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……ああ、見つかってしまったか。 出来れば佐々木の暴挙を他人に知らしめる事は良しとしなかったから、敢えて見つかりにくいようにしていたのだが、発見してしまうとは目敏いというかしつこいというか…… オホン、だが見つけてしまったものはしょうがない。俺が既定事項を守るため、佐々木がやっちまった失態をお見せしよう。 なお、お子様にはちょっと過激な内容を含んでいるかもしれないから気をつけてくれ。そんなに大したものじゃないが念のためな。 そして、ググって来た人、あるいは更新履歴から辿ってきた人は、物語の最初から読んで頂けば幸いである。 こちらだ。 時は流れて当日。 かったるい英語の授業はチャイムを持って終了を告げ、いよいよ問題の体育の時間前である。 俺はと言うと倦怠感溢れる授業からようやく解放され、腕を伸ばして背伸びをしながらどうやって佐々木をガードしようか、それとも知らん振りしてようか、どっちにしようかなと考えていたその時。 (キョン、それじゃあ始めるよ。よく見ててね) 後ろの席から小声で語りかけてくるのは、やる気を完全に取り戻した一人の少女。 ふと後ろを見ると、既に体操着を取り出して準備万端の状態。あれだけ嫌がっていたのがまるで嘘のような仕草であった。 授業が終わったばっかりなので、教室を移動すべき男子生徒の半数以上はまだ自室に篭っている。勿論俺もその一人。 やるなら今をもって他は無い。 ああ、頼んだぜ。俺はなるべくそっちを見ないようにしてるから、ちゃっちゃとやっちゃってくれ。 (何を言っているんだキョン。キョンにもやってもらうことがあるんだ。ちゃんと手伝ってもらわなきゃ困るよ) は? お前、何を言って―― そう言おうと、立ち上がって振り向いた瞬間、佐々木は俺の両腕を掴んで、 (キョンは壁だからそこから動いちゃだめ) 佐々木はそのまま両手を机の上に持って行き、俺の両手が机に付いたのを見定めてからホールド。 つまり今の俺は、自分の椅子を起点にして佐々木の机に手をかけている状態。身を乗り出して喋るハルヒと逆パターンだと捉えれば分かりやすいだろう。 「……壁?」まだ点在している男子生徒からの目線を防ぐための壁ということか? なるほどそれは妙案だ。 覆い被さるように存在する俺は、佐々木の姿の大半を覆い尽くしている。加えて俺達の席は窓際後方の角(この前の席替えでそううなった。結局ハルヒの定位置に佐々木が来たことになる)。 これならば大多数の人間が佐々木の生着替えを直視することは無いだろうし、見えたとしても腕や足の一部だけ。 『私、ライトになります』と言って服を脱いだ後の戸○恵○香が佐々木、カ○プ○ード○ラ○トが俺。 つまりそんな状態だ。 妙案だとは思うのだが……しかし佐々木、ひとつ教えてくれ。 なぜ……俺達は向き合ったままなのだ? (くっくっくっ……決まってるじゃないか) 妙艶な笑みを浮かべた後、佐々木は迷わず、 (キョンに見せるためじゃないか) 「なっ!!」 (他の男子生徒の目線をカットしつつ、キョンの視線だけはこちらに送る。となればこの方法が一番じゃないか。そう言うわけだからちゃんと壁の役よろしく。ああ、もっと近づいてもいいんだよ。その方が露呈されにくいし、キョンはもっと近くで見られるし) ……やっぱり勘違いしてやがった…… 大多数の男子生徒がまだ教室にいるこの時間、佐々木は障害物を巧みに利用し、男子生徒からの死角になるよう着替え始めた。 障害物も去ることながら、集まりつつある自他クラスの女子生徒が上手い具合に包囲網となる。 おかげで佐々木の裸体(といっても下着姿だが)を間近に見る男子学生は殆どいないはずだし、仮に見えたとしてもかなりの遠目で何をしているか分からない状態だろう。 俺、一人を除き。 (よーく見てて……) 佐々木は思考が停止しかけている俺の目の前で、やおらセーラー服のファスナーに手をかけた。 ファスナーを開いた先から、佐々木の白い肌が姿を見せ始める。 うわちょっと待て。水着やバニーガールで女性の肌は見慣れているし、朝比奈さんの下着姿も正直何度も拝んでいる。 だが、ここまで間近で見た事はなかった。 なんだかやばいってこれは! 心の中では道徳心と自制心が入り混じったそんな叫びを上げているのだが、悲しいかな俺の本能たる部分がそれを拒む。 ファスナーは既に全開。チラリと見える、白くて細い腰から目が離せない。 (くくく……キョン、どこ見てるの?) その姿を見た佐々木は突如、露出した部分を遮るように両手を宛がった。 肌を見せないようにするため……ではなかった。セーラー服を掴んだ両手を、そろそろと捲り上げるためだった。 しかも一気に脱ごうとはせず、線香が燃えるくらいゆっくりの速度で、するするする、と少しずつ肌をさらけ出す。 腰の括れが露になる。佐々木のスタイルのよさは特級品。加えて瑕疵一つ無い艶美な肌が、彼女のフェロモンを助長している。 ゴクリ。 (もう、エッチ) 思わず生唾を飲んだ俺に、佐々木はセーラー服を半分ほど捲し上げた辺りで一旦動きを止めた。 俺の視線があまりにも目ざとかったのか、生唾の音に興ざめしたのか。それとも他の意図があったのか、それはわからない。 しかし、脱ぎかけのこの光景はある意味素っ裸よりも衝撃的だ。 腰は完全に露出し、胸郭の下半分の部分も丸見え。上半身の半分を曝け出している。 中でも見えそうで見えない下着。これは違法だ反則だ。チラリズムここに極まれり、むしろバンザイ。 この体勢を保持したまま平常心を保っていろと言う方が難しい。 さらに佐々木は流し目を送って、 (キョン、この先、見たい?) コクッ、と頷いてしまったのは俺が健全な男である証拠だ。誰にも責められるべきことではない。 それに満足したのか、佐々木は再び服を脱ぎ始める。 するすると脱ぎ始めるセーラー服、そしてついに彼女の下着が露に…… (ああん、ひっかかっちゃった) なんとぉっ! これは困ったトラブルだ! 佐々木のセーラー服の端が、胸の膨らみによって阻まれた! キュウキュウと苦しそうに悲鳴を上げるのは、佐々木自身ではなく、寧ろ胸。 思いっきり力を入れたらセーラー服が破れるんじゃないか? うむ、それはそれで見てみたいな。 しかし俺の思いとは裏腹に、佐々木は強引にセーラー服を引っ張って、引っ掛かっていた膨らみから強引に開放。 ポヨポヨポヨって……うわあ……揺れすぎ…… そして、ついに佐々木の胸の全容が明らかとなる。 引き締まった体に、場違いに実ったバスト。その大きさを端的に言うと、 『デカイ』 『デカすぎる』 『なんつうデカサだ』 もうそんな言葉しか出てこない。 デカイデカイと連呼しているが、お化けカボチャみたいに巨大なものがくっついているとか、世界ビックリ人間に登場しそうな範疇の大きさではないぞ念のため。 人知の範囲内で――言い換えれば、正常な人間が興味を誘うレベルで、十分大きいのだ。 バストとカップの関係は詳しく知らないが、個人的観測でDは確実に超えている。朝比奈さんと遜色ないか、下手したらそれ以上だ。 残念ながら大人の朝比奈さんよりは少々劣る気がするが、あの人のレベルで物事を考えるのは早計である。高校生レベルとしては超一級のバストの持ち主である。 服を着ているとそんなに目立つようでもなかったのだが……もしかして佐々木は着やせするタイプなのだろうか? それに半年前――橘の脂肪を利用して豊胸手術をした時――よりも大きく感じる。 それは恐らく、彼女が見につけている下着のせいであろう。 紺色でラメの入っている時点で学校に着てくるのはどうかと思うのだが、問題はそこではない。 佐々木が身に付けているブラは、はちきれんばかりの果実を苦しそうに支えている。下手に刺激を加えたらそのまま零れ落ちるぜ、あれは。 ギュウギュウの下着が胸の大きさをより際立たせているのだ。 佐々木、水着は蒸れるから嫌だって言ってたのに、サイズ違いのブラの方がバストにとって悪影響を及ぼすんじゃないのか? とは言え、これ以上ない眼福な光景なので黙っておく。 (さ、佐々木! そ、そんなアピールは必要は無いぞ! さっさと脱いで体操着を着てくれれば問題ない!) 少し落ち着きを取り戻した俺は、彼女のみに聞こえるよう精一杯叫んだ。目の保養になる事は間違いないが、場所が場所だけにこんなところで悶々とするわけにはいかない。というか俺がやばい。 しかし佐々木は俺の言葉に対してくっくと喉を鳴らしたのみ。胸の上まで上げたセーラー服を下げる素振りは一向に見られない。 それどころか佐々木は更なる暴挙に出た。なんと二の腕を使って、胸と胸を挟みやがったのだ。 胸と胸の間に出来た漆黒の渓谷は、冗談ではなく本気で吸い込まれそうだ。 (キョン、どうかな? 涼宮さんに引けをとらないと思うんだけど?) 佐々木に言葉に共鳴するかのように、両腕で挟まれたものがふるふるっと揺れた。 (以前長門さんに頼んで大きくしてもらった時よりも立派になってると思わないかい? あれからスタイルをキープするために美容体操は毎日欠かさずやっている。おかげでスリーサイズは黄金比を保持しているんだ) ふわふわっ、とまた揺れた。 佐々木が喋るたびに、声の振動が胸に伝わって、衝撃を吸収しているためだ。 うわぁ……たまらん。 思わず鼻を抑える。鼻血が出るわけじゃないが、鼻の下は完全に伸びきっている。それを隠すためだ。 しかし佐々木の攻撃は止まらない。 (おや、その顔は信じてないようだね? せっかくキョンのためにバストとウエストをさらけ出してあげたのに……そうか、残りのヒップも見てみたいというわけか。しかたないな、特別に見せてあげよう。くくくっ、本当に『エロキョン』で困るわね) 再び喉を鳴らし、上着の胸の上に保持したまま器用に腰に手をあて、スカートのジッパーを下げ始めた。 噂の着○○って奴だ。下手な裸より刺激的だ。 太腿から続く腰下のラインも露になる……って、 「さ、佐々木! そ、そこの紐って、まさかパン……」 「――――――!!」 思わず声が出てしまった俺は、しかしこれ以上言葉を口にすることができなかった。 怒涛の勢いで教室から放り出されたためである。 ――放り出したのは、クラス委員長の朝倉涼子。 「…………」 もの悲しい顔をした朝倉は、俯き加減のまま俺をじっと見つめ、そして静かに扉を閉めたのだった。
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咲の悩み事 京太郎×咲 衣×咲 百合注意 CDbreaker 第3局 430~ 434 506~ 520 咲の悩み事 2日目 咲の悩み事 1日目 “愛”って何だろう? “恋”って何だろう? 私は最近よくそんなことを考える。 別にそれは最近読んでいる本が恋愛小説モノばかりだから、とかそんな理由ではない。 その理由は、私に好きな人がいるからである。 私の幼なじみで、言い方を変えると腐れ縁。 毎日毎日「レディースランチが旨そうだから」と言う理由だけで私をお昼に誘う酷いけれど憎めない男の子。 きっと今日もまた誘ってくるのだろう。 「咲ー!」 「京ちゃんっ」 そう、京ちゃんもとい須賀京太郎だ。 「また寝てたのか、咲は」 「もー、今日は寝てないもん」 「そんなことよりさ、咲。 今日のレディースランチも旨そうなんだよな、付き合ってくんねーか?」 「それだけのために私を誘うってどうなの。大体優希ちゃんだっているでしょ」 本当に心にもないことを言ってしまったと思う。 最近はいつもこんな感じだった。 きっと自分とは違って積極的にアプローチ出来る優希ちゃんが羨ましいのだと思う。 また、最近京ちゃんは、優希ちゃんばっかりに構ってるからむしゃくしゃしているのかもしれない。 この良く分からない気持ちが「嫉妬」なのかな? それに、優希ちゃんはことあるごとに京ちゃんに抱きついたりアプローチしている。 私も優希ちゃん以上のアプローチをしないと優希ちゃんに京ちゃんを取られてしまうかもしれないというのは分かっている。 だけど、そうは言っても優希ちゃんが普段やっているような大胆なアプローチを自分がやっているのを想像すると、 (顔が熱くなってそれどころじゃないよぅ) 今の私はたとえば京ちゃんと手をつなぐことだってどきどきしちゃってそれどころじゃないと思うし、それ以外だって…… 要するに私は恥ずかしくて思い切ったことが出来ないということなんだ。 ――と、考えていると京ちゃんの 「あいつは和と弁当だろ、誘っても来ないって」 という言葉で現実に引き戻される。 私は、今日は京ちゃんと2人っきりと言う事実に少し嬉しく感じながらも、京ちゃんの口から出た「和」という単語についてまた考え込んでしまう。 (そうだよね、京ちゃんは原村さんのことが好きかもしれないんだ) ことあるごとに京ちゃんが原村さんのことを見て顔をにやけさせていることに私は気づいていた。 気になる相手のことだからこそ。 そしてさらに、京ちゃんが原村さんの大きいおっぱいばっかり見ていることも知っていた。 (きっと、京ちゃんはおっぱい大きい方が好きなんだろうな……でも、私原村さんみたいにおっぱい大きくないし…きっと私はまだこれからだと思うんだけど………そうだと良いんだけれど…) もしかしたら京ちゃんは大きなおっぱいが好きなだけで原村さんが好きなわけではないのかもしれない。 だけれども、それはそれでおっぱいの小さい私には大きな危機といえた。 ――と、京ちゃんが私の顔をのぞき込んで不思議そうに聞いてきた。 「咲…?どうしたんだ、急に黙ったりして」 「ううん、何でもないよ」 「よし、それなら食堂に行くぞっ」 「あっ、待ってよ京ちゃん!」 「早く来ないと置いてきますよ?」 「むー、私がいないと京ちゃんはレディースランチが食べられないんだよ!」 「おっと、そうだったな……じゃあ行きますか、お姫様?」 京ちゃんがかしこまって手を差し伸べてくる。 「っ~~、ホントに調子良いんだから!」 少し。 少しだけ。 ほんの少しだけ京ちゃんに「お姫様」って呼ばれたことににドキッとしちゃったことは、 ……秘密なんだよ? * 「原村さんは好きな人とかっている?」 部長の「さあ、全国大会まで残すところ1ヶ月よ! 今日も張り切って打ちましょう!」という言葉で始まった本日の部活も終わって、原村さんと一緒に家に帰っているときに私は思い切って聞いてみた。 本当はこういうことに詳しいのは部長や染谷先輩なのかもしれないけど、部長は妙に勘がいいし、染谷先輩は家の手伝いがあるって言って部活が終わってすぐに帰ってしまったから聞けなかった。 「す、好きな人ですか!?」 「うん、そう」 「わ…私は宮永さんのこと好きですよ」 原村さんは何故か顔を真っ赤に染め上げて、とても小さい声でまるで絞り出すようにそう答えた。 (違うんだよ、原村さん。その“好き”は友達としての“好き”だから、私が今抱え込んでるものじゃないの) 私は原村さんがそういう反応を返すかもと、予想していたし、だからこそ初めからだめでもともと感が有った訳だけど、 やっぱり頼りにしていた原村さんが見当違いの答をしてきたことに、少しがっかりしてしまった。 でも、私はそれをあからさまに表に出すと原村さんを傷つけてしまうと思ったから心の中でため息をつきつつも、原村さんに返した。 「ありがとう、原村さん。私も原村さんのこと大好きだよ」 * チャプン…… 「はあぁぁ~…」 家に帰って入浴中。 そこでも私は悩む。 ……なんか最近私、毎日お風呂の中で悩んでばかりだな、と思った。 それは毎日のぼせてしまうほどで、ついには3日前お父さんに「長風呂はあまり体に良くないんだぞ」と怒られてしまった。 だが今日、明日、明後日はお父さんが出張で家にいないので、心置きなく長風呂する事が出来る。 それは私にとって誰かに邪魔されないで独りで考えることが出来る時間があるということに等しく、とても都合がいいことだった。 …とは言ってもやはりこればかりは何分悩んでも、何時間悩んでも、何日悩んでも、簡単に答が出るものではなかった。 「京ちゃん…私どうすればいいの…」 と、私の手ははいつものように自分のおっぱい、その大きさに少しだけ自信のないおっぱいに伸びて、揉み始める。 初めはゆっくり、撫でるように、ほぐすように揉む。 そして私は、その頂点にあるピンク色の突起に触れた。 「んっ……」 まるで微弱な電流が走ったような気持ちよさに思わず声が出そうになって、私は慌ててその声を押し殺そうとするけれど、 すぐに今日はお父さんがいないためその必要はないことに気が付いて、本能に任せることにする。 「ふあっ…………っんあ!」 私は、今自分の乳首を押したり引っ張ったりしているのは京ちゃんの指だというふうに考える。 そう考え始めだした瞬間、体を流れていた微弱な電流はいつしか微弱ではない、今までよりひときわ強いものになった。 だから、私の想像の中の京ちゃんがいじり初めてすぐに私の乳首はとても固く尖り初めていた。 自分でも比べる人がいないのでよくは分からないけれど、きっと感じやすい体質なのだと思う。 「んっ……ふあっ……っあ」 ついには、そろりそろりと私の想像の中の京ちゃんは指を私のおま○こに伸ばす。 そして、その指がおま○こに触れた瞬間、 「んああぁっっ……!!」 今までとは比べものにならないほど大きく強く鋭く、そして何よりも気持ちいい電流が体を駆けめぐる。 私のおま○こはお湯の中でも分かるぐらいに濡れていて、京ちゃんがそこをかき回すとお湯の中なのに私の耳にグチョグチョという、いやらしい音が響くほどだった。 「ふあっあっ、んああっ……きょ、ちゃん…激しすぎるよぅ……っあ!」 今度は京ちゃんは無我夢中で私のおま○こをなめ回している。 お湯の中とかそういうこともお構いなしだった。 舌を挿れたり、クリトリスを吸ったり、私の感じるポイントを狙って攻めてくる。 「ゃやあぁぁ……っ!」 ……やがて、私は自分の絶頂が近づいているのを感じた。 京ちゃんは自分のおち○ちんを取り出すと、私の中に強引に押し込んでピストン運動をする。 十秒ともつことなく、私はすぐに絶頂に達してしまった。 「んあああああああ…………っっっっ!!」 この瞬間、この一瞬だけ私は幸せな気持ちになることが出来る。 しかし、その一瞬が過ぎれば、私と毎日幸せな日々を送っている京ちゃんは消えて、私の中には果てしない虚無感が残るのみとなってしまう。 「…………京ちゃぁん……」 例え毎晩毎晩、何度自分を慰めてもその想いは満たされない。 そして私は絶頂の後の束の間の幸福感を求めて夜な夜な自慰、オナニーに走ってしまうのだった。 * しばらくして、絶頂後の倦怠感が無くなった私は自分の愛液で汚れてしまったお湯を捨てて(こういうのってなんか恥ずかしいよね)、パジャマに着替えると自分の部屋に戻った。 ベッドに飛び込んだ私はしばらくぼぅっとしていたが、浮かんで来るのは私の名前を呼ぶ京ちゃんばかり。 『咲、お前また寝てたのか?』 『それでな、咲。レディースランチが旨そうなんだよな』 『咲、お前麻雀出来るの?』 咲、咲、咲―――頭の中で京ちゃんがその名前を呼ぶ。 それは、いつまでも消えることないように思えたが、だんだんと小さくなっていき…遂には消えてしまった。 ――もっと。 もっと私の名前を呼んでほしい。 その力強い低めの声で「咲」って呼んでほしい。 いつの間にか、私は自分の瞳から水滴が零れ落ちるのに気付いた。 私、こんなに京ちゃんのことが好きだったんだ。 幼なじみの男の子。 小さい頃からよくお姉ちゃんを入れた3人で遊んでて。 だけど、今まではっきりと自覚したことはなかった。 この気持ちを。 愛を。 私は京ちゃん、須賀京太郎のことを愛している。 改めてそのことに気づかさせられる。 ――だけど。 消極的な私が京ちゃんと結ばれるなんて、そんな事は決してないのだろう。 そう思うと余計に哀しくなってきた。 「うっ、うっ……グス…京ちゃん……私、おかしくなっちゃうよぅ……」 私はたまらなくなってそう呟いてしばらくの間、俯いていた。 が、いつものようにやり切れなくなってしまい、やがてベッドの上で再び自分を慰め始めた。 京ちゃん、京ちゃんはきっと知らないよね。 私がいつもいつも読書中に寝ちゃってるのは毎晩毎晩、京ちゃんのことを想って自分を慰めるあまり寝不足になって、だからつい昼休みにうたた寝をしちゃうんだってこと。 私は、決して満たされることはないのを知っていながら、それでも何もせずにいられないから、自分を慰め続ける。 本当は、こんなこと考えずに今は全国大会1ヶ月前だし、お姉ちゃんと仲直りするためにも、また家族一緒に暮らすためにも、麻雀に専念した方がいいんだよね? しなくちゃいけないんだよね? ……でもね、それが出来ないの。いつ、何処にいても、何をしていても、貴方のことが気になるから。 頭から離れないから。 …………私…どうすればいいんだろう? ――ねぇ……京ちゃん? 1日目終了
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470 光の翼番外編 日登町防衛戦(6) 1/42016/01/26(火) 06 11 07.94 ID urE9Fw2X0 キオは学園で見かけたザンネックを追っていた。 (あのザンネック…ファラ先生がなんで…) ザンネックはちょうど敷地を出たあたりで停止し、学校にザンネック・キャノンの砲口を向けていた。 すでに攻撃の準備に入っているようで、両肩の粒子加速器が稼働している。 「待てえ!」 急ぎCファンネルを飛ばして攻撃する。 ビームはIフィールドにはじかれたが、それでこちらに気付いたらしくザンネックは砲撃の準備を中断した。 「おやおや。なかなか狩り甲斐のありそうな奴が釣れたもんだ」 「(ファラ先生の声! でも…違う!)」 「誰ですか、あなたは…いや、なんでザンネックに乗ってるんです。ファラ先生は…!」 あのパイロットは声こそよく似ているが、キオの恩師であるファラではない。キオはそう直感した。 「先生? …ああ、コッチの私は教員になってるのか。似合わない。処刑人は処刑人をやってりゃいいのにさ」 「何を言っているんですか…!」 「ああ、あんたにはわからない話だったか。まあわかったところで、私がお前の首を頂くことに変わりはない! この死神の魔手(デスイビルハンド)でね!」 戦略レベルの超長距離射撃を行えるザンネックだが、巨体と武器の取り回しの悪さにより接近戦には向かない。 組み付こうとすると、機体が何かにはじかれた。 「いきなり女に寄ってくるなんて悪い子だ」 ザンネックが何か持っていた。ビーム・サーベルの発振器のようなものから鞭状のビームが伸びている。あれではじかれたのだ。 「なんだ、あの武器…」 あんな武器をザンネックが持っているという話は聞いたことがなかった。 「便利だろ。ビームサイズにもビームランスにもなるんだ。――つまり!」 鞭を鎌に変えて、先ほどまで動かなかったザンネックが迫ってきた。 「うわっ!」 「お前のMSの首を刈り取ってやることもできるのさ!」 鎌が届く微妙な間合いに入り込んでビーム・サイズを振りかざすザンネック。意外な素早さに驚いたが、それも一瞬のこと。すぐに回避行動に移る。 「ははっ! この私、ファラ・グリフォンが処刑してやろう。お前も! あの学校の連中もねえ!」 名前まで同じ。キオの恩師と無関係とは思えなかったが、考えるのは後だ。 「処刑、処刑って。首をとることの意味をわかってるんですか、あなたは!」 「何を言ってる。首をとることに意味なんざないだろ!?」 ファラの言葉に、キオはぎりりと歯をかみしめる。 「あなたは、僕が止めてみせる!」 「止められるもんなら止めてみな、子供が!」 止めてみせる。決意を新たに、キオは攻撃を再開した。 471 光の翼番外編 日登町防衛戦(6) 2/42016/01/26(火) 06 12 20.99 ID urE9Fw2X0 数十分後。どうにかバズを撃破したアセムは、応援にやってきたシロー率いる警官隊にその場を任せ 損傷したダブルバレットでキオの元へとたどり着いた。悪い予感は当たり、ザンネックとAGE-FXが戦っていた。 両者とも素早く動き、攻撃の応酬を繰り返している。 「(援護は無理か…!)」 援護しようにも、あの中に割って入るのは無理だ。AGE-FXに当たってしまう可能性もある。 歯がゆい思いをしながら、目の前の戦闘を見守る。隙を見つけたらすぐに攻撃に移れるように。 戦いながら、ファラは違和感を感じ取っていた。先ほどから頭の中にノイズのようなものが走っている気がするのだ。 気のせいと決めつけていたが、ノイズはどんどん大きくなり、ついには言葉となって、ファラの脳裏に走る。 『ファラ先生が言ってた。首っていうのは、戦士にとって取るほうも取られる方も誉れの高いことなんだって 首を取られるってことは、それだけその人が評価されていたってことの証なんだから』 ファラが戦っているパイロット――キオの声だった。 「なんだこれは…頭に直接訴えかけてくる…!?」 『あと、神様への捧げものとして人の首の代わりに使うために生み出されたのが饅頭だっていうことも教えてくれた。 饅頭は生贄に使う人間の頭の代わり。つまり命の代わりだったんだ』 AGE3-FXがサーベルで切りかかる。 「だから――どうした!」 ザンネックはビーム・サイズで器用に受けて、また離れる。 「首は、いや人間はそれだけ尊いものなんだ! それをわからず首を取るあなたは僕の尊敬するファラ先生じゃない! ただのファラ・グリフォンだ!」 「ああそうさ、私はファラ・グリフォンさ! 無感動に人を殺して何が悪い!? "こっち側"の私など知ったことか! 私は処刑人の、人殺しの家系に生まれたファラ・グリフォンなんだよ!」 ビーム・ランスを突き出す。横に避けたところで、ビーム・サイズへと切り替える。AGE-FXの左足を切断した。 しかしAGE-FXはそんなことは構わないとばかりに戦い続け、今度は通信に乗せて声を届ける。 「親が…先祖が、家系がなんだっていうんだ! 子が親の業を背負うなんておかしいよ! あなたは、自分の劣等感にその道を選ばされただけじゃないか!」 「キオ…」 戦闘を見守るアセムの胸を、ちくりとした痛みと悲しみが走った。理由はわからない。 それは日登商店街でXラウンダーの能力を使いキオの言葉を聞いていたフリットも同様だった。 「父さんや母さんは何してるか知らない! でも、兄さんたちはいろんな道を歩んでるんだ! 僕はただのゲーム好きの子供で、将来のことなんか知らない! 学校や遊びのことで頭がいっぱいだもの!」 「MSに乗って、ザンスカール軍中尉の私に食らいつく貴様が、ただの子供!? 寝ぼけたことを言うな!」 472 光の翼番外編 日登町防衛戦(6) 3/42016/01/26(火) 06 15 03.54 ID urE9Fw2X0 「寝ぼけてなんかあるもんか! Xラウンダーなんていうワケわかんないものだって言われた。お前は凄いって何度も言われた。 でも、それでも僕は――普通の子供だ! 大人でも神様でも超人でもないんだ!」 激情に身を任せ、FXバーストを発動。勢いと見た目に怯んだファラのビーム・ランスを軽々と避けて、ザンネックへと抱き着いた。 「くっ…!」 「取ったッ!」 機体のあらゆる場所から吹き出すサーベルを使ってコックピット以外の場所にダメージを与えながら、右腕のサーベルを使って頭を切断。 間違ってコックピットに攻撃しないように、すぐにバーストモードを切る。 「頭を取ったって…私はまだ動けるんだよ!」 「それでいいんだ!」 ボロボロになりながらも反撃を試みるザンネックに対して、ブースターを全開にして渾身の体当たりをかける。 視界とバランスを失い体勢が不安定になったザンネックは、その衝撃でSFSから叩き落された。 「私が、子供に…!?」 その言葉とともに地上へと落下していくザンネック。全身にダメージを受けている状態で落下の衝撃を受ければ、もう動けないはずだ。 「ふぅ…」 コックピットの中で、キオは大きく息をついた。SFSはまだ生きていたが、遠隔操作される恐れがあるので念のため破壊しておいた。 「キオ!」 「ダブルバレット…アセム兄ちゃん…」 体を強い倦怠感が襲っている。キオは思いのほか疲れていた。 「学校は…?」 「ファラ先生とシロー兄さん達が頑張ってる」 「そっか…じゃあ、行かなきゃ…」 「え?」 AGE-FXを地上に降ろして、先ほどザンネックが落下した場所へと向かう。 「キオ!?」 予想外の行動をした弟を追い、アセムも地上へと降り立った。 キオの予想通り、ザンネックは機能を停止していた。外側からハッチを開く。 「大丈夫ですか?」 中のパイロットに手を差し伸べる。顔も体格もファラそっくりだった。違うのは鈴の飾りがないことと、額の奇妙なマークくらいか。 「…敵に情けをかけるっていうのか」 「戦いは終わったんだから敵も何もないでしょう。…アセム兄さん、引き上げるからちょっと手伝って!」 「あ、ああ…」 アセムの助けを借りて、ファラの右腕を強引につかんで引き上げる。特に暴れるようなこともなかった。 473 光の翼番外編 日登町防衛戦(6) 4/42016/01/26(火) 06 19 55.05 ID urE9Fw2X0 「お前たちは…一体なんなんだ?」 「言ったでしょ、ただの学生」 「同じく」 「あ、怪我してる!」 ファラは左肩から血を流していた。落下の衝撃で変形したコックピットの部品が刺さったらしい。 引き上げたときに暴れなかったのは、この怪我が影響していたようだ。 キオはポケットから消毒用のスプレーと止血用のテープを取り出し、消毒した傷口に貼った。 「こんな状況じゃ病院もやってないだろうし…とりあえず、これで我慢してくださいね。 シェルターまで行けば、たぶんちゃんとした治療を受けられると思いますから」 「なぜ、敵にそんなことをする…自分に害をなすかもしれないというのに」 言われてからキオははっとなった。 「…そこまで考えてなかった」 ばつの悪そうな顔で言うキオにファラが苦笑し、立ち上がった。 「私の負けだね」 「え?」 「テロ屋の真似事はもうヤメにする。で、警察に出頭してやる。それでいいんだろ」 「あ、はい…」 「なんで急に素直に…」 アセムの疑問には答えず、ファラはキオをじっと見つめた。 「あんたの馬鹿さと強さ、優しさに…どうにも惚れてしまったらしい。惚れた男の頼みは聞いてやるのが女ってものさ」 キオに向け、ファラが妖艶に微笑んだ。あまりの色気に流石のキオとアセムが一瞬どきりとし、しばらくファラが言ったことの意味を理解できなかった。 「いつかまた、会えるのを楽しみにしてるよ。キオ。デートの誘いはいつでも受けつけてるからね」 硬直する二人を後目に、手をひらひらと振りながらファラが去っていく。そして、ようやく言われたことの意味を理解した二人は。 「「えええええええ!?」」 二人そろって絶叫。混乱のあまり、結局あのファラが何者なのか聞くのをすっかり忘れてしまっていた。 link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。このページにつけられたタグ アセム・アスノ キオ・アスノ ファラ・グリフォン マンガバン 光の翼 光の翼番外編 長編
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もう潰れてしまった海沿いのライブハウス。 とても小さなハコで、数回しか行ったことはないが、僕はあの場所を一生忘れないだろう。 彼女の歌をはじめて聞いたのはもう4年前になる。 その日ライブハウスに行ったのは本当にただの気まぐれだった。通りがかりに「オープン10周年記念ライブ」という告知を見かけ、知っているバンドの名前もあったので、暇だし見ていくかと思ったのだ。 格好つけてキューバ・リブレを飲みながら、フロアの後ろに据えつけられた席で轟音に耐えていたら(そのライブハウスは僕の好みよりすこし音が大きかった)、――突然その声は降ってきた。 彼女の歌は倦怠感にまみれ、それでいてくすぶるような熱を帯びていた。高音で少し混ざる金属音。かすれるように響く低音。マイナスと思われるような要素も魅力に変えてしまう、彼女の声にはそんな力があった。僕はグラスを右手に握りしめたまま、その音に聞き入っていた。 彼女の名はMEIKOと言った。 MEIKOのバンドはすでになかなか人気があったようで、精力的にライブ活動もしていた。僕はそのひとつひとつのライブに行った。もともと音楽はキライじゃない。けれど、僕は彼女と出会わなければ音楽をやろうとは思わなかっただろう。バンドを組むとき、必要以上に女性ボーカルにこだわったのも彼女の影響だったのだと思う。「もし俺たちが有名になって、」その頃は結構本気でそんなことを考えたものだ――「影響を受けたアーティストを聞かれたら、彼女の名を出さなければ」。 彼女の声はすばらしかった。そしてその声をすばらしく生かす楽曲。いつしか僕は新曲が出るたびに悔しいと思うことが多くなった。自分にはこんな曲は書けやしないし、自分にはMEIKOもいない。なぜこのバンドはこんなにも恵まれているのだろう。最高の楽曲を作る人間がいて、それを最高に再現するボーカリストがいる。 彼女に顔を覚えてもらうのにそれほど時間はかからなかった。毎回ライブに顔を出す人間を覚えるのは容易いだろう。最初のうちは恥ずかしくてとても彼女と話すことなんて出来なかったが、いつしかライブ後に彼女や、彼女のバンド仲間と言葉を交わしたりするようになった。 話すことはほとんどが他愛無いことだった。彼女はいつも話題の中心にいたが、僕はその周縁で静かに話を聞いているだけだった。もしかしたら、直接話したことはほとんど無かったのかもしれない。何かの拍子に二人きりになったときなど、話すことがなくてとても困った覚えがある。周りを取り巻くファンが熱い思いを彼女に伝えていても、僕はただそれを眺めているだけだった。 結局僕と彼女が関わるのは、ライブがあるときだけだった。僕は彼女のライブが終わればその次のライブを心待ちにした。ロクに更新されない彼女のバンドのホームページに毎日のようにアクセスし、他のファンから情報をかき集め、とにかくひとつのライブも逃さないように必死だった。 だから、ライブの回数が極端に減りだしたとき、僕はすぐに気づいた。本当に少しずつ緩慢に、彼らの活動は停滞していった。僕にはどうしようもないことだ。彼女に会える機会はどんどん少なくなっていった。 最後のライブのことは今でも覚えている。僕はまだ認めていなかったし、彼女たちも表層的には認めてはいなかったが、すでに終焉は始まって久しかった。しかし、その時にはこのライブが本当の終焉になるとは思ってもみなかったし、彼ら自身にもそのつもりはなかったと思う。なにしろその日は久しぶりに新曲が演奏されたのだから。それはこれからもこのバンドを続けていくのだという意思の表れだったはずだ。 「アルニコ」と銘うたれた新曲の最初の音を聴いた瞬間、喉の奥がぎゅっと締まるような感じがした。穏やかにはじまって急に変わる曲調。僕は何か日常の中で降り積もったやるせなさと、うつくしい風景を両方同時に見せられたような心地がして、腹の底が熱くなるのを感じた。 その曲が、僕が最後に聞いたMEIKOの歌だった。その後一度のライブのアナウンスもないまま何ヶ月かが過ぎ、ある日いつものようにバンドのページにアクセスすると、解散のお知らせが載っていた。 それきりMEIKOと会うことはなかった。結局僕と彼女は顔見知り以上ではなく、ライブというつながりがなくなればそれでおしまいだ。あの日一度だけ聞いた「アルニコ」は、もうどんな曲だったか思い出せはしない。ただ、あの強烈な印象だけが僕の心の中に今も残っている。 4年経った今、僕のバンドもまた解散の危機を迎えていた。複数の人間が同じ目的と目標を保ち続けるのは難しい。いろんなことがずれていき、身動きが取れなくなっていく。嘘くさいと思い続けてきた「音楽性の違い」というのも、こうなってみるとあながち嘘でもないと思った。 このバンドがなくなってしまったら、僕は音楽を続けていけるだろうか。そしてそう考えはじめるといつも、僕はMEIKOのことを思い出す。彼女は今もどこかで音楽をしているのだろうか。 夕暮れの街を歩きながら、僕はあの「アルニコ」を再現しようとしていた。もちろん思い出せもしない原曲そのものではなく、僕の中に残ったあの印象を再現できるような曲を作ろうとした。そんな曲が実際に作れたとして、バンドではもう演奏できないかも知れなかったが。 走り抜けていく自転車、風にざわめく街路樹、子どもの手を引いて家路に着く母親。そう、あれはこういった日常の中から生まれくるようなメロディーだった。それでいて焼け付くような熱を秘めた曲。 前を歩く母親が、子どもにせがまれて歌を歌い始めた。聞こえてきた声はとても優しく、夕暮れの街並みに溶け込むようだ。はじめて聞くはずの音楽なのに、なぜかとてもなつかしい。僕はすぐそのメロディーに、声に引き込まれた。 低音で少しかすれる歌声、少し耳につく高音。 僕は強烈なデジャヴに襲われた。歌い方はまるで違う。僕の記憶にある声はもっと鋭さを秘めた声だった。だけど聞けば聞くほど、その声には聞き覚えがあった。 「MEIKOさん!」 全く今考えてみても、どこにそんな勇気があったのかと思う。けれど、さまざまな不安よりも「ここで声をかけなかったらきっともう会えない!」という気持ちの方が強かった。 彼女はびっくりしたように振りかえると、僕の顔を見て不思議そうな顔をした。 「あ、あの…」 途端に僕は口ごもってしまってうまく喋れなくなった。彼女は僕なんて覚えてないに違いない! 「昔バンドをしてらっしゃった頃に…ファンで…」 「ああ!」 彼女はそう言うとうれしそうに笑った。 彼女が本当に僕のことを思い出したのかはよく分からない。しかし 「ホントーに久しぶりね!」 と喜んでくれた。 僕たちは近くの公園に入って、子どもを遊ばせながらベンチに座って話した。こんなに近くで彼女の横顔を見たことがあっただろうか。彼女の顔は記憶のままに美しかった。 「かわいいお子さんですね」 「憎たらしい盛りよ~! ホントに毎日大変!」 そう言いながらも子どもを見る彼女の目はとても楽しそうだった。 「MEIKOさんはもう、音楽はやってないんですか?」 「うーん、そうねえ。バンドが解散してからしばらくはいろいろ探したりもしたんだけど、あの子が生まれちゃってね。やめようと思ってやめたわけじゃないけど、気づいたらやめちゃってた。あなたは……音楽をやってるのね」 彼女は僕の持っていたギターケースを眺めてそう言った。 「ええ…まあ……」 「なに? はっきりしない返事ね!」 彼女はそう言うとじれったそうに身を揺すった。MEIKOはもう少し落ち着いた人間だった気がするが、まあ4年もあれば変わるものだろう。 僕は自分のバンドが解散に危機にあることを話した。そして解散した後自分は音楽をやっていけるのかどうか不安なことを。 話しているうちになんだか僕は不思議な気持ちになってきた。なぜ僕はそんなに音楽をやることに固執しているのだろう。そもそも解散の話が出るまでの僕はそんなに真剣に音楽をやっていなかった気がする。それがいざこうなってしまったら必死でしがみつこうとして。 なんだか滑稽だ。 「昔はプロになりたかったんだ。だけど結局自分の実力のなさや、やる気のなさのせいで、夢は夢のまま終わってしまった。なのに必死でその残滓にまだ縋っているなんて、おかしいですよね」 僕がそう言うとMEIKOはしばらく黙った後に 「それでいいんじゃない?」 と軽く言った。 「作りたいものがある、表現したい気持ちがあるっていうのは幸せなことよ。たとえ、それが多くの目に触れなくてもね。その手段を失うかもしれない、っていうのはツライわ」 わたしだってそうだったもの、と彼女はぽつりと小さくつぶやいた。 僕たちはしばらく黙ったまま、落ちていく夕日と伸びた影を眺めていた。 彼女はまたさっきの歌を口ずさみはじめた。僕はしばらくその歌をひき込まれるように聴いていた。しかし穏やかに紡がれていた旋律は、途中で突然曲調を変えた。そこで僕ははじめて気づいた。 ああ、これはあの「アルニコ」ではないか! 急にあのライブの情景が思い出されてきた。確かにこの曲だ。当時の感動が鮮明によみがえってきた。 あの頃からだいぶ遠くまで来たような気がする。ただ同じような日常を繰り返してきただけなのに。昔と今ではずいぶんいろんなことが変わってしまった。僕自身も変わってしまったし、彼女も変わった。それでもこの曲は、今でも僕の心を掻きたて、焦燥感を煽る。 結局夢なんか叶わないのかもしれない。バンドだってもうどうにもならないのかもしれない。でも、僕にはやはり、捨てきれないものがある。 「MEIKOさん!」 彼女が歌い終わったところで、僕は叫んだ。 「あなたに、僕の曲を歌ってもらいたい!」 彼女の声はやはり今でも僕を駆り立てる。僕が思わず言ったそのことばに、MEIKOはそっと微笑んだ。 「そうねえ、あなたが本気ならやってあげてもいいわ」 「本当ですか?」 「そうよ、本当に本気ならね。わたしを歌わせるのはそう簡単じゃないんだから! あきらめないでやる自信あるの?」 なぜだろう、その時僕はものすごく自信を持てた。技術的な問題はきっと乗り越えていける。彼女の声があれば。 「大丈夫です!」 このしょうもない世界で、僕は足掻こう。彼女の声がきっと、そのための力をくれる。
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ミーア@愛鳴藩国さんからのご依頼品 閉鎖的な環境にいると、その環境内での常識しか知らない、というのはままあることだ。 実際、日本人における常識と諸外国の方のそれとが大きく違うように、同じ「人間」という種族の中でもその地域、国家などによって常識というのは大きく変化していく。 そして、カルチャーショックという物は、時に大きな悩みを生み出す材料になる。 * ……暑い、だがこれを脱ぐわけにはいかない。私は戦士、戦士なのだから戦士なので戦士だからして……。 長身の美青年であるバルクは汗をだらだらとかいていた。いや、もうどうしようもないくらいかいていた。 バルクは誘われるまま、小笠原に来ていた、のだが。 暑い……どうにも暑い。おかしい……ふらふらするのはどういう事だろうか? 空を見上げる。さんさんと照りつける太陽。その日の小笠原はその時点で37度を観測し、黒いローブをぴっちりと着込んだバルクにとっては灼熱地獄というか、すでに彼の装備自体が歩くサウナスーツと化していた。 「バルク様、その黒いのぬぎませんか? このままじゃ倒れそうですよ」 「ああ、いえ………一応制服ですし」 とはいえ、既に肌にくっついている部分はぐっしょり、目の前は何か明るくなったり暗くなったり。 それでも、わざわざ誘ってくれたカイエの言葉に何とか受け答えをしようとは思うのだが、どうにも頭が動かない。 とりあえず、倒れられたら困るという事を言われ、それもそうかと納得。というか、暑い。 よいしょ、と何とか黒ローブを脱ぐ。大分快適になったが、まだどうにもふらふらする。 「バルク様、鎧も脱いで!」 「ああ、いえ、ですが戦闘に備えないといけませんし」 そうか、鎧……鎧を着てるから暑いのか……うん、当たり前だ。でも、戦闘に備えなければならない。これは脱げない。 「いいから脱ぎなさい」 「いえ、ですが……あ、そんなご無体な」 バルク、ふらふらの頂点ゆえか黒のオーマなのにほとんど無抵抗で鎧まで脱がされてしまう。 大分楽になった。そもそも鎧を脱いだおかげで体は軽くなった。とはいえ、びしょびしょの鎧下の感触はどうにも好きじゃない。 カイエが自分を見て口をあんぐりと開けた。かなり驚いたようだ。そして、すぐに口を開く。 「着てるもの下着以外全部脱いで!! 今ここ37度もあるんですよ! しかも目の前は海です!」 「はあ」 目の前をみる。確かに海だ。あぁ、あそこに入れば冷たくて気持ちいいだろう……。 早く脱ぎなさい、とせっついてくるカイエに渋々ではあるが、従う。 森林国人だろうがはてない県人だろうが第七世界人だろうが黒のオーマだろうが、怒った女性に逆らおうとする男はそういないだろう。バルクもそういう意味では完全に男である。 鎧下を豪快に脱いでみる。そうすると先程までの倦怠感などがかなり和らぎ、今度は照りつける太陽が肌を焦がす。 改めて周囲を見てみる。笑えるくらい晴れた空と目の前は海だ。ここはリゾート、余暇を楽しむところらしい。 ならば、海で水泳をするのも良いだろう。脱水症状寸前のバルクにとって、それはまるで天国に行くような心地よさを想像させた。 体を伸ばして、カイエの方をみる……カイエは顔を赤くして、手のひらで自分の顔を覆っている? 「きゃー! 下着はつけてください!(チラ見しつつ」 「いえ、水泳や入浴の時には何もつけないほうが」 その方が動きやすいのだ。当たり前だが布などを身につけて水につかれば水を吸った分、動きにくくなる。 それを嫌がり、自分などはこのようにするのだが、どうにも違うのだろうか? とりあえず、カイエが何かを言っているが、それを半ば無視するような形で海に入っていく。冷たい……体中の熱が奪われていく。 ひんやりとした感触が心地よく、バルクは海の中で体を伸ばした。んー、と空を見上げてみると……なるほど、リゾートも悪くないと思う。 「生き返ります……」 「本当ですよ・・・」 「いや、申し訳ない。同じ東京ときいておりましたので」 「いえ、こんなに暑いなんて私も予想を超えてました」 ここで少し強めの波が体を引っ張る。だが、長身のバルクからしてみればこの程度、どうという程でもない。 だが、カイエは心配したようだ。そのバルクの姿を見て、声をかけてくる。 「危ないですよ~」 「はい」 「気持ちいいですか、バルク様」 「ええ」 「海はいいですね」 「ええ」 ここでようやく……本当に頭がいつも通り動き出した。そもそも、自分は何で呼ばれたのだろうか? 「お待たせしました。今日、呼ばれた理由はなんですか?」 体を起こして、相手をまっすぐと見る。布で体を隠したカイエをまっすぐに見つめながら、一体どんな用件だったのか聞こうと思った。 ** それから話したことはたわいと言えばそうだし、そうじゃないと言えば、その通りの話だ。 先日のお見合いについての話と、バルクの付けていたサークレットの話を少々。 うっかりと外し忘れたサークレットをカイエが不思議そうに見ているのがこっちも不思議で、見せたら褒めてもらえた。それが嬉しく、また大事な物なのでバルクは一度海岸に上がり、鎧下の中にそれをしまった。 「バルク様」 「はい」 「もう少し、泳ぎましょう」 「ええ、喜んで……それにしてもなにかお顔が赤い気もしますが?」 バルクを正面から見ているカイエの顔を見て、少し不思議に思う。とにかく、不思議だらけだ。 まず、あの布。あんな物を付けたら水中ではより動きにくくなるのではないか? バルクからしてみれば、かなり不思議である。 「バルク様、お慕いしております」 不意のその言葉に少し、ドキリとした。それでも、バルクは律儀に頭を下げて、礼を言う。 「でも、今度から水着を着けてください」 笑いながらカイエに言われる。みずぎ……みずぎ? 「水着とはなんでしょう」 「これです」 そう言ってカイエが指さしたのは当然、自信の水着である。胸と腰の部分を隠したそれを見て、なるほど、アレは下着ではなく水着という別の物なのか、と頷く。 噂では確かに女性という物は己の体を隠す物を身につけている、というのは聞き及んでいたがバルクの想像の中ではそれはライトアーマーであったり、プレートアーマーであったり、武具の想像であったので驚きよりも興味が先立つ。 「まあ女性はたしかに。しかし、自分はこういう髪型ですが、実は男でして」 長い髪を見せると、カイエは笑う。そんなことはまるで判っていると言わんばかりに。 「男性もつけたほうがよいと思いますよ、下だけでも」 「普通なら胸も隠すのですか?」 「女性は隠すと思います」 ふむ、なんの防御性も無い装備……に見える。だが、それを付けなくてはならない。 装備を増やせば機動性は当然その分損なわれていく。頭の中で色々と考えた結果。 「なんというか、不便そうですね」 バルクの感覚としては、余計な装備を増やすのは不思議でしょうがない。だが、それを聞いてカイエは微笑を浮かべる。 「まあ、不便ともいえなくもないですがつけてないとそれはそれで問題が発生します」 「なるほど。蚊とかでしょうか?」 確かにこの季節なので蚊に刺されるのは嫌なことだ。かゆくて仕方ない。だが、それにしては布面積が少ないようにも思う。 バルクは妙な試行錯誤に陥っていたのだが、どうにも違ったらしい。その言葉を聞いてカイエは堪えきれなくなったのか、声に出して少し笑い。 「えーと、たとえば、わたしが何も着ていなかったら、どうでしょう?」 言われて、想像してみる。体のラインはそれこそ隠す布が少ないからすぐに想像できる。 頭の中でイメージしたカイエの体から、布をはぎ取ろうとした瞬間、何かとても後ろめたいという……何というか、恥ずかしいというか、とにかくそのような気がして想像をすぐにやめた。 ** それからまた話、笑い、そして、様々な事実を知り、カイエと秘密の約束をした。 そして、髪の一房を銀に変えたバルクは……当惑していた。 カイエが自分の名前を平然と自分に言ってきたことにもかなり驚いた、がそれはこの銀の髪が保たれている限り、自分以外には知られていないだろう。 ……自分以外、誰も……知らない。そう思うと、ドキリとした。心臓が跳ね上がる。こんな経験は初めてだ。 自分は女性という物を理解しているつもりだった。自分は30人ほどの女児を養っている。 だから、普通以上には女性に対して免疫と、何より知識があると思っていた。思っていたのだが。 「……………………」 バルク、頭を振った。今度は事故というか偶然というか、何というか、とにもかくにも、見てしまった二つの双丘が微妙に頭から離れない。それがまた心臓を高鳴らせる。 水着は大切だ、大切……本当に大切な物だったのだ。 ある種世間知らずというか、それこそ常識の違いなのだろう。女性とにも二次性徴があることは知っていたし、性犯罪がそれによって引き起こされる、という事も判っていた。 知識としては知っていたのだ。だが、そんなことが本当に起こりえるのか? よほど野蛮人の集まりなのか、と想像していたそれが一気に瓦解した。 自分の中で何度も繰り返させる光景、そして落ちるのを抱き留めた時の腕の感触、彼女の体温。 全てが気恥ずかしく、どこかそわそわさせる。これはどういう事だろう? こんな事、自分は知らない。 バルクは煩悶する。どうにも抑えられない謎の衝動が体を走り続ける。一体これは何だろう? 何なのだろう? それはもしかしたら病気かもしれない。人類の英知がどれほどの時間をかけても解くことの出来なかった難病。 草津の湯でも治らないその病に、彼はかかったのかもしれない。だが、本人はほとんど気づいていないだろう。 今日は様々なことを教えて貰い、そして、様々なことを経験した。 知識でしか知らないことも体感した彼は、新たな問題に直面している。 目の前に垂れ下がる銀の一房の髪を見て、思いを馳せる。その想いがそれがどう転ぶかは……また、別の話である 作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) 名前 コメント ご発注元: ミーア@愛鳴藩国様 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/cbbs_om/cbbs.cgi?mode=one namber=753 type=673 space=15 no= 製作:癖毛爆男@アウトウェイ http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=1219;id=UP_ita 引渡し日:2008/06/17 counter: - yesterday: -
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※クオリティ低いです。とことん低いです。推敲の終わった部分だけ投下。気に入っていただけたら幸いです… タイトルは『咲の悩み事』京太郎×咲 (今回の投下ではありませんが)百合注意 キャラ崩壊注意 1日目 “愛”って何だろう? “恋”って何だろう? 私は最近よくそんなことを考える。 別にそれは最近読んでいる本が恋愛小説モノばかりだから、とかそんな理由ではない。 その理由は、私に好きな人がいるからである。 私の幼なじみで、言い方を変えると腐れ縁。 毎日毎日「レディースランチが旨そうだから」と言う理由だけで私をお昼に誘う酷いけれど憎めない男の子。 きっと今日もまた誘ってくるのだろう。 「咲ー!」 「京ちゃんっ」 そう、京ちゃんもとい須賀京太郎だ。 「また寝てたのか、咲は」 「もー、今日は寝てないもん」 「そんなことよりさ、咲。 今日のレディースランチも旨そうなんだよな、付き合ってくんねーか?」 「それだけのために私を誘うってどうなの。大体優希ちゃんだっているでしょ」 本当に心にもないことを言ってしまったと思う。 最近はいつもこんな感じだった。 きっと自分とは違って積極的にアプローチ出来る優希ちゃんが羨ましいのだと思う。 また、最近京ちゃんは、優希ちゃんばっかりに構ってるからむしゃくしゃしているのかもしれない。 この良く分からない気持ちが「嫉妬」なのかな? それに、優希ちゃんはことあるごとに京ちゃんに抱きついたりアプローチしている。 私も優希ちゃん以上のアプローチをしないと優希ちゃんに京ちゃんを取られてしまうかもしれないというのは分かっている。 だけど、そうは言っても優希ちゃんが普段やっているような大胆なアプローチを自分がやっているのを想像すると、 (顔が熱くなってそれどころじゃないよぅ) 今の私はたとえば京ちゃんと手をつなぐことだってどきどきしちゃってそれどころじゃないと思うし、それ以外だって…… 要するに私は恥ずかしくて思い切ったことが出来ないということなんだ。 ――と、考えていると京ちゃんの 「あいつは和と弁当だろ、誘っても来ないって」 という言葉で現実に引き戻される。 私は、今日は京ちゃんと2人っきりと言う事実に少し嬉しく感じながらも、京ちゃんの口から出た「和」という単語についてまた考え込んでしまう。 (そうだよね、京ちゃんは原村さんのことが好きかもしれないんだ) ことあるごとに京ちゃんが原村さんのことを見て顔をにやけさせていることに私は気づいていた。 気になる相手のことだからこそ。 そしてさらに、京ちゃんが原村さんの大きいおっぱいばっかり見ていることも知っていた。 (きっと、京ちゃんはおっぱい大きい方が好きなんだろうな……でも、私原村さんみたいにおっぱい大きくないし…きっと私はまだこれからだと思うんだけど………そうだと良いんだけれど…) もしかしたら京ちゃんは大きなおっぱいが好きなだけで原村さんが好きなわけではないのかもしれない。 だけれども、それはそれでおっぱいの小さい私には大きな危機といえた。 ――と、京ちゃんが私の顔をのぞき込んで不思議そうに聞いてきた。 「咲…?どうしたんだ、急に黙ったりして」 「ううん、何でもないよ」 「よし、それなら食堂に行くぞっ」 「あっ、待ってよ京ちゃん!」 「早く来ないと置いてきますよ?」 「むー、私がいないと京ちゃんはレディースランチが食べられないんだよ!」 「おっと、そうだったな……じゃあ行きますか、お姫様?」 京ちゃんがかしこまって手を差し伸べてくる。 「っ~~、ホントに調子良いんだから!」 少し。 少しだけ。 ほんの少しだけ京ちゃんに「お姫様」って呼ばれたことににドキッとしちゃったことは、 ……秘密なんだよ? * 「原村さんは好きな人とかっている?」 部長の「さあ、全国大会まで残すところ1ヶ月よ! 今日も張り切って打ちましょう!」という言葉で始まった本日の部活も終わって、原村さんと一緒に家に帰っているときに私は思い切って聞いてみた。 本当はこういうことに詳しいのは部長や染谷先輩なのかもしれないけど、部長は妙に勘がいいし、染谷先輩は家の手伝いがあるって言って部活が終わってすぐに帰ってしまったから聞けなかった。 「す、好きな人ですか!?」 「うん、そう」 「わ…私は宮永さんのこと好きですよ」 原村さんは何故か顔を真っ赤に染め上げて、とても小さい声でまるで絞り出すようにそう答えた。 (違うんだよ、原村さん。その“好き”は友達としての“好き”だから、私が今抱え込んでるものじゃないの) 私は原村さんがそういう反応を返すかもと、予想していたし、だからこそ初めからだめでもともと感が有った訳だけど、 やっぱり頼りにしていた原村さんが見当違いの答をしてきたことに、少しがっかりしてしまった。 でも、私はそれをあからさまに表に出すと原村さんを傷つけてしまうと思ったから心の中でため息をつきつつも、原村さんに返した。 「ありがとう、原村さん。私も原村さんのこと大好きだよ」 * チャプン…… 「はあぁぁ~…」 家に帰って入浴中。 そこでも私は悩む。 ……なんか最近私、毎日お風呂の中で悩んでばかりだな、と思った。 それは毎日のぼせてしまうほどで、ついには3日前お父さんに「長風呂はあまり体に良くないんだぞ」と怒られてしまった。 だが今日、明日、明後日はお父さんが出張で家にいないので、心置きなく長風呂する事が出来る。 それは私にとって誰かに邪魔されないで独りで考えることが出来る時間があるということに等しく、とても都合がいいことだった。 …とは言ってもやはりこればかりは何分悩んでも、何時間悩んでも、何日悩んでも、簡単に答が出るものではなかった。 「京ちゃん…私どうすればいいの…」 と、私の手ははいつものように自分のおっぱい、その大きさに少しだけ自信のないおっぱいに伸びて、揉み始める。 初めはゆっくり、撫でるように、ほぐすように揉む。 そして私は、その頂点にあるピンク色の突起に触れた。 「んっ……」 まるで微弱な電流が走ったような気持ちよさに思わず声が出そうになって、私は慌ててその声を押し殺そうとするけれど、 すぐに今日はお父さんがいないためその必要はないことに気が付いて、本能に任せることにする。 「ふあっ…………っんあ!」 私は、今自分の乳首を押したり引っ張ったりしているのは京ちゃんの指だというふうに考える。 そう考え始めだした瞬間、体を流れていた微弱な電流はいつしか微弱ではない、今までよりひときわ強いものになった。 だから、私の想像の中の京ちゃんがいじり初めてすぐに私の乳首はとても固く尖り初めていた。 自分でも比べる人がいないのでよくは分からないけれど、きっと感じやすい体質なのだと思う。 「んっ……ふあっ……っあ」 ついには、そろりそろりと私の想像の中の京ちゃんは指を私のおま○こに伸ばす。 そして、その指がおま○こに触れた瞬間、 「んああぁっっ……!!」 今までとは比べものにならないほど大きく強く鋭く、そして何よりも気持ちいい電流が体を駆けめぐる。 私のおま○こはお湯の中でも分かるぐらいに濡れていて、京ちゃんがそこをかき回すとお湯の中なのに私の耳にグチョグチョという、いやらしい音が響くほどだった。 「ふあっあっ、んああっ……きょ、ちゃん…激しすぎるよぅ……っあ!」 今度は京ちゃんは無我夢中で私のおま○こをなめ回している。 お湯の中とかそういうこともお構いなしだった。 舌を挿れたり、クリトリスを吸ったり、私の感じるポイントを狙って攻めてくる。 「ゃやあぁぁ……っ!」 ……やがて、私は自分の絶頂が近づいているのを感じた。 京ちゃんは自分のおち○ちんを取り出すと、私の中に強引に押し込んでピストン運動をする。 十秒ともつことなく、私はすぐに絶頂に達してしまった。 「んあああああああ…………っっっっ!!」 この瞬間、この一瞬だけ私は幸せな気持ちになることが出来る。 しかし、その一瞬が過ぎれば、私と毎日幸せな日々を送っている京ちゃんは消えて、私の中には果てしない虚無感が残るのみとなってしまう。 「…………京ちゃぁん……」 例え毎晩毎晩、何度自分を慰めてもその想いは満たされない。 そして私は絶頂の後の束の間の幸福感を求めて夜な夜な自慰、オナニーに走ってしまうのだった。 * しばらくして、絶頂後の倦怠感が無くなった私は自分の愛液で汚れてしまったお湯を捨てて(こういうのってなんか恥ずかしいよね)、パジャマに着替えると自分の部屋に戻った。 ベッドに飛び込んだ私はしばらくぼぅっとしていたが、浮かんで来るのは私の名前を呼ぶ京ちゃんばかり。 『咲、お前また寝てたのか?』 『それでな、咲。レディースランチが旨そうなんだよな』 『咲、お前麻雀出来るの?』 咲、咲、咲―――頭の中で京ちゃんがその名前を呼ぶ。 それは、いつまでも消えることないように思えたが、だんだんと小さくなっていき…遂には消えてしまった。 ――もっと。 もっと私の名前を呼んでほしい。 その力強い低めの声で「咲」って呼んでほしい。 いつの間にか、私は自分の瞳から水滴が零れ落ちるのに気付いた。 私、こんなに京ちゃんのことが好きだったんだ。 幼なじみの男の子。 小さい頃からよくお姉ちゃんを入れた3人で遊んでて。 だけど、今まではっきりと自覚したことはなかった。 この気持ちを。 愛を。 私は京ちゃん、須賀京太郎のことを愛している。 改めてそのことに気づかさせられる。 ――だけど。 消極的な私が京ちゃんと結ばれるなんて、そんな事は決してないのだろう。 そう思うと余計に哀しくなってきた。 「うっ、うっ……グス…京ちゃん……私、おかしくなっちゃうよぅ……」 私はたまらなくなってそう呟いてしばらくの間、俯いていた。 が、いつものようにやり切れなくなってしまい、やがてベッドの上で再び自分を慰め始めた。 京ちゃん、京ちゃんはきっと知らないよね。 私がいつもいつも読書中に寝ちゃってるのは毎晩毎晩、京ちゃんのことを想って自分を慰めるあまり寝不足になって、だからつい昼休みにうたた寝をしちゃうんだってこと。 私は、決して満たされることはないのを知っていながら、それでも何もせずにいられないから、自分を慰め続ける。 本当は、こんなこと考えずに今は全国大会1ヶ月前だし、お姉ちゃんと仲直りするためにも、また家族一緒に暮らすためにも、麻雀に専念した方がいいんだよね? しなくちゃいけないんだよね? ……でもね、それが出来ないの。いつ、何処にいても、何をしていても、貴方のことが気になるから。 頭から離れないから。 …………私…どうすればいいんだろう? ――ねぇ……京ちゃん? 1日目終了
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「言峰、綺礼……ッ!」 伸ばした手は、虚しく空を切る。 殺し合いの開幕を告げた男は、自分にとって余りにも見覚えのある顔だった。 聖杯を巡る戦いが終結し安心しきっていた衛宮士郎の胸中を、焼け付くような激情が満たしてゆく。 ――止めなくてはならない。この殺し合いは、絶対に。 手元の名簿を見れば、見知った名前がいくつか見受けられた。 遠坂やランサー、そしてあの傲岸な英雄王……ギルガメッシュ。 前者二人はまず乗らないだろうが、ギルガメッシュは解き放っておくには危険過ぎる怪物だ。 そこな奇策や力業であの黄金のサーヴァントは斃せない。 しかも問題はギルガメッシュだけではなかった。 アーチャー、『無銘』。 アサシン、『李書文』。 キャスター、『アリス』。 この三騎に至っては自分の知らない、第五次の聖杯戦争では召喚されていない英霊達ときた。 先のランサーもそうだが、真名が予め明かされているのは戦力差を埋めるための配慮なのか……それとも、聖杯戦争の枠を超えた蟲毒の宴に於いて、互いの探り合いなど無意味だと暗に告げているのか。 いずれにせよ、じっとしてはいられない。 殺し合いに消極的な参加者を保護するのは当然として、その傍ら乗った連中を無力化していかなければ必ず大きな犠牲が出る。こんなところで罪のない命が喪われるのは、士郎にとって許せる話では到底なかった。 一刻も早く殺し合いを止め、今度こそあの神父に引導を渡すこと。 楽な道のりでは決してないだろうが、不安はなかった。 否、そんなものに足を取られまごついていていい訳がない。 そんな無様を晒すことは絶対に出来ない――いつか、赤い外套の英雄に吼えた正義(じぶん)を嘘にしない為にも。 衛宮士郎は改めて強く確信し、正義の心を奮わせる。 腰掛けていたベンチから立ち上がると、肩を回して軽いストレッチを行う。 僅かな時間とはいえ気絶していたからか、全身の随所に倦怠感を感じる。 無論、そんな体調不良を残したまま人外の域に片足を突っ込んだ魔術師や、そもそも人間の枠から逸脱しているサーヴァント達と事を構えようなど自殺行為だ。少しでも身体を解しておき、いざという時支障がないようにしなければ。 日頃鍛錬の合間に行っている器械運動を行いながら、これからの行動について思考を向ける。 やはりまずは遠坂との合流だろう。ランサーもそうだが、こういう状況で乗ってこないと確信できる、信頼できる存在は非常に大切といえる。何かと優れた技術を持つ彼女なら、ひょっとすると衛宮士郎では絶対に気付けないような真実を暴くことも出来るかもしれない。……何分機械音痴のきらいがあるらしいので、首輪の解除については期待できなそうだが。 「――ん……?」 ふと、士郎は動きを止めた。 聞き間違いでなければ今、自分のものでない声が聞こえたような気がしたのだ。 女の子の声。改めて耳を澄ましてみると――やはり聞こえる。啜り泣くか細い声が、近くから漏れている。 放っておくのは忍びないし、何より危険だ。 いつどこに乗った参加者が彷徨いているか分からない以上、最悪なことになる前に見つけ、安心させてやらなければ……。 幸い、声の出所はすぐに分かった。 士郎のいたベンチから少し進んだ茂みの向こうだ。 目を凝らすとほんのうっすらとだが、金髪の小さな女の子の姿が確認できる。 こんな小さい子まで呼ばれているのか――驚くと同時に、士郎は言峰へ対してまた怒りを覚えた。 ……つくづく、卑劣なコトをするヤツだ。 気に入らないし、許せない。 胸糞の悪いものが沸き上がってくるが、いま自分が憤慨していてもどうしようもないとその激情を自制する。 それよりもまずはあの子を保護するのが先だ。 茂みを掻き分けると小さく呻く声がしたが、怖がらせないように両手を挙げて士郎は少女の前に姿を現す。 「大丈夫、俺は殺し合いに――「もう大丈夫だぜお嬢ちゃん、この東方仗助が来たからにはよォ――……!?」――!?」 そして、瞠目した。 少女を隔てた向こう側に、自分と同じくらいの年頃だろう、リーゼントヘアーの少年が立っている。 だが驚いたのはあちらも同じようで、不良生徒がそうするように構えを取ると―― 「うおおおッ、何だてめーはッ!」 「待て、俺は殺し合いに――――」 「『クレイジー・ダイヤモンド』ッ!!」 「――――ッ!?」 ――少年の傍らに、突如奇怪な人型の『何か』が出現した。 全身にあるハートマークらしき模様と頸部に数本、パイプのようなものが確認できる。 どちらにせよ確かなのは、これは人間ではないということ。 人の形こそしているが細部は明らかに人のそれと異なっており、極めつけがそのピンクがかった肌の色だ。 士郎も堪らず臨戦態勢を取る。相手が仕掛けてくるというならば、不本意だが自衛だけはさせて貰おう。 暫し睨み合いが続く。 あわや一触即発の空気が流れる中、二人の男を諌めたのは彼らに左右を挟まれた少女だった。 「ぐす……あ、あの……喧嘩は、やめてください……」 一瞬呆気に取られたような顔をしてから、ばつが悪そうにまずリーゼント頭の少年が頭を掻く。 次いで士郎も苦笑し体勢を解いた。 なんとも締まらない出会いにはなってしまったが、兎角此処に、三人の殺し合いを否とする者が合流を果たした。 ◆ 「魔法を使えるのが当たり前の世界にスタンド能力……はは、凄い話になってきたな」 取り急ぎ殺し合いに乗らない意思を確認し合った三人は各々の素性や能力、立場などについて自己紹介がてら教え合うことにしたのだったが、誰か一人が自分のことを喋る度にもう二人が驚愕する、その繰り返しとなった。 「士郎さんの話だってとんでもなかったっスよ~。まるで『週刊少年ジャンプ』の中の話みたいでビビったぜ」 「そ、そうですよ……でも、そんな危ない人達もいるんですよね。この会場に……」 リーゼント頭――東方仗助が興奮した調子で囃し立てると、虹彩異色の瞳を持った金髪の少女・高町ヴィヴィオが不安げに呟いた。その不安は至極もっともだ。士郎の『サーヴァント』についての話を聞いた後で、そんな怪物がこの会場に参加者として放り込まれており、しかも他者へ危害を及ぼして来るような輩までいると言われれば誰だって恐怖を覚えて当然であろう。 だが危険人物の観点で言えば、仗助の語った『触れたものを爆弾に変える能力』を持つ連続殺人鬼……吉良吉影なる人物も負けてはいないだろうと士郎は思った。 サーヴァント達はアサシンのクラスを除き、基本的には正面切っての戦闘を行うものだ。 その点に関して言えば件の英雄王も例外ではなく、故にある意味では手の打ちようがあるのだったが――話を聞く限り、吉良吉影という人物はまずそんな正攻法に訴えるような性格をしては居るまい。 影のように忍び寄り、ただ一瞬で人命を奪い去る言葉通りの殺人鬼。 仗助から情報を得られたのは僥倖だった。もし何も知らないまま遭遇していたなら、為す術もなく爆殺されていただろう。 「大丈夫だよ、ヴィヴィオ。おまえの友達や家族は乗る奴らじゃないんだろ? 仗助の知り合いも合わせれば、言峰のヤツへ反発する連中も決して少なくはない筈だ」 「おうよ。億泰や岸辺露伴がいればなお良かったが、なんてったってあの承太郎さんが居るんだ。 ちょっと頼りないけど俺の親父も居る……後は簡単、あのスカしたエセ神父野郎をブチのめしてやるだけだぜッ!」 士郎の言った通り、名簿にあったヴィヴィオの知る人達は見事なまでに全員殺し合いなどしそうもないいい人ばかりだった。なのはやフェイト、はやてはそんじょそこらの魔導師では相手にならないほど強い。 スバルとティアナも正義感の強い頼れるお姉さんだし、アインハルト達はかけがえのない親友だ。彼女達の顔を思い出すと、ヴィヴィオは安心すると同時に勇気が湧いてくるのを感じた。 ただ逃げるだけじゃなく、自分もこの悪夢を終わらせるために戦いたいと思えた。 昔の自分なら、きっと何も出来なかった。 でも今は違う――こんなことをするために身につけた力ではないけれど、誰かを守れる力が高町ヴィヴィオにはある。 自分を勇気づけるようにぱんと頬を両手で叩くと、不思議となんでも出来そうな……清々しい気分になる。 「……そうですよね。怖気づいてばかりじゃ、何もできませんよね。 ―――よーし! 士郎さん達には敵わないかもしれないけど、わたしも頑張って戦います!!」 「へえ……なかなかグレートな根性してるじゃあねえか、ヴィヴィオッ!」 仗助はこういう熱いノリが好きなのか、自分まで燃えてきたようだった。 士郎もそんな二人の後輩を見つめながら、負けてられないな、と独りごちる。 必ずこの三人で殺し合いを終わらせよう。一人も欠けずに、悪夢から覚めるのだ。 「もうちょっと休んだら行くか。――仗助、ヴィヴィオ。絶対生き抜いてやろうな」 「もちろん!」 「言われるまでもねーっスよ士郎さん。あんたの方こそしっかりついてきて下さいよォーッ!」 ここに、三人の『主人公(ヒーロー/ヒロイン)』たちのバトルロワイアルが幕を開けた。 【一日目/深夜/E-4 諏訪原市(海浜公園内)】 【衛宮士郎@Fate/stay night】 【状態】健康 【装備】なし 【所持品】基本支給品一式、不明支給品3 【思考・行動】 0:言峰を倒し、殺し合いを終わらせる。 1:仗助、ヴィヴィオと行動する。 2:遠坂、ランサーと合流したい。 3:ギルガメッシュと素性を知らないサーヴァント達には注意。特にギルガメッシュ。 4:イリヤについては保留。実際に会ってから、本物かを確かめたい 【備考】 ※UBWルート、ED後からの参戦です 【東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険】 【状態】健康 【装備】なし 【所持品】基本支給品一式、不明支給品3 【思考・行動】 0:このゲームは気に食わない。だからブッ壊す! 1:士郎さん、ヴィヴィオと行動。 2:知り合いを探す。 3:吉良吉影は必ず倒す。絶対に許しはしない。 【備考】 ※吉良との最終決戦突入直後からの参戦です。 【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのは】 【状態】健康 【装備】セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのは 【所持品】基本支給品一式、不明支給品2 【思考・行動】 0:ゲームを終わらせる。皆で生きて帰る。 1:士郎さん、仗助さんと行動。 2:なのはママやアインハルトさん達を探し、一緒に戦う。 【備考】 ※無限書庫へ入る直前からの参戦です。 時系列順に読む 前:夢花火 次:緋色の空 東方仗助 次:[[]] 高町ヴィヴィオ 次:[[]] 衛宮士郎 次:[[]]
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Last update 2008年04月12日 踊れないリズムはいらない 著者:AR1 私の頬に、自然に笑みが浮かんできた。様々な色が混ざり合った照明を反射する虹色のミラーボールが宙に浮いているのを見て、または『レッツ・グルーブ』の機械的に加工(エフェクト)のされたヴォーカルが聴こえると、もしくは重低音の衝撃腹部から頭頂部へ突き抜けるたび、私の中にはリズムが躍動した。それは外から揺さぶられているのではなく、記憶が揺り起こす衝動だった。 たまたまディスコに誘うことが出来た友人が言う。「よくそんなに踊れるわねぇ」 私は揺れる身体を止めずに、我ながら器用に思いつつ答えた。「こんなことが出来るのは若いうちだけよ」 そうやって何時間を腰をくねらせる儀式に狂っていたのだろう。自己の熱と周囲の熱気に当てられ過ぎたのか、私は倦怠感を催してしまった。うっすらとかいた汗のせいで、少々癖のあるミディアム・ヘアが頭皮にへばりついているような感じがする。 入場口の方に戻ってオーバーヒートした私の体を冷まそうと考えた。まだディスコのホールから退場する時間には早い、と私は一瞬だけ浮上した弱音を一蹴する。「強がりはよして、カラオケでも行って夜を明かそうよ」と友人は進言して来たが、耳を貸すつもりはない。 防音仕様の重々しいゲートを開いて階段を下りると、正装した清潔な井出達の男が二人いた。見張り番役を任命された係員だった。風に当たって休んでもいいか、と許可を求めると、二人の係員が同時に顔を見合わせる。どうしようか、という目の会話がしっかりと聞き取れた。彼らには、店の経営に関わる些細な権限すらも与えられていないのだ。 二十秒ほど待たされて、少しだけなら、ということで了解を得られた。話の分かる人でよかった、という気持ちを込めて、俯いているのかどうか判別できないほど俯角の浅いお辞儀と「ありがとう」という言葉を残し、ゲートを抜け、そのすぐ傍に突っ立っていることを決め込んだ。 闇夜と喧騒をアスファルトと道路が擦れ合うノイズが引き裂く。私は約束の相手が来ない恋人のように頭を垂らしていたが、反射的に顔を上げる。分厚い面のロールス・ロイスが、静かなくせに野太い排気音とともに視界を左へ横切る。そして、反対側から対向して来た、同じ面をした車を追いかけようと頭を右へ振った。ロールス・ロイスなのかは分からなかったが、ボンネットに銀色の天使を乗せてはいなかった。 私の目の前には、様々な色に塗られた豪勢な車が通り過ぎていった。フェラーリ、ランボルギーニ、メルセデス・ベンツ、BMW、リンカーンのリムジン……他にも一昔前には珍し過ぎてお目にかかれない車種もあったが、それらの正体を暴けるほどの好奇心はなかった。ただ、高級車を所有出来る人に声をかけられたいという願望を振り払うには、私はまだ若過ぎた。車は所有者の財産を計る単純明快なバロメータである。 「私みたいな人、たくさんいるんだろうねあ。きっと」 私みたいな、というのは「私のような現金極まりない考え方」を意訳したものである。もっと年を食えば、露骨な羨望は角を丸め、異国での出来事のような他人事でしかなくなるに違いない。 春一番の来襲が三週間ほど前に訪れたとは言え、深夜の一時という時間で夜風に当たるという発想は、寒がりの私にとって無茶が過ぎたのかもしれない。ベルボトム・ジーンズに守られた下半身はまだしも、黒のロングキャミを纏った上半身には辛い。もっとも、暑さにも弱い私が夏にディスコに来ていたら体中の水分が塩分とともに抜けて、干からびた死体となって悪臭を振りまいているのかもしれないけれど。 ふと、右方から足音がした。私の前を数える気にすらならない大勢の人々が通り過ぎて行ったが、なぜかその足音だけは鼓膜ではなく、骨振動を通しているかのような異次元のダイレクト感で飛び込んで来た。首をそちらに曲げると、ボロ布の衣服に裸足の女性がディスコの中に吸い込まれて行った。私の経験の中では、尾崎豊が死んだことの次くらいにショックな出来事だった――ヒッピーの少女がクラブに入ったことではなく、入口で門前払いを食らわなかったことが。 私は眼を思いっきり見開き、しかし疑念は喉を振動させるだけで発声すらままならなかった。着飾っていないという次元の話ではない。これでは、大枚をはたいて衣装を調達している自分が馬鹿らしくなるではないか! 憤りが麻薬のように作用したのかもしれない。骨が金属に挿げ替えられたように重かった私の足が急に軽くなる。高揚した気分に身を任せてディスコのホールに戻ると、『ライディーン』がフェード・アウトして『ボーン・スリッピー』のレコードに針が落とされようとしているところだった。私は古臭い音より新しい音の方が好きだったので、ちょうど良いタイミングに戻って来れたことが嬉しい。 ディスコの中を見回しても、私の目の中に一際目立つであろうヒッピーの少女の姿はなかった。フロアは広大だったが、どこからともなく詰め掛けた客の中に紛れてしまったようだ。異質なものは避けたがる人間の習性があれば少女を遠ざけるように空間が出来ると思ったのだが、ノッている客達にすれば些細な異物なのかもしれない。 レーザーが私の頭上を駆け抜け、陶酔するような声には思わず快感を抱かずにはいられない。しかし、今はダンスする以外の用事を優先的に片付けたかった。少し冷静になって考えると、なぜドラッグを提供しないディスコにヒッピーの少女が何の用があるのだろう? 青い照明がスモークを突き抜け、黄緑のスポットライトがお立ち台に上がったストリッパー同然の女の扇子を照らし、黄色の照明が私の双眸を焼かんばかりに飛び込んできて目を逸らした。ホールの隅から隅まで歩き回り、終始眼球と首を動かすことを忘れなかったが、とうとうヒッピーの少女と鉢合わせすることはなかった。トイレでも借りにディスコに入ったのだろうか? コンビニじゃあるまいし。 周囲にまともに気を配っていない群衆の間を用心深く抜けるのは体力を使うことだが、パンプスが足へのダメージに拍車をかけた。時間は深夜の二時、オールナイトとしゃれ込んだわりにはあっさりと限界を迎えている私がいた。 ディスコに来る度に不思議に思うのだが、朝まで狂気に犯されたように乱舞している人達の体力には底がないのだろうか? ビールの中にドラッグを混ぜて飲まされているのかもしれない。本人ですら気が付かないうちに。もしかすると、自分も。 私にも、タイトにフィットした、鏡の破片を張り合わせたようなワンピースを着てお立ち台に上がっている時代があった。当時の自分のパワーに驚きつつ、しかしストリッパー寸前まで行ったことに恥を感じている訳ではない。だが、単なるノスタルジーに成り下がった過去に対して、なぜか妙なもどかしさを感じずにはいられなかった。――私はそれで何を得たのだろう? 無為に時間を過ごしただけなのではないだろうか? 急に心が萎えてきた。足が棒になりそうだ。またホールを離れたくなってきた…… 去り際、レコードが『キャント・アンドゥ・ディス』に取り替えられる。私にとっても、この場にいる私以外にとっても最高の賛辞かもしれない。最高の皮肉として。 外へ通じる玄関口にいた二人の男は、雲散霧消してしまっていた。連れションにでも行ったのだろうか? 見張りを立てずに持ち場を離れたのだとしたら、彼らは近日中にクビが飛んでいるに違いない。その前に、傭兵のような体格のヤクザにしこたま殴られるかもしれない。 外の様子もおかしいことに気付き、私は階段を下りてゲートから顔を覗かせる。ネオンの光や酔っ払いの浮かれた鼻歌、言葉巧みに女を引っ掛けるクラブの店員――見慣れた光景がそこにはなかった。路上駐車されている高級車のフロント・ウインドウには、標準価格の十分の一にも満たない値段で投売りされている。 「みんな、忘れちゃったんだよ。もしくは、最初から使い捨てのボロ雑巾と同じ扱いだったのかもしれない」 日付が変わってから初めてかけられた声に私は肩を震わせ、ディスコの階段へ振り向く。ヒッピーの少女が影のような儚さで、段差を椅子代わりにして腰掛けていた。 「何か用?」 「誰にも用はないよ。なあんにも、ね」 落ち着いた口調のせいか、あまり皮肉屋っぽくは聞こえなかった。むしろ、少女は嘲笑うつもりはないのかもしれない。確かなのは、私のことについてほとんど眼中にないということだった。 「ロールス・ロイスも何もかも、需要がなくなれば鉄屑と同じような値札を提げられる運命。じゃあ、需要があった頃に価値があると思っていたのは誰? そこに価値を見出したのはあなたではなく、あなた以外の誰か」 「だから、なんなの?」 「あなた達の感じている価値観は、過ぎ行く現在(いま)を満足させ、思い出話に花を咲かせるだけの肥やしにしかならないってこと」 「私には関係のないことよ」 「そうやって他人の考えに依存し切って、自分の感性もろともノスタルジーの中に置き去りにするといいわ」 それは捨て台詞であったらしい。少女はおもむろに立ち上がると、階段を上がってディスコの中に消えて行く。 「待って!」 私は遠く離れた少女の肩を掴むように腕を伸ばしながら、少女の背中から漂うような気がする残り香を頼りに追いかける。しかし、ディスコのホールの中まで全力疾走するも、重厚な扉を開ける私を迎えたのは夜逃げの後のような無味無臭感だった。広々としたホールには客どころか、機材も何もなかった。何年も前から貸しに出されている空き物件のような空白。 私の中では、ディスコでの出来事は過去のことになっていた。私が覚えていることはほとんどない。――皆がディスコに出入りしていた時は羽振りが良くて、開放的な気分に浸るために金を費やすことが出来た。皆――私を含めた――はそのことを当時の知り合いと共有する程度の重要性しかなかった。 私は無情に打ちひしがれ、ディスコの門前で膝を突き、そのまま歩道に尻餅をついてしまった。ディスコで踊っていた私のリズムが体の心から消えうせ、情景の中にしか見ることが出来ない。 ディスコを楽しめたのも、またヒッピーの少女に出会ったのもそれきりだった。 前の作品 次の作品 コメント 名前 コメント
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ちらりと部屋の時計に目をやる。二本の針は見間違いようのない直角を示していて、今の時間が普段過ごすことのない深夜だということを俺に教えてくれた。 何故そんな時間まで起きているのかという理由については、さっきから俺の頭の中でくるくると踊るように回っている言葉を見て貰えば明白だと思う。 ……寒い……。 これ以上ないくらい単純な話だ。 なら、布団に入って眠ればいいのでは?という声が聞こえてきそうだが、残念ながら今の俺は布団の中にいて、その上で寒くて眠れないことに困っている。 朝の天気予報で言っていた「今日は暖かい一日になるでしょう」という言葉は、どうやら深夜の布団の中までは保証してくれなかったようで、いきなり舞い戻った冬の寒さは、春の陽気に油断して毛布を一枚減らした愚か者の体温を着々と奪っていった。 苦し紛れに足を擦り合わせても、体を丸めて布団にくるまってみても、俺の意識は綱渡りをするピエロのように絶妙なバランスで眠りと覚醒の間を行き来している。 ……何かに負けた気がするが、ここは素直に毛布を一枚引っ張り出そう。 半端な眠気と倦怠感に足を引っ張られながら、やっとの思いで布団を抜け出し押し入れを開ける。 「……あれ?」 だが、そこには俺の求めた魅惑の寝具は見当たらなかった。 「……あ、そうか」 ……どっちにしろ毛布はなかったんだ。 今夜はどっかの誰かさんが妹の部屋にお泊まりするために我が家から寝具が一組消えている。 その誰かさんは、いつものように俺に勉強を教えに来ただけのはずなんだけど……夕方になると何故かお袋と一緒に夕飯を作っていて、いつの間にか家族の団欒に溶け込んでいて、気が付いたらお泊まりが決定していた。 ……今考えると妙な話だ。誰かの陰謀すら感じるな。 ……まぁ、そんなこんなで、すっかり忘れていたが毛布は目下貸し出し中だったんだ……。 ……くそ。 人様の毛布にくるまってぬくぬくと眠る誰かさんを想像すると、言いようのない怒りが込み上げてくる。 ……が、 「……布団に戻ろう」 ……そんな怒りも着実に冷えていく体を暖めてくれるはずもなく、今の俺には布団に残った僅かな温もりを逃がさないことのほうが大事だった。 「……う」 ……やっぱりちょっと冷えてるな。 全く無駄な行動をしたものだと自分のうっかりさ加減を呪う。 ……ったく、あいつが俺の毛布を気に入らなければ……いや、いい。寝よう。目を瞑ってたら寝れるはずだ。 俺はいつもなら敵に回ることの多い睡魔に檄を飛ばしつつ、ぬるま湯のような中途半端な眠気の海に身を投じていった。 より暖かい姿勢を求めてもぞもぞと体を動かす。いい感じで意識が朦朧としてきているものの、まだ完全な睡眠には至っていない。 あれから数時間ほど過ぎたようにも感じるし、まだ数分しか経ってないようにも感じる。相変わらずピエロは綱渡りを続行中だ。 このあと熟睡出来たならともかく、これが朝まで続いたら間違いなく最悪な目覚めを迎えることだろう。 ……湯たんぽでも何でもいいから、何か暖まるものがあれば眠れるのに……。 俺がそんな考えを浮かべたのを見計らったように、ミシリとベッドの上に俺以外の誰かの重みが乗った。 こんな夜更けに俺のベッドに潜り込んでくるヤツなんか我が家には一匹しかいない。 ……シャミセン?なんだいたのか。 「……そういや、お前がいたな。よし、こっちに来い」 これ幸いにとベッドに乗ってきたシャミセンを抱き寄せる。 しかし、普段なら頼まなくても勝手に布団に潜り込んでくるシャミセンだが、今日に限って激しい抵抗を見せた。 「痛っ、コラ、暴れるな」 それとお前太ったか?なんか重いぞ? ぼそりと付け加えるようにそう呟く。すると、シャミだと思っていた生物が否定の言葉を口にした。 「な!?失礼ね!太ってないわよ!」 「……ん?」 ……ハルヒ? 「……そうよ。誰と勘違いしてたのよ?」 いや……シャミと……って、あれ?それより、お前は妹の部屋で寝てたはずじゃ? 「あ……それは……その……ちょっとだけ寝顔を……」 ……まぁ、この際どうでもいいや。 「え?」 寒いから一緒に寝るぞ。 「は?なんの冗談……ひゃう!」 ベッドの上に四ん這いになっていたハルヒをくるりと布団に引きずり込む。 はぁ~……暖かい。 「ちょ、ちょっと!さては、あんた寝呆けてるわね!?は、離しなさいよ!」 おやすみ~……。 「こんな所を家族の人に見られたらどうするのよ!?……こら!本当に寝るな!バカキョン!」 Zzz……。 「キョーン!」 翌朝、清々しい朝日に目を細めつつ、どこか茫然としながら俺は一人呟いていた。 その呟きは、まるで他人事のように空々しく聞こえ、俺しかいない部屋に溶けて消えた。 「……何やってんだ、俺」 何をって……それは、ただ行動だけを言葉にしてみれば原稿用紙半分にも満たない、その程度の出来事だ。しかし、それを言葉にするには些か混乱し過ぎている。 ……よし、何も考えずに事実だけを整理してみよう。 昨夜は寒かった、眠かったけど寒くて眠れなかった、だからハルヒを抱き枕にして寝た、以上。 「……って、以上じゃねぇ!」 寝呆けていたとはいえなんつー行動をしてんだよ! 出来ることなら眠れない夜が見せた夢であって欲しかったのだが、部屋の状況は俺の希望をやすやすと打ち砕いてくれた。 ぽっかりと一人分空いているベッドのスペースに、昨日貸し出したはずの毛布。そして、微かに残る俺以外の体温と思いの外鮮明に残っているハルヒの感触……。 ……うん、柔らかかったな。 「…………」 ……いや、トリップしてる場合じゃないだろ。 問題は否応なしにこの後ハルヒと顔を合わせなければならないってことだ。 「……どうする?」 いくつかの提案が俺の頭の中を飛び交う。議題が議題なだけに、脳内会議はどこぞの国の国会のように荒れに荒れていた。 『だから!覚えてないで通すんだよ!』 『あのハルヒ相手にそれが通る訳ないだろ。素直に謝っとけ』 『そんなことするくらいなら俺は死を選ぶ!』 『大袈裟すぎやしないか?』 『……だるい、眠い』 『お前も真面目に考えろよ!』 『……長門を頼れば?』 『いくら長門相手でもこんな恥ずかしい話が出来るか!』 『そうだ。いっそのこと、これ以上の既成事実を作ってうやむやにしてしまおう。一石二鳥だろ?』 『急進派は話をそっちへ持っていこうとするな!』 『Zzz……』 『寝るな!穏健派!』 「…………」 こんな混乱した思考では考えがまとまるはずもなく、 「……顔でも洗ってくるか」 ひとまず頭をすっきりさせようと俺は洗面所に足を向けた。 ……冷静に考えればこの後に起きる事態も想像出来たはずなんだが、そんな判断が出来るほど落ち着いていれば、そもそも顔を洗ってリフレッシュするまでもなく打開策が浮かんでいた訳で。 だから、この仮定の話は全く意味はない。意味はないが……それでも一分前の俺に非難の声を上げずにはいられなかった。 ……こういう可能性があることくらい気付けよ、と。 もう何があったかお分かりだろうが、一応言葉にしておこう。 ……洗面所にはハルヒがいた。 「…………」 あからさまに何か言いたげな視線を俺に投げ掛けてくるハルヒ。 うん、これで確定した。幸か不幸か昨日のあれは夢じゃない。 事前にシミュレーションする暇もなく、いきなり敵の前に放り出された俺は、自分でもどこか無理を感じながらも脳内会議で一番最初に出た案を採用した。 つまり、俺は何も気付いていない、昨日のことは覚えていない、昨夜俺は一人で寝た。そういうことだ。 ハルヒが口を開くより先にこちらから話を振る。 「おはよう。昨夜は寒かったけど、よく眠れたか?」 ……我ながら白々しい台詞だ。 「……誰かさんのお蔭で鬱陶しいくらい熱かったわよ。そのせいで眠れなかったけどね」 ……いきなりキツイな、おい。 「そ、そうか。まぁ、今日は休みだし問題ないだろ」 「まったく……誰のせいだと思ってるの?」 「……なんのことだ?」 「あんた、覚えてないって言うつもり?」 「……さっきからイマイチ話が見えないぞ?」 ハルヒは直接的な表現を避けて遠回しにこちらを攻める。チクチクと居心地の悪い空気に、早くも急進派と穏健派が白旗を振った。 えぇい、根性なしめ。ここまで来たら知らぬ存ぜぬで押し通すしかないだろ! 「それより顔を洗いたいんだ。蛇口使っていいか?」 「あくまで白を切るつもりなのね?」 ふぅ、と一つ息を吐き、ハルヒはこちらを見据える。いよいよ核心を突くつもりのようだ。 ……よし、どんな追及が来ようと白を切り通すんだ。ここさえ乗り切ればどうにかなる……多分。 俺は軽く息を飲んで、ハルヒが繰り出すであろう豪速球に対して身構えた。 ……が、 「……一つ言っておくけど」 「……なんだ?」 「……さっきから顔が真っ赤よ、バカキョン」 「……」 ……ハルヒの決め球は反則投球だったようだ。 想定外の攻めにこちらが言葉に詰まったのを見ると、ハルヒはニヤリと人の悪そうな笑みを浮かべて止めを刺しにくる。 「何がそんなに恥ずかしいのかしら?」 「……う」 「エロキョン」 あっさりと形勢が決まってしまい、最早俺が何を言っても誤魔化すことは出来ないだろう。 このまま為す術なくサンドバッグのように滅多打ちにされることが敗者にふさわしい末路なのかも知れない。 ……けれど、勝ち誇るように腕を組むハルヒを見て、俺の中で何かがキレた。 「……お前だってしばらく出ていかなかっただろ」 「な!?」 「抱き締められたらすぐに抵抗やめたしな」 「~~ッ!」 「エロハルヒ」 「や、やっぱり覚えてたんじゃないの!」 「う、うるさい!全ての元凶はお前が毛布を持っていったことだろうが!」 「意味が分からないわよ!バカキョン!大体あんたがなかなか離さなかったから出て行けなかったのよ!」 「う……な、なら起こせばいいだろうが!そしたらお前なんか布団から放り出したさ!」 「なんですって~!?」 「……お母さ~ん。キョンくんとハルにゃんがケンカしてるよ~?」 「それは仲のいい証拠だから放っておきなさい」 「そうなの?」 「あれが二人のコミュニケーションの取り方なのよ」 「ふ~ん……?」 「あとで『夫婦喧嘩は犬も食わない』って言葉の意味を二人に聞いてみなさい。あ、お母さんが言ったってのは内緒ね」 「わかった~」 「エロキョン!」 「エロハルヒ!」 END
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出血大サービス R 闇文明 (5) 呪文 ■自分の手札から「B・ソウル」を持つクリーチャーを好きな数、バトルゾーンに出す。その後、自分の手札をすべて捨てる。 B・ソウル。それは、救済されねばならぬ者たち。 サバイバーやダイナモほど独創的な能力でもなく、 ウェーブストライカーほど強力でもない。 ストーリー上では、ただでさえ少ないメンバーの中に裏切り者がいる始末。 同時期に出た他のソウルに比べ、固有能力「ノーチョイス」も響かず。 ただでさえ、E・ソウルが存在していた状態での投入。そして、失墜。 私はどうしたらよいのだろうかと思った。そして至ったのだ。「叩き売ってしまおう」と。 ガンヴィートを3枚出そう。そうすれば、これが破格の買い物であることを知ることが出来るだろうから。 作者:仙人掌 評価 名前 コメント