約 1,158 件
https://w.atwiki.jp/inuyasha50/pages/296.html
昨日 - 今日 - 合計 - カテゴリ アニメオリジナル 妖術 技 犬夜叉 劇場版 紅蓮の蓬莱島 防御技 雷刃牙 風刃牙 風属性 龍羅 【概要】 地龍風隠(じりょうふういん)とは、四闘神の一人・龍羅が扱う妖術の一つである。天龍迅雷と対を成す防御の技。あらゆる攻撃を防ぐとされる風刃牙の能力を使用した技であり、敵の攻撃を四方へとはね返す風の結界を生じさせる。普段は風刃牙のみを地面に突き立てる事で発動させるが、風刃牙のみでこの技を使うには刃を地面に突き刺す際に一瞬の隙が生じてしまう。風刃牙と雷刃牙を交差させる事でも使用する事ができ、雷刃牙と組み合わせた場合に限り即座にこの技を発動させる事ができた。 コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kuroeu/pages/1780.html
深淵の巨大地龍 種族:竜族 登場作品:神採りアルケミーマイスター 解説 深淵に引き寄せられた巨大地龍。 闇の力で強化されている。 雑感・考察 同作品に登場するカミルドラゴンと同グラフィックなので種族的には同じかもしれない。 名前
https://w.atwiki.jp/dimensionzero/pages/1920.html
魔甲トレイン地龍(まこうとれいん ちりゅう) 魔甲トレイン地龍 ユニット-ジャガーノート 使用コスト:赤2無4 移動コスト:赤1無2 パワー:6000 スマッシュ:2 クイック このカードと同じラインの後方のスクエアにあなたのユニットがある場合、このカードのパワーを+1000しスマッシュを+1する。 ボンガ・ボンガ・ボンガ「今、腹、減ってない。」 オリオン「だが、平和と満腹は長続きしないものだ。」 赤の大型前衛ユニット。 他のスマッシュ3のユニットと比べると、比較的低コストで強力スマッシャーを用意できる。 パワー増強とスマッシュ増加の相性は良く、終盤にプレイできればこのカード1枚で致命傷を負わせる事も可能。 上手く活用するには、通常以上に展開力が求められる。 同能力の低コスト版に、魔甲タンク馬頭が存在する。 収録セット セカンド・センチュリー ベーシックパック(022/200 コモン) イラストレーター 山宗 関連リンク 前衛ユニット
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4106.html
前ページ次ページ眠りの地龍 風が心地良い月夜。 1人と1匹の使い魔が、丘でその2つの月を見ていた。 1人は、端整な顔立ちの青年だった。 オッドアイ、つまり左右非相称の色をした眼が、彼の外見的な魅力を際立たせている。 平らな1枚岩に座り、持参した赤ワインの瓶を片手に 月見を楽しむその笑顔からは、純粋な自然鑑賞の感動と共に、何処か悲哀の感情も窺えなくは無い。 彼の隣には、小山が聳えていた。 それは文字通りの小山ではなく、1匹のあまりにも巨大な龍だった。 青年は、その龍に言った。 どうだい? こうやってただ、ぼぅっと酒でも飲みながら月を眺めるってのも、なかなかオツなものだろう、と。 龍は、唸った。 月の光に照らされたその龍は、客観的に見れば邪悪な風貌であった。 大きさは、尻尾の先まで測って約50メイル程。 薄い茶色の大きな鱗が、1枚1枚と並べるように体中を覆っており、 頭部に生えた複数の角が、人間で言う処の髪型の如く、その龍に個性を与えていた。 この特徴に該当する生物は、現在ハルケギニア地上において地龍以外にありえない。 普段は人の目から逃れる為に地底深くに潜伏し、 人気の無い夜に、この月見青年に呼ばれて地上に顔を出す。 龍が、爬虫類の多くに見られる長く突き出た顎を開き、青年に近付けた。 鋭い牙が生え揃う生きた洞窟が、青年の眼前に迫る。 青年は、味を覚えたのかい、と呟きながら、瓶を洞窟の中に掲げ、瓶が空になるまでワインを流し込んだ。 龍は、そのワインを時間をかけて飲み込むと、強風と間違える勢いの大きな噯をした。 要するにげっぷである。 青年は呆れ、もう少しマナーを弁えて欲しいんだがね、と思いつつ、龍の下顎をぽんぽんと叩き、言った。 まぁ、同じ使い魔同士、これからも仲良くやってこうぜ、と。 龍がそれに相槌を打ったのだろうか、歌うように低く鳴いた。 眠りの地龍 第2話 「食うな! シルフィ」 誰が呼んだかは知らないが、きゅいきゅいことシルフィードは憤慨していた。 タバサの使い魔である彼女(敢えてそう言い表そう)の怒りのとばっちりを喰らっていたのは、 トリステイン魔法学院の料理長であるマルトーだ。 「まいったなぁ。だからよ、この肉はあのドデカドラゴンに用意したもんなんだ。食わせるわけにゃいかんのよ」 なにやら彼は、厨房前の広場で、3つの大掛かりな竈で何かしらを燻っている様だ。 その姿を見て、シルフィードは きゅい! きゅきゅいきゅきゅい! きゅっきゅっきゅいっきゅいっ! と喚いている。人語に訳すれば、 そんなケチなこと言ってないで、1つくらい食べさせやがれこんにゃろめなのね! と。 マルトーが何をしているのかと言えば、それは彼の言うドデカドラゴンに深く関係していた。 何時目覚めるか判らないドデカドラゴン、基ゴモラに食糧を用意する場合、それが保存食である事が必然となる。 ゴモラが目を覚まし、そして空腹を訴えた際、差し出すのが腐った肉では逆鱗に触れてしまうであろうから。 即席に用意しても、僅かな量だとこれまた然り。見た目からして肉食であろう。 沢山あるからと野菜を出したら、喧嘩を売ってるのかと勘違いされるかもしれない。 そこで求められるのが、量を多く確保でき、且つ保存に長け、如何なる時でも提供可能な肉である。 これに該当するのは、マルトー曰く「錬金とやらで味を誤魔化し肉の風味を再現したなんかよくわからん物体」か、 「昔ながらの技法でこさえる燻製肉」だそうだ。 予算の面で、当初学院は前者を重視していたのだが、 職人気質のマルトーが、やっぱ魔法でなんやかんやした紛いもんなんかで あのドデカドラゴンの腹を満たせるってのもアレだろ、と大量の牛肉豚肉馬肉を用意し(自費)、 それらを全てせっせと燻製にする作業を初めたのが今日から4日前。 燻製作業は先ず肉の塩漬けから始めるのだが、量が量である。 通常の鍋ではとても間に合わないし、普段の料理にまで支障を来す訳にもいかない。 そこでマルトーは、先ずジャイアントモールのヴェルダンデに、使い主であるギーシュを通して、 学院厨房前広場の隅に穴掘りを要請した。その掘られた穴に、大釜を埋める。 そして、大釜に塩水と幾種かのスパイスを混ぜた液体を注ぎ、そこに肉を一杯に漬け込む。 それと同じモノを3つ作成。因みに、大釜は1つしか無かったので、もう2つは急遽購入した(自腹)。 味がよく染み込めば、続いては塩出しとなる。 先ず、一端大釜穴から肉とスパイス液を取り出し、今度は真水を穴に注いだ後、再び肉を入れ、長時間浸す。 これにより、肉から血や脂などの成分が抽出され、保存性がより一層高まるのだ。 頃合を見計らい、今度は風乾、肉を乾かす作業へと移る。 風通しの心地良い日、アウストリの広場一面に布をひき、さらに簡易的な天幕を張り(他のコック達と割勘)、 布一面に肉を並べる。その肉だらけの光景は、ある種一見の価値すらある (吊るして干す方がより効率が良いのだが、如何せん吊るせる場所となると、僅かに限られてしまう)。 天幕を張る理由は、外で干すとは言え、なるべく直射日光に当てないようにするためだ。 保存の為に干しているのに、日射で傷んでしまうのでは元も子も無い。 さて、無事に1晩干せれば、次は燻製作りの過程において、肝心要となる燻煙作業である。 先ず、塩漬けで使用した穴に埋った大釜を、また外に掘り出す。 その大釜で、今度は厨房前広場に3つの大きな竈を作った。 無論、竈のためのその他の材料費は自費である。 ここで少々脱線するが、トリステイン学院は貴族学校なので、 料理への経費はかなり多く与えられるのだが、やはり限度はある。 特に使い魔への餌となれば、常時は魚の粗やら野菜の切れ端で済ます。 でなければ、いくら金があってもとても足りないからだ。 しかし今回、このゴモラの為の燻製肉作りにマルトーは燃えていた。 「本当に美味い食い物ってぇのは、高ぇ食材さえありゃ作れるってもんじゃねぇ」 とは、マルトーのポリシーである。この学院に勤め始めてからというものの、 毎日貴族向けのちまちまとした高級料理ばかりを作り、いい加減ストレスを溜めていた彼にとって、 汗水垂らして豪快に作る燻製作業は、久し振りに料理人としての熱き血が滾ったのだろう。 それに関する金は一切惜しまなかった (場合によっては、ヴァリエール公爵家に代金を請求する選択肢もある。マルトー自身にはあまり意識は無いが)。 作業の続きに目を向けよう。 ナッツやサクラ亜属等の木材を大釜に入れ、その下の竈を炭火で摂氏90度までに焚き、煙を立たせる。 大釜から良い香りが漂う。この高温の煙で肉を燻す事で、煙に含まれる成分で殺菌を行い、さらに味に深みを出す。 これが、現段階の状態だ。香りに釣られ、シルフィードはこの場にふらふらやって来た次第なのである。 その香りは、喩え食いしん坊万歳のシルフィードでなくとも、大いに食欲をそそる匂いだ。 少々古い言い回しをすれば、匂いだけでご飯3杯はいけるだろう。 しかし、何度粘っても、マルトーは蒼い竜に肉を分け与える気配は無かった。 彼の頑固な構えに諦めを感じたシルフィードは、渋々と別の広場へ足を運んだ。 今や学院の風景の一部と化している鼾をかき熟睡中のゴモラは、 生徒達が授業時間の間は、使い魔達の憩いの場、というか棲家となっている。 例えばサラマンダーのフレイムは、ゴモラの丸みを帯びて屈折している角の上で 気持ち良さそうに日向ぼっこに勤しんでいる程で、 顎と胴体をぐでんと角の側面に乗せ、尻尾や手足をだらんと垂らし、気持ち良さそうに眠っている。 そんな彼の安眠を妨害したのは、ばっさばっさと翼を鳴らし、そこに飛来したシルフィードだ。 彼女は着地せずに浮遊を続けながら、フレイムに文句を垂らした。 きゅい、地龍なんて野蛮で乱暴で残虐でこんちきしょうめな種族と仲良くなる必要なんて無いのね、と。 目蓋を重そうに開いたフレイムは大きな欠伸を1つすると、面倒臭そうに言った。 青いの、そう言うなよ。確かに地龍は嘗てぼく達火竜の一族にも被害を及ぼしたそうだけど、 それももう大昔の話さ。そこまでして嫌う必要もないじゃないか、と。 それだけ言うと、もう起こさないでくれよ、と言い残し、再び目を閉じた。 ゴモラが地龍である事は、既に使い魔達の間では完全に認識されている。 地上最強の竜族と謳われる地龍を前に、当初は本能的に平伏せていた使い魔が殆どだったのだが、 延々と眠るゴモラと毎日を共に過ごす内、次第に服従心よりも安心感が芽生え、 今ではこうして皆に慣れ親しまれている。 韻竜であるシルフィードを除いて。 シルフィードは溜息を漏らし、辺りを見渡す。 フレイムと同様、ゴモラと直に触れ合ってる使い魔ばかりが目に付く。 長い尻尾の上でころころ転がるバグベアー、鼾のリズムに合わせ合唱の様に喉を鳴らすバジリクスとカエル、 その他諸々。蒼い韻竜は、もう1度深い溜息を吐くと、そろそろ授業が終わったであろう主人の下へと向かった。 みんな地龍なんかの味方をしちゃってからに。シルフィは肩身が狭いのね。きゅいきゅいきゅいきゅい。 午後の温かい日光が窓から差し込む学院長室で、オスマンが茶を啜り、何時もの様にコルベールと雑談している。 しかし、今日は少しばかり部屋が寂しい。 学院長室御馴染みのメンバー(と言うべきか)が1人欠けているのが、その起因となっている。 「ミス・ロングビルが有休を?」 「そうじゃよ。はて、聞いてなかったかね」 トリステインの首都トリスタニアに、演技力が高いと評判のとある劇団が期間限定で訪れ、 トリスタニアの劇場にて特別公演が催される事を知ったコルベールは、 学院教師としてのコネを駆使し、その切符をなんとか2枚入手したのは3日前の事。 予てから異性として若干の興味を抱いていたロングビルを、 所謂デートに誘える切っ掛けを手に入れたコルベールは、歓喜したものだった。 そして彼は、これまで3日3晩と脳内シュミレーションを行っていた。 ここに、2枚の芝居の切符があります。私の親友が、急用で観に行けなくなったとの事で譲ってくれたんです。 私はこの切符を使用し芝居を観に行くのですが、至極当然1枚切符が余る計算となります。 その残りの1枚を誰に託しましょう? 捨てるだなんて勿体無い。 オールド・オスマンは、最近疲労が溜まりやすくなったと聞きます。 さすれば、数時間もの間、劇場の狭い座席に留まらせるのは酷な話でしょう。 では、ミスタ・ギトーやミセス・シュヴルーズは? ミスタ・ギトーは、我々貴族たるもの、庶民の道楽に一緒くたになって興じるべきでは無い、という思考の持ち主。 ミセス・シュヴルーズは、騒がしいのは好みでは無いとの事。残念ながら、この芝居は賑やかな喜劇です。 まさか、生徒達に切符が1枚あると公言する訳にもいかないでしょう。 たった1枚の切符を巡って、醜い争奪戦をおっぱじめる情景は、安易に脳内に浮びます。 私の友人、コック長のマルトーを誘う選択肢もあるのですが、彼は休日を寝て過ごします。 劇場の座席で夢の世界に旅立ってしまう様では、芝居の切符の役目を果たした事にはなりません。 これらの点を照合し、相応しい人物を捜し求めた結果、貴女がそうだと確信したのです。 と言うことで、今度の休日に私と芝居を観に行きませんか? てな具合に、シミュレーションの結果は完璧だった。 後はタイミングを見計らい、ロングビル本人に1対1で会話する機会さえあれば、念願の―― と思っていた矢先であった。 「あの、オールド・オスマン、彼女は何日間の休暇を?」 「あー、10日間と言っとったの。親戚の元へ帰るそうじゃ」 芝居の公演は、5日後である。 その晩コルベールは、自棄食いをした。 ガリアに向け、主人を乗せて空高くを飛ぶシルフィード曰く。 韻竜が絶滅した原因が、かの天敵地龍にあるのは間違いないと言う。 お頭の悪い地龍が聡明なる私達韻竜の存在を嫉み、 ついには暴虐の限りを尽したのね、と彼女は不満げに洩らす。 彼女の背中に跨り、それらの止め処も無く流し続けられる愚痴の数々を無言でスルー、基受け流すタバサだが、 韻竜と地龍の両種族が同時期に絶滅したという考えには興味があった。 地龍の体長は平均数値でも40メイルはあったとされる。 現に学院に召喚されたゴモラの大きさは、教員達が測った処、約42メイルの大きさであるらしい。 それ程の巨体を維持するためには、喰らう食糧とて結構な量が必要となるだろう。 ならば、その主な食糧となるのは何であろうか。 一応燻製肉等は用意しているそうだが、果たしてそれで正解なのだろうか。 地龍が何を主食にしていたのかには、実は諸説ある。 雑食と言う学者もいれば、実は草食ではないかと語る者もいる。 確かに、地龍は外見からすれば肉を骨ごとばりばり貪ってそうなイメージはあるが、 あまりにも体が大きいので、逃げ回る動物を追って場合によっては逃してしまうよりも、 寧ろ植物を確実に食べる方が効率が良いのでは、という説が存在する。 しかし、それらの説を唱える学者達をあざ笑うかのように、 地龍は肉食であると断定できる、決定的なとある記録が存在した。 以前も記したが、地龍書物の殆どは、適当に書下ろされ、図鑑や資料としての利用価値がほぼ皆無な代物である。 が、それらの書物にも、ほぼ例外なく唯1つだけ、地龍の食性一連の重要な証拠となる、 とある真実の記録が残されているのだ。 「グドンはツインテールを喰らう」と。 『地龍録』、つまり数少ない信頼できる文献によると、 嘗てゲルマニアのある海沿いの地方にて、グドンという鞭の様な長い腕を持つ凶暴な地龍が、 何の因果なのか頻繁に人里に出現し始め、人々が暮らす村を順に襲撃して廻っていたらしい。 人を捕食する気配は無かったのだが、地龍独特の習性なのか本能からなのか、家や建物を破壊し尽していたそうだ。 それによる被害は甚大なもので、過去最大の地龍災害だと記録されている。 村の住民達が眠れぬ夜を過ごしていた最中、ある日海岸で巨大な卵が発見された。 グドン騒ぎの影響で漁や農作業が儘ならず、食べ物が不足していた中、 その卵は村人達にとって、例えそれが不気味な大きさや色であったとしても、貴重な食糧となりえた。 しかし、卵をなんとか調理しようとした寸前、突然卵が膨張、そして孵化し、中から不気味な怪物が現れた。 その芋虫に似た怪物は、『地龍録』によればツインテール(髪型にあらず)という学名だそうだが、 それを当事者の村人達が判断できる理由も無く、人々は怪物から逃げ回った。 割れた卵から這い出たその怪物は、当初百足の如く地を這いずり回っていたのだが、 唐突に尻尾の部分を上の方に仰け反り、頭部を人間で言う足元に、そして2本の尻尾を人間で言う頭の部分に、 言ってしまえば、手足の無い逆立ち形態へと体勢を変えた。 不気味を越えて不可思議な怪物は、村に侵入。避難が済んでいない村人達を次々に襲った。 その時、地底より突如グドンが出現し、求めていたかのようにツインテールに挑み掛かった。 決して村人達を救う為ではない。 それが目的なのであれば、その場から逃げ遅れた何人かの村人を、気にもせず踏み潰してしまう筈が無い。 その後数時間に渡って繰り広げられたグドンとツインテールの死闘は、 戦場となった農村をほぼ廃墟へと変貌させてしまう程に凄まじかったと言う。 勝負はグドン優勢の運びとなり、遂にツインテール最期の時が訪れた。 体力を消耗させたツインテールは、その眼球をグドンに無残にも足で潰され悶え苦しんだ挙句、 有無を言わさず胴体を噛み千切ぎられた。内臓を露わにし、大量出血でツインテールは呆気なく絶命。 そして、ピクリとも動かなくなった対戦相手の屍をグドンは喰らい始めた。 その死体を貪るグドンの姿は、目撃者達に吐き気を催したと『地龍録』に詳しく書かれている (このグドン騒ぎ、『地龍録』の中でもかなり具体的に事の場景が記録されているので、 余程衝撃的な出来事だったのだろう。或いは、その場に『地龍録』の筆者が居合わせていたのかもしれない)。 結局、腹を満たしたグドンは満足気に地底へと身を沈め、 以来、この地龍の出没はピタリと止んだそうだ。 静けさを取り戻した戦場に残ったのは、瓦礫や汚い木材と化した民家、 2体の激戦に巻き込まれた人々の死体。そして、グドンの食べ残し、詰まる所ツインテールの残骸であった。 勇気のある、というか普段からモノガワリと影で呼ばれていた青年がその肉片を食した処、 「海老の味に似てて、そこそこ美味かった」と感想を漏らしたらしい。 この青年はその後、不謹慎の塊だと他人から以前以上に煙たがられたそうだが、 青年の証言や卵が海岸で発見された点から、このツインテールは海洋生物、 それも水陸両生の特殊体質な種族であると生物学術的に記録され、 そして、謎の多かった地龍学に1つの説が確立された。 地龍グドンは、海洋生物ツインテールを食物連鎖の過程で食していたのだ。 地龍は、他種の生物を喰らう肉食性動物である。 こうした過去を辿る限り、地龍は肉食だと断言できるが、新たな疑問も発生する。 ハルケギニア全ての地龍が、海洋生物であるツインテールを喰らえる筈が無いとも言える。 火山脈などに棲息した地龍は、一体何を食べていたのだろうか。 その体格差故、逆に捕まえ難い人間を数人捕食した処で、彼等の胃袋が納まるとは到底思えない。 また、意外な事に、地龍種族同士の共食いは殆ど無かったらしい。 地龍同士の争い自体は頻繁にあったが、それはあくまで闘争本能や縄張り争いから起こるものであって、 パワーバランスの面を考えれば、食事の度に食うか食われるかの死闘を繰り広げるワケにもいかなかったのだろう。 種族の継続の為にも、共食いは彼等にとって不適切な行為であったと考えられる (ツインテールは地龍と完全に別の生物だと捉える)。 すると、消去法で餌の候補として予想されるのが、別種の竜や幻獣達である。 韻竜、風竜、また火竜の体長は、特に大きいもので6メイルを超える。 成長した韻竜達は、巨大な地龍達にとって格好の獲物と言えよう。 なにせ彼等からすれば、6メイルサイズの肉の体積は、食うに関して少なくも無ければ多すぎもしないし、 さらに韻竜や火竜なら、ただ受身となって無抵抗に突っ立っているのではなく、 風魔法や火炎ブレス等で地龍に戦いを挑んでくるであろうから、スリルあるハンティングの趣すらある。 戦闘能力の高い地龍の事。抵抗する獲物をその持ち前の豪腕で弄んだ挙句、腹を満たしていたに違いない。 地龍が残虐だと言い伝えられている所以は、そこから来ているのかもしれない。 やはり、シルフィードの先祖達は、ゴモラの先祖達に粗方喰い尽くされてしまったと言う可能性も否定できない。 そう考えれば、シルフィードの地龍に対しての態度も納得はいく。 が、だとしても、韻竜が絶滅したのはともかく、地龍までもが歴史上から消えた原因は何なのだろうか。 韻竜の数が暴食の結果減少し、それによって地龍も食糧難に陥った、とは考え難い。 他に餌となる火竜やグリフォン等の幻獣達は、現在も数を残しているからだ (因みに、『地龍録』においても、地龍絶滅については 何故か殆ど書かれていない。実は記する事さえ憚れる事柄なのか?)。 タバサは、独自に1つの仮説を立てた。 嘗て韻竜と地龍との間に、両種族の行く末を決定付けさせた大規模な戦いがあったのではないだろうか。 三人寄れば文殊の知恵が如く、大勢が協力し頭脳戦に持ち込めば、韻竜にも勝算はあったのかもしれない。 両種族の大戦争は、甚大な傷み分けを結果として残し、そして韻竜も地龍も朽ち果てた。 自身のシルフィードやルイズのゴモラのように、現在も韻竜と地龍が僅かながら生き延びている理由も、 大戦争の戦火を両種族の内何匹かが逃れたと考えれば、難解な話では無い。 そう考えたタバサは、早速、シルフィードにその事を問うた。 シルフィードの答えは、 「わかんないのね。 おとうさまもおかあさまも、シルフィが物心付く前に死んじゃったから、何も聞いて無いのね」 だった。 あと、任務が終わったらお肉食べさせてなのねー、とおねだりもした。 却下した。 この日、プチ・トロワの宮殿は何時に無く緊張感に包まれていた。 ガリア王の来訪、しかもアポ無しとくれば、慌てざるを得ない。 普段は誰が来ようと適当にあしらっている王女イザベラも、この時ばかりは比較的真剣な面構えで、 宮殿内の客間にて、ガリアを治める王であり実の父でもあるジョゼフに来駕の言葉を送っていた。 「しかし父上、何分急だった故、歓待の用意が」 出来ていない、とイザベラが阿吽の呼吸で、椅子で寛ぐジョゼフに伝える。 ジョゼフの気紛れ癖は今に始まった事では無いが、 祝い事や緊急事態でもあるまいに、城を離れ自らが娘の下へ赴くなど、誰もが予想だにしていなかった。 王としての職務を安易に怠業する辺り、無能王と呼ばれるには、いよいよ相応しくはあるのだが。 「なに、ほんの少し顔を覗きに来ただけだ。後ろの彼奴に、我が国を巡歴させてやっているんでな」 流石の無能王も、イザベラの対応に気は咎めなかった様だ (唐突にのこのこと現れ、満足に歓迎しろと言う方が人間として問題がある)。 ジョゼフはイザベラと眼を合わせたまま、自身の背後に佇む男を親指で差す。 どうも、その男にガリア王国の要所を直接出向いて紹介して廻り、その一環でプチ・トロワにも訪れたらしい。 服装や、王と王女を目の前にしても全く遠慮を感じさせない態度からして、護衛の兵には見えない。 ガリア王自らが国の巡歴、つまり案内をしていると言うのだから、それ相応の身分には違いないであろう。 イザベラは、男を見据えた。 年齢は、二十代の中頃。或いは、三十台を超えているのかもしれない。 老けて見えるのでは無く、その整った顔立ちから放たれる鋭い目付きが若年を感じさせず、 往年の戦士であるかの様な雰囲気を漂わせている。 そして、若くありながら髪の随所から生えた幾つかの白髪の束が、 彼のミステリアスな雰囲気をさらに増幅させていた。 それ故あって、正確な年齢を窺う事が出来ない。 また、見慣れない服装を身に纏っている。 紺色をした長袖の上着は、貴族が着る衣装の様な派手さや鮮麗さの要素は無い。 かと言って、庶民が着ている安い生地で拵えられた服の様な、貧乏臭さも感じられない。 貴族か庶民かの位すら判らない、謎に満ちた着物である。 イザベラは、ジョゼフに男の事を問うた。 「父上の旧友、ですの?」 「そんな処だ。さて、そろそろ御暇させてもらおうか」 極々短い返答、そして滞在だった。 ジョゼフと男が客間から出ようとした時、イザベラは最後に男に名を名乗らせた。 それは、聞いた事も無い奇妙な響きの名であった。 「可愛い娘さん、だな」 プチ・トロワの宮殿を後にし、門に停まらせている馬車へと向かう途中、若白髪の男がジョゼフに言った。 父親にヨイショする魂胆では無い。イザベラは間違いなく魅力的な美貌を備えている。 それでいて、その年齢に相応した幼さも秘めており、可愛いと言う男の発言に嘘は微塵も無い。 が、男はそれと同時に、イザベラの本性をも見抜いていた。 恐らく、今頃宮殿内では、なんで早く準備しなかったんだ馬鹿たれ共が、 と彼女が部下や侍女達にきつい罰を与えているであろう。 ジョゼフが無能王と呼ばれるなら、イザベラには鬼畜王女とでも名付けようか。 だが男は、決して彼女を批難しよう等とは思っていなかった。 人の所為にするな、なる言葉はあるが、あの年齢の少女の性格や心境を不安定な状態にさせてしまったのは、 まず間違いなく、父親であるジョゼフにも原因があると言わざるを得ないからだ。 そのジョゼフが、得意そうな顔で男に言った。 「そうだろう? まぁ、親馬鹿発言とでも捉えておけ」 「いや、親とはそう然る可きだと思う」 ただ、馬鹿は結構だが、娘の将来を閉ざす様な無能ぶりは改善したらどうだ、 と男は付け加えようとしたが、流石に冗談交じりにしてもデリカシーに欠けるし、 何より今ジョゼフを挑発した処で何のメリットも得られないので、既の所で止めた。 そして、いい加減にこの悪い癖を治さねば、と内省する。 「なんだ、貴様も子供がいるのか?」 ジョゼフの問い掛けに、男は微笑を洩らしながら頭を横に振った。 その仕草を横目で見たジョゼフも、そうか、と呟きながら鼻で笑った。 ふと、男が足を停め、西の空を見遣った。 男の足音が途切れた事に気付いたジョゼフは男の方に振り返り、彼の視線が指す方向に眼を遣った。 雲が幾つか蒼い空を優雅に漂っている以外に、特に何も見えない。 男が足を停めた理由は、まさか雲を眺める為だったのか。 そんな筈はあるまいと、今一度ジョゼフは双眸を細くして西を凝視したが、やはり変わった点は発見出来ない。 ジョゼフは男に対し癪の感情を僅かに抱き、穏便でありつつ不機嫌さが伝わる程度の口調で言った。 「何を阿呆の様に突っ立っている? 戻るぞ」 男は、遥か西の彼方から真っ直ぐこの宮殿に向かってくる、人を乗せた蒼い風竜の存在を捉えていたのだが、 ジョゼフの心境が芳しく無くなった事を悟り、再び歩き始めた。 前ページ次ページ眠りの地龍
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3830.html
前ページ次ページ眠りの地龍 過ちを繰り返したくはない。と、白髪交じりの髪を生やす若い男は言った。 男の言葉に対し、王座に踏ん反り返るガリア王は鼻で笑った。 そんな見てくれだけ御大層な信念なぞ主張した処で、 傍から聞けば所詮戯言としか受け取れないんだがね、と。 ガリア王の言葉に対し、男は落ち着いた表情で、それでいて感情を込めて言った。 戯言だろうが愚考だろうが、どう捉えてくれても構わない。 ただ俺は、何度でも言うが過ちを繰り返したくない。 だから俺は、過ちを阻止するべく行動を起こすその日まで、此処に身を置きたいんだ。 そして来るべき瞬間に、俺の邪魔をしない事を約束して欲しい、と。 男の庶幾に対し、ガリア王は幾分考え込み、そして口を開いた。 よかろう。貴様も俺の阻害をしでかさない限り、堅い事は言わん。 せいぜい為すべき事を成し遂げるまで、今まで通りゆっくり此処で寛ぐがいい、と。 ガリア王の認許に対し、男は礼を言った。 感謝する、ジョゼフ、と。 ガリア王はどこか含みのある微笑を浮べ、男を指差して言った。 なぁに、俺と貴様の仲だからこそ成立するのさ、と。 眠りの地龍 第1話 「龍の居所」 「ゴムア?」 「違う。ゴモラ」 「ゴモラ?」 「そう。ゴモラ」 トリステイン魔法学院敷地内の図書室。 時刻は日もやや傾いた夕暮れ時、窓から差し込む橙色の日射が多くの書籍を照らす中、 室内に備え付けられた読書用の机に集う2人の少女の姿がある。 1人は、蒼い短い髪を垂らし、椅子に座りながら、机の上に置かれた少々大き目のサイズの書物を広げるタバサ。 そしてもう1人は、そのタバサの横で、椅子は使わず、床に立ったまま体を屈折させ机に肘付くルイズ。 タバサは広げたページに書かれたある項目を指差し、ルイズにそれを示している。 思えば、このルイズとタバサという組み合わせはわりに珍しい。 ほんの数日前まで、彼女達はクラスメイトでありながら、面識は殆ど無かった。 その原因として、ルイズの宿敵でありタバサの無二の親友、キュルケが関与していたのはまず間違いなかろう。 そんなキュルケと言う壁を乗り越え、こうして2人きりで図書室でやり取りをする仲になった経緯は、 5日前の召喚の儀式にまで遡れば解る事であるが、今ここで語るほどでもあるまい。 「なんて書いてあるの?」 「読んで」 「えーっと」 ゴモラ。 幻獣界脊椎動物亜門地龍上目双弓類綱ゴモラサウルス科眷属。 身長約40メイル。 主に地底を住処とする。 頭部に3本の角が生えている。 体色は土色。 「あれ、これだけ?」 ルイズは、今しがた自分が読み上げた解説項目の短さに、軽く面食らった。 異常に分厚く、値段も庶民が3ヶ月は衣食住に苦労しない金額に相当する何とも尊大な書物でありながら、 知りたい事について書かれていたのは、ほんの申し訳程度でしかなかったのだから無理も無い。 そもそも、この『地龍から見取る現代的幻獣学論』という本は、 地龍についての解説も少なく、やたら回りくどい文章で学会への批判を書き綴っているのが目立つ。 資料用の挿絵も一切無く、正直、悪書だと言える。 何故そんな書物を、わざわざ図書室の奥から引っ張り出して調べものをしているのか。 それは、2人の会話から推察できる。 「地龍に関しての生物学的記録は少ない。あっても大概は信用出来ない」 「でもこれじゃ、あの子の正体が何時まで経っても判らないじゃない」 40メイルの巨体、頭部に3本の角、そして土色の体。 確かにそれらの点は、ルイズが召喚した幻獣の特徴と合致する。 しかし、未知の生物を詳しく知りたくば、やはり絵図はどうしても必要不可欠である。 絶滅種と呼ばれる地龍となれば尚更だ。 ルイズは、地龍に関しての資料の圧倒的少なさに、溜息をついて椅子に座った。 少しばかり沈黙の時が流れた後、ずっと例の悪書に目を通していたタバサが、ふと口を開いた。 「確かに、これでは知るべき智識は手に入らない。でも」 「でも?」 「あれが地龍なのは、恐らく間違いない」 『地龍(ちりゅう)』とは、主に地底や火山地帯を住処とする、翼を持たない桁違いに巨大な龍の事を指す。 生態特徴として、知能は低く、縄張り争いや餌の奪い合いで、 本能に従い同種族同士が随時死闘を交わす、野蛮な獣であると後世に語り継がれており、 先住魔法を操る知能を持ち、且つ空を自在に翔ける翼を具える『韻竜』とは極めて対照的な存在にある (『火竜』との接点なら幾つかあるのだが、体の大きさに明瞭な違いがある)。 故に、この地龍と言う種族は、ハルケギニアの多くの英雄譚等で悪役として描かれる事が多く、 ポピュラーな所では、『イーヴァルディの勇者』の冒頭、 主人公イーヴァルディの住む村を群れを成して襲撃するモグネズンなどが挙げられる。 だが、平均身長が40メイル越えという異常な体たらくが、生態系の秩序を乱す存在として神に嫌われたのか、 或いは種族同士の戦いの末に自滅への道を辿ったのか、現在ではその殆どが死滅したとされている。 ある意味、同じく絶滅したとされる韻竜との唯一の共通点だとも言える。 現代、地龍の生き様を語る事が出来るのは、 まだ地龍がハルケギニアの地上を闊歩していた時代の人々が残した、幾つかの記録文献のみなのだ (因みに、先に述べた『イーヴァルディの勇者』に登場するモグネズン等は、その殆どが架空描写で描かれている)。 しかし地龍の存在そのものは根滅してはいない、という説を唱える学者も多く、 さらに、翼を持たない小山ほどの超巨大な龍の目撃例が、今も尚各地で確認されているのが現状だ。 とは言え、漠然とした生態記録や、英雄譚の中での過剰とも言える悪役ぶりが原因となってか、 地龍の存在を架空の産物だと勘違いしている者も多い。 ルイズが例の使い魔を召喚した当初、騒がれこそはしたが「地龍を召喚した」と認識した者は、 召喚の儀式に教員として立ち合ったコルベールを含め、誰1人としていなかった。 絶滅した古代の龍、もしくは空想の龍を召喚するというのは、あまりにも非現実的すぎるからだ。 だが、40メイルを越える龍が召喚されたのは紛れも無い事実。 あの日から数日が経過し、徐々に龍の正体に疑問を抱く者が現れ始めた。 召喚した張本人であるルイズに、地龍とはまた別の、絶滅したとされる韻竜を召喚したタバサ。 トリステイン魔法学院長オールド・オスマンとコルベールも、それに当て嵌る。 勉強熱心な他の何人かの学院生徒も、何れ図書室に足を運び、古代生物に関しての資料を探し始めるであろう。 ――だが結局、ルイズ達の調査はそこで難航、及び終了を余儀なくされた。 知識を主食とする本の虫、と呼ばれるタバサでさえ、半ばお手上げ状態なのだから。 「今日も手伝わせちゃってごめんね、タバサ」 「……胡散臭い地龍の本は、もう見たくない」 本を元の場所に戻し、長い詮索から開放された2人は、お互い空腹感を覚え、揃って食堂へと向かった。 翌日。 「アホみたいに馬鹿でかいサラマンダー、じゃ誤魔化せないかの」 「無理があるでしょうに。生徒達の中にも、すでに地龍との関連性を見出した者が数名いるようですし」 トリステイン魔法学院学院長室で、学院長であるオスマンと教員のコルベールが、 なにかと馬が合うのだろうか、個人的に会話を交わす姿は珍しくなく、この日もそんな光景が見られた。 オスマンが椅子に座って鼻毛を弄り、彼の使い魔の任務「パンツの色を探る」の報告を待つのもいつもの光景。 コルベールが「また使い魔にくだらん事させてからに」と内心思いつつも、オスマンに話題を振るのも普段の光景。 秘書のロングビルが、棚の整理をしつつ、2人の会話に聞き耳を立てているのも、これまた変わらぬ光景。 そして、彼女の足元に、白い鼠、つまりオスマンの使い魔モートソグニルが、こっそりいるのも以下略。 「で、あれが土龍だと」 「お言葉ですが、土龍でなく地龍です。土龍ではモグラです」 「ややこしいのぉ。で、あのミス・ヴァリエールが召喚した幻獣の正体が、太古に絶滅した筈の地龍で、 それもゴモラという特定種であるという君の意見の確証は?」 「説明するまでも無く。これを読めば明確ですぞ」 変わらぬ光景、と何度か記したが、この日、実は差異の要素もあった。 コルベールが手袋をはめ、何やら黒い表紙の書物を大切そうに抱えているのである。 『地龍録』。 至ってシンプル、それでいて判り易い、ただ書き留めている内容を示しただけの書籍名。 著者の名すら記されていない。 普段は学院図書室内の、さらに一部の教員以外は立ち入り禁止の場所にて厳重に保管されている、 庶民はおろか並みの貴族ですら手の触れる機会が訪れないであろう、貴重な本である。 希少価値で言えば、宝物庫に蔵わられても諧謔ではない代物だ。 地龍に関して豊富に、それもまだ地龍が絶滅する直前に書かれた重要なデータが記録され、 さらに詳細な挿絵まで描かれており、事実上最も地龍について詳しく、且つ信頼できる文献だと言われている。 余談だが、昨日ルイズ達が図書室で目にしていた『地龍から見取る現代的幻獣学論』の様な悪書が 世に出回った最大の理由に、『地龍録』等の、過去の遺産が殆ど現存してない事が挙げられる。 「地龍と言うネタはあまり使われてないし、物珍しさで売れるかもしれん」 と、馬鹿、あいや考えの浅はかな売れない作家や学者達が 何処から沸いたのか、続々と現れ始めたのは近年の事。 だが、名前だけが正確に知れ渡っている地龍の数はほんの僅か。それらの名を載せるだけでは本にはならない。 たとえ新たに地龍に関する本を発行するべく奮起するにしても、 現存する生態記録や情報の絶対数の少なさ故に、結局は挫折してしまうのだ。 良識を備え持つ者であれば、そこで潔く地龍の本を書くのは諦めるであろう。 しかし、食べて暮らしていく為に、なんとしてでも変り種の本を出して1発当てなければ、 と言う思念が幾人かの脳を支配してしまった。 結果、生まれたのが数多の「パチモノ地龍」。適当なでっちあげ地龍でページを埋めていく作家や学者達。 その出来損ないの地龍図鑑の数々を発行し、ハルケギニア中に販売する、出版社や本屋。 そして、それらを読んで間違った知識を植えてしまう人々。 こうした経由の末、多くの『パチモノ地龍本』がハルケギニア中に蔓延ってしまったのだ。 ある種、無駄に頭脳が発達した人間ならではの愚の骨頂、では無かろうか。 『地龍から見取る現代的幻獣学論』に、ちゃんと実在したゴモラが載っていたのは、ある意味奇跡とすら言える。 こんな文学世情では、タバサの呆れる顔も安易に想像できよう。 しかし、いくら稀有な存在とは言え『地龍録』も現代に残ってはいるのだから、 業者にそれを託し、複写させるのも決して不可能な話ではない。 だが、基本的に『地龍録』ほど貴重な書物だと、世に曝すより寧ろ大切に手元に置きたいのが性と言うもので、 本の収集家ジュール・ド・モットも『地龍録』を所有しているそうだが、宝石を扱うが如く保管している模様。 尤も、オールド・オスマン自身は、この本はもっと有効利用すべきだと考えてはいるのだが、 如何せん貴族としての世間体がそれを妨げているらしい。 さて、オスマンはコルベールからその本を受け取り、予め栞で示されていた頁を開いた。 コルベールが、どうです、その絵に見覚えがあるでしょう、と得意げに語る。 そこには確かに、6日前にルイズが召喚した龍と酷似した、地龍の記録図が描かれていた。 頁の隅には、拙い文字ではあるが間違いなく『ゴモラ』と記されている。 「この6日間、ありとあらゆる資料や図鑑を漁った結果、その書物に辿り着きました」 「なるほど。では、やはりあれはゴモラと視て間違い無いようじゃな」 オスマンは、食入るようにゴモラの絵図と解説項目を黙読する。 ややあって、本を丁寧に閉じ、耳掻きを手に取りそれで耳を穿りながら言う。 「現代に蘇りし地龍、ゴモラ、か。やれやれ、アカデミーの連中が五月蝿そうじゃの」 「この事は出来れば暫く内密にしたいですが、噂と言う物は必ず外部に漏れますからね。 研究員達が挙ってここに雪崩れ込むのも、時間の問題やもしれません」 大きい声では言えんが、なんでもかんでも研究材料にしようとするアカデミーは好かん。 とオスマンは愚痴る。同意です、とコルベール。 「どれ。散歩がてら、噂のゴモラを拝みに行くとするかのぅ」 早速、この目で確かめに行きたくなったのだろう。 オスマンは、任務を終え足元に佇んでいたモートソグニルを肩に乗せ、席を立ち、 秘書のロングビルに留守番を命じ、コルベールを引き連れて学院長室を後にしようとしたが、 それをロングビルが声をかけ止めた。 「なんじゃね」 「あの、その本ですが」 「あぁ、読みたいのかね? わしらが戻って来るまでなら構わんよ。但し、丁重に扱うのじゃぞ」 礼を言ったロングビルに、オスマンはウインクで愛想を送ると、コルベールと共にそのまま部屋を後にした。 ロングビルは机の上に放置された『地龍録』に手を伸ばし、そっと胸元に運び、頁を開く。 彼女の本性は怪盗だが、今回これを盗むつもりは皆目無い。只、彼女には知りたい事があった。 あの子の使い魔も地龍とやらなのであれば、この本に載っているかもしれない、と。 静寂の時が流れる院長室の空間に、ページをゆっくりと捲る音だけが響いた。 広場の面積の半分以上を、土色の巨大な物体が占領していた。 その物体から、例えば洞窟の中を風が通る様な、重い音が律動的に放たれている。 広場の中央を丁度取り囲むように、ぐるりと左回りに円を描いて体を曲げ、 うつ伏せになって鼾を鳴らすそれは、よく見れば手足が生えている。 そして、重い音の正体は、生命の呼吸である。それは、間違いなく1匹の生物であった。 三日月の様に屈折した2本の角が生えた頭部を持ち、 一枚岩、もしくは地面の様な、ごつごつとした皮膚が体を覆っている。 首と胴体はほぼ一体化しており、お世辞にもスタイルが良いとは言えない。敢て寸胴、と表現すべきか。 手足は短いが、尻尾は長く、目を瞑った頭の2メイル程前に、尻尾の先端がある。 これこそ、現代に蘇った――否、今の今まで人間が「絶滅した」を謳い文句に、 勝手に健在を否定していた地龍の紛れも無い生き残り、ゴモラである。 この眠りの体勢は、6日前の召喚の儀式当初となんら変わっていない。 6日前。ルイズが周りから罵声を浴びつつも、 サモン・サーヴァントの呪文を詠唱した際、現れたのは眩く光る浮遊物体であった。 コルベールがその発光物体を慎重に調べようとする余地すら与えず、 光は突如として膨張し、ルイズを含む広場にいた者は全員広場の隅に退避した。 そして、大きく膨らんだ光が音も無く消滅した時、そこにあったのは土色の小山であった。 もし、光から逃れなかったら、危くその小山に押し潰されていた処であろう。 最初、それが生物であると気付いた者は少なかった。生物としては、常識を軽く超えた大きさだからだ。 だが、冷静に小山を観察してみると、それが音を立てて呼吸しているのが判明した。 程無く、それがとてつもなく大きな眠る龍であると知れ渡ると、学院中が騒然となった。 野次馬が広場に殺到し、広場に入りきれない者は本塔に登って窓からその光景を見下ろしたりと、 貴族の通う学院らしかぬ押すな押すなの騒ぎであった。 あのゼロのルイズがエライものを召喚した、と興味本位で駆け付けた者が多くを占めたが、 得体の知れない恐怖感を覚え、杖を構えたり一時学院から退避しようとした者も少なくは無かった。 尊敬の眼差しと言うべきか、服従の構えと言うべきか、なにせ動物的本能で、 使い魔達はゴモラの雄姿を見つめていた。例えそれが眠っているにしても、だ。 いや、寧ろ堂々と眠っている様が、より王者の風格を引き立てているのやもしれない。 そう、繰返すが、この龍は熟睡している。 この事実が、話を余計にややこしくしていた。 召喚相手が眠ったまま儀式を執り行う例は過去に無く、 目を覚ました後に儀式を始めた方が良いのでは、と広場に集まった教員達は話し合った。 (そもそも、仮に何処かしらで寝ていたであろうゴモラが、どうやってサーヴァントの鏡に入ったのだろうか。 鏡の出現場所とゴモラのいた位置がたまたま重なったのか、或いは召喚されたと同時に眠ったのか。 疑問は残るが、召喚されてしまったものは仕様が無いので、その辺の考証は保留とした) だが、ルイズはコントラクト・サーヴァントの実行を強く要望した。 一刻も早く、このある種神秘的な存在に触れたかったのだろうか。 しかし考えてみれば、もし眠った状態であっても儀式に成功すれば、 コントラクト・サーヴァントのシステムの新たな事実が解明できる。 仮に成功しなかったにせよ、お互いに悪影響を及ぼす事は無いであろう、と教員達は判断。 言い方は少々悪いが、実験を兼ねて儀式決行の許可を下ろした。 歓喜したルイズは、背伸びをし、ゴモラとキスをした。 だが、コントラクト・サーヴァントが成功したのか否かは、実は6日目の今日に到ってもまだ明白では無い。 儀式成功の証として、接吻をした者の左手にルーンが刻まれるのは周知の事実で、 その判断は誰でも出来るはずだった。だが、今回は少し事情が違った。 ゴモラはうつ伏せになって眠っている。つまり、胴体を横にして腹を地面にどっしりと乗せている姿勢だ。 右腕は、体の横で地面にちょこんと手の平を乗せているが、一方左腕は、胴体の下に埋もれている。 つまり、腹と地面の間に左手が挟まり、左手の甲が肉眼ではとても確認できないのだ。 魔法を使って腕を引っ張り出す試みは失敗した。体長もそうだが、ゴモラは想定外に重かった。 ディテクト・マジックで調べようにも、ルーンの有無はやはり直接目で見なければ確実ではない。 手っ取り早い手段としては、やはり起床だろうか。 だが、火炎魔法攻撃なり水流魔法責めなりなんなりで、眠りから叩き起こす術は幾らでもあるにはあるが、 睡眠から無理矢理引き剥がされても上機嫌でいれる生物、益してや龍など想像もでない (仮にコントラクト・サーヴァントが成功しており、ルイズを慕っているとしても、だ)。 ジャイアントモールの力を借り、地面を掘って、左手のある場所にだけ空間を作る方法も無い事は無いが、 そこまでしなくとも、儀式の成功を立証する事柄がすでに存在した。 ルイズがゴモラの口、と言うよりは鼻の先端にキスをした際、 ゴモラの腹部が光ったのを見た、と話す生徒が何人かいたのだ。 その証言から、恐らく埋もれた左手が発光し、洩れた光が腹部ごしに見えたのだろう、 とコルベールは判断した。つまり、ルーンが刻まれた、という証左に一応はなる。 その後何時間もの間、教員達が学院長室での会議で論議を交わした結果、 儀式は若干疑わしくも成功したと認められ、こうしてめでたくルイズは進級する事ができたのだった。 そして僅かながら日々は流れ。 眠れるゴモラの文字通り小山の如くの巨体は、何時しか生徒達に憩いの場所を提供する身となっていた。 授業が終わり次第真っ直ぐ広場へ直行し、俗に言う場所取りを我先にと行う生徒もいる程だ。 ゴモラの背中に登り、滑り台で遊ぶ様に滑り降りたり、尻尾の上に乗って寝転んで日向ぼっこをしたり、 広場の隅のベンチに座り、御菓子を頬張りながらその体躯を眺めたりと、多種多様である。 使い主であるルイズは、最初こそは一々それらに注意していたが、 考えてみれば、我が使い魔がこうして皆から親しまれるのも悪い心境ではない。 それに、魔法が不得意で「ゼロのルイズ」と馬鹿にされていた時と比べ、自身への風当りも緩くなった様な気もする。 彼女にとって、既にこのゴモラは、例え地龍であろうが眠ったままであろうが、誇り高き使い魔となっていた。 家族に、特に姉のカトレアにこの事を報告をするのが、今からとても楽しみだ。 「それにしても、何時までぐーすか寝てるつもりなのかしら。冬眠の時期だって過ぎてるんじゃない?」 巨大な尻尾の先端に腰を降ろしたキュルケが、彼女の膝に乗る使い魔であるフレイムを撫でながら、 彼女の眼の前にあるゴモラの巨大な顔に、優しく手を触れているルイズに言った。 「きっとねぼすけさんなのよ。ゆっくり眠らせてあげましょう」 ねぼすけさん、などと言うルイズに、キュルケはフレイムを撫でる手を止めた。 堅い性格では無いにしても、プライドの高いルイズが、よもや嘗ての天敵の前でそんな発言をするとは、と。 第一、召喚の契りが交わされているのなら、起きろと命令すれば目を覚ますかもしれないのに、 それを実行する姿は今の処無い。使い魔の為すがままにさせてあげたいのか、 若しくは使い魔の寝顔が可愛くて仕方が無いのだろうか。 「ねぼすけさん、ねぇ。それでヴァリエール。この眠れる使い魔の名前、決めたの?」 それを聞いたルイズは、ふっとキュルケの方に振り向いた。 名前。確かにこの数日間、この龍の正体を調べるのに気を取られて、 本来使い魔を操る者として、ある意味必要不可欠な「名付け」をしていなかったのを、ルイズは思い出した。 「んー。どうしよう」 ルイズは頭の中で名前の候補をリストアップする。 何と名付けようか。貴族の使い魔らしい由緒ある名か。もしくは覚えやすい名前の方が良いのかもしれない。 「雄か雌かは判らないけど、だったらどちらでも通じる素晴らしい名前を付けてあげなきゃ。 待っててね!」 満面の笑みで、彼女はゴモラに触れたまま幸せそうに言った。 尤も当の使い魔は、相変わらず目覚める兆候は微塵も見て取れないが。 結局、悩みに悩んだが、これから場合によっては生涯付き添う事となるパートナーの名前を そう早々と決めれる筈も無く、考えてる内に日も傾く。 ルイズ達が各々寮に戻る頃も尚、ゴモラの鼾が、淡々と眠りの旋律を奏でていた。 前ページ次ページ眠りの地龍
https://w.atwiki.jp/02220630/pages/37.html
《重爪地龍 ギレクシオ》 [赤][ステラ][地龍] 〔赤:2 無:4〕 Power:5000 BR:1 [常]このステラを装備しているステラはパワーを+3000し、ステラを戦闘で破壊した時相手プレイヤーに1ダメージを与える。 [常]このステラを装備しているステラが場を離れた時、このステラを場に出してもよい。 "高野を我が物顔で闊歩する彼らの剛腕は強大な爪を備えている。" 戻る
https://w.atwiki.jp/dmseitokai/pages/140.html
ロウが一度組んで、二度と組まないと心に誓ったデッキのうち一つ。 地龍の化身を使用して神秘の宝箱でマナにあらかじめ埋めておいたグラディアンレッド・ドラゴンやボルメテウスホワイト・ドラゴン等を召喚する、というコンボ。 コンボそのものは遠大ではないのだが、爆発力にあまりに欠ける。 さらに、これを考えていたころは当然のように母なる大地が4枚積めた環境だったので、何のために存在するのかわからないコンボになってしまった。 それが軽く怒りを招いてこのデッキは組まないことをロウは心に誓ったらしい。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4839.html
前ページ次ページ眠りの地龍 国王の財力、エルフの先住魔法、そして異世界人の知謀が結集し造り果せた、冷たき2体の巨人。 ガリア王国の何処かにある、広く薄暗い室内で、その巨人達は眠っていた。 ぴたりと並んいるその2体は、血を分け与えた双子の兄弟にも見える。 それほど、よく似ていた。 2体を外見がら個別化する為に用意された、蒼きを染めし鎧と、紅を司る鎧。 その彩色が、後に偶然ながら、彼等に付けられる名称の由来となり、 そしてさる事毎に因果な按排を弾き出すとは、ガリア王国の長とて現段階では予知すら叶わない。 彼等は光という存在を知らずにいる。 未だ1度たりとも、起き上がるのを赦されていないから。 仄暗い無の世界を漂う先に見つけるものは、果たしてガリア王が望する正しき事なのか、 はたまた、2体の誕生に携わった異世界人の危惧する、過ちの繰り返しなのか。 その運命を委ねるはガリア王、そして蘇りし神の頭脳次第。 遠くない未来、神の頭脳が灯す光は、彼等を何処へ導くのだろうか。 子は親を選べないとは、先人とてよくも適切な言葉を残したものだ。 何れにせよこの2体の巨人が、まだ目覚めてはならぬが故に彼等を固く束縛する、 強靭な紐から解き放たれる為には、暫時の経過を必要とした。 眠りの地龍 第3話 「あしなが姉さん」 ゴモちゃんで良いじゃない、とけんもほろろ気味に言うのはキュルケ。 生き物、よりも置き物、として認識され始めた感すらある、動かざる眠りの地龍ゴモラの名称について、 毎日散々思考する挙句、結局は決まらない事を悪循環的にひどく悩むルイズが、 少々プライドを捨て、この日授業の直前、キュルケに相談した処、前記の答えが返ってきた次第である。 やっぱこのゲルマニア女なんかに聞くんじゃなかった、とルイズは溜息をつく。 だが、キュルケとの雑談は続いた。それもわりと和気藹藹に、だ。 学院1年生の頃の彼女達は、犬猿の仲を具体的に表した仲の悪さであった。 同じ机に、それも隣同士で座るなど、例え天地が引っ繰り返りようとも考えられなかった程に。 ルイズは魔法が不得意とするが、それは周知の事実にも程があるので、敢てその詳細は省くとして、 爆発乃至、発光しか能がない彼女を嘲弄していたのは、何もキュルケに限った事ではない。 2人の仲が悪かった原因として、そこだけを指摘するのは見当違いではなかろうかと思える。 また、ゴモラたる大層な使い魔を召喚したから、2人は仲良くなったと捉えるのもまた然り。 確かに魔法劣等者ではあるが、ルイズは努力を怠ってはいない。ただ何故だか報われないだけだ。 それに早い段階で感ずいた者もいたのに、当のルイズは性分からか強がってしまい、 理解しようとしてくれた者達を、これまで遠ざけてしまったきらいは大いにあると言える。 そう、孤独の巌窟に片足を突っ込んだのは、他ならぬルイズであり、 召喚されたゴモラは、その巌窟から脱出するチャンスを、無意識がら与えてくれたのに過ぎないのである。 ルイズ自身にその気がなければ、何を召喚しようが、キュルケ達との距離は今も遠かったであろう。 「あの、さ。マウンテンガリバー、なんてどうかな?」 さて、そんな2人の少女の会話に、唐突に顔を突っ込むは、後の座席から乗り出す膨よかなる少年マリコルヌ。 その丸っこい顔に備え付けられた口から放ったのは、どうやらゴモラの名前についての発言らしい。 ルイズとキュルケは、彼の弾力のありそうな事実柔らかい頬を目の当たりにし、軽く怯む。 そして、ルイズはマリコルヌの案を即座に却下した。 ガリバーだなんて、いかにも男っぽい名前じゃ駄目よ、長いし。 と。 ゴモラの性別は未だ不明である。 昏睡状態なのではと疑ってしまう程に深く眠り、なかなか目覚めないため、 通常使い主と使い魔が可能とする、意思の疎通が儘ならないからなのも原因の1つだが、 最大の理由は、単純明快に生殖器による雄雌の判断がつかないからである。 竜の生殖器は、大抵他種の生物と同じ様に尻尾の付け根にある。 これに倣いゴモラの尻尾の付け根を調べた処、所謂突起物の類は見受けられなかった。 だが、まだ雌だとは断定をしかねる。何故なら、ゴモラはその巨体をうつ伏せにさせ眠っているため、 或いは案外小さな生殖器が、巨体と大地の合間に埋もれている可能性が高いからだ。 依然未確認のままのルーンと同じく、性別の方も曖昧模糊なのが暗黙の了解となっている (半陰陽、という単語も浮かび上がるが、生物学的にそれはあり得るのだろうか)。 目覚めてくれれば、そう事が有耶無耶に縺れる必然性も消えうせるのだが、 起き上がらない巨体を目の前に、ほとほと待ち惚けを喰らっているのが現状だ。 そんな良く言えばミステリアス、悪く言えば真偽があやふやではっきりとしない、 物言わぬゴモラは、今は如何な夢を見ているのだろうか。 マリコルヌの方に視線を戻してみると、絶対的な命名決定権を握るルイズからの冷たい即答を受け、 軽く残念がっているのだが、そんな彼を煽るが如く、 そうそう、君にはセンスがないよ。とさらに横入りする、頬に真新しい火傷の痕を負ったギムリの姿がある。 キュルケはギムリをルイズ越しに目にすると、少しげんなりとした表情を見せた。 大方昨晩あたり、その火傷に繋がる、何かしらの関わり合いがあったのは間違いない。 センスがないだなんて、君に言われたくないぞと指差し反論するマリコルヌに、 少なくとも君よりも高貴な名を考える自信はあるね、と胸張って言う妙に自信ありげなギムリ。 2人のやり取りを封切りに、他の生徒達もゴモラの名称について各々語り始めた。 たとえその正体が地龍であると知らずとも、ゴモラの存在に憧れを抱く者は少なくなく、 その名付け親になれるのならばなってみたい、と衝動にかられたのかもしれない。 最初はほんの雑談程度だったのだが、次第に誰が名をつけるか、どんな名をつけるかの口論に発展した。 何故に使い主である私の意志は無視なのよ、と当然至極なルイズの主張をも掠れ消してしまう程に。 その議論は、ギトーの風魔法の授業が始まっても尚継続するほど白熱し、 授業中だぞ、厳粛にできんのか、と怒鳴るギトーを誰もが無視した、というか気づいていない。 痺れを切らしたギトーが、いい加減にしゃぁがれこの糞餓鬼どもが! と教師らしかぬ暴言を吐こうとした直前であった。 「グノーム」 囂然たる場をまるでサイレントの魔法の如く沈め、そしてギトーのモラル崩壊を未然に防いだのは、 それまでキュルケの隣で、普段通り淡々と本を読んでいたタバサである。 彼女の声は極めて小さく、鶴の一声と例えるのも怪しいものだったが、まさか想定外の参入に人目を引かせた。 何かしら魔法の呪文でも詠唱したのかと勘違いした者もいるが、 それは普段から勉学を疎かにしている証拠である。 実技の結果はともかく、毎日の勉強を欠かさないルイズは、すぐにタバサの放った言葉の意味を理解した。 「土の精?」 以前何かの本で読んだか、或いは1年生の時授業で学んだ覚えがある。 四系統魔法と呼ばれる、火、水、風、土には、それぞれ系統の名を冠とする精霊が存在する。 火の精はサラマンダー、水の精はウンディーネ。 風の精はシルフィード。そして、土の精はグノーム。 そう、タバサの使い魔の名シルフィードは、ここからの因由なのである。 蒼い体色で、空を自由に飛び回る韻竜(表沙汰では風竜)には秀逸な命名と言えよう。 妥当、いやこれは秀逸かもしれない、とルイズは断案に達した。 グノーム、であれば、後々雄か雌か判別した際に、それに沿った名前に変える必要も無い。 土の精という意味ならば、地龍への命名由来としては十二分である。 それに、ゴモちゃんやらマウンテンガリバーやらなんかよりも、よっぽど響きが良く、程よく短いし、 何よりタバサの使い魔と共通点のある名というのも気に入った。 他の生徒達も概ね納得したらしく、感嘆や反論の声が僅かに漏れるのを除き、教室内は治まりを見せる。 なんかよく解らんがこれで授業が再開できる、とギトーもタバサに心の中で感謝の意を表したのであった。 その後、ゴモラを嫌うシルフィードが「んな、なんじゃとてなのねぇぇぇぇ!?」 と悲観に打ちひしがれて叫んだのは、敢えて記するまでもない。 それ自体が、巨大な風石の塊であるという説がある。 始祖ブリミルの力が時節「ナンデモアリ」的な意味合いで取られる謂れの1つに、 その始祖の息子が作り上げたという、ここ浮遊大陸アルビオンが挙げられる場合が多い。 常に地上から3000メイルの位置にて、巨大な1つの大陸が浮かぶ光景は圧巻である。 そこでは、人々や動物達が、地上と然程変わらぬ生活を送っており、 高度3000メイルだからと、高山病の類、酸素欠病症等に苦悶する例は殆ど無い。 森林などの自然環境が調っているから、と言えるが、 その自然環境も何故、雲の上なぞで、地上と大差無しに成り立っているのだろうか。 それもまた、ブリミルの「ナンデモアリ」が干渉しているのかもしれないが、だとすれば、 本当に「ナンデモアリ」である。 そのアルビオンのサウスゴータ地方、何かを隠すのに適する程深い森に囲まれた、ウエストウッド村は、 住人の平均年齢が一桁という、端から‘活気ある村’を志していない、小さな村である。 しかし活気はなくとも元気は溢れており、常に笑い声が絶えないのがこの村の特徴で、 収入源の皆無による貧困の対策は、とある1人の女怪盗によって成されている。 村から10メイル程森の中を突き進んだ場所に、せいぜい雑草が生い茂る程度の、広場とも言える更地がある。 木々の中にぽかんと開いたその空間に、さらに場違いと言わざるを得ない異様な物体が、ずんと身を置いていた。 岩山である。 いや、岩山と記述するのも怪しい。 何故ならそれは、少なく見積っても3つの色彩が塗りたくられているからだ。 「悪い事は言わない。今すぐこの化物と、なんとかしてでも絶縁するんだよ」 カラフルなる岩山を見据えそう言う、緑色の髪を生やす麗人は、 数日前まではトリステイン学院に身を置いていた、ロングビルであった。 髪を下ろし、眼鏡を外したその姿は、身に纏う黒い衣類と相俟って、 御淑やかな学院長秘書とはかけ離れた雰囲気を醸し出している。 前述の1人の女怪盗とは彼女の事であるが、なるほどその目付きたるは、がめつい盗人に相応しくもある。 「縁を切れって、何を言い出すの? マチルダ姉さん。ティルは私達の大切な家族なのよ?」 ロングビルのすぐ隣に、これまた麗人と言わざるを得ない少女の姿がある。 その少女の特異点たるは、1つや2つ指摘するだけでは済まない。 まず長い耳は明らかに人間の備える類ではないく、それは彼女が混血なる身であるのを示している。 しかし長いブロンドヘアーは、宝石と見違えんばかりの鮮麗さを放ち、端正な顔立ちを際立たせている。 さらに胸部は布地からはみ出さんばかりに豊満でいて、 対照的にすらりとした細い肢体が、彼女の女性としての外見的魅力を、必要以上に見せつけている。 身に着る服は、肩と腋を惜しげなく露出させ(透明の衣は被っている)、腰を纏うスカート部分の両腰側面には、 大きな切れ目があるため、足の付け根に程近い肌白き太ももが、ありありと眼に飛び込んでくる。 その肌の魅せ具合は、健全なる青少年の海綿体を刺激為兼ねず、周りの目を気にしないからこその服装である。 彼女こそが、ロングビルがこのウエストウッド村に投資を重ねる起因である、ティファニアだ。 (因みにマチルダとは、ロングビルの本名であり、以降彼女の事はマチルダと記す。 何故マチルダは、身を呈してウエストウッド村に尽くしているかの経由は、またいずれに) 化け物、そして大切な家族とは、2人の目の前にある岩山であるらしい。 カラフルな岩山の正体は、竜であった。 以前、冬の終わりかけだったか、このウエストウッドに立ち寄った際、初めてマチルダはこの竜を目にした。 これまでティファニアは、魔法を扱えるながらも、使い魔を召喚する運びには至らなかったのだが、 「呼んで欲しい、と願われたから」というよく解らない理由で召喚していた巨大なドラゴンが、これだった。 当時は、こりゃまた面倒なものを呼び出しちまったねぇ、と飼育資金面に関しての懸念は抱いたが、 あくまでサイズの大きい、えらく長く眠る竜とだけ認識し、マチルダはそのまま学院へと戻った。 しかしその後、学院での召喚儀式によって出現したゴモラを目にするや、 ‘地龍の生き残り’という聞き捨てならない単語が脳裏を過り、もしやと思い‘地龍録’を読んでみた処、 あのサウスゴータの森で眠る竜と、瓜二つな地龍の解説項目を発見した時は、青ざめたものである。 「十数メイルもある大きな竜」ではなく、「十数メイルしかない小さな地龍」だったのだ。 直後にオスマンから、休暇の許可をすんなり得られたのは僥倖であった。 逸早くアルビオンへのフネに乗り、一息足りとも休む事無く、ついぞ先ほどティファニアと再会した次第だ。 紅い色の頭部から発せられる低音の唸りは、恐らく竜の鼾と考定される。 額にあたる個所が、角の様に前にのめり出す形で突起しており、 図太い首元には、まるで人工物の装甲ではないのかと見違えんばかりの、 段々に構造された硬い皮膚が覆われている。この皮膚が、3色の内の灰色をなしていた。 太い前脚と後ろ脚は、濃い青色に染め、所々に数は僅かだか小さな斑点も見られる。 大凡に見計らって、尻尾も合わせ大きさ15メイル弱程だろうか。学院のゴモラの半分以下である。 まだ成体にまでは成長し切っていないのか、さもなくば生まれて間もないのかもしれない。 しかし、1匹の生物の大きさとしては、やはり非常識であると評するに差当り支障は無い。 「いいかい? ティファニア。何故この古代の竜が、おまえに呼ばれたのかは解らない。 だけどね、このままじゃ碌な結果を生まないよ。 幸い、こいつはまだ夢の中。今の内にここから離れる支度をするんだ」 ハーフエルフと、絶滅したはずの地龍。嫌でも目立ってしまうこの組み合わせは、非常に芳しくない。 万が一にも使い魔の儀式が失敗していて、目覚めたと同時に暴れ狂ってしまえば、太刀打ちできる道理もあらず。 マチルダは、これまでの悪行もとい窃盗(それ自体はティファニアには伏せている)で得た資金で、 ウエストウッド村の子供達と共々、少しでもこの地龍から逃れようと算段していた。 今この瞬間にでも、巨大土ゴーレムを造り、ゴルザを不意打ちし葬ってやりたいが、 いくらなんでも妹や村の子供達の目前で、それを実行するには危険が伴う上良心も痛むし、 第一、戦闘能力が未知数の地龍を相手に、果たして自分の戦法が通じるのか、という不安要素もある。 一旦ここから身を離した後、この地龍の存在をアルビオンの政府だかアカデミーだかに匿名で知らせばいい。 危険な存在と看做され、軍に退治されるもよし、アカデミーの研究材料として捕獲されるもよし。 場合によっては、此処ウエストウッド村に戻ってこれなくなるかもしれないが、致し方なかろう。 新たなる安住の地を見つけるには、どれほどの時間を費やさねばならぬか、苦悶を余儀無くされない。 「聞いて姉さん、ティルは――」 そんな風に1人で悶々と、今後についての不安を胸に廻らせているマチルダに、 ティファニアが複雑そうな表情で、心境を伝えようとした、その瞬間。 岩山が、ピクリと動いた。 さらに、岩山から重い轟音が迸る。 それは鼾ではなく、その地龍が眠りから覚めた事を示す、欠伸の咆哮であった。 岩の様に固定されていた身体が縦に震え、地表が軋む音が、辺りに佇んでいた鳥や小動物の逃走を促した。 ゆっくりと上半身を持ち上げると、その岩のような身体の先端、紅い顔面から、2つの微光が放たれる。 その光の正体が眼球であるのが判った刹那、日光が思いの外刺激を与えたのか、すぐさま眼を閉じた。 そして、眼の下部がばっくりと穴開き、その穴から鋭い牙と長い舌を見せると同時に、 断続的な唸り声が放たられた。低く、重たい音程を轟かせるその唸りは、 大型の獣の咆哮、というよりも寧ろ男性の荒い鼾を彷彿とさせる。 眠りから自為的に目覚め、豪快な欠伸を無意識に披露している、その地龍。 「――ゴルザ!」 マチルダは再度、あの日『地龍録』で目にし記憶に刻んだ竜の名を反芻した。 忘れもしない、地龍「ゴルザ」。 立ち上がった事により、その外見の全貌が、より鮮明と肉眼で確認できる。 やはり、挿絵として描かれていたものと酷似しているし、第一「起立する竜」は、地龍以外に考えられない。 現在既存する殆どの竜は、余程の事態でも舞い降りない限り、 前脚は常時地面に付け、後ろ脚は屈折させ、爬虫類と同様4足で佇む。 求愛行動などに限り、2足で歩行する場合もあるらしいが、あくまで稀でしかない。 だが地龍は、太い後ろ脚をぴんと伸ばし、尻尾をぐでんと垂らして重心を調整することにより、 人間や猿が直立した体制と似た姿勢を、難なく常にとることを可能としている。 また、直立するにより、必然的に地面から離れる前脚は、もはや『腕』であると断言して良く、 その腕で大小様々な物を掴み、持ち上げる事ができるなど、竜としてはありえない動作をやってのける。 地龍の体の構造は、その種類によりけりだが、竜でありながら哺乳類と非常に似ているのだ (故か、そもそも地龍は実は竜族で無く、皮膚等が特異なだけの哺乳類なのでは、という極端説が存在する)。 長い欠伸を終えると同時に、ゴルザは瞼を再び開かせ、ぎょろりとした漆黒の眼をティファニア達に向けた。 まさか目覚めてしまうとは夢にも思わなかったマチルダは、血相を変え、咄嗟に杖を構えようとするが、 慌てて落してしまい、素早く拾おうと身を屈ませた寸前、ゴルザの鼻息が彼女の身を強張らせた。 マチルダにとって、その鼻息が醸す恐怖は、大砲による砲丸発射の爆音にも等しい。 杖に構うのは諦めた。先ずは、ティファニアの身を護らなければ……と、 マチルダは妹のいる方へ身を翻したが、そこに見えたティファニアの様子は、なんともはや落ち着いていた。 事の状況に驚愕としている面構えではないのは、見るに明らか。 どうやら、ゴルザが起床する現場に居合わせたのは、これが初めてではないらしい。 ティファニアは、おはようティル、と10メイル程上空にあるゴルザの顔を見上げながら、明るく声をかける。 そんな彼女と対照的に、マチルダは冷汗を垂らし、その場から1歩後退りした。 ゴルザ――基、ティルという名のそれは、見慣れない客人、マチルダを視野に入れると、 警戒心からか鋭い目つきで彼女を睨み、短く唸る。 思わず腰が抜けそうになったマチルダを、ティファニアは守る様に寄り付き、その姿勢でティルに一喝した。 「ティル! 駄目よ、この人はマチルダ姉さんよ! 前に話したでしょう!」 明らかに動揺した仕草を見せる、ティル。 鋭く光らせていた威嚇の目付きを、何度か瞬くことで緩んだ表情へと変え、 少しばかり気の弱く感じる唸り声を上げると、その巨体を数歩後退させた。 もう大丈夫よ、とティファニアがマチルダに言う。 一瞬の出来事に、マチルダの脳内が、数秒の合間真っ白な世界に染まったのも束の間、 ティファニアがこの地龍を、こうまで忠実に手懐けていた事に驚き、目を丸くした。 ゴモラがそうであるように、地龍は長期間床に伏せ、そうは起きない性質だと想定していたのだが、 このゴルザはとっくに長い眠りから覚めていた。 マチルダが地上で出稼ぎをしている合間、目覚めてしまった裂帛なる風貌を相手に、 名を付け従わせる情景を想像してみると、それに如何な勇気を注げなければならなかったか、考えるに難しくない。 ティファニアは、少なくともメンタルの部分では、マチルダの思っていた以上に逞しく成長していたのだ。 危ない喰われる近づくな、と警告するだけ無駄な気配りであろう。 しかし『地龍録』によると、ゴルザの生態的特徴は、火山地帯を住処とし、 地龍の中でも随一に好戦的で凶暴な性質だった、とある。 一説によれば、溶岩を好んで食し、栄養源に変換してしまうという、 地龍においてもかなりの常識はずれな特殊種生物であるらしいが、果たして、本当なのだろうか? ティファニアの説教に大人しく耳を傾けている姿からは、凶暴性に関してはその名残すらも喪失している。 寧ろ滑稽さすら感じたが、火山生息で溶岩摂取を可能とする生物と同一のものとは到底思えない。 火山の、それもサラマンダーすらめったに近寄らない、溶岩を容易に口にできる程の灼熱地帯となると、 ウエストウッドの森のような緑が鬱葱と青茂る森林との環境の差は、そこに生息する生物の生態を及ぼす。 簡単且極端に例えるなら、人間は海中で呼吸できないし、魚も地上での鰓呼吸は不可能。のようなものだ。 二酸化炭素を吸収した植物達が放つ酸素濃度が、召喚されたゴルザの物質代謝に、 多かれ少なかれの悪影響を及しているとは考えられないだろうか。 百歩譲って、森の中でも生息できる理由は高い適応能力を備えているからだとしても、 ティルと名付けられたこのゴルザは、ここで何を食べているのだろうか? 森で採れる食物が、溶岩を喰らう奇想天外龍の口に合うの否かは甚だ疑わしい。 若しくはこの個体が、ゴルザそのものでなく、ゴルザと外見酷似した亜種目である可能性もありうる。 そうであってくれれば、草食であったり小食だとしても、さして疑問を抱く面倒も回避できるのだが。 ふとその時、幼い、奇声ともとれる荒ただしい声が、村から聞こえたかと思うと、 小さな影が続々とマチルダ達のいる元へ集まってきた。 それは、ティルの欠伸の咆哮を聞いて、そら起きたぞとばかりに駆け付けた子供達の姿だった。 禍々しい地龍の風貌に臆しもせず、その脚部に豪快に飛びつくと、純粋無垢なる楽しげな声を挙げ、 まるで父親だかに甘えるかのように、じゃれ惚けている。 当のティルは、さも関心を示していないかの様な、感情の読み取れない双眸で眼下を見据えてるが、 うっかり踏みつぶしてしまわないようにか足を微動だにさせない辺り、子供達を考慮しているのが窺えた。 この日何度目かの「呆気に取られている」のはマチルダである。 子供達との仲もここまで進展し、直に触れ合うとは、 俄かに信じがたい光景だが、トリステイン学院でのゴモラの人気ぶりを思い出してみると、 さりとて違和感は覚えなかった、と自分に言い聞かせたい処だが、 すぐにこの状況を受け入れるのには、やはり無理があった。 この地龍の生き残りが危険極まりないのに変わりはない。 確かによく懐いているかもしれないが、その巨体を地表に晒すだけで、 巡邏中のアルビオン竜騎兵だかに発見されてしまう可能性は大いにある。 そうなってしまうと、今まで大切に守り続けてきたこの村の秩序が崩壊するのは、瞬く間であろう。 何よりハーフエルフであるティファニアが、世間に知られた挙句忌み嫌われ、虐げられるのを一番恐れていた。 だがそのティファニア曰く、今日はたまたま地上で昼寝をしていただけで、 普段は地面に浅く身を潜らせており、大人しくしているという。 何より、この森の木々が姿を晦ましてくれるから、絶対に見つからない、とも。 「お願い姉さん、私達はちゃんとやっていけている。だから、ティルを屠るだなんて、言わないで」 マチルダの肩をぎゅっと掴んで訴えるその瞳は、いつの間にか潤んでいた。 こうまで感情移入されると、「いいえ」とは即答できない。 それに彼女達の絆は、たかが怪盗如きが盗めやしない程に、既に固く結ばれていたようだ。 「……あぁ、わかった。誰にもゴルザ……ティルのことは言出しないよ。だから、泣くのはおよし」 我が意思を捻じ曲げない、そんな妹の屈強な精神に、ついにマチルダは折れた。 金色の長髪に手を触れ、優しく告げると、彼女も内心で決意した。 こうなれば、どんな運命にだって一緒に立ち向かってやろう。何も今に始まったことではない、と。 やや興奮していたが、落着きを取り戻したティファニアは、持ってくる物があると言い、1人村へと戻った。 マチルダは、これまでの緊張を解し、ティルの足元に群がる子供達の姿を見た後、先程落とした杖を広う。 そして、地表から約10メイルにある、ティルの顔を恐る恐る見上げてみる。 眼が合ったが、その眼光から悟れるは、先の威勢は去勢し、マチルダを味方として迎え受ける感情だった。 素直に喜んでいいんだか、少し複雑な気分になったマチルダは、暫く空虚に立ち尽くしていると、 背後でティファニアの呼ぶ声が聞こえた。 いつの間にかその手には、何やら赤い果実が詰められた籠が抱えられている。 ティルとのアイコンタクトを試みている間に、取りに戻った物とはこれであるらしい。 今朝摘んだばかりの新鮮な木イチゴを、おやつに食べようとのこと。 そう言えば、昨日から不安の余り、何も口にしなかったのを思い出したマチルダは、 途端に湧いて出てきた食欲を抑えきれず、座るのに頃合いな岩を見つけると、そこに座る。 隣に腰を下ろしたティファニアが、愛くるしい笑顔で先程の籠を差し出した。 好意を受け、マチルダは籠に山盛りにされた木イチゴを1粒掴み、口に入れる。 小さな果肉を噛むごとに、甘酸っぱい香りが口内に広がり、鼻孔にも酸味が伝わった。 久し振りに食べた、懐かしい味に余韻に浸っているさ最中、 子供達の内の1人、エマが、ひょこひょことマチルダ達の元へ近寄った。 するとエマは、ティファニアに許容を得てから、籠から木イチゴを1粒手にする。 それを頬張るのかと思いきや 「いっくよー、ティル!」 と、後ろに振り向き、ティルの口元目掛け、思い切り木イチゴを放り投げた。 しかし、年端もいかない女の子が放った弾道は頼りなく、 大して高く上がらないまま、落下の一途を辿ろうとしていた。 その時だった、立ち尽くしたままで1歩たりとも動かなかったティルが、 顎を大きく開き、上半身を素早く前のめりにさせたかと思うや否や、その木イチゴをパクリと口に入れたのは。 人間と同じような味覚器官を備えているのかも疑わしい地龍だが、木イチゴなぞ口に合うのだろうか。 吐き出す行為は見て取られない処を見ると、少なくとも毒になりはしない様だ。 それどころか、再び口を開き低く短く唸った。2つめをねだっているのか? きゃっきゃと笑うエマを撫でるティファニアが、 「姉さん、仲直りの印に」 と、木イチゴをマチルダに渡す。 仲直り? それはつまり、こう、木イチゴを、ゴルザあいやティルの口元に投げてやれということか? マチルダは、ままよ、と果実を放る。さすがにエマが投げたのと比べて、真っ直ぐ正確に飛んだ木イチゴを、 ティルは難なくとらえ、咀嚼を開始した。 やったぁ、と笑うエマが、マチルダに対しガッツポーズを示している。 気づいた時、マチルダも心の底から、声に出して朗らかに笑っていた。 これだけ笑ったのは、何時だかぶりだろうか。 笑い合うマチルダとエマに自然とつられたか、ティファニアも眼福たる笑顔を振舞う。 よくよく鑑みてみれば、ティファニアや子供達の笑顔に、以前よりも純粋さが増した気がしないでもない。 威嚇や警戒の意思が感じられない、呑気な呻きを鳴らしている新しい家族、ティルが、 この笑顔を齎しているのだとしたら、自分が勝手に遂行しようとした事は、愚行だったのかもしれない。 しばしマチルダは、この穏やかなひと時を、大切な人々と1匹の地龍と共に噛み締めることにした。 前ページ次ページ眠りの地龍
https://w.atwiki.jp/bastard/pages/218.html
第一章 忘却の浜辺|竜船|要石の洞窟|小島|地龍神殿|小峡谷|秘された抜け道|大峡谷|風穴洞|風哭きの谷間|人造湖|風神塔|送電線|雷神塔|雷神塔地下|地龍の寝所|霊岩洞|泡角洞|夢角洞|影角洞|幻角洞|露角洞|電角洞|自走砦|天守閣| 第二章 第三章 第四章 第五章 クリア後 地龍の寝所 イベント 宝箱 回復球 扉 鍵が掛かっている扉 魔力で封印されている扉 階層移動(上) 階層移動(下) 転送機 強制エンカウント マップ|宝箱|出現敵 マップ ()をクリックで別ウインドウ表示 上へ 宝箱 No. 名称 No. 名称 1 エペ 2 ジュエルドブレスト 上へ 出現敵 名前 LV STR 攻撃力 攻撃回数 属性 魔法・技 特殊状態 特殊状態(無効) 経験値 ドロップアイテム HP INT 命中 AGI 防御力 MP LUC 副武器 名称 数量 率 COL ソルジャーホーネット LV8 43 66 1 無 毒針 浮遊 192 毒消し草 1 40 94 32 70 薬草 1 25 48 68 37 8 (ショートソード) 0 0 0 0 0 0 65 ポイゾンリーチ LV7 42 66 1 無 毒牙 192 カミルレハーブ 1 10 90 31 70 47 68 34 7 (ショートソード) 0 0 0 0 0 0 65 ファンガスヒーラー LV9 46 65 1 無 ヒール1 192 魔法草 1 42 104 36 70 49 62 41 9 (カットラス) 0 0 0 0 0 0 65 クリティカルニードル LV9 44 65 1 無 毒針 192 毒消し草 1 20 104 33 70 ソーマ 1 12 49 70 41 9 (カットラス) 0 0 0 0 0 0 65 上へ
https://w.atwiki.jp/magamorg/pages/7690.html
ガンガルタの地龍ジューラシア レア 自然 6 6000 アース・ドラゴン/ガイア・コマンド/エルドラード ■自分のターンに多色ではないクリーチャーを1体、マナゾーンから召喚してもよい。 ■W・ブレイカー (F)「世界とはなんと素晴らしいのだろう!」――テルセイア 作者:まじまん 収録 「王金編 第3弾 栄光の終焉(フィナーレ・オブ・エルドラード)」 評価 名前 コメント