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支援会話集 フレデリク×ソワレ 支援C 支援B 支援A 支援S 支援C 【ソワレ】 いたいた、フレデリク! 一手、ご教示願えるかな。 【フレデリク】 はい、構いません。 どこからでもどうぞ。 【ソワレ】 では! はあっ! 【フレデリク】 良い動きです… しかし! 【ソワレ】 あうっ! 【フレデリク】 大丈夫ですか、ソワレさん? 【ソワレ】 うん…降参だよ。ボクの負けだ。 ありがとう…ございました。 ………… 【フレデリク】 どうかしましたか? 【ソワレ】 …なぜ、こうもあっさり 負けてしまうんだろうか。 【フレデリク】 あっさり、ではありませんよ。 きわどい勝負でした。 【ソワレ】 けど、ボクは訓練中には 他の奴らに負けたことはなかった。 【フレデリク】 勝負は時の運といいます。 【ソワレ】 うーん… 付き合ってくれてありがとう。 また、強くなったら挑戦に来るよ! 【フレデリク】 はい。お待ちしております。 支援B 【フレデリク】 ソワレさん、どうされたのです? 最近の戦いは、あなたらしくありません。 なにか悩みごとでも? 【ソワレ】 …フレデリクに隠し事はできないね。 なぜキミに勝てないか考えてたんだ。 【フレデリク】 ああ、そのことでしたか。 別に気になさらなくても良いのでは? 私たちは仲間なのですから。 【ソワレ】 でも不思議なんだ。戦う前から… キミにだけは勝てる気がしない。 どうしてなんだろう? 【フレデリク】 ふむ、そうですね… そういえば、自警団の見習いだったあなたに 剣と槍を教えたのは私でしたね。 【ソワレ】 うん。あの頃は、まわりの男たちには 絶対負けないって意気込んでたな… 指南役のキミに会った時、 ぜんぜん強そうに見えなかったのに、 最初の手合せで キミにボコボコにされたっけ… 【フレデリク】 あ、いえ、ボコボコにはしていませんよ。 あれは通過儀礼というものです。 【ソワレ】 あの時は悔しくて 一晩中寝られなかったなあ… 【フレデリク】 …まあそれはともかくです、 原因はその日にあるのかもしれません。 武術の師匠と弟子が戦えば、 最初は弟子は手も足も出ません。 その時の『師匠には勝てない』という 思い込みが、後々まで続くのでしょう。 【ソワレ】 ! じゃあ、 ボクがフレデリクに勝てないのは… 昔フレデリクに ボコボコにされたから!? 【フレデリク】 ですから ボコボコにはしていません。 支援A 【ソワレ】 フレデリク。 さっきの戦い、見てくれた? 【フレデリク】 はい。とても見事な戦いぶりでした。 なにかコツをつかまれたようですね。 【ソワレ】 うん。フレデリクのおかげで… わかったんだ。 女であることがいやで、 男に負けたくなかった自分… キミに勝とうと やっきになってた自分… 【フレデリク】 その気持ちは 悪いことではありませんが… 【ソワレ】 うん。でも、 ボクはその気持ちに囚われすぎてた。 男のキミを打ち負かすことが目的じゃない。 ボクが目指すべき姿は、そうじゃない。 キミに仲間として信頼してもらえる 自分になること… そうなって初めて、 ボクはフレデリクと対等になれる。 【フレデリク】 ソワレさん… 立派になられましたね。 【ソワレ】 本当の自分と、正面から 向き合うことができたんだ。 新しい扉が開いたような、 そんな感覚だった。 フレデリクのおかげだよ。 キミが師匠で良かった。 【フレデリク】 いえ、あなたは もう一人前ですよ。 師匠と弟子の関係は終わり… 今の私たちは対等な仲間です。 【ソワレ】 うん! ありがとう! 支援S 【ソワレ】 うーん… 【フレデリク】 どうしたのですか、ソワレさん? また悩み事ですか? 【ソワレ】 以前、キミに勝てない理由を 考えてたんだけど… 【フレデリク】 おや? その件でしたら もう解決したのでは? 武術の師匠と弟子というものは… 【ソワレ】 うん。 あの時はボクも そうなんだって納得してた。 でも、違うんだ。 この気持ちは…違う。 【フレデリク】 ………? ソワレさん…? 【ソワレ】 キミを前にするとぎこちなくなる… キミのことをいつも考えてしまう… こんな気持ちは初めてだから わからなかったけど… ボクは、 キミのことが好きなんだ。 【フレデリク】 ソワレさん… 【ソワレ】 ごめん、急にこんなこと言って。 でもこの気持ちに決着をつけないと、 ボクはきっと前に進めない。 キミの気持ちを…教えてほしい。 【フレデリク】 わかりました。 それでは… これが私の気持ちです。 どうか受け取ってください。 【ソワレ】 …これって…指輪? ボクの名前が彫ってある… 【フレデリク】 貴方に渡したくて用意したものです。 この戦いが終わった後に、 と思っていましたが… 【ソワレ】 …ボクでいいの? 【フレデリク】 はい。貴方でないとダメなのです。 【ソワレ】 不思議だね。 また、新しい扉が開いた。 しあわせな光が射し込んで、 ボクの心を満たしてくれている… 【フレデリク】 私もです。気がつけば 貴方がいてくれるだけで、 私の心はいつも温かな光で 満たされていたのですから。 【ソワレ】 ……… …フレデリク… 【フレデリク】 これからも、私の光でいてください。 【ソワレ】 はい。喜んで。 【フレデリク】 ありがとう、ソワレさん。 貴方への永遠の愛をここに誓います。 【ソワレ】 こちらこそありがとう、フレデリク… これからもよろしく。
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どうしたら三年前の事件を明るく防げるかなと思って書いたもの パラレルワールド 『ハッピーエンドをめざして』 http //rano.jp/1258 中等部二年生の水分理緒を知らぬ者はいないだろう。 彼女の異能は、触れた水を武器として操ることである。いつもペットボトルの水を携帯し、戦闘時にはそのミネラルウォーターを使って敵を「斬る」。 名家の娘である彼女は常に穏やかな笑顔をたたえており、異性に人気がある。おっとりとした外見とは裏腹に芯の強い側面があり、かなり優秀な異能者であることは解説するまでもない。 そんな彼女が窓辺の席で、友人たちと談笑しているなか。 昼休みの校庭では高等部の学生が草野球を楽しんでいた。投手が渾身のストレートをインコースに放ったが――。 「どおおおりゃあああああああああああ!」 打者は太すぎる両腕をコンパクトに縮め、一気にバットを回す。 軟球が卓球のピンポン球のように、軽々と弾き飛ばされてしまった。 「どーだ! これで全打席ホームランだ!」 龍河弾はバットを放り投げると、巨体をのっしのっしと弾ませてダイヤモンドを一蹴した。どう攻めてもこの男によって得点されてしまう投手はやけになり、「おめー相手じゃ打つ手がねーよ! この筋肉バカ!」と罵った。 へっへっへと本塁を踏んだこの男子高校生は竜の血が流れており、超力系異能者のなかでも桁違いに「強い」。どんなに厄介な有害ラルヴァが発生しても、彼が動けば戦闘は穏便に、あるいは一発逆転を見せることも多かった。 その校庭から一つの建物をはさんだ場所に、初等部・中等部の給食センターがある。給食は生徒の任意で食べることができ、クラスごとに給食当番というものがある。 「へっ。誰よりも早く給食を届けてやるぜ!」 そう楽しそうな声で言ったのは、初等部の早瀬速人である。彼の異能は亜音速で移動することだ。今日もグリーンピース入りカレーの入った大食管を両手に持ち、バカなことをおっぱじめようとしていた。 通常のルートを外れて、彼は高等部の敷地を横切っていく。ショートカットだ。得意の異能でぐんぐん加速していったが、視界に小さな女性の姿を目にした。 「げっ! うわあああああああああああ!」 異能のコントロールに未熟だった彼は、まだ急には止まれなかった。女性が仰天して早瀬のほうを向き、目と目が合ったときには・・・・・。事故は発生していた。大食管のふたが宙に吹っ飛んだ。 「君ぃ。クラスと担任の名前を言いなさい。ちゃんと謝ってくれれば、許してあげるからね・・・・・・?」 「ごめんなさいごめんなさい! 本当に申し訳ございませんでした、先輩!」 頭からあつあつのカレーをかぶった春奈・C・クラウディウスは、しくしく涙を流した。 そこは山を切り崩し、住宅地を造成しようとしている地区であった。 「確か、この辺りでしたわね・・・・・・」 水分理緒は工事現場に来ていた。 土曜日の授業が終わったあと、帰宅途中に彼女のモバイル手帳が振動した。周辺にいるラルヴァを探知したのだ。 舗装されていない道を奥に進んでいくと、やがて訪れた凄惨な光景に彼女は唾を飲み込んだ。 「これは・・・・・・」 あちこちに横転している、傷だらけの重機。 岩肌や路面に付着している、おびただしい量の血。 ここで戦闘があったことは確かである。それにしても、常軌を逸している惨い現場だ。ここで一体どんな戦いがなされていたというのか。 「すでにもう終わってるようだ。ひでぇもんだ」 と、水分は背後から話しかけられる。 静かに彼女のもとへ近づいていたのは、とても背の高くて硬そうな筋肉を身にまとっている、強そうな男子生徒であった。半そでのカッターシャツから、大木のような太い腕が伸びている。 「高等部の龍河さん・・・・・・?」 「そうだ。お前さんは中等部の水分理緒かい?」 水分の握るペットボトルを見てから、龍河はそうきいた。 「お互い、有名人なんですね」と水分はくすっと笑う。「龍河さんも、ラルヴァの反応をたどって来たのでしょうか?」 「ああ。俺が来たときにはもう、こんな感じだったけどな」 そこにまたもう一人、男の子が乱入してくる。彼は砂煙を上げながら、急停止した。 「待たせたなラルヴァ野郎! この俺、早瀬速人が相手をしてやる!」 水分と龍河はぽかんとしながら彼の事を見つめていた。激しい戦闘も異能力のぶつかり合いも、何も起こってはいない。むなしい鳥の鳴き声が早瀬の耳にも届いたとき。 「あれ・・・・・・? もう戦いは終わってるの・・・・・・?」 彼はしょんぼり肩を落としたのであった。 工事現場でのラルヴァ発生は、偶然にもこの三人を引き寄せたである。あまりにも生々しい爪あとが気になった彼らは、調査を始めた。 「どこも真っ赤じゃねえか。残忍だぜ」 「でも、これは人間のものではないと思いますわ」 水分は龍河に、ある場所を指差した。血溜まりに混じって、茶色い体毛が大量に残っているのだ。 「・・・・・・ビーストラルヴァのものなのか?」 「だと私は見ています」 ということは、残忍に傷つけられたのは異能者でなく、ラルヴァのほう・・・・・・? ますます不可思議な現場に、二人は首をかしげるのであった。 「このえぐられたような跡はなんだ?」 と、もっと奥に進んだ場所にいる早瀬が水分たちを呼んだ。 水分が駆けつけてみると、棒のようなものでえぐられたような傷が、切り開かれた山肌にいくつも走っていたのである。周りに付着する血液の量も多かった。 「異能者が武器でラルヴァを痛めつけていた・・・・・・?」 水分がそう言ったとき、早瀬は背筋を震わせる。 「ちょっとやりすぎだろ・・・・・・」 「ええ、私もそう思います」 「これじゃまるで、人間がラルヴァ殺しを楽しんでいるかのよう――」 早瀬の視線が水分に釘付けになる。水分は喉が乾いたのだろうか、ペットボトルを開ける。彼女の桃色の唇に、ペットボトルの口が近づく。 しかし、彼女は水を飲もうとしていたのではなかった。 水分はミネラルウォーターの雫を零すと、それを指先でピンと弾き飛ばした。 早瀬の顔のすぐ隣を、弾丸のように駆け抜けた。キュンという音が彼の耳に残る。 そして。 がらんがらんと、早瀬の背後で何かが崩れる音がした。 「何が起こった!」 龍河が二人のもとに駆けつけた。水分はにっこり、 「私たちのことを覗いている無粋な方がいらっしゃったので」 と妖艶に言った。 草むらの影から何かが這い出てくる。龍河は表情を引き締め、構える。 だが、それはばちばちと火花を散らしている「ロボット」であった。水分の弾き飛ばした水弾によって、目の部分に大きな穴が開いてしまった。 「ロボットだと・・・・・・?」 「どこかで見たことあるようなロボットですね」 そう、水分がロボットのもとへ近づいたときだ。 「水分先輩! 危ない!」 彼女は横から現れた早瀬に抱えられ、その場から急激に離れる。同時に異変を察知した龍河も、後ろに大きく飛んだ。 工事現場の山に爆音が響く。 ロボットは自爆した。 三人はあのあと、一緒に双葉学園に戻っていた。 図書委員に無理を言って、閉館時間の後も図書館に彼らは篭っていた。 時刻は二十時を過ぎている。でも、早く調べ上げないといけない。そんな直感が彼らに働いていたのである。徹夜も覚悟していた。 「思い出しました・・・・・・。あのロボットは授業で使われていたものです」 「ああ、言われてみればそうだな」 双葉学園の戦闘訓練では、訓練用ロボットが使用されることがある。水分も龍河も一度は戦ったことのあるロボットが、あの現場にいたのだ。 龍河が、双葉学園で使用されている訓練ロボットの資料を持ってきた。 「ほら、これだ。こいつがあの山にいたんだ」 「与田技研の訓練素材ですわね」 「何であんな所にいたんだろうな。怪しくねえか?」 「はい。普段見るものは迷彩塗装なんてされていません」 工事現場で遭遇したロボットは確かに、与田技研のカタログに載っているものと同系機種だった。しかし水分が撃破したものは迷彩塗装がされており、頭部に大きな目のようなものが設置されていた。 「情報収集・・・・・・でしょうか?」 「だろうな」 「ただいま! 話を聞いてきたぞ!」 と、早瀬が図書館に帰ってきた。彼はあの工事に携わっていた人の話を聞くために、病院に行っていたのだ。片手には、帰り際に調達してきた差し入れが。 「巨大な熊のラルヴァが現れたらしい。重機を投げてはぶつけてきたり、おっちゃんたちに殴りかかったり、散々だったってさ」 「やっぱりカテゴリー・ビーストだったか」 と、龍河は早瀬の持ち込んできたおにぎりを頬張りながら言った。 「あと、戦いに出たのは高等部の立浪姉妹だった」 「立浪姉妹?」 水分はミネラルウォーターを机に置いて、早瀬の顔を見る。 「うん。工事現場の人が目撃していたから間違いない」 「学園の猫耳アイドルだったのか。なら瞬殺されちまうわけだ」 「でも、解せませんわね」 三人は怪訝そうな顔つきになる。 どうして、あんな凄惨な現場が残されていたのだろう? 血液が辺り一面、べっとりと付着していたというひどい惨状。 現場の痕跡や武装の特性から考えて、ビーストラルヴァを倒したのは鞭使い・立浪みきだろう。しかし、姉とは違って消極的で大人しい彼女が、あんなに惨たらしくラルヴァを血祭りに上げるようなことがあるのだろうか? ・・・・・・そして、運命のときは刻一刻と近づいてきていた。 龍河のモバイル学生証が鳴動したのだ。 「お? 誰からだ?」 画面を開いたとき、彼の顔に緊張が走った。 「なんでぇ、これ・・・・・・」 水分と早瀬が、大きな肩の後ろから覗き込む。 それは差出人が「双葉学園・超科学力分野・有識者会議」となっているメールであったのだ。本文が「これは過去にラルヴァによって不幸に陥った者に対して送られるものである」とだけ記されており、大きな容量の動画が添付されていた。 「過去にラルヴァによって不幸に陥った者だとぉ? 勝手なこと言いやがって!」 彼は机を乱暴に殴った。水分が冷静にこんなことを言う。 「もしかして、複数人の生徒に配信されている・・・・・・?」 「え? 俺のところには届いてないぞ?」 早瀬が慌てて自分のモバイル学生証を見て言った。 「とりあえず、動画を見てみませんか?」 水分が言う。龍河は恐る恐る、そのファイルを開いた。 そして彼らは惨劇を目の当たりにする。 三人は机にぐったりと突っ伏したり、両腕を垂らしたりしていた。 「何だよ・・・・・・。あんな残虐なの・・・・・・」 早瀬は歯を鳴らしながら言った。 さすがの水分も頭痛がしているのか、額を押さえていた。 ファイルには、立浪みきがあの工事現場で鞭を振るい、熊のラルヴァを惨殺する映像が納められていた。腕を斬ったり、腹を裂いたり、頭部に穴を開けてかき混ぜたり。 それに織り交ぜられて、テロップが挿入されていた。「立浪姉妹はラルヴァである」「立浪姉妹は双葉学園の脅威である」「立浪姉妹は我々学園生徒によって粛清させられるべきである」 「なんつうか、悪意がひしひしと伝わってきたな」 そう、顔面の汗を拭いながら龍河は言った。 「執拗なほどにね」と、水分が付け加える。 「悪趣味だなあ。こんなのをみんなに配信しているのか?」と、早瀬が言った。 「・・・・・・裏で何かが起ころうとしている」 水分は椅子から立ち上がる。静かな図書室内を歩きながら、二人に自分の考えていることを話した。 「これはふだんラルヴァを嫌っている生徒を執拗に煽り立てるものです。そんな彼らを煽り立てて、利用しようとしている悪いお方がいらっしゃいますわ。その方は相当、立浪姉妹を消したくてたまらないようですわね」 普通の人間なら参ってしまうぐらい、刺激の強すぎる映像。しつこいぐらいに視覚的に訴えてきた、テロップの煽り文句。嘘を嘘と見抜けないような人であったら、あっけなく冷静さを失って思わぬ行動に出てしまうことだろう。それぐらい映像は巧妙で、悪質なつくりをしていた。 「もしかして、その映像を撮影していたのが」 「ええ。あのロボットで間違いないですわ」 早瀬に対して水分はそう答えた。 しかし、双葉学園に訓練素材を提供しているロボット工学の老舗が、あのような姑息な情報収集ロボットを仕向けるような真似をするのだろうか? 与田技研は超科学系の卒業生が立ち上げたメーカーであり、母校の生徒に対して悪事を働くようなことをするとは思えない。 でも、あのロボットを改造することができて、かつ他の目的に転用する技術を持っているのは、与田技研の人間でないとまずありえない。 「聞いたことがあるぜ」 と、龍河はニヤリと笑って言う。 「同期に与田技研のおぼっちゃまがいるんだ。ラルヴァが大ッ嫌いな男だ」 「じゃあ、そいつの仕業なのか?」 「まあ、それは月曜日になってみないとわかりませんわ」 水分は大きく息をついた。 動画の最後に、このような一文が流されていたのだ。 『七月十一日月曜日・高等部第三グラウンドにて、我々は立浪姉妹に真っ向から勝負を仕掛ける。学生諸君で力を合わせ、双葉学園にはびこる悪を排除しよう!』 七月十一日・月曜日。 猫耳姉妹の長女・立浪みかは空高く放り出され、グラウンドに叩きつけられた。 「ひどいよ・・・・・・ひどいよ・・・・・・!」 砂煙の中でうつ伏せになったまま、彼女は泣いていた。 それもそのはずだ。彼女が愛する学園生徒が、こうして敵となって立ちはだかっているのだから。一斉に攻撃を食らって、ボロボロにされているのだから。 「どうだ立浪みか。この人数を見たまえ。これが双葉学園の総意なのだ。『ラルヴァ』であるお前を排除するため、みんなこの場に来てくれたんだ! この現実をどう受け止める!」 涙ぐんでいてぼやけている視界の向こうには、何人も何人も・・・・・・非常に多くの生徒が横に並んで自分を冷たい視線で見下ろしているように見えた。 彼女に対して言葉をぶつけた与田光一は、自分の集めた集団を横目に見る。 そして、ちっと舌打ちをした。 (ああは言ったものの、何だ? この想定以上の人数の少なさは・・・・・・!) 彼はラルヴァに恨みを持っている人間を利用し、立浪姉妹を始末することを企てていた。学園生との手によって彼女を殺させることに大きな意味があるのだ。 そうしたいはずなのに、どうにも人数が集まらない。多くて三百人は集まるものだと目論んでいたのに、ざっと数えたところ、五十人に届くか届かないかの人数であった。 与田は不機嫌だった。おとといから、どうしてかイレギュラーが重なる。 自分の仕向けた情報収集ロボット「コレクター」を、第三者に発見されてしまったのだ。 研究所で遠隔操作をしていた彼は、映像にまず初等部の生徒が映ったのを発見して仰天する。それからすぐに現れたのが、中等部の有名人・水分理緒だった。 まずいと思ったが遅かった。水分は「コレクター」の存在を見破り、水の弾を撃ち込んで機能停止にしてしまう。真っ暗になった映像を前に、与田は悔しそうにして自爆スイッチに拳を叩き込んだ。ロボットを見てしまったのは、あの二人だけだと彼は思い込んでいる。 それでも「コレクター」の映像は手に入れることができたので、地道な編集作業の末、彼は生徒たちに映像を送信することになる。 と、ここで集団がざわつき始めた。与田は考え事を止めて、彼らが指を差すほうを向いた。 見知らぬ熊の少年が、生徒たちに向き合って話をしているのだ。 与田はまた舌打ちをした。「何だ、あいつは!」。彼はイレギュラーが大嫌いなのである。 「人間のみなさま・・・・・・ごめんなさい。異能者のみなさま・・・・・・ごめんなさい。・・・・・・島に住むみなさま・・・・・・ごめんなさい」 氷をぶつけることのできる異能者が、新しい氷を具現させる。 グレネードランチャーを構えた生徒が、しっかり彼に標準を定める。 魔法を使える女子が、ステッキから雷竜を召還する。 「うちの父親が、みなさまに大きな迷惑をかけてしまって・・・・・・。悪いのは僕らですから、どうかみき姉ちゃんたちを・・・・・・」 理性を失った生徒たちの異能力が、火を噴いた。立浪みきは絶叫していた。 ところが、熊の少年――マイクが恐る恐る目を開いたら。 「ぐおおおおおお!」 彼はびっくりした。何と自分に直撃するはずの集中攻撃を、急に現れた男が背中で受け止めているのだ。上空から降ってきた龍河が、生徒たちによる一斉放火からマイクを守ったのだ! 「君はこっちおいで!」 マイクの小さな体は早瀬によって抱えられ、その場から離脱する。攻撃を被弾した龍河は爆発に包まれたが、カッターシャツが吹き飛んだ程度でまったく負傷していない。 「汚い真似しやがって!」 彼がそう睨みを利かせただけで、生徒たちは半歩下がって恐れおののいた。 高等部で最強に近い男が、立浪姉妹の味方をしている。もうそれだけで彼らは何もできなくなる。それぐらい龍河は強くて、敵に回してはいけない存在なのだ。 「ど、どういうことだ! お前だってラルヴァに家族を――」 「大きなお世話だ、おぼっちゃん」 と、龍河は怒りの混じった視線で与田をじっと捉えた。 与田は歯をぎりぎり噛み締めた。ラルヴァに家族を殺されている龍河は、絶対自分の味方になってくれるはずだと思い込んでいた。最強に近い龍河を引きずり込めると確信していたから、自信を持って今回の計画を強行することができたのである。 龍河は困惑している生徒たちに向かって、こう怒鳴った。 「お前らぁー! 何をこんなやつに乗せられているんだぁー!」 「これはあいつの悪巧みなんだ! 騙されちゃいけないんだ!」 マイクを姉妹に預けてきた早瀬も、龍河に並んで彼らに言った。 常軌を逸した悪質な映像を見せ付けられて、麻痺した理性。与田は意図的にそれを狙い、ラルヴァを嫌っている生徒たちを扇動した。 二人の話を聞いた生徒たちは、熱が引いていくように冷静さを取り戻す。 「俺たちはなんでこんなことを?」 「ラルヴァを倒せといっても・・・・・・」 「あそこにいるのは同じ生徒だしなあ・・・・・・?」 与田のかけた催眠がとける。サブリミナルな効果が失われる。学園生徒を利用して、姉妹を殺させる計画が破綻した瞬間であった。 「ぐっ・・・・・・!」 大きめの白衣を翻して、与田が早々に逃亡を図ろうとする。 しかし、退路を水分理緒が塞いだ。 「あなたほど悪いお方を見たことがありませんわ」 「お前は、水分理緒・・・・・・!」 「たくさんの生徒たちにあの惨たらしい動画を送ったそうですね。でも、あなたの思い通りにはさせません」 「俺たちがまる一日かけて、動画を開いた生徒たちに注意していたんだぜ!」 「あいつの言うことに耳を貸すなってね!」 与田は衝撃のあまり目の前が真っ暗になった。 三人は図書館で映像を見たあと、できるだけ多くの生徒たちに連絡を取って、冷静になるよう注意を促していたのだ。映像でしつこく繰り返されていた論調のおかしな点、矛盾点を教え、正気に戻させていた。特に動画を見ていない生徒には、決して見ないよう強く言った。 首謀者はようやく理解する。この三人の妨害が人数の低さに反映していたのだ。龍河を味方につけたくて彼に動画を送ったことが水分たちに計画を知られることになり、皮肉にも敗因となってしまったのである。 「フッ・・・・・・。フハハハハ・・・・・・」 与田は笑い出した。自らの悪巧みがこんなにもあっけなく看破され、失敗に終わってしまうなんて。 そして彼は白衣の中に納めてあった護身銃に手をかける。水分が頭上でペットボトルを握りつぶしたのは、ほぼ同時であった。 「死ね」 トリガーが弾かれる。銃声が響く。水分の脳天目掛けて銃弾が飛んだ。 しかし、水分が腕を縦に振って放った水のウェーブが、真正面から弾丸とぶつかる。 薄い水のカッターに触れた弾丸はぱっくり半分に割れ、分離した。それらはそのまま水分の両脇を通過する。一方、水分のウェーブは、与田の体を縦半分に斬ってしまわんとばかりに直進してきた。 「ひぃっ――」 眼前まで押し寄せたウェーブは、与田のぎりぎり手前で止まって無くなる。迫り来る恐怖の刃物を前にして、与田は死んだとさえ思った。呆然と、銃を握る腕を垂らしたとき。 ぱきん。 眼鏡のブリッジが折れた。 与田はびくびく震えだした。ぼやけた近視の視界の向こうで、水分が笑っている。ピントがずれて見えるはずがないのに、与田には水分の妖しい笑顔が見えてならなかった。 「悪党は大人しく醒徒会の沙汰を待つのがいいですわ。ふふ・・・・・・」 与田はもう、無駄な抵抗をすることはなかった。 「これは何事だ!」 ここでようやく醒徒会が駆けつけてくれた。水分が後から知ったことだが、この日この時、醒徒会のメンバーはどうしてか全員が学部長のもとに呼ばれていた。よりより学園を作るために云々、中身の無い話を学部長から長々と聞かされていたらしい。 実はこの学部長が真の黒幕だったのだ。彼は伝統ある双葉学園にラルヴァの生徒がいることに、誰よりも憤慨した大人であった。つまり、彼は与田たちが立浪姉妹を始末するあいだ、醒徒会を拘束していたのだ。 天下の醒徒会が現場にやってきて、悪事が丸裸になってしまえば、いよいよ与田光一は詰んでしまったことになる。 彼はがっくり、頭を垂らした。 水分と龍河と早瀬は、一緒に醒徒会室から出てきた。 与田光一の悪事を暴き、あわやのところで事件を止めたことに、会長から感謝の言葉をいただいたのだ。後日、三人は改めて表彰されるという。 「与田の計画に加担した奴らも罰せられるんだってさ」 と、早瀬が口を開いた。それに水分がくすっと笑って、 「反省文千枚でしたっけ? ま、嘘を嘘と見抜けなかった罰ですわ」と言った。 「まったくとんでもない奴だったぜ。与田は」 今後、与田光一は風紀委員や学生指導の管理下に置かれ、もう二度と浮かび上がることはないだろう。学生二人を殺そうとしていたことを、学園はとても問題視している。 なお、学部長は自宅謹慎ののち懲戒解雇される見通しらしい。 「猫耳姉妹もホントよかったな。殺されるところだった」 「そうですわね。こうして学園から守られる結果になって良かったです」 「別に二人がラルヴァでもいいのに。わけがわかんないや」 立浪みかとみきはこれまで通り、双葉学園の生徒として平穏な暮らしを送ることができる。二人が知らない間に殺されそうになったことを聞いた友人たちは、これからはどんなときでも側にいてあげようと決心したらしい。仲間がいれば、工事現場のときのような暴走を起こすこともないのだ 「同感です。彼女たちは何も悪くありません」 「だよなぁ? へへ、気が合うな、俺たち」 「俺もそう思う!」 三人はいっせいに笑いあった。すると、水分がこんなことを言った。 「私も醒徒会になって、より良い学校づくりをしたいです」 「俺もそう思ってたところだ!」と龍河が言う。「俺は頭が良い方じゃねェけどよ、楽しい学園生活の為なら全力で働いてやるぜ!」 「俺もいつか醒徒会に立候補したいな。自分の異能を活かした仕事をやりたい!」 「あん? お前にピッタリな仕事は、やっぱパシリじゃねぇのか?」 水分が思わず吹き出してしまう。文句で言い返した早瀬を、龍河がアームロックでぎりぎり締めてからかっていた。 この三人が醒徒会として再会するのは、三年後のはなし。 遠藤雅は大学から双葉学園に入学した、稀な生徒である。 昨日双葉島に到着し、あてがわれていたアパートに入居した。時刻は午前二時手前。暗闇の中に浮かび上がる、明るいコンビニエンス・ストアから出てきた。 袋の中にはカップラーメンと飲み物が入っている。コンビニから離れて、家路に着こうとしたときだった。 コンビニの裏手から、ごそごそと物音がしたのだ。 ――何かいるのかな? 興味の沸いた彼は裏に回った。 駐車場の隅に、何か黒い物体が蠢いている。ゆっくり近づいてみたそのとき、この異形はギロリと真っ黒な眼球を彼に向けた。 「うわあ!」 彼はしりもちをついた。そして驚愕する。 常識ではありえない大きさの「カラス」だった。彼の体を覆い尽くしてしまうぐらい、このバケモノは大きい。 「何だよ、何だよこれ!」 カラスは鋭いくちばしを、彼の頭目掛けて振り下ろした。彼はたまらず目を瞑った。 と、そのとき。雅の背後から、小さな少女の影が。 背後から飛び上がった少女は黄色い瞳をしていた。両手から爪を生やしており、雅の目の前に着地すると同時に切り裂く! ギギッと悲鳴を上げて仰け反ったカラスを、少女は思い切り蹴った。カラスは駐車場の壁面に背中から衝突する。少女は走って、さらに追い討ちをかけた。 深夜に猫の鳴き声が轟いた。カラスは少女の爪によって全身をズタズタに引き裂かれ、絶命する。 「ふうっ」と、カラスを倒した少女は額の汗を拭った。 「おつかれ、みくちゃ」 「うん、上出来だね。あとは早く猫耳が出せるといいね」 戦っていた少女に続き、もう二人、別の女の子が現れた。少女のお姉さんだろうか? 「ま、こんな下級ラルヴァ、大したことないわよ」 と、少女は優雅に言ってみせる。 「あたしたちが戦い方教えてやってんだからねー!」 「一人ぼっちだったらこうも上手くはいかないかもね」 「うん! いつもありがとう、お姉ちゃん!」 そして、しりもちをついたまま呆けている雅のことを、少女は見た。 「あんた、誰?」 「・・・・・・え、その」 「あんたのような弱っちい一般人が出る幕はないの。おとなしくお家に帰ってなさい?」 口の過ぎる末っ子に、次女が「こらこら、みくちゃ!」と注意する。 「こいつはこういう子なんだ、許してやってくれ!」 そう、長女らしき人物が雅にウィンクしてみせた。 三人は深夜にも関わらず、楽しそうに談笑しながら闇夜に消えていった。 「なんだ、あの子」 随分と小生意気な子供だった。雅は立ち上がってぽんぽん埃を払うと、ビニール袋を持つ。 「まあ、どうでもいっか、あんなの」 遠藤雅は口笛でも吹きながら、アパートへ戻っていったのであった。 彼は自分の素晴らしい異能に気づくことはなく、半年で双葉学園を退学した。 トップに戻る 作品保管庫に戻る
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ラノで見る(01冒頭から開始です) 桜子は表紙に目を通した。そこには、 『学校法人双葉学園への入学の手引き』 と、ある。 桜子は一瞬何の事かわからなかった。 より正確には、とてもイヤな予感がしたので、脳が理解する事を拒否したのかも知れない。 「あの、この、双葉学園、って何?」桜子は師範におそるおそる聞いた。 「見ての通りだ。初等部から大学までの一貫教育をしている学校。原則として全寮制。それは初等部についてもそう。所在地は東京湾の新興埋め立て地にある双葉区、そこのほぼ全域が双葉学園のキャンパスとなっておる。私学という扱いだが実質的には半国立と言っても良いな――」 「師範――」桜子は肺から息を絞り出すような声で聞いた。「もしかして――」 「そうだ」尚正は顔色一つ変えずに小さく頷いた。「わしはお前にこの学校に入学して欲しいと思っている。これは入学案内用のパンフレットだが、入学願書の方もすぐに用意出来る」 井高と松尾は完全に視線をあらぬ方向にそらしている。幸広はわけがわからないという顔、聡実は横から覗き込んで興味深そうにパンフレットをめくったりしていた。 「今から受験ですか? 無理です」桜子は言った。 「受験の必要はないぞ。手続きさえ済ませば、即入学が許可される事になっている」 「こんな学校わたし知りません」 「行けば知る事になるだろう。論より証拠という奴だな」 「わたし、もう東筑摩の制服買ったんですけど」 「うむ。それは残念だな。それにかかった費用はこちらで負担出来ると思う」 「友達も同じ高校に行くんです――」 「それは寂しかろう。わしも桜子の顔が見られなくなるのはさびしいと思っとるよ」尚正の声にまた幸広がピクリと反応した。 「一生懸命勉強したんです。合格する為に――」 「知っておる。その努力はどこに行っても無駄になるまい。お前には才能もあるが、まず努力家だ。それはわしもよく知っているし、得難い資質と言える」 「あたしこんな学校行きません。大体知りません」 「お前はこの学校に行くだろうし、そしてそこで知る事になるよ」 「行きませんよ!」 「いや、行く。絶対にな。お前は必ずそうする」 尚正は当たり前の事だと言わんばかりに断言した。 桜子はまたキレた。立ち上がって叫ぶ。 「師範っ!」 その声に飛び上がったのは、幸広と松尾だった。井高は居心地悪そうに座り直しながら、ポケットからハンカチを取り出し額の汗をぬぐった。聡実は桜子が放り出したパンフレットを拾い上げた。 「なんだ、桜子」尚正の返事にまた幸広がピクリと肩を揺らした。 娘を尚正に呼び捨てにされるのがとても気になるらしい。信じる信じないでは警察を信じるが、愛しているかどうかでは間違いなく娘を愛している、というか溺愛しているのが幸広だった。それはそれこそ桜子が聡実のお腹にいる頃から。 「わたしの人生はわたしの人生ですっ! わたしがどうしたいか決めます。師範を尊敬は――、してるけど、わたしはこんな学校なんかには絶対行きませんっ!」 尚正は黙って聞いていた。そして、茶封筒の奥に手を突っ込むと、数枚の写真を取り出した。 様子をちらちら見ていた井高が尚正のその行動に慌てた。 「剣崎さん、それはまだ――」 「ごまかしてもしょうがなかろう。どうせすぐにわかる」 「ですが――」井高はなおも渋った。 「この子は大丈夫だ」尚正は動じず、井高を制した。「ここはわしにまかせてくれ」 「どうなっても知りませんよ――」尚正がガンとして動かないのを見て、井高は渋々引き下がった。 「桜子、これを見てみろ」尚正は激高したまま立っている桜子の前にその写真を突き出す。また幸広の肩がピクリと動く。が、前よりも落ち着いた様子だった。尚正と桜子の様子を興味深そうに見ている。 「今度は――、一体――、これは?」 「何に見える?」 「これって、CG、ですか?」 「違うな。何に見える?」 「映画か何かの一シーンとか」 「違う」 「――」桜子は黙って、改めて写真を見直した。写真は白黒。 そこに写っていたのは、壊れた車の窓にボンネットに上体を突っ伏している人。血を流しているようで、黒々とした液体が周囲に飛び散っている。そして、その近くに立っている警察官の姿。どこかの事故現場のようだ。撮影したのは夜のようで場所は判然としない。 ただ、大きさがおかしかった。こんな大きさの人間はいないはず。車や隣に立っている警察官と見比べるとどうみても三メートルはある。いや、もうちょっと大きいかも知れない。 「ヘンです」桜子の口から出たのはまずはそれだった。 「そうだな。わしもそう思う」 今まで動かなかった幸広が身を乗り出して、桜子の手から写真を抜き取る。井高が何か言いたげに身を乗り出したが、軽く首を振って座り直した。 「映画か何かですか」写真をまじまじと見た幸広は桜子と同じ質問をした。 「違う。そういう生き物というか、わかりやすくいえば『鬼』だな、これは」尚正はこともなげに言った。 「鬼――」幸広はつぶやいた。 「他にも色々いるらしいがな。とりあえずはこういうのがいるのだ」 「でも、師範――」桜子が口を挟む。「わたしと何の関係があるのかわかりません」 「それについてはわたしが」井高が口を挟む。「よろしいですね?」尚正は頷いた。 「竹上市ででもですね。この鬼――、のようなものは既に現れていて被害が出ております。詳細は言えませんが、無視する事は出来ないくらいの事件もそれに伴う被害も出てしまっている」 「はあ――」幸広がよくわからないという表情のまま頷く。聡実は幸広の肩口から写真を覗き込み、あらやだ、とか言っていた。 「そしてこの鬼、便宜上鬼と呼ばせていただきますが、このようなものが現れる時、ある種のパターンというものがありまして――」井高は言い辛そうに口ごもった。「それはまあ――、その、特殊な資質をもっている人間がですね、まれにいるのですが、そういう人がいる場合、その周辺に現れる確率が高くなるという調査結果が出ているのです。それも倍とか、三倍とかではなく、もうちょっと高い確率で――」 「それが――、わたし?」桜子はつぶやいた。 「そうだ」尚正が短く肯定した。 「あんまり面白くない冗談ですね、剣崎さん。荒唐無稽だ」幸広が苦笑しながら言った。 「いや、冗談ではないですよ、諸葉さん。問い合わせをしていただければわかりますが」と、松尾。「ただ、自治体の方ではこの件での問い合わせは現在は受け付けておりませんので、総務省の方に問い合わせをしていただく事になりますが。諸葉さんの手続きやサポートについてはわたしと井高さんがやる事になっておりますけどね」 「総務省?」幸広が惚けた顔になった。 「ええ、こちらが番号です。内線番号も書いてあります」と松尾が小さな紙片を取り出して、幸広に渡した。「お疑いになるのももっともだと思われますので、番号はご自分で確認為された方が良いでしょう。必要ならば専用のメールアドレスもお教えしますが」 幸広は紙片をひったくるようにして受け取ると、物も言わずに応接間を出て行った。足音からすると夫婦の寝室へ入っていったようだ。 「あなた――?」 「パパ――?」 数分もしない内に寝室から、呻き声のような声が聞こえてきた。続いてなにやら怒鳴っている声がした。そして幸広が戻ってきた。 顔が真っ赤になっている。幸広は激怒していた。 「こんなバカな話があるか!」幸広が怒鳴った。「陰謀だ! 全部何かタチの悪い陰謀だろう! いきなりやってきて長々と居座ったあげく、ウチの娘がバケモノだか鬼だかなんだか知らないが、そんなものを呼ぶとか呼ばないとか。どうせホームページとかも書き換えてあるんだろう? あんた達はみんなあたまがおかしい! 冗談にしても気分が悪い! とにかく帰ってくれ!」 「あなた――」聡実が立ち上がって怒鳴る幸広の服の袖を引っ張る。「ご近所に聞こえるから――」 幸広はハッと口をつぐんだが、今度は憎々しげに尚正を見下ろして、やや声を潜めて言った。 「せっかく信用してあんたに娘を預けていたのに。まさかこんな事を言い出すと思わなかった。全部最初からあんたの差し金じゃないのか? 大体、前の道場にいた時に、いきなり自分の所で面倒を見たいと言いだしたのもあんたなんだしな」 それは言い過ぎだ。と、桜子は思った。剣崎道場に行った事自体は後悔はしていない。師範の弁護の為に口を挟む気持ちにもなれなかったが。 「この子には天稟というものがあった。だからそうしたいと言ったまで」幸広の荒々しい態度や言葉もまるで無いかのように、尚正は平然と言い返した。怒ってもいなければ、怯んでもいなかった。 「そんなわけのわからない事を言ってごまかそうとして――」幸広は言いつのる。 「なるほど、確かに。ごまかしと受け取られるのも言われてみればもっとも。ならば、どのような才がこの子にあったか、それを今ここで見てもらうのもよかろうと思う」 尚正はそういうとスッと立ち上がった。幸広は怯んで、ちょっと身を引いた。 「見てもらう、ってどうやって――」 「どちらにしても、わしがどんな風にこの子を鍛えたか、実は今日ご両親に知って貰おうとは思っていた。だから準備はしてある。車から取ってこよう」 「取ってくるって何を――」幸広はしどろもどろになった。話がどこに流れるのか想像もつかない。 「何、すぐ済む――、鍵を」尚正は松尾から車のキーを受け取ると出て行った。 尚正が持ち込んできたのは、ずっしりと重い、既に水につけてすぐに使える用になっている太い巻き藁と、紫の刀袋に包まれた日本刀だった。 「庭を借りる」と言って尚正は諸葉家の小さな庭に出た。釣られるように外に出た他の面々が見守る中、庭の片隅で小さな台の上に巻き藁を立て始める。 桜子はすっかり暗くなった周囲の景色を見回した。特にこれと言って音はしないが、近所の人たちが何事かと思っているのはなんとだくだがわかる。なんでわたしがこんな目に、と思わずにはいられない。 巻き藁を立ててしまうと、尚正は少し歩き回り、薄暗い足下を調べた。ひっかかるような石でもあったのか、かがみ込んで幾つか拾い上げて、近くにある植木鉢の影に置いた。 「少し狭いし、あまり足下も良くないが、まあこのくらいならば大丈夫であろうよ。桜子――」 「なんですか、師範」 「据え物斬りだ。抜き打ち、左右袈裟、最後に水平斬りでやってみよ」 「ここでですか?」桜子は驚いた。「でも、だって――、これ真剣じゃないんですか?」 「そうだが」 「でも、だって、真剣って事になると――」銃刀法違反ではないか。 「大丈夫だ。ここには警察の方もおられる。いいですな、井高さん」 「ええ、まあ、わたしも見ていると言う事で特別に許可しますよ」井高はあっさり応じた。 「親御さんの前だ。しっかりやれ」 しっかりやれ、と言われても、桜子は言い返したい気持ちにもなったが、そこはおさえた。 確かに両親にちゃんと練習の成果を見せた事はなかった。ここで見せておきたいという気持ちもちょっとだけならある。中学の剣道部の試合では団体戦では、桜子自身は勝ったが他の選手が負け越した為に勝ち上がる事が出来なかった。個人戦では二年生の時も三年生の最後の大会も、試合中に竹刀が破損してしまい、ベスト4以上の結果は残せなかった。 勝てない訳ではない、と決勝戦の試合を見ていても思ったが、負けは負けである。準備やうんも含めての勝敗だというのは桜子もよく承知している。それでも二度続けて同じようなトラブルで敗退したというのは悔しかった。 やってみようか――。桜子は腹を決めた。近所の手前少し恥ずかしいが、もうしょうがない。ここで断ってもこの師範は決して引いてくれないのは経験上わかってもいた。 「服装はこのままで良いのですか?」 「かまわん。靴もスニーカーでよい。」 そういうと尚正は刀袋から鞘に入ったままの日本刀を取り出して、桜子の方に無造作につきだした。 「暗いからよく足場を確かめておけ。わしも確認したが、自分でもよく見てみろ」 「わかりました」 慎重に足場を確かめる。刀を振り回した時に引っ掛かりそうなものはないか、万一手元が狂ってすっぽ抜けた時にも危なくはないか。大丈夫だった。特に何も問題がない。このおかしなシチュエーション以外は。 さっきまで大声を上げて怒っていた幸広も、オロオロしていた聡実も、松尾や井高と並んで興味深そうに見ている。 尚正が彼らに手招きをして、桜子の後ろにみんなを立たせた。ここならば万一の事故もない。 桜子は巻き藁の前に立ち、自然体をとった。冷たい空気が気を引き締めるのに助けとなる。 目を閉じて、一つ大きく深呼吸をしてから、息を整え、それが定まった所で、左刀に持った刀に右手をそえて鯉口をきる。 僅かの間が空いた。そして――、 「イヤァァァッ! ――ハッ! ――ハァァァッ!!」 静かな夜の静寂に桜子の掛け声が響き渡り、鋭い剣風が三つが殆ど重なるようにして唸った。 そして、切り落とされた巻き藁が下に落ちる。 軽く刀を振ってから、息を整え、そして刀を鞘に戻す。 カチンと音が鳴って、刃が完全に鞘に収まると、桜子はいきなり恥ずかしくなった。 やはりというべきか、近所のどこかの家でガラッと窓が開けられた音が聞こえる。しかも、複数。 「見事だな」みんなと一緒に桜子の後ろで見守っていた尚正が短く褒めた。 「はい――」さっさと家に入りたい――。桜子は小さな声で応じた。 「確かにこれは見事な物ですね。中学生で、女の子で、片手での水平斬りとは見事」井高も言った。警察官だけに、武道はやっているのでわかるのだろう。 両親はというとあっけにとられていた。 「天稟はあるでしょう?」尚正が言うと井高は頷いた。「確かに。普通じゃありませんな」 「さて、中に戻りましょう」尚正はそういうと、見事にバラバラになった巻き藁に近づくと、そのうちの一つ、最後に水平に斬り落とされた固まりを手に取って拾い上げた。「後の片付けはお願い出来ますかな、奥さん」 「え? あ、はい」聡実は頷いた。 全員が応接間に戻って来た中で、桜子はすっかり自己嫌悪の中にいた。 静かな住宅街に響き渡った自分の奇声を思うと身悶えしたいほど恥ずかしい。道場の中では気がつかなかったが、驚くほど響くものだったのが改めてわかった。 師範の独特のペースにみんな巻き込まれすぎだ。自分も含めて。誰も彼も、特に親たちが。 庭から戻ってきてからの両親はというと、父の幸広は何か黙って考え込んでいるし、母の聡実は井高にあれこれと質問している。「へぇー、そんなに」とか「そういうことなんですかー」とか、脳天気な母親の声が聞こえてきて神経に障る。夜の静寂に近所中に娘の奇声が響き渡ったというのに、あまり気にしてないらしい。 気がつくとまだ日本刀を手に持っている事に気がついた。返さなければ、こんな物騒な物。 「師範――、これ」ずっしりと重い、日本刀を尚正に差し出す。 尚正は切り落とされた巻き藁の断面をじっと見ていて動かなかったが、桜子の声に顔を上げた。 「おお、そうだな。だが、わしに返す前に、その刀をよく調べてみよ」 「あ、はい」 桜子は慌てて確認した。確かにそれも本当ならやっておかなければいけない事の一つ。 柄にも鍔にも鞘にも異常なし。そして、刀身を――、 「え?」 鞘から半ば抜かれた鋼鉄の刀身は光の下で冷たい光を反射している。しかし、そこには、 「師範、これ――、刃がついてない!」 全部引き抜いてみた。しかし、この刀のどこにも刃はつけられてない。これでは斬れないはずだ、普通なら。 両親も井高も松尾も、桜子の周囲に集まってきた。 「はあ、これじゃあ登録証はいりませんなぁ」と、覗き込んだ井高。まるで驚いていない。 一方で松尾や両親は驚いて声もないようだ。 「ペーパーナイフよりも、切れ味は悪いでしょうねぇ、はは」と、井高。わざとらしく本来なら刃のついている部分を指の腹で撫でる。 「わしはさっきお前に嘘をついた。そこは謝る。確かにそれには刃付けはされとらん。当たり前だ。それは練習用の模造刀だからな」と、尚正が静かに言った。「だが、お前が斬った切り口はこうだ。自分でいく見てみるがいい」と、桜子に巻き藁の断片をわたした。 桜子は部屋の照明の真下に行ってじっくりと見てみた。我ながら見事な切り口と思う。師範が試技で披露して斬って見せてくれたものと比べても、桜子の目ではどのくらい違うのかはわからない。 これだけ見れば自慢していいくらいだろうが、桜子にとっては悪夢そのものだった。正確には、この一連の悪夢の証明書というべきか。 「これがさっき話していたお前の資質だ、桜子」尚正は宣告した。 「なんで?」桜子はその場にへたり込んでしまった。 「そんな事わしが知る訳無かろう。わしがわかっていたと言えるのは、お前に剣の天稟があり、どうやらこういう、なんというかな――? 変わった資質というか、能力があるのではないか、ということだけだ」 「いつからですか?」 「剣の天稟については、最初にお前を見掛けてから。こっちの資質については覚えとらんよ。わしもまさかと思っていた。最近までは。前の大会で負けた試合で竹刀を壊したろう? あれで、おや、と思った」 桜子は思い出した。確かに試合で壊した竹刀を道場に持ってきていた。竹刀の先端が相手選手共々ぐだぐだに裂けて、使用不能になったのである。その試合は勝てたが、次の試合で桜子は負けた。 「あんな壊れ方は普通せんよ。竹刀の中に爆竹でも仕掛けたような壊れ方だからな。そりゃ気になって調べもする。ただ、本当の意味でどういうものかわかったのは今だ。一応予想は立てていたが、実際におまえがやらかした時は正直わしも驚いた」 苦笑しながら平静に話し続ける尚正の言葉に幸広も聡実も今は静かに聞いていた。井高も松尾も口を挟まない。ただ、この二人は明らかにほっとした様子になっている。 「そこで最初の話に戻るが――、桜子よ、お前は双葉学園へ行け。今のままのお前では、高校生活の三年間の内に、多分最低でも一回、運が悪ければもっと多く、あの鬼のようなものがお前の近くに現れるだろう。そういう統計結果も確か出ていたと思う。そうでしたな、井高さん?」 「そうです、そうです。わたしが読んだ資料でも大体そんな感じだったと思います。まあ、さっきは驚いたが。なんせ正直な所、半信半疑でしたからねぇ」 「あの――、すいません」聡実がおずおずと口を挟んだ。「そこに行くと桜子はどうなるんでしょう?」 「とりあえずは安全が保証出来る、という事ですかな」尚正は言った。「それは桜子にとっても、あなた方にとっても、ですぞ。双葉学園内にはあれらは現れない。そういう風になっておるのです。日本中どこにいてもあのようなものが絶対に現れないという保証はないが、少なくともこの子がここにいるよりは、どちらにとっても確率としてはぐっと少なくなるはず」 「それなら――」今度は幸広が口を開く。「それなら、一家全員でその双葉区に引っ越しを――」 「それは無理です」松尾が言った。「あそこは特殊な地域です。関係者以外は立ち入りは出来ても居住は出来ないでしょうね」 「関係者以外って」幸広は絶句した。「自分の娘なのに――」ぐったりとした様子でソファの上に腰を下ろして頭を抱える。 「非常に残念ですが、諸処の理由によってこう決められたということです。心中お察ししますが」お役人らしい几帳面さで松尾が丁寧に、しかし、断ち切るように断言した。 「師範――」うつむいたままの桜子がぽつりと口を開いた。「師範はわたしが行った方がいいと思いますか?」 「うむ。色々な意味でそう思う。どちらにしても一度でもお前の周囲にあのようなものが現れたら、その時点でお前は強制的に送り込まれる事になってしまう。望んでいく形ならばともかく、無理矢理放り込まれるのはお前にとっても侵害だろうし。それにお前がここにいるのはお前自身よりも、他の人間にとって危険だ。今はな」 「今は?」桜子は顔を上げた。 「双葉学園では普通の学校とは違う事も色々と教える。その中の一つがお前の持っているような資質を鍛えたり、とぎすます事でコントロールする術《すべ》だ。基本的な事だが、習得は難しい。ヨガや禅に近いというか、訓練の中にはそのようなものもあるだろう。だが、習得する事で、あのようなものたちを寄せ付けない、近くに寄せない、そういう事も出来るようになる。後でネットででも調べればよいと思うが、双葉学園を卒業して、普通の大学へ行ったり、就職していたりするものも少なからずいる。だから、それが出来るようになれば、またここで生活も出来る」 「じゃあ、この近くにもいるというかいたんですか? あたしみたいな事になった人が」 「それは言えん。言っちゃならん事になっておる。ただそういう事例が今までにあったか無かったかについては、あったと断言しても良い。それに訓練がつつがなく済んで、コントロールする術が身につけば、また普通の生活も出来る様になる。そこはわしが保証する」 「わかりました――」桜子の返事に、惚けた様子でソファに寄りかかっていた幸広が呻き声を上げた。 「行ってくれるか、桜子」 「あの――、返事は今じゃないと駄目ですか?」 「早い方がいいと思う。お前の方の準備も、あちら側の準備もあるだろうから。しかし、一週間ほどなら構わんよ。むしろ、今日から二日、もしかしたら三日はわしも忙しくなるから、返事は四日後くらいでよいだろう。どちらにしても行く事になるだろうが、自分で決めるというのが大事な事だ」 「はい」 「さて、それではお暇しますか、井高さん、松尾さん。すっかり遅くなってしまった。諸葉さん、それに奥さん、長々と失礼した」尚正は立ち上がると、幸広と聡実の方に深々とお辞儀をした。少し遅れて井高と松尾も立ち上がってお辞儀をする。 帰ろうとする三人の後を、桜子は慌てて追いかけた。聡実も後に続く。しかし、幸広はうつむいたままソファに座っていた。 家から出た三人はほぼ無言で黒いセダンに乗り込んだ。運転手は松尾である。桜子も聡実も見送りに出たが、何を言っていいかわからず、黙っていた。 「それでは奥さん、わたしらはこれで――」松尾が車を出そうとする。 「師範」桜子が声をかけた。松尾の動きも止まる。 「なんだ、桜子」 「最後に一つだけ質問いいですか?」 「構わんよ。なんだ?」 「双葉学園って言ってましたけど」 「うん?」 「どうしてそんなに詳しいんですか?」 「それか」尚正は薄く笑った。「あそこにはわしの知り合いがいる。では、行っていいか?」 「はい。おやすみなさい」 「おやすみ」 松尾は車を発進させた。ガソリン車を模した警告音を立てながらも、電気自動車らしく滑るように車は加速して暗い町の中に消え去っていった。 車の赤いバックライトが見えなくなってから、桜子と聡実は家の中に戻った。桜子はぐったり疲れていた。多分、それは聡実も幸広も同じだろう。 応接間に戻ると幸広が今はもう顔を上げて、しかし疲労の色を顔に浮かべて座っていた。 「行ったか?」 「ええ、お夕飯にしましょうか。なんだかお腹空いちゃったし」 遅い夕食は静かなものになった。おかずはシチューに豚と大根の煮物。それにポテトサラダ。そしてスーパーで買ってきた焼き鳥。これは幸広の酒の肴である。 いつもなら夕食の時はつけておく食卓の脇にあるテレビも電源をオフにしたままになっている。 桜子はお腹こそ空いていたが、食卓に座る前までは、とても夕食を食べる気にはなれなかった。しかし、実際に食べ始めると、やはり身体は正直なもので、口にするほどに食欲がわいてくる感じになる。 二度目のご飯のおかわりに立ち上がった時、それまでずっと黙りこくったまま、ぼーっとした様子で日本酒を飲んでいた幸広が口を開いた。 「なあ、桜子」 「なに、パパ」桜子は自分のお椀にご飯を盛りながら返事をした。 「お前、その、なんだ、あの、双葉学園とかいうヘンな学校へ行くのか?」微妙に呂律が回らない。 「ん――」桜子の手が一瞬止まった。「多分、そうなると思う。まだよくわからないけど」 「そうか」幸広は手酌で杯に酒をつぐとグイと一気に煽った。「なんでこんな事になったんだろうな」 「そんなのわかるわけないでしょ」 「だなぁ」幸広はまた杯に酒をついだ。いつもならペースがあまり早いと制止する聡実も今日は何も言わなかった。その代わりに、 「ご飯が終わったら今日は早くお風呂に入って寝なさいよ、桜子」と聡実。 「そうする」 風呂から上がった後、桜子は自分の部屋でドライヤーで濡れた髪を乾かしながら、尚正達が置いていったパンフレットをめくっていた。桜子の髪は長いので時間がかかるのである。 教育理念、教育環境、周辺環境、沿革――、どれも別に特におかしな事は書いてない。パッと見には。 だが、初等部から大学までの一貫教育だとか、クラブ活動の異常な多さだとか、卒業生の進路の雑多さなど、細かく見ていると明らかに異常な所があった。高等部だけとっても、進学校であり、商業高校であり、工業高校でもある。農業高校でもあるようだ。そして交通アクセスを見ると文字通り他の地域からは遮断されている。そして無闇にキャンパスが広い。 体のいい隔離施設じゃないの、と桜子は思ったが、社会に出ている先輩なども一応いるらしい。 「先輩からのメッセージ」などもちゃんと掲載されている。 しかし、それもよくよく読むとどこかヘンな事がある事に桜子は気がついた。 曰く、「双葉学園で自分の新しい可能性に気がつきました」 曰く、「双葉学園で学ぶ事で自分が何をするべきかわかった気がします」 曰く、「双葉学園で学んだ事が確実に社会の安定に繋がっている事を日々実感しています」 「おかしいよ、ここ――」 しかし、そうつぶやきながらも桜子にはわかっていた。 自分もそのおかしな一員になるのだろう、と。 次の日、幸広と聡実が娘の手作りのチーズケーキを口にする事はなかった。 第二章につづく ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ かなりな部分が前にアップされたものと違っています。 多くは地味な変更点なので、殆ど気にしなくてもいいくらいですが。 長い話の序章という位置づけだったのですが、思っていたよりも長くなりました。 楽しんでいただければ幸いです。 まだあまり面白いシーンになってない気もするが。 PN REDFOX777a
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キャラクター名 シルフィーナPスキル:★財力 :★★★★厨房度 :★★★★★ ランカークラス Class 汁 キルクラス デット数 普通 所属部隊名 発言の痛さ BL推奨 勝ち馬属性 初期ネツ民 戦闘スタイル パニカス タグ BAN キャラ ネツ 汁 草 総評 本人への要望 自演はやめましょうね ネツが誇る最強(厨房)キャラであり、頻繁にスレに光臨するネツの害虫。超ラディッツを煽る姿が2ch上で頻繁に見られる 職が頻繁に変わりそれなりに腕は上手い部類ではあるが、スコア的にはVictriaやゆかりんといったTopプレイヤーには及ばない イノにウェイブサッカーをされたトラウマで エル戦にはこれなくなってしまっていたらしい +シルフィーナに対する苦情、お問い合わせはこちらへ メインキャラはウォリなのだがそれを封印し苦手な皿やスカに挑戦してる。 その苦手キャラにボコボコにされた人からの嫉妬が多いらしいが本人は有名税だと思いニヨニヨしているとのこと。 最近はイノの粘着wisがウザイためイノをBL入りにしたらしい。 ↑自演はやめときましょう。見るに耐えませんよ汁フィーナさん。あ、でも一言追加して利用させてもらいまいした^^ 削除されていた汁本人と思われる書き込み (-捏造はだめだろwwwww) (-ドランゴラで10デッド?んなこた一度もしてねーしwww) (-電話でFOしたこと一度だけあるが戦績どーでもにいのに10デッドくらいでFOするわけないじゃんw) (-10デッドしてFOしたのはイノだろwwwwwwww) ネツが誇る患者の一人。 メインキャラはウォリなのだがドランゴラで10デッドした挙句FOという戦績を持つためそれを封印し得意な皿やスカに挑戦してる。 その得意キャラにボコボコにされた人からの嫉妬が多いらしいが本人は有名税だと思いニヨニヨしていると見せかけて精神崩壊寸前とのこと。 最近はイノの粘着wisがウザイためイノをフレンドリストに追加して自分から煽りwisに励んでいるらしい。 と編集していた矢先におまいらの仕事の速さに感動した。 わざわざエルの目標地に来てまで防衛放棄の空き巣とか訳の分からないこと言わないでくださいwwwww パニカス殺して煽っちゃうと敵もいない所でステップしまくりで自軍背後でガクブルしてる雑魚www 逆に殺して煽るとTELLしてくるらしいぞwwww ってイノが言ってた^^ 氷皿だとPSないからキル全然とれないんでスカに戻ってたな 普通に殺して煽ると全茶で顔真っ赤にしてくるらしいぞ? キルとった人は煽りを忘れないように心がけよう! ついでに汁が煽った奴をヲチしてればヲチ鯖民必見のルーキーが出てくるんじゃないか?という発想 汁ネタ飽きてきたし汁のページでかくなってきたから新しい燃料がほしいです。汁もスレに来なくていいです。 汁最近みないけど どっか亡命したか?情報求む Bホルで同名の人物を発見。但し全チャや痛い発言が無かったので本人かは不明。 見た時は2キル5デッド3kというまさに短カス級スコア。 ∇ FEZ ファンタジーアースレイ Z鯖晒しスレ15 758 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー![sage]:2008/02/25(月) 01 52 58 ID Zp3amvPS0 755 たぶん最近の汁はお前より役にたってると思うよ ∇ FEZ ファンタジーアースレイ Z鯖晒しスレ15 766 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー![sage]:2008/02/25(月) 06 30 46 ID Zp3amvPS0 760 ちょっと考えれば分かると思うけどBL入れればいいんじゃないか? そしたら不快じゃなくなると思うよ ∇ FEZ ファンタジーアースレイ Z鯖晒しスレ15 794 :汁[sage]:2008/02/25(月) 21 39 38 ID Zp3amvPS0 魔軍って最低だよなwww 岩本良平=射程伸ばしチート 牛島=絞り オーエン=瀕死状態でバッシュされて「Alt+F4」→カセ側が割れてたから何食わぬ顔でもどってくる 全チャで指摘すると魔軍がすごい勢いで追ってくるから超こえーwwww 最近片手になった。 痛いのさえ目をつぶれば、PSはなかなかのもの。 頼りにされている。 4/5 結構痛い発言無くなって正論言うようになったぞww ★1は無いわw3にしておくw 5月になってからは全くと言っていいほど見かけない。 今までは降臨していた晒しスレからも姿を消したことから、汁の身に何かあったことが予想される 暴言が多かったため、美乳同様に垢BANの可能性も高い BL入れてるからどうでもいいけど垢BANなのかぁ?だっせーwww 精神的に病んで戦争にこれなくなっても、擁護、自演はかかせないただのメンヘラ君
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名前 身体データ 所属 人物 能力 その他 ☆名前 壁 かべ 本名は不明 (@kabekabe159) ☆身体データ 身長:120〜180cm 体重:35〜75kg 性別:男性寄り ☆所属 とくになし ☆人物 意思を持った壁。 壁に宿った歴史や意味といった概念が形を成した、精霊みたいなもの。人間くさい。 誰かをからかいに行っては逃げる気分屋。反応の良い子が好み。たまに捕まる。 基本的に姿は自在だが、好き好んで人間の形を取る。 基本形態は成人男性(170/55)だが、少女・女性の姿を取ることも多い。主に使うのは2、3種類。 生まれは不明。体重の基準は生まれた世界。能力値は世界毎に修正を受ける。 能力らしい能力はあまりなく、ほとんどが特性に分類される。壁潜りや瞬間移動、世界間移動など。 分家入りしたわけではないが、同格の扱いを受けている。 ☆能力 1.壁操作 地面から壁を生やしたり、壁の形を変えたり、限界の壁をぶち壊したり。 2.補助魔術 能力補助、行動阻害、罠設置、など悪戯用。 ☆その他 シスイとは面識があるが、別に事情に詳しい訳ではない。たまにひょっこり遊びに来る。 一度だけ熟睡している紫水を叩き起こし、寝起きで機嫌が悪い紫水にボコボコにされた。 存在が曖昧なので何度死んでも気がついたら復活している。
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ラノで読む A.D.2019.7.10 16 20 東京都 双葉学園 商店街 「やめてぇええええええええええええええええええええっ!!」 日の沈む、無人の商店街に―― クロームのひしゃげる音が――永劫機メフィストフェレスの、敗北を告げる音が、響いた。 赤く染まる街は、まるで血に染まったよう。 砕けた鋼の欠片が舞う中――しかし、それは動いた。 「!?」 黒い腕が、鉛の腕を掴む。 永劫機メフィストフェレスが、敗北してなお――永劫機アリオーンの腕を掴みあげる。 「まさか――」 腕に力がこもる。掴まれたフレームがひしゃげる。 永劫機メフィストフェレスの全身に力が入り、敗北してなお反抗の意思を見せる。 そう――たかだか敗北した程度で、負けたぐらいの事で、倒れていられるか! 「まだ、動くなんて……っ!」 必殺必滅の時空爆縮回帰呪法(クロノス・レグレシオン)。それを撃ち放った以上、残された力は無く。 その機を狙い叩いた以上、もはや抗う力も無い。 そのはずだ。そのはずなのに――! それでも、永劫機メフィストフェレスは動く。 残された力が無かろうとも。抗う力が無かろうとも。それでも――心は折れぬ。 そう、永劫機メフィストフェレスは契約者である祥吾の意思を反映する。 祥吾は諦めない、祥吾の心は折れない。 敗北など、すでに幾つも経験している。いまさら黒星がひとつ増えた所で、それはただそれだけの事だ。 それでも―― 諦めなければ―― 心折れなければ―― 「うおおおおおおおおお!!」 吼える。 ありったけの意思を込める。 ああそうだ、確かに罠に嵌ってしまった。だがそれでも戦う。戦ってやる。 理不尽に屈してなるものか。 永劫機メフィストフェレスの腕が永劫機アリオーンの腕を掴み、突き刺さったその腕を引き剥がす。 そしてそのままその腕を振り解き、そして殴りつける。 「っぁあっ!」 永劫機アリオーンは、想定外の一撃を喰らい、バランスを崩して墜落、アスファルトに叩きつけられる。 「ふざけんじゃねぇ、舐めんなよこの野郎ッ! こちとら大昔からいじめられ慣れてんだ! たかだか負け犬(このおれ)相手にたった一回勝ったぐらいで、勝ち誇ってんじゃねぇッ!!」 「な――」 そのあまりにもあまりな祥吾の叫びに、桜子たちは瞠目する。 むちゃくちゃだった。論理も筋も通ってない。 そして桜子は察する。 ああ、要するにこの男は―― 「馬鹿?」 それも筋金入りの。 「さすがだな」 それを見て、直が言った。 「確かに君の心は折れない。だが――」 直が表情を変えずに、冷徹に言ってのけた。 そして、異変は起きる。いや、異変に気づく。 その兆候はすでに起きていた。起きていたのだ。 誠司たちが倒れていたのは何故か。 その答えが、これだ。それは祥吾の身体にも起きていた。 膝を突く。 全身に悪寒が走り、臓腑が冷え、頭痛が疼き、吐き気がこみ上げる。 これは――風邪だ。風邪の症状と同じだ。 それも、激しく重い。 こんな時に……否、こんな時だからだ。 「く――」 風が吹く。 敵のいる方角、風上より吹いてくる風が――病を乗せて来る。 初期位置として、祥吾たちは風下にあった事が、勝負の趨勢を決していたのだ。 時間をかければかけるほど――祥吾たちの敗北は確定的なものだった。 そう、マリオンや桜子の仲間の一人に、病原菌(ウィルス)を使うものがいる。正確には、それを操るのではなく、自分の免疫機能の操作である。それを応用して、自分の体に巣食う病原菌を使うのだ。 そしてそれは空気感染で、祥吾達に襲い掛かり、猛威を振るった。 ものの数十分程度で、彼ら全員の体を侵したのだ。 そう、心折れずとも――身体折れれば、人は脆いものだ。 倒れる。 体折(たお)れる。 どれだけ強き意志で抗おうとも――それを凌駕する、身体の異常。 病気。 苦痛や傷は、意志の力でねじ伏せる事は出来る。だが、病は――無理だ。少なくとも、今この場においては。 ゆえに。 「く――そ――――」 そして、時坂祥吾の意識は、闇に落ちた。 時計仕掛けのメフィストフェレス THE MOVIE LOST TWENTY ――La Divina Commedia―― 第二部【煉獄篇(プルガトーリオ)】 A.D.2019.7.10 17 00 東京都 双葉学園 保健室 菅誠司が目を覚ました時一番最初に見たのは、心配そうな春奈・C・クラウディウスの眼差しだった。 「先生……?」 「よかった、これでみんな無事だよ、うん。本当によかったよ~」 「……っ」 身体を起こす。 そうだ、と誠司は思い出す。商店街の戦いを見守っていたら……急に身体に寒気が走り…… 「私達は、倒れて」 「風邪を引いて倒れたんだよ……事情は皆槻さん達から聞いたよ」 話を聞くと、直たちが春奈に連絡をいれ、保健委員への手配もしたらしい。 「……だけど、これは……」 妙に違和感がある。あれだけの悪寒、体調不良。それが完全に消えている。 治ったとしても、病み上がりの疲労や倦怠感も無い。 そう……あの病気そのものが、無かった事になっているように。 「神無さんが能力で直してくれたんだよ」 その言葉に納得がいく。 そう、先日彼女は確かに言っていた。傷を受けたという時間を消す、というような事を。 つまり、あの攻撃で風邪を引いたという時象を消したということだろう。 「神無ちゃん、大丈夫?」 記憶が確かなら、祥吾一人の傷を治すだけでかなり疲弊していたはずだ。 それを、七人分もなんて…… 「はい、大丈夫です……」 疲労を隠そうと笑顔で返答する神無。 「かなり消耗しているようだけど、命に別状はないよ、みんな」 「そうですか……」 その言葉に誠司は安堵する。 「びっくりしたぜ、本当に。お前らがそろって病院に担ぎ込まれたって聞いて」 拍手が言う。 服装は中華料理屋のエプロンのままだった。着の身着のまま、あわてて飛び出してきたのだろう。 他にも、打ち上げに参加する事になっていた生徒達の姿もある。 敷神楽鶴祁が言う。 「……事情は聞いたよ。大変な事になつているそうだね」 「……そうなんス、なんていったらいいか、とにかくヤバイっスよ」 市原が頭を抱える。市原だけではない。ここにいる全員が同じ心境だった。 仲間が、あろうことか「世界を滅ぼす」などと言われ、そして風紀委員会からの捕縛命令が下り、倒され連れ去られた。 まったく持って、悪い冗談みたいな一方的で、かつ出来の悪い展開だ。 「……どうするの? それでこれから」 遠野彼方が言う。 「どうするって……」 その言葉に、皆が黙る。 判っているのだ、理不尽すぎる。だから助けないといけない、と。だがそれは、風紀委員と敵対するという事だ。 ましてや、風紀委員会だけではない。高槻直たちが動いていた。彼女達は、学園の指令で動く異能者チームだ。つまり…… 「双葉学園と、敵対するってこったろ……」 誰かがそう言った。 学園に敵対する? 在りえない。 だが…… 「必ずしも、敵対するって訳でも……ないし」 そうだ。 時坂祥吾に対する理不尽な待遇、それを緩めるように陳情すればいいだけじゃないか? 何事も力で解決すればいいというわけではない。ましてや相手は同じ人間なのだ。無理に戦う必要は無い。 そう、彼女達が時坂祥吾に行った戦闘行為、それは……時坂祥吾がバカだから、最初から素直に従う事は無いだろうという、正しい判断によるものだろう。 誰だって、お前が世界を滅ぼす事になるから捕まえる、と言ったら反発する。ましてや相手が馬鹿なら当然だ。 それに、直たちの言葉を信じるなら、国際風紀委員会連盟……通称D.A.N.T.E.……彼らから祥吾を守る意味合いもあるという。 それを考えるなら、このまま趨勢を見守るのもありではないか? そう考えていると、ドアがけたたましい音を立てて開く。 「大変!」 息を切らしながら、神楽二礼が駆け込んできた。 いつもの「~っす」口調でないということはね彼女自身本当に焦り、気が動転しているのだろう。 「ふっ、風紀、委員の……先輩に、っ、聞いたけど……」 肩で息をする二礼に、春奈が水を差し出す。 それを一気に飲みほして、二礼は言った。 「時坂先輩、下手したら……殺される!」 A.D.2019.7.10 17 35 東京都 双葉学園 風紀委員特別棟 時坂祥吾が目を覚ました場所は、白い部屋だった。 白い壁、白い床、白い天井、白いベッド、白いカーテン、白い鉄格子。 病的なまでに潔癖なそれは、白い部屋――というより、白い牢獄だった。 「……」 全身がだるい。疲労感と倦怠感。 病み上がりのようだ。いや、事実そうなんだろう。 そして、さらには首と両手に違和感がある。 「……囚人かよ」 そこには、ご丁寧にも手枷と首輪が嵌められていた。 じゃらり、と音がする。 部屋の内部を見回す。 無人だ。ここには自分しかいない。 ならば……とにかく脱出を試みるべきだ。 そして祥吾は、内に在るメフィストフェレスに語りかけようとし―― 瞬間、全身を電流が駆け巡った。 「がぁあああああああああああああああっ!?」 身体が痙攣し、無様なダンスを躍らせる。感電死するほどの威力ではないが、容易に身体の自由を奪うほどの電流。 「う……ぐぇぅ、あ……っ」 病み上がりに加えて電流を受け、祥吾はベッドから床に倒れる。 「異能を使おうとしても無駄よ」 電流の余韻に苦しむ祥吾に、冷徹な声がかけられる。 「……ぁ……?」 首から上を動かして祥吾はその声の方向を見る。 いつのまにか扉が開いていて、そこには三つ編みとめがねの少女が立っていた。 「おはよう。といっても朝じゃないけど。よく眠れた?」 「お、お前は……?」 「束司文乃。風紀委員よ」 見下ろしながら、文乃は名乗る。 「それ」 文乃は手錠と首輪を目線で差して言う。 「超科学研究の産物なの。というより副産物、失敗作ね。魂源力を電撃に変換して敵を攻撃する為の武装として作られたけど、電撃に変換するまでは出来たけどそれをコントロールするのが不可能だった、失敗作」 肩をすくめて、文乃は笑う。 「魂源力を感知して問答無用で電撃に変換するから、違反者達の拘束にもってこいの便利な道具」 「……それでかよ」 祥吾の異能は、永劫機との契約者としての適正、である。そして永劫機を召喚し操る時だけでなく、自信の魂の内にある、メフィストと共有する内的世界へのコンタクトも……メフィへと語りかけるときも、魂源力が働くのだろう。 この戒めは、それに反応して電撃を放ったのだ。なるほど、これでは確かに異能は使えない。 「大変だったようね。あの人たち相手に歯向かうからそういう目に会うのよ」 「……っ、けしかけたのお前らだろうが……!」 身体を起こしながら、祥吾はにらみつける。 「まあ、それは否定しないけど」 その視線を平然と受け流す文乃。 「俺を、どうするつもりだ」 「どうも何も……風紀委員に捕まった素行不良生徒がどうなるかは決まってるわ。誰も手出しの出来ない懲罰施設で矯正するまで奉仕活動よ。そう、誰にも手出しの出来ない場所で」 「……あの世とか言うんじゃないだろうな」 「ある意味そうかもしれないけど、私たちは貴方を殺すつもりなんて最初からないわよ」 読解力無いね、と呆れ顔で文乃は言う。 「どういう事だよ」 「高槻さん達が言わなかった? 貴方は狙われている。ええ、まあそれは私達風紀委員会も確かに貴方を狙ったけれど」 「……は、世界を俺が滅ぼすって? 本気で信じているのかよ、お前ら……!」 「信じてないわよ」 「は……?」 あっさりと否定する文乃。 「まあ問題なのは、貴方が世界を滅ぼすかどうかじゃない。 D.A.N.T.E.が、「時坂祥吾が世界を滅ぼす」と断定してしまった、という事実が問題なのよ。 何故だか知らないけれど、彼らはそれを確定事項としてしまった。 私達はあくまでも、貴方がそうなる可能性がある、ぐらいにしか思っていない」 可能性がある、ただそれだけでこんな仕打ちもひどいものとは思うのだが。 「実際に、予言系能力者の何人かはそういう話を出してきている。 残念ながら証言もあるの。だから風紀委員も貴方を拘束した。 でも重ねて言うけれど、私達は、同じ学園の生徒をそんな理由で殺すつもりは無い。 貴方が世界を滅ぼすというのなら、滅ぼさせないように矯正するだけだから」 「で、矯正施設に放り込むってかよ……」 いい迷惑だ、と祥吾は吐き捨てる。 上から目線の圧倒的正義。なるほど、今まで風紀委員のお世話になったことは無かったが、なるほどどうして厄介なものだ。 一般生徒から嫌われ、煙たがられるのも頷けるものである。 その祥吾の反感をよそに、文乃は言った。 「安心していいわ。私たちは貴方を守ってあげる」 A.D.2019.7.10 18 00 東京都 双葉学園 保健室 「それは本当なの?」 春奈の問いに、二礼は答える。 「はい、風紀委員棟で誰かが話してたのを確かに聞いたっすよ……」 それが誰かはわからないが、確かに話していた。 しっかりと聞こえたのだ。まるで自分に教えているかのように。 「……不自然ね」 「まあ、確かにそう思うっすけど……」 それを差し置いても、捨て置けるような事ではない。明らかにこれはやりすぎだ、と二礼は思う。 風紀委員として、D.A.N.T.E.の恐ろしさは知っている。 あれは狂人の類だ。その集まりだ。双葉学園の風紀委員であの危険度にためを張れるのは、風紀委員長のデンジャーぐらいだろうと思う。 強さではなく、危険性として。 正義のためならば、殺人も平気で是とするその思想。 二礼も一部では外道巫女と呼ばれるほどに大概に無茶なほうだが、次元が明らかに違う。 「ていうか、それならなおさら考えてるヒマねぇだろ……!」 孝和が声を上げる。 「状況が変わってきたんなら……もう学園に対して喧嘩がどうかとか、気にしてる暇じゃない」 「そうっスよ、後のことは後のことで、今はそのダンテとかに時坂先輩を渡さないことが大事っス!」 市原も言う。 「……そうね、うん」 春奈も決意する。 このまま生徒を死地に黙って向かわせる訳にはいかない。 そしてそのために生徒を死地に向かわせるも同然の、この結論に対する矛盾。 学園の教師としてあるまじき行動かもしれない。だけどそれでも…… 生徒達の信念を曲げてはいけないと思う。 それがもし間違っているのなら、全力で正すのも教師の仕事だ。だが、今回は明らかに、風紀委員達の軽挙妄動で勇み足だ。 おかしい。 春奈の中の何かが、そう訴えかけていた。 「私も、サポートする」 「っしゃあっ! せんせーさんがいれば百人力っス!」 春奈の言葉に、市原がガッツポーズをとる。 「うるさいよ、市原」 緊張感がない、と嗜める。だがそう言いながらも、誠司の顔も緩む。ああそうだ、やはりこういう緊張感の欠けているような空気がいい。 悲痛で悲壮なのは、この双葉学園の生活には似合わない、と思う。 「なるほど。ええと、じゃあ僕はどうすればいいかな」 「遠野先輩は、お気持ちだけで十分っスよ。相手は風紀委員で、異能者もたくさんいるっスからね。 美味いジュースでも買って待っててくださいっス!」 サムズアップで決める市原。 「じゃあ俺は美味いチャーハンでも……」 「あんたは一緒に来るっすよ」 二礼が拍手に言う。 「ええ、いや俺だって心配だけどよ、俺は異能が……」 敬が口ごもる。 彼の名誉のために言っておくならば、決して敬は臆しているわけでも、祥吾が心配でない訳でもない。 ただ敬は自らを弁えているのだ。 彼は異能者ではない。並みの一般人よりは強い程度には魂源力が確認されてはいるが、能力としての発現も見られないのだ。 そして、他の異能者が何人もいるのであれば、自分が出張っても逆に足を引っ張るのではないか――そう思った。 相手がただのラルヴァや異能者なら、敬とてここまで考えない。だが相手は危険すぎる。自分が軽々しく出ることで、より危険に仲間を巻き込むかもしれない。 だから敬は、彼にしては珍しくそこまで考えて―― 「あの」 神無が言う。前かがみで、それは胸を強調するようなポーズで。 「一緒に来てくれたら……挟んであげます」 「俺に任せろ!」 一発だった。 「……あれはあなたの入れ知恵?」 真琴が、二礼に聞く。 「くっくっく、何の事だかわかんねぇっすねぇ」 「神無さん、自分が何言ったか判ってないと思うんだけれど」 「別に何で何をはさむかなんて言ってないっすよ。アレが下世話な事言い出したら、万力で挟んでやればいいだけっすよ?」 「……」 成るほど、外道巫女と呼ばれてるのは伊達じゃないな、と真琴は内心思った。 きっとこんな感じでずっとからかわれ続けたんだろうな、今までも、そしてこれからも。 だが、真琴は気づいていなかった。 傍から見たら――孝和に対する真琴もまた似たようなものだと。 まあそれは、この場では本当に心からどうでもいいことではあるのだが。 「まあ、それはともかく、だ」 孝和が言う。 「あいつは、悪い事なんてしてない。 これから世界を滅ぼすかも知れない? そんなので捕まったり。ましてや殺されたりしてたまるか」 その言葉に全員が頷く。 「そうだね。やってもいない罪を償う事なんかない。罪に問われる謂れも、罰を受ける責任だってないよ」 遠野がそれに続く。 「全くっス。絶対に助け出すっスよ」 そう、絶対に助け出す。 A.D.2019.7.10 19 00 東京都 双葉学園 第八封鎖地区 双葉学園には二十年近い歴史があるといわれるが、それは実は誤りである。 確かに教育機関としての歴史は十八年だ。だが、その人工島としての歴史はもうすこし長い。 様々な計画、思惑が絡み合い作られた人工島。それは一説には、ラルヴァの増加を予見していたものが関わっていたと言う噂もあるが真実は定かではない。 だが、学園関係以外にも様々な施設がかつて存在していたのは周知の事実である。その全ては現在は学園関連施設、研究施設に置き換わっているか、あるいは廃棄された跡が残るのみだが。 そしてそういった廃墟は危険なために封鎖されている事も多い。 そういった廃墟を、学園やその他の組織が秘密裏に別の用途として利用している、というのは……都市伝説レベルの噂でしかなかったが。 しかし、覚えていて欲しい。 都市伝説とは、根拠があるからこその都市伝説だ。 火の無いところに煙は立たない……というあれである。 いわく、外部の組織……聖痕やオメガサークルなどの中継基地がある。 いわく、醒徒会の盗撮写真などを高値で取引している闇マーケットがある。 いわく、潰れたはずの違法異能研究機関が未だに存続している。 そして、いわく……風紀委員会の特別矯正施設が、そこに存在している。 「ただの噂かと思ってたけど」 真琴が周囲を見回しながら言う。 なるほど、典型的な、放棄された廃墟だ。こんな所まであるのだから、双葉学園も広い物だと思う。 「実は私も噂程度に思ってたっすよ、そういうの。まあ見習いだから知らされてなかったのかもしれないっすけど……」 それにしたって胡散臭くて、怪しすぎて…… 「ゾクゾクくるっすね」 「いやそれはどうかと思う」 気持ちはわからないではないが。 「ん、なんでしょうあれ、ねぇお姉さま」 何故かついてきている米良綾乃が、前方を指差す。 本当に何故ついてきているのかは判らないが、戦力は多いほうがいいだろうと動向を許可した。 というか許可しなければ無理やりついてこられて引っかき回されるのが目に見えていた。 「どれだ」 「あれ、あの……フェンスの所に」 見ると、ぐるりと広く廃墟を囲むフェンスがある。有刺鉄線でぐるぐる巻きにされた、いかにもという立ち入り禁止のフェンス。 そのフェンスの中に、鉄格子の扉がひとつ。 扉の上には、鉄の板に碑文が刻まれていた。 Per me si va ne la citta dolente, per me si va ne l etterno dolore, per me si va tra la perduta gente. Giustizia mosse il mio alto fattore; fecemi la divina podestate, la somma sapienza e l primo amore. Dinanzi a me non fuor cose create se non etterne, e io etterno duro. Lasciate ogne speranza, voi ch intrate 「なんて書いてあるんでしょうか? これ」 それを見て鶴祁が言う。 「これは有名だよ。神曲に出てくる、地獄門の碑文だな。 “我を過ぐれば憂ひの都あり、 我を過ぐれば永遠の苦患あり、 我を過ぐれば滅亡の民あり 義は尊きわが造り主を動かし、 聖なる威力、比類なき智慧、 第一の愛我を造れり 永遠の物のほか物として我よりさきに 造られしはなし、しかしてわれ永遠に立つ、 汝等こゝに入るもの一切の望みを棄てよ” ……そう書いている。脅し文句にしては陳腐だな」 鶴祁が碑文を朗読する。 「脅し文句っつーか、研究施設跡には似つかわしくない文面ですね、これ。 でもお姉さまとなら地獄の底までひぁうぃごうです!」 「そうか、頼もしいな」 綾乃の熱烈アプローチを素で受け流す鶴祁。たぶん判ってないのだろう。 「……上等じゃないか」 拍手がそれを聞いて拳を握る。 「要するに、ケンカ売ってる訳だ」 「意訳バリバリだなそれ。ま、合ってるか」 和孝は、その鉄格子の前に立つ。 「ボロボロだな……っと!」 言いながら、鉄格子を蹴破る。錆付いた鉄格子は耳障りな音を立てて転がった。 「行きましょう」 春奈が促す。 一同はフェンスをくぐり、先へと進む。 「止まれ」 廃墟の風に乗って、声が響いた。 「……!」 その声に身構える。 「……皆槻さん」 春奈は声を硬くする。 正直、会いたくなかった。ここで立ちはだかるのが、たとえば大人の警備員だとか、外部の人間だとか、そういった展開であればどれだけ気が楽だっただろうか。 だが、春奈の予測は、残酷にそして冷徹に、実現した。 生徒を率いて生徒と戦う。なんというふざけた悪い夢だろうか。 だがそれでも、選んだのは春奈自身だ。避けられない戦いなら、止められぬ争いなら、せめて双方に被害のないように、最短で決着をつけさせる。 そのために、彼女はここに立っている。それが信念だ。 そして――信念なら、おそらく春奈たちの前に立ち塞がる彼女達もまた持っているだろう。 「お揃い、か。うん、しかしあれだね、なんだか私達が悪役のようだ」 直は苦笑する。 「そう思うなら、どいてくれると嬉しいんだが」 敬が一歩前に出て言う。 「それは出来ないな。これも仕事だ」 「仲間を売り渡す事がかよ!」 「違うな。世界を守ることだ」 クレバーに言い放つ直。 だが直とて、本質的には冷徹ではなく、むしろ熱い方だ。本心では常に戦いを望み、強者を欲している。双葉学園に来たのもそのためだ。 そして世界を守るために弱いものを犠牲にする、などという行為・思想は彼女の最も嫌うことである。 本来の彼女なら、むしろ風紀委員や双葉学園そのものにその拳を向けてもおかしくはないだろう。 だが今回は、放って置けば多くの弱い者達が傷つき、死ぬだろうということを理解しているし、それに彼をこの先の矯正施設に入れる事は時坂祥吾のためでもあることもまた理解している。 己の性質を理解し、鋼の心で律する。それが高槻直という人物だ。 ありていにいえば、「大人」であると言ってもいい。 そしてその態度は、敬や和孝たちのような……いわゆる熱血少年なタイプにとっては我慢ならないものでもあった。 「だったら……コレで語るしかねぇってことか」 敬は拳を掲げる。 「そういうことだな」 直もまた、拳にブラスナックルを嵌める。 「あと、言わなくても当然の事だが……私たちだけじゃない」 その直の言葉によって召喚されたかのように。 廃屋の屋根を砕き、3メートルほどの鋼が舞い上がる。 「永劫機アリオーン……やはり……!」 「彼女達もいるということっスね」 「そういう事だ」 量産型永劫機にマリオンの魂を付与し完成させた桜子とマリオン。 そして彼女達が居るなら、夕刻の戦いで皆を病気にさせたその原因であろう、ヘンシェル・アーリアもまたいるはずだ。 その三人がいるなら、彼女達とかつて行動を共にした他の四人もいると見て間違いないだろう。 そしてその通りに、七人が姿を現した。 皆槻直、結城宮子、そして彼女たち七人。想定どおりのメンバーだった。 夕方の戦いのときに確認された人物とそこから想定される人物たち。 そう、想定どおり、だ。 ここに赴く前に、話し合ったとおりに…… 『……作戦を立てるよ。あなたたちの言うとおり、相手が高槻さんたちのチームとフリージアさんたちのチームなら……確かに厄介だよ。 だけど、彼女達は、特にフリージアさん達は、悪い意味で有名だったから』 彼女達は、かつて双葉学園に対して叛旗を翻した過去を持つ。 その仔細もまた生徒達には伏せられているし、春奈自身もそこを突くつもりは無い。 だがそれでも、その事実は有名である以上、そこを利用する。 不良生徒が、特に異能者が醒徒会や風紀委員会によって補導されたあと、「反省を促すための奉仕活動」としてラルヴァ討伐などに参加させられる事はよくある事である。 そして得てして、そういう生徒達は「醒徒会の犬」「風紀委員の犬」となってしまった境遇に対して不満と怒り、そして屈辱を覚えている事が多い。 彼女達もまた、事件を起こしその結果として風紀委員たちの下で今回の仕事をしているのなら…… 「ぷふー」 彼女達を見て、二礼が噴出す。 「?」 その姿にヘンシェルたちは怪訝な顔をする。 そして…… 「負け犬がいるっすよねえ、見て見てホラ! 学園にケンカ売って負けて尻尾振ってる負け犬!」 神楽二礼の悪口が、炸裂した。 『挑発……っすか?』 『うん。あの子たちの一番危険なのは、まず南雲小夜子さんの暗示能力。 それを無効化するために、意識を引き付けないといけないから……』 そこで小細工を弄したところで、カテゴリーFとして苛められてきて、そして今なお苛められ続けている彼女達に効果は薄いだろう。 ならば逆に単純なほうが効果が出る。 そこで、拍手敬推薦、悪口言わせりゃ天下一品と評判の彼女の出番、と言うわけだ。 「ねー聴いたっすかおくさーん! 盛大にテロ起してズタボロに負けたそうですわよー!」 大仰に肩をすくめ、口に手を当てて大声でしゃべる二礼。 「負けるだけならまだしもそれで風紀委員の使いッ走りたぁ、プライドねーんすかねー?」 「……っ!!」 そのあまりにも馬鹿にした口調言動に、七人は怒りに息を呑む。 「何も、知らないくせに……ッ!」 「知るわけねーっす。知って欲しけりゃ説明すればどーっすかー? 百文字以上五十文字以内で提出してくださいっす。読まねーけど。 だいたい言いたい事があるなら口で言えばいいのに短絡的にテロに走るなんてそれでも文明人っすか? もしもこの世にぱんつがなかったら好きなあの子にどうして会いに行こうさよなら文明っすか?」 「馬鹿にして……!」 「事実をありのままに言うのが馬鹿にすることなんっすかふーんへーんほほーん」 (ひでぇ……!) 今、みんなの心が一つになっていた。 学園に歯向かう、それは並大抵の事ではない。今の自分達が仲間を助けるために決死の決意を決めたように、彼女達にも守るべきもの、貫くべき意志、果たすべき願いがあったのだろうとは誰にだって想像がつく。 無論、二礼本人にも。 (まあ、だからこそ効果的なんすよねぇ) 自分が正しいとと思っていようと、過ちを犯したと反省していようと……どちらにしても、それは本人にとってみれば聖域だ。 それを突かれて平然とできるなら、本人達にとっては些事と変わりない。 そして……双葉学園に牙を向く決意を固めさせるほどのそれは、彼女たちにとっては本当に大切なものだろう。 だからこそ。 「力づくでモノ言わそうなんて、所詮はその程度のテロごっこなんすよねーぇ。だから負けてあっさりと醒徒会や風紀委員に尻尾振って宗旨替えできる。いやその変わり身の速さはソンケーするっす」 徹底的に、小馬鹿にし、嘲笑した。 そして当然、それを看破できるはずもなく、彼女達は激昂する。 『ほんの少しでもいい、挑発して主導権をこちらのもの出来れば……』 先手必勝。それで布陣は揃う。 『彼女達の能力と戦い方は記録されてる。そのデータを元に作戦を組めばやっつけられるよ』 そして、金剛の皇女の真価が、ここに発揮される。 たとえ、大規模ラルヴァ戦でなく、その異能のリミッターが解除されなくとも…… 春奈・C・クラウディウスのその真価は、その作戦能力と指揮能力にあるのだ。 「うおおおおおおおおおおっ!!」 そして想定どおりなら、なによりもまして先手を打つ事が最低条件。 全員が散る。 分散する理由はただ一つ。 南雲小夜子の異能をまず封じる。 その彼女の異能とは、「視界内の生物を暗示下におく」ことだ。 精神支配系の異能力。これは一番に封じておく必要性がある。 そこで、小夜子が登場した瞬間にとにかく挑発する。 そして気を引きつけつつ、自分達は分散する。この場所は廃墟なので、隠れる場所には事欠かない。つまり、視界に入らなければ、視認さえされなければ――その支配は防げる。 「っ!」 その作戦に気づいた九十九唯は、必死に心を落ち着け、そして異能を発動させる。 「……呪詛諸毒薬 所欲害身者 念彼観音力 還著於本人」 陰陽道斑鳩流玄武、奇門遁甲の陣。 強力無比な結界の術だ。 おそらく――小夜子の異能に対抗して分散した以上、次の手は、その小夜子を潰しにかかるだろう。 ならば彼女を結界で守ればいい。そうしておけば、視界内に入る相手を暗示下における。 無論、相手も歴戦の異能者たちだ。精神支配系の異能にそう易々とかかってくれるとは思えない。 だが、それでもこの切り札があるとないとでは大違いだ。ゆえに鬼札は守らねばならない。 そして同時に、仲間達の行動を阻害しないために―― 結界は最小限。自分と小夜子だけを覆い、発動させた。 そしてそれは当然ながら、春奈も織り込み済みだ。 ゆえに、彼女がとった作戦とは―― 「行けぃっ」 「了解ッ!」 真琴が和孝に触れる。 瞬間転移の異能で、和孝を跳躍させる。 その場所とは―― 「えっ」 小夜子が素っ頓狂な声をあげる。 その声に唯たちが気づいたときには、すでに遅かった。 結界を通り越し、その内部に和孝は転移していた。 なるほど、いかに強固で、通り抜ける事が叶わぬ強力無比な奇門遁甲の陣も―― その内部に瞬間転移するならば、その壁は意味を成さぬ。 そして、和孝の行動はすばやかった。 「ごめんなっ!」 小夜子の首に両手を回し、極める。いわゆるチョークスリーパーホールドだ。 「……っ!」 首の脈を押さえて血流を止め、脳に酸素が行かないようにして昏倒させるプロレス技である。 後ろから極めてしまえば、視界内に入る事も無く、洗脳される心配も無い。 そして、締め落とすまでの時間は、確かに和孝は無防備では在るが――それは奇門遁甲の陣が逆に守ってくれる。 そう、小夜子のみを確実に守ろうとした防御結界を敷いた事が、唯のミスだった。 それに気づき、結界を解き、救出に動くまでの数秒間―― それで十分。それだけあれば、和孝は女の子一人をシメ落とすぐらい造作も無かった。 「――あ」 かくん、と人形のように小夜子の身体から力が抜け落ちる。 「よくもぉっ!」 仲間を倒されフリージアが激昂し、ヘンシェルが弾かれたように拳を振るう。 だが遅い。 誠司と市原、レスキュー部の二人が走り、ヘンシェルとフリージアに襲い掛かる。 「だあああっ!」 振るわれる鉄棍と飛び蹴り。不意を突かれ、そのまま四人はもつれ合うように風下へと転げ落ちる。 「っ! 二人ともっ!」 そしてそれを追おうとする、永劫機アリオーン、そしてマリオン達。 だが宙を滑るその機体に肉薄するのは―― ――天地は万物の逆旅にして、 光陰は百代の過客なり。 言葉が響く。 それは呪文。それは聖約。それは禁忌。 そう、紅玉懐中時計に封印された時計仕掛けの天使の機構を開放するキーワード。 而して浮生は、夢の若しなり――! 力が、爆現する。 全長3メートルの巨体。 チクタクチクタクと刻まれる真紅のクロームの巨躯。 流れるような流線型のデザインは、流麗にして苛烈。 各部から露出した銀色のフレームが規則正しく鼓動を刻む。 まるで羽衣のような飾り布が、燃え上がる陽炎のように揺らめき、その美しさを際立たせる。 それは大地の力を秘めた赤き怒り。 これこそが、その危険性により計画凍結・破棄された、時計仕掛けの天使(クロックワーク・アンゲルス)―― 「永劫機(アイオーン)……アールマティ!」 桜子がそれを見て叫ぶ。 「そうだ。君達のと違い、純然たるオリジナルだよ」 「……っ、マリオンっ!」 ある意味、ここにマリオンは二人いる。量産型永劫機の機体に彼女の魂を同調させて生み出したアリオーン。 そして、もう一人、桜子純正のヒエロムスマシンのボディに魂を宿した彼女。 二人がかりでなら、恐れる事は無い。永劫機メフィストフェレスとて追い詰めたのだ。 だが―― 「私を忘れてもらっちゃァ困るっ! 愛の炎がこの身を燃やす、メラメラ中学生米良綾乃、ここに推参ッ!」 鶴祁とて、また一人ではない。 「綾乃君、彼女は君に任せる」 「いぇっさーお姉さまっ!」 そして、アールマティ。彼女にもまた当然ながらその人格が存在する。 「往くぞ、アールマティ」 『はい、お嬢様』 故に、三対三。双方共に、相手にとって不足なし。 かくして分散された中、直と宮子は眼前の敵に集中する。 そこに立つのは、敬と二礼だ。 「あらあら、バラバラっすね。いいんすかね、戦力分散っすよ?」 「構わないさ」 その挑発に、直は拳を掲げる。 「結果は同じだ」 その眼差しに迷いは無く。 (あちゃあ、やりにくい相手っすねぇ、この人) 二礼は嘆息する。 この手の相手に、挑発などの精神攻撃は効かない。良くも悪くもまっすぐな相手。 手加減も何もなしに正面からぶつかってくるだろう。 「俺がやる」 敬が前に出る。 拍手敬は肌で感じる。目の前の相手は強い。女だとか、乳だとかは関係なく、強敵だ。 本気の全霊でかからねば――打ち破れないだろう、と直感する。 「いい気迫だ」 その敬の覚悟を肌で感じながら、直は笑う。 「そっちこそ」 敬は笑える心境ではなかったが、それでも答える。 「いい風が、吹きそうだ」 「私達は、どうしよっか」 「そうっすねぇ……」 宮子は、治癒系能力者。 一方二礼は、神の召喚というもので、どちらも補助系の異能と言ってもいい。 治癒能力は触れねば使えぬし、二礼の力も戦場で行うには時間もかかりすぎるし隙も多い。 故に…… 「まあ、無駄に潰しあってもね。私は、ナオに賭けるわ」 「そっすね。まあ私は賭けないっすけど」 二礼は相変わらずだった。 風が吹く。 荒廃した空気をはごんで来る。 春奈は、その風の中、教え子達の戦いを見守っていた。 「みんな……がんばって」 春奈のやるべきことはもうない。 あとは、自分の生徒達を信じるのみだ。 なるべく傷つかないように、と。それは偽善者なのかもしれない、と春奈は自重する。 だってそうだろう、どれだけ言い繕おうとも、この地に生徒達を導き、ぶつけ合わせたのは自分だ。 「先生……先生は、悪くないです」 傍らで、神無が言う。 「……」 その言葉に、どう答えていいものか、春奈はわからない。 悪いのは誰か、悪いのは何か。何が正しくて間違っているのか。 そんなこと――わかろうはずもない。 でも、それでも。 「大丈夫、だよ」 春奈は傍らの教え子に言う。 「……必ず、みんなで帰らなきゃ」 「……はい」 双葉学園第八封鎖地区――地獄門。 一切の望みを捨てた者たちが立つ事を許されるその地で、 今、総力戦が始まった。 トップに戻る 作品投稿場所に戻る
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その2「学生課のオバチャン」 ラノhttp //rano.jp/1493 「おいコラお前、この書類、提出期限が一週間前じゃねーか」 「ふぁひ・・・・・・」 双葉学園・大学部の学生課窓口で、男子学生がネチネチ怒られていた。 しかしこういった光景は大学生にとってすっかり日常茶飯事となっているので、誰も気に留めたりしない。 窓口の女性は大きな丸いレンズの眼鏡をかけ、髪の毛も地味に一つにまとめている。いつも眉間にしわを寄せており、愛想のかけらもない。話しかけただけでジロリと睨みつけられるので、慣れないうちは躊躇することだろう。 彼女は通称「事務員のオバチャン・幸子さん」。今や、大学部の有名人物だ。 「余計な仕事させんじゃねーやカスが。期限ぐらい守りやがれ」 「はひ・・・・・・」 「返事は!」 「はっ、はひぃっ!」 学生はとぼとぼと窓口から去っていった。目がまるっきり死んでいる。背中を丸めた覇気の感じられない姿勢を、幸子は横目でずっと睨んでいた。 「ありゃあ滅多に大学に来ないヒキコモリだな。人とまともに会話ができねーで、どうするよ」 男子生徒が提出したのは奨学金の手続きに必須な書類であった。幸子はだらしのない人間が非常に嫌いなのである。 学生課は、奨学金の手続きや忘れ物の管理、グラウンドなど学校施設の借用手続きなどを行うところだ。 「いよーう幸子ちゃん。おっはー」 だらしない人間の次に嫌いなのが、うるさい男だ。現れたのは、体育委員長こと討状之威だった。 「おっはーじゃねえ。冷やかしに来たのならとっとと消えろリア充」 「朝っぱらから攻撃的だねえ。テニスコートを借りたいなっと」 「はいはい、わーったよ。待っとれ」 幸子は申請書を討状に渡す。討状は鼻歌交じりにさらさらと書き上げると、「はいよう」と言って幸子に返した。幸子は記入漏れが無いかチェックしたあと、彼にこう言った。 「土曜の日はいつも借りに来てんな。どうせおめーのことだから、女の子集めてなんかやってんだろ」 「さすが幸子ちゃん! よく知ってるぅー!」 「幸子ちゃん言うのやめい。他にもコート使いたい奴がいるんだ。ちったぁ自重しやがれ」 「んならぁ、幸子ちゃんも参加するぅ?」 「誰がするかぁ!」 幸子はガタンと立ち上がり、唾を飛ばしながら怒鳴った。 「幸子ちゃんはさぁ、そんな眼鏡外して髪型変えればさぁ、けっこうキレイになるはずだとお兄さん思うんだよ?」 「大きなお世話だ! とっとと消えろチャラ男!」 「本当はそんなに歳行ってないんだろぉ? オバチャン?」 「燃やし尽くすぞクソガキ!」 もしも窓口という檻がなかったら、彼女は颯爽と去り行く討状を背中から蹴っ飛ばして、見るのも鬱陶しいあのロンゲに火をつけていたことだろう。 事務員のオバチャンは、双葉学園の卒業生である。 ちょうど数年前に大学を卒業した。高卒で就職した姉とは違い、きちんと勉強をしたかったという。 幸子は、国か大手企業の秘書になりたかった。 巨大企業の幹部や国の重要な役職などでは、「異能者」のボディガードが求められているのが裏の常識である。いつラルヴァに襲われるのか、またはいつラルヴァを仕向けられるのか(今のところそういった事件は確認されていない)、わからないためだ。 もちろん、「異能者」も「ラルヴァ」も、表面上は秘密裏の存在とされている。 だが、1999年の事変以降、彼らによって強襲されることは「無きにしも非ず」の可能性である。成績や実績が優秀な学生はオファーがなされ、裏社会へ旅立っていくのだ。 無論、幸子もそのようなインテリ異能者となりたかったのだが・・・・・・。 「幸子さん、交代いたします」 後輩の事務員が幸子にそうささやいた。考え事をしていた幸子ははっとして、時計に目を移す。 「もうそんな時間かい。了解、あんがと」 あくびを一つすると、幸子は休憩室に入る。ポケットからタバコの箱を取り出した。 紫煙をふうっと吐きながら、彼女は回想の続きに入る。 ・・・・・・幸子には残念ながら、就職活動に有利となる「オファー」は来なかった。その場合は、企業の「裏」求人の公募から内定を目指していくことになる。 しかし、幸子は秘書にはなれなかった。面接で必ずといっていいほど落ちた。落とされた。 漫画みたいな丸くて大きな眼鏡。地味にまとめた髪。そして、一瞬たりともニコリともしない仏頂面。こんな女を誰が秘書として迎えたがることだろう。 幸子はタバコを吸いながら、後輩の働いている窓口のほうを見る。幸子が引っ込んだことを確認した学生たちが、どっと彼女のところに押し寄せていた。後輩は目元のぱっちりしている童顔なため、学生たちにアイドルとして人気だとか。 ぐしぐし灰皿にタバコを押し付けながら、彼女は舌打ちをした。 「フン! 女なんて結局は第一印象よ」 そして、美女のケツばかりを追いかける駄犬どもは死んでいい。全滅の一途を辿ればいい。幸子は、大企業の最終面接で「君は苦笑するぐらいかわいくないが、スタイルはいいねぇ。特にその胸が」とかほざいた社長にパイプ椅子を投げつけたことを思い出した。 結局、幸子は母校の事務員に落ち着いたのである。 夏休みも半分が過ぎた。幸子はいつも以上に恐ろしい形相をして窓口に座っていた。 「どいつもこいつも遊び呆けやがって・・・・・・!」 眉間に何本もしわが寄っている。鉛筆の頭をガスガス机に叩いており、さすがに学生たちもこんな猛毒害獣のいる窓口には近寄れない。 世間が海やら山やら楽しんでいる間に、自分はここで学生たちの世話ときた。たまったもんじゃねえ。そう幸子は思うのだ。海外渡航でもして、奇怪なウィルスでももらってくればいいと彼女は毒づいた。 幸子がそんな風に頭に来ているのも、年頃の妹たちがいるからである。まだまだ学生である彼女らは連日遊びやバイトに明け暮れ、なかなか楽しそうな夏休みを送っていた。 この世でいちばん嫌いな駄姉ですら、公休と年休を使って一週間鉄道旅行の旅に出るという始末である。あいつは本当に働いているのか? それでいて年収が神クラスとかどういうことだ? こんな暴挙が許される鉄道従事者って何なんだ? 長女・純子に対する不平や不満は、尽きることが無い。 それでも、あと少しで彼女も盆休みである。もう少しの辛抱だった。クールビズを理由に事務室の温度は高く、ますます幸子の苛立ちは募っていった。 ところが、後輩が血相を変えて事務室に飛び込んできた。 「幸子さん、大変です!」 「あんだよ。厄介ごととかだったらキレんぞ」 「ラルヴァです! 総合グラウンドでラルヴァが発生しました!」 この瞬間、幸子の握っていた鉛筆がボキリと折れた。 彼女はゆらりと立ち上がる。突然のことにびっくりしている後輩に、幸子はこう告げた。 「私が出る」 後輩は開いた口が塞がらない。筋金入りの面倒くさがりである彼女が表立って戦うところが、まったく想像がつかないからだ。 総合グラウンドでは、夏休み中である初等部の子供たちが遊んでいたところであった。 「チクショー! 離せぇー! ぜってぇ俺、あいつ許さねぇー!」 「やめろ! お前まで死ぬって!」 「うるせー! いいからあいつを殴らせろ! よくもまるまる呑み込んでくれたなぁ!」 「誰か大人が来るまで我慢しろよ! あーもう、暴れんな! おい、みんなでこいつ取り押さえようぜ!」 グラウンドの真ん中で、爬虫類型のラルヴァがどっかりあぐらをかいている。 上半身が蛇で、下半身が成人男性なのである。異様に縦に長いクリーチャーだ。胸部からは、機能していない小さな前足がぷらぷらと垂れ下がっていた。 現場に到着した幸子はまず、しゃがみこんで泣いていた女子児童に話しかけた。 「どうした」 「あ・・・・・・あの変なのがね、私たちの友達を食べちゃったの・・・・・・」 そう、真っ赤に泣きはらした顔で言った。 蛇ラルヴァは昼食を終えて満足しているのか、まったく警戒のそぶりを見せずにグラウンドで日なたぼっこをしていた。そして友人を食われてしまったのが悔しいのか、一人の男子児童が暴れまくってみんなに取り押さえられている。 男子児童たちは幸子の登場に気づくと、一斉にこう大声で言った。 「あ! オバチャンだ!」 「オバチャンじゃねえ!」 幸子は吼える。すると、あのみっともない眼鏡を胸ポケットにしまい、一つにまとめていた髪もぱさっと下ろしてしまった。長い黒髪が背中のあたりでさらさらなびく。鋭い眼光で蛇ラルヴァを見据えた。 「あたしゃまだ二十五だ!」 思わぬ美人の登場に、男子生徒は総じて絶句していた。 ここでようやく、蛇ラルヴァは強い異能者の登場に気づいた。 慌てて立ち上がり、その場から走って逃げようとする。が、すでに幸子は両手を上空にかざし、両方の人差し指と中指をクロスさせていた。 「『ヴォルケイニック・イラプション』! 溜まりに溜まった鬱憤と憤怒を、全部お前にブチこんでやる! FIRE!」 高くかざした指先から、オレンジのマグマが噴出した。それは雲にも届きそうなぐらい高く打ち上げられると、やがて蛇ラルヴァの脳天に降り注がれた。 ボトボトと溶岩はラルヴァに覆いかぶさり、呑み込んでしまう。大量のマグマの噴射が終わった頃には、消し炭となったラルヴァの死体がその場に立ち尽くしていた。 そのあっという間の出来事に、小学生たちは愕然としていた。 「お・・・・・・おい・・・・・・。冗談だろ・・・・・・? あの腹の中には、あいつが・・・・・・あいつが・・・・・・」 「うわー、太陽しっかりしろー!」 「太陽が泡吹いて失神したぁー!」 男子児童たちは気絶した男の子を囲み、頬を打ったり肩を揺さぶったり、わき腹を蹴っ飛ばしたりしている。だが幸子は彼らに目を向けることもなく、ラルヴァの真っ黒な焼死体に近づいた。 細長い指先でつつくと、そよ風に煽られて炭がぱらぱらとはがれ、死体は崩れていった。 すると、女の子が無傷の状態で出てきたのだ。それはまるで、卵からかえったひよこを見ているようだった。 女の子のつぶらな目がぱちぱちとまばたきをする。やがて、その両目に涙が溢れかえった。 「う・・・・・・うぇーん、ごわがっだよう~~~!」 彼女は幸子に抱きついた。その小さな頭を、幸子は優しく撫でてやる。 「に、虹子・・・・・・。大丈夫なのか・・・・・・?」 失神していた男子が彼女の泣き声を聞いて起き上がった。とりあえず、わき腹を蹴った友達をぶん殴る。 幸子は「フン、泣くな」と微笑むと、虹子の涙をハンカチで拭ってやった。 「私たち姉妹の炎はね、本当にキライな奴しか焼かないんだ」 その笑顔は普段なかなか拝めることのできない、それでいて魅力的な女性のするものだった。 彼女を面接で落とした社長たちが見ていたら、きっとひどく後悔するに違いないくらいの・・・・・・。 「虹子―! 今すぐそいつから離れろ!」 「双葉学園の有名なオニババがそんなキレイな笑顔を作れるわけがない!」 「騙されるな! その微笑みはワナだ!」 男子たちは口々にそんなことを言う。ビキッと、幸子のこめかみに青筋が走った。 「・・・・・・おーうおう、助けてもらったくせにその言い方はなんだこのクソガキャーーーーーーー!」 しばらくの間、幸子は男の子たちを追いかけ回す怪獣となった。 「幸子さん、何だか機嫌よさそうですね」 「そう見えんのかい?」 「はい、素敵ですよ? 前々から感じてたんですが、幸子さんはお洒落とかしないんですか?」 「わたしゃ地味なのがいーんだよ。ヤロウに媚売るのは嫌だし、そういうことはしたくない」 「もったいないです」 「ほっといてくれや。さ、今日の業務はおしまい。本日も滞りなく異常なし!」 幸子は身支度を終えると一目散に双葉学園大学部・本館を後にした。いつまでも仕事場にいたくないたちなのだ。 薄暗くなった構内にて、一人の女子が幸子を待ち構えていた。彼女は高等部のブレザーを着ていた。 「幸子姉」 「彩子かい。夏休みなのにこんな時間まで何してやがる」 「色々よ。クラスで話し合いやってた」 「お疲れなこった。そーいやお前んとこは、問題児だらけのクラスだったな」 「問題児というか、王女様とド変態の幕の内弁当よ」 六谷彩子。彼女は二年C組に所属している、幸子の実妹だ。姉妹の中では真面目なほうなので、幸子にとって一番性格が合う。彩子もまた、幸子と似たような炎系統の異能を使うことができる。 六谷家はその伝承をたどっていくと、「火の神」に到達するらしい。 「六」という漢字はどことなく「火」に見えるし、「谷」も「火口」に見えないこともない。さらに言えば「六谷」は「炎口」が変形したという言い伝えまであるほどだ。笑いを取るレベルだが、六谷家のご先祖様はそういうことを真剣に後世へと伝えていったのである。 事実、六谷の五姉妹は、優秀な「火の異能」を受け継いでいる。特に1999年以降に誕生した妹たちは、姉よりも強い力を持っているのだ。 活火山で有名な九州から双葉島へと移築した六谷邸を目指し、二人は夜道を歩く。 「これがあと、数ヶ月も経ったら文化祭か。暇つぶしがてら見にきてやんよ」 「結構よ。教室の戸をくぐってきたらぶっとばすわよ」 「ちったぁ可愛げのあるところを見せろや。お前は昔っから怒りんぼな子だ」 「幸子姉に似たのよ」 フンと、彩子は頬を膨らませてしまった。 しばらく無言が続いたのち、彩子は幸子にこう話しかけた。 「ねえ、幸子姉?」 「何だよ」 「どうしてさっきからずっとニコニコしてんの? 怖いから一刻も早く止めてくれない?」 「今日は色々あったのさ」 幸子は思い出していた。男子たちを追いかけ回して、捕まえて、一人ひとりシメて遊んでやった、あのあとのことだ。 (名前を教えて下さい!) (はん? 幸子だよ。大学の・・・・・・) (どうもありがとう! 幸子お姉さん!) あの女の子の自分に向けられた、心からの感謝の眼差し。 双葉学園で働いてきて、本当に良かったと彼女は嬉しく思っていたのであった。 トップに戻る 作品保管庫に戻る
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ラノで読む ◇島内広報用スピーカ各所 「ピン♪」 「ポン♪」 「パン♪」 「「「♪ポーン♪」」」 帰りのホームルームも終わり学園生達が岐路につく頃。 気象庁による梅雨入りの発表というそれだけでも気が滅入るというこの時期、双葉島内の各所に設置された区の広報用スピーカから突然、あまりにも不快で耳障りなハイトーンボイスが放送された。 「「「カエルの時間をお知らせします」」」 そのふざけたアナウンスが双葉島全域に響きわたると同時に、それが意図的なのかそれとも偶然なのか、丸一日どんよりと上空を覆い続けていた雨雲がついに活動を開始した。 まるでバケツをひっくり返したような土砂降り。 そして―― ◇双葉区役所広報課通信室 そのあまりに急な出来事に、区の職員は慌てふためいていた。 「島内の通信関係全回線が何者かにジャックされました!」 「広報用スピーカは完全に向こうの手に落ちました。こちらからの外部モニタもシャットアウトされてます!」 「まさか、夏騒《サマーノイズ》の仕業かっ!?」 「いえ、記録されている過去のパターンとは異なります!」 今回の騒動が夏騒《サマーノイズ》ではないというオペレータの回答に、室長が重い腰を上げた。 「ならば……全回線の接続を一時強制遮断、コードを書き換えろ」 「――ダメです、こちらからのアクセスが受理されません!」 「復旧コードにも応答ありません!!」 「なっ……いったいなんだというんだ」 「恐らくは……その何者かによって物理的に乗っ取られた可能性が強いかと思われます」 「ということは、これはやはり『新種のラルヴァ』によるものですかね……」 彼らは曲がりなりにも双葉島を管轄にもつ役所の職員である。対ラルヴァ戦におけるマニュアルを始め、また外部からの通信妨害や傍受などに対応できる設備、そして技術を持ち合わせているという自負はあった。 しかし、それらが機能されないまま事ここに至る。 「……あ、外部モニタ回復! 画像表示、出ます!」 復旧したモニタに表示された外部の映像はこの土砂降りの中、区役所前の通りを写したものだった……が、その道路一面に広がる緑と茶色の斑点が目に付いた。 「……いやぁぁぁあ!!」 それが何かを判別すべく映像をズームした女性オペレータが突如大声で悲鳴を上げた。 「どうした!?」 「かえっ……かえっ…………蛙ですっ! 何百何千という蛙が道路一面に……うわきもっ!!」 職務中とはいえうっかり本音が漏れてしまっていた。 オペレータの操作により他の場所の映像へと切り替わったが、その全てにおいて大量に発生した蛙が点在していた。 特に酷いのが広報用スピーカの施設だった。通信装置は完全に沢山の蛙によって覆い尽くされ、中でも特に大きな蛙がむき出しになったケーブルと自身とを繋いでいたりとやりたい放題だった。 「ジャックされた放送でも『カエルの時間をお知らせします』と言っていたんだよな……」 通信室内は騒然となった。 ◇双葉島内某所? 「わーい、雨だ」 「うれしいな」 「もっと降れー」 島の全域においてケロケロケロッという鳴き声が止めどなく響き続けている。 「お出かけしよう」 「もっと高いところへいこう」 「僕たちの声がみんなに届くように」 指先サイズや手のひらサイズの仲間を引き連れ、巨大な身を持った三匹の蛙が高台を求め島内を進軍する。 と、彼らの内の一匹が島の中心に位置する建設物群を指差した。 「あそこへ行こう」 「あの天辺を目指そう」 「あそこならきっとみんなが気付いてくれるはず」 彼らのボルテージが上がり、鳴き声がどんどんと大きくなっていく。 「いっくぞ~!」 「ケロッ」「ケロッ」「ケロッ」 「「「ケロ~~!!」」」 雄叫び(?)をあげて、たくさんの蛙と共にぴょこぴょこと飛び跳ね速度を上げる。 ――目指すは双葉学園校舎棟の屋上だ。 ◇スィーツ&ベーカリーTANAKA 「うわー何これきもいねぇ。足の踏み場もないよ」 学園からの帰り道、突然の雨に降られた鈴木《すずき》彩七《あやな》は、相方の田中《たなか》雛希《ひなき》の両親が経営する店に寄り、雨宿りをしていた。 「蛙ってそういえば久々に見たけど、これってただの蛙が偶然にこれだけの数で集まっただけなのかな」 窓の外を眺めながら、店内のテーブルに頬杖をついた田中がため息混じりにボソリと呟く。 ガラスの外はいつの間にか何処からともなく現れた、ぴょこぴょこと飛び回る蛙によって地面が見えないくらいに埋め尽くされている。 「う~ん、さっきの変な放送が関係してるなら誰かのイタズラか……それとももしかしてラルヴァの仕業?」 その田中と対面で座っている鈴木がケラケラと答える。 「まぁどうでもいいけどさ……雨は仕方ないにしても、店の周りにこんなに蛙が溢れかえってちゃ商売あがったりだわ。誰も表《おもて》を歩いてないじゃない」 頬杖をつきテーブルに突っ伏したままの田中が呻く。 彼女らが学園から戻ってから一時間以上は経過している。その間に来店した客は0人。通常ならば現時点である程度捌けているはずの商品が未だに山と積まれていた。 「この時期は日持ちしないから当日中に売れてくれないと困るのになぁ」 彼女らにとってこのありえないような非現実もまた現実世界の延長なのだ。 ……と。 窓の外を眺めていた田中が、商店街を闊歩する異様な集団に目を見張った。それはおそらく牛や馬よりすら一飲みにしかねないほどの巨大な蛙が三匹。 蛙たちは巨躯でありながら軽快にぴょんぴょんと商店街を抜け、学園のある方向へと消えていった。 「なんじゃ、ありゃあ……」 「どしたの、ヒナキ」 田中の呻きに気付いた鈴木が、彼女の目線を追い窓の外を眺める。 すると今度は、その土砂降りすら物ともせず「おいしいおいしいお肉おいしい」と足元をぴょこぴょこ飛び跳ねている通常サイズの蛙を次々と拾い喰いしていく女子生徒の姿。 その女子生徒は拾い食いを続けながら先行する三匹の巨大蛙を追いかけているようにも見えた。 「「……え、まじで?」」 そう。悲しいかな彼女らにとっての現実もまたこの非現実な世界の延長だったのだ。 田中と鈴木は目を見合わせると、本日何度目かのため息をついた。 ◇双葉学園醒徒会室 突然の土砂降りで帰宅するタイミングを逃した醒徒会女性メンバー、会長|藤神門《ふじみかど》|御鈴《みすず》と副会長|水分《みくまり》|理緒《りお》、書記|加賀杜《かがもり》|紫穏《しおん》の三名が、それでもいつもの通り醒徒会室で雑談に花を咲かせていた。 室内には彼女らの他に、隅の席で漫画を読んで時間を潰している広報|龍河《たつかわ》|弾《だん》の姿。 「そういえばきんたろーやルール、あとはやせは何処へ行ったのだ?」 「成宮くんとルールくんは今年度予算の内訳詳細について学園事務局の方へ出向いています。あと早瀬くんは表にいますよ」 水分の言葉に御鈴が「ふむ」と小さく頷くと窓の外に目線をやる。眼下の校庭では雨に濡れて質量の増した赤いマフラーをなびかせながら、この土砂降りの中を|な《・》ぜ《・》か《・》超高速で反復横飛びしている人影っぽいものが見て取れた。 「はやはや……何やってんだー……?」 加賀杜が藤神門と一緒になって校庭の様子を伺う。 そこへ、席を外していた会計|成宮《なるみや》|金太郎《きんたろう》と会計監査エヌR・ルールの二人が部屋へと戻ってくるなり、 「おーい、なんか連絡があったぞ。この雨の中、島内に大量発生した蛙の原因究明とそれがラルヴァによる場合の討伐をお願いしたいとさ」 成宮が面倒事を頼まれてしまったと言わんばかりに、室内のメンバーへと伝えた。ルールもやれやれといった表情を浮かべている。 「……かえる?」 女性三名があからさまに嫌そうな表情で答える。紫穏は窓の外を眺めたまま、 「うーん、それにこんな強い雨じゃ傘さしても濡れちゃうねー」 能力的にこの手の活動には不向きな成宮と、性格的にどうしてもラルヴァ討伐を躊躇ってしまうルール、そして「蛙」に拒絶反応を示している女性三名を見、龍河は読んでいた漫画雑誌を放ると後頭部を掻き毟りながら立ち上がった。 「……んじゃあ俺が行ってくるぜ。俺なら変身しちまえば濡れても特に問題ねぇしな」 「でしたら、私も行きましょうか」 水分の申し出を龍河は手のひらで制すと、親指で校庭を高速で動いている人影っぽいものを指し、 「いや、既にずぶ濡れになってるアイツを連れてくわ」 「あーい。それじゃ龍《た》っつぁんよろしくー」 上着だけ室内に脱ぎ捨て窓から飛び降りて行った龍河を、加賀杜が手を振って送り出した。 龍河は空中で龍《ドラゴン》へと変身すると、その強靭な両脚で力強く着地する。まだ校庭内は無事だったが、校門あたりまでケロケロゲコゲコと茶色と緑色の波が押し寄せているのが見て取れた。 「あれが金太郎が聞いてきた『大量発生した蛙』か……。確かに相当な量じゃねぇか」 「あれ? 弾さんどうしたんすか」 庶務|早瀬《はやせ》速人《はやと》は、校庭へ龍《ドラゴン》化した龍河が現れたことに気付き足を止め、声をかけた。 龍河は、肩で息をしている早瀬へと歩み寄ると、 「速人、仕事だ。蛙のボスを探しに行くぞ」 端的に要件を伝えた。 「蛙のボス……ってもしかしてあれじゃないっすか」 早瀬は即答し、学園で最も階の高い校舎棟の屋上を指差す。 「なっ、あれって……でかっ!?」 「雨でよくわからないんですけど、あいつさっきからずっとびょんびょんと鬱陶しいんですよ」 早瀬の言う通り、彼の指さす校舎棟屋上では、牛より更に大きな蛙が数匹、まるで天を目指すかの如く飛び跳ね続けている姿があった。 ◇双葉学園校舎棟屋上 「こいつがこの騒動の主犯格ということなのだな」 龍河に呼び出され、醒徒会メンバーが嫌々ながら屋上へとかり出された。女性三人と成宮、ルールは各々に傘をさし、そのぴょんぴょんと飛び跳ね続けている巨大な蛙と対峙する。 「あいつ、何したいのかさっぱりわからないな」 傘をささずにずぶ濡れのままの早瀬がぽつりと呟く。 (土砂降りの校庭で反復横飛びしてるお前の行動もわからないよ) 他のメンバー全員がそろって同じ思考を巡らせたが、面倒なので誰一人口にする者はいなかった。 そうこうしているうちに、屋上への来訪者に気づいた蛙がその脚を止め、彼らへと振り返る。 「君たち、誰ー?」 「蛙が……喋った。こいつやっぱりラルヴァっぽい?」 「――この蛙騒動はお前の仕業なのか?」 加賀杜を制し、藤神門会長が一歩踏みだし問いただす。蛙はその首を傾げ七人を真っ直ぐ見据えると、 「僕たちは、目的達成のためにこの島へ来たんだ。僕は、僕たちの目的達成のためにここへ登って来たんだ」 「目的、だと?」 「そう、身を呈《てい》して僕を守ってくれた仲間のためにも僕は必ず達成しなければならないんだ……」 喋る巨大蛙は天を仰ぎ、深い悲壮感に身を奮い立たせていた。 ◇数分前、商店街わきの小さな公園 「見つけたよ! おっきなお肉!!」 突如現れた人間――背が高くておっぱい大きい金髪少女――の登場により、先を急ぎたい巨大蛙たちは足止めを余儀なくされてしまった。 「沢山のちっちゃなサイコロステーキも悪くないけど、やっぱりはみ出るくらいおっきなステーキも魅力的だよね!」 そういって人間の少女はビシリと蛙たちを指さした。 「知ってるんだよ! 蛙のお肉は鶏肉にそっくり同じなんだってね!」 ――語弊はあるが間違ってはいない。その目的のために飼育されている種類も存在する。……するのだが。 「だから蛙はトリと同じ、ううん、むしろ蛙はトリなんだっ!」 「「「なんだってー!!」」」 そして人間の少女は「我、命ずるお肉食べたい」と呪詛のように言葉を吐き、、雨のぬかるみも物ともせずに地を蹴り三匹の蛙との間合いを一気に詰め、一番近くにいた一匹の脚へと噛みついた。 「ギャーーー!!」 「弟ーー!!」 「あぁ、僕はもうダメだ……あんちゃんたちは早く先へ……」 人間の少女に噛みつかれた蛙が、残った二匹に早く行けと促す。しかし―― 「末っ子のお前を一匹残して行けるもんか。僕が残ってお前を助ける! あんちゃんだけでも行ってくれ!!」 「弟二匹を見捨てて僕一匹逃げるなんて出来るわけがないだろう!?」 悲しいかな彼らの兄弟愛は狂おしいほどに暑苦しくそして鬱陶しかった。 「何をバカなことを言ってるんだ! あんちゃんたち、必ず僕らの悲願を達成しておくれ!」 しかし末っ子蛙が言うよりも早く、次男坊蛙が少女に向かってフライングボディプレスを仕掛けた。 「蛙肉がトリ肉を背負《しょ》って来た!」 少女がわけのわからないことを口走り、自身へと飛びかかってきた巨大蛙を片手でいとも簡単に抑え込んでしまった。 「しまった! ここは僕に任せて、あんちゃん早く!!」 「あんちゃん頼んだよ、絶対にこの島を僕たち蛙の楽園に……」 「……わかった。お前たちのこと、絶対忘れない!!」 長兄蛙は涙を流し、少女と共に残された二匹の弟蛙に背を向け一気に飛び跳ねた。 「すまない兄弟! 僕は……僕は……必ずトリになって見せるから!!」 「「あれっ!? あんちゃん目的変わってる!?」」 次の瞬間、二匹の弟蛙たちは一人の少女の胃袋へと収められてしまった。 ◇時間は戻り、再び双葉学園校舎棟屋上 「人工的に設けられたこの島には僕たち蛙が少なすぎるんだ。僕たちは雨の象徴。この島が水不足に悩まされないよう、僕たちが力を合わせて雨を呼ぶんだ!」 巨大蛙はいかにも自分たちが必要なんだと強く力説する。それを聞き、終始笑顔を絶やさない水分副会長が一歩前へ出ると、 「お言葉ですが過去この双葉島で水不足になったという事例は聞いたことがな……」 「そして僕は空を飛ぶ」 「人の話は最後まで聞き……蛙が空を飛ぶ?」 話の腰を折られた水分が、それでも笑顔を崩さず蛙のとんちんかんな言葉に首を傾げた。 「僕の弟たちを美味しそうに平らげた人間が教えてくれたんだ。僕たちはトリなんだって。だから僕らは空も飛べるはず」 そして細い四本指の拳をぐっと握った。 その場の醒徒会メンバー七人は、変なのと関わってしまったなぁと揃ってため息をついた。蛙はそんな彼らなどお構いなしに相変わらずぴょんぴょんと飛び跳ね続けている。 「ひとまず、こちらの総意は『お帰り願えますか』ということだ」 ルールが言う。しかし蛙が即座に反論した。 「嫌だ! 僕はここにいる! ここから空へと飛び、沢山の仲間を呼んでこの島を蛙の楽園にするんだ! 僕を残し先立った弟たちを弔うためにも!!」 まるでこちらの言い分に聞く耳持たずと言わんばかり。それまで全裸のまま雨に打たれていた龍河は、業を煮やし再び龍《ドラゴン》化すると、 「ならば全力でも!!」 その剛腕で蛙を掴み上げ、 「うぉりゃぁあ!!」 空高く、全力で放り投げた。 「――白虎」 続けて、水分に傘を預けた藤神門はその手に白虎を召喚する。 「うなー」 「行くぞ、しおん。白虎よ、やれ!」 「あーい、まかせて親分!」 触れたものを強化することのできる加賀杜の異能により、その投げ飛ばされた蛙にも負けないほど巨大化した白虎の口が彼を捉え―― 「がおーー!!」 天を貫く閃光が、空中で手足をばたつかせていた巨大蛙を包み込んだ。 「――僕……今、空飛んでるよ……」 ◇再び双葉学園醒徒会室 「雨やまないか……あの蛙関係なかったみたいだな」 降り続く雨音にうんざりしながら成宮が小さく呟いた。その声に、書面を作成していた加賀杜が首を上げ辺りを見回す。 「あれ? そういえばまたはやはやがいないや」 「早瀬ならまた外にいるぞ。なにやら修行だとさ」 「……しゅぎょう?」 ルールの言葉に、藤神門が何故そんなことを、と眉間にしわを寄せる。 そこへ、隅の席で先ほどの漫画の続きを読んでいた龍河が口を挟んだ。 「さっき屋上で聞いたんだが、雨粒が落ちてくるよりも早く避ければ濡れないんじゃないか、ってな。避けた先にも雨粒があるんだから俺は結局無意味だと思うんだがな」 六人は窓から眼下の校庭を覗き見た。 そこには早瀬は校庭で必死に超高速反復横跳びを繰り返す姿があった。あいかわらず全身ずぶ濡れになりながら……。 ◇翌朝、スィーツ&ベーカリーTANAKA 一晩明けても雨が止むことはなく。帰るタイミングを逃したまま一泊していった鈴木と共に田中は学園へと登校すべく家を出た。店舗前の商店街には同じく学園へと向かう生徒の姿がちらほらといた。 先日あれだけ道路を埋め尽くしていた蛙の姿はどこにも見当たらず。ふと、その蛙を拾い食いしていた女子生徒のことを思い出す。 田中たちの前を行く女子生徒三人組+なんかキュッキュ言ってる白くて丸い饅頭っぽいような変なのたちの会話が、雨音に混じって耳に届く。 その内、透明のビニール傘から綺麗な金髪を覗かせるおっぱいでかい背の高い一人が「昨日は一晩中歩き回っておなかいっぱいお肉を食べてたんだよ。でかいの一個だけ逃しちゃったのが残念なんだよ」とか言っている。いったい何の話だろう。 ――そういえば……そういえば、あの時に拾い食いしてたのってこんな感じの容姿だったような――? 「まさか、ね」 常識の通用しないような人でもない限り、あれだけの数の蛙を全て拾い食いしていくなんてどう考えてもあり得ないだろう、と田中は首を横に振った。 何処かで蛙の鳴く声が聞こえた、ような気がした。 田中と一緒に、前を行く巨乳の金髪少女がその声に反応した、ようにも見えた。 【カエルの時間をお知らせします】終 トップに戻る 作品投稿場所に戻る
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クロス=リューズ 種族:カイリュー 出身:本人も知らない(育った場所はレミアの作った孤児院) 年齢:15 性別:♂ 身長:1.9m 体重:175kg 特性:せいしんりょく 職業:郵送業(アルバイト) 通称:クロス、天然野郎など 左頬に生まれつきの十字架の模様があるカイリューの少年。 無邪気でとてもいい子なのだが、ありえないほどの天然なので話し相手に絶対に言ってはいけないような事を素で言ってしまう子。そのためボコボコにされることもしばしば。 しかし、体力・持久力・耐久力が普通のカイリューと比べずば抜けており、とんでもない発言を言ってしまいボコボコにされてもそこまでひどい事にはならないようだ。 武器は尻尾にあるプラチナ製の十字架で、レミアから貰った魔道具であり、通常はかなり小さいが、戦うときにはクロスの背丈よりも大きい十字架(鈍器)になる。 両親は2歳の頃に亡くなっており、その頃レミアに拾われた。今では両親の墓もクロスしか知らない所に建てられており、クロスはそこへ週に一度は必ず墓参りへ行っている。
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僕とロボコの用語集だ。週刊少年ジャンプ掲載。 本作のキャラクターについては僕とロボコキャラクターズへ 用語集 OM オーダーメイドロボのこと。ロメイド服姿が基本だけどロボコみたいなずんぐりむっくりなタイプもある。 他には那須みたいな医療従事用や能美兄弟が出したようなスポーツタイプもある。 スポーツタイプは運動性能が通常のOMよりおよそ5倍。 通常OMは悪用防止のため生物へ危害を加える命令を出すと強制停止してしまうようプログラムされているんだ。 ところがロボコだけは攻撃可能。またOMであっても那須みたいに故障して戦闘態勢することもある。 モツオにモツオダディが勧める単眼タイプもある。見かけは約ネバに出てきた鬼。 ロボコだけかもしれないが高エネルギーを使うと痩せて美少女風になり見かけが弱体化する。 ロボコクイズ ヒザからロボコクイズと書かれたノボリ旗が出てくる。痩せるとできない。 新しい概念 家に帰ったボンドを出迎えたロボコが発した概念。 ゴハンにする?おフロにする?それとも あ・た・ら・し・い・概念?新しい概念。 どう対処したらいいか困惑するボンド。 人が触れると世界の均衡が崩壊する全く新しい概念だゾ。 しまっとけそんなものとボンドは命令しロボコは処分しようと力でねじ畳む。 ロボコヒザ枕 イヤなことを忘れたいときに使う。毎秒10万回の超振動で過去の記憶を全て消去しシナプスを破壊。 メヒョゾーマ ロボコがメイコに放った一言。女狐女豹メヒョゾーマ。メラゾーマみたいに言うな。 バミューダ小学校 ボンドが通う学校。防災強化週間があり各家庭のOMが迎えに来るので生徒たちは大いに盛り上がった。 平家にロボコが来るまでボンドはこれが嫌いだった。皆がOMを自慢しあうなか1人で帰るのは寂しかったのだ。 ロボコ占い ロボコクイズと同じく膝から旗が出て来る。 ロボコ占いとはオシャレと占いを融合させた全く新しい占いだゾ。 ファミチキを出すボタンと反対側の腕にあるロボコボタンを押すとロボコが吐き気を催し運勢が書かれたしっとりな紙が出て来る。 よさげ、よさく。 形態変化(トランスフォーム) ロボコが変形するけど時間かかる。足を外すとジェットブースターになる。 もってくれよマキアージュドラマティックパウダリーUV! モデルPonanza ロボコが形体変化した姿。ただ寝転がっただけだが円によると電王戦で佐藤天彦名人と熱戦を繰り広げた将棋ソフトPonanzaと同じ形。 足で指そうとするが無理だったので普通に指すことに。 ロボコ砲 打つと山をもくり貫く破壊力を誇るが、生物には無害である一方優しくなるぞ。しかし代償としてつけまつ毛が飛ぶ。 ファミチキ ファミリーマート(ファミマ)で売っている おやつ的なもの。ロボコが出すファミチキは7話にてファミマで購入していることが判明。 バミューダ霊園 ボンドが肝試しに行ったぞ。霊界と繋がっているらしい。モツオとガチゴリラはメイコを連れゴーストバスター衣装で吸引力強い掃除機を装備。 しかしメイコが霊のプラズマで誤作動を起こしのっぺらぼうになったメイコにか2人は霊界へ連れていかれゴーストバスターするのだった。 モツオんち(金尾邸) 貴族の家みたいな屋敷。長机のある飯食い場や和室もある。 押忍‼︎クソ男飯‼︎ ロボコがつくった。皿に盛ったライスのほか、丸ごと卵とファンタグレープとトマトケチャップを容器ごと突っ込んだもの。 押忍‼︎クソ男飯"改‼︎" ガチゴリラにロボコの手料理を食べてみたいと言われボンドにロボコはメイコほどつくれないと聞いて対抗意識でロボコがつくった飯。従来の押忍‼︎クソ男飯‼︎はファンタグレープのみと言われていたが、あえてオレンジにした意欲作。 だがロボコにはイマイチで もっとクソさじゃないとと不満だった。 踊れ‼︎クッキングダンシングキッチング メチャクチャ手際がいい その洗練された身のこなしはまるで踊っているかのようだが実際に踊っていた。そしてできたのが皿とスプーンを放り出したものでボンドから何にもできてねえとツッコミられる一品。 ドチャクソバグりまんま ロボコが試行錯誤してできたカレー。食べればズバーンと服がはだける。モヤモヤも溶け出して帰りみち鼻歌。 ドミオピッツア ドミ夫がオーナー兼店長するピッツア店。 出来立てから30分以内で配達することにプライドがある。 アルバイトの次月シフトが希望できる。 看板のロゴはドラえもんタイトルをオマージュ。 バミューダ町 ボンドたちが暮らす とある都市の一覧地域だ。主な教育機関はバミューダ小学校だ。 バミュ4 バミューダ町にいるイケメン金持ち小学生グループ。 妙々寺トゥカサ、ルイ花技、西キャド、モツオで構成されている。 しかしバラバラに活動しているので普段4人組なわけない。 モツオは親の都合で小卒すればバミューダ町を去るためモツオの代わりが入るかバミュ4はバミュ3になる。 常にロボコをめぐり丁重に取り合いし商店街に集まる。小学生女がバタバタ倒れるのでタレントが来たかと思ったボンドは菅田かと思われていた。 ロボコ型自転車・ツール・ド・ロボコ ボンドの誕生日にロボコがプレゼントしたマウンテンバイク仕様の自転車。 バイト掛け持ちして貯まった資金で自転車屋・田田サイクルにつくってもらった。基準となる身長はカスピカイアザラシだ。 普通の自転車をカスタムしたオーダーメイド自転車で、サドル中央に顔や腕が付いていて目がライトになっていてメチャクチャ光るぞ! 腕も飛ぶ、勝手に喋る。「まだまだこんなもんじゃないわよ!」とな!泥除けカバーはロボコのスカートをモチーフにしているぞ! 時速120キロとメチャクチャ早く走ることができおまわりさんに止められる。 ロボコプター ロボコが飛べます。 我知動物病院 ガチゴリラの実家だ。OMの那須が受付するよ。 集英社 少年ジャンプなどを発行する企業。この世界ではスーパーブラック企業体制だ。 お仕置きと称して強制労働させる地下施設がある。 地下に強制労働場がある、集英社の電力は、強制労働の労力。 少年ジャンプ編集部 漫画に携わるものなら誰もが憧れる場所。たぶん集英社の部署だ。 入り口にはNARUTOやルフィが鎮座しちょるんよ。 未来の少年ジャンプ編集部は今以上にブラック。 編集長の両脇で人頭サイズのドラゴンボールを2個抱えていたり裸体でデスクワークしたり犬神家やったり背中に三代鬼徹刺さることもある過労死があったりマガジンを持っていたり読んでいただけで半殺しにされるジャンプ愛溢れる職場なんだな。過労死が発生した場合は死体を先週号と一緒燃やすのが恒例だ。一応みな世界一の漫画を創ろうという熱意がある集団だ。 盗作がバレると地下施設で強制労働させられるらしい。 なお、食いしん坊バトルクラブの敗者監禁場所として使用されることもある。 試しの門 ジャンプ編集部の入り口にある扉だ。 ジャンプ編集部ではネタバレを防ぐ為、簡単に入れないようなっちょるん! 入ったら最期、生きては戻れないとの理由から黄泉への扉とも言われているよ。 門には鍵はかかっていない。それでも押してビクともしないのであれば単純に力がたらんだけか。 このものを開けられないような輩はジャンプ編集部に入る資格なしということらしいが、2年目の4年目は開けられず入る資格がないと開き直り結局ロボコがいなかったら入れなかったんじゃ。 試しの門を2まで! この扉の横にある小さい扉は侵入者用の扉で、そこから入ると完璧に訓練された編集部員(脅威のメガネ率)が襲ってくる。 四稿 ジャンプ編集部に原稿ごとく君臨する編集長を含む副編以上の4人編集者さ。 連載するためには彼らを納得させなければならない。 避けては通れない相手だよ! メイク・ザ・ジャンプ 編集長の能力だ。触れたものをジャンプにしてしまう少年ジャンプの編集長に代々伝わる必殺技さ! 編能力 班長以上がもつ能力だ。 編集エネルギーを自在に操る力、まあ言ってみれば念能力と大体一緒だよ。 僕の緋色のマカダミア ロボコが描いた漫画。絵は劇画。十三階段ベムもビックラ! ケツの穴グッと マカダミアあ マカダミア?がんばれってかんじの 握りつぶしてマカダミアアアアア・・・ 緋色の丸く握り潰されたマカダニアナッツ NUTS‼︎ アンダッテアンダッテ ロボコが描いた漫画。絵は劇画。マンディだっての否定者。だって言うな‼︎と言いながら最高だ‼︎と言うぜ。 ハイあんドーナツ あんだって? だからあんドーナツ あんだって? ・・・ UN DONUT -あんドーナツ- ブラック (苦労婆)クロウバア ロボコの漫画。黒い老婆が魔法瓶を探すストーリー。主役の老婆は自称をアタスと言うぜ。 ルリの漫画がGIGAで掲載されたのを機に披露したあロボコの漫画。 これを読んだボンドはクソ漫画と叩きつけるが、同じく読んだルリはライバル出現を感じた。 ルリに独特の世界観と言わしめた。 じゅじゅじゅパイセン じゅじゅじゅパイセンというキャラクターが主役。パイセンはビックリすると『じゅじゅじゅ』と言うが、実際にビックリしても言うことは一度さえない。 僕とロボコ この漫画のタイトルおよびロボコが描いた完全オリジナル漫画。 内容は相変わらずの絵にモデルとなったボンドがロボコへの求愛度より高し! 応募して最終候補まであと一歩だった。編集部講評では、『全体的につたないが、2名の仲の良さが伝わり好印象。この内容で48Pはすごい』などと評価されたんだ。 バミューダツインテールズ いわゆるママさんバレーチーム、平かかあも参加している。 (T・T)みたいな顔がロゴ。体育館の使用権をかけた試合当時迫っているのに、チームメイトが風邪やら冠婚葬祭やらで大量欠員が出ていて相手チームの不戦勝に終わるかと思われた。そこでロボコ参戦を皮切りに知り合いをかき集めた。 バミューダビューティーズとは1つのチームだった。 その結果半分以上が子供とOMになってしまった。まあどうにか勝ったから結果オーライだ。 バミューダ・ビューティーズ バミューダツインテールズから見ても対戦相手だ。能美シマイが代表を務める。 バミューダツインテールズとは1つだったが、何らか理由で分離独立。まあともあれ敗退すると相手チームの平かかあが手を差し伸べ再びバミューダツインテールズに入りしたのを気にバミューダビューティーズは解散した。 ツイッター ご存知つぶやくアレである。バミューダ小学校で円のフォロワーが1万2千人と話題。他人を支持するフォロワーはロボコにすると戦闘力だ。ボンドは聞いた当初1万2千人は今年の雄英高校の受験者数だと思ったらしい。いやみそうに話しかけるモツオとガチゴリラ、ボンドがツイッターに興味なさを示すとオロオロし始めボンドには早すぎたとガチゴリラに言われる始末。モツオと純金ジェンガの続きをするのだった。 ツンとスルーしたボンドだったが帰宅早々睫毛いじりのロボコにツイッターを教わろうとする。 ロボコはムチャクチャツイッターしていてロボコからツイッター取ったらただの膝といっても過言でないらしい。早速ロボコはボンドのスマフォを借りボンドのアカウントを作ってくれたがメインページはロボコの主張が強い仕様になった。ロボコに勧められるがままに円のツイートも見ることとしたボンド。円のアカウントネームは円ちゅわん。まず見たのは634件のツイートがあった。内容はファッションがほとんど。なかには自身が勝負師になった顔を知らないひととしてツイートしたものもあった。ガチゴリラのトプ画は家族写真、ツイートは深い。フォロワーが4しかなく少ない。その理由はフォローしたアカウントが環境省やらJICAやら国連WFPやらという意識高過ぎて誰もついていけないからだ。モツオはトプ画がボンドとガチゴリラが写ったトリプル写真。人脈を活かしジャスティンビーバーやらレディーガガやら有名なやつらとツーショットをツイート。そのせいかな、フォロワーは53万だ。ロボコのアカウントは平ロボコ名義で6666件のツイートがあり大量の#がある。フォロワーは1,19件、ツイートは五条先生感想。ニキビができた今日のヒザ!肘、ツイートに対するは全てロボコの副アカ。最もバズったのは押忍‼︎クソ男飯‼︎と風呂上がりボンドのツーショット。さすがのボンドも消すよう指示して泣く泣くツイートを削除するロボコ。さいごは読者にロボコをフォロワーしてあげてねと締めくくる。 手塚賞・赤塚賞受賞記念パーティ 帝国ホテルで行われたイベント。 サニー号型ジェット機 尾田栄一郎の愛車ならぬマイプレーン。 手塚賞・赤塚賞受賞記念館パーティに合わせ、飛行機にとって狭い帝国ホテルの屋上に着陸できる。 食いしん坊バトルクラブ バミューダ町で最も食いしん坊を決める大会 優勝者にはバミューダ町の 中華店 新気功砲の1年食い放題券が送られる。 今回は中華トライアスロン中華マン50コチャーハン50杯ラーメン50杯を最も早く食べた人が優勝。 優勝者にはバミューダ商店街中華店新気功砲の1年無料券が贈呈。敗者は364泊365日の集英社地下労働施設体験ツアーにご招待。今なら焼印が無料らしい。 新気功砲は中村チ。しかも優勝商品2度言ってる。 今回は小学校5年生なボンド(11)も今大会最小にして最年少140センチ35キログラム 本当に大丈夫か?と言われながらテクテク出場したが、観客からは、ちっせー!とか頑張れー!とか励ましの歓声がこだまする。もともとボンドは たまたまチラシ見かけてちょっと出てみただけ、町の小さな大会と思っていたらしく、みんなに内緒で参加して優勝したらかっこいいと思って応募したら1人で来て後悔したらしい。こんなガチのやつだったとかいきなり決勝とかな。棄権は敗者と見なされるらしくボンドは審判に棄権を申し出ると敗者席で待つよう結局棄引くに引けなくなって棄権を撤回したよ。審判はバレー大会のときに取り仕切った審判。ボンドもできるだけ食べ進めるも限界がきて乱入したロボコと交代、これは審判に認められ続行。しかしラーメンに差し掛かるとロボコには すするという動作がないらしく食うスピード停滞、器ごと飲む方法に切り替え優勝した。 お食事処 とらや 慶応元年にあった茶屋。名物は草だんご。おマドという茶屋女が接待する。 バミューダ ゴリラーズ 少年野球チーム。我知ゴリラはエース4番。 ドレーク ドッグス 強豪少年野球チーム。 準決勝でジブラルタル ゼブラックスに敗れた。 ジブラルタル ゼブラックス もともと万年負けの弱小少年野球チームだったが、メジャー級の怪物と噂されるロボコの加入でパワーが増し、準決勝でドレーク ドッグスに打ち勝ったんだ。 ロボコはエース4番。OMの使用は大会で認められている。キッカケはネギ4本を千本買うとこだったロボコが野球少年らに球を投げたからよ。 球を受けた少年は幸い突き指で済んだが吐血、だけどチームは弱小 9人ギリギリ、人数合わせという形でロボコはゼブラックスに入った。パワー、根元、おまけに木製バットで軟式ボールを飛ばすとなると理論上ロボコはバットに当てるだけでホームランにできることになる。 ロボコボール ロボコの投法。一見すると投げた球が2つに分かれるように見える球。 しかし実際はボールと一生に右手を飛ばして途中から二手にわかれる技。 ガチゴリラはこれを苦戦したが、2つにわかれてもミットに収まるときは元の軌道に戻ることを見破った。 純喫茶 純・受話 茶屋純のパパ上なマスターが切り盛りする店。 一時期はオサレなカフェに客を取られし。 バミューダ病院 ボンドが記憶喪失で入院くらいした医療機関よ。総合病院だろうな。 幸せ棚〜 ロボコの作品。棚。「ヒエー」や「ヤメテー」と鳴くよ。 もともと漫画買い過ぎ棚が埋まった機にインスピレーション、翌日に披露。 犬でしかも首輪付いているんだ、幸せ棚〜は世界初の本棚になるペットだ。 散歩もできるし好きな時に漫画も読めるん顔コワいけど確かにちょっと便利だろう。 尻尾を吹くと、「ぎゃー」「たすけてー」と鳴く。 実はこの尻尾、ボンドのピアニカから拝借したもの。 顔は本棚として生まれてしまった絶望を表していて、人としての性を受けた幸せを噛み締めてもらうコンセプトだ。 「滅」と言いながらもつと「ヤメテー」というん。 あるいは裏切りと言う名の椅子 幸せ棚〜と同じくスゴイ顔。 どのへんが裏切りかというと、一見ただの椅子だが、一定時間座ると背もたれが倒れてテーブルになるところ。 よし坊 見かけはyogibo(ヨギボー)という人をダメにするソファだが、顔付きよし坊。人のためになりたいソファ。座ると「グエ」と放ち、白旗を持った手が出て「まいった」と言う。所詮ソファーですから座られるか 人型照明 スイッチ(頭部)を入れると関節が光ります。 今流行りの関節照明。 必殺‼︎ヴァン・ホーテン・ミルク・アパカー 制作期間1ヶ月に及ぶミルク藤沢とロボコの共作。 必殺技を形にすることで生と死を表現したミルク藤沢20年人生の最高傑作だ。 頭が手だ。これでも本棚だ。 ドラコンボール 主人公のソンゴ君がゴルフのドラコンで無したボールを探す物語ですう。 ドラコンとは、ドライビングコンテストの略。 天空の城のラピュオ 天空の城ラピュタのパロディ。 KISS!!クソ恋始めました!! ロボコオリジナルのラブコメクソ漫画。 超ノ助先パイ(15)と魔離孤(14)はクソ孤が加速するらしい。 宇和島吉田町ブラッドオレンジ みかん箱 君の雑炊が食べたい 映画だ。もちろん君の膵臓が食べたいのパロディだ。 推し鋸 押してダメなら引いてみろ‼︎ 雲母キララ先生のヒット作。 本来引いて使うノコギリを押して使うから全然切れない少年が生まれ変わって秋田小町を作る次期看板とも名高い青春ラブミステリーらしいよ。 その設定で次期看板って逆にスゴイ米。 天使の小窓(ゲート) ロボコが異世界などへ行く際使用。初登場は人形の世界に迷いこんだアカネを連れ戻すとき使う。 少女妄想(ファンシー)がギリギリだったんだけどなんとか小指の糸(ジョイント)できた。 人形の世界(イッツ・ア・スモール・ワールド) アカネが引き込まれた異世界だ。 アカネと人形のエンカウントがトリガーになって時のささくれが発生したようなの、人形たちはアカネをホストにしてトゥルーマンになるつもりだ。ダークファンシーが溜まるまでに人形を止めなきゃ! ようは人形がアカネの体を乗っ取ろうとしているんだぜ。 ベタ踏み坂47 鳥島ミユウことミユミユが所属するアイドルグループ。 たぶん乃木坂のパロディら! 本作のキャラクターについては僕とロボコキャラクターズへ