約 3,641,325 件
https://w.atwiki.jp/pokeyakata/pages/154.html
名前 ジーン・サーガル 種族 グラエナ 性別 ♀ 年齢 19 身長 普通 体重 普通 性格 かなりのツンデレ 備考 常に鎖の首輪をしている。 口調も雄のように雄々しい。 だが、体型が完全な雌なので、雄に間違えられることは無い。 特に胸が異常に豊かで、よく痴漢などをされる。 しかし、痴漢をした雄は皆ボコボコにされている。 タイプは「責任感の強い雄」らしい点
https://w.atwiki.jp/hisouten-aahokanko/pages/109.html
永江 衣玖 . ~^ 、. ⌒ヽ. i て ,. -弋ナ 、 r.,.'´ ̄ヽ ん_,l_,-={X}=、!,_ ,ソ / j .ノr‐,ぐ (´ ( '´,Y_]_ノ ,..-‐'" ̄ヾ`ソ /_ ! `く_,>‐ァ‐-、 / `ー'´ヽ ---------------------------------------------------------------------------------------------. ~^ 、. ⌒ヽ. i J ,. -弋ナ 、 r.,.'´ ̄ヽ 8_,l_,-={X}=、!,_ ,ソ / j .ノr‐,A (´ ( '´,Y_]_ノ ,..-‐'" ̄ヾ`ソ /_ ! `く_,>‐ァ‐-、 / `ー'´ヽ ---------------------------------------------------------------------------------------------\ \ /´⌒ヽ \ \ /´⌒ヽ_∠__ \へ \ \、、ノ ヽ \ \,, \\ \ \ __ノ / \ \ ノ 丿 l \ \ /i \ \ / / i \ \、、ノ i ___ヽ ヽ//___| \_ ー |_ { = ミV7ニ } _ト _ ゝ〈___. ノーへ __ ノ _| -、 / ( ───-───-───?? 丿 〝 r'´>'"丿川j !川|; .`7ラ`ヽン、 ;;;;;;;;;; ヽ '‐r'´ . . ;=、彡/‐-ニ''_ー<、{_,ノ -一ヾ`~;) く . . . . . !ハ.Yイ ぇ'无テ,`ヽ}}}ィt于 `|ィ"~ *** ) . . . . |.Y } ! `二´/' ; |丶ニ ノノ 逆に考えるんだ ) . ト、リ !ヾ 、 丶 ; | ゙ イ } 「【ここにアドバイスとか入れてね】」と { . . l { } ` ,.__(__,} /ノ 考えるんだ ヽ ! `'゙! ,.,,.`三'゙、,_ /´ ,/´{ ミ l /゙, -…-~、 ) | ,r{ \ ミ \ `' '≡≡' " ノ __ノ ヽ \ ヽ\ 彡 ,イ_ \ \ ヽ 丶. ノ!|ヽ`ヽ、 \ \ヽ `¨¨¨¨´/ |l ト、 `'ー-、__ \ `'ー-、 // / . .} `'ー、_ `、\ /⌒ヽ /! . .| `、 \ /ヽLf___ハ/ { ′ / ! ヽ--------------------------------------------------------------------------------------------- | |i, | | ,j i ヽ、 | L ,,イ ヾヽ ヽ、 L_,j ´ // , 、 \\_ `i `イ¨ ノ `ー' . /,,イ , ヽ\ ) ゝ入 ヽイ、__ ノ~/, イア _r, '´ \\! ̄ ( `! `´∠r‐"/.ヽ、 _r\ \ノ -'、 ノ \/ \\ノ /!、 / ``ー―‐一'´ ヽ-,‐'´ _, ヽ `ヾ .. ..... __ノー-;;ム-イ´, `iヽ、 ` - ,,_ / r ´,、 フ´ ヽj、 ` 'ー- 、_ ィ ´ l i `i ヽ l ヽ ヽ、 _j;;,j ! r´ ヽ ... `ー __ __ -Y\\ l ヽ .... ヽ ____ヽ _,---一ヽ_ ヽ_ \`ー' ノ....... *** `ー-、__,--‐ '´ `ー''`ー´ ┼ヽ -|r‐、. レ | d⌒) ./| _ノ __ノ--------------------------------------------------------------------------------------------- | |i, | | ,j i ヽ、 | L ,,イ ヾヽ ヽ、 L_,j ´ // , 、 \\_ `i `イ¨ ノ `ー' . /,,イ ヽ\ ) ゝ入 ヽイ、__ ノ~/, イア _r,ノ. \\! ̄ ( `! `´∠r‐"//.ヽ、 _r\ \ノ -'、 ノ \// \\ノ /!、 / ``ー―‐一'´ ノ / ヽ `ヾ .. ..... __\ `iヽ、 ` - ,,_ _ _⌒ヽ, 〉_丶 ヽj、 ` 'ー- 、_ __//´,. -─V-、 ゞ l ヽ ,i _k=ニニ} {=!_ヽ ヽ ... `ー __ ii .`l /ノノハノ) i .... ヽ ____ヽ _,---一ヽi_〈ハリ ゚ ー ゚ノ〉ノ 充電中です `ー-、__,--‐ '´ヽ`⊃ ⊂ノ **一旦〆---------------------------------------------------------------------------------------------※みょんにボコボコにされた / ..... ト--‐ / ;' ... .... !,_____ ユ ヽ i ; ... ___,ノ ~^、 │ i ; ....... ,. -─- 、/ヽヘ_ ⌒ヽ. i ', '; ..... / `"''ヽ!/〉 .V.、,、,..,||,、,、、..,_ ./i / ', ' ; .../ `く. .={X}=、.. l | ,. `゙ . ゙ `''' ,'.´-‐i ウワァアア!! 〉,.‐rゝ / i '、; ... , . .、. '| l;.;;..; .._;. ;' .‐'゙ ̄ ̄ \ '〈,_し'` . _;;、/ / / || `''ー _,ヘ7 !__/! / ,. /! \ / !、!_ ,.イヽ/ ハ / / ! \\ │ ,.-‐-、. / ,.ィ´`'ーrイ '-ヘレ i/ヽ/V .,' ! ! 'ー.、 _,./ i 〉 \ \ i ! ヽ.___ン「ヘ / !' \\ ', 〈 _,,.. -''" `ヽ、_ __,.」、 \ \ ヽ、 i ri"へ / /  ̄ ̄ハ `ヽ. ※文にボコボコにされた ヘ イ"´ ̄`'ヽ | i.|ノリハノリ〉 ,ヘルlリ ゚ ヮ゚ノii , ~^、 ゝ, ,⊃〔i◎〕 、 パシャ ⌒ヽ. i. `,(./~/:ハ .V.、,、,..,、、.,、,、、..,_ ./i / `'ィ ァ~ィ ァ´ .={X}=、.. 、 , ,. `゙ . ゙ `''' ,'.´-‐i ウワァアア!! T T '、; ... , . .、. ',. . _;.;;..; .._;. ;' .‐'゙ ̄ ̄ \※咲夜さんにボコボコにされた ,.ィ ーrーr 、 y' "´ ̄`'ヽ ノくノノ人リ))ゝ [] ルi§゚ ヮ゚ノ§ プップー ||____i{X l}〈つ◎'i__ / ̄ l .― l ―――― l /___ヽ,―、_ | | ./ E | EEEEl | |  ̄ ̄||`l / ̄ ̄ヽ ̄ヽ EEEEl | | __ ___||._| ~^、 / ,●、 | |777777| | l, ―┴、┴――、 ⌒ヽ. i | ●| |.● | |/////// . | | / ヽ ヽ .V.、,、,..,、、.,、,、、..,_ ./i / ヽ `●' .| |==== | | |==㊥==l===| .={X}=、.. 、 , ,. `゙ . ゙ `''' ,'.´-‐i ウワァアア!! ヽ___/ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~'ヽ___/___/ '、; ... , . .、. ',. . _;.;;..; .._;. ;' .‐'゙ ̄ ̄ \ ※アリスにボコボコにされた ,. ----- 、_ / _,-==,、、=,ヽヽ ,´ / / ノ/ゝヽi ノ、 i ルノレ_, レV,_ イレノ i..ノルi ━ ━ /ゝ ノノレレヽ" ー "ノノ ` , ⌒ヽ`、-- イ´、 /`V└,_ イ_,_,_,_,_ゝ==iゝヽ_ゝ , '´ `ヽ `-~イ ヽ__⌒ ⌒ヽゝ ` i リノノノ)),) ~^、 くゝ__=)⌒) ゝ_) ノ ィ).゚ ヮ゚ノ) ⌒ヽ. i / ヽ ~ ((,,(_,i,_Y,j,)つ .V.、,、,..,、、.,、,、、..,_ ./i / / \. ,(.U y_yヽ, .={X}=、.. 、 , ,. `゙ . ゙ `''' ,'.´-‐i ウワァアア!! く,_,,,~,_,_ 、_~(⌒ヽ⌒ヽ トコトコ `~i.ンi.ン~´ '、; ... , . .、. ',. . _;.;;..; .._;. ;' .‐'゙ ̄ ̄ \※アリスを倒した _,. -──-- .,,_ ,. ''" ´`ヽ、 , ' __,,,....,,,,ゝ、 ヽ、 ,' ,.- '"´ ____ `ヽ!、 ヽ, i ,.'´ ,. --ァ'7´ `i⌒ヽ、 ト、 ', .i .i,' / / / ハ !ー!- `Yヽ、 ', | !/ ,' .i-iイハノ レ´ レ!、ハ i i | イ / ./,!ハノ -ー'" !ハ,.ヘハノ /^~ ノ i ハ/イ --‐'" ,,,i/! i i .ノ⌒~ ≡=─ - イ / ! ヽi` ` .! | 〈 .V.、,、,..,、、.,、,、、..,_ ./i 二ニ ─ ,' 〈 ,ヘ', ヘ "" ー ' ,..イ ノ ! .={X}=、.. 、 , ,. `゙ . ゙ `''' ,'.´-‐i 三 ≡=─ - / i ヽ, ハ>.、,,_ ,,.イノ、レ,.ヘノ '、; ... , . .、. ',. . _;.;;..; .._;. ;' .‐'゙ ̄ ̄==- 〈 ハ V 、!、/ヽ,  ̄! i ヽ、 / ≡=─ - ヽ/ ヽハ/´ ヽゝ、/ヘi/i ', もはやこれまでか… / / i/ i ', /、 ,〈 」、」 _ゝ、 --------------------------------------------------------------------------------------------- /// / ヽ ヽ ヽ ヽ / ./ / / \ \ \ | / __.| ./-──--‐ァ ヽ ヽ . ト-‐- 、|/´ |/ / /ヽ. | | . | \rァ'__7'-─-<.,/ ハ / / / _,.>''"´ `"' ..、! ,' ,' ,... ''"´ _;; -──- ;;_ `ヽイ / ,. '´ ; '"´ `ヽ ヾ/ ! / /! ハ ∨ヽ /_ゝ \ / i ヽ i ,__,_ ', ', ∨ `'、 i ! /-‐l ノヽ i、' ノ | | | | ,! |/_ヾ、レ'´. ヽ!7テテ;,' ノ ', レ' | /!. ァテ=, マー'ン! ,' ヽ ノレ' ', マ;ノ ///゜o イ ハ ', r'¨´ ̄`ヽ ノハo゚/// ' / 丿 ,' イ. i -ーィ,_ノ -‐ / ,ィ´ i ハ ', __/ と`"ー――-‐-、 _ /イ ハ 、'.レ´ ヽイレ ヽ二,ノレ∨ヽノ入/∨/ト、 ノ´ ,ゝ '、i ヽ、 rー'rノ .| / イ / ヽ / / l=,. -', / ヾ / L/ハ_/ヽ| ´ヽ ノ ´ ./iゝ´'、` ヽ 、' ヽ /イ ヽ、 ', 丿ゝ ´ー´ん'´`'~'´ヾ~~`~~`~~`ヽ,ゝ 返信用 カテゴリー別へ戻る
https://w.atwiki.jp/niconico_rta/pages/629.html
Chocobo Collection PS チョコボスタリオン チョコボレーシング 〜幻界へのロード〜 ダイスDEチョコボ が収録されている 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/mayshared/pages/319.html
轟音と悲鳴。 前後からの音に挟まれながら、篠崎七雄 しのざきななお は身構える。 左足を軽く踏み出し、右足で体重を支えて右肩を引き、右手に持った『それ』を腰溜めに真っ直ぐ正面……体長十数メートルのラルヴァに向ける。 『それ』は槍。 振り回し、投げるために用いるような、刃をつけた細い槍 スピア ではない。 ただ真っ直ぐ前進し、眼前の敵を蹂躙するための、突撃槍 ランス 。 ラルヴァは低く唸りながら、アスファルトを踏み砕き、電柱を薙ぎ倒しながら駆けて来る。 背後の悲鳴は次第に掠れ、やがてすすり泣きに変わっていた。 「おい」 七雄の呼びかけに、俯いた少女は目だけを向ける。言葉の変わりにしゃくりあげる音を返事として受け取り、彼は嘆息した。 「助かりたいか?」 「うん」 「生きたいか?」 「……うん」 「生きて、前に進めるか?」 「……それは」 「どうなんだ?」 言い淀む少女に、七雄は首だけ振り向き、睨むように見据える。 「俺は前に進む以外の道を知らない。俺の足はただ前に踏み出すだけだ」 そして問う。お前はどうだと。 「前に進むことが出来るか? 春峰央歌 はるみねおうか 」 「私は……」 「お前の力は、そうしてただ座して待つためのものではないだろう?」 「で、でも、私が力を使えば、みんなが……」 「心配するな。この学園の連中は、変態的にタフなやつが多い。ちょっとくらい背中を強引に押されたくらいで、へばったりはしないさ」 ラルヴァの巨体がもうすぐそこまで迫っている。あと数秒で彼らは踏み潰されるだろう。 絶体絶命を目の前にして、彼女の逡巡は長い。それを、七雄は黙して待つ。 「前に、進みたい、です」 途切れがちな、しかし力強い、言葉。 「なら、俺が先駆けだ」 声と踏み足を答えとし、七雄の体が前に出る。 もはや数歩の距離に居る巨大なラルヴァに向けて、彼は進んだ。 「しっかり付いて来いよ。この道を、真っ直ぐだ」 真っ直ぐ、そう言い聞かせて、歩みを加速する。 雄々と叫び、槍を構え、ただ、前へ、前へ。 勢いに乗ったラルヴァは、自らの身体で七雄を押し潰そうと、突き進んでくる。 激突。 槍の切っ先が、ラルヴァの額に届く。その速度差は明らかにラルヴァに分がある。 だが、 『ぐぅぅぁるららるるるぁ!』 ラルヴァの苦悶の絶叫が響き渡った。 「くっ!」 七雄は構わず、歩み続ける。 「おお!」 踏んでは前に。 「おおおお!」 駆けては前に。 「ああああああああああああああああああああああ!」 馳せては前に。 やがて断末魔の叫びも消えたときには、真っ二つに裂かれたラルヴァの巨体が転がっていた。 息絶えたラルヴァは風に吹かれて次第に崩れていく。 ラルヴァの死体が消え去り、後には破壊されつくした道路と、真っ直ぐに佇む少年の姿が残った。 七雄は央歌を振り返り、左の手を誘うように差し出した。 「さあ」 少年は言う。 「前に、進め」 少女は、震える足で立ち上がると、ゆっくり、ゆっくりと最初の一歩を踏み出した。 【突撃のストレイトブースター】-プロローグ 1、問題 双葉学園に立ち並ぶ校舎の中には、生徒たちがあまり訪れない場所もある。 その一つ、理事棟は教師や学園運営者たちのための建物だ。 「運命の後押し、ですか?」 「そうだ。彼女の、春峰くんの異能は他者の運命を加速させるもの」 理事棟の大会議室に、今、大勢の大人が集まっていた。 彼らの年齢、服装は様々だ。 スーツ姿の者が多いが、仏教、神道、カトリック、プロテスタント、ヒンドゥー、その他諸々、様々な宗教的な装いを見せるものも少なからずいる。 また他にも、軍服の男、ラフなジーパン姿の男、いかにも怪しげな黒装束の女、和装の老人など、バラエティに富んでいる。 会議室の奥まった位置には大きなディスプレイがあり、その横でスーツの男の一人が説明をしていた。 画面に映し出されているのは、春峰央歌という一人の生徒の顔写真とプロフィールだ。 「運命干渉の異能者。この学園でも数少ない種類の異能だが、醒徒会の成宮くんや学園長のお孫さんもこれに含まれる。決して、ありえない異能でもない。神那岐のような破格の例はさすがに希少ですが」 「……全然、同じ系統とは思えませんけど?」 口を挟んだのは、会議室の中ほどに座る、シスター服の女性だ。 「占いから過去の改変に到るまで、とにかく人が『運命』という言葉を用いて言及するもの全てに、我々は運命干渉という位置づけをしている。例えば『ザ・ハイロウズ』は人の特定の社会的運命を限定的に予言する能力だ」 男の言葉に対して、黒装束の女が不意に声をあげる。 「予言が運命干渉とは、随分な言い方ね。それでは私がタロットを引いただけで――」 「もちろん」 彼女の言葉を無理やり断ち切って、男は言葉を継ぐ。 「運命というものを酷く強引に、大雑把に解釈してのことだ。異能の定義についてはまた別の機会に」 男はふうと溜息一つ。様々な立場の人間が集うここでは、迂闊な言葉は場を荒らす原因となりかねない。 宗教的な観念、異能に関する研究の主張。どんな反応を引き出すかわからない。 「それで、運命を加速すると、具体的にはどうなるんですか?」 「言葉の通りだ。いずれ来る未来、その人間に訪れるはずの運命を早める。たとえば、ある人間が宝くじを当選する運命を持っていたとして、その運命を加速すればすぐにも相応の幸運を得ることが出来る」 「そんな破格の異能が……ありえるのですか?」 「効能 メリット が破格な分、対価 デメリット も非常に高い。魂源力 アツィルト の消耗だけでは済まない対価がね」 「やっぱり、そういうのがついて回るのね」 またしても口を挟む黒装束の女を男が睨むも、彼女は涼しい顔で続ける。 「私たちが千年研究し続けてようやく練り上げる力を、生まれたときから使えるというんですから、代償はあってしかるべきだわ」 「……ともかく、運命の加速というのはただ有用な異能とは言いがたい。例えば、一人の人間の運命を百年分加速したら、どうなる?」 「ええと……百年分の様々な出来事がやってきて……」 「死ぬのさ。その人間が百年以上生きるというなら別だが、ほぼ間違いなく寿命を迎える」 「あ、なるほど……って、凄くおっかない異能じゃないですか、それ」 「恐ろしくない異能などというものは無いと思うが……扱いを気をつけなければいけない異能であることは確かだ」 そこで今度は和装の老人が口を開く。 「……だが、今回の作戦には必要な異能、ということだな?」 「そうだ」 男は明らかに年長と思われる相手にも口調を変えない。 「運命干渉というのはとてもデリケートな能力だ。同じ場所で二種類以上の運命干渉があると、過干渉が起こり、その能力は打ち消し合う」 「それも運命干渉系のデメリットの一つか」 「デメリットではあるが、今回はそれが利用出来る」 「敵ラルヴァの運命閉塞を過干渉によって突破するわけだ。その女子生徒はいってみれば、ラルヴァに到るまでの露払いだな」 「彼女だけでなく、現在制御可能な学園中の運命干渉系異能者は総動員する。先程言った、成宮くんや双葉敏明くんらとあわせて、現在投入可能な人員は五人だ。他にも、運命干渉系の異能者はまだいるが……」 「今回の作戦に投入するには不安がある、かね?」 「そうなるな。そして、彼らを護衛し、現場で実戦闘を担当する異能者をチームとする」 「しめて二個小隊程度か。君の言葉ではないが、恐ろしい異能者がそれだけの軍隊を整えるというのは脅威だね」 老人の皮肉げに笑うと、今度は別の男が手を上げた。こちらは派手なパンクルックだ。 「双葉区の警備は大丈夫なのか?」 「成宮くん以外の醒徒会役員は基本的に待機です。不測の事態の場合、出動を要請するかもしれませんが、他にも有力な生徒は残っています」 パンクが口を閉じると、しばし議場に沈黙が下りた。 「……他に質問はないな? では、今後の作戦指揮は私が続ける。各人は対応を頼む。特に、報道と政界への対応は厳しいだろう」 「まったくだな……まさか」 老人は心底疲れたような表情で呟く。 「町ひとつ、ラルヴァの力で閉鎖されてしまうとは」 「閉鎖されたわけではない。あくまで、その町の中で運命が閉塞しているだけだ」 「似たようなものだ。町の中のすべてが停滞すれば、時間が止まったも同然。そして、何者も出入りすることは出来なくなる」 「そして、それを突破するための運命干渉系異能者、か」 重苦しく囁かれた一言に、その場の全員が表情を改めた。 話し合いが一段落したと判断し、議場から人々が退出していく。 男は深々と溜息を吐く。そこに、シスターとパンクが近付いてきた。 「どうした? 二人もやることは多いのじゃないか?」 「そりゃもちろん、大忙しだけどな」 「聞いておきたいことがあるんです」 「……なんだ?」 「今回の作戦の要となる、春峰央歌さんのことですが……」 「そいつ、今年転入してきたばっかりじゃねえか。使えるのか?」 「使える、とは?」 「異能の制御訓練、戦闘経験、足りてるのかって聞いてんだ」 「異能の制御については、転入以前から完全にコントロールしていた。戦闘経験については、これから一週間の間に訓練で使えるレベルにする予定だ」 「一週間……舐めてんのか?」 パンクの声に険が混じった。目付き鋭く、唸るように男に迫っていく。 「そんな状態で戦場に立たせりゃ、足引っ張ることは目に見えてるんだろうが」 「……」 「あ、あの……私も反対です。まだラルヴァの知識もほとんどない女の子をいきなり実戦になんて……今回みたいな大規模な作戦に、しかも『最終兵器』として」 二種類の強い視線に晒され、男はしばし目を伏せて押し黙った。 彼らの主張は、結局は一人の少女の安全を気遣うものだ。同じ教育者として賛同してしまいたいという思いが彼の中にも生まれる。 「……だが」 それはできない。 「今回、敵ラルヴァに対して有効な『運命の操作』が出来る異能者は、春峰くんと双葉くんの二人しかいないのだ」 「ああ? 運命干渉系の異能者は五人って、さっき言っただろうが」 「その通りだ。成宮くんの能力のように運命を見聞きし、触れることが出来る異能者は全部で五人。そのうち、自らの意思で発動し、敵ラルヴァの運命閉塞の能力を打破できる威力の『運命操作』はその二人にしか……いや、性格には春峰くん、ただ一人にしか出来ない。双葉くんの能力『栄光と破滅の手 ハンズオブヒーロー 』は半分制御できていないも同然だからな」 「大層な名前のくせに、使えねえな」 「栄光と破滅、そのどちらの運命をも引き寄せられる代わりに、どちらがやってくるかわからないというのが、彼の能力の特性だからな」 「フン……それで、その『運命の操作』だけが有効ってのはどういうことだ?」 「言葉のままの意味だ。敵ラルヴァは、運命を閉塞させることで身を守っている。だが運命の閉塞さえ解除できれば、倒すことも容易だ」 「その閉塞を打ち消すだけなら、他のガキどもでも足りるって話だろ?」 「敵ラルヴァは町ひとつの運命を停滞させている。その周囲では、停滞はゆるやかだが、本体に近付くほど強まり、閉塞されていくことになる。成宮くんたちのような、運命に対する干渉の程度が低い能力では、ある程度以上には近づけない」 「力の強さの問題か?」 「強弱というより、質の問題だな。『運命を見る』という異能は、決して干渉の程度としては高くない。つまり、打ち負けてしまう。『運命の加速』『運命の引き寄せ』という、強烈な異能だからこそ『運命の閉塞』という力に対抗できる」 「……なるほどな」 一応の納得を得てパンクが口を噤むと、今度はシスターが首をかしげる。 「彼女以外の子供たちは、なぜその作戦に? 一人だけいれば事足りるような……」 「……敵が、そのラルヴァ一体だけならな」 「まさか、複数……?」 「運命閉塞を行っているラルヴァは一体だけらしい。だが、その停滞空間内部には、大量のラルヴァが存在していた。幸い、そのラルヴァたちも現在は運命の閉塞に巻き込まれているため、町には被害が出ていない。だが、生徒たちが突入すれば障害となる可能性がある。そのため、戦力の分散を行う」 「はぁ……わかりました。ところで、今回のような事態は初めてと聞いていますが、どうしてそんな解決策まで出ているのですか?」 「アドバイザーの意見だ」 「そのアドバイザーの意見ってのは当てになるのか?」 「他に意見を持ってくるような人間がいなかった」 「……まあ、ラルヴァの研究者は少ねえからなぁ」 「もしその対抗策が不完全な場合でも、アドバイザー本人が同行を申し出ているので、その場での作戦変更も可能だろう」 「オイオイ、現場に参加とは気合い入ってるな。どの学部の先生だ?」 「教員ではないらしい」 「あン?」 「そろそろ仕事に戻ろう。この作戦の如何に関わらず、しばらくは休みもとれそうにないな」 怪訝そうなパンクにはそれ以上とりあわず、男は会議室を後にした。 2、訓練 グラウンドに揃った数十名の生徒たちは、それぞれに何人かでグループを組んで集まっていた。 一週間後に控えた大規模侵攻作戦を伝えられ、どの顔にも緊張の色が浮かんでいる。 「いいかー、基本的にお前らのフラッグである運命干渉系異能者はサポート役でしかない。だが、そいつが居なければ町の中に入ることさえ出来ない。町と一緒に運命を止められたくなかったら、死ぬ気で護れ。わかったか!?」 『はい』『うっす!』『あーい』『にゃー』『オス!』 「本当にわかってるのか微妙な返事もあったが、まあいい。これから分隊ごとの訓練に入る。とりあえず最初だ。マニュアルを読みながら頑張れ。チームプレイを心がけろよ。それでは、始め!」 ジャージ姿の教師の号令で、生徒たちはめいめいに移動を始める。 その中で、双葉敏明と春峰央歌のいる二チームは、教師のところへ集まってきた。 「お前らは今回の作戦で要となる。春峰のチームは最有力侵攻ラインの西側から、双葉のチームは逆の東側からだ」 「先生、最有力って、どういうことですか?」 「地理条件が一番容易だろうということだ。停滞の中心部に向けて、真っ直ぐに大通りが走っていて、その入り口が東西にある。東側はラルヴァが多いようだが、西側はもう少し簡単に中心部へ進めるはずだ」 「うへ……こっち大変なのか」 「なんだ双葉、お前が弱音を吐いてどうする。戦うのはお前のチームメイトだぞ」 「そ、そうですよね……」 「大丈夫だよトッシー、ボクたちが護ってあげるから!」 元気良く胸を張った山崎巡理 やまざきめぐり の言葉に、隣に立つ河越明日羽 かわごえあすは も力強く頷く。 「心配するな、敏明クン。今回は心強い味方もたくさんいる」 「そうだよとっしー、私たちがついてるって」 「ぐあ、肩を組むなよ暑い。あとお前はとっしー言うな、高田」 「つれないなぁ」 高田春亜 たかだはるあ は突き飛ばされつつも、ニヤニヤと笑みを浮かべている。 「あ、アタシの瑞々しい肉体にひょっとして興奮しちゃう」 「……もうちょっと恥じらいとか持つべきだと思うんだが」 「ぐぬぬ……当ててんのよ作戦とは卑怯な……」 「メグ、なぜ自分の胸板を叩いているんだ」 「むきー! 板っていうなー!」 「オホン……言っておくが、お前たちのルートも二番目に楽なルートといえる。他のチームは……囮と言ってもいい。ひょっとすると、マズイこともありうる」 「マズイことって……」 「どれだけ万全の体勢でも、万が一がありうる。いいか、今回の作戦はお前たちに掛かっている。学友を少しでも助けたいと思うなら、可能な限り早く敵ラルヴァを倒せ」 『はい!』 それから彼らは教師による作戦中の行動の説明を受け、他の生徒たち同様チーム練習へと向かうこととなった。 「……はぁ」 説明を受けている間、質問も何もせず、一人俯いている生徒が居た。 春峰央歌だ。 「春峰?」 「……え、あ、なんですか?」 「訓練だ。早く行って来い」 教師に言われて慌てて振り返ると、すでに移動しているチームメイトたちの背中が見えた。 「……春峰」 「は、はい」 「今回の作戦はお前にかかってる。双葉は……今回は役に立つのかわからん」 「はぁ……」 「いや、あいつ自身が使えない奴だってわけじゃないぞ。あんな……ハーレム野郎ではあるが、それなりに訓練には真面目に取り組んでいるし、山崎と河越の補佐で何匹もラルヴァを倒した実績もある。ハーレム野郎ではあるが」 再び「はぁ」というファジーな相槌をうちつつ、央歌は思う。羨ましいのかと。 「だが、あいつの能力は確実さに欠ける。敵ラルヴァを倒すための場面で、うっかりおかしな運命を引き当てちまって失敗する可能性もある。だから、お前だけが頼りだ」 「……はい」 「お前は実戦経験が無いから、不安なのもわかるがな。お前のチームは強豪ぞろいだから、落ち着いて臨めば大丈夫だ。ほれ、行って来い」 央歌は頭を下げ、小走りでチームに合流した。 「す、すいません。お待たせしました」 「大丈夫? 緊張してるのかな?」 「その、だ、大丈夫、です」 「よし、じゃあとりあえず自己紹介からしようか。じゃあ、まずは俺から……」 チームの中で一番年長である大学生の異能者が、その場を仕切って話を進めていく。 彼は自分の名前や異能について説明すると、央歌に目を向け、 「次は春峰さん。よろしく」 「へ、は、はい! 春峰央歌です! その……私の異能は、運命を加速する『フェイトブースター』です……あまり、人間には使えない力です」 「使えないって、どうして?」 「その人の、その後に来る出来事を、な、なんでも、無理やり早めてしまうんです」 チームメイトからあがったもっともな質問に、央歌はなぜかしどろもどろになって答える。 「例えば……転ぶということが決まっていたら、加速した途端、何も無いところでも、転ぶんです。その人がどんな運命かを、事前に知ることは出来ないので、悪いこととか、良いこととか、選んで早めることは、出来ません」 「ふーん、でもそれくらいなら別にいいんじゃない? あっちのハーレム野郎……双葉よりは使えそうだ」 ハーレムさん人気だな、と妙なところに気を取られつつ、央歌はさらに俯く。 「こ、転ぶときって、なんとなく、つまずいたりとかしやすい場所で、心構えって、出来るでしょ? でも、加速すると、転ぶなんて思ってない、心構えのないところで、いきなり転ぶことになるから」 「つまり、思ってもみなかったことがいきなり起きてビックリするってことか」 「そ、そう、です」 「なるほど、あまり不用意には使わないほうがいいね。みんな、他に質問はあるかい?」 質問は特にあがらず、すぐに他のチームメイトの自己紹介に移っていった。 央歌はほっと胸を撫で下ろし、俯きながら彼らの言葉を聞く。 「篠崎七雄だ。俺の異能も、あまり融通の利くものじゃない。『止め難い前進 ストレイトトラック 』。俺が真っ直ぐ進み続ける限り、前進を妨げるもの全てを退ける。ただ、絶対に無敵というわけでもないし、止まったり曲がったりした瞬間に効果は完全に無くなる」 「条件が限定されているのか。でも、融通が利かないなんてものじゃないだろう。すごく使える異能のはずさ。特に今回は僕らは直線道路を進むことになるからね」 「まぁ、そうなるが……敵味方の区別は出来ないから、なるべく俺を先頭にしてくれ」 「わかった。一番槍は任せるよ。無茶はしないようにね」 コクリと頷いた少年の横顔を、央歌は伏しがちな目で見上げた。強い人だな、と思う。 「……?」 視線を感じたのか、七雄が央歌を見やった。 正面から見詰め合うことになって央歌はびくりと身体を震わせるが……すぐに、首をかしげる。 真っ直ぐに見つめ返されるか、それとも見下されるかと思っていたというのに、 (……弱い?) 七雄の瞳は、何かに怯えるように揺らいでいるように見えた。 先に目を逸らしたのも、七雄だった。 違和感。 たとえ勇敢な人間でも、その目付きまで常に荒ぶっているわけではないだろう。 だが、今の少年の目はそれとはまったく正反対の感情を浮かべていた。 (私を、怖がって、た?) 何故という疑問と共に感じたのは、 (私と、同じ?) 周囲の人間に怯えた目を向ける、奇妙な親近感だった。 to be continued... トップに戻る 作品投稿場所に戻る
https://w.atwiki.jp/tirashi/pages/39.html
2009/05/03(日) ポケモンダイパプ久々にクウガに変身したら鬼に掘られてきた 2009/05/06(水) ポケモンダイパプややボーイッシュな女の子のメイド服クンカクンカしてきた 2009/05/08(金) ポケモンダイパプ金銀リメイク公式発表でハートとソウルが輝いてきた 2009/05/09(土) ポケモンダイパプスマトラトラのスマ太郎見てきた 2009/05/11(月) ポケモンダイパプ重力使いをぶっ殺すってきた 2009/05/14(木) ポケモンダイパプ今さらだけど五月病にボコボコにされてきた 2009/05/14(木) ポケモンダイパプとマクドナルド 2009/05/14(木) ポケモンダイパプ時限の塔が作業用BGMに似合いすぎて感動してきた 2009/05/22(金) けいおん!観てポケモンダイパプラウザゲー始めました!! 2009/05/24(日) ポケモンダイパプぼっちへの道をひた走ってきた 2009/05/27(水) ポケモンダイパプダブルバトルの振興に全力を尽くしてき・・・た・・・ 2009/05/31(日) ポケモンダイパプ臍にキスしてきた
https://w.atwiki.jp/magicalclub/pages/204.html
【表裏サイバー】 【サイバー・ドラゴン】と【サイバー・ダーク】を共存させたデッキ。 《サイバー・ドラゴン》を【サイバー・ダーク】に入れるだけでは飽き足らず、ギミックそのものを足した形となる。 はっきり言って、この組み合わせで構築するメリットは少ない。ヘルカイザー亮の気分を味わう為のファンデッキと言ってしまっても過言ではない。 部内では、部長及び夢幻が使用。 部長の【表裏サイバー】 通常の【サイバー・ドラゴン】【サイバー・ダーク】に飽きた部長がその2つをガッシンクロス。 《仮面竜》や《シャインエンジェル》等リクルーターが多く入っているのが特徴である。 初お披露目の決闘でタミフル相手に回したところ《スキルドレイン》にボコボコにされ、 WAZATEN相手に回したらアゴを《因果切断》される。 以降、そのデッキを見た者は居ない。 夢幻の【表裏サイバー】 基本は【雑貨インパクト】であるが、戦略に幅を出すため【サイバー・ドラゴン】基本ギミックを足した。 《魔導雑貨商人》《未来融合-フューチャー・フュージョン》で多数の機械族を落とし《オーバーロード・フュージョン》を狙うのが基本戦術。 これだけではただの【未来オーバー】なので、しっかり《サイバーダーク・インパクト!》なども投入してある。 サイドラ軸のカードを入れたため、《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》に装備するモンスターが不足しているのが難点。 後に【サイバー・ダーク】部分が独立する。 関連項目 デッキ集/某戯王 デッキ集/某戯王/各種のデッキ 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/mayshared/pages/957.html
1 1999年7月。世界のいたるところで化物「ラルヴァ」が大量に現れ、人間社会は破滅危機に直面した。猛獣、天使、悪魔、精霊。これら人外のものが人々の営みを壊し、命を脅かす恐怖の時代が来たのである。 だが、それが運命であるかのように、不思議な力を持つ人間――「異能者」も爆発的に増加していた。異能者とラルヴァの織り成す、宿命の図が描かれていったのである。 悪しきラルヴァに対抗するために。そして、守りたい人たちを守るために。 日本でただ一つの異能者教育施設「双葉学園」は存在する。 「いやぁああん」 「虹子ぉー!」 スポーツ刈りの少年が叫んだ。しかし、彼もまた巨大なラルヴァによって砂浜にねじ伏せられていた。 あちこちで子供の泣き声が響いていた。みんな、星型をしている厚い布地のようなものに覆いかぶさられており、身動きが取れない。この子たちは午前で授業を終えて、双葉島の人工海岸に寄り道をしているところであった。 この緑色をした星型の物体こそがラルヴァ「イトマキヒトデ」であった。悪意を持って人間を捕食する恐ろしい怪物だ。 「やだぁ、ねばねばしてるよー」 一般的な水の生物であるヒトデが凶暴化したもので、人の子供を好んで食べるという。子供に覆いかぶさると裏側の無数の足でしっかり捕まえ、体の真ん中にある口から胃袋を露出させる。それから消化液を直接かけて溶かし、あっという間に吸収してしまう。 「くっそぉ、こんなのにやられちまうのか・・・・・・!」 初等部三年生の朝倉太陽が、悔しそうに砂を握ったときだった。 「体丸めて!」 誰か女性の指示が聞えたのである。太陽ら子供たちは言われたように身を丸め、ヒトデの中で頭を抱えた。 「いくわよ、そぉれ!」 監視員の見張り台に髪の長い女性が立っていた。浜辺を見渡せるこの高い場所でクルリと一回りし、黒髪を振り回す。すると髪から無数にきらめく粒子が舞い降りてきた。 きらきらと光の粒はヒトデたちに降りかかる。すると、じゅっという物が焼けたような音がいたるところで上がった。ヒトデたちの腕や胴が凍ったのだ。 ヒトデたちがダメージを負って動かなくなったのを見計らい、太陽ら子供たちが次々とヒトデを蹴っ飛ばして立ちあがる。とどめとばかりに、どこからかで調達してきた木の棒で次々とヒトデを潰しだした。ヒトデのシャーベットみたいだな、と誰かが気持ち悪い表現をした。 「おい、見ろよ」 太陽は、ヒトデ狩りに夢中になっている友人らをそう促した。するとみんな、監視台から周囲に粒子を撒いている女性に釘付けになる。少年たちはこの粒子が古代モルフォ蝶の「鱗粉」であることを知らない。 ヒトデはまだ周りにたくさんいた。群れをなして襲い掛かってきたのである。だが、謎の女性が後ろ髪をぐるぐる振り回したり、両手で色っぽくうなじを見せてから下ろしたりするたび、とてつもない力を秘めた鱗粉がヒトデたちに降りかかっていった。 誰だろう、あの人。 みんながラルヴァを踊りながら倒している、あの制服姿の女性の正体を気にしていた。彼女はブラウスの裾をスカートの上に出した、ラフな格好をしていた。 「よく見ておきなさい、あなたたち」 ウィンクを太陽に投げかけた。微笑を絶やすことなく、楽しそうにラルヴァを倒している。いや、人に自分の強さを見せつけることが彼女にとってたまらなく快感なのだ。鱗粉が辺り一帯に撒き散らされたとき、大量のヒトデたちが一斉に気化冷却され凍りついてしまった。 「す、すげぇ・・・・・・」 太陽は思わずそう零していた。小学生たちの歓声を一身に浴び、ラルヴァを一掃してみせた女性は嬉しそうに腰をくねらせ、グラビアアイドルのようにポーズなどを取っている。 「そうよ、この視線よ」彼女は恍惚のあまり頬を火照らせている。「ふふふ、やっぱり私、強いじゃない。もっとみんなに見てもらいたいわ、知ってもらいたいわ、味わってもらいたいわ」 うっとり余韻に浸っている彼女の足元で、砂浜の監視員が「もういいでしょ? 早くどいてください!」と怒っていた。××に監視台を占拠されているからである。 そんな彼女のところに、太陽は駆けつける。興奮しながら彼女にこうきいた。 「名前、教えて!」 「うん? ××××っていうのよ、坊や」 「××××・・・・・・! 覚えておくからなー!」 子供らしい生意気な言動も、今日は気分がいいから許してあげちゃう。と、そのようなことを思っていたときだった。 「フケでラルヴァ全滅させた女!」 ××はずっこけて監視台から落下し、頭から砂浜へ突っ込む。森田虹子までもそれを耳にしたとたん、「ぷぷっ」と吹き出してしまった。 「ふ、ふ、ふ、フケですってぇ!」 せっかくの黒髪が砂まみれになってしまい、ひどいことになっている。冗談を抜きにして本当にフケまみれになっているようだ。どこからか流れ着いてきたかもわからない、よくわからない紅色の海草が前髪に張り付いてしまっている。 「フケすげぇ! ヒトデ凍らしちゃうんだ!」 「どんだけ風呂入らなきゃあんなになるんだ」 「バカヤロウ、すげぇのは××さんだろ? ××さんのフケがすげぇんだって!」 「あ・ん・た・た・ち・・・・・・?」 ひっと太陽たちは悲鳴を上げる。長い黒髪が魂源力を帯びてゆらゆらと広がっていた。メデューサだかゴーゴンだか、彼らにはそういった類の化物のように見えていた。 「フケって言ったわねぇ――――!」 「ぎゃー!」 ××が怒りを爆発させたので、散開して逃亡を図った小学生たち。正午近くなってさらに高く上がった太陽は、いっそう強い日差しを双葉島の人工砂浜に浴びせていた。 ××××は激しく当惑していた。 眼前の男子学生による真剣な眼差しを浴びて、とても困った表情を浮かべていた。 「×さん、僕と付き合ってください!」 丸刈りの頭を一気に深く下げられて、×はさらに困ってしまう。 ××と一緒に浜辺のゴミ拾いをしていたときだった。携帯電話にメールが届いた。一ヶ月ぐらい前にお願いされてメルアドを交換した、同じクラスの男子である。 ×がこうして学園や地域へ奉仕活動を行っていることを、彼はよく理解していた。だから時折彼も手伝ってくれたり、帰りがけに××も含めてレストランに誘ったり、地道なアピールをしてきていたのである。 そしてとうとう今日、浜辺の近くにある花の綺麗な公園に×を呼び出し、このような行動に出た。××はというと、浜辺でラルヴァが出たと聞いたとたん、現場へ一直線に猛ダッシュしていったのでこの場にはいない。 「その・・・・・・困るよぅ」 「いきなりこんなこと言って迷惑かなって思ってる。けど、もう×さんしかダメなんだ。いつも×さんのことばかり考えててさ、・・・・・・」 次から次へと向かってくる真っ直ぐの球。嬉しくないと言えば、嘘になる。この男子は悪い人ではないし、先月に学園で大事件を起こしたにも自分たちにとても優しくしてくれる。 でも、×には男子からの告白を受け入れることのできない明確なわけがある。 「お願いします、僕と――」 「だめぇ!」 「うげっ」 男子が×の手を握ろうと自分の手を出した瞬間。×はとっさに「結界」を展開、彼に真正面からぶつけていた。彼女に悪気は無いのだろうが、手痛い拒絶の仕方だ。 「気持ちは嬉しいよ? でもね、私には××ちゃんがいるからダメなの」 「××さん?」彼はびっくりしてこう言った。「××さんって女の子じゃないか?」 「女の子でも××ちゃんは××ちゃんですぅ!」 またもや真正面から結界の壁をぶつけられ、今度はド派手に吹っ飛んだ。ドボンと噴水に突入したとき、ちょうどシャワーのように水が噴き上がって虹を作る。 「私はもう××ちゃん無しじゃ生きていけないんです。××ちゃん無しの日常なんてありえません。××ちゃん無しじゃ不快です死にます。お気持ちは嬉しいのですがやっぱり私は××ちゃんのいる生活を選びます。××ちゃんああ××ちゃん、いったいどこ行っちゃったの?」 「そん・・・・・・なぁ」 べたん、とずぶぬれのクラスメートが噴水から這い出てきた。地面にうつぶせになる。そして、真横から走ってやってきた小学生たちが次々と彼を踏んづけていった。 「こらー! 待ちなさぁーい!」 そして当の××××が彼の頭を思い切り踏んづけ、「ぎゃっ」とうめき声が上がる。それを目撃した×の瞳がきらきら輝きだした。 「あ、××ちゃん、そんなとこにいたんだぁ!」 「クソガキども――ッ! 鱗粉でお仕置きよぉ――ッ」 「みんな逃げろぉー、フケを浴びせにくるぞー!」 「な、なんですってぇ――ッ!」 「待ってよぉ、××ちゃーん。ねぇ~」 ××を追いかけて、両腕を左右に振りながら女の子らしく走り出した×。 文字通り踏んだり蹴ったりの男子学生は、その場で悲しそうに嗚咽を漏らしていた。 彼を慰めるかのように、青空から冷涼なそよ風が吹いてくる――。 音楽室のカーテンがそよ風に小さく揺れる。 室内は明るい雰囲気のワルツが美しい河のように流れていた。第一合奏部による演奏だ。部員の練習を見ている××××××××は、来る音楽会を前にして仕上がった曲を聴きながら、心地よさそうにそよ風とリズムに乗って左右に揺れ動いている。 「こんちゃーっす!」 とんでもなくデカい声が一瞬にして演奏を台無しにした。 一気に集中力が散った。ムードも散った。いきなり音楽室に入ってきた不届き者を×××はキッと睨みつけたが、すぐに「はうっ!」と血の気が引く。 「あっれー? ×××さんじゃないですか!」 「×、×××××・・・・・・!」 がははと笑いながら乱入してきたのは、長い髪をサイドに縛って垂らしている眼鏡の女の子・×××××××××××である。先日の××××××たちによる反乱騒動で中心となって動いていた人物で、今も学園内では悪名高い。品行方正で清廉潔白な女生徒として名の通っている××××××××は、今最も会いたくない人物の登場に動揺していた。 「×××××、あなた謹慎中では」 「懲罰房? 抜け出しちゃいました。×××さんに用がありましてねー」 も、問題児がお姉さまに用事ですって? 副部長の××××××は愕然としていた。 (ありえないわ、お姉さまに限ってこのような問題児と関わりがあるなんて) そんな××××を筆頭に、部員の女の子たちからもどよめきとざわめきが起こり、もはや練習どころじゃなくなってしまった。 「静かにしなさい! 練習中ですよ!」と、何とか冷静さを保とうと×××は努力する。「×××××、いったいどうしたの? 合奏部に何の用?」 「今度の音楽会、私たちも出ようと思うんです。×××××や××たち誘って」 「ば、馬鹿おっしゃい! 期限はとっくに過ぎ」 「ツれないなぁー。×××さんとはカテゴリーえ」 「わー! わ―――ッ!」 聞きなれない、憧れの先輩の大声。絶叫。引きつった顔。めったに見られない×××の醜態を前に、いよいよ××××は細かく震え、顔面を蒼白にし、いつでも卒倒できる体勢に入っていた。 「わ、わかったわ×××××。あなたたちも夏の音楽会、出させてあげる」 「ほんと? ありがとう×××さん! 持つべきものは仲間だよねー!」 仲間・・・・・・? 学園一の問題児・×××××と私たちのお姉さまが仲間・・・・・・? この思わぬKYの登場によって、優雅なムードたっぷりだった音楽室は、瞬く間にお先真っ暗のお通夜ムードに陥った。 それ以上に悲惨なのは×××本人だ。もうメチャクチャだ。数年間地道に築き上げてきた、合奏部での自分のイメージが一瞬にして台無しにされた。 「登録名はアリスプロジェクトでお願いします! では、風紀の追っ手が迫っているのでこれで!」 ビシッと右手を上げて元気いっぱいに去っていった×××××。 どうなることかと恐々として見ていた部員たちだが、×××の背中から涌き出てきたどす黒いオーラを確かにその目にして戦慄する。 「×××××、見てらっしゃい・・・・・・? 音楽は血で血を洗う聖戦だということ、徹底的に味わわせてあげる・・・・・・!」 今まで聞いたこともない、そして誰も知る由も無い、××××××の恐ろしい異能者××××××××の殺気立った声。 「いつもの×××様じゃない・・・・・・クスン」 とうとう××××は泣き出してしまった。 音楽室からやけに沈んだ雰囲気の「美しく青きドナウ」が流れてくるなか、学園の近くにある野球グラウンドでは、ある草野球大会の決勝戦が催されていた。 双鉄キャノンボールズVS双葉交通バスチーム。 キャノンボールズは、双葉学園鉄道の職員らによる草野球チームである。快音が響いた。 「九回ツーアウトから川井が出たか。よし、勝負をかけるぞ」 「何か策があるんですかぁ? 六谷さぁん」 選手兼監督の六谷純子はアンパイアを呼び寄せ、「代打」を告げている。純子は小学生のころから野球を続けており、就職してからは草野球チームを創設した。専用ユニフォームを自作し着用するとんでもない気合の入りようだ。 夏恒例の「社会人草野球大会」は、純子にとって大事なイベントだ。一昨年に念願の初優勝を飾ってから、三連覇をかけて今大会に臨んだのである。 しかし、相手の交通バスチームは思わぬダークホースだった。一点ビハインドで決定打のないまま、とうとう九回まで追い込まれてしまった。あと一人で試合終了というときに、小松ゆうなの同期社員である若い川井が二塁に出たのである。相手ピッチャーはじっと代打の登場を待っている。 ところが、その相手ピッチャーの目が点になった。バッターボックスに、小学生ぐらいのちまっこい女の子がやってきたからだ 「立浪みくよ!」にかっと八重歯を見せて名乗る。「にひ。二塁打決めちゃうから!」 これが六谷純子監督の秘密兵器だ。決定打を確保するために用意した、野球大好き少女。本人も中日ドラゴンズのユニフォームシャツにミニスカートという格好で登場しており、やる気に満ちているようだ。背番号は当然「3」に決まっている。 みくがバットを振る。なるほど手首の関節は非常に柔らかく動き、バットは身体よりも大きくて綺麗な弧を描く。失投はもちろんのこと、きわどい球でもしっかり当ててきそうだ。 「しかも足がかなり速いんだ。使えるぞ」 「出塁率がえらいことになってますねぇ」 データを眺めながら小松はそう呟いた。 だが相手チームの監督も出てきてピッチャー交代を告げた。どうやら向こうもクローザーとして、「助っ人」を用意してきたようなのだ。 マウンドに上がったのは。双葉学園の制服を着ている高等部の子だった。みくが怪訝そうな顔つきになった。 「・・・・・・誰、あんた」 「×××××です・・・・・・先生本気で投げますから・・・・・・」 みくがバッターボックスに入り、試合が再開される。彼女は非常に小柄なので、ストライクゾーンはかなり小さくて低い。制球力が求められる。 ×××はほとんど振りかぶらずにすっと投げてきた。いつどこで力んでいるのかもわからないぐらい、軽いモーションだ。真上にすっぽぬけた球を高い動体視力で追いながら、みくはまず見送ることを判断しかけたのだが。 何と球が急に降ってきた。慌ててバットを振ったが空を切る。 (ナックル!) 驚いてばっと×××のほうを向く。この人、できる! みくの衝撃覚めやらぬまま、×××はあっという間に二球目を投じてきた。 またもすっぽ抜けた球だ。しかも外側に大きくそれている。これはボール球だろうとみくは見送ることにしたが、急に気が変わったかのようにボールはクンと落ちてきて、しかもストライクゾーンに方向を変えてきた。 「ストラィーッ!」 アンパイアが声も高らかに判定し、みくは「な!」と彼を睨みつけた。しかし逆に睨み返されて威圧されてしまい、ぐぬぬと涙目になって×××のほうを向き直る。アウトローぎりぎりいっぱいに入ったのだ。 (何なの、あのボール!) ×××はひょうひょうと、表情一つ変えずに不可思議ナックルボールを放り続ける。厳しいコースに入ってきたものをなんとかカットしてしのぐが、タイミングを合わせて振れたときに限って軸をずらされ、ファールにされてしまう。とても精神的に疲れてくる。 ずっとツーストライクノーボールのまま追い詰められているみくは、すっかり心が揺れ動いてしまっており冷静さを欠いていた。×××はその隙を見逃さなかった。 全然力を入れているようには見えない、ゆったりとしたフォーム。その小さな手元から速いストレートが伸びてきたのだ。 「え、ちょ」 手が出なかった。インサイド直球にズバっと決まり、試合の決着がついたのである。 「ぐわー! 三連覇がぁー!」と純子は崩れ落ち、みくはバッターボックスでぺたんとお尻を着いて座り込んでしまい、「うわぁあああん、もう帰るぅ! 帰ってマサにいっぱいイイコトしてもらうぅ~~~!」とびーびー泣き出してしまった。 マウンド中央で喜び合う交通バスチームのおっさんたち。監督がやってきて、「×××ちゃんありがとう! すごい魔球だね、野球やってたのかい?」ときいてきた。 こういうとき決まって×××は、こう答えるのだ。 「昔取った・・・・・・杵柄です・・・・・・から・・・・・・」 閉会式のあと、×××は打ち上げパーティーに誘われたが丁重に断った。やるべきことがたくさんあった。学園側と約束した島内奉仕活動や、弟と食べる食事の準備。他の部活動からも助っ人を頼まれている。×××にとって忙しい日々が続いていた。 グラウンドを後にし、道路を横断する。青信号を確認し、ピッチャーグラブの入っているナップザックを肩から提げてとことこ横断していた、そのときだった。 右側から車が猛スピードで突っ込んできたのだ。×××は驚き、すぐ自分自身に跳躍力増強の異能をブーストした。前方向にカエルのごとく鋭く飛び出し、反対側の歩道にごろごろ転がって何とか轢かれずにすんだ。 「・・・・・・っ」 むっとした顔で信号無視をはたらいた車を睨む。その車は停止することなく、何の悪びれもない様子で去っていった。白いスポーツカー。エンジン音はとてもうるさい。 「袖ヶ浦・・・・・・ナンバー」 はて、袖ヶ浦ってどこだったか? そんなことを考えていたとき、先ほどまでいた歩道を小学生たちが駆けてきた。それに続いて、どうしてか××××と××××までもがどたばたと続いてきたので、ぎょっとする。 「あーもう、しつけぇ! 虹子ぉ、虹の橋出してくれぇ!」 「やだ! からかったの太陽くんじゃん! そういうの嫌!」 「いい加減堪忍なさい! 絶対ただじゃ済まさないから!」 「ねぇ待ってよ××ちゃーん、待ってってばぁ~~~」 一行の背中が見えなくなってから、×××は呟いた。 「元気な・・・・・・人たち」 夕刻のニューヨーク。洋上を×××××社のクルーズ客船が堂々と進む。 高価な置物のように並べられて美しく輝く、マンハッタンのビル。そのような美しい夜景をバックに、船内ではとある催し物が開かれていた。 超科学異能アンドロイドコンクール。 異能者として生まれた令嬢を持つ×××××社ならではのイベントだ。地球上の各国からロボット工学を専門とする異能者が集まり、ロボットやアンドロイドの出来映えを競うのだ。 「優勝は・・・・・・××××。×××××××××!」 ドンとスポットライトが、××××に合わさる。会場が拍手で埋め尽くされた。 「光栄ですわ。どうもありがと」 ××××ボディの製作者である××××××××が壇上に上がったとき、さらに祝福の拍手が大きくなった。××が主催者の娘だからとか、そのような理由で選ばれたのではないということはこの場にいる誰もが理解している。 ××××はフランス人形を思わせる豪華なドレスに身を包まれており、透き通るような白い素肌と「にこっ」という愛嬌のある微笑みが審査員をことごとく魅了した。アンドロイド本体の性能もさることながら、デザインセンスも厳しいものが要求されるこのコンテストにおいて、××××の優勝は最初から決まっていたのも同然であったのだ。 「悔しい。さすがは米国を代表する×××××社の令嬢だ」 「あら、日本代表の与田光一さんじゃなくて?」 クフフ、と××は勝ち誇った小憎らしい笑みを彼に向けた。与田光一もまた、ロボット工学を十八番とする国産ロボットメーカーの跡継ぎの意地をかけてこのコンテストに臨んだのだ。しかし、あの美しいマリオネットを前になすすべもなかった。完敗だった。 「メイドインジャパンもあの程度じゃたかが知れてますわね。超科学は今後、とても重要な産業となる分野。それはあなたもよくおわかりでしょう」 「ああ。これからは僕らの時代だ。僕らがこれからの異能者たちを、世界中の人間たちを牽引していかなければならない」 「そのイニシアチブも我々×××××社が――『USA』が握ることになりますわ。あなたがたジャップは私たちのお尻をいつまでも追い続けることですのね、クフフフ」 「くっ・・・・・・!」 「だいたいモチーフがウチの風紀委員長とはどういうことでして? あんな仏頂面で愛想のない貧乳堅物凶暴剣客女の、どこがいいんですの?」 「大きなお世話だ・・・・・・!」 与田光一は今回、自身の通学している双葉学園で風紀委員長を務めている逢洲等華をモデルにしたロボットでコンテストに挑んだ。偵察ロボットで逢洲等華の生活や行動、嗜好を徹底的に取材し百パーセントに近い水準で再現した自信作であるはずだったのに。 「教えて差し上げますわ光一さん。超科学は『愛』のちから。光一さんのようにどこか歪んだ気持ちでものを作っていては、いつまで経っても皆様方の共感なんて得られませんの」 「もっと・・・・・・バストを強調すべきだった・・・・・・」 がっくり肩を落とす与田を放っておき、××はヒロインのもとへ向かう。××××は世界各国の異能者たちと握手をしたり、挨拶をしたりしていてとても幸せそう。そう、××××を幸せにすることが××××××××にとって何よりの幸せ。生きがい。『愛』。 ××××は××に気づくと、その美しい笑顔を彼女にも向けた。 「綺麗ですわ、×××。あなたが、そして私たちが一番ですのよ・・・・・・」 「・・・・・・う~ん、×××、素敵ですわ・・・・・・綺麗ですわ・・・・・・さすがは私の・・・・・・×××・・・・・・むにゃむにゃ」 デスクに突っ伏し寝言を漏らしている××××××××。せっかくの設計図がくしゃくしゃになり、可愛らしい小顔にも消しゴムのカスがたくさんこびりついてしまっている。 「あらあら」 ××××××××は消しゴムのカスを取ってあげてから、××の白衣を彼女の肩にかけてあげた。何か楽しそうな夢の中にいる彼女を起こさないように、静かに、そっと。 「どんな夢を見てるんだろ。私にも見せて欲しいな」 親友の寝顔を眺めながら、××××は傍らの椅子に座った。自分で用意してきた雑誌を開き、恋愛関係のコラムや占いコーナーをチェックする。 彼女はボディの修復・調整をしに××のラボに来ていた。××××の戦闘ボディは××の手によって修理中である。 ちょうど先月、××と××××は醒徒会に勝負を挑んだばかりであった。それも、恐れ多くも双葉学園醒徒会長・藤神門御鈴とである。真正面から白虎との光線の撃ち合いを繰り広げるという、学園史上稀に見る壮絶な戦いであった。 結果は・・・・・・。結局会長には歯が立たず、××××は文字通り死力を尽くして半壊してしまった。それから学内・島内での奉仕活動の傍ら、××××ボディを修理・修復する作業が連日続いていた。 「××ちゃん、私のために頑張ってる」 ××の××××に対する気持ちの入れようや愛情は、××××本人がよくわかっていた。浮遊するだけの存在だった自分を友達として迎え入れ、本体そっくりなボディと戦う力を与えてくれた。 それだけに、××××が会長との戦いで消滅寸前まで陥ったとき、××は心から涙を流していた。絶対に自分と離れたくないという、純粋な気持ち。 だから、××はハード・スケジュールでもこうして頑張っている。睡眠時間も惜しんで新しい設計のボディを構想してくれている。毎日の調整作業にも優しく付き合ってくれる。 「私は××ちゃんに、とっても愛されてる」 丸い眼鏡を外した××は、歳相応の幼い少女にしか見えない。××××はこの女の子が親友であることに強い誇りを感じていた。 「無いなぁ」 遠藤雅はすっかり困った様子で、大量の本がぎっしり詰め込まれている棚の前で立ち尽くしていた。 大学が夏休み中、異能歴史学科のゼミでレポートの課題を与えられていたのだ。教授の雅に突きつけた課題は、「BEFORE1999とAFTER1999について調べること」。日ごろ図書室をほとんど利用しない彼にとって、この無限にすら感じる空間の中で適切な資料を探せというのは苦行のようにしか思えなかった。 「ま、今日で初めて図書室に入ったしね」 はぁっとため息をつく。しかし、与えられた時間は限られているのだ。途方に暮れる暇があったら目を動かす、足を動かす、頭を動かすべし。 「どうしたの?」 と、そのとき横から話しかけられた。雅は左を向く。 緑の瞳をした外国人の女の子がすぐ隣にいた。身長が同じぐらいなので、すぐ目の前に端整の取れた綺麗な顔がある。白い肌とブロンドの髪。美人さんだ。いい匂いがする。雅も双葉学園に入学して半年ほど経過したが、このような生粋の外国人は珍しいと思っていた。 「何を探してるの?」 「ああ、その、BEFORE1999やAFTER1999について調べたいんだけど」 「うん、確か異能歴史学のコーナーにあったような気がする」 「え? そんなコーナーあったの?」 「もう、ダメだよ。ちゃんと調べないと」 くすくす静かに笑われ、雅は顔から火が出るような思いをしていた。女の子に(それも可愛い)呆れられることほど、男にとって情けないものはないのである。 「おぅ、遠藤、×××××」 そして彼女の向こう側からやってきた、かなり大柄な男子学生。硬い筋肉を何十にも重ねて全身に巡らせ、まるで鎧に身をまとっているかのような男。そう、彼こそが――。 「キャッ。龍河さまっ!」 龍河「さま」? 雅はびっくりして彼女の横顔を見る。確かに醒徒会広報・龍河弾はべらぼうに強くてこの学園になくてはならないヒーローではあるが、あたかも王子様であるかのように憧れる子がいるなんて夢にも思わない(それも可愛い)。 「珍しいな、×××××が遠藤と話してるなんてよ」 「その、この方が図書館に不慣れだというんで、助けてあげようかなって・・・・・・。えへへ」 「けっこういいことするじゃないか、×××××」 ぽんぽんと頭を触られる。×××××と呼ばれた外国人の女の子は顔面をピンク色にし、緑の瞳を潤ませていた。ああ、わかりやすい人だなと雅はしみじみ思った。 彼のレポート課題に関わる文献は、×××××の教えてくれたとおりの箇所にあった。 「学生証を出してください」 「はい」 受付に座っていたのは黒い髪を二つに縛ってそのまま下ろした、一言で表現してしまえば「地味」な女の子だった。制服からして中等部の子だろうなと雅は思う。「図書委員」の腕章が参禅と輝いていた。 その女の子はトレー式のリーダーに学生証をかざし、貸し出し記録を入力した。このモバイル学生証はとても便利なものだ。GPSに似た位置特定機能もあれば、ラルヴァ接近を探知するレーダーまでも備わっている。しかもこうして図書の貸出記録も付けることができるとは。 ×××××にお礼を言うため、彼女のところに戻ろうとする。彼女はまだ、龍河ともじもじしながら会話をしていた。龍河が笑顔で何か言うたび、×××××は目を合わせられず下のほうに視線を移した。アッシュブロンドの後ろ髪が細かく揺れている。 「邪魔しちゃ悪いかな」 雅はそう思い、そっとその場から去って図書室を後にしたのであった。 ××××××××××の第一印象は「か弱い」。 そんなことを思っていた。 「ところで龍河さま?」 「なんだ?」 「龍河さまも何か用があって来たのではいのですか?」 「へへ、×××××に会いにきたに決まってんだろ?」 ボンと彼女は赤面した。 「まぁ、本当はちょっとした野暮用ってやつだ。ここんところ、また醒徒会が忙しくなってきたんだ」 残念そうな顔をこっそり見せてから、×××××は彼にこうきく。 「問題でも起こったんですか?」 「それに近いようなもんだ」龍河は言う。「双葉島外部の異能者について調べなきゃならなくなった。それも早急にな。島の外では妙な事件が起こっている」 ×××××は小首を傾げて彼の話を聞いていた。 トップに戻る 作品保管庫に戻る
https://w.atwiki.jp/umineko/pages/35.html
ヘッター(Hetter) メンバー おっさん ゲームはヘタなくせにめんどくさがり。 キレ芸持ちの糖尿のヘビースモーカー キレると黙るよ?(本人談) 最近吐血したらしい。 とりあえず、まだ寿命はあるらしい。 痰の検査結果まち。 実際にキレたのは某中二病患者の彼にだけだったりする おむすび禁止 2007/2/19 おむすび禁止の言いつけを破り、罰としておっぱい禁止にされる 例外として60歳以上とニューハーフのおっぱいはOKとなった。 (デック裁判長の温情である。) 即座に裁定を不服として上告中である プロレスゲームはガチ派 散々技かけておいて言った台詞は 「面白いからやっただけ」 ↑PS2のオンプロで 7分間も技かけられっぱなしだったとアマギン氏は、今でも顔を赤くしながら当時を語る・・・ その当時はボイスチャットのない時代だったので、直接電話で抗議したらしい。 ヘッター曰く 今まで散々ボコボコにされてたやん たまには仕返しさせてもらってもバチあたらんやろ? アマギンふざけんな俺を誰だと思ってるんだ?アマギンZX様だぞボコボコにしてやんよ ヘッターはい、すいませんでしたもうしません。 アマギンZX様いやね、あれはマジひどかったね どのぐらいひどかったかって言うとPS3なみだね 自己紹介 好きな漫画 ビックマグナム黒岩先生 好きな超人 バロム1 好きな先生 3年B組おっぱい先生 好きな実績 むりなもんはむり 好きなもの おむすび おっぱい 彼は生粋のテキサスブロンコで有る。
https://w.atwiki.jp/kokigame/pages/279.html
ツンデレでヤンデレな幼馴染み小鳥遊双葉さんとHなことをするゲーム 430 :名無したちの午後:2008/08/30(土) 21 18 01 ID TQIU/36C0 ツンデレで~双葉さんと~以下略、プレイ中。 ヒロイン3で、手コキ足コキ素股で亀頭ナデ等色々ある。 紫のヒロインがかわええ。 関連レス
https://w.atwiki.jp/mayshared/pages/1475.html
プロローグ 「えらいもんに遭っちまった」 岡持ちを右手に提げ、拍手敬は一目散に走る。 近所だからといってスクーターを使わなかったのが運のツキだった。道の途中で危険なラルヴァに襲われたのである。 最近の双葉島は物騒だ。出刃包丁を持った「口裂け女」が出没し、人間を無差別に襲っているのである。出前を終えて人気の無い裏通りを歩いていたら、遭遇してしまった。 「どこ行ったの、あのおっぱい狂い!」 ラルヴァにまでおっぱい呼ばわりとは。 無理も無い。ワタシキレイ? という問いに「胸が貧相だな」と答えてしまったのだから。そりゃあ電柱の陰から大型マスクをかけた女性がぬっと出てきてそんなことを言ってきたら、単なる変な人だと適当にあしらってしまう。 しかし、事態はとても笑えるようなものではない。 「生きて帰れっかなぁ?」 どうにかして物陰に潜み、苦労人の勤労学生は呟いた。 拍手敬は戦うことができない。それは彼が戦闘向きの異能者ではないからである。 しかも今隠れている場所が、運の悪いことに袋小路である。女は拍手が近辺にいるのを確信しており、なかなか離れていかない。もし顔を出したらドスンと突っ込まれ、あっという間も無く刺殺だ。 相手は血走った目で、じりじり近寄ってくる。マズい。 彼は路駐の陰に隠れているので、このまま近づかれたら間違いなく見つかるだろう。唐突に訪れた死神の足音に、拍手は震える。このまま死んでしまうのか。 自分が死んだらどうなってしまうのだろう。所属する二年C組には衝撃が走り、勤務している中華料理店は大騒ぎになる。 あの外道巫女は今も腹を空かせ、ちゃっかりテーブルに座っているのだろうか。 俺の死を知って、何を思うんだろうか。 「死んでたまるか!」 あの憎たらしい笑顔を思ったとたん、拍手の気持ちは強くなる。空っぽの岡持ちを握り締める。こんなところでくたばるわけにはいかないのだ。 「どぉりゃあぁあああ―――――――――――ッ!」 車の陰から飛び出た。腹の底から叫び、岡持ちを本気で投げつける。飛び道具でひるませた隙に逃亡するという寸法だ。 だが、口裂け女は見事なハイキックで岡持ちを蹴っ飛ばした。岡持ちはあさっての方向へと飛んでいき、見えなくなってからガキィンと音が聞えてくる。渾身の一投は通用しなかった。 「オワタ」 これで手持ちの武器はなくなってしまった。怖がらずに、岡持ちで殴りかかればよかったのである。 勝利を目前にし、口裂け女は接近する。前のめりになって倒れてしまいそうな前傾姿勢で、片足を引きずりながらやってきた。それが出刃包丁を振り上げた瞬間、熊のような猛烈な早さで突っ込んできたものだから、さすがの拍手も恐怖する。 (ちくしょう!) 半ばやけっぱちになり、素手で迎え撃とうとしたそのときだった。 拍手は突然、真上へと引っ張り挙げられた。 動揺する間もない。逃げられて悔しそうに叫ぶ口裂け女を眼下に、どんどん彼は浮き上がっていく。やがて口裂け女が小さな点になって見えなくなり、町中を張り巡らす細い道筋が浮き上がる。まるで俯瞰図を眺めているようだ。 上昇はなおも止まらない。水平線や富士山まで見えてきた。どうしてかはわからない。 もう口裂け女どころではなかった。怖くなって、「助けてくれーッ!」と絶叫する。 「落ち着いてよ! 君は私と飛んでるだけだから!」 「へ?」 後ろから女の子の声。彼は目を丸くして振り向いた。 黒髪で、前髪を真ん中に分けている。彼はその子に抱えられて空に浮かんでいたのだ。 そしてもっと不思議なものを発見する。彼女の背中から生える、赤い蛍光色に発光する棒状のもの。それが「翼」であると拍手はすぐに理解した。この機材の力で、自分たちは浮遊していることも。 「博士、聞えますか?」 『おう聞えるぞ。どうだったか?』 「救出できました! 無事です!」 『そうか、よかった! ったく、近頃ホント物騒だ』 無線越しに会話をしているようである。「博士」という言葉からして、この機械の発明者なのだろう。 それから口裂け女がいる辺りから離れ、人の多い区立公園に着陸する。口裂け女、飛行体験。拍手は今も、自分のざっと体感したことが信じられず、芝生に座り込んでぼうっとしていた。 ふっと苦笑しつつ、口を開く。 「空飛ぶ異能者・・・・・・聞いたことねえな」 「島の空を守るのは、魔女だけではありません」 赤い飛行ユニットを装着した黒髪の子は、大きく胸を張って拍手に言った。 「異能者航空部隊の一つ『スカイラインピジョン』! 島の安全を守るため、今日も鳥になります!」 スカイラインピジョン01 六時間目の、英語の時間のことである。 しょぼくれた顔をして立っている男子生徒が、頭をテキストではたかれた。 「中田、またあんた赤点じゃないの!」 烈火のごとく怒られ、クラスメートの前で無様な姿をさらしていた。 だが彼にとって、教師の怒声より教室に圧しかかっているこの静寂のほうが辛い。 いっそのこと笑ってくれと、そう喚き散らしたくてたまらなかった。教室のみんなに感情を爆発させたかった。そうでもしないと、彼の心は砕け散ってしまいそうであったから。 「来週の追試には必ず来ること。それにあんた、小テストの追試も三十枚ぐらい溜まってるじゃない」 こらえきれず、男子生徒の誰かがプッと吹き出した。 「少しはやることやりなさい! わかった?」 「わかりました」 はっきりしない口調で返事をした。英語教師は大きなため息を見せた後、白のチョークを手に取りようやく授業へと入る。この生徒のせいで二十分遅れのスタートだ。 彼は着席すると、すぐさま真横を向いてしまう。彼の席は遠くに水平線を望むことのできる、明るくてまぶしい窓際だった。 穏やかな秋の微風が、どうしようもなく疲弊しきった心身に優しい。彼はそう思う。 うっすらと青い大空を突っ切っていく、航空機を見つめながら。 中田青空は高等部二年生のおちこぼれである。 学業の成績はまるで良くない。しかしそれよりも、異能者としてまるで役に立たない・戦力にならないことのほうが、彼にとてつもない劣等感を抱かせていた。 青空はれっきとした異能者であるが、未だに何の異能者であるかは判明していなかった。魂源力は存在するらしいのだが、自分の異能が何であるのかわからなければ使いようがない。そのため全く戦力になれない。 その代わり、青空は人並み外れた「反射神経」を持っていた。それは異能とは別である、天性の才能である。敵の不意打ちと言ったものに対して素早く反応することができた。 だが如月千鶴のように魔術師として飛びぬけるような強さもなければ、あるいは舞華風鈴のように応用の利くような力であるわけでもない。青空は最弱の生徒であった。 それでいて学業や部活動など、何か別のことで頑張っているかといえばそうでもない。むしろ勉強に真面目に取り組まなくなってからは、常にクラス最下位の成績に甘んじていた。毎回テストの解答用紙に名前だけ書いて白紙提出しているのだから、当たり前だ。 英語教師が、長かった授業の終わりを告げた。終始上の空であった青空は、この授業で何を習ったのかまったく覚えていない。と、毎日こんな調子なのである。 クラス委員が全員に起立を促す。 「これで授業を終わりまーす、礼!」 「ありがとうございましたー」 生徒たちは椅子を引いて着席する。気の早い男子生徒はすでに帰宅準備を終えており、帰りのホームルームが始まるのをじっと待っていた。 「スィー・ユー、おつかれさま。よく復習しといてね。特に、なーかーたー!」 二年B組の英語を担当する教諭・エヴェリン野本は、大げさに声を上げる。 「やることやれば力は付くんだからね? きちんとやってくるんだよ?」 「はい・・・・・・」 愛想笑いの一つ見せない青空に、野本はまたも深いため息をつく。授業で使った真四角のカセットデッキを片手に、教室を後にした。 「ああ、やっと終わった」 どの教科の教諭にも同じようなことを言われる。その度に青空はうんざりした気持ちになり、心の中で両耳を塞いでいた。もう放っておいてほしい。どうせ自分はおちこぼれなのだから。 そのとき背後から、とある女の子の笑い声が聞えてきた。恐らく舞華風鈴と話しているのだろう。その声の主のことを、青空はよく知っていた。 「いつも元気だなぁ」 片肘を着き、授業中に配られたわら半紙のプリントを広げる。先ほど返却された課題テストの、学年順位表。上位五十名の氏名が掲載されており、青空が最後にこの華々しいランキングに名前を載せたのは去年の夏であった。 四位、権藤つばめ。 後ろを振り向く。前髪を真ん中で分けた黒髪の子が、思った通り友達と談笑している。 クラスでは明るい性格の秀才としてイメージが通っている。普段物静かで生真面目な風鈴と比較して、人懐っこく接しやすいタイプとして男子から好感度を稼いでいるようだ。その上頭がいいというのだから非の打ち所が無い。ざわつく教室のなかで声がよく通り、青空が離れた位置にいても、風鈴と英語の教え合いをしている様子がよくわかった。 それに比べて自分は何だろう。たちまち青空は自己嫌悪に陥ってしまう。 そんな彼とつばめは、意外と接点が多い。昨年も同じクラスだった。彼が成績を落として情けない顔をするようになってから、彼女はどうしてかしきりに気にかけてくれる。 席替えで接近するようなことがあれば、つばめは積極的に話しかけてきたものだった。 (青空くん、一緒にお昼食べない?) (勉強ならいつでも力になるぞ!) (青空って、なんかカッコいい名前だよね) 色々な記憶を呼び起こすたび、ちょっとした酩酊の気分に浸ることができた。女の子に気を遣われて嬉しくないわけがないのである。 でも今日のような無様なところを見られては、つばめもひどく幻滅したことだろう。英語の授業のことを思い出すと、情けなさのあまり泣きたくなってきた。 いつまでもこんな学校にいたくない。教室を出たい。窓辺の席にいる青空は、空を眺める。ほのかに黄色く透き通る午後の空を、二羽の鳩が横切っていった。 あの鳥のように、早く自由になりたい。 彼の心は灰色雲に覆われて、希望の日差しも見込めない暗がりに包まれていた。 中田青空は高等部から双葉学園に編入してきた。 それは彼が異能者だとわかったからである。両親の言いなりになるまま双葉学園に入ることになり、今やこの異世界で寮暮らしだ。 「何で嫌だって言わなかったんだろう・・・・・・」 自分の進路に関して興味も希望も無かったため、なんら疑問を持たずに受諾してしまった。その結果が、この拷問のような島流し。 「異能」というわけのわからない概念について学ばされ。 「ラルヴァ」という未知の生物と無理やり戦わされ。 彼にとって双葉学園編入は、人生における大失敗と言ってもオーバーではない。 自分の責任であることは十分承知しているものの、青空は満面の笑みで編入を薦めた両親をひどく憎んでいた。ある理由で彼らを強く憎んでいた。 「センパイ!」 そそくさと正門を出ようとしたときである。今、最も会いたくない女の子の声を聞いてしまった。 「また帰宅部ですか。どうして部活に来ないんですか」 「ごめん、ひかりちゃん。具合悪いんだ」 「そう言って合宿も来なかったし。しっかりしてください!」 低い身長、小学生と聞き間違えそうな甲高いソプラノ、ボリュームあるブラウスのふくらみ。 高等部一年生の河原ひかりは両手を腰に当てて、青空をじっと見据えている。 それから大げさに口を開けて息をつき、大げさにだらりと両腕を垂らした。 「ひかり悲しいです。センパイの勇姿に見とれて弓道部に入ったのに、それが今や幽霊部員のヒキコモリなんて」 「そんなこと言われても・・・・・・」 「いつまで惰眠むさぼってんですか。みんなセンパイのこと待ってるんですよ?」 「色々と辛いんだ。もうちょっと待ってて」 「ウツは甘えです。単なる怠惰です。つべこべ言ってないで今からでも弓を引きましょ・・・・・・あ、センパイ! どこ行くんですかぁ!」 青空はそれ以上耳を貸さず、繁華街に向けて歩き出した。 部活動など勝手に退部扱いにしてほしいものだが、それはこの口うるさいちびっ子後輩が許してくれないことだろう。 「いい加減にしないと寮に押しかけますよ! 聞いてるんですかセンパイ!」 どうにかしてひかりを振り切った後、青空は一人寂しく街を歩く。 空気もぐっと澄み渡り、たんすからマフラーを出したくなるぐらい肌寒い季節になっていた。この双葉島にも銀杏のつぶれた匂いが漂っている。 ふとブティックのショーウィンドウで立ち止まる。青空が見つめているのは、きっと背の高くて茶髪の男性が着るとよく似合うことだろう、黒皮のジャケット・・・・・・ではない。 鏡に映りこんだ自分自身であった。 冴えない容姿、映えない異能。第一印象で完敗しているタイプの男子生徒だ。そして駄目な奴の宿命か、日ごろの訓練や学業の成績は散々たるもの。 すっかりそんな学園生活が嫌になっていた。何かと異能がもてはやされる環境だ。最初に異能テストを受けて己の実態を知ったときなど、絶望感しか抱かない。 異能者として無能で、何が双葉学園生か。日ごろ頭の中を占有しているのは、いつも「落第」「留年」「自主退学」の文字群である。 「とっとと辞めてぇ・・・・・・」 ラルヴァなんてこの先一生倒せそうもないし、クラスメートとの共闘もろくに出来ない。あまりにも惨めな思いをしすぎて、胃をボロボロに痛める始末だ。 睡眠障害は基本的な生活習慣を崩壊させ、学業に深刻な影響を及ぼした。溜まりに溜まってしまった、不良債権の山――英単語テストの追試。 もう得意の弓も続ける気がしなくなっていた。これだけ毎日辛い思いをしながら、無理をしてあの学園に通い続ける意味はあるのか。奔放に伸びた前髪の奥の瞳は、汚く濁っている。 彼にはもう、これ以上頑張っていく気力が空っぽだった。 青空は行きつけのゲームセンターに寄っていた。繁華街にある家族向けアミューズメントパークなのだが、地下一階のフロアは双葉島でも有数の対人ゲームの聖地である。 いくら訓練や勉強にやる気はなくとも、こういった遊びはきちんとこなせるのだから都合のいい男である。しかしそれを後ろめたいとも思わず、彼は高揚感を胸に階段を降りる。 タバコの匂いが充満する澱んだ空気。大きすぎる音量や歓声、怒声。 それら全てが青空にとって心地がいい。気分の晴れない教室の中よりも、よほどこちらのほうが気楽に過ごすことができた。 お目当ての筐体を見ると、すでに顔なじみの連中が、「行けぇ!」「キタキタキタぁー!」「やってねぇ――ッ!」などという口プレイをしている。 そして財布からICカードを取り出した。彼はとあるゲームの上級者なのだ。 「乱入だな」 彼は筐体の椅子に座ると百円玉を入れ、慣れた手つきでICカードを挿入する。 モニターのすぐ前に、戦闘機の操縦かんのようなスティックが二本並んでいる。それぞれにトリガーが備え付けられていた。いわゆる「ツインスティック」だ。 『ベルゼブブ・アーマーズ』 全国でも双葉島にだけにしか置いていないロボット格闘ゲーム。 一日中遊んでいても飽きないぐらい大好きな、対戦型のゲームだ。3Dの世界を縦横無尽に駆け巡り、相手の操作するロボットと勝負する。 たらたらしていたらあっという間にやられてしまう圧倒的スピード感が、人気の秘密だ。カードを挿入してしばらく待ったあと、青空専用の機体データが読み込まれた。間もなく反対側の台にいる奴とのバトルが始まる。 戦闘前に、お互いのパイロットネームや戦跡が表示された。知っている名だ。相手はもう何千戦やったかもわからない、いつもの常連客である。 「げっ、SORAさんキチャッタ!」 「SORAさんちぃーっす!」 大学部の生徒がタバコをふかし、へらへら笑いながら青空のところにやってきた。彼も笑顔で挨拶をする。 「おっす。大学生はいいですね、早くから遊べて」 「まーね。でもSORAさん来てくれて楽しくなりそう」 SORAというのは青空のパイロットネームである。彼は去年の秋ごろから、すっかりこのゲームの中毒者になっていた。 さて対戦は始まった。いつもの奴とはいえ相手も上級クラスだ。日ごろ暇な時間をこのゲームにつぎ込んでいるだけあり、基本テクニックはもちろんのこと、ハイレベルな小技もきちんと使ってくる。少しでも隙を見せれば確実にダメージを削られる。弱くない相手だ。 しかし、青空はこのゲームに異常なまでの「適正」があった。 「ああもう、かすりもしねえ」 「おー、あれ避けるか」 反対側の台から聞えてくる声。廃人レベルのやりこみ具合を誇る彼らでも、青空の機体を撃破することはめったにない。 まず反射神経が違う。次に集中力が違う。青空はいつも「相手が止まってみえる」と彼らに言っていた。野球選手か挌闘家がするようなコメントである。 「もらった! ・・・・・・ってうそぉ――――――ん!」 「あれ当たったろ? 何で当たってないの?」 青空は地面で撃ち合いをするより、空中で高速移動をし、空から奇襲を仕掛ける戦法を好んだ。彼は逃げ惑う相手の移動先を瞬時に先読みし、空中移動で交差しつつ、真下を通り抜けようとするところをソードでぶった斬ってみせる。その離れ技を目撃した大学生たちは、「うわぁ――ッ!」とフロア中に聞えるぐらいの声で絶叫した。 「チクショー、また負けた」 「結局どうしようもなかったね」 「SORAさんマジパネェっす」 彼の型破りな攻略法は、それまでの最上級者であった彼らをコテンパンにしてしまった。見たことも聞いたこともないトリッキーな戦い方に、彼らはメロメロにされた。 大学部の人たちは青空に敬意を表しつつ、いつもこう言ってくれる。 「SORAさんは俺たちにはない才能があるんだよ。未来に生きてるよ」 青空はそれを聞くたび、とても誇らしい気分になることができた。 これが俺の『才能』なんだ、と。 おちこぼれの自分がただ一つ持っていた、他人に誇れる要素。尊敬の眼差しを浴びることのできる、自慢の取り柄。 だからこそ青空はこのゲームだけは続けることが出来る。ベルゼブブ・アーマーズがなければとっくにばらばらに崩れていたことだろう。なぜならこのゲームが彼のプライドを支えているのだから。このゲームにおいて最強であることが、中田青空のアイデンティティなのだから。 また大学生がリベンジしてくる。彼は背筋を伸ばしてスティックを握り直した。 「退学したら、専業アーケードゲーマーになるかな」 上機嫌に、冗談交じりに青空は呟いた。 今日も閉店時間まで遊ぼう。宿題なんてどうでもいい。 彼は今日も、荒れた日常を送ろうとしていた。 ところが反対側の台で異変が起こる。なにやら揉めているようだ。 「おい、俺のクレジットだぞ!」 「あとで百円返すから、お願い!」 「横入りはねーよ」 どうしてか、いきなり険悪なムードに陥っていた。 何が起こった? 不審に思った青空は向こうの台を覗き込む。 そして驚愕する。 「わかってる。わかってるけど、彼と戦わせて」 美しく背中まで伸びた黒髪。悪びれの無い、茶目っ気たっぷりな笑顔。 「権藤つばめ・・・・・・!」 彼の苦手なクラスメートの女子が、反対側の台に着席しているのだ。 クラスの秀才がなぜこんなゲーセンに。青空は彼女がここにいる理由が全くわからない。 スティックを握っていた左手が、いつの間にか汗で濡れている。突然のことに動揺しきっており、視線が上下左右に激しくぶれていたところを「乱入」された。画面が切り変わった瞬間、青空は「ひっ」と変な声を上げる。 嫌そうな顔をした大学生の連中が、後ろ頭をかきながらぞろぞろやってきた。 「SORAさん、何か変なの来ちゃったけど」 「知ってる? あの子」 「え? ああ、あいつ?」 青空は下を向き、少し黙ってからこう答える。 「知らない。学校でも見たことない」 それは聞いた大学生たちは、「何モンだろうな」と口々に話していた。 ・・・・・・どうしてとっさにそんなウソを付いてしまったのか、青空本人にもわからない。 それより、なぜこの女は自分の居場所にずけずけ入り込んでくるのか。日ごろのおせっかいもうっとうしくてたまらないというのに。憎たらしそうに舌打ちをしたあと、青空は据わった目をしてモニターのほうに向き直り、スティックを握り締めた。 殺してやる。 ここでは俺が最強だということを、この女にも思い知らせてやる。 彼の本来純粋であるべき感情は、とてもおかしな方向へと膨らんでいった。 つばめはICカードを持っていないようなので、機体選択画面から適当に選んでいた。 「よぅし、私はコレでやろっ」 それは青空に対して言ったのだろうか。彼はじっと画面を見据えたまま、口を真っ直ぐ結んで無視を決め込んでいた。 対戦が始まる前に、青空のこれまでの戦跡がつばめに明るみにされる。 「一万戦かぁ、相当やりこんでるね」 「・・・・・・」 「これやってる暇あったら、一緒に勉強すればよかったのに」 「ほっといてくれ!」 本気で怒鳴った青空に、ギャラリーの大学生たちはびっくりする。 「SORAさん、挑発に乗っちゃだめですって」 「あ、ありがとう」 彼らが注意をしてくれなかったら、頭に血が上った状態で対戦を始めようとしていた。冷静かつ大胆に、を戦いのモットーとしている青空らしくない。 権藤つばめは中田青空という人間に、深く干渉しようとしている。その目的はわからない。彼を徹底的に茶化しにきたのか、それとも? ・・・・・・コーラをぐいと飲み干す。炭酸は抜け切っており、ぬるくて甘ったるい。 「お手並み拝見と行くね。手加減なんてしないんだから」 「返り討ちにしてやる」 画面が変わる。お互いの機体が向き合っている。「3」。カウントダウンが始まった。 「同じ機体なのかよ・・・・・・!」 ぎりっと歯軋りを立てる。「2」。 「ぶっ殺す」 「1」。 スティックが乱暴な音とともに、真横に倒された。 レディ・ゴー! しかし次の瞬間には、青空は身を乗り出して叫んでいた。 開幕早々だった。真横に移動をしたのだが、それをつばめにまるっきり読まれていたのである。あらかじめ進行方向の先に射出されていた、高威力のレーザーをみっともなく食らってしまった。 「SORAさんが事故った!」 「事故る」とは、相手が先に出して置いた攻撃に、まんまと突っ込んだり踏んだりしてダメージをもらってしまうことを言う。 もうこの被弾で青空の理性はメチャクチャになった。スティックを左右に開き、3D世界の空へと舞い上がる。得意の空中戦術に持ち込んで、空から豪雨のような攻撃を仕掛けるつもりだ。 ところが、青空は信じられないものを見た。 何と、つばめも青空と同じ空中戦で応じてきたのだ。 「こいつ何なんだ!」 青空は驚愕で声を震わせる。 はっきり言って、この乱入はつばめによるタチの悪い嫌がらせだと思っていた。 違う。権藤つばめはこのゲームの上級者だ! 今度はつばめから攻撃を仕掛けてくる。誘導性の高いビーム兵器の連射を、青空は必死に上へ横へと避ける。クラスの才色兼備の優等生に、圧倒どころか反撃もできない。不意に心の奥底から熱い感情がこみ上げてきた。 「くっ・・・・・・!」 回避が追いつかず、つばめのけん制攻撃にかすってしまった。腹が立ち、筐体を拳で殴る。 大学生たちは青空の豹変に声も出ない。大声を上げ、顔を真っ赤にし、やがて両目から涙が溢れ出てきた彼を前に、とにかく呆然とさせられている ただ一つ誇りとしているものを、つばめに汚されたくなかった。 それがたとえゲームという程度の低いものであっても。それは彼にとって命の次に大切であることには変わりない。絶対に負けるわけにはいかなかった。 冷静さを欠いたか、青空は何度も攻撃を食らってしまう。普段の対戦ならまず見せることのない、無様な負け試合だ。残り時間は数十秒。まだまだ大逆転の見込める時間帯。 つばめはまだ一度も攻撃を食らっていない。誰も予想すらできなかった、青空の完封負けが見えてきた。このままだとあまりにも屈辱的な敗北を迎えてしまう。 「まだだ。まだ終われない」 ここでつばめに負けたら、もう二度とこのゲームを取り柄だと思えない。 何に関しても負けっぱなしだった青空。これはそんな彼が他人に打ち勝つことのできる唯一のものだ。それまで完膚なきまでにねじ伏せられてしまったら、彼はもう何を生きがいにしていったらいいのかわからない。 彼は最後の手段に出ていた。特殊なコマンドを素早く入力する。 機体が変形し、「戦闘機」となった。機体は青いオーラをまとうと、ものすごいスピードで一直線につばめの機体へと突っ込んでいく。 「捨て身の特攻だ!」 大学生たちが吼える。青空は一発逆転を狙い、大技をつばめに繰り出したのだ。 「絶対に負けねえぞ、権藤つばめぇ――――――――――ッ!」 涙粒が弾け飛ぶ。つばめの機体を粉々にしようと、青空の機体は襲い掛かっていった。 しかし・・・・・・。 つばめの機体は真上に引っ張られたように浮かぶ。ひらりと、あっさりと青空の特攻を回避してしまった。これが決着の瞬間であった。 でも、本当は青空にもわかっていた。 上級者であるのなら、このような大技など避けられて当然なのである。しかし彼にはもうこの特攻しか逆転できる手段がなかった。それに、もうこうすることぐらいしかつばめに意地というものを見せ付けることができなかった。 あさっての方向へ飛んでいく青空の機体。上空を取ったつばめの機体は、完全に相手に止めを刺すことのできる状況にある。でも、ビームも何も繰り出さない。 哀れな負け犬が遠くへ飛んでいくのを、ただ黙って見逃すだけ。 長い十秒間が過ぎ去った。タイムアップ。つばめが勝利した瞬間である。 その結果を最後まで直視できず、青空は残りコンマ五秒という段階で席を立っていた。そしてその場から逃げるよう、素早く一階への階段を上がっていく。 「SORAさん!」 その後ろ姿は、特攻を失敗した機体が遠くへと飛び去っていくのと、そっくりであった。 彼が展望台に到着したころには、双葉島を囲む東京の景色も夜景として彩られていた。 あの後は街を飛び出し、山に登り、ひとり展望台で景色を眺めていた。この島で一番空に近い場所で、魂の抜けた輝きの無い瞳をさらしていた。 「何やってんだろうな、俺」 中田青空。ナカタソラ。なかたそら。 勉強は出来ない。異能は無い。 そんな自分が唯一つ得意にしていたものも、他人から徹底的に叩きのめされた。 なぜこんなにも辛い気持ちでいっぱいなのか。どうして権藤つばめに敗れてこんなにもみじめな気持ちでいっぱいなのか。よくわからない。 双葉島にやってきてから、そうしてみじめに思うことだらけ。何をやっても「負け」がまとわりつき、結果が伴わない。心が晴れない日など訪れたためしがない。今後も色々な場面で生き恥をさらすぐらいなら、いっそのこと消えてなくなってしまおうか。 がけ下を覗く。下は真っ暗で、ぴちゃぴちゃと小波が岩肌を舐める音がする。まさに死の淵そのものだ。 自分が死んだら周囲はどうなるのだろう。親を困らせるにはいいだろう。クラスのみんなも特に何の感情も抱かないに違いない。 弓道部でも、あのちびっ子後輩がどんな顔をするのか想像もつかない。半年間じっくり面倒を見て、立派な戦力として育ててきた後輩。ここで暗闇に身を投げたら、やはり悲しまれるのだろう。泣かれるだろう。 「はあー・・・・・・」 それでも、あの子を泣かすことだけは駄目だと思った。 こんな青空にも、それなりに良心らしき感情は残っていたのである。死んだらだめだ。つまらない人生だけど、何とか耐え抜こう。そう思ってフェンスに背中を預ける。 ところが、何か「ばきん」という音がした。 音がしたと思ったその瞬間には、彼の体は真後ろにひっくり返っていた。 「え」 何と木製のフェンスが腐食のため、折れてしまったのだ。青空は崖下へ吸い込まれるよう、真っ逆さまに落下していく。 (う、嘘!) どんどん遠くなる展望台の明かり。死んでしまうのか。本当におしまいなのか。 自分にはこの島で、もっとやれることがなかったか? 今になって様々な気持ちが駆け巡り、死への恐怖が強烈なものになってくる。 嫌だ。死にたくない。 「あ、あぁあああ―――――ッ!」 まさに絶叫。張り裂けんばかりに口を開き、青空は闇に飲み込まれていく。 そのときだった。 ばたばたと風を切って落下していくなか、彼の耳は小さな音を捕捉した。 「・・・・・・ぇー・・・・・・」 女の子の声のようだ。それは少しずつ近づいてくる。 「・・・・・・だめぇ――・・・・・・」 何だと思い、声のしてくるほうを凝視する。 そして、両目を大きく見開いたのである。 「死んじゃだめぇ――――――――――――ッ!」 「な」 何と黒髪をなびかせて、権藤つばめが真っ逆さまになって突っ込んできたのだ。 「お前!」 声を荒げた。どう見ても、彼女が青空のあとを追って飛び降りたようにしか見えない。彼女はぐんぐん青空に接近し、そして追いついた。つばめの表情がはっきりと伺える距離にまで縮まった。彼女は怒鳴り散らす。 「何で死ぬのよ! ゲームに負けたぐらいで、弱虫! いくじなし!」 「何で落っこちてんだよ。死ぬぞ!」 「あなたを助けるために決まってんでしょう!」 「はぁ? こんなんでもう、どうやって」 やがてとうとう、つばめは青空の手を取った。それから彼を抱きしめる。冷え切っていた青空の心臓が奮え、温かい火が点る。 「ねぇ、約束して」 つばめはしっかり青空の目を見て言った。 「生きて! 死なないで! 生きて!」 「そう言われても、どうすんだ」 「約束して! あなたが死んじゃ私がやだぁ! あなたはまだ死んではいけないの、あなたはこの島でやるべきことがあるの」 涙を上空に残しながら、つばめは必死に叫び続ける。 それはまるで、あのゲームをやっているような感覚であった。 タイムアップまで数秒しか残されていないのに、ゆっくりと時間が流れていくこの感覚。油断を見せたら逆転を許し、こちらの気迫が上回れば逆転することのできる緊張のひと時。 「こんなとこじゃ話し足りなぁい! だから生きるって約束して! 生きるって私に言ってぇ!」 展望台の位置が、もう見えないぐらいに遠くなった。もうはっきりとした距離感などわからない。つばめの瞳を見つめていたら、自然と青空の心が熱くなる。日ごろの投げやりな気分はさっぱり無くなり、力強い勇気で心が満たされる。 「生きる」 彼は言った。 「生きるよ、権藤さん」 「・・・・・・嬉しい」 彼女はぎゅっと、さらに青空を強く抱きしめた。どんなことがあっても、絶対に離すことが無いよう、強く、強く――。 そして次の瞬間、彼に作用している力の全てが別の方向へと切り替わった。 ぐいっと引っ張り上げられ、たまらず両目を思い切り瞑る。つばめの柔らかい胸元に顔をうずめ、これでもかというぐらい抱きつく。 落下していた彼は、一転して上昇していた。一気に駆け上っていった。この感覚は誰もが知っているに違いない、旅客機が離陸していくときに感じることのできる、あの重力への反逆だ。 感覚も理解もまるで追いつかない青空は、いきなりのことに頭の中が混乱していた。ただひたすら、つばめの体にしがみついていることぐらいしかできない。 「もう目、開けていいよ」 つばめの優しいささやき。そして青空は、うっすらとまぶたを開く。 真下に広がっていたのは、町の俯瞰図であった。街灯がぽつぽつ縦に並び、住宅地では明かりがいくつも点となって闇の中に輝いていた。 青空は双葉島の夜景を空から眺めていたのである。 「これはいったい・・・・・・」 「飛んでるんだよ、私たち」 青空ははっとなり、つばめを見る。 つばめの背中から、赤い主翼のようなものが左右に伸びていた。そしてその翼から淡いピンクのビロードが、まるでマントのように後方へと流れている。 彼女の背中から、機械的な赤い「翼」が生えていたのだ。しばらくの間、青空は翼を生やしたつばめの姿に見とれる。日ごろ彼はいつも、「彼女の異能は何だろう」と想像や妄想にふけっていた。 「これがお前の異能なのか」 「違うよ。これは異能者なら誰でもできること」 「嘘だ。飛ぶ方法なんて聞いたことがない・・・・・・って、うわぁ!」 真っ直ぐ進行方向を向いた瞬間、青空はいきなりの右回転によって仰向けにひっくり返された 自分たちを軸として夜景のきらめきが左に回転し、頭上に広がる。つばめはそのまま回転を続け、美しい星空を天上に戻してやる。 エルロン・ロールの機動である。ぐるっと回されてしまい、頭がくらくらした。 二人はちょうど、繁華街上空を飛行しているところであった。一つ一つの明かりの強い輝きが、人々の活発な営みを思わせる。湯気の伸びる、双葉湯の煙突のてっぺんを通過。 夜の空中散歩にすっかりあっけにとられていたら、つばめが沈んだ声で青空にこうきいてきた。 「何で死のうとするの」 「べ、別に死のうとしたわけじゃ!」 「ずっと気にしてたんだよ? 青空くん二年生になって、元気無いから」 「それは、勉強とか、色々あって」 「いつでも頼りにして良かったのに」 彼が粉々に散ってしまわないよう、もう一度つばめはしっかり抱きしめる。あらゆる苦痛や障害から保護するように抱きしめる。青空はそれに胸をときめかせた。駆け上がるように加速していく胸の鼓動を、彼女に感じ取られないよう必死に祈る。 それからわざとらしくふてくされたようにして、青空はこんな風に吐き捨てた。 「そっちのほうがみっともなくて、嫌だよ」 「え? 意味がわかんない」 つばめは本当に理解できないような、きょとんとした様子で言われる。 「わかんないなら別にいいよ」 そんな彼女の態度に拍子抜けし、青空は本当にふてくされてしまったのであった。 「青空くんの悩みはもっとお話しないとわからないけど、これだけは言いたい。死んじゃだめ。二度と死のうとしないで」 自殺するわけじゃなかったのにと、青空は複雑な気持ちで真下を見た。あるものが目に入る。やけに見覚えのある、立派な校門だ。 「あなたは異能者として、これから色んな人を守っていかなければならないから」 「え?」 「青空くんにはね、私たちにはない大きな『才能』がある」 「あるわけないって。俺、役立たずだし」 突然の話に青空は驚く。これからつばめが何の話を始めようとするのか、当惑しながら次の言葉を待つ。 「そんなことない。今、あなたの力が必要とされている」 「俺の力が?」 そうきき返すが、今度は何も返してこなかった。徐々に高度が下がり、速度も落ちる。彼女は着陸に集中していた。 普段馴染みのある、学園の校庭が接近していた。 双葉学園高等部のグラウンドに着地したとたん、青空は腰が抜けてしまってその場に座り込んでしまう。 権藤つばめはやはり、背中から大型の赤い主翼を生やしている。その姿は天使や翼人というよりも、戦闘機を思わせるフォルムであった。その翼が消去される。 「びっくりしたでしょ」 「うん」 呆けている青空に、つばめは背を向けてみせる。 彼女は箱を背負っていた。台形をさかさまにし、縦に長くしたような印象である。それぞれの斜辺から両方向に翼が伸びていたようだ。とすると、その機材に空を飛べる秘密が隠されているに違いない。 『フライハイユニット』 と、つばめは教えてくれた。 「フライハイユニット?」 「赤い翼は私の。他に黒がいる」 「はは、権藤さん、そんなことやってんたんだ」 「うん! 中等部のころからずっとね、研究に参加してたの!」 驚きの連続だった。権藤つばめはどちらかといえば、戦いよりも学業に力を入れているものだとばかり思っていた。だが、まさか裏でそんな活動をしていたとは。 「そして私たちは、ある一人の男子生徒に注目している」 「誰かいるの?」 鈍感な彼がそうきくと、つばめはむっと頬を膨らませて歩み寄ってくる。 すると手を伸ばし、青空の両頬を掴んできた。ぐに~っと伸ばしながらこう言い聞かせる。 「あなたに決まってるでしょ青空くん! だから死なれるととっても困るの!」 「・・・・・・へ?」 彼はワンテンポ遅れて、間抜けな声を上げた。 「俺なんかが?」 「そう!」 つばめは一通りくすくす笑ったあと、表情を引き締め、改まった態度に変わった。それでも口元は嬉しそうに笑っている。 「異能者航空部隊の一つ『スカイラインピジョン』は、あなたを歓迎します、中田青空くん!」 しばらくの間、彼はぽかんとして、この黒髪のツバメを眺めていた。 これが、彼の長い戦いの始まりである。 次【スカイラインピジョン02(前半)】 トップに戻る 作品保管庫に戻る