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#blognavi 今日は町田で、ゆず爺さんと闘劇前の準備! 午前中は、ゆず爺さんとはあんまり勝負できず2勝1敗。 そのかわりキャッツのつわもの、 強すぎるアルク・初めて見た七夜にレ○プされる。 つ・つええ・・・。 キャッツのアルクは特に強くなれば強くなるほど、差を感じます。。。今日絶好調だったのになあ・・・。 んで7連勝したあたりでゆず爺さんに止められる。 俺しょんぼり。んでその後サイゼでメシ食って一旦俺は塾へ。 ゆず爺さんは横浜へ。 塾が終わってキャッツに来ると、なんと友達のワラキア発見! あいかわらずつえ~なあ。 かんなさんの都古もいたので、俺乱入。ボコボコにされる。 友達ワラキア乱入。ボコボコにされる。 結論 あきらめる 普段同キャラ戦嫌いな友達ワラキアが快く勝負を受け入れてくれたので、久しぶりのガチ対戦。 友達 俺 3-0 3-1 1-3 で俺敗北。投げうめえなあ。ホントみえない。。。ぽんぽん投げられました。 てか間に俺のサブ七夜がフルボッコにされたのは内緒。 さあココからが本題。横浜から帰ってきたゆず爺さんが神を連れて町田に戻ってきた。 友達ワラキアを倒し、俺も2回乱入するが負ける。 ええ~!!なんだこの強さは!?!?初めて会った時のゆず爺さんのさつきはまだまだかわいかったのになあ・・・。 今はどう見ても化物です。本当にありがとうございました。 ゆず爺さんとの戦績が3勝4敗になったところで、11戦ガチにしませんか?と俺がもちかける。ゆず爺さん快くひきうけてくれる。 俺意気揚揚と乱入。負けて3勝5敗。。。。え??もう俺後がない??この時点で俺のワラキアに「いのちだいじに」に作戦変更させる。 俺たて続けに二連勝。俺最後超バッタで、ゆず爺さんにもうしわけなかったです。 ここで5勝5敗。気がつくとフルセットになっていた。 マジ緊張しながら必死に戦う。一分後。。。立っていたのはワラキアでした^^ 今日学習したことは、ゆず爺さん戦では投げ封印。気軽にネロ起き攻めにいかないという事ですね。 今日の最後のゆず爺さんはホント強かったです。。。今度はもう負けないですからね!! TOGさん明日はがんばりますよ!!ゆず爺さんチームも明日は頑張ってくださいね!! カテゴリ [初めて会った時以来のゆず爺さんとの11戦ガチ] - trackback- 2006年01月14日 20 58 17 #blognavi
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【作品名】予め決定されている明日 【ジャンル】小説 【名前】ケムロ 【属性】算盤人 【大きさ】ω次元では成人男性並、下層次元からは認識できない 【攻撃力】上と同じ 【防御力】上と同じ 【素早さ】上と同じ 【特殊能力】 ω次元世界の住人。 これより下層の次元(3次元世界)の存在はこれに干渉できない。 世界は算盤人達が行っている計算(シミュレート)そのものであり、ケムロ及び班長その他はその計算を読み解き改竄することが出来る。 要するに「ラプラスの魔」の強化版。 計算を改竄するなどして新しい計算問題を提示することは任意に世界を創造することと同義であるため、 ケムロのシミュレートする世界は計算に手を加えられる箇所の数(つまり無数)だけ並行宇宙が存在し得ることになる。 世界の全てはケムロ達が計算するようにしかならず、またその計算結果や経過を破棄して新しい結果を作ることもできる。 つまり、原理的にケムロ達は全ての1次多元世界に対する、時間を無視できる任意全知全能=常時全知全能であるといえる。 【長所】ω次元って何だよ・・・ 【短所】同じω次元の住人には多分ボコボコにされる 19スレ目 744 :格無しさん:2008/08/15(金) 13 05 44 ケムロ 【長所】高次元の存在で1次多元全能 【短所】一人の女会社員の人生を滅茶苦茶にした 14スレ目 87 :格無しさん:2008/04/28(月) 18 09 01 ケムロ考察 二次多元全能だから天照大御神と= 93 :格無しさん:2008/04/28(月) 19 20 52 87 同じ階層のやつにはボコボコにされるなら天照にまけるんじゃないか? 94 :格無しさん:2008/04/28(月) 19 21 51 アマテラスと範囲が同じなら 95 :格無しさん:2008/04/28(月) 19 26 53 じゃあアマテラスに負けか 96 :格無しさん:2008/04/28(月) 19 27 53 全能範囲同じなん? 97 :格無しさん:2008/04/28(月) 19 30 02 どっちも無限×無限だろ? 98 :格無しさん:2008/04/28(月) 19 41 29 ケムロ再考察 同じ階層の相手には勝てない 天照>ケムロ 947 :格無しさん:2008/05/21(水) 14 49 28 ケムロ再考察 一次多元全能で、同じ一次多元全能に勝てない扱いなら ウルトラマンキングの下 ウルトラマンキング>ケムロ>エル・カンターレ イスカンダール再考察 一次多元全能なので自動的に ウルトラマンキング>イスカンダール>ケムロ
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周防 キョウジ 基本情報 名前 周防(すおう) 京時(きょうじ) 幻時(げんじ) 周防 経時(けいじ) 学年・クラス 高等部2−A 左に同じ 左に同じ 性別 男 左に同じ 左に同じ 年齢 17 ? ? 身長 172 左に同じ 左に同じ 体重 55 左に同じ 左に同じ 性格 弱気、日和見主義 超強気、戦闘狂で幼い 慇懃無礼、温和だが冷徹な側面も 生い立ち 旧兵器開発局に拉致、破棄された後双葉学園に入学(一般) 京時から人格が分裂 左に同じ 基本口調・人称 僕、基本的に丁寧。二人称は君、〜さん 俺、べらんめぇ口調。二人称はテメエ 私、常に敬語。二人称は貴方 特記事項 ベース人格 戦闘時などの人格 ? キャラデータ情報 総合ポイント 27 レベル 7 物理攻防(近) 6 物理攻防(遠) 5 精神攻防 2 体力 5 学力 3 魅力 3 運 2 能力 永劫機メタトロンの召喚 特記事項 スペシャルキャラの特例適用 その他詳細な設定 かつてオメガサークル(その前身の兵器開発局)にそのアツィルトを見込まれて拉致(その際、家族は皆殺し)される。 だが、幾度の実験や改造を経ても異能が開花しなかった事や兵器開発局の解散のドサクサで破棄される。(その際彼のデータも紛失) 異能の開花への希望やセキュリティの緩さから双葉学園に一般入試ルートで入学(深層意識では仇であるオメガサークルの情報を掴みたいがためと、双葉区自体には馴染みがあったから)。大学学食や生協などでバイトをしながら生活している。 実験や改造などの過酷な経験から精神の『バランス』を失い、解離性同一性障害を患い人格が3つに枝分かれした。 第一人格:『京時』 一人称は「僕」 「現在」を担当する人格にしてスタンダードな人格。普段はこれ 日和見主義で争いごとを好まず、押しに弱い。弱気。目立ちたくない。 全てを忘れて平穏に生きたいと思っている。だがそれは怒りや憎しみといった感情を別人格に仮託しただけで、復讐心が全く消えていない事を自覚していない。 平穏に暮らしていたが、ある時メタトロンに出会い、己の内の消えない憎しみや復讐心を自覚し、彼女と契約。自分や家族の時を歪ませた者に復讐を遂げるべく戦いに身を投じて行く。 第二人格:『幻時』 一人称は「俺」 「過去」を担当する人格。京時の怒りや憎しみ、戦意などに応じて出現する人格。 京時が「過去」に受けた仕打ちに関する怨みや憎しみをこの人格に押し付けた為に、幻時は好戦的で暴力を振るう事になんのためらいもない。 また、「過去」を担当する事から他の人格に比べると幼い面があり、子供っぽい。 第三人格:『経時』 一人称は「私」 「未来」を担当する人格。出現条件は不明。 京時がイメージする「大人」をイメージした人格。比較的温和で理知的だが、「大人」らしい冷酷さや狡猾さを持っている。 装備 永劫機召喚用の翠玉(エメラルド製の時計)製の懐中時計 【永劫機メタトロン】 翡翠の懐中時計を核とする永劫機、『機械仕掛けの天使(クロックワークアンゲルス)』 腰部に音叉式の時計が埋め込まれている。 身体は女性らしいシルエットだが、両腕部が肥大化しており拳が非常に大きい。 まるでゴリラのようだと評されるほど、身体と腕が『アンバランス』 能力は『殴ったモノの時間を停滞させる事』これは無機物限定で有機生命体(植物なども含む)の時間は停滞させられない。 時間停滞中のモノは外部の影響を一切受けず、その影響は停滞解除後にまとめて発生する。 下級程度のラルヴァの時間は停滞させる事ができるが、メタトロンが全力で殴れば下級ラルヴァ程度は消し飛ぶので意味はない。 基本的な戦術はその巨大な拳を使用した格闘(ただしボディは頑丈ではないうえに重量バランスが悪い為に威力はあるが格闘能力も高いとは言い難い)。 また、モノの時間を停滞させ、その間に一方向に衝撃を加え蓄積し、停滞解除と同時に標的に凄まじいスピードでモノをぶつけるなどといった事もできるが、勿論この間隙だらけ。環境利用闘法なのでまわりに何もモノがなければこの能力は全くの無意味。 一度に止められるモノは3個まで。時間は1分が限度。 特長もあるが、弱点も多いという非常に『アンバランス』な永劫機。 詠唱呪文はイギリスの詩人、アルフレッド・テニスンの『いかにして、どうして』より 時に今日はなく 永劫には未来はなく 永遠には過去はない メタトロン 基本情報 名前 メタトロン 学年・クラス 永劫機 性別 女 年齢 ? 身長 140(精神世界では165) 体重 33 性格 ドS。高慢だが、人生経験が無い為にアドリブに弱く、実はヘタレ 生い立ち 作られた 基本口調・人称 ワタシ、二人称はアンタ 特記事項 永劫機 その他詳細な設定 天使の王の名を持つ永劫機メタトロンの制御を行う人造生命体。 白いゴシックファッションに天使のような小さい羽を背中に付けている。ポイントは胸に下げた大きなエメラルドをつけたペンダント。 髪は白、肌も真っ白で赤い瞳を持つ(アルビノのイメージ) 性格はひたすらにキツいドS。よく喋るしよく手足が出る。契約者に仕えるという意識がないどころか契約者は自分に仕えるものとすら考えている。だが人生経験の無さから押しやツッコミ、高圧的な態度、突発的なアクシデントに弱いというヘタレ属性を持っている。 いい加減で大雑把なところがある。 彼女が契約するのは『全ての時を喪失してでも叶えたい願いを持つ者』だけ。 ただし、その望みの善悪は問わない。強い願いを持つ者とのみ契約する。 彼女と契約したものは永劫機の召還に応じて時間を消費するが、それは契約者の外見には現れない。 全ての時間を消費すると契約者はいきなり消える。 契約の際の言葉「私が望むように、伴侶のように、召使のように、或いは奴隷のように仕えなさい」 登場作品 登場作品のリンクを貼ってください。後から追加もしていってください 作者のコメント 何か付け加えたいことや言いたいこと、キャラに対するこだわりがあればここに
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群像ウィスタリアシリーズ一覧へ 蜻蛉 -セイレイ- ラノで読む 表向きは国立の教育機関でありながら、ひとつの小国のような繁栄を治める双葉学園。端から見てもその規模・人口は、この学園の知名度を大きくしている要因の一つだった。学園がとある事情により設立されたという由来を知らなければ、「珍しく、特別な施設」という意味以外にも「異常なまでに統括された施設」と穿った意見を持つ者も現れるのも当然の成り行きだろう。それは国の特殊工作機関だとか、日本のエリア51、最終戦争に備えた究極機動ロボットを隠しているなど、住民たちからすれば苦笑いするような、当たらずとも遠からずといった様々な噂や曲解された伝説が巷には囁かれている。 唐橋《からはし》悠斗《ゆうと》の叔母もその噂の信奉者の一人だった。 信奉者というと狂信的な響きがするが、休日の朝から突然かかってきた電話では、御守りを買って送って欲しいと頼まれただけだ。双葉学園はその様相と秘匿性ゆえに「ミステリアス且つエリート学園」という妙なイメージだけが伝播してしまい、結果その敷地内にある学園島の人間しか訪ねることができない神社の存在が、都合よくメディアに担がれてしまった格好だ。なんでも叔母の観たワイドショーでは、風水術や占星術、果ては黒魔術の儀式を執り行って、学園創立の裏からその発展に寄与してきたとか何とか。 (今どきそんなオカルト要素ふんだんに扱った番組ってあるかよ……) ひとかたまりの乗客を吐き出し、身軽になった郊外バスが再び走りはじめた。窓の向こうに立ち並んだ学舎の風景が通りすぎると、紅や黄色に染め広げた樹木の一群が入れ替わりにぽつぽつと増えていく。 「次は~双葉神宮前。双葉神宮前ぇ~」 手馴れた感じの朗々とした声で車内放送が流れる。それが終わると、倉持《くらもち》祈《いのり》が小さな体を伸ばし、早押しクイズの要領ですぐさま停車ボタンを押した。 「危ないからちゃんと座ってろ」 通路を隔てて反対側の座席から、窓枠に肘掛ながら悠斗《ゆうと》が横目で見やって言った。祈は気分を害されたらしく、怒ったように口を尖らせる。 「子どもじゃないんだから。唐橋、いちいちうるさい」 「悪うございましたね、お嬢様」 悠斗は肩をすくませた。言葉のあとに「そういうのが子供なんだよ」と口に出さないぶんには大人だった。一回り歳の違う小学生を相手に、同じ調子で返すのは大人げない。 双葉神宮への道のりは、喫茶店〝ディマンシュ〟でウェイトレスとして働いているクラスメイトの森村マキナに教えてもらった。今日は珍しく客入りが多かったため店を手伝うということも考えたが、マキナにも仕事に対する意地があるらしくやんわりと断られた。ならばということで彼女が仕事に専念できるよう、祈を一緒に連れて行くことにしたのだった。 一 バスを降りてすぐに、前方に朱塗りの大鳥居が目に映った。その奥には、はじめの大鳥居を縮小した感じの鳥居が、本殿のある境内まで等直線に建ち並んでいた。正面から見るとどこにでもある神社の外観だったが、少し体を傾けると、数え切れないほどの緋色の柱が顔をのぞかせ、まるで自分が合わせ鏡の間に立っているような錯覚に陥りそうになる。 入口には白い石柱に彫り字で〝双葉神宮〟と書かれていた。悠斗はそこでふと立ち止まると、示し合わせたわけでもないのに傍らで祈も足を止めた。祈はちょこんと鼻先をあげて、小犬のように匂いを嗅ぎ始める。引きつけられるような甘い香りに気がついて辺りを見渡すと、ずらりと並んでいる鳥居の列から外れて金木犀《きんもくせい》がオレンジの小花を咲かせていた。 「金木犀か。久しぶりに見た気がする」 「キンモクセイ?」 「俺のいた街じゃ、そこらじゅうの家の庭に咲いてて綺麗だったんだ。知らないのか?」 祈はゆるゆると首を振る。「でも、甘くていい匂い」 「二、三日で花は枯れる。こんなところで見られるなんて俺たち案外ツイてるかもな」 いくつもの朱い鳥居をくぐり、石畳の参道を踏み越えていく。 閑散とした境内は思っていた以上に広く開かれ、それでありながら隅に自生しているもみじの樹の周りは落ち葉一枚なく掃き清められている。正面には大きな注連縄《しめなわ》が吊るされて賽銭箱を設けた本殿があり、隣接したところに目当ての御守りを売っている授与所があった。その授与所を右手に抜けた先に、悠斗がテレビでしか見たことのないような能舞台がひっそりと建っている。入口にあった金木犀の花の香りが風に乗って、周囲にもその残り香がわずかに感じられた。 授与所には薄い白髪頭の老人が詰めていた。おそらく宮司なのだろう。白衣に水色の袴を履き、二人に気づくと、テレビの音の漏れる奥座敷から現れて、笑い皺《しわ》をにじませながらにこにこと応対してくれた。 「この時期に参拝たあ、兄ちゃんたち信心深いね」 と、快活そうに話しかけてくれる。 「親戚に頼まれて、ここの御守りを買いに来たんです。なんでも護符を包《くる》んだここ謹製の御守りがすごいって聞いて。俺もここに来るの初めてだし、探検がてらですよ」 「ありゃ、そうかい。それでもせっかく来てくれたんだから本殿もお参りしていきなさい。夏を過ぎると参拝客もぱったりで、私らもどうしても暇になってね。何か願い事でもすれば、競争率も低くて神様も叶えてくれるかもしれないよ」 抽選でもあるまいし、悠斗は笑った。宮司はぺろりと頭を撫でると、悠斗の後ろに隠れていた祈に気づいた。 「そこのお嬢ちゃんは妹かい? 兄ちゃんと一緒にお使いで偉いね」 「いのりは唐橋が迷子にならないようについて来ただけ。妹なんかじゃ、ない」 ぼそっとそれだけ言って、また悠斗の後ろに下がる。笑っていた悠斗の顔が一瞬だけ固まった。 「あは、ははは……こいつ人見知りする子で。あの、それで、御守りあります?」 宮司はおみくじの棚の近くにあった引き出しに手をかけた。悠斗もつられて覗くが、中身は空だ。 「ありゃ、ここに仕舞ってたはずなんだけどなあ」宮司は首をひねり、申し訳なさそうに悠斗たちを見た。「すまんね、参拝する人も少なけりゃ御守りなんて買ってく学生も珍しいから、家に置いてきたみたいだ」 学生も滅多に買わない御守りにご利益はあるのだろうか。今さらながら、叔母の期待が徒労に終わりそうな予感がした。 「時間かかりそうです?」 「いいよいいよ。家はすぐ裏だから、待っていてくれればすぐ取ってこれるよ」 「それじゃ、俺たちはそのあいだ境内をゆっくり見て回ってますんで」 さきに授与所から出ようと背中を向けた宮司が、頭のなかで手を叩いたように急に振り返った。その老体にそぐわないきびきびとしたキレのある動きに、祈が悠斗の背後でひどく驚いていた。「そうだ、さきに本殿に参ってくるといい」宮司は誰もいない本殿のほうへ両手をメガホンのようにして声を張りあげた。「おーいミコト! お客さんだー!」 すぐ戻るよ、と言い置いて宮司はさっさと行ってしまった。取り残された悠斗と祈は、勧められたとおり本殿へ足を向けることにした。 二人はまず手水舎《ちょうずや》に入り、柄杓で手を洗い、看板の作法にならって口をすすぐ。こんこんと湧いてくる清水は水道水の比にならないほど冷えており、確かに雑念を払うには十分だった。 本殿へ進んでいくと、前を歩いていた祈がはじめにそれに気がついた。 「誰かいる」 言われて目を凝らすと、注連縄と賽銭箱の置かれた風景の奥に隠れて、幅の狭い赤い幕のようなものがのぞいた。近づくにつれて、それが誰かの足で、赤い袴であることが悠斗にも分かった。 雪のように光沢のある白い長髪が肩をなびく。それと対照的な漆黒の二つの瞳が、板間の上でふたりを見下ろして立っている。悠斗と同じかそれより下に見える外見と、白衣と緋袴を着こなす威容な様とが同居して、混成された神秘さが目の前の少女にはあった。 「拝礼と祈念を」 やはり少々幼さを残した声色だ。しかし、それでも相手の心を緊張させるだけの厳格さがある。 二拝二拍手一拝《にはいにはくしゅいっぱい》。手水舎で掲げられていた作法を思い出し、ぎこちない動きでぺこぺこと頭をさげる。祈はといえばさっさと賽銭を投げ入れると、声に出さないで呟きながら、小さな両手を合わせている。紙札を取り付けた御幣《ごへい》が擦れる音が聞こえ、祈へ、そして悠斗の頭へと軽く被せられた。 二 参拝を終えて再び境内を歩き授与所のほうへ顔を向けるが、宮司はまだ帰ってきていないようだった。 「しまった」 悠斗が突然ぽかんとした表情になり、それらを押し流すように大きくため息を吐いた。 「拝む作法のことばっかりに気がいって、肝心の願い事するの忘れてた……」 「唐橋、バカじゃないの」 祈が真顔で言う。 「うるせー。手順踏まずにお願いする不心得者に言われたかねえよ。俺はマニュアル人間なの、お前家電の取扱書とか読まないタイプだろ」 「でも、いのりはちゃんとお願いしたもん。唐橋みたいに忘れてないもん」 もっとも意見だ。わざわざ縁起を担いで「|二重のご縁《二十五円》」と、小銭を合わせて入れたのに。神様にケチをつけるつもりはなかったが、これじゃ投げ損だ。口にするつもりもないのに、ぼやきが漏れた。 「今のうちにもう一度行ってくるかな……」 「誠に残念ですが、本日の営業は終了致しました」 振り返ると、さっきの巫女少女が立っていた。本殿にいたときのような、近寄り難い雰囲気はまるで感じない。その理由はすぐにわかった。あのときは髪をストレートに流していたが、これが普段の髪型なのだろう――長髪をアップぎみに二つに分けたツーテールでまとめていて、それが彼女の印象を親近感のあるものにがらりと変えている。 「たまの休日に本業の仕事を勤めあげたと思ったら、とんだ祓い損ですよ」 「こっちは賽銭の投げ損だ」 「25円で?」 ばっちり見られていたらしい。少女が見透かすように見つめ、祈に「25円」と小声で復唱されて悠斗は耐えられず顔をそむけた。 「お、俺がいくら出そうがあんたに関係ないだろ」 「あんたじゃなくて、神那岐《かんなぎ》観古都《みこと》」それから、と付け足して言う。「礼儀深いのは結構ですけど、欲深いと元も子もないですよ。唐橋さん」 たしなめつつ、悠斗と祈を交互に見やって、神那岐は続けた。 「でもまぁ、あなたも日頃の行いが良いと見えます。隣の女の子もね。二人とも運がいいですよ。……少し歩きましょうか、ついてきて」 神那岐は境内のちょうど全景が見渡すことができる真ん中あたりまでやってくると、悠斗たちへ振り向いた。褪せない常緑樹と時節とともに移り変わった濃淡な赤や黄の枝葉が、お互いに過度の領分を覆わずひしめき合っている。声をかけようと悠斗が口を開きかけ、それを神那岐が人差し指を唇の前に置くことで制す。 「8、7、6……」漂うなにかを探るように神那岐は眼を閉じる。 「振り返って、空を見上げて、2、1」 瞬間、周囲の木立が音もなく揺らいだ。風の絶えた境内に、無数の木の葉が吹き上がっていくように見えた。だが、それらは足元に落ちることはなく不規則な軌道で宙を漂っている。 「トンボ?」 透けた模様の入った銀の翅《はね》に、赤長い胴と茶けた複眼。縦に長い十字のシルエットが、頭上を群れをなして飛んでいる。 「フタバアカネ」 悠斗の疑問に祈が答えた。 「なんだそりゃ。アカトンボと同じじゃないのか?」 「小さな昆虫を捕食する従来の蜻蛉《トンボ》種と違って、フタバアカネは私たちから溢れている魂源力《アツイルト》を糧にして生きているんです」 神那岐が注釈するが、そう言われても悠斗にはやはりただのアカトンボにしか見えない。いったいどこが違うのだろうか。 神那岐は自身の髪の色にも劣らない白い手を、悠斗の前にゆっくりと差し伸ばした。悠斗はそれが握手の意味なのかちょっとだけ考えたが、やがて少しして三人の周囲を間近に飛んでいたフタバアカネの一匹が、蜜を求める蝶のように、その雪のような神那岐の手のひらにとまった。それまでばたつかせていた四枚の翅がハの字に沈み、静かに頭《こうべ》を垂れた。 隣へ視線を下げると、祈の頭の上にも一匹フタバアカネが翅を休めている。祈は気がついていないのか、悠斗の顔を不思議そうに見返している。 「こうして魂源力のある者の近くへ寄ったり、周囲を飛び回ることで少しずつ吸い取っていくラルヴァなんです」 「ラルヴァって――」 その言葉にはっとして、祈の頭上にとまっていたフタバアカネを払いのけようとすると、神那岐が微笑した。 「言葉足らずでしたね」 静止しているフタバアカネを驚かさないように、ほころばせた口もとを袖で隠しながら言う。 「『吸い取る』といっても、生物から漏れ出す少量のごくごく僅かな魂源力を摂取するだけで人体になんら影響はありませんよ。鬼神蜻蛉《キシンヤンマ》って知ってます? あっちは敵性のある危険種ですけど、フタバアカネは等級も無害なC-0エレメント体。肉体を持たない彼らは払うこともできなければ、触れることも叶いません」 そう言って神那岐は手のひらに乗ったままのフタバアカネを、眉一つ動かさずまるで紙でも丸めるように握りしめた。悠斗は乾いた音か悲鳴が頭のなかをよぎって身構えたが、神那岐は顔色も変えずに、力をこめていた右手をふっと緩めた。ゆっくり開かれた手のなかには、変わらない姿のフタバアカネがいた。 「エレメントラルヴァは初めて?」 その反応がおかしかったのだろう。手首をしならせてフタバアカネを宙に追いやると、神那岐は訊いた。 「夏の講習で資料は見たが、実物――というか実際に目にするのは初めてだ」 さっきの神那岐を真似て空に指を揚げてみる。しかし、いつまで経ってもフタバアカネは降りてくる気配はない。祈には何匹ものフタバアカネが髪飾りみたく張り付き、はじめは楽しげだった彼女の表情は少し困ったように眉を寄せている。振り払ったりしないのは、フタバアカネがエレメントでそうすることが無駄だと知っているからだろう。 「唐橋、フタバアカネに嫌われてる」 「たぶん俺の異能力のせいだ」 諦めて手を下ろすと、悠斗はそう結論づけた。 「へえ、ちなみにどんな能力なんです?」 「唐橋が臭いの」 「お前はまた……そういう言い方したら勘違いされるだろ。って何ちょっと後ずさりしてんだよ、鼻つまむなよ!」 「あははは、これは軽い冗談ですって。巫女ジョーク」 「鼻声でそう言われてもまるで説得力がないんだけどな。あと顔が笑ってないのは明らかに素だろ」 それでも、この状況には慣れた感じがする。「|匂いつき《ステインカー》」と言うと、相手のリアクションはほとんどが顔をしかめたり首を傾げたりするのだ。変身能力のように役割が明確なものや、物質操作のように派手で力の用途がはっきりしたものと違い、一言でそれを表すことができない。一見複雑に見えて、それでいて蓋を開ければつまらないガラクタ。興味を示す学者もいたが、能力の在り方を知れば三日と経たずに飽きられた。戦闘にも支援にも使えないため、対ラルヴァ科目の模擬演習には人数の数合わせの時くらいにしか召集されず、たとえ参加してもほとんどが雑用だ。体力は人並みか少し上くらいには持ってはいるが、最大のアドバンテージといえる異能力の伸び白が皆無であれば、それは一般人とちっとも変わらない。 「ラルヴァに嫌われる異能力って、ホントにつまらない能力だよな」 自分の異能力について簡単な説明を済ませ、最後は自嘲気味に付け加えて言った。そのあいだ神那岐はふんふんと真面目なのか適当なのか判らない相槌を打ちながらも、口を挟まず聞いてくれた。 神那岐は祈の前に立って、彼女の頭上を低空して旋回するフタバアカネを右手でひらひらと扇いだ。時おりその手をすり抜けながらも、変わらずフタバアカネは悠々と宙を泳ぎ続ける。 「エレメント種というのは、そのほとんどが実体を持っていないんですよね。そのことは彼らも自覚していて、だからこうして私たちが干渉しようとしても、そ知らぬ顔でいられるんでしょう」 唐突に語り始めた神那岐はそこでいったん区切ると、悠斗の右手を掴んだ。呆気にとられた悠斗が振りほどこうとする間もなく、その手がぽんと祈の頭に置かれた。それだけで、祈にまとわりついていたフタバアカネが散り散りになっていく。ほらね、と神那岐が納得させるように言うころには、すでに彼女の手は悠斗から離れている。 「異能、役に立つじゃないですか」 「こんなんでか?」 苦笑いを堪えつつ、悠斗が二の句を告げるより先に神那岐は答えた。 「成果の規模が問題じゃないですよ。私にできないことがあなたにはできる。それは唐橋さんにしかできない力でしょう? それで十分じゃないですか」 悠斗は吐き出すべき言葉を見失って、目の前の巫女を見据えた。赤点で居残りして帰れないでいる生徒を諭す教師のようで、冗談みたいに幼い少女の言葉は慈愛を含んでいる。 「求める答えの視野が狭いんですよ。その力が役に立たない、なんて客観的な評価はいいんです。『何かの為に力を使うことができた』その事実は、それが有用か不用かなんて問答を小競り合いさせる理由にはならないはずです」 ふっと笑い、やがて歌うように言った。「あなた自身がそれを認めないと、認識を改める人は誰もいませんよ」 フタバアカネたちが飛び交う。銀と茜の精霊が軌跡を曳《ひ》きずって、神那岐を中心として天体のように回っている。 どのくらいそのままだったのだろう。目下でうんうんと唸る声が聞こえた。 「手、早くどけて」 「ああ、すまん」 祈からぱっと手をどけると、ようやく帰ってきた宮司が声を張って悠斗たちを呼んでいた。 三 悠斗は〝ディマンシュ〟の隅っこのボックス席にどかっと腰を下ろし、今日の戦利品である御守りと茶菓子の代わりに買った双葉饅頭を取り出す。軽く店内を見渡すと、夕日が悠斗の近くまで差し込みオレンジの斜線が店内を照らし、悠斗以外の客はいない。午後の賑やかさはすでに過ぎ去り、いつもの贅沢な静寂が祈のピアノの音とともに流れている。 「あいつは元気だな」 「子供は遊ぶのが仕事ですからね」 テーブルに自分と悠斗の湯のみを運び、マキナはごく自然な感じで向かい側の椅子に腰を降ろした。 「ん、日本茶?」 「お茶うけにはコーヒーよりこっちのほうが美味しくいただけますよ。これは売り物じゃなくて、休憩室にある既製品のお茶ですけど」 「お茶うけって、これのことか?」 悠斗は双葉饅頭を指差すと、マキナは小さく肩をすくめて笑った。 「バレちゃいましたか」 もともとここで開けようと思っていたから別に構わないのだが、アテにされるほど味の保証はできなかった。御守りを購入したときに、神那岐と宮司に言い寄られて抱き合わせで買わされたのだ。曰《いわ》くまだ在庫が多いらしく、近く学園のほうでも販売するつもりだと言っていた。 「でもこれ、賞味期限年末までみたいですよ」 きれいに剥がした包装紙の裏面を見てマキナが言う。目をしばたかせているが、それがどういう理屈で見えているのかは未だに分からない。 彼女の異能力は有用なものだろうか。いや、視覚の補助を担うくらいだから相当なものだろう。少なくとも、彼女自身の為には役に立っているのだから。 「わたしの顔に何かついてます?」 視線に気づいたのか、見られていると分かったのか、小首をかしげてマキナが訊いてくる。 「な、なんでもない! そんな短期間に学園で土産物を売りさばくにしても、学生に需要なんかあるかなと思ってさ……あ」 そうか、文化祭か。 「今月は文化祭でしたね。唐橋さんが聞いた在庫の数が結構なものなら、どこかの催し物で使うのかも」 ほとんど同じタイミングでマキナもその結論に達し、なぜか悠斗は少しだけ嬉しくなった。 「だろうな。そういえば、俺たちのクラスって文化祭で何するつもりなんだ」 「実行委員の子と話したんですけど、うちのクラスは感応能力者《トランサー》や分析能力者《アナライザー》が数人いますから、大学部に機材を借りて異能と科学を使った『占い屋』をやるんだとか」 悠斗とマキナのいる2年F組はいわゆる「文化祭は遊びたいから、抜け出しやすい催し物なら何でも良い」という生徒の弁が大半で、とりあえずどこかのクラスの没案を拾ってしまおうと、各々で八方に手を尽くし自堕落この上ない活動に精を出していた。なので、明日にでもその決定案がクラス全員に伝えられる予定になっており、悠斗はまだ知らなかった。 「占いかぁ、出し物としては無難なところだろうな」 C組は早々にメイド喫茶と決まったのは聞いていたので、執事喫茶の一抹の可能性を憂いていたがどうやら取り越し苦労だったようだ。 「占いと一口に言っても、未来予知のできる人もいますからね。『占い屋』は表向きの看板で、人相学を口実に細胞測定器を使った肌《スキン》チェックみたいなものをするらしいですよ」 「俺はラクなやつなら何でもいいし、ただ美容が絡むと女が怖いな……」 双葉饅頭をつまみ、しみじみとした顔で渋い日本茶を啜《すす》る。饅頭は一口サイズで中身も普通のこし餡だ。これも無難だ。その姿を見て、マキナは表情を和らげて言った。 「ふふっ、唐橋さんまるでお爺さんみたいですね」 「老人《ロートル》はただ幸せに生きたいだけよ、ホント――っと忘れるところだった。森村、ちょっと手を出してみてくれ」 悠斗はポケットから懐紙《かいし》に包まれた御守り袋一つを取り、おずおずとした感じで差し出してきたマキナの手のひらに落とした。 「これは? もしかして御守りですか」 「おまけで貰ったんだ。駄菓子屋じゃないってのに、好きなの選んでいいって言われてさ。祈のぶんもある」 「ありがとうございます」 「元がタダだからあんまり気にしないでいいからな。それじゃ、もう帰るわ」 明るい声で感謝を述べられ、悠斗は胸が躍った。出口から吹き抜けの二階を見上げたが、まだ祈の演奏は続いている。 (俺も叔父さんになるのかぁ) 細い道を抜けて、アーケードに辿り着く。 叔母のお腹の子は来春には生まれるらしい。叔母、といってもまだ20代半ばの会社員で、出産を終えたらすぐにでも職場復帰すると電話越しに意気込んでいた。 ポケットからマキナに渡したものと同じ懐紙に包まれた御守りを手に取る。 「一生わかんねえけど、生まれてくる子を待つ親ってのはなんにでもすがりたくなるもんなのかな」 人通りの絶えた夕暮れの街並みに気が緩み、自然と呟きが漏れる。御守りを顔の前にかざしてみる。夕日の混ざったその白い御守り袋は健康祈願。 「え」 ◆ 赤い御守り袋。自身の目で見てみたかったが、色がぼんやりと判別できるだけで文字は読むことができない。 マキナは向かいに座っていた少年を瞼の裏に浮かべ、深々と呼吸した。 おおよそ健康祈願か学業成就のどちらかだと予想はついていたが、そうだとしても彼はわたしのことを思って選んでくれたのだ。その御守りに込められた気持ちを指でなぞり、今度こそ力を使って眺める。 「……あ、安産祈願?」 ガタン!! とその瞬間マキナの声を遮るように、喫茶ディマンシュの扉が少年の叫びとともに盛大な音を立てて開け放たれた。 -了- トップに戻る 作品投稿場所に戻る
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園内にひときわ目立つ、エキゾチックな鐘楼。澄み渡った青空に、じっくりと鐘の音を響かせる。春の冷たい空気を味わいながら、遠藤雅は大学構内に足を踏み入れた。四月未明。もう少ししたら、双葉大学の入学式が執り行われる。 大学の校舎や研究塔は、さすが2000年代創立の学園だけあり、どれもガラス張りで綺麗なものである。よく磨かれた青い窓ガラスが午前の陽を反射させ、まるで建物に青空がそっくり映し出されているかのようであった。 島は東京湾の埋立地なので、ときおり海辺からの冷たい風が吹く。台場や豊洲、夢の国が近辺にある湾岸一帯だ。南の青空に、羽田へ下りる航空機を見た。 雅は校舎一号館の前で立ち止まった。一階には食堂、購買、コピースペースなどがあり、二階から先は大小さまざまな規模の教室があるという。雅がオープンキャンパスに足を運んだ、典型的な私立大学とまるで大差ない。 周りの新入生も、みんな服や鞄や髪型が、お洒落でかわいくて。 ごくごく普通のキャンパス・ライフが、これから自分を待ち受けているようにしか思えなかった。 だが、そんな呑気な展望もすぐに打ち砕かれた。 爆音。 さっき見かけた航空機が近くで墜落したのかとさえ雅は思った。 慌てふためいて周りを見る。焦って口をぱくぱくさせているのは雅だけであり、他の新入生たちは目つきを鋭くし、まずは自分たちの安全を確認していた。それと同時に、構内にサイレンがうなりだす。 「ラルヴァだと?」 「嘘でしょ? どうしてこんな時期に、それも学園に!」 「大変だ! 大講堂が、複数の上級ラルヴァに強襲されてるそうだ!」 男子学生がモバイル学生証を片手に、そう声を荒げた。それを見て雅も思い出したように、自分のモバイル学生証を開く。 普段、壁紙時計を表示しているモバイル学生証は、強制的にレーダーに切り替わっていた。双葉学園・大講堂に、三つ、四つ・・・・・・、いや、十以上も確認できる「赤い丸印」。そして瞬時に情報は更新された。「カテゴリーB」と、いくつかの赤丸にはそう英字で表示されている。 「上級がこんなにも? どういうこと? マズいじゃないの!」 「おい、大講堂って今、高等部の入学式やってんじゃねーのか?」 「よりにもよってそんなときを狙ってくるとはね」 「クソ! 外道どもめ・・・・・・!」 それまで桜並木に囲まれ、浮かれた大学生の顔をしていた彼らは、誰もが険しい顔つきをして握りこぶしを震わせていた。茶髪にキャミソールワンピースの女子大生がロケット砲を構え、ちゃらちゃらと笑っていた男子学生が怒りに震え、眉間に青白い血管を浮かび上がらせながら、髪を逆立てている。 これが、異能力者の学生か・・・・・・。 雅は敵の攻撃よりも、その光景に圧倒されていた。 双葉大学の入学式までにはまだ時間がある。彼らはそれまで通っていた学び舎と、後輩たちを襲ったラルヴァを絶対に許すわけにはいかないだろう。みんな、討伐のため現場に向かった。そんな彼らを、雅は一人立ち尽くしながら眺めていた。 その後、教師たちや有能な新入生、そして後から駆けつけた高等部在校生や、大学生たちによって、犠牲者を出すことなくラルヴァを全滅させることができたという。約一名、保健室に担ぎ込まれたらしいが。 入学式の騒動は鎮圧された。 歴史学科。 それが、雅の行くことになった学科だ。実家に届いた合格通知にそう記されていた。 「歴史って、普通にあの日本史・世界史をやればいいのか・・・・・・?」 雅はどうして自分が歴史学科なのかがわからない。高校時代の成績を振りかえり、肩を落とす。彼はせいぜい、鎌倉幕府が鎌倉にあることぐらいしかわからなかった。 一号館の小教室で、歴史学科のガイダンスは始まる。教室に入ると受付のみが設けてあって、数名の教員が座っていた。その中の一人に近づくと、学生証を出すよう指示された。 携帯電話ほどの大きさであるモバイル学生証は、トレー式のリーダーに置かれると、ピピっと電子音を出して白く点滅した。 「はい。これであなたの学生証に、今年一年の行事予定と、授業シラバスがインストールされました。以降はその学生証から、授業の履修登録をしてください。ガイダンスは以上です。帰宅してかまいません」 なんとまあ、先進的な学校である。田舎者の雅は愕然としていた。 ラルヴァの襲撃があった大講堂で、双葉大学の入学式は始まった。 本来、ガイダンスよりも先に行われる順序だったのだが、先ほどのアクシデントで急遽変更となった。予定よりもかなり遅い時間に、入学式は始まった。 応急処置でふさがれた天井の穴や、壁や床についた傷が生々しい。これで明日に中等部と小等部の入学式があるというのだから、可哀相だ。 「そんなことないよ遠藤くん。一晩もあれば学園の設備管理課が直してくれるよ」 「そんなの可能なのかい・・・・・・?」 「うん。彼らだって成人したとはいえ、この大学出身の異能者さ。一般人よりもずっと仕事は早いはずだ」 そう、メガネをかけた男子学生は言った。 与田光一。食堂で昼食をとっていたときに知り合った男だ。 きっかけは同じテーブルで、隣に座っていて、同じ「双葉学園カレーセット(大盛り・サラダ付)」を食べていて、目と目が合ったから。「学園で見ない顔だね。今年からこの島に来たの?」と声をかけられ、そこから話が進んでいった。 雅はこういう存在を待ち焦がれていた。気軽に話のできる友人ができるのは、とてもいいことだ。田舎の友達と別れ、一人上京してきて少し寂しかったのは言うまでもない。 それに、まだまだ彼にはわからないことが多すぎる。この島のこと、学園のこと、異能者のこと、ラルヴァのこと。そんな自分が、こうして気軽に頼ることのできる友達ができたのは、大きな収穫であった。雅はそう思っていた。 何故だか脳内で「この私を差し置いてどういうことよこの浮気者!」とどこかの女の子に怒鳴れた気がしたが、潔く忘れることにした。 アクシデントが重なったためか、なかなか入学式は始まらない。暇だったので、雅はしばらく与田と会話をしていた。 「遠藤くんは『スカウト』生なのかあ。いやあ、スカウトなんて都市伝説と思ってたよ。みんな小等部からか、せいぜい高等部から一般受験をしてこの学園にやってくるからね」と、与田はにこにこ言う。「テストも実技もなしに裏口入学。君はそんなにすごいやつなのか」 「いや、すごいとかすごくないとか、全然わからない。自分がどういう能力を持っているのかすら、よくわかってないんだ」 「そうなの? だいたいの異能者は、もう中学の頃には自分の能力に自覚を持つはずなんだけど」 「そんなことはなかったぞ? まあ、思い当たる節々もないことはない」 「君の能力は何なの?」 雅は少し躊躇してから、自分の能力を与田に教えた。こんな非科学的で、非常識なことを人に言うのは生まれて始めてだった。口に出すのは恥ずかしかった。 「治癒能力・・・・・・。何でも、人の怪我とか治しちゃうらしい」 「何だって?」与田の目つきが真剣なものに変わる。「怪我を治すっていうと、治癒(ヒール)能力のことか?」 「うん、俺もそんなものが使える人間だとは思ってもみなかった。でも、思い返してみれば心当たりがいっぱいある。例えば、木から落ちて骨折した友達の腕がいつの間にか治ってたり、踏み潰されて粉々になった妹の人形が直ったり。俺が手を触れただけで、なぜか怪我も物も治ってしまうことが度々あったんだ」 「人間だけでなく、物質まで応用できるのか。ますますそれはすごい能力だよ、遠藤くん・・・・・・!」 と、与田は興奮して言う。感嘆の目を向けられて、雅は反応に困ってしまう。与田はなおも、興奮してこうまくしたてた。 「治癒なんて反則的なスキルを使える異能力者なんて、めったにいない。それは世界規模での話だよ。統計が無いから鵜呑みにしちゃいけないかもだけど、治癒能力者は十年に一人出るか出ないかとまで言われているんだ。いや、もしかしたら百年に一度、かもしれないね」 「うーん。そうは言ってもなあ・・・・・・。自分自身が、そういう異能力や治癒とか、全然わかってないんだ。実際、使い方だってまったくわからないんだぜ?」 そう言いながら、雅はラルヴァとの戦闘で傷ついた床に手を触れる。 足元には抉られたような傷が走っていた。そこに手のひらを置き、元通りになるよう念じてはみるのだが、手ごたえは感じられない。むなしさだけが感じられた。「ほら、この通り」と、何も変らない床面を与田に見せ、苦笑する。 「そりゃもったいない」と、与田は言った。「ずっと一般人として暮らしてきたのだから仕方ないんだろうけど、それは僕ら異能者にとって実にもったいない話だ。遠藤くんは治癒を使いこなせるようになるべきだよ」 そう、目を輝かせて雅に言った。 それから二ヶ月が経過した。 大学生活もだいぶ慣れた。朝起きると、なぜか立浪みくが朝食を作っていて、雅はそれを食べる。そして一緒に登校する。「今日は遊んでないで早く帰ってきなさいよ!」と怒られる。 大学では「異能歴史学」を専攻している。異能の発祥、進化、分派、対立、戦争。それらは高校で習ってきた社会科の歴史よりも、よほど面白かった。 雅はふだん与田と共に行動していた。時たま、与田に「治癒を見せてほしい」とせがまれることもあったが、やはり雅は能力を使うことができなかった。身体障害を与えられた実験用マウスや、足のもがれた昆虫、壊れたテレビなど、与田の用意してきた対象を何一つ治すことはできなかった。 黒猫を助けたときや、みくを治したときの感覚を思い出そうと試みるのだが、結局、壊れたものは壊れたままであり、ネズミはずっと手のひらの中で苦しそうにもがいていた。 与田は理系畑の人間であった。絶対に雅の「治癒」をこの目で見てやると、あらゆる実験体を用意してきた。ラルヴァとの戦闘で大腿骨を折った男子高校生を目の前に運び込まれた日には、どうしたものかと頭を抱えてしまった。 「治らねーじゃねーかよ! いてえ、ちょーいてえ!」 この男子学生は保健室に運びこまれ、適切な治療がされたという。 「能力を自覚し、自由に使役するには訓練がいる。そういうタイプだっているんだ。あんなことを言った高校生の男の子だって、最初は苦労したはずだよ。遅咲きの人間ならなおさらさ。ま、始まりってものはいつだってこういうもんだよ遠藤くん」 そう、与田は雅を励ましてくれた。 雅はというと、実はさほど自分の能力に興味を持っていなかった。だから、どうでもよかった。黒猫を救ったことは誇りに思っているが、あれこれ訓練をしてまで能力を引き出そうという気にはならない たとえ「治癒」が自在に使えたとして、それがどう、ラルヴァとの戦闘に貢献できるのだろう。日常生活の助けになるのだろう。 彼は自分を過小評価していた。 昼休み、雅は散歩もかねて学園内を散策していた。 昼休みは一人になる時間である。与田はこのごろ研究室にこもりがちなため、一人で食堂に行って昼食をとったり、購買でパンを買って外で食べたりしていた。 今日は梅雨時に訪れた久々の晴天であった。雲の切れ目から覗く晴れ間に誘われて、雅はジャムパンを片手に表に出た。 いくつもある研究塔の脇を抜け、大学のエリアから出る。アスファルトは黒く湿っており、水溜りから青空が覗いていた。やがて目の前に空き地が広がった。隣にはクラブ塔が並んでいる。グローブをはめてキャッチボールをするにはいい場所だが、連日の雨で土はぬかるんでおり、誰も居なかった。 適当に腰掛けると、猫の鳴き声がいくつも近づいてきた。初め、飼い猫のアイが抜け出したのかと思った。ジャムパンを半分食べた頃には、いつのまにか足元にわらわらと、猫の群れがたむろしている。ブチ猫が雅の顔を見上げていた。 「ほんと、猫をよく見る島だねえここは」 「ああ。悪くないだろう? かわいい猫たちに囲まれて暮らす生活も」 雅がブチ猫に話しかけると、変わりに右隣から返事が来た。 見ると、長い黒髪の美少女が隣に腰掛けている。剣を二本傍らに置き、三毛猫を持ち上げていた。凛とした顔つきだが、表情はほこほこと緩んでいた。 「うん、悪くはないね。どちらかというと俺は猫のほうが好きだしね。猫は勝手なときに甘えてくれて、勝手なときに勝手なことしてくれる」 「ほほう、気が合うじゃないか。キミの言う通りだ。猫はいいものだ」 雅はひとけのない空き地で、初対面の女の子と会話を始めていた。彼女は高等部の子だろうか。一人でこんな場所で何をしているのだろうか。しかし、細かいことをあれこれ考えたくなくなるぐらい、陽射しはぽかぽかと暖かくて、つい気が緩んでしまう。 「まったくだよ。家で黒猫を飼っているけど、これがけっこうかわいい子でね」 「何?」 彼女は鋭い視線を雅に向けた。「詳しい話を聞こうか」 「ええと、ひょんなことから出会って、部屋に連れてきて、それ以来ずっと一緒。まあ色々あって、とっても好かれてるんだ。何もしてなくても膝の上に乗っかってきたり、足元でごろごろと、遊んで光線を向けてきたりするぐらい」 ごくりと、雅の話を聞きながら黒髪の美少女は唾を飲み込んだ。 「とても人懐っこいんだな。できることなら私もその子を見てみたいものだ・・・・・・!」 「おまけにどうしてか猫娘まで部屋に居ついている始末。もう少し大人しくて、口うるさくなかったら、こいつもまあまあかわいいのになあ」 「なん・・・・・・だと・・・・・・?」と、黒髪の少女は目を大きく開き、小刻みに震えだす。 「なんでも猫の力を使って戦うとかどうとか。小等部の子で、毎朝エプロン着て小さなお尻をぷりぷり向けながらにゃんにゃん鼻歌交じりに朝飯作ってくれるぞ」 「やん、かわいい」 真面目そうな少女の口から熱っぽい言葉が飛び出した。よほど猫が好きなんだなと雅は感じた。 「ま、寝坊しつつおいしい朝飯が食えるのはありがたいからね。何も文句は言えないし、あいつの好きなようにやらせてるというわけだ」 「こ、これは猫参りの巡回ルートを再考する必要があるかもしれないな。・・・・・・いや、誤解しないでほしい。これはお前が小等部のいたいけな子に何か悪さをしているのではないかと、風紀委員として懸念しているだけのことだ。黒猫、猫娘、はあー・・・・・・」 紅潮した頬に両手を当て、ため息をついている女の子をよそに、雅はモバイル手帳の時計を見る。そろそろ午後の講義が始まる時間だ。 「そろそろ俺は大学に戻るよ。雑談の相手ありがとうね」 「なんだ、キミは大学生だったのか。年上じゃないか。てっきり同年代だと思ってたぞ」 「ふん、どうせ身長165センチのチビですよ」 「いや、その、年下が馴れ馴れしく話しかけて悪かった」 「気にしないでいいよ。まだまだ友達も少なくて暇してたとこだった。じゃ、もう行くね」 「またどこかで会おう。ああそうだ、大学一年生なら、ぜひともあの問題児にこう言っておいてくれないか?」 「あの問題児?」 「『あまりハダカになって風紀を乱すな!』とな。あいつにはいつも手を焼いているんだ」 その翌日も、雅は空き地にやってきた。透明のビニール傘から雨水が間断なく滴り落ちる。空き地は灰色のもやが充満し、大きな水溜りがいくつもできていた。 関東甲信越が梅雨入りしてから、もうだいぶたった。昨日は梅雨の中休みであったが、残念なことに続かなかった。 「やっぱ、誰もいないか」 こう雨がしとしと降っていては、猫たちも、あの女の子も現れないだろう。 きびすを返して、大学に戻ろうとしたときだった。 「にゃー」 足元の白いトラ猫と目が合った。顔は丸くて、体毛は真っ白。大きな鈴を首にぶらさげ、しっぽには赤いリボンが付けられている。 誰かの飼い猫だろうか。その珍しい模様と丸顔に目が引かれた。 「変わった顔してるなお前。この島に来てからもう腐るほど猫を見てきたけど、お前のようなマヌケ顔の猫は初めてだ」 「にゃー?」 ふと、何かデジャヴのようなものを雅は感じる。 (こいつ、どこかで見たような気が・・・・・・?) そのとき、降りしきる雨音のなか、足音が近づいてきた。ぬかるんだ土を踏みしめる音。振り返ると、淡いピンク色の傘がそこにあった。 「まったく。白虎、勝手に出てはいかんとあれほど言っただろう。体が濡れると風邪引いてしまうのだぞ」 女の子の声だった。みくと同じぐらい、幼いものだ。 そして、傘に隠れていた素顔があらわになったとき、雅は言葉を失う。衝撃のあまり雨音が聞こえなくなる。 この学園に入学して早二ヶ月。外部から来た雅とはいえ、彼女の名前を知らないわけがない。 藤神門御鈴。 十三歳にして、醒徒会の、学園のトップ――。 最初に戻る 【双葉学園の大学生活 ~遠藤雅の場合~】 作品(未完結) 第一話 第二話 第三話 第四話 第五話 第六話 登場人物 遠藤雅 立浪みく 与田光一 西院茜燦 逢洲等華 藤神門御鈴 水分理緒 エヌR・ルール 早瀬速人 登場ラルヴァ カラス 関連項目 双葉学園 LINK トップページ 作品保管庫 登場キャラクター NPCキャラクター 今まで確認されたラルヴァ
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410 :影響を受ける人:2014/05/16(金) 23 53 05 いないみたいだな・・・投稿しよう。 以前作った魔改造ルーデルネタと、 スレにて出ていたベネットネタ。 アイマスは良く知らないが、噂の双葉杏をウィッチにしてみました。 某所某日。 ある部隊が入っている建物を目指して歩く一人の少女がいた。 服装は扶桑国の様であるが・・・なんというか、ものすごくだらしなく見える。 「なんでアッシが、こんな辺鄙ところに・・・」 彼女の名前は 双葉杏 年齢■■歳「秘密だ。」 使い魔:日本ウサギ。 元々怠け者だった彼女は、両親に「根性を鍛えて貰え!」と言われ、強制的に導術士学校に入学させられた。 なまじウィッチの要素があったのが運の尽きと言えよう。 文句を言いつつも、一応それなり成績を残したのは微妙に人が良から。 最も、サボり癖は全く治らず。むしろ巧妙になってしまい、担任も困り果ててしまった。 しかし諦めきれない両親はそのまま軍隊に入れる。 「ヘタレた性根を叩き直せ!」と言う有り難いお言葉つきで。 最もそれで治れば苦労はしない。 軍生活は厳しく、なかなかサボれなかったのだが・・・慣れてくると何かしら理由をつけて避ける様になってしまった。 イメージはゲ○トの伊丹耀〇のような感じである。 変に実力があるので軍でも困ってしまったが、「厳しい所に派遣してしまえ。」と言う声に派遣が決定してしまった。 「畜生・・・隊長の賭けに乗るんじゃなかった。」 ブツブツ言いながら建物にたどり着くと、溜息を一つして顔をキリリと整える。 とても先ほどまでだらしなく歩いていた人物だとは思えない。 普段からこうだといいのに。「やかましい!」 外見を『私出来ます』と言う風に見繕い、建物内に入る。 中は意外と静かで・・・ 「爆弾の資料はどこ?」 「それならあっち。それより弾薬の勘定が合わないけどどうしよう・・・」 「隊長のせいでしょ。また「分割してくれ」って言うと思うから誤魔化しておいて。」 「その隊長はどこだ!!」 「副隊長、つい先ほど、友軍から援護要請があって、飛んで行ってしまいました。」 「その報告がなぜ私に来ない!」 「え? だって、他のストライカー整備中で飛べませんよ?」 「報告くらい寄越せ!!」 「副隊長・・・前回の敵撃破数少なくしないと、皆エースになっちゃやいます。」 「・・・削れ。」 訂正、意外とにぎやかだ。 遣り取りを聞いていた杏はもう帰りたかった。 「めんどくさい、非常に・・・めんどくさい。」 ブツブツ文句を言いながら崩れてしまった顔を整え、話し声が聞こえた扉の前に立った。 そして軽くノック。 すると中の喧騒が消えて静寂がやってきた。 「失礼します・・・」 そろ~りと入ると、中にいた人の視線が集まっていた。 すこし怖気付くが、なけなしの勇気を出してはいる。 「本日付で配属となりました。扶桑国出身 双葉杏です。よろしくお願いします!」 「えっと・・・貴方が。話は聞いていたわ。ようこそ我が隊へ・・・ あいにく隊長はいないけど。」 副隊長らしき人物が握手を求めてきたので、こちらも手を差し出す。 「よろしくお願いします。」(早くサボって帰ろう。) 「ええ、よろしく。」(よしきた!帰さないわよ!!) 内心まったく違う事を考える二人。 とりあえずソファーに座っていろいろ説明を受ける。 基本的にこの部隊は地上攻撃を主体としているが、もちろんそれだけではやっていけない。 乱戦となれば自分達で防御するしかない。 その護衛の一人として呼ばれた・・・という事らしい。 411 :影響を受ける人:2014/05/16(金) 23 53 40 (うわぁ・・・予想以上に厳しそう。アッシには無理だね。) そんなことを考えていると、出入口の扉が開いた。 視線を向けると顔に傷がある女性が、ずかずかと入ってくる。 「副隊長、帰った。」 「お帰りなさい。それで戦果は?」 「うむ。大型4、中型13、小型56程だな。最近は私が戦場に出ると敵が逃げるので困る。」 (*1))) 「戦果が多すぎるから「また分割ですね。わかります。」よろしく頼むぞ。」 副隊長の肩を軽く叩いていく。 信頼してくれるのは嬉しいが、正直自重してほしいと思う。 スカーフェイスの女性、ハンナ・U・ルーデルは、扶桑国の軍服を着た少女を見て首をかしげた。 「だれだ?」 「・・・昨日お渡しした増援のウィッチです。」 杏は印象だけは良くしようと立ち上がり敬礼する。 「本日付で配属となりました。扶桑国出身 双葉杏です。よろしくお願いします!」 元気良く言ったが、内心は関わりたくないという思いでいっぱいだ。 ルーデルに関する噂は良く聞いている。 だからこそ、かかわり合いたくない。 上から下までじっくり見たルーデルは、顎に手を当てていった。 「ふむ・・・(オバサマの国のウィッチ・・・外れはあるまい)気に入ったぞ。僚機を任せる。」 「・・・はい?」 なにを言っているんだコイツは? 「聞こえなかったのか?ロッテを組むと言ったんだ。」 「え・・・ええ!」 厄介ごとを認識し、大いに驚く。 慌てて無理だと言おうとすると、副隊長が両手を包むように握って持ち上げる。 「良かったわね。隊長に気に入られて!」 「え、ちょ。」 「貴方筋がよさそうだし。隊長についていけるわ!」 「うむ、副隊長も目が良いな。はっはっ!」 「いや! アッシは!」 「私はグレールと僚機を組みます。隊長、申し訳ありませんが案内をお願いしても?」 「かまわんぞ。さぁいこう!」 「あ、ちょっ! ひ、ひぱらないで!! 皆さん助けて!」 急な展開に助けをほかの人物に求める。 「「「「「良かったですね隊長! 優秀そうな人が入って!! 私達も安心です!!!」」」」」 神も仏もいなかった。 ズルズル引きずられていくさまは、ドナドナの様にひかれていく子牛の様に見えた。 もっとも、見送る隊員たちの笑顔は綺麗な笑顔だったけれども。 それからと言うモノ、杏に心休まる日々は来なかった。 「そうだ。風邪をひいてやすもう。」 「風邪? 安心しろ。病気も直せるウィッチがウチにはいる。サァ出撃だ!」 「隠れてやり過ごす!」 「ここにいたか。サァ出撃だ!」 「怪我をしたからもう・・・」 「こんなものは怪我の内に入らない。サァ出撃だ!」 何とかサボろうと、今まで培った技術を駆使するが、ハンナには全く意味が無い。 強引に連れ出されて、出撃する毎日だ。 朝は一緒にトレーニング。(牛乳を飲んで吐いた。1月もすると慣れた。) 魔力が切れるまで出撃。(強制回復が出来る栄養剤:扶桑国製を飲んでいたら魔力量が増えて、いらなくなった。) 敵の弾幕に臆することなく突撃していく。(シールドははれるが、回避した方が早く。2月で慣れた。) お陰で隊の中で二番目に強くなってしまった 更に能力に開眼する。 412 :影響を受ける人:2014/05/16(金) 23 54 14 【加速】 触れたものを加速させる事が出来るという能力で、主にハンナについていくために使っている。 思考は早くならないが、シールドの展開や弾速が加速できるので重宝している。 だけれども・・・さらに過激に攻め始めたハンナについてくのでやっとだ。 「アッシはもう帰りたいでヤンスゥゥゥ!」 「あはははははは!!!」 そんな彼女は後に、『ハンナ・U・ルーデル最高の相棒』と称され、勇敢なウィッチの一人として称賛される。 実態は誰にも知られなかったが・・・ 以上です。 消えたけど書き直したぜ! もう眠い・・・おやすみなさい。
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【表裏サイバー】 【サイバー・ドラゴン】と【サイバー・ダーク】を共存させたデッキ。 《サイバー・ドラゴン》を【サイバー・ダーク】に入れるだけでは飽き足らず、ギミックそのものを足した形となる。 はっきり言って、この組み合わせで構築するメリットは少ない。ヘルカイザー亮の気分を味わう為のファンデッキと言ってしまっても過言ではない。 部内では、部長及び夢幻が使用。 部長の【表裏サイバー】 通常の【サイバー・ドラゴン】【サイバー・ダーク】に飽きた部長がその2つをガッシンクロス。 《仮面竜》や《シャインエンジェル》等リクルーターが多く入っているのが特徴である。 初お披露目の決闘でタミフル相手に回したところ《スキルドレイン》にボコボコにされ、 WAZATEN相手に回したらアゴを《因果切断》される。 以降、そのデッキを見た者は居ない。 夢幻の【表裏サイバー】 基本は【雑貨インパクト】であるが、戦略に幅を出すため【サイバー・ドラゴン】基本ギミックを足した。 《魔導雑貨商人》《未来融合-フューチャー・フュージョン》で多数の機械族を落とし《オーバーロード・フュージョン》を狙うのが基本戦術。 これだけではただの【未来オーバー】なので、しっかり《サイバーダーク・インパクト!》なども投入してある。 サイドラ軸のカードを入れたため、《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》に装備するモンスターが不足しているのが難点。 後に【サイバー・ダーク】部分が独立する。 関連項目 デッキ集/某戯王 デッキ集/某戯王/各種のデッキ 名前 コメント
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htmlプラグインエラー このプラグインを使うにはこのページの編集権限を「管理者のみ」に設定してください。 htmlプラグインエラー このプラグインを使うにはこのページの編集権限を「管理者のみ」に設定してください。 □■□ほたるchを視聴したい人へ□■□ ほたchは独自の用語が多数有ります。 ほたるch専スレはこちら配信予定なども→http //yy33.kakiko.com/test/read.cgi/peercast/1148926007/l50 とりあえず作ってみました。 リスナーの皆様でどんどん編集していってくださいね。
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ラノで読む ◇一 「それじゃあ、バイバ~イ」 私は手を振り、学園大学部生を自称する男のアパートを後にした。 文化祭も終わってまだ間もない十一月初頭、早朝の冷たく澄んだ強い風にさらされ小さく身を震わせた。もう冬だなぁ。薄い雲間から差し込む眩い朝日が寝不足の目にしみ、ふあーっと大きくアクビ一つ。 西の空にどんよりとした雨雲が立ちこめていた。まだまだ遠いから降り出すとしても夕方あたりだろうけど、この後さらにぶらついて万が一雨に降られても嫌なので、私はさっさと家へ帰ることにした。 昨晩ナンパされてそのまま夜通し遊んで……顔はそこそこいいオトコだったけど、アレはあまり上手くなかったなぁ。 週末とはいえまだ人気《ひとけ》のない繁華街を通り抜け、|ヒナキんちのお店《スィーツ&ベーカリーTANAKA》がある商店街を横切る。おじさんとおばさんはお店の仕込みのためにもう仕事してるだろうし、ヒナキも休日の朝は手伝わされるって言ってたから、こんな朝っぱから遊びに行くのはさすがに迷惑だろう。 っていうか今行ったらきっとヒナキに「アヤナも手伝って」って言われるな。 私はふと無意識にゴソゴソとポケットを探り……、そういえば昨日帰宅して私服に着替えた後、|わ《・》ざ《・》と《・》学生証を携帯しなかったことを思い出す。金曜放課後から週末にかけて街で夜通し遊ぶ時は下手こいて身元バレしたくないし。誤魔化して逃げるための自己保身術(?)だ。 「まぁいいかぁ」 メールや着信も気になったが、帰宅してからでいいだろう。 ……と、ポケットの中に覚えのない紙切れが折りたたんで入っていることに気付く。広げてみると汚い字であまり見覚えのない男の名前と連絡先、そしてメールアドレスが殴り書きされてあった。これはやっぱり、さっきの男だろうなぁ。 「……あほくさ」 私は小さくため息をつくと、その紙切れを丸めて路肩へぽいっと放り投げた。 「あれ? アヤナさんだ。駄目だよ、ゴミ捨てちゃ」 不意に後ろから声かけられ、私は驚き振り向く。 その先には、片手で学生証をポチポチいじりながらもう片方の手で私に向かって「おーい、アヤナさん、おはよう」と大きく手を振る眠り姫の姿があった。……って、こんな朝早くになぜこの子が? 放った紙くずを拾おうとする眠り姫を適当に言い訳しながら制止し、私はそそくさとそれを拾い直しポケットへ突っ込む。 「ごめんねぇ。おはよー姫音《ひめね》さん。一人? 相羽《あいば》さんは?」 私はふと、いつもの保護者《あいばさん》なしに眠り姫が一人で出歩いてることに疑問を感じた。危険じゃない? この子一人でいたら。 彼女は手元の学生証の表示を見、苦笑いで小さなため息をつきながらコンソールを弄り――おそらく待ち受け画面に戻したのだろう――上着のポケットに仕舞うと、 「んー、学校お休みの朝はいつもそこの双葉公園までお散歩してるんだよ。それと、コトはまだ寮室で寝てる。休日はいつも昼過ぎまで寝てることが多い、かな」 眠り姫はへらへらと笑いながら、なんだか嬉しそうに語った。 「へぇ……平日と休日だとま逆なんだ。面白いねぇ」 「ところでアヤナさんは?」 「私!? 私は……えーとぉ」 突然こっちの話を振られて言葉に窮してしまった。「朝帰り」なんて説明するのもアホらしいし、そもそもこの子に伝わるのかなぁ? どうしたもんかと首を捻っていると、眠り姫が南東の空を見つめ、何かを指差しながら呟いた。 「ねぇ、アヤナさん。あれ……」 私は眠り姫の指差す方へ首を向ける。 そこには、数百メートル先の道路に根を張り緩やかな弧を描く七色の虹がまるで陸橋のように生《・》え《・》て《・》いた。 「ん、虹かぁ。こんな時間に珍し……って、虹!?」 私はその光景に目を見張った。地面から虹が生えてるって何だあれ!? 「うわーすごいね。私、虹の根っこって初めて見たかも。いつも空の高いところに見えるだけだもんね」 眠り姫があまりにもアホなことを言っている。私はその虹が根っこから伸びているさらに先、朝日の昇る東の空を見上げながら、 「いや待って。そもそも虹って雨上がりとか滝の近くとかの空気中に水滴が含まれる状態で、太陽を背にして空高くに見える気象光学現象のことだから。こんな朝、しかも東向きで太陽を正面にして、っていうかそもそも地面から虹が生えてるなんて常識的に考えてもあり得ない!」 ……あ。つい虹には特別な思い入れもあって、口早に蘊蓄《うんちく》を捲《まく》し立ててしまった。もしかして気を悪くさせてしまったかと眠り姫のほうへ、虹の根本へと目線を向けると、 「ねーねーアヤナさん、この虹、乗れるよ!?」 「ちょっと人の話を聞……何だってぇ!?」 私のことなど全く気にせずといった素振りで、眠り姫は地面から生えたその虹の上で嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねていた。 「あ……ありえねぇ」 私は恐る恐る爪先で虹をつついてみる。ホントだ、触《さわ》れるぞこれ。 ◇二 「…………ゎぁぁぁぁあああ!!」 突如、虹が伸びる先の東の上空から甲高い悲鳴が響き、私は慌てて虹から飛び退く。同時に 「きゃぁあ!?」 その虹を滑り台よろしく滑走《かっそう》してきた少女に追突され、そのまま後ろから押し倒される形で、前のめりに地面へと落下した。 「いったぁ……」 「ごめんなさい! 大丈夫でしたか!?」 うつ伏せの眠り姫へと馬乗りになった少女が慌てて飛び退く。初等部の子だろう、二重まぶたの活発そうなかわいらしい女の子だった。 「このまま公園まで行く予定だったのですが、友達が追いかけて来たのが見えたので……まさか虹を降ろした先に人がいるとは思わなくて……ホントごめんなさい」 私は、いかにも申し訳なさそうにモジモジとしている少女をいじらしく思い、 「えっと、お名前は?」 とりあえず訪ねてみた。しかし少女は節目がちのまま、 「……虹子、森田《もりた》虹子《にじこ》です」 「虹……? もしかして、虹の異能者だから『虹子』ちゃん?」 私の返答に虹子ちゃんは急に私を見上げ、驚いたかのように目を見開くと、 「はいっ。私が生まれた時、指にこう……リボンのように虹を巻いていたからなんだよって、お母さんに教えてもらいました」 虹子ちゃんはようやく申し訳なさというか緊張がほぐれたのか、屈託のない笑顔で話してくれた。 それが私はとても嬉しかった。私はそんな虹子ちゃんの手を取ると、 「そっかぁ。私ね『鈴木《すずき》彩七《あやな》』って名前でぇ、アヤナって漢字、七色の彩《いろど》りって書くんだけど――」 彼女の手のひらに指でそっと自分の名をなぞり、 「実は私のこの名前も、生まれた日が雨上がりでものすごくきれいな虹が空に掛かってたからなんだって、私のお父さんが教えてくれたんだよぉ」 そして彼女の手を握り、微笑んだ。 「わー、それじゃ私とおそろいなんですねー」 「ホント、おそろいだねぇ」 私は虹子ちゃんと手をつないだまま、本心から喜びはしゃぎあった。 「へぇ、アヤナさんの名前の由来ってそんななんだ。知らなかったぁ」 ……とりあえず間抜けな表情で私たちを見つめていた眠り姫のことは無視することにした。 「コラぁ! 虹子!!」 和やかな空気の中、一人の少年が息を切らしながら私たちの元へ――いや、正確には虹子ちゃんの元へかな? 駆け寄ってきた。 「あ、太陽くん」 虹子ちゃんが声をかける。太陽君と呼ばれた少年は怒っているような呆れているような、いかにも複雑な表情で、 「あ、じゃねーよ。お前またその異能つかって一人で勝手に先行ったりするんじゃねぇ! 班のみんなもあきれてたぞ!?」 「そうだ、みんなは?」 「他の四人は直接双葉公園の中央広場に向ってもらった。俺だけ先にお前の虹に沿って追いかけて来たんだよ。みんなで走るのもめんどくせーからな。ほらさっさと双葉公園でみんなと合流するぞ。……で、こっちのお姉さんは何を?」 私は太陽君が見つめる先に目線を送った。そこには―― 「……すぅ……」 さっきの虹の斜面にもたれ掛かりすやすやと眠っている姫音さんの姿。うわぁ、ちょっと目を離した隙にすぐこれか。 ひとまず私は眠り姫をたたき起こした。何事かときょろきょろとあたりを見回している。この子に関わってるのが時間の無駄だ。私は太陽君の方へと向き直ると、 「ごめんねぇ、そっちのお姉さんのことは放っといていいからね。……えっと、太陽君、でいいのかなぁ?」 私と、そして目を擦りながらの眠り姫に目線を向けられ、太陽君は困ったような照れたような表情を浮かべ指先で頬を掻いた。そこへ虹子ちゃんが、にこにこ笑顔を私たちに向ける。 「あ、こちらは私の友達で朝倉《あさくら》太陽《たいよう》くんです。太陽くんも異能者で、雨雲をどかせることができるんですよー」 「へぇ、太陽君も異能者かぁ」 「バッカ、俺のことなんて別にいいだろ! それよりもう、早く行くぞ」 名前だけならまだしも異能のことまで紹介されたのが癪に障ったのか――あ、それともこの反応の仕方は思春期特有のアレかな? 太陽君は双葉公園の方角を指さしながらまくし立てた。 虹子ちゃんは如何にも「あ、そうだった」と言わんばかりに手をぽんと打つと、私たちへと振り返り、 「うん。それじゃお姉さんたち、またね」 手を振り立ち去ろうとする。しかし、私はちょっとわけあって慌てて二人を呼び止めた。 「あ、待って虹子ちゃん。ちょっとだけその虹に乗ってみてもいいかなぁ?」 ――そう、乗ってみたかったのだ。 いい歳してそのメルヘンチックな願望を口にするのがはばかられ、言い出すタイミングを失っていたのだが―― 虹子ちゃんは再び私へと振り返ると満面の笑みで答えてくれた。 「はい! 同じ虹の名前のお友達ですもん。遠慮なんてしないでください」 「ほんと? やったぁ、ありがとぉ」 そして虹子ちゃんは、指で顎を押さえながら「うーん」と首を傾げると、 「私たち今からもうちょっと先の双葉公園まで行くんで、もしよかったら私の|虹の掛け橋《レインボー・ロード》で一緒に行きませんか?」 虹子ちゃんに聞かれ、そういえば太陽君の言葉を思い出す。単に友達内で遊びに行くのなら「班のみんなは~」とは言わないだろう、課外活動か何かがあるのかなぁ。 「二人は……あ、班行動で合計六人だっけ? 双葉公園で何か用事とかあるの?」 「はい、社会科の宿題で『班で双葉島の歴史を調べてみましょう』って」 ビンゴだった。隣で太陽君が虹子ちゃんに相づちを打つ。 「そう、自分たちの足で調べて回りましょう、ってな。さっさと終わらせて遊びに行こうってのに、こいつが勝手に……」 「むぅ」 太陽君の言葉に虹子ちゃんが唇を尖らせていた。なんとも可愛らしい。 「それじゃちょっと急ぎましょう。曇ると私の虹は消えちゃうんで……」 「あれ? でももし曇っちゃったら、その時は太陽君に雲どかしてもらえるんだよね? 異能の相性とかお似合いカップルだねぇ、このこの」 私はニヤニヤしながら冗談半分に、耳まで顔を赤らめながらそっぽを向いた太陽君を肘で軽く突っついてみせた。 「では行きましょう!」 虹子ちゃんは、眠り姫がベッドにしていたさっきの虹を一端消しさると、人差し指で徐々に広がりつつある雨雲から覗く朝日を指さし、彼女はくるりと指先を回せて見せる。すると、その指先からまるでシャワーのように、大量の粒子が涌き出てきた。 「……綺麗」 私は思わず呟いてしまった。 虹子ちゃんの指先から作りだされるキラキラと輝きだしたプリズムは、やがて空に一本の「虹」を生み出していった。 今居た住宅地から北西方向の双葉公園まで伸びる虹の上から望む双葉島は文字通り絶景だった。 朝日に照らされた綺麗に区画された町並み、幾重にも折り重なる学園の校舎群。そして人工島でありながら山や川、海岸まで整備された、自然との共存すら考慮された空間。 「うわぁ……」 私は、またしても思わず声を上げてしまった。 ビルの上階から見た景色とほとんど同じはずなのに、それまるで全く違った風景のように感じられた。 私たちはしばらくの間、緩やかに双葉公園の中央広場へと延びていた|虹の掛け橋《レインボー・ロード》を進んでいたが、不意に虹子ちゃんが、 「ごめんなさい、ちょっとここで降ろします」 と、急に螺旋を描《えが》き、虹の先端が双葉公園の南東側、遊歩道のある雑木林へと根を下ろした。 ◇三 先頭の虹子ちゃんが着地し、追うように太陽君、私の順に虹を降りた。 「いてっ」 ……最後尾の眠り姫は、上手く着地できなかったのか尻もちをついていた。ホントどんくさい子だなぁ。 「いったぁ……、えへへ、お尻から落ちちゃった」 へらへらと笑いながら立ち上がり、ジーンズをパンパンと叩《はた》いていた眠り姫。さっきからこんなんばっかで……もしスカートだったら膝とかすりむきまくってたんだろうな、この子。 「でも、虹子ちゃん達中央広場で待ち合わせてたんでしょ? そこまで伸ばしてくれてもよかったのに」 消えた虹に名残惜しみながら私は虹子ちゃんに声をかけた。虹子ちゃんは困ったような表情で空を見上げた。 「あ、そっか。曇ると消えちゃうんだっけ」 風が強いからなのか、まだまだ遠い西の空にあったはずの雨雲が案外早いペースで近づいて来ている。朝日が射し込んでいた東の空もすでにほぼ一面が薄雲で覆われてしまっていた。 「はい、途中で落ちちゃうわけにもいかないので……」 そして小さくうなだれながら「ごめんなさい」と続けた。 「なんだ、それならさっき話してたように俺が雲どかしてやったのに」 太陽君がさりげなく(?)フォローに回った。なんだいやっぱりこの二人いい関係なんじゃない? 「でも太陽くん、集中しなきゃ上手くコントロールできないんでしょ?」 「う、そんなことないぞ、たぶんお前の虹の上を滑りながらでも出来なくはなかったと思うぜ?」 「えー、ほんとにー?」 虹子ちゃんが太陽君の顔を覗きこむ。太陽君の顔はまたしても真っ赤だ。 そんなちびっこ二人に私は隠れてニヤニヤしていた。いやー、若いっていいねぇ初々しいねぇ。 「……ん?」 と、眠り姫がふっと硬い表情で首をかしげるように、雑木林の先へと目線を向けた。 「どした?」 「何か……気配がする」 「気配……何の?」 私も眠り姫の目線を追うが、その先になんらおかしい様子は感じられない。虹子ちゃんたちも顔を見合わせ首を傾げている。しかし―― 「わかんないけど、何か、いる」 雑木林の向こうに何かの影が見え隠れする。ガサガサと藪《やぶ》を踏み分けて進む音が近づいてくる。 眠り姫がちびっこ二人の手を引き小さく屈《かが》ませ、迫り来る「何か」をじっと見据えると、 「……来る」 小さくつぶやいた。 同時に、影がその正体を私たちの前に現した。 「へ、蛇ぃ!?」 雑木林から、数メートルはあるだろう巨大な蛇の頭がぬっと覗かせる。私は情けなくも大声をあげてしまった。 「蛇……ってそんなまさか……、まさかあいつがまだ!? あいつはあの時オバチャンがやっつけたはずなのに……」 「……ぃやぁぁぁあ!!」 突如、眠り姫の手を振り切り、虹子ちゃんが遊歩道の先へと駆けだした。 「ちょっ、おい虹子!?」 間髪いれず太陽君が彼女を追いかけていく。 ……と。彼らの声によってこちらに気付いたのか蛇が私たちの方を見下ろしてきた。間抜けな、それでいて威圧感のある顔。横に裂けた大きな口から先の割れた真っ赤な舌をチロチロと覗かせながら、のそのそとその巨体を藪から抜け出させ……その異様な姿に、私は再び大声をあげてしまった。 「何じゃありゃあ!?」 頭と長い首は確かに蛇そのものだった。が、肩と思《おぼ》しき突起から小さな腕をちょろちょろと動かし、そしてなにより人間のような下半身をもって二足歩行でのそりのそりと近づいてくる。 人間でもない、普通の蛇でもない、人外の存在――初めて見た、こいつが、ラルヴァ? この蛇ラルヴァがいったい強いのか弱いのか、また人を襲うタイプなのかそれとも友好的なのか。頭が回らない、まったくわからない。 学園の授業で概論や模擬戦、避難訓練などはいくらでも受けてきたが、いざ実際に遭遇すると頭は真っ白で、目も背けられないまま立ちすくんでしまう。 ……少なくともこのまま私と眠り姫だけじゃどうしようもないことは明白だった。 「アヤナさん、逃げよう。あの二人を追わなきゃ」 眠り姫に肩を揺らされ私は我に返り、 「わ、わかってる!!」 無理矢理絞り出したその返答を合図に、私たちはちびっこ二人の走り去った遊歩道へと駆けだした。 「姫音さん、足、遅ぉい!!」 「……だって、運動とか、苦手なんだもん……」 私の後を必死になって追う眠り姫は、まだ数百メートルも走っていないというのに、既に表情は崩れ息も絶え絶えで、私も決して速い方ではないにしても、意識していないとすぐに彼女を引き離してしまいそうだった。 まぁ、それでもまだ眠り姫のかなり後方をのっしのっしと走る蛇ラルヴァのほうがもっと足が遅いってのがせめてもの救いか。あいつ後ろ足で走らないで這ったほうが速いんじゃないの? 「ほら、急いで!」 私は眠り姫に檄《げき》を飛ばすと、前を行く二人を追いかけた。 遊歩道を抜け、視界が広がる。 そこにはブランコやシーソー、砂場とセットになった滑り台に丸太組みのアスレチック、そして出入り口の穴が幾つか開けられた直径三メートル程のドーム型の遊具などが設けられた、簡素な子供向け広場だ。 まだ朝早いからだろうか、単に運が良かったのかそれとも悪かったのか、ラルヴァに追われてからここに来るまで私たち以外の人とは遭遇していない。他に被害者が出ないってのはいいことなんだろうけど、同時に助けてもらえそうな人が周りにいないというのはかなりきつい。 広場へ入って見渡す間もなく、滑り台のそばにちびっこ二人を見つけ私は急いで駆け寄った。 「二人とも大丈夫!?」 「俺は大丈夫、でも虹子が……」 「……やだよぅ、怖いよぅ」 膝を抱え地面にうずくまり嗚咽を漏らしている虹子ちゃんの肩を太陽君が支えていた。 なんだろう、虹子ちゃんの怯え方は単に「ラルヴァと遭遇した」ってだけではなさそう? 明らかに「あの蛇ラルヴァ」そのものを拒絶しているように見えた。 「……追いついたぁ」 私の後ろで、前かがみに両膝《りょうひざ》を押さえ、今にも倒れ込みそうな勢いでゲホゲホとむせ返っている眠り姫はとりあえず無視しておいて……、私はそのさらに後方を見渡す。予想以上に足が遅いのか、蛇ラルヴァは先ほど私たちが走って来た遊歩道のはるか向こうにようやくその影が見える程度。しかし……。 「遅いけど、真っすぐこっちに向かって来てる。どうしよう……」 しかし、たったこれだけの距離で息も絶え絶えに疲労困憊の眠り姫と、可愛そうなほどおびえきっている虹子ちゃん。この二人を連れて無事に逃げ切れるのか……? 太陽君がなんとか虹子ちゃんを立たせようと声をかけたり手を引いたりしているが、両膝に顔をうずめたままいやいやと首を振る虹子ちゃんは微動だにせず、こりゃまいったねぇ。 蛇ラルヴァの影は刻一刻と近づいてきている。私はどうしたもんかと辺りを見回すと、 「太陽君、こっち。いったん隠れるよ」 私は虹子ちゃんを脇に抱え眠り姫の手を取り、太陽君と共に二人を引きずるようにドーム型遊具の中へと潜り込んだ。 ◇四 しばらくの間、三人がかりで虹子ちゃんをなだめすかし、ほどなくしてなんとか虹子ちゃんは平静を取り戻したようだった。 っていうか、明らかにヤバイ状況だってのにあの蛇ラルヴァの足がとことん遅いせいもあって中途半端に余裕があるというのも変な話だ。 ……と、ようやく息が整ったのか眠り姫が、 「そういえば太陽君、さっき『あいつはあの時~』って言ってたよね、もしかして、あの蛇ラルヴァと前に遭遇したことあるの?」 突然二人に尋ねる。その言葉に虹子ちゃんがピクリと反応した。 太陽君はそんな虹子ちゃんの顔をちらりと覗くと、 「……うん。二ヶ月半くらい前、っていうか夏休みの終わりころに総合グラウンドで遊んでて、そのときあいつと同じ蛇型のラルヴァに襲われたことがあって。で、虹子があいつに……その、飲み込まれ……」 そこまで言って言葉を詰まらせ、太陽君は再び虹子ちゃんへと視線を向けた。せっかく正気を取り戻したってのに虹子ちゃんはさっきよりもさらに小さくうずくまってしまっている。 しかし――、なるほど。これで虹子ちゃんが何故ここまで異様に怯えるのか納得できた。 「あの時は、大学部の学生課のオバチャンが一瞬で焼き殺して、助けてくれたんだけど……」 「……あぁ、あのおっかない眼鏡のオバチャ……オネエサンね。っていうかごめんねぇ、この子が余計なこと聞いて嫌なこと思い出させちゃって」 言って、私は二人にばれないように眠り姫を小さく蹴った。まったくこの子は、空気読めよねほんとにもぅ。 ってか、そんなことよりも……。 「なんとかしなきゃ」 この状況を打破する方法を考えないと。 現状、非戦闘系異能者が三人と一般人の私。しかもそのうち二人は初等部生だ。もうこのメンバーだけでラルヴァ相手にどうしようかと考えること自体が間違ってる。 「そうだ、誰か助け呼べば……」 ぱっと思いつくだけでも何人か戦闘系異能者の顔が浮かぶ。ポケットを探りながら誰を呼ぶべきか考え……、 「しまった、学生証持ってなかったんだった」 昨晩の自分の浅はかな思惑がこんな時にあだとなるとは。 ていうか、ラルヴァに襲われたら写メってから逃げるなんて息巻いて起きながら、実際に遭遇してみればそんなこと考えていられる余裕すらないことに気づく。我ながらなさけない。 と、余計なこと考えてないで……、 「姫音さん、さっき学生証持ってたよね? 誰かあのラルヴァ倒せる異能者を助けに呼べないかなぁ!?」 「えっと、ごめんね。電池、切れちゃった」 「はぁ!? さっき会った時にいじってたじゃん!?」 思わず詰め寄ってしまった。眠り姫は困ったような本当に申し訳なさそうな表情で私を見ると、 「昨日の夜、充電するの忘れちゃってて……、それに私、朝に散歩する時はいつもアプリ起動してゲームしたり音楽聴いたりしながらだから……ほら、途中で眠くなったりしないように、ね」 ポケットから取り出した電池の切れたらしい学生証を両手で挟み「ごめんね」と頭を下げる。 私は即座にそれを奪うと、勝手に電源を起動する……がしかし、ピピピッという警告音と共にディスプレイに『バッテリー残量が不足しています』の表示が出てそのまま強制終了されてしまった。うわなにこの子使えない。 「そっちの二人は?」 私は眠り姫に学生証を投げ返すと、ちびっこ二人のほうへと振り向く。 もう形振《なりふ》り構ってる場合じゃない。しかしこの子たちの友達に戦闘型異能者がいたとしても、まさか初等部生にそんな危険なこと頼むわけにもいかないし。友達の兄弟とか、なんとか誰か頼める人がいれば……。 しかし、 「今日の宿題は『ネットで調べず自分で見て回りましょう』って先生に言われたから、私も今は……」 「うん、俺も……」 二人の返答はなかなかに辛辣なものだった。えぇぇ、それってつまり……、 「じゃあ、まさか今、誰かと連絡とったり助けを呼んだりする手段がないってこと?」 「……えっと、あれ? アヤナさんも学生証持ってないの?」 絶望が襲う。軽くめまいがした。もう使命感も他人の目とか配慮とか何もかも全部かなぐり捨てて、この三人をおいてダッシュで逃げ出してしまいたい衝動をギリギリのところでなんとか堪《こら》える。 「あ。あいつが見えるところまで来た! どうしようお姉さん!?」 ドーム型遊具の横穴から外を覗いていた太陽君が叫ぶ。私の方こそどうしよう。虹子ちゃんもさっきからおろおろしっぱなしだ。 穴から外を覗く太陽君の後ろから同じように様子をうかがうと、蛇ラルヴァは既に肉眼で確認できる距離まで近づいてきてるのが見て取れた。 他へ行ってくれればいいのに、なぜ真っすぐこっちへ向かってくるのか……と考え、ふと蛇は視覚よりも嗅覚感知で獲物を狙うという情報を、いつだったか動物番組の爬虫類特集をヒナキと一緒に「キモ可愛い」だなんだと笑いながら見ていた記憶と共に思い出す。 あれ? それじゃここに隠れこんだのは失敗だったんじゃない? 私が悶々と考え込んでいると、唐突に眠り姫が、 「うーん、こまった、ね。……そうだ、太陽君の異能、見せてもらえないかな」 あまりに暢気なことを言い出した。この子は本当に今のすごいヤバいって事態を理解しているのかなぁ。 「なんで? 今?」 太陽君は突然話を振られ困惑気味だ。虹子ちゃんもどうして急にと不思議そうに眺めている。 私は改めてちらりとドームの外をうかがう。ついに子の遊具広場に到着してしまったさっきの蛇ラルヴァは、それでもまだこちらには気づいてないのかチロチロと舌を出しながら辺りを探ってる様子だった。 「うん、見てみたいな。お願い、太陽君」 眠り姫は太陽君の前にしゃがみ込むと、手を合わせ「ね、お願い」と再度頼み込んだ。 「しょ、しょうがねぇな、ちょっとだけだぞ」 少し照れながら、太陽君が立ち上がった。 ドームの天井はちょうど私たちの身長でぎりぎり立てる程度の高さ。その中央に横穴と同じサイズで穴が開いている。 太陽君はその穴の真下に立つと右手のひらを広げ天に伸ばし……ただそれだけだった。そのまま幾秒かの沈黙が走る。 その時、奇跡が起こった。 西の空から双葉島上空を覆いつつあった雨雲が裂け、澄んだ青空が姿を見せ始めた。 太陽君は小刻みに震える指先に苦虫を噛みしめたような表情で歯を食いしばり、それでもなおその姿勢を崩さず。そして徐々に青空が広がっていき、いつしか朝日が再び差し込むまでになっていた。 「くそっ、うまく集中できねぇけど、まぁこんなもんかな……」 言って、太陽君がどかりと地面へ腰を下ろす。頼み込んだ本人の眠り姫は心から喜んでいるようだった。 「すごいすごい、あんなに青空広がったよ」 「でも俺の能力で作った青空なんて数時間ともたないぜ?」 やはり疲れたのか座ったまま肩で息をしている太陽君が謙遜してみせる。 「そうだよ、姫音さん。確かに太陽君の異能もすごいけど……この青空に何の意味が?」 「うん、ちょっとね」 そして、私は目を見張った。 突如、眠り姫が上着を脱ぎ出していたのだ。 続【眠り姫の見る夢 -Ayana- 後編】 トップに戻る 作品投稿場所に戻る
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最下部にテキストあるんで落として読めます。 とりあえず発起人が書いた叩き台。 こっから適当に設定とか広げてください。 設定がろくに含まれてない? うん、ごめん。無難すぎた。 学園の中心に聳える鐘楼が見るものの目を引く。 いま、そこに据えられている鐘が高らかに、一回、二回と高く長く、荘厳な音を降らせている。 双葉学園の入学式を祝って。 式場となる大講堂へと列をなした新入生たちが一斉に鐘を見上げ、しばし行進が止まった。彼らを誘導している教師や腕章をつけた在校生が、ゆっくり進むように声をかける。 学園は広く、いくつもの校舎が立ち並んでいて、大講堂から鐘楼までの距離もかなり遠い。だが、年季が入って黒ずんだ鐘の、春の日差しを浴びる堂々たる佇まいを見て取ることが出来た。 鐘の形は寺にあるそれに似ているが、ここは仏教系の学校というわけではない。見上げるほど高い鐘楼はレンガ造りで、いかにもキリスト教的だ。 真新しい制服に身を包んだ少年、双葉敏明(ふたばとしあき)も、他の新入生同様に鐘を見上げていた。 その視線がふと、空の向こう、雲の切れ間に吸い寄せられる。 「なんだあれ?」 敏明は何かの影を見つけて、目を凝らす。 普通なら鳥か飛行機だろうと気にも留めないようなものだが、その影の形は人型だった。 「どうしたの、トッシー? お腹減った? スニッカーズあげようか?」 敏明の隣を歩いていた女子が彼の言葉に気付いて聞き返した。入学式とはいえ、初対面ではないのだろう、あだ名で気軽に呼びかけている。 「なんで入学式にそんなもの持ってきてるんだ」 「メイトがいい?」 少女は肩に提げたポーチから黄色い箱を取り出してみせる。 「そういう問題じゃねえ。ほら、あれ」 彼の指が示す先を見やり、彼女もすぐ人影に気付いた。 「スカイダイビング?」 敏明は錯覚ではなかったかと納得すると、すぐに興味を失って列に視線を戻す。行列は遅々として進まず、再び鐘の音が響き始める。 「生徒多すぎだろ。いくら超マンモス校だからって数千人単位はさすがに……」 不意に列の中からざわめきが漏れ出して、彼は口をつぐんだ。 彼らの指差す先は、さっきの人影の方向だ。みんなも今更気付いたのかと、欠伸しながら眺める。 しかし、どうも様子がおかしかった。新入生たちの何人かは、なにやら慌てたような表情を浮かべているのだ。 再び、鐘の向こうを見ると、人影はさっきより大きくなっていた。 不審に思っている間にも、その大きさは増していく。 「なあ、メグ」 「なに? やっぱりお腹減ってる? ウィダーもあるよ?」 「いらん」 「あ、足りないのかな。じゃあカツ丼だね!」 「そんなものを持ち歩くな!」 「バカだねトッシー、カツ丼なんて持って来てるわけないじゃん」 「お前な……」 「本当は牛丼でした」 「大差ねえよ! しかもそれ弁当じゃなくてマジで丼じゃねえか!」 ポーチから取り出された大きな容器を見て、敏明は思わず叫ぶ。何故か盛られた牛肉からは湯気も立っていた。 「前から不思議だったが、そのポーチどうなってやがる」 「あん、乙女の秘密に勝手に触っちゃダメだよ」 「変な声出すなっての」 ポーチを奪い合う彼らをよそに、周囲のざわめきは大きくなっていく。 すでに新入生のほとんどの興味が鐘から人影に移っていた。 誰かが叫ぶ。 「こっちに来るぞ!」 二人が振り返ったときには、人影は細部までが判然となる距離にまで近付いていた。 「なんだありゃ……」 それは、スカイダイビングをする装備をつけた人間には到底見えなかった。 体中を赤と黒の殻に包まれている。全身に甲冑を着込んだ鎧武者のようだ。 武者姿は近付いて細部まで見えるようになると、それは鎧ですらなかった。ごつごつとした突起と生物的な曲線は、巨大な人型に組み立てたカニかエビのようだ。 数秒後、カニ鎧は鐘楼の脇を通り過ぎ、敏明たちの目の前の地面に激突した。 轟音と悲鳴が、眩暈を誘うほど強く鼓膜を叩き、敏明は屈みこんだ。 落下の衝撃で巻き起こった土埃から手で顔を庇いながら、武者姿の落ちたあたりを見やる。 そこにあるものが、砕け散ったカニの殻だけならば、訳はわからないがまだいい。 鎧の中身として人間が入っていたとするならば、今の衝撃を受けて原型を留めてはいないはずだった。それはとても直視して気分の良いものではない。 だが、敏明の想像とは別のものが、煙の向こうから現れた。 薄くなってきた土煙を裂いて、真っ赤な腕が飛び出してきた。 そして、新入生の列を誘導していた教師の一人へと、その手が迫る。 「は?」 カニ鎧が無事だったこと、そして動き出したことにも当然驚いたが、さらに不可思議な現象がその後に起こった。 ただの教師と思っていたスーツ姿の男が、手品のように炎をどこからか生み出し、カニ鎧に叩きつけたのだ。 熱風と爆音が炸裂し、カニ鎧がよろめいた。さらに畳み掛けるように、教師は火の球を連発していく。 眼前で繰り広げられる光景に呆然と見入っていると、少し離れた場所から再び悲鳴があがった。 「今度はなんだ?」 そちらでは、在校生が手から得体の知れない輝きを放っていた。光を振り上げ、振り下ろし、何かを滅多打ちにしている。 打たれているのは、巨大な樹のようだった。しかし、樹の枝は人間の腕のように指をそなえて動き回っている。 樹の腕を避けながら、在校生は光の剣だか鞭だかで、木肌を削り落としていく。 彼らは、戦っているのだ。 敏明がそんな思考に到った時には、いつのまにか化け物が五匹以上も現れていた。 中には人間にしか見えないようなものもいたが、その右腕は不自然に膨らんで長大な爪だか骨だかが幾本も鋭く伸びている。 全体を眺めてみれば、新入生の列を背にして守るように、教師と在校生が化け物と戦っていることがわかる。彼らは皆、魔法や超能力と言われる類の超常の力を振るっている。 戦う相手も、戦いの手段も敏明の常識には無いものだった。 呆気にとられて眺めているうちに化け物たちは倒れ、逃げ出していく。 最後に残ったのは、敏明たちの目の前に落ちてきたカニ鎧だった。いつのまにか全身が焼け焦げ、左腕は半ばから折れて傷口からは青い液体がこぼれている。 カニ鎧は最後の力を振り絞るように全身を震わせると、身を屈めて駆け出した。 迎え撃つ教師が手に火の玉を生み出し、構える。 突っ込んでいく、と見えたカニ鎧はしかし、教師の眼前で跳躍した。 「しまっ……!」 カニ鎧は、新入生の列のすぐ傍、敏明の目の前に着地した。 敏明は真黒な眼球が自分を睨んでいるように感じ、全身から血の気が引いていく。硬そうな腕が持ち上がり、振り下ろされる様子を、突っ立ったまま見ているしか出来ない。 周囲で上がる悲鳴も、どこか遠くのことのように聞こえる。しかし一つだけ、その声は鮮烈に耳に響いた。 「しゃがめ!」 鋭い怒声に慌ててその場に腰を落とす。 眼前に、ふわりと黒髪とミニスカートが舞った。その手に長大な刀を握っていると気付いた次の瞬間、閃いた銀光がカニ鎧を横一文字に切り払い、両断した。 「オォ!」 気迫を大呼し、二の太刀でカニ鎧をさらに切り裂き、弾き飛ばす。 ふっと鋭く息を吐き、敏明の窮地を救った女子生徒が刀を納める。 「無事かい?」 凛とした声と共に差し伸べられた手を、敏明は無意識のうちに握り返す。 やけに力強く引かれて立ち上がる。 「あ、ありがとうございます……」 「いや……ヤツラにここまでの侵入を許したのは我々の落ち度だよ。すまない」 「へ……いえ」 何故か礼に対して謝られ、敏明は途方に暮れて下げられた頭から目を逸らす。なんとなく耳たぶを掻きながら、地面に転がるカニ鎧の残骸を見やった。 青い体液をごぼごぼと溢れさせながら、下半身や左半身は小さくなっていく。そして、まるで何も無かったかのように消えてなくなってしまった。右半身を残して。 鞘を引っ提げた女子生徒は背を向けているため、そこに消え残っているカニ鎧に気付かない。 「あっ……」 真っ赤な右腕が振り上げられたと思ったときには、敏明は女子生徒を庇うように前に出ていた。 カニ鎧の腕が爆ぜた。 細かく飛び散る破片の中で、大きな握り拳だけが真っ直ぐこちらに飛んで来る。 まともに受け止めればケガは免れないだろうと、咄嗟に理解できるほどの大きさと速度だった。 なんて無謀なことをしたのだと考えている間にも、拳が敏明に迫る。 せめて顔や胴は守ろうと、咄嗟に腕を前に構える。 「わあああっ!」 その時、敏明の手から謎の光が漏れ出て、あたりを照らした。 彼自身、驚愕しながら光が瞬くのを見届け……カニ鎧の拳は敏明の額に直撃した。 「い、いまの光は……?」 こういうときは助かるものだろ、お約束的に考えて。 そんな敏明の思考はすぐに闇に沈んでいった。 目を覚ました敏明は、独特の消毒液の匂いで保健室にいるのだとすぐ気付いた。 白く固いシーツに手をついて身体を起こす。額にはガーゼが張られていたが、少し鈍い痛みがあるくらいで重傷ではなさそうだった。 見つめた窓の外、空は朱色に染まっている。 「……入学式、終わっちまってるよな」 あんな騒ぎの後で予定通り行われるとしたらの話だが、あの教師や在校生たちの余裕の戦いぶりを見たあとだと、それもありえるのではないかと思えた。 ベッドから降りてカーテンを引きあけると、保健室は無人だった。 「……期待なんかしてないぞ、そんなお約束なんて。裏切られたばっかりだし」 落胆の隠し切れない低い声で、誰かに言い訳するように呟く。 「さっきの剣道少女系なセンパイが待っててくれてそこから恋が始まるなんてそんな妄想」 ガラリと扉が開き、黒髪の女子生徒が入ってきた。 「ああ、起きていたか。すまないな、小用で外していた」 「ありがとうございます!」 「ん? 礼を言うのは私のほうだよ?」 言いつつ浮かべられた微笑に、敏明はぐっと拳を握り締める。 「本音を言えば後輩系が好みだけど、アリだな」 「意味がよくわからないんだが……まさかさっき頭を打ったせいで……?」 わざわざオタ趣味について説明するのもおかしいので、笑って誤魔化す。 「俺は双葉敏明です。ええと、センパイは?」 「河越明日羽だ。双葉ということは、やはり君が学園長のお孫さんだったか」 「ええまあ一応、小中は他所の学校行ってたんですけど、高校はここに入れって言われて」 「ということは、君も『ラルヴァ』と戦う力を持っているんだな」 「らるば?」 「さっき私たちが戦っていたヤツラだ。魔物、怪物、悪霊、そういうものをひっくるめてそう呼ぶんだ。……まだ詳しくは知らされていないのか?」 「まったく初耳です」 「ふむ。だが、さきほどので君にも力があることはわかったからな。そのうち授業で教えられるだろう」 「……ていうか、あんなことあったらマスコミとか警察とか自衛隊とか騒ぐんじゃ……」 「そういうことは起きないようになっている。国の偉い人たちが、ラルヴァの存在を隠しているからな」 「そんな……さっきの音とか、絶対町まで聞こえてましたよ?」 「心配ない。この学園都市『双葉』はすべてラルヴァと戦うために用意されているからな。住人だって承知の上だ。もし、外部の人間に漏れそうになったときも記憶操作系の異能力者などがいる」 話のスケールが急に大きくなってしまい、なかなかその意味が推し量れず――敏明は考えるのをやめた。 「そのうち君も我々『醒徒会』の一員になることだろう。そのときはよろしく頼むよ」 明日葉が笑いながら差し出した手を、敏明も服の裾で拭ってから握り返す。 先ほどの助け起こされたときには余裕が無くて気付かなかったが、刀を握るには少し頼りないほどに、たおやかでしっとりした手だった。 ――end. トップに戻る 作品投稿場所に戻る