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悟史が行方不明になったというのはもう村中の皆が知っていた。 けれどここ何年か続いていた綿流しの日の事件の所為か オヤシロ様の祟りとか、鬼隠しとか“そういうこと”だと皆思っていた。 別に私は誰がやったとか、オヤシロ様とかそういうのはどうでもよかった。 悟史は仲の良いクラスメートだったし 好きか嫌いかと言われたら好き…だった。大好きだった。 でも詩音が悟史の事を好きなことは知っていたし、 そして私は園崎家の次期頭首だ。 北条家や悟史のために泣くと詩音や婆っちゃを裏切るような気がした。 悟史が何処かへ行ってからもうすぐ一年だ。 ――四年目の連続殺人・失踪事件…。 ざわ、と風を感じた 頭の高い位置で結んだ髪の毛が揺れ、うなじを生温い風があたった。 本能的にバッと振りかえる 何も居ない 何も居ない。 あるのは広く暗い空に浮かぶ月だけ。 黄色く少しだけ霞んだ月。 悟史の髪もこんな色だった気がする。 そう考えるとじわりと涙が滲む。 「ちょっと…何泣いて…しっかりしろ 園崎魅音!」 自分に渇をいれ、涙を拭う。 拭った指の先から何か見える …人? 100mぐらい離れている…だろうか 目を凝らせばギリギリ見える、小さい人影。 なんだかひどく見覚えがある気がした。 まさか・・・! その答えを思いつく前に走り出す 「悟っ、史……!?」 そばまで行ってはぁ、と溜息をつく。 人影なんかじゃなかった ただの案山子。 「皮肉だなあ…。悟史と見間違えるなんて しかも案山子…」 あの時の会話を思い出す。 ―魅音は? ―私? ―僕が他人と入れ替わってたら 「はぁ…」 失踪する一週間前に悟史は私のうちへやってきた。 なにか深刻な様子だったのでとりあえず、と行って散歩を提案した。 ――園崎のうちで話すのも気が引けたのもあった。 夜だし誰にも会わないはずだ。 二人とも無言で歩いていると 悟史がぽつりぽつりと話し出す 沙都子を庇うのが、叔母からの虐待が 全部 辛いと。 何かに怯える様に悟史は何度かオヤシロ様 オヤシロ様とつぶやいていた。 「枕元まで…来るんだ。きっと僕…」 私は何かにとり憑かれたようにブツブツと言う悟史を抱きしめた 悟史は少し驚いて、それから唇を重ねてきた。 私は悟史の事を好きだったし、 詩音や婆っちゃに対して凄く罪悪感があったけど 悟史が楽になれるなら・・・と抗わずにいた。 少しすると悟史の舌が入って来る。 ぎこちなく私も舌を歯の間を割って入れる。 がち、とたまに歯と歯がぶつかる。 舌と舌が絡み合う。 ねちゃ、ずちゅ と水音が響く。 どちらからでもなくそれを止めると二人の間に銀の糸が引く。 悟史はじっと私を見つめて なんだか照れて目をそらすと悟史に押し倒された。 少しだけ戸惑ったが若い男女が二人きりでやることなんて決まっているし、それに悟史のことは好きだし…。 「さと…し、一応此処 外だから…さ」 押し倒された格好だとどうも悟史が陰になってよく見えない。 表情は分からなかったけど、少し困っていたのだろうか? 「むぅ…だって 魅音の家も僕の家も駄目だろ?」 「家と言えば 沙都子は?おいてきた…の?」 「……ごめん」 「ななななななななっななんで私謝られるの!?」 しまった。さっきまでのムードが台無しだ 「いや…うん…えっとまあ…むぅ…」 「とととととりあえずね!うん!場所変えようよ 人目のつかないとこ、にさ ね?」 「むぅ…仕方ないな…」 と悟史は短く言ってから屈みこみ、 私の胸のあたりと足をつかんでぐいっと持ちあげた えええええええ何何何何これお姫様だっ・・・ 「さ……とっ悟史!?自分で歩くから!降ろして!」 「いいよ 僕がやりたいだけだから」 にこ、と微笑んでこっちを見る。 「う、うぅぅ…で でも私重いって!」 「そんなことないって 全然重くない」 「うぅ…そんなこといったって…」 「あはは、どこまで運ぼうか?」 さっきのとり憑かれたような悟史ではなく普段の明るい悟史だった。 「ど、どこまでって…。なるべく目立たない……とこ」 「よし じゃあそこの木のかげでいいかな」 「ちょちょちょちょっとそこは十分目立つ!」 「むぅ…魅音はちょっと文句が多いな」 悟史はそこで一度言葉を止め、私の胸に手を当てた。 少し探るように揉んでから乳首を捻った。 「うぁ・・ふぁ・・・」 下着を着けていない、ぶっちゃけノーブラな私はもろにそれを感じて声をあげた。 悟史は相変わらずにこにこと笑いながら乳首転がすようにを弄んでいる。 「あはは 可愛いな、魅音は」 「ちょっと悟史 悪ふざけは…」 と 言いかけたところで乳首をつねられる。 「ひゃ!」 「ね、この木のかげでいいよね」 「うぅぅ…」 なんだか有無を言わさぬ悟史の言葉に私は呻くことしか出来なかった。 悟史は私を木のそばまで運ぶと木の前に立たせた。 少しだけ見上げる位置に悟史がいて、悟史も男の子だもんなーと実感した。 「魅音」 「ん?」 名前を呼ばれたので答えるとその口を塞がれた。 「ん…」 さっきよりは優しい触れるだけのキス。 キスを続けながらも悟史は私のTシャツに手をもぐりこませ脇腹から少しずつ上を触っていく。 悟史の手はとても冷たく、ひんやりとしているのに触られた箇所は凄く熱い。 手が胸まで辿り着くと悟史は優しく揉みだす。 「んむ…ぅ…ぁ」 いつの間にか唇同士も離れ、声が出るようになった 「魅音はいやらしいな」 あはは、と悟史が笑う じろりと少し睨むとごめんごめんと肩をすくめてみせた。 いつの間にか普通に揉まれているだけでは物足りなくなってきて、なんとかTシャツを脱ぎたいと思った 「悟史・・・これ脱いじゃだめ?」 悟史はいいよ、と言うかわりに私のTシャツに手をかけた。 ぐぃっと持ち上げて頭が抜けたところで脱がすのを止められた。 「? 全部脱げてない…よ」 言ってみて気がついたが丁度向こうには丸見えじゃないか。 「さとっ…さとし!ちょっと…」 「あはは 脱いじゃだめだよ」 片手で私の両手を上の方で掴む。動けない。 ふふふ、と悟史は不気味な声をあげ 私の胸を空いている片手で揉み始める。 乳首を弾いたり転がしたりする。 指の腹で円を描くように撫でてみたり、と …なんでこんなに手馴れているのかきになるところだけど気持ちいいので…と思ってしまう。 「む…ふぁ…さとし・・」 私の声とは思えないほど甘い声が出る。 それを見計らっていたように悟史が私のジーンズに手をかける 「あ…」 と小さく漏らすと嫌?という風に私を見てくる。 「嫌じゃない・・・けど」 それを聞いて悟史はにこりと笑い、 空いている片方の手で私のジーンズをカチャカチャと外しだす。 する、とジーンズが落ちてひんやりとした空気が足に触れる。 ショーツは普通の白地のもので、こうなるならもう少し真面目に選んでおけばよかった と思った。 悟史は人差し指の腹を使ってぐい、とショーツの上から私のソコを強く押す 「っぁ…!」 自分以外触れた事がないそこは先ほどの胸を揉まれている時からかなり湿っていた 「脱がすよ」 悟史は短く言って、ショーツをずりさげる。 私のそこはテカテカと恥ずかしいぐらいに湿っていて、むわ、と凄いにおいがする そしてやっと悟史は中途半端に脱がされたTシャツをちゃんと脱がしてくれた。 悟史は私のそこに顔を近づけ、ぬめぬめとした愛液を舌で舐める ぞくぞく、と体が疼く。 悟史は私のそこを指で開くようにして舌を中にいれた 「っぁぅ…ん…ふぁ…」 少しずつ息が荒くなっていくのが自分でも分かった 木にももたれかかるようにならないと立っていられない。 「魅音?大丈夫?」 私を覗き込むように見ているのは悟史だ。 ぱちぱち、と何回か瞬きをしてから「大丈夫、」と頷いた。 「よしよし じゃあいれるよー」 何を?と言う前にそれは私のそこへあてがわれた。 それは想像していたよりもずっと大きくグロ…かった。 私の許容量より大きいんじゃないかと思いつつそんなことはいれられた瞬間吹っ飛んだ。 みし となんだか嫌な音がした後途轍もない痛みがそこを襲う 「痛・・・ぅぁ・・・」 ぽた、と地面に赤い血の染みが広がる。 「魅音…大丈夫?」 「お…おじさん死に…そう」 「力抜いてね?動かすからな」 悟史が腰を振りはじめる。 痛みもあったが少しずつ気持ちよくなってきた。 「いやらしいね、魅音」 二回目だぞ、とも言おうと思ったがまたムードをぶち壊してもいけないので黙っておく 「なっ…なんで…!」 「魅音、僕に合わせて腰振ってるんだよ?」 「うううううるさい!」 腰の振りは徐々に速くなって行って 「ごめん…魅音出る」 「う…うん」 「っぅ…魅音…!」 「…悟史!!っぁ・…」 二人同時に果てると悟史から勢いの良い精液が私の膣内に注がれる ずる、と悟史は私からそれを抜く。 「あはは…赤ちゃん出来たら責任とってよね…」 「むぅ……そのときはそのとき・・・」 凄い倦怠感があり、ぺたんと座る。悟史も私の隣に座る。 ふう・・・と大きく息をつくと詩音の顔が浮かんだ。 ほんとにごめん 詩音 「魅音?」 顔を覗き込まれ驚く。 「悟史…もしも、だよ?」 「何?」 「もしも…私にそっくりの 誰かが私のふりをしていたとしたら・・・悟史はそれに気づける?」 「むぅ……どうだろうなあ…。実際に気づけるかは分からないけど…頑張る」 「あはは、頑張れ!うにゃ…頑張って。そんで更にもしも…」 一瞬言おうかどうか戸惑う 「その私のふりをしている人が悟史の事を好きになったらどうする?私とその人 どっちを選ぶ?」 「魅音?…なんか変じゃない? 僕が好きなのは魅音、だよ」 「そっかぁ………あはは うん…なんでもない ごめんね」 こつん、と隣に座る悟史の肩に頭を預ける。 「何かは分からないけど…うん」 わしゃわしゃと頭を撫でられる。 「ちょっとーぐしゃぐしゃになるでしょ」 「あはは いいだろー」 「よくない ……よし、そろそろ私帰るね。」 立ち上がり、背中は見られないようにしながらTシャツを着る。 「むぅ… 早いなあ 余韻ってものがないよ魅音」 「おじさんは忙しいの それじゃね」 ジーンズをばばっと穿き立ち上がる。 「魅音」 「ん?」 「魅音は?」 「私?」 「僕が他人と入れ替わってたら。気づける?」 「…あははっ おじさんも気づけるように頑張るよ それじゃね~」 ひらひらと手を振りながら立ち去る。 「悟史は…気づけてないんだけどなあ…」 なんだか酷く胸が痛く、締め付けられるようだった。 悟史は詩音と魅音と どっちを選ぶんだろう…か この時4年目の綿流しの夜に誰か犠牲になるのかも私は知らなかったし 知ろうともしなかった。 そして5年目の犠牲のことも…。 それを知っていたのは あの夜煩く泣いていたひぐらしだけだったのかもしれない。 終
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用語集(あいうえお順) あ 医務室 いつの間にか場所や広さが変わっていることで有名なデュナミス魔法学校の保健室。常備されている魔法薬は苦いものが多い。人手不足を補うべく新たに担架型のドローンが配備された。 魔導車喫茶(オートカフェ)『LOW-RIDER』 魔法学校から少し離れた場所にある、魔法都市における有名なカフェの一つ。魔導車関連の装飾や雑誌が多く、店名も車高を下げるカスタマイズから採られている。名物のサンドイッチは二人で分け合うと軽食に丁度いいボリューム、焼いてもらうこともできる。 演算魔法式 魔法方式の一つ。 文字の代わりに数字と式を組み合わせて用いることで魔法を発動させる。 ただ同じ数字を同じ式で組み合わせればいいというものではない、0と1をただ並べているだけでは非効率である。 精密かつ効果的に数字と式を組み合わせて記述する必要があり、専用の学問が存在するほどである。 お お伽噺の魔法。理論によって基づく魔法と違って杖を振るえば家具が生物になり、反対に家具が生き物になるなど高難度の魔法を容易く行い、熟練した使い手なら無から有を産み出すことも可能となるあり得ない(童話)の魔法。しかし万能というわけでは無く、変身術が得意な代わりに四大元素を産み出すことは不得意という欠点もある。使い手の多くは夢想に生き、大人になろうと幻想を生きてる者らしい要するに精神がアレな人が多い か カフェ エスプレイス メニュー コーヒー類 店長の気まぐれメニュー カレー パフェ ナポリタン プリンアラモード 概要 最近できたカフェ 店長が物凄く怪しい 具体的にはゴニョゴニョ 美しい展示品と音楽が売り アルバイト募集中 基礎魔法 基本的に魔法を習った者ならば誰もが使える射撃魔法、障壁魔法、強化魔法、砲撃魔法、以上四種の無属性魔法のこと。これまでの歴史の中で一部の研究者たちが改良と最適化をし続けた結果、術式が簡潔で洗練された物になり、容易に要素を後付け・改変出来る柔軟かつ自由度の高い魔法だが、威力が然程高くないのと現在は属性魔法が主流なため、身体強化魔法以外は使用者は少ない。 さ 従魔 自分に従うよう契約を結んだ魔物のことを指す。契約した主の命令にある程度従う。魔物であれど生物という事に変わりはないので主となった人物には従魔の面倒を見る責任があり、そういった人達をサポートする店もある。 食堂 デュナミス魔法学校のそこそこ広い食堂。自由に生卵を持っていける「TKGコーナー」が常設されている。今年度から自動でお盆が料理を運ぶシステムが導入された。 操作魔法 何かを操作するための魔法。土や水、植物など自然から自分の肉体、運などの形のないもの、果ては他者まで、操作できるものに限りはない。 詳しくは魔法一覧の項で。 た 都市議会 都市における立法府。 都市内の各区ごとに直接選挙で選ばれる議員により構成される。 各区の人口比によって選出される議員数も変わるため、固定化された人数の理事会よりも民意を反映しやすいのが強み。 都市内の条例の制定、都市理事会並びに都市行政の監督、都市の予算議決が主な仕事。 任期は二年。再選は何度でも可能。 都市理事会 都市内の行政を監督する組織であり、行政に対する決定権を有する組織。 理事長が名目上の市長であるが、実際は理事会の決定が優越する。 理事会は市民の直接選挙で選ばれる理事長と12人の理事により構成されており、各理事と理事長が1票ずつ有する。 それぞれの理事と理事長には任期中の不逮捕特権が存在するが、都市議会は理事を罷免する権利を持つ他、都市の市民が一定数の署名を集めれば都市理事会を解散させることが出来る。(理事長が都市議会により退任させられた例も市民によるリコールの例もアリ) 理事会の任期は4年であり、理事長は二期8年まで務めることが可能である。 ただし例外として理事長死亡時に任命された臨時理事長の残り任期が2年未満であった場合、三期目(通算10年以内)の挑戦が可能である。 な ノワール・エトワール デュナミス魔法学校から少し離れた商店街の4丁目辺りの中央の細めの扉に入ることで入店できる、かなり落ち着いていて大人っぽい雰囲気の隠れカフェ。 店長がいれるブラックコーヒーは深いコク、程よい苦み、良い後味を兼ね備えた絶品だが、本人はブラックにこだわりすぎて砂糖もミルクも置いていない。 出されるお菓子も店長の好みが反映されており、普通のチョコ、チョコクッキー、焼きチョコなどのチョコレート類ばかり。 は 刃輪殴羅魔法学校 魔法都市に存在するデュミナス魔法学校とはまた別のライバル校 世紀末伝説じみた改造車に乗ったモヒカンやヤンキーとか番長とかが居る 治安は少し悪めだが、生徒達の意見を尊重したりする自由な学校でもある 魔族の生徒も多い ポータル屋 魔法のポータルを貸し出しているレンタルショップ 容量が決められておりより多く入れられるポータル程貸し出し費用が高い。 1番安いプランは魔法の杖を除いた計15種の物品を入れられる。 箒(魔道具) 魔道具である箒を媒介に、柄から送り込まれた魔力を穂で飛行のための力へと変換することで空中浮遊ができる。量産品は幾つかの穂での変換をいくつかの束で纏めているが、一本ずつ丁寧に繋げられた高級品もある。 魔力があれば誰でも飛べる。必要なのは操作技術だけ。宅配や運送の仕事などにもよく使われるメジャーな乗り物の一つ。サイズの大きいものや二人乗り用などもある。 なおこれは魔道具としての箒であり、他の原理で飛んでる箒もあるとかないとか。 筆記魔法式 魔法方式の一つ。 魔法的な意味を持つ文字を複数文法で組み合わせて用いることで魔法を発動させる。 ただ、文字を並べて書けばいいというものでもない、同じ文法をただ書き表せばいいというものではない。 意味を持たせながら正確かつ効果的に文字を文法で組み合わせて魔法を発動させられるよう記述する必要がある。 ま 魔源 呼吸や食事、睡眠などによって外部から大気中の魔素を吸収して体内に取り込む事で魔力に加工する魔力生成機関。例えるなら魔素が原油、魔力がガソリンでその加工を魔源が担っている。回路と核の二つから出来ていて、この世界の生物は皆これを体内に持っている。回路は全身に張り巡らされており核は心臓に近い部分に存在しそこに魔力が貯蔵される。この核に貯蔵できる量が所謂魔力量である。 また短時間での極端な魔法使用をした場合、魔源の核と回路の機能が低下、倦怠感などの症状を引き起こし、最悪気絶する場合もある。回路は肉体に神経の如く張り巡らされているため外傷により損傷する場合があるが、早期の治療で充分に回復可能。 魔素 大気に満ちる、未だに謎が多い未知の元素。この元素の発見により魔法文明が栄える事になる。後の研究により植物などが光合成時に生成し酸素と共に排出される事が分かっている。なので植物は魔力と親和性が高く、魔法の杖は基本木製なのである。 魔導エンジン 受け取った魔力を魔法に変換し、外部に働きかける機関。熱機関の構造を流用しやすいため火属性の魔法に変換するものが多い。魔力を送り続けなければならず純科学の内燃機関や電動機ほど普及していないが、エネルギーの損失が少ないという利点がある。 魔導剣技 魔法と剣術を組み合わせた技の総称。組み合わせる魔法の種類や剣術の型や流派は問わない為、比較的使いやすく修得者の多い技から、独自に編み出された個人個人のオリジナルの技まで、その種類は多種多様。 魔導車/魔導バイク 魔導エンジンによって車輪を回転させ走る自動車/オートバイ。運転手の魔力を使うため普通の自動車やオートバイの方が普及しているが、魔力を消費しながら大地を駆け抜ける感覚にハマる者も多い。 魔物 人語を喋らない魔力を持つ生物全般を指す。中には人語を少し理解し、ある程度の意思疎通ができる固体もいる。 魔力 魔法を発動する為に消費される力、魔源によって外部の魔素を吸収、エネルギーとして加工したものが魔力である。魔法発動により消費されても全てが消滅する訳ではなく、余剰分が周囲に魔素として大気に霧散したり、専用の触媒や魔導書なら残留する場合もある。 蝋やオイルで魔力を制御する手段も存在するが、「需要」「コスト」「既得権益」などの様々な問題から研究は進んでいない。 魔糸 魔素を多く含んだ植物を食べた糸を出す生き物、又は植物そのものからとれる糸の事 魔力伝導率が高く様々な用途で使われる ランクは概ね 植物→羊毛→絹糸 と上がっていく これはただ生えただけの植物よりも体内で生成し直した羊毛の方がより強くなり、生え変わる羊毛よりも一生に一度しか作られず更には守る為の繭から作られている絹は更に強くなる為である マジフォン 魔電導相互変換機搭載式携帯型情報通信端末装置(マギアボルトコンバーターシステム・ジオメトリーフォン) 魔導トランジスタや魔電導コンデンサ、幾何学抵抗器などによる……と説明を始めれば専門的な用語ばかりなのでほぼ割愛する。要は写真や動画の撮影・加工、通話やメールなどに画像添付等の情報交換、ネットの情報検索・閲覧及びさまざまなアプリ・ゲームの取得、動画配信サービスに繋いで動画視聴も可能な高性能小型端末。(所謂スマホ) マジチューブ Magitube。大規模オンライン動画共有プラットフォームで動画の投稿・閲覧を主としたサービス。利用者が動画データを投稿すると、ブラウザやアプリなどで再生できる形式に自動的に変換し、他の利用者が閲覧できるシステムになっている。(Yo○Tube?ナンノコトヤラ) 魔道具 魔法を行使するために用いる道具の総称。現在は扱いやすいという理由から、魔源と同様に核と回路で構成された方式が主流となっている。 港 旅客船と貨物船がひっきりなしに出入りする魔法都市の玄関口。毎月一度バザールが開かれ、様々な物品が売買される。埠頭には使われていないコンテナを改装して暮らしている 変わり者 もいるようだ。 魔法細工 魔法で作られた小さな置物や玩具の総称 や ら 霊障 霊と関わることで稀に起きる病気。 症状は金縛りから寝たきりになるものまで様々なものがある。 一部の人間 は体の一部が変形したり化け物になる者がいるらしいが一般的には信じられていない。 治療法は確立されているため早期に治療できれば脅威ではない。 わ WWWA 世界(World)魔法使いの杖(wizard s wand)協会(Association)。魔法使いの杖を安心して、楽しく使って貰いたい。そんな想いを胸に、世界中の人々の安全でより身近な魔法生活への貢献と関連業界の健全な発展を目的として、世界魔法使いの杖協会【WWWA】は設立された。
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夏の気候と風を吸い込んで、少年はこれから始まる激動の毎日への好奇心と挑戦心をを、空気以上に胸いっぱい、体いっぱいに巡らせた。 密航した船が嵐に巻き込まれ、体が放り出された時は死を覚悟したなあ、となんだか他人事みたいに思い返す。 このノースティリスの大地に打ち上げられ気を失っていた彼を助けてくれた自分と同じエレアの……名前は忘れた、少し気障ったらしい腹の立つ緑髪の男と、ラーネイレと名乗った美しい女性。 緑髪の男の話もおざなりに、彼は女性に、ラーネイレに見惚れていた。 それも仕方がない、男ならば振り向かずにはいられない、全人類どんな種族も(カオスシェイプやかたつむりの美的価値観は正直分からないが)はっと息を呑む……そんな女性だったから。 「綺麗だったなあ」 ヴェルニースに行くことを勧められて、彼は今ノースティリスの大地をその二本の脚で歩いている。 彼の名前はプロミス、至極善良で、前途洋々な、きっと誰かが、一度は夢見たことのある冒険者の道を歩むもの。 自分が魔法戦士であるということと、エレアと呼ばれる種族に分類されていることは覚えているのだが。 船から放り出されたせいなのか、密航する以前の記憶が殆どないのだ。 どこからきてどこへ行くのか、何も分からない。 しかしプロミスの心を満たすのは恐怖ではない。 前述した通りの未知の世界への好奇心と挑戦心だ。 それは彼が生を諦めるその日まで永遠に続くはずの、世界と繁栄と盟約の物語。 ヴェルニースの街は、言われたとおり子供の足でもすぐさま辿り着くほど近い場所にあった。 賑やかな音楽と、次いで遮る鮮烈な悲鳴に体をびくっとさせたが、ええいままよ!とプロミスは大きく一歩踏み出した。 鈍い音と共に、時空が歪むのを感じる。 目の前にあったはずの街が湾曲して遠ざかっていく。 モンスターか!? プロミスは慌ててエーテルの長剣を構える。 手に馴染む、愛着のある美しい永遠なるエーテルの長剣。 これさえ共にあれば、どこまでも、自分で道を照らし切り開ける。 しかし、いくら空を切ろうとも、迫り来る歪みは収まらない。 じわじわと締めあげられるような恐怖、張り詰めていくそれは、ドンっと小さな爆発を起こして、彼の存在をノースティリスから消した。 プロミスは、鏡を見た。 緑の長髪を後ろに適当にくくり、ぼんやりと眠たそうな揃いの緑の瞳で、鏡の中のプロミスはこちらを見返す。 『ゲームスタートだ』 彼は告げる、限られた、永遠ではなく約束もない物語の、始まりを。 暗がりに人が集まっている。 意識を取り戻したプロミスは、ざわめきと多すぎる気配をいっぺんに受けた。 手足は石になってしまったみたいに動かず、取り戻した意識も粘着く倦怠感に絡め取られてまともに機能しない。 周りの人間もそれに変わりはないらしく、ざわめきと思ったものの大概は、呻き声だった。 いや、確かに、言葉が聞こえる。 健常で、居丈高な……声達が剣を交えている。 「ふん、どうやらシモベ達がお目覚めのようだぞルルウィ、静かにしろ」 「あらあ、貴方こそブウブウ鳴くのを止めたらいかが、ブタのマニ」 男と女は会話の終止符にお互い大量の悪意を詰め込んで、剣を収めた。 「喧嘩してる場合じゃない……はやく……」 静かで慈しみのある声が窘める。 暗黒で姿はわからぬが、春の慈雨を思わせる声はプロミスを少しだけ安心させて。 「間引きを……裏切り者の間引きを……」 ぞっと、肌を粟立たせた。 「フハハハハッ、クミロミの言う通り!」 岩を砕く豪快な笑い声。 「全く我が元素からなる神とあろうものが痴話喧嘩とは」 苦言を呈する厳かな声。 「うみゃみゃぁあ仲が悪いの?よくない!よくない!」 気が触れたような調子はずれの声。 「べ、別に羨ましくなんか無いけどやめなさいよね!」 場違いに嫉妬する声。 合わせて、七人。 誰だろう、誰だろう、僕は知っているぞ。 プロミスは懸命に起き上がる。 闇に慣れてきた瞳は声の主達を見つめる。 順繰りに確認し、一言。その場にいた全員が答えるだろう言葉を真っ先に口に出した。 「神様……?」 ノースティリスには七柱の神が存在していた。 正確には無のエイスも含めた八柱だが、無のエイスは名の通り無宗教を表す。 機械のマニ、風のルルウィ、元素のイツパロトル、収穫のクミロミ、地のオパートス、幸運のエヘカトル、癒しのジュア。 その神々が、今この場所に、プロミス達の目の前に降臨している。 「そう、我々はお前たちが崇める神だ」 機械のマニはプロミスの放心した声に満足そうに頷いた。 「神様か、ならなおさら分からないね」 横槍を入れるついさっき聞いたばかりの男の声。 見上げると、緑髪のエレアが立ち上がりその美しい弓を構えていた。 「ロミアス」 そうだロミアスだ。 マニは面倒くさそうにその名前を呼んだ。 「今から話を始めようと言う時に無礼な……これだから弓などという旧式の武器を扱うものは」 「弓じゃないわよ、エレアが悪いのブタさん」 マニに突っかかるルルウィの言葉にロミアスだけではなく自分の種族も貶されプロミスはむっとする。 だからといって神様に武器を向けるだなんて、とても自分ではできない。 とても勇気のある誇り高きエレアの戦士だ、なんてロミアスのことを見なおしてしまう。 プロミスは知らなかったが、ノースティリスでの信仰は少し他の宗教観とは異なっている。 一部には勿論、信心深く神を信じ仰ぐものがいるが、大概はその信仰からくる恩恵を期待するものばかり。 特に冒険者達はこぞって宗教を変え、自分に最も有益な宗教を探している。 「神様が我々になんの用だ、君たちと違って我々は忙しくてね」 異形の森の使者としての役目を果たさねばならぬのに、とロミアスは添える。 「ちょっとそれをロミアスが言うのは納得出来ないけど……」 美しいエレア、ラーネイレは苦笑してその傍らに立つ。 それは人間の勇気の象徴に見えて、プロミスを含めその場に居た者達は鼓舞され、暗闇の恐怖をうちはらった。 「これだから……お前らがそうだから、このような催しを開かねばならなくなったのだ」 「催し?」 マニは心底うんざりして、腕を組む。 「……簡単な催しだ、お前たちのような冒険者なら常に……行っている」 「殺し合いだ、この場にいるものが一人きりになるまでの、殺し合いの催しだ」 低い低い宣告に皆ぽかんとして、あるものは肩をすくめ、あるものは笑った。 「そうですか、とやるわけにはいかない。やれやれだ、実に」 異形の森の使者ロミアスはミンチになった! 「ロミアス!?」 ラーネイレの悲鳴と、ロミアスだったぐちゃぐちゃの肉塊が散らばる音。 「静かに……もう一度遮ったら……君たちも…………」 血の滴る鎌を携えたクミロミはしとしとと、人間たちを精神的に押さえつける。 それからはラーネイレも、誰も、物音一つ立てることは無くなった。 「宜しい。先ほど言ったとおり、これからお前達には殺し合いをしてもらう」 機械じかけの照明がぼんやりと世界を照らし、暗がりに映像を映し出す。 数多の冒険者の見慣れたノースティリスの大地の地図。 しかしそれは妙に小さく、いくつかの建物を欠いていた。 「私達で作ったミニチュアのノースティリスよ、よくできているでしょう?」 ルルウィはからから風車を回すように笑う。 聴衆は納得するが、微動だにできず。 「三日間……このノースティリスで……君たちは最後の一人になるまで殺しあうんだ」 もしも一日の間に誰も死ななければ、その時点でこの箱庭は閉じられる。 ぐしゃりと、中身ごと。 「どうして……」 思わずプロミスは疑問を漏らし、はっと手を口に当てた。 殺される、殺されてしまう。 どうして、どうして、ひどい。 「フッハハハハッハハ!確かに当然の疑問よの!!」 プロミスを覆う殺意を退けたオパートスの笑い声。 クミロミも、疑問を口にする権利はあるだろうとその手を動かすことはなかった。 「汝らが日頃我々に対する信仰の、水と火の報いだと思うがいい」 勘のいいものたちはそこではたと、理由に気付かされる。 「うみゃぁ……裏切っちゃう!みんなすぐ裏切っちゃう!」 有益を求め、目当てのものを賜ればすぐさま宗旨変えする。 「わ、私たちだって……神様だって怒るんだからね!」 その神々を舐め切った立ち振舞。 「我々は、お前たちを、信仰してくれたお前たちを愛していたのに」 プロミスは理解できなかったが、その言葉に酷く悲しくなった。 裏切ったのだ、僕たちは、きっと、神様の信頼を。 「裏切りは……許さない……でも」 愛しているから、また信じたい。 これは信仰を試す試練でもあるのだ。 最後の一人になるものは心を入れ替え、本当の信心を見出すだろう。 それを繰り返して、星の数ほど居る冒険者の選別を行うのだ。 もう裏切られないために、きちんとお互いを愛せるように。 「迷える我がシモベであった者達よ、機会を授けよう」 「もう無様に這い上がることはできないけれど、頑張ってね子猫ちゃん達」 「定命の者達よ、汝らの信用を取り戻すのだ」 「帰ってきたら、ずっと一緒だよ……もう離さない……」 「フッハハハハハ!!!」 「うみゃみゃ♪」 「せ、精々沢山戦うことね!終わったら怪我……治すから」 神々の言葉がぐるぐると周りを囲む。 僕の冒険の第一歩は、とんでもないものになってしまった。 プロミスは蒼白な顔色になっているラーネレイを見て、ぎゅうと拳を握る。 「さて、これからお前たちをこのミニチュアノースティリスに這い上がらせる。最後の復活だ、心してかかれよ」 え?と全員がマヌケな音を出す暇もなく。 ´. __,, ======== ,,__ ...‐ ゙ . ` ´ ´、 ゝ ‐... ..‐´ ゙ `‐.. / \ .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ´ ヽ. ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;................. .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙ . ヽ ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;...... ;;;;;;゙゙゙゙゙ / ゙ ゙゙゙゙゙;;;;;; ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............ ;゙ ゙; .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙ ゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;.......;............................. ................................;.......;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙ ゙゙゙゙i;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;l゙゙゙゙゙ ノi|lli; i . .;, 、 .,, ` ; 、 .; ´ ;,il||iγ /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li ; .` .; il,.;;. ||i .i| ;il|l||;(゙ `;;i|l|li||lll|||il;i ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `, ,i|;.,l;; `ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ ゙゙´`´゙-;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;, ,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙/`゙ ´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii ;゙|lii|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´゚゙´`゙ ´゙゙´`゙``´゙`゙´``´゙`゙゙´´ 原子爆弾が文字通り彼らを吹っ飛ばした。 「うむ、実に良い」 「悪趣味」 機械のマニのほくほくとした笑顔。 始まりをド派手に告げた赤い花。 これから彼らが歩む、一時の冒険。 【ロミアス@NPC 死亡】 【Elona Battle Royal始動】 0 NEXT→ 投下順 01:見る目がない 時系列順
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838 名前:保守 七夕記念予告[sage] 投稿日:2010/07/04(日) 06 21 46 ID ??? (こちらアスカこちらアスカ聞こえる?私はあなたを取り戻しにきた。月は遥か遠く、地球も見えない。こちらアスカ。私に出来ることは‥) 『spece oditiy』 ~十七年前~ おそらく今後こんなに目覚めの悪い朝は来ないとアスカは確信した。 汚泥に浸かりながら眠ってしまったような倦怠感。虚ろに開けた目は重いし、手足の先に微電流が流れているような痺れ。寝違えてもいないのにバキバキと音を立てる関節群。 凝り固まった筋肉をほぐしながら目覚まし時計を凝視する。 「えっ?」 短針は左向きへ水平になり、アスカをベッドから飛び立たせた。 乱れた寝巻も整えぬまま居間へと入ると、こおばしい香りと音をフライパンから漂わせながらシンジが言った。 「あ、おはよう」 「あ、おはよう、じゃないわよ!何で起こしてくれないの!?」 露出した下半身を気にする暇もなくまくし立てるアスカ。 「え、なんで?」 「なんでって、学校は‥」 「学校は休みじゃないか。いつも休みの日に用事があるから起こしたら寝かせろって怒るくせになんなんだよもう」 フライパンの上の卵を器用にターンオーバーさせながらぶつくさと呟く。 不可思議に思うも自分の勘違いだったのかと納得し、卓上に並べられた専用の皿の前に座るアスカ。そのうち太陽のように鮮やかな卵が食卓を彩った。 「ねえ、今日って何曜日だっけ」 向いに座ったシンジに話しかける。 「忘れっぽいなぁ、アスカは。月曜だよ」 「月曜?振替休日だったっけ?」 「‥具合でも悪いのアスカ」 「は?何でよ」 「だって‥」 急にシンジの歯切れが悪くなる。途端に伏し目がちになり、疑うような目線をアスカに向けた。 「戦争中なんだよ。この"国"‥」 七夕までに終わるかな‥ 840 名前:kou[sage] 投稿日:2010/07/06(火) 15 54 10 ID ??? 838 『ーーー‥依然、日本政府は遺憾の意を示し、第三新東京行政府に対して対話の提案を試みています。しかし行政府はこれを拒否。認めないなら武力行使も厭わないと発言。この発言に対して防衛庁はーーー‥』 映像の途切れたテレビをアスカは呆然と見つめる。 「嘘‥」 「嘘じゃないよ。この街は独立しようとしてる」 言葉を失った背中を見つめるシンジは事実を述べた。 「僕もよくは知らないけど、ネルフが中心になって独立の表明を出したんだって」 どうやら初号機に関係あるらしい、と続けた。しかしアスカの耳には無秩序なノイズが発する音のように聞こえた。混乱のレベルがあるなら間違いなく最大に位置するだろう。 「大丈夫アスカ?」 「そんな訳無いじゃない‥訳わかんない」 「仕方ないよ。昨日の今日起こったことだし、みんな混乱してる。アスカも落ち着いて‥」 慰めの手を背にかけようとするが振り払われる。 「違う!そうじゃない!そうじゃなくて‥」 言葉にしようとすると絡まった糸のようにうまく解けず言葉が出ない。 「ごめん、ちょっと一人にさせて」 竦み上がった体を何とか立ち上がらせ、よろけそうになりながら再度自室へと戻る。襖の滑りが悪くてがたりと音を立てた。 十分ほど熟考した頃だろうか。アスカは根本的な疑問にたどり着く。 「私の知ってる世界じゃない」 ここはどこだろう。今はいつだろう。私は誰だろう。何が起こっているのだろう。張り巡らせた思考の輪を収束すべく、PCを起動させて情報を集めはじめた。 某大型掲示板 1 第三新オワタwww(618) 2 第三新「いついかなる挑戦も受ける キリッ」(213) 3 【速報】衝撃!突然の独立宣言!?part8(18) 4 どうやらこの国に終わりが来たようだ(500) 5 さて、そろそろ仕事をはじめ‥え?(980) 6 リアルゲバラが日本にいた件について(774) 7 第三新「こいつを見てくれ。どう思う?」日本「すごく‥面倒です」(4) 8 特務機関関係者だけど質問ある?(63) 9 ニュー速民で特務機関のサーバー攻撃しようずwww(1) 10 【速報】衝撃!突然の独立宣言!?part7(1001)‥‥‥ 841 名前:kou[sage] 投稿日:2010/07/06(火) 15 56 02 ID ??? 様々なニュースサイトで情報を集めていくに連れて、アスカの中で少しずつだが確実に現実感が募ってきた。 改めて疑問と情報を整理してみる。 ・知っている世界と違う 主にネルフを中心に日本政府に対して宣戦布告とも取れる独立宣言をしている ・アスカ以外異変に気づいている様子がない ネット中心の主観だが、少なくともメディアに異変が発露するほど大人数が違和感を感じていない ・ネルフと初号機が違和感のキーかもしれない 推測だが、シンジの話によるとそうらしい 「ファーストやミサトはどうなのかしら」 携帯を取り出しミサトへコールをする。が、留守電サービスに繋がってしまう。レイにも連絡しようとしたがアドレスを知らない。 仕方ないのでシンジの携帯を借りるために自室を出て、カタカタと勤勉そうに洗い物を進める後ろ姿に声をかける。 「シンジ、携帯貸して」 「いいけど何に使うの?」 「ファーストに電話するのよ。私番号知らないし」 そしてまた、先に見せた訝しむ目をアスカに向けた。 「‥ファースト?何それ」 「何ってファーストはファー、スト‥」 これはいよいよおかしい。シンジがファーストを知らない。せっかく活性化し始めたアスカの脳がまたもや固まりはじめた。 不思議な物で焦りはなく、ただただ違和感だけが体の芯に浸透していく。 「シンジ何かおかしいとは思わない?」 「おかしいよ。アスカは変な事言うし、ネルフも何だかおかしいし」 「それよそれ!ネルフ!エヴァは?使徒は?」 まくし立てるも、ここで一つまた疑問が増える。 「‥なんで私は何も覚えていないの?」 この"世界"のことはもちろん、今までの事も良く覚えていない。 842 名前:kou[sage] 投稿日:2010/07/06(火) 15 56 54 ID ??? 頭の中に霧がかかったように釈然としていない。断片的にではあるが、深い後悔の念と憎悪の渦のような物がアスカの胸中を掻き乱しはじめた。 それらを押し殺していると、シンジがふと言った。 「使徒?なにそれ?」 思ったよりも自体は深刻だと悟った。 「じゃあ何でエヴァに乗ってるのよ」 「父さんに来いって急に呼び出されたからだよ。それに‥」 「‥それに?」 「僕、初号機の写真を見たことがあるだけで実際には乗ったことない」 「え」 「それでいつもアスカは馬鹿にしてたじゃないか。乗ったことないのにパイロットだなんて~って」 「‥変に思わないでね。ていうかもう変だろうけど‥」 「なに?」 「今日までの私って、どんな風だった?」 シンジの表情は訝しみなどという表現を越え、むしろ哀れみの色さえ浮かびはじめた。 「どんなって言われても‥。いつも通りだったよ」 「だからそれがどんな風?」 「例えば、シンクロテストの結果を自慢したり、合同演習でエヴァで予定にない動きをして戦自の人を困らせたり、僕の料理にケチつけたりだよ」 そこまで言うと、しまったという顔を浮かべて反射的に頭部を守る体勢を取る。しかしいつまで経っても予定の衝撃が来ないので恐る恐る顔を上げてみる。 そこには呆けた目を潤ませながら、おぞましいものを見たような表情でわななくアスカがいた。 「エヴァに乗ってる‥戦自‥シンクロ率‥」 アスカの体に戦慄が走った。 「アスカ!?アスカ!」 気丈に振る舞う精神とは裏腹な華奢な体が、唐突に床へと崩れ落ちた。 843 名前:kou[sage] 投稿日:2010/07/06(火) 15 58 33 ID ??? 数時間後、正常を示す規則正しい点灯と音が鳴る部屋でアスカは目覚めた。白い壁紙と天井の染みがやけに目立っていて、綿の空気が抜けた固いベッドには自分の汗がじっとりと染み込んでいるのがわかった。 肌寒さを感じて掛け布団を手繰り寄せたあたりで、何故こんな場所にいるのかを考えた。 記憶を反芻すると悪寒が脊髄を駆け登ってきた。 二号機、戦自、ロンギヌスの槍、白いエヴァ、痛み、碇シンジ、赤い海。忘却していたというよりもとてつもなく大きな石蓋を記憶に被せられ続けていたような気分だった。ひび割れた部分から漏れ出ていたのが違和感の正体なのだろうか。 ここが病室だと気付いたのと同時に、パイプ椅子でくたびれて眠るシンジの姿を確認した。 「シンジ」 「あ。良かった目が覚めたんだね」 起きぬけに安堵の表情を浮かべると備品の小型冷蔵庫の中から小振りなナイフと果物を取り出した。 「びっくりしたよ。急に倒れるんだもん。気分は悪くない?」 カットしたフルーツを差し出されるがあまり食欲が進まないアスカはそれには手をつけず、シンジの目を直視した。 「どうしたの?」 「綾波レイ。聞き覚えない?ううん、ファーストだけじゃなくて使徒や赤い海の事も」 「レイ?なんでアスカがレイを知ってるの?」 綾波レイは親戚の子で最近父親が第三新東京に呼び寄せた。父の所で生活しているためあまり会わない、とシンジは述べる。 「シト、だっけ?聞いたことないなぁ。赤い海もわからない」 「ミサトは今どこにるの」 844 名前:kou[sage] 投稿日:2010/07/06(火) 15 59 29 ID ??? 「ずっと連絡が取れないんだ。何度か連絡してるんだけど繋がらなくて」 いくつかの質疑を交わして幾時間か経った頃ふとした事にアスカは気付いた。 「ここ病院よね?他の患者や医者とか看護師は?」 「ここはネルフ関係の病院だから個室を取れたんだ。お医者さんも検査だけして引き上げていったよ」 だとしても、いささか人の気配がしなさすぎる。窓は無く、今がいつかを知らせるのは備え付けのデジタル時計だけだ。また違和感。 思い返してみれば、外の風景を目覚めてから見ていない。確信はないが"何か"が自分を阻害しているような、大事な事だけ見えなくなる目隠しをされているような妙な気分に陥った。 閉塞感漂うこの状況になにか打開策は無いかとアスカは思案を巡らせる。 「ねぇ、レイに連絡してみてよ。番号知ってるんでしょ」 「知ってるけど、どうして」 ファースト、という通称では通じなかったのは"この世界"ではアスカが彼女を呼んでいなかったか、呼ぶ必要がなかっただけで綾波レイという人物は存在する。 「いいから。出来れば会いたいって伝えて」 突然の提案に戸惑いながらも電話を取り出し綾波レイの番号をコールするシンジ。 着信を待つ呼出し音が静かな部屋に小さく聞こえている間、シンジがレイを"レイ"と呼んだ事に少しばかりの嫉妬を覚えた事に気付いたアスカは布団の舌で自分の太ももを小さく抓った。 そして呼出し音が途切れた。 「あ、レイ?こんにちは。突然なんだけどいいかな」 たどたどしいやり取りをいくつか交わした直後、またもシンジが困惑した顔をした。 「え、そうなの?うん。うん‥わかった」 相手側から切られたようで、何度か液晶画面を確認するシンジに問うた。 「どうしたの?」 「下のロビーにいるから降りてきてって‥」 理由ははっきりとしないが、綾波レイが一連の違和感の鍵を握っているキーパーソンだとアスカは確信した。 845 名前:kou[sage] 投稿日:2010/07/06(火) 16 03 13 ID ??? 申し訳ないですが続きは夜に投下します。 長々と失礼します。
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―――僕の人生は人よりずっと長い。 だから、僕には人生が短いという感覚は理解できないだろうね。 きっと死の間際には、よく生きたと満足して笑って見せるよ――― 【英雄伝】 いつもどおりの日常を過ごしていたはずが、気が付けば手足は満足に動かず、 何日眠らなくても疲れを知らなかった肉体は、たった数時間の読書にすら倦怠感を主張するようになった。 衰えたのは肉体ばかりではない。 いつしか未来の自分に思いを馳せることはなくなり、過去の思い出にばかり浸る自分がいた。 新しい物を求めるよりも、今ある物で満足することを覚えた。 そうして悟った。もう、自分は長くないのだ、と。 幻想郷にある魔法の森。 その入り口に存在する店、香霖堂の店主こと森近霖之助は、老いた自分を振り返っていた。 すでに何年生きたのか覚えていない。 体力はすっかり落ちきってしまい、無縁塚への仕入れはもう何年も前から行っていない。 いや、すでに一日の大半を布団か椅子の上で過ごす毎日だ。 見た目の姿も随分と変わった。 もともと白かった髪は、色こそ変わらずとも艶を失い、顔には多くのしわが刻まれている。 だが、それらは決して不快感を与えるものではない。 重ねてきた月日が性格を丸め、その性格を反映した柔和な笑顔。 その笑顔を見て、かつて彼が仏頂面とからかわれていたことを信じるものはいないだろう。 そう、かつては霊夢や魔理沙にからかわれてばかりだった。 「……最近は昔のことを思い出してばかりだな」 自嘲気味の笑みを浮かべる。思えば随分生きたものだ。 結局、外の世界を目にすることは適わなかったが、自分の人生には概ね満足している。 外の世界のほかに心残りといえば、自分の集めた品の行方くらいのものだ。 特に草薙の剣と、大昔に無縁塚で拾い上げた彼の背丈ほどもある古時計。 死後の世界にそれらを持っていけるわけではないのに、と苦笑する。 「調子はどうだ?霖之助」 「慧音か」 霖之助が床に伏せるようになると、友人たちはそれまで以上に香霖堂を訪れるようになった。 今では当番制で家事や霖之助の生活を手伝ってくれている。 自分はどうやら自覚していた以上に彼女たちに好かれていたらしい。 「どうにも、昔のことを思い出してばかりだ。これはいよいよ天に召される時が来たかな?」 「またそんなことを言っているのか……」 半分人間の血が混じっている者の中で、霖之助の寿命が最も短かったらしい。 慧音や妖夢も年は取ったが、まだまだこれから人生の折り返し地点というところだ。 咲夜、霊夢、早苗、そして人間として生きることを選んだ魔理沙はすでに他界し、今はその子孫たちの時代になっている。 「魔理沙、霊夢、咲夜、早苗、か」 懐かしい名前に、慧音が応じる。 「随分久しぶりに聞いたな。懐かしいものだ」 「ああ。特に、魔理沙と霊夢には迷惑もかけられたが、彼女たちがいなければ、 君を始めとしてこんなに多くの友人を持つことはできなかっただろうね」 思い出話に華が咲く。 楽しい一時だったが、かつての自分はこんなにも過去の話で盛り上がることはなかったと、 霖之助は改めて自らの老いを自覚した。 「それではまた来るからな」 「ああ、楽しみにしている」 霖之助が夕食を済ませて床に就くと、慧音は少しのやり取りを済ませて帰り支度を始めた。 ふぅ、と一息ついて、霖之助はまた思索の海に沈む。 結局、自分はだれかと添い遂げることはなかった。 こんな自分でも、好意を向けてくれた女性は少なくない。 慧音とて、何度も人里で共に暮らそうと言ってくれた。 彼女たちに応えることができなかったのは申し訳ないが、誰かを選んでいれば、その分誰かと疎遠になっていただろう。 そうなれば、今のように多くの友人を持つことはなかったかも知れない。 そう思えば、多くの友人と知り合い、その内面に触れることができたこの人生も、悪くはなかった。 これなら、安らかに死んでいけるだろう。 若いころから、死について考えることが度々あった。 死、四、史、始。 これらは同じ、『し』という読みを持つ。 これは死した者の行く末を暗に示していると言えよう。 肉体は『四』大元素(火、水、土、風)へと分解され、世界の構成要素となる。 残した足跡は歴『史』となり、残された者たちの道しるべとなる。 そして、魂は輪廻の輪をぐるりと回って、また新しい生を『始』めるのだ。 ゆっくりと目を閉じる霖之助。 いつもは眠りが浅くて困るというのに、今日は易々と意識が沈んでいく。 まるで、死に誘われるかのように。 帰り支度を終えた慧音は、次に来る日を思い浮かべつつ、店を出ようとした。 だがその時、ありえないはずの音を聞く。店の古時計が、時間でもないのに音を上げた。 ボーン 振り返ってみるが、今の時刻は18時20分というところ。 ボーン 故障だろうか。霖之助が拾ってきてからというもの、こんなことは一度もなかったが。 ボーン すぐ止むと思っていたその音は、むしろ激しさを増して店内に響き渡る。 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 何かを訴えるように鳴り続ける時計を呆然と見ていると、かつて霖之助に聞いた話を思い出す。 この時計は、ある人物が生まれたときに送られたもので、その人物が亡くなる瞬間に音を上げた後、壊れて幻想入りしたものだと。 「……まさか」 慧音は部屋に戻り、横になった霖之助に声をかける。 いつもなら例え寝ていても起き上がってくる霖之助が、微動だにしなかった。 時計の音は、まだ止まない。 古時計の音は、届くはずがない場所にいる者の耳にも届いた。 いや、正確には耳に届いたのではない。 頭の中に直接響いたのだ。 最初は疲れているのか、それとも何かの悪戯かと思った彼女たちも、延々と続くその音に聞き覚えがあること、 そしてその音を何処で聞いたのかを思い出し、嫌な予感と共に香霖堂へ向かった。 朦朧とする意識の中で、霖之助はいよいよ自分の死を確信する。 周りには友人たちがいるはずだ。はっきりとはわからないが、声が聞こえたように思う。 しかし、死に向かう霖之助の体は、彼の意識をどんどん皆から遠ざける。 目は周りの様子を写してくれない。死ぬ時には皆の顔を焼き付けておきたかったのに。 耳が音を感じない。皆の声に囲まれて逝きたかったのに。 手足が言うことを聞いてくれない。死の前に、できれば握手の一つでも交わしたかったのに。 口は唸り声すら出そうとしない。皆に感謝の言葉を告げたかったのに。 鼻も利かなくなったようだ。住み慣れた家の香りを感じることすらできなくなった。 残酷なことをしてくれる。 自分に音も光もない孤独の中で死ねというのか。 死ぬ前に済ませておきたかったことは何もできないまま、 こんなに心配してくれている皆になにも伝えられぬまま、最期を迎えるのか。 いや、まだ残っているものがあった。 それは、触覚。 皆が自分に触れているのを感じる。 そして彼の能力は、蝋燭が最後に一際燃え上がるかのごとく、ここに来て進化を遂げた。 『道具の名前と用途がわかる程度の能力』 生命体の名前はわからなかったはずが、今では触れた手から皆の名前が流れ込んでくる。 頬に手を当てているのは紫。 口元で呼吸を確認しているのは慧音。 右手で脈を診ているのは永琳か。 両の肩口に水滴が滴ると思ったら、美鈴と鈴仙が泣いていたのか。 左手を包んでいるのは文の両手。 霖之助の能力はよりいっそう強く燃え上がる。 一人一人の声が肌に届くたび、なんと言っているのかまではわからずとも、それは誰の声だと教えてくれる。 長年付き合ってきた妖怪たちばかりではない。 年老いて穏やかになった彼を慕う人間たちも、わざわざ人里から大勢駆けつけてくれている。 部屋に入りきれないほどの人数が、霖之助に声をかけていた。 それは、本来存在するはずがない光景。 人と妖怪が、いがみ合うこともなく、一つの目的のために一堂に会している。 皆等しく、霖之助の死を悲しんでいた。 一際続いているのは古時計の音だったのか。そうか、君が皆を集めてくれたんだね。 ありがたい。自分なんかの死を、こんなにも大勢で惜しんでくれるとは。 僕は幸せ者だ。心の底からそう思う霖之助だが、困ったことにそのことで心残りができてしまった。 せめて皆に、自分は最期の最期で、幸福に包まれている事を伝えたい。 何もわからぬままに死んでいったのではなく、自分の生と死を見つめた上で受け入れて死んだのだ、と。 頼む、体のどこでもいいから言うことを聞いてくれ。すがるような思いで全身をもう一度確認する。 あった。 どうやら顔の筋肉は、まだ自分に味方してくれるようだ。 せめて、笑顔を残していこう。 よかった。まだ僕にも、できることが残っていてくれた……。 「脈が……止まったわ……」 永琳が霖之助の臨終を告げた。 泣き崩れるもの、 呆然とするもの、 必死に涙をこらえるもの、 反応はそれぞれだったが、誰もが霖之助の死に顔を直視できない。 しかし、そんな中でも誰かが声を上げた。 「……笑ってる」 その言葉を聞き、皆の視線が霖之助の顔に集まる。 脈が止まった瞬間、確かに無表情だったその顔は、いつの間にか笑顔に変わっていた。 そして、慧音の声が響き渡る。 「全く……。 自分が死のうとしているその真際に、私たちを安心させることを考えるとは、お前も本当に変わったものだ。 だが、残念だったな霖之助。お前の作り笑いなど皆お見通しだ。 ……この……大馬鹿者の……お人好し……め……」 慧音の両目から、大粒の涙が溢れ出す。 その視線の先に横たわる霖之助。 その顔に浮かんでいたのは、かつて自らが苦手と公言して憚らなかった営業用の笑顔。 霊夢が、魔理沙が、わざとらしいと揶揄した、ぎこちない『誰かのための笑顔』を、今再び霖之助は浮かべていた。 何時しか、時計の音も消えていた。 蝉がやかましく泣き叫ぶ、夏の日の夕暮れ。森近霖之助の時間は停止した。 そして、1つの物語が阿礼乙女の蔵書に加わる。 物語の題名は、『森近霖之助伝』。 人と妖怪両方の血を引きながらにして、どちらの道を選ぶこともなく、個人としての行き方を貫き、遂には人と妖怪の区別なく多くの友人を作った男の人生を伝える、『英雄伝』。 この物語に新たな一行が加わることは、もう、ない。
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現代日本を〈わたし〉から考える ―「新型うつ」という警告―(仮) 1. テーマ設定の理由 1) 背景にある問題意識 現代日本が抱える問題の中で、私が特に関心を持っているのが、心あるいは人間の存在そのものに関する現象である。自殺、引きこもり、精神疾患、いじめ、モンスターペアレント等がそれに当たる。空気を読むことや自分探しも、程度によっては含めることができよう。 暴論かも知れないが、上記の現象に共通する問題点を2つ挙げてみたい。第1に、本人もしくは周囲の人間が辛く、苦しいという心理的なこと。第2に、企業・社会に貢献する能動的な人間(戦力)が減少することで、他者の負担が増えるということ。後者に関してもう少し言うと、負担を増やしてもカバーしきれない部分が出てきてしまうし、下手をすれば新たな心の病や過労死を生みかねない。つまり、社会が回らなくなってしまう可能性がある。 もともと人間存在に関する現象に対して、どこに原因があったのかと、釈然としない思いを抱くことが多かった。このことと上記の問題意識とが根底にある。 2) なぜ「新型うつ」なのか 「新型うつ」問題は以下の3つの点から、緊急性・重要性が高いと思われる。 まず、様々な人や要素が関わっている複雑な現象である。「新型うつ」である本人だけでなく、周囲、精神科医、企業等の在り方が問題になってくる。また、「新型うつ」は時にクレーマー時に引きこもりで、自殺衝動が生じる場合もあるなど、先に書いた現象の内複数と関係している。「新型うつ」問題を考えることで、現代日本のマイナス面の重要な部分が見えてくるのではないだろうか。 次に、2005年頃から(おそらく現在も)増加しており、誰が「被害者」になってもおかしくない状況である。正確な時期や数は不明だが、増えていると言う精神科医は少なくない。また、10/22放送の「クローズアップ現代」によると、“現代型うつ”(≒「新型うつ」)がここ10年で増加したと答えた医療機関は、全体の90%だった(NHK調べ)。ちなみに2005年というのは、「ディスチミア症候群」(≒「新型うつ」)が社会的関心事になった時期だ(上野,2010)。 更に、本質を理解していない、経済的・心理的余裕がない等で、対策が不十分である。「新型うつ」という言葉が独り歩きしているだけ、というのが現状なのかも知れない。 3) なぜ〈わたし〉なのか 実は「新型うつ」に関して、精神医学における統一的な見解はなく、治療法も確立されていない。そんな中で、「専門家に任せればいい」と精神医学に全てを押しつけてしまうと、問題解決は遠ざかってしまう。他方、文化・社会の変化が原因だと片付けてしまうだけでは、「自分達には何もできない」という意識が生まれ、やはり解決にはつながり難い。そこで、「特殊な病気」として精神医学的に分析するのではなく、身近な問題として考えようと思った。 上野 (2010) は専門家の意見を総合し、「新型うつ」の発症には ①自己愛肥大 ②アイデンティティの喪失 ③いい子至上主義(母子密着)という3つの要因があるとした。また、精神疾患の主な原因は、精神的なストレスだと言われている。これらのことから、〈わたし〉(≒精神)を考える必要があるのではないかと思い、今回の研究で扱うことにした。 「新型うつ」問題では「本人の甘え、自分勝手」だという非難が強い一方、「周囲、社会の理解が不十分」だとする意見もある。おそらく本人にも周囲の人間にも問題があり、両者のコミュニケーションが上手くいっていないように思える。そこで、〈わたし〉と他者との関係、〈わたし〉と〈みんな〉(≒世間)の関係も考えることにした。 2. 研究の目的 「新型うつ」問題を〈わたし〉という言葉を用いて分析し、問題解決のヒントを提示する(おそらくコミュニケーションが鍵になってくる)。「新型うつ」問題を身近な問題として扱い、一般人でもできる対策を考えることを目指す。 その際、現代日本の〈わたし〉が置かれた状況を理解し、より現状に即した内容にすることを目的に、〈みんな〉という概念も取り入れる。〈わたし〉〈みんな〉から考えることで、「新型うつ」・現代日本に対する新しい見方を得ることを目指す。 〈 補足1 〉キーワードについて 「新型うつ」 「新型うつ」は正式な病名ではない。2000年代に増えてきた、従来型のうつとは異なるタイプのうつ的なものを指す。「新型うつ」という言葉を最初に用いたのが誰かは分からないが、上野によると、香山リカが社会的に広める役割を果たしたという。香山は2007年に「新型うつ病『三〇代うつ』」について言及している。 傳田(2009)(上野2010より)によると、「新型うつ」には以下のような特徴がある。①若い人に多い。②こだわりがあり、負けず嫌いで、自己中心的に見える。③自分の好きな活動の時は元気。④仕事や勉学になると調子が悪くなる。⑤「うつ」で休むことにあまり抵抗がなく、逆に利用する傾向がある。⑥疲労感や不調感を訴えることが多い。⑦自責感に乏しく他罰的である。⑧不安障害(パニック障害、強迫性障害)を合併することが多い 本研究での「新型うつ」は、傳田らの理解をもとにしながらも、もう少し広い概念にするつもりである。ちなみに、社会問題として扱うという意味で「新型うつ病」とはしない。 〈わたし〉 「私」という一人の人間が持つ精神のようなもの。あるいは対象化された「私」のこと。 いずれにしても言葉の束として考える。原子のような円形モデルと、つみき型モデルを考え中。 主に高田(2006)を参考にしている。 〈みんな〉 世間に近い。複数の人間の意思の集合体のように思われるもの。日本に特有らしい。同質性などのオキテがある。大きい〈みんな〉は解体されつつあるが、小さい〈みんな〉は濃密化。 佐藤 (2009) や岡本 (2009) を参考にしているが、要検討。 〈 補足2 〉章節構成 ( 論文の流れ ) 序章 第1章 「新型うつ」問題の概略 「新型うつ」とは何か 「新型うつ」で苦しいのは誰か どこに問題の原因があるのか 「私」に何が起きているのか 第2章 〈わたし〉について 〈わたし〉の性質 〈わたし〉を支える他者 〈わたし〉を抑圧する他者 現代日本の〈わたし〉に起きていること 第3章 〈みんな〉について 〈みんな〉とは何か 〈みんな〉の性質 〈みんな〉と〈わたし〉たち 現代日本の〈みんな〉の混乱 第4章 〈わたし〉たちのコミュニケーション 問題の所在 今必要なコミュニケーションの条件 各手法の検討 短期的対策と中長期的対策 終章 〈 補足3 〉参考文献 上野玲『都合のいい「うつ」』祥伝社新書,2010 海原純子『会社でうつ 休むと元気ハツラツな人』文藝春秋,2008 岡本薫『世間さまが許さない!』ちくま新書,2009 香山リカ『うつで困ったときに開く本』朝日新書, 2009 佐藤直樹『暴走する「世間」で生きのびるためのお作法』講談社+α新書, 2009 高田明典『「私」のための現代思想』光文社新書,2006 豊泉周治『若者のための社会学』はるか書房,2010 仲正昌樹『「みんな」のバカ!』光文社新書, 2004 その他、社会学系を中心に増える予定 中間発表の振り返り ●頂いたコメントについて ① 「現代」とはいつのことか? → 経済危機の影響でリストラが増え、自殺者が急増したのが1998年。「新型うつ」は 若い人に多いと言うが、この頃の中年層から始まったはずだ。 A1 発表当日は動揺して2000年以降と言ってしまったが、概ね2005年以降とする。 このことは今まで意識していなかったので、これからは念頭に置いておきたい。 「新型うつ」に至る、精神医学界での概念の流れ 1970年代 「葛藤反応型うつ」 自己実現困難だと症状 1977年 「逃避型抑うつ」 上+社会によって抑圧されると拒絶反応 1991年 「現代型うつ」 上+不安感が強く、女性に多い 2005年頃 「ディスチミア症候群」 漠然とした倦怠感、他罰的 2008年頃 「新型うつ」 上と同一or更に広い概念 参考:上野玲『都合のいい「うつ」』祥伝社新書,2010 ② 「新型うつ」の研究をしたいのか、「新型うつ」論の研究をしたいのか A2 「新型うつ」問題の全体像を大まかに把握し、それを〈わたし〉という概念を用いて 説明したい。なので、基本的には「新型うつ」の研究である。 しかし、専門家の定義にある程度従う必要があり(離れてしまっては「新型うつ」ではなくなる)、また原因分析等がとても参考になるので、「新型うつ」論の研究も自ずと含まれる。ただし、各人の見解の違いを考察したり、「新型うつ」とそれ以外を明確に区別したりするのは、ここではあまり意味がないため、深入りはしないつもりだ。 ③ 二次資料のような印象を受ける → 精神科医の見解を引用、患者等に直接関われないので間接的 A3 これは止むを得ない部分がある。相当数の「新型うつ」の人と直接関わることができ ない以上、専門家の見解を交えて「新型うつ」を考察しなければ研究になるまい。専門家が本で紹介している事例を用いれば、多少は直接的な分析に近づくだろう。 ただ、この質問が出たのは、研究内容の核心部分を伝えられなかったからだと思う。 まず、「新型うつ」問題の概要を精神医学の解釈を交えて説明し、問題意識を共有する。 次に〈わたし〉の特徴を述べ、「新型うつ」で問題になる人の〈わたし〉の状態を考える。更に、時代背景や社会的な圧力等から、「新型うつ」問題における〈わたし〉の状況を考察する。こうした流れを言わずに、専門家の見解を紹介してしまったので、二次資料と言われるのも無理はない。 ちなみに、「新型うつ」の認知度が低い現状を考えると、単なる二次資料であったとしても意味はあるはずだ。 ④ 「コミュニケーションが大切」という結論に逃げたいように見える → 〈わたし〉という概念で「新型うつ」を考えるのは独自のもののはず。今までの うつ論を批判するような視点が必要ではないか A4 これも、研究の流れ・中身をきちんと提示できなかったことによる質問だろう。 確かに、〈わたし〉や〈みんな〉を用いて説明するプロセスが疎かになれば、「人間関係 が重要」といった、何の新しさもない結論を示すだけになってしまう。そこは気を付け たい。途中の考察が充実すれば、どんなコミュニケーションが必要か具体的に言えるはず だ。 ⑤ 身近な問題として考えたいと言うが、やはり精神医学の専門家に任せた方が良いのでは A5 そうしない理由は2つある。まず、「新型うつ」に関して精神医学が混乱しているから。 定義もバラバラで治療法も確立されておらず、病気かどうかさえ疑わしいという。こう いう状況では、一度精神医学から離れた方が本質をつかめるかも知れない。そして何よ り、「新型うつ」を生むのは社会であり、「新型うつ」になってしまった人が生きるのも 社会である。だからこそ、〈わたし〉や人間関係の面から(も)考えるべきである。 ⑥ 「新型うつ」になる前の人間関係と、なった後の人間関係は違うだろう。どちらを 対象にしているのか A6 これについては考えたことがなかった。 「新型うつ」を生んでしまうような人間関係、「新型うつ」になった人を排除するような 人間関係が問題ではないか。なので、前と後の両方が対象と言えるかも知れない。ただ、 私はこの両者に大きな違いはないと思っている。
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【登録タグ Maj LOVE × Min BABY Triplet 3K し 三澤秋 幽雅に咲かせ、墨染の桜 ~ Border of Life 広有射怪鳥事 ~ Till When? 曲 東方妖々夢 ~ Ancient Temple】 【注意】 現在、このページはJavaScriptの利用が一時制限されています。この表示状態ではトラック情報が正しく表示されません。 この問題は、以下のいずれかが原因となっています。 ページがAMP表示となっている ウィキ内検索からページを表示している これを解決するには、こちらをクリックし、ページを通常表示にしてください。 /** General styling **/ @font-face { font-family Noto Sans JP ; font-display swap; font-style normal; font-weight 350; src url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/10/NotoSansCJKjp-DemiLight.woff2) format( woff2 ), url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/9/NotoSansCJKjp-DemiLight.woff) format( woff ), url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/8/NotoSansCJKjp-DemiLight.ttf) format( truetype ); } @font-face { font-family Noto Sans JP ; font-display swap; font-style normal; font-weight bold; src url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/13/NotoSansCJKjp-Medium.woff2) format( woff2 ), url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/12/NotoSansCJKjp-Medium.woff) format( woff ), url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/11/NotoSansCJKjp-Medium.ttf) format( truetype ); 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第六回定時放送 ◆/Vb0OgMDJY 恐慌、 困惑、 激怒、 失望、 消沈、 様々な感情が私の中に溢れ出して、やがてそれは一つ文章を形作った。 (駄目だこいつら…早く何とかしないと…) まるで熱病に冒されたかのように、激しい頭痛が襲い掛かって来る。 (まさか…) 驚愕が全身を支配して、指一本動かすことが出来ない。 (まさか……) 体中の力が抜けて、自然とコンソールに体が傾いて行く。 (本気で言っていたなんて……) 俯いて、両手で頭を抱えた。 何となく嫌な予感はしてはいた。 でも、筆談の内容までは解らないし、そんなことは無いだろうと思っていた。 口では最低限のことと、疑われない為の雑談を行い、肝心の内容はもっと確信に迫る物だと思っていた。 いや、言い直そう。 肝心の内容はもっと確信に迫る物だと『期待』していた。 が正しい。 ……その期待はあっけなく裏切られた訳だけど…… (もう…駄目かも……) 全身を虚脱感と倦怠感が襲う。 いや、この程度で駄目だなんて本気で思ってないよ? でも、 でもねぇ、 今一番期待できるチーム、ううん、今となっては唯一期待できるチームと言ってしまえるかもしれない人達から、こんなアホな意見が飛び出そうとは……。 (逆に、聞かないほうが楽だったかもしれないわね……) さっきまで、 そう、ほんの数分前までは、この幸運に感謝していた。 首輪解除を期待でき、高い戦力を持つ、宮小路瑞穂、一ノ瀬ことみ、アセリアの三人と、 ノートパソコンを所持しており、羽入を通してこちらの意思を伝えられる相手、古手梨花。 この双方の遭遇は、間違いなく僥倖だった。 古手梨花の首輪を通して、宮小路瑞穂の声が届いて来るまでは。 あそこで彼女達が遭遇さえしていなければ、こんな絶望を覚えずに済んだかもかもしれない。 転送装置の影響で盗聴器が使用不能になった事で、希望を持ち続けられたかもしれない。 彼女達は真実に近い場所に居るという希望に浸り続ける事が出来たかもしれない。 …… ………… ………………いや、落ち着こう、冷静に、COOLに、KOOLになれ鈴凛。 今なら、今だからこの程度で済んだ。 これから先、もっと重要な、それこそ一分一秒が生死を分ける時に、あんな勘違いをされていて、それでジ・エンド。 と、いう事態が未然に防げた。 その幸運に感謝するべき。 それに、口で言っている内容は全てブラフで、本当の考えを筆談で語っている可能性も…… うん、無い。 ……でもでも、羽入が梨花に接触さえすれば、正しい情報が伝わるのだから問題は無い。 羽入任せという時点で激しく問題だらけのような気もするけど…… て、言うかそもそも羽入が微妙なアイテムばかり選ぶのが悪い。 私には理解出来ない深遠な理由があるのかもしれないけど、それにしたってもう少しなんとかならなかったのか。 特にあの国崎最高ボタンは意味不明すぎる。 ことみさんと瑞穂さんが躊躇うことなく否定した時は思わず突っ込んでしまったけど、冷静に考えると多分私も否定しそう、というかする。 あんだけ仰々しい暗号文を書いといて、実はただのダジャレでした、と言われて納得は出来ない。 アレを選ばないといけない理由でもあったのだろうか? (そういえば、そもそもアレは誰が造ったのかしら?) 支給品は、基本的には武器等の殺し合いに役立つものと、参加者に関係のあるアイテムが選ばれる。 この場合のアイテムとは所持品の事で、服とかアクセサリーとか、あるいは趣味で愛用している物品を意味する。 なので、私も見せしめになった少年の趣味であるゲームに偽装して、特殊プログラムを忍び込ませたのだが……、 アレは、国崎往人本人とは何の関係も無いし、作られた記録も無い。 殺し合いに使える可能性は……まあ、ゼロじゃないけど使う人間はいなそう。 (だから、誰かがわざわざ作ったのだろうけど……) 目的がまるで見えてこない、と考えた所で、 「鈴凛、ちょっといい?」 コンコンというノックの音と共に優さんの声がした。 「えっ、あっはい、……なんですか?」 なんだろう? 倉成武の様子でも聞きに来たのかしら? 慌てて立ち上がり、ドアを半分くらい開け、そこに立っていた優さんの顔を見た。 表情は……駄目、読めない。 ただまあ、纏ってる雰囲気からそんなに重要な問題じゃなさそうかな、と思った所で、 「司令が、読んでるわよ」 優さんの口から用件が発せられた。 鷹野が? 一瞬、”ヤバッ?”と思ったけど、どうも優さんの態度からはそんな気配がしない。 となると……なんだろ? また、トロッコ関係かな? と、タイムリーなネタを思い浮かべていたけど、 「『次の放送を、やってみない?』だそうよ」 優さんの一言で全てが凍り付いた。 は、 何…を、 今…何て…………言ったの? ……放送……って無論あれだ。 この時間帯に誰と誰が死んだ、というのを知らせる為の物。 それを……私にやれ? 私に…… 私に……… 私に、……千影が、死んだ、事を、口にしろ…って言うの? 私の、罪を、悲しみを、後悔を、再び、味わえと? 「馬……鹿な、こ…と……言わないで!」 その言葉を発した相手でもないのに、優さんに叫んだ。 馬鹿に……ううん、楽しんでるんだ! 私が苦しむのを、苦しんでいるのを! だから……だから、そんな事を言って、弄ぶつもりなんだ! 私は、私は…… 「まあ、そうよね。 姉妹が殺されて、それを普通に放送なんて出来る訳ないわよね」 再び優さんの声がした。 それで、少し…少なくとも表面的には、落ち着いた。 「うん…、だから……」 「どんな事を口走ってしまうか判らないものね」 お断りしますと続けようとして、遮られた。 「……え?」 「自分の姉妹が死んだのに、なんでまだ他の連中は生きているのか、なんて口にしてしまうかもしれないわね」 「何……を言って?」 「貴方達がさっさと死んでくれれば、私の妹は死なずに済んだとか」 「何を、言っているの! 優さん!!」 再び込み上げる怒りに任せて、優さんの服を掴み上げる。 私は、そんな事は、考えてなんか…… 「貴方達だけ首輪を解除するのは気に食わないから爆破しちゃうとか」 けど、優さんは気にせずに続ける。 この…… 「何人か、何してるか判らないから念のため殺しちゃうとか。 首輪を確保しておきながら、間に合わなかったから殺しちゃうとか。 “つい”そういう“感情に任せたこと”を口走ってしまうかもしれないしね」 (え……?) 黙って、と言おうとしたところで一気に頭が冷えた。 何? “つい” “感情に任せたこと” ……え? でも……ううん、確かに、それなら、けど…… 「それで、どうするの?」 少し思い悩んだ所で優さんの声がした。 (……そっか、そういう意味だったんだ) 理解、出来た。 私に告げている訳だ。 “チャンスよ”と。 確かに、今なら、いえ、今この時にしか出来ない行為。 姉妹を全て失い、少し錯乱気味な研究班の主任。 それが放送をするなら、何か変な事の一つや二つ喋ってしまうかもしれない。 そう、“何か” 恨み言かもしれないし、何か重要な機密かもしれない。 つまり、利用しろという訳だ。 千影の死という結果を、機会として利用しろと、そんな残酷な事を言っているわけだ。 私の中に、先ほどまでとは違った怒りが込み上げて来た。 最も、そんなものはあっさりと受け流されておるみたいだけど。 そうして、私は 「いえ、やっぱりやります」 と口にした。 その時、少し、優さんの感情が見えた気がした。 「参加者の皆さん、定時放送の時間だよ。 今回は私、鈴凛が担当します。 ちなみに皆さんの首輪は私が作ったものなんだけど、気に入ってくれてるかな? もう少しカッコいいデザインにしたかったんだけどね。 と、まあ余計な話は抜きにして、まずは禁止エリアを発表するよ。 十四時からE-2 十六時からB-6 もう一度言うよ。 十四時からE-2 十六時からB-6 ちゃんと記入出来た? 間違っていても添削とかはしてあげられないから注意してね。 では続いて死亡者を読み上げます。 …高嶺悠人 小町つぐみ 北川潤 二見瑛理子 ……千、影 朝倉純一 佐藤良美 土永さん なんだか知らないけど、今回は頑張ってるみたいだね。 私の知り合いも皆死んじゃったなあ。 残念。 でも、あと一息だからここまで来たら頑張ろうね皆。 支給品とかをちゃんと集めれば、楽勝だよ。 強力な武器とか、お気に入りの物とかがあるからね。 疲れたら、それらで気合を入れたり、適当にゲームとかして遊んだりしてもいいかもね。 て、そんなことしたら殺し合いにならないか、難しいね。 ……なんかよく判らなくなったので、この辺りで終わりにするよ。 それじゃあ、また次の放送で」 ……上手く、いったかな? こればっかりはなんとも言えない。 ただ、羽入が接触してくれれば、そこから私の意図を読み取ってくれるかもしれない。 そんな事を考えていると、 「ふふっ、随分妹想いなのね」 今一番聞きたくない声がした。 「……やらないか? って言ったのは司令だよ? …それに」 「……それに?」 一瞬、目を瞑る。 私は、既に汚れきった身だ、今更外面なんて気にしない。 「もう、誰が生き残っても興味がないから。 ううん、むしろ一度くらいは禁止エリアでの首輪の動作テストをしたいかも」 何もかも失って、壊れてしまったヒト。 ゲームの駒に興味のない、冷徹な人間。 そういう風に装う。 「は、」 鷹野は一瞬呆けていたけど、ややあって、 「あは、はははははは! そう、ようやく貴女もこのゲームが楽しめるようになったのね」 楽しそうに、 心底楽しそうに語りかけてきた。 「別に、楽しんでなんかいないよ、ただ、誰がどうなっても興味がないだけ」 たとえ演技でも、それだけは許容出来なかった。 だから、続ける。 より、私らしい理由を 「今私に興味があるのは、首輪の完全性。それだけ。 それを上手くやれば、次以降のゲームで他の姉妹が選ばれても、私の権限で除外出来るようになるかもしれないでしょ」 伝えた。 「あら、そうなの、勿体無いわね。 でも、それじゃあ仕方が無いわね、せいぜい頑張りなさい。 貴女の望みが叶うように」 それだけ言って、鷹野は向こうを向いた。 話は終わりということみたい。 私も、鷹野に用なんてない、だから、すぐさま司令室から出ることにした。 ……出来ることはした。 後は、祈ることしか出来ない。 どうか、この仕組みが、今回限りでありますように 198 小さなてのひら/第2ボタンの誓い(後編) 投下順に読む 200 ブルーベリー・パニック/決戦の幕開け~宣戦布告~(前編) 198 小さなてのひら/第2ボタンの誓い(後編) 時系列順に読む 201 ひと時の安らぎ 198 小さなてのひら/第2ボタンの誓い(後編) 鷹野三四 200 ブルーベリー・パニック/決戦の幕開け~宣戦布告~(前編) 193 贖罪/罪人たちと絶対の意志(後編) 鈴凛 200 ブルーベリー・パニック/決戦の幕開け~宣戦布告~(前編) 193 贖罪/罪人たちと絶対の意志(後編) 田中優美清春香菜
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運命と呼ぶには 不覚だ・・・。 と、朝布団の中でそう後悔してももう遅い。 頭がガンガンと割れるように痛く、体は気だるさで動くこともできない。 何よりも寒くてガタガタ震えが来て、布団から出ることもできなかった。 昨日の帰りだ。 「神田、顔色悪いぞ?大丈夫か?」 と、俺の顔を覗き込んでそう言う飛行隊の先輩。 「いや、大丈夫っすよ。ちょっと今日の訓練でヤられたもんで。」 と適当に返して、そして俺はそのままアパートまで10キロの道のりを走って帰ったんだった。 ・・・小雨の降る中をだ。 気持ちよく汗をかいて、それで寝たはいいけど、どうやら思い切り風邪を引いたらしい。 せっかくの週末に、この分じゃ寝込んで過ごすことになりそうだ・・・。 とりあえず、布団をかぶりながらなんとか起き上がって、電話口まで這っていく。 飛行隊に電話をかけて、今日は休ませてくれ、と連絡をいれた。 昨日、せっかく栗原に睨まれながらたてた訓練計画だったが、もう今日は這って出勤したところで飛べる体調じゃない。 電話を切って、また這うように布団にもどり、そのまま目を閉じた。 それから目を覚ますと、日がもう随分高く上っていて、時計を見ると昼過ぎだった。 頭痛と、熱からくる気分の悪さで食欲なんかはなかったが、それでも早く治すのには何か食わなきゃ、と思ってヨロヨロと台所に向かう。 けれど、そこに俺が食べられそうなものは何もなかった。 米くらいはあるが、とてもそれを磨いで焚こうという気力はおこらない。買い置きのカップ麺も切らしているし、とてもじゃないが外に食べに出ようなんて気もおこらなくて。 唯一の救いが冷蔵庫の扉の隅に残っていた栄養ドリンクで、俺はそれを2本とって、1本をその場で飲み干して、もう1本を持ってまた布団に這い戻った。 最悪だ。 一日寝て居れば治るだろうと、たかをくくっていたのに、そんな気配はまったくなくて、朝よりも一層体は熱っぽかったし、割れるような頭痛は治まりつつあったものの、倦怠感は余計に酷くなっている。 結局寝ている事しかできなくて、目を閉じて眠ろうとする。 日ごろの疲れがたまっていたのか、朝から寝続けていた割にはすぐに睡魔がおそってくる。 今頃飛行隊は何をやっているのかな、とかそんな事をぼんやりと考える。 そうだ、栗原はどうしているだろう。 別のヤツと組んで、ソツなく今日の訓練を終わらせただろうか。 それとも、ふてくされながら地上勤務でもしているだろうか。 それからどれくらい眠っていたのか、目覚めた時にはもう辺りは暗くなっていて、俺は相変わらず和室に引いた布団で独り眠っていた。 ・・・筈だった。 薄暗いままの部屋で、けれど部屋を仕切る襖の隙間から明かりが漏れている。 あっちの部屋、明かりを点けたままだったか?とか考えていると、その襖がすっと開いて、俺はかなり驚いた。 「神田?寝てるのか?」 同時にそんな声が聞こえる。 それが栗原の声だと認識するのと、襖が完全に開いて奴が顔を出すのとが同時だった。 「・・・なっ、なんでお前ここにいるんだ??」 「別に・・・、隊長が様子見て来いって言うから。」 と栗原は素っ気無い返事をして俺の布団の近くに膝をついた。 「鍵は大家さんに借りてね。調子はどうだ?」 そう訊いてきて、つと冷たい指先が俺の額に触れた。 「まだ熱があるな。」 とそう言うので、 「いや、朝よりは下がったと思う・・・。」 と返す。 「測ったのか?何度だ?」 と訊かれるけど、うちには薬箱なんてものはなくて。 「いや、体温計とかないから。」 正直にそう答えると、暗がりだが栗原の表情が少し険しくなるのがわかる。 「体調管理は基本中の基本だろう。それくらい置いておけよ。メシはどうしてたんだ?何を食った?」 さっきから痛いところを付かれてばかりだ。これも仕方なく正直に、 「・・・食べるモノ、何もなくてさ・・・。」 とそう言うと、栗原の表情は怒りを通り越して呆れ顔になる。 「バカか、お前は。しょうがねぇ、何か作ってやるからとりあえずこれでも飲んでろ。」 と、そう言って栗原がくれたのはスポーツ飲料だった。それを渡されて初めて、熱で汗をかきまくったせいか、すごく喉が渇いていたことに気がつく。 「あ・・・、すまん。」 栗原は俺にそれを渡すと、すぐに立って台所のほうに行ってしまった。ピシャリと襖の閉まる音がひびく。 それからしばらく水を使う音が聞こえていたが、また襖が開いて、今度はそれと同時に部屋の電気が煌々と灯された。眩しさに一瞬目を閉じてしまったが、その目をあけると、栗原は洗面器とタオルを手にしていて、 「お前、汗掻いてるだろ?これで体拭いて着替えろよ。そのままだと治らんぞ。」 と、お湯を張った洗面器を布団の傍に置いて、それにタオルをつけて固くしぼる。 そのままそのタオルを寄越してくれるのかと思いきや、栗原はいきなり俺が着ていたパジャマのボタンに手をかけた。 まだ熱が高いせいか、俺は頭がまわらない。 ぼやっとしていると、いつのまにか手際よくボタンが外されて、そして汗ばんだ体をそのタオルでゴシゴシと拭かれていた。 「熱くないか?」 と、心配そうに尋ねるその顔が、不自然なくらい俺の近くにあって、目が合った瞬間に俺はドキっとさせられる。 フワリとした前髪が俺の肩にかかりそうに揺れていて、甘い髪の匂いがした。 どうしてそんな感覚を覚えてしまったのか、自分ではわからずに、俺はタオルを持った栗原の手を自分の手で押さえてその動きを止めた。 「えっと・・・、その、自分で出来るから・・・。」 なかなか言葉が出てこなくて、ようやくそう言った俺に、 「じゃあ着替えとってくるよ、どこにある?」 とそう言いいながら栗原は、タオルをお湯につけて濯いだあと、また固くしぼって俺に手渡してくれる。 「押入れの中に、一応・・・。」 押入れの中なんてぐちゃぐちゃだ。また栗原になんて言われるかわからない、と思いながらそう答えた。 けれど栗原は俺の着替え一式とシーツ類の替えを持ってきて、 「もっと汚いかと思ったよ。」 と笑いながら俺の枕元にそれを置いた。 「じゃあ、大丈夫そうだったらメシの用意を続けるけど。」 「あ、あぁ、自分で着替えられるから・・・。」 そう言うと、栗原はまた笑って言う。 「シーツは後で俺が替えてやるよ。」 と。 職場で見る表情とは全然違う笑顔だった。意外に人の世話を妬くのが好きなんだろうか。 栗原にはああ言ったけれど、まだ体の調子は全然戻っていなくて、タオルを絞る手にも余り力が入らない状態だった。それでも自分で出来ると言った手前、なんとか体の汗を全部拭い終えて、そして下着とパジャマを着替え終わる。 脱いだ物は、ほんとはそのままぐちゃぐちゃに洗濯籠につっこんでしまいたかったが、栗原の手前もあったので、見栄えが悪くない程度にたたんで布団の傍らに積み上げた。 そうこうしているうちに襖が開いて、それからしばらく間を置いてお盆を手にした栗原が現れた。 お盆の上には片手鍋と茶碗と箸が載っている。いつも俺が袋ラーメンを作るときの鍋だ。けれどそこには湯気のたつお粥が出来上がっていた。 「食えそうか?冷蔵庫に何もなくて、玉子粥くらいしか作れなかったけど・・・。」 言いながら、鍋の中のお粥をよそって俺に手渡してくれた。 暖かいその匂いを嗅いだとたん、猛烈な空腹感が襲ってくる。 「い・・・いただきますっ。」 熱さにハフハフ言いながら食べている俺を栗原は面白そうに見ていたが、ふと姿を消すと、襖の向こうの部屋のちゃぷ台の傍に置きっぱなしだったらしい俺のドテラを手に現れて、 「味はどう?口に合うといいんだけど。」 とそう訊いてくるので、 「いや、上手い、コレ。すげぇな、お前。」 俺は手放しでそう褒めた。本当においしかった。お粥なんて母親が作ってくれた以来久しぶりで優しい味がする。 そうすると栗原は、普通だよ、と言いながら照れたような表情をする。 「食べてるところ悪いけど、コレ着てちょっと布団から出てくれるか?今のうちにシーツとか替えちまうからさ。」 言われたとおり、布団から降りて、お代わりにとよそって貰ったお粥をかきこんでいると、栗原は手早く敷布団と掛け布団、それと枕のシーツやカバーをてばやく取り替えてくれて、そして汚れたそれをさっき俺が脱いだ下着類と一緒にして、また部屋を出て行く。 どうやらそれを洗濯籠に入れに行ってくれたらしい。 そして次にあらわれた時は、水の入ったコップを手にしていた。 その頃にはもう、小さな片手鍋一杯のお粥は全部俺の胃に納まった後で、 それを見て栗原は、 「腹減ってたんだな、もっと作れば良かったな。」 と言って、そして、俺に水のコップと錠剤を手渡してくれる。 「風邪薬はイヤがるだろうと思って、ビタミン剤買ってきた。飲んどけよ、治りが違うから。」 俺は言われるままに、渡された数粒の錠剤を水で流し込んだ。 俺が風邪薬・・・に限らず、判断力の低下を来たすような薬は絶対に飲まないと、その性格をよく見抜いている。 俺の世話を妬いてくれているその間中、態度も言葉も素っ気無くて、けれど、時折見せる笑顔が自然で、少し皮肉っぽいけどすごくいい顔をしていると思う。 相手が病人なら・・・、誰にでもこんなに親切なんだろうか? とそんな事をついつい考えて、 すると栗原は、 「はやく良くなって、復帰してこいよ。つまんねぇよ、お前が居ないと。」 とそう言って、俺の方を見て笑う。 「そだな。」 そう答えながら、俺はドテラを脱いで、栗原がシーツを替えてくれたばかりの布団に潜り込んだ。 「今日もさ、別の奴と組んで上がったんだけどさ。反応鈍くて全然ダメで。やっぱ、神田じゃなきゃダメだな、って思ったんだ。」 と、栗原は笑いながら何気なくそう言ったけれど。 俺はその言葉にものすごくドキドキさせられた。俺じゃなきゃ、というその言葉に。 「そりゃ・・・、悪かった。ゆっくり寝て月曜には復帰できるようにするさ。」 それだけ答えるのが精一杯で。 「んじゃ、俺、帰るけど・・・。ちゃんと寝てろよ。」 「あぁ、ありがとな、助かった。美味かったよ。」 そんな会話を交わす。布団の中から手を振る俺に、栗原は手を振り返す。 そのまま俺が寝てしまってもいいように、と消灯とか戸締りとか火の始末とか、一通りやってくれている音が聞こえて、そして最後にアパートの扉が閉まる音と鍵を閉める音が聞こえた。 眠ろうとして目を閉じると、不思議に栗原の顔が脳裏にちらついてなかなか寝付けなかった・・・。
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唯「…ブラ、外してあげようか」 梓の思考を読んだかの様にそう言って、唯が身体を離す。 ゴクリと、梓がのどを鳴らす。 それを肯定と受け取ったのか、唯は、自分の部屋着の背中に手を回し、ブラのホックを外した。 タイト目な部屋着の中で、唯の瑞々しい乳房が、ぽよん、とその存在を主張する。 梓は、その光景を食い入るように見つめている。 肩紐を外し、器用にブラを脱ぎ、服の裾から外したばかりのブラを取り出す。 唯はそのブラを無造作に放ると、胸の膨らみを強調するように、腕を組むような仕草をして、梓を見つめた。 唯先輩。唯先輩のおっぱい。 ぽよん、と、瑞々しい膨らみが、ふかふかの部屋着をその形に盛り上げて… そして、その双丘の頂点には、うっすらと、でも確かに、その突起が確認できた。 梓、唯のおっぱいをガン見。 唯「くすくす。あずにゃん。見過ぎ」 梓「あ、あ、ご、ごめんなさいです!」 梓、真っ赤になって顔を背ける。 唯「くすくす。…あ~ずにゃん」 そう言って、唯は再び、梓を背中から抱きしめた。 横に並んだ体勢から、身体を乗り出すようにして、その身体に覆い被さる様にして抱きしめる。 梓「…ふあぁ…」 思わず、ため息が出た。 柔らかい。 暖かい。 良いにおい。 気持ちいい。 梓の思考はもう、そんなシンプルな単語しか浮かばないほどに、惚けたようになっていた。 たっぷりと、お互いの身体を堪能したところで、唯は身体を離した。 梓、名残惜しそうにそれに従った。 唯「それじゃ、あずにゃん。さっきの続き。今日は、キスはしないから、舌出してみて?」 梓「え…し、舌ですか?」 唯「うん。ほら、べー、って」 べー、と、見本を見せるように、唯が舌を伸ばす。 ぷるぷるとした唇から、ピンク色のきれいな舌が覗く。 それに習うように、梓も、小さな舌をべー、と伸ばした。 唯「じゃあ、キスはしないからね?舌、そのまま出しててね」 そう言って、梓の顔に自分の顔を近づける。 梓、思わず目をつぶる。 ぺろっ。 梓「!」 舌に、経験したことのない感触があり、梓はびっくりして舌を引っ込め、目を開ける。 唯「ああん、舌、引っ込めちゃだめだよ」 梓「ゆ、唯先輩、今、何しましたか?」 唯、不思議そうに逡巡して、こう返した。 唯「何って、舌、嘗めただけだよ?」 それがどうかしたの?とばかりに、唯はきょとんとしていた。 唯「あのね、唇と唇があたらなければね、キスじゃないんだよ。だからこれはセーフ。ね?」 梓、その言葉を聞いて、ああそうか、なるほど、と思った。 梓はもう、まともな思考を放棄していた。もう完全に、唯のペースだった。 唯「じゃあ続き。はい、べー」 梓「は、はい…べー」 梓の舌を、ねぶるように、ぺろぺろと嘗める。 こぼれそうになる唾液をきれいに嘗め取り、こくりと嚥下する。 つばの臭いが梓の鼻に届き、あ、つば臭い、と一瞬だけ思ったが、瞬時にその嫌悪感は吹き飛んだ。 梓は、ふるふると身体を震わせながら、その倒錯的な光景を見守っていた。 唯「んー…ちゅぱ、ちゅぱ」 梓「ん、あ、はふあぁ…」 梓の舌をついばむ様に、唇でちゅぱちゅぱとしごき始める唯。 ちゅぱちゅぱ。ちゅぱちゅぱ。 唯「ん…ふ…ちゅぱ…ちゅぱ…」 梓「ん…やは…んああ…」 どうしよう。これ、凄く、気持ちいい。 梓の全身から力が抜ける。快感の余り、力が抜け、徐々に舌が口内へ戻されてゆく。 唯「…ほら、あずにゃん。ちゃんと、舌、出してないと、唇当たっちゃうよ?」 舌を促す唯。健気にそれに従う梓。 唯はその肩を支えるようにして掴んで、梓の舌を欲しいがままに堪能した。 ちゅぱちゅぱ。ちゅぱちゅぱ。 唯「…ぷあ…。うふふ、気持ちよかった?」 長らく、それを続けて、ようやく梓の舌を開放し、「どうだった?」とばかりにいたずらっぽい笑みを向ける唯。 梓「…」 放心したように、コクコクとうなずく梓。 唯、それを見て満足そうな表情を浮かべる。 唯「じゃあ、交代。はい、べー」 梓「あ、あ、えと…どうやって」 戸惑う梓。 唯、「ん、ん」と、舌を梓に伸ばして行為を促す。 梓、観念したように、その顔を近づけ、行為を始める。 梓「し、失礼します…」 ちろちろ、と、戸惑いながら、おっかなびっくり、その舌を触れるように嘗め始める。 ぺろぺろ、ちろちろ、と、慣れない舌の動きで舌を刺激され、唯は却ってもどかしいような、じんじんするような快感を得ていた。 唯「…うふふ、上手だね、あずにゃん。じゃあ、次は、唇でして」 べー、と、再び舌を出す唯。 梓、促されるままに、その舌を唇でついばんだ。 ちゅぽ。ちゅぽ。ちゅぽ。ちゅぽ。 無心で、その行為に没頭する梓。 暫く続けるうちに、行為に慣れてきたのか、口の動きがスムーズになり、貪欲に唯の舌を求めてついばみ続けた。 唯「…ぷは…。うふふ。あずにゃん、上手。じゃあ、交代」 梓「は、はいです…べー」 何回も、何回も、交代交代にその行為を続けた。 続けるうちに、隣り合って座っているのがもどかしくなり、唯に促されるままに、梓は唯の膝の上に腰掛け、向かい合ってその行為を続けた。 何度も続けるうちに、たまに唇が触れ合い…いや、でも、これはちょっと当たっただけだから、セーフ。 …またちょっと触れて…今度はちょっと長い時間だったけど、それでもこれはキスじゃない。セーフ。 もっともっと、続けて、…これはもう、唇と唇で、お互いの唇をついばみ合っていて、…ああ、でも、これは、キスじゃない。キスじゃない。だから、セーフ。 そうして、たっぷりと、ねっとりと、二人は長い時間ディープキスを交わしていた。 部屋には、ちゅぱちゅぱと淫靡な音だけが響いていた。 …こうして、梓も、唯の手中に落ちた。後は時間の問題。 梓の身体と精神は、余すところなく唯の言いなりになるだろう。 事実上、梓は最早、憂と同様、唯のペットとなっていた。 … 唯「おーす。りっちゃんおーす」 律「おー、唯。おつかれさん」 あれから数週間後。 その日、部室に行くと、珍しく律が一人で机に腰掛けていた。 二人きりで、部室で向き合う。 唯はいつもと変わらない。 ただ、律は、いつもより少し、険しい表情で、唯を見つめていた。 唯、そのただならぬ雰囲気に、一瞬気圧される。 律「あのさあ唯。なんか隠してることない?」 唯、いきなりの問いかけに、意表を突かれて逡巡する。 唯「えー、なんだろ?どうしたの、いきなり?」 心当たりがあるのかないのか。 唯は、そんな絶妙な態度で律に応じる。 律は、その態度から、唯が本当の事を言っているのか、嘘をついているのか、全く判断できなかった。 律「…あのさ、唯。最近梓様子変だろ。お前なんかしただろ」 その言葉に、唯は何一つわかりやすい反応を示さない。 「え?」という表情で、全く心当たりがない、と言わんばかりの表情。 唯は内心、焦っていた。 これは一体、どういうことだろうか。 唯は今まで、みんなが不審に思わないよう、最低限の対策はしてきたつもりだった。 梓との過度な接触は控え、抱きついた際も以前のように拒絶するように指示し、そして、呼びつけたら速やかに密やかに自宅へ来るよう、入念に躾けていた。 その甲斐あって、最近は、ちょっと前にあったような微妙な空気が払拭されていたのだ。 少なくとも唯はそう判断していた。 唯「何かって何?」 どうしよう。 律「何かは何かだろ」 律は、明らかに何かに気づいている。 多分これは、律だけ。 紬も、澪も、何も気づいていない。いないはずだ。 いっそもう、律にだけは正直に話してしまうか。 でも、何て? 暫く考えて見たが、やはりここは、しらを切り通すしかないだろう。唯はそう判断した。 唯「ごめんりっちゃん。何言ってるのか分からない」 律「そっか。なんもしてないんだな」 唯「うん。もちろん」 唯「秘密を暴露させるボタンを使って、憂とあずにゃんを陥れてペットにしている。三人の関係は極めて良好。二人は一生私の物」 唯「えっ」 律「やっぱな」 ぎょっとした。 自分の意思とは無関係に、勝手に自分がしゃべり出した。 しかもその内容は、今正に秘匿しようとしている、重大な秘密ごとだった。 その内容を喋り終えた後で、唯は、ぎょっとして、自らが発した言葉の意味を反芻して、ようやく今の状況に気がづいた。 律を見やる唯。 その手には、唯が拾った物と同じストラップが掲げられていた。 驚いた。まさか、同じ物が二つあるなんて。 そして、それを、こんなにも身近な人間が持っていたなんて。 律「嘘つき」 唯「…」 唯は警戒した。 下手に返答はできない。今は律の出方を待つしか無かった。 律「お前、以外と腹黒いよな」 唯「…そんなんじゃないよー」 しばし、熟考して、唯はそう答えた。 事実、唯のメンタルは、腹黒いとは少し異なっていた。 良く言えば純真無垢。 悪く言えば、小学生くらいの頃の、残酷な童心をそのまま引きずった、大人としては余りに不完全な精神構造が、唯の一見腹黒く見えるメンタルの正体だった。 唯「で、りっちゃん、何それ?」 律「言うまでもないだろ。お前が持ってるのと同じ物だよ」 唯「悪用してるんだ。私と同じように」 律「してねーよそんなん」 律「秘密を暴露させるボタンを使って、澪を言いなりにしている。澪は最早完全に私に依存している。一生一緒にいさせる」 律、ぎょっとして自分の口を塞ぐ。 唯、にやりと顔を歪める。 唯「へー。りっちゃん、そんな事してるんだ」 律「ちっ」 次は唯の番だった。 ポケットから取り出したストラップを、ふりふりと掲げて見せる。 唯「人のこと言えないじゃん。腹黒いね、りっちゃん」 律「てめ」 目に見えて、澱んで行く空気。 緊張感。敵愾心。 緊迫した空気。張り詰める緊張の糸。 そして、二人は。 同時にそれを向け、お互いに押下した。 …その時だった。 夕暮れの空を、まばゆいばかりの閃光が覆った。 … そこから、意識がとんで、ふわふわとした感覚の中で、私はぼんやりと天井を眺めていました。 唯「…」 始め、何が起こったのか、状況がよく分かりませんでした。 何か、大切な事を忘れていて、今すぐ何かをしなければいけないような、妙な焦燥感。 そして、それに逆らうように、私の身体をベッドに縛り付ける、強烈な倦怠感。 唯「…」 暗闇の中で、瞬きを繰り返す。呼吸を繰り返す。 徐々に、まとまりを帯び始めた意識が、徐々に覚醒に近づいて行きました。 チッ チッ チッ 時計の音。微かに、エアコンの音。 唯「…うわ…うわわわ…」 私は、徐々に、状況を把握していました。 唯「こ、この感じは…この感覚は…まさか…!」 私は、ようやく、状況を把握しました。 唯「夢オチかよ!」 終わり 戻る あとがき すいませんでした。書き溜めが尽きてしまいました。 明日も早いので一端終わります。 全部書いたらまた建てます。すいませんでした。