約 5,243,449 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2193.html
※今までに書いたもの 神をも恐れぬ 冬虫夏草 神徳はゆっくりのために 真社会性ゆっくり ※今現在進行中のもの ゆっくりをのぞむということ1〜 ※注意事項 ゆっくりの形じゃ最初のひと跳ねもできないだろとか突っ込み禁止。 お日様昇って天高く、ぽかぽか大地を照らしてる。 風はびゅうびゅうまだまだ寒く、北から元気に吹いて来る。 睦月一月、春まだ遠い。とある冬の小春日和。 ここ数日続いていた陽気に誘われて、うっかりおうちの外に出かけてしまったれいむ一家は困っていた。 「ゆううぅぅ……」 「「「「「みゅぅぅぅ……」」」」」 人里近い川べりに、しょんぼり屯する一家、母れいむと六匹の赤れいむの総勢七匹。 水面に困り顔の影を落としても、事態が改善するわけもなし。 「水さん、ゆっくりしていってね!」 「みじゅしゃん、ゅっきゅりちていっちぇにぇ!」 もちろん川の流れに呼びかけたところで、急流がゆっくりしてくれるはずもなし。 さらさらと音を立てて流れる小川に恨みがましい目を向けて、「はぁ」と溜息と共に愚痴を吐くのが関の山だ。 「これじゃかえれないよ……」 「みゃみゃ、ひゃやくおうちにきゃえりちゃいよ……」 そう、れいむ一家のおうちはこの小川の向こうにある。 川幅おおよそ十尋にして、深さはおおよそ一尺ほどもあるだろうか。 この小川、一昨日れいむたちが渡った時には幅も深さも半分ほどでしかなかった。ゆっくりでも這って渡れる浅瀬もあった。 それが急に大きくなったのは、れいむたちを外に誘い出した小春日和に原因がある。 大本を辿れば妖怪の山にたどり着くこの小川に、この数日の陽気で生まれた雪解け水が一気に流れ込んだのだ。 妖怪の山から霧の湖へ、霧の湖からこの小川へ。 本格的な春が訪れた訳ではないから、流出した水の量もまだ微々たるもの。 だが、その微々たる量が、今はこうしてれいむたちの帰宅を断固として拒んでいた。 「ゆぅ……どうしよう。こまちのわたしぶねはここからだととおいし……」 この小川を遡っていけば、上流にゆっくりこまちが営む渡し舟の里がある。 だが、そこまで行こうと思えば、ゆっくりの足では丸一日。赤ちゃん連れでは二日を見ないと難しい。 今の一時的な増水が収まるまで待つのとどちらが早いか、れいむの餡子脳では判断しにくいところだった。 というよりも、餡子脳では考えても無駄なことであった、というべきか。 「あ。ゆっくりだ」 「ほんとだ。親子だ」 「ゆ?」 親子揃って無益な思索にどれほどの時間を費やしたことだろう。 状況の変化は、結局れいむが起こすのではなく外部からやってきた。 「ゆゆっ。ゆっくりしていってね!」 「ゆぅ〜、にんげんしゃんだ!」 「ゆっくちー!」 「ゆきゅちちちぇいっちぇにぇ!」 くるり、とれいむ一家が振り向いた先には数人の人間の少年がいた。 口々に挨拶するゆっくり一家に、人間に対する不審はない。 もともと魔法の森の奥に住むこの一家のこと、人間に出会うことも稀なために先入観というものがないのだ。 「にんげんさんは、ゆっくりできるひと?」 だから、とりあえず親れいむは聞いてみた。 相手のことをれいむは何も知らないのだから、本人に聞いてみるのが一番だ。 人間さんはとてもゆっくりできると、れいむの餡子脳の中に伝わる一族の記憶が伝えている。 きっと快く答えてくれるだろうと、根拠なく想った。 「ん? 俺たちはゆっくりしてるぞ」 「ゆっ。よかった、ゆっくりしようね!」 「「「「「ゆっきゅちちようね!」」」」」 返ってきたのは期待通りの返事で、れいむたちは今の状況も忘れてすっかり嬉しくなり、ぴょこんぽこんとその場で飛び跳ねた。 一方の人間の少年たちといえば、もちろんその場で飛び跳ねるような事もなく、ふいっと視線を水かさの増した川へと遊ばせる。 「……川を、渡りたいんだ?」 「ゆっ! そうだよ、れいむたちのおうちはこのかわさんのむこうにあるんだよ!」 ぴょこん、少年の問いかけにもう一度れいむはその場で飛び跳ねた。 人間さんと会えた喜びでゆっくり忘れてしまっていたが、今はそれが一番大事なことのはずなのだ。 川の流れは激しくて、れいむ家族は愛するれいむ(同種のつがいらしい)が待つおうちに帰れない。 「ふぅん……」 「でも……ねぇ、れいむ?」 そう窮地を必死に訴えるれいむにも、少年たちの視線は相変わらず川のどこかに向けられていた。 人間さんがどこを見ているのか、れいむは不思議に思って高い場所にあるお顔がどこを見ているのか必死に追いかける――と、 少し上流の川の中ほどをゆっくり進むそれを発見して納得がいった。 「まりさたちは川を渡ってるよ?」 れいむが見つけたそれ、人間さんが指摘したそれは、別の群れのまりさの家族が川を向こう岸に帰っていく光景だ。 親まりさ一匹に、赤まりさ六匹の計七匹。 川岸で侘しく佇むれいむ一家と同じ数。でも彼女たちはおうちに帰ることが出来て、れいむたちには同じことはできない。 「ゆぅ……まりさはおぼうしでかわをわたれるんだよ。れいむにはできないんだよ……」 「ゅー。まりしゃのおぼうち……いいにゃぁ……」 「うらやまちいにぇ……」 だって、それが生まれついてさだめられたゆっくりの種としての特徴だから。 まりさは帽子を舟代わりにして水辺を過ごすことができて、れいむは川を渡ることが出来なきない。 親一匹と赤ゆっくり六匹、羨ましそうにまりさたちの後姿を見送ることしか出来ないのだ。 れいむたちだって、おうちにかえりたいのに。 おうちにかえって、もう一匹の親れいむと何日かぶりにすりすりしたいのに。 ちょっとしたお散歩と餌集めのつもりが、陽気に誘われて随分遠出してしまった。 さぞかし、お留守番の家族は心配しているに違いない。早く、顔を見せてゆっくり安心させてあげないと。 思えば、最初から留守番れいむは遠出に反対していたのだ。 ここまで連れて来た六匹の赤ちゃんたちは、れいむとれいむの初めての子供だった。 秋口にれいむ達はつがいになって、冬篭りに入る直前に初めてのすっきりでこの子達を作った。 たっぷり食料を蓄えた巣穴で、安全に大きくなるまで育てる為に。 春の目覚めを十分に成長した子ゆっくりとして迎え、危険の少ない状態で外界での生活をスタートさせるために。 ああ、だから赤ちゃんたちを連れてくるべきではなかった。 今はちょっとゆっくりできそうだからって、お外の世界を見せてあげようなんて思うんじゃなかった。 れいむの反対を聞いておくべきだったのだ。何がおきるかわからないよ、ってれいむはちゃんと注意してくれていたのに。 川の流れに逆らって、ゆっくり遠ざかるまりさの姿を見送りながら、お出かけれいむの焦りは募る。 かなわない願いだけれど。 今は、ほんとうに、早く、帰りたい。 「ふぅん……じゃ、渡れるようにしてやろうか」 ――その、見送ることしか出来ないはずのものを、人間さんがこともなさげに聞いてきた。 びっくりして、れいむ一家はお互いに顔を見合わせた。 与えられた衝撃と、それによって生じた困惑と、そこに芽生えた期待の大きさは、みんな同じだった。 この川を渡るなんて、れいむたちにはとてもじゃないけれどできないこと。 だけどれいむたちより大きくて、とてもゆっくりしているはずの人間さんの言うことなのだ。 人間さんが口にすることならば、それはとってもゆっくりできることのはず。疑うことなんて何もない。 そして、お出かけれいむだけではなく、赤ゆっくりの心も一つ。 おうちに早く帰りたい。 れいむ一家は「ゆっ」と一つ頷きあって、それから一斉に人間さんへと顔を向けた。 「ゅんっ、ほんちょ?」 「にんげんしゃんはゆっくちできるね!」 「ゆっ、ありがとうにんげんさん! れいむ、とってもうれしいよ!」 そして顔の次に向けるのは、感謝感激雨あられ。 なんて人間さんは凄いんだろう。 れいむたちに出来ないことを簡単にやってのけるのだ。 「んじゃ、と……おい」 れいむたちが提案を受けれたことに、少年たちも満足そうにお互い笑いあった。 ただし、全員ではない。幾人かは、どこか不満そうな顔で仲間たちの行動を少し離れたところから見守っていた。 何か言いたげなその連中を一瞥して黙らせ、れいむを助けてやると請け負った少年たちはさっそくれいむ親子の周りに集まる。 ひょい、と男の子の一人がれいむを顔の両側から抱え込むようにして手を差し込んでくる。 少しびっくりしたけれど、れいむはそれに逆らわない。きっと、これからゆっくりできることをしてくれるはずだ。 次の瞬間、地面が、すぐ側にいた赤ちゃんが、目の前にどこまでも広がるように見えた川面さえも一気に遠ざかり、 視界が大きく広く拡大する。 その絶景、まるで鳥さんになったよう。 「ゆ? ゆーん、おそらをとんでるみたい♪」 「おしょらをとんじぇるみちゃい!」 気が付けば、赤ちゃんたちもいつの間にか少年たちの手にそれぞれつかまれている。 今まで目にした事がないような光景に出会っているのは、赤ちゃんたちも同じこと。 きゃっきゃと賑やかに声を交わすその様子は、とってもゆっくりできているようだった。 でも、『人間さん』の中には『ゆっくりできていない人間さん』もいたようだった。 「おい、やめなよ。いじめはよくないってけーね先生もいってただろ?」 「ゆぅ、いじめはゆっくりできないよ?」 少年たちの一人――仲間たちから先ほど距離を置いた少数派の少年たちの一人が、少し震える様子で上げた制止の声を聞いて、 れいむは思わず自分を抱える少年の顔を見上げて言った。 不満を洩らした人間さんは、れいむのかわいい赤ちゃんを持っていない。れいむたちより人間さんの方が数が多かったらしい。 「ゆー?」 「ゆゆっ?」 れいむのかわいい赤ちゃんたちも、きょとんとした顔を自分を手にした人間さんの顔へと向けていた。 それは、不満顔の人間さんが怒るのも当然だとれいむは思う。 こんなにもかわいらしい赤ちゃんを、手の上に載せて挙げられないというのはあまりにも不公平というものだろう。 独り占めなんていじめっこのすることだ。ゆっくりの世界では一番しちゃいけないことのひとつなのに。 「バーカ、いじめじゃないよ。儀式だ儀式」 「こないだ先生に習ったろ? 蜀の国の諸葛孔明は荒れた川を治めるのに人間の顔に似たお菓子を川の中に投げ込んだって」 「それが饅頭のはじまりだってね。だから、これが饅頭の正しい使い方だろ?」 「そうだけど、そうじゃないだろ。先生にバレたら怒られるぞ」 「ゆ……ゆゆー?」 人間さんたちのお話の内容は、れいむには難しくてわからない。 なんでケンカしているのかも、いまいちはっきりとはわかっていなかった。 わからないけれど、人間さんたちが普通にれいむたちを運んで川を渡してくれるわけではないことだけはわかった。 それはそうだろう。川はいつもより深くて急だ。 れいむたちに渡れないんだから、きっと人間さんにも危ないんじゃないだろうか。 だから、れいむたちにも渡れるように、逆に川さんにゆっくりしてもらうんだろう。 「ゆゆっ? ゆっくりりかいしたよ! かわさんにゆっくりしてもらうほうほうがあるんだね!」 「ゆー! ゆっくちできにゃいかわさんが、ゆっくちできりゅかわしゃんになるんだね!」 「ゆう、にんげんしゃんはすぎょいんだにぇ!」 赤ちゃんたちがいうように、人間さんは、やっぱりすごい。 川さんにゆっくりしてもらえる手段なんて、れいむどころかドスもぱちゅりーも知らないはずだ。 れいむは人間さんの会話を素直に受け取り、とても素直に感動する。 「実はそうなんだよ、れいむ。だから一緒にがんばろうな」 「あのなぁ……」 「ゆゆっ。よくわからないけど、れいむがんばるね!」 人間さんの一人がえっへんと胸を反らせて答え、別の一人が、「はぁ」と疲れたような吐息を吐いた。 ため息をついた一人はぶすっとした仏頂面で胸張る一人をにらみつけ、 「俺たち知らないからな」 「バラさなきゃ、先生だってわかんねえよ。っつーか先生に気づかれたらお前ら殴るからな」 逆に凄まれて「わ、わかったよ」と怯む。 やっぱり、れいむのあかちゃんを持ちたいのに、独り占めされてるから怒ってるんだ。 れいむはそう理解して、頭上の少年にわが子を宥めるような優しい声を掛ける。 「ゆぅ。にんげんさん、けんかはよくないよ?」 「よしよし、待たせたな。じゃあ行くぞれいむ」 少年は、れいむのいさめには答えない。変わりに笑って川のほうを見るようれいむに促した。 いよいよ、この川を渡れるようにしてくれるらしい。 れいむは先ほどの人間同士のやりとりなど忘れ、満面の笑みがパァっとれいむの顔に咲く。 「ゆーん。これからかわさんにゆっくりしてもらうおねがいをするんだね! ゆっくりがんばってねにんげんさん!」 「お前も頑張るって今言ってたじゃん……」 それは、期待通りの話題変更ではあったけど。 れいむの能天気な受け答えを聞いた少年と、彼の仲間たちの顔にいつしか強い嘲りと愉悦の色が浮かんでいた。 だが、近づく帰宅への期待に胸膨らませるれいむ一家は、頭上はるかな人間達の表情の変化に気が付かない。 気付けといっても、顔を直接見あげることの出来ない位置に固定されたれいむたちには無理な話ではあったが。 「……ゆゅっ」 れいむ一家が微妙な空気の変化に、なにも気が付くことのないままに。 一人の少年が赤れいむを掴んだ右腕をすっと身体の後ろに引いた。 唐突な動きに赤れいむはほんの少し驚いたようだったが、怯えの色は微塵もない。 人間さんはゆっくりできる存在で、ことにこの人間さんたちはれいむたちを助けてくれる特別ゆっくりな存在なのだ。 なんで恐がる必要があるというのだろう。 「おねえちゃん、りぇいみゅおしょらをふわふわすぃーってとんじぇりゅよー」 「きゃっきゃっ♪」 「ゆっくりできてるねおちびちゃん!」 「うまくやれよー、弥平次」 「任せとけって」 赤ゆっくりたちの歓声、それを見守る親れいむのゆっくりした声、はやし立てる周囲の少年たち、 そんな彼らに向けて空いた側の手でガッツポーズを作って応える少年。 何が起きようとしているかわかっている者と、何もわかってはいない者。 今だけは、お互いの感情は一致している。 「できればまりさにぶつけたいな」 「あ、それ面白そう。ぶつけたヤツが一等賞だ」 「ゆゆーん、もうすぐおうちにかえれるね!」 「おうちにきゃえったらおきゃーしゃんとゆっきゅちちようにぇ!」 即ち、これから起きること、その先に待つことへの期待と喜悦。 「んじゃ、第一球――」 「ゆっゆぅ、たきゃいたきゃい〜♪」 一瞬先には、その明暗はくっきり分かれてしまうのだが。 「――投げましたぁっ!」 「ゅ……ゅぅぅぅぅぅぅぅっっ!!?」 一瞬の静止から、サイドスローで少年がれいむを掴んだ腕を振りぬいた。 突然身体に掛かった強烈な加速感に、掴まれた赤れいむの歓喜の声が驚愕の叫びに変じたその瞬間、 すっかりゆっくりしていたれいむ一家の目には、わが子が、姉が、妹が、マジックのように消えうせたように見えた。 だから、川面の方から聞こえてくる同属の声を、すぐには誰のものか認知しない。 「ぁぁぁぁっ、いぢゃいっ! あびゃいっ!? えべべ……えびょっ」 ぱしっ! たしっ! じゅぶっ……じゃぼん。 ぎゅるぎゅるっ、と横回転を加えられた赤れいむは、確かに二回水の上を跳ね、三回目で勢いを失い、 それからつんのめるようにな軌跡を描いて、その次の着水であっさり流れの中に飲み込まれていった。 それは、いわゆる石切り遊びと呼ばれる遊びと同じものだった。 というよりも、石切り遊びそのものだ。使うのが、平たい小石ではなく、れいむ――ゆっくりであるということが違うだけで。 横投げで、投擲するものに強い回転を掛け、浅い角度で水面で跳ねさせてどこまで遠く、何回跳躍するかを競う。 投擲物は飛び去るうちに空気の抵抗を受けて回転数を減じ、着水時の抵抗力を失って最後には水中に没することになる。 たった今、赤れいむがあっという間に水没したように。 「……おちび、ちゃん……?」 「おねーしゃん……いにゃいいにゃいしゅりゅの?」 「いみょうと……れいみゅのいみょうと、きゃくれんびょしてりゅの……?」 ゆっくりたちが、ゆっくりと異変に気づいたころには、すでに川へ向かって投げられた赤れいむの姿はどこにもなかった。 音を立てて流れる清流の中に、一瞬餡子の黒が浮かんだが――それも一瞬のこと。 強い流れの中に溶けて消えうせ、投じられた生き饅頭の残滓は綺麗に何も残らない。 だから、れいむたちにはわからない。 なぜ、人間さんが先ほどまで手にしていたはずの家族がいないのか気が付かない。 順番にその身を襲うだろう、命の危機に気が付かない。 もっとも、それに気が付いたところで、文字通り生死を握られた状況ではなんら益するところはなかっただろうが。 「んあー、おしいっ!」 「どこがおしいのさ? まりさ、気付いてもないよ」 「次はせめて、まりさに水音が聞こえるぐらいに近づけろよな」 混乱するれいむたちの頭上で、少年たちが賑やかに言葉を交わしている。 だがきょときょとと家族の姿を探す一家に、その声は聞こえていても内容を理解することはできなかった。 理解できぬままに、次の危機は無情にもやってくる。 「っせえなあ。じゃあ助左、お前やってみろよ」 「任せろよ」 周囲のブーイングにすっかり拗ねた顔をする弥平次と呼ばれた少年に、助左と呼ばれた少年は不敵な笑いを浮かべて応じ、 彼と同じく赤れいむを掴んだ腕をすっと身体の横へと引いていた。 「……ゆ? おにーしゃん、あしょんでくりぇりゅの?」 「おう、遊ぶぞ。れいむで遊んでやる」 視線が急に水平に動いたことに驚いたらしく、掌中の赤れいむがずれた問いを発する。 そのずれた問いに返す少年の返答も、また少しばかり言葉をずらしたものだった。もちろん、こちらは意図的にずらしているのだが。 「ゆゆ……? りぇいみゅであしょぶにょ?」 姿の見えぬ姉妹を探すうちに心に浮かんだ一抹の不安が、幼い赤れいむにその問いを思い至らせたのだろうか。 微妙な言い回しに気が付いて鸚鵡返しに聞き返す声は、ほんの少し不安に揺れていた。 横目で親の方を見れば、やはり心の中に広がりつつある形容しがたい不安に瞳の光を揺らがせる、親れいむの視線と目が合った。 あるいは、腕を引いた少年のしぐさが先の赤れいむの消失のサインだったと思い至ったのかもしれない。 その未だ人間の善性を信じつつ、それでも禁じえないだろう不安の様子が、芽生え始めた人間への恐怖が、 少年に心地よい快楽を与えることを赤れいむはついにその死までしることはなかった。 「そうだ。おねえちゃんのあとに、つづけぇっ!」 「ゆあっ、ゆぅぁぁぁぁぁっ!?」 少年の威勢のいい掛け声と、赤れいむの恐怖と驚愕が相半ばした悲鳴が川原に響く。 今度ははっきりと、親れいむたちは家族が消滅するプロセスを順序だてて目にすることが出来た。 「れっ、れいむのおちびちゃああああんっ!!!」 「……ゅぁ?」 「おっ、おねえちゃあああぁぁぁん!!」 家族の絶叫がとどろく中、六尋ほど先の川面から小さな水音がじゃぽんと聞こえた。 今度のれいむは短い跳躍を五回繰り返し、異常を感知して漕ぐ速度を上げたまりさ一家にほんの少し近づいて、死んだ。 最初の赤れいむと同じく、この世に生きた証を何も残すことはなく、親に最後の言葉を遺すことすらなく、跡形なく溶け崩れて死んだ。 「なっ……れいぶのおぢびぢゃんだぢがっ……。にんげんざん、ごればどういうごどおおぉぉっ!!」 れいむは信じたくなかった。 これが現実だと信じたくはなかった。 娘がいきなり川の中に投げ込まれ、あっけなく死を迎えたことが現実の世界に起きたことだとは信じたくはなかった。 先ほどと変わらない笑顔をれいむに向けて見下ろしている人間さんが、こんな非道を唐突に行う存在だと信じたくはなかった。 「儀式するって言ったじゃん」 その祈るようなれいむの願いを、少年たちは笑顔のままあっさりと折り砕いた。 「饅頭を川に投げ込むって言ったろ。聞いてなかったのか、お前?」 「おまえら饅頭なんだからさぁ。その時点で気づけよ」 馬鹿だなぁ、と笑う少年たちの口元には、れいむにもわかるほどくっきりと嘲りが浮かび上がっていた。 それを見てれいむは、生まれてはじめて憎しみというものを知った。 生まれてはじめて絶望というものを知った。 生まれてはじめて悪意というものが存在することを知った。 それらは全て、ゆっくりできるはずの人間という存在から与えられた。 つい先ほどまで、共にゆっくりしていたはずの、人間さんから。 「でいぶのあがぢゃんはまんじゅうじゃないいぃぃっ!」 「饅頭だよ、キモチ悪いしゃべる饅頭。ほら、その証拠に」 「……っ!!」 「ぃぎゃあああぁぁぁぁっ!!?」 「ほぉら、餡子入りの饅頭だ」 一瞬の躊躇もなくれいむの右頬を毟り取った少年は、身を襲う激痛に泣き喚くれいむの鼻先にそれを突きつけてけたけたと笑う。 やがて苦痛に身を捩るばかりで突きつけられた事実に反応を見せないれいむに飽いたのか、千切ったその部分を川の中に投げ捨てる。 「おきゃーしゃーん!?」 お楽しみは、まだまだあるのだ。 このゲスしかいない屑饅頭の分際でクソ生意気にも、親を案じるようなミニ饅頭を筆頭にして。 「おきゃーしゃーん、じゃねぇよ。ほらさっさと飛べ」 「ぉきゃーしゃんをいじめりゅ……にゃぁああぁぁぁ、おねーちゃんがぁぁぁぁぁっ!!?」 「ゅぁぁっ、れいみゅしにちゃくにゃ……ゃぁぁぁぁぁっ!!!」 頬を大きく千切り捨てられて、身を絶えず苛む激痛にほとんど麻痺していた親れいむの精神がようやく我を取り戻したのは、 愛するわが子の怒りや悲しみに満ちた絶叫が次から次へと飛ぶように遠ざかるという恐るべき事態に直面してからだった。 「ぉあ、あああああっ! おぢびじゃあああああああん!!」 我に返ったところで、もう遅い。 我に返ったところで、何も出来はしない。 親れいむにできることは、命に代えても惜しくはない愛するわが子達が、 次から次へと決して対岸に届くことない死への跳躍に駆り立てられる姿を見送ることだけ。 いや、そもそも描かれる軌跡は対岸へと向けられてすらいない。 すべて、川の中ほどまで進んだ他所の群れのまりさの家族へと向けて投げられているのだから。 「沈め、沈め!」 「あーっ、当たらねぇーっ!?」 「丸すぎてちゃんと飛ばないんだよ。やっぱ何に使ってもだめだな、ゆっくりって」 少年たちが楽しげに笑い、天を仰いで嘆くたび、 「ゅびゃぁぁぁぁぁっ、ゆびぇっ、ぃゃだっ、たじゅけぶびゃ!?」 「ゅぎゃっ! ゅぐぅっ、おぎゃーじゃばばっ!!」 「やだやだれいみゅおちょらとびちゃくにゃ……ぶぎゃぅ……」 赤れいむの声が遠く、彼方へ遠ざかっていく。 二度と親れいむの肌が触れ合えない彼方へと。 投じられた赤れいむの誰一匹、対岸にたどり着くことはなかった。 親れいむと一緒にお散歩に出かけた誰一匹、二度とおうちに帰り着くことはなかった。 六匹全てが、親れいむの目の前で川のせせらぎの中に没して溶けて崩れて死んだ。 親れいむは叫び続けた。全てが終わるまでずっと叫んでいた。 よほど強く投げられたのだろう、最後の一匹は最初の着水の衝撃に耐え切れずに弾けて死んだ。絶鳴すらなかった。 吹き飛んだ餡子が川の中に沈み、リボンが流れに乗って視界から消え去る頃には両の目から流れ出る涙も、 悲鳴を上げるべき喉も枯れ果て、乾き切っていた。 「あ゛……ゅあ゛あ゛……」 頬に痛々しく開いた傷口の痛みすら、もう欠片も感じない。 後に残ったものは、れいむの中を満たすものは、全てを失った絶望だけ。 少年の腕に抱かれて、れいむは生きながらにして死んでいた。 「もぉ、やだぁ……おうち……かえれない……」 あるいは、自分が殺される順番を待ちわびていたのかもしれない。 もう、おうちで待つ伴侶のれいむに会わせる顔などあろうはずもなかった。 生気のないうつろな眼差しを対岸にあるおうちの方角へ向け、在りし日の幸せな生活を、去りし日の安らぎに満ちた家族を想った。 それを壊したのは他の誰でもない、自分だ。 自分が子供たちに早く外の世界を見せてあげたいなどと思わなければ、 きちんと理由立てて反対してくれた伴侶れいむの言葉に耳を傾けていれば、 外の世界に出たとしても、調子に乗ってこんな遠くまで遊び歩かなければ。 「れいむが……れいむがばかだから……みんな、みんな……」 幾つものif全てで、れいむは死に繋がる選択ばかりを選んできた。 今考えれば、れいむにも如何に愚かな試みだったかが嫌というほどによくわかる。 だって、こんな最悪の結果を迎えてしまったんだから。 だから、れいむにはもうゆっくりできない人間たちをうらむ心はなかった。 ここで彼らに会わなかったとしても、きっとどこかで自分たちは死んでいただろう。だって、れいむはとびきりのばかだったから。 生きていることが罪になるほどの、誰もゆっくりさせてあげられない、自分の子供さえゆっくりさせられないゆっくりだから。 今からこのゆっくりできない人間さんたちから与えられるだろう死は、れいむにとって当然の罰なのだと思えた。 「れいむ……ばかでごめんね。れいむをおいてっちゃうことになるけど……せめて、おちびちゃんはあっちでりっぱにそだてるよ……」 だから、れいむはこっちでゆっくりしてね。 心のそこからそう願い、れいむはゆっくりと目を閉じる。 次にくるのはお空を飛ぶ感覚か、れいむの身体を何かが破壊する激痛か。どちらでもよかった。 全てを受け入れる心は出来ていた。与えられるものが死であるなら、どんな苦痛を伴うものでも構わない。 「おーい、何言ってんだよ」 「ゆぅ……?」 与えられるものが、死であるなら。 「お前はおうちに帰るんだよ」 「……ゆ゛!?」 誰が、生など望むものか……! 「お前をおうちに帰すために、ガキども川に投げ込んでやったんじゃないか。お前が帰んなきゃどうすんだよ」 だというのに。少年の笑顔が、れいむの心を痛烈に一打ちして蘇生させた。 ま、水が収まるまでゆっくりしろよ。少年はにやにやと嫌な笑いを浮かべてそう告げた。 れいむの願いと対極をなす、あまりにも残酷な言葉をそんな笑顔で淀みなく告げた。 「……あっ、あがぢゃんみんなじんじゃっで、ごろされぢゃっでがえれるわげないでじょおぉぉ!?」 だがそれに驚き、叫ぶれいむは本質を理解していない。 自分を抱えたままの少年が、いったいれいむに何を望んでいるのかを。 当然、ことの本質を理解しようともしていないれいむの抗議になど、少年はまるで取り合わない。 そうやって、れいむの身体ではない、心を苦しめ、痛めつけることが目的なのに、この饅頭はまるでわかっていないのだから。 楽しげに笑う少年の意図を、れいむはまったく理解しない。 理解しないままに、少年が望むままに苦しみ、悶え、のた打ち回る。 「ごろじでっ! あがぢゃんだぢどおなじみだいに、ごろじで! すぐごろじで! れいぶをごろじでっ!!」 「あっそう。じゃあ好きにしろよ。とりあえず傷は直しておいてやるから」 「ゆびゅっ!?」 なおも殺してくれと喚きたてるれいむに、少年は肩から提げた布地の鞄から竹筒の水筒を取り出した。 そこから頭に振りかけらた液体が目に染みて、思わずれいむは悲鳴と共に目を閉じる。 一瞬、ゆっくりが死ぬことのできる毒か何かと期待したが、もちろんそんなものではなかった。 それどころか、引き裂かれた頬の傷口があっという間に痛みを失っていくのがわかる。 恐る恐る、髪を伝って口元に一筋の流れを形作ったその粘度の高い液体を舐めてみる――とても、甘い。 傷つき、死をひたすら望むほどに疲弊した心すら、油断すると癒してしまいかねないほどにその液体は甘かった。 それが水あめというあまあまなたべものであるとまでは、まったく野生で育ってきたれいむは知らない。 「じゃーな」 別れを告げるその言葉に我を取り戻した時には、頬の痛みはまったくなくなっていた。 頭に注がれる液体も、いつのころからか途絶えている。慌てて目を開けたれいむの 先のれいむの懇願など気にも留めず、いっそ丁寧なぐらいゆっくりと、安定した岩の上にれいむを置いて手を振っていた。 岩場から飛び降り、れいむがその背中を追う頃にはすでに少年たちの姿はずいぶん先にある。 「まっ、まって! おいでがないでっ!」 「礼はいらないぞー」 「あと一日も待ってりゃ水は引くと想うぞ。よかったな、赤ちゃん死なせた代わりに家に帰れるぞ」 まあ、多分ちびが死ぬのと水が引くのは関係ないけどな。 そう言って、少年たちはどっと愉快そうに笑いあっていた。 「でいぶをごろじで! ごろじでよぉ!」 「やーだよ。死にたきゃ勝手に死ねば?」 れいむが泣けば泣くほど、叫べば叫ぶほど、少年たちは楽しそうに肩を震わせて笑った。 顔がキモい、声がキモい。ガキ殺したぐらいで必死なのがキモい。 理由を挙げ、せせら笑い、だが川原を離れる歩みは止めずに、れいむからどんどんその姿が離れていく。 「おでがいじばず! でいぶをごろじでぐだざいっ! れいぶを、でいぶをあがぢゃんのどごろにいがぜでぐだざい! おねがいじばず、おでがいじばぶっ!!」 れいむは泣き喚きながら、追いかけた。 精一杯、尖った石が親れいむの底面を抉り、切り裂く痛みなど気にもならなかった。 致命傷には至らない痛みなどどうでもよかった。 ひたすらに、自分の命を少年達が摘み取ってくれることを希った。 彼らがれいむ自身の命よりもはるかに重い、赤ちゃんたちの命を遊びのために全て流し去ってしまったように。 だが子供達は無情にも、れいむの願いなど一顧だにせず嘲り笑いながら走り去っていく。 どんなに跳ねても、どんなに飛んでも、その背中にれいむが追いつくことは決してなくて。 「どぼじで! どぼじでごろじでぐれないのおぉぉぉ!!」 ただ、痛々しい親れいむの絶叫だけが、誰もいなくなった川原に轟いた後。 しばらくして、大きな水音がひとつ新たにバシャンと響き、川原は元の静けさを取り戻した。
https://w.atwiki.jp/kobetakigawa/pages/84.html
教師がいじめ認識か 神戸の高3男子自殺 2007/09/19 18 15 【共同通信】 恐喝未遂事件で、担任教師が自殺前から、いじめがあったことに気付いていた可能性があることが19日、分かった。 学校関係者によると、7月3日に自殺を図る1年ほど前、担任教師が男子生徒の名前を挙げて「もうこれ以上、彼をいじめ るな」と教室で同級生の少年らに注意している場面を複数の生徒が目撃していたという。同校は共同通信の取材に、担任の 注意は「聞いていない」としている。
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/143.html
ゆっくりけんをきわめてね! 13KB ※独自設定垂れ流し 例によって独自設定考察なお話 斬ってきた。 男は無数のゆっくりを斬ってきた。 れいむを斬った。まりさを斬った。ありすを斬った。ぱちゅりーを斬った。 数えきれないほど多くの普通種を斬り、希少種も斬ってきた。 剣の修行のためだった。 平和な現代、戦う相手などいない。。 歪とは言え人の顔をし、稚拙とは言え人の言葉を操るゆっくりは、男の求める修羅の剣の 修行に適した獲物だったのだ。 銃刀法に守られた世だ。刀を使うわけには行かない。 だが、男は道具を選ばなかった。小さなペンナイフだろうと手頃な長さの木の枝だろうと、 男の手に掛かれば刀と変わらぬ鋭さでもってゆっくりを切り裂いた。 男の剣は鋭さを増していった。低い姿勢から斬り上げる独特の斬撃は、もはや神速の域に 達していた。 だが、それはもはや人が人に対して使う剣術ではなかった。 本来、剣術は低い場所にある標的を斬るのに適さない。常に低い位置にいるゆっくりを斬 ることに特化した男の剣は、もはや剣術とは言えないものになっていた。 男は剣の腕を磨くためにゆっくりを斬るのではなく、ゆっくりを斬るために剣の腕を磨く ようになっていた。手段と目的が入れ替わっていた。 だが、男はそれでも良かった。 楽しかった。純粋に、斬ることが楽しくてしようがなかった。 おまけにゆっくりは幾ら斬ってもすぐに湧いてくる。男が飽きることはなかった。男の充 実した剣の修行は、いつまでも続くかと思えた。 だが、ふとしたとき。男はゆっくりを斬ることに躊躇いを覚えるようになった。 「……何故だ?」 男を迷わせたもの。それは、男が最も信頼している自らの剣だった。 数多のゆっくりを斬ってきた男は、卓越した審美眼を持つようになっていた。ゆっくりを 見ただけで善良かゲスかれいぱーか、あるいは普段どんなものを食べており、巣の位置か ら群れの規模までおおよその検討がつく域に達していた。 それなのに、斬った手応えがおかしい。 同じ種類、同じような環境にいる同じようなゆっくりを斬っても、その手応えがまるで異 なるのだ。 それは常人であれば感じ取れない微妙な差違ではあったが、男の剣は確かに「違う」と告 げていた。 自分の目で得たものと、剣の手応えが一致しない。 それは剣を極めることを志し己を磨いてきた男にとって、あまりにも受け入れがたい矛盾 だった。 悩みに悩み、思いあぐねた男は、ある小さな大学に駆け込んだ。ゆっくりについての研究 をしている――そんな噂を聞きつけて、たまたま訪れた大学だった。 だが、男が訪れたのは偶然ではなく運命だったようだ。 「あなたのような方を待っていました」 男の突然の訪問、異常な質問を聞いた大学の研究員は、そう言って男を迎え入れたのだか ら。 ゆっくりけんをきわめてね! 「ゆんゆんゆ~ん♪ ちょうちょさん、かわいいれいむにゆっくりつかまってね~♪」 男が連れてこられたのは、大学の構内にある小さな庭だった。 そこでは一匹のゆっくりれいむが蝶を追って跳ねていた。 「あのゆっくりを斬れますか?」 研究員の問いに、しかし男はなにも反応しない。 答えるまでもない質問だったからだ。 研究員も男の不快を察したのだろう。 「もちろん、ただ斬るのではありません。れいむが蝶を追い、跳ねた瞬間。痛みを感じる 暇もなく縦に両断して欲しいんです。できますか?」 次の瞬間。研究員が見たのは、男の立っていたはずの場所で揺れる芝生だった。 慌ててれいむの方に目をやれば、既に全ては終わっていた。 「これでいいのか?」 研究員が慌てて駆け寄る。 男の足下には綺麗に両断されたれいむが転がっている。 二つに割れた顔は、あまりにものんきな笑顔だった。それはまさに蝶をつかまえようと跳 ね、もうじき届く瞬間を思わせるもの。自分が斬られたと意識する暇すらなく、正確に中 枢餡を切られた証拠だ。 「い、いったいどうやって……!?」 男がつまらなそうに掲げたのは、どこの街の文房具屋でも売っていそうな、ありふれた3 0センチほどの定規だった。 「普段はこんなものを使っている。まともな獲物を使わせてもらえれば、もっと綺麗に斬 ってみせよう」 研究員は目を白黒させた。 れいむの断面は研究員が見た中で、もっとも綺麗だったのだ。どこも歪なところもない美 しい直線。 研究員は感激した。 「やはり、あなたはここに来るべき人だった! 我が大学の研究によって、あなたの疑問 は晴らされることでしょう!」 そして、男はその日から大学の研究に協力することになった。 とは言っても、男のやることは変わらない。 ゆっくりを斬ることだ。それも、必ず縦に両断する。 ただ、様々な条件を課せられた。 眠っているゆっくりを斬る。あるいは、起きた瞬間に斬る。 「ゆっくりしていってね」という定型句を発する寸前に斬る。あるいは、言った直後に斬 る。 「むーしゃむーしゃ、しあわせー」と言う直前に斬る。あるいは、言った直後に斬る。 交尾を始める直前に斬る。あるいは、交尾を始めた直後に斬る。 すっきりーの直前に斬る。あるいは、すっきりーの直後に斬る。 跳ねる直前に斬る。あるいは、着地した直後に斬る。 虐待で死ぬ直前に斬る。あるいは死んだ直後に斬る。 いずれの状況も、常人であれば見極めることすら難しく、ゆっくりがいくら鈍いとは言え 気づかれもせずに斬るなどできないだろう。 だが、男は難なくこなしていった。 大学によってあてがわれた模造刀もまた、男の手によくなじみ、その斬撃をより鋭く精妙 なものとしていた。 ゆっくりは自分が斬られたという自覚すらなく、その瞬間をまるで写真に撮られたように 時間を止め、真っ二つに斬られていった。 男が斬るたび、研究員はゆっくりの死体を慌ただしく回収していった。 男は次第に、なかなか結果のでない研究にはそれほど興味が無くなっていった。 ただ、今までにない様々な状況でゆっくりを斬ることを楽しんでいた。いずれ、斬ってい くことで疑問の答えにたどりつけるのではないかと考えるようになっていた。 そんな充実した日々。 しかし、ある日突然、終わりが訪れた。 「俺が出ても意味がないんじゃないのか?」 ある日のことだった。 男は、突然に研究の発表会に招かれた。 慣れぬスーツを身につけさせられ、年輩の教授や研究への情熱に目を輝かす学生に混じっ て席に着くのは、実に居心地の悪いものだった。 「いえ! あなたのおかげでようやく研究の成果が出たんです! 是非見ていただかない と!」 隣に座るのは、男が大学に来たとき迎えた研究員だ。この研究員によって、男はこの発表 会に強引に参加させられたのだ。 研究の成果が出たのなら、こんな発表会ではなくすぐに男に告げるのが筋だろう。 だが、研究員曰く、こうした晴れの舞台で見るのが一番で、かつわかりやすいのだという。 男は少々呆れていたが、もう諦めてもいた。こうして会場に来てしまったし、いよいよ男 の協力した大学の研究成果発表が始められようとしていたからだ。 「ゆっくり餡子変異学説」 そんなタイトルで公演は始まった。 壇上に立つのは大学の教授のハズだが、男にはぼんやりとしか見覚えがない。 ゆっくりをいかに斬るか。そればかり考えていた男にとって、他のことはどうでもいいこ とだ。それはこの発表会についても同じ事で、男はほとんどを聞き流しゆっくりをどう斬 ろうかとばかり考えていた。 そんな男の思考を断ち切ったのは、壇上に透明な箱に入れられたゆっくりれいむが連れて こられてからだ。 ゆっくりに目がいき、自然に教授の声も耳に入った。 「ゆっくりはご存知の通り、餡子でできた饅頭という極めて奇妙なナマモノです。食べた ものは餡子に変換し、苦しめれば苦しめるほど甘くなる。また、中の餡子は中枢餡と呼ば れる核となるものや、筋肉の役割をする筋餡などがある。そういったことはわかっていま す。しかし、そこでこの謎のナマモノへの探求を止めてしまってはいないでしょうか? 思考を停止させていないでしょうか?」 おもむろに、教授はゆっくりれいむの底部に近い皮を、中の餡子ごと引きちぎった。 「ゆぎぃぃぃぃぃ!? どぼじでごんなごどずるのぉぉぉ!?」 ちぎられた頬からは粘りけのある餡子が漏れ出る。一定以上出ると、やがてその流出は止 まる。 「今、私はゆっくりのあんよに当たる部分をちぎりました。さて、ではこちらのスライド を見ていただきましょう」 そして、壇上のスクリーンにスライドが表示される。 スライドにはゆっくりの断面図が描かれていた。ゆっくりの断面はそれぞれ色分けされて おり、中枢餡や筋餡といった注釈がつけられている。 「これは一般的なゆっくりの体内構造図です。私が今ひきちぎったのはこのあんよから餡 子変換器――人間で言うところの消化器に当たる部分です。この図が正しいとするなら、 餡子も漏れて、餡子変換器は重大な損傷を追ったことになります。つまり、このゆっくり は食物の摂取に障害が出ることになります」 続いて、教授はれいむにケーキを与えた。 「ゆぐぅ……むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 初めは痛みが気になっていたようだが、すぐにケーキの甘さに酔い、れいむは元気な声を 上げる。 「御覧になりましたでしょうか? このようにれいむは問題なくケーキを食べました。障 害は発生していません」 講堂がざわめく。 ゆっくりの体内構造は複雑怪奇にして不条理。体内構造図はあくまで目安に過ぎないのは ゆっくりの研究における常識なのだ。 だが、教授はひるまずに続ける。 「私は、ある特殊な手段によってゆっくりの様々な状態における餡子の情報を得ることが できました」 スライドが切り替わる。 先ほどと同じく体内構造図だが、内臓に当たる器官が無く、殆どが筋餡がしめている。 「これが運動時のゆっくりです。ゆっくりがあれほど高く跳ねるためにはこれだけの筋餡 が必要になります。そして、落下時の衝撃を吸収するためにも必要です。内臓が傷つかな いことが疑問視されていましたが、実は運動時のゆっくりには内臓がないのです」 講堂のざわめきがより強くなる。 同じように、男の心の奥のざわめきもまた強くなっていた。 教授の言っていることはまるでわからないことばかりだ。だが、自分の身体が知っている。 これが正しいことだと叫んでいる。だから、男の心はざわめく。 そして、次々とスライドは切り替わる。 男がそれらのスライドを見るのは初めてだ。だが、見覚えがある。間違いない。男の斬っ てきたゆっくりを元にスライドは作られているのだ。この研究のために大学は男にゆっく りを斬らせたのだ。 ゆっくりの食事時、生殖時、就寝時。 スライドはそれぞれの状態で、体内の構造がまるで違うことを示していた。 たまらず聴衆のひとりが問うた。 「おかしい! いくらゆっくりでも、そんな無茶苦茶な変化はありえない!」 対して、壇上の教授は頭を振った。 「いいえ。ゆっくりだからこそ、こんな無茶苦茶な変化があり得るのです。ありとあらゆ る食べたものを餡子に変換する。痛めつければ痛めつけるほど甘くなる。そこから考えれ ば当たり前のことだった」 教授は講堂にいる全ての人間を包み込むように両手を広げ、目を輝かせ叫んだ。 「ゆっくりは、状況に応じてその体内を突然変異させる――それが私の主張する、『ゆっ くり餡子変異学説』なのです!」 ざわめきは最高潮に達した。 講堂にいるほとんどのものが納得しなかった。 跳ねるときは身体全部が筋肉になる。食べるときは身体全部が内臓になる。生殖するとき は身体全部がそのための器官になる――そんなこと、常識的に考えて納得のいくことでは ないのだ。 だが、男は納得した。いや、納得していた。ずっと前から身体は知っていたのだ。無数に 斬ったゆっくりの感触から、とうに答を出していたのだ。 それをようやく頭が理解することができた。 「はははははははははは!」 みながぎょっとして見た。 気づけば、男は笑い出していた。 男はおかしくてたまらなかったのだ。 ――なんだ、自分が悩んでいたのは、こんなに簡単なことだったのか、と。 「どうしても行くんですか?」 「ああ」 大学の正門前。 旅立とうとする男と、それを引き留める研究員の姿があった。 「研究はもう俺無しでもできるんだろう?」 「それはそうですが……」 「ゆっくり餡子変異学説」は、ゆっくり研究会に大きな波紋を呼んだ。それにより研究資 金の確保ができた。これからは男に斬ってもらわなくても、様々な計測器によってゆっく りの状態を探ることができる。 その意味では確かに男の役目は終わったと言えた。 「でも! あなたがいることによって研究は認められた! あなたはこの大学にとって大 切な人だ! あなたが望めば一生暮らしていける地位だって……」 「そんなものに興味はない」 「それに! 研究が進めばこれまで謎とされていたことだってわかります! あなたは知 りたくないですか? 例えば……そうだ! なぜゆっくりが痛めつけるほど甘くなるかと か……」 研究員の言葉に、男は笑い出した。 「おまえら学者は頭が固いな。ゆっくりを痛めつけるほど甘くなる理由? 決まってる。 群れを生き残らせるためだ」 「群れを生き残らせるため……?」 「やつらを捕食するものがいたとする。そいつが一匹目を喰らったとする。続いて二匹目 を喰うと、追われる恐怖で一匹目より甘くなっている。三匹目、四匹目とどんどん甘くな る……やがて味の虜になって、群れを追うのを忘れる。犠牲は出るが、群れは生き残れる って寸法さ」 男は舌なめずりして言った。 経験したことがあるのだ。山籠もりをしたとき、ゆっくりの群れを全滅させようとしたこ とがあった。途中、空腹に負けて斬り捨てたゆっくりを口にしたとき、体験したことだっ た。 「やはり、あなたはすごい。経験によって真理に近いところにいる。それを世に広めよう とは思わないのですか……?」 「研究の発表で得られるのは何だ? 地位か、名誉か、それとも金か? 興味ないね。俺 はそんなことより楽しいことを知ってしまったからな」 そして、男は大学を去っていった。 男が見つけた楽しいこと。それは、この大学の研究によってハッキリと知ったゆっくりの 生態だ。 やつらは状況に応じて体内構造を変化させる。 ゆえに斬ったときの手応えが異なる。 それはつまり、様々な状態に応じた最適な斬り方があるということだ。 その探求が男の目的となった。 それは想像を絶するほど奥の深いことだろう。 男は楽しみのあまり、口元に野性的な笑みを浮かべた。それでいて、その瞳の輝きは知的 好奇心に満ちていていた。 今や、男は「剣」の者であり、「賢」の者でもあった。 男はこれからもゆっくりを斬っていく。 今まで斬ってきたゆっくりなど比較にならない数のゆっくりを斬り、より真理を究めてい くのだが……それはまた別の物語である。 了 by触発あき なんとなく過去作品一覧 ふたば系ゆっくりいじめ 4 ゆっくり井戸 ふたば系ゆっくりいじめ 5 ゆっくり定量保存の法則 ふたば系ゆっくりいじめ 9 ラジコンに引きずられて ふたば系ゆっくりいじめ 11 まりさの見つけた大切なもの ふたば系ゆっくりいじめ 12 ゆっくりヤリ方を工夫するよ! ふたば系ゆっくりいじめ 13 今のしあわせ無くしたゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 15 餡子遺伝子の深淵 ふたば系ゆっくりいじめ 18 幻想郷のゆっく輪廻 ふたば系ゆっくりいじめ 20 ゆっくりみさせてね! ふたば系ゆっくりいじめ 21 ゆ虐地獄でゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 23 ちぇんじとかいはとれいん! ゆっくり最後の日 ふたば系ゆっくりいじめ 25 むーしゃむーしゃのしあわせを求めて ふたば系ゆっくりいじめ 27 無能なれいむに愛の足を! ふたば系ゆっくりいじめ 29 れいぱーキャンセラーありす ふたば系ゆっくりいじめ 35 スグルイ ふたば系ゆっくりいじめ 39 太陽と水のゆっくり一家 ふたば系ゆっくりいじめ 40 おはなばたけのゆうかにゃん ふたば系ゆっくりいじめ 41 餡小話の感想れいむ ふたば系ゆっくりいじめ 44 裏切りのおにいさん ふたば系ゆっくりいじめ 47 夢みるモノ達の夢のない話 ふたば系ゆっくりいじめ 49 ゆっくりを、叫ぶだけ ふたば系ゆっくりいじめ 56 ゆっくり害獣駆除 ふたば系ゆっくりいじめ 59 ゆっくり害獣駆除・餡子サイド ふたば系ゆっくりいじめ 63 システム・オブ・ブラック ふたば系ゆっくりいじめ 67 それでもぱちゅりーは本を読む ふたば系ゆっくりいじめ 69 ゆ~性遺伝の育てたモノは ふたば系ゆっくりいじめ 73 ありすの成ゆん式 ふたば系ゆっくりいじめ 75 ゆっくり存在概論 ふたば系ゆっくりいじめ 77 泣きゆっくりのあやし方 ふたば系ゆっくりいじめ 82 ルナティック・カウンター ふたば系ゆっくりいじめ 93 電子レンジでチンしてポン! ふたば系ゆっくりいじめ 99 流産の果てに ふたば系ゆっくりいじめ 102 おはだでゆっくりあそんでいってね! ふたば系ゆっくりいじめ 104 れいむのけっかいはゆっくりできるんだよ! ふたば系ゆっくりいじめ 110 目標にセンターを入れてゆっくり 触発あきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ↓いいやつじゃなくていいssです すみません -- 2015-08-19 00 05 05 俺が見たなかで一番いいやつだな この男はゾロの域に達している 続きを見てみたいな -- 2015-08-19 00 02 48 この男の物語も見てみたいな -- 2012-12-13 18 10 15 男が格好良すぎる!!やばい、絵にしてくれ!! ↓「慣れないスーツ」=「いつも和服」だったら面白いwww -- 2011-12-25 12 41 46 かっこいいじゃねえか、修羅! 宮本武蔵見たいのがあのまんじゅうを切ってると思うとシュールだけど -- 2011-08-15 13 35 07 男がかっこよすぎるわ! -- 2010-12-29 21 39 50 絵師様はおられるか!絵師様はおられるか! 早くこのSSに絵をつけてくれ!絶対に笑える絵ができる!w -- 2010-09-07 03 50 13 おお!なんかかっこいいかも? まあ、まんじゅうを切ってるだけなんだけどw -- 2010-08-27 07 48 47 面白い話だった 状況によって切る感覚の違いとか面白かった -- 2010-08-13 12 44 20
https://w.atwiki.jp/wiki13_zch/
Zちゃんねるwiki 概要 Zちゃんねるについてのことのいろんなまとめに使います。 方針 徒然なるままに。 スタイルとか @wikiさんで借りてるやつをちょこっといじくって、 2chのwikiっぽくしてみました。
https://w.atwiki.jp/ggeneration_spirits/pages/248.html
Gジェネレーション初代~F.I.F 攻略Wiki Gジェネレーションポータブル 攻略Wiki Gジェネレーションウォーズ 攻略Wiki Gジェネレーションワールド 攻略Wiki Gジェネレーションオーバーワールド 攻略Wiki Gジェネレーション3D 攻略Wiki Gジェネレーションクロスドライブ 攻略Wiki Gジェネレーションモバイル 攻略Wiki Gジェネレーションモバイル ネクストユニバース 攻略Wiki
https://w.atwiki.jp/hinanyoumuzintou/pages/17.html
初代wiki
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/1324.html
ゆきのなか 35KB 虐待-普通 越冬 「餡子ンペ09」 ・餡子ンペ投稿作品:『親子/期待はずれ』 ・掲載ペースが落ちてると言われる昨今・・・忙しくて書けない時期もあるんですよ。 仕事って時期が重なるんですよね。 『ゆきのなか』 D.O 季節は冬。 ここは、人間の里から少し山の中に入った森の中。 しんしんと降り積もる雪の中、木の根元あたりに、 木の枝や小石が積み重ねられた奇妙な膨らみが見える。 「・・・っくちちちぇにぇ・・・」「すーり・・・むーしゃ・・・」「・・・ちあわちぇー・・・」 もしもここに人間がいて、周囲の音に注意深く耳を傾けたならば、 その膨らみの奥から、人間のしゃべるような声を、かすかに聞き取ることができたであろう。 そして、さらに注意深く周囲を観察すれば、同じような奇妙な膨らみは、 そこらじゅうの木の根元に見つけることができたはずだ。 そんな奇妙な膨らみの一つ、雪と、木の枝や小石に隠された奥には、木の洞がある。 そこには、つがいである2匹のゆっくり、群れの長まりさとれいむが住んでいた。 冬という、ゆっくりにとって死の季節の中にいながら、2匹の表情はとても明るい。 「まりさとれいむのおちびちゃん・・・もうすぐうまれるね。」 「ゆぅん。とってもゆっくりしてるね。」 「・・・(プルプル)」 「ゆぅ~ん。おちびちゃんがおへんじしてるよ~。」 なぜなら、おうちの入り口を完全に閉ざして越冬を開始してから数日、 このつがいの間には、間もなく新しい命が誕生しようとしていたからだ。 ここはゆっくりの群れの生息地。 木の枝や小石で作られた膨らみは、木の洞や洞穴など、巣穴の入り口を塞ぐためのバリケード、『けっかい』であった。 野生のゆっくり達は、雪の降るような冬の季節には、巣穴にこもってゆっくりと過ごし、 寒気を防ぐために入り口を堅く閉ざして、秋に蓄えた食糧で命をつないで春を待つ。 「どぼぢでごはんさんなくなっちゃうのぉぉぉおおお!!」 「ゆぁーん。おきゃーしゃん、おなかしゅいたー。」 「しょうがないよ・・・おぢびぢゃんは、でいぶにゆっぐりだべられでねぇぇぇええ!!」 「ゆびぃぃぃぃぃ!!どぼぢでしょんなことしゅるのー!?」 「もっちょ・・・ゆっぐぢ・・・」 と、たいていの場合、野生のゆっくりにとって、越冬は過酷であり、命がけのものだ。 十分な量の食料確保に失敗すれば、飢餓が親子にすら共食いを引き起こし、 それでも食料が不足すれば、体温を保てず凍死するか餓死する。 巣穴である『おうち』の作りがあまければ、積雪の重みで崩壊、雪と土の中で圧死。 巣穴が頑丈でも、入り口の塞ぎ方がダメだと隙間風でやはり凍死。 こうした悲劇を起こさないため、特に優秀なリーダーがいる群れならば、いくつもの対策を立てて 必死に被害を減らそうと努力している。 ドスまりさの力で頑丈な崖などに洞窟を掘り、共同住宅として群れ全員で冬を越す、 熟練のゆっくり達が協力して、群れのみんなの『おうち』補強工事を監督する。 食料が足りなかったら、人間さんの独り占めしているお野菜を強奪してくる、など。 そんな中で、何より注意されるのが、『越冬前にすっきりーして子供を作らない』ということだ。 「「すっきりー!!」」 「ゆぅん。れいむのかわいいおちびちゃんが、たくさんできたよ~。 まりさ、おちびちゃんのために、はやくれいむにあまあまをとってきてね!」 「なにいってるのぉぉぉおお!?おそとはゆきさんがふってるんだよぉぉぉおおお!!」 「だからなんだっていうの!?つべこべいわないで、はやくごはんをとってきてね!!」 びゅぅぅぅぅううううう 「しゃぶぃぃぃぃいいいいい!!!ゆっぐぢぃぃいいい!ゆっぐぢぃぃぃいいいいいい!!」 「れいむはむーしゃむーしゃするよ!むーしゃむーしゃむーしゃ・・・はぐっ!ばくばくっ!めっちゃうめっ!ぱねぇ!」 ・・・3日後 「どうしてごはんさん、なくなっちゃったの・・・・・・おちびちゃんをむーしゃむーしゃするよ・・・」 こんなことも当たり前のように起こる。 秋の半ば以降にすっきりーしようものなら、にんっしん中だけでなく、生まれてからも子育てのために、 つがいの一方は狩りに参加できなくなる。 越冬中にすっきりーしたりしたら、さらに最悪だ。 食い扶持の増加で貯蔵食料の計算は完全に崩れ、食糧不足で結局一家全滅となる。 つまり、厳しい環境下に生活する野生のゆっくりにとって、 冬+赤ゆっくり=死、というのは、ごくごく一般的な考え方なのだ。 だが、実は先ほどの長まりさとれいむのつがいだけでなく、この群れの中では、現在にんっしん中、 あるいは生後数日以内の赤ゆっくりを抱えた家族が大半を占めていた。 いかに若いゆっくり達とは言え、本能にまで刻み込まれた冬の恐怖を知らないはずはない。 では、なぜあえて越冬が始まった今、ゆっくり達は子供を作ることを選んだのか。 その理由を見ていくため、先ほどのつがいの一方、長まりさの生まれた春の中頃まで時間をさかのぼることにする。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 季節は春。 多くの野生ゆっくりにとっては、長い死の季節を乗り越えたあとの、喜びの季節である。 暖かな陽気。 新鮮で大量にある、ゆっくりした野草や虫。 食料の心配がなくなったことで、成体ゆっくり達はさっそくすっきりーに励み、 新たな命を迎えることでさらに喜びが積み重なる。 「まりさとれいむのおちびちゃん・・・もうすぐうまれるね。」 「ゆぅん。とってもゆっくりしてるね。」 ・・・・・・。 「そうだよね・・。」 「・・・そうだよ。」 ぶるぶる・・・ぷちんっ! ぽとっ! 「ゆぅ・・・ゆっく、ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 まりさも、そんなベビーラッシュの中で誕生し、祝福を受けた赤ゆっくりであった。 だが、生まれて数日経ち、おうちから外を眺めて過ごすようになった赤まりさは、 春の陽気も楽しめず、あまりゆっくり出来ていなかった。 なぜなら・・・ここが岩肌も荒々しい、草木もろくに育たない高山の荒地だからだ。 「ただいま、れいむ・・・。」 「おかえり・・・まりさ。」 「ふぅ・・・ごはんだよ・・・なかよくむーしゃむーしゃしようね・・・。」 「ゆわーい!!むーちゃむーちゃしゅるよ!!」×10 だが、食卓代わりに置かれた平たい石の上には、固い雑草が少々と干からびた虫の死骸だけ。 「むーちゃむーちゃ・・・それなりー。」 「おとーしゃん・・・もっとむーちゃむーちゃしちゃいよ・・・。」 「ごめんね・・・はぁ・・・おうちのまわりに、ごはんがないんだよ・・・」 「どぼぢでしょんなこというにょぉぉぉぉおおお!?」×10 とは言ってみたものの、赤ゆっくり達はそれほど駄々をこねることなく、残念そうに食事を終えた。 父まりさの話が嘘ではないことは、生後3日を迎えてようやく跳ねることが出来るようになったばかりの、 幼いまりさ達にもわかってはいたのだ。 何せ、おうちを一歩踏み出してみたら、眼前に広がるのは砂利や砂ばかりという、 およそ命の喜びとは無縁の世界が広がっていたのだから。 「おちびちゃんたち・・・きょうはもう、ゆっくりすーやすーやしようね。」 「ゆぅぅぅぅ・・・ゆっくちりきゃいしちゃよ。」×6 「じゃあ・・・まりさが、ふぅ・・・おふとんをよういするね・・・」 だが、森に住む野生のゆっくり達のような、落ち葉や草を敷いたお布団や、 ましてや丁寧に編みこまれたベッドなどというものが出てくるはずもない。 そんなものがあったら、今日の夕御飯になっているのだから。 「おちびちゃん・・・はぁ・・・ゆっくりすーやすーやしてね・・・」 「ごりょごりょちて、ゆっくちできにゃいよぉ。」×6 「ふぅ・・・ごめんね・・・ゆっくりがまんしてね・・・はぁ・・・」 お布団として用意されていたのは、比較的粒の細かい砂(といってもサラサラというには程遠い)を、 平たい石の上に厚めに敷いただけのものである。 まりさ達赤ゆっくりは、この砂にあんよを口のすぐ下あたりまで埋め、身を寄せ合って眠る。 石の上に直に眠る両親よりはマシかもしれないが、少なくともしあわせーからは程遠かった。 まりさ達のおうちは、大きめの石が偶然積み重なってできた隙間に穴を掘って作ったものだ。 風雨や外敵から身を守るという意味で言えば、まあ、そうそう悪くもないものではあったが、 とにかくゆっくり出来ない場所に住んでいる、という感覚のまりさから見たら、 なんだか無機質でゆっくり出来ないおうちに思えてならなかった。 『ここはゆっくりできないよ。まりさはおおきくなったら、ゆっくりぷれいすにいくよ。』 それは、まりさが生まれてからずっと抱き続けていた想いである。 そして、食糧不足で次々と姉妹達が餓死していく中、なんとか生き延びてテニスボール程度に成長したある日、 父まりさが大事なお話がある、と言って姉妹をおうちの近くの崖へと連れて行った。 「ゆわーい!もりしゃんがみえりゅよ!」 「とっちぇもゆっくちちちぇりゅにぇ!」 「おしょらとんでるみちゃーい!!」 「ふぅ・・・。おちびちゃんたち。あの、もりのむこうをみてね。」 「ゆぅ?・・・ゆゆっ!!」 崖からは、山のふもとに広がる広大な森が一望できる。 この眺めのいい崖へのピクニックは、まりさ姉妹にとってはほとんど唯一と言っていい娯楽であった。 大きくなったらあんなところに住むんだ、というのは、姉妹共通の夢であったのだ。 そして、その広大な森のさらに向こうに、木々がほとんどない、平らな土地が広がっているのが見えた。 「あそこはね。・・・にんげんさんがすんでるところだよ。」 「ゆわぁぁぁ。しゅごくゆっくちしちぇるにぇぇ・・・」×3 ゆっくりは、ゆっくりしているものに関しては敏感なものだったりする。 人間から見てもかすんで見えるほど遠くの人里に、まりさ達はとてもゆっくりしたものを感じ取っていた。 里の中を流れる小川、緑に輝く田畑。 人間さんが出入りしている所は、人間さんのおうちだろうか。 だが、まりさ姉妹がゆっくりしている中・・・父まりさだけはまったく別の表情を浮かべていた。 人里を眺めているだけにもかかわらず、歯は限界まで食いしばられ、全身汗まみれ、 口の端からは餡子混じりの泡がゴボゴボとたれている。 「ゆ゛・・・ゆぎぃ・・っ!ゆぅぅぅうう・・・!!」 「おとーしゃん?」 「ゆぎぃぃぃひぃ!にんげんさんはゆっぐりでぎなぃぃぃいいいい!!」 「!?」×3 しばらく脂汗をかき、顔色を赤、青、土色にあわただしく変化させていた父まりさが、突然暴れ始めた。 「ゆびぃっ!!おねぇじゃんっ!だべぇっ!!おぎゃあじゃぁぁん!!」 「ゆぅぅぅ!!おとーしゃん、ゆっくちちちぇにぇっ!ゆっくちちちぇー!」 ・・・・・・。 「ゆぅ・・・ゆぅぅぅ・・・おちびちゃん、ぜったいにんげんさんにちかづいちゃだめだよ。ぜったいだよ。」 「ゆ、ゆっくちりきゃいしちゃよ。」×3 結局、何があったのかは聞けなかった。 まりさ姉妹達だって、餡子による記憶継承の効果で、人間さんがゆっくりできない、 という感覚は両親から受け継いでいるのだが、所詮は両親一代限りのトラウマであり、 れみりゃ等のような、明確な意味でのゆっくり出来なさは記憶を受け継いでいない。 そのため、まりさにとって父まりさからの忠告は、 『人間さんに出会うと確実に死ぬ』と言う様なものではなく、 『ゆっくり出来ない存在で、どんな強いゆっくりでも不用意に近づくと酷い目にあう。』 という程度のものと認識されることになった。 それからさらに月日は流れ、季節が夏の終わりに差し掛かった頃、 他の姉妹全てが命を失う中、最後まで生き延びたまりさが、 独り立ちして親元を離れる日がやってきた。 「おちびちゃん!ゆっくりしていってね!!」 「もうおちびちゃんじゃないよ!ゆっくりがんばるね!ゆっくりしていってね!!」 こうして結局まりさは、親の忠告を無視して森の方へと旅立っていったのであった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 独り立ちに際して、まりさには一つの計画があった。 その計画は大体以下のようなものである。 1.人間さんの里に行き、そこで一番強い人間さんと勝負して勝つ 2.力を示すことで人間さんからゆっくりプレイスと食料、おうちを手に入れる 3.森や山からゆっくりを呼び集め、人間さんの里をゆっくりのためのゆっくりプレイスにする 4.群れの長になる 5.ゆっくりした美ゆっくりと、ゆっくりした家庭を築く 6.ゆっくりし続けたまりさはいつしかドスになる 意気揚々と山を下り、森に入り、人間でも丸一日ではきかない距離を走破するまりさ。 まりさ自身は気づいていなかったが、山育ちであったため、 足腰の強さとスタミナについては、確かに群れの長にふさわしい逞しさを手に入れていたのである。 そして、ゆっくりの足で言えば、あと一日で人間の里に着こうという森の中で、 まりさの旅は、予想外の形で終わりを迎えることになった。 「ゆぁぁぁぁああああ!!なにこれぇぇぇええええええ!!!」 目の前には、人間の里が霞んでしまうほどの、ゆっくりプレイスが広がっていた。 木々は適度に生えて木漏れ日が優しく降り注ぐ。 地面には若く柔らかな雑草から人間も食用とするような野草まで青々と茂っている。 草ばかりではない。 周囲にはキノコやゆっくりでも届く高さに実った木の実も豊富にある。 その豊かな食料に誘われてか、昆虫からイモ虫まで、取り尽せないほどにいる。 食料ばかりではない。 大きく育った木々の根元を見れば、その多くにはゆっくりが家族で暮らすのにちょうどいい洞がある。 中は小石などもほとんど落ちておらず、すべすべに整えられており、隙間も丁寧に埋められている。 明らかに以前別の群れが使っていたと見られるおうちばかりであった。 今、どうしてゆっくりが住んでいないのか不思議であったが、 一時的な食糧不足で群れごと引っ越すことも珍しくはないので、 ここはかつて別の群れが使い、放棄したゆっくりプレイスだったのであろうと、まりさは理解した。 まりさが放心状態でゆっくりプレイスの中を歩き回っていると、 まりさとは別の場所から独り立ちしてきたのであろう、若いゆっくりの集団が多数、 吸い寄せられるようにこのゆっくりプレイスにやってきた。 「ちぇん、ゆっくりしていってね!!」 「まりさだねー!ゆっくりしていってねー!!ゆわぁぁー、すっごいゆっくりぷれいすだねー!わかるよー!」 「ゆぅん!ちぇんもそうおもう!?ここにはいま、ほかのゆっくりたちはぜんぜんすんでないんだよ!」 「わからないよー!!こんなゆっくりぷれいす、ほっとくにはもったいないねー!」 「ゆっふん!!そうだよ!ここは、まりさたちのおうちにしようね!!」 「わかるよー!!」 こうして、まりさの無謀なゆん生計画は、あっさりと方向転換を向かえ、 人里から近くも遠くも無い、実り豊かなゆっくりプレイスで、一から群れを作る作業が始まったのであった。 そもそも、まりさにしても、ゆっくりしていない人間さんと争うのは、あまり気が進まないことではあったのだ。 まりさほどのゆっくりであれば、相手が人間さんであっても負けることは無いであろう。 しかし、ケンカは痛いしゆっくり出来ない。 それに、万が一相手に遅れをとれば、永遠にゆっくりしてしまうこともあり得る。 また、実のところ人間さんの里を見たこともないので、どの程度ゆっくりしたゆっくりプレイスなのかわかったものでもない。 遠くの、あるかも怪しいゆっくりプレイスより、目の前の極上のゆっくりプレイス。 まりさの、新生活はここから始まった。 ゆっくりしたおうちとご飯は、余りにもあっさりと手に入ってしまった。 さらに、まりさ達のゆっくりとした姿を見つけて、独立したての若いゆっくり達が続々とやって来ては定住を決める。 わずか数週間で、まりさ達のゆっくりプレイスには、大規模、と言って差し支えない規模の群れが形成されていった。 「わからないよー。そろそろおさをきめないと、ゆっくりできなくなっちゃうよー。」 「そうね。せっかく、とかいはなゆっくりぷれいすなんだから、みんななかよくしたいわ。」 「むきゅん!それじゃあ、ぱちぇはまりさがおさになるといいとおもうの!!」 「ゆぅぅー!まりさでいいのぉぉぉおお!?」 「まりさなら、きっととかいはなむれにできるわ!」 「ゆぅ。でもまりさ、もりでのせいかつになれてないよ。わからないこともおおいよぉ。」 「わかるよー。でも、まりさのできないことは、みんなできょうりょくしてあげるからだいじょうぶだよー。」 ・・・・・・。 「ゆぅ。わかったよ!まりさ、このむれのおさになるよ!!」 「むきゅーん!ぱちぇたちにもおてつだいさせてね!むきゅっ!」 流れは自然と生まれ、拡大していく。 まりさは群れの初期メンバーとしてリーダーシップを発揮していた点を考慮され、立候補するまでもなく長に選出された。 なお、幹部メンバーは、このゆっくりプレイスでまりさに初めてであったちぇんとありすのつがい、知恵者ぱちゅりーの3匹。 群れの体制はこの4匹を中心として、急速に固まっていった。 そして・・・ 「このむれのおさはまりさみょん!?みょんたちをむれにいれてほしいみょん!!」 「ゆっくりしていってね!!おうちはたくさんあるよ!・・・ゆゆっ!?」 「どうしたみょん?れいむのおかおになにかついてるみょん?」 「・・・ゆぅ?ゆっくりしていってね。」 「(ゆわぁ。ゆっくりしたれいむだよぉ。)ま、ま、まりさとずっと、ゆっくりしていってね!!」 「・・・・・・?・・・ゆぅぅぅうううう!!?」 ある日群れに加わってきた若ゆっくりの集団に、一匹のれいむがいた。 清楚な物腰、紅く輝く大きなおリボン、そしてゆっくりとした下膨れ。 初めてれいむとあいさつした時に、まりさのぺにぺにに電流が走った。 一目ぼれというものであろう。 結局いきなりすぎて、れいむから正式にOKの返事が来るまでに5分以上かかったが、 まりさは、ゆっくりプレイス、長という立場にくわえて生涯の伴侶まで、あっさりと手に入れてしまったのであった。 季節は夏の終わりという時期。 群れのゆっくり達も、そろそろ新生活に慣れてきた時期である。 早期にこのゆっくりプレイスにやってきたメンバーはつがいを見つけ、にんっしんしている者も多かった。 長まりさとれいむの間にも、何一つ障害はない。 後は、一刻も早くおちびちゃんを手に入れて、ゆっくりとした家庭を築きあげれば、 まりさのゆん生計画は、ほぼ完璧に果されることになるはずであった。 ・・・だが、ある出来事が、まりさとれいむの子作りに待ったをかける。 「むきゅぅぅぅううううん!!まりさがぁぁぁぁああ、おちびちゃんがぁぁぁぁああああ!!」 その不幸は、長まりさの側近筆頭、ぱちゅりーの元に訪れた。 無論、この叫びの対象になるまりさとは、長まりさではなくぱちゅりーのつがいであった、だぜまりさである。 「むきゅ・・・おちびちゃん・・おそとはあぶないって・・・むきゅぅ。」 ぱちゅりーは胎生出産で、子供はまりさ1匹だった。 赤まりさは好奇心旺盛で、将来有望なゆっくりだったが、その好奇心が強すぎた。 「まりしゃ、おとーしゃんとかりにいっちぇくるよ!しょろーり、しょろーり!」 父であるだぜまりさが狩りに行き、母である側近ぱちゅりーがお昼寝している間に、 おうちを抜け出して、群れの喉を潤す泉へと遊びに行ってしまった。 さらに好奇心があだとなって、水草を採集している父、だぜまりさのマネをしてしまう。 水への恐怖よりも、お帽子で泉の上を自在に漂ってみたいという衝動が勝ってしまったのだ。 「まりしゃ、ゆっくちおぼうちにのりゅよ!ゆ!ぷーきゃ、ぷーきゃ・・・ぼちゃん。」 結果はご想像の通り。転覆、水没。 さらに不幸に輪をかけたのは、赤まりさが自分のおちびちゃんであると気付いただぜまりさが、 赤まりさを引き上げるため現場に急行、 「ゆぁぁぁぁああ!!おちびちゃん、まっててね!いまたすけ・・ゆぅっ!?・・・ぼちゃん。」 あわてすぎて転覆、水没。 結局側近ぱちぇは、一気に家族全員を失ってしまったのであった。 特に大きな危険もなく、ここに至るまで群れのゆっくりは増える一方だったため、 失うということに慣れていなかった幹部メンバーは、過剰に反応することになる。 特に側近ぱちぇは、自分自身を襲った不幸ということもあり、 これ以上同じ思いをするゆっくりを増やさないための対策を必死になって考えた。 そして、一つの結論に至る。 「ゆ!みんな、まりさのいうことをよっくきいてね!!」 「ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!」×300 「このむれでは、これからすっきりをきんしするよ!!」 「・・・ゆっぐりでぎなぃぃぃいいいいい!!!」×300 「でもあんっしんしてね!ずっとしちゃいけないわけじゃないんだよ!」 「?」×300 まりさ達幹部メンバーは、期限付きのすっきり禁止令を決定した。 内容は簡単。 要は、冬ごもりに入るまで一切すっきりーしてはダメ。 子作りは、冬ごもり中に行うべし!とのことである。 先にも書いたとおり、通常の群れであればこれは自殺に等しい案だ。 秋の間に集められるのは、成体のつがいであっても自分達の分だけで精いっぱい。 そこに子供が入れば飢え死に確定となる。 しかし、そこにこの群れの強みが加わると、状況が変わる。 何せ、ここは類を見ないほどのゆっくりプレイスで、食糧はおうちの外にあふれるほどある。 秋の間につがいで必死に集めれば、それこそ成体ゆっくり10匹以上は養える蓄えが出来るほどなのだ。 ならば・・・蓄えてしまえばいい。 後は、冬ごもりの季節になったらおうちの入り口をしっかりと閉じて、存分にすっきりーする。 赤ゆっくりはおうちの中で誕生し、お外にこっそり出て行ったりする心配はない。 しかも、両親ともやはりおうちから出ることはないので、にんっしん、子育て中にしんぐるまざーになる心配もない。 ゆっくりとしたおちびちゃん達とたっぷりゆっくりして冬の数か月を過ごし、その間におうちで出来る教育は済ませておく。 おちびちゃん達が子ゆっくり程度、十分に大きく成長した頃に、冬ごもりは終わりを迎えるはずだ。 後は春の恵みの中で、おちびちゃん達は大きく育ち、世界に羽ばたいていくのだ。 「すごーい!!おさはやっぱりてんっさいだよー!」 「わかるよー!」 「むほぉぉぉおおお!!すっきりー!」 群れのゆっくり達は、説明を聞き終わるとともに、目をキラキラと輝かせて幹部達をほめたたえた。 それもそのはずで、餡子で継承されている記憶では、冬ごもりと言うととても楽しいものではない。 餓死、凍死の危険を感じつつ、つがいがいればまだしも、下手すれば一匹で暗く狭い穴の中に閉じこもって過ごすのだから。 それが、死の危険もなく、最上級のゆっくりである『おちびちゃん』とともに過ごせるとなれば、 ゆっくりでなくとも、その喜びはなんとなく理解できるであろう。 そして群れのゆっくり達は以降数カ月間必死で狩りに奔走し、 (中には不幸な事故ですっきりを味わうことも出来ずに命を落とした者もいるが) ほとんどのつがいが無事に冬を迎え、すっきりー出来るだけの蓄えを確保しておうちの入り口を塞いだのであった。 みんな、より大きなゆっくりをちらつかせられた分、意外と我慢強かった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ・・・そして現在の状況に至る。 おうちの奥には貯蔵食糧の山、れいむの頭上にはツタが一本とそこに揺れる6匹の赤ゆっくり。 おうちの中央には、まりさがこの日のために、特に柔らかい枯れ草を編み上げて作った、 おちびちゃん達用の鳥の巣型ベッド。 ふかふか、ふわふわになるように、一生懸命頑張ったよ。 きっと、おちびちゃん達も気に入ってくれるね。 ぶるぶる・・・ぷちんっ! ・・・・・・ぽとっ! 「ゆぅ・・・ゆっく、ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 「ゆぅぅん!おとーしゃん、おきゃーしゃん、ゆっくち!ゆっくち!」 「ゆぅ!まりさそっくりの、げんきなおちびちゃんだね。」 「ゆふぅん!でも、れいむにおめめはそっくりだよぉぉ。」 「ぴゃぴゃー!みゃみゃー!れいみゅおなきゃしゅいちゃよ!」 「むーちゃむーちゃしちゃいよぉ。」 「ゆっ!まっててね。おちびちゃんに、つたさんをたべさせてあげようね!」 「ゆっくちむーちゃむーちゃしゅるよ!」 「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー!」 「おちびちゃん、さむくない?」 「ゆっくち!べっどしゃんがふーわふーわであっちゃかいよ!」 「ゆぅ。でも、まりしゃちょっとしゃむいから、しゅーりしゅーりしちぇにぇ!」 「おとーさんがすーりすーりするね!すーりすーり、しあわせー!」 「しゅーりしゅーり、ちあわちぇー!」 「ゆぅん、じゅるいよ!れいみゅもみゃみゃとしゅーりしゅーりしゅるよ!」 「すーりすーり、しあわせー!」 「しゅーりしゅーり!ちあわちぇー!」 まりさがおちびちゃんだった頃、しあわせーと言えばせいぜい、 栄養不足でガサガサな両親の頬とのすーりすーりくらいしかなかった。 さもなければ、手の届かないところにある、木々の緑を眺めている間の、白昼夢の中にだけ。 まりさは思うのであった。 この、ゆっくりとしたおちびちゃんには、まりさの全てを注いで、精一杯しあわせーを与えていこうと。 そうすることが、自分の報われなかった過去を取り返すことにもなるかのように。 「おとーしゃん、ゆっくちないちぇるにょ?」 「ぴゃぴゃ、ゆっくちちちぇにぇ!」 「ゆぅ?ゆふふ・・・おとーさんはね、しあわせーすぎてないちゃったんだよ。とってもゆっくりしてるよ。」 「ゆぅん、へんにゃにょー。」 「ゆふふふ、おちびちゃんたちも、おおきくなったらわかるよ。ゆっくりおやすみなさい。」 「ゆっくちしゅーやしゅーやしゅるよ!・・・しゅーや、しゅーや。」 「・・・・・・ゆっくりしていってね。」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 次の日の朝、異変は突然やってきた。 ざくっ! まりさ一家が眠っているおうちの中に、何かが突き刺さるような異音が響いた。 「ゆぅ、ゆ?なんなの?」 「まりさ、おうちのいりぐちで、へんなおとがしたよ。」 「ゆぁーん、ゆっくちできにゃいよぉ。」 「ゆゆぅ。まりさがみてくるから、おちびちゃんたちは、べっどさんのうえでゆっくりまっててね。」 「ゆぴゅぅ・・ゆっくちりきゃいしちゃよ。」 「ゆぅぅ、なんなのぉ?・・・ゆぁぁぁぁあああ!なにこれぇぇぇぇぇええ!!?」 まりさが入り口に向かうと、おうちの入り口を塞ぐ『けっかい』を、何か見たことない物が貫いていた。 「ゆぅぅぅううううう!!ゆっくりでていってね!ゆっくりはやくいなくなってねぇぇぇええ!!」 それは人間が見たとしたら、子供の手のひらサイズの、先割れスプーンに似ていると思うであろう、 銀色に輝く金属製の道具であった。 金属製のそれは、まりさの言葉を聞くまでもなく、ゆっくりと左右に動かされ、『けっかい』の石や木の枝を崩しながら引き抜かれた。 まりさが、寒気でおちびちゃん達がつらい思いをしないようにと一生懸命塞いだ入り口は、 いともたやすく寒気の中に口を開けてしまったのであった。 「まりさ、どうしたの・・・どうしてけっかいさんがなくなってるのぉぉぉおおお!!?」 「ゆぅぁあああ!ぎんいろのぴかぴかさんが、けっかいさんをこわしちゃったんだよぉぉ!」 訳が分からない相手に、秋の間ずっと待ち望んでいたゆっくりした時間を奪われた衝撃で、 れいむだけでなく、群れの長になったほどのまりさまでもが逃げるという選択肢を忘れ、お外にいるであろう敵に向かって飛び出していった。 そこでまりさ夫婦が見たものは、 先ほどの特Lサイズの先割れスプーンを、長さ1mほどの棒の先端に取り付けた、 槍のような奇妙な道具を手に持つ、一人の人間さんであった。 ちなみにその道具は、人間さんを避けていた、ゆっくり達は知らない道具。 里の人間さんの間では、『あの棒』と呼ばれている道具である。 「ゆ・・・にん、げんさん・・・。」 「ゆぅ?・・・どぼちて・・・?」 これまで、ゆっくりしていないからと、近づかないようにしていた人間さん。 遠くもない所に住んでいるのに、ゆっくりプレイスに一度もやってこなかった人間さん。 それが、雪の降り積もった、ゆっくりがおうちに閉じこもってしまった今、なぜかここにいた。 茫然とした一瞬、その間に、まりさとれいむは、人間さんのあんよでころりと上下さかさまに転がされた。 「「ゆ?」」 そして次の瞬間、 ざくっ!ざくっ! 「ゆ・・・ゆぎひぃぃぃいいいい!!!」 上を向いた2匹のあんよに、『あの棒』が突き刺された。 「どぼぢでっ!あんよさんが、まりさのゆっくりしたあんよさんがぁぁぁぁ!!」 まりさの叫びともとれる問いは、人間さんには聞こえた雰囲気すらみえず無視しされた。 そして人間さんは、崩されたままだった『けっかい』の材料であった、 木の枝や大きめの石を『あの棒』を使って雪に埋めていく。 「どぼ、ぢで・・・。やべでね!げっがいでおうぢをふさがないど、ざむぐでゆっくりでぎないよ!!!」 だが、やはりまりさの声は届かず、人間さんは手際よく木の枝や石を雪に埋めてしまった。 「なんでぞんなごどずるのぉぉおおお!!まりさだぢ、なんにもじでないでじょぉぉぉぉおおお!!?」 さらに人間さんは、もはや邪魔するもののなくなったおうちの入り口から、『あの棒』をおうちに滑り込ませると、 先端のフォーク状になった部分でおちびちゃん達のベッドの端を引っ掛け、崩れないようにそろりそろりと引きずりだす。 そのベッドの上には、まりさとれいむの、5匹の可愛いおちびちゃん達が恐怖と寒さで震え、涙を流していた。 「ゆぴぃ、ゆぴぃぃ・・・ゆっくちちちぇ・・ゆぅぅぅ、ころがりゅぅぅうう、ゆぴぃっ!!」 そして、ベッドに引っ掛けたままの先端を少し持ち上げ、ベッド全体を傾けて、 ゆんゆん泣くおちびちゃん達をころりと転がし落とす。 おちびちゃん達もまりさも状況についていけず、泣くことも出来ずに目を丸くしている中、 主のいなくなったゆっくりしたベッドは、雪をひとすくいかぶせられ、人間さんのあんよでパンパンと踏み固められてしまった。 「ゆ・・・くち、べっどしゃん・・ゆっくちちちぇ。」 「ゆぅ、・・・ぺーりょ、ぺーりょ、・・・ちゅめちゃぃ・・・。」 何が起きているのか未だに理解できていないおちびちゃん達は、 すっかり踏み固められた雪の下にうっすらと見えるベッドの上にもしょもしょと集まって、 ぺーろぺーろしようとして舌を雪に突っ込んだり、あんよをもぞもぞさせて、 ついさっきまで確かに感じていた、ゆっくりとした柔らかさを得ようとしていた。 しかし、当然埋め固められたベッドは二度と柔らかさを取り戻すことはなかった。 「ちゃむいよぉ・・・ゆっくちちゃちぇちぇ・・・」 「ゆっく・・・しゅーり、しゅーり・・・」 そうでなくても生まれたてのおちびちゃん達は、跳ねることが出来ず、這いまわることしか出来ない。 その上、すっかり冷え切ったおちびちゃん達のあんよは、もはやわずかに震える程度にしか動かせなくなっていた。 雪に埋められた、かつてベッドだったモノの上で、5匹のおちびちゃん達は、おうちに戻ることもできず、 身を寄せ合ってなんとか温まろうとすーりすーりしている。 「ゆぅぅううう!!にんげんざん!もうやべでね!まりざはどうなっでもいいがら、おぢびぢゃんをおうぢにいれであげでぇ!!」 そんなことを言っている間に、人間さんは再度『あの棒』をおうちの中に突っ込み、 まりさとれいむが秋の間、必死になって集めた、ゆっくりとしたご飯さんを、山盛りすくい出し、 ビュッ!!・・・・パラパラパラッ。 勢いよく周囲の雪の上にばら撒いてしまった。 「やべでぇぇぇぇええええ!!!おぢびぢゃんのだめの、だいじなごはんざんがぁぁぁああああ!!!」 それも、2回、3回と繰り返される。 まりさには、おうちの中は見えていなかったが、秋の間集めた食料の、実に9割近くは辺り一面にばら撒かれていた。 無論、逆さまにされている上、あんよに大きな穴があいているまりさには、集めなおすことなど出来ない。 結局まりさの声は人間さんに一向に届くことなく、視線すら一度も合うことがなかった。 人間さんはふぅっと一息吐くと、まりさのおうちの木の、人間さんの目のあたりの高さに描いてあった、 すっかり色が薄くなっていた×印を赤の塗料で塗りなおす。 そして、全ての作業が終わったとでも言うように、人間さんは向きを変えると、 こきっ、こきっと首をならし、深呼吸をして、どこかに移動しようと、歩き始めたのであった。 「ゆ・・・まっちぇ・・・」 人間さんが再びまりさ一家の前に通りがかった時、ベッドの残骸の上でぷるぷると震えていた赤まりさが最後の力を振り絞って呼びかけた。 「どうちちぇ・・・?にんげんしゃ・・・ん。」 人間さんは、赤まりさの前を素通りすると、まりさの横を通って、 群れ幹部のちぇんとありすのおうちの方へと、まっすぐ向かっていった。 ざくっ! まりさの後方で、聞き覚えのある音が響いた。 「ゆぅぁあああ!ぎんいろのぴかぴかさん、けっかいさんをこわさないで・・にん、げんさん・・・?」 「わ、わからないよ・・・?」 「ちぇぇぇん!ありずぅぅぅうう!にげでぇぇぇええええ!!」 まりさは叫ぶ。だが、全ては遅すぎた。 「「ゆ?」」 ころりっ・・・ざくっ!ざくっ! 「わ・・・わぎゃらにゃぁぁぁあああ!!!」 「どぼぢでっ!あんよさんが、ありずのどがいはなあんよさんがぁぁぁぁ!!」 「なんでぞんなごどずるのよぉぉぉ!!ありずだぢ、なんにもじでないでじょぉぉぉぉおおお!!?」 まりさの背後で、ありすとちぇん達の叫び、そして、 まだ生まれたばかりであろう赤ありすと赤ちぇんの泣き声が聞こえる。 「ゆぴぃ、ゆぴぃぃ・・・わきゃらにゃぁ、ころがりゅぅぅうう、わきゃら!!」 ばさっ!ばさっ!ぱんっ、ぱんっ! 「しょんにゃ・・・くち、べっどしゃん・・しゃむいわ・・・」 「ゆぅ、・・・ぺーりょ、ぺーりょ、・・・わきゃらにゃ・・・。」 「ゆっくちちちぇ・・・しゅーり、しゅーり・・・」 ビュッ!!・・・・パラパラパラッ。 「やべでぇぇぇぇええええ!!!おぢびぢゃんのだめの、とかいはなごはんざんがぁぁぁああああ!!!」 ・・・・・・。 その後も、まりさの後方では、いくつかの家族の叫び声が聞こえ続けていたが、 それがいくつか続いた頃には、まりさも大声で人間さんに呼びかけたり、ゆっくりに逃げるように叫んだりはしなくなっていた。 ただ、逆さまのまま身動き一つ取らず、涙を流していた。 そしてよく見れば、まりさの遠く前方にも、まりさ同様に上下ひっくりかえされ、 あんよに穴を開けられたまま、声一つ上げずに泣く成体ゆっくりの、つがいの姿がいくつも見える。 そして、バスケットボール大の饅頭達の目の前では決まって、数個の小さな饅頭が身を寄せ合いながら、静かに息を引き取っていた。 まりさの横に、逆さまになっているれいむは、あんよに穴を開けられてから、一度も声を発することなく息絶えていた。 おそらくあんよへの一刺しが中枢餡にまで届いてしまったのであろう、即死であった。 だが、まりさから見れば、それはうらやむべき幸運であっただろう。 「ゆ・・・もっちょ・・・く・・・・・・」 「ゆっぐぢぢでぇ、おぢびぢゃん、ゆっぐぢぢでぇぇぇ。」 ベッドの埋まる雪の上で、身動き一つ取れず凍えていたおちびちゃん達は、結局誰にも助けられることのないまま、 まりさの目の前で苦しみぬいて死んでいった。 これから毎日、あったかいおうちの中で存分にむーしゃむーしゃして、すーりすーりして、 春になったらきれいな草花さんや、あったかい太陽さんの光に包まれて、ゆっくりとしたゆん生を歩むはずだったおちびちゃん達。 だが、今まりさの目の前には、涙まで白く凍りついた、悲しい表情のまま息絶えた5個の饅頭が並んでいる。 「・・・くちちちぇにぇ。・・とーしゃ・・・。」 「・・・・・・ゆ!」 5?・・・おちびちゃんがひとり足りない!! 「・・ゆっくちちちぇにぇ。・・おとーしゃん・・・」 「ゆ・・!ゆっくりしてね!おちびちゃん!おちびちゃぁぁあああん!!」 まりさが、動けないながらも必死で視線をおうちの中に向けると、そこには末っ子まりさの元気な姿があった。 「おにぇーちゃん・・・みんにゃぁ・・ゆっくちちちぇにぇ。」 「おちびちゃん!こっちにきちゃだめぇ!!」 「ゆぴぃっ!」 まりさは、姉達のもとに駆け寄ろうとする末っ子まりさを制止する。 「おちびちゃん!よくきいてね!おうちにごはんさんはある!?」 「ゆ・・・ゆぅ。おとーしゃんのぶんしかにゃいよぉ。」 「・・・ゆぅぅ、おちびちゃん。それはおちびちゃんのぶんだよ。」 「ゆぅ?しょしたらおとーしゃんのごはんしゃんがにゃくなっちゃうよ!ゆっくちできにゃいよぉ!」 まりさは、もう決断していた。 「おちびちゃん。まりさは・・・おとーさんは、もうゆっくりできないよ・・・。」 「どぼぢでしょんなこちょいうにょぉぉぉおおお!?」 「おとーさんは、もうあるけないんだよ。だから、おちびちゃん。はるさんがくるまで・・・ひとりでゆっくりしていってね!!」 「ゆぅぅううう!?しょんなのゆっくちできにゃいよぉぉおおおお!!!」 「だいじょうぶだよ。おちびちゃんは、まりさとれいむのおちびちゃんなんだよ。」 「・・・ゆ・・・ゆぅ。」 「だから、はるさんがくるまで、おうちのごはんをたべて、べっどさんのかわりに、ごはんさんのなかですーやすーやするんだよ。」 それは、まりさの夢。 まりさの最後の希望。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆぁぁぁあああん!!ゆっくちりきゃいしちゃよぉ!!ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!」 まりさの両親は、人間さんの手によって、山のゆっくり出来ない土地に追いやられた。 まりさは、人間さんの手によって、ゆっくり出来ない最期を迎えようとしている。 しかし、それでも希望は、まりさのゆっくりとした夢は、未来へと輝き続けるのだ。 そして、まりさは余りにも理不尽に幸福な未来を奪われながら、群れのゆっくりの中でただ一匹、 満ち足りた表情で3日間生き延び、その後永遠のゆっくりへと旅立っていったのであった。 そしてただ一匹人間さんの手を逃れた赤まりさは、わずかに残されたご飯さんを食べ、 ご飯さんの山をお布団代わりにして、中に身を埋めて必死に寒さと戦った。 だが、寒さで体温を奪われ続けるため、体温維持のためにむーしゃむーしゃを絶えず続けなければならない。 しかしむーしゃむーしゃを続けると、お布団の代わりになるご飯さんがどんどんと減っていき、体温を維持できなくなる。 そこでさらにむーしゃむーしゃを繰り返す。 しかも、どれだけ体温を維持しても、おうちの入り口を塞ぐ材料も技術もないので、 室温は全く上がらず、状況が改善されることは無い。 結局、赤まりさは、まりさが息を引き取る2日ばかり前に、おうちの食料を全て平らげて、あっさりと息を引き取ったのであった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 森は春を迎えた。 前年の秋には300匹を数え、冬ごもりの中で生まれた赤ゆを合わせれば1500匹を超えた巨大な群れは、 人間さんの手によっておうちから引きずり出され、一匹残らず死に絶えた。 そして、その亡骸は雪解けとともに溶け、大地に栄養を与えて森の恵みを育む。 それは、雪に埋められた赤ゆっくり達のためのベッドも、冬ごもりのために貯められた食糧も同様である。 沢山の栄養で育った草花や木々は、今年も多くのゆっくりに、ゆっくりとした恵みを与えてくれるであろう。 また、ゆっくり達によって長年整備されてきた木の洞は、 いずれも新たなゆっくり達にとって絶好のおうちになることであろう。 おうちの入り口を塞ぐ『けっかい』の材料にも困ることはない。 なにせ、前の年の冬にも使われた、小石や太い木の枝もそのまま残っているのだから。 ゆっくり達が変わることが無い以上、昨年最高のゆっくりプレイスであったココは、 今年も多くのゆっくりにとって、最高のゆっくりプレイスとなることであろう。 ・・・・・・そう、人間さんの里に、近づこうなどとは考えないほどに。 春を迎え、山にもベビーラッシュがやってくる。 まりさの両親は新しい命を迎え、過酷な生活の中でも少しだけゆっくりしていた。 「まりさとれいむのおちびちゃん・・・もうすぐうまれるね。」 「ゆぅん。とってもゆっくりしてるね。」 「このおちびちゃんたちも、おねえちゃんたちみたいに、げんきにそだってほしいね。」 「そうだね。・・・みんな、げんきにしてるかな?」 「きっとげんきいっぱいだよ。まえのおちびちゃんだって、あんなにゆっくりしたまりさだったもん。」 「そうだよね・・。」 「・・・そうだよ。」 ぶるぶる・・・ぷちんっ! ぽとっ! 「ゆぅ・・・ゆっく、ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 なーんかイマイチ。 挿絵 byキリライターあき 挿絵 by儚いあき 餡小話掲載作品 ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言 ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿 ふたば系ゆっくりいじめ 305 ゆっくりちるのの生態 ふたば系ゆっくりいじめ 436 苦悩に満ちたゆん生 本作品 『町れいむ一家の四季』シリーズ 前日談 ふたば系ゆっくりいじめ 522 とてもゆっくりしたおうち 『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけについては何とも言えないけど) 春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ 春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ) 春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけのおまけ) 春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ) 春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道 夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね 夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ) 夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけのおまけ) 夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけのおまけのおまけ) 夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ) 夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね 夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還 秋-1. ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ 秋-2. ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね 冬-1. ふたば系ゆっくりいじめ 490 ゆっくりしたハロウィンさん 『町れいむ一家の四季』シリーズ 後日談 ふたば系ゆっくりいじめ 249 Yの閃光 ふたば系ゆっくりいじめ 333 銘菓湯栗饅頭 ふたば系ゆっくりいじめ 376 飼いゆっくりれいむ ふたば系ゆっくりいじめ 409 町ゆっくりの食料事情 ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(おまけ) D.Oの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る てかこんな大規模な群なのにドススパーク打てる奴が居ないってどゆこと? -- 2018-08-25 19 01 46 フォオオオオオオオオオオオオおっぱいもみたい -- 2017-06-04 07 22 37 しかしこんだけ数がありゃ何組か残ってもいいはずだが わざわざ全滅させる必要も無さそう -- 2014-08-27 04 17 19 ガキはすぐ死んでいくのに外で足破かれて3日生きる糞饅頭の生命力ときたら・・・人間よりはるかに丈夫だなおい -- 2013-08-07 01 05 42 ↓森から群れが消えた日(後編)を読めば分かる -- 2012-08-03 01 38 02 なんか納得できない。 -- 2012-07-29 22 25 49 こういう感情もなく容赦無いSSにはキリライターの絵がすごくマッチするなあ -- 2011-09-27 01 52 37 ↓畑や人里に行く気も失せるようなゆっくりプレイスを作ってゆ害の防止、冬になったら一斉駆除って事じゃないか? -- 2011-08-30 06 56 43 結局人間がここまできた理由がまだわからないんだが・・・ -- 2011-08-27 00 47 47 かつて先祖が散々好き勝手やってきたツケを未だに支払わされてる訳だ、コイツらは。 「森から群れが消えた日」見る限り、山の人達にとっておよそ最悪の部類に属する害獣だし こんなのがのさばってたら当然駆除だわな。恨むんだったら愚かなご先祖達を恨んでね! -- 2011-05-01 14 25 18 う~ん… 人間って怖いね。 -- 2011-04-14 05 57 47 ゆっくりは、弱肉強食のなかでは一番弱い生物だ!! -- 2011-03-18 22 34 32 めっちゃ面白かった!ぱねぇQNQNできた!! ゆっくり出来る森は人間の罠だったのかw 人間が毎年群れを潰すからゆっくり出来る森でいられるんだな -- 2011-03-08 12 57 34 長の考えた策は良かったんだけどな、ゆっくりにしては上出来といえる -- 2011-01-30 13 20 39 やべえ濡れた やっぱ越冬を無理やり失敗させるのはたまらなくQNQNするね! -- 2010-12-02 23 20 17 まあ、かつて散々山荒らしまわったクズ共の子孫で 実際あの場所見つけるまでは人里乗っ取ろうと企んでたアホだし、駆除は当然だな。 -- 2010-11-16 15 45 12 なんかもう虐待いらないわ逆に -- 2010-11-03 23 55 50 淡々とする作業、まさに駆除って感じがして良いですねぇ。 街に来るゆっくりを防止するための防波堤でもあり、ゆっくりホイホイでもある森か -- 2010-10-20 14 49 36 語彙的に無理なんじゃね?ゆっくりの知能で何か説明するのって難しいんだろうと解釈した それに言葉を重ねるより、アレにとって「ゆっくりできない」は存在に関わる最強の脅し文句なんだし十分と思ったとか あとトラウマすぎてその話をする事すらとか無理ゲーとかなんじゃね?w -- 2010-10-07 06 31 53 ↓ それを話そうとすると、顔色変えて発狂して暴れだす始末なんだから無理だろ。 ここらへんがゆっくりの限界なんだよ。 -- 2010-09-28 00 47 17
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/220.html
ゆっくりいじめ系1004 万能お兄さん1_2 「ただいまー。」 「「「「「ご主人様、おかえりなさい!!」」」」」 ゆっくりたちが玄関で迎えに来た。れいむ、まりさ、みょん、ちぇん、ありす、れてぃ、等など、いろんな種類のゆっくりたちが主人の帰宅をよろこんだ。 数は30ほどはいようか。 玄関で靴を脱ぐとれいむが器用に靴を下駄箱になおし、収穫した山菜をおろすとまりさやみょん、ちぇん、れてぃたちが食料庫へと協力してもっていく。 きちんと分類して整理することも忘れない。 台所では別のきめぇ丸とふらん、れみりゃなどが簡単な料理を作っている。おおまかな料理はお兄さんが作るが、味噌汁や揚げ物の下ごしらえ、 漬物など簡単なものくらいはできるようだ。さすがに揚げ物を揚げるのは危険なのでしないが。 そう、この万能お兄さんの家はゆっくりたちにとっては真の「ゆっくりプレイス」と言えよう。捕食種のれてぃやふらん達もれいむ達には 襲わないように躾けられていて、しっかりと協力して共存している。 服を脱ぐときめぇ丸がハンガーにかけてくれた。まぎらわしいので、このきめぇ丸をA、台所で料理しているきめぇ丸をBとする。 「さぁ、いろいろやることが終わったからご飯を作ろうか」 台所に下りていき、料理を作り始めた。 「ではみなさん、ご一緒に」 「「「「「「いただきます!!」」」」」」」 それぞれが仲良く料理を食べる。今日取ってきた山菜と、家のゆっくりたちが育て上げた野菜、デザートにはあけびと豪華だ。 各々は料理を食べるがこぼすなどの粗相はしない。捕食種のれみりゃやふらんも野菜や料理を食べるように躾けられている。 今までゆっくりのみを食べているが、躾ければ野菜も食べるようだ。だが、たまにゆっくりを食べさせないと発作が起きるようなので注意が必要だ。 みんなが食べ終わった後、報告会が始まった。 「では、各自報告を」 お兄さんが言うと、農場を管理するリーダーのれいむが報告を始めた。万能お兄さんの家の畑の野菜は、ゆっくり達によって管理、 生産されている珍しいものである。水道の整備などできないことはお兄さんがするが そのほかは躾と教えにより、ほとんど人間の手を使わずに生産することが可能となった。たまに新聞記者などが取材に来るほどのものだ。 「きょうはやさいのだいぶぶんがしゅうかくできました!!みんながきょうりょくしてくれたおかげです!!むしくいもほとんどありませんでした!!」 「そうか、がんばったね」 「でも、きょうもやせいのゆっくりがおそってきましたー!!」 農場や家の警備をするリーダーであるちぇんが報告する 「へぇ、で、殺したのかい?」 「30ひききて、はんぶんはころしました!!あとはつかまえて倉庫にいます!!ご主人様のいいつけはまもりましたよー!!」 「ご主人様のはたけをあらすやつはゆるさないよー!!したいはちゃんとそうじして、はたけのひりょうにしましたよー!!」 「よしよし、よくやった」 「しょくりょうこのしょくりょうをかぞえたら、ことしのふゆはじゅうぶんこせるほどのりょうがあつまりましたぜ!!」 倉庫番のまりさが報告する。 「ほぞんももんだいないですぜ!!いたんでいるのはべつのはこにぶんるいしているんですぜ!!」 「そうか、なら今年の冬は去年よりゆっくりできるね」 「「「「「ゆっくりできるね!!」」」」」 「よし、報告会はこれで終わり。僕はいまから捕まえたゆっくりを虐待しに行くよ。れみりゃ、ふらん、れてぃ、おいで。あときめぇ丸A,Bも」 「うー♪ゆっくりがたべれるどー♪」 「「ご主人様のモノに手を出すとは、愚か愚か」」 「「「「「ご主人様!!ふとどきものはゆっくりころしてね!!」」」」」 この家のゆっくり達は家の仲間がいじめられるのは許せないが、野生のゆっくりをお兄さんが虐待しても、同族がいても文句は言わないし、 お兄さんがある日突然家のゆっくり達をいじめても受け入れる(優秀な労働力に、そんなことはしないが)。 大切なご主人様のものや仲間を傷つける不届きものは許せないのだ。だからお兄さんが野生のゆっくりを虐待しても文句は言わないし、 悪が滅びることに喜びを感じ、もし自分が悪いことをしたら罰は甘んじて受け入れる。それに、外の連中などに興味はまったくないのである。 普通のゆっくりはこういった考えは浮かばない。それはひとえにお兄さんが彼女達をしつけ、餡子の中身を白餡にかえたりして 清く正しいゆっくりに改造したからだ。だから言葉が敬語で、お兄さんと呼ばずご主人様と呼んでいるのも白餡の効果である。 この家にすむゆっくりの3分の2は中身が白餡である。のこりは改造を施す必要なく、 躾けによって十分、清く正しいゆっくりと判断されてそのままになっている、きめぇ丸A,Bとゆちゅりーがそうだ。 清く正しく従順な奴隷がこの家にはいるのであった。すべては万能お兄さんの思うがままに動く。 倉庫の中にいき、ゆっくりたちを捕らえている柵をみた。15匹で、れいむ種が5、まりさ種が4、赤れいむが6という割合だ。 万能お兄さんは、畑をおそってきたゆっくりは半分は残すように言いつけている。 「ゆっ!!おにいさんだれ!?わたしたちをゆっくりだしてね!!」 「はやくまりさをださないといたいめにあうんだぜ!!」 野生のゆっくりは相変わらずだな、すこしはいいのがいないと人間にいじめられるのになぁ。と思いながらゆっくりに尋ねる。 「君達に聴きたいことがある、君らはあの山のドスの群れなのか?」 「まりさたちはそんなやつしらないんだぜ、はやくここからだすんだぜ!!」 「ついでにごはんももってきてね!!ここじゃゆっくりできないよ!!ここにあるやさいはぜんぶちょうだいね!!」 「あまり僕にたいして偉そうなことを言わないほうがいい、これでもまだ言うかね?」 と、きめぇ丸とれてぃ、ふらん、れみりゃをゆっくり達に見せた。捕食種達をみて、ゆっくりたちは震え上がる 「は、はやくにがしてね!!ゆゆゆゆ、ゆっくりできないよ!!!」 「じゃあ僕に対して敬語でいうこと、いわなかったら餌になってもらう」 「「「「ゆっくりわかったよ!!」」」」 「はやくどっかにいっちぇね!!おにいさんはゆっくりでていっちぇね!!」 1匹の赤れいむがそういったのでお兄さんはを拾い上げ、手で圧迫し始めた。 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!!!!!ちんじゃう!!!!くるちいよおおおおお!!!!!!」 「やめでえ゛え゛え゛え赤ちゃんをいじめないでええええええええ!!!!!!」 「そうかそうか、君はこの子を助けたいんだね?」 「ゆ゛っ!ぞうでずうううう!!!だずげでぐだざいおねがいじまずううううううううううう!!!!!!!!」 「じゃあ今回は特別に助けてあげよう、次敬語で話さなかったら2度目はないよ」 「あ゛りがどうございまずううううううう!!」 そういうと、万能お兄さんは赤れいむを離す。しかし赤ん坊はしょせん赤ん坊。すぐにいったことをわすれてしまうものであった。 「おにいさんとはゆっくちできないよ!!ゆっくちちね!!!」 そういった赤れいむをまた拾い上げ締め上げる 「やめでえ゛え゛え゛え赤ちゃんをはなしてえええええええ!!!!あ゛や゛ま゛り゛ま゛ず!!!ごべん゛な゛ざい゛い゛い゛い゛い゛い゛いいいいいいい!!!!」 「2度目は」 にこやかに言いながら 「ない」 「ゆびゅっ!!!」 一瞬何が起こったのか理解できなかったが、次第に餡子脳が理解していき 「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!でい゛む゛の゛赤ち゛ゃん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!!!!」 悲鳴が倉庫に響いた。 お兄さんは手をれみりゃたちに差し出した。餡子がへばりついた手をれみりゃ、れてぃ、ふらんが競うようにして餡子を嘗め取る。くすぐったくてきもちがいい。 「どぼじでごんなごどをずるのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!!」 「自分達が行ったこともわからないほど脳がゆっくりしているのか。お前達は僕の畑を荒らしただろう?」 そういわれるとゆっくりたちは黙った。やはり悪いことをしたとは感じるようだ、だがそれでもまりさがいってきた 「あれはまりさたちがみつけたんだぜ!!ほかのゆっくりたちがじゃましたけど、まりさたちのものなんだぜ!!!」 そう言ってきたまりさの目に指を突っ込み、抉り取る。 「ま゛り゛ざのめ゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!!!!」 目玉を舌に載せレロレロレロレロレロレロレロレロ。 ゆっくりの体は全て食べられるから驚きだ。この目も羊羹でできているのでおいしい。ゆっくりの種類によってはゼリーだったりするが 「すぐに自分のもの宣言するのはどのゆっくりも変わらないんだな」 そしてまりさの歯を抜き食べる。立て続けの激痛に気絶してしまった。 砂糖菓子なのでカリカリした食感がよい。おいしいのでついついもう一本抜いて食べる。うん、うまい。これなら中身も期待できるかな? と、お兄さんは気を失っているまりさの口の中に手を突っ込み、指で穴を開け、 一気に中枢の餡子まで指を通して嘗めてみる。指で穴を開けたときに、激痛により気絶から目を覚ましたが、中枢を嬲られたショックで、また気絶した。 「うーん、うまいといえばうまいがいまいちだな、Bってところか。」 万能お兄さんは、中枢餡子の味によるランク付けを行っていた。上からS,A,B,C,Dと分類分けしており、 高ければ高いほど優秀なゆっくりで、群れを率いるリーダーとして、母として、運動能力、頭脳が秀でているとしてなどなど あらゆる面での優秀さを約束されている。ペットに最適でもあり、お兄さんはほかの人でペットとしてゆっくりを買いたいと思う人に、 高いランクのゆっくりを薦めていた。おかげでブリーダーとしても評価は高いし、今まで不満を言ってきた人はいない。 逆に下のランクは、子殺しを平気でする、仲間を見捨てるのは当たり前など、そういったゲス傾向が強い。 万能お兄さんはそういった独自の方法により、ゆっくりをランク付けをしていき、 優秀なもの、Sランクのもののみを家に置き、白餡にいれかえたりそのままにしておいたりした。こうしてこの家のゆっくりたちが生まれた。 (れみりゃやふらんのような肉まんはわからないので、餃子の中身と入れ替えたら運良く成功した、れてぃのような希少種はそのまま白餡に入れ替えた) 「こいつBだし、さっき敬語いっていなかったからいらないや。餌決定ー♪」 というと、柵からまりさをとりだし、ふらんたちの方へ放り投げる。さっきの母れいむも、言ったことを守っていなかったが、子に見せ付けるためにまだ殺さないでおく。 「やっ!やめてっ!!まりさはおいしくな、ゆぎぃっ!!!いだいいいいいいいい!!!!だずげでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ええええ!!!!」 まりさの悲鳴を気にせず、ふらんたちは仲良く綺麗に三等分しておいしく食べた。 ほかのゆっくりたちは恐怖のあまり隅によりそって震えている。何匹かは気絶してしまった。 「うーん、時間がかかるな。あともう少ししたら集会いかないといけないしな、こいつらは後回しにしようかな」 「ならご主人様、わたしたちも」 「お手伝いします」 ときめぇ丸A,Bが進みでた。 「じゃあ頼むよ僕は集会に行ってくる。見込みのないやつは遠慮なく餌にしてもいいし、お前達の遊び道具にしていいよ」 そういうと万能お兄さんは倉庫を後にした。 うしろから 「ゆっくりでぎないよお゛お゛お゛お゛お゛お゛おおおお!!!!ゆっぐりうごいでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛ええええええ!!!!!」 「だずげでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ええええ!!!!じにだぐない゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛いいいいい!!!!!!!!」 とゆっくりたちの叫び声が聞こえた。おそらく頭を高速シェイクして、耐えられるものを選別しているのであろう。こ の選別はお兄さんの中枢餡子格付けより正確であったので頼りになる。 もっとも、あの動きをみて、死なず、気絶しなかったものは今までで数えるほどしかいなかったが。 村長宅にいくと、すでに人が集まっていた。虐殺お兄さんは、ちゃんと人を集めてくれたようだ。 「おお、万能お兄さん、おそかったのぉ」 と村長が声を掛けてくれた ほかの男達から、遅かったな、真打登場だ、などのやっかみをうけながら皆の前に立つ 「さて、皆を集めた理由を聞こうか」 村長が厳かにいい、お兄さんの言葉に全員が耳を傾ける 「こんばんわ皆さん、夜分遅くにすみません。今日集まったのはほかでもない、山に現れた野生のゆっくりの群れについてです。」 そういうとどよめきがはしる。 「うちのきめぇ丸の偵察により、ある野生のゆっくりがこの村を襲うと宣言したそうです。理由は冬篭りの食糧確保のためだそうです。」 お兄さんはきめぇ丸が撮った写真を皆に見せた。ドスやクイーン、それに大量のゆっくりを見て男達に不安の声がでた。 「おい、このゆっくりの群れって山小屋のきこりさんが襲われていたやつじゃないのか?」 「ええ、そうです。ドスの言質も取れていますので間違いはないかと。」 「なら、きこりさんの怪我の仕返しができるってもんだな」 そういうと虐殺お兄さんは両手を握り、ポキポキと音を鳴らす。 「おい、万能お兄さん。こいつらはいつになったら襲うんだ?俺トラップしかけてーんだけど」 虐待お兄さんがわくわくしながら言う。 「あと、ほかのゆっくりたちの被害も確認して、被害があるようなら保護したいんだけれど…」 愛でお兄さんも、この大規模なゆっくりの群れに、ほかのゆっくりたちが略奪などの被害を受けていないか心配なようだ。 万能お兄さんはそれらを聞き、口を開く 「まずこいつらは、ドスのみならずクイーンもいるので、ほかのドスの群れとは違い統率が取れています。 群れの連中も不満をもったものはいないので、ほかのゆっくりの群れを襲うようなことはしていません。 あと、村を襲うのは僕の見立てでは2週間後と見ています」 「なぜ、そんな確信がもてるのかのう?」 村長が尋ねる 「ゆっくりを見ればわかるんですが、怪我や肌のはり、髪の毛などの状態もいいので少なくとも荒れた群れではないのです。 それに2週間後と見ているのは、食料庫の量を見る限り、ドスはできるかぎり食料を集め、それでも間に合わなかった場合に 僕達の村に食料をわけてもらうよう「お願い」をするんだとおもいます」 「お願い?さっき襲うといったじゃないか」 虐殺お兄さんが尋ねる 「ええ、彼女は僕達のところにきてこう言うでしょう「冬を越す食料がたりないからわけてください!!おねがいします!!」 ってね。しかし皆さん考えてください。なにかと交換ならともかく、一方的にくれといっているのをお願いと言えるでしょうか?」 万能お兄さんは見渡しながら言う、皆気づいたようだ。 「そうです、彼女は事を荒立てないよう「お願い」をしますが、なにも渡さずにくれといっているのは脅迫に近い。 それにゆっくりたちはこういった人間に要求するときはかならずほかのゆっくりを大量につれてきます。 僕らへの示威行動かどうかはわかりませんが、交渉が上手くいかなかったら回りのゆっくりは騒ぎ立てて、 「ゆっくりしね!」「どすのばか!」などといい、亀裂が走る。その後はどうなるか…ご想像できますか?」 「村の反発と、仲間の反発によりパニックに陥って、ほかの仲間が村を襲うのを抑えきれずに…ヤケになって暴れるんじゃないかな?」 ゆっくりと、愛でお兄さんが口を開いた。我が意を得たりと、万能お兄さんが頷く。 「僕がいった襲撃とはこういうことです。やつらが分けてくださいといっても、応じなくてよい。逆に殲滅できる口実を得ることができますよ」 皆がしんと静まる。 写真の見立てではドスは3mは超えているし、ほかのゆっくりの数も半端ない数だ。 この村の男たちはほとんどが初老を迎えていて、体力も十分ではない。村は生き残れるのだろうか?と皆に不安が走ったが。 「でも皆さんご安心を」 万能お兄さんが元気付けるように言い 「こういうときのために」 虐待お兄さんは不敵な笑みを浮かべ 「俺達ゆっくりスペシャリストが」 虐殺お兄さんが立ち上がり 「いるんですよ」 愛でお兄さんもにこやかに言う 「「「「村に手出しはさせません、皆は私達が守ります」」」」 4人の青年の声が重なる。村長宅に割れんばかりの歓声が沸き起こった。 愛で、虐待、虐殺お兄さんはそれぞれ用事があるので先に帰っていった。だが万能お兄さんは村長宅に留まり、皆を集めて 「では襲撃に備えてひとつの策を弄したいと思います。よって、皆さんに協力していただきますよ。うまくいけば村に大金が手に入ります。」 と万能お兄さんが皆をまとめ、策について話しはじめた。 ちなみに、ほかの3人のお兄さんには知らせないようにと厳重に言っておいた。 会議も終わり、解散となった。お兄さんは我が家へと帰る。 家につくとれいむときめぇ丸Aが迎えてくれた。 「おやおや、寝ていなかったのかい?」 「ゆっ!ご主人様がかえってくるのをまっていました!!」 「そうかいそうかい、ありがとう」 れいむの頭を撫で、居間に座る。れいむに寝るよういってさがらせ、きめぇ丸Aにビールを持ってこさせた。 「そういや、拷問は終わったかい?」 きめぇ丸にビールを少しやって尋ねる 「赤れいむ2匹だけが生き残りました。あとは死んだり気絶したので、れてぃたちのおやつにさせました」 「2匹か、しかも赤ちゃんとは…。結構思わぬ拾い物だな、明日会うのが楽しみだよ」 きめぇ丸はほろ酔いになりながら答える。そして酔っているせいか、いつもより激しく頭をシェイクしている。 「ご主人様、今日は抱いてくれるんですか?」 と服をいやらしく着崩して寄り添ってきた。胴付きの彼女は、サイズが子供くらいだが問題ない(時間が経てば、身長とBWHは結構それなりの大きさになるらしい) 今までも彼女が望めば抱いてやったし、なにより今日はいい赤れいむが手に入ったので気分がよい。 「この変態め、そんなに抱いてほしいのか」 と接吻をした後、お兄さんはきめぇ丸を自分の部屋につれていき、布団の上で彼女に覆いかぶさった。 部屋の中から甘い嬌声がときどきもれてきた。 つづく ____ あとがき ゆっくり虐待は好きですが、なにぶんSSを書くのは初めてです。 他のかたがたのすばらしい作品を参考にしつつ、がんばってかいてみましたがいかがでしょうか? お目汚し失礼します。 ツールボックス 下から選んでください 新しいページを作成する以下から選択してください-------------------------このページを編集ページ名変更差分 編集履歴アップロード-------------------------新しいページページ一覧 @wikiパーツ検索------------------------- ヘルプ / FAQ もご覧ください。
https://w.atwiki.jp/gdgdtales/pages/120.html
概要 概要 今見て頂いてる、これです。 なんとなく、このサイトも長くやってるので、 何か形に残したい…と思い、Wikiもどきを作成し始めました。 閲覧自由、編集は管理人のみ。 イベント記録などもできる限りやっていきたいので、 見て楽しんで頂ける要素も築きあげられればいいなぁ。
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/2760.html
『価値観の違い』 それは異様な光景だった。 百を超えるゆっくりが二つに分かれて対峙している。 一つは背後に森を背負っており、ゆっくり達は皆、枝や石などで武装していた。 もう一方は人間の育てている畑を背後としており、成体ゆっくりから赤ゆっくりも混ざっており、皆不安そうな顔をしている。 だが何よりも際立っているのは、そのどちらにも黒い帽子を被った巨大な饅頭―――つまりドスまりさが居るという事だ。 ドスを長にもつ群れが互いの親交を深めている―――様には見えない。 森側のゆっくり達の携帯した武器と、不安そうな畑ゆっくり達を見ればそれは明らかだ。 「まりさ!ドスの使命をわすれのたのかだぜ!ドスはゆっくりをゆっくりさせるのぜ!」 「ゆぅ……まりさはみんなをゆっくりさせているよ?」 「嘘をつくなだぜ!!それでもドスなのかだぜ!?」 大声で叫ぶ森側ドス(森ドス)と静かに答える畑側ドス(畑ドス)。 森ドスは生粋の野生であり、生まれてから今に至るまで、ずっと森の中で生活してきた。 ありすとまりさの番の7人姉妹の長女として生まれ、数匹の妹達は自然現象や野生動物の手にかかり死んだが、まりさは無事大人へと成長できた。 独り立ちし、自立した生活ができるようになり、そろそろ番を作ろうかと思っていたらドスへと変化していた。 ドスに会った事はなかったが、ドスの役割というのはなんとなく理解していた。 『ドスとして群れを治めゆっくりをゆっくりさせなければならない』 ドスとなったまりさは群れをつくり、有能なぱちゅりーを補佐としてたて、群れの個体数を調整し、冬篭りに備えて食料を備蓄し、外敵からゆっくりを守り、素晴しいゆっくりぷれいすを作り上げた。 だがそんな時、群れに酷い傷を負ったゆっくりが訪れた。 それは人間によって虐待を受けたゆっくりだった。 ドスは人間を見たことなかったが、聞くところによると人間は、ゆっくりをゆっくりさせない、とてもゆっくりできない存在らしい。 ドスの使命はゆっくりをゆっくりさせること―――。 ドスは決めた。 『人間によってゆっくりできないゆっくりを開放する』と。 人間はゆっくりを見るとすぐさま潰そうとしてくるらしい。 ドスは群れのゆっくりを『戦えるゆっくり』にするために、ゆっくりみょんの剣術を皆に教え、人間との戦いに備えた。 同時に偵察ゆっくりを森の外に送り、森の外のどこに人間がいるか調べた。 そして群れの訓練を終えた時、この森の麓に人間に捕まったゆっくりが大量に居るという情報を得、手始めにそこのゆっくりを開放する為、赤・子ゆっくりは一部のゆっくりに任せ、戦闘ゆっくり達と共に森を出てきたのだ。 一方の畑ドスは、なんと町で野良生活をしてたまりさがドスへと変化したものだった。 街での生活は過酷だった。 幼いときに駆除によって片親をなくし、父まりさの手によって育てられた。 あと少しで独り立ちというときに父まりさも駆除によって死んだ。 街ゆっくりはいつ死んでもおかしくないので、機会があればすぐにでも番を作り子を作る。 まりさもその例に漏れなかったが、その番と子供も駆除によって全滅した。 他にも、猫や烏、犬など……様々な恐怖を乗り越えまりさは成長した。 そしてある日ドスになったが、まりさは既に一つの結論に達していた。 まりさは、人間に飼われとてもゆっくりしているゆっくりを知っている。 中にはそれをかさにきて野良ゆっくりをいじめる飼いゆっくりもいた。 自分たちが恐れる動物でさえ人間を避け、同時に人間の元で暮らす動物はゆっくりしているように見えた。 ゆっくりしたお家。 ゆっくりした食べ物。 ゆっくりした暮らし。 その全ては人間が握っている。 『ゆっくりするには人間に気に入られなければならない』 ドスになったからといって人間に勝てるだなんて思わなかった。 長く街ゆっくりをやっていたまりさにとって、人間という存在は絶対的な力の対象となっていたのだ。 同時に同じような思いを持つゆっくりを集め、そのことを優しい人間に相談すると、郊外のこの農場を紹介してくれたのだ。 なのでドスたちがこの畑に居るのは、労働力として働く代わりに人間の保護を受けるというものだったのだ。 ちなみにこの畑の作物は『ゆっくりが作るゆっくりした作物』(完全無農薬天然栽培)という触れ込みのもと売買されている。 お互いにゆっくりを目指してそれなりの結論を出したドス同士だった。 だが、その溝は深かった。 「どうしてドスが人間と一緒に居るんだぜ!!人間はゆっくりしてないんだぜ!ゆっくりを苦しめる存在なんだぜ!!」 「そうだよ!そんなんにんげんといっしょにいるなんてゆっくりしてないどすだよ!!」 「そんなどすといっしょにいるなんて、おお、あわれあわれ!」 「ゆっくりしてないよっ!」 森ドスのゆっくり達も畑ドスとそのゆっくりを非難する。 「それは一部の人間さんだよっ。ここの人間さんはとてもゆっくりさせてくれるよっ!」 「しょうだよっ!おにーしゃんはゆっきゅりしちぇるよっ!」 「とかいはなおにいさんとどすをぶじょくするなんてとんだいなかものねっ!」 「そうだよっ!」 畑ドス側も負けてはいない。 「ゆゆっ?あのゆっくりたちはとてもゆっくりしてるよ?」 「にんげんはぜんぶわるいやつじゃないの?わからないよー?」 「わからないみょん!どういうことなんだみょん?」 だんだんと森ドス側のゆっくり達にざわめきが広がりつつある。 こっちにもドスは居るが、あっちにもドスが居る。 元より森ドスにとってコレは予測していなかった事だった。 森ドスが聞いたのは虐待を受けたゆっくりである。 そのゆっくりが人間のことを悪く言うのは当然であるし、ドスも人間の事をよく知ろうともしなかった。 群れのゆっくりも、人間の事をあまり知らずにここまで事を進めてしまったので、当然といえば当然である。 一方の畑ゆっくり達はいろんな意味で人間を知り尽くしたゆっくりである。 同時に、ゆっくりする為には人間と上手くやっていかなければならないと理解した頭のいいゆっくりでもある。 しっかりと自分自身で判断し、畑ドス側に居るので迷いなどはなかった。 「ゆぐぅ……まりさ!本当にそれでいいのかだぜ!人間に媚売って自分たちだけゆっくりするだけでいいのかだぜ!?」 ゆっくりはゆっくり全てをゆっくりさせる。 森ドスにとってはそれが全てだった。 「全てのゆっくりをゆっくりさせるなんてできないよ。まりさが面倒見切れる範囲内で、人間さんとゆっくりできるゆっくりと一緒にゆっくりしたいよ」 畑ドスの考えに理解を示すゆっくりはほんの一握りだ。 それ以外のゲスや頭の悪いゆっくりがここに入り込めば、たちまち人間との関係は悪化し、畑の群れは崩壊するだろう。 畑ドスはそれだけは防ごうと思っていた。 「ドススパークやゆっくりオーラは何の為にあるのだぜ!?ゆっくりをゆっくりさせる為!ゆっくりをゆっくりできないものから守るためなのぜ!!」 森ドスは帽子の中からキノコを取り出し掲げてみせる。 ドススパークやゆっくりオーラの発生源となるキノコは、大きく立派に育っており、森ドスの帽子の中には未だ幾つかのストックがあった。 「まりさはキノコさんをもってないよ」 「ゆあっ!?」 畑ドスの返答に森ドスは驚愕する。 「人間さんと一緒に暮らすため、キノコさんを生えないようにしてもらったよ。それにキノコさんはもう、人間さんが別の畑で作ってるから特別じゃないよ」 畑ドスがお帽子を取った。 「!!」 「ゆゆっ!?どすのあたまさんが?!」 「はげまんじゅううううううぅぅぅ!?」 畑ドス自ら頭を焼き、キノコを生えないようにしたのだ。 自分が人間に逆らう意思がないこと。 何とかして友好的な関係を作りたいと思っていることを精一杯アピールした結果である。 自分のゆっくりできることを犠牲にした、畑ドスの精一杯の誠意だった。 そのかいあって何とか今の状態を作り出すことができたのだ。 なお、頭頂部は焦げ目だけが残り、金髪の髪の毛は帽子からはみ出た部分しかないのだ。 この畑ドスの姿を見た森ドスは結論を下した。 「そうなのかだぜ……わかったのぜ……」 「ゆぅ。わかってくれたんだね。まりさ達はまりさ達のやり方があるんだよ。森のみんなはこれからも森の中で『まりさはドス失格なのぜ』……ゆ?」 よく見ると森ゆっくり達の様子もさっきとは違ったものになっている。 完全に、畑ドスとゆっくり達を見下したものだ。 「ゆぷぷっ!はげあたまのどすのむれのゆっくりなんてゆっくりできないねっ!」 「ゆっくりできないゆっくりはせいっさいなのぜっ!!」 「しょせんにんげんにこびをうるいなかもののどすとゆっくりね!」 「まりさはドスとしての誇りも使命も忘れたおろかなドスなのぜ……!そんなドスは……真のドスの名の下に制裁するよっ!!」 森まりさがキノコを口に運ぶ。 「ま、まりさっ!!」 「無能なドスが口を開くんじゃないのぜ!!まりさはこれから人間を制裁してゆっくりによるゆっくりの為のゆっくりプレイスを作るのぜ!!」 「そうだよ!れいむがゆっくりスタめのゆっくりぷれいすだよっ!!」 「じゃまをするどすはしぬんだねー。わかるよー!!」 「むのうなどすとゆっくりはしねだみょん!!」 どうやら畑ドス達を完全に敵とみなしたようだ。 「ど、どすぅー!!!」 「わ”、わがらなあああああ!?」 畑ゆっくり達は自分たちに向けられる殺意に完全にすくみあがっている。 「どぼうじでわがっでぐれないのおおおおおぉぉぉ!?まりさ達はまりさ達のやり方でゆっくりするよっ!!こんなところでドススパークを撃ったら人間さんに殺されちゃうよ!!帰ってね!!森に帰ってもうここには来ないでね!!」 「煩いんだぜ!!無能などドスはゆっくりしねっ!!むーしゃ!むーしゃ!行くのぜ!ド―――」 バフンッ 森ドスがドススパークのために大きく口を開けた時、森ゆっくり達が居る場所めがけて何かが飛んで行き、ドスの目の前で破裂した。 「ゆゆっ!?」 それは赤い霧を作り出し、森ゆっくり達を包み込んだ。 「な、なんなのぜこれは!?よく見えないのぜっ……ゆぅっ……ぎいぃ!?」 途端に、全身に走る激痛。 「ゆんぎゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁぁ!?!?」 森ドスの悲鳴を皮切りに、それは森ゆっくり達にも伝染していく。 「い”っ、い”ぢゃい”い”い”い”い”い”い”い”い”ぃぃぃぃぃ!!あんござんばい”ぢゃい”よ”お”お”お”お”お”お”お”ぉぉぉぉぉ!!」 「ゆんぎゅぎゃあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」 「び、びえないいいいい!!!おべべがびえないいいいいい!!いだいいいいいいいい!!!」 「がらっ!がらっ!!かはっ!!がはっ!!」 「ゆぶぶぶぶぶっ!!ゆべえええええええ!!」 霧ではなく煙玉。 煙の成分は辛味成分を凝縮した『ゆっくりの群れ駆除用辛味煙幕』。 赤・子ゆっくりならば即死。 成体でも数分で死亡。 ドスであっても数十分で死に至る。 数分後。 森ドスはむーしゃむーしゃしていたキノコを口に含んだまま地面に倒れ付していた。 目は真っ赤ですでにかすれており、舌と涎と涙をだらだらと垂らし、しーしーを大量に漏らしている。 続いてなにやら白い雨のようなものが降ってきた。 それは中和剤で、既に人間が近くまで来ており作業を始めていた。 なおドスは死んでいない為中和剤はかけられない。 「ゆげっ……み”み”んな……」 ドスが目を向けた場所にあったのは大量のゆっくりの死骸だけ。 どのゆっくりも餡子を吐き散らし、涙と涎としーしーにまみれ、苦悶の表情を浮かべて息絶えている。 人間がその死体を袋につめる。 実に淡々とした作業だった。 「あ”……あ”……あ”……」 「まりさ……」 その近くに畑ドスが近づく。 「どうして帰ってくれなかったの?どうして人間さんに関わろうとなんてしたの?森の中でゆっくりしていれば、ずっとゆっくりできたのに……」 畑ドスが悲しそうに言う。 ドスは他の畑ゆっくり達はその場から立ち去らせており、この凄惨な場面を見なくてよいようにしていた。 「ど、どず……ば……ゆっぐいを……ゆっぐり……ざ、ぜ……」 「ゆっくりしてたよ?まりさ達の群れはとてもゆっくりしてたよ?羨ましかったよ……。でも……もう……みんな死んじゃったよ。きっと残った子供達も人間さんに殺されちゃうよ。人間さんは容赦しないよ。みんな……みんな……死んじゃうよ?」 「ど、どぼじ……で……?ばでぃざば……ゆっぐり……を、ゆっぐ……り……」 「……ここは森じゃないんだよまりさ……。まりさとまりさ達は同じゆっくりだけど全然違う場所に生きてるんだよ……。まりさはその境界線を越えちゃったんだよ……。そうしたら、もう、ゆっくりできないんだよ……でも、まりさ……ありがとう。ごめんね……」 「ゆ”っ……ゆ”っ……ゆ”っ……」 森ドスは死んだ。 その時、雨が降ってきた。 人間が作業を中断し戻って行く。 雨が降ればゆっくりの死骸は全て溶けてしまう。 作業の手間が減るのだ。 「ドス。帰るぞ。……残念だったな」 人間の一人がそう言って引き上げて行く。 「……」 ドスは呟く 同じゆっくりだったのに、最後までお互いに交わせなかった言葉を。 「まりさ……ゆっくりしていってね」 帰ってくるはずのない返事を待つかのように、畑ドスはいつまでも雨の降る草原に佇んでいた。 読んでくださりありがとうございました、 前回の投稿でもご指摘がありましたが、最大の悩みが『ゆっくりの言葉』が書けないのです。 なんか、普通の人間が話ってるっぽくなってしまう(以前の『あるドスのゆっくり』でもご指摘がありましたが)。 他の皆様が書かれているようなゆっくりの豊な言葉(主にスカッとする悲鳴や命乞いw) をしっかりと書けるようにしたいです。 ふたば系ゆっくりいじめ 433 ゆっくり親子 とクズ人間 ~Another~ ふたば系ゆっくりいじめ 496 あるドスのゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 530 絶対的虐待意思 ふたば系ゆっくりいじめ 650 絶対的虐待意思 0 ふたば系ゆっくりいじめ 684 ドス以外いらん ふたば系ゆっくりいじめ 733 あるドスの最後 ふたば系ゆっくりいじめ 745 絶対的虐待意思 ~せめてゆっくりらしく~ ふたば系ゆっくりいじめ 815 おかねさんとゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 901 原材料 ふたば系ゆっくりいじめ 935 底辺ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 1314 どぼじでごんな”ごどずるの”おおおぉぉ このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! ◆SS感想掲示板 絶対あき感想スレへ ※書き込む時はSSのタイトルを書いて下さい。 コレをコピーしてから飛びましょう→『ふたば系ゆっくりいじめ 1325 価値観の違い』 トップページに戻る