約 301,189 件
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/158.html
674 名前:毒にも薬にもなる姉 ◆9BssOn5LsM [sage] 投稿日:2007/07/27(金) 15 27 31 ID WQfMW10e 第三話 姉の意図 灯火 光 朝になったら目覚める。これは基本。 じゃあその基本ができない人ってどんな人? ねぼすけとか夜型人間とかは除いて。 もうどうしても起きられない人。 「…何が言いたい。」 「これはあっくーの羞恥プレイ?」 「いや、結論を言え。」 おはようのちゅー 「んぐ、むごごががぁっ!」大喜びだ。 「ぷはっ、舌使いが激しい。」 「少し寝ぼけただけでこれはないだろ!はあ、いっそのこと窒息死させてくれ…。」 つまり王子様はお姫様にキスで目覚めるわけだね。 ふふふふふふ。 675 名前:毒にも薬にもなる姉 ◆9BssOn5LsM [sage] 投稿日:2007/07/27(金) 15 28 38 ID WQfMW10e とりあえず朝ごはん。 あっくーは何だかしおしおしていた。 「ごめんね、お姉ちゃん。」 「うん、ホント激しかった。でも覚悟はもうできてる。でも式は6月にあげたいな~。」 「ほんと昔に戻っちゃった。我慢してたけど。」無視ですか。てかあっくーのチキン。もっと、乱れる喜びをー。 「一人で立派に生きていけるように努力してたけど。」 あれはあっくーが小三の時かな。 それまではあっくーは素直にお姉ちゃん子だった。 蠅がたかるのを除けば幸せだったあのころ。 だけどある日を境に独り立ちして…。 お風呂も一緒に入らなくなった 二人でよりも友達と遊ぶようになった 勉強のわかんないところをとことん自分で考えるようになった 一人で寝るようになった。などなど。 神様、なんで人は成長しちゃうのかな。 「お姉ちゃんだって、僕から離れるために独り立ちしたのに。僕がまた逆戻りしちゃった。」 もう涙目になってきたあっくーを抱きしめる。 あっくーはもう十分強いから大丈夫だよ。 「ううん、弱い。また自分の親から逃げてる。」 「弱いってことが分かっているだけで、自分から逃げていないから強いよ。…て感じのことがなんかの漫画にあったような。」 676 名前:毒にも薬にもなる姉 ◆9BssOn5LsM [sage] 投稿日:2007/07/27(金) 15 29 51 ID WQfMW10e 灯火 芥 とりあえずお姉ちゃんなりの元気ずけをされた。 …まあ、いいや。 そういえば言い方も変えようかな? 姉貴と「あっくー、無駄な事考えない。」ふわぁ! 「あっくーがお姉ちゃんを呼ぶ時はお姉ちゃん以外無いんだよ。ついでに一人称もボクだよ。」 これは従うしかない。 昔自分のことを俺と言い始めたころにはひどい目にあった…。 「そんなことよりどう説得するか考えようよ。」 そこは正論だった。 「いっそのこと無職でお姉ちゃんのヒモになる?」自分から勧める人がいるとは。 10時頃ホテルを出た。 再び家に向かった。 「とにかく、自分一人で頑張ってみるからね。」 「うんうん、強いぞ。」 とにかく話さなければ始まらない。単純な結論に至った。 とりあえず今から向かうことを父に電話で報告。 「おかけになった…」 なんだ、電池切れてるのかな?念のためお姉ちゃんのを借りているのに。 かれこれ五回。無返答。 「もうついちゃったよ。」 あっという間に家の前だった。 さてインターホンを鳴らす。 …無反応。 もしやと思い振り向く。 ポストをみると当然の如く新聞がまだある。 「はいはい、ちょっとどいてねー。」 とお姉ちゃんは二つの太めのクリップを変形させてカギ穴に差し込んだ。 はたから見れば犯罪者。でも仕方ないだろう。 677 名前:毒にも薬にもなる姉 ◆9BssOn5LsM [sage] 投稿日:2007/07/27(金) 15 30 38 ID WQfMW10e 灯火 光 ロックを解除と同時に中に駆け込む。土足のまま駆け込んだ。 薄暗い家の中で人影を探す。居間、客室、台所、お手洗い。 「一階にはいないね。」 「まだ、寝てるだけならいいけど。」 奥へと進む足は焦りを表している。 寝室のふすまを急いで開けた。 「きゃあああああ!」 「どうしたの!」 「あ、あ、あはは、あははは。」 「お姉ちゃん、どうしたの?」 あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは、 はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは。 もはや、笑うしかない、状況だった。 蠅はいなかった。 あるのは、亡骸が、二つ。 すでに二人とも倒れていた。 布団から出てはいたが、床に這いつくばっている。 今日家に着たばかりで、この状況。 今笑わずして、いつ笑おう。 「もしもし、もしもし!」 しかしあっくーは、 「救急車をお願いします。対象者は二名!」 助けを求めていた。 「呼吸はまだあります。あ、あと・・・」 あっくーはそれをもとめるんだね。 「ど、瞳孔は・・・」 じゃあ、そうしようか。 「まぶたが閉じてて・・・」 「患者は二名ともインシュリンの過剰摂取による低血糖と見られる。ブドウ糖とグルカゴンを用意。」 「お、おねえちゃん!」 電話を奪い取り即座に指示を出す。 678 名前:毒にも薬にもなる姉 ◆9BssOn5LsM [sage] 投稿日:2007/07/27(金) 15 31 39 ID WQfMW10e 灯火 芥 覚えていない。 救急車で一緒に運ばれて、まるでドラマのシーンのような治療室の前のソファーで横になっていた。 何があったのか理解できない。それ以外思うことがない。 頭も心もついていけない。涙が出てくる以前の問題。 あれから何時間がたったのかわからない。 30分?6時間?それとも半日?見当がつかない。 自分の中身が空っぽになったみたいだ。 ……たすけて。 「んー、どうしたのかな?」 上から光ねえが顔を覗き込んだ。 「今何時?」 「もう2時だよ、おなか減ったでしょ。ほらほら。」 コンビニの袋からサンドウィッチやらおにぎりやらを取り出す。 「いらない。」正直吐き気がしていた。 「…口移し希望ね。ちょっと待ってて。」 「わかった、食べます。だからやめて。」 消化しやすそうなたまごサンドをもらう。 以外に食べれた。おにぎりを数個もらう。 「大丈夫。低血圧じゃ人はそんなに死なないよ。」 「そう。」そうか、だから光ねえは落ち着いてられるのか。 しかし疑問が残る。 「お父さんは高血圧だったけど、なんで二人は低血圧で倒れていたの?」 お姉ちゃんは少し視線をずらした。 「…ミュンヒハウゼン症候群。」 ミュンヒハウゼン症候群 受験勉強の中でちょっとだけ目にしたことがある。 大雑把に言えば仮病だ。 症状をでっち上げ、病気のふりをして周りの人の注意を引こうとする精神面の病気。(本人は自覚なし) また、薬のあやまた利用で病気の症状を自ら引き起こす人もいる。 たとえば、インシュリン…。 「え、それじゃあ自分でああなったの?」 「二人とも注射のあとがあった。お父さんは当然だけど、お母さんは必要がないのに。」 「そんな…。」 「たぶん私があんなこと言ったから。」 弱弱しく光ねえは言った。 「『自慢の娘』に突き放されたから、注意をひきつけようとして 「だから全部私の責任。」 目は潤んでいた。それでも僕のことだけを考えていた。 見計らっていたかのように手術中のランプが消えた。 679 名前:毒にも薬にもなる姉 ◆9BssOn5LsM [sage] 投稿日:2007/07/27(金) 15 32 17 ID WQfMW10e 灯火 光 あっくーにも担当医師にもお願いして一人きりにさせてもらった。 「いや、まだ三人か。」 意識不明、それが今回の結果だ。 「あなたたちが忌む、あっくーのおかげでこうなったんですよ。」 あの時のあっくーは予想外だった。 まさか自分から救急車を呼ぶとは。 「六年間。その間に考えが変わると思ったら。変わっていなかった。」 まったく救いようがない。 救いようがないのは今も同じと『独り言』をつぶやいた。 ハエのような醜い生物にも長所はある。 生命力。 しぶとさ。 「まあ、不思議ではないですが。」 当然といったほうがいい。 「ところで私は今医者と薬剤師の両方の資格を持ってるんです。この前はお父様のために血圧降下剤を開発していました。 そう、注射では一回一回がわずらわしいですから。たとえば、吸引。粉末状でそれを吸うだけで済む薬。 結果は失敗でした。利きすぎるのです。最少量にしても高血圧が、低血圧になってしまうほど。」 でも最終的には二人のために利きましたね。 昏睡状態から、脳死状態へ。 「あっくーはがんばりました。」 そう、これは私が望んだ結果です。 「それだけはわかってあげてください。」 「それでは」 永久に 「さようなら。」 誰にも切り離せない絆で結ばれた 「私たち二人は」 愛を味わいながら 「支えあい」 この上ない笑顔で 「生きていきます。」 そしてチューブというチューブを切り離した。 680 名前:毒にも薬にもなる姉 ◆9BssOn5LsM [sage] 投稿日:2007/07/27(金) 15 33 10 ID WQfMW10e 灯火 芥 春休み終了まであと一週といったところだ。 四十九日を終えたあと、筑波のマンションに戻ってきた。 時計によるともう五十日らしい。 「あっくー。」 「何、お姉ちゃん。」 「二人っきりになっちゃったね。」 「・・・うん。」 「やっぱしお姉ちゃん、間違ってたのかな。尊厳死なんて。」 「正解がないだけじゃないかな?どっちにしたって。それに・・・」 「先に言っておくよ。頼りたいときはお姉ちゃんを頼って。もうあんなこと…。」 そっか。だからべたつくのか。 一人が怖いから。 明確すぎる理由だ。 「わかった、ありがとう光ねえ。」 背中に寄りかかりながら、時々は甘えようと思った。 それが光ねえの強さになるのなら。
https://w.atwiki.jp/oreqsw/pages/427.html
その後バルバロッサ作戦が始動、ある程度の戦果を上げる。 実はこの際素手で戦車ネウロイを一機体撃破しているが、それはまた別の話。 今回に関しても、自分はチマチマと戦果を上げ続けるだけなのでつまらない事この上なし。 だが次のハルファヤ峠、此処はきつかった。 ソコでの作戦は俺一人だけだった。 先行しハルファヤの超大型設置型遠距離狙撃砲台8基、別名ストーンヘンジを落としてこいとの事。 俺(エスコンじゃないですかー!やだー!しかも俺一人かよ!) ダウディング「さて、今回も面識が有るという理由で今回も君とブリーフィングだな」 俺「俺ウィッチと喋ったこと無いんですよね、どうしてでしょうね」 ダウディング「男だからじゃないのか?」 俺「……ああ……よし、じゃあ姿を変えてやろう」 そう言ってミスティレディの応用で光を屈折させ、周りから見えなくなった後BYDOの能力を利用し。 変身するのは……病弱系のヤツそうそれは…… 俺「スペランカー先◯!」(ソーレハマギレモナク、ヤツサー ダウディング「……頭痛くなってきたので今日は帰らせてもらう」 俺「マジサーセン」 ダウディング「まあキミの魔法(?)とか何かはまあ気にしないが、明日から作戦開始なのでしっかり準備するように」 俺「了解ではおやすみなさいませ」 ダウディング「ああ、お休み」 俺「コレはやめとくか……即死しそう」 結局その後元の姿に戻りその日は就寝。 結局その後空中を漂い漂いお国から数百里、何でも中東にあってかなり遠距離まで狙える超大型兵器らしく。 ぶっちゃけ、ウォーヘッドの位相次元潜行能力が無かったら、少し面倒だったかも知れない。 そんな事を考えつつ、既に北アフリカに到着。 俺「……で、デケェ……」 遠く1km離れても見える巨大な大砲。 そして、全機コチラを確認したようで、突然銃口をコチラに向け射出。 次の瞬間、巨大な質量とエネルギーを伴い、飛んでくるが伊達に未来兵器を使っては居ない。 第一宇宙速度で回避、然し巨大な質量による振動がコチラにまで伝わってくる。 恐らくアレはシールド弾でも防ぎ切れないことはおろか、カスってもマズイと判断。 コチラも先に準備していた拡散波動砲を1基にぶち込み、撃破、残り七基。 俺「クソッ、なんて兵器だよ……」 恐らく一基一基がネウロイであり、尚且つお互いに情報を共有し戦闘する兵器と判断。 レールガンで一基を狙うがチャージ完了した他のネウロイが、コチラに狙って放った砲撃により回避行動をとり。 一基の破壊に失敗、恐らく一発一発波動砲でやるほうが確実だと思われる。 だが一発一発が別の砲のクールタイムを補い、カバーしあっている先に一基潰していなかったら不味かったかも知れない。 俺「ザイオング重力制御システムが無かったら死んでたな俺……」 チャージ完了まで後20秒。 19、18、17、16、15……次の瞬間他の一基の放った特殊榴弾が炸裂、だが何とかギリギリ位相次元に離脱。 8、7、6、5、4、3、2、1、ネウロイは敵を見失い、慌てているのかアチラコチラを見回している。 ソコに現れまた波動砲を放ち、2基目のネウロイを撃破。 俺「2基目撃破!チョロイもんだぜ、その綺麗な砲台を吹き飛ばしてやる!」 現れた時の流れでまた一基をレールガンで撃破、一度離脱し放ってきた榴弾を回避しまた一基、また一基と撃墜。 そして最後の一基に照準を合わせ、レールガンで穴だらけにした後、さらさらとネウロイは欠片化。 ストーンヘンジを撃墜確認、後は撤退するだけだが…… 俺「……ん?」 遠くからネウロイのを確認、だが既に撃破されたのを知ると撤退していったようだ。 俺(……ネウロイも視覚的情報を利用するのか) その後前線基地に退却、今日のを今までの戦果と合わせて撃墜数は601となった。 その戦果を評され、新しい通称を頂きました。 俺「……流石に空飛ぶ筋肉戦艦YAROUはどうかと思うわ」 その後も淡々と撃墜数を重ね1943年末。 ブリタニアの第442連隊駐留基地(43年、一度第100大連隊を解体し名前変更) 8492、ネウロイの悪夢、筋肉飛行隊、衛星攻撃兵器その後も色々な名前をつけられたが。 まあ空飛ぶ黒ブーメランパンツ筋肉兄貴オッスオッスよりはマシか…… 結局今年も一人身だったなぁ(部隊人数的な意味で)なんて事を考えていると。 次の瞬間ドアをこんこんと叩く音がする、取り敢えずどうぞと言って人を中に引き入れる。 ミーナ「失礼しmブッ……」 勿論最近は男しか来ないので、基本的には黒ブーメランオンリーで生活していたスキンヘッドマッチョ。 其れが元帥の席の上で胡座をかいて、ココアを飲んでいる。 勿論そんなものを見たミーナは勿論というべくか、かなり困惑した表情を見せる。 俺「……あー女性さんか、少し外でてもらってて良い?」 ミーナ「え、あ、はぁ……」 バタン、という音と共に取り敢えず、姿を変えることにする。 基本的に、女性には女性の姿で取り合うことにしている。 理由は187cmのムキムキマッチョマンで話しかけるとかなりの確率でビビられるからだ。 取り敢えず、黒髪ロングの黒目に黒地のスーツ、薄い白肌でか細い印象、身長は156cm程で体重は42kgに設定。 大幅な変化はゼリーのようにドロドロになった後、変化するため見ればSAN値がガリガリ削れる事間違い無し。 前にスペランカー先生の時の偏光霧はどうしたって?一々そんなん出してられっか! 俺「はいどうぞ」 ミーナ「は……えっ?」 いきなり現れた別人に驚いたのか、再び戸惑いの表情になるミーナ。 ミーナ「……あの、今の男の人はどちらに?」 俺「私だ」 ミーナ「は?」 俺「まぁ、何でもいい造形等は、まあどうでも良いことだと思わないかな?」 ミーナ「はぁ……」 俺「それで何用かね?」 ミーナ「いえ、ですが『俺元帥』は男性の方だと聞いていますが」 俺「分かりやすく言おう、『俺元帥』に性別は……まあ無いと思ってくれて良い」 ミーナ「判りかねます」 俺「まあうん、さっきのムキムキマッチョマンも今此処にいる私も全て『俺元帥』である」 ミーナ「固有魔法……ですか」 俺「まあそれでいい、詳しく言うと魔法だとか、手品だとかそんなチンケな物ではないが……まあ本当にどうでもいい」 まあ説明しても意味分かんないだろうしね。 ミーナ「はぁ……では要件を言います、コチラに居る442連隊を世界中のウィッチと合わせ」 ミーナ「此処に連合軍第501統合戦闘航空団通称「STRIKE WITCHES」を編成する趣旨をお伝えしに来ました」 俺「……はぁ、まーた連合の命令か……メンドイなー」 ミーナ「そう言われましても……所で442連隊についてですが、他のメンバーは何処に?」 俺「連隊もクソもないが……まあ、私一人だよ、ワンマンアーミーってヤツだ」 ミーナ「……はっ?いえ、ですが、連隊合計ネウロイ総撃墜数は800を超えており……」 俺「まあそれもそうか、小型機が多かったしね、決して倒せない敵ではなかった」 俺(ってか、私一人しか居ないって伝えなかったのかよ) そう言って、机の上の少しぬるめの、丁度いいココアを飲む。 やっぱり砂糖は4杯程が良いのか、と思いつつミーナをまだ名前聞いてないなー、とその時は思いつつ見つめる。 俺「所でキミ、名前は?」 ミーナ「ミーナ、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐です」 俺「んで、他のメンバーは?」 ミーナ「今それぞれ、コチラに向かっているそうです」 俺「へぇー」 ミーナ「資料を参考にした上で付かぬ事をお聞きになりますが……おいくつ何ですか?」 俺「……まあ少なくとも1500年代から生きてるしね……まあ500歳は超えてるんじゃないかなァ!?」 ミーナ「(何でこの人語尾を強めたんだろう……)……嘘ですよね、渡された資料にも年齢不詳とはありますが?」 俺「……まあ少なくとも、こんなボロボロの生年月日確認書も役に立つもんだ」 そう言って胸ポケットから出された天正14年、皇紀2246年、西暦1586年の南洋島、太閤検地の際の写真である。 侍のような人と一緒に映る、筋肉ムキムキマッチョマンのブーメラン男。 作っててよかった、デジカメとプリンターセット。 ミーナ「……」 俺「……そんなジト目で見ないでくれよ、コレでも善良な市民なんだぜ私は」 ミーナ(胡散臭っ) 俺「さて暫く空き家だらけだったこの基地だが、何人来るのかね?」 ミーナ「私と合わせて9人だと聞いてますが……」 俺「10人位か、何だか多いんだか少ないんだか分かんなくなるな、何分今まで一人だったしね」 ミーナ「少ないですよ、少数精鋭なんですから」 俺「そうか、少ないのか、多いほうだと思ったんだが……」 そんな事を考えつつココアを一口、うん、旨い。 ミーナ「所で……その、通称なんだけど」 俺「通称がどうした?」 ミーナ「空飛ぶ黒ブーメランパンツ筋肉兄貴オッスオッスは変えたほうがいいと思われますが…」 俺「開戦時から其れなんだよね、いい加減私も変えたいわ」 ミーナ「そうね……うーん、ティンダロスの猟犬ってどうかしら?」 俺「それ私腐臭しまくりじゃん、嫌がらせ?」 ミーナ「そう……うーん、ゲロシャブ……」 俺(自分で考えたほうが安全なような……) ミーナ「空飛ぶダンディマッチョ!」 俺「なあ、筋肉から離れないか?」 ミーナ「そうね……じゃあ……マキシマムマッチョ」 俺「離れるどころか近づいてるじゃねぇか!」 ミーナ「イイじゃない、マッチョ、ふふ」 可愛いからふふっ、って言えば良いってもんじゃないぞ…… まあ空気は大分解れたし、まあよし。 俺「よし、決めたミラクルおr……やっぱやめた」 ミーナ「?」 俺「いや、その名前は早死しそうだし、辞めよう」 ミーナ「はぁ……不定形侵食生命体俺兼元帥なんてどうでしょう」 俺「それってそのまんま私を名指ししてるようなもんだよね、てかクトゥルフからも離れない?」 ミーナ「あら失礼」 俺「こやつめハハハ」 ミーナ「うふふふ」 俺「扶桑の最終防衛システムでいいや」 ミーナ「それでいいんですか?」 俺「其れの方が戦後元鞘に戻りやすそうだし」 ミーナ「まあそれでイイんなら、良いと思いますが」 さてどうしたものか、後で一人一人面接して所属特徴などを掴みたいが…… まあ、兎に角だだっ広い基地の中で一人ぼっちは避けれそうだ。 俺「後で来た順に私の部屋に通して面談した後、適当に部屋に分けていってくれ」 ミーナ「今更面談なんて必要ですか?」 俺「適当に喋っとかないと、後々いざ話したら…ってのもアレだしな」 ミーナ「まあ其れもそうですね、後々お通ししますね」 俺「そしてミーナ君、今一番の問題はだ、お腹が空いたって所か」 ミーナ「あら、ソレなら何か料理を……」 俺「いや大丈夫だ、今から作ってくる」 ミーナ「そうですか、じゃあお待ちしてますね」 アレでも気を使っているように見える、取り敢えずパスタでも作るか。 水は小型浄水装置、通称G.E.C.Kがあるので無限にあると言ってもいい。 故に何となくトイレは全部ウォシュレット付き、水は全部風呂水でも飲める素敵仕様。 砂漠でパスタ作っても大丈夫、イタリア軍が強くなるよ、やったねムッソリーニ。 ついでに風呂場も地味に電気沸騰させた水と、普通の水の二種類が出せるようにしてある。 尚さっきいた部屋は食堂の隣である、理由?食堂と便所と風呂と部屋にしか使わないのに離す理由がない。 俺「冷蔵庫は自前、というか城を改築したの私超頑張った私、命令したのダウディングのオッちゃん」 俺「大親友がパスタの私、一人で笑って楽しいね」 俺「今日は取り敢えず肉でいいか」 俺「……取り敢えず2人分」 俺「肉……肉、そうだ、鳥を軽く焼いて、そうだなトマトでも……」 俺「……よし!」 鶏ささ身のスパゲッティ、スパゲティを作りそこに炒めた鳥のササミを一口サイズに切って投下。 トマトをひねり潰し、炒めて半液状にし醤油とソース、胡椒、固形ヴィヨンで味付け。 あっという間に手軽なパスタ2人前完成、取り敢えず簡易充電電池コンロごと隣の部屋に運び、他の人を待ちつつ食べる事に。 ミーナ「美味しそうなパスタ……と其れは何かしら?」 俺「気にするな、簡易コンロだ」 ミーナ「其れならいいんだけど」 そんな事を言いながらパスタを食べる、何でも恐らくもうすぐフランチェスカ・ルッキーニ少尉が到着するとのこと。 俺「どんな子なんだい、いい子だといいんだけど」 ミーナ「少しヤンチャな子らしいわ、けれど12歳だし仕方が無いのかも知れないわね」 俺「12ならしょうがないな、まだ小学校とかの年齢だろうし」 ミーナ「それにしても、此処の電気施設は見てみたけど随分色々あるのね?」 俺「まあ、色々改造したしね、もっとも私以外が弄れないようにプロテクトは掛けてあるけど」 ミーナ「そう……あら?」 外からエンジン音がする、輸送兵が届いたのだろうか。 ミーナ「では俺元帥、様子を見てきます」 俺「ああ、行ってらっしゃい」 俺(……てか食べるの早いな) 暫くズルズルスパゲティを食べた後、遠くで子供の楽しそうな声が聞こえてくる。 少しミーナ中佐が困っているような気がしつつスパゲティを食べ終え、皿を机の上から食堂の流しに置き。 その後部屋で待つ、先程地味に渡された資料によると天才的戦闘センスだが、子供らしさが抜け切れ無い悪ガキ。 とのことだが、まあお菓子とかで釣ってみるか? 次の瞬間、ドアがノックされ2秒後小麦色の健康的少女が入ってくる。 キョロキョロと忙しなく色々なところを見ており、落ち着きの無い様子だ。 俺「お嬢ちゃん、お菓子好きかい?」 ルッキーニ「お菓子好きー!くれるの?!」 次の瞬間ミーナ中佐が叱ろうとするも、其れを目で制し、ふと自分の部屋の小型冷蔵庫からポッキーモドキを取り出し。 15本ほど与え、キラキラした目で其れを受け取ると、直ぐ様ポリポリと食べ始めた。 予想通り腹でも空いてたんだろうか、まあ子供だしそんなもんだろう。 ルッキーニ「ニヒヒーお姉ちゃんありがとう!」 俺「さて、君には明日から此処で、ネウロイを撃墜するお仕事に付いてもらうが、どうだいできるかい?」 ルッキーニ「うん!」 俺「よし!良い返事だ!今日はミーナ中佐から部屋を教えてもらったら、後から来た人と遊んでて構わないよ」 ルッキーニ「はーい!」 俺「後、お菓子は座って食べること、いいね?」 ルッキーニ「はーい!……所でー」 次の瞬間、いきなり胸を鷲掴みにすると、揉みしだき始めた。 ミーナ「」 ルッキーニ「……ざんねんしょー……」 俺「おっきいほうが好きかい?」 ルッキーニ「うん!マンマも大きかった!」 俺「よし、ちょっとまっててね……」 意識的にはどの位大きくしようか……Dか? 次の瞬間、見る見るうちに大きくなっていくおっぱい、其れに合わせてバランスを取るため身長体重も合わせ。 身長165、体重52の黒髪Dっぱいに変更。 ミーナはかなり唖然とした表情でコチラを見ているが、まあルッキーニもコレくらいなら満足するだろう。 ルッキーニ「わぁぁー!!すごいすごーい!」 ミーナ「それで良いんですか俺元帥……」 俺「まあ其れくらいで満足するなら構わんよ、」 ミーナ(扶桑の人間ってあんなんばかりなのかしら……) ルッキーニ「ふっかふっかおっぱいー!」 俺(……少し擦れ、あふん) 一通り触ると、少し諦めた感のあるミーナと共に部屋に向かうルッキーニ。 何でも、志願兵でネウロイを倒しに来たらしい、祖国を憂うというよりは家族の為なんだろうなぁ。 一息つきながらぼーっとしていると、次の人が届いたのか小走りの足音が聞こえる。 そして数分後、ドアをノックし次はミーナと……二人組が入ってくる。 バルクホルン「ゲルトルート・バルクホルン大尉です!」 ハルトマン「エーリカ・ハルトマン……ふぁああ……」 ハルトマンの方はかなり眠たそうな様子で、恐らくさっきまで飛行機の中で寝てたのだろうか。 ソレを見てバルクホルンの方はかなりご立腹の様子だった。 バルクホルン「ハルトマン!お前は……!」 俺「えーっと、バルクホルンに……ハルトマンね、よし分かった」 バルクホルン「……?」 俺「ネウロイ、倒してくれるかなー?」 ハルトマン「良いともー……」 バルクホルン「なっ……!俺元帥!そんな上司でこの最前線基地の主任が務まりますか!シャキッとして下さい!」 俺「私元帥だけど普段民間人だから無茶言うなよ……」 バルクホルン「……ッ!」 俺「まあ落ち着けって人には人のノリがある」 俺「其れを崩してまで無茶をしてくれ、とは言わん、自分のペース、流れで任務をこなしてくれ」 バルクホルン「クッ……わかりました」 俺「まあ、私もソコまできつくは言わないが……ハルトマンもソコソコ節制のある生活を送るように」 ハルトマン「ふぁーい……」 俺「……出来ない場合、罰ゲームが待っているので心して掛かるように、以上」 ハルトマン「えっ」 少しハルトマンは驚いた様子だったものの、ミーナに連れられて二人は部屋を後にした。 ……やべぇ、バルクホルン大尉履歴書見たけど、少しシスコンの質があるなコレ。 今度ロリ姿で接近してみるか?……やめとこ。 俺「あ……ココア切れた」 俺「こういう時はココアメーカーでも作っときゃ良かったかな、って何時も思うけど造らないんだメンドイからかな」 そんな事を言いつつ、ココアの粉を引き出しから取り出し、砂糖と混ぜ。 後ろの小型冷蔵庫の上のポッドからお湯を入れ、小型冷蔵庫の中身の牛乳を混ぜる。 俺「私猫舌だから、熱いままのは飲めねぇんだよなぁ……」 俺「……うん、美味い何かBGMでも掛けようかな……お、コレは……」 そんな事を考えつつ、音楽再生機の画面に表示された曲名の一つを押す。 『私は私の故郷で暮らしを営む、この愛しい人々と優しい人々を愛している』 『だって彼らは、貴方を決してガッカリさせないから…』 俺「……暫くはコレで行くか」 シャーロット「おや、なにかイイ曲が聞こえると思ったら、此処は音楽室ですかなー?」 そこにいるのは身長は167cm、体重60kgの今の私のおっぱいすら負けそうなグラマーなおねーさんだった。 俺「おや、ミーナ中佐とは会わなかったのかい?」 シャーロット「いやー、ストライカーで来たから気づかなかったのかも知れません」 俺「まあそれならいいんだが、ネウロイやっつけてくれるかなー?」 シャーロット「いいともー!」 俺「よし良い返事だ、このトッポモドキでも齧りながらミーナ中佐を探して自室を決定してくれ」 シャーロット「わーりゃーしたー」 俺「……あ、そうだ、ルッキーニ少尉とも仲良くしてやってくれないかな、あの子は子供だから」 シャーロット「へ?まあ私は構いませんが、どんな子なんです?」 俺「おっぱいが好きな女の子だよ」 シャーロット「ハハハハ、まあ取り敢えず会ってみます」 俺「ああ、そうしてくれると嬉しい」 シャーロット「それでは失礼します」 そう言って楽しそうにポッキーかじりながら、シャーロットは部屋を出て行った。 うん、いい感じの人だな、まあ一本筋の通った威勢のいいヤツだよなぁ。 さて後4人か、ボーっとしているとコレまた飛行機の音が聞こえる。 俺「あー来たかなー」 数分後ドアをノックして、二人の少女と後ろからミーナが入ってくる。 エイラ「エイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉だゾ」 サーニャ「サーニャ・V・リトヴャク中尉です、よろしくお願いします」 俺「あゝ宜しく、ネウロイやっつけてくれるかなー?」 エイラ「いいともー」 サーニャ「いいともー…」 俺「よし、ところでポッキーゲームって知ってるかな?」 エイラ「何なんだ?ソレー」 俺「ここにポッキーモドキがあります、二人で君たち二人で両端から二人で食べて、先に口を離したほうが負け」 ミーナ「ブッ」 エイラ「なっ、ななっ」 サーニャ(……エイラとなら……) 俺「取り敢えず、そんなゲームがあるって事だけ教えておきます」 俺「そしてコレは偶然ですが、此処にポッキーモドキが一箱偶然あります……コレは君たちに上げましょう」 エイラ「」 サーニャ「……」 エイラ「……きょ、今日ダケダカンナー……」 ミーナ中佐がコチラを笑顔で見ていた、今日私は死ぬだろうな。 だが反省はしていない、資料には二人はお互いに『非常に』仲が良いと書いてあった、ソレの他意の確認のためであって。 ただ何となく、あの二人が初々しくもポッキーゲームやらないかなー、なんて事はない、多分。 さーてポッキー後で作らなきゃなー、まあ作るのは簡単なんだけどな、機械作ったし。 俺「……ふぅ、も4時か……」 今日一日は大分のんびりしている気がする、ここ最近出撃、撃墜を何かいかやってたしもう報告するのもメンドイよ。 すると、また飛行機の離着陸の音がする、次は誰だ? 数分後凄く引きつった笑顔のミーナ中佐と、はっはっはっと笑う豪快な少女、そしてお嬢様風少女が現れた。 坂本「坂本美緒大尉だ!」 ペリーヌ「ペリーヌ・クロステルマン中尉ですわ」 俺「さて、ネウロイ倒してくれるかなー?」 坂本「いいですとも!」 ペリーヌ「いいt……いいですとも!」 俺「よし、後別にいいともーでも、いいですともでも、どちらでも構いませんよペリーヌさん」 ペリーヌ「なっ……うぐぐぐ……」 坂本「ハッハッハッ!まあ宜しく頼みますよ俺元帥!」 俺「よし頼まれた!今日はストライカーがない為、戦闘任務は全員有りません、各自休息を取ってください」 坂本「了解しました」 ペリーヌ「了解ですわ」 俺「今日はミーナ中佐に従って各自部屋で休んでおくように、後ミーナ中佐はソレを各自に伝えといてください」 ミーナ「わかりました……それと俺元帥あとで話が」 俺(あわ、あわわ、あわ、慌てるなコレは孔明の罠だ) その後ミーナ中佐が部屋を出たのを確認後、格納庫に走る。 電気は全部充電電池で、一週間は持つようになっている、要はちょっと逃飛行。 格納庫で内部無線を開き、少し考えた後連絡放送を告げる。 俺「緊急ネウロイ捜索任務発令!俺元帥は直ちにネウロイ撃墜に向かってください!」 ミーナ「なっ!」 俺「その他の人員は今日はお休みです!楽にしててください!では!」 ミーナ「待てー!」 その後ミーナ中佐が来る前に空に飛び立つ私、一人でネウロイ撃墜して何が悪い。 第一宇宙速度で城を尻目に、ドーヴァー上空に来ると、マジでネウロイを発見。 富獄よりは小さいものの今回はかなりの大型らしく、アチコチに対空レーザー発射口を備えている。 俺「ネウロイ発見撃墜します!」 ミーナ『無茶です!かなりの大型ですよ!』 俺(無線、そういや作ってあったんだっけ) 俺「こんなヤツらの為に、これ以上誰かの涙を見たく無い!みんなに笑顔でいてほしいんです!」 俺「だから、見てて下さい!オレの…戦闘!」 ミーナ「俺元帥!」 今日はR-9φ実は波動砲が改良されていて、ラストダンサー作戦時より威力が上がっているらしい。 チャージ30秒!ウィ……*Opps!* 次の瞬間レーザーがコチラに向けて発射、スレスレで回避し其儘下を通る。 だがよく考えたら、レーザー発射口は下の方にも付いている訳で。 雨あられのようなレーザーを掻い潜りつつ、下を抜けネウロイのケツに照準を合わせる。 ミーナ『シールドも無しにあの雨あられの中を駆け抜けたというの…?』 俺「あぶねぇあぶねぇ……オヤスミケダモノ」 次の瞬間、連続して射出される波動砲、そして波動砲に全身を核ごとゴリゴリと削られたネウロイは。 全身が崩壊し、粉雪のように白い何かに替り、消えていった。 ミーナ『凄い……』 俺「私お疲れさん……」 ミーナ『ですけれど、帰ったら【お話】は有りますからね俺元帥』 俺「」 その後帰った後、ミーナ中佐にメチャクソに怒られました、ミーナさんマジおっかない。 皆さんも土下座をしたくなかったら、ミーナ中佐は怒らせない方がいいですよ。
https://w.atwiki.jp/ohayousex/pages/294.html
「ぅ・・・うう・・・。」 埠頭の上、 血だらけの少女は巨大なコンテナの壁にもたれかかりながら、足を引きずるように歩いている。 足には何者かに銃弾で抉られたような傷があり、腹部にもそのような傷が見受けられる。 瞳に何も映っていないかのように目は虚ろを向いている。ただ本能に従うかのように歩くだけ。 いつ倒れるか分からない位不安定に歩いていた。 そしてそれを追う1人の尾行者の男。武器は手に持っていない。他に2人位尾行者が居るらしいがどこへやら。 コンクリート上でついに目標の少女が倒れ込む。仰向けで無防備に。 追跡者がそこに駆け寄ってみてみると、その娘は意識が失っているようだが、まだ微かに息が合った。 しばらくの間、男が何かを躊躇っていたかと思うと やがて殺さんとせんばかりに彼女の首に手を伸ばし始める。その腕は躊躇うように伸び縮みを繰り返していた。 男は結局彼女を殺すことは出来なかった。現れた邪魔ものによって。 「おい、その子から離れろよ。」 そこへ全身ボロボロのメタキゾがそこに辿り着いて居合わせた。 「ああ?てめぇは何様だ・・・?」 男はドスを利かせた声でメタキゾに言い放つ。しかしこの時メタキゾは動じない。 その態度にイラついたか、男はズボンのポケットからナイフを取りだした。 「ここで殺してやろうか?ああ?」 「そんなので動じてたまるかよっ・・・!」 メタキゾの手の中に何か黒い渦のようなものが生まれる。 その異様な渦はやがて黒い弾となってメタキゾの手の中にとどまった。 メタキゾが逃げてきた灯台の方向は南西。太陽が今傾いている方向も南西。 そして今メタキゾが男に向いている方向は北東。影をエネルギーに変える程度の能力をフルに使うことが出来る位置に居る。 彼が灯台に逃げてきたのも計算の内であった。 「おい、来るなら掛かってこいよ。 星を奪いたいんだったら向かってこいよ。」 メタキゾが手の上に黒い球をキープしながら言った。 「クソッ、能力者かよッ!」 男はそれを見てたまらなかったのか、逃げだしてしまう。 とりあえずなんとか追い払った。 もはや能力を持たない者は敵ではないかもしれない。 そう思うとメタキゾはほんの少し安心するのであった。このゲームで勝てる見込みがまだあると。 そして倒れている少女のところに立ち寄ってみる。足と腹部に強烈な傷があるのが確認出来た。 しかしメタキゾにはこの倒れている少女への施し方が分からない。 今、自分の持っているハンカチで傷口を塞ぐ位でしか何もしてあげられない。 だがライムとロキと離れ離れになってしまったのでこのまま少女を放っておくわけにはいかない。 困り果てて辺りを見回して見た時、やはり何もそれっぽいものはなかった。 溜息をつきその場でうろたえるメタキゾ。 だが意を決したかのように立ち上がり 傷ついた少女から目を離さないように見張りながら、かつそこら一帯を歩いて探索してみる。 すると異様な光景が目に付いた。 巨大なコンテナの壁を曲がったその向こうに普通ではない自動販売機があった。 「・・・おいおいこんな話があるか・・・? この自動販売機、拳銃が売ってやがるっ・・・!」 唖然とする少年。見慣れたちょいと大型の自動販売機には人生で生で見ることがないであろう銃火器が普通に売られていた。 ボタンを押すとそれが出てくるのであろうか。 しかしその値段は400万円。これだけは当然でかつ相当な値段であった。 またため息をついてしまうが、品目を目で追っていくと、スタンガン、サバイバルナイフと続き そして水と救急箱のセットと思われる品があった。 その値段1つ100万円。恐るべきインフレである。所持金の半分で交換が可能というものであった。 しかしこの品は待っている者の為に買わないわけにはいかない。 メタキゾはそれが目に付いた瞬間、自動販売機のボタンを日常で使い慣れているように押した。 無論1万円札を1枚1枚入れてやった。意外と早く済んだ。 下からその品物が出てくるとすぐにそれを持って少女の元に向かった。 「なんで一般生徒が銃なんか持っているかと思ったら・・・ こういうことだったのかい・・・全く。」 救急箱を持って急いで傷だらけの少女の元に戻る。 彼女はメタキゾにとって見知らぬ人間であったが そんなことを全く気にかけることもなく患部を水で洗い流して包帯で縛ってやった。 大金つぎ込んで懸命看護した結果か出血はとりあえず収まった。 安心したようにメタキゾが一息つくとやがて少女の瞼が開く。 「あ、どうも。こんなことまでしていただいて・・・。 お気づかい大変感謝しております・・・。」 目が合ってすぐに少女は頭を下げる。 白い帽子に上品な金の長髪。お嬢様といったような容姿だった。 そしてこの野蛮な殺し合いの中で 彼女の台詞の礼儀が成っているのである。 メタキゾは頭をかきながら次の台詞を思い描いている。 「お だがメタキゾが口を開いた瞬間に銃声が辺りに木霊した。 空をみてみれば煙が上がっている。 「とりあえず、詳しい話は後で聞かせてくれ。 お前はさっさと逃げるかどこかの陰に隠れるかして離れてくれっ・・・!」 メタキゾはひとまず少女を置いて銃声のした方向に走っていく。 現場に近づいて音を出さないように忍び足で歩き始めるメタキゾ。 そこで見たものは 「ひ、ひでぇ・・・丸焼きにされてやがる。」 生徒のこんがり焼死体がそこに転がっていた光景だった。 顔も服も何もかもが焼けただれて焦げ切っていて、男なのか女なのか誰なのか全く確認できない位醜く、 異臭のする煙を巻き上げていた。 しかしこの生徒に銃弾の跡は全く見られない。銃声とは関係ないかもしれないのでひとまずまた先を急ぎ始めた。 行きついたところは埠頭上の何やら倉庫のようなものが建ち並んでいるような場所であった。 古い小屋やコンクリート建造物がそこ辺りに不気味にそびえたつ。 何か轟音でも響きわたってきそうな雰囲気である。 「何なんだ・・・?この辺り・・・なんつーかその・・・ 相当やばい空気な気がする。ここに来て急に風向きが変わったっつーか・・・。」 その場で硬直し始めるメタキゾが次にみたものは、遠くの巨大なコンクリートの建物の前に居る少女、ライムの姿であった。 「あ・・・あいつあんなところにいやがった・・・!」 少年は少女の元まで駆け寄り始めるが、少女はそれに気付いていない。 向かって来るメタキゾをよそに ライムは建物に入ろうか入らまいか戸惑っているところであった。 「何か右から風が来ているようであり・・・左から風が来ているようでもあるわ・・・。 相当不気味な感じね・・・。」 嫌な予感等を感じつつもライムは倉庫らしき建物の扉を開けようと試み始める。 がこの扉、どうやら硬くてなかなか開かない。 「おかしいわね・・・。」 メタキゾがライムのいる建物まで辿り着いた時。この時点でライムとの距離は10m位。 しかしこの時ある異変がメタキゾと巡り合わせた。 頑丈そうな倉庫に開いているかすかな隙間。その隙間にほんの一瞬メタキゾの手が触れた時、メタキゾの手が隙間に張り付いたのである。 「なんだ・・・?」 メタキゾが慌てて手をその隙間から放そうとする。 それなりの力でくっついた手を引っ張らないと手は隙間から離れなかった。 「今のは一体なんだったんだ・・・? まるで風呂の栓を抜いた時とか、プールの穴みてぇに俺の手がこの隙間に吸い込まれた・・・。普通じゃあねぇ・・・。」 その隙間をまじまじと見つめていると、空気の流れの異変が段々と分かり始めてきた。 今でもこの隙間には勢いよく空気が流れ込んできているのである。絶えることなく。 「この建物・・・まさかっ・・・・・!」 この時メタキゾに電流走る。 ちょうどその時ライムがなかなか開かない扉を開け始めた。 「よ・・・よせっ・・・ライム!! その扉に近づくな・・・!なんかやばい・・・・・!」 「え・・・あっ」 ライムがメタキゾの言葉に気付いた時には扉は完全に開いていた。 その瞬間、突風が建物の扉の向こうに、 ライムを押し上げるかのように吹き込み始めた。 そしてライムの体が宙に浮く。 持ち上げられたライムはそのまま建物の中に吹き飛ばされていく。 少女は空気と共に建物の中へとなだれ込まされた。 「いやぁぁああっ!!ひ・・・きゃぁあああぁぁぁぁ・・・・・」 少女は成す術もなく建物の中へと吸い込まれていった。 中で断末魔の悲鳴を残して声も途切れてしまった。 そして扉が閉じた。 「ライムっ・・・!!!ライムぅぅぅぅぅゥゥ・・・!!!」 メタキゾが彼女の名前を叫んだ時には扉はまた再び閉じてしまった。 成す術も無く彼女は倉庫の中に閉じ込められた。 メタキゾがこの倉庫の中に入ろうとするが 扉はどうやっても同じように開けることが出来なかった。 そしてその閉ざされた倉庫の主と思われる人物が現れた。メタキゾが待ち望んでいた奴が来た。 「奇遇だな。こんなところで会うとはな。」 途方にくれるメタキゾの前に現れたのは 一見眼鏡をかけているただの甘いマスクの優男。 しかしその顔はよく見ると深いシワと影につつまれていて その眼の奥には地獄の底を想像させるようなドス黒いものが映っている気がした。 再び姿を現した彼が、メタキゾを追放させた本人であった。 そいつの名は 暗 刻 殉 一 メタキゾのクラスメイトである。 「暗刻・・・!お前・・・!!」 「始末しに来たよ。俺の正体を知る者は絶対にこの世に残すつもりは無いから。」 自ら復讐を誓った相手が自らここに来た。 メタキゾやライムがさっきから感じていた不気味な何かはこいつが今も醸し出している。 再開して改めて見ただけで強力な異能者であると理解できた。 彼の腕についていた包帯はもうない。 代わりに彼は既にクラスメイトの銀の星が5つと、それ以外の色の星2つ、合計7つの星を手に入れていた。現在8つも所持している 「君もあの建物の中に閉じ込められた女の子も、 多分この不愉快な殺し合いに付き合わされてさぞかし可哀そうな思いをしているだろうから すぐにゲームオーバーにしてやるよ。手榴弾の傷を負った君の手当をしたあの2人のように。」 「・・・! お前やっぱりあの後・・・」 「始末したさ。心配しなくとも彼らは俺の記憶の中で生きている。 もうこの世にはいないけどな。」 ゲームに乗っている者特有の平然としている口調。 まるで感情がないようだった。 メタキゾは自分を看護してくれたあの2人を思い出していた。 「2人はただの若者だった。クラスメイトを愛し、夢幻街を愛し、 普段穏やかな学生生活を送るただの若者だった。 ただの若者だったッ!! お前はその2人の尊い命を奪ったんだァーーッ!!少しは自覚しやがれっ・・・!」 怒りに震えるメタキゾ。拳が固く握りしめられていた。 「くだらない。 そんなことより君の持っているその星は俺が頂くよ。2つとも。」 暗刻がメタキゾの腕についている2つの星を指差す。 そして不気味に笑う。 この時彼は何もしていなかった。 それなのに突然メタキゾの頭上の蛍光灯が割れた。 割れた蛍光灯のガラスが雨あられのように降り注ぐ。 あまりにも突然過ぎて体が対応出来ず避け切ることが出来ない。 その雨あられがメタキゾの皮膚へと次々突き刺さった。 メタキゾは暗刻に圧倒されていた。7つもの星を奪えたその強さが実感として分かった。 「これが俺の能力。 まぁ正体は明かさないけどね。」 不気味な雰囲気は消えない。暗刻は相変わらずニタニタ笑っていた。 (クソ・・・どういうことだ・・・? ライムを閉じ込めたものと俺の頭上の蛍光灯の破壊。 どうやったらそんなことができる・・・? 奴の能力は一体・・・?) 新しく創られた傷を抑えて戸惑うメタキゾ。 「気圧です・・・。 かの者の能力は気圧。」 そこにまた後ろから聞き覚えのある声がした。 振り返るとそこにいるのは白い帽子と綺麗な黄金色のロングヘアーのお嬢様。 もとい応急手当をしてやった少女がメタキゾの後ろにいた。 メタキゾが彼女が瀕死だったところを助けて、銃声がした際に置いてきたはずだった。 その少女が後ろで囁いていた。 「お前どうしてこんなところに・・・危ないだろうがっ・・・。」 「なんで俺の能力を知っているんだか。 いや、どうやって知ったんだか。」 メタキゾは心配そうに、暗刻は興味深そうな目で少女を見る。 そんな2人に少女は一礼して呟く。 「風は全部お見通しなのです。 風が私に教えてくれるのですわ。」 「・・・はぁ。」 その少女、メタキゾが呆れる位メルヘンだった。 「とにかくこのままだと負けてしまいます・・・!」 少女はメタキゾに深刻な顔で警告した。高ぶるフラグの予兆である。 果たしてメタキゾは閉じ込められたライムを救うことが出来るのか・・・?
https://w.atwiki.jp/p_ss/pages/1302.html
A-side 昨夜の事は、昨夜の感情は、無かった事にしよう。あの頃みたいに、あ〜ちゃんだって子供じゃないんだから。 そう自分の心に言い聞かせると、自然と視界がぼやけてビックリ。零さない様に太陽を見上げると、大きな羽根を持った鳥がくるくると青空を旋回していた。 泣いちゃいけない。絶対に泣かないって決めたんだから。こうなる事はあの頃から分かっていたんだから。 「はぁ…、学校いこ」 もう完全に桜は散っている。春はあんまし、好きじゃない。 N-side 夜、 「うおっしゃあああああキタああああああああ!!!!」 うるさい!とゆかちゃんに頭を叩かれて、舌を噛んでまたもや絶叫。痛い…うぅ…。ちょっとテンション上がっちゃっただけなのにさぁ。 「もう9時よ?近所迷惑じゃけ静かにしんさい」 「クリアしたよ!アヤちゃん攻略だよツンデレーションポイントマックスで初デートで初チューだよ!アヤちゃん愛してるー!!」 「うるっさいなぁ」 「やっぱあの選択肢は唇だったんだね、やっぱりツンデレの事はツンデレ娘に聞くに限るわ」 あ〜ちゃんに言われた通りにして良かった。よっしゃこれでレポートが書ける。今回の西園寺アヤちゃんは今までで一番難しかったけど、やっぱりこーゆー難しい子程やりがいがあるよね。 「それより、あ〜ちゃん遅くない?」 「本当だ…珍しいね」 「今日って友達と遊びにいくって言ってたよね、それでもいつも大抵9時には帰ってくるのに」 その時、ゆかちゃんの携帯がなった。メールみたい。 「あ、あ〜ちゃんからだ」 「なんて?」 「今から帰るってさ」 「そっか、ならのっち先にお風呂入っちゃうね」 「うん」 ゲームの電源を切り、立ち上がってお風呂場に向かった。あ〜ちゃんが帰ってきたら、昨日のお礼をちゃんと言わなきゃ。あと、クリア出来たお礼もね。 お風呂はいつもより熱かった。のっち間違えて少し高い温度を設定しちゃったかも。 あ〜ちゃんが買ってきたアヒルのおもちゃを浴槽に浮かべ、のっちが実家から持ってきた水鉄砲でそれを打つ。 「うりゃ、くらえっ」 くちばしに当たると、アヒルはくるくると回った。あ〜ちゃんが帰ってきたら、笑顔でお出迎えしなきゃ。ちゃんと出来るかな。昨夜のあ〜ちゃんが胸を締め付けるんだもん。 はぁ、もうのぼせてきちゃった。 K-side のっちがお風呂に入ったのを確認すると、ゆかは携帯と鍵だけをポケットに突っ込んで家を出た。 数分歩いた先にある河川敷。僅かな灯りに照らされている背中は、すぐ側に立つ電灯みたいに今にも消えてしまいそうでなんだか胸が苦しくなる。 「あやちゃん、」 「……」 声を掛けるとビクッと小さく震えた。風が強く吹いて、髪が舞い上がる。この季節の夜風はまだ冷たい。 「帰ろ、風邪引くよ」 「…うん」 「おいで、あやちゃん」 頷いて聞こえた声も消えてしまいそうだった。ゆっくり立ち上がって振り返るまでの間がやけにスローで、なんだか弱々しくて。風に飛ばされてしまわないように、駆け寄ってその手を強く握った。 「帰るよ」 大丈夫、全部分かってるつもりだから。何も言わなくたってゆかには分かる。その目を見れば、すぐに分かるから。 昨夜、些細な事で思い出しちゃったんだね。あの春の夜の出来事、のっちの言葉、あの涙。大丈夫、ゆかはちゃんと触れられる。この手を握っていられるよ。あの王子様と違ってね。 「ゆかちゃん、こっち向いて」 「ん?」 隣を向いた瞬間、ふわりと花の香り。甘い唇の感触。なんだ、まだ余裕あるんじゃん、こんなに綺麗で柔らかいのに、消えちゃう訳ないよね。 また風が吹いて髪を乱された時、ゆかはちゃんと抱き締めた。大丈夫だよ、って、泣いても良いんだよ、って。だけど泣かずに笑った。泣かんもんって泣きそうな声で。 「あやちゃん可愛い」 「可愛くなんか」 「めっちゃ可愛いよ」 なんかもう、食べちゃいたいよね。のっちじゃないけど。 再び歩きだすと、今度は指を絡めて手を繋ぎ直す。もうすぐのっちもお風呂上がるだろうから、ちょうどタイミングが合えば髪を濡らした犬みたいなのっちが笑顔でおかえりを言ってくれるかもしんないからね。 キスした事は、二人だけの秘密だよ。 ◇3 終◇
https://w.atwiki.jp/rozenmaidenhumanss/pages/4400.html
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2188.html
この話における主な登場人物簡略紹介 ルイズ 一般的なルイズ。 使い魔 ここではフー・ファイターズ。フーケの体を使っている。 タバサ アルビオン編まではルイズに同行。その後神父と行動を共にする。 キュルケ フーケに殺害される。死体が見つからない。 アンリエッタ ワルドに殺害される。アンドバリの指輪の力で動いている。 マリコルヌ メインキャラクターの一人。とある事情でルイズに惚れている。DISCを抜かれたため魔法が使えない。 ギーシュ モンモン一筋のバカップル片割れになった。 クロムウェル スタンド・クヌム神を使う。 ワルド ホワイトスネイクに記憶を抜かれる。その後は不明。 神父 虚無のDISCを狙っている。 簡単なあらすじ ワルド戦を終えてトリステインに帰還(撤退)したルイズたち。 その後タバサは母の治療と父の仇への復讐のため、神父とともに行動することに。 また、ルイズたちは神父から虚無の使い手を守るため、FFの記憶を頼りにウェストウッドに向かうのであった。 ウェストウッドへの道中… 「そういえば貴方、今魔法使えないのよね?」 ルイズの問いかけに、マリコルヌははっと思い出した。 「だから、私思ったの。途中トリスタニアで武器屋に寄って何か買っていったほうがいいかなぁって。」 「さすが僕のルイズ!僕なんかのことを心配してくれるなんて!!」 「ちちち違うわよ!戦えないと足手まといで邪魔になるって思っただけよ!自分の身は自分で守ってもらわないとね!」 マリコルヌの返答に、ルイズは声をあらげて顔を真っ赤に染める。ルイズとしては精一杯の誤魔化しのアクションであったが、相変わらず誰がどう見てもそれは効果がないとしかいえない。そしてたわいのないやり取りののち、首都トリスタニアのブルドンネ街に到着する。 「じゃあ、すぐに済ませて戻ってくるよ。」 マリコルヌはルイズとFFを馬車に残し、一人足早に武器屋を目指していく。因みに仕方がないことではあるが、マリコルヌはルイズから武器代を援助してもらっているという、情けない状態での買い物である。 「聞いておくれよ、僕のルイズ…」 「どうしたのよ、いったい?」 数分後、馬車に戻ってきたマリコルヌは、馬車が発車すると先程の武器屋での出来事を語りだした。 第三話(18) 眠れる剣(つるぎ) 時間は少し遡って店の中。 「いらっしゃいませ~」 店主が営業スマイルでお出迎えである。ところが入ってきたのが貴族であることがわかると、その笑顔は一瞬にしてひきつっていく。 「き、貴族の旦那ぁ~。わたくしはいやしいことなんかまったくしとりませんぜぇ。まっとうな商売やってまさぁ。」 「僕は武器を買いにきたんだけど…」 店主のどうもこなれた言い訳は、ただ武器を買いにきただけのマリコルヌを、少し戸惑わせてしまっていた。しかし、店主はみなぎる商魂でそれを払拭させるよう瞬時に動く。 「ハハハ、そうですか。それではこちらは如何でしょう?」 店主が買い物客に使ういつもの営業スタイルだ。どうして貴族が武器を買いにきたのかという疑問に自分なりに答えを出し、無駄に触れなかった。そうしたほうがいいような気がしたからである。そしてそのまま飾りが多量についているたいそうな剣をすぐに取り出して宣伝をする。 「これはかの有名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿が鍛えたとされるもの! 今ならエキュー金貨で二千、新金貨で三千に致しますぜ。」 マリコルヌはそれを見て感嘆としたが、懐に相談してみて断念した。 「もうちょっと手頃な値段のはないのかい?」 「手頃なのねぇ…。まぁ、あそこに纏めて置いてあるのは一律にエキュー金貨で二十、新金貨で三十になりやすが、その金額にみあった程度のものにまりますぜ。」 貴族だからいいカモになると思ったのも束の間、たいしたカモにもなりそうにもないのを見て、店主は少しばかりテンションが落ちていくのを自分でも感じられたのがわかった気がした。 「まぁ、あんたは運がないからな。始めっから期待するもんじゃねぇぜ。」 そんな店主を慰める声が一つ。驚いたのは安物をあさっていたマリコルヌ。まわりを見渡すが、そこには店主の姿しか見当たらない。てっきり聞き間違えたのだろうと思い再び物色しなおすが、あろうことかその声の主と店主が喋っているではないか。 「普段はデル公が邪魔しやがるしな。」 「おまえさんがナマクラを売ろうとしてたからだろ。自業自得じゃねえか。」 「それは商売だからだろうが!商人嘗めるなよ!」 これは聞き間違えではない、とマリコルヌは確信した。そして怖くなって足早に武器屋から逃げ出してきたのであった。 「…ということがあってね。」 話を聞いたルイズは呆れた。 「じゃあ、あんたは何も買ってこなかったっていうの!?」 「だって不気味じゃないか。」 「あんたねぇ、インテリジェンス・ソードの可能性があるでしょ。武器屋なんだから…。あってもおかしくはないわ。」 「なるほど、さすが僕のルイズ!」 ルイズは溜め息を漏らし、がっくしと肩を落とした。 「ウェストウッドに着いたら現地調達よ。いつ襲われるかわかんないんだから。」 そしてそれを取り払うかのように気合いをいれる。 その横でFFは一人、少しでもスタンドだと考えた自分を、違う世界からきたんだなぁ、と感慨していた。 to be continued…
https://w.atwiki.jp/koboh/pages/283.html
第三話開始時のユグドラル大陸出身キャラ設定をここで並べていきます。 旧サイト時代よりは設定がリニューアルされています。 第四話の設定は別ページをご覧ください。 セーナ 稀代の戦乙女 クラス:ロードオブロード 装備:★ファルシオン、ギガスカリバー、ライトニング、(流星指南) 武器LV:剣☆、弓B、光☆、闇☆、理A、杖A マルスユニオン盟主にして、第二代ヴェスティア皇帝に就いた戦乙女。ユグドラル、リーベリア、アカネイア三大陸を事実上、取りまとめることが出来る地位に就き、来るべき大戦に備えるが、思わぬ襲撃を受けることになる。 *-----------------------------------------------------------------------------------------------------* ミカ セーナの半身 クラス:セイジ 父:ランゲル、夫:ラティ 子供:アトス、ヴァイン、ミル 装備:☆フォルブレイズ、エルファイア、サンダー 武器LV:剣B、理A、光A、闇A、杖A ヴェスティアの元宰相、セーナの半身として、無位無官の身でありながらも、ヴェスティア内では隠然たる発言力を持っている。元がヴェルトマー家の分家の身であることもあって、魔法への造詣が深く、その魔力は世界随一と言われることも。セーナ同様に年齢よりも遥かに若く見られ、その豪腕と共に恐れられることも多い。 *-----------------------------------------------------------------------------------------------------* ラケル ヴェスティアの弓神 クラス:ボウナイト 父:デュー、母;ブリキッド 弟:ルカ 夫:フリード 子供:ルカ、ハノン 装備:☆イチイバル、ロングボウ、アーバンレスト、鋼の剣 ヴェルダン(旧ユングヴィ家)公国当主で、五武王の一人。 夫婦揃ってリーベリア出身ながらも、時を経てユグドラルの領主としても板についてきたことが伺え、セーナたちの良き話し相手となり、アルド世代のものからも尊敬の対象となっている。 *-----------------------------------------------------------------------------------------------------* ライト シレジアの風 クラス:セイジ 父:セティ 母:ティニー 妻:セーナ 徒弟・妹:レイラ、セイラ、ルゼル 子供:アルド、クレスト、エレナ、ハルトムート シレジア連合王国盟主にして、初代ヴェスティア皇帝も務めて一度は位人臣を極めるも、アカネイアでセーナにヴェスティア皇帝を退位させられたのを機に心身不調となる。今の彼の思考・行動を理解できるものは少なく、その名の通り、シレジアの風と化している。
https://w.atwiki.jp/arthurgundam/pages/25.html
#03 Brackシステム ルフィア「質量を持った残像……!瞬歩だと!?」 サイ「悪いな。斎木流刹那的瞬歩だ!」 すんでのところでスティールガンダムの抜刀切りをかわしたブラックガンダム。 サイ「なかなかやるな。小童。だかなぁ、次は無いぜぇ。」 ルフィア「アンタに殺される義理も暇も無いんだよ!」 ブラックガンダムは背から2本のサーベルを抜いた スティールガンダムはビームサーベルを構え再び光り出す ルフィア「こんのぉーっっっ」キー「チェーッッ」 そして2体の巨人は激突した (機動新聖域アーサーガンダムOP I defend for you) 何故僕は此所に生きて何故剣を振るう(AH~此所に~AH~振るう) 何故天は僕を生かし 何故大地は僕を生んだ(天はAH~生かし~ 大地は僕を生んだ~) 何故 海は力を授け 何故空は僕を守る~(何故AH~~~AH~~~) 何故天は僕を嘲る~そんなにも~ 何故大地は僕に糸迫る~(何故AH~ AH~何も~出来たいのに~) ―バチバチバチ モニターに映るのは火花を散らす2本のサーベル。そして憎きスティールガンダムの頭部だった。 ルフィア「お前がっ、お前みたいのがいるからぁっ」 サイ「うん?」 ルフィア「お前みたいな奴がいるから世界はいつまでも変われないんだ」 サイ「…それだけか?」 ルフィア「えっ?」 サイ「言いたいことはそれだけか、と聞いている?」 ルフィア「なんだって」 サイ「ならば、終りにさせていただくっ」 その刹那、スティールガンダムの背中から幾本ものコードが伸びてきた。 ルフィア「何だよこれっ!?」 そう言ってバーニアを蒸そうとレバーを押すが、 サイ「遅い、遅いよっ!!」 既にブラックガンダムはコードに動きを封じられてしまった。 サイ「死んじまえよっ」 するとコードに電流が走った。 ルフィア「ぐわぁぁぁああぁっっ」 サイ「任務完了。これより帰還する。」 ―薄れていく意識の中 僕は…死ぬの…か? 今までの人生が走馬灯のように脳内を駆け巡る。 自分を拾ってくれた両親。友人をつくれず、一人ぼっちだった自分と友達になってくれたリン。捨て子である自分をいじめる奴らを追い払ってくれたリン。一緒にプリンを食べたリン。リン……。 守りたい守りたい守りたい 「守りたいんだぁっっっ」 ピコーン 聞き慣れない機械音ともにブラックガンダムの金色の目が紫色に変わった。装甲の隙間からも怪しい紫の光が漏れている。 その怪しい光はブラックガンダムを取り巻くコードを断ち切った。 サイ「何なんだ…これは…」 ルフィア「Brack…システム…」 ルフィア「うわぁぁぁ~」 ブラックガンダムはスティールガンダムへ殴りかかった。 サイ「なんだこの力は…」 ブラックガンダムは手を広げ、右腕を突き出した。指の間からは光が漏れている。スティールガンダムはそれを左腕で受け止めた。 しかしその瞬間スティールガンダムの左腕は侵食されていき、爆発した。 サイ「なんだとっ!」 ルフィア「もうやめろぉぉぉっ」 ブラックガンダムは左足でスティールガンダムを蹴り飛ばした。 すると足が当たったスティールガンダムの右足が切断された。 サイ「わけわかんねぇ。このままだとマズイ。撤退する。」 ルフィア「…やった……の…か……」 ルフィアの意識は遠ざかっていった。 医者モブ「気づいたかい?」 ルフィア「ここは…。僕は一体……」 医者モブ「カタフィギオの軍事医療施設だよ。君はMSに乗って敵を撃退したんだ。でもパイロットスーツを着ないで出撃したからすごいGが君の体にかかって気絶していたのさ。」 ルフィア「そうだったんですか…」 医者モブ「でも安心してくれ。体にも異常はないよ。(多分…)」 医者の呟いた最後の一言は声が小さすぎて、疲れたルフィアには聞こえなかった。 医者モブ「まぁゆっくり休みなさい。」 すると部屋の中へ一人の男が入ってきた。 男が医者に一言言うと医者は出ていった。 ルフィア「あなたは?」 スナー「私はスナー。ブラックガンダム開発に携わった者だ。君に話たいことがある。 ルフィア「僕に?なんですか?」 スナー「君は先程、敵を見事撃退しカタフィギオを救ってくれた。その時のことを覚えているかい?」 ルフィア「まぁ…なんとなく。ガンダムの体が光って…」 スナー「そうだ。その様子を私も見ていた。ガンダムが光ったあれはBrackシステムと言うんだ。」 ルフィア「Brackシステム?」 ルフィアはあの時コクピットの画面にそのような文字がうつしだされたのを思い出した。 ルフィア「Blackシステムって一体なんですか?」 スナー「実はブラックガンダムはナノマシンで動いているんだ。ブラックガンダムの中にはナノマシン生成機関がある。この生成量をある条件を持ったパイロットの意志によって増大させるシステムをBrackシステムと呼んでいる。パイロットの意志によってナノマシンが大量に生成され、余ったものは機体の外へ放出され発光する。ブラックガンダムが光ったのはこの為だ。ナノマシンのほとんどは機体外へ出てしばらくすると劣化するが、出たばかりのナノマシンには物体を腐食する力がある。」 ルフィア「(だから敵のMSが壊れたのかな…)よくわからないんですけど…。条件を持ったパイロットって…」 スナー「まぁそうだろう。条件というのは正直私にもわからない。ただ、君の意志によってガンダムは予想以上の力を発揮出来るかもしれないんだ。」 ルフィア「僕にそんな力があるなんて…」 スナー「まぁまた今度話をしよう。今はゆっくり休みなさい。」 そういっては部屋から出ていった。 そしてルフィアは眠りに落ちた。 その後スナーと医者は話をしていた。 医者モブ「ルフィア君は本当に大丈夫なのでしょうか?」 スナー「わからない。ナノマシンは人体に影響がある。開発の際これによって多くの人が死んだ。コクピットにはナノマシン侵入を防ぐ措置はしてあるが完璧ではない…。だがコクピットに乗っていたルフィア君はなんともない。何故だ……」 リン「ルフィアのせいでお父さんは死んだのよ」 ルフィア「そ、そんな…」 リン「あなたは人一人の命も助けられないのね!」 ルフィア「ごめん…」 リン「もういいわ じゃあね」 ルフィア「待ってよリ…」 「逃げろ!!」 「リン!! うわああああああ」 「はっ、夢…か」 (はあ… black…システム… ナノマシン… 意味が分からない ある条件を持ったパイロット? 僕の意志も何も僕は何も考えてなかったんだ そんな…急に言われたって…) -ガチャッ スナー「もう目覚めてたかルフィア君 よく休めたかな 」 ルフィア「はい…まあ」 スナー「今からブラックガンダムの整備をするんだが君も来てくれないか 武装を強化しようと思うのでパイロットの意見を聞きたい」 ルフィア「ちょっと待ってください …ブラックガンダムにはこれからも僕が乗るんですか…?」 スナー「嫌かい?」 ルフィア「嫌というわけではないです… だけど…まだ…分かりません 何をすべきなのか、 何をしたいか、も…」 スナー「もともと君はただの学生だ そりゃ心の整理もつかないだろう しかし、君があのガンダムの隠れた力を引き出すことができるのは確かだ 軍のために命を捨てろ、とは言わない だができるのなら協力をしてほしい 」 ルフィア「少し…時間をください」 スナー「急かしはしないよ そろそろ整備の時間だ パイロットとしてでなくていいから見てみてないか? 一度は乗った機体だ」 ルフィア「分かりました」 スナー「本当は、工場に移してじっくりとこのガンダムを整備したいのだがね。あいにくZARTZは待ってくれそうにないからここでやるしかないのだよ」 スナーはそう言いながらユートピアのMS搭載区域にルフィアを連れて行った。 ルフィア「こんなのに僕は乗っていたのか…」 改めて見てみると、ブラックガンダムの放つ威圧感はとんでもないものだった。だがルフィアの心中は、MSを見学するだけで喜んでいた3日前とは全く違う感情で支配されていた。先の大戦で両親と離れ離れになり、生きているかも分からない。戦争が終わると、彼には大きな悲しみだけが残った。やっと、リンと仲良くなり立ち直ってきた矢先の武力衝突。もう二度と戦争に巻き込まれたくはない。どこか安全な所へリン達と逃げたい。そんな風にルフィアは思っていた。しかし、これはあくまで理屈の話で、彼の心の奥底にはある思いが沸き起こっていた。あのガンダムを操れるのは僕だけなんだ。 ルフィア「僕が乗ります、あのガンダムには。あの憎きZARTZからフェリエルを守ってみせます。」 スナー「どうしたのだね、突然?焦らなくてもいいんだぞ。」 ルフィア「僕の中の何かがそれを望んでいるのです。どうか、僕を正規パイロットにしてください。」 スナー「分かった。こちらとしても君の能力は必要不可欠だと考えていたところだ。こちらとしても助かるよ。(しかし、何故こうも簡単に意欲的に乗りたがるようになったんだ?)」 ルフィア「では早速整備を始めてもいいですか?」 スナー「ああ、いいとも」 ルフィアはコックピットに乗り込むと、武装の確認、システムのメンテナンスなどを行った。スティールガンダムとの対戦で、ブラックガンダムは近接戦闘力が劣っているが分かったので、ルフィアは、胸部から出る近距離迎撃用の拡散ライフルと攻撃用の高性能のホーミング機能のついたサーベルを新たに装備することにした。 スナー「今日はよく働いてくれたな。もう帰って休んでいなさい。いつ眠れない日々が始まるか分からないからな」 ルフィア「はい」 ルフィア「そういえば、なぜブラックシステムはbrackでblackではないのですか?」 スナー「そのうち分かるさ。」 数時間後…MS生産工場 スナー「どうもルフィア君の様子がおかしいのだが」 部下「どうしたのです?」 スナー「突然態度が変わったのだ。乗ろうか躊躇していたついこの間とは違い、突然乗ると言い出したのだ。単なる気まぐれならいいが、もしナノマシン影響だったら…」 部下「だから私は反対だったんですよ。パイロットの安全も保証できない新技術を今使うことに」 スナー「しかしあれがなければ今頃フェリエルは滅んでいたぞ」 部下「今更しょうがありません。次の戦闘までにナノマシンを解明しなければ。」 スナー「ああ、そうだな。早速、電子以下でのスケールで分析を始めろ。」 一同「はい」 数時間後… 研究者「こ、これは…」 スナー「何だ?」 研究者「この反応は有名なあの反応ですよ。そして、副産物として毒ガスを生じ、人体に影響を及ぼすのは接触からおよそ3日後…」 スナー「まずい!パイロットの保護を!急げ!」
https://w.atwiki.jp/wiki9_vipac/pages/136.html
自宅地下より通じる雫のACガレージ。 重厚な金属の扉を開き、その冷たく暗い空間に身を躍らせる。 扉の近くにある、照明のスイッチに手をかける。 いくつかのスイッチをオンにすると、ゆっくりと周辺が明るくなって行った。 ガレージの中心にたたずむ、蒼いAC。 「……シルフ」 返事をするわけでもないのに、つい名前を呼んでしまう。 その冷たい脚に手の平を合わせ、愛機の命の鼓動を感じ取る。 苦楽を共にし、数多の敵を倒し、傷ついては修理し、一緒に同じ道を歩んだ。 言わば親友。 言わば家族。 同じ時を過ごした、最愛の仲間。 兄の命を受け継いだ、最愛の兄弟。 「……今までありがとう。……そして……お疲れ様」 愛する者に別れと感謝を告げ、雫はその場を去った。 次の日 ピンポーン……。 優雅に紅茶を楽しんでいた雫の耳に、チャイムの音が届く。 「来たわね……」 ティーカップをソーサーへ戻し、立ち上がる。 エレンは、一瞬雫が呟いた言葉に首を傾げていた。 玄関から戻った雫の後ろには、エレンが想像していなかった人物が立っていた。 「ようお嬢さん。同居してたんだなあんたら」 ハンニバルである。 意外な人物の登場に、エレンは目を丸くして固まっていた。 「昔からの親友なのよ……あの事件以来同居してる」 律儀に説明する雫。 あまりに普通の対応だったのでエレンは一人除け者の気分だった。 「ところでお前さん日系だったんだな」 「何を今更」 「いや、表札にSUMERAGIって書いてあったからよ」 極々普通の会話をしながら二人はガレージの方向へ歩んで行った。 一人取り残されたエレンは二人を追うことも忘れていた。 二人がガレージに入ると、既に数十名の作業服を着た整備士が待機していた。 「ご苦労さん」 ハンニバルが適当に手を挙げ挨拶をする。 雫は無言でAC付近の端末へ歩いていく。 「おいおい……お前も挨拶ぐらいしとけよ」 しかめっ面で挨拶を促す。 煙草の煙が雫にかかり、若干鬱陶しそうに歩調を速めた。 「さっきしたわよ」 至って平坦かつ冷淡な返答だった。 「そうかいそうかい……」 ハンニバルも半ば諦めつつ返す。 結局会話はそれだけで終わった。 端末を起動させ、ACの構築データを読み込む。 やや間があって、画面には今後ろにあるACの姿が映し出された。 「これが今日搬入したパーツのデータだ」 ハンニバルがポケットから何かを取り出す。 所謂メモリースティックの類で、今雫が操作している端末に対応しているタイプのものだった。 雫はそれを無言で受け取り、端子へと挿入する。 データの読み込みのためしばらく待つ。 「搬入したのはどんなパーツ?」 読み込みの間、雫はハンニバルに出来るだけ質問することにした。 主に、今日行う作業についてだ。 「読み込まれるリストを見ればわかると思うが……まぁ主に脚部やコアなどの外部パーツだな。 この間の戦闘から判断し、主に中量2脚や軽量2脚、それに見合うコアを用意した。 武装パーツは軽めの物をいくつかって程度だな。主力はあのブレードだろうし、そんなに用意しなくてもよかっただろう?」 そこまで言うと、読み込みが完了される。 出てきたパーツリストは、ハンニバルが雫に合わせて選んだパーツ。 どれも雫の戦闘スタイルに合ったものばかりだった。 (この男……あれだけの戦闘でよくここまで……) 素直に感心した。 性格はとてもじゃないがいいとは言えない。 だが、確かにハンニバルの腕は一流なのだ。 「だてに色んなパーツ使いまくってるわけじゃない。 そこらのレイヴンよりアセンブリの腕はいいつもりだぜ」 現に、彼のアセンブリの腕は定評がある。 彼のACを模倣するものも現れるほどだ。 「上出来ね……信頼に値するわ」 恐らく、雫の口からハンニバルに対して褒め言葉に値するものが出るのは初めてだろう。 (よっし!!この調子でフラグまで持ち込んでやる!!) ……やはりこんな男だった。 二人で話し合いしつつ、ACの構成を決めること既に2時間。 その間、クレストより派遣された整備士は仕事の準備をする者もいれば談笑する者もいた。 エレンが途中お茶を運んで来ることもあった。 そして……。 「こんなものかな……」 データの入力を終え、イメージの出力をする。 ハンニバルがそれを後ろから覗き見た。 「ほぅ……結構いいんじゃねーか?」 あくまでブレードを主体に、補助火力としてイクシードオービットとライフルを積んだタイプの軽量2脚AC。 今までのACよりエネルギー効率が良く、積極的にブレードを狙っていける。 雫なりに導き出した最良の構成だろう。 「で……名前はどうすんだ?前のままでいいのか?」 ある者は語る。 名前はACにとって命のようなものである、と。 ACは自分の子供のようなもの、とそいつは言った。 『自分の子供には、愛を込めて名を付けるべきだ』と。 「……ブラッドファング」 ……果たしてその名に愛は存在するのだろうか。 雫にとって、こいつは戦友。 復讐のために、共に戦う大事な仲間。 だからこそ、この名を捧げる。 「血塗られた牙……ね。まったく……お前らしい名前だ」 「まだ知り合って間もないのに『お前らしい』とは、ひどい言い草ね」 データを整備士達が持つ小型端末に転送する。 データを受け取った整備士達が各々の作業のために動き出す。 ここからは彼らの仕事のため、二人はガレージの端で見守ることにした。 「………………」 じっと、作業の様子を見つめる雫。 ハンニバルはその横顔を見て、呆けていた。 その視線に気づいたのか、雫は険しい顔をしてハンニバルに迫る。 「……何?」 ハンニバルはあわてて取り繕った。 「あぁ……いや。お前さん……年はいくつなのかなぁって……」 「17よ」 その答えに、ハンニバルは動揺する。 「何よその顔」 どうやら表情に出ていたようだ。 あわてて真顔に戻し、話を続けた。 「いや……ずいぶんと若いんだな」 レイヴンの世界は、そう簡単に入れるものではない。 強者の領域になると、並大抵の努力ではなれない。 そのため、上位にはある程度年を重ねたものがなるものだった。 ハンニバルも、彼是10年はレイヴンをやっている。 それでもやっと、アリーナランク10位以内に食い込むのが関の山だ。 それと同等……いや、それ以上の力を持つ少女。 (本当にいやがるんだな……天才って奴が) ふと、昔を思い出す。 真の天才に出会ったあの時を……。 5年前 「ひぃふぅみぃ……っと。これで全額だな」 男の手には札束が握られていた。 「まったく……たかが200万コーム返すのに5年もかけやがって」 一瞬、ぶん殴ってやろうかと思ったがさすがにまずいので手は上げない。 良家の人間を相手にすると自分の金銭感覚がおかしくなりそうだった。 だから、彼は金を渡した後すぐその場を去った。 「悪かったな。じゃあ、俺はこれで」 背中越しに手を振り、出来るだけ早く自宅へ戻ろうと考えた。 寄り道もせず、余計な買い物も避けようと、そんなことを考えていた。 「あ、ガルシア」 ふと、呼び止められる。 「何だよ……俺は急いでるんだ」 溜め息混じりに吐き捨て、振り向いた。 「お前、レイヴンやってるって本当か?」 この男は、学生時代のダチだった。 昔から金銭面で世話になることが多々あり、今返済した金もその頃から溜まっていたものだった。 卒業して離れてからは、極たまにメールのやり取りをする程度だった。 その度に『早く金返せ。』などと言われるので、いつも頭に来ていた。 卒業してからの進路は、誰にも告げることは無かった。 両親を亡くした15の時から天涯孤独、ずっと一人で生きてきた。 だから、高校で出来た友人とはいつも馬鹿やって騒いでた。 そうしているのが一番楽しかった。 家に戻ってもいつも一人。 一人で過ごすより、複数で遊んでいるほうが楽しかった。 だが金遣いが荒く、バイトだけではとても足りなかった。 だから友人たちからお金をよく借りていた。 一番大きかったのが目の前にいる男から借りた200万だ。 卒業と同時に借り、そのお金でレイヴンになった。 誰にも告げず、地道に任務をこなし、少しずつアリーナの順位を上げて稼いだ。 「……どこで聞いた」 不思議でしょうがなかった。 レイヴン名は本名ではない。 顔だって、レイヴン同士でなければほとんどわからない。 そんな世界の人間の話を、どこで知ったのか。 「最近……お前が借りていた金を全部まとめて返してきたと聞いてな。 金回りのいい仕事でもやってんのかと思って。そんでお前がレイヴンなんじゃないかってダチの間で噂に」 確かに、すぐ返せるような金額ではなかった。 それをまとめて返済しているとなれば、相当金回りのいい仕事をしているとしか思えない。 そしてこの世界で、最も金回りのいい仕事はレイヴンだった。 「まったく……大した想像力だぜ」 吸っていた煙草を携帯用灰皿に押し付け、新しい煙草を取り出す。 「あぁそうだよ……俺はレイヴンだ。これでもアリーナで最近話題になってるんだぜ」 今更隠し通そうとは思わなかった。 別に学生時代の友人にバレたところでどうって事はないだろう。 「やっぱりそうか……まぁお前のことだから大丈夫だとは思うんだが……」 「あぁ?大丈夫って……何がだ?」 こんな時でも挑戦的な口調なのは彼の性格だった。 「いや……なんでもない。とにかく、絶対死ぬんじゃないぞ」 それだけ言って、別れた。 (死ぬんじゃないぞ……ってか) 相変わらず煙草を咥え、帰路をゆっくりと歩く。 (レイヴンなんて……いつ死んでもおかしくはねぇ) それは彼自身がよくわかっていた。 何度も死線を掻い潜っている彼が、わからないはずがなかった。 (ま、しばらくはアリーナで遊んでるか……) それから数日後 この日はアリーナで挑戦を受けることになり、彼はアリーナに来ていた。 数々のACが立ち並ぶガレージ、その中をただ何も考えず歩いていた。 いつも通り煙草を咥えながら。 (…………そういや今日の相手誰だったかな) ここで今更対戦相手のことを思い出す。 マイペースな男だ。 (確か……エンペラーとか言う奴だったか) エンペラー……皇帝の名を冠するそのレイヴンは最近アリーナに参戦した言わば新参。 それでもここまで破竹の勢いで駆け上がって来た。 (相手にとって不足は無し……) ドンッ!! 「あっ!!申し訳ございません!!」 突然衝撃を受け、突然謝られる。 声の主のほうを向けば、そこにはいかにも新人っぽい青年がいた。 「あぁ……いや。こっちこそぼーっとしてた。悪い」 それだけ言って、その場を去ろうとする。 面倒なことに関わりたくは無かった。 これが美女なら話は別だが……。 男、しかもここにいるって事はほぼ確実にレイヴンだろう。 そんな奴にはなるべく関わらないほうがいい。 「あの」 ……そううまくはいかないらしい。 渋々、彼は相手をすることにした。 「……なんだ」 声が明らかに不機嫌なのは仕様である。 「今日の試合、よろしくお願いします。」 青年は、深くお辞儀した。 (今日の試合……) 少し考えてしまったが、すぐに答えを導き出した。 「まさか……お前が……エンペラー?」 こんな若いとは思わなかった。 明らかに15かそこらの青年。 そんな奴が、自分の対戦相手とは……。 「はい。……あの、何か顔についてますか?」 気が付けば、相手の顔をずっと伺っていた。 すぐに視線を戻し、歩き出す。 「いや……なんでもねぇよ」 少しだけ、後の対戦が楽しみだった。 (とてもじゃないが……レイヴンには見えねーな……) 後のインタビューで彼はこう答えている。 『あいつはまさに、ACに乗るべくして生まれた人間だ。 天才とはあいつのような奴を指すんだろう。 強いとか、上手いとかのレベルじゃない。 初めて、天才の二文字が似合う奴に出会えたよ。 彼から学んだ事も少なくない……今後に生かして、いつか追い抜いてみせるさ』 「ハンニバル!!」 前方からの怒鳴り声に意識を戻す。 少し、ぼーっとしていたようだ。 「すまん……考え事をしていた」 ハンニバルが戦った、『天才』レイヴン。 戦うために生まれてきたような存在。 何度も再戦を望んだが、ある日突然彼は姿を消した。 「あんたも考え事なんてするのね。まぁいいわ。 私シャワー浴びてくるから。作業終わるまでよろしく」 そう言って答えを待たず、いそいそとガレージから出て行く雫。 「………」 一人取り残されるハンニバル。 作業はまだ終わる気配が無く、どうしようも無く暇な時間が彼を襲う。 「……そうだ」 何を思ったのか、彼は歩き出した。 先ほどACの構成を決めるため使用した端末の電源をオンにする。 画面には先ほど構築したACが映し出されていた。 「構築済みACデータはっと……。」 彼がしようとしているのは、雫が過去に構築したACのデータの読み込み。 あの時戦ったACを詳しく調べてみようと思ったのだ。 「お……あったあった……ってあのACの名前わかんねーや」 そこにはいくつかのAC名が書かれていて、どれがあの時戦ったACなのか名前だけでは判断できなかった。 仕方が無いので上から調べていく。 「これかな……」 いきなり当たりだった。 内装から武装まで、全てのデータが映し出される。 「ほぅ……こんな構成だったのか……」 チューンまで詳しく調査しておく。 こうやって他人のACを調べるのも知識を溜め込むには丁度良い。 (……腕はいいのに……アセンブリのセンスがあまり無いな……。勿体無いと言うか……なんというか) ついでに他に保存されていたデータを調べることにした。 (ほぅ……よく見るといい構成のACも見られるな……) 中には、とても雫が構成したとは思えないACも見られた。 ダブルトリガーだったりフロートだったり。 あの時見た雫の戦闘スタイルとは想像が付かない物もある。 (これが……最後か) ハンニバルは、最後のデータを開き、ショックを受けた。 「……まさか……これは……!!」 そこに映し出されたのは、赤い高火力の4脚AC。 5年前ハンニバルが戦った、エンペラーのACそのものだった。
https://w.atwiki.jp/mayshared/pages/892.html
壊物機 第三話 前編 『万能天才ダ・ヴィンチ』 ラノで読む ・OTHER SIDE 「想定の範囲内だったがアスフォルト君は死んだか」 「左様デスネ」 「彼はあれでも|この組織《センドメイル》で五指に入る実力者だったが、それでもやはり最強のフリーランサーには敵わなかったか」 「本来ナラバ、フリーランサーモ当方ノ戦力ダッタノデスガ」 「ルール違反をしたのはこちらだから仕方ない」 「デスガ、ルールヲ『鋼鉄魚群』ノアスフォルトニ教エナカッタノハ貴方デス」 「私が教えていてもきっと彼は同じことをしたさ。なにせ、ここは腹の中では「自分こそが最高!」なんて考えの連中ばかり。自尊心の高すぎる芸術家の集まりだから仕方ないが……私を落として頂点に立とうとする者も多い」 「ソウカモ知レマセン。全員ガ貴方ノ足元ヲ掬オウトシテイル、トマデハ言イマセンガ……百人中九十九人ハ大ナリ小ナリソウイッタ考ヱヲ持ッテイルノモ確カデス」 「ふむ? 全員ではないのか。ちなみにその奇特な百人中一人は誰かな?」 「私デス」 「……素直クールとはこういうものか」 「何デスカソレハ?」 「東洋の神秘の言葉らしい。それはそうとリザ、『音声変更』。ベーシックからCV17」 「リョウカイ……これで宜しいですか?」 「OK。やはり機械音声よりそちらがいい。……しかし、機械音声だからこそいいのだろうか?」 「あなたはたまに理解不能な発言をしますね」 閑話休題。 「さて、センドメイルは前回と今回で二度も永劫機ウォフ・マナフの奪還に失敗している。より恣意的に言えば同じ相手に二回負けている。実際には二回目の相手は最強のフリーランサーだが、それは問題じゃない。我々が同じことに二度しくじっているのが問題だ……という意見も内々に多いのだろう?」 「相手は半壊した永劫機と武器商人とはいえ異能の戦いに不慣れな一般人。組織としての沽券に関わるのではないか、と遠回しに貴方の責任を追及していますね」 「五月蝿くなってきた。嫌になる。だから永劫機の無事な奪還は一先ず無視して……次はこちらが勝たねばならない」 「三度目の正直」 「イエス」 「先ほどの発言に矛盾するようですが、あちらは素人とはいえ独力でアントワーヌ・プールブルの『アダム』を倒しています。『鋼鉄魚群』には苦戦していたようですが、それなりの実力はあるでしょう。それにフリーランサーを護衛に使っている可能性もあります」 「中級戦闘員のアントワーヌ君以上の戦闘力を持った相手と最強のフリーランサー。最悪の場合、そのどちらも相手にしなければならないのか。そんな状況で勝ち目のある人間はこの組織には一人しかいない」 「分かりました。準備します」 「リザ、「それは誰です?」とは聞いてくれないのか?」 「……それは誰です?」 「私さ」 ・・・・・・ アルフレドとアス某に襲われてから三日が経ったが、当初の予定を変更“させられて”俺とウォフは学園都市に滞在したままだった。 それも全部あの襲撃事件のせいだ。リムジンの炎上からトンネルの崩壊まで全面的にアス某に罪を被せて通報したが、それでも重要参考人として身柄を押さえられこの街の外に出られないでいる。ちなみにアルフレドは一人だけトンズラした。 仕事の方は部下に任せて何とか切り盛りさせてはいるが、やはり自分の手で仕事を進めたいので早く帰りたい。 「仕事はできねぇ。学生の街だから賭博場も歓楽街もねぇ……あー、暇だ」 どうにも健全すぎて性に合わない街だ。見て回るくらいなら異能やラルヴァのこともありそれなりに面白いが、滞在するとなると俺には退屈だ。 普段やっていることでこの街でもやれることと言えばウォフをからかうことウォフをいじめることウォフを弄ぶことくらいだったが……今はそのどれもできないでいる。 この三日間ウォフはまともに懐中時計の中から出てこない。 最初はあの戦いでのダメージが後を引いているのかと心配したがどうやらそういうことでもないらしい。 単に、悩んでいる。 ポンコツが何をそんなに悩むのか、ポンコツだから悩んでいるのか、悩んでいるわりに飯とデザートの時間には出てきてしっかり食うのもポンコツだからか。という趣旨の発言でからかってみても反応が薄い。どうやら真面目に悩んでいるらしい。 相棒がそんな調子ではからかい甲斐もなく、俺は一人で退屈な思いをしながら街を歩いている。 「しっかし……案外まともだな、この街」 初日にバイクに乗ったヒーローが街中を走っているのを見かけたが、全体としてはさほど外の街と代わりがない。俺としてはホグワーツ魔法学校的な有り様を予想、というか夢想していたのだがそんなファンタジーな光景はほとんど見られない。 まだ異能力者増加の99年以降に生まれた異能力者が最年長でも十歳、ってのがこの日常過ぎる街並みの理由らしい。あと十年もして異能力者の平均年齢が上がり、数も増えれば非日常の度合いも増すだろうか? 「ま、今の俺は十年どころか明日の命も知れぬ身って奴だけどな」 武器商人をやってはいたが、特定の組織に命を狙われるなんて羽目になるのは初めてだった。 マスカレード・センドメイル。狂芸術家達の宴。自らの作品を駆る異能芸術集団。 ゴーレムの術者とアス某で二回もしくじったんだ。連中も諦めるか……次はいよいよ本気でくるかのどちらかだ。 おまけに今はアルフレドに襲われたときから引き続き手元には『ドラゴンキラー』の一つもない。あのポンコツの素のスペックで戦わざるを得ないわけだ。……十中十の確立で殺される。 唯一の救いはここが日本の国営異能力者組織の中心地であり、警備・教導のために99年の増加以前に生まれた成人異能力者が多く滞在していることだ。ここにいる間は事件が起これば戦闘技能を持った異能力者が駆けつけてくる。襲撃者との戦闘をそいつらに任せれば、永劫機で戦うよりは生存確率も高くなる。 だから車を使わずに徒歩で移動し、街を歩くときも人通りの多い道を選んでいる。 人口密度が高ければ高いだけ異能力者がいる確立も増える。もしいなくてもこの人数がそのまま攻撃を防ぐ盾にも逃走を助ける目隠しにもなる。宛がわれた部屋でじっとしているよりもよっぽど安全だ。 とは言え、無目的に人ごみを歩いているわけでもない。ちゃんと目的地はある。 兵器開発局。 先日学園側から寄こされた数々の超科学系研究機関の資料の中で、最も実用的な兵器開発をしている……一番裏がありそうな部署だ。 そこならあるいは強力な兵器《ウェポン》の一つや二つ、あるいは七つ程度は隠してあるかもしれない。 例え無くても、『ドラゴンキラー』レベルの武装は資料にも載っているくらいだから当然置いてあるだろう。 それらを実際に拝見し、性能如何によっては交渉して借りる、もしくは頂くのが今日の目的だ。 アルフレドやアス某との戦いでは致命的な損傷こそないもののほとんど一方的に負けていた。判定なら審判全員があちらに軍配を上げるだろう。 前回生き残れた要因であるアルフレドはもういない。もう一度、同レベルの敵が襲ってきたときが年貢の納め時だ。 だから、どんな手を使っても強くなる必要がある。 「しっかし……やっぱ車使えばよかったかねぇ」 兵器開発局があるという南の工場区域は徒歩だと結構な時間がかかる。 この街は街並みこそ普通であれ、普通の街よりも随分と広いからだ。国の首都港の一角を埋め立てて創っただけのことはある。 三日前はリムジンで見回ったが、そのリムジンはアルフレドの襲撃で運転手ごと爆散している。新しく車と運転手を仕入れるのは容易だったが、また同じような目にあっては金がもったいないと思って出費をケチった。徒歩移動にはそんな理由も含まれている。 ただし、その計算には徒歩に要する体力が入っていなかった。 「あー、クソッ。歩いて移動するのがこんなに面倒だとは思わなかったぜ。つうかすげえな異能力者」 『何がすごいんですか御主人様?』 俺がぼやいていると懐中時計の中からウォフが話しかけてきた。 「悩み事は終わったのかポンコツ?」 『その、考え事より先にちょっと気になることが……。でもそれは一先ず置いておいて……何がすごいんですか御主人様?』 「ん? ああ、いや。異能力者の餓鬼は毎日毎日こんな広い街ん中で通学してすげえなって話。やっぱ根本的な体力からして俺みたいな一般人とは違うのかね」 『え、でも……必ずしも徒歩通学とは限らないんじゃ……』 「けど餓鬼は運転免許取れないし運転手の手配とかできないだろ?」 『バス使えるじゃないですか』 …………バス? 「浴槽《バス》がどうかしたか?」 『そっちじゃなくて定額料金で客を乗せて走る大型車両のほうですよ。御主人様も歩くのが大変なら使えばよかったんじゃ……』 ……………………あー、そういうもんがあったのか。 『まさか御主人様……バスの存在を知らなかったんじゃ……。バスって、日本だけじゃなくてアメリカやヨーロッパにもちゃんとありますよね……?』 「ハハハハハ、何を言うかこのポンコツが。俺がそこまで世間知らずなわけがないだろう。バスってのはあれだ、手を上げて止めて乗り込んで金を払う車のことだ」 『それはタクシーです……』 「…………」 墓穴掘った! 『御主人様……漫画のお金持ちキャラみたいな珍回答です……。運転手付きリムジンの弊害がこんなところに…………(頭が)かわいそう』 「かわいそう!? かわいそうとか抜かしやがったな!? しかも小声で「頭が」って言いやがったなこのポンコツ!」 懐中時計から引きずり出して剥いてやろうか! 「ママー、あの外人のお兄ちゃん時計とお話してるー」 「シッ! 見ちゃいけません!」 俺の様子に危機感を覚えたのか幼い親子連れがそそくさと離れていく。同様に人通りの多い道だというのに俺の周りだけぽっかりと人の波が逸れていた。 「…………」 『とりあえず場所を変えたほうがいいと思います御主人様』 「……そうだな」 世間の目から逃げるように俺はその通りを後にした。 五分後。俺はさっきまでいた通りから二つ離れた通りのバス停に立っていた。 『南部工場区域行きだから、ここで大丈夫です』 『……なるほど』 横にある目印のような看板には時間が書いてある。この時間にバスとやらは到着し、乗客を乗せて規定のルートを回るらしい。 『電車みたいもんだな』 『よかったぁ……。御主人様も電車を知らないほど世間知らずじゃなかったんですね……』 『果てしなくバカにされた気がするから後で締めるわ。つうかお前もお前で世間知らずのはずなのに何で知ってんだ?』 こいつを作った施設での期間を抜かせば、こいつはほんの十日前に世に出たばかりだ。 『あの……私は人間に擬態する機能もある兵器ですから……その……言いづらいことなんですけど』 言いづらい? 『人に紛れるために万人が知っているべき一般常識は教えられてます……』 『…………万人が知っているべき、ね』 やっぱ後で剥いて締めよう、と俺は心の中で誓った。 先刻の二の舞を避けるため今は肉声ではなく頭の中の声、いわゆるテレパシーでウォフと話しているが、それは普通に喋るときと同様に伝えたいことだけ伝えることができる。だから心のうちで俺がどんなことを計画していてもウォフにはわからないという利点がある。楽しみにしとけ。 それとさっきまでいた雑踏とは違い立ち止まっている今は聞き耳を立てようと思えば立てられる状況だからというのもテレパシーで話している理由だ。 とは言ってもこのバス停で俺達の他にバスを待っているのは小学校低学年くらいの少女が一人だけなので心配することもないかもしれない。土曜の昼時少し前、こんな時間に工場のある区域に行こうとする者は少ないらしい。 そうして二分ほど待っていると書いてある時刻より少し早くバスは到着し、俺達と少女はそれに乗り込んだ。乗る際に整理券とやらを取り損ねると料金が余分にかかるとウォフに聞いていたので忘れずに取る。 バスには乗り込んだばかりの俺達以外には乗客がいなかったので、俺は一番後ろの広々とした席に陣取り、少女は横ではなく縦長に設置された長い席に座った。 俺達以外に客がいないのを確認すると、バスはエンジンを動かし、巨大なくせに空洞な車体を揺らして走り出した。 彼らを乗せたバスが走り出した一分後、乗り込んだバスと全く同じ形のバスがバス停に到着した。 バスが走り出して少ししたころ。 『……あ』 とウォフが声を漏らした。 声は文字通り一言ではあったが『あ、やばい』、『あ、しまった』というニュアンスを聞く側に伝えるには十分だった。 『何しでかした?』 『し、しでかしたと言いますか……しでかさなかったと言うんでしょうか……』 ウォフは先ほどの一般常識云々よりも言いづらそうに、こう言った。 『さっき言いかけたまま忘れてたんですけど…………この街に別の永劫機がいます』 『へぇ、この街に別の永劫機がね……………………ハァ!?」 ウォフの報告に思わず驚きの叫びが口から漏れる。 唐突に大声を出した俺に驚いたのか、俺達を除いてバスの唯一の乗客である少女が驚いて身を竦ませる。すぐに非難がましい目で俺を睨んできた。物怖じしないお子様だ。 少女にジェスチャーで謝り、ウォフとのテレパシーに戻る。 『どういうことだ、そりゃ? 三日前は手がかり一つなかったのにいきなり永劫機そのものが見つかった? そいつはこの三日の間に学園都市に入ってきたのか? つうかそんな大事なこと何でいい忘れるんだよ!』 『ご、御主人様のバス発言が衝撃的過ぎて…………』 それほど!? 『その永劫機がいつからここにいたのかはわかりません……。私は探査系の機能がそれほど優秀な永劫機じゃありませんし、この街は異能力者が多くて波長が読みづらいんです……。今だってわかるのは永劫機がいるってことだけでどの機体かまではわかりません……』 『何にしても、ここで他の永劫機を見つけられたのはまたとない好機だな。ひょっとするとお前を作った連中と一緒かも知れねえ。会いに行く価値はある。場所は分かるか?』 『あまり正確にはわかりませんけど……今の進行方向にはないです。逆方向みたいです……』 『……どうすんだ?』 『御主人様、バスはランプを押せば次のバス停で止まってくれます』 『そうなのか。えーっと、こうか?』 俺がランプを押すと、車内のランプが一斉に灯り、『次のバス停で停車します』という録音されたアナウンスが流れる。 なるほどこういうものかと思っているとすぐに次のバス停が見えてきて――バスはそのまま通り過ぎた。 『……止まらなかったぞ? 嘘ついたか?』 『う、嘘ついてないです……!』 俺達や他の乗客である少女が疑問に思う間にもバスは走行を続ける。やがてバスは交差点に差し掛かり、そこを左へと曲がる。 「いつもの道順とちがう……」 少女がそんなことを呟いた。 「…………」 『…………御主人様』 ようやくこいつを強くする手がかりが見えてきたってのにな……。 来たかよ、刺客。 「すみませーん、バスに何かあったんですかー?」 少女が席を立って、運転席に近寄り話しかけた。運転手は前を向き運転しながら答える。 「いいえ。車両の機能は十全です」 「でもいつもと道がちがいますよ?」 ……? なんだ、この違和感は? 「本来この車両が通るべき交通ルートを利用していないのは、本来の目的地に向かう理由がなく、他の目的地へと向かう理由があるからです」 「え、こまるよ! わたし研究所のパパにお弁当を届けに行かなきゃなのに!」 おかしい。 運転手の声、随分と若い女の声だ。いや、少女の声と言ってもいい。 その時点で奇妙と言えるが、それだけじゃない、何かが引っかかっている。 これは…… 「あなたには申し訳ありませんが、少々お付き合い頂きます。ああ、ラスカル・サード・ニクスと永劫機ウォフ・マナフ。窓を割って逃げようなどとは考えられませんように。そのような動作が見られた場合、ただちにこのバスを爆破いたします」 そいつは俺達を脅迫しながら、ゆっくりと、振り向いて、こっちを見た。 「…………え?」 ……違和感の正体にようやく気づいた。 そいつの声は乗客の少女と――まったく同じ。顔も瓜二つだった。 【ドッペルゲンガー】――と呼ばれる人真似ラルヴァがいるとは聞いたことがある。 だが、こいつはどうやらそうではないらしい。 なぜなら次の瞬間にはそいつの顔は、俺になっていた。 さらにはまだこのバスの中で姿を見せていないウォフの顔に切り替わる。 「申し遅れました。私はマスカレード・センドメイル属員。首領補佐、モナ・リザと申します。以後、この名を知りおいていただけますように。顔はお見知りおきいただいても意味がございませんので」 俺達と少女と爆弾を乗せたバスはすぐに地上の公道から地下へと潜り、どこかを目指している。 いや、どこかなんて曖昧な言い方をするのはやめよう。この三日間、学園都市で襲撃されたときのために街の上も、下も、地図で立地を把握する努力はしていた。 だからこのバスが向かっている先はすぐに知れた。 地下演習場。 緊急時の避難所としても兼用される学園で最も頑丈な施設の一つにして、学園で最も人目につかない施設の一つ。 「……やられた」 「どうしたのーお兄さん。なんだか暗い顔してるねー」 俺が相手に最悪の先手を打たれ、苦しい立場に立たされたことに溜息をついていると、いつの間かあの少女が隣に座っていた。最初こそ驚いていたが、今は意外なことに無関係な事件に巻き込まれたにしては落ち着いている。 「暗い顔してると幸せがよってこなくて、溜息一つで幸せ一つ逃げてくんだよ?」 「……覚えとく」 俺から幸せが逃げてくのはポンコツ疫病神のせいだとは思うが。 「悪いな嬢ちゃん」 「? なにがー?」 「今回の一件、嬢ちゃんは俺のせいで巻き込まれた。ひょっとするともう家には帰れないかもしれねえ。つうか死ぬかも」 『そうかもしれませんけど本人に面と向かって言うんですか御主人様!?』 まぁ、普通はそうだな。けど、ここで「絶対に大丈夫」だとか「無事に帰してやる」なんて無責任なことを言う気にもならなかった。 それを決めるのは俺ではなく、相手の胸先三寸だからだ。 俺達が強くなる前に、ウォフ・マナフの武器を手に入れる前に刺客が出てきた時点で既に圧倒的に相手の優位。ウォフ・マナフは最初の刺客のゴーレム野郎相手でも素手じゃ勝負にならなかった。今度の刺客がゴーレム野朗より弱いとは考え難いのだから、これから始まる戦いで俺とウォフが生き残るのすら難しい。それどころか、相手が手ぐすね引いて待ち構えている状況じゃ最悪戦いにもならずに殺されるかもしれない。 そんな状況でこの少女の身の安否を決めるのは俺じゃない、相手の側だ。 巻き込んでしまい、守るだけの余力もない俺が軽々しく「大丈夫」だなんて言えるわけが……。 「大丈夫!」 少女は俺の思案を断ち切るように胸を張ってそう言った。 「……なんでだ?」 「あの運転手は悪い奴なんでしょ?」 「まぁ、そうだな」 秘密結社の一員なんだし。現在進行形で誘拐の真っ最中なんだからまず悪人だろう。 「だからきっと正義の味方がやっつけにくるよ……ちょっとスケベだけど」 「正義の味方、ね」 子供の言葉。しかし異能力者だらけのこの街なら本当にいるかもしれない。 もし本当にやってきたなら、悪党《ラスカル》である俺《ラスカル》も一緒にやっつけられてしまうのかもしれないが。 「到着です」 会話と思索をしていると地下道でバスは停車し、モナ・リザが目的地への到着を告げた。停車したバスの前方は機械仕掛けの分厚いシャッターで道が塞がれている。 停車して間もなく、シャッターは重低の機械音を響かせながら開放され、バスはシャッターの向こうへと入る。 暗い地下道から照明に照らされた空間に侵入してすぐは目が眩み視界が上手く見えなかったが、それでもシャッターの向こうにあった空間は俺の予想と記憶にあるとおりのものだとは察することができた。 地下演習場。視界はぼやけているが、輪郭で想像していたそれよりもずっと高い天井と広い空間があるのはわかった。これだけの広さがあればウォフ・マナフを動かすのに何の支障もなさそうだ。……何でだ? 相手はもちろん俺とウォフのことは知っているはずだ。だったら、何でこうも広々とした空間にわざわざ誘い出す。 むしろもっと狭い空間、ウォフ・マナフを召喚できない地形に連れ込んで始末してしまったほうが話は簡単だ。 俺は疑問に思ったがそれはバスから降りて演習場に立ち、目が明順応して演習場の様子が伺えるようになるとすぐに知れた。 演習場には人間と――機械仕掛けの巨人が立っていた 巨人の全高は巨人の手前に立つ人間と比較してウォフ・マナフより少し高い6メートル前後。しかし、ウォフ・マナフが脆くも分厚い装甲に覆われているのに対し、巨人は人間に換算すれば引き締まった美しい肉体と言えるスタイルなので傍目にはウォフ・マナフの方が大きい。 ウォフ・マナフのように右腕がアンバランスに大きいわけではなく、左右対称の完全にバランスがとれた造詣。 顔はウォフ・マナフが三連スコープ状の特徴的な悪役顔なのに比べて、まるでどこぞの主役のような双眼のヒーロー顔。 対極。 超科学の、ウォフの操縦者《ハンドラー》だからこそ一見して理解できる。 この巨人は俺達の対極だ。 恐らくは……強さも。 「ウィトルウィウス」 俺が戦慄を覚えながら巨人を睨んでいると、巨人の前に立っていた人物――恐らくは巨人の所有者《マスター》――が言葉を発した。 「『無欠なるウィトルウィウス』。それが私の創り上げた機兵の名だ」 ウィトルウィウス。それは著作である建築論において人体の比率について書き記した建築家の名前だ。 だが、こいつがマスカレード・センドメイルの一員であるならば、ウィトルウィウスの名が示すのはもう一方のウィトルウィウスのことだろう。 ウィトルウィウス的人体図。ウィトルウィウスの記述を基にかの万能の天才芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた人体の絵だ。 最も美しいプロポーション、人体の調和そのものの図解 即ち、無欠なるウィトルウィウス。 俺が巨人の名に納得と、悪寒と、その他の口に出したくはないあれこれの感情を抱いていると巨人の所有者は一礼して名乗り始めた。 「申し遅れた。私の名はレオナルド・ダ・ヴィンチ。マスカレード・センドメイルの首領を務めている」 そのとき初めて俺はそいつの顔を見た。いや、見ていない。 名乗った名、首領の肩書き、驚くべきことはいくらでもあった。だが、俺が一番驚きを覚えたのはそいつの顔を見なかったときだ。 ――仮面 そいつの顔は全体がまるで舞踏会でつけるような仮面に覆われていた。 |仮面舞踏会・序章《マスカレード・センドメイル》。なるほど、名前の由来はこういうことだったか。 「……こっちの自己紹介はいらねえよな。にしても、二回負けたくらいで親玉が出てくるとは随分と余裕のない組織じゃねえか」 俺は内心の動揺をこれ以上漏らさないよう努め、話す。 「全くもって君の言うとおりだな。我が組織のメンバーもたかが一度や二度の敗北でざわついて沽券がどうのと五月蝿いことだ。自意識過剰。プライド過多。対して余裕のなんと少なきことか」 「お前自身は余裕綽々ってかい」 「真に上に立つ者はいつ如何なるときも余裕は消えず、優位は揺るがず、地に着く膝などありはしない。それが私のポリシーでな」 「そうかい。なら――膝どころか額を擦りつけるくらいの土下座させてやる」 好機は既に逸した 青春は既に過ぎた 時、既に遅く、気づけば喪いしものなり 「――時は、掌中より滑り落ちる!」 俺の呼びかけに応じて瑪瑙懐中時計より永劫機ウォフ・マナフが召喚される。 そして召喚された勢いのまま、巨大な右腕を唸らせてウィトルウィウスに殴りかかる。 先手必勝。まともにやれば勝ち目はないのは見て取れる。 なら、相手が体勢を整える前に叩き潰す! 「兵は拙速を尊ぶ。しかしラスカル君。我々は兵ではない……落ち着きたまえよ」 異能芸術家集団《センドメイル》の首領ダ・ヴィンチは涼しい声音でそう言い、奇襲にもそのまま微塵も動じることはなかった。 そりゃそうか。 先手必勝一撃必殺を期して振るわれたウォフ・マナフの右拳は――それよりも遥かに細いウィトルウィウスの左掌に受け止められ、微塵も揺るがすことができなかったのだから。 歪み一つない装甲の硬さ、奇襲に対応する反応速度、そして片手で受け止めるパワー。その全てが、ウォフ・マナフを比較対象とするならば桁が違う。 「落ち着きたまえ。まだ始めるには早い。話したいこともある。何よりも、今始めればそちらのお嬢さんを巻き込みかねない」 ダ・ヴィンチはツイと右の人差し指で俺の後方を指し示す。 そこにあったのは俺が今しがたまで乗っていたバス、そして車内に残ったままの少女だった。いきなり姿を現したウォフ・マナフや相対するウィトルウィウスを驚きの視線で見ている。 「リザ」 ダ・ヴィンチが車内の配下に短く指示を出す。するとモナ・リザは少女の背後に立っており、そっと手のひらを少女の口元に当てた。すると少女はそのまま瞼を落とし、モナ・リザに背を預けるようにして気を失った。 モナ・リザは眠りに落ちた少女を抱え上げてバスから降り、演習場に併設されていた小部屋へと歩き出した。どうやら、戦いの影響が及ばない場所に移すらしい。 「本当は関係ない子供を巻き込む予定ではなかった。ラスカル君がなぜかいつまで経ってもバスに乗らず、ここに連れて来る機会を逸し続けたために巻き込む羽目になってしまった。何分、あそこで偽装バスに乗せる機会を逃すともう機会がないかもしれなかったのでな」 「そりゃ悪うござんした。……ったく、巻き込みたくなかったねぇ……善人みたいなことを言いやがる」 「我々は芸術家だ。善人だの悪人だのとは関係のない場所に立っている。 しかしながら、我が組織の人員全てがそうだとは言いがたい現状ではある。これで後年になり私がいなくなれば我が組織もどうなっていることか悩みは尽きない」 「そうかい。ま、そっちは俺には関係ねえわな」 「ああ。関係のないことだ」 ウォフ・マナフの右拳とウィトルウィウスの左掌が交わったその真下で、俺とダ・ヴィンチは言葉を交わす。 「しっかしよくもまぁこんな地下演習場を秘密結社が勝手に使えてるもんだ。管理が杜撰なんじゃねえか?」 「勝手に使ってはいないさ。私はセンドメイルの長ではあるが、表向きはある企業の取締役でね。双葉学園《ここ》のスポンサーの一人でもある。君と似たようなものだよ、武器商人のラスカル君」 なるほどな……。たしかに俺も出資者の一人だ。そのお陰で超科学の研究成果の閲覧やらができている。似たようなもの、と言えば似たようなものだ。 「ところで、わざわざこの地下演習場に招いた理由は尋ねないのかね? 『何でこんなところに呼び寄せやがった!』と言われるのを予想していたのだが」 「聞くまでもねえ」 俺はこの街に滞在していてこう考えていた。『この街には戦闘能力に秀でた異能力者も多い。敵が来ても騒ぎになれば加勢を得られるはずだ』、と。 間違ってない。たしかに、普通ならそうなる。俺は超科学機体の操縦者、ウォフ・マナフを出せば否が応にも目立つことになる |地下演習場《ここ》以外では。 ここでどれだけ戦おうと、音も衝撃も外には決して漏れない。そもそも、ダ・ヴィンチが演習場の許可をとって使用しているのなら戦いは何もおかしいことではない。 「大人気ない真似しやがる……」 「これを大人らしいやり方と言うのさ」 「……覚えとくぜ」 会話をしている間にモナ・リザが演習場へと戻り、つかつかと歩いてダ・ヴィンチの隣に並ぶ。 「そうだ、もう一つだけ教えろよ。そいつの顔が変わるのは変身の異能か? それとも」 「リザは私が創った超科学のアンドロイドだ。骨格・皮膚・毛髪・網膜・声帯、外見上の特徴と声だけなら自由に変化させることができる」 「……諜報用のアンドロイドってわけか。うちのより優秀そうで良いねぇ」 『ひ、ひどいです御主人様……』 「待ちたまえ」 俺の言葉を聞きとがめた。仮面に隠れて顔は見えないが、「心外だ」という気配は伝わってくる。 「誤解があるようだから言わせて貰うが、リザは諜報用ではなく観賞用の芸術品《アンドロイド》だ」 「……観賞用?」 「人の美意識は変わるもの。色彩、音階、造詣、大小……時が経てば美の判断基準も変わる」 美の判断基準……価値観とも言える。 「だから変わった判断基準に合わせて姿形を変える芸術品があれば、それは“最も美しい”芸術品ということになる。私はそう考えてリザを作成した」 声も顔も体型も変化させられるのなら、その時々で所有者が最も美しいと感じる姿になれる。なるほどたしかに観賞用だが、こいつが漏らした言葉にはそんなことよりも重要極まりない事柄が雑ざっていた。 こいつはモナ・リザの能力を考え、製作動機に忠実な代物を作成したことになる。自分で作りたいものを、作ったということになる。加えてこいつはウィトルウィウスも作成している。この時点でこいつは天啓ではなく理解したうえで設計が可能な設計者《デザイナー》だと知れる。 設計するだけでなく、創り上げたと言っていることから製作もこいつが行ったと推測できる。つまりこいつは開発者《アセンブラー》でもあるわけだ。 ウィトルウィウスやモナ・リザは自動操縦で動いているようなので操縦者《ハンドラー》ではないにしても、こいつは超科学を使いこなしすぎている。マスカレード・センドメイルの首領におさまっているのも道理だ。 ……こういう奴が身内にいたらウォフももうちょっとお手軽に強くなれたな。 「もう質問は?」 「……ねえよ」 「では、闘争を始めよう。姿を見せないところを見ると最強のフリーランサーは君達と行動を共にしていないらしい。それにウォフ・マナフは本来持っているべき武器を持っていないようだ。 ならばウィトルウィウスも武器を使用せず、“素手”で相手をさせてもらうことにしよう」 「……ありがたいこって」 『真に上に立つ者はいつ如何なるときも余裕は消えない』。先刻の発言を実証するかのようなハンディマッチを提案されても、「馬鹿にするな!」と青臭く怒ることも俺には出来ない。 俺から見ればこんなもんはハンディになるようで、まるでなっていないからだ。相手の武器の有無程度で勝敗が変わるほどの変化はない。 そんなどうしようもない事実について考えていると、ダ・ヴィンチが合図するように短く手を振り、ウィトルウィウスがそれに応えて動き出した。 戦闘開始かと身構えたが、そうではなかった。ウィトルウィウスは空《から》の右掌でダ・ヴィンチとモナ・リザを拾いあげ、胸元へと持ち上げた。何をする気なのか、俺が疑問に思っていると――ウィトルウィウスの腹部と胸部が順に開閉した。 腹部の中の空間は極狭く、所狭しと敷き詰められた機械の端々から接続端子が覗いている。対して、胸の中には機械的な椅子と戦闘機のそれに似たレバーや計器が収って……ちょっと待て!? 俺の驚愕を他所にダ・ヴィンチとモナ・リザは動く。 モナ・リザはその変形機能でトルソーに似た形態へと変形して腹部の空間に収まる。 そして、ダ・ヴィンチはゆっくりと『操縦席』に座り、宣告する。 「改めて。マスカレード・センドメイル首領、レオナルド・ダ・ヴィンチとその芸術品、“最も美しい”モナ・リザと『無欠なるウィトルウィウス』。 永劫機、午前六時の天使ウォフ・マナフとそのマスター、ラスカル・サード・ニクスに決闘を申し込む。 拒否は――認めず」 レオナルド・ダ・ヴィンチ。 知らぬ者無しの万能の天才芸術家と同じコードをもつマスカレード・センドメイルの首領。 設計者《デザイナー》にして、開発者《アセンブラー》にして、――操縦者《ハンドラー》。 超科学の三職種全てを網羅した万能天才。 ダ・ヴィンチを乗せたウィトルウィウスはウォフ・マナフの右拳を受け止めた自動操縦モードから真の力を発揮する手動操縦モードへと切り替わり、ウォフ・マナフを倒すべく動き出した。 壊物機 続