせずにすみませんでした。 今からでも許してもらえるなら、言います。好きです……。私も、好きです! 貴方を愛してます!」 その言葉を、その気持ちを。幾星霜待ち続けていただろうか。 「小悪魔っ…!」 ぎゅっと、抱きしめる。 もう離さない。ずっと、側にいてくれ。そう耳元で囁くと、胸の中でしっかり、はい、と返事をしてくれた。 「私、私……ごめんなさい……」 そう言ってすすり泣く。 涙は似合わない、そう言おうと思って頬の涙を掬った指をふっとさらわれ。 気が付くと俺の指は――好きな人の口の中に吸い込まれていた。 「んっ……ちゅ……れろ…」 「こっっっっこここここここあっくま?」 わたわたと焦る俺の指がぬるりと解放され、つぅと糸を引く。 「血が出ていました、舐めていれば治りますよね」 えへへ、と目尻を赤くしたまま悪戯っぽく笑って、再び指をちゅっと吸い込む。 吸われている部分からぞくぞくとした快感が伝播してくる。 「う、ぁ……」 くすぐったさと恥ずかしさに思わず、手首を握っていた小悪魔の手を取り、同じようにその人差し指に吸い付く。 「ふ、ぁ……ぅん……」 少し驚いて指を一瞬口から離した小悪魔だったが、すぐにとろけるような表情に戻り、指を舐め合う。 ほっそりと白く長い小悪魔の指は、少しだけ本の黴くさい匂いがしたが、ほんのりと甘かった。 口の中で時たまぴくぴくと蠢くものから温もりを受け取り、温もりを与える。 とろとろと熔けそうになる指先からは甘い波が伝わり続け、じんじんと意識までも融かしてゆく。 いつしか、どちらが誘ったか。 お互いの手と手が少しずつ近づいてゆき、自然、ふっと微かに唇が触れ合って――すぐに離れる。 「え、えへへへへへへへへへへへへへへへ」 顔を真っ赤に染め上げてはにかむ俺の恋人。 でも、自分も同じくらい顔が紅く火照って頬がゆるんでいるのを感じる。 お互い恥ずかしくって、二人照れあって、一緒に何か言わなきゃ、と思ってわたわたして。 そして、二人とも同じくらい間抜けなことをしていることに気付いて、ぷっ、と同時に吹き出す。 「「あはははははははははっっ」」 二人でいられる。二人で想っている。二人で感じ合っている。 そんな些細なこと、されどそんな奇跡が幸せで、笑いが止まらない。 ひとしきり笑いあって落ち着いたころ、小悪魔に惚れてからこのかた、長い間夢だった願いを口にする。 「ねぇ。小悪魔。笑ってほしい。ずっとずっと、こうして俺の隣で笑っていてほしい。 俺のためだけに笑っていてほしい。 君の太陽の様な笑顔が、大好きなんだ」 「はい……はい! ずっと、ずっと貴方の傍にいさせて下さい。そうすれば、私は貴方のおかげでずっと笑顔でいられます」 夕立のあとに輝く太陽のように晴れやかな笑顔で応えてくれる。 俺だけに向けられている、向日葵のような笑顔。 もう二度とその笑顔を離さないよう、ぎゅっと強く抱きしめる。 ――ああ、俺は、小悪魔を好きになって、心底良かった。 「あぁ、もったいない。行動に多少問題はあったけど優秀だった司書を、一気に二人も解雇しちゃったわ」 「あいつら勝手に住み着いただけで、元から雇ってないし解雇してもいないじゃん? それに、大丈夫よ。 すぐ三人に増えるわ。ああ、もっと増えるかもね。きっと賑やかになるわ」 「――そう。レミィが言うのならきっとそうなのね」 咲夜が来て、レミィは変わった。 霊夢が来て、レミィはまた変わった 魔理沙が来て、妹様は変わった。私も変わった。 ○○が来て、あの子は変わった。 人間が来るたび、新しい風が吹き込み、紅魔館は変わっていく。 今度来る人間は、きっと悪魔と人間のハーフ。多分。 そして、また新しい風が生まれ、何かが変わっていくのだろう。 この世に生を受けて、はや1世紀が経つパチュリー。 こんなにもめまぐるしく変わってゆく世界は初めての経験だった。 人間という種族からは、どんな本から得る知識も敵わない量の生きた知識を得ることが出来る。 そのことに気付かせてくれた人間達に感謝しつつ、パチュリーは、 その知識を得られることを思って、早くも期待に胸を躍らせるのだった。 5スレ目 775 ───────────────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/lasteden/pages/314.html
小悪魔 生息地 封印されし魔界 外見 ステータス HP 907 MP 967 攻撃力 453 守り 1113 魔防 1195 素早さ 1468 武器 [風]風の書Lv.4 所持金 1384G 技 鳴き声 勝利 敗北「またね」 コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/th-gotouchi/pages/123.html
小悪魔のページ(暫定) 二つ名 能力 出演作品 『紅魔郷』4面中ボス 使用スペルカード 元ネタっぽいエピソードとか 悪魔 図書館 こあ 候補地 愛知県(第六天魔王と呼ばれた織田信長から) ご当地絵 ランダム画像表示テスト実施中 (ランダムにしつつ画像サイズ揃える方法募集中) random_imgエラー:存在する画像ファイルを指定してください。 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/orz1414/pages/248.html
本棚を見上げる。天井は薄暗くて見えない程、遠い。 壁が本で造られていると言える程、本棚が列を成している。上を見れば崖と思わせ、左 右を見れば迷宮と惑わせ、下を見れば整理されていない海。全ての角度から見ようと、全 てが本。活字嫌いが幽閉されようものなら、数時間で精神障害を起こすのではないかと危 惧さえしてしまう。 と、感慨深く思った所で……要するに片付いてないだけ。 「えっとこの本は……うげ。これ南西端側の棚じゃないか。なんでここまで持ってくる必 要があるんだ」 図書館内といっても、今自分がいる位置から該当する本棚へはかなりの距離がある。そ のぐらいこの"仕事場"は広大すぎる。歩いて何分かかるだろうか。 付近に放置されていた書籍類の本棚は見事にバラバラで、東奔西走南船北馬と口に言え ば軽いが、距離を換算したら気が滅入る結果になる。 しかし、雇われてしっかり図書館の主から貰う物貰ってる以上、やらざるを得ない。主 人曰く、ぎぶあんどてーくの精神らしい。 とはいっても、支給元は紅魔館当主からなのだが。 「さて、どこから突っ込んでいくかな」 回収した本の基本位置情報を一つ一つ脳内の図書館見取り図と照らし合わせ、ルートを 弾き出す。だが、結局行って帰っての応酬で時間短縮は見込めそうにない。 「……はぁ」 無意識に重い息が出た。そんな自分に気分が苦くなったが、耳に入って来た小さな声が 苦味をかき消した。 柔らかに笑う、音。 「お疲れのようですね」 「それなりに、かな」 踵を返し、空中を漂う主人の従者に答える。俺に微笑みかけるその優しい表情は、大人 の色香を持ってはいるが、案外茶目っ気があったりドジ踏んだりおっちょこちょいだった りして、保護欲をかきたてられてしまう。"リトル"という名も、性格から鑑みて頷けるい い名前に思えた。 「私の作業は終わりましたから、遠くの本は持って行きます」 両手を差し出して本を受け取ろうとするリトルに、「大丈夫」と俺は軽く手を振って否 定の意を表した。 「構わず休んでてくれ、主人と茶でも飲みながらさ。後で行くから」 「ダメですよっ」 振っていた手をガシッと両手で握られ、リトルの真剣な眼差しにたじろぐ。 「休憩ぐらいご一緒しましょうよ。それに……パチュリー様は今し方気分が優れないとお 部屋に戻られました。私一人で寂しく紅茶を啜れと仰いますか……?」 「言ってない、そこまで言ってないから」 真剣かと思えば、瞳を潤ませ上目遣いで懇願されると、さすがに意思が折れる。ここま でされて拒否を続けられる程、サディズムなんてない。 しかし、ずるい業だ。理解していようとも、従ってしまう。 「でしたら、お手伝いさせて下さい」 「む……そこまで言うなら。これと、これが南西方面なんだ。悪いけど、頼めるか?」 「はい、お任せ下さい。ぱぱーっと片付けてきますからっ」 嬉々として本を受け取り、颯爽と飛んでいく。そんな姿が好ましく、重労働である図書 館の作業も続けられるというもの。 確かに、我が雇い主も妖艶かつ蟲惑的な空気を持ちつつ容姿は少女というなんともミス マッチなお方だが。両手に華なんてお門違いもいい所だが、恵まれてると実感する。 最近、というより数ヶ月も好調のようだった主人が急に体調不良とは少々驚いた。加え て妙に元気というか気合の入ったリトルの姿にも違和感があるのだが。 とかく、後々主人の見舞いでもさせてもらおう。 「よし、さっさと終わらせよう」 拳に力を入れ、数冊の本を抱えて歩き出す。本来あるべき地へ納める為に── 「先ほどの終わりました。次はどこのでしょうか」 「──速すぎだろ常識的に考えて」 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/谷・)_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 「アールグレイとジャワがご用意できますが、どちらがよろしいですか?」 「アールグレイ、お願いできる?」 リトルは笑って頷くと、茶葉の入ったポットに熱湯を注ぎ始めた。色々と工夫をしているみたいだが、詳しくはわからない。多分、本格的な淹れ方なのだろう。 数刻前は残骸の山に見て取れたテーブルの周囲も、今ではすっきり爽やかさんくm…… 失礼。綺麗に清掃されている。 「少々お待ち下さいね、もうすぐ良い香りになりますので。あ、よろしければ先にお茶菓 子をどうぞ。頑張って作ってみたんですよ」 「お、リトルが作ったのか。……ん? 見たことないな、コレ」 テーブルには、主人と三人で休憩を楽しむ際によく見るクッキーやドーナツの他に、全 く知識に存在しない細い棒の束があった。全体的に黒く、先端が白い。 「最近また、新しい雑誌が来まして。その中に書かれていました。ポッキーって言う名前 のお菓子です」 ぽっきー。確かに、見た目通り簡単に折れそうな名前だ。 「へぇ、ちょっと一本。……ぉ、チョコレートとビスケットってやつか」 「大体そのような感じですね」 リトルの作った新作に感嘆しつつ、淹れ立ての紅茶がテーブルに置かれた。 アールグレイは薫り高く、ドーナツはふっくらと、クッキーは芳ばしく、ポッキーの小 気味良い音が俺とリトルの雑談に花を添えてくれる。主人はおらず、本日の作業は全て終 わっている。止め処ない語りは、時間の流れを意識させなかった。 「それでまぁ、あれは臭いったらありゃしないよ本当に」 「ですよねぇ、臭いですよねぇ~」 一段落ついでに何かしら菓子を取ろうとして……手元がスカる。テーブルを見れば、あ るのはポッキリいくのが一本のみ。 「あ、悪い。結構食っちまったか」 「いえ、お構いなく。美味しく召し上がって頂けたようで、嬉しいです」 満面の笑みが目に焼きついて、急速に気分が高揚してくる。この笑顔で三倍飯だ。 彼女が魔族である事は知っている。ただ、魔族と思える節が全く見えない。笑顔で人を 救ってしまえるのではと思う程、魔族とかけ離れている。 「じゃあ、最後のこれはリトルが食べてくれ。俺は貰いすぎたよ」 「そうですか……? あの、でっ、でしたら、半分ずつにしましょう」 急に挙動がおかしくなった気がしたが、そのままリトルが手にしたポッキーが半分に割 れて渡されるのを待った。 が、折らずに咥え、テーブルから身体を乗り出してきた。 「ん?」 リトルが、ポッキーの先端を咥えたままお戯けた笑いを向けてくる。 「──へ?」 「ふふ、わかりませんか?」 唇で挟みながらも器用に喋るリトル。 意図がわからず、呆ける。しばらくして、ハッと脳内が鮮明になった。 ま、さ、か…… 「は、はんぶん?」 「はやくして下さいよ。私の方、濡れて折れちゃいます」 目が細まり、からかいの意が伝わる。これを食べろ、と言いたいらしい。 一回だけ里で聞いた事がある。外来人が開いた集団お見合いみたいな集まりで、男女一 組で一本のうどんを互いに両端から食べて度胸試しみたいな事をしたと。 リトルもその意味を理解してやっている様子で、目や口元は『どうしたんですか? 食 べないんですか~?』と挑発しているが、頬は夕暮時を越える紅色。 つまり。俺は試されている。男としての度胸を試されている。と、思う。 「一応聞くけど……手で半分に折ったら?」 「怒ります。大弾を妖夢さんの未来永劫斬並の剛速球で投げます」 「イタダキマス」 とは言ったものの、緊張で身体が強張る。しかも、リトルは目を瞑ってる。しかし、躊 躇して時間を経てれば経てる程状況は宜しくなくなってしまう。 意識を高める。我は獣、目の前の糧を喰らうのみ。 ポッキーの半分を口に入れ、乾いた音が耳に届く。折れた合図に心で頷き── リトル側の半分がテーブルに落ちるのを最後まで見てしまった。 「……」 身体が止まる。頭も、首も、腕も、足も。四肢の骨が鉄の棒にすり換えられた。 逆に、内部は灼熱が迸る。鉄は炉で熱されたばかりの真紅に染まり、肉が煙を立てて焼 け焦げる。 どれほど接触していたか。柔らかく、肉厚な桃色のそれが自分から離れていった。呆然 とした俺の口から、折った棒が落ちて転がった。 「り、リトル? 今、俺に何をしたかわか──」 「わ、わかってますっ」 うつむいていて、表情は窺い知れない。きっと、鬼灯の赤だろう。きっと、俺も。 「おぉ、俺はうれしっ、いややや。別にいいけどさっ、い、いいのか、リトルは」 「……他の男の人とは、絶対しません」 脳天直撃。これは酷い、いや。これはやばい。 「あ、新しい茶葉取って来ますねっ」 言うが早いか、視界からリトルの姿が消えた。 「これは、これはいいのか? 本当に? ど、どうすんのよ! どうすんのよ俺ぇ!?」 明らかにリトルからの積極的な意思表示なのは分かっているが、脳内の整理がつかず、 眩暈に似た感覚に侵食される。驚きと、喜びと、欲が沸いて混じっては押し殺す。思考が 混沌に満ちている。 テーブルに頭を打ちつけ、痛みと時間で熱が収まるのを促そうとした。結果は、頭痛が 酷くなって額から血が滲み出てきただけだった。 「いでぇ……」 愚の骨頂って言葉は、今の自分に適しているかもしれない。 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/皿゚)_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 仕事は既に、終わっている。 自分の住居はここではない。独り身とはいえ、家はある。導き出される、次に取るべき 行動は、"帰路につく"こと。 「……」 「……」 図書館の出入口へ向かう、二人。俺の後ろを俯いたままついてくるリトル。少し振り向 いて、声を掛けようとして、喉がつまり……また歩く。 あれから、会話していない。俺もリトルも。何を話せばいいのかわからない。いや、違 う。リトルの顔を見てしまうと、あの映像が蘇り、全ての言葉が忘却の彼方、だ。 扉が見えた。外に出れば、この重さから解放される。そして同時に、何かが砕け、終わ るとも。 伝える必要があった。 「リトル」 「……はい」 仔猫を思わせる小さな声。背中を向けたまま彼女を見ずに、言を続ける。 「さっきは取り乱して悪かった」 「いえ、あの。私こそあんな、はしたない事をしまして……でも」 「ぁぁ、大丈夫。はしたないとか思ってないし、厭でもないし。寧ろ、踊りたくなる程こ う……なんつーか……あぁ!」 自分の気持ちが言葉にならず、頭を掻き毟る。自分の莫迦さに反吐が出る。 至る所、簡潔かつ直球なものしか選べなかった。 「嬉しかった。初、ってやつだったんだけどさ、俺。相手がリトルなら問題なし。もう癖 になって毎日一回はしてもらわないと気が済まなくなりそうだよハハハハハハッ!」 自分で言って、自分で身体を爆破させたい程、莫迦で下らない。乾いた笑い声が図書館 に響き、虚しさとして耳に戻ってくる。 背中にぶつかる音は、無い。今振り向けば、呆れ顔のリトルが見れるかもしれない。 扉の取っ手を掴み、「お大事にって、主人に伝えておいて」と捨て台詞。 開けば、"おわる"── ──おわらせていいわけ、ないだろう。 扉を開けたいと焦る逃亡の意。踏みとどまれと足を重くする打破の意。頭の中で白い小 人と黒い小人が言い争うなんて喩えがあるが、まさにそんな気分だ。 「ひとつ、聞いていいかな」 また、背中で語る。 「はい」 また、小さな声が背中に刺さる。 「さっきのキスって、俺だから、だよな。だとしたら……俺も同じ考えだ」 「……」 刺さらない。空虚が纏わりつく。 音もなく、腕を捕まれ身体が動かされた。 リトルの手が腕を掴み、自分の身体が半回転し終えた時には、俺達は密着していた。両 手を腰に絡めて離そうとせず、顔は胸元にうずくまっている。 「リトル……」 「あなた以外の方とは、したくないです」 腰を覆った腕の力が少し強くなった。俺の手も、軽くリトルの柔らかな髪を撫でると、 軽い喜びの音と共に身じろぎした。 「俺も、リトル以外は願い下げだ」 顔を上げたリトルと視線があい、笑う。互いの鼻先が触れ、息が二人の熱を共有する。 ただ、後悔はあった。 「しかし、情けないな俺も。自分から切り出すつもりが、リトルに言わせてしまうとは」 切り出す気があっても、逃げ腰だったのが現実。 「雑誌の受け売りですけど……女の子って、想いが強ければ強い程、男の人よりずっと大 きくなれるんですよ」 「確かに、今のリトルは俺の何倍も大きくみえるよ。いいのか? ヘタレな俺で」 わざとらしく、自分を謙らせて悪戯めいた笑いに頬が少し膨れる。ただ、その上目遣い はすぐに、惚けて潤み、蕩ける。 「私には……あなたしかいません。見えません。存在しません」 「ぅ……」 熱視線に気おされる。が、それが悪戯返しだとニヤけた表情に切り替わって理解した。 してやられたと、眉間に皺が寄る。 「そう言われたら、どうします?」 「押し倒して、今夜は寝させないぞ。まである」 「期待してます」 緊張感が無くなり、異常に負担をかけていた膝から力が抜ける。本棚に寄りかかって座 ると、リトルも俺に乗りかかる形で座った。優艶さ漂う吐息が、一寸先は俺の首と、暖か にくすぐってくる。 「私は……魔族です。正真正銘の悪魔です」 「知ってる」 知っているが、俺にとっては関係の無い事。魔族でも悪魔でも。 「でも、それ以前に女の子なんです」 「わかってる」 わかっているからこそ、種族なんて意識せず、俺は接してきた。 「女の子は、大好きな人の事を想うと──溶けちゃうんです。溶けて……大好きな人と同 じ色になっちゃうんです。わかって、頂けますか?」 「……俺の色はかなり酷いぞ。後悔するなよ」 「はい──」 顔を引き寄せ、今度は自分から押し付ける。リトルは拒まず、受け入れてくれた。微か に涙ぐんだ瞳で求めてくる目の前の女の子に激情をかられ、手が柔軟な肌の感触を欲し始 めて震えだす。 理性が本能に蝕まれていく。これが男の"さが"というものなのか── 首筋が、冷えた。とても、金属質な冷たさ。 「業務時間は過ぎました……が、何をしてるんでしょうか?」 紅魔館のメイド長がいた。 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/△ )_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 一ヶ月待った、と聞かされた。 俺もリトルも、互いに意識はしていたものの、主人の存在が壁になっていた。加えて持 病の喘息がここぞとばかりに表に出ず、好調だった。本来ならば喜ぶべき話だが、なんと も複雑な期間になってしまっていた。 更には、主人は俺の事を気に入ってくれていたようで、お陰で長期の図書館内業務を受 ける事ができた。そんな主人の俺に対する感情が、リトルにとっては焦燥感そのものだっ たらしい。そして主人の急な体調不良が引き金になった。なんとも、愛らしい話だ。 「──女性のいる前で、他の子を想い耽ってると嫌われるわよ?」 「むぉっ!? これは失礼しました」 館を、木々を、萌える若草を照らす太陽。涼しい風と穏やかな雲の流れ。外に足を向け るには絶好の日和。 「とりあえず、まだ準備に時間かかるようなので、ここで待ちます。メイド長はここにい て大丈夫なんですか?」 「あなた達二人を見送るのも仕事よ。一通りの人員管理も私の役目ですから」 紅魔館の正門前。外出を許されたリトルを待つ俺……と、メイド長。館の上層部が来て るとあってか、普段ボーっとしている門番も胸を張って仁王立ちしている。 「色々とやる事多くて大変ですね。お疲れ様です」 「そう思うなら、厄介事は増やさないでね」 笑顔だが、語気が強い。実直に頭を縦に振った。 「本来、職場恋愛は厳罰なんですから。お嬢様に毎日の感謝をお忘れなきよう」 「わかってますよ、命の恩人ですし」 「一言余計です」 「失礼」 メイド長に発見された後── 問答無用で蹴り飛ばされた俺は意識が吹っ飛び、そのまま無数のナイフに刺されて三途 の川に直行だったはずだが、リトルが本気で大弾投げて騒然となったらしい。翌日、俺の 意識が戻った後、メイド長に連行されて紅魔館当主から処罰を言い渡されたのだが、『そ の程度、目くじら立てる程ではないでしょう、好きになさい』と放任発言。さすがのメイ ド長も豆鉄砲を食らっていた。 そして、公にリトルの"お相手"として認められてはや数日。 図書館の主人は一向に調子が良くならず、今し方長い銀髪の女性が有名な薬剤師のもと へ連れて行くと、背負っていった。 俺とリトルも同行しようとしたのだが、『あんたら分の送迎が面倒だよ』と一蹴されて しまった。要するに、"ひま"が出てしまった。 「まぁ、たまの休みだから羽を延ばしていらっしゃい。お役目も忘れないようにね」 「了解しました」 当主直々から『お遊びついでに、リトルに館外の知識を見せて来なさい』と命令? を 受けて今に至る。『霧雨と博麗という女には近づかないように。いらぬ無駄知識しか増え ないわ。百害あって一利なし、よ』と釘も刺された。 大きく背伸びをして……見れば、はにかむ笑顔。 「お待たせしました。あの……変じゃ、ないですよね?」 「何言ってんだ。似合いすぎて言葉が見つからないぞ」 喜び、笑うリトル。外の眩しい日差しは、彼女の輝きと同化する。 黒き翼に純白のワンピース。白と黒のモノトーン調というのは、格好良くもあり、綺麗 でもあり、可愛くもある。語ろうとして語りきれるものではないだろう。 「行ってらっしゃい。道中、気をつけなさいよ」 「わかりました」 深々と頭を下げて一礼し、メイド長が館の奥へ消えていく。ここからは、二人の時間が 始まるんだと、手を差し伸べた。 「行こうか。丸々一日、遊び倒すぞ」 「はいっ」 勢い良く抱きついてきたリトルを回転しながら抱え上げ、大きく一歩を踏み出す。 遠くに見える木々が風でなびく。俺とリトルの出発に手を振って送ってくれた。 ──想うんだ、俺は。 黒い翼の天使がいてもいいんじゃないかと。なんつってな── 7スレ目913 ─────────────────────────────────────────────────────────── 小悪魔「はい、これが私との契約書です♪」 ○○ 「おう。」 小悪魔「本当に?本当に私が主側の契約でいいの?」 ○○ 「君はすでにパチェの従者だ…君と絆を作るには、 俺が君の従者になるしかない。」 小悪魔「う、嬉しい…」 (にこ…) ○○ 「で、何処にサインすればいいんだ?」 小悪魔「サインではなく…○○さん自身の血で血判を押してください。 ココに…レミリア様の認可印がありますね、その脇です。」 ○○ 「ここだな。」 俺はこのとき、契約書をよく読みもせずに、指を軽く噛み、自分の血をにじませて、 小悪魔のいわれるがままに血判を押してしまう。 (ぺたっ) 小悪魔「できたー♪」 これでめでたく、俺と小悪魔の主従関係契約が成立…したはずなのだが… ○○ 「おかしいな…何も変わった感じしないぞ…」 小悪魔「はい、だってこれ婚姻届ですから♪」 ○○ 「ぶっ」 小悪魔「悪魔との契約に期限も解約もありませんからねっ!幸せにしてくださいね!」 7スレ目 564 ─────────────────────────────────────────────────────────── 答え④ 小悪魔萌え 「っ……!!」 妙な夢を見ていた。 ルーミアにさんざん追っかけまわされた後―――― なすすべなくルーミアに捕まる夢や みすちーと風呂でコンサートを開く夢や えーりん総司令と一緒に永遠亭防衛軍で戦う夢 それにしても、えらくリアルな夢だった。 ……いや、本当にあれは夢だったのか? つーか、ここは……? 周囲を見回すと、分厚い本が何冊も詰まった数多くの本棚が目に入った。 何回か訪れたことのある風景。 紅魔館の図書館……? えーと…… や っ ぱ り 夢 か !? …… ……いや、違う。 改めて自分の体を見てみると服は泥だらけだし、体のあちこちに擦り傷が付いている。 ルーミアに追いかけまわされていたのは間違いがない。 そして、たぶん追い詰められていたとこも夢じゃない……あのあたりまでは、かなり記憶が鮮明だったから。 ただ、その後の記憶がひどく曖昧なのだ。 ともかく、ルーミアに追い詰められた俺が、今無事ってことは……誰かが助けてくれていたのか? そして、ふと床を見ると奇妙な形の文様が描かれている。 「これ……魔法陣?」 以前、黒白の泥棒魔女が俺に押し付けて行った魔法書の中に、これによく似た魔法陣があったのを覚えている。 確か……これ転移の魔法陣だっけか? ってことは、俺は転移魔法でここに連れて来られたのか? ……誰に? 「目が覚めましたか?」 暗闇から声が響く。 暗くてよくわからないが、このシルエットは……みすちー? だが、何かが違う。彼女は みすちーじゃない。 暗闇から、一人の少女が姿を現す。 あれ? この人は……確か…… 「君は…確か、小悪魔さんだっけ? この図書館の司書の」 以前、紅魔館に訪れた時に会ったことがある。 確か、この図書館の司書をしているはず。 いや、問題なのはそこじゃない もっと言うと、問題なのは彼女自身ですらなく、彼女が来ている服の方だった 小悪魔さんが……“みすちーの服”を着ていたのだから 紫がかった茶色で統一された衣服と奇妙な形の帽子。 うん、間違いなくみすちーの服だ。 ……Why? 「正直、何が起こっているのかわからない上に、何から聞いたらいいのかも わからないんだけど……」 「は、はい……」 「とりあえず質問は2つ! ① なんで、俺はここにいるの? ② なんで、小悪魔 さんは みすちーの恰好してるの? 以上ッ! 簡潔な答えを求むッ!」 ビシィ! という擬音が聞こえるような勢いで小悪魔を指差す。 それにしてもこの俺、ノリノリである。 「えっと……1つ目の答えは、私があなたを転送魔法で ここに移動させたからです」 やっぱり助けてくれたのは 小悪魔 だったのか。 うん、やっと一つ謎が解けたよ。 真実はいつも一つ! いや、それよりも助けてくれてありがとう 小悪魔! 「2つ目の…答えは……」 「うん」 「……」 「?」 「……私は……初めて会ったときから、あなたにずっと惹かれていました」 「え?」 ……惹かれてたっていうことは、つまり―――― ―――― 俺のことが好きってこと? でも、それなら何故みすちーの恰好を? 「でも……あなたがミスティアさんのことが好きだと聞いてしまって……」 「え?」 「あなたのこと、諦めなきゃいけないのに……頭ではわかっていても、どうしても諦めきれなくて……」 「……」 「せめて“ごっこ遊び”の中だけでも、あなたに愛されたかったんです……」 ああ……そうだったのか 彼女は、俺と気軽に話しているみすちーが羨ましくて、妬ましくて 「お願いです…ほんの一時だけでいいですから……」 混乱と苦悩の末に、小悪魔さん自身ではなく みすちーの姿を借りた『ごっこ遊び』の中だけでも愛されたいと願い 「私を ミスティアさんと思って、一緒にお話してくださいませんか…?」 そして、最終的に導き出されたのは 自分自身を否定する歪な手段だった。 だけれども、それは ただひたすら純粋な想いが込められた不器用な愛情表現 俺に向けられるそれが、すごく心地が良かった。 ……ん? いや、ちょっと待て。 彼女、『この前、俺がみすちーのことが好きだと“聞いた”』って言ったよね? ―――― 小悪魔さんは、一体 誰からその情報を仕入れたんだ? 「あのさ、一つ聞いていいかな?」 「は…はい……」 「さっき『この前、俺がみすちーのことが好きだと知った』って言ったけど、誰に聞いたの?」 「えっと……魔理沙さんです」 ―――― ま た あ い つ か ! あ の 超 ド ⑨ の 耳 年 増 ! ! つーか、なんでこうデタラメな情報ばかり伝えてるんだあいつは……文の新聞じゃあるまいし。 いい加減ここまで来ると耳年増に恨みでも買ってるんじゃないかと不安になってくる。 ……ん? 俺なんで、魔理沙のこと耳年増って呼んでるんだ? (青年思考中……) いくら考えても『魔理沙=耳年増』が繋がらないので、そのうち俺は考えるのをやめた。 そして、気付いてみれば、小悪魔さんは いよいよ不安そうな表情でこっちを見ている。 う……女の子のその不安そうな眼は卑怯ナリよ…… ……つーか、要するに、彼女は俺と仲良くなりたかっただけなんだろ? だったら話は早い。 「えっとね……とりあえず黒白の言ったことは全部デタラメだから信じないでいいよ。いや、むしろ信じるな」 「えっ?」 「でさ、俺 明日から一日に一回はここに来ることにした。だからさ、その時はここで いろいろお喋りしようよ、ね?」 みすちーの恰好をしたところで、小悪魔はみすちーにはなれない。 だけれども、小悪魔 は みすちー になる必要は全くない。 彼女は、俺のことをこんなにも想ってくれている可愛い女の子なのだから。 「っく……」 「……え?」 「ぐすっ……ふぇ……」 「ちょ……ちょっと!? なんで泣くのさ!?」 「どうして…?」 泣きじゃくりながら小悪魔は俺に問いかける。 「……どうして、ほとんどお話したこともない私なんかに……そんなに優しいんですか…?」 俺は、小悪魔の目を見つめながら優しく語りかける。 「俺のこと、そこまで強く想ってくれている 君と もっと仲良くなりたいからさ」 「――――……!!」 「うおっ!」 彼女が俺の胸に飛び込んでくる。 「ありがとう…ございます……私…幸せです……」 彼女が泣きやむまで胸を貸してあげることにした。 そして、数分後……彼女の嗚咽がようやく収まってきた頃を見計らい、彼女に声をかける。 「落ち着いた?」 「……はい」 「で、一つ聞きたいことがあるんだけど」 「は、はい……なんですか?」 「君の本当の名前……教えてくれないかな?」 今まで、彼女のことは小悪魔と呼んでいたが……さすがに『小悪魔』が本名とは思えない。 「私には…名前が無いんです」 ……? そういえば……悪魔の中には名前が無いものもいるとか聞いたことがある。 彼女も、その中の一人なのだろう。 しかし、『小悪魔』って名前もなんとなく呼びづらい……もっとも、そもそも『小悪魔』は名前ではないのだろうけれども。 そうして、しばし考えた後―――― ―――― リトル 「え?」 「“小”悪魔から『リトル』って名前をつけたんだけど……」 「…私の……名前?」 「そう、『リトル』……どうかな?」 「リトル……」 しばらく、彼女は何回か“リトル”という言葉を反芻する。 そして 「あの……リトルって、呼んでくださいませんか……?」 いや、その頬を紅く染めた上目遣いの視線と可愛らしい仕草のコンボは反則だ…… 「リトル」 「もっと…お願いします……」 「 リ ト ル 」 「も、もっと……」 ふと、俺は悪戯心も手伝って彼女の名前に『ある形容詞』をつけてみようと考える。 彼女がどんな反応を返すのか気になったから。 「 可 愛 い リ ト ル 」 「……!?」 お、大成功だ。 リトルは目をぱちくりさせてる そして、一瞬の後 ボ ン ! と擬音がつきそうなくらい派手に真っ赤に頬を染めるリトル。 いや~……かわいいなぁ。 って……あれ? 「……~~~~~~!!」 「ど…どうしたの?」 「あ……あなたのせいですからね…っ!」 彼女の言葉の後、俺は一瞬何が起きたのかわからなかった。 「ん……っ」 「……!?」 数秒後、気付いたのは彼女に押し倒されていたということ。 そして、彼女の柔らかく艶やかな唇に俺の唇が奪われているという事実のみ。 気持ちいい。 リトルの柔らかい唇はなおも俺の唇を貪ってくる。 意識までもが侵食される。 そうして、何十秒もの間俺の唇は彼女の唇に蹂躙された後―――― 「あなたが、あんな嬉しいこと言うから……もうっ、もう あなたへの想いを抑えられません…!!」」 長い口づけが終わった後に、彼女はこらえきれないように俺に言う。 そうして再び俺の唇が貪られる。 「ん……」 「!!??」 彼女が今まで貯め込み続け、満たされることのなかった俺への愛情が爆発していた。 そうして、何十分熱いキスを交わした後だったろうか…… き、気が済んだのかな……? 「私の心とカラダ……すべてをあなたに捧げます……」 そう言って、彼女は自分の服を肌蹴始めた。 ……全然済んでない と言うか、むしろ序章すら終わってなかった 俺は彼女の豹変に……僅かな恐怖と妙な期待がないまぜになった妙な感覚を味わっていた。 そんな俺に、妖しくて、それでいて天使のような笑顔とともに 美しい悪魔の囁きが紡がれる 「………だから、私のすべてを あなただけのものにしてくださいね…」 リトル Moe End『天使のようなー小悪魔の笑顔ーこの紅魔館に~(ry』 おまけ 「……そういえば、あの みすちーの服ってどっから手に入れたの?」 「え…ええと……その……」 「?」 香霖堂で買ったのだろうか? 正直、あの店はロケットランチャーですら置いてあるからな…… 「や、やっぱり……知りたいですか?」 「あ、ああ……」 なんだろう? えらく言いにくそうな顔をして…… 「じ、じゃあ……ちょっと ここで待っててください……」 「? ……いいよ?」 リトルは奥の部屋への扉を開けてその中へ入って行った。 正直、訳がわからなかったが俺は素直に待つことにする。 そして、彼女が奥の部屋に消えて1分かそこら経った頃…… 「ん――――――!!」 妙なうめき声……というか くぐもった叫び声が聞こえてきた。 それも、聞き覚えのある声……って、あれ? この声って……みすちー? 「みすちー?」 俺は扉を開けた。 「だ、ダメです!! 来ないでくだ――――」 そこに広がっていた光景は ―――― 「あ……」 「んっ…!?」 みすちーの服ではなく、いつもの服に着替えた リトル そして、下着だけしか身につけていない上に 縛られて猿轡をかまされたみすちーの姿だった。 (青年と少女 状況把握中……) そして―――― 「ん――――――ッ!!(や、やだあっ! 見ないでよおぉっ!!)」 「ブフゥ――ッ!!!」 冗談でも何でもなく鼻血吹いた。 ってか、みすちーを拉致して服剥ぎ取ったのかYO!! ヤバイこれ刺激が強すぎああああああああ!!! 「み、見ないでください」 リトルが俺の頭を抱きかかえる。 いや、言葉で書くとアレだが つまり要するに、俺の顔は彼女の胸の中にうずまってしまっていた。 「ちょ、リトル!?」 いやこれみすちーの下着姿は見えなくなったけど 正直こっちのほうが刺激が強いって!! ヤバイ リトルの胸が柔らかくてあああああああああ!! 「見ちゃだめですっ……」 それは、裸を見られるみすちーが恥ずかしいから見るな……というものではない。 自分以外の女性の裸を見せたくないという、独占欲からくるもの。 「ん――――――ッ!!(ちょ! 小悪魔ぁっ! その人は私の旦那様(になる予定)なんだからぁぁっ!!)」 俺の頭を胸に抱き、僅かに頬を赤く染めながら、微妙に勝ち誇った眼をみすちーに向けて 「こ、この人は……私だけのものですよ……」 かわいくて、大人しいけれど…… ――――やっぱり彼女は“小悪魔”だ うpろだ254 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○っ」 仕事中には聞き慣れない声に振り返ってみると。 「えへへ、来ちゃいました」 ちょっと体を傾かせて、上目遣いのこぁがいた。 後ろ手を組んで、微妙に前傾姿勢なのが妙に色っぽい。 「お前、仕事は?」 一応、聞いてみる。 まあ、ここにいる時点でサボりは決定なのだが。 「サボっちゃいました。 パチュリー様も、お仕事しないでイチャイチャしてるだけだから、 別にいいかな、って」 その言葉に苦笑する俺。 「おいおい、だからといって俺は仕事中なんだぞ」 「いいんです。 だって――、横であなたの顔があるだけで幸せですから」 俯いて赤面しながら言葉を紡ぐこぁ。 そんなこと言われたら、言い返せないじゃないか。 何となく気恥ずかしくて、俺も下を向いてしまう。 「おーい、○○ー! お前、そんな状態じゃろくに仕事できないでしょう? 今日はもうあがっていいから、ちゃんと彼女エスコートしてやんなさーい」 上司から声がかかる。 って、ええっ! 驚く俺に対し、周りの同僚が追い討ちをかける。 「ほら、早く行ってやんなさーい」 「結婚式には絶対呼んで頂戴ねー」 「いい娘なんだから、手を離しちゃだめよー」 四面楚歌。 同僚たちは、ニヤニヤしながらこちらを見ている。 そうだな。 せっかくだし、今日は目一杯楽しもうか。 「じゃあ、こぁ、行こうか」 「あ……、はいっ」 彼女がおずおずと差し出した手を繋ぎ、 多少、照れながらその場を立ち去る。 「あー、恥ずかしかった」 「でも、皆さんいい人みたいでよかったです」 「そりゃ、まあな。 ……まだ日は高いけど、どこか行こうか?」 「久しぶりに、お日さまを浴びたいです。 湖の方に行ってみませんか?」 「ああ、そうしようか」 「はい」 こぁは嬉しそうに笑うと、俺の頬に軽くキスをして手を離す。 それが、デート本番の俺たちの合図。 俺が軽く左腕を出すと、こぁは抱え込むように腕を絡める。 そして、2人で、日の差す玄関へと歩き始めた。 7スレ目878 ─────────────────────────────────────────────────────────── 1. 「だぁーーっ、また負けたぁ!」 「ふふふ……、私が早々簡単に負けるとお思いですか?」 「うううううう…………で、次の罰ゲームは何なんですかぁ……」 「う~ん、何にしましょうか。あ、そうだ、決めました」 「何ですかぁ? さっさと済ませて次のゲームしましょうよぉ」 「うふふ、そうですね。じゃあ、咲夜さんに、『パッドですか?』って訊いて来て下さい」 「うげっ、それはキツいなぁ……」 「じゃあ、やめましょう。○○さんの負けってことでいいですね?」 「う~、いやいや、やりますとも。やりますともさ」 「じゃあ、はい、いってらっしゃいです。薬箱は用意しておきます」 「……はい、いってきますぅ」 2. 「さくやさーーん!! さくやさんってパッドでsげふぅ!?」 3. 「あいたたた……」 「お疲れ様です。こっち来て脱いで下さい。薬塗りますから」 「はいぃ……。あのですねぇ、あんなことやらせないで下さいよ。 ほんと、死ぬかと思いましたよ」 「あはは、すみません。でも、罰ゲームは罰ゲームなんで」 「げっ、鬼だ」 「悪魔です」 「大体ですねぇ、なんでいっつも罰ゲームがこんな血が出るような痛いやつばっかりなんですかぁ?」 「んーとですね。……だってそうでもしないと○○さんは私のところに来てくれやしないし こうでもしないと私は○○さんの身体に触れることさえ叶わないんですよほんとパチュリー様が羨ましいなぁ」 「え? 何ていったんですかぁ?」 「○○さんが痛い目見るのが楽しいからって言ったんです」 「うげっ、悪魔だ」 「はい」 8スレ目 61 ─────────────────────────────────────────────────────────── どさっ ○「……小悪魔?」 嗚呼、そんな目で見ないで下さい 貴方にそんな目で見られるとますます我慢できなくなってしまいます ○「俺、なにか小悪魔の気に入らないことした?」 嗚呼、そんな声で私を呼ばないで下さい 貴方にそんな声で呼ばれると私は悲しくなって泣いてしまいそうです ○「こ、小悪魔!?本当に大丈夫か?」 小「私の、私の我侭なんです 貴方を誰にも取られたくない、お嬢様にも、妹様にも、咲夜さんにも、美鈴さんにも そして、パチュリー様にも 貴方の身も心もそして魂さえも私の物にしたい ただの醜い執着心です」 ○「…………」 ぎゅぅ 小「あ……」 ○「そんなに心配しなくても俺はもう小悪魔の物だよ 小悪魔が望むならそれこそ俺の全てを上げるよ」 小「○○さん……」 8スレ目 153 ─────────────────────────────────────────────────────────── 私はしがない妖精メイドなのですが、最近私の体調が優れないのです。 なぜ、図書館に入ると胸が苦しくなるのでしょう? なぜ、あの人が微笑みかけてくれると私は惚けてしまうのでしょう? あぁ、なぜ私は彼女の傍にいれないのだろう? 妖精程度では傍にいることさえ許されないのか? あなたのために高鳴り、喘ぐこの心臓を抉りだしてしまえればどれだけ楽になれるだろうか? 友人のチルノに相談したら、それは恋だと言われた。 よく解らなかったけど、熱い気持ちを何とかしたいと頼んだら凍らされた また、明日も会えるかな? 小悪魔さん 8スレ目 688 ─────────────────────────────────────────────────────────── 〇〇は親友のレミリアに捧げられた生け贄だ。 本来なら血を絞り、残った絞りカスの肉を飢えた妖怪の前に放り投げて嘲笑う。 ただ、それだけのはずだった。 だが、『使い捨てるより面白く使える玩具』とレミリアが言いだしたため今だに生きている。 「……その強運も今日まで? レミィに語る外界の話もネタ切れかしら」 「いや、生憎まだ若いんだ。死ぬ気はないよ……お、この小説いいな。今日の語りに使おう」 いつまで、〇〇は生きられるのか。 全ての権限はレミィの手の中にある。 話のネタなんてとっくに尽きていて、図書館に入り浸っていることだって既に知っている。 「必死に生きようとして藻掻く姿が可愛くて面白いのよ」 それがレミィの本音。 「パチュリー様、〇〇さん。お茶が入りました」 「こぁちゃんありがと!」 「ん、そこに置いて……………………こぁちゃん?」 小悪魔だからこぁ、単純すぎる。 あぁ〇〇が言うことやること全てが気に障る。 〇〇が次にどんな馬鹿をやるのか、考えるとおちおち本も集中して読めない。 「……っと、そろそろいかないとレミリア様に怒られちまう じゃあ、また明日な。 パチュリー」 「そうね、また明日」 あしたもまた、〇〇に振り回されるのか。 面倒臭い。 〇〇が置物なら横においておくんだけど。 「あ、〇〇さんを送ってきますね」 いってらっしゃい。 …… 「そうだわ小悪魔、アームストロングの資料は……」 残念、もう行ってしまったらしい だが、前に片付けのは小悪魔なので自分で探すのは骨が折れる。 仕方なく、〇〇と小悪魔を追い掛けた。 「――・……――!」 「…――……・・・」 話し声、どうやら間に合ったらしい。 「ねぇ小――」 わが目を疑った。 〇〇と小悪魔が包容し、口付けを交わしていたからだ。 「俺、今日も生き延びてみせるよ。だから…」 「あぁ、〇〇。恐ろしいことを口にしないで。 あなたが居なくなることを想像するだけで震えが止まらないんです」 「ごめんこぁちゃん。恐がらせてしまって」 「だったら、もう一回怖くなくなるおまじないをしてください」 「お安い御用さ」 二人は再び、かたい抱擁と口付けを交わした。 私はそのまま自室のベッドに潜り込み、訳もわからず泣いた。 〇〇と小悪魔が見舞いにきたが、気分が悪くなり、追い返した。 そして自分の本当の気持ちに気付き、声を殺して泣いた 最後に、全部お見通しだった親友にロイヤルフレアをぶちかました 9スレ目 999 ───────────────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/593.html
小悪魔10 大図書館の片隅で(Megalith 2011/05/22) 「〇〇さん、頼まれていた本ってこれでいいですか?」 「ああ、うん、ありがとう。そこに置いておいて」 小悪魔が抱えていた本の束が、机の上でどさりと重い音を立てる。 「助かるよ、こぁの手が空いていて本当に良かった」 このだだっ広い図書館で自分の望む本を見つけ出すなんて、考えただけでも目眩がする。 魔法使いに「なりたて」の〇〇には、パチュリーのような知識も小悪魔のような経験も不足している。望む情報がどの本に記載されているか、推測することも難しかった。 「いいんですよ、〇〇さんの書いた小説好きですし」 そう言って、小悪魔は〇〇の向かい側に腰を下ろす。 彼女の動きに合わせ、ふんわりと髪が揺れた。 「でも〇〇さんも不思議な人ですよね」 「どうして?」 「『書きたいものがありすぎて時間がない、だから魔法使いになろうと思う』なんて、普通の人は考えませんよ」 そんな馬鹿げた望みを叶えたのが小悪魔の主人であったりするのだが、その主人も〇〇が魔法使いになった途端に、〇〇の世話を小悪魔に丸投げしてきた。 当人曰く「彼が自分の使い魔を呼び出せるまで、手伝ってあげなさい」とのことだが、魔法使いになった〇〇が図書館に入り浸っていることが気になったのかもしれない。 〇〇は小説の資料を探し回っているだけだが、時折禁書にまで手を伸ばす悪癖がある。禁書は別箇に封印されているが、〇〇は何故かその封印を突破してしまう。 パチュリーが〇〇を危険人物と認定するまで、時間は掛からなかった。 「パチュリー様も〇〇さんの小説、楽しみにしているんですよ。本人は隠してますけど」 くすくすと笑う小悪魔に〇〇の頬が緩む。その名前とは裏腹に、心が暖かくなるような笑顔だと〇〇は思っていた。 「今度はどんな話ですか?」 机に身を乗り出す小悪魔。〇〇は苦笑して原稿用紙を隠した。 「まだ完成してないから、お預け」 「えー、お手伝いしてるんだから少しくらいいいじゃないですか」 「パチュリーだって執筆中の魔導書なんて中途半端なものを他人に見せたり預けたりはしないだろう? 同じことだよ」 「むー」 頬を膨らませてすとんと戻る小悪魔。〇〇は仕方がないな、と呟いて、机の下に置いてあった鞄から原稿用紙の束を取り出した。 「じゃあ、これを読んで感想を聞かせてくれないかな」 「いいですけど、これって新しい連載の原稿か何かですか?」 「連載……かな、続き物になるかどうかは、小悪魔の感想次第だけど」 〇〇が言うと、小悪魔は首を傾げながら原稿用紙を捲る。 そこには元人間の魔法使いが、とある図書館で司書を務める女性に想いを寄せる物語が綴られていた。 魔法使いと司書の思い出が続き、小悪魔はその内容に目を丸くする。 総て、〇〇と彼女が経験してきた思い出ばかりだった。 「あ、あの……」 「感想は、最後に纏めてお願いね。私はその間にこっちの原稿を書き上げるから」 「は、はい」 自分が贈った万年筆で原稿を書く〇〇の姿を振り切り、小悪魔は原稿用紙の中の世界に戻る。 様々な思い出の果てに、魔法使いが女性に愛を告白する場面で原稿は終わっていた。 続けようと思えば続けられる。ここでお終いにしようと思えばお終いにできる。そんな場面だった。 「――あの、読み終わりました」 小悪魔が言うと、〇〇が顔を上げた。 いつもと変わらない柔らかい表情で、じっと彼女を見詰める。 「で、どうかな」 どういう風に続けたらいいと思う、そう訊かれて、小悪魔は答えに窮した。 〇〇がどんな意図で答えを求めているのか、今更疑問に思う余地はない。 だから、彼女は顔を伏せ、ぼそぼそと答えた。 「……すごく、面白いと思います」 「そうかい、それは良かった。それで……」 〇〇は小悪魔の手を取り、再度同じ質問をした。 「此処から先、どういう風に続けたらいいと思う?」 小悪魔は、顔を真っ赤に染め、小さく呟いた。 「……二人が、一緒に幸せになるような、そんな続きが読みたいです」 「そうか、じゃあ……」 一緒に、作ってみようか。 〇〇の言葉に、小悪魔は小さく頷いた。 大図書館の片隅で その2(Megalith 2011/05/22) 「小悪魔、〇〇はどうしたの?」 ついこの間想いを交わして恋人同士になった〇〇と小悪魔。 しかし、パチュリーが知る限り、二人が恋人らしいことをしている場面に遭遇したことはない。 万が一図書館内で不純異性交遊でもしようものなら一言注意しなくては、と意気込んでいたパチュリーにしてみれば、拍子抜けもいいところだ。 「〇〇さんなら、永遠亭に取材だそうですよ」 パチュリーの読み終えた本を整理しながら、小悪魔が答える。 「何でも、日常生活で活用できる応急処置の方法を物語にして新聞に連載するそうです」 文さんの依頼だそうで、そう言って、小悪魔は本を抱えて飛び立った。ぱたぱたという音が遠ざかり、パチュリーは首を傾げる。 「……おかしい、わよね?」 付き合ったばかりの恋人というのは、こう人目も憚ることなく砂糖を撒き散らすものではないのか。 図書館が砂糖工場になることも覚悟していたというのに、本当に拍子抜けだ。 「はたてさんの新聞でも今度連載を始めるみたいですし、〇〇さん頑張ってますよね」 本を戻した小悪魔が、パチュリーの元に戻ってくる。 その表情は明るく、〇〇が世間に認められるのが本当に嬉しいらしい。 「でも、そんなことばかりしてると、あなたと会う時間も取れないんじゃない?」 「あ……! ちょうどそのことでパチュリー様にご相談したいことが」 「何かしら? 休暇でも欲しいの?」 これまでまともな休みもなかったことだし、一日二日ぐらいなら休みを与えても良いかもしれない。パチュリーはそんなことを考えていたが、しかし小悪魔の次の台詞に心底驚いた。 「今度紅魔館の敷地内に〇〇さんの屋敷を建てるんですけど、そちらから通ってもいいですか?」 「はっ!?」 パチュリーは驚きのあまり、持っていた分厚い本を取り落とす。小悪魔が慌ててそれを拾ったが、パチュリーはそれどころではない。 「パチュリー様? やはりダメでしょうか」 しょぼんと肩を落とす小悪魔に、パチュリーが震える声で問う。 「だ、ダメっていうか……レミィは……」 「妹様用の童話を書くことと、館内に貸し出し文庫を作ることで取引したそうです。お嬢様も〇〇さんのお話気に入ってくれたみたいで、今度自分をモデルにして一つ短編を書いてみなさいって」 「あ、あの子用の童話、ね……」 屋敷から出ることが難しい吸血鬼の妹にとって、暇を潰せる童話というのは存外貴重かもしれない。たとえ自分で書かなくても、香霖堂などで〇〇が選んだ童話を用意するだけでも退屈しのぎにはなるだろう。 レミリアにしても同じことで、長い時間を生きる彼女たちには「暇つぶし」ほど貴重なものはない。 屋敷内に邸宅を建てれば、色々注文も付けやすいと踏んだのだろう。 「で、あなたはそこから毎日通いたいと」 「はい、この間〇〇さんに誘われまして」 もう少し恋人の期間を楽しんだら、今度は新婚ですよーと嬉しそうに翼を揺らす小悪魔。 二人揃っている訳でもないのに、場の空気は大層な糖度であった。 「ええと、同棲ってことでいいの?」 「同棲というか、同居ですね。まだキスまでしかしてませんし、もっと進んだことは、今の関係を楽しんでからにしようって二人で決めたんです」 寿命の長い恋人同士、のんびりと愛を育もうということなのか。 パチュリーにとって、小悪魔の緩みきった笑顔は何ともいえない危険な匂いを感じさせた。 これから延々と、この甘ったるい空気を吸わなくてはならないのかと戦慄した。 喘息が悪化するどころか、糖尿病になりかねない。 「分かったわ……そうしなさい」 そうパチュリーが決断したのは、ある意味英断だった。 これ以降二人は小悪魔の仕事場である図書館でイチャイチャすることはなかったものの、それ以外の場所では文句も言えないくらい清い交際のまま、大量の砂糖を量産することになる。 ただ手を繋いでいるだけなのに何故か空気が桜色。会話しているだけなのに空気が甘く変化。執筆している〇〇を小悪魔が見守っているだけなのに、第三者は見ているだけで恥ずかしい。といった具合である。 「あ、〇〇さんがクッキーお土産に持ってきてくれたんですよ。お茶の時間ですし、用意しますね」 「……ええ、ありがとう」 ふわふわと笑う小悪魔がお茶の準備のために席を外すと、パチュリーは机に突っ伏した。 「……甘」 苦い紅茶が恋しかった。 うーん、甘さが足りない。もっと甘くする方法はないものか…… 大図書館の片隅で その3(Megalith 2011/05/22) 妖怪の山の上空を、三つの影が行く。 ひとりは白狼天狗の犬走椛、ひとりは魔法使い〇〇、最後のひとりは〇〇の恋人兼司書の小悪魔だ。 「今日はありがとう、椛」 「いえいえ、山のお客様の案内とあれば、哨戒天狗としては晴れのお役目です。むしろ指名してもらったのが不思議なくらいです」 いや、文に頼むと色々訊かれそうでね。そう言って〇〇が頭を掻くと、椛はそれもそうかと納得してしまった。 新聞記者としてのサガか、最近同居を始めた恋人同士の旅行などという美味しい場面で文が黙っていられるはずもない。 「一応はじめの方は監視が付きますけど、変なことしなければすぐに引き上げる予定ですので」 恋人同士の旅行を監視する事自体、あまり感心できるものではない。 ただ、山の秩序を維持するためには必要だと判断されたようだ。最初の方だけというのは、二人の身元が明確で、その目的もはっきりしているからだろう。 無論、実際に監視が解けるかどうかは、山の考え次第なのだが。 「十分だよ、本当にありがとう」 「ありがとうございます、椛さん」 「あっはは、いえいえ……」 椛は手を繋いで空を飛ぶ二人の様子に、たらりと冷や汗を流した。 初々しく、微笑ましいのだが、何とも身体が痒くなる光景だ。 「あ、見えてきましたよ」 二人の周囲に形成された甘ったるい空間から逃げ出すように、椛は先行して地上へと降りていく。 その後に続いた二人は、椛が手を振っている場所に降り立った。 「はあ、すごいですね……」 小悪魔が目を輝かせて見上げる先には、太陽の光を反射して輝く滝の姿。 この旅行に合わせて〇〇が手に入れてきた白いワンピースを翻し、小悪魔が滝に近づいていく。 「〇〇さーん、すごい音ですー!」 ごうごうという水の落下する音は、小悪魔の声を幾分か遮っている。しかし彼女の楽しそうな表情を見てみれば、何を言っているのか大凡の見当はついた。 「楽しそうだなぁ、良かった良かった」 「そうですね。気に入っていただけて良かったです」 手を振る小悪魔に応える〇〇。その隣でほっとしたように溜息を漏らし、椛は微笑んだ。 「一応、滞在は今日の夕刻までというお話でしたが」 「うん、私も彼女も仕事があるからね。日帰りという形にしたんだ」 〇〇の言葉に、椛は少しだけ意外そうな顔を見せた。 この二人のイチャつき振りは妖怪の山にも伝わっており、もしかしたら一泊していくかもしれないと山の方でも考えていたのだ。 「お弁当を持ってどこかに出掛けるだけでも十分楽しいからね。こぁの作るお弁当が楽しみで、昨日は寝られなかったよ」 ははは、と笑う〇〇の様子に、椛は全身が痒くなった。 これ以上ここにいたら、砂糖を吐きそうだ。 「では、夕刻になりましたらお迎えに上がります」 「分かった、よろしく」 「はい」 椛は小悪魔に手を振りながら、その場を飛び去った。 その表情が少しほっとしていたのは、おそらく気のせいではないだろう。 「こぁ、あまり近付くと水しぶきで濡れてしまう」 「大丈夫ですよ、濡れたってそう簡単に風邪を引いたりしませんから」 滝壺の上をぐるぐると回りながら、小悪魔が笑う。 〇〇はその様子に苦笑しながら、今自分が見ている場面を記録に残そうと手帳を取り出した。 「あ、お魚がいますよ!」 「釣具は持ってきてないんだ、魚も山の資源だからね」 「あ、それもそうですね」 川の中を泳ぐ魚を追い掛けながら、小悪魔は納得したように頷いた。 妖怪の山を管理している天狗たちに許可を得ない限り、そこで魚や山菜を取ることは出来ない。 人里の人間たちが山の外縁すれすれで少し手に入れるくらいなら問題はないだろうが、一応紅魔館の関係者である二人が妖怪の山で好き勝手な行動を取ることは出来ない。 「ほら、虹ですよ!」 小悪魔がそう言い、滝壺の上に掛かった虹を指し示す。 〇〇はその虹と小悪魔を一つの絵として捉え、感嘆の溜息を漏らした。 「綺麗だ」 「ええ、本当に綺麗です」 小悪魔は〇〇の本心に気付かないまま、うっとりとした表情で虹を見上げる。 〇〇はそんな小悪魔の姿に釘付けになり、万年筆を動かす手はピクリとも動かない。 「〇〇さん?」 ふわりと自分の目の前に小悪魔が降りてきても、〇〇はその顔を見てじっと黙り込んだままだ。 不思議そうに首をかしげた小悪魔が〇〇の顔に手を伸ばすと、その腕が少し強い力で捕らえられた。 「ま、〇〇さん?」 「あ、ごめん」 〇〇は小悪魔に謝ったが、掴んだ手はそのままだ。 困惑する小悪魔を余所に、〇〇はその身体をぐいと引き寄せた。 「あ、あの……」 「……綺麗だったから、捕まえてみたくなった」 「え?」 〇〇の言葉に、小悪魔の動きが止まる。 短い言葉の中に、万感の思いが込められていた。 「こぁを捕まえていたい、本気でそう思った」 「〇〇さん……」 小悪魔が怖ず怖ずと〇〇の背中に手を伸ばす。 すると、彼女を捕まえている〇〇の腕が、さらに強くその身体を抱き締めた。 「独占欲かな」 「だったら、嬉しいです」 「そうかい?」 「ええ、だって〇〇さんもわたしと同じ気持ちだったってことですから」 小悪魔の嬉しそうな声に、〇〇は少しだけ力を抜いた。強く抱き締めていなくても、小悪魔は逃げ出したりしない。 「ずっと一緒だといいなぁ」 「はい、ずっと一緒だといいですね」 そう口に出しつつも、二人はお互いの居ない未来など考えられなかった。 それは希望というよりも欲望に近いものだったが、二人はそれを「幸せ」だと思っていた。 勢い以外の甘さを目指してみた。だが、まだまだ技量不足だった。 大図書館の片隅で その4(Megalith 2011/05/23) パチュリーは自らの使い魔が休憩中に胸元から首飾りを取り出し、それを嬉しそうな表情で見つめていることに気付いた。 ごくごく簡素な意匠の首飾り。小さな無色の宝石とそれを支える台座で形作られたそれは、小さくも精緻な細工が施されている。 「小悪魔、それはどうしたの?」 魔力を感じないことから魔導具の類ではないのだろう。しかし、少なくとも自分は使い魔にこんな首飾りを与えた記憶はない。 となると、自ずと答えは明らかになるのだが、パチュリーとしては誰から贈られたものかよりも、何故贈られたかの方が気になった。最近使い魔とその恋人の記念日があったとは聞いていない。 「〇〇さんから頂いたんですよ、パチュリー様」 「それは分かるけど、何か記念日でもあったかしら?」 小悪魔の誕生日はまだ随分先で、付き合って何年何ヶ月という記念日でもない。 「違いますよ」 「じゃあ、どうしたの?」 何か小悪魔を怒らせるようなことでもして、その埋め合わせなのかとも思ったが、それにしては贈られた側の機嫌が良すぎる。 「うーん、わたしもよく分からないんですけど、〇〇さんのお母様が……」 「え!? あなた〇〇のご両親と会ったの?」 「違いますよー、〇〇さんのお母様が昔お父様に貰ったものらしいです。好きな人が出来たら渡しなさいって言われてたみたいで、昨日寝る前に頂きました」 昨日整理した荷物の中から出てきたそうです。そんな小悪魔の言葉にパチュリーは何とも言えない表情になった。 理由としては納得できないものではないが、それなら何かの記念日に渡す方が良いのではないだろうか。 そもそも記念日というのものはそれ自体が魔力を持っている。その日に最適な行動を取ることで運命が拓けたり、幸運を招き寄せることが出来る。 〇〇は魔法使いとしては未熟だが、それくらいの知識はある筈だ。 「〇〇も、もう少し色々考える癖をつけた方がいいかもしれないわね」 「あはは、本人も同じようなこと言ってました。自分はどうにも考えが浅いって」 「……自覚があるなら、もう少し努力すればいいのに」 パチュリーは溜息を吐き、抱えた本の頁を捲る。 「〇〇さんですから」 それで総ては問題ない、というような小悪魔の表情に、パチュリーは思わず目付きが怪しくなる。 恋は盲目と言うが、余りにも恋人を好意的に見過ぎてはいないだろうか。 〇〇は小悪魔を大事にしているが、傍目からは少し自分の時間に重きを置き過ぎている。物語を書くことは〇〇の生きる目的であるからとやかく言うつもりはないが、もう少し小悪魔との時間を作るべきではないか。 「ねえ小悪魔、〇〇とはどんなことをして過ごしているの?」 「何ですか、パチュリー様も誰か好きな人が出来たんですか」 「そうじゃないわ、そもそも〇〇以外にこの図書館に来る男なんて、香霖堂の店主くらいなものよ」 「それもそうですね、でも、どんなことと言われても……」 一緒に朝御飯を食べ、小悪魔が図書館に出勤すれば〇〇も仕事を始め、小悪魔が帰宅すれば〇〇と一緒に夕食の準備、夕食が終われば晩酌という日もあるが、基本的には〇〇の書いた原稿を読んで感想を伝え、一緒に入浴して眠る。 「それだけですよー?」 「……ちょっと待ちなさい、お風呂って一緒に入っているの?」 ぴ、と手を挙げ、パチュリーが確認する。 小悪魔が、小首を傾げた。 「え? 恋人ってそういうものじゃないんですか?」 「違うとも言い切れないけど、そういう如何わしいことはまだしないんじゃないの?」 「如何わしいことなんてしてませんよ、背中流し合いっこしてるだけです。それに、お風呂は一度に入った方が使う燃料が少なくて済むんですよ」 主婦の知恵です、と形の良い胸を張る小悪魔。 最近香霖堂で主婦の強い味方な雑誌を買い集めているらしい。 「おいしい料理とか、裁縫のやり方とか、お庭の手入れの仕方とか、咲夜さんとか冥界の庭師さんとかに色々教えてもらってます」 家計簿までしっかりとつけている小悪魔。いつの間にか主婦技能が向上している。 「〇〇さんも喜んでくれますし、何よりも一緒に暮らしてるって感じがして楽しいです」 小悪魔がにこにこしながら今日の献立と書かれた紙をパチュリーに示す。 今晩は和食だった。 「〇〇さんも人里で良い夫婦関係とは何かを訊いて回っているって、この間慧音さんが教えてくれました」 仲が良くて結構なことだ、と苦笑しながらではあったが。 「なんていうか、本人よりも、周りの人が〇〇さんの気持ちを教えてくれるんです」 〇〇が何を思っているのか、何をしているのか、小悪魔をどれだけ大切に思っているのか、本人が時折物語という形で伝えるそれを、小悪魔は日々の生活の中で感じている。 「人里に買い物に行ったら、お店の人がわたしの好物を知ってるんです。〇〇さんがすごく優しい顔で『これ、こぁが好きなんです』って言うから、店の人も憶えてくれてたみたいで」 ふわりと笑い、小悪魔は首飾りを両手で包み込んだ。 「言葉じゃなくて、他のもので想いが伝わるって嬉しいことですよね」 小悪魔も、料理や裁縫、庭で育てている花に〇〇への想いを預けている。 「〇〇さんはあまり言葉数が多い人じゃないですけど、わたしはそんな〇〇さんが好きです」 「そう……」 パチュリーは、小悪魔の様子に深々と息を漏らした。 何とも幸せそうで、見ているだけで笑みが浮かんでくる。 「じゃあ今度、小悪魔が〇〇を好きだって言ってたこと、伝えなくちゃね」 「えー、それはちょっと恥ずかしいです」 「一緒にお風呂入ってるのに、恥ずかしいもないでしょう」 「それとこれとは違いますー」 照れたように頬を染めた小悪魔をいなしながら、パチュリーは自分ももう少し勉強した方がいいかもしれないと思った。 人と人の繋がりは、どうやらどれだけ分厚い辞書でも説明しきれないようだ。 どうやら自分は、パチュリーと小悪魔のコンビが好きらしい。
https://w.atwiki.jp/tamakagura/pages/25.html
コダマ名 HP 攻撃 防御 特攻 特防 速度 合計 属性1 属性2 攻撃属性 弱点 耐性 スキル1 スキル2 必要アイテム ここあ 85 20 55 80 70 50 360 理 - 理水闇 虫霊闇 闘理 大図書館の司書 - 小悪魔カード T小悪魔 105 30 85 110 90 80 500 理 炎 理炎水闇 地岩霊水闇 樹闘鋼氷理炎 大図書館の司書 リトルネザーデーモン 技の霊珠 H小悪魔 105 30 80 100 90 95 500 理 風 理風水闇炎 岩霊雷氷闇 樹理闘地 大図書館の司書 リトルネザーデーモン 祝福の霊珠 D小悪魔 120 30 105 85 110 50 500 理 闇 理闇水炎 虫 理 大図書館の司書 リトルネザーデーモン 守の霊珠 S小悪魔 105 30 75 100 80 110 500 理 鋼 理鋼水闇炎 地炎 無樹風岩鋼氷神理毒 大図書館の司書 リトルネザーデーモン 疾風の霊珠 ※太文字のみは禁呪、青文字は属性一致、赤文字は重複弱点、緑文字は重複耐性、灰色は無効、(括弧内)はスキル効果あり ここあ T小悪魔 H小悪魔 D小悪魔 S小悪魔 スキル 1.大図書館の司書 戦闘中のコダマの能力値が5%上昇します。 2.リトルネザーデーモン 自分が状態異常になると、相手にも同じ状態異常を引き起こします。 スペル スペル名 属性 分類 威力 命中 消費 詳細 ここあ T小悪魔 H小悪魔 D小悪魔 S小悪魔 カラードボール 理 特殊 60 100 0 30%の確率で、相手の特防を1段階下げます。 初期 初期 初期 初期 初期 フラッドレッドカーペット 水 特殊 80 100 10 30%の確率で、相手の命中を1段階下げます。 15 15 15 15 15 デモンズパッション 闇 特殊 90 100 20 20%の確率で、相手を混乱させます。 20 20 20 - 20 ナイトエンプーサ 闇 特殊 90 100 20 相手の攻撃、特攻を1段階下げます。 - - - 20 - ダークサイドルミナリー 理 特殊 100 100 20 30%の確率で、相手の命中を1段階下げます。 レンタル限定 30 30 35 30 ストロベリーカクテル 炎 特殊 90 100 20 20%の確率で、相手を火傷させます。 - - - 30 40 ルビータブレット 炎 特殊 100 100 20 相手の装備を2つ同時に無効化します。 - 35 40 - - エレメンタルリゾネント 風 特殊 100 100 20 相手のスキルを2つ同時に無効化します。 - - 35 - - マーキュリカルレガシー 鋼 特殊 100 100 25 20%の確率で、相手を猛毒にします。 - - - - 35 ファシネイションピューピル 闇 変化 - 200 5 相手を混乱させます。 - 40 - - - マギア・ルナロッサ 岩 変化 - 200 0 変化分類のスペルの使用を禁止します。効果は相手が交代するまで継続します。 - - - 40 60 ビロードカーテン 理 変化 - - 20 5ターンの間、物理攻撃のダメージを半減します。交代しても効果は継続します。 - 60 60 60 - シャドウキューブ 闇 特殊 - 100 20 後攻になります。相手が特殊攻撃を仕掛けてきた場合、受けたダメージの2倍のダメージを与えます。属性、スキル、アイテムなどでダメージが変動しません。 - 禁呪 禁呪 禁呪 - 小悪魔のトリル 闇 変化 - 100 20 自分のHPと相手のHPを足し合わせて、半々に分けます。ただし相手の最大HPが自分の最大HPの3倍以上の場合は効果がありません。 - - - - 禁呪 カード効果 アイテム名 装備時効果 契約コダマ 入手(金額) 備考 小悪魔カード 理属性スペルで与えるダメージが20%上昇します。 ここあ 紅魔印の福袋美月堂(2,000,000)
https://w.atwiki.jp/tokimekicn/pages/1266.html
【哇,超糟糕……你这个样子完全是犯规啊!】 登场条件 告白条件告白基本条件 结局种类(单人) 称呼方法 推荐的约会地点(可以触发○以上的评价。粗体字为◎) 服装喜好 礼物 特殊事件CG事件(这里是全部的单人CG,三人CG请见三角关系攻略) 特别事件(无CG) ADV 注意要点通常注意要点 回收注意要点 相关页面 登场条件 满足下列条件之一即会登场。 第2年4月5日~第3年2月28日,流行达到规定值,平日执行「阅读杂志」指令后登场规定值:3人以下流行67;4人以上流行80。从第2年6月起,在此基础上每过一个月+1。 主人公去便利店•哈罗轩打工,第一天报道时即可认识。 第1年只身一人外出时看过特殊事件「搭讪小哥」「被搭讪小哥救了」「搭讪小哥的另一面」中的至少一个,则第2年4月5日一定会出现。 告白条件 告白基本条件 数值要求 流行 200以上 学力 150以上 好感度 「喜欢」以上 伤心度 230以下 约会次数 5回以上 ※约会次数达到40,要求数值下限-20;好感度达到心跳,要求数值下限-20。两者可累加(最大-40)。 结局种类(单人) 告白ED ED1:没有达到结局优先顺位前段的ED条件的情况下,满足告白基本条件 ED2:看过不二山的三角关系模式「败北宣言」,满足告白基本条件中数值的50% 亲友告白ED 新名是亲友爱情状态(在亲友成立事件中选择「好好说清楚」,且发生过「恋心爆发事件」)。 满足亲友成立事件中,炮灰的告白条件。 亲友抢人告白: 毕业典礼当天,新名的好感界面中,粉色心在黄色心之上,亲密度400以上,达到心跳状态。 亲友告白: 毕业典礼当天,新名的好感界面中,粉色心在黄色心之上,亲密度300~399。 拒绝炮灰的告白。 ※两者在内容上没有区别,都登在一个格子里。 亲友ED 新名是亲友状态。 在成为亲友后约会3次以上。 没有满足通常告白结局的条件的角色。 没有达到结局优先顺位前段的ED条件。 称呼方法 无论何时都OK 新名君(新名くん)、妮娜(ニーナ) 友好以上就OK 旬(ジュン)、旬平 喜欢以上就OK 旬平君(旬平くん)、阿平(ペー) 阿平酱(ペーちゃん) 绝对NG 小旬旬(ジュンちゃん)、新名同学(新名さん) 强烈建议在好感度高的时候,尤其是PSP版的天使•小恶魔状态下,存档试试看NG的称呼 称呼方法会保留到ADV模式中 写成妮娜是笔者恶趣味,如不合适请在留言板提醒我…… + 对主人公的称呼变更 对主人公的称呼变更 友好以下 名+さん 喜欢以上 名+ちゃん 以小波美奈子作例,友好以下是美奈子姐,喜欢以上就是小美奈子。 推荐的约会地点(可以触发○以上的评价。粗体字为◎) 地区 地点 项目 繁华街地区 商店街 逛街 电影院 丽萨魔术师2,HEAVY METAL COBRA,拥抱的季节,Red Racer 7000,切尔西的烦恼,流冰物语~迷路的海豹~ Live House 摇滚演出 保龄馆 保龄球,飞镖 游戏中心 街机游戏 卡拉OK 唱卡拉OK 临海公园地区 购物中心 逛街,美食广场 会展中心 尖顶Boz,搞笑巨人,TRAN-SPARK 临海公园 防波堤 水族馆 海豚表演 海 海水浴,海边散步 烟花大会 烟花大会 森林公园地区 公园大道 逛街 自由市场 逛街 博物馆 宝石展 森林公园 赏花,喷水池,林间路(冬) 室内泳池 游泳 滑冰场 滑冰 振翅山地区 振翅山 滑雪 游乐场 旋转木马,卡丁车,花车巡游 动物园 通常,猫狗屋,羊驼牧场 特殊的地点 男生家 新名的房间 服装喜好 服装属性 初期评价 初期点数 性感 ◎ 255 可爱 ○ 140 鲜艳•轻便•时髦 △ 80 自然 × 0 喜欢的组合属性:小恶魔 喜欢的颜色:粉红色 礼物 可赠送的生日礼物(DS版) ◎ △ ×× 第2年 炫酷风零钱包 日本温泉入浴剂组 标准日语用法 第3年 手工用银黏土 防静电宽梳 HOW TO 接近女人心的方法 可赠送的生日礼物(psp版) 参见攻略•心跳回忆GS3中「PSP版生日礼物喜好表」一节 可赠送的圣诞礼物 1元 10元 ◎ 闪闪发光的手机链 奢华熔岩灯 ○ 带LED灯的钥匙链,玩具特雷明琴 圣诞花环,古董收音机 △ 发车旋律的闹钟,羊驼毛绒玩具 高级蛋白饮料,沙画 × 盛满零食的圣诞靴 1/144振翅城模型 + 送给主人公的礼物 送给主人公的礼物 圣诞节 第2年 亮闪闪修指甲套装 第3年 新艺术风格的迷你型装饰艺术灯具 生日礼物 白色情人节回礼 第1次 设计风格的小手包(流行+5,魅力+5) 带八音盒的亮闪闪旋转木马(流行+10,压力-5) 第2次 玫瑰石英项绳(约会时可佩戴) - 评价在「喜欢」以上时,会优先收到饰品。 特殊事件 CG事件(这里是全部的单人CG,三人CG请见三角关系攻略) 类别 事件名称 发生时期 评价 其他条件相关 学校 扫除中 第2年后夏 普通以上 好感达到后即会发生 闯入补习 第2年后冬服 喜欢以上 期末考试挂科后补习 我的女朋友 第3年10月29日~11月11日 普通限定 好感达到后即会发生,新名不属于柔道部 修学旅行 第3年9月14日 喜欢以上 好感达到后即会发生 逼近的新名 第2年2月~第3年4月的假日 喜欢以上好感大于不二山 新名属于柔道部,执行柔道部指令 学园话剧 第3年文化祭 友好以上 好感度第1位,参与学园话剧,文化祭准备成功 咖啡馆(冬服) 平日 无 放学时约去咖啡馆 咖啡馆(夏服) 平日 无 放学时约去咖啡馆 令人意外的兴趣 第2年后春赏花 喜欢以上 去森林公园(赏花期)约会,已经在追加约会或咖啡馆聊天中问过「询问兴趣相关」 约会 消毒伤口 第2年后夏 友好限定 去海水浴约会 万圣节 第2年10月31日或第3年10月30日 喜欢以上 去游乐场约会 滑板跳 第2年后冬 普通or友好 先前在滑雪场约过一次 憧憬的模特 第2年4月~第3年2月 友好以上 好感达到后即会发生 在游览船上 第1年冬假日 - 看过特别事件「搭讪小哥的另一面」,执行外出指令 打工时的事情 第2年后的打工日 友好以上 在「便利店」打工,打工经验值10以上 圣诞节 第3年圣诞事件 喜欢以上 好感度第1位 卡拉OK 第2年后 普通限定 流行80以上第1年没和新名见过面,新名是在打工中或者主人公数值达到要求后出场的首次去卡拉OK约会时发生没进入三角关系争执状态有四个季节服装的版本,也就是说该事件有4张CG 发型模特 第2年后 友好以上 魅力100以上和新名见过15次面以上没进入三角关系争执状态 告白1 毕业典礼 喜欢以上 通常告白ED1、ED2或亲友告白ED4 告白 告白1 毕业典礼 喜欢以上 通常告白ED1、ED2或亲友告白ED4 在约定的教堂 毕业典礼 喜欢以上 通常告白ED1或ED2,接受告白 夕阳映照下的教室 毕业典礼 - 亲友告白ED4,接受告白 之后…… 职员表之后 - 通常告白ED1、ED2或亲友告白ED4,接受告白 特别事件(无CG) 待续 ADV |ADV在内容上是和游戏本篇互动的,但性质和游戏本篇是独立的,不会影响角色好感度,触发过一次就不会消失 - 标题 触发条件 DS原有 有其父必有其子 被新名邀请到家中作客后 以人为鉴,走你 见过特殊事件「要不要翘掉打工看电影啊?」 圈套之岚 见过不二山的ADV「笑容的有效应用」 春夏秋冬 见过不二山 新名的三人CG事件「交接」 怡然自乐乃座右铭是也 第1年把新名的相关事件都看完的前提下,第2年新名入学后 妹子现在,在想啥 第2年修学旅行时接到过新名的电话(评价喜欢以上),第3年新名去修学旅行 月与太阳 见过特殊事件「不二山VS新名」,三角关系中新名比不二山更接近主人公 也不赖嘛青春啥的 主人公是柔道部经理,第2年9月1日~11月30日期间的周日执行柔道部指令 让我听听你的声音 见过「要不要翘掉打工看电影啊?」「犯大错了」「被交代带新人」全部三个时间。评价喜欢以上 我的她是友人 好友爱情状态下,放学后一起去咖啡馆 值得拥有之物 见过新名的CG事件「扫除中」,主人公第1年见过新名 PSP新增 啊真是,恋爱什么的 见过新名的CG事件「闯入补习」 为她神魂颠倒 见过新名的CG事件「卡拉OK」,开出一张即可 于是南瓜得儿意地笑了 见过新名的CG事件「万圣节」 心理阴影 约新名去过鬼屋以及振翅城,新名评价在喜欢以上 ※请原谅笔者的丧病 注意要点 通常注意要点 出场时好感度就很高,放学时即便评价普通也会主动邀请主人公一同放学。 不喜欢去的地方很少,连看电影这种好恶分明的活动都涉猎颇广。 除了学力和流行之外别的都不看,相当容易。 在第1年见过他随后他自动出场的情况下,结局告白主人公可以拒绝一次看他的反应。 回收注意要点 这才是重中之重…… 看过上文条件的没有全部回收齐新名事件与ADV的人一定会有什么想法吧。 新名的CG还有ADV的条件都相当古灵精怪,一周就用正常手段全收集齐压根不可能。 因为新名的攻略是分「通常」和「柔道部」两条路线的,和不二山不一样的是,他的通常路线的内容也很充实,其中最明显的例子就是翘班看电影以及系列后续, 这个事件发生在夏秋两季,只要去超市打工一段日子基本上都会发生。 (待续) 相关页面 新名旬平 三角攻略(不二山•新名)
https://w.atwiki.jp/cimnptvy1156/pages/331.html
【名前】 小悪魔 【コード】 5115-6536-0009(スペシャルプライスDS) 【レート】 2424 (11月24日現在) 【種類】 なんでも 【時間帯】 コメント欄にいえばいつでも 【募集】 19時から1時間程度募集しています。参加ヨロです。 【一言】 素人ですががんばります。 ↓これが僕の掲示板です http //6238.teacup.com/koakuma/bbs