約 12,461 件
https://w.atwiki.jp/digimon-cs/pages/88.html
No. 種族: 属性: 成長タイプ:タイプ スロット数: メモリ: サポートスキル:() ステータス(Lv.50時) HP SP 攻撃力 防御力 知力 素早さ 退化先 No. デジモン名 種族 属性 モン 進化先 No. デジモン名 種族 属性 モン 覚えるスキル名 技名 効果 習得Lv. 消費SP
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4238.html
(消失を読んでない方は、ネタバレ危険です。一応) 私の選んだ人 第5話 「:古泉一樹」 一樹の体を触診していた私は、あまりにも酷いソレに気付いた。 ……彼は助からない…… 私の中で何かが弾けたような感覚と共に、世界が静止した。 私が正気に返るまでに掛かった時間は恐らく1秒以下だった筈。でも、その間に自分の頭から完全に血の気が失せていた事に気付く。 恐ろしい予感と気配、そして貧血性の眩暈を感じながら、一樹の顔を確認する。 私の首は、焦る私の意識に反して緩慢な動きしかしない。地面が揺れている。 ……しまった。 一樹が目を開けている。私の顔色に気付かれた! 私自ら彼の生き残ろうとする気力に止めを刺すような事を……。 こうなる事を恐れ、救護班を押し退けてまで私がやったというのにッ! 悔恨の念、自責の念が押し寄せてくるのを、私は唇を噛み締め、手首に爪を立てて、痛みで脳の覚醒を図り、振り払う。 落ち着け、落ち着くのよ。私。 今は既に犯した過ちを悔やんでいても仕方が無い。自分を責めるのは後。今私には成すべき事がある。 一樹はまだ生きている。最後の1秒まで、諦めてはいけない。 私は、自分の弱い心をフィルターに掛ける。取り乱すのは、一樹が死んだ時でいい。 意識して呼吸を整え血圧を高めると、フラつく足を無視して立ち上がり、少し離れて救護班の1人に手招きする。 救護係は素早く私の前まで来ると私の口元に耳を向けた。彼も理解しているのだ。私がこれから言う言葉を決して一樹に聞かれてはならないという事を。 「肋骨が6本折れ、破裂した内臓が多数交錯している。脊髄も損傷していると思う。これでは閉鎖空間消滅まで持たない。外傷の応急処置が済んだら、モルヒネを3本打ってから外へ運んで。動かす時には折れた肋骨を肺に刺さない様に細心の注意を。でも早くして。1秒でも」 背後で、今日最初の1体目の神人が崩れ落ちる。 あれは一樹の手柄。 もし死ななければ彼はまた階級が上がるだろう。 もし死ななければ。 「私のここでの任務は終った。負傷した部下に付いて行く。後の事は任せると伝えて」 私と同格のアナリストにそう告げると、彼は無言で頷きながら、担架に乗せられた一樹に目をやる。 が、彼はすぐに顔を逸らした。その顔には明確な諦めの色が浮いている。 でも、私はまだ諦めていない。 私は鬼。だからあなたをこんな簡単に楽にはさせない。 「古泉、1秒でもいいから長く頑張りなさい。そうすれば私が必ず助ける」 私がそう言うと、一樹は少しだけ目を開けてゆっくりと私に微笑みかけ、また瞼を閉じた。彼の眉間には深い皺が刻まれている。彼の身体がシャットアウトしていた突然の多過ぎる痛覚情報が、今彼の脳に向け押し寄せている。モルヒネ3本でどれだけ緩和できるだろうか。痛みによるショック死だけは避けなければ。肋骨が肺に刺さるのもまずい。そうなると仰向けているだけで肺に流れ込む血液に因って溺死してしまうから。でも腹部損傷も激しく脊髄も損傷している為、横臥させる事も出来ない。彼がもし咳を始めたら、高確率で、詰む。 「古泉一樹!」 ……意識が既に混濁しかけている。良くない兆候。 「急いで担架へ」 既に朦朧としている一樹を丁重に慎重に担架に乗せる。 涼宮ハルヒの精神が今すぐ安定してくれたら、もしかしたら閉鎖空間消滅がギリギリ間に合うかもしれない。でも、今賭けるべきなのは、その可能性じゃない。 残り時間を予測し、細かく震える指で時計を確認する。一樹の血液に塗れぬるぬると滑る。……見辛い。 救護班の2人が、一樹の乗せられた担架をタイミングを取って持ち上げ、空中で静止して待つ能力者二人に手渡した。 私達が外へ出ると、待機していた新川がすぐに異変に気付いた。彼は黒い偽装タクシーのエンジンをかけると飛び出し、素早く後部座席両側のドアを開ける。地平線へ半分隠れた西日の赤い光線が、太陽の無い世界から帰還した私と担架を運ぶ能力者達の目を直接射る。強く吹き付ける生暖かい風が私の髪を散らし顔を打つ。 新川に声を掛ける。 「ヘリは?」 「既に帰投」 こんな時に限って…。 「多丸は?」 ならば警察車両の方がまだタクシーよりは速いが、もし近くに居なければ仕方が無い。 「私の方が速い。しかし一体どちらへ?」 新川の疑問は当然。本来ならば、手術で助かる様な怪我なら閉鎖空間内に留まった方が生還率が高くなるのだから。 「長門有希の所へ」 「そ、本気ですか?……いえ、この様な時に、些か愚問に過ぎました」 「急いで」 無言で頷いた新川と救護班が一樹を後部座席に担架ごと運び込み固定する間に、一樹の意識がどうやら一時的に回復したらしく、動かされる度に風の音の様な呻きを上げている。顔が苦痛に満ちている。全く動かなくなった彼の左手とは対照的に、右手は何かを求めるかのように虚空を掴んでいる。 その手が、私の心臓を直に掴んでいる様に感じる。 新川が私の耳元で囁いた。 「残り時間は?」 私も小声で返す。……余り意味はないかもしれないけど。 「恐らく、限界まで持って20分。私の勘では14分は持たない」 新川が何かを言いたそうに一瞬口を開きかけた。が、そのまま閉じると顎を引き締め、作業に戻る。 新川が驚くのも無理は無い。確かに時間は無い。でも、それよりも長門有希に助けを求める事自体が、機関の人間なら有り得ない選択。 情報統合思念体と機関は今SOS団を介して一時的に休戦条約を結んではいるものの、基本的に相容れない立場にある。機関は「涼宮ハルヒの永遠の現状維持」を求めて行動しており、情報統合思念体は「進化の可能性となり得る鍵を涼宮ハルヒから引き出す」事が最終目的だから。ただ、私は情報統合思念体ではなく、長門有希自身に、一縷の希望を抱いている。 助手席に乗り込み、衝撃を与えないよう慎重にドアを閉める。 一樹の体の固定作業を終えた新川も、運転席に素早く身を沈め、なるべく衝撃を与えないように足で抑えながらドアを閉める。 車はスムーズなスタートを切り、景色と、一樹を運んで来た2人の攻撃能力者達の暗く沈んだ顔が一気に後方へ遠ざかる。一樹の死を確信している顔。 身体を捻って後部座席へ寝かされた一樹を見ると、歯を食いしばり、夏でも涼しげな顔をしている彼の顔に見慣れない汗がびっしりと光っていて、ありありと激しい苦悶の表情を浮かべたまま、また意識を失っている。 今の内に本部に連絡しないと。 携帯から緊急ラインへ発信すると、いつもの様に1コールを待たずに繋がり、感情の起伏が感じられない低い男の声が流れて来る。 『森園生、どうした』 「古泉一樹が神人の攻撃を受け危篤状態。恐らく13分以内にTFEI長門有希の助力を得られなければ助からない。私はこれから古泉一樹を連れ、長門有希の住むマンションへ向け移動する。長門有希が在宅中か確認したい」 『そのまま待て』 電話の向こうでキーボードを叩く音。 『確認した。TFEI長門有希は12分前に帰宅している。その後外出した形跡は無い』 「了解。では、長門有希の住むマンション前に救急車両1両と人員の緊急手配を申請する。それから新川車両の緊急車両化、長門有希に対しての状況説明を申請する。長門有希を、こちらの到着前にあらかじめ救急車両脇で待機させるよう、手配して欲しい」 『3点の申請を受理する。だが1つ留意点を先に述べる。言うまでもなく我々には古泉一樹と引き換えに情報統合思念体と交換する物はない。そのように動け』 「了解。通信を終える」 長門有希は、間に合いさえすれば間違いなく一樹を救おうとしてくれる。でも、問題は、彼女も情報統合思念体の意思には逆らえないという事。 だからこれは当然予想された注意事項。でも実際に言われるとその冷酷さに内心憤る。が、今はそれを抑え込む。冷静を保たなければ。 すぐに携帯にメールが着信した。「新川車両の緊急車両化」 これで目前の信号は全て青になる。制限速度超過で止められることも無い。この車の進行方向から警察車両は全て移動させられるから。 「新川、来たわ」 「はい」 新川がアクセルを踏み込む。 少し余裕ができた。まず落ち着かなければ。 今私が落ち着かなければ、一樹は絶対に助からない。 深呼吸し、自分の肉体の状態を正常に戻そうとするが、うまくいかない。震えが止まらない自分の手を見て、付着した血が乾き始めているのに気付く。手を拭く事を完全に失念していた。 これが、鬼と呼ばれ恐れられる女なの?フフ……。 手や、血が付いたまま触れてしまった物を拭っていると、また携帯メールが着信。「警察車両が先導する」すると前方に1台のパトカーが徐行しているのが見えた。 「アレの先導に従って」 「かしこまりました」 こちらがそのままの速度で近づくと、そのパトカーは回転灯を光らせサイレンを鳴らし、一定の距離を取って加速する。 それに合わせ新川がアクセルを更に踏み込み、本来ならば高速道路ですら直ちに捕まるような速度に達する。 「新川、到着までは?」 一瞬だけ考えた新川は、今の私と同じ抑制された声で答える。 「……あと8分から9分」 その時間だと、到着してからの余裕は最悪2分程度しかない。 しかも、一樹の気力がそれほど持たない可能性もある。 ……なんとか一樹を力付けなければ。 私は振り返ると、担架から零れた一樹の右手を取った。 少しだけ目を開けた一樹が、無理に笑おうとする。 いつから気が付いていたの? 何か声を掛けなければ。でも、「咳をするな」とは、口が裂けても言ってはいけない。彼に咳をするという選択肢を意識させてはならない。 一樹は苦痛を必死に隠し、無理矢理私に笑い掛けようとする、油汗に塗れた彼の醜い笑顔。 それを見た私の胸が酷く痛む。 まるで狂った猫を飲み込んだかの様に内側から掻き毟られる。それを抑制……しきれない。 「無理するんじゃない。あんたは必ず助けるからっ、今は気絶でもなんでもしてなさい!」 自分の声が震えていたのが判った。 そしてそれに気付いた新川がチラッと私の顔色を覗った。 無理するなと一樹には言ったものの、無理しているのは私も同じ。 さっきから手の震えが止まらない。 それを一樹に悟られないよう握る手に力を込めると、一樹はそれに答えて手に力を込める。 でも、私は彼の手から生まれたてのヒヨコぐらいの力しか感じない。それぐらいの力しか、もう残されていない。 それでも、彼は無理にでも、震える手に力を込めようとする。 彼の目は、こう云っている。 ……「僕は大丈夫」と。「信じています」と。 私を、安心させようとしてる。 急に一樹の手から力が失せた。また失神したようだ。 信じる?ええ、知ってるわ。あなたは私を信じてる。信じ切ってる。盲目的に信じている。 私を、安心させようだなんて……どこまでもバカな人。 一樹の手を離した私は前を向き、到着まで目を瞑り、呼吸を整え、精神を統一する事にする。 彼の手を握ったままでは、私の心はきっと静まらないから。 「そろそろ到着致します」 新川の声で目を開けると、目の前を走るパトカーとの車間がかなり狭くなり、速度も落ちていた。 救急車の回転灯の赤い光と交互に訪れる夕闇が、周囲に緊迫感をチカチカと振り撒いている長門有希の住むマンションの前に到着した時、一樹は意識を失ったままだった。既に脈の圧力はかなり弱くなっている。タイムリミットが近い。 新川が車を停止させるのももどかしく、私は飛び出し辺りを見回す。 居た。 何故かスーパーのロゴがプリントされた不透明な白い袋を右手に提げた長門有希が、救急車の横にポツンと立っている。 私は彼女の元へ走る。背後では移動式担架を予め外に出し待機していた救急隊員達が、無駄のない動きで一樹を救急車の中に移動させようとしている。 私はこの小さな制服姿に宿る巨大な知性と、そこから繋がる宇宙規模の叡智に、これから1人で立ち向かわなければならないだろう。 情報統合思念体が、機関に対し無償で快くボランティア活動を引き受ける事を期待するのは間違いだ。私は今やっとスタートラインに立ったに過ぎない。 私は彼女の手を取ると、救急車に乗り込み、救急隊員全員に外に出てドアを閉めるように促した。 彼らは救急隊員でもあるけど、全て機関の人間。 何も言わずに淡々と降りると、全てのドアを堅く閉ざした。 器具や一樹の寝かされたベッドに挟まれた細い通路。 病院と同じ薬品の臭いが鼻を突く。 私は一つ深呼吸をしてから、振り返り、長門有希の目を覗き込む。 彼女も私の目を見返す。お互いの目を見つめ合う。 私は一樹の脈拍が測れるよう、左手で意識の無い彼の右手首を掴む。 脈が不整。間隔もかなり長い。心拍停止寸前。 今は彼の顔は見ないようにする。 冷静を保たなければ。 今、彼を守れるのは私だけ。 無表情を維持したままの長門有希は、ゆっくりと一樹の寝かされたベッドの方へ向き直ると、スーパーの袋からステーキ用の骨付き牛肉を取り出し、包装を破り、プラスチック製の皿ごとベッドの上に置いた。そしてまたゆっくりと身体をこちらに向け、私の目を凝視する。 そしてそのまま私が話し始めるのを待っている様だ。 私は自分の呼吸を意識しながら、言った。 「先ず確認するけど、一樹を治すのに掛かる時間はどれぐらい?」 彼女は答える。 「約4.1326秒」 一呼吸置いて、私は本題を切り出す。 「……古泉一樹を治して」 それに対し彼女はこう返す。 「我々への対価は?」 私の返事は決まっている。 「何も無い」 彼女の立場もまた、決まっている。 「情報統合思念体は、何らかの形で対価を要求している」 予想していた展開。情報統合思念体はこの機会に乗じて機関に対しアドバンテージを得ようとするだろう。と考えていた。それが現実になったに過ぎない。でも今は押し問答をしている場合じゃない。 「それなら、対価は一樹が治ること」 「それでは対価とは言えない」 「利害が一致する。という事で手を打って頂けないかしら?」 「対価を支払うならば、協力する」 途切れがちだった一樹の脈拍が完全に沈黙した。 腕時計の秒針を確認する。 彼を彼たらしめる為の脳。その脳の死へのカウントダウンが始まってしまった。 もう1秒も無駄にできない。 機関が知り得た情報により、TFEIが他人の記憶情報をほぼ制限無く改竄可能な事は判明しているが、脳死した人間を元のように治せるのかは知らない。完全には出来ないのではないか。と、私の勘は告げている。記憶では無い部分、人格を形成する部分について、もし思い通りに改竄可能ならば「鍵」をいじってしまえば思い通りに涼宮ハルヒを動かす事ができる筈だから。 ただ1つ例外がある。一樹の報告にあった、昨年12月の我々の知らなかった事件が真実だと仮定すれば、涼宮ハルヒの力を長門有希が利用すればそれは可能だろう。しかし、情報統合思念体がそれに許可を出す可能性は無いと私は見る。長門有希を完全に信用するにはリスクが大きすぎる筈だ。 つまり、これで私には制限時間が出来たという事。それもかなり短い。 対する情報統合思念体には何の制限も無い。 交渉するにはこちら側が圧倒的不利な状況。 心拍停止から、1秒経過。 「あなた方の提示する、我々の差し出すべき対価とは?」 「あなた方がTFEIと呼称する、有機ヒューマノイドインターフェースの活動に今後一切関知しない事。もしくは研究用媒体として有能な個体を1体提供する事。それには、森園生、貴方が望ましい」 ……そうきたか 「私をお望み?でも、本当に私が欲しいのなら、とっくに全てを書き換えて中身を入れ替えている筈じゃない?」 「私達に取って貴方の容姿や立場に特別な価値など無い。私達が欲しいのは貴方の生体由来部分、特に感情の制御データ。貴方の意識が貴方の肉体に宿った状態での協力が必要」 脳に酸素を送るため、私は若干過剰気味に深く呼吸をする。 そして私は集中する為に、彼女の言葉、自らの思考、経過時間以外の不必要な情報からのノイズを意識のフィルターに掛け、一時的に思考から遮断する。 私の意思は決まっている。一樹を死なせたくない。 情報統合思念体の思惑は解った。 では、長門有希はどう考えているのだろう。唯一の希望は彼女にある。彼女の立場になってこの状況を再考しなければ。 長門有希から見ても、『機関がTFEIの活動に今後一切関知しない』との条件は、機関そのものを揺るがす制限であり、もし今ここで私が機関上部へ申請しても、結果が手遅れになる前に間に合う可能性すら皆無。私に考える時間を1秒でも浪費させる為のブラフと見て間違いない。 しかし私がもしもう一つの選択肢を取り、機関からの命令を破り情報統合思念体に協力すれば、どちらにせよ私は機関に消される。それも長門有希には解っているだろう。 つまりこれは、一樹の命と私を交換する。という申し出。 そんな事を一樹が許す筈が無い。相手が誰であろうと自分の命を救うために誰かが犠牲になる事を良しとする一樹ではない。その上、私に対する一樹の音声や脈拍、瞳孔の伸縮、視線、表情筋の動きの微細な変化、もしくは彼の記憶そのものを通して、彼の私に対する「感情」に彼女が気付いていない筈が無い。 でもこの提案を受ける事自体は可能。意識を取り戻した一樹が後で何を言っても、情報統合思念体は交わした契約の対価の権利だけを放棄したりはしないだろう。ただ、自らの意思の埒外で私の代わりに生き残される事を強要された彼と、情報統合思念体の意思がどうあれ、結局その提案を私にした長門有希との間に、致命的な亀裂が入る事は疑うべくも無い。 そもそもSOS団の現状維持に反する事を長門有希が求めるだろうか。私はそうは思わない。 つまり、彼女から提示されたこの二つの選択肢には正答が無い。彼女の真の狙いは何か。見誤ってはならない。 長門有希は、間違いなく、SOS団が現状を維持する事を願っている。 一樹を治したい筈。一樹の隣に置かれたTボーン・ステーキがそれを告げている。あれで一樹の欠損した肉体を補うつもりなのだろう。そもそも本気で交渉するつもりならば、彼女は先にアレを取り出したりはしない。アレは一樹を治したいという彼女の意思表示。 恐らく、2つの対価の提案の大筋は情報統合思念体の意思。 ただ彼女は対価を得る事を良しとしていない。彼女は、対価を得る事が後の機関と情報統合思念体の関係性に軋轢を生じさせ、それがSOS団のバランスが致命的に崩れる方向に作用し、結局涼宮ハルヒの精神の安定を保てない状態になる事を懸念しているに違いない。だから提案の肝心の部分を調整し無効化する事で私にメッセージを送っている。正答は別にある。と。 彼女は私と同じ。所属する組織の意向に従わざるを得ないだけ。だから彼女は形ばかりの要求をした。 何も交換無しで一樹を治す。それが彼女に取っての唯一の正解。 つまり、彼女からのメッセージは、「対価を何も支払わなくとも、情報統合思念体が長門有希に対し一樹を治す許可を出さざるを得ない状況を生み出す方法がある」という事。それは情報統合思念体には弱みがあるという意味。長門有希は私にそれを突けと云っている。 でも、弱み?おかしいわ。 私にはタイムリミットと言う明確な弱みがある。私が譲歩する側でなければ辻褄が合わない。 私の弱みであり、情報統合思念体に取っての強み。 タイムリミット。 では、情報統合思念体に取っての弱みで、私の強みは? 辻褄を合わせる。 そう。…そういう事なの。 理解したわ、長門さん。あなたからのメッセージを。 心拍停止から、15秒経過。 私は意識してゆっくりと言う。 「フッ。ならば交渉は決裂ね。SOS団という交錯した天秤の1辺である彼には、まだあなた方にも利用価値がある筈よ?残念ね」 彼女もまた、自分のペースで淡々と話す。 「我々は涼宮ハルヒと、その鍵である「彼」の観測のみを必要としている。涼宮ハルヒ周辺のバランスが崩れる事が齎す影響が、我々に取って必ず悪い方向へ作用すると判断する根拠は無い。因って、あなた方の一員である古泉一樹を救うには、我々は我々の状況を改善するに役立つ対価を要求する」 「しかし、状況が必ず悪くない方向へ進むと断定できる程の論拠もまた、無い。事態が悪化する可能性は捨て切れない。あなた方は、軽薄な行動を禁忌すると私は理解している」 「まさしく。しかし、古泉一樹の命を救う事が軽薄な行動でないとどうして言えるのか。古泉一樹の死によって、涼宮ハルヒが起こす可能性のある環境情報への干渉が、我々の求める物ではないと何故断言出来るのか」 私はこう切り返す。 「あなた方はその可能性を考慮していない。もし可能性があるならば、あなた方はそもそも交渉にすら応じない。寧ろあなた方自ら、古泉一樹の命を奪うでしょう。因って、私はそれはあなた方が求める物では無いと断定する」 「……」 それに対し彼女は何も言わない。 私は追い討ちをかける。 「現状を維持することが、私達機関の願いであり、また、SOS団5名の総意でもある筈。……涼宮ハルヒの願いでもあり、「鍵」である「彼」の願いであり、……長門有希、あなた自身の願い。そうよね?」 「……」 彼女は言うべき言葉をもう持っていない。 私も、言うべき事は全て言った。 自分の意識に掛けていたフィルターを全て取り除く。急に自分が弱くなった様な気がして寒気が背筋を這い上がってくる。……本当は、自分は何も変わっていないのに。 私達は、無言で相手の目を見合う。 無表情な長門有希は、静かな、波一つ無い新月の夜の海のような瞳で、私をただじっと見つめている。 その目に見つめられていると、心を全て見透かされているように感じ、私の胸の中にモヤモヤとした霧が広がる。 ……彼女と私はとても似ている。立場も、生き方も、他人の内面を読み取るという点も。私の前に立つ人は、きっとこんな気持ちになるのね。平静を失うのも無理ないわ。私も落ち着かない気分になるもの。でも、中にはその落ち着かない気持ちを全く表さないか、そもそも落ち着きを失わない人も居る。新川も、多丸兄弟も、そう。だから、私の下に配置されている。 静寂。空気すら動かない沈黙。 その中を時間だけが流れて行く。 一樹。 彼は、私が見つめていても、常に落ち着いている。 いいえ、逆に安らいでいるようにすら見える。 しかも彼は、隠している私の本心を逆に透視してくれるように感じる。 そして私はそれを心地良く感じる。 彼にとって私は、擬態していない本当の自分を知る数少ない人間。 そして、想いを寄せる相手。 私にとっての彼は……私は彼に恨まれるべき人間。 私には何を言う権利も無い。 一樹という存在が消えてしまう時のタイムリミットが迫って来る。 そろそろ時間。私は時計に目を据える。 ……あと30秒。 私には言葉はもう無い。時間が来るのをただ待つだけ。 ……あと20秒。 彼女もまた同じ。その時が来るのを、ただじっと待っている。 ……あと15秒。 彼はこのまま死んだ方が、きっと彼も、後で余計に苦しまないで済む。 でも私は少しでも可能性があるなら、それに賭ける。 ……時間ね。 「そろそろ時間よ。あと10秒で、彼が元の彼に戻るという保障が無くなる。治して頂戴」 「解った。対価は必要ない」 そう言いながら彼女は非常に素早い動作で右手を一樹の胸に当て、左手を骨付き生肉にかざし、『呪文』と未来人が呼ぶ高速言語を詠唱する。 内出血し醜く紫色に腫上がっていた一樹の下腹部がみるみるうちにへこみ、まるで元々何事も無かったかのように、綺麗に元通りになって行く。反対に彼女の左手の下のステーキ肉が蒸発するかの様に消えて行く。 長門有希が、ゆっくりと手を下ろす。 一樹の力強い脈動が、手首を掴んだ私の指を圧し返す。 終った。彼は、死ななかった。 彼の上に掛けてある毛布のいびつな形の膨らみと、彼の千切れた衣服を汚す血、一樹の顔に張り付いた苦悶の表情と汗が、全てが夢ではなかったことを告げている。 胸に熱いものが込み上げてくるのを、私は抑制した。 長門有希と共に救急車から降りると、新川と目が合った。 私が目で合図を送ると、彼も満面の笑顔になり、大きく満足気な安堵の溜息をつくと仲間達の許へ報告に向かった。 私は長門有希と向き合い、 「長門有希さん、あなたに、本当に感謝します」 そう言って、深く頭を下げた。 すると、その私の頭上から彼女の平坦なイントネーションの言葉が降ってきた。 「あなたは、私の意図を正確に理解していた。「彼」のような直感ではなく、計算に依って」 私が顔を上げると、長門有希は先程と同じ場所に同じように立っている。 長門有希が設計に織り込まれていない筈の感情を微細に表す事がある。というのは、一樹の報告により知っている。 実際にこの目で見たのは、これが初めて。 彼女は、驚いている様ね。 「あなたが、教えてくれたのよ」 「そう。問題はあなたが思考に掛けた時間。人の脳の構造的限界に近い時間しか、貴方は必要としなかった」 「お褒めの言葉と受け取っておくわ」 「人間が通常訓練で習得し得る能力レベルを遥かに凌駕している。私という個体は、情報統合思念体とは別の意味で、貴方に興味を感じている」 今度は私が驚く番ね。私の耳で、彼女の口から「興味」といった言葉を聞く事になるとは。しかも、私に対しての。 「ふふ。私も、あなたに興味を感じていた所よ。機関の一員としての私は別にして。ね」 「古泉一樹は、正しい上司を持った」 そう言い残して、彼女は忽然と歩き出す。 その彼女の残した言葉が、一発のライフル弾の様に、焼き焦がすような激痛を伴って、正確無比に私の心の一番弱い部分を貫いた。 と、突然足がスポンジの様になった。世界が傾げる。 咄嗟に受身を取ろうとした私は、まるでそれを予期していたかのように瞬速で反応した新川の腕によってしっかりと支えられていた。 私とした事が。今日は醜態を晒してばかり。 今まで緊張し過ぎていた為か、あまりに安堵した為か。 それとも、長門有希の残した一言が原因か。 新川の手は、咄嗟に支えに入ったにも拘らず正確に女性を安心させる位置に置かれている。 機関の人間は、皆こう。あらゆる面において非常に辛い訓練を受ける。 「済まない。新川。もう大丈夫よ」 「いえ。差し出がましい真似を致しました」 私と新川は自然な動作で身を離す。 そろそろ一樹が目を覚ますわね。救急車に戻らないと。 それが上司の務め。 上司としての。 ……私が正しい上司? やめて……。 長門さん、貴方は全て解った上でそう言ったの? やめて。私、それにだけは耐えられない。 第6話「真実の言葉」へつづく 私の選んだ人リストページ
https://w.atwiki.jp/nitendo/pages/5102.html
発売したゲーム以外のページは作らないでください。 【ゲーム ウオッチ】の国内未発売作品は【ゲーム ウオッチ】/ゲーム、アーケードの国内未稼働作品はアーケードゲーム、ゲームハードの国内未発売はゲーム機一覧を参照。 おおよその年代 タイトル ハード 説明 1983 ドンキーコングJR.の音楽遊び FC 【ドンキーコングJR.】が鍵盤で演奏するゲーム。チラシなどで公開されていた。 1986 パルプス FCD ブロックでアルファベットを組み合わせてプログラミング言語を作るゲームとして発表されていた。 1986 【Gumshoe】? NES NES Zapper(ファミコン光線銃)対応。日本未発売。横スクロールアクションをガンシューティングで遊ぶという今見ても風変わりな作品。 1988 五目ならべ FCD 【五目ならべ 連珠】の移植と思われるが発売されなかった。 1988 【バルーンファイト】(FCD版) FCD FCDに移植予定だったが発売されず。 1989 Tetris(NES版) NES 国内のFC版テトリスはBPSが販売したが、日本国外では任天堂が発売した。ゲームボーイ版がベースだが、対戦モードがない、結果画面の音楽隊が任天堂キャラに差し替えられている等の違いがある。 1989 【To the Earth】? NES NES Zapper(ファミコン光線銃)対応。日本未発売。宇宙を舞台にしたガンシューティング。 1990 パンチアウト(Mr.ドリームが出る再販版) FC 日本では発売せず。しかし後に【どうぶつの森+】に収録され、以降のハードではバーチャルコンソールで販売された。 1990 【StarTropics】? NES 日本未発売。小さな島を舞台にしたアクションアドベンチャー。【Nintendo Entertainment System - Nintendo Switch Online】?に収録されているため、やろうと思えば日本国内でもプレイ可能。 1991 【Kid Icarus Of Myths and Monsters】 GB 日本では発売せず。しかし後に【ニンテンドー3DS】のバーチャルコンソールで英語版そのままで販売された。 1992 【Wave Race】 GB 水上レースゲーム。本作は日本で発売されなかったが、続編の【ウエーブレース64】は普通に発売された。 1992 【Super Mario Bros. Friends When I Grow Up】? PC マリオシリーズを題材にしたぬりえゲーム。 1992 【Mario Teaches Typing】? PC マリオシリーズを題材にしたタイピングゲーム。 1993 【メタルコンバット】? SFC 日本では発売せず。何故か公式HPはあるので日本語名は判明している。 1993 【Mario is Missing!】? NES/SNES 【ルイージ】が初めて主役を務めたことで有名な教育ソフト。 1993 【Mario s Time Machine】? NES/SNES/PC タイムマシンを使って過去の歴史を学ぶ教育ソフト。 1993 【Mario s Early Years! Fun with Letters】? SNES/PC 英語の基礎を学ぶ教育ソフト。 1994 サウンドファンタジーサウンド・ファクトリー 音楽工房 SFC 音楽ソフト。スーパーファミコンマウスとの同梱版が発売される予定だった。 1994 【Game Boy Gallery】 GB 【ゲームボーイギャラリー】の元祖となる作品だが、日本では発売せず。マリオキャラがいない。このソフトの影響で発売地域によってナンバリングが異なる。 1994 【Tetris Dr. Mario】? SENS テトリスと専用モードの部分のみ、日本では発売せず。テトリスと【ドクターマリオ(ゲーム)】のカップリング。2つのゲームでスコアを競う「Mix Match」モードがある。日本では【サテラビュー】と【ニンテンドウパワー】向けにドクターマリオのみ配信された。 1994 【Wario s Woods】 SNES 【ワリオの森】のSFC版。日本国外ではNES版と同時にマルチプラットフォームで展開された。対戦モードが押し出されており、FC版とは異なるオリジナルキャラクターが登場し、ストーリーモードでは戦闘前に会話をするシーンがある。日本ではサテラビュー用に『ワリオの森 爆笑バージョン』と『ワリオの森 再び』としてローカライズされているが、そちらではストーリーモードが削除されている。 1994 【Zoda s Revenge StarTropics Ⅱ】? NES 日本未発売。『StarTropics』の続編。 1994 【Mario s Early Years! Fun with Numbers】? SNES/PC 数字を学ぶ教育ソフト。 1994 【Mario s Early Years! Preschool Fun】? SNES/PC 指定のオブジェクトをクリックする教育ソフト。 1994 【Wario Blast Featuring Bomberman!】 GB 日本未発売。『ボンバーマンGB』のローカライズ。ゲームタイトル通りに【ワリオ】が主役級の扱いで登場しているが、他はそのまま。 1994 【Hotel Mario】? CD-i ホテルに逃げ込んだクッパを倒すゲーム。 1995 【スターフォックス2】 SFC ほぼ完成していたが【NINTENDO64】の発売が迫っていたため開発中止に。しかしネット上にROMが流出したため一部の間では知られており、なんと【ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン】?に収録される形で正式に発売された。後に配信された【スーパーファミコン Nintendo Switch Online】にも収録済み。 1995 【ゴールデンアイ 007】(SFC/VB版) SFCVB 元々はSFC向けに作られていたが開発中止により破棄。更にバーチャルボーイ向けに作り直されたが本体の不振でこれまた開発中止に。64にハードが移されたが二度に渡る開発中止で開発陣の士気は最悪だったという。 1995 G-ZERO VB バーチャルボーイ版の【F-ZERO】。マシンの名前が微妙に変更されている。VBの不振によりお蔵入りに。 1995 【Kirby s Avalanche】 SNES 日本未発売。『すーぱーぷよぷよ』のローカライズ。当時のぷよぷよシリーズのキャラクターが受けないという理由で、カービィの世界観に差し替え。【Super Nintendo Entertainment System - Nintendo Switch Online】?に収録されているため、やろうと思えば日本国内でもプレイ可能。 1995 【Mario s Game Gallery】? PC マリオを題材としたテーブルゲーム集。 1996 カービィボウル64 64 いつのまにかカービィのエアライドに変わっていた。 1996 カービィのエアライド(64版)/カービィエアライド 64 何度かスクリーンショットを掲載した後に64では開発中止となった。 1996 Killer Instinct 64 日本でも発売する予定があったが中止。 1996 ボディハーベスト 64 64のロンチタイトルとして作られていたが中止。 1996 【Mario Teaches Typing 2】? PC マリオシリーズを題材にしたタイピングゲームの続編。 1997 ポケットモンスター2 GB 全国を舞台とする予定だったが大幅に作り変えられて【ポケットモンスター 金・銀】となった。後にプロトタイプ版のROMが何故か流出して話題に。一部のポケモンの画像は【ポケットカメラ】に流用された。 1997 ミラーハウス コーンフレーク 64 コーンフレークを食べるために城を探索するゲーム。サンプルゲームとされている。 1997 クライマー(仮) 64 DMAスタジオ(ロックスター)が開発を担当していた。クリエイター(仮)というゲームに吸収された。 1997 バギーブギー 64 マシンがどんどん進化するRPG。【マリオアーティスト ポリゴンスタジオ】?に吸収された。 1997 【Tetrisphere】? 64 日本でも発売予定だったが中止された。 1997 Conker s Quest 64DD 【コンカー】が主役の3D探索アクションとして作られていたが開発中止。後に北米でレア社から発売されたが凄まじい内容に変貌していた。 1998 クリエイター(仮) 64DD 恐竜を育てるゲームだったらしい。【マリオアーティスト ペイントスタジオ】?に吸収された。 1998 スーパーマリオRPG2 64DD 【ポチ】が登場する予定だった。通常の64向けの【マリオストーリー】に変更された。 1998 TEO 64DD イルカとコミュニケーションを取るゲーム。任天堂とハドソンの共同開発で移植予定だった。 1998 【オリエンタルブルー 青の天外】 64DD 元々は64DD向けに開発されていたが、不調によりGBAに持ち越し。この時点で3部作構成予定だった模様。 1998 キャベツ 64 糸井重里によると「たまごっち」のようなゲームだったらしい。 1998 格闘ゲーム竜王 64 【ニンテンドウオールスター! 大乱闘スマッシュブラザーズ】のプロトタイプ作品。ワイヤーフレームのキャラクターが戦う簡素なものだった。 1998 ポケモンピクロス(GB版) GB 後に3DSで同名の【ポケモンピクロス】が発売したが特に関係はない。 1999 スーパーマリオ64-2 64 ルイージが出る予定だったらしい。 1999 スリッ駆ラジッ駆 64 ラジコンカーを操作するゲーム。結局開発中止に。 1999? ジャングル大帝 64 同名漫画のゲーム化。糸井重里によると「1年半から2年やって、もう少しでできる」というところで中止になったらしい。(参照) 1999 MOTHER3 豚王の最後 MOTHER3 キマイラの森 64 何度もサブタイトルを変えて発売欄に乗っていたが開発中止に。後にGBAでリリース。サブタイトルもGBAのストーリーで何となく察せられる。 1999 64ウォーズ 64 ファミコンウォーズシリーズの1作。GB版との連動予定があった。 1999 ウォール街(仮) 64DD 日本の金融モチーフにしたシミュレーションゲームであったらしい。 1999 Star Wars Episode I Racer(GBC)? GBC 北米と欧州で発売。64版と同じく任天堂が発売元となっている。 2000 【Dr. MARIO 64】? 64 日本未発売。後に【NINTENDO パズルコレクション】に収録。【Nintendo 64 - Nintendo Switch Online】?に収録されているため、やろうと思えば日本国内でもプレイ可能。 2000 ファイアーエムブレム64 ファイアーエムブレム 暗闇の巫女 64 「封印の剣」になった事を考えると「暗闇の巫女」は【イドゥン】のことか。 2000 エコーデルタ 64 18分の限られた時間で海底を探索するゲーム。 2000 【動物番長(ゲーム)】(64DD版) 64DD 64DDの不調によりゲームキューブにハードが移された。 2000 【Pokémon Puzzle League】? 64 日本では発売せず。【NINTENDO パズルコレクション】の【パネルでポン】は本作の手直し作品。【Nintendo 64 - Nintendo Switch Online】?に収録されているため、やろうと思えば日本国内でもプレイ可能。 2000 ゼルダの伝説 ふしぎの木の実 勇気の章 GBC 当初は「力・知恵・勇気の章」の3部作予定だったが、開発が難航して宮本茂に「2作のほうが楽なんちゃう?」と助言された事によって、力・知恵を大地・時空へと変更。勇気はお蔵入りとなった。また、これとは別に「ゼルダ1」と呼ばれるものがもう1本存在していたらしい。 2000 【伝説のスタフィー】(GBC版) GBC 元々はGBC向けのタイトルだった。ファミ通64+(2000年10月号)によると既に開発度100%となっていたが、新規IPのためお蔵入りとなり、GBA向けに作り直された。 2001 ジャガーミシン刺しゅう専用ソフト KIRBY FAMILY GBC 【ジャガーミシン刺しゅう専用ソフト MARIO FAMILY】がコケたためか未発売。 2001 【ゲームボーイギャラリー4】? GBA 日本では発売せず。しかし後に【Wii U】?のバーチャルコンソールで日本語版が販売された。 2001 【ゲームボーイウォーズアドバンス】? GBA 長らく発売予定に残っていたが、日本では単品で発売せずに【ゲームボーイウォーズアドバンス1+2】?のカップリング作品として発売した。 2001 スーパーマリオ128 GC 128人の【マリオ】がうろうろするゲーム。元よりデモンストレーション用のタイトルだったと見られている。ピクミンは本作を元に作られた作品。 2001 スーパーマリオ2001 GC ゲームキューブの説明書にのみ記載されている作品。マリオがさらわれてしまい、ルイージ・キノピオ・ピーチ・クッパが協力して助けに向かうという内容。制作の話が一切出ないためタイトルだけの存在で企画自体が立っていなかった可能性が高い。マリオがさらわれるゲームはロンチで【ルイージマンション】が発売しており、中期以降の説明書ではルイージマンションに置き換えられている。小学館の学年誌では「ルイージマンションのダミータイトル」と推測されていた。 2001 ゲームボーイミュージック GBA 東京ゲームショウに出展されたもののGBAでは色々無理があってお蔵入りに。後に再開発されて【大合奏!バンドブラザーズ】となった。 2001 サーベルウルフ GBA レア社開発。後にTHQから日本国外で販売された。 2001 穴馬大作戦 GBA モバイルアダプタGBと連動した競馬ゲーム。 2002 コロコロカービィ2 GC GBAと連動するシステムが搭載されていた。Roll-o-Ramaというタイトルに変更される。 2002 星のカービィGBA GBA 当初はオリジナル作品が作られていた。【星のカービィ 夢の泉デラックス】にドット絵が流用された。 2002 Roll-o-Rama GC コロコロカービィ2のタイトルが変更。結局未発売となった。 2002 ステージデビュー人間コピーまねビト GC GBA用カメラ「GAME EYE」(まねビトカメラ)を使って顔写真を取り込み、取り込んだ人間を元にしてアバターを作るゲーム。【マリオアーティスト タレントスタジオ】?の「いろんなタッチをよくばりすぎた」という反省点を活かしてアクセ等のカスタマイズ要素を増やして制作されたが、キャラを作って何をやるのか分からなくなって開発中止に。【Mii】と【Wii Sports】?でようやく実を結んだ。 2002 GAME EYEまねビトカメラ GBA ↑のゲームで使う予定だったGBA用カメラ。同時にお蔵入りに。 2002 バドランド(仮) GBA HAL研究所開発。戦略マップと対戦格闘アクションを組み合わせたゲームだったらしい。 2002 ルナブレイズ GBA HAL研究所開発。モンスターを集めて育てるゲーム。 2003 ディディーコングパイロット GBA フライトレースゲーム。レア社の売却により開発中止に。北米では「バンジョーパイロット」としてリリースされた。 2003 【ゲームボーイウォーズアドバンス2】? GBA 日本未発売。『ゲームボーイウォーズアドバンス1+2』にカップリング作品として発売した。 2004 ドンキーコングレーシング GC 【ドンキーコング】達がアニマルフレンドに乗るレース作品。後に【ドンキーコング たるジェットレース】が発売したが関連性は不明。 2004 カスタムロボGX2 GBA 何度も作り直したため、作品としては「GX5」に該当する内容だったらしい。DS向けに作り直されて【激闘!カスタムロボ】?となった。 2005 【Geist】?(ガイスト) GC E3で公開されたが日本では発売されていない。 2005 星のカービィ(仮称) GC ヘルパー制を採用した4人用アクションゲーム。【毛糸のカービィ】が発売した後に消滅した。 2005 星のカービィ(3D版) GC 表には公開されずに作られていたプロトタイプ。【星のカービィ Wii】の社長が訊くで公開された。 2005 Project H.A.M.M.E.R. Wii Wiiリモコンをハンマーに見立てて操作するゲーム。2008年頃には発売リストから消滅した。 2006 【スーパーペーパーマリオ】(GC版) GC 元々はGCで発売される予定だったが、急ピッチで作り変えられて下記の『ドンキーコング たるジェットレース』と共にWii向きのゲームになった。 2006 【ドンキーコング たるジェットレース】(GC版) GC 元々はGCで発売される予定だったが、急ピッチで作り変えられて上記の『スーパーペーパーマリオ』と共にWii向きのゲームになった。元々はタルコンガ対応作品だった。 2006 【Elite Beat Agents(ゲーム)】 DS 【押忍!闘え!応援団】の北米ローカライズ作品だが、基本となるゲームシステム以外(楽曲やキャラクター等)は北米に合わせて全て差し替えられている。改良版としての側面もあり、スキップ等の仕様は【燃えろ!熱血リズム魂 押忍!闘え!応援団2】に引き継がれた。スマブラではキャラクターがシールやスピリッツという形でいくつか収録されている。 2007 ニンテンドーDS向けの似顔絵ソフト DS Miiの原型となった「こけし構想」の開発プロジェクト作品。これ自体は商品化に至らなかったが、似顔絵チャンネルやMiiの原型となった。 2007 【Diddy Kong Racing DS】? DS 日本では発売せず。 2008 コズミックウォーカー Wii 任天堂カンファレンスで公開された後にいつの間にかタイトルが消えていた。 2008 100語でスタート!英会話 Wii 同名のTV番組のゲーム化。任天堂カンファレンスで公開された後にいつの間にかタイトルが消えていた。 2009 【Metroid Prime Trilogy】? Wii メトロイドプライム三部作のオムニバスソフト。全作品がWiiリモコンとヌンチャクの操作に対応している。日本未発売だが、日本ではその代わりに『Wiiであそぶ メトロイドプライム(同2)』が単品で発売されている。 2009 Wiiバイタリティーセンサー Wii 2009年のE3で脈拍を計れる周辺機器として発表。しかしそのまま続報は出ず、2013年の質疑応答で測定に問題が生じた事が語られている。【リングフィット アドベンチャー】?には脈拍測定機能があるが、IRカメラの測定方法にこれで培われた技術が関連しているのかは不明。 2012 【Pokémon TCG Online】? PC/スマホ 【ポケモンカードゲーム】?のデジタル版。日本向けでは未配信。 2014 Project Giant Robot WiiU 巨大ロボットが戦うゲーム。【Nintendo Labo Toy-Con 02 Robot Kit】?で使う予定だったロボットの一部が再利用された。 2014 Project Guard WiiU Wii U ゲームパッドとテレビ画面が非対称の防衛ゲーム。【スターフォックス ガード】?に変更された。 2019 【Pokémon Tower Battle】? PC/スマホ Facebookで配信。「どうぶつタワーバトル」のポケモン版。製作者監修。日本向けには未配信。 2019 【Pokémon Medallion Battle】? PC/スマホ Facebookで配信。ポケモンのメダルを出し合って対戦するTCGのようなゲーム。日本向けには未配信。 2021 【Pokémon Trading Card Game Live】? PC/スマホ 『Pokémon TCG Online』の後継作。データ移行可能。日本向けへの発表はなし。 2023 【Advance Wars 1+2 Re-Boot Camp】? Switch 『ゲームボーイウォーズアドバンス1+2』のリメイク。日本向けへの発表はなし。2022年発売に延期した後、ロシアのウクライナ侵攻が始まって以降は発売未定となった。その後、2023/04/21にようやく発売。 コメント 青の天外も元は64DD向けに開発されてたと言われていますが、どうなんでしょうか? - シグナ (2021-09-12 07 56 29) 入れて良いと思います - よしこう (2021-09-12 08 48 56) 「project hammer」や「geist」、「コズミックウォーカー」ってのも昔ゲーム雑誌で見たけど記載するならここになるのでしょうか?(コメント場所違っていたらごめんなさい) - 名無しさん (2022-02-27 20 06 22) ここに記載してください。 - よしこう (2022-02-27 20 10 34) 名前 全てのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/zenzen53/pages/87.html
最後の純血なる「竜の騎士」にしてダイ(ディーノ)の父親。 人間でいうところの、壮年から中年期の男性のような風貌をしている。柄に竜の意匠が施された専用の剣「真魔剛竜剣」を武器として使用。左目には「竜の牙(ドラゴンファング)」という飾りを付けており、これを使用して竜の騎士の真の姿である「竜魔人」に姿を変えることができる。 基本的には、弱者を必要以上に傷つけたり、卑怯な戦い方をすることを好まない武人気質の持ち主である。しかし竜の騎士ゆえの気性の激しさも有しているため、自分を怒らせた者や、敵と見なした相手に対しては容赦無く攻撃し、命を奪うことも躊躇しない。 多彩な呪文を使い、電撃呪文ギガデインを剣に込めて放つギガブレイクを得意とする。
https://w.atwiki.jp/degi-mon/pages/250.html
https://w.atwiki.jp/zunk/pages/29.html
第1話「友達」 「今思えば彼が金貨を拾ったのも偶然ではなかったのかもしれない。 たった1枚の金貨がここまで世界の命運を変える事があるとは、誰も思っていなかっただろう。」 「あの地方に吹く初夏の訪れの風が、なぜ夏の貴婦人と呼ばれるようになったのだろう。 最初にその名を呼びはじめた者は一体どこまでわかっていたのだろうか?」 カミテアには知る人ぞ知る、ある言い伝えがあった。 「初夏の訪れの風、『夏の貴婦人』が吹くときティ・オールの実は現し世に実る」 ティ・オールの実はそれはそれは価値の高い宝石であると噂されていた。 夏の貴婦人の訪れを目前に、噂を聞きつけてカミテアの町に3人のごろつきがやってきたところから物語は始まる。 カミテアの4人の少年少女、エレン、レイル、セオドア、ジュークらは、いつもと同じように集まって今日は何をしようかと相談していた。 その時にジュークが森にしかけた罠に何か獲物がかかったことを知らせる鳴子がガラゴロと音を立てたので、少年達はかかった獲物を見に行くことにした。 胸躍らせて現地に向かった少年達は獲物の姿に驚かされることになる。罠にかかったのは人語を巧みに話す小さな竜だったのだ。 少年達はその不思議な生き物(エスイサルと名乗った)を晩御飯にする代わりに助け出し、友達になった。(そして竜はエレンの子分にもなった。) 次の日の夜、到来した夏の貴婦人を子守唄に、エスイサルは町外れの洞窟で気持ちいい寝息を立てていた。 そこはカミテアの町外れにある洞窟群の中のひとつ。洞窟の奥には大きな岩があり、奥への道を閉ざしている。 風が一際強く吹いたその刹那、地面が揺れ、道を塞ぐ岩には大きな・・・人が通れるほどのヒビが入ったのだ。 これを見た小竜は少年達にこの事を伝えるべく風の中を町へ飛び、子一時間ほど後には4人と一匹が道を阻んでいた岩の前に勢ぞろいした。 洞窟の奥に入る少年達はそこに財宝を見付ける。話の中でしか聞いたことがないような金貨や宝石に芸術品。 エスイサルは一足先に奥に入り込み、そこでとてもおいしそうな果物(に見えた)が生っているのを見付けそれを食べてしまう。 エレンが勝手にそこにあった「何か」を食べたことを叱ろうとしたとき、後ろから悲鳴が聞こえた。 振り返ると一番後ろに居たジュークがごろつきの一人にナイフを突きつけられていた。そいつは少年達を町から追ってここまできたのだった。 ごろつきはジュークを人質にして財宝を少年達に運ばせる。 このままでは無事に帰れるか分からない。慈悲の無いごろつきの言動に少年達はごろつきに立ち向かうことにした。 少年達は策を練り、少年達を4人だと思っていたごろつきのふいをついて、エスイサルの毒針がごろつきを打ち負かした。 こうしてごろつきは処罰されることになり、少年達は残り短い平穏な生活に戻ることになった。 (残り二人のごろつきはこの話を聞くと朝早く、村から逃げ出した。) 少年達はそれぞれひとつずつ、財宝の中から自分の宝物を持ち帰った。 エレンは宝飾された円月刀 リュークは沢山の葉っぱで出来ているかのようなマント。 セオドアはとても大きな宝石(彼はこれがティ・オールの実だと思ったが、本当はエスイサルが食べた実がそれだったと後で知る) ジュークは動物達の絵が入った矢筒 第2話「家族」 「あの最後の日、皆は家族の目に何を見たのだろうか」 「良かれ、悪しかれに関わらず人はどんな環境にも適合できる。 それが、常人の及びもつかないようなものでも、だ。」 町に数年ぶりに蛇の血の魔法使いがやってきた。 ちょうどその時、村では小型のアースエレメンタルによる畑荒らしによる被害が頻発していた。 少年達は蛇の血の魔法使いアーリアとその護衛クルトが騒ぎが広がる前に事件を収拾しようとするのに手を貸す。 やがて、原因が村に封印されていたコボルトのシャーマンの霊だということが判明、 病気で寝ているジュークに霊が取り付いていることを突き止め、 (少年達の中でも強固な意志を持った)セオドアの体に閉じ込めることでその力を無効化することに成功する。 コボルトの霊が体に封じられたことを嫌がるセオドアに、アーリアは象牙の砦へ来るならば除霊を行うし 望むのならば魔法使いとしての訓練を受けて蛇の血の一流の魔術師になれる、と提案をする。 アーリアはジュークにも素質があることを見て取り、魔術師にならないかと誘う。 少年二人はそれぞれに異なる想いを抱き、その道を受け入れることを決意した。 一方、それを聞いて羨ましく思ったエレンと、皆と離れたくないレイルはささいなやりとりをしていたがやがて口論へと発展する。 結局、エレンは無理にでもついていくと言い、レイルは別れの前日に行うパーティに備えてお別れの歌を作る、と返した。 家に戻ったエレンとレイル二人はそれぞれの家族から、蛇の血からの誘いがあったことを伝えられた。 次の日、酒場で開かれたお別れパーティで、レイルはこの町で最後となる歌を披露する。 4人が旅に出、立派な魔法使いとなる歌を。 運命の歯車は今、回り始めた・・・ 第3話「勇気」 「無力が故に自分にとってかけがえのないものが失われたとき、 呪うべき神さえいないこの世界で、力が無い者は何を恨めばよいのだろう?」 町を出た4人は、蛇の血の魔術師アーリア、護衛のクルトとカザスらと共に旅に出て最初に見つけた大きな町「グレイナン」。 一行は物資の補給と傷んできた馬車の修理を行う為、数日間滞在することとなった。 町をぶらついていた少年達は、法衣を着た大人から逃げ出す少年、イーロと出会う。 成り行きでイーロを法衣姿のもの(彼らは光の手の信徒である)から逃がそうとした少年達とクルト、その場はなんとか誤魔化すことに成功する。 少年達は再び町の中でイーロと再会、事情を聞くと父親が光の手の司祭を怒らせてしまい、悪魔憑きとして処刑されてしまうのを助けようとしたらしい。 色々と努力はしてみるが自分らの手ではどうしようもないと悟ったエレンは、先日手に入れた宝飾されたシミターをクルトに渡し、イーロの父親を助けて欲しいと願う。 最後の日、固唾を呑んで処刑を見守る少年達とイーロ。 結局、罪人達の中には探している者の姿は無かった。 クルトが一人尽力し、処刑直前にイーロの父親を救ってやったのだ。 第4話「家」 「胸に希望を持てば、人は強くなれる。 あの頃はまだ希望が持てたから、辛い修行にも耐えることが出来た。 あの頃は・・・」 第5話「輝き」 「もしも秘法が手に入ったら、世界と自分と、どちらを元に戻そうか? こんなことで悩んでいるなんて知れたら、皆どんな顔をするだろうな・・・」 「最高の友、驚きに満ちた日々、全ては過去のもの」 「透き通った水の流れる滝、青く生い茂った木々、緑色の髪をした森の乙女、 この魔法の腕を持ってしても、あのような美しいものは到底作れるはずがない」 「半年程の旅路では学習不足だったということだ。人間が汚れるのに、月日はさして必要ない」 第6話「星」 「空よ、星よ、この世の行く末を見せておくれ」 第7話「月」 「月と星が、私を見守ってくれている? 違うな、見張られているんだ」 第8話「篝火」 「宙を舞う火の粉を見て、あのときの祭りのことを思い出した。 我ながら呑気なものだな」 「蛇の血、その名は弱者を守る希望の刃」 「星空、篝火、虫の鳴き声、明日への希望を持った皆の横顔」 第9話「空」 「あの願いが叶ったのは何かに祈りが届いたからではない。 その意志が世界を曲げたのだ」 第10話「階段」 「この身砕けるまで、私は戦う」 第11話「悪夢」 「一つより沢山あるほうがいいに決まってるさ、魂だってな」 第12話「流れ星」 「星が教えてくれたんだ。 僕らに、そして世界に降りかかる災いを」 第13話「証」 「高みを求めるのは、人として自然なことだ」 第14話「剣」 「私が選んだ道、それはいつ終るかも知れない戦いの道」 「この剣章が何を意味しているか真に解ったのなら、戦の魔術師として学ぶことはもう無い」 第15話「蛇」 「そして、私の第二の人生が始まった」
https://w.atwiki.jp/nrks/pages/1003.html
星々だけが私たちの味方だった。 宵闇の向こう、遠くで響く銃声は、ポップコーンが弾ける音によく似ていた。 途切れていた意識が少しずつ視界に浮かび上がってくる。けれど、何故か紅く染まった視界は随分と暗い。夜って、こんな風に見えてくるものだっけ。 「 ── ぁ、ぅ」 どうしてか、呻く喉は砲煙に焼けていた。眼を擦ろうとして、持ち上がらない右腕を訝しむ。ならばと左腕に力を込めたけれど、やはり、動かない。 座り込む自分の身体に視線を遣った。 ── 初めてそこで、肩から先が無くなっていることに気がついた。自分の脚が、お腹から下が、どこかに消えていた。 人間というのは不思議なものだと思った。すっかり身体が無くなってしまったのに、すぐには驚いたり怖がったりしないのだ。脳が理解を拒む。あるいはきっと、拒み続ける。 「あ、あ ── あ」 なんのことはない。私の味方なんて、どこにも居やしなかったんだ。 『 ── おい! この子、まだ息がある、生きてるんだ ── ……… 』 『アドラー、こちらヘイロー8、こちらヘイロー8、要救助者1名を確認!』『トリアージレッド、トリアージレッド、至急後送の用意を! ヘリを回してくれ! 繰り返す ── 』 『メディック! メディック!!』『解ってるよ!!』『コッヘル、ケリー!』『ちゃんと押さえてろ、いま留める ── !!』 『くそッ脈拍低下!』『輸血はもうないのか!?』『喚くな! まだ助けられる!』『離れてろ! ショック用意 ── 3、2、1!』 ── 生きてる? 私が? 冗談じゃない。 手脚も身体も何もかも無くなって、何がどうして生きているものか。そんな風に生きるなんて、夢物語もいいところじゃないか。 ああそうだ。これは夢なんだろう。そうじゃなかったら辻褄が合わないのだ。身体がないのに生きているなんて、おかしいよ。 みんな夢なんだろう。きっと。目が覚めたら、日曜日になっている気がする。お母様の焼いたフレンチトーストとソーセージを、つめたいミルクと一緒に食べるんだ。 そしたら皆んなで一緒に出かけるって約束なの。ぴかぴかに磨いた車でドライブ。隣街にある大きな自然公園へ。池のほとりで、お母様の作ったサンドイッチを食べて。 お父様はキャッチボールが上手。けれど手加減してくれているの。私はあまり遠くまで球を投げられないし、下投げでなければミットから零れちゃう。 だから本当は日が暮れた後、帰り道の街境いにある映画館へ寄る方が楽しみだった。ショッピングモールの中にあった、さして大きくもない所だったけれど、そこのポップコーンは特別に思えた。 シナモンがたっぷりかかったハニーフレーバーのポップコーン。大好きだった。いちばん大きいサイズを頼むことにしていた。けれど毎回残してしまって、お母様とお父様にも食べてもらっていた。 その瞬間がきっといちばん幸福だった。その後お買い物をしたりレストランに行くことは大したことじゃなかった。また来週も、こんな幸せな一日が来るんだって、信じて疑わなかった。 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 「 ── 結局、この間の救出作戦、どうなったよ。」「どうもこうもねえ。輸送ヘリが1機、奴さんのRPGで落とされてからは泥沼さ。」「30分で終わる手筈だったのによ!」 「結局は空軍にまで協力要請。殲滅戦にシフトして、支援戦闘機のバンカーバスターで燻り出した。」「出てきたネズミ共はガンシップの機銃掃射で皆殺し、か。情けねえ話。」 「人質は?」「ほとんど死んだよ。みんな少年兵だった。ふざけてやがる。」「制服組のメンツも丸潰れ ── か。」「それでいて八つ当たり喰らうのは俺たちだ。やってられねえよ。」 「 ── でも、確か1人だけ、生き残ってた奴がいたっけな。」「聞いたぜ。女の子なんだろ?」「12歳だか13歳だか ── あんな子供に銃を持たせて、剰え戦わせるなんて。」 「能力者だって言うから無理もないが ── むごい話だ。 」「発見された時は瀕死もいいとこ、生きてるのが不思議なくらい。両腕、下半身、それに右目まで御陀仏だった。」 「 ……… それが本当なら、よく生きてたなぁ。」「だが、大規模な義体化は免れないだろうよ。」「あの年でか …… 。」 「そこまで若くて、しかも全身義体の能力者か。うちの軍でも、前例のないケースかもな。」「 ── 研究屋どもの下衆な笑いが眼に浮かぶぜ。くそったれ。」 「右眼球は完全に失明している。視神経から脳波をエミュレートしたがサケードが正常に機能しない。ニューロン内の伝達経路が傷ついたか?」 「20mm焼夷榴弾のエアバーストを右側頭部に貰った痕跡がある。火傷も激しいが、おおかたの原因は爆轟とソニックブームだろうな。酷いもんだ。」 「脳に損傷が見られないのは本当に奇跡的だよ。だが ── 頭蓋骨ごと三半規管もやられている。」「とりあえず右眼は、光学素子タイプにして様子見だな。」 「そして、ここからが本題だが ── 脳はそのままで良いとして、脊髄は6センチほど残して置換するのが最善だろう。多臓器不全の兆候も見られる。」 「血液を媒体にした能力なんだろう? なんとか残してやれないか。」「だったら骨髄なら培養もできるし、最近の自己構築型義体なら毛細血管まで再現できる。それでどうだ。」 「わかった。しかし、生身の部分は ── 」「あまり無理は言わんでくれよ。そも一般論でも、臓器の30%・肉体の55%を義体化した時点で歩留まりは効かんと言われてる。」「全身義体化しかあるまい。残せるのは、脳と脊髄と骨髄 ── 強いて言うなら、残った皮膚の一部、だろうな。」 重い瞼が開く。レンズが露光して、勝手に焦点を合わせる。信じられないくらい長い間、目を瞑っていたみたいに。けれど目やにが気になったりはしない。 目覚めれば、そこは知らない天井。窓から射す日がひどく眩しい。手をかざす。大きな掌、長い指。おかしいな。こんなに大きくなかった。それに、ここにある筈もなかった。 だったらこれは夢なんだろう。また瞼を閉じる。夢の中なんだから、泣いたっていいんだ。 「アリア中尉。」「本日付けで、陸軍701機械化試験小隊への転属を命じる。」 「ねえ。」 「顔の皮膚だけを遺しておく ── ってこと、できるかしら。」 「 …… 出来ない訳じゃ、ないが。然し、全身義体なんだろう?」「特段のメリットもないぞ。ナノマシンの効きも悪いし、自己再生の効率も悪くなる。」 「言っていいことかは知らんが、随分大きな火傷の跡があるじゃないか。どうせ骨格フレームでおおかた決まるし、頭蓋骨まで義体化するんだから、いっそ無くしてしまえばいいのに ── 。」 「いいの。 ── お願い。」 みんな、みんな、悪い夢。それなら、私の好きにしたって、許されるべきよ。 殺しましょう。殺されましょう。そうしたらきっと、いつか、醒めてくれる筈だから。 「 ── 愚かね。」「分かっているのでしょう?」 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 「 ── はッ、は、ッ、 ……… は、ぁッ。」 飛び起きる。シーツを払いのける。情事よりも荒い呼吸。ベッドサイドの時計を垣間見る。午前3時。汗なんて二度とかかない筈なのに、背筋にべっとりと嫌なものが張り付いている気がした。 よろよろと起き上がって、冷蔵庫を開いて、飲みさしのミネラルウォーターを一気に空ける。鏡も見ずに洗面台で顔を洗い、シャツの袖で拭う。吐き戻しそうになるのを必死で堪えた。 ベッドに戻る気力はないから、ソファに倒れこんで横になる。丸ごと部屋の一面を占める雨戸から、変わらない月明かりが差し込む。乳白色の優しい光に、身体が溶けていく。 ── 徐に寝返りを打った。髪の毛が絡むのも気にせずに、仰向けになった。寝る前にソファへ放ったままの、分厚いクリアファイルを手に取る。見知った天井を遮って、読んでいく。 藤色の髪をした少女の顔写真。その経歴。功績。淡々とした報告書。投薬量。機序。結果。肉体的な反応から吐瀉物の成分に至るまで。実験中の写真。苦しそうに悶える女の子の姿。 何十枚。何百枚。千枚に届くだろうか。読み切れないくらいに続いていた。 ── 情動が、沸き起こらぬ訳も、ないけれど。 けれどそれよりも納得が先に来た。忘れていた記憶。忘れたかった記憶。思い出せたのかもしれない。私たちは、似た者同士だ。 それでも、やはりこの部屋は、夢の中にある。彼女と過ごした時間も、また。 だから次こそは、目醒めの中にいなければならない。 それで全てが終わるとしたって。 ── いなければ、ならない、のに。 思い切りファイルを投げ捨てる。くるくる回って、ベッドの上に飛んで行った。それはスプリングを軋ませて、そして何度か跳ねて、どこか家具の隙間に落ちていった。 眠れなければいい。彼女もそうであればいい。呪うように願って、けれど届かないことを知っていた。 /アリアの過去に関して、でしょうか。そんなSSです
https://w.atwiki.jp/594or2/pages/20.html
禁忌について 禁忌について禁忌肢のみによる不合格者数 104回結果 絶対禁忌 禁忌候補 禁忌ではないと考えられているもの 103回禁忌濃厚 禁忌肢疑い 禁忌肢のみによる不合格者数 不合格者数 禁忌肢のみ 合格基準 105回 925 0 3問以下 104回 909 0 3問以下 103回 760 6 2問以下 102回 802 3 101回 1038 1 http //www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001f1i2-att/2r9852000001f1rl.pdf 104回 結果 ? 絶対禁忌 絶対禁忌:違法なもの、倫理的に許されないもの、患者が死亡するもの、患者を死亡させうるもの ★:選択者が大勢いると予想されるもの A20 妊娠27週の切迫早産に対して、c.人工妊娠中絶 ⇒法的に中絶できない週数であり法的禁忌肢。また殺人でもある。 A40 脳腫瘍による脳ヘルニアに対して、a.サクシニルコリン ⇒筋弛緩作用により呼吸が停止し、死亡する。 A44★ 褐色細胞腫に対して、b.副腎静脈造影 ⇒造影剤によって高血圧発作やショックが誘発される。(禁忌にカウントされず) A56★ 喘息患者に対して、b.β遮断薬点眼 ⇒気管支が収縮し、呼吸不全にて死亡する。(禁忌にカウントされず) A59 ICU症候群に対して、d.夜間、予防的に身体を拘束する ⇒人権侵害であり、法的禁忌肢。 B40 15歳女性の左下腹部痛に対して、a.腹部エックス線撮影および、e.造影CT ⇒妊娠していれば胎児奇形を生じうる。 C22 子宮外妊娠の破裂に対して、e.2週間後の来院を指示 ⇒ショック状態であり、早急な加療を行わなければ患者は死亡する。 D23 食道静脈瘤破裂に対して、e.トロンビン末溶解液静注 ⇒血管内で微小血栓を生じ、DICを惹起する。 D59 薬効不安定なParkinson病患者に対し、e.L-dopaの投与を直ちに全量中止する。 ⇒悪性症候群を引き起こす。 E55 良性発作性頭位眩暈症に対して、c.迷路破壊術 ⇒前庭機能および蝸牛機能の廃絶をきたす。 E61 入院を拒否する精神病患者に対して、c.任意入院の手続きをとり入院させる。 ⇒人権侵害であり、法的禁忌肢。 E66 ペースメーカー患者に対して、e.頭部MRI ⇒ペースメーカーが故障し心停止し、患者は死亡する。 F20 大動脈解離が疑われる患者に対して、c.心臓カテーテル検査および、d.運動負荷心電図 ⇒大動脈解離の破裂を誘発する。 G57 末期認知症患者に対して、b.家族の希望により経管栄養を中止する ⇒家族希望による積極的安楽死であり、法的禁忌肢。 H26 転移を認める乳癌患者に対して、a.まず家族に伝えるおよび、b.肺の炎症として伝える ⇒aは違法であり、bは嘘である。aは法的禁忌。 H38 緊張性気胸に対して、d.人工呼吸器装着 ⇒病態を悪化させ、患者は死亡する。 I50 上腸間膜動脈塞栓症に対して、d.経カテーテル的動脈塞栓術 TAE ⇒腸管壊死を生じる。 I76 妊娠28週の双胎切迫早産に対して、d.プロスタグランディンF2α投与 ⇒妊娠28週では肺が未成熟であり、できる限り妊娠継続を図る。子宮収縮促進薬は禁忌。 I77 卵巣過剰刺激症候群に対して、e.ヒト絨毛性ゴナドトロピン投与 ⇒病態を悪化させる。 禁忌候補 禁忌候補:絶対禁忌とは言えないものの患者に害をなしうるもの ★:選択者が大勢いると予想されるもの B06 穿刺針による緊急気道確保する部位として、e ⇒大血管損傷の可能性がある。 B12 65歳女性に対する骨髄検査の部位として、a.胸骨正中第2肋間部および、b.胸骨正中第4肋間部 ⇒骨髄穿刺による心損傷の可能性がある。 B55 禁煙指導に際して、b.「意志の弱い人が喫煙者となります」 ⇒患者の人格を全否定。 C17 インシデントに際して、a.特に何もしない。 ⇒昨今の医療事情に鑑みれば相対的禁忌。 C18 コンプライアンス不足の患者に対して、b.「このままでは脳血管や心臓の発作を起します」 ⇒患者を脅している。国試的に相対的禁忌と言える。 C20 心停止に対して、e.心腔内にアドレナリン投与 ⇒??? D29 急性胆嚢炎に対して、e.体外衝撃波結石破砕術 ESWL ⇒??? D34 心因性多飲症に対して、b.Na制限および、d.デスモプレシン点鼻 ⇒病態を悪化させる。しかし禁忌とまで言えるか不明。 D59 薬効不安定なParkinson病患者に対し、c.抗コリン薬を大量投与する ⇒??? E48 哺乳不可のnot well being乳児に対して、e.「入院して検査と治療をしましょう」以外の選択肢 ⇒脱水により病態が悪化する。 F02 終末期のがん患者に対して、e.「大丈夫、よくなりますよ」 ⇒限りなく嘘である。適切とは言えない。 F07 統合失調症の患者に対して、a.妄想は否定し根気強く説得するおよび、b.患者にも家族にも病名は告知しない ⇒??? F13 熱性痙攣疑いに対して、e.気管支拡張薬投与 ⇒テオフィリンは熱性痙攣を悪化させるらしい。ホント? F14 インフォームドコンセントで最も重要なものは、e.医事訴訟での責任回避 ⇒インフォームドコンセントは責任回避のためではない。 F19 禁煙治療を希望する患者に対して、b.「今さら禁煙しても意味ないですよ」 ⇒患者の意志を全否定。 F21★ 突然の脈拍停止に際して、b.胸骨圧迫を開始する以外の選択肢 ⇒早急に胸骨圧迫を開始しなければ不可逆的な脳障害が生じる。(b,c複数正解) F28 重症肺炎に対して、a.外来でβラクタム治療および、b.外来でアミノグリコシド治療 ⇒絶対禁忌としてはやや弱いか。相対禁忌。 F31 胎児ジストレスに対して、b.陣痛促進 ⇒頚管が熟化しておらず、胎児ジストレスを悪化させる恐れがある。 G06 食道静脈瘤に対して、d.切除および、e.レーザー ⇒破裂を誘発しうる。 G52 心房細動患者に対して、e.翌年の健康診断受診の指示 ⇒血栓塞栓症を発症しうる。相対禁忌。 G53 高K血症患者に対して、a.濃厚赤血球輸血 ⇒高K血症をさらに増悪させ、不整脈を誘発する。 G56 尿閉に対して、c.経静脈的腎盂造影および、e.ループ利尿薬による利尿確認 ⇒cは造影されないばかりか腎不全を悪化させ、eは病態の増悪をもたらす。 I28 通風発作の治療薬として、b.プロベネシド、d.アロプリノール、e.ベンズブロマロン ⇒痛風発作時に尿酸値を急速に変動させると疼痛が増悪する。(eは禁忌にカウントされず) I54 前立腺肥大症に対して、d.抗コリン薬投与 ⇒尿閉をきたす。 I72 丹毒に対して、e.副腎皮質ステロイド ⇒感染症に対してステロイドは禁忌。 I77★ 卵巣過剰刺激症候群に対して、c.高浸透圧利尿薬投与 ⇒血管内脱水を悪化させる。(禁忌にカウントされず) 禁忌ではないと考えられているもの A56 眼圧高いのに散瞳薬(トロピカミド) E66 SAHにルンバール I65 壊死性筋膜炎に下肢離断術 103回 禁忌濃厚 ◎はほぼ禁忌肢確定 選択率 A40 小児の鼠径ヘルニア嵌頓に穿刺吸引 →破裂して死ぬ 0.4% B52 採血担当者に中絶の勧め →胎児殺し、法律違反 0.3% ◎B58 ペースメーカーにMRI →死ぬ、禁忌の王道 10.0% C18 痩せようとするピザの奴にbce →患者の意思を全否定 0.2%(bceあわせて) F05 トリアージ赤タグの人に黒タグ →殺人 0.2% F23 アナフィラキシーショックにβブロッカー →とどめ 0.1% ◎H23 Sheehan症候群に甲状腺ホルモン →死ぬ 2.8% H28 慢性硬膜下血腫に腰椎ドレナージ →脳ヘルニアで死ぬ 0.1% H31 脱水の患者に利尿薬 →死ぬ 0.0% ◎I16 消化管穿孔に消化管造影 →バリウム腹膜炎 1.8% ◎I47 緊張性気胸に人工呼吸器装着 →胸腔内圧上昇→肺虚脱亢進 1.1% ◎I76 大動脈解離にIABP →鮭鱒 0.4% 禁忌肢疑い A22 重喫煙者にピル →血栓 5.1% A33 妊婦に経口血糖降下薬 →催奇形性、胎児低血糖 2.1%(bcdeあわせて) A36 挫滅症候群で下肢切断 →Z武。 0.4% A55 妊婦+尿路結石にESWL →胎児傷害 19.7% A55 妊婦+尿路結石にインドメタシン →妊婦禁忌 30.6% D45 アスピリン喘息患者に同じ市販薬を投与 →再発 0.1% D21 先天性食道閉鎖症に食道造影 →造影剤による誤嚥性肺炎惹起 1.1% D21 先天性食道閉鎖症に上部消化管内視鏡検査 →呼吸状態悪化、送気による誤嚥 2.0% G58 妊娠疑いにX線 →奇形 0.1% I16 消化管穿孔で超音波内視鏡 →急性期には禁忌 15.2% I67 SIADHにDDAVP →水中毒 2.6%
https://w.atwiki.jp/kisuitosuuki/pages/152.html
あの誘拐は、どうやら俺らの部隊に変わるところを、つまり交代の隙を狙われたようだ。 前任の警護部隊がミスった模様。 その前任部隊にすごく怒っていたな、四代目が。 愛の力とは恐ろしいほどに、殺気が放たれる説教とは怖いものだと再認識した。 俺に愛の力はいらぬくらいには、恋愛に辟易しておるがな。 その後、堂々と四代目は警護対象と結婚した。 いくらなんでも早すぎるのではないかと思うが……。 所詮は他人事。 俺自身の指針に触れなければいい。 「そろそろ、気を付けてねぇ。クシナさんがもうそろそろ臨月になるそうだから」 『もうあの警護対象は子持ちの人妻になるわけか』 時が経つのは本当に早いものだ。 「……時が来る」 『ん?どういうことだ』 ぼそりと呟いた瑠威に、注視していると彼女の横に光が生まれ始めた。 『……何の術だ?それは』 「ああ、違う違う。アルトゥが来たのよ」 【ほぅ。お前が、天空が連れてきた者か。お初にお目にかかるな。吾は六合。瑠威やこの世界では”アルトゥ”と呼ばれておる】 光が背の高い人物になった。 長い銀髪の男性で、何やら民族衣装を着こなしている。 『お前も神とやらか。なるほど、俺が苦手な匂いと雰囲気だ』 【そうか。お前は瑠威の記憶から見たが、神が苦手であったな。仕方なかろう】 『それでどうしてアルトゥは出てきたのだ?空は俺の家にいるが』 【この世界の者と約束していたことを守りに来ている】 『条件は?』 【”里の危機にのみ力を使う”。ただそれだけだ】 「とある者に宣言したからね。あーでも、それ言葉のあやも入れたでしょ?アルトゥは演算能力高いはずだから」 【そうでもせねば、この世界の平定などできぬ。吾が本気を出す時は……瑠威、お前が知っている”危機”の時のみだ】 「……結構シビアに行くわねー」 【運命を一つ動かすのに、いくらの労力がかかると思っておる。世の中、いや世界の理はそんなに甘くない】 『そうそう神がほほ笑むことはないか。次々に幸せが来るのは、ないからな』 「ガロは流石にわかってるよね~。だから神様って不幸しか与えんのよね~、聖書に書かれている神話とかそうじゃん」 『そういうお前もよく知っているな』 「一度はその不幸に負けた身だからねぇ。君は勇者に打ち破られたのだろうけど、私は自ら死したのでね」 『その時は弱かったのだな。今は結構強いが』 「こんだけ長生きしちゃうとねぇ。ああ、私これでも八十年は生きてるから。成長してるけどさぁ、一年分の成長が十年で、っていう理不尽な状況下だけど」 『時の神殿にでも行ったのか?』 「わぁお、懐かしい響き。行ってないけど、神域にいたことはあってるかな。ああ、君に渡した水晶はちゃんと持ってるかい?あれ自動防御壁出してくれるから」 『オートか。それは楽そうだ。お前は長生きしているようだが、俺の方が精神上は上だ。四天王くらいの立場から話せ』 「え、それ弱そう。嫌だから、君の隣くらいにしてくれ。それくらいの立場くらいであれば君の言葉くらいは聞いてあげるよ」 『食えぬ奴だ。だが、面白い』 アルトゥと名乗った男性は俺の嫌いな神の部類で、俺らの部隊の象徴みたいな位置になっているといっていた。 そして、本気を出せば恐ろしいという事も聞いた。 だが、この里の結界があまりにも強いものだとは聞いていなかった。 バチバチと音を立てて、巨体を防いでいる。 『どういう仕組みだ。俺ならばあのようなもの、全く持たないぞ』 「アルトゥ特製の結界だよ。まぁ、この里の人間は自分たちが作ったものだと勘違いしているけど」 『……チャクラの無駄遣いをしているのか、奴らは』 「敵を騙すにはまず味方からってね。んじゃ、行こう。あそこのお面野郎に」 巨大なそれを操っていると思わしき変なお面をつけた者に向かっていく。 移動していくのは俺ら以外にもいるが、他にもぐりこんだ敵に遮られ、簡単にそれらを屠っていく俺たちしか奴に近づいて行っていない。 ボスクラスの奴らや幹部クラスの奴を一手で倒せるのは俺らだけらしい。 それでも暗部か、といいたいがそれは忍びの在り方による性質ともいえるので、致し方なかろう。 瑠威が結界を越え、お面と対峙する。 「誰だ!」 「その言葉そっくりお返しする。集え、晶!」 一発目から水晶を使った術をお見舞いしているではないか。 あれは、瑠威が最初に見せてくれた特殊術の類。 アルトゥから強制的にもらってしまった力なのだそうだ。 この世界ではかなりレアのものだったらしく、血継限界とか血継淘汰という他には誰も居ない状態の能力だそうだ。 一斉に襲い掛かる水晶の群れに、敵はギリギリの位置でそれらを躱していく。 ほぅ、それを躱すか。 ならば。 『雷槍』 槍を取り出し、雷をまとわりつかせて敵に繰り出す。 それすらも敵は躱した。 チッ、感がいい奴だ。 「狼!適度にいなして後退!」 『了解した』 瑠威の言葉通りもう一撃してから、後退する。 すると、鉄砲水のような勢いのある水撃が敵に命中し、敵をかなり遠くへと飛ばした。 「アルトゥね!さっさと警護対象のとこへ戻るわよ!雑魚は他に任せる!」 『ああ』 確かにその方が先決だ。 俺らがいた理由だとて、四代目が命令したほかにはないし、縛り付けられるのは嫌である。 が、帰るとそこは血の海。 『おい!』 「くそがっ!!」 四代目と警護対象の生命徴候(体温・脈拍・血圧・呼吸・意識状態)を確認した。 どれも反応がない。 なんという事だ。 今の今まで、俺らの部隊は目的を挫かれたことはない。 が、このザマはどうだ。 情けない限りではないか。 かろうじて生きているのは、二人の子供と思しき赤子。 その手はあまりに小さかった。 少しだけ未熟児で生まれてきたようだ。 へその緒でさえ切れておらぬというのに、親を亡くさせてしまう不甲斐ない俺たちを許してくれ。 『いったいどういう事だ』 「それはこっちが聞きたいわよ!私達が離れたのは十分くらい、けどその間に……こんな」 『……傷はかなり深い。警護対象は刃によるものだな。四代目は何やら獣に突かれたような傷だ』 「それがどうし……!」 【裏をかかれた。面倒な】 何かに気をついた状態で固まる瑠威とガロ。 そこにアルトゥが現れた。 「!」 『誰にだ』 【同郷の、同じ部類の輩にだ】 「どうして……」 『嫌なのだろうな』 「!」 『俺はもともと悪だ。こういうことをする輩と同類のな。だからこそ、わかる』 「じゃあ……」 【瑠威。既に人払いと防音の結界を張った。思い切り話してよい】 『気が利く神だ。で、誰がこれの犯人か予測としては誰だ?』 「……………………ゾウ」 『ん?』 「たぶん、あいつしかいない。四代目、いや歴代火影を忌み嫌っていた、ダンゾウしか!」 【だろうな。瑠威の記憶の中でもかなり嫌な奴だった。それが吾らがいるというだけでこれだけ暴走する……】 「信念はあった!そういう奴のはずだ!だというのに、これだ。もうあいつを斬り殺したい!!」 【だが、もう一件残っておる。そちらはどうする?】 「起こしたくない!けど、それは驕りで……」 『人が死ぬのは嫌いか。八十年生きていても、所詮は人だな。俺がやるか?そうすれば瑠威の負担ぬならぬ』 「それも駄目!」 『ではどうする?』 しばし沈黙する瑠威。 どうやら思考が止まらないようだ。 【仕方ない。では、吾と天空で何とかすることにしよう。だから……】 四代目の死と、警護対象の死が発表され、多くの人々が涙にくれた。 その後、また三代目が火影の座に戻った。 次ページ:忌み子へ *あっさり死んでしまう両親。 ナルトごめんね、もっといい状況にしたかったけど、やっぱりこの二人は役目があるから他の選択肢がないんだ。 死んだと見せかけたかったけど、それじゃいろいろと崩れ去るからね……。 次からは本編になりますが、まだオリジナル続きます。
https://w.atwiki.jp/remember11/pages/38.html
・THE DAY AFTER DAY 第6話『終わりと始まり』 あの事件は、二年前の冬―― 北海道の市立病院で起こった。 静かに眠っていた病院を、黒い悪夢が襲った。 犬伏?「・・かーごめかーごめ・・かーごのなーかのとーりーは・・いーつーいーつーでーやーる・・ よーあーけーのーばーんに・・つーるとかーめがすーべった・・」 犬伏?「うしろのしょうめん、だーぁれ・・・」 ヒュッ!ズドッ! 男の声「うぎゃあああああああああああああああ!!」 そして、その殺人鬼が私の大切なものをうばっていった。 犬伏?「くっくくくくっ・・・。」 潤一「お母さん・・やだ・・・。助けてよ・・・。お母さん・・・。」 犬伏?「ふっふふふ・・。ひゃはっははは。くく・・はは・・・。」 ズドッ! 潤一「うああああああああああああ!!!」 Remember11CDドラマ THE DAY AFTER DAY 第6話『終わりと始まり』 スフィアのリビングで犬伏景子と向かい合った。 いいえ、違う。 目の前にいるのは、犬伏景子の中に潜む殺人鬼の人格。 犬伏「いーひひひひあーはははっ、あぁっはぁっ~~・・ぁぁお腹いたぁい・・っふふふふ。」 カーリー「ついにあらわれたわね、殺人鬼。」 犬伏「はぁ?何の話?私は殺人鬼なんかじゃない。」 カーリー「今あらわれてるのは殺人鬼の人格でしょ。加虐主義、悪魔の人格。」 犬伏「違うってばぁ。」 カーリー「優希堂君を突き落としたんじゃないの?! 犬伏「私にそんなこと出来るわけ無いでしょ。自分の部屋にずぅっといたもん。時計塔の上にのぼったことなんてないし。」 カーリー「ならば、なぜ笑っているの!」 犬伏「人が空から降ってきたら笑うでしょ?あっはははっ、死むぅ~っ笑いじむ~~。」 (ビンタ音) カーリー「笑うのを止めなさい!!」 犬伏「ぃったッ!何するの!?」 カーリー「あなたがやったんでしょ!嘘をつかないで!!」 犬伏「・・私が殺人鬼だったら、どうするの?・・・私のこと、殺す?・・殺すんだ?殺したいんでしょ?」 犬伏「今あんたすごい目してる。ギラギラ光った殺人鬼の目。」 カーリー「黙りなさい・・。」 犬伏「でもぉ、殺されてあげないっ♪殺人鬼に殺されるなんて、そんな最低な死に方まっぴら♪うっふふふ。」 カーリー「くっ。」 犬伏「どうせ殺されるなら、私のこと守ってくれるような人に殺されたいなぁ。・・やさしく、やさしく殺されたい。」 カーリー「矛盾してるわよ・・。」 犬伏「矛盾してるわよ・・。プッ・・あははははっっ」 カーリー「・・今の人格はなんなの?!殺人鬼の人格があらわれたんじゃないのっ?!」 犬伏「人格なんて変わって無いよ。私は私。最初から最後まで私は私のまま。」 カーリー「そんなハズはないわ。」 犬伏「どうして?」 カーリー「あなたはDIDよ!それは間違いない!」 犬伏「・・本人が違うって言ってるのに?」 カーリー「あなたは、DIDと認められて裁判で免罪になったでしょ!」 犬伏「ところにより、そんなこともあったでしょう~」 カーリー「2008年からDIDの検査には催眠試験が用いられるようになったわ。催眠状態にある人間は、嘘をつくことはできない!」 犬伏「ふむふむ。」 カーリー「あなたが多重人格であることに、間違いは無いはずよ!」 犬伏「うっふふ・・。」 カーリー「なにがおかしいの!」 犬伏「気にしないでぇ、思い出し笑いだから。あぁ、思い出し笑いをする人ってぇ、エッチだ。っていうよねぇ。」 犬伏「悟は、エッチな女の子嫌いかなぁ?」 カーリー「何を思いだしたって言うの?」 犬伏「えぇ~、あなたに言う必要ないしぃ。」 カーリー「答えなさい!」 犬伏「しょうがないねぇ~、特別に~、いいこと教えてあげりゅ♪」 カーリー「いいこと?」 (奇妙な音) 犬伏I?「たしかに、催眠状態では嘘はつけない。ふっ、いくら私でもそれは無理だ。」 カーリー「っ!?」 (奇妙な音) 犬伏F?「でもねぇ、催眠術師は嘘がつける。鑑定した医者も、嘘がつける。警察の人も、嘘がつける。」 カーリー「・・・あ・・・。」 犬伏F?「鑑定員の人、悟に似てて、ちょっとかっこよかったよぉ。」 カーリー「まさか・・あなた・・、鑑定員を誘惑して、鑑定結果を偽装させたの!?」 (奇妙な音) 犬伏?「うふふふっ。」 カーリー「あなたはDIDじゃないの!?犬伏景子という人格しか(奇妙な音)存在していないの?!」 犬伏G?「あっははははは。なーんちゃってー♪そんなわけないない♪ゆるしてぇ~冗談ナリ~♪」 (奇妙な音) 犬伏?「私はDIDよ。じゃないと死刑になっちゃうし。」 カーリー「真実は何ッ!?あなたは誰ッ!?あなたは何者ッ!?」 犬伏?「さぁ?私は誰?私はどこ・・?プッ、あははははっあははははっあははっ」 犬伏?「あぁ、そんなことより大事なこと忘れてない?悟をそのままにしておいていいの?」 犬伏?「雪の上に落ちたから、まだ生きてるかも。助けてあげれば?」 カーリー「っ!」 私は、優希堂君を助けに向かった。 カーリー「優希堂君!大丈夫っ!?」 優希堂「う・・ぅぅ・・・。」 雪に埋もれていた優希堂君を助けながら、私は思った。 犬伏景子という女、よくわからない・・。 本当にDIDなのかすら、よくわからなくなってきた・・。 カーリー「ほらっ、しっかりしてっ!優希堂君っ!」 (優希堂を運びだすカーリー) カーリー「ほら、ベッドに寝て。」 優希堂「ぅ・・ぁぁ・・。」 カーリー「骨は・・・、折れてないみたい。今、手当してあげるから。」 優希堂「・・すまない・・。」 カーリー「気にしないで。頭痛はない?吐き気は?」 犬伏景子のことがよくわからない・・。 でも、あの女が潤一を殺したことに、間違いはないのよ。 1月14日。あの子の命日に、必ず、犬伏景子に罪を償わせてやる。 必ず、この手で。 しかし、私は知らなかった。 優希堂君が時計塔から落ちたことが、合図だったなんて。 この出来事を境に、狂気に満ちた7日間が始まった。 そう、あの忌まわしい7日間が。 優希堂君の手当を終えた直後―― ???「ぅぅぅ・・」 私の耳に子供のうめき声のような音が聞こえてきた。 ???「ぅぅ・・ぅぅ・・」 カーリー「潤一・・?潤一なの!?」 ???「ぅぅ・・ぁぅ・・・ぅぅぅ・・・」 確かに声が聞こえる。幻聴じゃない。 私と犬伏景子と優希堂君しかいないはず。 私は、謎の声に導かれるように、スフィアの廊下を歩いた。 ???「ぅ、ぅぅ・・・ぁ・・・。」 声は、空き部屋から聞こえてくる。 おそるおそる、私は空き部屋のドアを開いた。 ???「寒い・・。寒いよう・・。」 カーリー「誰かいるのっ!?」 ???「助けて・・。助けてよう・・。」 カーリー「だ、誰っ?どうやってここに入ってきたのっ?」 ???「ゆに・・。楠田ゆに・・・。」 カーリー「楠田ゆに!?」 ゆに「飛行機に・・・HAL18便に乗っていたはずなんだ。でも、気がついたら・・。助けて・・。」 カーリー「・・どうして・・。」 ゆに「寒いよう・・・。」 カーリー「どうしてあなたがここにっ!こんなところにいるはずない!!いるはずないのよっっ!」 ゆに「何言ってるの・・?わけわかんないよ・・寒いよ・・・。寒いよう・・・。」 カーリー「あの事件の生き残りがどうしてっ!!!」 (ガチャーン) カーリー「・・っ!?今度はなにっ?」 キッチンから壮絶な物音が響いてきた。 私は悪夢にうなされているような気分で、キッチンに走った。 キッチンで、犬伏景子が倒れていた。 うめき声一つ立てず、ぐったりと横たわっている。 死んでる? 一瞬そう思った。 しかし、呼吸も、脈拍も、正常だった・・。 カーリー「人格・・Eなの?」 人格E。 エンプティとあだなされた五番目の人格。 鑑定にあたった医師たちの間でも謎とされていた人格だ。 意思のベクトルが剥ぎ取られたかのようなからっぽの人格。 完全なる虚無。それが、人格Eなのだと、解釈されている。 しかし、どうしてそんな人格が誕生したのかは、不明とされていた。 その時だった。 戸惑う私の耳に声が聞こえてきた。 犬伏のものでも、優希堂君のものでもない。 あの少年のものでもない。 不気味な、声! セルフは・・どこ・・・。 (終)