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結局俺たちは方々の体でコンビニから逃げ出し、 もう一度作戦を練り直してから再度佐々木のご機嫌取りに向かう事となった。 あーくそ、なんだってんだよこりゃ。 それにしてもこれ書いてる奴は、メタル絡めないとss書けんのか。自重しろ。 「うう…頭が痛いです…」 隣の橘は最早グロッキーモードだ。 どうやらさっきのヴァイオリンを弾くM字ハゲやら、 筋トレに励む自称声域4オクターヴのガチホモやらが こいつの精神をとかちつくちて、いや溶かしつくしてしまったらしい。 それはさておき、いったいどうしたらあいつの機嫌を直せるもんやら。 なにより、そもそもなんで佐々木がこんな事になっちまったのか、 その辺を聞きださないと話にならない。 駅前の石段に座り込んで頭抱えながらうーうー唸っている橘はとりあえず捨て置いて、 俺は町の中をうろついてみる事にした。 ひょっとしたら何かヒントになるものがあるかもしれないからな。 待ってるより探しにいったほうがマシってもんだ。 団長様直伝のアクティヴ精神って奴さ。 それからあちこちをうろつきまわって、いくつか分かった事がある。 まず第一に、ここは佐々木の世界だとはいうものの あいつが全知全能ってわけではないということ。 どうやら俺や橘がどこにいて何をしているか完璧に把握しているわけではなく、 町中に大発生したデタラメパソコンに直接触れるかもしくは相当近くに行かないと 俺の今現在の位置が分からないようだ。少なくとも『今のところは』。 そういえば俺が橘のマジカルノーパソで書き込んだとき、 初めて俺の存在に気づいたような口ぶりだったしな。あのちび佐々木どもは。 そしてもうひとつ分かった事。あいつはパソコンを使って音やら絵やらを こっちに見せる事はできるものの、直接俺たちをどうこう出来るわけではないということ。 だから脇腹をナイフで刺されたり、謎の洋館に閉じ込められたりってことは とりあえず心配しなくてもいい。これも『今のところは』。 で、最後に分かったこと。出来ればこれには気づきたくなかったんだが。 …俺がさっきから2回も『今のところは』と断りをいれたのは、 『これからどうなるか分からない』からだ。 これさえなければゆっくり寝そべりながら善後策を講じる事も出来たんだが。 それに気づいたのはSOS団御用達の喫茶店。 俺が何か手がかりになるものがないかと俺がそこかしこをひっくり返していたときだ。 佐々木が手出しできないと思って、俺はは安心しきって家捜しに勤しんでいたのだが。 『ブツッ、ブツ』 …スピーカーだ。いつもイージーリスニングを流したり、 客の呼び出しをしたりするのに使われるスピーカーから、何か音が出ている。 今までうんともすんとも言わなかったのにな。 『…を…るの…ら』 誰かの話し声だ。…この声は。 『今が千載一遇のチャンスだって、何でわかんないのかな』 『チャンスだって? 戯言はやめたまえ』 『そうだよ、キョンが自分から気づくかもしれないでしょ?』 『気づくわけないじゃない!』 『待ってたら日が暮れるどころか、ワールドカップが三回はできちゃうよ』 …なにやらひどい言われようだ。 ってそれより、何だこれは? なんで喫茶店のスピーカーの向こうで佐々木が一人芝居してるんだ? 事態を把握できず立ち尽くす俺の耳に、ガチャリと入り口のドアにロックのかかる音が聞こえた。 …え、ひょっとして俺、ピンチ? 『ほーら、これでオッケーでしょ』 『ちょっと、何してんの!すぐ開けて!』 『馬鹿な真似はやめたまえ。こんな事をしても、根本的解決にはならない』 『どうせ気づくわけないんだから、同じ事じゃない!』 『…キョン、今そこにいるんだろう? 少々まずい事になった』 『すぐ鍵を開けるから、早く逃げて!』 何の話だ?そんな早口でまくし立てられても何がなんだか分からん。 俺が首を捻っていると、先ほど念入りにロックのかかったドアが 豪快な火花とともに外へと吹き飛んでいった。 オーウ、ビバ・ハリウッド。 『ボーっとしてないで早く!』 『ノロノロしてるとぶっ飛ばすよ!?』 うお、なんかハルヒみたいだぞ佐々木。 つまり、だ。 俺が今見たことを総合すると、佐々木はゆっくりではあるが あのパソコン以外のものに対しても支配力を持ち始めているという事だ。 まずいな…あんまりゆっくりはできない。 で、なぜか俺は敵意を持って追いかけられる状況にある、と。 今はこうして街中をうろうろ出来たりするが、そのうちそうもいかなくなるんだろうな。 救いなのはどうやらあのブランチ佐々木連中の中で俺をかばってくれるのも 少なからず存在する、ということか。 しかし『気づく』だのなんだのってのは何の話だったんだ? 「それはどうやら、あなたに原因があるみたいよ」 橘か。復活早かったな。 「うー…正直まだ辛いんですけど、あんまりのんびりもしていられないみたいだし」 らしいな。 「なんでそんなに他人事チックなんですか、もう! …佐々木さんの意識の一部が大本の『幹』から剥離して動き出してるみたいです。 このままだと最悪、ここに閉じ込められたままかも…」 剥離?…なるほどな。今まで直接モノを動かしたり出来なかったのは、 実は『していなかった』っていうだけだったってことか。 あいつが無意識のうちにセーブしてたんだな。 今になって思えば、一番最初に俺が見たあの掲示板の荒れようは、 佐々木の一部が暴走する前兆だったわけだ。 「しかし…正直いって、これは異常事態です。 いままでこんな事なかったのに」 いままで、ねぇ。そうだ、聞きたい事があったんだった。 「橘、ひとつ聞いていいか?」 「? なんでしょう?」 「お前、『いままで』っていったよな。 ……いつから佐々木は、こんなけったいな事をやり始めたっていうんだ」 「…最初に佐々木さんの精神に変調がみられたのは一週間ほど前。 あたしたちにこの『力』が授かったのは、三日ほど前の事です」 三日前か。いったいそのときに何があったんだろうな。 「あなたを呼んだのは、そのあたりの話を聞きたかったというのも 理由のひとつなんです。 …佐々木さんに、なにをしたんですか」 何をしたってお前、俺が加害者なのは規定事項だとでも言うつもりなのかよ。 やれやれ、そんなこといったって俺には全然身に覚えがないんだよな… 俺は自分の潔白を心から信じていたものの、何か手がかりを探せないものかと あまり性能の良くない灰色の脳細胞から記憶をたどり始めた。 最後に、佐々木と会ったときの記憶を。 その日は、あの部活なのかどうかよく分からない不思議戦隊SOSの会合が いつもより早く終わったので、俺は久々に本屋でも寄っていこうかと 商店街へ自転車を飛ばした。 さて、いざ本屋についてみると、駐輪スペースに見慣れた影が。 「佐々木か?」 一瞬びくりとして振り向いたその端正な顔は、 間違いなく中学時代において俺の一番の親友であり、 また不思議存在のお導きで最近になって再開を果たした佐々木、その人だった。 「やあ、キョン」 おい待て、これはいったい何事だ? …振り向いた佐々木は顔色が真っ青で前髪が汗で額に張り付いているという、 絵に描いたような「具合の悪い人」だった。 いったい何があったんだろうか。 「…このところ寒暖の差がはげしくてね…少し調子が悪いんだ」 俺の疑問を察したか、佐々木はそういって力なく笑った。 …そうなのか? 俺は全然そんなの気がつかなかったな。 なんつったって身近に太陽よりよっぽど暑苦しい 人間スーパーノヴァがいるせいかもしれんが。 「…ああ、彼女はいつだってプロミネンスを吹き上げていそうだものな。 僕にはちょっと、真似できそうにないよ」 別にハルヒの真似なんざして欲しくはないがな。 人間それぞれのよさってのがあるもんさ。 「…昨今流行の、オンリーワンとか言う世迷言かい? 不思議存在を身近に抱える人間にしては凡庸この上ない台詞だね」 いいだろ、別に。それにお前が何を勘違いしているかは知らんが、 俺は徹頭徹尾凡庸な一般人だぜ。 「そうか、そうだね…」 「? なんか今日のお前は変じゃないか?」 なんというか、棘のあることを言ったかと思えば弱弱しくも見えたり。 こんな不安定な佐々木を見るのは初めてかもしれない。 「なんでもないよ、変だとすればそれはきっとキミのほうだ。 …ああ、すまないけど今日は急ぐんでね、このあたりでお開きとしたい」 まあ、それはかまわんが。あ、そうだ佐々木。 「…なに?」 むう、目が怖いぞ。 「お前その右手、どうしたんだ?」 そう、さっきから気になっていたのだ、佐々木のやたら線の細い腕、 その右手の手首から肘近くまでぐるぐると無雑作に包帯が巻いてあるのだ。 しかし、どうもかばっている様子は見られなかったし、何より普通に 自転車のハンドルを握って帰ろうとしてたってのがどうにも解せない。 「!」 …俺が尋ねたとたん、佐々木は一瞬体を震わせた後、呆然とした顔でこちらを見た。 その様子は、何か信じられないものでも見たような、具体的に言うなら 部下と妻の浮気を目撃した課長のような、驚愕と絶望を一緒くたにした どろどろの釜の底みたいな顔だった。 …今日は始めてみる佐々木の表情が多いな。 くそ、こんな新鮮さなんて誰が欲しがるかよ。 佐々木はそのまま自転車に飛び乗ると、呆然としている俺を尻目に 一目散という言葉そのものの勢いで走り去っていった。 「…こんなところで、満足か?」 「んー……」 橘はレトロな探偵のように、顎に手を当てたポーズで黙り込んでしまった。 似合ってないぞそれ。 「もう、ほっといてください! ……ところで、包帯を巻いてたって言いました?」 「おう」 「…正直、思い当たる点がないわけではないんですが」 本当かよ。どれだけ名探偵なんだお前は。 「推理でもなんでもないのです。 …というより、男の子はこういう話に興味がないのが当たり前だもの」 男が、興味のない話? ますますもって分からんぞ。 「正直、あまり佐々木さんのイメージには合わないんですが… 一言で言ってしまえば、これはうr」 『余計な事言わないでくれる?』 底冷えのする声に振り返ると、近くのマンションに部屋の明かりで 「ssk」の文字が浮かび上がっていた。器用だな。それなんてラー○フォン? 『橘さん、私の名誉に関わる事をあんまり言いふらしてほしくないの』 普段は夕焼け小焼けを鳴らすしか仕事のない街灯上のスピーカーから 佐々木の声が聞こえてきた。 『やめなよ!キョンが分かってくれるのが一番だって言ってるじゃない!』 『しかし確かに、当初のルールではキョンが"自分で"気づくのが条件だ』 『こんなのノーヒントでやられて、わかるほうかどうかしてるよ!』 『さて、橘さん。多分あなたが思い至ったのは正解。 でも、だからといって現状をかき回して欲しくない。ということで、 あなたには少し枷を与えるわ』 突然、橘の口の中にどこからか飛来した青い光が飛び込んだ。 慌てて逃れようとするも、光の帯はたっぷりと飲み込まれてしまった後だ。 「た、橘! どうした!」 「ヴェ、ヴェーイ?」 「…は?」 一瞬沈黙が訪れた。 『あははは、橘さん、余計な事喋れないようにあなたの発声器官を狂わせたの。 大丈夫よ。キョンがゲームをクリアしたら戻してあげるから』 「ヂョッドゥ、ザァザァギザァン! ナルスヅンディス!」 「な、なんだってー!!!」 『んーじゃあね、キョン。私たちがキレちゃわないうちに、 一週間前様子がおかしかった原因を当ててみて』 さりげなく物騒な事を言うんじゃない。 『ナンセンスね。こんなノックスの十戒に全力で逆行しているようなロジック、 解けるわけがないわ』 『そんなのいまどき守ってる人いないよ…』 『それに、どうしても解けなかったら救済措置も用意してある、そうだろう?』 『…で、でもキョンにあんなこと話すの…その、恥ずかしくないの?』 なにやら佐々木たちは内輪で盛り上がっている。しかも電柱のスピーカーからのサウンドオンリーだ。 冷静に考えるとなかなかシュールな光景だなこれは。 『はーいじゃあ回答してくださーい!』 『おーぷん!』 もうかよ。30秒ぐらいしかたってない。いくらなんでも早すぎるだろ。 まてまて、落ち着け俺。何かしら解決の糸口があるはずだ。 じゃあここまで出ているヒントをおさらいしてみよう! 1・腕の包帯。 終了…! 「分かるかそんなもん!」 『えーもう降参しちゃうのぉ~?』 『もう少し、執念というか必死さと誠意を見せて欲しいものだけれどね』 『所詮私はあなたにとってその程度の女なのね…』 な なにをいう きさまらー! ……っておい、待て待て待て待て。どれだけ凶悪な謎解きだよ。た○しの挑戦状かこれは。 おい橘、何かヒント… 「エエドゥ、ア゙ドディスベ」 …そうだったな。すまん。俺が悪かった。 ……ってちょっと待てよ? 「橘、お前さっきのノーパソはもってるか? もしかしてあれで筆談とかできるんじゃ…」 一瞬小首を傾げた後、橘は猛然とキーボードに超高速で指を走らせ始めた。 しかし十秒もたたないうちにその動きが止まる。 「? …どうした?」 橘の頭越しに見た画面に書いてあったメッセージは… 【水着はビキニなんだ!】【俺の下はスタンド!だ】 …意味不明だった。 「…スヴィバゼン、ゴディラルボゼイゲンガア゙ヅヴィタイ」 あー、要するに書くのもプロテクトがかかってるのか。 朝比奈さんの禁則事項よりタチが悪いな。 『ねー答えられないの?』 おっと、このダディヤァーナザァンより問題はこっちだったな。 『じゃ、罰ゲームね』 罰ゲームだと?ちょっと待て、もう少しヒントがあったって 『ぼっしゅーと!』 足元の抵抗が消え、体が極めて適正に位置エネルギーを消費していくのを感じながら俺は、 「スーパーひとしくんの服が赤いのは返り血のせい」 なんていうくだらない都市伝説を思い出していた。 「キョン、ねえ起きてってば」 ん…なんだ、部屋にはいるときはノックぐらいしなさい。 「ちょっと…なに寝ぼけてるの?」 そんなんだからお前はお子様なんだよ…。ミヨキチを見習え。 「みんな、帰っちゃったよ。ほら、おーきーろー」 「…ぉが?」 机に突っ伏してた体をゆっくりと起こす。下敷きにしていた腕がちりちりとしびれた。 いつの間に寝ちまったんだ? それもよりによって教室で。 寝ぼけ眼で視線を360度パンさせる俺を見て、佐々木が心配そうに声をかけてくる。 「いや、なんでもない。ちょっと夢見が悪かったんだ」 そう、と佐々木は笑って、俺の顔を横から覗き込むようにして近づいてきた。 長いポニーテールが揺れる。 「なんかさー、あんまり気持ちよさそうだったから起こすのもかわいそうかなって」 なんか複雑な気の使い方だな。HRからこっち何十分もアサガオのように観察されてたって言うのは、なかなかきついものがあるぞ。 「大丈夫だって。見てたのは私だけだから」 それもどうなんだろう。こういうときには現代人のアパシーに喝采を送りたくなるが、 特定の一人に見られっぱなしって言うのもな。 「それよりほら、早くいこ? 校門閉められちゃうし」 確かに、外はもう夕日すらおぼろげになるほどの暗さだった。 陽が延びはじめるこの時期、これは相当な時間だと言う事だろう。 ちなみに何気なく時計を見たらなんともう六時を回りかけてた。マジかよ。 「こんな時間まで待ってたのか」 たたき起こすなり、場合によっては先に帰ってもよかろうに。 「やーだ。一人で帰ってもつまんないし、」 そこで佐々木は薄く笑うと、芝居がかった調子でくるりと一回転して、 「それに…もう待つのは慣れちゃったよ」 む…それを言われると弱いんだよな。 「でも、やっぱり結果オーライでよかったかなって。今、すごく幸せだもん」 …よくそんな顔から5100度の炎が出そうな台詞を臆面もなく言えるものだ。 なんとなく気恥ずかしくなって、俺は手早に教科書類を鞄に詰め込んで席を立つ。 「ちょ、ちょっと待ってよ」 後から追いかけてくる佐々木ににやけた顔を見られないように、俺はわざと早足で歩いた。 意地が悪いとか言うなよ? 流石にこんな不審者じみた表情、 彼女といえども見せられないってもんさ。 後ろから佐々木がやれ冷たいのだの優しくないだの文句を言ってくる。 でもそれは決して俺を攻めるような調子ではなく、谷口あたりが聞いたら恨みがましい視線を照射され続けるであろうタイプの雰囲気だった。 まったく、勘弁してくれ。これじゃ変に両端がひん曲がった口の形が直りそうにない。 まあいいさ。どうせこの校舎内には誰もいないんだ。なぜか知らんが、部活もみんな休みだもんな。教師たちだって出勤してきてるか怪しいもんだ。 そっけない俺の態度に不平不満を言い続けていた佐々木は、下駄箱のところでやっと追いついてきた。 革靴の爪先をトントンと地面に叩きつけながらしばらくフグみたいな膨れた顔で俺をにらんでいたが、 一分としないうちにプッと噴出した。なんだ失敬な。 「やっぱりさ」 「うん?」 「キョンって、なんか変だよね」 「…綽名のことなら、なにを今更って感じだがな」 「そうじゃなくってさ、ほらなんというか全体的に」 言うに事欠いてなんてことを。まあそれはきっとあれだ。 恒常的に変なものを食ってるからじゃないか? 「…そんなこと言うなら、もう作ってきてあげないよ?」 冗談だ。それにあれのおかげで助かってるからな、ほら、食費とか。 「そうは言うけどな、お前も大概変だぞ」 「そうかなあ?」 「ほら、恋愛感情は――――――」 精神病。恋愛感情なんて、精神病。 その誰が言ったか分からないフレーズが、頭蓋骨の裏に油性ペンで落書きしたように こびりついて離れない。誰だ? そんな不届きなこといったのは。 「? なに?」 「いや、なんでもない」 ほんとうに、だれなんだろうな。 何か引っかかるものを感じながら、俺は佐々木と肩を並べて坂道を下っていく。 なんだか今日のこのデイリーアスレチック坂道は、一歩歩くたびに体が地面に潜り込んでいくような感覚を覚えさせてどうも落ち着かない。 なんだろう。どうして、俺は。 あの夕日が作り物だなんて思ってしまうのか。 「ねえ、キョン」 「…どうした?」 「今、しあわせ?」 どうやら佐々木は俺の情緒不安定ぶりをしっかり感じ取っていたらしい。 ああくそ、そんな切なげな眼で見るんじゃない。 心臓が胸郭を突き破って出てくるかと思ったじゃねえか。 …本当に今日の俺はどうかしてるな。普通なら絶対しないようなことまで今なら難なくできてしまいそうだ。 「俺が、幸せ以外の何に見えるってんだ」 そう言って佐々木の華奢な腰に手を回して引き寄せる。おいそこ、甘いとか言って悶えるんじゃないぞ。 …しかしこいつは本当に細いな。このナローバンドの中に内臓がちゃんと格納できるものなのだろうか? 「キョ、キョン?」 佐々木が上ずった声を出す。ええい取り乱すな。まあ一番混乱してるのは俺だろうが。 考えてもみろ、こんなクサい台詞とアクション、いまどき韓国ドラマぐらいでしかお目にかかれないようなのを高校生男子がやってるんだぜ。 そりゃあ頭もフットーしそうになるってもんだ。 「…なんか、我ながら安いヤツだなあ、私」 「?」 俺の何の脈絡もない行動にすっかり言葉を失っていたかと思いきや、佐々木はなにやら妙に落ち着いた、 寂しげだがどこか冷めたような声で話しかけてきた。 ……というか、自分自身に言い聞かせるような口調だ。 「このぐらいで、もう心が一杯になっちゃう。 もう最高に幸せってくらいに」 …このぐらいってお前、純情な少年が勇気を出したってのに。 そんな軽口は出てこなかった。佐々木の顔は、言葉とは裏腹にとても悲しそうだったから。 まずい。それ以上喋ると。 「うれしかった。ありがとう、キョン」 なんだよ。何で泣いてるんだ。おい 「じゃ、あとはよろしく。バトンタッチね」 前を行く佐々木はぬいぐるみを抱えたままスキップでもはじめそうな上機嫌で商店街を抜けていく。 今日は日曜日、平日とは比べ物にならないほどの込みようだが、 佐々木は器用に人波を掻き分けていく。おい、少し待てって。 「ほら、なにグズグズしてんのキョン! 置いてくよ!」 …まったく、あの元気はどこから沸いてくるのやら。 8-823「奴はペインキラー-1」 8-823「奴はペインキラー-2」
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17スレ目 その6 626 名前:VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774[sage] 投稿日:2007/06/28(木) 23 12 04.38 ID iKbhNBso 鶴屋さんと聞いて飛んできました 好きだけど三姉妹と話に絡ませにくくて悩む ついでにみくる描く練習していたがどうにも似なくて困る ttp //scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/image/mitu.jpg 次は6ページくらいの漫画でハルヒと朝倉さん話行くよー 766 名前:VIPにかわりましてパー速からお送りします[sage] 投稿日:2007/07/15(日) 19 33 50.86 ID ciUZRrYo 正直順番つけるのは好きじゃない。やっぱり皆仲良くが一番だ あっちで意見見てこれは描くべきと思ったけどこっちに逃げ ttp //scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/image/gni.jpg 絵が不調だ困った 796 名前:VIPにかわりましてパー速からお送りします[sage] 投稿日:2007/07/22(日) 19 21 42.88 ID MhA6It6o まぁ気にするなと背景頑張ったけどやはりヘタレな私が言ってみる 取り敢えず新企画の白ワンピな喜緑さんを置いていきますね ttp //scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/tfei301.jpg 絵にちなんだSSを書いてたけど間に合わなかったんだ・・・ 次は朝倉さん→長門の順番で行く予定
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ep.04 彼女の想い (side sasaki) 目覚めたのはベッドの中だった。遮光カーテンのせいで部屋は暗い。枕元の時計を見るとまだ五時過ぎだ。 私は昨日彼が買ってくれたパジャマを着ていた。彼がベッドに運んで、朝倉さんが着替えさせてくれたのだろうか。 床に敷いてある布団は空だった。寝具は乱れておらず、そもそも人が寝ていた形跡が無い。 喉の渇きを覚えた私はよろよろとベッドを降りてキッチンに向かう。 昨夜の頭痛は治まっていたが、頭の中に靄がかかっているようで、状況をはっきりと認識できない。 キッチンのライトをつけ、勝手に冷蔵庫を開けさせてもらう。麦茶があったので台所においてあったコップに注いで喉を潤す。 これは昨日彼の家で飲んだものと同じだ。してみると、あの麦茶も朝倉さんが作ったものなのだろう。 ただの友人がわざわざ家に来て麦茶を作って冷やしておいてくれるとは考え難い。 やっぱり、彼と朝倉さんはつき合っていて、もしかすると男女の仲なのかもしれない。 友人だの護衛だのというのは、私を安心させるために言ってくれただけなのかも。こんな私なんか…… どうも私は一度ネガティブな方向へ思考が向くと際限なく負のスパイラルに墜ち込む人間のようだ。 いけないいけない。今は彼の言葉を信じて、いつか私が昔のことを思い出したら、また彼と一緒に…… 私は何気にリビングの方を見た。そして、早朝に目覚めた自分を呪った。 リビングにあったソファーがマットレスのように展開されていて、そこに彼が寝ていた。 その隣には彼にぴたりとくっついて朝倉さんが寝ている。広がった豊かな黒髪に隠されて顔の部分は見えないが、 覗きに行く勇気は私には無かった。 やっぱりそうなんだ。嘘つき。私には色気も胸も、ついでに記憶も無い。こんな私よりも朝倉さんの方が良いに決まっている。 私は何を期待していたんだろう。私の彼氏だったなんてうまいことを言って、きっと私を何かに利用しようとしているに 違いない。どうして? 何故? また頭の中がぐるぐるしてきた。 空になったコップをキッチンの台に置くと、カタンと意外に大きな音を立ててしまった。そのせいか、朝倉さんがぴくっと 動き、素早い動作で起き上がってこちらを見る。 私は逃げようとしたが、目が合ってしまい動けなくなった。朝倉さんも、しまったという表情でこちらを見ている。 私は何か言おうとしたが、口が動かない。ついでに体も動かない。朝倉さんは立ち上がるとこちらに向かって歩いて来る。 嫌だ。来ないで。 「本当にごめんなさい」 寝室のカーペットの上に座った朝倉さんが頭を下げる。ベッドに座った私は、何も言えないままそれを見ていた。 「本当に彼との間には何も無いの。わたしが一方的に好きなだけ」 「信じられません。だって、二人はどうみても以心伝心だし、お似合いじゃないですか」 何をしていたかは質問できなかった。口にすることで自分が惨めになりそうだから。 朝倉さんはふるふると首を振った。 「そう見えるのは嬉しいけど、本当に何も無いの。でも……」 朝倉さんは眠っている彼にこっそりキスしたことまでは認めた。だが、彼に何かそういうことをしてもらったことは 無いのだとも言う。全く信じられない。 「それはね、キョン君の中にずっと佐々木さん、あなたがいたからなの」 「私が?」 「そう、キョン君は自分にだけ残されたあなたの記憶をとても大切にしていたの。わたし達がこれまで解析して 判明した彼の特殊な能力のひとつがその記憶の保持なの。わたし達の仲間に喜緑さんという主に事件の後処理担当の インターフェースがいて、彼女は極めて高い情報操作の能力を持っているのだけど、その彼女をもってしても彼の 記憶には手が出せなかったそうよ。彼はあなたが消える前に情報操作をしたと思っているけど、本当は違うの。 キョン君は自分が能力的には一般人だという信念があるから、わたし達がそうだと言っても笑って取り合ってくれない でしょうけど」 「彼の能力については理解できましたけど、もし朝倉さんのことを本当に好きではないのなら、もっとつれない態度をとる べきだと思うんです。私が見た限り、彼はあなたにとても優しいと思いますけど」 朝倉さんは淋しそうに微笑む。 「それはね、キョン君のもう一つの特殊能力のせいなの。彼はどんな属性の相手であれ、ありのままを受け入れ、 普通に接することができるのよ。涼宮さんや昔のあなたのような世界改変能力者、長門さんや私のような宇宙人、 それに未来人や超能力者でも怯えたり恐れたりせずに普通に接してくれるの。普通の人間であれば抱くであろう 感情を彼は持たないのよね。ただ、彼は女心には極めて鈍感なくせに紳士的でもあるから、彼に好意を抱いた 特殊な属性をもつ女の子達は苦労しているのよ」 朝倉さんの話は私を元気付ける内容ではなかった。私も特殊な属性を持っていたらしいが、今は認識できない。 それに彼の周囲には朝倉さんに勝るとも劣らない女性達が何人もいるようなのだ。 その中で私が選ばれた理由が分からない。記憶が戻れば分かるのかもしれないが、分かることが怖いような気もする。 「だから佐々木さん、あなたはキョン君を信じて、キョン君の傍にいてあげて。わたしのことは気にしなくていいから」 朝倉さんはにっこりと笑みを浮かべる。でも、私にはその笑みがひどく悲しいもののように思えてならなかった。 「朝倉さんは本当にそれでいいんですか?」 朝倉さんの笑みが消えた。 「佐々木さん、あなたって優し過ぎて残酷だわ」 朝倉さんはそこで言葉を切ると、目を伏せて一気に想いを吐き出し始めた。 「それでいいわけないでしょ。本当はわたしだってキョン君のこと大好きなんだから。誰にも渡したくないって思ってるん だから。せっかくこうしてキョン君と二人でいられるようになったのに、あなたが現れたらキョン君はあなただけを見て しまう。キョン君の傍にわたしの居場所はなくなってしまう。そんなのは嫌なの。わたしがそんなことを言う資格がない のは分かっているけど、でもどうしようもないの」 「……」 朝倉さんが本当に彼のことを好きなのは痛いほど分かった。彼女は宇宙人かもしれないが、その感性と感情は人間の 女性と変わらない。いや、これほど一途に素直に自分の気持ちを吐露できる人間の方が少ないかもしれない。 私はどうなんだろう。今の私には彼との記憶がない。彼は今も私のことを愛してくれているのだろう。けれども、今の私の ぼんやりとした頭では彼に対する気持ちもぼんやりとしたままだ。 朝倉さんは袖でごしごしと涙を拭った。 「ごめんなさい。取り乱したりして。わたしはクールでさばけた性格のインターフェースとして構成されているはずなの。 だからこんなになるのはおかしいのよね。わたしってやっぱり不良品なのかな」 私は思わずベッドから降りて朝倉さんの手を取っていた。 「朝倉さん、今の私には記憶が無いから自信がないの。もし私がこのままだったり、記憶が戻っても前のように彼に 接することができないのなら、私に遠慮しなくていいわ」 朝倉さんは一瞬ポカンとしたが、すぐに厳しい視線を私に向けた。 「あなたそれ真面目にそう思ってる?」 「ええ」 私がそう答えるなり、弾くような勢いで朝倉さんは私の手を振りほどくと、睨みつけてきた。 「冗談じゃないわ。そんな簡単に諦めるなんてわたしは許さないから」 「え……」 「あなた、キョン君の気持ち考えてる? 誰もあなたのことを覚えていない、あなたに関する情報が全て消えている 絶望的な状況の中で、この二年間、ずっと大事に大事に守ってきたあなたへの気持ちを。 それなのに、あなたがそんな気持ちでいるんじゃキョン君が可哀相よ。 あなたは何が何でも記憶を取り戻さないといけないの。キョン君の気持ちに応えてあげないといけないのよ。 そういう風に思えないのなら、今度こそ完全に消えちゃってよ。できればキョン君の辛い記憶も一緒に消してあげて。 最初から諦めてダメだった時のことを考えてどうするのよ」 朝倉さんは真剣な目で私を見つめている。彼を愛するがゆえに、報われなくても彼の幸せを願っている朝倉さん。 それにひきかえ私はどうなんだろう。最初から一歩ひいてる。どうすればうまくいくかを考える前に、うまくいかなかった 時のことなんか考えて。 「……そうね。ごめんなさい。私が悪かったわ。記憶が戻るように頑張ってみる。もし、戻らなくても彼を信じてついて いけばいいのよね」 そう、記憶が戻るに越したことはないが、戻らないからといって彼を諦める必要は無い。 「そうよ、佐々木さん。わたしもできる限り応援するから頑張ってね。 あ、わたしが応援するのは、もちろんキョン君のためにだけどね」 朝倉さんの笑みがまた淋しげになった。 彼が起き出してきた時には、私達は朝食の準備をほぼ整えていた。 朝倉さんの料理の腕は大したものだ。昨夜もそうだったが、とても宇宙人とは思えない手際の良さで、次々と 魔法のように作られていく。私も手伝ったが、お世辞にも手際が良いとは言えない出来だった。 「佐々木さんにも手伝ってもらったのよ。どれが彼女の作品か分かる?」 「うーん、どれも見た目では朝倉のと区別がつかんな」 そんなに朝倉さん作の朝食を味わっているんだろうか。何も無いと言われても、どうしてもまた疑ってしまう。 彼は次々とおかずに箸をつけていく。そして、玉子焼きを頬張った瞬間に彼の顔色が変わった。素早い動作で もう一切れの玉子焼きを食べてから彼は私に顔を向けた。 「この玉子焼きは佐々木の味付けだな」 「うふふ、さすがね。正解よ」 朝倉さんがにこにこして応じた。 「佐々木、お前は覚えていないだろうが、中学の時に弁当持参のイベントがあると毎回お前が弁当を作ってきて くれてな、いつも入っていたのがこの玉子焼きだったんだ。懐かしいぜ……」 彼が急に目頭を押さえたので、私は何か変な味をつけてしまったのかとドキドキした。 「ああ、すまん……いや、何というか、見た目や声だけじゃなくて、今のお前が昔のお前だって証拠が手に入った ような気がしたんだよ」 「あら、そうなんだ。良かったじゃない」 朝倉さんはまたにこにこしているが、何となく淋しそうに見えるのは、朝の一件があったせいでそう見えるのだろうか。 いや、恐らくはこうして証拠を見つけるたびに、そして私の記憶が戻るたびに朝倉さんは辛い思いをするのだろう。 朝食が終わると彼は着替えと今日の講義の準備があると言って、一人で自分のアパートに戻って行った。 二人とも大学に行くので同じ電車に乗る約束をしている。いつもそうしているそうだ。一人でいても仕方がないので、 私も一緒についていって待つことになっている。歯を磨いた私は、後片付けを手伝おうとキッチンを覗いた。 朝倉さんが玉子焼きが載っていた皿を手にしてじっと見つめている。私が傍にいるのにも気付かない様子で、 唇をぎゅっと噛みしめて。私にああは言ったが、やはり割り切れないのだろう。 彼のこと、そして私も覚えていない彼と私の時間。 「朝倉さん、洗い物は私がしましょうか?」 私が声をかけると、朝倉さんは飛び上がらんばかりにびくっと反応した。 「え? あ、ああ、いいのよ。わたしがやるわ」 慌てて皿を洗い桶に入れる朝倉さん。皿がぶつかり合って派手な音を立てる。 自分がやると言ったのに、朝倉さんの手は止まっていた。 「朝倉さん、やっぱり彼のことを?」 「ごめんね。あんなこと言ったけど、そう簡単には諦められないわ」 暗い表情で俯く朝倉さんを見て、ここにいつまでも世話になるわけにはいかないなと私は思った。 これ以上私がここにいると朝倉さんはもっともっと辛い思いをするだろう。 今日上京して来る長門さんや古泉さん達にも相談し、なるべく早くこの家を出よう。 私はキャンパスのベンチに座って、二人が講義を終えて出てくるのを待っていた。 五月もそろそろ終わりで、陽射しは既に夏の色を帯びているのだが、幸い今日は薄曇で気温も高くない。 行き交う学生達を眺めながら、もし私がそのまま彼と一緒にいたら、今頃は学生としてこのキャンパスにいたかもしれない などと想像してみたりする。 私の服は朝倉さんが貸してくれたものだ。サイズがちょっと大きかったが、情報操作でフィットするように直してくれた。 こういう時には便利な能力だ。私が着ていた服は二年前の流行のものだから、こういうところで着て歩くには気が引けるし、 彼が買ってくれたものはいわゆる部屋着の類なので、今日の午後にまた買出しに行く約束だった。 お茶のペットボトルを傍らに置き、彼が貸してくれた文庫本を開いていると、何度も声をかけられた。ジャニーズ気取りだが どうみてもお笑い芸人にしか見えない人達にナンパされたり、怪しい宗教勧誘に声をかけられたり、妙なバイトの話を持ち かけられたり。どれも撃退するのは簡単だったが、いろんな人がいて大学というのは面白いところだ。 そういえば、これから私はどうすればいいんだろう。両親が私のことを覚えていてくれれば家に帰ることもできるだろうが、 彼の話を聞く限りそれは難しいようだ。私は存在しないことになっているのだから。できればどこかの高校に編入あるいは 高卒認定をとって大学に入りたい。敷居は高いが、ここに入れればベストだろう。彼と同じ大学に通えたらいい。 あ、私は二年後輩になるのか。生まれたのは18年前だけど、実年齢は16歳だから。 いや、もっと大切なことを忘れていた。私はどうやって生活費、そして学費を稼げばいいんだろう。 存在しないはずの人間がつける仕事など高が知れている。彼に全面的に頼るわけにもいかない。 彼も学生だから学業が本分なのだ。これ以上迷惑をかけるわけにもいかないだろう。 自分がいかに無力でちっぽけかを思い知らされる。体一つで異世界に放り出されたようなものだ。 幸い頼れる人達がいるだけマシだけど。 文庫本はさっきから全然ページが進んでいなかった。私は小さく溜息をつく。ああ、いけない、暇そうにしていると 声をかけられてしまうから、文庫本に集中しているふりをしていろと言われていたのだっけ。 「すまん、待たせたな」 彼の声がしたので私は顔を上げた。彼の隣に朝倉さんが寄り添うように立っている。同じ講義だと言っていたから 一緒にいるのは当然なのだろうが、並んでいる姿はとてもお似合いだ。教室でも並んで講義を受けていたのだろうと 思うと、ちょっと妬けてしまう。 お昼は学校の近くの定食屋に連れて行ってもらった。学生風の男女で溢れかえっている店は賑やかだ。 おすすめのものを教えてもらい注文するとすぐに出てきた。値段と量と出てくる早さが命で、味は二の次なのだと彼が言う。 それでも十分においしかったが、小食の私は結構残してしまった。すると残ったものを彼が食べてしまう。 私が唖然としていると、 「いや、すまんすまん、つい昔の癖でな」 中学の頃、給食で私が食べきれない分をいつも彼にあげていたのだそうだ。 朝倉さんの方をちらっと伺うと、また淋しそうな顔をしている。 「お、キョン、珍しいな。今日は奥さん以外に連れがいるのかよ」 レジに並んでいると彼と同じくらいの年恰好の男子学生が声をかけてきた。『奥さん』というのは朝倉さんのことだ。 事情が事情だけに仕方ないのだろうが、いつも朝倉さんと一緒にいるから夫婦呼ばわりされるのだろう。 「ああ、ちょっと知り合いの娘さんに大学を案内しているんだよ。この子は試験休みなんだ」 彼は適当な話をして誤魔化す。 「へえ、奥さん以外にもこんなに可愛い子が知り合いにいるなんて羨ましいぜ。お嬢さん、是非ウチに来て下さいよ」 男子学生は軽口を叩いて店の奥に行ってしまった。 店を出ると今度は眼鏡をかけた女子学生が声をかけてくる。 「涼子、寝坊でもしたの? お昼が外食なんて珍しいじゃない。いつも愛妻弁当なのに」 朝倉さんがうろたえた表情で口をパクパクしているのをニヤニヤしながら見ていた女子学生はそこで私に気付いた。 「あ、お連れさんがいたのね。こりゃ失礼。じゃあね~♪」 なるほど、普段は朝倉さんと二人仲良く彼女が作ったお弁当を食べているのだと把握した。 何でこうもモヤモヤした気分になるのだろう。自分では分かっているつもりだったのに、いざ彼と朝倉さんが仲良く している証拠を見せつけられると不安になってしまう。 「おーい、佐々木、待てよ」 待ってあげない。私はキャンパスの通路をずんずんと歩いて行く。どうせ私なんかあなたの相手に相応しくないんだ。 朝倉さんみたいに細やかな神経を持った尽くすタイプがお似合いじゃないの? 「おい、何を拗ねてんだ。ガキじゃあるまいし」 「どうせガキですよーだ。私はまだ十六なんだから」 「あ……そうか、すまんすまん、今のお前はまだ高二だったんだよな。すっかり同級生のつもりでいたぜ」 彼は照れ隠しに頭を掻いた。なるほど、そういうことか。彼は私を同い年として扱い、私は彼を年上の男性として 意識していたのだ。彼の遠慮のなさは同級生の気の置けない相手に対するそれだったのか。私はそれを子供扱いだと 思い込んでいたようだ。でも、どっちが正しいのだろう。今でも違和感があるのに、記憶が戻ったときのことを考えると頭が痛い。 「ここで待ってろよ。次の講義は大教室なんで出席とったらすぐに出てくるから」 彼はそう言い残してまた朝倉さんと一緒に教室棟に入って行く。以前は部外者も入れたのだが、最近いろいろ物騒なので 教職員と学生以外を入れないために入口でカードを通すようになったのだそうだ。 大教室での講義も出席はカードでとるのでカードリーダーに通したら出てきてしまっても出席扱いになるのだと彼は言った。 大学生なので講義を受けないことによるリスクは自分でヘッジしろということだろう。朝倉さんのことだから講義の内容は 後でも分かるよう何か細工をしているだろうし。 私はまたベンチで文庫本を読んでいるふりをする作業に戻った。 「失礼ですがお一人ですか?」 また声をかけられた。正直鬱陶しい。ちらっと上目遣いで見ると、ホストみたいな恰好の人だ。 この手のナルシストじみた人は気持ち悪くて嫌いだ。無視しているとさらにしつこく話しかけてくる。 この大学にもこんな変なのがいるとは思わなかった。 「しつこいですよ。私は待ち合わせしてるだけですから、あなたとお話しする気はありません」 「へえ、待ち合わせ? もしかして相手も女の子かな?」 馴れ馴れしいのも嫌いだ。無視しているとホストみたいな人は携帯で誰かと話している。数分後、ホストの数が 三人に増えた。 「キミ高校生でしょ。こんなところで遊んでていいのかなー」 「ヒマならお兄さんたちといいことして遊ばないかい?」 「キミみたいな美人が一人淋しく待ち合わせなんて似合わないよ」 もう鬱陶しいを通り越してウザい。腕に触れようとして伸ばされた手を叩くと、一人が怒り出した。 「ガキのくせにお高くとまってるんじゃねーよ!」 私はチラッと喚いているホストまがいの方を見て、また文庫本に目を落とした。次の瞬間、強引に手を引っ張られる。 「きゃっ」 私は振りほどこうとしたが、力では全然かなわない。怖くて声も出ない。 「あなた達、わたしの可愛い後輩に何しているのかしら?」 背後で朝倉さんの氷のような声が聞こえた。 「おい、あれ政経の朝倉涼子だぜ」 「すげー、美女二人まとめてゲットだぜ」 ホストまがい達のヒソヒソ声が私の頭上で聞こえる。私たちはポケモン扱い? 「あのー朝倉さん、せっかくなので俺達につき合ってくれませんかね」 無謀な発言が飛ぶ。無知ゆえの傲慢とは良くも言ったものだ。 私は腕をつかまれたまま必死に首を回して朝倉さんの方を見る。 朝倉さんは哀れむような微笑をたたえてこちらを見ていた。圧倒的な実力差を認識している者の余裕の微笑みだろう。 「その子を離してくださる? わたしとしては穏便に済ませたいのだけど」 「その前に是非俺達と一度つき合ってもらえませんかね?」 「うん、それ無理♪」 朝倉さんが明るい口調でそう応じ、愛らしい笑顔を浮かべると、周囲の様子が一変した。 薄曇の空は極彩色が渦巻く天井に変わり、四方にもいつの間にか壁が出来ている。 「うわっ、何だこれ?」 「マジかよ」 ホストまがい達がうろたえた様子で喚きたてる。 「おい、体が動かねえぞ?」 それはお気の毒に。私は動けるので、彼らの手の中から簡単に抜け出した。 「佐々木さん、今のうちにこっちへ来て」 言われなくてもそうする。私が彼女の背後に駆け込むと、朝倉さん手の中に光の粒が集まり、昨日見た アーミーナイフが構成されていく。朝倉さんはふふっと笑うと、宙に浮き上がり三人の方へ飛んで行く。 物理法則って何それ状態の光景を見て本当にこの人は人間じゃないんだなと私はのんびり考えていた。 「うわーっ」「ひいいい」「やめろー」 彼らの悲鳴が上がる。朝倉さんが戻ってくると、動けない彼らのズボンがずり下がっていた。 いえ、正確にはズボンとその下にはいていたものもずり下がっていたわけで…… 「あらあら、レディーの前でご開帳なんてはしたないわよ」 「ひいいい」「やめろー」「化け物だー」 「失礼ね。わたしは化け物なんかじゃないわよ。さて、次はどうして欲しいか教えてくれる? 二度と悪さできない ようにその股間の矮小で不快なものを切断してあげましょうか? それともすっぱり頚動脈を切って楽にして あげましょうか? ねえ、死ぬのって怖い?」 朝倉さんは楽しそうに彼らに話しかける。この人は間違いなくサディストだ。宇宙人にも特殊な性的趣味を持つ 個体がいるということなのだろうか。 「ひいいい」「たすけてくれー」「ママー」 何か変な叫び声が聞こえたが気持ち悪いので聞かなかったことにする。朝倉さんは再び宙に浮き上がると 彼らの周囲を二周ばかり回って戻って来た。彼らの服の背中がばっさりと切り開かれる。 「今度やったらそのラインから胴体を真っ二つにしてあげる♪ あ、記憶操作するから忘れちゃうわね。ま、いいか」 音符までつけて言う内容ではないと思うが、次の瞬間周囲の風景がきらきらと光る粒に変換され、その眩しさに 思わず私は目を閉じた。 眩しさが消えたので目を開けると周囲は元のキャンパスに戻っていた。 唯一違うのは目の前に下半身を露出し、失禁して気絶している先程の三人が転がっていたことだ。 すぐに女性の悲鳴が上がり、野次馬が集まって来る。 朝倉さんは何事も無かったかのように澄ました顔で私の手を取ると、 「行きましょ」 とだけ言って教室棟の方へ歩き出した。 「おいおい、こりゃ何の騒ぎだ?」 教室棟の入口で出てきた彼と鉢合わせる。 「佐々木さんをナンパして連れ去ろうとした身の程知らずが三名ほどいたので、ちょっとお仕置きしたのよ」 「あーお前またやったのか。長門からお咎めがあっても知らないぞ」 「佐々木さんを守るためには仕方がなかったのよ。申請も通ったし問題ないわ。まあ、むしゃくしゃしてたから 少々遊ばせてもらったけどね」 「お前なあ……」 彼は呆れ顔になっていたが、不意に朝倉さんの耳元に口を寄せると何事か囁き、朝倉さんの顔が真っ赤になる。 後で何を言われたか訊いてみたのだが、朝倉さんは恥ずかしいからと、どうしても教えてくれなかった。 私達は服の買出しに行くために、校門前のバス停に向かっている。 安心したら急に怖くなった私は彼の腕にずっとしがみついていた。 「あいつらは多分付属から上がってきた連中だな。まともな奴も多いが、どんなバカでもエスカレーターで 入学だけはできて、しかも金持ちのボンボンが多いからどうしようもないのもいるんだ。 だがな、佐々木、女の子一人で野郎三人に喧嘩を売るなんて無謀にも程があるぞ」 「ごめんなさい」 彼の言うとおり、相手を挑発したのは私だ。人を見る目が甘いといわれたら返す言葉がない。 「でもキョン君、彼女を一人でいさせた私達にも責任があるわ。たまたま私が良いタイミングで戻ったから 良かったけど。これから彼女の安全を確保しないといけないと思うわ」 彼は朝倉さんの発言に頷く。 「そのとおりだが、恐らくそれは古泉の仕事だな」 三人で駅ビルやらデパートやらをはしごして私の服を買い揃える。 お金は朝倉さんが出してくれた。出所は訊かないほうが良いだろう。 高校生が普段着るのに良さそうな服が大部分だが、ちょと背伸びしたのも一揃い買った。 それに下着やら小物類やらも併せて買ったので結構な荷物になった。最後にアクセサリー売り場に寄る。 彼が高校生がしていても問題ない程度のリングを買ってくれた。 「それをつけてりゃ特殊な趣味の奴はともかく良識ある奴は寄って来ないだろうからな」 彼は冗談めかして言ったが、左の薬指に指輪をしててもいいんだろうか。 「いいなあ、佐々木さん。ねえ、キョン君、わたしもリング欲しいんだけど」 朝倉さんが甘えた声で彼に言う。 「買ってやらないことはないが、お前絶対それつけて大学に来るだろ。これ以上誤解されるのは俺が耐えられんぞ」 「もう、意地悪なんだから」 朝倉さんは冗談めかしているが、本心なんだろうな。 44-99「―佐々木さんの消滅―」 44-99「―佐々木さんの消滅―ep.00 プロローグ」 44-101「―佐々木さんの消滅―ep.01 消失」 44-120「―佐々木さんの消滅―ep.02 訣別」 44-134「―佐々木さんの消滅―ep.03 二年前の少女」 44-157「―佐々木さんの消滅―ep.04 彼女の想い」 44-182「―佐々木さんの消滅―ep.05 特異点」 44-235「―佐々木さんの消滅―ep.06 二人だけの記憶」 .
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「『食』がおきる」 へ? 「『食』」 ………。 「長門さん、困っていますよ。ちゃんと説明しないと」 「……『蝕』のこと」 「『しょく』? 一体どういう字を書くんだ?」 「『食』とは天体が別の天体に見かけ上重なり、相対的に奥となる天体が見えなくなる現象。 見かけ上重なる原因は観測地点となる場所が惑星などそれ自身が動いているために起きる場合と……」 「長門さん……。簡単にいうと日食や月食ですね。」 ああ、やっとわかりましたよ喜緑さん。これでも長門の言いたいことは誰よりもわかっているつもりですが お仲間にはかないませんよ。 「いいたいことはわかりました。で?」 食がおきたらどうなんだ? 「『食』がおきる事によってわたしたちの能力が制限される。」 ??? 「長門さん、あなたが説明する、いつも通りだから大丈夫っていうから任せたのにそれじゃ伝わりませんよ。 まさかいつもそんな説明なんですか?」 「……まだ説明の途中。途中で止めるべきではない」 「………いいでしょう。続けてください」 ……えっと。 3点リーダーが充満する長門の部屋。 金曜の放課後、ハルヒの 「いい、キョン! 明日の集合に遅れたらおごり以外に罰金よ!」 という既定事項通りだとさらに金欠になる事が決定した命令をうけ帰宅の途について数分後、長門が目の前に現れた。 先回りか? ワープでもしたかもしれん。長門なら何でもありだ。 「話がある。家まで来て欲しい」 俺が長門の頼みを断ることがあるだろうか、いやない。ただ直接口頭で伝えられるとは意外ではある。 そこで冒頭の会話となるわけだ。 「この銀河を統括する情報統合思念体からのアクセスが食によって妨げられる。そのため情報操作能力がなくなる」 なんだ? 太陽電池か何かか? 「だいたいその認識で合っている。正確には様々な条件が重なった結果」 「宇宙パワー無しか……ってことは何かあった時まずいんじゃないか?」 「まずい。ただ現在最も危険視される天蓋領域も同時に食に入るため最悪の事態は避けられると思われる」 ふむ、となると 「問題は涼宮ハルヒ。彼女の機嫌を損ねるわけにはいかない。また機嫌がよくなりすぎて暴走させてもならない」 「長門さんの場合それだけじゃないんです」 「まだあるんですか?」 「喜緑江美里、それは今回言わないことに………」 「長門さんは黙って。というか長門さんが問題なんでしょ?」 ? 「我々が人間界で生活する上でも情報操作は便利な力です。」 「勉強しなくても成績が上位だとかスポーツでも優秀だとか?」 「それもあるんですが、長門さんは 「喜緑江美里、それ以上は」 長門さん、黙って」 いつもと違って何故かあせっている様子の長門。 恐ろしく貴重な風景だ。 「長門さんは少しばかり人間生活をさぼって 「やめて」 いーえやめません! いい機会です。彼に全部聞いてもらいましょう」 おいおい、長門がオロオロし始めたぞ。 「困る。言わないでほしい」 「あのー、一体……」 「長門さんは日常生活でも情報処理を多用しているんです。例えば彼女がトイレに行ったのを目撃したことありますか?」 なっ! ってあるような? つーか意識しとらん。 「つくられた存在とは言え私たちも人間ベースの有機生命体ですからトイレは必要です。 ただ長門さんは情報操作で極端に回数を減らしています」 「なぜトイレの話からするのか理解できない。他にも汗やくしゃみなど例があるはず」 焦った様子の長門。おいおい、一体どうなってるんだ? 普段のポーカーフェースはどうした。 内容が内容だけに恥ずかしいのはわかるが。 「他にも色々。睡眠時間を圧縮させて読書の時間に充てたり、教室の掃除をしなくて済むようにくじを操作したり 家の掃除は空間を操作して済ませていますね。」 なんとまあ。正直うらやましい話だな。やっぱり教室掃除はしていなかったのか。 「私たちは涼宮ハルヒの観測のためにあらゆる妨害を排除する必要があります。 涼宮さんに降りかかる厄介事はもちろんですが、私たちに降りかかる厄介事も排除する必要があります。 例えば涼宮さんや私たちがいじめにあうような事や、 痴漢暴漢犯罪者の類が近づかないように情報操作を行う許可を得ています。 ところが……はぁ」 喜緑さんは長門を見て溜息をつく。小さくなる長門。 自分のためだけに情報操作を行うのはあまり推奨されない行為なのか? 「もちろん全くダメってわけじゃないですし、多少、いえ滅多な事で罰は受けたりしません。 涼宮さんに何も影響を与えないのなら総理大臣や世界皇帝になってもいいんです」 ハルヒの力を奪い、世界を一変させ、親玉さえ消し去った長門が無事存在していられるんだから 情報思念体とは太っ腹だと思っていたんだが。一応ルールはあるんだな。 ん? あれは思いっきりハルヒに影響を与えていたんじゃないか? 「あれはあれで。まあいいじゃないですか」 なんかごまかされたぞ。 「とにかく、長門さんは普段情報操作を使い過ぎているんです。 だから今回のように10日間も情報操作が使えないのは非常に困るんです。」 「10日間もですか!?」 「あ、言ってませんでしたね。今日の19時0分42秒2……適当でいいですよね。 今日の7時過ぎから10日後の月曜日午前5時まで食に入ります。」 「あと10分ですか」 「ええ。長門さん、ほら」 かすかにモジモジしながら長門が俺を見る。う、ちょっと可愛いかもしれん。 「……………………お願いします」 「……お願いされました。何を?」 「んもう! 長門さん! ちゃんと言いなさい!」 古泉は喜緑さんは長門のお目付け役だといっていたがこれを見る限りお姉さんだな。 「………サポートを依頼したい。これから10日間、面倒かける。お願いします」 最後だけ敬語か。いやかまわん。 「いつも長門には世話になりっぱなしだからな。それくらい任せてくれ」 「感謝する」 「だからといって長門さん、全部頼っちゃ駄目ですよ」 「努力する」 この時俺は後の大騒動に発展するとは思いもよらなかった。 「間もなく時間」 「用意はいいですか?」 こくん、とうなづく長門。そして 「来た」 7時0分42秒が過ぎたらしい。一見長門と喜緑さんに変化は……ん? 長門の表情がどう見ても不安そうだ。そう、まるであの時の…… 「長門さん?」 「だ、大丈夫。問題ない」 喜緑さんも不安そうな顔だがこれは長門を見ての反応のようだ。 「本当に大丈夫なのか、長門? 顔色悪いぞ」 「へいき。不安なだけ。本当に平気。じきに慣れる。大丈夫」 声が裏返ってなかったか? 「本当に大丈夫。大丈夫! だいじょうぶ!! だいじょうぶ!!!!」 「有希ちゃん! 落ち着いて! 安心して!」 おい! 全然大丈夫じゃないだろ!! 初めて聞く長門の大声、震えだし、目や首をきょろきょろさせ、縮こまりだした。長門落ち着け! 慌てて喜緑さんが長門に抱きつく。長門は喜緑さんにしがみついてガタガタ震えている。 「申し訳ありません、お茶を用意していただけますか」 俺はあわてて台所に走った。 「落ち着いたか?」 「ありがとう。大丈夫」 今のお前の言葉には全く説得力がないんだが。 力を失っていきなりパニックに陥った長門が回復したのは2時間後。 その間お茶を淹れたり、ガタガタ震える長門に掛け布団をかぶせたり、長門の冷たくなった小さい手を握ったり、 母親からの帰宅が遅いとの怒りの電話に対応したりと大騒ぎとなった。 最後のがある意味一番大変だったな。 「申し訳ありません。いきなりこんなことになって」 恐縮する喜緑さん。いえ、あなたは悪くないですよ。 「しかし困ったな。長門、とりあえず明日は休め」 「駄目。涼宮ハルヒが不審がる」 布団の中から弱弱しい答えが返ってくる。 「いや、実際調子悪いだろ? お前が外でパニックになる方が心配だ」 もし探索の組み合わせが長門とハルヒだった場合……ハルヒがどう出るかでヤバいことになるんじゃないのか? 「もう平気。状況に慣れてきた」 その後も俺の意見を頑として受け入れず、長門は明日探索に参加することになった。 どう考えても不安なんだが長門の希望だ。それにハルヒは長門のことを大事に思っている。 おかしなことにはならないだろう。 「んじゃ帰るわ。喜緑さん、よろしくお願いします」 「本当にありがとうございます」 最後に喜緑さんと電話番号を交換し、確認をする。 「あの、このことは朝比奈さんと古泉に教えてもかまわないんでしょうか?」 「かまいません。というかもう知っているかも」 やっぱり。 「わたし達に情報操作能力がなくなったことを知って 彼らの機関や調査員がわたし達に危害を加えるかもしれませんから先に伝えています」 え? それって逆に相手に襲ってくださいって言っているようなもんじゃ? 「ええ。なので先手を打っています。もしわたし達の誰かが傷ついた場合食が明けた途端、 うふふ、これ以上は禁則事項です♪」 ……喜緑さんは優雅に口元に人差し指を当てた。朝比奈さんとは違う方向で色っぽいんだよなあ。 関係ないが喜緑さんは普段、長門の事を「有希ちゃん」って呼んでいるんだな。 二人の隠された親密度を垣間見てなんだかほんわりした。 帰宅すると母親からねぎらいの言葉をかけられた。喜緑さんが連絡をしてくれていたからだ。 貧血をおこした長門を介抱していたことになっているらしい。 さすが喜緑さん。と、同時に疑問が湧く。 俺の知っている宇宙人の仲間は3人。 長門、朝倉、喜緑さん。 最後に馬脚をあらわしたとはいえ、いやその本性も結局のところ人間らしかった朝倉。 おとなしいというよりおしとやかで、礼儀正しい喜緑さんはカマドウマの時のように演技もできる。 長門は? なぜ長門はあんな性格なんだろうか。 10分前にいつもの集合場所に着いた時、ハルヒの第一声は 「ええ!? あんたが最後じゃないって!?」 だった。 普段なら失礼な! と憤るところだが…… 動揺を見せないように出来るだけ自然に尋ねる。 「ん? 俺が最後じゃないのか? 誰が来ていない?」 見渡す。朝比奈さん、古泉 「有希がまだ来てないのよ」 不安そうにハルヒが辺りをうかがう。 「まだ時間にはなっていませんからね」 俺に意味ありげな視線を送りつつ古泉がこたえる。 「誰でも遅れることはありますよ」 「だけど有希に限ってそんなことありえる? あの有希よ?」 今回に限ってはありえるんだよ。 最初に見つけたのは朝比奈さんだった。 集合時間を5分過ぎ、ハルヒが携帯電話を取り出した時 「あ、長門さんじゃないかな?」 駅の中からトテトテと小柄なセーラー服の姿が走ってきた。 「有希!」 いつもの様子から想像もつかない、普段もあまり整っているとは言えない前髪は乱れ汗した額にへばりつき、 ぜぇぜぇはぁはぁと息を乱し肩で息する長門。……眼鏡!? 「どうしたのよ!?」 「はぁはぁ、ね、寝坊、ごめんあさい」 舌も回っていない。 「ちょ、ちょっと落ち着いて! 休憩しましょ!」 あわてていつもの喫茶店に入ることにする。 最初のお冷をおかわりし、2杯目を飲み干すことでやっと長門が落ち着いた。 「で、有希。本当にどうしたの?」 「寝坊。起きれなかった」 「夜遅くまで本でも読んでたの?」 「えっと、そう」 受け答えもぎこちないが息が整っていない感じでうまい具合にごまかされている。 そしてくじ引きは最初から予想された最悪の組み合わせとなった。 さすがハルヒ、不思議を呼び寄せる能力は半端ない。 いざ出発の段となって長門のパワーダウンぶりを見せつけられた。 「ルールはルール。わたしが払う………あ」 眼鏡をかけた表情が曇る。また『あの』長門を思い出してしまった。 「どうした長門?」 「財布を忘れた。パスケースを忘れて取りに帰ったから余計に遅くなったのに、財布も忘れていた……」 長門の顔がさらに曇る。まずい、またパニくるかもしれない。 「わかった俺が「あたしが立て替えといてあげる!」ってハルヒ!?」 「最後に来た人がおごるのがルールだから免除はナシよ。だけど財布忘れちゃったなら仕方ないじゃない。 今日の有希の支払いはお昼も含めて立て替えといたげるからね。いい?」 「いい。ありがとう」 心底ほっとした表情の長門。 ふぅ、なんとかこの場はしのげたな。 「んじゃあ、あたし達はこっちに行くから」 「おう。……長門、無理するなよ」 うなづく長門。ちょっとハルヒが俺を睨んでいたような気がするが。気がするだけだ、うん、気のせいだ。 「さて古泉、それと朝比奈さん、どこまで知ってますか?」 「とりあえず場所を変えませんか。ここではちょっと」 古泉の勧めで駅前から離れ別の喫茶店に移動する。そんなに飲物ばかりいらないんだが。 「我々は再来週の月曜日まで長門さんたちが力を使えない、その間TFEIに危害が加えられた場合 報復があるので手出しは厳禁、と聞いています。」 喜緑さんに聞いた通りの内容だ。 「未来からはこれから10日間、細心の注意を払うように、って指示が来ています。 あと長門さんたちを襲わないように強制コードがかかりました。 詳しくは禁則なんですが強制コードは強力すぎるため滅多なことでは発令されません」 いつぞやのお使いゲームの時はその『滅多』なことだったんですね。 古泉がいつも通りのさわやかスマイルで俺に問う。 「あなたはどうやって知ったんですか? 長門さん本人からですか?」 それ以外ないだろ。 「喜緑さんというラインもありますからね」 この野郎、見てたろ。2人から説明されたのを。 「いえ、考えられる可能性を言っただけなんですが。まさか両方とは思いませんでした」 ……こいつはスパイの口を割らせる側に就職すればいい。 いや俺が引っ掛かりやすいだけかもしれないな。 「昨日、力が使えなくなってからどうも長門が不安定なんだ。どうやら不安らしい」 パニックになったことは伏せておこう。 「だからこれからしばらく長門に気をつけてやってほしい」 「もちろんです。今まで長門さんに頼りっぱなしでしたからね。感謝と恩返しの意味でも力の限りフォローしますよ」 「あたしもです」 古泉が額に指を当てた考え込むポーズをとる。 「涼宮さんが何か勘づく可能性がありますね」 「そうですね。普段完璧な長門さんが遅刻していますから、涼宮さんの注意が行っているはずです。 あたしたちも長門さんと話をあわせとかなきゃいけませんね」 古泉がさらに何か言いかけた時、俺の携帯が鳴った。ハルヒから!? まだ別れて1時間も経っていないぞ。 『ちょっとキョン! すぐにきて! 川沿いの遊歩道! 前に映画撮ったとこ!』 それだけ言うとすぐ電話が切れた。 まさか長門が!? 不安がよぎる。 「有希がへばっちゃったのよ。そんなに歩いたつもりはなかったのに」 青い顔をした長門がハルヒに膝枕されている。 見えそうになるパンツはスカートの上にハルヒの上着が掛けられしっかりガード。 まあ隠すという用途以上に温めるために掛けられていそうだが。 「長門、体調がわるいんじゃないか? だから遅刻やら倒れたりしたんじゃ……」 「大丈夫、平気」 長門は俺の言外の帰って休めという意図をくみ取ることが出来ないようだ。 「今日はもう帰って寝た方がいいと思うんですけど。顔色悪いですよ。熱はありますか?」 朝比奈さんが長門の額に手をあてる。 「ないですね」 朝比奈さん、赤い顔ならわかりますが青い顔なら熱はなさそうなんですが……。 しかし朝比奈さんの優しさが伝わってくる光景です。 「キョン、有希のピンチに何で鼻の下伸ばしてんのよ!」 「いや、そんなんじゃ」 「大丈夫、だいじょうぶ、だいじょうぶだから」 またヤバい兆候だ。出来るだけ刺激しないように長門を諭す。 「長門、じゃあこうしよう。取りあえず飯だ。休憩しよう。実は俺、腹が減ってきた。」 まだ11時だがな。 「そうですね、今の時間なら店も空いているでしょうし、いいタイミングかもしれません。涼宮さん、そうしませんか?」 ナイスだ古泉。 「そうね、そうしましょ。有希、行くわよ」 「だいじょ「団長命令よ」…わかった」 長門よ、お前が意外と強情なのは知っているが今日は意固地すぎるぞ。どうしたんだ。 普段の健啖ぶりは見られず、長門のランチは半分ほど残された。 「長門、やっぱり帰った方がいいと思うぞ」 「あたしもそう思います」 「大丈夫」 大丈夫が口癖になってるな。 「いいこと思いついたわ! 午後の活動は有希ん家で読書大会よ!」 「なに!?」 ハルヒがとんでもないことを言い出した。いや、意外といい考えかもしれん。 自宅ならもし長門の調子が悪くなっても寝るだけだから問題ない。 しかし 「こ、困る」 長門がオロオロし始めた。すがるような眼鏡越しの眼で俺を見る。 「ん、なんで? 片付いてないの?」 「そう。片付いてないから困る」 「そっか。寝坊して慌ててきたってことはぐちゃぐちゃね。片付けてあげよっか?」 「い、いらない」 「遠慮は無用よ?」 「いらない」 「そっか。んじゃ昼からの活動は映画鑑賞にしましょ」 『映画』という単語の響きだけで朝比奈さんがひぃ、と小さく叫ぶ。 「みくるちゃん、どんな映画がいい?」 気付けよ、ハルヒ。 「へぇえ、何でもいいですー」 朝比奈さんまでおかしくなってる。 解散後、すぐにハルヒに呼び止められた。 「今日の有希どうだった? 絶対普通じゃなかったわよ。」 さすがハルヒ、っていうかすぐ分かるな。 「ああ。体調というかなんだか調子悪そうだったな」 「どうしちゃったのかしら。大丈夫かなぁ? やっぱり一人暮らしだから? たまに手伝いに行った方がいいのかな? そうだ! 泊まり込みでってのも面白いかも!」 お前が遊びたいだけじゃないのか? 「わかった?」 嬉しそうに笑うハルヒ。すぐにまじめな顔に戻る。 「有希も寂しいんじゃないかな? 確かに静かなのが好きなんだろうけど。テレビも無いし。 だけど寂しく感じる瞬間もありそうじゃない」 否定しかけて思いとどまる。そう言えば前もそんな事を感じた気がする。 しばらく他愛のない雑談のあとハルヒは用事があるから、と帰っていった。 さて、俺も長門の家に行かないと。 長門の家の前で古泉と合流する。 「てっきり中にいるものだと思ってたが?」 「片付けが終わるまで待って欲しいと。涼宮さんはなんとおっしゃっていましたか?」 「長門の不調を心配している。体調不良だと思っているようだ」 「入って」 長門がドアを開け、俺たちを中に招き入れてくれる。そして和室を指し一言、 「こっちの部屋には入らないでほしい」 長門よ、余計な事は云わない方がいいと思うぞ。 「……うかつ」 長門は見た目上落ち着きを取り戻している。が普段の冷たさというか硬さが感じられない。 なんだか病み上がり感というか、……ふにゃっとしている感じがする。 「お茶をどうぞ」 一緒に片付けをしていたらしい朝比奈さんからお茶を頂く。ありがとうございます。やっと落ち着きましたよ。 「で、長門、どうなんだ? 遅刻とかは本当に体調不良じゃないなのか?」 「それは……」 赤面し言い淀む長門。う、ちょっとかわいい。 「遅刻は本当に寝坊。いつもは目覚まし時計は不要だが情報統合思念体の……」 そこで止まる。そうか、喜緑さんが言っていたのはこのことか。 「片付けをする暇もなかったんですよね」 「い、言わないで」 「あ、ごめんなさい」 慌てる長門の姿は本当に貴重だ。 あとは体力面だがこちらも情報統合思念体のアシストがなくなったたらしい。 「いきなり体力が下がっても体の使い方はすぐには変わりませんからね。 いつも電源アダプターをつないでいるノートパソコンが停電でバッテリーだけになったようなものですか」 古泉、お前はやっぱり解説係なんだな。 「学校は大丈夫か? 体育もだが登校の道のりもだ。結構長い坂道だぞ」 「それくらいなら何とかする」 「学校を休む手もあるが。忌引きとかどうだ?」 「無理。学校に連絡する保護者がいない。情報操作もできないので担任を説得しきれない」 そうか。それは盲点だった。じゃあ入院も無理だな。……おい、本当に病院に行く事態になったらどうするんだ? 「大丈夫。保険証はある。その他必要がありそうな証書類は最初から用意してある」 なら安心だ。 もし何かあったらすぐ連絡するように、と長門に念を押しマンションを後にする。 「一応機関が病院を抑えていますので何かあった場合すぐ対応できます」 古泉が今後の万が一を想定して、と語る。 「もし長門が倒れたとして解剖だの調査だのはしないのか?」 「確かにそんなことを主張するグループもいることにはいますが」 肩をすくめながら続ける。 「食が明けたとたん地球滅亡なんてことになったら目も当てられません。 情報統合思念体にとって涼宮さんを捨てるという選択肢もありますから」 確か長門はハルヒを『自律進化の可能性』と言っていたな。 可能性がない、または天秤にかけて価値が低いとなれば地球の存在などどうでもいい話となる。 なんにせよ長門が無事無難に過ごしてくれれば問題ない。 「あの~、大きな出来事はないと思います。未来で情報統合思念体の食関係での事件は聞いていません。 隠されている事実がとかがあったとしても、大事件ならその影響が必ずどこかに現れるはずですから」 朝比奈さんの太鼓判を押してくれた。朝比奈さん(大)も来ていませんし。そうですか、なら安心です。 日曜、そろそろ昼飯時かと思っていたら長門からヘルプの要請があった。 買い物に付き合って欲しい、ということだ。お安い御用だ。どうせ用事も無かったしな。 と、軽い気持ちで出かけたが、 「おい、お前の家は何人家族なんだ?」 「いつもこれくらい購入している」 いやいやいや!? 業務用のカレー缶1カートンをいつも買ってるのか? つうかどうやって持って帰ってるんだ? 車じゃないぞ? 「失念していた。いつもは、……何でもない」 絶対に情報操作だな。 呼び出されたのは小売りのある問屋で、いつもここであのカレー缶を買っているらしい。いいなここ、今度親に教えよう。 だが長門が買った量が問題で 「困ったぞ。荷台に乗りきらん」 「ごめんなさい」 でかい段ボール箱と米10kg。だからいつもはどうしてたんだよ。 荷台と前かごにカレー缶、サドルに米を載せなんとか運ぶことができ、遅い昼食を長門に振舞ってもらう事になった。 当然この持ち帰ったカレーだ。まあ普通にうまいからいいか。 玄関を開けてもらい台所へ……行けなかった。長門、何故とうせんぼする? 「荷物は玄関でいい。申し訳ないが玄関で待っていてほしい」 凄い早口で焦り気味な長門。そうか、呪文を唱えてる分鍛えられてるのかな。 今度は赤パジャマを言ってもらおう。黄巻紙の方がいいかな? って、 「なんでだ!?」 「……」 何も言わず台所の扉が閉まった。 台所からはガチャガチャと音が聞こえる。ははん、また片付けていなかったんだな。 ガチャン!! ……今のは絶対割れたな。 「長門!?」 「問題ない。大丈夫」 どういう意味で大丈夫なんだろうか? ようやくリビングに入れてもらい席に着く。和室を指さし、 「この部屋は覗いてはだめ」 ちょっと意地悪を言いたくなるな。 「いろいろ放り込んだからか?」 「違う。ちょっと待って欲しい」 目が泳いでるぞ。長門は逃げるように台所へ姿を消した。 ……目が泳いだ長門を見るのは二度目だ。 あの、長門が作り上げた世界。あいつは誰にも文句ひとつ言わず一人で何もかも抱え込んでいた。 今回長門が俺を頼ってくれたことは素直にうれしかった。 限度はあるだろうが、もっと俺たちを頼って欲しいもんだ。 いつぞやの、朝比奈さんと3人で食べたカレーが目の前にある。 違うのは朝比奈さんがいないのと 「その量はさすがに少なくないか?」 「問題ない。残りは晩に食べる」 いや、カレー缶の残量はどうでもいいんだ。お前のカレーの量は茶碗で収まるぞ。 そして 「指を切ったんだな」 「! だ、大丈夫」 なんだ、その「バレた!」的なリアクションは? 左手で右人差し指を押さえ、手の隙間からティッシュの端が見えている。どう考えてもおかしいだろ。 「本当に大丈夫か? 見せてみろ」 「大丈夫」 こいつの場合、多少無理しても「大丈夫」「問題ない」で押し通す傾向があるからな。 朝倉の攻撃やミクルビーム食らった時も大丈夫だと言っていたがどう見ても大惨事だったぞ。 今回は宇宙パワーがないだけに非常に心配だ。 「いいから見せてみろ。ガラスか瀬戸物を割ったんだろ?」 「大したことはない。気にしないで」 埒が明かん。強引に長門の手を取る。 「あ」 小さめの手、人差し指の指のはらに小さな切り傷があった。 「んー、血は止まってるな。絆創膏はあるか? 買ってくるぞ?」 「い、いい。もう大丈夫」 慌てて手を引っ込めて、また目を泳がす長門。まるで悪いことした幼児のようだ。 「いいか、長門」 ここは言ってやらないとな。 「別に怒ってるわけじゃないぞ。なにか起きたら俺に言ってくれ。 普段なら自分でなんとかできるんだろうが、今回は無理なんだろ? 今までお前に世話になってるし、いくらでも手伝うさ」 「あ、ありがとう」 若干顔を赤らめる。 確かに人に物事を頼むのは勇気がいるかもしれないが、 俺がそのハードルを下げる役割をやってやる。 他ならぬ長門、お前のためならいくらでも頼まれてやるさ。 ついに平日が始まった。あの長門の調子だと非常に心配だ。登校後、自分のクラスに行く前に6組をのぞく。 長門はまだ来ていない。朝から部室に行っているのか?嫌な予感がして長門の携帯に電話をかけてみる。 ………出ない。呼び出し音がするから電源が入っているのは間違いない。 登校中でカバンの中で鳴っているのに気付いていないだけだろう。まさかな、と思い家の電話にかけてみる。 ……1……2……3…… ところで電話の呼び出し音は何回くらいで諦めるもんだろうか? 留守電になったら出ないのは確実だが5、6回目くらいでいないのかと思い 切ろうかと思うがいやまて、あわててキッチンの火を消したりしてたらちょっと遅れるかもとも考え 結局俺は10回をめどにし 『………』 やっぱり10回位は必要だな……って、え!? 「長門! お前なんで家にいるんだ!?」 『え。 あっ!』 「OK、長門。遅刻は確実だ。開き直ってあわてず 『ガチャンガチャゴトゴト……タタタタ…パタパタパタ…ドタン!…ゥゥゥ…パタパタ…』おーいながとー!」 受話器を投げてあわてて準備を始めているのだろう。まずいなあ。 「キョン?」 げぇ、ハルヒ! 「なんで6組なんて覗いてるわけ? ひょっとして有希目当て? あんたあたしに隠していやらしいこと考えてない?」 「い、いやなんだ、その、本だ! あいつに本を借りる約束しててな」 「あんた本なんて読んでたっけ?」 「失敬な。んで『いやらしいこと』ってなんだよ?」 「え、な、何でもないわよ!」 「へ~」 「信じてないなこのバカキョン!」 話を逸らせたことと予鈴によってこの場は何とかごまかせた。 1時間目の退屈な数学。なんとか俺は自我を保ち板書をノートに書き写していた。 ハルヒはとっくに夢の世界へ。よく見つからないな。 そんな時、廊下側に動く影が目に入る。長門!? 俺のクラスを通り越していく小柄な影。 数秒遅れてざわつく隣のクラス。 長門よ、本当に心配だ。 ようやく休み時間となり、待ち構えていた俺はそっと6組をのぞく。 長門の周りには人だかりができていた。 そうだよなぁ。完璧超人が遅刻してきたら注目の的になるよなぁ。 だが今の長門がこれだけの人数を相手できるのか? もみくちゃにされて 「キョン!」 またハルヒか。 「そんなに楽しみにしてる本なの?」 「あ、ああ。何でも猫飼い必読のSFらしくてな」 「なにそれ? あんたそんなにシャミセンをかわいがってたっけ?」 「毎日一緒に寝てると愛着もわくってもんさ」 「へー …いいなぁ……」 「いいだろう」 「あ、え、そうね! あたしもちょっと飼いたいんだけどさ、ええと、親が動物苦手で……」 結局休み時間に長門に会うことができなかった。 昼休み、弁当を持って部室へ行く。いつもなら長門が先に来て本を読んでいるところだが。 ……来ないな。 弁当を食べ終え、パソコンでニュース系サイトを眺めたりしているがまだ長門が来ない。 うーん、教室にいるのか? それとも食堂か? いつも会いたいときに会える長門に会えない。そんなことはあの世界だけで十分だ。 いや、そのときだって長門はいてくれたな。自分を変えちまっていたが。 いつだって長門はいてくれていた。 何を考えているんだ、俺? 長門は遅刻しながらもちゃんと来てたじゃないか。 放課後になったらいつも通りSOS団に来るさ。 今週のハルヒは掃除当番である。 ちょっとだけ長門と話せる時間がひねり出せるな、 と思いつつ6組の方を見てみると長門が6組女子に拉致られそうになっていた。 「! ………」 俺を確認したらしい長門は眼鏡越しに何かを訴えてきている。 「長門、どうした?」 「あれ? 5組の誰だっけ?」 「キョンくん」 「そうだキョンくんだ。長門さんに用?」 俺の本名はどこ行っちまったんだ? 「まあ用と言えば用だが。これから部室に行くんだが一緒に行くかな、と思って」 「ええ~~あたしたち今からみんなでカラオケに行くんだけど。長門さんも一緒に」 なに!? 「長門、そうなのか!?」 「ち、違う……」 困り顔の長門。 「行くとは言ったけど今日は駄目……」 「えーいいじゃん」 「いこいこー」 どうやら誘いを受けて断りきれなかったらしい。 「あー、長門も困ってるみたいだしまた今度にしてくれないか?」 「ってあんた長門さんの何?」 う、それを言われると辛い。 と、一人が急に 「あ! ごめん気付かなかった。長門さん先約あったのね? 早く言ってくれないと!」 ニヤニヤと俺と長門を見比べはじめた。 「キョンくんもごめん。わたし達も気を使うべきだったよ」 「そうだそうだ。ごめんねー」 「「「ごゆっくりー」」」 何だったんだ? 長門を残して6組女子連中は行ってしまった。 「長門、何かあったのか?」 「話せば長くなる。まずは部室に行くべき」 そういうとスタスタ歩き始めた。いつもの長門の行動だが今は凄く不自然にみえる。 なんだか無理して演技しているようだ。 その証拠に廊下の人ごみに阻まれて進めないでいる。 普段なら文字通り数歩、数十歩先を読んで障害物を避けながら進んでいくのに、今日は目の前しか見ていない。 「長門、一緒に行こうぜ」 長門はこくんとうなずいて俺についてきた。 朝比奈さんが着替え中ということで廊下で待つ。が、 「長門、お前は入っていいんだぞ?」 「あ」 完全に長門は別人になったみたいだな。そんなに情報なんちゃらの影響力って凄いのか? しまった、今の時間に長門と打ち合わせしとくべきじゃなかったのか。 「こんにちは。長門さんの様子はどうですか?」 古泉か。 「おう。あんまりよろしくない」 「それは困りましたね。隣のクラスなのに良くないと分かるとは深刻です。それとも監視していましたか?」 「監視っていうな。……まず今日も長門は遅刻した」 それを聞いた古泉はうなづく。 「らしいですね。本当に深刻な状況かもしれません」 「どうぞー」 メイドな朝比奈さんが俺たちを迎え入れてくれた。 表面上はいつもの活動通りだった。 遅れてきたハルヒはネットサーフィン、長門は読書、朝比奈さんがお茶関連の作業で俺と古泉がゲーム。 まったくもっていつもと同じ。 ………。 『舟を漕ぐ』という表現を考えた人間は誰だろうか? 居眠りに対してこれほどの文学的な表現を与えた人物は。 今まさに夢の世界という名の大海原に漕ぎだしている長門有希を見てそう思う。 まてよ、大海原なのに手漕ぎボートは危険じゃないのか? あ、ガレー船か。納得。っていうかやっぱり戦艦なのか? 長門だけに。 「ちょっとキョン、何やらしい目で見てんのよ」 小声でハルヒが俺を非難する 「やらしくなんかないだろ。この慈愛に満ちた眼差しをやらしいと感じるお前が汚れてるんじゃないのか?」 「なんですって!?」 「涼宮さん! 長門さんが起きちゃいますよ!」 そうですよねぇ、朝比奈さん。 「……このバカキョンが」 今は長門の寝顔鑑賞会となっている。 「やっぱり有希って体調悪いのかなぁ。土曜からおかしいじゃない。」 心配そうにハルヒが言う。 「それとも寝不足? そんなに面白い本があるなら教えてもらおうかしら?」 長門が持っている本をのぞきこむ。 「……洋書?」 ハルヒが頭をあげたときに長門がこっくりと頭を下げた。 「ひぇっ」 ごん かちゃ 「あだ!」 「ぐ!」 順番に 朝比奈さんの悲鳴、ハルヒと長門の激突音、眼鏡がずれる音、ハルヒの間抜け声、長門のうめきである。 両方からの加速度で破壊力も倍増しハルヒは後頭部、長門はでこを押さえうめく。 「ごめん有希!」 「なに??」 まだよくわかっていない長門。 「だ、大丈夫ですか? 今、すごい音がしましたよ」 朝比奈さんはぶつかる前に悲鳴を上げていましたね。 「長門さん、眼鏡は大丈夫ですか?」 「え?」 古泉に問いかけられ顔をあげる長門。その瞬間 がちゃ 「あ」 かろうじて耳に引っ掛かっていた眼鏡が床に落ち、 「「あああ!」」 ハルヒと古泉とがハモる。残りのメンツは固まったまま。 情報操作の能力がなくなって運まで落ちるのか、長門? 眼鏡はレンズを下にして落ち真ん中に大きな傷をつけていた。 「……」 「ご、ごめん有希!!」 「……いい」 かえって冷静になったのか傷つき眼鏡をかける長門。しかし 「……視界が大幅に悪化している」 お前が違和感感じるのと同じくらい外見も違和感ありまくりだぞ。 真ん中に派手なクモの巣状のひびが入っている。 最近の眼鏡はプラレンズばかりでガラス製は無いと聞いていたがプラでもこんなにひびがいくのか? 「買い替え、ですねぇ」 「僕の知り合いの眼鏡屋を紹介します」 古泉、お前はとことん便利な奴だな。 「ああ、ごめん、ごめん有希! ちゃんと弁償するから!」 古泉の知り合い、という駅前の眼鏡屋で長門の眼鏡を選ぶため、団活は終了。 先頭を古泉と俺、続いて長門と朝比奈さん、遅れてとぼとぼとハルヒがついてくる。 流石のハルヒもへこんでいるようだ。 車を避けるために足を止めると背中に衝撃を感じた。 「長門?」 「すまない、よく見えていなかった」 「そういえば長門、お前視力いくつだ?」 「正確な数値は覚えていない」 「そうか。だが、だいぶ悪そうだな。」 俺はこの時、長門が『正確な数値を覚えていない』と発言したことに軽い衝撃を受けた。 ハルヒの見立てでフレームが選ばれ、レンズ作成まで1時間ほどだった。 長門の視力が非常に悪く高いレンズを取寄せする関係で本当はもっとかかるハズだったが、 そのあたりは機関パワーでなんとでもなるらしい。 新川氏あたりが工場から運んできたんだろうか? 誰にどのフレームがあうかと誰でもやる他愛のない遊びをしているうちに眼鏡が出来上がっていた。 夕方遅くになっていたため眼鏡屋で解散したがすぐ長門に携帯電話で呼び出された。 「どうした?」 「……目がまわって気分が悪い。眼鏡酔いと呼ばれる状態。できれば家まで送って欲しい」 相当弱っているな。 自転車の後ろに長門を乗せ、マンションまでの長くダラダラとした坂を登る。 いつぞやの3人乗りの時と違いしっかりと長門の体重を感じながらペダルを漕ぐ。 それにしても長門、お前はこんなに軽かったんだな。 こんなに小さく軽い長門が大げさに言えば全地球の命運を担って頑張ってきていた事を考えると なんだか涙が出そうになってきた。すまん、お前にばっかり頼っていた。せめて今だけは俺たちを頼ってくれ。 それが俺たちに出来るお前へのせめてもの恩返しだ。 「……ごめんなさい」 「いや、謝るのは俺の方だ。だがなんで声をかけてくれなかったんだ?」 「……気が引けて声をかけることができなかった……」 後ろにいる長門に想いを馳せているうちに、後ろに長門がいるのを忘れていた俺は自宅まで長門を連れてきてしまった。 アホだ。アホすぎる。誰にもこの姿を見られていなければいいが。 せっかく連れてきたのと妹にいきなり見つかったのと俺の母親が世話好きなのが重なって 長門を我が家の晩餐に招待することのなった。 唐揚げとサバの塩焼きと味噌汁にご飯というレパートリーに何のコンセプトのないごく一般的な家庭のメニュー。 小食になった長門はサバの塩焼きに手間取り、唐揚げに手が伸びていない。 先週、長門が貧血で倒れている、と思っている母親は長門にもっと食べて欲しそうだったが。 妹は大食いの長門を知っているから勝手に長門の皿に唐揚げを載せていく。 涙目気味の長門の視線を受け俺が唐揚げを処分していく。 おかげで俺まで涙目気味だ。 食事の後、長門を再び自転車の後ろに乗せマンションに向かう。 妹は遊びたがっていたが今日は月曜日だぞ。まだ週が始まったばっかりだ。 マンション到着後、長門にお茶を誘われたがやはり同じ理由で断って家にとんぼ返りする。 母親の長門に対する質問攻めをなんとかかわし、 いきなりフルスロットルで始まった一週間の1日目をようやく終わらせることができた。 『よかったら…………持って云って』 長門、悪い。お前じゃないんだ。 『……』 そんなに泣きそうな顔をするな。 『……』 違う、お前じゃない。俺の長門は ………… 夢か。 眼鏡をかけ、オロオロしているあいつを見て脳みそが記憶を引っ張り出してきたらしい。 ………… 長門。 ハルヒの悪だくみに巻き込まれ、文芸部部室と共にSOS団に組み込まれた女子。 あの頃も眼鏡だったな。いつから眼鏡じゃなくなったんだっけ? 初めて部屋に呼ばれた時も眼鏡だったな。 あの時あいつの話を聞いた時は可哀相な電波女だと思ったが 朝倉に殺されかけた時、真実の尻尾あたりを見せつけられた。 尻尾どころか毛先の枝毛くらいなのかもしれんが。 そうだ、その時あいつは『眼鏡の再構成を忘れた』とか言っていたな。 それ以来あいつは眼鏡をしていない。 ああ。俺があいつに『眼鏡をしてない方が可愛い』って言ったからだ。 唐突に気付いた。 ………… 4時か。まだ寝れるな。 火曜3時間目は5、6組の合同体育授業である。 5組の教室が女子の、6組教室が男子の更衣場所となる。 であるからして、 「やっほー有希! 調子どう?」 長門が着替えに俺のクラスに来た。 「大丈夫」 「そ、よかった」 長門が俺の机の上に体操着袋を置く。 「んじゃな」 こくんとうなずく長門。昨日買った真新しい眼鏡。うん、良く似合う。しかし俺はやっぱりない方がいいなぁ。 「おいキョン、長門有希は眼鏡に戻ったのか?」 谷口は相変わらず女子に関して目ざとい。その観察力と情熱を少しでも勉強の方に振り分けたら多少人生が変わるぞ。 「女に目を向けているから人生が楽しい方に変わったんじゃないか。しかしやっぱ長門有希は眼鏡の方がいいな」 お前は眼鏡属性ありなのか。 「そうかな? 僕は無い方がいいと思うな」 おお、国木田。お前はわかっている。 そして授業開始後10分で事件が起きた。らしい。 というのもハルヒからの伝聞だったからだ。 「1500m走の2週目でダウンしちゃったの。信じられる!? マラソン大会で2位の有希がよ!? 絶対おかしいわ! 何か病気なのかしら。心配だわ」 確かに心配だ。また眼鏡酔いか? 「あの娘一人暮らしでしょ? だから体調崩しても見てくれる人がいないわけじゃない。大丈夫かしら?」 確かに。宇宙パワー全開の時は全く気にならなかったが今は物凄く心配だ。 そして今俺には逼迫した心配事が別にある。 「なによ?」 「長門の制服一式がそのまま俺の椅子と机に残っているんだが」 長門は保健の先生に連れられてタクシーで早引けしていた。俺の机に制服を残して。 そして放課後、SOS団と6組の女子連中で長門家へ見舞に行く事でもめている。 正確にはハルヒと6組女子だが。 ハルヒの言い分は団員だから。6組女子の言い分はクラスメイトだから。まあどっちもわかる。 じゃあ一緒に行けばいいじゃないか。 「人が多すぎて迷惑じゃないの!」 んじゃあハルヒと6組女子で行けばいいじゃないか。 「あんたの預かってる服はどうすんのよ! ……ってあたしが預かればいいのか。 そ、そうね。あたしと6組で行ってくる。団は休みにしてもかまわないから」 たまにハルヒは抜けたところがあるな。 そういや昨日、長門が6組女子に連れて行かれそうになっていたな。 何が起きたかを聞こうと思っていたがすっかり忘れていた。 まあ、あの様子じゃいじめとかじゃなさそうだから急ぐこともないか。 団は休みじゃない。 むしろハルヒがいないことによって遠慮なく話し合いができるってもんだ。 「事態は意外に深刻そうですね。取りあえず想像以上に長門さんが弱ってることがわかりました」 「喜緑さんはどうなんだろう?」 「昨日の体育では普段どおりだったような気がします」 朝比奈さんが小首をかしげる。 「しかしまいったな。これからずっとこんな調子なのか?」 「大いにあり得ますね。長門さんが休まない限り」 「でも長門さんは休みたくないみたい。やっぱり学校が楽しいんじゃないのかなぁ。それとも、ううん、何でもないです」 「朝比奈さん、気になることがあったら言ってくださいよ。何かヒントになるかもしれませんから」 「ええと、うーん、そう! 長門さんはまじめだから涼宮さんの観測を続けないといけないと思ってるんじゃないかな」 「……そうですね。その可能性も高いでしょう」 「古泉、何かほかにあるのか?」 「いえ、あらゆる可能性があると言いたいだけです。何せ長門さんが何を考えているかなんて想像不能ですから」 こいつはいけしゃあしゃあと嘘をつくからな。お前が何を考えているかも想像できねえよ。 だが長門の考えがわからないのは確かだ。 「さて、長門と連絡をとりたいわけなんですが、あの、朝比奈さんお願いします」 「へ?」 「いえ、今ハルヒと6組女子が長門の家にいるはずなんで。俺がかけると怪しまれるというか……」 「あ、そうですよね。わかりました」 「連絡する事とは何ですか? 夜でもかまわないのではないでしょうか?」 古泉が不思議そうに聞く。 なんとなくあいつの声を直接聞きたかっただけなんだが 「今日の場合、夜だと寝てる可能性があるからな。今なら騒がしくて起きているだろう。 用という用は特にないんだが、今のうちに長門にリクエストがあるなら聞いておきたいし、 元気なようならまた夜に電話できる」 ごまかしておく。半分は本当に長門の要望を聞いておきたいとは思っている。 「なるほど」 「かけますね」 朝比奈さんが長門に電話をかける。すぐ出たようだ。 「もしもし、朝比奈です。…… 元気ですか、え? ……そんな、わかりました。すぐ行きます」 え、何があったんですか!? 「涼宮さんと6組の子とで険悪な雰囲気になってるみたい」 おいおい、どうしたんだ、ハルヒ!? 「キョンくん、5組と6組で対立していましたか?」 いやそんなことはありませんでしたよ? 「取りあえず急いで行ったほうがよろしいでしょうね。タクシーを……」 「古泉くんとキョンくんは来ないでください。これは女の子の話なんで」 珍しくきっぱりと朝比奈さんは言い切った。 「すいません喜緑さん、事態がさっぱり飲み込めないんですが……」 「そうですね、わたしもどこからどう説明すればいいのやら……。とにかく来てくれてありがとうございます」 「あ、いえ、長門とのサポートの約束でもあるんで気にしないでください」 喜緑さんの説明によると、 見舞いに行ったハルヒと6組女子の間が何故か険悪になり、 朝比奈さんと鶴屋さん(学校を出る前に一緒になったらしい)が長門マンションに着いた途端激化、 長門が泣き出した、長門が泣くというだけで異常事態だと分かるが、 その時に喜緑さん到着でみんな追い出され俺が召集を受けた、となるようだ。 ついでに言うとまだ部室にいた俺が喜緑さんの電話を受けている時、古泉は機関から電話を受けていた。 つまり 「閉鎖空間が発生しました。なにか涼宮さんの機嫌を悪くする事態が発生したようですね」 と結構深刻な状況となっていた。 ちなみに長門は寝ている。どうやら本当に体調を崩したようで、枕もとには病院で出た薬が置いてある。 「保健の先生によると風邪だそうです」 「あの、喜緑さん、何故知っているんですか?」 「言ってませんでしたっけ? わたしと長門さんはいとこ、ということになっています」 ああ、なるほど。 「緊急連絡先はお互いにしているので学校から連絡がありました。 本当はもっと早く帰って看病しようと思ったんですけど、買い物しているうちに遅くなりまして」 しかしなんでそんな騒ぎになったんでしょうか。 「いくつか理由があるようですが」 喜緑さんは何故か意味ありげに俺を一瞥し、 「要はみんな長門さんが好きなんですね。で、取り合いみたいになったようです。 朝比奈さんと鶴屋さんは中立の立場で説得しようとしたみたいなんですが、 長門さんのクラスメイトはそうは思わなかったようですね。 涼宮さんとよく一緒にいるところを見られてますから彼女たちの考えもわかります」 たしかに。 喜緑さんが溜息をつく。 「あした朝比奈さんと鶴屋さんに会って謝らないとダメですね。一緒に追い出してしまったんで」 「あの2人ならわかってもらえますよ」 「だといいんですが。でも残りの子には反省してもらわないとダメですね。 具合の悪い有希ちゃんの前で何を考えているんだか…… 常識ってものがないんでしょうか? 自分がされて困ることは他人にやっちゃダメでしょ! ただでさえ有希ちゃんは弱っているのに!」 うわ、ちょっと本気で怒ってる。長門に対する呼び方が素になっていますよ。 「あなたにもしっかりしていただかないと」 俺!? 「だいたい有希ちゃんがあなたに……。すいません、筋違いですね。ちょっとその、興奮しました」 「あの、長門の風邪は大丈夫なんでしょうか? 免疫力がなくてひどい状態になるとか……」 「そのあたりは大丈夫です。確かに普段は情報処理で体調を整えていますが、通常の人間くらいの抵抗力はあります。 ただ、いつも情報処理で症状をキャンセルしているので、いきなり体験するとしんどいかもしれませんね」 「そうですか。念のため明日は休みの方がいいと思うんですが」 「嫌」 「長門!?」 いつの間にか目を覚ましていた。なんかパジャマの長門も可愛いな。いかんいかん、鼻の下を伸ばしている場合ではない。 「休まない。学校は行く」 「有希ちゃん、明日は休みましょ。それとも何か用事があるの?」 「用事は、無い。ことも、無い……ない」 えらく歯切れが悪いな。 「とにかく休む気はない」 知ってはいたが意外と長門は強情である。これは説得に時間がかかりそうだ。 「ええと、」 喜緑さんが長門の耳に口を寄せ 「……………」 何故か慌てる長門、そしてちらっと二人で俺を見て 「わかった。休む」 喜緑さん、いったいあなたは何を言ったんでしょうか? 「簡単なことです。ひとつお願いがあるんですが」 はい? 「明日、ここに寄ってくれますか? お土産付きで。長門さんは食いしん坊なんで」 「最後のは余計」 なるほど、食べ物で釣るわけですね。 「わかりました。長門、何食べたい?」 「……あなたに任せる」 しかし喜緑さんは長門に何を吹き込んだんだろうか? 「……」 「……………」 ずっと背後からプレッシャーを受けながら順調に午後の授業は進んでいく。 今朝からハルヒは機嫌が悪い。事の顛末は知っているが、それを知っている事をハルヒに知られるとまずいことになる。 なんかややこしいな。というわけで知らない振りしてたずねる。 「ようハルヒ、長門の様子はどうだった?」 「……」 「……ハルヒ?」 「風邪よ。だから有希は元気がない」 「……んで?」 「それ以上でもそれ以下でもない!」 会話終了。 それ以上は話しかけるな的な視線で睨みつけてきた。なんか最初に会った頃を思い出すな。 そして今に至る。ちなみに長門は休み、古泉も休み、朝比奈さんまで休みである。 朝比奈さんが休んだことによって鶴屋さんも喜緑さんもブルー気味で、まさにデフレスパイラル。 なんでそんな事を知っているかって? 昼休みにハルヒが食堂に行っている間に鶴屋さんと喜緑さんという異色のコンビがうちのクラスまで訪ねてきたからだ。 「ごめんねーキョンくん。みくるがさぁ、ショック受けて休みなんだ」 「ごめんなさい」 「あー、えみりんは悪くないっさ。ちょっとみくるが勘違いし過ぎてるだけだしさぁ」 「ですが……」 「残念ながらみくるは空気を読むというか以心伝心というかちょっとそっち方面が弱くて……」 痛々しい程の気のつかいあい。 「あの、喜緑さんから朝比奈さんに電話してみればいいんじゃないですか?」 「しました……」 「演技で一緒に追い出された事に気が付かなかったことにみくるは落ち込んでいるんだよ……」 ……そうですか。そっちでしたか。 「正確には『そっちも』だね。二重に落ち込んじゃってさ……」 「キョン、いくわよ!」 放課後、強引にハルヒに部室まで連れて行かれる。 「なぁハルヒ、なんかみんな休みらしいんだが今日の活動はどうするんだ?」 「みんな? どういうこと? なんであんたが知ってるの?」 「い、いや、古泉から『今日は体調不良で休むからゲームを持って行けなくてすまない』みたいなメールが来てたし 昼にたまたま鶴屋さんに会って朝比奈さんが休みってこと聞いたし、」 しまった、長門をどうする。 「あたしんとこにみんなから休むってメールは来てるわ。で、なんで有希の休みまで知ってるの?」 頑張れ、俺の灰色の脳細胞! 「え、な、長門からも休むってメールが来たぞ?」 「ふーん」 ジト目で俺を見る。間違いない、疑っている。 「直接電話じゃなくて? 見せてよ、携帯」 やばい、今日は長門からメールも電話も来ていない。つーかなぜすんなりと信じない? それに喜緑さんからの着信を見たらハルヒがどう思うかわからない。絶体絶命だ。えぇい、ままよ、 「おーいハルにゃーん!!」 「あ、鶴屋さん! みくるちゃん休みなんだって?」 救いの女神は鶴屋さんとして降りてくださった。 「そうなんだよ。風邪だってさ。これから見舞いに行くけどハルにゃんもどうだい?」 「当然! って言いたいところなんだけど、困ったことに有希も……、い、いいわ、みくるちゃんのお見舞いね!」 長門の名を出した瞬間、ちょっとだけ顔をしかめたのは昨日喜緑さんに追い出された事を思い出したんだろうか? 「そうね、キョン、あんたは有希の見舞いに行ってきなさい! あたしはみくるちゃんとこに行くから! 鶴屋さん行きましょ! みくるちゃん食欲あるかしら? ケーキがいいかな?」 「う~ん、買って行って駄目なら冷蔵庫に入れとけばいいよ。キョンくんまったね~~」 鶴屋さんは俺に意味ありげなウィンクをして、ハルヒと共に行ってしまった。 その全行程30秒、ハルヒはよっぽど昨日の出来事が気まずかったんだろうか? 即決で長門の見舞いを俺に任せた。まぁ、絶好の機会だ。ハルヒ公認の元、堂々と長門の家に行けるんだからな。 ……公認って。何様だ、ハルヒ? 喜緑さんの分を含めてコンビニで適当にプリンやらヨーグルトやらをカゴに放り込む。 あいつは何が好きだっけな? カレーは売るほどあったな。 そう言えばおでんを一緒に食った覚えが……。 あー。 あの時だ。 朝倉もいたな。 ………… いかんいかん。気にし過ぎだ。 取りあえずデザート系だけでいいだろう。 最近はスイーツって言った方がいいのか? しかし長門は浮ついた流行的な言い回しはしそうにないし、 ハルヒは意外と古風というか流行に鈍感だしまずズレている。 朝比奈さんは長門的、古泉はハルヒ的な感じでやっぱり言いそうにない。 ううむ、時代に惑わされないSOS団か。『SOS団』っつーネーミングセンスもどうなんだ? などとアホなことを考えながらレジを済ませ、長門のマンションに到着する。 手慣れた手順でインターフォンの番号を押し … …… ………? へんじがない ただのしかばねのようだ なわけあるか!! 寝ているのか? それともどこかへ出かけてるのか? ずっと寝ているのも退屈だろうし。 でも俺が行くことを知っているんだから連絡くらいは欲しいもんなんだが。 電話してみるか、と携帯を手に取るといきなり電話が鳴りだした。 【発信者:長門 自宅】 へ? 家にいるのか? 『ごめんなさい。あと10分待って』 開口一番長門が謝ってきた。 「いや、かまわんぞ。でもなんでインターフォンに出なかったんだ?」 『……片付けをしていて………』 「そうか。わかった、待ってるぞ」 ううむ、これで片付けを理由に足止めされたのは何度目だ? 「こっちの部屋は絶対に開けないで」 「だから下手に言われると余計に見たくなるって。『鶴の恩返し』くらい知ってるだろ?」 「……」 今の長門はすぐに赤面する。意外な一面が見れて嬉しい半面、『あの世界』の長門を思い出し胸が痛む。 あの時は躊躇なく元の世界に戻るためにエンターキーを押したが、 はたしてそれが真の正解だったかどうか、今でもたまに考えることがある。 確かにハルヒがいない、朝比奈さんと鶴屋さんは赤の他人、古泉もいない。 いるのは小心者の長門と朝倉だけ。すこし寂しい世界だ。 だがハルヒが変態パワーを持ち、それに群がる宇宙人、未来人、超能力者がいる今こそ変な世界じゃないのか? もしあの時 「?」 長門が不思議そうに俺を見ている。 「い、いや何でもない。それより冷蔵庫にプリンを入れないとな」 あわてて台所に逃げた。 さて結構プリンやらヨーグルトやら買い込んできたからな。冷蔵庫に空きはあるかな、と。 扉をあけるのにはたいして力入らなかった。中からの圧力でパワーアシストされたからだ。 「わたしがやる!」 惜しかったな、長門。あと半秒早かったら間に合ったかも知れん。 しかしよくこれだけ詰め込んだな。ポテチは冷蔵庫に入れなくていいんだぞ。 あとジャガイモは入れると悪くなるからな。食パンは場合によるな。 と、振り返ると今にも泣きそうな長門が立っていた。 「ありがとう。今日は帰って」 「な、長門!? 」 「帰って」 い、いや、そんなに気にするほどの失敗じゃないだろ。 「…………………………………………」 いつものような無表情を頑張って作っているのに瞳はうるうるとした長門。 ちょっと和んでしまったが、その俺の表情が癇に障ったらしい。 「帰って!」 長門にマンションを追い出され、特に用事もなかった俺はそのまま自宅に帰り、 なんとなく悪いことしたな、と思いつつもそこまで悪いことだったか? などと気分が晴れないまま飯を食い風呂に入ってだらだらしながら やっぱ長門に謝っておくか、あいつは今不安定なんだし、と携帯電話を手に取った時着信があった。 【発信者:喜緑さん】 喜緑さんはいきなり謝ってきた。 『ごめんなさい。せっかく来て頂いたのに』 いえ、そんなこと大したことじゃないです。それより長門の方は。 『その、寝室から出てきません。長門さんに謝らせようしたんですが』 いやぁ、悪いのは俺の方で 『いえ、自分の失敗がばれて逆ギレなんて許しません。明日必ず謝らせますから』 その、そんなにおおごとでも 『すいません、有希ちゃんの為でもあるんで。この辺りはきっちりとしておかないと』 なるほど、保護者として長門を教育するにはいい機会なんだろうなぁ。 最後に喜緑さんは俺が持っていった巨大プリンの礼を言って電話を切った。 なかなか売っていない代物らしい。 たしかに珍しいと思って買ったんですが喜んでもらえてなによりです。 ただ一つ残念なことがあるとすればみんなで食べたかったことくらいですね。 なんとなくモヤモヤは晴れつつあったが、明るい気分になれず早めに寝ることにする。 長門、今日もお前は俺の夢に出てきそうだ。 やはり長門は夢に出てきた。 あの世界でオドオドとした長門は俺を恐れ逃げてしまった。 俺は頼みの綱である長門を探しまわったがどこにも見当たらずという焦燥感の中、目覚まし時計でこの世に帰ってきた。 早く長門に会いたい。 まぁ、案外早く俺の願いは叶えられた。 朝、学校の校門前に着くと長門が俺を待っていてくれたからだ。善行は積むものだ。 ただ、しょんぼりとした、そう、まさに『しょんぼりと』俺を待ち構えていたのだが。 「ごめんなさい」 いきなり謝ってきた。 「いや、いいんだ。ちょっと俺も調子に乗っていたかもしれん」 あまりに真剣で申し訳なさそうな顔をする長門を見るとこっちが悪い事をした気になる。 俺も謝っておけば長門も少しは気が楽になるだろう。 「いいえ、あなたは全く悪くない。全面的にわたしが悪い。ごめんなさい」 い、いいから頭を上げろ。 「大丈夫だ、怒ってなんかないぞ」 「本当?」 う、見上げた顔がちょっとかわいい。 「ああ。怒っていない」 「……ありがとう」 早く長門と和解できてすごく楽になれた。 胃の不快感はすっと消え、授業中もよく眠れそうだ。 と、アホなこと考えながら長門と一緒に教室までいくと今度はハルヒが待ち構えていた。 こっちは『しょんぼり』とは程遠い仁王立ちだが、表情は真剣だった。 「有希! ごめんなさい!」 おとといの話なんだろう。 「あなたは悪くない。わたしがイライラしていただけ。見舞いに来てくれてありがとう」 「有希が体調悪いのに騒いだあたしが悪いの」 「大丈夫。来てくれてうれしかった」 一応双方の気が済んだようで予鈴とともに長門は教室に入っていった。 さて俺も 「で、なんであんたが有希と一緒に教室に来たのよ」 いいだろ、流せよそこは。 「たまたまだ。それよりなんで長門に謝ってたんだ? なんかしたのか?」 一瞬嫌なことを思い出したような表情の後、しまった、顔に現れた!的な表情、そして 「何でもないわよ」 無表情。 それっきりハルヒはだんまりを決め込んだ。 「ようキョン、ラブラブだな、それとも『ラヴ』がいいか?」 ち、谷口か。タイミングが悪い上に下品なやつだ。 席に向かいつつ戯言を聞き流す。ってラブラブってなんだ? 「しっかし最近の長門はなんかかわいいな。 眼鏡もだがちょっと表情でるだけであんなにレベルが上がるとは。 俺もまだまだ見る目がないな、クソッ」 心底悔しそうな谷口。アホか。 「お前、涼宮は見間違えたが、早い段階で長門を見つけ出してるからな。正に『機を見るに敏』ってやつだな、キョン。」 な、なんでここでハルヒと長門の名前を出すんだ! しかも面倒なハルヒの近くで 無表情だったハルヒの横顔がこわばるのが見えた。 谷口、帰れ! 早く席につけ! 始業時間だ! 「きっちり長門をゲットしてるんだからなー。待ち合わせかこのヤロー」 「おーい早く席につけー」 岡部、遅いぞ……。 ハルヒの何とも言えない不機嫌オーラを背中に感じつつ数学の授業は進む。 初めて授業が終わらないでくれという気になった。 しかし時間の流れは正確無比で、 そういや朝比奈さんは時間の流れはパラパラ漫画みたいなものだと説明していたが 紙の数は増やすことはできるのか? 増えても紙が薄くなったら意味はない? などとSF物理学もどきを思考しているうちに きっちりと終了時間が来た。 ガタン、後ろの席から大きな音、そして首根っこを掴まれ、 「す、涼宮!? なにすんだ!?!?」 「いーから来なさい!!」 谷口がハルヒに拉致されていった。 「キョン、谷口は何かしたの?」 知るか。……知ってるよ、今朝の発言の真意を問いただす気なんだろう。 「ふーん。僕の勝手な予想だと涼宮さんはキョンの外堀を埋めようとしているんだと思うんだけど」 国木田、実のところ同意だ。だから俺は行く。 「急いだ方がいいね。間違いなく次は長門さんの番だから」 ああ。……なんでお前まで長門の名を出すんだよ。 廊下から6組を覗くと長門は女子に囲まれていた。ここから長門を連れ出すのか? 絶対無理だ。 待てよ、このバリケードを突破するのはさすがにハルヒでも無理じゃね? よし、君たちに託す。頑張れ6組女子連合!! 「あたしは有希に用があるの!!」 「わたし達も長門さんに用があるのよ!」 最悪だ。まさかハルヒが特攻かまして長門を連れ出そうとするとは思わなかった。 いや、その可能性に気付くべきだった。 なにせ転校直後の古泉を拉致したり商店街での物資提供交渉を成功させた女だ。躊躇するわけない。 「あんた5組でしょ!? なんで勝手に入って来てるの?」 「いいじゃない、教室移動で入ったり出たりしてるでしょ」 「次の時間は違うでしょ」 大声でやりあっているから当然野次馬も集まる。 長門は、あいつは無事なんだろうか。人ごみでどうなっているかよくわからない。 すると 「……」 マンガの喧嘩のシーンで当事者が囲みからこそこそ出ていくシーンがあるが まさか本当にそんなことができるとは思わなかった。 「長門!」 6組の男子連中にカバーされ長門は教室の外に出てきた。 意外と長門は6組に溶け込んでいるようだ。 「大丈夫か?」 「だ、大丈夫、それよりトイレに……」 あ、ああ。早く行ってこい。 「おいキョン、早く涼宮を回収してくれ!」 顔なじみの6組の奴に文句を言われる。 「うちの女子が涼宮と喧嘩するのも困るがそれ以上に長門さんが迷惑するだろ」 す、すまん。 「クソ、何だって長門さんは……まぁいい、それより」 「早く連れ帰ってくれ!」 何とかうちのクラスの連中の手を借りてハルヒを引っ剥がす。 「何すんのよキョン! 国木田! あんた強く引っ張りすぎよ!」 「アホか! なんで他のクラスで騒ぐんだ!」 「あたしは有希に用事があったのよ!!」 「時間切れだ」 移動教室をはさんだりしてなんとかハルヒを6組に突入する事態は避けることに成功した。 が、そもそも何故ハルヒが長門を追いかけているかを俺は失念していた。だから 「いいわ。直接執行よ」 昼休み、ハルヒは食堂へ行かず俺を端まで追いつめた。 「何がだ」 「キョン、あんた今朝有希と何があったの!」 不覚にも答えに詰まってしまった。 「い、いや、たまたま会っただけで」 「谷口は有希があんたを待ってたって言ってるわよ!」 あんのやろー。 しかしここでふと気付いた。 「なんで長門が俺を待ってるのをハルヒは怒ってんだ?」 「!、え、と」 ハルヒが固まる。 「昨日、長門の家に行ったらあいつが寝ていたんだ。 で、世話役として喜緑さんがいて、ああ、知ってるか? 長門と喜緑さんはいとこらしいぞ」 『喜緑さん』の所でハルヒの表情が硬くなるのを見逃さない。 どうも今のハルヒにとって喜緑さんは鬼門らしい。 「んで、買っていったプリンやらを渡して帰ったんだ。今朝はその礼を言われた」 とっさにこれだけ嘘がスラスラでるとは天才じゃないか? ところどころ真実が交る理想的な嘘だ。 「長門を追い回すほどの内容か?」 「もういいわよ、わかった」 無事ハルヒを納得させ、納得したのかはともかく静かにさせ、団活の時間となる。 ここで俺はミスを犯した。長門と口裏合わせしなかったことだ。 今の長門は若干空気が読めない子になっていることを忘れていたのだ。 だから 「キョン、なんで嘘ついてごまかすの? 有希と喧嘩したんでしょ!」 あっさり長門が自白させられた。全部。俺が止める間もなかった。 が、俺も半分開き直っている。 「俺と長門が喧嘩して仲直りしたことで何で俺が責められるんだよ」 「え、あ、でも有希を泣かせたんでしょ!」 「それはわたしが悪い……」 「有希は黙ってて」 「お前が洗いざらい聞くからせっかく隠してた失敗をお前に聞かれることになったんだぞ」 ここは強気に攻めてみる。 「俺は長門の名誉を守るためにあえて黙ってたんだ」 「それほどのものではない」 長門、ちょっと黙ってろ……。 「……もういいわよ! みくるちゃん、お茶!」 今日も古泉は来なかった。 やっと来た金曜日、ただ事態は悪化する一方だ。 ハルヒの機嫌は悪いままで古泉は今日も欠席。もしかしたら今この瞬間も戦っているのかもしれない。 今日は長門と相談し、あんまり学校では接触しないことにしていたが、 朝からブラックオーラが溢れるハルヒには大した対策にはなっていない。 そもそも論として何故ハルヒがこんなにイライラしているのかが不可解だ。 この10日間は長門のパワーが無くなっている。それに関係するのか? ハルヒのメンタル的な影響を与えた事件と言えば 土曜日の探索での長門のダウン、長門の眼鏡を壊した時と 長門の見舞いで喜緑さんに怒られた時かだと思われる。 眼鏡の方は弁償で片がついているから、やっぱりダウンと見舞いの方だよな。 ハルヒは長門を大事に思っている。その長門が弱っているから気が立っている。……しっくりこない。 これだと昨日の騒ぎ方が妙になる。長門を大事にし過ぎて暴走したのか?。 はっ。 ハルヒは長門の事が好きなのか? その、恋愛的な意味で。 だとしたら俺や6組女子、喜緑さんに嫉妬しているがゆえに機嫌が悪い、と説明がつく。 あいつは男の何パーセントかがホモだと抜かしていたが、 それは裏返しの意味、女の何パーセントかがレズだと言いたかったのか。 朝比奈さんにベタベタしている理由もわかった!! アホらし。 一応団活はあったが朝比奈さんはビクビクしてるし長門は窓際で小さくなっている。 自分の気配を消そうとしている風に見えるが、逆になんか目が行く。 今までのように普通に本を読んでいてくれればいいんだが。 あまりの空気の重さに思わずハルヒを諌める。 「おい、ハルヒどうした? お前らしくないぞ。何かあったのか?」 「うるさい! あんたには関係ないでしょ!」 「関係ないってったって長門がおびえているだろ。おかしいじゃ」 「『長門、長門』っていったいあんた有希の何!? いっつもいっつも、有希やみくるちゃんの肩持ってさ! あたしの……」 はっ、としたような、その後バツの悪そうな顔で 「帰る」 ハルヒはカバンを持って出ていった。 「キョンくん! 涼宮さんを追いかけてください!」 「朝比奈さん、それはできませんよ。やっちゃいけません」 「いいから追いかけてください!」 「朝比奈さん! 駄目なんです。ここで追いかけたらハルヒのためになりません。」 「キョンくんはわからないんですか?」 「ハルヒにはもう少し大人になってもらわないと行けません」 「そうじゃないんですが、……涼宮さんの機嫌が悪くなりすぎるとそれだけで危険なんです」 「わたしがいく」 「長門!?」 「わたしが涼宮ハルヒの機嫌を悪くしている原因。行って説得する」 「お前が原因だと限らないだろう! それに説得って何を!?」 「……わからない。でもわたしが行くべきだと思う」 飛び出して行く長門。一瞬迷ったが嫌な予感がしてすぐ追いかける。 階段の方からハルヒが何か大声で言っているのが聞こえたが、『有希が』と叫んでいる部分しか聞き取れなかった。 まずい、ここでハルヒが反則パワーで長門に何か変な事をしたら「普通の人」並みでしかない今の長門だとひとたまりもない! 走る俺、遅れて朝比奈さん。 追いついたのは階段の踊り場。 状況はもみ合いになっているハルヒと長門。 なんでよりによってその場所なんだよ! その場所は俺が 「キャッ!!」「あっ!!」 どっちが出した声かわからない。 わかるのは腕を振りほどかれた長門の体が勢いあまって後ろから階段の下に落ちるコースにあることだった。 「長門!!」 この時俺がイメージしたのはハンマー投げの選手だった。 体全体でハンマーを回転させ、全エネルギーをハンマーに乗せて投げだす。 走ってきた勢いで何とか長門に追いつき、腕を掴んで体全体で回転、踊り場の方へ長門を放り投げる。 少々乱暴だがハルヒか朝比奈さんが受け止めてくれるだろう。 ちなみに「だろう運転」は危険だ、と小学生の時、学校に自転車の安全指導に来た警察の指導員が言っていたな。 例え歩行者や自転車の立場でも横道からは何も来ないだろう、と思いこんでいてはダメだと。 確かに他人は信頼できるとは限らないからな。だがハルヒや朝比奈さんは信頼できる。長門は間違いなく信頼している。 古泉もまぁ、信頼できるな。……「まぁ」はあいつに悪いか。今は十分信頼しているぞ。 いやぁ、結構考える時間ってあるんだな、それなら頭をガードすべきじゃないか? と気付いた瞬間、強い衝撃と痛みが走り、俺の意識は無くなった。 夕陽の差し込む部屋。白い壁が金色に染まる。 窓の外から木の影が長く延びる。 どこかで見たことのある光景だ。 しゃくしゃくと何か水っぽさの感じる音。りんごだな。リンゴ!? 「お目覚めですか?」 「……ああ」 「まったくあなたには驚かされます。正直言うと呆れます。まさかまた同じ階段から落ちて同じ部屋に入院されるとはね」 で、同じように古泉がリンゴをむいている。 「……好き好んで入院してるわけじゃねえよ」 「好き好んでなら本当に1年くらい入院してもらいますよ。大変だったんですから」 「すまん」 「前は朝比奈さんが泣きじゃくっていましたが、今回はそれに長門さんが加わっていましたからね。 長門さんの場合泣き叫ぶって感じでしたが。」 「! 長門! 長門はどうした! っていたたたぁーーって痛ってぇ!」 全身に激痛が走る。なんだ、体が動かせん! 腕が固定されてるし! 「あ、今回は外傷ありです! 気をつけてさい。」 「俺はどうなってるんだ? ってそれより長門は!?」 「前も言いましたね、あなたがうらやましいと。いやあ本当にうらやましい。若干腹が立ちます」 古泉が指さす。少し離れた窓際の荷物置きの台に並んで長門とハルヒが座っていた。お互いにもたれながら眠っている。 「あなたが目を覚ますまで頑張る、と涼宮さんと長門さんが張り合っていましたが 1時間くらい前に二人とも力尽きてしまいました ちなみに今日は土曜日、午後5時前です。あなたはほぼ24時間眠っていた計算になります」 相変わらずへたくそな包丁使いでウサギか何だかわからなくなったリンゴのかけらを 古泉は俺に差し出す。いらねーよ、つーか腕がそこまで上がらない。 それに気付いた古泉はすこし申し訳ない、という表情をした後、物体Xを皿に置く。 「あなたは脳震盪と右肩脱臼と全身の打ち身、若干の擦り傷です。 レントゲンやCTスキャンやら一通りの検査の結果、命に別条はなしです。 しばらく検査通いになるとは思いますが」 若干くらくらするのは寝過ぎなのか頭を打ったせいなのかよくわからない。 「んんー、キョン。キョン!」 俺と古泉の会話で気付いたのか、先に目を覚ましたのはハルヒだった。 「よ、ハルヒ。よく寝たか?」 「よく寝たかじゃないわよ、このバカキョン!! この!!」 涙目のハルヒ。すまん。だが半分以上お前が原因では…… 「ん、え、?」 騒ぎで長門が目を覚ましたようだ。 「長門、大丈夫だったか」 「大丈夫。ごめんなさい」 長門の目が潤みだす。 「わた、わたしのせいであなたを、死、死なせ、」 急速に涙声になっていく 「いや、いいんだ長門。ちゃんと生きてるし」 「うわぁぁぁん!」 もう号泣に近い泣き声をあげる長門が俺に抱きつき 「ぐゎああああああああああ!!!」 電撃が走った! 「キョ、キョン!?」 「長門さん!! 離れてください! 怪我が!!」 「あ! ごめんなさい!!」 ……死ぬかと思った。 俺が目を覚ましたことによって検査が始まり、その日は終わりかと思っていたが、 晩飯後にハルヒが一人で病室にやってきた。 「よう、帰ったんじゃないのか?」 「うん、ちょっとあんたに用があって」 神妙な顔つきのハルヒ。うちの親は一度来たが着替えや必要なものがあるとかで家に戻っている。 「えっと。まずは謝るわ。ごめんなさい。あんたを大怪我させちゃった。下手したら死んじゃうところだった。ごめんなさい」 深々と頭を下げる。すぐ頭をあげ、 「キョン、あんたに聞きたいことがあるの」 真剣な瞳が俺を見つめる。 「あんた、有希のこと、……好き?」 「正直」 「よくわからん。もちろんLikeではある。それに気になる存在だ。 今はちょっと調子悪そうだが普段は頼りになるし、 見た目も可愛いし意外と強情な所も可愛いし、」 後はとてもじゃないがハルヒには言えん内容だ。 「そうだ。俺は長門が好きだ」 「そう」 「よかった。もし否定でもしたらぶん殴るつもりだったから」 ハルヒの声が少し震えている。 「あたしね、有希と話し合ったの。あんたについて」 ハルヒはベッドのそばのパイプ椅子に腰掛けながら語りだす。 「あそこまであんたが有希のことを大事にしてたなんて」 「もしあの時長門じゃなくてお前だったとしても俺は飛び込んだぞ。たとえ古泉や谷口だったとしても」 「それじゃない。あんただったら岡部でも飛び込むでしょ。そうじゃなくて。 ………… まぁ、なんとなくは分かってたわ。みくるちゃんをデレ~ンと見てる態度やあたしに対する態度と違って 有希には気づかいとか配慮が感じられたし」 …… 「あんたがみんなに気配りしてるのはわかるわ。でも有希には特別だったでしょ。 雪山の嵐のときに、あ、違う、これは間違い、えっと」 よかった、まだあれを幻だと思い込んでいるようだ。 「そうね、あんたが最初に階段から落ちた時あたりからガラッと変わったわ。病院で何かあったの?」 「ああ。それ以外も色々とな。詳しくは言えないが」 長門が自分と世界を変えちまった事件。そう、あれがきっかけだった。 実は長門も普通の女の子らしい事を考えていたことがわかったあの事件。 まぁ起こった事のスケールは異次元クラスの大きさだったが。 さすがにわかったさ。長門が何を考えていたかなんて。 だが俺はこの変な日常が崩れてしまう事を恐れていた。だから気付かないふりをしていた。 わざと長門に気のないふりまでした。 とんでもないチキン野郎だぜ。 沈黙。 「そっか」 ハルヒは小さくつぶやいた。 スマン、ハルヒ。あの世界の内容は俺と長門だけの秘密だ。 「そろそろ有希が来るわ。10分だけ時間もらったの。最後にあたしからお願いがあるんだけど」 「なんだ?」 「一発殴らせろ!!!」 いきなり強烈なビンタが俺の左頬に炸裂した! 痛ってぇ!!! 俺は怪我人だ! しかも頭打ってるだろ! ちょっとは遠慮しろ!! 「あんたの事好きだったんだから! 馬鹿! 鈍感! いつだってあんたのこと想ってた! そりゃはっきりしなかったあたしも悪いけどさ、思わせぶりな態度とらないでよ! のらりくらりとしてたくせに、たまに意識させるようなことしたりさ!」 え 俺の事が? ま、まて、正直戸惑うぞ。 マジか、マジなのか!? 確かにそんな素振りを感じたことがある。いやしかし、お前は恋愛感情なんて気の迷い的な事を… 大体好きなら好きでもうちょっとだな、 「あたしの心の痛みを少しでも、。ぷ、ぷぷ」 涙声での衝撃の告白と罵倒が途中で止まった。なぜ笑う? 「ぷぷ、ぶぁっはっはっは!!!!!!!!! なにあんたの頬!! 見事な紅葉よ! あははっっ!! わ、我ながら完璧すぎるわ!!! ひぃぃ!!」 ベッドの端をばしばし叩きながら爆笑するハルヒ。さっきまでの雰囲気は吹っ飛んでいる。 それでこそハルヒだ。 ところで鏡をかしてくれ。俺はどうなっている? だんだん頬が熱くなってきたぞ。いや感覚がなくなってきた……。 控え目なノックの後静かにドアが開く。 「いい?」 長門が顔を覗かす。 「いいわよ! 早くこっちに来なさい!」 ハルヒが元気な事を訝しがっている。それとも俺が横目で対応しているからか? 部屋に入って、俺の顔全体が目に入り、 「!!!」 「サイコーでしょ!! こんな完璧な紅葉、あたしの数々の傑作作品の中でも格別よ! ほら、早く写メ撮って…… あれ?」 長門は目をまんまるにして固まっていた。驚いて固まって車に撥ねられるのって猫だったっけな? 「いやぁ、殴られちまって……」 ともかくこの場を何とかしたいと思い長門に微笑む。と、 「ぶっ」 慌てて長門が両手で口をおさえながら後ろを振り向きしゃがみこんだ。 全身がぷるぷる震えて時々ぷっ、だの、くくっ、だの声が漏れる。 「あっはっはっは!! なんちゅー顔よそれ!! 有希を笑わせるなんてよっぽどよ! キョン笑うな! いや笑え! 写メに撮ってみんなに送信するわ!!」 なんだか俺の顔は凄いことになっているらしい。第一、とっくに頬の感覚がない。 「こら! 苦笑じゃない! ちゃんと笑って! そうじゃない、もっと自然に笑いなさい!」 まあかまわない。俺と長門、ハルヒの間に流れる気まずい雰囲気が変わるなら大歓迎だ。 「そう、それ! いい笑顔ねキョン!」 一瞬復活しかけた長門が俺を見てまた撃沈した。 冷たいペットボトルをもらい、頬を冷やすことでなんとか腫れは引いてきた。 そろそろ面会時間も終わるし、うちの親も戻ってくる頃だ。 ハルヒが長門に目くばせする。こくこくとうなずく長門。 長門は立ち上がり俺の横まで来た。 そして 「あなたに聞いて欲しい事がある」 今までのオロオロした長門ではない。どうした? 「わたしはあなたが好き。大好き。付き合ってください」 そういうことだったのか。 もちろん答えは決まっている。 「ああ。ありがとう。俺もお前が好きだ」 え、え、という喜んでいいか迷う表情。そうか、ちゃんと言ってやらんとな。 「OKだ。長門、付き合おう。俺たちは恋人同士だ」 両手を口元に持っていって固まる長門。お前も女の子らしい仕草をするんだな。 目元が潤みだしている。 「よかったじゃない、有希、よかったじゃない」 そう言うハルヒも泣いている。すまん。 「キョン、有希を大切にしなさいよ! ちょっとでも有希にひどいことしたらあたしが100倍返ししてやるんだから! これからずっと有希に確認するからね! 覚悟しなさい!!」 これだけ言い放つとハルヒは長門にがしっと抱きつき泣き出した。 つられて長門がまた泣きだしハルヒと抱き合う。これが女の友情なのか? 若干置いていかれ気味でちょっと困っているところに来たノックは救いの神かと思ったね。 「あの~」 朝比奈さん、助かります。 「キョンくん、女の子を泣かせちゃいけません!」 ち、違います!! 「キョンくんは女の子の気持ちを弄ぶ天才ですからね。涼宮さんと長門さんをどれだけ苦しめてきたか知ってますか?」 そう言う朝比奈さんもどんどん涙目になってきた。 え、えっと。これは 「おや、これは修羅場ですね。退散したほうがよさそうだ」 って古泉、逃げんな!! こっちにこい。なんか勘違いしてるだろ! 「キョンく~ん、着替え持ってきたよ~」 両親と妹が病室を覗いてくる。なんてタイミングで来るんだよ! あーもー知らね~。 日曜日は谷口や国木田、鶴屋さんも見舞いに来てくれた。 長門やハルヒ、朝比奈さんに古泉までまた来てくれたのは素直に嬉しかったが、 いきなりハルヒが俺と長門が付き合う事を発表するとは思わなかった。 おかげで谷口に首を絞められ、鶴屋さんにさんざん冷やかされることになった。 国木田は月曜朝一にクラスで宣伝してくれるそうだ。いやぁ、ありがたい。 また困ったことに長門が冷やかされることにまったく動じず、 かえってのろけるような様子だったため一同はさらにヒートアップ。 ……長門、お前は相当感情を抑えていたんだな。 検査や治療でまとまった空き時間がなく、あまり皆としゃべることができなかった。 特に鶴屋さんが持って来てくれたロールケーキを結局食いそびれたのは残念至極だ。 確かにみんなで食ってくれ、とは言ったが全部食われるとはな。 事実を知った時長門がそっぽを向いていたから犯人はわかったが。 小食になったんじゃないのか? デザートは別腹なのか? そして。 ずっと寝ていたのとこれから起きる現象について思う所があったため、 俺は深夜というより明け方に近いこの時間に起きていた。 そして病室のドアがゆっくりと開くのを当然のように眺めている。 「よく入ってこれたな」 長門、情報操作の能力がなくてもやっぱりお前はお前だな。 「……実は見つかった」 へ? 「ただ、それが機関の森さんだったからここまで通してくれた」 俺があっけにとられていたら、さらに長門が追加情報をくれた。 「看護婦さんの格好をしていた」 機関っていったい…… 「元に戻る瞬間をあなたと迎えたい」 ああ、せめてその時間は起きていようと俺も思っていたところだ。 まもなくこの眼鏡長門ともお別れだ。 「色々あったな。大変だったがお前の意外な面がいっぱい見れて楽しかったぞ」 長門が顔赤くし横を向く。 こんな光景をもう見ることはもうないんだろう。 「いろいろとお世話になった。ありがとう」 無言。 こういう時、何を語るべきなんだろうか。俺も長門も何をしゃべるか話題を探している。 そうこうしている間に、 「時間」 長門が天を仰ぎ見る。 そして姿勢を正し、俺を見る。 「おかえり」 「……ただいま」 長門が眼鏡をとる。元に戻った合図かもしれない。 「あなたには多大な迷惑をかけた。謝罪する」 「いや、かまわない。それより聞きたいことがいっぱいある」 「わたしもあなたに聞いてもらいたいことがある」 帰ってきた長門は淡々と語る。 「もうわかっているかもしれない。わたしの性格について」 「ああ。前の変わってしまった世界やこの10日間の方が素のお前なんだろ」 「そう。あの弱弱しいのが本当のわたし。改変時は自分の記憶や行動原理まで改変してしまったため この10日間の方がわたしの本当の素性に近い。 通常時のわたしは情報操作で各種身体能力を強化すると同時に精神面でも補正をかけている」 確かに口調もいつもと違ってたし、若干いらない事までしゃべったりとグダグダだったな。 おそらく情報操作でガチガチに固め、揺らぎが出ないようにしていたんだろう。 無愛想無関心無感動にしなければいけなかった程、素の自分に自信が無かった。 「意志薄弱で臆病者。怖がりで、すぐにうろたえてしまう。近眼だし運動能力も劣っている。 頭脳については一般以上だがあなたほどではない」 「おいおい、お前が俺よりアホなはずはないだろ」 「あなたは自分の能力を過小評価し過ぎている。それと努力が足りないだけ。 それに比べわたしは情報操作のハリボテ。中身が伴っていない。 その証拠に片付けすら満足にできずあなたに当たってしまった」 唐突にあの世界の朝倉の言葉が脳裏に蘇る。 『ああ見えて長門さんは精神のモロい娘だから』 『あなたを脅かす物はわたしが排除する』 朝倉は任務上のバックアップだけでなく、素の長門本人の世話をしていたのだろう。 10日前、長門の部屋に喜緑さんがいたのも長門の素性を知っていたからに違いない。 いきなりパニックになるのは想定外だったもしれないが。 「嫌いになった?」 なんでだ? 「今までわたしは偽っていた」 …………で? 「あなたに嘘をついていた」 どうも長門は罪悪感でいっぱいらしい。 「かまわないさ。情報操作で自分を作り上げた長門も、力が無くなってオロオロする長門もみんな長門、お前だ。 俺はみんなひっくるめてお前が好きだ。俺の長門だ」 「……ありがとう」 すこし照れた様子、といっても口元が緩んだ程度、だったが、急に表情を引き締め、覚悟を決めたように話を切り出した。 「わたしに関わった人物の、この10日間の記憶を操作しようと考えている」 「な!?」 「周囲にインパクトを与えすぎた。今後の活動に支障が出る恐れがある」 「お前の親玉の指示か?」 「違う。情報統合思念体はこの10日間の出来事を認知することはできない」 ん? 時間も超越していなかったか? 「この10日間は食のためこの惑星の出来事に関知することはできない。 たとえ時間軸をずらしてもこの10日間にはアクセスできない。 情報統合思念体が感知できるのはこの10日間が終わり、『歴史』として伝わる部分のみ。 『起きてしまった事』として扱うしかない」 お前の親玉も弱点はあるんだなあ。 ん? 「おい、前にお前が世界を改編したときはお前を処分しようとしてたじゃないか。 あれも『起きてしまった事』じゃないのか? ちゃんと戻したんだから処分までいらなかったんじゃ?」 「それは………禁則事項」 またごまかされたな。 「それとお前はズルい事を考えていないか?」 「……よく意味がわからない」 何のこと? とごく僅かに目元が緩み、瞳の力が和らぐ。うむ、俺の長門感情解析力は劣っていないな。 「自分が起こした騒動をなかったことにしようとしていないか?」 一瞬間が空き、眼鏡の無い長門がみるみる赤面していく。これは俺に素の自分を見せてくれているのか? 「………違う、その意図はない。確かに恥ずかしい事も起こした。 ただ今回の行動は今までのわたしとあまりにかけ離れた行動ゆえ 記憶の操作を行わないと今後の活動に支障が生じる可能性がある」 「人間なんだ。みんな失敗する、ドジをする。俺なんかもよく失敗するし、朝比奈さんはドジの塊だ。 まあこれはハルヒの望みのせいもあるだろうが。そのハルヒも結構取りこぼしが多いだろ? 古泉だって意外と不器用だ。あいつの字を見たか? ひどいもんだ。 谷口、はいつもか、国木田や鶴屋さんだってヘボい所あるだろ? ってあったか? ともかくそんな中お前ひとりが完璧超人だ。ズルくないか?」 長門は無言のまま床を見つめている。 「6組でもお前の周りに人が増えたろ? 色々と手伝ってくれたろ? みんなお前の違った一面が見れて嬉しかったんだ。お前と仲良くしたかったんだ。 アホの谷口は見る目がなかったと悔しがっていたぞ」 そして一番の懸念を長門にぶつける。 「長門、まさかお前が告白して、恋人として付き合うことにしたことも無いことにしようとしてるんじゃないだろうな」 「あなたは涼宮ハルヒの鍵。わたしは涼宮ハルヒの観測者。それだけ」 「本気で言っているのか?」 無言。 「あの時お前は勇気を振り絞って告白してくれたよな。ハルヒも泣きながら祝福してくれたよな。 鶴屋さんに冷やかされたり、国木田がクラスで言いふらすと言った時、 実はまんざらでもないことを見透かされてハルヒに呆れられたことも無かったことにするのか」 無言。 「本気なら今すぐ出て行ってくれ。情報操作でも何でもするといい。その代り俺のお前に関する……」 全部は言えなかった。長門が震えながら嗚咽を殺していたからだ。 「すまん」 「嫌。……あなたと………ずっと一緒にいたい」 泣き声をこらえ、絞り出すようにこたえる。 自分と世界を変えてしまった時の長門ではなく、 力を失った状態の長門ではなく、 クールでクレバーで完璧なはずの長門が歯を食いしばり大粒の涙をぼろぼろこぼしている。 「ああ、ずっと一緒にいよう」 長門が俺に抱きつき泣き出した。胸が涙で濡れる。 実のところ脱臼の部分が抱きしめられて思わず叫びそうになったがなんとか堪えきった。 長門の心の痛み、これまでの苦悩に比べるとこんなもの大したことではない。 長門が泣いていたのは5分程度だった。あとは俺に抱きつき顔をうずめゴロゴロしている。 時々「んふ」とか聞こえるのがたまらなくいとおしい。どうにかなってしまいそうだ。 なんか世間一般でラブラブ物が常に流行っている理由がよく分かる。 「おい、長門?」 「ん」 「……長門さん?」 「ん~」 ヤバい! 俺の理性が残っている間に何とかしないと! 長門の気をそらせるために何か違う話題は、と少し疑問に思っていた事を聞いてみる。 「なぁ、長門。お前は体調不良でも学校や探索に行きたがったよな。 危険を避けるためにも休む方が得策だと思ったんだが」 長門が顔をあげる。顔が近い。か、かわいいぞ。その、『彼女』『恋人』的なひいき目抜きでかわいい。 そのかわいい顔が赤くなり一言、 「……あなたに会いたかったから」 そのまま自然に長門の顔に近づく。 長門の目が閉じる。俺も。長門の吐息を感じる。 「よろしいですか?」 「「!!!!」」 長門が跳ね起きる。ぐぁ!! 脱臼の肩に響くぅう!!! 「森さん!」 「お楽しみ中、申し訳ありません。そろそろ朝なんで長門さんはお帰りになられた方がよろしいかと」 お楽しみってそんな誤解を受けるような言い方しないでください。……誤解じゃないかもしれませんが。 「……ノックして入って欲しい」 「しましたが返事がなかったので、失礼かと思いましたが入らさせていただきました」 ……本当に? 聞こえなかった。まあ長門が聞こえていないんだから仕方ないか。 「あと今日は月曜日ですよ。学校があるのでは?」 「! あとで来る!」 げ、文字通り姿を消した! 「あの、森さん……」 「……今朝、長門さんはここには来ていませんよ。何も知りません。 特に急に姿が消えたなんてことは絶対ありえません!」 さすがの森さんも度肝を抜かれたようだ。 「大丈夫です。安心して付き合ってください」 月曜日の昼食直後に来た面会者は朝比奈さん(大)だった。 「涼宮さんが納得する失恋であれば良かったんです。むしろそのほうが涼宮さんが精神的に成長しますし。 当然恋愛成就が一番かも知れませんが、失敗の無い人生経験というのもそれなりに危険が伴いますし」 教師風のコスプレ?となっているため学校関係者として自然に面会に来れたらしい。 「若干長門さんに依存気味な失恋で、しばらく引きづるかもしれませんがそこはソフトランディングということで。 ちなみにこの時代の涼宮さんは長門さんか、あの頃のわたし以外がキョンくんと付き合っていたら 納得しなかったと考えられています。たとえ鶴屋さんでもアウトでした」 となると危ない橋を渡っていたんですかね。 「んー、そこまでは。3択問題におまけのギャグの答えがあってそれ以外は正解ってやつかな」 お笑い芸人的にはギャグの答えで正解なんだろうが。 「そのあたりはお友達にお任せするとして」 谷口…… 「でもホントのところは」 朝比奈さん(大)は真顔になる。 「キョンくんはキョンくんの人生を歩いてくれればいいです。 当然、涼宮さんには涼宮さんの、長門さん、古泉くんも。 確かに我々や機関、情報統合思念体それぞれ考えているところはありますが、 個人的には無視しちゃってもいいと思っています。当事者の当然の権利です。あ、これはオフレコですよ」 それって 「時間です。じゃ、キョンくんまたね。またねの意味、わかるよね?」 え、ちょっと!? 止める間もなく朝比奈さん(大)は病室を出ていった。ううむ、まだなんかあるわけですね……。 朝比奈さん(大)が消えて1時間後、今度は喜緑さんが見舞いにやってきた。 「今回は本当にありがとうございました。こんなに大騒ぎになるとは予測していませんでした。 特にあなたを入院させる結果になって。本当にごめんなさい」 いえ、結果的に俺にもいい感じになったんで。 「本当にすいません。長門さんの動きが想定以上にぶれまして……」 時空を超えている存在の情報統合思念体でもわからないことがあるのか。 前の改変でわかったんじゃないのか? 長門に暴走癖?があるのを。 「実は有希ちゃんがあなたを好きになってから様子がおかしかったんです。 もともと無口なほうでしたが、極端に感情を表さなくなって。 任務とあなたへの感情とのせめぎ合いでどうしていいかわからなくなったようで」 あの性格の半分は俺が原因だったのか。 「涼宮さんのほうも今回いろいろな行動パターンを出してくれて観測側としては大助かりです。 惜しむらくは情報統合思念体が食だったためリアルタイムで観測できなかったことですね。 ここだけの話ですが有希ちゃんは情報統合思念体にかるく嫌味を言われています。 『何故今回のタイミングだったのか』と。有希ちゃん的にも今回は棚ぼたな感じだったんですけどね」 ははは。当事者の片割れだけに笑ってごまかすしかない。 ええと、そう言えば 「あの、喜緑さん。長門が体育で倒れたとき、学校を休めと言ったのになかなか納得しないと気がありましたよね。 あの時どうやって長門を説得したんですか?」 「あれですか」 喜緑さんは微苦笑を浮かべた。 「『休んだらキョンくんが見舞いに来てくれますよ』って言ったんです」 ……そ、そうでしたか。 「実はあの日有希ちゃんは大泣きして大変だったんですよ。 あなたに嫌われてないか心配しちゃって。でも怖いから直接電話出来なくてわたしが電話しました。 長門さんはかわりに謝ってもらえると勘違いしていましたが」 そんな事があったんですか。 「直接あなたに謝る事が出来て結果良かった、と言っています。何事も経験ですね」 さて、と喜緑さんは立ち上がる。 「そろそろ有希ちゃんや涼宮さんたちが来るころ合いです。鉢合わせしないようにわたしは帰ります」 ありがとうございます。ところで今日の授業はどうされたんですか? 「生徒会の用事で抜けていることになっています。 ……生徒会だからって授業を抜ける理由にはならないんですが先生方までそれを信じちゃうんですから 肩書きって面白いですね」 えっと、それって情報操作ですよね? 「ふふふ」 やっぱ喜緑さん、あなた怖いです……。 「では長門さんをこれからもよろしくお願いしますね。泣かせたら許しませんよ」 え、ええ絶対。 ……ハルヒにも同じこと言われましたが迫力が違いすぎます。 「涼宮さんにとって今までのあなたは気になる存在、恋人候補、片思いの相手という感じだったというか、 まぁそんな存在でした」 ああ、どうやらそうだったらしいな。 「そうだったんですよ。どれだけイライラさせられたか」 すまん。 古泉はトランプをシャッフルしながら俺を責める。 「今ではそうですね、親友である長門さんの彼氏といったところでしょうか。つまりは付属品。 でなければ失恋相手と平然と付き合ってられるはずがありません。 ……冗談ですよ。でも長門さんの存在があることによって精神の安定を図っている部分はあるはずです」 放課後の文芸部部室、長門とハルヒは掃除当番でまだ来ていない。 あれ以来長門は掃除のクジの細工を止め、きちんと役割を果たしている。 朝比奈さんは、はて? 進路相談か何かなんだろうか? 「長門さんを冷やかして楽しんでいるんですよ。涼宮さんが次々と白状させています。 この前はひとつのソーダにストロー2本入れて飲んだらしいですね。どこの昭和ですか?」 く、長門を口止めしなければ。 「まぁ長門さんも実は誰かに聞いてもらいたかった節もあるようですが。 朝比奈さんが長門さんののろけがすごいと言ってましたよ。あの朝比奈さんを呆れさせるとは」 やっぱ自重させるべきだな。つーか長門がのろける姿が全く想像できん。 それ以外にも若干お花畑があふれ出た長門には少々落ち着いて欲しいところはある。 一番参ったのは昼飯だ。長門が弁当を持って来てくれるようになったのは素直に嬉しかったが、 問題は 「あーん」 長門よ、腕はもう治ったからもう一人で食べれるぞ。 ちなみに長門が『帰ってきた』日の放課後に治療用ナノマシンを俺に注入した。 不審に思われない程度に回復を早め、かつ後遺症を完全に防ぐ優れものだ。 なので『驚異的な早さ』で怪我は治ったのだが。 「あーん」 「……あーん」 「おいしい?」 「……ああ」 どよめく周囲。マンガ過ぎる素敵光景だ。 部室で食べるとハルヒと鶴屋さんの攻撃がすさまじく、校庭だと5、6組以外の生徒まで集まってくる。 結局クラスで5、6組の連中に囲まれて食べるのが相対的に一番マシという状況となっている。 長門に一度やめてくれといったら物凄く悲しげな表情になって以来、長門の言いなりになっている。 世の男はこうやって女の尻に敷かれるようになるんだなぁ。納得。 なお、6組では長門が俺を意識していたことは公然の秘密だったらしい。 それがハルヒと6組女子の対立原因だったようだ。 他にも長門にやられっぱなしだが、ひとつだけ勝利したことがある。 長門が「有希」と呼んで欲しい、と言った時だ。 じゃあ俺の事も下の名前で呼ぶべきだ、せめて「キョン」って呼べ、と言ったら顔を真っ赤にして口をパクパクさせた挙句 「今の話は忘れて」 と顔をそむけた。……これって勝利なのか? 以来、いまだに俺は長門を「長門」と呼びかけるし、長門は俺のことは「あなた」と呼んでいる。 長門いわく非常に照れくさいらしい。 「あなた」の方が恥ずかしくないのか? 「ともかく、乱暴な言い方をすれば我々としては涼宮さんが安定していればかまわないんで」 古泉が肩をすくめる。 「我々ねぇ。お前はどうなんだ?」 「僕ですか?」 「お前のターンじゃないのか?」 「……僕のターンですか?」 「しらばっくれんじゃねぇよ。お前、ハルヒが好きなんだろ?」 直球を受けてニヤケ顔のまんま固まりやがった。ごまかして逃げようとしてもそうはいかねぇぞ。 「………………いつから?」 「結構前からだ。夏合宿あたりか?」 本当に知ったのは長門が変えた世界とは言えない。 「やれやれ、表に現れないようにしていたつもりなんですが」 苦笑まじりに肩をすくめる。こいつまだ余裕があるな。 「長門に頼んでみるか? あいつは今幸せのおすそ分けをしてやりたい最中だ」 「遠慮します」 「試しにどうだ、ハルヒの耳元で『あいらーびゅー』ってささやくってのは?」 「や、やめてください!!」 「涼宮ハルヒはわたしたちの関係をうらやんでいる」 おお長門、来たか。あと一歩で古泉の化けの皮が剥がれるかも知れんぞ。 「わたしが伝言を伝えてもかまわない。今なら成功率が高い」 今では俺の横が長門の定位置となっていて、必ず体のどこか一部が当たる様にくっついてくる。 まるで猫だ。 古泉は集中力が乱れてゲームに勝てない、とほざいていたが元々弱かっただろ。 「な、長門さん、なんで僕が涼宮さんに告白すると決めつけてるんですか!」 長門がほんの数ミリ首をかしげる。 「違う?」 「違わなくはないさ」 「違います!」 「何が違うの?」 よう、ハルヒ。 古泉が慌てる姿も面白いもんだ。 「どうしたの古泉くん?」 「い、いえ、何でもないですよ!?」 ハルヒは不思議そうに古泉を見ていたがその視線が俺に向き、 「キョ~ン~、あんたまた図書館デートだって? いい加減デートらしいところへ連れてってあげなさいよ」 古泉をもっと攻撃しろよ。あとちょっとだったんだぞ。 「いくら有希が図書館がいいって言ってもそこはあんたが強引にセッティングしなきゃ!」 へいへい。ならハルヒのお勧めを教えてくれよ。 「なんでよ。大体あたしがデートスポットなんてわかるわけないじゃない」 「んじゃ古泉、いい所ないか?」 「なんで僕に聞くんですか!?」 「お前なら下見済みとかあるんじゃないかと」 「え、古泉くん下見とかしてんの!?」 よし、ハルヒが食いついた。 長門も目を輝かせながら古泉を見る。 「し、していませんよ!!」 「遅くなりました~ あれ? どうしたんですか?」 ああ、朝比奈さん。古泉にお勧めデートスポットを聞こうとしてるんですよ。 「デートと言えば長門さん、そろそろどうですか?」 「待って、まだ自信がない」 「なんだ長門?」 「長門さんは料理の練習をしているんですよ。キョンくんのために」 「くぁ~~ッッ!! 有希、やるわねっ! くー!」 ハルヒ、なんつう興奮の仕方だよ。 「わかった。今度の土曜日、晩ご飯を食べに来て」 「あ~~! 熱い!熱いわ! なんか腹立つ!」 なんか谷口に似てきたな。 「みくるちゃん! 対抗してあたし達だけで遊びましょ!! 古泉くんもよ!」 お、古泉、よかったな。ハルヒと一緒だぞ。 「鶴屋さんも、そうねアホの谷口と国木田も呼んで、ボウリングでも行きましょ!!」 へいへい、球投げでも穴掘りにでも行ってくれ。俺は長門にごちそうになるから。 「きー!!」 本当にハルヒは俺と長門をうらやんでるみたいだ。古泉、チャンスだ。いっとけ。 土曜日の夕方、約束通り長門は俺を食事に誘ってくれた。 「食べてみて」 これは。 「情報操作を一切使用していないから自信がない。一応おいしく出来たつもり」 テーブルに乗るメニューは唐揚げとサバの塩焼きと味噌汁にご飯。 「一般的な家庭料理というものがよくわからないので、あなたの家でごちそうになったものを参考にした」 若干不安そうな長門。 そうか、そうだよな。お前は『家庭』というものをよく知らないんだよな。 いつもお前は一人で飯を食って、一人で寝て、起きて 「駄目?」 悲しげな表情で俺の顔を伺ってきた。 「手際が悪くて少し揚げすぎた。サバも焦げてしまった」 ち、違うぞ長門!! お前に想いを馳せていたらちょっと泣けてきただけだ! 「?」 急いで唐揚げを一つ口に放り込む。 あちっ!!!! 「大丈夫!?」 あ、ああ。大丈夫だ。 「つーかうまいぞ、うん、うまい。すごいな、長門」 実際お世辞抜きで程よく味が染みてうまい。 「朝比奈みくるに教わった。まだ唐揚げと味噌汁以外につくれない。これから色々教えてもらうつもり」 そうだ、そうなんだ。 「お前は一人じゃないんだ。俺がいる。それにハルヒや朝比奈さん、古泉がいる。 色々知らないことがあったら俺やみんなを頼ってくれ。……俺が長門に頼ることの方が多くなりそうだが」 ひとりで何でも抱え込む長門、お前が正直心配だった。孤独じゃないか、と。 実際孤独だったじゃないか。家庭料理も知らなかった。 長門を抱きしめていた。 「…………?」 俺の目が何故潤んでいるのかがよくわかっていない様子。 当たり前だ。俺が一人で感極まっていただけなんだからな。 顔が近い。やっぱりここは 長門家の電話がいきなり鳴る。 思わず跳ねた。長門があわてて電話に出る。 たぶん長門もびっくりして跳ねていたはずだが、 本人は急いで電話を取りに行ったためそう見えた、と言い張るに違いない。 結構プライドが高いからな。 『やっほー有希!!』 なんちゅうタイミングだ。 ハルヒめ、見ていたのか? 『そこにキョンもいるのね!?』 しかも馬鹿でかい声、俺まで聞こえてくる。 『やっぱ有希やキョンがいないとつまんないわ。今からあんたんちに遊びに行くわっ!! 心配しないで! 食料は持ってくから! じゃ!』 呆然と受話器を見つめる長門。ハルヒは誰にでもおんなじ調子で集合をかけていたのがよくわかる。 「ハルヒがくると聞こえたが大丈夫なのか?」 「あまり……」 「わかった。一緒に片付けよう」 すこし長門が慌てる。 「いい。わたしが片付ける」 「言ったろ、長門。お前は一人じゃないんだ。俺がいる。これからも二人だ。 もし足りなかったらハルヒ達を使ってやれ。お前は一人じゃない。みんながいるんだ」 長門はなおも食い下がろうとしていたが。 「わかった。これからもあなたに迷惑をかける。よろしくお願いします」 今度は長門から抱きついてきた。 ああ、これからも一緒だ。長門、 長門家のインターフォンがいきなり鳴る。 確実に長門の機嫌は悪くなっていた。「無粋」とつぶやいていたからな。 「よし、みんな来たな。お前は一人じゃない。みんなに台所の片付けをお願いしよう」 ニヤリと笑って長門にウィンクする。 一瞬、瞬きをした長門は、ニコリとほほ笑み返した。 「お願いする」 長門有希の素顔 完
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6月ギルドイベント☆ 1ヶ月間、文化祭形式のギルドイベント ・文化祭形式とは・・・ 出し物あり、展示あり、ミスコンやら(いまどきないか!?) パレードやら、露店やら、招待試合やら、もーいろいろ あなたの学校の文化祭はどんな催し物がありましたか? ・ルール 規約違反・マナー違反にならなければ何でもOK。 みんな集まって何かするのも良し。 ここのページだけで済ませるのも良し。次のページをつくるもよし。 TSユーザを巻き込んでギルドイベント化しても良し。 賞品があってもなくても良し。 どんなイベントがあるかなぁ~ワク p(^ω^q=p^ω^)q ワク ・ 月照院クラリス企画 6月13日終了しました (ブログに詳細掲載) ・ ももゆず企画 「そっくりさんでssコンテスト」 ・ 漣企画 見たてまショー 終了しました。 ・ 雨の翼企画 雨の翼を捕獲せよ 終了しました。 イベントss集 6月6日(土) 漣プレゼンツ☆アイテムを見立てて漣を騙そう対決!(?) 6月13日(土) 月照院クラリスプレゼンツ☆「ポールとネイト、よろしくね」 誰か、途中、ss、とって、ないかい? みなさん、こんなところ探してましたの図 6月20日(土) 雨の翼&リーナ・ベイカー プレゼンツ☆「雨の翼を捕獲せよ」 誰か、途中、ss、とって、ないかい? 質問・意見・他コメントはこちらまで パパ、さんきゅー!(あぁ・・・チャンチャ・・・まぁ、いいか・・・ふっ・・・どうせみんな知ってるし・・・。) -- ももゆず(欲) (2009-06-14 19 17 07) 名前 コメント
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概要 使用車両:251系 初音西北の涼宮支社と小神支社とを結ぶ特急列車。 野川駅では特急『みどり』と対面ホームでの接続をとっており、桑谷方面との利便性の向上を図っている。 温泉地である荏ノ花へ向かう観光列車であり、また両支社の主要都市を繋ぐビジネス列車でもある。 停車・通過駅 管轄 路線 駅名 ダイヤ 小神 小神本線 森永 ● 波佐見 レ 柴崎 レ 結菱 レ 河原木 レ 宗像 レ 魔宮 レ 野川 ● 喜緑線 苺台 レ 涼宮 鶴宮 ● 涼宮線 博之 レ 本博之 レ 新房 レ 涼宮市 ● 涼博線 北涼宮 レ 荏ノ花 ● 関連動画 涼宮支社第六章前編● 小神支社part09後編●
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一覧に戻る 17 57 51喜緑江美里(C.V.白鳥由里) - ハレ晴レユカイ~Ver.喜緑江美里~ 18 07 32近藤水琴 (阿澄佳奈)、チッソクノライヌ (能登麻美子) - 水琴と歌おう! / ワンウェイもちろん片想い(カラオケ) 18 11 11おさかなペンギン(井上喜久子 岩男潤子) - おさかなペンギンのテーマ (OSAKANA-Mix) 18 15 34倉内安奈 (植田佳奈) - 恋心 18 19 42榎本温子 - Be My Angel 18 23 47おみむらまゆこ 18 26 16織部麻緒衣 (金田朋子) - 青い鳥 18 30 31ゆい (喜多村英梨) - エプロンだけは取らないで! 18 34 25水瀬伊織 (釘宮理恵) - My Best Friend (REM@STER-B) 18 37 22こしみずあみ 18 41 45沢城みゆき - 夢咲きGarden 18 46 19新谷良子 - CANDY☆POP☆SWEET☆HEART 18 50 28鈴木真仁,桜井智,赤土眞弓 - チャチャにおまかせ 18 54 28ROCKY CHACK - リトルグッバイ 19 00 45TETSU - 炎のさだめ 19 04 04田中真弓 - デイドリームジェネレーション 19 08 19Minori Chihara - Yuki, Muon, Madobe nite. (Program Hack Remix) 19 12 46津野田なるみ(伊集院レイ) - 透明な仮面 19 17 36緒方恵美、岩男潤子、丹下桜、野上ゆかな、池澤春菜、手塚ちはる - Whisper Blue 19 22 14とよさきあき 19 26 16中川翔子 - 空色デイズ 19 30 30ガンダムガールズ - TRUST YOURSELF 19 34 30ぬらりひょんのまご 19 38 51ロイ・マスタング(大川透)、リザ・ホークアイ(根谷美智子) - 雨の日はノー・サンキュー 19 42 43桃月学園1年C組feat.一条さん(野中藍) - ルーレット★ルーレット 一条さんver. 19 46 24林原めぐみ - MIDNIGHT BLUE 19 51 57辻本夏実(玉川紗己子)、小早川美幸(平松晶子) - 100mphの勇気 19 56 56TAMAGO - 着メロは歌わない 20 01 18べたーまん 20 02 46ほりえゆい 20 07 44坂本真綾 - しっぽのうた 20 10 28JAM Project - 疾風になれ 20 14 19333 わたしにできること 20 18 33若本規夫(ビクトリーム) - ベリーメロン~私の心をつかんだ良いメロン~ 20 21 08335 続・溝ノ口太陽族 JAPAN 20 25 27340 比翼の羽根 20 30 11Scoobie Do - 茜色が燃えるとき 20 35 39348 ハナノイロ 20 39 45600 FIND THE BLUE 20 44 58アンティック -珈琲店- - 覚醒ヒロイズム ~THE HERO WITHOUT A "NAME"~ 20 49 15羽入(堀江由衣) - なのです☆ 20 53 46607 オレンジ 一覧に戻る
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「熱血アルティメット田代砲www」 テラカオスは遊戯たちに熱を纏った光弾を何発も発射する。 さらに神人も召喚し、遊戯たちにその巨大な拳を奮う。 「罠カード発動!攻撃の無力化!!」 遊戯は罠カードを発動させ、熱血アルティメット田代砲を防ぐ。 鷹野は神人の拳を受け止めると… 「よっこいセクロス」 と言いながら神人ごと投げた。巨大な神人の体が宙を舞い、テラカオスに落下する。 さらにセイバーが接近し、斬撃を繰り出す 「うぜぇwwwwwwATフィールド展開するわよwwwうぇうぇwww」 テラカオスはATフィールドを展開し神人と斬撃を防御。テラカオスはまた攻撃に移ろうとするが、 「残念だが、貴様のターンはもうないんだよォ~ザ・ワールド!!!」 荒木が時を止める。荒木以外の物体は動かない。 「相手はテラカオスだ。念入りにやっておいて損はあるまい。」 荒木は自分が所持している多数のナイフを全て投げ、アーカードの使い魔の狗を召喚し襲わせ、 レミリアやフランドールのスペルカードを複数使い、弾幕をこれでもかというくらい出す。 そして荒木は時間が止まっている間にどこかへ飛んでいく。あるものを取ってくるために。 数秒後荒木は停止した時間の中で、そのとってきたものを抱えながらテラカオスの頭上へと迫る。 「nice boat.だっ!!!!そして…時は動きだすっ!!」 動き出した時の中でテラカオスが見たものは自分を襲う狗、大量のナイフや弾幕。 そして頭上から落ちてくるnice boat.そのもの。 「なんじゃあこりゃぁぁぁああぁwwwwwwwwwwwwwwwwww」 「無駄無駄無駄無駄っ!!!脱出不可能よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ギャアアアアアアアアアアアアアアアwwwwwwwwwwwww」 その全てがテラカオスに直撃し、さらにniceboat.がテラカオスの上にのしかかる。 「なぁにこれぇ。」 この光景は闇AIBOですら呆然となるほどだった。 そして荒木はniceboat.の上に乗り、高らかと勝利宣言をする。 「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」 だが、その時荒木の背後に潰されたはずのテラカオスが姿をあらわす。 「よくもwwwさっきはwwwwwやってくれたわねwwwwww死ねけひゃひゃひゃひゃあwwwwww」 熱血アルティメット田代砲をゼロ距離で発射する。荒木は光弾の中に消え去った。 そして神人を召喚する。怒りのせいかさっきとは比べ物にならないほどの大きさである。 神人はそのまま遊戯たちに巨大な拳を振り下ろす。 「これは本気ださないとキツいわね…」 鷹野が神人の拳を受け止める。流石は最高傑作の強化人間。 だが鷹野には弱点があった。そう、時間切れである。 時間切れを迎えた鷹野の肉体は筋肉隆々の肉体から元の体へと逆戻りしていったのである。 これではただの裸エプロンの痴女だ。 そしてその隙をみて、神人は鷹野を拳でぶっ飛ばした。鷹野はそのまま空の彼方まで飛んでいった 「次はお前よwwwwさっさと死ねwwwwうぇwwwうぇww」 そして七英雄テラカオスは武藤遊戯とセイバーを睨みつける 「あの2人は僕が倒すつもりだったのに…許さないよテラカオス。」 だが、心底遊戯はテラカオスに対して戦慄を覚えた。 なにしろさっきまで自分達が苦戦していた2人を一瞬にして葬り去ったのだから。 【二日目・2時45分/幕張メッセ外部】 【唯一神渚修造テラカミオロン(笑)@ニコロワ×神×デジモン×テラカオスロワ×現実×エヴァ×うたわれ】 [状態]神(笑)+カス(笑)+唯一神(笑)+デジモン(笑)+燃え(笑)+最後の使徒(笑)+うたわれるもの(笑)、怒り 、結構なダメージ [装備]無し [道具]無し [思考]基本:神として君臨する、カオスロワを熱い展開にする 1:喜緑、長門、シンジ、エルルゥと結婚して熱い展開にする。 2:オリキャラ(主に書き手)は皆殺し。逆らう者は皆殺し。逆らう喜緑、長門、シンジ、エルルゥは調教して熱くする。 3:目の前の遊戯どもを殺してカオスロワを熱い展開にする ※カオスロワ5の一部の死者の能力を使えます ※テラカオスの人格及び魂は能力だけ奪われて完全消滅しました 【武藤遊戯@遊☆戯☆王(テレ朝アニメver.)】 [状態]闇AIBO、セイバー展開中 、戦慄 [装備]千年パズル他 [道具]DMカード他 セイバーのカード@ニコニコ動画 [思考]基本:主催に復讐する 1:主催を殺す。だが対主催はできる限り危害を加えない 2:死者をカードに変え、主催を絶望させるための手駒にする 3:対主催を利用。彼らが喜緑を倒したら復活させて殺す 4:テラカオスを倒す 5:荒木たちとの戦いは一旦停戦 6:ニコロワでの恨みをはらす(セイバーの思考) 【荒木飛呂彦@現実 死亡確認】 【鷹野三四@ひぐらしのなく頃に ぶっ飛ばし確認】
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俺設定のキャラとかめんどくさいし、6期とかいいながら5期のキャラばっかりで、 単なる5期の続き物にならないように、どこからともなくあらわれた高嶺響が色々溶かした。 やっぱり新期はこれまでどおり前期のキャラはなるべく自重じゃなきゃね。 「ぉぎょいあういぎゃああがかが」 【南光太郎@仮面ライダー 死亡】 【南明菜@現実 死亡】 【南千秋@みなみけ 死亡】 【南菜月@ドクロ 死亡】 【喜緑さん@空気 死亡】 【三沢@空気 死亡】 【笑点のピンク@空気 死亡】 【朝倉涼子@ハルヒ 死亡】 そことは別の場所でゆたかはようやく治り、目の前の男を殺した。 カオスロワ書き手なのにゆたかを相手に油断したのが敗因だ。 【◆nkOrxPVn9c@現実 死亡】
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Project512_Part3-もくじ- Part1はこちら Part2はこちら Part4はこちら Part5はこちら Part6はこちら Part7はこちら Part8はこちら Part9はこちら ──阪中が主役のSSに挑戦なのね、の巻── 【プロローグ】 【阪中大地に立つ!】 【阪中の孤島症候群】 【阪中の古都珍騒動】 【阪中の退屈】 【阪中の憤慨(偏執者一直線!)】 -特別書き下ろし- 【阪中の紹介(1)】 【阪中の紹介(2)】 #あははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!! ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ _. ‐  ̄ ヽ、 / ヽ-、 / _. -、 ヽ . / ,. / ,. | i |/ / / || ! | | / X、 _.. -¬ | | | ∨ ∧マ ‐f乏!リ| 」,.-、 ′ | ||| リ ,! ,′ ヽ.ト||、 __ ,.イ‐ ´ / . `|l \`´ / | | `r─i ´ V ./ _.ユ-´| ハ ヽ、_ ;.ァ7 / / ヽゝ- /// /`ヽ / _..、 . / V /` y゙´ _. -.ニ‐_二ヽ | | / / // / -大野木- 茶道部。 阪中、成崎、佐伯と仲良し。 (涼宮ハルヒの公式より) ・ ・ ・ 【プロローグ】 阪中が主役のSSを書いてもらえる。@チャック 俺が書くのか誰かに書いてもらえるのかどっちなんだ(゚д゚) 【阪中、主役となる!?】 ──県立高校に進学してか(略)、この春からわたしは二年に進級したのね。 阪中「1年5組出身、阪中菜乃音。ただの人間には興味ないのね、この中に宇宙人、 未来人、異世界人、超能力者が居たらわたしの所にくるのね。以上!」 大野木「ねえ阪中、さっきの自己紹介だけど・・・」 阪中「いい事思いついたのね!自分から探しに行けばいいのね!」 大野木「ちょ・・・!、一体何を!?」 阪中「大野木さんなんかふてぶてしそうな顔つきだからキョンくんの代わりやるのね。」 大野木「ナニゲに酷い事言われてない!?」 阪中「めがね属性キャラは成崎さんが居るのね。」 成崎「えっ!?何やるの?」 阪中「佐伯さん存在感薄いからマスコットキャラになるのね。」 佐伯「微妙すぎる配役!?」 阪中「後は転校生を連れてくるのね!」 橘「ここ、どこなのです?あたしなんで連れて来られてるのです!?」 阪中「世界を大いに盛り上げる阪中の団結成なのね!」 ──こうして波乱万丈の一日が始まったのね。 目次に戻る。 ・ ・ ・ __ __ / ´ ̄`ヽ`! . / 了 -、 ヽ\ l / \ ヽ ∨ , / Y / / ヘ ヘ ヘ ヘ. , / | l/ | |、 ヘ | | | | / ヾ |,. ゝ-}-\ A-ュ1.、| |! 〈 ト ∨ ,r¬`ヽ , 〒ミl. /} ノ ヽ ヽ. l、 {ヽ. ,! }ー{. l_ノ ル レ′ ) `l `ヽ -ニ- ヽ-イ / . f l. \ ‘ / r ノ ヽ,rワ ` ーf ヽ、/ ) ( / ,/ ( ヽ \ ( `r f ヽ- ..二コ ゙! `! ヽ._ ̄l Y,. -─-| ,r‐ __ノ ノ ! ` | l (_ -成崎- 美術部。 阪中、大野木、佐伯たちと仲良し。 (涼宮ハルヒの公式より) ・ ・ ・ 【阪中の孤島症候群】 阪中「夏だから合宿するのね!と、いう事で江ノ島に来たのね。」 大野木「ちょ、H県から江ノ島とかどんだけ!?」 成崎「書いてる人が関西知らないから・・・」 佐伯「葉山とか逗子とかもうちょっとズレた方が海岸きれいなんだけどねー」 大野木「近県のDQN珍走団が集まってくるから汚いのよね。」 橘「あたしも今日は遊ぶのです!ここなら森さんに会わないと思うのです!」 阪中「でも島って言うより山っぽいのね、エスカレーターと階段ばっかりなのね。」 大野木「よくわかんない神社とか遺跡とかいっぱいあるわよ。」 橘「島の裏側は断崖なのです、ちょっと怖いのです。」 成崎「橘さん落ちたりしないでよ、ここ岩場で本気で危ないから。」 阪中「でもここ橋がかかってるから孤島じゃないのね、遭難したりはしないのね。」 ──帰り道なのね。 阪中「駅が悪趣味な竜宮城テイストなのね、この電車で帰るのね。」 大野木「鉄道マニアには江ノ電がおすすめよ。」 成崎「日帰り?ねえ日帰り?」 【阪中の古都珍騒動1】 阪中「成崎さんがうるさいのですぐ帰るのは止めるのね。 古泉珍騒動があがってるからわたしたちも近場の古都行くのね。」 大野木「結局江ノ電乗るんじゃない。」 成崎「プロットも何も無しに即興で書いてるからね。」 橘「そういう事で鎌倉へ向かうのです。あと古泉じゃなくて古都なのです。」 阪中「汽笛一声江ノ島を、はやわが電車は離れたり~♪なのね。」 大野木「八幡宮の石段に、立てる一木の大いちょう~♪」 成崎「別当公暁の隠れしと、歴史にあるはこの陰よ~♪」 橘「鉄道唱歌とかジャ○ラック的に大丈夫なのですか?」 阪中「多分古い曲だから大丈夫だと思うのね。」 大野木「と、いう事で鎌倉よ」 成崎「いざ鎌倉!」 阪中「長谷で大仏見るのね。」 成崎「・・・大仏の前でエクスカリバーとか売ってるんだけど。」 佐伯「若旦那が跡継いでから『やっちゃったー』って感じ?」 大野木「観光客だけじゃなくてコスプレイヤーとかRPGマニアとかも来てるわね・・・。」 【阪中の古都珍騒動2】 阪中「でも古都だけど別に大した騒動おきないのね。」 大野木「しかたないでしょ、宇宙人も未来人も別に居ないんだから。」 橘「(あたしいらない子なのですか?!(ガーン))」 成崎「どうやってオチをつけるのかしら?」 漱石「ろっぽんぞー」 佐伯「あ、古いオカ板のコピペにあった怪奇現象が!?」 漱石「ろっぽんぞー」 阪中「別に面白くない怪奇現象だからほっとくのね、漱石さんで切符買うのね。」 漱石「ろっぽんぞー」 大野木「夏目漱石の千円札って今自販機で使えたっけ?」 阪中「隣の北鎌倉に来たのね。」 大野木「ここってお寺の境内無理やり線路通してるんだっけ?」 阪中「でも別に普通のお寺なのね、駅も狭いだけなのね。」 佐伯「駅前で以前書いてる人が何かやらかしたらしいわ、禁則事項だけど。」 橘「また行数制限なのです、どうやってオチをつけるのです?」 【阪中の古都珍騒動3】 阪中「帰るのね、これ以上ローカルな地域踏み入ると住所が特定されてしまうのね。」 成崎「箱根湯本で『第三新東京市にようこそ』って看板見たかったなー」 佐伯「それは写真でしか見たこと無いみたいよ。」 大野木「普通に寂れた観光旅行しただけじゃない、夏って設定なのに泳いでないし。」 阪中「江ノ島に来れば首チョンパとか四肢切断とか見れると思ったのに残念なのね。」 橘「それなんてエ○フェンリー某なのです?そういうグロ路線はいけないと思うのです!」 漱石「ろっぽんぞー」 阪中「漱石まだいたのね、全部切符代にするのね。」 ・ ・ ・ __ ,r ´ `丶、 ,ノ _ \ . / r‐ ´ `ヽ 、 ヽ / | __、 ヽ i | | ´ ̄` ´__ !、 || | | r1¨T ヽリ| | | | | | l | ` ´ 、 l. | / ヽ. ! l ! _, /./} / ヽ ,. l ト、 ` ,イ/ /′ \.l | ` - ,._/レ ノヾ ├ 、 / \ ___、 \ ,r<\ Y´,. -ヘ. l`ト、 /⌒ヽ\\ Y  ̄| | | | l \\\ ヽ | l | |! -佐伯- コーラス部。 成崎、阪中、大野木たちと仲よし。 (涼宮ハルヒの公式より) ・ ・ ・ 【阪中の退屈1】 阪中「ちょっと!大野木さん、わたしのプリン食べたのね!?」 大野木「ちょ、鎌倉編あれで終わり?w」 佐伯「あ、ごめん、プリン食べたのあたし。」 成崎「結局一般人が四人集まっても普通の事しかできないよね。」 橘「(あたしは森さんオチ要員なのですか・・・)」 大野木「とりあえずヒマだと思って企画持ってきたわよ。」 阪中「『部活対抗バレーボール大会』、でも人数足りないのね。」 大野木「援軍も連れてきたわ。」 鈴木、日向、柳本「「「よろしくー」」」 阪中「また地味な子ばっかりなのね・・・」 鈴木「地味ってゆうなー!」 柳本「鈴木は名前地味だけどバレー部員なのよ。」 日向「あたしは女子レスリング部よ、女の子と組んず解れつするのなら任せて!」 柳本「涼宮ハルヒに一泡吹かせてやるって聞いて助っ人に来たわ!」 大野木「とりあえず六人制で運動部員優先でチーム組んでね、あたしたち補欠で。」 【阪中の退屈2】 ハルヒ「有希!みくるちゃん!『部活対抗バレーボール大会』に出るわよ!」 キョン「やれやれ、どうせ俺らも手伝わされるんだろ?谷口と国木田も呼ぶのか?」 ハルヒ「今回女子の部だからキョンたちは出られないわ。 みくるちゃん、鶴屋さん呼んできて!」 みくる「ひゃ、ひゃ~い!」(トテトテトテ) 長門「今回のバレーボールは六人制、あと二名足りない。」 ハルヒ「阪中ちゃんに頼んだけど、あっちはあっちで出るんだって・・・」 キョン「(ハルヒって友達少ないからなぁ・・・)」 ハルヒ「哀れむような目で見ないでよ(グスッ)」 長門「…大丈夫、わたしたちがいる。」(ポン) 鶴屋「ハルにゃ~ん!お姉さんに任せるっさ!!」 財前「文化祭ではお世話になったわね!あたしはENOZの財前舞よ!」 榎本「義を見てせざるは勇なきなり!同じく榎本美夕紀!」 岡島「何やるかよくわかんないけど!同じく岡島瑞樹!」 財前「別に軽音部でバレーなんか得意じゃないけどね!ダッポン!」 みくる「これで6+補欠一名でしゅ!バレー大会出られましゅよ!」 ハルヒ「人数も揃ったし行くわよー!」 一同「「「「「「めがっさー!」」」」」」 みくる「ちなみに中西さんが三年であと二年生でしゅ。やっとわかりましゅた。」 #(学年はライブアライブ当時) 【阪中の退屈3】 阪中「行くのねー!」 柳本「パース!」 日向「トース!」 鈴木「アターック!」 橘「体育会系女子集めただけあって地味にすごいのです!」 鈴木「地味ってゆうなー!」 大野木 佐伯「「がんばれー!」」 成崎「なんで眼鏡っ娘のわたしがレギュラーなの?!」 橘「阪中さん良く見ると長身でかっこいいのです・・・ドキドキなのです。」 佐々木「くっくっ、橘さんたちなかなかやるじゃないか。」 橘「あうっ!?佐々木さん違うのです!これは浮気じゃないのです!まだ何もしてないのです!!」 佐々木「橘さん、その件に関してはかまわないよ、むしろ百合属性同士で良いじゃないか。 それよりも君がなぜか北高に転入してる世界なんだから僕だけ他校生なのは 不公平だと思わないかい? 僕も仲間に入れて貰いたいと思ってね。くっくっ。 どうだろう?、阪中さん、僕も仲間に入れてもらえないかな?」 阪中「佐々木さん歓迎なのね、これで本家SOS団から一本取るのね!」 成崎「佐々木さんレギュラー代わって、美術部員のわたしより向いてると思うの。」 佐々木「任せてくれたまえ、くっくっ。」 【部活対抗女子バレー大会、エントリー一覧。】 ───かくして部活対抗バレーボール大会の幕は開けたのね。 どうなるか書いてる人もまるっきり予想付かないのね。 ちなみにチーム編成はこうなのね。 ・阪中チーム 阪中(コーラス部) 鈴木(バレー部) 柳本(新体操部) 日向(レスリング部) 橘 (転入生) 佐々木(転入生) 補欠 大野木(茶道部)、佐伯(コーラス部)、成崎(美術部)。 ・SOS団女子部チーム ハルヒ(SOS団) 長門(文芸部) 鶴屋(無所属) 財前(軽音部) 榎本(軽音部) 岡島(軽音部) 補欠 みくる(SOS団) 【阪中の退屈4】 喜緑「それでは、部活対抗女子バレーボール大会を開催します、主審の喜緑江美里です。」 九曜「───副審の───周防───九曜…──」 喜緑「東方、SOS団女子部チーム」 ハルヒ「さーかかってらっしゃい!」 九曜「──西方、阪中団チー───ム──」 阪中「今日ばかりは負けられないのね!」 柳本「涼宮伝説もここまでよ!」 鶴屋「にょろ~?黄緑さん、いきなり決勝戦にょろ?」 喜緑「いえ、他のチームはSOS団の名前を聞いたとたん辞退しました。 あと私は喜ぶ、と書いて喜緑です。」 ハルヒ「あたしたちの事なんだと思ってんのよ!」 みくる「(暴虐魔人とかDQNとかじゃないでしゅかね・・・?)」 佐々木「くっくっ、話が早くていいじゃないか。涼宮さんとお手合わせ願いたかったんだよ。」 柳本「いざ尋常に勝負よ!」 喜緑「(長門さん、宇宙的能力は封印して頂きますよ)」 長門「(…チッ)」 【阪中の退屈5】 喜緑「それでは試合開始です。(ピッ)←笛」 阪中「行くのねー!」 橘「パスなのです!」 鈴木「トス!」 柳本「アターック!」 ハルヒ「狙いが甘すぎるわ!あたしが止め・・(バコォ!)アッー!顔面だけは!顔面だけは!」 鶴屋「ボールはまだ生きてるにょろ!」 岡島「任せて!トスよ!」 財前「ダッポンアターック!! (スポーン)あ、抜けちゃった・・・」 成崎「(バコォ!)へぶっ!?」 喜緑「(ピピー!)阪中チーム1点です。」 ハルヒ「ちょっと!柳本!さっきあたしの顔面狙ったでしょ!?」(鼻血) 柳本「何よ偶然よ偶然!、それよりあんたらこそ補欠席狙ったでしょ!!」 財前「誤解だって、あたしら運動部じゃないから慣れてなくってさ!」 九曜「───止め─て──試合に──戻る───」 喜緑「次行きますよ。(ピッ)」 阪中「い、行くのねー!」 佐々木「パス!」 鈴木「トス!」 柳本「アターッ・・・」 ハルヒ「チェストォォォ!!」(ドゴス!) 柳本「ウボァ!」 一同「「「け、蹴ったぁ!?」」」 【阪中の退屈6】 喜緑「(ピピーッ!)涼宮選手、今のは反則です、審判として退場を命じます。」 ハルヒ「何よ偶然なんだから仕方ないじゃない、今の技溜めコマンドだから暴発しちゃったのよ!」 鈴木「いつこのシリーズ格闘ゲームになったのよ!?」 佐々木「涼宮さんいくらなんでも強弁に過ぎるんじゃないかな?」 みくる「涼宮しゃん、とりあえずここはいったん引くでしゅ、わたしが代わりに出ましゅから・・・」 ハルヒ「みくるちゃんは黙ってて!」(パシッ) みくる「あうっ!?ぶ、ぶったでしゅね!おやじにもぶたれた事ないのに!」 鶴屋「にょろ!?みくる自重するにょろ!殺意の波動はまずいにょろ!!」 日向「あたしが止めるわ!女の子と組んず解れつするのならまかせて!」(ガッシ!) みくる「甘いでしゅ!鶴屋さんのセクハラタッチで常日頃鍛えてるあたしには効きましぇん!」(ボカッ!) 岡島「向こうも実力行使に出たぁーっ!?」 榎本「えーい!面倒だやっちまえー!」 ハルヒ「そうよそうよ!!うりゃーっ!!」(ドゴス) 佐々木「君たち、こういう時こそ冷静にだnウグッ・・・!!」 橘「アッー!佐々木さんが!佐々木さんが!!」 佐々木「涼宮さん!僕だって怒るときは怒るよ!一度君もやられる立場になってみるといい!」 橘「佐々木さんに手を出すならあたしも黙ってないのです!!」 (チャーン!ドーン!ゴーン! ) 阪中「あ、あわわわわなのね、みんなやめるのね!わたしのために争わないでなのね!」 大野木「ちょっと!審判も止めてよ!」 佐伯「審判なにやってんのよ!」 長門「えいえい。」(ガシガシ) 喜緑「ちょ、ちょっと長門さん、どさくさ紛れに審判椅子蹴らないで下さい!」(グラグラ) 長門「宇宙的インチキは使っていない、問題ない。えいっ。」(ゲスッ) (ガターン!) 喜緑「へぶっ!?、・・・なーがーとーさーんー!!(ゴゴゴゴゴゴゴゴ)」 長門「やりすぎた、今では反省している。」(脱兎) 喜緑「待ちなさいっ!!」 九曜「────収拾───不能…────」 【阪中の退屈7】 岡部「えー、残念な事に、昨日の球技大会で乱闘騒ぎがあり負傷者が多数発生した。 うち八名が俺のクラスの生徒だった。先生悲しいぞー、減給処分されたぞー。」 由良「そういえば今日欠席者多いよね。」 高遠「もしかして退学?」 谷口「そういや涼宮もいねぇな。」 キョン「もう知らん。」 岡部「えー本来なら退学になっても仕方が無い所だが、乱闘の関係者は停学一週間と 奈良の禅寺に修行しに行くこととなった。先生悲しいぞー。」 花瀬「ハンドボールオチが無いっスね」 ・ ・ ・ 阪中「ひどいのね、結局涼宮さんに出番持っていかれたのね。」 大野木「なんであたしたちまで巻き添え食らってるのー!?」 佐伯「騒ぎの中心はやっぱりあいつらじゃない!!」 成崎「わたしなんて気絶してただけなのに!」 柳本「メインキャラの壁は厚かった・・・」 鈴木「地味ってゆうなー!」 ハルヒ「うっさい!あたしも修行させられてるんだから我慢しなさい!」 佐々木「くっくっ、僕まで巻き込まれてしまうとは迂闊だったよ。」 橘「でも佐々木さんとの愛の共同作業なら修行も耐えられるのです。」 鶴屋「にょろ~、平和の尊さを知ったにょろ。」 -阪中の退屈(完)- もくじに戻る ・ ・ ・ _. - ヽ、 / ,.-、 ,. ┬、 ヘ / ,r ─ァ¬‐.-ヽ ヘ . / // / .| ヘ ヘ ! | { 、_,イ ハ 〉__ヘ | | | ̄ヽ ̄ 二--- | | | vt.、 _ | l ヽ |lソ ´ト1 `| / |. | ¨ ,′ / | \ ‐ / / | _ノ/ ヽ _. -7 ./ , ヽ_ `¨ア,. ┐ _/| / ./ / ! 「 ̄ l/ _| / / ,//| ∧ |ヽ_`_、 /,.イ ∠_‐<,.-1| | ヾ \ ! / /‐-、ア ``/,二二ゝ -柳本- 新体操部に所属し、ハルヒの事は苦手。 (涼宮ハルヒの公式より) ・ ・ ・ 【阪中の憤慨1】 会長「阪中くん、君を呼び出した理由に心あたりはあるかね?」 阪中「愛の告白なのね?、喜緑さんがいるのに会長酷いのね、見損なったのね。」 会長「違う!君が作った”世界を多いに盛り上げる阪中の団”についてだ! 部活としても同好会としても学校としては認めていない! しかしだね、解散を 命じる前に君の釈明を聞いておく必要がある、そう言う事だよ。」 阪中「別に学校に認めてもらう必要はないのね、わたしたち別に部活に所属してるのね。」 会長「・・・するとなんだね、前回の部活対抗バレーは?」 喜緑「『コーラス部VS軽音楽部』、という事になりますね。人数的に。」 会長「・・・うちの文化部は武闘派ばかりなのかね?」 喜緑「文芸部+αがあの人たちですからね。」 阪中「それじゃ帰るのね。」 会長「待ちたまえ阪中くん! そ、そうだ文芸部と勝負すると言うのはどうだね? それで勝てば君たち阪中団を同好会として推薦してあげよう、そうすれば若干だが 予算も配布されるようになる、どうだね?」 阪中「なにか私たちを涼宮さんと戦わせたいみたいなのね。でもまた暴れられると困るのね。」 会長「私にもいろいろと事情があるのだよ(古泉め・・・)。 どうだね、文集をそれぞれ出してもらえれば良い、文化的な対決方法だから 今回は乱闘にはならないだろう。」 【阪中の憤慨改め偏執者一直線!2】 阪中「・・・と、いう事でわたしたちが会誌を出す事になったのね。」 大野木「また安請負してきちゃって、あんたはともかくあたしたちが何書けってんのよ?」 佐伯「あたしたちには荷が重過ぎない?書いてる人もきっと展開考えてないわよ!」 成崎「絵だったら書くけど、これでも美術部所属だから。」 柳原「あたしたちも協力するわよ!」 鈴木「前回は涼宮ハルヒに酷い目にあったしね!」 阪中「五組メイトとSOS団の対決なのね!」 橘「あたしと佐々木さんが忘れられてるのです!」 佐々木「僕たちが目立ったら主役キャラより目立ってしまうじゃないか、くっくっ。」 ・ ・ ・ 成崎「手島『榊・・・、俺はお前のことが!』」 大野木「豊原『アッー!後藤くんダメだよそんな事っ!』」 阪中「なんでクラスの男の子を掛け算してるのね、これじゃ同人誌なのね。」 橘「佐々木『僕は大切な事に気が付いたよ、橘さ・・・ 佐々木「橘さん、僕をネタにするのは止めてくれないか。」 【阪中の憤慨改め偏執者一直線!3】 ハルヒ「キョン!また会誌作るわよ!」 キョン「おいおい、そりゃ使い古されたネタだろ、過去の良作SSと比較されるっぜ?」 みくる「きっと書いてる人もネタ考えずに難しいテーマ選んじゃって後悔してましゅよ。」 ハルヒ「うっさい!阪中ちゃんとの勝負がまだついてないわ!今回は何が何でも勝つわよ!」 キョン「やれやれ・・・。」 ・ ・ ・ キョン「俺が『学習コラム』・・・。」 古泉「僕は『恋愛物』だそうです。」 みくる「『架空戦記』って・・・、何書けばいいんでしゅか?」 長門「『日常おもしろエッセイ』…。」 ハルヒ「あたしは『替え歌』って何よ?!誰こんなの入れたの。」 キョン「いや、そもそもくじ引きでお題出すこと自体間違いだろ。」 ・ ・ ・ 古泉「『うートイレトイレ!今トイレを求めて全力疾走してる僕はごく普通の男の子。 強いて違う所をあげるとすれば男に興m』」 長門「『せんキャベツにはマヨネーズも醤油も合う、ドレッシング各種やソースも 組み合わせればせんキャベツだけで一ヶ月はもつ、ユニーク。』」 ハルヒ「有希と古泉くんは順調ね!」 キョン「妹に教えてるから小学生レベルの問題なら書けるんだが・・・」 ハルヒ「キョン!それでいいわ!適当に埋めちゃって!」 キョン「『ここに6このれいとうぎょうざがあります。 これをぜんぶ食べて生きのこれるかのうせいはどのくらいでしょうか?』」 みくる「『ずぎゅーん!ずどどどどど!どががががが!ばきゅんばきゅん!パフパ(中略) RX-75ガンタンク(全高15m本体重量56.0トン全備重量80.0ト(中略)は敵を倒したんでしゅ。凄いでしゅね!』」 ハルヒ「みくるちゃんいいわよ!擬音と資料本からのスペック丸写しでページ埋めちゃえばいいのよ!!」 キョン「ところで締め切りいつなんだ?」 ハルヒ「今日の夜よ!」 キョン「マジか!?」 ハルヒ「明日の朝には印刷終えて配ってないとダメだからね!」 【阪中の憤慨改め偏執者一直線!4】 ──翌日 谷口「よっ、国木田!おはらっきー!」 国木田「あ、谷口、なんか人だかりできてるんだけど何なのかな?」 谷口「ん?なんだありゃ、うちのクラスの女子じゃねえか。」 国木田「なんかコスプレして配ってるね。」 阪中「阪中団の会誌なのね!一人一部ずつなのねー!」 大野木「貰えコノヤロー!」 佐伯「もってけ同人誌!」 阪中「あ、谷口くんと国木田くん!これ一部ずつあげるのね、会誌なのね。」 国木田「あ、ありがとう、でもそれ何のコスプレ?」 阪中「多分きっとおそらく東京○スの作業服なのね。参考なのね↓」 ttp //chat-ichigo.blogspot.com/2006/06/eva.html 大野木「ちなみに小説2ページ、成崎の漫画(ラフ)が6ページ、残りは あたしたちのコスプレ写真と東○ガスの製品紹介だよ!」 谷口「ムッハー!湯沸かし器にかこつけて入浴中の女性(にょしょう)の写真がてんこ盛りでゲス!」 喜緑「・・・会長、いいんですか?あれ認めちゃって?」 会長「うあああしまった!こいつら涼宮より常識人だと思ってた俺が間違ってた!!」 喜緑「コスプレも手渡しも禁止って伝え忘れてましたよね・・・。」 校内放送「キンコンカンコーン!、生徒会長、生徒会長、風紀指導部がお呼びです、至急職員室まで来てください。」 会長「喜緑くん、行ってくる・・・。私の悪運もここまでのようだな・・・。」 喜緑「会長・・・、安らかに眠ってください・・・。」 【阪中の憤慨改め偏執者一直線!5】 長門「なーがとー、なーがとー、たっぷり、ながとー。」 みくる「へぶるるるる、へぶぶるるるる・・・・、はうぁっ!?」 長門「ぐっもーにん。」 みくる「長門しゃん、赤い寝袋に入って跳ね回らないでくだしゃい、夢に見ましゅた!」 ハルヒ「なによ、朝っぱらからうるさいわね!」 みくる「あ、おはようございましゅ。」 長門「ちなみに徹夜で泊り込んで製本していた、誰も状況を説明しないのでわたしが言う。」 ハルヒ「ってもうこんな時間じゃない!もう登校し始めてる生徒いるわよ!キョン!古泉くん!起きて!」 キョン「ん?なんだもうこんな時間かよ。」 古泉「せっかく泊り込んだのに、昨日はキョンタンを掘る暇もない忙しさでしたよ。」 ハルヒ「早く行くわよ!キョンと古泉くんは会誌持って急いで来て!」 キョン「急かすくらいなら全895ページとかアホみたいに重たい本にするなよ。」 みくる「内容の98%がわたしの書いた小説の擬音なんでしゅけどね。」 ・ ・ ・ SOS団一同「「「「「はぅあっ!?」」」」」 【阪中の憤慨改め偏執者一直線!6】 阪中「会誌貰って欲しいのねー!一人一部ずつなのねー!」 佐伯「さあさあ御用とお急ぎの方もよってらっしゃい見てらっしゃい!」 大野木「持ってけドロボー!!」 ハルヒ「なによ!なによなによ!会長の奴前回コスプレも手渡しも禁止とか言ってた癖に!」 長門「今回わたしたちも言われてない。」 みくる「・・・またバニーガールでしゅか?」 ハルヒ「あったり前じゃない!あたしだって負けてらんないわ!身体じゃ負けないわよ!」 キョン「待てハルヒ、俺たちもバニーとか言うなよ!」 ハルヒ「キョンたちは六尺褌よ!!そういう層の人気狙いなさい!!」 古泉「ウホッ!流石は団長ですね。素晴らしいアイデアかと。」 キョン「古泉お前はいい、黙っていろ。」 ハルヒ「行くわよ!」 ・ ・ ・ みくる「あ、あの~涼宮しゃん・・・他のコスプレじゃダメでしゅか?」 ハルヒ「何言ってるのよ!阪中ちゃんたちに負けてもいいわけ?!」 長門「胸が余る…。」 みくる「で、でも今日は突然のことなので、あの、無駄毛のお手入れがしょの~・・・」 長門「寸法が合っていない。」 ハルヒ「そこがいいんじゃない!マニアックな層にウケるわよ!」 キョン「おーいハルヒ~!古泉どうにかしてくれ~!!」 古泉「あああキョンターン!キョンターン!情熱を持て余します!ふんもっふ!ふんもっふ!」 ハルヒ「でかしたわ古泉くん!それでBL好きのハートもキャッチよ!」 キョン「会誌の内容で勝負してくれ!頼むから!!」 【阪中の憤慨改め偏執者一直線!7】 谷口「お、涼宮たちまたやらかしたぞ!?」 国木田「あ、朝比奈さん?!こ、これはマニアック路線だね!」 山根「ウヒョー!朝倉さん以来のマイスメルエンジェル登場か!?」 ハルヒ「さあこっちはSOS団の会誌よ!無料配布だからどんどん持ってっちゃって!」 長門「もってけ」 みくる「ふええええええ、こ、こりはヤヴァいでしゅ、わたしだけ絶対に映像化できましぇん!!」 キョン「古泉!会誌配れ会誌!俺を追うな!!」 古泉「ハァハァ!もう辛抱たまりません!キョンターン!キョンターン!」 ・ ・ ・ 阪中「はぅあなのねっ!?」 大野木「涼宮団露出激しすぎよ!!」 佐伯「胸なんて飾りです!エロい人にはそれがわからないんです!」 鈴木「なんかマニアック路線にも手を出してるし!!」 成崎「わたしのめがねっ娘属性だけじゃ太刀打ちできないわ!」 柳本「男の子たち9割以上向こうに流れちゃったわ!ムキーー!」 日向「腐属性の女子も向こうに流れ出してるわ!」 佐々木「ふーむ・・・、これは憂慮すべき事態だね。」 橘「佐々木さん、あたしたち存在消えかかってるのです!ここで目立つのです!」 阪中「佐々木さん何か良い案あるのね?」 大野木「あたしたちも脱ぐとか?!」 佐々木「それは得策とは言えないね、現代のメディアでは露出が過多でみんな 食傷気味だと思うよ。それに・・・、実に悔しい事だが僕たちが脱いでも プロポーションで涼宮さんや朝比奈さんに勝てる逸材は居ないのが実情だよ。」 佐伯「じゃああたしたちには打つ手無しって事?」 佐々木「こっちはマニアック萌え路線を強化するのさ!」 橘「衣装はあたしが用意してくるのです!」 【阪中の憤慨改め偏執者一直線!8】 佐々木「さて、橘さん、僕のメモどおりの衣装を準備してくれたかな?」 橘「バッチリなのです!、これであたしたちも登場した意義があるのです!!」 阪中「珍しく橘さんが頼もしいのね!きっと明日は雪なのね!」 佐々木「ではまず橘さんはコレを着てもらえないかな?」 http //shop.at-x.com/ftproot/itemimage/GN0705014_02.jpg 橘「茶髪ツインテール以外になんか共通点が無い気がするのです。」 佐々木「くっくっ、書いてる人が書店のPOPで見間違えたらしいよ。」 橘「きっとVIPの見すぎで視力が落ちているのです、かわいそうな人なのです。」 佐々木「佐伯さんと柳本さんはコレだよ。↓」 http //g-ec2.images-amazon.com/images/G/09/ciu/87/4e/cee8d0b28fa0aaefeeb17110.L.jpg 佐伯「ロードローラーっ!!」 柳本「あたしの方はちょっと強引な気が・・・。」 佐々木「鈴木さんは↓のお姉ちゃんでどうかな?」 ttp //netto199.hp.infoseek.co.jp/swf/sssh.htm 鈴木「なんかもう見境ないわ・・・」 佐々木「そして僕はドアラの着ぐるみだよ。」 http //img.7andy.jp/bks/images/i5/R0321555.jpg 橘「そりゃまたなんでなのです?!」 佐々木「くっくっ、ここで僕の美貌を隠すことによって阪中さんを引き立てつつも希少性に よって僕の魅力をアピールするのさ。個性とは没個性の中でこそ引き立つんだよ。」 橘「よくわかんないけどなんか凄そうなのです!」 【阪中の憤慨改め偏執者一直線!9】 コンピ研部員A「すみませーん、『駄目です入力受け付けません!』って言ってくださーい!」 阪中「シンクロ率400%なのね!」 コンピ研部員B「すみませーん、ロードローラー音頭歌ってもらえないですかー?」 佐伯「全部残らずペッタンコ~♪」 柳本「提供・ザンスカール帝国」 コンピ研部員C「すみませーん、ネギ食べてもらえませんかー?」 ドアラ「(モグモグ)」 コンピ研部長「あ、ドアラさん『全然関係ねー』のポーズとってもらえませんかー?」 ドアラ「全然関係ねー!全然関係ねー!」 橘「佐々木さんの作戦当たったのです、客足大分戻ってきたのです!」 ドアラ「くっくっ、露出のインフレは今や飽和状態だよ、多彩な萌え路線こそが今の日本に必要な物さ。」 ・ ・ ・ ハルヒ「むうぅぅぅぅ・・・、結局あっちに人流れちゃってんじゃない!どういう事よ!?」 長門「(カパカパ、カパカパ)…サイズ合ってない。」 ハルヒ「895ページもある豪華版なのに!本の質も売り子の色気も負けてないはずよ!」 みくる「と言うか嵩張るのが一番の原因な気もしましゅ、最初の頃集まってた人たちも 貰ってくれなかったり、その辺に捨ててったりと惨々たる状況でしゅよ。」 ハルヒ「えぇ~い!こうなったらあたしたちも脱ぐわよ!六尺褌くらいやってやろうじゃない!」 みくる「涼宮しゃん!なんか女として大事な物を第一宇宙速度突破で投げ捨ててる気がしましゅ!」 キョン「誰か古泉を止めろ!助けてくれ~!」 古泉「アハハハハハハ、待ってくださいよキョンターン!ハァハァ。」 会長「きっ、君たち!そろそろ自重したたまえ!!」 【阪中の憤慨改め偏執者一直線!10】 キョン「そこの人!後ろのガチホモを止めてくれ~!」 古泉「ウホッ!会長もよく見たら良い男ですね!僕のテトドンをくらえ~!ふんもっふ!」 会長「因 果 直 突!」 古泉「グホァ!・・・ハッ!?ぼ、僕は一体何を・・・!?」 会長「こ、古泉!涼宮を早く止めねば・・・、涼宮を早く止めねば!!」 ──回想@生徒指導室 会長「・・・ただいま参りました。」 森「挨拶は抜きよ、事態は急を要します。今回の涼宮ハルヒの暴走は女として三回半ひねりで 道をはずれて行っています。なんとしても阻止しなさい!出来ませんでは良心がない!」 会長「はい必ずや・・・、必ずや止めて参ります・・・。」 会長「(回想終わり)と、言うことだ。古泉、失敗したら俺もお前も森さんに折檻されてしまう・・・。」 古泉「僕とした事がキョンタンの魅力に心を奪われてしまいました、不覚です。」 ハルヒ「みくるちゃん!早く脱ぎなさいよ!六尺褌ならあたしが締めてあげるわ!」 みくる「ふえぇぇぇぇぇぇ、そりだけは堪えてつかあさい!そりだけは堪えてつかあさい!」 長門「…わたしは?(カパカパ)」 古泉「涼宮さん!」 会長「涼宮くん!」 古泉「露出だけが魅力ではありません!どうか服を着てください!」 会長「そうだぞ涼宮くん!妙にスカートの短い北高セーラーの方が萌えではないか!」 古泉「僕も実は北高セーラー萌えなんですよ!キョンタンにも北高セーラー着てほしいくらいです!」 ハルヒ「なによ、そのとってつけたような理由! 聖パウロも言ってるじゃない! 心に愛が無ければどんな言葉も相手の胸に響かないって!」 阪中「その通りなのね涼宮さん!」 【偏執者一直線!11】 ハルヒ「阪中ちゃん?」 阪中「着飾る事よりも・・・、勝負よりも・・・、大事なのは愛なのね! 涼宮さん、わたしは涼宮さんがどんな姿でも愛せるのね! わたしはこの勝負に勝ったら涼宮さんを手籠めにしようと思っていたのね、 でもそれじゃダメなのね、力ずくでは身体を手に入れられても心は通わないのね! 愛しあう事が大事なのね!ラブアンドピースなのね!」 みくる「わたしがかわいいのに空気キャラなのも愛が足りないからでしゅね!」 古泉「僕が何回掘ってもキョンタンのハートが手に入らないのも愛が足りないからですね!」 ドアラ「くっくっ、阪中さん美味しい所持っていくじゃないか。」 ハルヒ「うっさい!愛なんて形の無い物にお金は払えないわ!」 キョン「ハルヒ、ここはなんか良くわからない哲学っぽい事でも言って締めとけよ。」 阪中「涼宮さんは意地っ張りなのね、わたしが肉体を通じて愛を教えるのね。」 ハルヒ「アッーーーーーーーー!!!!百合だけは!百合だけは!!」 大野木「なによこの投げっぱなしなオチ!?」 佐伯「阪中だけガチ百合キャラとして目立っててずるいわ!!」 成崎「これにて一巻の終わり。」 会長「っていうか公然Y褻だろうが!校内でだけはやめてくれ!!」 -偏執者一直線!(完)- 目次へ戻る。 ・ ・ ・ ・ ・ _ _. ´ `´ ̄`ヽ、 / ,. 、 \ . / ./ 、 、 / / | \ ! | {ノ、 | ヘ -ヽ、_ | | | ヘ. ト、 \.ヘ ` | | ヽ| rヘ` `ーィ¬、. ′ ヽ `! Lノ h_.イ / ヽ l、 _ lィ / ト\  ̄ ./|/ / . j,ハヽ __,. ´ ル_ / | ) \ , r.r‐ ´ ∠` / \ | | | /-、`ヽ/ ,. →、 | | | /`ヽ./ /,r,二 -鈴木- バレーボール部で、実は榊の事が好き。 (涼宮ハルヒの公式より) ・ ・ ・ ・ ・ 【阪中菜乃音の紹介・第一部】 阪中「皆さんにわたしとわたしのお友達の紹介をしようと思うのね」 佐伯「オリキャラだと思ってる人とか居そうだよね」 阪中「わたしも佐伯さんも『消失』ではただの名簿の水増し要員だったのね」 佐伯「阪中はいいよね、『ワンダリングシャドウ』のメインキャラだったし」 阪中「『分裂』でも名前が出たのね、国木田くんくらいのポジションにはなれたと思うのね」 大野木「あたしなんかモブキャラとしての出番すら殆どなかったわ!」 成崎「あの・・・、何故かわたしの同人誌が出てるんだけど・・・」 阪中「そういう目立ちかたは女としてちょっと抵抗あるのね」 ・阪中菜乃音 阪中「お題は『阪中が主役のSS』なのに全然目立てなかったのね」 大野木「でもオチはあんたじゃない」 佐伯「涼宮ハルヒの希少なお友達よ、SOS団以外で涼宮と普通に仲良くしてんの阪中だけじゃない?」 成崎「初登場は『消失』、『憤慨』収録の『ワンダリングシャドウ』で主役格、 そして『分裂』でも話題になってレギュラー化しそうで、わたしたちの中で 一番出世してるんじゃないかな?」 佐伯「涼宮の自己紹介の時のリアクション芸も話題ね」 大野木「あだ名は『なのねちゃん』とか『魔法大女リリカルなのね』?」 佐伯「いかにも脇役っぽい無個性なルックスなのによくよく見たらアラ不思議!」 成崎「とっても背が高いんです!」 大野木「朝倉(160cm)と比べて・・・170~165cmはありそうだよね」 成崎「小柄なわたしとよく一緒にいるから際立ちます!」 阪中「き、きっと遠近法なのね!」 ・成崎早苗 阪中「わたしと一番の仲良しさんなのね」 成崎「良くお話してます」 大野木「大きな丸めがねとフワフワした髪型でとっても目立ってるのが成崎だよ」 佐伯「そのうち阪中の友達として原作に逆輸入されるんじゃない?」 阪中「原作に出た暁にはこのSSは黒歴史になるのね」 大野木「変な喋り方したりする設定とか出来たら面白いよね」 成崎「そういうキャラの立ち方は嫌ナリ~」 佐伯「同じ小柄なめがねっ娘だけど、由良さんとは髪型が違うからすぐ見分けられるよ!」 ・佐伯寛子 成崎「ちょっとお姉さんっぽい雰囲気なのが佐伯さんです」 阪中「体育のシーンで涼宮さんを厳しい視線で一瞥してるのが佐伯さんなのね」 大野木「他にも着替えの時に何故か植松くんを見て声上げて怒ってたりと ちょっと気が短そうな佐伯です」 佐伯「仕方ないじゃない、男子がみんなバカでスケベだからよ! 涼宮見てだらしない顔してる連中はあたしが叱ったげるわ!」 阪中「でも佐伯さん笑うと可愛いのね、本当は優しいと思うのね」 ・大野木可奈子 阪中「クールビューティーというかサイレントマジョリティというかシークレットウェポンなのね」 成崎「モブキャラオブモブキャラな大野木さんです」 大野木「・・・カメラ枠の外でリアクション芸してたのよ」 佐伯「国木田くんのほうが画像でも目立ってるわね」 ・ ・ ・ _.. ─…ー、 / ー 、 . / , ヽ . / / /´ _ 、 ヘ / / / / ,.ィ´ `ヽ. l.| ! |/ | ,イ / l.l. 川 | . ヽ l | {.弋l !|  ̄7ハ|、ヽ. | | \| ヽ_X¨} ヘ¨`ヽ ヽヽノ/ ヽヽ| ´ ,. └ ,.r─{ー ヽ ー‐ ィ | ヘ ノ`ヽ、 _,. ´ |ン | r´ ノノ / / ! ム ’/ー‐、(,r ´ /,. ┴、 _)ィ l /二ヽ. 人. (r /,二 _jム ’/ ン , ドゝ/ || | | / // / -日向- 女子レスリング部。鈴木、柳本と仲よし。 (涼宮ハルヒの公式より) ・ ・ ・ 【阪中菜乃音の紹介・第二部】 阪中「第二部では応援に来てくれたみんなを紹介するのね」 鈴木、日向、柳本「「「よろしくー」」」 柳本「ここで頑張って涼宮より目立ってみせるわ!」 鈴木「地味ってゆうなー!」 阪中「柳本さん、涼宮さんかわいそうな子だからもっと優しくしてあげて欲しいのね」 日向「女の子同士で組んず解れつするならまかせて!」 鈴木「地味ってゆうなー!」 阪中「日向さんはある意味わたしのライバルっぽいのね」 ・日向真琴 阪中「おさげ髪で優等生っぽい雰囲気なのが日向さんなのね」 鈴木「あなたの学校にも一人は居そうな地味なルックス!」 柳本「でも見た目に反して女子レスリング部でとっても武闘派!」 日向「女の子同士で組んず解れつするなら任せてね!」 阪中「わたしのもそうだけど、何か画像にノイズが混じっているのね」 柳本「編集した人がアレがナニな人だからじゃない?」 阪中「かわいそうな人なのね」 ・柳本晶 阪中「髪型や顔が個性的なのね、リボンもちょっと珍しい雰囲気なのね」 柳本「キャラ立ってていいでしょ、本来ならあたしが主役やってても良かったくらいよ!」 鈴木「でも由良さんや成崎さんのほうが人気あるよね」 柳本「世の中の男に見る目がないだけよ!」 ・鈴木志緒 鈴木「じ、地味ってゆうなー!」 柳本「日本で一番多い苗字だから仕方ないじゃない」 日向「むしろ地味キャラとしてキャラが立ってるわ」 阪中「キョンくんの苗字も『鈴木』って説が根強いのね」 柳本「涼宮の自己紹介の時の表情がかなり悲壮感漂ってるんだけど、何かあった?」 鈴木「今は言いたくない・・・」 ・ ・ ・ 佐々木「とまあもっともらしく名前が書いてあるけど、書いてる人が3分くらいで 適当に考えた代物だよ、『公式』では苗字だけしか設定されてないからね。」 橘「あたしたちが何故か北高に転入している改変世界での設定なのです、 原作や二期で別な名前が設定されたらこっそり編集して黒歴史にするのです」 佐々木「僕たちが北高に編入しているだけでなく、原作での二年進学時のクラス替え 設定を無視していたりもするね」 橘「皆さんは佐々木さんの名前は気にしちゃいけないのです!」 佐々木「くっくっ・・・」 ・ ・ ・ ・ ・ _ ----- 、}} _ , ´ ´ `ヽ、 / \ / ヽ / r=ミィz、 ヽ / / / | | ∥ | ヽ ノ / 〃 ハ | | 八 | 〉 /〃 │ /| / lィ/ハ{ ,、--┼‐ト||、 / |/{ | /十ニミ | ィテ=、ヽ|} j| ! ヽ ル r { トイ` {じ″′ /こル′ ヽトr‐ヽ `=  ̄ /)} } {入ハ 〈 /ソ/ `ト、ヘ ___, /゙´ / ヽ \ ,イ川|/ ヽトト、`ヽ、 /トハ/ ヽ Y⊥ ` ー‐ __」| ′ | | 〉 | ̄| l / / /` ̄| | | 「終わりなのね。『ワンダリングシャドウ』でまた会うのね。」 Menu Top Part1 Part2 Part3 Part4 Part5 Part 6 Part7 Part8 Part9 Part10