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正午過ぎの商店やオフィスが立ち並ぶ路地を、4人の少年――成人と呼んで差支えない体格の青年達が走り抜けている。 正確には3人が1人を追いかけているのだ。 追われている1人は最近、この近辺で幅を利かせるようになった外国人の若者である。 全体として彫りの深い顔立ちをしており、がっしりした顎や、一の字に結ばれた口元からはその勇猛さが窺える。 陽光をたっぷりと吸った金髪を後ろに撫でつけ、銀色のコートを羽織った姿はド派手としか言いようがないが、青年自身も負けてはいない。 日に日にストリートで存在感を増していく彼を、元々このあたりに屯していた連中は快く思わなかった。 今日、街で彼を見かけた3人組は特に予定を入れていなかったこともあり、急遽金髪の青年を襲撃することにしたのだ。 襲撃をかけられた金髪の青年は3人の姿を認めると、誘う様に今いる路地まで走り込んだ。 やがて高架下の駐車場で、青年は威圧的な格好の男達に取り囲まれる。退路を断たれても青年は微塵も揺るがない。余裕の表情で並んだ3つの顔を鼻で笑う。 それが3人の神経を逆撫でし、青年の背後をとっていたハリネズミめいた髪型の色白の男が殴りかかったのが、開戦の合図となった。 しかし状況は3人の想定外の方向に進んだ。二度と大きな顔が出来ないように痛めつけるつもりが、自分達とはあまりにも喧嘩の練度が違い過ぎた。 色白の奇襲を金髪の青年はあっさりと避ける。右腰に容赦ない前蹴りを浴びせられた色白は、身体をくの字に折って地に伏せた。 仲間があっさりと倒された一部始終を見ていた2人は瞬き1、2回程度の間、硬直してしまう。喧嘩の場においてこの隙が見逃される道理はない。 地を蹴る足音に残った2人は即座に反応したが、彼らの攻撃が金髪の青年を捉えることはなく、見る見るうちに追いつめられてしまう。 一人が落ち……そして今、最後の一人も地に沈んだ。 若者達が拳や蹴りの応酬を繰り広げている最中、その場に男が突然一人増えた。音もなく現れたその男は4人の喧嘩に加わることはせず、殴り合う彼らをじっと見ていた。 頭髪と瞳は燃えるように赤く、これなら街を行き交う群衆に紛れても瞬く間に見つかるだろう。 彼は厚い胸板の前で逞しい両腕を組んで等間隔で並ぶ柱の一つに身を預け、金髪の青年による蹂躙劇を観覧していた。 間も無く3人のチンピラを返り討ちにした金髪の青年は、左右の手で払う様に音を立てると肩で風を切って歩きはじめた。 表情の晴れない青年に赤毛の男は凭れていた壁から背中を外し、歩み寄って声を掛ける。赤毛の男はかなりの長身だったが青年も同じくらいに大柄だった。 「何をイラついてる」 受けた青年が足を止めて振り返った。 遠くを見据える猛禽のような眼差しが、赤毛の男に向けられる。 「これは戦争なんだろ!?それで人がやる気になってみれば、未だに一人も出てこない…いつまで俺を待たせる気だ!」 発酵しそうな程に溜まったフラストレーションを発散する様に腕を左右や上下に大きく振り、金髪の青年は不満の声を上げる。 出鱈目な軌道を描いていた腕が止まると、赤毛の眼前に人差し指が突き付けられた。 赤毛は退屈そうに溜息をつく。瞳だけが煌々と燃えている。 「大方、情報収集か陣地の構築に忙しいんだろうよ」 赤毛があらぬ方向に視線を向けると、腕を引っ込めた金髪の青年――サイファーは忌々しげに低く呟いた。 「チキン共が……!」 サイファーは大通りを目指して再び歩き始めた。足取りや表情には倦怠感と焦燥が滲んでいる。 記憶を取り戻した瞬間のサイファーは、興奮と期待、そして歓喜に包まれていた。 勝ち残った者が万能の願望器を掴みとる死亡遊戯。これこそ、けちの付いた自分の禊の場に相応しい。 聖杯を狙う敵を尽く蹴散らし、失った誇りと夢を取り戻す。そして復活を遂げた俺はもう一度スコールの前に立つ。完璧な筋書きだった。 さぁ敵はどこだと息巻いて探索に出れば、出会うのはどうでもいいチンピラばかり。 今のサイファーは、例えるならお預けを喰らっている犬だ。早くご馳走にありつきたくてしょうがない。 「…にしても記憶を取り戻した途端、学校ってやつに行かなくなるとはな」 思い出したように赤毛が口にする。 サイファーは記憶を取り戻してから、学校に全く寄り付かなくなった。 聖杯戦争の場において目立つ行動を取るのは自ら危機を呼び込む愚行でしかないが、接敵の機会が増えるのは赤毛のサーヴァントも望む所だったので、サイファーに改めさせる気はない。 「誰が好き好んで、あんな所いくか」 サイファーが退屈そうに返した。大通りを行き交う人々が視界に入る。 「よく今まで耐えてたもんだ。……教える方も、教えられる方も、ありゃ何がしたいんだ?」 サイファーにとって、「学校」の授業は苦痛極まりなかった。 招かれるまで受けてきた「ガーデン」の授業は退屈ではなかったし、良い刺激に満ちている。教員はともかく。 戦闘技能の訓練、知識の習熟。そして世界を股にかける傭兵「SeeD」として活動するうえで必要な知識の習得。 SeeDになれなかったとしても今後の人生の糧にはなるだろう。なれる実力は既に身につけているが。 しかし学校で受けた授業は平々凡々、毛ほども心が動かない。 自分の周りで机に向かっていたあいつら――NPCとか呼ばれる再現らしいが、大元になったものはいるはずだ。 連中は学校から巣立った後で何になるつもりなんだ。街を歩きながらそんな事ばかり考えていた。 「さぁな。これだけ動いたんだ、…すぐにウンザリするほど敵が来るぞ」 赤毛の視線が油断なく周囲に走る。ややあってサイファーの隣を歩く赤毛は静かに霊体化した。 「望むところだ」 酔った様な口調でサイファーは言った。たとえ雑魚相手でも戦うのは楽しい。聖杯も、魔女も、アイツも―俺の夢は終わらない―通り過ぎてみせる。 「なぁ、ヒート」と不敵に笑うと、脳裏に愉快そうな吐息が聞こえた。実体化していたなら、ヒートと呼ばれた赤毛の青年も口の端を上げていることだろう。 歩調を緩めるとサイファーは大きく息を吸い込み、来たる戦いの予感に胸を膨らませる。 そしてアスファルトをぐっと踏み込むと、サイファーは人の列が行き来する中心街の一際高いビルを目指して駆け出した。 【クラス】アーチャー 【真名】ヒート 【出典作品】DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー 【性別】男 【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷D 魔力D 幸運D 宝具A+ アグニ 筋力A 耐久B 敏捷C 魔力C 幸運D 宝具A+ ヴリトラ 筋力A 耐久A++ 敏捷C 魔力A 幸運E 宝具A+ 【属性】 混沌・善 【クラススキル】 対魔力:E(C+、B+) 魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。 アグニに変身すると第二節以下の詠唱による魔術を無効化できるようになる。特に炎熱を利用する魔術に対しては高い防御力を発揮する。 ヴリトラに変身すると詠唱が三節以下のものを無効化できる。炎熱を利用する魔術ではヴリトラに傷をつけることは出来ない。 単独行動:C マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。 【保有スキル】 勇猛:B 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。また、格闘ダメージを向上させる効果もある。 魔術:-(B、B-) 通常は使用できない。 アグニに変身することで魔術を行使できる様になる。アーチャーは強烈な火炎魔法を一工程で発動させる。 ヴリトラ形態では使用できる魔術が制限される。 喰奴:A 「悪魔化ウィルス」を照射された事でアートマが発現した者のこと。身体の何処かにアザが刻まれるのが特徴。 魂喰いを含む捕食行為によって、魔力を回復することができる。 保有者に高い身体能力を保証するが、覚醒中は常に飢餓感に苛まれるデメリットがある。 飢餓感は魔力を消耗するほど強くなっていき、NPCやサーヴァントを喰らって消耗を補わない場合、肥大化した飢餓感によって同ランクの狂化に匹敵する精神の変質を一時的に起こす。 暴走したアーチャーは飢えを満たそうと敵味方問わず襲い掛かる。満足した時点で暴走は解除される。 【宝具】 『咆哮す火神の顎門(ファイアーボール)』 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身) 右腕のアートマに意識を集中することで"アグニ"に変身する。ステータスやスキルを専用のものに修正、魔術スキルを解禁する。 アグニは火炎属性の魔術に長け、屈強な肉体を使って敵を粉砕する悪魔である。発動にかかる魔力は少ないが、ステータスの向上や魔術スキルの使用が可能になった事で飢餓感が増大しやすくなっている。 『我は宇宙を塞ぐもの(ヴリトラ)』 ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:陣地全域 最大捕捉:1人(自身) "ヴリトラ"に変身、ステータスやスキルを専用のものに修正、魔術スキルを解禁する。 アーチャー単独で発動させる事は出来ず、魔術師が作成した陣地にアーチャーが存在していることが絶対条件。 宝具を発動するとアーチャーが陣地全域を取り込み、丸く膨れた胴体と二本の触手、三つの口を持つ巨大な竜と化す。飢餓感については上述と同じ。 この形態に変化したアーチャーは頭部から吐き出す極寒の冷気、超高温の熱波、思考を攪乱する怪音波、巨大な触手による叩き付けや薙ぎ払いによって敵を蹂躙する事が可能だがその場から移動することが出来なくなる。 また、自発的に人間態に戻る事も出来ず、令呪一画によってのみ人間態に戻る事が可能。 【weapon】 無銘:グレネードランチャー 【人物背景】 セラの主治医「ヒート・オブライエン」をモデルにしたママゴトAIが戦闘AIに生まれ変わったもの。 ジャンクヤードでは、所属するトライブ「エンブリオン」のアタッカーを務めていた。 アートマを獲得してからは直情かつ好戦的な性格になり、同チームのリーダーであるAI「サーフ」をライバル視するようになる。 その性格から仲間達と違い、敵を喰らう事に躊躇いが無い。 アートマ出現と同時期に出会ったセラに対して出所不明な執着を持っていたが、ジャンクヤードからニルヴァーナ(地上)へとやってきて真実を知ると、彼は仲間を裏切りカルマ協会に加わる。 後にEGGと一体化し、ヴリトラと化したヒートはセラを含むかつての仲間達、EGGから脱出したサーフによって倒された。 太陽に情報が到着する以前から参戦。 【聖杯にかける願い】 ? 【マスター名】サイファー・アルマシー 【出典】FF8 【性別】男 【Weapon】 ガンブレード(ハイぺリオン) 【能力・技能】 「疑似魔法」 オダイン博士が、奇跡を操る"魔女"の研究から編み出したもの。 本来のそれより威力は劣るが訓練次第で人間にも扱える「偽物の魔法」。 「始末剣」 サイファー固有の技術。剣技と魔法の複合技。 火炎魔術によって標的を牽制した後、斬撃や衝撃波を浴びせる。 【ロール】 高校3年生。 【人物背景】 シド・クレイマーが「SeeD」育成のために設立した学校「バラムガーデン」で一番の問題児。 学園トップレベルの実力者ながら自己中心的かつ好戦的な性格の為、万年候補生に甘んじている。 実地試験の際の命令違反によって懲罰房に入っていたが、旧知の仲であるレジスタンス構成員「リノア・ハーティリー」の危機を知ると、ガーデンを脱走して大統領拉致を敢行。 姿を現した「魔女」イデアの目に留まり、彼女の騎士となる。魔女の騎士となった後はスコールやリノアたちと幾度となく対立、一時はガルバディア軍司令官にまで昇りつめた。 ルナティックパンドラでの戦いに敗れた直後から参戦。 【聖杯にかける願い】 追い込まれた現状をひっくり返す。くわえて聖杯戦争に勝利することで傷ついたプライドを立て直し、スコールと再戦を果たす。
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放送者紹介5 05月05日(土)放送分 第52部 05月05日(土)01 00~03 00 DJ:◆SsWWi8OyLg ジャズ風音楽など大人の時間と呼べる流れに。 事前にこの日命日を迎えた岡崎律子さんの追悼特集を組むと告知してあった為、岡崎さんのファンを中心に多くの期待を背負ってスタートした。 あまりにも「大人」な雰囲気の為に早々に「KOOLな52部」「バーボンマスター」と呼ばれるようになった。左手にカクテルグラスを右手にマウスを持つ人が続出。 途中のMCでDJの呼びかけによりリスナー全員で岡崎さんに黙祷を捧げた瞬間(1 38~39)は今年のアニソン三昧で最も感動的なシーンであったと言える。 その後岡崎さんの楽曲が流れると実況スレの住人多くが涙を流しさらにはDJまで泣いてしまうという一幕も。それを慰めつつも自身も泣いてしまっているリスナーが大量に現れた。それ以降も感動したリスナーが一体となった。 いつもならばAAが飛び交う実況スレで、感化された住人達の語らいは人の心の奥にある綺麗な部分が垣間見えた。 その原動力となった岡崎律子さんの天使の歌声と52部DJに惜し気の無い感謝の言葉が浴びせられた。 DJ、リスナーの一体感という意味合いにおいて52部は間違いなくナンバーワンと言える。 放送を聴いて感動した437さんによる自作イラストも投下された。(このページ下の添付ファイル)今年のアニソン三昧ベストDJ候補。 第53部 05月05日(土)03 00~05 00 DJ:◆nNfoT3GIGI 激動の51部、感動の52部を継いでの登場。 1曲目にシティハンターを選曲、適度にUPテンポの曲という事でリスナーの気持ちを見事に切り替える。 その後流したそばかすで祭好きの阿部高和により大量のニート剣心のAA がスレを占拠いつもどおりの活気を取り戻す。 X→0083→V と連続でガンダム系を流し瞬く間にAAでスレを埋めつくした彼こそ「AAの53部」といえよう。 高加速の曲を連続で流したためAM4 00という時間帯にもかかわらず AAお約束の容量超過を実に5連続で起こし、勢いは10万を突破し「鯖の天敵にしてAAの神」「鯖テロリスト」という称号を得たという。 「AAとか自重しろよおまえら」と何所か(35部)で見たセリフを言い放っておきながら自らもどさくさにまぎれてAA爆撃しているあたり確信犯的行動と思われる。 やはり51部同様暗黒DJの波動にあてられたのか、それとも元からそうであったのか不明である。 この加速の最中に熱気に当てられ暴走した安部さんがリスト作成スレに誤爆投下された悲劇を忘れてはいけない。 第54部 05月05日(土)05 00~07 00 DJ:◆wcRMusufe2 53部終盤でヤムチャAAが乱れ飛ぶなか突如「もうやめて! ヤムチャのライフはとっくに0よ!」とコメントし住人の笑いを誘った。 ARIAニ連発という形でスタートしたが、その後はノリのいい曲を流している。 終盤にksk祭りが起きる。 また、ブルジョア太郎から「包茎DJ」という不名誉な名前を命名されるが、全体として盛り上がった部であった。 第55部 05月05日(土)07 00~09 00 DJ:◆wTFu2381ZU 後に言う「熱くキモいノリの55部」である。MCが究極にやばい。 この時間帯とそのキモさ(その絶妙なトークの間)が相まって住民をドン引きさせたことは言うまでも無く史上最低のDJとして名を残す。 「クリ☆リス」発言にはリスナー全員が引いた。 しゃべり方がうざくて、きもいと言われて、逆に喜んでいた。間違いなく変態(あるいは変質者)である。 選曲そのものには定評があるものの初っ端に住民の心を掴むとしようとした行動が裏目に出てしまった伝説は拭うことが出来ない。 恐らく夜辺りに放送を行っていれば相当盛り上がったことであろうが、気色悪さは否めないのが残念だ。 それにしてもこの主、本当に萌えないドジっ子。 「☆ニスの王子様」を放送し、「おまいら雌豚が恋しいんだろ」と18禁発言を惜しげもなく繰り返し熱唱するが、隣の家より苦情が来たため歌は自重となる。 それにしてもこの主、わざとではないが発言のすべてが伝説となってしまうからすごい。気持ちが悪いが・・・。 北海道在住。ニート説を否定。(死) 第56部 05月05日(土)09 00~11 00 DJ:◆qGeltyTU46 徹夜組が脱落し人が少なくなった時間を狙ってか、自分を突き通す渋い選曲を最初から最後まで突き通した。 「ずっと俺たち30代のターン!」とオサーンリスナーが狂喜する。 スパロボ好きにとっても「俺のターン!」だったらしい。 その徹底したロボット物ソングの選曲には驚きである。 第57部 05月05日(土)11 00~13 00 DJ:◆k109xHCicw ギャルゲ二連発からはじまったが、その後は新旧取り混ぜた落ち着いた選曲でリスナーをマターリさせる。 起きだしたリスナーが増えてきたタイミングでヤンマーニで一気に加速し、その後セガールのテンプレ化、オセロ、とスレは活気をつけた。 私見ではあるが、「虹の都」が懐かしかった。 第58部 05月05日(土)13 00~15 00 DJ:◆lv.o3z9kM6 初っ端に苺ましまろとおじゃ魔女を流したため「高速の58部」と住人に呼ばれた。 死天王の一人37部の暗黒面の影響をうけているのか現段階ではわからないが、55部の惨劇だけは来て欲しくないというのは日本国民全ての願いである。 その後は堅実な曲を選曲を行ったが熱い曲を流した反動でセガール(47部、48部参照)と53部での暴走で熱気がさめぬ安部さんにスレを汚染されかけたのは2007年度のアニソン三昧の悲劇の一つとしてリスナーに記憶される。 常にスレを進行具合を確認し、スレに倦怠感が漂っているのを確認すると「残酷なニートのテーゼ」を選曲、今の生活を続けると末は安部に掘られかねないとリスナーに警告した、思いやりの持ち主でもある 高速で曲を流すverが多く「高速と拘束の58部」と呼ばれることになる。 63部で自らが童貞であることをを告白した。ついでに彼女いない暦=年齢らしい。 第59部 05月05日(土)15 00~17 00 DJ:たらこ ◆f5TKZ74F9k 初 の 女 性 D J の 5 9 部 で あ る 。 マイクの声が聞こえたとたんスレでおんにゃのこコールが沸き起こった。 初の女性DJという事で58部でハッテン場と化し、汚れたリスナーを浄化できるか?と期待された。(中心は90年代、ロボ特撮物とのことだが・) それにしても『アクエリを流すと公言しながらAA自重とはまるで「どこかのDJ(ry」』である。 なお58部での熱気がおさまらぬ阿部さんがイケメンと勘違いする。 ラブコールを行ったがリスナーから足蹴にされるハプニングもあった。 熱い曲で攻めた後、90年代の懐かしい曲を流しリスナーの気持ちを掴んだが中盤突如MADを投入、昨今の版権問題に対して正面から取り組む姿勢を披露しリスナーを心酔させる。 またこの部の放送中はAAで加速する曲が多かったにもかかわらず容量オーバーが一度も発生しなかった事を忘れてはならない。 後の「鯖の女神の59部」である。腐女子ではないと運営スレに現れて訴えるも、残念ながら、腐女子である。 自覚症状がないぶん危険な腐女子であると言えよう。 しかし、それを嘆くことはない。腐女子と付き合いたいという者も意外に多く、腐女子であることを誇りに思うといい。 第60部 05月05日(土)17 00~中止 DJ:◆God/FiIxMM やっとの思いでDJ枠を確保したのにもかかわらず、出だしでいきなり事故を起こしてしまう。 リスナーが本鯖に殺到したのが原因らしく、放送事故は40分にも及んだ。その間、鏡で各々曲を流しカオス状態。 来年出直すことを誓って、静かに立ち去った。ただ、リスナーにとっては良い休憩時間となった。 「まぁ、最初から休憩時間作ろうと思ってたんですけどね」(本人談) 第60.5部 05月05日(土)17 40~19 00 DJ: 60部の放送事故の代打として登場した。エロゲ曲を中心として展開。 急遽放送となった割にはなかなか充実した内容だった。 MCが聞き取りにくかったのが難点。 最後に自分で製作中のエロゲの宣伝をしてしまい、自重しろwwという声が飛ぶが、wktkでもある。 来年再度DJに挑戦しその際に自作エロゲの宣伝を行わんと画策中。 エロゲ脳とは思えない、異様に爽やかな声であった。 「エロ爽やかの60.5部」と呼ばれる。 第61部 05月05日(土)19 00~21 00 DJ:◆5ct/yT2iFU 爽やかなボイスであった60.5部とは対照的にダンディーなボイスの持ち主。通称ゲンドウ。 挨拶を聞いた瞬間リスナーと安部さんからの絶賛を受ける。 昨年の祭りのリストを全て一人で直すなど、まさに裏方稼業の人。 アニメ本編と曲を組み合わせた演出を好むようであり、その完成度は非常に高レベル。 構成力とネタ使用のセンスをもちあわせた実力者である。 前半は盛り上げ系、MAD、電波曲を入れつつテンポ良く進行していく。 アナゴ→若本ボイス「本家本元はこれだ」→本家若本という流れは、この祭りでのアナゴネタの中でも特に秀逸。 後半は昨年亡くなった声優の鈴置氏、曽我部氏、また近年亡くなった塩沢氏を追悼するコーナーを設ける。 さらにドラえもん最終回からつながる友情を謳った曲の流れによって、ガチで泣くリスナーを続出させた。 そして岡崎さんと堀江由衣のForフルーツバスケットデュエットによりスレは感動の嵐に。 エンドトークでは、残り一日となった祭りを盛り上げていく意気込みをみせた。 第62部 05月05日(土)21 00~23 00 DJ:◆NokJP0Uoxw (一部の住人の)国歌斉唱でスタートした、62部。事前に紹介していた通り GAMEMUSICからの選曲が多かった。 声が入っていないものが多いにもかかわらず有名曲が多く、スレは賑わいを見せた。 その選曲センスには goodjobせざるを得ない 第63部 05月05日(土)23 00~25 00 DJ:◆bcvYaav4Wg 開始と同時に「設定をミスっていた」と脱力系のAAを貼りリスナーの注目を集めたお茶目なDJ。 麻呂AAを多用し度々スレに出てきては「kskが足りん」とリスナーを煽り自らもキモカワイイ系のAAで祭を盛り上げようとしたり「ライアーゲーム(同時間帯に放送されていたテレビ番組)忘れてた見てくる 。」と職務放棄宣言したりと混沌の香りがした。 スレッドは加速で容量オーバーを乱発した。63部に限ったことではないが、中盤以降のDJに意図的にスレを加速に煽動するような選曲を集中させる傾向が見られるが、昨年はこれが原因で大型のAAが乱舞しサーバー過負荷によるダウンなど多大な混乱を招いたので、この後に出番を控えるDJは自重してもらいたい。 薔薇好きなのか関係する曲を多く流したが「翠麻呂」「雛麻呂」といったようにDJ自身がAAと化してしまったのは他に類を見ず、そのキモカワイさは筆舌に尽くしがたい。 ドジっ娘であるがゆえ時々操作ミスをおかしたがその度に「麻呂は悪くないでおじゃる PCが悪いのでおじゃる 」と言い逃れを行い、麻呂流を貫き通した彼こそ現代に生きる平安貴族といえよう。
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おとといの大雨・洪水警報が嘘のように今日は実に晴れ晴れとした日だった。こんなピクニック日和に出かけないのは人生における最大のシミとなり、一生引きずってしまう羽目になるかもしれない。ちょっとばかり大げさだが。 しかし心のそこから湧き出してくる感情を抑えるほど俺は器用ではない。まず、この感情の高ぶりを蒼星石にぶつけるべく洗濯物を干しているはずの蒼星石の元へ行くことにした。 俺が庭へ出て、物干し台を眺めるも蒼星石の姿は・・・いた。蒼星石は台をつかって小さい体をフルに使い洗濯物を干していた。 俺は後ろから抜き足差し足忍び足の容量で近づいていく。そして蒼星石のすぐ後ろに立つと、俺は抱き上げるように蒼星石の両脇を持つ。 蒼星石の体は俺に重さを感じさせることなく、宙に浮かんでいく。はとが豆鉄砲を食らったように蒼星石はきょとんとした後、状況を少しずつ理解し、手足をじたばたさせた。 「まっ、マスター!?いきなり抱き上げられたらびっくりす――」 と蒼星石が慌て始めた頃だった。俺の腕が物干し竿にぶつかり、それが台から外れ俺の両腕を襲う。 蒼星石を抱えているため俺は握力を緩めるなんて愚考は犯さなかった。すべての物干し竿が俺の腕にダイブしたあと、俺の両手に抱えられている蒼星石は腰をひねってこちらを向き、愚かな俺に心配をかけてくれた。 「大丈夫?マスター?」 「なんとかな・・・。」 俺は衝撃を受けてぷるぷると震える腕を動かし、蒼星石を地面に戻した。 「ふー、危なかった・・・。もう少しでとんでもないやつらを敵に回すところだった・・・。」 蒼星石は誰だそれ、という面持ちでこちらを見ていた。 俺と蒼星石は手分けして洗濯物を干し、家の中へ戻った。そこで俺は今日というすばらしい日をどうやって消費するかを蒼星石に相談として持ちかけた。 「どこに行きたいって?・・・愚問だね、マスター」 「なにっ!?」 「それはマスターが僕のマスターとして当ててもらいたいな。」 蒼星石は少しだけいやらしい表情で俺に答えを求めた。それこそ愚問だぜ、蒼星石。 「レバー肉専門店か?もしくはそれに順ずる焼肉専門店とか。」 「ふーん、マスターには僕はそう見えてたんだ?」 その反応に俺はしまった、と心の中で舌打ちする。まさか違うとは思いもしなかった。ギャルゲとかなら好感度-1ってところだ。 「僕はお花屋さんに行ってみたいな、マスター?」 「花屋か・・・近いところにいい店があるぞ。じゃあ準備でもしてくるか。」 俺はそういうと財布に札を数枚仕込み、準備をはじめた。 家を出発してすでに5分が経った。見晴らしのいい丘からは目的地である花屋を容易に見つけることができた。俺はより歩を早く進め、まさにピクニック気分といえる蒼星石を先導していく。蒼星石と会話していると10kmでも苦なく歩けそうだ。 さらに7分後。俺たちは花屋に到着した。入り口の外からでも花のいい香りが鼻を刺激する・・・ダジャレではない。 店内に入ると芳香はより強いものとなって俺と蒼星石の鼻を刺激してくる。蒼星石はブランド物のバッグを見ている女性のように花を舐めるように眺め、吟味している。俺は本能的に食虫植物に目が行ってしまう。悲しき男のサガだと信じておこう。 蒼星石はというと、花ではなく、種が詰まった袋を俺に見せた。パッケージには真っ赤な薔薇の写真が印刷されていた。 声には出さないが蒼星石はこれを欲している。真紅の薔薇を咲かすこの種を。俺は目で答え、代金を払う。思っていたより値段は安かったので正直、ホッとした。買い物を終え、俺と蒼星石は花屋から出た。店員さんの声が俺の背中を押した。 「ありがとうマスター」 「ああ。こちらも意外と安く上がったんでよかったよ。」 蒼星石からお礼のお言葉をあずかる。俺にとっての至福の瞬間でもある。しかし、丘に差し掛かったところでこの雰囲気はぶち壊されることになる。 突如、ヴーン、と何かがうなりをあげてこちらに向かってくる。蒼星石とおそろいの鞄。飛行。この2語が俺の中で絡まり、1つの結論を導き出す。 「翠星石!?」 しかし時すでに遅し。その鞄は俺の額に思いっきりぶつかり、なぐり抜ける要領で空中に飛び出す。そしてまた俺の顔の前に戻ってきてから空中静止する。俺は額の激痛でめまいがする。蒼星石は俺が倒れないように後ろから支えている。 すると鞄がバカンと開き、中から暴走運転をしていた張本人が出てきた。彼女は翠星石と言って蒼星石の双子の姉だ。見た目は瓜二つだが性格が大いに異なる。彼女は俺と蒼星石が一緒にいるのを快く思わないらしい。 「ざまあ見ろです、ド低脳人間」 と翠星石はさきほど俺に鞄で体当たりしたときにぶつけたのか、額をさすりながら出てきた。 「そっちも同じ状態にあるぞ。」 「うっさいです!今日こそ息の根を止めてやるです」 と翠星石は物騒なことをさらりと言いのけ、如雨露を手に構えた。大ピンチだ。蒼星石に俺は視線をやる。 「がんばって!マスター!」 蒼星石は丘に配備されているベンチに腰掛けて俺に声援を送っていた。俺が助けを求めると、 「よく言うよね、“子供の喧嘩に親は出るな”って。だから僕はここで慎ましく応援させてもらうよ。」 そうか。単に姉妹喧嘩を繰り広げたくないように俺は見えるのだが。そうこうしている内に翠星石が襲い掛かってきた。 「お前には力を使うのももったいないです!脳挫傷で殺してやるです」 今あきらかに物騒なことを言った。しかしまだ余裕がある。俺は翠星石の仕掛けてきた如雨露での殴打攻撃を右にかわす。 するとその翠星石の像が雲が蒸発するように消えていく。 「残像ですぅ。」 「はっ、後ろっ!?」 俺の背後に出現した実像が如雨露で俺の頭を力いっぱい殴りぬけた。鈍い音がして俺は前に倒れこんだ。 「ええっ?本気?」 と、蒼星石が俺の元に駆け寄ってきた。まさかコントにでも見えたのか。蒼星石は俺のいきなりの転倒に慌てふためいている。 意識が揺らいでる俺に翠星石がにじり寄る。 「・・さ、そこをどくです蒼星石。そいつ殺せない。」 「嫌だ!マスターを傷つけるなら翠星石でも許さない」 数秒前とはうって変わってシリアスな雰囲気になってきた。そろそろ俺の意識をつなぐ糸が限界に達しかけていた頃、俺の口が勝手に1つの言葉を口にした。 「――体は(蒼星石に対する)萌えでできている」 「え、マスター・・・」 「な、なんなんですか?」 2人が大きな不安を胸に抱き始め、それが確信に変わり始めた頃、俺の言葉は終わりに近づいていた。 「―その体は、きっと(蒼星石に対する)萌えでできていた。」 すると突然、世界が白き閃光に覆われたかと思うと、数秒後に別の世界が現れた。萌え盛る炎が壁を築き、世界から隔離する。 後には荒野。無数の蒼星石のポスターが乱立した、ポスターの丘だけが広がっていた。 「固有結界・・・これがお前の能力ですか・・・人間!」 「驚くことはない。これは全てただの萌えポスターだ。 人を傷つける力はない無力の存在だ。」 俺は右手を丘に刺さった一枚のポスターに手を伸ばし、握り、そして一気に引き抜いた。 「だがな、ポスターが如雨露に負ける、なんて道理はない。お前が如雨露を振るうなら、その悉くを受け 無力に変えよう。」 俺は一歩踏み出した。目前には世界樹の枝を操るドール。 「いくぞツンデレ女王――水の貯蔵は十分か。」 「は――思い上がりやがったですね人間!」 奴は“門”を開け、如雨露を召喚する。 荒野を駆ける。一対である二つの群は、ここに、最後の激突を開始した。 ―何分経っただろうか。俺と翠星石は以前と己の武器を打ち合っている。その力の差は互角、といってところだ。 しかし俺の魔力の消費が激しい。このまま持久戦が長引くとまずいことになる。そう思った俺いったん距離をとり、 丘からポスターを4,5本抜き出す。それを翠星石に向かって投げつけた。翠星石は一本目をかわすが、2本目の追撃により右腕を封じられて、左腕、右足、左足、と次々と四肢をポスターに封じられていった。 俺は翠星石に近づき、とどめを刺そうとした瞬間、俺の目の前にひとつの光球―人工精霊だ。目を守ろうとしたときにはすでに遅く、目くらましを食らったあとだった。 俺は目が見えずに2,3歩後ずさりをする。俺の力が弱まったため、ポスターが灰となって粉砕される。自由になった翠星石は俺に如雨露を構えた。 「これで終わりです人間。おまえにしてはよくできた方です。 冥土の土産に翠星石の宝具を飲み込んでくたばるがいいですぅ」 別にそんなものは飲み込みたくないが、そんな俺の気持ちもむなしく、翠星石は宝具を展開させた。 「スイドリーム(湿濡らす甘露の如雨露)!」 俺の意識が四方に拡散するのを感じた俺は、蒼星石に最後の言葉を託そうとした。 「蒼星石、頼む。奴を止めてくれ。このままだと世界は混沌の渦に飲み込まれてしまう。」 「わかったよマスター・・・。でも、別にあれを倒してしまってもかまわないんだね?」 「ちょ、蒼星石、何を言ってるですか!?」 「翠星石。僕らはもはやマスターを違えた。ローザミスティカを奪い合う敵同士だ。」 その言葉を全て聞く前に俺の意識は宙へと飛んでいった。 俺は不意に目を覚ました。俺は布団で寝ていたようだ。あたりを見回すと、自分の部屋だという確信は得られた。 時計を手にとり眺めると針は9時を指している。カーテンが閉められ、そこから闇が部屋を侵食していることを考えると今は夜らしい。 倦怠感が体に重くのしかかるが、それを跳ね除けて俺は居間へ行くことにした。 居間には蒼星石がテレビを見ながら湯飲みに注がれたお茶を飲んでいた。蒼星石は俺に気づくと 「目がさめたんだねマスター」 と声をかけてくれた。俺は蒼星石に昼間、何があったか訊いてみた。 「何って、僕とお花屋さんに行ったじゃないか。ほかに大したことは起きてないよ。」 そう振舞ってくれた蒼星石だがどこか裏があるような笑顔だった。それに、その言葉では俺が眠っていた理由を証明することはできないわけだが。 「えーっと、そうだ。帰ってきた途端、マスターが疲労で倒れたんだよ。きっとそうだよ。」 きっとそうだよ、って・・・。しかし俺は貧血気味なのかフラフラするためその日は蒼星石のレバニラ炒め+αを食し、再び寝ることにした。 これは後日談だが、翌日、俺は翠星石が持っていた物と同じような如雨露を使って買ってきた薔薇を育てている蒼星石を見た。俺はそのことについて触れることはしなかった。
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Last update 2008年03月14日 晩夏 著者:朔 夏の暑さはまだ地上にずるずると居座り続けている。 目を醒ますと、アパートの窓から吹き込む風は生暖かく、照りつける光を反射させるようにアスファルトを陽炎が包み込んでいた。 もう夕方近いのか、目が焼けるような錯覚を起こし、窓から視線を外す。東の空だけは重暗くなり始めていた。 夕立が来るに違いない。 ぼんやりと、頭の隅でそんな事を考えながら、遠く、微かに聞こえる蜩の声に、僕は夏の終わりの倦怠感を、紫煙と一緒に吐き出す。 少しは涼しくなるのだろうか。点け放していたテレビは、見ていたバラエティー番組からニュースへと変わっていた。 プライベートにまで社会の某かを持ち込みたくはない。リモコンを叩くようにして、ニュースを切り、煙草を揉み消す。 休日の夜に、予定が何も無いのは少し寂しいものだ。誰か同じように暇を持て余す奴は居ないかと携帯を開くと、待っていましたと言わんばかりに、6畳間に着信音が鳴り響く。 「もしもし…」 見覚えの無い番号に、恐る恐る電話を受けると、相手は2?3日前にバーで声をかけた女、智美だった。何てタイミングだ。 まくし立てるように話す女だったな、と朧な記憶を辿る。こちらが話さなくても済むのは楽だったが、番号を交換したのは間違いだったかもしれないと、少し後悔した。 彼女の話は案の定止まらなかった。何本目かの煙草に火を点けて、どちらともつかない相槌を打ちながら聞き流し続けていると、智美が唐突に提案してきた。 「ねぇ、電話も何だから、今から会おうよ」 何も考えずにただ聞いていた僕は、一瞬、彼女が言った言葉を理解できなかった。智美はそれを察したかのように、矢継ぎ早に、場所はこの間と同じバー、時間は夜八時…と、有無を言わさず、あっと言う間に決定していった。更に、 「それじゃあ後でね」 と、一方的に電話を切ろうとしたので、僕は腹立たしさを丸出しにして、それを遮った。 「待てよ、僕の都合とか、無いのかよ」 少しの間があった後、受話器の向こうで智美が笑ったような気配がした。 「来ても来なくても、待ってるから」 そう言い残して彼女は電話を切った。 急に静かになった室内に、智美の、少し含みのある声に変わって、開け放した窓から雨音が響き始めていた。 「誰が行くかよ」 あの後、既に通話相手の居なくなった携帯に向かって、思わず呟いたのだが、何故か、指定の夜8時前には、大人しく先日のバーへと歩を進めていた。 雨は上がり、涼しい風がビルの隙間を吹き抜けていく。その風を受けながら、昼間の電話を反芻した。 普通、番号を交換したとしても、最初に誘うのは男の方だろ?取りあえず番号を聞いても、大して気に入りもしなかった女には連絡しないが。少なくとも僕は今までそうしてきた。 女は常に連絡を待っているもので、積極的にモーションをかける女など、周りには居なかった。 智美は一体何のつもりなんだ?僕をからかって楽しんでいるのだろうか? そう考えると知らず、苛立ちに比例するように足が早まる。そのお陰で、思ったよりもかなり早く、目的のバーに着いていてしまった。 腕時計はまだ8時前だったが、僕は鈴の鳴る木製のドアを押し開けた。まだ智美は来ていないだろうと踏んで、薄暗い店内を一瞥した。 と、カウンターの一番端…更に暗い隅の壁と同化する様にもたれていた為に、僕からは見えなかった女が、急に体を起こし、此方を振り返る。 今日、2度目に対面する、それが智美だった。 「僕の方が早いと思ってたよ」 手を上げて近付きながら、挨拶もそこそこにそう言うと、 「待ってるって、言ったでしょ?」 彼女は、当たり前のように僕に笑みを投げかける。 僕は不思議と、苛立ちが夕立後の気温の様に冷えて行くのを、否定できなかった。 彼女の表情は、その早い話のテンポからは想像できない程、穏やかなものだった。前回、僕は酔っていたのだろう、目の前の女性は、記憶とは全くの別人のようだった。 「だけど、来ないかと思ってた」 智美は既に頼んでおいたのか、用意されていたコースターの上に、若いバーテンダーが置いたカクテルグラスを、僕に勧めながら続けた。 「僕は天邪鬼だから」 グラスを受け取りながら、それに応える。 「何、それ」 智美は可笑しそうに笑った。現に昔から僕はそうだったから、偽り無く言った言葉を笑われるのは心外だったが、自分を良く見つめた結果だ。 社会人になり、旨く社会を渡る術は否応にもなく身に付いた。嘘とおべっかで塗り固めてきた人生は、既に嘘ではなく、僕の生き方として真実になっていた。 今日の智美の誘いでさえ、本当は不快に思っていたのに、それを言えずに結局会いに来てしまった。単に彼女のペースに巻き込まれてしまったと言えばそれまでだが、有無を言わさないその話術に、はめられたのは確かだ。 「ちょっと、何暗い顔してるの?」 思考を打ち消すように耳に飛び込んだ言葉に、僕がはっとすると、智美は僕の腕に手を置いていた。それに違和感なく甘んじていた自分に軽く驚きながら、考え込んでいたことを詫びると、 「いいのよ」 カクテルグラスを、右手で紅い口元へと運びながら、左手をヒラヒラさせて彼女は言った。 「それより天邪鬼さん、得意の方便で、私を楽しませてよ」 僕達は暗いカウンターで、恋人ごっこをしているかのようだった。 酔いも手伝ってはいたのだろうが、会って2回目とは思えないような親密な空気に、こういう状況に不慣れな僕は、段々と、彼女が僕を誘った理由が気になってきた。 否、男なら、誰もが不思議に思うに違いない。少しの期待だって、許されるはずだ… すると、それを見透かしたかのように、彼女がそっと僕に耳打ちした。 「アナタとは、また逢いたいと思ってたの」 真っ直ぐに僕を見る目には偽りは感じられなかった。 僕達はタクシーに乗っていた。『逢いたかった』と聞いて、今度は僕が智美を自宅に誘った。彼女は静かに頷いた。 寄り添うようにバーを後にし、すぐにタクシーを拾った。夜の繁華街はネオンと車のライトで、昼間とは逆に、夜更けの空が地上から照らされていた。 僕と智美は押し黙って、窓の外をじっと見ていた。ただ、握った互いの掌だけが、焼けたアスファルトのように熱かった。 アパートに戻るとすぐに、僕は智美に風呂を促した。彼女が着られそうな着替えを手渡すと、 「覗かないでね?」 と、お決まりの台詞と、照れたような笑顔を残して、智美は浴室に消えた。 聞こえてきた、雨のようなシャワーの水音を背に、僕はテレビをつけた。夕方見ていたニュースと代わり映えしない。ここ最近、連続して発生しているらしい殺人事件が報道されていたが、昼間だろうが深夜だろうが、僕には耳を素通りするだけの遠い出来事だ。今は特に。 僕は智美の事を考えることにした。彼女は今、僕の部屋にいる。昼間はただのウルサい電話相手だった。『逢いたかった』という彼女の言葉を聞いた今なら、僕には今まで経験の無かった、女性から誘われる…というシチュエーションにも納得がいく。 そればかりか、僕も彼女に惹かれていた。何故、初日にその魅力に気付かなかったのだろう。はめられた、などと思ってしまった自分を恥じた。 浴室からは相変わらずの水音に混じって、智美の小さな鼻歌が聞こえる。 一向に興味を引かないニュースは消し、鼻歌をBGMに煙草を吸う。部屋の灯りに誘われた虫が数匹、窓の外から僕を見つめる中、彼女となら、この僕の偽りにまみれた人生を是正できるかもしれない、とすら思い始めている事に気付き、1人微笑むのを止められなかった。 そうこうするうちに、智美が風呂を出た気配がした。それと同時に僕の意識は別な方へと飛躍する。彼女の体躯、彼女の声、彼女の… 智美が、やっと浴室から出て部屋に戻った。 煙草で白く煙った所為で少々蛍光灯の灯りが遮られている気もしたが、風呂上がりで少し蒸気した頬の智美は、ダウンライトの下、美しく見えた。 「いいかな?」 おずおずと聞く彼女に、隣を指差し、無言で『おいで』と手招きする。彼女がそこへ腰掛けると、部屋の空気が移動し、良い香りが辺りに漂った。 まるで初夜を迎えるような心境だった。髪を撫でると、「同じ匂いだね」と、智美が笑った。それを聞いて微笑み返しながら、きっと僕達はこうなるように運命付けられていたに違いないと、一層、智美を愛しく感じた。そう思わせる胸の疼きが心地よくて、彼女の長い髪に顔を埋め、細い体を強く抱いた。 早鐘を打つ鼓動が、彼女への想いを表しているかのようだ。聞こえはしないだろうか、嗚呼、僕は彼女に恋をしてしまっている。 こんなにも胸が熱い… 熱い? 彼女の髪から落ちる、冷えた水滴とは別の、熱いものが体を伝う感覚と、いつからか聞こえていたのであろう、彼女の含み笑いとで、僕は我に返った。 胸の熱さは、それと同時に激痛へと変わった。 「きゃっ!」 彼女を突き飛ばすと、小さな悲鳴が漏れたが、智美は笑いを止めない。 手には刃渡り20㎝はあろうかというサヴァイバル?ナイフが握られていて、鈍い蛍光灯の光を受けて赤黒く反射している。 体を伝っていた熱いものが自身の血液であることを認めた僕は、唐突に胸にできた刺傷を、どうにもできず、ただ掻きむしりながら、床に崩れ落ちた。 「私を楽しませてよ」 数時間前にも聞いた同じ言葉が、再び智美の口で繰り返された。あの笑顔と、真っ直ぐな瞳も全く同じだった。 「何で…」 熱かった体が、失血で急激に冷えてくるのを感じながら、僕の頭は、昼間から消し続けたニュースを思い出していた。 【通り魔的犯行、愉快犯、被害者は全て男性、凶器はナイフ…】 様々な記憶が速い速度で脳裏を掠めていく。今夜は熱帯夜だった筈だ、何故だろう、寒い。 だがそれらも次第と遠ざかる。夕立前の、暗雲が立ち込めた空の様になりつつある視界の端に、彼女を捉えた。 智美はまだ笑っていた。僕は抜けていく力を振り絞って、彼女に再び問い掛けた。 「何で…」 彼女は更に目を細めた。それは夜叉の形相だった。整った顔が歪み、さっきまでとは明らかに違う低い声が、室内に静かに響く。 「こういうのを天邪鬼って言うのよ」 彼女はそう言って、今まで見た中で、一番美しく笑った。 窓の虫は何処かへと行っていた。 智美が何か言っているが、もう聞こえない。 そういえば天邪鬼は、元は女性の悪鬼だったな…… 彼女の笑顔が焼き付いて離れなかった瞼が、落ちるのを感じた。 夕立の音がする 前の作品 次の作品 コメント 名前 コメント
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4月末。世間はGWに突入し、敷島家は例年通りに結構な人数で旅行するらしい。 オレと篤史も「一緒に行こーよー」と誘われたが、 篤史はレザークラフトの資金調達の為にバイトを始めたのでパス、オレは…当然、気まずいので断った。 静花がいない、連休…。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 夕方、コンビニの帰り道の途中、前方にノロノロと自転車に乗って何やら熱唱してるバカを発見。バイト帰りか? 「…~壊れた世界で彷徨って私は~♪」 「引き寄せられるように辿り着いた~♪」 「……どこから見てた…?」 「喜びも~悲しみも~♪の辺りから?」 そっからの話はあんまり覚えてない。他愛も無いコトを喋ってたと思う。 篤史が「うち寄ってくか?」って訊いてきた……正直、少し期待してたかも知れない。 暁芳さんは出掛けていて、家にはオレ達2人だけだった。 どちらが誘うでもなくオレ達はまた……セックスをしていた。 それから連休中何度も、した。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― …目を覚ますと自分の部屋じゃなくて、一瞬びびってからここは篤史の部屋だと気付いた。 ベッドの下には、脱ぎ捨てられたオレの服。布団の中のオレは裸で…あ、ニーソは履いたままか。髪もほどいてる。 身体に残ってる倦怠感と…『あそこ』の違和感、それらがさっきまでこのベッドの上でしてた行為の証明の様で、 気恥ずかしかったり、少し嬉しかったり…後ろめたさがあったり。 この部屋の主で、その…した相手である篤史は、机に向かい何やらゴソゴソとしている。 …革を編んでんのか。デスクスタンドの明かりに照らされてるその横顔は真剣そのもので、なんと言うか… その、なんだ…カッコいい、とか思ってみたり。こっ恥ずかしいコトを考えてるのを自覚して頭を抱えもぞもぞしてると、 「面白れー動きだな」 にやけ顔でこっちを見ている篤史。手にはいつも通りケータイ。…ムービーですか、そうですか。 「………あれ?蹴りが来ないな」 「……この格好でしたら、その…見えるじゃねぇか…」 「だが、それがいい?」 「いや、しねーよ!?」 「いいじゃん、さっき隅々まで見せたんだし」 「~っば、バっ…バカっ…てめ…」 「お願いしたら『…お、お前にだけ、だからな?』とか言って、自分でくぱぁって…げぶゥ!?」 「それ以上言ったら本気でぶち撒けるからなッ!!!?」 「……いい右だ、世界を獲れるそんな右だ…が、結局丸見えだぞ?タク」 「っ!?滅びろ!!お前なんか絶滅しろッ!!」 「まぁ、これでも着れ」 と、椅子に掛けてたシャツを羽織らされた。つまり裸Yシャツ完成。 「…随分と『紳士』なんだな…?」 「当然です」 「…ギン勃ちだぞ『紳士』…?」 「当然です」 裸ワイにオーバーニーソの美少女である。まぁ、胸の辺が大変残念ではあるが。 男の時のオレなら「もうガマン出来なーい」とキレていただろう。童貞だから想像だけど。 ………今のこのバカみたいに。 「ちょ…篤史…っふぅ!…ん、んぅ…」 オレはベッドに再び押し倒されて、耳に、首筋に幾度となくキスをされている。 軽く、啄む様なそれに体から力が奪われ、抵抗を試みていた手足もいまやふにゃっと弛緩している。 「…っ、やっ、それっ…ダメだっ…て」 顎の付け根の辺を啜られ、甘噛みされる。ゾクゾクと脊髄を電流が走る様な感覚。 トクトクと心臓の鼓動が早くなる。下腹部にとろりとした熱を感じる。…濡れてきてるのが、わかる。 「…本当、コレに弱いよな、タクは」 「そ、んな…弱いっ、とかッ…あッ…あぅ!?」 ぐちっ…と音を立て割れ目に篤史の右手が這う。 「じゃあ、これは?俺よくわからんから説明してくれないか?」 「っ!!?バ…カやろ、見せんな!舐めるなっ!!」 「説明してくれないなら、いいよ?自分で調べる」 「えっ…ちょ…見るなッ……えっ!?…やめっ、あっん、あっ、っくぅ…ん」 舐められてる…。篤史に舐められてる。 真ん中ら辺を、まわりを、おしっこの穴を、先っちょを、穴の中を、全部舐められてる。 柔らかい舌が、まるで突き刺さる様に、溶けて染み込み侵される様に、 複雑に混ざり合うそれらは全て快感で、呆っと頭の真ん中が痺れる。 「はぁ、はぁ…ふぅっ、っ、…くぅんッ」 「っ…ぷぁ…ウム、甘露」 「…嘘つけバカ、苦かったぞ」 「…お前、自分の舐めたの?」 「前にお前が舐めさせたじゃねーか!!指に付いてたヤツ」 「記憶にございません」 「白化っくれんなよ!?前から言おうと思ってたけど、お前『俺ってMだし』とか普段言ってっけど思いっ切りドSだよな?オレの扱いとか!?」 「個別の案件にはお答えできません」 「やかましーわバカ」 「まあ…黙ってコレでも弄ってろ?女の子はその方がカワイイ」 「…やっぱりドS…」 目の前に出された篤史の…なんだ?エクスカリバー?…ゴメン、ちょっとアーサー王に謝ってくる。 何回か、その、えっちはしてるけど、どうして良いのか判らず、ずっとツナ缶の如き有様だったから、 その…篤史の息子を扱うのは初めてだ。自分のを思い出しながら、怖ず怖ずと触る。 …あー、何か、懐いわーコレー。お前は元気だねー? ウチの息子は家出しちゃったけどさ?まあ、お前が元気なら、それでいいよ。 今は亡き我が子に思いを馳せる。オレはこの辺が好きだったんだよな、と感慨に浸りながらカリ首の辺を強めに扱いたり、 裏筋に沿う感じで摩り上げたりした。…涙が出そう。 ふと篤史顔を見上げると、えっらい男前な表情…『紳士』のつもりか?口元をよく見るとプルプル震えてる。 あ、ひょっとして効いてる?コレ。面白くなって口を近付ける。 直前でちょっと躊躇するけど、オレの息がかかってピクっと反応するのが、なんか自分でも信じれないけど『可愛い』と思えて、ちろりと舐めた。 …少し、しょっぱい?あと、何か…変な、肉っぽい味? セルフフェラとかした事無かったから比べ様も無いけどこんなもんなんだろうか? …ここの筋とか、イイのか?ちろちろと舐めてみる。 つぅ…と何かが腿を伝う。……うん、わかってる。オレ、今…興奮してるんだ。篤史のを、舐めて… 少し夢中で舐めてると頭上の気配に違和感。 「やってくれた喃、谷田拓海」 正気でも曖昧でもなく、人でも獣でもない。 『紳士』へ『変貌』した篤史が正体不明の『何か』に『変質』していた。…魔神篤史ェ…。 ヤバい、犯られる…と思ったらもう遅かった。股を開かされ篤史のをそこに擦りつけられる。 「やっ…ふッ…ぅッん…」 ゴムを着けたそれが再びそこに触れて、「挿入るぞ」そう聞こえた瞬間、ズリュリュと体の奥深くまで押し拡げられる様な圧迫感。 息が出来ない程の…それが快感だと直ぐに分からない位に激しい感覚は篤史がオレの行き止まりにコツっと達した瞬間に、爆ぜた。 「………~ッ!!!?…ゥ…ッ!!」 ぎゅっと目を閉じ歯を食いしばる。背中が丸まり篤史の胸に顔を埋める様な格好になる。 しがみつく指先は篤史の背中に食い込んでたかも知れない。それでも堪えられない、深い快感。 …イってる……入れられただけで… 「……タク?」 「…はっ、はぁっ…ふっ…くぅ…」 「……へぇ?」 ……気付かれた…?!イってるって気付かれたッ! イヤらしい顔してる、当社比何倍か分かんないけどイヤらしい顔してるよ?この篤史!? 頼むからッ!!頼むから今動かないで!?息継ぎしか出来ない、声が出ない。 「…あッ、あ、あ、っァ、ア、んあ、あっ!」 言葉が紡げない、なのに篤史の動きに合わせて声は漏れる。 ずちずちと肉の擦れる音が直接頭に響く。自分が、篤史が、今どんななのかわからない。 篤史の感触だけが脳に伝わってくる。快感の波がずっと引かずに大きくうねる。 駄目に、なる。こんなの駄目になる。 いや、いや、いや、いや、いや、いや! ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ……また……来るぅ…っ!! 「っ……きゃっ…ゥっ!!!?」 「…っく!!」 中で篤史がびくんと跳ねた、一際大きな波に呑まれてオレは…… ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― …ぼぉっとして、視界も焦点が定まらない。 篤史がごそごそ片付けをしてるのはわかるけど体に力が入らなくて動けない。 天井をぼんやり見てるような見えてないような、そんな感じでいると手に何か握らされた。 「……なに…これ?」 「ああ、さっき作ったやつ」 それは銀細工が付いた編み込んだ革とゴムで出来た輪っか。 「ヘアゴムなんだよ、これ」 「へぇ…やっぱ、すげーなお前…」 素直に感心する。本当、スゴいと思う。 「…やっぱり、プロ目指すの?」 「……」 「…篤史?」 「あっ…ああ、そうなれたら…良いな」 …なんだ?今の表情…前にも見たような…? 「……前に、な、3人で大阪行った時」 「…うん」 「観覧車乗っただろ」 「…うん」 そう、覚えてる。あの時に篤史の口からは初めて聞いた、篤史のお父さんの話。 篤史のお兄さん-暁芳さんにはそれより前に話は聞いていたけど、 篤史からはお父さんの事はそれまで聞いた事はなかったから、 観覧車の中で窓の外を指差して「あっちの方、あの辺に…親父、住んでるらしい」と、 突然言った時にはオレも静花もびっくりした。只々、びっくりして何も言えなかったけど。 思えば中学の卒業旅行に大阪に行こう、と提案したのも篤史だった。 「中学に上がった頃な」 「うん…」 机から何か取り出す。あれは… 「これが届いたんだ」 それは革のブレスレット。オレが篤史から貰った…今、左腕に着けてるのと同じデザインの。 「俺、別に親父を恨んだりしてないんだよな」 あの時、観覧車でも言ってた言葉。その時はそこでその話は終わりだった。 「親父、革細工の職人してるんだって」 「…うん」 「最初は…なんとなく、真似て作りだしたんだ」 「…うん」 知っている、レザークラフトを始めた頃。篤史の部屋に明け方まで灯りがついていた。何日も。 「タクの、今着けてくれてるそれも、やっと納得したヤツなんだ」 「そっか…」 「でもな、まだまだで…な」 そう言いながら、篤史はどこか嬉しそうな、誇らしげな、そんな顔。 「…今は、親父のこと…職人としては憧れてる、かも」 「…うん」 「……でも……」 …また、あの表情。 「篤史…?」 「…あ、いや…うん、なんでもねー、服着せてやろうか?ホレ、水玉パンツ」 「~っ、自分で着るっ!!」 もう、いつもの篤史だ。…何なんだ、あの表情。聞きたい、けど、オレにその資格が有るのか? 結局、聞けないままオレは帰宅した。 第8話★へ続く
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真っ白な雪原に、華が咲く。 カナン・ヨハナンの振るうグングニルと、『狂犬』と呼ばれた男を師に持つ少女が駈るテスティレンス・サイズ。 二つの超重量級AFが交差する度に、 その共鳴が大気を振るわせ音叉を咲かせ、 その激突が金属の火花を咲かせ、 その余波が大地を抉り雪と土砂を放射状に拡散させる大花を咲かせ、 そして一撃毎に、互いの体から血煙を咲かせた。 「・・・」 大きく振りかざした『槍』を大地に打ち付けるカナンの顔には、表情はない。 額から流れた血と、泥で汚れた頬が激戦を物語るが、一切の感情を浮かべない瞳が、戦闘開始以前と比較し、より人形めいた印象を与える。 「この程度で・・・」 足下より大地が隆起し喉元に迫る『槍』を、『大鎌』で一閃しなぎ払った少女は、対照的に溢れる感情を隠そうともしない。 表情に乏しかった戦闘前とは別人を思わせる変動ぶりだ。 砕いた大地の『槍』の破片を『大鎌』の柄でカナンに向けて打ち付ける。瞬時に、5連。 「『魂が喰える』のか!?」 打ち付けられた破片は、大砲から打ち出された砲弾のような速度でカナンを襲う。 浮かべた表情は、歓喜。 餌を目の前にした『狂犬』が浮かべる、唇を引き釣らせ牙を剥き出しにするような、獰猛な笑みだった。 -間違いない。 左膝の痛みを圧し殺し 、超重量級AFが織り成す激戦を見守っていたアズールは、呻くように呟く。 常人であれば持ち上げることすら敵わず、修練を積んだ異端審問官でさえ使いこなす事は困難と言われる超重量級AFを、手足のように操る。 AFに関して天才的才能、すなわち『白き腕』と呼ばれたカナン・ヨハナンであることは間違いない。 -だが 今のカナンの戦いかたは、アズールの記憶にある姿とはかけ離れている。 感情と共に武器を振るい、激情にまかせれば『巨神』すら打ち倒し、消極的姿勢をとれば駆け出しの準騎士にすら遅れを取る。 その『ムラ』がカナンの長所であり、短所であったはずだ。 今のカナンの戦いかたは、その真逆といってよかった。 「なんて・・・」 疾風の速さで繰り出される『槍』の連撃の中で、少女は呻くように呟いた。 呼吸する間も与えられずに、回避も反撃も許されない。 ただ、弾くことがいつまでもつか、が問われる連続攻撃。 一撃事の余波が少女の四肢を傷つける。 「なんて、楽しいんだ」 避けた頬から流れた血を嘗めとり、少女の瞳は、喜悦で歪んだ。 -楽しい、戦う事は楽しい -ねぇ、そうでしょう?お師匠様 続きます 97: 拾郎:2016/02/12 15 47 No.326 続き ~◇~◇~◇~ 『半年だけ時間をやる』 名前も知らない山の廃村。 まれに見る凶悪な表情をした男が、少女の目の前に精巧な彫刻が施された棒を投げる。 棒の正体を少女は知っている。 使用者の生命力を代償に数多の効果を発動させる『テスティレンス・サイズ』 男の半身とも言うべき武器だ。 『そいつを使って、この俺を殺せ。・・・出来なきゃ俺が貴様を殺す』 『わかりました』 少女はテスティレンス・サイズの冷たい柄で拾い、素直に頷く。 感情を欠落させた忌み子として村を終われた自分を拾ったのは『さまよえる逆十字団』だった。 恐怖を感じる事が無いことから、連絡係のような事をやらされて一年近く。 際もの揃いの逆十字団の中でも、目の前の男、『魂飢の狂犬』ラグジャの性格は一際異彩を放っていた。 単純にして、凶悪。 要求を断れば半年と言わず、今すぐ殺されるだろう。 『いい返事だ』 同時に少女は、手にした柄でラグジャの右側より斬りかかる。 直後、蹴り飛ばされた。 圧倒的な速度で革靴の爪先が、顎の先端に叩き込まれる。 フワリとした感覚の後、薄れ行く意識のなかで、踵を返す長身の背中が見えた。 ダラダラと歩くその後ろ姿には、右手が無かった。 『いいか、半年後だぞ』 その日から、死に物狂いの毎日が始まった。 少女は全力の攻撃を、ラグジャは手にした枝で、錆びた剣で、動物の骨で、いとも容易く打ち付ける。 技術的な教えは一切なく、ただひたすら繰り返される実践練習。 数百回となく叩きつけられた地面の感覚。 変化が現れたのは三ヶ月後、少女が初めて自分の意思で『光の刃』を発動させた時であった。 『コツを掴んだようだな』 胸元を浅く薙いだ一撃に、ラグジャは胸を撫でた左手を話すと、薄く血が溢れだす。 『・・・笑っている』 『え?』 ラグジャの思わぬ言葉に、少女は戸惑う。 『貴様は今、笑っている』 『・・・お師匠様も笑っています』 『俺の渇きは、命をかけたギリギリのやり取りの中で癒される。同情も、憐れみも、愛もお呼びじゃねぇ。戦いだけが、この俺を満たすんだ』 『貴様も同じだ、ガキ。貴様は感情を無くしてなどいない。戦いを通して、相手の魂を喰らえ。自分の全てを出し、相手の全てを引き出せ。その先にあるのが、感情って奴だ』 戦いのみで繋がる歪な師弟関係。 戦いのみで癒される穴だらけの心。 戦いのまで満たされる不器用な信頼。 『さあ、こい。今度こそ俺を殺してみろ。』 『はい、次こそ殺します』 少女が『光の刃』を伸ばす。 ふたりの距離を満たすのは、刃の長さと言わんばかりに全力をそそぐ。 が、その刃が届くのは、後三ヶ月後の事だ。 嵐の夜だった。 『・・・お師匠様』 少女の呼び掛けに、ラグジャは答えない。 痩せ細った体と異様にギラつく瞳で暴風雨の中、歩き続ける。 『何処へ行くのです、お師匠様』 ラグジャの体に異変の徴候は以前から現れていた。 永年に渡り使用し続けたテスティレンス・サイズの副作用だと知るのは、もう少し後になってからだ。 『・・・腹が減った』 ラグジャが足を止めたのは、山間の麓に広がる村の灯りが見えた時だった。 『だから、あいつらを喰おう』 『えっ?』 麓の村には少女は何度か立ち入った時がある。 不審者扱い去れる事もあったが、食料を分けて貰うこともあった。 『待って下さ・・・』 『いつからお前は俺に命令出来るほど、偉くなった?』 振り向き様に、少女の膝を蹴り飛ばす。 『久しぶりの餌だ。どれだけ足掻いて楽しませてくれるか』 雷鳴轟く雨の中、『狂犬』が進む。 『待って・・・』 泥に這いずりながらの少女の呼び止めは、届く事はない。 何が届く? 何が。 ザンッ。 『・・・そうだ、・・・それでいい』 背後から己の胸を貫いた長大な『光の刃』に、ラグジャは満足げな笑みを浮かべる 『・・・』 『クククッ、なんてツラ、してやがる』 歩みよる少女に対し、隻腕を伸ばす。 『今日からお前が、・・・『魂喰の狂犬』だ』 ~◇~◇~◇~ もうちょい続く 98: 拾郎:2016/02/12 18 51 No.327 「逃がさない」 カナンを囲むように地中から伸びた六本の光の刃が伸びる。 巨大な食虫植物が、その顎を閉じるかの如く、光の刃は内側に、すなわちカナンに対して、『折り畳まれる』。 さらに。 「散華!」 カナンに接触する直前に、光の刃は無数の華吹雪へと姿を代える。 「屠(とっ)た!」 この間合いであれば、いかなる身体能力を持とうと避せない。 だが。 「!?」 華吹雪を貫いて、光輝くグングニルより放たれた閃光が、少女の胸元に伸びる。 「っ!」 テスティレンス・サイズを最大稼働。 放出できる刃を全て展開し、高速回転。 最大の攻撃技を防御として使用し、グングニルより放たれた『雷神の審判』を拡散させる。 そして、巨大な爆発。 「あはっ、はははっ、」 何処かで、笑い声が、響いてる。 笑っているのは自分だと気づき、遠のいていた意識が戻る。 左手が動かない。 先ほど最大の出力で稼働差せたテスティレンス・サイズが、彼女の左手を『喰った』。 腕の健は切れ、皮膚は水脹れを起こし、ただれている。 全身にも酷い倦怠感が包んでいた。 右腕で大鎌を掴み体を支える事で、ようやく立っている。 「・・・なるほどね。」 爆煙をかき分け、カナンがゆっくりと近づいてくる。 右手をには、白き輝きを放つグングニル。 そして左手は。 「・・・防御を捨て、攻撃に活路を求めた」 左手は肩から先が欠落していた。 感情と共に痛覚も欠落しているのか、カナンは相変わらずの無表情。 だが、右手に構えたグングニルは、一層強い輝きを放っている。 既にテスティレンス・サイズに『喰われ』始めた少女とは対照的だ。 「これが、・・・白き腕」 基は、侮蔑の称号。 基は、汚辱の称号。 基は、畏怖の称号。 基は、闘争の称号。 基は、破壊の称号。 カナンが霧を裂き、加速する。 「これが、白き腕か!」 降り下ろされる槍を見つめ、叫ぶ。 向かえ撃つ大鎌の動きはあまりに遅い。 眼前でグングニルが止まる。 受け止めたのは『柱』、いや柱ほどもある巨大な槍斧(ハルバード)であった。 「さすがは、白き腕。見事なものだ」 AFよ格を考慮すれば『エイバムの柱』といえど、白き腕が操るグングニルを支えきれるものではない。 「お前を殺すことに、全力は出せぬが・・・」 赤く燃焼を続ける刃の維持に全霊を注ぎつつ、アズールはカナンに語りかける。 気を抜けば、AF共鳴の圧力に押し潰される。 「お前が誰かを殺すことに止めるためなら、全力を注げよう」 悲鳴のような痛みを送る左膝を黙殺し、「エイバムの柱」の握り手を振り絞る。 柱に装填された封印弾が作動、封印攻撃『エイバムの光』により、巨大な爆発が起こった。 ~◇~◇~◇~ 確か、初めて『光の刃』を出した日の事だ。 『殺す』と宣言し、ひたすら長く、長く刃を出すことに集中した少女は、神経を磨り減らし昏倒した。 翌朝まで、記憶はない。 記憶はないが、不思議な感覚は覚えている。 固く、大きく、暖かい壁に、自分が揺られている。 壁の正体は分からないが、奇妙な安心感があった。 ~◇~◇~◇~ 「気がついたか」 正体が目を覚ましたのは、アズールの背中の上であった。 片手で、エイバムの柱とテスティレンス・サイズをかつぎ上げ、片手で背中の少女を背負っている。 「下がっていてろ、とは言われたが・・」 少しの間。 「手を出すな、とは言われなかったのでな」 言葉の意味を理解するのに少し、時間が掛かった。 「全ては私の未熟が招いた事だ。言われた通り、覚悟すら出来ていなかった。結果、君を巻き込んだ」 「私、負けたんだ」 ぽつりと呟く。 「ああ、負けた。だが、」 背中が、大きく揺れる。 「次は勝つさ」 不器用な謝罪と、慰めと、励まし。 アズールに出来る、精一杯の誠意。 だから、正面を向いたままのアズールは気がつかない。 その瞬間、少女の顔に浮かんでいた表情を。 「・・・そうね」 -全然違うのに、何処か似てる。 そう思うと、少女は二度目の『暖かな揺れる壁』の感覚に身を任せた。 満身創痍であった少女も、エイバムの柱の稼働に全身を集中させていたアズールも、気がつく事は無かった。 『エイバムの光』により吹き飛ばされる瞬間、カナンの表情が、僅かに動いた事を。 聞くことは無かった。 その口許が呟いた言葉を。 言葉にならない程の小さな呟きであったが、確かに発していた。 『イルドルフ、様』、と。
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ネタ351~400 353 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/13(水) 11 24 31 ID ??? アンタはアタシの物 ほかの女はみちゃだめ 喋ったらだめ 触れたらだめ 考えちゃだめ もしやぶったら 殺す そしてアタシも死ぬ シンジ「…は!?」 アスカ「どうしたの?シンジ」 シンジ「キョウコ…」 アスカ「なによ。なんでママの名前言ってんのよ。へんな夢でもみたの?」 シンジ「えっ?あっ?うん。変な夢みただけあはは」 アスカ「ふーん浮気相手の名前だったら殺してたわね。まったく起こさないでよバカシンジ。」 シンジ「ごっごめん…あははは」 シンジ「(逃れられない、か…僕は…もしやぶったら…)」 そして心の迷宮へ 354 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/13(水) 23 05 37 ID ??? アスカ「私のこと…好き?」 シンジ「やばいほど好き」 アスカ「あたしは殺したいくらい好きよ」 355 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/14(木) 00 54 23 ID ??? シンジ「夫婦生活しよう」 アスカ「いや」 シンジ「……」 アスカ「いやよ」 シンジ「……」 アスカ「イヤーーーー!!」 シンジ「……」 357 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/14(木) 03 39 33 ID ??? 夜・シーンとしてる部屋 プルルルッ ガチャ シンジ「あっアスカ?今日飲み会があるから家帰るの遅くなるから先寝てて」 アスカ「…泊まってくるの?」 シンジ「遅くなるけど、泊まりはしないよ」 アスカ「だれといるの?」 シンジ「上司だけど」 アスカ「嘘ね、アンタ泊まってくるつもりでしょ?飲み会?はっ!本当は女といるんでしょ」 シンジ「落ち着いてよ、アスカ!ほんとに飲み会だけだから!」 アスカ「それならもっと早く電話できたでしょ!!言い訳考えてたんでしょ!」 シンジ「そ…そんな訳ないだろ!…どうしたの…アスカ?生理?」 アスカ「もう知らない!!嫌イ!嫌い!アンタなんか大嫌い!どうせアタシの事始めから好きじゃなかった癖にィ!大っ嫌い!!!!!!!帰ってくんなっ!」 ガチャン! シンジ「…………ふぅ」 ダッシュで帰るシンジ END 359 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/14(木) 23 53 50 ID ??? 「もしもし、アスカ?」 「遅いわよ!まだ帰ってこないの?」 「ゴメン、仕事が長引いちゃってさ。悪いけど今日は会社に泊まるよ」 「・・・そう。わかったわ」 「ゴメンね。じゃ、お休み・・・随分聞き分けが良かったな、アスカ。どうしたんだろ?」 「ヤッホー、シンジ!アタシも一緒に泊まるわよ!」 「ア、アスカ!?会社に来ちゃったの?」 360 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/14(木) 23 57 15 ID ??? 「さあさっさとヤルわよ」 「ちょ、ちょっとアスカ!ここ会社だって!拙いって!」 「大丈夫。警備員のオジサンは手刀で気絶させといたし、警備カメラも切ってきたから」 「なるほど、・・・ってそーいう問題じゃないだろー!」 362 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/15(金) 04 06 41 ID ??? 夜・オシャレなレストランにて アスカ「アンタとこんな所来るの久しぶりかもね」 シンジ「あ~そうだね。最近忙しかったし」 アスカ「アンタとまさかこんな所来るとはな~。出会った時から想像できないわ」 シンジ「なっなんだよそれ!」 アスカ「だって初めて会った時なんか暗くて、内気で気持ち悪かったもん」 シンジ「(ムカッ)そこまで言わなくてもいいだろ!」 アスカ「見たまんまじゃな~い(笑)」 シンジ「!!アスカが…」 アスカ「でも今はアンタの事好きよ」 シンジ「!!!!!!!あっ…僕もだよ…」 アスカ「ぷっ…照れてやんの~、子どもみたい。あはは」 シンジ「あっアスカがからかうからだろー!」 平和だなByケンスケ END 363 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/15(金) 04 26 30 ID ??? 夜、喧嘩したあと アスカ「…………」 シンジ「あっアスカまだ怒ってるの?ゴメン」 アスカ「…………」 シンジ「ゴメン…どうしたらいいかわかんないよ」 アスカ「…なら側に来ないで…アンタアタシを傷つけるだけだもん…」 シンジ「ゆ…ゆるしてよ、アスカ。僕アスカが好きなんだよ」 アスカ「嘘ね、あんた誰でもいいのよ。」 途中で終わりスマン 喧嘩を書いてたら まるっきりEOEになってしまうことに気付いた この後は「シンジも嫌い!みんな嫌い!…でも本当は自分が一番嫌!!!なんで(ry」→別居 こんな感じになりそうこの二人 364 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/15(金) 05 12 47 ID ??? 深夜・ベットにて アスカ「…そういえばさ、」 シンジ「ん?」 アスカ「ユニゾンの練習した時あったじゃん。」 シンジ「懐かしいね。したした」 アスカ「最後の夜さ、本当にアタシにキスしたの?」 シンジ「あっ…あの時は本当してないよ。未遂」 アスカ「ふーん。でも寝てる所襲うなんて、アンタ本当にスケベね」 シンジ「ちっちがうよ!なんか…こう…吸い込まれる感じだったんだ」 アスカ「アタシのフェロモンにやられたって訳ね。アンタの事だからどうせ他にもしたんでしょ…たとえば…、とか」 チンコにデコピン シンジ「!!!!!!!!!!!!し、しっし、市、した訳ないだろ!!」 アスカ「…アンタ顔と声にでるのよ。したんでしょ!!!!!」 シンジ「えっ…あ…うん」 アスカ「エッチバカ変態!信じらんない」 シンジ「ごめん…」 アスカ「………」 シンジ「……………」 布団の中に潜りこむアスカ シンジ「アスカ…!!!!パンツ下げないでよ!」 アスカ「ばーか。昔みたくやってみなさいよ。ここで見ててあげるから…それともしてあげようかしら?」 シンジ「…あっ…やっ……」 END 370 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/15(金) 22 30 36 ID ??? 休日、碇宅 アスカ「シンジ…ちゃんねる変えなさいよ」 シンジ「今いいところ…」 アスカ「(ムカッ)」 ピッ シンジ「なっなにすんだよ!!!!!」 アスカ「言うこと聞かないからよ」 シンジ「いいところなんだってば!!!!!」 アスカ「うっさいわね!だめったらだめよ!」 シンジ「えい!」 アスカ「返しなさいよ!!この馬鹿!アホ!!」 シンジ「いいじゃないか!アスカのは録画してるんだし」 アスカ「リアルタイムで見なきゃいやなの!!!」 シンジ「なんだよそれ!録画した意味ないじゃないか!」 アスカ「保存用よ馬鹿!返せコラ」 ドカッ シンジ「イテテ…本気でなぐんなよォ…」 アスカ「ばーか~(笑)」 いつもの軽い喧嘩でした END 373 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/16(土) 06 49 55 ID ??? 夕飯。碇宅 アスカ「シンジ~ごはんまだあ~?」 シンジ「ハイハイっもうちょっと待っててよ!」 アスカ「ったく、トロいわね~…」 シンジ「だったらアスカが作ればいいだろ。まったく、なんかミサトさんに似てきたな」 アスカ「なんか言った~?」 シンジ「な~んにも言ってませんよ」 アスカ「シンジ~…スイカバー取って」 シンジ「ハイハイっ」 アスカ「サンキュー~」 シンジ「僕は、パシリじゃないんだからね、まったく」 アスカ「馬鹿ね…アンタに甘えてんのよア・タ・シ」 シンジ「(ドキ)そ…そっか。ま…まぁすぐ料理作ってもってくるから待っててね!」 アスカ「(ほんと単純だわシンジったら♪)」 チャーーンス顔のアスカでした END 374 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/16(土) 16 31 48 ID ??? 夜・リビングで シンジ「アスカ~お風呂の準備できたよ!!!!」 アスカ「ああ~、たまには温泉行きたいなあ~」 シンジ「行きたいね、最近旅行なんかしてないし」 アスカ「アンタが有休全部使い切ったせだからね」 シンジ「アスカが休みは、合わせろって無理矢理…」 アスカ「うるさいわね。」 シンジ「……(なんだよ~)」 アスカ「ん~…………………じゃぁ今からいこっか」 シンジ「えっ?」 アスカ「温泉よ温泉」 シンジ「…ええ!?ダメだよ!今から?ええ?」 アスカ「そっ、日帰りよ日帰り…車なら行けるでしょ」 シンジ「明日仕事に遅れたら…」 アスカ「ふーん。遅れたりするのが怖いんだ。ほっっんと相変わらず臆病者ね。まっ昔からわかってたけど」 シンジ「なっなんだよ!じゃいいよ!いってあげるよ!でも明日アスカを起こさないからね」 アスカ「ふん、いいわ。じゃ準備お願いね」 シンジ「ハイハイっ急がなきゃ」 尻に敷かれてるかせいふシンジ END 375 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/16(土) 17 21 31 ID ??? 夜・リビングにて アスカ「シンジ見てみて!ジャーン!」 シンジ「アスカ…眼鏡…どうしたの!?」 アスカ「イメチェンよ、イメチェン。今流行りのアウアウアーフレームよ。似合う~?」 シンジ「うん…似合うよ!…かわいいよほんとに」 アスカ「フフ~ン♪まっ当然よね、だってこのアタシがかけてるんだから♪シンジもかけてみてよ」 シンジ「え?…じゃかけてみようかな」 カチャ アスカ「ぷっ…アハハハ!碇司令そっくりアハハ。ヒゲがない司令よ」 シンジ「なっ…親子なんだから仕方ないだろー!!」 アスカ「アハハハ」 平和だねByイナバウアー END 380 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/18(月) 04 29 30 ID ??? 夜、アスカとシンジ シンジ「ねえアスカ…。ちょっと頼み事があるんだけど…」 アスカ「なによ?えっちは今日はだめよ 昨日したから」 シンジ「そっそんなのじゃないよ。その…お小遣いを値上がりしてほしいなあって…」 アスカ「はあ~?!?!アンタばかぁ!?今の値段じゅーぶんでしょ!」 シンジ「そっそんな…。3000円じゃやっぱ無理だよ。。ダメ?」 アスカ「ダメ。無理。ふん、アンタにお金持たしたら大変な事になるわよ。 安い給料で必死にやりくりしてるつーのに、まったくアンタは、、、、」 シンジ「わかったよ…。あれ?アスカそんな鞄持ってたっけ?」 アスカ「ばっ…!!!ばか!!コレはミサトからもらったの!!」 シンジ「そういえば、クローゼットいつまにかアスカ服が増えてるような…」 アスカ「!?!?!?うっうるさいわね!いちいち細かい事気にするのやめたら!?あれもミサトからもらったの!!!」 シンジ「でも…。」 アスカ「だ"ーー!!!!!もうわかったわよ!!!!1000円だけね!!!!ハイ!」 シンジ「1000円…」 アスカ「もういいでしょ!ほら!子どもは早くねなさい!」 シンジ「わっわかったよ…」 アスカ「ふう~…指輪はバレてないわね~あぶないあぶない」 END 383 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/18(月) 20 24 17 ID ??? 「アスカ、今朝は早朝会議だろ?起きないと遅刻しちゃうよ」 「ん゛~眠い~」 「起きようよ、ほら、アスカ」 「まだ寝る~」 「いいの?じゃあ僕は会社に行っちゃうよ?」 「・・・しんじがキスしてくれたら起きる~」 「しょうがいないな。・・・ハイっ」 「いい?け、今朝の事誰かに言ったら離婚だかんね!」 「今朝の事?」 「朝のき、キスよ!」 「はいはい」 たまに甘えん坊になるアスカさん 384 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/18(月) 20 46 25 ID ??? ~ある冬の日~ 自宅で食事中の二人 「おいしっ!やっぱりこの時期は鍋よね~」「そうだね。」 「………ん?」 「どうしたの,アスカ?」 「………お肉は?」 「え?入ってない?じゃあもう無くなっちゃったみたいだね」 「………買ってきて」 「…………え?」 「買ってきてって言ってんのよ!」 「そ,そんな!あれだけ食べたんだからもう充分だろ?それに外寒いし…………」 「ハァ!?そんな理由で愛する妻の願いを断ろうっての!?」 「………わかったよ…買ってくるからちょっと待っ」 「あ!ついでにお米と醤油と味噌と洗剤と………」 「ちょっ,ちょっと待ってよ!そんなの一人で無理だよ!」 「(ニコッ)ったく,あんたも軟弱ね~仕方ないからあたしもついてってあげるわ!」 「最初から一緒に行こうって言………」 「ほら早く支度しなさいよ!ホントにアンタはアタシが居ないとダメね~」 「……うん,そうだね(ニコッ)」 「……っっ!///はっ,早く支度しなさいよ!」 ~fin~ 385 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/18(月) 20 57 59 ID ??? 帰り際にシンジが「ほ、ホテル寄っていかない・・・?」、って誘ってきても大丈夫なように ちょっと買い物に行くだけなのに勝負下着なアスカさん もちろん計画が無駄にならないようにお出かけ中シンジを誘惑するアスカさん 386 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/19(火) 01 38 56 ID ??? 夜、只今誘惑中 服装はEOEの喧嘩してる時と一緒 シンジ「洗剤洗剤~、と」アスカ「(そういえば昨日エッチしてない…)」 シンジ「魂のソフラン…あはっなんだこれ、へんな名前。買って見ようかな」 アスカ「ちょっと!へんなもの買わないでよ」 シンジ「大丈夫だよ、ソフランに間違いはないんだし」 店を出る アスカ「ねえシンジ…なにも気付かないの?」 シンジ「なにが?」 アスカ「はあ~本当鈍感ね、まっ期待してなかったケドサ。肌今日キレイだと思わない?」 シンジ「あっ本当だ…」 アスカ「ふふ~ん♪エステ行ったの。いつもよりフェロモン感じる? モデルみたいな足でしょ」シンジ「う…うん。」 アスカ「おっぱいもすごく張りがあるんだ~」 シンジ「へ、へえ~(チラ)」 アスカ「なあに見てんのよ変態!」 シンジ「ごっごめん!あれ…香水も変えた?」 アスカ「やっと気付いたの。ばーか」 シンジにくっつくアスカシンジ「あっ…(逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ!)」 アスカを連れてダッシュするシンジ アスカ「なによイキナリ!ホテルじゃないココ。」 シンジ「えっちさせてください!!!!僕は…僕は!!!アスカの夫、碇シンジです!!!」 アスカ「しょうがないわね、いいわ。特別、よ」 END 388 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/19(火) 04 25 17 ID ??? 静止した、闇の中で アスカ「スー…」 シンジ「ハァハァハァ…ハァハァハァ…ウッ」 アスカ「スー…スー…」 シンジ「ふう…(妻をオカズでオナニー…おかしいよな俺)」 アスカ「んんっ……スー…」 ユニゾン最終日状態 シンジ「………ハァハァハァ(最低だ、俺って)」 妻をオカズにオナニーはよくありますbyトゥナイト END 390 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/19(火) 12 33 23 ID ??? 静止した闇の中で シンジ「……………ハァハァハァ」 アスカ「……(ゲッ!!バカシンジの奴、オナニー初めやがった!!!)」 シンジ「ハァハァハァ……!!」 アスカ「(やけに激しいじゃない。だれオカズにしてんのかな。会社でかわいい女の部下?いやそんな情報ないし…)」 シンジ「ハァハァ…ア…」 アスカ「…(浮気してんのかな…。アタシもう特別だと思われてないのかな)」 シンジ「ハァ…ハァ…ア…スカ…ハァハァハァ」 アスカ「…(!?アタシ??アタシをオカズにしてんの!ぷぷ笑いそう…昔と同じじゃん。あーもうさっさと出しなさいよじれったいわねー)」 シンジ「ウ!!…ふう」 アスカ「…(ウ!!とか言ってるし!!!超笑いたい~!あはは!チャーーンス!いいこと…考えた♪)」 アスカ「んんっ…スー…」 ユニゾン最終日状態 シンジ「!………」 アスカ「…(さーて、あたしの事襲うのかしら。いきなりキスしてきたら驚かしてやろ…くくっ)」 シンジ「…………」 アスカ「…(…ほんとじれったいわね!まさかなにもしないつもり?このアタシが誘ってるのよ?ちったーなんかしなさいよ!)」 シンジ「……ハァハァハァ」 アスカ「(またオナニーかよ!!コイツ…)」 アスカ「…気持ち悪い…」 END 395 :名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/20(水) 01 12 52 ID ??? 朝、はじまり アスカ「バカシンジ!!!」 シンジ「……なんだよ…スー」 アスカ「なんだよとは、なによ!ほら遅刻するでしょ!お弁当作ってよ!!」 シンジ「もうすこしだけ…」 アスカ「こんのバカシンジ!!!」 ドカッ! シンジ「イテテテ…わかったよ…ほんとうるさいんだからアスカは、、」 アスカ「なんですって!!!」 ドカッ シンジ「イタタッ…あれ…あああ!!!!お弁当のオカズ買い忘れた!」 アスカ「えぇえええ!!!!なにしてんのよ!この私に昼なしで過ごせってーのアンタは!!!まったく本当アホでバカで…ブツブツ」 シンジ「だったらアスカ気付いてくれたらいいだろ!!」 アスカ「厨房担当はアンタでしょ!!」 シンジ「洗濯も掃除も僕じゃないか!」 アスカ「うるさいわね!してる!アンタが見てないだけ!」 シンジ「そんな…あーもう時間がないや!アスカ今日コンビニで買って!」 アスカ「……イヤ(プイッ)」シンジ「なっなんでだよ!」 アスカ「コンビニ弁当は体に悪い。肌悪くなる。太る。イヤ(プイッ)シンジのお弁当じゃなきゃ無理」 シンジ「なっなにいってんだよ!!!変わんないよ!!」 アスカ「絶っっ対イヤ!!早く買ってきなさいよ」 シンジ「ううっ」 END
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● ≪夢の国の地下カジノ≫は混乱していた。 ≪夢の国≫の王様が突然血まみれの衣服と共に衰弱しきった状態で落ちてくればそれも必然だろう。 夢の国のお姫様たちが地下カジノ中に異変を知らしめるように口を開く。 「王様が落ちてきたわ!」 「服に血が付いています!」 「大丈夫!?」 お姫様たちが騒ぎながらもテーブルを一つ空け、その上に夢子を乗せて介抱し、小人が夢子の症状を見る。やがて小人の表情がこわばり、 「この症状は……まさか」 いや、彼女にしては症状が強力過ぎる。そう小人が呟いた時、重量物が落下する音がまた一つ響いた。 落下音の正体は二人の人影で、 「――っつー、いきなり移動とか勘弁してくれよなー……、と」 落ちてきた人影の片方、所々穴があき、ボロボロになったスーツを着たサラリーマン風の男――浅井秀也は手に持っていた外殻の破片を放り捨て、周囲を見回し、感心したように言った。 「≪夢の国の地下カジノ≫だったか、立派だなあおい」 「貴方がたはいったい……!?」 浅井に誰何の声を上げようとした小人もお姫様も、もう一人の人影、さっちゃんを見て時が止まったかのように口の動きを止める。そんな中、 「どう、して……?」 どうして地下へ入ってこれたのか? テーブルから下り、手を着いて身体を支えながら、夢子はその理由を半ば確信しつつ問う。答えはさっちゃんの口から発された。 「だって、ずっと前にもらったんだもん。地下トンネルのお兄ちゃんに、ここに入る権利を」 出てきた都市伝説名は夢子にとっても覚えのあるもので、 「あの人、から……じゃ、あ」 「思い出した?」 「確信しま、した」 夢子は憶えている。自身がまだ夢の国の創始者に操られて間もないころに戦い、殺した契約者たちを。 じゃあやっぱり。と小人や姫たちが囁き合う。夢子はそれら全てを代表するように、言った。 「≪さっちゃんの歌の四番目≫ですね」 それに「うん」と答え、さっちゃんは俯き、呟いた。 「ただいま」 発された帰宅の言葉。二度の闖入者にざわつく≪夢の国の地下カジノ≫。 事情が把握しきれず、動けない彼らの隙をついて浅井が動いた。為す動作は簡潔だ。≪夢の国≫の王を殺す。ただそれだけ。他の一切を無視して、何かに手をつくことによってようやく身体を支えて立っている夢子へと能力によって人外の威力に強化されたその剛腕を―― 「――受け止められれば、幸せだな?」 受け止める青年の姿があった。 ……なに? 浅井は一瞬目を見張る。視界の隅では彼が首から下げている二つのペンダントがそれぞれの光を放っており、拳の重さに顔を顰める青年の足元は男の打撃のあまりの重さに床を割り、沈みこんでいる。 能力は発動してるな。 一考。 「契約者か」 「都市伝説だ」 浅井が逆の拳を持ち上げた時には青年のもう片方の手に白い光があった。 「破ぁ!!」 青年の気合い。浅井はとっさにスーツの腕部分を都市伝説の能力で変異させ、堅い外殻にして纏い防ぐ。しかし青年から放たれた光弾を受けた外殻は弾け飛び、体も吹き飛ばされた。 ソファを破壊して止まった体を起こし、浅井は口を開く。 「どけっ! その王様は俺たちの仇なんだよ!」 叫びと共に口から熱線を放とうとして、 「――ガッ、フ!?」 不意の痛みと共に血がこぼれ出た。 「……チッ、やっぱ無理か」 そう吐き捨て、もう片方の腕のスーツの袖で口を拭い、突然割って入ってきた青年を睨む。 二十代前半といったところだろうか。その年代の者にしては少し落ち着いた印象を受ける容姿。黒髪を先程自ら放った光の余波で小さく揺らし、端整な顔立ちにどこか超然とした雰囲気を纏い、鋭い目で浅井を射抜くように見据えている。 睨みあうこと数秒、二人はほぼ同時に言葉を放つ。 「契約している都市伝説と能力が分かれば幸せだが」/「ついうっかり能力とか話してくんねえかな」 青年の体から一瞬フラッシュのように光が、浅井の首に下がったペンダントの片方から発されている赤い燐光が一瞬その輝きを増した。……が、 「やはり(やっぱり)都市伝説や契約者には効きづらい(づれえ)か」 そう互いが呟いていると、 「Tさん! 夢子ちゃんが!」 「分かってる」 青年が肩口までの長さの黒髪を適当にまとめ、頭に人形を乗せた少女の言葉に返答した。そうしつつも浅井の睨む眼光は揺るがない。 一筋縄じゃあいかねえか、めんどくせえ……。 浅井はそう思い、さっちゃんへちらりと視線を向けた。 ● さっちゃんは周りを見回し、半ば呆然としていた。 「なんで……」 なぜ≪夢の国≫の王を皆こんなにも心配するのだろうか。 「それに、おとーさんを止められる人がちょうど居るなんて……」 それだけの物理的な力を持っている者が居るなんて、なんという偶然だろうか。 「……まさか」 はっとして目を向ける。 ≪夢の国≫の王様の首から一つ、先程のパワーストーンとは違う、力のある装飾品の気配を感じた。それは以前見知っていた都市伝説が持つ気配と同じもので、 頭に人形を乗せた少女に支えられ、身を折った≪夢の国≫の王様の胸元から装飾品が――≪カーバンクル≫の毛でできたお守りが零れた。 「≪カーバンクル≫のお兄、ちゃん?」 それは≪カーバンクル≫本体のような強烈な幸運をもたらすわけではない。与えるのはささやかな幸運のみ。しかしそんなものは関係がない。さっちゃんは≪カーバンクル≫のお守りが運気を与えていることを見てとり、その意味を理解し、しかし認めたくなくて、周りの皆を見、声を放つ。 「みんな! この人が何をしたかわすれちゃったの!?」 声が地下カジノ内に反響し、ザワついていた地下カジノから音が消えた。そんな中、青年の声が諭すように響く。 「それは今の≪夢の国≫の王――夢子ちゃんがその意思で為した事ではない」 そうして語られたのは≪夢の国≫にまつわる一連の事件の顛末。夢子の立場。そして―― 「夢の国の創始者……」 青年は頷き、 「それが夢子ちゃんを操っていた犯人で、お前たちの仇だった存在だ」 浅井は依然青年を睨み据えたまま問いかける。 「その話、本当か?」 浅井の言葉を受け、青年はさっちゃんへと視線を向ける。 「≪さっちゃんの四番目≫。夢子ちゃんに≪カーバンクル≫の加護があり、かつて敵対していたはずの夢の国の姫君やこの地下カジノが彼女を拒んでいない意味。君になら分かるな?」 青年の言葉にさっちゃんはしばし沈黙、地下カジノ内の自分たち以外の全ての存在が≪夢の国≫の王様を守ろうとしているのを確認して、頷き。 そして小さく声が発された。 それは、 「……そんなの」 少しずつ大きくなり、 「そんなの」 感情がにじみ、 「そんなの!」 最後は、どうしようもない心の叫びとなった。 「そんなの、――――――――ゆるせないよっ!」 ● 「サッちゃんはね、バナナが大好き! ほんとだよっ!!」 そうさっちゃんの叫びが響いた直後、青年――Tさんは体に不調を感じた。 周りでも次々とお姫様たちが倒れていく。 「これは……」 「さっちゃんはねー、バナナが大好きほんとだよー」 自らの突然の不調を訝しむ青年の耳に浅井が口ずさむ童謡が聞こえてきた。 「だけどちっちゃいから、バナナを半分しか食べられなーいのー」 そして浅井はにやりと笑う。それは意外にも人好きのする笑みに見えた。 「可哀相だと思わねえか?」 同意を求めるように言われた言葉に青年はああそうか。と思い、 「バナナを半分しか食べれないのはさっちゃんが病気でそれだけしか食べることができなかったからという……」 「ご名答」 ≪さっちゃんの歌の四番目≫が契約して得た能力ってやつだ。二番目の歌詞だっけか? と浅井は言うと、 「さってと」 ソファを蹴飛ばし、足元がおぼつかなくなってきた青年へ突っ込もうと足を折り曲げ力を溜め、 眼前に立ちふさがった夢子を見て驚きの声を上げた。 「ぅおっと!?」 浅井はとっさに後方に跳びはねて夢子から距離をとる。夢子は憔悴しきった顔で、それでも目だけは真っ直ぐに浅井を見ていた。 「おいおいおい、ブーストされた二番だぞ? 多少緩めたって何万人規模で呪殺できる負荷がかかってるはず……」 浅井の戸惑いを含んだ呟きに夢子は声を振り絞って答えた。 「王……様、ですから」 手にネヴァーランドの永遠の少年が持つ短剣を構え、 「私の力が及ぶ限り皆さんを護る義務が、私にはあるんです。そも……そも、皆さんをこんな目にあわせているのは私の、せいですしね」 途切れ途切れの言葉で告げる。と、 「解呪できれば幸せだ」 声に合わせてガラスの割れるような音が響き、全身に淡い光を纏わせた青年がゆらりと立ち上がって身構えた。 「……やるねぇ、青年」 夢子と、解呪を連続で宣言する青年を交互に見ながら言う浅井に青年は頷き、 「まあ、身体の構造自体をいじる必要のない状態異常ならばなんとかな」 そうかい。と言い捨てて浅井はさっちゃんへと声をかける。 「さっちゃん! 呪いは≪夢の国≫の王個人に全力でかけ続けろ! 少しでも緩めると起き上ってくるぞ!」 「うんっ!」 さっちゃんの返事と共に再び夢子は自らの足で立つことすら危うくなり、危うく倒れかかるところを青年に掴まれ、背後のソファへと放り投げられた。 青年は夢子の扱いに文句を言っている少女の言葉を聞き流しながら、余韻として残る倦怠感を振り払うように首を振り、さっちゃんへと視線を向ける。 浅井は周囲で倒れていた者たちがよろよろと起き上がってくることを確認。更に、≪夢の国≫内部で人々の避難と記憶処理にあたっていたマスコットたちが≪夢の国の地下カジノ≫へと次々現れるのを見る。 次々と増えていく≪夢の国≫の協力者たちを見て、彼は判断した。 「一旦退くぞ」 「おとーさん、まださっちゃんやれるよ!」 抗議の声を上げるさっちゃんへと浅井は口元の血を拭いながら告げる。 「俺がしんどいからな」 そう言ってさっちゃんの居る所へと歩いていく。 「待て!」 青年がそれを止めようと光弾を放った。 「っ!」 浅井はそれを腕で殴り、防ぐ。とっさに纏った外殻の破片が飛び散るが、それだけだ。そして残りの距離を一足飛びで近づき、さっちゃんの腕をとる。 「どっから逃げりゃいい?」 浅井の質問にさっちゃんはどうして皆が自分たちの復讐を分かってくれないのかと泣きそうな顔になりながら、 「こんなの……いらないっ!」 叫ばれたその言葉と共に二人の姿はぶれて、地下カジノ内から消失した。 「消え……た?」 青年の契約者の少女がその光景を見て端的に言う。 「地下への権利を、……放、棄されて、しまいました」 夢子はそう言うと、激しく咳き込み、床へと倒れ伏した。 「夢子ちゃん!」 少女が、お姫様が、住人が、マスコットが、皆夢子へと駆け寄る。 「マスコットがいきなり血相変えてやってくるから何かと思えば……」 その光景を眺めながら青年は苦く呟く。 「罰を与えに来てしまったか……」 沈んだ調子で言われた言葉は地下カジノの喧騒に溶けた。 前ページ次ページ連載 - Tさん
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シーン2 「アミナス山頂」 暗闇の夜。 馬車から降りたイルドルフを土砂降りの雨と叩きつけるような風が襲う。 聖都から離れたアミナス峠の山頂は、灯り一つ無い。 目を開けるのも困難な風雨だが、イルドルフは対峙するフード姿の四人の距離がはっきりと分かった。 四人とも、己の潜在的な戦闘能力を隠そうとしていない。 イルドルフは、濃厚な重圧が支配する空間に足を踏み出す。 「この私を・・・」 ぬかるむ地面に革靴を沈めながら、イルドルフは静かに問いかける。 「イルドルフと知ったうえで、この場所にいるのだな?」 「もちろんです。法王庁第七課課長イルドルフ司祭」 フード姿の一人が、一歩前進しながら答えた。 それだけで、イルドルフを包む重圧が一段と濃くなる。 「一年前、あなたとあなたの率いる第七課には、大変お世話になりました」 口調こそ礼節をなぞったものだが、フードの下の口元は、笑いの形に歪んでいる。 「だからこそ、イルドルフ様には、直接挨拶にあがりました」 女の細い指が、ゆっくりと顔を覆うフードをはずす。 壮麗な美貌と、闇夜でもはっきりと分かる輝くばかりの銀髪が、こぼれた。 「ああ・・」 馬車の小窓から様子を伺い、練成印がいつでも組める準備をしていたキスリングが、悲鳴にも似た声をもらした。 「どうした、お嬢さん?」 愛用の旧式ライフルを構えていたベルンが、キスリングに振り見向いたが、その皺が刻まれた顔が曇る。 キスリングは、暗闇でもはっきりと分かるほど脅えていた。 血の気の引いた頬。 練成印を組む手と、国家第二階位の証である‘銀枝の紋章’が刺繍されたローブに身を包んだ細い肩が、小刻みに震えている。 「どうした!?しっかりしろ!」 ベルンの叱咤の声も、キスリングの耳には届いていなかった。 「あれは・・・」 キスリングは、思い出す。 一年前、の夜を。 ‘法王庁の最も長い夜’と呼ばれている夜を。 キスリングの生涯で、最も大切なものを失ったあの夜を。 錬金術師協会本部の賢者の塔。 待機を命じられていた自分を含め十数人の錬金術師たちは、塔の屋上へと駆け上がった。 敬愛する師の命令を初めてやぶり、月夜の屋上へと駆け上がったキスリングの目に飛び込んできたのは、国家第一階位の導服を赤く染め、倒れ伏した師の姿だった。 そしてその傍らに佇む、銀色の‘闇’。 「・・・逃げて」 顔を上げると、キスリングは、馬車の小窓に倒れ掛かるように身を寄せる。 もう二度と、自分の目の前で、大切なものを失いたくなかった。 「逃げて、イルドルフ様!」 キスリングの悲痛な叫びは、豪雨と暴風に消され届かなかったのか、イルドルフの広い背は微動だにしなかった。 「直接お会いするのは、これが初めてですわね」 フードをはずすと、吹き荒れる風雨が美貌の上で銀髪をかき乱す。 「・・・‘逆十字’」 闇夜でも艶やかに輝く銀髪の下に刻まれた紋章が、イルドルフに感情を抑えた声を吐き出される。 「‘彷徨える逆十字団’の‘銀水晶’と申します。・・・お目にかかれて光栄ですわ、イルドルフ司祭」 「生きていたか、‘No2’。すると後ろの者達は・・・」 「新生逆十字団の新たな死徒ですわ」 銀水晶の含みのある声に、背後に控える三つのフードが揺れる。 笑っているのだ。 銀水晶の顔にも、微笑が浮かぶ。 「お聞き下さい、イルドルフ様」 舐め回すような視線と供に、豪雨の中、銀水晶は高らかに宣言する。 「我ら逆十字団は、くだらぬ弱き世界を我がもの顔で統治してきた法王庁を、‘逆十字’によって裁きます。 あと半年のうちに法王庁は、‘逆十字’によって裁かれ、焼かれる‘審判の日’を迎えるでしょう」 「やってみるがいい、逆十字団。お前たちが思っているほど、法王庁は脆弱でも欺瞞に満ちているわけでもない」 傲岸にして不遜な銀水晶の言葉を、イルドルフの静かな自信が受け止める。 「信念と志を持つ者。道は違えても、志の根底を同じくするものは大勢いる。お前の言う‘くだらぬ弱き世界’で精一杯生きている人々を守ろうとする者は、法王庁にも、法王庁の外にも大勢いる。 その一つ一つは、‘逆十字’如きに裁けるものではない」 即座に返答したイルドルフに、銀水晶は胸中で賛辞を贈る。 イルドルフの言葉は、虚勢や理想論ではなく、本物の自身が込められている。 事実、イルドルフ率いる第七課は、一年前に‘全てを知るもの’を筆頭とした旧逆十字団を退けている。 だからこそ、直接会いに来た。 「言いたいことはそれだけか、銀水晶?」 「いいえ、はじめに言ったでしょう。今日は挨拶にあがったと」 「確かに」 豪雨の中、イルドルフに向かい、ゆっくりと近づく。 型も、間合いも考慮していない、無防備な歩き方だ。 「では、させていただきます、イルドルフ様」 闇の中でもお互いの表情が識別できる距離まで近づくと、しな垂れかかるようにイルドルフに身を寄せる。 「・・・あなたへのお別れの挨拶を」 囁くような声が届くのと同時に、銀水晶の右腕に形成された‘夢幻刃’が、イルドルフの左胸に伸びた。 銀水晶の指先に、針の先程の粒子が灯る。 理論上、『物質界の安定は不可能』とされた多元粒子が、銀水晶の体内に埋め込まれた『永久動力供給機関‘銀水晶’』によって固定化され、硬質な輝きを放つ‘夢幻刃(フェアリーテイル)’を形成する。 上位粒子で形成された、物質界のあらゆる存在を切り裂く‘夢幻刃’を銀水晶は、イルドルフの左胸に滑り込ませた。 「‘銀水晶’よ。一つだけ言わせてもらおう」 イルドルフの発した声は、依然として落ち着きに満ちたものだった。 ‘夢幻刃’が、左胸を貫く直前で動きを止めている。 「甘く見るな」 イルドルフの右腕に握られた短杖が、‘夢幻刃’を押さえ込み、微動することも封じている。 銀水晶は、僅かに眼を細める。 「甘くみているのはどちらかしら?新生逆十字団は、不完全な‘No1’に率いられていた以前の逆十字団とは違うわ」 銀水晶の嘲笑に、イルドルフは僅かに眼光を細く絞った。 呼吸をする間も無く、銀水晶の左腕の手刀が喉元へと伸びる。 「さよなら、イルドルフ」 「遅い」 イルドルフはぬかるむ足元に体を滑らせるよう避けると、その勢いのまま足蹴りを放つ。 軸足を払われ、転倒する銀水晶にイルドルフは短杖を振り下ろす。 「子供だましね」 眼前にかざした‘夢幻刃’が短杖と交差した瞬間、二人を中心に、水滴が波状に飛び散る。 「おおお!!!」 イルドルフの魂迫の叫びと供に、短杖を握った右腕の袖が吹き飛び、光り輝く紋章が現れる。 紋章の発光が短杖を包み込むと、輝きそのものが凝縮され‘夢幻刃’の表面に、稲光の様な皹が走る。 「‘夢幻刃’が!?」 直後に無数の氷欠片のように中空に散った。 「・・・砕けた」 銀水晶は、初めて動揺に近い表情を見せた。 転倒した泥の中で、転がるようにして距離をとろうとする。 同時に静観の構えを取っていたフード姿の三人が一斉に動き始めるのを、イルドルフの視界の端が捉えた。 銀水晶を仕留めようとすれば、三人に対し側面を晒す事になる。 「だが・・・」 今のタイミングならば、銀水晶に致命傷を負わせることは十分に可能だ。 イルドルフは迷わず、追撃に移る。 フード姿の三人から放射される重圧が一段と濃くなり、そして、イルドルフの足元に側面からの着弾により爆ぜた。 「これは!?」 土砂と供に後方に吹き飛ばされながらも、イルドルフは、爆発はベルンが使用する炸裂弾によるものである事を確信する。 突如間合いの範囲外に外れたイルドルフに、フード姿達の動きが一瞬止まる。 「‘威褄の奔流、硬堅の賢者の名を持ち、四界の理を示せ’」 馬車の車軸の音と供に、キスリングの練成詠唱が響くと、フード姿達の足元の土砂が幾重にも絡まりあいながら‘檻’を形成する。 「イルドルフ課長!」 レスターが叫びながら馬車を牽引する二頭の馬を、片膝をついたイルドルフの脇へと向かわせる。 「せいっ!」 馬車から半身を乗り出したベルンが、イルドルフの腕を掴み、強引に馬車の内部へと引き釣り込む。 馬車は速度を増し、豪雨の中を麓へ向かい疾走する。 「ご無事ですか、イルドルフ様!?」 ずぶ濡れのイルドルフの体に、キスリングが乾いた布を当てる。 「ああ、問題、ない」 イルドルフは答えたが、右腕の根本を抑え、その体は小刻みに震えていた。 「見せてみろ」 「平気だ」 イルドルフの答えを無視し、ベルンは強引にイルドルフの右腕を取る。 「ぐっ!」 「きゃっ!」 苦悶の息がイルドルフの喉から漏れ、キスリングが息を飲む。 焼けた鉄板を押し付けられた様に右腕手首の‘マトレイヤの紋章’付近が爛れているだけでなく、イルドルフの全身は激しい倦怠感に支配されているのも分かった。 「年甲斐もなく、無理をしたからな」 顔を顰めながらも、イルドルフは笑った。 「逆十字団の銀水晶。刺し違えても仕留めたかったが、この様だ」 「そんなに命を粗末にしたいのか?」 イルドルフの腕を放し、愛用のライフルを手に取ったベルンが発した声には、抑揚というものがなかった。 「‘マトレイヤの紋章’は、お前さんにしか適合しなかった‘アーティファクトの効力を増加、拡大させるアーティファクト’だ。だが、発動の際には、お前さんの体が極度の負荷に晒される。・・・過去の過度の使用が原因でな」 ライフルに炸裂弾を再装填しながらのベルンの声は、更に低くなった。 「まして先ほどの使い方、銀水晶の‘夢幻刃’が砕ける前に、お前の体が焼き切れるところであったぞ。強行と無謀を穿き違えるな、イルドルフ。・・・そんなに命を粗末にしたいのか?」 対するイルドルフの応答は、素っ気無いものであった。 「自分の命の使いどころは、自分で決める」 「愚か者!!」 ベルンの一喝が、馬車の内部に響いた。 「お前が良くても、残されたものはどうなる!お前を必要としているものはどうなる!お前が交わした誓いはどうなる! お前は、逆十字団程度で、その身に背負ってきた大切な物を下ろすつもりか!?」 普段の好々爺然とした立ち振る舞いからは、想像もつかないベルンの激昂に、キスリングは驚いたが、同時に納得もいった。 事情を知っていたら、感情を爆発させていたのは、キスリング自身だったかもしれない。 座席の下から薬箱を取り出しながら、精一杯、落ち着いた声を出す。 「戦うな、とは言いません。逆十字団を阻止したい気持ちは、私たちも一緒です。麓までいけば聖輪騎士団と合流できます。それからでも遅くありません。手勢を整えてからでも間に合います。・・・‘志を供にするものは、大勢いる’、違いますか?」 「・・・そうだな、すまない」 イルドルフは眼を閉じ、頭を下げた。 ベルンとキスリングは顔を見合わせ、安堵感の含んだ笑みをもらす。 「お話がまとまった早々で申し訳ありませんが・・・」 御者席から、小窓を通じてレスターが視線を馬車の背後に向ける。 「追手ですぜ」 >シーン3へ続く
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第六回定時放送 ◆/Vb0OgMDJY 恐慌、 困惑、 激怒、 失望、 消沈、 様々な感情が私の中に溢れ出して、やがてそれは一つ文章を形作った。 (駄目だこいつら…早く何とかしないと…) まるで熱病に冒されたかのように、激しい頭痛が襲い掛かって来る。 (まさか…) 驚愕が全身を支配して、指一本動かすことが出来ない。 (まさか……) 体中の力が抜けて、自然とコンソールに体が傾いて行く。 (本気で言っていたなんて……) 俯いて、両手で頭を抱えた。 何となく嫌な予感はしてはいた。 でも、筆談の内容までは解らないし、そんなことは無いだろうと思っていた。 口では最低限のことと、疑われない為の雑談を行い、肝心の内容はもっと確信に迫る物だと思っていた。 いや、言い直そう。 肝心の内容はもっと確信に迫る物だと『期待』していた。 が正しい。 ……その期待はあっけなく裏切られた訳だけど…… (もう…駄目かも……) 全身を虚脱感と倦怠感が襲う。 いや、この程度で駄目だなんて本気で思ってないよ? でも、 でもねぇ、 今一番期待できるチーム、ううん、今となっては唯一期待できるチームと言ってしまえるかもしれない人達から、こんなアホな意見が飛び出そうとは……。 (逆に、聞かないほうが楽だったかもしれないわね……) さっきまで、 そう、ほんの数分前までは、この幸運に感謝していた。 首輪解除を期待でき、高い戦力を持つ、宮小路瑞穂、一ノ瀬ことみ、アセリアの三人と、 ノートパソコンを所持しており、羽入を通してこちらの意思を伝えられる相手、古手梨花。 この双方の遭遇は、間違いなく僥倖だった。 古手梨花の首輪を通して、宮小路瑞穂の声が届いて来るまでは。 あそこで彼女達が遭遇さえしていなければ、こんな絶望を覚えずに済んだかもかもしれない。 転送装置の影響で盗聴器が使用不能になった事で、希望を持ち続けられたかもしれない。 彼女達は真実に近い場所に居るという希望に浸り続ける事が出来たかもしれない。 …… ………… ………………いや、落ち着こう、冷静に、COOLに、KOOLになれ鈴凛。 今なら、今だからこの程度で済んだ。 これから先、もっと重要な、それこそ一分一秒が生死を分ける時に、あんな勘違いをされていて、それでジ・エンド。 と、いう事態が未然に防げた。 その幸運に感謝するべき。 それに、口で言っている内容は全てブラフで、本当の考えを筆談で語っている可能性も…… うん、無い。 ……でもでも、羽入が梨花に接触さえすれば、正しい情報が伝わるのだから問題は無い。 羽入任せという時点で激しく問題だらけのような気もするけど…… て、言うかそもそも羽入が微妙なアイテムばかり選ぶのが悪い。 私には理解出来ない深遠な理由があるのかもしれないけど、それにしたってもう少しなんとかならなかったのか。 特にあの国崎最高ボタンは意味不明すぎる。 ことみさんと瑞穂さんが躊躇うことなく否定した時は思わず突っ込んでしまったけど、冷静に考えると多分私も否定しそう、というかする。 あんだけ仰々しい暗号文を書いといて、実はただのダジャレでした、と言われて納得は出来ない。 アレを選ばないといけない理由でもあったのだろうか? (そういえば、そもそもアレは誰が造ったのかしら?) 支給品は、基本的には武器等の殺し合いに役立つものと、参加者に関係のあるアイテムが選ばれる。 この場合のアイテムとは所持品の事で、服とかアクセサリーとか、あるいは趣味で愛用している物品を意味する。 なので、私も見せしめになった少年の趣味であるゲームに偽装して、特殊プログラムを忍び込ませたのだが……、 アレは、国崎往人本人とは何の関係も無いし、作られた記録も無い。 殺し合いに使える可能性は……まあ、ゼロじゃないけど使う人間はいなそう。 (だから、誰かがわざわざ作ったのだろうけど……) 目的がまるで見えてこない、と考えた所で、 「鈴凛、ちょっといい?」 コンコンというノックの音と共に優さんの声がした。 「えっ、あっはい、……なんですか?」 なんだろう? 倉成武の様子でも聞きに来たのかしら? 慌てて立ち上がり、ドアを半分くらい開け、そこに立っていた優さんの顔を見た。 表情は……駄目、読めない。 ただまあ、纏ってる雰囲気からそんなに重要な問題じゃなさそうかな、と思った所で、 「司令が、読んでるわよ」 優さんの口から用件が発せられた。 鷹野が? 一瞬、”ヤバッ?”と思ったけど、どうも優さんの態度からはそんな気配がしない。 となると……なんだろ? また、トロッコ関係かな? と、タイムリーなネタを思い浮かべていたけど、 「『次の放送を、やってみない?』だそうよ」 優さんの一言で全てが凍り付いた。 は、 何…を、 今…何て…………言ったの? ……放送……って無論あれだ。 この時間帯に誰と誰が死んだ、というのを知らせる為の物。 それを……私にやれ? 私に…… 私に……… 私に、……千影が、死んだ、事を、口にしろ…って言うの? 私の、罪を、悲しみを、後悔を、再び、味わえと? 「馬……鹿な、こ…と……言わないで!」 その言葉を発した相手でもないのに、優さんに叫んだ。 馬鹿に……ううん、楽しんでるんだ! 私が苦しむのを、苦しんでいるのを! だから……だから、そんな事を言って、弄ぶつもりなんだ! 私は、私は…… 「まあ、そうよね。 姉妹が殺されて、それを普通に放送なんて出来る訳ないわよね」 再び優さんの声がした。 それで、少し…少なくとも表面的には、落ち着いた。 「うん…、だから……」 「どんな事を口走ってしまうか判らないものね」 お断りしますと続けようとして、遮られた。 「……え?」 「自分の姉妹が死んだのに、なんでまだ他の連中は生きているのか、なんて口にしてしまうかもしれないわね」 「何……を言って?」 「貴方達がさっさと死んでくれれば、私の妹は死なずに済んだとか」 「何を、言っているの! 優さん!!」 再び込み上げる怒りに任せて、優さんの服を掴み上げる。 私は、そんな事は、考えてなんか…… 「貴方達だけ首輪を解除するのは気に食わないから爆破しちゃうとか」 けど、優さんは気にせずに続ける。 この…… 「何人か、何してるか判らないから念のため殺しちゃうとか。 首輪を確保しておきながら、間に合わなかったから殺しちゃうとか。 “つい”そういう“感情に任せたこと”を口走ってしまうかもしれないしね」 (え……?) 黙って、と言おうとしたところで一気に頭が冷えた。 何? “つい” “感情に任せたこと” ……え? でも……ううん、確かに、それなら、けど…… 「それで、どうするの?」 少し思い悩んだ所で優さんの声がした。 (……そっか、そういう意味だったんだ) 理解、出来た。 私に告げている訳だ。 “チャンスよ”と。 確かに、今なら、いえ、今この時にしか出来ない行為。 姉妹を全て失い、少し錯乱気味な研究班の主任。 それが放送をするなら、何か変な事の一つや二つ喋ってしまうかもしれない。 そう、“何か” 恨み言かもしれないし、何か重要な機密かもしれない。 つまり、利用しろという訳だ。 千影の死という結果を、機会として利用しろと、そんな残酷な事を言っているわけだ。 私の中に、先ほどまでとは違った怒りが込み上げて来た。 最も、そんなものはあっさりと受け流されておるみたいだけど。 そうして、私は 「いえ、やっぱりやります」 と口にした。 その時、少し、優さんの感情が見えた気がした。 「参加者の皆さん、定時放送の時間だよ。 今回は私、鈴凛が担当します。 ちなみに皆さんの首輪は私が作ったものなんだけど、気に入ってくれてるかな? もう少しカッコいいデザインにしたかったんだけどね。 と、まあ余計な話は抜きにして、まずは禁止エリアを発表するよ。 十四時からE-2 十六時からB-6 もう一度言うよ。 十四時からE-2 十六時からB-6 ちゃんと記入出来た? 間違っていても添削とかはしてあげられないから注意してね。 では続いて死亡者を読み上げます。 …高嶺悠人 小町つぐみ 北川潤 二見瑛理子 ……千、影 朝倉純一 佐藤良美 土永さん なんだか知らないけど、今回は頑張ってるみたいだね。 私の知り合いも皆死んじゃったなあ。 残念。 でも、あと一息だからここまで来たら頑張ろうね皆。 支給品とかをちゃんと集めれば、楽勝だよ。 強力な武器とか、お気に入りの物とかがあるからね。 疲れたら、それらで気合を入れたり、適当にゲームとかして遊んだりしてもいいかもね。 て、そんなことしたら殺し合いにならないか、難しいね。 ……なんかよく判らなくなったので、この辺りで終わりにするよ。 それじゃあ、また次の放送で」 ……上手く、いったかな? こればっかりはなんとも言えない。 ただ、羽入が接触してくれれば、そこから私の意図を読み取ってくれるかもしれない。 そんな事を考えていると、 「ふふっ、随分妹想いなのね」 今一番聞きたくない声がした。 「……やらないか? って言ったのは司令だよ? …それに」 「……それに?」 一瞬、目を瞑る。 私は、既に汚れきった身だ、今更外面なんて気にしない。 「もう、誰が生き残っても興味がないから。 ううん、むしろ一度くらいは禁止エリアでの首輪の動作テストをしたいかも」 何もかも失って、壊れてしまったヒト。 ゲームの駒に興味のない、冷徹な人間。 そういう風に装う。 「は、」 鷹野は一瞬呆けていたけど、ややあって、 「あは、はははははは! そう、ようやく貴女もこのゲームが楽しめるようになったのね」 楽しそうに、 心底楽しそうに語りかけてきた。 「別に、楽しんでなんかいないよ、ただ、誰がどうなっても興味がないだけ」 たとえ演技でも、それだけは許容出来なかった。 だから、続ける。 より、私らしい理由を 「今私に興味があるのは、首輪の完全性。それだけ。 それを上手くやれば、次以降のゲームで他の姉妹が選ばれても、私の権限で除外出来るようになるかもしれないでしょ」 伝えた。 「あら、そうなの、勿体無いわね。 でも、それじゃあ仕方が無いわね、せいぜい頑張りなさい。 貴女の望みが叶うように」 それだけ言って、鷹野は向こうを向いた。 話は終わりということみたい。 私も、鷹野に用なんてない、だから、すぐさま司令室から出ることにした。 ……出来ることはした。 後は、祈ることしか出来ない。 どうか、この仕組みが、今回限りでありますように 198 小さなてのひら/第2ボタンの誓い(後編) 投下順に読む 200 ブルーベリー・パニック/決戦の幕開け~宣戦布告~(前編) 198 小さなてのひら/第2ボタンの誓い(後編) 時系列順に読む 201 ひと時の安らぎ 198 小さなてのひら/第2ボタンの誓い(後編) 鷹野三四 200 ブルーベリー・パニック/決戦の幕開け~宣戦布告~(前編) 193 贖罪/罪人たちと絶対の意志(後編) 鈴凛 200 ブルーベリー・パニック/決戦の幕開け~宣戦布告~(前編) 193 贖罪/罪人たちと絶対の意志(後編) 田中優美清春香菜