約 441,844 件
https://w.atwiki.jp/madougakuin/pages/154.html
「ななや いそじ あまりむっつ やーやー むそじ あまりよっつ このこの やそじ あまりひとつ……」 少年と家政婦と思しき女性が、東方の数え歌を歌って遊んでいる。少年の父に教えられた歌だ。 「ただいま」 「おかえりなんしませ、お館様、奥方様」 「ただいま、お菊さん」 この家の主夫妻、少年の両親を和服姿の女性……白緑色の獅子が出迎える。 「お霙さん、いつもありがとうね」 「当然の事じゃ、わらわはお主の使い魔なのじゃからの」 子守の労を労う言葉にその女性は蒼い狐の姿になって嬉しそうに目を細めると、彼女の足元に擦り寄った。 少年も母の傍に駆け寄り、母親は息子の頭を撫でる。両親は息子の手を繋ぎ、その傍を狐と獅子が守るように歩く。 「ねぇ、お父さん。ブシドウ、ってなに?」 少年は、父の顔を見上げて聞いた。 男は、難しいな、とひとつ悩んで 「そうだな……人に恥じる事のないように、後悔しないように、一生懸命生きるという事だな」 「じゃあ、ぼくもブシドウを守って、大きくなったらお父さんみたいにりっぱになりたい!」 「スタファンはいい子ね」 母に褒められ、父の大きな手が少年の頭を撫でて、少年は嬉しそうな顔をした。 両親は心の底から楽しそうに笑っている。獅子と狐も心の底から両親を慕い、幸せそうに歩いている。それが少年も幸せだった。 少年にはおぼろげながら相手の心が見えた。幸せにしている、悲しんでいる、喜んでいる、怒っている。 だから周囲の人間が幸せにして喜んでいるようにしようと少年は当たり前のように考えていた。 そうしていれば、彼も幸せだから。 ずっとこんな時間が続くと少年は信じていた。 「おやすみなんし、坊ちゃん」 「お霙さん、お菊さん、おやすみなさい」 いつもと同じように蒼い狐と緑の獅子に見送られて、両親に手を引かれ子供部屋に戻る。 「おやすみ、スタファン」 両親は代わる代わる彼の頭を撫でておやすみのハグをすると、子供部屋の明かりを消した。 眠りに落ちた少年のに、部屋から立ち去る両親の発声していない声が聞こえた。 ――神様、どうかスタファンをお守りください…… 少年の記憶はここで途切れた。 次に始まった時間では、蒼い狐が傍にいた。一振りの刀があった。それだけだった。 【高位の使い魔だと?】【あぁ、親の七光りか】 霙氷と共にいると、そんな声が相手の心から聞こえてきた。 【面倒臭い】【名前を売るか】【こうすれば優しい大人に見えるだろう】 いくつもの声から耳を塞ぎ、いつしかスタファンの心は固い石棺に閉ざされた。 「霙氷、学院に通えば白菊も再び私の使い魔として現れる、と」 彼の目は、狐の纏う冷気よりも冷たいものだった。 「そうじゃ。お主の才覚があれば、それも容易かろ」 ならば、と帝都に向かう乗合馬車に乗る。 「白菊も位の高い使い魔、役に立ってくれるでしょうね」 人の心を見すぎて、いつしかスタファンは自分にも誰にも心を開かなくなった。 『白菊だけじゃと?お主、わらわが信用できぬのかや?!』 『いいえ。私たちの大切な宝、スタファンを信用できない人には任せられないわ』 主に随行出来ないと知った霙氷が驚いて言った言葉に、彼女と契約した主は微笑んで首を振り、彼女の毛並みを撫でた。 『お霙さん。私たちが留守の間、スタファンをよろしくね』 あの時に主人に随行し、何かあって異界に戻り力を蓄えざるを得なくなった白菊と再び契約すれば、あの時のようにまた心を開くのではないか。 学院で様々な術師たちと触れれば、素直な心を取り戻すのではないか。 また、昔のように自分達を「お霙さん」「お菊さん」と呼んで、学んだ儀礼でではなく心から笑ってくれるのではないか。 霙氷の願いは、完全には叶わなかった。 ただ。 「霙氷、白菊」 スタファンは二人の使い魔を呼ぶ。 「貴方達には、いつもお世話になっていますから」 二つの花冠を狐と獅子の頭に乗せる。 「よく出来ているの。ありがとう、坊」 あの時のように、スタファンの頭を撫でる。 「やめてください」 「わらわから見れば、お主はまだまだ子供じゃ」 まだあの時のように素直に甘えようとはしてこない。それだけ彼はいろいろな心を見すぎた。 彼が掟に厳しいのも、人は嘘をつく。人を欺く。だから人は掟を以って律さないと世界が上手く回らないと思っているからだ。 けれども花の冠は心を込めて編まれたもので、彼はむくれながらも照れている。 それだけでも満足だ、と、彼女は目を細めて前足を伸ばした。
https://w.atwiki.jp/desert_clover/pages/73.html
作品リストへ 前へ 次へ A-30:36-00695-01:みぽりん:神聖巫連盟 さん 「天から降ってきたコイン」 ここは国境近くの小さな村。 土地はとてもやせていて、どんなに耕しても麦も芋もろくに採れないのでした。 この村には小さな男の子がいました。 男の子の両親は毎日一生懸命働きましたが、男の子が食べるものをわずかに得るだけなのでした。 男の子は知っています。 「私達はおなかがいっぱい」という両親が、水をたらふく飲んで空腹をしのいでいることを。 とおさんとかあさんが たべて 一度だけそう言ったことがあります。 両親はとてもとても悲しそうな顔をしました。 それから男の子は二度と言いませんでした。 男の子が食べても足らないくらいの食事です。 しかし両親が勧めるたびに口にする食べ物を目にするとなんだかきゅっとなってしまい、なかなかのどを通らないのでした。 そんな家は珍しくもないのでした。 この村で大人たちはみな疲れた顔をしています。 とおさんかあさんが おなかいっぱいになるといいのに そう思った男の子は空を見上げて神様に祈りました。 かみさま ぼくのねがいを かなえてください 小さな手をあわせて一生懸命お祈りしました。 すると。 天がきらりと光り、小さなコインが落ちてきて、男の子の手にぽとりと落ちました。 空から声が聞こえます。 「これは願いをかなえるコインです。一つだけあなたの願いをかなえましょう」 これで両親をおなかいっぱいにしよう! 男の子は両親のもとに走りました。 家に帰ると、となりのおじさんが訪ねてきていました。 「家内の足の痛みがひどいんだ。薬があったらわけてほしい」 男の子は手のなかのコインをぎゅっと握りしめました。 このコインがあれば願いがかなうはずです。 ぼくがこのコインでかみさまにおいのりしてあげる。 おじさんはあははと笑って、大きな手で男の子の頭を撫でました。 男の子は何もいえなくなってしまいました。 それから何日かして、男の子のもとを一人の紳士が訪ねてきました。 私の家がもっと栄えるように祈ってくれたら、食べ物をあげよう。 しばらく村に滞在しているから返事をきかせておくれ。 そういうと紳士は背筋をきちっと伸ばして村の宿屋へゆきました。 男の子はそうするのがよいのかわからなくて困ってしまいました。 それから幾日か経たないうちに牛追いが来ました。 毎日たくさん出る「ふん」をなんとかしてほしい。牛が多すぎて世話が大変なんだ。 牛追いも宿屋へゆきました。 また幾日か経たないうちに今度は荷車屋がきました。 こう不景気で荷車が売れなくて困っているんだ。 そして宿屋へゆきました。 ある日のこと、この国を治める王様がやってきました。 これが伝説のコインかと、男の子のコインを眺めました。 ぼうや、このコインをわしのために使って欲しい。もっともっと広大な領土が欲しいのだ。 王様が来たという話を聞きつけてみんなが男の子の家へ集まりました。 「私のほうが先でしたよ」 「こっちのが困っている」 「そんな小さな願いにはもったいない」 大人たちはあれこれ言いました。 男の子は悲しくなりました。 みんな困ってる、みんな助けてほしいんだ。 男の子は考えました。 そして…。 「みんな きいて」 男の子の声にみなしいんとなりました。 かたずをのんで見守っています。 「ぼく、どうしたらいいのかわかったんだ」 男の子はコインを手に、澄んだ声で祈りました。 「みんな みんな せかいのみんな しあわせになあれ」 そのときです。 あたりをぱああっと暖かな光が包みました。 みな、なんだか優しい気持ちになりました。 「こんなに満たされた気持ちは初めてです」 大人たちは互いに非礼を詫びました。 「あなたは車が売れなくて困っていましたよね」 紳士が車屋に言いました。 「私が車を買いましょう。そして牛追いさん、私に牛を数匹とふんを売ってください」 そして男の子に言いました。 「みたところ、この村の土地はやせているようだ。この暖かな気持ちのお礼に牛のふんを肥料として寄贈させてくださいませんか」 村人たちは喜びの声をあげました。 王様は荷車をひく道を整備してくれました。 村人たちは何年もまた少しずつ頑張りました。 今ではもうおなかをすかせた人も、悲しい顔をした人もいません。 となりのおばさんは薬を買い、足の痛みもとれました。 村は豊かになりました。 生き生きと過ごす国民をみて、王様もますます幸せと思いました。 そして男の子も幸せでした。 もう食事をしてもきゅっとなりません。 男の子の両親も幸せでした。 かわいいわが子がいつも笑顔でいてくれるようになったのです。 みんなみんな 幸せでした。 作品への投票・ひと言コメント 【テンプレート】 ○国民番号:名前:藩国 ○支払い口座:投票マイル数 ○作品へのコメントをひとこと ○27-00518-01:od:ヲチ藩国 ○個人口座:1マイル ○めでたしめでたしですね。(でも、結びが「めでたしめでたし」でなくて「みんなみんな 幸せでした」になってるところが個人的にはお気に入りです) -- (27-00518-01:od:ヲチ藩国) 2008-07-03 23 38 09 名前 コメント すべてのコメントを見る 上へ 作品リストへ 前へ 次へ -
https://w.atwiki.jp/originalriderinkago/pages/92.html
(「場面」は準備中) 「仮面ライダーRUIN」第4話プロットライン (ライター:管理人) 登場人物 千堂疾風(23) 『MESSIAH』首領の息子。主人公 水戸徹(18) 高校生。 『MESSIAH』首領 秘密結社『MESSIAH』 首領 ナメクジ型怪人スラフラッグ 秘密結社『MESSIAH』 幹部怪人 戦闘員 秘密結社『MESSIAH』 構成員 話のあらすじ(検討段階) 健康状態にあった人間が突然動脈硬化や心筋梗塞で血管を詰まらせ、次々に死んでいく怪事件。その裏には、秘密結社『MESSIAH』の体質改造実験が潜んでいた。 ナメクジ型怪人スラフラッグの粘液には、接種した人間の体を変化させてしまう作用がある。 『MESSIAH』はその粘液を用いて、水分の過剰排出を促すように人間の体質を改造していたのだ。 しかしそれは試験段階にすぎなかった。『MESSIAH』の最終目標は、粘液を接種した人間の体が溶けて消えてしまうように改造することにあったのだ。 高校生・水戸徹の両親は人間溶解作戦の最初の犠牲者となってしまう。 死ぬ直前に両親が言い残した言葉から、彼らが殺されたことを悟った水戸徹。彼は単身で事件の調査を探り、スラフラッグの粘液を混入させた納豆食品がバラまかれようとしていることを突き止める。 スラフラッグに襲われるも、同じく事件の調査を行っていた仮面ライダーRUIN――千堂疾風の助けにより、水戸徹はその一命を取り留め、仮面ライダーRUINに『MESSIAH』の作戦の全貌を伝える。 仮面ライダーRUINと水戸徹の協力により、『MESSIAH』の作戦実行は防がれ、スラフラッグは倒された。 両親がいないでも強く生きていく決意をした水戸徹を見届け、仮面ライダーRUINは次の街へと向かう。 場面 <場面1> (以下準備中)
https://w.atwiki.jp/moyatto/pages/21.html
ジェラルド ヒロインの一人。 最初は「ウチ・ズ・ネグ」の構成員だったが、飢えているところを 主人公に助けてもらって(パン耳のラスクを頂戴して)からは主人公の陣営に付いている。 基本的に無気力。 両親と死別し、今は犬、猫一匹と生活している。 blankimgプラグインエラー:ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 以下、裏設定 ロリで巨乳。 これ超大事(´・ω・) ペットの犬と猫の死亡シーンはジェラルドルートでしか見れない。 ヒロインごとにウチ・ズ・ネグと何らかの因縁があり、ラストバトルでは そのルートのヒロインと行動する。 (電波) 全キャラのハッピーエンドとトゥルーエンドを見るた後に最初から始めると ハーレムルートに行ける、ハーレムルートではペットの犬と猫は生き残る(電波) 旅行先の事故はウチ・ズ・ネグが起こした屋留の両親を事故に見せ掛けて 殺そうとして起こした事件 その事件で両親は死に妹は行方不明になる 行方不明になった妹はウチ・ズ・ネグに拉致られていて戦闘員としての教育を受ける。 妹は当時3歳で家族の記憶がほとんどなく唯一残っている記憶は 母親が作ってくれた兄の好物のパン耳のラスクを兄と一緒に食べている記憶のみ 屋留に助けられたときに食べたパン耳ラスクが記憶にある味と一緒で 徐々に屋留になついていく(美味しんぼ的展開) その後ペットの犬と猫と一緒に屋留に家に転がり込み、高校に転校してくる。 また、拉致される前は美香ともよく遊んでおり美香にもなついていく。 5歳年下の妹はジェラルドにすれば安価設定の13歳もクリア出来るし 作品中に臭わせるていどにしておけばソフ論にも引っかからないはず・・・ (電波)
https://w.atwiki.jp/keikenchi2/pages/1133.html
ヒウンシティのセントラルエリアの港に、あるタブンネの一家が歩いていた。 父に母、長男次男、長女次女とべビタブンネの7匹の家族だ。 本来、森に住むタブンネだが、こんな港街に出てくるにはわけがある。 森の食料が不足してきたのだ。つまり、この一家は港の船に密航し、暖かくて住みやすい場所に 移住のである。「ミッミッ、ミッミィ、ミッミッ。」新たな土地に期待を膨らます家族。 そのうちに港に入るタブンネ達。港に船は3つある。どの船に乗るか迷うが、一家は密航者だ。 当然、人が並んでいない青い船に乗ることにした。ここだけの話、これが一家の痛恨のミスであった。 青い船にはなにやら重装備の人々がコンテナや積み荷を運んでいる。タブンネ達は、そのコンテナに 入りこんだ。母タブンネの木のバスケットにはオレンの実が30個ほどある。移動中での食料だ。 15分後、船は出港した。タブンネ達は、見つからないよう、静かにしながらも、「ミイミィ」と おしゃべりを楽しんでいる。そんなタブンネ達が、理想の地を踏むのは3日後だった。 荷物室の積み荷が出され、一家が入っているコンテナも取りだされた。 (はやく、理想の地が見たいミィ。)人の気配に気を付けながら、戸を開けると、強い吹雪が入ってきた。 「ミィッ!?」「ミッミィ?」目の前に広がるのは広大な氷の景色。タブンネ達は驚きを隠せない。 そう、タブンネ達が乗り込んだのは、南極行きの砕氷船であった。港で人が並ばないのは当然である。 この瞬間から、タブンネ一家の死の南極サバイバルは始まるのであった・・・。 広大な氷の景色。それが信じられないタブンネ達は思わず目をこする。 (ここはどこ?おいしい木の実の木はどこ?)もちろん木などは一本も生えていない。 焦った一家は引き返そうとしたが既に砕氷船は海の上。完全に退路を断たれてしまう。 タブンネ達にはただ、氷の世界をさまよう術しか無かった・・・。 -30℃。温暖な森に住むタブンネには絶対に味合わない気候だ。 現在、一家にはバスケットのオレン12個と自分達のでっぷりした脂肪しかない。 南極を歩いてもう、1時間が経つ。一家の顔は寒さによる鼻水と、後悔の気持ちの涙が 氷柱を作っていた。「チィチィ」ただ一つ、べビタブンネは母の懐の中で無事であった。 「ミヒィ・・・ミヒィ・・・」(ママ、さむいよ、おいしいオレンの実がたべたいよう) 次男タブンネの悲痛な声。早くも次男の体には異変が起こっていた。 触角が紅く腫れ、水泡ができていた。言うまでもない、凍傷の症状だ。 可哀想に思った母は数少ないオレンの実を次男に渡す。 「ミイイイィィィ・・・。」喜ぶ次男。オレンを噛もうとする。しかし、「ミギィッ!?」 次男の舌がオレンに張り付いてしまった。この寒さで木の実も一瞬で凍ってしまうのだ。 「ミギィイイイイィッ、ミイィィッ!」焦って外そうとするが、力不足。 次男の舌はどんどん凍りついて行く。しかし、極寒の恐怖はこれでは終わらなかった。 舌から凍りついて行く次男。このままではいけない。列を先導していた父タブンネは 覚えている火炎放射を応用して指先に炎を込めて氷を木の実ごと焼き切る作戦にでた。 「ミイィィ・・・ミッ・・。」神経を擦り減らせる作業だ。ジュウゥゥゥ・・・ なんとか、成功はしたが、次男の舌の氷はどうにもならなかった。 それから2時間後、家族は疲労困憊だった。「ミグゥゥ・・・」一番泣いていた長女は 涙が凍り、右目が完全に凍ってしまった。また、体ができている両親は平気だが、 子供達の中にも凍傷が広がっている。両親は後悔と自責の念で涙が止まらなかった。 (あたたかい土地で新しい生活ができるとおもったのに・・・。甘くて美味しいオレンの実を かわいい子供たちにたべさせたかったのに・・・。どうして・・・?どうしたらいいの?) 「ミグググゥゥウゥゥウゥウゥ・・・。」タブンネ達の泣き声が氷の世界に空しく響く。 しかし、タブンネが歩いて行くと、そこには1つのある程度大きな建物があった。 南極探検隊の基地だろう。つい最近使われたらしく、食料も備えてあった。 タブンネ達の大好物のオレンもあった。タブンネ達はここを拠点とし、助けを待つことに 決めたのだった。 基地に入ったタブンネ一家。中に入ると暖かい。つかの間の安息に一家は涙を流して 喜んだ。父のかえんほうしゃで暖炉に火を付ける。凍えていた子供達はわれ先に暖炉に 駆け寄る。母タブンネもべビタブンネを暖めるために暖炉に座る。 「チィチィ」母の懐にいたべビタブンネは何事も無いように元気だ。全員ここにいる。 安心した母は思わずまどろむが、その瞬間、「ミギャァアアァァア!!?」「ミアァアアァアア!?」 次男と長女の悲鳴が部屋に響く。何があったか両親は2匹に駆け寄ると、思わず息を呑んだ。 暖炉の熱で次男の触角と長女の右目が溶けてしまったのだ。凍傷で芯まで凍っていた証拠だ。 「ミグゥゥウゥウ・・・」「ミヒィイイィイイィ・・・」2匹の子供の泣き声が響く。 (どうして・・・神様、助けて・・・ヤグルマの森に帰りたいミィ・・・)我が子の悲痛な叫び・・・。 両親は改めて後悔に顔を歪めた。やがて、空が暗くなり、さらに冷え込んだ。 家族は夕食を始めた。倉庫のオレンを一人2個。感謝を込めて頬張るタブンネ達。 甘くておいしいオレンの実。本当は暖かいところで食べるハズの・・・。家族が美味しくオレンの実を 口の中で溶かす中、次男だけ、違和感があった。「ミィ?」味覚が感じない、口で何か別の物が溶けている。 次男が父に口内を見てもらう。父は言葉を失った。次男の口内ではオレンではなく、凍傷にかかっていた 舌が溶けていた・・・。南極の恐怖はまだ、序盤である。 暖炉と食料の生活から4日が経った。倉庫の中のオレンは5箱、150個ぐらいだ。 しかし、いつまで待っても助けは来ない。両親は少しずつ不安が募って行った。 次男は舌と触角を失い、落ち込んでいた。他の3匹の子供達は暖炉の周りで走り回っている。 そんな時、暖炉の火が消えた。基地の燃料切れである。「ミッ?ミイイィィィィ!?」 驚きと寒さの余り、騒ぎ出すタブンネ達、父が火を吐いても効果は無かった。 3日後、オレンの実も半分以下になった。室内でも-4度はあるだろう。家族達はどんどん衰弱していった。 焦った父タブンネ。どこかにオレンの実の木はないか?そう思うと、自分はまだ元気な長男を 連れ、母に子供を任せると2匹で吹雪の中へ食料を探しに行った。 足の裏が冷たい。ハート型の肉球は霜焼けで紅く腫れていく。慨に2匹共、耳や触角が白く変色し始めている。 外に出て2時間、オレンの木など見付かるハズは無かった。落ち込む2匹に更なる不幸が襲う。 「ミイイイイイイイィィイイィィィイイィッ!!?」長男タブンネが足を滑らし、谷底に落ちてしまったのだ。 涙を流しながら、互いの距離が広がって行く。谷が深すぎたせいで長男の姿は見えなくなった。 父タブンネは泣きながら、基地に戻って母に応援を求めにいった。 その頃、落ちた長男タブンネは更なる地獄を見ていた。 父が応援を頼みに行っていた頃、長男タブンネは300m下の谷底にいた。 長男が落ちた時、ボヨーンと青くて柔らかい物がクッションとなって助かったのだ。 しかし、その青い物体はトドゼルガの腹だった。「ブオオオオオオオオォォォ!!」 怒りのトドゼルガの雄叫びが谷底に響く。「ミイイイイイィィィ!?」長男の絶望的な 悲鳴が響く。(ゴメンなさいミィ。殺さないで、死にたくないミィ!) (ココはワシの縄張りだ!入った物は許さんッ!)長男の必死の命乞いも誇り高きトドゼルガ には無意味だった。(死ねェ!絶対零度じゃ!)トドゼルガの口から最強の冷気が発射される。 冷気が長男の体を足から凍らせていく。「ミヒィイイイイィイイィィ!?」自分に迫る死の恐怖 にかられ、長男は父に助けを求める悲鳴をあげる。しかし、父はまだ基地にいた。 (助けて!誰かァ!)冷気が長男の体を固めた。「ミィッ!ミィッ!」(パパッ!早く来て!!) 長男は耳を澄ますが、既に耳は凍って使い物にならなかった。トドゼルガは海に潜って行った。 「ミイミィミィッ!ミイイィイイィィ!!」動かなくなっていく体で助けを求める。 もう時間が来たようだ。「ミ・・・ィ・・・。」(パパ・・・助け・・・) 最期の弱々しい声と共に長男は死んだ。家族が救援に来た時、絶望に満ちた死に顔に皆泣いた。 「ミヒィ・・・ミグゥ・・ゥエ・・・。」非業の死を遂げた長男。その死を悼む家族の声が 空しく響く・・・。(ゴメンよ・・・。パパのせいで。お前の命を奪ってしまったミィ。) せめて基地の近くに立派な墓を建ててやろう。氷付けの長男タブンネの死体を持ち帰る。 しかし、その道中にまたも惨事が起こる。「オニ―ィッ!」オニゴーリと遭遇したのだ。 (俺達オニゴーリは、ルイべが大好物なんだ。その死体、戴くぜ!) (何を言うミィ。これは家の大事な息子だミィ!)しかし、父タブンネの抵抗も空しく、 長男のルイべは奪われてしまった。「ミイィィィッ!」子供を返せと父が叫ぶ。 (返すワケねえだろバーカ。」オニゴーリに冷たくあしらわれ、父が殴りかかってきた。 父タブンネの鈍いパンチをかわすオニゴーリ。そのまま父の左腕に噛付いた。 そのまま、かみくだく。「ウビヤアァァァァァァァアアァァビイィイイィ!!」 左腕が見る間に粉砕され、父タブンネの悲鳴が南極に響く。構わずオニゴーリは噛みつぶす。 腕は肉や血、骨がグチャグチャに混在され、ただの肉片と化した。「ウビイイイィ・・・。」 のたうち回る父に母がいやしのはどうをかけるが、最早、効果無し。腐り落ちるのを待つのみだ。 父タブンネが重傷を負い、慌てふためく一家を見ているオニゴーリ。いい考えが浮かんだようだ。 良からぬ考えが浮かんだオニゴーリ。混乱している一家の中から一番小さい子タブンネを 捕まえる。「ミィィッ!ミィーッ!」捕まった次女タブンネが助けを求める。 両親は「ミィミィ」と子供を返すように懇願するが、オニゴーリに無視される。 ミィミィ泣く次女を自分の頭に置き、そのまま空気中の水分で凍りを作る。 すると、氷がカプセルを型取り、次女を閉じ込めた。また、カプセルの下からは、刃が 出てきた。皆も知る、ミキサーの完成である。「ミッミッミッ・・・ミヤァァァアアァァ!?」 今度は自分が殺される。自分に迫る死の恐怖にかられ、次女は泣き叫び、糞尿を垂れ流しながら、 氷のカプセルをガリガリ引っ掻いている。もちろん、無駄な抵抗だ。 両親も顔を涙と鼻水、涎でグシャグシャにしながら必死に「ミヒィミヒィ」と懇願している。 それを見てオニゴーリは上機嫌になった。次女は「ミギャァアア!」とまだ必死に氷のカプセルを 引っ掻いていた。しかし、両親は頭を下げることしか術がなかった。 (よく見てな。)オニゴーリは残酷な笑みを浮かべ、ジャイロボールを始めた。 その瞬間、次女の足元が血を噴きあげた。「ミギャアァアアァァァァァァァァァアア!?」 次女が絶望に満ちた奇声を上げ、自分の糞尿と共に溶け始める。 (パパッ!ママッ!助けてエェェ・・・。)次女の悲鳴は空しく幻へ消えていく。 「ビヤアアァァァアアッミビイィィィィイイィ・・・!!?」その内、次女は赤茶色のムースに なっていった。その光景に母はもちろん父タブンネは呆然としていた。自分の愚行のせいで、 木の実はおろか、長男に次女、自分の左腕を失った事実に気付くのはもう少しかかることになる。 自分の愚行によって、長男と次女に自分の左腕を粉砕された父タブンネ。結局、長男の死体はオニゴーリに ルイべとして食われ、基地の前の小さな墓にオニゴーリミキサーにかけられた次女のムースが一すくい入っていた。 あれから3日。父の左腕は辛うじて付いており、母タブンネがいやしのはどうをかけるが、腐り落ちるのは時間の問題だった。 それから2日後、父タブンネの腕は腐り落ちたが、父は無言だった。そんな中、べビタブンネだけが「チィチィ」元気に鳴いていた。 こうしてはいられない。早くオレンの木を見つけねば。父タブンネは全く懲りていなかった。 嫌がる次男を無理やり連れてまたも南極をさまよった。「ミヒィミヒィ」(もう帰りたいミィ。いやだミィ。)次男は弱音を吐くが、 「ミィッ!ミィミィッ!!」(お兄ちゃんの死を無駄にするなミィ。オレンの木をなんとしても探すミィ。」父の一括。 しかし、見付かるハズもなく、スゴスゴと基地に帰るしかなかった。そんな生活が5日たったある日、次男の体に異変が起こった。 次男の両足が真っ赤に腫れ、化膿していたのだ。「ヒィヒィ」呻く次男。元から寒さに弱かった次男。ここに来て触角と舌を凍傷で 失っていた。今回も厳しい寒さの中、尖った氷を踏みつけたため、足の傷口が炎症と凍傷を併発していた。 本来なら、ポケセンに行くべきだが、手元にあるのは、包帯しかなかった。「ミヒィミヒィ」と苦しむ次男。 両親は究極の選択を迫られることになる・・・。 次男の足は日に日に悪くなっていくばかりであった。倉庫にあった包帯を巻くが、もちろん効果は無かった。 最初、紅く腫れていたところは紫や茶色く変色し、異臭を放ち始めた。つまり、壊疽である。 神経は生きているらしく、次男は「ミグゥ・・・ウビイ・・・」と呻いていた。(パパのせいだ。ボクの足を かえせミィ!)やがて、父タブンネに憎悪の視線を送るようになっていった。父タブンネは泣いて後悔し、 次男の足が治ることを神に祈るしかなかった。しかし、既に治療法は両足の切断しかなかった。 それから2日後、壊疽は太ももに広がった。だが、父が倉庫をあさると、一本の鋸(冷凍マグロ用)を発見した。 もう時間が無い。切断を行う。父に憎悪の視線を送りながら「ヒィヒィ」苦しむ次男。父の手元の鋸を見ると、 「ミヒィイイィイイィイイ!?」絶望の奇声を上げた。暴れる次男を諭す両親。「お前の足はもうダメだミィ。 生きるために足を切るミィ。」次男は余りの恐怖に気絶してしまう。今しか切るチャンスは無い。 切断は両腕がある母タブンネが行うことになった。べビタブンネは長女に預け、気絶中の次男の体を父が押さえる。 意を決し、母タブンネが重さ十数キロの鋸次男の右足の太ももをゆっくり引いた。その瞬間、目を覚ました次男が 「グビヤアアァァァァァアアァァァァ!!ウビイィィイイィイイィ!!?」この世で一番の悲鳴を上げた。 両親は謝罪と自責の念にかられ、泣きながら手術を続行した。 「グビイィイイ!」右足を切られる次男タブンネは子供とは思えぬ力でのたうち回る。 母タブンネは手術を早く終わらそうと焦るが、寒さで引き攣った体に加え、重さ十数キロ の冷凍マグロ用の鋸では到底終わるものでは無かった。「ウビイイイイイィイイィィ!!」 2時間後、次男の悲鳴は止まらない。しかし、今だに右足の半分も切れていなかった。 床は血で染まり、母タブンネも父タブンネも返り血を浴び、紅くなっている。 「グビイィイイィィイイィィィィウビャァアアァアアァアアアァアァ・・・!!」 (痛いよォ!ママァッ!もう止めてェ、死にたいミィ!)鋸を引くたびに疲れ果てる母。 次男タブンネの痛みは長引くばかりだった。次男は白目を向き、血の泡を吹いて叫ぶ。 8時間後、ようやく右足を切り終えた母。次男、父3匹疲れで満身創痍だが、左足がまだある。 憎悪の視線を一万倍強め、両親をただ睨む次男。親子関係もズタボロだ。次の左足。 「グビイィィィイイィィイイィミガアアァァァァァァァアアァアアァアアァ・・・!!?」 (もうイヤだ。痛いよォッ!苦しいよォッ!)5分かけて引かれる鋸。その都度、血が吹き出し、 両親の体を涙と鼻水、返り血が染める。12時間後、合計20時間かけて次男の両足の切断は終了した。 足の切り口は包帯で無造作に巻かれ、次男は気絶した。「ミヒィ・・・ヒィ・・・」 改めて、疲れと後悔、謝罪の涙を流す両親であった・・・。 またも父タブンネの愚行のせいで次男タブンネは触角、舌ならず、足までも失ったしまった。 地獄の大手術から5日後、目を覚ました次男。起き上がろうとするが、転んでしまう。 しばらくして自分の足が太ももから無いことに気付き、落ち込んでしまった。 「ミブァァァァァァアアァアア・・・。」時々泣きだすこともあった。 しかし、一家はそれどころでは無かった。基地の倉庫にあった莫大な量のオレンが尽きてしまったのだ。 つまり、一家の食料は全く無し。飢え死にを空しく待つだけだ。最初の2日間は堪え切れたが、 だんだん空腹はひどくなっていくばかり。母タブンネに至っては母乳の出が悪くなり、「チィ・・チィ」 べビタブンネも衰弱が見えてきた。 一週間後、家族全員が痩せこけ、父は外に出る元気も無く、母は母乳が全く出ず、べビタブンネは母乳を 求め「みーっみーっ」と泣くばかり。一家全滅という絶望の最中、たった一つだけの生きる術に皆が 気付いた。そう、ここにいるだれかを食すことだ。残酷だが、家族の視線はただ一つに向けられた。 「みーっみーっ」べビタブンネである。今まで、辛い時も笑顔を振りまいてくれた赤ちゃん…。 運命の残酷さに家族は涙を浮かべる。ただ1匹、何も知らないべビタブンネが「チィチィ」鳴いていた。 せめて、苦しませないように・・・。父タブンネは10万ボルトでべビタブンネの心臓を止めた。 「チ・・・ィ」べビタブンネはゆっくり目を閉じる。これが赤ちゃんとの永遠の別れ・・・だと思った。 夜になり、家族の悲しい夕食が始まるが、事件はその時起こるのだった・・・。 家族が囲む夕飯の輪にべビタブンネが皿にちょこんと乗っかっている。 (今までみんなに元気をくれてありがとう。ゴメンね…。)家族全員がべビタブンネに感謝の 黙とうを奉げる。皆が涙ぐむ中、父タブンネの包丁によってべビタブンネの胸が断ち切られる。 すごく血生臭いが、皆、目を背けなかった。しかし、その瞬間、「ビギイイイイィィィ!?」 一瞬、誰の悲鳴か分からなかったが、たしかにそれはべビタブンネのものだった。 「ミグゥウゥウァアアァァ!」胸と腹から血や腸を撒き散らし、とても赤ちゃんとは思えぬ悲鳴で べビタブンネが苦しみもがく。実はさっき父タブンネが放った10万ボルトがあまかったのだ。 急いで母がいやしのはどうをかけるが、べビタブンネはチアノーゼをおこし、意味を成さない。 「ビィーッウビイーッ」見る間にべビタブンネは吐血でアゴを血に染め、臓物、糞尿を撒き散らす。 その様はこの世で最も悲惨な赤ちゃんといっていいだろう。「ビブォッ!ガフッ!ミガガガァ!」 やがて、手足をジタバタさせ、狂ったような奇声をあげ、最期の「ミゲオォッ!!」すごい勢いで 吐血し、白目をむいて、泡を吹いて死んだ。全て父のミスである。 その後、家族の夕食がさらに涙と暗黒のムードになったことは言うまでもない。 悲しい夕食から2日後、べビタブンネの犠牲も空しく一家は空腹だった。べビタブンネの骨は 基地の前の粗末な墓に元次女のムースと共に安置された。7匹だった一家はもう4匹に減った。 悲しみに一家が包まれる中、またも不幸がタブンネ一家を襲う。次男であった。 父の愚行で両足と触角、舌を失い、歩くことも出来ず、包帯を腰に巻き付け、オムツ生活を送っている。 切断した傷も化膿し、炎症が起こっている。終いには傷口から入った黴菌が脳に入り、脳症を引き起こした。 毎晩「ミグオオォォオオォォォォ!!!」(足を奪ったクソジジイ!許さんッ!)と叫び続け、父を見るたび、 憎悪の視線は強まった。そんなある夜。惨事は起きた。「ビグゥウゥウォオオ!」「ウビイイイイイィ!?」 次男の叫びとは別にもう一つの悲鳴があった。長女である。驚いた両親はすぐに次男を見に行く。 その光景は狂った目付きの次男が水を持ってきた長女に噛付いていた。「ミヒィイイィいい!」長女の悲鳴。 「グへへへヒィィイイ!」(オレに惨めな思いをさせたクソジジイ!死ね!)脳症を引き起こしていた次男は 偶然、水を持ってきた長女を父と間違えたのだろう。すでに個人の判別も出来ていなかった。 既に長女は次男に触角を噛み切られ、足はズタズタに引き裂かれ、右足が足首から千切れていた。 「ミヒィミヒィミヒィ」痛みと恐怖に泣き叫ぶ長女。それを「ミガァァアアァァ!!」タブンネとは思えぬ、 恨みと獣の形相で父を殺しているつもりで長女をボロ雑巾にしていく次男。目の前の地獄絵図に両親は呆然 とするばかり、絶望の声で「ミギィミギィ」助けを求める長女タブンネの声さえ聞こえなかった。 「ブガガハア―ッ!!」最早、獣と化した次男。足の無い体で素早く這いまわり、長女を引き裂いて行く。 「ミブィ・・・ミブイイィ!?」血を撒き散らしながら必死に両親に助けを求める長女タブンネ。 (パパ、ママッ!おねがい。早く助けてミィ!)しかし、次男タブンネの変貌に唖然とし、両親の耳にそれは 届かない。事実上、父タブンネの罪を被って無実の制裁を受ける長女の運命は絶望的だった。 「ブガァァァァ!」狂気の次男が長女の腹に噛付き、破った。「ウビイイイィィイイィィイイィ!!!?」 大量の血と臓物を吹き上げ、苦痛と絶望の悲鳴を上げ、「ミブォッ!」と血を吹く長女タブンネ。 (死ぬのイヤだよ!早くゥ!いたいよォォ!)脳がイカれ、父を殺しているつもりの次男。 長女の悲鳴を気分良く、嘲笑い、腸をズルズル食い漁っている。「ブゲゲゲゲエエェェ!!」 飛散した臓器を全て食い、「ミグゥゥウゥゥウ・・・」と苦痛に呻く長女の腹に顔を突っ込み、食い荒らす。 目の前の凄惨な光景に両親は自分がすべきことすら見失い、口を開けて見ているだけ。 「ミビャァアアァァァァァアアァァ!!ミビィイイイイィィィイイィィイイィイイィイイィィ!!?」 内部から臓器を荒らされ、長女は白目を剥き、口と腹から血を吹き上げ、のたうち回る。 5分後、顔を紅く染めて顔を上げた次男。最高の笑みを浮かべている。長女はチアノーゼを起こし、「ヒィヒィ」 呻ってビクンビクンと動いている。虫の息の長女に次男は渾身の力で鼻の骨を叩き割った。「ミグ・・ゥァ・・」 乾いた悲鳴と共に鼻から脳をニュルニュル吹きあげる。しばらく経って長女は脳を吹いたまま息絶えた。 疲れ果てた次男は意識を失い、倒れた。両親は、やっと正気を取り戻し、言葉を失った。目の前には、顔が変形し、 右足が千切れ、臓物、血をぶちまけた長女の変わり果てた死体が転がっていた。その死に顔はいつまでも両親を 見つめ、(はやく、たすけて!死にたくないミィ)と訴えていた。その責任は元を正せば全て父タブンネである。 狂った次男タブンネに惨殺された長女タブンネ。その死体は基地の前の墓に葬られた。 しかし、それから次男は一日中喚き、暴れていた。自分が殺したつもりの父。父の愚行で足を奪われ、 正に殺しても飽き足らないのだろう。「グオオオオオォオオォ!!」と父を恨む声を上げる次男。 そんな、変貌してしまった次男。その狂暴さを両親は恐れ、足の包帯を換えることも、オムツ代わりの 腰に巻いた包帯も換えず、別の部屋に引きこもっていた。つまり、看護を放棄しているのだ。 不潔なため、足の切断面は膿が吹き出し、またも、壊疽を引き起こした。その上、長女タブンネの臓物 を生で食いあさったため、腹を下し、オムツ包帯には下痢便が溢れ、様々な異臭が立ち込める。 食事もなく、次男の死も時間の問題であった。「ミヒィ、ミヒィ、ググ・・グオオオオオォォオオ!!」 自分の責任で苦しみもがき、呪いの声を上げる次男。しかし、既に両親は次男の事など頭に無し。 自分達2匹で、助けを求め、故郷に帰ることを考えついた。次男を置き去りにし、基地を後にする両親。 子供3匹(長女・べビタブンネ・元次女のムース)の墓に手を合わせる。「ミグゥ・・・ミヒィィィ・・・」 (ゴメンね・・・。パパとママが森の木の実を一人占めしたばかりに・・・。)泣いて子供に詫びる両親。 ハート型の肉球を腫らしながらも必死に海岸を目指し、氷をさまよう2匹。助けが来てるかも・・・。 甘い願望を浮かべる両親。もちろん狂った次男の事など、どうでも良かった。「ミッ、ミッ、ヒィ、ミィ」 白く息を吐きながら故郷を目指す両親タブンネ。自分達の判断ミスで、子供達4匹を死なせ、次男タブンネ の両足を奪い、看護まで放棄した両親。自覚が無いながら、ここまでの悪行を行った外道の両親。 父タブンネの左腕だけで済むほど、神の裁きは甘く無いことをこの2匹の外道の豚は知る由も無い。 外道の両親タブンネはただひたすら海岸に向かって歩く。もう一度ヤグルマの森に帰って家族を やり直そう。そんなことを考えながら歩くこと3時間。疲れた両親はバスケットからオレンの実を 2個出す。実はこれ、子供達にナイショで隠し持っていたモノだ。夫婦が実を頬張るそのとき、 「レ―ジ―ア―イッ」両親の目の前の氷がひび割れ、レジアイスが飛び出したのだ。 「ミヒィッ!!」驚いた両親は隠しオレンを思わず落とす。それをレジアイスは構わず踏みつぶす。 「ミイッ、ミィミィ」なんとか命は助けて。と許しを乞うがただのバカである。 「レ―ジ!レジ!レジ!」(美しい南極の景観や住民を乱すとは何事ダ。ここで始末スル。) 「ミヒィ、ミイミィ」必死で命乞いするが、この外道の豚に助かる理由など無い。 「ビィーーーーーーー」レジアイスの古代の吹雪が大罪人、父タブンネの体を直撃した。 「ミガガガガガァアア!!?」震えた悲鳴を上げ、父タブンネは氷のクリスタルに包まれた。 「ミイィイイイイィ!!」逆上した母タブンネがひみつのちからを放つが氷の世界でレジアイスに 効果は無かった。「ミッミミ?」うろたえる母タブンネの足元にレジアイスは冷凍ビームを放つ。 「ミヒィィイイィ!?」足が凍り、動けない母タブンネにレジアイスは(お前も罪人ダ)と言い放ち、 母タブンネにラリアットを撃つ。「ウビイィイイィィイイィ!!?」両足が氷ごと砕け、母タブンネ は吹っ飛ぶ。「ミヒィミヒィ」と苦痛に歪む母。去り際にレジアイスは(いい地獄を体験シロヨ。) と言い、飛んで行った。 自分と氷付けの夫。母タブンネは耳を澄ます。父の心臓は動いていた。はやく直さないと。 母タブンネは足の無い体で血の線路を作りながら、必死に氷付けの夫を押し、這いながら基地に戻る。 「ミヒィ・・・ヒィ、ミィ、ヒィ・・・。」膝下から血がどくどくと出る。しかし、自分の足の苦痛 に耐えながら基地に帰る母タブンネ。(もう一度、ヤグルマで家族をやり直すんだミィ・・・。がんばる んだミィ・・・。)夫婦が基地に戻ったのは12時間後。次男のことなど、頭にあるハズもない。 足の無い体で懸命に父タブンネを看病する母タブンネ。両足の出血は止まらず、這うたび、 血の線路を作る。母タブンネの看病も空しく、父の心臓の鼓動は弱まり、3日後、心臓は止まった。 「ブミヤァァァァァァァァアアッ!?」人生のパートナーを失い、泣きわめく母タブンネ。 数分後、突然、「ミへへへへへへ」と笑い、氷付けの父タブンネにいやしのはどうを当て続ける。 それから、2日後、48時間ぶっ通しでいやしのはどう使い続けた母タブンネ。足の出血は止まること なく、血の水溜りを作っている。疲れ果てた母タブンネは「ミグゥフゥッ!」と血を吐き、死んだ。 氷の中の父タブンネは1㎜も動かない。誰もが死んだと思うだろう。しかし、生きているのだ。 レジアイスの特殊な冷気によって、体の細胞が凍結し、仮死状態に陥ったのだ。脳細胞すらも。 しばらくして、目を覚ます父タブンネ。脳細胞がわずかに意識を取り戻したのだろう。 (妻はどこだミィ?)探そうとするが体が動かない。父タブンネの意識を司る脳細胞以外は、凍結したまま である。つまり、この先、父タブンネが動かせるのは己の意識のみ。一生溶けることのない氷の牢獄に 閉じ込められる。また、特殊な氷なので、心臓が凍ったままでも生きていける。死ぬことも無く、 永遠に終わることの無い、氷の監禁生活。これこそが神の裁きである。 しかし、父タブンネの本当の地獄はそれから5年後である。 それから5年後、父タブンネは心で泣くか寝るだけの生活を送っていた。今日も変わらない味気ない生活。 では無かった。この基地の南極探検隊が帰ってきたのだ。 「隊長!倉庫のオレンがありません。」「隊長!氷付けのタブンネとミイラが転がっています!」 部下の報告に驚く隊長だが、すぐにタブンネを回収した。「隊長!地中から子供らしきタブンネがあります。」 また、別の部下は「隊長!子タブンネの頭部を発見しました。」それは長男の頭だった。さすがにオニゴーリも 頭は不味く、捨てたのだろう。「隊長!実は・・・。」「何だって・・・。」 そんな感じで、タブンネ一家は全て回収された。(やった!助かったミィ♪)甘い妄想に浸る父。眠ってしまう。 父タブンネが目を覚ます。しかし、体は動かない。そして目の前に並んでいたモノ。それは、右から長男の首、 ズタズタの長女、ムースの次女、骨だけの赤ちゃん、ミイラの母タブンネ。全員、凍結して保存されている。 そして、一番左には、立派な義足を付け、同族を食い殺す、見捨てたハズの次男の姿。父は言葉を失った。 そう、ここはシッポウ博物館の別館である。次男と一家の死体が、父タブンネを見つめるように配置されている。 次男はあれから5年、氷付けで、生存し、ここで解凍された。もう、タブンネとしての記憶は無い獣である。 この一家はイッシュ政府の国家虐待遺産とされ、厳重な管理の下、保管される。次男には毎日タブンネを10匹 プレゼントされ、狩りを楽しむ。もちろん父の生存も確認された。父タブンネは永遠に家族の死体の憎悪の 視線を浴び、変わり果てた次男と同族の惨劇をずっと一生、死ぬことなく見せられる。本当の生き地獄。 父タブンネの精神崩壊との終わることのない闘いはこうして始まるのであった。 南極サバイバル 完
https://w.atwiki.jp/hacchake/pages/11.html
10名無しさん@HOMEsageNew!2007/11/02(金) 16 58 35 0 ウチの実父も前にいきなり発症したなぁ・・・。 父方の祖父母は、今から17~18年位前に相次いで他界してるんだけど、 長男夫婦が同居していて、お墓自体は代々のものがあったので、そこに はいった。 母方の祖父はその1年位前に他界したんだけど、代々のお墓がないから、 しばらくお寺さんで預かってもらって、今から15年ほど前に霊園にお墓を 立てた。 出来たばかりの霊園なんで、広々しているし休憩所もある。 お墓だって新築wだからとっても綺麗。 田舎なので、霊園自体が広くお墓同士も結構ゆったりと並んでる。 一方、父方の祖父母のお墓は都内のお寺さんに隣接した墓地だから、 ちょっと狭くてお墓同士の距離が近い。 もちろん代々のものだから、年季が入ってる。 これらの事情は、充分に承知していたはずなのに 実父 「〇〇(母の旧姓)のお墓は立派なのに、自分の両親は古い お墓で可哀想!!そうだ!パパンとママンのために綺麗で新しい お墓立てちゃうもんね!!!」 ・・・と言い出したらしい。 実母が「そんなことしたら長兄さんの面子はどうなるの?大体お墓は 代々続いているものなのに、お義父さんお義母さんの骨だけ移すな んて、へんじゃないの?」と懇々と諭したところ落ち着いたらしい。
https://w.atwiki.jp/dangerousew/pages/33.html
6年前の秋。 年配の男性が中年の男性に対し、労わるような口調で話した。 「……大丈夫か?瑞浪?」 「……ええ、大丈夫です。小松川さん、僕も探偵ですから。それに星羅を引き取る事は、僕にしかできませんから」 「そうか……」 瑞浪と呼ばれた中年の男性は、小松川と呼ばれた年配の男性に強く答えた。 「しかし、彼女の今後が心配だな。今は記憶が曖昧だが、それが戻った時、一体どれ程のショックを与える事となるのか」 「……僕は星羅に、この事は思い出して欲しくないと考えています」 「例え嘘で塗り固めたとしてもか」 「……はい」 「この先、彼女のために全てを投げ出す事になるかもしれないぞ」 「……はい」 そう瑞浪が答えると、小松川は意を決したような表情になった。 「……そうだな、俺ももう歳を取ったし、人の表裏を十分見てきた。そろそろ探偵業を引退しようと思う」 「小松川さん!僕にはまだ小松川さんがいないと……」 「瑞浪は立派な探偵だ、もう俺から教える事なんて無い」 小松川の唐突な引退宣言に、狼狽える瑞浪。 「それにな、俺は引退後、生まれ育った八王子で地元の人が集まるカフェをやるっていう夢があるんだ。俺の夢を邪魔しないでくれよ」 「……小松川さん……」 「店を開いたら、瑞浪にはいち早く教えてやる。コーヒーを飲みたくなった時には娘を連れていつでも来い、話し相手になってやる」 「小松川さん、それは……」 「これはあくまで俺の選択だ。お前は関係ない」 小松川はそう言ったが、瑞浪はおそらく小松川が星羅の居場所を作ろうとしたのだろうと感じた。 そしてしばらく後、一人の探偵は姪を引き取り、一人の探偵は引退し、八王子にカフェを開いた。 「やばっ!もうこんな時間!?」 私、瑞浪星羅は八王子駅から走り、いつも入り浸っているカフェ、『シャーロキアン』へと向かった。 教授め……普段は時間通り授業が終わるっていうのにこの日に限って10分延長するなんて! おかげで乗ろうとしたバスが1本遅れて、既に約束の時間を過ぎた状態で八王子駅にいる。 八王子駅からシャーロキアンまで徒歩8分程度だから……ヤバい!怒られる! 「どいてどいて!」 私は人込みをかき分けつつ、ユーロードを一生懸命走った。 「はぁっ……はぁっ……大丈夫?」 「おう、星羅か。今日は友達と待ち合わせだったか?」 私がシャーロキアンに入ると、店長の小松川健一さんが私の事を迎えてくれた。 小松川さんは5年程前から八王子にカフェを開いており、育ての両親とは家族ぐるみの付き合いがある事から、開店当初から常連になっている。 昔は探偵をやっていたって聞くけど、実際に何をやっていたかはよく分からない。もしかして、殺人事件を解決した事があったりして? ちょっと口煩いところはあるけど、ちゃんと私の事を知っているいい人だ。 「はい、お兄ちゃんと一人さんと一緒に、コーヒーを飲む約束をしていまして……」 と言うと、お兄ちゃんが私の事を呼んだ。 「おーい星羅、授業がちょっと延びたか?でも大丈夫だ。山乃端からは遅れるって連絡が来ている」 「……と衛は言っているが、携帯は確認したか?」 「あっ!」 私が携帯を確認すると、一人さんからは「ごめん!ちょっと用事があって15分位送れるから!」と連絡が入っていた。なんだ、そこまで焦る事も無かったじゃん……。 ちなみに私がお兄ちゃんと言った衛は、私の育ての両親の実の子供。年齢が私よりも2歳年上なので、普段私は『お兄ちゃん』と呼んでいる。まぁ、元から従兄だったから、呼び名は昔から『お兄ちゃん』なんだけどね。 お兄ちゃんの向かい側の席に座ると、小松川さんがお冷を出してくれた。 「とりあえず水を飲め。そして呼吸を落ち着けろ」 「はい……ありがとうございます……」 私は水を飲み、気持ちを落ち着けると、早く一人さんが来ないかと窓を覗き込んだ。 お兄ちゃんは、そんな私の行動を見て呆れていた。 「星羅、そんなに山乃端が来るのを楽しみにしているのか」 「そりゃあそうでしょ、今日は一人さん初めての探偵依頼、『商店街のゴミ拾い』の事前会議の日なんだから!」 「そう言いつつ、山乃端と話がしたいだけだろ……」 別に一人さんと話をする事を楽しんでもいいじゃん! そうしているうちに、窓の外に一人さんがやってくるのを見かけた。いつも首から懐中時計を掛けているので、一人さんはとても目立つ。 小松川さんは、いかつい顔ながらもスマイルを見せ、一人さんを迎えた。 「いらっしゃいませ」 「申し訳ありません、瑞浪さんの席はどちらでしょうか?」 「こっちだよ!一人さん!」 「あっ、星羅さん、ごめんね!ちょっと学校の方で用事が長引いちゃって……」 「私もだよ!わざわざ連絡ありがとうね!」 遅れながらも一人さんがやってきて、私は嬉しくなった。 一人さんは、3か月位前からシャーロキアンに通う事になった新たな常連さんだ。 私とは年齢が近い事から、すぐに仲良くなり、同じく年齢の近いお兄ちゃんと3人で話すという事が多くなった。 この前、私も所属している探偵サークル『ベイカー街』の事を話すと、とても興味を持ち、一緒に参加してくれる事となった。今日はその説明の為の会議だ。 「という訳で一人さん、ベイカー街の事について詳しく教えるね」 「ありがとう」 「ベイカー街は、シャーロック・ホームズに出てくる通りの名前なんだけど、店長の小松川さんが探偵小説が好きで、そうつけたみたい」 「そうなのですか?店長さん?」 「まぁな」 いきなり話を振られたにも関わらず、すらっと答える小松川さん。 私は一人さんに説明を続ける。 「でもって、探偵サークル『ベイカー街』は、街の人の依頼を次々と解決していく活動をしているの。とは言っても私達に殺人事件の依頼が入る事は無くて、大体ゴミ拾いとか街の見回り運動、あって飼い猫の捜索位なものだから、実際はボランティアサークルに近いかな」 「まぁ、私達に殺人事件と言っても荷が重すぎるからね。ゴミ拾いでも素晴らしい活動だと思うよ」 「今回の依頼は、京王八王子駅付近の商店街でゴミ拾いをしてほしいというものなんだ。明日の予定なんだけど、ゴミ袋や手袋の準備とか、汚れてもいい服装とか大丈夫?」 「大丈夫だよ」 「お兄ちゃんからは何かある?」 「星羅が言った通りだよ。まぁ、ゴミ拾いだから、ちょっと臭いがきついかもしれないが、俺から追加で言う事はそれ位かな」 「私、納豆やくさやと言った臭いのきつい食品が好きだから、大丈夫だと思う」 「納豆やくさやとはまた違うかもしれないけど……。まぁ、大丈夫ならいいか」 ベイカー街の活動を一通り説明したところで、小松川さんが咳払いをした。 「ゴホン、話が盛り上がっているところ悪いが、飲み物が淹れ終わったぞ。星羅はブラック、衛は砂糖にミルクを付けて、それで山乃端さんは紅茶のダージリンで良かったか?」 「そうですね」 私達3人はそれぞれの飲み物を受け取った。 ブラックのコーヒーを呑めないお兄ちゃんが、私に対して感心している。 「しかし星羅、いつもの事だけど、よくコーヒーをブラックで飲むな」 「私はこの苦さがたまらないんだ。探偵らしいでしょ」 「探偵に苦いコーヒーとか関係あるかなぁ……?」 私達のやり取りを見て、一人さんが笑った。 「ふふふ、2人は本当に仲が良い兄妹ね」 「そうかな?」 「……まぁ、俺達には色々あるからな」 翌日の朝、シャーロキアンの前にはゴミ拾いをするために十人ほど集まっていた。 横にいた一人さんが人数に驚いていた。 「えっ、ベイカー街ってこんなに人がいたの?」 「これでもごく一部だよ。ベイカー街は出たい活動に出たい人だけ出るっていうゆるい活動方針だから、積極的に活動を行う人もいれば、全く活動を行わないっていう人もいる。条件と言えば、シャーロキアンの常連になる事位かな?」 「色々な年代の人がいるね」 「そうでしょ。あっちの人は小説家の八幡翔子さん、あっちの人は居酒屋店主の勝浦裕紀さん、あっちの人は警察官の鳴海亮吾さん、ベイカー街には色々な人が所属しているんだ」 「へー」 「おい、小松川さんが喋っているぞ」 お兄ちゃんに注意されて、中央で喋っている小松川さんの話を聞く。 「作業は3グループに分かれて行います。Aグループは駅周辺、Bグループは保健所周辺、Cグループは神社周辺のゴミ拾いをお願いします。Aグループは八幡さん……」 私とお兄ちゃん、一人さんは神社周辺のCグループのようだ。 小松川さんが作業開始の号令を行う。 「それでは皆さん、宜しくお願いします」 「はい!」 私達は神社周辺に行き、道に転がっている空き缶、空き瓶等を次々と拾った。 一人さんもあまり慣れない様子ではあったけど、ゴミ袋には結構な量のゴミが溜まっていた。 「ふー、なかなかゴミ拾いも大変だね」 「大変なんだけど、街が綺麗になっていくのって、気持ち良くない?」 「確かに街にゴミが無いっていうのは気持ちいいね」 そんな取り留めの無い話をしていたところ、お互いの家族についての話になった。 「そう言えば、星羅さんと衛さんの両親ってどんな人なの?」 「とても優しい人。いつも私の我儘に付き合ってくれるんだ」 「いい親なんだね」 「けど、私の本当の両親は、事件で亡くなっているんだ……」 「えっ?ごめん!触れたくないところを触れてしまって」 「いいんだ、隠しているわけではないし」 そう、私の本当の両親は、私が中学1年生の時、旅行に行った京都での事件で亡くなっている。 たまたま居合わせた男子中学生によって殺され、更にその男子中学生もその場で自殺しているという、救いようのない事件だ。 だから、今の私の育ての父は、私の伯父で、その息子がお兄ちゃんと呼んでいる衛。 それでも、私の育ての両親は、私を実の息子の衛と変わらない愛情で育ててくれている。それだけに、本当に感謝している。 「星羅さんは、きっといい家族に出会えたのね」 「へへっ、自慢の両親なんだ」 「私の両親は厳しい人だったら、ちょっとうらやましいところがあるかな」 「へー、どんな人?」 「そうね、中学までは門限は厳しくて、なかなか同級生と遊べなかったかな。最初はそれを嫌がって高校は寮のある姫代学園を選んだんだけど……」 唐突に一人さんから姫代学園の話が出て、私は驚く。 「姫代学園!?私もそこの出身なんだけど!? 」 「えっ、星羅さんも姫代学園出身なの!?卒業って昨年度だよね?」 「そうだけど」 「となると学年は違うか。だったら名前に気づかなかったかもしれないね」 一人さんは前に話した時、確か20歳だと言っていた。 だとすると19歳の私より一つ年上だということになる。 「えっ、一人さんって姫代学園の先輩!?すみません!タメ口で話して!」 「いいっていいって、逆に敬語を使われた方が距離を感じるから」 「じゃあありがたく、今後もタメ口で話させてもらうんだけど、姫代学園に通っていたということは、魔人だったりする?」 姫代学園は魔人が多く通っている事で有名な女子高だ。一人さんも魔人なのだろうか? 「うん、そうだよ」 そう言うと、一人さんはいつも首に掛けてある懐中時計を手に取った。 「これは父から受け継いだ時計。父は私が魔人に覚醒すると、『遂にお前にもこの時が来たか』と言って、これを渡したんだ」 「と言う事は一人さんは時計に関する能力なの?」 「よく分からない。デミゴットを開放できるとか父は言っていたけど、あまり能力を使った事が無いから、銀時計に念じると私を守る怪物が出てくる位の認識しか無いかな」 「へぇ」 「そういう星羅さんも姫代学園出身という事は、魔人なの?」 「まぁね」 そう、私も魔人なのである。念じると自分の手に大鎌が握られるというものだけど、お兄ちゃんやお父さんからは能力を使うなと言われているので、極力使わずに今までの人生を生きてきた。 私もあんまり使いたくないとは思っているけど、お兄ちゃんや一人さんを守る為なら使ってもいいかなって思っている。 能力を使うと目立つので、今は使えないと言うと、それ以上一人さんは能力について聞いてこなかった。 「そう言えば星羅さん、中等部にやたら正義と言っている子がいなかったっけ?」 「いたいた。高等部の生徒に対しても『私が正義だ!』ってよく言っていたから、覚えちゃったよ」 「名前はよく分からないんだけど、あのマフラー姿は目立つよね」 「そうそう……」 私と一人さんは姫代学園であった話をしつつ、ゴミ拾いを進めた。 1時間半後、私達はシャーロキアンの前に戻っていた。 小松川さんが終わりの挨拶をすると、各々それぞれの場所へと戻っていった。 私と一人さんは午後、南大沢のアウトレットモールに行く予定があるので、準備のために一旦家に戻らなければいけない。そのままシャーロキアンでコーヒーを飲むお兄ちゃんとは一旦ここでお別れだ。 「まぁ、星羅なら大丈夫だと思うが、気を付けて行くんだぞ」 「何言ってるの、お兄ちゃん」 「衛さん、しばらく星羅さんを連れていきますね」 「ああ、よろしく」 「じゃあ、またね!」 私達は駅へと向かった。 一人さんはまだ知り合ったばかりだけど、いい人だなぁ。色々な事を知りたいなぁ……。 星羅と山乃端が戻った後、シャーロキアンの裏の部屋で、小松川と衛が話をしていた。 「衛、最近知り合いになった山乃端一人についてどう思う」 「どう思うも何も、とても良い友人だと思いますよ」 「そうか」 「星羅に友達が増える事は、僕は良い事だと思っています。高校は魔人であっても認めてくれるという本人の希望で姫代学園に入学させましたが、そこでも友達は多かったと協力者の教師からは聞いていましたし、問題を起こさずに3年間過ごしています」 「うむ」 衛が星羅の様子について言うと、小松川は唸った。 「……俺達は、彼女の対応について間違ったのかもしれないな」 「と言うと?」 「確かに、彼女は中学1年の時に悲劇的な事件に遭遇し、魔人となり、心に大きな傷を負った。その事に対し、俺達は極力彼女のトラウマを蘇らせないように気を遣っていた。しかし、彼女は魔人である事すら受け入れ、元々社交的な性格も相まって、友達を増やしていった」 「そうですね」 小松川は話を続けた。 「俺は一時期、友達が増えると彼女の弱点が増えると思い、できるだけ彼女を人から離そうと思っていた。しかし実際はそうした方が不安定になり、友達を作った方が安定していた。彼女にはそろそろ、自由に生きてもらった方がいいのかもしれない」 「そうは言っても、俺は兄的存在として彼女の事は心配しますが」 「一般的な兄妹位の関係性で続けていればいい。俺も行きつけのカフェの店長として彼女の事を心配する」 「それがいいでしょう」 小松川は星羅の対応について少し悔いているようだ。 「ところで衛、お前はどうする。父の手伝いで探偵業の補助をやっているが、無理して探偵を目指さなくても良いんだぞ」 「正直、俺は何も決めていないです。夢も曖昧なので、このまま探偵をやってもいいかなと思っています。夢ができた時は、その時はその時ですね」 「そうか。おっと、そろそろ休憩時間は終了だ。カフェの営業に戻るぞ」 そう言うと、小松川はカフェのキッチンへ戻った。 ゴミ拾いを行ってから10日程経過した。 山乃端は都心の学校に通っているせいか、毎日のようにシャーロキアンには来ないが、それでも暇があるとすぐシャーロキアンに向かい、星羅、衛と話をする日々が続いた。 小松川も安心して彼らを見守っていた。 その日も閉店前まで星羅、衛、山乃端が喋っており、3人が帰った後、小松川一人で閉店準備をしている時だった。 「……小松川さんでしょうか?」 「……誰だ?」 いきなり何者かの声、しかし、店の扉が開かれた形跡は無く、部屋の何処からか声が聞こえているようだった。 小松川が辺りを見渡すと、身だしなみを確認する鏡の中に、何者かが映っているのが見えた。 「突然の訪問、お許し下さい」 「鏡の中から顔を見せるとは……何者だ」 異常な状況にも関わらず、魔人と幾度となくやり合っている元探偵、小松川は動揺しなかった。 「私の名前は鏡助と申します。ああ、ご安心下さい、貴方に危害を加えるつもりはありませんので」 「……俺に何の用だ」 「最近、こちらの店に山乃端一人という方が訪れていないでしょうか?」 「山乃端一人?うちの常連に何かあるのか?」 「時間が無いので端的に言います。今、山乃端一人さんの命が狙われています。助けて下さい!」 鏡助と名乗る男は、その手に握っている銀時計をちらちら眺めつつ、強い口調で小松川に言った。 「……どういう事だ?」 「ざっくり言いますと、山乃端一人さんが殺されると、東京が壊滅する可能性があります」 「なっ?」 突拍子の無い事をいう鏡助。 「そんな事を言われて、信じるとでも思ったか?」 「信じるも信じないも、私は時間が無いのでこれ以上の事を言うことが出来ないのです。お願いします!」 そう言うと、鏡助が鏡の中から消えていった。 一人になった小松川は、さすがに困惑していた。 「山乃端一人が狙われているとはどういうことだ……?」 ふと、小松川の携帯電話が鳴る。 「はい、シャーロキアン小松川です」 『小松川さん、山乃端さんについて情報がありました』 「どうした、瑞浪」 電話の相手は衛の父で小松川の弟子の探偵、瑞浪俊介だった。 『引退した身の小松川さんにこんな事を言うのも申し訳なく思いますが、この情報は伝えなければと思いまして、連絡を致しました』 「いいから言え!」 悪い汗が流れる小松川。 『鏡助を名乗る方が鏡の中から現れ、山乃端さんの命が狙われているという話をしました』 「瑞浪、うちにも来た」 『小松川さん……本当ですか……』 鏡助……瑞浪のところにも来ていたのか……、小松川は驚愕した。 「しかし、鏡助の言う事だけを信じる訳にはいかないな……」 『僕もそう思っていたのですが、別件で国分寺に本拠地を構える盗賊団の調査をしていたところ、山乃端家の銀時計……おそらく山乃端さんが首から掛けている懐中時計かと思いますが、それを狙う計画がありました。その中には山乃端一人を殺しても構わないという文言がありました』 「山乃端家の銀時計?見た感じ、普通のアンティーク時計だと思われるが、それを奪うために殺しまでするか……?」 『その辺りまでは分かっていませんが、山乃端さんを殺害する計画があった事は事実です』 「そうか……」 これは単なる偶然なのか?小松川は悩んだ。 「とにかく、しばらくは俺のツテで山乃端一人の情報をより深く集めようと思う」 『僕も衛と協力して山乃端さんへの監視を強めたいと思います』 電話は切れた。 「山乃端一人が狙われている……山乃端も心配だが、星羅が巻き込まれる事がそれ以上に心配だな……」 翌日、衛と星羅はいつものようにシャーロキアンに来ていた。 星羅はいつも以上に機嫌が良さそうだ。 「どうした、星羅、嬉しそうじゃないか」 「ふふふ、お兄ちゃん、明日、一人さんと一緒に立川にお出かけに行くんだ」 山乃端一人とお出かけ……父から話を聞いた衛と小松川は緊張した。 「え?どうしたの?お兄ちゃん」 「いや、何でもない。そのお出かけに俺も付いていってもいいか?」 「ダメ!明日は2人の約束なの!お兄ちゃんは来ないで!」 直接見守ることは難しい。衛は次善の対応策を考えていた。 「立川駅の近くにお洒落なカフェが出来たみたいで、一人さんがそこに行きたいって言ったから、一緒に行こうって事になって……」 と言いながら、星羅はカフェの店名を言った。衛がWebで調べてみると、確かにお洒落で、男性が入るには少々勇気がいる場所のように思えた。 「という訳で明日はお留守番宜しくね!」 「あ……ああ……」 そこまで星羅に言われては、衛も引くしかない。変に「立川に行くな!」と言えば逆に怪しまれる。 「私は明日の準備があるから、先に店を出るね」 星羅が機嫌良さそうに店を出ていくと、小松川と衛は無線機で周囲に聞こえない位の声で作戦会議を行った。 「……これは少々良くない状況かもしれない」 「監視をしようにも星羅、ベイカー街のメンバーの顔と名前を覚えていますからね」 「とは言え明日、立川で監視し、かつ異常に対処できそうな人員が衛しかいない状況だ。何とかなりそうか?」 「……やるだけやってみます」 衛は決意を固めた。 今日は立川で一人さんとカフェ。 立川駅の改札前は人で溢れかえっている。八王子もこの位賑わってくれればいいなぁ。 早速待ち合わせ場所の目立つ壁面の前に行くと、既に一人さんが立って待っていた。 「ごめん!待った?一人さん!」 「全然?私も今着いたところ」 「よかった!結構混むみたいだから、すぐ行った方がいいかもしれない」 私は一人さんの手を取り、目的地のカフェまで歩いて行った。 カフェは立川駅周辺の路地裏にありながらも、私達が行った時には既に行列が出来ていた。 私達は20分程度並び、ようやく案内された。 「やっと入れたね」 「まぁ、行列必至って書いてあった位だから、20分でも早い方じゃないの?私達の後にも更に長い行列ができているみたいだし」 少し話をしていると、店員さんがメニューを渡してきた。 「星羅さん、ここはアップルパイで有名みたいだから、それを頼んでいいかな?」 「いいと思うよ。あ、私ハンバーガーを食べようかな?」 同時刻、カフェに入った星羅と山乃端を、遠くから変装した衛が見ていた。 (2人は目的通りカフェに入ったか……頼む、今は事件が起きないでくれ……!) 2時間程カフェで話し、私達はカフェを出た。 「結局私もアップルパイを頼んじゃったよ」 「でも美味しかったね」 「うん!」 カフェで出てきた食べ物はとても美味しく、このままずっと居たい気持ちはあったけど、一人さんは用事があるみたいで帰らなければならない時間になったので仕方が無い。 「それじゃあ、私は家電量販店に寄ってから帰るからここでお別れだね」 「またね!」 一人さんは路地の別方向に歩いて行った。 (さて、帰りがけにスマホアクセサリーでも買って帰ろうかな……?) その時だった。路地の方から一人さんの悲鳴のようなものが聞こえたような気がした。 「一人さん……!?」 慌てて一人さんの歩いた方に行くと、そこには既に一人さんの姿は無かった。 「一人さん!一人さん!」 私が叫んでいると、横からコートを着た男性が私のところに寄ってきた。顔をよく見るとお兄ちゃんだった。 「お兄ちゃん?」 「星羅、山乃端は俺が追いかける。星羅は戻っていろ」 「でも……お兄ちゃん!一人さんが!」 そう言うと、お兄ちゃんは山乃端さんを探しに走っていった。 「お兄ちゃんは戻っていろと言ったけど、帰れる訳がないよ!」 私も一人さんを探しに、立川の街を走った。 私が立川駅周辺を探して5分位経過しただろうか。ファーレ立川付近に一台の不審なワゴン車が止まっていた。 一縷の望みを懸けて、私は一人さんの携帯に発信した。すると、車の中から一人さんの携帯の着信音が聴こえてきた。 私は能力で大鎌を出し、運転手を脅した。 「な……なんだよお嬢ちゃん……」 「一人さんを開放して!」 「お……俺は知らねぇよ!」 運転手は怯えながらその場を去っていった。 「一人さん!今助けるか……」 何かが首に刺さった感覚がした直後、私の意識は飛んだ。 「くそっ!山乃端は一体!」 衛は山乃端を探しに、ファーレ立川付近に来ていた。 「一体何処に……ん!?」 周囲を見渡すと、ワゴン車に何かを積んでいるかのような動きをしている2人の男性がいた。 その積もうとしている荷物が、人に近い大きさだった。 「確証は無いが、怪しいな……」 衛が近づいた時には荷物を積み終わり、車は出発しようとしているところだった。 「時間が無いか……」 衛は発信機を車に投げ、行方を追う判断をした。 「これが手がかりになればいいのだが……」 「……う……う……」 意識が朦朧とする中、私の耳に車のエンジン音が聞こえていた。 手足が動かない。紐のようなもので縛られているみたい。 私の横には一人さんが私と同じく手足を縛られているようだった。 私達、誘拐されてしまったのかな……。 「……一人さん」 私は僅かに声を出したが、一人さんの意識はまだ戻っていないようで、何も返事をしてくれなかった。 運転席の方から数人の男性が話しているのが聞こえた。 「おい、山乃端一人は殺害するって指示じゃ無かったのかよ!」 「あれだけ良い時計を首に掛けているんだ。きっと実家も良いところに違いねぇ」 「誘拐すればきっと身代金を出してくれるって」 「それは良いとしても、連れらしき女まで誘拐する事も無かったんじゃないか?」 「仕方が無いだろ!スタンガンで気絶させてもそのままにしておく訳にはいかないだろ!」 「大鎌を出してきたという事は魔人じゃないですかね、さっきはいきなり脅されてびっくりしたけど」 「こっちは魔人が3人だ。最悪山乃端一人も魔人だったとしても3対2でこっちが有利だ!」 「とにかく、さっさとアジトに戻り、実家を調べようぜ!」 やっぱり私達、誘拐されたんだ……お兄ちゃん……小松川さん……。 私は再び気を失った。 「……星羅さん……無事?」 「……一人……さん?」 私は一人さんに声を掛けられ、目を覚ました。 相変わらず、手足は紐のようなもので縛られているようだった。 「……私は大丈夫」 私はそう話した。車のエンジン音は止まっているようだ。運転席の方にいた男性も今はいない。 「私達、誘拐されたみたいだね」 「うん」 2人で今の状況を確認する。 「しかし、どうすれば……」 「星羅さん、私に考えがある。それで上手く解決するか分からないけど……」 どうやら一人さんには考えている事があるようだ。 「お願い、私にはどうする事もできないから」 「うん!」 「待って、車に誰か近づいてくる。静かにしていよう!」 私は息を潜める。程なくして、ワゴン車の後ろの扉を開ける2人の男性の姿が見えた。 「お願い……!デミゴット!」 一人さんがそう言うと、一人さんの持つ懐中時計が光りだした。 「うわっ!」 「何なんだ!」 驚く2人の男性。そこには男性に襲い掛かる白色に光る猿がいた。 男性を怯ませた後、猿は爪で私と一人さんの手足に結ばれた紐のようなものを切った。 「どうした、蛇浦!阿武隈!」 「雲井さん……こいつ……」 「クソっ!何だあの猿は!」 私と一人さんは立ち上がり、私は手に大鎌を出現させた。一人さんは出現した猿に守られている。 「一人さん、この猿は何?」 「多分、デミゴットだと思う、時計に猿の絵が出ている。前に能力を発動した時は龍が出ていたから、十二支に関係しているのかもしれない」 一人さんの能力は十二支を出現させる能力なのだろうか?いや、悩んでいる場合ではない、今はここからどう逃げるかを考えなければ! 「ともかく、ここで目を覚ました以上、誘拐は失敗だ」 「こうなったら依頼通り殺すしかねぇな……」 「やるしかねぇ!俺はやるしかねぇ!」 さっき怯ませた蛇浦、阿武隈という男性に後から来た雲井という男性が加わり、3人の男性が私達に向かい合った。 少し目を覚ましていた時にしていた会話から推測するに、3人共魔人だと思う。気を付けなければ……! 「~~~~~~~!!!!」 いきなり阿武隈が口を開き、黒板を爪で引っ搔いたかのような不快な音を出した。思わず私は耳を塞ぐ。 そこに雲井が白い紐状の物体を手から飛ばした。私は辛いのを耐え、大鎌を使い紐状の物体の軌道を逸らした。 しかし、雲井はもう片方の腕からも白い紐状の物体を出していた。その先には……。 「一人さん!」 私は急ぎ、一人さんのところへ向かった。だが、阿武隈が不快な音を再び出したせいで、その場に蹲ってしまった。 紐状の物体に縛られる猿。雲井が腕を振り上げると猿は大きく振り回され、一人さんとは遠い場所の地面に打ち付けられた。 「もらったぁ!」 一人さんに向かって走るもう一人の男、蛇浦。手にはナイフが握られている。 グサッ、私には思わずその音が聞こえたように思えた。 蛇浦のナイフが一人さんの胸に刺さった。蛇浦がナイフを抜くと、力を失った一人さんがその場に倒れた。 能力で召喚した猿も、光の塵になって消えていた。 「ひ……一人さん!!」 強い頭痛が発生し、私の意識は暗転した。 私の前に血を流して倒れるお父さん、お母さん。 「お父さん……お母さん……うわぁぁぁぁぁぁぁん!」 その手前には、私の両親を殺したと思われる魔人に覚醒したばかりの中学生が立っていた。 「ひ……ヒィ!こいつはすげぇや!俺の能力マジすげぇ!気持ちいい!!」 私のお父さん、お母さんはこんな奴に殺されたの? 魔人という奴によって殺されたの? もし、私のお父さん、お母さんが魔人によって殺されたのなら……。 私は魔人という存在を許さない……! 「やったか?蛇浦?」 「俺の能力でナイフに致死性の毒を塗り込む程時間は無かったが、それでも山乃端一人は当分立ち上がれないだろうな」 「後は連れの女だな」 山乃端を仕留め、一旦は安堵する3人の男性。 「……る……ない……」 「な……何か連れの女、様子がおかしくない?」 「……許さない……」 「何なんだよ……こいつ!」 「許さない!」 いきなり叫んだ星羅に、怯む3人。 「焦るな!こっちは3人だぞ!」 阿武隈が先程と同じ様に不快な音を出した。だが、星羅は持っている大鎌を咄嗟の判断で阿武隈に投げつけた。 阿武隈は避けきれずに、直撃ではないものの、大鎌の刃の部分により傷が付いている。 「危ない!……が、大きな傷は受けていない。もう一回、能力が使えれば……!」 阿武隈は口を開き、不快な音を出そうとした。しかし、喉から音が出る気配が無い。 「な、どういうことだ!」 「阿武隈!俺がやる!」 今度は雲井が両腕から白い紐状の物体を星羅に向けて飛ばした。だが、星羅は両腕に1本ずつ大鎌を出現させ、紐状の物体の軌道を逸らせつつ雲井に向けて突進した。 星羅の大鎌が雲井の身体を貫くと、腕から出る紐状の物体は消え、雲井はその場に倒れた。 「ひ……ヒィ!!」 蛇浦は怯えながらもナイフを構え、星羅に向かうが、もはや星羅の敵ではなく、大鎌によって切り裂かれた。 「う……うう……」 「や……やべぇ……」 阿武隈は完全にビビり、背中を見せてその場を去ろうとした。だが、すぐさま星羅が近づき、背中を大きく切り裂いた。 大量に出血し、阿武隈は前のめりになりつつ倒れた。 「……すみません……すみません……!」 僅かに意識が残った蛇浦は、失禁しながら謝罪の言葉を述べた。 それに対し、星羅が口を開いた。 「すみません……じゃないよ」 「ひっ!」 「魔人は存在してはならない存在なの……」 そう言うと、星羅は大鎌の先を蛇浦の傷口に差し込み、ほじくった。 「!!!!!」 余りの痛みに声にもならない悶絶をする蛇浦。 「私の両親は魔人によって殺されたの。だから、魔人は消えるべき存在……」 「!!……やめてくれ……!」 「安心して、残り2人も貴方と同じような最期を遂げるから。気まぐれに貴方から殺そうと思っただけ」 星羅は蛇浦の急所を踏み潰した。 「!!!!やめ……!!!!!」 更に大鎌を握りしめ、蛇浦に向けて鎌を振り下ろそうとした。 「やめろ!星羅!」 突如、星羅の身体に糸のようなものが巻き付いた。 そこには、楽器の糸や弦を自由自在に操る魔人能力『必殺仕事人』で、ギターの弦を操る衛がいた。 「!!!だめ!!!魔人は殺すべき……」 「すまない……星羅……」 そう衛が言うと、星羅の首に巻き付いたギターの弦を強く締め付けた。 星羅はその場に気絶した。 「なんだ……これは……」 現場の余りの惨状に、衛はショックを受けていた。 衛はまず、胸に傷を負った山乃端が生きているか確かめた。 「……どうやら山乃端は生きているようだ」 次に犯行グループの3人も生きているかどうか確認したところ、重傷は負っているものの、3人共生きていることが判明した。 「……救急車を呼びたいところだが、この現場を見られるのは星羅にとってまずい。とりあえず、小松川さんが来てからだな……」 15分後、事件の現場に車に乗った小松川が訪れていた。 「先ほども話しましたが、山乃端が誘拐され、ファーレ立川付近に止まっていた怪しいワゴン車に発信機を付け、追ったところ、星羅が暴走し、犯人に対し暴行を加えていたところを目撃しました」 「恐れていた事態が発生したか……」 恐れていた事態。小松川は6年前に京都で発生した凄惨な事件を思い出していた。 その知らせが小松川の探偵社に入ったのは、夕方の5時頃だった。 当時、小松川の下で働いていた瑞浪俊介が、その連絡を取った時、ひどく動揺した。 「どうした、瑞浪」 「……僕の弟夫婦が、旅行先の京都での事件により亡くなったようです」 「……そうか……」 親族が突然亡くなる。そのショックは計り知れないものだと小松川は理解していた。 「瑞浪、しばらく休め。葬儀の準備もあるだろう」 「それが、電話をくれたのが親しくしている京都の探偵社の桂さんで、小松川さんにも話したい事だと言っております」 「なに……?」 小松川は京都の探偵社に連絡を入れた。 『はい、京都河原町探偵社の桂が受け取りました』 「桂か、小松川だ」 『小松川さんですか?お久しぶりです』 「御託はいい、瑞浪の弟の事故について聞いていないか」 『あっ、その事ですね。少々お待ち下さい』 そう言うと、桂は瑞浪の弟の事件について説明した。 事件は瑞浪の弟家族が、京都のとある寺院を参拝していたところ、たまたま近くにいた修学旅行中の男子中学生が突然魔人に覚醒し、その衝動により弟家族を襲い、弟とその妻を殺害したという、魔人関連事件では稀にあるものだった。 しかし、生き残った娘の星羅が、その際のショックで魔人に覚醒、両親を襲った男子中学生を鎌のようなもので何度も刺し、殺害したという報告が出ていた。 「瑞浪星羅は今どうなっているんだ?」 『両親が殺された時のショックで泣いているばかりですね。男子中学生を殺害した時の事は覚えていないと言っております』 「事件の後処理は」 『星羅さんの行った事があまりにも凄惨な事から、魔人のイメージ低下を防ぐ勢力が今回の事件を、男子中学生が魔人能力でない方法で星羅さんの両親を殺した後、自傷して死んだと隠蔽するつもりがあり、警察も逆らえない状態です』 巨大勢力による事件の隠蔽、それは褒められた事ではないが、星羅の今後を考えると、ある意味良い事なのかもしれない。 「まさか、瑞浪にはそれは話したか?」 『さすがにショックが大きすぎると思いましたので、隠蔽した後の情報を伝えました』 「……そうか……分かった。ありがとう」 小松川は電話を切った。 すぐに瑞浪が小松川の部屋に入り、小松川に意を決するような思いで口を開いた。 「小松川さん、もしかして、弟の事件、隠している事は無いでしょうね」 「……なんだ、瑞浪。別に隠している事は無いぞ」 「僕には分かります。皆さんが僕にショックを与えないように、物事を隠していると」 「……瑞浪、世の中には知らなくてもいい真実もあるぞ」 「それでも、構いません。事件の全貌を、僕に教えてください」 「……分かった」 小松川は瑞浪に、弟の事件の全貌を語った。 「……大丈夫か?瑞浪?」 「……ええ、大丈夫です。小松川さん、僕も探偵ですから。それに星羅を引き取る事は、僕にしかできませんから」 「そうか……」 瑞浪が星羅を引き取り、小松川が探偵を引退する決心をした後、2人は星羅を引き取る為、魔人専門の収容施設へと言った。 「星羅さんの伯父さんですね。私、収容施設で精神分析を行っている一畑と申します。ああ、星羅さんが引き起こした事は知っていますので」 一畑と名乗った男性に、瑞浪は星羅の状況を聞く。 「一畑さん、星羅の状態はどうですか?」 「一時期は両親が亡くなった時のショックで泣きじゃくってばかりでしたが、今は比較的落ち着いています。魔人に覚醒した事についても受け入れているみたいです。ただ……」 「ただ?」 「両親が魔人によって亡くなり、その魔人を惨殺したという記憶を別の人格に封じ込めている節があります。そうですね。両親程でないにしても、親しい人や家族が魔人に襲われる事が起きた際、別の人格が表に出る可能性があります。そうなった時、彼女は再び魔人を決して許さず、惨殺する存在になる可能性は否定はできません」 「……そうですか」 「それさえ気を付ければ、彼女については問題無いでしょう」 星羅の状況を知り、小松川と瑞浪は星羅に荒事から極力遠ざける事を決意した。 「……できれば星羅には平穏な日常を味わって欲しかったが……」 「そうですね……」 星羅の事を思う二人。 だが、小松川はすぐに衛に向けて指示を出した。 「さて、事件の後始末はしなければならないだろう。山乃端はどうだ?」 「急所は外しているようですが、毒を受けた形跡があります。病院に連れていく必要がありますね」 「誘拐犯の3人は?」 「重傷ですが、3人共まだ生きています」 「星羅は?」 「気絶しているだけです。しばらくすれば目を覚ますでしょう」 「まだ別人格が表に出ているかもしれない。気を付けろ」 小松川と衛が事件の事について話していると、星羅の身体が動き出した。 「星羅!大丈夫か!」 「……お兄ちゃん……一人さんは……?」 「山乃端は生きている!」 「良かった……」 星羅の別人格は出ていないようだ。 それを確認すると、小松川は指示を出した。 「衛、星羅の事はお前に任せる。山乃端と誘拐犯の3人は俺がここに残って何とかする」 「かしこまりました。さぁ、星羅、大丈夫か?」 「うん……」 衛はタクシーを呼び、立川駅まで行くよう案内した。 タクシーでの車内。星羅は黙りっぱなしだった。 「……山乃端の事が心配か」 「うん……」 衛は悩んでいた。星羅に山乃端の命が狙われている事を伝えるのは簡単だ。しかし、星羅の事だ。山乃端の命が狙われていると聞けば、山乃端を守ると言い出しかねないだろう。そして星羅の別人格が目覚めると、魔人である山乃端が星羅の餌食になる可能性も否定できない。 どうするべきか……。 「もしかして、一人さんって命を狙われているの?」 「……星羅……」 「一人さんの事ですぐにお兄ちゃんや小松川さんが動くなんて変だよ。何かあるにちがいない」 衛は観念した。 「……そうだ。山乃端は命を狙われている」 「もし私が戦えるのなら、一人さんの命は私が守りたい」 「星羅!確かに山乃端は心配だが、俺は星羅を危険な目に遭わせたくない!」 「……私だって、お兄ちゃんが危険な目に遭うのは心配だから、それはお互い様」 「……星羅」 衛は言えなかった。星羅を戦いから遠ざけているのは、星羅が弱いからではなく、星羅が別人格になった時、周囲への被害が大きくなると言うことが。 その夜、シャーロキアンではベイカー街の緊急会合が開かれた。 参加者は、十数名程。小松川、瑞浪俊介、衛の父子、小説家の八幡、居酒屋店主の勝浦、警察官の鳴海の姿もあった。 皆、ベイカー街の裏の活動、『情報交換の場』という事が分かっている者達だ。 小松川が口を開く。 「諸君、以前から山乃端一人の命が狙われている事は知らせたが、本日、具体的に山乃端が誘拐され、傷を負うという事件が発生した」 どよめく参加者。 「誘拐犯は国分寺の盗賊団の関係者。山乃端殺害の命を受けていたが、現地の判断で山乃端を誘拐し、身代金を受け取ろうとしたことが分かっている」 居酒屋店主の勝浦も話し始めた。 「俺は国分寺の盗賊団以外にも山乃端一人の命を狙う話を知っていますね。それも、一つではなく、複数」 「それは本当か!」 「ええ、新宿でホストクラブをやっている知り合いからも、渋谷で美容院をやっている知り合いからも、池袋でラーメン屋をやっている知り合いからも、別々の話を聞いています」 更にどよめく参加者。 「とにかく、引退した俺が言うのもアレだが、山乃端については俺のツテを最大限使い、協力者を募り、全力で護衛をしたいと思う、皆も山乃端の情報は優先的に集めるように」 小松川は一旦話を切った。 「さて、山乃端一人の事以上に俺達にとって問題なのが、瑞浪星羅の事だ。先程の山乃端の事件に巻き込まれ、彼女が傷を負った際、事件の時に封印した記憶を持つ別人格が目覚めた」 「星羅さん……」 小説家の八幡は悲しい顔をした。 「この事件の後処理については、警察官の鳴海に任せ、できるだけ星羅に害が無いようにするが、既に星羅は山乃端が命を狙われている事を知っている。山乃端に何かがあった際、星羅は間違いなく動くだろう。しかし、それによって、星羅の別人格が再び目覚め、山乃端を殺してしまう事は否定できない」 「小松川さん……」 悲しそうな顔をする瑞浪と衛。 「もし、山乃端の命が星羅によって奪われる可能性が高い時、我々は最悪の選択肢を取る可能性がある事を留意に入れなければならないだろう……」 最悪の選択肢を想像した参加者は、皆黙っていた。 「今日の緊急会合は以上だ。解散!」 鏡助は焦っていた。 確かに山乃端一人が殺される事によって、東京の惨劇を引き起こす可能性がある。 しかし、それと同じ位問題なのは、瑞浪星羅が転校生になる事である。 「あの子が転校生になったら、転校生という存在自体を否定しかねない……!」 山乃端が命を狙われているという情報を、星羅に直接伝えなかったのはこのためだ。 もし、この世界の山乃端が殺されれば、星羅が転校生になる可能性が相当高い。 「山乃端の護衛と星羅への対処、もし私があの世界に行ければ、私自身が行っていたというのに!」 しかし、鏡助の今の状況では、直接的な協力は出来そうもない。 鏡助には星羅の世界の住人の力を信じるしか無かった。
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/1891.html
【名前】フランツィスカ=シュワルツシルト 【性別】女 【所属】魔術/必要悪の教会 【魔術】夢想術式 【魔術説明】 後述する『インドラの槍』と『蓮華の杖』を霊装として用いる。 魔法名は『夢は汝の強き意思を愛す(somnium789)』 『インドラの槍』 古代インドの叙事詩『ラーマーヤナ』に記される『インドラの矢』をモチーフにした槍。 全体はインドラの髪色を思わせる淡い赤色で、先端部は雷の如く歪曲している。 伝承上の『インドラの雷』は、現代における核分裂反応を引き起こす核兵器並みの性能を持ち、 一度放たれれば周囲の物質は水分が蒸発し、猛火によって焼かれ、最後には音も無く崩れ落ちていったとされている。 フランツィスカは『インドラの槍』を持ったまま、事前に吸収した周辺物質を用いて巨大な魔法陣を構築し、詠唱を繰り返しながらそこにフランツィスカ自身の魔力を流し込むことで魔法陣の効果も相まって、自身の魔力を何十倍にも増幅させる。 そしてこの魔力を以て『インドラの槍』に『インドラの雷』の性能を0.00000数%再現させることに成功した。 この槍で突き刺さされたり、切り裂かれた物質は瞬時に分解されていき、その性質と構造を失う。 『蓮華の杖』 先端部が蓮を模したピンク色の花弁に見え、それが蕾状に纏まっている杖。 持ち主から注がれた高濃度の魔力を感受して、杖の先端が5つの方向に開く構造となっている。 フランツィスカは『インドラの槍』と魔法陣の効果によって自身の魔力を増幅させるのと同時に、 片方の手に『蓮華の杖』を持つことで杖の先端部を共役的に開かせている。 また『第五元素』であり、万物に似ているという性質を持ったエーテルを象徴しているこの杖の開口時の特徴を利用して、 『インドラの槍』によって分解された物質を互いに凝集し合わせ、融合反応を引き起こさせることに成功した。 この融合反応はエーテルの特徴を用いた「想像の具現化」を可能とし、ここまでの一連の流れを彼女は『夢想術式』と呼んだ。 こうして誕生した物質は前駆物質の持つ性質や構造を受け継ぎ、術式展開下では彼女の意思によってそのサイズをある程度変更することができる。 また偶像の理論に則るからといっても、『第五元素』の特徴と似ているだけなので、融合した物質は5秒と経たずに消失してしまう。 人間の想像を超えて誕生するもの、特に天然の生物やこの世に存在しない素粒子を生み出すことはできない。 加えて現在この世にある物質を前駆物質として生み出すため、それらが本来持っていた以上の強度や質量を与えられない。 【概要】 ドイツ出身の魔術師。20歳。 両親は新進気鋭の科学者であったが、原子力実験の暴発事故に巻き込まれて間もなく父親が亡くなり、彼女が誕生するのを見届けて母親も他界した。 他に身寄りが無かった彼女はイギリス清教が管理する孤児院に引き取られ、以前まで年長者として子供達の世話を任されていた。 そんなある日、彼女の両親と生前付き合っていたという巨漢と老婆が現れ、両親が亡くなる前に彼女に遺した品を渡すために来たと告げた。 それは両親の家系で何世紀にも渡り受け継がれてきた一族の秘宝であり、それが『インドラの槍』と『蓮華の杖』であった。 彼女の両親は二人とも魔術師の家系に生まれ、本人達としては、魔術師を継がずに科学者となった親不孝者である自分たちの代わりに、 一族の宝を娘に継がせて、将来フランツィスカを魔術師にさせたかったというのが、実際の話らしい。 そして彼らは亡くなる直前に、最も信頼できる知人に対して「娘が16歳になったときに渡してほしい」と頼んでいたのである。 しかし『インドラの槍』が、イギリス清教と学園都市との間で結ばれた条約に違反するものであるという誤解を生んでしまう霊装であったがために彼女は罪を問われて孤児院から追放されてしまう。 それから彼女はこの2つの霊装を使いこなすために2年間世界中を旅して回っていた訳であるが、その間に教会の魔術師を助けることが幾度かあった。 冤罪であったと分かると、彼女自身の魔術的素養が高く評価されたこともあって、孤児院に戻った後に正式に必要悪の教会に所属することとなる。 現在は身勝手な上司の命令を受けて再び世界中を飛び回り、魔術的素質を持った子供を可能な限り保護(誘拐)する任務に従事している。 また任務を遂行すると同時に、彼女が追放された直後に孤児院を脱した4人の子供達の行方についても情報収集を行っている。 魔術師でありながら科学技術に関心を持つ稀有な存在で、子供の頃には両親のような立派な科学者になるのを密かに夢見ていた。 その上で、科学が人間の想像を超えて進歩し、制御不可能になる未来を阻止するという決意を胸に、今日まで魔術師として自身の魔術の研鑽に励んできた。 【特徴】 身長170㎝。澄んだ声と端麗な金髪、イージアン・ブルーの瞳を持つ。顔つきからは芯の強さが窺える。 体つきは全体的に成熟してきている。子供の頃からFカップの胸を持ち、腕を組んでいるとそれが一層際立つ。 上司の言い付けを守ってピッチリとした黒の軍服を着込み、体のラインがこれ見よがしに浮かびあがっている。 また世界各地を飛び回る際に上司が彼女の旅費を着服していたことがあってから、健脚の持ち主にもなった。 【台詞】 一人称をなるべく用いない。二人称は「アナタ」 「お父さん、アナタのご友人がおっしゃったことがございますが、アナタは死んでも人に迷惑をかける悪い癖が治らないようですね。それとも、不出来な我が子に旅の一つでもさせたかったのですか?」 「彼らが真っ先に欲しいのは作物なのよ。ここは痩せた土地だし、水源も乏しい。そこに魔術の素質を持つ子供が現れ、彼らを救うようなことがあれば、様々な紆余曲折を経て、水や豊穣を司る神を祀る信仰や宗教が生まれる。…元を辿れば、宗教が人間を救うのではないのよね。あら失礼。」 「以前に孤児院を集団脱走した者の内、学園都市に潜入した者がいるとの情報を入手しました。1人で赴けば、4対1ならば勝算があると思って全員がその場に駆け付けるはずです、…来なければ幸いですが。つきましては、上官殿にはその任をどうかワタシに委ねて頂きたいのです。」 【SS使用条件】 特に無し
https://w.atwiki.jp/2ch-tanteidan/pages/142.html
http //www39.atwiki.jp/2ch-tanteidan/pages/58.html FRIDAY 4/9号 【福岡バラバラ殺人】悩みは交通事故だけではなかった。友人たちに打ち明けていた「社内恋愛」 捜査本部が追う「深夜、OL宅を訪れた男」 諸賀さんの両親は遺体がすべて見つかるまで通夜・葬儀はしないと言っていたという http //megalodon.jp/2010-0404-2309-25/www.nhk.or.jp/lnews/fukuoka/5013606842.html 能古島 遺体発見の女性告別式 - NHK福岡のニュース 葬儀は、すでに親族だけで済ませたということで、4日は告別式が福岡市南区の斎場で営まれ、親族や親しかった友人などおよそ550人が参列しました。 4月04日 19時06分 http //megalodon.jp/2010-0404-2245-57/www3.nhk.or.jp/news/html/20100404/t10013629701000.html 遺体の一部発見 女性の告別式 NHKニュース 4月4日 20時57分 葬儀はすでに親族だけで済ませたということで、4日は福岡市南区の斎場で告別式が営まれ、親族や親しかった友人などおよそ550人が参列しました。
https://w.atwiki.jp/suka-dqgaesi/pages/4762.html
551 :名無しさん@HOME:2010/12/20(月) 15 24 48 0 トメから「年末年始は孫ちゃん連れて義実家で過ごしなさい!老い先短い親に孝行しようと思わないの?」 と電話がかかってきた。予定では自宅でまったりするつもりだったんだが。 「ですねー・・・あと何回孫の顔見せられるかわかりませんし。 有難う御座います。年末年始は私の実家で過ごしますね。父の方が先短いんで」といってガチャ切り。 年齢が 父>ウト>トメ>母 なんだよね。 夫に留めが文句言ったらしく、夫から「トメがわけわからない電話をしてきてる。何かあった?」ときたので 「老い先短い親に孝行しろっていうから、年末年始はうちの父に子どもの顔見せに行くって言っただけだよ?」と答えたら 「おまえの親に老い先短いとか失礼なこと言ったの?!馬鹿な親でごめん。ほんと〆とくから、ごめんな」 夫からすっごい謝られてしまった。 年末年始、うちの両親は旅行行くし、どっちにしろ自宅でまったりだけどね~。 赤子連れてインフル時期に新幹線とか怖すぎる。 558 :名無しさん@HOME:2010/12/20(月) 15 42 06 0 551 「おまえの親に老い先短いとか失礼なこと言ったの?!馬鹿な親でごめん。ほんと〆とくから、ごめんな」 旦那GJ! 次のお話→596