約 301,245 件
https://w.atwiki.jp/rozenmaidenhumanss/pages/669.html
https://w.atwiki.jp/wiki11_platinum/pages/24.html
https://w.atwiki.jp/sousakurobo/pages/428.html
先程からコンロで熱されていたやかんが、蓋から蒸気を上げながら音を鳴らす。どうやら中の水が沸騰した様だ。 イスに座り、静かに新聞を読んでいたルガ―は立ちあがると、再び珈琲を入れ始めた。 珈琲を入れるのは四人分。二階の客室で寝ている、今だに正体不明の三人と、その三人の目覚めを健気に待つ遥の分だ。 全員分のティーカップに珈琲を注ぎ終え、甘くならない程度に砂糖とミルクを入れ、お盆の上に乗せる。 こうして見ると、ルガ―のエプロン姿は実に様になっている。正に喫茶店のマスターといった面持だ。 客室には、遥と一緒にライディースも入っている。あの三人は悪い人間ではないとは思うが、もしかしたら状況が理解できずパニックを起こすかもしれない。 その際、ライディースに遥と一緒に自分が着くまで場を収めて欲しいと伝えている。まぁ今の所、特にドタバタしている様子は無いから心配ないと思うが。 階段を昇り、いざ客室へと。ドアの前に立ち、ルガ―は軽くドアをノックし、言った。 「失礼、珈琲を入れてきたよ。少しは落ち着いたかね?」 もし三人が起きていた場合、なるべく緊張させない様、出来る限り温和な表情を浮かべてルガ―はドアを開けた。 「遥ちゃんの髪……良い香りね。食べちゃいたい」 「ひゃあ!? か、髪の毛の匂いを嗅がないでください! くすぐったい……です」 「眠気覚ましにちょっとだけ……」 「もう駄目だ……俺は会長と……俺は会長と不埒な夢を見てしまった……俺はもう……」 「……寝言くらい誰でも言いますよ。だから隆昭さん……そう落ち込む……落ち込む事ないですよ……多分」 客室へと足を踏み入れたルガ―を迎えたのは……色んな意味で反応に困る、何というか珍妙な光景だった。 悪戯っ気に満ちた笑みを浮かべながら、遥を抱き寄せてくんくんと髪の匂いを嗅ぐ女性と、逃げようとしても逃げられず、女性の成すがままにされる遥。 ソファーの上で落ち込んでいるのか、暗い表情で体育座りをしている青年と、正座し、どこか浮かない表情で青年を慰めている、銀髪のショートカットの少女。 そしてこのカオスな光景に、ただただ苦笑いを浮かべて壁際で腕を組んでいるライディースである。 ルガ―はライディースとアイコンタクトを取る。大体の状況は掴めた。掴めた、が……困ったな。 この三人、悪い人間ではないものの、一癖も二癖もありそうだ。そう……我々、やおよろずの様に。つまりそれは、一筋縄ではいかないと言う事。 一先ず、この三人の中でリーダー……代表者と話をするべきだな。ルガ―はそう判断し、遥を弄んでいる女性へと近づいた。 「その子はウチの大事な人材でね。そろそろ離してはもらえませんかな?」 ルガ―の発した言葉に、女性は一息吐くと遥をベッドから優しく解放した。よっぽど強い力だったのか、何故か遥は息を荒げている。 ルガ―に気付き、ソファーにいる二人が座り直した。二人ともその表情は硬い。恐らく初対面である事と、ルガ―の鍛え上げられた図体に緊張しているのだろう。 「珈琲を入れてきたんだ。そろそろ落ち着いた頃だろうし、一杯如何かな? お話でもしながら」 女性はルガ―が片手で持っているお盆の上の珈琲に目を向けた。そして含みのある笑みを浮かべて、ルガ―に返答した。 「有難く頂くわ。伊達男さん」 ビューティフル・ワールド the gun with the knight and the rabbit ジリジリと肌が焼ける様な緊張感が、廃工場内を支配する。一瞬でも火花が付けば、すぐに爆発してしまいそうな、 そんな雰囲気の中でも、一人と一機に怯む様子はなど微塵もない。むしろ、そんな緊張感さえ愉しもうとする不敵な気慨さえ感じる。 驚異的な身体能力で、悪漢どもを瞬時に蹴散らした赤毛の男、リヒト・エンフィールド。そのパートナーにして、未知数の実力を隠し持つ白きオートマタ、ヘ―シェン。 雰囲気からして底知れぬ強さが窺い知れるこの一人と一機に立ち向かうは、前門のグスタフ・フレ―ンと後門の野良オートマタ軍団。 リヒトとヘ―シェンは背中合わせに、互いの倒すべき敵を定める。リヒトはグスタフ、ヘ―シェンは野良オートマタ軍団だ。 と、グスタフが懐から、悪趣味な装飾が成された、長い銃身が印象的なリボルバーを取りだした。 そして血管が切れそうなほどの大声で、リボルバーを思いっきり振り下げながら野良オートマタ軍団へと叫んだ。 「行けぇぇぇぇぇぇぇ! このクソッタレ共をぶち殺せぇぇぇぇぇぇぇ!」 リヒトは指をハッキリと響く程に鳴らすと、ヘ―シェンに向かって明快な声で伝えた。 「俺はグスタフを〆る。頼んだぜ、相棒」 伝えるが早く、グスタフの方へと走り出したリヒトに、ヘ―シェンはサムズアップしながら明るい声で答えた。 <あいあいさー!> かくして、グスタフの咆哮により闘いの火蓋が切って落とされた。 リヒトにグスタフを託し、ヘ―シェンは改めて倒すべき敵である、野良オートマタ達へと意識を集中させる。 先程まで囲っていた野良オートマタ軍団がほぼ一斉に、ヘ―シェンへと襲いかかる。奴らに作戦や戦略などという、高尚な物は無い。 ひたすら獲物となるオートマタを力押しで倒すだけだ。だが、例え一機一機は貧弱でも、それが束となると話は別。 どんな強いオートマタでも、腕や足等を掴まれて動きを封じられれば最早成す術なし。ハイエナにたかられる草食動物の如く、喰い殺されるだけだ。 しかしヘ―シェンに慌てる様子も無ければ、慄く様子もない。逆に、指を立てるとちっちっちっと左右に振って、余裕たっぷりに言った。 <あらあらうふふ。そんなガッつかなくても、美女は逃げませんよ~> 二機がヘ―シェンを抑え込もうと、左右から迫ってくる。かなり距離が近い。ぼやぼやしていれば、あっという間に抑え込まれてしまうだろう。 だが、ヘ―シェンは動かない。まるで……何かの期を伺っている様に。ふと、ヘ―シェンの両足が緑色に淡く発光している事に気付く。 二機の魔の手が伸びる。このまま……と、その時。ヘ―シェンは両膝を屈めた。そして、二機が目前まで迫って来た途端。 ヘ―シェンは勢い良く両膝を伸ばすと、天高く跳び上がった。その衝撃で、二機の両腕が原型が無くなる程に粉砕した。 バランスを失ってゴロンと動けなくなる二機。残りの野良オートマタ達が、飛び上がって姿を消したヘ―シェンを探す為に右往左往する。 <おーにさんこーちら> ヘ―シェンの声が響き渡る。探していた獲物の声がして、野良オートマタ達がその方向に体を向ける。 しかし何処を見ても、ヘ―シェンの姿は見えない。何処に居るのかと――――その時。 一機が妙な違和感を感じる。異様に頭部が重い。おまけに中のカメラアイが故障でもしたのか、周りの景色が緩やかにモザイクと化していく。 頭部を触り、異変を確かめようとした――――瞬間、その違和感の正体に、気付く。 何時の間にか、ヘ―シェンは野良オートマタの一機の頭部に器用に片足立ちしていた。それも両腕を組みながら。 しかしバランスを崩す様子は全く無い。その立ち方は、まるで曲芸の様に美しい。 ヘ―シェンは無言で周囲を軽く一瞥すると、次の瞬間、思いっきり自らが乗っている野良オートマタの頭部を踏み潰した。 踏み潰すと同時に飛び跳ね、空中で華麗に一回転すると、近くに居た野良オートマタの頭部目掛けて左足を思いっきり叩き落とす。 しかしそこでヘ―シェンの動きは止まらない。再び飛び跳ね、その後方に居る野良オートマタへと空転しながら右足で思いっきり叩き落とす。 信じられないような身軽な動きで、ヘ―シェンは左右の足を巧みに使い、次々と野良オートマタ達を破壊していく。 空中の敵に対応できないのか、ヘ―シェンの常軌を逸した機動力にあっけに取られているのか、野良オートマタ達に抵抗する術はない。 最後のオートマタの頭部を踏み潰し、へ―シェンはぐるりと月面宙返りをして、綺麗に着地した。 <お気の毒ですが――――貴方達は、すでに死んでいます> 着地と同時にヘ―シェンがそう言い放った瞬間、野良オートマタ達は一斉に倒れた。 頭部を完全に潰された機体、ピンポイントに動力部を破壊された機体等、各々の違いはあるが立ち上がれる野良オートマタが居ない事だけは確かだ。 圧倒的な強さで、ヘ―シェンはこの闘いを制した。勝因は至極単純である。強いのだ。ヘ―シェンは。 <さて、マスターの方はと……> 少し時間を戻し、リヒトの方に視点を向けてみよう。 ヘ―シェンがオートマタ達を挑発している頃、リヒトはまっすぐ走り出していた。無論、一切武器無しで、だ。 「何のつもりかは知らねぇが……止まれ! 止まんなきゃ殺すぞ!」 グスタフは向かってくるリヒトにそう言いながら、リボルバーの引き金を引く。銃弾はリヒトの頬を次々と掠めていく。 恐らく、グスタフはワザと狙いを外しているのだろう。この期に及んで、まだ自らが優位だと思っているからだ。 言動や態度は三流だが、腕はそれなりらしい。銃弾を掠める毎にリヒトの頬が削れ、コンクリートに生暖かい血がポツポツと落ちていく。 しかしリヒトは怯む事無く、グスタフの元へと疾走する。その目に迷いは無い。例えダメージを受けようと、リヒトの足は止まらない。 気付けば残り二発。グスタフの顔に、はっきりと焦りが見え、リボルバーを握っている手が若干震えだす。 「……くそったれが! そんなに死にたきゃ殺してやるよ!」 どうにか震えを押えながら、グスタフは狙いをリヒトの額目掛けて定めた。 そして――――引き金を引く。いくら化け物染みた身体能力があろうと、この距離だ。奇跡でも起きない限り避けられはしない。 避けたとしても、まだもう一発弾丸は残っている。どちらにしろ、俺の勝ちだ――――。必然的な勝利に、グスタフの頬が自然に緩む。 「狙うなら最初に狙えっての……だから三流なんだよ」 そう呟きながら、リヒトは右腕を顔の前に目一杯伸ばすと、手首を左手で掴んだ。予想だにしない行動に、グスタフが驚嘆する。 「何をする気だ!?」 次の瞬間、リヒトは飛んでくる銃弾を人差し指と親指で挟んだ。いや、掴んだ。勢い余ったのか、リヒトは体を右方向に回転させた。 まさかの防御行動に、グスタフの顔が青ざめる。銃弾を生身で、しかもほぼ至近距離で塞ぐなんて……本当に化物か、この男は。 「お返しだ。射撃の手本を見せてやる」 回転しながらリヒトは掴んだ銃弾を空中に向けて放り投げる。同時にグスタフの方へと向き直る。 慌てて、グスタフがリボルバーを向けた。あと一発。この銃弾を外せば、実質グスタフの負けが決まる。 早く、早くこいつを殺さないと、俺はあの人に殺されちまう! グスタフの額と手に大量の冷や汗が滲む。 狙いはリヒトに向かってまっすぐ向かっている。外す要素は無い。だが……だがだ。 本当に当たるのか? こんな無茶苦茶な事を平気な顔で行える男に――――いや、当たる。当たる筈だ。むしろ当たってくれ。 何が何でも殺すんだ、コイツを、コイツを殺すんだ! グスタフは覚悟を決め、引き金を引く為に指を掛ける。 グスタフが銃を構えると同時に、リヒトは目の位置まで両腕を伸ばし、右手を握り拳にして立てると、左腕で固定した。 銃弾が右手へと落ちてくる……瞬間、リヒトはリボルバーの銃口目掛けて、銃弾を親指で弾いた。 弾かれた銃弾は吸い込まれる様にリボルバーの銃口へと飛んで行き、一切ぶれる事無く、銃口へと。 その一瞬をグスタフは全く認知出来ない。引き金を引いた――――。 「ぐわぁっ!」 銃身内で銃弾同士がぶつかり、グスタフのリボルバーが暴発した。その衝撃に思わずグスタフはリボルバーを手放す。 「し、しまった!」 グスタフは拾おうとその場に屈むが、次のグスタフの目に映ったのは、あの男の、影。 恐る恐る、グスタフはその顔を上げた。あの男が、悪魔の様な天使の笑顔で、言った。 「次はちゃんとした銃を買うこった。ま、その前にお前は中身を伴え。1000年掛かっても無理だけどな」 瞬間、リヒトのローキックがグスタフの顔面を直撃した。と、言ってもだいぶ手加減しているが。 グスタフは勢い良くゴロゴロと転がると、壁に激突して仰向けになった。白目を剥き、口から唾液が零れている。 とはいえ死んだわけではない。あくまで気絶しているだ。しかし手加減でもこれほどの威力なのは恐ろしいが。 <何時もながらやりすぎです。マスター> 「良いんだよ。こういう連中は生易しくすれば図に乗るからな。徹底的にやれば懲りるだろ」 <どっちが悪役か区別が付きません> 「あんな戦い方したお前には言われたくない」 戦闘終了。野良オートマタ軍団はヘ―シェンによって全て沈められ、長であるグスタフ含め、悪漢は全員、リヒトの鉄拳により再起不能となった。 大型機械に隠れ、静かに息を潜めていた子供達が、恐る恐る出てくる。そして目の前に光景に、息を飲んだ。 あれほど恐ろしい存在だったグスタフ達と、凶暴なオートマタ達が見る影も無く撃沈しているのだ。 と、リヒトに話しかけられた男の子が、リヒトに気付いて走り出す。他の子供達は顔を見合わせると、頷き合い、男の子に続く。 <それで今回のクライアントは誰なんですか?> 「ちょっとした大富豪だよ。数週間前、旅行中に息子が居なくなって、警察を頼っても見つからないってな。 それで最近、こいつらの悪事を耳にして、もしかしたら何か絡んでるんじゃねーかなと思って探ってみたらビンゴ」 <……あぁ、それじゃあマスターが話しかけたあの男の子は> 「そう、クライアントの一人息子。俺の話をすぐ理解してくれる賢い子で助かったよ」 リヒトとヘ―シェンの周りに、子供達が集まる。 絶望的な状況から助けて貰った事で、感極まり泣いている子や、リヒトを羨望の目で見つめている子、反応は十人十色だが、共通しているのは助かった事に対する安堵だろう。 しかしこれほどの子供達を、奴らは……。リヒトは子供達を見つめながら、次第に苦々しい顔つきになる。 グスタフを倒した所で、何も変わりはしない。本当の悪人―――――益を得ている人間は、のうのうと生きていやがる。 奴らのコネクションはクモの巣の様に多岐に、かつ深く深く繋がっているのだろう。この状況を変える事は出来ない。その益を得ている人間を倒さない限り。 ――――と、リヒトは頭を振る。何を考えているんだ、俺は。俺達は正義の味方でも何でもない。何でも屋だ。俺達はクライアントの依頼を遂行する事だけを考えりゃいい。 余計な感情を挟めば、それだけ迷いが生じる。もし迷いが生じれば――――周りを傷つける事になる。それだけは、絶対にしてはならない。 <それにしても……クライアントの息子さん以外の子供達は如何に為さるおつもりですか?> 「心配すんな。そっちの伝手はもう付いてる。児童保護施設にな。指定の場所で合流して、クライアントに連絡を取って、この仕事はコンプリートだ」 そうして、リヒトは自分の前に立つクライアントの一人息子の髪を撫でた。一人息子は泣きそうな目をぐっとこらえる。 その様子に、リヒトは優しげに微笑むと、子供達に爽やかなイケメンボイスで言った。 「皆よく頑張ったな。けどもう少しだけ、俺に付き合ってくれ」 「ほえぇ……」 目の前の巨大な鉄の物体に、リタはただただ感嘆の息を漏らす。これほど巨大な物体だとは思いもしなかった。予想外です。 リュックを下ろすとドスンと重い音がして、地面が少しばかり凹む。ガチャガチャと計器等を取り出し、リタは早速調査を開始した。 リタの周りを玉藻が浮遊しながら物体を観察する。時折、リヒタ―に疑問に思った事を質問しながら。 <見れば見る程現実感が薄れそうだ……しかしリヒター、本当に何の衝撃音も無く、これが落ちてきたのか?> <はい。私達が移動している間、特に衝撃はおろか、墜落した音さえ聞こえませんでした> <そうか……> 普段はよほどの事でもない限り驚きもしない玉藻も、流石に今回ばかりは別だ。これほど謎に満ちた物体は、本当に見た事が無い。 その大きさ、形状、共にオートマタとは全く別の、言わば別次元の存在だ。共通しているのは、機械……ロボットという事だけ。 あの三人が何者なのかは知らないが、こんなモノを乗り回すとは……。一体、どんな世界で生きてきたのだろう。想像もつかない。 <リタ、何か分かったか?> 「むー……調べていますが、全く分からないです。材質も駆動系統も、オートマタとは全然違う事くらいしか」 <そうか……> 性格はともかく、メカニックとしては一流であるリタがお手上げとなると、悔しいがこれ以上詮索しても時間の無駄だろう。 それにしても……ウチには既にリヒタ―という、得体のしれないブラックボックスがいるが、まさかリヒタ―以上に訳の分からないモノが増えるとは……。 全く……一条遥、お前が来てから退屈しないよ。玉藻は人知れずふふっと微笑した。 にしてもこれをどうするべきか……こんな田舎だ、妙な連中が嗅ぎつけてくるとは思えない。 しかし、だ。万が一見つかった場合、我々の生活が脅かされる事は容易に想像できる。 かと言ってこの二体を隠せるような場所等、この近くには無い。それ以前にこの二体を運び出す方法などありはしない。 何にせよ、あの三人からこれについての話を聞く必要がある。もしも拒否すれば……その時は、その時だ。 <リタ、そろそろ日が暮れてきた。今日は引き揚げるぞ> 「えぇ~……けどもう少し……」 <ちょうどまどかも帰ってくる。調査はまた明日、ライディースも連れてきてだ。ほら、急げ> リタは玉藻にねだる様な眼をしたが、玉藻はそんなリタを露知らず、さっさと家へと戻っていく。 行動が早い玉藻に、リタは小さくため息をつくと、リヒタ―に顔を向けて言った。 「……帰りますか。ちょうど、お腹も空きましたし」 「それでは自己紹介をさせて貰おう。まず僕達の事だけど、端的に言えば何でも屋を経営しているんだ。名前はやおよろず。 依頼があれば、探偵業から機械の修理まで幅広く受持つのがポリシーさ。もちろん、法に触れる様な事はしないよ。あくまで健全な範囲で、ね」 ルガ―の説明に、女性は軽く頷く、ソファーに座っている二人も頷くが、青年の方は少しだけ首を傾げた。が、すぐに打ち消した。 「僕はルガ―・ベルグマン。仕事はそうだな……マネージャーを担当してる。いうなれば仕事の斡旋とか云々ね」 お盆を脇に挟み、ルガ―が自らの自己紹介を始める。三人と遥はそれぞれ、マグカップを手に持っている。 ソファーに座っている青年がだいぶリラックスしたのか、マグカップの中の珈琲を一口飲むと、小声でおいしいと言った。 「そこの壁に寄り掛かっている彼はライディース・グリセンティ。メカニック担当で、機械を修理したり、点検したりと機械関連の仕事している 後もう一人、メカニックが居るけど後々紹介させてもらおう」 ルガ―の紹介に、壁際に寄り掛かっているライディースが三人に向かって手を振った。少女と青年は軽く会釈を返す。 そしてルガ―が遥を紹介しようとした時、イスに座っていた遥は自ら立ち上がり、明快な声で三人に言った。 「私の名前は一条遥と言います。その……ここでは見習いとして働かせてもらっています。宜しくお願いします!」 遥の自己紹介に、ルガ―は言葉を付け足した。 「君達を見つけて、僕達に助けを求めたのは誰であろう、遥ちゃんなんだ。礼を言うなら、後で遥ちゃんに言ってもらえるかな」 「あ、いえ、私は特に何も……」 そう言って遥は赤面した。あくまで遥は三人を救いたいと思っていただけなのだが、こう言われると正直、照れる。 青年が遥の様子に人知れず小声で可愛い……と言おうとしたが、、隣の少女の生累を憐れむ様な視線に気づき、黙って俯いた。 女性はルガ―の言葉に何度かふむふむと頷くと、納得した様に掌をポンッと叩いてルガ―に言った。 「分かりやすい説明有難う、ルガ―さん。それと遥ちゃん、さっきは変な事してごめんなさいね」 「いえいえ。少しでも気持ちが落ちついたのなら……でもちょっとくすぐったかったですけどね」 「そう……それなら落ち着きたい時にはまた嗅が」 「丁重にお断りします」 眩しい程の笑顔で遥に断られ、女性は残念そうにま、しょうがないか呟くと一転、真剣な表情でルガ―に向き直る。 「それじゃあ私達の事も話さないとね。最初に現実味が無い事を先に謝っておくと……」 先程までの軽妙な雰囲気がピリッと締まる。女性の柔和だった目つきが、いつの間にか鋭い目つきに変わっている。 雰囲気を察したのか、ソファーの二人とライディースと遥も真剣な面持ちで、女性の話に耳を傾ける。 「私達三人は、貴方達のいる世界とは全く違う、別の世界から来たわ。貴方達が見た巨大なロボット同士で、戦争が起きている世界からね」 戦争と聞き、やおよろずの面々の顔に若干曇りが出る。女性はそれを察するがあえて、話を続ける。 「私達はその戦争を終結させる為、あの巨大ロボットに乗って戦争の火種を広げている人物を倒す為に、時空を移動していたの。 だけど移動している最中、見た事の無い機体から襲撃を受けた。圧倒的な強さだったわ……本当に手も足も出ない程に」 「……それでその機体との戦いに負けて、この世界に落ちてきた、と?」 「えぇ。ルガ―さんの言う通り、私達はその機体の攻撃で時空の狭間……。 説明すれば長くなるけど、簡単に言えば一度落ちたら何処に行くか分からない所に叩き落とされたのよ。 それで私達は落ちていった先が……」 「この、世界……か」 場に、言いしれぬ重い沈黙が流れる。その中で、遥はハッキリとスチュアートの言葉の意味を、理解し始めていた。 何故、スチュアートが世界を救う為と言っていたのか、何故、この三人を救ってくれと遥に伝えたのかという意味を。 「それで、その時に負ったダメージが深刻でね。多分動力炉には異常は無いと思うけど、駆動部やらに……ね」 「そこで本題に入るけど……あの二機の修理が完了するまで、私達をやおよろずで雇ってくれないかしら?」 女性の言葉に、ライディースが戸惑いの表情を浮かべ、遥が小さく驚いた。想定済みだったのか、ルガ―に変化は無い。 二人の反応も無理は無いだろう。助けてあげた人から雇ってくれと言われても、単純に反応に困る。 だが、あの巨大なロボットを目の当たりにした手前、無碍に断る気にもなれない。女性の言っている事に、嘘は無い事くらい分かる。 やおよろずの面々が何も言わないのに気付き、女性は目を擦ると少し声を和らげて言った。 「こう見えても機械関連に関してはかなり腕に自信があるの。元居た世界では技術者やってたから。 それに掃除洗濯炊事何でもござれ。雑用と呼ばれる事はほぼ何でもこなせるのよ、私」 そして女性はソファーのふたりに指を向けると、冷やかな笑みと目つきで続けた。 「そうそう、そこの二人を自由に使って貰って構わないわ。どんな事でもね」 女性の言葉に青年がお前は何を言っているんだといった表情で立ち上がろうとする。が、寸でで少女が青年の肩を押えて無言で首を振った。 青年は明らかに不安げな目をしていたが、少女と数秒見つめあうと、深いため息を吐いて大人しくソファーに座りなおした。 少女が対して女性に対して目配りすると、女性は小さく頷き、ルガ―の方に向きなおって、再び言葉を続ける。 「どうかしら? もちろん……決定権は貴方にあるから、もしも駄目なら私達はここから潔く出るわ」 女性がルガ―の目を真正面から見据える。どうやらルガ―が、この三人の行く末決断しなければならない様だ。 ライディースと遥、そしてソファーの二人の視線がルガ―に集中する。ルガ―は内心弱る。 どう返答するべきか、非常に迷うのだ。もしこの女性の言葉を聞きいれ、雇う事を認めれば今まで以上に出費が増えるだろう。 それに負担も増える。しかし、だ。この三人を追い出した所で、あの大きな機体はどうする? というか、この三人は女性自身も言っていたが、他の世界から来た人間だ。 この世界に適応出来るとは限らない。もしも酷い目にあったりでもしたら、この三人を助けた遥を傷つけてしまう事になるのではないか。そう考えると……。 5人の視線がルガ―に決断を迫る。ルガ―の額に一筋の汗が流れ、ルガ―の閉じていた口が開きはじめた。 「お話は全て聞かせて頂きました」 凛とした少女の声がして、その方向に6人の視線が集中する。 そこには、学生服を着た、肩まで伸びた美しい黒髪と幼い顔つきに似合わぬ豊満な胸が印象的な少女が、穏やかな微笑みを浮かべて立っていた。 黒髪の少女はゆっくりと、一歩一歩女性の方へと歩み寄っていく。そして女性の顔を見据えて微笑みからキリッとした精悍な表情になると、女性に言い放った。 「やおよろずのオーナーとして、貴方達を採用いたします。その代わり、しっかりとやおよろずの一員として、働いて貰います。良いですね」 黒髪の少女の言葉に女性はまっすぐ視線を返し、静かに目を閉じると、しっかりと黒髪の少女を見据えて、言った。 「ありがとう。ヴィルティックとルヴァイアルの修理が済むまで、やおよろずの為に身を粉にして働くわ。そこの二人も良いわね」 女性がソファーの二人に目を向ける。二人は無言で顔を見合わせると、答えた。 「はい!」 「は……はい……」 少女の後で答えた青年の声に、覇気は、全く無い。しかし何はともあれ、話は全て決まったようだ。 黒髪の少女は元気良くパンと手を叩くと、ルガ―に振り返って、明るい声で言った。 「それじゃあそろそろ、夕食の準備をしましょうか、ルガ―さん。リヒトさんとヴァイスさんが帰ってきますし、それに」 「遠くから入らした新人さん達も、お腹がすいてるでしょうしね」 その頃、子供達を指定の場所へと連れて行く為、リヒトとヘ―シェンは子供達を連れ、廃工場から立ち去ろうとしていた。 と、何故かリヒトは上部の誰もいない鉄筋で出来た通路を見上げている。まるで何かの気配を、察知しているかのように <マスター、どうかなされましたか? てきは ぜんめつ した 筈ですが> 「いや……何でもねえよ。さ、早く用事済ませて帰るぞ。美味い飯が待ってるからな」 リヒトの予感は外れてはいない。通路から地べたにペタンと座り、リヒトとヘ―シェンを冷やかな目で見ている少女が一人。 背中まで伸びた長髪は白く、野暮ったさを感じる半面、神秘的な雰囲気を発している。 淡い琥珀色の瞳は、何を映しているのかジトっとしており、髪の毛の色と相まって生気を感じさせない奇妙な感覚に囚われる。 と、少女は両手に自らの背丈ほどに長いステッキを握っている。 その先端には扇型の巨大な目を思わせるオブジェが付いており、目の部分には赤黒く輝く、野球ボール大の大きさな球体が嵌めこまれている。 少女の目は先程からずっと、ヘ―シェンを見つめている。と、少女が静かに立ちあがった。そしてステッキを――――。 「おいリシェル、駄目じゃねえか、勝手に奴を起こしちゃ」 何処からともなく男の声が聞こえ、腕が少女の肩を掴んだ。 「……駄目?」 「駄目だ。あれはまだ喰う時期じゃねえ。大体本気出してねぇ相手なんざ喰っても、美味くも何ともねえぞ」 男の言葉に、少女はステッキを握り直すと、再びぺたんと座った。そして男に顔を向けて言う。 「ねぇねぇ、ライオネル。リシェル、町に行ってみたい。この近くにあるでしょ?」 「町? あぁ……構わねえよ。その代わり、俺が呼んだら必ず来いよ」 男の言葉に少女は頷く。男は移動を始めるリヒトとヘ―シェンに目を向けると、静かに言葉を発した 「あのガキもデカくなったな……ヘ―シェン……盗らせてもらおうか」 その男の名は―――――ライオネル・オルバ―。 第三話 始動 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) + ... 名前
https://w.atwiki.jp/undeerl/pages/314.html
第3話「だって、あなたが一番好きだから」 放課後――生徒たちは最後の授業が終わるなり荷物をまとめて、ある者は体操服に着替えて運動系の部活へ、ある者はカバンをもって家路に向かう。そして、ナムレは他の三人と隣のスリャーザ、そしてラーセマングの導きの下で部室に連れていかれようとしていた。 「よーし、我らがスカルムレイ研究会の新入りよ、今日もスカルムレイ陛下のことについて論じようではないか」 いつもテンションの高いテルテナルは早速そう切り出して促した。依然としてナムレは鬱陶しそうな顔をしている。ラーセマングも時期に荷物をまとめ終わり、テルテナルに同調していた。 「ささ、行くよナムレ」 ラーセマングはナムレの背中を押す。もはや何らかの勧誘だ。だが、ナムレにはこの後予定――謎の声に呼ばれていたこと――を思い出した。時間も場所も何もかも同じなのだが。 「あ、そういえばナムレにはこの後予定があったな」 そう言ったのはラズィミエだ。さすがは気を利かせてくれる。テルテナルは残念そうな顔をした。 「えー、マジかよー。絶対来いよー?」 「わかった。分かったから」 彼らと別れの挨拶をしたのちに、別の方向へ歩き始めた。後ろに誰もいないことを確認した。そして、この後どうしようか考えた。あの声が提示してきた待ち合わせ場所はあの部室だ。だが、そんなことをすれば怪しまれることは明白だった。 だが、冷静に考えてみるといい。あの謎の声はまともなことを提案していなかった。『ラーセマング=カリーファテリーンの暗殺』といったか。仮にも姉と呼ぶことを強要されている、大事な人間を殺そうという、普通に考えて自分がやるようなことではないし、本人にはそんな意志も実力もないはず。そんなことをわざわざ自分にやらせるなんて、やはりおかしいと思った。 特に何もなかったことにしておき、ナムレはとりあえず部活に向かおうと考えた。あの謎の声も夢か何かだったのだろう。そうに違いない。自分に彼女は殺せない。足先を急に変えて、さも先ほどまで用事があったかのように、廊下で数秒無駄に時を過ごしてから部室へ向かおうとした。 「やはり来てくれたのね」 「!?」 昨日の帰りにも聞いた謎の声だ。まさかこんなタイミングで現れるとは思わなかった。 「集合場所にいたんだけれど、やっぱり彼らしか来なかったから、様子見に来たら、やはりそんなところで立ち往生していたのね…どうしたのかしら?」 「…あの部屋は俺の所属しているサークルで使うんだ。どうせ昨日の話の続きをしに来たんだろう?それをあんなところでできるか」 実体の見えない相手に対して必死に抗議している。誰かに見られていないかどうか心配だ。 「あら…あんなサークル、在って無いようなものだわ。妙な配慮をする必要はなかったのに…まあいいわ。昨日の提案について、やる気になったかしら?」 やはりそのことを聞いてくるか。ナムレはもちろんすぐには答える気にはなれない。当然ながら彼女を殺したくも、関係を険悪にもしたくはないが、相手の事情によっては自分が何かされるのではないかという危惧もあった。だが、余計な時間を使っている場合ではない。なるべく早めに応答した。 「俺はやるつもりはない。俺にあいつは殺せないから」 「そうでもないかもしれないわよ?」 その返答にナムレは違和感を覚えた。そうでもないかもしれない。自分に、彼女を嫌うような心理が働いていると、そういう深層心理があるとでも見抜いているのだろうか?だとしたら見当違いだ。 「どういうことだ?」 「ラーセマング=カリーファテリーン、彼女はあなたに対してとても人間の一生では償えないほどの禍根を残していった。あなたは以前の全てを失っているのよ。力も、財産も、家族も、彼女はあなたの全てを奪った。命でさえも」 「…何が言いたい?俺はあいつにそんなことをされた覚えはない」 「当然よね……」 とてもユーゴック語が通じているとは思えない。なんだかこうやって虚無に対して話しかけているのも馬鹿らしい。 「それくらい、彼女が貴方に残した傷は深いわ。だから、私はあなたに力を授けて彼女を暗殺する術を与える。するとあなたは居場所を失うかもしれない。でも大丈夫よ。すべてを私の案に委ねるの。そしたら、あなたを助けに来る」 「何を言っているのかわからない。あんたは一体誰だ?」 あまりにも唐突な出来事。何かの教室の扉が開いたのだ。ゆっくりではなく、わざとらしく音を立てるように。開いた扉の先には、長い金髪の少女が立っていた。ナムレの知っている人間ではない。彼女はスカルタンでもなく、ペーセ人の民族衣装でもなく、ファイクレオネ風の軍服を纏っていた。その風貌はまるで特別警察だった。 だが、彼女は鍔の非常に大きい帽子をかぶっていた。彼女の眼を確認することはできず、口角が軽く上がっていて笑みを浮かべていることしか分からなかった。白い手袋を身につけた彼女の右手は、胸ポケットを探って昨日と同じように何かが書かれた紙をナムレに示した。ナムレはそれを何も考える暇なく受け取った。硬い紙にまたしても何やら文字が書かれていた。 「…え?」 「自己紹介、私の名刺を受け取りなさい」 さっきまで聞こえていた謎の声と全く同じような声色だ。謎の声の正体なのだろうかと推測した。 ナムレが名刺を確かに手に持つと、少女は部屋の方に戻っていた。ナムレの方に手を振りながら扉が閉めた。音も気配も消え、さもそこには何もなかったかのようだった。怪しげに思ったナムレは再び扉に手を掛ける。通常通り、ロックがかけられ開けることはできなかった。職員室でこの部屋の鍵を借りることくらい容易だろうが、相手の正体が謎な分、現段階での深い詮索も意味を持たないと考えた。懐疑心を持ちながら一応用が済んだということになり、部室へ向かおうとした。 ふと、先ほど受け取った名刺を覗いてみた。しかし、名刺とはよく言ったもの。ラズ・ププーサ体で大きくReeunar(奪還者)と書かれ、その下の方にはラズ・アルムレイン体で「私を呼ぶときは美術準備室の前か三階渡り廊下、そして実験室にしなさい」とのこと。今後彼女のことを呼ぶことがあるのかどうか。なんだか彼女はどうも関わると面倒事に巻き込まれると思ってしまう。どうも違和感しかない思いを胸に抱きながら、部室の扉の前に立った。 扉を開けた。すると真ん中のテーブルに座っていた部員五人が一斉にナムレを見た。 「おっ、ナムレ来てくれたな。えらく時間がかかっていたじゃないか」 「ああ、ちょっと手こずってな」 「ナムレ!さあ早くこっちに座って!」 右手でナムレを招こうとするのはラーセマング。ナムレは先ほどまで、この今自分を読んでいる人間を殺す話を持ちかけられていた。そのインパクトが強すぎて、どうも接しづらかった。 ナムレが椅子に座ると、スリャーザが話を始めた。 「ちょうどよかったよナムレ。今からまた別にスカルムレイについて考察を入れようといろいろと資料を用意してきたところだ」 カバンから取り出してきたファイルをテーブルに出した。ファイルからは豪華絢爛で美しい装飾を身につけたスカルムレイの肖像画が飛び出してきた。 「今日ピックアップしたいスカルムレイは、このお方だ。ラズィミエ、名前は分かるか?」 「もちろん、彼女はスステ=スカルムレイだろ?」 「なんと!彼女はあの偉大なるスステ=スカルムレイ!!」 唐突に大声を上げたのは言うまでもなくラーセマング。そのリアクションに便乗するかのようにスリャーザも解説を付け加える。 「君たちの言う通り、言わずと知れたスカルムレイだ。彼女は997年にお生まれになり、その28年後にスカルムレイに即位なさった。彼女の時代、王国は派閥分裂による宗教戦争により内乱が悪化していた。内乱が起こりすぎて当然ながら経済は停滞し情勢は悪化していた。そこを救われたのが彼女だった」 いつも通りのスリャーザの解説である、と思われる。なにしろナムレはまだ、スリャーザのこういう姿を見てからまだ二日なのだ。スリャーザの熱弁は続く。今度は話し方を変えてきた。 「当時派閥の乱立と言うものはとても重要な意味を持った。信仰はもちろん行政、経済など、生活にいたるところにシャスティの派閥と言うものは大きな意味を持ち、この国を支配していた。それをすべて解体して中央集権とされたのだ。それ以来スカルムレイは指揮官からこの国の全権限を握り、トイターの遺産と神の意志を受け継ぐ最高権力者として見せたのだ」 ナムレ以外すっかり熱くなった研究会メンバー。同じようにラーセマングも解説を加えた。 「さすがは歴史的なスカルムレイ。彼女が始めたこの体制を以来スステ政治と呼ぶのよ」 このことはハタ王国の人民にとってはもはや常識中の常識。なぜ海は青いのか、なぜ鳥は空を飛ぶのかといったことと同じであった。ナムレもそのことは散々教えられてきた。 「その通りだ、ラーセマング。それにしても、君は新入部員なのにずいぶんと知識が豊富だなあ?」 「馬鹿にしないで、イルキスの出身なのよ」 まるで決め台詞のように言った。そんなことを言われてしまって、ナムレにも矛先が向いた。 「へえ、じゃあナムレのやつもそれなりの知識があるというのか?」 「いや、ナムレはまだ勉強中よ。私の教育カリキュラムによれば来年にはもうすごいことになっているわよ。この学校の国史で学ぶ内容なんて朝飯前のレベルね」 その発言を聞いてスリャーザはすこし遊びたい気持ちになった。 「ほほう、国史の内容が朝飯前……それはラーセマング、君自身もそうであると言いたいのかな?」 「…そうよ、それが何か?」 「全く、この私、パシュ=スリャーザの国史に関する知識をなめてもらっては困る。これでも実家はイルキスなんだ、そこらの高校生とはわけが違うぜ?」 「たいそうな自身だこと、何なら勝負してみる?」 「もちろんだとも、次の定期考査の国史の点数で勝負しようぜ」 思わぬ戦火の蓋が切られてしまったようだ。 「もちろん、ただし条件があるわ」 「ん?なんだ」 ここでラーセマングは恐ろしい追加ルールを提示してきた。 「もし私が勝ったらこのスカルムレイ研究会の部長に就任させてもらうわ」 またしても予想外な条件である。次回の定期考査の結果でスカルムレイ研究会の代表まで変わってしまう恐れがある。ツェッケナルもラズィミエもテルテナルも目を大きく開けて驚いた。 「な、なんだと!?」 「いや、いいだろう。部長たるもの、もっとも歴史に通じるものでなければならない。では、私が勝ったらラーセマングの放校処分とする」 スリャーザの提示した条件はより場を混乱させた。 「な…!?」 ラーセマングが驚いたのは言うまでもない。 「お、おいおいスリャーザ!それはまずいぞ!ラーセマングが俺らの学年の間でどれほどのアイドルとして認知されているのかわかっているのか!?そんな子を放校なんてしちまったら……」 「そうだ、俺らはこの学校の男子から猛反発を受けるぞ!第一、アンタ一体どうやってそんなことをするんだ!?」 「策があるんだよ、私には。スカルムレイ研究会部長の権限をなめないでくれよ、部員たちよ」 そんなに怖い部活だったかとナムレは冗談交じりに突っ込んでいた。ただのサークル代表が、なぜそんなことまで支配できるのか。スリャーザお得意の誇大妄想ホラ話かもしれない。ラーセマングを除いた多くがそう思った。 ―― その日の夜、ラーセマングは家に着くなり大量の書類をナムレに見せてきた。寝る直前まで。夕飯を食べている間でさえも。風呂場であっても、謎の書類をナムレに見せ続けた。 「おい、スリャーザとの勝負の事なら分かったから、俺を巻き込むのはやめてくれよ」 布団にもぐりこむナムレ。しかしラーセマングは小さい明かりを付けながら、寝ているナムレの顔を覗き込んで書類を見せ続けた。その書類とは、長い長いハタ王国――より正確に言うとトイター教――の歴史書の一部である。 「違うのよ、知識と言うものは、ただ覚えるよりも人に教えたほうがより正確に理解できるのよ。だから今私は今までに得た知識とこれから知る知識を組み合わせて、あなたに教えることでさらに理解を深めようとしているのよ。すべては、部長になるために」 「あんな部活の部長になったところで、お前にはイルキスがあるだろうが」 「うるさいわね。いいから私の話を聞いていなさい」 「もっと他にいるだろう、なぜ俺を選ぶ?寝かせてくれよ。俺は日頃の旧暦の暗記作業で十分疲れているんだ」 ナムレはラーセマングを断って布団を閉じてしまった。相手をしてもらえなくなったラーセマングは布団に少し近づいて軽く囁いた。 「だって、あなたが一番好きだから」 さすがにナムレもドキッとしたが、それが悟られないように返した。 「なら先に寝かせてくれ」 「ナムレも私のこと好きでしょ?」 嫌いではない、何もできないナムレのことを何かといつでも気にかけてくれる彼女は、確かにナムレにとっては大事な存在であった。しかし、そういった恋愛感情を抱くほどではない――いや、それは言い訳だ。本当は充分に好きである。積極的なアプローチに潰されるのも時間の問題かもしれないが、それでもナムレには意識があった。だが、自分に嘘をつくことだけは、一応イルキスの養子という肩書に誓って避けねばならないと考えた。その結果、ナムレの頭が布団から出てきた。 「……少しだけだぞ」 だがナムレは目の前に光景に驚いた。ラーセマングはすでに書類を持ったまま座りながら寝ていたのだ。本当にどうしようもない、と甚だ呆れた。だが、さっきの反応を聞かれていなかったのは少し救われたのかもしれない。 だが安心してナムレは布団にそのまま身を預けて寝ようとした。しかし、そうしようとした瞬間に、腹を誰かに殴られるというか、何か重たいものが自分の腹に圧し掛かる感覚を覚えた。 「グホッ……!」 ついつい変な声が出てしまった。急いで起きて確認してみると、座りながら寝ていたはずのラーセマングがナムレの方に倒れていた。 ―― いつもの朝の後である。ナムレとラーセマングの二人は忙しなく階段を駆け上がる。彼らは今日珍しく遅刻したのだ。だが予鈴には十分間に合う。教室に入りいつものメンツが確かに椅子に座っていることを確認しようとした。 「あ、カリーファテリーン達だ」 「遅刻か~?絶対ナムレがやらかしただろ~」 なぜわかる、とナムレは小さくつぶやいた。ラーセマングはナムレに倒れながら先に熟睡してしまったが、ナムレの方はというとあまり眠れずにいた。登校途中もこのことを執拗にラーセマングに問い詰められていた――彼女の事なのだからそんなことがあったら絶対に聞いてくるに違いないと彼は予想していた――が、ナムレは一向に答えようとはしなかった。 理由は単純で、例の特別警察の服を着た少女の話である。ナムレよりは確実に年下なのだが、ナムレ自身よりははるかに大人びていた。寝ようとしても、何度となくその少女が現れてナムレに問いかけるのである。彼女は今寝ている、あなたが今までにされてきた仕打ちを今ここで晴らせと。 何度も彼が言っている通り、彼にはそんなことをされた記憶はない。やれといわれてやるわけもなく、だからといってやらなければ向こうが何をしてくるのかもわからない。そんな葛藤を続けながら、いつの間にか彼女はその場からいなくなっていた。それからしばらくしてラーセマングが起きたのだから、彼女がそれを知る由はない。 何度かうとうとしていたとはいえ、熟睡できたわけでは決してない。通りで彼にはまだ疲れがはっきりと見て取れるのだ。 「遅いな、ナムレ」 「本当なの!この子ったら全然眠れなかったとか言ってさ~、理由すら話してくれないのよ?」 「へぇ~?」 「気を付けたほうがいいぜ。ナムレのやつ、結構おとなしそうな顔しているがちゃんと男の本能は備えてやがるからなあ」 「おい煩いぞテルテナル、自重しろ」 「はっはっは、冗談だっての。仮にもパンシャスティであるお前がそんな不敬を侵すなんて、トイター教徒の俺らが本気で考える訳ねえだろ?」 「本当だ、チェクセル確定だな」 口々にラズィミエもコメントを残す。そこにラーセマングが静けさを以て口にした。 「確かにそんなことしたら神の怒りに触れるわ。でも、それは相手の同意を得ているのならば全く疑われることはない……それはこの地上に半永久的に神の言葉を広めるために必要な行為だから」 何かを含ませるような言い方。これもナムレには分かった。 「おら、この子と一緒に半永久的に神の言葉を広めてこいよ」 「断る」 連中は一斉に笑った。ラーセマングはいつもの表情――すなわちよくわからないニコニコした顔でいた。その笑い声の中に、ナムレは何かが一つ欠けていることに気付いた。 「そういえば、ツェッケナルは?」 「ああ、なんかさっき電話で休むって連絡があった」 あのツェッケナルが学校を休むとは珍しい。というのも、ツェッケナルは今まで皆勤だったのだ。風邪などひいたことはないと豪語するし、学校にはかわいい子がいっぱいいるとか言っていたし、サークルでの活動に手は抜けないとも言っていた。 「休む?何故?」 「そこなんだよな」 テルテナルが表情を変えた。すでに事情を聴いているような顔をしているラズィミエが話し始めた。 「あいつ、今日から二週間旅行に行くらしい」 「旅行!?どこにだ?」 「PMCFだよ。ついこの前連絡があった。ツェッケナルが撮ったのか知らないが天神《マカティ》の写真がメールで送られてきた」 天神、PMCFの都市の一つである。まさか本当に行っているのか。 「今あいつと連絡は取れないのか?」 「今のはウェールフープ転送だ。とっくに携帯は圏外だし、もうしばらくは通信はないだろう」 残念だ、といえるのだろうか。一種のムードメーカーであるツェッケナルがいないとなると、かなり寂しいことになる。あいつが学校に来ていないこと自体異例の事態だ。 やがてチャイムが鳴り生徒は席に着いた。最初の授業は国史だった。国史のテスト勉強のためにラーセマングはいち早く席について授業を受けようとする。別にそんなに勉強しなくても学校で得られる知識なんて限られているだろうに。隣の席だったナムレが着席すると、先生がまだ来ないのを確認してから言う。 「別にそんなことしなくても、国史の授業内容はもう理解できているんじゃないの?」 「甘いわナムレ。姉たるもの、弟に恥は見せられない。先生が学校で教えた範囲のみからテストを作成するとは限らないんだから」 まあ確かにそうだが、と思った。だがナムレが本当に心配しているのはそこではない。授業で教えられるのはせいぜい授業で扱う範囲のみだ。それ以上は興味で先生に訊いてみるとかしないと先生はおそらく帰るのだろう。元来のハタ王国の教育スタイルをよく継承している。 「このあと先生のところに行くの?」 「ええ、どんな命題でもかならず聞くべき点と言うものはあるはずよ。知識を深めておかないと、あの男には勝てないわ」 一瞬あの男とはだれを意味するのか分からなかった。だが、すぐに推測はついた。昨日彼女に宣戦布告してきたあのスリャーザの事だろう。あまりにも急な賭け事で、しかもスカルムレイ研究会の命運もかかっているらしい。あまりナムレには実感がないが、他の部員にとってはそれほどにまで重要な勝負なのである。 「そう、まあがんばれ」 当然ながらナムレは自分には関係ないと思っている。そうこうしている間に教師が到着した。 ―― やがて授業が終了する。内容はハフリスンターリブ勃興と勢力拡大である。 ハフリスンターリブとは、かつてハタ王国の北部、すなわちイザルタ地方よりも北の地方で栄えた反王国思想を持つ勢力である。発端は当時国内で深刻化していた宗教差別である。かつてトイターがスケニウとハグナンおよびディスナルとテリーンを支配下におさめた後、さらに勢力を北に伸ばすべくしばらくテイカ=スカルムレイ政権は軍を動かして北上政策をとっていた。その結果イザルタやアカーノを手に入れたわけであるがイザルタよりも北を攻める前に国内情勢を整える政策に転換してからハフルはトイター教徒やウィトイターが長らく混在する地域となっていた。時代は下りイザルタがその境界となる最北端になった。 やがてファイクレオネから移住してきたファイクレオネ人がハタ王国北部に出現し始めた。彼らは巨大な都市を求めて南下したのだが、スステ政治の影響により宗教政策ははるかに強化されていた。ウィトイターは市民として認められず、移民たちは宗教差別にさらされた。この現状を拭い去るべく立ち上がったのがララータ=ハフリスンターリブであった。彼は周辺の被差別民を結束させて運動を起こす。それがやがて組織の形をとり組織的なクーデターに発展していったのがハフリスンターリブの大まかな経緯だ。のちに彼らは反王国勢力かつ国家転覆をたくらみスカルムレイでさえも打倒しようとする。彼らについてはカリアホととあるディスナルのシャスティの助力によりデュイン戦争で鎮圧された。 予言していた通りラーセマングは立ち上がった。その時の体勢の変化で、微妙に髪が肩から落ちていくのを直しながら。 「さっ、行くよナムレ」 「え、あんただけでいいだろ」 「馬鹿なこと言わないで。パンシャスティたるもの、祖国の歴史をよく理解して神の言葉を広める努力に役立てないといけないのよ」 ナムレに一切物事を喋らす隙を与えぬまま、ラーセマングは彼の右腕を掴んで強引に引っ張った。そのまま引っ張られるわけにもいかずナムレは仕方なく立ち上がって半強制的に教卓まで連れて行かれた。先生はその異様な光景にすぐに気が付いた。 「ああ、カリーファテリーンの二人か。どうしたんだ?」 「先生、今日授業で取り上げられたハフリスンターリブの勃興の事なのですが」 「はい」 ラーセマングはノートを開いて示した。それはハフリスンターリブの家系図である。 「これは私がノートに記したハフリスンターリブ家の家系図です。ここにハタがいるとしますと、ここには誰が入りますか?」 ナムレは当然ながらなぜそんなことを訊くのかと首をかしげたが、これも知識がどうこうという話になるのだろう。ノートの図をまじまじと見る先生の顔はとても余裕のある表情をしていなかった。 「それは……ユーナリア=ハフリスンターリブだな」 「あ、そうなんですか?」 「確かそうだ」 明らかにハフリスンターリブ家が好むような名前である。というのも、これは以前ラーセマングから聞いた話なのだが、かつて王国北部で大量に発生した反王国派勢力通称「ハフリスンターリブ」の指導者ハフリスンターリブ一族は後継者に王国と密接に関係する古めかしい名前を付けようとしていたらしい。初代ハフリスンターリブ指導者のララータ=ハフリスンターリブは該当しないが、その息子のチャルズはまさに有字の字母の名前だし、その息子のハタなんて国号を出してきている。これについては様々な説が提唱されており未だに国史における議論の的になるという。そんな背景での「ユーナリア」という名前である。 「でも彼、明らかにおかしな家系図を作っています。どうしてですか?」 「それは俺も知らないな…説はいくつかあるがもっとも濃厚なのは拉致説だ」 「拉致説?」 ナムレは一応二人の話を聞いていた。 「もうそろそろ俺も次の授業に行かないといけない。詳しい話は放課後にしよう。君の部活は?」 「私たち二人ともスカルムレイ研究会です」 そういうと、先生は奇妙なリアクションをとった。 「スカルムレイ研究会……?始めて聞くサークル名だ」 ナムレは何を言っているのかわからなくなった。
https://w.atwiki.jp/redjanuary/pages/21.html
シャードは泣いた。くやしい。悲しい。 そのことがチェンソーとヨミチにもひびいたかんじだった。 それにしてもなぜシャードが泣く? あの強気なシャードが? チェンソーは頭をかかえながら下を見ると何かがあったので拾った。 救助隊だけがつけているバッジだ。 それに・・・3、4年前ぐらいの物だ。 ルカリオランクでもある。 待てよ・・・?ルカリオといえば伝説の救助隊のリーダー。 そのルカリオは3,4年前にはいなかったはず。 そのルカリオランクをとった救助隊といえば・・・。 間違いない。 この幽霊はポケモンズの3体だったのだ。 ピカチュウのリュウガはいなかったので3体だった・・・。 ヨミチ、チェンソーも涙を出した。 この洞窟の主を叩き潰して倒す・・・。 シャードはブラッディズのバッグにポケモンズの骨をいれた。 ポケモンズはここで死んだのだ。 悲しい気持ちがさらにあふれた。 そしてこの洞窟の主を倒すだけだ・・・。 3体は奥へ進んでいた。 その頃洞窟のとある場所では・・・。 何かが吠えていた。恐ろしい声だ。 シャードたちはこれを聞いて奥へ進んだ。 そして3体が見つけた物・・・。 それは新種のポケモンであった。 そう。この世の裏側に住むポケモン。ギラティナである。 ギラティナは狂った様子だ。 シャードは先制攻撃を決めようとしたがギラティナは姿を消した。 ギラティナはシャードの上から攻撃をした。 そう。必殺のシャドーダイブだ。 シャード「ぐあぁぁぁぁぁっ!!!」 ヨミチ「シャード!!」 チェンソー「まずいぜ・・・。」 だかうつてはない・・・。 いやひとつある・・・。 シャードのシャドーボールである。 しかし体力がつきようとしている。 もうだめだ・・・。ポケモンズのようになるんだ・・・。 すると体に力がわいてきた。シャードの体に。 シャード「なんだこれは!?」 ポケモンズの力が入ったようだった。 そして痛恨の一撃を決めるとギラティナはまた姿を消した。 シャドーダイブか!? しかし来る気配もなかった。 勝ったんだ。ポケモンズのかたきをとれた・・・。 うれしくてまた泣いた。 そしてこの洞窟の名前がとけた。石板があったから。 生きし者、消えし者の混じる洞窟だった。 空間が狂ってるから。 そしてポケモン広場にポケモンズの骨がうめられた。
https://w.atwiki.jp/84gzatu/pages/103.html
前へ戻る。 次へ進む。 遊義皇トップへ 小説置き場に戻る バンデッド・キース、裏の世界でも敗北! 二ヶ月前に衛星放送されたデュエルでペガサス氏の代わりにデュエルした少年に敗北を喫したキース・ハワード氏、 彼はその後、裏の世界のギャンブルに没頭したと先日本紙にて報道したが、 その陰世界のデュエルでもハワード氏は年下の青年に大差を付けられ敗北している。 青年は紫のコートを羽織り、ゲーム中の不正を指摘され、右手の指を全て切断された。 だが、不正は立証が無く、ハワード氏の敗北への苛立ち、酒の勢いが手伝った言い掛かりだと思われる。 以上、ニューヨークの会社発行の「ウォールアウト」、二年前の2月27日発行分、3ページ目より抜粋。 (ホーティック視点) とにかく今日は最悪の日だ、オセロ村まで不得意な電車を乗り継いできたというのにその二封気さんは外道に成り下がり、 正念党に連絡を取ろうとするが携帯電話は圏外で繋がらず、公衆電話も無い。 しかも宿泊施設も無いと泣きそうになりながらも、俺は雨降り後の秋の寒空に野宿する気には為らず、数時間村の中を散策した末に、 「刃咲診療所」なる病院で怪我人扱いでベッドが借りれる事を知った。 そこに着いた途端、疲労とストレスで電話を借りるのを忘れてそのまま眠りに落ちた……次の日の朝、美味そうなダシの香りで目を覚ますまで。 「……おはようございます。」 「おはよう、仮病のお兄さん。」 「おはようございます、重度の左足複雑骨折の患者さん、 ……朝食にうどんはどうですか? サービスしますよ。」 匂いで起きるほどのうどんを断る理由もあるはずが無い。 「では、お言葉に甘えて頂きます。」 「ちょっと待ってて下さいね、急いで作りますから。」 ここは病院ですよね、民宿か何かじゃありませんよね? 「ところでお兄さんの鞄ってそれってデュエルケースですよね、 デュエルディスクとカードがたっぷり入るって触れ込みの。」 「ええ、結構荷物も入りますし、 簡単なデュエルディスクの手入れ道具も入って1280円で得だったんで。」 俺は、テレビコマーシャルで言っていたことをそのまま繰り返す。 「ってことはお兄さんは決闘者ですよね、勝負しませんか、いますぐ。」 つまり、彼もデュエリストか。 「…『ながら食』はお母さんが怒るんじゃないですか?」 「いやぁ、家の家訓は『時間短縮した者に勝利有り』なんですよ、 カードにうどん汁が付いた時に自分で処理できればOKです。」 どんな家訓だ? それは? 「良いですよ、デュエルディスクは使わなくて良いですよね、 電波器具ですし病院内で電源入れる訳にも行きませんし。」 「それはもちろんですが、お兄さんは何してるんですか?」 「……デッキを鞄から出してるんですが。」 「デュエルディスクにもくっ付いてるようですけど…そっちが一軍じゃ無いんですか?」 なかなかめざといですね、デュエリストのスキルと言うよりイカサマ師のスキルですが。 「今、ディスクに入ってるのは実験中のファンデッキで、今から出すのが全力勝負のデッキですよ。」 実際は、デュエルディスクに装填されているデッキが私のメインデッキの1ターンキルデッキであり、 暇潰しには成りえない上に、子供とはいえ他人に戦術を見せるのが抵抗が有る。 「…まあ良いですけどね、とにかくデュエルです。」 少年も手早くデッキを取り出し、面会者用の椅子に手早くデュエルマットを広げる。 『デュエル!』 ジャンケンの結果、少年の先攻となった。 「俺の先攻、ドロー(手札6)、〔装甲昆虫騎士〕を攻撃表示で召喚し、 3枚セットして終了だ。(手札2・伏せ3)」 甲虫装甲騎士 地属性 昆虫族 レベル4 ATK1900 DEF1500 昆虫騎士の中でも、エリート中のエリートのみが所属できるという「無死虫団」の精鋭騎士。 彼らの高い戦闘能力は無視できない。 「俺は〔サイバー・ドラゴン〕を自身の効果で特殊召喚して、攻撃させてもらいます。」 「伏せカードを2枚発動します、〔収縮〕に 〔働き蜂への報酬〕です。」 サイバー・ドラゴン 光属性 機械族 レベル5 ATK2100 DEF1600 相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、 このカードは手札から特殊召喚する事ができる。 収縮 速攻魔法 フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の元々の攻撃力はエンドフェイズまで半分になる。 働き蜂の報酬 永続罠 自分フィールド上のモンスターが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与える度に、自分はカードを1枚ドローする。(オリカ) 〔サイバー・ドラゴン〕(攻撃力1050)VS(攻撃力1900)〔昆虫装甲騎士〕 サイバー・ドラゴン破壊、昆虫装甲騎士墓地へ。 刃咲→働き蜂への報酬の効果で1枚ドロー 「伏せ3枚出てる状態で攻撃するのは妥当とは思えないぜ? 兄さんよ。」 「魔法・罠の除去を引くまで攻撃せずではペースを取られてしまいますからね、 私はモンスターを裏守備で通常召喚して伏せカードを1枚セット、終了です。(手札3・伏せ1)」 …なるほど、モンスターを破壊しつつカードをドローするコンボ、なかなか面白いですね。 「…あら、デュエル中?」 さっきの女医さんがうどんを溢さない様に慎重に入ってくる……雰囲気は民宿の店主さん。 「…あ、有難うございます。」 デュエルフィールドを置いている椅子をまたいで、ベッドの横の小さな棚の上に置いて頂いた。 「カードしながらでも良いけどカードに染み付かないように注意してくださいね、 乾かすの大変なんですから。」 「ご心配なく、その為のカードスリーブですから。」 俺は言いながら手に持ったスリーブ付きカードをひらひらさせる。 「へぇー、そうなんですか。」 俺のカードスリーブは何年か前に記念品で発売されたレア物で、昔纏めて買っていたものだ。 そこで気付いたんですが、少年の使っているカードは「素」でカードは節々が擦り切れている。 「何年か前に2000セットのみで販売された特別品なんですよ、 ……よろしかったら1セット要りますか? スリーブは有った方が便利ですし。」 「お、ありがとうございます。」 少年は微笑みながら手早く手札のカードやデッキにスリーブを被せていく。 「賄賂をも貰っても手加減はしないぜ! 俺はドローして(手札5枚)、 〔電動刃虫〕を通常召喚し、〔装甲昆虫騎士〕で裏守備へ攻撃!」 「裏守備は〔魔装機関車 デコイチ〕なので、1枚ドローさせてもらいます。」 電動刃虫 地属性 昆虫族 レベル4 ATK2400 DEF0 このカードが戦闘を行った場合、ダメージステップ終了時に相手プレイヤーはカードを1枚ドローする。 魔装機関車 デコイチ 闇属性 機械族 レベル4 ATK1400 DEF1000 リバース:カードを1枚ドローする。 自分フィールド上に「魔貨物車両 ボコイチ」が表側表示で存在する場合、さらにその枚数分カードをドローする。 ホーティック→1枚ドロー、手札4枚。 「貴方が1枚ドローしたのでさっき伏せたカードの3枚目、 〔便乗〕を発動させて貰います、一応説明しますがここではドロー効果は発揮されません。」 便乗 永続罠 相手がドローフェイズ以外でカードをドローした時に発動する事ができる。 その後相手がドローフェイズ以外でカードをドローする度に、カードを2枚ドローする。 「そして〔電動刃虫〕でダイレクトアタック。」 刃咲→1ドロー(働き蜂への報酬の効果)、刃咲手札5枚 ホーティック1ドロー(電動刃虫の効果)、ホーティック手札5枚 刃咲2ドロー(便乗の効果)、刃咲手札7枚 ホーティックLP8000→LP5600 「そして1枚伏せて――エンド!(手札6枚・伏せ1・発動中2)」 「凄いドローターボだですね、カードを引きます(手札7枚)、 俺は〔スチームロイド〕を攻撃表示で召喚して、〔装甲昆虫騎士〕へ攻撃する。」 相手の伏せカード1枚に怯えてたらいつまでも攻撃できず、 〔スチームロイド〕は自分のターンでしかパワーを発揮しない。 ……それにあのカードはなんとなくだがハッタリのカードに見える。 スチームロイド 地属性 機械族 レベル4 ATK1800 DEF1800 このカードは相手モンスターに攻撃する場合、ダメージステップの間攻撃力が500ポイントアップする。 このカードは相手モンスターに攻撃される場合、ダメージステップの間攻撃力が500ポイントダウンする。 「伏せカードは発動できません、スルーです。」 〔スチームロイド〕(攻撃力2300)VS(1900)〔装甲昆虫騎士〕→装甲昆虫騎士、破壊・墓地へ。 刃咲LP8000→7600 「〔地砕き〕を使って〔電動刃虫〕を破壊してからターンを終了します。(手札5枚・伏せ1)」 地砕き 通常魔法 相手フィールド上の守備力が一番高い表側表示モンスター1体を破壊する。 電動刃虫→破壊、墓地へ。 「カードをドロー(手札7枚)、兄さんの場の伏せカードに対して、手札から〔撲滅の使徒〕を発動します。」 撲滅の使徒 通常魔法 裏側表示の魔法または罠カード1枚を破壊しゲームから除外する。 もしそれが罠カードだった場合お互いのデッキを確認し、破壊した罠カードと同名カードを全てゲームから除外する。 リミッター解除→ゲームから除外。 「そして〔昆虫装甲騎士〕・〔電動刃虫〕を除外して、 手札から〔デビル・ドーザー〕〔ギロチン・クワガタ〕を召喚、 〔死者への供物〕で〔スチーム〕を破壊してから〔手札抹殺〕を使用します!」 デビルドーザー 地属性 昆虫族 レベル8 ATK2800 DEF2600 このカードは通常召喚できない。自分の墓地の昆虫族モンスター2体をゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。 このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、相手のデッキの上からカードを1枚墓地へ送る。 ギロチン・クワガタ 風属性 昆虫族 レベル4 ATK1700 DEF1000 ハイエルフの森に生息するクワガタ。 人の親指ほどの大きさしかないが、 鋼鉄をも切り裂く強力な顎をもつ。 死者への供物 速攻魔法 フィールド上の表側表示モンスター1体を破壊する。 (次の自分のドローフェイズをスキップする。) 手札抹殺 通常魔法 全てのプレイヤーは手札を全て捨て、その後捨てた枚数だけカードをドローする。 刃咲手札2枚墓地へ、2枚ドロー。 ホーティック手札5枚墓地へ、5枚ドロー。 刃咲手札2→4枚ドロー(便乗の効果) 刃咲「とどめに伏せカード、〔リビングデッドの呼び声〕で〔アルティメット・インセクト LV7〕を特殊召喚して一斉攻撃!」 リビングデッドの呼び声 永続罠 自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。 このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。 そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。 アルティメット・インセクト LV7 風属性 昆虫族 レベル7 ATK2600 DEF1200 「アルティメット・インセクト LV5」の効果で特殊召喚した場合、 このカードが自分フィールド上に存在する限り、全ての相手モンスターの攻撃力・守備力は700ポイントダウンする。 ホーティックLP5600→3900→1300→-1500 「凄いコンボですね…ありがとうござ…」 「もう一回しませんか? まだ6時ですし。」 挨拶も聞かずにご機嫌のまま次のデュエルの催促する少年、 断る理由も無い、今はちょうど暇だし…… それにちょっとした「掘り出し物」かもしれない。 時間経過&視点変化 (刃咲視点) 「…あー、楽しかった。」 俺とホーティックさんはあの後に延々とデュエルを繰り返し、どっちが多く勝ったかすら覚えていないほどの熱戦の連続だった。 「…ふぅ、強いですね、将来はプロのデュエリストに為るんですか?」 「それは好きな事を仕事にして食って行けたら最高だしなァ、星七以上のライセンスは取るな。」 ここで言う「星」とはレベルはレベルでもモンスターのレベルではなく、 将棋や囲碁の級や段のような物で、星五以上がプロとされ、星七以上とも為ると10人程度のレアスキルだ。 「余談ですが――私は星七以上のデュエリストを20人以上知ってます。」 「……あ!?」 まるで俺の心を読んだような発言、前に壱華にも読まれた事が……いや、重要なのはそこじゃねぇ! 「君ね、顔に思ってる事をそのまま出すのは問題だと思いますよ、 デュエル中でもコンボ前は少し顔が緩んでましたよ。」 「それよりもどう言う意味だ? 星七以上20人って世界中のプロ合わせてもそんなに居ねぇだろ。」 「それはあくまで表の世界での話、俺は裏の世界の知り合いが多いもので。」 ……つまりレアハンターやら、非合法カード偽造の連中か。 「貴方はデュエルを本当に楽しんでますね、それで強くなりたい欲求もある、 確実に強くなりますよ、貴方は。」 「自覚してる。」 「デュエルが好きな方ならば、 いつでも私達『制々正念党』はいつでも受け入れます、 レアカードが欲しい、強い奴と戦いたいと思った時はここへ連絡を。」 野郎が自分の連絡先の書かれた名刺を差し出し、俺はサラリーマンのように受け取る。 「それでは俺はこれにて失礼します、そろそろ電車が来る時間なので。」 奴はあっけなく立ち去り、足音が遠のくのを確認した、 ……よく考えれば裏の世界の人間が何でこのオセロ村に来たんだ? この村に存在するレアカードが狙いなら壱華の〔コスモクイーン〕か、 俺の〔アルティメット・インセクト LV9〕だが奪う素振りは無かったし、確認したが入っている。 まさか勧誘が目的でこんな小さな村は来ないだろうし…。 「…んアアアア! 考えれば考えるほど判らなく為る!面倒くせぇ! おやすみ!」 俺は布団を被り、福助と壱華が見舞いにくるまで寝るか。 前へ戻る。 次へ進む。 遊義皇トップへ 小説置き場に戻る
https://w.atwiki.jp/rozenmaidenhumanss/pages/1808.html
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3198.html
「もう良いです! 顔も見たくありません!!」 「あぁ、そうか! もう俺も知った事じゃない!!」 ついカッとなって喧嘩してしまって、手遅れだと思うのはいつの事なのか。 病室を飛び出し、イライラがおさまった頃には俺は病院から離れていた。 そして後悔をした頃には家に着いていた。 思い返せば下らない理由だった。本当に下らなかった。 あいつがジュースこぼした時にカチンと来た。それだけだった。 それで言い争いになって今に至る。家に帰って、 「おかえりキョンくん」 と、言ってくれた妹を目にも留めず、俺は自分の部屋に入った。 電気を点ける気にもならない。光を見るのが怖かった。 眩しい光は、あいつの笑顔に似ているからだ。 橘の香り 第三話「恋愛喧嘩柑橘類型」 「・・・くそっ」 結局のところ俺という生物は馬鹿である。 相手は病人だろう。ちょっとの失敗ぐらい構わないじゃないか。 歯軋りしたって静かな部屋に響くだけ。 人はなんでこんなにも後悔を知っているのに愚行をしでかすのか。 知っているなら教えて欲しい。だけど、もうどうしたら良いのか。 誰かに相談したいけど、誰に相談したら良いんだろう。 長門にも、朝比奈さんにも、ハルヒにも、誰にも電話なんか出来る訳が無い。 こいつらからしたら橘は敵だった少女だ。橘の件で相談が・・・などと言える訳が無い。 しかも俺とあいつは付き合ってるなんて言ったら尚更だ。 と、なると古泉しか居ないのだがあいつに相談するのはしゃくに障る。 ・・・仕方ない。 役に立つか立たないかは元より関係ない。ただ誰かに聞いて欲しかった。 さっと携帯電話を取り出して、俺は目的の番号を探す。 そして電話帳から見つけたそれに電話を掛ける。 トゥルルルル・・・。 長い長い呼び出し音。実際は短いそれがひたすら長い。 トゥルルルル・・・。 電子音が鳴る度に俺が急かされてる気がした。 トゥル、ガチャッ。 「!」 やっと相手が出た。 『―――どうしたの?』 長門以上に無感情でボソボソと聞き取りにくいながらも澄んだ声。 電話の相手とはあの九曜に相違ない。 「相談があるんだ。聞いてくれるか?」 『・・・うん―――』 とりあえず事情を一から十まで詳しく話してみた。 そして話を聞き終えてから一秒もしないうちに、 『―――謝ったら良い』 帰って来た言葉はこれだった。おいおい。 「そんな簡単に出来るなら苦労しないさ・・・」 それで相談してるんだぞ、こっちは。 『案ずる必要は無い・・・多分―――橘京子も・・・謝罪したいと―――考えてる・・・はず・・・』 「そうかな。こんな俺にまだ腹を立ててるんじゃないか?」 『そうかも―――ね』 「おいおい」 相談を受けて相手の不安を助長させる奴が居るか。 『でも大丈夫―――私が・・・保証する・・・・・―――』 「・・・そうか?」 『なにかあったら―――私が代わりに彼女に・・・―――なってあげる・・・から』 一瞬きょとんとした。あの九曜がこんなジョークを言うようになったとはな。 「ふふっ・・・そうか。でも、ありがとう。おかげで心が楽になった」 思わず吹いてしまった。吹いたついでに心の箍が外れた気がした。 そんな俺の感謝の言葉に偽りは無い。 『ん―――』 「じゃあな」 『今度・・・―――何かご馳走して・・・?』 何故か俺には電話の向こうの九曜が微笑んでる気がした。 「OK。とびっきりうまいカレーを奢ってやるよ。じゃあな!」 ガチャ。ツー・・・ツー・・・ツー・・・ピッ。 「・・・じゃあ、謝罪でもしに行こうか・・・」 俺は洗面所に行き、顔を洗うと颯爽と家を飛び出した。 そして自転車に跨るとさっさと漕ぐ。っつか全速力で。 「面会時間に負けるかヴォケェエェェエエエエエェェッッッ!!!」 そう。面会時間締め切りがもう近いのだ。 かつて無いほど足を動かしひたすら病院へと向かう。 今佐々木を後ろに乗せたら路上に落ちるだろうな、多分。 いや、もし俺にしがみついている状態だったら俺も一緒に落ちているだろう。 でも、んな事態になったら困るって話だ。 何故なら、 「うぉりゃぁぁああああああッッッ!!!」 橘に謝りにいけないだろう? 俺は謝る為に今この道を進んでいるんだぞ。 そうだ。止まってられない。 時間は刻一刻と過ぎてしまうんだからな。 どんなに待ってくれと言っても、非情な奴だからな。 「まだまだぁぁぁあああああ!!」 足に疲れが溜まりすぎてピークを超えている。 だから何だ。動かせられるなら動かせ。止まるな。進め。 日頃を考えろ。SOS団に比べればこんなものまだまだだろう。 そして、病院についたのは面会時間終了ギリギリ前。 すっかり顔なじみになった入院患者の老人が軽く手を振ってきたのでこちらも振り返す。 まだこれだけの余裕があるじゃないか。 さぁ、階段だ。あんな遅いエレベーターなんかくそ食らえ。 足がつりそうになっても大丈夫だ。つったらつったで片足ジャンプで登れば良い。 だからつるまで両足で駆け上がれ。 「はぁ・・・はぁ・・・!!」 しかし、長いなこの階段。考えてみりゃ、この病院他の病院に比べて高層物件なんだよな。 あ~、マズい。足が上がらなくなってきた。 だけど、あと少しだ。踏ん張れ。謝る為だけにここまで来たんだろうが。 謝れなかったらそれこそ無意味だ。スライムがLv.99の勇者に攻撃するみたいにな。 ・・・いや、これじゃ俺がモンスター側だから訂正しよう。 初っ端から魔王の居るステージに行ける某RPGで普通に初っ端から突撃する勇者のようなものだと。 「やっと、ついた・・・!」 その階、なんと十五階。これならエレベーターの方が良かったかもしれんな、やれやれ。 そして、橘の病室の前に立つ。 さぁ、開ける前に深呼吸して・・・ゆっくりと・・・ゆっく ガラガラ、 「「あ」」 まだ、心が落ち着いていないのに何てこった。 運悪く、いや、運良く、いや運悪く・・・もうどっちでも良いや。 とにかく橘が病室から出て来て遭遇しちまった。 俺達は見詰め合って固まっていた。 「・・・・・」 「・・・・・」 ええい。ここでびびってどうする。 そうだ。当たらなければどうという事はないと大佐が言っていたではないか。 「た、橘ァッ!」 緊張して声が大きくなっちまった。 「は、はいィッ!」 橘もびっくりして声が大きくなってる。 「本当にすまんかったァッー!」 病院内に響く俺の謝罪。 シン、 と静まり返る建物内。 深々と下げた俺の頭を、橘の手が撫でる。 「・・・こちらこそ・・・ぐすっ・・・すいませんでした・・・」 そう言う声が震えている。何故? 俺はそれが知りたくて頭を上げた。 だが、俺が橘の顔を見るよりも先に橘が俺に抱きつく方が早かった。 「・・・橘、泣いてるのか?」 「・・・ぐすっ・・・うぐっ・・・」 「・・・泣き虫さんだな・・・よしよし・・・」 「・・・良かった・・・私、貴方がこのまま離れるかと思うと怖くて・・・」 「馬鹿言え。離れるわけがないだろ。大好きなんだからさ」 「ぐすっ・・・キョンくん・・・」 パチパチ。 ふとその音がして俺はハッとした。 しまった! ここは病院じゃねぇか!! よく見りゃ周りはギャラリーで一杯。何てこった! やっちまった!! 俺の顔真っ赤だろうし、橘も顔真っ赤だし。 ええい! 「病室に緊急退避だ、橘隊員!」 「はい、隊長!」 そんなわけで俺達は橘の病室へと避難するのだった。 あー、しかしとんだ恥を掻いた。やばいよやばいよー。 顔が熱いぜ。ホットホット! いや、ホッター、いや、ザ・ホッテストだな。 比較級どころか最上級の恥だぜ。 まぁ、良いか。仲直りできたんだから。 「キョンくん・・・」 橘が俺に寄りかかってくる。 「ん?」 「ちゅぅ、して?」 「・・・やれやれ」 これを頼まれて断れる俺は此処に居ないさ。 ちゅっ。 これで、お姫様が笑顔になってくれるんだからな。 ・・・・・・・・・・・・・・・。 「ふふっ。良かったですね・・・お二人とも・・・・・」 「おい、古泉」 「・・・解ってます・・・解ってますけど・・・応援したくなるじゃないですか・・・・」 「・・・・・まぁな」 「で、現状で橘さんの症状はどこまで進んでるんですか?」 「これ以上進行を食い止めるのも、もう難しいだろう・・・薬も効かなくなるかもしれないな」 「そうですか・・・」 「・・・彼には辛い思いをさせるな」 「仕方ないですよ。彼女の死こそが機関の狙いなんですから」 「しかし、そう上手く行くのかね・・・」 「間違いなく彼を涼宮さんが放っておくわけがありませんよ。何だかんだ言いながら慰めに取り掛かりますよ」 「それで彼と涼宮ハルヒがくっつくかね?」 「シナリオ通りにいけば、ね」 「世の中そんなに簡単じゃないよな」 「そうですね・・・嫌な予感がしてならないんですよ、このシナリオ」 「・・・俺もだ」 第四話「病気進行柑橘類型」へ
https://w.atwiki.jp/ohayousex/pages/151.html
~その頃の子乃達は…~ 冒頭を迎えていた!!! 「どうしてこうなった。」 「どうしてもこうしても、私の友人達を死に至らしめた仲間は世界一綺麗な桜の前にて待つとの事だ!!! 絶対に殺してやるんだ!!!奴らの居場所がわかったなら後はもう走るのみッ!!!!!!!!!!!」 「だからってさぁああああああ!!!俺の首根っこを持って高速移動するのはやめてくださいよぉおおおおおお!!!!」 つーか子乃ちゃん立ち直り早いよ畜生!!!!!あ…なんか意識が遠く… 「いやだねぇえええええええ!!!!あああ!!?!そこをどけ少年ッッ!!!!!!!!!!!」 子乃の行く先にいたのは…少年…ん?あれ…その顔どっかで…って 「ここから先へは行かせない。唯我さんが何を吐いたか知らないが…貴方達を目的地へは行かせは…って、白鳥さんと子乃さん!?」 そこにいたのはエス・カーペリオン…エスカペだった!!何してんのお前!? 「何でお前がここにいるんだエスカペ!?」 「白鳥ィ!?コイツは知り合いかッ!?」 「あ、ああ…そうだが」 まさか…嫌な予感がする。 「……コピペさんの命令でここから先へは行かせない。まさか、話に聞いていた相手が子乃さんだったなんて… そういえば子乃さんの苗字、若林だな…とかエスカペはほざいている。つまり、エスカペは敵なのか…? 「お前さん、逃走者だろ?だからここは逃げた方が良い!子乃はマジで強いから!!」 「…残念ながらそれは無理です。命令に背いたら賢者の石ごと僕がコピペさんに粉砕されますから。」 「は?」 「あなた方とは『逃走』ではなく『闘争』をするという事ですよ…子乃さん、覚悟!!」 「ふむ、どうでもいい。」 子乃がエスカペを強く見つめるとエスカペの右腕が突如爆ぜた!! 「なっ…!ぐっ…!!これが、若林の力ですかッ!?」 だが、エス・カーペリオンは『賢者の石』の力でその傷が一瞬でふさがる。 「いいでしょう…僕の魔砲をくらえ!!デスアビスショットッッ!!!!!」 エスカペの指から放たれた魔法の弾丸はゴオオオオオッ!!と轟音を立てながら子乃に向かうッ!! 「この程度か…?」 だが、空間をねじ曲げ、弾丸はエスカペに跳ね返り飛来するッ!! 「くっ!!!」 それを避けたエスカペだったが、今度は唯我を追撃した時の弾幕を先程の何倍もの要領で発生させる。 「くたばりなぁああああああ!!」 だがそれらも全て避ける!!避けるッ!!!避けるゥゥアアア!!!!! 撃ち漏らしまくった弾幕が白鳥ィの周辺に飛来するッ!!飛来しまくるッ!!!! 「ぎゃあああああああ!!!!!!なんでだァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」 「当たりませんよォ!!私にはッ!!私は逃走を支配し超越した!!もはや私に回避できないものはないッッ!!!! そう…当たらなければどうということはないんですッッ!!!!!!!!!!!」 「そいつはどうかなエスカペさんよォ……」 「( ・∀・)!?」 完全に乗せられた。エスカペはそう思ったという… 何故なら、彼は子乃の空間操作の射程距離に足を踏み込んでしまっていたのだから!! 「チェックメイトだッ!!!死ねぇええええええええええ!!!!!」 「ウボァアアアアアアアアアアアアアアア!!?!?!?」 エスカペさんが身動き出来なくなり、子乃にトドメを刺される…と思われた次の瞬間!! 背後から異常な量の『霊圧』が!!! ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド………!!! あまりにも巨大すぎる『ソレ』に思わず絶句する 「うおおおお!!!今のうちだァアアア!!1例え相手がッ!!何者であろうとッ!!! 我が逃走を妨げることは出来ないィィ!!!!!!!」 ギュイイイイイイイインンと音速突破しエスカペは離脱した!! 「うわぁ…どんだけ逃げる事に集中したらあんな速さで逃げれんの?」 だが子乃は未だ固まっている 「アレは…なんなんだ?」 ~西行妖の前~ 「死を体現する破壊神エリスよ!!我が召喚に応えたまえ!!」 叫ぶ男の名は、若蓮摩翔…自身が神になる為に破壊神を召喚させる!!その名目でコピペに雇われた者だった!! 『…我を呼ぶのは貴様か?……余りにも粗末すぎる…その器で我を取り入れるなど、言語同断ッッ!!!!』 「な、何!!ふざけるな!!!私は貴様を取り込み神になるのだ!!!」 『……封印を解かれたからには…貴様に取り込まれる他ないのだろうな。』 若蓮摩翔はそれを聞いて歓喜する。が、その頭が何者かに掴まれた。 「では…このDIOと召喚士、どちらかを選ばせてやろう…破壊神。」 『…DIO…貴様からは邪悪な気が伝わる…!良いだろう!貴様に従ってやる!!この召喚士よりは大マシだ!!』 「フッフッフ…いずれその評価も変わる。」 そして…破壊神はエリスはDIOに取り込まれた。 「なんだ、零分咲きじゃねぇか。」 一分ほど遅れ子乃が辿りついた。 「待っていたぞ、若林子乃。」 「貴様はDIO…!?テメェもコピペとつるんでやがったのか!!」 「コピペ…?知らんな。……ククク、あの時言ったよなァ…このDIOを、『ウジ虫』と。今訂正しても良いんだぞ?…子乃。」 「あぁ、当然。訂正してやるよ。『糞虫』の方が響きが良いだろう?糞虫。」 「……クックック…ハァーハッハッハッハ!!!」 DIOは笑い出し言った。 「その糞虫にも劣るイエローモンキーの脳味噌でも分かるように言ってやろう… 今から貴様は神となったこのDIOの力によって最初に取り殺される者となる。光栄に思うのだな!!」 「貴様程度の糞虫が…私に勝てると勘違いしているようだが、 どうやら私の勝利という形で終わりそうだぞ?私は今この時点で『死線』が見えている!! 気持ちが高ぶる…フフフ…素晴らしく!良い気分だ!!血が煮えたぎるッ!!!」 ――目覚めていく…私の魂が。覚醒していく…私に眠る若林の力が!!! 「クックック…このスタンドパワー!溢れ出る不死の力!!!最早何も恐れるものは無いッ!! ンッン~…気分がいい…歌のひとつでも歌いたいような良い気分だ!そう、まさに!!」 「「最高にハイって奴だァアアアアアア!!」」 「うわぁ…」 白鳥裕也はエスカペがいた位置(1kmほど遠く)から苦笑いするしかなかった。 一方その頃、異変が起きたら知らせる存在紫がいないので博麗の巫女はご就寝中である。 この日に限って妖怪達が入る事の出来ない結界を用心深く張っており、 その上唯一の人間である早苗や咲夜は絶賛外の世界へご出張中…学校生活を楽しんでいた。 ………もうすぐ、太陽が昇る。 ~一方此方では~ 「オラオラアァアアアアアアアアアアア!!この程度でくたばるような奴じゃねぇだろ神父ぅあぁああああああああ!?!?」 「この程度ですか!?宇宙人が聞いて呆れますねッ!!この程度で私を殺せると思わない方が良い!」 「死ねえぇえええええええええええええ!!!!」 「塵は塵に!灰は灰にぃいいい!!!!!」 パーフェクト戦争教室!!!! 霧魔龍夜は『抹殺』だけの為に容易した術式(どこ当たっても致命傷に至る魔術)を弾幕のようにばら撒き、 クレイ・ブラクは『デストロイ』だけの為に容易した宇宙兵器(空間を消し去る超強力光学兵器)を撃ちまくる。 周囲にあった魔法の森は理不尽にも既に焼け野原状態である。 「ぶっるぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」 「ヒッギギ…ガギャギャガンガガンガババアアアアアアアダダ!!!!」 身体の間接無視した歩行法で疾走しながら360度どの位置からも常人ならば視認不可能のスピードで動き回り さらに視認不可能のスピードでチェーンソーで振り回しまくるステファニィイイイイイイイイイイ!!!! それをこちらも負けじと視認不可能のスピードでディアボリックファングを振り回し、 周囲の地面を抉りまくるバルバトスゥウウウウウウウ!!!! 「はぁああああ!!!微塵に砕けろ!!!!ジェノサイドブレイバァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」 「ヒヒャヒャヒャハハ!!!血肉ヨ踊レ!!!!デヴィルレイザァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」 ―――――湖の水は全て蒸発し、周囲は灰野原となった。 そして、その中央に立っていたのは――――バルバトス・ゲーティアだった。 「が…ま…」 「中々よくやったぞ執事ィ…この俺をここまで追い詰めるとはな…だが、貴様はここで死ねェ!!!!」 バルバトスは大きな斧を振りかぶる。 「星符「ドラゴンメテオ」!!」 だが、その頭上で声がしたッ!! 「何ィ!!」 ちょうどバルバトスの位置に降り注いだレーザービームはバルバトスを容赦なく吹き飛ばすッ!! それをしたと思われる人物は、箒に跨る少女だった!! 「大丈夫か?…執事?紅魔館の執事か?あそこの姉妹は今確か『外』で学校に通っているって噂だったが…」 ステファニーは何事も無かったかのように立ち上がり、言葉を紡いだ。 「ありがとうございますお嬢様。おかげさまで助かりました。」 「おう!元気そうで何よりだぜ!私が執事だったか!!」 アハハハハ!と元気そうに笑う少女を執事は見ていると後ろから気配を感じ取る。 「ぶっるぁあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」 執事は即座に体制を立て直し、チェーンソーを構えるが、バルバトスの一撃は防げないッ!! 執事は辛うじて『宇宙障壁』を張ったものの斧に吹き飛ばされ彼方へ飛んでいった!!! 「う、嘘だろ!?ドラゴンメテオは直撃したはずっ…!」 「貴様ら揃いも揃って弱すぎる…!俺はまだ本気を一度も出していないぞ…!?」 「くっ…!恋符…」 「遅いわぁああああ腑抜けがぁあああああ!!!」 バルバトスが斧を振りかざす!!! やめろォーッ!!!!! デデェエエエエエン!!!(効果音) 「ロリに手を出すなぁあああああああああ!!!!!!!」 彼女の声がした方角からぼろ切れとなった霧魔龍夜が飛んできた!!!!!!! バルバトスの顔面に既に半分死んでいる霧魔が激突する!! 「よっしゃ!食らえッ!!マスタースパァアアアアアアアアアアク!!!!!」 ドゴォオオオオオンという音を立ててバルバトスを吹き飛ばすレーザービーム!!!! 「遠慮はいらねぇえええええええええ!!!!!死ねぇえええええええバルバトスゥアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」 さらにクレイのロケットランチャー108式を連射する!!!!!!! バルバトスが吹き飛ばされた場所に宇宙ロケットランチャー(最強)が爆ぜるッ!!爆ぜるッ!!!爆ぜるッッッ!!!!!!!!! 「終いにはこれだァアアアアアアアアア!!!!!!!!宇宙光学兵器第二弾!!!レーザーインパクトォオオオオオオ!!!!!!」 ギュイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!! バルバトスはこれでもかとばかりに吹き飛ぶ!!!! 「やったか!!!」 魔理沙が声を張り上げる!!! 「貴様らぁ…二対一などという…弱者の悪あがき程度でこの俺に勝てると思っているのか!!?」 まさに規格外のタフネス!!!!バルバトスは依然健在だったのだぁあああああああああああ!!!!!!!!!!!!! 「まあぁああああああああああだ死んでねぇえええええええええええええええのかよおおおおおおおおおおおお!!!?!?!?」 「いいぜぇ…一発で沈めてやるよォ…!!!」 ドドドドドドドドドドドドドドドド…地鳴りが響く!!!大地がこの一人の男に震えているのだぁああああああ!!!!!!!! 「覚悟は出来たか!?」 「うわぁなんかヤバそう!!私は逃げるzzzz 「ワァアアアアアアアアアアアアアアアアルドデストロヤァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」 クレーターが出来た。 場所は変わり、西行妖前… 圧倒的な戦力だった。 本当に恐るべきは破壊神エリスではなくDIO!その本人ッ!! 奴はエリスの力を借りるだけでなく、『支配』し完全に『その』領域に踏み入れた。 「DIOォォオオオオオッ!!お前は私が肉塊にしてやる!!」 「喚いていろイエローモンキー!決着をつけてやる!!『ザ・ワールド』ッ!!」 「無駄無駄ァアアア!何をしようと今の私に敵う筈がァアアア…!!」 次の瞬間、無数のナイフが子乃を貫くッ!! 「何ィィ…!?何をしたんだ貴様ァアアアアア!!!」 「素晴らしいッ!今まさに『世界』は完成したッ!貴様如きは最早このDIOの敵ではない!」 「馬鹿を抜かせッ!!DIOッ!貴様の心臓を爆破してやるッ!『爆ぜよ』!」 だが爆ぜたのは、DIOではなく、その足元の『石ころ』だったァ~! 「私に不可能はない…何があろうと貴様が勝つ事は決してない!」 「な、何故当たらない!!」 「無駄無駄無駄無駄ァ!!『既成事実』…!最早何をしようが神であるこのDIOに勝つ事など起きはしない!! 貴様が勝つという事実さえも『破壊』した!これより貴様がどう足掻こうが、それは『足掻き』の範囲から出る事はないだろうッ!!」 「出鱈目なっ…!」 「フッハハハハ!!次で終わりにしてやろう!!」 DIOは完全に勝ち誇るッ! 「うおおおッ!させるかァアア!!」 だが、そこに現れたのは…白鳥ィ!! 「子乃ッ!お前を絶対に救ってやるからなッー!」 白鳥が横から子乃を運びさるゥ!お姫様抱っこで!! 「くっ…よせ、白鳥!離せぇ!力が入らないからと言って勝手な事をっ!!」 「うっさい黙れ!俺だって命を張る時ぐらいあんだよ!!」 そうだ…このままでは非常にマズい!バットエンドだッ! 「ククク…どこへ行く積もりだ?」 だが、無慈悲にもDIOは目の前に何の前触れも現れたッ! 「残念ながらこの私から逃げる事は不可能だぞ…白鳥、貴様もその女の道連れになるがいい!!これが最期だッ!ザ・ワールドッ!!」 時は…止まるッ!! ~魔法の森~ 「そんな事より女装少年の話しようぜぇえええええええええええええ!」 ガッツポーズをとりながら森の中を歩く王堂勝とその他モヒカン達。 「うおおおおおおおおおおお!!!!流石王堂さん!!」 「展開に困った時の変態キャラだぜ!!!!!!!」 「王堂さんかっけぇえええええ!!!!!!!!!」 「うはっ!しかし王堂さん!!どうやって幻想郷に来たんですかッ!?」 「えっ?!そんなん……まだ明かしてない俺の未知の能力に決まってんじゃん!!」 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」 「流石王堂さんだぜぇええええええええええええええええええ!!!!!」 「正直子乃サイドの味方が少なすぎてもうどうしようもねぇ詰んでやがる!!って思ったから適当に出しといたオリキャラ使おうぜって魂胆か!!!」 「マジレスすると味方とか東方勢からいくらでも引っ張り出せるんだけど正直キャラ味方たくさん出さんとあのDIOに勝てねぇしな。」 「つーかDIOだけじゃなくて冒頭のビルでコピペがなんか話すシーンで出てきた奴ら以外にもキャラ出しまくりだしね。もうアホかと」 「ここは穏便にぼくのかんがえたさいきょうきゃらで適当に成敗してさっさと作者が書きたい話を書く為にこの話を終わらせようって事よ!!!」 「流石王堂さんだぜぇええええええええええええええええ!!!!!!!」 「細かい事は気にもとめない王堂さんだぜぇええええええええええええええええ!!!!!!!」 「よっしゃああああああああああああああああああ!!!!!!!」 王堂勝!彼の能力は『あらゆるものを解かす程度の能力』。つまり「解析」や「解除」といった何かそれっぽい事が出来るぞ!! 「よぉし!!!今の俺には作者による補正がついているッ!!DIOだろうが若林だろうがエドワードだろうが勝つ事は不可能だぜ!!!」 「そうか…では、試してみるか?」 この時、王堂勝はまさか作者のオナニー能力を披露をしただけでその人生の幕を引くとは思いもしなかったのである。 ~博麗神社~ 花見の宴会を終え、嘘のような静寂を迎えていた博麗神社に一つの足音が響く。 「…こんな時間に…誰よ?」 足音は神社の前で止まり、神社に住む巫女は目を擦りながら反応する。 「やぁ久々だな博麗の巫女。俺だ、ギルバートだ。」 「あ…?妖怪は入れないようにしておいたはずだけど…」 「俺は妖怪じゃねぇよ…ったく、相変わらず腹立たしい巫女だ。そんな事より…」 「今は眠いから後にしてくれる?っていうかマジで眠いわ…ヤバいぐらい眠…」 「起きろ巫女。異変だ。」 ギルバートは霊夢の言葉を無視し、言葉を紡ぐ。 その言葉を聞いた霊夢は最初はハァ?という顔をしていたが、段々その顔を引き締まっていく。 「根拠…というか証拠はあるのかしら。」 するとギルバートは博麗神社の妖怪退けの結界に触れると、結界が割れる。 それと同時に物凄い勢いで流れつく妖気。 「…どうやら嘘じゃないみたいね。」 「久々に博麗の巫女の力を見せて貰おうか。今回は弾幕ごっこだとか言っている場合じゃあないみたいだぜ。完全にルールを無視した不届き者共だ。」 「紫は何をしているの?」 「紫…見ていないが。全く、久しぶりに帰郷したらいきなりこれだ。」 「あんたが呼び寄せたんじゃないの?まぁいいわ。とりあえず行ってくる。」 巫女は神社の中に走っていき、再び出て来るとお札やら針やらを沢山持って空を飛んだ。 「生きて帰れよ腋巫女。」 「誰に口聞いてんのよ妖怪野郎。」 「……酷い言い草だな。」 霊夢が見えなくなると、ギルバートは一息つく。 「さて、俺も行動するか…まぁ、直接戦うなんて面倒臭い事はしないがね。」 そう言って彼は妖怪の山へ向かったのだった。 その頃コピペはァ!!! 「邪魔くせぇんだよ糞妖怪共がァァァァァァァァ!!!道を開けろやァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」 西行妖へ向かい作戦の邪魔者(DIO)を排除する為特攻していたッ!! 「やぁコピペ、元気そうで何よりだ。」 その横にたった今現れたのは… 「こんな所で何をしている唯我ァァァァァ!!あのバルバトスでさえも仕事をこなしているというのに貴様ときたら何の役にも立っていないぞォォ!!」 「俺はいざという時の為の保険さ。ごく序盤にやられたフリをしておいた。」 「単に仕事をサボりたいだけだろうがァァァァァァァァ!!殺すぞ糞野郎ォォォォォ!!」 「はははは!勘弁願いたいね。」 こんなフレンドリーな会話を進めている最中もコピペは目の前に現れる妖怪達(殆どが事故)を抹殺しながら突き進んでいる!! 唯我は妖怪達や木々をよけながらコピペに驚異的なスピードで追いついている! 「何でテメェはついてくんだよォ!!目的地についたら傍観でもキメる気がコラァァァァァァァ!!」 「へぇ、よくわかったね。」 「殺すぞボケェェェェェェェェェェ!!!!」 そう言っている間に超巨大な妖気が見える。 「アレが…DIOッ!!よし殺すッ!!待ってろよォオオオオオオオ!!!裏切り者のDIOォォォォ!!!!」 木々がなくなり、枯れた西行妖が見えるともう邪魔する障害物はないとばかりに全力疾走するッ!! 障害物はないと思った彼に当然前方に「おーいコピペー!俺だー!これは一体どういう事なんだー!?聞いてないぞー!」 などとのたまう若蓮摩を轢き殺してもコピペは全く表情を変えなかった。というか気づいていなかった。 「ん?靴に血がついてやがる…鼠でも踏んだか?」 そしてこの反応である。 「ザ・ワールド!!時よ止まれッ!!」 その言葉と共に子乃、それだけでなく全世界が『停止』する。 破壊神エリスの影響により停止時間が大幅に伸びたDIOは最早、背後でその姿を表した太陽を見ても…その身が滅びる事はなかった。 「フフフフフフフ!!ハァァアアアアアアアアッハッハッハァアア!!あの忌まわしき太陽が!!このDIOを前に為す術なくただ輝いているッ! 最強のスタンドッ!!最強の能力ッ!!最強の力ッ!!最早このDIOに勝る存在などこの世に存在しないのだ!!」 「お前がそう思っているんならそうなんだろう…お前ん中ではな!!」 「何ィィ!!」 突如DIOの背後に現れた男に、DIOは胸を貫かれるッ!! 「ぐおおおおッッ!!何故動けるッ…貴様ァァァ!!」 「クックック…時は動きだすッ!!!」 子乃は、『もう駄目だ…』とらしくもなく、死を覚悟していた。だが仕様もない。完全な力の差を見せられてしまったのだから…そう思わざるを得なかった。 ましてや、白鳥に少しでも延命させられるなど、我ながら愚の骨頂!最も屈辱!もう死ぬしかないと軽く…いや、ロードローラーよりも重く鬱状態だった… だが、そこに目を再び開けた時映ったのは… 「コ、コピペ!?」 「クック…無様だな若林ィ…だが当初の目的は最早達成されない…その命、助かったのだ。 そしてDIOォ…貴様が俺の下に着くことなど最初からないと思っていたよ。」 「馬鹿な…我が世界を上回る存在など…!!」 「この幻想郷こそが俺の進化する場所に相応しい。遥か太古より圧倒的な才能を持っていた我が血統がついに昇りつめたッ!! 尋常ではない数の『最強』の先人達がこの俺に才能をくれたのだ…だがその先人共も所詮、塵に過ぎない!! 過去の最強など糞のような有象無象と何も変わらないッ!だが俺は違うッ!圧倒的才能ッ!圧倒的知力ッ!圧倒的戦力ッ!! そう、まさに究極ッ!!私は今ここで幻想郷の『妖力』を綺麗サッパリ吸い尽くし…『神』となるッ!」 「ぐ…お、おのれッ!!ザ・ワールド!!」 「無駄だって言ってんだよ、糞虫がァァッ!!」 コピペは殴りかかるッ!!その拳はDIOの胸に突き刺さったッ!! 「ヒャッハァァァアアア!!!吹き飛べェェェェェ!!!」 コピペは突き刺した腕を通る『気』を爆発させ、DIOの上半身を完全に破壊したッ!! 「クククク…フハハハハハハハァァァア!!感じるぞォ…幻想郷の全妖気が俺に集ってくるッ!! 俺は全てを覆し覆されない究極となるッ!!!!」 ドドドドドドドド!!! うちゅうの ほうそくが みだれる! 「ウワァアアア!!子乃ちゃんヤバいよこれぇ!!逃げようよ!!」 「くっ…今日は厄日…ッ!この私が生まれて最大の屈辱の日だ…覚えていろよコピペェェエエエエ!!!」 子乃が白鳥の首を吊る形で退散すると… ドカーン幻想郷の結界は崩壊した! んなわけねぇだろええ!? 次の瞬間、コピペの周囲に結界が張られるッ!!これでコピペはもう妖気をすいとれないィィ!! 「待たせたわね、異変の原因!」 そう、霊夢の参上である!! 「邪魔をするなビッチがァァァァァァ!!我が栄光を妨げるというのなら貴様も血祭りにィィ!!?」 次の瞬間!!さらにコピペが吹き飛ぶッ!! 「ハッハァ!!闘争のメインディッシュは雇い主とは笑わせる!!さぁ、付き合って貰おうかァ!!」 バルバトスの参上である!! 「キサマァァァ!!やはり雇うべきではなかったばはぁあ!?」 さらにコピペが吹き飛ぶ!! そこにいたのは金髪で長髪の女性と、大きな翼を持った女性… 「ギルの知らせの通りなら、物凄い強いんですって?付き合って貰おうかしら…」 「ふふ、久々に人間が食べれそうね。」 EXルーミアとEXミスティアの参上である!! 「おのれぇ…ビッチ共が!!一人残さず犯し殺しィィ!?」 さらにコピペがきりもみ回転するゥ!! 「こんなに幻想郷を追い込んで…絶対に許早苗!!」 「あんたなんか食べやるわ!!覚悟しなさい!!」 「お腹壊すからやめときなさい諏訪子…」 早苗、諏訪子、神奈子を筆頭に妖怪の山から沢山の妖怪達が下山してきたようですゥ!! 「便乗して私も行くぜ!」 「フハハハハハハ!!バルバトスに一度は敗れたが宇宙医学の手により肉片となった身体を元に戻したぜ!!」 「ギギギギギッギギィイイイ!!殺ス殺スコロスコロスコロス!!!!」 魔理沙、クレイ、ステファニー!そして湖の妖精達などがぞろぞろと参上!! 「幻想郷に喧嘩を売った対価、払ってもらうぞ?」ニヤッ さらにはこれらを呼び寄せた張本人であるギルバート先生が参上仕ったァァァァアアア!!どや顔で!! 「ハハハハハハハ!!!!面白いィ!!!!貴様ら全員俺が相手だァアアアアアアアアアアア!!!!!!!」 コピペのその言葉を合図に舞う粉塵!木霊する轟音!ちぎれ飛ぶ血肉!! ただ事ではなかった!!! 作者のスランプもただ事ではなかったので中略。 ~一週間後~ ―――ねぇねぇ、コピペ君が全治半年の大怪我負ったんだってー ―――DIOの奴なんか全治一年だぜwwwwwwwwwwwメシウマ状態wwwwwwwww ―――うわーそれってマジで半端じゃなくね?やばくね?超やばくねぇ? ―――うっはwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwマジでざまぁ↑みたいな感じー→wwwwwwwwwwwww とかいう噂話が聞こえる。どうやらコピペの野郎はあんな量の幻想郷民にリンチにされても生還したらしい。つくづく異常だと思う。 「はぁ…幻想郷は今も健在らしいが…コピペの最後の足掻きで襲いかかったほぼ80%の妖怪が死傷を受けたらしいぞ。本当に人間じゃないなw」 白鳥は今日も相変わらずウザいぐらい軽いノリで元気だったが子乃はそうではなかった。 へいジョニー、何故そんな事が言えるのかって?それはな、そう言った白鳥の机が真っ二つになって吹き飛んだからさ。 「素朴な疑問なんだが…お前の頭がこの机のようにパックリと綺麗に開いたらお前は死ぬのか?」 「死ぬに決まってるでしょォォがァァァァア!!!何いきなり!?俺が何か悪い事し(ヒュンッ 白鳥の隣にあった黒板が粉々になったので白鳥は放課後になるまで土下座する事にした。 ギルバート先生はその件に関しては敢えてノータッチだった。 ~ホトの豪邸~ 「…どうやら子乃はあれからというもの自身の力が100%で出せないらしいんだけど…どうしてかわかる?ホトちゃん。」 「ふむ、それは恐らく幻想郷の瘴気を吸い込んだ事による一時的な覚醒だったんだろう。この世界の瘴気を吸い込んでいれば自然と元に戻るものだ。」 「マジか…そりゃあお気の毒だ。」 「まぁ覚醒しても破壊神エリス(笑)を搭載したDIO相手にあそこまでやったんだから褒め称えるべきじゃないか?」 「…えっと、何でホトさんが子乃とDIOと戦った事を知っているんだ?……」 「それはな、白鳥君。私が黒幕だからさ。」 「黒幕…またまたご冗談をーw」 いや知っているけどねホトさんが冗談を言うような人じゃない事ぐらい。 「ふむ、冗談と思うなら思うで良いんだが。」 「……マジで?」 「ああ、本当だ。」 「……俺、こういう時どんな行動をしたら良いかわからないんだ……」 いやだってさ、相手が中年男性とか、せめて同級生ぐらいの大きさの女の子ならよくもこんな事を!!とか言って殴るけど 見た目小学生3、4年生の女児だしね…それになんか、誰かの視線を感じるし… 「とりあえず、やっていい事と悪い事があるだろう!とか言って、殴れば良いんじゃないか?」 「…すいません、勘弁してください。」 何で黒幕相手に謝っているんだろう… 「しかし、何でこんな事を…」 「ふふふ、私の話が聞きたいのかい?」 何故か待ってましたみたいな口調でホトさんは話し始める。 「私はわからない物事をとにかく研究し尽くしたいという性癖があってな。研究する事で私は脳内麻薬が大量分泌され最高にイイ気分になる。」 「…うわぁ。」 「前にも言ったが私は超越者。若林を殺す事は出来ないが、殺される事も無いだろう。とにかく悠久の時を過ごす者なんだ。 …少し、昔話をしよう。私は元々は人造人間でな。今の地球より数億年ほど進んだ人類達の手によって違法的に生み出されたんだ。 その数億年ほど進んだ科学から見ても全くもって解明不可能な身体の構造をしていた私は多くの研究者が匙を投げた。 私は元々、何者かの手によって作られたオリジナルが既に死亡したクローンでな。そのオリジナルの名前は知らないが、とにかく異常だったらしい。 そしていつのまにか私の隣にいた研究者は、私に命令した。『多くの人間を殺してこい』、と。命令通り私は何の躊躇もなく、人間を殺しまくった。 未来の人類は銃で頭を撃ったり心臓を撃ったり、バラバラになったりしても死なない構造になっていたんだが… 私の力を使ったら人類は物凄い勢いで死んでいった。私の身体は誰にも理解されないし、誰にも到達不可能の力を持っていたんだ。 絶対の力。神のような力で私は研究者の為に沢山の人を殺したが、研究者…だけでなく世界に飽きてしまった私はとっとと星を破壊し、 宇宙へ旅に出た。私でさえもわからない…前人未到の地は宇宙でしかなかった。そしてようやく、私は辺境の地にて人類兼友人を発見したんだ。」 「はぁ…常人には信じ難い話っスね…正直信じるという選択しか無い気がしますけど…」 「ほう、何でそう思うんだ?」 「いやだってあんた、どう考えても小学四年生じゃないし。」 「ふふふ、私だって一応女なんだぞ?」 そう言ってホトは若干色気のあるポーズをとる。 「なななんあななんあうぁぶえらういx何をしているんですかホトさん…!」 「だが残念な事に私は一度も人を愛した事がないんだ。俗に言う売れ残りという奴かね?私は満足だから良いが。」 傍から見たらマセガキにからかわれている糞餓鬼である俺… 「…そういえば今、何歳なんだ?ホトさん」 「む?…まぁ、一応3000年ほど生きていたが…正確には2974歳だな。」 「マジぱねぇな。」 とりあえずホトさんは尊敬するべき大人だと言う事がわかった。いや本当はわかってたけど認めたくないだけだったんだ。 「世界は広いわぁ…」 …その頃ホトの豪邸を双眼鏡で覗いていたクレイは 「おい、ステファニー!!このホトの色気写真を宇宙科学で解析して全角度…全アングルから10000枚程均等に製造しろォ!永久保存必至だ!!!」 「イエスボス!!」 「それと白鳥裕也の命は今日限りだ!!あんな至近距離で生でホトちゃんの……うおおおお!!許さんッ!!その脳味噌引きずりだして見てやるゥゥ!!」 「私にお任せ下さいお嬢様ァァ!!必ずあの男の脳味噌をお持ち帰りします!!!」 「クールだステファニィ!!!やってこい!!!」 「イエェェェスボスッ!!」 薄命に定評のある白鳥だった。 ☆超展開に定評のある作者のあとがき☆ とりあえずわたくしが書きたい文がノリで書いた謎の長編のせいで書けないのでチャッチャと終了させました。 客観的に見なくても打ち切りみたいで面白い終わり方ですねプゲラ。 我ながら酷い出来だが所詮オナニー!!それ以上でもそれ以下でもないんだよばぁーーか!!!! じゃがこの小説はこれで終わりじゃないのぞよ。もうちょっとだけ続くんじゃ。 っつってもオナニーの枠を出ないけどなwwwwwwwwwwwwwwwwっうぇwwwwww ちなみにバルバトスはあの後から幻想郷に住むようになりました。
https://w.atwiki.jp/toride/pages/61.html