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ポケットモンスターよりNO,425のフワンテを召喚 風船の使い魔-01 風船の使い魔-02 風船の使い魔-03 風船の使い魔-04
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59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 10 49 36.67 ID cGgoc351O ゼロの使い魔 使い魔が一匹もおらず仕方ないので自分でなんとかしました 837 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 08 42 40.07 ID ISV9IunIO 59 使い魔であるピンク髪の女の子が「良いわね?行くわよ」の掛け声と共にイヤリング爆弾で敵を葬り去る まだみぬご主人様を探すために 160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 12 08 06.22 ID d1uPUwgO0 ゼロの使い魔 ツンデレ幼女魔法使いに召還された使い魔がメイドといちゃいちゃしつつ長門にちょっかいをかける話 そしてそれをツンデレ幼女にやきもちやかれる 269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 13 28 28.26 ID PV6UskiYO ゼロの使い魔 ゼロと呼ばれる天才魔術士が黒魔術に手を出し、ルイズという悪魔を使い魔とした。 しかし不幸な偶然が重なり舞台を変えてギャンブルで争いあうことに… 321 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 14 03 34.55 ID +YuxCU8M0 ゼロのつかいま ロックマンの続編 354 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 14 29 59.13 ID +/W8V6y8O ゼロの使い魔ってどんな話? 359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 14 36 14.26 ID uZ0I99qB0 354 ゼロの使い魔 トリステイン王国に恨みを持つ少年、主人公ルルーシュ・ランペルージは謎の少女ルイズから、武器を自在に扱える力「ギアス」を与えられることになる。ルルーシュは仮面で素顔を隠して「ゼロ」と名乗り 自称正義の味方「ハルケギニア」を結成し、トリステイン王国に戦いを挑む。 361 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 14 36 51.71 ID OvnsEnhz0 359 混ぜるな危険 362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 14 38 05.51 ID +/W8V6y8O 359 まんまギアスじゃねーかw 367 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 14 40 12.25 ID Spl9UEq/O 354 ゼロの使い魔 魔法大学に通う青年・ゼロが主人公。 ある雨の振る日、一人の美少女が道端で倒れているのを助ける。 そしてその美少女は、元マスターに捨てられたために行き倒れになっていた低級使い魔だった。 美少女使い魔とゼロの奇妙な同居生活を描いたドタバタ恋愛学園コメディ。 373 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 14 42 41.43 ID +/W8V6y8O 367-368 ちょっと面白そうだな 368 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 14 40 37.29 ID 2mXwYkvq0 354 ありふれた日常を打ち崩す光が空から降り注いだ その時、突如ゼロ次元から現れた神の使い魔「ゼクス」 高校生の主人公とヒロインはゼクスにある”力”を与えられる 使い魔はこの混沌とした世界を救う救世主か? はたまた終末をもたらす悪魔なのか? カタストロフラブストーリー 371 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/30(水) 14 42 14.36 ID 1TGAHhyd0 354 ゼロの使い魔 コードギアス1期と2期(R2)を繋ぐ作品。 ブラックリベリオンの後、バラバラになった黒の騎士団を再建すべく黒の騎士団の一般兵士だった主人公は「ファミリア」と名乗りゼロの意思を継ぐ為に戦う。 ちなみにR2で最初にゼロを庇って死んだのがファミリアだったがその事実はあまり知られていないようだ・・・。 375 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 14 43 54.67 ID +/W8V6y8O 371 またギアスかよwww 750 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 22 52 56.11 ID JX9a05j60 745 昔はマジでNHKに入社したりNHKの仕事を紹介したりするマンガだと思ってた ゼロの使い魔 天才数学者が数の悪魔「ゼロ」と戦う物語 753 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 22 55 41.39 ID N3FN0yeC0 ゼロの使い魔 コードギアスのスピンオフ作品 481 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 15 56 41.17 ID UNy/vdZ6O ストーリーっていうかイメージ ルイズフランソワーズ・ル・ド・ラ・ブァリエール 主人公の名前が長い とにかくかわいいらしい 多分外人 ルイズルイズルイズ!!!!くんかくんかくんかくんか!!!!!と、よく言われる VIPで毎日スレが立つほど大人気 可愛い
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最後の机を運び終えて、リキエルは息をついた。 時間は、昼休みまで一時間あまりといったところだった。リキエルがルイズに言ったように、そう時間はかからなかったことになる。 無論、リキエルは手抜きなどはしていない。爆発によるクレーターは如何ともし難かったが、その瓦礫はルイズがいる間に片付け終わっている。掃き掃除も、細かい塵は残っているかもしれないが、もともと綺麗なわけでもない教室なので、ざっと見ただけではわからないだろう。 新しい窓ガラスは、教室に運び入れたそのままで放置してあった。どうやって窓にはめ込むものか、リキエルにはわからなかったのである。何かしらのノウハウが必要なのかも知れず、あるいはメイジの仕事なのだろうとリキエルは思った。 ひとまず、これで仕事は終わりだった。御役御免というわけだ。 しかし、リキエルが教室から出て行く気配はなかった。自分で運び入れた椅子の一つに座り込んで、所在無げに鼻の頭をかいている。その姿は、先ほどのルイズに似ているようで、少し違った。 ルイズはずぶずぶと沈み込むようで、何かを堪えるようにジッと座っていた。対してリキエルは、根を生やしたように動かないのは同じだが、どこか虚ろで、放心したように座っている。リキエルは煩悶していた。 ――どうしてオレは……。 一人でこの作業をする気になったのか。そんなことをわざわざ言ってしまったのか。ルイズが訝しげにしていたように、納得のいく理由が、リキエル自身思いつかないのだ。気まぐれではなかった、とは確信しているが、そうすると余計に説明がつかない。 労働意欲に目覚めたわけでは勿論なかった。仕事を終えた今、リキエルに残っているものは充足感でも達成感でもなく、心地よい疲労感でもなかった。熱を持ったような肩の凝りの他にはただ、胸の奥に奇妙なもやがかかっただけである。 そしてこのもやは、考えてみるとしかし、仕事を終えて今初めて湧き出したものではないようだった。 ふと、「ないわ」と言ったルイズの顔が思い出された。葛藤とも困惑とも焦燥ともつかないものが、そのとき頭を駆け巡ったのをリキエルは覚えている。もやが生じたのはその少し後だった。そして、気づけばルイズを追い出すようなことを口にしていたのである。 ――追い出すだ……? 自らの思考にリキエルは一瞬疑問を抱いたが、直ぐにそれは消えた。むしろすんなりと、あるべき場所にあるべきものが落ち着いたようにさえ感じられた。 そこでハタと気づく。気づくというよりも、それは明確な答えとなっていた。自分は、ルイズを追い出すためにああ言ったのではないか。言葉を重ねれば、ルイズと同じ場所に居たくないと、そう思ったのではなかったか。 そしてそう思わせたものは、リキエルにとって、やはりある種馴染み深いものだったのである。 それは恐怖だった。闇夜に息を殺しているような得体の知れない恐怖とは違う、逆に、幾度も落ち込み底の知れた、よく見知った恐怖である。だからこそ、リキエルはそれに気づきたくなかった。無意識に、自分でも気づかないふりをしていたのである。 そして、これは恐怖であると同時に兆候でもある。その兆候とは、パニックに陥る際の兆候だった。リキエルがルイズを遠ざけたのは、それを過敏に捉えたためだ。この兆候が胸をよぎった理由も、既にリキエルはわかっていた。 ――これ以上は。 考えちゃあならない。昨晩ルイズの前でパニックを起こしたときと同様に、リキエルはそう思った。が、既に遅く、気づけばリキエルは大量の脂汗をダラダラと流し始めていた。リキエルの顔が苦悶に歪む。 ――やばい。やばいやばいまずい! 『このこと』については、『こいつだけは』考えちゃあならないんだ! わかってる、そんなことはとうの昔になァ。 ああくそ! なのに、チクショウ! ああ、わかっているんだ。ここまで来たらもう手遅れってことぐらいオレが一番わかってるんだッ! くそ、くそ! 考えるんじゃあない! まぶたは下がり、息は過呼吸気味に荒れる。歯を食いしばって呻いても、流れ出る汗は止まらず、むしろ、呻き声によって搾り出されているかのようだった。 胃袋に砂利が入っているような心地がする。 のど仏のあたりに泥を塗りこめられたような感触がある。 耳の後ろにライフル銃を突きつけられたかのように不安になる。 自分ひとりでは何もできないのだと絶望する。 こんな姿を誰かに見られたらと恐怖する。 ――チクショウ! ちくしょう! 苦しい、息が、くそ! 何も見えないぞ! いつにも増して酷いッ! まぶたが、下がって、何だってんだァ! 考えるな、考え……おおおおお!? 何も見えない。見えないのに眩暈がする。 息を吸いたい。息の吐き方がわからない。 頭痛がする。吐き気もだ。体がうまく動かない。 ――血統、家、笑われ、今まで、ゼロ、パニックを、諦めが、まぶた、汗が、動かねえ、苦しい、息、呼吸、カワイソーだとか、やばい、血筋、ふきたい、ゼロ、血統、何も、タオル、死ぬ、期末試験、呼吸が、意識、死ぬかも、意識、ディ、意識が、D、意識……。 リキエルは椅子から転げ落ちた。落ち方が悪く、体のあちこちを床に強かに打ちつけたが、リキエルはその痛みを感じてはいなかった。意識が朦朧とし過ぎたためなのか、感覚が鈍っているようだった。 「――……? ――!」 足音が聞こえた。呼びかけられているような気がする。なんだか耳に心地よい。 顔を上げようとする。上がらない。少し上がった。何も見えない。 体が冷えていくような感覚に襲われた。上唇にかかる自分の鼻息が、変に熱っぽく気持ちが悪い。 意識が暗がりへ転がる寸前、肩に乗った手の感触を、リキエルは感じた。 リキエルには母親がいなかった。 勿論、今こうしてのた打ち回っていたからには産んだ親がいる。だが、リキエルが物心ついたときには、既に母親の姿はなかったのである。何故いなくなったのかはリキエルも知らない。ただ、それが酷く悲しかったことだけは覚えている。 盥回し先の、親戚達の話を聞きかじったところでは、他所でできた男と逃げた挙句に野垂れ死んだだの、麻薬に手を出して厄介ごとに巻き込まれただの、挙句の果てには、奇病にかかって世にもおぞましい姿で死んだなどと言う者もおり、何れにせよ、わずかばかりも心ある話は聞かされなかった。 リキエルはそれらの話を信じていない。それは母親を信じたいという気持ちからではなく、親戚達が、控えめに言っても母親を好いていなかったらしいことが――子供が盥回しに合う理由など、金銭の話を抜けばこんなところである――わかっていたからだ。 リキエルは父親を知らなかった。 どころか、その親類縁者にすら、リキエルはお目にかかったことがなかった。母方の親戚達がその辺りの話題を嫌っているのは明々白々なので、あまり尋ねる気にもなれず、例え聞いても「知らない」「わからない」という答えが返ってくればよい方だった。 誰もが、答えたくないというよりも本当に知らないらしいということが――そのくせ、嫌な憶測だけはエラク自信あり気に語っていたこともあって――印象的だった。リキエルは幼心に奇妙に感じたものだ。 リキエルは暫く、ギクシャクとした関係の親戚の家を渡り歩き、歩かされた。彼ら、あるいは彼女達は、リキエルに暴力を振るいこそしなかったが、愛情を以って接してきた者もまたいなかった。 空気中に含まれる窒素のような扱いを受ける日々だったが、小学校に上がる頃には、一つの場所に落ち着くことができた。他人とほぼ同義な程に遠い親戚の家だったが、そのことが幸いしたものか、彼らはある程度の好意を以ってリキエルの面倒を見てくれた。 リキエルは、元気で明るいとはいえないが、それなりに普通の子供として育っていった。 だが、リキエルの生い立ちはやはり、少なからず彼の頭上に暗い影を落としていたとみえ、リキエル自身も気づかぬうちに、リキエルを少し歪ませていたのである。 その暗い影は、例えば友人の、両親に買ってもらった誕生日プレゼントが気に入らないとか、タバコなんか吸うんじゃあないと親父がうるさいのだ、とかいった手合いの話を聞いたときに色濃くなる。 その歪みは、例えば小学校の先生が、将来の夢はなんですか? と聞いてきた時や、熱心が過ぎて終始空回りしていた中学の教師が、やりたいことをやれ! と脈絡もなく語りだした時などに浮き彫りとなった。 リキエルは、およそ生きる希望や目的というものを、どこかに置き忘れてしまっていた。 それでも、リキエルはそのせいで絶望するということはなかった。むしろ中学に上がった頃には、年相応といえばそうだが、自分のやりたいことについて考えるようになっていた。そしてその答えが出ないとなると、何をするにせよ良い成績を出しておいて損はないだろう、という考えに至り、勉学に励むようになる。 しかしあるとき、その努力も水の泡と消えた。端的ながらルイズにも話した、16才の学年末試験での出来事である。 当時リキエルには何が起こったのか理解できず、原因は依然わからないままだ。起きたことをありのまま話すのであれば、集中し始めたら何も見えなくなった、とこれだけである。初めは周囲の人間も同情的だったが、すぐに『カワイソー』とか『知らんぷりして近づかないでおこう』といった、『我関せず』の態度を露にした。その態度はリキエルを追い詰め、息苦しくさせ、汗だくにした。結局、彼は試験科目のうち、半分を白紙で提出ことになった。 以来、リキエルは何がしかに強く集中するたび、まぶたが下りてくるようになった。 当然、ろくな結果は残らない。 自然、何事にも自信が持てなくなった。 はじめはまぶたが下りるだけだった症状が、晴れてパニック障害という、亀の餌にもならない名前を無駄に賜うことになるまで、そう時間はかからなかったが、リキエルがその名前を耳にしたのは、学校へ行かなくなってから暫く経ったある日のことだった。 20歳を迎える頃には、誰かにパニックの発作を見られるのが嫌で、一人暮らしをはじめていた。生きる希望は完全に失っており、人生そのものにまいってしまっていた。 時折、このままではいけないとアルバイトなどもしてみたが、一月と勤め上げたことはなかった。 移動に欠かせないものだからと、車両の運転もできるように頑張ってみたが、暫く乗れば事故を起こした。 失敗ばかりするうち、リキエルはどんなものに対しても、行動を起こす前から自信が持てなくなっていき、大小数多くのトラウマを抱えるようになる。ひどいトラウマに至っては、そのことに関する事柄を故意に忘れようと努めた。 中でも『自分の肉親』や『血筋』について考えをめぐらすことは、何よりもしてはならないことの一つになっていた。自分の親を知らないというその事実は、十余年を経て肥大し、リキエルの心に重く深く、捕鯨用の銛のように食い込んでいたのである。二、三度、そのことについて考えたことはあるが、重度のパニック発作に苛まれることになった。丁度、今先ほどのようにである。 リキエルはもう何もする気になれないでいたが、今年に入ってから、ふと、生活環境を変えてみようと思い立った。そして何かに引き付けられるようにフロリダを目指した。それから暫く経ち、三月も半ばになろうという時期になって、リキエルはようやく新天地フロリダでの、最初のアルバイトを手に入れたのである。 ◆ ◆ ◆ 学院長室を後にしたロングビルの足運びは、心持ち軽やかだった。 何枚捌いても変わり映えしない羊皮紙の群れから、いつもより少しだけ早めに逃げられたことが、彼女の足取りをそうさせているようだった。勿論ことあるごとにセクハラをしかけて来たり、冗談交じりに色目を使ってくるジジイから離れられたことも、ロングビルの足を軽くしている。 ただ、ロングビルの表情は晴れ晴れとしたものとはいえなかった。かといって暗い顔をしているわけでもなく、思案気な表情である。 ロングビルは、慌しく駆け込んで来たコルベールの様子と、珍しく――というよりも恐らく初めて目の当たりにした、オスマン氏の真剣さをたたえた表情を思い返している。それまでの醜態を取り繕うのに相当な精神力を割いていたとはいえ、それは印象深くロングビルの記憶に残っていたのである。 ロングビルはこの学院に来てから日が浅いが、その短い期間でわかったことの一つが、オスマン氏は食えない部類の人間だということだ。 どこからどこまでが本気で、もしくは冗談なのかわからないあの老学院長は、滅多なことではあんな顔はしないだろう。コルベールの持ち込んできた話は、それなりの重要性を持っていたとみて、まず間違いはないはずだった。 その上で、暗に席を外せと言われたときは、とぐろを巻き始めていた自分の好奇心が、ムクリとその鎌首をもたげるのをロングビルは感じたが、コルベールとオスマン氏が、漏れ聞かれることさえも憚るような話をするのだということもわかっていた。それだけに、興味を引かれたというだけで首を突っ込むことは避けるべきだと、ロングビルは思った。好奇心が殺すのは、何も猫に限らないのである。 ――それは。 さすがに言いすぎか。ロングビルは、自分で思ったことが可笑しくなった。 学院長室での二人の様子は確かに珍しくはあったが、それが陰謀めいた何かに結びつくとは思えなかった。自分の発想が飛躍気味になっているのにロングビルは気づいていたが、いささか飛びすぎた感は否めない。それで、悪い気もしないのが始末に悪かった。 漫然と流れるだけの日常に兆したちょっとした変化は、ロングビルの足取りだけでなく、少しだけ気持ちも浮つかせているのかもしれない。 「……」 ロングビルはツイと眼鏡を上げ、少しだけ足を速めた。 冗談めかしてものごとを考えられるほど、心に余裕が戻ってきたことは喜ばしいが、緩めすぎるのも考えもの、と思ったようだった。軽快な足取りは変わらなかった。 ほどなくして、ロングビルは教室に到着した。 オスマン氏の使った方便であれ、仕事は仕事である。むしろ方便や建前とは、表向きその通りに行動するからこそ、その役割を果たし得るのだ。秘書としても、仕事と言われればそのあたりはきっちりとしておかなければならない。 というのは建前で、ちゃっちゃと片付けてさっさと昼食をとりたい、というのがロングビルの本音である。ロングビルは、大きい割りに軽い扉を開いた。 そこで、違和に気づく。それは曖昧な違和感というよりも、明確な異変だった。 ――誰かいる……? 人の気配がどうのこうのどころの話ではなく、はっきりと、何かしらのうめき声が聞こえてくるのだ。荒い息遣いだった。苦しんでいるようでもある。 ロングビルは足音を殺し、机の影に隠れながらうめき声の主に近づいていった。 ただの人間のようだが、用心は必要だった。使用中止の教室でうめいている誰か。恐らく生徒ではない。教師ということはさらに考え難い。教室の修繕をしようなどと、殊勝な心がけをする者がいるとも思えなかった。となれば、これも考えづらいが、外部からの侵入者かもしれなかった。 万一そうなら、詰めている城の衛兵にも学院の誰にも気づかれずに、ここまで来たということである。目的やうめいている理由はまるでわからないが、その万一を念頭に置いて、怪我をすることはないはずだった。取り越し苦労ならそれでもよい。 「……」 意を決して、ロングビルは机の横から、うめき声の主を覗き込んだ。 しかし初めに目が行ったのは、教室の惨状だった。それなりに片付いてはいるようだが、教卓のあった場所はえぐれ、窓はそのほとんどが割れていた。吹っ飛んだとは聞かされていたが、ここまで酷い状況とは、ロングビルも思っていなかったのである。 それらをざっと見回してから、ようやく本題へと、ロングビルの目が向く。 ――……いた。でもこれは。 男が倒れ、もがいていた。やはり苦しんでいる。だが、その様子はロングビルの予想以上に、尋常なものではなかったのである。 もとの造形を著しく損なわせるほど顔は歪み、双眸がまぶたで固く閉じられている。パニックを起こしているようで、息は乱れに乱れている。立ち上がろうとひざ立ちになっているが、足に力が入っていないのは明らかだった。生まれたての馬のほうが、まだ力強さを感じさせる。 男の姿は、ほとんど滑稽と紙一重だった。 ――まずいわね。 直感的に、ロングビルは思った。男に対する所見である。目立った外傷が見当たらないことから、男の苦しみは、体の内側から来るものだろう。重病に侵されていることも考えられた。 何にせよ男の状態は、遠目には一刻を争うことかもわからないのである。迷っている時間は、あまりないようだった。 正味を言えば、ロングビルは面倒ごとは御免だったが、だからといって、男の様子をただ見ているというわけにもいかない。日頃からドライな空気を纏うロングビルだが、目の前で苦しむ人間を捨て置けるほど、情の無い人間というわけでもない。 人助けをして、悪いことがあるものか。ロングビルは自分に言い聞かせた。言い聞かせなければ動けないことが、自分の融通の利かないところかもしれないと、どこか冷めたままの頭で思ったりもした。 「どうしました……? 大丈夫ですか!」 警戒心はもう解れている。思うに任せて、ロングビルは見ず知らずの男に駆け寄った。 その声に反応したものか、錆付いた歯車のように緩慢な動きで、男が顔を上げた。それだけの動作が、男に大きな負担をかけているようだった。 肩に手を置いた途端、男の体から力が抜けたのがロングビルにはわかった。どうやら意識を失ったらしい。これで逆に、呼吸は落ち着くはずだが、男の顔色は一向によくならない。地肌が土気色の人間はそうそういるものではない。 男の喉に手を当ててみる。ひくひくと痙攣するだけで、うまく息が吸えていない。危険な状態だった。 「しっかりして下さい、気を確かに」 「グ……う、げぇ、かはっ、あが、まぶたが、クァ」 しゃがみこんで呼びかけると、ほどなくして男は息を吹き返したが、呼吸が早くも乱れ始め、うわごとを繰り返す。気を抜けば、またすぐに意識を失うだろう。まずは落ち着かせることが先決だった。 ロングビルは男の背をさすりながら、優しく語り掛ける。 「気を確かに持ってください。大丈夫、単なるパニックよ。すぐに収まるから、安心して」 「ぐ、うう、ハァ――、あが、がが、ハァ――」 「無理に息を吸わず、力を抜いて。そうです。ゆっくりと、浅くてもいいのだから、ゆっくりと吸って、肩の力を抜いて、大丈夫です。大丈夫だから」 「か……はァッが、クウぉ、ハ、クハァ、は、ハァ、ハァー」 次第に、男の呼吸が一定のリズムを保つようになった。顔も比較的穏やかなものになっていく。こうして見れば、男はまだ若く、自分とそう歳は変わらないだろう、とロングビルは思った。 「タオ、ルを……く、ハァー」 男は喘ぎながら、辛そうに唇を動かして、聞き取り難い声を発した。 「タオル?」 「貸して、くれないか」 男は酷く汗をかいていた。ロングビルは白いハンカチを取り出し、それでぬぐってやる。 「ハァー、ハァー、ハァ――……」 男は片方のまぶただけを上げ、顔色悪く「すいません」と言った。 「私は、この学院で秘書をしているロングビルという者です。……あなた、ここで何をしていたんですか?」 ロングビルは青年の呼吸が整うのを待ってから、鋭くそう聞いた。 見たところ青年は平民で、見覚えはなかった。つまりは侵入者で不審者だ。倒れているのを見てつい手を差し伸べてしまったが、それとこれとはまた別である。 ――まあ、でも。 これといって警戒が必要な相手でもない。のた打ち回ったときにできたのだろう、体のいたる所にある擦り傷に顔をしかめている様は、害があるようには見えなかった。ましてや丸腰の平民である。 青年は頭を抑えながら立ち上がった。ロングビルも腰を上げる。青年は少し猫背気味だったが、それでも頭半分ほど、ロングビルよりも背が高かった。ロングビルは、自然見上げ形になる。 「オレは、リキエルっていいます。え~、主人――がここをこんな風にしちまったんで、その片づけをしてたんスよ。だいたいは片付け終わったんだが、その後でなァ……」 リキエルはそれきり押し黙ってしまった。苦い顔になっているところを見れば、さきほどのような状況に陥った経緯を思い出しているのだろうと、ロングビルは思った。リキエルと名乗った目の前の青年は、そのことについてはあまり触れたくないらしい。 ロングビルはその話題は避けることにした。今重要なのはそこではなかったし、気になったこともある。 「主人?」 とはどういうことか。 「いや、まあ、なんて言うんだろうなァ、これは……」 またも歯切れ悪くなるリキエルに、ロングビルは少し眉をひそめたが、リキエルはそれには気づかない様子で、諦観めいた顔になって、溜息混じりに言った。 「使い魔をやってるんスよ」 「使い魔? ああ、あなたが噂の」 それで、ロングビルには合点がいった。 平民を呼び出した生徒の噂は聞いている。その話を聞いたとき、運のない話だとロングビル思ったが、当の本人を目の前にしてみると、なるほどこの男、顔の造形は決して悪くないが、薄幸そうなといえばまさしくそうだ。いま一つ締まらない印象を与えるのは、その幸の薄そうな面構えのためかもしれない。 「それは……大変でしょう」 「本当に、朝っぱらから洗い方も分からない、ややこしい服とか洗濯させられたりよォー。といっても、シエスタってメイドが手伝ってくれたんですが」 「シエスタですか。彼女は気立てのよい、優しい娘ですからね」 そのおかげで助かったってわけです、と言って、リキエルはもう一度溜息をついた。所作のひとつひとつが、どうにも覇気に欠ける男である。 とそのとき、溜息に触発されたものか、リキエルの腹が複雑怪奇な音をたてた。ぐう、ともぎゅる、ともつかない、本当に腹の音かも疑わしいような音に、ロングビルは目を丸くした。 「半日以上何も口にしてないもんで」 リキエルは忌々しげに腹をさすりながら、ぼそりと言った。 なんとも情けない顔をするリキエルを見ているうち、ロングビルは気が抜けた。さきほどのパニックのこともあいまって、ロングビルの目にはリキエルが妙に頼りなく映る。 手助けした手前もある。このままさようならというのは気が咎めた。 「一緒に行きませんか?」 「……? 行く?」 リキエルは疑念をこめて、開いている左目をロングビルに向ける。ロングビルはニコリともせず、しかし柔らかい口調で繰り返した。 「昼食ですわ。よければ一緒にどうかしら? 私もこれからなので」 「はぁ、なるほど。しかし良いんですか? 申し出は嬉しいんだが、なんか用事があったんじゃあないですか? わざわざここに来たってことはよぉ」 「いえ、様子を見て来いと言われただけですから」 できればということで、錬金での修繕も頼まれていたはずだが、このロングビル、そこらへんのことはきれーさっぱり忘れているらしい。あるいは、端から錬金で直す気などなかったのかもしれない。答えは彼女の眼鏡の奥深くである。 「遠慮は無用ですわ」 「助かるな、それならよォ」 そう言って首の後ろに手を置くリキエルはやはり頼りなげで、それが無性に可笑しくなり、ロングビルはリキエルに見えないようにして少しだけ笑った。 気持ちが浮ついている、とは思わなかった。
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快傑ズバットより早川健を召喚 日本一の使い魔-01 日本一の使い魔-02 日本一の使い魔-03 日本一の使い魔-04 日本一の使い魔-05 日本一の使い魔-06 日本一の使い魔-07 日本一の使い魔-08 日本一の使い魔-09 日本一の使い魔-10
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■空腹度 空腹度は何もしていなくても少しずつ減っていきます。「お仕事」をすると2倍の速度で減っていきます。 空腹度がゼロになると、愛情度が少しずつ減っていきます。 使い魔のエサは、ペットショップで購入することができます。 使い魔に対応したエサを与えましょう。 ■愛情度 使い魔と一緒に過ごすことで、少しずつ増えていきます。 「お仕事」をすると増える使い魔もいます。ただし苦手な「お仕事」だと、愛情度は溜まりにくくなります。 愛情度がゼロになってしまうと、使い魔は野生化し襲いかかって来ますので注意してください。 何か上手にできたときは褒めてあげましょう。愛情度が上がります。 失敗したときもそれはそれで励ましましょう。ただし叱ることで愛情度が上がる使い魔もいます。
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Fate/stay nightの凛√士郎召喚 シロウが使い魔-01 第1章 シロウが使い魔-02 第2章 シロウが使い魔-03 第3章 シロウが使い魔-04 第4章 シロウが使い魔-05 第5章 シロウが使い魔-06 第6章 微熱 シロウが使い魔-07 第7章 土くれ シロウが使い魔-08 第8章 王女来訪 シロウが使い魔-09 第9章 思惑 シロウが使い魔-10 シロウが使い魔-11 第11章 接触 シロウが使い魔-12 第12章 試合 シロウが使い魔-13 第13章 空軍 シロウが使い魔-14 第14章 謁見 シロウが使い魔-15 第15章 決闘 シロウが使い魔-16 第16章 決着 シロウが使い魔-17 第17章 珈琲閑話
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露伴とコルベール、シエスタがタルブの村に旅立ってから二日後の昼のこと。 ルイズとブチャラティは、学院の中庭に置かれたテラス形式の丸机を囲むようにすわり、久しぶりに気楽なお茶の時間を楽しんでいた。 二人と一緒に、なぜかキュルケとタバサもいる。 というのも、ルイズが今飲んでいるお茶は、キュルケが実家から送られてきたものである。 キュルケは自分のカップを空にすると、ルイズに勢いよく話しかけた。 「どう、ルイズ? 今度私の実家が新発売する銘柄『アウグストゥス』は?」 「まあ、香りがよくておいしいけど……なんで私が試飲しなくちゃいけないの?」 「今度この銘柄をトリステインとガリアに輸出したいらしくて。うちの実家としては、外国の貴族の好みを知っておきたいんだそうよ。タバサに飲ませても『うん』としか言わないし」 タバサがキュルケになでられながらうなずく。 「うん。飲める」 タバサはそういいながら、テーブルの皿に載せられたクッキーを手に取った。 まるで、タバサの舌がベルトコンベアーであるかのように、お茶請けを次々に口内に運んでいる。 そのようなタバサを、キュルケはいとおしい妹を見るような気持ちで眺めた後、彼女の本命である、ブチャラティに話しかけた。 「ほかのみんなも、私の家に遠慮しちゃって、『おいしい』としか言わないのよ。 その点、あなた達なら正直な感想を聞かせてくれると信じているわ」 「そんなことより、ダーリンはどう思った? おいしい?」 「うん? あ、ああ。なかなかだな」 ブチャラティはそういったが、内心は上の空であった。 彼はすでに紅茶を飲み終わり、別のカップに口をつけている。 「それより、ルイズ。君とキュルケは微妙に仲が悪いのではなかったか?」 よくキュルケの誘いに乗ったな。とブチャラティは思った。 俺が召喚された当時よりは、二人の仲はよくなっているのだろうか? ルイズは、顔を少しだけ膨らませながらブチャラティに答えた。 「まあ、せっかくお茶に誘われたんだし。たとえキュルケがツェルプストー家の人間だとしても、無碍に断るわけにも行かないしね。ヴァリエール家の貴族としての当然のたしなみよ」 実際のところ、ルイズはこのお茶会をとても楽しんでいた。 彼女はいままでの短い学院生活の中で、誰かにお茶に誘われることなど一度としてなかったのだ。 なぜか? それはルイズが『ゼロ』であり、魔法の無能さを学生にバカにされていたこともある。 だが、最大の理由はルイズ自身にあった。 彼女がそれをコンプレックスに感じ、僻みともいえる感情を内に持っていたこと。 そして、それを補うかのように、必要以上に、ヴァリエール家の名門さを居丈高に誇っていたからでもある。 このような彼女に対し、誰も彼もが。学院つきの平民でさえも、ルイズの僻んだ様子を見下し、ルイズの無闇に高い家名を恐れた。 だから、ルイズは、ブチャラティ達を呼び出すまで、同じ級の学生達とさえ、必要不可欠な会話しか交わさなかった。罵り合い以外には。 そのため入学した当初、一期生のころは、マルトー親父などには『タバサと双璧をなす無口な子』と思われていたほどだ。 つまるところ、ルイズは徹底的に孤独だったのだ。 「そんなものか」 ルイズのはっきりとした回答に、そう頷いたブチャラティは、マルトー料理長に作らせたという、一見珍妙な飲み物を飲んでいた。 タンポポの根と大豆を煎った後、粉末にしたものに、紅茶のようにお湯でせんじたものだ。 ルイズはそれを見て、あまりいいとはいえない味の記憶を思い出した。 ルイズもちょっとした好奇心で、その黒い液体を飲ませてもらったことがある。 でも、ルイズにはとても苦くて、飲み物とは到底思えないものだった。 それをブチャラティはなぜか懐かしそうに飲んでいる。 ブチャラティの故郷の飲み物なのかしら? ルイズはそう思い、思わず顔をしかめた。 キュルケはその様子を見て、少し安心した。 ルイズは、ダーリンと露伴を召喚してから、とても明るくなったわ。 それに、なんだか近頃は肩の力が抜けてきている気がする。 キュルケは入学式のときに出会ったルイズの顔を思い出す。 とても今のような穏やかな表情を想像することができないわね。 あのときのルイズは、常に誰かに見張られているような鬼気迫った顔をしていた。 そう。まるで誰かに、同時に、罵られ、脅えられてるような。 そんな哀しい、こわばった顔つきだった。 お父様に、『ヴァリエール家にだけは負けるな』といわれたから、一年間。 たびたびルイズにちょっかいを出してきたけれど、本心から言えば、一期生のころのルイズは、とても陰気で高慢で。はっきりといってしまえば自分にとって一番近づけたくない人種だった。 ルイズが『ヴァリエール家』でなければ、私は今頃ルイズなんて子、すっかりと忘れてしまっているでしょうね。 でも。 キュルケは微笑みながら紅茶をすすりながら、桃色の髪の少女を見やる。 素直にしかめっ面をするルイズが、小憎らしく可愛らしい。 ルイズは強くなったわ。 フーケのゴーレムを倒したから? それとも、アンリエッタ姫の密命を果たしてこれたから? ……いいえ、違うわね。 原因は、あなた。 ダーリン……いえ、ブチャラティ。 あなたが、いえ。あなたを召喚できたことが、ルイズにとって大きな財産になったのね。 近頃のルイズの態度には、ほのかに自信すら感じ取れる。 洗濯はいまだに自分の手でやっているし、魔法実技の成績もまるで前と同じだけど。 今は学院での生活に、精神的な余裕が見られる。 他の生徒の野次にも、前よりは小粋な返答をしている。 覚えてる? モンモランシーとのこと。 あなた、前は『洪水』なんて、くだらない洒落でしか返せなかったけど。 昨日なんて、「ギーシュの恋人になるくらいなら『ゼロ』でかんべんして」なんて。 思わず噴き出しちゃったじゃない。 つばがかかったタバサに睨まれたのよ、私? ルイズ。 あなた、ブチャラティを召喚する前は、宿敵の一族が招待したお茶会なんて、意地でも行かないでしょう? それに、ほかのメイジと話す時間があれば、図書室の個室にこもって、魔道書を読んでいたでしょうね。 一年前のあなたなら。 フフフ……涙を堪えながら、ね。 そう思いながら、ふと、二人を見やる。 不機嫌なダーリンと嫌そうな顔をするルイズ、か。 感情も共有しているのかしら、この二人。 使い魔と主人なんだし、その可能性もあるわね。 だとしたら、ちょっと妬けちゃうわ。 ……ん? ダーリンが不機嫌? 「どうしたの、ダーリン? 今なんだか機嫌が悪そうだったけど」 キュルケの質問に乗るように、ルイズも畳み掛けるように質問した。 「そういえばそうね。 それに、最近ブチャラティは物思いにふけっている時間が多いわ」 「そうか? ルイズやキュルケに気づかれるほどか…… いや、故郷の食べ物が懐かしくてな……」 ブチャラティが考えるに、召喚されてからこっち、一度もイタリアの料理を食べていない… ここの物がマズイわけではないのだが、ブチャラティとしては、やはり地元の食べ物が一番しっくりとくる。 いまの時期のネアポリスはさぞ天気がいいだろう。 あの眩しい、透き通るような青空が懐かしい。 今となっては大気の、あの排気ガスの臭ささえ、自ら嗅ぎたいとすら感じた。 「カラスミソースのパスタが食いてェ。せめて、ピッツァだけでも……」 ブチャラティはそこまで考えて、不覚にも涙がこぼれそうになった。 「あら、ピッツァって、あのピッツァ?」 キュルケの思わぬ言葉に一瞬思考が硬直するブチャラティ。 「今、何て言った?」 「だから、あなたの言う『ピッツァ』って、丸いあの料理でしょ?」 「マジか!? マジであるのかッ!?」 急に顔を近づかれたのでキュルケもどぎまぎして答えた。 ダーリンの顔が近くで見られるというのに、なぜか目をそらしてしまう。 自覚なく、利き手の人差し指で自分の髪を巻き、所在無さげに弄っている。 ブチャラティはそのような彼女の肩をつかみ、情熱的に揺さぶった。 「茸とか肉とかを生地に載せて焼くあの『ピッツァ』が!?」 「ええ」 「マルガリータとかマリナーラとか言う、あの『ピッツァ』か?」 「…そう言うメニューがあるらしいわね」 「ベネ!」 「いやいや、落ち着けブチャラティ……ここで『ピッツァ』といっても、アメリカや日本などで売られているらしい、食パンでできた紛い物かも知れん。ここは慎重にならねば……」 ここで下手に期待してしまうと、後々間違いだったときにブチャラティ自身のショックが大きすぎる。 彼はイタリア人らしく、大げさに頭を抱えて部屋の中を歩き回った。 その態度は、標準的なイタリア人の許容範囲内の行動であったが、ブチャラティ自身は普段そのような行動を起こさない。 結果、唖然とする二人の女生徒がブチャラティを凝視することとなっていた。 ちなみに、タバサは本を読みながら、平然とクッキーを食べ続けている。 耐え切れなくなったルイズがキュルケに話しかけた。どこか上の空であったが。 だが、この状況を打破することができたのは結果的に彼女の功績となる。 「……確か、ある村の名産よね?」 「ええ、正確には郷土料理。なんでも、『ピッツァ』専用の釜で焼くみたいよ」 「ディ・モールト ベネ!!!!!!」 そいつは本物だ! とブチャラティの本能が叫んでいる。 彼はアイススケートの選手が演技をするように、背中を思い切りそらして拍手をした。 「ブラボー!! おお、ブラボー!!」 なにか違う人が混じってるぜ……ブチャラティ。 「で、どこにあるんだ? ぜひ行こう!」 「たしか……タルブ村といったかしら?」 タバサの耳がピクリと動いた。彼女は本から目をそらさずにつぶやく。 「私の風竜。乗るの?三人」
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「いざ進めやギーシュ!めざすはヴァルダンテ♪」 トリステインの南方目指し、馬を駆る 「ねえ、なんでこいつがいるのよ、キュルケ」 ルイズがため息をつく。 「説明しよう!ギーシュは宝探しなどという面白そうなことに関しては 鋭い嗅覚を持っているのである!」 「要するにあんたが勝手についてきたわけね、このアカポンタン」 「まあそうともいうね」 「じゃあ帰りなさいよ、一応私のためなんだから」 「なにも成果を得ずに帰ったらおしおきされちゃうじゃないか!」 「誰によ誰に」 「まあまあ、ミス・ヴァリエール、いいじゃないですか」 シエスタが宥める。 「さすが、美しい女性は僕のことをわかってくれるな!ハハハ!」 「シエスタ、こんな奴かばうことないわよ、 まあシエスタがそう言うなら許してあげるわよ、感謝しなさい」 キュルケが地図を開いて先導する。 「えーと、まずはここから東に1キロね…」 トリステインを数日かけて各所を周り、六日目には大量にあった宝の地図ももう残り数枚になっていた。 「なによキュルケ、宝なんて全然ないじゃない。なによこのガラクタの山は!」 「ヒンタボアイランドへの地図、星がいくつか入った黄色いボール、 変な円盤、DISCって書いてあるわね…しん・よげんのしょってなによこの汚い紙は… あとは…波動エンジン設計図?なによこれ」 キュルケがひとつ黒いノートを拾う。 「この黒いノートなんか使えるんじゃない?なにか書いてあるけど読めないわね… とりあえずギーシュの名前でも書いておくわ」 「あれ、ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストー、ミスタ・グラモンが心臓を 抑えてもがいていますけど…あ、動かなくなりました」 「いいのよ、ほっときなさい、ギーシュだから」 「ギーシュだもんね」 「そうですか…」 ルイズが振り向いてキュルケに尋ねる。 「あとどこが残ってるのよ」 「あとはタルブ周辺だけね、シエスタ案内してくれるー?」 「ええ、もちろんですよ」 「じゃあ、ギーシュいくわよ、って動かないんだったわね…フレイムー、 ギーシュひきずってきなさーい、重かったら焼いてもいいから」 「ぎゅるぎゅる!?(そ、そんなご主人さま、それはひどすぎるんじゃあないですか!?)」 といいながらギーシュを引きずり、馬に乗せる。 「さあ、目指すは南よー」 キュルケが行く先を指さした。 「なんか薄気味悪い森ね…」 ルイズが呟く。 「いかにも今回の山場って感じだね、諸君」 「あら、ギーシュ生きてたの?」 「ギャグキャラは死なぬ!何度でも蘇るさ!」 「なにか出るかもしれないわね、警戒して進みましょう」 その言葉を聞いてギーシュがバラをあしらった杖をくわえる。 「ふふ、こんなこともあろうかと、今週のびっくりドッキリワルキューレ! 名付けて、ワルキューレ旅団!全国の女子高生の皆さんどうぞご覧下さい!」 説明しよう!ワルキューレ旅団とは、大型のワルキューレを手のひらサイズまでに小型化し、 数を増やした物である!数は増やしたが体積は減っていないため、戦力を集中させることによって 従来の敵にも対処でき、かつ一体一体の体積は小さいため、全滅させることは困難、という代物である! 偵察、威力偵察、囮、遅延作戦、多方面攻撃など幅広い任務に使えるぞ! 「そして、最終的には合体して超電磁やゲッター線、ミノフスキー粒子などを使えるようにする予定だ! どうだ、すごいぞ! かっこいいぞー!戦いは数だー!ワハハハハハ!」 「…まあいいわ、やってみなさい」 大量のワルキューレをばら蒔き、森の中へ進ませる。 「第一青銅大隊はそのまま前進、第二黒金大隊は停止し、第四…じゃなかった第三偵察小隊を十時の方向に、 えーと第二青銅大隊は停止じゃなかった第五白銀大隊が、えーとそんなにないよなあ…第三黒金大隊でいいのかなあ」 「指揮が混乱を究めてるわね」 「う、うるさいルイズ、大量のゴーレムを動かすってのはすごい集中力がいるんだぞ!」 「じゃあなんでむやみやたらに増やすのよ…」 「大きくするなら大きく、小さいなら全力をかけて大量生産が僕のポリシーだからね」 「まるで使えないわね…どっかのヒゲ伍長の兵器みたいだわ」 「う、うるさいな、……ん?あれ、おかしいな第十六偵察小隊が動かないなあ、どうしたんだろう」 「あんたのゴーレムでしょ、私に聞かないでよ。そもそもなによその小隊の数は、何体いるのよあんたのゴーレム」 「あ、あれ?どんどん動かせるゴーレムが減っていく、も、もしかして敵襲かなあ…」 キュルケがため息をつく。 「偵察の意味ないじゃない…」 「で、でも敵がいることがわかっただけでも大きな進歩じゃないかね?」 「普通にゴーレム出せばよかったじゃないの、とにかくなんとかしなさいよ」 「わかった、とりあえず集合させよう、これでなにが起きてるかわかるはずだ」 ギーシュが目をつぶって杖を振る。 「お、オーク鬼の集団だ!」 ギーシュが悲鳴をあげる。 「総員退避ィいいいい!こっちまで撤退いいいッ!」 ルイズが慌ててギーシュの肩を揺する。 「ちょ、ちょっと、そんなことやったら私たちのところにオーク鬼が来ちゃうじゃない!」 「あああああ!忘れてたあああ、でももう遅いや、あはははは」 ボロボロの小さなワルキューレが次々と集まってくる。 「なんだこりゃ、オーク鬼にやられたにしては…穴だらけなんて不思議な傷だな…?」 ガサガサよ周りの藪が動く。全員杖(シエスタはフライパン)を構え、場が静まる。 そして、藪からオーク鬼が顔を出した。 「来たわよッ!」 ルイズが叫ぶ。 しかし、いたのはオーク鬼だけではなかった。 キュルケがあとずさりしながら言う。 「ね、ねえ、これはなに?ギーシュのゴーレムなの?なんか小さい兵隊で、銃みたいなのを持ってるけれど…」 「え?僕のゴーレムはもうここに全て集まって……」 小さな兵隊が銃をこちらに向ける。 「伏せなさいッ!」 ルイズが叫んだ次の瞬間、小さな銃からでた弾丸が伏せたルイズ達の上を突き抜けていく。 「ど、どうなってるんだ!?」 ギーシュがうろたえる。 「もしかして…スタンドじゃない?人間以外が持ってるってこともありえるはずよ!」 キュルケが杖を構えて距離をとりながら言う。 シエスタはフライパンを構えて震えている。 「じゃあ、この兵隊はどれかのオーク鬼のスタンドなのね……なら、こうするしかないわね、それは…逃げる!」 ルイズが振り向いて逃げようとする。 「……こともできないみたいね、見事な包囲だわ、ギーシュも少しは見習いなさい」 後ろにも獲物を狙う目をしたオーク鬼が何体も並んでいた。 「さて、観念する?無駄な抵抗してみる?」 ルイズが尋ねる。 「そんなの決まってるじゃない!」 「命を惜しむな、名を惜しめ、この家訓の通りに死ぬまでさ!ミス・シエスタだけでも逃がすぞ!」 二人は杖を構える。 「少年少女ども、相変わらずいい啖呵だな!こんな優れた人間どもをオーク鬼の夕食にするにはあまりに惜しすぎるゥウウウウッ! そのとき、茂みの後ろから声が聞こえた。 「この世にナチスがあるかぎりィイイイイイイッ!共産主義は栄えないィイイイイイイッ! この村に俺がいる限りィイイイイイイイッ!オーク鬼どもは栄えないィイイイイイイッ!」 男の後ろから彼女たちがよく見知る男がでてきた。 「やあ、ミスタ・グラモン、ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストー、ミス・シエスタ、でしたかな?今週の山場ですぞ」 「食らえオーク鬼どもォオオオオオウッ!重機関砲発射ァアアアアアッ!」 機関砲をぶっ放しながら前進していく。 「どうだオーク鬼どもォオオオオオオッ!我が愛機Bf.109最新型搭載ィイイイイイ機関砲の味はァアアアア!」 小さな兵隊が銃を放つが、もちろん効果はなく、そのうち本体が倒れたのか兵士は消え去った。 オーク鬼が全てやられるか逃げていき、一息をつく。 「それにしても、なぜこんなところにコルベール先生とシュトロハイムさんがご一緒にいらっしゃるんですか?」 ルイズが二人に尋ねる。 「若者がァアアアア!天才コルベールの技術を起点にィ……このシュトロハイムの体の部品は作られておるのだアアア!」 「うむ、彼は柔軟な発想を持っていてね、私の研究を認めてくれた上に色々とアドバイスしてくれるのだよ! 非常にためになっている、研究がはかどってはかどってしようがない!」 コルベールは嬉しそうに顔をほころばせる。 「それで、どうしてここにいるんですか?」 シュトロハイムがうなずく。 「オスマンの計らいでな、この前のゴーレム騒ぎで家が壊されたからな、ここに土地を紹介してもらったのだ。 それにしてもここはいいところだ、風土もいい、人もいい、飯もいい!イギリス人も見習うべきだな! ということでここに住まわせて貰っておるのだ、こういったところは不慣れだが、近所の人たちも色々と 世話をしてくれる。俺にとってここは第二の故郷とも思えてきたな!」 一行はコルベールに目を向けると、コルベールは口を開いた。 「うむ、シュトロハイムくんにあの空飛ぶヘビくんの話をしましたらね、感心されまして、彼はそれを応用した 『ひこうき』というものについて教えてくれたのですよ!そしてある日、友人の話を聞いていると、ここに『空の羽衣』 という道具があると聞きまして、話を聞く内に、シュトロハイムくんの言っていた『ひこうき』というものと特徴が 似ていることに気付いたのですよ!それを考えるといてもたってもいられなくなって、こちら向かったところ、 なんと彼に出会ったのですよ!」 「『空の羽衣』ですって!?」 シエスタが驚きの声をあげる。 「おや、ミス・シエスタ、ご存じなのですか?」 「ええ……私のひいおじいちゃんの、形見です。ひいおじいちゃんはそれを纏えば飛べるとも言ってたそうですけど、 誰も動かせなくて…きっとインチキなんでしょうね」 そう笑うと、シュトロハイムが口を挟んできた。 「インチキなどではないィイイイイイッ!コルベールの知力と努力の結果ァアアアアアア! 『空の羽衣』を飛ばすことは可能となったのだァアアアアア!」 「ほ、ほんとうですか!」 シエスタが目を輝かせる。 「百聞は一見にしかずゥウウウウウ、ついてこい少年少女どもォオオオオ!」 そういって背を向け歩きだすが、ふと気付いたように振り返る。 「そういえば、ミス・ヴァリエールだったか、君がナチスについてなにか悪いことを言っていたような気がするのだが」 「なに、ナチスって?私そんなもの知らないわよ?」 「そ、そうだな、そうに決まっているな、すまなかったな、では行くぞ、諸君ゥウウウウ!」 To Be Continued...
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Finale ゼロの使い魔コンプリートイラストコレクション 兎塚エイジ アートワークス 発売日:3月25日 全500点以上のイラストを収録した『ゼロの使い魔』画集が登場! 13年の時を経て、ついに完結を迎えた伝説のライトノベル『ゼロの使い魔』――。 そんな『ゼロの使い魔』の世界を彩ってきた、兎塚エイジ先生による全イラストを収録した、 『ゼロの使い魔』のもう一つの集大成となる画集が登場! ここを編集 2006年7月放送開始。プライムビデオが配信開始。続編にゼロの使い魔~双月の騎士~がある。 http //www.zero-tsukaima.com/ 監督 岩崎良明 原作 ヤマグチノボル シリーズ構成・脚本 吉岡たかを キャラクター原案 兎塚エイジ キャラクターデザイン・総作画監督 藤井昌宏 プロップデザイン 飯塚晴子 動画検査 荻野信子、河野隆子、岡本弘樹、高橋真理子 美術監督 廣瀬義憲 色彩設計 石川恭介 撮影監督 丸茂力也 2DCG 向井吉秀 編集 後藤正浩 音響監督 高橋剛 効果 今野康之 調整 黒崎裕樹 録音 三浦拓也 音楽 光宗信吉 設定制作 中川二郎 アニメーションプロデューサー 松倉友二 アニメーション制作 J.C.STAFF プロデュース ジェンコ 脚本 吉岡たかを 絵コンテ 岩崎良明 二瓶勇一 上原秀明 佐々木皓一 鈴木洋平 福田道生 大上相馬 東海林真一 演出 岩崎良明 吉本毅 上原秀明 佐々木皓一 鈴木洋平 高島大輔 山内東生雄 上田繁 矢花馨 作画監督 藤井昌宏 つるあかりみなみ 柴田志朗 中島美子 篁馨 杉本功 亀井治 冷水由紀絵 木本茂樹 中村基 梶谷光春 プライムビデオ ゼロの使い魔 Ep. 1 "ゼロのルイズ" 監督 岩崎良明 再生時間 0時間23分 初公開日/初回放送日 2006年7月3日 提供 ゼロの使い魔製作委員会 ■関連タイトル ゼロの使い魔 Blu-ray BOX スペシャルCD2枚付 Finale ゼロの使い魔コンプリートイラストコレクション 兎塚エイジ アートワークス ゼロの使い魔 ~Last Song from ZERO~ ゼロの使い魔 主題歌集 ゼロの使い魔 サウンドトラック スペシャルCD~聞かないと、許さないんだから!~ ゼロの使い魔 ルイズBEST[CD+DVD] ねんどろいど ルイズ ゼロの使い魔ビジュアルコレクション 画集 兎塚エイジZeroゼロの使い魔イラストコレクション フィギュア・ホビー:ゼロの使い魔 原作小説 ヤマグチノボル/ゼロの使い魔 1巻 rakuten_design= slide ;rakuten_affiliateId= 053df7e0.7c451bd1.0c852203.190c5695 ;rakuten_items= ctsmatch ;rakuten_genreId=0;rakuten_size= 468x160 ;rakuten_target= _blank ;rakuten_theme= gray ;rakuten_border= on ;rakuten_auto_mode= on ;rakuten_genre_title= off ;rakuten_recommend= on ; 随時更新! pixivFANBOX アニメ@wiki ご支援お待ちしています! ムック本&画集新刊/個人画集新刊/新作Blu-ray単巻/新作Blu-ray DVD-BOX アニメ原画集全リスト スタッフインタビューwebリンク集 最新登録アイテム Switch ゼルダの伝説 Tears of the Kingdom Switch 世界樹の迷宮Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ HD REMASTER Switch ピクミン 4 大友克洋 Animation AKIRA Layouts Key Frames 2 小説 機動戦士ガンダム 水星の魔女 1 ONE PIECE FILM REDデラックス・リミテッド・エディション 4K ULTRA HD Blu-ray Blu-ray 劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ 完全生産限定版 Blu-ray 映画『ゆるキャン△』 Blu-ray 【コレクターズ版】 Blu-ray ウマ娘 プリティーダービー 4th EVENT SPECIAL DREAMERS!! Blu-ray 天地無用!GXP パラダイス始動編 Blu-ray第1巻 特装版 天地無用!魎皇鬼 第伍期 Blu-ray SET 「GS美神」全話いっき見ブルーレイ Blu-ray ソードアート・オンライン -フルダイブ- メーカー特典:「イベントビジュアル使用A3クリアポスター」付 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 5th Live! 虹が咲く場所 Blu-ray Memorial BOX 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち Blu-ray BOX 特装限定版 地球へ… Blu-ray Disc BOX 完全生産限定版 神風怪盗ジャンヌ Complete Blu-ray BOX HUNTER×HUNTER ハンター試験編・ゾルディック家編Blu-ray BOX BLEACH Blu-ray Disc BOX 破面篇セレクション1+過去篇 完全生産限定版 MAZINGER THE MOVIE 1973-1976 4Kリマスター版 アニメ・ゲームのロゴデザイン シン・仮面ライダー 音楽集 テレビマガジン特別編集 仮面ライダー 完全版 EPISODE No.1~No.98 MOVIE リスアニ!Vol.50.5 ぼっち・ざ・ろっく!号デラックスエディション ヤマノススメ Next Summit アニメガイド おもいでビヨリ アニメ「魔入りました!入間くん」オフィシャルファンブック 『超時空要塞マクロス』パッケージアート集 CLAMP PREMIUM COLLECTION X 1 トーマの心臓 プレミアムエディション パズル ドラゴンズ 10th Anniversary Art Works はんざわかおり こみっくがーるず画集 ~あばばーさりー!~ あすぱら画集 すいみゃ Art Works trim polka-トリムポルカ- つぐもも裏 超!限界突破イラスト&激!すじ供養漫画集 開田裕治ウルトラマンシリーズ画集 井澤詩織1st写真集 mascotte 鬼頭明里写真集 my pace 内田真礼 1st photobook 「まあやドキ」 進藤あまね1st写真集 翠~Midori~ 声優 宮村優子 対談集 アスカライソジ 三石琴乃 ことのは 亀田祥倫アートワークス 100% 庵野秀明責任編集 仮面ライダー 資料写真集 1971-1973 金子雄司アニメーション背景美術画集 タローマン・クロニクル ラブライブ!サンシャイン!! Find Our 沼津~Aqoursのいる風景~ 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会[復刻版] 梅津泰臣 KISS AND CRY 資料集 安彦良和 マイ・バック・ページズ 『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』編 氷川竜介 日本アニメの革新 歴史の転換点となった変化の構造分析 Blu-ray THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th Anniversary Celebration Animation ETERNITY MEMORIES Blu-ray おいら宇宙の探鉱夫 ブルーレイ版 Blu-ray 映画 バクテン!! 完全生産限定版 アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~ Blu-ray BOX 初回生産限定版 はたらく細胞 Blu-ray Disc BOX 完全生産限定版 Blu-ray 長靴をはいた猫 3作品収録 Blu-ray わんぱく王子の大蛇退治 Blu-ray 魔道祖師 完結編 完全生産限定版 魔道祖師Q Blu-ray Disc BOX 完全生産限定盤 にじよん あにめーしょん Blu-ray BOX 【特装限定版】 Blu-ray 鋼の錬金術師 完結編 プレミアム・エディション Blu-ray付き やはりゲームでも俺の青春ラブコメはまちがっている。完 限定版【同梱物】オリジナルアニメ Blu-ray「だから、思春期は終わらずに、青春は続いていく。」
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学院の襲撃劇から一週間後。 「お入りなさい、ルイズ」 アンリエッタの声が、トリステインの王宮に響き渡る。 「失礼します、姫……女王様」 「いやね、私とあなたの仲じゃない、今までどおり姫様でいいわ」 フフ、と笑みを漏らすアンリエッタに、ルイズはぎこちない笑顔を返した。 それを見たアンリエッタは、ふとわれに返ったように話し出した。 「ルイズ。学院では災難だったようね。教員には死者も出てしまったとか」 「はい。姫様、やはりアルビオンの手勢の仕業ですか?」 「おそらくそうでしょうね。いまの段階では詳しいことまではわかっていないけど」 ルイズは唇をぎゅっとかみ締める。 「やはり、これが戦争なのですね……私はいままで戦争のことを甘く見ていたのかもしれません」 「どういうことかしら?」 「私はあの襲撃があるまで、敵を、アルビオンを憎らしく思うばかりでした。ただアルビオンをやっつけてやる、敵をやっつけてヴァリエール家のみんなを見返してやるって思ってました。でも、コルベール先生が死んでしまってからは、なんだか怖いんです。はは、可笑しいですよね。笑ってください。私のような愚かな臆病者がヴァリエール家の名前を受け継ぐ資格なんてないんだわ」 「可笑しくなんかありませんわ。ルイズ。それは生き物として正当な事です。それにあなたのことを誰が臆病者なんて笑いますか。そうですね、マザリーニ?」 女王は傍らにかしずく家臣に語りかけた。 「左様でございます。伝説に聞こえた勇者といえども、一大決戦の前には恐れを抱いたと言い伝えられております。ましてやあなたは貴族といえどもまだ乙女。そのようなお方が勇気をもてあそばれていれば、私ども男は立つ瀬がありませぬ」 「まったく、しょうがないやつだよ」と、愚痴をこぼすのは岸辺露伴にたいし、 「仕方がないだろう。ルイズはまだ16なんだ。人の死を経験するには多感すぎる」 とため息がちに返すのはブチャラティであった。 「相変わらず使い魔さんは面白い方たちですわね」 アンリエッタは微笑んだ。奇妙に権威の高くなっているアンリエッタの威厳がややなくなりほっとしたルイズは本題に入ることにした。 「ところで、私と使い魔に旅立ちの用意をさせるとのことですが、ついにアルビオンに行くのですか?」 アンリエッタは顔に陰のある表情を見せる。 「ええ、いまわがほうの艦隊がアルビオンに向かっています。その艦隊がアルビオンの艦隊にかち、ロサイスの軍港を手に入れれば私たちは出発します」 「勝てるのですか?」 「そのために新種の軍船と、アルビオン人の士官を艦隊につけましたが……正直どうなるかわかりませぬ」代わりにマザリーニが答え、窓の外を憂うように見た。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 「始まりましたな」 アルビオン空軍司令官は、艦長のその言葉に、うむ、と頷いた。 ひとまずは、彼の望んでいるとおりに、常套的に戦闘が進んでいる。 アルビオンの誇る竜騎士隊。そのうちの風竜が、敵艦隊の上空に到達したのだ。 彼らの任務は、敵竜騎士と交戦し、あるいは、彼らより足の遅い火竜を護衛することである。 ことハルケギニアに関して言えば、アルビオンの風竜騎士隊に対して、互角に戦える竜騎士隊はない。 しかも、今回のトリステイン艦隊には、ごくわずかしか、竜騎士の護衛がいないのだ。 トリステインからアルビオン大陸まで到達し、そのまま戦闘できる竜騎士は存在し得ない。 そこまで竜を操る人が、疲労困憊を極めて戦闘不能になるのだ。 そのため、彼らには、戦列艦の甲板に乗り合わせた少数の竜しかないハズである。 それも、アルビオンの、熟練の竜騎士にかかっては戦力たりえないだろう。 アルビオン大陸を防衛する、守る側の利点の一つといえた。 艦長達の見据える視線の先では、彼らの望む地獄が始まっていた。 トリステイン空軍は喧騒に包まれた。 「方向右方二十度ッ! 敵竜騎士二十頭、来ます!!!」 「迎撃ヨーゥイ!!」 「火竜、こちらに向かって接近!」「五頭、近いッ!」 「帆を守れ!」 「速力を落とすな!」 「ヘッジホッグ用意!」 最後の怒号とともに、船の甲板に多数の投石器が甲板に並べられた。 そこに搭載されるのは、火縄で数珠のように連なったちいさな砲弾たち。 「照準、上に4コマ、右に6コマ修正ッ!」 「一番右のやつだ! 狙えッ!」 平民の士官により、手慣れた手つきで操作する自由アルビオン軍の兵。 その砲弾はディテクトマジックの応用魔法がかかっており、 竜騎士のような、魔力を持つ生物に接近すると発火する仕組みになっていた。 「射ェーッ!」 狂気の花火がはなたれた。 多くがむなしく虚空へと消え去っていく中。 わずかにだが本懐を遂げる砲弾たちがあった。 火につつまれ、堕ちてゆく竜がある。 だが、それ以外の火竜は、弾幕を無視した。 怒涛のごとく、艦船に突撃を続行する。 自身が火達磨の状態で突っ込む竜騎士もある。 その火の塊は、一隻の小型艦艇と衝突した。 「『ハーマイオニー』大破ッ! 炎上!」 「高度が低下してゆきます!」 ―― ボーウッドは、その戦闘風景を、自分の竜母艦『ヴュセンタール』の指揮所にて、艦長として眺めていた。 誰が見ても、戦端が開かれたのはわかっている。 だが、そのなか、副長はあえて報告した。 「艦長、戦闘が開始されたようです」 ここからでは、『ハーマイオニー』の高度の低下が、これ以上の被害を受けないための措置なのか、損傷のための墜落なのかはわからない。 このフネ、『ヴュセンタール』は、それほどまでに戦場空域から離れていた。 「うむ。わかった」 副長の、報告の形をとった問いかけに対し、艦長のボーウッドは、彼の期待したような交戦命令は発しなかった。 副長は自分の上司に、とてつもなく深刻な疑問を抱いた。 このアルビオン人は信用できるのだろうか? 仮に信用できたとして、はたして有能なのか? 「副長」 「ハッ」副長は敬礼を返す。彼は思った。 隷下の竜騎士隊たちにたいし、いよいよ出撃命令を下すのだろうか? この艦長、ボーウッドは、なぜか竜を甲板にも出さず、格納室へ待機させたままだ。 副長の見るところ、すでに友軍の竜騎士、戦列艦付きの竜騎士隊は圧倒されつつある。 今のままでは、敵の竜に戦場の制空権を奪われかねない。 われらの艦長はあくまでも冷静のようだが。と副長は内心考えていた。 臆病風にでも吹かれたか? このアルビオン人は? 副長のその思考を、当の艦長が邪魔した。 「我々は、この『竜母艦』が戦闘艦であることを熟知している。だが、敵のアルビオン艦隊からしてみれば、どのような艦種に見えるだろうか?」 副長は、自分の直接の指揮官に対し、最低限度の礼は守った。 「……おそらく、彼らは本艦を輸送艦と思うでしょうな」 「そうだな。本官もそう思う」 だれがいったか、 「……艦長、命令を」 この言葉は、艦長以外の、指揮所に居合わせたトリステイン軍人の総意でもある。 ボーウッドは、戦場を眺めながらゆっくり口を開いた。 「本艦を輸送船とみなしているのであれば、交戦中は、我々を脅威とはみなすまい」 副長は、艦長の言うことがいまひとつわからないでいた。 この間艦長は、アカデミーで学生を相手に講義するプロフェッサーのような態度で部下に接している。 「戦術教義上、艦隊から離れている輸送艦を攻撃するときは、余力が発生したとき。勝負が決したときである。 すなわち、彼らが勝ったと思っているときだ。そのときまで、彼らはこの『輸送艦』を略奪すまい」 「……どういうことでしょうか?」 「だから、その決定的な局面まで、本艦は攻撃を受けずにやり過ごすことができる」 副長は険のかかった顔を前面に押し出し、はっきりと詰問した。 「艦長の真意をお聞かせ願いたい」 ボーウッドはそれに答えず、たった一つ、命令を発した。 「竜騎士隊たちに令達。別命あるまで待機」 副官は開いた口がふさがらない思いだった。 ボーウッド、いや、この男は戦わないつもりなのか? ―― 小さな敵の船がたくさんこちらにやってくる! レドウタブール号の甲板に居合わせた、マリコルヌがそう思っていると、彼の目の前に鉄の塊が突き刺さった。 なに、これ…… あ、敵の放ったバリスタの矢か…… 彼がそこまで考えたとき、マリコルヌは頬を思い切り叩かれた。 見れば、のこぎりを持った平民が自分を怒鳴りつけている。 「バカ野郎! メイジならさっさと魔法を唱えて敵を止めろ!」 そういって、彼は甲板に突き刺さったバリスタの先を指差した。 そのバリスタの矢尻には、巨大な鉄の鎖がついており、その先は敵の船につながっている。 そして、その鎖をわたって、敵のメイジたちがやってきている!!! マリコルヌは恐慌のうちに、わけもわからず魔法を唱え、放った。 偶然か、必然か? マリコルヌの放った魔法は、一人の若いメイジをかすった。 結果、彼を鎖から引き離した。 その敵メイジは中空に静止する。 その男は『フライ』を唱えているため、彼に、魔法による攻撃戦力はなくなった。 とにかく、マリコルヌは一人の敵メイジの無力化に成功した。 だが、事態は刻一刻と変化を遂げている。 マリコルヌは、自分の戦果を確認する暇も与えられないまま、新たな目標に向かって攻撃魔法を唱え続けた。 その周りで、船員たちの怒号が鳴り響く。 「急いで鎖を切断しろ!」 そうどなる水兵は鉈を持っている。 「接舷されたら降下猟兵が降って来るぞ!」 斧を持った男がそれに応じる。 「こっちにも手斧を頼む! 至急だ!」 どこかから野太い怒号が聞こえる。 「くそっ! どんどん引き寄せられているぞ!」 「弓兵、矢を増やせ!」 「近接戦闘用意! 来るぞ! 槍衾だ!」 この後、マリコルヌに理解できた言葉はなくなった。 彼は、自分が今、何をしているかもわからなくなったからだ。 かろうじて自分が小便を漏らしているのがわかる。 だが。 自分がどの魔法を唱えているのか。 隣にいる人の気配は、敵なのか。それとも味方なのか。 それすらもわからないまま、マリコルヌは杖を振り続ける。 ―― ボーウッドの、先ほどの副長との会話から半刻後。 「君、トリステインでも、竜騎士たちは狐狩りをするのかね? その、竜に乗って」 「ええ、行いますが。それが何か?」 彼にそういわれた若い竜騎士、ルネ・フォンクは怒気を隠さずに答えた。 竜母艦の指揮所に呼ばれ、すわ出撃か、と思ったらこれだ。 何をのんきな。 一体この男は何を考えているんだ? やっぱりみんなの言っていたとおり、このアルビオン人は裏切っていたのか? 「それでは、君ならばわかるだろう。戦と狩は根本的な所で同一なのだ」 それはそうだろう、とルネは思う。 犬に周りを囲ませて退路をふさぎ、自分たち竜騎士と犬で目標を討つ。 現に今。 犬をアルビオン艦艇に例えれば。 友軍の艦隊が、狐のように包囲されてしまっているのだ。 しかも、戦列艦による艦砲射撃のおまけつきだ。 初陣の自分でも、トリステイン艦隊が負け始めていることがわかる。 そのような状態で、このフネは戦闘に加わることも無く、自分の高度を上げ続けている。 「そんなことっ、士官学校を出たものならば常識のことです」 ルネは、己の持つ最大限の自制心を発揮した。 「ならば、なおのこと良い。ふむ、トリステインの士官学校は、聞いていたほどには堕ちていない様だな」 なかばたたきつけるように返答したルネに対し、ボーウッドはあくまでも鷹揚に返す。 このアルビオン人を戦死させようか? 『流れ弾』にあたった、『不幸な戦死』をあたえるべきだろうか? ルネがそこまで思いつめ始めたとき、不意に、当の士官から質問された。 「君、狐狩りの最中に、竜騎士が守るべき三大規範は何だ?」 あまりにも戦場とは異なる質問。 その思わぬ質問に、唖然としながらも、ルネは返答することができた。 「まず、獲物に反撃されないように注意すること。次に、獲物に狙いをつけた人と、その獲物の間に自分の身をさらさないこと。最後に、獲物を狙って急降下している、他の竜の進路を邪魔しないこと。以上のみっつです」 ボーウッドはうなずいた。 「そのとおりだ。ならば、諸君ら竜騎士隊に対し、今から命令を発す。 アルビオンの狩人たちに対し、その規範を破りたまえ。可及的速やかにだ」 ルネたち竜騎士は、一瞬の遅れの後、敬礼を返す。 ボーウッドは簡素な敬礼を返しながらも、簡潔に続けた。 「だが、まずは生き残ることを考えろ。彼らは、君たちよりもよほど竜の扱いに長けている。敵にとっては、動いて、生き続けている的が多いほど、獲物に対する狙いがつけにくくなるのだ。さあ、行きたまえ。出撃だ」 「「ハッ!!!」」 ルネ・フォンクと仲間たちは、はじかれたように、自分の竜のもとへと駆け出した。 彼ら自身が狩人となる為に。 または、獲物と成り果てる為に。 彼らまだは知らない。 同じ船に乗るマンティコア隊とグリフォン隊には、別の命令が発せられたことを。 ―― アルビオン竜騎士団、風竜第三連隊、通称銀衛連隊。 その隊長、サ-・アンソニーは己の竜を操りながら、眼下で繰り広げられている戦況を冷静に俯瞰した。 そこでは、敵である戦列艦隊群を小型のスループ船が包囲している。 味方のスループ船が二手に別れた、二つの縦列陣。 一方は敵進路の右方に展開し、もうひとつは後方へと回り込んでいる。 彼らは、遠方からの援護射撃の元、大型船の戦列艦と互角以上に戦っていた。 味方の小型艦は、勇敢にも戦列艦に接舷し、突っ込み、乗員を敵甲板に乗り移らせている。 まるで海賊だな。 彼はそう思ったが、実際は海賊以上であった。 小型艦があまりにも接近したため、敵戦列艦の砲撃では、彼ら自身も誘爆をおこしかねい状況だ。 また、敵艦のうちいくつかは、高度をとることを試みている。 だが。 「クオックス小隊、降下開始!」 アンソニーの近くで、輪乗りをしていた火竜の乗り手が叫ぶ。 その掛け声とともに。 合計十五頭の火竜が、高度を上げ始めた敵艦にたいし急降下を開始した。 一方で、すでにそのような急降下を終え、敵の帆を焼き払った竜騎士隊がいた。 彼らは高度をあげ、元の攻撃開始座標まで上昇するつもりだ。 今のところ、我々は勝利しつつある。 アンソニーには、戦場で、そのように考える余裕があった。 その理由は、彼がベテランの竜遣いであったからだ。 だが、一番の理由は、彼ら風竜の主敵である、敵竜騎士隊を全滅させてしまったからである。 現在、高度を上げつつある火竜部隊。 たしか、スワローテイル小隊だったな。 アンソニーがそう思ったとき、彼らの統制の取れた隊形が。 急にバラバラに乱れていく光景を目の当たりにした。 「各隊、散開!」 彼は無意識のうちにそう叫んだ。 だが。 その命令は、一寸程遅かった。 次の瞬間、猛烈な魔法の奔流が、はるか上空から彼らに襲い掛かった。 今の一撃で、アルビオンの竜騎士の半数が失われた。 歴戦の戦士であるアンソニーの脳裏に、そのような電算結果がはじき出された。 「糞ッ!!!」 彼自身はそういいつつ、自分の風竜に回避のため旋回行動をとらせた。 何よりも痛いのは、この混乱のせいで、まともな指揮が取れなくなったことだ。 彼がそう考えているうちに、間抜けな味方から、次々に打ち落とされていく。 ―― ルネ・フォンクとその仲間達は、敵の誰にも気づかれること無く、戦場の上空に到達することができた。 彼らの真下には、負け始めた味方。 ルネと味方との間に、うようよといる敵竜騎士。 ルネ達は太陽を背にし、急降下を始めた。 無論、魔法を唱えながら。 彼らが急降下しながら放った最初の一撃が、敵にとって一番の致命弾であった。 ルネらの存在は直前まで敵に知られることが無かった。 そのため、ルネたちは思い思いに、自分が得意とした大魔法を唱えることができた。 彼らの大規模な効力魔法射撃により、敵火竜の殲滅に成功する。 一部風竜の撃墜にも成功した。 だが、さすがはアルビオン竜騎士団。 この状態で、かなりの風竜騎士が奇襲の回避に成功している。 彼らは、竜の手綱を翻し、すかさず反撃に移る。 高度の差の不利にもかかわらず。 彼らはトリステイン竜騎士達の後ろにぴったりと張り付いた。 トリステインとアルビオンの竜騎士の技量の差である。 だが、このとき。 ルネたちトリステイン竜騎士は、ボーウッドから教えられた新戦法を実行していた。 アルビオンの狩人が、トリステインの竜の後ろに付き続ける。 しかし、トリステインの戦士は戦士らしからぬ態度を見せた。 彼らは、ひたすら逃げに打って出たのだ。 しかも、高度をとりながら。 高度をとる、ということは、減速することと同義である。 たちまち追いついたアルビオン竜騎士が、杖を振り下ろす。 否、振り下ろさんとするとき。 まさに、そのとき。 太陽のぎらついた輝きの中から、新たなトリステインの竜騎士隊がその戦渦に突入した。 今までいた敵に狙いをつけていたアルビオン竜騎士は、その流れにまったく付いていけない。 アルビオンの狩人に、攻撃を食らって墜落する者が続出した。 攻撃を食らわずに済んだ狩人たちも。 新たな騎士と今までの騎士。 どちらに狙いをつけるか決めかねた。 また、決めた人間も。 狙いをつけたとたんに、そのトリステインの竜は逃げ出す。 それを追いかけるうちに、別の戦士に攻撃される。 アルビオンの竜騎士達は。 こうして、戦場の狩人たる資格を失っていった。 ―― 「いったいどうしたのだ、これは!」 アルビオン軍の司令官はそう叫んだ。 乗り合わせた、レコンキスタの政治将校とともに。 彼は驚愕した。アルビオンの竜騎士は、世界最強ではなかったか? だが、その疑問は晴らされることは無かった。 「敵襲ゥ!!!」 その絶叫で、彼はようやく自分の乗る戦列艦が襲撃されているのを自覚した。 だが、何者によって? 政治将校は、その襲撃の報告を虚言と信じた。いや、自分を騙した。 トリステイン艦隊の、戦列艦すべてはかなり遠くにある。 トリステインの竜騎士は、アルビオンの竜騎士に対して(信じがたいことに)互角以上に戦っている。 そんななか、戦列艦の砲射撃にかまわず攻撃できる敵戦力があるとはとても考えられない。 そのように考えている彼の指揮所に、一匹のマンティコアが侵入してきた。 これは夢だ。 「敵のマンティコアなど、ここまで飛んでこられるわけがない! ハルケギニアの大陸まで、どれだけあると思っている!!!!」 彼の、喰われるまえの最後の叫びだった。 ―― 「勝ちましたな」 そういった副長は、肝心のボーウッドが相変わらず仏頂面な事実に内心驚いていた。 護衛艦を欠いた敵戦列艦にとって、有効な攻撃手段は艦砲射撃のみである。 ボーウッドの命によって、幾十もの獣が、戦列艦の甲板員を食いちぎっていく。 彼らに、反撃するすべは無きに等しい。 敵総指揮官が乗ったと思われる戦列艦群から、敵戦艦がひとつずつ、だが、確実に堕ちて行く。 味方の艦隊も、ボーウッドが放った竜騎士隊の援護を受け、徐々に制空権を取り戻しつつある。 彼らが勝利を収めるのは時間の問題であった。 「副長、ここでこういうのもなんだがな」 ボーウッドは、副長を見もせずに話しかけていた。 「ハッ、何でしょうか」 「私は、人殺しというものが好きではないのだ」 ボーウッドに向かって、思わず敬礼を行った副長は。 この勝利をもたらした張本人に個人的な敬意を感じ始めていた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 昼。ガリア王宮にて。 ドッピオが王宮の主、ジョゼフに報告を行っていた。 「トリステインも、あの学院襲撃にあいようやく重い腰を上げたようです」 「いよいよ、アルビオンでの戦いの火蓋は切られたようだな。結構結構」 王座の主は鷹揚に笑う。その目線の先には、アルビオンのロサイス港が映見の鏡に映されていた。所々戦争の煙がたなびいている。 「いいんですか?せっかく苦労してあのクロムウェルを帝位につけたのに」 「気にするな。苦労したのは私ではない。お前だ」 「……そうですけど」 「それに資金はたっぷりとある。お前が売りさばいた麻薬の資金がな」 「ひょっとしてパッショーネの資金、全部つかっちゃったんですか?」 「いいではないかドッピオ。狗の相手よりは戦処女の相手をしたほうが万倍も色気があるというものだ。さあ、アルビオンに向かうのだ。混乱の刻印を刻みに。死者の慟哭を叫びに」 「了解しました。王様」 ドッピオは敬礼をかざし、王宮の間から退出した。 しばらくの時間のあと、ジョゼフは王の椅子から立ち上がった。 沈黙の後、王の口元からクックックと笑いがこぼれる。 「わが弟、シャルルよ。見ているか、お前の弟の悪業を。オレはここまでやっても心は痛まぬ。お前を殺したときの後悔等と比べれば今の心の痛みなど無いも同然。お前は優しいからあの世から嘆いているだろうな。今ごろ自分がガリア王になっていればと、そう思っているのではないか?今さら遅いわ。すべてはオレがお前を殺した10年前から事態は転げ始めていたのだ」ジョゼフは気にした風もなくメイドをよび、ワインをグラスに注がせた。 「わが弟よ。お前のいない世界はなんと感情を感じぬのか!このくだらない世界など……いや、あえて言うまい。シャルルよ、あの世から見ておけ。俺はこの世界で自分がどこまでやれるか試してやるつもりだ。このブリミルの世界に、どこまでオレの劣情が刻みつけられるのか。その暁には、おそらくひどく後悔するのだろうな。ああ、わくわくするぞ。どきどきするぞ。後悔と懺悔が漣のように我が身を襲うのであろうな!それを思うだけで今から果ててしまいそうだ!」ジョセフの高笑いはその後しばらく続いたのであった。