約 395,755 件
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4345.html
ギザ十と幽霊少女とご先祖様と組織の狗 04 毎度の事ながら、奴らが現れるのは突然だ。 例えば、部屋から出ようとドアを開いた瞬間に、何となく目線を向けた場所に、路の角を曲がった先に。 或いは、朝早くに起こされて眠気眼で大きな欠伸をした後に目を開けた次の瞬間。 奴ら『黒服』は、まるで人の意識の狭間から湧き出るかのように突然目の前に現れる。 漆黒のダークスーツに、漆黒のサングラス、ぴくりとも動かない口元は感情が欠落しているようで、冷たく虚ろな印象を他人に与えている。 いつものように現れたいつもの格好をした『黒服』、しかし俺はそこに少しの違和感を感じた。 「おはようございます、今日はお早いお目覚めですね、貴方はいつも休日は昼頃まで寝ていると我々は認識していましたが」 いつもの『黒服』と同じような無感情な話し方、しかし違う 今まで俺の前に現れていたやつと比べ明らかに声が高い、そして。 「お前、もしかして背が縮んだ?」 今までの『黒服』は俺より頭一つ分大きかったのだが、此奴は若干、俺よりも背が低い。 「人間は基本的に背が伸びる事はあっても、そうそう縮むことは無いと思いますが…」 「お前、人間じゃないじゃん、都市伝説じゃん」 「『もと』人間の、『半』都市伝説です」 「あんま変わらないだろ……、しかし、だとすると今までの奴とは別人か? 前の奴はどうした」 「ええ、その事で今日は寄らせていただいたのです、実は前担当の者が現在療養中でして、貴方の担当が私に移り変わったのでその報告を、と」 「療養中……?」 何か嫌な予感がする。 「はい、昨夜、謎の都市伝説が突如現れ、我々『組織』に宣戦布告をし、襲いかかってきたのです、その強さは凄まじく、一撃で我々『黒服』を消滅させ、手に持った刀の一振りで山すら粉砕させてしまいました」 「…………」 「どうやら、新種の伝説のようで未だ正体は不明ですが、妙な仮面に派手なマフラー、近未来的なデザインのスーツを着用していた事から、特撮やアニメ、ゲームの類から派生した者だと我々は考えています」 嫌な予感的中、そして『組織』の推測、的外れすぎワロタ どう考えても特撮でもアニメでもゲームでもなく、俺と糞餓鬼とロリ婆の共同黒歴史ノートから発生した、中二病設定の太郎さんです、本当にありがとうございました。 前ページ次ページ連載 - ギザ十と幽霊少女とご先祖様と組織の狗
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2465.html
喫茶ルーモア・隻腕のカシマ 憂国者 輪とボクサーが仲良く遊んでいるのを見つめる視線が二つ 白髪混じりの口髭を綺麗に整えた中年の男 そして、眼鏡をかけた神経質そうな男の二人だ どこからともなく現れ、輪とボクサーに向かい歩を進める 明確な目的を持った、迷いのない足取り 「輪廻転生の都市伝説だな?」 口髭の中年が問い掛ける 白い軍服を着た二人は、紛れも無く旧日本軍・海軍所属の将校 輪とボクサーは、慎重に観察しながらも相手との距離を測る 眼鏡の男が言葉を継ぐ 「君に恨みはないが、訳あって同行してもらう」 「同行?……そんなこと、誰が許すってんだよぉ」 「そちらの君には関係の無いこと……そして、拒否権は無い」 眼鏡の男が、チラとボクサーを見やり言う……が 「ボクは、貴方達について行く理由も無ければ、この町から離れる気もない!」 輪もまた、自分の意志を伝える 「だ、そうだ……どうする?このまま帰るかヤりあうか……」 「ならば、仕方あるまい……力ずくで奪うまでよ」 張り詰めた空気が、場を支配する * 「待っていただこうか」 緊迫を破る声……だが、口調は穏やかで自然と皆の視線が男へと移る カシマだ 「貴様……カシマ……か?」 「おぅ、カシマさんいいところに来たなぁ」 「カシマさん、この人たちがボクを連れ去ろうとしているんだけど」 ふぅ、と息を吐きながら輪も声を掛ける 「遅れてすまない……夢見が悪くてな……さて、話は大体聞かせてもらった、手を引いてもらえないだろうか」 カシマがやんわりと提案し、口髭の中年が答える 「カシマよ……輪廻転生を護る意味など無いだろうに」 「確かに……」 「流石はカシマだ、話が早くて助かる」 「ワタシには輪廻転生を護る意味も必要も無い……」 「では、引き渡して頂こう」 「断る」 「……済まない、もう一度言ってくれないか……よく聞き取れなかった」 「断ると言った」 「何故だ?」 「ワタシが護っているのは、都市伝説ではない……この少年個人──輪個人だ」 「ふん、詭弁だな」 「ワタシが語るは真実のみ」 静寂が辺りを包む 「ふはははは! 相も変わらず生真面目な男だな!」 「ワタシはこういう冗談は好きではありません、艦長殿……ご無沙汰しております」 カシマは頭を下げながらも警戒を解かない だが、艦長と呼ばれた口髭の中年からは既に先程までの威圧感は無く 柔和な表情で言葉を吐きだす 「久しいな、カシマよ」 「あの時以来となりますから……」 「そうだな、時の流れは早いものだ……その後、具合はどうだ?」 「一時は消えかけましたが、今では契約者を得る事ができました」 「そうか……契約したか」 「今のワタシにもまだ護れるものがあると、恥を忍んで生き永らえております」 「それで、その少年だが……お前が護る程の価値があるわけだな?」 「はい」 「そうか……では、諦めよう」 無言で付き従っていた眼鏡の男が一瞬だが顔をしかめる 「宜しいのですか、艦長」 「構わん」 「では、我等の行く末はどうされるおつもりですか?」 「他を当たるか……いや、いっそのこと幕を引くのも一つの選択肢と言えよう」 「諦めると?」 「既に、我等が何かを変えられる様な時代ではないのかもしれぬよ」 「……潮時、ですか」 「そうよな、潮時だ」 「分かりました……その旨、兵員にも伝えて宜しいですか?」 「頼む」 眼鏡の男はきびすを返そうとするが、カシマと視線が合い足を止めると 眼鏡の位置を直し、言う 「カシマ……あの時の事、よもや忘れてはおるまいな?」 語気の鋭い詰問に、カシマは困った様な顔で言葉を返す 「副官殿、以前にもお答えしましたが自分は」 「貴様の答えなど訊いてはおらん、憶えていればそれで良い!」 遮る様に言い放つと、今度こそ踵を返して去っていった 「すまんな、アレも悪い男ではないのだがな」 「……」 「さて、カシマよ……大方の想像は付いているだろうが……」 「艦長殿らも都市伝説としての存在が消えようとしている……と?」 艦長は、カシマから少年へと視線を移し 「カシマが消えかけたという話は、今聞いた通りだが……君も知っているな?」 自分へと向けて発せられた言葉に、輪は頷く 「うむ、我等もカシマ同様"今の日本は平和か?"という都市伝説だ…… そして、我等もまたカシマの言った通り、カシマ同様に消えようとしている……時代の流れよな」 輪廻転生の力があれば、輪廻転生の力を自分達に取り込むことが出来れば 自分達が消えようとも、輪廻し転生出来るのではないかと考えた 出来るかどうかは分からない……だが、彼らはそう考えたのだという * 「もし、輪廻転生が人々を恐怖におとしいれるだけの者であったなら 我等は躊躇い無く、この案を実行するつもりでいた」 だが、そこにカシマが立ちはだかった 「我等と端を同じくするカシマが護るというのだ…… ならば、我等もまた彼を護る側におらねばなるまい」 そう言って、深々と頭を下げ 「我等の都合で迷惑を掛けた事、許されざる事かとは思うが 私も多くの部下を預かる身、簡単に彼らの消失を受け入れるわけにもいかず……どうかご容赦頂きたい」 と、輪へと謝罪した 「艦長さん、頭を上げてください……ボクのことを諦めてくれるなら良いんです」 「ご容赦頂けるか……」 「……でも」 続く言葉を待つ 「ボクのことは諦めてもらわないと困るけど、存在を諦めるのはまだ早いと思うんだ」 「……では……まだ、我等にも出来ることがあると?」 「例えば活動の拠点を広島や長崎とかにするのは?」 「ふむ、確かに……だが、それならば既に行っている」 「じゃあ地道にインターネットで工作するのは?」 「インターネットか……確か前にも……そう、先程の眼鏡の副官だが…… あやつが諜報活動に利用したことがあったのだが……」 どうも、説教臭いせいか食いつきが悪かったらしい 他にも、暗号板かと思い入り込み…… やたらと食いつきが良いと思ったら、何やら精神的外傷を受けたこともあったらしい その後しばらくの間 "馬鹿な、この私が艦長とだと?!" "裏2ちゃんねるだと?……しまった!罠か!!" "現代の婦女子は腐っている……これ以上読んでは、精神が……" 等々、医務室のベッドで毎晩うなされていたらしい 「嗚呼……書き込む板の選択を誤ってしまったんだね……」 「そうか……選択を誤っていたのだな」 「たぶんその話、暗号板じゃなくて801板だと思うんだよね」 「801板……確かに暗号の様だな……危険なのかね?」 「不用意に入り込むと精神が汚染されると言われていて、もう都市伝説レベルだよ」 「ふむ、その様な危険な所があるとは……気を付けるとしよう」 「うん、一度失敗してもまだ二度目も三度目もあるよ」 「不思議と説得力を感じるものだな……実感が伴っているという事か」 「まぁ……何度も繰り返して来ているからね……」 「……そうか、そうであったな……すまぬ」 「いいんだよ、今は凄く幸せだからね」 「よし、また皆で模索して行くとしようぞ」 「頑張ってね」 「ああ、ありがとう……さて、出港の準備をするとしよう」 「すぐに発つの?」 「着いたばかりだ、数日は休息と準備に充てる事となろう」 「そっか、じゃあまた会えるかもね」 「その時はまたご教授願おう」 「ははは、またね艦長さん」 「また会おう、少年……では、カシマ、そちらの青年も元気でな」 敬礼するカシマに背を向け歩き出す 艦長は去り行く途中、 思い出した様に踵を返し、声を張り上げる 「おっと、言い忘れていたが!輪廻転生の少年を捜索している内に気付いたことがある! このところ、何物かにより都市伝説が立て続けに負傷させられている! 同じ通り魔により負傷したと思われる都市伝説は全て少年型の都市伝説だった! 少年も気を付けるのだぞ!良いな!」 「わかったよ~!忠告ありがとうね~!」 大きく手を振り応える 「少年の都市伝説を狙った犯行か……」 「気を付けるって言っても、携刀しておくことくらいかなぁ……」 カシマと輪は視線を交わし、思案する 「謎の通り魔ねぇ……意外とどっかですれ違ったことのあるヤツだったりするんだよなぁ」 ぎょっとする二人、だが…… 「でもよぉ……考えたってしょうがないよなぁ……頭使うと疲れるから嫌だぜぇ」 ボクサーが発したのんきな一言に掻き消される 「む、もうこんな時間か……朝稽古はこれまでにして引き上げるとしよう」 「そうだね……じゃあ、今夜またルーモアで!」 「うむ」 「よっしゃ!今夜は宴会だもんなぁ!」 「逢魔ヶ刻からだからね、ボクサーさん遅れないでよ」 「おぅ!今日の為にかなり絞って来たからなぁ!」 「じゃあね!」 今夜はマスターの帰還を祝い、関係者を招いての宴会が催される 規模は小さいが、マスターとサチと輪が用意した軽食と 皆が持ち寄ったお酒で、楽しい時を過ごす事が出来るだろう それを思うと、輪は自然と高揚するのを感じていた 三人はそれぞれの道へと散っていく 近づきつつある雨雲に、ある種の予感を抱きつつも 誰もが春の柔らかい日差しに心を遊ばせていた * 前ページ次ページ連載 - 喫茶ルーモア・隻腕のカシマ
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3472.html
【上田明也の探偵倶楽部after.act9~修行開始~】 「この男をブチ殺せ♪」 「ハァァァァァァァァァ?!」 「何だ?文句あるのか笛吹」 「文句しかないんですけどぉぉぉぉっ?!」 「愛美さん、流石に殺しちゃマズいと思うの」 「そーだ!そーだ!」 わらわらと集まった契約者達。 子供が多い。というか子供だらけ。 ガキのお守りには慣れているのでそれは良いのだが子供達に言った愛美さんの台詞が問題だった。 それにしても望が殺しちゃ不味いと言ってくれるとは思わなかった。 お兄さんちょっと感激。 「じゃあ、お前はどうしたいんだ?」 「え?俺はねー、のぞみんとそこの女の子と一緒に(パァンッ ナンデモナイデスヨハイ」 「ミナワに手出すなよ!?出すなよ!?」 「ご主人様・・・」 「誰かそこのリア充爆破させてくれ」 「アンタ妻子持ちでしょ・・・」 「まだ生まれてないから妻『子』じゃないもんねー!!」 「ふざけてないで先に進めてくれ」 あの突っ込み役が龍一少年か。 素のスペックはこの面子(除く都市伝説)で恐らく一番高いだろう。 それにしても……苦労させられそうだなあ。 主に俺に。 「じゃあこうしよう?」 愛美さんがアイテムバッグからネコミミを取り出す。 ま、まさかそれを付けてくれるのか? 愛美さんのネコミミなんて見たらやる気を出さざるを得ない。 あれ? 俺の方に来た? まさか? まさか? まさかの俺featネコミミ 「テンション上がって来たにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」 「変態だー!?」 「元からでしょ」 「私の許可した範囲内の方法でこの男からネコミミを奪い取れ」 「・・・それだけで良いのか?」 「そんなの楽勝じゃない?」 「みー簡単なの」 その通り、簡単だ。 この中の可愛い女の子の誰か一人が 『ネコミミチョウダイお兄様?』 とか言って潤んだ瞳で懇願してきたら俺はこれを簡単に譲り渡す自信がある。 「ルールは簡単だ 『都市伝説との連携禁止』 つまり「都市伝説か契約者、どちらか片方が傍に居なければ使えない能力」の使用は全面禁止 望の様に単独でも使用可能な能力は一応認めるが極力使うな そして、連携は認めんが、助け合いは好きにしろ ただし、他人を助けた結果自分がどうなっても文句は言うな」 「無茶苦茶じゃねぇか!?」 「体力や体術と言った基礎が出来て無い状態で都市伝説に頼っても碌な事にならん まずは基礎を固める為の方法だ」 「でも、単純な追いかけっこじゃ体力は付いてもそれだけじゃない?」 良いことに気がついた。 流石望ちゃん、愛してるぜ。 「その点は心配要らん ここ、フヴェルゲルミルの平均レベルは150~200 ダンジョンの中では規模も難易度も最高レベルだ つまり、お前達のいう「楽勝な追いかけっこ」とやらは この広大なダンジョン全体を逃げ回る笛吹を、何時何処から現れるかわからない高レベルモンスターを相手にしながら 都市伝説との連携無しで切り抜ける物と言う訳だ」 流石愛美さん、さえてらっしゃる。 滅茶苦茶愛してるぜ。 「みー!」 さぁ、始めようかと言った所でビシッと綺麗に手が上がる 何あの可愛いナマモノ。 お持ち帰りたい。 「・・・花子さん、だったな 何か質問か?」 「みー、わたしたちにとっても、けーやくしゃたちにとっても、協力することはとても大切な事なの だけど、このおいかけっこじゃそれができないの それはどっちにとってもよくない事だと思うの」 「フム・・・成る程、良い意見だ」 「みー?」 「だがな、一人一人が強ければ初めて共闘する相手とでも連携は取れる だが、個々の能力が低ければどうすれば良いかわかっていても実行に移す事はできない 寧ろ足を引っ張り合うだけになってしまう、それこそ良く無い事だろう?」 「みー・・・」 「心配しなくても、その点は後でいやと言うほど鍛えさせてやるさ・・・ 笛吹、お前は好きに能力を使って構わんぞ」 「良いのか?」 「死なない程度に殺すつもりでやれ・・・でなければ意味が無いからな わかったら行け お前が走り出してから20秒後にコイツらを行かせる」 「了解!」 俺は迷わず洞窟の中に駆け込む。 辺りにはモンスターが喜ぶ香水を振りまきながら洞窟の奥までできるだけ走り続ける。 モンスターのうなり声が聞こえてくるので多分俺の望むようにモンスターが引き寄せられているはずだ。 第一に殺気。 第二に敵意。 再思のまもなくご臨終。 「―――――ッ!」 でも俺には故郷に妻と子がいるので死ぬ訳にはいかない。 直感に任せて身をよじると俺のせっかく伸ばしていた髪の毛が数本落ちた。 ちょっと振り返ってみたがまだ敵の攻撃圏内に俺は居ない……? 「って、ちょっと待てぇえええええええええええ!!??今の何、今の何だ!?都市伝説使用禁止っつったろ!?」 「みー、花子さん、何もしてないの」 『刀を抜刀する勢いで衝撃波飛ばしただけだろ』 「だけじゃねぇっ!!??それは達人級かそれ以上の化け物が使うような技だろっ!?一介の高校生が使うもんじゃねぇよっ!?」 『俺は刀は使わないからよく知らないけど。龍一は将門様から稽古つけてもらってるから。将門様が使うのを見て覚えたんじゃないか?』 「見よう見まねで覚えられる技じゃないっ!!??つーか、祟り神に稽古つけてもらうとか何その死亡フラグに思えなくもない無茶振りっ!?」 俺の周りは何時から人外魔境になったのかと。 そのうち龍一とやらも俺の親父と同じように座ったまま跳躍し始めるに違いない。 ところで喋りながら走ったら疲れてきた。 其処にもう一度さっきの抜刀術――勝手に飛び飯綱と名付けておこう。 俺は慌てて真横に飛び退く。 丁度モンスターも周りに集まってきた。 「………失せろ」 それらを、睨みつける 消えろ、と 龍一はやや威圧するように、睨み、そう告げた 「…あれ?」 まもののむれはにげだした! 経験値稼げないからちゃんと倒せよ……。 「まあ良い、そろそろ暗闇には慣れていただけたかな?」 だがこの一瞬の隙で充分だ。 耳栓を付けて口を開ける。 俺は懐からスタングレネードを取り出して安全ピンを外して投げた。 投げた方向から急いで目を背ける。 “人間”には耐えられない大音響と光の洪水が辺りに広がる。 愛美さん相手だと使っても大して意味がなかったので余っていたのだ。 ……よし。 完全に“人間”は沈黙している。 だから今俺に襲いかかれるのは……! 「そうだよなあ!都市伝説にはこの程度の攻撃は効かないからな!」 「その巫山戯たネコミミは奪わせて貰うの!」 そう、――――都市伝説だ。 「やはり来たか、みぃみぃ少女。俺の膝の上で眠れ。」 狙い通りだ。 大量のトイレットペーパーが俺に向けて伸びる。 「一対一で戦おうと思うな。自分は常に相手より弱いつもりで作戦を練れ。」 トイレットペーパーなんて軽い物ならば俺の能力の餌食だ。 正宗から発生した斥力がトイレットペーパーの軌道を滅茶苦茶にかき乱し、絡ませる。 「み!」 「吹き飛べ!」 斥力を花子さんと俺の間に発生させる。 花子さんの小さな身体はとてつもない勢いで吹っ飛んでいった。 このままではそこら辺の壁と激突、中々痛いだろうが我慢して欲しい。 そう思った瞬間、花子さんの身体を誰かが受け止める。 「予想外の復活の早さだな。」 「…………。」 龍一だ。 スタングレネードからこんなにも早く回復してきたらしい。 俺は村正と正宗を抜き放つと村正の引力で龍一の身体を引きずり寄せようとする。 狙い通りこちらに引っ張られてくる龍一。 ここで村正を蜻蛉切としての本来の姿、槍に戻す。 俺は正宗を真上に投げ上げてから両手で槍を持ち直し、龍一に真っ直ぐ突きを放った。 村正の力で習ったこともない槍術を使えるのがありがたい。 俺の槍が龍一を捉えたと思った瞬間だった。 龍一の移動速度が一気に上がる。 「――――加速した!?」 龍一は村正の引力を利用してさらに距離を詰めてきたのだ。 「ふうむ、裂邪きゅんとノゾミーが来ない辺り、あいつらはモンスターに手間取ってるのか? それとも俺が隙を見せたところでポルナレフよろしく暗殺しようとしてるのか。 どっちだろうなあ?」 交差する剣戟。 飛び散る火花。 龍一君、只の日本刀のくせになんで都市伝説と五分の戦いしているのだ。 「なぁ、お前はどう思うよ?」 引力と斥力が交互に入れ替わる不安定な足場の中、それでも龍一は俺に食らいつく。 不味い、このままだと俺が切られる。 「…………。」 「無口だな、嫌になるぜ。もっとおしゃべりしようぜ!」 赤い部屋の能力で大量の釘を口から吐き出す。 必殺・含み針。 龍一はそれを……あえて顔面で受けた!? 少しばかり動揺したその隙を龍一は見逃さない。 彼は容赦無く俺の右腕を切った。 これ以上近づかれていると不味い、俺は龍一の腹を思い切り蹴飛ばして後ろに下がった。 「みい!?」 「おいおい驚くなよ花子さん、契約者なら切られた腕くらいすぐ繋がるさ。」 そう、確かに俺は右腕を切られた。 だが俺はその切断と同時に引力を操り、神経血管筋繊維の全てを再接続したのだ。 そしてサンジェルマンの傷薬をかければ全て元通りである。 「見たまえよ龍一君、これが強いと言うことだよ。」 額から血を流す龍一に向けて高らかと宣言する。 そう、これが強いということだ。 相手が何をしようと気にしない。 相手の行為の全てを無為に帰す。 こうして自分の果てしない大きさを相手に見せつけるのが強さだ。 「君は血を流すのだろう? 戦う度に血を流し続けるのだろう?一人で! そんなんじゃ何時か痛みで君は動けなくなるよ。 いっそ化け物に、俺みたいな化け物になれよ。 楽だぞ、すごく楽だ。迷いも悲しみも何もかもなくただ自分の望みのままに動く化け物に……!」 「買って嬉しいはないちもんめ!」 「おっと、あぶな……!?」 物陰から出てきた望が大量の硬貨で出来た鎖を俺に向けて繰り出す。 咄嗟に躱してすかさず彼女を殴り飛ばそうとしたその瞬間だった。 「ネコミミもらっ……!」 「裂邪バリアー!」 「うぎゃああああああああああああ!」 恐らく俺の隙を突いてネコミミを取るつもりだったのだろう裂邪くん。 俺に殴られそうになった望が彼を咄嗟に盾にしてしまった。 そして吹っ飛ばされた裂邪くんの影から望が再び攻撃を仕掛ける。 「【どけえええええええええええええい】!」 腹の底から空気を振り絞ってありったけの声を望に叩き付けた。 「うるさいわね!」 「――――チッ、はないちもんめの操作能力を自分に使ったか!」 意外だ、望は俺の大声を至近距離で聞いても気絶しないらしい。 まあ表情が歪んでるのを見るとかなり効いてはいるようだが。 異常による命令を無視したのも考えるとこれは都市伝説能力か。 ネコミミに伸びる望の手をすかさず捕まえる。 力で敵うとは思えないので暴れられる前に赤い部屋の釘でで彼女の靴をその場で釘付けにして俺と花子さんの間に立たせる。 「みっ!水で流せないの!」 「その洪水は使ってくれるなよ!流石に俺でもちと厳しい。」 「あ、あんた私を人質に使ったわね!」 「HAHAHA!戦闘中だからなあ!」 村正を持った腕が俺の意志と無関係に動き始める。 再び龍一が俺に斬りかかってきたのだ。 なんとかそれを受け止める。 「チッ、予想以上にやるなお前ら……。」 正宗の放つ斥力でなんとか彼を仰け反らせると俺はモンスターを呼びながら再び逃走を開始した。 【上田明也の探偵倶楽部after.act9~修行開始~fin】
https://w.atwiki.jp/legends/pages/1267.html
首なしライダー 21 変なガスによって女の姿になってから数日が経過したが 一向に元の男の姿に戻らない ……やれやれ、いつになったら元の男の姿に戻れるのだろうか… 俺はバイクを運転しながら昼の町を走る 時折、町の大通りから脇道に逸れて路地裏などを覗き込みながら、俺はある都市伝説を探していた。 ……ここもハズレか とある建物の間の薄暗い路地裏を探したが、都市伝説どころか人すらいないようだ。 俺の体を女の体にしやがったのはどうやら[マッドガッサー]って名前の都市伝説らしい。 俺は携帯を取出し、朝野から送られてきた情報を確認する 本来マッドガッサーとは外国の都市伝説で、毒のガスで人を殺すらしい 姿は全身黒ずくめで顔にはガスマスクを着けている ……普通に町を歩いていたら間違いなく怪しまれる格好だよな? 俺をこんな姿にしたマッドガッサーを見つけてボコボコにすれば元に戻る方法を吐くかもしれない…いや、吐いてもらわなきゃ困る もしも吐かなかったら…その時はいっそのこと首を刈ってやろうか 相手が死ねば確実に元の姿に戻るだろ………たぶん 俺はバイクにまたがり、再び大通りを移動する そして 俺はガソリンスタンドの横にある細い道に入っていく黒ずくめの人物を発見した。 顔にはガスマスク 奴だ!! マッドガッサーらしき人物は辺りを注意深く確認した後、路地裏に入っていった。 建物の間にある道にはバイクが入れないため、俺はバイクを降りてマッドガッサーの後を追おうと路地裏に入る 路地裏はゴミや物で元々狭い道がさらに狭くなっており死角も多いため、注意しながら奥に進まなきゃはならないな… マッドガッサーらしき人物は、俺のだいぶ前を歩いており、すぐに道の角を曲がり俺の前から姿を消した。 ……あの角を曲がって一気に相手を襲えば勝てるな 俺はマッドガッサーが曲がった曲がり角を一気に曲がって その先にいるはずのマッドガッサーを襲おうとしたのだが……… 曲がり角を曲がろうとした瞬間、突然男性が飛び出して来た。 やばい! 俺は咄嗟に止まって男性とぶつかるのを防いだ。 「くけけけけけけ」 危ない危ない、もう少しで男性とぶつかる所だった… …男性にもケガはないようだ 「くけけけけ」 男性はそのまま俺の横を通り過ぎて行った。 しかし…なんか変な笑い方をする人だなさっきの人 そんな事を思いながら慌ててマッドガッサーを追おうとすると ピピピピッピピピピッ!! 足下から謎の電子音が鳴り響く 足下を見てみるとそこには何故か携帯電話が落ちていた。 さっきの変な笑い方する人が落としたのだろうか? 幸い、さっきの人はまだ俺の少し後ろを歩いているので、今ならまだ渡す事が出来る 俺は携帯を拾い、さっきの男性に渡そうとしたのだが…… 瞬間、なんとその携帯電話が光り、そしていきなり爆発しやがった! 「くけけけけけ!」 ――――――――――― 「くけけけけけ!」 首なしライダーが拾った携帯電話が爆発すると同時に 爆発する携帯電話の契約者は自分の手に持つ携帯電話から他の携帯電話に電話をかけまくる すると路地裏の至るところに設置された携帯電話が着信し、爆発する 鳴り響く爆発音と着信音 「くけけけけけけ!」 爆発が路地裏にあった物やゴミを吹き飛ばしていく! ……… 数秒後、爆発の納まった路地裏には ボロボロになった首なしライダーが横たわっていた。 「おいおい…さすがにこれはやりすぎじゃね?」 「くけけけけけけ!」 横たわったまま動かない首なしライダーと、爆発によって破壊された路地裏を見ながら マッドガッサーは、首なしライダーが着けていた壊れた青色のヘルメットを拾い上げ呟いた。 以上? 前ページ連載 - 首なしライダー
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3419.html
「七つの大罪」 今日は幼なじみの七人の予定が偶然合ったので、久しぶりに会うことにした 疾風「あの七人で揃うのは久しぶりだな…花見の時は一人居なかったし」 そう呟きながら、集合場所へと向かう 疾風「確かこの辺りだったはず…」 集合場所に到着したようだ 帝「む、遅かったではないか」 疾風「え? まだ時間まであと三分もあるよ?」 帝「五分前集合だ。さて、後まだ来ていないのは… 礼次と小百合(さゆり)だな」 全員が揃うまでしばらく待つことにした 集合時間丁度に… 礼次「あれ、みんな早いじゃん…」 安河「集合時間ギリギリだ。次からはもう少し早く来るように」 礼次「えー…めんどくさい…」 そして五分後… 小百合「ごめーん!待ったぁー!?」 芙向 小百合(ふむかい さゆり)が少し遅れてやってきた 安河「五分と12秒の遅刻だ」 小百合「ごめん!今描いてる同人誌を仕上げてたから…」 安河「だからといって遅れるなど…」 帝「まあ、安河よ。その辺にしておいてやれ」 そんなこんなで、全員が揃った 宝「で、今回はなにをするんだ?リーダー」 帝「せっかく皆都市伝説と契約しているんだ。巡回して都市伝説を見つけたら退治するぞ」 廻女「りょーかーい」 そんなわけで、疾風たちは都市伝説退治に向かうことにした しばらく歩くと… 小百合「…! ちょっと疾風、あれ見てあれ!」 小百合の視線の先には、仲の良さそうな二人の男子が居た 疾風「…? 確かに仲は良さそうだけど、それがどうかしたの…?」 小百合「え…男子が二人居て、しかも仲が良さそうなのよ? これはもう… 妄想せずにはいられないじゃない!?」 疾風「そっち!?」 小百合「見た目では右の子が攻めだけど、左の子にも素質はあるわね…」 小百合は完全に妄想モードに入ってしまった そう、お察しの通り彼女は腐女子の一面を持っている。しかもBLだけでなくノマカプ、百合、さらには兄妹や親子などの禁断の恋もいける それだけでなく、本人が、美しければ老若男女誰でも愛せるという淑女っぷりである 小百合「決まったわ。貴方達に恨みは無いけど、しばらく私の妄想に付き合って頂戴」 すると、先ほどの男子二人が突然いちゃつき始めた。まるで突然同性愛に目覚めたかのように… 今のは小百合の契約した都市伝説の能力である。『801フィルター』。本人の腐的妄想を具現化できる さらにしばらく歩くと… 疾風「ねえ、小百合さん小百合さん。…あれ」 疾風の指差した先には、あからさまにいちゃついている、男女のカップルが居た 小百合「え? ああ、ノマカプも悪くないわね…」 疾風「いや、そうじゃなくて…こんな真っ昼間から堂々といちゃつきやがって…ああ…もう、本当… 妬ましい…っ!」 小百合「そっち!?」 疾風「ほんとさ、こんな白昼堂々いちゃつくってどういうことだよ… 何だ? リア充アピールか? 勝ち組アピールか? もう本当、場をわきまえろと。 相手を自慢の種に使ってんじゃねーぞと。 つまり何が言いたいかというと… リア充くたばれ☆爆発しろ!」 案の定カップルがいちゃついていたベンチは爆発した 疾風(それにしても、何なんだろう、この人…) 小百合(何なのかしら、この子…) 疾風(カップルなんて見たって妬ましいだけなのに) 小百合(カップルの関係を妄想した方が楽しいに決まってるのに) 疾風・小百合(もう何年も一緒に居るけど…) 疾風(この人のことは…) 小百合(この子のことは…) 疾風・小百合(理解できない…!) 幼なじみなのに、こうも違うのかと思う、疾風と小百合なのであった… 後編に続く…かも
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4351.html
ある少女は、学校町あるマンションの洗面台で、髪を洗っていた。 その少女の髪は長い茶髪で、彼女自身それは自慢の髪だ。 顔立ちは日本人ともいえるが、どちらかといえば西洋人の顔だろうか? だがそれは些細なことで、その『美少女』には関係が無かった。 そしてその少女は、髪を洗いながら、目をつぶりながらボソッと呟いた。 「だるまさんがこーろんだ」 所で、『だるまさんがころんだ』という話は知っているだろうか? 髪を洗いながら「だるまさんがころんだ」と呟いて鏡を見ると、顔の青白い不健康そうな顔の女が肩越しにこっちを見ている……という都市伝説だ。 そして少女は目を開けて鏡を見る。 そこには、肩越しにこちらを見ている女の姿があった。 少女も見かえし、鏡に右手を伸ばす。 ずるとその右手は鏡の中に入り込み、女の首を掴んだのだ。 「――――ッ!?」 鏡の中の女は、あまりに予想外な出来事に驚き、先ほどとは全く違う、ギョッとした目で少女を見ている。 「おいおい、都市伝説が都市伝説を見抜けなくてどうする? 暇つぶしにやったら本当に出るとは思わなかったな。これぞ東洋の神秘ってヤツか?」 少女は鏡の女の中の顔を、じろじろと見ながら感想をずばずばと言っていく。 「まあ俺みたいになれば、都市伝説の力の気配も消せるしな。お前みたいなマイナー都市伝説が騙されるのも無理無いが」 鏡の中の女は『失礼な! 最近は結構人気なんだぞ!?』とでもいうかの様に手をジタバタと動かしている。それでも少女の手は離れず、それどころか強く握っていっている。 「苦しいか? 死にそうか?」 鏡の中の女は目で頷き、少女はあっさりと手を話す。 『な、何よアンタ!? アンタみたいな都市伝説聞いたことが無いぞ!?』 慌てながら鏡の奥に避難する女を見ながら、少女は律義に答えてやる。 「俺を知らないなんて悲しいな。まあ拠点はアメリカだったしな。お前が知らないのも無理は無い」 少女は先程まで首を絞めていた手をひらひらとふって、洗面台に座った。 「まああれだ、すまなかったな。俺の暇つぶしで死にかけたからな。お詫びに話相手にでもなってやろうか?」 『誰がなるかバカっ!!』 鏡の中の女は、あっかんべーをしながらどんどんと鏡の奥に逃げて行ってしまう。 「そう恥ずかしがるなって」 少女はニヤリと笑いながら、鏡の中に一歩踏み込んだ。 「今帰った」 しばらくすると、急に煙のような霧が部屋の中に入り込み、人の形を作り出す。 ファントムだ。 「ん、お帰り」 少女――――DKGは、鏡の中から顔をだしながらそう言ってやった。 「おお!?」 あまりに予想外な出来事に、ファントムは腰を抜かし、DKGは指を刺しながら笑った。 突如抱きつかれた後、二人は無事に契約した。……何故かファントムの男が婚姻届にサインを! と言ってきた時はパニックになりかけたが、そんな紙は思い切り引き裂いてやった(婚姻届を破るのは犯罪です。良い子も悪い子もまねしないでね)。 二人の関係は恋人などではなく、ただ契約した仲というだけだ。お付き合いの返事は、そういうのはお互いをもっと知ってからにしようという、あまりアメリカ育ちとは思えない反応だった(別に恥ずかしがったわけではなく、流石に一日も経っていないのに早すぎるというだけだ)。 そのはずなのだが、ファントムの男はあれからDKGの為に様々な環境を整えた。 まず、ファントムの男はDKGについて『何も殺したくない=普通の生活をしたい』と勝手に考えたらしく(当たっているのだが)、日本のハイスクールを紹介してきた。彼自身もそこに通っているらしく、一緒に通いたいです! とファントムの男のしつこい要望からだった。 その後は協力関係にある都市伝説達や公共機関さえ操る『組織』にかけ合い、彼女の身分を作らせるという、壮大な事をやってのけた。 それを聞いた時、ん? お前ってフリーって言ってなかったか? と聞いてみると、 「組織のトップとか総理大臣とか、結構顔広いんです」 思わず、お前一体何者だ!? と聞いたら、 「そういえば名前言ってませんでしたね。本条(ほんじょう)雄介(ゆうすけ)です」 と言ってごまかした。 そして時は現在に至る。 「何で鏡の中から何ですか!? あれですか、そんなにドラゴンナイトが気に入ってるんですか!! それとも龍騎の方ですか!?」 「どっちもすきだ安心しろ。それに俺が鏡に入っていたのはお前みたいな痛い理由じゃない」 「それじゃあ何ですか」 「友達作りだよ」 そう言って鏡の中から跳んで出てきた。その手には、胸倉が掴まれた女性の姿もある。 「誰ですか!? どこのどちら様ですか!?」 「いや、みりゃ都市伝説って分かるだろ」 「それはわかりますよ!? 分かりますけど鏡から出てくる系の都市伝説って苦手なんですよ!!」 「そういう問題か?」 「ミラーモンスターに比べれば幾分かマシですけどね!」 そういうとファントムは仮面を外し、黒くワックスで形を整えた髪をした、少し顔のいい人間の姿――――本条雄介の姿に戻った。 「まああれだ。こいつは暇つぶししてたら出てきたから、どうせならこっちで初の友達でもゲットしようかと思ったんだ」 「首を掴むって友達を作る対応じゃないでしょ!?」 ようやくその女性が話しだし、DKGは手をひらひらと振る。 「仕方ないだろ。お前を殺そうという意思が無いと、そっちに入れないからな」 「殺す気満々でしょうが!!」 「安心しろ。半分嘘だ」 「半分は本気じゃん!!」 DKGと女性のガールズトークに、雄介はやれやれと呆れる。 「それはあれでしょう。彼女の能力は『殺すためならどんな事もやってのける』事なんですから、それを応用しないと鏡の中に入れなかったんじゃないですか?」 「そういう事だ。まあ頭の中で『殺す』と呟けばそれで充分なんだけどな」 はっはっは、とDKGと雄介は笑い合い、鏡の女はそれを睨みながら、 「リア充爆発しろぉ!!」 鏡の中に再び逃げた。 「ま、出会いはあれだからな。仕方ないか」 「というより、あの人ネラーですか」 「ん? ちなみにあれはどういう意味だ?」 「『現実(リアル)を充実している奴は、さっさと爆発して消えてしまえ』という嫉妬を意味する言葉です。ちなみに『末長く爆発しろ!』っていうのは、主にカップルに対して祝う、素直になれない人の言葉ですね」 「日本語ってのはよくわからないな」 「というより、最近の若者の造語ですから、教科書には出ませんよ」 「そうか、覚えておく」 DKGはソファに転がり、テーブルの上に置いてあった本を読み始める。 「……『PGM ヘカートⅡ』か、いいな」 「あれ? 契約してからは亜音速どころか、素手で光線銃出せるようになってませんでしたっけ?」 「それとこれは別だ」 人を殺す事を拒絶しているDKGだが、武器は別だ。 武器とは職人の魂であり、大切に扱っていれば絶対に裏切らない物……らしい。 実際彼女の使っている武器は、自分で作っているもので、職人とかあまり関係が無い気がすると、雄介は思う。 「『何も殺さない』とか言っておきながら、そういうのはお好きなんですね」 「何事もビジュアルは大事だろ。木の枝よりナイフの方がかっこいいのと同じだ」 こんな美少女が、銃器を構えている方がイケない気がするのだが、そこはあえて黙っておく。 「おっとそういえば、あなたの生徒手帳、貰ってきましたよ」 雄介はキッチンに立ち、高校の生徒手帳を持っている手で振っている。 「投げろ」 だが取りに行くのが面倒くさいのか、本を読みながらそんな事を言ってきた。 もしかしたら雄介の配慮もあるのかもしれないが、そういうのは良くないと思っている。 「私は、投げていいものはボールと髪飛行機だけと思っています」 「投げナイフとダーツは?」 「危ないから、駄目じゃないかなぁ?」 目をそらす雄介。 間違いない。それだけは、考えついていなかったのだろう。 「まあそんな事言ってる間に取りに来たわけだがっと」 生徒手帳を雄介から奪い取り、パラパラと中身を見る。 その中で、気になるものがあった。 「……おい、今すぐこれは冗談と言え」 「へ?」 DKGは震えていた。 「何で俺の名前が『本条 薫(かおる)』になってるか言ってみろ!」 「うひゃあ!?」 怒りで。 「薫はあれだ、俺が考えたからいいだろう。だけど、何だよ本条って! 名字の方は大文字と言ったはずだろ!」 「だってー、それネーミングセンス無さ過ぎますよ。それにDKGのDとKに沿ってるみたいで嫌なんですよ……」 「俺がそうなるようにしたんだ! 余計な気遣いは迷惑だ! ジャパニーズ『有難迷惑』だ!」 なんかニュアンス違うような? と雄介は思ったが、それより大事な事を言う。 「だってDはドライ、Kはキラーですよ? 薫という名前は僕の好みなので許しましたけど、Dのつく名字は嫌だったもので」 本当は、薫の名前も嫌なんだったとDKGは思う。 何故なら、薫に触れた途端、雄介の表情が曇ったからだ。 それも無理は無いと思う。何故ならキラーが意味するのは、『殺人者』なのだから。 だが、自分の意見も入れてあげたかった。だから、そんな冗談で変えられるような部分を削ったのだろう。 ほんの数日で人の事をここまで分かるという事は、自分も人らしく慣れているのだろうか? 人を殺すことで、満たされたいと願いながら殺すあの頃とは、変わっているのだろうか? 「……ちなみに、何で本条?」 「ほら、あれですよ。結婚しても名字で呼ばない対策――――」 次の瞬間、雄介は暗い空を舞った。 「……信じた俺がバカだった」 瞬間変身で何とか助かった雄介を見ながら、呟くのであった。 ……続いてもいいカナ?
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4412.html
少女は帰り道、数多くの女子生徒に帰りながらの下校だった。 「ねえねえ、本条さんって、本条君の許嫁なんでしょ?」 「違う。あんなのとは一生無理だ」 「えー、でもでも、一緒に暮らしてるってのは本当なんでしょ?」 「いいなー! 本条君ってあの性格で人気無いけど、あの顔じゃん? 狙ってたりしてたんだよね」 「やるよやるよ。あんなのでよければ、ラッピングして宅配業者にでも頼むから」 「じゃー私にもー!」 「うぇ? なら私も私もー!」 「ちょっと待ちなさい! 本条君は一人だけでしょ?」 「心配する事は無い。あんなのがほしい物好きは三人か? 三等分にして送ってやるよ」 「私頭の部分だけでいいや」 「顔がないなら私いーらないっ」 「顔は私によこせっ」 「なら顔を三等分にして送ってやろうか?」 「「「お断りします」」」 少女――――DKGこと本条薫は、クラスメイト達と冗談を言い合いながら、楽しく下校していた。 (……本当に切ったりしませんよね?) そんな光景を、屋根の上から見聞きしている少年――――雄介は、苦笑いをしながら、屋根から屋根へと跳ぶのであった。 「ただいまっと」 「お帰りなさーい」 薫は玄関で靴をそろえると(最初日本に来た時は、土足で踏み込んで怒られた)、なぜか自分の方が先に帰ってきたはずなのだが、既に夕飯を作っている雄介の姿があった。 「今日は餃子ですよ! 百個位作っちゃいますよー!!」 「……流石に多すぎないか?」 「いえいえ、今日の夕飯に明日の朝食にお弁当にもなります」 「……朝からニンニクか、今から嫌になってきた」 「それとできるのが一時間後なので、ゆっくりしていてください」 「わかった」 薫は鞄を放り投げ、そのままソファに背を預けるように倒れる。 「いつまでも制服姿だと、ニンニクのにおいが付きますよ」 「……はーい」 これから着替えようと思っていたのに……、とぶつくさ言いながら、自室に入る。 薫の基本的な服装は、Tシャツの上にミニジャケットを着て、ホットパンツを履いているだけだ。 制服を脱いでしまえば、後はもうぱぱっと着れた。 服を着終わると、自室から出てソファで本を読む。これは薫の習性と言っても良いだろう。 薫は床に放りっぱなしにしてあった鞄から、銃器関連の本を取り出そうとする。が、 「……無い」 バックをひっくり返しても無い。せっかく片づけたのに……、と雄介がため息をついていたが、薫は自分の部屋に戻り、机もベットも棚も、心当たりは全て見たが、どこにもない。 いや、後一つだけ、心当たりがある。 「……教科書と一緒に忘れてきたか」 はあ、とため息をつき、時計を見てみる。 六時半……そろそろ外も暗くなってきたし、薫としては出たくないのだが、日本では銃器関連の本はあれしか持っていない(アメリカにいたころ持っていたのは、荷物になるので全部向こうで捨てた)。 だが、校内に入る為には制服で行かなければならない。 「……深夜なら、私服でもばれないよな」 彼女に思考に、明日の朝に持ち越すという考えは、浮かばなかった。 その後、ソファに転がりながら別の本で過ごし、雄介の餃子を食べ(かなりおいしく、30位食べてしまった)、二人でテレビを見て過ごした。 雄介が時計を見ると、もう12時になるところだった。 「さて、風呂に入って、そろそろ寝ますか」 「ああ、悪い。学校に忘れ物したから取ってくる」 「なぜこの時間何ですか?」 「制服着たくなかったから」 「……本当は?」 「夜の学校とか面白そうだろ? 少なくとも、退屈はしない」 薫は不敵な笑みを見せ、ベランダから跳んでいった。 「……やれやれ」 とりあえず、風呂の準備をしておこうと思い、雄介は風呂場に向かうのであった。 薫――――今は能力全開なので、DKGと呼んだ方がいいだろうか? DKGは幸いにも、二階の窓がカギがかかっていなかったので、その窓からひょいと入った。 教室の鍵はあるらしいが、鍵をかけてはいないらしく、別段苦労はしなかった。 「……ん? 都市伝説か」 何やら都市伝説が交戦中らしいが、今はそんなとことより本が先だ。 DKGはそのまま寄り道をせず、自分の通う事になっている教室に入る。今日一日だけしか過ごしていないが、なんだかとても楽しい気分になる。 そんな事に浸り終わると、自分の机の中から目的の本を取り出し、ミニジャケットのポケットに入れる。 「さて、それじゃ日本の都市伝説見学、開始ってところだな」 パンっ、と手を叩き、不敵な笑みを浮かべながら、DKGは歩きだす。 都市伝説と交戦があった女子トイレの前につくと、ちょうど終わったらしく、交戦していた片方の都市伝説が消えたのを感じた。 (なんだ、もう終わったのか――――) DKGは女子トイレに入ると、柄にもなく絶句してしまった。 この学校の制服を着た男が、おかっぱの、下手したら十歳にも見たないであろう少女の頭を撫でているのだ。 よくよく感じてみると、少女の方が都市伝説らしい。一瞬、頭を撫でている男が、少女をここに連れ込んでいるか変態かと思った。 何だか面白い事になりそうな気がしたので、完全に気配と姿を消し、二人の後ろから声をかけてみた。 「どうも、先輩方」 「っ!?」 「みっ!?」 誰もいないはずの後ろから、突如声をかけられ、とっさに水で作られた刃を構える男。 その髪に隠れた目からは、DKGの嫌いな殺し屋の目にも似ている。 「……DKGか」 「俺の事を知っているのか? 今となっては嬉しいやら悲し」 「黙れ」 ぴしゃりと、発言を遮られ、少しイラときた。 「仮にもあんたの後輩だぞ。警戒解いても罰はあたら」 「黙れと言ってるのが聞こえなかったのか」 尚も遮る男に、かなりイラッときた。 「……こちらの質問に答えてもらおうか」 男は、慎重に、ゆっくりと、まるで人質を持っている強盗に話しかけるように、DKGに接する。 「こちらもおしゃべりをしに来たみたいな感じだからな。別にいいぜ?」 「質問だけに答えてもらおう」 男は尚も、慎重に、ゆっくりと、話しかけてくる。まるで、なるべき刺激を与えないように。 だが、その滲み出る警戒心という殺気は隠せてはいないので、DKGからしたら何がしたいのかわからないのだが。 「お前は、俺と花子さんに、何をするつもりだ?」 「いや? 別に何も?」 この質問でなんとなくわかった。この男は、自分が殺しに来たのだと思っているのだ。 どういう情報が伝わっているかは分からないが、恐らく自分の存在を保つために、平気な顔をして誰にもできない殺しをしているとでも聞いているのだろう。 自分の事を分かってもらえないというのは、キツイものだと改めて実感した。 こんな時に何だが、自分の事をすぐに分かった雄介には、感謝しきれない。 「安心しろ、俺に襲ってこない限り、もう何も殺さない。お前達も、殺さないし、傷一つ付けない」 「……本当か?」 ここまで必死になって確認するというのは、この男は自分の命ではなく、おそらく隣にいる少女――――花子さんとやらが、とても大切な存在なのだろう。 「本当だ」 だから、安心してもらえるように、心の奥底から断言する。 「み!」 「花子さん?」 花子さんとやらは、男の袖をひっぱり、水の刃を消した。 「けーやくしゃ、あの人、悪い人じゃないよ?」 「……そうか」 やけにあっさりと頷く男に、DKGは少し拍子ぬけたが、そこまで信じているんだろうとすぐに納得した。 「……あー」 男は何か気まずそうな雰囲気を出しながら、DKGに話しかけてくる。 「その、疑って悪かったな」 「別に構わない。慣れてるしな」 慣れてると平気はかなり違うが、そこは野暮なので言わないでおく。 「よー、なんだなんだ? 転校生と女子トイレで待ち合わせって、お前も罪な男だな」 「違います」 ふらり、と女子トイレの出入り口から顔を出した理科の教師。名前は覚えていないが、不良教師と呼ばれていたのは覚えている。 その後ろから、理科室にあった人体模型と骸骨が入ってくる。 『いや~、ホンマお疲れサマ』 『肩お揉みしましょうか?』 「……グロテスクな光景だな」 ボソッと呟いただけなのだが、どこかガーンとショックな顔をしている気がする。 「それにしても、この学校には教師にも契約者がいるのか」 「まあ、この学校町じゃ珍しく無いんじゃないか? ……それどころか、都市伝説が学校に通い出す方が珍しいけどね」 やれやれと不良教師は首をすくめる。どうやら、この教師もDKGの事は知っているらしい。 そういえば、女子トイレの出入り口から、こっちに踏み出してこない。この男と話しているので多少は安心しているようだが、それでも警戒心はあるらしい。 不良教師は懐から煙草とライターを出すが、み! と花子さんに止められて、しぶしぶとしまう。 「生徒にも契約者はいるし、日本ってのは物騒な国だ。アニメ文化が栄えてるだけと思ってたけどな」 「それも学校町が異常なだけだと思うけどね」 男はやれやれと首をすくめてはいるが、あまり嫌がってはいないらしい。 恐らくだが、花子さん以外にも、都市伝説関連で知り合った友人などがいるからではないだろうか? 「そういや獄門寺。今日宿題結構だしたけど、終わってんのか?」 どうやら男の名前は獄門寺いうらしく、はいと男は答える。 「既に終わってます」 「そっちの転校生の方は? 提出月曜だけど」 「ワタチ、ニーホンゴワッカリマスェ―ン」 「「さっき思い切り日本語喋ってただろ!」」 獄門寺という男、以外にもノリが良いらしい。 ある程度親交を深めると、今日は解散という事になり、帰る事になった。 とはいっても、途中まで帰る方向は一緒なので、DKGは花子さんと話しながら歩いていた。 「というか、お前トイレじゃなくても出てこれるんだな」 「み! けーやくしゃと一緒だから、大丈夫なの!」 にっこりと笑顔でそういう花子さんを見て、自分はこんな純粋な笑顔をすることは、多分一生できないんだろうなと、ふと考えてしまう。 だが、いざ道が分かれて本当にさようならとなる前に、包帯を体中にグルグル巻きし、刀を背負って自転車をこいでいる都市伝説がいた。 「あれ何だ? 包帯男か何かか?」 「みー?」 花子さんも首をかしげている。どうやらマイナーな都市伝説らしい。 獄門寺を見てみると、獄門寺も首をかしげていた。 「……俺にもわからない」 「あれ? 何だ、知ってるの俺だけか?」 そんな三人に、懐かしそうな目で包帯男(仮)を語りだす。 「あれは『トンカラトン』っていう都市伝説だよ」 「「「トンカラトン?」」」 まるで擬音のような名前に三人が同時に首をかしげると、こっちに気がついたのかトンカラトンとやらがこっちに向かって漕ぎだした。 「そうそう。確か――――」 だが、不良教師はとたんに顔を青くする。 「……自分の名前をいえと言われずに呼んでしまうと、切られて仲間にされちまうんだ……っ!!」 不良教師はバッ! と来た道を走りだし、その言葉の意味と、自分たちが置かれている状況に整理がつくと、二人も来た道を走りだす(花子さんはDKGが反射的に背負った)。 「バカ! 何で自爆してるんだこのダメ教師!」 「おまけに俺達まで道ずれにすんな! ハチの巣にするぞタバコ教師!」 「しょうがないだろ! 随分と古いアニメを思い出したら、すっかり大事な部分を忘れてたんだよ! 第三者視点だったんだよ!」 必死に言いわけをしているが、トンカラトンは自転車に乗りながら、じわじわと追い詰めてくる。 「……トン、トン、トンカラトン。トン、トン、トン、トン、トンカラトン」 「うわーしかも歌歌いながらとか余裕過ぎるだろアイツ!」 「確かアニメでも歌ってたな!」 「ってそういやお前! さっき水の刃で攻撃しただろ!」 「あれはトイレじゃないと無理だ! ドスはあるがこれじゃ対応のしようがない! お前はどうだ!? お前の能力はここでは使えないのか!?」 「え? 俺が今能力使って殺してもいいのか?」 きょとんと聞き返すDKGに、何か意味があるのかと獄門寺は考え、質問を質問で返す。 「……それは俺達を巻きこむという事か?」 「いや、別に大丈夫けどな……殺すのは嫌だって言ったろ?」 「もう正直ヤバいし、とっとと始末してくれると助かる」 嘘だな、とDKGは走りながら思う。 この男は、首塚だか宝塚やらという組織に協力関係にあると聞いた。 雄介から聞いた話によれば、獄門寺の協力関係にある組織は、雄介の協力している組織とは敵対しているらしい。それで聞いたのだが、どうやら雄介のところほど戦力や根回しがあまりできていないらしく、具体的には活動してきていないらしい(雄介もおぼろげに言っていたので、真意は確かではない)。 恐らく、獄門寺はトンカラトンを通して、DKGの戦力調査といったところだろう。 この男なら、ドスだけでもなんとかなりそうというのも、嘘だと思った理由の一つだが。 だが、このまま簡単に戦力調査されるのも気に食わないので、一つ子供じみた意地悪をしてうある事にした。 「……なあ、お前らの命の優先順位ってなんだ?」 「え?」 「あれは殺そうこれはダメ……。命の順位って、人が簡単にしている命の区別……。それは何だ?」 花子さんを獄門寺に手渡しすると、虚空から大剣を取り出し、上段の構えをとる。 トンカラトンも、刀を上段にしながら自転車で迫ってくる。 「まあ、そんなの人それぞれで、自分勝手だけどな」 一瞬、大剣を上から下に振り落とし、刀ごとトンカラトンを左右対称に斬り落とす。 これを目視できるのは、上級の都市伝説位だろう。 「明日は筋肉痛か?」 そんな物はDKGに存在しないが、能力を使わず筋肉だけでさっきの事を行うのは、辛いことは確かだ。 前の彼女なら、死んだ都市伝説をこの世に残し、残酷なオブジェに変えてそこらへんに捨てていたが、今は恐怖を与える必要は無いので普通に殺した。 自然……いや、最初からそこに無かったように消えていくトンカラトンを見て、自分もこうやって消えていくのかと感じる。そんな消え方だと、自分が本当に異形の存在だと改めて感じる。 (……人間になることは、不可能だな) そんなありえもしない事を考えながら、目から涙が流れ落ちないように、夜空を見上げる。 「トンカラトン消したし、疲れた。もう帰る」 誰の顔も見たくなかったし、見せたくなかった。やはり、何かを殺すという事は、今の彼女にはキツい。 三人に背を向け、大剣を虚空にしまった。 その瞬間を狙っていたかの様に、DKGの後ろに刀を構えてトンカラトンが現れた。 だが、ファントムが夜空からの青いキックを繰り出し、トンカラトンは消え去った。 「俺の女に手をだすなよ」 もういないはずのトンカラトンに、ものすごい都市伝説パワーやら怒りが漏れ出しているファントムは言った。 「……ってお前!? どうしてここにいるんだ!?」 「あなたが何かを殺そうとしていたから、止めに来たのですが……どうやら、一人間に合わなかったらしいですね。本当にすいませんでした。あなたを幸せにすると誓っておきながら、あなたが殺しという重荷を一つ背負わせてしまいました。本当に、すいませんでした」 ファントムは深々と頭を下げる。それからは、悲しみが滲み出ていた。 「俺の女が世話になった」 すっかり置いてきぼりの三人にぺこりと頭を下げ、DKG――――薫をお姫様だっこする。 「ちょ、お前っ」 「月曜日、会えたら会おうぜ。先生、先輩」 そう言い残すと、ファントムは夜空に消えた。 嵐みたいな男だ、と思う前に、二人は大きな疑問が残った。 「……なあ、あんな生徒いたか? というか最近噂のファントムか?」 「……あんな都市伝説が生徒になってるって、聞いたことが無い」 「み?」 あんなのがいたら、容姿でも気配でも、どちらでもすぐに感じ取れるだろう。 二人はファントムが何なのかを深々と考え、花子さんはこの急展開に頭が追いついていなかった。 「……俺はお前の女じゃないだろ?」 「恥ずかしがらなくても良いですよ。……それにしても、本当に華奢な体ですよね。胸以外」 「セクハラで訴えられるのと、ここで腕が折れるの、どっちがいいか選択肢を与えてやる」 「……そんな魅力的ボディを持っているあなたが訴えられますよ」 あの後、家に帰った二人は、ホットミルクを飲みながら話をしていた。薫は、相変わらずソファで飲んでいる。 「……なあ」 前から、ずっと気になっていた事を、薫は聞いてみる事にした。 「はい?」 「何で、そこまで俺に優しくするんだ?」 「愛しているからですよ」 「そうじゃない! そういうのじゃなくて……」 何と言えばいいのか、薫自身分からない。 それを察し、雄介はホットミルクをテーブルの上に置き、薫の隣に座る。 「……人を殺す苦悩を、私も知っているんです」 そのまま薫にもたれかかり、弱弱しく薫の首に抱きつく。 「自分が生きるために、他人を殺す……。都市伝説の力を初めて手に入れた時、そんな事をしたんです。……とてもつらかった。体が、心が、魂が、全部引き裂かれるように感じました。……最初あなたにあった時、そんなあなたの苦悩が見えたんです」 「……だから愛してるだなんて嘘を言ったのか? 俺に同情して」 その言葉を聞いて、雄介は抱きしめる力を強くする。まるで、今にも消えてしまいそうな物を、失わないように、強く強く……。 「確かにあなたに同情しました。でも、この愛は偽りじゃない。本物だ。あなたに初めて会った時、同情と共に、恋にも落ちてしまったんですよ」 「変なヤツだ」 「……よく変人って言われます。慣れているので、別に何とでも言ってください」 薫は不敵な笑顔を見せると、 「……お前も、俺の為にそこまで辛い思いをしなくてもいいぞ」 優しく抱きしめ、まるで母親の様に頭を撫でてた。 「辛くはありませんよ。私はあなたが好きでやってるんですから」 雄介もにっこりといつもの笑みを浮かべ、薫の頭を優しく撫でた。 See you next time ・・・
https://w.atwiki.jp/legends/pages/816.html
合わせ鏡のアクマ 27 「ネックと」 「RBの」 「「「ラジオde都市伝説ー!!」」」 「司会は私、ネックおばさんと」 「秋祭り編に登場したい、RBがお送りする」 「・・・で、久々のこのコーナー。みんな覚えてなさそうなのに何故今?」 「無論、書き手の気まぐれだ。それでは書き手からの要望でアンケートをとるぞ」 「はーい。今回のラジオde都市伝説は、書き手から読んでくださっている皆さんへのアンケートです」 「わー、ぱちぱちぱちー」 「その内容は『姫さんの方向性をチートキャラとしてよいのかどうか』だ」 「普段から父親に暴力を振るう姫さんですが、どうも最近その頭角を現してきたらしいんですよ」 「あ、もちろんそのほとんどが作者の脳内でですよー?」 「そこで、これまでのヒロイン役に加えてチートキャラのポジションを与えてみたいらしい」 「まぁ・・・そのチートもどれくらいのレベルかによるわよねぇ・・・」 「書き手としては『禿の黒服と渡り合えるが、スタミナ切れで負ける程度』にしたいらしい」 「強いわよ!新世界の神になりえる人と渡り合うってどれだけチートなのよ!!」 「大きくでましたねー」 「それくらいでないとチートとは呼べんだろう・・・」 「で、でももちろん禿の黒服さんみたいにギャグ要員としてのチートなのよね?」 「・・・・・・・・・」 「え、なにその沈黙は。おーい、RB?」 「それではラジオde都市伝説!またいつの日かっ!!」 「あ、コラ逃げるな!待ちなさぁああああい!!」 「・・・あ、書き手からの手紙が置いてかれてます。えーっと・・・ 『姫さんって最近すっかりギャグ要員だから、 チートキャラとして戦闘させたいなーって思うわけよ』 ・・・・・・・・・ そ、それではラジオde都市伝説!また次の機会にお会いしましょう!!」 * このアンケートの結果・・・・・・・・・ * 南区を一人の女子高生が歩いている。 彼女は時計を見ると、なにか時間が迫っていたのか小走りになって路地裏へと入っていった。 すると、狭い路地裏に黒い服を着た男が二人立っていた。 女子高生は気にする様子もなく男達を避けて走っていく。 それを見た男は彼女の背中へ向けてその異常に長い腕を伸ばして、捕まえようと・・・ 「バーカ、単純すぎるわよ」 女子高生はクルリと振り向くと伸ばされた腕を掴み・・・ 「んっ、そぉい!」 思いっきり引っ張った。 引き寄せられてきた黒服に、女子高生が蹴りをいれる。彼女はよろめく黒服から距離をとると 「ダァッ!」 助走をつけて渾身の踵落としを決める。 崩れ落ちる男の後ろからもう一人の黒服が異形を隠そうともせずに向かってくるが 「せいっ」 黒服の足が払われる、そのまま彼女は体を回転させると 「うりゃっ!」 黒服の頭と思われる部分へ回し蹴りを決めた。 蹴りの勢いで壁に叩きつけれれた黒服は、そのまま動かなくなる。 「ま、こんなもんよね」 靴をトントンと踏み鳴らすと彼女は路地裏を出て行く。 「やっぱり妹ちゃんと契約してから、××みたいに体が少し強くなったみたいね」 『怪奇同盟』からは器が小さくて影響が出てしまったのだろうとか言われたが、これはむしろ好都合だ。 「なにせ、アイツや妹ちゃんの手を煩わせなくてもこうやって自衛できるわけだし♪」 そう、彼女は戦う力を手に入れた。別に人間でなくなるつもりはないが、これくらいならアイツも気づくまい。 「ほーんと、なんか得したきぶ、ん・・・・・・あ」 路地裏から出た先で彼女を待っていたのは、黒い影の集団であった。 「・・・えーっと、もしかして私今すっごく・・・ヤバイ状況?」 迫ってくる黒い影の集団に、冷や汗を流さずにはいられない女子高生こと姫さんであった・・・ 前ページ次ページ連載 - 合わせ鏡のアクマ
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2532.html
暗い暗いその部屋に、灰色のコートを着た男が帰ってきた 尾なしの犬を引き連れ、部屋に戻った男は……部屋の中にいた先客に、機嫌悪そうな表情を浮かべる 「……何の用だ」 「つれないですね。私は、あなたの協力者だと言うのに」 その女は、男…朝比奈 秀雄に、楽しげにそう、笑いかけた 白い髪が、ぱさぱさと揺れている H-No.9を名乗る、「組織」の黒服だ もっとも、黒いスーツの上に白衣を纏うと言うやや珍妙な出で立ちのせいで、「組織」の黒服と呼ぶには、やや違和感も覚える しかし、彼女は間違いなく「組織」の黒服であり…朝比奈に、「都市伝説との契約書」を「組織」から持ち出し、与え続けた女である とは言え…最早、その事実は「組織」にバレてしまった 消される前に「組織」を抜け出し、その際に持ち出してきた「都市伝説の契約書」が全て使い尽くされたならば…この女は、朝比奈にとってもはや用無しである こちらの事情を知る相手は出来る限り少ない方がよい 使えなくなった駒は、消すに限るのだ 「用があるのなら、さっさと言え。化け物が」 「まぁまぁ、そう言わずに……どうでしょう?私の契約都市伝説の力、あなたの計画に役立てるよう、使って差し上げましょうか?」 形のいい唇を釣り上げ、重たそうな胸を支えるように腕を組みながら、そう言って来たH-No.9 …確か、この女の能力は… 「…「病は気から」、か」 「そうです。この力を使えば……あなたがその権力を欲する家の今の当主の、三日以内にその命、終わらせる事ができますよ?」 「……余計な事をするな」 低く、そうH-No.9に告げる朝比奈 彼の不機嫌な思考に連動するように、クールトーが唸り声を上げる 「あの男に、今の状態で死なれては困る……翼が、次期当主に着く事を、確定させるまでは」 「他の当主候補を全員殺してしまえばいいのでは?」 「それでは、世間から不審の目を向けられる。それでは意味がない。なりふり構わぬのなら、それでも良いが」 冷酷に、そう口にする朝比奈 目的の為ならば、己の息子すら平気で利用する男だ かつて伴侶にした女の家族すらも、目的の為ならば容赦なく殺せる冷酷さは持っている だが、それでは、目的を達する上で、不都合なのだ だから、まだ殺さない ただ、それだけだ 「こちらの役に立つというのなら、その能力で街に不幸でもばら撒いておけ…ただし、日景の家以外にな」 「そうですか。それならば、そうしましょう」 笑い、H-No.9は部屋を後にしようとする その直前、朝比奈とすれ違い……どこか妖艶に、笑った 「…ところで。いい加減、あなたの三つ目の都市伝説、教えていただいても宜しいのでは?」 「……私が貴様を殺す事になったならば、その瞬間に知る事になるのだから、必要はない」 「………酷い人」 肩をすくめ、部屋を後にしたH-No.9 朝比奈は、忌々しげに彼女が出て行った扉を見つめた 「……化け物が………増長するようだったら、さっさと消してしまうか…?」 …いや あの能力には、まだ使いどころがある あの女が、裏切ったり、敵の手に落ちるようならば、その時に消せばいいだけのことだ 利用価値がある限りは、生かしておいてやってもいいだろう その価値がなくなるまで、使い潰してやればいい 「…しかし、コーク・ロアの兵が増えぬのは不便だな……対策を考えておくか」 兵は多ければ多い方がいい だが、所詮は使い捨てだ 使えば減るのだから、増やす方法も考えねばならぬ さて…どうしようか? 朝比奈は、どこか残酷な笑みを浮かべながら、思考をめぐらせるのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - 悪意が嘲う
https://w.atwiki.jp/legends/pages/972.html
私は走る。そして破壊する。あの忌まわしきカプセルを。人々の、そして我ら都市伝説の心を無くさないためにも! ―Episode5 人の形破壊せし人の形― 私は東 京都。結界の黒服とでも、神代の黒服とでも何とでも言うが良い。しかし「暗部」の黒服も元は人間だったと聞く。 なぜこのような事をするのか。そもそも、「鮫島事件」を発動させてしまえば、『組織』の理念とは反するはずなのでは? 『組織』は都市伝説の活動が公になることをあまり快く思ってはいないはず。 『組織』のため、とは言うが、本当にそうなのか? …迷ってる暇はない!今は一刻も早くカプセルを破壊するだけだ! 私はカプセルのある部屋へ入る。そして黄金の刀を取り出す。 「…重力斬艦刀、出力最大。」 黄金の輝きが更に増す。その輝く様はまるで、刀が黄金のオーラを纏っている様だった。 「…っ!久々だったもので少々出力調整に手間取りましたよ。」 そして私はカプセルに向かって一閃する。瞬間― 太刀筋から斬撃が飛び、それが部屋全体のカプセルを貫いた!そして― カプセルなんて元からなかったかのように消え失せた。 「ぐっ!」膝をついてしまう。少々やりすぎたか… 私は懐から4つの布袋を取り出す。 中には色とりどりの石が入っていた。 …こういう時に使わないでいつ使うのか! 私はその内の3つを同時に胸に押し当てた!パリーン!!!! …今の私は今までとは確かに何かが違っていた。勘が冴え、力も無限に湧いてくるような気がする。しかもそれが更に底上げされているような気もする。 パワーストーンがそこまでの力を秘めているものだとは… そして私はまた走り続ける。そしてまたカプセルのある部屋を見つける。 「…さて、ここもきれいにしますか。」 私は手に持った黄金の刀でカプセルに入りし人の形を消しにかかる。 …皮肉なものだ、嘗ては人であったとはいえ、今では黒服。どこにも属してないだけまだマシ、というものだろうか。 黒服と化した私が同じ黒服を倒すのだから。 …いや、同じ黒服でも向こうは創られし存在、私とは違う。創られた物はいずれ破壊される。破壊無くしての再生はない。 …この様な事は詭弁なのかもしれない。 ただ、今は1秒でも時間が惜しい。さっさとカプセルを破壊して回ろう。 さっきより鼠の量が増えたような気がする。 私は霊体にシフトして壁抜けしつつカプセルを目指す。 前ページ次ページ連載 - 結界都市『東京』