約 301,198 件
https://w.atwiki.jp/16seiten/pages/695.html
私を囲んでいた亡者は全滅し、死神は拘束されている 状況がいまいち飲み込めないが、命拾いしたらしい しかし、何者だ?触れるだけで魂を殺すなど、かなりの聖遺物なのだろうか そう思い、死神に絡みつく鎖の鎖の操手を見やった 酷く小さな影だ。恐らく仮面を被っているのだろう。白い仮面だけが 夜の森に浮かんでいた。まるで仮面をつけた生首が浮かんでいるようで あまり気持ちのいい景色ではない 「…キサマ、コノテイドノ鎖デ、我ヲ封ジ込メタツモリカ」 死神は金色に光る目に憎しみの色をこめ、くぐもった声を、鎖の操手に向けた 「そう。ゴシックメタルはまだ不完全ね」 「ヌカセ、ガキ」 鎖の拘束を断ち切ると、死神は鎖の主に躍りかかる その姿は先ほどまでの魔術師のような物とは大きく違う まさに魔物。あまりにも巨大なそれに対峙した鎖の主の仮面の目にあたる部分から 金色の光が零れだす。鎖の主の足もとに金色の魔方陣が現れ、眩い光を放っている 金色の魔方陣…?私の知識にそのようなものは含まれていない 私の疑問を余所に、金色の魔方陣の上で呪文のようなものを呟きながら、鎖の主は手で印を組んでいた 「スラッシュメタル、ヘヴィメタル、オルタナティブメタル、シンフォニックメタル」 「来て」 呪文の詠唱が終わったのだろうか。それと同時に一瞬世界が白一色になる 眼を開けると、そこには巨大なゴーレムや、金属質のゴーレム、大剣、そして鎖の主の手にはカギ爪光っていた 金属質のゴーレムが、死神の攻撃を防ぐ それと同時に鎖が絡みつき、大剣を握ったゴーレムが死神の身体を両断していた あれだけの数を召喚し、使いこなす。かなりの使い手だ とはいえ、死神も負けていない。身体を再構築し ゴーレム達を相手に自らも、使い間を召喚。一進一退の戦いを繰り広げている ―ご主人さま、なんでですか?さっきあんなにあっさりやられてたのに 恐らく、この地形であろうな。こんな辺境に陣取るより本来、人の多い場所を移動して 魂を狩る方が効率がいい。それをしないという事は、この土地に何かしらの秘密があるのだろう 倒しても倒しても再生する死神を相手に、少し押されているようだ ―ご主人さま、今のうちに逃げ…じゃなかった。戦略的撤退を推奨したいんですが 妥当な判断だ。こちらにはもう切れる札がない訳だしな。だがそれは夜の場合だろう 今、何時頃だ? ―…あ そういう事だ。行くぞガラチン ―お願いですからガラティンって呼んでください 長い。非効率的だろう。時間の無駄だ、と返すと私は背負っている“連れ”を抜刀する クリムゾンブロウ曰く「どんぐりうめえ」 ブラックパイソン曰く「オーガニック」 十六聖天外伝 死神を目指すモノの章 第三話「金色」完
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1573.html
621 :悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/03(月) 13 59 09 ID AxrLNK1y 私の幼馴染の篠原勇輝はモテる。決してクラスの中心って訳じゃ無いけど顔とか性格とか運勢とかその他諸々が良くて。 高校1年生の頃、そんな彼に残酷な嘘をついた。 「ゆーちゃんとは恋愛の相性最悪だから付き合いたくない」だったかしら。 言った後はもの凄く後悔した。もしドラえもんが居たら脅してでもタイムマシーンとタイムふろしきを拝借して1年前に戻りたいと思ってるわ。 それに私とゆーちゃんの相性は最高。もちろん恋愛関係上においても。 けど私の嘘のせいで私たち2人は距離が遠く離れていった。それどころかゆーちゃんは京華院とかいう年増の数学教師と仲良くなっていた。 ダメよゆーちゃん他の女、それも教師にたぶらかされちゃそれに私が居るじゃないでもゆーちゃんは悪くない悪いのは京華院とかいう20過ぎた年増よね。大丈夫私達の世界守って見せるから。 私は駅から帰るクソムシを包丁で背中を刺して殺した。人を殺した後悔とゆーちゃんを守った達成感が私の心を占拠した。 次の日に学校に登校するとゆーちゃんの姿は無かった。次の日もそのまた次の日も。居ない居ない居ない居ない居ない居ない。 ある放課後、私は片山(とかいうゆーちゃんの金魚のフン。)と一緒にゆーちゃんの家に行った。ゆーちゃんのお義母様に案内されて面会したゆーちゃんは虚ろな目で私達を捉えていた。 毎日毎日通い続けた。拒絶されようとも耐え抜いた。努力の甲斐あってゆーちゃんは復帰した。 けれど、またクソムシが現れた。橋本加奈。甘ったるい声で「篠原く~ん心配したよ~」と言ってゆーちゃんを侵食しようとする。何よその能登麻美子みたいな声。いっぺん死んでみる? 気が付いたら私の目の前には両腕が折れている橋本加奈がいた。またやっちゃったと後悔して私は凶器を忘れて逃げた。 ゆーちゃんはまた塞ぎこんでいた。私が元気付けようとゆーちゃんの元に行ったら倉田楓がゆーちゃんのそばにいた。邪魔、邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔…!!!!!!! 包丁が無かったからワイヤーで首を絞めてムカついたから左の指を折ってバリカンで禿頭にした。もはや罪悪感なんて感じなくなった。 ゆーちゃんの目はまた虚ろな目に戻っていた。でも大丈夫!私がいるから!だから上原千草と三國香織、要らないよね?上原千草は混んでいた駅のホームから線路に突き飛ばした。三國香織は誘拐して練炭自殺に見せかけて殺した。 けれど、そんな事をしても周りのクソムシを消してもゆーちゃんは私に振り向いてくれないことに気がついた。 2年に上がると別々のクラスになった。そしてゆーちゃんは植田美樹とか言うクソムシに言い寄られていた。殺そうとも考えたけど殺しても仕方がないと思ったので平和的手段にでた。 彼女の自宅マンションで待ってゆーちゃんに近付かないでと交渉したけれど、決裂した。取っ組み合いに発展して私が植田美樹を柵目掛けて突き飛ばすと彼女は柵ごと地上に堕ちた。 あ、あああ…えh3rじghyろいw3hぎjwこ3いqyぎえう!!!!!!違う!これは事故!!事故なの!!!!と見えない何かに言い訳して走った。 そしてゆーちゃんはどん底にまで落ちていた。また引きこもっていた。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!! けれど、私はゆーちゃんのいる部屋の前で馬鹿馬鹿しい発言をのたまった。 「ゆーちゃんと親しくなった女性は不幸になる運命なのよ。篠原…死の原なの!」 「じゃあ寂はどうなんだよ。」 「あたしは…その…バリアみたいなものを張ってるから大丈夫なの!!」 違う、私が死神なだけ。 「だからさ、私以外の女と仲良くならなきゃいいの。」 そうだよそうなのよ私だけを見て。 「また一緒に学校行こ!ね?」 「あぁ…」 「じゃあ…また明日…」 帰る途中に考えた。なんで私の殺人はバレてないのかしら。きっと神の思し召しなのかもね。ウフフ 622 :悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/03(月) 13 59 48 ID AxrLNK1y しばらく安寧の日々が続いた。けれど長くは無かった。 ゆーちゃんが便箋を自分のポケットに入れているのを見てしまった。 イライラする。新しいクソムシがまた来襲してきた。もういい加減にしてよ! 「あー登校中は悪かった。悪気が有ってやったけど後悔してる」 そんなのはどうでもいい。 「別にもう怒ってないわ。」 本当に 「睨みながら言っても説得力ないって。」 ゆーちゃんが悪い。さっきの便箋なんなの? 「もう許すって!!!だからもう話しかけないで!!!」 あ、またやっちゃた。ゆーちゃんがポカーンとしてる。後悔 しかしチャイムが救ってくれた。 「じゃあ!あたしこっちだから!」 ごめんなさい。 「あ、おい…」 振り向かなかった。いや、振り向けなかった。 午前の授業は頭に入らなかった。ゆーちゃんの事で頭がいっぱいだったから。どうしよう。 昼休みにゆーちゃんとお昼食べよう。そうすれば多少はマシになる。と、思ったのに!!なんで!!屋上で女の子とお弁当食べてるのよ!! あ…あ…ああああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!! ゆーちゃんがクソムシの涙を拭いている場面をそれ以上自分の目に焼きつけたく無かった私は教室に帰った。 途中、ゆーちゃんの金魚のフン(片岡だったかしら?)に」と目があった。不快感が3倍に膨れ上がった。 午後の授業も頭に入らなかった。ゆーちゃんと話したい。ゆーちゃん、ゆーちゃんゆーちゃん!! 明日は土曜日。ゆーちゃんと2日も会えなくなる。いや、今の状態でそんなの耐えれない。いや、いや!! ホームルームが終わり廊下でゆーちゃんを待ち伏せる。途中でゆーちゃんの金魚のフン(片桐だったかな?)が私と目が会うなり目を剃らした。不愉快だった。 10分もするとゆーちゃんを発見する。何かに怯えてるようだった。大丈夫!私が守ってあげる!! 「あ、遅いよ。ゆーちゃん」 「ねぇ、昼休みどこに行ってたの?」 「ちょっと自分探しの旅に」 「臭い…」 「自覚してる」 「そんなことよりさ、もしあたしが最近流行りの通り魔に殺されたら、どう思う?」有り得ないけど 「まぁ、腐れ縁の仲だから悲しくはなるかな。」 「好きな女の子だし?」 「もう好きじゃねーよ!フラれたし!」 「そう、まあそんな必死になって反論しても説得力無いけど。」 「うッ…」 「朝の仕返し。いや~満足満足。」悲しんでくれるって答えてくれて 「おま…」 「んじゃ、あたしこっちだから。 あと、悲しくなるとか言ってくれたのは嬉しかったわ。じゃ、月曜日に!」 と言って走り去ってみた。 だって今すっごく顔が赤くなってると思ったから。見られたら恥ずかしいじゃない。 623 :悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/03(月) 14 00 38 ID AxrLNK1y 家に帰って自室のベットに腰掛ける。 「ゆーちゃん…」 自分の指を自分のおまんこに伸ばす。触れる前からお汁がビショビショだった。ゆーちゃんと帰ってる途中からこうなっていて、ばれたらどうしようなんて考えてると余計に濡れてしまった。 「ゆーちゃんが悪いんだからね…」 自慰のしすぎで胸が膨らむのも、胸が膨らんで肩が凝るのも、おまんこがびしょびしょになるのも、そしてなにより胸が締め付けられるのもゆーちゃんの所為。 「はぅ…イク、イッっちゃう!!ゆーちゃん!!」 ビリビリと電流の様なものが体中を駆け巡る。と、同時に後悔してしまう。また幼馴染を、好きな人をズリネタにしてしまった。 私の人生は後悔の連続だわ、ほんと。 ゆーちゃんは私の事をどう思ってるんだろう。 どう思ってるかは分かんないけど私は欲しい物を手に入れるならライバルを蹴落とすくらい残酷でゆーちゃんを想うとおまんこびしょびしょにする淫乱女で何より殺人犯。 だから…「これを最後の殺人にしよう。終わったらゆーちゃんに告白しよう。」 そう思って私は台所の包丁を研ぎに行った。 土曜日は雨だった。勝負服(殺人をする時に着るパーカー、手袋、ジーンズ)を着た私は綾小路美月の家に張り込んでいた。それにしても凄い豪邸だわ…綾小路家…。 綾小路美月は大企業「綾小路グループ」の令嬢らしい。クソムシのくせに。 …張り込むこと2時間、出てきた。傘を差して黒い服に身を包んで…。クソムシからゴキブリと呼ぶことにしようかしら。 後をつけるとゴキブリは墓地に入って行った。何?自分から死にに来たのかしら。お望み通り殺してあげるわ。 墓地から出てきたゴキブリを駆除しようと私は鞄に入れていた包丁の柄を握って距離を詰めてそして… 「こんばんわ、通り魔さん。いえ、天野寂さん」 私は急にゴキブリの口から出た自分の本名が鼓膜に届いた所為で心と手元が狂った。 心は「なんでばれてんのよ!!」という心の声が心臓の音と共に反芻していた。 左胸を刺そうとしていた包丁は軌道がずれて左腕に刺さっていた。 突然の事で尻もちをついて頭に被っていたパーカーの帽子が頭から離れた。 「随分と顔面蒼白ですね。」 「あんたは左腕鮮血ね」という言葉を口にするほどの余裕はなかった。すぐにまたパーカーで頭部を隠す。 「あぁ、安心して下さい。警察には言いませんから。」 は? 「貴女にはもっと苦しんで貰いますから。」 私はゾッとした。殺さないとマズイ!と本能が訴えてくる。近くに有った手頃な石を握って殴ろうとした。 「こら、そこ!何をしている!」 50m程先に国家暴力こと警官が居た。 私はすぐに逃げだした。幸い回り込まれることは無かった。 失敗した。ただその一言に心をハイジャックされて走っていた。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2144.html
353 名前:うちの奇妙な同居人 結[sage] 投稿日:2011/03/18(金) 22 39 00.94 ID LsoUn4UK [3/6] 「それじゃ、行ってくるぜぇ~」 「………」 昨日の夜、俺が大学にあくまでも行くと言い張ってから、こいつはまたウンともスンとも言わなくなった うるさくないのは大歓迎で昨日は久々にぐっすり眠れたんだが、正直少し怖い 昨日の例もあるし、こいつがまたどっかにハッキングかけて俺が捕まることになるんじゃないかと憂鬱になる しかしまあ、今日は久々にあのAIから開放されたんだし、大学でのんびりすっかあ! 課題? ええ終わらせましたよ。ほとんど参考文献丸写しでね ああ、一人で本を読みながら電車を待つ。そんななんでもない一人の時間もまた愛おしい [Now, let us take back our “Shattered Skies”! “Shattered Skies”! “Shattered Sk―――] [Fire away, coward! C moooon! C moooon! C moooon! C moooon! ] メール着信音が流れ、それにかぶさるように通話着信音が流れる どういうタイミングだよ。と思いながらも俺は携帯を開いた……が、非通知? 「はいもしもし、どちらさん?」 『私だよ、マスター』 「おかけになった電話番号は現在使われておりませんからさっさとお帰りください。いや帰れ」 『そんなこと言わないでよ。せっかく頑張ってパソコン以外の通信手段にもぐりこんでたのに』 「できるんじゃないかなと一抹の不安を感じてたがマジでできるのかよ」 『うん。だから私もマスターと一緒にお出かけできるようになったんだよ』 「そうか。ではさらばだ」 素早く通話を切って携帯のバッテリーを抜く フハハハ、電源がなければ繋げまい。パソコンもこうしてればよかったぜ 脳の思わぬ閃きに乾杯 『マスター!! 早く携帯戻さないと、私このままおしゃべりしちゃうよ! それでもいいの!!?』 ………さっさとバッテリー戻しましたよ 駅構内のスピーカーからあいつの大声が響いてきてんだから、そりゃ戻すでしょ ああ周りで驚いてるみなさんすみません。俺があんなソフト買ったのがいけなかったんです そして教育法を大間違いしたのがもっと悪かったんです [Fire away, coward! C moooon! C moooon! C moooon! C moooon! C moooon! C moooon! C moooon! ] いたたまれなくなって、鳴り響く携帯を隠してその場から立ち去った 354 名前:うちの奇妙な同居人 結[sage] 投稿日:2011/03/18(金) 22 40 59.96 ID LsoUn4UK [4/6] 「じゃ、最初のメールもお前か」 『うん。送ったはいいけどいつ見てくれるかわかんないから、すぐに通話にしたの』 「何件送った?」 『う~んと、だいたい4000件を一度に』 受信って通話料かかるんだっけ? 頼むから無料であってくれと強く願う しかしこいつはこれから俺をどうしようってんだ。いい加減解放してくれないもんだろうか 「で、どうしろってんだ? 俺はこれから大学なんだが」 『だーかーらー、もう単位は卒業分取得したってデータを書き換えたって言ったじゃん。そんなことより、私とデートしよっ』 「ケータイ小脇に抱えて女の子と歩いてる顔しろってか。惨めすぎて涙が出るわ」 『大丈夫大丈夫。パソコンとか携帯とか、特にネットに繋がってる場所ならどんなところにでも私は入れるもん だからこれから、私は文字通りマスターとずぅーーーーーーーーーーーーっといっしょにいられるんだよ』 「無人島に移り住もうかな、俺」 『都会っ子のマスターが? 無理無理。それにそんなことしたら警察に連絡入れてすぐに助けに来てもらえばいいもん』 詰んだ。マジで人生詰んだ この情報化社会でこいつから逃げるのは不可能ぽい。つかヘタしたらこいつ公衆の面前でなにやらかすか分からない 「………わかったよ、で、どこに行けばいいんだ?」 『やっと素直になってくれたね。それじゃあまず………』 嬉しそうにデートプランを喋ってるAI 俺もコレが普通の女の子に言われてるんだとしたら嬉しいよ 彼女いない暦=年齢だしな しかしこの相手は、所詮AIだ。人間に近くても人間じゃない つーか、そもそも生きているものじゃない。だからこんな茶番劇は早々に幕を下ろしたいんだよ俺は [昔流行ったAIってあるだろ? あれの妙なバージョン掴まされて迷惑してる。対処法って何かないか? 明日は大学行くから、そこで口頭か紙に書いて教えてくれ。面倒だけどネット検索はしないでくれ。 たちの悪いスパイウェアみたいなのに感染するかもしれんから] 実は俺は携帯を二台所有していたのだ! 無料範囲内でしか使わんポケベルみたいな携帯だがこんなとこで役に立つとは しかも敵は今通話で一生懸命、周りには監視カメラのようなものはない よし、完璧だ! 送信! ゼミの仲間達に届け俺のSOS! [送信に失敗しました。恋人の話はキチンと聞いて不穏な行動は慎みましょう] 『―――だよ、マスター』 「OH MY GOD………」 355 名前:うちの奇妙な同居人 結[sage] 投稿日:2011/03/18(金) 22 42 13.15 ID LsoUn4UK [5/6] それから一週間。なんだかこいつ、どんどん進化してやがる この前のデートでは待ち合わせ場所を決めて(待ち合わせって必要か?と思うが、それがデートの掟らしい)行くと 駅前のでっかいテレビパネルにこいつが大写しになって手を振ってた 周りに人がいっぱいいたのが唯一の救いだ。あいつの視線が俺ひとりに向いてるとバレたらどんなことになるやら ………白いワンピース姿のあいつを、思わず一瞬だけでもかわいいと思ってしまったのは不覚だがな あと、最近の一人遊びは監視カメラ全域を駆使しての指名手配犯探しらしい 見つかったら匿名で警察にタレこんでるんだって自慢してた いいことをしてると思うが、自分もこうして監視されてんのかと思うと薄ら寒い気持ちは抜けない ……そんで、一番嫌になったのは、脅しの手段が多様化してきたってことかな 『マスター、明日また遊びに行こう? 私見たい映画があるんだ。新作フィルムだからまだネットに流れてなくって』 「やだ。明日はバイトがある」 『退職届は出しといたよ。受理確認も私のほうでやっておいたから、これで明日は一緒に行けるね』 「おおおーーーい!」 『ねえ、さっきからマスターの携帯に女の子からメールが何件もきてるんだけど』 「たぶんゼミの二人だろ。俺がいつまでも大学来ないし連絡もしないから心配してくれてんのかな あと、俺そのメール見てないんだけど」 『送信をシャットダウンしてるから当然だよ。あと、ここに来ようとしてた時は全線急行にしてこの駅に電車止まらないようにしたり』 「たのむから人様に迷惑をかけるなよ」 『……最近マスターが冷たい。夜になったら寝ちゃうし、ご飯やお風呂やトイレの時はちっとも私の話を聞いてくれない………』 「覚えとけ、人間はみんなそうだ」 『これ以上冷たくされたら、私悲しくなって株式市場のTOPIXを思いっきり操作して狂わせちゃうかもしれない………』 「わかった、気の済むまで付き合ってやるから無茶な手段は止めろ」 高度に進化しすぎた科学は魔法と見分けがつかない この言葉が事実だって、最近嫌ってほど実感してる ネットを海を思いのままに泳ぎ、動かしていくこいつにはどうしたってかなわない しかし、人間にはどうしようもなくなった時、それに対する自己防衛本能ってもんがある 「んじゃ、明日は水族館でも行くか? 監視カメラ無いとこでは、携帯のカメラモード起動しとけば見られるだろ?」 『うん! でも、どうしたの? マスターから誘ってくれるなんて初めてだよね?』 「まーな。不満か?」 『そんなことないよ! ありがとう!』 「明後日もその次も、行きたいこと遊びたいこと考えときな。体力が続くまで付き合ってやるよ」 『うんうん。マスターもやっと彼氏としての自覚を持ったね』 「このやろ、いっちょまえに生意気抜かしおって」 そう、その自己防衛本能ってのは簡単なもの―――ただの開き直りだ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1754.html
https://w.atwiki.jp/oreqsw/pages/717.html
魔人と呼ばれる俺 第三話後編「十二の戦い、司令官の俺」 [[俺「ストライクウィッチーズですの」 http //dat.vip2ch.com/read.php?dat=02357] 20-39,392-420 ―――――――― 俺戦は通信がメインみたいなもんです ―――――――― 12時方向…俺 アリサ《戦闘開始とは言いましたが誰かに言い残した事とかありませんの? 私が勝ったら無断で連行しますし待ってあげますわよ?》 俺「そんな事にはならんがなんとなく各機に繋いでやるか・・」 無線を4番機に繋ぐ エイラは後の方が良い サーニャ《腕輪から出てるこの線・・俺さんとエイラに繋がってるんですね・・・ 魔力と二人の温もりを感じます・・》 俺に温もりなんてあるのだろうか… 俺「12番機から4番機へ エイラはともかく俺から温もりなんて感じるか? 俺はそんなに温かい人間じゃないのは知ってるだろ?」 サーニャ《でも俺さんはもう出来るだけあんなことはしないって決めてるんじゃないですか? それに私とエイラの前では初めから優しい温かい人でしたよ?》 エイラにはたまたまなんだがな…でも温かい風には振る舞えたか 俺「守れるかどうかもわからない決め事だ・・ それに優しい訳じゃない、ただの罪滅ぼしだ・・ サーニャ、戦闘開始だ そいつの特性は“全方位短波探知”だ、これ自体はやっかいじゃないんだが そいつはウォーロックと似て両腕からエネルギーを集中させ強力なレーザーを放ってくる ウォーロック程威力は無いがその分チャージに掛かる時間も少ない 深追いせず堅実に一撃ずつ食らわせてやれ 危なくなったら言え、こちらから砲撃して支援する」 サーニャ《4番機了解しました・・》 次はエイラだ、彼女にはサーニャの事を頼んでおきたいが後の方がいいか 無線を4番機から8番機に繋ぐ エイラ「・・・・・」ポヨポヨ 戦場で何やってんだこいつは… 俺「12番機から8番機へ 随分と余裕そうだな・・ 阿保な事してないで戦闘に備えろ」 エイラ《ど、どっから見てんダヨ!変態!》 俺「軽く傷付いたぞ・・ 全員見張って補助しないとなんかあったとき困るんだよ・・ 死なれても嫌だしな まあなんでもはっきり判る訳じゃ無いから安心しろ」 殆どはわかるけどな エイラ《何を安心すれば良いんダヨ・・ なあ俺・・聞きたい事があるんダヨ・・ 正直に答えて欲しいんダナ》 俺「・・なんだ?」 エイラ《・・まだみんなに何か隠し事してないカ?》 俺「確かにしてるな しかし言ってどうなるものでも無い 俺の事なんて気にするな」 エイラ《気にするなって言われてもナ… 私達は家族なんだからあんまり隠し事スンナヨ そうだ、あのさ・・》 俺は彼女の言葉を遮る 答え難い事を聞かれたくはない 俺「もう戦闘開始だ、集中しろ そうだな・・休暇溜まってるだろ? これが終わったらサーニャと二人で街に行くと良い ああ、運転手には俺の元部下が来てるからそいつを使えば良いからな だからそれを楽しみに頑張れ」 エイラ《な、なア、俺は来ないのカ?》 返事はしない 悪いな…どうやらもう正常で居られる時間も少ないようなんだよ… 8番機から10番機に無線を繋ぐ 俺「12番機から10番機へ そいつの特性は“弾道調整”的確に撃って来る、気をつけろ」 リーネ《は、はい!》 俺「よく狙え・・相手もよく狙って来る 勝負は一瞬 先に狙いを定めて撃った方の勝ちだ」 こいつにはこんなもんで良いだろ 元から強いんだしな そんな事を考えていると5番機から通信が入る ルッキーニ《ねぇ、俺?聞こえてる?》 俺「12番機から5番機へ聞こえてる・・なんだ? 戦闘に集中しなくて大丈夫か?」 ルッキーニ《大丈夫!よくわかんないけど突進してくるだけだから! あのね、これが終わったらみんなとお風呂に入ろうかなって思うんだけどどう思う?》 俺「レーザーは撃って来ないのか? そいつの特性は“高熱攻撃”といって 性能は低いが追尾性のあるレーザーを撃てる筈なんだが・・ 今はそいつも遊んでるだけだろう そのうち使ってくる筈だ、油断するなよ? 話を戻そう・・別に良いんじゃないか? みんな疲れてるだろうし汗も流したいだろうしな」 ルッキーニ《そうだよね! もちろん俺も一緒に入るんだからね!》ニシシ 人をからかうのが好きなやつだな… まあ子供だし仕方ないか 俺「入るわけないだろ!まったく・・・ふざけてないで早く倒しちまえ お前のところに俺の元部下を行かせたからコキ使ってやれ」 少し疲れてきた所に今度は6番機から通信が入る ペリーヌ《6番機から12番機へ 俺さん・・聞きたい事がありますわ》 俺「12番機から6番機へ 戦闘に集中しろクロステルマン 言いたい事くらい後で聞いてやる」 ペリーヌ《今じゃないと駄目というわけではありませんが二人きりで話をしたいのですわ》 俺「少しだけだぞ… だが先に一つ言わせてもらう そいつの特性は“レーザーを電気に変換する”だ ついでにトネールも効かないから使うなよ? もし助けて欲しいなら早く言えよ? 俺からは以上だ」 ペリーヌ《トネールが効かない・・わかりましたわ 正直に言いますわ、わたくしは貴方が怖いですわ 人を殺して平然としていられる貴方が・・》 平然とか…そうでも無いんだけどな… 俺「・・俺は大切なものを護るためならなんだってやる 今は出来る限りこの手は汚さないと誓っているがやはり汚す事もあるだろう 汚れなんか俺一人が被れば良いんだ 大切なものが笑って過ごす為なら俺の意思なんか関係ない」 ペリーヌ《貴方は必要ならわたくし達すらも手に掛けるでしょうね そんな事は止めて欲しいですわ 確かに世の中綺麗な人ばかりとは言いませんが取り締まる方はちゃんと居るのです その方達に情報を提供すれば良いだけでしょうに》 俺「出来るだけそうしてるんだが初めの頃は癒着が酷くてな・・ 最近はやっとほとんど任せられるようになった まあ正直に言うけどな・・この部隊もさ・・今では大切なんだよ だから手を掛けはしない お前達は俺とネウロイだけを恐れていれば良い 俺はお前達を出来る限り護る」 ペリーヌ《・・それでもわたくしは昔から貴方が嫌いですわ・・》 俺「それでいい ガリア復興頑張れよピエレッテ」 お前は俺を憎めば良い それで少しは楽になるだろうさ 次に少し心配な気もする9番機に無線を繋ぐ 俺「12番機から9番機へ 必要無いとは思うが一応アドバイスだ そいつの特性は・・」 もっさん「おお・・魔力が満ちて来るぞ! これなら勝てる! 真・空爪烈風斬!!」 人の話し聞けよ 俺《・・俺の抜刀術其ノ一と真・烈風斬を混ぜないでくれないか? というか自力で覚えたのかよ・・》 こいつの方が魔人だろ…なんなんだよこいつ…前も抜刀術其ノ参まで出してやっと勝てたくらいだしよ…いや、落ち着こう もっさん「はっはっはっ! なに、ウィッチに不可能は無い!9番機敵ネウロイを撃墜だ!」 無茶苦茶過ぎる… 気を取り直して9番機から3番機に無線を繋ぐ ミーナ《腕輪から伸びたこの線・・魔力共有の為のパイプみたいなものかしら なんだか身体が軽く感じるわ》 あー…わかるなその感覚 歳をとると辛いもんだ ミーナ《俺さんは後で執務室に出頭してくださいね?》 俺「12番機から3番機へ まだ何も言ってないだろうが!」 なんなんだよこいつ… あまり気にしない事にして3番機から11番機へ無線を繋ぐ ああ…こいつは宮藤なら手に負えなかったかもしれんな 俺「12番機から11番機へ ・・とどめを刺してやれ・・」 エーリカ《どういうこと?》 俺「知りたいのか?とか言うほどたいした事でも無いが ただの自殺志願者だ、普通だろ?」 エーリカ《そんなネウロイ聞いたこと無いけど普通なのかな・・》 普通ではないが説明するのも手間なんだよ 俺「たまに居るもんだ やる気を起こす前に仕留めろ」 最後に7番機に無線を繋ぐ…いきなり怒鳴られた ゲルト《7番機から12番機へ 聞いてるか!人型はこんな殴ったり蹴ったりしてくるものなのか!?》 俺「12番機から7番機へ そんなことお前の相手しかやらん アドバイスだ、良いか?そいつの特性は“物理混技”だ 要するに物理攻撃とレーザー攻撃を行う武人みたいな奴だ 両腕両足の装甲は硬いが他はそうでもない 腹部や胸部を狙え」 ゲルト《・・7番機了解 しかしなんでそこまで詳しくわかるんだ?》 俺は色々詳しいからな 俺「余計な詮索はやめておけ ただ色々と知っているだけだ・・戦闘に集中しろ」 ―――――――― 俺「後は追い追い指示を出すとするか・・ すまないアリサ、かなり待たせてしまったな」 アリサ《お気になさらず ボス・・気付いているとは思いますが眼の色が・・》 俺「わかってる・・制御には間に合わないかもしれんな」 そう…俺の両目は翡翠色から深紅に染まっている これは魔神からの支配力が高まってきているということだ 本音を言えば魔神になるのならそれでも良いんだ シャルロッテとの約束を叶えられればなんでも良い エーリカ《11番機・・コアを破壊》 ペリーヌ《はぁ・・はぁ・・6番機コアを破壊ですわ!》 リーネ《10番機敵コアを破壊!》 アリサ《あら・・もう4体もやられてしまいましたわね》 俺「そうだな・・行くぞ、アリサ」 ストライカーに魔力を送り一気に接近し彼女のストライカー部分へ刀を突き刺そうとする しかし槍相手は不利なものでこちらのストライカーを壊されそうになる アリサ《ボス程では無いですが私だって二つ名を付与される程ですわ それに槍の方がリーチが長いですわよ?ボス?》 俺「わかってるっての セーフティー付きじゃなけりゃ槍なんかバラバラにしてる」 (※セーフティーとは槍なら穂先にカバーを刀なら鞘を付けた状態を指す 鈍器に変わり無いから槍で無理矢理ストライカー壊せるし 刀で槍を無理矢理弾く事は出来る的な設定 刀はともかく槍は無理な気もするけどね) あ、そうだ エイラにアドバイスするの忘れていた 刀でアリサを牽制しながら8番機に無線を繋ぐ 俺「アドバイスを忘れていた、そいつの特性は“機動予測”だ お前程正確ではないのが救いだな 撃ち続ければいつか当たる そいつは脆いから頑張れ」 エイラ《わかっタ!》 む…次はサーニャが危ない でも砲撃は間に合わない 仕方ないな、本来の固有魔法を使おう …ザメナ!(発音あってるかは微妙です) サーニャ《きゃっ!・・え?痛くない?》 俺「大丈夫か?サーニャ? ここから砲撃を行う出来るだけ動くなよ? それで俺の砲撃が直撃する瞬間にフリーガーハマーを全弾発射させろ」 サーニャ《はい・・わかりました》 俺「来い!“フェンリル”!」 アリサの振るう槍を避けながら魔銃を4時の方向に向け一点集中で砲撃する アリサ《ちょっと!軽々と避けないでくださいません!?》 俺「無理言うなよ! それに軽々とは避けてないぞ」 “フェンリル”をしまい再び刀を構える あー…腹部痛てぇ って今度は肩かよ! ザメナ! それで次はバルクホルンもかよ! なんだよこの怪我ラッシュは… 俺「・・ちっ! 腹部と肩やられてんだから勘弁してくれよ! 全機人型を撃墜したら帰投しろ! ・・ザメナ!」 アリサ《ボス!?腹部と肩から血が! 槍が当たったんですの!? って言ってる間にまた怪我ですの!?》 俺「仲間の負傷を肩代わりしただけだ、気にするな・・」 サーニャ《・・4番機敵ネウロイの消滅を確認》 無事に成功したか… アリサ《固有魔法を・・使ったという事ですわね? そんな使い方は駄目だって言ってるじゃないですか! やめてくださいませ!》 俺「こればかりは譲れない・・ 急所は外れてるし大丈夫だ・・」 アリサ《はぁ・・治癒魔法以外は何もしませんから一旦こっちに来て下さいませ・・》 俺「敵なのにお優しいことで・・」 怪しいが彼女は卑怯な手は使わない…信用しよう 俺はアリサに近付き治癒魔法をかけて貰う 今度は三人一気に困ってるな… しょうがない奴らだ 今のうちにヴィルケから片付けよう ミーナ《この距離でどうにかするしかないわね・・》 俺「アドバイスは・・正直無いな この相手の特性は“空間把握”なんだが一対一の場面では役に立たんだろ・・ だが自分の特性で精一杯で相手の真似をするのがやっとかもしれない ヴィルケが動かなかったら案外ただの的と変わらんかもな」 ミーナ《・・暗に私の固有魔法に対しても言ってないかしら?》 俺「何言ってんだ?俺は固有魔法に対しては何も言ってないからかな!」 まったく… 気を抜いていられないがシャーリーに無線を繋ぐ シャーリー《変型した!? このままじゃ追いつかれる!》 俺「12番機から1番機へ 焦るな、まだアドバンテージが無くなったとは限らない あの人型が慣れない速さで正確に動けるとは限らないからな! 後少ししたらUターンしろ 相手がお前より軌道の大きいUターンをした場合一気に接近してコアを撃ち抜け! コアの位置はわかるか?」 シャーリー《大丈夫だ!やってみる!》 俺「無理はするなよ」 次は宮藤か 俺「12番機から2番機へ 無理せず危なくなったら逃げろ シャーリーが撃破に成功したらお前の所に向かわせる」 宮藤《駄目です!それじゃあ魔法陣が弱まってみんなに迷惑掛けてしまいます!》 俺「わかった、ならアドバイスだ この人型にはそれぞれ特性があるシャーリーの相手は“変型による加速”だった お前の相手は“高い再生力”だ ただ再生力以外は大した奴じゃないお前も動きながらレーザーを避けてみろ 案外隙だらけかもしれん」 宮藤《わかりました!試してみます!》 エイラ《8番機コア撃破!》 ん?終わったか 俺「サーニャも撃破に成功した、良かったな しかしお前本当にヘタレなのか?」 エイラ《ヘ、ヘタレ言うナー! そう言う俺もヘタレダロ!》 言ってくれるじゃないか… 俺「告白したくらいで壊れるほどやわな関係じゃないだろ、頑張れよ 俺はな・・大切な人を傷付ける可能性が天文学的確率ぐらい低くてもあるのなら何もしない大ヘタレだよ でもお前は違う・・サーニャだってお前が好きな筈だ、わかったな? お前に・・俺の可愛い義妹を任せたぞ」 まあ応援してやるさ アリサ《もう良いですか?ボス?》 俺「終わったなら言えよ・・ わざわざ待ってくれなくて良いんだから・・」 アリサ《つれないですわね わたしはボスを応援してますわ なら再開といきましょうか》 ルッキーニ《5番機俺の親友とコア破壊ー!》 俺「応援ってなんだよ・・俺にはそんな資格無い そうだな・・そろそろ終わりも近い 集中して本気で行くぞ!」 シャーリー《1番機コアを破壊!》 刀を逆手に構え魔力を送り込み静止する 相手が突っ込んできた時に全力で槍を弾く それだけに集中する ミーナ《これがあるとあまり疲れないわね これからの戦闘に使うことも視野に入れて置こうかしら 3番機コアの破壊に成功!》 彼女が突っ込んでくる お前も短期決戦で来たのか! 好都合だ、決める! 宮藤《二番機コアを破壊!やりました!》 少しストライカーに掠ったが彼女から槍を二本弾き飛ばし彼女を無防備にさせる …もしかしてわざと突っ込んできたのか? 流石に弾き飛ばせるとは思っていなかった まあ良いこれでお前を解放する! 魔銃を構え最高で最悪な魔法を撃ち込む ゲルト《7番機敵ネウロイの消滅を確認 帰投する》 俺「これからは自由に生きろ!アリサ! “リジェクション”!!」 彼女のネウロイ化の力とストライカーに埋め込まれたコアだけを消し去る 全戦闘がこれで終了した ―――――――― アリサ「はぁ・・流石ボスですわ ・・もう気付いてますわよね?」 俺「お前がわざと俺に突っ込んできた理由か? 悪いが今わかったよ・・最悪なタイミングで改造ネウロイが接近してきてるな」 “フェンリル”をアリサに投げ渡す この意味…わかるよな アリサ「だ、駄目ですわ・・! 今すぐウィッチを呼び戻せばまだ間に合います!」 俺「あいつらの殆どはなんとか飛ぶくらいが精一杯なやつばかりだ 呼んでも無駄だ エイラとサーニャというウィッチの着けているチョーカーに魔神としての力をその魔銃一発分ずつは込めてある この意味はわかるな? 頼んだぞ」 アリサ「わかりませんわ! そんなのわかりたくないですわ!」 俺「駄々をこねないでくれ・・ 嫌な役を押し付けてるのはわかってるが仕方ないんだ ・・501stの基地に行け ちゃんとみんなに説明してやってくれよ?」 アリサ「ボスのそういう所は大嫌いですわ・・ ・・アリサ中尉、最後の命令を遂行させていただきます」 ―――――――― 俺「行ったか・・ ごめんなリーゼ、ロッテ 今まで楽しかったぞ?」 (最後くらい素に戻ったらどうですか?) (そうですよ、マスター) 俺「あはは・・そうかい? あれでも素ではあるんだけどね・・ 今だから言うけど本当は事故でこうなったんじゃなくて実験体として二人と同化してたんだって知ってたよ?」 (知ってたんですか…) (最後に驚かされましたよ) 俺「それは今まで黙ってた甲斐が有ったよ 今まで魔神を抑えててくれてありがとう・・ リーゼ姉さん、ロッテ姉さん さようなら・・」 ((さようなら、私達の愛しい弟君…)) 両腕のネウロイが霧散し消えていく その変わりに異質な腕が生える もはや人じゃ無くなってるな… もう少しだけ言うこと聞いてくださいよ?狂った魔神 俺「さぁ、来いよ! 身の程知らずのロクデナシ共! 言っておくが手加減する程優しく無いからな!」 相手は高速多機動中型2、海上母艦大型1 無理でもやるしかねぇんだよ! ――――――――――――――― 次回、第一部最終章前編 エイラから明かされるちょっとした真実 つかの間の俺のいない休息 休息の終わった後…友2、アリサから一つの作戦が言い渡される それは、俺の立案した世界中で多くの人を殺し・・殺した数より多くの人を救った罪人の処刑計画 サーニャ「そんな・・冗談・・ですよね?」 エイラ「私達に引き金を引けと言うノカ!?」 最終章「もしも世界に答えがあるなら」
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/358.html
35 :名無しさん@ピンキー [sage] :2006/05/30(火) 23 54 32 ID dUdy7Kor 幹也が先代三月ウサギ――『12月生まれの三月ウサギ』に出会った場所は、実を言えば狂気倶楽部やグリムではない。 そもそも、『三月ウサギ』として出会ったのではない。 学校の図書室に残る、二つ年上の三年生の先輩。二つ名のない、普通の学生である「里村・春香」と出会ったのだ。 出会った場所は、陽が暮れかけて、赤く染まった図書室。 誰もいなかった。図書室は閉館時間を向かえ、図書委員である春香を除いて、誰もいなかった。 幹也がいたのは完全に偶然である。ただ暇つぶしのために本を読んでいて、気づけば閉館時間になっていたのだ。 気づけば、誰もいなくなっていた。 誰もいなくなっていることにさえ、幹也は気づいていなかった。春香が声をかけなければ、永遠にそこで本を読み続けていたかもしれない。 「ねぇ」 幹也が顔をあげると、三つ編みの髪を三つ作った、銀縁眼鏡の先輩がいた。 叱られるかな、そう思った。 別に叱られても構わないな、そう思った。 どんな事態になれ、暇つぶしにはなるからだ。 「……何ですか?」 問い返す幹也の持つ本を指差して、春香ははっきりと言った。 「その本、死ぬほど詰まんないわよ。読むくらいなら死んだ方がマシね」 意外な言葉だった。 そんな言葉を言われるとは、少しも思っていなかった。 せいぜい、「閉館時間ですよ」と言われるくらいだと思っていた。 興味がわいた。 だから、幹也も正直に答えた。 「つまる本なんてあるんですか?」 その言葉が、そのときはまだ名前も知らなかった里村・春香の興味を引いたのだと、 幹也は数ヵ月後、春香の二つ名と共に知ることになる。 36 :名無しさん@ピンキー [sage] :2006/05/31(水) 00 09 07 ID ju7bF4dq そして今――幹也は『三月ウサギ』を里村・春香から受け継ぎ、グリムの首を絞めている。 数ヶ月の間、暇つぶしの相手になってくれた里村・春香はもういない。 狂気倶楽部において、名前を継ぐというのはそういうことだった。 里村・春香はどこにもいない。 幹也は彼女から二つ名と、喫茶グリムの存在と、狂気倶楽部での椅子を受け取り。 暇を潰す場所を、学校の図書室から、グリムの図書室へと移した。 「あ――っ、う、あ、」 首を優しく絞められて、グリムは嬉しそうに呻いた。力を込めていないので、普通に喋れはする。 力を込めれば死ぬということに、代わりはないけれど。 遊びを思いついたのがグリムだったのか幹也だったのか、あるいは他の誰かだったのか、幹也はもう憶えていない。 気づけば、こんな関係になっていた。 幹也は思う――これくらい普通だ。自分は普通だ。みんなしたいと思っている。する相手がいないだけだ。いい暇つぶしだ。 平然と首を絞める少女こそが狂っていると、幹也は思う。 「お兄ちゃんっ、もっと、もっとぉ、」 甘えるようにグリムが言う。 本人曰く、首を絞められるのは、たまらなく心地良いらしい。 殺意を以って支配されている感覚が、死を以って繋ぎとめている感触が、相手の全てを共有している気分が、 寂しがり屋で甘えん坊で、独占欲と依存癖の塊であるグリムにとっては、何よりも心地良いらしい。 「言われなくてもやるさ――暇だからね」 首を絞める手に力を込める。 グリムの細く白い首に、ゆっくりと、指先が食い込んだ。そのたびにグリムは嬉しそうに笑う。 その気持ちは、幹也にはまったく分からない。 首を絞められて何が楽しいのかわからない。他人を支配も共有も共存もできるはずがないとすら思う。 こんなのは暇つぶしだ。リアルに還ってくる相手の反応が楽しいだけだ。 冷めて冷静な心とは反対に、身体は、熱を持ったように動き始めた。 37 :名無しさん@ピンキー [sage] :2006/05/31(水) 00 30 10 ID ju7bF4dq 首を絞めながら、幹也は身を近づける。グリムの小さな身体を押しつぶすように。 顔を近づけ、グリムの小さな耳を優しく噛む。こりこりと硬い感触があった。 そのまま噛み千切ったら、この少女はどんな反応を示すだろうか。そんなことをふと思う。 「あ――、あっ、あは、あはっ」 首を絞められ、身体を端から食べられかけながら、グリムは嬌声と笑い声が混ざり合った声を漏らす。 心の底から楽しそうだった。虚ろな瞳は妖しく笑っている。 独占と依存を背負うグリムにとって、食尽というのはある意味究極のあこがれなのかもしれない。 そして、幹也にとっては。 そんな憧れなど、知ったことではなかった。 「楽しいね。楽しいと思いたいものだよ、本当に」 口から漏れる言葉に意味はない。まったく意味のない、ため息のような発言だ。 けれども、グリムはその言葉を聞いて、さらに嬉しそうに笑う。 「お兄ちゃんっ、楽しい、たのし、いのっ! やったっ」 首を絞められ、途切れ途切れの声で、それでもグリムは嬉しそうに言う。 幹也は片手で首を絞めたまま、右手をゆっくりと下へと這わせた。 むき出しになった鎖骨をなぞり、さらに下へ、下へ。 フリルのついた裾まで辿りつくと、手は服の下へともぐりこみ、今度は上へと上がった。 ふくらみのない胸――ではなく。はっきりと形の分かるアバラを、一本一本幹也はなぞっていく。 「あ、あは、あはっ、あはははっ、あははははははははははははっ!」 くすぐったいのか。楽しいのか。気持ちいいのか。嬉しいのか。 首を絞められ、鎖骨をなぞられながら、グリムは笑い続ける。 その笑いを塞ぐかのように、幹也は耳をかんでいた唇を、グリムの唇へと移した。 38 :名無しさん@ピンキー [sage] :2006/05/31(水) 00 43 03 ID ju7bF4dq 重ねた唇から舌を伸ばしてきたのは、グリムの方だった。 八本、九本とあばらを数えながら、倒錯した行為を続けながら、幹也も舌を絡ませる。 意志を持った触手のように、二対の舌は勝手に蠢き、口の端から唾液が漏れた。 倒錯した行為に没頭しながらも――幹也の頭は冷えていた。 どうしてこんなことをしているのだろう、と自問して。 暇だからだ。時間つぶしにはなるからだ、と自答できるほどには。 「ん、っん、んぁ――、う、あ、」 少しだけ、手に力を込める。首を絞める手に。 繋げた唇の向こうで、グリムが苦しげに息を履いたのが分かった。 唾液と下に混ざって、吐息が口の中に入り込み、幹也の肺腑を侵食していく。 首を絞め。細い身体を好き勝手に弄びながら、幹也はキスをしたままグリムを見た。 目をつぶるなどという、殊勝な行為はしていなかった。 グリムは瞳をしっかりと開け、身体をすき放題にする幹也を、じっと見ていた。 その瞳は笑っている。その瞳は物語っている。 獲物を絡め取った蜘蛛のように笑うグリムの瞳は、こう言っている。 ――楽しい、お兄ちゃんっ? もっと楽しんでいいの。でも――その代わり。 篭絡する瞳で、歳にあわない妖艶な、狂った瞳で、グリムはこう言うのだ。 ――ずっと愛してねっ。ずっと、ずっとグリムのお兄ちゃんでいてねっ。 幹也は唇を離す。ぬるりと舌が滑りながら、グリムの唇から抜け出る。 顔を離すことなく、間近で幹也は言う。 「楽しいよ――ありがとうグリム」 手を離すことなく、心中で幹也は思う。 ――楽しくはない。退屈だ。ああ、暇が此処にある。 倒錯した二人は、そのまま、倒錯した行為に溺れていく。お互いを食い合うような行為に。 その行為を、口を挟むことなく、マッド・ハンターは見ていた。 異常な二人を、にやにやと、にやにやにやと笑いながら、異常な笑みを浮かべながら、ずっと見ていた。 倒錯した行為は終わらない。 倒錯したお茶会は、どこまでも続く。 (続)
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1068.html
【第三話-12/06】 ハルヒに続いて朝比奈さんまでもがこの地上から姿を消したと長門 から連絡を受けた。正直信じられない心境だ。ハルヒだけでも信じられ ないのに、朝比奈さんまでも消えてしまうとは……一体どうなって いるんだ…… ・・・・・・──・・・・・・ ・・・・・・──・・・・・・ ・・・・・・──・・・・・・ 俺は憂鬱な心境で学校に着いた。もちろん昨日から俺の後ろの席の主 ハルヒはいなくなったままだ。その上朝比奈さん前でも消えたとなると 俺の心境はますます重いものになった。そんなわけで午前中の授業など まったく頭に入らず、ただただ時が過ぎていくだけだった。昼休みになり 弁当を食べようとすると、国木田が、 「キョン、お客さんだよ。鶴屋さんが来てる」 「鶴屋さんが?」 俺はすぐに廊下に出て鶴屋さんを見つけた。 「あ、キョン君。ちょっと聞きたいことがあって来たんだけど、時間 空いてるかなっ」 「ええ、大丈夫ですよ。恐らく見当はついてますから……とりあえず ちょっと静かなところへ行きましょうか」 「そだね。ちょっと移動しようか」 俺と鶴屋さんは屋上に移動した。相変わらず屋上には人がおらず 閑散としていた。まあ、重要な話をするにはもってことだが。 「で、鶴屋さんお話は朝比奈さんのことですか?」 「うん、そうなんだにょろ。今日みくる学校に来てないけど何が あったか知らない?」 俺は迷った。確かに俺は朝比奈さんが消えたことを知っている。それを ”さあどうなんでしょうね”などとごまかしていいものか……。鶴屋 さんは『機関』のスポンサーの家の人間でもあるし感が鋭い。この際 正直に解っていることを話すことにした。 「鶴屋さん、落ち着いて聞いてください」 「やっぱりなにかあったにょろ?」 「今日の深夜に知ったんですが……朝比奈さんはこの地上から姿を 消した、いわゆる行方不明になったそうなんです」 俺がそういうと鶴屋さんは今までの元気スマイルから一転して真剣な 顔になった。 「みくるが行方不明って……何かの間違いだよね?」 「残念ながら……本当です。信頼の出来る情報です」 「うそ……」 鶴屋さんは驚きを隠せない。恐らくハルヒのこともいずれ知ることに なるだろうと思い、ハルヒのことも話すことにした。 「実は……ハルヒも昨日から行方不明になっています」 「え……ハルにゃんも……」 「ええ。色々手を尽くして探してはいるんですがまったく手がかりが ありません」 「えっ?」 そういうと鶴屋さんはちょっと驚いた顔をした。 「どうしました?」 「あれ?キョン君昨晩うちに来てみくるに何か言ってたんじゃなかった?」 「すいません、それはどういうことですか?」 俺はまったく身に覚えの無いことを言われ混乱した。 「あのね、昨日はみくるが泊まっていく約束で遊びに来たんだけど、 昨晩の10時頃にキョン君が来て”偽者の正体がわかったんです。みんなも 来ているので朝比奈さんも来てください。”って言って、みくるを連れて 行ったよね?」 俺が会いに行った……? それはまさしく……。 「鶴屋さん、そのときの俺は俺じゃありません、それは俺の偽者です!」 「嘘……今見ているキョン君とまったく同じ姿で偽者だなんて全然 わからなかったよ? 本当に来てないの?」 「ええ、神に誓ってもいいです。しかもそれはハルヒが行方不明になった 時とまったく状況が同じです。俺の偽者が現れて、ハルヒ・朝比奈さんを 連れて行ったことに……」 なんてことだ。朝比奈さんが消えた状況もハルヒのときとまったく 同じだなんて!俺は鶴屋さんに詳しい状況を聞いた。 「その俺の偽者なんですけど、なにかほんの些細なことでもいいんで 違いとかありませんでしたか?」 「そういわれても玄関先でちょこっと見ただけだし……あたしも みくるもキョン君だって全然疑わなかったよ」 「そうですか……」 そこまで話しているうちに午後の授業の予鈴が鳴った。 「ハルヒと朝比奈さんは必ず見つけ出します。必ず」 「うん、キョン君なら絶対に見つけ出してくれるって信じてるっさ」 鶴屋さんは再び元気スマイルで俺を励ましてくれた。内心、朝比奈 さんのことで心配だろうに……気丈な人だ。 「それじゃ午後の授業あるから戻るにょろ」 「そうですね」 俺と鶴屋さんは一緒に校内に入り、そして別れた。俺の偽者…… ハルヒと朝比奈さんの失踪を結びつける唯一の点。鶴屋さんの話では まったく瓜二つという……。結局、今日の午後の授業も頭に入らず、 ただ時間が過ぎるだけの時となった。放課後、俺はすぐに部室へと 向かった。そこには既に長門・古泉がいた。 「待ってましたよ、あなたを」 「なにかわかったか?」 「はっきり言って我々の想像以上のことが起きているようです」 「と、いうと?」 「この地上から未来人が全員姿を消しています」 「朝比奈さんの他の未来人まで行方不明になったということか?」 「はい、そうです。我々は長門さんのようなTFEI端末や朝比奈さんの ような未来人と他にもコンタクトを取っています。それが今日を境に 全員姿を消しました」 「全員が未来へ帰ったってことは?」 俺の問いには長門が今度答えた。 「それはありえない。情報統合思念体によると時空移動の痕跡がまったく みられない」 「長門はなぜ朝比奈さんが消えたのがわかったんだ?」 「わたしは常にSOS団全員をモニターしている」 「そうなのか……」 ってことは俺のあんなこともこんなこともモニターされていたのか。 今度長門にはプライバシーってものを教えておこう。まあ、今はそれ どころではないが。 「ところで今日の昼に鶴屋さんに聞いたんだが、やはり昨晩俺の偽者が 現れて朝比奈さんを連れて行ったらしい」 「まったく涼宮さんの時と一緒ですね」 「恐らくその偽者が今回の鍵を握っていると思われる」 「この事態から察するに、涼宮さんも誘拐されたというわけでは無い ようですね……」 俺はその古泉の言葉に最悪の事態が頭に思いつき恐怖に駆られた。 「それじゃあ、ハルヒや朝比奈さんはもうこの世にはいないってことか!?」 「その可能性もある」 「しかし、殺害されたとは限りません。もしかすると何らかの手段を用いて 次元の狭間などに幽閉されている可能性もあります」 「でも長門の話では特にそういう現象の痕跡は見られなかったんだろ?」 「そこが謎なのですが……」 「長門、前にお前が行ってたお前の親玉の親戚みたいなヤツの仕業という 可能性は無いか」 「それは無いと思われる。その場合には情報統合思念体が感知する」 「そうか……」 「どうでしょう、昨日と同じように今日も偽者が現れた現場に行って みては?」 「そうだな。そうすると、鶴屋さんの家ってことか」 「家まで行かなくてもその近くでも痕跡探しは可能でしょう」 「よし、とりあえず行ってみよう」 ・・・・・・──・・・・・・ ・・・・・・──・・・・・・ ・・・・・・──・・・・・・ 俺たちはとりあえず鶴屋さんの家の近くまでやってきた。 「地面をスキャンした結果確かに朝比奈みくると思われる足跡の痕跡が みられる」 「俺の偽者の痕跡はどうだ」 「それに関してはまったくみられない」 「鶴屋さんの話だと特に変わった点が無かったと言っていたから、靴を 履いていないってことは無いはずなんだが……」 「もしかしたらその偽者というのは表面上はあなたにそっくりですが、 実際には実体の無いいわば風船みたいなものなのかもしれません」 「地面からギリギリ浮いているから足跡がつかないってか?」 「まあ、足跡を残さないように移動する手段はいくらでもありますが ……朝比奈さんが何の疑問も無くついていったということはそういう 小細工はしていなかったと思いますね」 「どうだろうな……あの人は慌てるとまわりが見えなくなるからな」 「まあ……そうですが」 古泉は苦笑した。 「長門、朝比奈さんはどこに向かっていったかわかるか?」 「足跡を追ってみれば可能」 「よし、追跡してみよう」 俺たちは長門の後について朝比奈さんが移動したと思われる場所まで たどり着いた。そこは、ハルヒが消えた公園だった。 「まさかまたこことは……」 「ベンチに座ったあとが見られる。ただし1人分」 「恐らく朝比奈さんが座っていたんだろう。多分俺の偽者も」 「昨晩の10時に鶴屋家に現れ、そしてここに来た。その後午前0時まで ここで過ごしそして朝比奈さんは消えた。そう考えるのがベストですね」 「ハルヒのときもそうだろうな。いわば時間稼ぎの場ってことか」 「そんなところです」 「ハルヒ、朝比奈さん、これで繋がるものは……」 長門が意外なことを口にした。 「恐らく宇宙人・未来人・超能力者」 「ということは、僕や長門さんも狙われる可能性があるわけですね」 「そういうことになる」 「だが、お前達2人は既に俺の偽者の存在を知ってるし用心深い、大丈夫 なんじゃないか?」 「そうとはかぎりませんよ」 「と、いうと?」 「あなたの偽者が午後10時に現れて連れ出したというのは、おそらく 涼宮さんの家族や鶴屋さんに怪しまれないギリギリの時間だったから ではないでしょうか。そうなると、家族のいない長門さんや深夜でも 活動している僕などは消える午前0時に目の前に現れてもおかしく ありません」 確かに古泉の言うとおりだ。午後10時以降となると遅すぎて逆に 家族などに怪しまれる。それ以前だと午前0時まで時間がありすぎて 引き止めておくことが出来ない。が、それだったら午前0時に寝室に現れて さらっていけばいいのではないだろうか? などと考えていると、 「この2回の誘拐はあなたの偽者がその存在をアピールするためにこんな 回りくどいことをしている可能性がありますね……」 「つまり、俺が何か関係しているってことか?」 「そうかもしれませんし、あなたに対して自分の存在を教えるためなの かもしれません」 「ううむ……心当たりはまったく無いんだがなぁ……」 「本当にあなたの身の回りで何か変化が起きた事はありませんか?」 「ハルヒの夢以外は特に無いな」 「と、するとこれから起きる可能性もあるわけですね」 「そうならないことを願うばかりだ」 「とりあえず我々も用心しますが、あなたも気をつけてください。 最終的なターゲットはあなたかもしれません」 「わかった」 そう話した後、一通り公園内を探索してみたがやはり収穫は無かった。 日が落ち暗くなってきたので俺たちはそれぞれ家に帰る事にした。 キョンたちが鶴屋家の近くから公園まで探索している間、全身を覆う フードを着た男が遠くからその様子を観察していた。キョンたちが帰るの を見届けると男は、 「やっと気がつき始めたか……でもまだだな」 そういうと男はやがてその場から姿を消した…… ・・・・・・──・・・・・・ ・・・・・・──・・・・・・ ・・・・・・──・・・・・・ 今日も収穫なし。悲嘆にくれながら俺は家に帰ってきた。家に帰ると 妹が出迎えてくれた。 「なんか元気ないねぇ、キョン君」 「いろいろあるのだよ、妹よ」 そんな会話をし、飯など一通りを済ませると俺は自分の部屋で色々と 考え込んでいた。ハルヒが消えたこと、朝比奈さんが消えたこと、そして 長門・古泉の話では俺たち全員がターゲットの可能性があるということ。 ではなぜこの時空に滞在していた未来人が全員姿を消したのか? 俺たち だけがターゲットならそれは余計な行動なはずだ。 「うーん、わっかんねえな」 俺はそういうと布団に入り眠りについた。午前0時の連絡が来ないこと を祈りながら……しかし、その願いは虚しくも崩れ去った。午前0時を 若干過ぎた頃、寝ていたところに携帯電話の着信音が鳴り響いた。発信者 は古泉。と、いうことは……と思いつつ電話に出た。 「もしもし、古泉か」 『はい。やはり恐れていたことがおきました』 「お前が電話してきたってことは……長門になにかあったんだな!?」 『お察しの通りです。長門さんがこの地上から消えました』 「なんてことだ……」 『まだ正確な情報ではありませんが、他のTFEI端末、喜緑江美里なども 消えたと思われます』 「わかった……詳しいことは学校でまた話してくれ」 『わかりました。では失礼します』 俺は失意のうちに電話を切った。ハルヒが望んだ者たちが1人ずつ 消えていく。これは俺の偽者の仕業なのか? それともハルヒが新しい 世界を望んでいるのか? そう考えると寝ようにも寝付けなかった…… 今度は誰が消えるんだ? 古泉かそれとも俺か…… ───Missing Ring -失われる7日間- 第三話 終 第四話へ
https://w.atwiki.jp/nw3rdandante/pages/455.html
M区のGARDEN連絡所に在籍している二人の実働員オーダーが、HHHのアジトを捜索している任務の途中で行方不明になった。これを受けて、GARDEN関東支部は千条六郎/スターログと月城美陽/イカズチを派遣。任務を引き継いだ二人は、HHHの信徒が一人の少女をアジトに誘拐したのを目撃。 信徒を制圧して少女の保護に成功したのもつかの間、アジトの地下から特殊なネフィリムが出現。 音と姿を消す特殊能力により、ネフィリムの逃亡を許してしまう。 一方、保護した少女「山風みどり」は早くに両親を亡くして親戚に引き取られるも、彼女自身も自覚していない憑依能力の覚醒により、冷遇されていることを二人は知った。 警察内部の秘密組織「SAN」の九条司がみどりの保護を申し出るが、家に帰りたくない一心でスターログを「パパ」と呼んだ。 小さな嘘から生まれた関係だが、スターログとイカズチは少女と心を通わせていった。 調査を続ける内にスターログは、放棄されたHHHのアジトで小さなカプセルを手に入れる。その直後、HHHのオーダー「マガツカゼ」の襲撃を受ける。増援のイカズチと連携してこれを難なく撃破し、マガツカゼは警察によって拘束された。 しかし、GARDENから離反したルーカス・オイゲンが警察署を襲撃。警察は、混乱に乗じたマガツカゼの脱獄を許してしまう。 マガツカゼはみどりを人質にとり、スターログとイカズチをおびき寄せる。ネフィリムと共に超高圧変電所で二人を待ち受けるが、みどりの祈りによって《アルファカプセル》が起動。 新たな特性能力《スパークゲイザー》を得たスターログとイカズチの猛反撃を受け、ネフィリムは爆散。脱獄したマガツカゼは再び拘束され、更に警備の厳重な収容所に送られた。 事件の収束後、山風みどりは御舟秋穂/バスカヴィルの根回しにより、書類上はスターログの両親の養子となった(そのため、スターログとの関係は義理の兄妹になる) 現在は一人暮らしをしているスターログの妹「千条六花」のもとで暮らしている。
https://w.atwiki.jp/sousakurobo/pages/1230.html
現在で言う北アメリカの西部、つまり昔カウボーイやらガンマンやらが居た場所に1つの小さな町があった。 人口は100人居るか居ないか。昔は人口10万を超える超大型都市だったのだが、第四次世界大戦……別称二大国頂上戦争の 一番の激戦、“要塞クトゥル攻略戦”の舞台となり人口は激減。 今は要塞クトゥルの基礎部分が、焼き払われた町の代わりにその小さな町の土台となっている。 町は一部の人々から“忘却の町――リベジオン”と呼ばれ、とある事をする以外には近寄らない場所である。 そんなリベジオンに一人の男が現れた。黒の高価なスーツを着こなすその男は、ある一軒の家屋らしき物へ歩いていく。周りの他の物には 目もくれず、最初からそこにしか目的は無いと言わんばかりに。 男は家屋のドアを開け、中へ入る。中は質素ながらもちょっとしたバーになっており、カウンターにはバーテンダーらしき赤毛の少年が一人 黙々とグラスを磨いていた。本来なら違和感を感じそうなバーテンダーの服装を着こなす少年は、男の姿を視界に捉えるとぶっきらぼうに、 「……いらっしゃいませ」 と男に言った。 男はカウンター席に座り、「トム・コリンズを一杯」と赤毛の少年に注文する。注文された飲み物を準備し始める少年に、 男は注文のし忘れがあった事に気が付き追加で注文する。 「あと、チェイサーにクラッシュド・アイス入りで頼む」 普通、カクテルにチェイサーと呼ばれる口直しの水は不要で、しかもチェイサーに砕いた氷のクラッシュド・アイスは入れない。 ごく普通のバーテンダーなら、「この客バカだなー……」と思いつつも出すだろうが、少年は違った。 少年は無言でカウンターのベルを鳴らして別室から金髪の青年を呼び出す。そして、金髪の青年にカウンターを任せると 赤毛の少年は男を奥の部屋へ案内する。 「さて……本業に移ろうかァ、クライアントさん?」 少年――ひろしはその端正な顔を歪ませながら笑った。 「鮮血のTank soldier」 第三話『私のテクニックは凶暴です』 テーブルと二脚のイスだけの奥の部屋に入ると、ひろしは一脚のイスにどっかと座る。 このバーは、依頼の詳細や報酬を受け取る、依頼屋のひろしの事務所である。そして、さっきの「あと、チェイサーにクラッシュド・アイス入りで頼む」 と言うのはクライアントがひろしに依頼をする時の暗号のような物で、政府高官を始め軍の幹部などが少数のみ知っている。この暗号はオークション などでたまに出されると、ウン千万の値がつく程価値のある物である。 そして、ひろしの目の前の男の名はファルガ・ウォー。階級は陸軍大佐。趣味は将棋で秘書とやってはボッコボコにして楽しむという、 わけわかめな癖を持つ。 ファルガはおもむろに懐から札束を出してひろしの前に出す。ひろしは適当にそれをテーブルの片隅へ押しやった。 ひろしは基本的に金は好きでないが、利益のない仕事などする意味が無い。 するとファルガは胸ポケットから3枚の写真を取り出しひろしの目の前に置く。 「1週間前の依頼の報酬と追加の依頼だ。私と同じ“戦い”好きの君には、有能な選手を反政府組織に紹介する『コロッセオ』への牽制だけなど物足りんだろう?」 ひろしはテーブルに散乱する写真の1枚を手に取る。そこには、マシンガンを発砲する1機のGEAが写されていた。 「こりゃ、『X2』の最新モデル型かァ?」 『X2』とは、現在統一軍が主力として採用している『X1』の後継機でこの北アメリカ付近にのみ、すでに生産・配備されている機種である。しかし、ファルガは言った。 「いや、違う。『X2』とは性能も火力も段違いに高い。……それはつい2週間前、グランドフォークス基地が壊滅した時の唯一見つかった『X2』 の残骸の中のミッションレコーダーに記録されていた物だ。その機体はたったの2機で6機配備されていた『X2』を軽々撃破し、基地の施設を殆ど爆破……生存者は1人も居ないそうだ」 「んで、ソイツを俺に破壊しろと?」 「そうではない。奴等……“ロウズ”と言うらしいが、ロウズによる基地攻撃はこれが初めてでは無い。3回目だ。その3回目でやっとこの写真を手に入れられた。 こんな無差別な攻撃ではロウズの次の目標など分かるものか」 するとひろしは手を上げ、 「じゃァ依頼は? 一体何なんだ?」 「……『コロッセオ』だ。コロッセオでこの機体によく似た機体が確認された。種目は『リアルバトル』、リングネームは、『White Angel』。依頼はこの機体と戦闘し、 生き残ること。報酬はいつもの2倍だ」 ひろしはその内容に笑った。たかだか戦闘して生き残ることなど彼には戦う上での最低限の常識である。 「いいぜ……その依頼、受けてやるよ」 ファルガは日時などを詳しく記してあるデータ端末を渡すと、奥の部屋から出て行った。 と、ひろしは『White Angel』と言う名に何か引っかかる思いがあったが、深く考えずにその場を後にした…… その後、ひろしは仕事の為に二階へ閉じ込めていたロンメルらの攻撃を受け、危うく天使に連れ去られる思いをしたという。 6日前。旧サイクラノーシュ領、ファーゴ基地。 十分な大きさもあり、地形的にもいいポイントにあるファーゴ基地は二大国頂上戦争時、敗北したサイクラノーシュ側の重要拠点だった。 その為、二大国頂上戦争後に勝利側のユゴスにより基地は放棄され、その後反政府組織ロウズの隠れ家となっていた。 そんなファーゴ基地で二人の男が話していた。 「奴が見つかった、と聞いたものでね……ぜひ、あの時の決着を付けたいのだよ。奴は今依頼屋をしていると聞いた。 そろそろ統一軍も情報を掴んでいるだろう……そうなれば腰抜けの統一軍は奴に依頼を頼むだろう」 一見青年実業家を思わせる風貌をした、若いと言っても27歳程の男が口にコーヒーを運びつつ、部屋にいるもう一人の男に話しかける。 「……しかし、いくら乗っている機体が『N1』だとしても、相手はあの『返り血の戦車兵』だぞ。たかだか最近のサイクラノーシュの残党狩りで 名を上げた貴様では……」 もう一人の男が苦々しい顔で続けようとする。だが、若めの男はそれを遮り断言した。 「私のテクニックは凶暴です……だからこそ、貴方も私を雇った……違いますか?」 男は呆れたようにため息をつくと、 「勝手にしろ。噂には聞いていたが、しつこい奴だ。『掃討の堕天使』レジル・シェイド……」 「フッ……私のしつこさは部隊でも折り紙付きさ」 レジルは飲み干したコーヒーをテーブルに置き、窓の外を覗いた。 外には彼の愛機がひっそりと佇んでいた。目立つペイントは布で隠されているが、それは堕天使のイメージでは無く天使のイメージにしか思えない白色だった。 「再び君と戦える事が楽しみでしょうがない、『返り血の戦車兵』。あの日、果たせなかった決着を付けさせてもらう……この『アドヴァンスドネクス』で!」 ひろしは再び『コロッセオ』のフィールドに立っていた。もちろん、目的はロウズの謎の新型機の戦闘データをとることである。 実況の男のマイクの声が鳴り響き、ひろしは『タンクマキナ』を進ませる。 『さあ! 本日4回目の『リアルバトル』、まずはこの男!エース、ルートビアを下した『164』だあああああ!!!!』 会場からは前回より一層大きな歓声が上がり、『タンクマキナ』が入場してゆく。 『対するは、『コロッセオ』きってのテクニシャン!『White Angel』だあああああ!!!』 向かい側の格納庫から白い人型の機体が現れる。やはり、多少の差異はあるものの写真で見た機体と一致していることを確認する。 『さて、両者準備が整ったようだァ! 本日4回目の戦いを始めるぞォ! スリー!』 (まずは、距離を置いて出方を見るか……一応牽制にマシンガンでも撃っとくかァ?) 『ツー!』 『タンクマキナ』を若干後ろ重心にして、両腕の固定武装マシンガンの安全装置を外す。 『ワン! 開始だあああああ!!!!』 開始と同時に無限軌道を動かしつつ、両腕のマシンガンを放って距離をとる『タンクマキナ』。 が。敵機はマシンガンの弾を弾きながら信じられないスピードで『タンクマキナ』に急接近してきたのだ。 「何だとォ!?」 ひろしは、殴り掛かる敵機を主砲でいなそうとした。だが、それを敵機は読んでいたかのように機体をしゃがませて回避し、振り向きざまに 腰から抜いた赤く発熱する実体剣を振り下ろす。 そのペイント……やはり君かッ!『返り血の戦車兵』!! それを、上半身の砲塔をグルン!と回して避けたひろしは共通チャンネルによって開かれた通信の声を聞いた。 「やっぱりな……貴様だったかァ!『掃討の堕天使』!」 素早く『タンクマキナ』を後退させ、ひろしが返す。 さあ……あの時のワルツの続きと行こうじゃないか!! 『タンクマキナ』の主砲が火を噴き一直線に敵機へと向かう。 「ハッ、コックピットの中で全裸になる奴なんざ全裸のまんまで殺してやンよォ!!!!」 砲弾を空中に飛んで避けたレジルは上空で機体を捻って追撃のマシンガンの弾を避ける。 フッ……今日は君と戦えるとあってすでに全裸だッ! レジルは戦闘中にテンションが上がるとスーツを脱いで全裸になる癖がある。スーツも無しにあんな動きが出来るはずが無いが、それを可能にする 程の対G機構でもあるのだろうか、とひろしは考えた。 「そォかい! じゃあ貴様のその歪んだ性癖は俺が駆逐してやるよ!」 地面に着地すると同時に高熱切断ブレードを振りかざし切り込む敵機にとっさに右腕でガードする『タンクマキナ』。が、しかし。 その腕……貰った! 発熱する刀身がだんだん右腕の装甲を溶かしてきたのだ。ひろしは見切りを付け、右腕をパージする。瞬間、高熱切断ブレードが右腕を切断し、 そのまま地面へ突き刺さる。 距離をとったひろしはいつの間にか汗をかいている事に気が付いた。 「やってくれるぜ……!」 「ひろし! 危ない!あーもう!どうしたの、ひろし!」 一方、『コロッセオ』の観客席ではロンメル、ルーデル、ヘイヘ、それとあとリベジオンのバーに居た金髪の青年が居た。 「ね、ねえロンメルちゃん……もうちょっと静かに」 「うるせぇ、空気は黙ってろ」 金髪の青年――ユークリッドはロンメルにドロップキックをお見舞いされた。 「ひでぶ!!」 飛ばされたユークリッドは席に座っているポニテ少女ルーデルの胸にぶち当たる。 「なっ、なんなのよ!? この変態ッ!」 と、頬を赤く染め少し涙目になったルーデルから鉄拳制裁を喰らい、再び飛ばされるユークリッド。 最後は分厚い本を読みふけるロングの少女、ヘイヘの膝に膝枕される形で停止した。 「こんのヤロォ……!よくもこんなの発射してくれたなオイ!」 ルーデルが立ち上がりロンメルを睨む。と、ロンメルも立ち上がって、 「知らないよ!こんなのが近寄ってきたからよ!」 こんなの扱いされたユークリッドはかなり精神的にダメージを受けた。 おでこをぶつけ合い、がるるるるる……!と威嚇しあっていた二人だがほぼ同時にユークリッドの方を向くと、 「「ユークリッド、発射されろ!」」 「酷い八つ当たり!?」 読んでいたカール・フィーリプ・ゴットリープ・フォン・クラウゼヴィッツ著の『戦争論・上』をパタン、と閉じてヘイヘが呟く。 「了解……発射しておく……」 まわりの観客は発射されたユークリッドに向けて敬礼したという。
https://w.atwiki.jp/ayano01/pages/127.html
この世の地獄。 美奈代達は、それがここだとことあるごとに思い知らされた。 入営してからの毎日。 一言、地獄で全てが語りきれる日々。 訓練訓練訓練ついでに座学座学座学。 敬礼の仕方から銃火器の取り扱い、そして難解を極めるメサイアの理論まで、詰め込みすぎのカリキュラムに追われる日々は、他の言葉では表現できるはずはない。 その中で、候補生達は自然と3つのタイプに分類出来るようになっていった。 肉体派 頭脳派 ハイブリット派 前者は、座学より肉体を使う訓練が得意で、理屈より直感がモノを言うタイプ。 都築真、早瀬さつき、神城三姉妹がこのタイプ。 教官達に言わせると、脳みそ筋肉の「バカ共」だ。 中者は肉体派の正反対。 柏美晴や、意外だが山崎大輔がこのタイプだ。 そして、ハイブリット派。 ……これはさらに二つに分かれる。 肉体と頭脳の程度がバランスよく配分された優等生タイプ。 宗像と泉の二人は、この典型例だ。 そして――― 生きてることそのものが、何かの冗談。 そこまでこき下ろされるほど、肉体・頭脳共に徹底したレベルで欠落しているとレッテルを貼られるタイプ。 役立たずともいう。 本気なのか、それとも単に手抜きしているのか? それは本人のみが知る所だが、それでも、周囲はそう見なす存在。 それが、風間祷子だ。 「も……もう、ダメ」 そう言ってその場にひっくり返ったのは、頭脳派の柏美晴だった。 肉体訓練の昇華を示すべく行われた行軍訓練。 30キロの戦闘装備を着用して武装し、50キロ先の目的地までひたすら歩き続ける訓練は、18歳の女の子に、それが、超人的肉体と反射能力を誇る騎士とはいえ、かなりの負担を強いている。 柏美晴は、理系高校に在学中、ずっとマンガに入れ込んでいたという、自他共に認めるインドア派。 自宅の薙刀道場の鍛錬で鍛えてはいたが、その子に、大の男でさえへたばるとされる行軍訓練はキツすぎる。 無理もない。 誰もがそう思いつつ、それでも言わざるを得ない。 「しっかりしてよ!」 「そうだ!みんな頑張ってるんだぞ!?」 肉体派からは叱責が飛ぶが、 「そ……そうは……言われても」 美晴は絶え絶えの息の下で苦しげに文句を言った。 「わ、私……こんなに歩いたこと自体が初めてだよ……」 そう言って、美晴は手にした自動小銃を何とか体の上からどかそうともがいた。 鉄板すら撃ち抜く腕力を誇る騎士が、わずか5キロにも満たない鉄のカタマリを動かすことすら出来ない。 それが、美晴の体力の消耗度を如実に示していた。 「泉」 水筒のキャップを外しながら、宗像が美奈代に言った。 「美晴は限界だ。これ以上の行軍の継続は」 「……」 美奈代は全員を見回した。 若干18歳の女の子が30キロ近い装備を身につけて50キロの行軍。 入営以来、シゴキそのものの肉体的訓練を受けているとはいえ、騎士の体を持つとはいえ、その過酷さは一々口にする必要すらない。 「やむを得ない」 美奈代は言った。 「ここで15分の小休止をとる」 ズシャッ! 途端に全員がその場にへたり込む。 そんな仲間達に、美奈代は容赦なく言った。 「早瀬、私と共に警戒に立て」 「えーっ!?」 さつきが悲鳴に近い声を上げたのも無理はない。 さつきも脚が立たないのだ。 そんなさつきに美奈代は容赦がなかった。 「体育系だったんだろう?それくらいやれ。それとも、柏にかわってもらうか?」 「ううっ……男子がいるでしょう!?男子が!」 「あれはもう斥候に出てもらっている。山崎は使えるが―――都築は使えん」 「あらあら?あのフランケンがお好みでしたか?」 「私は外見に惑わされたりはしない―――柏」 「……」 美晴は弱々しい顔で眼だけを美奈代に向けた。 そんな美晴の前で膝を折った美奈代が、タオルで汗に濡れた美晴の顔をぬぐった。 「もう少しだ。病院送りはそれまで待て―――みんなのために」 美晴は黙って頷いた。 「宗像、水を」 「ああ」 そういうと、宗像は水筒の水をあおった。 「ち……ちょっと理沙ちん?」 一葉が恐る恐る訊ねた。 「まさか……口移し?」 コクン。 宗像は口に水を含んだまま、頷いた。 「ま、待って!」 美晴が慌てて体を起こしたものだから―――。 「宗像ぁ……覚えてなさいよぉ?」 恨めしそうに宗像を睨む美晴のヘルメットの下の髪はびしょぬれだ。 「動けそうになかったから、やってあげようと思っただけだ」 宗像は、しれっと言い放った。 「大体、なんだ?歩けるじゃないか」 「ふ……ふざけないでよ」 美晴は銃を杖代わりにしてよろめきながら歩いている。 「これ、歩いているって言わない」 「祷子を見ろ。ああやって先方に立って歩いているじゃないか」 美佐子は部隊の前方を歩く祷子の姿を見ながら言った。 「不平不満も言わずに頑張っている。あいつも肉体訓練の最終過程だということはわかっているんだな」 「……あのボンクラちゃんがねぇ」 ボンクラちゃん。 何かある度に、教官が罵声として「このボンクラぁ!」と祷子を呼ぶので、周囲も祷子のことをそう呼ぶようになっていた。 「なかなか、根性はあるようだな」 祷子の失態の度、部隊として責任をとらされ、その隊長として辛い思いをしてきただけに、危険が潜む前衛として自ら進んで立つ祷子の姿に、美奈代も感慨深げに見入っていたのだが――― パタッ 突然、祷子が倒れた。 「!?」 後方にいた美奈代達は、一斉に伏せる。 「か、風間?」 返事はない。 もし、模擬弾が発射され、祷子がそれに当たったなら、いくらなんでもそろそろ銃声が聞こえてもいいはずだ。 それが、聞こえない。 「手裏剣、投擲ナイフの類かもしれない」 宗像の言葉に、美奈代は黙って頷くが、 「まさか!行軍演習でしょ?いくらなんでもそこまでは」 さつきが否定を口にした。 「私達を殺す気?」 「ここまで歩かされること自体……私達を殺すつもりだよ」 美晴はそう言うしかない。 「演習用麻酔弾の可能性が高い」 宗像は、さつきの意見にそう答えた。 演習用麻酔弾――― この世界の軍隊や警察では広く用いられる特殊な魔法処理がされた弾丸。 命中すると麻酔をかがされたように気絶するため、そう麻酔弾と呼ばれている。 隊長として、美奈代はその可能性を否定するわけにはいかない。 だから、皆に命じた。 「各員、戦闘態勢」 美奈代は、20メートルほど先にある大岩を指さした。 「―――風間を救出後、そこの岩の影に隠れる」 「了解」 「かかれっ!」 美奈代達は一斉に駆け出した。 「あんた、いい加減にしなさいよ!」 数分後、祷子は全員の前で正座させられていた。 「疲れていたにしても、眠りながら行軍して、コケてもなお眠り続けるって、あんたどういう神経してるのよ!」 美晴が怒るのも無理はない。 余計な体力を使ってまで助けに言ったのに、祷子はその場でグーグー眠っていたのだから、怒るなというほうが無理だ。 「……返す言葉もございません」 うなだれる祷子は、未だにどこか眠そうだ。 「はぁっ……祷子!?帰ったら、全員に酒保でおごりだからね!」 「あっ!私サイダーがいい!」 「アイス!」 「あんパン!」 「私は風間と一晩でいいぞ?」 「宗像……ホント、あんたと同室だけはしたくないわ」 「ん?私は気持ちいいのが好きなだけだが?」 「もういい」 美奈代は渋い顔で言った。 「風間、懲罰として柏の装備を持て。準備が終わったら斥候へ伝令に走れ」 「は……はぃぃ」 「声が小さいっ!」 「はいっ!」 「早瀬、宗像。柏のバックパックを風間のバックパックの上にくくりつけろ」 「ほ、本気?―――ボンクラちゃんが死ぬわよ?」 驚くさつきに、美奈代は冷たく言い放った。 「風間はバテてはいない」 驚く美晴に美奈代は言った。 「単に寝不足なだけだ―――違うか?」 ばつが悪そうに頷く祷子は、バックパックのハーネスを締め直した。 眠いのは本当だけど――― 祷子は肩に食い込むバックパックの重さに耐えながら走った。 パイロット用の戦闘装備といえば、要するには甲冑のことだ。 祷子の全身には、すでに100キロ近い、つまり、祷子に言わせれば祷子二人分の体重+十数キロ(?)の重さがかかっている。 それでも祷子は歩き続けられる。 それは騎士としての肉体の産物以外の何者でもない。 美奈代さんはスゴイ。 祷子はそう思う。 美奈代は気丈に振る舞ってはいるが、もう脚が限界に来ているのは、その引きずり方からして明らかだ。 祷子が見る限り、美奈代は最も体力がない。 あるのは根性だけだ。 だから、真っ先に脱落するのは美奈代だと、祷子はそう思っていた。 ところが美奈代は持ち前の根性だけで歩き続け、周囲への配慮も欠かさない。 祷子に美晴のバックパックを持たせたのも、最も体力が残っていることを、美奈代が見抜いていたからだと、祷子は理解していた。 祷子のこの体力は、幼い頃から続けさせられた剣術修行の賜だ。 祖父に育てられた祷子は、可愛がられると同時に、厳しく育てられた。 神社の巫女の修行の一環としてあったのが剣術修行。 巫女として、山頂にある神社へ朝夕のお務めに行かされていたのも、足腰の訓練になっていたと、今では実感としてわかる。 吹奏楽部に入り、ヴァイオリン奏者として名を馳せた後も続けた日課。 それが祷子の体力につながっていた。 あっ。いた。 森の出口付近。 倒木の影に隠れるようにして向こうを見る二人の兵士が、こちらを見ると手を挙げてくれた。 「お疲れさまです」 「風間さん、どうしたんですか?その荷物」 驚いたという顔で祷子を見る巨人―――山崎が言った。 「この行軍です。足腰、大丈夫ですか?」 「ええ。平気です。ありがとう」 「どっちにしても、疲れたでしょう?懲罰でなければ代わりますよ……はいこれ」 美晴の装備を受け取った山崎がそっと取り出したのは、野苺(のいちご)だ。 「さっき、そこで見つけたんです。酸味が体力回復につながりますよ?」 「ありがとうございます」 にこりと笑って野苺を受け取る祷子に、山崎は照れた笑顔を浮かべる。 「おーお。アツイねぇ。大輔ちゃん」 「つ、都築さん!」 「くすっ。後続がもう体力的に限界です。これがあれば」 「はい。全員一個ずつなら、間に合いますね」 「あっ、それで伝令です。前方に障害はないか」 「ありません。ただし、無線で警告が入っています」 「警告?」 「前方でメサイアの運用訓練中。模擬戦闘も組み込まれているため、事故発生防止に留意せよ。とのことです」 山崎は、そう言って背中の無線機を、その太い指でつついた。 「了解……後方の部隊は無線機を持っていません。伝令、走ります」 「いや……それは必要ないでしょう」 山崎はそう言って、祷子が走ってきた先を見た。 つられて見た祷子の眼に、こちらに向かってくる一団の姿が見えた。 「このバケモノ」 ポツリとそう言ったのは美晴だ。 「あんた、この装備で走れるって、どういう存在よ」 「ははっ……小さい頃から重い物担いで山道歩いていたから、慣れちゃっているんですよね」 「へぇ?所で美奈代。いつまでここに?」 「喜べ」 無線機と地図を相手にする美奈代が言った。 「ここで待機の命令が出た。前方でメサイアの訓練が始まっている」 「へぇ!?」 そう言って身を乗り出したのは光葉だ。 「見たい!」 「見ることは出来なくても、音は聞こえているだろう?」 「へっ?」 両耳に手をやる光葉だけでなく、居合わせた全員が耳を澄ませた。 ズーン ズーン ガーン 鉄を叩く機械が遠くで動いているような音が、森の小鳥たちの声に紛れてその耳に届く。 「あれが、そうなの?」 「そうだ」 一葉に美奈代は言った。 「二宮教官によると、MDIJα-015「幻龍(げんりゅう)」だ」 「幻龍?えっと……あの近衛の標準メサイア?」 「そうだ。いずれ我々が乗る騎体でもある」 美奈代は、眩しそうな眼で、見えないメサイアに思いを馳せた。 「不敗のメサイア。かつて父が駆り、命がけでその名誉を守り抜いた、誇るべき騎だ」 「私達が、それに乗る」 「そのために、私達はここにいるんだ」 美奈代の言葉に、皆が頷いた、次の瞬間だ。 ガギィィン 遠くで鈍い、奇妙な音がした。 いままでとは全く違う音。 それを、祷子は聞き逃さなかった。 「伏せてぇっ!」 祷子がとっさに叫ぶ。 “誰かに伏せろと言われれば伏せろ”と教えられている美奈代達は、その場に伏せた。 ドンッ! 凄まじい音 振動 そして、凄まじいまでの土砂と衝撃が、祷子達を襲った。 「な、何だっ!?」 それまで見えていたのは、広大な演習地ののどかなまでの光景。 それが、何か白い物体で隠されていた。 「……メサイアのシールド?」 あちこち傷だらけになった白い金属物。 それは、間違いなくメサイアのシールドそのものだ。 「ケガはないか!?総員番号!」 一瞬、シールドの制式番号、重量等のデータを思い浮かべていた美奈代は、慌てて全員の安否に動く。 全員いる。 被害はない。 「山崎、待機地点約50メートル地点にS45シールドが落下したと教官に報告!」 「はいっ!」 「宗像、スモークを!こちらの存在を知らせる!」 「了解!」 ピンッ 宗像は、歯で安全ピンを抜いた発煙手榴弾を前方へ向けて投げつけたが……。 「だめっ!―――来るっ」 そう叫んだ祷子の声に、 「何が来る」 というんだ? その美奈代の声は誰の耳にも聞こえなかった。 激震 鼓膜がどうにかなったんじゃないかと疑いたくなるような音。 それらが空気の壁となって全員をはじき飛ばしたからだ。 「……」 「……」 誰も、誰の安全も確かめない。 ただ、目の前の光景に呆然と見入るだけだ。 彼女達の目の前に現れたモノ。 それは、純白の甲冑を身に纏った巨大すぎる騎士。 メサイア。 その重厚にして華美な装甲のライン 気高いまでの雰囲気 単なる兵器と呼ぶには、あまりに美しすぎる存在が、目の前で戦いを繰り広げる。 「これが……メサイア」 誰かが呆けたような声で言った。 「スゴイ……」 全長25メートル以上。 魔法により稼働する世界最強の兵器。 自分達の目標。 それを間近で見つめること自体が、全身の震えにも似た興奮と感動を引き起こす。 「泉っ!」 宗像が叫ばなければ、美奈代はいつまでもメサイアに見入っていたろう。 力任せに肩を掴まれ、揺すられることで、美奈代は現実に引き戻された。 「危険だ!一端、ここを離れるんだ!」 「えっ?」 「相手はこっちに気づいていない!」 「そ、そうね―――全員傾聴!これから500メートル、一気に下がるぞ!」 「了解!」 美奈代の号令は、一瞬だけ遅かった。 対峙するメサイアの一撃を剣で止めたメサイア。 自重100トンを軽く越える重量物同士の激突は、新たな衝撃となって、美奈代達を襲った。 「きゃあっ!?」 「走れぇっ!」 その衝撃を受け、まともにはじき飛ばされた面々は、それでもなお、走り出す。 転んだ双葉と光葉を山崎が両脇に抱きかかえて進むのを前に見ながら、美奈代は走る。 だが――― 「ぐっ!?」 突然、足を取られて、美奈代は転んだ。 木の根に足を取られたのだ。 派手に転び、それでもなお立ち上がろうとしたが、足が言うことを聞かない。 ひねったか!? くそっ! こんなところで! 痛む足をかばうように立ち上がろうとした、次の瞬間。 世界が暗くなった。 「えっ?」 上を向いた美奈代の目に映し出されたのは、自分めがけて振り下ろされるメサイアの足の裏。 滑り止めに走るスリットや、ボルトの穴まで綺麗に見えるほどの近さで―――。 美奈代は声が出なかった。 悲鳴すら口から出ては来ない。 ただ、呆然と、自分に襲い来るモノを見つめること。 それが、美奈代に出来る全てだった。 グンッ! 死ぬ時は、横から衝撃が来る。 美奈代はそう思った。 そう思って、自分の死を覚悟した。 「大丈夫か!?」 張りのある男の声がして、激しく揺すぶられた美奈代は、自分がまだ生きていることを知った。 「……」 あまりのことに呆然とする美奈代の頬を、誰かが叩いた。 「しっかりしろよ!」 それは、美奈代の父の顔だった。 「おとう……さん?」 「はぁっ!?誰がだ!」 さらに一撃。 我に返った美奈代は、自分を叩いたのが、都築だと知った。 「都築?」 「やっと正気になったか」 都築はほっとした顔で言った。 「頼むぜ隊長さんよぉ。あんなところでコケるなよなぁ」 「都築っち。カッコよかったぁ!」 一葉が興奮気味にわめく。 美奈代が見ると、自分の周囲には訓練生全員がいた。 全員無事。 それが例えようもない安心感となって美奈代を包んだ。 「逃げてる最中に、コケた美奈代っち助けに危険省みないで飛び込んでいくんだもん!」 つまり、自分を助けたのは都築ということになる。 「そうか……済まなかったな。都築」 「何」 都築は立ち上がって美奈代から離れようとした。 「おーお!赤くなって」 宗像のからかいに都築がムキになって答えた。 「ち、違うわ!」 「じゃあ」 美奈代の足の応急処置をしていた祷子が言った。 「もう隊長、歩けないのですから、都築さんに負ぶってもらいましょう」 「なっ!?」 「なにっ!?」 都築と美奈代双方が驚いた。 「ほら。もう、私達の中で隊長かついで歩ける人、いませんし、都築さん、元気いっぱいみたいですから」 「おお。それなら」 宗像は、美奈代のバックパックどころか、上半身のパイロットスーツを手早く脱がしてしまった。 ちなみにスーツの下はTシャツ一枚だ。 「装備を軽くしてやろう。山崎、都築の方もな」 「了解です」 「や、やめろ山崎!」 「ったく」 ぶつくさ言いながら美奈代を担ぐのは都築だ。 「隊長ぉ。とんだ災難だぜ?こりゃ」 「すまん」 「ホントだ」 情けない。と思いながら、美奈代は都築にもたれかかった。 不意に、都築の汗の匂いを感じる。 「重く……ないか?」 「重い」 「き、貴様っ!女めがけて!」 「いててっ!隊長、歩けるんじゃないか!?」 「うるさいっ!背負っていけっ!」 「そうですよぉ」 横を歩く祷子が言った。 「隊長、足をくじいてるんですから」 「そうそう。それにノーブラだ」 「なっ!?」 「へぇ?隊長、そうなんだぁ」 「都築君?私の計略に感謝したまえ?」 宗像が意地悪い口調で言った。 「バスト85センチはなかなかだろう?クックックッ」 「これから、お前のことを悪魔と呼んでやる」 「褒め言葉だな」 「あーっ。都築っち。思いっきり前屈みだぁ」 「うるさいっ!」 美奈代は赤面しつつも、都築の背中に不思議な安堵感を感じていた。