約 301,191 件
https://w.atwiki.jp/animeyoutube/pages/1303.html
これ作った人天才すぎるすっすばらしい - 南っちゃん 2011-05-09 22 40 37
https://w.atwiki.jp/nisina/pages/190.html
仁科学ライオン 第三話 Sorrowは早漏で候 「うわああああああああん!!」 叫び声。しかもよく聞き覚えがある声だ。 今日は珍しくもまた音楽室が使える日だった。例の演劇は校内あげての物。いくらか人員を取られているのか、それを口実にサボっているのか。 とにかく、貴重な音楽室を使用出来る事は懐にとってはこの上なく嬉しい事。 それだけに、そこから聞こえる叫び声は恐ろしい。 音楽室から誰かが走ってくる。身長は懐と同じくらいだが、横の幅はケタ違い。眼鏡のボサボサ頭のその男は涙と共に大声で叫びながら走っている。 「うわあああああん!!!」 「トオル!? どうした――」 弾き飛ばされる。100kg超はあるトオルにぶちかましをされれば耐えられるはずもなく、トオルはそのまま走り去る。 その後ろからは、限界まで重力に逆らった髪型をした男が、スティック片手に逝った目で追い掛けてくる。 「っっ待てコラァアアアアア!! 今日こそそのブサイクなツラ整形したるぞおんどれぁ!!」 「広介!?」 いつもの喧嘩だろうか。しかしここまで激しい事は今までなかった。嫌な予感がビシビシする。 このメンバーでもダメか。と懐は思う。こんな事態は今までも何度かあった。もっとも、その時はいつも違うメンバーだったが。 とりあえず流血沙汰はまずい。事件になる前に走ってくる広介にカウンターでラリアットをかまし、素早く背後に回りスリーパーホールドを極める。 昔からヘヴィメタルとプロレスの関係は深い。 「落ち着け偽ヨ〇キ!! 何があった!?」 「誰が偽〇シキだコラァ!! 離せやボケ!!」 「だから落ち着け!! ってうおっ!」 激昂する広介はスティックを振り回す。危険なので絞め落としておく。目が覚めた時には落ち着いてるといいが。 遅れてひろとが現れる。袖口の辺りが破けていた。おそらく暴走する広介を止めようとしたのだろう。その理由はあくまで自分の邪魔をされたくないとか、そんな理由だろうが。 「フン。トオルはうまく逃げたようだね」 「何があった訳……?」 「簡単な事だよ。また広介のバカがトオルにグダグダ言ったのさ。 よせばいいのにトオルも口答えしてね。シンバルが多いとかタムがウザイとか。見た目より中身だとかね。見た目なんて二人ともどっちもどっちだけど。 で、結果こうだよ。殺されなくてよかったね」 「止めたんだろ?」 「一応ね。まぁすぐ諦めたけど。得物もって暴れるバカに関わるほど自信過剰じゃないし」 ひろとはそう言うと手にしたギターのソフトケースを肩にかける。 「帰るのか?」 「もちろんだよ。こんな危険人物と一緒に居るなんて真っ平だよ。 よく考えたらあんあ場所で安物のアンプ使わなくとも自分の家にあるんだ。やる意味がないよ」 「そうか」 「えらいアッサリだね。まぁいいけど。ああ、トオルも辞めるって言って飛び出したよ。まぁ当然だろうけど。 君はどうするんだい」 「わかんねー」 「フン。まぁどうでもいいさ。僕は帰るよ。じゃあね」 コツコツと規則正しく床を蹴る音が響く。 懐はそれを見送る事もせずに廊下に座り込んだまま。まぁいつもの事だ。またメンバーは集めればいい。これだけのマンモス校なら人材はいくらでもいるはずだ。 寝ていた広介がようやく目覚める。 頭は冷えたようだ。状況を説明すると残念そうに帰って行く。それがトオルを仕留め損ねた事に対してなのか、事実上の解散に対してかは知る由もないが。 がらんとした小さな音楽室。実際は楽器の調律に使う為の小部屋だが、バンドの練習をするには十分だ。 メンバーは集めればいい。また。 がらんとした部屋には懐一人。意外と慣れている。いつもそうだったから。 紛らわす為に彼は人に話し掛けまくる。友達だけはたくさん居る。 ”仲間”は、また居なくなった。 懐は叫んでみた。思い切り。 誰にも聞かれる事の無いシャウト。どこまでも高く、どこまでも悲しげな。 ※ 図書館五階、イベントホール―― 今はもう誰も居ない。日はとっくに落ちている。 この時間まで残っているのは仕事に追われた教員くらいだろうが、ここまではやって来ないだろう。 座席の一番後ろの席、そこの一番端っこの席に懐は座っていた。この場所に来た理由は簡単だった。ただステージを見ているのが好きだったからそこに居た。 「さっ……寂しくなんかないもんねっ……フン!」 少々派手に独り言を言ってみる。聞かれるはずはない。 が、世の中、油断大敵とはよく言った物だ。 「……いきなり何言ってんのアンタ……?」 いきなりの声。ホールの床はカーペットになっており、人の接近に気付かなかった。この時間帯にまさか人が居るなどとは想像もしなかった事も、油断を招いた一因。 そこには、衣装を抱えた京が驚いた顔で立っていた。 「何しんみりしてんの?」 「御冗談を」 「いや、泣いてたでしょ」 「何の事かな?」 「いやいや、瞼、思いっ切り腫れてるよ?」 「……見ないで」 はいはいと生返事をして京は横の席にどかっと座った。抱えている大量の衣装はすべて演劇用だろうか。 自分の横の席に置こうとしたが、乗せ切れずに一部は床に落ちてしまった。 「驚いちゃったなぁ~もう。まさかアンタに涙があったとは」 「人を何だと思ってんだ」 「あ~……。ただのお喋り」 「ひでぇな。まぁ実際そうだけど」 「何してるのここで?」 「何でもないですよ。そっちこそ何してんの?」 「そりゃ色々とね。裏方仕事もあるのさ」 「ふ~ん」 しばし沈黙。あのマシンガントークが炸裂しない事は相当な驚きだった。変な心配までしてしまう。 「……何あった訳?」 「何って?」 「いやいや……。アンタがしんみり泣くなんて驚き通り越して気色悪いってゆーかなんてゆーか……」 「さっきからひでぇな」 「そのくらい驚きなの」 「まぁいいけどさ」 「で、どうしたの」 「何でもないって。また解散」 「また? しょっちゅう解散してるみたいな言い草ね?」 「そ。しょっちゅうだよ」 「なんで?」 「なんで? 聞きたい訳?」 「うんうん」 「……ん~。ま、色々理由あったけど……。喧嘩したり意見合わないでクビにしたり逃げられたり。今回は喧嘩。上手い連中だったけどさ」 「それって泣くほどの事?」 「俺にはね」 「ふーん。で、また集めるの?」 「そりゃそうだよ。まぁうまく行かないけどさ。メタルなんて奇特な音楽やりたい奴なんてほとんど居ない」 「なんだ。自分が奇特だって自覚してたんだ」 「当たり前だろ」 しばし沈黙。意外な事に自分を冷静に見てる懐に少し驚く。京にはいくつか聞いてみたい事も出て来た。 一つは奇特と分かっていながら、なぜやるのか。 もう一つ、普段の行動について。 「……今日おとなしいね」 「さっきまで泣いてたんだぞ?」 「ああ、そっか」 「そうだ」 「あのさ、なんで音楽やるの? しかもそのヘビメタなんてさ」 「ヘビメタって言うな。それは蔑称だ」 「そうなの?」 「そうだよ。メタルと言いなさいメタルと」 「じゃあ、なんでそれやるの?」 「そりゃ好きだから」 「なんで?」 「そこまで聞きたいの?」 「うんうん」 「……まぁいいか。俺さ、元々ずっと音楽そのものは好きだったんだよ。中等部の頃まではそれなりに流行りモンの物聴いてたし、楽器だってやった。」 「それで?」 「たまたまテレビでさ、イギリスのバンドの世界ツアーのCMやってたんだよ。ホントたまたま。 そいつらが日本も回っていく事になってた。会場も近くだったし」 「うんうん。で? で?」 「最初笑ったけどね。ハゲたオッサンが何してんだって感じだった。逆に気になるくらい」 「で、チケット取ったんだ。結構簡単だったけど。 今考えりゃCM直後だったからわりと早めに取れたんだな」 「それで観にいったの?」 「うん。で、会場入って一発で後悔した。どこ見てもバンドのTシャツ着たオッサンばっかりでさ。女っ気なんてかけらもない。 その上、加齢臭と汗が混じったとんでもない臭い。ステージの上じゃ五十過ぎた白人のオッサンがピチピチのレザー着込んで立ってる。有り得ねぇと思ったよ」 「と……とりあえず凄そうね……」 「全くだよな。あのオッサン連中も参ってたと思うよ。だってくせぇもん。 でもさ、そこまでして観たいもんなのかとも思ったんだ。 で、その理由はステージのオッサンが歌い始めたらすぐ解った」 「どうだったの?」 「……凄かったんだ。 五十過ぎたオッサンがだよ? 前屈みになって全力で歌ってた。聞いた事ない程のハイトーンでさ。しかも音も外さない。そのまま死ぬんじゃないかってくらいの歌い方」 「……それで?」 「引き込まれた。歌だけじゃない。演奏もハンパじゃない。 あんなのテレビに出てるような連中じゃ絶対できないって思った。 あとはズブズブとメタルの毒が回って、今の有様って訳」 「かっこよかったんだ」 「とりあえず後で知ったらメタル界隈じゃ知らない奴居ないって程のオッサンだった。おまけにゲイだった……」 「そうなんだ。(……ゲイ!?)」 「まぁ馴れ初めはそんなとこ」 「馴れ初めって、恋人かいな」 「似たようなもんだよ」 「ふーん……」 つまりは、懐はヘヴィメタルに「恋」をしている。 そのためにメンバーを集め、少しでもそれに触れたい。 そしてメンバーが離散する事はつまり、恋人と別れたようなもの。 京にも少しだけ理解出来るかもしれない。自分がやりたい事に、命を燃やしている者として。 「それで寂しくて泣いてたんだ」 「泣いてないです」 「ウソつけ」 「ウソじゃないもん」 「あはは。はいはい」 懐の腫れぼったい瞼にはなんの説得力も無い。ともあれ少しは元気になったかもしれない。 「あー……。喋って気が紛れるなんて女か俺は」 「いつも喋りまくってんじゃん」 「そうだな。基本淋しがり屋だし」 「ははは。それこそウソでしょ」 「これはマジ」 「アンタがマジな事言うなんて信じらんない」 「俺はいつだって大まじめですぅ~」 「ウソつけ!」 減らず口が戻って来たようだ。それにはいつもの威力こそ無かったが。 京がとりあえず聞きたい事は一つ聞けた。 あとはもう一つ。 なぜここに居るのか。なぜ、いつもホールに来ているのか。 そこまで聞きたいのか? これが懐の解答。 うん。と京は答える。 しばらく考えた後、まぁいいかと言って、懐はホールのステージを眺める。そして、語りはじめた。 青臭いガキの理想を。 前:仁科学ライオン 第二話:【まぜるな危険】 次:仁科学ライオン 第三話 Sorrowは早漏で候
https://w.atwiki.jp/komica_genesis/pages/25.html
Q:「後悔道路的主人」??? A:這個笨蛋就是後悔通道這個名稱的由來,的意思。 “留下了葵・「托利的後悔」的「道路(托利,同音)」”所以「後悔道路」。 而那個後悔就是「於眼前失去了青梅足馬」,如說明一樣。 Q:為什麼托利一臉蒼白進去後悔道路? A:在煩惱著該不該為了面子交出包裹的正純,為了幫她而突然跳出來,大概吧,原作也沒說明。 P-01s快唱完歌時有一瞬他的吞口水畫面,有一說是指他終於下了決心。 Q:圖書館突然跑出來的那兩隻是……什麼? A:魔法少女バンゾック的床單和抱枕套。 Q:「嶄新的價值觀……!」是? A:原作也不明。 最有力的一個說法是,「在夜晚的學校身穿不審襲擊美少女所得到的感覺」的價值觀。 Q:馬車中的小西的旁邊…… A:小西本人所言的商人,而且是專門買賣 H Game 和動畫的商人。 所以會有動畫商品並沒有什麼異常。嗯。
https://w.atwiki.jp/jojo_haruhi/pages/29.html
『汐華初流乃の憂鬱』 第3話 シャイニングウィザード 語り部:キョン やられた… 空港を出て、さてこれからどうした物かと 考え込んでいた俺たちの前に黒髪の少年が現れた。 彼はタクシーとして市内の観光案内所まで俺たちを連れて行ってくれる…そう言っていた。 ところがどっこい、車に荷物を積んだのを確認すると、そいつはそのまま俺が乗る前に 車を発進させて走り去ってしまった。 さっきまで横にいた警備員は何をしている!? 見れば奴らは横向いて知らん振りしいてやがる。 くそったれが、さっきの金はそういうことか!! 「ハルヒ!?」 俺は叫んだ、そうだ、ハルヒはどうなった? 姿が見えない…まさか! もし、すでに座席に乗り込んでいたりしたら…背筋を冷たい汗が流れ落ちる。 「オイ、ハルヒッ!?」 こんなところで拉致られたらシャレにならん。 複数の男に囲まれて[禁則事項]されたり[禁則事項]されて[禁則事項]が[禁則事項]になったり…冗談じゃねぇーーッ! 「ハルヒーーーーッ!」 「っこらあァーーーッ!!まてぇーーーーーーーっ!!」 怒りの雄叫びを上げながら、ハルヒは車に負けじと物凄いスピードでその後ろを追いかけていた。 … …やれやれ心配無用だったな。 今年のダービーを制したという牝馬はきっとハルヒみたいな奴だったんだろう。 さて、馬とまでは行かないが陸上選手並みの脚力は誇っているハルヒだが、 いくらなんでも生身でアクセル全開の自動車になんて追いつけるはずもなく アイツは道路をまっすぐ行った先で、へたり込んで叫び声をあげていた。 「もうっ!!今度あったら覚えてなさいっ!!死刑死刑死刑、絶対死刑にしてやるっ!!」 ハルヒ怒りに任せて,手さげバッグを地面に叩きつけていた。 「ハルヒ、そんなに早く歩くな」 「うるっさいわね、キョンが遅いのよ!」 ハルヒが不機嫌オーラ全開で、どんどん先に歩いていく。 俺が最初に遅刻して空港に着いた時以上だな 不機嫌力スカウターなんてものがあったら、数値オーバーで機械が爆発しているだろう。 結局俺たちは空港から延々と道路を歩くハメになった。 市内不思議探索イタリア編の一日分位はすでに余裕で歩いたな、これは。 海岸沿いの道路をしばらく歩いていくうちに、ようやく街中らしくなってきた。 海辺に隣接した山間部に、階段状に町が構成され上へ上へと続いている。 これがイタリアの港町か。 ここは港の周辺なのだろう、すぐ横には海が広がりロープで係留された漁船や個人所有のヨットがたくさん並んでいた。 その先に広場になっている場所があったので、そこにあるベンチに座って休憩することにした。 海の見える公園といった所だろう。 近くでは、小学生くらいの子供達がサッカーボールを蹴りあっていた。 「ふぅ、やれやれ…」 「キョン、若いのにだらしないわよ」 無茶言うな。俺は朝、家を出るときから怒涛の超展開の連続だったんだぞ。 お前違ってこんなものが続いたら身が持たん。 「いいわ、ちょっとこの辺り探検してくるから、アンタはそこにいなさい」 ハルヒはあっという間に、広場の向こうへ走り去ってしまった。 やれやれ、少しは落ち着けよ…。 俺は辺りの景色をボーッと見ていた。 右手には山の上へ上へと、階段状に構築されているイタリアの港町が展開している。 一方穏やかな地中海が左手には見えた。 皆は今頃どうしているんだろうか。 朝比奈さんは泣きながら俺たちを心配してるかな。 長門は平然としているかな、それとも情報何とか体の力を借りて唐突に助けに来るかな? そうだと良いんだけどなぁ・・。 そういえば古泉の機関は何をやっているんだろう。 お前ら、ハルヒを見張ってるんだろ、こういう時こそ何とかしてくれよ。 それとも特大の閉鎖空間でそれどころじゃないか?だとしたお気の毒様、だが・・。 広場や町の風景を眺めながら、そんなことを考えている内にハルヒが戻ってきた。 で、不機嫌な顔でまた何か理不尽なことを言い出すかと思ったら、あいつはきょとんとした顔をしている。 「…誰?その子?」 「はぁ、誰って?」 「その子よ、あんたシャツ掴んでるじゃない」 何のことだ、と思ってハルヒの緯線の先を見る。 俺のすぐ横でいつの間にか、小さな女の子が俺の上着のシャツを掴んでいた。 3歳・・いや2歳くらいかな? 大きめの帽子を被ってサングラスをしてるから、顔が良く見えない。 赤いリボンの付いたワンピースを着ているので、女の子だとは思うんだけど。 頬や口元にはファンデーションが口紅がしてある。 こんなに小さくてもしっかり化粧をするのがイタリア流なのか? 「迷子かな、いつの間に俺の横にいたんだ?」 「お父さんか、お母さんは?」 「… …」 「私は涼宮ハルヒ、あなたが掴んでるのはキョン。あなたお名前は?」 「… …」 ハルヒが話しかけると、その子はハルヒから隠れるように黙って俺の後ろに回ってしまった。 「…もう、キョンの方がいいの?」 「ハルヒ、イタリア語じゃないと分からないんじゃないか?」 ここはイタリアだ、日本語を使っても普通は通じないと思うべきだろ。 辺りを見回してみるが、子供を捜している両親らしき人物は見当たらない。 「ねぇキョン、そういえば最初の遅刻の罰金がまだだったわよね」 ハルヒが突然、にやりと笑みを浮かべる。 「あんなのがあったりしたのよ」 ハルヒの視線の先には、落し物でもしたのか、キョロキョロと辺りで何かを探している挙動不振な爺さんが・・・いや、違うアレではないな。 その爺さんのすぐに近くにアイスクリーム屋があった。 …あれか。 「…素直に自分がアイス食いたいといえ」 「この子に買ってあげるよ!あたしの方はついでで構わないわ」 結局お前にも奢るんじゃねぇかよ! 「ほら、早く来なさい」 ハルヒはアイスクリーム屋の方に走りだした。 しょうがない奴だな…というか店員はイタリア人だぞ…ちゃんと買えるんだろうな。 …いや、あいつなら買ってくるかもしれないな。 「ちょっとシャツ離してくれるかい?アイスクリームを買ってくるんだってさ」 やれやれ結局俺も日本語で話しかけてるな。 さて、ハルヒにとんでもない注文をされる前に俺も店に向かおうとベンチから立ち上がった。 その時だ 道路から二人乗りのスクーターがアイスクリーム屋の前の歩道に突っ込んだ。 交通事故ではない。 スクーターは真横を通り抜け、再び道路に戻った。 すれ違いざまに後ろに乗っていたほうの男が、アイス屋の前にいた爺さんの手からカバンをひったくったのだ。 うお…マジかよ。 何か叫んでる爺さんを尻目に、奴らは道路を横断してきた。 広場を通り抜け港の方に脱出する気らしい。 要するに、このままだと俺達の方に突っ込んでくるって事だ。 「ハルヒッ!」 早くも、広場の出口へ向かおうとしていたハルヒと鉢合わせになった。 ハルヒ危ないーーーーーーッ、と俺は本気で思っただが 当のハルヒはというと、逃げるどころか引ったくり犯たちのスクーターに向かって突撃し 「うりゃあっ!」 必殺の膝蹴りを炸裂させていた。 真正面に突撃したハルヒは、スクーターの前輪カバーを土台に駆け上がり 反対側の膝を運転していた引ったくり犯のコメカミに叩きつけるように真横になぎ払うと そのまま流れるように華麗に着地する。 通称シャイニングウィザード、知る人ぞ知るプロレスの必殺奥技一つである。 相手は側頭部に膝蹴りをもろに食らって地面に投げ出された。 「うわ、あぶねっ!」 俺は女の子を抱えて大慌てで横に避けた。 操縦者を失った無人のスクーターがバランスを崩し 後ろに乗っていた男を振り落とすように転倒しながら、こっちに突っ込んできたのである。 スクーターはそのままベンチの方に激突して大破した。 なんて恐ろしい事をするんだこいつは…。 ハルヒは仁王立ちで、倒れた相手を指差しながら得意げにポーズを決めている。 「2度も3度もあたしが悪事を見逃すと思ったら大間違いよ! 暗い闇を照らして邪悪を根絶やしにするのが正義の味方SOS団の使命なんだからね!」 あれ、そういう団体だったっけ? 膝蹴りを食らった引ったくり犯は完全に再起不能だ。 なんせハルヒの破壊力Aクラスのキック力に加え、スクーターで出していたスピードが加算されている。 彼が死んでないかの方がむしろ心配なくらいだ。 ヘルメットを被っていればここまでの大惨事にはならなかったろうに。 安全運転って大事だな。 運転免許を取ったらヘルメットとシートベルトは欠かさず装着するようにしよう。 一時停止もちゃんと止まるし、法廷速度もきっちり守るぜ。 「何だ、アイツだと思ったら外れだったじゃないの」 ハルヒは蹴りを入れた相手の顔を覗き込んでから叫んだ。 あのタクシー少年を見つけるまで犯罪者狩りを続ける気かお前は。 「あたしの怒りはこんなもんじゃないわ!これを機にイタリアの悪を一人残らず駆逐するわよ!」 そのつもりだったようだ…当初の目的がどこかに飛んで行ってる。 「ま、それはともかく。 これはあの爺さんに返しておくからな」 俺は爺さんの財布を取り返そうと、スクーターの後ろに座っていた男の方に近づいた。 こっちも気絶してるよな? ハルヒの蹴りこそ食らってないがスクーターから転げ落ちたんだ。 大ダメージは必至のはずだぜ? が、この辺り俺の認識がまだ甘かったとしかいいようがない。 再三にわたり「大丈夫だろ」で痛い目を見てるんだから学習しておくべきだった。 サングラスの幼女はまだ俺のシャツを掴んで後を着いてきていたんだ。 この状態では、倒れているとはいえ犯罪者にうかつに近づくのは危険だったのだ。 俺の脳みそはカマドウマと同程度だったな。 日本に帰ったらあいつらと軒下でこのことに関して語り合っておこう。 「あwせdrftgyふじこ!」 「うわっ!?」 そいつは俺が近づくといきなり立ち上がってイタリア語で何かをわめきだした。 手には逆手にナイフが握られていた。 朝倉に殺されかけた時の記憶がよみがえり、背筋が寒くなって汗が流れ出てくる。 どうやら彼はまだヒットポイント、もしくはライフゲージが3割近く残っているようだ。 どう考えてもこれはまずい。 あのナイフで襲ってこられたら今度は逃げられそうにない。 それでは俺にしがみついているサングラスの幼女が危なくなる。 あの時は長門に守ってもらったが今度は俺がこの子を…守らないわけに行かないだろうな、この流れだと。 どうする、せめてナイフだけでも何とかしないと! 「キョン!!」 「ダメだ、うかつに近づくな!」 いくらハルヒでもナイフを持った相手に突撃させるのは危なすぎる。 相手はすでに据わった目でこっちにじわじわ近づいてくる。 これは大ピンチだ…そう思ったときだ 突然相手の動きが止まった。 「…っか…はっ… …!?」 それだけじゃない 首に何か絡まったのか息も出来ないようだ。 もっとも、それらしき紐やロープはが俺にはさっぱり見えないが…? 「 ハーミットパープル 隠 者 の 紫 ッ!!」 男はそのまま何かに引っ張られるみたいにして、後ろ向きに壊れたスクーターの方に飛んでいった。 「な、なんだ?」 長門か、長門が来てくれたのか? だが俺の期待とは裏腹に、あの物静かな本好きの少女の姿は見えない。 今ここにいるのは ハルヒと サングラスの幼女と そしてスクーターを追いかけて、ようやくここにたどり着いた爺さんだけである。 ←to be continued
https://w.atwiki.jp/canaan-jp/pages/34.html
Q.あのショタはどうやってカナン達の所に来たの? Q.カナンの共感覚ってもはや何でもありじゃね? Q.結局カナンの能力って何なの? Q.もうちょい簡単に頼む Q.結局ショタは何がしたかったんだ Q.カナンは電子ロックを素手で開けられたのに、何で爆弾のブラフは見抜けなかったんだYO! Q.カナンが壊した張りぼての中にあった箱の中身って何? Q.あのショタはどうやってカナン達の所に来たの? A.ヒント:ユンユンの持っていた箱 Q.カナンの共感覚ってもはや何でもありじゃね? A.野暮っちゃ野暮だがまあそうですな。とりあえず超常能力みたいなもんだと捉えとくのが吉かと。 Q.結局カナンの能力って何なの? A.感覚と脳の処理回路の関係が 常人 視覚→A回路 嗅覚→B回路 聴覚→C回路 味覚→D回路 触覚→E回路 カナン 視覚―┬→A回路 嗅覚―┼→B回路 聴覚―┼→C回路 味覚―┼→D回路 触覚―┴→E回路 こんな感じ つまり例えば視覚から得た情報を他の4つの感覚の処理回路も利用して処理できるんで解析能力が高いと思われ Q.もうちょい簡単に頼む A.・敵味方が色分けされて見える ・暗号とかで重要な部分が色分けされて見える ・感情が見えて相手が撃つ前に銃弾回避する Q.結局ショタは何がしたかったんだ A.自分の兄(第二話で死んだじいさん)を殺したカナンに対する復讐じゃね?という説が。 自分を殺させる事でカナンとマリアの関係を引き裂くのが目的だったんでないかと。 Q.カナンは電子ロックを素手で開けられたのに、何で爆弾のブラフは見抜けなかったんだYO! A.双子弟(ショタ)が突然変異者だった(カナンの能力はそういう輩には効かないっぽい)+爆弾には直接触れてないから、という意見が本スレ(part12/22~27レス辺り)にあり。 Q.カナンが壊した張りぼての中にあった箱の中身って何? A.敵意のあるお兄ちゃん(じいさん)の心臓。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1657.html
462 :森山家の青少年 [sage] :2010/06/21(月) 01 15 48 ID kWMaKB2J 第3話(少年編) 8月末・残暑がつらい昼前 「やぁ、ちょっと遅れたかな?」 適度にクーラーの効いた店内にボーイッシュ(過ぎる)美少女が入ってきた。 アースカラーで統一された目に優しい配色の店内は昼の時間帯から、結構混雑していた。 「平気平気。美鳥(みとり)より10分以上早く来たヤツは居ないから」 6人掛けのテーブルの向かいに座る少女・久堂 律花(くどう りつか)が軽く笑いながら言う。 言い回しをしているが、要は「皆来たばかりだよ」ということだ。 「や、裕介君より遅れてしまうとは。不覚」 「俺ってそんなに遅刻魔でしたっけ?」 「いつも見習うべき模範生だね。」 「言ってることが変ですよ?」 「あまり細かいとモテないよ?」 「・・別にモテなくてもいいですよ」 向かいに座る少女がニヤニヤと下世話な笑みを浮かべていた。 「美鳥と話してる裕介って、楽しそうな顔してるよね~」 「そんなことは無いですよ」 「嘘つけ~女殺しの微笑み浮かべちゃってさ」 「まぁ、私は楽しいけどね」 屋九嶋が笑いながら冗談とも本心ともつかないことを言う。 「・・・なぁ、そろそろ本題に入らないのか?」 隣のイスに座っていた長身の少年が会話に割り込んだ。 長身で細身な体格の少年・日向井 啓(ひむかい けい)は中学からの友人だ。 「ゴメンゴメン、女子にはこういう話題っていい娯楽だから」 「入り込めない世界を構築されたらこっちは聞き流すしか選択肢が無いんだ。こっちの事も考えてくれ」 「んー・・・善処するよ」 「それって遠まわしに無理と言っていないか?」 「うん」 「お前性格悪いな」 「前から知ってるでしょ?」 「・・・・・」沈黙の肯定。 「で、律花さん。今日俺らは何で呼び出されたんですか?」 今度は俺が割って入る。 「あ、そうだね・・ゴホン、本日諸君らに集まってもらったのは他でもない」 物々しい咳払いの後、久堂は両手を広げて尊大な態度で説明を始める。 その大仰な語りと仕草に久堂の軽快な声はミスマッチ甚だしい。 「本日商店街を中心に開催される夏祭りについてだ。・・この祭はこの街に限らず近隣市民にとっても夏の最期を飾る一大イベントとして 毎年約二千人近い祭客が来るとも統計で出ている。当然我々もこの街の住人として参加せねばならぬと思い、こうして皆を呼んだのだが・・・」 「普通に『一緒に祭に行こう』って言えばいいだろ」 啓の発言にクワッ!と目を見開く久堂。 「痴れ物がッ!黙っとれヒョロノッポ!」 古風なのか単にふざけてるのか判らない口調で叫びながら啓の脳天にチョップを繰り出す。 啓は振り下ろされた手刀を受け止め、そのまま捻る。 「誰がヒョロノッポだ、バカ!」 「イタタタタタタ!痛い!い、痛い!ギブギブギブッ!!」 「そのへんで止めてあげたらどうかな、啓君」 屋九嶋の仲裁が入ってやっと収まる。 夏休みでも変わらないいつも通りの風景に思わず苦笑した。 463 :森山家の青少年 [sage] :2010/06/21(月) 01 17 03 ID kWMaKB2J やや泣き目になっている久堂が啓に捻られた手首を摩りながらグッタリしている。 啓は不機嫌な様子で、屋九嶋は久堂を見ながら曖昧な笑みを浮かべていた。 「うぅ・・痛いよぉ・・・」 「黙れ。チョップしてきたお前が悪い」 「啓が酷いよ美鳥ぃ~」 「今回は先に手を出した律花が悪いね」 「うぅ・・・いいもん!裕介は私の味方だよね!」 俺に振られても困る。 「面倒ごとは嫌です」 「うわぁーーーーーんっ!」 テーブルに突っ伏して泣き真似をする久堂。 小柄な体型と童顔が相まって結構愛らしい姿なんだが今はそこはかとなく哀愁を漂わせている。 だんだんしゃくり上げる声が漏れて来る。 本当に泣いていた久堂を俺と屋九嶋で宥めること約十分。 この程度・・って言うのも酷だけどこれくらいで泣き出す久堂の外見どおり過ぎる子供っぽさには少し呆れた。 結局、祭は泣き止んだ久堂の主張で「今日の夜6時半に集合だからね!」と議決。 議決と同時に解散し、各々が家路に着く。 まだまだ活きのいい炎天下の中、自転車を使わなかった事を後悔した。 「自転車だったら風を切って気持ちよかっただろうにな・・」 頬を伝う汗が首筋に落ちる。 「?」 誰かに呼ばれたような気がした。・・暑さにやられて幻聴でも聞こえたか? 「・・・・~~~」 「??」 だんだんと音源が近づいてくるように感じた。 「・に・・~~~」 「に?」 ついでに金属が擦れるような聞き慣れているようで思い出せない音が付随する。 「なんだ?」 音は遂に背後から聞こえた。 464 :森山家の青少年 [sage] :2010/06/21(月) 01 17 37 ID kWMaKB2J 「無視すんなバカ兄貴っ!」 背中に衝撃が奔り、前屈みに倒れそうになる。 バランスを整え、痛む背中を摩りながら振り返るとそこには見慣れた銀色の自転車と和沙がいた。 さっきの衝撃は和沙が停めた自転車を支えにとび蹴りをしたらしい。 和沙が詰め寄ってくる。ただ、怒りは感じるがあまり怖くない。 「こんな可愛らしい妹が呼んでいるのに無視するとはどういう了見だ!、いっぺん冥土の旅へいって来いやゴルァア!」 思わずため息が出る。幻聴じゃなくて良かった。 「可愛いと思ってるなら言葉遣いに気をつけろ。身内ひいき抜きにしてもお前は可愛いんだからさぁ・・」 「っ・・!ちょ・・兄貴・・何言って・・・・・・・・」 何か言いよどんだと思ったら途端に真っ赤になる和沙。いったいどうした、熱病か!? まぁ、自分でも恥ずかしいことを言ったとは思ったが一応本心だ。 しかし俺は断じてシスコンではない。たとえ現実、それを誰も肯定してくれないとしても俺はシスコンではない。 ふと和沙の乗ってきた自転車を見る。 「和沙、何故俺の自転車がここにある?」 我に返ったように顔を上げる和沙。顔はまだ赤い。 「二人乗りしよ♪」 「・・・・・・・・・・・」 「なんでそこで黙るの!?」 体力的には問題無い。例え二人乗りする相手が啓だとしても・・なんか男同士で二人乗りって寂しいな・・苦も無くこぎ続けることができるだろう。 しかしそれなりに田舎要素の高いこの街で妹と二人乗りしようものなら夏休み中には完全に知れ渡り俺のシスコン疑惑を確固たるモノに変えるだろう。 否定ならいくらでもしてやる。・・だが俺と和沙以外の全校生徒相手ではあまりに多勢に無勢。 そんなワケで、 「嫌だ。」 「一言で済まされた!」 「嫌。」 「二文字になった!?」 「面倒臭い」 「それが本心か!見損なったぞ兄貴!シスコンの風上にも置けないヘタレ兄貴め!」 ・・お前もか 某・超誇大妄想狂ではないが自分の認識と周囲の認識の合致によりひとつの現実が出来上がるとすれば、俺が否定し続ける限り俺自身はシスコンではない!和沙がブラコン気味なだけだ! 「じゃぁな」 もう帰りたい。頭から爪先まで直射日光で焼けそうに熱い 俺はまだ真っ白に燃え尽きたくはないんだよ。 「待ってよ兄貴!イヤだよ置いていかないでよ!」 「自転車あるだろ」 「兄貴と一緒に帰りたいんだよぅ・・・」 結局、二人乗りで帰ることになった。俺は相当な甘ちゃんだった。 幸い誰にも見られずに済んだが、もし見られたらどうしようかと気が気ではなかった。 465 :森山家の青少年 [sage] :2010/06/21(月) 01 18 24 ID kWMaKB2J 間章 某日某所・昼前の住宅街 「賢一、ここは何処だ?」 凛とした声が俺に問う。 「親戚の家だよ」 目の前に建っている立派な一軒家。要家の表札。 生活感の感じられない、生活感の存在しない一軒家。 住人は既に居ない。何故か売られることもなく取り壊されることも無く、そこに在る。 躊躇いも無く玄関に入り、靴を脱ぐ。 埃の積もった廊下を歩き、様々な感情を込めてため息を吐く。 既に居ない、顔も覚えていない住人のことを思いながら部屋を見て回る。 自分の手を握る気の強い恋人を視界からはずし、思い馳せる。 466 :森山家の青少年 [sage] :2010/06/21(月) 01 19 26 ID kWMaKB2J 森山大吾は大切なものを諦め、捨て、それでも、せめてもの幸せを守ろうとした。 始まりはとある秋の夜だった。 下腹部に妙な重量感を感じた大吾は目を覚ました。ぼんやりと目を開ける。 重量感の正体は隣部屋で寝ているはずの妹だった。 何のつもりか知らないが、下腹部に跨る妹は目を覚ましたことに気付いていないようだ。 視線を下げ、絶句した。 結合部を晒す自分と妹の性器。 窓から入る外灯の明かりを返すドロリとした液体と一筋の赤。紅。朱。 悪夢だと思った。悪夢だと思いたかった。 体の奥底まで突き抜ける快感が希望的観測を完膚なきまでに否定した。 森山大吾は実の妹に犯された。 大吾は問い詰めた。怒りではなく、悲しみだった。 対して、妹の口から帰ってきたのは愛だった。 間違っている。異常だ。狂っている。 否定の意は決して届かなかった。 一人の学生でしかない大吾に逃れる術は無かった。 翌年、妹の妊娠が確定し 大吾は自分の未来を諦め、実の妹との婚姻に至る。 交際を続けていた恋人とも別れ、噂は尾鰭を付けながら回っていった。 そして枷が外れたように、大吾は狂った妹の要求に応え続けた。 両親は諦観の面持ちで、反対することはなかった。 自分の思い描いた未来は打ち壊された。だが子供には未来がある。 せめて真実を隠し続け、我が子には幸せに思える将来を掴んで欲しい。 可能性はできる限り回避策をとった。 通っていた高校を卒業し、進学とともに妹を連れて県外のマンションに引っ越す。 親族に反対する者は一人も居なかった。事情を知って、ただ諦観の念を露にする。 大学を卒業し、就職。 467 :森山家の青少年 [sage] :2010/06/21(月) 01 20 00 ID kWMaKB2J そして数年後。 安定し二人の息子をもち、軌道に乗った生活。 いまだに時折『要求』をする妻である妹は、再び妊娠した。 そんな折、悲劇の芽は芽吹いた。 一本の電話。 かつて恋仲だった女性。大吾が最初に失った将来。 要 美佐子(かなめ みさこ)だった。 久しぶりに会いたいという彼女の要望に応え、出向いたのが芽だった。 数年ぶりに会った美佐子は百人が百人、目に留めてしまうほどの美女になっていた。 視線が気になり肩身を狭くした大吾に対し、美佐子は堂々としていた。 人通りが無くなった夜の住宅街に辿り着く。 別れ、家路に着こうとした大吾の背後で、美佐子はまるで携帯電話を取り出すように、黒い金属を取り出した。 小さな電光。 背後を気にも留めなかった大吾は一撃で気を失った。 ・・・・・・・ ・・・・・ ・・・ 「おい、起きろ賢一!」 頭を叩かれる。 薄ぼんやりとした視界に白い、というより色素が抜け落ちたような長髪が映る。 「私と一緒に居て寝てしまうとは酷いヤツだお前は!」 「あぁ・・俺寝てたのか。ごめんな、葵。」 そういえばリビングのソファーに腰掛けたあたりから記憶が無い。 「もういい、帰るぞ」 「はいはい、わかりましたよ姫様」 「誰が姫様だバカ!」 また頭を叩かれる。赤くなった葵の微笑ましさになんとなく苦笑してしまう。 「な、何故笑う!?」 夏の夕日を背に浴びて 前を歩く白い髪を見送りながら森山賢一は家路に着いた。 468 :森山家の青少年 [sage] :2010/06/21(月) 01 20 36 ID kWMaKB2J 夕暮れの商店街 祭りの会場である商店街には、既に人の海が出来上がっていた。 シャツの端を掴みながら後ろを歩く和沙。 度々衝突しながら睨み合い続ける啓と久堂。 その様子を見て何か含んだ微笑を見せる屋九嶋。 「・・・・何故付いて来た?」 「兄貴だけじゃ心配だから」 「俺はもう子供じゃないってのに・・そもそも俺の方が年上だろうが」 「まぁまぁ兄妹お二人さん、折角の祭を楽しんだらどうだい?」 いつもの調子で炭酸飲料を煽る屋九嶋。 なんか、こう、女らしさが薄すぎる気がした。 祭の夜は始まったばかりで、先生方や警察官の皆さんも今日ばかりは街に目を光らせている。 時間いっぱい楽しんでおこう。 夜の病院から喧騒を覗く長身と白い髪。 喧騒を離れ、怯えるように部屋に篭る少年。 喧騒など知らぬ顔で何かを画策する少女。 十人十色に夏の最期を飾っていった。
https://w.atwiki.jp/ohayousex/pages/167.html
梅重納戸の受難 第三話_前編 ~夢幻学園2-γ組~ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; それはそれはいい天気で、 それはそれはいい気持ちで、 それはそれは最悪な一日が幕を上げた。 「夢幻学園、ねぇ。えらくそのまんまなネーミングだことで。」 梅重納戸は夢幻学園への道を急ぐ。 無論のこと、登校しているだけであるが。 学園には一応、制服らしいものは用意されているが、それを着なければならないというワケではない。 しかし、あの家にあった服はどれもまともなセンスで選ばれたものではなかったので、俺は今現在久方振りの学生服を纏っている。 それはそれとて。 「しっかし、なんだこりゃ・・・・・・」 基本的に統制がされていない。 梅重納戸はそう感じた。 商店街が広がったかと思えば、荒野が現れる。 館が見えたと思ったら草原が周りを覆い尽くす。 機械の世界が構築されたと思うと氷河期の地球を思わせる。 京の町並みかと思ったらローマの街が見える。 たとえでしかないが、そんなところだ。 東洋も西洋も今も昔も何もかも、古今東西の全ての混濁を飲み込んだ街。 まさにカオスの具現だな、と梅重納戸・・・・・・俺は誰にともなく放った。 「ここが夢幻学園、か。」 俺はその学園の、余りにも馬鹿げた大きさに暫し怯みもしたが、しかし段々と、 そんな非日常に慣れて行く自分を感じて、身震いした。 門を一歩踏み越えれば、そこは学園の法の中。 俺は転入生扱い。 確か2-γクラスに入るハズだ。 ・・・・・・はて、2-γ、というと聞いたことが・・・・・・・・・ 「ドォォォラァァァァア挨拶ゥゥゥ!!オ・ハ・ヨ・ウ・ゴザイマァァアアァァッ!!!」 背中がびりびりと震える感覚に襲われた。 どうやらこの学園では靴箱に靴を突っ込むような暇すらないらしい。 いや文字通りこの男が土足で上がり込み、それどころか校舎を破壊しながら入場してきたのを見るに、靴くらい履いたままでも何も言われなさそうだ。 しかもコイツ上下ジャージだ。 「おお!来たな梅重納戸!!」 男・・・・・・黄朽葉竜胆は、校舎の壁にめり込んだ脚を引き抜きながら叫ぶ。 「ああ・・・今日からあんたのクラスで世話になるみたいだな。」 取り敢えず、今日の帰りに耳栓を購入することは俺の中で閣議決定された。 「ふははは、その通りだ!オレは生徒に優しい男だからな!!突然の転校生だろうが受け付けるゥ!問答不要!!!」 「へぇー、あんたのクラスは欠員が多いから、って聞いたんだけど。」 「むぅ、オレの愛のムチに耐えられなかった男達の事か・・・・・・ッ! 勿論入院費はオレが負担している!ただし経費で落とすッ!!」 竜胆は歯を輝かせている。それでいいのか・・・・・・?つーかそれお前の負担じゃねーだろ実質。 俺が頭の中でツッコミを入れていると、竜胆は「教室で待っているぞッッ!!」 と言い残して炎を噴き出し物凄い速さで走っていった。 「ああ、流石に校舎が壊れるから飛びはしないのか」、とか呟いた自分は、酷く現実離れしているようだった。 とりあえず、校内へ入る。 入ってすぐ、昇降口付近の壁に校内の見取り図の描かれた黒板を見つけた。 今様からこの学校の位置は教えてもらったが、校内は自分で把握しなさいな、とのことだ。 「・・・随分と広いんだな。 初等部、中等部、高等部・・・・・・まあ俺は高等部だし、他の部とは関わらないだろう。」 一人品定めをするように黒板を見、自分の向かうべき2-γの教室の位置を確認する。 「最上階、か。」 二年生の教室で唯一、何故だか最上階にあるそれに疑問が湧きもしたが、しかしそれは俺の非日常を求める心に掻き消された。 要はワクワクしていたのだ。 黒板から目を外し、校内を歩き出す。 いくつかの階段と廊下を越える。 当然、道中で誰かしらの生徒や教師に出くわす。 「・・・いや、だから無茶ですって。」 「は?何が無茶だって?」 「いやその・・・・・・『ルーミアの可愛さを原稿用紙100枚にまとめてこい』なんて宿題が出来ますか?常識的に考えて。」 「ん、どうかしたの?」 「あ。カーペリオン先生!聞いてくださいよ!この人の出しt・・・」 「莫 迦 野 郎 が ッ ! ルーミアの可愛さも語れずして何が俺の生徒か!」 「いや可愛いとは思いますけどいくらなんでも4万字も書けませn」 「問 答 無 用」 「え、いや、ちょ」 「宿題の未提出者には等しく・・・ペナルティを与える。」 「そんな!か、カーペリオンせんs・・・・・・っていねぇぇぇぇえええええええええ!?」 「安心しろ、磔・打ち首・獄門・さらし首・責め苦のどれかから選ばせてやる☆」 「うわぁあああああああああああああああああ!!」 ・・・うわぁ。 なんだか初日からとんでもないものを見てしまった気がする。 たまんないねぇこの背徳感。若干寒気がするが。 黄朽葉とかいう担任も大層異端だと思っていたが、どうやらここはアレくらいが標準らしい。 とかなんとか言ってるウチに着いたようだ。 「・・・なんだァ、こりゃ。」 思わず口を阿呆みたいに開けて見上げてしまった。 目に入るのは“2-γ”の表札。砕けた壁。そこにあるはずの天井。綺麗な青空。 「これが本当の青空教室・・・ってか?」 雨が降った時はどうするんだ、とかそういう考えも、この世界に慣れれば無くなるだろうか。 まあ、今それはいい。 教室の中からは話し声が聞こえる。 黄朽葉が向かったのは職員室である筈だから、今中にいるのは生徒だということになる。 俺は教室のドアに手をかける。無論、この青空教室に入る為だ。 しかし、待った。 転校生である俺がいきなり入っていって良いものか? フツーの学校なら転校生は“自己紹介”とかあるんじゃねぇのか? ココがフツーじゃないのは重々承知だが、教師がいないウチに教室に入ったら、危険ということも有り得る。 普通じゃないからこそ、俺の身は常に危機に晒されているのだ。 それこそ油断すれば、先刻の生徒のように、教師に引き摺られて行くことになりかねない。 ならばどうする? ・・・一応、ナイフくらいは持ってきている。 いざとなったら戦うくらいの覚悟はしておかなければなるま 「ファッッッ!クゥゥハハハハハハハハハハァァァアアアアアア!!!!」 掻き消された。 「フゥゥン・・・そろそろ来る頃だと!思っていたぞ梅重納戸ォ!!」 天国のお母さん、耳栓が欲しいです。 「・・・目が充血してるが、どうした」 「いやァ・・・久々の!転校生だからな!!ワクワクしてワクワクして職員室のコーヒー豆を食ってたらこうなったァッ!!!!」 馬鹿か。馬鹿なんだな。 「で、そろそろ教室に入らなくていいんですかァ?」 「おお!そうだな!!!」 黄朽葉が教室のドアを壊れんばかりの勢いで開く。というか壊れたっぽい音がした。 俺は指示により外で待機だ。まあ途中で入らされるんだろう。 教師・・・黄朽葉竜胆が教卓の前に立った。 次の瞬間だった。 教室にいた生徒───およそ二名が黄朽葉に襲い掛かった。 黄朽葉はその素拳による攻撃を構えもせずに受け、そして咆哮した。 「喝ッッッッ!!!!」 今まで以上に異常な声量、それに加えて発せられた力に、生徒二名が教室後方の壁にまで吹き飛ばされる。 廊下からその光景を見ていた俺でさえ、一瞬心臓が止まりそうになるほどの衝撃だった。 教師の名は伊達じゃないというところか。 「ヨォォシッ!“掟”をシッカリと守ったな!! だぁがッ!まだまだ甘い!!まだまだまだまだまだ甘いッ!!!お前の愛より甘ァァァァアアアアいッッ!!!! そして!!・・・オレの言いつけを守らずに愚かにも着席したままだった不届き者よ・・・我が拳を以って死の贖罪をォォ・・・・・・!」 何やらかなりハイになってしまっていらっしゃる黄朽葉竜胆先生。 それを遮って、教室後方の席より、声が響く。 「はい、先生。」 花のように甘い声だった。 不覚にも俺はそう感じた。 それに落ち着きを取り戻したのか、黄朽葉はその生徒を見やって言う。 「どうした、裏葉(うらは)。」 「制裁するまでもなく、私と後ろのお二人以外は漏れなくさっきの叫びで再起不能みたいですよ?」 その言葉通り、教室内は見る限り地獄絵図のようだ。 声で鼓膜がやられた者、気に当てられて昏倒している者・・・・・・ それを除くと、今発言した裏葉と呼ばれた女子生徒と、平然と起き上がり血を拭っている二名の男女が残った。 「・・・またこの三人しか残らないのか。」 黄朽葉が溜息を吐く。 「仕方ありませんわ!何故なら・・・」 「ボク達以外の生徒は全員!寄せ集めのクズばかりなのだから!」 先程壁まで吹き飛ばされていた二人が、さも日常茶飯事といった連携プレイで格好つけた台詞を吐いている。ついでに変なポーズも決めている。 裏葉と呼ばれた生徒はいつの間にかティーセットを出して紅茶を嗜んでいる。今更驚きもしないが。 しばらく、間があって、ポーズを取るのをやめた二人は何事もなかったかのように各々の席に向かう。 黄朽葉は一気に下がったテンションに突然火が付いたように、陽気に語り出した。 「おお!そうだ!今日は転校生がやってきたぞッ!!!」 「それはそれは・・・」 「骨のある奴だと嬉しいのですがね。」 「お茶がおいしいわ~」 「紹介ッ!しようッッ!!梅重ッ!納戸くんだァァアアアアアアアアア!!!」 ・・・入りずらい。 が、そんな事も言っていられないので、生徒の約六分の五が再起不能状態の教室に、足を踏み入れる。 三人の視線が集まるのを感じる。 「初めまして・・・外の世界から来ました、梅重納戸です。 頭を下げたり“よろしく”なんて挨拶をする気は毛頭ないので、そこを“よろしく”お願いします。」 沈黙。 あの五月蝿い黄朽葉も、ポーズを決めていた二人組も、茶を啜っている裏葉さんは・・・まあ除くとしても、 誰一人として喋らない。無言。無表情。 大しておかしな挨拶をした覚えはないのだが。 しばらく俺が疑問符を浮かべていると、二人組の片割れの男が突然立ち上がり、一人舞台に上がった役者のように、揚々と語り始めた。 「こちらこそ初めまして!丁寧な挨拶どうも有難う! ボクの名前は暁鼠憲法(あかつきねず けんぽう)!学級委員だ、よろしく!」 眼鏡をクイッ、と上げて、得意気にポーズを決めている。 それを聞くなり、二人組のもう片方、女も負けじと立ち上がり、どこかのミュージカルの主役のように、高らかに述べ始めた。 「初めまして!外の世界からやってきたなんて素敵なジョークね! わたくしの名前は蕎麦切白磁(そばきり はくじ)!学級委員よ、よろしく!」 髪の毛をフワッ、と掻き揚げて、得意気にポーズを決めている。 暫く俺が呆れ果てた表情でそれを見ていると、二人はまた何事もなかったかのようにきれいに着席した。 と思ったおよそ一秒後くらいだろうか。 俺の視界は青空に覆われた。 「がっっ・・・!?」 殴られた、と自覚するのに、暫く時間がかかった。 それほどの疾さで、着席した筈の二人の生徒は、俺に不意の一撃を喰らわせたのだ。 「おやおや、威勢は良かったが・・・」 「そんなに強くないようね!」 青空から目を外し、声の主二名の方を向くと、最早言うまでもなく変なポーズを決めていた。 俺はとりあえずグラグラと揺れる脳と体を起こす。 二人はまたもしばらくポーズを決めた後、そのまま着席した。 ・・・油断していたつもりではなかったのだが、やはり俺の力はここでは不足し放題らしい。 反撃を試みるのも無謀そうだ。 その後、菓子のおまけについてくるシールのように、静かに席を立って、自己紹介を始める者がいた。 「初めまして。裏葉柳(うらは やなぎ)と言います。仲良くしてくださいね。」 そう花のように甘い声で自己紹介を終えると、裏葉はこれまた静かに席に座った。 「と!いうわけで中々ユカイな連中だ!仲良くやってくれ!!がっはははははははははは!!!!」 黄朽葉が肩をバシバシと叩いてくる。力が尋常じゃない。明らかにスキンシップの域を超えている。 「安心しろッッ!!俺の授業について来い!!強くなりたいだろう?」 「まあ・・・強くなれるんならそれに越した事は・・・・・・」 「良く言ったァァァッッ!!! よし!暁鼠!蕎麦切!コイツにこのクラスの掟を説明してやれッッ!!」 「いいでしょう!」 「説明して差し上げますわ!」 学級委員二名が待ってましたとばかりに立ち上がる。もうお前ら着席しなくてもいいだろ。 「このクラスの破ってはならない鉄の掟その壱!」 「“武器を使わず、己の身一つで闘争う(たたかう)こと”!」 「その弐!」 「“日常坐臥に自身を高めること”!」 「その参!」 「“オレが隙を見せたらいつでも殺しにかかってこい”!」 「以上!」 「あと、知ってると思うけどこの学園では教師の言う事は絶対。」 「逆らった者は黄朽葉先生が手を下すまでもなく・・・」 「「私達学級委員が制裁致します!!」」 「よし!着席ッ!!!」 ・・・なんともまあ簡潔な事だ。 常識を捨ててるんだか捨ててないんだか分からん。 こんなクラスでやっていけるのか? いや、これでもこの学園ではまともな方か・・・? まあ、いい。 しばらくは日常を満喫しようか。 ここでの“非日常”を模索する為に。 後編に続く
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1693.html
288 :軋んでいく歯車 ◆fyY8MjwzoU [sage] :2010/07/05(月) 00 13 16 ID HP3nHyK7 「おーいしょうへいへーい」 「誰だよ……」 遠くからとある奴が走ってくる。あの毎回綺麗に立っているアホ毛を揺らしながら俺に近寄るのは一人しかいない。 「卓也の前世ー」 「俺の前世がそんな最近の人物の名前じゃないだろ、正敏」 小柄で女の子みたいな感じの男、神崎正敏《かんざきまさとし》である。俺の小学校から親友だ。 チャームポイントは一本だけ目立つように立っているアホ毛。どうやっても直らない。 中学の時の修学旅行で俺が直してみたけど直らなかったからキャラ立てではないらしい。 いつもは女々しいが意外にも頼りになることが多い。俺と会長のドジをよく返上してくれるから大助かりだ。 けど俺と正敏が週間ランキングBL部門で上位に入り始めた頃は死にたくなった。今では気にして無いが。 「卓也~今日は遊べるか~い? SFCのボンバー5やろうよ~僕はあのぶよぶよが好きだよーハンドあると不規則な方向に飛ぶから~」 「う~んそれもいいけどさ。せっかくテスト終わったんだからお疲れさま会しないか? 「いいねえ~ぼくはいくよ~。他に誰誘うの~?」 正敏は基本断らないからうれしい。まあ向こうも時々無茶振りなこと要求するからお相子だな。 「基本は生徒会のみんなかな」 正直一時期の売り上げ確保はこういつだけでも十分いける。将来フードファイターになれるかもと言われた胃だ。 本気で食うと普通に在庫をなくすほど食えるかもしれない。食べた分の栄養がどこにいっているか分からないけど。 あのアホ毛かな。でも今回は広めるのが目的だから一人じゃ意味無いんだよね。 「どうやって呼ぶ~?」 「あー俺が一応声かけるよ」 「あ、そうだ~僕がやるよ~まかせてくりー」 「わかったよ。まあくれぐれも穏便に頼むね」 「あいあいさ~」 289 :軋んでいく歯車 ◆fyY8MjwzoU [sage] :2010/07/05(月) 00 13 51 ID HP3nHyK7 テストが終わり放課後、今日は例の作戦の開始だ。それにしてもどうやって役員集めるんだろうな。 ピンポンパンポン 『えー生徒会です。生徒会です。今日、臨時報告会を開くため暇な生徒会役員は生徒会室に集まってください。 繰り返します。今日臨時の生徒会のみで開かれる報告会を開く予定なので暇な生徒会役員は生徒会に集まってくださいYO! by副会長の代理がお送りしました。では』 ピンポンパン 「あのヤロウ!」 「ふふふ、なんだあの原稿は?」 後ろから般若の声が聞こえた。俺のせいではないのになこれ。 「可笑しいな。ああ、とっても可笑しい。私の許可なしに臨時とは……」 後ろの般若は確実に俺をKillするつもりだろう。肩が掴まれているがこれはかなりの握力だ。骨がきしむ音がしている。 「声は正敏君かな? まったく正敏君も悪乗りが過ぎているな。副会長の卓也の意見しか聞かずにやるなんて」 段々と右肩の感覚がなくなってくる。危険だ。確実にやられる。 「会長。誤解です。本当に誤解です。俺は別にそんなつもりは無いんです」 「いまさら遅いだろ? by副会長って言ってる時点で確実にOUTだな。ああ、可愛そうにここに一人の男眠る。か……」 洒落になっていない。この人は本気だ。本気で俺の魂を刈り取るつもりだ。 「すいません、謝るからゆる……いたいたいたたたたた!!」 肩が壊れている気がする。というかむしろ肩を捥がれている気がする。 「仕方ないだろう。これは生徒会の信用問題なんだからな。こんなバカ一人で評価はがた落ちになるのか。 政治の尺図だな。汚職している政治家が一人でもいれば評判は下がる。そんな感じだな。 だからこういうのはとかげのしっぽのように切るしかないか。腐ったミカンは捨てろともいうしな」 「あ~ただいま~……あ、プロレスごっこ? 大変だね~。それじゃ先に生徒会に行ってるね」 諸悪の根源が会長が俺の肩を外すところをみて逃げていった。あいつあとで半殺しにしないと。 「さぁもっと肩を壊してあげる。反省するまで」 「ぎぃやぁぁああああ!!!」 俺の声が虚しく響く。俺の断末魔の声がなりやんだあと三年生のテストを始める鐘がなった。 290 :軋んでいく歯車 ◆fyY8MjwzoU [sage] :2010/07/05(月) 00 14 27 ID HP3nHyK7 俺が今一番会いたかった愛しの彼はいつもの指定席に座って本を読んでいた。タイトルは『必読!殺人鬼から逃げる方法TOP50。ポロリはないよ』 実用性はあまりないだろう。殺人鬼なんて今この場所には二人しかいないと思うし。とっさに反応できないと思うので。というわけで 「死ねェェ!!!」 「うわ!」 正敏は華麗に横にずれた。攻撃は紙一重であたらなかったが後ろを取っていた会長による踵落としによって床に沈んでいく。 しかしそれが命取りだ。会長の恐ろしさはここからはじまるのだ。 会長は体を捻ってその遠心力を使い蹴りを繰り出した。その蹴りは正敏にクリーンヒットする。 その蹴りは普通の蹴りより威力は桁違いに高いだろう。蹴りがあたった正敏は真横に吹っ飛び壁に激突する。(よい子は学校の壁に人をぶつけたらダメだよ。お兄さんとの約束だ) 壁に激突している正敏。最初はひくひくと動いていたが2分ぐらいたった後動かなくなった。 正敏を壁から剥がして服をひん剥いていく。剥いたあとは掃除ロッカーに入れ、穿いてたズボンから財布と携帯をとりだした。 携帯SDカードを抜き財布からはお金と数枚にカードをぬく。確実に犯罪臭がするのだが気にしない。俺たちは友達だからな。 「やったな会長!」 「ああ、私達の勝利だな」 俺と会長は諸悪の根源である男を倒し幸福を感じていた。こんなにも清々しいなんて思いもしなかった。 「さて」 会長がこちらに向き合う。妙に清々しい笑顔でこちらを見つめている。 俺の心の危険を示す値が赤になっている。これはやばい。確実に。 「諸悪の根源を倒した後必ずしないといけないと思うことが私にはあるんだ」 「会長、それはなんですか?」 俺は落ち着いているように話しかける。ものすごく冷や汗かいてるけど。もしかしたら脂汗もだらだらと出ているかもしれないけど。 「ああ、諸悪の根源を倒しても必ずその意志を継ごうとするものが出てくるだろう。それは大変危険だと思う」 「俺もそう思いますね。こういうのは早めに対処しないと危ないですし」 「だから意志を継ぎそうなやつらを倒すべきだとおもう。ということはだ。次私がやることは--」 ああ、今すぐ逃げよう。俺の人生の灯火が確実に失われる。 「--残党退治だ」 気がついたら俺は般若から逃げるために無意識のうちにフルスロットルで走っていた。 291 :軋んでいく歯車 ◆fyY8MjwzoU [sage] :2010/07/05(月) 00 15 36 ID HP3nHyK7 「ところで集めた理由はなんだ」 俺たちへの制裁が終わったあと生徒会室に戻り集めた理由を聞かれていた。普通制裁よりこっちが先だろう。 「いやー生徒会って忙しいからさ。俺のおごりでお疲れ様会開こうかとおもってさ」 おごりにしなければ今俺の首は吹っ飛んでいるだろう。 「慰安のようなものか。まあそういうものも大切だな。店は決まっているのか?」 「ええ、とってもお勧めなところが一見あるんだ。一応デザートに抹茶系統のものもあったし」 「なら行こう。奢りなら気兼ねしないで食べれるからな」 すいません。遠慮はしてください。さすがに10人前+デザートたくさんはさすがに財布がきついです。 「生徒会の全員で~10人だよね~1万5千円ぐらいかな? 大変だねー」 「まあ俺の500円貯金箱第二号の1割だから気にしなくていいぞ」 「なら遠慮なくゴチになりますよ~遠慮なんてしたらもったいな~い」 正敏は飛び跳ねて喜んでいる。こういうのを見ると男じゃなくて女の子に見えてしまう。 「他の役員が来るまでもう少し時間がかかるかもしれないな。紅茶でも飲むか?」 「お願い~」 「頼みます」 会長は沸かせていたお湯をティーポットに入れ茶の準備をする。 「どうして緑茶は無いのだろうか。私はどちらかといえば緑茶派なのだが」 そうは言いながらも会長はおいしい紅茶を入れている。というか緑茶のみたいなら自分で道具持ってくればいいと思うのだが 「それなら~会長は~どうして紅茶を~入れるの上手いの~?」 「それか? 私は凝り性でろう。緑茶の練習をしているときに思ってな。紅茶の入れ方も上手くなれば緑茶もさらにおいしくいれる方法が見つかるかもしれないと思ったからだ」 その執念が凄いな。自分の好きなことを極めるためなら他のことも吸収するって。 「うーん俺にはまねできませんよ」 「そうかもしれないな」 入れた紅茶を飲みながら会長は答える。 「だけど自分を下卑はするな。私は卓也をきちんと評価しているんだからな。私と正敏を救ってくれたのは卓也だからな」 「そうだね~あはは~懐かしいや」 「いやなんでシリアスな雰囲気に……」 「『自分は役立たずだ』と思っていないか? そんなことはないぞと伝えたいんだ」 会長の言葉にギクリとする。今日のテスト中ずっと考えていたことだった。 「自信をもて。困ったときは頼れ。自分が悪いことしていなければ人はついてくる。私はそう思ってる」 「まあ警察や権力者に~目つけられたら助けてくれる人は極端に減るけどね~」 「それは当たり前だろうな。みんな捕まるって聞いたら手のひら返しそうだし」 「けど、卓也。君は最後までその人の味方をするだろう? 悪いことをしていないなら」 「それは……うん」 「誇れる長所だよ。それは。私は無能扱いにはしない。そして卓也に仇名す人がいたら守るさ」 「僕もだよ~あはは~」 「なんかここの会話だけだと中二病くさくないか?」 「いいじゃないか」 「ね~」 まったくこいつらって変だよな。さすが俺の友人だな。まあ家が普通じゃないしな両方。 「こんにちはー」 どうやら一人来たようだ。俺たちは話をやめみんながくるまで資料整理することにした。 292 :軋んでいく歯車 ◆fyY8MjwzoU [sage] :2010/07/05(月) 00 21 12 ID C8rFDNOR 「いらっしゃいませーって幸一君?」 というわけで喫茶店に着たが愛さんは幸一といっている。俺卓也だけどな。どうしてだろう 「愛さん。俺卓也なんですが……」 「え? だって昨日幸一って名乗った……」 「泣かした~みんな~副会長が綺麗なお姉さん泣かしてるよ~見ものだよ~。そもそも幸一ってーぷくく、人に~中二病っていってるのに偽名って~ぷくく」 おかしい俺卓也って言ってたはずなのに幸一? どうしてだろうな 「ま、気にしないことにします。卓也……さんですね。次もまた違う名前って言うのは無しですよ」 「ええ、さすがにそんな間違えませんって」 「そうですね。えっと10名ですね。ではこちらの席へどうぞ」 俺らは店の広い団体用らしきテーブルに案内された。 「ここはなかなかいい場所だな」 会長が珍しく褒めていた。いつもなら埃があって掃除が粗末とか明かりがたりないとか言うのに 「だね~隠れた名店って感じ~」 正敏はいつもどおりだ。特に変わらない。殆どの喫茶店で言うからな。 「これがメニューです。ゆっくりしていってくださいね」 メニュー3冊をもってきてテーブルに置く。そのときに一緒に水を渡していた。 「メニューが決まったらお呼びくださいね。それでは」 そういうと愛さんはどこかに行ってしまった。俺は会長と正敏と一緒にメニューを何にするか考えていた。 「俺は昨日と一緒でいいなーオムライス上手かったからね」 「私はビーフシチューかな。肉じゃがの原点ともいえるし結構好きなんだ。デザートは抹茶パフェ」 「僕は~そだな~リゾットかな~デザートはあんみつでー」 「ここはなかなかメニュー多いな」 「だね~僕は気に入るかも~」 「だろ。味もお勧めなんだよ」 少し話していると他の皆も大体決まったらしい。 「ほかのみんな決まった?」 確認のために俺は聞いておく。頼み忘れとかあったら少し面倒だしね 「「「決まりました」」」 決めるの早いなー。人のこと言えないけど。 「すいませーん愛さん」 「はーい、何にしますか?」 「デミグラスオムライス1つに魚介クリームオムライス1つ、ビーフシチュー1つ、リゾット1つでパスタのオニオンときのことアサリ。 デザートは抹茶パフェ2つにチョコパフェ1つ、クリームあんみつ2つ。ドリンクは全員特製フルーツジュースで」 「わかりました。オムライスのデミグラ1つにクリーム魚介1つ、ビーフシチュー1つにリゾット1つ、パスタのオニオンときのことアサリですね。 デザートはパフェの抹茶2つにチョコ1つ、あんみつクリーム2つ、ドリンクは特製フルーツですね」 「はい、すいません量多くて」 「いえいえこういう仕事なので気にしてませんよ。では調理に入りますね」 愛さんは厨房に向かったようだ。後姿を見て相変わらずスタイルいいよなーとしみじみ思う。 「さて、料理来るまでの暇つぶしとしてたが。そうだ。今回はテストの慰安とのことなのでテストの出来具合でも聞こうか」 このご婦人機嫌が悪いんですか? 「う~ん僕から言うね~僕はなかなかいったと思うよ。自己採点したけど平均92だった~数学Bが少しダメだったね~」 「あーわたしも数学Bがダメダメだったよーそれにしても正敏さんって結構頭いいんですね」 「そ~でも無いですよ~僕なんてまだまだです。あと自己採点だから少し甘いかもしれないしね~」 正敏に話しかけたのは隣のクラスの腐女子で有名な女の子、伊藤美弥子だった。正敏が好きらしいという噂を聞いたがどうなんだろうか。 「そうなんですか? あ、そういえば卓也さんはどうなんですか?」 俺に振らないでほしい。 293 :軋んでいく歯車 ◆fyY8MjwzoU [sage] :2010/07/05(月) 00 22 11 ID C8rFDNOR 「まあ、待て卓也は最後だからな。私は正敏と同じぐらいだと思う。平均94点ぐらいだな。英作文や文章は一応丸にしているが先生次第ではバツになるから気がぬけないな」 「私は多分平均点スレスレの87点ぐらいだと思いますよー」 美弥子さん。平均点ってそんなに高くないと思います。どっちにしたってどうせ俺には届かない栄光だよ。平均点なんて。 「あたしはそうだなー70ぐらいが高いかなー」 次に答えたのが少し不良っぽい見た目の女子、秋中楓さん。面倒見がよく後輩には姉御と呼ぶ人もいるそうな。たしか好きな人がいるそうだったけど、あー隣に座ってる人だ。 「俺はまだ判断できませんね。自己採点はまだしていないので」 彼はもう一人の会計である若葉雫。インテリの眼鏡でイケメン。俺としばしば話すことがあったが家庭菜園がいける口なので驚いた。 それを知った日から俺たちは家庭菜園仲間になった。じゃがいもとか芋系が好きらしい。あの蒸した芋のほくほく加減が好きだ。とかいってたなー。 そういえばやはりもてるけど告白は断ってるらしい。心に決めた人がいるそうで。それでも告白が途絶えないのはな……ある意味すごいね。女の執念って。明確にして無いから私かもって思わせてるのかもしれないけど。 「そういえば~会長は~告白したんです? 雫くんに~」 「私は雫には興味ないな。私はその……なんだ。気になる奴はいるけど……告白は……」 「だよね~会長はね~凄くにやにやしちゃうよ~」 どうやら好きな人がいるそうだ。やはり会長も人なんだよなー。会長なら告白すれば確実にOKもらえると思うけどな。 「会長。困ったことがあるなら俺に相談してくれよ。ちゃんとバックアップするから」 「「「はぁ……」」」 あれ? みんないきなり溜め息ついたぞ? 「その彼が鈍感という絶対防御壁を持っているのがだるいね~」 「そうだよねーまったくーどうにかならないのかな」 「ああ、アタシもあれは無いと思う」 「俺もそう思うな。壁が分厚すぎるのは困りものだ」 そんなにその人は鈍感なのか。 「なおさら手伝うよ! 絶対その人を振り向かせるの手伝うさ!」 「「「はぁ……」」」 またみんなの深い溜め息。うーんついていけない。やっぱ俺ってそんなに頼りないかな。 「もういい。そこの女子Aはどうだ」 「私イニシャルって適当じゃないっすか! 酷いっすよーあーさんー」 彼女は亜紀 呉《あき くれ》と言う。多分日本探してもめったにいないと思う名前だ。柔道部と報道部とを掛け持ちらしい。というか会長が生徒に生徒会をよく知ってもらうためにいれたそうだ。 「私は今回は70点ぐらいっす。先輩方には追いつきませんっすよ」 正直凄いと思うな。自己主張激しいボーイッシュな奴だ。 他にもいるのだが他は用事があるので帰ってしまった。まあこのメンバー以外はあんまり来ないのでいいと思うが。 「最後は卓也だ。さぁ白状しろ」 「ええっとーその赤点スレスレ……かなぁ?」 なんかシラーっとなった。よくない。この空気よくない 「たくやんってよく副会長になれましたね」 呉さんの同情の視線が痛い。 「卓也さんと正敏さんのカップリング……やっぱりいいね……頭がよくない卓也さんに正敏さんが個人レッスン……そして徐々にエスカレートして……にへへ」 一人変な人がいるかもしれないけど気にしないでおこう。 「まったく卓也は困るな。次の期末テストの時は勉強一色にしないといけないか」 「手伝うよ~」 「まて落ち着け。正敏。俺は勉強しなくても」 「僕は~上からの命令は断りません~」 「なら無理やりするな!」 「それはダメですよ~卓也のためにならないから~」 上からの命令なのに 「あと~会長のほうが位は~上なので~どっちにしろ無理ということで~」 「うわ、いらつく。こいつ」 今日は正敏を殴りたくなる一方だ。珍しい。 「おまたせしました。こちら特製フルーツジュースとなります。食事はもう少ししたら出来ますので少々お待ちくださいね」 ありがとう、愛さん。あなたは女神に見えて仕方がありません。 「それにしても面白い話ですね。そのときは私のお店でやってくださいね」 俺の女神は実は女神の仮面を被っていただけの悪魔だった。
https://w.atwiki.jp/ao-ohanashi/pages/848.html
「やっと見つけたよ、雪華綺晶…」 「何故? いえ、どうやって? あなたがここにいるのですか……蒼星石のマスター…!」 どうやら夢の世界から辿り、あのたくさんの扉の中から正解を見つけられたらしい。 見渡す限りの石畳の中に星空がどこまでも広がる世界。 その中央に十数メートルはある巨大な蓋がない砂時計があり、 よく見るとこの世界の夜空は巨大な砂時計の中に削られているようだ。 星空が絶え間なく漆黒の砂に変えられ、下に落ち続ける砂時計。 その前に悠然と雪華綺晶は立っていた。 「…以前、鏡の中から覗かせて頂いた時から随分印象が変わりましたね……痩せましたか…」 「何、ちょっと体が持たなかっただけだ」 「一体どんな手段を使ってこのフィールドにたどり着いたのです…」 「海外に飛んで買った脱法ドラッグをありったけ試したのさ」 「………」 俺は痩せた体を自分で支えるかのように左腕を右手で持った。 「夢の世界に繋がれば、後はこの指輪と蒼星石との絆が必ず導いてくれると信じていた。 だから、後はどうやって夢の世界に蒼星石やドールたちの協力なしで入るかが焦点だった。 大半はハズレもいいとこだったけど…… アヤワスカによるソーマ・ヨーガ(薬物瞑想)だけは俺を自我の狭間にぶっ飛ばしてくれたってわけさ」 「……………」 「呆れただろうね。でも、俺には前に進む道が無かった。 だから、『道を切り拓く』ことにしたんだよ。 世界の神秘は君たちを作った錬金術や西洋の秘法だけじゃないってことかな」 雪華綺晶が沈黙を破る。 「…いえ、呆れてはいません…ただかわいそうな人だと…」 「傷つくねぇ」 「他意はありません…それで、何をしに来たのですか……?」 獰猛な笑みを浮かべる雪華綺晶。 「…私は器を求めてきました。肉でも無機でもない空っぽの器…… ……そしてそれはミーディアムとドールの絆にあると見ました… エーテルから解放されたアストラル…コーザルのくびきを断ち切ったメンタル…… その素材が自ら来てくれるとは……好都合です… 復讐に狂う心はここまで自らの泉を濁すのですね……かわいそう」 俺も構わず歯を見せて笑う。 「復讐のために来たんじゃないよ」 「…では?」 「君に俺の精神を食ってもらうために来たんだ」 「……!」 雪華綺晶に左手を突きつけるかのように甲を向けた。 「この指輪は、まだ蒼星石との絆としての力を果たしている。 砂漠に落とした針を見つけるような確率で君のフィールドを探し当てたのも、 蒼星石との共鳴があったからと考えるべきだろうね。 君の中に蒼星石は生きている。だったら、俺は君の中の蒼星石に会いに行く」 左手をそのまま握り締める。 「君の中で蒼星石と永遠を生きるんだ」 雪華綺晶は戸惑った様子こそ見せないものの反応が鈍い。 少しの間があった後、 「……正気の沙汰とは思えません…」 と、言い放った。 「…私はあなたの駒鳥を殺した憎むべき雀でしょう…… …そして、あなたを取り込んだ力で他のお姉様たちをも吸収し、至高の少女になる……」 「それは悩んだよ。蒼星石を倒した君は憎みきれないほど憎い。 でもね、真紅たちが君を倒せたとしても蒼星石の精神が戻ってくるとは考えにくかった。 キャンディー・ボトルを無意識の海という混沌の中で割れば二度と中身は戻らない。 だったら……俺は…俺は、君に勝ってもらいたい。君にアリスになってもらいたい」 雪華綺晶が今度は愉快そうに口の端を持ち上げた。 「何にせよ奇妙な形で利害が一致しました… 今日からあなたは私の中に存在し続ける……」 「殺したいほど憎い相手の中で生きるのも嫌な話だけどな」 笑い声こそ上げないものの、さも可笑しそうに口を開けて雪華綺晶は俺に手の平を向けた。 「焼き菓子、フライ、蜂蜜はビーカー……鳴る鐘の音はセント・ピーター…」 俺の右眼が熱く熱を持つ。そして体中に白い茨が絡まっていく―― 「火箸でつまんで火鉢にポン……鳴る鐘の音はセント・ジョン…」 熱と茨に対する嫌悪感が次第に薄れ、再び俺の意識は暗闇に沈んでいった。 街中に一人寝転がっていた。 知っている街並みのようだが思い出せない…… スクランブル交差点の真ん中に寝転がっていて大丈夫なのだろうか。 水を吸った砂袋のように重い体を横に向けると、昼間なのに車どころか人一人居ない。 ああ……じゃあ、いいんだ…誰にも迷惑がかからないなら、このまま眠ってしまおう―― 『……っく…えっく……マスター……ますたぁ…ごめんなさい』 体中が総毛立つような感覚が走った。 自分で手の甲を噛み、刺激で体(と、言っていいのだろうか)を覚醒させる。 今のは蒼星石の声だ! 蒼星石がどこかで泣いている! 蒼星石が、この世界にいる!! 倦怠感を振り切って起き上がると、周囲をじっくり見渡した。 ここは俺のアパートからそう遠くない街、蒼星石と暮らした街だ。 勿論、人が居ないことから雪華綺晶の内包宇宙のようなものなんだろうが…… 俺は自分のアパートに向かって走り出した。 走った。走った。ひたすら走った。息が切れ、もんどりうって倒れても、少し深呼吸をしてひたすら走った。 体が重いのも、記憶が薄くなったのも。 無意識の海から雪華綺晶のフィールドへ、雪華綺晶のフィールドから雪華綺晶の内包宇宙へと 精神が体からあまりに遠くなってしまったからだろう。 だがそんなことはどうだっていい。蒼星石。蒼星石。蒼星石。蒼星石が泣いている。 俺は途中転げそうになりながらアパートの階段を登ると、勢いよく自分の部屋のドアを開いた。 「……! マスター!」 「やっと会えたな、蒼星石……」 駆け寄ってくる蒼星石をぎゅっと抱きしめる。 お互いの存在を確かめ合うかのような長い長い抱擁。 「最初の頃、涙は見せられないって言っておいて。随分泣き虫になったんだな蒼星石」 「だって……マスターはこの世界に居ないし… それに、ここに来てるってことは雪華綺晶に取り込まれたってこと……」 「いいんだ」 蒼星石の涙を優しく拭う。 「もういいんだ。 アリスゲームとか勝者とか敗者とか、何が正しいとか正しくないとか。 もうそんなことはどうだっていい 俺には蒼星石だけ居てくれればそれでいいんだ……」 「マスター……」 「誰にも、何にも邪魔されず、ここで暮らしていこう」 俯く蒼星石。 俺に飛びついてきた拍子に落ちた帽子を拾って髪を指で梳く。 その時に左指の指輪が熱を持ち、薄い光を放った。 蒼星石が驚いた表情で顔を上げた。 「まさか、自分で雪華綺晶に取り込まれに……?」 「雪華綺晶が俺を吸収しに来る前に負けたら、蒼星石が消滅すると思ってね」 「……マスターはバカだよ。僕なんかのために人間を捨てちゃって」 「バカな俺は嫌い?」 そう聞くと、やっと蒼星石に笑顔が戻った。 この笑顔を見るために、死ぬような思いをした気がする。 でも、もう現実のことなんてどうでもいい。 俺の腕の中で笑う蒼星石。これだけで十分。 この幸せが、永遠よりも永遠に続くことを祈った。
https://w.atwiki.jp/majokkoxheroine/pages/119.html
第三話『救世主は悪魔!?』 連春に現れた二人の少女、凛とシャニー。彼女たちがここに来た理由は復讐のため。 だが、正義と平和のためでもある。街の人々が苦しめられているのを見れば、 二人の怒りが爆発する。その結果、早々に正体はバレてしまったが…。 「すごいな、お嬢さんたち!」 「もう、この街で絶望しながら死ぬしかないと思っていたのに、あなたたちのような 人が現れるなんて…この世も捨てたもんじゃないねぇ」 そういって街の人々は凛とシャニーを歓迎した。 街の人々の信頼も得て、幸先は良さそうだと思われた…が、ことはそう上手くはいかない。 ---獄牙の本拠地。毒花とパリアが幽覇に報告をしている。 「…ということです、幽覇様」 「ふむ、奴らの力など恐れるに足りんことだとは思うが、街の連中が一丸となると 少々やっかいか…よし、毒花、例のバイオモンスターを使え」 その言葉に、反応し、怪しい微笑を見せる。 「例の、でございますか……さぞ面白いことになるでしょう…」 毒花が獄牙アジトの地下へと赴く。そこは巨大な研究施設があり、ある種、ありがちな 培養液が詰まったカプセルがいくつもあり、その中にはバイオモンスターの試作品が 何体も眠っている。毒花が来たことで研究員たちは彼女に敬礼する。 「毒花様、お疲れ様です!」 「そんなに堅苦しいことはしなくてもいいのよ…それよりも、例のバイオモンスターは…?」 彼女の言葉に研究員の一人がスイッチを押す。すると、彼らの目の前に床から巨大な カプセルがせり上がってくる。中は、ボコボコと泡立ち、スライムのような軟体生物 二体ほど眠っている。 「いつでも、使うことが出来ます。もちろん、あの能力も持たせてあります」 「上出来よ…それじゃあ、今夜さっそく使うから、よろしくね…」 毒花に了解しましたと告げて、研究員たちは彼女を見送る。 姿が見えなくなると、カプセルの方に向き直り、コンピュータをいじり始める。 電撃がカプセル内に流れ始め、スライムの形が段々と人型へと変わっていく。 シルエットからして女性のようであった。 賑やかな街である連春も、夜が近くなると、中心地から外れたとこから、静かに 穏やかな雰囲気となっていく。大悟の家では、彼の父親が、凛とシャニーを歓迎していた。 「いやぁ、息子を助けてもらったどころか、あなた方はこの街も救うために やってきてくれたとか…感謝感激って奴ですよ」 褒めちぎる親父さんに、二人は少々照れ気味。 「いやぁ、あたしたちにとってもここは故郷だし」 「そうです、そこで苦しんでる人を見捨てるなんてことは出来ませんから」 「今時、立派な娘さんたちだ!よし、今夜はここに泊まっていきなさい」 「え、でも、今日はご馳走してもらいましたし、そこまでお世話になるわけには…」 シャニーが遠慮するが、親父さんは首を横に振る。 「まだ寝泊りするとこも決めていないなら、とりあえず今晩ぐらい、全然良いですよ」 二人は顔を見合わせ、しばらく考えていたが。 「じゃあ、お言葉に甘えて今夜は泊めさせてもらおうかな」 泊まるとこを決めていないのは事実だし、素直に言うとおりにすることに。 「お姉ちゃんたち、泊まっていくの?嬉しいなぁ」 「せっかくだしね。ね、大悟、トランプでもして遊ぼうか」 「うん、いいよ!じゃあ俺の部屋でやろう!シャニーのお姉ちゃんも早く早く!」 「はいはい…」 テンションが高くなっている大悟と凛に少々呆れながら、二人に付き合うことにするシャニー。 しかし、彼女たちが楽しい時間を過ごしている間に事件は起きる…。 連春の中央街。そこの一角にあるホテルに、二人の女の姿が。 一見なんの変哲もない光景ではある。 だが、彼女がホテルにはいってしばらくすると、外から見てても分かるほどの閃光が ロビーから走り、大爆発を起こした。ロビーにいた人たちは、奇跡的に無事だったが その目には憎悪が秘められていた。そして一人の職員が呟く。 「くっ…連春の救世主…違う、さらなる悪夢だ…」 翌日。凛とシャニーは大悟の家を去ることに。 「お姉ちゃんたち、行っちゃうの?」 「いつまでも世話になりっぱなしになるわけにはいかないしね」 「大悟君、獄牙を潰すまで私たちはこの街にいるから、会おうと思えばまた会えるわよ」 シャニーのその言葉に、小さく頷く大悟。 二人は、街の中心街へと向かう。行き交う人々は、昨日と違って何やら、二人を 疑念の目で見ている。 「…シャニー、なんかみんなの様子がおかしくない?」 「そうね…まあ気にしてもしょうがないわ、宿を探しましょう」 気にはなるが、それを振り切り、ホテルへと向かう。 「な、いったいどうしたっていうの!?」 二人が見つけたホテルは入り口から破壊されており、多くの人々が避難のために外へと出ていた。 そして、二人の姿に気づいたホテルの従業員がすごい剣幕の様子で 「お、お前ら!!よくもうちのホテルをぶっ壊してくれたなぁ!!」 「ちょ、ちょっと!どういうことよ!?あたしらは今、ここに来たばっかだよ!」 そんな凛の抗議の声など、届かず周りの人々の怒りの視線は治まらない。 「いや、昨日の夜に、ここに来て、いきなり破壊行動をしていたのは間違いなく あんたらだった!見間違えるわけがない!」 「救世主ぶりやがって!実際はこの街の新たな支配者にでもなろうって魂胆だったんだな!?」 周りから知らないことで責め立てられ、二人は困惑する。 「本当に私たち、そんなこと知りません!」 「まだしらばっくれるか!ええい、みんなでひっ捕らえ!」 抗議は意味を成さず、周りの人は二人を捕まえようと囲おうとする。 「くっ、逃げるよシャニー!」 「わ、わかったわ!」 完全に包囲される前に、二人は建物の上に飛び上がって、屋根伝いにその場から離れる。 追えー!という叫びが響き、民衆は彼女らを追いかける。 とりあえず、人目のつかないところへと大急ぎで逃げてきた二人。 息を切らしながら、凛はシャニーに話しかける。 「はぁはぁ…シャニー、いったい何が起きたんだと思う?」 「う~ん、獄牙の仕業だと思うけど…みんなの誤解を解くには、それをなんとかしなくちゃ…」 二人がどうするか考え中の頃、大悟は街に買い物でやってきていた。 しばらくすると、街の人々が、こっちに向かって走ってくるのが見えはじめる。 「うわっ!?いったいなんなんだ!?」 何が起きてるのか分からない大悟に気づいたのか一人の青年が話しかけてくる。 「おお、大悟じゃないか!」 「ねえ、いったいみんなどうしちゃったの!?」 「お前も知ってるだろ、例の二人」 「二人…もしかして、凛お姉ちゃんとシャニーお姉ちゃん?」 その言葉に頷く青年。 「ああ、あいつらなぁ、救世主のふりして本当はこの街を自分らの物に しようとしてたんだぜ!昨日の夜も、ホテル始め、街の一部があいつらに破壊された」 その言葉に驚愕する大悟。 「そ、そんな馬鹿な!だって二人とも昨日はうちに泊まっていったんだよ?そいつらは 偽者かなにかだよ!獄牙の罠かもしれないじゃないか!」 「なに、お前あいつらを泊めたのか!?じゃあ、お前も同罪だ!!」 ほぼ暴徒と化している民衆は二人を匿ったものだと思い、大悟を捕まえてしまう。 「なんだよ!放せよぉ!」 「うるさい、お前はあの二人への見せしめだ!」 街の中央広場。そこに大悟は柱へと縛られ、くくり付けられてしまっていた。 「悪いが大悟、あの二人が救世主でもなんでもないとわかった時点で、お前にも それ相応の謝罪をしてもらわなきゃいけないんだ」 「くそ~お姉ちゃんたちは別に何もしてなかったぞ!うわっ!?」 反抗的な態度をとる大悟に平手が飛ぶ。 「口答えするな!よぉし、もう一発…ぐっ!?」 殴ろうとした男の腕にどこからか、石が投げつけられた。 石が飛んできた方角を見ると、建物の上に二つの人影が。それは次第にはっきりと見え始める。 「あれは!あの二人じゃないか!」 そう、そこにいたのは凛とシャニーの姿。何故か変身済みである。だが、どこか様子がおかしい。 二人は高く飛び上がり、大悟の目の前に降り立つ。 「お姉ちゃんたち!助けに来てくれたんだ!ね、二人はそんなこの街を 破壊とかなんてしてないよね!?」 大悟の言葉に、二人は黙ったままだ。だが、しばらくして、シャニーが怪しげな表情で口を開く。 「大悟君、私たち、ホテルの破壊とかやったよ?」 「…え?」 何を言っているのかわからないといった表情の大悟に追い討ちをかける。 「だってぇ、あたしたちは本当は獄牙の一員なんだ。だから破壊でもなんでもするよ… こんなことだってねぇ!!」 凛の片手から光弾が飛び、周りの人々のいる地点に命中、爆発した。 辺りはあっという間に大混乱に陥る。 「や、やめてよ!お姉ちゃんたち!」 「大悟、あんた生意気な口を利いてると…殺すよ?」 凛の腕が振り上げられ、大悟は思わず、強く目を瞑る…だが、その時であった! 「ぐわっ!な、なんだ!?」 自分たちがやつたのと同じく、凛の腕に石が命中する。そして、辺りに声が響く…。 「私たちの姿を使い、人々を欺こうとする獄牙…!」 「天はあんたたちの悪事を見逃さない!戦姫転生!!!」 台詞が終わると、ビルの天辺から眩い光が放たれ、それが止み、人々の目に飛び込んできたのは… 「!?…どういうことだ!凛とシャニーが、もう一組現れやがった!?」 そこにいたのは、もう一人の凛とシャニーであった。変身した姿が人々の瞳に映る。 大悟を甚振ろうとしていた方の凛が思わず焦りの表情を浮かべる。 「くっ…貴様たち!」 「語るに落ちたって奴ね!あんたたちがあたしらの評判落としのために街を荒らして いたまではよかったかもれないけど…わざわざ表に出て大悟を始末しようとするなんて!」 「こうなれば、このガキを…!」 「そうはさせない!気功弾!!」 「うおあぁ!」 偽者のシャニーが大悟を殺そうとするが、本物がそれを防ぎ、偽者がのた打ち回っている うちに、凛が彼を救出する。 「大丈夫!?」 「うん、また助けらちゃったなぁ…」 「さあ、安全な場所に逃げて!」 凛の言葉に頷くと、大悟は素早く周りの人々の輪の中に逃げ込む。 そして本物と偽者は静かに並び、対峙する。 「おのれ、陽凛明、シャニー・ハリソン…こうなればお前たちをこの場で消す!!」 「出来るかしら?あなたたちのような卑劣な悪党には、私たちは負けないわ!」 「だまれ!うがあああああ…!!」 咆哮をあげながら、偽者の二人は醜い獣の姿へと変貌を遂げていく。 思わず嫌悪感を抱くほどの。 「うわぁ、こんな奴らがあたしたちの姿を真似てたっての?最悪だなぁ」 「死ねぇ!!」 げんなりした表情の凛に向かってバイオモンスターが飛び掛るが、凛はカウンターで 額に拳を浴びせ、続けて膝蹴りをお見舞いする。 「おのれぇ…!ぐおおおお!!」 「昔から、偽者は本物には勝てないってお約束なのよ!」 シャニーは素早く回し蹴りを連続で浴びせていく。 「天翔拳!!」 そして続けざまに岩をも砕くようなアッパーを浴びせ吹き飛ばす。 「シャニー!とどめといくよ!」 「OK!はぁぁぁぁ…!!」 二人の目の前に、小さな光が集まっていき、段々と形を成していく。 それは、気合の念力みたいなので亜空間から召還した専用武器。 「風斬刀!!」 「ドラゴンブレード!!」 凛は柳葉刀、シャニーは青龍刀を持ち、それに気を集中させていく。 「「聖覇流一刀両断!!!」」 二人の叫びが重なり、同時に飛び上がると一気にその刃を振り下ろし、 バイオモンスターを頭から切り裂いていく。怪物どもは断末魔も残せずに、消滅していった。 「「押忍!!!」」 拳を空いてる手のひらにぶつけ、吼える。終わったのを確認して大悟が二人に近寄る。 「お姉ちゃんたち!よかったぁ、俺、もしも姉ちゃんたちが悪いことしてたら どうしようかと思ったよ…」 周りの人々も、申し訳なさそうに、二人に話しかける。 「す…すまなかった…あんたらは全然悪いことなんかしてなかったのに、話も聞かずに あんな行き過ぎた行動をしちまって…」 「私たち、なんていったらいいのか…とにかくごめんなさい!」 二人に対して謝罪する人々。その様子に微笑んで返す。 「大丈夫、一番悪いのは獄牙の連中なんだから」 「皆さんの誤解が解けたなら、私たちは平気ですよ」 そう言いつつも、二人の心には少しだけ不安は残っていた…。 だが、それ以上にこのような行動に出る獄牙に対して怒りが込み上がるのであった。 次回予告「かつて、凛とシャニーが日本で修行していた頃、お世話になっていた 東雲道場。そこの当主の娘が連春にやってきた!彼女は凛たちに会いたいというだけで 単身やってきたのだが…そんな中、またも人々を苦しめる獄牙。 二人は立ち向かうのだが…!?次回も凛の拳が唸る!」