約 396,664 件
https://w.atwiki.jp/tohokusf/pages/249.html
東北大SF研 読書部会 『なめらかな世界と、その敵』 伴名練 著者紹介 伴名 練 第4期京都大学SF研OB。2010年、大学在学中に応募した「遠呪」にて第17回日本ホラー大賞を受賞。同年10月に『少女禁区』にて作家デビュー。今作が書籍第2作目となる。 それぞれの作品について 理玲ちゃんのnoteを大幅に参考にさせていただいて各編の簡単な解説(?) をさせていただく。 なめらかな世界と、その敵 視覚化不可能な情景が、文章中に見事に描写されており、さらにその描写が、冒頭からこの作品世界の基本設定をすんなりと読者に理解させることを可能としている。伴名練の卓越した文章によって、映像的には矛盾するシーンが実に鮮やかに想起される。 エピグラフでも引用されているようにR・A・ラファティ「町かどの穴」をオマージュしているらしい。 タイトルの元ネタはおそらく鈴木健『なめらかな社会とその敵』(2013/01)。この書籍の第9章の題は「パラレルワールドを生きること」(SF的な意味でのパラレルワールドではないっぽい)。さらにこの書籍の題の元ネタはカール・ポパー『開かれた社会とその敵』である。どちらも読点が挿入されていないので、本作の題に入っているのは意図的なものと思われる。本文中では、異なる世界の情景は読点によって分かたれている(序盤の文で顕著)。 ゼロ年代の臨界点 富江、フジ、おとらの3人とその関係性は日本SF御三家(星新一、小松左京、筒井康隆)、海外SF御三家(アシモフ、クラーク、ハインライン)を意識していると思われる。架空史を論じた評論的文章の体で書かれているが、その真相は最後の注11に含まれている。つまり富江とフジは「藤原家秘帖」の藤原家の女性たちのように過去へと遡りながらSFをのこし、世界を早めているのだ。それに気が付いたフジはSF作家としての活動を再開したのである。よってこの作品はifものや架空史ものというよりは歴史改変ものだ。時間旅行者たちによって、我々の世界から、ゼロ年代が100年前に早まり、科学技術が大きく進展した世界へと変わったのだ。 フジ亡き今SFを書く“意味”を知っているのは読者たちしかいないわけで、これは伴名練からの「SF書こうよ」というメッセージなのかもしれない。 美亜羽へ送る拳銃 伊藤計劃、特に著作『ハーモニー』へのオマージュ。作品の文体や語り方なども伊藤計劃に寄せている。作中では“聖書”としてグレッグ・イーガンやテッド・チャンの著作(「真心」「しあわせの理由」「顔の美醜について―ドキュメンタリー」)などについても言及がある。こちらもラファティへのオマージュ(「クロコダイルとアリゲーターよ、クレム」)があるらしい。タイトルの元ネタは梶尾真治「美亜へ贈る真珠」。 計劃と言えば「虐殺機関」「ハーモニー」における嘘である。本作にもそのような「嘘」が仕込まれている可能性は十分ある。そこで2点ほど違和感を覚えた点を挙げる。 ①P74L2「多くのWKには固有の「仕様書」が添付されている―その一挺が誰と誰を、いかに結び付けるため作られたかの、覚書だ。」とあるが、そのテキストの内容は「いかに結び付けるため作られたか」というよりかは「いかに結び付いたか」といったほうがふさわしいものであるように思われる。 ②P83L5「無論、~私と妻の脳に現時点で変化はありません。6時間後、インプラントが稼働しはじめた時、我々は不滅の愛を得ます。」とあるようにWKのインプラント手術は6時間ほどかかってから効果が表れる。しかし、P136L1「待っていたのは数十分。やがて、彼女のまぶたがゆっくりと開かれた。」とあるように、ここでは1時間かからずに効果が表れている。厳密にはWKと異なるインプラント手術であり、作中では時間も経過しているから技術の進歩などにより、冒頭で紹介されていたWKよりもはるかに短時間で済むようなっているのかもしれないが… ホーリーアイアンメイデン お嬢様言葉で綴られた書簡体の小説。読者は送られてきた手紙を読み進めていく毎に妹琴枝の思いを知り、最後の手紙で彼女の真の目的を目の当たりにすることになる。それはまさに姉鞠菜の視点であり、我々は百合の当事者としてこの物語を読み進めることができるのだ。伴名練のお嬢様×書簡体は「彼岸花」でさらに極められているので、そちらもぜひ読んでいただきたい。 シンギュラリティ・ソビエト 設定と、党員現実・警備用レーニン・共算主義などのパワーワードだけでご飯が3杯はいけちゃいそうな作品。ヴォジャノーイとリンカーンによる化かしあいによって、真実のレイヤーが一体どこにあるのか常に揺らぎ、ハラハラさせる展開となっており、その揺らぎは読者の現実にまで波及している。実際には作品内の現実が本当で、東側が大勝利をおさめ、我々はただ、東側が滅び西側が勝ち残った仮想現実の夢を見ているに過ぎないのではないか(この本はヴォジャノーイの送り込んだプロパガンダか?)。 米国の人工知能がリンカーンなのは分かるが(州毎に投票で仮想現実に浸るかどうかが決定されるというのは、カンザス・ネブラスカ法を意識したものだろう)、ソ連の人工知能の名がヴォジャノーイとしたのは何故だろうか。ヴォジャノーイとは水の精であり、日本における河童のようなものらしい。人間を水に引きずりこんで奴隷にしてしまい、ロシアでは魚の支配者とされる。 少し調べたところ、チャイナ・ミエヴィル『ペルディード・ストリート・ステーション』にヴォジャノーイという種族が出てくるらしい。チャイナ・ミエヴィルは『都市と都市』で知られるSF・ファンタジー作家だが、国際社会主義連盟と国際社会主義ネットワークの一員であり、マルクス主義に関する博士論文を出版している。 ひかりより速く、ゆるやかに タイトルが駄洒落なわりに、事故当事者たちの周りの人々や世間の描写がとても生々しくてしっかりとしているのでえぐい。のぞみ123号なのは日本航空123便墜落事故からか?しかしその分解決策への突破口が開き、エンディングまで向かう流れでの高揚感、カタルシスと、青春感あふれる(語彙がない)スッキリとした終わり方が実に心地よい。とてもニヤニヤしてしまう。最後の「あっ上に飛ばせばええんか」という感覚になるのも良い。主人公の性別が、男性的な印象はあるものの、作中で明言されていないのも特徴的だ。ファンタジーパートの情景はルーシャス・シェパード「竜のグリオールに絵を描いた男」を彷彿とさせる。 (物理学徒としては本作の設定について、もっと様々な角度から検討してみたい感がある) 所感 どれも一級品でとても面白い作品だった。ベストを上げろと言われても答えに窮してしまう。アンケートを取れば三者三葉となるだろう。私が非常に驚いたのが、作品によって様々な文体を使い分けている点である。それぞれが読者の読書感に素晴らしい影響を与えるもので、単純に凄くうまいと思った。ここで挙げたもの以外にも様々なSF作品をオマージュしているそうで、本作をより楽しむためにも、もっとSFを読んでいきたい。 伴名練の次の著作が待ちきれない。
https://w.atwiki.jp/tohokusf/pages/224.html
SF研読書会 『ソラリスの陽のもとに』(スタニスワフ・レム) byちゃあしう 1 作者紹介 (wikipediaより) スタニスワフ・レム(Stanis?aw Lem, 1921年9月12日 - 2006年3月27日) ポーランドの小説家、SF作家、思想家。ポーランドSFの第一人者であるとともに、現代SF史上最高の作家の一人とされる。1921年、ポーランドのルヴフ(現ウクライナのリヴィウ)に生まれる。ギムナジウム時代に知能指数が180であることが分かり、当時の南ポーランドでは最も頭のいい子供だったという。 1951年、『金星応答なし』で本格的にSF作家としてデビュー。1955年に金十字功労賞受賞。1957年、クラクフ市文学賞受賞。1959年、ポーランド復興十字勲章受章。1965年、ポーランド文化芸術大臣賞第二席。1969年、外務省から外国でのポーランド文学普及に対して表彰状を受ける。1970年代になると、研究書『SFと未来学』や、メタフィクション『完全な真空』『虚数』などを発表。1979年、ポーランド復興上級十字勲章受章。1976年文化芸術大臣賞第一席。2006年3月27日、ヤギェウォ大学病院にて死去。享年84。 主な著作 ファーストコンタクト三部作 『エデン』『ソラリスの陽のもとに』『砂漠の惑星』そして『天の声』 連作シリーズ SFホラ話の『泰平ヨン』『ロボット』や『宇宙飛行士ピルクス』シリーズなど メタフィクション(仮想文学) 『虚数』(書評) 『完全な真空』(まえがき) ミステリー(?) 『捜査』 『枯草熱』 その他評論(『高い城・文学エッセイ』)なども多い 2 あらすじ 二重星系をめぐる一面を海に覆われた惑星ソラリス。しかしそれは自身の軌道をコントロールする能力を持った「生命体」であった。その観測基地に一人の心理学者・ケルビンが観測ステーションに派遣されてくる。しかし基地は荒れ果てており、駐在の科学者のうち一人は自殺、あとの二人も様子がおかしい。いったい何が起こったのか。そんな彼の前に現れたのは、自殺したはずのかつての恋人だった・・・ 3 翻訳の違い 『ソラリス』(国書刊行会) 沼野充義 ポーランド語からの翻訳 『ソラリスの陽のもとに』(早川文庫) 飯田規和 ロシア語版からの翻訳 ソ連政府の検閲による削除部分あり。 具体的には『「怪物たち」の章の p.197 12 行目から p.202 7 行目 (原稿用紙12枚分・p231の4行目後)、p.202 15 行目からp.204 5 行目 (4 枚分ほど・P231の12行目後)。「思想家たち」の章だと、p.284 11 行目から p. 294 まで 20 枚分強(p323の13行目後)。「夢」の章ではp.299 最後から 2 行目から、p.301 の12 行目まで(p329の13行目後)』(アマゾンレビューより) 1)ソラリスの原形質の生み出す現象(対称体)について 2)同上 非対称体について 3)ソラリス物質の分離例とその後、後半の化が進んだソラリス学について 4)クリスの心象について 分かりやすい表現が多い飯田訳に対してちょっと硬めな印象を受けるが、ソラリス学の部分に関しては完訳版のほうが充実している。 ちなみに共産主義化のポーランドでは現在コンピューター社会の根幹を成す「サイバネティクス」は資本主義陣営の生み出した反共産主義的「疑似科学」とみなされていたそうな。そのことも関係がありそうだ。 4 登場人物 クリス・ケルビン 心理学者 スナウト サイバネティクス学者 ギバリャン 物理学者 自殺 サルトリウス 異星生物学者 「黒人の女」 ギバリャンの「お客」? ハリー ケルビンの「お客」 数年前に自殺 (※ソダーバーグ版では「小さな子供」が誰かのお客として登場している また、別調査隊のバートン[ベルトン]が見た赤ん坊も言ってみればお客の一形態とみなせるかも。) 5 構造 ありがたいことにあとがきでレム自身が説明してくれている→ ・アメリカSF的ファーストコンタクト像への批判⇒人間形態主義(アントロポモルフィズム)・人間的理解への批判 「宇宙戦争」を高く評価、ただし目的がハッキリしていることに対する批判、そしてその後のSFの異星人と遭遇、平和的に事が進む/異星人と遭遇、戦争が起きてどちらかが勝ち、どちらかが負けると二元展開への批判 ⇒厳密には「目的が分からない」話は結構あるが、完全に行動原理が分からないわけではない 「分からない」ことが目的であり、メインテーマから外れるから、ではない (例:戦闘妖精・雪風 終わりなき戦い など) しかし、人間の『知性』とかを無駄とは考えていない(それだと純粋だから子供がコンタクトできるんだとかそーゆー方向に行ってしまうはず。そういう作品は別に存在するが) 他者との対峙をやめることはない⇒ラストの主人公(恋人の復活・地球への帰還による安泰が欲しいわけではない ここが映画版ではスッポリ抜けているところ) 他人ですら理解し会えないのに・・・」という「逃げ」もない様子。 ・レムの主題のひとつ:コミュニケーションの「失敗」 コンタクト可能=人間的レベル ではない レムの認識三部作 ソラリスと二作品 意味を人間が持たせることへの不満? 『砂漠の惑星』 機械生命体の究極進化体たる群体生物 『エデン』労働部分と思考部分に分離されるよう支配階級に改造された生物 →遭遇した「それ」に感情移入して人間的解決策を図るのが果たして正しいのか? 『天の声』でも異星人の通信に人間が意味づけを行うことに関する議論が行われる。(登場するゲル状物質「カエルの卵」はソラリスの原形質にそっくり) ・「不完全な神」・・・? あくまで限定された能力 そして認識 ・永遠の別れを味わったはずの相手とのラブストーリー・・・あくまで表面的なもの? ラブストーリーとして失敗している、ではなく「失敗した」ラブストーリー(過程)⇒「失敗した」ファーストコンタクトとの関連? ボーイミーツガールを一種のファーストコンタクトとして扱う(もしくはそのもの)作品は多いが、その過程は? 未知なだけでは見えない・分からない・想像できない存在を具体的に描化なくてはいけない過程で「発生」させたもの 「夢の中の彼女」(脳内の彼女)のコピー≠彼女 中では「ミモイド」という表現も使われているが、ずばりミーム(模倣子)の実体化版 (ミモイド自身はミームの影響で命すら捨てる行動に実際に出る人のこと 自爆テロ犯など) コピー自身の苦悩⇒現代もよくテーマに(他人の空似、アンドロイド、ホムンクルスetc)⇒やっぱりSF読みは「泣き」に弱い? ・本当か??⇒「受け取り方は複数ある、作品自身が読者を映す「鏡」である」 レム自身は鏡としてのソラリスを否定したいらしい ⇒これも人間本位の考えだから? 6 映画について 1972年『惑星ソラリス』 アンドレイ・タルコフスキー 2時間30分の「超」大作 意図的に観客に分かりにくいよう出来ているという。「2001年」と並び称されることが多い。 →特徴:「水」「大地」「自然」のモチーフ クリスの父親の存在 台詞:「我々に必要なのは『鏡』だ」・・・未知探求の否定 レム:「これはSFではなくて『罪と罰』だ。(以下罵詈雑言)」 2003年『ソラリス』 スティーブン・ソダーバーグ 99分 ジョージ・クルーニー主演 キャメロンも一部協力(?) 収入はあまり大きくなかったとか。 レム:「これは知性よりも感情の物語である まぁ、ハリウッド受けは難しいかもな・・・(以下映画に取り入られなかった作品のテーマについて)」 その他、テレビドラマ版(ロシア)や演劇『孤独の惑星』(日本)が存在する。 7 追記 4章のテスト計算について 「なぜこんなことで自分が正気か分かるのか?」 これが夢もしくは幻(つまり、頭の中で起きている何かの産物)であるならばその中の計算機がまともな計算結果を弾き出せるはずがない、という予測に基づく。しかし外部の世界に属するはずの衛星のデータも計算機も両方幻ならば「無意識の影響」(おそらくここまで計算が合ってるはず、という思い込み)により失敗する可能性は高いようにも思う。おそらくソラリスが脳内イメージから物質を構成していることに対比させている? 歴史的資料(?) 通信や計算の度に真空管を温めるシーンがある。これはしょうがない (砂漠の惑星もそうだったしあの宙道士コンビもけっこうアナクロな部品の塊)。 ニュートリノでできたF物質という一説も今では少し苦しくなってきている。これはソダーバーグ版ではいちおう最新理論に近い形で解釈しなおされている。 参考URL Anima Solaris ブックレビュー(レム追悼企画) http //www.sf-fantasy.com/magazine/bookreview/index.shtml Wikipedea→スタニスワフ・レム 惑星ソラリス ロシア映画の過去・現在・未来を紹介する唯一のサイト→ 惑星ソラリス パンフレット http //russiaeigasha.fc2web.com/arc/pamph/solaris/index.htm レム生前のインタビュー(Youtube:英語字幕あり) http //www.youtube.com/watch?v=jnNZRxYtmkE 例の「あんたは馬鹿だ!!!!」生ポーランド語版が聞けます 部会メモ 2019.03.19 Yahoo!ジオシティーズより移行 http //www.geocities.jp/tohoku_sf/dokushokai/solaris.html なお、内容は執筆当時を反映し古い情報・元執筆者の偏見に基づいていることがあります by ちゃあしう
https://w.atwiki.jp/briah/pages/436.html
C鯖からの移住部隊らしい 部隊内から名前に関する不満が出て派閥争いが展開、 現在は「お代官様」と名を変え活動中らしい(晒しスレのログより)
https://w.atwiki.jp/aquarianagetcg/pages/5215.html
Character Card [[阿羅耶識]] [[スチューデント]]/[[タレント]] 1/1/2 ▼/[[シールド]]/チャージ1 No.3138 Rarity C Illustrator ナナハラユウ Expansion 冥約の少女 カード考察
https://w.atwiki.jp/drdiasan/pages/50.html
部長 デスカーン(霊組) 副部長 ドータクン(鋼組) 会計 シンボラー(超組) 部員 ネンドール(地面組) ゴルーグ(霊組)
https://w.atwiki.jp/bisidol/pages/50.html
2ちゃんねる過去ログ @アイドル板 新生アイドル研究会 BiS 新生アイドル研究会 BiS part2 新生アイドル研究会 BiS part3 新生アイドル研究会 BiS part4 新生アイドル研究会 BiS part5 新生アイドル研究会 BiS part6 新生アイドル研究会 BiS part7 新生アイドル研究会 BiS part8 新生アイドル研究会 BiS Part9 新生アイドル研究会 BiS part10 新生アイドル研究会 BiS part11 新生アイドル研究会 BiS part12 新生アイドル研究会 BiS part13 新生アイドル研究会 BiS part14 新生アイドル研究会 BiS part15 新生アイドル研究会 BiS part16 新生アイドル研究会 BiS part17 @(狼)板 BiSがavex移籍でメジャーデビューするんだけど Bisの股間wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
https://w.atwiki.jp/tohokusf/pages/169.html
星を継ぐもの(1977) 創元社SF文庫 1981年度星雲賞海外長編部門賞受賞作 ジェイムズ・P・ホーガン 05/06/06担当:ちゃあしう 1・作者紹介 ジェイムズ・パトリック・ホーガン 1941年ロンドン生まれ。航空機関連からコンピューターセールスへ転向。いろいろな理系企業を渡り歩き、その後アメリカへ移住。「2001年」に触発された処女長編「星を継ぐもの」でデビュー。 2・代表作 「星を継ぐもの」「ガニメデの優しい巨人」「巨人たちの星」「内なる宇宙」「Mission To Minerva(未訳)」 以上が「巨人たちの星」シリーズ。その他、「終局のエニグマ」「創世記機械」「量子宇宙干渉機」 「未来の二つの顔」「断絶への航海」「時間泥棒」「未来からのホットライン」「プロテウス・オペレーション」 「造物主の掟」「造物主の選択」「マルチプレックス・マン」「インフィニティ・リミテッド」「ミクロ・パーク」 そして(日本における最新作)「揺籃の星」など 3・あらすじ 大型企業複合体IDCCの一科学部門、メタダインに勤めるヴィクター・ハント博士にUNSA・国連宇宙軍からお呼びがかかる。月面基地の建設現場で真紅の宇宙服を着た死体が発見されたのだ。コードネーム「チャーリー」と名づけられた死体とその所持品に対して直ちにあらゆる角度からの調査が開始される。所属:不明。身元:不明。死因:不明。死亡推定時刻:5万年前・・・ 謎が謎を呼ぶ調査。新たな事実はまた新たなる謎を生む。果たしてこの死体の謎はすべて解明されるのか?そして、木星ガリレオ衛星群のひとつ、ガニメデの氷河の奥からも、宇宙船の残骸が発見される。その関連は? 4・登場人物など ヴィクター・ハント 原子物理学者 トライマグニスコープを開発 UNSAに出向 後に転職 クリスチャン・ダンチェッカー 生物学者 絵に描いたような偏屈・意固地な科学者だが、おいしいところは・・ グレッグ・コールドウェル 国連宇宙軍航行通信局ナヴコム(NAVCOM?)本部長 柔軟で臨機応変な上司 リン・ガーランド コールドウェルの秘書 さまざまなグループの連絡役も勤める ドン・マドスン 言語学者 ルナリアン語解読に力となる 通称「風狂専門馬鹿」 ロブ・グレイ メタダイン工学部長 ハントの(いちおう)相方 「チャーリー」 月面で発見された「ルナリアン」第一号 セルター基地整備員として配属される コリエル 「チャーリー」の相棒(こちらは本名) 巨漢で賭け好き。女に目がない 「シリル」 人類と類人猿とのミッシング・リンク(注:失われた輪(リング)ではない 5・テーマ・考察 多くのヒトが「星を継ぐもの」は本格ミステリーである!と評論している(考古学SFと見る人もいる)。最近は小野不由美推薦!なんてオビがついてますな。実際、謎が提示され、その解明だけがメインのSFというのは珍しい。近年の作品群のように謎がぽんぽんと掲示されては、答えを暗示するだけで解明されずに終わるなどということも無く、続編につながる部分以外種明かしが行われる。もちろん謎の解明にはそれなりの理論付けが行われ、読者に対して非常にフェアである。登場する科学技術の背景もトライマグニスコープ・超融合爆弾・反物質大量破壊兵器アニヒレーター・ガニメアンの駆動システムなどを除けばそれほど現在のものと外れていない。少々強引なところ(体の構造から重力場を推測し、太陽までの距離を測る、月と地球の引力に関するいくつかの表現etc)などもあることから、「星雲賞でこれをハードSFとして推薦した人間は(以下検閲により削除)」(石原藤夫・SFマガジン82年6月)などと悪口を言う人間は存在するものの、謎へのアプローチが多面的かつ科学的なところはなかなか。まぁ、別にハードSFとして読まなくてもいいんだと私は思うのですが。 謎解きのメインはルナリアンの起源について。ルナリアンは人間に極めて酷似した外観を持ち、骨格・酵素等もほぼ現在のホモ・サピエンスと同等である。しかし、地球上には「5万年前の超古代文明の遺跡」は存在しない。ハントが地球外起源、ダンチェッカーが地球起源という視点で謎に迫っていく。「進化は結果的に似た究極の理想形を生み出す(例:魚類のサメ・哺乳類のイルカ・爬虫類のイクチオサウルス)」という考え方については現在も議論が尽きないので一概に地球外起源は否定できないとは思うが、教授が缶詰の魚の骨格を、ガニメアン骨格と対比・対応してゆくさまはお見事。(ルナリアンが缶詰にしていたということは、今の地球人もミネルヴァの魚料理が食べられる?) はじめのシーンは、古典的未来アイテム:エアカーにVTOL旅客機が登場し、紛争は減少してその分を宇宙開発につぎ込む国連宇宙軍UNSA(注:谷甲州の航空宇宙軍のような純軍事組織ではない)が誕生している、とあまりに明るい未来を描きすぎな印象があるが、その後のハント・グレイ・スタインフィールドといった「理系人間」の生態をつぶさに描いているところは興味深い。ぜひご自宅のコーヒーにも「酸化第二鉄」のラベルを…という冗談は置いておいて、ハントの進学・就職・移籍などの部分はホーガン自身の人生経験が反映されているそうだ。ダンチェッカーは往年のチャレンジャー教授(注:コナン・ドイルのSF的作品に登場する万能科学者。専門は何だ?)的な古典SF的科学者そのもので、彼の偏屈さと洞察力が強調されてるだけなのは少々残念。彼の素顔ももうちょっと描いてほしかったところだ。それでもラストの「解決編」で主役を食ってみたり、慣れない冗談を言おうとしてみたりと大活躍。がんばれ主人公!(違) 研究や分析ばかりで無味乾燥な文章になりがちかと思わせて、「チャーリーの日記」という重要アイテムをすえてくるところはうまいと思う。宇宙戦闘描写などは「本家」にはかなわぬものの、種族の生存だけを目的に、最終戦争へと向かっていった自分たちをむなしく思いながら筆を置いた日記のラストはなんともいえない余韻を残す。個人的にはコリエル関連のエピソードがもうちょっと読みたかったがな!とくに通信隊の…(ぉ) そしてラストのダンチェッカー教授による種明かしとエピローグ。ここで初めてタイトルと内容との繋がりがはっきりする――”Inherit The Stars”「星を継ぐ者」。”Star”でも”The Star”ではなく、”The Stars”だ。「継ぐ」のは決してこの小さな水玉ではないのだ! ダンチェッカー教授の言葉を「超人間中心的な利己的発言」ととるか「人間の無限の可能性をあらわした素晴らしい発言」ととるかはヒトによって分かれるかもしれないが、とにかく、これこそが「センス・オブ・ワンダー」なんだっ、文句あるか!と私は言い切ってしまいたい。 これはこれで話として十分なラストを迎えたわけだが、話はまたまたダンチェッカーの独演会のために、もとい、別の謎の解明のために次回作、「ガニメデの優しい巨人」へと続くのである。これは次回のお楽しみ。 6・コレに興味を持ったヒトにすすめる作品 もちろんホーガン作品はぜひ。 エドモンド・ハミルトン「虚空の遺産」 月面で古代の軍事施設が発見された。どうやら人類はかつて太陽系に広がる帝国を築き上げていたらしく、さらに大宇宙に挑もうとしていた矢先に宇宙の敵に先制攻撃を受けて文明を喪失したらしい。大宇宙の謎を求めて、探検隊は残されていた超光速宇宙船で出発するのだが・・・スペースオペラの大家の描く異色作。 グレゴリイ・ベンフォード「夜の大海の中で」 突如軌道を変更し、地球への衝突の危機が迫る特異小惑星・イカルス。ナイジェルは火星探査ミッションへの参加の予定を変更され、爆破のためにイカルスへ赴くが・・・ 一人の科学者の生き様とその人生の節目ごとに太陽系に出現する謎の無機物体の調査を描く。こちらも実は人類の… あと、解説で言及されているアルジス・バドリス「無頼の月」はSFマガジン1961年8月~11月号に連載されているそうだ。物質転送機を使って即死トラップ満載の月の遺跡に挑む話(だが、実際は違う)らしい。でも抄訳。 7・少々ネタ談義 タイトル 傾向と対策 映画:「機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者」 TV:ジーンシャフト第一話「惑星を継ぐ者」 漫画:戸田尚伸「惑星を継ぐ者」 TV:ふしぎの海のナディア最終話「星を継ぐ者」などなど 「Z」で継ぐのは何だ?もしや予告編に出てきた木星? やっぱりあるある翻訳上の注意点 「スカイライン」=「地平線」、タイコ=ティコ(チコ)・クレーター かの石板(*1)発掘地点 「アニヒレーター」(Annihilate 全滅・壊滅させる Annihilation 物質・反物質の対消滅を意味する)(*2) 「原理と機能を一言で表している」といわれても、ちゃんと解説しないと分からんと思うがコレ。第一、英語でそうなっただけのような。 「ファーザー・クリスマス」 サンタクロースの俗称(おもにイギリス) その男、所属不明につき 「それは歴史の中で隠蔽された過去の宇宙飛行士では?」なんて言葉も期待してたんだが。 しかし、真紅の宇宙服って月面での戦闘では目立つ。整備班専用なのか(でもコリエルの戦闘服は青)実は殺る気満々で、戦闘力当社比30%増なのか。「2001年」のボーマン船長を参考にしたというのが一番かも。 ルナリアン SF世界では、月の住人は「ルナリアン」が標準(プラネテスのノノ、ガンダム0083のニナも自らこう名乗っている)。ウエルズの作品での月の住人は「セレナイト」。ムーリアン・ムーシャンは少々語呂が悪いので使用されない…のだろうか。ムーンレイスなんて言い方もあるが。 トライマグニスコープ ニュートリノビームで内部を透視する機械は鈴木光司「リング」シリーズの三巻目「ループ」にも登場する。「ループ」はヒトガンウイルス・人工生命といいネタは持ってきてるんだが、それまでの「リング」「らせん」の世界を「(検閲)」にしてしまうのはいかがなものか。とにかく、現在の技術ではニュートリノを捕らえることそのものがなかなか難しいので実用化は難しいだろう。あらゆるシールドを貫通する通信手段としてなら有望かも ちなみに、私はリング・らせん・ループをSFとして興味深く読みましたが、映画版は見たことがありません(何) プロローグ 折りたたみテントやヘルメットの飲食用チューブ(通例、自殺用の毒薬なんかも入ってたりする)の記述は無いが、チャーリーやコリエルたちはどうやって月面(基地外)で缶詰や食糧コンテナの中身を食ったのだろうか? ちなみにコリエルが「巨人」とされているのは、決して彼がガニメアンだからではない。 ルナリアンの「巨人伝説」 記述を見る限り、ルナリアンは自分たちの進化の途中に去っていった巨人たちを何らかの形で記憶していた? なんとなく「オーバーロード」(幼年期の終わり)とかを思い出させる設定ではある。 エピローグ SF映画なんかでありそうな展開。オーパーツ(その時代にあるはずのない遺留物 Out Of Place ARTifacts)ネタ。 このラストについて、センス・オブ・ワンダーの「駄目押し」とする好意的な意見が巻末に出ている一方、「SF的に大きな落とし穴」と評する動きもある。(「プロテウス・オペレーション」巻末 川又千秋の解説より) 別にそこまで悪いと思わないがなぁ。ちなみに、「2001年」に影響を受けながら、ここは「3001年」を先取りしてるかも。 2018.11.22 Yahoo!ジオシティーズより移行 http //www.geocities.jp/tohoku_sf/dokushokai/inherit_the_stars.html なお、内容は執筆当時を反映し古い情報に基づいていることがあります by ちゃあしう
https://w.atwiki.jp/tohokusf/pages/116.html
東北大学SF小説研究会 夏合宿読書会 長谷敏司「あなたのための物語」 1、作者について 懲りもせずにウィキペディアより 1974年3月18日生まれ。大阪府出身で関西大学卒。ハードSF的な作風を持つとも書いてるのに、なぜかウィキペディアにはファンタジー作家と書かれてる。大学卒業後は会社に勤めたが、衝動的に退職、25歳前に病気を患い、危機感を抱いて作家を志した。2001年「戦略拠点32098楽園」(原題はアルカディア)で第6回角川スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。デビュー作の「戦略拠点32098楽園」はSFファンの間から高い評価を得ているが現在絶版、高額取引されているらしい。Amazonのマーケットプレイスでは600円より(定価は税抜きで419円)。2009年出版の「あなたのための物語」は第30回日本SF大賞にノミネートされた。 以下余談、ウィキペディアにまでロリコン・変態的な作風も持ち合わせていると書かれている。長谷自身は「円環少女」発売前に、有川浩との対談の中でロリコンではないと言っている。また、本人のブログでユニセフの児童ポルノ規制強化キャンペーンについて触れている場所でも、同じくロリコンではないと言っている。 2、登場人物 正直一人でいいんじゃない? と思いつつもさびしいので詰め込んでみた サマンサ・ウォーカー ニューロロジカル社のオーナー。NIPの基礎を共同研究者と共につくりだした科学者。大人げない研究バカ Wanna be 仮想の人工神経だけで構成された人格。小説を書くことが目的。 マサフミ・カンザキ 主治医 デニス・ローネンバーグ ニューロロジカル社のCEO。サマンサと同じ研究室で学んだ。 ケイト・ブライアン 新進の疑似神経学者。サマンサの後任。教科書通りの人 3、ストーリー オープニング いきなり死ぬサマンサ 1 《Wanna be》の起動実験は成功。サマンサは自身へのITP移植のため入院する。《wanna be》の創造性を実験するために小説を書かせる。手術は無事成功してサマンサは退院。《wanna be》の書いた文章は正直下手。ITPの問題点。サマンサの体調に異常。医師の診断は自己免疫疾患、治療は不可能。サマンサは延命療法を選んだ。《wanna be》の処女作、なぜかヒロインの名はサマンサ。少しでも生きるためにあがくサマンサ。脳の機械化は不可能。疑似神経についてのケイトとの対談。サマンサの研究する目的。サマンサは《wanna be》に彼がつくられた目的を告げる 2 サマンサは一人で平板化の研究。ITPの反対運動。サマンサの脳神経配置のITPへの翻訳と分析。自分の死の恐怖を見せつけられ、サマンサは《サマンサ》を削除。サマンサはクリスマスパーティーの会場で体調を崩す。ITPによる感情の制御。続けていくうちにサマンサに平板化が起こる。症状の悪化に苦しんだサマンサはITPで自分の感情を操作する。《wanna be》の書いた小説は強調すべきことと書き流すことが区別できていない。これは平板化と同じ現象。《wanna be》が優先順位を割り当てることができれば平板化の解決の助けになる。サマンサはそれを論文にするが、病気はさらに悪化して、結局入院する。退院後、サマンサは実家に帰る。両親と話したサマンサはシアトルへ帰る。ITPを使うと、“灰色”が襲いかかる。 3 “灰色”は疑似神経が停止した状態で、原因はITP制御部の不良。《wanna be》の告白。《wanna be》の書いた小説で最初のバッドエンド。ケイトの平板化対策は双子のITP人格を使用した対照実験。ケイトの解決策は優先順位をITP制御部に生身に合わせて割り振らせること。サマンサの案は脳内で二つのITPを稼働させることだが、反発も多いと予想。サマンサは優先順位の基準点は死んでいる状態を提案。会議は空中分解。サマンサは車いす生活に入る。平板化を避けるための理論作りに取り掛かる。《wanna be》とサマンサのITPによる情報交換。情報交換中に発作、サマンサは入院し人工臓器を移植される。ITP情報の不正使用が会社にばれ、サマンサの研究室は閉鎖される。サマンサは《wanna be》に自分の脳内に来ることを提案するが、《wanna be》は断り死を望む。《wanna be》は最後の作品を残して、消滅。 4 サマンサは《wanna be》の最後の小説を読み、彼に愛されていたことを知って泣く。 5 サマンサは家で《wanna be》の書いた小説をひたすら読んでいたが、デニスに連絡を入れてニューロロジカル社に向かう。サマンサはそこで以前ITPに翻訳した自分の人格《サマンサ》と対面する。今度は《サマンサ》から彼女を脳内に書きこむことを提案されるが、サマンサは拒否。サマンサは肉体の優位性を認め、《サマンサ》に別れを告げる。 4、ガジェット ITP(Image Transfer Protocol) 神経の発火を模倣し、意思や意味を脳内でつくりだす言語。NIPがハードでITPがソフトのようなもの? 環境セル 宇宙服のようなもの。これを着てれば寒さ暑さは全く感じない。これさえあれば、アウトドアでも引きこもれます。 NIP(Neuron Interface Protocol) 脳神経と電動義肢を接続する人工神経を構成する技術。 文章作成プログラム 『ノックスマシン』のような方程式ではなく、小説を書く仮想人格。 人工知能(AI) コンピューターに人間の知能を模倣させる技術。SFではおなじみ。古くはHALから新しい物だと瀬名秀明のケンイチまでいろんなところに出てきます。 死について この本では「残念ながら、死と苦痛は人間にとって必要」というスタンス。『しあわせの理由』に収録されているイーガンの作品「ボーダー・ガード」には「死が人生に意味を与えることは決してない。つねに、それは正反対だった。死の持つ厳粛さも、意味深さも、そのすべては、それが終わらせたものから奪いとったものだった。けれど、生の価値は、つねにすべてが生そのものの中にある―それがやがて失われるからでも、それがはかないからでもなくて」とある。これは真っ向から対立してるわけで、『あなたのための物語』はイーガンへのアンチテーゼなのかもしれない。 5、著作紹介 長編 「あなたのため」以外は角川スニーカー文庫。 円環少女(サークリッドガール) 2005年~、11巻刊行。登場人物に変態、変人が多いとウィキにすら書いてある。このことは長谷自身も認めている。 戦略拠点32098楽園 デビュー作 天になき星々の群れ―フリーダの世界 2002年。女子高に潜入した工作員の物語。 あなたのための物語 短編 楽園行き 角川ホラー文庫「ウルトラQ dark fantasy」に収録 トイ・ソルジャー 角川スニーカー文庫「S BLUE ザ・スニーカー100号記念アンソロジー」に収録。2か月で15歳の肉体に成長し、知識や経験は疑似神経を埋め込むことで補われる人造兵士たちの物語。「フリーダの世界」と世界観を共有している。 地には豊穣 ITPに関する話。ハヤカワ文庫「ゼロ年代SF傑作選」に収録 allo,toi,toi 上と同じくITPに関する話。性犯罪者矯正用ITPの実験モニターに選ばれた8歳の少女を性的虐待の上殺害し、刑務所で終身刑に服する男の話。SFマガジン2010年4月号に収録
https://w.atwiki.jp/kbek/pages/16.html
メンバー紹介 (50音順) ●石部 尚登(東京外国語大学グローバルCOE研究員) 社会言語学 ― 言語政策・少数言語/方言復権運動、コーパス言語学 時に社会言語学者にとっての「楽園」とも称されるベルギー、ややもすれば「言語戦争」という扇情的な用語と共に語られてきた(る)ベルギー、「言語問題」について夥しい数の著作が記されてきたベルギー、ただし昨今の政治的な混迷(迷走?)と比して「言語問題」はもはや「解決済み」との評価が下される現在のベルギーの状況。フランス語とオランダ語(フランデレン語)という公用語のみを対象として言語政策がなされてきた背景で、様々なことばの在り方が均質化されてきた。このような言語政策のもつ「負の効用」に関心をもっています。 ベルギー経験:2000年-2001年モンス大学留学、2007年ブリュッセル滞在、2008年-2009年リエージュ大学留学。 ●板屋 嘉代子 1995年から2001年までベルギーのアントワープに住んでいました。現地でオランダ語を習い、帰国後も勉強を続けてオランダ語の実務翻訳をしています。専門的に研究している事物はありませんが、研究会で皆さまの発表を拝聴することは大変興味深く、楽しみにしております。 ●井内 千紗(大阪大学大学院言語文化研究科・博士後期課程) ベルギーとの出会いは大学時代の交換留学から(Vesalius College, 2001年8月~2002年6月)。そこで特にブリュッセルの多言語状況とメディアの関係について興味持ったことがきっかけで、現在に至ります。研究の対象は放送メディア(特にコミュニティ・ラジオ)ですが、関心領域は限りなく広く・・・です。まだまだ未熟者ですが、この研究会を通して、特にブリュッセルという都市を単にEUの首都としてではなく、あらゆる文脈で語り合う機会を持てれば、と思っています。 研究キーワード:ブリュッセル, Ixelles/Elsene, Flagey, NIR/INR, RTBF, VRT, FM Brussel, TV Brussel, Matonge, オランダ語圏に見られるallochtoon/autochtoonの言説 ●今中 舞衣子(大阪市立大学大学院言語文化学専攻・後期博士課程) 2006年9月から2008年9月まで、ベルギーのモンス・エノー大学に派遣していただいたことがご縁で、ベルギーと関わりを持つようになりました。現地では言語教育の研究を続けながら日本語教育に携わっていましたが、帰国後は日本におけるフランス語教育を軸に活動しています。フランス語教育の分野では、英語教育に比べて、フランス語をつかう人々の文化の多様性が前提となることがまだまだ少ないように思います。また、ひとつの国の中で複数の言語が公用語として使用されているというベルギーの言語状況からも、言語教育のあり方について学ぶことは多々あると感じています。この研究会を通じて、さまざまな分野の人たちと意見を交換していきたいと思います。 ●岩本 和子(神戸大学大学院国際文化学研究科) 専門はフランス語圏の芸術文化論。特にベルギーのフランス語文学と、フランス作家スタンダールを研究。フランス文学研究のためになぜかブリュッセルに派遣され、留学1年でこの国にハマってしまったのがベルギー研究の始まりでした。 オランダ語圏文学にも目を向けつつ「ベルギー性」を追求していきたいと思います。ベルギーのビールとチョコレートが大好きです。 単著『周縁の文学ーベルギーのフランス語文学にみるナショナリズムの変遷』(松籟社 2007、博士論文を出版)『スタンダールと妹ポーリーヌ』(青山社 2008)、共著『スタンダール変幻』(慶應義塾大学出版会 2002)『欧州諸国の言語法ー欧州統合と多言語主義』(三元社 2005)、共訳『スタンダールの生涯』デル・リット著(法政大学出版局 2007)。 ●加来 奈奈(奈良女子大学大学院人間文化研究科・博士後期課程) カール5世の時代のネーデルランドの歴史を研究しております。特に、カール5世の叔母でネーデルランド総督のマルグリット(マルハレータ)の外交政策やカール5世とネーデルランドのコミュニケーションを中心に研究を進めています。 現在、ヘント大学に留学中。 ●狩野 麻里子 もともとはフランスの哲学専攻でしたが、フランス留学を機に世紀末の象徴主義に興味を持つようになり、修論後、博士課程からはベルギー象徴主義に。ベルギー滞在歴は、前の職場(某県立Museum)からベルギー王立美術館に派遣され一年間学芸員として調査研究を行ったのが始まりで、その後ULBで文化マネージメントのD.E.S.を取得。専門は、ベルギーの象徴主義で(特に絵画と文学)にみられる神話回帰がテーマ。これと平行して、最近は文化マネージメントの方にも、というより、こちらに比重が移りつつあります。 ●河内 華子(大阪大学大学院文学研究科・博士後期課程) 専攻は西洋美術史で、16~17世紀ネーデルラント絵画史を専門にしております。 特に1560年代~1600年頃の期間、ちょうどスペイン・ハプスブルク家統治下のネーデルラントが、現在のベルギーとオランダに分裂する前後にかけての時期が研究対象です。 ピ―テル・ブリューゲル一世で卒論を書いた後、ブリューゲル作品の注文主や収集家の研究を試みて迷走をくり返していましたが、幸いにもベルギー留学の機会をいただき、2007年9月よりルーヴェンのカトリック大学でお世話になっています。 現在は、地元ルーヴェン出身の一肖像画家についての研究で博論を準備中です ●河崎 靖(京都大学大学院人間・環境学研究科) 学生時代は言語学科に在籍してましたので、一般言語学の諸理論を学びつつ、いくつかの言語(ゲルマン系を主として)をやっておりました。職業上はドイツ語教師となりますが、個別言語学はむしろ避けたく、ゲルマン・ロマンス・ケルトの関係という広めの視野から言語境界の問題に関心を寄せ、この脈絡で「ベルギーの言語境界線」に興味があります。 ●苅田 弥生(神戸大学大学院国際文化学研究科・修士課程) 私自身は学部時代は仏文科に所属していたこともあり、また今はEUに関心をもっており、ベルギーについても、特にその言語政策に関して非常に興味があります。 ●小林 亜美(神戸大学大学院文化学研究科・博士課程修了) 専門は、スタンダールを中心とした19世紀フランス文学です。文学、小説が主な関心の対象ですが、絵画や音楽もキーワードに研究をすすめています。ベルギーとの関係は薄いのですが、ベルギー(フランス語)文学やベルギー象徴派を中心としたベルギー絵画にも興味を寄せていますので、本研究会でいろいろと楽しく勉強させて頂きたいと思っています。 ●正躰 朝香(京都産業大学外国語学部国際関係学科) 専門は国際関係論で、特に文化や社会にかかわる国際政治について(民族問題、多文化主義、移民、地域統合など)研究しています。民族問題の調停という観点での連邦制研究の事例として、ベルギーを中心に扱っています。また地域統合下でのエスノナショナリズムの変容、サブナショナルな主体の位置づけについてが目下の関心の焦点です。 『ヨーロッパ統合の国際関係論 第二版』(共著、芦書房、2007年)、『グローバリゼーション国際関係論』(共著、芦書房、2006年)など。 ●鈴木 義孝(関西大学非常勤講師) 2003年夏から2004年夏まで1年間、オランダ語圏のルーヴァン・カトリック大学に留学していました。 大学院では、言語学(主に英語、日本語)、言語学史を中心に研究していますが、留学をきっかけとしてベルギーの言語事情、言語政策、蘭・仏語などにも関心を持っておりますので、本研究会に参加して、いろいろな方と意見交換、勉強させていただきたいと思います。 ●中條 健志(大阪市立大学都市文化研究センター研究員) 「フランスの移⺠問題」を出発に、「郊外暴動」の中で語られる「若者」と彼(女)らの「社会的排除」に関⼼を持っています。現在、“フランスのメディアにおける「郊外」および「若者」の語られ⽅”をテーマに博⼠論⽂を準備しています。また、フランスの対アフリカ政策(マグレブ諸国、⻄アフリカなどを対象)にも興味があります。 「ベルギー」に直結した研究テーマではありませんが、是⾮こちらの研究会でこれからも勉強できたらと思っています。 ●寺尾 智史(てらお・さとし)(神戸大学大学院国際文化学研究科) 関心地域は南欧と、過去、この地域と「植民地」としてつながれていた中南米、アフリカです。 この研究会では完全にアウトサイダーです。 しいて言えば、中学・高校と通った姫路の淳心学院という学校が、ベルギー発祥の ローマ・カトリック系ミッション団「スクート会」に属するため、校長も英語教師もベルギー人だった、というご縁はあります。 高校卒業後は、ベルギーを観光客、出張者の立場で、そして今はEUの言語政策策定の 一中心として、「おのぼりさん」の感覚で眺めさせてもらっています。 というわけで、皆さんの研究を拝聴するばかりで申し訳ございませんが、自称「アフリカ班」として、旧ベルギー領のコンゴ民主共和国とその周辺諸国の言語状況や文化について識者をお呼びし議論できたらいいなと思っております。 ●三田 順(日本学術振興会特別研究員PD) 専門はベルギーにおける象徴主義。ベルギーにおけるオランダ語、フランス語、ドイツ語による文学と美術を文化アイデンティティーを巡る観点から比較研究している。ベルギーではブリュッセル自由大学 (ULB)での留学経験があり、現在はヘント大学で研究滞在中。 ●三宅 拓也(京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科・博士後期課程) 陳列所(物産陳列所、商品陳列所)という近代特有の展覧施設の建築を中心に、その業務を含めて近代日本の都市空間における実態を明らかにすべく研究を行っています。 陳列所とは1900年前後に世界的に設置された商業奨励機関で、大規模なものは世界の最新商品、製品カタログ、図案資料の収集展示などを総合的に行う商業ミュージアムともいえる存在です。 専門は近代日本建築史であるためベルギーが直接の研究対象ではないのですが、日本における商品陳列所の原点としてブリュッセルの商業博物館に興味を持っています。 ●矢追 愛弓(九州大学大学院芸術学研究室・修士課程) 日頃は九州の地でベルギー象徴派の画家フェルナン・クノップフについて研究しています。 代表作《愛撫》を中心にクノップフの内面にせまれたらと考えています。
https://w.atwiki.jp/neumann/pages/45.html
歴代司法試験累積合格者数(1949-2005年) 1 東京大学 6410人 2 中央大学 5450人 3 早稲田大 4133人 4 京都大学 2867人 5 慶応大学 1983人 6 明治大学 1082人 7 一橋大学 978人 8 大阪大学 777人 9 東北大学 752人 10 九州大学 639人 11 関西大学 587人 12 名古屋大 556人 13 日本大学 518人 14 同志社大 489人 15 立命館大 423人 16 神戸大学 409人 17 法政大学 392人 18 大阪市大 386人 19 北海道大 385人 20 上智大学 314人 司法試験資料室に戻る