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413 : ◆36m41V4qpU [sage]: 2013/05/06(月) 13 14 "絶対防衛あやせたん(仮)" ゴールデンウィークも真っ最中 「あれ?あやせたん、来てたの?」 「京介、おかえりなさい♪」 野暮用を済ませて、徹夜明けに自分のアパートに帰ると マイ・ラブリー・セレスティアル・エンジェル・あやせたんが ベットの上にちょこんと待っていた。 「今日約束してたっけ?」 俺はこの連休中の期間、色々(本当に色々)かなり忙しくて 遊ぶ時間はおろか、何時に帰宅出来るかの時間すら決まらず、 彼女は彼女で仕事(あやせたんは超A級モデルである)が入っていて お互いに予定のタイミングが合わないと思っていたのだが――― 「いいえ………でも来ちゃった♪」 「お、おう」 「だってぇ、早くぅ………京介くんに会いたかったから♪」 「アハハ………あやせたん、面白れぇな~ 例のラブタッチの台詞かよ(笑)」 「ブー、本当にすごく――すごく、会いたいから待ってたのに ―――笑うなら、迷惑ならすぐに帰ちゃうぞ?」 「め、迷惑じゃないに決まってるんだろっ!」 あやせは花柄(レース)ぽい―――カチューシャっぽい(ヘアバンド)と それと、お揃いである総レースのワンピースを着ていた。 俺の希望? ―――と言うよりも、前に色々バトルがあった時の話の流れで あやせは、俺の妹の影響から俺の好みの服装やファッションへと 最近かなりイメチェンしていた。 ところで、彼女がお洒落した時に、彼氏がやる行動と言えば?――― 「今日のあやせ(は)………今日もあやせは可愛いなぁ 凄く似合ってるよ」 「ふふ………有り難う御座います♪」 「なぁ、あやせ―――」 ―――正解は 彼女のお洒落な服を大いに褒め、その褒めた彼女の服を 一刻も早く脱がそうとするという、大いなる矛盾(パラドックス)な行動。 でも彼氏・彼女って大体こういうものであり ―――事実、このパターンで拒否られた記憶は俺の中には無い。 あやせは仕事の時以外は俺がプレゼントした例の"チョーカー"を 身に着けてくれてるが、今日は格好が格好なだけに首周りじゃなく ブレスレットの様にして左手首に巻いていた。 俺はあやせの右隣に移動してベットに腰掛け チョーカーのあるあやせの左手を、自分の右手で優しく捉まえると ベットに座ったまま あやせの正面の方に向き直り、 左手でゆっくりとあやせの横髪を撫でながら、 いつもみたくキスしようとした ―――が 「ダメ」 あやせは唯一空いていた右手で俺の口撃(キス)を防いだ。 「な、何で?」 「何で・でもダメ」 「そ、そうか………俺さ、徹夜明けだからちょっと寝るわ」 「あーあ、なるほど………エッチなコト出来ないと分かると せっかく遊びに来た可愛い彼女を放置して、 呑気に、すやすやとお休みになるってことですね?」 「………いや、そういうわけでは」 「もしかしたら………二度と起きれないなんてことも。 何故だか分かりませんが、わたし悪い予感がする」 「き、奇遇だな―――そして危惧だな、これ。 実は俺もあやせと同じ予感がしたんだ。 それに寝るなんて………う、嘘に決まってるじゃん この俺がおまえを放置で寝るわけがないだろ?」 「ふ~ん………どうだか」 「でもさ、本当に眠いのは嘘じゃないんだけど」 「だったら、少し寝てても良いです」 「そっか、うんならお言葉に甘えて、ちょっとだけ寝よう―――」 「わたし、お外の撮影で少し汗かいちゃったからお風呂入ろうかな」 「ああ………良いぜ。」 あやせは何度か(も)うちの風呂には入ってるから 要領は大体分かってる筈だ。 そして、この後続く言葉は 『―――お風呂覗いたら、針千本飲ますから(殺)!』 である あやせの恥じらいと言うか羞恥心と言うか 絶対に許してくれない、封印されたプレイ?がいくつか有った。 ―――風呂に一緒に入るもその中の一つ。 「ねぇ、せっかくだから一緒にお風呂………入りません?」 「もちろん、覗かねぇって………………………え?」 「だから、お・風・呂・」 「う、うそ?」 「別にイヤなら………別に無理にとは言わないけど」 「いや、せ、せっかくだから入ろう」 「あ! その前に、一つだけお願い―――」 「まさか、目隠ししろ………とか殺生なことを言わないだろうな?」 「ピンポーン♪ 正解………だってやっぱり恥ずかしいし」 「そんなの駄目だろ! 風呂で目隠しするとかの方がよっぽど変態プレイみたいだろ?」 我ながら、滑稽なほど必死にあやせを説得する俺 「い、良いよ………目隠しするならエッチしても」 「嘘?マジで………」 「う、うん」 本来ならこれで、諸手を挙げて受け入れるべきだった。 後から考えたら、初めての風呂+目隠しプレイ+あやせが色々してくれる で充分、僥倖なのだが―――普通に見えてエッチするよりも 実は、ある意味良い要素もあるほどだろう でも ―――男は視覚で興奮する動物と言うこと ―――あやせはその視覚情報が最強ということ ―――今日は最初から、あやせに翻弄されて、焦燥してたこと だから俺は 『目隠しイヤです!目隠しイヤです!目隠しイ・ヤ・で・す・!』 と駄々をこねた。 あやせは―――……… 「もうしょうがないなァ………だったら―――」 俺はシマッタと思った。 何故なら―――この先に続く言葉は 『わたしの言うコト聞けない悪い子は一人でお風呂入りなさい!』 だと思ったからだ。 でも実際は 「目隠ししなくて良いです。でもエッチなことしちゃ駄目ですよ?良い?」 ………―――と言った。 でもとにかく、一緒に風呂るんだ。 そしてお互いに裸なんだ―――だから、力技で何とか 良い感じに出来ると俺は楽観していたが……………… あやせたんがバスタオルを開いてご開帳すると 「おお!………え?………ええぇぇ?」 …………み、水着だと 「撮影で使ったんです………どう?」 あやせは魅惑的に笑みを浮かべて俺は見た。 「う、うん………そ、そうなんだ」 「ねぇ………可愛い?」 まんまとあやせの作戦に引っかかった俺だった。 「あやせはやっぱり可愛いよ」 ところで、彼女がお洒落した時に、彼氏がやる行動と言えば?――― 「ダメ! 約束して守れないなら、もう金輪際一生、一緒にお風呂入ってあげないよ?」 何故か、風呂のあやせたんの貞操は オレイカルコス(オリハルコン)並に固いらしかった。 二兎追うものは一兎をも得ず ―――あやせと風呂入るなら、あやせの裸見ながらエッチしようとすると 目隠しのエッチも出来ず だった。 風呂上がり 「ねぇ………京介」 「何?あやせたん」 「わたし達お付き合いして結構経ってるし、 だからわたしって敬語使うのはなるべく辞めまし―――辞めたよね?」 「うん」 「だったら、もう一歩進めてちょっぴり乱暴な言葉で話すのとか如何 ―――どう(ですか)♪?」 「ら、乱暴………とは?」 「京介なんて………死ね、バカ、駄作」 「―――っておい!駄作って何だよ! 何だかよう分からんが………と、とにかく俺は絶対にイヤだぞ 俺のあやせたんがキャラ崩壊しちゃうだろ!」 「ふぅん………そう? だったらしょうがないから辞めてあ・げ・る・」 「是非、そうしてくれ 俺は誰が何と言おうと、今のあやせたんが好きなんだからさ」 「でも――でも、京介ってわたしに苛められて喜んでる時も 結構ある癖にぃ♪」 「それは凄く待て! それは誤解も良いところだ。俺は断じてMじゃねぇから! むしろ褒められて伸びる子なんだぞ!」 「ほんとぉ………かな? 実は今だって、わたしにいっぱい意地悪されたかったり………して?♪」 「そんなおまえのお口(タグ)はこうだ(ロック)!」 「―――あっ♪ ってもうっ、結局―――また………いきなり」 「あやせが可愛い美少女で良かった。 本当に――本当に良かった。 関わるのも面倒なキモヲタでなくてマジで良かった」 「それ………何のことです?」 「いや、全くもってこっちの話だ。 ほら、そんな事よかあやせたん………早く続きしようぜ?」 「ダメだよ ちょっと待って………今、髪といてるし お化粧もまだ途中」 「別に、すっぴんのあやせたんでも―――それはそれで」 「って言うか―――わたしの質問、今日もずっと一日お部屋の中?」 「って言うか―――俺も凄く疑問なんだが、 あやせは………その格好で外歩く気なのか?」 ―――風呂上がりに、着替えた今のあやせたんの格好 (明らかに)部屋着ではないが (明らかに)あやせには不釣り合いなエロい格好とは―――……… ふと、思う 俺の女の子と言うか―――あやせたんの七不思議 風呂で裸を見られるのは、今の所は何があっても絶対にNGなのに 風呂上がりの真っ裸の身体のケアをお手伝いするのは推奨されるということ 俺が、あやせの身に着ける下着を選ぶ権利を与えられると言う謎 女の子は―――あやせたんは未だに、深淵の謎に包まれている。 ………―――見せブラ(見せブラって何?)が(ヘソも)見えるほど 大胆に胸元が開いて(これでもかと強調されて)いるスリムのTシャツと ボトムは、これまたピッチピチのレザー風味のショートパンツ ―――どれだけショートかと言うと(見せショーツも見える)くらい その"見せ下着?"は俺が死ぬほどお願いして、 俺自らチョイスして、俺自ら自腹で購入したサテンの Tなバックなのであった。 「まさか………これはあなたが見たいとリクエストしたから、 着てあげてるだけですよん♪」 「そりゃ、そっか。安心したぜ。」 「それとも別に他の男の子に、この姿見られても ………別に良かった?」 「………え?」 「変態さんだから、興奮する?」 「絶対ダメだぞ!」 「ふふ―――でもこの姿のわたしが好きなんだ?」 「むろん、死ぬほど」 「京介って本当に、困った男の子だね~」 とあやせにクスクス笑われた。 その後、あやせが化粧し終わったのを見計らって 「ほら、あやせ抱っこ」 と言って、有無を言わさずあやせをお姫様抱っこして ベットに連れて行き、後ろから抱きついた。 「ねぇねぇ、せっかくお休みなのにわたし達お出かけしないのかな? せっかくのお休みなのに勿体ないよー、京介くん」 「だって、この時期は何処に行っても人、人、人の波だぞ? 俺はこうやって、可愛い俺の天使あやせたんとベットの中で ゴロゴロ――マッタリしてた方が100億倍楽しい」 「それってちょっと酷くないですかっ?」 「何だよ、イヤなのか? と言うかそんな格好してイヤって言われても、凄く困る」 「い、イヤってわけじゃないけど………でも、でも、でもっ、 ずっとお部屋のベットの上でエッチなことばっかりって―――」 「―――楽しいし、気持ちいいし、超一石二鳥じゃん!」 「うーん………はっ!? も、もしかして、やっぱり今日会ったのもわたしの身体だけが目的?!」 「もちろん、おまえの身体が目的だぞ 何故なら、あやせたんが一番喜ぶのがコレだからな あ~む♪」 「―――っ?!あっ♪ はぅ………あっ………ちょっとぉ………もうっ! ちょっとダメだってば、わ、わたし今日はここで流されないん…だ……から」 「あ~れ? 今日のあやせたんは、意外に強情だな?」 「わたしの彼氏なら、ちゃんと考えてみてくださ―――もっとよく考えてっ!」 「何を?」 「 最近は、いつもわたしがあなたのお部屋を訪ねる ↓ 3分で脱がされる ↓ こ、行為 ↓ 同点 ↓ ロスタイム ↓ 延長 ↓ PK ↓ おわり ばっかりじゃないですか!バカバカ 」 「いや、これって真面目に愛を確かめる行為だろ? make loveって言うじゃん? 彼氏と彼女、男と女、雄と雌、狼とあやせたん ―――好き同士の恋人が会ったら、会ってしまったら どうやってもロマンティックが止まらないもんだろ?」 「わたしのロマンチックは、だだ止まりです! 普段だって………わたしに え、エッチでいやらしい言葉ばっかり 言わせようとするし、そういう時って全然雰囲気なんて無いし」 「そ、そうだっけ?」 「 『あやせ、おっぱいって言ってみて』 『小陰○って言ってみぃ』 『大○唇って言って、ほら言って』 『ほら、あやせたん―――いつものおねだりは? それともず~とこのまま我慢する?』 」 「そ、そんなコトも有ったかな………?ハハ」 「あ、あの時は………わ、わたしがワケが分からなくなっちゃってるから あなたの言いなりだったけど、普通に考えるとすごい屈辱ですよね?コレ」 「良いかい?あやせたん 男って落差や意外性に萌える生き物なんだぞ? 俺が日頃から考えている『ギャップ理論』」 「はっ、はい?」 「エロゲーに登場するビッチな娘が実は家庭的とか あやせの様な清純なお嬢様が実はメチャクチャ(今の格好)みたくエロいとか」 「だ、だから一体何を言ってる―――」 「男って奴はこういう女子に頗(すこぶ)る弱い もちろん、俺も弱い―――メチャクチャ弱い」 「そんなのわりと、どうでも良いから! わたしに、いやらしい事ばかり言わせるなっ!って言ってるんですっ!」 「あやせなら分かってくれるかと思ってたんだが」 「わ、分かるわけないでしょ!京介の変態!エッチ!ドスケベ!」 「『変態』って言葉も―――よく考えるとエロい響きだよな 出会った時からおまえの罵倒って確実に俺の劣情を誘発してるぞ?」 「くぅ……………この………この!」 「『エッチ』、『ドスケベ』―――さぁさぁ遠慮なく言え、もっと言うんだ!」 無言で、殴(られ)る・蹴(られ)る・踏み砕(かれる)く 「イテテ………ま、待て待てっ!」 「ハァハァハァ………なんです? あなたが泣いても殴打・蹴撃・踏砕を辞めてあげないっ!」 「俺はエロに真剣に取り組んでるんだよ! あの頃の全力少年なんだ! 面白半分とか冗談じゃなくて真剣に言葉―――そう、エロ隠語の言霊を あやせたんに言わせるコトに命を賭けてるんだ!」 「そんなのに命賭けるくらいなら ―――すごーく久し振りに言ってあげるけど いっそこの場で、ぶち殺してあげましょうか?!」 「…………………待て待て待て、暴力反対! 話せば分かるって」 「分かるわけないし―――分かりたくもないし やっぱりもう死んじゃぇ―――」 「―――だ、だからちょっと待ってくれ! とにかく俺の話を………あっ!―――そうだ! しょ、勝負だ、あやせたん………俺と勝負しないか?」 「………勝負?―――勝負って何です?」 「あやせに、俺が一流のセクハラ野郎だと証明するから!(キリっ) それをあやせに納得して貰う為の勝負」 「ドヤ顔で言われても ―――『わたしの彼氏はやっぱりド変態でした』の証明なんてされても わたしには完全なデメリットしかないって知ってる? やっぱりこれが原因で死にますか?―――死にたいですか!」 「も、もちろん―――ただでとは言わないぜ もし俺が負けたら、今後一切一生、あやせとエロイことしねぇから」 「…………………え?」 「勝負にはリスクがつきものだからな 俺は俺の一番大切な物を賭ける」 「―――え、エッチが一番大切ってどうかと思うけど で、でも………あの一生とか………その………そこまで大げさに………」 「おいおいこの条件で、一体何が不服なんだ?」 「今回は――今回だけ………言葉―――そう、エッチな言葉を わたしに言わせるプレイを、絶対に今後一切しないと約束するということで 許してあげる」 「本当にエロ隠語禁止だけで良いのか?」 「こ、行為自体は別に、特別に――本当に今回だけは特別に 許してあげ……ま………す。だから感謝して………ください ―――優しい彼女に感謝してよね!バカ京介っ!(ぷい)」 「ニヤニヤ」 「気持ち悪いから―――気持ち悪い顔でニヤニヤしないで!」 「だって可愛いあやせたんを見てたら、俺はいつもだらしない顔になるさ。 それは勘弁してくれよ?な?」 「本当に京介の………バカ そ、それで………そ・れ・で・勝負って何で勝負するの?」 「そりゃ、どっちが先にイク………痛っ―――」 「―――何処に行きますか? て・ん・ご・く・に・?!」 「痛い、いててて………ごめん、ごめん」 「それとも、じ・ご・く・か・な・?!!」 「う、うそ、うそ、嘘だから………」 「どっ・ち・か・な・? ―――両方(りょ・う・ほ・う・)か・な・?」 「ちょっとっ………マジでっ待て待て、頼むから待ってくれ!」 「………………………………はぁん?」 「怖っ………あやせたん、本当にごめん―――この通り」 「ツギハホントウニ・・・ワカリマス・・・ネ?」 「は、はい―――もうしません」 「ハァーまったく………で・結局、何で勝負するの?」 「えっと、そうだ………尻とりとかどう?」 「わたしのお尻にまた悪戯するって意味じゃないでしょう………ねっ゛?!」 「痛いたた………ひ、被害妄想だ。 普通の尻とり」 「あなたってやっぱり意味不明過ぎ 普通の尻とりの勝敗で、何を証明出来るって言うんです?」 「だから尻取りで隠語言うってのは?」 「わたしの話を聞いてますかっ? わたしはそんな言葉言いたくないって言ってるでしょうが!」 「だ、だから俺は隠語、あやせは普通の言葉のハンディ戦でどうだ? ちゃんとした言葉の勝負―――正々堂々男と女の真剣勝負」 「言ってる意味全く分かりません―――全く分からないけど とにかくそれで、あなたが負けたら本当にわたしにエッチな言葉を 今後一切言わせないんですね?」 「もちろん、男の言葉に二言はない」 「分かりました! やりましょう―――受けてあげる、その勝負」 「ほう………やる気のようだな それでこそあやせたんだ。流石は俺の彼女だ」 「たっぷり後悔させてあげるから、せいぜい覚悟してくだ―――覚悟してっ! ド変態の彼氏に羞恥プレイを強要されるのも今日で最期なんだから!」 「んじゃ、レディーファーストであやせのターンからだが、 尻とりだから、『あやせ』の"せ"で良いか?」 「こら、京介! なんでわたしの名前がエッチな言葉になるの?!」 「いや、だからエロイ言葉は俺が言うから、おまえはノーマルの尻とり をやってくれ」 「あっそ ふん………あ、あやせ」 「せっ○す」 「すいか」 「カーせっ○す」 「スイス」 「す○た」 「す○たってな、何?」 「説明しよう 『す○た』と言うのはだな、こうやって―――」 「―――変態、わたしに触らないでっ!」 「実際にやった方が早いから つーかあやせたんは、もう何度もしたことあると思うよ?」 「だから脱がさないでっ・って言ってるでしょう! ちゃんと口で―――」 「―――口で流石にす○た出来ないぞ? それはもはや別のプレイになってしまうからな それは『ま○ぐ○返し』と言うあやせたんが二番目に好きな―――」 「だから言葉で説明してって意味ですっ! バカ!変態!エッチ―――パンチっ!」 「痛てたたぁ………ちっ。 簡単に言うと○○で××だ…………わかったかい?お嬢さん」 「はい、分かりました………死ねば良いと思います」 「ひど………と、とにかくあ、あやせたんのターン(あやせターン)だぞ? "た"だからな。張り切ってどうぞ」 「た、タコス」 「また"す"?………す、す、す?」 「あれあれ?もしかして………もう降参ですか? 本当に京介って口だけ―――お口も貧相だったのかな?」 「まだだ!まだ終わら(れ)んよ」 「ふっ………所詮は二流のセクハラ野郎だったようですねー?」 「ちょっと待って………お願いだから」 「ダ~メ♪5・4・3・2・1―――」 「す、す、………俺は負けるのか? こんな所で俺の野望は潰えてしまうってのかよっ」 その時、妹の持ってたヤバいゲームのタイトルが閃く 「ぜ~(ろ)―――」 「―――ス○ト○!」 「な、何ですそれ?」 「説明しよう」 ―――流石にこれは実践出来ない 「この変態、本当に穢らわしい ―――わたしの耳が腐っちゃったら一体どうしてくれるんですか?!」 「そういう勝負なんだ、文句はあるまい?」 「く………ロース」 「また"す"?」 「もうこんな不毛な勝負辞めて、素直に負けを認めちゃったらァ?」 「甘いな、あやせたん―――ス○○ロマニア!」 「今度は何です、一体?」 「だからマニアだよ、ス○○ロのマニア!」 「そ、そんなのダメ!」 「おまえはス○○ロマニアの権利を―――存在を認めないってのかよ?」 「絶対に認めませんっ!」 「あ~せこいな―――ビックリするくらいセコいわ。 あやせたんは、最初から正々堂々と戦う気はなかったんだなぁ。 分かったよ、俺の負け―――負けで良いさ。 正々堂々と戦って………卑怯なジャッジにやられた真の男が居た。 潔く戦い潔く負けた、男の中の男が居たこと―――忘れるなよ?」 「あ゛ーーも、もう分かりました―――分かったから。 "あ"でしょ………アイス!」 「また、す………………あっ!す、スケベ椅子!」 「何です?それ」 ―――以下略 「す?………スイス」 「―――それ言ったぞ」 「す、スイス人」 「ほう………"ん"と言ったな、言ってしまったな? これは俺様の大勝利―――」 「―――ち、違う………スイス人マニア」 「なんだよ、それ!狡くねぇか?」 「 何でス○○ロマニア!の権利と存在を認めて 何で"スイス人マニア"がダメなんです?! 何でス○○ロマニアは良いんですか?!!! 何でス○○マニアは許されるんですか!!!!!! 」 「クク………アハハハ」 「何がおかしいんです?」 「いや………なんかさ、あやせがそんな言葉を大声で絶叫してるって シュールだなと思ってさ」 「………………………え? ハッ!イヤァヤヤァァァァ」 「あ、あやせ? ちょっと………お、落ち着けよ」 「もう………イヤ うぅ………わ、わたし………わたし………こんな言葉を言わされちゃった うわぁん………わたし―――」 「―――な、泣くなよ!」 「わ、わたし、汚れちゃった―――穢れちゃった もうお嫁に………行けない………」 「だ、大丈夫だって どんなに惡堕ちしたって、俺が必ずあやせたんを貰ってやっから」 「ほ、ほんとぅ?」 「ああ、もちろん」 「絶対――絶対っ、京介のお嫁さんにしてくれ………る?」 「当たり前だろ? 現時点で、もう俺のお嫁さんだろ?」 「京介―――きょう………やっぱり好き………愛してる」 「お、おう、俺も愛してるぜ、あやせたん―――」 「―――………?………っ!!!」 「って………痛いっ、キスしながら殴るの辞めて……くれ」 「って、よく考えたら………あなたが原因でしょ?!このバカ!」 「な、何だよ? せっかく良い雰囲気だったのに、本当に今日のあやせたんは強情だな~」 「ふんっ(ぷい) 結局、またエッチなコトして、わたしが気持ちよくなっちゃったら その勢いでワケ分からなくさせて有耶無耶にしようって魂胆なんでしょっ?」 「あ~れ? ついに………バレちゃった?」 「今日の戦いは、これから先の将来の命題――― 京介をわたしのお尻に敷く? 京介にわたしのお尻をぶっ叩かれて、わたしが言いなりにさせられる? か、の勝負なんだから―――わたし、絶対に負けられない」 「げっ……何かすげぇ現実的なことを言い出したな?」 「何か………ご不満でも?」 「いや、全く――全然………不満なんてねぇよ つーか"尻とり"だけに、あやせたんの尻を賭けた勝負ってコトだな? 俺、あやせたんのそういう所―――お茶目でユーモアのセンスが有って やっぱ結構好きだぞ」 俺のあやせたんは、天性のコメディエンヌだと最近つくづく思う。 同時に―――それがとても魅力的だと言うことも 「ふ………ふん、口ではいくらでも誤魔化せるから嬉しくないし」 「本当にそう思ってるんだが、まぁそれは追々証明すると言うことで」 「と、とにかく、気持ち悪い言葉を言っちゃったじゃない、もうっ! 早く責任取って!」 「責任って言われてもなぁ………」 「もしかして、さっきの言葉を言わせる為に 誘導尋問してないでしょうね?!」 「ご、誤解も良いところだ。 さっきのは………本当に俺のせい?」 「京介のせいで、京介が全部悪い」 「んじゃ、それで良いけど それに"尻とり"勝負以前に、あやせがその気なら、 俺は確実にあやせたんの尻に敷かれるのは分かってるけど」 「へぇ~そうなんだ………ふーん、ふーーん」 「な、何だよ………その顔?」 「別に何も?………そ、それにしても 今日は、無理矢理わたしのチョーカーを外して襲いかかってこないんですね?」 「俺はド変態で、セクハラ野郎で、末期的なあやコン(あやせコンプレックス) ―――だ・が・し・か・し・ レイプマンじゃねぇから、あやせがガチでイヤなら無理矢理なんてしない」 「ふ~ん………そう」 「ああ、俺は全部あやせたんが喜んでくれるかと思ってやってるんだ」 「ねぇ京介、これ尻とりの勝負………だったよね?」 「そ、そうですよ………あやせたん」 「お尻に敷くか、お尻をぶっ叩かれるかの勝負で良い?」 「え? まぁそう………とも言えるかな?」 「で、京介はわたしのイヤなコトはしない?」 「もちろん! まぁそれならエロ隠語とか最初から言わせるなって話だがな」 「確かに ―――でもそれはそれとして、ちゃんと責任とってくれますか?」 「よし!分かったよ。 俺を誰だと思ってるんだ? 俺はあやせたんの言いなり―――新垣あやせの彼氏の高坂京介だ」 「ふふ………はい、手出して」 「何で今頃………手錠?」 「今まではあなたをつなぎ止めたくて、縛りたくて 手錠使ってたけど―――今日は違う」 「と、と言いますと?」 「物理的に拘束する為に使う………ほらっこうやってっ!」 ベットに拘束される俺 「………………え?」 「わたしが京介をお尻に敷きたいなら こうしたいならっ―――こうすれば良かった♪ 最初っから本当に敷いちゃえば良かったんだね♪ 京介―――大好き、愛してるよ♪」 「あや………せ? おまえやっぱエッチしたかった―――」 「―――勘違いしないでよね?本当に違うから これは………純粋に『尻とり』の勝負の続きだから」 と言って、俺の顔全体にレザーのショーパンを ―――自分の尻をグイグイと痛いくらいに押しつけてきた。 「うー(あやせ)ぅー(どういうつもり?)」 と、いくら声をだしても、当然マトモな声にはならず ―――しかも、もっと悪いことに 「ねぇ………嬉しい? それは………嬉しいよね? だって京介――わたしのお尻(フリフリ♪)大好きだもんね?」 そりゃメチャクチャ嬉しいが………息が出来ない 「お付き合いしたての時、 わたしが我が侭だったから、いっぱい京介にお仕置きされちゃったよね?」 「うー(………)」 「でもあの時は本当に凄く―――すごぉく、嬉しかった………。 お尻叩かれて、いっぱいエッチなコトされて、滅茶苦茶に感じさせられて 京介と肌と肌を重ねて―――心もちゃんと重なって いっぱい………い~っぱい、わたしの心と身体に触れてくれて幸せだった」 「………」 「わたし………感謝してる……よ」 「………………」 「 でも最近はそればっかりで、おざなりだから頭にきちゃったんだ 本当はもっと――もっといっぱいして欲しいの どんな恥ずかしいコトでも良いし―――変態のセクハラでもして欲しい でも他のこともしてくれないとイヤ エッチだけの関係なんて絶対にイヤ 身体だけなんて絶対にイヤ もっと心も―――わたしの全部を抱き締めてくれないくれないとイヤ 」 「………」 「だから今度からは、わたしが意地悪してあげる 全部――全部、京介が悪いんだよ? わたしをこんなに好きにさせて―――夢中にさせて ―――エッチにさせて―――わたしの全部を京介の為だけさせた癖に」 「………」 「ねぇ、わたしに意地悪されるのは………イヤ?」 「………コクコク」 と俺は何とか肯いた。 まだこの時の俺はプライドが残っていたのかも知れない 「あ~イヤなんだ! でも………だからやっぱりイジワルするからっ! やっぱり悪い子だから、ずっとこのままにしちゃうから♪」 また、これ見よがしに形の良い尻をフリフリ♪とするあやせ。 「うーうーうーー」 「京介がちゃ~ん…とぉ………イイ子になるまで………あんっ♪ ん♪…っ……許さないっ……絶対にぃ許さないだからっ♪」 今度はあやせが(多分、意図的に)卑猥に擦りつけるように 尻を前後にフリフリしてたので、完全に俺の鼻腔は塞がれてしまった。 「うーー(降参する)」 「あっ…んっ……京介♪こ、降参………する?」 「コクコク」 でも俺が何度も肯いて降参の意思を示しても、 あやせは全く、解放してくれなかった。 「んっぁあっ♪ ほんとにぃ……あっ…わ、わたしに降参?♪…っあ…ん…しちゃうぅっ?」 それどころか、レザーのショーパンを太ももの間まで脱いで、 (でもエッチじゃないと言う建前上?)Tバックのショーツは脱がず その状態で―――さきほどの顔全体からピンポイントで、あやせは俺の口唇に 自分の下半身の口唇をお互いにディープキスかの如く押しつけた。 「か、勘違い………っ……しないで………よ?♪ これは………わたしぃ感じる、か、感じてないっ!……からねっ? はぅ…あっ♪……感じて…る…わけ…じゃなぃん………だからっつ!」 そしてあやせは何故か、今度はチビTの下から手を入れて するりと自分のブラを外した。 ―――上から見下ろすあやせの視線と、本当に椅子みたく敷かれてる俺の 視線が下から交差した。 ほんの一瞬だけの出来事だったが、あやせは俺がゾクゾクするほどの 魅惑的で、残酷で、嗜虐的で、羞恥に満ちた顔をしていた。 「ねぇッ………京介♪ ねぇっ………苦しい? でも………やっぱり嬉しい?♪ もう……ぅ………辞めるっ?、もう辞めちゃう?」 あやせはそう言いながら、 露わになった自分の両胸を、俺に見せつける為に(でもTシャツを着たまま) いやらしく自分で愛撫し始めた。 そして当然、それが原因であやせの腰と臀部の動きが更に激しくなった。 「んーダメなのっ♪ 京介の、きょう…っ……罰な…んァ…だかっらァ……ぁっあん♪ ぜったい許してっぇ………あげない………からっ……だめっ…あっ…げない」 俺はそんなあやせの肢体と胸と、ほぼ視界を遮られている ゼロ距離の俺を苦しめている元凶を必死で見ようとした。 「うーー」 俺は自分の涎とあやせの愛液で、ますます窒息しそうになりながら 最期は必死に、頭と口と舌を動かして必死に足掻いた。 「これぇ…っ!、コレ…、好き…………かもっ、 これっ………イィの………あっ♪、もうっ!いっ…くぅ………からっ ああっ♪………わたぁしぃ………京介……わたしぃ好…きぃ?」 何度も、肯定の意味で首を縦に振ろうとする。 その振動のせいか―――あやせは身体全体が痙攣し始める。 まるで―――本当にお互いに口と口でキスしている様に 俺とあやせは、舌と舌を絡め、唾液と愛液を溶かして、お互いの口唇を 何度も――何度も激しく貪り犯し合った。 「あっ…あ……京介っ…………いっ…てェ……っ………イィって」 俺はあやせと一緒に ―――同時に昇天しろと言う意味だと、最初は思った。 ―――でも違った。 そうだった、これは俺への罰だったんだ。 「すゅきって、いってっ…きょう…あっ♪……愛してるぅ……いって…言っ」 「 うー(あやせ、好きだ!) うー(あやせ、好きだ!) うーー(あやせ、好きだ、好きだ、愛してる!!!!!!) 」 「京介ぇ………あっいしってるっ♪ きっきょう………愛…しぃてる…っつ♪ す……き…… すっ!き…ぃっ!♪ すきぃっぃ…イック………京介に…乗ってわたし、いくぅ あっ♪これぇ……すごっいぃっよっ!……あぁ♪…お尻…ヤバぃ あ゛っ……あっ!イックっ…京介ぇイッちゃう…お尻に敷いてイクゥぅ!!!!」 あやせが俺の口の中を大洪水にして昇天した時、 ―――同時に俺も指一本触れられずに一緒に波打ちながら 激しく昇天していた。 「………ハァハァハァハァ」 「ねぇ、京介………参った?♪」 あやせは俺の顔をようやく解放すると、 ―――俺の腹筋の上にちょこんと座って、俺の頬を優しく撫ながら、 最期は抱きつきながら言った。 「ま、参りました」 ビショビショに濡れた口の周りを拭いながら、俺は肯いた。 ―――今まであやせにやられた殺されかけで 一番リアルに死にかけて、一番………ゴホン、俺はMじゃねんだから 『あやせたんの尻に敷かれて、こんなに気持ち良いわけがないっ!』 あ~本当に、文字通り―――尻に敷かれた。 俺、色々な意味で………完全に負けた 名実共に、俺のご主人様『黄金週間』が終わった気がした。 その後、暫くマッタリして 「ふ、ふん―――負けたんだから 金輪際わたしにエッチな言葉言わせないでくださいねっ! ―――言わせないでよね!(べー)」 「ぐ………マジか 俺は―――俺は大切な何かを永遠に失っちまったのか………?」 「そ、そんなあからさまに落ち込まなくても したいことは―――エッチなことは、何でもさせて(して)あげるんだから それにさっきは、喜んでた癖に、ドMの癖に むしろ喜んで感謝して―――泣いて感謝しろ、京介のバカッ!欲張り!」 「イテテ……………………………! ………あ、あやせ、これ食う?」 「え?あ、ありがとう。 頂きます―――あ~む、甘くて美味しい♪」 「そうそう、甘い物を食べるとリラックスして色々と収まるらしい ところで、これ何だっけ?」 「え? きのこの山………でしょう?」 「んじゃこっちは?」 「たけのこの里………?」 「………!? しつこいほど再度確認しておくけど、さっき言ったみたいに セクハラ―――もとい、俺たちの愛の行為は今まで通りで良いんだよな?」 「それまでダメって言ったら泣かれたり、土下座されたりしそうで困るから 約束の通り―――しょうがないからお情けで、今まで通りに許してあげます」 「ありがとうな………あやせたん」 「本当は………暫くエッチは絶対禁止でお預けのつもりだったんです でもそれだと、絶対にイヤなんでしょう?」 「そりゃ、もちろんイヤだよ」 「それが原因でさっきみたいに、 わたしのお尻にいっぱい乗られても………?」 「エロなしになるくらいなら、 あやせに―――あやせたんの美尻に窒息させられた方が 万倍マシだぜ!」 「へ、変態」 「でさ、あやせ………これは?」 「だから、きのこの山だって」 「えっと、ゆっくり深呼吸しながら言ってみぃ?」 「ちょっとっ………何で今、わたしのおっぱいを触るんですッ?!」 「エッチはして良いんだろ? ほら…言ってみて?」 ―――あやせのおっぱいをモミモミ 「あっ♪って………今日はお預けの日………だから………お預け……… きぃ……のっ……こぉお……のっ…あぁ♪、………やぁっまァ……んンぅ♪」 「と? ………こっちは?」 ―――さっきの箇所をは~む♪ 「なん………で? わ、わたしぃ………ぁあっ……そこ舐めぇぇ……なぁい……っ…で……」 「良いから――早く!」 「たっけえぇん…あっ♪……のこォ……ぉ!、あぁっ……のっ…さとぉ…ンっ♪」 「………―――って何やらすんですか!この変態!!!!!」 「すいません、すいません………出来心なんです」 「あ~わかった♪ さっそく、わたしにお仕置きされたくなったんだ? あーそうか、京介がこんなに変態さんだなんて分かってたけど ―――今まではすっかり忘れちゃってたから、わたし♪」 「待って、誤解だって」 「大丈夫………5回じゃなく10回してあ・げ・る・♪」 「………………」 ヤバイ、誤魔化さなければ………流石に不味い 「これは?」 「きのこの山!」 「こっちは?」 「たけのこの里!!!」 「お、俺は?」 「ぶ、ブチ殺しますよ!」 「た、助かったぜ」 あのスイート・拷問より、殴られた方が ―――今の俺には全然マシだ 「ふふっ、な~てね♪ まさか、これで………許して貰えると思っちゃいました?」 「え゛?」 「今度からは―――今からは、悪い京介くんの罪は 問答無用で、わたしのお尻(フリフリ♪)で いっぱい――いっ~ぱい罰してあ・げ・る・からね♪」 「………………う、うそ」 「ほら、イイから早く………おいで?」 「はい………よ、喜んで」 「ふふん♪ 京介くんは素直な良い子だから特別に選ばせてあげるね♪ ねぇ、ねぇ、レザパンとTバックと………直に生のま・ま・♪ わたしのどのお尻(フリフリ♪)で敷き殺してほ・し・い・?」 結果―――全部やられました ……………これが今年のゴールデンウィークの俺の一番の思い出 おわり
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http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1306742825/62-72 次の日、俺は秋葉原に来ていた。 遊びに来たワケじゃないぞ。ちゃんと対策を練るために、ある奴と待ち合わせしてるんだよ。 なんで秋葉かって? …そいつが指定してきたんだよ。 正直、秋葉は何度も来ているから別の場所にして欲しいと頼んだんだけど、そいつは秋葉以外、何度も行ってるから嫌だって拒否しやがった。 まあ今回は俺がお願いする立場だから、出来るだけそいつの要望に応えるのが筋ってもんだろうし、今回は文句を言わない。 携帯を開く。約束の時間は過ぎている。 「何やってんだ、あいつ…」 イライラしてくる。 これがあやせなら全然苦じゃないんだけど。 如何せん、俺自信あまり気に入ってねぇ奴だからイライラが倍増する。 「きょうすけくーん!」 と、突然デカイ声で誰かの名前だろうものを呼ぶ声が聞こえる。 きょうすけという名前に身に覚えがないわけじゃないが、ありふれた名前だから他人ってこともある。ここは聞かなかったことにしてさっさとここから離れよう。 「どこに行くの!?高坂京介くーーーん!!!」 「フルネームで呼ぶんじゃねえ!!!」 なに公衆の面前で人の名前を大声出して公表してくれてんのこいつ!? 「あ、聞こえたんだね!よかった!!」 「何が『よかった!!』だこのドアホ!」 駆け寄ってくるそいつの頭を、おもいっきり叩いておいた。 「あ痛ァ!」 涙を浮かべながら頭をさする姿を見たら、さっきまでのイライラも大分すっきりした。 「んで、何遅刻してんだお前?」 「イテテテ…、ちょっと仕事の方が長引いちゃって…」 「それならそうと連絡しろよ」 「そんなに遅れそうじゃなかったからいいかなと思って…」 「―――ハァ…」 こいつと会うのは3回目だが、相変わらず変な奴である。 「それはそうと、久しぶりだね京介くん」 「出来れば二度とお前には会いたくなかったけどな」 「酷いなぁ…ホントに」 そう言って顔をしかめるこの美形野郎は、御鏡光輝。 俺と同い年なのに、プロのデザイナー兼モデルという美少年。 いちいちわざとらしく見せるキザっぽい仕種も格好よく思えるほど、その容姿は完成している。 初めてあった時はなかなかいい奴だと思ったんだけど、後のあることによって、俺のコイツへの好感度はマイナスを下回っている。 そのため、こいつは俺にとってあまり会いたくない奴の一人なのだが…。 「会いたくないって言っているわりには、今日誘ってくれたよね」 「うっせ。理由がちゃんとあんだよ」 「うん、まあ、わかってた」 「わかってただァ?」 「友達だからね」 キザっぽく言うが、それが嫌味を感じさせない。コイツのスキルだ。 まあ俺はコイツが何を喋ろうとムカつくのだが。 「俺はお前を友達と認めない。つか拒否する」 「酷い!」 「いいから行くぞ!」 御鏡を置いて、歩き出す。 「あっ!ちょっと待って!」 「早くしろ!」 「そうじゃなくて!」 「…なんだよ?」 こっちは早く話を始めたいってのに。 「秋葉原、紹介してくれないかな?」 「…は?」 何言ってんのコイツ。 「僕、秋葉原には全然来たことがなくて…」 「…」 ああ、忘れてた。 こいつ、桐乃と同じ隠れキモオタだったんだ。 しかも属性が桐乃寄りの。 まあオタクで秋葉に来たことがないってなると、秋葉を回ってみたくもなるわな。 でも、出来れば早く話を始めたいんだが…。 つか、コイツの為に秋葉原を紹介してやる義理もねえし。 「…俺も詳しいワケじゃねぇけど、よく行くコースで良いなら教えてやるけど」 「全然!それで全然いいから!」 「たく…、さっさと行くぞ」 「うん!」 まあ、今日は俺の頼みを聞いて貰うつもりだし。 その対価に、こいつの頼みを聞いてやるか。 ―――それ以上の、理由はねえぞ。 「いやぁ、楽しい場所だね!秋葉原って!」 「…そうかい」 ある程度秋葉を回って、俺達は某ファーストフード店で話をしていた(メイドカフェはさっき行った)。 まあ、御鏡のオタ話を流し流し聞いているようなもんなんだけど。 「それで、京介くん」 「ん、なんだよ?」 「僕に用事って?」 このタイミングでそれを聞くかよ…。 話に脈絡もなかっただろうが。 ―――まあ、いっか。 いつ話をしようか考えていたとこだし、こいつが振ってきてくれたのは、正直ありがたかった。 「話ってのはな…」 俺は事の始まりを御鏡に話した。 とりあえず、あやせのことを一通り話し終えたのだが、御鏡は 「ああ、そのことか」 と、意外な反応を返した。 「知ってたのか?」 「うん、その子と一緒に僕もヨーロッパに行く予定だし」 「ん、どういうことだオラ?」 「た、ただあやせちゃんと美咲さんが一緒に行くのに合わせて、ついでに僕も連れていかれるってだけだよ?な、なんでそんなに睨むの…?」 なんだ、そういうことか。 付き添いとか言ったら危うくピーするところだったぜ。 つか、こいつ今あやせちゃん呼びやがったか?馴れ馴れしくして、どういう関係だ? …まあいい、今はそんなことを問い詰めるよりも大事な話があるし。 だけど、後日覚悟しとけよ?御鏡。 「な、なんか君に背中を見せるのが怖くなってきたんだけど…」 「安心しろ、気のせいじゃねえよ」 「全然安心出来ないよ!?」 「もうそんなことどうでもいいからよ、話を続けるぞ」 「僕の命がかかっているんですけど!?」 御鏡の叫びは無視して、話を続ける。 「それで、お前に協力してほしいんだよ」 「何に?」 「あやせの海外行きを阻止するのを」 「…本気で言ってる?」 「冗談言ってるように見えるか?」 「見えない」 「そういうワケだ」 「ちょ、ちょっと待って!」 「なんだよ?」 「今回の話は桐乃さんの時とは違うんだよ!?桐乃さんと違って、あやせちゃんはそのことを承諾してるんだから…!!」 「承諾つっても無理矢理だろ?あやせが嫌だって言えばいいだけならなんとかなる」 「そんな簡単に言うけど、あやせちゃんは多分、一度決めたことは梃でも動かない子だよ?」 「知ってる。そういうところは桐乃に似てんだよな」 「それに、それを阻止するっていうのはあやせちゃんの気持ちを踏みにじることになるんだよ?他人の京介くんにそんな資格があるの!?」 ―――あー、メンドくさい奴だなホント。 「…あのなぁ、んーなのはどうでもいいんだよ」 「めちゃくちゃだよ!?言ってること!」 「めちゃくちゃなのは承知の上だ!」 ダンッとテーブルを叩いて立ち上がる。 「納得いかねえんだよ!よりにもよって、なんであやせが連れて行かれなきゃなんねえ!?なんであやせは行くなんて言っちまいやがった!? 桐乃のためだァ?あいつはホントにそう思ったのかよ!? …だとしたら言ってやんなきゃいけねえ!聞いてやんなきゃなんねえ!!止めてやんなきゃなんねえ!!!あいつに本当の気持ちを…言わせなきゃなんねえんだよ…!!」 俺は床に座り、手を付ける。 属にいう土下座だ。 「桐乃が泣いてたんだよ…。助けてって、俺にすがりつくしかないぐらい、苦しんでんだよ…!俺だって苦しいし悲しい! …でも、桐乃の為にも、自分の為にも、あやせの為にも…!立ち止まって考えてる暇なんてねえんだよ!もう思い付く全てにすがって頼むしか出来ねぇんだ…!!」 俺だって、桐乃と同じだ。 一人じゃ何にもできないから、誰かに頼るしかできない。 頭を下げても、恥を忍んでも、俺にはこうするしかできねえんだ。 「―――頼む御鏡!お前の力、貸してくれ…!!」 「きょ、京介くん…」 土下座しながら、俺はあの時のあやせを思い出していた。 『―――さようなら、お兄さん』 そう言って微笑んでいたあやせを。 その時フラッシュバックしてきた光景は、桐乃だったんだ。 『―――じゃあね、兄貴』 そう言って、アメリカに留学していった桐乃となんら変わらない。 あの時は、もうどうすることも出来なかったけど、今回はまだ時間があるんだ。 何もしないで後悔するよりは、全力を尽くしたほうがいいに決まっている。 「―――キミのことを、僕は少し勘違いしていたのかもしれないね」 御鏡が、ゆっくり口を開いた。 「桐乃さんの為に身体を張っている姿を見て、僕は京介くんのことを『理想の兄貴』みたいに思っていたんだ」 「んなわけねーだろ」 キッパリと否定する。 「桐乃の時も、今回のこともなんだかんだ言っても結局自分のためだ。桐乃の為でも、あやせの為でもねぇ」 「うん、わかってる。京介くんは僕が思ってた以上に自分勝手で、わがままで…いい加減だ」 …わかってるけどさぁ。 改めて言われるとなんか傷つくな…。 「でも、そんな京介くんだから、守れるのかもしれないね」 なんか勝手に納得されてるけど、俺にはよくわからなかった。 「わかったよ。そこまでさせてノーとも言いづらいし。―――僕個人としても、京介くんに協力したくなった」 「本当か御鏡!?」 「うん。だけど、話をする場を設けるぐらいしか、僕には出来ないと思うよ?それでもいいかな?」 「十分だ!話は俺がつける!!」 「うん、僕もその方がいいと思うよ」 「本当にすまねえ御鏡!」 もう一度、俺は頭を下げた。 「―――まぁ、それはいいんだけど…」 「ん?どうした?」 「いい加減、立たない?目立ってるよ?」 その後、再びこの店に来たとき、俺が『土下座男』として語り継がれていることを知るのだが、それはまた別の話である。 ―――そうして後日、 俺は緊張していた。 原因は、俺がいる場所だ。 株式会社エターナルブルー日本本社。 ヨーロッパに本社がある、高級化粧品メーカーの日本本社だ。 化粧品メーカーではあるのだが、化粧品だけに留まらず、別ブランドでアクセサリー等も扱っている世界でも有名な会社…らしい。 なにせ、それを思い出したのはつい最近で、曖昧な入れ知恵のため、俺はよく分かってないんだよ。 なぜそんな場違いなところに来ているかというと、御鏡の指定した場所がよりにもよってここだった。 実は、御鏡は、エターナルブルーの別ブランドを任されているアクセサリーデザイナーという一面も持っている。 御鏡に相談したのも、その一面があってのことだ。最も美咲さんに近い存在だからな(ちなみに美咲さんが社長をやっているのが、このエターナルブルーだ)。 だから、話す場所なんかも御鏡に頼んだら、まさかの会社内だ。 受付の人とか、すれ違いざまに見てくる人とかの視線が痛い痛い。 「早くこいよ、御鏡ィ…」 「もう、来てるよ?」 「は?」 声がしたほうを見ると、すぐ近くに御鏡がいた。 「お前…いたなら声かけろよ」 「いやぁ、慣れない場所で落ち着かない様子の京介くんを見てたら、なんか面白くて」 とりあえず一発叩いとく。 「イッタい!!」 「バカ言ってねえで早く行くぞ。準備終わったんだろ?」 「うん。今、二人で話をしてるよ」 「うっし!んじゃ、案内よろしく」 「社内も案内しようか?」 「いいよ、二度と来ねえだろうし」 「わからないよ、将来ここで働いているかもしれないし」 「ないない。いいからさっさと案内しやがれ」 「はーい」 御鏡に付いて、俺も歩き出す。 なんかさっきよりジロジロ見られている気がするが、気にしないようにする。 つか、広いなぁオイ。 流石世界で名を上げている会社だ。設備もパネェ。 何もかもが俺にとっては、目新し過ぎて、ついキョロキョロしてしまう。 「ここだよ、京介くん」 「へ?」 気づいたら、扉の前にいた。 いつの間に着いたんだよ。 目の前の扉を、じっと見る。 他と比べると、結構小さな扉だった。 「大きな会議室は少人数には無用だろうと思ってね。個人面接なんかで使う会議室にしたんだけど、よかったかな?」 「全然オーケーだ。むしろナイスだ、御鏡」 話しやすい環境にしてくれたことに感謝するぜ、御鏡。 ―――ここに、美咲さんとあやせがいる。 ドクン、ドクン、と心臓が高鳴ってきた。 ここに入ると、逃げることは出来ない。それに、失敗も許されない。 最初で最後のチャンスと思わなければいけない。 「京介くん。前に言った通り、美咲さんとあやせちゃんには、今日君が来ることを知らせていない。それに、二人と僕達以外にこの部屋には誰も入らない。完全に、美咲さんとあやせちゃんだけと話をする場所になっている。―――心の準備は、いい?」 深く息を吸って、吐く。 ここまで来たら、後はなるようになれ、だ。 「オーケー、行こうぜ」 それを聞いた御鏡は軽く微笑み、扉を開いて中に入って行く。 それに、俺も付いて行った。 中は、少し小さなテーブルに、椅子が前後2つずつ置かれた若干狭い会議室になっていた。 すでに対面で座っている二人が、こちらに目をやる。 俺を見るなり訝しげな目を向ける美咲さんと、ありえない物を見たように驚いている、あやせ。 やっと、顔が見れた。 思わず顔が緩む。 「…御鏡くん、どういうこと?」 鋭く、突き刺さるような声で、御鏡に問う美咲さん。 「いやぁ、どうしても話がしたいって言って、聞かなかったので…」 しかし、そんな刺のある言葉も気にした様子もなく、御鏡は軽く言う。 と、そこで美咲さんの視線がこちらに向けられる。 「あなた…、桐乃ちゃんの彼氏、だったわよね」 「覚えていてくれたんですね」 じゃあ、話は早い。 「んじゃ、桐乃の彼氏ってのは、嘘だったってことも、知ってますよね?改めて、高坂京介。高坂桐乃の兄です」 「…それで、桐乃ちゃんのお兄さんが、今更何の用かしら?桐乃ちゃんのことはもう諦めたから、あなたに話すことはないわよ?」 「いやぁ、それが俺にはあるんすよ」 「あら、何かしら?」 あやせが座っている横に移動し、本題を切り出す。 「あやせの海外行き、なかったことにしてください」 「…なにを」 「ちょ、ちょっとお兄さんなにを言って…!」 あやせの言葉を遮り、話を続ける。 「海外に行くのは、もう少し先ですよね?だから、今のうちにキャンセルしてほしいんです」 「無理よ。もうこれは決定したこと。私にとっては最優先事項なの」 「そりゃ奇遇だ。俺の最優先事項は、あやせの海外行きをやめさせることだからな」 「…あなた、あやせちゃんの何?」 「知り合いです」 「そう、友達でもなく?」 「ええ。ただの知り合いです」 「なら、あなたにあやせちゃんが自分で決めたことを止める権利なんてないんじゃないかしら?親友の桐乃ちゃんならまだしも…、家族でもなんでもない、ちょっと知っている程度のあなたに」 「普通ならそうでしょうよ。俺もそんなこと、重々承知の上です。―――だけど、止めなきゃならない理由があるから、俺はここに来たんです」 「理由?それはあやせちゃんの将来を奪うことになっても、止めなきゃならないような理由なのかしら?」 「当たり前です」 キッパリと、言ってやる。 「なら、聞かせてくれない?その理由とやらを」 「桐乃に頼まれたからです」 「…は?」 美咲さんは、『何言ってんだコイツ』みたいな目で俺を見ている。 「あなたは、何?妹にお願いされた。…それだけの理由で、止めに来たと言うの?」 「ええ、そうですよ?」 そう、言ってんじゃん。 「あいつ、落ち込んでたんですよ。あやせが海外に行くって知って。そんで泣きながら俺に頼んできたんです。―――これで止めてやんなきゃ、俺がやるせなくなっちまう。だから、止めにきたんです」 そう、桐乃やあやせの為じゃなく、俺自身の為に。 「それに、どんな条件を出したのか知りませんけど、あやせは桐乃の親友なんです。あいつの為にも、こいつの為にも、二人を離すわけにはいかないんです。だから、取り消して下さい」 「…あなた、言ってることが無茶苦茶よ?」 まあ、そうだろうな。 桐乃と俺の為に海外行きを取り消せなんて、自分勝手にも程がある。 だとしても、 「俺には、それ以上の理由はないんですよ。――つか、他のどんな理由もいらないんです。俺は、この理由一つで、あんたを納得させるつもりですから」 「………」 ―――実は、秋葉での御鏡と俺の話には続きがある。 話をする場所、日程などはその時は決まらなかったのだが、ある程度の対策を練ることはしていた。 「京介くんも一度話してわかったと思うけど、美咲さんはとても手強いよ」 「ああ。それはよくわかる」 心を見透かしているようなあの目を、今も覚えている。 「だから、まず正論で討論したら勝ち目はない。だけど、京介くんならなんとかなるかもしれない」 「具体的にはどうすればいいんだ?」 「何もしなくていい。いいや、何もしちゃダメなんだ」 「はぁ?」 負け試合してこいって言ってんのかコイツは? 「あ、いや勝てないって言っているんじゃないんだ」 と、俺の心を見透かしたように言う。 「んじゃ、どういうことだよ?」 「京介くんは、理屈なんて通じない。どんなに正論を並べたって、自分勝手な意見で、頑として譲らない。―――そして、最終的に、無理矢理相手に言い負かされたような錯覚に陥らせる」 「…酷い奴だなオイ」 「そうだね」 自分自身に向けた皮肉に、御鏡はフォローもしようとしない。なんか腹立つな。 「だから、京介くんはそのままで戦うのがベストだ。何も考えずに、素直にぶつかっていったほうがいい。そうすれば、多分勝てる」 「結構な自信だなオイ」 お前のことじゃねーのに。 「うん。僕自身が京介くんに負けたからね。大丈夫だよ」 「…そうかい」 いつ、俺がお前を負かした?覚えがないんだが… 「物忘れが早すぎるよ、京介くん」 何故か、御鏡はクスクスと笑っていた。 わけがわからん奴だ。 ―――と、そのアドバイスのおかげ…ってわけでもないが(今までこの話を忘れていたからな)、順調な滑り出しのようだ。早速、美咲さんが言葉に詰まっている。 だけど…、本当の戦いは、ここからだ。 美咲さんを負かしても、コイツが断らないと、意味がない。 ただ、コイツは非常に頑固で、一度決めたことは譲らない、桐乃に似た性格をしているため、一番厄介なのだ。 「さっきから黙って聞いていたら、勝手なことばかり…!」 そう言って、隣で勢いよく立ち上がった… 新垣あやせが、最も厄介だった。 「―――少ししか話したことがないから、なんとも言えないんだけど…。あやせちゃんを言い負かすのは、正直最も難易度が高いことだと思うよ」 あの時、御鏡はそう言っていた。 「奇遇だな。俺もそう思う」 俺もそれには大いに同意だった。 「だから、あやせちゃんには本当の意味で、本音をぶつけないといけないと思う。嘘八百を並べたって、あやせちゃんには通用しない」 「だろうな」 あの時俺が付いた嘘も、嘘だったってバレてたらしいし。 「でも、恐らく彼女が一番の嘘つきだろうね」 「ん?俺のあやせを馬鹿にしたか今?」 殴るぞキサマ。 「そうじゃないよ、彼女は思い込みが強いだろうから、自分の本音じゃない嘘の自分を、自分だと信じ込んでいると思う」 ―――こいつ、あやせとは少ししか会ったことがないんだよな?なんでそこまでわかんだ? 御鏡は、あまり敵に回さないほうがいいタイプのようだ。 あの時御鏡に喧嘩売った俺、よくやったよホント。 「だからあやせちゃんに勝つためには、あやせちゃんの本音を引き出すしか方法はないだろうね。そして、それが出来るのは…」 「俺だけってか?」 「御名答。だから頑張ってね」 「簡単に言いやがって…」 あやせに刺されたりでもしら、お前を呪うからな御鏡。 ―――そして、ついにその時が来た。 「さっきから聞いていれば、お兄さん自分勝手な意見ばかりじゃないですか!私の意見も聞かないで、勝手に話を進めないで下さい!!」 俺に向かって、怒鳴るあやせ。 ぶっちゃけ迫力あって怖いんだけど、こんなんで負けてはあまりにも惨めなので、負けじとあやせの方に身体を向ける。 あやせの目を見る。目を離すこともなくこちらを睨んでくるあやせは、やっぱり怖い。 「んじゃあやせ、お前に聞くけどさ」 「な、なんですか…?」 「お前は、桐乃と離れるのは嫌じゃないのか?」 「…そんなの」 あやせは拳を握り締め、何かに耐えるように顔をしかめた。 「嫌に…決まっているじゃないですか…!」 そうだな、お前は俺に言ったよな。 離れたくないって。 桐乃と離れ離れになるのは、絶対イヤだって。 「だったら、なんであいつと離れる選択をしちまうんだよ?おかしいじゃねえか」 「それは…」 あやせの言葉が詰まる。 「お前は桐乃のためと思ってるのかもしんねーけど、それで桐乃を悲しませてたら元も子もねえだろうが?」 「そう…かもしれませんけど」 「そうかもしれない、じゃなくて、そうだろうが!桐乃の為を想うなら、桐乃の傍にいてやってくれよ!あいつには、お前が必要なんだよ!!」 「…桐乃桐乃って、さっきからそればっかり…!」 あやせの目が更にきつくなった。 ヤバい、マジ怖い。 こんなあやせ、初めて見た。 「桐乃なら大丈夫です!…桐乃にはソッチの友達がいるんでしょう!?それに、加奈子だっています!!」 ちなみにソッチというのは、桐乃のオタク趣味のことだ。何度も言うが。 「私の代わりなんて…いくらでもいるじゃないですか!!」 「お前…!!!」 あやせの口から、一番聞きたくなかった言葉。 誰よりも桐乃の親友であるかとを誇りとしていたあやせから、『自分の代わりはいくらでもいる』なんて言葉を、聞きたくはなかった。 「あやせ、それ本気で言ってんのか!?」 こちらも、更にあやせに詰め寄る。 「お前と桐乃が喧嘩した時、桐乃言ったよな!?『アンタと同じぐらいエロゲーが好き』だって!!」 …あれは今思い出しても、何言ってんだって思うトンデモ発言だった。 桐乃は、あやせかエロゲーかという選択に、どちらかという選択をせずに、どちらもという選択をしたのだ。 やると決めたこと全てに全力を注ぐ、桐乃らしい選択だった。 「あいつは、諦めなかったんだ!お前も、エロゲーも、自分の大好きなもの全部!!…それなのに、お前は簡単に諦めちまうのかよ!?」 「―――大好きな桐乃を、そう簡単に諦めんのかよ!!?」 もう、誰の声も耳に入らない。 唯一俺に聞こえるのは、目の前のあやせの声だけだ。 「だったら尚更行かせるわけには行かねえ!力づくでもお前を止める!!んな馬鹿なことを言ってるお前を、俺はそのまま見捨てるなんて出来ねえ!!」 その時、 パンッいう乾いた音と、俺の右頬に衝撃が、同時に響いた。 あやせが、平手打ちをかましてきやがったのだ。 「いっ…てぇ…!」 「お兄さんに…お兄さんに何がわかるんですか!?」 右頬を押さえながらあやせの方に向き直ると、 「あ…やせ…?」 ボロボロと涙をこぼすあやせが、そこにいた。 「私は、ずっと桐乃の為に…桐乃を守る為に、全力を尽くしてきました!桐乃の親友でありたいから…!!桐乃の傍にいたいから!!!」 ぐしゃぐしゃの顔になりながらも、あやせは怒鳴り続けた。 「でも!全部自己満足だったんです!!桐乃を守っていたのも、桐乃の傍にいたのも…、全部、全部お兄さんだったんです!!!」 「…!!!」 「悔しかった…!私が何年もかけて築いてきたものを、お兄さんはたった数ヶ月で超えてきた!! 桐乃の為に私が出来なかったことを、お兄さんはいとも簡単に成し遂げた!! ―――だから、悔しかった!羨ましかった…!お兄さんという存在が、憎くて憎くて仕方がなかった!!」 初めて聞いた、あやせの本音。 異常なぐらい桐乃の為を思ってくれて、桐乃の心配をずっとしてくれていた、少女の嫉妬。 俺は、そこまで憎まれていたのだと、今初めて実感した。 平気なのかって? ショックに決まってんだろうが!!!! やべえ、本音が聞けたけど泣きそう。俺負けそう。 「…でも、それ以上に」 と、あやせの話は終わってなかったようだ。 「お兄さんという存在が…、私にとっても、必要になってたんです」 「…え?」 俺が、なんだって? 「私が桐乃の誕生日プレゼントを考えるのを手伝って貰った時、本当は会うのも嫌でした。 ―――でも、桐乃の一番欲しい物を知っているのはお兄さんしかいないと思ったから、お兄さんにお願いしたんです。 そんな私に…あんな酷いことをした私に、お兄さんは嫌とも言わずに、協力してくれましたよね?私、わからなかったんです。なんであそこまで協力してくれたのか」 あの時、俺は桐乃が欲しいであろうプレゼントに、メルルのコスプレ大会の優勝商品であるメルルの限定フィギュアを提案した。 そんで、メルルにめっちゃくちゃ似ている生意気中学生の来栖加奈子のマネージャーになってやったんだったっけ。 「その後も、私の個人的なお願いなんかも聞いてくれて…。私は、本当にお兄さんっていう人がわからなかったんです」 「―――だけど、そんなお兄さんに惹かれていっている私がいて…、憎くて仕方がないお兄さんのことを考えちゃう私がいて…!」 「あやせ…?」 おいおい、これって… 「そうして、私気づいたんです…。お兄さんは、桐乃だけじゃない、皆に優しいんだって。助けを求める全てに、手を伸ばしてくれる人なんだって」 言いすぎかもしれませんが、とあやせは付け加えた。 「それに気づいた時、もっとお兄さんに惹かれいく私がいたんです。―――必要もなく、手を伸ばして欲しいと思う私がいたんです」 そうなのか? いつも会うたび会うたび、嫌そうな目をされてた気がしてたんだけどな。 「でも、一番お兄さんを必要としているのは、桐乃なんです…!私は、お兄さんを求めちゃダメなんです!お兄さんは、桐乃の傍にいてあげなきゃダメなんです!! ―――そう思っているのに、私はお兄さんを求めたくなっていくんです。…お兄さんが、必要になっていったんです」 あまりにも唐突過ぎる衝撃的告白に、言葉が出なかった。 「だから、いい機会だと思ったんです。この話を貰った時。桐乃の為にも…、私の為にも」 …おい。もしかして、それは 「―――お前が海外に行くのを決めたのって、桐乃の為であり、…俺のせいだったのか?」 あやせは、イエスともノーとも言わず、沈黙している。 だけど、この状況でこの沈黙は、ある意味答えのようなものだ。 「そっか…」 何となく、そんなことを呟いていた。 御鏡に目をやる。 微笑んで、こちらを見ていやがった。何がおかしいってんだコイツ。 『―――あやせちゃんには、本当の意味で、本音をぶつけないといけないと思う』 リフレインしてくる言葉。 ああ、わかってるよ。 「…あやせ」 あやせの肩を掴む。 桐乃と同じぐらい、小さい肩だ。 こんなに小さいのに、誰かの為なんて、いっちょ前に考えてたのかよ。 お前も、桐乃と同じぐらい馬鹿な奴だな、あやせ。 最初から、俺に話してくれてたら、よかったのによ。 「あやせ、行くな。ここにいろ」 肩を掴んだまま、言う。 「無理ですよ。またお兄さんを求めたくなってしまいます」 「求めればいいじゃねえか。迷う必要も、悩む必要もねえ。いつでも俺はお前の為に傍にいてやる」 「…わかっています、お兄さんがそう言ってくれることは。――それが、苦しいんです!私には、お兄さんに優しくしてもらう資格なんてないのに…!」 「資格ってなんだよ?そんなもん、存在しねえよ。俺がいいって言ってんだから」 「その言葉に甘えたら、私が桐乃を裏切ってしまうかもしれない!それも、怖いんです!」 「大丈夫だ。それで喧嘩しても、俺がなんとかしてやる」 「…でも!私はお兄さんの妹でもない!赤の他人なんです!そんな私が」 「こっちを見ろあやせ!」 ビクッとしたあやせは、下を向いていた顔を、ゆっくり上げた。 その目をじっと見る。
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1288544881/768 やっつけ 「おにーちゃん! あそんであそんで!」 「コラ、パパのことはちゃんとパパと呼びなさいって、なんど言ったらわかるんだ」 「だってママが、パパのことはおにーちゃんって呼べって言うんだもん」 「……はぁはぁ」 「おい桐之、自分の娘になんて教育してんだ」 「……はぁはぁ、なにコレ、カワイ過ぎでしょ……! 歳の差兄妹萌え! 超極上生意気美幼女とヘタレ兄貴とかこれなんてアヴァロン(全て遠き理想郷)?!」 「娘で自分の歪んだ欲望を満たしてんじゃねえ!」 「でもよく考えたらホントの妹はあたしなのに、この子に妹の立場取られちゃってるってコトよね ……え、ええ?! なに今のゾクゾク?! これが噂のntr属性?! あたしそっちに開眼しちゃった?!」 「あなた、今度の日曜日はこの仔と映画に行こうと思うのだけれど」 「……またアレじゃないだろうな」 「愚問ね。眷属の主としての自覚を持たせるにはそれ相応の帝王学というモノが必要なのよ。 だから、佳き教育材料というものは繰り返し繰り返し視聴させて然るべきだわ」 「でもなあ、さすがに四回目だぜ? それにさあ、言い回しとかが――その、まだコイツには早いっつーか、 たとえば『所詮貴様は盤上の騎士――女王に勝てる道理など、那由多の彼方にも存在しない』とか言われてもよくわからんと思うんだが ――うげっ、台詞まで覚えちまってる」 「御父様、さんせいですわ」 「おお、お前もそう思うか」 「こんどは、おえかきのどうぐを買いに、せかいどうにつれて行ってほしいの」 「まあ――それでも構わないかしら。そろそろデッサン人形も必要と思っていたことだし」 「…………」 「ちちうえー! 見てくだされ! このギャン、せっしゃがつくったのでござるぞ!」 「京介殿! こ、この子は天才でござる! 出来たばっかりのザクを砂場で汚して『この方がアジがでるとおもったでござる』と言ったときは、さすが拙者と京介殿の子供と感じ入ったのでござるが ――まさか教えもせずにマッキ―ペンでスミ入れをするとは思ってもみなかった!」 「確かにすげぇが……ニッパーとかヤスリとか、まだ使うには早くねえか? ケガしたらあぶねえぞ」 「はは、ちちうえ、そんなへまをするのは、そのひとが坊やだからでござるよ」 「……あとさ、沙織。お馬さんゴッコっつって俺の背中に乗っからせたとき『俺を踏み台にした』ってボソッて言ってニヤニヤしてたんだが 何か心当たりは無いか?」 「ω」 「……ってなことがあってな、みんな娘の教育をフリーダムにしすぎなんだよ」 「あ、あ、あなた! 私とこの子の前で他の女の話とは良い度胸ですねぶっ殺しますよ?!」 「おかあさんわたしのおとうさんになんてこと言ってるのぶっころしちゃうよ?!」 「ぶ、ぶっ殺すって……あなた! いったいこの子にどういう教育してるんですか!」 「いやお前の影響だろう」 「きょうちゃ~ん、お茶が入ったよ~」 「おと~さ~んおちゃですよ~」 「…………ガシッ(無言で二人を抱き寄せる)」 「ふぇ? ど、どどどしたのきょうちゃん。まままだだだだだここんなに明るいのに、この子も見てるのに ……この子も、いっしょに?」 「え~、なにするの~? いつもおと~さんとおか~さんがやってるぷられすごっこぉ?」 「それを言うならプロレスごっこだ……って、え?」 「あ、きょうちゃんだいじょうぶ! ちゃんとうまくごまかしてるから!」 「……お前だけは俺を落ち着かせてくれると思っていたのに」
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http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1301391825/19-26 ある日の夜、わたしはとある対戦ゲーム――『真妹大殲シスカリプス』のネット対戦のためにパソコンの前に鎮座していた。 わたしはRAPを巧みに操作しながら対戦相手の一瞬の隙を掻い潜り、超必殺技の2回転投げを叩き込んだ。決める難度は高いが一撃必殺の破壊力を誇るそれは相手の体力をみるみる奪う。 そして示された”YOU WIN!”の文字。 「ふふ、これで拙者の勝ち越しでござるな京介氏」 パソコンに表示される金髪ロールに渦巻きメガネのアバターが先程の対戦相手――京介さんへとコメントを表示する。 今のわたしは対外的には『沙織・バジーナ』であるから。 『くそー、さすが沙織は上手いな。黒猫ほどじゃないにしてもダイヤ有利なはずなのに負け越すとは』 京介さんのアバターは桐乃さんのメルルである。基本的に1つのゲームには1つのアカウントしか取れないため、自分のアカウントは作れないのだろう。 「相手が勝ち誇ったときそいつは既に敗北しているのでおじゃるよ。京介氏は有利に立ったときの立ち回りがおろそかに感じまする」 『うーむ、確かに言われてみればそうかもしれないな。もっと練習しなきゃな』 「精進めされよ、でござる」 まだ会話が終了してはいないけれども、わたしはキーボードに伸ばしていた手をだらりと下に降ろし、背もたれに体を預けて伸びをした。 格闘ゲームは他のゲームよりも一戦ごとの集中力が多くかかるので疲れやすい。 それにしても。 (相変わらず、なんて妹思いの方なんでしょう……京介さんは) 忌憚なく彼女は心の中で思った。 文字通り妹キャラしか登場しない『シスカリプス』をプレーするのは京介さんにとって本来気分のいいことではないはずだ。 それでも桐乃さんの対戦相手として力になってあげるために彼はこのゲームをやりこんでいるのだろう。あるいは。 (瑠璃さんや、わたしのためでもあるのかもしれない――いや、わたしのためであってほしい? わ、わたしは何を……) 頭の中に漠然と生まれた妄想を真っ赤になって打ち消していると、京介さんから返信が返って来ていた。 『そういえばさ、沙織』 「なんでござるか?@ω@」 画面を介した通信だったことが幸いして平静を装うことは用意だった。 『明日の休み、暇だったらちょっと付き合ってくれないか?』 (――――ッッ!?!?) そんな装った平静を吹き飛ばすようなナパーム弾が投下されてきた。 「ど、ど、どういうことですかっ!?」 『いや、ちょっと買い物にだがな……ってそんなに驚かんでも^^;』 ああ、買い物に……と少し落ち着いたものの、いまだ動揺は隠せていない。とりあえずは情報を集めなくては。 「どこへ何をしにでござるか?」 『いやな、最近勉強やらゲームのやりすぎか視力に若干不安が出てきてな。眼鏡でも買おうかと思ったんだけど一人じゃと思ってさ。場所は決めてないけど眼鏡なら大体どこでも一緒だろ?』 「きりりん氏や黒猫氏も?」 『いや、桐乃はモデル業で少し遠出するらしくて、帰りは夕暮れぐらいになるらしい。黒猫は妹が風邪を引いてしまった(黒猫曰く”下界の瘴気にあてられた”らしいが)らしくてダメだってさ。 麻奈実でもいいんだが、あいつはそういうファッション系に疎いからな……沙織がいてくれれば俺としては自信がもてるんだけどな……ダメか?』 「拙者でよければ、もちろん付き合わせていただきますが」 そんなことを言われて断れるわたしではなかったし元より予定はなかったのだが、京介さんと2人っきりという状況が否応なく自分の鼓動と罪悪感を高めていく。 『そうか、そりゃよかった!場所はどうしよっかな……やっぱ俺が横浜まで行ったほうがいいかな?』 「いえ、お気遣いなくでござる。せっかくだから拙者が千葉まで伺いまするよ」 『沙織がそう言うのならありがたく承るけど。じゃあ後で何かおごるよ』 「ふふっ、楽しみにしてるでござる」 『わかった。それじゃあな ノシ』 「しからば ノシ」 京介さんのオフラインを確認してからわたしはひときわ大きな深呼吸をした。 「京介さんと……デート……」 高坂京介。わたしの最も信頼する男の人。 容姿は決して良いとは言えない。けど、身近な人――特に桐乃さん――に対する献身や努力、奔走をわたしはずっと見届けてきた。 わたしを心配するあまりに桐乃さんや瑠璃さんと一緒にこの家に駆けつけてくれたこともあった。……でも。 「京介さんを信頼しているのはわたしだけじゃない……」 それがとりわけ大きなふたりの友人に、まだ話したこともないあのひとの幼馴染の方。 後者はともかく、前者の京介さんへの感情が単なる信頼だけじゃないのは傍から見ていてもすぐに分かる。それを考えるだけでわたしの胸はちくりと痛んだ。 「わたしは……どうすればいいのかしら」 答えの出ない問いを宙に紡いだまま、わたしはゆるやかにベッドへと潜り込んだ。 朝早くに目が覚める、というか覚めてしまい、わたしはシャワーを浴びるとおもむろに着替えを始めた。 服装はいつものオタクルックに渦巻き眼鏡。結局のところ人見知りの激しいわたしはこの格好でいた方が余計な干渉がかからず楽なのだ。わかってくれる人だけわかってくれればそれでいい。 はやる気持ちを抑えつつ予定の時刻に余裕を持たせて千葉駅の待ち合わせ場所に着くと、すでに京介さんはやってきていた。 「待ちました?京介殿」 「いや、そんなことはないぞ。俺が誘った上に俺のほうが近いんだから早めにいなきゃおかしいだろ」 「それもそうでござるな」 「即答かよ!まあいいや、何か食べるか?昼前だけど」 「それじゃあ再開を祝してマックでも。当然京介殿のおごりでね」 「最初からそう言ってたけどな。まだ月は見えないから沙織のターンだな」 「お、拾ってくださるとはさすが京介殿」 「ははっ」 マックのセットを京介殿におごってもらったあと、一息ついてから本命の眼鏡ストアに向かった。 「着いたぞ。ここだ」 「ほうほう。さすが千葉の駅前、なかなかの品揃えでござるね」 「さて、沙織の出番だ。思う存分探してくれ。もちろん俺も自分で探すには探すけどな……」 あまり自分で探すのに気が乗らなそうな京介さん。以前のコスプレが酷評されたのがよほどトラウマになっているらしい。 「了解でござる。うーむ……京介殿の嗜好とかはありまする?それも判断材料に加えたいと思いまするが」 「そうだな……フレームがあった方がいいかな。眼鏡があるならあるなりのファッションてものを求めたほうがいいかと思うんでな」 「ふむぅ、京介殿もメガネフェチ故のこだわりが自分にもフィードバックされておるのですな」 「メガネフェチ言うな!そりゃ否定はしないけどよ!」 「はははは。では、こんなのはいかがです?」 そう言ってわたしは京介さんに陳列されていたもののひとつを渡した。 「これは……よくあるフレームだけど、赤か。ちょっと派手じゃないか?」 「顔が肌色だから案外目立たないものでござるよ。意外と悪くないと思いますが」 「そういうもんかねえ?まあいいや、かけてみるよ……これでどうだ?」 京介さんが赤い眼鏡をかけて私を見据えてくる。その表情の真剣さに不覚にもドキッとしてしまった。 「おお……思った以上に良いでござるな……」 「へぇ?」 京介は存外な評価に感心して店に備え付けの鏡を見た。 「なるほど、悪くないな。さすが沙織だとほめてやりたいところだ」 「ありがたき幸せ。でもまだ最初のですからもっといいものがあるかもしれませぬ。只今一生懸命行方を調査しておりますのでもうしばらくお時間を」 「わかった。それじゃあしばらくは分かれて探そう」 そうしてわたしと京介さんは別々に散策を始めた。 京介さんの眼鏡をわたしだけが選べる、すなわち私色に染め上げられると思うと妙にときめくものを感じながらわたしは丹念に眼鏡を探していき、ある程度いくつかよさげな物を見繕ったあと京介さんと合流した。 後にして思うと、ここが運命の分岐点だったのかもしれない。 「だいたいこんなものでどうかと思いますが」 「なるほど。じゃあ俺が探したのと合わせて一つずつ試してみるか」 そうして京介さんの擬似ファッションショーが始まった。 ノンフレームのもの、ハーフフレームのものを加えて様々なデザイン、色を組み合わせて、まるで着せ替え人形のようだ、と少しおかしく思った。 「うーん……10個以上試したけど、やっぱり最初の赤のフレームが一番かな。これにしようか」 「そうでござるね。拙者も色々見繕いましたがそれが一番しっくりくる気がするでござる」 「じゃあこれで俺のは決まったな。……それじゃ、せっかくだから沙織のも新しく買ってみないか?」 「え?」 わたしはきょとんとして間の抜けた返事をしてしまった。少し期待していたとはいえ、京介さんがそんな大胆な提案をしてくるとは思っていなかったからだ。 「そうだな……じゃあ、まず試しに俺のと一緒のこれをかけてみるか?」 「は、はい……」 京介さんがかけていた買う予定の赤眼鏡を受け取ると、わたしは自分の渦巻き眼鏡を外しておずおずとかけてみた。 「ど、どうですか……?」 「おお、よく似合うじゃないか。さすが元が極上だから何でも似合うのかな。じゃあおそろいで買うか」 「あ、ありがとうございます……」 そう言うと京介さんはニッと笑いかけて、一緒にレジへと向かった。 そして清算を二人で済ませ、あらかじめ眼科の処方箋を受けていた京介さん用にレンズを調整してもらって製品を受け取り(わたしは伊達だったのでそのまま)、揃いの眼鏡をかけたまま店を出た。 と、その時。 「………?」 体が、熱い。 京介さんを見ているだけで動悸が激しくなるのが自分でも分かった。頭も良く回らないのを実感する。 京介さんとおそろいの眼鏡をかけている、その事実もまたわたしの興奮を助長するファクターになっていた。 「今日は付き合ってくれてありがとうな沙織――ってあれ?どうした沙織?」 「えっと、あの……なんでもありません……」 「なんでもないことないだろ、明らかに顔が赤いぞ。もしかして調子悪かったのか?」 こういう時ばかり鋭いのがこの人のずるい所だ。つい甘えたくなってしまうではないか。 「ええ……先程から、少し、気分が……」 「やっぱりそうなのか。じゃあ近いから俺の家に向かおう。多分桐乃のベッドが空いてるはずだからさ」 「え!?は、はい……」 もはやあまり考える余裕もないまま頷いてしまった。気こそ失わないものの、本当に熱でもあるかのような体の熱さだ。軽く体がふらつく。 「おい沙織!?……くっ……!」 京介さんは周りに人がいないのを確認してから軽く逡巡し、意を決したようにわたしをおぶって小走りに動き出した。 「きょ、京介さん!?」 「思ったより容態が悪いみたいだから四の五の言ってる場合じゃなさそうだ!もう1kmないからこのままおぶって行く!」 「で、でも拙者は重いんじゃ……」 「なせばなる!高坂京介は男の子ぉ!」 京介さんも恥ずかしいだろうにわたしの身の方を天秤にかけて決断してくれた。その思いに涙が出そうになった。が。 (……京介さんの臭いが……!) 走っているからであろう男くさい汗の臭い、それも京介さんのものであるということがわたしの思考を更に鈍らせた。なおかつおぶさっている関係上当然小刻みに体が揺れる。 そのことがわたしに起こっている変調をなんとなく理解させ始めていたが、そのままわたしは気を失った。 気がついたらわたしはどこかのベッドに寝かされていた。と思えば、このベッドにはどこか見覚えがあった。それもそのはず。周囲はいつも見慣れた風景が広がっていた。 「京介さんのベッド……!?」 その事実に直ちに思い当たると、起きる前までの衝動が直ちに沸き上がってきた。 京介さんの判断か買った眼鏡は外されて傍に置いてあったものの、疑惑を解消するためにわたしは再びその眼鏡をかけた。かけてしまった。 「……ぁっ!!や、やっぱり……!」 そう。この眼鏡はわたしの内なる感情――性的欲求を噴出させるためのパーツらしかった。 京介さんとおそろいの眼鏡。京介さんにおぶさってもらったこと。京介さんのベッドで寝ていること。 それら全ての要素が今まで溜め込んできた欲求不満を爆発させるように体に浸透してきていた。 思わず自分の胸、そして秘所へと手を差し伸ばしてしまう。 「んっ……!あ、はぁっ…・・・!」 ダメだ、こんなことをしていては、と頭は考えるも、体の、指の動きが止まってくれない。 もっともっとと性欲を掻き立てるように無意識のうちにわたしは服のボタン、ズボンのベルト、そしてブラジャーをも取り去ってしまった。 外気に晒された豊かな自身の胸とショーツの中を自分の意思など及ばないかのように指がまさぐる。 「んぁっ……京介さんに……さわられてる……ひぁっ!!」 もう沙織の乳首はピンと立ち上がり、秘部はグショグショに濡れていた。 「どうして、こんなに……あっ、ああっ!」 沙織は趣味の関係上18禁の同人誌などは数多く見ていたが、自分のを自分で触る、すなわち自慰は考えたこともなかった。それゆえに今の自分の淫乱な状態に同様を隠せなかった。 そして自らの指が乳首と剥かれた陰核をぎゅっとつまむと、増幅された性感はあっけなく絶頂をもたらした。 「ふぁっ、京介さ、んっ、あ、ああああああっ!!」 わたしの体は弓なりに仰け反り、ひときわ大きく痙攣した後にシーツをぐっしょりと濡らし、力なくへたり込んだ。 (こんなところ……京介さんに、見られたら……) 最悪の可能性を考えた瞬間、それは現実となった。 「どうした、沙織!……っ!?!?」 「ぁ……」 京介さんがお盆の上に雑炊とスポーツドリンクを乗せてドアを開け、そのままの状態で硬直した。 「そ、その……」 「い……いやああああっ!!」 羞恥が極限に達したわたしは、即座に胸を隠してベッドに潜り込んだ。
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http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1298520872/244-259 初夏。 早朝。 今日も朝から快晴だった。 そして今日は祝日で、さらに今日から長い夏休みの始まりであり、好きなだけ惰眠を貪れる期間でもあった。 しかし… 「うー…今日も暑っちーなぁ…」 あまりの暑さに目が覚めちまった…。 もうちょい寝ていたかったんだけどな…。 それにしても…本当に暑っちー…。 おかげで下着まで汗でびしょ濡れだよ…。 「しょうがねー…着替えて朝飯にでも行くか…」 俺は着替える為に、寝巻を脱ぎ始めた。 その頃、リビングでは… 「桐乃ー、ちょっと悪いけど京介を起こしてきてくれない?」 「えー…? 面倒くさいなぁ…」 今日は休日。 だけど我が家は、食事は平日も休日も関係なく、いつも決まった時間に食べるのが習わしになっている。 もうすぐ朝食の時間で、お母さんは準備の仕上げに入っていた。 そしてあたしはお母さんに頼まれて、兄貴を起こしに行く。 本音を言うと面倒くさいけど、朝ご飯抜きはさすがに可哀想だもんね。 うんうん、あたしってホントできた妹だよねー♪ 階段を上がって兄貴の部屋の前に来たあたしは、ノブに手を掛けて扉を開いた。 寝巻を脱ぎ、たまたまあったタオルで身体を拭いて、下着を替えようとパンツを脱いだ瞬間だった…。 ガチャ 「兄貴、そろそろ朝ご飯だ…よ…」 妹様が、何の前触れもなく、ノックもせず…扉を開けやがった…。 今の状況を説明すると… 俺は下着を着替える為にパンツを膝ぐらいまで脱いだ。 因みに上着は一切何も身に着けていない。 つまり、ほぼすっぽんぽんの状態だ。 それに対して桐乃はTシャツに短パンというラフな普段着姿で、ドアノブに手を掛けて扉を開いた状態で固まっている。 目線は…俺のナニに釘付けになっていやがるけどな…。 「う…」 「き…」 「うわああああぁぁぁぁ!!!」 「きゃあああああぁぁぁぁ!!!」 「あ…ああああ…あんた、何そんな汚いモノを見せてんのよ、このヘンタイ!」 「るせー! てめー、人が着替えている最中にいきなりドアを開けやがって!! ノックぐらいしろといつも言ってるだろうが!!!」 「いいから、その貧相なモノをしまいなさいよ!!」 「な…だれが貧相だ! てめー、他人のモンでも見た事あんのかよ!!」 「な…! あ…あるワケないでしょ!! ヘンタイ!!!」 桐乃が涙目で俺を睨んできた。 てのか、そんなに見たくなけりゃ扉閉めればいいだろうが…。 「…で…? てめーはいつまで俺の着替えを見てるんだ…?」 俺はジト目で桐乃に尋ねた。 するとどうだろう、桐乃は気付いた様子でハッとして、みるみる顔が真っ赤に染まり… 「…ぐす…っ…知るか! バカ!!」 バタン!!! 桐乃は逆ギレして、涙を浮かべながら扉を乱暴に閉めた。 …少し大人げなかったかな…。 いや、今回ばかりは俺が被害者なんだから、譲歩する必要はねーよな。 まぁ…あとであいつの我侭にでも付き合ってやれば、機嫌は収まるだろ。 そういう結論に達した俺はとっとと着替えて、桐乃から少し遅れてリビングに向かった。 「お早うー」 俺は朝の挨拶と共にリビングに入る。 そこにはお袋と共に、さっき怒って先に降りて行った桐乃が座っていた。 桐乃は…まだ顔を真っ赤にして怒っている様子だ。 その証拠に、ギロリ…という擬音が聞こえてきそうな形相で俺を睨んできたよ。 あーこわ。 「あんた、桐乃に何したのよ? さっき泣きながら降りて来たわよ? 理由聞いても答えてくれないし…」 お袋が俺を諌めるように言ってきた。 なんだ、桐乃は何も言ってねーのか…じゃあ俺も答える必要無いな。 「別に、大した事じゃねーよ」 俺はあまり取り合わないようにして席に座った。 隣に座る桐乃がまだ横目でにらむので、俺は桐乃の頭をくしゃっと撫でる。 「さっきは言い過ぎた。 悪かったな」 桐乃は真っ赤な顔のまま俯いて、「ん…」と首を少しだけ縦に振った。 いつまでも喧嘩しててもしゃーないし、俺が折れるつもりで桐乃に謝る。 これで御破算でいいよな。 「「いただきます」」 それじゃ、朝飯でも食べますかね。 「ごっそーさん」 「御馳走様でした」 俺たちは同時に朝食を終え、一旦自室に戻ろうと階段を上る。 階段を上り切り、部屋に入ろうとした時、桐乃が口を開いた。 「あんた、今日の予定は?」 今日の予定? 桐乃がそういうのを聞いてくるとは珍しいな。 「午前中は麻奈実と図書館で受験勉強。 午後からは一応空いてる」 別に隠す必要も無いので、俺は正直に答えた。 「チッ…地味子か…」 麻奈実と一緒というの部分に反応して、桐乃は露骨に嫌を顰めて盛大な舌打ちをかましてきやがった。 今更だからいいけどさ、そういうのはせめて当事者の居ないところでするものだぞ、妹よ…。 「じゃあ午後からあたしに付き合って」 ほらきました。 多分そうじゃないかと思って、午後は空けといたんだよな…。 「へいへい。 で、どこへ遊びに行きたいんだ? アキバか?」 こいつの事だから、俺と一緒の場合はファッション系ではなくオタク系の場所だろう。 大方アキバか新宿…ぐらいじゃねーかな…と思って聞いてみたら… 「アキバもいいけどさ、今日はブクロに行きたいんだよね」 池袋…予想外の回答が来たぞ…。 池袋っつったら…瀬菜のヤツが以前『池袋には乙女ロードがあって、そこがあたしたちのホームだ』とか言っていた気がするが…、ま…まさか… 「き…桐乃…お前まさか…BLに転んだワケじゃ…ゲフぅッッ!!!」 お…ふ…不意打ちでボディーブロー…かまされた…ゲフ…。 腹を押さえて桐乃を見たら、真っ赤になって怒っていた…。 「ふざけんな! あたしがBLに転ぶワケないっしょ!! キモい事言うなっての」 どうやら桐乃にとって、BLは否定しないが相容れないものらしい。 そりゃあ今の今まで妹ゲーやってたんだから、まさかとは思ったけどさ…だからって、いきなりボディーブローはねーだろうよ…。 「あたしが付き合ってほしいのは、しすしすオンリーで、 ホントは午前中から行きたいけど、あんたも受験生だから我慢してあげてんじゃん」 「しすしすオンリー?」 聞き慣れない言葉が出てきたぞ? 俺が頭に疑問符をつけていると、桐乃は『そんな事も知らないの?』的な顔をして、腰に手を当てて説明してきた。 「しすしすオンリーってのは、しすしすのみをテーマにした同人誌即売会で、他のジャンルでもそういう一定のテーマに限定にしたオンリーイベントが、毎週都内のどこかで必ず行われているの。 で、今日は池袋のサンシャインシティでそれが行われるってワケ」 なるほどな。 同人誌即売会はコミケだけだと思っていたから、そういうのがあるとは知らなかったぞ。 本当に同人誌ってのは奥が深いな…。 「で、開始が11時なんだけどさ…」 桐乃はちらっと上目遣いで俺を見てきた。 …そういう視線は反則だろう…お前…。 俺はちらっと腕時計に目をやった。 8時40分か…ここから池袋だと…2時間近くかかるな…。 午後からだと間違いなく間に合わないだろう。 しゃーねーか…。 俺は自室に入り、扉を開けたままケータイを持って、ある電話番号にダイヤルした。 「もしもし麻奈実か? 悪いけどさ、今日の勉強会だけど…ドタキャンさせてくれ。 この埋め合わせは必ずするから。 ああ、悪い。 明日は必ず。 ああ。 じゃあな」 麻奈実に勉強会中止の連絡を入れて、俺は桐乃に向き直った。 「桐乃、池袋に行くから準備してくれ」 俺の言葉に桐乃はきょとんとして、頭に「?」マークを浮かべている。 「え? …てのか…勉強会はいいの…?」 「今日1日くらい休んだって影響はねーよ。 それよりも…しすしすオンリー、楽しみにしてるんだろ?」 桐乃は暫く呆然としていたが、俺の言葉の意味を理解したのか、顔に少しずつ笑みを浮かべて… 「うんっ!」 最後には天使の様な笑顔で慌てて自室に戻っていった。 そして約2時間後…俺たちは池袋のサンシャインシティに着いた。 コミケ程ではないとは言え、けっこうな人数が並んでいる。 桐乃が準備出来てすぐに俺たちは千葉駅へと向かい、千葉~快速~錦糸町乗換で各駅停車~飯田橋で地下鉄乗換~東池袋というルートを使って1時間半で行けた。 サンシャインは池袋が最寄りかと思っていただけに、このルートはけっこう便利だ。 桐乃は俺の分を含めてカタログを2部購入し、早速サークルチェックに取り掛かる。 カタログを買って来た時の桐乃の顔は、まるで子供みたいに楽しそうだったな…。 因みに俺は最初から桐乃の荷物持ちのつもりで来たから、カタログのチェックはしていない。 それから少しして、一般入場が始まった。 それと同時に桐乃はサークルチェックを終えて、臨戦態勢に入る。 今回の参加サークル数は大体80ぐらいだったので、サークルチェックも簡単だったみたいだ。 「兄貴、入ったらすぐに○○△に並ぶから、ついてきて!」 桐乃の頭では既にシミュレーションが出来ているらしい。 ホント、自分の趣味になると、こうも人間って変わるものなのね…。 俺は半分呆れつつも、桐乃に従って行動を共にした。 それから2時間。 全てのサークルを回り終えた桐乃と俺は会場を後にした。 けっこう豊作だったらしく、桐乃はとても御満悦な顔をしていた。 その分だけ同人誌の冊数もあるから、手提げ袋が手に食い込む分だけ重いんだけどな…。 池袋駅へと向かう途中のサンシャイン通りで俺たちは軽く昼食を摂り、ゆっくりと雑談を交わしていた。 「兄貴…今日はあたしの我侭に付き合ってくれて、ありがとね」 「おいおい、どうしたんだよ急に」 今日はえらく殊勝な事を言ってるな。 「だってさ…受験生じゃん、兄貴…。 夏コミにも付き合ってもらうのに、さらに一日あたしの為に潰してくれて…」 どうやら俺が麻奈実との勉強会をドタキャンしたのを気にしているようだ。 「大学受験てさ、高校受験の比にならないぐらい…難しいんでしょ…? だから…午後だけでよかったのに…」 「いいんだよ、桐乃」 俺は桐乃の頭の上に手を置いて、軽く撫でてやった。 「今日桐乃に付き合うと決めたのは俺の意思だからな、お前が気にする必要はねーよ。 だから今日は一日中、何にでも付き合ってやるぜ」 桐乃の頭を撫でながら、俺は桐乃に気にするなと伝えると、桐乃は顔を真っ赤にして、軽く頷いた。 これ…今朝も同じ様な事をした気がするな…。 「よし、じゃあ次はどこへ行きたい? さっきも言ったが、今日はどこにでも付き合ってやるよ」 「………ホントに…いいの…?」 まだ桐乃は気にして聞いてくるので、『気にするな』と、俺は桐乃に対して首を縦に振って応えた。 その答えに桐乃は、今朝の様な満面の笑みで返してくれた。 「じゃあ、次はアキバに行こ♪」 それから数時間後、俺たちはとらのあな、メロンブックス、ソフマップやラジオ会館などのアキバ散策を満喫して、自宅へと向かっている。 桐乃から『ささやかなお礼』ということで、帰りは東京駅からちょっとだけ贅沢してグリーン車で千葉まで戻った。 俺は普通車でもいいと言ったけど、桐乃はこういう時は絶対に譲らない。 その辺りは親父そっくりで頑固だなと思う。 でもまぁ…今日一日ずっと歩きまわったから、桐乃のこの心遣いは正直言って有難かったな…。 そして夜。 晩飯が終わった後、桐乃がシスカリ対戦を希望してきたので、俺は桐乃の部屋に向かった。 対戦ゲームが終わり、そろそろ自室に戻ろうかという時だった。 「ちょっと待って…」 と、桐乃は俺を呼び止めた。 何か思案顔をしていた桐乃はパソコンチェアを立ったかと思うと、扉の鍵を閉めてベッドに座る。 鍵を閉めた…って…一体何を考えているんだ? コイツは…。 「あ…あのさ…最後に…もう一つだけ、お願いがあるんだけど…」 桐乃は何かを躊躇う様に、重く口を開いた…。 「あんたのソレ…もう一度…じっくりと見せてくんない…?」 ……はい…? 何か、とんでもない事をぬかしましたよ、この妹!? お…おおお…俺の…モノ…見せろって… 「おおおお…お前、何考えてやがるんだ!? 俺の見せろって、変態か!!」 「あんたが朝っぱらからあんなの見せるから、今日一日ずっと頭から離れないんじゃないのよ! 責任取ってよ!!」 「責任取れって…アレはお前が悪いんだろうが!」 ああもう…忘れてたのに蒸し返しやがって、ホントこいつが何を考えてるのかたまに分からなくなるわ…。 「それに…兄貴、『今日一日は何にでも付き合う』って言った…」 ええ!? それって…こんなアホな事も含まれるの!? 確かに言ったけどさぁ…。 ああもう…好きにしろ!! 俺は開き直って桐乃に尋ねた。 「…で? 責任取れって…俺のナニ見てどうするつもりなんだよ…」 「…じっくり観察する」 はあ? 観察?? 「エロゲーじゃモザイクかかって分からないから…実物がどんなのか…見てみたいかな…って…」 …興味本位っすか…。 俺だって男なんだけどなぁ…分かってるんだろうか、こいつは…。 しゃーないから、一応釘刺しておくか…。 「あのな、俺だって男だぞ。 それが何を意味するのか分かってるんだろうな?」 桐乃は真っ赤な顔になって目を見開いた。 次に機関銃のような罵詈雑言が来るものだと警戒していたら… 「…い…いいよ…アンタだったら…」 …はい…? 「あの…桐乃さん…?」 「だから、兄貴だったら…その…間違いが起こっても…いい…って言ってんの…。 何度も言わせないでよ…」 そ…それって…。 「つべこべ言ってないで、早く見せればいいでしょ!!」 桐乃はヤケっぽく文句を言ってきたと同時に、素早くベルトに手を掛けて…一気に俺のスポンとパンツを下ろしやがった…。 そして…露わになる、俺のモノ…。 それを桐乃が興味深そうに凝視している…。 「うわぁ………お…思っていたより…その…グロテスク…?」 グロテスクって…まぁ…そうだろうなぁ…。 初めて見るんだろうから、そんな印象を持ってもおかしくないわな…。 「へぇ…」 桐乃は俺のを興味深げにジロジロと色々な角度から観察しているが…これ…なんて羞恥プレイだ? 俺が恥ずかしい思いをしているだけじゃねーかよ…。 「…あ…あのさぁ、桐乃…。 その…ジロジロ見られると…恥ずかしいんだが…」 「…もうちょっと我慢してくんない…?」 桐乃は俺の意見を却下した…。 うう…涙が出そうだ…。 「ねぇ…兄貴…」 「あん…?」 桐乃が上目使いで俺を呼ぶものだから、俺は桐乃に顔を向けた。 すると… 「今日一日…ホント…ありがとう…。 今からのは…全て…今日のお礼だから…」 と、一言だけ口を開いて… 「ん…!」 「………!?」 何を思ったのか、桐乃は急に…俺の唇を塞いできた…。 そしてそのまま舌を俺の口の中に侵入させ、口腔内をくまなく貪り始めた。 「んむううぅ…!?」 「ん…んむ…っ…んん…っ」 「ん…んんん…んむむ…」 あ…やべ…桐乃の舌の気持ちよさに…頭がボーっとしてきた…。 そしてそれに反応するように…俺のモノも…カチカチに硬くなりましたよ…。 「ぷは…」 桐乃の口が俺の顔から離れ…俺と桐乃の唇を、透明の唾液が糸を引く様に伝う…。 そして、桐乃は視線を…硬くなった俺のモノに移した…。 「…ごく…っ…これが…男の人の…」 桐乃が艶やかな表情で俺のを凝視し、その直後… 「はむ…」 桐乃は躊躇う事無く…俺のを…頬張った…。 「ん…んちゅ…んん…」 兄貴のアレを見ているうちに、気持ちが高ぶっちゃって…あたしは…兄貴のを頬張っちゃったんだけど…せっかくだから…兄貴にも気持ちよくなってもらいたいな…。 あのゲームのフェラチオのアニメーションシーンを参考にしてるんだけど…確か…こんな感じ…だったかな…。 「お…き…桐乃…すげ…気持ちいい…っ…」 兄貴…あたしの口で気持ちよさそうにしている…。 ちらっと表情を見たけど…なんか…可愛い…♪ もっと…もっともっと気持ちよくなってもらお…。 あたしは兄貴のを隅々まで舐め回し、時には竿を甘噛みし、時にはぶら下がっている袋を咥えて口の中で舐め回しと、色々と試してみた。 そして兄貴が一番気持ちよさそうにした場所…その…兄貴のモノの先っちょと亀の頭の首筋みたいな部分を、重点的に舌先で攻める様に舐め回した…。 「やべ…桐乃…出ちまう…」 兄貴がそろそろ限界のようだから、ちょっと苦しいけど…あたしは兄貴のを再び口に含み、それを根元の部分…あたしの喉の奥まで達するぐらいまで深く咥え込んだ。 その瞬間… 「うおおお…っっっ…!!」 兄貴のがあたしの口の中で激しく震え、喉奥に精液を射精しているのが分かった…。 喉から逆流した精液があたしの口の中に溜まっていく…。 生温かくて…苦くて…ヘンな味がして…そして臭い…。 だけども嫌ではない精液独特の味と匂いが、口腔内に充満していく…。 「んぐ…んぐ…」 あたしは頑張って精液を飲み下そうとするが、兄貴のからは未だに大量の精液が放たれていて…とても飲み干せる量ではなくなってしまった…。 そして溜め込まれなくなってしまった精液があたしの口の端から溢れ出し…あたしの顎から首を伝い、あたしの服へと染み込んでいく…。 やがて放出が止まり、兄貴はあたしの口からアレを抜いていく…。 兄貴のはあたしの唾液と兄貴の精液で滑っていて、てかてかに光が反射していた…。 「…はぁ…はぁ…はぁ…」 漏れた分以外の兄貴の精液を何とか飲めたのはいいけど…あたしは身体が火照っていて、頭がボーっとして…何も…考えられなくなっていた…。 いかん…あまり気持ちがよくて、思わず桐乃の口に射精してしまった…。 桐乃はボーっとしたままだし…大丈夫か…? 「桐乃…大丈夫か…?」 「…あ…兄貴…」 何とか気が付いたみたいだな…。 「桐乃…一応確認する…。 俺…もう…収まりつかねーぞ…いいんだな…?」 口に出しちまったとはいえ、俺たちは兄妹だから…今ならまだ引き返せる。 俺は警鐘のつもりで桐乃に尋ねた。 しかし… 「いいよ…」 桐乃は拒絶しなかった…。 本当にいいのか…? と再度聞くと、桐乃は微笑みながら答えを返して来た。 「兄貴だから…いいよ…。 あたし、最初から…兄貴に…全てあげるつもりだったからさ…」 あ…やべ…。 この笑顔と答え…反則だろ…。 俺は桐乃が愛おしくなり…唇を塞いだ。 唇を離すと桐乃は一度俺を離れ、ゆっくりと…そして1枚1枚丁寧に自分の衣服を脱いでいく。 そして桐乃は恥ずかしながらも…俺の目の前で生まれたままの姿になった…。 桐乃の裸は…陸上競技で鍛えられて、さらにモデルをもやっている所為か…とてもバランスが取れた、とても美しい姿だった…。 俺が桐乃の姿に見惚れていると、桐乃は再びゆっくりと俺に抱きつき、俺に抱き抱えられるようにしてベッドに横たわった…。 「桐乃…」 「いいよ…きて…お兄ちゃん…♥」 俺たちはお互いに頷き合う。 そして俺は自分のを桐乃の秘所に充てがい… ズプ…ヌププ… 「んん…んんん…っっ!!」 少しずつ体重をかけて… 「い…痛…っっ…!!」 根元まで…全て挿入した…。 「桐乃…痛くないか…?」 俺は耳元で桐乃に囁いた。 だけど桐乃は涙を流していたが、嬉しそうだった…。 「少し…痛いけど…、それよりも…兄貴に挿入れてもらった…幸せの方が大きいかな…へへ♥」 くうぅ~~~…っっ!! すげー嬉しい事を言ってくれるじゃねーのよ、このお姫様は…。 「兄貴…動きたいんでしょ…? いいよ…♥」 挿入れたまま暫く動かずにいると、桐乃が求めてきた。 桐乃が痛がらないように気をつけて、俺はゆっくりと…抽送を開始した…。 「…ん…んん…っ…」 とりあえず一往復だけストロークしてみたけど…桐乃…眉を顰めて…痛そうだな…。 「桐乃…無理するなよ…。 あまり痛そうだったら…その…止めてもいいんだぞ…?」 「いいよ、そのまま…続けても…兄貴が気持ちいいなら、あたし…それで十分だからさ…」 桐乃…お前ってやつは…。 こんな状況なのに俺に心配かけまいとして…。 「今だから言うけどさ…あたし…小さい時からずっと…兄貴だけをみてきたんだよ…?」 桐乃…? 「幼い時にさ…『お兄ちゃんのお嫁さんになる』って言ったの…覚えてる…?」 ああ…覚えてるさ…。 「途中、冷戦状態になっちゃったけど…あたし…今でもずっと…あの言葉を心の中で温めてた…。 だから…今…夢が叶って…とても幸せだよ…」 桐乃は涙を零しながら、俺にこれ以上ない笑顔を向けてくれた。 「お兄ちゃん…好き…愛してる…」 桐乃…俺…本当に…幸せ者だ…。 小さい頃からずっと…俺の事だけを見ていてくれたなんて…。 なのにお前を長い間無視してしまって…本当に…申し訳ない…。 俺は感極まってしまい…瞳から…涙を零してしまった…。 その涙は少しずつ…少しずつ…桐乃の顔を濡らしていく…。 「桐乃…俺も…お前の事…愛してる…」 俺は心の奥底にあった本当の気持ちを、桐乃に伝えた。 「何があっても俺たちはずっと一緒だ…兄妹だとかはもう関係ない…。 俺が社会に出て生活できるようになったら、一緒になろうな…桐乃…」 そして…そのまま…俺はプロポーズした…。 俺の言葉に目を大きく開いた桐乃は…暫くして…とても嬉しそうな顔で…その瞳から大粒の涙を溢れさせた…。 「お兄ちゃん…」 「桐乃…」 俺たちは自然に顔を近づけて…唇を重ねた…。 そして俺はそのまま、抽送を再開した…。 「んんん…んん…っ」 俺の先端が、桐乃の膣内の壁のような所に当たり、その瞬間…桐乃の身体が激しく震えた。 どうやら子宮口に当たったみたいだ。 「お…兄ちゃん…っ…すご…気持ちいい…よ…っ」 抽送を繰り返していくうちに桐乃は痛みを感じなくなったみたいで、その代わりに呼吸が激しくなり、喘ぎ声を発するようになった。 そして結合部からは桐乃の潤滑液が溢れ出すようになり、さらに抽送がスムーズになる。 次第に俺の腰の動きが激しくなっていき、俺ももっともっと桐乃で気持ちよくなろうとさらに動きを加速させる。 「あ…ああ…♥ おにい…ちゃ…激し…♥」 「桐乃…お前の膣中…すげ…気持ちいい…」 「も…っと…もっと…激しく…して…♥」 「桐乃…桐乃…っっ!」 パンパンパンッ! という肌と肌が叩き合う音が室内に響き、俺と桐乃はお互いを激しく求め合う。 「だ…め…だめ…! あたし…イっちゃう…♥」 「俺も…そろそろ…出ちまう…っ…」 桐乃は両脚を俺の腰に回し、俺のが抜けないようにしっかりと咥えこむ形をとると、俺も桐乃の膣内に射精しようと激しい抽送を繰り返す。 俺もそろそろ限界が訪れようとした。 「桐乃…イクぞ…イクぞ…!!」 「きて…お兄ちゃん…♥ あたしの膣内に…出して…いいからぁ…♥」 「桐乃…っ」 「お兄ちゃんの…精液…全部…あたしに…ちょうだい…!!」 桐乃…桐乃…っ! 俺の忍耐は限界を超えて… 「桐乃おぉ…っっ!!!」 ビュルルルルルルッッ!! ビュルルルルルッッ!!! 「……………!!!」 桐乃の膣内に大量の精液を射出した。 「…! ………!! …………!!!」 桐乃は俺の射精を子宮口で受け止め、身体を痙攣させてイキながら必死になって声を殺し、俺の身体にしがみつく。 「き…桐乃……きりの…おぉ…っっ」 ビューーーッッ!! ビュルルルルッッ!! ビュプッビュプッ!!! 「はぁ…はぁ…お兄ちゃん…おにい…ちゃ…ん………っっ」 ビュクッ…ビュプッ… 長かった射精がやっと終わり…俺は脱力して桐乃に覆い被さった。 桐乃も俺の背中に両腕を回して、俺を受け止めてくれている。 お互いの身体にき、心地よい疲労感が漂っていた…。 「桐乃…」 「お兄ちゃん…」 俺たちは互いに見つめ、微笑み合いながら…自然に唇を重ねた…。 「幸せになろうな、桐乃…」 「うん…♪」 これからは大変な困難が待ち構えているだろう…。 だけど、俺たちはそれを乗り越える覚悟で結ばれた。 だから、何があっても俺たちは一緒に生きていく。 可愛い妹でもあり、愛する異性でもある桐乃と共に…。 「大好きだよ、お兄ちゃん…♥」 END
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1294505746/313-316 「はぁはぁ…」 俺はホームルームが終了すると一目散に教室を飛び出す。そして靴を履き代えると、裏の通用口を使い学校を無事脱出した。それでも不安は拭えず、俺はしばらく走り続けた。 「ふぅ…、ここまで来れば安全だろう」 ようやく歩調を緩める。それでも恐怖心がそうさせるのか、つい後ろを振り返ってしまう。 「あら、京介君じゃない」 慌てて前を見ると目の前に立っていたのはフェイトさんだった。俺は安堵の溜め息をついた。 「脅かさないで下さいよ…、あやせかと思った…」 「あら、あやせちゃんがどうかしたの?」 「いや実は……」 俺はフェイトさんに返答しかけて、ふと気付いた。あれ、あやせとフェイトさんて面識あったか?そんな事を考えていると、フェイトさんが近寄ってきた。そして右手に握っていた物を、俺の首筋に当てるとこう言った。 「ゴメンね京介君」 次の瞬間、俺は目の裏から激しい火花が飛び散るような衝撃を受け意識を失った………… 目覚めは最悪だった。まだ目の裏がチカチカしているようで頭もクラクラしている。 「あら、目が覚めた?」 反射的に声のする方を見ると、頑丈そうなドアの脇に置かれた椅子にフェイトさんが腰掛けていた。 「フェイトさん!?これは一体……」 フェイトさんに詰め寄ろうとした俺は、身体が動かない事に驚いた。改めて確認すると、俺の身体は椅子に座らされた状態で拘束されていた。腕はひじ掛けに、足は椅子の足に、おまけに椅子自体がL字型の金具で床に固定されていた。 「ちょ…何の冗談ですか!早くこれを外して下さい!」 「申し訳ないけど、ある人の頼みでそれはできないの」 ある人?………何故だか急に身体震えてきた。生物としての本能が危険信号を発しているかのようだ。 そしてそれが間違っていなかった事はすぐに証明された。 ガチャリ……ギギギ……… 見た目に違わず、目の前のドアが重そうに開き、そこに立っていたのは―― 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 こんなに絶叫したのは小学生の時、初めてスプラッタ映画を見た時依頼の事だった。身動きが取れないのは先刻承知のはずなのに身体は本能に突き動かされ、この場から逃げようと手足を空しくバタつかせる。 「む、女の子の顔を見て悲鳴を上げるとか失礼ですね、お兄さん」 そう言って新垣あやせは頬を膨らませた。 少し前までの俺なら「膨れっ面でも可愛いな~さすがマイエンジェル♪」等と呑気な事を考えていたであろうが、いまやその存在自体が恐怖の対象でしかなかった。 「あの~あやせちゃん…お取り込みの所悪いんだけど…」 恐る恐るといった様子でフェイトさんがあやせに声を掛ける。あやせはちらりとフェイトさんを見ると「あぁ」と一言呟き、上着のポケットから一通の茶封筒を取り出した。 「お兄さんの捕獲、ご苦労様でした。約束のものです」 茶封筒を受け取るとフェイトさんは中身を確認した。そして 「ありがとうあやせちゃん!これで今月ガスと電気停められずにすむわ♪」 などと吐かしやがった!詳しい金額は分からないが、普通両方合わせても一万もいかない金額で俺売られたの!?激しくショックを受ける俺を余所に茶封筒を上着の内ポケットにしまい、部屋を出ていこうとするフェイトさんにあやせが声を掛ける。 「ああ、念のため言っておきますが……」 「わかっているわ、ここの事は誰にも喋らない。私もここの事は忘れる…でしょう?」 「そういう事です」 「じゃあ私はこれで……、京介君、申し訳ないとは思うけど…私にも生活があるの。ゴメンね」 そう言い残すと、フェイトさんは部屋を出ていった。そして頑丈そうなドアが重たげに閉じ、後には俺とあやせが取り残された。 「ようやく二人っきりになれましたねお兄さん?」 「ひひひ久しぶりだなあやせ」 裏返りそうな声を必死に押さえながら俺は返答する。するとあやせはまた不機嫌な顔つきになった。 「お兄さんがあってくれなかったからじゃないですか。携帯は着拒にするし、学校の前で待っていても裏口や塀を乗り越えて逃げてたじゃないですか!」 そりゃ会ったら何されるか分からないからな。事実今の俺が置かれてる状態が、考えが間違っていなかった事を証明している。 「私あの後、妊娠検査キットを使い自分で調べたんです。結果は……残念ながら陰性でした」 俺にとっては喜ばしい事だ。 「ですから、今度こそ確実に種付けをしてもらいますよ?私が確実に妊娠したら解放してあげます」 「ま、待てあやせ!やはりこういうのはよくないって!好きでもない男女で子供を作るとか…」 「私だって好きでするわけじゃありません。けどお兄さんは無意識にあちこちでフラグ立て過ぎなんです。このままではいずれ母親の違うお兄さんの子供が大量生産されてしまうでしょう」 ……………待ってくれ…、脳の処理が追い付かない。腕が自由なら頭を抱えているところだ。 「そうならないために、私が犠牲になり既成事実を作ろうと言ってるんです。ああ念のため私が無事出産したらパイプカットもしますよ」 あまりにも狂った発言に、俺は本能的に内股になりリヴァイアサンを少しでもあやせから遠ざけようとした。 「さぁ、おしゃべりはこれくらいにしてそろそろ……」 そう言ってあやせが近づいてくる。それにつれ、俺の身体はガタガタと震え出す。 「お兄さん、そんなに震えて寒いんですか?でも大丈夫、すぐに暖かくしてあげますからね…ウフフフフ…」 制服の上着を脱ぎながら、さらにあやせが近寄ってくる。俺は「あぅ…あ……あ…」等と意味を成さない呻き声を上げ震えるしかなかった。その時 バーン!…ズズーンッ あの頑丈なドアが内向き倒され、二つの人影が飛び込んできた。それは大門軍団……ではなく桐乃と黒猫だった。 「そこまでよあやせ!」「この悪魔!先輩を離しなさい!」 「くっ!何故ここが!?」 「フェイトさんから聞いたのよ!」「溜まっている水道代とケータイ料金を肩代わりすると言ったらすぐに教えてくれたわ」 「く…こんな事なら謝礼にもう少し色を付けておくべきでした…」 フェイトさん……あんたどれだけ困窮してんだよ……。まさか家賃も滞納してんじゃ? そんな事を考えていると、いつの間にか既視感のあるキャットファイトが目前で展開されていた。あれ?…って事はそろそろ…。そう考えた時、案の定腕のロープが緩められた。 「来てくれたのかブリジット!」 「あたしで悪かったな…」 「か、加奈子!?」 意外にも、そこにいたのは不機嫌そうな顔をした加奈子だった。 「どうしてお前が…?」 「加奈子もオメーを助けに出張るのは面倒だったんだけどよ…ブリジットにどうしてもって頼まれたから仕方なく来たんだよ」 ※※※※※※※※※※※※※※※ ブリジットの部屋 ぐるぐる巻きにされ口には粘着テープを貼られたブリジットが転がってる 「むぐむぐぅ~、もが~!(かなかなちゃんのバカ~!)」 ※※※※※※※※※※※※※※※ 「ほれ、とっととズラかろうぜ」 「あ、ああ…助かったぜ」 「礼はキッチリしてもらうからな」 「おう、ケーキでも飯でもなんでも奢ってやる」 「そんなもんより、もっといいもんご馳走してもらうぜ?」 何故だろう。今すごく危険な気配を感じた…。いや気のせいだな。 だから加奈子がペロりと唇を舐めながら、俺の股間にねっとりとした視線を這わせたのも気のせいに違いない… そう自分を信じ込ませると、俺は加奈子とこの悪夢のような部屋から脱出した 終り
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「ちょっと違った未来4」 ※原作IF 京介×桐乃 「そう…そんなことがあったの…。」 「ああ…。」 俺は今、大学のカフェテリアにいる。 元恋人で現友人の、黒猫こと五更瑠璃に今回の件ーーー桐乃と俺が事故に合ったその後の経過の話をするためだ。 桐乃と俺が事故にあった時、すぐに彼女は病院まで駆けつけてくれた。激務で忙しい仕事を途中で切り上げてまで。 その後色々と時間を見ては俺や桐乃の身の回りの世話を焼いてくれ(瑠璃曰く、女には女にしかわからないことがあるものよ。だと、さ。)、そのことに親父とお袋はとても感謝していた。 当然桐乃の身の回りのことをしてくれていたのだから、その異変にーーー勘の鋭いこいつが気づかないわけもなく、すぐにその異常を把握した。 そう、桐乃はーーー記憶を失っていた。それも何故か「俺」や「オタク関係」のこと全てについてだ。 初めは正直こんなことってあるのかよ!?と半信半疑だったが、桐乃の演技だとは思えなく(そもそも疑ってもいないが)、医者もこんなケースは初めてらしく慎重に途中経過をみていくという線に落ち着いた。 なんでこんなことに…。しかもそれだけじゃない。 「でも、あの子が黒髪に…。確かに今のあの子の性格にはその方があっているのでしょうけれど…。」 「いや、そうだけどさ。なんかもとの桐乃の接点、ていうのかな。そういうのがどんどんなくなっちまうよそれじゃ。」 もひとつ問題点。桐乃は記憶だけじゃなく性格まで変わっていた。以前のパワフルで勝気な性格(それでも中学時代と比べたら随分落ち着いていたのだが)がなりを潜め、すっかりおとなしめの気の弱い美少女、という感じになってしまった。親父やお袋に対しては自然だが、俺や瑠璃、沙織にはかなりよそよそしい。それは桐乃にとっては…俺達は「知らない人」だからだろうか…。 「無理に何かを今の桐乃に言い聞かせるのは…気が引けるわね…。あの子、かなり無理してるから。」 「やっぱりおまえもそう思う?」 「ええ。私は記憶喪失なんてなったことがないからわからないけれど…相当負担がある筈よ。特に心に…。皆が言うことが全く記憶にない。しかも相手は自分のことを知っている。…葛藤がそこにあることは容易にわかるわ。」 「だよなぁ…。」 瑠璃はティーカップに入った残りの紅茶をどこか上品なしぐさで飲み干し、 「ごめんなさい、もうそろそろ会社に戻らないと…。」 「あ、ああ。すまねえな、今日は。忙しいところ。」 「なにを言っているの。これぐらいなんでもないわよ。」 「いつも世話になるな。送ってくよ…って車で来てたよな。」 「ええ。そういうわけだから見送りは結構よ。」 「仕事、忙しいのか?」 そうたずねると瑠璃はため息を漏らした。 「うえ(営業部)がまた余計な案件を取ってきたのよ…。まだこなしきれる量だからいいけれど、また前みたいになったら何人か辞めていくわね。」 「おまえ…大丈夫なのかよ?」 「ありがとう。でも無理と判断したらすぐに相応の対応を取るわ。それに貴方や沙織もついてるし…自分ひとりだけの判断じゃない。まだまだ大丈夫よ。」 「そうか。俺に出来ることがあったらなんでも言ってくれ。つっても逆に世話になりっぱなしなんだけどさ。」 ポリポリと頭をかく俺のこめかみに瑠璃はそっと指を重ねて、 「妹が心配なのは解るけれど…貴方こそ、無理はしないでね。お願いよ。貴方までどうにかなったら私…。」 「瑠璃…。」 彼女の沈痛な顔を見るとどれだけ今回の件で迷惑をかけたのか…心に染みた。 4年前からそれまで俺達は本当に仲が良かった。 俺は大学生に、桐乃も海外のモデルの仕事を辞退し日本の高校へ…。その後沙織は名門女子大学へと進学を果たし、続いて瑠璃はIT系の専門学校へ通い始めた。 瑠璃だけ一足早く就職したけれど、それでも時間を見つけては俺達との時間を本当に大切にしてくれた。 俺はあの時桐乃のことを兄として選んで、その後男としても桐乃を選んだ。だけどそんな俺達を皆は祝福してくれた。 とりわけ瑠璃はその後も変わらず俺達を見守ってくれた。就職してからというもの、ハイスピードなリズムを仕事に要求されるからか、いっそう増した怜悧できびきびした容姿に隠された彼女の優しい心根は…本当に暖かい。 彼女は何も変わっていない。出会った時から、ずっと。 「じゃあ、もう…いくわね…。」 「ああ、また近いうちに。また連絡するよ。」 そのまま颯爽とカフェを出て行った。しっかりとしてその足取りは次のスケジュールを頭の中で練っているのだろう。 「俺も行くか…。」 そのまま注文したコーヒーを飲み干し、店を出た。 ☆★☆ 「んーと…この辺の筈なんだけど…。」 お母さんから手渡された住所とにらめっこしながら…あたしこと高坂桐乃は目的の住所までの道のりを歩いている。 「ここの店が右だから…あっ、あそこだ。」 あのアパートの二階に…あたしのお兄ちゃんこと高坂京介、さんが住んでいる。 ーーー正直、ここにたどり着くまで何人もの男の人に声をかけられて凄く怖かったけれど…なんとか振り払って無事(?)にたどり着くことが出来た。 「やっぱりお母さんについて来てもらったらよかったかな…。」 でもそんなことしたら、あたしが京介さんとちゃんと向き合うということが出来なくなる。いつまでも甘えていられない。 「えっと…いる、かな…?」 チャイムを鳴らす。 ピンポーン。 …。 「あれ?もう一回…。」 ピンポーン。 …。…。 「いないの、かな。じゃあ、」 引き返そうという足を見て、止めた。…すごく弱気になってる。そんなにもあの人と、会うのが…。でも…。 「よし!」 パンパン!とほっぺを鳴らして気合を入れる。ここで引いたら逆戻りだ。何も前に進めない。 「えーと、鍵は…んしょんしょ。…あった。」 ピンクの熊のかわいらしいキーホルダーがついた鍵を鍵穴に入れ、ドアを開けた。 「お、おじゃましま~す…。」 さわさわさわ…。 暖かい日の光が窓からふんだんに降り注いでいた。その部屋の人の心の中をあらわしているのかな、なんてことをふと思ってしまう。 大きめのベッドに机に本棚…。奥には流しがある。男の人の部屋なのは間違いないんだけど、所々に女の人の物がある。 机の上に立ててある板に貼ってある写真に目がついた。そこにはあたしが楽しそうな笑顔で色んな人と写っていた。 あやせとも、加奈子とも、そして…黒猫さんや沙織さんに…そして…真ん中には。 「京介さんと、あたし。」 京介さんの腕を抱きしめるように組んで、笑顔で写っている。京介さんはどこか照れくさそうに、でも顔をほころばせていた。 「…。」 …ダメだ。どうしても思い出せない。この部屋だってとても大切な場所のような気がする。無視しちゃいけないって、心の中の誰かが叫んでる。だけど…。 頭が痛い…。 あたしはベッドに身体を横たえた。勝手に許可もなく使うことに抵抗がよぎったけど、そうしちゃいられない。 ベッドにはグリーンとピンクの枕が揃えて置いていた。 …あたしはグリーンの枕に顔をうずめた。 (…いい匂い。) (なにかとても…優しい匂いがする…。) (あの人の、匂いだ…。) (いつもあたしがどれだけぎこちなくても、優しく接してくれる…。) (お兄ちゃんの匂い…。) 柔らかな日差しと心地いい匂いに包まれて…あたしは眠りに落ちた。
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http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1316537661/539-563 とりつく島もなく一方的に捲し立てると部屋を出て行ってしまった。 「あいつ―――俺に手錠はめたまま帰りやがった」 連絡するなと言われて、連絡しないわけにもいかないので メールしようとして気付く。 俺の電話はあやせからの着信で通話状態だったのだ。 だからクローゼットにいるあやせにも会話が筒抜け状態。 あいつは俺が桐乃の応対の為にちょっと部屋を出た隙に 自分の靴と服を隠し、ついでに俺の携帯まで弄っていた。 戦慄するよりも素直に感心してしまった。 もしかしたら監視カメラや盗聴器くらい有っても、不思議じゃない。 『あやせ……もう一度ちゃんと話がしたい。 だから落ち着いたらまた連絡して欲しい。俺はいつでも良いから』 とメールしたがもちろん返事はなかった。 やる事なんて無いのだから俺は風呂に入る為に服を脱ぎ Tシャツは脱げないのでTシャツ来たまま風呂に入った。 お気に入りだったのに、見事なダメージTシャツに……… 風呂に入ったのは30分かそこらだと思う。 何気なく携帯を見て俺は100%純粋な恐怖を感じた。 ―――着信不在76件 ―――メール未読101件 脅迫文ですらもう少しマトモだろうと思われるほど 悪意、呪詛、恨み、辛みetc、etcの文言……… 大あわてで電話するがあやせは出ない。 しょうがなくメールすると、さも迷惑そうな内容が返ってくる。 だから放置しておくと、すぐにメール………が。 あ~女ってマジ面倒くさ―――と言うかこれ絶対解決しねぇだろ。 それでもあやせ自身をウザイと思わなかったのは………。 あやせとメールを始めて数時間後どうやらあやせは寝るらしい、が 最後のメールの文面が 『裏切り者で変態でクズで意地悪なお兄さん。 もうあなたの知らない人のこと、考えてしちゃいます。 でも、でも今後、二度とあなたには絶対に、絶対に、絶対に(15回連続の絶対に) 指一本わたしの身体には触れさせませんからっ!!』 無視してると、メールと着信の硝酸弾雨 しかたなくおやすみとメールの返信をする。 色々考えようとするがため息しか出なかった。 そういや黒猫と付き合って、あいつが突然別れを切り出して、失踪した時 随分酷い奴だと思ったものだが……今の俺よりも全然幸せだったな。 あやせには悪いと思うがあの頃が懐かしかった……… 麻奈実と並んで下校した時や黒猫が"神猫"で手を繋いでデートした時が そして こうやって別れるカップルもいるのかなとふと思った。 一瞬だけ、ほんの一瞬だけ"別れ"を想像したが ………すぐに頭を振って、俺はそのビジョンを振り払った。 俺は馬鹿馬鹿しいと思うがあやせの気持ちになる為に 何気なくクローゼットに入ってみる。 あやせは 『次、お兄さんが浮気したらお兄さんをぶち殺して、わたしも死にます。 だからそんな心配無用です。 あ、でも寝取られる方が死ぬよりも辛いなら――ふふ(魅惑)』 と言った そもそも俺が桐乃と食事するのは浮気なのだろうか? と言うよりも―――あいつ、俺が他の女といちゃついたら 俺への罰としてNTRとかその方面で考える回路を作っちゃってるのか? 桐乃の"偽彼氏"事件は可愛いものだったが、あれも多分俺に嫉妬して欲しくて 俺の気を引きたくてやった事なのは今なら分かる。 だがあやせの場合は―――全然洒落にならない。 普段は清楚、清純、純真なのだが、一度リミッターが解除されると 淫靡、淫乱、猥褻、俺の気を引く為にする行動のレベルが無制限で 或意味、それは男冥利に尽きるのだが、やっぱり危なすぎる。 なら、どうすれば良いのか? あいつの中にある、気を引く=別の男の発想を何とかして消さないといけない。 じゃないとあいつは、いつか本当に一線を越えるかも知れない。 そんな事をしなくても俺はあやせを見てるし、ちゃんと魅力を感じている事 を伝えなければ……… 『…………………………』 俺はある決断をした。 もうしょうがない ろくでもない発想だがこれ以外に思いつかないのだから。 あやせと桐乃が喧嘩した時に俺が変態と言う事で騒動を丸く収めたように… 一旦事が起これば、俺が何とかするしかない。 あの時は桐乃がエロゲー好きの変態であってはいけなかった。 今回は俺の可愛い彼女を変態にするわけにはいかない。 俺はほとんど眠れずに朝起きると 『昨日の夜クローゼットに入ってみた。暗くて狭くて淋しい場所だ。 あやせをこんな気持ちにさせて本当に悪かった。 もう何の意味もなく手遅れかも知れないが、おまえがかけた手錠そのままにしてる。 馬鹿馬鹿しいと言うかもしれないが、俺はこれがおまえとの絆だと思ってるから』 とあやせにメールを送って、手錠のまま大学に行った。 賢しいが同じ大学にいる赤城に手錠状態の写メまで撮って貰った。 理由を色々聞かれたがおまえのせいだとだけ答えた。 きっかけはエロDVDだったのだから。 幸い麻奈実には会わずに済んだ ―――色々な意味で今、麻奈実に会うのは非常に不味い。 俺は学校が終わるとにあるものを買う為に街に出た。 職質こそされなかったが、すれ違う人々の反応は予想通り。 買うものはなかなか良い値段だがしょうがない。 考えてみれば、桐乃、麻奈実、黒猫、全員に色々プレゼントしてたのに 恋人のあやせにはしてなかった事に気付く。 朝からずっと返事が来なかったが一方的にメールした。 と言うか、本当にストーカーの如くメールしまくった。 やっとあやせが望んでいた事がわかった気がする。 ―――そして何であいつが手錠なんかを持ち出したのかも 家に帰っても、ずっと待ったがあやせはなかなか連絡をよこさなかった。 今日はもう来ないのかも知れないと諦めた時にメールが届いた。 時間は深夜 『裏切り者の変態さん、お見舞いに来て下さい』 とだけ書かれていた。 考えるより先に行動した、あやせへのプレゼントをポケットに入れ普段はあんまり 乗らない自転車を引っ張り出して手錠のまま、あやせの家に向かう………。 もちろんあいつは実家暮らしだし、行ってすんなり仲直りが出来るとも思えないが。 そういや桐乃の為にエロゲー買ったことや桐乃を送るために二人乗りもしたっけ 不安な気持ちを誤魔化す様にあの時の事を考えながら自転車を走らせた。 俺とあやせが急速に仲良くなったのは多分、加奈子のライブがあったあの日からだ。 俺は会場で花嫁姿の桐乃と手を繋いでる瞬間をあやせに見られた。 その後、あやせの様子が変だったから俺はあやせに電話した。 それが桐乃や"頼み事"関係なく、純粋にお互いの為だけに話した初めての機会だった。 一度だけのつもりの電話が受験勉強の息抜きと言う口実で 週一から三日に一回になり、毎日話すようになるのには時間はかからなかった。 静かで、とてもささやかな好意があるのはお互いに薄々は感じていた。 普段は『ぶち殺す』だの『変態』だのキツイ言葉を吐くが、普通に話してみれば 女の子らしく、俺は純粋に気軽に話しの出来る年下の友達が出来たのだと その時は簡単な気持ちで考えていた……のだが。 思えば―――特別なキッカケが無い限りは俺とは話さないと決めていた、 あやせのルールこそ桐乃に遠慮した自制だと今なら或いは言えるかも知れない。 息をきらせて、あやせの実家の目の前に到着する。 『着いた』 とだけメールした。 案外、何の返事もせずにこのまま放置もあるのかもなと高をくくるではないが、 そう期待した部分も正直あった。 流石に真夜中に手錠した男が家に入るのはどう考えてもヤバイ。 だが――― 『裏に回ってください…勝手口が開いてるので入って』 との文面が ハァ………ため息をつくがしょうがないので言われた通りにする。 しかし前回あやせの家に行ったのは黒猫と付き合ってる時で 階段から転げ落ちてそれこそ命からがら逃げ帰ったんだった。 緊張で胃が痛くなるのを我慢しながらドアを開けると――― 「本当に………来たんですね(無表情)」 「もちろん、風邪は大丈夫か?」 「一応…………わたしは見つかっても構いませんが、それがイヤなら黙って わたしの部屋に来てください」 俺は靴を持ってあやせの後に従った。 何度かあやせの部屋に上がった事はあるが―――あの時とは状況が違う。 真夜中に不機嫌な彼女の実家に手錠して侵入する しかも変な企みまで胸に秘めて ―――下手をすると、俺の人生終わるかも知れない。 「………その手錠(抑揚のない声)」 「ああ、おまえカギ持って行ったからな………でもこれってさ 考えてみたら、おまえが俺にくれた初めてのプレゼントみたいなもんだろ? だから壊すのも悪いかなと思ってさ。俺の可愛い彼女の贈り物だからな」 「返してください…」 「へ?」 「返して」 「な、なんで?」 「良いから、返せって言ってるでしょっ!!!!(大声)」 「へっ、そんな事でビビってたらおまえの彼氏なんてやってられっかよッ!」 「お(兄さ)、あなたはもうわたしの彼氏じゃない!!!(怒声)」 そろそろ声がヤバイと思った俺は―――あやせに覆い被さり、口で口を塞ぐ ファーストキスはあやせに告白されて、了承した時にした(むしろされた)。 2回目は昨日のエロDVD事件の時にあやせに嬲られながらやられた。 3回目は思い出すのも恥ずかしいが、良い雰囲気で出来たと思うが。 4回目は鉄の味……… あやせとのキスに法則なんてものがもしあるなら、奇数回は良いキスってことだろう。 そして5回目のキスは………? しっかり鉄の味がする―――痛みが全身に広がるほど、容赦なく俺の舌を噛む それでもあやせが窒息するほど、無理やり唇を重ねる。 ここで辞めるなら最初から、あやせの彼氏なんてやってられないのだ。 「わ、わかった……から、お、お兄さん苦しいです、息が……ハァハァ」 「ぜぇぜぇ………な、何が分かったんだ?」 「わ、わたし………風邪引いて…て……」 そうだ―――我ながらバカだった 俺の可愛い彼女は風邪引いて寝込んでるのに 「す、すまん…そうだった、俺何やってんだ(猛反省)、(超土下座)」 「それよりも、わ、わたし達もう恋人じゃないんだから! そっちの理由でちゃんと反省してください!」 「その点では全く反省出来ないな!俺はおまえの彼氏だし(尊大)」 「ち、違う!」 「(遮って)と言うか"彼氏"と言う点でもやっぱ反省しないとかもな」 「?」 「俺って全然男らしくなかったもんな。キスにしたってそうだ。 ―――告白したのもおまえ、キスしたのもおまえから、2回目もおまえ 3回目もあやせからせがまれてしたし、4回目は途中でひよって未遂 だからこれからは俺が強引にしようと思ったんだが………」 「な、何が言いたいんですか?」 「これだよ、これ(手錠をあやせにかざす)」 「だからそれが何だって言うんですか?! 真夜中にそんな変態自慢されても困ります………気持ち悪い(嫌悪)」 「まだ上手には言えないんだが、手錠もキスも……… 本当はおまえが俺にして欲しかったんじゃないのか?」 「……………」 「メールにしたってそうだ、、あんな狂ったみたいに、一方的に―――」 『だ、誰が!!!』 とあやせが叫ぶ前に機先を制して、今度は人差し指をあやせの唇に当てる ―――最悪噛まれるのを覚悟したが、あやせは大人しく黙ってくれた。 「俺が狂ったみたいに送れば良かったんだ、本当はさ。 おまえに………そんな真似をさせた俺が全て悪かったんだ。 だからここからは俺の勝手な独りよがりの妄想で、ストーカーの論理かも知れないが (本当はその方が良いのだが)、あやせ………」 「い、言ってください、そのストーカーの論理を、京介さんの考えてる事を わたしに……教えて」 「あやせが色々な事に嫉妬するなら、俺はそれ以上におまえに嫉妬してやる。 あやせが俺の事をいつも考えてるなら、俺はそれ以上におまえの事を考える。 あやせが俺の事を雁字搦めにして縛りたいなら、俺がもっと強い力で おまえの事を拘束して束縛してやる………おまえを捕まえててやる!」 とこんな立派な演説をやって もし俺の勘違いで、単なるストーカーで変態のカミングアウトになってたら? まぁでも、あやせがそうじゃないと言うならそれはそれで良いのかも知れない。 俺の可愛い彼女の為に………俺の人生や名誉は全部くれてやる ―――きっと愛情ってそういうものなんだ。 あやせは――― 「…………………き、気持ち悪い、もう近づかないでください。 わたしに二度と」 ―――この時のあやせの顔を、俺は一生忘れないだろう 「そ、そうか………すまなかった」 まぁ普通そうだよな。これで良かったんだ、多分 あやせは無言で俺の手を取ると、カギを取り出して手錠を外した。 手錠の重みと同時に色々なプレッシャーから解放された気分 本当は嬉しい筈なのに………これで良かったと思ってたのに なのに俺は――― 「これが京介さんの顔―――わたしが、わたしが勇気を出して 初めて好きって言った時、あなたはこんな顔をした………」 「あやせ………おまえは」 なんで……そんなに優しいんだ 「お兄さん………これで解放して貰えると思いましたか? わたしがどれくらいあなたの事を恨んでるのか、分かってます…か? こんな事でわたしの復讐終わると思いましたか?」 俺はあやせから手錠を取り上げるとあやせに無理やりはめて 後ろからしっかり抱きしめた……… 「俺って、やっぱ情けねぇな。 満足におまえに変態って呼んで貰えるほどの覚悟も勇気もないんだもんな ごめんな、あやせ」 「本当に救いきれない。 一途にわたしだけにものにはならない癖にわたしのことも、ちゃんと 捕まえてもくれない……最低の人」 「本当はこれでも決心してきたんだけどな………そのつもりだったんだ」 「京介さんは、どうせヘタレでシスコンで、スケベで口だけ――(キスされる)」 「もうおしゃべりの時間は終わりだ、あやせ(強引)」 「まだわたしは病み上がりなんですよ?ヘタレのお兄さん(呆れる)」 「そうだな………でも俺は"優しい変態"を目指してるから今回はこっちだ」 「い、き……なり下着まで降ろして、な、何?お、お兄さん…えぇ?(戦慄)」 「そういや、口でしてもらった時おまえに噛み切られるかも知れないって ビビったな(苦笑) おまえはその変態にどんな事されるんだろうな?クク(下卑た笑)」 「ちょ、調子にのってっ! どうせあなたは、女の子に手錠しないと何も出来ない……… ヘタレの卑怯者の裏切りもぉ…あぁ…ん……ちょっ…と……いき…なり」 「その通り、だからもうトコトンおまえに軽蔑されることにするわ。 今からは中途半端はなし―――0か100かだ。 これが終わったらいくらでもぶち殺して良いぞ(舐める)」 「あっ、き、京介さん………だ、ダメ………駄目で…す ………わ、わたし風邪ひいててお風呂入ってないから やめてぇ………き、汚いからァ……きたな…い…か…ら……」 「へぇそっか、でも辞めないぜ!舐めるんだ!我ながら最低だな(ノリノリ) 俺がおまえより――あやせが引くほどの変態になってやる(舌入れる)」 「あっ゛……く、苦しいから、京介さ……ん、い、息が…出来ないから」 「ほら――人工呼吸の時間だ。 もう俺は容赦しないぜ!イヤなら俺の舌を噛み切って良いからな(男らしく)」 「変態!レロ、変態!、ペロ………変態のくせに……変態のくせにィぃ!!!」 「やっと…変態は認めて貰えたか。ほら次はこっち(また舐める)」 「あっあんっ……あ、後で覚えてて…おほ゛えてて……ずっと同じ……… ずるいぃ………狡いから………す゛るい………からァ…だめ………」 「俺はヘタレで変態でずるいんだ。でも裏切り者だけにはならないつもりだぜ(舌技)」 「わ、わ、たしの……わ、たしの中に舌入れて………あん、舌入れたまま 舌入れて゛喋らないで゛、へ……へんになるから゛……だ゛め、だからぁ」 「………………(無言)、(舐めたり、吸ったり)」 「はなしぃ、話をきけぇぇええぇ(足をじたばた)」 「いやなのか?(舐めつつ)」 「イヤに決まってるでしょ!変態!死ね!」 「駄目だ、駄目だ、これじゃダメだ! やっぱ"優しい"だけの変態ではダメなんだ!やっと分かったわ(確信)」 「き、京介……さん?(ぽか~ん)」 「多分、このままだとおまえには、おまえの狂気やおまえの愛情に勝てない。 俺はおまえを変態のままにさせてたらダメなんだ!(決意)」 「あの………京介さん、え、えっと…その口ではイヤって言ってましたけど、わたし ほ、ほんとうはそれなりに気持ちが良いと言うか愛情も感じてるし(フォロー)」 「あやせ、これが俺の全力だ!(全力)」 「いっ?き゛な゛り゛………そ、そこ吸ったら、吸っちゃ……あ゛あ゛あんっ」 「これから俺はおまえを躾ける、多分、これやったら今日俺はおまえに本当に ぶち殺されて死ぬかも知れない!だから、だから(愛の)」 「なに………を……な、何をす、する……つもり……?」 俺はあやせのケツ(人知を尽くして)を、ぶった叩く(天命を待つ) 「あやせ……愛してる!!!!!!(告白)」 「い、いたぁぁい、ば、ば、ば、ば―――ちょっとバカじゃないの!!!!!」 「―――――(無言)、(強引に吸う)、(ちょっと噛む)」 「そ、そこは………ん、い、意味が、あっあ゛………強すぎるぅからぁ……」 「あやせ、おまえはこうしてほしかったんだよな?(狂気)、(叩く)」 「そっ、そんなわけないでっ……交互にぃ………交互にしゅるなァ……… そっちは……ほ、ほんとうに……意味が……あっん、っん、い、みぃ…い……みが」 「俺、思ったんだ………この前みたいにおまえの言いなりになって おまえに支配されるのは楽だなって、おまえはエロくて、綺麗だし、魅力的だし! (すごく舐める)」 「っ……ぅん………あっ……だから……んっ………だ…か…ら?」 「だけど、本当のおまえは優しくて思いやりのあるちょっとか弱い女の子で(叩く) 俺が頼りなくて、ダメだからおまえ、あやせに無理させてるのかなって(絶舌技)」 「あん………だから……だ……から…ァ…き、きょうは(京介)…んッ…あっ きょうは………きょうは…あっ…ァ…ん…イキ………そ……う」 「おっとダメだぜ!あやあや、今日の俺はひと味違うんだ(レロレロ)、(叩く)」 「きょうの………きょうの、きょうの意地悪゛、い゛・し゛・わ゛・る゛・!(お尻振る)」 「俺があやあやの為に意地悪になる!変態になる!だから、だから(大地のドラム)」 「わ、わたし、こわい………お尻…叩かれて………た、たから…て……あぁ 気持ちいい…の……叩かれるだけ………きょうに……ァ…たたかれて気持ち…いぃ」 「あやあや……愛してる。 だから、あやあやはもう普通の女の子で、素直なおまえのままで良いんだ!! 無理しなくても………ずっとそのままでっ! 俺が――俺がずっとおまえは捕まえてるから、絶対に離れないからっ! ずっとずっと一緒だから!!!!!!! もう嫉妬しなくても、焼き餅焼かなくても、ずっとずっと」 「きょう、きょう………好き、好き、ずっと好き………なの………きょうが」 「ああ、ずっとずっと好きだ、ずっと前から好きだ(思いっきり強く抱きしめる)」 「あっ………あ゛ん……きょうに………きょうに抱きしめられてイ……ク…からァ わ、わたし……抱きしめられただけでイッちゃう………よ………きょう、イイ? きょう、きょう………わたし………イッって………イイ………?(昇天)」 五分後 「お兄さんの変態――女の子に暴力ふるうなんて最低ですっ!(抗議)」 「あ~あ、俺が許可してないのに、勝手にイッてさ。マジでガッカリだわ(冗談で)」 「ご、ごめんなさい、ごめんなさい―――えっ?てそんなっ、わたし?!(混乱)」 「おまえってキャラ変わったよな……?(驚愕)」 「っぅ………うっ、うるさい、うるさい、うるさい!! 変態、変態!やっぱり、あなたは―――最低最悪のDV男ですっ!!!」 「へいへい―――あっ、そうだ。 あやせの手錠姿も可愛いんだけどさ、日常でその姿って流石に不味いだろ? ………だからさ」 「可愛いとか言っても許さないんだから!フンっ、ぶち殺しますから――絶対に」 「ちょっと話、聞けってば(軽く尻に触れる)」 「きゃ、あん……ってちょっと……もう、バカ、でも……(心の迷路)」 「やれやれ………はい、これ―――おまえに似合うと思って買ってきた」 結構値の張った、アクセサリー 「これって――ネックレスと言うよりもチョーカーかな? ど、どうしていきなりプレゼントだなんて………も、物で釣ろうとしても 絶対にDVは許さないんだから必ずぶっ殺すんだから!!!(ジタバタ)」 「まぁ話を聞けってば(おもむろに尻を揉む)」 「あんっ………き、聞くから、聞くから辞めて…く……ださい(敏感)」 「さっきは素直なあやせでイイって言ったけどさ そんないきなり素直になれるもんでもないだろ? いや…どっちのあやせも本物で、俺はどっちのあやせも好きなんだが それだと今まで通りになっちゃうからな………」 「だから……?」 「手錠の代わりにこのチョーカーでおまえを受け止める! 普段はこれつけててヤンデレのあやせのままでイイから………」 「だっ、誰がヤンデレですか!?もう今からぶち殺しますよ!(憤慨)」 「そうそう、そういうおまえ………」 「なら………このチョーカー外したら?」 「別に今まで通りでも良いし、甘えたいなら思いっきり俺に甘えてくれてもイイ。 俺がおまえの為に変態にもなるし、出来るだけ何でもするぜ」 「分かりました。じゃ、きょう………わたしに付けてみて…ください」 「やっぱり似合ってるな。あやせ、本当に綺麗だ」 「お兄さん―――ふふ、処刑開始しましょうか? と言うかこんなもの付けさせて……本当は虐めて欲しかったじゃないですか? この変態(魅惑)」 「そうでもないけどな――あっ(ズボン)、(パンツまで降ろされる)」 「うわ………本当に引きます。 わたしのお尻叩きながら……出しちゃってたんですね。 どんだけ変態なんですか?目の前に本物があるのに……レロ(お掃除)」 「おまえが普通にしゃぶってるのってエロイよな? 髪かき上げながら必死にしかも自分の自宅だろ男連れ込んでさ どう考えても親引くだろ、これ(嘲)」 「あ~!今はわたしのターンなんだから! お兄さんは虐められて喘いでれば良いんです!じゃないと、 わたし……また意地悪―――(言いかけて辞める)」 「あやせは頭が良いもんな。おまえが嫉妬する気持ちは本当に分かるんだ。 でもさ、変な感じにならない様に俺が変態になるって決めたんだが………」 「……………お兄さん、わたし決めましたっ!」 「な、何を?」 「このまま、お兄さんに全部あげるつもりだったけど、それじゃやっぱりダメ なんだって………二人で儀式しましょう?」 「ぎ・し・き・?」 「そう――お兄さんがわたしを受け止めてくれたみたいに わたしもお兄さんに魔法をかけます。残酷だけど、優しい魔法………」 「……………」 「お兄さんが一生、わたしだけのものになる魔法。 二度とわたしが嫉妬してお兄さんを困らせないようにする魔法です。 だから―――あっ、レロ、ちゅ」 「(あやせの口を)、(口で塞ぐ)」 そんな都合の良い魔法なんてあるのだろうか? あやせが、その魔法を詠唱し終えた時――俺達はどうなるのだろうか? 期待と不安、でもそんな事はきっと知らない方がイイに決まってる。 あやせが二度とこんな事を口走らない様に 俺は何度でもあやせの口を塞がなければならない……………… もし自分が童貞の時に黒髪のモデルで、超が三桁くらいは付く美少女で 自分の事を死ぬほど(或いは殺したいほど)好いてくれる15歳の彼女が 居た場合はどう思うだろう? 多分、こちらがお願いすればどんな事でもしてくれるかも知れないが 単なる言いなりではなく、"怪しい魔法"まで使おうとする彼女が居たら………? 俺は―――― おわり
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1293190574/416-425 「何を見とれているのかしら」 玄関先で固まっている俺に黒猫はいつもの口調で言った。 寒空の中、大晦日も夜の十時半を過ぎたころ、玄関のベルが鳴ったので、 どうでもいいと思いつつ紅白をなんとは無しに眺めていた俺が玄関を開けると、 そこには綺麗な日本人形が立っていた。 いや、人形じゃない。 夜の黒に溶けるような黒い振袖。 その黒の中に、雪を冠した梅の花の柄が豪奢に流れている。 そして夜の闇に溶ける漆黒の艶やかな髪。 真っ直ぐ伸ばされた黒髪と、ほんのり薄紅色に火照った頬のコントラストは 思わず息を呑むほど美しかった。 まるで作りものみたいな。 でも、その生気は人形ではありえない艶をもっていた。 黒髪の襟元には白くてふわふわした、よくわかんないけど高級そうな襟巻。 帯は錦糸なのか絹なのか、妙にてかてかと光沢をもった、でも けっして安物ではなさそうな、そんな和装の美少女を目にしたら誰だって固まってしまうのも無理からぬ事だろ? 黒猫は言った。 「寒いわ、先輩。よろしければお家に入れてもらえないかしら?」 あ、ああ、もちろんだ。 「これは祖母の形見なの。自分で着付けをしてみたのは初めてなのだけど、 変ではないかしら?」 「変なことなんてあるもんか! その、すげえ綺麗だと思う。美人画みたいだって思ったくらいだ」 この時ほど現国を頑張っておけばよかったと思った時はない。 俺の情けない、ボキャブラリーのないアホみたいな褒め言葉じゃこの黒猫の姿の綺麗さ、美しさ、愛らしさを百分の一も表現しきれていない。 でもそんな稚拙すぎる俺の表現を聞いた黒猫はその薔薇色の頬の中の唇をほころばせて 嬉しそうに微笑んでる。 「な、何着飾っちゃってんのよ!?」 これは俺の後ろから現れた桐乃の叫び。 「あら、一緒に初詣に行く約束でしょう?」 と涼しい顔の黒猫。 「それって明日の事じゃん!?」 「新年の最初に詣でるから初詣と言うのよ。 その丸顔の中の脳はそんな事も知らないのかしら?」 桐乃が答えに窮していると、その後ろから母親が。 「お客様なの?どなたかしら」 そんな初対面の俺の母親に、黒猫は完璧な物腰でご挨拶をする。 「始めまして。夜分遅くに失礼します。私は桐乃さんの友人で、五更瑠璃と申します。 京介さんとはしばらく前からお付き合いさせて頂いてます」 と、和装の美少女が礼儀正しくご挨拶をしたらもう、うちの母親なんて 一発で攻略されてしまうのも無理からぬ事で。 「初詣のお誘いに来たのですが、桐乃さんと京介さんとご一緒に 二年詣りに参るお許しを頂けないでしょうか?」 「あらあらまあまあ」 そんなサザエさんでしか使わないような慌てた台詞で居間の父親に告げてる。 「あなた、京介の彼女さんがいらっしゃったのよ」 「そうか、では上がって頂きなさい」 ありがとうございます、という可愛らしい返事をして草履を脱ぐ黒猫。 見とれていた俺もはっと気付いて手を貸す。 きちんと脱いだ草履の向きを直した黒猫は、俺の手をとって立ち上がる。 そのとき黒猫の顔がすごく近くを通り、その形のよい唇にほのかに薄い赤い色の紅が乗っている事に気づく。 その唇に視線が吸い寄せられるのも自然すぎる事で、脛に桐乃のローキックが入らなかったら もしかしたらそのままキスしちゃってたかもしんない。 不服そうな桐乃をよそに、うちの居間のソファにちょこんと座ってる黒猫。 なんとも絵になるね。 母親は地に足が付かないくらい浮き足立ってて、変な質問ばかりしてる。 「お母さん!着付け手伝ってよ!」 二階から桐乃が母親を呼んでる。 「瑠璃ちゃん、うちの京介のいったい何処が気に入ったの?」 というアホな質問を投げかけていた母親がちょっと失礼するわね、と階段に消える。 「京介さんはとても妹思いで素敵なお兄さんですし、困ってる人を助けずにはいられない 優しさに惹かれました。気がついたら、好きになっていました」 そんないきさつ、俺も聞いたことねえよ! っていうか、親の前で真顔でそんな事言われたら照れるだろ! 黒猫、そういうのは二人きりのときに言ってくれ。頼むから! 「うちの愚息にはもったいないくらいの素晴らしいお嬢さんじゃないか。 瑠璃さん、不肖の息子ですがどうかよろしくお願いします」 わあ。父親は頭下げちゃってるよ! いたたまれない、父親と彼女との会話を横目で見つつも俺は黒猫にシグナルを送る。 頼 ?む ?か ?ら、 ?黙 ?っ ?て ?く ?れ そのメッセージに気付いたのか、黒猫は変な微笑みを浮かべながら、俺に言った。 「先輩? 先輩は今日のこの格好があまりお好みではないのかしら?」 酷い! 酷い黒猫! そんな事訊かれたら親の前でも言わなきゃいけなくなるじゃん! 「あ、あの、あんまり綺麗過ぎて、言葉になんないだけで、その、 すげえイイと思うぜ」 「すげえイイとはなんだ、京介! 折角瑠璃さんがこんな素敵な装いをして下さってるのに、 もっときちんと感想を言わないか」 ボスケテー!! なんで父親の前でそんな恥ずかしい真似をせにゃならんのだ! でもそう言えないのは父親には逆らえない悲しいところ。 「あ、あの、その、なんだ、くろ…じゃなかった、瑠璃…さんの、髪飾り、 黒猫の目みたいで、すげえ、じゃなくて、凄く、似合ってる、と思う…思います」 「ありがとう。…お父様、京介さんは口下手なところはあるけれど、 とても細かいところまで気がついて、優しい彼氏なんです。 言葉が足りなくても私の事をいつでも想ってくださってます」 親父! てめえ黒猫に「お父様」って呼ばれたとき一瞬鼻の下伸びただろ! 見逃さなかったからなチキショー! 黒猫も黒猫だ! いくらなんでもネコ被り過ぎだろ!! そう心の中だけで思ってると、騒々しい音が階段を降りてくる。 桐乃。 真っ赤な振袖はお前に似合ってるけど、だからと言って腰に両手を当てて俺を睥睨するように ガンを飛ばすのはどうかと思うぞ。 そんなこんなで、右腕に黒猫、左腕を桐乃に取られたまま初詣に出掛ける。 俺の頭越しに冷戦の火花が散ってるのは気のせいじゃないだろうな。 「奇襲でポイント稼いだつもり?ホント性格悪いったらありゃしないわよこの腹黒猫が!」 「あら、先輩はこの格好がいたくお気に入りのようだけど」 「ふん!たかが振袖くらいでいい気になるんじゃないわよ!」 「その明るい茶髪に赤の振袖はどうかと思うわよ。それに帯の位置が上過ぎる気がするわ」 「悪かったわね! 着物が似合うのは胴長で胸が小さいド日本人体型だけなんだから! どうせあんたみたいなナイ胸女だったら帯の位置がしっくりくるんでしょうけど」 「あら、言ってくれるわね? 言っておくけど、貴女の兄さんはこの胸の大きさが好きだ、って言ってくれたのよ?」 「はん! ?どうだか。コイツのベッドの下の本を見たことあるの?! 馬鹿みたいにでっかい おっぱいのグラビアばっかりなんだから!」 いつ見たんだ! って言うかそんなもん漁るんじゃない! 「どういう事かしら?」 俺の右腕に絡みついた黒猫から、なんとも言えない冷たい波動が伝わってくる。 「ち、違うんだ。アレは以前、赤城に貰ったモンで、お前と付き合い始める前にー「先週増えた雑誌もでかおっぱいの写真満載だったっけね~」 冷たい波動が三倍くらいの量で俺の右半身を凍らす。 「違うんだ、俺が好きなのは、俺が見たいと思ってるのは、 お前のおっぱいだけなんだ、信じてくれ、黒猫!!」 瞬時に凍てつく波動は消え去り、恥ずかしそうにふるふると震えてる黒猫の体温が俺の右半身を包む。 しかし、今度は左半身に焼け付くような怒りの放射熱が浴びせられる訳でーー どうすりゃいいんだ!? 京介が困惑したまま終わる つづかない
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http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1303394673/883-913 メールから始まった加奈子と俺の関係。 先日電話と言うもう一つのステップを踏み、 加奈子と俺の関係はこれ以上無いぐらいに進展したかに見えた。 ・・・だが。どうやら俺たちはもっと関係を近づけられるらしい。 あの電話があった日以来、俺たちは主にメール、たまに電話で連絡を取り合っていた。 その期間は決して長い物ではなかったが、お互いをより良く知るには充分だった。 今まで知らなかったことを知り、理解と仲を深めてきた俺たち。 もう俺の中では、ただの妹の友達ではなくなっているのかもしれない。 加奈子の仲の俺は、いったいなんなんだろう? アイツの仲では、友人の兄のままなのかもしれないな・・・。 と、こんな気の滅入る話はやめにしよう。 とにかく俺たちは、これからとんでもない関係の発展を遂げようとしている。 メールから電話と来たら、もう決まってるよな? ついでにこの話を持ちかけてきたのは、またまた加奈子からである。 場所は近所の街。 待ち合わせ時間は昼の1時。 そう、今回のイベントはデートである。 デートって言うのには語弊があるかな 別に両方が好き合ってるわけでもねーし。 ことの発端は昨日。 もはや恒例となったメールの中の一通に、こんな文字が並べられていた。 『そうなんだよなー(←前のメールの返信なのだ) てかさ、明日ってなんか予定入ってたりする?』 さすがに鈍い俺でも、ここでは何か勘が働いていた。 あぁ、恐らく明日は加奈子と行動することになるだろう、と。 ちなみに俺の予定は運良くその時点で空であった。 赤城を誘ってどこかへ行こうとも思っていたのだが、 女子中学生からお誘いがあったのでは、ヤツの存在は爪楊枝と同等になる。 その後、俺の予想通り加奈子からのお誘いがあり それを俺が承諾したことによって、加奈子と俺との初お出かけが決まったのだ。 そして今は朝の10時。 どんな服を着ていこうか鏡の前で試行錯誤したり 念のためデートプランを立てておいたり。 受験を間近に控えているとは思えぬ行動で時間を潰す俺。ちょっと痛い。 しかしちょっと時間が余ったな・・・。 よし、ここは受験生らしく勉強で時間を潰すか。 ・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・・・ なんだ、以外にに集中できるもんだな。 もっとデートの事にしか頭が回らないと思っていたんだが。 恐ろしいほど公式やらウンヌンカンヌンが頭に入ってきやがる。 なんでだろうな? アドレナリン?アドレナリンなのか? いつにない早さで俺はペンをノートの上に滑らせていた。 昼の一時まではまだ時間がある。 俺は部屋に掛かっている時計をチラッとみて、再び視線をノートに・・・ いや時間ねーよ!!?もう12時45分じゃねえか! やばい、非常にヤバイ。勉強に集中しすぎて、何の準備もしていない。 今から準備をして、時間に間に合うだろうか? ここから待ち合わせ場所までの距離は徒歩5分。それを走って2分と仮定しよう。 いや考えてる暇はない!最初のデートで遅刻はバッドエンド直行だ! そうして俺は、人生で一番早いと言っても過言ではない早さで、加奈子との集合場所に向かうのだった。 ****************************** 周りの空気を巻き込んで、俺は走っている。 加奈子からお誘いがあったってのに、勉強に没頭しすぎて遅刻しそうだったからだ。 家を出たのは12時55分ぐらいだった。ギリギリ間に合うか? よし、待ち合わせ場所に着いた。時間は12時58分。 時間的には間に合ったけど、もっと早く来るべきだったな・・・。 加奈子のヤツ、怒ってるかもしれない。 俺は慌てて加奈子の姿を探す。が、俺の探し人はすぐに見つかってはくれなかった。 場所を移動してみても、首を回してみても、身長の低い彼女は見つからない。 おかしいな・・・。待ち合わせ場所を間違えたか? とりあえず、もう少し探してみよう。もしかしたらアイツが遅れたのかもしれないし。 ――――15分後 いつまでたっても姿を見せない加奈子。もしかしたら加奈子の身に何かあったのかもしれない。 そんな不安が俺の脳をよぎり、電話でも掛けてみようかと迷いはじめたころ。 今回の待ち合わせ場所に向かって走ってくる小学生のような姿が見えた。 15分という心の準備をする時間があったにも関わらず、俺の心臓は今にも爆発しそうだ。 認めたくないけど、かなり緊張してしまっている。 そんな俺の緊張を知らない加奈子は、スピードを緩めることなく俺に向かってくる。 そして、俺と会話が出来る距離で立ち止まって、今にも倒れそうな声で 「ご、ごめん。待たせた?」 と、俺に問いかける。加奈子の声から感じ取れる反省の色に、 少し脳の奥底にあった怒りの感情は静かに消え失せていった。 「正直待ったけど、別に気にしてねーよ。ほれ、息整えろ。」 膝に手をついて息を切らしている加奈子は、俺に一言詫びて息を整えはじめる。 その間も俺の心臓はとんでもない鼓動の打ち方をしている。 それにしても・・・。メールや電話で話すのとは違う感じだな。 やり取りにはなれたつもりでいたが・・・それが今全く役に立っていない。 声だけを聞くのと顔をみながら声を聞くのは大違いだ。 「ふぅ。もう大丈夫。ワリー、遅れちまって。」 「さっきも言ったろ気にしてねーって。」 第一俺も遅刻しかけたしな。内緒にしておくけど。 でも何で遅刻したんだ?この時間なら寝坊ってわけでもないだろう。 「どんな服着ていこうか迷ってたら、いつの間にか時間が過ぎてて、 もうスッゲー慌てて来たの。加奈子から誘ったのに遅刻はヤバイからナ」 まるで俺の心を読んだかのような話題だった。 それにしても、俺と同じようなことしてんだな、こいつ。 俺と会うだけなのに服に悩んだりして・・・。 「じゃあ、とりあえず行くか。どこ行くか決まってんのか?」 「うん。とりあえず、加奈子の買い物に付き合えヨ。」 「・・・よし、そうすっか。」 本当にこいつは、桐乃みたいなやつだな。 可愛い顔して俺を荷物もち程度につれまわしやがって・・・。 「なんだ?今日俺は荷物持ちとして同行させられてんのか?」 「まあそれもあるけど。一人より二人の方が楽しいっショ?」 それは俺がついていかなくても桐乃達を誘えばよいのでは・・・。 そんな質問が思いついたが口に出さなかった。 そして今、俺たちは隣に座り合って電車に揺られている。 今回の目的地は駅二つ分ぐらい離れた割と近くの街だ。 近いとは言え、こいつの隣に座るのは緊張するな・・・。 今は席が詰まっているので、左に加奈子右に知らないおじさんという状況だ。 知らないおじさんに身体を密着させるのは気が引けるので、どっちかというと加奈子寄りに座っている。 そんな状況だから、腕に加奈子の感触があるわけですよ。 女子中学生独特の鼻につく甘い匂いと、加奈子の腕の感触がお互いを高めあって 俺の理性をぶっ壊そうとしてきやがる。恐ろしい娘! 俺が理性を保つことに奮闘していると、腕に伝わる加奈子の感触が急に強くなった。 慌てて左に目をやると、なんと加奈子は俺に身体を預けて駅前で買った雑誌を読んでいたがる! も、もう勘弁してくれ・・・。自分が自分でなくなっちまうみたいだ。 そもそもお前は男に対してそんなに無防備でいいのか?男慣れしてんのか? 。男慣れといえば、加奈子って彼氏出来たことあんのかな? この前は俺の彼女の話で終わっちまったから分からなかったけど・・・。 考え出すと気になるな。聞いてみるか。 「なあ、加奈子。」 「んー?どうしたー?」 雑誌から目を離さず俺に応える加奈子。電車内なので双方ちょっと小声だ。 「お前ってさ、彼氏とかできたことあんの?」 「はあ?ねーよ、そんなん。でも出来ねーわけじゃねえよ?」 まあ、それもそうだろう。 加奈子も一般人から見たらかなり可愛いほうだしな。 桐乃と同様、作ろうと思えばいつでも彼氏を作れる状況にいたっておかしくない。 「ただ、周りに加奈子に相応しい男がいねーだけで。同い年はガキくせーし。」 周りって言うと、クラスの男子とかそんなんだろうか? 桐乃と同じでやっぱこのぐらいの年頃だと、年上に興味を持っちゃうんだな。 「でもお前、前にナンパ待ちしてたって言ってなかったか?」 「あんなん食いモン奢らせるために待ってたに決まってんだろうがヨ。 知りもしないヤツの女になるなんてサラサラごめんだね。」 そこで加奈子は初めて雑誌から目を離し、俺の方を見る。 そして口角をニヤッと上げたかと思えば、こう続けた。 「なに何~?オメーもしかして嫉妬でもしてんの~?」 「バッ!別にそんなんじゃねーよ!」 「ふーん。じゃあそういうことにしといてやんよ。」 で、また雑誌に目をやる、と。 なんだかこいつ俺の扱いに慣れてね?まるで桐乃みたいな・・・。 「おいおい、女の子と二人の時は別の女のこと考えんなヨ。」 「お、オイお前!人の心を勝手に読むな!」 「いや、思いっきり口から出てたじゃネーか。」 どうも俺は心の内を隠すのが度へタみたいだな。 これはもしかして加奈子の好感度下げちゃった? そんなエロゲー脳を働かせていると、電車が俺たちの目的地で停まった。 どちらが声をかけるわけでもなく、俺たちはほぼ同じタイミングで席を立ち電車を降りる。 さて、こっからが本番だ。 せいぜいお姫様のお使いを真っ当するとしますか。 ********** おれは今、某ファッションショップにいる。 俺は桐乃と違いファッションセンスもないし、男だし。 ここでは多分こいつの役にたつことなんてできないだろう。 と、加奈子い言ったところ 『オメーにファッションセンスなんて期待してねーヨ。 ただ、一般男子としての感想を聞きたいってだけ。』 ってことなんだそうだ。 一般男子て。俺なんか所詮「可愛い」とか「似合う」とかしか言えねーぜ? それでもいいんならそれでいいけどさ。 で、俺は今試着室の横で加奈子の帰りを待っている。 女物しか置いていない場所の試着室横で、な。 きっと変態にしか見えないだろう。しょうがねえよ。変態だもん。 「ン、選んできたぜ。覗くんじゃネーからな!」 数着の服を手に提げた加奈子のおかえりだ。 俺はこれからこの服を着た加奈子の評価をすればいいらしい。 加奈子のことだから大丈夫だろうけど、もし圧倒的に似合わなかったらどうしよう。 正直に似合わないって言ったほうがいいのかな? 桐乃の時はこんな心配しなくて良かったのに・・・。女の子と出かけるのって、思ってたより辛い。 「お待たせ。ど、どうよコレ」 ・・・俺の心配は、無駄だったみたいだな。 正直に言おう、超可愛い。 俺はファッションに詳しくないから、アレがこうだとは言えないけど。 見えてるままに言うと、超可愛い。 「ど、どう?もしかして似合ってなかった・・・?」 「い、いやいや!超似合ってる!超可愛い!」 むう、いつもとのイメージの違いに唖然としてしまった。 俺はファッションに詳しくないので、 でにむとか、ぱーかーとかそんなんは分かんねーけど とりあえず似合っている、それは確実に本音だ。 誰かこれを絵にしてくれないだろうか・・・。 「そ、そう。まあ、当たり前だけどな!」 そんな口を叩きながら無い胸を撫で下ろす加奈子。 コイツも、もし似合わないって言われたらどうしようって思ってたのか? ・・・俺が思ったよりも可愛いところがあるやつなんだな。 ******************* その後、服を購入した俺たちは店を出る。 もちろん、先ほどの服が入った袋は俺の腕にさがっているが。 「で、次はどこ行くか決まってんのか?」 「ぶっちゃけさ~、急いできたから加奈子昼飯食ってないんだよね~。」 そういえば、俺も昼飯食ってなかった。 「俺も昼飯がまだなんだ。なんなら今から食いに行くか?」 「あ、いいの?じゃあそうしようぜ!」 てなわけで、次の俺たちのイベントは『一緒にご飯を食べる』になった 「決まったのはいいけど・・・。どこに食いに行くんだ?」 「京介はどっか行きたい所とかねーの?」 「特に無いな。お前はどっかないのか?」 加奈子は俺の問いに、少し考えて答える。 「あるっちゃああるけど・・・」 「じゃあ俺はそこでいいよ。あ、でも高級レストランとかはやめろよ?」 「そんなんじゃねーって。あそこなんだけど。」 加奈子は俺たちから向かって右側にある店を指差す。 なんだあれ・・・。カフェにしては外観が和風な・・・。 でもまあ、予想外の展開が無い限り大丈夫だろう。あそこにするか。 「お前が行きたいんなら、あそこにしようぜ。」 「マジで?あ、ありがとうな」 加奈子から素直にお礼が飛んでくる。 初めて会ったときに比べて、なんか反応が変わってきているのは気のせいだろうか。 なーんて疑問を抱きながらも、俺は加奈子が行きたいと言う店に向かうのであった。 「「「よく参られました、殿、姫。」」」 よ、予想外の展開キターーー! なんだ此処は! 店員が全員忍者の格好をしていて、男を「殿」女を「姫」と呼ぶ きわめて異例な状況だ。こんなカフェが京都四条以外に存在しているとは・・・。 「いやー。この忍者カフェ、一回入ってみたかったんだよねー。」 「入ってみたかったって・・・。ここ案外高級そうだぞ?」 「だーいじょぶだいじょぶ。入ってみたかっただけで量は食べないから。」 本当だろうな・・・。 「とりあえずなんか頼もうぜ。加奈子、スーパー腹減ってんだよね。」 「お前、さっき服買ってあんまり持ち合わせないだろ?食事代ぐらいだしてやるから、なんか頼めよ」 「え、いや悪いってそれは・・・。」 一応拒否するんだな。こう言う所以外としっかりしてるな、コイツ。 でも俺がお代持つって言ってるんだから、この厚意ぐらい受け取ってくれないかな。 「いいからいいから。」 「・・・。そっか。これ断ったら京介の顔がねーもんな。お言葉に甘えさしてもらうよ。」 コイツと関わり出してからと言うもの、何度か加奈子に心を読まれているかのような出来事が起こっている。 今回もそうだ。なんだってコイツはこんなに人の気持ちを理解できるんだろうか。 俺たちは各自頼みたい物を頼み、料理が来るのを待っている。 待っている間、加奈子にこんなことを聞かれた。 「つーか、オメー本当に今まで一人、しかも2,3週間しか女と付き合ったこと無いの?」 「あん?ねーけど・・・。なんでだよ?」 「いや、やけに勘が言いというか・・・。こう、行動が女の子の心を刺激すんだよね。」 なんか、デジャヴ。 黒猫とデートをしたときも、こんなことを言われた気がする。 俺としては、やりたいことをやってるだけなんだがな。相手が女の子だと下心も1割ぐらいあっけど。 「別に、俺は思ったことをやってるだけだよ。相手が男でも、な」 俺が夏休み中、御鏡にしてやったように。 「ホモ?」 「違う!」 瀬菜と離れてるときぐらい、俺をホモにするのはやめてくれ・・・。 「ほんと、お人よしだな。京介って。人に世話してないと生きていけないタイプ?」 「はは、そうかもしんねーな。」 こいつとの会話にも、大分慣れてきたもんだ。 この雑談で時間を潰したからか、料理は思ったよりも早く俺らの元に届いた。 「いただきますっと。」 「健やかに食べたまへ、加奈子君。」 冗談を交わしつつ、俺たちは食事を口に運ぶ。 ここで一つ驚いたことがある。加奈子、食うペース速すぎ。 俺の一口と加奈子の二口のペースはほぼ比例しているといってもいいだろう。 「お前な・・・。女の子なんだからもっとおしとやかに食べられないのか?」 「ん?べも、あんばびびらば・・・」 「口に物を入れながら喋るなよ。せめて飲み込んでから・・・」 「でも、あんまり知らない人の前ではちゃんとゆっくり食べてんだぜ?」 飲み込むのも早いんだな。サイヤ人かコイツは。 「目の前にいるのが京介だからな。気が緩むと、食べ方が汚くなっちゃうんだよね。」 「桐乃にもよく、注意されちまうんだけど・・・。そんなに汚い?」 「正直、女の子っぽくねーよ。」 それにしても、もう俺には気を許してくれてるんだな。 それはそれで、悪い気は全くしないんだけど。 「でもしょうがねーだろ?これが加奈子なんだもん。」 「まあ、無理して自分らしさを消しちまうよりかはいいんだろうけどさ・・・」 「じゃあ、いーじゃん!モグモグ」 はあ、全く。 結局その後も加奈子の食べるペースは変わらず 俺の2倍ぐらい量を食べていた加奈子と俺が間食した時間が同じなんていう 奇天烈なことが起こったりしたな。こんなに食ってるから腹がぷにぷになんじゃねーの? 「ふー。お腹一杯。あ、ごちそうさま~」 「はいはい、お粗末さまでした。」 俺が作ったわけじゃないけど、なんだか気分でそう返す。 加奈子が店を出て、俺はレジに向かい代金を払う。 「合計で21000円になります。」 。ホーリーシット! 加奈子のヤツ・・・どんだけ食うんだよ! これじゃ高級レストランと変わらんじゃないか。 俺の財布は、今日からものすごく寒くなりそうだ。 お財布から逃げていったお金に未練を抱きながら、俺は店を出た。 ************ 「はぁ~、おいしかったぁ!また行きてーな。」 「今度は、桐乃達と行くとか、いいとおもうぞ。」 俺の財布にはとっても良くないから。 遅めの昼食をとった俺たち。時刻は3時30分。 「よし、次はどこ行くか決まってんのか?」 「そうだなァ、次は・・・」 加奈子が次の目的を口にしようとしたとき、 明らかに運転がヘタクソなバイク(ペーパードライバーか?) が俺たちに向かって走ってくる。 なんか怖いな。俺たちの前でバランスを崩されでもしたら・・・。 「加奈子。あのバイクに気をつけ――って!」 早速バランスを崩しやがった! ハンドルにそんな荷物掛けるからだよバカ! 「あ、あわわっ!」 「か、加奈子!危ないっ!」 俺は加奈子の服を地面に置き、加奈子をかばいに入る。 そして、身体に衝撃が走った。 ************ 「ご、ごめんなさい!大丈夫でしたか?運転に不慣れなもので・・・。」 「クソドライバー!オメー、前から人が来てんだから気をつけろってんだ!」 「・・・京介? だ、大丈夫?」 「あ、ああ。なんとか大丈夫だ。」 今のは死ぬかと思った。 向かってきたバイクから加奈子を守るため、俺は加奈子に体当たりにも似た回避高度をとらせ、 なんとかバイクを避けた後、地面に叩きつけられた。超痛い。 「大丈夫ですか!?すいません、運転にはまだ慣れてなく・・・て?」 「いや、大丈夫ですよ。こちらの不注意でもあった・・・し?」 沈黙。 「あ、赤城ィィィィィィィィィィ!」 「こ、高坂ァァァァァァァァァァ!」 なんと諸悪の根源は友人、赤城浩平だった! そりゃあ運転下手だわな!夏休みに免許とったばっかだもん! 「何?京介?知り合いだったの?」 「ああ、ゴッテゴテの知り合いだ。気を遣って大丈夫だって言ったのが勿体ねーや。」 「そう・・・。それはいいけど、さ。」 「ん?どうした?」 何で顔赤らめてんの?どっか痛めたか? 「あのサ・・・出来れば。は、早くどいてくんね?恥ずかしいし。」 「え?」 え? ・・・えええええええ!? オーマイガッ!俺はなんてことを! 簡単に説明しよう、加奈子に体当たりしたままの体制である俺は 今現在加奈子に覆いかぶさるような体制になってしまっていた。 「わ、悪い!すぐどく!」 俺はすばやく加奈子の上から飛び退く。 「まじでスマン!本当に故意じゃなかったんだ!」 「わ、わかってるっつーの。別に気にしてないし。」 照れ隠しも入って、俺たちはすばやく立ち上がる。 が、立ち上がった瞬間俺の右足に痛みが走る。 「痛ってて・・・。」 「おい、大丈夫か高坂」 「大丈夫だけど、忘れるなよ?お前のせいだぞ?」 迷惑なヤツだぜ全く。 「京介、本当に大丈夫なのかヨ?」 「まあ歩くのに支障は無いけど、長時間歩くのはきついかな。」 「・・・はあ、しょうがネーな。今から京介の家戻るか。そんな足じゃデートってわけにもいかねーし。」 え?俺の家?加奈子が? ・・・。まずいぞ、今日は桐乃が家に・・・。 「もしもし、桐乃?オメーの兄貴が怪我したから、送り届けるわ。うん」 行動が早い!しかも桐乃にデートの件は隠さないのかよ! 電話で口論になるのでは・・・と思ったのだが。加奈子はすぐに電話を切る。 「じゃ、行くぞ。」 「き、桐乃はなんて?」 「ぶぇーつに?待ってるって言ってたよ。」 あれ、案外普通なんだな・・・。 油断は出来ないけど、とりあえず今は加奈子の言葉に甘えよう。 「じゃあ、言葉に甘えて一旦家に戻ることにするよ。」 「じその荷物は俺が高坂の家まで持っていくよ。家の前でまってるからな」 「ああ、悪い。帰りにまた事故起こすんじゃねーぞ?」 「大丈夫だよ。そもそもさっきの事故は、瀬菜ちゃんのホモゲーをハンドルに掛けてたのが原因だからな。」 赤城は「同じ間違いは二度と犯さん。」と言って荷物を二台に乗せて走っていった。 運動神経はいいほうなのに、バイクの運転はさっぱりなんだな。 こんなんならラブドール買っといたほうがよかったんじゃねーの? 「じゃ、行くか。歩ける?」 「歩くくらいなら大丈夫だって。それに、お前に肩を貸してもらうわけにもいかないだろ。」 「それもそうだなー。とりあえず、電車乗るか。」 俺たちは行き道に乗った電車に乗り、俺ん家から最寄の駅に向かう。 行き道はあんなにオロオロしていた電車の中も、今となっては心地いい。 「なあ、京介、ありがとうな。」 「ん?それはなんのお礼だ?」 「助けてくれたことの、お礼。京介が加奈子に体当たりしてくれなかったら、 バイクが加奈子に直撃してたかもしれないじゃん。それに足まで痛めて・・・」 「別にいいよ。足なんてかすり傷程度だしな。」 「それに、目の前で大切な物が傷つくのを見るのに比べたら、なんてことねーよ。」 そこで加奈子は顔を赤らめてうつむいてしまった。 やっぱりちょっとキザ過ぎたかな? 「この、乙女心殺しめ。」 そんな加奈子の声と同時に、電車は目的の駅へ到着する。 「ああ、帰ってきた。3時間の旅を終えてマイタウンへ帰ってきたんだ。」 「はいはい、馬鹿なこといってねーで京介ん家行くぞ!」 加奈子にあしらわれるだと・・・? **************** それから、家の前で瀬菜と電話をしながら俺たちを待っていた赤城と合流し、家へ入る。 さて、どう出る・・・。我が家の隠れた悪魔(桐乃な)! かなり身構えてドアを開けた俺だったが、俺を出迎えたのはお袋だった。 「た、ただいま」 「おかえり、京介・・・アンタ、どうしたの?車にでも轢かれた?」 「そんなんじゃ足引きずるだけですまねーよ!?色々あってな。」 どうして家の女共は 怪我=交通事故 なんだよ? いや、今回はあながち間違ってないけども! むしろ轢かれればいいのにってこと?そうなのか?泣くよ俺? 「「おじゃまします。」」 「あらあら、浩平君と加奈子ちゃんじゃない。今日はまた変わったメンバーね?」 「加奈子ちゃんは桐乃に用事?なら二階に―」 「い、いえ。今日は京介君に用がありまして。」 「あらそう?なら、京介の部屋は桐乃の部屋の隣よ。どうぞ上がって。」 お袋、赤城にも構ってやってくれ。 いやまあ小学校からの付き合いだから当たり前みたいになってるのは分かるけども。 加奈子だけに絡んでニヤニヤしながら俺を見るのはやめてくれ! 「はあ、全くお袋のやつ・・・」 「とりあえず、部屋に上がろう。話はそれからだ。な?高坂。」 「赤城、なぜお前が仕切る!」 コイツ・・・友人をバイクで撥ねかけといて、図々しいやつだ。 「あ、加奈子。やっと来たんだね。」 ら、ラスボスが出やがった! 「ヨ、桐乃。悪いな、急に着ちまって。」 「いいのいいの、加奈子とせなちーのお兄さんは兄貴をつれてきてくれたんだから。」 「ま、とりあえず兄貴の部屋に上がってよ。ここの階段上がったとことだし。」 おい、俺の部屋は公衆トイレか? 鍵が無いとは言えフリーすぎるだろ。 桐乃と加奈子、俺と赤城が別々に話しながら階段を上る。 そして4人で(人口密度が高いが)俺の部屋へ入り、一息。 「ここが京介の部屋ねー。やっぱ想像通り地味だな。」 「るっせーよ。いいだろ、別に。」 にして、デートから部屋へ上げるのは間隔が開くもんだと思ってたが、まさかの一日で両方を済ませてしまうとはな。 「じゃあ、兄貴は怪我の手当てするからリビング来て。」 「別にいいよ。大した怪我でもねーし。」 「いーいーかーらー!早く来る!」 俺は桐乃に引っ張られて部屋を出る。 痛い、足痛いって! 「桐乃、加奈子も行こうか?」 「いいよ、すぐ終わるから。」 そう言って加奈子を部屋に残す。 まて、俺と桐乃が抜けたら部屋に残るのは赤城と加奈子・・・。 スーパー接点のない2人の気まずい空気が流れてしまう! 許せ、加奈子。すぐ戻るから。 「はい、そこのソファに座って。」 ここ最近で妹に2回怪我の治療を受けている。なんだこの状況は。 妹の手荒な治療に俺が悶絶していると、桐乃は俺の足にクルクル包帯を巻きながらこう聞いてきた。 「ねえ・・・。アンタ今日加奈子とデートしてたんでしょ?」 「べ、別にデートとかそんなんじゃねえよ!」 「でも加奈子からはデートって聞いたモン。」 加奈子のヤツ・・・。 電話で桐乃と俺の話したじゃん! 「デートに付き合うくらいなら、もしかしてアンタ加奈子のこと好きなの?」 「・・・。」 どうなんだろうな? ここ最近加奈子と関わってきて、俺の気持ちに変化があるのは分かっていた。 でもこれは好きっていう感情なんだろうか。黒猫へ向けていた感情とはまた別の感情。 それは恐らく、スタート地点の違いからだろう。 黒猫の場合元々俺とも直接つながりを持った人間だが、加奈子は違う。 あくまで始まりは桐乃とあやせからのつながりだ。 どうして、こんなに迷っちまうんだろう。 多分、大切妹の友達って言うイメージを消しきれていないからだ。 妹の嫉妬心を知ってしまった以上、妹の友達を好きになるのは抵抗がある。 ・・・はあ、俺って本当に最低な人間なんだな。人一人を素直に愛せないなんて。 「そんなに悩むならいいよ。」 妹に呆れられてしまった。 そりゃそうだろうな、こんな兄貴だもん。でも・・・ 「もし、俺が加奈子のことを好きになったとして。お前はどう思うんだ?」 「そんなん、決まってるじゃん。黒猫の時と一緒だよ。」 「アタシはアンタの一番でいたい。だから遠慮せずアンタの恋を邪魔する。」 「おまっ!それは卑怯だろうが!」 「卑怯なんてないもーん。アタシの好きな人が他にいないのに、アンタだけ出来るとかありえないし。」 全く・・・当分俺の恋愛は上手く行かなさそうだな。 「でも、加奈子がアンタのこと好きってなら、形だけでも受け止めるしかないよね。」 「お前は、それでいいのか?」 「よくない、良くないよ。でもしょうがないでしょ?」 そういって笑う妹は、どこか儚げで・・・。 思わず見とれてしまいそうだったが、その顔に加奈子が被ってすぐ消える。 恐らく加奈子は、桐乃の言うとおり俺に好意を抱いている。これはさすがに俺でもわかる。 ここで俺が桐乃を選んでしまったら・・・。加奈子に同じ表情をさせてしまうだろう。 俺はどっちにもそんな表情をして欲しくはないんだ。 どうすれば、二人ともいつまでもわらっていられるんだろう。 つーか俺なんでこんなこと考えてんの? ・・・。 それは多分、俺が加奈子のことを 「ハイ、治療お終い!」 バッシーン! 桐乃が俺の患部を思い切り叩いた。 「痛ってえ!お前、二回目だぞ!」 「気にしない!ホラ、アンタの部屋戻るよ。」 そうだ、忘れてた。俺の部屋に流れているであろう気まずい空気を早く解かねば。 俺は桐乃と並んで、階段を上がる。ちょっと足痛い。 そして、部屋のドアノブに手をかけたとき、こんな会話が耳に入ってきた。 「う、うわ!本当に眼鏡ばっかり。京介、こういう趣味だったんだ。」 「だから言ったろ?高坂の趣味は偏ってるんだよ。」 「えーと、俺が金を出したAVは・・・お、コレだ。」 気まずい空気は流れていないが、他の空気が流れている気がする。 恐らく、今は俺の秘めたる部分が今あらわになっているんだろう。 ハッハッハ!そんなことをしたって俺がとる行動は決まってるぜ? 俺はドアを開け放って、こう叫ぶ。 「お願いします。返してください!」 もちろん頭を床にこすりつけながら、な。 ********** 結局その後、コレクションを取り返した俺は部屋で皆と一服している。 桐乃のプリクラだけ他の場所に移しておいてよかった・・・。 「じゃあ、俺は帰るわ。高坂、早く怪我治せよ。」 「おう。怪我させたのはお前だけどな。」 俺たちは挨拶を交し合う。そして赤城が俺の部屋からいなくなる。 現在俺の部屋には、見た目が超可愛い中学生が2人いる。 なんだこの状況は・・・。 「アタシお菓子持ってくるから、ちょっと待ってて。」 次は桐乃が退室。 現在超可愛い中学生が隣に一人。 距離が近い。っていうか、腕当たってる。 こいつ、電車と違って広いのに何でこんなに密着してくるんだ・・・。 で、目が合う。 ・・・。 ・・・・・。 目を見詰め合ったまま、沈黙が耳元で騒ぐ。 何だこの間。ターニングポイント? いつのまにか手が当たってるんだけど! ここはもう・・・行くしかないのか! 「加奈子」「京介」 oh... まさかの相打ちだと!? 「ど、どうした?」 「京介こそ。」 そしてまた沈黙が訪れる。 なれたはずだった加奈子との間に気まずい空気が流れる。 そこでタイムアップ。桐乃が入室。 「ごめん、待った?」 「べ、別にまってねーヨ。」 「そ?じゃ、遠慮なく食べてね。」 桐乃はそういうと携帯を弄くりだす。 それにしてもさっきの状況はなんだったんだろう。 もしかして何もしなかったのはまずかったか? 早くも先ほどのことを後悔していると、俺の携帯にメールが届いた。 『From,桐乃 この、意気地なし!』 全く、コイツには頭が上がらないよ。 俺はこれからのことを考え、加奈子は食い、桐乃は呆れる状況がしばらく続いた頃、 「じゃあ加奈子も帰るわ。京介、今日はありがとうな。」 長かった今日のデートが終わろうとしていた。 「そ、そうか。じゃあ玄関まで見送るよ。」 「いいっていいって。足怪我してんだし、桐乃だけで充分。」 「アタシは強制なんだね・・・。」 「じゃあな、京介。またいつか。」 そういって加奈子は俺の部屋から出て行った。 なんだろう、この全てを失ったような感じは。 おそらくこれからもメール等で連絡は取れるだろう。 でも、今日の昼からずっと視界の中にいた加奈子が視界から消えると胸に寂寥感が襲ってきちまうんだ。 ずっと傍にいてほしい。ずっと声を聞かせて欲しい。 こんなことを思うのは、多分。いやきっと。 ―――俺が加奈子のことを、好きになってしまったからだ。 「さーて・・・。これからどうすっかな」 芽生えた自分の気持ちに気付いた俺は、これからのことを考える。 桐乃も加奈子も、強いて言えば黒猫も幸せにしてやりたい。 でも俺はその中の一人を好きになってしまった。 加奈子が残していったもの。 それは身体のところどころに残っている加奈子の感触と 俺の脳内へ残ったモヤモヤだった。 この後俺は、どうすればいいんだろうか。 ベットに寝転がって天上を見ながら考える。 みんなの幸せを、なんて欲張りを言ってる場合じゃないんだ。 それでも・・・ 「答えなんて・・・。一つしかねーやな。」 俺は最後に残った加奈子の手の感触を、強く握り締めた―――