約 301,168 件
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/629.html
142 :黒の領域 ◆mxSuEoo52c [sage] :2007/03/02(金) 23 01 14 ID 96pJgTHX 今日は英津子さんが休日だったので僕と彼女はお互いの顔を睨めっこするように一日中飽きずに見ていた。 それしかやることがないのだ。骨折した足の具合はまだ悪くて、外に出掛けることは不可能。 監禁している状態で僕を外出すると問題なく他人に大声で助けを求めるであろう。 それに対して英津子さんは会社に行く事と買物する以外は僕の隣で手を握っていた。 僕の温もりを感じるだけで安心するらしい。微笑ましい英津子さんの照れている顔にいい加減に飽きる。 毎日毎日同じ事の繰り返しだ。そこに退屈を覚えても、新たな新鮮な出来事に遭遇するわけでもないし、 電波女と慰めしかやる事がないのはいろいろと欲求不満になってくるわけだ。 ここで初めて僕はこの監禁されている場所から抜け出して、自分の家に帰りたいという気持ちが胸から溢れだしそうになった。 さっさと僕の居場所に戻って、僕の世界へと回帰する。仲間達とまだまだ遊びたかったし、 引き裂かれる寸前の家族を救うことも諦めていなかった。 そろそろ、20過ぎの独身女性の心の隙間を埋めるボランティア活動は終了させてもらおうか。 機会はある。 英津子さんは今日は休日なので必ず買物に行く。その瞬間を狙って、ドアを叩き開けて周囲に助けを呼ぶ。 その辺を歩いている通行人でもいい。助けを呼べば……僕は帰れるんだ。 昼頃を過ぎると英津子さんは冷蔵庫の中を険しい顔をして覗いていた。 普段は仕事で忙しい彼女は休日にいろいろと買い溜めをしておいて、休日になるまで食材や材料を切らさないように気を遣っていた。 また、休日になると食料を補充するために買物に出掛ける。 これが僕と英津子さんが同居している時に気付いた彼女の生活パターンである。 もちろん、自宅に僕がいるから鍵を閉めるなんてことはしなかった。 「京介君。お姉ちゃんねぇ、ちょっと近所のスーパーまで買物をしてくるから。よい子で待ってくださいね」 「はい。わかりました」 僕はいつものように笑顔で返事を返すと外に出掛ける英津子さんを注意深く観察する。 バックを持って、英津子さんが玄関に行ってドアを開けて出掛けるところを確認すると。 時計で5分ぐらい待ってから、作戦を実行に移す。 寂しさと孤独を紛らわす生活に慣れていた英津子さんは油断していた。 一緒にご飯を食べて、一緒に居る時間が長かったから 英津子さんは僕が立派に調教されて大人しく従う愛玩動物になっていると……。 現実はそう甘くない。帰る場所がある人間は揺るがない。 擬似的に僕の寂しさと孤独が英津子さんによって癒されたとしても、 捨て去ることができない物がある以上は優先順位に従って、人は行動する。 だから、僕は動かせば激痛がする足を引き摺ってまで玄関のドアの方向へゆっくりと動いた。 左足を軸にして、大根によって折られた右足を少しづつ動かす。 1cm単位でも動かせば、感じたこともない痛みに苦渋の表情を浮かべるが。僕は我慢した。 希望の扉まで後もう少し。ノブに手が届くと僕は最後の力を振り絞って。 ドアを開けた。 143 :黒の領域 ◆mxSuEoo52c [sage] :2007/03/02(金) 23 03 36 ID 96pJgTHX ドアを開けた瞬間、僕に待っていた光景は久しぶりに見るはずの外の光景。 のはずだった。 開けた先には英津子さんがいつものように優しく微笑んでいる表情を浮かべて待ち伏せるように立っていた。 「京介君……、一体何をやっているのかな? かな?」 「あっっ……、いやぁぁ……」 僕の顔色がどんどんと青くなっていくのがわかる。英津子さんは外見は笑顔を崩さずにいるが、 目は全然笑っていなかった。女の子が怒っているのは、暴力や汚い罵声など 頼らずにただひたすら冷笑するだけで男を怯えさせることができるのだ。 「お姉ちゃん。言ったよね? 京介君はよい子で待ってくださいね? どうして、私との約束を守れなかったの。 そんな悪い子にはちゃんとしたおしおきが必要だよ」 「い、いやぁ……。や、やめて」 英津子さんは僕を突き放すように押すと尻餅を着く。その間にドアを閉めて英津子さんは僕の方に近寄ってきた。 「京介君はもう私の物なんだよ。勝手に外に出掛けたらどうなるかわからないわけじゃあないでしょ。 私と京介君だけの生活が終わちゃうんだよ。私は絶対にそんなの嫌っ!! もう、一人は嫌なんだよ」 骨折している足の激痛に襲われて蹲っている僕を見下すように冷たい視線で英津子さんは睨んでいた。 視線を合わせるのが恐くて、僕は思わず外した。 「京介君。今度はどこの体を痛め付けて欲しいの? 左足? 右腕と左腕。 どちらが不自由だったら今度はもう私たちの楽園から逃げ出そうとしないはずだよね?」 「もう、やめてぇぇ……。謝るから。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。 だから、もうこれ以上は痛い目に遭わせないでください。お願いしますっっ!!」 「そんなに懇願しなくても……。まだまだ、大根はこんな時のためにたくさん買ってきたから大丈夫だよ」 「だ、だ、だ、だ、いこんいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!」 冷静な判断できずにあまりの恐怖に僕は精神の限界に耐え切れずに癇癪を起こす。 あちこち身体を激しく動かし、首を左右に揺らす。口から溢れだす唾液は垂れ流していた。 「もう、こんなことはしないよね?」 「う、う、うん」 僕は必至に首を下に振って頷いた。英津子さんの迫力に圧されて、僕の体は硬直していた。 喉の奥深くから懇願するようにようやく声を搾り出して言うと、英津子さんは満足な表情を浮かべた。 「でもね……。ちゃんとおしおきするよ」 「えっ……?」 唖然とした僕の隙を突いて、英津子さんは僕の唇を奪った。 それはキスと呼ばれる行為だったかもしれない。 「んっ……ちゅうちゅ……あっ。京介くぅぅん」 僕の唾液と英津子さんの唾液の交換し、僕の口から侵入してくる英津子さんの暖かい舌が僕の舌と絡み合う。 初めての体験に脳に鋭い電撃が落ちたような感覚に陥る。 英津子さんとの行為に没頭していると骨折した足の痛みもどこかへと飛んで行く。 「え、英津子さんっ……」 「お、お、お姉ちゃんの舌は気持ち良かった?」 唇から離れると僕と英津子さんの間に唾液の糸がいやらしく繋がっていた。 その光景に年頃の男性である僕は興奮を覚える。それは、快楽の表情を浮かべている英津子さんも動揺であった。 「き、気持ちよかった」 「京介君が私の初めてだよ。ファーストキスを貰ったのは……」 「僕も初めてだったよ」 「だったら、ちゃんと責任取ってくださいね。京介君」 「ええっ……!?」 「つ、次はお姉ちゃんのセカンドキスを奪って欲しいな」 僕の返事を待たずに英津子さんはまた僕の唇を奪う。貪るように僕の唾液を飲み込む彼女を拒むことは僕の頭の中にない。 もう、僕はこの監禁生活という現実をしっかりと受け止めてしまったから。
https://w.atwiki.jp/tmnanoha/pages/218.html
#1 「え~っと、あの黒騎士とか怨霊とかの総称がサーヴァントで、 其の正体は地球の過去の伝承に登場する英雄、なんだっけ?」 この解釈でいいのかなというナノハ・ナカジマの疑問に、 男は概ねそれで正しいと答えた 涼やかな顔立ちの美丈夫で右の目元にある黒子が印象的な雰囲気をかもし出している ティアナが連れてきた事件の重要参考人である 付け加えて言えばサーヴァントの真の名は弱点に通ずるものであるが故、 秘匿すべきものである それゆえ彼らは各々の割り振られたクラス名で呼ばれることとなる 其の男も自らをランサーと自称していた 「でも、この二つは兎も角、 コッチの事件は英雄とはいいがたくないですか?」 会議室のテーブルにつき、ティアナが自分の仕事である誘拐事件を指して言う 年端も行かない子供ばかりを家族を皆殺しにしてでも攫う その所業はとても英雄のそれとは思いがたい 「いやぁ、地球の伝承見ると晩年の英雄いうんは結構ヒドインよ、 酔っぱらって裸で寝てるところ見られたからいうて 呪いかけて息子だか孫だか追い出したりとか」 この事件もそういう類のもんやろねと、はやては一人つぶやき 書類を見ながらおもむろにティアナに聞いた 「ティアナ、ジャンヌ・ダルクの話は知ってる?」 「以前フェイトさんに進められて見た地球の映画で、 そう言えばアレにもジル・ド・レって居ましたね」 それが何か? と言うティアナにこれがあるんよと答え、 はやてはモニターに画像を表示させた 「ジル・ド・レ―――ジル・ド・レィとも言うな 地球の西暦1400年代、イギリスとフランスの百年戦争において フランスの英雄ジャンヌ・ダルクの副官を務めた人物でな ―――直接的に武力で支えた言うより資金面で活躍した人なんやけど フランス側が当時追い込まれてた王族が盛り返した途端に手のひら返してしもてな ジャンヌの最後はイギリスで当時最も恐れられた火刑による処刑で、 その後、領地に引きこもったジル・ド・レは黒魔術と少年少女の虐待に傾向したんよ」 紆余曲折の後、最後は処刑された訳だが、 傾倒していた黒魔術の腕前次第によっては オカルトに否定的な時空管理局では苦しいかもしれない 「呪術的な面に関してはさほど警戒せずとも問題は無い、 かの英霊の真価は宝具の性能によるもので自身の術者としての力量はとかく低い」 「さよか、そうなるとその持ってる物が重要やね、 ところで―――」 「質問―――っ! 宝具ってなんですか?」 右手を上げて質問をしたのはオッドアイの女性、高町ヴィヴィオだった、 其の傍らには同じように右手を上げるこの時代のヴィヴィオが居る なのはによってここに連れてこられるまでに打ち解けてしまったのである 「駄目だよヴィヴィオ、はやてちゃんの台詞遮っちゃ」 「はぁい、ごめんなさい」 なのはに叱られ首をたれてうなだれるヴィヴィオ(大) そういうところは変わってへんねんなぁ、と其の様子にほほえましいものを感じつつ 咳払いで話を引き戻す 「改めて聞くけど、宝具ってなんや? 英霊の武器や言うたらそうかも知れんけど、あんなとんでも武器ロストロギアや無いか」 英雄の伝承に出てくる魔法の剣といえば大抵刃こぼれしないか権力の象徴である、 何処をどう間違えば一振りで街をなぎ払う様な剣になるのか 「宝具とは、其の英霊の伝承におけるもっとも顕著な逸話の具現だ 代表的なのは其の英霊の用いた武具だが必ずしもそうとは限らん」 そうした意味ではもっともオーソドックスなのが自分のそれだ、と 両の手に一つずつ紅と黄の槍を取り出す男 「それがフェーナ騎士ダーマットの魔法の槍か、 流石はランサー言うだけはあるなぁ」 其の輝きに思わず見入り感嘆の声を漏らす 一つはいかなる魔法も無効化し相手に突き立つ紅い槍 もう一つは、コレでつけられた傷は決して癒えることの無い黄色の槍 「其の槍の威力はまぁ分からんでもないけど…… アレがエクスカリバーいうんはなんかおかしいやろ」 はやてが表示した画像には、文字どうり全てを薙ぎ払う黒い極光が映し出されていた いかに伝説において幾重もの松明より眩く、 一振りで何百もの敵を討ったといわれる魔法の剣でもやり過ぎである 「そもそもアーサー王が龍の化身言うのはあくまで表現の一環と言うか、 シンボル的な意味合いで、エジプトのファラオを神の化身言うみたいなモンやないか」 「はやてちゃん、それを言ったらそもそもアーサー王が女の子の時点で変だって」 「いや、それはえぇねん、 グレアムおじさんの話やとイギリスでは普通にある説やから、 まぁ、源義経女説とかの同類やね」 アーサー王伝説自体複数の英雄譚が編集されて出来上がった代物である、 其のモデルとなった人物の中に一人ぐらい女性がいてもおかしくは無い なのはのツッコミを流し、とにかく物騒なロストロギアという認識でOKと、 自己完結するはやて 人の身では最早作ることの叶わない代物と言う意味では あながち間違った認識でもないのか、ランサーは何も言わない 其の時、警報が鳴り響いた 「なに?」 反射的になのはが通信を開く 地上本部発令所によると、連続誘拐事件の犯人を発見、 現在陸士部隊による包囲中ということらしい 現在この事件の専任はティアナである なのはは彼女の判断を仰ぐべく水を向けることにした 「たくさんの子供達を引き連れた状態みたいだけど、 ティアナ、どうする?」 「人質の安否を最優先にして、 引き離した上で何とか無力化するしかないですね、 武装隊の要請は?」 「ティアナ次第かな、 もちろん、他の英霊が出た場合対応できる体制も必要だけど」 引き起こされる行為の悪辣さに比べれば ある意味直接的な危険度は低い、そのことはランサーに確認している 下手に刺激を与えるよりは少数の方がいいかもしれない 「分かりました、では私とランサーが正面に、 なのはさんには万一の場合の相手の動きを封じる為のけん制役を」 「わかったよ、それじゃはやてちゃん達は」 「他のサーヴァントが出てくる可能性を考えて待機やね」 「はい、おねがいします」 阿吽の呼吸で役割分担を決定して立ち上がる それに異を唱えるものは一人も居なかった #2 たどり着いた現場は、既に阿鼻叫喚の様相を呈していた 黒い蛸のような怪生物が大量に現れ陸士たちはそれらと攻防を繰り広げていたのである 「コレは一体―――人質は?」 「それが―――」 割って入りながら、その場に居た陸士に問いただす なのは達の問いかけに、其の陸士は、手の中の物を握りしめ、悔しげに俯いた 「なんてこと―――」 「まさに、外道此処に極まれりと言うところか」 其の端整な顔を怒りに歪めてランサーが言葉をつむぐ 見渡せば言葉にせずとも分かる、そこかしこに散らばる肉片は、 この怪生物を生み出す苗床に使われた子供達の成れの果てである 此処にたどり着くまでのたった数分が実に歯がゆい 自分さえ最初から居合わせれば、せめて一人はと思うのは傲慢であろうが、 それでもそう思わずにはいられない 「ランサー、ほんとにアナタの宝具でこの化け物を止められるのね?」 「無論だ、あれはキャスターの持つ宝具が呼び出した妖魔の類に過ぎない、 我が槍で奴の宝具さえ貫けばたちどころに形をとどめられずに霧散する」 「そう願いたいわね、みてるだけで気持ち悪くなりそうだし」 口元を押さえながらティアナが戦場の真ん中でふんぞり返る男をにらみつける、 男の手にある一冊の書物、莫大な魔力を放つそれがこの場の元凶なのは明らかだった やることが決まったところで、其の手に武器を構える 「それじゃ、全力全開でいってみようか レディ……GO!!」 子気味よい音を立ててカートリッジが廃莢される 念話で陸士に退避を促しながら魔力を充填する 「ストレイト……バスター!!」 反応炸裂型直射砲で一息に怪生物をまとめて吹き飛ばす 陸士部隊の戦闘力に完全に魔導師の実力をなめてかかっていたのか、 其の一撃で実に半数以上が吹き飛んでいた 「なんと!!」 驚愕に目を見開く男の目前に炸裂を目くらましに踏み込むひとつの影 「いざ―――覚悟ッ!」 「ひぃい!」 耳を打つ悲鳴は追い込まれた小物のそれだ もとより自ら戦場に立つ身ではないこの男には 敵に踏み込まれること自体が既に王手である、 主を守るべく集う怪生物も、一山いくらの小物では其の槍を防ぐたてとはなりえない 「抉れ、『破魔の紅薔薇』ッ!」 右の手から繰り出された真紅の一撃が男の持つ本を串刺しにする 触れてさえ居ればあらゆる魔力を断ち切る赤槍の穂は一撃で男の術の根幹を断ち切った すぐさま飛びのいたことで、書そのものは魔力の活動を再開させたものの ザバリと音を立てて陸士たちと争っていた妖魔が形を保てず飛び散った 全員がことの全容を把握するすることよりも、 先ず男を取り押さえんと十重二十重に囲みこむ 最初に遭遇した時点で陸士隊による説得は行われていたが、 相手は見るからにそれとわかる狂人である、そんなものはついぞ効果が無かった 今もってその目には狂気がの他には、 目の前に突きつけられた武力に対する脅威以外、一切の感情を持ち合わせていなかった 「時空管理局法に則り、市街地危険魔法使用、公務執行妨害及び、 未成年者略取誘拐、暴行致死の現行犯で貴方を逮捕します」 「法か! 待たしても法の名の下に私から万物を奪わんとするのか知れものどもめ ―――よろしい、それが諸君らの信仰ならば 私もまた私なりの信仰を持って諸君らに報いるとしよう」 ティアナの口にした法と言う言葉に反応し、 男が狂ったように目を見開き声を上げて嗤う 「笑止、法の裁きを笑う前に己が罪を悔いるがいい外道!」 二槍を手にランサーが男に詰め寄らんとした其の時だった 物陰から数本の黒塗りの短剣がティアナめがけて投げ放たれた “マスター” デバイスの警告にとっさに弾くが、そもそもコレだけの魔導師がいる中で、 インテリジェントデバイスのセンサーにも気付かれずに 近づいて投擲する手誰の一撃である 弾丸さながらのそれは、とっさに身をかわしたティアナの首筋を バリアジャケットの上から掠めていた 「投擲? どこからだ」 突然の出来事に一瞬騒然となる魔導師達、 ランサーもまた突然の出来事の犯人が思い当たるだけに油断無く目を走らせる、 なのはもレイジングハートのサーチをすり抜ける相手に緊張の色を隠しきれず、 それゆえにその一瞬誰もが男から目を離した そして男は決してそれほどの隙を見逃すような愚鈍な存在ではなく、 再び魔書が膨大な魔力を走らせる 「させないっ!」 書の動きを無効化しようとなのはがバインド魔法を起動させる 魔力運用そのものを阻害する高位拘束魔法――― 彼女の判断は決して間違っていなかった、惜しむらくは 術の起動も魔力運用も書に任せているこの男自身を拘束してしまったことだろうか 元から術など組み上げず、ただ野放図に書から魔力を暴発させる 結果、今だ魔力のパスだけは残っていた大量の残骸が一斉に魔術的に沸騰、破裂し どす黒い濃霧となってその場の視界を埋め尽くし、 その血臭に魔導師達は思わず口元を押さえた ようは目くらましの煙幕である、その隙にバインドを振りほどくと、 一瞬にして己が魔力の流れを解き実体を解体すると脱兎の如く逃走を図る男 ランサーが追跡しようと飛び出すが、それを何処からか飛来した黒塗りの短剣が妨害する 「おのれ……」 歯噛みするランサーの後ろで魔導師たちが各々に濃霧を払う ひとしきり、視界がはれたところで、なのはは思った 帰ったら念入りにシャワーを浴びよう、と 逃がしてしまったのは問題だが、なら次の手を考えるのが正しい戦術だ 次は逃がさないと心に誓い、そのまま辺りを見渡して ―――ティアナの様子がおかしいことに気がついた 「ティアナ?!」 “バイタル低下、魔力運用効率減少、 バリアジャケット維持できません” 先ほどの濃霧に当てられたにしては自分を含めた他の魔導師に影響が無いのはおかしい 疑問に思って調べてみると、 首筋の傷がうっすらと不気味な色を帯びていることに気がついた 「毒物……コッチが本命だったんだ!!」 全身をフィールドで覆い、毒ガスや炎からも身を護るバリアジャケットの防御力も 体内までは及ばない、 コレが自分ほどの堅牢さであればそもそも傷を負うこと自体無かっただろうが、 ティアナのジャケットはなのはのそれを参考にしながらも、 本人の魔力から強度はおよぶべくも無い 自分のなかから血の気が引くのを感じながら、 それでもなのはは歴戦の経験からすぐさま落ち着きを取り戻し、 矢継ぎ早に陸士たちに指示を出し、よどみなく撤収した 最もその後は、担ぎ込まれたティアナが回復に向かったことが告げられるまで、 拳を血が滲むまで握り締めながら、ICUの前を動こうとしなかったのだが
https://w.atwiki.jp/rozenmaidenhumanss/pages/437.html
https://w.atwiki.jp/rozenmaidenhumanss/pages/4469.html
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/855.html
78 :羊と悪魔 [sage] :2007/09/19(水) 00 35 10 ID zx7wJDLP 高校生活のリズムにも慣れてきた五月、私はある悩みを抱えていた。 何故だか知らないが、私の所持品がすぐに消えてしまうのだ。 教科書、シャーペン、消しゴム、ボールペン……気がつくとそれらがあるべき場所から消えている。 「それさぁ、絶対ストーカーだよ」 理子がけらけらと笑いながら言う。本当にストーカーなら笑い事ではない。 「希美子は美人だからね、なんかそういうの連れてくるフェロモンとか出してるんじゃないの?」 玲が真面目そうな顔で、そんなことを言い出した。先ほどまで読んでいたブ厚い美術史の本を閉じて、私の顔をじぃっと見つめる。 「あー、希美子ってなんか女王蜂って感じよねー」 女王蜂ってどういう感じなのよ、とスナック菓子を頬張っているのぞみにツッコミをいれつつ、私はいつ失くしたのか、もしくは誰が盗んだのかを考えた。 しかしいざ考えようとしても、さっぱり答えは出ない。 いつ失くしたか憶えていないのだから、どこで失くしたのかもわからない。誰かが盗んだとしても心当たりはない、はず。 それに理子が言うようにストーカーだとしても、私にはそんなストーカーの気配など微塵も感じないのだ。 「これ、希美子」 「あてっ」 玲が、持っていたブ厚い美術史の本でチョップしてきた。 「あんたはあんまり難しいこと考えんな。あんたの心配はあたしたちがするから、あんたは自分の心配はしなくていいのよ」 無茶苦茶なセリフだけど、玲の表情はいたって真面目だった。 その真面目そうな顔があんまりおかしくて、私はついつい噴き出してしまった。 「ぷっ。あはははははははは!」 「何笑ってんのよ」 「いやごめん」 むくれてる玲の顔を見ていたら、ものが失くなったことなどどうでもよくなっていた。 玲ははげましたつもりだったんだろうけど、はげまし以上に心が満たされた。玲は、いい人だ。 「あ、そだそだ」 食べ尽くしたスナック菓子の袋を丁寧に折りたたみながら、のぞみが今思い出したらしい話題を語りだした。 「あの赤い髪のコ、なんだっけ名前、えーと……」 79 :羊と悪魔 [sage] :2007/09/19(水) 00 44 37 ID zx7wJDLP きみこちゃんと違うクラスになりました。 とても悲しいです。 やたらと私に他人たちが話しかけてきます。親友はきみこちゃんだけです。話しかけないでください。 私は悪魔ですから、あなたたちを食い殺しますよ? そんなことを言っていたら、いつの間にか誰も私に話しかけないようになっていました。ありがたいことです。 カールクリノラースくんはそんな私をじぃっと見て、何も言いません。 きみこちゃんが他人と話しているのを見かけました。 とても悲しいです。 きみこちゃんは私の親友です。私の親友はきみこちゃんだけです。 そんなきみこちゃんが知らない他人と話をしているのを見るたびに、私の喉と胸が、針を刺されたように痛みます。 この感情は一体なんでしょうか。 いらだった気持ちのまま家に帰り、無言の父と母の横を通り、自分の部屋に入って鍵をかけます。 物で溢れかえる鞄を勉強机に置き、学校の制服を脱いで放り投げます。放り投げた制服は私の足元に落ちて、ここは自分の領地であるかのように裾を広げていました。 下着も脱ぎ捨て、ベッドに倒れこみます。暗い部屋の中で冷えた毛布の感触が、私の肌に直に伝わります。 女性には性感帯というものがあるそうなのですが、私が感じるものはこの心地よい冷たさだけです。自ら裸体を晒すあの他人たちは、この心地よい冷たさを知っているのでしょうか。 きみこちゃんは、この冷たさを知っているのでしょうか。 何故でしょうか、きみこちゃんのことを考えるたびに、冷たさが消えていく気がします。けれどそれもまた心地よくて、私はきみこちゃんのことばかり考えているのです。 いつかきみこちゃんをこの部屋に連れてこよう。私はそう思いました。 この暗い部屋に。この暗がりで冷えた、ゆりかごに。 カールクリノラースくんと私だけの部屋に。 私は一糸も纏わない自分の身体を抱きしめて、何がおかしいのか自分でもわからないまま、ただただ笑い続けました。
https://w.atwiki.jp/minasava/pages/801.html
X X X X X 水佐波市の外れには一軒の古書店が存在する。 狭い店内には至る所に書物が天井近くまで積み上げられ、足の踏み場もなく、 その奥には煙管を咥えた甚平姿の男が暇そうな顔で店の本の頁を繰っているという。 六、七十年前から時間が止まったかのようなその古書店に、客が訪れることは殆どない。 何せその店に足を踏み入れるには“結界”を越えなければならないのだから―― 「んー……」 まだ正午を回ったばかりだというのに薄暗い店内の一番奥で、 古書店の主人、蔵馬鉄人は新聞をめくっていた。 『早くも猛暑到来? 市内各所で今年最高気温を記録 熱中症に注意を』 『地デジ完全移行 対応テレビ求め列 市内の家電量販店は軒並み在庫切れ』 『市内の動物園で飼育されていたライオン(六歳 オス)が急死 遺体は専門家の元に搬送』 『台風6号 来週にも最接近 気象庁が発表』 地域欄にざっと目を通す。見たところ、これといって目に付く記事はない。 水佐波市は今日も平穏だ。……少なくとも、表向きは。 「まだ“事”は始まっていないのか、それとも……」 「鉄にぃいいいいいい!!」 突如、かび臭い店内に甲高い叫びが響き渡った。 鉄人は新聞紙を机に置く。その向こうにいたのは…… 「……な、夏海!? お前学校はどうしたんだ!?」 「それどころじゃないんだよ!」 高坂夏海。額から汗を流し、呼吸を荒らげた彼女がそこに立っていた。 そしてその後ろに、 「ちょっ……そんなに強く引っ張らないでください!」 もう一人、夏海と同じ制服を着た少女がいた。 彼女も肩で息をしながら、困惑した表情で夏海と鉄人を見ている。 「突然こんな所に連れてきて……一体何のつもりなの? 夏海」 「えーと、話すと長くなるんだけど、この人は蔵馬鉄人って言ってあたしの親戚のお兄さんなの。鉄にぃ、この子はあたしの友だちの志那都みこと」 志那都みこと。その名は鉄人も何度か夏海から聞いた覚えがあった。 志那都家の一人娘。都市開発企業の役員を両親に持つお嬢様。 最近彼氏が出来たせいで遊んでくれないとかなんとか…… 「その子が一体どうしたって言うんだ? そもそも此処にはあまり他人を連れてくるなと前にも……」 「これ見て! これ!」 夏海が強引にみことの制服の袖を捲り上げる。 顕になる白い二の腕。そしてその上にくっきりと浮かび上がった文様に鉄人は目を見開いた。 「これってさ、やっぱアレだよね……」 「あ、ああ間違いない……」 「……あなたたちさっきから何を言ってるんですの?」 みことが怪訝な表情を夏海と鉄人に向け、二人は顔を合わせて眉を顰める。 「何て説明したらいいんだろうな……みこと君、と言ったね?」 鉄人が頭を掻きながらみことに向けて言った。 「君は選ばれてしまったんだ――この、聖杯戦争の“マスター”に」 X X X X X 「……………………というわけなんだ」 「というわけなんだよ、みこと」 「というわけなんだ、と言われましても……」 聖杯戦争。 その概要を説明されても、みことの頭には困惑しか浮かんでこなかった。 一体どう受け止めろというのだ? 遥か昔に死んだ英雄の魂を現世に召喚して闘わせる……そんな儀式がおこなわれているなどと言われて。 「信じられないのも無理はない。けど君の腕に現れた文様を見る限り間違いない。 それは令呪と言って、聖杯戦争の参加者に選ばれた証であり、それを使えば召喚した英霊……サーヴァントのあらゆる行動を律することが出来る絶対命令権でもある。 夏海もそうだったが、君も何かの偶然でサーヴァントを召喚してしまったのかもしれない」 「それは……はい、心当たりは」 みことは昨晩のことを思い出す。 祭殿で祈りを捧げていた自分の前に、雷光と共に現れた何者かの姿を。 やっぱりあれは……夢ではなかったのだ。 「……でも、わたくしの前に現れた者は、すぐにどこかに行ってしまいましたけど」 「じゃあみことはサーヴァントとちゃんと契約してないってこと?」 「契約? 何ですの、それは?」 みことは首を傾げ、夏海と鉄人は不穏な表情を浮かべる。 「通常なら呼び出されたサーヴァントが召喚者を確認して契約を締結させるはずなんだが…… 陣も呪文もなしで強引に召喚したせいでサーヴァントの記憶に不備が出たのかもしれない。 或いは、運悪く精神の錯乱した英霊を呼び出してしまったという可能性もあるが」 「はぁ……」 鉄人の言葉に、みことは溜め息の混じった返事をかえす。 いまいち要領を得ない話しだが、何にせよ自分がおかしな事態に巻き込まれたことは間違いないらしい。 はぁ、とみことはもう一度深々と溜め息をついた。 どうして自分なんかが……しかもよりによって“こんな時”に…… 「一体、誰が何のために、そんな訳の分からないことを始めたと言うんですの……?」 「主催者が何者なのかは現時点では分からない。だが目的は間違いなく聖杯の入手だろう」 「聖杯……ですか」 「そう、聖杯を手に入れて己の願いを叶えること。聖杯戦争はそのための儀式なんだ。他にはないだろう」 聖杯。その言葉にみことは心の中で苦笑する。 これではまるでおとぎ話の世界ではないか。 聖杯を手に入れて、己の願いを叶えるだなんて―― 「……願い……」 「まあ、令呪を捨てマスター権を放棄すれば安全に離脱することは可能なはずだ。今回の聖杯戦争にいるかは分からないが監督役を探して……」 「ちょ、ちょっとお待ちください。今、“願いを叶える”とおっしゃいました?」 みことは鉄人に問いかける。 「ああ、他の参加者が脱落し最後の一組になれば聖杯が召喚される。それを使えばどんな願いでも叶えられるという話だ。だから……」 「なんですってぇッ!?」 古書店の店内に、にわかに絶叫がこだました。 鉄人と夏海が目を丸くする。 「そっ、それは例えば治る見込みのない怪我人を復活させるといったことでも可能ですの……!?」 「……え、あ、ああ……勿論出来るだろう。聖杯に不可能はないはずだ」 「――!」 鉄人の返答に、みことは総身が震えた。 “彼”を救い出す可能性。その希望が自分の前に現れたのだ。 救える――この戦いに勝ち抜けば“彼”を救えるのだ!! 「……ふ、ふふ……ふふふ……」 体が歓喜と共に武者震いをし、口からは期せずして笑いがこぼれ出る。 ああ、やはり神様はわたしを見捨ててはいなかった。 わたしの祈りを聞き届けて、チャンスを与えてくれたのだ。 この聖杯戦争という一世一大のチャンスを! 「――どうすればいいんですの?」 「……え?」 「この戦いに勝利するためにはどうすればいいのかと聞いているんですの!!」 叫びとともに、みことは掴みかからんばかりの剣幕で鉄人に詰め寄った。 「と、とりあえず君の場合、自分のサーヴァントと合流することが先決だろう。何とかして探し出して……」 「……左様ですか」 その時、鉄人と夏海は気づいた。 みことの左袖の下から、淡い燐光が放たれていることに。 「要するに――呼び寄せればいいのでしょう? わたくしの元に」 それは令呪から発せられた光だった。 みことの魔術回路が励起し、それに呼応して彼女に刻印された令呪は急速に輝きを増して行く。 「これを使えばあらゆる行動を律することが出来る……そうおっしゃいましたね、鉄人さん?」 「……! いや、確かにそうだが、それは――!」 鉄人が制止するより先に、みことの左腕の令呪はその法外な魔力を覚醒させて激しく光を迸らせる。 そして閃光と共に、みことは高らかに宣言した。 「さあ我がサーヴァントよ! 聖杯を手に入れ“彼”を救うため、今すぐここに飛んできなさい!!」 ――その瞬間、 轟音と共に一個の人型が三人の眼前に降り立った。 X X X X X 「我を呼び、我を求め、キャスターの座を依り代に召喚せしめた者……問おう、汝が私のマスターに相違ないのだな……?」 「左様! このわたくしがあなたを召喚したマスター、志那都みことに違いありませんことよ!!」 「……………………では、ここに契約は成立した。我らの手に聖杯の奇跡がもたらされんことを……」 みことの呼び声と共に現れた古めかしい外装の男性がそう宣言する。 こうして、水佐波市を舞台にした聖杯戦争の最後の一組――七番目のマスターとサーヴァントは契約を完了した。 「あなたがわたくしのサーヴァント……キャスターと言いましたわね」 みことは改めて自分の眼前に立つ男の姿を凝視した。 偉丈夫と言っていいだろう。みことより頭一つ分以上高い長身に、絵画のように均整のとれた肉体。 だがその身には剣も槍も、それどころか寸鉄の一つすら帯びていない。 身に纏っているのも具足の類ではなく、何の変哲もない布の服だ。 どこをどう見ても戦士とか騎士とかいった人種だとは思えない。 そして何より目を引くその相貌……そこに刻まれた表情はひたすらに陰鬱で、闘気や覇気といった気配はあまりに薄い。 (……こんな様子で満足に戦えるのかしら?) みことは怪訝な表情を浮かべる。だが望もうが望むまいがこれが自分に配られたカードなのだ。 自分はこの男を従えて勝負するしかない。みことは毅然とした態度をキャスターに向ける。 「良いことキャスター! このわたくしの配下になった以上、脆弱さは許しませんわ! 持てる力の全てを使って、何としても聖杯を手に入れるのよ!」 「……盛り上がっているところ悪いんだが」 そこに鉄人が天を仰ぎながら、口を挟んだ。 「何ですの? 今は下の者を叱咤するのに忙しいので後にしてもらえません?」 「悪いが緊急を要する。“アレ”は一体どうしてくれるんだ……?」 鉄人が仰ぎ見た視線の先、そこには文字通りの“天”が見えていた。 先ほどみことがこの場に呼び寄せたキャスター……彼は高速で空から落下してきて、まさしく自分たちの前に“降り立った”のだ。 恐らく「今すぐここに飛んできなさい」などという文言で命令したためであろう。あらゆる手段でサーヴァントを統べることを可能にする令呪は みことの言葉をまったくもって正確に実行してキャスターをこの場へ飛来させたのだ。 ……その結果が鉄人の視線の先の、天井に穿たれた大穴だった。 「あら、ちょうど篭った空気が換気されて良かったんじゃありません? それに心配しなくても今日は一日晴れですわよ」 「そういう問題じゃないだろ!? 屋根なしでまともに生活が出来るか!」 「しょうがないですわねぇ、では請求書をわたくしの実家宛に送ってくださいな。傘下の建築会社に無償で修理させますから」 「……そうしてくれると有難いが問題はそれだけじゃない。さっきの衝撃で結界が完全に破られた。もう一度張り直すのにどれだけ時間がかかるか……」 「結界? よく分かりませんが地鎮祭なら工事の前にちゃんとやって差し上げますわよ。叔父が神主をやっておりますので」 「だからそういう話ではなくてだな……!」 「ま、まぁまぁ落ち着いてよ二人とも」 噛み合わない口論を始めた二人の間に夏海が割って入った。 「あら、いたのね夏海。ずっと声が聞こえなかったから帰ったのかと思いましたわ」 「ずっといたよ! 何か話に入るタイミングが掴めなかったから黙ってただけだよ!」 鉄人に詰め寄られても、夏海に抗議されても、みことは飄々とした態度で受け流す。 「まったく、みことはこれだから……」 呆れたような態度で応じながら、夏海は心の中で安堵していた。 そうだ。この超然とした物腰こそがみことの本当の姿なのだ。 彼女の左腕に令呪を見つけたときはどうなることかと思ったが、聖杯戦争によって彼氏を救えるかもしれないという希望を持つことで みことは昔の、元気だった頃の彼女を幾らか取り戻せたようだった。 「……」 ふと、夏海はみことが呼び寄せたサーヴァント、キャスターに目を向けた。 英霊。その称号に恥じぬ、神々しさすら感じられる風采。だが表情も全身にまとった空気も華やかさとは縁遠く、ただただ痛ましい程に暗い。 頭は自然と俯くように下がり、彫りの深い眼窩は泣き付かれたかのように力なく窪んでいる。 その様子に夏海は既視感を覚えた。 (なんかこの人……昨日までのみことみたい……) キャスターは押し黙ったままただじっと、何かを観察するかのような目でみことを見ていた。 「……やれやれ、話が逸れてしましましたわね」 鉄人と話がついたのか、みことは踵を返しそのまま出入口の方へと向かっていく。 「こんな所でグズグズしてはいられませんわ。他の者たちに遅れをとるわけにはいきません。 さぁ行くわよキャスター! わたくしに付いて来なさい!」 「断る」 「まずは手始めに大橋を落としましょう! 都市間の経路を塞いで敵を追い詰め――」 言いかけて、みことは足を止め己のサーヴァントの方を振り返った。 「……今、何とおっしゃいました?」 「聞こえなかったのか……?」 自分のマスターに向けて、キャスターは眉一つ動かずにきっぱりと言い放った。 「断る、と言ったのだ。私は君に付いて行くつもりはない」 「な――」 みことは目を見開いて、噛み付かんばかりの勢いでキャスターに詰め寄った。 「どういうことです!? あなたはつい先程わたくしと主従の契約を結んだはずでしょう!!」 「……確かに契約はした。君は私のマスター、それは事実だ。だからといって君と行動を共にするつもりは一切ない」 声を荒げるみことに対し、キャスターは冷たく応えた。 「君は魔術師ではないな? 私を召喚し限界させている以上、魔術回路は持っているようだが魔術の素養も知識もまるでないと見える。 そんな君がのこのこ戦場に顔を出して一体何の役に立つというのだ? 敵マスターとの戦闘どころか私の援護も出来はしないだろう。 はっきり言って足手まとい以外の何物でもない」 眼前の小柄な少女を、文字通り見下しながらキャスターは告げた。 「この戦いに勝ちたいなら君はどこかにシェルターでも作って閉じ篭っていてくれ。君に出来るのはそれくらいだ」 「…………!」 あからさまな侮辱にみことは拳を震わせた。 ここまで言われて黙っている訳にはいかない……みことは左腕の文様に意識を集中させた。 「……ひょっとして令呪を使うつもりか?」 「ええ、そうです。これを使って命令すればあなたは逆らえないのでしょう……!」 左腕の令呪に力が満ち、淡く輝きだしていく。 「このわたくしを侮辱した罪、きっちり償わせてさしあげますわ! さぁ今すぐそこに跪いて――」 「一応訊くが、令呪が三回しか使えないことを承知でそうするというのだな?」 「――え?」 キャスターの発言にみことは虚を突かれ静止した。 きょとんとした表情で鉄人の方を振り返る。 「……そうなんですの?」 「ああ……令呪は一人三画しかない。君の場合既にキャスターを呼ぶのに一画使っているから残りは二回までだ」 「そ、そういうことは先に言ってくれませんこと!?」 狼狽するみことを、キャスターは一層冷たさを増した視線で見据える。 「やれやれ……まさか基礎的なルールすら把握してないとは。 これで分かっただろう。聖杯戦争の表舞台に君の出る幕などないということが」 「くッ……」 何も言い返せず、怒りに身を震わせながらみことはキャスターを睨み返す。 激情の込められたその視線を、何ら意に介さずに受け止めてキャスターはみことの傍らを横切った。 「……ついでに言っておくが」 出入口へと向かいながら、キャスターは振り返りもせずに言った。 「私は君のような感情的で騒々しい女が大嫌いでな、近くにいられるだけで虫酸が走る。 分かったら私には干渉しないでくれ。聖杯は私一人で手にいれてみせる。 心配しなくても君にもちゃんと“使わせてやる”から、大人しく待っていたまえ……」 そう言い残し、キャスターはみこと等の前から姿を消した。 X X X X X 「うああああああああああああああああああああああッ!!」 「み、みこと落ち着いて! みこと!!」 キャスターが去ってから後、怒声を上げながら暴れかけたみことを夏海は必死で抑えこんでいた。 「……はぁ……はぁ……! あの男よくもぬけぬけと言ってくれましたわね……!!」 息を切らしながら、それでもなお怒り収まらぬ様子でみことは言った。 「こうなったら何としてもヤツの鼻を明かしてやらなければ気が済みませんわ…… 待ってなさいキャスター! あなたより先に敵の一人や二人打ち倒して目の前に叩きつけてやりますから!!」 「おい、ちょっと待て!」 矢も盾もたまらずに駆け出そうとしたみことを鉄人が背後から制した。 「夏海の言うとおりだ、みこと君。もう少し落ち着きたまえ」 「ですが……!」 「苛立つのも無理はないが……あのサーヴァントの言うことも最もだ。 君は魔術師ではないし、聖杯戦争のこともよく分かっていない。 おまけにサーヴァントと離れた状態とあっては他の参加者からしたらいい鴨でしかない」 「……それは……」 「このまま闇雲に飛び出していっても犬死にするだけだぞ」 「……」 鉄人の言葉に気を削がれ、みことは黙って握り締めた拳を降ろした。 「いいか、聖杯戦争は言葉通り“戦争”、殺し合いだ。 しかも相手は真っ当な人間じゃない。魔術師や英霊といった超人が手段を選ばず君の命を狙ってくる。 そんな危険なことに君は参じようとしているんだぞ」 「……それは……わかっていますわ」 戦争。殺し合い。この戦いは間違いなく自分の死の危険と隣り合わせだろう。 だがそれでも――自分には戦わねばならない理由がある。 「ですがこの戦いに勝利すれば願いを一つ叶えられるのでしょう…… だったらわたくしはやらないわけにはいきません。それで“彼”が救えるなら……」 「さっき“治る見込みのない怪我人を復活させられるか”と聞いていたね。それが君の願いかい?」 鉄人の言葉にみことは頷いた。 「確かに君の気持ちは分かる。だがもう一度よく考えてみてほしい。 本当に自分がこの戦争に参加するべきなのかどうかを。……夏海」 鉄人は、心配そうな面持ちでみことの傍らに立っている夏海に声をかけた。 「とりあえず今日は帰りなさい。夏海、お前はみこと君を送っていってやれ。 あと人通りのない道は通らないよう注意するんだ」 「う、うん。分かった……行こう、みこと」 「……ええ……」 鉄一に促され、古書店を後にする夏海とみこと。 二人を送り出し、鉄人は大きく息をついた。 ――この時、彼は気づいていなかった。 天井に穿たれた穴から一匹の雀が、 ……正確には一匹の雀の“死体”が、店内の様子をずっと覗き込んでいたことに――。 X X X X X 水佐波海上都市。 その沿岸部はリゾート地として近年めざましい発展を遂げ、周辺には幾多のホテルが軒を連ねている。 その中でも特に富裕層向けに特化したラグジュアリーホテルのスイートルームの一室で、 ファーティマ・アブド・アル・ムイードはベッドに腰掛けていた。 「ふむ……」 褐色の肌に黒い髪。南欧の雰囲気を色濃く漂わせた美女である。 眼鏡の奥の瞳は理知的で、白衣のような純白の衣装と相まって科学者か数学者のような印象を与える。 その連想は当たらずとも遠からず。ファーティマは確かに研究者を生業としている。 ただしその研究対象は“魔術”という、科学とはかけ離れた分野であったが。 「まさかこんなに早く見つかるとは思わなかったわね」 水佐波市内に放っておいた使い魔の内の一匹、その視覚から送り込まれて来た映像を確認してファーティマは満足気に呟いた。 「素人同然のマスターに、それを構わず放置するサーヴァント。 これほど与し易い相手が現れるなんて。幸先がいいわね、ライダー」 ファーティマはそう、己のサーヴァントに声をかけた。 「ふふふ、しかしあんな相手では手応えがなさすぎて貴方のお気には召さないかもしれないわね」 ファーティマは呼びかけながら振り向いた。 ……が、そこに目当ての姿はない。 ファーティマはぐるりと室内を見渡す。 「…………ライダー?」 X X X X X 『さぁ逃げますのはブルートルネード そしてビッグゴールド それからトウカイトリック、トウカイトリック二番手 ブルートルネード先頭、トウカイトリック二番手 三番手に内へ入ってビッグゴールド 外へシルクフェイマスであります それからトウカイカムカムがいて、リンカーンは早めに行っている リンカーン早め五番手から六番手 ナリタセンチュリー、ローゼンクロイツ そして相変わらず、相変わらずディープインパクト、後ろから2頭目のポジションであります 悠然と後ろから2頭目で前の15頭を見ている さぁ1コーナーから2コーナーに ペースが落ち着く1コーナーから2コーナーへ ファストタテヤマの外へディープインパクト 現在後ろから2頭目であります さぁ逃げるのはブルートルネード その外の方へ、二番手にトウカイトリック シルクフェイマス三番手 内へビッグゴールド その後ろからリンカーン早々と五番手に入っている リンカーン早々と五番手であります 滴るばかりの緑の中を行く、17頭であります この位置11番リンカーン その後ろ6番のトウカイカムカム ナリタセンチュリー、ハイフレンドトライがいてアイポッパー マッキーマックスがいて、いた、いた! 7番! ディープインパクトは相変わらず後ろから3頭目ぐらいであります アスコットへ、ロンシャンへ、夢大いに膨らむディープインパクト 今3,4頭を交わして後ろから五番手ぐらいに上がってまいります 薫風に乗って第3コーナー、さぁ勝負所』 「…………何をしているの、ライダー」 先程ファーティマがいた部屋、その隣のリビングルームにかの人物はいた。 「あぁ? 見りゃ分かるだろ。テレビ見てんだよ。テレビ」 瀟洒に拵えられた長椅子に悠々とふんぞり返ったまま、その人物は愛想なく応じた。 金色の髪を短く刈り込んだ、精悍な顔立ちの男だ。 無駄なく引き締められた肉体を軽装の戦支度でピッタリと包み込んだその姿は、さながら一本の革鞭のようである。 野性的な光をたたえたその瞳は、呼びかけたファーティマに向けられることなく目の前のプラズマディスプレイに注がれていた。 『17頭がほとんどひと固まり ディープインパクト、ゆっくりと今、ゆっくりと今、先頭集団に上がってまいりました 先頭集団に上がって場内大歓声であります さぁ800の標識で早くもディープは四番手、四番手から三番手 ローゼンクロイツの外へ馬体を併せに行きました 早々とディープインパクトは先頭だ 早くもディープインパクト先頭で、あとゴールまで600mの標識を過ぎている さぁ第4コーナー、二番手はローゼンクロイツ シルクフェイマス 外から猛然とリンカーン、左ムチが飛んでいる 大外からマッキーマックスとストラタジェム マッキーマックスとストラタジェム リンカーン追い込んだ、リンカーン追い込んだ 逃げる! 逃げる! 逃げる! 逃げる! 懸命に逃げるディープインパクト あと200m、差は詰まらない! ディープインパクト、三馬身、四馬身のリードがある 二番手はリンカーン 三番手ストラタジェム 先頭は依然ディープインパクトです、ディープインパクト!』 「これは……競馬の中継?」 早口で捲し立てられた実況アナウンスの声がスピーカーから響き渡り、 画面の向こうでは何頭もの馬が抜きつ抜かれつ緑眩しい野芝の上を駆けている。 「姿が見えないと思ったらこんなものを見ていたの、ライダー」 テレビに釘付けになっている己のサーヴァントの姿にファーティマは呆れたように嘆息した。 ライダー。その呼称の通り、この男は『騎兵』のサーヴァントだ。 その中でも特に彼は馬と縁深い英霊である。トラックを走る騎手と競走馬の姿に何か感じ入るものがあったということか。 いや、それともあるいは…… 「ひょっとして貴方、自分が現世で乗るための馬の品定めでもしていたのかしら?」 「はぁ? まさか」 そこでようやく、ライダーはファーティマに顔を向けた。 「どの馬も毛並みは見事だが軟弱すぎてオレの好みじゃねえよ。 オレの家でも代々馬を飼育してたがアイツらは凄かったぜ。 気性が荒すぎて、気に入らない人間が背中に乗ると振り落としてそのまま食い殺しちまってたくらいだ。 ま、オレとしちゃそれくらいの暴れ馬でないと乗った気がしなかったがな」 そう言ってライダーは不敵な笑みを浮かべた。 「まぁでもあのタケって乗り手はなかなかの腕だな」 「それはそうと、ライダー」 ファーティマはようやく本題に入った。 「先ほど敵マスターの所在を捕捉することに成功したわ。直ちに奇襲を仕掛けます」 「……ようやく出撃か。だがそれには――」 「ええ、勿論用意は出来ている」 ファーティマはチラリとバスルームの方へ目を向けた。 その方向から微かにだが、地鳴りのような重い唸り声が聞こえてくるのをライダーは感じた。 「この現世の戦場を駆け抜けるための“騎馬”、こちらも調整が完了したわ。 きっとお気に召すはずよ。貴方が手綱を掛けるに相応しいよう、飛びっ切り凶暴に仕上げておいたから」 「ほぅ……そりゃあ楽しみだ」 ファーティマの言葉にライダーは口の端を吊り上げる。 それは獣が牙を剥くような、獰猛極まる笑みだった。 X X X X X 蔵馬鉄人の古書店を出た後、 高坂夏海と志那都みことの二人は水佐波自然公園に立ち寄り、 一角のベンチに並んで腰を降ろしていた。 「あーっ、それにしてもまだ腹のムカつきがおさまりませんわ!」 先ほどの古書店でのキャスターとのやり取り、それを思い出しただけでみことは苛立ちに歯噛みする。 「まったく何なんですの!? あの人を馬鹿にしきった態度は! 夏海もそう思うでしょう!?」 「……え? う、うん。まあ」 みことの迫力に隣りに座った夏海は若干たじろいだ。 「何とかして落とし前を付けさせてやらないと気が済みませんわ……。幸い令呪はまだ二画は使えるのですし どうにかしてあの男をギャフンと言わせるような命令を……」 「あー、それなんだけどさ」 ぶつぶつと恨み言を呟くみことに、夏海がおずおずと声を掛ける。 「やっぱりさー、みことはあのキャスターって人とちゃんと仲直りしたほうがいいと思うんだけど……」 「――何ですって?」 夏海の発言に、みことは露骨に嫌悪の表情を浮かべる。 「鉄にぃも言ってたけど、実際あたしたちってサーヴァントがいなかったら何も出来ないんだよ?」 「それは……わたくしだって分かってます」 確かにそれは事実だ。だからと言って自分をあれだけ侮辱した男にこちらから頭を下げて守ってくださいとお願いしろというのか? そんなことはこの志那都みことのプライドが許さない。 「だからさー、もうみことの方から謝って早く仲直りしちゃいなよ」 「なッ、何でわたくしの方が謝らないといけませんの!?」 「そうよね。こうしている間にも敵のサーヴァントに後ろから刺されないとも限らないし」 「冗談じゃありませんわ! 誰がそんなこと――」 そこでふと、みことは違和感を覚えた。 (……今、知らない人の声が聞こえたような……) その時、誰かがポンとみことの肩を叩いた。 振り向くと――いったいいつからいたのだろう。全身を黒い装束に包んだ女性がみことのすぐ後ろに立っていた。 「だ――」 「あ、アサシン!?」 誰、とみことが言うより先に夏海がその女性を呼んだ。 「しっ、あまり大きな声を出さないで……」 アサシン。そう呼ばれた女性は人さし指を口元に当てて夏海を制した。 「い、いつからいたの?」 「ナツミたちがあの古書店に入る前からずっと貴方たちの後ろにいたわよ。気づかなかった?」 唖然とする女子二人をよそに、アサシンはみことの方に顔を向け艶然と微笑みかけた。 「はじめまして、ミコト。妾身(わたし)はアサシン。ナツミと契約したサーヴァントよ」 それは考えてみれば当然の話である。マスターの証である令呪、みことがそれを夏海の左手の甲に発見したのが今回の事の始まりなのだ。 で、ある以上夏海もマスターの一人としてサーヴァントを従えているのは当然の成り行きだといえた。 「だから、貴方とは敵同士ということになるのかしらね?」 「なっ……」 「ちょ、ちょっとアサシン!?」 アサシンの不穏な発言に、夏海が語気を荒げる。 「変なコト言わないでよ! 確かにあたしは聖杯戦争に参加するって決めたけどみことと戦うつもりなんて……」 「はいはい、分かってるわよ勿論」 アサシンは夏海の口に手を当てて声を封じ、そのまま再度みことの方に顔を向けた。 「主の大事なお友だちである以上、妾身は貴方に手を出すつもりはないわ。 でも他のサーヴァントたちは違う。それは理解できるわよね?」 アサシンの言葉にみことは黙りこむ。 “こうしている間にも敵のサーヴァントに後ろから刺されないとも限らないし” 先の彼女の発言が脳裏をよぎる。もしこのサーヴァントに殺意があったなら、自分はとっくに殺されていたに違いない。 「貴方が聖杯に賭けてるのは分かるわ。妾身や他のサーヴァント、マスターだって同じだもの。 でも貴方の願いのために、本当に自分がするべきことが何なのかは、ちゃんと考えたほうがいいわ。 でないと取り返しの付かないことになるわよ」 「そう……ですわね……」 みことはすっかり怒気を削がれた様子でアサシンに応じた。 聖杯に望みを託しているのは自分だけではないのだ。 キャスター。あの男だって、何か切な望みがあって召喚に応じたのかもしれない。 「……そういえば、夏海はどうしてこの聖杯戦争に参加することにしたんですの?」 「え、あたし?」 不意のみことの問い掛けに、夏海は困ったような表情を浮かべた。 「あなたにも何か叶えたい願いがあったのですか?」 「そういうのとはちょっと違うんだけど……何て言ったらいいのかな。 みことにも話したことなかったけど、あたし……霊が視えるんだよね」 「……はい?」 唐突な夏海の発言にみことは唖然とする。 「いや、冗談とかじゃないんだよ! 霊感っていうの? そういうのが昔から強かったみたいでさー」 夏海の話によると、彼女は小さい頃から霊を見ることができたということだった。 だが霊というのは姿が見えるだけで意思の疎通は行えず、大半は死亡時そのままの苦痛にまみれた状態のままで現世に留まっていながら それを救う手立ては何もなく、そのせいで夏海は随分歯がゆい思いをしたらしい。 そんな折、今回の聖杯戦争のマスターに選ばれた彼女は、サーヴァントという“意思を持つ霊”と出会った。 「それで思ったんだ、今まで見てきた死んだ人の霊に何も出来なかった分、 この聖杯戦争で呼び出されたサーヴァント……英霊の願いはなるべく叶えてあげたいなって」 「そ……」 そんなことで? そう言いかけてみことは口を噤んだ。 死者の無念を救いたい……それは決して下らないことではない。むしろ貴いとさえ言える。 だがそのために自分の命を掛けて死地に赴くことができる人間がいるだろうか? 「じゃあ夏海は、自分のことはどうでもよくてただ他人のためだけにこの聖杯戦争に参加したというの?」 「んー、まぁそうなるのかな」 「そんなのって……」 「別にそんなにおかしなことじゃないと思うけど。それにみことだって赤城くんを助けたくて参加することにしたんでしょ? それだって“他人のため”に戦うってことじゃない?」 「それは……」 夏海のあっけらかんとした物言いにみことは言い淀む。 確かに自分は“彼”を救うために聖杯を勝ち取ろうと決めた。 だがそれは自分にとって“彼”が特別な存在であるが故である。 夏海はそれとは違い、自分とは殆ど無関係な見ず知らずの者のために戦おうと決めたのだ。 そんなのは……それこそ『英雄』のような行動ではないか。 「お話し中のところ悪いんだけれど」 不意に、背後からアサシンが言った。 「そろそろ日が暮れ始めるわ。これ以上、外をうろつくのは危険よ。 人の気配がなくならない内に帰った方がいいわ」 空を見ると、既に若干赤みがかかっていた。 周囲を見回すとまばらだかが人の姿は確認できる。 木に登って遊ぶ子ども、ジョギングをする老人、デート中らしきカップルの姿なども伺える。 この広い平原かつ衆人という環境ならば、無理に仕掛けてくる相手もいないだろう。 「そうだね、帰ろうか。みこと」 「そうですわね……」 そう言って二人はベンチから立ち上がった。 その時、みことは視線の端で捉えた。 木登りをしていた子ども、その一人が高枝から真っ逆さまに落下するのを。 「……えっ?」 数度瞬きしてもう一度そちらに目を向ける。 落下した子どもは地面に倒れ伏せたまま身動きひとつしない。 「大変……!」 「あ、ちょっと……みこと!?」 みことは即座に倒れた子どもの元へ駆け寄った。事態を察したのかすぐに夏海も後を追う。 そして横たわる子どもの体を抱き起こした瞬間、みことは息を飲んだ。 「冷たい……」 体温をまるで感じない体。手首に指を当てても案の定脈拍はない。 「みこと、その子……」 「と、とりあえず救急車を呼びましょう。ひょっとしたら助かるかも……」 「ちょっと待って」 狼狽する二人に向けて、夏海の背後に影のように寄り添っていたアサシンが言った。 「ミコト……今、貴方“冷たい”と言った?」 アサシンのその言葉にみことははたと気づいた。 もしこの子どもが先ほどの落下で命を落としていても、今この時点で体温が冷たいなどということは在り得ない。 これではまるで、とっくの昔に死んでいたみたいでは―― 「――その子から離れなさい! ミコト!」 叫びと共にアサシンがみことの元へと飛び出し、その腕から子どもを払い除ける。、 次の瞬間、子どもの上半身が爆音と共に破裂した。 夥しい量の肉片と骨片が血しぶきと共にみことへと浴びせかけられる。 炸裂弾のごとき勢いで飛来したそれらは、しかしアサシンの振るう拳足によって残らず叩き落とされ、みことは僅かに血で顔を汚す程度に留まった。 「ミコト、大丈夫!?」 「……あ、あ……」 怪我はない。だがすぐ目の前で巻き起こった血肉と臓腑が飛び散る悪夢の光景は脳裏を打撃し みことは顔面を蒼白にしてへなへなとその場に座り込んだ。 「アサシン、これって……!?」 「恐らくは敵マスターの仕掛けた罠ね。……迂闊だったわ、人目に付く場所なら安全と思っていたけど……」 夏海とみことはふと周囲の気配の異状に気づき、そこで更に背筋の凍るような光景を目にした。 公園内にいた老若男女さまざまな人々、それら全員がその場に立ち止まってじっとこちらを見ているのだ。 そして、それら人々の目は一つ残らず“瞳孔が開き切っていた”。 「――ここにいるのは最初から皆、生きてる人間じゃないわ……!」 アサシンが表情を引き締める。 そして次の瞬間、死者の群衆が夏海たち目掛けて殺到した。 X X X X X 小さな子どもの肉体が木っ端微塵に爆裂し、骨肉を四方八方へ飛び散らせる。 その醜怪な光景を離れた場所からライダーは憮然とした面持ちで眺めていた。 「アレがお前の仕掛けた魔術なのか? ファーティマ」 『ええ』 念話によって脳裏に直接返事が届く。 今、ライダーが見た光景は感覚共有の魔術によってマスターであるファーティマにも視認されていた。 『死体爆弾……オーソドックスな死体人形にスーサイドボムという攻撃手段を付加したものです。 自爆というのは奇襲性の高い有効な攻撃だけどどうしてもコストが掛かるもの。 でもこれは元が死体ですから実質的な損失はゼロ。よくできてるでしょう?』 そこはかとなく誇らしげな色合いを含んだ声がライダーの脳裏に響く。 高坂夏海と志那都みこと、二人のマスターを発見したファーティマは彼女たちが公園に入り込むと周囲に人払いの結界を張り、 一般市民を遠ざけると同時に近隣に配置されていた使い魔――『生ける屍』たちを集結させたのだ そして怪我した子どもを偽装しての自爆攻撃という悪辣極まりない一発を皮切りに、 周辺を包囲していた死体人形が一斉に群がり、夏海とみこと目掛けて一つまた一つとその肉体を四散させてゆく。 だがそれらは皆、一人の黒装束の女の手によって余さず薙ぎ払われ、標的である二人の少女には骨の一片すら突き刺さるには至らない。 『あのサーヴァント意外とやりますね』 「別に意外という程でもないがな」 アサシン。マスターの少女はあのサーヴァントをそう呼んでいた。 その風体からも鑑みて、黒装束の女は暗殺者の英霊と見て間違いないだろう。 直接的な戦闘能力は低いクラスだがそれでも英霊の端くれ、あの程度の攻撃を捌くことなど造作もあるまい。 『あの程度の相手なら使い魔で充分討てるかとも思ったけど、やはり貴方に出てもらう必要があるようね、ライダー』 「当たり前だろ。元よりこっちはそのつもりだ」 体内に沸々と滾る闘気を剥き出しにしてライダーは応える。 幾百幾千という年月を隔て、久方ぶりに感じる戦場の空気に体が自然と武者震いする。 『ところで、“馬”の調子はどう?』 「あ?」 ライダーはちらりと自分の傍らに目を向ける。 そこには一頭の獣が侍っていた。 轡を噛ませられ手綱を締められ、それでもなお内に秘めた凶暴さが噛み締めた牙の隙間から漏れでてくるような生粋の猛獣。 これこそが、ライダーのためにファーティマが用意した乗機たる“騎馬”である。 『あれね、少しばかり急拵えなんで不備がないか心配なのだけど』 「……特に問題はなさそうが」 『そう、なら遠慮はいらないわ。存分に蹴散らして差し上げなさい、ライダー』 たった一つの明瞭な指示を残し、ライダーの頭の中の声は途絶えた。 「“馬”ねぇ……」 ライダーは一人そっと呟く。 「……コイツのどこに馬の要素があるんだよ」 X X X X X 肉が爆ぜ、臓物が飛び散り、血と脳漿が宙を染める。 群がり爆発するヒトのカラダ。もういったい幾人目なのか、みことはとっくに数えてなどいられなくなっていた。 人肉の焼け焦げた匂いと血臭が渾然となった悪臭に、思わず口内に酸っぱい物がこみ上げてくる。 「……みこと、大丈夫?」 「夏海……」 蒼白の顔色で俯くみことの背中に、夏海がそっと手を置く。 「な、夏海は平気なんですの? こんな、酷い有様を見て……」 「あー、……あたしは何ていうかその……見慣れてるから」 「……見慣れてる?」 「ほら、さっきも言ったけどあたし霊感が強くて……で、霊って死んだ時の姿のまま彷徨ってるのが多いから……」 ぎこちなく苦笑いを浮かべながら話す夏海。 その内容に、みことは戦慄を禁じ得なかった。 あのような無残に破損した人体の成れの果てを、思い出すだけで頭が痛くなるグロテスクな代物を 彼女はずっと見つめながら生きてきたというのか……。 「……終わったの? アサシン」 「ええ、一応」 気がつくと、周辺を包囲していた死体の群れは、残らず爆破されてのか動いているものはもう一つもなくなっていた。 辺りには自爆の後に残った腕や下半身が散らばり、自然公園の一角はさながら地獄の如き有様である。 「死体人形の方は片付いたわ。でも――」 立ち上がり、前に出ようとする夏海を手で制し、アサシンは一層表情を険しくする。 「――どうやら本命のご登場みたいよ」 そのとき突如として、先程までの死者たちが巻き起こしていた爆発など問題にならぬ衝撃と風圧が三人を襲った。 迸る一陣の颶風、それに付随して巻き上がった土煙にみことは身を強ばらせる。 何かが、隕石もかくやという勢いで目の前に降り立ったのだ。 いったい、何が……。 「……!?」 「な、何アレ……!」 はたして、濛々と立ち込める土煙の中から現れたのは…… ――男だ。癖のある金髪を短く刈り込んだ、野性的な雰囲気漂う一人の男。 神秘的なまでに整った端正な容貌に、不釣合なほど獰猛な闘志を滾らせたその居住まいは、誰であれ瞠目せざるを得ないだろう。 サーヴァント……アサシンはもとより、背後の夏海、みことにも目の前の男がそれであることは一目のうちに察せられた。 だが、このとき三人が真っ先に目を奪われたのは男自身ではなく、男を背に乗せた一匹の“騎獣”の姿だった。 頭部と前肢はライオン。だがその後ろに付随した胴体と後肢は山羊のそれだ。 獅子の頭の後ろからはその山羊の首が生え、尻から尾のように伸びているのは鎌首をもたげた一匹の大蛇。 黄金色に輝く手綱で括られたその獣は紛れもなく、ギリシャ神話に登場する異形の怪物“キマイラ”の様相そのものであった。 「ふん」 呆気に取られた様子の夏海とみことを一瞥して鼻を鳴らし、 「女の分際でのこのこ戦場に出てきた挙句、腰を抜かして震え上がるだけとは笑う気にもならん無様さだな」 そう言うと、男は背中から長柄の得物を抜き放った。 先端に取り付けられた槍の穂先、その根元には人間の頭程の大きさの金属球がくくりつけられている。 スピアとメイスを無理やり一纏めにしたような竿状武器。それを男は腕一本で軽々と振りかざす。 「マスターの方はどうにもならん有様だが、貴様はもう少し骨のある所を見せてくれるだろうな」 「あら、殿方たるもの女性は怖がらせるのではなく守ってあげるのが務めというものではない?」 放たれる闘気を平然と受け止めながらアサシンは眼前の敵を観察する。 獣の背にまたがって、左手で手綱を握り、右手には騎乗槍。 このようなスタイルで戦場に赴いたとなれば、該当するクラスは一つしかない。 「ライダー……と呼べばいいのかしら」 「いかにも。尋常に名乗りを交わすことも出来んとは下らん戦もあったものだ。 最も……貴様に戦場で名乗りを上げる程の名があるとは思えんがな、アサシン」 さも不愉快げに口元を歪めて、ライダーは獣の上からアサシンを睥睨する。 「一騎打ちに駆り出され、その相手がこともあろうに暗殺者風情とは。全く誉れのない戦もあったものだ」 「あらあら、そちらから仕掛けておいて随分な言い草ね」 ライダーの傲岸すぎる言い分にアサシンは呆れたように苦笑する。 その尊大な態度と口調から鑑みるにこのサーヴァント、恐らくは高名な英霊なのだろう。 他者を見下すことを当然とするその様子からは、生前の位の高さも伺える。 「でも、そういう貴方こそ一体どこの英霊なのかしら? そんな得体のしれない怪物に乗った騎兵の話なんて聞いたことがないけれど」 そう口にした瞬間、黙れと言わんばかりにライダーの携えた槍の鋒がアサシンへと突き付けられた。 「……あまり余計な口を叩くなよ暗殺者。何が貴様の最後の言葉になるか分からんぞ」 「あ、アサシンっ!」 何か逆鱗に触れるものがあったのか、アサシンの一言を皮切りに男は更なる強さで剥き出しに殺意を放射し始めた。 そのあまりの迫力に、思わず夏海が後ろから声を出す。 「心配いらないわ。でも危ないからもうちょっと離れてて」 背後の少女二人に退避を促すと、アサシンはそっと自らの後頭部に手を触れる。 すると、一体どこに仕舞われていたのか――アサシンの手には一本の匕首が握られていた。 鍔のない、刃そのもののような凶器。それを胸前に構えてアサシンはライダーと対峙する。 「大丈夫、早く帰れるよう速攻で片付けてあげるから」 「はッ、言ってくれるな――!!」 ライダーの怒声と共にキマイラの後肢が地を蹴り、その巨体が弾丸のごとく放たれる。 かくして此度の聖杯戦争、現世に蘇った英霊達の激突は幕を開けた。 X X X X X 志那都みことは、ただ驚愕に息を呑んでいた。 いま眼の前で繰り広げられる光景の度外れた凄まじさ。 ライダー、敵のサーヴァントが従えているキマイラはまさしく怪物であった。 踏み締める足は地面を穿ち、爪を振るえば風圧だけで近くの街灯が割れ、樹木が砕ける。 映画の中でしか見られないような非現実的なモンスター。それが今、現実のものとして自分の目の前で猛然と暴れているのだ。 ライダーを乗せたキマイラは大型獣とはとても思えない身軽な動きで縦横無尽に跳び回り、 ハリケーンの如き颶風を迸らせながらアサシンへと襲いかかる。 二本の前肢が振るう爪撃は音速に達し、更に獅子の頭が隙あらばその肌に牙を立てんと喰らいつく。 それだけでも充分に驚異的だが、この怪物はそれに加えて双角を携えた山羊の首が猛然と頭突きを繰り出し、 おまけに尾のごとく生えた蛇はその身を正面まで長々と伸ばして、鞭のような挙動で獅子頭と山羊頭の間を縫ってアサシンへと噛み付きを仕掛けてくる。 キマイラ。複数の生物を合成した異形の体が生み出す連撃は、尋常の獣には到底不可能であろう。 だが―― 「くッ……コイツちょこまかと……!!」 キマイラの全身を使った猛攻に、更に鞍上のライダーが繰り出す槍撃を加えた圧倒的手数の連撃連打。 その全ての攻撃が一つ余さず、標的のアサシンに掠りもしないのだ。 「あらあら、段々速度が落ちてきているけど大丈夫? 疲れてるんじゃない?」 まるで風に舞う木の葉のようにひらひらと、爪を、牙を、槍を紙一重で躱し続けるアサシン。 一発でも食らえば致命傷になりかねない鏖殺の嵐の真っ只中にいながら、まるで焦る様子もなくアサシンは軽口を叩く余裕すら見せる。 「ほざくなよ兇手ごときが……!!」 平然としたアサシンとは対照的に、一方的に責め立てているライダーの方が焦燥の表情を浮かべる。 これだけの猛攻を回避し尽くし、そればかりかこのアサシンは騎乗槍と短刀という絶望的リーチ差を軽々と飛び越えて 鞍上のライダー目掛けて幾度も刺突を繰り出してきているのだ。 今のところはライダーも傷は負わされていないが、あと一歩で首が落とされかけたという窮地は一度や二度ではない。 アサシンなど所詮、闇に紛れて背後から刺すだけが能。正面から対峙して真っ向勝負に持ち込めば容易く破れる…… そのように考えていた自分の甘さを省みて歯噛みする。 (この女、尋常の暗殺者ではない……!) そのとき、にわかにキマイラが躓くように膝を折り動きを止めた。 ライダーが背上から仰ぎ見ると――いかなる事か、キマイラの右前肢の脛の肉が抉れ、罅割れた骨がその隙間から覗いていた。 「ふぅ」 倒れ伏せたキマイラから間合いを取り、アサシンが息をつく。 「ようやくダメージが出てきたようね。まったく何て頑丈なの……もう五十回は蹴ったかしら」 「なっ……」 アサシンの発言にライダーは驚愕する。 この女、あれだけの攻撃を躱しながら、その間隙にキマイラに攻撃を加えていたというのか? しかも上に乗った自分にまったく気づかれずに…… 「さぁ、どうするライダー? “脚”が使い物にならなくなった以上、騎兵の貴方はもう戦えないのではない?」 ふふん、と微笑みながらアサシンが告げる。 万全の状態ですら攻め切れなかった以上、それが手負いではもう有効打を放つことは望めまい。 「…………フ、フフフ……」 だが、ここにきてライダーにはまるで戦意が失した様子はない。 それどころか放たれる闘気は一層鋭さを増していく。 「この程度でオレを御したつもりでいるのか? 笑わせるなよ暗殺者風情が!!」 『GUUUUUURUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』 ライダーの怒声。それに応じるかのように跨下のキマイラが咆哮を上げる。 そしてその異形の肉体がここにきて更なる変成を見せた。 『翼』。キマイラの背部から皮膚を突き破って一対の羽翼が広がったのだ。 蝙蝠か、あるいは中生代の翼竜を思わせる膜構造の翼。それを猛然とはためかせ、キマイラはライダーと共に宙へと飛び上がった。 「きゃっ…!」 その巨大な翼が巻き起こした羽ばたきは、軍用ヘリの離陸に匹敵する風圧を地面に叩きつける。 吹き荒れる乱流。それによって撒き散らされた粉塵は離れて様子を伺っていた夏海とみことの元にまで達し、彼女らにか細い悲鳴を上げさせる。 「生憎だがアサシン、オレの“脚”たる獣は見ての通り有翼だ。足部を砕いたところで止められはしないぞ!」 土煙の立ち込める地上を悠然と見降ろしながら、ライダーは宙空より言い放つ。 これで形勢は逆転した。空中を飛行し頭上から攻め立てれば地を這うしかない人間には為す術がない。 猊下を注視しながら更にキマイラを上昇させる。あとは噴煙が晴れると同時に降下して―― 「――?」 だが、ライダーの意に反して、濛々と煙る粉塵が去ったあと、アサシンの姿は忽然と消えていた。 ライダーは空から地上を一望するもどこにもその姿は見えない。 ……敵のクラスはアサシン。その気配遮断能力を持ってすればいかなる場所であろうと身を隠すことは容易いだろう。 だが身を隠したままでは戦闘には及べないはず。ならば撤退か? ……マスターを置いて? まさか―― 疑問と思考を巡らせる最中、予想だにしない方向から声が投げかけられた。 「――――さっきからどこを見てるのかしら? ライダー」 ライダーは反射的に声が聞こえた方を向き、そこで信じがたいものを目にした。 声が発せられたのはライダーの“真横”から。 なんとアサシンは羽ばたくキマイラと同じ高さで宙を舞っていたのだ。 それは“跳躍”などでは断じてない。 この女、完全に空を“飛行”している――!? 「馬鹿な、人の身が単独で空を飛んでいるだと……有り得ん!」 「あら、知らないの? 人間鍛えれば誰だって空くらい飛べるようになれるものよ」 「そんなわけあるかッ!」 ライダーは一喝するも、眼の前の光景は疑いようがない。 翼も何も無しで、この女は自在に宙を駆けることが出来るのだ。 空を飛ぶアサシン。その不可解な存在を前にして、ライダーの心中には疑問よりも先に怒りの念が湧き上がった。 神聖なる天空を、卑賤のものが我が物顔で飛び駆ける。それはこの英霊にとって何物より許しがたい咎であった。 「……外道働きが相応の分際が、悪ふざけも大概にしろよアサシンッ!!」 怒号と共にキマイラの双翼が空を叩き、怪物と騎兵はアサシン目掛けて流星のごとく飛翔する。 アサシンとライダー。二体のサーヴァントの死闘は舞台を空へと移し、今またその火蓋が切って落とされた。 X X X X X 古書店を去ってから後、 サーヴァント、キャスターは一人街を歩いていた。 「“Ο γιος μου, τι θα φέρει το πρόσωπό σας έτσι φοβισμένα;(我が子よ、何をそんなに怖がっているのだ) Ο γιος μου, είναι κομματάκι ομίχλης(我が子よ、それが霧がたなびいているだけにすぎない)……”」 2メートル近い長身を、蒼古とした衣装に身を包んだその姿、往来を歩けば人目をひくこと憚らないだろう。 だが、キャスターの周囲の人々は彼の姿などまるで気に留める様子もなく淡々と歩み去っていく。 「“Να είστε ήρεμοι, μείνετε ήρεμοι, το παιδί μου?(我が子よ、落ち着きたまえ) Ψίθυροι του ανέμου σε ξερά φύλλα.(その音は枯葉のざわめき) Το παλιό ιτιές Εκεί φαίνονται τόσο γκρίζα.(その姿は古い柳を見間違えただけ)……”」 キャスターの口から淡々と紡ぎだされる詩のような文言。 それを耳にした人々は知らず知らず意識を逸らされ、キャスターの姿を確りと見定めることができず、 あるいは目撃したとしてもその記憶をすぐに薄れさせていった。 (全く、何ということだ……) 呟くように呪文を詠唱しながら、キャスターは心中で落胆を露にした。 聖杯戦争。生前果たされなかった望みを叶えることができるという千載一遇のチャンス。 その好機をついに掴んだというのに、よりにもよってあのような娘に召喚されることになろうとは…… 聖杯戦争とはマスターとサーヴァントという二人一組の単位で行うもの。 ゆえに、他の参加者と戦う際は必然的に二対ニの様相を帯びることになる。 そこでマスターの側がまるで魔術を扱えぬとなれば、その時点でもう半分負けているも同然だ。 何故、あのような人間に呼び出される羽目になったのか…… キャスターは落胆を通り越して疑問すら感じていた。 魔術的知識を持たない以上、触媒を用いて指定召喚したわけではあるまい。 そういう場合、召喚に応じる英霊はマスターと精神性が似通ったものになるというが、とてもそうは思えない。 それどころか、あのような気性荒く言動の喧しい女は彼にとっては嫌悪の対象でしかなかった。 何せこの英霊は“そういう女たち”の手にかかってその命を落とすことになったのだから。 (状況はとても良いとはいえない……) 自分も英霊の座に祀られる身である以上、幾らかの武勲なり功業なりを成してはいるが、 それでも、生涯を通じて戦場を駆け続けたような生粋の勇士かといえば決してそうではない。 山野の中で出会ったセイバー、あれはまさしくそういった戦場の華たる英霊だろう。 ランサーやアーチャーといった他のクラスにもそのような豪傑が招かれている可能性は高い。 そういった面々を相手に、素人同然のマスターを抱えて勝ち抜こうとなれば、よほど周到に立ち回らなければ叶わないだろう。 ますはこの街の地理と霊脈の流れを把握。なるべく格の高い霊地に拠点を構え、そして―― 「……ん?」 そこでキャスターはふと気がついた。 考え事をしながら歩みを進めている内に、妙な場所に迷い込んでいたことに。 屋外ではない、建物の中だ。清潔な白い壁に、微かに空気に篭る薬品の匂い。 リノリウムが冷たく光る廊下を、白衣を来た男女が忙しなく歩き回っている。 ここは病院だ。聖杯から与えられた知識によってキャスターは理解する。 しかもかなり奥の方まで入り込んでしまっている。そんなにも長い間自分は漫然と歩いていたのだろうか? ……いや、 最初から自分はここに来なければならなかったような…… ここに来て、“誰かを救わなければ”ならなかったような……… (いかんな、まだ記憶の混濁が残っているのかもしれない……) 不鮮明な意識を振り払い、キャスターは踵を返す。 このような場所に用はない。立ち去ろうした、その時だった。 「――――志那都さん、今日はまだお見えにならないのかしら」 その名前に反応して、キャスターは咄嗟に立ち止まる。 「あの子も偉いわよね、毎日ちゃんとお見舞いに来てくれて」 話しながらやってきた二人の看護師は、キャスターの正面の病室の扉を開ける。 呪文による意識操作によって傍らのキャスターの存在を気取るもことなく、看護師はベッドに横たわった患者に声を掛ける。 「具合はいかがですか? 赤城さん」 その患者は、まさしく見るも無残な有様だった。 両足は膝から下で切断され、左腕は肩口から全て失われて最早その痕跡すら見えない。 頭部は首までびっしりと包帯が巻かれ、胴体からは何本も管が生えベッドの周りを取り囲む機械類に接続されている。 「待っててください、今包帯を取り替えてあげますからね」 反応のない患者に話しかけながら、看護師は頭部の包帯を解く。 元はどのような面貌だったのか想像も出来ぬほど大きく崩れた顔面が顕になり、キャスターは思わず眉を潜めた。 「……それにしても志那都さんも気の毒にねぇ」 「本当。彼氏がこんなことになるなんて、私だったら耐えられないわ」 二人の看護師は痛ましい表情でため息をつく。 「まだ付き合ったばかりだったんでしょう? 可哀想に……」 「凄い大恋愛だったって、ちょっとした噂になるくらい睦まじいカップルだったのに、まさかこんなことになるなんてねぇ」 「何とか意識だけでも取り戻してくれたらと思うけど、難しいわよね今の医学じゃ」 死体も同然の傷だらけの身体で伏している患者。 その姿に、看護師たちの語る内容を重ねれば、その背後に起こった出来事の察しはある程度つく。 「……………………………」 ――この時、気を取られていたキャスターは気づいていなかった。 窓の向こうから一匹の雀が、 ……正確には一匹の雀の“死体”が、病室内の様子をずっと覗き込んでいたことに――。 X X X X X 地上戦から空中戦へと様式を変え、現世に蘇った英霊の闘いはますます非現実的に苛烈さを増していった。 ライダーが駆るキマイラはロケット噴射もかくやという急加速をもって御敵たるアサシンへと突進する。 それを迎撃せんとアサシンの手から鏢(びょう)が放たれる。風を切り裂きながら投擲された四本の寸鉄は一つ余さずライダーの急所へ狙いを定めて飛来する。 圧倒的な相対速度を持って襲いかかる刃に、しかしライダーは臆することなく手綱を繰る。 即座にキマイラの巨体がバレルロールを描き、投剣を躱す。急激な旋転によって周囲の空気を竜巻のように荒立たせながらライダーはアサシンへと肉薄する。 進行方向へ真っ直ぐ槍を構えての騎馬突撃(ランスチャージ)。弾丸のごとき飛行速度に怪物の重量を掛け合わせた膨大な運動量を穂先に乗せて放たれたその必殺の刺突を アサシンは急降下によってキマイラの腹下をくぐるような軌道で辛くも回避する。 突撃が回避されたと察するやいなや、ライダーはキマイラの機首を強引に引き上げ、殆ど直角に近い角度で急激に進行方向をねじ曲げて、 すぐさま宙空で反転(インメルマンターン)し、すれちがったアサシンへと追撃を掛ける――。 「……あれが……サーヴァントの同士の戦い……」 遥か上空で繰り広げられる飛行格闘戦を目の当たりにして、みことは唖然とした面持ちで呟いた。 彼女の視力では両者の動きを捉えきることは叶わず、空に描かれる残像の線をもって辛うじて戦況を認識するに留まるが、 それでもその闘いの度外れた凄まじさは理解できた。 キマイラ。あのような大型の四足獣が背中に生えた翼で空を飛ぶというだけでも信じがたい現象だが、 真に驚嘆すべきなのはそんな不自然な乗機で、まるで航空戦闘機のような曲芸飛行をおこなうライダーの操舵術であろう。 コンピュータ制御によるマニューバ演算などとは程遠い、ただ一本の手綱を繰るという極めて原始的な手段で跨下の獣をあそこまで自在に操ることができるなんて……。 ……だがそんな騎兵の神業めいた空中機動をもってしても、相対する黒衣の暗殺者には届かない。 先ほど地上で行われた白兵戦、ライダーの繰り出す猛攻連撃をことごとく回避し尽くしたアサシン。 その構図は舞台を空中へと移しても全く変わることなく再現されることとなった。 ライダーの槍を、キマイラの爪を、アサシンは上へ下へと自在に抜き躱し、すれ違い素早く匕首で反撃を放ちつつ離脱する。 「こいつ……卦体な術を使いやがって……!!」 ライダーの騎乗技術がいかに優れてるといえども、キマイラによる飛行はあくまでも条理に則ったものだ。 推進力を得るためには羽ばたくという動作が不可欠になるし、旋回するためには翼を広げて空気抵抗を制御しなければならない。 だが、敵手たるアサシンはそのような航空力学をまるで無視したありえない挙動でライダーとキマイラを翻弄していた。 風を起こしているわけでもない、魔力を放出しているわけでもない。推進手段も姿勢制御手段もまるで見当が掴めないが 上昇性能、加速性能、旋回性能、そのどれをとっても、アサシンの飛行能力はキマイラのそれを上回っていた。 「ほらほらどうしたのライダー。攻めが緩んできたわよ?」 「……貴様ッ!」 アサシンの揶揄にムキになって槍を振り回すも、難無く回避され、黒衣の影が背後に抜けると同時にキマイラの脇腹に匕首が突き立てられる。 もう何十合打ち合ったことだろう。残像が虚空に∞の字を描き、両者が宙空でランデブーする度に、ただただキマイラの身体にばかりいたずらに傷が増えていく。 アサシンの攻撃力は決して高くはないが、こうも連続して打ち込まれれば蓄積したダメージは無視できない大きさになる。 現にその翼のはためきも、爪を振るう腕も、その勢いを目に見えて落とし始めていた。 (この女……!) ライダーは屈辱に相貌を歪ませる。有翼の獣に跨り空を駆ける――それは彼が最も得意としていたスタイルであった。 そしてそれは一度とて破られたことはない。ひとたび天に舞い上がれば、地上の雑兵どもは為す術もなくただ己の勇姿を呆然と仰ぎ見ながら討たれていくだけだった。 いつだってそうだ。自分は見上げられる側の人間だった。戦場では常に、敵を見下ろしながら一方的に勝利を手にしてきたのだ。 それをこの女は、天に立つ自分と『同じ高さ』からこちらを攻め立ててきている……! 追加の一撃が右翼に打ち込まれ、キマイラの巨体が大きく揺れた。 幾度と無く斬りつけられたダメージがついに限界に達したのだろう。右の翼には大きく亀裂が走っていた。 ライダーは強引に両翼の動きを制御して姿勢を立て直すも、もはやこの状態では空中戦の続行が不可能なのは明らかだった。 「どうやらここまでのようね、ライダー」 背後からアサシンの言葉が投げかけられる。 「そんな怪物をこうも自在に乗りこなすなんて大したものだけど、三次元的な空間認識が甘いわね。 貴方、ひょっとして『空対空』戦の経験はないんじゃない?」 「……ッ」 アサシンの指摘に、ライダーは返す言葉もなく歯噛みする。 そしてアサシンは進行方向を直角にねじ曲げ垂直上昇。数十メートルの距離を一気に駆け上がると頂点で反転し、ライダー目掛けて急降下した。 自身の推進力に落下速度を動員した突撃はこれまでのドッグファイトを遥かに凌駕する鋭さで繰り出される。 その攻撃に、ライダーは一瞬反応を迷った。 無理もない。何せこの騎兵にとって『真上から攻撃される』などという事態はついぞ経験したことがなかったのだから。 上から攻撃を仕掛けるのは常に自分、それを為す術もなく受けるのが敵。 その構図が今、完全に覆されたのだ。 敵が真上から猛然と襲いかかり、真下の自分は為す術もなくそれを見上げている。 ……この自分が? 敵を? 見上げて? 「――こ、」 上空、己より高い位置から向かってくるアサシン。 その面貌を仰ぎみた瞬間、ライダーの双眸が憤怒の炎に燃え上がった。 「このオレを――見下してんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」 直後に生じた爆発音。何であろう、それはキマイラの大翼が音速を突破する速度で空気を叩いた破裂音だった。 傷ついた翼で強引に大気を掻き、キマイラにまたがったライダーはまさしく爆発的な速度で急上昇、降下するアサシンに真っ向から突進し、 そのまま手にした槍を投げ放った。 「落ちろアサシンッ!!」 雄叫びと共に槍が翔ぶ。アサシンが認識するライダーの間合いよりも遠方より先んじて放たれたそれは通常ならば避けようのない奇襲だっただろう。 両者の相対速度と相まって刹那の内に迫る槍。だがそこで予想だにしない事が起こった。 今まさに槍で貫かれんとしたアサシンの姿が忽然と消え失せたのだ。 ライダーは思わず目を見開く。だが見間違いなどではなく、アサシンは影も形もなく、 そこには代わりに一匹の羽虫が―― 「……ッ!?」 だが、次の瞬間に羽虫の姿は消え、アサシンの黒影がその姿を現した。 そこでライダーははたと気づいた。両者は出たり消えたりしているわけではない。 アサシンと羽虫、この二つは最初から同一の存在。 コイツ、虫に身体を“変化”させて投槍を回避したのか――! 「獲ったり、ライダー!」 槍を投げ、丸腰となったライダー。 その隙目掛けてアサシンの刃が迫る。 「やった……!」 「行けー! アサシンッ!!」 この瞬間、アサシンも、地上で見守る夏海とみことも、皆がその勝利を確信していた。 ただ一人、 「 屠 獣 (カ ウ ン タ ー)―――――」 このライダーを除いては。 「――――― 熔 鉛 (キ マ イ ラ)!!」 ――その言葉を皮切りに発生した現象は、アサシンにとって全く慮外のものだった。 ライダーの投げ放った槍、その穂先の根元に括りつけられていた金属球がにわかに膜状に広がり、 食虫植物のような動きで背後からアサシンへと襲いかかり瞬く間にその身を包み込んだのだ。 「――なっ」 「え……?」 呆然とした夏海とみことの前に、ドスンと重たい音を立てて落下する鉛球。 「あ――アサシン!?」 夏海は己のサーヴァントの名を叫ぶも、それに応じて姿を表す影はない。 直径2メートル近い大きさにまで膨らんだその中に、彼女らの頼みの綱であったサーヴァントが封じ込められたのはもはや動かしようのない事実だった。 槍の柄に括りつけられていた金属球、それは単なる球型柄頭などではない。 自在に展開し標的を包み込む流体金属。これこそが、ライダーの切り札たる宝具『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』の真の姿であった。 「……まさか、こんなに早い段階でこいつを使う羽目になるとはな」 一拍遅れてキマイラに乗ったライダーが地面に降り立つ。 向こうに鎮座する自身の宝具を見て、彼は苦々しげに口元を歪めた。 「たかが暗殺者と侮って掛かったツケが高くついたな……おい」 舌打ちすると、ライダーは視線を二人の少女へと向けた。 「あの鉛球に閉じ込められた以上、もはや奴が自力で脱出することは不可能だ。 勝負は決した。お前らもこの聖杯戦争に挑んだ以上、負けた時の覚悟くらいは出来てるよな……?」 一歩ずつゆっくりと、騎兵を乗せた怪物がこちらに迫ってくる。 全身に傷を追いながらも、その獰猛な闘気は損なわれることなく全身から放たれている。 キマイラに携えられた獅子の面。その双眸と視線が交錯した瞬間、みことは本能で察した。 「あ、あ……」 自分は――まもなく目の前の獣に“喰われる”のだと。 「……ま、待って!」 まさしく蛇に睨まれた蛙のように身じろぎできなくなったみことの前に、夏海が身を乗り出した。 「アサシンのマスターはあたしなの。だから殺すのはあたしだけで……!」 「駄目だ」 夏海の訴えを、ライダーはにべもなく封殺する。 「そっちの女もマスターの一人なんだろ? だったら生かしておいてやる道理はない」 ライダーの言葉と共に、キマイラの獅子頭が牙を剥く。 その白く冷たい輝きを、みことは呆然と眺めていた。 ……自分は一体何をしているのだろう。 “彼”を救うと息巻いておきながら、肝心要とサーヴァントとは喧嘩別れし、 今こうして為す術もなく犬死に同然に殺されようとしている。 おまけに自分だけではない、たった一人の、掛け替えのない親友の命すら危険に晒して……。 「二人仲良く――あの世へ行きな!」 大きく口を開いたキマイラが猛然と突進する。 剥き出しの牙を、今まさにその身に突き立てんと―― “――――Σταματήστε(止まれ)” ……反射的に目を閉じたみことの傍らを、そのとき澄んだ一声が通り抜けていくのが聞こえた。 「――なっ!?」 直後、ライダーが驚愕に声を荒げる。 おずおずと目を開くと、いかなる事か―――みことの眼前で、キマイラは今にも噛みつかんとした姿勢のまま、 まるでその場に縫いつけられたかのように動きを静止していたのだ。 「どういうことだ……キマイラ、動け! 何故動かない!?」 「……あ、あれ?」 夏海も目をぱちくりさせて驚きを顕にしている。 三者揃ってこの状況は慮外の出来事であったらしい。 ならばこの現象は―― 「……!? 誰だ貴様っ!」 ライダーがみことらの背後に怒声を放つ。 それに反応して自分も後ろを向く。そこには一人の男が立っていた。 古めかしい衣装、月桂樹の葉の髪飾り、そしてその陰鬱な面貌。 「……キャスター!?」 見間違うはずもない、それはみことが呼び出したサーヴァントに他ならなかった。 「ど、どうしてここに……」 「……マスターが甚大な危機に陥ればサーヴァントにはそれが分かる。知らなかったのか?」 素っ気無く答えると、キャスターは身を寄せ合っているみことと夏海の眼前に割り込み、 目の前の怪物、そしてその手綱を取る騎兵の姿を見据えた。 「何があったのかと思って来てみたら、まさか敵のサーヴァントに襲われているとはな…… だから安全な場所に閉じこもっていろと忠告したのだがな。案の定これだ」 「……う」 キャスターの言葉に、みことは顔を赤くして項垂れる。 ことここに至ってはもう言い返す言葉もない。 「……貴様、もう片方の女のサーヴァントか」 一方のライダーも、目の前に現れた男を凝視する。 キャスター。確かにマスターの女は男をそう呼んだ。 戦場に赴きながら一切の武装も伴わないその姿を見ても、目の前の男が魔術師の英霊なのは瞭然だ。 ならば、キマイラの全身の筋肉が麻痺したかのように硬直したのは何らかの魔術を仕掛けたということか? 「――“Δεν μπορεί να σταθεί στο χορό”」 キャスターの呟きと共に巨大な影がライダー目掛けて飛来する。 ライダーは手綱を思いっきり引き、キマイラの硬直した肉体を僅かに駆動させてギリギリのところで回避する。 難を逃れたライダーだったが、飛来した物体の正体を見極めたところで彼は愕然となった。 『樹』――おそらくは周辺に植えられた公園樹の一本であろうそれが、根をまるで足のように用いて眼前に“立って”いたのだ。 「“Δεν μπορεί να σταθεί στο χορό(どうして踊らずにいられるだろうか) Δεν κάνει καμία προσπάθεια να(こんなにも労せず舞うことができるというのに)……”」 キャスターの詠唱に呼応するかのように樹木が身を躍らせる。 それは、見ようによってはメルヘンチックな光景だと言えたかもしれない。 樹木が根を動かしてステップを踏み、茂る枝葉を振ってダンスを踊るかのように動いているのだ。 まるで絵本の中のような光景だが、しかしてその勢いが尋常ではない。 乱流の如き風圧を纏って大きく横薙ぎに幹を振るう樹木。それは攻城戦の破壊槌もかくやという勢いでもってライダーへと襲いかかる。 だが、それを受けるライダーとて尋常の兵ではない。キマイラの動きが本調子でないと見るや手綱から手を離し、 両手で握った槍でもって迫る樹木を一振りで両断してみせたのだ。 本業の槍兵にも劣らぬ槍技の冴え。だがその業前を嘲笑うかの如く、樹木は再び身を躍らせる。 両断された樹幹は何とその勢いを全く衰えさすことなく、二本となった樹身で双方向からライダーへと襲いかかっていった。 「なッ…!?」 ライダーは即座に槍を振るい、二つに分かたれた樹幹を連続で切り落とす。 だが、そうして生まれた四本の木片は、今度は四方から突撃を繰り出してくる。 これでは迎撃しても敵の手数を増やすだけ……そう察するも、キマイラの機動力を奪われたライダーは槍で応戦するしかなく、 振り払い、砕いていく度に宙を舞う木片はその数を増やしていく。 「“Πόσο μεγάλη είναι η χαρά(なんと大きな喜びだろう) Ας αργά ή νωρίς(早朝でも、夕暮れ時でも), Επιπόλαιες float(谷と丘の上を) Πάνω από την κοιλάδα και τους λόφους.(気軽に舞うことは)……”」 何合にも渡る打ち合いを経て、キャスターが操る踊り手の総数はいつしか二十を超えていた。 これほど手数に差が出ては、ライダーにも防ぎきることは叶わない。機銃掃射のごとき乱撃の中、打ち漏らした木片が幾つも身体に叩きこまれ、 その身には痣や傷がじわじわと増え始めてきている。 「……すごい……」 その光景を、みことは感嘆と共に眺めていた。 魔術の知識をもたない彼女にも、キャスターの操る術の高等さは理解できた。 「……」 一方のキャスターはそんな主の驚嘆も、敵の驚愕もまるで意に介さずただただ冷ややかに術の制御に精神を集中させていた。 敵を打ち倒さんというのではなく、まるで障害物を取り除こうとでもしているかのような淡々とした態度。 おおよそ闘争に臨んでいるとは思えぬ振る舞いが、対手たるライダーに激昂を滾らせる。 「貴様……舐めるのもいい加減にしろッ!!」 手綱を引いて、キマイラを強引に後方へと引き下がらせる。 すぐさま追撃せんと飛来してくる木片の群れ。 そこにキマイラの獅子頭が大きく口を開け、何とそこから紅蓮の炎を吐き出した。 口腔より噴出した火炎によって幾十もの木片は灰と化し、ついにその動きを止めた。 「……ほぅ」 これには少しばかり驚いたのか、キャスターが声を漏らす。 「随分と好き勝手してくれたな……だがこれで終わりだ!」 手綱から伝わってくる感触から、ライダーはキマイラの動きを縛る魔術の効果が既に薄れてきているのを悟った。 アサシンにやられた傷も、驚異的な再生力によって半ば治癒している。 万全ではないとはいえ、相手は白兵戦能力を持たないキャスターのクラス。真っ向からの全力突撃を放てば押し切れない道理は―― 「……“ηρεμία(鎮め)”」 今、まさに飛びかからんと大地を踏みしめたキマイラの巨体が、そのときキャスターの一言によって制せられた。 一度目の時と同様に、まるで見えない鎖で縛られたかのように硬直するキマイラの肉体。 背上のライダーは、信じがたいという表情で目の前のサーヴァントを凝視する。 (……まさか、今の詠唱だけで術を掛けたというのか!?) 有り得ない出来事だった。今、ライダーが手綱を握るキマイラは正真正銘の『魔獣』――幻想種だ。 本来ならば幻想の中にのみ生存する獣。在り方そのものが神秘である彼らは、それだけで魔術を凌駕する存在だ。 その神秘の格はモノによっては五つの魔法と同等。その肉体は儀礼呪法クラスの大魔術とて簡単には通さない。 だというのに、たかだか一小節や二小節の詠唱だけで、こうも容易くその動きに干渉するなど……。 「“Μην βιάζεστε, διαμονή, (急ぐな、立ち止まれ) Ιδού, ο ίδιος παραμένει το μόνο σύννεφο billowed έξω.(見よ、月は留まり、去っていくのは雲だけ)……”」 術式を補助するための礼装も、陣もなく、ただ口頭での詠唱だけでキマイラを縛るキャスター。 続々と呪文が紡がれ、キマイラの肉体への負荷が刻一刻と増していくのをライダーは感じていた。 このままでは完全に動きを封じ込めれれ、下手すれば支配権を乗っ取られる可能性すらある。 焦燥感に苛まれ歯噛みする。そうこうしている最中にもキャスターはまるで歌うように滑らかに呪文を発し、術式を上乗せしていっている…… 「……」 そこで、ライダーの思考ははたと立ち止まる。 “まるで歌うように”というよりも、これはむしろ―― 「……なるほど」 ライダーの眼の色が変わる。と、同時に騎兵は右手に掴んだ槍を振り上げ、 「そういう――ことかッ!」 それを跨下のキマイラの脇腹へと思いきり、鞭のように叩きつけた。 『GUUUUURUUUUUUUUUUUOOOOOOOOOOOAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!』 全身を走る激痛にキマイラが堪らず絶叫を轟かす。 突風と見まごうほどの莫大な音圧が、そのとき周囲の全ての音を一瞬でかき消した。 無論、それはキャスターの呪文も例外ではなく―― 「―――!」 驚愕の表情でキャスターは口を動かすも、そこから発せられているのであろう言葉はキマイラの咆哮に掻き消され、ライダーの耳には聞こえない。 “聞こえない”。それを認識すると同時に、キマイラの肉体が戒めから解き放たれたのを感じた。 (やはりか……!) 本来、魔術師が唱える呪文というのは自分自身に訴えるためのもの。つまるところ自己暗示のためのスイッチでしかない。 だがそれとは逆に、呪文を“聞かせる”ことによってその相手に直に干渉する特殊な魔術体系も存在するという。 呪文に旋律をつけ、唄うように発する『呪歌』……眼前のキャスターが用いた魔術も恐らくはこのタイプだったのだろう。 そして相手に聞かせることで発動するというのなら、より大きい音で掻き消すことが出来れば術は打ち消されるということに他ならない。 『GUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』 雄叫びとともにキマイラの巨体が地を跳ねる。 呪歌による枷から解き放たれた怪物はこれまでの鬱憤を晴らすが如く筋肉を躍動させ、砲弾も同然の勢いで跳びかかる。 キャスターとの間合いはもはや十歩に満たず、その間を阻む障壁は皆無だった。 「その首、貰ったぁッ!」 勝利の確信と共にライダーは鬨(どき)の声を上げる。 しかしその快哉は、 「――“θα κοιμηθεί απαλά στα χέρια μου( 安 ら か に 眠 れ 我 が 腕 の 中で)”」 潸然と響き渡った一節の歌声によって阻まれた。 X X X X X ……何が起こったのか、ライダーは理解できなかった。 まずキマイラの咆哮。周囲の大気をあれほど激しく震わせていた轟音が、いかなる事か一瞬にして消え去ったのだ。 前兆も脈絡もなく訪れた一瞬の静寂。そこに覆い被さるように紡がれたキャスターの呪文。 それによってキマイラの挙動はまたも標的の目前で制止させられることとなった。 ライダーは改めてキャスターを瞠目し、そこで眼前のサーヴァントの手に握られた“それ”に気づいた。 キャスターの手にいつの間にか握られていたもの、それは一挺の『竪琴』だった。 陽光のように淡く輝く竪琴(キタラ)。そこに張られた弦の一本一本が、内側で膨大な魔力を渦巻かせているのをライダーは霊感力によって知覚する。 推し量るまでもなく、あの竪琴はキャスターの宝具に相違なかった。 ――あれを使って、奴はキマイラの咆哮を無効化したというのか? 「……音というのは、その実態は空気を伝わる波だ」 ポン、と竪琴の弦を一本弾いてキャスターは口を開いた。 「だからこうやって何らかの形で“全く位相が逆の音”を発すればどんな轟音だろうと相殺し無音に戻すことができる。 驚くことはない、ごく単純な原理だ……」 何でもないことのように言い放つキャスター。だがそれを聞いてライダーの驚愕は一層大きさを増す。 確かに理論的には可能なのかもしれないが、あの一瞬でキマイラの咆哮の音域を見極め、 更にそれと全く逆位相の音を竪琴を弾いて正確に発するなどということを、現実に行える者がいるというのか? (……いや) 心当たりはある。これほどの楽才、魔力を持った歌声、そして何より自身の象徴たる宝具を“竪琴”に定めた英霊となれば…… 「オルフェウス――貴様、“竪琴弾き”のオルフェウスか!?」 これだけ揃えばもはや間違えようがない。 目の前のサーヴァントはギリシャ全土にその名を知らしめた歌聖、オルフェウスに相違なかった。 「お、オルフェウスですって……?」 その名を聞いて、みことは己のサーヴァントを瞠目する。 「……え、誰? 有名な人なの?」 「ちょっ、夏海知りませんの!?」 オルフェウス、類まれな音楽と歌の才能を持った神代の歌人。 彼の奏でる調べは鳥や獣をも虜にし、草木を踊らせることすら可能にしたという。 その伝説は数多くの芸術作品に主題として取り上げられており、知名度は充分にあるはずだが……。 「いやー、あたしあんまり本とか読まないからそういうの疎くって」 「夏海、あなた……」 みことは呆れたように肩をすくめ、改めてキャスターに目を向ける。 宝具を出した時点で覚悟はしていたのか、真名を看破されたことで取り立て狼狽するような空気は見られない。 相も変わらず、暗澹たる面持ちのまま眼前のライダーと向き合っていた。 「なるほどな、道理で……」 ライダーはようやく得心したという様子でキャスターを捉える。 真名が明らかになった今では、魔獣キマイラにああも容易く術を掛けたのも納得がいく。 その歌と竪琴の調べは、かの地獄の番犬すらも調伏したと言われているのだ。 幻想種相手の魔術戦は不得手どころかむしろ奴にとっては真骨頂と言えるだろう。 「まさか、かの竪琴弾きと矛を交える機会があるとは……くく、これが聖杯戦争の妙というものか」 「……そういう君は」 そこで、ふとキャスターが口を挟んだ。 「そういう君は、もしやベレロフォンではないか? ライダー」 「ッ!?」 キャスターの発言にライダーが目を見開く。 「あれほど自在に魔獣を乗りこなす騎乗術。それに何よりその黄金に輝く手綱、 同郷の人間なら見間違うはずもないさ。“天馬騎兵”ベレロフォン」 「………」 真名を看破し返されたライダーは、むしろ清々しいほどの様子で表情を引き締める。 古代ギリシャにて、戦女神から手綱を授かり、天馬ペガサスに跨って大空を駆けた英雄、ベレロフォン。 それこそがライダーの真なる威名であった。 「……そうだな。当たりだよ。 全く驚きだぜ。こんな所で“同じ格”の英霊と相まみえることになるとはな」 竪琴弾きのオルフェウス。 天馬騎兵ベレロフォン。 直接の面識はない二人だが、両者の繋がりは同じギリシャ神話にその伝説が綴られたというだけには留まらない。 ギリシャ神話に登場する数多の英傑たち。その中でも筆頭とされる七人の英雄。 その名も高き“ギリシャ七英雄”。キャスターとライダー、彼らは共にその一角を担う存在であった。 「だが、何故今の君はキマイラなどに乗っているのだ? それは君が討ち倒したはずの怪物では」 「それは聞くな」 キャスターの問いかけを黙殺するライダー。 だが彼の言うとおり、ベレロフォンは“ペガサスに乗ってキマイラを打破した英雄“だ。 それがキマイラに乗って戦っているなどということは普通に考えれば有り得ないことではある。 『――ペガサスはいない、ですって?』 ライダーが現世に召喚された夜、召喚者たるファーティマも同じ疑問を口にした。 『ああ。この聖杯戦争というシステムだが、どうやら生物をそのまま宝具として再現することまでは出来ないようだ。 自前で幻想種を召喚する能力があれば呼び出すことも出来るんだろうが、あいにくオレにはないのでな』 『じゃあ……』 『何、心配は無用だ』 そう言って、ライダーは虚空から金色に輝く一本の手綱を出現させてみせる。 『こいつは括りつけた騎乗物に“何であれ”魔獣の格と力を与えることが出来る。 生前は天馬がいたから能力を発揮する機会もなかったが、こいつがあれば乗機には事欠かねぇよ』 それは、『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』と共に彼が携えたもう一つの宝具、 戦女神アテナより賜りし神器、『黄金の手綱(ポリュエイドス)』に他ならなかった。 『馬乗りが本分とはいえ、オレなら他の獣だって十全に乗りこなせる。 獅子でも虎でも、好きな得物を持ってくりゃあいい』 『ふぅん……』 何の気なしに発せられたライダーの言葉に、ファーティマは何やら考えこむような仕草を見せる。 この時、ライダーは知らなかった。自身を召喚したマスターが“死体細工”を専門とする魔術師であったことを。 その後、ファーティマはどこからか素体となる獣の骸一式を調達し、あろうことか彼の宿敵たるキマイラの複製を創り上げたのだ。 『どう、よく出来てるでしょう? これに貴方が手綱を掛ければまさしく神代の怪物をこの世に再現できるわ』 ファーティマの仕事は完璧だった。獅子の頭、山羊の銅、蛇の尾、まるっきり異なる生物同士の筋肉と神経を繋ぎ合わせ全ての部位を駆動可能にし、 おまけに如何なるからくりか、肺腑から炎を生成し噴出する器官まで精緻に再現してのけたのだ。 『……何、気に入らないの? 少なくとも貴方が生前乗ってた羽の生えた馬より余程実戦的だと思うけれど』 自分のマスターという立場でなかったらその場で括り殺してやってもいい憤慨ものの発言だったが、 業腹ながら認めざるを得なかった。これほど凶悪無比な騎獣など、現世では他に望むべくもない。 それに、そもそもこの怪物の恐ろしさは『自分が一番良くわかっている』のだ。 ――しかし、その謹製のキマイラも今はハリボテ同然の有様だった。 キャスター、オルフェウス。その魔性の歌声に骨抜きにされたのか、 魔獣は全身の筋肉を完全に弛緩させ、ぐったりと四肢を投げ出して意識を失っていた。 「……まあ良い。何れせよ、そのキマイラはもう覚めることのない眠りについた」 キャスターがその手に顕現した宝具、『魂響の竪琴(フォルミンクス・アポロ)』。 その音色と共に発せられた呪歌は魔獣キマイラの持つ抗魔力を完全に突き抜け、その調べは魂の深奥にまで響き渡っていた。 「先ほどのように時間経過による劣化も起こらない。私自らが解呪するまでその獣は目覚めはしない。 どうする、ライダー? 騎獣を封じられては戦闘の続行は不可能ではないか……?」 「……」 ライダーは目を眇めて、敵手たる同郷の英霊を見据える。 「なるほどな、流石はその名も高きオルフェウス。見事な業前だ。 同じギリシャの英雄として敬服しよう。―――だがな」 しかと手綱を握りしめ、ライダーはカッと双眸を見開いた。 「この程度でオレを縛ったなど――思い上がるなよ楽士風情が!!」 咆哮とともにライダーの全身から魔力が迸る。 湧き上がった力は握りしめた手綱を通して跨下のキマイラへと流れこむ。 “……目覚めろ、キマイラ! このオレの騎獣となった以上、無様に倒れ伏すことなど断じて許さん!” 確たる一念を持ってライダーは手綱を引き上げる。 それに呼応するかのように、意識を失った筈のキマイラの四肢があろうことかゆっくりとその身を持ち上げ始めた。 「……何だと……!?」 その光景にキャスターは驚愕する。 『魂響の竪琴(フォルミンクス・アポロ)』によって強化された呪歌は完全な形でキマイラの心身を拘束した。 外部から他者が解呪することなど出来るはずがない。 ……いや、そもそもライダーは何ら魔術的な措置は行ってはいない 信じがたいが、あのサーヴァントは『獣を乗りこなす』という技能だけでもって、魔術的に拘束されたキマイラ覚醒させている――! そうはさせんとキャスターが再び竪琴を爪弾く。術式の補強によってキマイラの四肢はみるみるその力を萎えさせる。 だが、ライダーが強引に手綱を繰ると、またも怪物の巨体は魔歌の鎖を引きちぎらんとその筋肉を奮わせる。 ――オルフェウスとベレロフォン。どちらも共に“魔獣を従える”ことに特化した技能を有する英雄同士。 両者の振るう神代の御業は、今ここで完全に拮抗していた。 「“Δώσε μου το χέρι σου, είσαι όμορφη και απαλή πράγμα!(手をお出し、美しく繊細なるものよ) Είμαι φίλος και όχι να τιμωρήσει.(私は君の友であり 罰するために来たのではない) Έχε θάρρος! Δεν είμαι άγριο(心をしずめて。私は君を傷つけないから)……!!”」 竪琴の奏でる調べと共に、キャスターは更なる呪歌の詠唱を重ね掛け、キマイラの動きを封じこめんとする。 ライダーが送り込んだ魔力によって、今キマイラの肉体に脈動するエネルギーは先程までとは比較にならないレベルに膨れ上がっている。 ここで呪歌による拘束を振りきって飛び出されたら、その勢いは自身と、その後ろに控える二人の少女を一瞬で粉砕してもおかしくはない。 一部の気の緩みも許されない。拮抗しているようでいてその実、今の自分は追い詰められたも同然の状態だ……!! 「うぅぅぅぅぅぅぅうおぉぉぉぉぉおぉぉぉおおおおおおおおおお!!」 一方のライダーも、キャスターの呪歌に対抗せんと激しく両手で手綱を振るう。 何とかして一刻も早くこの拮抗状態を打破せねば……! ライダーは眼球を一瞬チラリと動かし、離れたところに鎮座する巨大な鉛球の様子を伺った。 『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』。それは、包まれた相手が内側から壁に攻撃を加えればその衝撃を相手へと跳ね返す効果を持つ。 ゆえに一度拘束されれば内側から破ることは決して叶わない。 だが、展開拘束状態の『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』はその維持にかなり大きく魔力を消費する。 キマイラを起動させるために魔力を注ぎ込んだこともあって、その拘束の持続には限界が近づいていた。 キャスターも、後ろのマスター二人も気づいてはいないようだが、既にその表面はボロボロと剥離し始めている。 相手が無知な獣であれば、攻撃の反射などお構いなしに暴れまわってとっくに自滅していてもおかしくはないのだが、 今、中にいる暗殺者の英霊はそんな蒙昧ではない。むしろ宝具の限界を察して飛び出す機会を虎視眈々と伺っていると考えるのが常道。 ゆえに、この状況が長引けは自分は圧倒的不利に立たされることとなる。 一部の気の緩みも許されない。拮抗しているようでいてその実、今の自分は追い詰められたも同然の状態だ……!! キャスターとライダー。二人の英霊の手によってキマイラは覚醒と昏倒を連続で繰り返し、痙攣も同然の有様でその巨体を小刻みに振るわせる。 二人のサーヴァントがせめぎ合う極限状態は、背後のみことと夏海にも呼吸すら忘れさせるほどの緊張をもたらしていた。 「みこと……」 耐え切れず、夏海が不安げな声を漏らす。 「……大丈夫よ、落ち着きなさい」 そう宥めてみるも、内心穏やかでないのはみことも同様だった。 今にも眩暈を起こして倒れそうなほどに、心中はざわめき極度の不安と緊張で押しつぶされそうになる。 だが、ここで倒れる訳にはいかない。今、自分たちを守ってくれているサーヴァント、 それを現世に留めているのは他ならぬ自分自身なのだ。 体内にひりつくような痛みを感じる。あの夜、キャスターを召喚し実体化させた時のように みことの全身はサーヴァントの力を引き出すために今も魔力を生み出しているのだろう。 「今は、信じるしかないわ……キャスターを」 二人の少女が見守る中、騎兵と魔術師は互いの持てる技を駆使して鎬を削りあい続ける。 何人たりとも割りこむことなど出来ぬ英霊二人の拮抗状態。 そこに、不意に言葉が投げかけられた。 「――――随分と苦戦しているようね、ライダー」 四者が一斉に声の主へと目を向ける。 いつの間に現れたのか、一人の女の姿がそこにあった。 みことらよりも幾分年上だろう。褐色の肌に、黒い髪。眼鏡を掛けた理知的な風貌の美女だ。 サーヴァントの気配ではない。にも関わらずこの状況に首を突っ込んできたとなれば…… 「……ファーティマ!?」 最初に反応を示したのはライダーだった。 「何故ここに……お前、工房にいたはずじゃなかったのか!?」 「ええ、そうよ。でも見ていられなくなってしまって」 二人のやり取りを見て、残りの三人も理解する。 この女が、ライダーのマスターに違いない―― 「初めまして、お嬢さん方。私はファーティマ・アブド・アル・ムイード。 ライダーのサーヴァントを召喚し、此の地で開かれた聖杯戦争に挑むマスターの一人です」 女は微笑を浮かべながら朗々と名乗りを告げる。 そのあまりの慇懃さに逆に不気味なものを感じ、みことと夏海は後退り距離を取る。 「まあ、そう警戒なさらないで。私は話し合いがしたくて参っただけですから。 ……志那都みことさん?」 不意にフルネームを呼ばれて、みことはビクリと身を震わせた。 「実は折り入って貴方に交渉したいことがあるのです」 「い、一体どういう用件ですの!?」 自分の名前を一方的に知られていたことで、みことは一層警戒の念を深める。 だが次に続いた言葉は、彼女の全く予期せぬ内容だった。 「はい、もし私の願いを聞いてくれたならその御礼として、 “貴 方 の 恋 人 の 身 体 を 修 復 し て”差し上げます」 ――――それを聞いた瞬間、みことは目を見開き、心臓を大きく高鳴らせた。 「な、何で……」 「何で知っているのか、ですか? それくらいちょっと調べれば分かることです。 貴方の恋人は重傷を追って入院中。今も意識は不明。 もはや治る見込みもなく、貴方は最後の手段たる願望機を求めてこの聖杯戦争に参加した。そうですね?」 みことは絶句する。ファーティマ……この女の言うことは何から何まで事実だった。 「ですが、医学では治る見込みがなくとも、私の魔術の業をもってすれば貴方の恋人を修復することは可能です。 全ての破損部を修復し、以前のように歩けるように、喋れるように、笑えるようにして差し上げますよ」 最早どうやって調べたのかなどと問いただすことも忘れて、みことは衝撃に打ち震えていた。 “彼、”を元通りに戻すことができる……それが事実なら、自分は―――― 「……本当に、そんなことが……」 「ええ、勿論です。そのためには、ただ一言」 ファーティマは優しくみことに微笑みかけ、そして告げた。 「こう言ってくれるだけでいいんです。“令呪を持って命ずる。キャスター、自害せよ”と」 その発言に、その場にいる全員に戦慄が走った。 「な、何を言ってやがるファーティマ!!」 ファーティマが提示したその内容。 それに最初に反応を示したのはまたも彼女のサーヴァントだった。 「キャスターはオレがこの手で打破する! 余計な真似をするんじゃねえ!」 「強がりはよしなさい。それが出来そうにないからわざわざこうして出向いてきたんでしょう。 いいから貴方はキマイラの制御に集中して、そのままキャスターを抑え込んでいればいいから」 「……!!」 にべもなく糾され、ライダーは屈辱で口元を引きつらせる。 対照的にファーティマはにこやかな雰囲気を崩さず、再度みことに問いを投げかける。 「どうです? サーヴァントを失えば貴方の脱落は確定ですが、 そもそも貴方の目的は『勝利すること』ではなく『恋人を元通りにすること』。 その願いが叶うなら、敗退したところで問題はないはずです」 「そっ、それは……」 みことはそっと己のサーヴァントの様子を疑う。 「……」 相変わらず陰鬱一辺倒の面持ちを崩さぬまま、ただ眼前のキマイラに集中しているキャスター。 一見しても狼狽の色は伺えないが、自分の命を身代金も同然に扱われてるこの状況で一体何を思っているのか。 「私が約束を違えるかもしれないと心配しているなら、誓いを反故に出来ぬよう魔術的に契約を交わしても構いません。 何なら自己強制証文(セルフギアス・スクロール)を作ってもいいですよ。……といっても貴方にはピンと来ないでしょうか」 「……」 ファーティマの言い分は最もだ。最後まで勝ち抜けるかどうかも分からない闘いを命懸けで続けるよりも、 今ここで彼女の交渉に応じたほうが確実に望みは遂げられる―――― 「いかがします? 悪い話ではないでしょう」 「そう、ですわね……決めましたわ」 微笑むファーティマに、みことは毅然と表情を引き締め、そしてキッパリと口にした。 「その申し出―――――お断り致しますわ」 「……えっ?」 断られるなどまるで思っていなかったのか、ファーティマは鳩が豆鉄砲食らったように目を見開く。 「な、何故です? これなら貴方の望みは確実に叶うのですよ?」 「確かにわたくしの望みは叶うかも知れません。でも、それではわたくしのサーヴァントの願いは果たされません」 そう言ってみことはキャスターに言葉をかける。 「キャスター、あなたが聖杯に掛けた願いというのは、あなたの妻エウリュディケを復活させることなのではありませんか?」 「――ッ」 その名前を聞いて、キャスターはついぞその鉄面皮に変化を見せる。 オルフェウス。彼の主たる伝説とは愛する人の喪失と再生を巡る物語だ。 婚姻の直後に、愛する妻を毒蛇の一噛みによって失ったオルフェウス。 彼はその死を受け入れることが出来ず、単身で死者の国、冥府へと降り立った。 門を守る番犬も、死の川を塞ぐ船渡しも、その竪琴と歌が織り成す調べで魅了してくぐり抜け、彼は冥府の王の元へと辿り着く。 自らの悲痛な想いを歌に乗せて訴えかけた彼は、冥王の心までをも動かし、亡き妻を地上に連れ戻す許可を得る。 だがそこで交わされた“地上に戻るまで決して後ろを振り返ってはならない”という約束。彼はあと一歩というところで不安に駆られて後ろの妻を振り返り、 そして、最愛の人を永遠に失うこととなった――――― 「あなたの物語、小さい頃に読んだことがありますわ。 愛する人を取り戻したい……その気持ち、今のわたくしには痛いほど分かります。 ですから決めました、わたくしはあなたと“共に”聖杯を勝ち取ると! 分かったらそんなところで立ち止まってないで、さっさとケリを付けなさい!!」 「…………」 みことの叫びに、キャスターは沈黙によって応じる。 言葉による返答はなかったが、何かに感じ入るように目を閉じたその面貌は、心の動きを雄弁に物語っていた。 「……はぁ、そうですか」 そこで、ファーティマが呆れたように肩を竦めた。 「そこまで言うなら私からはもう何も言いません。 ですが、忘れていませんか? 貴方のサーヴァントは私のライダーと膠着して身動きがとれない状態」 ファーティマはすっと右手を上に掲げる。 「この状況で私が攻撃すれば、貴方がたにそれを防ぐ手段はないということを――!!」 「……貴方こそ」 ――――そう言い放った直後、 褐色の女の首は一刀のもとに切り落とされた。 「誰か一人、忘れているんじゃないかしら。マスターさん?」 ゴロン、と音を立てて転がる生首。 断面から噴水のように鮮血を迸らせながら膝をつく首無の骸。 その後ろに立っていたのは―――― 「……あ、アサシン!?」 「ごめんなさい。待たせたわね、ナツミ」 刃に付いた血を振り払いながら応じる黒衣の影。 それは鉛球に閉じ込められていたはずのサーヴァント、アサシンに他ならなかった。 「馬鹿な、貴様どうやって……!?」 驚愕の面持ちでライダーは『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』へ目を向ける。 剥落が進行し、幾らか崩れかけてはいるものの、まだ脱出できるレベルに達しては…… そこで、ライダーは思い出した。拘束の直前にアサシンが見せた術。 “小さな虫への変化”。あれれを用いれば、どこか一か所極小の穴が空くだけでヤツはその身をくぐらすことが出来る―――― 「まさか、あんな宝具を持っているのは思わなかったわ……間一髪だったわね。二人とも怪我はない?」 「あ、あたしたちは大丈夫だけど……」 おずおずと、夏海は首と胴が分かたれたファーティマの肉体を覗き見る。 「この人……もう」 「ええ、死んだわ」 アサシンは躊躇いなく言い放つ。 「妾身が殺した。……そうしなければ、貴方たちが殺されていただろうから」 「……」 アサシンの言葉に夏海も、傍らのみことも黙りこむ。 目の前で人が殺される。そのような事態に遭遇したのは二人とも初めてなのだろう。 とりわけ、夏海にとっては自分のサーヴァントがこうもあっさり人の命を奪ったことに少なからずショックを覚えているのかもしれない。 だが、こればっかりは受け入れてもらうしかない。聖杯戦争に参加した以上、避けては通れないことだから。 アサシンは表情を引き締め、対峙する二人のサーヴァントへ顔を向けた。 「ライダー、貴方のマスターはたった今討たれた。 もうじき貴方は現界を絶たれ、この世から消滅する」 「…………」 アサシンの宣告に、ライダーはうなだれるようにがくりと頭を垂れる。 「……………………………………オレの……………… ………………………………オレの……負けだ……」 俯いたまま、かすれ消えそうな声でライダーは言った。 「………………だが……このまま消えるのは心憎い…… 最後まで闘いを全うしたい……アサシン……最後は、せめて……お前の手で……」 「……分かったわ」 アサシンはキマイラの上に飛び乗り、ライダーの背後に立った。 ライダーの身が小刻みに震え上がる。 「安心しなさい。痛みも感じないよう一瞬で終わらせるから」 匕首を構え、その首に狙いを定める。 「……じゃねぇ……」 そこでふとライダーが言葉を発した。 ……今、何と言った? アサシンは手を止めてライダーの顔を覗き込む。 「……ふざけんじゃねぇぞ…………」 その相貌の凄まじさに、アサシンは思わず息を呑んだ。 大きく見開かれた目は炎のように滾り、噛みあわせた歯は自ら砕かんばかりにギリギリと音を立てる。 「……ライダー?」 正面に立っていたキャスターも異変を感じ、怪訝な表情を浮かべる。 これが今から死のうとしている男の顔か? とてもそうは見えない。この表情はむしろ…… 「……ふざけんじゃねぇぞファーティマァァァァァァァァァァァァァ!!」 怒り。その面持ちに瞭然と刻まれた激昂の感情そのままに、ライダーは絶叫を上げた。 「よくも……よくもこのオレに……“ 負 け た ”な ど と 言 わ せ て く れ た な!!」 それと同時に、信じがたいことが起こった。 みことと夏海の傍らに伏していた首無し死体。 それが猛然と飛び上がって、二人の少女の身体を押さえ込んだのだ。 「なッ……!?」 その光景を見てアサシンは悟る。 ライダーのマスター、あの魔術師は“死体を操る”ことが出来る。 先ほど自分が首をはねたのはマスター本人ではない。そのように偽装した死体だったのだ。 すぐさま二人のもとへ向かわんとするアサシンを、更なる衝撃が襲った。 キマイラ。その腹が突如として爆ぜ割れ、中から飛び出た腸が触手の如く伸び広がって瞬く間にアサシンと、正面にいたキャスターにも巻き付きその身を締め上げた。 両手両足に加えて顔面にも腸管が巻きつけられ、二人のサーヴァントは身動きも言葉を発することもできない。 それを驚愕の表情で見据えるライダー。どうやら彼も、自身の騎獣にこのような仕掛けがあるということは知らされていなかったらしい。 「仕方ないじゃない、この娘たちからアサシンを引き離すにはあれが一番手っ取り早かったのよ」 地面に転がった生首が平然と言葉を発し、ライダーに応える。 「しかし貴方も頑固ね。こころよく承諾してくれればわざわざ令呪を使う必要もなかったのに」 ゴロンと首を回転させ、ファーティマ――この場にはいない本物の彼女は、断ち切られた死体頭部の視覚を通じて 死体胴体部によって押さえ付けられた二人の少女に目を向ける。 「あ、あなたこんな卑怯な真似をして恥ずかしくありませんの!?」 死体の手で頭を地面に押し付けられながらみことは目の前を転がる生首に向かって糾弾する。 「そ、そうだよ! それにこんなふうに死んだ人の体を道具みたいに使うなんて、酷いと思わないの!?」 背中にのしかかられた夏海も同様に声を荒げる。 「卑怯? 酷い? 言ってる意味がよく分かりませんね。 大体死体を使役することが酷だというのなら、この聖杯戦争はどうなるんです? 遠い昔に死んだ英霊を蘇らせ使い魔とする――――それは屍人形と何が違うというのかしら」 最早根本的に価値観の異なる回答に、みことと夏海は絶句する。 ……そのとき、二人は自分を押さえつけている死骸の体温が急激に上昇していくのを感じた。 そこで二人は気づく。そう、この女の操る死体はただ動くだけではない。 自爆――ライダーが現れる前に自分たちに襲いかかってきた死者の群れが行っていたそれを思い出し、全身に怖気が走る。 こんな密着状態で爆発されては間違いなく致命傷だ。おまけに先ほど守ってくれたアサシンも、キャスターも拘束されて身動きがとれない。 二人に打つ手はもう――――なかった。 「それではさようなら、お嬢さんがた。 心配しないで。爆散した死体は綺麗に修復して、ちゃんと役立ててあげるから――!」 ――――そこで、 今まさにその身を炸裂させんとした死体は“音もなく”バラバラになった。 体内の爆発機構が壊滅するほど細かくその身を寸断され、肉片が芝生の上へ舞い落ちる。 うつぶせにされていたみことと夏海も、巻きついた腸管で視界を封じられたアサシンとキャスターもそれを見ることは出来ず。 ただ、地面に転がった生首の両目だけが、その光景を目撃していた。 「――――ラ、 ライ……ダー……?」 ファーティマの意識をトレースした生首は、唖然とした面持ちで目の前に立つ己のサーヴァントを凝視していた。 一瞬の出来事だった。みことと夏海を押さえ込んだ死体を爆破させようと術を繰ったそのとき、 キマイラの背上からライダーが疾駆の如く飛び出し、刹那の内に死体を槍でバラバラに切り裂いたのだ。 「な、何をしているの!? あと一歩で敵のマスターを二人まとめて倒せたというのに!」 「言ったはずだぞ、ファーティマ。余計な真似はするな、と」 もはや怒りの頂点を通り越したのか、冷たく凍るような視線でライダーは主の顔を模したその首を睥睨する。 「英霊同士の闘いに――――――茶々入れてんじゃねぇよ!!」 怒号と共に槍が振り下ろされ、女の首は原型も分からぬほどに砕け散った。 「……あれ?」 「な、え?」 自身を押え込んでいた圧力が消えたことにようやく気づき、みことと夏海をその身を立ち上がらせる。 主たるライダーがその身から降り、『黄金の手綱(ポリュエイドス)』の効力が失われたキマイラは、 その肉体を元の死体細工へと戻し、二度の戦闘にわたって蓄積したダメージの影響に耐え切れずぼろぼろと崩壊していった。 ほどなくして、腸管の拘束がほどけ、解放されたアサシンとキャスターが駆け寄ってくる。 「……ライダー」 「言っておくが、勘違いするなよキャスター」 ライダーは憮然とした面持ちで言い放つと、右手に携えた槍を背負った。 くい、指を手前に曲げると、展開された『屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)』が瞬時に野球ボール程の大きさに圧縮され、その掌中へと飛び込んだ。 「あんな形でマスターに水を差されて終わらせられるなど我慢ならなかったというだけだ。 貴様とはいずれ、真っ向から決着を付けてやる。……アサシン、お前もだ。忘れるなよ」 ライダーはそう言い残し、瞬く間にその場から消え去っていった。 「……終わったの?」 「ええ、一応は」 夏海の問い掛けにアサシンが頷く。 「でも、勿論すべてが終わったというわけではないわ。 聖杯戦争が続けばこういう死地に何度も遭遇することになる」 「……」 夏海は表情を曇らせる。……ふと、そこで、みことが蹲って何かを凝視しているのが見えた。 「夏海、これ……」 そこにはライダーが騎乗していたキマイラ、その残骸とでもいうべきものが残されていた。 獅子の頭に、ヤギの胴体……どうやらあの怪物は見た目通り複数の動物の死体を掛け合わされて作れたものらしかった。 「このライオンの頭、これってひょっとして……」 「……あ」 みことの言葉で夏海も思い出す。確か今朝のニュースで市内の動物円で飼育されていたライオンが急死したと伝えられていた。 そういわればその面影には見覚えがある。となればこの死体は…… 「ううん、これに限ったことじゃない。他の動物も、それにあの人達だって……!」 「ええ、きっと自分で“用意”した死体なんでしょうね……」 みことの言葉に、夏海はぐっと拳を握り締める。 「この街を守るためにも、勝たなきゃならないよね……アサシン」 「そうね、妾身もそう思うわ」 アサシンは懐から小瓶を取り出し、その中身をキマイラの亡骸に降りかける。 「できればちゃんと弔ってあげたいところだけど……」 すると、その亡骸はみるみる内に水となり、地面に吸い込まれるように溶けこんでいった。 「これだけあると、そうもいかないしね。……それでもせめて土に帰すくらいはしてあげましょう」 同様の処置をそこら中に散らばった死体や肉片にも施し、数分と経たずに自然公園は普段通りの平穏な姿を取り戻した。 ……だが、それはあくまで表向きの話にすぎない。 真の平穏を取り戻すためには、この聖杯戦争を終われせることしかないのだから――― X X X X X 憮然とした面持ちで、ライダーは根城たるホテルの一室に帰還する。 「おかえりなさいライダー。早かったわね」 そこに待っていた主は、ライダーの予想に反して実に安穏たる態度で出迎えた。 先ほど公園で行われた闘い。その最後に行ったライダーの行動は謀反と言ってもおかしくないものだった。 それなのに何ら糾弾する素振りもないとは…… 「……怒ってないのか?」 「あら、何故私が怒らなければいけないの?」 「オレはお前の邪魔をしたんだが――」 「ああ、それならいいわ」 顔をしかめるライダーをよそに、ファーティマはにこやかに微笑んで応じる。 「令呪を一画消費してしまったのは惜しかったけど、収穫はあったわ。 あなた、思ったより強いじゃない」 「……あ?」 その言葉に、ライダーはぽかんと口を開ける。 「最初にペガサスがないと言われたときはどうしようかと思ったけど、『黄金の手綱(ポリュエイドス)』の効果は予想以上に優秀だったし、 特に、爆発直前で死体を一瞬でバラバラにされたのには驚いたわ。あなた、生身でも意外と強いのね。 これなら今後の戦略を上方修正できるわ」 「……」 賞賛されてるのか侮辱されてるのかすらよく分からない発言に、ライダーは返す言葉もなかった。 一体、この女はどういう価値観で動いているのか……まるで理解できなかった。 「……そういえば」 そこで、ライダーはふと思いだした。 「お前あの時、相手のマスターの恋人の怪我を治すとか言ってたが、そんなことが可能なのか?」 「ええ、もちろん可能よ。完全に修復して元通りに歩いたり喋ったり出来るようにね」 ただし、とファーティマは指を一本立てて補足する。 「それには、彼女の恋人に一度“死体”になってもらう必要があるけど…ね」 ウインクしながらそう言い放つファーティマを見て、ライダーはいよいよ頭を抱えた。 X X X X X その日の夜。 みことは“彼”の病室を見舞いに訪れていた。 「……今日は本当に色々なことがありましたわ」 みことが言葉をかけてもいつも通り反応はない。 「聞いてください、赤城くんの身体を治せるかもしれない。その方法が見つかったんですの。 ……いえ、“かもしれない”ではありません。必ず元のあなたに戻してみせますわ」 横たわる“彼”の手を握りしめ、みことは毅然たる態度で告げる。 今はこうしていても自分の手を握り返してくるような反応は見られない。 だがこの闘い、聖杯戦争に勝ち抜いて聖杯を手にすることが出来ればきっと―― 「……ぁ…………が………」 握った手がにわかに痙攣を始めた。 「……ぐあ……が………あ……がががが……!!」 「あ、赤城くん……?」 まただ……また、拒絶反応による発作症状を起こしたのだ。 「ま、待っててください。今お医者様を呼びますから……!」 「ぁ……ガッ……ガ……ぁガ……ガガガガガ…!!」 ベッドに拘束されたま苦痛に身を捩り、悶絶する“彼”。 そのあまりの痛ましい様子に、みことは思わず目を背ける。 聖杯の奇跡、それを齎す戦いの参加権を得た所で 今の自分には何もしてやれない。その事実が歯がゆく、そして無力感となって突き刺さる。 「ガ……ガガガガガ…!! が……! ……ぁ―――」 そのとき、ふいに“彼”の呻き声が止んだ。 「……え?」 みことは“彼”の姿を瞠目する。 こんなにすぐに発作が収まったことは今までになかった。 いや、収まったどころではない。身悶えもなく、赤子のように安らかに眠るその表情は平時ですら見られないものだ。 まるで、“彼”の肉体を苛む苦痛が一片も残さず消えてしまったかのような―― そこで、みことは気がついた。 耳を澄ませば微かに聞こえる、病室の中にそっと響き渡るその音色に。 それは“竪琴”の音だった。 X X X X X 病院の屋上の縁に腰掛け、猊下に街の夜景を一望しながらキャスターは竪琴を奏でていた。 その調べはかつて地獄で責めを受ける亡者の苦痛すら癒したもの。 この病院で床に伏せる患者たちを安らげるには充分に余りあるだろう。 弦を指でなぞりながら、キャスターは今日の戦いを回想する。 セイバー、ライダー、アサシン。この日彼が出会ったサーヴァントはいずれも劣らぬ英傑ぞろいだった。 自分が単なる一介の吟遊詩人としてこの現世に招かれていたのなら、喜んで彼らを題材に叙事詩を謳ったことだろう。 だが、今の自分にとってあの英霊たちは敵手。たった一つの聖杯を賭けて戦わねばならぬ相手なのだ。 「Ευρυδίκη(エウリュディケ)……」 最愛の女性の名を口にし、彼は覚悟を決める。 「“Ευρυδίκη, Ευρυδίκη(エウリュディケ エウリュディケ)! Ακριβά αποχρώσεις! Ω, πόσο μακριά είσαι;(亡き魂よ どこにいる)”」 一度ならず二度までも失った妻を想い、彼は歌った。 「“Ο άντρας σου, βυθίστηκαν βαθιά στο πένθος(汝の夫は 悲哀にくれ) και βασανίστηκε από τον πόνο,(苦痛を抱いて沈みゆく)”」 だがエウリュディケ。今度こそ、今度こそ君をこの手に取り戻してみせる。 もう決して振り返りはしない。 「“πάντα σας καλεί,(呼び続けよう 絶えることなく君の名を) απαιτεί ότι οι θεοί σας και πάλι.(神々が再び 君を返すその日まで)”」 負けるわけにはいかない。 逃すわけにはいかない。この好奇をどれほど待ち焦がれたことか。 勝つ。キャスターはそう決意を新たにする。 この戦争に勝利し、必ずや聖杯を手に入れて見せる。 私はそのために此処にいるのだ。 自分の愛する“彼女”を、 「“Οι άνεμοι, OH, απαγάγουν τις καταγγελίες του(たとえ風にその声を消されても)……”」 ――――そして、自分の主が愛する“彼”を、死の淵から救い出すために。 ───── Fake/firstwar fragments 『Der Tod und das Mädchen』 ~END~ ─────
https://w.atwiki.jp/hamiyalog/pages/78.html
TOPIC 子犬たちの冒険譚 第三話「ロストメモリー」 GM高梨千里 21 01 時間になりましたので始めて行きたいと思います よろしくお願いします! マテル 21 01 よろしくお願いします ウィル 21 01 よろしくお願いしますー ルセリナ 21 01 よろしくおねがいします フィア 21 02 よろしくお願いします。 ノクス 21 03 よろしくおねがいします GM高梨千里 21 05 では、現在時刻10 30。全員が集合できました。 商業区が動き出すまであと30分あります ウィル 21 06 もう集まったでいいですか? GM高梨千里 21 06 はい、構いません。 では、RPをお願いします ウィル 21 07 「……誰だそいつは」 (見慣れない少年を指差す) フィア 21 07 「……こっちで聴き込めた情報はこんな感じだ。あと、5区の警備についてる奴の偵察をしてきたが大したことはなさそうだったな」 1回めの聞きこみで聞けた情報と、2回めの聞きこみで聞いたフードのドレイクっぽい美人について報告。 ウィル 21 07 別名神官 マテル 21 07 *無言でニコニコしてるよ フィア 21 08 「ん? ああ、俺のコーディネート。いい感じだろ?」 ウィルに応えて。 ルセリナ 21 08 では情報は共有されたということで( ウィル 21 08 「……?」? (´・ω・`) GM高梨千里 21 08 はい、共有されました ルセリナ 21 09 「ええと、フィアさんのコーディネートということは、マテルさん、ですの?」 きょとん マテル 21 09 「正解!」 (精一杯男の子っぽい声 フィア 21 10 「なんだ、ルセリナも気づいてなかったのか? 我ながら、俺の変装の腕もなかなかだな」 と、自画自賛しておこう マテル 21 10 「フィアースに見立ててもらったんだー」(精一杯(ry ウィル 21 10 「……分からなかった」 (´・ω・`) ルセリナ 21 10 「まあ、マテルさん素敵です。お二人ともいつの間に準備なさってましたの?」 マテル 21 11 m9 (とウィルを指さしてげらげら フィア 21 11 「マテルとルセリナが狙いって話だったからな。5区の偵察に行く前にパパッとね」 そういや着替えはどこから出したんだろうな、俺 GM高梨千里 21 11 予備の服じゃないですかね(しれっ マテル 21 12 「路地裏に連れ込まれてごそごそね」(誠一(ry ウィル 21 12 (指差してきたのでその指を掴んで軽く捻る) ルセリナ 21 12 (ポキッ マテル 21 12 「」 ウィル 21 12 そこまではしないよ!? マテル 21 12 「げらげらげら……痛っ!?、なにすんのよ!」 ルセリナ 21 13 「そういえば隠蔽用のものは用意しましたが、変装という発想はありませんでした。落ち着いたら、揃えましょう。きっと楽しいです」 主に私が ウィル 21 14 「人に指を指してはいけないと習わんかったか?」 フィア 21 14 「そうだな、買い出しに行く時にそれも揃えていくか。……で、リリエの家の床下に怪しい扉があったって?」 ぼちぼち本題にはいろう ウィル 21 15 「ああ、ついでにこんなのも拾った」 (指輪見せます) ルセリナ 21 15 「ええ、リリエさんに頼んで秘密にしてはいただきました。普段通りなら帰りも遅いようですので、日中の確認は可能かと」 フィア 21 17 「持って帰ってきたんか。……こりゃまた、あからさまに怪しい物を」と言って、少し考えこむかな ウィル 21 17 「売れば金になる」 (* ̄ー ̄)b フィア 21 17 「なあ、リリエの母親…… アウラは、どの程度までメティシエに染まってると思う?」 マテル 21 17 「売るな」 「奇跡には完全に縋ってるとは思う、それこそ信仰しているという意味では完全に、でも腐敗しきっているという意味ではまだ、かも?」 ウィル 21 19 「……オレはギリギリの戻れるラインだと思う。確かまだ、声は聞いてなかった筈だ」 ルセリナ 21 20 「……そういえば、聞いていないのでしたね。まだ、間に合うのでしょうか」 ウィル 21 22 「短期決戦だな……剣がダメになるのは後、二日だ」 フィア 21 23 「アウラがメティシエにすがる理由は、リリエのためなのか、それとも別の理由があるのか…… あくまでリリエのためを思ってるのなら、あるいは……?」ブツブツとつぶやいてる ルセリナ 21 23 現時点だと互いに利用しあってる、というところでしょうか ウィル 21 24 「まあ、決めつけるにはまだ材料が少ない……最悪のパターンも想定しておくか」 フィア 21 24 ところで今話してるのって冒険者の店だよな? GM高梨千里 21 25 合流地点が冒険者の店ならばそうですが…… ルセリナ 21 26 まあこんな話ができる場所は限られますし、当然冒険者の店だと思っておりました フィア 21 26 他に安心して話せる場所は思い当たらないし、最初に確認してなかったけど店で話してたということにしよう ノクスはまだ寝てる時間かね ウィル 21 26 今10時だし六時間睡眠だと起きるの13時やね ルセリナ 21 27 3h睡眠なら、昼襲しに参りますが フィア 21 27 GM、ノクスのペナルティが回復するのって13時で合ってますかね GM高梨千里 21 27 前回起きていたのが7 00までなので、そうですね ノクス 21 28 3時間睡眠で問題ないよ。 ああ、GMがダメだというならそれで。 GM高梨千里 21 28 睡眠不足のペナルティがつくのが構わないのであれば、3hでも大丈夫ですよ というかノクスが7 00より前に起きていること前提で話してるのですが フィア 21 30 俺らが起きる7 00までノクスに夜警お願いしてて、それからすぐ睡眠取った感じだからやっぱり13時だな。 GM高梨千里 21 30 任務を受注した日に7 00より後に起床したということであれば、3h睡眠でもペナルティはありません ルセリナ 21 30 ではまだ休んでいただきましょうか ノクス 21 31 なるほど、既にペナルティが入っているという采配なんですね ウィル 21 31 ゆっくり寝といでー GM高梨千里 21 31 はい、ノクスはたぶんそんなにゆっくり起きてこないかなと ノクス 21 31 まぁそうですね (笑) フィア 21 31 1話か2話あたりで早起きして鍛錬してるって言ってたし、7時前に起きてたんじゃないかな GM高梨千里 21 32 どうしますか? フィア 21 32 それじゃ、市場開くまで時間つぶして買い物、その後13時まで時間つぶしてリリエ宅に突撃だな ルセリナ 21 32 そういたしましょう フィア 21 32 買い物ってどれくらい時間かかりますかね? ウィル 21 32 一時間? GM高梨千里 21 33 することにもよりますが、最低30分は見ていただけると ノクス 21 33 すまんな。何だったら時間が余れば先に図書館に行って来てくれても。 GM高梨千里 21 33 それに加えて、移動時間が往復10分ほどです もちろん、商業区を見て回ったりするのであればそれなりに時間がかかりますが…… ノクス 21 34 聞き込みもしてもいいけどさ程益はなさそうだね。 GM高梨千里 21 34 そうですね、利益はほぼ無いと言っておきましょう ウィル 21 34 うむ ノクス 21 34 GMはいわなくてもいいところだよ (笑) フィア 21 35 まあ、買い物だけでいいか。現時点で調査したいことは概ね調べ終わってるし、買い物終わったらノクスが起きるまで待機かな? GM高梨千里 21 35 いや、無駄なことに時間をかけるのは良くないと思いますので ウィル 21 35 んじゃ、みんな (-ノクさん)でお買い物? フィア 21 35 そうね、まずは買い物に行こう ノクス 21 35 うん、さくっと買い物して、時間が余るようならそこで判断で いってらw ルセリナ 21 35 参りましょうー ウィル 21 35 おー! GM高梨千里 21 36 では、情報共有と移動で30分経ったということで マテル 21 36 おー GM高梨千里 21 36 11 00ちょうど。5人は商業区に到着しました フィア 21 36 「皆、領収書わすれんなよー。ある程度は店主が出してくれるらしいからな」 ノクス 21 37 先わたしでいいらしいよ (笑) そもそもそうじゃないと皆1万も持ってないw マテル 21 37 「大丈夫、先に貰ってるわ」 (ガメルの詰まった袋 GM高梨千里 21 37 そうですね、ボブは「なくすなよ」とかいいつつ1万渡しています ウィル 21 37 「では、俺は甘味探してくる」 (買い物はお前たちに任せたの訳) フィア 21 38 で、買い物の内容としては、太陽の魔符+1*8、月光の魔符+1*8、赤青目*4、聖水*3 指輪も買うんだっけ? ルセリナ 21 38 「ああ、そういえばリリエさんへお土産も用意しないといけませんね。ウィルさん、お願いいたします」 にこにこ マテル 21 38 「あっ、ずるい!」 時間がかかるようだったら手分けして買ったことに……? ウィル 21 39 「……分かった」 GM高梨千里 21 39 では、ウィリアムは別行動ということで ウィル 21 39 1300ほどあるしなんか他に必要なのあるかしら? GM高梨千里 21 39 すか? ノクス 21 39 陽光の魔符、ね (笑) ルセリナ 21 40 まもち・先制用に一つずつ用意しましょうか? ノクス 21 40 指輪はウィルやフィアなど知性が必要な人とかが足りそうにないなら。もしくは先制用など ウィル 21 40 無さげなら、わし適当に買ってくる 指輪は3ある フィア 21 40 「あ、コラ単独行動はやめといたほうが良いだろ」ウィルを引き止めるけど、誰か付いて行くかね ノクス 21 41 いいや、PT品として2:2で買っておこう。 ルセリナ 21 41 ああ、アレックスさんが割れる指輪を持っておりませんね 余裕があるようならば、欲しいところです マテル 21 41 知力3つある ついていっていいなら付いてく ウィル 21 41 アレックスには一つ渡してる フィア 21 41 フィアースは知力と敏捷2個ずつ持ってるな ルセリナ 21 41 では手元にメモしておきます ノクス 21 42 *3ずつで計算した後があった (笑) GM高梨千里 21 42 ふむ、ではメガネカップルが別行動、ですか? ノクス 21 42 買い物の内訳: 陽光の魔符+1 *8、 月光の魔符+1 *8、 知性の指輪 *3、 俊足の指輪 *3、 対の青赤目 *4。 計:12440G。足出はPT金から補填のこと。 これに聖水*3の900G加算でいいんじゃないかな フィア 21 43 そうだな。それじゃ10000Gを使いきって、PT金から3340G出す、と ノクス 21 43 ではそう処理しておきます 陽光と月光はノクスとルセリナが2枚ずつ、他は各自1枚ずつで所持の筈ですね 指輪はPT品に全て放り込んでおきます。手もちが不足したら各自申告のこと 青赤目は暫定PT品で、合流後分配しましょ。OK? マテル 21 45 大丈夫です ウィル 21 45 OK 後、消魔の守護石の三点と二点を個人的に買いたい ノクス 21 45 それはどうぞw とりあえず各自魔符を即時更新しましょうw 足し忘れないようにw ウィル 21 46 とりあえず、誰に渡すかは考えとく フィア 21 46 「すまん誰かウィルに着いててやってくれ…… 俺はもうちょい買いたいものがある」 主に変装用の衣服とか。 ウィル 21 47 そして、大判焼きでも買っとこ マテル 21 47 「じゃあ付いてく」 フィアースがどんどん怪しい道に GM高梨千里 21 47 そうですねえ……では、そんなことを話している5人に、聞き覚えのある声が聞こえます。 ルセリナ 21 48 さすがに商業区では危ないこともないでしょうし、フィアさんと一緒に衣服を見たいです ってあら? GM高梨千里 21 48 【ヒカル】「あーっ、ウィルぽんテルっちリナぷーフィアたんアレぴょん! お久~。ノクさんはどしたの? ケンカ?」 フィア 21 48 この街で聞き覚えがある声…… っておいw マテル 21 48 天敵一号が ウィル 21 48 ゲェ ルセリナ 21 49 マテルさんは変装中ですけれど さすがに見破れましたか( マテル 21 49 「あ、普通にバレてるし」 (男装中 フィア 21 49 いやでもこれ天の助けじゃないか ウィル 21 49 「げ……」 (露骨に嫌そうな顔) GM高梨千里 21 49 【ヒカル】「そりゃー、テルっちみたいな綺麗な青い髪の子あんまみないし。背格好とか一緒じゃん」 マテル 21 50 「ん、ありがとね」 フィア 21 50 「ヒカルか? お前何でこんなとこに……いやでも今すげえお前に会いたかったとこだ助かる」 GM高梨千里 21 50 【ヒカル】「それに、お友達の変装くらい見破れなきゃだめっしょー?」 マテル 21 50 「ソウネ」 ウィルとか見て GM高梨千里 21 50 【ヒカル】「それはこっちのセリフだよ。こんなとこまでどーしたの? ボク? 商売しにきたに決まってるじゃーん。ま、相手は1区の子どもたちだけどねー。ほら、ボク自分で仕入れしてるから、他のとこより安くて済むんだ」 【ヒカル】「安いよ? パンの詰め合わせ1G」 ウィル 21 52 「元取れるのかそれ」 GM高梨千里 21 52 【ヒカル】「ボク他でいっぱい儲けてるもーん」 【ヒカル】「じぜんじぎょーってやつだよ」 フィア 21 52 「まあ、商売だよな。……で、今まさにお前の商売ルートが壊滅せんかという危機なんだ。ちょっと頼まれてほしいことがあるんだが宿まで来てくれんか」 具体的には、ルキスラへの使いをお願いしたい。実力もあるし空飛べるし信用もあるしで申し分ない。 まあ、事情を話すのは宿に来てもらってからにするけど。 ルセリナ 21 53 さすがにこの場ではいたしませんね ウィル 21 53 連行じゃー GM高梨千里 21 53 【ヒカル】「んん? 別にいーけど……それより、何か買ってかない? 安くするよー?」 フィア 21 54 「何売ってんの? 服飾品か食料品とかあるとありがたいんだけど」 マテル 21 54 「何が入ってんの?」 GM高梨千里 21 54 【ヒカル】「割と何でもー。日用品とー、ポーション系とー、指輪腕輪?」 【ヒカル】「魔晶石なんかも売ってるよー」 ノクス 21 55 つまり先ほどの買い物を少し安価でできるよというイベントなのかな? ウィル 21 55 ほう! GM高梨千里 21 55 そうですね、5%引きで。ゴネればもうすこし下げてくれるかもです フィア 21 55 安価じゃないとしても、頼みごとするんだし買えるものはヒカルから買っておくか ノクス 21 56 ごねる気はないな。安価は好意ならありがたく頂けばいいんじゃなかろうか フィア 21 56 さっきのリスト、全部ヒカルが扱ってるんですか? GM高梨千里 21 56 青赤目以外は扱っているようですね。 ノクス 21 56 ってことはーっと GM高梨千里 21 56 青赤目も、知り合いの商人に口利きをしてくれるので、5%offです ノクス 21 56 おっと。 なら GM高梨千里 21 56 ただしこちらはゴネられないですけど ウィル 21 57 ……5%offか ルセリナ 21 57 ごねずに、5%引きで 買い揃えましょうw GM高梨千里 21 57 【ヒカル】「まいどー♪」 ノクス 21 57 #13340*95/100 で、あっとるかな ダイス 21 57 ノクス - 13340*95/100 = 12673 GM高梨千里 21 57 はい、それで大丈夫ですね フィア 21 57 ゴネずにありがたく5%offで購入しよう。あと個人的に化粧品セット+着替えセットで150G分買い物しておく ノクス 21 57 じゃあこれでPT金処理しておきます。 GM高梨千里 21 58 よろしくお願いします ノクス 21 58 出来ればもーすこし早くいってほしかった!w 既に計算終ってたので (笑) ウィル 21 58 守護石も5%引きる GM高梨千里 21 58 すみません…… ウィル 21 58 ? GM高梨千里 21 58 そうですね、ここで買うのであれば引いてくれますよ ノクス 21 58 いえいえ (笑) GM高梨千里 21 58 個人的な買い物も、ここで買ってくれるなら最低価格の5%offでいいようです ルセリナ 21 59 急にはあまり出てきませんね…… フィア 22 00 じゃあ、その5%分いいものを買ったということで。計算めんどいw ウィル 22 00 ……正規値段でいいや GM高梨千里 22 00 はい、ではそのように ルセリナ 22 00 私と夜色さんの分の変装用のお洋服を揃えておきましょう 私の好みで GM高梨千里 22 00 ということで、ヒカルは昼の市で商売をした後であれば、宿に向かってくれるようです マテル 22 00 あ、雪結晶の髪飾り個人的に購入したいです GM高梨千里 22 01 はい、どうぞ フィア 22 01 昼の市が終わるのって何時くらいだっけ? ノクス 22 01 俺の預かり知らないところでちゃくちゃくと俺のものが整えられていくこの感じ (笑) フィア 22 02 敏捷指輪はウィリアムに2個、俺が1個で割り振っておこう。知力指輪はアレックス2個、ウィリアム1個かな ノクス 22 02 いや、さっきも言ったけど、基本手持ちがあるだろうからPT品扱いで 少なくなったら言って。 ウィル 22 03 おお指輪増えたー 感謝ー ノクス 22 03 PT一括にいくつかあると、余剰が何個か分かって便利なんだよ GM高梨千里 22 03 ヒカルは店を昼の暑くなる頃に閉めるつもりのようです。2 00には向かうとのことですが、どうしますか? ノクス 22 03 買い物時にいちいち聞かなくて済む。 フィア 22 03 じゃあウィルが今敏捷持ってないから2個持っておいてくれ。アレックスも指輪持ってないので2個。PT品としては1個ずつだな ウィル 22 03 はーい ノクス 22 04 了解。 PT品は減らしておきました ルセリナ 22 04 アレックスさんの手元には2つあるで、よろしいんですか?>知性 GM高梨千里 22 04 ありがとうございます!>PT品管理 ウィル 22 04 指輪一つ渡したのに反映されてない悲しみ ルセリナ 22 05 ああ、合計3でよかったんですね 手元はそれです フィア 22 05 前回からキャラシート更新されてないのかな? じゃあアレックスは3個持ちですね ノクス 22 05 こんだけいないと流石に管理困るねぇ。 ルセリナ 22 05 更新されておりませんね フィア 22 06 ちょっと時間が遅くなるのは気になるけど、儀式出来る人が居なくなってる可能性を考えるとルキスラへの連絡は必須だと思うし、2時まで行動開始遅らせて良いかね ノクス 22 07 じゃあそれまでに図書館を終わらせておいたら? ウィル 22 07 はーい フィア 22 07 そうだな…… 時間余るっちゃ余るし、行っておくか。 ノクス 22 08 皆で行動するなら店に使い魔おいていってくれ。 フィア 22 08 またノクスを置いていくことになっちまうのが申し訳ないが、まあ前衛2人居ればそれなりに対処はできる ノクス 22 08 そうすれば状況が把握できる。 フィア 22 08 了解。 ノクス 22 09 もしヒカルが早めに来ても対応できるだろう。 フィア 22 09 ではヒカルから一通り買い物を終えて、宿に戻った後4区に向かいます。 今何時ぐらいになりますかね? >GM GM高梨千里 22 10 そうですね、 ヒカルにあって買い物をして、その合間に話をして、ということですので、買い物終了で11 30。 更に移動として……11 45とします フィア 22 11 あ、宿に戻ってからルセリナの仮装をするので+10分でお願いします GM高梨千里 22 12 はい、では11 55……いえ、宿に行くとのことですので、ちょうど12 00としましょう 地図を見てもらえばわかるのですが、やや遠回りになるので ルセリナ 22 13 戻るなら、このタイミングで使い魔を置いていきましょうか ノクス 22 13 お願いします。 フィア 22 13 了解。それじゃ全員でまとまって行動するけど、4区に入って周りから視線を感じたりしないですかね ウィル 22 13 そして図書館へ移動か GM高梨千里 22 13 はい、では宿に使い魔をおいて、4区に到着しました。現在時刻12 00。 周りからの視線……そうですね、4区に出入りしている何人かから、ルセリナやマテルに視線が向けられていることがわかります マテル 22 15 やっぱり普通にバレとる ルセリナ 22 15 むう…… フィア 22 15 むう、付け焼き刃の変装ではダメだったか ウィル 22 15 oh GM高梨千里 22 15 髪色などで覚えられているようですね ウィル 22 15 さりげなくマテルへの視線を遮るように立ってよう フィア 22 15 2d+5+3-4 そういえばルセリナの変装判定 ダイス 22 15 フィア - 2d+5+3-4 = [6,5]+5+3-4 = 15 ルセリナ 22 15 髪色も変えなければなりませんか フィア 22 16 この出目ならごまかせないかなw マテル 22 16 「……ありがと」 ウィル 22 16 (知らんぷり) GM高梨千里 22 17 どうやら、髪と瞳の色、装備、回りにいるメンバーの情報が出回っているようです。 ウィル 22 17 (´・ω・`)……全員変装タイム? マテル 22 17 女装? ウィル 22 17 やだ ルセリナ 22 17 私当然のように異性のものを手配したつもりでしたけれど マテル 22 17 でも装備は流石に ルセリナ 22 17 染め粉も必要ですか GM高梨千里 22 18 しかし、おそらく警戒していてば町中で襲われるような事にはならないと考えてください。 フィア 22 18 「……やっぱそう簡単にゃ誤魔化せないか。襲撃は3日目、ってのを信じるとして、さっさと用事を済ませておこうぜ」 小声で全員に話しておく。 GM高梨千里 22 18 あなた方にとっては十把一絡げの有象無象ばかりですので ウィル 22 19 怪しい奴はスパークでイチコロよ マテル 22 19 ルセリナさんと二人っきりで来てたら本当にヤバかった フィア 22 19 街の権力者が敵だから、騒ぎ起こすのはNGな ルセリナ 22 19 本当に…… GM高梨千里 22 19 まあルセリナに蹴散らされる可能性は無きにしもあらずではありますが ルセリナ 22 19 私そこまで血の気は多くありませんよ( マテル 22 20 私達か弱い乙女ですものね() フィア 22 20 ノーコメントで。 で、図書館の様子はどんなもんでしょう? GM高梨千里 22 20 至って普通の図書館です。ルキスラにあるものよりはずっと小さいですが、ここなら大体の情報は、時間をかければ全て得られるでしょう ウィル 22 21 ふむ フィア 22 21 ……調べたいことがある人ー? GM高梨千里 22 21 もし必要な情報が固定されているならば、時間をさほどかけずに調べられます マテル 22 22 ここの歴史? ウィル 22 22 この街の由来とか? フィア 22 22 ああ、じゃあそのへんと工業区で何作ってたかとか調べておくか ・この街の成り立ち、歴史 ・工業区で作っているもの この2点について調べます。判定は必要ですか? GM高梨千里 22 23 ふむ。では、目的の書籍を探せたか、探索判定をお願いします。 ウィル 22 23 後は、街の古い地図 (どこかに使われてない道あるかもしれんから ルセリナ 22 23 どちらかといえば文献判定では? GM高梨千里 22 24 文献判定は本を読む時だと思ってたのですが、違うんですかね ルセリナ 22 24 必要な文献を探し出せる、も入っていますよ フィア 22 24 ああ、そうね ・街の地下の地図 ルセリナ 22 24 改1P118 フィア 22 24 これも探せたら探そう ノクス 22 24 その通りです。どちらかというと探し出すがメインですね。<文系判定 GM高梨千里 22 24 あ、ありました。かける時間一緒なんですね ノクス 22 24 文献 GM高梨千里 22 24 はい、では文献判定でお願いします ルセリナ 22 25 アレックスさんに探していただきましょう フィア 22 25 2d 文献平目だ! ダイス 22 25 フィア - 2d = [3,1] = 4 フィア 22 25 頭脳労働はむーりぃ…… ルセリナ 22 25 2d+6+5 アレックスさんセージ知力 ダイス 22 25 ルセリナ - 2d+6+5 = [3,6]+6+5 = 20 ウィル 22 25 ウィルもいくよー ルセリナ 22 25 2d6 ついでに私も平目で振っておきます ダイス 22 25 ルセリナ - 2d6 = [1,3] = 4 マテル 22 25 2d+9 私も ダイス 22 25 マテル - 2d+9 = [2,1]+9 = 12 ウィル 22 25 2d+3+4 文献 ダイス 22 25 ウィル - 2d+3+4 = [6,6] (6ゾロ)+3+4 = 19 マテル 22 25 この出目 ウィル 22 25 どや フィア 22 26 気合入ってんな…… マテル 22 26 (頬を伸ばす ウィル 22 26 ひひゃい (いたい マテル 22 27 (手を離す GM高梨千里 22 27 はい、では、まずここの歴史について、必要な物をざっくりと貼り出します ウィル 22 27 はーい GM高梨千里 22 28 ・この町は元々、レーゼルドーン大陸から逃げてきた移民の一時シェルターのようなものが始まりであること ・それを先導してきたのは、とある魔動機技師ととあるティダン神官であること ・基本的に守りの剣はその魔動機技師と、代々のティダン司祭が管理していること 以上です 次に工業区に関して。 ・工業区は、主に鉱石細工や牙細工など富裕層向けのものを作る地区と、生活用品を作る地区に分かれていたようだ。 ・現在、事件のために活動を自粛しており、稼働している場所は無い。 ・なお、霧の出ていた場所は、生活用品を作っていた地区のようだ。 以上です。 最後に、街の地下に関して。 町に地下が作られたという記録は見つかりませんでした。 以上です。 マテル 22 34 ふむ GM高梨千里 22 34 これを、達成値5以上の方が知ることができました。 フィア 22 35 成る程。元々あった地下道を流用した、とかではないなら、そんなに地下は複雑ではなさそうかな? 得られた情報は以上? GM高梨千里 22 36 はい、以上ですね。あとは今回の事件に関係ないものでした。 ウィル 22 36 ふむ あ、そうだ 青薔薇エキス精製してるみたいだから、原料がどこで取れるかとか調べられますか? GM高梨千里 22 37 では、もう一度文献判定をどうぞ。 達成値は13です。 ウィル 22 37 2d+3+4 ウィル! ダイス 22 37 ウィル - 2d+3+4 = [2,6]+3+4 = 15 ルセリナ 22 37 2d6+6+5 アレックスさん ダイス 22 37 ルセリナ - 2d6+6+5 = [6,4]+6+5 = 21 ウィル 22 37 よし フィア 22 37 2d 平目 GM高梨千里 22 37 ふむ、では以下の様なことがわかりました。 ダイス 22 37 フィア - 2d = [6,3] = 9 ルセリナ 22 38 2d6 ついで ダイス 22 38 ルセリナ - 2d6 = [6,4] = 10 フィア 22 38 「……もう、俺は、駄目だ……」(知恵熱で湯気を噴きつつ ウィル 22 38 「情けないな、セージ取れセージ」 フィア 22 41 「嫌だよ、これなら罠の掛かった宝箱開けてるほうがまだマシだ……」 GM高梨千里 22 42 では、青薔薇のエキスについての情報です。 ・青薔薇のエキスは、フェンディル王国の向こうにある、ジャーベルウォーキーの森のなかに咲くという、魔法の植物である。 ・その花びらはうす青く輝いている。なお、青いバラはこの世には存在しない。 ・神紀文明時代、妖精神アステリアが愛した薔薇であるという伝説が残っており、その芳香には強い魅了の効果がある。 ・なお、その正体にしっかりとした論はなく、現在も主にアステリア神殿で研究がなされているようだ。 以上です ウィル 22 43 ふむ……なんか怪しいのう フィア 22 44 「なあ、まだなんか調べることあんのかー? やること終わったらさっさと戻ろうぜ」 机の上に突っ伏してダレてる 特に思いつかないようならもう宿屋戻ってヒカルを待ちたいんだが、問題ないかな ウィル 22 46 「もう無いな、帰るか?」 「しかし、お前がそんなに調べるのが苦手だったとはな」 (じとー) フィア 22 49 「頭使うの苦手なんだよ…… 体動かしてるほうがよっぽど楽だ」 ウィル 22 50 「脳筋め……」 フィア 22 53 で、宿にカエルで良いかな マテル 22 54 かえろー ウィル 22 54 かえるー お昼ご飯だーアイスー フィア 22 54 ではGM、用心しつつ宿に帰ります。その後はヒカルが来るまで待機かな GM高梨千里 22 55 それでは、宿まで向かったということで……2 00まで時間を飛ばしますが、よろしいですか? 昼食はその間に取ったということで ウィル 22 55 はーい マテル 22 55 アイスはご飯ではない 大丈夫だと思います フィア 22 55 はい。その間にノクスにも情報を共有しよう GM高梨千里 22 56 はい、では1時前に宿へ戻り、起き出してきたノクスと情報交換をして昼食、と言うかたちでしょうか フィア 22 56 そうですね。それでお願いします。 GM高梨千里 22 57 帰宅のところからRPをお願いします ウィル 22 58 「帰ったぞ……店主、アイスは出来ているか?」 GM高梨千里 22 58 【ボブ】「おう! できてるぜ」 マテル 22 58 「ただいまー、……食べれるものかしら」 (男装継続 GM高梨千里 22 58 2d-3 ダイス 22 58 GM高梨千里 - 2d-3 = [5,1]-3 = 3 フィア 22 58 「まてウィリアム、正気か。食えるものが出てくるとは……」 遅かった ノクス 22 59 ノクス「お疲れ。異臭ならしていたようだが」 GM高梨千里 22 59 【ボブ】「ほらよ!」 と出されたのは、白と半透明と黒と紫のマーブル模様のアイスバーらしきものでした。 ルセリナ 22 59 「ただいま戻りました。ゆっくり休めましたか?」 そういえば男装したままですね、私とマテルさん ウィル 22 59 「……なんだこれは」 GM高梨千里 23 00 【ボブ】「なんだって、アイスだぞ」 ウィル 23 00 「嘘つけぇ!こんな色のアイス見たことないわ!?」 フィア 23 00 「その格好、あんまり役に立たんかったな…… いつものカッコに戻しとくか?」 マテルとルセリナに。 ルセリナ 23 00 白はバニラ 透明はレモンやらのシャーベット 紫は葡萄 黒は……黒……? ノクス 23 00 ふむ GM高梨千里 23 00 【ボブ】「アイスって甘くて冷たいやつだろう?」 ウィル 23 00 「ああ」 GM高梨千里 23 01 【ボブ】「だから、生クリームと、砂糖と、果物とを入れて、かき混ぜて、凍らしたんだ」 マテル 23 01 「髪が固まって熱いからできれば戻りたい、」 意外と美味しそうでは ウィル 23 01 「……何かが違う気がする」 GM高梨千里 23 01 【ボブ】「隠し味として魔香草も入れておいたぞ1」 ウィル 23 01 「神官」 マテル 23 01 あかん ノクス 23 02 2d6+10**2 よいしょ。るせりな、まてる ダイス 23 02 ノクス - 2d6+10 = [2,2]+10 = 14 ノクス - 2d6+10 = [5,2]+10 = 17 マテル 23 02 「なによ」 ウィル 23 02 (振り向いたマテルの口に放り込む) ノクス 23 02 あw ルセリナ 23 02 「あまりこのような装いはしませんので、楽しいですよ。夜色さんどうですか、似合いますか?」 とかはしゃいでましょう( マテル 23 02 「」 ルセリナ 23 02 生命抵抗を GM高梨千里 23 02 MPが回復しましたね。 ウィル 23 02 因みにGM マテル 23 02 2d+8 ダイス 23 02 マテル - 2d+8 = [3,6]+8 = 17 マテル 23 02 生きた ウィル 23 03 魔香草は煙吸うものやで 確か GM高梨千里 23 03 知ってますよ ノクス 23 03 「……、……。ああ、ルセリナなのか。すまない、一瞬分からなかった」 GM高梨千里 23 03 ボブさんは使うことがなかったのでしょうね(しれっ ウィル 23 03 そっか (´・ω・`) マテル 23 03 ノクスの目をごまかすだと GM高梨千里 23 03 だがしかし一瞬 ノクス 23 03 看破14だったんで (笑) フィア 23 03 「ノクスの目は誤魔化せたんだがなあ…… やっぱり全員変装しておくべきだったか」 ノクス 23 03 そりゃあ話しかけられれば (笑) ルセリナ 23 04 まあ魔香水は原料に魔香草を使いますし…… GM高梨千里 23 04 ボブは味覚の破壊神ですが一般人ですから(たぶん) ルセリナ 23 04 「うふふ。機会があれば夜色さんも変装いたしましょう。準備は万端ですので、いつでも構いませんよ」 ノクス 23 05 「俺の場合は変装という問題ではない気がするんだが……」 ウィル 23 05 「さて、昼食はどうするか……」 (神官の惨事はスルー) マテル 23 06 「」(へんじがない フィア 23 06 「まあ良いや、特に変装は意味なさそうだし、リリエんち行く前に解いておくとして…… ノクス、午後はリリエの家から街の地下に行くことになった。荒事になるかもしれんから準備頼む」 ノクスに午前中手に入れた情報を共有しとく。 ノクス 23 06 「わかった」共有されました ルセリナ 23 07 「そうですね、ヒカルさんもそろそろいらっしゃる時間ですし、昼食を準備してまいります」 変装したままいくよー ウィル 23 07 こっちの情報も共有するねー ノクス 23 07 はいw フィア 23 07 「マテル、無理に飲み込まなくて良いんだぞ。トイレ行っとくか?」 ボブ料理被害者の会として気持ちは分かる マテル 23 07 もうのみこんでいるようだ ルセリナ 23 08 昼食の料理作成振っていいですか?( GM高梨千里 23 08 はい、ではどうぞ ウィル 23 08 「食べ物を無駄にしないのは一応は神官だということか」 GM高梨千里 23 08 ボブはどうしますか? ほっといたらルンルンで準備始めますが ルセリナ 23 08 さすがに店主を押しのけて、というのも気が進みませんね GM高梨千里 23 09 うまいこと言いくるめてみれば作らないかもしれませんよ ノクス 23 09 好きにしろ (笑) 俺には関係ない。 GM高梨千里 23 09 ですよね マテル 23 09 「っは、川の向こうにお母様が居たわ」 ルセリナ 23 09 私もそのままで フィア 23 09 「ああ店主、お前も知っといたほうが良いだろうからちょっと来てくれ。他言無用だからな」 情報共有のフリして料理を阻害しよう ノクス 23 09 w ウィル 23 09 ナイス人間 ルセリナ 23 09 被害者の発言の重みが…… GM高梨千里 23 09 【ボブ】「ん? 何だ?」どてどてとキッチンから出ていきます ウィル 23 09 さて、ウィルも、作るか ルセリナ 23 09 ではさっくり作成いたします ウィル 23 10 わしもー ルセリナ 23 10 2d6+5+3 昼食作成 マテル 23 10 さて私も ダイス 23 10 ルセリナ - 2d6+5+3 = [5,4]+5+3 = 17 ノクス 23 10 うっはw GM高梨千里 23 10 ふむ、安定のルセリナさん マテル 23 10 2d+1+2 ダイス 23 10 マテル - 2d+1+2 = [1,6]+1+2 = 10 フィア 23 10 ウィルの襟首つかむぞ。お前が行くならボブを止めた意味が無い ウィル 23 10 2d-2 ウィルクッキング ダイス 23 10 ウィル - 2d-2 = [3,4]-2 = 5 GM高梨千里 23 10 やっちゃったー!! ウィル 23 10 (´・ω・`) マテル 23 10 流石にルセリナさんには敵わない ルセリナ 23 10 変装しての楽しい気分が料理の出来に出たようです フィア 23 10 お、俺の発言のほうが早かったので GM高梨千里 23 10 そうですね、無事阻止できたということで ノクス 23 11 (笑) GM高梨千里 23 11 さっきのアイスキャンデーと同じ出来ですからね ノクス 23 11 ちょっと目を瞬いてから小さく笑おう。 フィア 23 11 ともあれ、男連中+ボブで情報共有をした。ルキスラへの連絡はヒカルにお願いするつもりだけど、ダメなら最悪ボブに頼むかもしれん。 ルセリナ 23 11 配膳する際、ウィルさんの前にマテルさんの料理が並ぶようにいたしましょう( ノクス 23 11 「必死だな」>フィアース フィア 23 11 「必死だよ…… まだ舌の上に苦味が残ってんだぞ……」 マテル 23 12 ありがとう……? ノクス 23 12 「そうか。『人族』というものは大変なものだ」くつw ウィル 23 13 「何故か止められた……解せぬ」 フィア 23 13 「ちくしょう、調理無くても食えるからっつって涼しい顔しやがって……」 GM高梨千里 23 14 では、ボブの飯テロ(物理)もなく、平穏に昼食を食べ終えました。 一息ついている頃に、蹄の音が聞こえてきます。 フィア 23 15 「……そうだよな。こういうのが食事ってもんだよな……」 ホロリ。 マテル 23 15 「涙まで……」 ノクス 23 15 「雑多に味を乗せられるのは好かないが、塩胡椒程度なら有ってもいいな。ともあれ――……待ち人が来たようだ」 GM高梨千里 23 15 【ヒカル】「あれー、ここだよね。ここにしか冒険者の店って無いしー」 ウィル 23 16 (食後のデザートを美味しそうにモシャモシャ GM高梨千里 23 16 【ヒカル】「おーい、いるー?」 と店の前で叫んでいるようですね マテル 23 17 「いるわよー」と扉開けて上げよう GM高梨千里 23 17 【ヒカル】「テルっちあんがとー! で、話ってなにー?」 ノクス 23 17 流石に目立つので入って来いと誰か言ってやれw 俺は扉が開いていると近づけないw フィア 23 18 「おお、よく来てくれた。実は、この街でちょいと退っ引きならない事態になっててな……」 ヒカルを迎え入れてから、街の上層部がメティシエに染まってること、蛮族も入り込んでるらしいこと、守りの剣の儀式が行えて無くて、行うアテも無いことを伝えよう。 ルセリナ 23 19 食事はまだか確認して、まだのようなら出しましょう GM高梨千里 23 19 【ヒカル】「ふんふん、つまり、鼻持ちなんないバカーズがバカなことやってて、超マジな感じのピンチってことだね」 ノクス 23 20 「酷い表現だがまぁそう言いうことだな」 お使いを頼むなら手紙をしたためた方がよさそうだ (笑) と判断した (笑) ウィル 23 20 うむw GM高梨千里 23 20 語彙力はグラスランナー語中心なのでこんな感じです フィア 23 21 「だいたいそんな感じだ。で、頼みがあるんだが…… この話をルキスラのリュシアさんに届けて、可能なかぎり早く守りの剣の儀式が出来る人と、事態を鎮圧できる人を派遣してもらえるよう連絡を頼めないか」 GM高梨千里 23 21 【ヒカル】「りょーかい。っても、ルキスラの神官ってけっこうノロマだと思うよ? だいじょぶ?」 【ヒカル】「ま、伝えるだけなら伝えるけど」 ノクス 23 22 「だからこそ早い伝達が必要だろう。俺たちに関していえば、危ないと判断したらその時点で引く。絶対とは言えないが、心配はいらない」 フィア 23 23 「できれば結界が切れる前に来て欲しいけどな…… 俺らが失敗して、この街の現状が伝わらないままになるのが一番まずい。何かあってもリュシアさんに伝わってるなら俺達も安心だからな」 GM高梨千里 23 23 【ヒカル】「りょーかい! とりあえずリュシア姉に、ギシキができる人と強い人をチョッパヤでって言えばいいんだね? わかったー」 フィア 23 24 「すまんな、恩に着る。あと、森にブランクが出てるかもしれんから、できればアマネに乗って飛んでいったほうが良いと思うぜ」 ノクス 23 24 「手紙を書く。それも併せて届けてくれ」 GM高梨千里 23 24 【ヒカル】「フィアたんありがとね。ノクさんも手紙ありがと。渡せばいいの?」 【ヒカル】「んじゃ、アマネ姐にかっ飛ばしてもらうね!」 フィア 23 27 「ああ、頼んだ。気をつけてな」 見送ろうとして、ふとウィルに目をやってみますが GM高梨千里 23 28 手紙を受け取ったヒカルは、ぴょーいと元気よく飛び出していって、くるっと振り向いて袋を投げよこします。 ノクス 23 28 「ああ、頼む」 ウィル 23 28 「……転けるなよ」 (デザートうまうま) ルセリナ 23 28 袋……? GM高梨千里 23 28 【ヒカル】「それ、センベツー!! クズ石ばっかだから使ってー!」 フィア 23 28 「おっ、と。何だ?」袋をキャッチ。 ノクス 23 29 毎回有り難いなぁ (笑) GM高梨千里 23 29 袋の中には、3点魔晶石がおよそ30ほど。合計90点ですね マテル 23 29 ふぁ!? ノクス 23 29 ……は? (笑) ルセリナ 23 29 多いですね ノクス 23 29 お、思ったより多かったんだがw フィア 23 29 現物支給とはいえ、凄いなw ウィル 23 29 !? これが必要なボスって……ボスって……!? GM高梨千里 23 30 【ヒカル】「それ以下の、売らないんだよね! うちに捨てるほどあるし、あげるー! じゃーねー!!」 ペガサスのいななきを残して、ヒカルは飛んでいきました。 フィア 23 30 「お、おう、ありがとうなー!」 くれるというなら有りがたく貰っておこう。手を振って見送るよ。 ルセリナ 23 30 「……ヒカルさんは相変わらずのようですね」 ちょっとあっけに取られつつ、見送りましょう ノクス 23 31 流石にこっちも少し驚いているなw とりあえず、全くMPを使わないって人はいたっけ? ウィル 23 31 人間 フィア 23 31 俺は一応練技で使うぞ ノクス 23 31 いやエンハンがあるね ウィル 23 32 おっと ノクス 23 32 とりあえずじゃあ、多すぎるし暫定均等でいいんじゃないかな (笑) ルセリナ 23 32 私使いません、と打ち込んだところで 神官であることを思い出しました( ノクス 23 32 後衛が使うには微妙な点数のこともあるし (笑) マテル 23 32 ルセリナさんw ルセリナ 23 32 頭割りで5個ずつですね ノクス 23 32 使用して数が偏ってきたらまた融通とかも考慮で そうね フィア 23 32 了解。 ノクス 23 33 忘れず記入のことで>all ウィル 23 33 はーい フィア 23 33 では、一通りやること終わったのでリリエ宅にお邪魔するかね ウィル 23 34 おー! ルセリナ 23 34 はい ノクス 23 34 そうだね。出がけにディスガイズをよろしく ルセリナ 23 34 マテルさんが変装を解いたようですし、私も戻っておきます 残念 ウィル 23 34 ほいさ マテル 23 34 髪の量多くて熱いの…… フィア 23 34 リリエが混乱しそうだから解いとこうぜw ウィル 23 35 2d+6+4+1 ノクさんにディスガイズ ダイス 23 35 ウィル - 2d+6+4+1 = [5,4]+6+4+1 = 20 フィア 23 36 準備も終わったので、全員で1区、リリエの家に移動しますよ GM高梨千里 23 37 では、ヒカルが去っていったのが2 10ごろとして、もろもろを行ってリリエの家に2 30としても構いませんか? ウィル 23 37 ゴーゴー (どたどた フィア 23 37 はい、OKです ノクス 23 37 はい ルセリナ 23 37 はい マテル 23 37 ごー GM高梨千里 23 38 はい、ではそのように。場面を転換します。 では、リリエの家の前です。 ノックをすると、嬉しそうなリリエが出迎えてくれます。 【リリエ】「お兄さんたち、お姉さんたち、いらっしゃい! どうぞ!」 ウィル 23 39 「帰るとき転けなかったガキンチョ?」 フィア 23 39 「よう嬢ちゃん、昨日ぶりだな」 わしわしとリリエの頭を撫でてから、お邪魔しようかね GM高梨千里 23 40 【リリエ】「こけてないよ!」といいつつ、腕をかばうようなしぐさをしています ウィル 23 40 「……見せてみろ」 (ほれっと手を差し出す) GM高梨千里 23 40 【リリエ】「……えへ」 ルセリナ 23 40 にこにこしながら見てます 和みます GM高梨千里 23 40 不自然な位置にある傷ですね。おそらく、また石でも投げられたのでしょうか。 ウィル 23 41 (イラァとしつつ無言で治療) GM高梨千里 23 41 【リリエ】「ありがと、お兄ちゃん!」 ウィル 23 41 「別にいい、入るぞ」 ノクス 23 42 微笑ましい (笑) GM高梨千里 23 42 【リリエ】「うん、どうぞ!」 【リリエ】「……ねえ、その黒いお兄さん、だあれ?」とウィリアムの服をくいくいしておこうかな フィア 23 42 朝ウィルたちと会ってから今までの短い時間でもこれか。アウラは何やってんだが…… ノクス 23 42 黙ってフードをかぶって見せる。 それからとる。 GM高梨千里 23 43 【リリエ】「あ! おっきなあたまのお兄ちゃん!」 ノクス 23 43 頷く。 ウィル 23 43 ww マテル 23 43 間違いではない GM高梨千里 23 43 【リリエ】「なあんだ、良かったあ」 ノクス 23 43 「驚かせたな」 GM高梨千里 23 44 【リリエ】「ううん、平気! お母さん、まだ帰ってないよ!」 ウィリアムたちが出て行ってから、コップが片付いている以外は変わっていませんね。 ノクス 23 44 「そうか。……床の扉を、見せてもらってもいいか」 フィア 23 45 「そうか…… お母さんとも、ちょっとお話したかったな。また今度挨拶に来るよ」 ルセリナ 23 45 手土産はウィルさんが持ってらしたはず GM高梨千里 23 45 【リリエ】「お母さん、今日はいつ帰ってくるのかなあ……床だね! うん、どうぞ!」 ウィル 23 45 ……こけしでいいかな? ルセリナ 23 45 ウィルさん フィア 23 45 改めて探索判定要りますか? >床 ウィル 23 45 アイスサンドで ルセリナ 23 45 「ありがとうございます。しっかり確認してまいりますので、待っていてくださいましね」 GM高梨千里 23 46 いいえ、共有したとのことですので、得た情報はそのままでいいですが より詳しい情報を得るのであれば、探索判定をどうぞ フィア 23 47 では、床布を引剥して開かない扉とやらを探索。 GM高梨千里 23 47 また、扉に見識判定を行うことができます。目標値は9です。 ルセリナ 23 47 ではアレックスさんで フィア 23 47 2d+7+1 ダイス 23 47 フィア - 2d+7+1 = [2,6]+7+1 = 16 ルセリナ 23 47 2d+6+5 扉に見識 アレックスさんでセージ ダイス 23 47 ルセリナ - 2d+6+5 = [6,1]+6+5 = 18 GM高梨千里 23 47 はい。では探索判定から。 この扉には鍵がかかっているようですが、鍵穴が見当たりません。 ノクス 23 47 流石に騎獣を家の中で出せないので加わりません (笑) GM高梨千里 23 48 通常の解除判定を行うことはできないようです。 ノクス 23 48 じゃあアンロックで。 GM高梨千里 23 49 また、見識判定で、この扉にハードロックが掛けられていることがわかります。 合言葉で開くようになっているようですが、アンロックを試みることも可能です。 ノクス 23 49 ……結構高レベルですね (笑) GM高梨千里 23 49 はい、関わっているものがものなので、 ウィル 23 49 ふむ……メティシエ様hshsとか? フィア 23 50 指輪に何か書いてあったりしないか? ウィル 23 50 どうだろう…… GM高梨千里 23 50 扉に、魔法文明語らしき文字が描かれています。読みますか? ルセリナ 23 50 指輪に宝物鑑定をしていなかったような そういえば 読みます(アレックスさんが ウィル 23 50 どーれ GM高梨千里 23 50 そこには、「永遠の命を支えるのは」と書かれています。 ノクス 23 51 か弱き無限の魂である GM高梨千里 23 51 何語でいいますか? フィア 23 51 速いよ! ノクス 23 51 PL知識ですが (笑) ウィル 23 51 はぇぇ ノクス 23 52 じゃあとりあえず共通語ですね。皆に知らせたいだけなので GM高梨千里 23 52 はい。皆さんは突然ノクスがそのようなことをポツリと呟いたことを耳にして構いません。 ノクス 23 52 「……だな。メティシエの教えの一つだ」 ウィル 23 52 んじゃ、魔法文明語で復唱 GM高梨千里 23 52 はい。かちり、と音がしました。 扉の鍵が開いたようですね。 ウィル 23 53 「なるほど……『か弱き無限の魂である』」 おー GM高梨千里 23 54 扉を開けると、そこには地下に降りる階段が見えます。 フィア 23 54 「……何が起こったんだ」 何やらやり取りしたと思ったら一瞬で開いた GM高梨千里 23 55 粗雑な石を組んだだけの、ごくごく簡素な作りです 突貫工事であったことが察せられますね ノクス 23 55 「今のはメティシエの教えの一つなのだ。彼らが作った仕掛けだとしたら、合言葉には妥当だろう?」>フィア ルセリナ 23 56 「……では参りましょうか。リリエさん、何があるか分かりませんので ついてきたらいけませんよ?」 フィア 23 56 「へえー…… イカンな、俺も少しは勉強するべきなのか……? 鍵開けに知識が必要だとは思わんかったぞ……」 GM高梨千里 23 56 【リリエ】「! ……はーい」 マテル 23 56 ついてきそう ウィル 23 57 「……ガキンチョ」 フィア 23 57 「すまんな嬢ちゃん。なるべくすぐ戻るから…… そうだアレックス、使い魔を貸してくれるか?」 リリエと遊ばせておきたい GM高梨千里 23 57 【リリエ】「ねこさん!!」 ルセリナ 23 57 にぁー GM高梨千里 23 57 ぱああ、とリリエは 顔を輝かせますね ノクス 23 57 それは俺も考えていた。安全も確認できるしちょうどいい フィア 23 58 夜目が減るけど、使い魔は残して置いていいよな。それじゃ、俺先頭で階段を降りよう ルセリナ 23 58 「ですね、危ないかもしれない場所にクリスさんを連れてはいけません。リリエさん、見ていてくださいませ」 GM高梨千里 23 58 リリエは大人しい猫を抱き上げて、神妙な顔でうなずきます。 ノクス 23 59 では2番手で。 GM高梨千里 23 59 ノクス フィア 23 59 ちなみに、階段の広さは1人でいっぱいいっぱいですかね ノクス 23 59 入ると何かあるかもって言われてましたね なんでしょう GM高梨千里 00 00 トークを ノクス 00 00 「……」 一度フィアースの肩をつかむ。 フィア 00 00 「っと! なんだ?」肩を掴まれて踏みとどまる GM高梨千里 00 01 階段の広さは、成人男性が2列で肩がふれあう程度ですね フィアース×2でいっぱいいっぱいです ノクス 00 01 「……この地下は……」少し思案するように眉根を寄せ ウィル 00 01 「ん、入らないのか?なら先にいくぞ?」 フィア 00 02 「待て、ちょっと話を聞け」 ウィルを留める ノクス 00 02 ちら、とリリエに視線を投げ、猫に気が反れていることを確認したうえで、小声で。 マテル 00 02 「……何があるのよ」 ウィル 00 02 (大人しく止まる) ノクス 00 02 「「剣の効力が及んでいない」」 ウィル 00 03 「……まあ、ある程度は予想していた」 ノクス 00 03 「「……ああ。此処ならばアンデットだろうと楽に活動できるだろうな」」 フィア 00 04 「……成る程ね。了解。アレックス、皆が入ったら施錠頼む」 万一俺らと入れ違いでアンデッドが出てきたら敵わん ルセリナ 00 04 まかせてー(ぴこん GM高梨千里 00 04 はい、では扉を閉めるんですね? ノクス 00 05 「「これはかなり大掛かりな魔法による結界のはずだ」」 「「その詳細までは、目にしてない故今は分からないが」」 フィア 00 06 魔法は補助で切れるはずだし、鍵掛けといて事態が悪化することはないだろ…… 多分。閉めるよ。 ノクス 00 06 いえることは以上だ、という様に一度口を閉じます。 GM高梨千里 00 06 はい。では、辺りは真っ暗になります。 ノクス以外は現在、何も見えません。 ウィル 00 06 松明用意 マテル 00 06 松明付けます ノクス 00 06 まて、地下だ (笑) ルセリナ 00 06 割れないランタンがありますよ ノクス 00 07 それはやめておけw フィア 00 07 「わかった。此処から先は、敵地と思って行動したほうが良いな」 ウィル 00 07 はーい ルセリナ 00 07 アレックスさんに小型ナイフにでもライトをつけていただきましょう GM高梨千里 00 07 行使判定をどうぞ ノクス 00 07 うん フィア 00 07 全員にナイトウォーカーって手もあるけど、まあライトで良いか ノクス 00 07 mp消費がね…… (笑) ルセリナ 00 08 ナイトウォーカーはさすがに時間が短いかと…… では後衛と前衛で2つあればいいですよね>光源 GM高梨千里 00 08 はい、それだけあれば階段や意図せぬ段差で躓くこともないでしょう ルセリナ 00 08 2d 2倍ライト ダイス 00 08 ルセリナ - 2d = [2,5] = 7 フィア 00 09 じゃあ俺のキタローアンテナが光った GM高梨千里 00 09 えっ ルセリナ 00 09 なぜ隠せないところにかけるんですか( フィア 00 09 この状況で隠す意味ないかなと思って…… マテル 00 09 ヘッドショットしやすくなっちゃう ノクス 00 09 隠せるものにしておいて (笑) ルセリナ 00 09 というわけで、小型ナイフにかけました( GM高梨千里 00 09 はい、では小型ナイフに明かりが灯ります。 フィア 00 09 仕方ないので俺のダガーを光らせてくれ ノクス 00 09 隠してから暗視を貰って偵察とかありうるんだからw ルセリナ 00 10 後衛は手が空いてるウィルさんに、もう片方はフィアさんのダガーにということでw ノクス 00 10 ほいw GM高梨千里 00 10 はい、それでは光源を確保したところで、終わりたいと思います。 ノクス 00 10 おつかれさまでしたー^^ フィア 00 10 お疲れ様でしたー ウィル 00 10 はーい、発動体の指輪ピかー お疲れさまでしたー GM高梨千里 00 10 次回は地下道の探索からです。お疲れさまでした! ノクス 00 10 だからなぜウィルも隠せないものにかけたがるwww まだウィルはましだけどさ…… (笑) フィア 00 11 光り輝くアホ毛とか素敵やん…… GM高梨千里 00 11 頭が光るフィアースと指輪が光るウィリアムで光源確保? ノクス 00 11 うんそれは隠密が絶対必要ないと気にしてくれw ルセリナ 00 11 隠せるもので( ウィル 00 11 指輪はポッケにしまえる ノクス 00 11 発動体を外してかw GM高梨千里 00 11 そしてポッケから明かりがふんわりいい感じに漏れる、と ウィル 00 11 指をポッケに突っ込む ルセリナ 00 11 GMによっては 漏れるので……w ノクス 00 12 うん (笑) ウィル 00 12 (´・ω・`) なら……何がいいかな ルセリナ 00 12 ウィルさんもフィアさんも可愛らしいですねえ ノクス 00 12 大人しく鞘付きのものにしようね。冒険者セットのナイフでいいよ (笑) ルセリナ 00 12 素直に小型ナイフにいたしましょうw ウィル 00 12 良さげなの後は虫眼鏡くらいしかないよ ではナイフで ノクス 00 12 あ、皆そろそろ状態をください 裏に同じようにー フィア 00 17 いやー、久しぶりのノクスの出番だったな ウィル 00 17 うむ ノクス 00 17 はははw GM高梨千里 00 17 いやあ、長らくお待たせしました マテル 00 18 主役は遅れて的な ルセリナ 00 19 つんつんして起こせなかったが残念です 再現はいつになることやら…… GM高梨千里 00 19 この話はノクスが主役だった……? ノクス 00 20 違うと思いますけどね (笑) ウィル 00 20 違うの? フィア 00 20 さて ウィリアム、ちょっとこれからお時間ありますか ノクス 00 20 おw フィアース面談w によによ フィア 00 21 前回リクエストされた気がしたのでw ウィル 00 21 ゑ ルセリナ 00 21 (にこにこ ウィル 00 21 は、はい…… (gkbr フィア 00 22 まあよろしければ裏で軽くどうでしょう ノクス 00 22 こっちでどーぞw 裏でニヨニヨしてます ウィル 00 22 お手柔らかに…… (やるとなったら急に緊張してきた ルセリナ 00 22 では私もニヨニヨしています フィア 00 23 じゃあ、市場での買い物が終わって、宿でノクスが起きるのを待ってるあたりですかね ウィル 00 23 はーい フィア 00 24 「……そういやさ、ウィリアム。良かったのか?」 冒険者の店で待ってる時に、不意に思い立った、という風に口に出します ウィル 00 25 「何がだ?主語を出されんと俺は分からんぞ」 フィア 00 26 「いや、昨日の話し合いでさ。このままケツまくって逃げたほうが良いんじゃないか、ってなこと俺が言ったじゃないか」 「あの時、マテルとルセリナ、あとノクスの覚悟……みたいなもんは聞けたけど、お前は詳しく話し聞けてなかったなと思って」 ウィル 00 27 「ハァ……俺一人で逃げたとして、無事に帰ることが出来ると思うか?」 フィア 00 28 「……どうだろね。来るときは問題なかったから、昼なら逃げれるかもしれん」 「一人じゃ無理だから仕方なく……ってんなら、ヒカルに頼んで載せてってもらうのも出来ると思うぜ」 ウィル 00 29 「……その手があったか」 フィア 00 29 ……いかん、余計なこと言ったか、と少し後悔中 ウィル 00 31 「それで……話はそれだけか?」 (ジトー) フィア 00 31 「……まあ、状況に流されて仕方なく残る、ってぐらいなら、逃げて助けを呼んでもらうってのもアリだと思う。昨日、俺は後悔したくないから残ると言ったけど、それは俺の都合だからな」 ウィル 00 33 「そうか……なら、俺は邪魔か?」 フィア 00 34 「そんなこたない」それには即答する 「居てくれりゃあどんなに助かるか。ただ、俺は、なるべく仲間に自分が納得行ってない事をさせたくない…… まあ、俺のワガママだな」 ウィル 00 36 「ワガママか……まあ、欲を出さない者より丸出しにしている者の方が俺は人らしくて良いがな」 フィア 00 38 「欲を断てるほどご立派な人間じゃねーよ、俺は。で、どうすんだ? 多分、ヒカルに頼むのが最後のチャンスだと思うが」 ウィル 00 40 「頼むつもりはない……不死とかそういうモノが絡むのは気に食わんからな、俺たちとしては全会一致で潰しに行きたいんだよ」 フィア 00 42 「そうか……」 頼むつもりはない、という言葉でホッと胸をなでおろす 「……何か、心境変わったか? 前、ノクスの事情を聞くときは、席立とうとしてたろ」 ウィル 00 47 「俺は変わったつもりは無い、今まで通りだ」 フィア 00 49 「ふうん…… 変わってない? 何も?」 ふと、台所で食事の準備をしてるだろうマテルに目をやってみる ウィル 00 51 「……なんだ」 フィア 00 52 「……いや、別に。まあ、最初の頃と比べりゃ随分仲良くなったよな、俺ら」 ウィル 00 54 「俺は仲良くなったつもりはないな……ただ、近くにいることに慣れただけだろう」 フィア 00 58 「そーかあ? お前、あいつをからかってる時とか楽しそうじゃんか」 ウィル 00 59 「人をからかうときは思いっきり楽しげに……そうしたら、憎たらしく見えるだろう?」 フィア 01 02 「憎たらしく? 何だお前、嫌われたいのか?」 きょとんとして尋ねるかな ウィル 01 02 「……少し、口を開きすぎたか」 フィア 01 03 「良いじゃんか、もっと話そうぜ。考えてみりゃお前とこんだけ話すのも初めてだし。それに」 「嫌われたいってんなら、お前は失敗してるよ。嫌いな奴と、一緒に冒険したいなんて思わないだろ? 誰もさ」 ウィル 01 08 「……」 「……お前、他の奴にもよく話しかけてるがそんな口説き文句ばかり言ってるのか?ん?」 フィア 01 11 「男を口説く趣味はねえ…… って、口説き文句に聞こえるのか、今の?」 ウィル 01 12 「さっきの言葉はようは『お前のことが嫌いじゃない』と言ってるのだろう、似たようなものだろ……」 フィア 01 14 「そりゃその通りの意味だから間違っちゃいねえけど。……似たようなこと口走ってない自信がないぞ」 ウィル 01 16 「そうか……」 「なぁ、人間」 「自分のやることなすこと全てにケチ付けられたら、お前はどうする?」 フィア 01 19 「……うん? どうした?」 そんな軟派な言葉選びになってるだろうか、と考え込んでいたので呼ばれてハッとするかな 「……何かやるたびに文句をつけられる、って事か? そりゃ俺ならキレるよ。うるせえほっとけ馬鹿野郎! ってな」 ウィル 01 21 「……そうか、お前らしい答えだな」 フィア 01 21 「何だよ。お前だって別に言われたまま黙っちゃ居ないだろ?」 ウィル 01 22 「さて、どうだろうか」 フィア 01 24 「なんだそりゃ。そんな殊勝なとこ見たこと……」 まで言って、前世のことか?と思い至るかな ウィル 01 27 「さて……もうそろそろドレイクが起きる頃だろう」 フィア 01 28 「ん? ああ、そんな時間か」 ウィル 01 31 「話はこれで終わりだな」 こんな辺りかな? フィア 01 33 「あ、ああ…… なんだよ、変な謎かけしやがって」 と、ウィリアムが席を立ってから呟く はい、こんなんで〆ですかね お付き合いありがとうございました! GM高梨千里 01 34 ありがとうございましたー!! ウィル 01 34 ありがとうございましたー ウィルの闇は深かった……? フィア 01 36 なんか裏ではちょいちょい心情話してくれるけど、実際に話すとなかなか踏み込めないなw ウィル 01 36 因みに変わってるのは無自覚よ
https://w.atwiki.jp/trpgken/pages/2392.html
【今回予告】 幾重にも、影が闊歩し 光さえも置き去りにした。 捉えられない想いが虚空を駆ける。 機甲の戦神がオリジンを飛翔する時、 暗闇を裂き、明瞭な真実をも砕く、 極光へと繋がる戦いが加速する。 異界戦記カオスフレアSC キャンペーン “波乱の機甲隊” 第三話 「未来の分水嶺(カミング・ヴィジョン)」 人よ、機甲よ、未来を侵略せよ! 【ハンドアウト】 PC1用ハンドアウト パス:過去への不安 エコルとの再会を祝したのもつかの間、 キミたちは一転、時空戦艦が次元アンカーを下ろし、 波乱の旅はひとまずの長い休息に入ってしまう。 いくら何人たりとも立ち入り不可の亜空間であるとはいえ、 手をこまねいていてはテオスに追いつかれるのも時間の問題だ。 突如陥った窮地に、エコルはトワとキミに向かって言う。 「こういうときのための『相克の機虹帝(ディスカラード・プライマル)』をつかおうよ。…つかわないの? どうして?」 アインス・トリニティにのみ許された禁断の力。 目を背けてきた過去が、キミの脳裏についに去来する。 PC2用ハンドアウト パス:立花嵐雪への敵意、または立花しらゆきへの慈愛 アイエエエ!立花嵐雪。富嶽にて不遇の時を長く過ごし、 台頭して久しいMT技術を体得して信長から寵愛されようと目論む 忍者の鷹武者である。コワイ!彼には溺愛する妹がいる。カワイイヤッター! 愛のために戦っていた戦士であるところの彼の失踪と、 謎の宇宙帝国から謎の巨額の献金を受けたため、亜空間殺法で 襲いかかってきた謎の忍者軍団は決して無関係ではないはずだ。ゴウランガ! 義と使命に揺れる兄、過去、キミに惹かれつつも邪悪に唆される妹、 どちらも救わなければいけないのが愛の戦士の辛いところだ。 ア「今回ワタクシは出番無しでありますか?ザッケンナコラー!スッゾコラー! 」 PC3用ハンドアウト パス:エコルへの(任意) 希望を運ぶカイロスクルーザー、 「デューカリオン」は宿命管理局が更紗に与えた時空戦艦である。 その艦長である更紗が原因不明の昏睡状態に陥り、 組まれた旅程をやむなく中断せざるを得なくなった。 艦長代理の呼寄は艦をスリープモードに移行した上で、次元潜航させ 亜空間の中で主人の回復を待つ消極的な方針に転換。 協力者のGSLは強制下船。加えてキミとハイフ、テオス士官の2名は解放するという。 しかし、艦内を渦巻いているプロミネンスの反応を察知したキミは 退去までのわずかな時間にこの件の捜査を開始する。 キミたちの傍らには協力者、エコルの姿もあった。 PC4用ハンドアウト パス:美酒町への懐旧 「今度こそ、貴女が選ぶ路が、貴女にとっての未来でありますように…」 キミは、これが夢だと思った。 雪代学院で培った学友たち、家族であった父と母ときょうだい。 手を伸ばせば、守ることができたかもしれない未来。 世界神は、キミは運命の囚人だと言った。 世界神は、キミは、他人の成長を促す機構だと言い放った。 キミが思い出したのは、その運命を手放した過去。 ゼウスによって焼かれる前の、愛すべき現実と、 そして、それを焼きに来た、破滅の使者「ゼウス」。 キミにとっては、今こそが未来の分水嶺だった。 キミは、これが悪夢だと思った。 【何かありましたら】 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/novel_of_h/pages/13.html
俺は黙りこくっていた。 少なくとも日常生活では絶対につかないような傷が彼女の胸からかなりの範囲、長さにわたって広がっている。 生々しい。何があったのだろうか。 「この傷…そんなに珍しい?」 女の子はやっぱり俺が固まった理由をはっきりと理解していた。 「あ、いや、ええ…と」 俺はと言えばさっきまでの女の子への不満やら何やらが吹き飛んで、代わりにこの子が持つ事情を勝手に妄想したりした。 虐待家庭なのか、かつて大事故に遭ったのか、それとも常識を超えた組織のようなものに属しているのか。 「そういえばアンタに名前、聞いてなかったわね。名前は?」 女の子はバスタオルを身に纏ったまま、布団すら置いてない木材むき出しのベッドに腰かけた。 「後原良星って言います。後ろの原っぱに、良い星って書いて後原良星」 「ふぅん」 女の子は、初めて素の笑顔(俺から見て)を見せた。 俺が『天使』と呼んだのは、あながち間違いでもなさそうだ。 この子の持つ可憐さには、何か神々しいものを感じる。 「なかなかいい名前ね」 まさかこの子からお褒めの言葉が聞けるとはね。 「ありがとう。えっと、あなたは?」 「私は…そうね。玲、玲よ」 その合間にあった空白は何なんだ、と細かく突っ込めるはずもなく 「苗字は?」 と、いかにも玲という名前を受け入れたような質問をした。 「そこまで言う必要がある?」 また、玲お得意の鋭い目つきだ。どうもこの目つきに慣れることはできそうもない。 「え、あ、ええ、まあ、一応」 「…ふぅん、そう。苗字は守岡よ」 が、目つきの割にはあっさりと苗字を言ってくれた。この子の性格がいまいち掴めないな。 「で、玲さん」 「敬語はいらないわ。これからあなたのお世話になるんだし」 「そ、そう?」 「そう」 そう言われればそうだよな。 事情はともあれ、俺はこの子改め玲をかくまうんだ。俺がへこへこする理由なんてどこにもないもんな。 「それじゃあ、玲」 「切り替えが早いのね」 どうでもいいツッコミは入れるもんじゃない。 「ええと、だな、どうして俺にかくまってほしいのか聞きたいんだけど」 やっぱり玲は黙りこくった。 何か言いたそうに、口を何度かパクパクさせるのだが全て飲み込んでしまい言葉にはなっていない。 玲は玲なりにも追い出されることを懸念しているのだろうか。 俺はと言えば腕を組んで彼女の言葉を待ちながら、彼女が時々発する「あぅ…」とか「えぇ…」とか 言葉にならずに口から漏れた声を聞いて「かわいいなぁ」とか思ったりもした。 しかし、このままじゃ日も暮れてシャンプーやら日用品を買いに行く時間も消え去りそうだな。 事実、帰ってきてから二時間が経過し、短針と長針が縦に背筋をピッとしていた。要するに六時だな。 言わずともわかるだろうが午後だぞ、午後。 この持久戦に負けたのは俺だった。 「ほれ」 渡すタイミングを失っていた俺のスペアティーシャツを玲に投げる。 よくもまぁ、くしゃみをせずにほぼ素っ裸のまま小一時間もじっとしてられたな。 「…むぐ」 完全に思考の海に深く潜り込んでいたらしく、ティーシャツを顔面でキャッチするとお礼を言いながらお得意のナイフのごとき眼光を俺に向けた。 「ズボンも…ほい」 今度は引っぱり出したスウェットを投げた。 玲はその『ナイフ』を俺から刹那も逸らさず、左手だけで華麗にキャッチした。 「とりあえず晩飯にしようか」 俺は冷めた生姜焼き弁当を取り出し、段ボールから衝撃吸収材に包装された皿を一枚取り出してから プチプチ潰して遊べるそれを何故か慣れた手つきではがしてから弁当の半分を玲に分けた。 「あ、ありがとう…」 「箸は…っと、ほれ」 運よく同じ段ボールに入っていた赤褐色の箸を…投げるのは危ないからちゃんと手渡しした。 「ん…おいしい…」 「そうか」 彼女は、初めて生姜焼きを食べたかのようなリアクションをした後、またもや神々しい笑顔を俺に向けた。 「これ、なんて料理?うちのシェフですら作ったことないわ!」 「ああ、これはな」 あれ、なんだろう、この違和感。 「生姜焼きって言って、シェフ?」 日本語が破綻した瞬間だ。 今度は玲は「しまった」というように眼を見開いた。 「シェフって?」 「あ、え、と」 これは明らかに口を滑らせたって感じだな。 「…正直に話すわ」 それから彼女はついにポツリポツリといった風に、今までの経緯を話してくれた。 以降は彼女の話をまとめたもので、合間合間の沈黙はすべて省略したのをご了承願いたい。 私は、俗に言うお嬢様ってやつよ。 名前は出さないけどすんごい大富豪の娘なの。 私は、父さんの娘ってだけですんごい色々期待されたし、罵られもした。 何より決定的だったのは、この髪の毛と、この傷痕。 周りからは「できそこない」だとか「欠陥品」なんかとも言われた。 それでも父さんは私をかばってくれていた。 嬉しかった。 あと何十年とあるこの人生、父さんに捧げようとも思った。 だけど、私はちょうど二日前、聞いてしまった。 父さんがこんな私をどうして愛してくれていたか。全てを理解した。 政略結婚ですって。 父さんは誰かと電話してて間違いなく私の名前を出して『政略結婚』って。 「ええ、わかってます。もうすぐ十六歳の誕生日。ええ、政略結婚なんてのは響きが悪いですよ、ははは!またご謙遜を!」 涙が止まらなかったわ。 私に向けられた愛情なんてのは全て嘘っぱちだったの。 最後の最後まで父さんの言うことを聞くように仕向けられていたのよ。 私は…私はできそこないで、父親からも愛されなかった欠陥だらけのクズよ。 気づけば、私は財布も持たず私服のまま玄関にかけてあったジャケットだけを着て家を飛び出した。 そして、バテるまで家から離れた。 きっと今頃父さんは血眼で私を捜してることでしょうね。 「もう…いろいろ疲れたのよね」 玲は目線を、玲から見て右下に落とすと「ふぅ」と溜息をついた。 ちょっと待てよ。冷静に考えてかなりまずいんじゃないか? 大富豪、政略結婚、血眼。 勝手な推測だが、映画でよく見る全身黒ずくめの外人がサングラスをかけて俺の家に銃を乱射するとかないよな? それとも賃貸ごとプラスティック爆弾でボン、か? 「おい…玲、お前、命の危険はないとか、言ってたよな?」 「ええ、本当よ?私は政略結婚させられるために、追われてるんだもの」 間違いない。 こいつ、俺のこと何も考えてなかった。 第四話へ
https://w.atwiki.jp/shinatuki/pages/474.html
【第二部】~Saint Babel Run~ 第三話 『片鱗 前編』 ―――――――――――――――― ―――――――― 纏わり付く湿気と瘴気。 まだ日もそれ程傾いていない時刻であるはずなのに、宵の刻のごとく暗い森。 鬱蒼とした蟲と茸の王国を、一頭の馬が駆け抜けて行く。 たてがみを靡かせ、規則的な足音を響かせて自由に走るその姿は、人外ですら足を踏み入れたがらない魔境であるこの【魔法の森】には全く場違いと言う他無かった。 この自然の作り出した悪路を、なぜこんなにも自在に疾駆できるのかという疑問は、その走行の様子を見れば自ずと解消できるだろう。 朽木や苔が蔓延る劣悪な足場が、馬を駆る男の右手が『何かを撃つ』ような素振りをすると、地面に『波紋』が拡がり瞬く間に草や礫が薙ぎ払われ、振り下ろす蹄鉄をしかと支える快適な道路に豹変していった。 「ホル・ホース、次の【遺体】の位置は感じた?」 馬上に跨る人物の横、ピッタリとつけている小柄な影ーーー『氷精』チルノが、ややうわずった声で問うた。 「いんや、生憎俺の【左腕】には大した変化は無いぜ。 近付いても反応しねぇモンかもしれねえし、まだ遠いって証拠かもしんねえよ、ーーー【遺体】からもーーー【悪魔の手のひら】っつートコからもな…………」 左手で手綱、右手で【皇帝(エンペラー)】をめまぐるしく操りながら、ホル・ホースは半透明のマスクの下、口を動かした。 ーーーーーーーーーーー事の発端は、今から数時間前。 『兎耳の女』の惨状を目の当たりにし激昂したホル・ホースの脳は、チルノの怯えた目を見たショックで逆に冷え切ってしまった。 狼狽していた彼も、一度外に出て竹林の景色と風を感じ、何度か深呼吸すると、冷静さを完全に取り戻した。 すぐさま【永遠亭】内に引き返し、チルノと顔を合わせ、先程の醜態の謝罪をした。 最初は不安げな表情だったチルノも、普段の気さくなホル・ホースである事を確認するや否や、いつものようにじゃれついてきた。 「早速【遺体】探しに行くわよ!早い方が良いわ!誰かに取られる前に!」 妖精の精神とは子供そのものであり、子供とは冒険心の塊である。 ワクワクと目を輝かせ、旅の出発を急かしてきた。 「ああ、その通りだぜチルノ。何も最初に【遺体】を見つけたのが俺たちだとは限らねえ。 すでに他の部位を手に入れていて、今この瞬間にも残りの【遺体】を血眼になって探している連中がいるかもしれねーんだ、早いに越したこたぁねぇよ。 でもな~……チルノ。」 ホル・ホースは渋い顔つきで、チルノをたしなめる。 「『手掛かり』がねえんだよなぁ~…どこを探せばイイのか、サッパリ分からねえ。 まずは『手掛かり』を見つけることだぜ、出発はその後だ。」 ホル・ホースの言葉を聞き、む~と頬を膨らませるチルノ。 「今持ってる【左腕】に、なんか『ヒント』とかないの? こういうお宝って、だいたいは見つける度に次のお宝の在処を教えてくれたりするものなんじゃないの?」 「物語や昔話の中じゃあそうなんだろ~がなぁ… …いや、実はよォ、『ヒント』らしきモンは【左腕】にゃああるんだ。」 「えっホント!?なになにどんなの!?」 目を輝かせて飛びついてきたチルノに、浮かない顔で自分の【左腕】を凝視していたホル・ホースは、袖を捲って見せた。 「この部分、よく見てみな。『文字』が浮かんでんだろ?」 ホル・ホースが指差した場所、明らかに日本語でない言語で、何事か記されている。 「『ラテン語』っつー由緒正しい言語だ。 movēre crūs(モヴェーレ・クルース)、日本語に訳すと『脚よ動け』。シンプルに考えるとすりゃあ、俺の『脚を治したい』っつー望みを【遺体】が見透かして、そいつを御丁寧にも【左腕】に彫り込んでくれたってことになるが……」 「なるけど?」 「この『文字の配置』……なんか不自然じゃあないか? 『movēre』と『crūs』の間が妙に開いてる…それに、『movēre』の方は随分とへしゃげた形になってるぜ。 ど~もこの『形』が、次の【遺体】の在処を教えているように思えてならねえ。」 ホル・ホースが指でなぞった『文字列』は、確かに不自然に歪んでいる。 「『文字の並び方』が『ヒント』?どーゆうこと?」 「そこが俺にも分からねえんだよなぁ~… チルノ、オメーはなんか知らねえか?『脚』に関係ある場所ーーーー例えば、『脚』と名のつく山とか川とかーーーーあとは、この『並び方』を見て思い付く場所とか……何でも良いぜ、とにかく思い付いたら言ってくれ。」 「『脚』?『脚』ね!分かった!」 う~んう~んと頭を捻るチルノを横目に、ホル・ホースは思案を再開する。 やはり【遺体】と『兎耳の女』が埋まっていた場所に戻って、もっと隈無く痕跡を探すべきなのか。 いや、しかしーーーー背筋を撫でる悪寒を感じ、ホル・ホースは僅かに身震いする。 「(あの『場所』………明らかになにかしら異様だった…! 優曇華と一戦交えた時は、彼女の幻覚のせいかと思ってたが……今じゃハッキリ言える! 優曇華と遭遇する前から感じていた、あの『ものスゲえ数の視線』!『勘違い』なんかじゃあねぇ…ッ! ゼッテェに『何か』いたッ!優曇華とは無関係な『何か』がッ!!)」 妖精ゆえの愚直さで、頭が煙をあげかけるほど知識を掘り起こしているチルノの横、ホル・ホースは険しい面持ちで俯いている。 「(できりゃあ、あの道は通らずにこの竹林から抜け出してェくらいだ……! 勝てねぇ勝負はしねえ、喧嘩も売らねぇ、ヤバ過ぎるモンには近寄らねえ、それが俺の人生哲学… だが、もしこのまま『手掛かり』が掴めねぇんなら、あの『場所』に引き返すしかなくなる! どのみち【遺体】と出遭っちまった時点で、『ヤバい道』に片足突っ込んでんだ…!…覚悟を決めろホル・ホース……ッ!! なっさけねえだろが…この老いぼれになってまだ『ビビり癖』が抜けてねぇようじゃあ、臆病の真反対にいるみてえなテメーの隣の娘に顔向けできーーーーー)」 「あったァーーーーーーーっ!!!!」 突如休憩所内に響き渡った歓声に、両手の組んだ指を握り締め思案に耽っていたホル・ホースの体は車椅子の上で軽く跳ねた。 「あった!これよ!見て!ホル・ホースっ!!こっちっ!」 ブンブンせわしなく右手を振り、興奮した様子でホル・ホースを呼ぶ。 この休憩所にいるのは二人だけであるが(盗み聴きを恐れたホル・ホースがそういった場所を選んだからだ)、反響するチルノの声は【永遠亭】特有の長い廊下の曲がり角の先にまで筒抜けなのではないかというくらい大声である。 「待て待て待て待てチルノ今行くッ!行くからちょっと声抑えろッ!!」 小声で怒鳴り、ホル・ホースは急いで車椅子を漕ぎチルノのもとへ向かう。 チルノは指摘されて初めて自分の声の大きさに気付き、慌てて口を押さえた。 「これよ!この新聞!」 チルノが指差す方に目を落とすと、暇潰しのためにと【永遠亭】の好意で置いてある新聞立てがあった。 数部あるうちの一つ、『花果子念報』なる新聞の一面に視線を向けると、 「あッ!?」 ホル・ホースの口から、驚愕の声が漏れた。 ーーー『〝悪魔の手のひら〟現る 今度は〝魔法の森〟』ーーー でかでかと踊る見出しの下、これまたでかでかと存在を主張する一枚の写真。 〝悪魔の手のひら〟と呼ばれているらしい、自然現象が創り出した風景。 その形には、見覚えがあった。 「この山っ!この記事の写真にある山! 『同じ形』だッ!!ホル・ホースッ! 『ここへ行けッ』って教えてくれてるのよッ! きっと次の【遺体】はこの山にあるッ!」 先程より抑え気味の声で、しかし興奮が抑えきれない声色で、チルノはホル・ホースに熱弁する。 「ーーーーーーーああ、そうだ…!そうに違いねぇ…ッ!! 次の【遺体】は間違い無くあるぜッ!【魔法の森】に! でかしたぜチルノッ!やっぱオメーは天才だッ!!」 ニッと快活に笑い、チルノの顔を見下ろす。 「ふふん、あったり前じゃない! あたいはあんたの『親分』なんだから!」 得意げに鼻を鳴らし、しかし褒められた喜びに顔をほころばせて、チルノは胸を張る。 「じゃあ決まりね!【遺体】探しにっ!しゅっぱあぁぁーーつっ!!」 チルノはワクワクと肩を震わせて、軽快に飛び跳ね拳を突き上げた。 ーーーーーーーーーーーーーー 「ーーーーーーーん?」 「? 何か見つけたの?ホル・ホース?」 【悪魔の手のひら】を求め【魔法の森】を探索していたホル・ホースは、ふと眉をひそめ声をあげた。 「ーーーーいや、さっきから【マンハッタン・トランスファー】で前方を見張ってんだけどよ……… この先に『人』がいるみてぇだ。」 「『人』?人間ってこと?」 「『妖怪』かもな。『妖精』じゃあねえ、背丈が高い。」 険しい顔つきで、ホル・ホースは前方を睨む。 「チルノ、一応『警戒』しとけ。」 ホル・ホースの言葉を聴き、チルノもやや身体を強張らせ身構える。 優曇華の一件で、僻地で無警戒に他人に接近することの危うさを嫌というほど味わった。 いかな妖精とて、その恐怖体験を忘れて無邪気に振る舞うことは許されない。 やがて、木々の間隔が大きく、やや開けた場所に出た。 「…………あっ!…」 そこに来てチルノも『人』の存在を視認し、声をあげた。 二人の視線の先、森の湿った地面の上に、大きな黒いとんがり帽子が転がっていた。 その先には、ややクセのある長い金の髪と、泥に汚れた白いエプロンが見える。 「女だ、しかも子供だぜ。」 「あたい知ってる!あいつ魔理沙だ!」 馬を止め、森の中で倒れ込んでいる少女の姿に驚くホル・ホースに、チルノは耳打ちする。 「マリサ?妖怪なのか?」 「ううん、魔理沙は魔法使いだけど人間。妖精の間だと結構有名な人間よ。」 「人間?あんなちっこい人間の娘が、なんだってこんな危ねー森ん中にいんだ?」 「魔理沙はこの森の中に住んでんのよ。」 「………そうかい。」 妖怪すら近寄らないような森で、暮らしているという少女。恐らく家族といるワケではなく、一人でここに住み着いているのだろう。 勝手に事情を勘繰り憐れむことは侮辱にあたると十分理解しながらも、気を使ってやらねばならないという気持ちがホル・ホースの中で芽生えた。 もとより、『女性』がこのような危険地帯で負傷している場面に遭遇しては、彼の良心が黙ってはいないのだが。 ふと魔理沙の周りを見ると、いかにもこれに乗って飛んどりましたと言わんばかりの箒が側に転がっている。 「ありゃ、どうやら箒から落ちたらしいな。 その魔理沙ってヤツ、顔から流血だぜ。」 「落ちた?あの魔理沙が箒から?」 チルノは訝しそうに首を傾げる。 「こんだけ入り組んだ森ん中だからな…いくら彼女のホームつったって、油断してスピード出しゃいつ事故ってもおかしくねぇ。 うずくまったぞ………!!頭をかかえこんで横になった………」 魔理沙は血の流れる頭を抱え、地に伏した。 「助けに行かない方がいい、魔理沙は物を盗むって有名なのよ。 【遺体】のパワーに気づいたら、絶対に奪いに来る!」 目を細めて警戒するチルノに、ホル・ホースは苦笑いして目を向ける。 「おっ、オメーそーいうこと言うのか~? 確かに、先を急ぐうえ敵を増やすわけにゃいかね~のが今の俺たちだ…… だが命にかかわる負傷してるかもしれねえんだぜ…様子みてやろう。」 言うと、ホル・ホースは馬の鼻先を魔理沙に向け、手綱を操る。 「やめた方がいいって!ホル・ホース!」 「流血がかなりひどくなってる!見てやるだけだ。」 チルノの制止を遮って、ホル・ホースはゆっくり馬を進める。 と、突然、ヒヒヒーンと彼の乗る馬がいなないた。 ガッ 「痛で!」 唐突な衝撃に、ホル・ホースは反射的に声を漏らす。 「ブルルッ ブルルッ」 鼻息荒く、馬は身を震わせる。 「どう。どうどう…」 落ち着いた様子で、ホル・ホースは馬をなだめた。 ガッ ガガッ ここで、先程の衝撃の正体がホル・ホースにも理解できた。 足下の隆起した地面が、馬の蹄を絡め取ったのだ。 「(ここらの地面、やたら地面が尖ってるな。馬もなぜか怯えてる……)」 不自然な凹凸から目を離し、魔理沙に向かって呼び掛ける。 「嬢ちゃん、魔理沙っていうんだよな? 大丈夫かッ!【永遠亭】に行きたいならそう言えッ!運んでやるぜ!」 ホル・ホースの呼び掛けに、魔理沙はゆっくりと頭を上げる。 血の伝う顔を二人に向けると、一瞬目を見開き、次に露骨に警戒心のこもった視線を送る。 「……あん…た……『外来人』……だろ?」 「…おう、鋭いな嬢ちゃん、その通りだぜ。」 痛みと不愉快さでしかめっ面で問う魔理沙に、ホル・ホースは気さくな態度を崩さず肯定の言葉を返す。 「……ふんっ、大きなお世話だぜ。 『外来人』に貸しを作るなんて真っ平だ…とっとと消えな。」 片眉を上げ、好戦的な笑みを浮かべて、魔理沙はホル・ホースの提案を突っぱねた。 それを受けてホル・ホースは、好意を無碍にされたにも拘らず、嫌味の無い笑顔を浮かべる。 「…ヒ………ヒッヒ! どうやら平気らしいな!! そいつは良かった!……行くぞ、チルノ。」 クルリと馬の向きを転換させ、ホル・ホースはその場を離れていく。 「あっ、うん!」 何事も無かったことに安堵して、チルノは彼の後を追った。 「……………ううっ………」 二人が立ち去った後、魔理沙は再び土の上に倒れ込んだ。 顔は青白く、明らかに先程より症状が悪化している。 何度か呻き声を上げて、眠ったように沈黙した。 ーーーーーーー【魔法の森】の鬱蒼とした木々に遮られなかったとすれば、幻想住人は上空からその異様な光景に気付くことができただろう。 身体を丸め地に伏せる魔理沙を囲うように横たわる、隆起の全貌に。 彼女の幼馴染である薀蓄屋が『名前の無い龍』と表現した、太古の王者の亡骸にーーーーーーー 「ねえ、【悪魔の手のひら】見つけるまであとどれくらいかかりそう?」 「そいつは俺も見当がつかねえな。 あの新聞には『【悪魔の手のひら】は突然消えたり移動したりする』と書いてあった。 下手すりゃもう【魔法の森】から無くなっちまってる可能性もある。」 やや気だるげなチルノに、ホル・ホースは大雑把な【幻想郷】全土の地図を見ながら答える。 「うーん、やっぱりあんな【お宝】、簡単には見つからないもんね…」 妖精は『自然の権化』だ。周りの環境に非常に影響を受けやすい。 【魔法の森】の瘴気と憂鬱な暗さが、チルノの精神に悪影響を及ぼすのではないかと危惧していたホル・ホースは、先程からのチルノの態度が、単に【遺体】が見つからないことにイラついているのか、それとも心に異常が起こり始めているのか、若干の迷いがあった。 「(ま、こんな陰気な場所に留まっていちゃ、妖精じゃあなくても気分が沈んで当然だな。)」 ここらで引き時かと判断し、ホル・ホースはチルノに告げる。 「チルノ、そろそろ日が傾いてきた! あと暫く走れば森を突っ切って抜けられる! 今日はここで止めだ、一旦休んで、明日の朝から探索するぜ!」 「…うん、分かった。」 終了が近い旨を聞き、若干明るさを取り戻した声でチルノが返事する。 「(やっぱチルノを連れて【魔法の森】に入るのはマズかったな… 明日はどうにか説得して、森の外で待機してもらわねえと……)」 ホル・ホースがチルノの不調を案じた時、 「ッ!」 ホル・ホースが息を呑んだ。 「チルノッ何か来る!」 「えっ!?」 ホル・ホースの強張った顔を見て、チルノは辺りを見渡す。 「後ろからだ!馬も怯えてるッ! スゲースピードだ!」 馬を方向転換させ、接近する相手と対峙する瞬間のために、二人は身構える。 それは、突然だった。 繁茂した木々の葉を蹴散らして、黒い影が矢の如く飛び込んで来た! 「ッ……!?」 「ああっ!?」 ホル・ホースとチルノは目を見開いた。 「ヤッホーお二人さん!」 先程血を流して倒れていた霧雨魔理沙が、箒に跨り二人の眼前に現れたのだ。 「あんたらおっそいなァーー!あっと言う間に追いついてしまったぜ!いや、私が速すぎんのかなァー!?」 ホバリングしながら、やけにデカイ声で二人に話し掛ける。 「おたくら、もうすぐ日が暮れるが、どうするつもりなんだ! その先に私の家がある…野宿はやめた方がいい! この辺はおっかない妖怪がいるからな! この間日が暮れた時に妖怪に囲まれたんだ!! 数匹の一反木綿と数匹の犬神になっ!一反木綿と犬神が私の行く道を塞いで通れなかったんだ………! 廻り道しようと思ったら…このうち片方がなんと私に襲い掛かるのを待ってくれたんだ!親切にも待ってくれたんだぜ、妖怪がだ…! いったいどっちの妖怪が待ってくれたと思う? 一反木綿か?犬神か?どっちだと思う?」 「……え?」 突然現れて、先程の態度とは真逆の馴れ馴れしさでベラベラと喋り立てる魔理沙に、ホル・ホースは困惑しチルノは目を丸くしている。 「答えは一反木綿だぜ!『いったん』ッ!いったんーーーっ!ジャスタ モーメン(木綿)ト(ちょっと待って)ォォーってな!」 ビシィッ!と人差し指を向け、ハツラツと言い放つ魔理沙。 そして、両者の間を吹き抜ける、ブリザード並みの寒風。 「………あ?」 「……………?」 魔理沙の『ハイさ』に気圧されて、思わず零れたのは純粋な疑問符であった。 「おいおいクイズだよおたくら、ただのクイズさっ!なんだと思った? でも、その後犬神に道で箒を喰われたりして!『ほう、きに入った』とか言って!犬神がみんなして『ほう、きに入った』なんて言ってたりして!!」 もはや背筋に薄ら寒いものを感じながら、二人は魔理沙に奇異の視線を投げ掛ける。 ホル・ホースに至っては冷や汗が流れる始末だ。 そんな二人をよそに、魔理沙はえらく上機嫌に高らかな喜びの声を上げる。 「気分がいいッ!なにかすごく気分が爽快なんだッ!いいぞッ!さっき箒から落ちたせいかな…体もすごく軽いッ!日が暮れるのが残念だぜ!」 言い終わると、今度は急発進しホル・ホース達を追い抜いて、 「こっちだ!私の家がある! きったない家だが、大丈夫あんたら二人くらいなら寝られるスペースがある筈だぜきっとッ! 着いて来なッ!私のスピードに匹敵できるんならなァァーー!!」 ギュンッと加速し、高笑いを残して森の奥へと飛び去って行った。 「……………おい、チルノ! なんだ?あいつは?魔法使いって、こんなラリったキャラなのか?」 暫し茫然と魔理沙の消えた方角を見つめていた二人だったが、ホル・ホースは眉をひそめチルノに確認する。 「し、知らない!確かに、前から変なヤツだって言われてたけど、でも……なんか変だった。あいつ変だ! さっきは大怪我だと思ったのに!」 ブンブン首を振りホル・ホースの質問を否定した。 「それに…なんで後をつけて来たの? まさか、【遺体】を狙っているとか?」 「ーーーーーーそんな筈はねえ…【遺体】のことを知っているとは思えねえし、【左腕】のパワーに気付いているなら、とっくに襲い掛かって来ていても良い筈だぜ。 俺たちが【遺体】の他の部位を探しているなんてことまで察した上で、横取りしようとしてるなら、もっとコソコソ隠れて付け狙う筈だ。それに……」 「それに?」 「さっきのあいつからは、全く殺気とか敵意とかを感じなかった…これ、割りと信用してくれて良い情報な。」 「……でも、あいつ『ついて来い』って言ってた!ホントは家じゃなくて、落とし穴とか罠に誘い込もうとしてるんじゃないの?」 「いんや、それはねえ。見てみろよ。」 警戒心の晴れない表情のチルノに、ホル・ホースは魔理沙の通っていった方を指で示す。 「この道、ヤケに枝や葉が少ねえと思わねえか?あいつが突っ切って行く前からだぜ。『トンネル』みたくなってる。 この道は普段から使ってる通り道だ、自宅からどっかへ出かける時のな。まず『家に向かってる』のは疑う必要はねえだろ。」 「おいおたくら、何チンタラやってんだ!?」 「「ッ!?」」 おもむろに聞こえた声に二人が咄嗟に顔を上げると、魔理沙が訝しむような顔つきで見下ろしていた。 「あんまり遅いもんだから引き返して来たが、なるほどな、確かにあんたらじゃあ私の背中は追えないもんな! よし分かった!この魔理沙様がおたくらに合わせてゆっくり飛んでやる! はぐれずに着いて来いよッ!」 言うだけ言うと、クルリと背を向け、馬でもなんとか追えるくらいの速さで、家路を飛んで行った。 「……い…いつの間に引き返して来たんだ?」 「さ、さあ…?気付かなかった…」 奇怪な行動を立て続けに起こされ、二人は完全に向こうのテンションから置いて行かれている。 「…で、どうするの?今夜は魔理沙の家に泊まるのか?」 「…いや…やっぱあいつどっか怪しい…魔女の家に招かれるってのも、言っちゃ悪いが縁起でもねえ。せっかくだが、あの誘いはお断りさせてもらおうぜ。 だが、さっきの怪我の拍子に頭を打ったとか、ミョ~な茸の胞子を吸ったとかなら心配だな。 取り敢えず家までは見送る、だが入りはしない。そのまま森を突っ切って外に出る。それで良いな?」 「…うん、早く出よ。この【森】嫌いだ…」 チルノのやや暗めの返事を聞き、二人は魔理沙の後を追った。 「(ーーーーーチルノのヤツ、相当【魔法の森】に影響されてるっぽいな…… 本来、あんな風に人を疑う性質(タチ)じゃあねぇ…早めに脱出しねえとな……)」 横を飛ぶチルノの、普段からは程遠い覇気の無い顔をチラリと横目に見て、ホル・ホースは懸念する。 「(魔理沙……あの魔女っ子が【遺体】を狙って来てるってこたぁ無いだろうが……最初に会った時の『外来人』である俺に対する敵意が、キレーに消えたってのがよく分からねえ…チルノには黙っといたけどな…)」 前を飛ぶ魔理沙の背中に視線を移す。 彼女は先程のやかましさが嘘のように振り返ったり言葉を発したりせず、黙々と足を、いや、箒を進めている。 「(急に黙りこくっちまったが、まあ『森のコース』は外れちゃいねえ。 このまま無事に家に着いてくれんだろ。そしたら適当に断って、森の外に出るか…まだ森の中が完全に暗くなるまで時間もある……)」 「(…そう言やぁ……俺たちの他に【遺体】の存在を知っているヤツが、俺らの近くにあと何組いんだろうな…)」 【永遠亭】を発つ前から抱いていた、一つの懸念。 それは、『八意永琳が自分たちを泳がせて利用しようとしているんじゃないか』という危惧だった。 「(永琳は俺の治療中、この【左腕】の『パワー』に気付かなかったのか? あれだけ察しが良くて、気の回る彼女が? 気付いていて『敢えて』黙っていたと考えるのが自然だが……ま、聡明な彼女が無言の『GOサイン』を出したっつーことだから、【遺体】集めがそんなオッソロシイことじゃないって太鼓判押してくれたってことにしとくか。)」 そう、今の問題は【遺体】が手に入るかどうか。手に入れた後の心配は、その時になってからでも遅くはない。 魔理沙の後を追い、【魔法の森】の中をひた走っていた時、 「……ッ!?」 ホル・ホースが突然、何かに反応し背後を振り向いた。 「っ?何?ホル・ホース!?」 ホル・ホースの異常に気付き、チルノが問いただす。 「『何か』追って来てる!スゲー速さだッ! 魔理沙ッ!!止まれ!なにかヤバイ!」 振り返らず後ろの魔理沙を呼び止め、【マンハッタン・トランスファー】に集中する。 「一つじゃねえ!20はいるッ! ちっこいが素早いヤツがこっちに向かってやがる!」 メギャンッ! ホル・ホースは【皇帝】を、チルノは冷気を構え、自分たちを追う何者かの到来に備える。 ガサリと葉が揺れ、緊迫の一瞬が訪れた。 「ッ!! なんだコイツら…ッ!?」 木々の枝から躍り出て来たのは、フィギュアサイズのトカゲのような生物だった。 二本の脚で地面を蹴り、俊敏な動きで向かって来る。 「向かって来るぞッ! チルノ!魔理沙ッ!構えろォォッ!!」 怒鳴り、ホル・ホースは【皇帝】の引き金を引く。 スタンドの銃声を響かせて、銃弾が先頭の『トカゲ』に向かっていった。 軌道を変化させ、近いヤツから順番に縫うように撃ち抜くつもりだ。 ヒュンッ 「ッ!?」 だが、ホル・ホースの目論見はあっさり破られた。 『トカゲ』は目にも止まらぬ動作で【皇帝】の弾丸を避け、何事もなかったかのように接近を続ける。 「避けたッ!?コイツら、【スタンド】が見えるのか!?」 「トカゲめっ!こっち来るなぁッ!!」 驚愕するホル・ホースの横で、チルノは両手の冷気から氷を作り出し、一気に展開する。『パーフェクト・フリーズ』、スペルカードバトルでの彼女の十八番を実戦用の威力にしたものだ。 「ッ!?」 猛然と突進してきた『トカゲ』たちは、突如現れた『氷の弾幕』に驚いたのか、一斉に足を止めた。 「魔理沙!アンタは『魔法の森』に住んで長いんだろォ!! 何でもいい!この『トカゲ』どもについて知ってることはーーーーーーー、ッ!?!?」 油断なく【皇帝】の銃口を『トカゲ』に向け、後方の魔理沙に呼び掛けて振り向いたホル・ホースは、愕然と顔を凍りつかせた。 「えっなにーーーー、っ!?」 つられて振り返ったチルノも、息を呑み表情を硬直させる。 ーーーミシーーーーーーメキメキーーーーーーーーメリッーーゴギーーッ…………… 魔理沙は、箒から降りていた。 二人に背を向け、屈んだ姿勢で、地面に立っている。 彼女の黒い魔女服の背中は、異様な形に隆起しており ダラリと垂れた両の手は、乾燥した鱗のようなものに覆われ、鋭い鉤爪が覗いている。 肩幅も身長も、肉体が軋みをあげて膨張していき、彼女のトレードマークたる衣服や帽子は、溶けるように皮膚に呑み込まれていった。 「ーーーーーーーグルル………グルルルルル…グルル…………」 猛獣のような唸りを洩らし、『魔理沙だった』それは振り向いた。 「………なんてこった…… 俺たちは……!既に…ッ!?」 ホル・ホースの額から、汗が流れ落ちる。 「既に…!囲まれちまってたのか……ッ!!」 人間より大きな『トカゲ』と成り果てた魔理沙は、その巨体を振るわせ、獰猛に咆哮した。