約 7,635 件
https://w.atwiki.jp/testest-umigamedb/pages/3610.html
2023年9月9日 出題者:耳 タイトル:「母をたずねて三千里」 【問題】 マルコは母を探し、母もマルコを探した。 結局会えた形跡はないのだが、特に誰も心配していない。 どういう状況? 【解説】 + ... 待ち合わせしていた円子(まるこ)と母のLINEのやりとり。 「マルコどこにいるの?」 「ごめん道に迷った、今どこ?」 「駅前です」 「え、私も駅前まで来た」 「駅のどこ?」 「マクドの横」 …というやりとりをしている間にお互いを見つけたので、 メッセージはこれで途切れている。 メッセージだけを見た限りでは、会えた形跡はない。 しかし実際には会えたので、何の心配もいらないのだ。 配信日に戻る 前の問題 次の問題
https://w.atwiki.jp/aizufudoki/pages/697.html
陸奥国 河沼郡 坂下組 坂下(はんけ)村 大日本地誌大系第33巻 118コマ目 この村みな高寺の坂下にありし故(ゆえ)名けしという。塔寺八幡宮天喜5年(1057年)の神役目録に番下村に作れり。何れの頃より今の文字を用いしにや。長帳(当寺八幡宮所蔵)に文禄の頃(1593年~1596年)には既に坂下の字を記せり。また下茅津村肝煎の家に蔵むる慶長6年(1601年)の文書にも坂下御蔵とあり。文禄4年(1595年)10月27日この村火災ありし後栗村と合せて1村とせしこと長帳にあり。栗村もまた古より有りし村にて天喜5年6月3日祭禮を務めし事また神役目録に見ゆ。 蒲生氏の時寛永2年(1625年)村南の地に町割し。 毎月6度の市日を定む。今もなお49の日を以てこの村の市日をし、遠近より群集し諸物を交易す。毎年正月14日を初市とて、この村の農民15より65歳までを限り上下2組に分し米俵を争い勝負に随ひ米価の高下を定る事あり。これはこの国の旧俗にて府下大町より以下処々にあれども、この地の壮観に比するものなければ来見るもの尤多し。 府城の西北に当り行程3里。 家数399軒、東西10町50間・南北2町16間。 東より西に通り北に折れ越後街道を挟み両頬に連なれり。 東の入口を上町(うはまち)といい、次を中町(なかまち)、次を下町(したまち)という。北に折れたるを新丁(しんちやう)といい、中町より北に通るを茶屋町(ちややまち)という(この町の北端米倉の地に蒲生氏の時別墅(べっしょ)あり貞享の頃(1684年~1688年)まで茶屋残れり)。 四方田圃(たんぼ)にて北に宮川あり。 越後街道駅所にて府下よりここに継ぎ、21町40間牛沢組塔寺村駅継ぐ。その間に1里塚あり。また村中に越後より下野に通る街道あり。2里32町40間大沼郡高田組高田村駅に継ぐ。 村中に本陣を置き、官より令せらるる掟条目の制札あり。 東は古坂下村と連なれり。 西5町48間牛沢組杉村の界に至る。その村まで11町。 南4町22間原村の界に至る。その村まで8町余。 北4町34間和泉河原新田村の界ひ宮川を限りとす。その村まで8町30間余。 また 子丑(北~北北東の間)の方4町34間中政所村に界ひ宮川を限りとす。その村まで10町40間余。 辰(東南東)の方5町24間葉林村の界に至る。その村まで8町。 申(西南西)の方6町6間牛沢組蛭川村の界に至る。その村まで10町30間。 戌(西北西)の方9町1間塔寺村の界に至る。その村まで12町40間余。 亥(北北西)の方5町57間青津組新舘村の界に至る。その村まで12町40間余。 山川 宮川(みやかわ)(鶴沼川(つるぬまかわ)) 俗に鶴沼川という。下同。 村東5町にあり。 葉林村の界より来り、古坂下村の地を過ぎ6町40間北に流れ西に転じ15町50間流れ新舘村の界に入る。 土産 烟草 諸村の烟草を買集め江戸諸方に売出す。坂下烟草と称する者これなり。 関梁 船渡場 村東にあり。 宮川を渡す。越後街道なり。冬月は土橋を架す。 昔この所を西明寺渡という。 享禄4年(1531年)3月1日蛇出て1日1夜下流水流れさりしこと長帳に見ゆ。 水利 栗村堰(くりむらせき) 原村の方より来り田地の養水とし塔寺村の方に注ぐ。 昔この村の地頭栗村下総という者領地水利に乏を患て稲荷社に参籠し7日7夜祈願しければ或夜不思議の示験を蒙り、やがて渠を穿ち元亀元年(1570年)にその功を畢しとぞ。その時栗村が家の子笠間平大夫という者その事に任せしとて子孫今に堰守という者を務む。 郡署 代官所 中町にあり。 役人を置き坂下・牛沢両組を支配せしむ。 会津郡中荒井組中荒井村郡役所に属す。 神社 諏訪神社 祭神 諏訪神? 勧請 不明 下町にあり。 もと村北にあり。寛永8年(1631年)ここに遷せりという。 祭禮は7月27日。 鳥居幣殿拝殿あり。 別当 一傳院 本山派の修験なり。 開山を宥仙という。 寛文の頃(1661年~1673年)牛沢組中茅津村より移れり。 現住宥眠まで5代なりという。 稲荷神社 祭神 稲荷神? 相殿 伊勢宮 三島神 鬼渡神 高木神 中地神 明神 権現 2座 鎮座 不明 村西4町、小高き所にあり。 鳥居あり。原村山田伊勢が司なり。 村民この地を杵森(きねがもり)という。 相伝ふ。義家朝臣この辺に宿陣ありし時農民糧米を舂(つい)て供しけるが、その後杵臼と米とを各1所に埋めしと。その東1町計を隔て田畝の中に米森とて小さき壇あり(森は新舘村の境内にあり)。 寺院 法界寺 上町にあり。 山郷を虚空山という。慶長元年(1596年)宗悦という僧創建せり。 曹洞宗会津郡南青木組天寧村天寧寺の末山なり。 本尊観音客殿に安ず。 弁天堂 境内にあり。 光明寺 中町にあり。 正覺山と號す。浄土宗府下五之町高巖寺の末山なり。開基詳ならず。 もとは光明院と称す。天正3年(1575年)岌岸という僧住して院を改めて寺とすという。 弥陀を本尊とし客殿に安ず。聖徳太子の刻む所という。 門上に鐘を懸く。径2尺5寸、『正徳三巳年六月廿一日當寺貳拾世縁蓮社法譽上人祖残代大願主五十嵐甚左衛門』と彫付けあり(正徳3年:1713年)。 十王堂 境内にあり。 光照寺 茶屋町にあり。 寛永元年(1624年)純覺という僧開基せり。 浄土宗京師東本願寺の末寺なり。 本尊弥陀客殿に安ず。 貴徳寺 茶屋町にあり。 浄土宗、山號を長光山という。また高巖寺の末山なり。 創立の時代伝わらず。 天文14年(1545年)岌延という僧住せりという。 本尊弥陀客殿に安ず。立像長2尺5寸。 脇立観音勢至、長2尺1寸。 共に定朝が作という。 鐘楼にかくる所の鐘径2尺5寸、『享保改元丙申孟秋十七日廿世最譽上人演廓代願主氣多宮村平野與治右衛門』と彫付けあり(享保元年:1716年)。銘あれども煩しければ禄せず。 観音堂 境内にあり。 定林寺 下町にあり。 益葉山と號す。曹洞宗耶麻郡五目組熱塩村示現寺の末山なり。 何れの時の開基にか詳ならず。 天文21年(1552年)宗銀という僧住してより示現寺に属すという。 観音を本尊とし客殿に安ず。長2尺2寸。伝言ふ、定朝が刻める所にして高寺より移せりと。 鐘楼に鐘を懸く。径2尺5寸、『延寶三午年三月願主住持能外益藝代』と彫付けあり(延寶3年乙卯:1675年)。 地蔵堂 境内にあり。 般若堂 同上。 祖師堂 同上。 稲荷神社 同上。俗に栗村稲荷と称す。 熊野宮 同上。 寶物 古文書 1通。その文如左(※略)。 古蹟 館跡 下町定林寺の辺民居の地をいう。 今は土居堀の形もなし。 元亀天正(1570年~1593年)の間栗村上総(諱を失う。舊事雑考に天正7年(1579年)12月28日栗村死すというはこの人の事といえば同12年(1584年)松本太郎に与力せし者とは別人なるべし)住せし跡という。 Google Map旧坂下組代官所跡(坂下中央公園内) 諏訪神社/粟村稲荷神社 杵森稲荷神社 杵ガ森古墳(稲荷塚公園) 法界寺 光明寺/小滝稲荷神社 真宗大谷派 光照寺 貴徳寺 定林寺 大山稲荷神社 日月神社 惣六稲荷神社 栗村館(陸奥の城)
https://w.atwiki.jp/sexyvoice/pages/454.html
「ロボ、起きてるー?」 土曜の11時。玄関のガラス扉を揺らして、一応外から声をかける。 「お母さんから煮物……」 いつもはどーせ寝てるし鍵も開いてるしで、勝手に入ってタッパーだけ玄関先に 置いていったり。リモコン握ったままTVの前で寝てる時には、け飛ばして起こしたり するんだけど。 「おはよう~」 と出てきたロボは、スーツ姿で歯を磨いていた。 「いつも悪いなぁ、月末は助かるよー」 「味付けはロボの方が上手だけどね」 「こら! そんな口きいちゃイケマセン」 「へーい」 愛と正義と、行儀にも結構うるさいロボに生返事しながら、冷蔵庫にタッパーを しまう。流し脇には朝食の食器が片付いていた。 休日出勤?という問いには、みたいなもん、と応えたくせに、嫌そうじゃない。 見覚えのない派手めのネクタイを締めながら、ちらちらと、こっちを見てる。 ……おニューを褒めてほしいとか? その割に、悪い事した子供みたい。 変なの。まあ、ロボはいつも変だけどさ。 地蔵堂閉店から3年。 高校生のあたしとロボは、また出会って「友達」を続けている。 流石にもう、男の一人暮らしの部屋で昼寝をするほど子供じゃなくて、 昔の自分を思い出して赤面することがある。 そんなガキを笑って許していたロボは、大人だったんだなと思ったり。 目の前のロボは相変わらずなんだけどね。 「ねー、お仕事終わったら一緒に」 そう言ったところで、ロボの携帯に着信が入った。返答の様子だと誰か偉い……会社の人? ロボは片手で『ゴメン』のポーズをすると、お辞儀をしながら部屋の奥に行ってしまった。 そんなロボは知らない人みたいだ。 TVでも見ようっと振り向いた拍子に、つまづいた営業カバンから出てきたのは…… お見合い写真だった。 走って、ただ走って、赤の信号にひっかかってやっと止まった。 帰るねとも言わずに出てきた。 お見合い写真、本物って初めて見た。演歌歌手みたいな着物の、でもきれいな人。 さぞ鼻の下のばして承知したんだろうな。 「ロボのくせに!」 隣の人がぎょっと振り返る。しまった、声に出ちゃってるよ。 ちょうど青になった信号をそそくさと渡りながら、やっぱり波だった気持ちは収まらなかった。 戻ってちゃんと問いただしてみようかな、でももう出てるかも。美女と会いに。 ウィンドウにしかめっ面の自分が映る。 一海ちゃんとさえ比べなかったら、お年頃になったあたしは結構イケてるのに ロボには相変わらず子供扱いされて、相変わらず「お友達」のままだ。 だから、恋人が出来たんなら応援できる。 でも、お見合いだなんてさ。 「結局一緒じゃん、テレクラと!」 今度は口の中だけでつぶやくと、足はなんとなく繁華街に向かった。 ロボなんかミアイでもプロポーズでもしてたらいいんだ。 「じゃねー、サンキュー」 送ってくれた車に手を振ると、夜道を家に向かう路地に入る。そこまではごきげんだったのに、 思わぬ人影に出迎えられて酔いが一気に醒めてしまった。 「遅いよー、ニコ」 「ロボ! 何してんの!?」 昼前と同じスーツ姿のロボは、いつものカバンを抱えていた。 そういえば着信あったけど無視してたっけ。 「……さっきの車、誰?」 「誰でもいーじゃん」 口答えに突然、顔を寄せられて固まると、くん、と匂いを嗅がれただけだった。 「未成年に酒呑ますような奴」 「二十歳だって言ったモン」 「えー、見えないだろうー」 「見えるよ!ロボだけだよ、子供扱いするの!」 ロボのあひる口が、何かいいたげにとんがった。 そうだよ。街で声かけて来る人は、大学生?可愛いねってちやほやしてくれる。 どっかのバカだけじゃない、11時には寝なさいって言うの。 ちょっと離れて向き合ったまま、沈黙。 「だから、用事はなんなのよ」 「し、したでしょー? 落書き!」 バレた。見合い写真の美人に猫のヒゲ。猫系の顔で似合ってたんだよね。 「ふーんだ。大事ならちゃんとしまっといてよ。 で、どうだったのお見合い!」 さぞ鼻の下が伸びるかと思ったのに。 「……行ってない。ていうかしないよ、見合いなんて」 「えー? なんで? 美味しいもの食べて”若者同士あちらで”話せばいいじゃん?」 おぼろげなイメージで応えると、ロボの眉間にしわがよった。普段がふにゃけているだけに、 そんな時のロボは怖く見える。 「会って、話してからどう断るの。貴女じゃダメですって? 失礼でしょ」 「そういうもんなのー?」 「そう。で、特に文句なかったら、婚約だからね」 「えー?」 相変わらず不機嫌な顔のロボは、盛大にため息をついて 「そーんなことも知らないんだ」 と、言ったきり足下の砂利を蹴ってまた黙り込んだ。 当たり前じゃん!ぴちぴちの10代には関係ないもん!! でも、悪態をつくにはロボが険しすぎて、あたしも黙り込んだまま時間が過ぎる。怒るなら、 さっさと怒ってくれたらいいのに。 「……とにかくさ、断ろうと思って。今日は写真を返しに行ったんだ」 ホッとしたのは、沈黙が破られたせい。多分。 「なのに部長が広げたら、猫のヒゲでさ」 「あ、怒られちゃった?? ゴメンねー」 必殺!上目遣いの一番カワイイ顔で誤魔化そうとしたのに不発。 「怒られるとかじゃなくてさぁ。 お断りする時には返すんだよ、こういう写真は。また他の人に回すから」 「ふーん。 え?」 「なのに落書きって。一体どーいうつもりかなって」 「え、まさかロボ、返せないと、お見合いで、婚約なのー??」 あたしの落書きのせいでー?? 「……しちゃってもいい?」 「だ、駄目に決まってるじゃん!そんな理由でー」 「じゃあ何。ヤキモチ、妬いた?」 「バ」 ばっかじゃない、と威勢良く言い返したかったのに図星だったから。探るようなロボのまなざしの前で みっともなく言いよどむ事になった。 と、何軒か先の我が家の玄関に灯がともって『ニコなのー?』と母が顔を出した。 ロボが腰を折って会釈する。途端に笑顔になったロボ贔屓の母は、会釈を返してひっこんでしまった。 帰れって呼んで欲しかったよ。 「う、うちの両親も見合いだったのに隠してるの。恋愛結婚でしたーって」 とりあえず話を変えてみる。 「ふーん、出会いはなんでもいいと思うけど。俺達が最初テレクラで知り合ったのも、やっぱり 内緒にしなきゃかなぁ」 はぁ?内緒って誰に?? 見上げたロボはいつのまにか、いつものふにゃっとした笑顔だった。 「部長がさ、落書きの件、先方に謝ってくれる代わりに仲人させろって言うんだよ。 俺とヤキモチ妬きの…」 ロボの指がなんとあたしに向いて 「…『彼女』の結婚式で」 ぴん、とおでこを弾いた。 口がぱくぱく開くだけで言葉が出ない。ケ?ケッコン?? 「そんなの、もーっと先の話だと思ってたのにさ、 ニコは勝手に二十歳になっちゃって、誰かと酒呑んで帰ってくるし。焦るじゃないか」 何、この突然の流れ。 「あ、あたし帰るっ」 「ダ~メ。俺が呑ませたと思われるでしょ~。醒めるまで、明日の話でもしようよ、どっか行く?」 腕を掴むな! …と、ポケットの携帯にメールが届いた。 見れば?という仕草に促されると、 案の定さっきの人からで、楽しかったね、明日も会えるかなって。 うん、楽しかった。 ヒマだったら明日も会っても良かった。 でも、真ん前に立ちふさがるロボが、あたしの選択を待っている様なのよ。 腰に両手を当てて、胸はってクビをかしげて、そいつと俺とどっちにするのかって。 結構自信ありげでむかつく。 「も、もしかして、この人が運命の人で、明日の誘い断って、もう2度と 会えなかったらどうしてくれる?」 「そーゆーのは、運命の人って言わなくない?」 俺達は会えたじゃん。照れもせずにそういうと、ロボはお得意のポーズで決めてくれた。 ああ、こんなやつがあたしの? <運命の人? 終わり>
https://w.atwiki.jp/sexyvoice/pages/476.html
「よっちゃあん……」 海外で優雅な隠居生活を営む真境名から引き継ぎ、新装開店した地蔵堂。 その店の入り口に女の子が立っている。 「あれぇ。さっちゃんじゃない。どうしたの?」 「あ、あのね、よっちゃ……うぇっ、うぇ……ふぇぇぇん!」 「あああ、泣かないで!よしよし、お菓子あげるからこっちにお座り。(ボソッ)……ったく、ニコのやつは 何してやがんだ」 「あのねぇ、ママはきょうからおじいちゃんちにすむからって……だからさっちゃん、にげてきちゃった」 「え!?あ、ああそうなんだ(やばっ、聞こえてやんの……さすがニコの娘)はい、ジュースだぞー」 「ありがとー。ねえ、どうしたらなかなおりできるのかなぁ?パパとママがなかよくしないとあかちゃん こないんだって。さちこ、おとうとがほしいんだぁ」 「そうなの!?(仲良くか……確かに)うーん。そうだなぁ、ようし、耳貸してごらん」 中年男と可憐な幼女が何やら密談を交わしていると、息を切らして駆け込んで来る者があった。 「……もう、やっぱりいた!こら幸子、勝手に居なくなっちゃ危ないでしょ!?」 「おお、ニコか。お前こそ何してんだよ。あんまり叱っちゃ可哀想だろうが!なーさっちゃん」 「よっちゃんは黙ってて!今日という今日は絶対許せないんだから!!なによロボのやつ……」 「またかよ」 やれやれ、と首を竦めて『ニコ』と呼ばれた『さっちゃん』の若いママを宥め席を勧める。 * * * 「よっちゃん!ニコ達来なかった!?」 親子連れが去って暫くの時間が経った後の事だった。店内にいた客は、その形相におののいて慌てて逃げた。 「あっ、ちょっとお客さ……おいロボてめぇ!」 「うあぁぁぁ~だってだってさぁ、聞いてよよっちゃん」 「知ってるよ。嫁と娘に逃げられたんだろ?」 「逃げ……知ってんなら止めてよ!友達でしょお!?」 「知るか。夫婦喧嘩に付き合う程暇じゃねえよばか……いらっしゃいませー」 とぼとぼとヨレヨレになったスーツで立ち去る男の後ろ姿に 「しゃあねぇ奴らだなあ……あーあ、あんなにやつれて」 髭を撫でつつため息をつくのだった。 * * * 「幸子、勝手に電話おもちゃにしちゃだめ!」 「もう二湖。さっちゃんに当たる事ないじゃない……いいのよ、こっちいらっしゃい」 子機を手にした状態で固まったまま涙を浮かべている孫娘を抱き寄せながら、目の前で苛々ともやしの ヒゲ取りをする娘を母の雪江が宥めている。 「だってぇ……悪いのはロボだもん。会社の人に勝手にお金貸しちゃってさ。あたしに何の相談も無しだよ!?」 「けどあれだろ?その相手って、銀行で下ろした給料みんな落としたって……」 「だからってうちの分勝手に渡さなくていいじゃん!全部だよ?全部!!……もうお父さんは黙っててよ!!」 八つ当たりされた父竹男はしょんぼりと隣室へ逃げる。 「……っとに、ロボなんかに頼まないで自分で銀行行けば良かったなー。今月どうしろってのよ」 「何とかなるわよ、そんなの」 幸子を膝から下ろした雪江は、ニコの手元のもやしをつまんで同じくヒゲ取りを始めながら言った。 「何とかって……」 「ご飯はうちに来てもいいし、まぁ他の生活費も……あんた達のひと月ぶん位ならどうにかなるから。 またゆっくり返してちょうだい」 「いや、そういう問題じゃないから。うちだってキツキツなのにさー、それも勝手にって……バカにも 程があるよ」 「でもその人困ってたんでしょう?」 はた、と手を止めて雪江を見る。弛んだ手からもやしがザルの外に落ちた。 「そういう人を黙って見とく事が出来ないんでしょうあの人は。そんな人が、二湖は好きになったんでしょう?」 無言のまま俯いて、人の好いあの崩れた笑顔を思い出す。 自分が呼べば応えてくれた。 臆病者のくせして、危険な時でも助けに来ててくれた。 何よりも自分を――自分達を愛してくれる。そう、お金よりも大切に。 普通の人なら綺麗事にしか聞こえないそんな言葉が、信じる事が簡単にできる。 そう、ロボの言う事ならば。 「お母さん」 「なあに?」 「昔、お父さんが内緒で50万人に貸しちゃった事あったじゃない?おまけに借金まで……。なのに、 それ許せた?ずーっと一生これからも信じて一緒にいられるって思えた?」 「いるじゃない一緒に」 「まあ、そうなんだけど……」 「……そりゃあねえ、腹が立ったし離婚だって考えはしたわよ?けど、それがお父さんのいい所だし。 人に優しく出来ない人は、自分にも優しく出来ないと思うのよ。だから甘いと言えば甘いんだけど、 強いと言えば強いのよねぇ」 「……」 ニコはちらりと襖の陰から覗く竹男の肩と幸子の体に目をやり、また雪江に戻す。 「お母さん、お父さんが信じるなら一緒に信じてみようかなって。別々の方向いて歩いたってつまんない じゃない?どうせなら一緒に歩きたい。だってせっかく夫婦になったんだもん」 ニコの落としたもやしをひょいと拾ってザルに戻しながら、照れ臭そうに笑う。そんな雪江の姿に 思わず強張っていた頬も弛んだ。 「お母さんって、お父さんが好きなんだ?」 「まっ……やあね!もうっ。親をからかうんじゃないわよ」 恥ずかしそうに手をばたばたしながら笑う母を、ニコは少し羨ましく思う。 「……帰ろかな」 椅子を引き立ち上がった、が 「さっちゃん、子機持ったまま寝ちゃったぞ?」 「えぇ!?困ったなぁー」 と眉をひそめた。 「いいよ、置いてけ。明日にでも迎えに来なさい。……二人でな」 「お父さん……」 「たまには夫婦水入らずもいいもんだぞ?……おっと、トイレトイレ」 パタパタと部屋を出て行く背中を見送りながら、雪江とニコは顔を見合わせて笑う。 「もうお父さんたら。さ、あんたは帰りなさい。もし泣いたら連絡するから」 「……うん、ありがと」 玄関の扉が閉まり、雪江が幸子に毛布を掛け、夕飯の支度をしに流しに立つ。 ――襖の向こうにある小さな丸い背中がぴくりと動いた。 * * * 「はあぁ~……ダメだ、帰って来ないか。やっぱり迎えに行くしかないかなぁ。でも許してくれない だろうな~。なあマックス、お前ならどうする?」 『そんな事言われても』という顔に見えたかどうかは定かではないが、青い体を手の中に見下ろしながら、 物言わぬ仲間に救いを求める。と、大音量で鳴り響いた携帯を物凄い速さで掴んだ。 「も……もしもしっ!ニコっ?」 『あの……ロボ、あたしが悪かったわ。言い過ぎちゃってごめんなさい』 「……いいよ。黙って勝手な事した俺が悪いんだ。ごめんね」 『今から帰るわ』 「じゃあ迎えに……もしもし?あれっ」 ロボが話し終える前に電話は切れてしまった。 「えっと、あ、とにかく行かなきゃ」 慌てて出ようとして自分の格好に気が付き、ステテコパジャマの上からせっせとシャツとズボンを 身に着けようとしていると、玄関のドアががちゃりと開いた。 「ただいま……何してんの」 「あ、お、おかえり。えっと、あ、もういいやこれ」 でぇい!と服を脱ぎ捨て、再びステテコパジャマでニコに駆け寄り抱きしめる。 「ニコぉ~!」 「あ、あのね、さっきそこでロボの会社の人に会ってこれ預かったの。うちに帰ったら鞄の底からお金の 封筒出て来たんだって。だからこれ返しに来てくれたみたい」 今月分の給料の入った封筒をニコから受け取ると、中身を確認し、再び抱きしめる。 「ロボが助けてあげた事、本当に喜んでた。……ごめんね、きつい事言って。あたし、ロボのそういう 所好きになったはずだったのに。ちゃんと話し聞いてあげたら良かった。家族なのに……」 「……ううん、こんな大事な事ニコに何の相談もしなかった俺も悪いんだよ。それこそ家族なのに……。 一家の主の自覚が足りなかったよ。よっちゃんにも怒られちゃった。ごめんね」 二人して何度もごめんなさいを繰り返したあと、目を合わせてぷっと吹き出した。 そのままどちらからともなく目を閉じると、静かにキスを交わした。 ぐうぅ~~~~。 「……」 「……」 「ロボ、お腹空いてるの?」 「あ、うん……そういえば何にも食べてなかった」 ニコは仕方ないなぁと言った様子で苦笑いすると、 「わかった。何か軽く作るね。あたしもお腹空いちゃった」 とキッチンに立った。 「幸子は?」 「寝てたから置いてきた。泊めろって言うし」 「そうかぁ……じゃ、二人きりだ?」 二ヤァ~っと鼻の下を伸ばすとニコを背後から抱きしめた。 「えっ!?ちょっとロボ危ないっ!!」 「せっかく二人きりなんだよ?久しぶりなんだよ?というわけでお願いするであります、奥さん」 言うが早いか一気にスカートを捲り上げて下着を引っ張る。 「ちょ!やだ、だめだよこんな所……あっ」 「だって普段はこんな事デキないよ?ね、お願いニコ」 片手で抱きしめるように服の上から胸を掴み、下着を太ももまで引き下げられたお尻をもう一方の 手が長い指を巧みに動かしながら滑る。 「いいでしょ?ニコ」 「やぁ……ん」 「愛してる」 困った顔で振り向くと、にっこりと優しい顔で微笑む。 ああ、ずるい。こんな屈託無い笑顔を見せられたら怒るに怒れない。しかもロボはそれを計算ではなく 天然でやってのけるから始末が悪い、とニコはいつも思う。 「ご飯出来ないよ?」 「先にニコを……」 「もうっ……ぁ……ん」 引っ張り出したブラウスの裾から入り込んだ手が胸を弄り、思わず言葉を詰まらせる。 ん、と小さいため息を吐いて身を縮めるが、曲げようとした膝の間に後ろからロボの長い脚が支える ように割り込んで、太ももを伝った指がその行き止まりまで這って探り出す。 「んあぁぁっ!」 「あ~……何か濡れてるねぇ」 「……や……」 すくめた首筋に唇をあててちゅうと吸い付くと、肩をぶるっと震わせて呻く。それを目を細めて感じ ながら、かき回して濡れた指で両脚の間を渡る裂け目の先にある蕾をついついと転がしては、子猫の ようなか細いニコの泣き声にも似た吐息を堪能した。 「あ……っ、やぁ、ロボ、お願、ベッドいこ?ここじゃだめぇ……あぁんっ」 「ん……でもせっかくだからさ、それは後にしない?……ね?」 そう言うと、着ていたステテコパジャマをマックスのスピードで脱ぎ散らし、ニコの下着を足首まで 一気に落として片方を引き抜いた。 「え……うぁ!?」 「ごめんね。もう我慢できない」 ボタンを外してひん剥かれたブラウスから肩に口づけられ、のけぞって震える。その隙に背後から 支えられた細い腰を引き寄せ、ロボのモノがニコの中にのめり込んだ。 「ひぃ……ん……あぁぁっ」 「は……ニコ……すご……イイ」 「ああ、あ、あ、んん」 シンクに必死に掴まって躰を支える指先は、力が流れ込み爪がじわじわ白く濁る。そのそばに片手を かけて同じく自らの躰を支えようと、ニコの背中に裸の胸を押し当てながら一方の腕をその腰に廻すと、 ロボは弾みをつけて腰を前後に揺らし始めた。 「く……う……ぁ」 後ろからずん、と突かれる度に喉から苦しげな声を交えた息が漏れ、押し上げられるような衝撃に 爪先立ちになった脚が震え、前のめりに躰をシンクに預けてそれに堪える。 「ロボ……ん……だめ、や、壊れちゃうっ……!」 「あ……ニコ……そんな事言われたらもう、んっ」 ロボは両腕でニコの躰ごと支えるように腰を抱くと、ゆっくりと深く中を掻き回した。 「あ~……まだイキたくないなぁ……でも……ダメだ……ねぇ?」 「ん……?」 「後でもう一回……していい?ちゃんとベッド行く、から……」 ぐいぐいと押し当て肌が密着し、より深く結合する。 「……っ!いいよ……だから、お願い、はや、早く、イかせ……あっ、ああんっ」 がくがくと髪を振り乱しながら躰を小刻みに揺らし、目の前が白くなる――そうニコが感じた時、 ロボの呻きと共に彼の動きも静かにゆるやかに流れた。 「あ……」 どろりと躰の奥から温かな液が流れ出す。 「……ごめん。そのままシちゃった」 「え……あっ!?」 ニコの慌てた声にさっと体を離して手を伸ばし、ティッシュを渡す。 「んもうー!」 「だってすっごく……ヨかったから。それに」 「それに?何よ」 「もう少しだけ、幸せになりたいなあって、さ」 息を整えながらぺたんと床に座り込み、見上げたロボの顔は照れ臭そうに微笑む。 「ニコみたいな奥さんがいて、可愛い幸子がいて、今でも十分幸せなんだけど……何か欲が出ちゃってさ。 もう一つだけ……って」 「ロボ……そんなあたしなんか」 「ううん!今日だって大事な奥さんに一番に相談しないといけないのに勝手な事しちゃって、一家の 主の責任とか何も解ってなかった。なのにニコの方から折れてくれるなんて……」 「!?ちょっと待って、あたし知らない。謝って来たの、ロボの方じゃない!」 「えぇ!?いつ?」 「あたしが実家出てすぐだからえっと……」 「え~~~~!?」 暫くの間どちらも『自分は電話などしていない』と主張したため、須藤家はまたもや争いが勃発する事となった。 「もういいや。らちがあかない」 「そうだね~。とりあえずシャワー浴びようか。ニコ、行こう」 「うん……って、えっ!?」 「綺麗に洗ってあげるから。……ま、その後また汚しちゃうけど♪」 「え……うそぉ」 ニヤニヤと腰に手を当てニコを舐め回すように眺めると、ひょいとその体を抱き上げバスルームへ向かう。 「ちょっ、や、嘘でしょロボ、ね?」 「なんで?せっかく二人きりなんだから。……今日は眠れないかもなぁ……」 「そんなぁ……スケベ、へ、変態、バカ、オタクっ!!」 暴れるニコに悲しげな目を向けて 「俺の事嫌い?」 と呟く。ちょっとうるうるしたその瞳に弱いニコは、仕方ないと諦めてため息をつく。 「……す、好き、に決ま、ってん……」 「♪」 真っ赤なその頬にキスをして、ロボは最愛の奥さんとご機嫌でバスルームに向かった。 * * * その頃、表の通りに人影がひとつ。 「やれやれ、世話の焼ける奴らだな。にしても」 髭を撫でながらニヤリと笑うとこう呟いた。 「カエルの子は、カエルだな」 * * * * * * *終わり
https://w.atwiki.jp/borderbreakss/pages/479.html
久我子 主人公の幼馴染み。二人とも大人に近付いていく中で自然と距離が出来た事を少し寂しく思っている 動物が好きで、そのなかでも兎が大好き 修羅子 体育会系の女の子。言いたい事ははっきりと言う。足が速い。猫好き 少し痩せ過ぎてるのがコンプレックス。ただ胸は平均以上 HG子 文系の女の子。寒がり故の着太りが凄い。その中の肉付きはエロい。ゆっくりおっとりな巨乳お姉さん。実は力持ち 本が大好きだが、小さい頃からそれ一辺倒だったので目が少し悪い 杖子 頭が良くて、他の事もオールマイティーに出来るので、皆から頼りにされる。HG子と仲が良い 気分屋で少々意見が極端になりがちなところがある 円子 足はそれなりに速かったりするのだが、どうも目立ちにくく、少し「地味」 ただ、久我子の妹だったり、修羅子の部活の後輩だったりで立場的にはおいしい。胸は控え目 刃子 ツンツン気味の女の子。修羅子の後輩 少しくらい落ち込んでも立ち直りは速い ケー子 HG子の後輩。意外と頼りになる床の下の力持ち的存在 服に隠れているが美乳の持ち主
https://w.atwiki.jp/amaneo/pages/43.html
かー、かー。 カモメの声が聞こえるほど海沿いにある名呑高校。 「はいはい授業終わりまーす、来週までにこの宿題やらなかったら――えへ」 乾より子が職員室へ戻ると、隣の待合室に黒縁眼鏡をかけた男がいた。 「警察の方らしい」 傍にいた羅椎教員が囁くように言った。より子の頬にミント臭い吐息が当たったが、笑ったような彼女の表情は一切変わらない。 「何かあったんでしょうか」 より子は六年前、近くの名呑小学校で起きた教員失踪事件を思い出す。教員の一人が、小学生が噂する「アマネオ」に襲われ、食べられてしまったと言われていた。 気がつくと警察は捜査をやめてしまっていて結局どうなったのか、より子は知らない。 「捜査らしい」 「捜査」 刑事は色白童顔で若く見えるが、くたびれていない程度のスーツからすれば年齢は三十代前半といったところだ。 彼はどことなくふざけた顔でより子を見ていたが、教頭の案内で席を立ちやってきた。 「貴女が、乾より子さんですか。僕は警察やってます、巡査長の岩本洋一です」 より子は、いかにも忙しいですよ、といわんばかりに用もなく出席簿を開く。 「ちょっと、お聞きしたいんですけどね」 「何も答えられないと思いますけど」 肩までのショートボブを左手で梳く。岩本は彼女のそっけない態度に面くらいながら続ける。 「聞きたいのは名呑町の――その、ゑびす像や伝説について」 より子の目が変わった。細い線のようだった目が、猫に取りつかれたように縦長くなる。それからすずいっと身を乗り出した。 「聞きたい? ねえ、ほんとに聞きたいです?」 「は、はい」 二人の顔が近づく。岩本は背骨を引き抜かれて氷を突っ込まれたようにゾクゾクする。 「警察なのにそんなこと調べてる。もうただのオカルトじゃ済まなくなって、あなた、後戻りできないかもしれませんよ……えへ」 笑顔に纏わりつく不気味な空気。彼女の後ろの羅椎教員はそんな様子を初めて見たのか、身がすくんでいる。 岩本はゆっくり息を吐く。 ビンゴだ。大変なドSに会ってしまったかもしれない――じゃない! 糸口が掴めた。 「そいつはけっこうですね。オカルト好きなんで」 岩本は手にじっとりと浮かぶ汗を隠しつつ、口許が綻ぶのは隠さなかった。 階段の突き当たりにある扉を開けると、カモメが一斉に飛び去った。屋上のフェンスに背中を預け、岩本は腕を組む。 「失礼ですが、ある名簿を見たんですよ。あなたはリリジョン101に入信してませんよね」 より子は頷く。岩本の隣に並んでフェンスを掴み、遠く内海を眺める。渡船がほら貝のような音を吹き鳴らして動きはじめた。 「のどかな風景。でもあの内海でよく行方不明者が出てるね。最近はニュースにもならないしあなたたちも捜査しないから、たいていの人は知らない」 岩本は足先を見る。革靴の先には乾いた泥がついていた。 「私も生徒の噂で聞くだけ。この町は知らない間に人が消えてる。神隠しみたいに。えへ」 「あの、もう警察の人間が来ても、まともには応対しないでくださいね」 より子は目を細めてニッコリ笑う。 「だから、まともには応対しなかったでしょう?」 岩本はチラリとより子を見て、また目を逸らす。 「残念ですけど、警察は既にリリジョン101の傘下です。僕は勝手に調べてるだけです、まあ遅すぎたんですけど」 「それで、ゑびす像とリリジョン101に行き着いた。でもわからないんですね」 まあそうですけど、と小さな声を漏らして岩本は語りはじめた。 名呑警察署には行方不明者の情報が入ってきません。というか、事件自体が成立しないケースが多いんです。例えば誰々が海で消えたとか林で行方不明になったとかいう連絡は、時々入るんですよ。 それで捜査に行くと、やっぱり誰もいなくなってなかったと、こう言われる。 連絡してきたはずの家族に聞いても「旅行に行ってたのを忘れてた」とか、とってつけたような話がつくことさえある。 連絡した者が出てこないまま、隣人の「知らない」の一点張りで追い返されたこともあります。そんな場合も、上からの圧力で捜査中止です。 被害者もいない、加害者もいない、目撃者もいない。そうなると事件は事件にならないんです。 たとえ本当に人が一人――いえ、何人消えていたとしてもね。リリジョン101は多分そういうやり方で、教団に敵対する者を消してきたんです。おっしゃったように「神隠し」の再現です。 そういうときの捜査法って、結局歩いて子供に聞くしかないんです。大人に正攻法でいっても、たいていは信者ですからシラを切り通されて終わりです。とは いえ子供たちの情報はあやふやで、消えた人間は噂の「あまねお」に食べられたというように信じきってます。そんな化け物はありえない。失礼、オカルト好き のあなたからすれば不快だったかもしれませんが。 で、確かなものだけ数えても、リリジョン101が宗教法人になった一九九五年以降の行方不明者は六十三人です。六十三人。、六十三人分の肉体と記憶がこ の町に拡散している。行方不明扱いにすらなっていない、記憶と記録から抹消され、はじめから存在していなかったことにされた者を合わせると更に増えるで しょう。この数字は異常ですよ。 彼らの死体は見つかってないんですが、おおまかな消えた場所はわかったんです。子供たちのあやふやな情報を総合すると、名呑浜、名呑池、首坂の三つに集中してます。 そこに何故かリリジョン101が信奉する名呑町の名物「ゑびす像」があると。そこから何が導き出せるのかわからないんですよ。 リリジョン101はそんなにまでして、何が目的なんでしょう。しかも教祖とされるマハカメリア宮は公式には既に「死んで」いる。 教祖が死んでも組織は解体せず、蓮田ヒカリによって恐ろしいほどにまとまっている。一九九〇年には名呑内海に大発生したヒトラシキの公害事件にも関わっていた恐れがある。 彼らはこの名呑町に何を起こそうとしているのか。行方不明者は何をされたのか。民俗学の観点から、この町の信仰を教えてほしいんです。 どうなんです? 「流された神――こどもが流れる悲しみ。居場所のないこども――親は選べない――えへ。今から名呑神社に行きましょう。次は私の推理の番です」 乾より子はフェンスの金具を撫でて口だけで笑った。 放課後、乾と岩本は首坂を登っていた。次第に人里を離れ、森の色が濃くなっていく。山の上にある名呑大学と途中まで道が同じせいか、時折自動車が走っていく。 しかしそれが去った瞬間にあたりは閑寂として、木葉の奥には得体の知れない暗がりが広がっているのに気づかされる。 「昔なら『神隠し』が起こると言われたら信じる者もいただろうな」 岩本は呟く。声はすぐに静けさに吸い込まれていった。乾に呼び止められ、眼下に広がるダムを見た。夏場の夕方、まだまだ強い陽射しに青緑色の水面が反射する。 「そこのダム、古地図では地蔵堂があったみたいです。そこもおそらく道祖神ではなくゑびす像があったと思しいですね。本来地蔵が置かれる場所でも、あの像 が優先されることがあるんです。今ではダム底に沈んでますけど、人々はあの水を使っている。リリジョン101が崇める像――蝙蝠の羽とタコみたいな触手の 流された神――によって『浄められた』水をあなたも使ってる――えへ」 岩本は背中にひんやりとしたものが流れるのを感じた。乾には彼の見ているものと別のものが見えている。 これまで岩本が捜査と推理において持っていた「誰よりも先にわかっているのに動かないスタンス」というひねくれたプライドが、一般人によっていとも簡単に覆される。 「えへへ」 彼女の真似をしたわけではなかったが、岩本は自然に笑いがこみあげた。彼にはそうしたプライドが傷つけられるのが、快感だった。 「ねえ今、赤ん坊の泣き声が聞こえませんでした? えへ」 「やめてくださいよ、乾さん。僕はオカルトの類は苦手ですし、信じてないですし」 困ったように彼は言った。この態度は、怖い話をしたくてたまらない人間に調子よく話させるための計算された演技だった。 岩本は相手にもっと踏み込んできてほしい、なんなら怖がりの自分を蹂躙して凌辱してもらってもかまわないと思った。 一方で、彼女も嬉しそうだ。既に三十歳を越えていたが、疲れを感じるどころかペースアップして首坂を上っていく。目指す場所は神域。彼女もその場所は詳 しく調べていない。しかしこの町に来てから九年、目立たないように調べてきた仮説が正しければ、重要な地点だった。好奇心が彼女を突き動かしていた。 二人は名呑大学を抜け、更に山に分け入っていく。 「そろそろ、我々が何故名呑神社に向かっているのか、説明してくれませんか」 草むらの中、辛うじて見える道を進む。 「うーんと。簡単に言えば、その『神隠し』――人間がやっているにしろ、彼らの宗教の要因は大きい――が起きてる地点が問題なんです。名呑浜、名呑池、こ こ首坂。ついでにさっきのダム。全て地図上で繋ぐと、古い参道にぴったり一致してて。だから道の脇にはゑびす像がある。海からやってきた神あるいは『何 か』が、町の中心にある名呑池を通り、首坂を上る。その先には――」 えへ。 乾が顔を上げたので、岩本もつられて見上げる。山の中腹には小さな神社があった。 誰も管理していないのか、荒らされ放題の境内は不気味に佇んでいる。朽木を組み合わせた簡素な鳥居をくぐり、本殿に近づく。賽銭箱も鈴もない。 本殿を覗いた岩本は、びくりとして短く息を吐いた。人間の頭ほどの大きな目が侵入者を見つめるように、奥の壁に左右一つずつ描かれていた。 ぽつ。ぽぽつ。 先程まで陽が射していたのが嘘のように、背後で突然雨が降り出した。 当然のように本殿に入っていく乾に、岩本は遠慮がちについていく。乾は転がった陶器の瓶などを立て直しつつ、メモをとった。 「雨女って知ってるかしら」 岩本は一瞬どこから声がしたのかわからなかった。 「知ってますよ。何か催し物の時、その女性がいると雨が降るっていうアレ」 岩本は目の前の小さな背中に向かって話す。雨が屋根を打つ音が沈黙で空いた時間を埋める。 「その元になった伝承です。雨が降る時というのは、日常とは別の空間――異界になる。雨の日にこどもを神隠しで失くした母親は雨女になるんです」 振り返った乾の顔は、目元が暗くてよくわからない。肩までの髪が、外からの湿った風で揺れている。 えへ。 しかし開いた口が笑っていることだけは、岩本にわかった。 「この神社はそれに近いのよ。ここの本尊は、ゑびす像じゃない。こどもを失くした母神だわ!」 乾が指差した壁の一部には、漢字がびっしり刻まれていた。 天子怨天子怨海女禰音女海 天子怨天子怨女禰緒音緒禰 天子怨天子怨禰緒音緒海女 「こっちも!」 本尊にあたる奥の壁には、女の絵と無数の風車、更に葦で作られた小舟が描かれている。 乾は興奮して持ってきていたカメラで写真を撮りながら、言い続ける。 「流された神が流した母のもとに帰ってくる? 胎内回帰? まさか間引きの風習が? 怨みが」 ちょっと、と岩本が肩を叩くが気付かない。 「仮説は違った。海から上ってくるんじゃない。この神社から海に生まれていく」 「お、落ち着けッ!」 えへえへと笑いながら、乾は彼の方を向いた。指摘され、慌ててよだれを拭った。 「で、どういうことなんだい。リリジョン101の目的は。神隠しは」 「それはわからないわ」 岩本は肩をすくめ、頭を抱えて壁に寄り掛かった。 「でもわかったことはたくさんあるの。まずこの漢字。読み方はわからないけど一つ一つ見るとニュアンスは伝わると思う。天、子ども、怨み、海、女(母親?)、禰は天の意に沿うこと、音、緒は臍の緒。多分これは神の名前だと思う」 岩本の反応がない。ひとり首を傾げているが、乾は更に絵を見せる。 「ゑびす――つまりヒルコは、伝承では葦の舟に乗せられて流された。流したのはイザナミだったけど、ここでは他の水子供養とかと同一視されてよくわからない母神になってる。こどものおもちゃの風車は、水子でよくお供えされてるものだし」 岩本は並んだ漢字を指で追い、自分の中で何が引っ掛かったのか確かめようとするが、うまくいかない。 「この神社の意味だけど――間引きや流産で悲しんだり怨んだりした母親や流れたこどもの供養のためだったのか。それともゑびす像に対になるものを後から作ったのか。そんなところだと思う」 話を聞いているのかいないのか、岩本は漢字を読んでいる。 「てん、あま、こ、し、ね、えん、おん、うみ、いやあま、ね、おん?」 岩本の脳裏に無愛想な少年とうるさい少女が浮かんだ。彼ら双子は、生体スーツを使っていた。「あまねお」。偶然かもしれないし、そうじゃないかもしれなかった。 「何かわかりました?」 岩本は首を振った。コカゲに「あまねお」のことは秘密にしてくれと言われていた。彼自身も噂は噂のままに、そうした方がいいと思っていた。 「さて、じゃあどういうことになったかというと。私は元々、海からゑびすが参道を上がってくるという信仰が名呑町にあって、それをリリジョン101が利用 したんじゃないかと思ってた――えへ。でも違う。さんどうはさんどうでも、『参る』道じゃなかった。さて、この神社を女性の頭として、私達が上ってきたの は?」 「首坂」 岩本は即答した。 「距離的にダムの辺りが心臓とすると、名呑池は下腹部……というかおヘソ。名呑浜周辺は膣になる。この町は全体を一人の女性として、ゑびすを産むために重要な部分にゑびす像を置いてる」 ゑびすを産む。それは何を意味するのか。 「上ってくる参道ではなく下りていく産道なんですか」 「そう。リリジョン101にとってゑびす――得体の知れない『何か』――を産むことが大事なのはわかるけど、具体的に何をするのかはわからない。刑事さんの仕事かしら、えへ」 岩本は腕を組んで考える。 各地点で行方不明者が出るということは、その近くに彼らのアジトの一つがあるかもしれない。何らかの儀式でいけにえに使うのか。必要なら名呑池の中も調べなければならないか。池は濁っているから、うまく調べるには潜れる者がいる。 「あの双子――」 あまねおについても聞かなければならない。名前の由来。そして意味するもの。 「あの、名呑池を調べるなら私もついていっていい――ですか。リリジョン101が宗教儀式をなぞる理由が知りたいの」 外は暗くなり、空の端から夜が降りてきていた。既に本殿の中は文字が読み取れないほどだ。しかし乾は嬉しそうに闇の中ではしゃいだ。 「単なる好奇心でね――えへ」 岩本は外に出て伸びをする。雨で緑の葉がてらてらと光り、ひんやりとした空気が頬を撫でた。 「いいですよ。それなら紹介したい双子がいます」 乾が食いつく。 「双子! 昔は男女なら夫婦子(めおとご)とも呼ばれていたの。双子というのは魂が分かれて――」 雨は上がっていた。岩本は、一瞬だけ乾が雨女ではないかと思ってしまったことは、とりあえず言わないでおくことにした。
https://w.atwiki.jp/sangokuchishi/pages/14.html
三國地誌巻之五十七 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○伊陽 藤堂元甫 編集 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○東京 川井景一 増訂 ○伊賀國 ○○建置沿革 旧事本紀曰,以天日鷺命為伊勢國造,即伊賀、伊勢國造祖。 ○伊賀國造,志賀高穴穂朝御世皇子意知別命三世孫武伊賀別命定賜國造,難波朝御世隷伊勢國,飛鳥朝代割置如故。 ○按○成務御宇武伊賀別命ヲ以伊賀國造ト定メタマフモノハ全國ノ任ニアラス大和葛城ノ國造駿河蘆原ノ國造ニ同シ一郡ニツイテ定ムルモノナリ 『三国地誌』巻之五十七 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○伊陽(伊賀の雅称) 藤堂元甫 編集 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○東京 川井景一 増訂 ○伊賀國 ○○建置沿革 『旧事本紀』に言うところ、天日鷺命を伊勢國造とし、すなわち伊賀、伊勢の國造の祖先である。 ○伊賀國造は、志賀高穴穂朝(成務天皇)の時代の皇子意知別命の三世の孫の武伊賀別命が國造を定賜され、難波朝(孝徳天皇)の時代は伊勢國に隷属し、飛鳥朝(天武天皇)の時代は割置してもとのように伊賀國造を置いた。 ○考えるに○成務天皇の時代、武伊賀別命を伊賀国造に定賜したものは一國全体を委任したのでは無い。大和葛城の国造、駿河蘆原の国造と同じで一郡について定めたものである。 阿直敬 続日本紀曰,元明天皇和銅五年九月,伊賀國國司阿直敬. ○按和銅ヨリ天平勝宝三年ニ至ル凡四拾年任限闕如シテ詳ナルヲシラス姑ク史録ニアラハルヽモノヲ概挙ス下皆傚之 陽候璽 続日本紀曰,廃帝天平宝字三年秋七月丁卯,外従五位下陽候史璽為伊賀守。 ○按ニ宝字三年ヨリ八年ニ至ル其間六年 久米子虫 続日本紀曰,廃帝天平宝字八年冬十月己丑,以従五位下久米朝臣子虫為伊賀守. ○按宝字ヨリ景雲三年ニ至ル其間十二年 阿直敬 『続日本紀』に言うところ、元明天皇の和銅五年(712)九月、伊賀國の國司は阿直敬。 ○考えるに和銅から天平勝宝三年(751)に至るまでおよそ四十年、国司の任官期限は欠如して詳しくは分からない。とりあえず史録に出てくるものを概挙する。 陽候璽 『続日本紀』に言うところ、廃帝(淳任天皇)の天平宝字三年(759)秋七月丁卯(二十六日?)、外従五位下陽候史璽が伊賀守になった。 ○考えるに、宝字三年(759)から八年(764年)に至るまでの間は六年。 久米子虫 『続日本紀』に言うところ、廃帝(淳任天皇)の天平宝字八年(764)冬十月己丑、従五位下久米朝臣子虫を伊賀守にした。 ○考えるに宝字から景雲三年(769)に至るまでの間は十二年。 葛井河守 続日本紀曰,称徳天皇神護景雲元年八月戊子,外従五位下葛井連河守為伊賀守。○按景雲元年ヨリ三年ニ至ル其間三年。 伊勢子老 続日本紀曰,称徳天皇神護景雲三年六月乙巳,外従五位下伊勢朝臣子老為伊賀守。 ○按景雲三年ヨリ宝亀五年ニ至ル其間六年。 長尾金村 続日本紀曰,光仁天皇宝亀五年三月乙巳,以外従五位下長尾忌寸金村為伊賀守。 ○按五年ヨリ九年ニ至ル其間五年。 葛井河守 『続日本紀』に言うところ、称徳天皇の神護景雲元年八月戊子、外従五位下葛井連河守が伊賀守になった。 ○考えるに景雲元年から三年に至るまでの間は三年。 伊勢子老 『続日本紀』に言うところ、称徳天皇の神護景雲三年六月乙巳、外従五位下伊勢朝臣子老が伊賀守になった。 ○考えるに景雲三年から宝亀五年に至るまでの間は六年。 長尾金村 『続日本紀』に言うところ、光仁天皇の宝亀五年三月乙巳,外従五位下長尾忌寸金村を伊賀守にした。 ○考えるに五年から九年に至るまでの間は五年。 三國地誌巻之六十八 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○伊陽 藤堂元甫 編集 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○東京 川井景一 増訂 ○伊賀國 山田郡 ○○郷名 中村 ○按千戸、真泥、畑、甲野、鳳凰寺、平田、出後、炊、富岡、中村,是ヲ呼テ今中村郷ト云,古千戸、真泥、畑,是ヲ河原郷ト云。 阿波一作淡准后伊賀記作粟郷 惣國風土記曰,山田郡阿波郷公穀六百七十二束,三毛田,仮粟四百七十二丸,貢松、桧、橘、柚、樟、柏、熊、猪、茗、猿、狸、狼、狐、兎、鸛、鶴、雉、鳩、茯苓、松油、栗、榧、蕨、葛等。 ○按上阿波、猿野、富永、下阿波、川北、広瀬,是ヲ呼テ阿波郷ト云。 『三國地誌』巻之六十八 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○伊陽(伊賀の雅称) 藤堂元甫 編集 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○東京 川井景一 増訂 ○伊賀國 山田郡 ○○郷名 中村 ○考えるに千戸、真泥、畑、甲野、鳳凰寺、平田、出後、炊、富岡、中村、これらを呼んで今中村郷と言っている。古くは千戸、真泥、畑、これらを河原郷と言った。 阿波一説に阿波は淡と表記し、『准后伊賀記』は粟郷と表記する 『惣国風土記』に言うところ、山田郡阿波郷は公穀六百七十二束、三毛作をし、仮粟四百七十二丸、松、桧、橘、柚、樟、柏、熊、猪、茗、猿、狸、狼、狐、兎、鸛(こうのとり)、鶴、雉、鳩、茯苓、松油、栗、榧(かや)、蕨(わらび)、葛等を貢納している。 ○考えるに阿波、猿野、富永、下阿波、川北、広瀬、これらを呼んで阿波郷と言っている。 馬野 惣國風土記曰山田郡馬野郷公穀六百八十二速仮粟五百七十二丸三毛田貢松脂橘柚又貢雉鳩有牧馬駿馬之牧也 ○按奥馬野中馬野坂下是ヲ呼テ馬野郷ト云 喰代 ○按喰代鷹山蓮池是ヲ呼テ喰代郷ト云 友生 ○按上友生界下中友生下友生是ヲ呼テ友生郷ト云 已上五郷今存在スル所也 馬野 惣國風土記に曰く、「山田郡馬野郷は公穀六百八十二束。仮粟五百七十二丸。三毛作。松脂、橘、柚を貢納する。また雉、鳩を貢納する。牧馬の牧場が有って駿馬の牧である。」 ○考えるに奥馬野、中馬野、坂下、これらを呼んで馬野郷と言っている。 喰代 ○考えるに喰代、鷹山、蓮池、これらを呼んで喰代郷と言っている。 友生 ○考えるに上友生、界下、中友生、下友生、これらを呼んで友生郷と言っている。 以上の五郷は今も存在している。 川原今廃 延長風土記曰山田郡川原郷土地痩亡有旱水之患也時々出橘柑民家所用也 惣國風土記曰山田郡川原郷公穀四百七十二束仮粟三百五十丸貢鮎鰻鴨鷺等 ○按今畑村ニ川原出ノ字アリ此地山田川ノホトリニテ水難ノ地ナレバ此名アルニヤ 竹原今廃 延長風土記曰山田郡竹原郷土地富饒而脩竹多焉亦民家所用也在郡以下虫喰 惣國風土記曰山田郡竹原郷公穀三百七十二束无仮粟以横税為仮粟貢桑麻 ○按今廃シテ鳳凰寺村ニ存ス 已上三郷和妙抄出ル所也 川原今廃 延長風土記に曰く、「山田郡川原郷は土地痩亡にして、旱水の患が有るのである。時々橘柑を出し民家の用いる所となるのである。」 惣國風土記に曰く、「山田郡川原郷は公穀四百七十二束。仮粟三百五十丸。鮎、鰻、鴨、鷺などを貢納する。」 ○考えるに今畑村に川原出の地名がある。この地は山田川のほとりで水難の地であるからこの地名があるのだろうか。 竹原今廃 延長風土記に曰く、「山田郡竹原郷は土地富饒にして、脩竹が多い。焉亦民家所用也在郡以下虫喰 惣國風土記に曰く、「山田郡竹原郷は公穀三百七十二束。仮粟はない。横税をもって仮粟とする。桑、麻を貢納する。」 ○考えるに今廃して鳳凰寺村に存在していた。 以上三郷は和妙抄に出ている。 阿野今廃 延長風土記曰山田郡阿野郷土地富饒而民用多在郡之西有神曰並日明神大足彦忍代別御宇奉崇也又曰西限阿野 ○按阿野ハ今上野ノ東南字野畠ノ地ナリ古ハ郡ノ西界ニシテ今阿拝郡ニ属ス 鳥合今廃 延長風土記曰山田郡鳥合郷在郡之東北土地廃亡焉民用少也 玉井今廃 延長風土記曰山田郡玉井郷在郡之東北土地富饒而民用多也 ○按今平田町ニ玉井ノ名アリ 郡今廃 延長風土記曰山田郡郡郷土地富饒而民用多也亦多出薬草在郡之西 川向今廃 延長風土記曰山田郡川向郷在郡之東北多出薬草亦民所用也 ○按平田ヨリ出後ヲ呼テ川向ト云 阿野今廃 延長風土記に曰く、「山田郡阿野郷は土地富饒にして、民用資源は多く、郡の西に位置している。神がいて並日明神という。大足彦忍代別の御宇に崇めたのである。又西の境を阿野と言う ○考えるに阿野は今の上野の東南、地名野畠の地である。古は郡の西の界にして今は阿拝郡に属している。 鳥合今廃 延長風土記に曰く、「山田郡鳥合郷は郡の東北に在る。土地は廃亡している。民用資源は少ないのである。」 玉井今廃 延長風土記に曰く、「山田郡玉井郷は郡の東北に在る。土地富饒にして民用資源は多いのである。」 ○按今平田町ニ玉井ノ名アリ 郡今廃 延長風土記に曰く、「山田郡郡郷は土地富饒にして民用資源は多いのである。また多く薬草を出す。郡の西に在る。」 川向今廃 延長風土記に曰く、「山田郡川向郷は郡の東に在る。北は多く薬草を出し、また民衆の用いる所である。」 ○平田より出後を呼んで川向と言う。 字形:PCの文字環境を考えて本文は「國」字を除き、当用漢字に変更した。訓読点、添え仮名は表示できない。 ○:空白 イタリック文字:注釈 <A山○B山>いずれも某村:A山からB山までは某村の山。 ●:同じ山の異称か、異なる山のなまえ。野、谷、川、遺跡名も以下同。 三國地誌巻之八十 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○伊陽 藤堂元甫 編集 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○東京 川井景一 増訂 ○伊賀國○名張郡 ○○山川 鷹塚山 大野山並蔵持村 ○按比奈知ヨリ小波田村ヘノ道路アリ 西山南出村 ○按簗瀬平尾北出南出共ニ領ス大和ノ國界ナリ 東光山北出村 ○按簗瀬四邑春日祭祀ノ日此山ニ入テ箸木ヲ伐ル 『三國地誌』巻之八十 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○伊陽(伊賀の雅称) 藤堂元甫 編集 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○東京 川井景一 増訂 ○伊賀國○名張郡 ○○山川 <鷹塚山 大野山>いずれも蔵持村 ○考えるに比奈知より小波田村への道路がある。 西山南出村 ○考えるに簗瀬、平尾、北出、南出が共に所有する。大和の國との境界である。 東光山北出村 ○考えるに簗瀬の四邑(簗瀬、平尾、北出、南出の四地域)は、春日(宇流冨志禰神社)祭祀の日にこの山に入って箸木を伐る。 鷹塚山葛尾村 ○按和州葛原岩屋村ニ界フ山ニ神明ノ祠有又堡址アリ 殿出山下三谷村 ○按堡址アリ故ニ名クト云 一尾山○本陣山●高塚山 ○按筒井須慶営址アリ因テ号ク 鷹尾峯地蔵堂並短野村 ○按山頂西ハ和州岩屋毛原笠間村共ニ領ス 向山○和田山並夏秋村○番取山○茶臼山○観音山並安部田村 ○按観音廃堂ノ址アリ 茶宇須山黒田村 ○按大和ノ國界ナリ 鷹塚山葛尾村 ○考えるに和州葛原、岩屋村に境界する。山に神明の祠が有る。また堡(とりで)の遺跡がある。 殿出山下三谷村 ○考えるに堡(とりで)の遺跡がある。故に名前が付いたと云われる。 <一尾山○本陣山●高塚山 ○考えるに筒井順慶の陣営の遺跡がある。よって号する。 鷹尾峯●地蔵堂>いずれも短野村 ○考えるに山頂の西は和州岩屋、毛原、笠間村が共に所有する。 向山○和田山いずれも夏秋村○番取山○茶臼山○観音山いずれも安部田村 ○考えるに観音廃堂の遺跡がある。 茶宇須山黒田村 ○考えるに大和の國との境界である。 光堂山井手村 ○按此山ニ荒墳アリ経塚ト云 山神山○天神山並上三谷長坂市井等三村共領○小嶽山並竜口村○下道山○升杜山○猪口山 ○按長坂一井柏原三邑共ニ領ス 和良平山並滝長坂村 ○按一井長坂共ニ領ス和州今井ニ至ル道アリ 香善山○横山並檀村○高天原山柏原村 ○按青蓮寺山ニ属ス是ヨリ奥ヲ青蓮寺山ト云 光堂山井手村 ○考えるにこの山に荒墳がある。経塚と云われる。 <山神山○天神山>上三谷、長坂、市井などの三村が共に所有する○小嶽山竜口村○<下道山○升杜山○猪口山 ○考えるに長坂、一井、柏原の三地域が共に所有する。 和良平山>いずれも滝長坂村 ○考えるに一井、長坂が共に所有する。和州今井に至る道がある。 <香善山○横山>いずれも檀村○高天原山柏原村 ○考えるに青蓮寺山に属する。是より奥を青蓮寺山と云う。 青蓮寺山 ○按長承三年東大寺古文書青蓮寺西杣口云々青蓮寺瀬古口中村里川柏原檀長屋一井長坂ノ九村共ニ領ス 八幡山 ○按東大寺領古図ニ出上ノ九村共ニ領ス此山ヨリ大和国界へ十三町アリ西嶽中嶽東嶽笹原一橋泥谷等ノ名アリ又八幡長者ノ宅址トテ長七拾間横四拾間ノ廃地アリ又経塚アリ 根太山○河内山並青蓮寺村○上山星川村○夏見山今云男山●夏見村 延長風土記曰名張郡夏見山在郡之○○○○○杉松竹土地富饒而民用多 草神山○阿清水山並丈六村 ○按和州長瀬村ヲ界フ 青蓮寺山 ○考えるに長承三年の東大寺古文書に青蓮寺西杣口が云々とある。青蓮寺、瀬古口、中村、星川、柏原、檀、長屋、一井、長坂の九村が共に所有する。 八幡山 ○考えるに東大寺領古図に出る上の九村が共に所有する。この山より大和の国の境界までは十三町ある。西嶽、中嶽、東嶽、笹原、一橋、泥谷などの地名があり、また八幡長者の屋敷跡という縦の長さ七十間、横の長さ四十間の廃地がある。また経塚がある。 根太山○河内山 いずれも青蓮寺村○上山星川村○夏見山今男山と云う●夏見村 延長風土記に曰く、「名張郡夏見山は郡の・・・に在り。・・・杉、松、竹、土地は富饒にして民用資源が多い。」 草神山○阿清水山いずれも丈六村 ○考えるに和州長瀬村を境界とする。 高座山 ○按村ノ東ニアリ此山ニ方五尺バカリノ石アリ馬蹄ノアトアリ俗千方ノ飛石ト云又地蔵ノ古石仏アリ嬰児ヲココニ祝スレハ長命ナラシムトテ呼テ小売地蔵トモ云 馬留山 ○按千方此ニ馬ヲ留ム故ニ此名アリト云 赤岩尾山○小岩尾○仏山 ○按山頂ニ岩窟アリ夷石大黒石ノ名アリ又岩洞及ヒ屏風岩倶ニ奇岩ナリ 穴尾山○雷丸峯○燧山○鷹山○月山並滝原村○万度山長瀬村 ○按古ヨリ邑下安全ノタメ万度祓ヲココニ立ツ因テ名ク 中山 ○按和州伊賀見村ヘ道アリ國界ニシテ布生峠ト云 紅形山 ○按南峯大和ノ國界 沼木山今云野木峯○並布生村 延長風土記曰名張郡沼木山在郡之東北多出松拍民用多也 高座山 ○考えるに村の東にある。この山は二つの方向に五尺ばかりの石、馬蹄のあとがある。俗に藤原千方の飛石と云って、また地蔵の古石仏があり嬰児をここに祝福すれば長命になると言って小売地蔵とも呼んでいると云う。 馬留山 ○考えるに藤原千方がここに馬を留めた。故にこの名があると云う。 赤岩尾山○小岩尾○仏山 ○考えるに山頂に岩窟がある。夷石、大黒石の名前がある。また岩洞および屏風岩はそれぞれ奇岩である。 穴尾山○雷丸峯○燧山○鷹山○月山 いずれも滝原村○万度山長瀬村 ○考えるに古より地域一円の安全のために万度祓いをここに立てている。よって名付けられた。 中山 ○考えるに和州伊賀見村への道がある。國の境界にして布生峠と云われる。 紅形山 ○考えるに南の峯は大和の國の境界。 沼木山今野木峯と云う○ いずれも布生村 延長風土記に曰く、「名張郡沼木山は郡の東北に在り。松、柏を多く出し民用資源が多いのである。」 中知山長瀬村 ○按長瀬布生奈垣ノ三邑共ニ領ス 浅間山奈垣村 ○古富士ノ祠アリ故ニ名ク 岩尾山 ○按神屋奈垣共ニ領ス 為奈山 延長風土記曰名張郡為名山在郡之南多出松杉竹民用亦不少也 中知山長瀬村 ○考えるに長瀬、布生、奈垣の三地域が共に所有する。 浅間山奈垣村 ○古富士の祠がある。故に名前が付いた。 岩尾山 ○考えるに神屋、奈垣が共に所有する。 為奈山 延長風土記に曰く、「名張郡為奈山は郡の南に在り。松、杉、竹を多く出し民用資源はまた少なくないのである。」 真菜筒谷 ○按此ニ怪石アリ俗不動休石ト云長一丈九尺幅一丈三尺竪九尺諸鳥此ニ止マラズト云 新堂谷並安部田村 ○按和州笠間村ヘ出ル道路アリ怪石アリ黒岩ト云 桑木谷柏原村 ○按和州今井村ヘ出ル道路アリ又巨岩アリ鐘掛岩ト云又穂ノ出ザル薄アリ俗物ワラ薄ト云 湯屋谷長瀬村 ○按古温泉アリ平時頼此ニ寓スト云 大岩谷奈垣村 ○按巨巌アリ竪二丈三尺横六丈二尺古山婆此ニ出ト云 真菜筒谷 ○考えるにここに怪石があった。俗に不動休石と云っている。長さ一丈九尺、幅一丈三尺、竪(たて)九尺どの鳥もここに止まらないと云う。 新堂谷いずれも安部田村 ○考えるに和州笠間村へ出る道路がある。怪石があって黒岩と云っている。 桑木谷柏原村 ○考えるに和州今井村へ出る道路がある。また巨岩があって鐘掛岩と云っている。また穂の出ない薄(すすき)があって俗な言葉でワラ薄(すすき)と云う。 湯屋谷長瀬村 ○考えるに古は温泉があった。北条時頼がここに寄ったと云われている。 大岩谷奈垣村 ○考えるに巨巌がある。竪(たて)二丈三尺、横六丈二尺。古は山婆がここに出たと云っている。 久保岩穴一井村 ○按清水アリ毎年首夏節ヨリ出テ仲秋節ニ涸ルト云 鳥居小野今云大広野○上比奈知村 養和元年東大寺古文書曰鳥居小野寺領古絵図云比奈知鳥居小野寺領東界 ○按民居ノ東ニアリ方五町許リ 簗瀬原 惣國風土記曰名張郡名張郷簗瀬原出川芎(きょう)柴胡香薷独活松露等 ○按今ノ簗瀬ヲ云今尚民居ヲ除クノ外地面平昿(むなしい)ナリトイヘトモ悉ク田畝トナルヲ以原ヲ称セス 久保岩穴一井村 ○考えるに清水があり毎年初夏の節より出て仲秋の節に涸れると云われる。 鳥居小野今大広野と云う○上比奈知村 養和元年の東大寺古文書に曰く、「鳥居小野。」寺領古絵図に云う。比奈知の鳥居小野は寺領の東の境。 ○考えるに民居の東にあって面積五町ほど。 簗瀬原 惣國風土記に曰く、「名張郡名張郷の簗瀬原は川芎(きょう)柴胡香薷独活松露などを出す。 ○考えるに今の簗瀬を云って今も尚民居を除く外れの土地は一面平らかで昿(むな)しいのであるのであるが、悉(ことごと)く田んぼや畝(うね)となったのをもって原という地名では呼ばない。 阿弥瀑布一名赤目 青蓮寺瀑青蓮寺村 ○按キヤウトウノ瀑ト云源木挽山ヨリ出テ谷川滝尻ヲ歴河内川ヘ落ル其飛泉三段上四丈許中二十丈許下二丈許 青蓮寺瀑青蓮寺村 ○考えるにきゃうとうの瀑と云い、源木挽山より流れ出て谷川、滝尻を経て、河内川へ落ちる。その飛泉は三段、上の滝は四丈ほど。中の滝は二十丈ほど。下の滝は二丈ほど。
https://w.atwiki.jp/japan_dorama/pages/4245.html
amazonで探す @楽天で #スーパーサラリーマン左江内氏 を探す! 土21日テレ 2017.01.14~2017.03.18 9.5% 公式HP wikipedia 前 お迎えデス。 Hulu NETFLIX dTV PrimeVide U-NEXT TVer Paravi GYAO youtube検索 / Pandora検索 / dailymotion検索 / bilibili検索 1 藤子F原作サエないヒーロー悪に強いが妻に弱い 2017/01/14 12.9% 2 サエないヒーローでも息子のピンチを救えるのか!? 2017/01/21 9.6% 3 ヒーローがなんてったってアイドルのマネージャー!? 2017/01/28 9.2% 4 仕事か遠足か?夫婦愛を試されるサエないヒーロー 2017/02/04 8.9% 5 不倫!?家庭崩壊の危機に顔面蒼白のヒーロー 2017/02/11 9.4% 6 爆破予告で家族サービス崩壊 2017/02/18 10.2% 7 ヒーロー交代!?スーパー池杉 2017/02/25 7.9% 8 円子が良妻!?永野芽郁がスーパーウーマン! 2017/03/04 6.3% 9 社長登場で大波乱!出世をかけた誘拐事件!? 2017/03/11 10.5% 10 ヒーロー放棄で絶体絶命!?夫婦愛の奇跡!! 2017/03/18 10.5%
https://w.atwiki.jp/sexyvoice/pages/347.html
君が笑って、怒って、泣いて、振り返るといつもそこにいて……でもそんなの 当たり前の事だと思ってた。 幸福はいつもすぐ側にあったというのに、その時は気付かなくて。 君がいなくなると世界が変わる。だから…… 『死なないで』 「暇だなあー、ロボなんか面白い事ない?」 「そんなのそうそうあるわけないでしょ?大体もうあんな危ない目に遭うのはやだよ」 地蔵堂が無くなって出動しなくなった俺達は、それからしばらくして自然と離れて いってしまった。 喧嘩したわけでも引っ越したわけでもないのに、ただ何となく会わなくなってしま った。 勿論俺はニコと離れるつもりなんてなくて、そのうちまたフラリと遊びにやっ て来るだろうと思っているうちに今度は俺も仕事が忙しくなって、気付いたら会う 理由を探さなくては会えなくなってしまっていた。 そのまま季節は流れて3度誕生日を迎えた。その度にニコを思い出したけど、やっ ぱり何もできなかった。偶然に会う事も無くて、こっちから尋ねて行く事も出来ない となればもう後は自然と忘れてしまうしかないわけで。 ただマックスロボはあれからもずっと手元にあるから、ニコの存在だけはもうフィ クションではないと言い切れた。 あんなに憧れた一海ちゃんや、全てを捨てた昭子さんはもう思い出の遥か底にいる のに、ニコだけは何故かずっと心の中に浮かんでいた。 生意気で、子供のくせに大人びて、だけど純粋で。口が悪くて。 そんな想い出そのままに、ある日突然再会はやって来た。 いつもの帰り道、会社でまたへまをして叱られた俺は、昔ニコと仲直りした公園の ベンチでぼうっとしながら肩を落としていた。何気に歩いて来た人影に目をやると、 そこにいたのは以前と違う制服姿の女の子の姿があった。髪も下ろしてあの時よりも 大人びて。 「ニコ!」 「…………ロボ?」 お前はもう、子供なんかじゃなくなって。 「何してんの?相変わらずモテない顔」 相変わらず手厳しい挨拶に俺は思わず笑っていた。4年後の事だった。 それから気が付けばニコはまた、フラッと部屋までやって来る様になった。 昔中学生のニコを部屋に入れるのを咎められたのを思い出して、一応少しはためら ったけど、何も思う事なくやって来るニコに無し崩し的に部屋に上がられるうちに、 どうでもよくなってしまった。実際階下の店の人にも何度か目撃されてはいるが、別 に怪しまれてはいないみたいだったし。 俺は今の今まで意識しなかった事を考えるようになっていた。 俺とニコ、他からはどう見えてるんだろう…………。 俺は世間的にはいい歳したおっさんだけど、今の高校生のニコとなら案外それ程 不自然でない組み合わせに見えるのかもしれない。 だけど俺達そんな関係じゃないし、第一ニコが何を考えてるのかなんて全くわからない。 実際この3年間俺だって男だから、テレクラや出会い系なんてのも何度か試して見た。 結果は撃沈続きだったけど……。 だから、今だってニコが平気でまた入り浸れるようになっているわけだ。 さっきから暇だ暇だと言い続けるニコに 「だったらさ~、友達とでも遊びに行けばいいんじゃないの?ここにいたって何にも する事ないんだからさ~。それか彼氏でも作る努力したら?」 と言い返してやったら、 「うっさいな、あたしの勝手でしょ!人の事より自分の心配したら?黙ってたって モテないんだから」なんて痛い所を突いてくる。 「かっわいくねえ~!!」 「別に何て思われてもいいもん」 少しは大人になったと思ったのに、やっぱり可愛くない!ムッとしてニコの方を向 いて俺は、思わず息を呑んだ。 窓にもたれて外を眺める横顔が、風になびいた髪が頬とうなじを露にしていて…… すごく綺麗だと思った。 その上膝丈のスカートから伸びた脚は白くてそれもまた綺麗で、無防備にベッドの 上なんかに投げ出されているから……。 「あ、ロボ?フィギュア落ちそうだよ!」 「あ、うわ、腕取れるっ!!」 そんな格好なんか今まで何度も見たってのに、知らないうちに釘付けになっていた。 「変なロボー」 ここまで来て俺はようやく腰をあげた。もう限界だ。 「ニコ」 「ん?な、何?恐い顔して」 「……や、別に」 俺、何しようとしてんだろ。そのままぐっと拳を握り締めてニコに背を向けた。 「何?言いたい事あんなら言えば?」 言いたい事。 「……ニコがいると落ち着かない。何でうちに来てるの?」 何か胸が苦しい。 「……何それ、あたしがいるとなんかだめって事?」 「ううん、俺ニコと一緒にいると楽しいよ。でも時々なんかこう……」 何て言えばいいんだろう?どうしたらこの関係を壊さずにいけるんだろう。 「じゃあ何?……ハッキリしないなあ」 「だっていつも暇なんでしょ?なのに一体何が楽しいのかなって」 俺は楽しいよ。だけどニコは違うの?うだうだ考えてるうちにニコは 「……もういい!お邪魔しました!」 と吐き捨てて出て行ってしまった。 ニコが出て行ってしばらくの間しんとした部屋に1人しゃがみ込んだまま、俺は じわじわと溢れて来る後悔と呼ぶ気持ちをどうしようも出来ずにいた。 苦しかった。前にもこんなふうに部屋がだだっ広く感じた事を思い出す。俺馬鹿だ。 やっぱりニコに謝ろうと携帯を手にする。 「もしもしニコ?今どこ?……さっきはゴメン。戻って来て欲しいんだけど」 『……さっき来るなっつったじゃん』 「そこまで言ってないじゃん!……話がしたいんだ。迎えに行くからね、どこ?」 しばらくの沈黙の後だった。 『角のコンビ……』 パーーーーン!!!! その瞬間乾いた音が向こうから響いた。同時に何かが倒れる音、ガラスの割れた様 な音がして電波が途切れた。 「ニコ!ニコ!?」 聞き覚えのあったあれは……銃声! あの時あんな言い方をしなければ、あんなふうに帰さなければ、俺がもっと素直に なっていれば。 恋をする楽しみも失う怖さも知った俺なのに、いや、だからこそニコを失くす事ば かり考えて。 じゃなきゃ守る事が出来たのに。 自分に正直に俺らしくぶつけてみれば良かったのに。 そしてそれがニコと交わした最後の言葉になってしまった。 ガラス越しの集中治療室の中にニコは眠っている。 「どういう事なの!?あなたニコと一緒にいたの?何でこんな事になっちゃったの!?」 久しぶりに会った一海ちゃんは妹の変わり様に俺を激しく責め立てる。 慌てて俺が駆け付けた時には人だかりが出来ていて、緊迫した空気が流れていた。 運悪くコンビニ強盗に遭い、犯人はすぐ取り押さえられたが、ニコは犯人が脅しに 撃った銃弾に倒れてしまった。巻き込まれたのだ。 現場に来た救急車に勿論一緒に飛び乗った俺は、そのまま今まで病院でニコの家族 を待っていた。そして一海ちゃんにこうして問い詰められている。 「君、一海の次は二湖か!一体何を考えてるんだ!?」 「そうよ、どういう事なのか説明してちょうだい!」 ニコの両親もこんな事信じられないと、彼女の姿に泣きながら俺をなじる。 当然だ。 「とにかく、話はまたにしてくれ。今日は帰ってくれないかな。……今君の顔は 見たくないんだ」 何も言えなかった。ガラス越しに眠るニコを一目だけ見ると、病院を後にした。 翌日もその翌日も俺は病院に足を運んだ。 命は助かったものの意識が戻らず、当然会わせては 貰えないまま追い返される。 だけどいてもたってもいられなくて、諦めずに通い詰めて、ずっと待合室で居座り 続けていた。 数日後、意識は戻らないままだが集中治療室から個室に移る事になったと一海ちゃ んが見かねて声を掛けてくれた。一応一番危険な時は越えたらしい、良かった。 「あなた、ニコの事好きなんでしょう?」 口にした事のなかった言葉を一海ちゃんから聞かされて、俺はやっと自分の中の霧 が晴れた気がした。 「だったらあなただって辛いでしょう?」 黙って俺は頷いた。俺はニコが好きだったんだ。なのにそれを伝える前にこんな事 になってしまった。 「ニコ最近休日になると楽しそうに出かけるの。彼氏?って聞いても答えないから 知らなかったけど、あなたと会ってたのね」 ズカズカと遠慮なく上がり込んで来るニコを思い出す。気が付けば戸惑う一海ちゃ んの顔があった。 涙が止まらなかった。 肩を叩かれたのは翌日の事だった。 「ちょっと、出ないか?」 中庭のベンチに座って、ニコのお父さんは俺にパック牛乳を差し出してくれた。 「一海から聞いたよ。君は二湖と付き合ってるのか?」 いいえ、と言うと驚いた。だったら何故毎日ここにいるのかと問い詰められた。 「あの日ちゃんとニコに僕の気持ちを伝えていれば、もしかしたらあんな目に遭わせ ずに済んだかもしれないんです。俺大事な事ちゃんと言えなかったから。だから目 が覚めたらちゃんと謝って、僕の気持ちを伝えたいんです」 「君は……真剣に二湖が好きなのか?」 お父さんの目をまっすぐ見据えると、俺は大きく頷いた。 「ニコの事好きです。許してもらえなくても、ちゃんと償いたい。本当にすみません でした。僕のせいです!」 「いや、君のせいじゃないよ。たまたま、運が悪かったんだ……俺も言い過ぎた」 そう言って俺の肩をポンと叩くと、 「須藤君と言ったね?二湖が大事なら、ちゃんと会社へ行きなさい」 「えっ?」 思わぬ言葉にうなだれていた頭をあげた。 「二湖の気持ちは知らんが、男として社会人としてちゃんとしてる奴じゃなきゃ親と しちゃ大事な娘は任せらんないだろ?」 何かあったら連絡するから、と約束してくれた。俺はただ頭を下げる事しか出来な かった。 数日休んだせいでもう席がなくなる寸前だった。無職になったらニコに好きだなん て言えやしない。必死で頭を下げて、その日から死に物狂いで働いた。それはニコ を想う苦しみから逃れたい気持ちも確かにあって、また罪の意識は溢れて来る。 会社から病院へ直行してはニコの様子を見るのが日課になった。面会謝絶は解けた ので会う事も許された。時間ぎりぎりまで側にいて時々はそのまま居眠りしてしまっ て看護婦さんに怒られたりしていたら、お母さんから何かあったら必ず連絡するから と言って貰えたけど、それでもニコに一目会いたくて毎日通い続けていた。 夢の中のニコはいつもの様な生意気な口を聞いて俺をムッとさせる。なのに目覚め る度に動かない姿に涙が溢れて、切なくて。 必死で働いた成果が形になって手元に残った。今までになく頑張ったお陰で新規契 約が取れて報奨金が出たんだ。 そういえば家と会社と病院の往復で、ロボット収集がご無沙汰になっていた。さす がに今はそんな気分にはなれない。マックスを取り出すと眺めては鞄に戻す。 お金、減らないなぁ。珍しく財布が重い。 よく考えたらそれとテレクラ以外にお金遣う事あまりないかもしれない。それは全 部俺の楽しみと寂しさを紛わすためだけにしていた事、いわゆる自己満足。 街はクリスマスの飾りで賑わい始めてる。今年は一緒に過ごせるかと思ったのに……。 『女の子って何喜ぶの?』 それとなく会社の女の子に聞いてからかわれたりした。せめて何かしてやりたかった。 ニコはそんなもの望みはしないだろうけど、例えそれも自己満足でもいいと思った。 お陰で貧乏逆戻り。それ自体は毎度の事だったけど……。 残りの小銭をかき集めて、ニコと話した神社に行って手を合わせた。 願う事しか出来ない自分が情けない。 病室の窓に外のイルミネーションが映る。 「ニコ」 動かない手は少し細くなった気がした。その左手をゆっくり包むとその温もりを確 かめる。 それからスーツのポケットから取り出した物をゆっくりとその指に捧げた。 「クリスマスには早過ぎるし、素直に喜んじゃくれないだろ~し」 でもそれでもいい。 「早く、目を覚ましてよニコ」 他には何もいりません。 「戻って来てくれたら、俺何よりもお前を大事にするからさ」 だから、神様。 「レアフィギュアだってもう諦めてもいい」 お願いです。 「引き換えに全部捨てろって言うならそれでもいいから」 ひとつだけ、ただひとつだけ。 ニコを俺の所へ返して下さい。 「俺ニコが好きだ」 ただひとつだけ、俺の願いを叶えて下さい。 「………………ボ……?」 これは奇跡? 握り締めていた手にかすかに力がこもり、綺麗な瞳が俺を見上げている。 「ダメだよ……」 弱々しくもきっぱりとその声は言い放つ。 「ニコ!!!」 大声で俺は叫んだ。 「ロボ……捨て……ダメ」 ニコは必死で俺に何かを訴えている。口元に耳を寄せると、ゆっくりと言葉を続けた。 「捨てちゃ……ダメ……んな事……たら許さな……ら」 「こんな時に何言うの?俺これからはニコを大事にするって決めたから」 「だ……ら同じに大事にして……だって、そしたらこれからロボの事……何て呼べば ……いい?……」 俺をそう名付けたのはニコ。 宇宙で君だけが、今俺をそう呼ぶ事が出来る。 「ねえロボ……これ、ちょっと大きいよ?……」 俺の精一杯の気持ち。 「気に入らない?」 「……ていうかさ、あたしにはちょっとババ臭い」 「はあ~~!?ちょ、え~何その感想!俺凹む~」 ああ、やっぱりニコだよ。 「そのうち似合う様になるかな?……」 俺の手を握り返す。生きてるって実感が嬉しい。 「……あの日『迎えに行く』って言ってくれて、本当は嬉しかったの」 ニコの指にゆっくりとくちづけて俺は告げた。 「お帰り」 この手を離したくない。ずっとその温もりを忘れない様に。 それから数週間後ニコは退院し、日常生活に戻った。今では以前以上に当たり前の 様に俺達は一緒にいる。 そして更に数ヶ月後、目の前で座って俺を待っているニコの姿は、純白の衣裳に包 まれて。 あれからずっと病室の前で入るに入れないで待っていた、ニコの家族に叱られた。 叱られついでにニコをくれと言って益々怒られた。 きっと普通に考えたらいきなり過ぎるのだろう。だけど俺達はもう互いに代わり がいない事を知っている。 ニコの元に跪いて抱き締める。 「ずっとこうしたかった。……綺麗だ~♪」 「ありがと……でもロボ、七五三みたい」 「はあっ!?」 相変わらずの生意気振りに腰が抜ける。 「くっそ~、でも俺は愛してるぞニコ!……悔しいけど」 「うん」 本番前に誓いのキスを交わしながら考えた。 神様。 この世でたった1人きりの『取り替えられない人』 側にいる事が当たり前の幸せに気付かせてくれてありがとう。 そして、ニコをありがとう。 * * * * * * *終 3-410様 Robo へ続く
https://w.atwiki.jp/zizo/pages/22.html
※そのままコピーしてご使用ください 複数の地蔵 六地蔵 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ________________ | 六地蔵じゃ / ./ \ \_______________ / ./( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). \o〇 /_____/ .( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚) .\  ̄|| || || ||. |っ¢...|っ¢...|っ¢...|っ¢...|っ¢...|っ¢..|| ̄ || || || ||./,,, |ゝ/,,, |ゝ/,, |ゝ/,, |ゝ/,, |ゝ/,, |ゝ || | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| 六地蔵その2 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ________________ | / ./ \ \_______________ / ./( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). \ ヾ!;;; iii|//" /_____/ .( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚) .\ |;;;; iii|/゙  ̄|| || || ||. |っ¢...|っ¢...|っ¢...|っ¢...|っ¢...|っ¢..|| ̄ |;;;; iii| || || || ||./,,, |ゝ/,,, |ゝ/,, |ゝ/,, |ゝ/,, |ゝ/,, |ゝ || ヾwwwjjrjww!;;;; iii|jwjjrjww〃 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| wjwjjrj从jwwjwjjrj从jr 七地蔵(ミス) / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ___________________ | 失敗して七地蔵になったでござるの巻 / ./ \ \_______________ / ./( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). \o〇 /_____/ .( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚) .\  ̄|| || || ||. |っ¢...|っ¢...|っ¢...|っ¢...|っ¢...|っ¢...|っ¢.. || ̄ || || || ||./,,, |ゝ/,,, |ゝ/,, |ゝ/,, |ゝ/,, |ゝ/,, |ゝ/,,, |ゝ || | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| 分身の術(十二地蔵) / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ________________________________ | 分身の術! / ./ \ \_______________ / ./( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). ( ・ ). \o〇 /_____/ .( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚).( ゚Д゚) .\  ̄|| || || ||. |っ¢...|っ¢...|っ¢...|っ¢...|っ¢...|っ¢... |っ¢...|っ¢...|っ¢...|っ¢...|っ¢...|っ¢..|| ̄ || || || ||./,,, |ゝ/,,, |ゝ/,, |ゝ/,, |ゝ/,, |ゝ/,, |ゝ ./,,, |ゝ/,,, |ゝ/,, |ゝ/,, |ゝ/,, |ゝ/,, |ゝ|| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|