約 50,302 件
https://w.atwiki.jp/heroeswiki/pages/254.html
imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 Previous episode⇒見えざる糸 Next Episode⇒もうひとつの存在(後編) What Happened? (シーズン4 第1話「もうひとつの存在」(前編)) クレアが新たな学校で新たな生活を始める。 マットはサイラーの幻覚に悩まされる。 ピーターは救命士として働く。 カーニバルのメンバーは何かを企んでいる。 トレイシーは復讐を始める。 ネイサン(生身はサイラー)は何か変だと思い始める。 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。ヒロとアンドウはある企画を始める imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。ノアはトレイシーに殺されかける imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。クレアは大学生として人生を再スタート imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。エドガーはサミュエルによって首を絞められる imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。クレアはアニーが自殺するのを目撃 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。リディアは人が望むものを表現することができる -
https://w.atwiki.jp/vgmginfo/pages/162.html
ベジマギ攻略VGMGトップ イベント ●クリスマスと銀の星-前編- ~あらすじ~ 野菜世界に伝わる聖夜の伝説・・・ 聖夜の日に、どんな願いも叶えてくれるという魔法のクリスマスツリーがひっそりと佇む場所がどこかにあるという伝説が長い間少女たちの間で語り継がれてきた。 願いを叶えるためには、聖なる洞窟にある銀色に輝く「願いの星」を集めて一つにし、それをツリーに飾り付ければよいのだがそれを探し当たられたのは皆無であった。 夢多き少女たちは、先を争って聖なる洞窟へ入ってゆく、果たして今年こそ願いを叶える者は出てくるだろうか? #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (クリスマスと銀の星-前編-) ●イベントやさい 兼 人気投票 選択肢 投票 双槍の使い手パースニップ (2) 天空の狙撃手ソラマメ (0) 聖騎士サルシフィ (1) 香炉の僧侶セロリアック (0) ●イベントアイテム スターデルタ(赤R) スターガンマ(赤SR) スターベガ(赤SSR) ●ミッション達成報酬 聖なる洞窟→Rガチャチケット 洞窟の銀河→Rガチャチケット 地下の大聖堂→Rガチャチケット2枚 ●エリア・ステージ エリア ステージ スタミナ 特別ルール 勝ち方のコツなど 全滅勝利 ボス撃破 敵陣制圧 ←3つ達成 ステイルメイト 聖なる洞窟 【初級】洞窟の入り口 4 黄 N 黄 N 黄 N スターデルタの種 聖なる洞窟 【初級】垂直に落ち込む洞窟 4 赤 N 赤 N 赤 N スターデルタの種 聖なる洞窟 【初級】網の目のような支洞 4 黄 N 黄 N 黄 N スターデルタの種 聖なる洞窟 【初級】ドキッ!落盤だらけの… 6 黄 N 黄 N 黄 N スタミナ回復剤 聖なる洞窟 【中級】更なる深みへ 7 黄 R 黄 R 黄 R スターデルタの種 聖なる洞窟 【中級】冬のアイスクリーム 7 赤 R 赤 R 赤 R スターデルタの種 聖なる洞窟 【中級】狭い洞 7 黄 R 黄 R 黄 R スターデルタの種 聖なる洞窟 【中級】大深度地下! 9 黄 R 黄 R 黄 R スタミナ回復剤 洞窟の銀河 【上級】銀色の回廊 13 黄・赤限定 黄 R 黄 R 黄 R スターガンマの種 洞窟の銀河 【上級】暗闇の河 13 黄・赤限定要:パースニップ 赤 R 赤 R 赤 R スターガンマの種 洞窟の銀河 【上級】源流からの風 13 黄・赤限定要:ソラマメ 黄 R 黄 R 黄 R スターガンマの種 洞窟の銀河 【上級】地底の湖 15 黄・赤限定要:サルシフィ 黄 R 黄 R 黄 R スタミナ回復剤 洞窟の銀河 【超級】洞窟の上り坂 22 黄・赤限定要:セロリアック 黄 SR 黄 SR 黄 SR スターガンマの種 洞窟の銀河 【超級】長大な空洞 22 黄・赤限定要:パースニップ 赤 SR 赤 SR 赤 SR スターガンマの種 洞窟の銀河 【超級】石柱の森 22 黄・赤限定要:ソラマメ Lv100ズッキーニ様々! 黄 SR 黄 SR 黄 SR スターガンマの種 洞窟の銀河 【超級】鍾乳列石の神殿 25 黄・赤限定要:サルシフィ Lv100ズッキーニ様々! 黄 SR 黄 SR 黄 SR スタミナ回復剤 地下の大聖堂 【狂級】地下の大聖堂 30 黄・赤限定要:セロリアック Aジャイアント 黄 SR 黄 SR 黄 SR ??? ●コメント欄 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/famicomall/pages/595.html
前のゲーム | 次のゲーム クリア条件:後編に進む 開始時間:2007/08/25(土) 05 42 48.08 終了時間:2007/08/25(土) 12 19 37.20 コマンド選択型アドベンチャー。 後にBS新鬼ヶ島としてサテラビュー(SFC)にて外伝が配信され、それらとディスク版のリメイク・オリジナルをまとめたものが「平成 新鬼ヶ島」としてSFCで発売された。 また、ファミコンミニとしてゲームボーイアドバンスにも移植され、こちらはオリジナルが唯一前後編まとめて収録されている。 操作 動作 十字キー 選択 Aボタン 決定 Bボタン キャンセル START セーブ 取扱説明書(画像)は下の添付ファイルのtorisetsu_zenpen.jpgからどうぞ。 けっこうムズいです。 音楽がなかなか良い。 シナリオ上視点変更システムを上手く使っていますので、色々順番も考えながらやるといいかも? 第一章で詰まっているようではまずクリア出来ないと思う。 第三章からかなり難易度が上昇するのでここを乗り切れるかどうかが分かれ目。 前編終了。本当の旅は(ry
https://w.atwiki.jp/16seiten/pages/96.html
「ここが半蔵の言っていた場所か」 一つの人影が敷地内に溶け込みように侵入していく 十六聖天裏十一位、ポイズンマスター・ヴェノムタイガーはある任務のためにここを訪れていた 「よく来てくれたタイガー、愛媛での潜入任務とクロレラ(獣)の殲滅、お見事。 まさかアレがあそこまで拡大するとは、全てを吸収しつくして制御できなかたらアトランティスは どうするつもりだったのだろうな」 「過ぎた任務の話はどうでもいい、半蔵お前がこの俺を直に呼んだのなら次の任務のことだろう?」 「ああ、戻ったばかりで悪いがすぐに行ってもらいたい」 「内容は何だ、暗殺か?」 ヴェノムタイガーはもともと裏の人間であり、十六聖天が通常表立った活動することのできない 裏の任務を遂行していた 幼いころからその世界で生きてきた彼にとって自らの手を汚すことに躊躇や後悔は無かった そんな生き方しか彼は知らないのである 「いや任務は二つで、一つはある施設への潜入と破壊だ」 「…それだったらお前の方が適任だろう、伊賀忍23代目党首服部半蔵」 「それがそうでもない。そこはクリフォトの十大悪の2i 「愚鈍」、6i 「醜悪」、9i 「不安定」 がいる8i 「貪欲」の研究施設なのだ」 「なるほどABC兵器に対するために俺というわけか」 「そうだ、俺の調べでは施設内はレベル7クラスのバイオハザードが発生している」 「その顔ぶれだと俺一人では厳しいな」 ヴェノムタイガーの戦闘能力は決して低いものでは無い、仮にも裏十一位に座している 常に最悪の事態を想定し、より成功率の高い状況を分析しているのだ 自分を過大評価しない、これも裏で生きる上で重要なことだと考えている 「直接の戦闘と施設の破壊は別の十六聖天に任せてある。お前にはウイルス、ガス、毒などの 無力化と敵の露払いを行ってもらいたい 「わかった。で、もう一つは?」 「そう、こちらが本命で…」 ヴェノムタイガーが施設内に踏み込むと目の前にはそには不釣合いにピンクの花が中庭に咲き乱れていた 「エリカの花か…この俺にはお似合いだな」 少し自嘲気味に呟くと彼のコートのなかから声が聞こえてきた 『独り言なんて気持ち悪いよ』 プリエデイターヴェノム、ヴェノムタイガーの命令を忠実にこなす不定形で不死の生きた毒獣である 生み出した当初は言葉を話さなかったが、時間が経つにつれて自己主張をするようになってきた 通常はゲル状でコートの下に隠れているが戦闘時には相手の意識を受動的に読み取り、子供や 最愛の人、動物、雪さん、思い出の品、雪さんなど相手の最も油断する形状を取る 「うるさい、少し黙って…どうやらもう見つかったようだ」 施設の建物の中から無数の異形の生物が現れた 8i 「貪欲」のファウストのクローン技術で生み出されたキメラ(合成生物)だ 「モザイクか…めどいな」 生命力と力が高く倒すのに時間がかかるので普段は相手にしないが、今回は殲滅も任務の一つである 「俺は建物のバイオハザードを無効化する、ここは任せるぞプリティ」 ヴェノムタイガーがそういうとコートの中から緑色でゲル状のプリエデイターヴェノムが現れた 『あいつ等じゃ記憶は分からないからな~』 地面に落ちるとプリエデイターヴェノムは見る見る姿を変えていく 赤い着物に下駄、長い髪を後ろで縛った少女が現れた よく見ると右の中指の爪が長く、鋭い先端が赤く染まっている 『独り、去りゆきときは、いつだって独り』 そう囁くと無数敵の中にふわりと飛び込んでいった ~ヴェノムタイガーの後悔・前編 完~
https://w.atwiki.jp/f-konami/pages/58.html
雪返り 前編 「……きろ」 頭の深奥にまで響くような、声音が染み渡った。 「おい。起きろってば」 同時に、乗合自動車が曲がり道で大きく車体を振り、その振動で漸(ようや)く深海(ふかみ)は目を覚ました。 「やっと目を覚ましたのか、君は。お寝坊さんだな」 「ここは……」 未だに目蓋重く微睡みの中、深海は周囲を見渡して、自分がバスの中に居る事に気がついた。古いバスであった。天井に灯る照明は、半ば消えかけているのか薄暗く車内を照らし、錆び付いた手摺りと、所々引き破れた座席の陰影を浮き上がらせていた。 「やぁ、おはよう。といっても今は夕暮れ時だけど。君が眠ったままで居ても良かったんだけどね、そろそろ目的地も近いから」 指先で右隣の窓枠を小突く彼女。 嵌め殺しにされているにもかかわらず、カタカタと身を震わせる窓の外を見遣ると、雪が吹き荒れる山道が見えた。空は余すところ無く雲に覆われ、木々に遮られた山道は薄暗く、夜といっても差し支えない車窓がそこにはあった。幾多もの雪片が縦横無尽に飛び交う中を、バスは走っている。それは、軋み声を上げる年老いたこの車がばらけないのが、不思議なほどであった。 「見ているだけで凍えるような景色だな」 「この山は、冬になれば毎日がだいたいこんな感じさ。そうでもなければ雪霧峠の名が泣くよ」 両の手のひらを天井に向けて、やれやれと言った風情で首を横に振る彼女。物見窓へ向けていた意識を車内に戻し、ここに来て深海は隣に座る女性を見た。 「……鹿島?」 一瞬何故か口をついて出た名前を、いや……と深海は否定をし、再び問いかけをした。 「……お前、誰だ?」 深海の誰何を聞いた彼女は、一瞬固まると、軽く鼻先を弾かれた猫のように目を丸くし、 「おいおい。失礼な奴だね、君は。まだ半醒半睡の寝惚け眼かい? そのとおり。君の親愛なる友人の鹿島雪菜(かしまゆきな)だよ」 鹿島雪菜と名乗る彼女は、先ほどの窓枠を小突くのと同じ要領で、逆隣の深海の頬を突いた。 「鹿島ぁ?」 改めて肯定されたその名字に、深海は聞き覚えがないわけではなかった。むしろ記憶の奥底で、いつまでも忘れられずにたゆたっている音韻だ。何故ならば彼女は、 「鹿島は確か、俺が中学の時に不治の病で亡くなったはずなんだが……」 赤く指痕つく頬をさすりながら、深海はまじまじと鹿島を名乗る隣の女に見入った。利発そうな切れ長の細目。そうありながらも、どこかあどけない口元。肩口まで綺麗に伸びた黒髪。何よりも決定的だったのは、彼女が指につけていた指輪だ。月の光にも似た鈍い輝きを放つそれは、そうそう同じものを見かけられる物ではない。 ——果たしてそこにいたのは、深海の記憶に残る鹿島雪菜を、そのまま成長させた姿であった。 「またその話かな。何度聞いても笑える話だよねぇ。確かに喘息は不治の病ではあるのだけれど」 口元を袖口で覆い隠すような仕草をし、くつくつと笑い出す鹿島。 「勘違いにしても甚だしいよね。全く。こんな冗句は本人しか笑えないよ。どうだい? まだ思い出せない?」 「いや……そういや、そうだったかな」 悪戯猫を想起させる鹿島に瞳を覗き込まれて、朧気ながらも深海は顛末を思い出していた。 治しようも無い病気に冒された鹿島は、退院することなく亡くなった——と、中学時代の深海は聞いていたが、その話は九割が本当だったが、肝心の結末が全くの嘘だったのである。 確かに鹿島は重度の喘息を患って、退院することはなかったが、そのまま空気の綺麗な実家の系列病院に移されて、学校から籍を消した。と、それだけの話だったのである。人に好かれ慣れていた鹿島にしては珍しく、一言の挨拶も無しに学校から姿を消したので、一時期は死んだという噂が流れただけだったのだ。 人付き合いとは対極の位置にいた深海は、その断片的な情報だけを耳に入れてしまい、かなりの長い間、真実とは無縁の関係で暮らしていたのである。 「そういう、肝心な間だけを綺麗に抜き落としてしまう人を、なんて言うか知ってるかい?」 「なんだよ?」 「間 抜 け っていうのさ」 笑い声を押し殺すようにしながらも、腹を抱える鹿島。 苦虫を噛み潰したような表情で、深海はそっぽを向いた。車内には他に乗客は居ない。 ——それで、何で鹿島と二人乗ってるんだったかな。 ぎいぎい軋みながらも二人だけを乗せて走行し続けるバスを見渡し、隣り合う鹿島の震えを肘に感じながら、深海は事の次第を思い出し始めた。 大学に入り、人づてで鹿島の生存を漸く知った深海であったが、だからといってどうしたというわけではなかった。確かに聞いた当初は呆気に取られたものだが、中学時代の鹿島と深海は特別親交深い訳でも無かったし、鹿島の実家のある地方は深海の通う大学とは、彼方の遠山里であったためだ。 それにも関わらず今現在、この古ぼけた乗合自動車で、鹿島と互いに同席しているのは、深海が卒論を書くにあたって、鹿島の家郷を思い出したためであった。深海は大学にて風俗民俗学を専攻していた。昔ながらに人の生死に興味を持っていた深海は、これに絡めゼミの最終論文については、日本各地の命脈に関わる伝承を取り上げようと画策していたのである。 そこで図書館に入り浸り、有用な情報が無いかと参考文献を漁りつつも、自らの記憶と相談しているうちに、同窓していた頃に鹿島から聞いた蘇り伝承を掘り起こしたのである。 地方に伝わる伝承につき調査するにあたり、地元の民の協力の有無が、完成した論文の品質の是非を左右することは、言うまでもない。 半ば断られることを覚悟して、何年ぶりに鹿島と連絡を取った深海であったが、鹿島は長らく疎遠であったはずの深海の希望を快諾した。それは呆気ないほどであった。 加えて、迷惑をかけるからと断ったはずなのだが、鹿島は道案内と称し地方都市まで迎えに来てもくれたのであった。それから、わずかに互いに言葉を交わしただけにもかかわらず、先ほどの会話のように、すでに鹿島は深海の何年来もの友人のごとくの振る舞いをしている。 昔ながらにあった、鹿島の持ち前の明るさに久々に接した深海は、気抜けすると同時にどこか幾ばくかの安心を抱いたものであった。 「それで?」 「それでとは、何かな? 深海くん」 「本当にあるんだろうな」 「何がだい?」 「蘇りの伝承だよ。死者が生き返るという、鹿島の住む地元の村の」 「ははっ。何を今更。あると思ったから、ここまで来たんじゃないのかな?」 「それはまぁ、そうなんだが……」 想い出にも残っているし、文献との参照も終わっている。しかしながら、記憶は中学時代の公園での一幕のものであるし、言質を取れるにこしたこともない。 「覚えているだろう? あのとき深海くんには、昨日食べた夕食から、私の体にあるほくろの数にいたるまで、私の全てを教えたんだから」 「ほくろの数は、さすがに自分じゃ数えられないと思ったんだが……」 「それは道理。あれはもちろん適当さ」 自分のことでも自分で分からないことは意外に多い、と笑みを浮かべながら頷く鹿島。 「例えば、名前だよ」 「名前がどうかしたか?」 「私の名前はなんて言うか、知っているかな?」 「鹿島雪菜だろ。さっきも名乗っていた」 「そう。私の名前だね。しかし、考えたことはないかい? 自分の名前を一番使うのは、自分じゃない。他人なんだよ。鹿島さんや、雪菜さんと呼ばれることは毎日のようにあっても、自分で名乗りを上げる機会って言うのは、絶対的に少ないんだよ」 「そう言われてみればそうだな」 「そもそも自分自身の姿だって似たようなもんさ。鏡を見る機会よりも、他人に見られる事の方が大抵は圧倒的だよ。名前も姿も、自分のものなのに、自分が一番蚊帳の外なんだ。面白いとは思わない?」 自己の存在と認識の問題。どちらかといえば、哲学の部類に入るたぐいの物だが、民俗学でも視点の変更、といった考えのもとで基本になることでもある。 例えば、お化け。古くから人類は得体の知れない体験をしたとき、本来は無いものを在ると見出し、名前をつけることで恐怖を克服してきた。闇夜に浮かぶ幽霊。山で人を食い殺す鬼。そんな伝承は日本に限らずとも世界中のどこにでもある。 未知の現象に対し、人は名前を与えることで安心を得てきた。お化けや妖怪など、そのほとんどは現在の知見のもとでは勘違いに過ぎないと分かっているのだが、当時の人たちにとっては、それが真実であった。名前を与えられたモノは、例え実際に存在しなくとも人の心に巣くい、影響する。過去を探求する者は、民俗学者に限らず、このことは常に留意しておかなければならない。世界を人が見て、世界があるわけではない。世界を人が見て、人が見た世界があるのだ。 まぁ、簡単に言えば、人の心にたってみろ——という一言なのだが。 「このままの話も面白くない訳じゃないが、路線がずれてるな。蘇りの伝承の話は?」 「もちろんあるよ。そして、ついでにいうと、近々行われる予定もある。蘇りの儀式がね」 「儀式……やっぱり、儀式なのか!」 淡々と話を続けていた深海だったが、さすがにこの鹿島の言葉には食い付く反応をした。 「うん。まぁ、儀式といってもなんていうかね。仰々しいもんじゃないよ」 「そういう問題じゃないんだよ、鹿島。君も知っているのかもしれないけど、人を蘇らせるのに〈儀式〉を行うっていうのは、滅多にないんだ」 例えば単に、人が生き返るたぐいの伝承ならば、世界各地に多量にある。日本で一番有名な神話でいうならば、イザナギとイザナミの話が頭を過ぎるだろう。しかし、その殆どは黄泉の国や、死者の国に行き、死んだ者を連れ戻すといった語りだ。実際に儀式として形があるまま伝わる例は僅少なのだ。 この理由は、日本でいうと人を生き返らせる行為は、死者の神に触れることになるため実質的に神卸しに近く、禁忌に触れるため形として現存することはなかったともいわれているが、実際は、蘇りの儀式は結果が明確に分かるため、だと語られる事が多い。蘇らなければ失敗だということが一目で分かるために、伝承として伝わることはあっても、儀式として形に残ることはなかったのだ。 それは伝承すら、イザナギにしてもギリシャ神話のオルフェウスにしても、死者の国から妻を連れてくることはとうとう出来なかった、とされていることからも分かるだろう。 「儀式として様態があるならば、恐らく成功例が昔にあったと言うことだ。もちろんそれは真実の意味での蘇りではなかったに決まっているにしても——だ」 「いや、本当に蘇るんだよ。この儀式ではね」 しれっと、決定的で信じられないことをいう鹿島だったが、これには深海も鼻白むほか無い。 「それはないよ、鹿島。ありえない」 「そうだね。死んだ人間が生き返るなんて事は、絶対にありえないさ。でもね、深海くん。確かにこの村で人は蘇るんだよ」 「鹿島、矛盾してるぞ」 続く鹿島の言葉を待っていた深海だったが、差し込む光に照らされて急に明るくなった車内に驚起し、身を乗り出して車窓を覗き込んだ。 「……晴れてる?」 外には夕日があった。あれほど吹雪いていた灰色の景色は、不自然なほど跡形もなく溶けるように色を変えて、茜色の雪村になっていた。 峠を越えたためだと、鹿島は確答する。 「それにしたって、こんなに急には……」 「まぁ、話はおいおい語るとして、とりあえずは——」 未だ驚きから覚めやらない深海を手で制す。 鹿島は深海を猫のような細目で見詰めると、その口元に、にたりと笑みを浮かべた。 「雪返村へ、ようこそ」 ■ バスから降車し到達した坂の上からは、雪返村が一望できた。ここは山の中腹にあたる部分であり、盆地状の立地を為す村を見下ろせる位置に、二人はいた。 盆地の窪みはちょっとした野球場程度の広さしか無く、比例して雪返村は小規模の家々が密集しただけの集落であった。降り積もった雪の毛布が村全体を覆い隠し、村はむしろ隠れ里とでも形容すべき様相を為していた。 「さ、家は向こうだよ。少し歩こうか」 夕日を背景に雪返村の奥を指し示す鹿島に、深海は頷き歩を移した。 車一台が漸く走れそうな幅の土道は、盆地上の村の外側を一周するようにして続いていた。先達の足跡も轍もない道を、二人は真綿のような新雪を踏みしめた。 「案内がてら、村の中をつっきっても良いんだけどね」 「別にかまわないさ。雪道は嫌いじゃない」 「それは僥倖かな。ま、見ての通りの小さな村だ——まぁ、そうでなくとも君には案内など必要ないか」 何が面白いのか白い吐息を弾ませながら、鹿島は笑う。暖房の効いた車内から寒冷地に身を移したせいか、ふっくらした頬は赤く上気しており、その色彩がいっそう鹿島の表情を豊かにしていた。 それからしばらく西日差す茜道を歩き、二人は一軒の家屋の門前に到着した。そこは先ほどの坂の上からも見下ろせた、集落の端に位置したひときわ巨大な屋敷であった。立ち止まり深海を見遣った鹿島の様子から考えて、ここが案内された目的地のようだった。 「到着」 鹿島の背丈の二倍ほどもある閉じた門を前にして、深海はゆるりと視線を這わせた。 この家全体の造りは木造であるが、家垣を含めて結構な規模の日本家屋であった。先ほど見下ろした村の他の家々に比べると、二乗ほどの面積はある。雪返村の立地から推察して、最奥にあることからも、ある程度の有力者の家であることは間違いないようだった。 「感想は何かあるかい?」 「……でかい家だな」 「言うほどでは無いんだけどね。村が小さいから、相対的に見えるんでしょ。他にはないかい?」 「他には、といわれてもな。特には無いが、しかし……」 「しかし?」 深海は今一度、目の前の建築物を見上げた。全てを覆い被すほどの雪を纏いながらも、自らを誇示するかのような存在感がこの家にはあった。そんな屋敷を前にして……いや、最初にこの雪返村を見渡し、この家を目端にした時、ふと感じていた違和感があったのだ。 「俺はこの家……どこかで見たような気がするのか?」 「おいおい。何かな——既視感かい?」 「いや、そういう訳じゃない。そうじゃないな。既視感じゃないんだが……」 不意に、もやもやした不安めいたものに心揺らされた深海は、それを取り払うかのように側頭部を掻いた。押し付けられ触れた耳が、つんとした冷たさを手の平に伝えた。 「まぁいっか。とりあえず中に入ろうか、深海くん。たぶん部屋は暖かいはずさ」 鹿島が軽く体重をかけると、見た目とは裏腹に負荷を感じさせない具合で、すんなりと門は開いた。石畳を越えた先にある内玄関からは、薄暗いながらも暖かい光が漏れている。 未だ違和感をぬぐいきれないながらも、断ち切るように頭を軽く振り払った深海は、先導する鹿島に続いて門をくぐった。 誘われるようにして通された部屋は、十畳ほどの畳からなる和室であった。中央には丸角で四角形をした桐製の卓袱台があり、紫陽花の模様をあしらった肉厚の座布団が二組、対の位置で敷かれていた。特に暖房器具も見あたらないが、部屋の中は外の寒気を寄せ付けないほどに暖かい。 「長旅疲れたね。座って休もうか。ああ、荷物も好きなところに置きなよ。自分の家だと思って、寛いでくれ」 「では、お言葉に甘えるか」 担いでいた着替えや研究道具の詰まった背負い袋を部屋の端に下ろし、手近な座布団へと深海自身も腰を下ろした。その対面に、鹿島もすっと座り込む。 「家の人に挨拶しなくても良いのか? 何日かお世話になるから、さすがに一言ぐらいは告げたいんだが」 「ご丁寧にどうも、と言いたいところだけど、あまり畏まらなくて良いよ。実は他の家人は用事があって他出していてね、しばらくはこの家宅、空き家なんだよ。つまり二人っきりということさ」 「それなら、いいんだが……」 礼を欠いた状態に、多少の居心地の悪さを感じざるを得ない深海だったが、玄関で只今を告げた鹿島に返答が無く、同時に家の中に人の気配が感じられなかったのも、そのせいかと納得もしていた。 「おいおい深海くん。何が『いい』んだい?」 「勿論、失礼に当たらないことが、に決まっているよ鹿島」 台に両肘を乗せ、笑みを浮かべる鹿島の表情に、からかいの意図を見て取った深海は、素気ない対応をした。 「つれない男だね、君は」 「諧謔ならともかく、羞恥する人を見て楽しもうとするのはいただけないな」 「それは悪かったね」 言葉とは裏腹に、多少も悪びれた様子もなく鹿島は肩をすくめた。 その後しばらく、用意されていた茶菓子をつまみ、和室の調度品など吟味するなどして寛いだ後、深海はこの村に来た目的に頭を回らし、そろそろ蘇りの儀式について観じたいとの申し出をした。 「さすがに気が早いんじゃない? 今日くらいは羽を伸ばして、明日から取りかかればいいじゃないか。休暇はまだあるんだろ。そんなに慌てる時間じゃないよ」 「そうはいかないさ。時間があることと、それをどう使うかは全く別の問題だ。迷惑をかけない借宿だとしても、そんなに長く他人の家にやっかいになるわけにはいかないだろう?」 「他人の家ねぇ……身内の家ならいいのかい?」 身を乗り出して、再び意地の悪そうな笑みを浮かべる鹿島。 「その手の問答は、品が悪いと言っただろう鹿島」 「ん? ああ、これは別にそういう意図では無かったんだけど……まぁ、いいか。でも、私は疲れているから大した助力は出来そうにないよ」 「それは仕方がないな。一人で頑張るさ。迷惑をかけない程度に散歩するくらいなら出来るだろう。見たところ、この村だったら——」 「道に迷うこともない、か。でも、もうそろそろ落日も近い時間さ。聞いた話によると、この村の子供は夜は蛍で勉強するそうだよ。それでもかな?」 「これだけ雪があれば、明かりに困りそうもないな」 何故か引き留めようと拘泥していた鹿島だったが、立ち上がって決意を示した深海を見て、ついに嘆息した。 「分かった。好きにしなよ深海くん。玄関を出て、左に折れる道をまっすぐに進めば、山を登る階段(きざはし)がある。そこを上れば儀式の祭壇だよ。一見は百聞に勝る。下見を済ましておくのも良いだろう。もっとも、今はまだ時期じゃないから中には入れないけどね」 「我が侭を言ったみたいで迷惑かけるな。夕食の時間前には帰るよ。何時頃だ?」 深海の問いかけに対し鹿島は、何時頃ねぇ……と、顔の半分だけを歪めて、何やら皮肉めいた顔つきを向けた。 「そうだな。君が帰ってきた頃に、ちょうど暖かい夕飯を出してあげるよ。ま、食事の時間は君自身が決めるんだな」 ↑作品一覧 雪返り 中編→
https://w.atwiki.jp/8oregon/pages/60.html
メニュー -トップページ-対戦結果-猛者リスト-オレゴン杯-オレゴンメンバーズ-オレゴン史-オレゴンレポート 第17章 飛躍 前編 8月24日 午前7時30分 オレゴンは既に目を覚ましていた。 寝つき、寝起き ともに飽きれるほどの悪さをもつオレゴンにとっては 奇跡的であった。 ネカフェの綺麗な設備により オレゴンの身も心も万全な状態で 大会の会場へと向えた。 ありがとう マンボー 大会会場となる両国までは3,4個先の駅であったため 数分で着くことができた。 オフライン大会自体の規模など 全くわからないことだらけで どれぐらい人が賑わっているのかも 想像することができなかった。 最初の予想としては わんさか人が集まり 夏の蒸し暑さと 人ごみの暑さで 参ってしまうのではないかと心配していた。 しかし そんな心配はご無用であった。 会場周辺はごく普通な風景であった。 良くも悪くも期待を裏切られた。 とりあえず クラブメンバーと合流せねば。。。 オレゴンはマハガトチョンへ連絡を取った。 あと数分で着くとのことだった。 そして 軽やかな走りで、自分の方へ向ってくる好青年の存在に気づいた。 イメージ通りのマハガトチョンであった。 お互い挨拶を交わし しばし、他愛もないファミスタの話で盛り上がりながら 会場へと急いだ。 エントリーを済ませ 会場へ入ると先ほどの裏切りを覆してくれたのだ。 巨大ステージに(アラド用) 巨大ビジョン(アラド用) コスプレ姉さんに(各種ゲームの) コスプレおっさん(くにお君) さすがネットゲームのオフラインイベント 会場の規模に驚き オタク丸出し加減にドン引き しかしながらも 徐々にテンションが上がっていったのだ。 ファミスタのブースへと足を運ぶと あの耳から離れなくなる ファミスタのBGMが大音量で流れていた。 キターーーー って感じですかね。 スタッフ全員ナムコスターズのユニフォームを着用(ビジタータイプ 300FC) 続々と出場者らしき人々が会場入りしてきた。 しかし、ここで問題発生 なんとアシッド12がいないのだ。 メールで連絡を取ってみると 試合開始予定時間くらいに到着するとのことだった。 さらば、アシッド12 と、思いきや 予想以上に参加人数が集まらなかったため 急遽予定を変更し 参加者を待つことにしたのである。 ナイスプレイb チョンゲb そして、アシッド12も到着し コネクト組勢ぞろいとなったのだ。 試合開始数十分前には 練習時間を設けてくれたのだ。 うれしい誤算にオレゴンとガトンチョは 軽く練習試合をし バグ、ラグ、反応速度などを確かめた。 感想としては 高性能な割には。。。。。。 と言った感じか。 すると ある人物が話しかけてくれた。 FOA まゆたろう である。 なんとFOAはコネクトの人数を軽く凌ぐ 5,6人のまゆたろう応援隊を結成していたのだ。 さすが、FOAの団結力 と言ったところであろうか。 ファミスタ界で憧れていた人物を目の前にして 少々照れくさかったが お互いに健闘を称えあった。 そして 組み合わせも決まり オレゴンは運良く一回戦免除の シードを引き当てたのだ。 そして、試合開始時間となり 一回戦が始まった。 一番若い番号の試合だげが ファミスタブースのビジョンに映し出されて 試合が始まった。 かなり興奮する感じであった。 リアルタイムでなおかつ 臨場感ある?実況、解説つきの試合 さらに普段見れない 他人のプレイヤー同士の試合を見れるということもあり かなりの興奮だった。 映し出された試合は スギヤンマVS大日本帝国 試合の内容を一言で表すと 泥試合だ。 怪しげな投球 怪しげな操作 一瞬会場は失笑と落胆の声に包まれた。 マジかよ。。。。。 やばいなぁ。。。。 オレゴンの気持ちであった。 なにしろ、この試合の勝者が オレゴンの対戦相手となるのであるのだから。 試合は徐々にスギヤンマのワンサイドとなり そのままスギヤンマが勝利を収めたのであった。 ガトンチョもシードであったため、2回戦へ アシッドも練習0のキーボードに苦戦しながらも、2回戦へと駒を進めた。 しかし 悲しいことに、この二人が次の試合 対戦することになったのだ。 これもトーナメントの宿命か。 そして二回戦 8オレゴンVSスギヤンマ ガッチリと握手を交わし 「二度曲げなしでよろしく。。。。」 と軽くオレゴンがつぶやいたのであった。。。 メニュー -トップページ-対戦結果-猛者リスト-オレゴン杯-オレゴンメンバーズ-オレゴン史-オレゴンレポート
https://w.atwiki.jp/rnext/pages/285.html
Traffics(前編) 『まず、この放送を目にしている参加者の皆様に突然の無礼を詫びさせてもらう』 唐突に携帯電話から流れた放送。 『私……橘朔也は、君達と同様、このゲームの参加者だ』 参加者の一人である橘朔也から、全ての参加者へと発信されたメッセージである。 『単刀直入に言わせてもらおう。……私は、ゲームの終了に必要な鍵を所有している』 それはあるいは喉から手が出るほど求める物に。 『こちらの現在地は――――君達も察しがついているだろう。……そう、放送局だ』 それはあるいは格好の獲物の在り処を示すものに思えただろう。 『ここから我々は――!?』 唐突に始まったその呼びかけは、終わりも唐突であった。 ◇ ◆ ◇ 北崎は放送を見終わり、携帯をしまう。 「放送局か……」 今の放送で、放送局に集まる参加者は少なくないだろう。橘を救い出そうと、もしくは息の根を止めようと。 「面白そうじゃない……」 見る者に恐怖を与える、凶悪な笑みの浮かんだ幼い顔。 変身の制限時間が切れるのを待つために不本意に時間をつぶしていた不満を解消する機会がじきに巡ってくる。 多数の参加者を全てねじ伏せ、自分が絶対の力を持っている事を思い知らせる。 それは自分にとって至福の時間となる。 「……だけど、まだ早いかもな」 現在地から放送局までは程近い。今から向かって到着する頃にはまだ参加者は集まっていないかもしれない。 それに、オーガとシザースの制限が切れるまでにはまだ少し時間が必要だ。 それなら。 「寄り道していこうっと」 つぶやき、凱火を走らせる。 まだこの近くにいるはずの歌舞鬼を探しに。 ◇ ◆ ◇ 「……今の、どう思う?」 澤田は隣に座る真魚に尋ねた。 「どうって……」 予想通り答えに詰まった真魚を見て、携帯を閉じる。 先刻、侑斗と一戦交えた地点から少し北に移動し、彼がまた来るかもしれないと警戒していたがその気配もなく、今後どこへ向かうべきか考えていた所だった。 「はっきり言って、他人の心配をしていられる余裕なんかないでしょ?」 「そうだけど……」 木陰に並んで座るその光景は、傍目には普通のカップルにしか見えないだろう。 「でも、気になるじゃない」 「まあね」 認める。特に最後、あんな中途半端に終わったのを見れば何かあったと思うに決まっている。 「だけど、ここからその放送局までかなり遠いんだよ? 僕らが着く頃にはもう彼はいないかも知れない」 救出されるにしろ殺されるにしろね、とは言わないでおく。 「まあともかく、僕らがこれからどうするのかはちゃんと考えないとね」 東西を禁止エリアに挟まれたこのエリアでは北か南しか進みようがない。 真魚には、北の研究所に参加者が集まるかもしれないと言ってある。 スマートレディから電話で聞いた事は伏せ、首輪を外す方法を研究所で探す参加者がいるかもしれないと話した。 人の多い所は避けたいので北へは向かいにくい。 しかし、南には先ほど倒し損ねた侑斗(澤田は名前を知らないが)が逃げていったはずだ。 それを言った所、真魚は南へ行く事に難色を示した。 彼女は彼に対してあまり悪い印象は持たなかったようだ。 それを考えるとなぜか面白くなくなってくる。彼女は自分を頼りにしているのではなかったのか。 彼女を待たせて、そいつを片づけてこようかとも考えた。 ひょっとすると多少態度に出たかもしれない。彼女はとりあえず落ち着いて考えよう、と提案してきた。 そこに今の放送があった。 「とりあえず南に行って、人のいなさそうな所を探そうか?」 と言ってみるが真魚は、 「ん……」 まだ悩んでいる。 いよいよ不機嫌になり始めた澤田はデイパックからペットボトルを取り出し、水をゴクゴクと飲み始めた。 ◇ ◆ ◇ 急に途切れた放送に、侑斗は思わず立ち上がった。 「なんだ? 一体どうしたんだ?」 橘という男の身に何かあったに違いない。 今すぐに放送局に駆けつけたい所だが、さっきゼロノスに変身したばかりで制限の時間はまだ過ぎていない。 それに、はぐれてしまった香川を放っておく事もできない。 「くそ、どうすればいいんだ……」 歯がゆい思いをしながらつぶやく。 しかしその場には彼一人しかおらず、答えてくれる者はいない。 「香川さん……デネブ……」 そのつぶやきも風の中へ消えていく。 一人でいる事がこんなに心細いとは思わなかった。 いつも一緒にいて、共に戦ってくれたデネブ。 この殺し合いの中で幸運にも最初に出会い、様々な助言をくれた香川。 だがデネブは殺されてしまい、香川は消息が知れない。 この殺し合いはなんとしても阻止したい。そう意気込んでいた。 だが現実には一条や海堂、放送で呼ばれた見知らぬ人々はことごとく命を落としている。 それらの人々どころか、自分の隣にいた人さえ守り切れていない。 「ちくしょう……!」 吐き捨てても現実は何も変わらない。 がっくりと肩を落とす。 自分は人に頼り切りの子供だったことを痛感する。 強くならなければならない。人を守るために。 「もうこれ以上、誰も……!」 拳を強く握りしめ、侑斗は歩き出した。 たとえ一人でも、それでもできる事があると信じて。 ◇ ◆ ◇ 侑斗を――正確には侑斗にそっくりな京介を探している葦原と木場は一旦カブトエクステンダーを停めて放送を聞いていた。 いきなり中断され、顔を見合わせる。 「どうしたんでしょう?」 「さあな」 葦原は答えるとヘルメットのバイザーを下ろした。 「とにかく、まずは侑斗ってヤツとちゃんと話をつける事だ。その後で考えていい」 「……わかりました」 カブトエクステンダーが走り出したので葦原にしがみつく木場。 色々と取り留めのない事を考えていると、葦原が声をかけてきた。 「あんまり何でも背負い込もうとするな。誰にでも限界はある」 「でも……」 「今のは俺だって気になるさ。だが、考えることはそれ以外にもたくさんある。一つずつ片づけていくしかないんだ」 「…………」 気休めを言うでもなく、突き放すでもない。葦原の言う事は現実的だ。 どうにもできなかった事態は木場も経験がある。一度や二度ではなく。 確かに、いくつもの問題を同時に手につけていたらかえって上手くいかないかもしれない。 それなら、一つに集中した方がまだマシだろう。 「……ん?」 と、何かが聞こえた気がして声を上げる。 「どうした?」 木場のつぶやきが聞こえたのだろう。葦原が聞いてくる。 「いえ、今何か聞こえたような……なんだか何かがぶつかる音だったような」 「どっちだ?」 「多分……こっちです」 木場は北への道を指差した。 ◇ ◆ ◇ バイクにまたがったまま後ろの京介と共に放送を聞いていた歌舞鬼は携帯をしまい、エンジンを噴かす。 「い、いいんですか歌舞鬼さん?」 「んん?」 声を上げる京介。まだ落ち着いていないようだ。 「そうは言ってもなぁ、こんな事になったらお前、そのホーソーキョクとやらに人が集まるだろ? 北崎みてえのもいるかもしんねえぞ?」 「そ、そんな」 情けない声を上げる京介に笑いながら、 「だからよ、逆に人の少なそうな所に行こう。北の方だったらあんまりいないんじゃないかと思うんだよ」 地図で見ると、北側のエリアには人の集まりそうな施設はほとんどない――と歌舞鬼は思っていた。 研究所や大学などがどういう場所かよくわからないゆえの思い込みなのだが。 それに北崎は南側のエリアにしばらく留まるのではないかと思われた。 さっき遭遇したのはこの近辺だし、今の放送で放送局のある南側に人が集まると予想できるからだ。 アクセルをひねり、バイクを走らせる。 「よし、少し急ぐか」 「は、はい」 必要以上に強く歌舞鬼にしがみつく京介。相当不安らしい。 「そんじゃ、スピードアップだ!」 少し深めにアクセルをひねり込み、加速する。 「おお、速ぇな!」 予想以上の加速に歓声を上げる。 「よし、もっと上げるか!」 風を切る感覚に爽快になり、さらに加速し―― ガッシャーン! カーブを曲がりきれず転倒してしまった。 「つ~」 歌舞鬼は背中を押えながら立ち上がった。調子に乗りすぎたらしい。 「おい、京介、大丈夫か?」 「いっててて……」 京介は胸と顔を押さえている。けっこう強く倒れて顔もすりむいたようだ。 「運動神経ねえなあ、お前」 「ひどいっすよ歌舞鬼さん……」 なんとか二人でバイクを起こして再び乗ろうとした時、自分達が来た方の道路から別のバイクが走ってくるのに気づいた。 「ん?」 京介も気づいて見る。そして声を上げた。 「あ、あいつらさっきの!」 乗っているのは先程京介に迫っていた二人組の男達だった。京介を追ってきたのか。 こちらに気づいたらしく、後ろに乗っている者がこちらを指差している。 「行くぞ、京介!」 再び走り出す歌舞鬼。 京介はまたも強くしがみついた。 ◇ ◆ ◇ 森を抜け、川を渡り、坂を越える。 そうして道なき道を進み、ようやく舗装された道路が見えてきた。 「お、見えてきた見えてきた」 橘という人物の放送を聞いて彼の元へ向かった一文字・志村と別れ、病院を目指して竜巻を走らせるヒビキは歓声を上げた。 禁止エリアを迂回するためとはいえ、悪路ばかり走っていては手塚のケガにも響く。 肩越しに手塚の様子を伺うと、自分の背中に顔を突っ伏したまま動かない。やはり相当参っているようだ。 「手塚、そろそろ休憩にするから、もう少し頑張ってくれ!」 道路へ乗り上げ、そのまま南へ向かってハンドルを切った。 ◇ ◆ ◇ 動物園とはこんなに不気味な場所だったろうか。 動物どころか人っ子一人いない動物園を歩き回り、香川はため息をついた。 さっき自分がいたホテルと同様、ここも数ヶ月は放置されているようだ。 侑斗や海堂の姿はなく、人がいた気配もほとんどない。 とりあえず入り口へ足を向ける。誰か通りがかったり立ち寄るかもしれない。 (動物園か……) ――パパ! 数年前、家族で動物園に遊びに言った事を不意に思い出した。 息子の裕太が嬉しそうにたくさんの動物達の檻の前を走り回り、妻と一緒に追いかけるのが大変だったほどだ。 ミラーワールドを巡る戦いに身を投じ、神崎士郎によって手を引く事と家族の命とを選ぶ事を強要された時、迷わず家族を見捨てる選択をした。 家族はもちろん大事だったが、ミラーワールドを閉じなければ多数の人々がミラーモンスターの餌食になってしまう。 それを阻止するためには犠牲は覚悟しなけらばならない。彼の持論である英雄的行為だ。 だからオルタナティブ・ゼロに変身し戦ったが、その最中に現れた龍騎に家族は無事だと教えられ、戦闘の後すぐに連絡を取った。 電話がつながった時の安堵感は忘れられない。ミラーワールドの問題は解決していないとはいえ、やはり家族が無事だったのは嬉しかった。 あの時ばかりは龍騎――城戸真司に感謝した。だから彼は英雄の器ではないのだが。 思わず感傷的な気分になってしまう。もう一度家族に会いたい。 必ず生還する。ミラーワールドを閉じるためにも、家族のためにも。 そういえば、城戸もこの殺し合いに参加させられていたはずだ。名簿に名前があった。 会えば、恐らく手を貸してくれるだろう。そうでなくても、誰かに協力しているに違いない。 考えながら歩いていて、入り口に着いた。 入場券売り場に入ろうとして、音が聞こえてきた。 耳を澄まし、しばらく聞き入っていると、どうやらバイクのエンジン音のようだ。 塀に身を隠し、その陰からのぞく。 やがてバイクが北の方から走ってきたのが見えてきた。運転しているのは男のようだ。 段々近づき、その後ろに誰か乗っているのが見えた。 仲間だろう。という事は友好的な人物である可能性が高い。 一か八か、香川は道路で飛び出し、両手を振った。 当然バイクの男は気づき、自分の近くで停車した。 「こんにちは」 にこやかに挨拶する男。歳は30前後ほどだろう。 「私は香川と申します。この殺し合いを止めようと考えています」 「俺は日高仁志。ヒビキって呼んで下さい。こっちは手塚」 ヒビキは後ろの男の紹介もした。思った通り友好的だった。 ただ、彼の言葉に二重の意味で知る名があった。 「手塚……?」 名簿を思い出す。そこには確かに手塚という名があった。しかも直接の面識はないものの、彼の知る人物の名前だ。 手塚海之。 神崎士郎からライアのデッキを渡されながら、戦いを止めようとしていたライダーだ。 だが彼はすでに命を落としたはず。名簿を見た時から不思議に思ってはいた。 彼以外にも、芝浦淳も同様に死んだはずだが名簿に名があった。第一回放送でその名前が呼ばれたが。 「ちょうどいいや。手塚はケガしてるんです。この中に運ぶの手伝ってもらえませんか?」 「ええ、いいですよ」 バイクごと動物園の中へ入る三人。 自分の幸運に感謝しつつ、色々と情報を聞かねばならないと考えていた。 ◇ ◆ ◇ 彼らが歩む道は、同じ空間にありながら全て異なる方向へ向いていた。 ある道は他の道と交わり、またある道はさらに違う道へ分岐し。 この島そのものが大きな運命の交差点と言えるだろう。 そして今、いくつもの道が一本に交わりつつあった。 ◇ ◆ ◇ 澤田はすっくと立ち上がった。 彼の耳が遠くから風に運ばれた音をとらえたからだ。 「どうしたの?」 尋ねる真魚。 「あっちの方、遠くから何か音が聞こえたんだ」 北の方を指す。 結構遠いのかはっきりとは聞こえなかったが、バイクのエンジン音ではないだろうか。 真魚はそちらへ目を向ける。 「誰かいるのかな?」 澤田は少し考え、 「よし、行ってみよう」 座っていた真魚の手を引いて立たせ、丘を登る。 「ねえ、道路から行かないの?」 「ばったり出くわすのは避けたいからね」 正直、真魚が動く事を渋っていたので、動かすいい口実が出来たと思った。 様子を見に行くだけだ。いざとなれば自分が真魚を守る。 自分がかなり自然に真魚を守るべき対象として意識している事に、澤田は違和感を感じないでいた。 ◇ ◆ ◇ 「ありがとう、香川さん」 「いえ」 休憩所のベンチに寝そべり礼を言う手塚。 すでに情報交換はかなり進んでいた。 ヒビキからは第2回放送の内容を教えてもらい、海堂とデネブが死んだ事。 橘の放送が行われた事。 ヒビキ達のグループは手塚を病院へ連れて行くために別行動中である事。 そのグループに城戸真司がいる事。 北條と言う人物が首輪の分析のために乃木と言う怪人に連れて行かれた事。 さらに志村と一文字という人物が橘を助けるために放送局へ向かった事などを聞いた。 香川も侑斗が時の列車の持ち主で恐らくこの島からの脱出の最重要キーパーソンである事。 木場に襲われた事と彼、ひいてはオルフェノクは危険である事、主催者であるスマートブレイン社長もオルフェノクである事。 立ち寄ったホテルで起こったと思われる事などを話し合った。 そして自分は神崎士郎の目論見を打ち砕くべく動いている事を手塚に話した。 それを聞いて、手塚は驚きながらも自分を信用してくれたようだ。 ライアのデッキは別行動中の志村に預けたという。聞けば別の変身アイテムがあるらしい。 彼が死んだはず、という事は言わなかった。さすがにケガ人にそんな事は聞けない。 「他のメンバーは、その乃木と言う男の指示で動いているんですね?」 「ええ。青いバラを探せって言われてるらしいです」 「青いバラ?」 その言葉に、先ほど林の中で見た美しい青いバラを思い出す。 「なんでかはよくわからないんですけど、多分この首輪に関わりがある事だろうって」 自分の首元を指しながらヒビキ。 それならば、ちゃんと教えた方がいい。 「青いバラなら知っていますよ。この目で見ました」 「本当ですか!?」 その言葉に驚くヒビキと手塚。 「ええ。このすぐ近くに咲いていました」 「案内してもらえます?」 言いながらヒビキは立ち上がり、自分の荷物を肩に担いだ。 「手塚、ちょっと行ってくる。少し待っててくれ」 「わかりました」 「念のため、バイクは置いてくから」 バイクのキーをテーブルに置き、二人は動物園を後にした。 ◇ ◆ ◇ 「来ないな……」 斜面にしゃがみ、双眼鏡をのぞいていた侑斗はつぶやいた。 さっき遭遇したナオミらしい少女と男がこっちへ来るのではないかと考え、遠くから双眼鏡で様子を伺っていたのだ。 香川は北にいると考えられるので、なんとかこの道を北上したい。 だが、まだ変身できないので鉢合わせは避けねばならない。 しばらく待っていたものの、北側からは人影は見えない。 「どうするかな……ん?」 考えていると、逆の方向からバイクの音が聞こえてきた。 こっちから来る事は考えていなかった。そちらへ双眼鏡を向ける。 二人が乗ったバイクが道路を走っている。 運転している男に見覚えはない。後ろに乗っている人間の顔はよく見えない。と、 ガッシャーン! 「あ」 カーブを曲がろうとした時、バイクごと転倒してしまった。 二人ともケガは大した事はなさそうで、フラフラと立ち上がってバイクにまた乗ろうとしている。 そこで後ろに乗っていた男の顔が―― 「えっ!?」 思わず大声を出していた。 そこには自分がいた。 自分と同じ顔をした男だった。 最初に会場で見かけた自分にそっくりな男に違いない。 すぐにそこへ向かおうとすると、彼らの後ろからもう一台バイクが走ってきた。 彼らの近くでバイクを停め、彼らへゆっくり近づく。 運転していたのはやはり知らない男。だが後ろに乗っていたのは―― 「木場……さん!?」 間違いなく、木場勇治だった。 気がつくと侑斗は走り出していた。 行かなければ。ちゃんと話さなければ。 自分のせいで事態はおかしくなってしまった。 だから、自分が何とかしなければいけないのだ。 転がりそうになりながら踏ん張り、斜面を駆け下りていった。 ◇ ◆ ◇ 「ってぇ~……」 「歌舞鬼さん……勘弁して下さいよ、ホント……」 「たはは、ワリぃワリぃ」 立ち上がりながら恨み事を言う京介。 今度は尻を打ったらしくさすっている。 歌舞鬼はというと、どうという事はない。 すぐにバイクを起こそうとするが、そこへ後ろから別のバイクが到着した。 「あ……!」 京介が声を上げる。 バイクから男が二人降りてくる。 ◇ ◆ ◇ 「大丈夫ですか? ケガは?」 ようやく追いついたが、相手はバイクで転倒してしまったようだ。 心配だったので木場は二人に声をかけた。 「く、来るなよ!」 後ずさる侑斗――らしい人物。木場は足を止めて、 「落ち着いてください。俺の話を――」 「おい」 もう一人が侑斗の前に立ちはだかる。 すると木場の表情が急に引きつった。 「も……森下さん!?」 「あ?」 木場は青ざめ、よろめいた。 それは見覚えのある顔だった。 かつて木場の恋人だった千恵の兄の義正だ。 自分が殺した彼女の仇を探して自分を訪ねてきた後オルフェノクに襲われ、彼自身もオルフェノクへ覚醒してしまった。 そして彼は自分がオルフェノクになったのは妹の仇を討つために神が授けてくれたものと思い込んでしまい、暴走して無差別に人を襲ったためファイズ――乾巧に倒された。 すべての発端となったのは、自分が千恵を殺した事だ。それさえなければ彼は人の道を踏み外す事はなかっただろう。 それゆえ、彼に対しては強い悔恨の情が残っていた。 その彼を目の当たりにして、木場は心を押しつぶされそうになっていた。 「森下さん……なんですか!? どうしてこんな所に……あなたはもう死――」 「待て待て待て、俺は歌舞鬼だ。モリシタなんて名前じゃあねえ」 手を上げて否定する森下――いや歌舞鬼。木場はそれを聞いてしばし呆然としていたが、 「そ、そうですよね……あの人はもう死んでるんだし、名簿にも名前なかったし……」 「そんなに似てるのか?」 葦原が聞くので、頷く。 「はい……とてもよく似ています」 「へぇ、俺みてぇな男前がいるってぇ? どう思うよ、京介?」 おどけながら後ろの侑斗に声をかける歌舞鬼。 だが彼はそんな事を言っている場合かとばかりに非難のまなざしを向けてくる。 「キョウスケ? そいつは桜井侑斗じゃないのか?」 歌舞鬼の言葉に、葦原が反応した。木場も耳を疑った。 「おい京介、名乗ってやったらどうだ?」 「お、俺は桐矢京介だ。サクライなんてし、知らない」 それを聞いて木場と葦原は顔を見合わせた。 「おい、こっちは名乗ったんだからよ、そっちの名前も教えちゃくんねえか?」 言われて、二人とも再度顔を見合わせる。 「俺、木場勇治っていいます」 「俺は葦原涼だ」 「キバにアシハラか。悪いがこいつは京介だ。お前らの探してるサクライとかいうのとは違う」 「でも……」 「木場さーん!」 不意に大声。その方向を全員が向いた。 「えっ!?」 京介がもう一人走ってきていた。 同じ顔の人間を二人も目の当たりにして、全員が驚いていた。 四人の前に現れたもう一人の京介はハアハアと肩で息をしながら口を開いた。 「木場さん……ハア、ハア……」 「君……」 木場がつぶやく。 「お前、桜井侑斗か?」 息を切らしながら葦原の問いかけに頷くもう一人の京介――侑斗。 「……たまげたな、こりゃ」 侑斗と京介は本当にそっくりだった。これではみんな間違えて当然だろう。 「そっくりさんって、意外といるもんなのかね」 「そ、そうですね」 と、今も間違えられた歌舞鬼と間違えた木場。 京介も侑斗の顔をまじまじと見つめる。 「……ホント、気持ち悪いくらい似てるな」 「まったくだな」 京介の言葉に葦原が同意を示した。そして木場に声をかける。 「おい、こいつに話があるんじゃなかったのか?」 「あ……はい」 二人がそっくりすぎる事に呆然としてしまっていたが、気を取り直して侑斗の前に立つ。 「その、あの時は俺――」 「すいません木場さん、さっきはひどい事を言ってしまって」 話そうとしていると、いきなり頭を下げられた。 「謝っても許してもらえないかもしれないけど、本当にごめんなさい」 「君……」 頭を下げたまま謝る侑斗。 木場は驚くと同時にとても嬉しかった。 「いや……大丈夫だよ、俺は。あの時は君も無事だったし」 「いえ、俺が悪いんです。俺が赤カードの代償の事を忘れていたから……」 「代償?」 木場が聞き返すと、侑斗はデイパックからベルトを取り出した。 「香川さんはあの時、このゼロノスベルトに赤のカードを使って変身したんです。 これ、今まで俺しか使った事がなかったからうっかり忘れていたんだけど、赤を使った人間は自分を知る人から記憶が消えてしまうんです」 「え?」 「そのせいで木場さんは香川さんの記憶を失ってしまったんですよ。そこにあんな写真とか見てしまったから……」 急に突拍子のない事を言い出す侑斗。 頭の中で言われた事を噛み砕く。 「じゃあ俺は、あの香川って人に会った事が?」 「はい。あのショッピングセンターでの戦いの時、香川さんと話をしたはずです」 「でもそんなはずは……あの場には海堂や北崎、あと怪物とかはいたけど……」 あの場は三度に渡り――最初は北崎、次いで鳥の怪物、そして巨大な赤い怪物――数名が入り乱れて戦いが行われたが、彼の事は全く記憶にない。 「あの赤いヤツが現れた時の事は?」 「それは覚えてる。僕も君も変身できないから海堂と……」 もう一人が戦った、と言いかけて、それが誰なのか思い出せず口ごもった。 確かにあの時、海堂の他にもう一人戦っていたのだ。 だが、それは誰だ? 全く思い出せない。 もし侑斗の言う通りならば、それが香川だ。 だが自分の記憶から香川の記憶がなくなってしまい、誰かがいたという記憶だけが残った。 そう考えれば説明はつく。 「じゃあ俺は本当に……」 そうなると香川に攻撃したあの時、彼らからすれば味方と思っていた人物がいきなり襲いかかってきた事になる。 裏切られたと思って当然だ。いや、裏切り以外の何物でもあるまい。 「そんな……」 頭を殴られたような衝撃を感じてひざが崩れた。 裏切ったのは彼ではなく自分の方だったのだ。 そんな木場の肩を侑斗がつかんだ。 「木場さんは悪くないんです。俺の、俺のせいで……」 侑斗が慰めの言葉をかけてくれるが、木場は自分を責めていた。 「俺はどうしたらいいんだ……」 「さっきの放送じゃ香川って名前はなかったな。って事はまだ生きてるんだろう」 そこで葦原が口を開いた。 「じゃあ木場、その香川って人を探すのに手を貸してやれ。俺も協力する」 「葦原さん……」 葦原を見上げる木場に、侑斗も、 「俺からもお願いします、木場さん。香川さんが見つかったら、俺からちゃんと説明しますから」 「二人とも……」 二人の言葉に思わず涙が溢れてきてしまった。 この二人は、とても優しい人達だ。オルフェノクである自分をさえ受け入れてくれた。 やはり人間にもいい人はいる。それはとても嬉しい事だと感じた。 「ありがとう……ありがとう……」 木場は侑斗と葦原に何度も頭を下げた。 ◇ ◆ ◇ 泣いている木場を見ながら、 「えーと……」 と、歌舞鬼は頬をかきながらつぶやいた。 すっかり話に置いていかれてしまってどうしたものかと思っていたのだ。 やがて木場は顔を上げ、京介に謝った。 「桐矢さん、でしたっけ。すいませんでした、桜井君と間違えてしまって」 「あ……ああ。まあ、こんなに似ていちゃあしょうがないよな」 少々複雑な表情の京介。と、そこで木場が再び口を開いた。 「あ、そうだ。ちょっと聞きたいんですけど」 「何?」 「さっき君が持ってたベルトの事なんですけど……」 「え……」 表情が引きつる京介。 「あれは俺が仲間の海堂ってヤツに預けたものなんです。海堂に会ったんじゃないんですか?」 京介は困った顔でこちらを見た。しょうがないので助け舟を出す。 「ああ、会った」 歌舞鬼は、道中で北崎に会った事。 彼が同道を申し入れてきたので受け入れた直後、海堂が北崎に戦いを挑んだ事。 自分は一度海堂とやりあった事があったため様子見をした事。 仲間の三田村が脅迫同然に北崎に加勢させられた事。 さらに北崎が海堂の持っていたファイズギアを京介に使わせようとしたが、彼はそれを持って逃げた事。 そして自分は追い詰められた海堂を助けて逃げた事などを話した。 「それで海堂は……?」 「…………」 罪悪感が胸にちくりと刺さる。 「一応逃げたんだがな、北崎にやられた傷が深かったらしい。そのまま死んじまったよ」 さすがに自分がとどめを刺したとは言えなかった。 優勝を狙う覚悟の印のつもりで殺したはずだったが、人数的に言って今戦うのは不利だろうし、何よりこの場の全員を倒す気にはなれなかった。 特に木場と侑斗は何やら誤解を解いた直後で感動的な場面を迎えたばかりだ。 (ダメだなあ、俺ぁよ) 「そうだったんですか……海堂を助けてくれてありがとうございました」 悲しそうな表情を浮かべながら歌舞鬼に頭を下げる木場。胸の痛みが強まってきた。 「……なあ、仮面ライダーって知ってるか?」 「え? そういえば海堂や赤いヤツがそんな事言ってたような……」 首を傾げる木場に、空を見上げながら続ける。 「海堂は言ってたぜ……仮面ライダーは困ってる奴を助けて、どんな時でも助けを求めてる奴の所へ行くんだって……そしてあいつは自分も仮面ライダーになるって、そう言って北崎に挑んでいった」 「海堂が……」 「あいつの事で俺が伝えるべきなのはこれだけだ」 そう言って締めくくった。 それをどう受け止めるかは彼ら次第だ。 だが恐らく、彼と同じ道を歩もうとするだろう。 目を見ていれば、この三人はそういうタイプだとわかる。 彼らがその道を進み――そしてぶつかるべき壁を越えられなかった時、自分が彼らに引導を渡そう。 困難な道である事は自分が一番良く知っている。 だが、だからこそ彼らに期待してしまう。 自分が進めなかった道を、彼らは進めるだろうか。 できれば最後まで貫き通して欲しいとさえ思う。 (やっぱ甘いなぁ、俺は) 「なあ、頼んでもいいか?」 木場の肩に手を置き、京介を親指で差しながら、 「こいつ、お前たちと一緒に連れてってやってくれ」 「え!?」 京介が驚いた声を上げる。 「歌舞鬼さん、一緒に来てくれないんですか!?」 「悪いな、京介。俺、ちょっと一人でやりたい事があってな」 その方がいい。 このままでは京介は自分が殺してあげなければより苦しむ事になる。 それに自分はやはり優勝を狙う。そのためには戦わねばならないが京介も一緒だとはっきり言って足手まといだ。 それよりは多数の仲間と一緒にいた方が安全だろう。 荷物を押しつける形になるが、恐らく彼らは受け入れるだろう。 「心配すんな。縁があったらまた会えるだろうからよ」 言いながらさっさとバイクを起こし、京介の分の荷物を彼に投げ渡す。 「それじゃ、すまねえが京介の事、頼むぜ。じゃあな」 大声で呼び止める京介を後に、歌舞鬼は北へ走って行った。 やがて声は聞こえなくなり、バイクの音しか聞こえなくなる。 また一人になった。 だがアマゾンと海堂は死に、京介は木場達に預けた。 三田村は心配といえば心配だが、北崎の性格からしてすぐには殺さないかもしれない。三田村には酷な環境だろうが。 それでも、気になるものはあらかたカタはつけた。そろそろ自分の事を考えていいだろう。 (俺はどこへ行くか……) とにかく、会った者を倒す。それしかないだろう。 (よっしゃ……やったるか) 改めて方針を決め、歌舞鬼はスピードを上げた。 ◇ ◆ ◇ 「歌舞鬼さん……」 歌舞鬼が走り去っていったのを呆然と見送る京介。 木場はそれになんと声をかけていいのかわからなかったが、やがて葦原が話しかける。 「お前はどうする?」 「え……ど、どうって……」 京介は浮き足立っている。と、侑斗がおずおずと口を開いた。 「あのさ……よければ、これからはこの四人で行動しないか? やっぱり仲間は多いほうが頼もしいし……」 その言葉に、他の三人は顔を見合わせた。そして口々に答える。 「俺はいいぜ」 「俺もそうしたい」 笑いかけながら言う葦原と木場。京介も上目遣いになりながら、 「い、いいのか……?」 その言葉に、侑斗は顔を輝かせた。 「よし……それじゃ、これから俺達は仲間だ!」 そう言って、侑斗は京介に手を差し伸べた。 「改めて、俺は桜井侑斗」 「き、桐矢京介」 やや固い笑顔を浮かべながら握手を交わす侑斗と京介。 そして木場や葦原とも順に握手を交わしていった。 木場は仲間が増える事を大変幸福な事だと実感していた。 結花や海堂の事を思い出す。 海堂はもういないが、結花はきっとまだ生きている。なんとか巡り会って一緒に脱出したい。 そして海堂が死ぬ時まで貫いた意志――仮面ライダー。 自分にその資格があるかどうかはわからない。 だが自分の知る人物に、最もそれに近いだろう者がいる。 巧は確かに、人を助けるためだけにファイズとして戦っていた。 きっと彼こそ仮面ライダーと呼べる人物だろう。 そして、ここにいる侑斗や葦原。彼らも人を助ける強さを持つ人たちだ。 自分も彼らのようになりたいと思う。 こんな殺し合いの最中に放り込まれたからこそ、仮面ライダーの真価が問われているのだろう。 ならば自分は海堂の遺志を継ぎ、助けを求める人々を見捨てず戦う。 自分は、海堂が信じた仮面ライダーの正義を信じる。 (海堂……俺はきっと仮面ライダーになる。見ていてくれ) 木場はまるで生まれ変わったような気分で、晴れやかな笑顔で仲間達と握手を交わしていた。 ◇ ◆ ◇ 丘を北へ移動していると、急に澤田がしゃがみこんだ。 「どうしたの?」 真魚もしゃがまされた。 澤田は辺りを見回すと、崩れた家の跡を指差し、 「こっちへ」 と、その家の中に一緒に入った。 家の中、という言い方は適当ではあるまい。 壁は一面しか残っておらず、その壁の陰に隠れているだけだ。 壁から様子を伺う澤田の肩越しに外を見ると、男が二人歩いていた。 どちらも知らない顔だ。彼らは林の中へ入っていった。 彼らの姿が消えて家の中だった所を見ると、埃まみれの本が落ちていた。題名がかろうじて読めた。 「これ……学術書?」 彼女の扶養者である叔父は大学教授を務めている。 そのため家で学術書の類はだいぶ見慣れている。さすがに読んだ事はなかったが。 題名からすると植物学関連のもののようだった。 なんでこんな廃墟にこんな本があるのだろう。 そう思い、本の表紙に指を触れた瞬間、頭の中にビジョンが見えた。 「あっ――」 自分の視界は何か透明なプラスチックか何か越しになっていた。 視界が動き、自分は――正確には自分が追体験している記憶の持ち主は、小さいビニールハウスの中で防護服に身を包んだ状態なのだと気づいた。 ビニールハウスの中には、防護服を着た人間がさらに二人いた。手に何か器具を持っている。 その中で栽培されている植物に自分の顔が近づいた。 それは青いバラだった。 そこで場面が変わり、今度は防護服を着てはいたが顔の部分は晒していた。 防護服の手袋をした手で青いバラを一輪持って、女性にそれを見せた。歳は30歳前後くらいか。 女性はうれしそうに花を受け取り、青い花弁に指を触れた。 すると女性に異変が起こった。 指がボロボロと崩れていったのだ。 それは手首、腕、胸、顔、ついには全身に達し―― 女性は灰になって崩れ落ちた。 そこでビジョンは終わった。 「真魚ちゃん?」 澤田の声で我に返る。いつの間にかかなり汗をかいていた。服がべっとりして気持ち悪い。 「あ、うん、なんでもないよ。それより澤田くん、これから――」 ごまかそうと話をそらそうとした時。 ガッシャーン! 何か音が聞こえた。 澤田と一緒に壁から少し顔をのぞかせるが何もない。 方向は道路の方だろう。 「ちょっと様子を見てくる。真魚ちゃんは絶対ここから動いちゃいけないよ。いいね?」 「う、うん。気をつけてね」 澤田は自分のデイパックを取り、先ほど二人組が入っていった林から遠ざかるように走っていった。 林の中から姿を見られないように迂回して道路へ出るつもりだろう。 「…………」 澤田の姿が見えなくなり、真魚は再び恐る恐る学術書に触れた。 今度は何も見えなかった。 (何だったんだろう……今の) ◇ ◆ ◇ 動物園を出て丘を登る香川とヒビキ。 「ここ、ピクニックとかしたら楽しいだろうな」 道々、ヒビキは自分が所属する猛士という組織の事を話してくれた。 表向きはオリエンテーリングのNPOだが魔化魍なる怪物と戦うために鬼という戦士を集めた組織で、ヒビキもそこで鬼としての経験を活かしアウトドア活動のインストラクターのような仕事をしているらしい。 それなら仕事柄そういう感想を持つのはまあ当然だろう。状況が状況でなければ。 だが見様によっては豪胆とも言えるし、体の動きを見ても確かに素人ではない。 引いたのは多分当たりだ、と香川は思った。 やがて見えてきた林の中へ、ヒビキを伴って入っていった。 「あそこです」 指差す先に咲いている青いバラを見て、ヒビキはおお、と声を漏らした。 「へ~、本当に青だ。キレイだな~」 ヒビキはしばらくバラを見ながら周囲を回っていた。 「よし、この事をみんなに知らせないとな」 嬉しそうに手を打ち合わせるヒビキ。 「でも、知らせるだけでいいのかな? 持って行った方がいいのかも」 「しかし、迂闊に取ってしまうとしおれてしまいますからね。これ一本しかないですし、まず知らせてから考えた方がいいでしょう」 話し合っていると。 ガッシャーン! 「うん?」 はっきり聞こえた大きな音に二人とも顔を上げる。道路の方だ。 「なんだろ? ちょっと見てきますね」 「待って下さい。誰かいるかもしれません。殺し合いに乗っている者だったら……」 行こうとするヒビキを引き止める香川。 「大丈夫ですよ。いざとなったら逃げますから」 だがヒビキは林を出て道路へ向かっていった。 ◇ ◆ ◇ 「あいてて……」 道路に五体投地してうめく歌舞鬼。 「くそ~、もう金輪際スピードアップして曲がらねえからな……」 カーブをにらみつけながらうなだれる。 ケガは大したことないが、三回も連続で同じ事をやっていればいい加減悲しくもなる。 カラカラと虚しく回るタイヤを見たら、ため息がもれた。 「大丈夫ですか~?」 と、声がした。 声に聞き覚えがあるような、と思いながら上体を起こすと。 「……!」 歌舞鬼の心臓が一瞬、痛みを感じるほど収縮した。 男が一人、丘を駆け降りてきていた。その顔も声もよく知っている男が。 「ヒビキ……!」 自分を倒した鬼――ヒビキに間違いなかった。 出会ったら意趣返しをしようと考えていたが、こんな唐突に遭遇するとは。 本当に世の中は何が起こるかわからない。 「バイクで転んだんですか? 頭とか打っていません?」 駆け寄ってきたヒビキは歌舞鬼にケガの心配をしている。 「あ……ああ。心配にゃ及ばねえよ」 自分を落ち着かせようと、平常を装って答える。 言いながら、汗が頬を伝うのがわかった。 緊張と興奮によるものだろう。 息も荒く、胸も高鳴っていた。 「そうですか。よかった」 と言って、こちらを助け起こそうとする。 こいつらしいぜ、と内心思いながら起き上がる。 「まさかこんなトコでお前に会えるとは思わなかったぜ、ヒビキ」 にらみつけ、しかし口元は笑みを浮かべながら言うと、ヒビキは目を丸くした。 「え? 前に会った事あります?」 「おい、まさか俺を忘れたとは言わせねえぞ」 ヒビキは首を傾げ、しばらく考えてから、 「いえ、俺は覚えが……あ、もしかして猛士の方ですか?」 「タケシ? 俺の名前はタケシじゃなくてよ……」 答えながら取り出した変身音叉を見せると、ヒビキは驚いたようだった。 「それは……?」 足を上げ、靴の裏で音叉を鳴らし、額の前にかざす。 「歌舞鬼……」 歌舞鬼の周囲を花びらが舞い、ヒビキは思わず後ずさる。 そして花びらが消えると、歌舞鬼が赤と緑の鬼へと姿を変えていた。 「ハァ!」 それこそ歌舞伎のように首を回し、手を広げる。 「鬼!?」 驚くヒビキを尻目に、変身音叉を音叉剣へ変化させる。 「さぁて、俺のリベンジを受けてもらうぜぇ!」 108 男二人、虫二匹――――はぐれ虫 投下順 109 Traffics(中編) 105 病い風、昏い道(前編) 時系列順 093 時の波 桜井侑斗 096 顔 葦原涼 096 顔 木場勇治 093 時の波 澤田亜希 093 時の波 風谷真魚 096 顔 歌舞鬼 096 顔 桐矢京介 102 この言葉を知っている(前編) 日高仁志 102 この言葉を知っている(前編) 手塚海之 107 香川教授の事件簿 香川英行 098 金色の戦士(前編) 北崎
https://w.atwiki.jp/mmmmnnnn/pages/457.html
第四十二話・前編 「友(とも)と、親友(なかま)と、旧友(ライバル)と」 ―放課後遅く、夕暮れ時。いよいよ大詰めとなりつつある選挙活動の打ち合わせを終え、ハクとボブは帰路につこうとしていた… ハク「選挙も大詰め、キメに行かないとな…でも、祭壇に連に、面倒事だらけだな」 ボブ「それに、麗の事だって…」 ハク「アイツは敵だったんだ。もう関係、無ぇよ…」 かつて信頼出来る仲間、親友だと思っていた男・レイ=ソーマ。しかし、彼は納得学園の過去の生徒であり綺羅祭壇の手先・相馬麗であった。 親友を信じたい気持ちと祭壇への敵がい心…ハクは二つの葛藤の中、悩んでいた。 二人は互いに何を言うでもなく、無言で歩き続けた。しかし、次の瞬間、 ハク「!!危ない!」 ドンッ ボ「ってて…おいハク、いきなり何すん…!?」 ボブが目にしたのは、路上についた大きな焦げ目。明らかに事故や自然現象などによるものではなかった。 ?「ほう…流石にそこまでは腑抜けてはいなかったようだな、ハクよ」 ハク「天(ティエン)…テメェかよ…」 ハクが睨めつける先に悠然と立っていたのは後ろで縛った金髪に白い制服、左手にはショートサーベルを構えた青年であった。 黄=天(ファン=ティエン)―人馬学園乗馬部「人馬同盟」盟主― ボ「は、ハク…アイツ、知り合いなのか?」 ハク「まぁな。元同級生ってとこだ。 …で、『人馬盟主様』が結構な挨拶じゃないか。なんの用だ?」 黄「せっかく久しぶり旧友が会いに来たというのに、そっちこそ酷い態度じゃないか、ハク… おっと、そんなことより…聞いたぞ、選挙に立候補したんだとな」 ハク「なんで知ってやがる?」 黄「我が人馬同盟の情報網を甘く見るなよ?まぁ、そうでなくとも有名な話さ。あの石覇を倒したそうだしな…無論、学園を統べる支配者を目指すならその程度出来て当然の」 ハク「そんな話はどうでもいい。本題はなんだ?」 黄「……、では本題に移そう。ハク、お前が出馬表明をした事を知ってから、我々はお前の動向をマークした。あの納得学園を統べるに相応しい働きしているか、そしてこの人馬盟主・黄=天の旧友として恥ずかしくない活躍を示しているかを! …だがどうしたことだ、配下を増やすどころかそこにいる『お友達』と仲間割れをし、やっと仲直りしたかと思えば今度はもう一人と仲違い…もう見ていられん、お前には学園を制す資格も我が友たる資格も無い。よって、」 「消えろ」 ズザァッ! 言葉を切ると共に黄=天はサーベルを構え、一瞬でハクの懐に突きを繰り出す。 それを紙一重で後退してかわしたハクは、 ハク「ボブ!」 ボ「おう!」 ボブが放った一対の模造刀を手に、かつての旧友、そして今自身の命を狙う人馬盟主・黄=天と対峙した。
https://w.atwiki.jp/suproy/pages/216.html
再開(前編) 彼、チーフと名乗る堅物な男は道路沿い草原地帯に立っていた。 傍らには二つの墓と大きめの一本の木、そしてその木には奇妙な巨大ディスクが立てかけられてあった。 (かなりの時間をロスしてしまったな。追いつけるか?) そう思いをよぎらせ、数時間前の惨劇を思い出す。 そう、木原マサキと名乗ったその男が年端もいかぬ少女を惨殺したことを―― しかしその時自分は不覚にも気絶していた。 そこまで考えが進むと自然と操縦桿を握る手に力が入る。 彼女を守るため力を尽くした仲間、ガルドにどう顔向けが出来ようか。 (おちつけ、焦るわけにはいかん) そう彼は自分をなだめた、焦りからむやみに突出することは死に繋がる、それでは元も子もない。 それは彼が軍人として戦場でつちかってきた真理であり、そしてそれが追跡を遅らせる要因となっていた。 マサキが去りしばらくした頃チーフはグランゾンに乗り込みすぐさま追跡を開始しようとした。 しかしその操縦系統はあまりにも自分の愛機であったテムジンと異なりすぎていたのだ。 というよりもVRの操作が簡単すぎたのかもしれない―― チーフは優秀な軍人でありパイロットであったが、すぐには使いこなせそうにはなかった。 追跡しながら徐々に慣れさせていくことも考えられたが、 攻撃的な相手と遭遇する可能性もあり、またよしんば追跡に成功しても現状でマサキを倒すことは難しいと判断したのだ。 焦って返り討ちにあっては洒落にならない、必ず倒すと誓ったからには確実性が欲しかった。 しばらくあまり現地からは離れずに操作練習を行うしかなかった。 また、マサキによって殺された二人にせめて墓ぐらいは作ってやりたかった。 戦場で、しかもこんな何時自分が殺されるかもわからない所でかたくなに殺し合いを拒否した少女、 死んだ後まで利用され弄ばれた名前すらわからない少女。 本来ならば戦場にいるのは似つかない無力な存在。 そんな彼女等にせめて安らげそうな場所を与えてやりたかった。 街から東に外れた草原地帯、そこが彼女達の眠る場所、まるでその木が緑の墓標のような―― (とにかく焦って全てを終らせるわけにはいかん。) 全ての操作を習得し彼女達の埋葬を終えたチーフは再度思い、そして状況を推測する。 (おそらく奴は首輪を解析するつもりなのだろう。 そしてそれが出来るのは大掛かりな施設のありそうなG-6に限られる――いやE-1も怪しいか。 ならばこのまま東に進み、その後南へ降りればいい。) 実際のところは東に向かうのは気が重かった、 再び襲われる可能性もあり単にマサキを追うのであれば避けて通るのが確実と思われた。 だがガルドの消息を確認し生きているようならばコトのあらましを説明しなければならなかった。 (ガルド――、自分が生かされていたことと、 プレシアにマサキに対する警戒が無かったらしいことからマサキに殺されたということは無さそうだ、 ならばあの水中で待ち伏せていた機体と戦ったのだろう、生きていてくれれば良いが――) そこまで考えをまとめた所でふと視線を巨大ディスクに向ける。 それはVRの存在そのものといってもよい物であった。 さっき二人の遺体を運ぶため病院へ戻った際、奇跡的に無事であったのをテムジンの残骸から発見、回収した物である。 このディスクの名前はVディスクと呼ばれる。 一般にVRの背についているVコンバーターと呼ばれる出力機に取り付けることによって リバースコンバートと呼ばれる技術でディスク内に書き込まれたデータ(この場合テムジン)を実体化することが出来るのである。 つまり新たなVコンバーターさえあれば、再びテムジンを復活させることが出来るということになる。 (可能性は低いがな……) そう思いながら、持ち運ぶにはちょいと不便な物体をわざわざ運び出し、 丁寧にも傷つかないよう立てかけてある己自身に苦笑するのであった。 (まだまだ甘いな。) そう思いながらグランゾンに乗り込もうとしたとき、彼はさほど離れていない場所で爆発が起こるのを確認した。 それはややあって立て続けに起こり、こちらに近づいてくる。 「何だと!?」 平安を願って埋葬したはずのその地は、新たな戦場の場へと移り変わろうとしていた。 【時刻:二日目:15時05分】 「シロッコさん……前方から何か近づいてきます……」 「うむ、こちらでも確認した。」 そう返答しながらシロッコはキラを、 ゼオライマーに支えられるようにして立っているゴッドガンダムをみた。 声は弱々しいが多少は落ち着いて見える。 しかし―― (たった1時間前のコトだ、どうなるかわからんな……) そう、先ほどの戦闘後ラトゥーニをシロッコが埋葬してから1時間弱しかたっていなかった。 あの戦いが終わった後シロッコは二人にしばらく休息をとらせ、できるだけ早く移動するつもりでいた。 先ほどの連中、特にリョウト=ヒカワが万が一戻ってきた場合、ゼオラを抑えることが困難になるだろうと思ったからである。 事実あの戦闘後のゼオラはこれまで以上に危険度が増していた。 また、別の相手だったとしても今の状況で接触することは好ましくなかった。 戦うには戦力に不安が残るし、仲間に引き込もうにも他の二人がいては相手に好印象を持たせるのは難しい。 だがしかし、現在シロッコはリョウトが逃げ去った東へと進んでいる。 その理由は今目前のモニターに映し出されているグランゾンの存在であった。 二人を休ませている間に付近の偵察を行った時、シロッコはそれを見つけた。 ミノフスキー濃度が濃かったため相手には気づかれなかったようだが―― その相手は壊れた(おそらく戦闘があったと思われる)病院でなにかをコクピットへと運んでいるようだった。 普通の相手であればおそらくその場をスグに離れたであろう、 だがしかしグランゾンをみた瞬間シロッコはそれが只者ではないことを直感的に確信した。 設計者としての先見でもあったが、なによりもニュータイプとしての勘がシロッコにそう告げていた。 (あれを得ることさえ出来れば!!) そう感じ取ったシロッコはパイロットのみをねらえる隙を探った。 だが不運にもその相手はすでに作業を終えたらしく すぐにコクピットに乗り込むと何か円盤のようなものを手にし飛び立ってしまった。 しかも最悪なことに東に、である。 だが―― たしかにゼオラをつれていくことはかなりのリスクであったが、それでもグランゾンに対する魅力には及ばなかった。 加えて現状の戦力では相手に発見されない位置から攻撃を加えられそうなゼオライマー抜きというのは厳しい物がある。 しかしそれでもなかなか事はうまく運ばなかった。 ミノフスキー粒子が濃いおかげでレーダーはそこまで脅威ではなかったが、 そのパイロットが降り立ったところはほとんど平地であり気づかれないよう接近するのが難しく、 また相手がグランゾンからほとんど離れなかったためである。 (あえて、この場所で待機しているというのか…?なかなかのパイロットのようだな……) シロッコはその相手に対し憎々しげに呟いた。 すでに何度も、攻撃をしようかというゼオラを制している。 じわじわと盆地に身を隠したまま近づいてはいたが、今強襲をかけることでうまくいく可能性は、 まだ五分五分といった所だ、下手を打って失敗すればこちらがやられることにもなりえる…… ゼオライマーは大丈夫であろう、先ほどのエネルギー消費もわずか1時間でかなり回復しているようだ、 自分も撤退ぐらいはなんとかなるだろう、だが疲弊したキラはほぼ確実にやられる。 それではまずい、まだ首輪を解析している間の護衛も必要だ。 加えて失敗した場合グランゾンが手に入る可能性は限りなく低くなる。 「キラ君、やはり君は町で休んでいたほうがいい、今からでも戻りたまえ。」 シロッコがそう声をかける。 「いえ…僕はまだ…大丈夫です……ゼオラを……守らなきゃ…」 キラがうつろな眼でそう答える。 「だがしかし、今の状態ではかえってゼオラに心配をかけてしまうだろう? これは何も君だけのために言っている事でもないのだよ。」 そうできるだけ諭すように声をかける。 「でも…僕は……」 「大丈夫ですよ、シロッコさん。キラはみんなを助けてくれるんだから…ね?」 かわりにそう答えたゼオラに対してキラはどこか焦点の合わない笑みを浮かべる。 (ゼオラを抑えることが出来るかと思ってつれてきたが……これでは逆だったな……) そう思ったがもはや後の祭りである。 (早く決めねばならんか。) 再度、目標を見つめた眼にやや焦りの色が浮かぶ。 だが相手はまだ隙を見せる様子はない。 そうこうしているうちに別のところに変化があった。 目標よりさらに前方で爆発が起こったのだ、それは続けていくつか起こりだんだんと近づいてくる 「シロッコさん……前方から何か近づいてきます……」 「うむ、こちらでも確認した。」 少し間の向けたようなキラの言葉に丁寧に返答を返すとシロッコは食い入るようにモニターを見つめる。 (まずい、奴はコクピットに乗り込むぞ……これでは無理か?ならば一か八か仕掛けるか?) だがシロッコがその答えを出す前にゼオライマーの右腕からあふれ出た光があたりを包み込んだ。 【時刻:二日目:15時05分】 「あんたも……あんたもあの女のようにアタシを笑うのねぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」 アスカは絶叫していた。 「馬鹿な……僕は…そんなことは…………君はリオをしっているのか!?」 対するリョウトはやや困惑気味である。 数分前リョウトは自機へと向かってきた機体と接触した。 危険をはらんではいたが、リオの情報を集めるためであった。 だがその名前を口にした途端このありさまである。 リョウトに理解できるよしはなかったが、アスカにとって彼の落ち着いた態度が気に障ったのであろう、 自分をみて去っていくようならば彼女の自尊心を満足させたであろうが―― 今の彼女には彼の態度は自分を見下しているように感じ取られたのだ。 「あんたなんかにぃぃ……笑われる筋合いはないのよぉぉぉぉぉ!!!」 「アタシが一番なんだからぁぁぁぁぁぁ!」 そう続けざまに言い放つと同時にファイブシューターがWガンダムに襲い掛かる、 いやこの場合ファイブというのはおかしいかもしれない。ダイモスは続けざまにそれを投げまくっていた。 「くっ!!」 間一髪、リョウトは自機を羽で覆いガードし、そのまま回避運動に移る。 すでにやや破損していた左翼をさらに傷つけることとなったが、とっさの反応としてはなかなかだ、 反撃にマシンキャノンで牽制し、距離をとろうとする。しかし―― 「そんなもの……きくもんですかぁぁ!!」 装甲にモノを言わせなおダイモスは突っ込んでくる。 バスターライフルを構えようとするが、ダイモスは回り込み、 懐へともぐりこんだ、こう接近していてはライフルを思うように使いにくい。 「くぅう!」(おされている……) かろうじてダイモスの拳をかわす。 「うをおおおおおお!!」 今度はバスターライフルを撃つ、狙いはてきとうだ。 相手は難なくかわし、それは道路を吹き飛ばした。だがその一瞬の隙に後退を試みる。 だがアスカはそれをやすやすとは許さない。天才と言われた彼女は目の前の機体の特性を見抜いていた。 離れて戦わない限りこの相手に遅れをとることはない、と またWガンダムが左翼を破損していることによる飛行能力の低下もダイモスを引き離せない要因となっていた。 リョウトは懸命に、距離をとろうと後退し続けたが相手は執拗に迫り続ける。 今度はダイモシャフトとビームサーベルが交差していた…… (なんてパワーだ!この機体……特機か!) 彼の脳裏に先ほどのゼオライマーがちらりと浮かぶ。 (だが、こいつはリオを知っている。このままやられるわけにはいかない……) 「君は……君はリオを知っているんだな?」 再度たずねる。 「うるっさいわねぇぇぇ!!」 「あんな女に仲間扱いされる言われはないのよぉぉぉ」 「何!?それはどういう――」 しかし最後まで言い終わらないうちに視界が光に覆われ、破壊音が響く。 次の瞬間リョウトは片腕に損傷をおったダイモスをまのあたりにした。 そしてレーダーにいくつかの反応が出ていたのに気が付いた。そのうち一ついや二つが向かってくる。 まさにそれはついさっき自分が思い浮かべたゼオライマー、それそのものであった。 再開(後編)へ
https://w.atwiki.jp/onlinesilkroad/pages/109.html
中国シナリオ#2-女性キャラクター(前編の前編) 弥生人みたいな髪型の彼女とカラスマスクの彼女。 弥生人の親の名前は漢字適当です。夫婦別姓なので注意。 カラスマスクですが、アラブの人ぽいのでカタカナ表記にしてます。 アイシャの話を聞いているとSROのアラブ像が浮き上がってきますね。 敦煌NPCの話を聞くと召喚士がいるようですが、それ以外にもプロモーションムービーに出てくる ような格闘系の暗殺者とか出てきそうです。そして交易品は絨毯とか。 呂晶(ルー・ジン) 韓国版名:林雪君 職業:冒険家 年齢:20 中原の成都で装身具店を経営している林礼ではその大きな都市、成都でも誰でも知られているほどの大金持ちであった。 先祖代々受け継ぎながら経営している林礼家の装身具店はその品質と美しさが優れており、皇室御用達でもあるほどの名声があった。 林礼も父から装身具店を受け継いで店を経営しており、優れた商売実力を持っていて、妻である浦水安は装身具の材料になる品物を選ぶ眼力を持っていたので、林礼家の装身具店はより一層繁栄するようになった。 そんな林礼には雪君という娘が一人いた。幼いころから不思議な物を集めることを趣味にしている彼女は、材料を選ぶ母についていって市場を歩き回ることがとても好きであった。 同い年の友達と一緒に遊ぶことで時を過ごす普通の子供とは違い、雪君は母に付きまとって不思議だったり美しいものを勝った後、それを部屋に並べてままごとをすることに時を費やしていた。 こうして主に一人で時を過ごした雪君であったが、父の血を受け継いだのか人と簡単に親しくなる力も持っており、それなりに親しい人も多かったので彼女の親はそんな雪君を心配はしていなかった。 月日が経って雪君がいつのまにか18になった年、浦水安は装身具店を出入りする商人から東国の新羅で新しい材料が手に入るという話を聞く。 結婚してからというものの遠い場所へ出かけられなかった浦水安は、この機会に新羅へと旅に出ようと心に決め、林礼に新羅へ行くことを承諾するよう頼んだ。 しかしあまりにも遠い道のりであったので心配になった林礼は承諾することをためらい、躊躇する夫の姿を息苦しく思った浦水安はあらゆる手段を動員して夫を説得しようとした。 このような夫婦の揉め事を偶然盗み聞きしてた林君は、母の新羅に行きたいという話を聞くと自分もついていこうと心に決め、その日から母の説得を気づかれないように影から支援するようになった。 そんな雪君の努力のおかげか結局林礼は浦水安に新羅行きを承諾し、浦水安が新羅へ行く準備をしているときに、雪水は親に知られずに母へついていく方法を考えた。 一ヶ月あまりかかった準備が終わり、浦水安は新羅へと向けて商団を導いて出発した。そして雪君は商団の荷車に密かに隠れ、裏水安について新羅へ向かうことになった。 数日間隠れていた雪君は空腹に耐えかねて食べ物を探したときに働いていた船員にばれたが、もう陸地を遠くはなれ沖に出てしまった後であったので、浦水安は仕方なく雪君を連れて新羅へと行くことにした。 広い海を渡り、やっと到着した新羅で、浦水安と雪君は質のいい材料と不思議なものを思い切り見物し、商売をしながら楽しいときを過ごし、また中国へと戻る時間をとても惜しんだ。 中国へと戻ってきた雪君は父から大目玉を食らったが、新羅での経験は貴重なものであったので、ひどい目にあってもいい気分であった。 その後雪君は一年間毎日のように新羅での記憶を振り返り、もっと広い世間に対する想像で楽しいときを過ごした。 そして雪君は長年の悩みの末、自分が往けなかった新しい世間を尋ねることを決心した。 それが両親が絶対に承諾してくれないことだと分かっていたが、自分の人生は自分が作るべきものだと思っていた雪君は旅へ出る準備を始めた。 世間で生きていく方法や外世に対する数多くの情報と資料を集め、一年余りの間勉強をした雪君は、新しい世間を経験するには一度長安へ向かわなければならないということを知り、自分を長安へと送ってくれる商団を探して、時と場所を秘密裏に約束した。 いよいよそのときになり、両親に内緒で家を出た雪君は、自分を長安へと送ってくれる商団と共に成都を去って長安へと向かった。このようにして彼女の新しい世の中を経験するための旅行が始まった。 阿伊沙(アイシャ) 韓国版名:阿伊沙 職業:暗殺者 年齢:22 アイシャには母がいなかった。しかし、彼女の兄弟を生んで死んでしまった母の代わりに、彼女には優しい父と善良な弟がいたので幸せであった。 アイシャの父はアラブ人の都市バグダッドにて絨毯を自分で織って売っていた商人であった。 たとえ多くの金を儲けることはできなかったが、三人の家族が暮らすには問題が無かったので、アイシャの家族は通常のほかの家族と同じように平凡な生活をしていた。 しかし世間は誰一人として平凡な生活を認めず、アイシャの家族も恵まれなかった者たちの一つになってしまう。 ある日黒服に黒い覆面の一団の男達がアイシャの父の店に静かに入り、いきなり刀を抜き、アイシャの父の作った絨毯のために自分の親分の息子が死んだので子供の中の一人の命を親分へ差し出せと脅した。 元々どこか足りなかった親分の息子は、新しく買ってきた毛布を見て悪戯心を起こし、毛布を持って遊んだまま下敷きになってしまい、誰にも気づかれないまま窒息死してしまったということであった。 たとえ馬鹿だったとしても子供に対する愛情を格別持っていたその黒ずくめ男の親分は、狂ったように激怒し、親分の怒りを収めるために部下が直接アイシャの父を尋ねて脅迫することになったのだ。 アイシャの父はあまりにもあっけなかったが、刀を突きつけて脅す黒ずくめ男の姿に、仕方なく自分の子供を一人差し出すことを約束した。 自分が死ねば二人の子供がどうなるかわからなかったが、家族全員が生き残る最善策は子供を差し出すしかないと思ったのだ。そして、2番目の子供はあまりにも幼かったので結局アイシャが差し出されることになった。 こうしてアイシャは黒服の人々に連れて行かれ、言うことを良く聞けば大金を渡すが、もしも逃げ出したりしたら家族全員殺すと脅迫されたので、10歳のアイシャは涙一つ流さず家族と別れた。 アイシャが連れて行かれた場所は、バグダッドを出て都市を少しはなれたところにある小さな洞窟であった。 入り口は大人一人がやっと入るぐらいの小ささだったが、中に入っていくととても広い場所へ出、洞窟の中とは信じられないほどの大きな村があった。 そこは暗殺者を養成する村であり、アイシャの父が作った絨毯の下敷きになって死んだ馬鹿者の父が治めている場所でもあった。 その日からアイシャは家族の命のために熱心に殺人技術を学び、数年後彼女は暗殺者として単独任務を遂行できるほどの実力になった。 いよいよアイシャは初めての任務を遂行する日になった。いつも人形や品物を相手に訓練していた彼女に、その日は初めて生きているものを殺す演習を与えられたが、その相手は今まで彼女が丹念に育ててきた犬であった。 ここへつれてこられて暗殺者になる教育を受ける彼女に、集団はかわいい子犬を一匹与えて育てよといった。突然つれてこられた暗殺者集団で頼るもの一つ無かったアイシャにとってその子犬は唯一の情を与えられる対象であり、自分の命よりも大切な家族であった。 その犬を殺さなければならないという現実にアイシャは吐き気を感じながらも自分の家族のためにただ一度の攻撃で苦痛無しに殺し、その後の任務のために洞窟を出た。 相手はテヘランとバグダッドを往復してさまざまな品物を売買する年老いた商人であった。 その人が何をやらかしてどうして死ぬべきなのかは知らなかったが、アイシャはただ命令に従い、人の目の着かない路地でその商人を待ち、商人が自分の横を通り過ぎるときに短刀を心臓に差した後狂ったように逃亡を図った記憶だけが残っていた。 アイシャが気づいた場所は自分の実家であった。初任務成功時に組織員は自分の家族との面会の機会を組むということを知っていたアイシャは、本能的に自分の家へ向かって走り、家の前で気を失ってしまっていたのだ。 彼女が目を覚ますと家族が集まってきて、彼らは何の言葉も言えないままお互い抱き合ってこんこんと泣いてばかりいた。そしてしばらくして父は全ての準備を整えておいたのでアイシャに一緒に逃げようといった。 しかしアイシャは自分に見張りがついていることに気づいていたので、家族に注意をしたあと、1週間後に実家にまた戻るのでそのときに逃げ出そうと言って暗殺者の村へと帰った。 一週間後また任務を引き受けたアイシャは、任務を遂行するために洞窟を出た。そして任務を遂行しに行く振りをして彼女はバグダッドの外郭で自分の見張りを落とし穴に落として家へと駆けつけた。 また家族と一緒に住めるという嬉しさに駆けつけたアイシャであったが、実家には家族の姿は影も形も無かった。 何が起こったのか家族がどこへ行ったのか分からなかったアイシャは慌てたが、それでもしばらく後にやってくる追っ手の気配を感じて逃亡を図った。 追っ手は4人ほどいるようだった。早くて情け容赦の無い追っ手はアイシャを追いかけながら自分の行く道を阻む人々の命をどんどんと奪ってしまい、罪の無い人々が自分のために死んでいく音を聞くのは辛かったが、それでも精鋭の追っ手と戦うこともできなかった。 なんとかバグダッドを抜け出したアイシャはどこへ行くべきか分からなかった。 家族が行方不明になった今彼女の行く場所はどこにも無かった。しかし死にたくも無かったのでアイシャは荒地へと向けて駆けつけ、追っ手も彼女を追いかけてきた。 村ではあらゆる建物や物を利用して脱出できたアイシャであったが、荒地では彼女が利用できるものは何も無かった。砂と乾いた土だけではアイシャは何もできず、追っ手達はあっという間に彼女に追いつき暗器を飛ばし始めた。 腕や足に傷ができ、その傷から流れ出る血をとめることもできずに死に物狂いで逃げたアイシャはそのまま座り込みそうになった。 彼女の進む方向には巨大な砂嵐が吹き付けており、逃げるのに必死でそれに気づかなかったアイシャは急に現れた砂嵐に自分はこれで死ぬんだと思った。 後ろからも追っ手がきておりどこへも行けなくなったアイシャはこのまま砂嵐の中へと逃げ込んだ。 追っ手達は彼女の姿が砂嵐によって消えることを見てこれ以上の追い討ちは無意味だと判断し、急いで引き返して自分達の巣窟へと帰った。 砂嵐の中へと入ってすぐにアイシャは空へ飛ばされ、そのまま気を失った。そして気づいたとき彼女は一キャラバンの馬車の中にいた。 偶然道を進んでいる途中砂漠の中で倒れているアイシャを見つけた一中国人キャラバンが彼女を拾い、いつ息を吹き返すかわからなかったのでキャラバンに乗せたまま旅を続けていたのであった。 彼女の気がついて数日後、そのキャラバンの先頭の者がアイシャにこれからどうするところなのかを聞いた。 行くあてがあるのならば近くの村で自分達と別れ、行く当てがないのであれば中国の長安まで一緒に来て今後の仕事を考えてみよというのであった。 そのときまで頭がぼうっとしていたアイシャはどうすればいいか分からなかったので彼らについていくことに決め、はるか遠くの中国へと向かって進むことになった。 長い旅のあとキャラバンは中国へと到着し、長安へ行く前に敦煌という村に一日泊まることになった。 そこでアイシャは偶然キャラバンの人々の話を盗み聞きすることになった。 それは彼女を奴隷として売って金儲けしようという話であった。 イスラム人の女奴隷は簡単には手に入らない商人なので大きな金を儲けることができるという意見にみんな賛成し、どうせ上部に報告さえしなければそのお金が全部自分達のものになるということで魅力的な話だったのだ。 そしてその日の夕刻アイシャはキャラバンから逃げ、こっそりとキャラバンを追跡して入ったシルクロードの中心の都会長安へと向かった。 そこで何が起こるかはわからなかったが彼女は長安で自分の人生を再開することを心に決め、運良く成功したならばいつか必ず暗殺者集団に復讐をすることを約束してシルクロードの中へと飛び込んでいった。