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シルフィードが青い空を飛んでいく。 溶け込むような色合いの鱗にしっかりとしがみつきながら、マジシャンズ・レッドの炎が揺らめくのをキュルケとポルナレフは見ている。 首の根っこに跨ったタバサの隣で、ルイズが身を乗り出して眼下に広がる森を見ていた。 後ろから迫る巨大なゴーレムがゆっくりだが、確実に離れていく。 だが、ポルナレフ達は逃げているのではない。 眼下に広がる森の中からフーケを探さなければならないのだ。 だからすぐに見つからなければ、フーケを探してゴーレムをこの森の上でかわし続けなければならない。 その事を理解している皆の表情には焦りが見え、特に追い掛け回されるシルフィードは必死だった。 そんな様子を、追跡されている『土くれのフーケ』は冷静に見つめていた。まるで養豚場の豚でも見るような目で見上げる。 「逃げるんじゃあ無いようだね。ミス・ヴァリエールのお陰かねぇ?」 小馬鹿にしたような口調だったが、顔に笑みは浮かばなかった。 それどころかシルフィードを睨みつけ、歯軋りをせんばかり… あのまま、ゴーレムと戦い消耗してくれていればよかったのだが、マチルダの予定は狂っていた。 「あの亀…やっぱり、どう見たってジョルノ・ジョバァーナの亀だね」 木陰に潜み、近づいてくるシルフィードの姿を見ながらマチルダは確認と、自分にいい聞かせるように呟き始めた。 本当は別の目的があった。 アルビオンに隠れ住むテファの為、円盤の使用方法をメイジ達に使わせて理解するという目的…! マチルダのテファへの感情は複雑だった。 テファは、サウスゴータ家が主君と仰いだ王弟で財務監督官だった大公の一人娘だ。 アルビオン王家やそれに追従した貴族への恨みを持つとはいえ…いや、だからこそ王家に杖を捧げてきた貴族としては、 テファこそ正統な、アルビオン王位を継ぐに、真に相応しい方の娘だ、なんて想いもないわけじゃない。 貴族に戻るなどの利益を求めての考えではない。 そうでなければ…! 彼らが正しいとするのなら…! 亡父達が間違っていたというのか? そんなわけはないのだ…マチルダは突然湧き上がった衝動のままに隠れていた木を殴った。 どういう事情がったのか、マチルダも完全に知っているわけではない。 だが、エルフだからって理由だけで幼い子供を殺すような真似は貴族のすることではない。 愛人とて、義務の為に望まない結婚をした貴族が恋人とその後も関係を続ける話は、大っぴらに良しとはされないが、平凡な話である。 だから、テファをどうしても主君の娘として見ることはある。 彼らへのあてつけでテファを生かしておこうなんて想いさえ、マチルダにはあるのだから… しかし同時に、何年も面倒を見続けてきたテファに愛情が沸かぬほど情が薄くもない。 もう既に、マチルダにとってテファは妹であり、娘でもあるような大切な存在だった。 そういう複雑な想いを注ぐ大事なテファが、あろうことか男を召喚したという話を聞いたことが…昨日聞いたことのように思い出される! あの糞ガキッ!! マチルダでさえうっかり騙されちまう、あの爽やかな笑顔が思い出されるッ! アルビオンの冷たい冬の終わり、春の訪れを伝える花の蕾が開きだしたのを見つけた時のような気持ちッ、 鬱陶しい雨を降らせる雲の隙間から差す暖かな陽光を浴びた時のような気持ちを植えつけるくせに、時折チラつかせるあの色気ッ…! 放っておけば間違いなくテファを誑かして悪い道に引き込むに違いないッ!! そのジョルノ・ジョバァーナが、マチルダがある貴族から盗んだ円盤を渡した直後から、マチルダが少しだけ見せてやった裏社会で何か行っているらしい… テファがそんな道に引きずりこまれるのは最早時間の問題だろう…次に戻った時に排除するしかないッ! マチルダはそう決めていた。 ジョルノ・ジョバァーナは抜け目ないガキだ。排除しなければならないが…円盤を使っているのならそれを知らなければ、追い詰めた所で足元を掬われちまうかもしれない。 その為に、ジョルノ・ジョバァーナを確実に葬りさる為にできれば『破壊の円盤』の使い方と力を知っておかなければならなかった。 だがそれは、復讐とかは止せと言っていたテファに姉のように慕っているマチルダが盗賊をしていると知られてしまう事に比べれば、カスのようなものに過ぎなかった。 何より、テファの存在が亀の口からうっかりばれて、妹か娘のように可愛がっているテファの身に危険が迫ることに比べれば…! 「円盤も使ってないようだし…こうなると、今重要なのは円盤じゃないね…あの亀だ。喋れるようになった亀の口から、私の事がテファにばれたり、テファのことが誰かにばれちまう方が、ずっとヤバい」 言いながらマチルダはローブの中に手を入れていた。今のこの状況を、マチルダは切り抜けなければならなかった。 円盤にどんな力があるのか知る事ができないのは残念だが…どんな手段を使ってでも、亀の口を封じて逃走しなければならなかった…! 懐を探り、微かに震える手で取り出したのは小さな紙の包みだった。 一時の甘い夢、心地よい幻覚に誘われ、あるいはどんなことでもできるような全能感を味わうという手の中の禁制品の一種が、その包みの中に入っている。 それを、マチルダは硬い表情で見つめた。依存性などがあるという話をマチルダは知っていた。 だがこの薬には、精神を高揚させ魔法の力を一時的に高める力がある…! ドーピングとしての力、体を蝕むがゆえに禁止されている上、値も張るが、その効果から念のために一つだけ用意異しておいた欲望の白い粉。 当然使いたくなんて無いが、相手にはマチルダと同じトライアングルが二人いる。 その上あのように飛ばれていては、あの亀を殺すのはかなり困難だ。積んでいる、と言ってもおかしくはないかもしれない…だが逃がすわけにはいかないのだ! 近づいてくるシルフィードの姿を一瞥し、フーケは包みを開いた。 時を同じくして、シルフィードを追いかけていた30メートルのゴーレムが突然崩れ始める。 決して精密なつくりではなかったが、それでも土が零れることは殆どなかった土の人形が、手を伸ばした形で動きを止めていた。 溶けるようにして、ゴーレムは人型ではなくなり、土の山へと変わっていくことに後ろを見ていたキュルケが一番早く気付いた。 シルフィードやタバサは前を見ていなければならなかったし、ルイズは身を乗り出すようにして眼下に広がる森を見ていた。 ポルナレフは勿論、生物探知機でもある炎が燃え盛るかどうかを見るのに集中していたのだが、「見て! ゴーレムが…!」 キュルケの声に、皆自分の行動を止めて、シルフィードまでが首だけ振り向いてゴーレムが崩れ落ちて、下に生えていた木々を押しつぶしながら大きな土煙が上る光景を見る。 だが、それが彼らの行動を一手遅らせた…! そうする彼らの行く手で、木々を突き破り新たに生み出されたゴーレムの腕が、生き物のようにうねりながらシルフィードの前へ急速に伸びていく。 森の木を巻き添えにしたまま天へと突き出されようとしているのは、崩れ落ちた30メートルゴーレムの腕と同じサイズの腕だった。 生物探知機を有効にする為に低空で飛行していたシルフィードとその背に乗るポルナレフ達の上に影を落として、腕は成長をやめた。 構成する土くれの一部が崩れていくのにも構わず、今までに無い、本物の人間めいた動きで手が蠢く…メイジが使う魔法は、基本的には共通のものが使われる。 レビテーション、ウインドカッター。それらはどの国でも共通だが、そこにメイジ個人の能力と隠しようのない癖が現れる。 その点から言えば、つい先ほど背後から追いかけてきたゴーレムを作ったメイジとは、別のメイジが作ったような巨大な土の手は手を形作る土くれを撒き散らしながらも、恐ろしく素早かった。 だが日頃表情を動かさぬタバサが、目を見開くまでに広げられた手はシルフィードを叩き落し、何故かすぐには追撃を行わずに小刻みに震えた。 木々をなぎ倒して墜落するシルフィードが地響きを立てている間に、ゴーレムは再び土を集め、否応なしに圧迫感を与える巨体を作り上げて彼らの前に立ちあがろうとする。 マチルダはそれを少し離れた場所で眺めていた。 「そいつらを埋めちまいな…!」 亀を逃がしてしまうと、妹、あるいは娘のようにさえ思うテファの事が脳裏にひっかかっていたというのに… 鼻歌の一つでも歌いだしてしまいそうな清清しい気分が、心の内から湧き上がってきてしまう…! 自然と笑みが広がっていた事に気付いたが、マチルダは杖を振るう。 砕け散った巨大な手がルイズ達の上に土の塊となって降り注ぐ。 髪や服に降り注ぐ土から、体についた土を嫌そうに払いつつキュルケが逃げる。 シルフィードの無事を確かめたタバサが視線を微かに険しくし、「ここにいて、シルフィードを」と言い残して『土くれのフーケ』を追う亀を追いかけ森へと消える横で、ルイズは降り注ぐ土に目もくれず周囲へ忙しなく目を向けていた。 頭にこぶし大の土がぶち当たり、ぶん殴られたような衝撃に目が眩んでいても、血が滲んでもルイズは目と手を動かしていた。 タバサと共に、炎により生命を探す能力を持つ亀を追いかけようとしていたキュルケは、それを見て先にルイズへ叫んだ。 「ルイズ! 貴方何やってんのよ!「円盤がないのよ! 今叩き落された時に、何処かに落としちゃったのよ!」 震える声で叫んだルイズの目は潤んでいた。 今回の目的でもある戦利品を失くしたと聞かされたキュルケは、ルイズの頬を叩いた。 一瞬動きを止めるルイズにキュルケは言い聞かせる。 「馬鹿ね…ッ。貴方の体を守るのが先でしょ!」 「ば、馬鹿って何よ! アンタには「ほら、次の攻撃が来る前に動くわよ!」 「きゅいー!」 喚くルイズの手を引いて、キュルケはフライを唱えた。 フライの使用中は強力な魔法を使えなくなるが、代わりに高速で空を飛ぶことが出来る。 ゴーレムがまた崩れ、腕だけを素早く天へ突き出すのを見ながら、キュルケはルイズと『土くれのフーケ』がいるらしい、亀とタバサが消えた方へと飛んでいく。 離れていく二人へ残されたシルフィードが必死に鳴き声を上げたが、ルイズ達にはそれを気にする余裕はなかったし、目に見える傷が、硬いウロコのお陰で無かったせいで、然程気にしていなかった。 「きゅいきゅいー!(ゴーレムに潰されたらどうするのね!)」 離れた場所にまた腕が出現するのを見て、二人の後方で必死に手足をバタつかせるシルフィード。彼女?が自分で倒した枝葉が絡まって素早く空へ逃げることもできないことに、二人は気付かなかった。 その代わりに素早く生み出され木々をなぎ倒しながら、振り回される腕が狙うのは亀である事には気付いていた。 キュルケの位置からは良く見えないが、炎が上がり、土くれでできた巨大な腕が破裂するので追われているのは亀だと判断する。 ディスクを探すのを邪魔され、騒がしくするルイズと共にキュルケは木々の間を縫うように飛ぶ。 亀が狙われているようだとは思っても、慎重な部分が警告し木の上まで上がるのは躊躇いがあった。 そう遠くない場所で、木の幹が折れる音と共に地響きがする…断続的にその音は響き、発信源が少しずつ遠ざかっていく。 抱きかかえられ、胸が当たるせいもあって幾分余計に暴れるルイズにキュルケは目を落とす。これ以上暴れられると、落としてしまいそうだったのだ。 「円盤を探すのは後でいいじゃない…フーケを捕まえてからゆっくり探せばいいわ」 「…わかってるわよ。だ、だから離しなさいよ!」 「はいはい…」 音が離れていくのを聞いて、渋々納得し悪態をつくルイズをキュルケは笑った。 ルイズとて、状況がわからないわけではない。使い魔のカメナレフは先程から頑張っている。 タバサもだ。キュルケの今の態度とて、ヴァリエール家の宿敵ツェルプストーとは思えないものだ。 トリスティンを騒がせる盗賊フーケを相手に、シルフィードが叩き落された所なのに、ルイズを気にかけている。 だが、そんなキュルケに素直な態度を取れずに、ルイズはふくれっ面をして森の中を走っていく。 先程当たっていた大くて柔らかい脂肪の塊。何より、自分の目の前で使われる魔法の数々が、ルイズのコンプレックスを刺激して止まない。 キュルケが、ルイズにあわせてフライを解き森の中を走っているのが、草をかき分けて進む音でわかって、爪が食い込むほど強く手を握り締めた。 遠くでまた何かが燃え上がる大きな音がした。土くれの腕が弾けるのが見え、亀が空へと舞い上がった。 それを追ってどろを飛ばしながら、何本もの手が亀を追いかけていく…だがそれらは突然砕かれた。 魔法学院に入学してから、自分の系統を探そうと必死に勉強を続けていたルイズには、それがエア・ハンマーの魔法だとわかる。 「向こうね! 急ぎましょう!」 彼女が扱う炎のような色の髪をかきあげて、キュルケは軽快に森の中を抜けていく。 生い茂る長い草や突き出した根が、小さなルイズの行く手を遮って、キュルケより一歩遅らせる。 魔法が使えないからいつも走っているルイズの足は他の貴族達と比べれば速かった。 だが20cm近い身長と、魔法で道を切り開くキュルケは、ルイズより更に一歩分前に進む。 その後を進めば楽に走れたが、横目で見たルイズは、短いスカートから覗く足が切れるのも構わず、進んだ。 軽く流し目を送り、キュルケが笑うのが見え、唇をかみ締める。 フライを唱えて杖を振るっても、何も起きなかった。 「爆発だけでも起きればいいのに…!」 きつく唇をかみ締めるルイズを、普段どおりからかうようにキュルケが声をかける。 「どうかしたのルイズ? 遅れてるわよ!」 「うっさいわね! 黙って走りなさいよ!!」 二人が騒音の聞こえる方へと走っていくのを、静かに観察する男がいた。 そよ風に揺れる3つのコロネと口元の爽やかな笑み。そしてキュルケよりも大きく開いた胸元は、勿論ジョルノだった。 手でちょっぴり土で汚れた円盤、先程ルイズが必死に探していたモノを弄んでいたが、呟く。足元のモグラ達が、ただの石ころへと戻っていく傍らで。 「ツェルプストーとヴァリエール。奇妙な組み合わせだが、ポルナレフさんを召喚したのはヴァリエール家なのか」 髪の色と先日出会ったヴァリエール家の女性達の面影、そして魔法が使えなかった点から推測を立てながら、ジョルノは二人が消えた方向に背を向けた。 手の中のディスクに映るスタンド、『ワールド』の姿が奇妙に印象に残っていた。 例えて言うなら、首の背中の付け根が疼くような感覚…空いている手でジョルノは首筋を撫でる。 そうすることで何かわかりそうな気がしたのだが、無駄なことだった。 ジョルノは頭にディスクを差す―ずぶずぶずぶずぶ「ジョルノ、治療が終ったぞ」 木々の間を縫って向かう先では、ラルカスが手を振って合図している。ジョルノは頷き返した。 シルフィードの治療を終えて報告に来るラルカスに気付いたジョルノは、二匹?に駆け寄る。 その手には櫛が握られ、手早くコロネが梳かれていく。徐々に二人との距離も縮まる内に、手馴れた様子で櫛がコロネに突き刺さる。 コロネが一つ、二つと解け、最後のコロネが解けると同時にジョルノは二匹の元にたどり着いた。 「ジョ「ジョナサン」ジョ、ジョナサン、助かったのね! 全く、お姉さま達ったらシルフィーを置いて「話は後だ。今やる事はわかるな?」ひーんっ…お、斧を突きつけるのは止めて欲しいのね!」 ラルカスが涎を垂らしながら、杖代わりの斧でグリグリとシルフィードの頬っぺたを押し込む。 それが杖だということは治療をしてもらったシルフィードがよくわかっていたし、人間ではとても片手では扱えないサイズの黒光りする斧を軽々と扱う牛男に洞窟で戦った記憶が蘇ったのか、シルフィードの涙腺は決壊寸前だ。 ジョルノは苦笑してそれを眺めながら、髪に染色剤を塗りこんで、上着を脱ぐ。 亀の中へテントウムシのブローチがついた上着を仕舞い、代わりに出した汚れ一つ無い白いシャツを羽織ってボタンを留めていく。 ギーシュのようにフリルが付いてるわけではないが、使われている生地の光沢と洗練されたシルエットが黒髪になったジョルノを引き立てていた。 ラルカスが今着ているモノと同じく、ジョルノが作った偽ブランドで作られたシャツなのだが、筋肉質過ぎて聊か不恰好になってしまうラルカスには、本当に同じ商品なのか疑いたくなる優雅さをシャツは与えていた。 「怖がらせても仕方ないでしょう。シルフィード、飛べますね?」 言いながら斧を下ろさせるジョルノに、シルフィードは一も二もなく頷いて二人が乗りやすいように体を捻る。 ジョルノは生み出したモグラがほんの少し前に掘った穴を足で埋めながらその背に飛び乗る。 ラルカスも同じく、治療しながら埋めたジョルノのモグラが開けた穴を足でいじり、完璧に隠滅してから背中に乗り、シルフィードは再び空へと舞い上がる。 亀と魔法が飛び交う方へと急速に向かうシルフィードの背中で、ジョルノは亀の中からマントを取り出した。 そして最後に取り出した細い杖を軽く手の中で回して、ジョルノはゲルマニア貴族ジョナサンになった。 「ジョナサン、アンタ相変わらずメイジっぽい格好をするのが得意だな」 これから向かうトリスティン魔法学院の生徒のように、マントと杖を携えたジョルノを見てラルカスがぼやく。 「そうですか? 何故かはわかりませんが…凄く馴染むんですよ」 「なんだそりゃ「きゅいきゅい――!」 その時、空中へと伸ばされた一際大きな腕が、タバサの物と思われる魔法に粉々に砕かれた。 砕かれたゴーレムの腕が大きな土くれとなって周囲へ散らばり、一部がジョルノシルフィードへと飛来する。 散弾のように降り注ぐ拳大から、牛男の銅より大きな塊へ、ジョルノはゆっくりと杖を向けた。 「エア・ハンマー」 無駄ァッ!! ジョルノが魔法を唱えた瞬間、その一瞬だけ二人には見えない古代ギリシアの彫刻の如く優美な像が一瞬だけ出現し、時計のような装飾が施された左腕が土の塊を全て砕いて消えた。 何か言いたげな視線が、二人からジョルノへと向けられる。 「何です?」 「助かったんだが、なんか…違わないか?」 「私も何か違うような気がするのね。きゅいきゅいっ!」 「いいえエア・ハンマーです」 ジョルノの爽やかな笑顔は、この時は凄く胡散臭かった。 それを感じたラルカスとシルフィードは同時に叫んでいた。 「嘘だっ!!」 二人の疑惑の声をジョルノは一笑に付して土煙が立ちあがる辺りへと杖を向けた。 「どうでもいいじゃないですか。さぁいきますよ…!」 爽やかだが、どこかイっちゃったような目をしたジョルノの呟きは風に紛れて消えていく。 今までに無く心地よく聞こえた声に、噴出す汗を抑えきれずラルカスはただ頷いた。 ジョルノが話しかけてくる言葉に危険な甘さがあった…だからこそ、ラルカスはその時恐怖を感じていた。 「ジョナサン…アンタ、どこかおかしい所は無いか?」 「…(奇妙なことなんですが)今の僕は最高にハイって感じなんですよ。薬を打った時なんでもできるような、良い気分になると言う人がいるそうですが…」 汗をかきながら尋ねたラルカスにジョルノは答えた。 その言葉には微かに戸惑いがあったが、ラルカス達は気付く余裕がなく…ディスクを差し込んだ辺りを触れるジョルノを、ただ見ていた。 「他人のスタンドをつけたせいで妙な影響を受けちまってるのか、僕は?」 シルフィードの背中で、とても小さな声でそう呟いていた時、フーケとポルナレフ達の戦闘は終了しようとしていた。 さほど距離が離れていない上、ポルナレフの移動速度はフーケを上回っている。 炎による生物探知機まで装備した亀を相手にするマチルダは、自分が追い詰められていくのを実感していた。 空を飛ぶ亀を相手にするには、詠唱をする時間が惜しかった。 加えてマチルダが身を隠す森が亀を相手にするには不向きだった。 マチルダが身を隠すように、亀が木々の間を抜けてマチルダを追いかける事を選んだ瞬間から…レーダーを持たないマチルダは適当に広範囲を巻き込むしかなかった。 だがその範囲に巻き込んだとしても…! 亀が操る炎。少し離れて行動する風のメイジが予想以上の腕を見せ、全て防ぎきる。 キュルケが炎を操るのは有名だったし、ルイズが魔法を使えないことはもっと有名だったからそれがタバサのせいだとはマチルダにもわかる。 だが、複数生み出した亀を貫く為の針をさえ、防ぐ程とは思っていないことだった。 焦り、唇を噛むマチルダが体を隠していた樹木が、一瞬で燃えあがった。 「チッ…」 舌打ち、慌ててその場から逃れようとするマチルダの体に、容赦ないエア・ハンマーの一撃が入る。 肺の中の空気が全て追い出され、意識を失いそうに鳴るのを辛うじてマチルダは防ぐ。 偶然切れた口内の痛みか、それとも吹き飛ばされて木に叩きつけられて生じた痛みかはともかく、マチルダは重たい体に鞭打って、自分に迫ってくる亀と、距離をとって杖を構えるタバサを見つめた。 「マ…いやいや『土くれのフーケ』。追い詰めたぜ!」 「カメナレフ…!」 マチルダはタバサに視線を向ける。 ここに来る途中、襲われた時のように切り抜けるか? そんな考えが一瞬浮かんだが、今食らった手加減されたエア・ハンマーとタバサの無感情な目が、別の手を選ばせた。 こうなっては、このドーピングされ普段より段違いに素早く作り出せるゴーレムに、マチルダは賭けることにした。 「カメナレフの生物探知機、フーケの攻撃も止んだ…フーケは貴方」 小さな体に不釣合いな杖を向けられたマチルダは、笑みを浮かべた。 「…あぁそうさ。私が『土くれのフーケ』だったのさ。アンタらが勘違いしてくれて助かったと思ったんだけどねぇ」 「ったくあの時私の話を信じてくれりゃあこんな手間がかからねぇで済んでたのによ」 「…あの時の話はセクハラだった」 沈黙が訪れようとする。 だがそれを、マチルダが杖を投げ捨てて未然に防いだ。 何故なら、こちらへと接近する者達がたてる騒音が、彼女の耳にはしっかりと届いていたのだ。 「降参だよ。おとなしく捕まるからここで丸焼きってのは勘弁して欲しいねぇ」「そうしてくれると助かるぜ。女を殴るのは気分が悪いからな」 ポルナレフは無造作に亀を持ってマチルダに近づいていく。 タバサは、まだ離れたままいつでもマチルダを攻撃できるように杖を向けていた。 その目はどんな些細な行動も見逃さぬと言わんばかりに、注意深くマチルダの動きを観察していた。 マチルダが少し肩を竦めたり、降参の証として、杖を彼女の方へと蹴っても、タバサは杖を向け続ける。 「そんなに怖がらなくったっていいじゃないか、ねぇ? カメナレフ」 少しだけ、媚を売るような仕草で言うマチルダに、ポルナレフは戦いに挑む緊張感を少しだけ解す。 同時に杖を持っていないメイジに何ができるわけでもねぇ、という考えが浮かんだポルナレフは、マチルダの手を縛る為の縄を探しながらタバサに声をかけた。 亀の中には、亀の中から出られないポルナレフの為にジョルノ達が結構なんでも揃えてくれているのだが、ロープの類があったかどうか、ポルナレフは覚えていなかった。 だって使わねーからなぁ、とポルナレフはぼやきながら棚をあさる。 「ん? そうだな…おい、タバサ。杖もお前が持ってるんだし、もういいじゃねーか」 亀の言葉に、タバサは杖を下ろさずに少しだけ亀へと視線を向ける。 ポルナレフは聊か軽薄な調子で、(マジシャンズレッドもそれに呼応して手を広げたりしたが、タバサには見えなかった)拝み倒す事にした。 「もう心配ねーって、後で手を縛ったりすりゃ何もできねーだろ」 「駄目。今しておく」 「いや、できればそうしたいんだが…ちょっと見当たらなくってよ」 ポルナレフの言葉をタバサとマチルダは不審に思った。 「? どこを探しているの?」 「あー…秘密だ。あえて言うなら、私の四次元ポケットだな」 余計に胡散臭くなったカメナレフに、タバサは先程は悪い事をしたので譲歩しようかという気持ちが砕ける音を聞いた気がした。 むしろやる気満々になって杖を向けるタバサに、ポルナレフはちょっぴり泣いた。 だがポルナレフがちょっぴり泣いた分だけ緊迫感が薄れたその時、タバサはシルフィードが接近する音に空を見上げた。 タバサが見上げると同時に、シルフィードが姿を現す。 翼を大きく広げ、降りてくる巨体が巻き起こした衝撃波が3人を襲う。 一番小さいポルナレフは、マジシャンズレッドに亀を抱え、タバサを風から守る為に動く。 それを尻目に、マチルダは襲い掛かる風から身を守る振りをして、小さな杖を取り出す。 広範囲を適当に潰すだけでは効果が無いなら、不意に訪れる一瞬にかけた。 既に詠唱は終えていたゴーレムの腕を瞬間的に複数生み出し、時間差で全てカメナレフへ向け襲い掛からせる。 「チィッ…『マジシャンズ・レッド!!』」 カメナレフが叫ぶと同時に、炎が出現し腕を溶かしていく。 だがマチルダが用意したカメナレフへ向かう幾多のゴーレムの方が、勝るとマチルダは直感した。 視界の端に見えたタバサが、今度は加減抜きのエア・ハンマーを唱え、マチルダを殺すかもしれないが…それよりもカメナレフをゴーレムの腕が握り潰す方が先だッ! だがそこで、突然マチルダは意識を失った。 マチルダがゆっくりと倒れ、ゴーレムが砕け散り、エア・ハンマーが消滅する。 唖然として声も出ない。タバサも、ポルナレフも。 だが、ポルナレフとタバサの間には大きな違いがあった。 ポルナレフにはこの現象が理解できていた。 全て。同時に、一秒の差もなく砕け散った。 「こ、これは…まさか!」 空を見上げたポルナレフの視界に、牛男と共に降りてくる黒髪の貴族の姿が見えた。 だが! マントと杖を見れば、自然と貴族を連想したが…その顔には見覚えがあった。そこへ植物を掻き分け、ルイズとキュルケが来る。 「タバサッ!「ミス・ロングビル…! カメナレフッ、フーケは!?」 草で切ったのか、手足から血を流しているルイズが気になったが、二人はラルカスとジョルノから目を離せなかった。 シルフィードの背中から降りてきた二人は優雅な仕草で礼をする。 「お久しぶりです。タバサ、それと初めまして。ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストーとお見受けします、私はネアポリス伯爵です」 「…どうしてここにいるの?」 状況がわからないまま、挨拶を返すルイズ達にかわって、タバサが尋ねる。 ジョルノはマチルダを一瞥する振りをしながらルイズ達に言う。その目は、油断なく警戒するポルナレフを観察していた。 「魔法学院へ向かう途中、巨大なゴーレムを見かけましてね、ミス・ヴァリエールとここでお会いできたのは運がいい」 「アンタ、どうして私の事知ってんのよ…!?」 亀からルイズへと視線を移すジョルノに、ルイズは食って掛かる。 その声は常にも増して刺々しい。 円盤を落とし、フーケ退治にも貢献できていない…情けない自分を責める気持が、自分の中だけでは抑えられず、外へもあふれ出していた。 ネアポリス伯爵がどういう人か噂で聞いていたキュルケは、詰まらなさそうに髪を手櫛で梳く。 皆が大怪我もなく、円盤がなくともフーケも捕らえたので怒られるいわれは無い、そう考えるキュルケにはルイズの刺々しさは、うざったい。 そんなことより本当に当人か確かめたかった。 ポルナレフも、頭が違いすぎるがまさかジョルノ?という疑問を解決したかったが、グッと我慢していてルイズが自分を責めていることには気付かなかった。 「貴方のご家族からよく聞いていましたから」 「ごご、ご家族ですって?」 はい、と言って懐から取り出された手紙に、ルイズは緊張し体を硬直させる。 手紙は複数あり、その一通が母からの物だという事をその封筒から察したルイズは、恐怖で震え始めていた。 今回の自分の事を母が知ればどんな顔をするかなど、考えたくもない。 そんなルイズに、ジョルノは無造作に近づき、手紙を渡す。 「私との事はその手紙に書いてあると思います…貴方にジャン・ピエール・ポルナレフという人を探すのに協力していただきたかったのですが」 言って、ジョルノは亀を見る。それにつられ、皆がマチルダの周囲をうろちょろする亀に目を向ける。亀は動きを止め、ジョルノたちの顔を順に眺めた。案外知能が高いのかもしれない。 「手間が省けましたね」 そう言った自称伯爵の表情を見て、ポルナレフは確信した。 コイツ、ジョルノじゃねぇか、と。 ジョルノは無造作にポルナレフに近寄る振りをして、今度は先程気絶させた女性がマチルダかどうかを確かめる。 「ポルナレフさん、アンタ何やってんです?」 「やっぱりお前かよ…てめぇこそ何やってたんだ? 遅いじゃねぇか」 「そこは後で話すとして、私の馬車に行きませんか。学院に戻りながらでも会話はできますからね」 ジョルノはそう言ったが、ジョルノは予想していなかった。 ルイズとポルナレフが、(ルイズはスタンドが見えない為契約が完了したと勘違いしているが)使い魔の契約も誤魔化した、微妙な関係である事を。 馬車にいる客人、イザベラがガリアではタバサを虐めていて、ここでもその調子を引きずりタバサを『ガーゴイル』呼ばわりすること。 それにキュルケがキレてしまうこと…そして、連行される『土くれのフーケ』のローブで隠れた姿形を見ただけで、テファがマチルダだと気付く事を。 「そ、そうよ!! こうしちゃいられないわ! 円盤を探さないと…!」 ルイズが背を向けて、もと来た道を戻っていく。 『土くれのフーケ』は捕らえたが、肝心の円盤を落としてなくしたなどとは口が裂けても言えない…! 顔を青ざめさせたルイズの肩をキュルケが掴んだ。彼女がシルフィードで向かう事を提案する横で、異邦人二人はコソコソと相談する。 「お前、さっきのアレはどういうことだよ…!?」 「後で、といいましたよ。ポルナレフさん」 ゴールド・エクスペリエンスで二人の会話に聞き耳を立てているタバサを指差す。 『世界』を手に入れておきたいって気持があったポルナレフは、渋々唸って黙り込んだ。 「ムゥうッ!」 呻く亀を手に持って、ジョルノはルイズ達と共にテファが待つ馬車へと向かい歩き出した。 ポルナレフ…ジョルノとは再会できたが、じゃあルイズとはこれからどうしようかって悩みが浮上。 ルイズ…フーケは捕らえたものの、奪還予定だった『破壊の円盤』を無くしいいところもなく落ち込む。そこへ届けられた実家からの手紙にビクビクしている。 タバサ…ジョナサンが不治の病と診断されていたルイズの姉を治療したと聞いて希望がムンムン沸いてきた。イザベラの事はちょっぴり気になったが後回し。 キュルケ…親友を『ガーゴイル』呼ばわりするタバサの従姉妹にキレそう。 マチルダ…気絶したまま連行される。 ラルカス…運んでいく最中に偶然触った『土くれのフーケ』のお尻の感触が忘れられない。 イザベラ…ジョナサンが色々連れて戻ってきた事に驚き、今にもキュルケと喧嘩する羽目になりそう。 テファ…連行されるマチルダを見て青ざめている。 ジョルノ…妙な円盤の力に溺れているような気分で、とても気に入らない。 To Be Continued...
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舞踏会が始まった頃にまで、時間は戻る。 ジョルノがイザベラと踊っている頃に、ポルナレフの入った亀を抱えたラルカスの偏在は牢屋への道を走っていた。 ラルカスは急いでいた。 フーケの身柄が、明日にもこの魔法学院から遠く離れたトリスティンの城下町の一角にあるチェルノボーグの監獄に移送されてしまう、というのもある。 学院の牢とチェルノボーグの監獄とでは軽微に大きな差がある。 兵士を買収すれば案外簡単に侵入できるのかもしれないが、兵士へと引き渡すまで身柄を任された魔法学院の牢から脱獄させる方が容易だと、ラルカスは考えることにした。 魔法学院の面子はこれでまた潰れてしまうだろうが、急がなければならなかった。 理由は二つある。一つは、テファがジョルノに反抗し組織入りを望んでいること。 彼女が手っ取り早く手柄を立てジョルノに本気であることを示すには今やるべきだとラルカスは考えていた。 テファまでいなくなると潤いがなくなる…ということではなく、テファの境遇を考えれば普通に暮らすことを考えるより目の届く所において事務仕事でもやらせておけばいい。 ジョルノとラルカス、ポルナレフにフーケまでが加わるのだからなと、個人的な意見だがラルカスはそう考えていた。 もう一つは『土くれのフーケ』を求めるのはジョルノのパッショーネだけではないということだ。 『レコンキスタ』と名乗る組織がフーケをスカウトしようとしているという情報が入っていた。 それ自体は余り驚いてはいない。 ジョルノはテファを自分から切り離す為にフーケを使う予定のようだが、ラルカスだってできればパッショーネに参加させたいと思っているからだ。 だが、本体は(勿論コルベール等のジョルノに指定されたメイジと親交をもとうとはしているが)舞踏会を楽しんでいるし、他にもヴァリエール領内などで暗躍している偏在がいるため余り多くの精神力を分配する事は出来ない。 もしもの時の事を考えてポルナレフも連行してきたが、できれば『レコンキスタ』が来るより先にフーケを引っ張り出したいと言うのも、ラルカスの本音だった。 本体の視界に髪を黒く染め、コロネを解いて髪を下ろしたジョルノが親交のある貴族の子女や調べておいた有望そうなメイジと談笑している姿が入ってきて少しため息が出たが、今回は仕方ない。 ジョルノがこの場にいたら、亀の中に手を突っ込んでテファがいないかどうか入念に調べてしまうだろうからな。 気付かない振りをして亀を荷袋につめたラルカスは、警備の兵士を金と自分が地位の高い貴族であるという振りでクリアして牢屋への道を急いだ。 本体の視界では、その時はまだジョルノは頭の禿げた中年教師の発明の話を熱心に聞いていた。 牢屋に続く通路は、余り清掃がされておらず汚れていて薄暗い。 舗装されているだけで隠れ住んでいた洞窟と大差ないとラルカスは感じた。 煉瓦で組み上げられた壁を照らす、一定の距離を置いて設置された灯りをラルカスは消していく。 ミノタウロスという身体能力では人間を超える怪物の肉体を持つラルカスには、灯りが無いほうが有利だった。 灯りを消しながら黴臭い空気が淀む通路を進むラルカスの荷袋の中、その中でじたばたする亀の中でポルナレフは神妙な顔つきでソファに座っていた。 普段ジョルノが座っている所から人一人分程離れた位置にはテファが緊張した面持ちで座っている。 テファの手には彼女が魔法を使うための杖と、ジョルノがこちらに着て作り出した拳銃が握られている。 ジョルノの夢に付き合う為には、手を汚す覚悟がいると思っているのだ。 ポルナレフはそれを見て少し罪悪感を覚えた。 テファをこんなことに関わらせるべきではないというジョルノの考えに、ポルナレフも基本的には同意しているし、何よりジョルノを裏切る行為だという理解しているからだ。 だが、ポルナレフにはテファの頼みを断る事ができなかった。 テファの真剣な眼差しから感じられる、初めて出会った時の彼女からは考えられないような事を行うと決めた意志に… 既に、それは所詮他人に過ぎないポルナレフが説得できる時期を過ぎていると悟ったのだった。 ここで協力せずジョルノの考えどおりにした所で、テファはジョルノを追いかけてより厄介な事になる。 そう感じたポルナレフは、テファの行動を助ける事を決めたのだった。 だが…ジョルノの荷物から持ってきた拳銃をポルナレフに見せたテファを、ポルナレフは脳裏に描く。 だが、助けると決めてもジョルノの判断の方が正しいような気もしている。 その相反する気持がせめぎ合うお陰で、本当は考えなければならないルイズとのことを余り考えないようになっているのだが。 今は無事にこの件を完了することだけを考えようとしているポルナレフは気付かなかった。 ジョルノを裏切ることになると知っていて協力することを決めたのだ。 最低でもマチルダの救出を完遂し、無事に送り届けるまでは完遂しなければポルナレフのプライドに障る。 あ、ありのまま現状を説明するぜ。 私は再会したテファに同情していたら彼女が悪の道に入る手伝いをする羽目になった。 な、何を言っているかわからねぇと思うが、私にも何が起こっているか(事情が全く)わからなかった。 って言うか私は今こんなことをしている場合じゃあないんだがな。 ポルナレフは内心ため息をつきながら、思いつめた表情で胸元を押さえる手にルイズ達が持っているような杖を握るテファを見る。 自分が泣かせてしまったルイズと比べると同じ生き物なのか疑うような物体が目に入り、ポルナレフは唾を飲み込んだ。 「…ゴホンッ、テ、テファ。もう一度だけ聞いておくぜ。もうすぐ牢屋に着くと思うが…本当にいいのか? こういっちゃ何だが、マチルダお姉さんを助けてもジョルノがお前を組織に入れるとは限らないぜ。アイツを怒らせるだけかも知れん」 「うん。でも、やらなくちゃならないの」 ラルカスのフェイスチェンジで普通の人間の娘のように見える顔を俯かせたまま答えるテファにポルナレフは片手で頭を抑えた。 やはり今のテファを見る限り、説得しても無駄だとしか思えなかった。 後でテファも救出するのに協力しただとか言ってもいいと言っても、テファは退こうとはしなかった。 ここまでやるなんて、まさかジョルノの野郎。 ポルナレフは腕を組んで考え込んだ末、 「手は出してないと言っていたが…実際はテファに子供達には聞かせられないような手を出しまくっておいて、履き古した服をタンスの肥やしにするみたいに厄介払いするつもりなのか?」 「ポルナレフさんよ…アンタ、声に出てるぜ」 天井からラルカスの突込みが入り、ポルナレフはテファに平謝りする。 テファは首を振ったが、意味はわかったのか顔を赤くしていた。 ばつが悪そうにするポルナレフをフォローするように、ラルカスの声が再びかけられる。 「見張りが見えてきたぜ…どうする? 金を掴ませるかそれとも眠ってもらうかだが」 「眠ってもらうのが一番だな。私に任せろ」 「よし」 ポルナレフがマジシャンズレッドを出す。 ルイズとの一件で凹んでいるせいかいつもより迸る炎の勢いは緩やかなようだ。 上半身裸の鳥男は荒ぶる鷹のポーズで亀から飛び出し、亀を抱えたまま早足に歩くラルカスに先行する。 牢を見張る兵士があくびをしている姿が目に入る。 舞踏会の夜だから気を抜いているのかそれとも普段からそうなのかはわからないが、ポルナレフは好機と見て一気に距離を詰める。 「ムゥンッ、赤い荒縄(レッド・バインド)!」 亀の中で突如私があげた叫びに呼応し、マジシャンズレッドが炎の縄を放つッ! 兵士が炎の熱と光に気付き、驚きと共に顔を向けた時には勢い良く伸びた炎が腕を、足を縛り上げ、口を塞ぐ。 中々の速度と精度、そして兵士の顔焼き尽さない程度の奇妙な熱さ。 私は着実にマジシャンズレッドを制御できるようになっている事に少し満足感を覚えた。 崩れ落ちる牢番から牢屋の鍵を奪い取り、ラルカスに投げる。 空中に浮いた鍵や炎の縄をラルカスがどう思ったかは気になるが、ラルカスは何も言わず走り出した。 廊下を通り抜け、牢獄へと続く階段を下りていく。 「ポ、ポルナレフさん突然どうしたの?」 だが、いきなり雄叫びを上げた私の姿はテファには奇怪なものに映ったらしい。 ドン引きしながら声をかけてくるテファに私はスタンドのことを説明しちまった方がいいような気がした。 「ああ、これはスタンドって言ってな。まぁ魔法みたいなもんだ」 「そ、そうなの…」 なんだか誤解が解けていないような気がするが…ま、まぁ余り気にしないで置くとしよう。 今はそれよりも早急にやらなければならないことがある。 ラルカスは既にフーケが入れられている監獄が並ぶ階層に着ている。 「おや! こんな夜更けにお客さんなんて、珍しいわね」 奥の牢から聞こえてきた声にテファは笑顔を見せた。 「この声、マチルダ姉さんだわ!」 「そうなのか?」 ちょっぴりしか聞いた事が無い私には判断が付かないが、テファの様子を見る限りは間違いない。 ポルナレフは再びマジシャンズレッドを亀の外に出してラルカスが見ている牢の中を見る。妙齢の女性が身構えていた。 剣術を嗜んでいたポルナレフには彼女がそれなりに喧馴れしていることと彼女のボディはやっぱり結構グンパツだということはわかった。 訓練しているかどうかはわからなかったが。 「おあいにく。見ての通り、ここには客人をもてなすような気の利いたものはございませんの。でもまあ、茶飲み話をしに来たって顔じゃありませんわね」 「単刀直入に言う。貴方に我々の組織に参加していただきたい」 大柄なラルカスが腰を折り曲げて言うのを見てマチルダは鼻で笑った。 「話が早いね。アンタの組織って言うとパッショーネかい?」 「よくわかったな」 「2メイル越えの巨体のメイジ。その上これだけ手の早い組織ってのはそうはないからねぇ」 ラルカスは2メートル強の巨体。 正確には2.5メートルはある肉体にの今はマントに包まれて隠れているが盛り上がる繋がった丸いボールのような筋肉は威圧感などを加え、見る者にはそれ以上の大きさに見せている。 そして巨大な斧。顔はフェイスチェンジで変えているためミノタウロスではないが、マチルダは逆に納得していた。 ミノタウロスのメイジという話の方が常識的ではないのだ。 自分が納得するような考え…例えば恐怖に駆られた者達が勘違いしたのだとでも考えた方が、納得が行くため…疑問には思わなかった。 「それで返答は?」 マチルダは肩を竦める。 「気が早い男は嫌われるよ。アンタ達が「余り時間が無いのでな。マチルダ・オブ・サウスゴータ。”レコンキスタ”アルビオンの貴族派が動いている」 かつて捨てることを強いられた貴族時代の名前を言われたマチルダの顔は蒼白になった。 マチルダもパッショーネがアルビオンの内乱前後に設立された事は耳にしていたが、まさか知っている者がこの世にいないはずの名前まで調べられているとは思わなかった。 「アンタ、どこでそれを?」 平静を装い、震える声で言うマチルダからラルカスは…正確には有無を言わせずにミノタウロスの体を乗っ取った地下水が視線を自分が降りてきた階段へと向けた。 亀をマチルダに放り投げ、受け取ったかどうかも確認せずに地下水はミノタウロスの体を走らせる。 「ちょっと! どこに行くんだい!?」 降りてきた階段から黒いマントを纏った人物が飛び降りた。 着地すると同時に既にその人物はラルカスへ長い魔法の杖を向けている。その一連の動きだけで、その人物が軍人だという事は理解できた。 教本通りだが、熟練した動き。地下水はじっくり仮面の人物を観察する。 白い仮面をつけており顔は伺えないが、余裕を見て取った地下水は笑みを浮かべているだろうと考えた。 エア・ニードル。杖が細かく振動し、高速で風が渦を巻きドリルのような形状を作り出す。 風で生み出されたドリルが迫ってきても、地下水は走る速度を緩めずに腕をかざした。 腕に当たる風に動じることなく地下水は斧を向ける。仮面の人物は驚いて一手遅れていた。 地下水の放つエア・ハンマーが、一瞬早く飛び退いた仮面の人物を打ち据え、階段を破壊しながら天井へと叩き付ける勢いで吹き飛ばしていく。 天井でプレスされるのだけは逃れたようだが、地下水は追わずに続けて錬金を行い今破壊した階段を塞ぐ。 エア・ニードルは、ラルカスの肉体にかすり傷一つもつけられずに消滅していた。 「今の威力、スクエアクラスか」 二人が一度敗北した『烈風』程かどうかはまだわからないが、地下水と地下水に体を乗っ取られたラルカスは仮面の人物の魔法の腕を理解した。 魔法の腕だけでもないことも…地下水は斧を握りなおした。 一手、相手に譲る。 ラルカスの体を得てからの地下水の得意の戦法。 ミノタウロスの肉体の強度を持って一撃目を合えて受け、大抵驚いて一瞬動きが止まるメイジを叩き潰す。 クリーンヒットせずともスクエアクラスの魔法は、相手に決して軽くは無い傷を負わせる。 だが、この仮面の男はまだ元気に動きまわっている。侮れぬ相手と地下水は受け取った。 「おい、敵か!?」 地下水の背中にポルナレフの声がかかる。 壊れた階段を閉鎖しながら、地下水は振り向いた。空中に浮かぶ亀に地下水は頷く。 「ああ。トリスティン貴族だと思うが、さっさと逃げるぜ。『土くれ』は?」 「今姉妹喧嘩の真っ最中だ」 地下水は返事を聞きながら、亀を懐に仕舞いその場から飛び退く。 直後に、二人が立っていた横の壁が破壊され、散らばっていく煉瓦の波の中から仮面の人物が現れる。 退きながらポルナレフのマジシャンズレッドが放った炎と炎が届く直前、どうにか間に合った風の魔法が衝突する。 仮面の人物に亀を見られはしなかったはずだが、どうしたものか…地下水は悩み始めたが、油断なく魔法の杖でもある巨大な斧を構え、自分の本体である剣が固定されている事を確かめる。 仮面の人物をトリスティン貴族と考えたのは男の動きがトリスティンの軍人、それも恐らくは近衛隊のものだったからだ。 長く傭兵として生き、ガリアの裏でも暗躍していた地下水の経験からしてそれは間違いない。 元貴族のラルカスとしては、この男と正々堂々とこの場で決着をつけたいという気持が沸いている。 『烈風』を今後乗り越えなければならない身としては、当然超えなければならないだろうという義務感に似た感情もある。 だが、こんな相手と戦うのは今回の任務ではないし、ここで時間をかけ騒音を聞きつけて学院の関係者が集まってしまうと不利だ。 テファをつれてリスクを負う気は無い。 今の手際を見れば、このまま逃げるのが容易ではないことは明白だが、任務は完了させなければならない。 地下水とラルカスは湧き上がった感情を抑え、逃げる手を考え始めた。 仮面の人物が杖を下に向ける。 「待て、私に争う気は無い」 「いきなり杖を向けてきて何言ってやがるッ」 「それについては謝罪しよう。我々には優秀なメイジが一人でも多く欲しい。協力してくれないかね?」 地下水は鼻で哂った。 冗談半分の軽い口調でレコンキスタのスカウトに返事を返す。 「貴様こそうちに来いよ。ボスはどんな素性の者でも受け入れる器量があるぜ」 「麻薬の売人如きで終わるつもりか。貴様も元は貴族、ハルケギニアの将来を憂う気持はないのか?」 再度尋ねてくる相手に地下水はうんざりしたような顔をする。 ラルカスは勿論、地下水にもそんな気持はなかった。 インテリジェンス・ナイフとして生まれた地下水にあるのは、この長い生をどのように生きていくかだけだ。 自分の肉体は無く、自分と同じ時間の流れの中を生きる物と出会うことは早々無い。 百年も立たぬ内に退屈になっていた地下水にとって興味があるのは、退屈をどう潰すかだけだった。 その点、ジョルノ達と行動する今は案外嫌いではなかった。 新しい相棒のラルカスの体を使えば今までに無いレベルで魔法を行使できるし、退屈はしない男だからだ。 ラルカスも同じだった。病に冒されていた頃に、既に国家への忠誠はどうしようもなく落ち込み、今はもうない。 だから仮面の人物に油断無く斧を向けながらこう答えた。 「下らんね。俺が興味があるのはどう生きるかだけさ」 ならばと、仮面の人物が纏う空気が張り詰めていくのを感じて、地下水は笑みを浮かべた。 * フーケが救出されようとしている頃、舞踏会に参加するはずだったイザベラは、まだ学院が用意した客室にいた。 本来なら舞踏会に参加していたはずだった。 トリスティン貴族の子女達を背景にパートナーとなった犯罪組織のボスとダンスをしたりするはずだったが… その予定は準備をしている途中で、突然の来客により崩れさっていた。 「ふむ…?可愛らしい娘ではないか。私は本当にどうかしていたらしいな」 「ほ、本当にどうされたのですか?」 イザベラの容姿をザッと上から下まで観察した美丈夫はうん、と大きく頷いていった。 今までそんな言葉をかけられた覚えがなく、戸惑うイザベラにジョゼフは苦笑した。 ガリアの玉座に座っているはずの、時間的には美食を堪能しているはずのイザベラの父親が、屈託のない顔で笑っていた。 「少し前からここ何十年かの記憶を失ってしまってな。ある方の薦めもあって戻ってくるのを待つより、こうして迎えに来た方が案外記憶を取り戻す良い切っ掛けになるのではと考えたのだ」 「記憶喪失、ですか…?」 戸惑いを隠せない娘に、ジョゼフは頭を下げた。 「うむ。これまでは冷たく当たってすまなかったな。許せ」 「え? は? なんで頭を」 呆気にとられたままのイザベラとジョゼフはそのまま、イザベラのことを根掘り葉堀り尋ねているうちに舞踏会は始まり、時間が過ぎた。 ジョゼフは本当に記憶を失っているかのように、色々な事を尋ねてくる父親が本当の事を言っているのかどうか、イザベラにはまだ判断が付かなかった。 だが、舞踏会が始まるその頃になってやっと、そんなイザベラも我に帰った。 「そうか…シャルルは本当に」 シャルルが死んだ時の事を尋ね、悲しげな表情を見せる父親の真に迫った表情。 照明に照らされ、目に涙の膜が張っていることに気付いたイザベラは、父親を疑っていた。 自分でしでかしたことを確認する無神経さには呆れたし、これまでのことを考えると、今のジョゼフは胡散臭すぎた。 誰だコイツ? どうやってイザベラの下へたどり着いたのかとか、色々な疑問もあったが、我に帰ったイザベラの頭に浮かんだのは違和感だった。 若々しい壮年の肉体はそのままだ。蓄えた髭なども。 だが、身分を隠すためか服装はラフだった。 この学院の生徒と大差ない、と言ってもいい。 公式の場意外では余り父と対面していなかったから、というのもあるが。 白シャツ。皮の手袋やブーツ…どれもイザベラが今までに見たジョゼフと比べると、飾り気の無い物だった。 装飾品と辛うじて言えるのは、(これをつけているからジョゼフだとわかったのだが)始祖から受け継ぐルビー位で他には腕にも首にも、何の宝飾もなかった。 杖さえ、一見して良い物とわかるが宝石の類は見受けられない。 それに明るく、陰りなどない表情は…まるで別人のようではないか。 自分の豹変に戸惑うだけでなく、ガリアにいる臣下。その中でも側近となる者達や愛人と全く同じ態度… 疑いさえ持ち始めた娘にジョゼフは気付き、ため息をつく。 人づてに聞いた自分とのギャップを考えれば仕方がないとはいえ、切なかった。 胸中で始祖ブリミルに祈りを捧げながら、ジョゼフは話を切り替え、初めて表情に陰りを見せた。 「そういえばお前が世話になったネアポリス伯や…シャルルの娘にも会わなければならないな。イザベラ、すまんが後で案内してくれないか」 「え、はい。父上」 「シャルロットが許してくれるとは思えんが、母親やオルレアン家のことだけは言っておかねばな」 肩を落として言うジョゼフにますますイザベラの疑念は増し、シャルロットとネアポリスという名前が異様な父親へ一つ尋ねさせた。 「父上、シャルロットをどうなさるおつもりですか?」 「無論正統な地位と権利を与えるつもりだ」 「馬鹿なッ…父上、それは」 「危険性については理解している。シャルル派を名乗る者どもが勢いを取り戻すことも、私がシャルロットに殺されることもない」 断言するジョゼフにイザベラは心の中で毒づいた。 ジョゼフの口ぶりからすれば、そうなるように既に準備が十分に済んでいるのだろう。 そうした手腕に関してはジョゼフは天才的と言ってもいい手腕を誇っている。 でなければ暗愚と呼ばれながらも王を続ける事など不可能なのは、イザベラが一番良く知っていた。 アンタはいいかもしれないけどそれじゃこっちは困るのさ! イザベラがシャルロットを味方に引き込むためにはシャルロットは不幸なままがいいのだ。 今の不幸な状態ッ、ジョゼフが完全にシャルロットと敵対している状況が凄くいいのに! ジョゼフの言う事が本心であれ、何か思惑があるのであれ…謝罪や協力などを求める手紙は、既にシャルロットに出してある。 だが今のジョゼフの言い様からすると、シャルル派の貴族達が揃ってバックにつきシャルロットはシャルロットだけでジョゼフに対抗しようとするかもしれない… 利を考え始めたイザベラにジョゼフは気付いたが、何も言わずに悪戯っぽい表情を作ると部屋に来る時持ってきた大きな箱をイザベラに示す。 「…フン。ところでイザベラが置いて行った使い魔を念のため連れて来たのだが…」 ニヤリとするジョゼフに、イザベラは顔を青くした。 視線を父親が持ち出した金属の箱へと固定して、震える声で尋ねる。 「あ、アイツをですか…!?」 「使い魔とメイジは共にいるものだろう?」 「ですが…アイツは」 当然のことを言うジョゼフにイザベラは口を濁し、ジョゼフが持ち込んだ箱を今度は視界にいれないようにする。 箱の中にいるであろうイザベラの使い魔は…イザベラに劣等感を抱かせる要因の一つでしかなかった。 始めは、喜んだ。 イザベラが数年前に召喚し、未だ衰える気配を全く見せないそいつはハルケギニアでは見ない、新種の鳥だった。 だがソイツはイザベラを使い魔の分際で見下ろしてくる。それが気に入らなかった。 そして、シャルロットが竜を使い魔としてからは、鳥さえ御する事ができない自分を否応なしに比べてしまう…見たくは無い物へと変わっていた。 その時、箱の内側から氷が突き出た。イザベラは悲鳴を上げ、身を竦めながら距離を取っていく。 ジョゼフは逆に好奇心で目を輝かせ、固定化をかけた金属を容易くぶち抜いた氷の鋭い輝きや、その奥から覗く猛禽の目を眺めていた。 金属製の箱をあっさり破壊した氷が砕け、中から一匹の隼が飛び出す。 軽く羽ばたきその体が宙を舞う。 「ペットショップ…」 何か予感めいたものを感じてジョゼフに従い、今勘にしたがって飛び出したペットショップは窓をこじ開けて外へと飛び立った。 一応は主人であるイザベラが後を追ってレビテーションを唱えているのはわかったが、気にも留めなかった。 レビテーションを使えないジョゼフが置いてきぼりを食らった事もどうでもいい。 翼の形状から、頻繁な旋回・方向転換などは不得意であるはずだが、悠々と旋回を繰り返し学院の建物を出たり入ったりして、灯りの近くを移動する。 ニワトリのように夜盲症ではないので、月が二つ輝くハルケギニアの夜はペットショップには十分な明るさだった。 着飾った人間達を見下しながら、ペットショップは自分が召還された時の事を思い出していた。 ペットショップが召喚されたのは、主人の屋敷をかぎ回る糞ったれな犬(イギー)に敗れた直後だった。 最早ペットショップの命の灯は消えかかり、傷ついた体は死体一歩手前だった。 だがガリア王宮の優秀なメイジ達はそんな彼を奇跡的に治療してみせた。 弱っていた自分にキスをした幼いイザベラの顔を使い魔のルーンが刻まれる焼け付く痛みと共にペットショップは今も記憶に止めている。 それから数年の月日が流れた今も。 だが何故か殺す気にならず、それを不思議に思わず主人であるDIOの下へ戻っていない。 命を助けられたから恩義を感じている、というわけではないのは自分のことだからわかる。 そんな殊勝な心がけはペットショップには存在しなかった。 それは使い魔のルーンの効果だったが、ペットショップはそれに気付く事は無かった。 時折頭に浮かぶ違和感を振り払いペットショップは学院の周囲を飛ぶ。 本来なら老衰で死んでいてもおかしくない年齢だったが、そんなことは無視した若鳥のような力強い動きではばたいていく。 目が忙しなく周囲を探り、何かを探していた。 ペットショップにも何を探しているのか明確にはわかっていなかった。檻の中で感じた奇妙な、予感を求めていた。 そしてペットショップは一人の人間に目を付けた。 人間が多く集まる会場から抜け出していく人物にペットショップは羽ばたきも極力押さえて、ゆっくりと近づいていく。 主人とは違う鮮やかな黒髪だったし、体つきも柔だ。 だがその華奢なボディや立ち振舞いに、ペットショップは微かに同じ匂いを見た。 注視する間に何処かへ向かう人間の首筋が見えた…首の付け根にある星形のアザが目に入った。 ジョゼフについてガリアを出る前に出会った男の言葉が頭に浮かんだ。 男はあっという間に、それこそチャームの魔法でも使ったかのようにジョセフと親交を結び、貴族達も恐れるペットショップの視線を受けながら、リラックスした体勢で笑みを浮かべてこう尋ねてきた。 『ペットショップ。君は引力を感じたことはあるかね?』 人間はいつのまにか立ち止まり、首だけ振り向いてペットショップを見ていた。 口元には薄く柔らかな微笑がある。爽やかな笑みだったが、声は不思議と心地よかった。 「よければ、僕と仲良くしないか?」 ペットショップは、当然のように人間が差し出した腕に止まった。人間の背後に力あるヴィジョンが一瞬見えた。 人間を背後から抱きしめるようにする黄金に輝く優美な像と、その頭に腕を置く主人のスタンドの像を。 間違いなく、人間は主人の血統に違いないと、ペットショップは確信した。 「ジョナサン!」 ペットショップを腕に止めたまま、生命エネルギーを頼りにラルカス達のいる場所に向かおうとしていたジョルノは足を止めた。 今出会ったばかりの鳥と共に声の方へと視線を向けた。重力を無視してゆっくりと青い髪の女が降りてくる。 「クリス?」 振り向くとドレスアップしたイザベラが着地していた。 レビテーションかフライの魔法で鳥を急いで追いかけて来たのだろう。 今宵の舞踏会のために時間をかけて結った髪が少し乱れていた。 「…もしかして貴女の使い魔ですか?」 「そうさっなのに…いや、何でもないよ。さ、戻るよペットショッ」 連れて行こうと手を伸ばしたイザベラは、ペットショップが自分に敵意のこもった視線を向けていることに気付いた。 それどころか、その周囲が歪み、冷たい空気が流れ始めているのをイザベラは感じていた。 忌々しい気持が浮かんだが、それをグッと堪えてイザベラはジョルノとペットショップを見る。 今日ジョルノに言われたばかりの言葉が頭に浮かんでいた。 自分に、いや誰にも従わなかったペットショップが、何故だかジョナサンに懐いているように見えた。 …自分で使えないのなら。 当然のように腕に止まりイザベラを冷たく見つめる使い魔の目を眺め、思案顔で考えたイザベラは口の端をもちあげる。 「案外いいかもしれないね。ペットショップ、アンタ…ジョナサンを助けてやりな。私の、じゅ、重要な仕事を任せてあるから、目を離すんじゃないよ」 「いいんですか?」 ペットショップに詰めより言い聞かせるイザベラにジョルノは不思議そうに聞いた。 メイジと使い魔はどちらかが死ぬまで共にいるパートナーだという風に、何かの本でジョルノは読んでいた。 それはこの学院の学生が以前ジョルノも生み出した事のあるジャイアントモールに頬づりしていたことなどを見てあながち間違っていないと思っていた。 それをあっさり手放すイザベラが変わっているのか、未だジョルノには正しい定規がなかった。 微かに顔を赤くしてイザベラはそっぽを向いた。 灯りの方を向いたので、横顔ではあったがより表情がよく見えるようになったのだが、そこは指摘せずにジョルノは礼を言う。 「ありがとうございます。彼はペットショップというんですね」 「そ、そうさ。コイツの視界を通し私はアンタを監視できるんだから、これからはサボれないね!」 少し冗談半分にイザベラは言った。 視覚や聴覚を借りる事はできるが、どの程度の距離までそれが行えるかどうか、イザベラも正確には把握していなかった。 「(一方的になってしまいますが)僕から伝たいことがあれば、すぐに貴方に伝える事ができるようになりますね。後で時間を決めておきましょう」 ジョルノもそれには気付いていたが、一方で可能という事になれば、うまくやれば情報伝達を素早くできるかもしれないとジョルノは少し期待していた。 浮遊大陸であるため、飛行船などでよく使われる風の力を秘めた風石の利用がうまかったアルビオン出身のギャング達を中心に技術を再現できないかと電信等を研究させているが、国家間で通信を行うような段階ではない。 ポルナレフが毎日頼んでいた携帯電話で出前、なんてことをやるのはまだまだ無理な話だ。 「わ、わかってるじゃないか。私もそういう使い方を期待してたのさ」 だから伝書鳩や人手による通信を強化していたのだが、離れている使い魔を使って通信を行うという使い方はありかもしれない。 何より他人にはわからないという点が素晴らしい。 どの程度の距離まで使えるかはわからないが、それで1kmでも縮められたら積極的に採用しようと考えながら、嘘っぽいイザベラに礼をいう。 そしてジョルノはペットショップと共にラルカス達の元へと向かう。イザベラに再び背を向けた時既にその目はペットショップが惚れ惚れするような冷酷さを宿していた。 イザベラは急ぐジョルノの背中に手を伸ばしたが、何故か気圧されて声をかけることができなかった。 人気の無いところまで来た時点で、ジョルノは亀を生み出しそれをペットショップに輸送させるという手を取った。 先程から忙しなく生命反応が動いていた。レコンキスタか学院関係者との戦闘に入っているらしかった。 急いでいけば、まだ間に合うかもしれない…ペットショップが足に掴んだ亀の中で、ジョルノは車のシートで寛ぐようにソファにもたれかかり足を組んだ。 * その頃ポルナレフ達は、学院を脱出し周辺にある森の中へと逃げ込み、呼吸を整えていた。 あの場所でアレ以上戦いを続けていてはいつ学院の関係者達がやってくるとも知れない。 そう考えた地下水は逃走し、森へと逃げ込んだ。 人の手が入らない森はうっそうと茂り、二つの月が放つ光を遮る。 植物の枝葉が重なり合い、夜行性の動物達が徘徊する世界は人間の目では暗闇にしか映らないだろう。 だが、仮面の人物はそこに逃げ込んだ地下水を風の動きを頼りに位置を掴み追いかけてきた。 だから地下水はその人物を今、仮面の人物をエア・ハンマーで砕いていた。 ラルカスの肉体を使った地下水のエア・ハンマーは容易に人間を破壊する事ができる…が、杭のように地面に打ち付けられた仮面の人物の死体は無かった。 ラルカスと同じく、敵も遍在を使っていることに気付いていた地下水は特に驚くことも無く鼻を鳴らした。 何故わかったかといわれると返答に困るのだが、何度も使用してきたからか、なんとなく実体かどうかわかるのだった。 思っていたより手強い相手だった。 鍛えられた肉体、スクエアクラスと思われる魔法の腕と、軍人達が使う戦闘に特化した詠唱方法。 詠唱の技術や体捌きはラルカスや地下水より洗練されていた。 だがどれほど鍛え上げようとミノタウロスと人間の差はその程度では埋まらなかった。 生半可なエア・ハンマーやニードル、カッターでは、主要な風の魔法の殆どは、ミノタウロスの皮膚を貫く事は出来ないのだ。 地下水は斧を振るい、錬金で作り出した避雷針を消す。 エア・ニードルを防いだ自分に何を使ってくるのか。 地下水はライトニング・クラウドを警戒し、敵が放つ瞬間に身代わりを用意したのだった。 それはラルカスの発案だった。 烈風に負ける前のラルカスでは、思いつかなかったかもしれないと地下水は考え…ラルカスに体の主導権を返す。 ラルカスは安堵の息を吐き、亀の中にいるはずのポルナレフに、途中から戦闘を全く手伝わなかったポルナレフに険のある声を出す。 「ポルナレフさんよ。アンタさっきから何やってんだ? アンタも手伝ってくれればこんな冷や冷やしなくてすんだんだぞ」 だが返事は無い。 ラルカスは少し不機嫌になり、ぶっきらぼうに言う。 「ポルナレフ。姉妹喧嘩はどうなった?」 そう尋ね亀を覗き込んだ瞬間、中から伸びてきたゴーレムの手が、ラルカスの首を掴んだ。 「ッ?」 「アンタのボス…いいや、あのクソガキのところに私を案内しな」 中から聞こえてくる声は、地獄から響くような怨念めいたものが感じられた。 少し冷や汗を垂らしながらラルカスは中を見る。 …き、貴婦人に手をあげるのは紳士としてやっちゃいけませんよね? 亀の中の部屋では、同じようにポルナレフがゴーレムに捕まっていた。 そして、説明をしているテファがいて、かなり危険な目をしたフーケと目が合った。 「何してるんです?」 「ボス、アンタいつきたんだ?」 ラルカスはゴーレムの腕を握りつぶし、周囲に目をやる。 見覚えの無い鳥が同じように周囲を警戒している姿が目に入り、ラルカスを見下ろす冷徹な瞳が合った。 「今です。ペットショップに運んでもらいました」 「…アンタに話があるらしいぜ?」 いつのまにか背後に立っていたジョルノへ哀れむような目を向けたラルカスの姿が消える。 遍在を解除し、この場から逃走して舞踏会などに専念する事にしたらしい。 ペットショップが警戒していてくれるので、ジョルノ自身は余り警戒せずに亀の中へと入っていく。 腕を組み、親の敵のように睨みつけてくるマチルダへジョルノは笑みを浮かべたまま礼をする。 「…お久しぶりです。マチルダさん」 「ジョルノ…アンタ、覚悟はできてんだろうね?」 「姉さん、ジョルノは悪くないわ。ジョルノは姉さんとゲルマニアに行けって言うの。でも…」 ドスの効いた声を出すマチルダに、慌ててテファが説明する。 だがマチルダは可愛い妹を一瞥しただけで、面白くなさそうにジョルノへ視線を戻す。 To Be Continued...
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概要 人間関係 ノ\r┐_ノ} __,ノ⌒´ _ノ⌒\ /⌒ヽ /⌒ーァ }. { fil } / /三ミヽ. 〈 r‐{ {リ 八 イ⌒V ∧ {ト、`丁´__ }_ノ fiミ }、 . 乂}_.ノ /-┐ ノ } } } ∨fiリノ |イ 人___ イ / | /ニ∧⌒\/八. /___ |//{二 ∧\__∨ } fこ... /_)/ニニニニ}三≧ハ__ (/⌒\ニニニニニニ) ) l}_ \ /ニニニ \ニニニニ 人 {__) }\___ {ニニニニニ∨ニニニ \__ノ}ニニ ハ 人ニニニニニ}ニニニニニニニニ}ニニニ}─────────────────────────────────────── +ステータス ┗╋━━━━━━━━━━ ┃Name:ジョルノ・ジョバァーナ┏╋━━━━━━━━━━▽ 能力 ▽ 生命値 : 根性値 : 人間性 : 傾向 :┏ ┳ ┳ ┓┃ 接近:00 知略:00 敏捷:00 ┃┣ ╋ ╋ ┫┃ 射撃:00 技巧:00 幸運:00 ┃┗ ┻ ┻ ┛▽ 傾向 ▽▽ 技能 ▽▽ 道具 ▽ +ダウンズ __ / ヽ \ / ヽ ヽ / |l く\ ヽ /ヽl | \/二二二ヽ i | // || ヽ_ i| |,,,____|| [~| ヾ'''ノ-ヾ''ソ| L| || ||/ |\ L == j/| ,--|| \皿/ ヽ_ /| /il | ヽ / / ゝ __ / l /i| ヾ,, ~ ,,,,// ~~^ヽ,,_、 // / / /~i~~⊂⊃⊂~ι==~~~~~⊂⊃⊂⊃ /⊃ヾ //|/┗╋━━━━━━━━━━ ┃Name:ライフイズビューティフル┏╋━━━━━━━━━━ 耐久値 : 特徴 : 武装 : 火力 : 純度 :┏ ┳ ┳ ┓┃ 接近:00 知略:00 敏捷:00 ┃┣ ╋ ╋ ┫┃ 射撃:00 技巧:00 幸運:00 ┃┗ ┻ ┻ ┛▽ 特徴 ▽▽ 武装 ▽ 概要 故人。幼少時のやらない夫がいた商隊を護衛していた傭兵。 るるいえの商隊の護衛中に積み荷を狙ったダッチ率いる黄昏流星国の集団の襲撃を受ける。 黄昏隊の部下数名の命とダッチの片腕を奪うも、新入りとして忍び込んでいた志々雄に殺された。 るるいえの国家元首である幻海の孫。幻海の息子が他所で作った子であり、承太郎の腹違いの兄。 幼いころから自身の立場を理解しており、迷惑にならないよう自ら傭兵志願して国を離れた過去を持つ。 低純度を極限まで強化したダウンズ「ライフイズビューティフル」を使用。 拳を主体とした接近戦を得意とする。当時としては個人の持てる最高純度レベルのダウンズ。 死後、「ゴールド・エクスペリエンス」と改名され、承太郎に引き継がれた。 最期まで逃げず戦い、やらない夫を守ろうとした。その為、背中には一切の傷を負っていない。 人間関係 やらない夫 守るべき対象であり、自身を兄貴として慕っていた弟分。 戻る
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J-490 ジョルノ・ジョバァーナ J-490 SR キャラ 黄金の風 奇 P3 S3 T(5) ☆☆☆ ★『ゴールド・E(エクスペリエンス)』は生命を与え続ける能力! 「レアリティ R」の味方全てを「P+3、S+3、T+3」する。 奇・奇・奇 ジョルノ 人間 出典: ド×0/バ×0/ゴ×0 記念すべきジョジョABC初のシークレットレアカード。 「レアリティ」を対象とする珍しい能力。 しかしこのカードの真価はむしろ、「奇」単で出せるレベル 3の攻撃力5のキャラ、にある。 風以外の幽奇デッキに、キャラかぶりなし、レベル上げが容易なJ-608 ゴールド・エクスペリエンスが加えられるなど、SRのレアリティに相応しい実用度。 難点を言えば、SRゆえの希少性で、そうそう集められるものでないところか。
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No.29 ジョルノ3/高橋書店 ジョルノ1~4があるがカラーの違いのみで全てA5サイズのバーチカルノート 見開き週間のバーチカルであるが、縦の区切りが強調されていない方眼なのでバーチカルの時間や幅に規制されず自由に書ける。ガントチャートのようにも使える。 オフィシャルWEB https //www.takahashishoten.co.jp/notebook/31477.html アマゾン https //www.amazon.co.jp/2020%E5%B9%B4-%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC-No-477-2019%E5%B9%B4-12%E6%9C%88%E5%A7%8B%E3%81%BE%E3%82%8A/dp/4471794779/ref=pd_cp_229_1/358-9327860-1322958?_encoding=UTF8 pd_rd_i=4471794779 pd_rd_r=31034280-3ef4-458a-accc-4195871ed154 pd_rd_w=xcSfs pd_rd_wg=q4MIR pf_rd_p=3be1534f-36f4-440c-b13e-b22eee9f7cff pf_rd_r=NHPQBVJ28C1ZSQKG62BG psc=1 refRID=NHPQBVJ28C1ZSQKG62BG 個人WEBのレビュー https //money-is-tight.com/mylife/takahashi_schedule/2007/
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→参照 出典:ジョジョの奇妙な冒険Parte5(黄金の風) DIOと日本人の母の間に生まれ、イタリア人の養父に育てられた。 その為、イタリア国籍を持つが、本名は「汐華初流乃」(しおばな·はるの)。 ジョルノ·ジョバァーナの名はイタリアで暮らす為に名乗った通称。 ミサスレにおいてはその独特な髪型からコロネと呼ばれる事もしばしば。 使用するスタンドはゴールド·エクスペリエンス(黄金体験)で、殴ることで無生物に命を与えることができる能力。 応用として外傷の治療もできるが、痛みを伴う。 勿論、ミサミサが刺されば痛みを伴うのは仕方ない。 時にPORORI画像で使用されているダビデ像の紳士部分からポークビッツと揶揄される事もある。 ただダビデ像は少年の像である事に加え、 当時は慎ましやかな皮付き紳士でないと倫理的にアウトだった事を、 制作者ミケランジェロの名誉のために付け加えておく。 …ポルノ穴さんの名誉? なにそれ食べれるの? ポークビッツはよくとらぬこに狙われている。 スゥー・・・バシィーーッ!! コロ音って誰ですか? コロネ図書館ってどこですか?
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ジョルノ・ジョバァーナ&アーチャー◆DIOmGZNoiw ジョルノ・ジョバァーナは、石段に腰を下ろし、感嘆の息を吐いた。視界に広がる世界は、すでに見慣れた世界ではない。生まれ育ったイタリアでも、ましてやスノーフィールドでもない。 そこは、見渡すかぎりの財宝の海だった。この世に現存する古今東西の伝説上に語られる宝具の原点がそこかしこに転がっている。剣に槍、斧に弓、食器から飛行船まで。この蔵に存在する宝の中に、ただのひとつとして贋作は存在しない。すべてが正真正銘の、宝の山だった。その宝と宝の間を埋めるように、大小様々な金塊がうず高く積み上げられている。黄金の蔵、という印象をジョルノはいだいた。 この世に現存する宝と黄金をありったけ集めれば、或いはこの景色を再現することはできるのかもしれない。だが、ひとりの人間の力でそれを実現することは、決定的に不可能だ。莫大な富と権力を持て余した富豪が一生を費やしたところで、これだけの財宝を集めきれるわけがない。 莫大な数の宝の山。無限の財宝。総数を数えることは、最早物理的に不可能。人ひとりが一生遊んで暮らしても足りぬ程の富。それが今、眼前に積み上げられている。 ジョルノは、この荘厳なる光景が自分の心象の内にあるものでないことを、理解している。誰の夢であるのかも、理解している。 その男は、神話の時代の終わりに誕生した、半神半人の魔人。 神にも人にも理解されず、自らの存在のみを法となし。 この世のすべてを手中に収めた、世界最古の英雄王。 輝かしい英雄王の夢の一部を、それでもジョルノは、どこか凪いだ気持ちで眺めていた。 漠然とした他人の夢を、物語の外から眺める語り部のような心持ちでいた。 ジョルノ・ジョバァーナには、夢がある。黄金のように尊い夢がある。 それは、眼前に広がる見渡すかぎりの黄金と比べれば、ちっぽけなものだ。だけれども、散っていった仲間たちに誓った夢は、いかな無限の財宝を積まれようとも、その光輝に眩まされることはない眩さを秘めている。 その夢と比べれば、眼前の財宝の海は、どこか、虚しいものであるように感じられた。 蔵に積み上げられた財宝は、確かにどれも美しく、かけがえのない宝ばかりなのだろう。それはジョルノにもわかる。だけれども、ジョルノがこの胸にいだいた夢もまた、眼前の黄金すべてと比べても遜色はしない光輝を放っている。だからジョルノは、今更物理的な黄金を見せられた程度でひるみはしない。 ふと、背後から感じる気配に振り返ったとき、そこに金髪の男がいた。鍛え上げられた上半身をさらけ出した半裸の男だ。その男が、笑った。嘲るような笑みだが、敵意は感じられなかった。その笑みの意図を探るうちに、ジョルノの意識は現実へと引き戻された。 ◆ 規則的に体を揺さぶる車の振動の中、ジョルノはふと目を覚ました。 短い時間だが、夢を見ていた気がする。小さくかぶりを振って、靄の掛かったような思考を覚醒させる。窓の外を見ると、ジョルノが生まれ育ったイタリアとは似ても似つかない景色が広がっていた。近代的なビルの立ち並ぶアメリカ、スノーフィールドの街並みだ。車の中で、移動中にまどろんでいたらしい。自分でも気付かないうちに疲れていたのかもしれない。 「お目覚めですか、GIOGIO(ジョジョ)」 運転手がミラー越しに視線を向ける。ジョルノが支配する組織、パッショーネの構成員だ。今日はこうしてジョルノの送迎を買って出てくれている。 ええ、と短く返したジョルノは、どこか現実感の伴わない意識のまま、再び窓の外の大都会へと視線を投げた。自分のおかれた状況を思い出す。 実物となんら遜色しない街並みだが、このスノーフィールドが現実世界でないことを、ジョルノは知っている。この空間は、月の聖杯戦争に参加するマスターとサーヴァントのために用意された擬似空間だ。その中で、ジョルノにはこの擬似空間で生活するための設定(ロール)が与えられている。ジョルノは、自らに与えられた役割をまっとうすることにした。 「今回の交渉、上手くいったようでなによりですね」 「ええ、一悶着あるかと思っていましたが、相手方も話の分かる組織だったようで、安心しました」 交渉。それが、ジョルノに与えられた設定のひとつ。台本の筋書き。 交渉相手は、アメリカに本部を置くスピードワゴン財団だ。彼らと協力関係を結ぶため、財団に指定された場所――スノーフィールドまで足を運んだ。流石に世界を牛耳るスピードワゴン財団に対して、重要な交渉を、幹部や部下に任せっきりにするわけにもいかない。相応の相手と認め、ボスであるジョルノが直接遠いアメリカまで出張ってきた。という設定だ。 実際、スピードワゴン財団と協力関係を結ぶ、という話自体は現実世界でも上がっていたので、設定としては無理なく、現実感もあると、ジョルノは感じていた。 最前の運転手との会話の通り、交渉の結果自体は上々だった。スピードワゴン財団としても、イタリアを広く支配するパッショーネと裏で繋がりを持っていたい、という思いがあったのだろう。それはパッショーネとしても同じだ。ジョルノの交渉の甲斐あって、今後は両組織の間に協力関係が結ばれることになった。これで、ジョルノの組織はかつてディアボロが支配していた時代よりもずっと動きやすく、そして頼もしい後ろ盾を得たことになる。 スピードワゴン財団には、表立って動く「悪」が現れた時、それを察知し正面から叩き潰すために動くスタンド使いの協力者がいる、という噂を聞いたことがある。空条なんとかいう名前だったとは思うが、確かではない。 表立って動く「邪悪」を駆逐する「正義の十字軍」がいるとするなら、彼らが動けない、裏の世界で暗躍する「邪悪」を潰すのが、ジョルノらのパッショーネだ。街を穢す「邪悪」をひとりでも多く排斥するためには、そういう結託も必要だと思われた。少なくとも、ジョルノは自らの組織の役割をそう捉えている。 いずれ現実世界に戻った際のシミュレーションと思えば、悪くはない結果だった。 ジョルノが聖杯戦争の真実に気付いたのは、些細な違和感が原因だった。 この街に入ってからというもの、記憶が不鮮明だったのだ。あらゆる記憶が、ところどころ欠落している。いったいなぜ、不自然と思わないのか、それが不自然であることすら考え付きもしなかった。それそのものが不自然だというのに。 そもそも、ジョルノはなぜ、ボスとしてこの国へ入国するに至ったのか。組織のボスという類まれなる環境に身をおきながら、ボスになるまでの経緯が思い出せない。これが最初の違和感だった。なにか、忘れてはいけないことを忘れている、と。直感的にそう思った。そう感じてからは早かった。組織のボスとして、ジョルノにはやるべきことが、夢がある。悪を制するギャングスターとなって、麻薬や汚職で汚れきった街を浄化する。そういう、散っていった仲間に誓った黄金のような夢がある。 そこまで思い出した時、脳裏に蘇ったのは、かつてジョルノが所属した組織のチームリーダー――ブローノ・ブチャラティの姿だった。 かつてのボス、ディアボロとの最後の戦いで、空へ昇っていったブチャラティの魂の気高さを、ジョルノは思い出した。連鎖するように、ここに至るまでのあらゆる記憶が蘇る。ジョルノには、この聖杯戦争で成し遂げねばならぬ目的があった筈だ。 それを思い出した時、ジョルノの黄金のような精神に呼び寄せられた英雄は、ようやくその姿を表した。 「なんだ。既に聖杯戦争が始まっているのかと気が気でないか、雑種」 ジョルノの後方で、皮で出来たソファーに深く腰掛けた英雄が、嘲りの笑いをとともに問うた。窓に向かい合っていたジョルノが踵を返し、英雄に視線を向ける。 はじめてジョルノの前に姿を表したとき、その英雄は、全身を覆う黄金の鎧を身に纏っていたが、今は違う。鎧を脱ぎ捨て、髪を下ろしたアーチャーは、一件ただの小奇麗な金持ちの若者、といった風情をしている。だけれども、その所作から滲み出る高貴さと気高さが、彼が凡夫ではないことを示している。彼こそは、世界最古の王。この世の財宝を集めきり、無限の富を蓄えた黄金の英雄王。今回はアーチャーのクラスで召喚されている。 アーチャーは自らの蔵から取り出した黄金の盃に、同じく蔵から取り出した酒を少量注ぎ、呷る。それを嚥下してから、鮮やかな真紅の瞳でジョルノを見た。燃えるようなその虹彩の色に反して、視線はずいぶんと冷ややかだった。 「僕を『気が気でない』というなら……あなたは逆に……ずいぶんと余裕そうですね」 鼻で笑って、アーチャーはもう一口、黄金の杯の酒を呷った。 「当然だ。我(オレ)がなにを焦る必要がある。そも、この聖杯戦争は貴様の戦争であろう。我は無聊の慰めに、貴様の足掻きを眺めるだけよ」 アーチャーの言った通り、既に両者の間で話はついている。 ジョルノの目的は、聖杯を獲ることにある。しかし、アーチャーはそもそも聖杯に興味がない。ゆえにアーチャーはジョルノには従わない。さらにいえば、アーチャーにはジョルノの部下という認識は露ほどもない。逆だ。ジョルノが、アーチャーに縋り付いて助けを乞う側なのだという。 そこまで傲岸不遜に己を貫くアーチャーがそれでもジョルノに付き合うのは、先の言の通り、無聊の慰め――要は暇潰しだ。 「雑種。貴様は我に、聖杯に託す願いはないと言ったな」 「ええ、言いました。しかし、聖杯は獲ります……絶対に」 「ハ、願いを持たぬ男が、なにを拠り所に戦うというのか」 「言ったはずです。このジョルノ・ジョバァーナには夢がある」 視線を逸らさず、英雄王をまっすぐに見据えたまま、ジョルノは己の意思を述べる。 「そして、夢とは……自らの力で叶えるものだ。僕の夢に、聖杯が介在する余地はない」 それは、黄金のように気高い夢。 ギャングによって腐り切った街を、ギャングスターのジョルノが救う。 麻薬を売買する者を徹底的に始末して、この世に存在する麻薬を根絶する。 汚職にまみれた役員を、そして私腹を肥やすことしか考えない公務員を排除する。 聖杯に願えば容易いまでも、人の身でこれらすべてを成し遂げるのは、困難であるように思われる。 だけれども、その夢のために近道をしようという考えは、ジョルノにはなかった。それぞれの夢をかけて、聖杯戦争に参加した者を皆殺しにして頂点を掴み取るというやり方は、結果だけを追い求めた以前のボスとなんの違いもない。 ジョルノは、そういうやり方を求めない。 「ほう、それは矛盾だな。貴様はこの戦争を気に入らぬと断じた。だが、戦争には乗る? 綺麗事を並べ立てようと、それでは聖杯を狙う凡百の簒奪者どもとなにも変わらぬではないか」 「聖杯は獲る。しかし、マスターは殺さない。サーヴァントだけを『始末』する」 「話にならぬ。他者を殺めることを躊躇せぬ外道がマスターが相手でも、同じことが言えるのか」 「そういう人間が相手なら、話は変わってくる。そういうやつらもまた、例外なく『始末』するのが僕の仕事です」 一切の淀みも衒いもなく、ジョルノは即答した。 命は尊重する。だが、命を摘み取る悪が相手ならば、ジョルノ自身も悪となって、それを排除する。 悪を制して、正義をなす。ギャングになってからというもの変わることのなかった、裏世界での生き方だ。 深く息をついたアーチャーは、もう一度あの冷ややかな視線をジョルノに送った。 「ハ、貴様は度し難いほどに歪んだ男よな。――いや、まあ、それはよい。で? 聖杯を獲らんとする貴様の目的は」 「二度とこんな戦争を起こさせない。そして……聖杯が願いを叶える願望機というなら……この戦争で傷付いた人々に救済を」 「そうかそうか! ならば重ねて問おう。貴様と同じ『尊い志』を持ったマスターとサーヴァントが相手なら?」 尊い、という言葉を強調して、アーチャーは嘲りの問いを投げる。 「その時は、協力することも視野にはいれます。だが、最後に聖杯を獲るのは僕だ……そこは変わらない。そして……僕にはそれを成し遂げるだけの『覚悟』があるッ!」 ジョルノの言葉もアーチャーからしてみれば予想通りだったのだろう。 諦念混じりに笑みを浮かべたアーチャーは、再び金の盃を取った。 「これだ。この道化っぷり、どこまでも度し難いものよな」 「道化、この僕が?」 「道化でなくて何とする! まったく、不遜にもこの我を喚んだ魔術師が、どれほどの猛者かと思えば……聖杯を獲るため、他者を蹴落とすならばまだ話は分かる。それこそが遍く魔術師の懐く正しき目的なのであろうよ。だが、見よ。蓋を開けてみれば、貴様はただの『救世主気取り』ときた――これでは興醒めもいいところだ。最早此度の聖杯戦争の愉しみなど、貴様の奮戦ぶりを眺めて嗤うほかにはあるまい」 言いつつ、アーチャーの口元の笑みは深まっていた。口角が不敵につり上がっている。それがなにを意味する笑みなのか、ジョルノは図りかねる。だがしかし、なんと言われようと、笑われようとも、ジョルノの意思は揺らがない。今更他者になにか言われたくらいで、考えを改める程度の覚悟であるなら、そもそもジョルノは組織のボスになどなってはいない。 聖杯に願う望みがあるとするなら、この聖杯戦争によって人生を捻じ曲げられた無辜なる人々を救済すること、のみだ。他に願うことなどなに一つとしてない。その必要もない。 ギャングによって汚された街は己の力で変える。自らの力で、良い方向へ進むようにと願いながら、真実へ向かって歩いて行くことに意味があるのだ。結果だけを追い求めた上っ面の言動は、いつか必ず滅びるということを、ジョルノは誰よりも理解している。 言い返そうとしたジョルノを制するように、アーチャーが軽く片手を上げた。 「だがな、雑種。貴様のような道化を眺めるのは……これはこれで、存外に『愉しい』という思いもある。人の身に余る救世の大望を背負い込み、苦しみ、足掻く、その葛藤……慰みモノとしては上等だ」 アーチャーの意図が汲み取れない。ジョルノほどの男が、アーチャーの真意ばかりはいつも読み切れない。 返す言葉もなく、視線のみで応えるジョルノに、アーチャーは笑みを向けた。 「我の言わんとすることが判らぬか、雑種」 「ええ……言いたいことがあるならハッキリと伝えたらどうです、アーチャー」 「ハ、どこまでも慇懃無礼な返事をする。つくづく礼儀を知らぬ男よな、貴様は」 「それはどうも。褒め言葉ととっておきます」 一瞬眉をひそめたアーチャーだったが、すぐに相好を崩し、表情に浮かんだ陰は鳴りを潜めた。 「フン、まあよい。精々、己の限界に挑み、奮戦することだ。案ぜずとも、貴様の足掻く様は我が見届けてやる。道化とはいえ、仮にも貴様は我がマスターゆえな」 「そうですか……、ありがとうございます」 今度は軽く頭を下げた。 アーチャーが、再び笑った。 「確かに貴様は愚かな道化だ。だが、同時に貴様には我の無聊を慰める責務がある。それが早々に壊れる様を見せ付けられることほどつまらぬこともあるまい……事によれば、我が力を下肢してやってもよいのだぞ」 「それは……このジョルノ・ジョバァーナに……力を、貸してくれる……と、捉えても」 「たわけが、付け上がるなよ雑種。道化なりにも見込みはある、それだけだ。無条件にいつでも力を下肢してやるなどと思ったら大間違いよ」 今度はジョルノが眉をひそめる番だった。アーチャーの考えが、上手く読み取れない。 「あなたが言っていることは、つまり……その時々の気まぐれで戦う、と……そういうことですか」 「ハ、当然であろう。言ったはずだぞ、これはあくまで貴様の戦争だとな。ゆえにくだらぬ期待は捨てておけよ雑種。妙な期待は貴様の足元を掬うぞ」 アーチャーの真紅の瞳が、突き刺すようにジョルノを睨めつける。視線だけで射殺されそうな威圧感だったが、それでもジョルノは、自らと肩を並べて戦う英霊を前にして、下手な緊張を表に出したりはしない。毅然とした態度で、アーチャーからは微塵も視線を逸らさない。数瞬の沈黙ののち、杯に盛られた酒をすべて飲み干したアーチャーは、すっくと立ち上がり、再び嘲りを含んだ笑みを見せた。 「もっとも、貴様がそのようなくだらぬ期待に殺される程度の男ならば、それでもよい。その時は、我も大人しく座へと帰るのみよ。だが、そうでないなら、証明してみせよ」 「証明……?」 「貴様が我にとって認めるに足る存在であると示せば、ともに戦ってやらぬこともない」 「ふむ。もしもそうなったら……きっと、何よりも心強い味方となってくれるのでしょうね」 「フン、当然であろう。この我を誰と心得る。我こそは、世界最古の英雄王ぞ! 貴様が我を飽きさせぬ限りにおいては、我もまた物見遊山がてら務めを果たしてやってもよい」 くつくつと不敵に笑うアーチャーの傍らに、金の波紋が広がった。 「ただし――我を失望させるなよ、雑種。もしも失望させた時は……」 波紋の内部から射出された金の短剣が、ジョルノの首筋を擦過して、背後の壁に突き刺さった。首筋に傷はついていないが、しかし確かな熱を感じる。額を、冷や汗が伝う。 もしもジョルノがアーチャーを失望させた時は、その時は――死よりも重い刑罰が待っている。玲瓏な眼差しで言外にそう告げたアーチャーは、まるで大気に解けるようにその姿を消した。霊体化したのだ。こうして魔力消費を抑えながら、気が向いた時だけ姿を見せる。物見遊山がてら、とは言ったが、本当に気まぐれで現れ、気まぐれで戦場を引っ掻き回していくつもりなのだろう。であれば、彼が言ったように、対サーヴァント戦において、ジョルノはアーチャーの戦力にあまり期待するわけにはいかない。 自分一人でも戦っていく方法を模索する必要がある。サーヴァントと二人一組の相手に、ジョルノひとりで戦っていく方法を、考えなければならない。成程、そう考えれば確かに前途は多難だ。 しかし、不可能だとは思わなかった。 ――おまえの気高き『覚悟』と…… ――黄金のような『夢』に賭けよう、ジョルノ・ジョバァーナ。 はじめてブチャラティと出会った時にかけられた言葉を、ジョルノは今も覚えている。 ジョルノ・ジョバァーナには仲間たちに誓った夢がある。黄金のような気高さに満ちた夢がある。 状況は困難だが、たとえ一歩ずつでも、真実に向かって歩んでいく。その在り方は、どこにいようとも決して揺るぐことはない。黄金の英雄王の真意は読めないが、そんなジョルノだからこそ、彼も一応は味方側についてくれているのだろう。 ふう、と一息ついて、ジョルノは、背後の壁に突き刺さった短剣に視線を送った。金の短剣が、粒子となって消えていく。夢で見た、あの莫大な数の宝物と金とを収めた蔵へと還ったのだろう。 あの黄金の夢を共有したジョルノは、不思議と英雄王に対し、嫌悪感は感じてはいなかった。傲慢で、鼻持ちならない英霊だとは思うが、それでもジョルノには、彼の気高さは誇り高いものであるように感じられた。 戦力として期待はできない。できないが、英雄王とならば、やってやれない気はしない。そういう不思議な確信があった。 窓際に立って下界を見下ろしたジョルノは、これから始まる過酷な戦いに思いを馳せて、しかし、不敵に微笑んだ。 【出展】Fate/Grand order 【CLASS】アーチャー 【真名】ギルガメッシュ 【属性】混沌・善 【ステータス】 筋力B 耐久C 敏捷C 魔力B 幸運A 宝具EX 【クラス別スキル】 対魔力:E 魔術に対する守り。無効化はできず、ダメージ数値を多少削減する。 単独行動:A+ マスター不在でも行動できる能力。もはややりたい放題。 神性:B 最大の神霊適正を持つのだが、ギルガメッシュ本人が神を嫌っているのでランクダウンしている。 【保有スキル】 カリスマ:A+ 大軍団を指揮・統率する才能。 ここまでくると人望ではなく魔力、呪いの類である。 黄金率:A 身体の黄金比ではなく、人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。 大富豪でもやっていける金ピカぶり。一生金には困らない。 バビロンの蔵:EX ギルガメッシュは財宝のコレクターでもある。 地上のものはすべて集めた、とは彼の口癖だが、それは比喩でもなんでもない。 彼は彼の時代において発生した、あらゆる技術を集め、納め、これを封印した。 【宝具】 『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』 ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:1~99 最大補足:1000人 エヌマ・エリシュ。 乖離剣エアによる空間切断。 圧縮され鬩ぎ合う風圧の断層は、擬似的な時空断層となって敵対するすべてを粉砕する。 対粛正アーマークラスか、同レベルのダメージによる相殺でなければ防げない攻撃数値。 乖離剣エアは剣のカテゴリではあるが、その在り方は杖に近い。三つの石版はそれぞれ天・地・冥界を表し、これらがそれぞれ別方向に回転することで世界の在り方を示している。この三つすべてを合わせて宇宙を表しているとも。アルトリアのエクスカリバーと同等か、それ以上の出力を持つ「世界を斬り裂いた剣」である。 『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』 ランク:E~A++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足- 黄金の都に繋がる鍵剣。 空間をつなげ、宝物庫にある道具を自由に取り出せるようになる。 所有者の財があればある程強力な宝具になるのは言うまでもない。 【人物背景】 言わずと知れた英雄王である。 今回はGrand orderからの参戦のため、このギルガメッシュ自信に他の聖杯戦争の記憶はない。が、他の聖杯戦争で戦った自分自身を知識として知っていてもおかしくはない。 【サーヴァントとしての願い】 とくになし。 【基本戦術、方針、運用法】 ギルガメッシュは気が向いた時、または気まぐれでジョルノを助けることはあるのだろうが、ジョルノがギルガメッシュに助けを求めることは(よほどのっぴきならない状況でない限りは)おそらくない。 しかし、もしもジョルノがギルガメッシュに助けを乞うのであれば、ギルガメッシュは助けてやるつもりである。一応当分は見殺しにする気はない。 【出展】ジョジョの奇妙な冒険 Parte5 黄金の風 【マスター】ジョルノ・ジョバァーナ 【参加方法】 部下が手に入れた白紙のトランプを偶然手に取った。 【人物背景】 ジョジョの奇妙な冒険 第5部主人公。 父親は邪悪の化身DIOだが、その肉体はジョナサン・ジョースターであったため、ジョルノにはDIOのカリスマ性と、ジョナサンの誇り高き黄金の魂の両方が受け継がれている。 ギャングによって腐り切った街を救うため、ディアボロを頂点とする組織・パッショーネに入団し、組織を内部から変えるため、ブチャラティらとともにボス・ディアボロを打倒するために戦った。 現在は自らがパッショーネのボスとなり、街の浄化のために日夜戦っている模様。 【能力・技能】 『ゴールド・エクスペリエンス』 破壊力 - C / スピード - A / 射程距離 - E(2m) / 持続力 - D / 精密動作性 - C / 成長性 - A テントウムシがモチーフの接近パワー型。触れた物体に生命力を注ぎ込み、無機物から動物や植物といった生物を生み出す能力を持つ。 既に生きている生命を殴るなどして、更に生命力を注いだ場合、過剰になった生命力が暴走を始め、対象は動作やものの見え方が非常にゆっくりとなる。もしこの状態で攻撃を受けると、ゆっくりとダメージを受けて行き必要以上の痛みを感じることになる。 【マスターとしての願い】 聖杯を獲る。叶える願いは、此度の聖杯戦争による犠牲者の救済。 その後は、二度と聖杯戦争が起こらないようにする。 【令呪】 左手の甲に三角。
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-原付の基本について- 原付のタイプ AT クラッチを使用しない二輪車で足を揃えて乗るスクーターが主です。 例外としてカブのように変速機を有するもの、ストリートマジックのような跨るタイプもあります。 MT 手でクラッチ操作を行い変速機を操作する二輪車で、跨るタイプが基本です。 種類としてレーサーレプリカ、ネイキッド、アメリカン、オフロード、ストリート等が存在します。 原付の場合、基本的にスクーターに比べて高価です。 エンジン(2stと4st比較) 2st(2サイクル) 構造上同排気量の4stに比べて馬力を出せるため、明らかに加速が良いです。 エンジンの部品点数が4stより少なく、価格は平均的に4stより安めです。 特徴的な甲高いエンジン音を発するので、4stに比べると耳障りで騒音は大きいと言えます。 2サイクルオイルを燃やしながら走るので、定期的にオイル補充が必要です。 エンジンオイルはバイクの場合大多数が分離給油方式で、オイルタンクに2サイクルオイルを補充します。 エンジンオイルが切れるとエンジンが焼きついて動かなくなります (オイル切れでなくても4stに比べ焼きつきやすい傾向があります)。 排ガスには独特のオイル臭(2stオイルが燃える匂い)がします。 また、車種やコンディションによっては後方に未燃焼オイルが飛ぶ事もあります。 昔は原付をはじめ多くのバイクが2stでした。 環境保護のための排ガス規制により、国内メーカーの国内向け2st新車は2007年9月で全て製造中止になりました。 4st(4サイクル) 現在の主流となっているエンジンです。 2stに比べて燃費が良く、エンジンの構造上エンジンブレーキが強く掛かります。 エンジンの部品点数が2stより多いため価格は高くなりますが、排気ガスは2stよりきれいです。 エンジンの潤滑に4サイクルオイルを使っています。そのため定期的なオイル交換が必要です。 また馬力やトルクが小さいため上り坂には弱く、2stに比べて維持可能な速度が低いです。 ※原付のエンジンの寿命についての質問が多いので追記。 耐久性については、原付は、誰でも使える(メカ音痴含む)ように作られてます。 バイクの知識がない素人が、無茶な使い方しても大丈夫な耐久性をどれも持ってます。 扱い方や保管方法でエンジンに限らず各部品の寿命はとても大きく変化するため一概にこれが寿命時期、とは言えませんが 走行距離20000kmオーバーしている原付スクーターを見ることは稀でしょう。 そもそもエンジン寿命が来る前に大体15000km辺りで部品の一斉交換時期が来るため、 維持に必要な費用を出すなら買い替えした方が良いのではないか?と考えるようになる、 いわゆる経済的寿命の方が先に来ます。 ビジネスバイクであれば走行距離30000kmオーバーしている物も珍しくありません。 こちらは10000km前後でタイヤ、20000km前後でチェーンとブレーキシューの交換時期となることが多いようです。 また、数ヶ月放置すると調子が悪くなったり動かなくなったりすることがあります。 これはバッテリー切れ、潤滑油切れ、雨などによる部品の腐食、ガソリンが腐ったり詰まったりする等 車両自体の耐久性とは別の原因となります。 加速と燃費 現在の原付は50cc以下という縛りに加え規制などの制約の中でぎりぎりの性能を搾り出しています。 したがって加速は燃費とトレードオフの関係であり、基本的に両立させるのは不可能です。 一般的に燃費の良い順に4stMT>>>4stAT>2stMT>2stATとなっており 一般的に加速の良い順に2stAT>2stMT>>>4stAT>4stMTとなっています。 加速の差自体は原付で50~100m競争した場合、0.5秒の差がつく・つかない程度であり 体重差が10キロあれば、それでくつがえってしまう程です。 乗ったことがある方は運転していて、「原付スクーターの加速は速いなあ」と思う事があるかもしれませんが それは原付は車と違い無駄なものが無く軽いことと、発進加速に絞ったセッティングだからです。(一部車種除く) 車の感覚で加速を考えてはいけません。 最高速 原付は基本的に点火系のリミッターで60km/h以上出ないようになっています (一部の原付は非力なためリミッターがついていないものもあります)。 車種によっては改造によってリミッターカットする事も可能ですが、 60km/h以上の速度で捕まった場合は一発免停に加えて前科がつき、裁判所行きとなります。覚悟するように。 それが耐えられないなら二輪免許を取得して原付二種(~125cc)を買いましょう。 インジェクション(FI)について 2007年9月の排ガス規制により、国産の国内向け原付の全車種がインジェクション(電子燃料噴射式)となりました。 インジェクションはキャブレター(気化器式)に比べて割高ですが、始動性・燃費が優秀と言われています。 事実、キャブレターからインジェクションに移行したことで燃費が改善された車種もあります。 ただし今回のモデルチェンジに限って言うと、排気ガス規制の施行による移行のため、一概に「FI化で低燃費化した」とは言えません。 スーパーカブのように、規制対応の結果カタログ燃費が悪化した車種や ギア・JOGのように2st時代と比較しても大きな変化のないカタログ燃費の車種まであります。 ちょっと特殊な車種 ZOOMER メットイン部分を大きな荷台にしているのでメットインがありません。 更にリアキャリアを追加することもできます。前荷台標準装備。タイヤが非常に太いのも特徴です。 DioCesta・JOGPoche・Let s4 Basket 普通のメットインやリアキャリアに加え、シャッター付きの大きな前カゴを標準装備しています。 ベースとなった車輌に比べて少し重く、価格も高めですが積載力は大幅に向上しています。 GEAR・MOLLET リアキャリアがビジネス仕様の大型です。メットインはありません。GEARの新聞仕様とMOLLETは大型の前カゴも装備しています。 VOX メットイン部分のラゲッジスペースが大きいのが特徴です(34L…普通のスクーターの約1.5倍程度)。 但し形状が特殊なので半キャップ以外、ヘルメットの収納はできません。 また荷台もありません(別途オプションで購入することはできます)。 ZZ 原付スクーターには珍しい前後12インチタイヤを採用しています。 なお、GEARとMOLLETも前輪には12インチを採用しています。 LOOKER (台湾KYMCO社) 前後に16インチの大きなタイヤを採用、その代わりメットインは半キャップしか収納できません。 ちょっと見たところアンダーボーンのようですが、普通のステップスルーのスクーターです。 チョイノリ あらゆる意味で他の原付スクーターと懸絶している。 言わば、現代に蘇った 80年代初頭の安物バイク。 素人にはお勧めできないらしい。 ※参考サイト バイク選び参考サイト GooBike 単車選び(実際のユーザーのインプレ) 2ちゃんねらのための単車選び(実際のユーザーのインプレ) 中古バイク選びのポイント バイク&車の0-100㎞/h加速動画 まとめサイト
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J-634 ジョルノ・ジョバァーナ J-634 R キャラ 黄金の風 風 P2 S2 T(5) ☆☆☆☆ ●運命とは『眠れる奴隷』だ……オレたちはそれを解き放つことができた…… このキャラが登場した時、バトルフィールドにいる、スタンドの付いていない「登場タイトル 黄金の風」以外の敵3人までを持ち主の手札に戻す。 風友風奇 ジョルノ 人間 出典: キャラを一度に3人もバウンスできるのは強力。 しかし悲しいかな、現環境のトップメタは風デッキである為、実際の対戦では相手の場のキャラが 殆ど登場タイトル:黄金の風であることが多いのである。 効果そのものは強力であるが活躍の場が少ないという、ある意味不遇のカードである。 余談だがこのカード、箔押しの加工にミスがある。 本来キャラの周りの背景などには箔押しが施されるはずなのだが、 ジョルノの持っている地球儀の下部分と左脇下の背景に箔押しが施されていない。
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ジョン・ジョルノをお気に入りに追加 ジョン・ジョルノのリンク #blogsearch2 ジョン・ジョルノとは ジョン・ジョルノの67%は勢いで出来ています。ジョン・ジョルノの28%は時間で出来ています。ジョン・ジョルノの3%はやさしさで出来ています。ジョン・ジョルノの2%は花崗岩で出来ています。 ジョン・ジョルノ@ウィキペディア ジョン・ジョルノ ジョン・ジョルノの報道 gnewプラグインエラー「ジョン・ジョルノ」は見つからないか、接続エラーです。 冬のソナタ またでるよ 冬のソナタ 韓国KBSノーカット完全版 DVD BOX(初回限定 豪華フォトブックレット&スペシャル特典ディスク付) 本当に長い間、待たせてごめんなさい。「冬のソナタ」韓国KBSノーカット完全版をいよいよお届けします。 映像は韓国KBSのオリジナルそのままに、音楽に関してもユン・ソクホ監督が想いを込めて監修し、一部楽曲を変更しました。初回限定特典にはぺ・ヨンジュン 独占インタビュー/ユン・ソクホ監督&田中美里の対談スペシャルDVDの他、DVDオリジナルポストカード、シリアルNo付 豪華フォトブックレット(20P)を封入しております。 今までの日本用編集版よりも約166分長いノーカット映像(本編後のエンドロールも収録!)に加えて、映像特典の【スペシャル短編集】には、ペ・ヨンジュンのスノーボードシーンの撮影風景も収録しています。 【ここが違う!8つのポイント】 ◆今までの日本用編集版よりも約166分長いノーカット映像(本編後のエンドロールも収録!) ◆ファン待望の「ダンシング・クィーン」「白い恋人たち」をついに収録。 ◆日本語吹替を再収録。萩原聖人さん、田中美里さんが担当、その他主要人物もなつかしいあの声で。 ◆本編は日本語字幕に加えて韓国語字幕も収録 ◆一部変更した楽曲をユン・ソクホ監督が想いを込めて監修!(一部BGMはオリジナル版より変更されています) ◆<初回限定特典1>スペシャルDVD:★ぺ・ヨンジュン 独占インタビュー/★ユン・ソクホ監督&田中美里の対談 ◆<初回限定特典2>豪華フォトブックレット:シリアルNo付(20p) ◆<初回限定特典3>DVDオリジナルポストカード3枚 ジョン・ジョルノのキャッシュ 使い方 サイト名 URL ジョン・ジョルノの掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る ページ先頭へ ジョン・ジョルノ このページについて このページはジョン・ジョルノのインターネット上の情報を集めたリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新されるジョン・ジョルノに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。