約 2,471,764 件
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/666.html
369 名前: ◆36m41V4qpU [sage] 投稿日: 2013/04/16(火) 俺の妹である桐乃がエロアニメのDVDを偶然落っことしたのが、 俺が経験した一連の物語が始まるキッカケだった。 あれから俺の人生、エロアニメやらエロゲー抜きには語れない っつっても 過言じゃない(のかも知れない) そう―――今の俺がこんな風に存在するのも (幾分大げさな言い方を許して貰えるなら) エロゲーやらアニメとは切っても切れないと思うのだ。 それは、妹やヲタ関係で知り合った仲間だけの話ではない。 俺の彼女『あやせ』とも少なからず 『エロアニメ・ゲーム』には因縁めいたモノ を感じざるを得ないのだ。 何故なら、俺とあやせの関係を確実に変化させたキッカケは やっぱり『エロアニメ・ゲーム』だったから。 あのコミケの時に偶然出会わなければ、今の俺らは居なかったと思う。 そして、その影響は今も……………… 「この浮気者っ!!!!」 「いやだからな、あやせたん―――俺の話をちょっと聞いてくれ」 「問答無用っ! わ、わたしの身体を弄んだ癖にっ! あ、あんなコトや―――そ、そんなコトまでさせてた癖にッ! こんな身体にした癖に――こんなわ・た・し・させた癖にぃい!!!」 「いや――いや、あやせ自身心と身体は歓喜してた………よ?結構」 「強姦は親告罪 強姦は親告罪 強姦は親告罪(15回連続)」 「ま、待て 待て!だからご、合意の上だっただろ?」 「た、例え………法には問えなくたって、 あなたを社会的に抹殺することは出来るンですからっ!」 「ちょっとだから話を聞け」 俺はあやせに首に装備されている ―――例の"チョーカー"に指を触れると、更に軽く引っ張った。 「わ、わたしがドMだから、また強引にお尻叩いて言いなりにさせるのね どうせ、またいじわるするんだ――性的虐待するつもりなんだ、へ、変態!」 なんつー恐ろしい台詞を言う様になったんだ、俺の彼女は としかし罵詈雑言を爆発させてるのに ―――あやせはチョーカーを自分で外す いい加減、俺も気付き始める(と言うか流石に色々学んだ) 例えば―――俺らみたいに彼氏彼女が喧嘩し始めるとする。 そういう時は(主に)女の子の方から、仲直りのキッカケになる 分かり易いサインらしき"何か"を出してるもんなのだ。 それをスルーしなきゃ、大事にはならない。 「んじゃ――ご希望通りぶっ叩くから、こっちに来いよ」 「ふんっ、す、好きにすればイイじゃない ――わたしに拒否権なんて無いんでしょ!」 あの日(あれから結構時間が経ったと思うが)から、 あやせは時々敬語をやめて、俺とタメ口で話す様になった で、ついでに――― 「京介のサディスト、DV男、リョナ族、本物の鬼畜」 ―――みたく俺のコトを『京介』って呼び捨てにするようになった。 こういう状況じゃなきゃ、あやせの言葉の響きに浸って居られるのだが、 今は流石にそういう場合ではない。 あやせは俺を罵倒しながら、(その言葉に大いに矛盾して)行動では 俺の膝の上に自ら乗っかった。 しかもご丁寧な事に わざわざ俺があやせの尻を叩きやすい様に もしくは、これ見よがしに自分の形の良い尻を思いっきり突き出す。 でも俺はもちろん叩いたりはしない(一回ゆっくり撫でたけど) そのままあやせを―――俺の太ももに、乗せたまま起きあがらせて あやせの黒髪を、左右・両方・横から・優しく撫でてやった。 ―――これが俺の彼女の最近のお気に入りらしい (エッチモードが発動する時は、大抵このパターンからの始動が多い) そして俺はこの状況であやせの目を、しっかり見つめて話し始める 「ゲームはゲーム、現実は現実だぞ? 全く別モノなんだから、ごっちゃにするなよな。 現実の彼女が、二次のゲームにそんなに目くじら立てないでくれよ?」 「普通のゲームならまだ許せるけど――認められるけど だからって、何でエッチなゲームを わたしが認めなくちゃ、いけない(んです)のよッ?!!」 説明しよう――― 『もっとっ ラブ×2★ラブタッチ』 俺らが喧嘩する元凶になったゲームソフト 前回の『ラブタッチ』から満を持して発売されたのだが、続編で まさかの全年齢版から、敢えて成人指定版へパワーアップしたのが 『もっとっ ラブ×2★ラブタッチ』なのである。 ―――俺は例によって桐乃のお勧めでプレイしようしていた のだが……………… それはさておき、本当に中の人(声)が同じだったら、 俺だって絶対に買うと思うほど、前のソフトに俺はハマった。 確か前は、桐乃とあやせを仲直りさせようとしていたが 今は俺の彼女あやせたんが、烈火の如くプリプリ怒ってるわけだ 「なぁ………あやせたんさァ あんまし嫉妬深いってのも、彼氏から言わせて貰うと 彼女としてどうかと思うんだけどな」 「ふんっ!(プイ)」 あやせが思いっきり右に顔を逸らしたので、 また両サイドの髪を撫でて、正面に視線を合わせようとすると――― 「べー(ぷい)」 ―――舌を出して、今度は左を向いて避けられた。 「あのね、ゲームやアニメは俺の妹や俺の友達との大切な絆なんだ。 あやせも知ってるだろうけど、俺は親父と殴り合っても認めさせたんだぜ? だから全部が――全部、いかがわしいモノじゃねぇんだ。 も、もちろん、別におまえも好きになれとは言わないけどさ」 「…………」 「それに自慢じゃねぇが、桐乃に勧められてやったゲームやアニメを オカズにソロプレイなんてしたことはないぞ! ジャパニメーションはもっと高貴で神聖、セレスティアルでディグニティなんだ。 エロゲーとアニメは文化なんだ――ミームなんだよ、あやせ」 俺は声を大にして言った。 なぜならば、この点が曖昧だったり少しでも疑われたりすれば ―――どう考えても、問題が解決する可能性は一㍉も残らないからだ。 「何をカッコつけてるンです? 京介さ(ん)のオカズは、眼鏡・巨乳のエッチなDVDと本だっただけでしょう」 「だから………約束通り処分しただろ?」 「………」 「俺が約束破って、エロDVDやネットのエロサイトを閲覧してたか?」 大学生にもなって自分のパソコンを フィルタリングされている男 一人暮らしの部屋のベットの下の 段ボールには何も入ってない男 俺の名は――高坂京介 「そ、それは………そうだけど」 俺の説得がどうやら功を奏したらしい。 そりゃそうだろう ―――あやせは自分でドMで俺の良いなりと言った。 でもそれを言うなら、俺も負けず劣らずあやせの言いなりなんだ。 俺らのS気とM気ってお互いに多分、絶妙に方向が違うだけなんだな。 (だからきっと相性が良くて上手く行く(と俺は信じてる)) 「だったら良いよな?」 「もうっ………か、勝手にすればいいよっ!」 「ありがとう、あやせたん」 あやせの気が変わらない内に、さっさと電源オン 「ぐ………うぅうぅぅ」 「おまえ、なんつー顔してるんだよ?!」 「………………イヤ、イヤ、イ ヤ」 「あの………?」 「わたしのコトは気にしないで、好きにやってっ!」 好きにやれと言われてるのに、 あやせのもの凄い握力に掌握されて、俺の手は指一本動かせなかった。 「な、何で5秒間隔で、気分変えるんだよ? つーか、言ってることとやってることが―――」 「―――わ、わかりました。もう分かったって言ってるでしょ!」 「さーて、じゃぁ誰にしようかな」 『誰を選びますか?』 誰にするかとは、まず最初に誰に話しかけるか………だ 今回はバージョンアップしてキャラも増えていた。 絶対ヒロイン 黒髪の美少女 『藤崎あやか』 その双子の妹 茶髪の美少女 『藤崎きりか』 ナイスボディ ショートの綺麗なお姉さん 『田宮まみな』 深淵の果てからの使者 謎の美少女 『極聖天のルイ』 「………う~ん こりゃ可愛い子ばっかで、マジ誰にするか迷うぜ」 こういうのって最初が肝心だからな 第一印象って大切なんだ 本当に――本当に、第一印象って大切なんだぜ? 「……………………………………………………………… ……………………………………………………………… ………………………………やっぱりぃイヤャァアァ!」 「―――ゲホ」 背後から側頭部に肘打ちと手刀の二連撃を喰らって ダウンした所に、後頭部を踏み砕かれて俺は卒倒した。 「あっ、あいつゲーム持って行きやがった」 つーか、ゲームの女の子と一言も口聞いてないよ?俺 何となく桐乃の気分が分かった気がする俺だった。 それでも桐乃相手だと多少は遠慮してたあやせが俺が相手だと ○グネスばりに検閲が厳しい。 しっかし………ま~たこのパターンかよ。 これからどうしたもんか……な 三日後 メールしても電話しても返事が無く音信不通 心配になってあやせの実家まで行ったが、 美人のママさんと怖いお父さんに色々言われたが(別れろとかはでない) 結局、本人には会えずじまい あやせたん――――最近はあんま嫉妬しないと思ってたんだがな どうやって彼女の機嫌を直すか? を考えながら、大学から帰宅して、自分の部屋のドアを開けると――― ベットの上に、ちょこんとあやせたんが鎮座してた。 ―――うぉ、ビックリした 「あの……………あやせさん? まだ怒ってたりなんかしちゃったり……なんかしたりなんかしたりする? 俺は謝ろうと思って、何度か連絡してたんだけどさ」 俺は幾分用心しながら、あやせに訊いた。 あやせは、首を振った。 ―――あれ? 結構ニコニコしてるぞ 「この前はごめんなさい。ねっ? わたしの方こそ大人気なかったから、ホントにごめんなさい」 「いやいや、良いんだよ」 何も事件やらハプニングが起きずにコトが収まって良かったと 俺は思ったのだが――― 「だから、今日は京介に自由にゲームして欲しいと思ってるの、わたし」 「う、うん?」 ………何か物分かりが良すぎて怖い。 非常事態に用心しながら、俺はあやせの出方を見ようとする ―――っ!!! あやせがおもむろに鞄から取り出したのは、 包丁――などでは無く (最近はそんな恐怖は感じてないから、俺っビビらなかったもんね!) で取り出したのは ―――フリップボード?? クイズ番組とかで、解答する時に出すみたいなヤツだった。 「なに………それ?」 意味が分からん 「はい………ゲームスタートだぞ♪」 あやせたんは手書きで 『もっとっ ラブ×2★ラブタッチ』 の"タイトル画面"を描いていた 何だ、この手作り感バリバリ満載の ――何か本物買って貰えないウチの子が親から手作りで作って 貰った みたいな悲壮感があるゲームは?! 「あやせ………どういうことなの?」 次のフリップを掲げるあやせ 『誰を選びますか?』 『 黒髪の少女 あやか 双子の妹 きりか ショートのお姉さん まみな 謎の少女 ルイ 』 「何………これ?」 フリップを改めて強調する俺の彼女 『『誰にしますか?』』 「んじゃ……"まみな"でお願い」 再び、何故かフリップを掲げる俺の彼女 『『誰にしますか?』』 「いや、だからまみな………で」 「……………………………………………… ………………………………………………… 誰にしま―――誰にする?京介(きょ・う・す・け・)♪」」 「おいおい、口で言っちゃってるじゃん! だから―――巨乳のまみ……」 「―――わかりました…もうぉわかったっ!!! わたし、ちょっと豊胸施術してきますからっ! 髪切って、眼鏡かけてきますからっ、それまで待っててくれる?! 少しだけ 待・って・て・貰・え・ま・す・か・?!!!」 「うっ、うそ、ウソ、嘘―――お、俺はあやかオンリー厨だぜ!」 何、このゲーム こわーい 「オッス あやせだよ♪」 暫く気を取り直す時間を取ってから あやせが元気よく言った。 「え? あやせなの?」 「え? あ、ああ………オッス あやかだよ♪」 「いや、おまえは どう考えても、あやせたんだろ?」 「だっ、だから………わ、わたしがキャラになってあげます ゲームの内容自体は、ちゃんと頭に叩き込んできたからっ 大丈夫だよ、てへ♪」 「へ?」 「わたしでゲームをシミレーションすれば、 桐乃達と会話する時も話題は完璧だぞ、エヘン♪」 『藤崎あやか』のデフォルトの絵である 例の敬礼みたいな決めポーズであやせは言った。 「あ?あ、ああ そ、そうだね……あ、安心だ……たしかに安心……か?」 「何ですっ?そ、その冷たい目はッ?!」 「い、いえ別に………それで俺はどうすれば?」 「で、では、さっそく告白の場面からやりましょう♪」 またフリップボードを掲げるあやせ 『わたしに好きって言いなさい』 「俺……あやせが好きだよ (俺の口が、この言葉の並びに馴れきって、もはやこの名前しか出てこない)」 『好き』と『あやせ』が対の枕詞の関係になるほど 俺はこの言葉を言ってたのか――と俺はこの時改めて気付いた。 「え?………うんっ! わたしも京介が 好き――好き、大ァ好きぃっ!」 結果 あやせに―――息がつまるほど抱きつかれました。 「な、何だ?………これ おいおい、もはやゲーム関係ないぞ」 「――はっ?あっ!ああ ちょ、ちょっと気分が上がったから、えっと………気を取り直して」 「やっぱさ、普通にゲームはゲームで割り切った方が―――」 「―――う、うるさい! わたし………ちゃんと考えてきてるンだからっ! 本当に――本当に凄い、"取っておき"を考えてるんだからっ! 二次元のゲームなんかより凄いんだから………黙ってプレイする!」 「まぁ………おまえがそう言うなら」 色々アレだけど、確かに一生懸命さは伝わる。 あやせはまた鞄から何か取り出す 「はい、これ!」 「なに、これ?」 だって………ペンを渡されても 「ふふっ♪ どうぞ、触ってくだ――さぁ、お触りなさい、遠慮なく!」 あやせは魅惑的な顔で、 肢体と胸を―――さっきの決めポーズから更に強調しながら言った。 「へ?」 『ラブ・タッチ・パネル』とフリップボード それでも流石に、俺が躊躇していると 「ねぇ~早くし・て・?」 強引に俺が握っているペンを、 あやせのグロスでぷっくりとした柔らかい唇に 無理矢理当てさせられる。 「お、おう!分かった」 彼女がここまでやってるのに ノリが悪くて雰囲気をぶち壊したら情けないもんな ってコトで俺は腹を決めると、心眼を捉えるかの如く目標を 一気に突く そうだ、俺は狼だ 血に飢えた狼なんだ 狼の牙が―――俺の『牙突』が炸裂する! 「ポチっとな―――」 「―――あっ、あん♪ ってぇ………な、何でいきなり、おっぱいな………の!?」 「いや、だってこういうのでは基本プレイだから」 「ちょっとぉ………良いですか、ねぇイイかな? 京介がそんな童貞くさい行動ばっかりを取ってると、 ゲームでも―――リアルでも女の子に引かれちゃう………よ?」 『惹かれる?』 フリップボードに、ちょうど握ってるペンを走らせ書いてみる 「イヤイヤ………字が違うし」 「まぁ、何にせよリアルの彼女はおまえだから、な? それは別に違わないよな?」 「ふーん?そっかァそうなんだぁ ………ふふ、うんっ!それは間違ってない」 笑ってはる―――笑ってはるわ まっ、リアルの彼女の好感度は高いに越したことはねぇけど 「ま、まずはキスの場面からや、やってみま(しょ)――やってみて?♪」 「うん……わ、わかった」 「ペンで撫でて、お、女の子をその気にさせるんで(す)―――させて?」 「へいへい………あー可愛い、可愛いな」 何か―――もはやこれはコントだよな だって………ちょっと想像してみて欲しい どう考えたって、笑いを堪えるのに必死になるだろう、コレ 「全然(ぜ・ん・ぜ・んっ・)気持ちが入ってないじゃないですか!!!! どうしたんですか!!!!?」 「いや、でもゲームだから言えると言うか 目の前に、生身の彼女居るのに、ペンでなで回してもギャグと言うか」 「はっ? そんな舐めた気分で、適当にプレイするなら よくもゲームが絆とか文化だなんて言えましたね!!!」 「わかったよ! その代わし、後でどうなっても俺は知らねぇぞ?」 「アハハ……そんな拙いペン捌きで、心配するなんて凄く滑稽だと思う 反対のコトを懸念した方がイイんじゃないの………かな?ボク♪」 魅惑的にいやらしく、そして俺のプライドを嘲笑 ―――二重の意味で、挑発された俺は おまえの弱いところは大体知ってるだぞ的な 俺のペン捌きであやせを責め始める。 「っ………た、大したコト………はぅ………あん……っ…な……ない ん?(ビクっ)あっ……ゃ……んっ………全然たいし……あっあん♪」 本当に簡単に拍子抜けする。 あやせの身体は、ペンが触れば何処でも ―――否、触らないでかざすだけでも ―――否、かざさずにペンをずっと止めたままでさえ ―――否、もはやペンの存在――不在に何の関係なく 感じるようだった。 「え、エッチぃ………同じ………所ばっかり………でも………イイっ してぇ………でもぉ………しなくてっ………も………イイっ……っ」 没★・入★・感★・ 「な……なんでも………し……てイイ……きょうなら…何でもイイのおぉ」 ―――我忘れて一気にプレイ感覚の様相を呈してくる 俺が一心不乱にペンを振り回していると ………あやせたん、何故か服を脱ぎ始めた 「えっ?」 「これはエッチな……ゲームだからァ…わたし………脱ぐの…ほら……ねっ♪」 一糸まとわぬ姿 まさに天衣無縫―――本当に天使か天女かと見まごう ―――でも 普段の清廉な表情は媚態に満ち、上品な顔は涎まで垂らし 何処までも透き通った白い肌は、夕陽の様に紅く――赤く高揚し 長い手足は、だらしなく意思を失ったように脱力し 普段は姿勢のよい美しい身体も、不意に痙攣し始めて 俺が執拗にペンでなで回すと 「っ………あっ………ひっ…あん……あ………アァ……あぅ」 一目で興奮と熱の源のような大きく張った胸をこれ見よがしに、 不自然なほど俺に強調し――触れられること(触れられないこと)期待して 激しく貪欲に求め 「もっと………して………いじわる………し………て……」 魅惑する様にくびれた腰をくねらせて 誘惑する様に例の如く臀部をフリフリさせて 「ほらっ………ほらァ………ココっ……にぃ……欲し…ぃ……してして?」 あやせは解放的に嬉々として、全てを露わに 俺が思わず躊躇うほど、全てをさらけだした 何か普段より―――すげぇエロい つーか、普通に触りたい………んだが ――――――このゲーム、メチャクチャ凄かった と思ってたら 流石は、最強に気が合う理想的なカップル?の俺らである 「ねぇ、京介………ペンじゃなくて、普通にして………くれ…ない……の?」 そう言われたら、俺はペンと理性は明後日に放り投げるしかない でも、いざ触ろうとしたら―――止められる あやせたん ―――ついに焦らしプレイをも完全にラーニングしてしまったのかよ! 最期のフリップボード 『京介くんと結婚したいな』 「おっ、おう………………け、結婚しよう」 「声が小さい!! もっと心を込めてっ!」 「あ・や・せ・結婚しよう!!!!」 「うん………早くしよう♪」 ―――で 普通にベットに行って 「あっ♪…きょう好き………もっとしてぇ………あっ……ぁ…あん」 「あやせ………たん…あやせ………お、俺………もう………イキそう」 「ダメっ………もし先に…イったら………後、三回………追加……」 「が、我慢………しま…い?―――あっ、あやせ………おまえぇ?」 「ふっ♪………やっぱり………ダ~メ………五回に追加…… ………あっ…ん……させる……からっ……それまではダメぇ……… わたしぃ……ゲイムクリア……させなっ………いから……許さな…い ………ずっとっ………ずっと………一緒………もう終わらせな……いっ」 結局、普通に(普段より何倍も萌え(燃え)気味に)やった(やられた) 「ったく、何だよ! ゲームがもはや関係なくなってるじゃねぇか!結局」 「じ、自分が一番楽しんでた………癖に」 「そりゃ、そうだろうよ おまえに誘惑されたら全自動発情システムは起動するさ でもこれだと、いつもの俺らじゃん?」 でも俺らの夜の関係って、立場がまた――また再々逆転しちゃってるな。 別に良いのだが ―――つーか、俺らカップル もう後戻り出来ないだろうなぁ (別に全然良いけどさ) 「うぅぅ………だ、だけどやっぱり、他の女の子を 京介には見せたくないもん、ぜ、絶対に見せたくないのっ!」 俺はこいつの強情さに ―――少し感動して、同時に胸がほっこりしちまった。 この期に及んで、まだ俺がゲームする事に納得出来ないって 俺はあやせにどれだけ、深く思われてるのだろう? でも―――今はこの思いに浸ってる場合じゃないな。 「俺、ちょっと思ったんだが 今のあやせたんだと……… 俺の――俺らの子供が何となく気の毒になるぜ 特に子供が男の子の場合だけど」 「…………な、何を意味不明な話をして ――はっ!え?」 「あやせたん、絶対に最高のママァンになると思うんだがなぁ」 「べ、べ、別にそんなコト言われても嬉しくなんて」 「嬉しくないのか、じゃぁ―――さっきの話はなし」 「ふっふん! こ、こ、今回だけですよ 今回は………しょ、しょうがありません わたしが監視してる時に限り、許してあ・げ・る・」 やっと俺は(ゲームの?――じゃなくてリアルのゲームの) 『もっとっ ラブ×2★ラブタッチ』のゲーム画面の女の子と 会話することが出来た(挨拶だけど) もちろん、あやかちゃんオンリー あやかちゃんの好感度だけが異常に上がるわ――上がる ベットの上で、あやせを膝に乗せたまま後ろから抱っこして 真剣に俺がプレイしてると 『えー?何で常にデートで植物園なんです??』 『あ~ダメ、あやかちゃんが可哀相!』 『あー女心全く分かってない、理解してないっ こ、これだから終身名誉童貞の京介くんは本当に、もうっ』 『まったくぅ、どんだけ女心に無頓着なンです?あなたって』 結構な機嫌の悪さでダメ出しの連続攻撃 『あーあ、わたしってやっぱりぃ甘やかし過ぎちゃってる? だから、ダメ男にさせちゃってるの………かな? でも――でも、コレってこれちょっとだけ参考になるかも? ふふん♪』 相変わらずの猛毒舌のあやせたんだったが 「あー、もう見てられない。わたしにもちょっとやらせてっ!」 その後は、やっと(あやせが主にプレイだから) 他のキャラと話すのも許可されましたとさ 「え??……キャー、す、凄い………エッチです、これ」 「お、おう、何か色々ヤバイな」 「えっ?えぇぇ? な、何であやかちゃんが違う男の人に――あっ!!!」 「あやせたん……ちょおま、何を――何を選んだ?!」 あやかちゃんヤンデレNTRルートになってたよ(汗) そうやって、途中から俺ら二人で キャッキャ言いながら 結構楽しんでゲームした。 俺はしみじみ思った 妹とエロゲーするのは、悪くない 女友達とエロゲーするのも、悪くない そして彼女とエロゲーするのだって、案外悪くない? ちょっとくらいなら ―――こういう話題も時々だったらイイのかもな、きっと まっ! わざわざ あやせがコミケ行ったり、何かしらのコスプレとかして 欲しい願望なんて一㍉も無いのだ。 あやせにディープなヲタになられても、俺的には対応に苦慮して 困るだけだろう。 最初に出会った時 お嬢様の美少女 桐乃のヲタバレで ヤンデレの暴力女 付き合う様になって 健気で優しい(かなり)エッチな彼女 今は ??? あやせは色々変わったけど、変わらない部分ももちろんある。 尻をぶっ叩いて、ペンであやせの身体中を弄くり回してる 俺が偉そうに言うのは滑稽だけど ―――――あやせには、自然なあやせのままで居て欲しい。 物分かりがもの凄く悪く我が侭なあやせたんでも、 俺は大好きなんだからさ。 一通り『もっとっ ラブ×2★ラブタッチ』を終えると 俺の膝の上で、あやせたんがプルプルと身を震わせて、 俺に猛獣の如く襲いかかった。 「な、なんで結果が、きりかと結婚エンドになってるんですかっ?! こ、この浮気者っ!」 パチン!(最大撃ビンタ) 「痛ってぇだろ、あやせたん 理由なら簡単だろ? それは、おまえが――― ………」 俺には、このフラグがちゃんと見えたから――― 『……… ―――『きりか』にばっか話かけてるからだろ?!』 と言うとしたが ―――結局、最期まで言うのは辞める 「ねぇ、京介―――わたしの好感度、 あなたの選択で、だだ下がりだけど一体どうするつ・も・り・?」 と手に握っていた『もっとっ ラブ×2★ラブタッチ』本体を放り投げて 俺の膝の上で、身体の向きを背中から俺の正面に向き直して 下から見上(下げ)げて―――甘える(恫喝する)ように言った。 「あやせたんのご機嫌が早く直るように、 出来るだけハードに、俺があやせさんに"ラブタッチ"させて 頂きます!」 と男らしく?宣言しては みたものの……… この好感度のパラメーターなら、 かなり簡単に上がるのを、俺はすでに知っている。 タイトル 信じて待った俺のあやせたんが携帯美少女ゲーム(本人役)に ドハマリしてしまい、逆セクハラしてくるようになるのは 往々にしてよくあること おわり
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/618.html
http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1330012485/481-495 病院での診断結果は打ち身だった。 一週間が過ぎても痛みが続くようであればまた来てくれとの事で、右手を包帯でグルグル巻きにされた俺は、馴染みの医者にお礼を言って、病室を後にする。 桐乃は……まだ居た。 「よ。……待たせたな」 ひょいと右手を上げて、桐乃に声を掛ける。 「……別にあんたを待ってたワケじゃないし」 じゃあこの何もない待合室で一体何をやっていたというのかねえ、こいつは。 「そーかよ。じゃあ、そろそろ帰ろうぜ」 俺がそう促すと、何か文句ありげな視線を俺に向けていたが、やがてコクと小さく頷く。 立ち上がって俺の横に並ぶと、そこで気付いたように言った。 「あれ、あんた、会計は?」 …………。 「さて、座るか」 すっかり会計の事を忘れていた俺は、頬を指で掻きながら、今しがた桐乃が座っていた席へと腰を落とす。 「あ、あんたねぇ……って何あたしの席座ってんの! あたしが座れないでしょ!」 「あれ、おまえは帰るんじゃなかったのか?」 「はぁ? 何言って………」 …………。 ガスッ! 「いってえ!」 こ、こいつ、思いっきり俺の足を踏みつけやがった! 「おま、怪我人になんて仕打ちを!」 「あんたが生意気な事、するからでしょ!」 「おまえが素直に言わねえからだろうが!」 「あたしはいつだって素直だっての!」 くぅ、可愛くねえ……! 無言で睨み合う俺と桐乃。そんな二人の横に、一人がやってくる。 訝しげに桐乃と二人でその第三者を見やる。 看護士だった。 「病院内ではお静かに」 ……ごもっとも。 帰り道。 「ったく、あんたのせいで怒られちゃったじゃない」 「はいはい、俺のせいですよ」 結局、無言で睨み合いながら、しかし桐乃は帰らなかった。 俺が会計を済ませると、横に並んできて、肩を並べて帰路についている。 ……本当、俺達の関係は変わったよな。 思わず苦笑が零れてしまう。 「なに笑ってんの、キモいんですケド」 相変わらず、妹は憎まれ口ばかり叩くけど。 それでもそこに会話があって、こうして二人で帰る事が自然に出来るようになっている。 今の俺達なら、誰から見たって兄妹に見えるんじゃないだろうか。 「…………」 自然と笑んでしまう。今度は桐乃も何も文句を言わなかった。暫く俺を見ていたが、やがて、静かに微笑むと俺と同じように前を向いた。 同じような事を思っているのだろうか。 そうして、決して心地悪くない沈黙で歩いていると分岐路に付いた。 「んじゃ、一ヶ月後な?」 まだ模試の結果は出ていない。だから当然の言葉として俺は桐乃にそう投げかけた。 「はぁ? 何言ってんの?」 対して桐乃は訝しげな表情で俺を見やる。 「何って……。ほら、俺は一人暮らし先に帰らないと行けないしさ。結果も出てないし。……まさかおまえを家まで送っていけとか言うつもりじゃねえだろうな」 そこまでしたら兄妹じゃなくて恋人だ。 「違くて。あたし、今からあんたの家に行くつもりなんだけど」 はぁ? 何言ってんだ? 「俺の家に来て、なにすんだよ?」 言っておくが、娯楽要素は全くないぞ。いや、桐乃ならあのフィギュアを見てるだけで数時間を潰せる可能性があるが。……フィギュア目当てか? 「……ホント、あんたって察しが悪いよね」 横目で呆れたように見やる桐乃。そう言われても、分からないものは分からない。 「あんた、その手でどうやってご飯とか用意するつもりなワケ?」 …………。 右手を見やる。包帯だらけの手。がっちり固定されていて、動かす事もままならない。というか動かすなと言われている。安静が、大事だと。 「な、なんとかなるんじゃね?」 「なんともならないから」 そんなもんかね。まあ、確かに少し考えただけでも、幾つかは不自由はしそうである。 ん? という事は……。 「つまりこういう事か? 俺が不自由するだろうから、おまえが面倒を見てくれるって」 「すっごく、気が進まないんだケドね。でもホラ、あたしって優しいじゃん? 流石に放っておけないっていうか」 俺だっておまえに面倒見てもらいたくなんかねえよ! 大体、桐乃、おまえは忘れているぞ。 「別に大丈夫だっての。あやせだっているしな」 そう、俺にはここ十数日甲斐甲斐しく面倒を見てくれている天使がいるのだ。 「あやせなら来ないよ」 「な、なんでっ!?」 「……キモ。あんたね、あやせが嫌々ながらもあんたの面倒を見てくれたのは、あたしが試験が終わるまで監視役も兼ねて面倒を見てあげて、とお願いした結果なワケ。つまり、試験が終わった今、あやせがあんたの面倒を見る理由なんて一欠片もないの」 「…………」 思わず膝から力が抜けそうになる。 おおおお、なんてことだ。なんで俺は試験に挑んでしまったのだ。あやせとのドキドキワクワク共同生活が終わってしまうなんて。 つかさり気に嫌々だった事を強調すんなよ。傷つくだろうが。 「ちょ、マジで凹まないでよ。つか、あたしが面倒見てあげるって言ってんだから喜びなさいよ」 喜べねえよ。どこの世界に超絶美少女に面倒見てもらっていた毎日が、妹にバトンタッチされて喜ぶ兄が居るっていうんだ。 赤城なら喜ぶかも知れねえが。 ……まあ、それでもあれか。こいつだって嫌だろうに、俺が怪我なんてしちまったから面倒を見てやろうとしてくれてる訳だ。感謝こそすれ、文句をいうのはお門違いか。 「……そうだな。んじゃ悪いけど、頼むわ」 俺がそう返すと、桐乃はそっぽを向いて、フン、と呟いた。 「これ……、どういうコト?」 家に帰った俺は、桐乃に尋問を受けていた。 桐乃が指を差しているのは、洗面所の歯ブラシ。 一つのコップに青の歯ブラシと、ピンクの歯ブラシが2つ仲良く刺さっていた。 「こ、これはだな……」 何故俺は浮気を見つかった彼氏のようにわざわざ弁明をしなくてはならないのかと思いながらも誤解されてしまうとあやせにも悪いので素直に説明する。 そう、このピンクの歯ブラシはあやせのだ。 「あやせが、モデルたるもの、ご飯を食べた後には歯磨きが必要なんですって言って自分の分を買ってきたんだよ」 俺も何か同棲しているカップルみたいだから止めたんだが、断固としてあやせが譲らなかったんだよな……。 「……あ、あんた、あやせと一緒にご飯食べてたワケ?」 「あん? まあ、毎日って訳じゃなかったけどな」 流石に作るだけ作らせて帰らせるのは酷だろう。感想も言いたかったし。 「…………。ま、まさか」 桐乃は暫く考え込んでいたが、そう呟くと流し台の下を開ける。 そこには食器が幾つか並んでいた。どれも、2つずつ。 「…………」 ま、まあ、二人で一緒にご飯を食べるんだから、食器も二つずつあるよな? 桐乃は無言で、ガスコンロの下の引き出しを引く。 そこから箸を取り出す。大きさが違う、しかし柄が同じな箸が二つずつ。 「みょ、みょうとばしって……」 ……みょうとばし? なんだそれ? 桐乃が何か焦っている顔をしている。そして、部屋を見渡し、ベッドを見つけると近づいていく。 「……。さ、流石に枕は無いか」 ほっ、としたような息を吐く桐乃。しかし、直ぐに布団の上に乗っかっているヌイグルミを見つける。 「…………」 「そ、それヌイグルミ……だってよ。な、なんか見守られている気がするから、とかそんな理由で」 「…………」 桐乃は無言で、その『ヌイグルミ』のカバーを外す。そして中から取り出したのは……枕だった。 ……やっぱ枕じゃねえか! くそ、あやせに騙されたぜ。道理で四角い訳だ。 「…………」 どうも桐乃の様子が可笑しい。何か焦っているような、というか少し青ざめている。 「い、言っておくが、全部あやせが用意したんだからな?」 こんな可愛らしい趣味なんて、俺持ってないし。 「わ、分かってるっての。だ、だから問題なんだってば」 問題……? 「…………。……!」 また考え込んだ桐乃、だが突然顔を上げると慌てて風呂場へと向かう。 そして、俺を手招きすると、とあるものを指さす。 女物のシャンプーとリンス。ボディシャンプーまである。 「……それは」 事情を説明しようと思ったが、それを制するように桐乃が言う。 「分かってる。これも、あやせの、なんだよね? だってあやせが使っている銘柄と一緒だもん」 桐乃の声が少し震えている。どうしたんだろうか。さっきから様子が可笑しいし。 「おい、桐乃。おま」 「ね、ねえ、京介?」 え実は具合が悪いんじゃないのか、と続けようとした所を、桐乃に被せられて言葉を止める。 「なんだ?」 「あ、あんた、……あやせに何かされてない?」 「何もしてねえよ! って、あれ?」 俺があやせに、じゃなくて、あやせが俺に何かされてない、なのか? 「それなら……、色々面倒みてもらったけど」 そもそも世話を焼く様に言ったのは桐乃だろうに、されてないもクソもないだろ。 「いや、そ、そういう意味じゃなくてっ! あー、もうホント察しが……いや、この場合は察しが悪いからこそ良かった、のかも知れない」 さっきから桐乃が何を言っているのかが分からない。 大丈夫か、こいつ? そして、頭を抱えて座り込んでしまう。 「お、おい」 「……放っておいて。今、すっごく後悔してるから」 何に対して後悔してんだ? いつもにも増してよく分からん妹様だな。 「よく分からねえが、そのシャンプーとかリンスの類は、一度あやせが雨に濡れてうちにやってきてだな、そのままじゃ流石に不味いだろうと思って、シャワーを貸した時に……」 この辺りの話は、日向がちゃんと説明していれば桐乃は知っている筈だ。 特に驚きもせず、話を聞いている。 「俺のしか無くて、俺と同じ匂いだと嫌だからって、次の日に買ってきたんだよ」 「……なんでまたここでシャワーを浴びる時を想定してんのよ。フツー、次からシャワーを借りなくてすむ方面で考えるでしょ」 ……それもそうだな。 俺が素直に納得していると、桐乃が突然立ち上がって、俺の方へと向きなおった。 そして俺の胸ぐらを掴む。 「って待って、あんた、もっと詳しくその時の状況を教えて」 「そ、その時の状況、って……」 「あやせがここでシャワーを借りた時の話!」 詳しくって……既に日向から説明されてたんじゃないのか? 「だから、俺の家に来る途中で雨に振られて……」 「傘」 「あん?」 「あやせは、いつもそういう時の為に折りたたみ傘を持ち歩いてるの。髪を濡らしちゃうと、痛めちゃうからって……」 ……その割には、ズブ濡れだったが。 「ちょ、ちょっと、あんた! ひ、日向ちゃんが帰った後、どうなったのか言いなさいよ」 胸ぐらをぐいっと掴み、怒っているんだか怖がっているんだかよく分からない表情で俺に命令をする。 ひ、日向ちゃんが帰った後? 「……ゴクリ」 「な、何喉を鳴らしてんの? え、な、ななな、なんかあったワケ? ねえ!?」 「な、なな、何もねえよ。ただ……」 桐乃の剣幕に押されて、普通に否定だけしていればいいものの、つい言葉を続けてしまう。 しまった、と思った時にはもう遅い。桐乃は、目を細めて睨みつけて。 「ただ?」 そう聞き返してくる。……こうなれば、しらばっくれるのは難しいだろう。 「……あ、あの時、あやせ、……下着まで濡れてたから、その、俺が貸したの、スウェットだけだったから、その……」 俺が言わんとする事が分かったのだろう。一瞬、頬を染めた後、サァーっと青ざめる。 「あ、あんた……、手、出したりとか、……した?」 「するかっ!」 どんだけ信用ねえんだよ! 「確かにいつもよりドキドキしちまったけど、いつもどおり一緒にご飯食べて、適当に雑談して、それでさよならだっての。何もねえよ」 「…………あんたが真のヘタレだって事がよく分かった」 なんでそこで貶されんだよ!? まるで手を出さない方が悪いみたいじゃん! 「…………」 「…………」 そして訪れる沈黙。くそ、なんだってんだ。何を誤解してんだか分からねえが、青褪められる事なんて何もしてねえぞ。 プラトニックな関係だったての。 何やら真剣な表情で考え込んでいた桐乃が、チラと俺を見て、ふぅ、と息を吐く。 よく分からないが、ようやく何も無かった事を信じてくれたんだろうか。 「あんた、ちょっと出てって」 「唐突に俺を家から追い出すんすか!?」 何、一緒の家に居る事がもう嫌だって意味? 俺泣くよ? 「ああ、違くて。ちょっと、ここから……出てって」 ここって……。脱衣所から? 「あ、ああ」 良く分からないが、従う。な、なんだ。家探しでもすんのか? 風呂場の上とかに別にエロ本とか隠してねえよ? 俺が脱衣所から出た事を確認すると、風呂場の桐乃は無造作にシャワーの蛇口を捻った。 ザァアアアアア! 当然の様にシャワーから水が出る。 「――っておまえ、何やってんだ!?」 桐乃は服を着ている。だから、当然、びしょ濡れになる訳で……。 「あーあ、手が滑ってシャワー出しちゃって濡れちゃった。下着までぐちゃぐちゃ。……あんた、服貸してよ」 ……幾ら鈍い俺でも、桐乃の意図が分かった。あの時のあやせの行動の再現だ。 だからここで求めているのはあのスウェットだ。 だが―― 「あ、あのな。桐乃。ひ、非常に言いづらいんだが、あのスウェット。あやせが洗濯して返すからって言って持って帰っちゃってないん、だ」 「はぁ!? さ、先に言いなさいよ!」 いや、無理だろ! 予告されてた訳でもなしに、言えねえよ! 「だから今あんのは……俺のパジャマぐらい?」 薄手の。前をボタンで締めるワイシャツタイプの。 「…………」 桐乃が目を見開いて、少し引きつった笑いを浮かべている。 いや、俺は悪くないだろ、どう考えても。 でも流石に下着もなしにこれを着させるのはなぁ? 「な、なんなら、俺がひとっ走りコンビニまで行って」 「……分かった。それ、持ってきて」 「へ?」 「あんたのパジャマ。それ着るから」 で。 目の前に居るのは妹。 俺のパジャマを羽織って、袖が合わずぶかぶかの。 しかも恐らくそのパジャマの下には何も……。 ……ゴクリ。 って何を喉を鳴らしてんだ、俺は! 目の前に居るのは妹! ただの妹! 意識するな、妹、妹、そう、妹だ。 「へ、へっ、結構似合ってんじゃねえか」 「……ウザ。何、こういうのが好みなワケ?」 ……わりと。 妹じゃなく、仮にあやせがこんな格好していたら、悶絶してしまうかも知れん。 そうか、あの時、ちょうど今みたいに服を切らしておけば……。 「……何か変な事、考えてない?」 「ぶはっ! な、何も変な事考えてねえよ!」 少なくともおまえでは。 「ふーん」 なんか疑っているような、そんな視線。けど問いただそうとはしない。 ……。つか、桐乃、顔赤くね? 「おい、桐乃。おまえ、熱あるんじゃねえか?」 そう言えばさっきまで様子おかしかったしな。 「へ?」 きょとんとする。そして、慌てたように手を振って言う。、 「ね、熱、無い、ほんと」 なんでカタコトなんだよ。 「う、うっさい! 察しろ、馬鹿!」 あやせのヌイグルミを掴んで投げつけてくる。 それをキャッチしながら、 「察しろって……」 考える。顔が赤い。しかし熱が無い。なら何故、顔が赤いのか。 …………恥ずかしいからに決まってるじゃねえか! 「わ、悪い」 うわ、そうだよ。俺以上に、桐乃の方が恥ずかしいわな。 「こ、これでも羽織っておけ」 そう言って毛布を渡してやる。 これで温かいし、身体も隠せるだろう。 「う、うん」 素直に頷いて、毛布を羽織る桐乃。 ふぅ。これで一息つける……。 ……つか、何やってんだ、俺ら。 「飯でも……食うか」 そろそろ夕飯時だし。 「あ、あたし、何か作ろうか?」 桐乃が珍しい提案をしてくる。こいつ、料理作れたのか? ……まあ、完璧超人の妹様だからな、料理ぐらい朝めし前なのだろう。 「いや、あやせの作りおきがある」 チンするだけで食べられるようになっている筈だ。 「…………あ、そう」 途端に機嫌が悪くなっていく桐乃。自分が役に立てなくて悔しいのだろう。 ったく、仕方ない奴だ。 「俺、左手じゃ箸使えねえから、何なら食べさせてくれ」 「え……、ええっ!」 あれ? 驚きすぎじゃね? 「あ、あーんって事?」 …………。 「い、今のなし!」 我ながら考えなしの発言だった! 反省する! 「し、仕方ないなぁ、あ、あんたがそういうんだったら、と、特別にあたしが食べさせてあげても、イイケド……」 何故か知らないが嫌にノリノリな俺の妹は俺の撤回を聞かずに、いそいそと料理の準備を始めるのであった。 罰ゲームの様な夕飯を終えて、一休み。 桐乃はしっかりと食べ終わった後の食器を洗ってくれている。 ……こういう所を見ると、あやせが言っていた学校での桐乃が、とても気が効いて面倒見がいいという意見も少しは分かる気がする。 何を言うまでもなく自然と、俺の分の食器まで片付けて今、洗ってくれている。 これも俺の右手が使えない事に対する気遣いだろう。 ……この右手が使えないというのは思いの外、苦痛だというのがようやく分かってきた。 だから今回の妹の申し出は、とても有難かった。 「ふぅ……ここのお湯の出が少し悪くない? 水道見てもらう?」 「いや、特に不自由してないし、こんなもんじゃないか?」 「そうかな……?」 蛇口を見て、首を捻る桐乃。 やがて、納得が言ったのか手を拭きながら戻ってくる。 「お疲れ」 感謝の気持ちを込めて労ってやると、桐乃はそっぽを向いた。 「別に……当たり前の事だし」 家族が困っていれば、それを助ける。 兄が困っていれば、それを助ける。 それが当たり前。 ……そして俺達の中で、ずっと無くなっていた慣習。 何だか心が暖かくなるのを感じた。 「さて、夕飯も食べた事だし」 「ん、何かするのか?」 もしかして帰るのだろうか、とも過ぎったが、俺はそれを口に出さず、違う事を口に出していた。何故だろう、と考えるまでもない。 模試までの一ヶ月。俺は殆ど桐乃と会っていなかった。元々の事情が事情だったし、勉強の邪魔をする訳にいかないという事情もあった。 だから、久しぶりにあった妹ともう少し一緒に居たい、という思いがあったのは否定出来ない。基本、俺はシスコンなのだ。それはもう否定出来ない。 「何って……決まってんでしょ」 どうやら帰る気は無いらしい。少し安心する。 「決まってるって……この家、特に何も無いぞ? 人生ゲームとかですらないぜ?」 一応、勉強するという名目でこの部屋を借りている訳だしな。娯楽要素は持ち込めなかった。 「何いってんの? あるでしょ、ゲーム」 …………。ま、まさか。 「押しかけ妹妻。どうせ、あんたロクに進めてないんでしょ? それに右手がその状態じゃ薦めづらいだろうし、あたしが手伝ってあげる」 ……やっぱ桐乃、もう帰ってくれ。俺は心の中で深々と息を吐いた。 で。 「はい、どっち選ぶ?」 「んー、下だな」 「いやここは上でしょ」 「…………」 結局二人でエロゲーを進めていた。 他にやることもないのもまた事実だったしな。 そんで、右手を俺が使えないので、俺の後ろに桐乃が立って、俺の代わりにマウスを操作してくれている、という訳だ。 イメージとしては二人羽織のような感じだろうか。 ただ、この右手、俺の要望を全然聞き入れず、勝手に選択肢を選んだり、ボイスを最後まで聞くまでクリックしなかったりして、終始俺を苛々とさせてくれる。 確かに椅子に座って、パソコンに向いているのは俺で、構図だけ見たら俺がプレイしてるっぽく見えるが、それは見えるってだけで、実際の所、妹がプレイしているといって過言ではないのだろうか。 それにさっきから、結構気になってるんだが……。 桐乃がマウスポインタを上に持って行こうとする時、前に乗り出すのか、その、背中に当たるんだよ。アレが。 だからさっきから下の選択肢を要望してんのに、まるで聞きやがらねえ。兄のさりげない気遣いに気付きやがれってんだ。 仕方ない。真っ向から指摘してやるか。遠回しに伝えてもこいつ、察し悪いからな。 「なあ?」 「何よ、今いい所なんだから、画面見てなっての」 「さっきからおまえのおっぱいが当たるんだが」 「パッ……!」 桐乃が激しく動揺している。 それもそうだ。いきなり妹に対し、おっぱいは無いだろうおっぱいは。 どんなセクハラ兄貴だよな。 ……弁解させて頂く。 本当は胸と言おうとした。だが、言う直前に胸というと嫌らしくないかと考えた。そこで、口に出し切る直前に路線を変更したのだ。 その結果セクハラ発言になってしまったのだ。 ……はい、弁解の余地なしですね。 「…………」 黙りこんでしまった桐乃。怒ってるんだろうか。怒ってるんだろうな。 今現時点で殴られてないだけで、奇跡なのかも知れない。 ふぅ、これでゲームは終了かな。まあ、仕方ない。桐乃も納得するだろう。 なんて思っていたのだが、予想に反して桐乃はゲームを続けていく。 位置も変わらず、そのままだ。 「お、おい桐乃」 「……今、良い所だって言ったでしょ」 ここからじゃ妹の表情は見えない。 良い所って言ったって……、なあ? まあ、選択肢で上を選ばなきゃいい話か。 そう楽観的に考えていると、早速選択肢が現れた。 当然、下だな。 「桐乃、下の選択肢を頼む」 「…………」 カーソルが迷いなく上を選んでいく。 ふに。 それと同時に背中に柔らかい感触。 「な、おまえ、聞いてなかったのか?」 「…………」 桐乃は答えない。こいつ、何を考えてやがるんだ? 「もう一度言うが、おまえの胸が俺の背中にあたってるんだよ。少しは気にしろって」 「……馬鹿じゃん。あんた兄貴でしょ。あたしの胸が当たっても……兄妹なんだし別に良くない?」 いつもは俺が言っているような台詞を、桐乃が吐く。 「いや俺が良いか悪いかじゃなくて、おまえがこう兄貴に胸があたってても良いのかって話であって――」 「そのあたしが良いって言ってるんだから、良いじゃん」 ……それもそうだな。 いや、待て待て。本当にそうか? 幾ら兄妹って言ってもこう、駄目じゃないか? 俺が納得してないのが分かったのだろう。桐乃は苛立たしく頭を掻き毟り、 「ああああ、もう! あたしが良いって言ってんだから良いでしょ? このヘタレ!」 何故、妹に胸が当たる事ぐらい良いじゃんと罵倒されているのだろうか。 俺、間違えてないよね? 「俺が気になっちまうんだから、仕方ないだろ。分かってくれよ、妹だからとかそういう問題じゃないんだっての」 仕方ないので俺が折れてやる。ったく、面倒臭い奴だな。 「……あ、そう。分かった。……なら、あたしが前に座る。それなら胸が当たらないし、問題ないでしょ?」 「あ、ああ、まあそうだな」 前に座るって意味が若干分からないが、つまりは位置を交代しようと、そういう話だろ? 桐乃がプレイしているのを、俺が後ろで見る。正直、見たくもないんだが、納得しないと煩そうなので取り敢えず振りだけでもいいので納得してみせる。 「そんじゃ、交代しようぜ」 そう言いながら俺が立ち上がろうとすると、桐乃が俺を制す。 「はぁ? 何いってんの。あたしが前に座るって言ったでしょ?」 「前って……いや、だから俺が後ろに立つって話だろ?」 「違くて。……くう、本当に察しが悪いんだから、あんたは。つまり、」 と口で続けて桐乃は行動で指し示す。 「こういう事!」 そう言って桐乃は俺の上に座った。 ……。ええと、状況を再確認しようか。 俺、椅子に座っている。桐乃、俺に座っている。 「って、人を椅子代わりにしてんじゃねえ!?」 俺、一応怪我人なんだぜ? 「うあ、なんかゴツゴツして座りづらいんだケド」 そりゃ椅子になるように作られてませんから! そ、それにこの体制は不味い。何か不味い。 妹の体温がこう間近に感じられて、こう柔らかいお尻の感触が、こう、な? 分かるだろ? 大体考えてみれば、今、こいつ、下着を付けてねえじゃん。 うあ……、いや、落ち着け、落ち着くんだ高坂京介。 そして静まれ、海綿体! 「な、何、耳元でハァハァ言ってんの? マジキモイ」 お ま え の せ い だ ろ う が ! もっと気にしろっての、俺だって男なんだぜ? くそ、普段はこれでもかってぐらい勝手に意識してる癖によ、なんでまたこんな時だけ……。 とそこまで考えて気付いた。よく見ると、桐乃の耳が赤い。 つまり、こいつも恥ずかしがっているという事か? 「お、おい、桐乃。どうしたってんだ? なんか変だぞ?」 恥ずかしがってないならまだしも、恥ずかしがってるならやらなきゃいいのに。 今日は桐乃の行動がいつも以上に分からない。 「……うっさい。ゲーム続けるから、ちゃんと見てなさいよ」 そう言って、マウスを動かし会話を進める。 ……正直、ゲームに集中できる状態じゃないんだが。 全身に密着している身体。伝わる体温。ほのかに香る匂い。それが例え妹だったとしても、意識するなって方が無理だ。 し、しかしここでちんちん固くしてみろ。俺は生涯桐乃に馬鹿にされつづけるぞ? そう、これは兄のプライドを掛けた勝負なのだ。 ふっ、読めたぜ、桐乃。これは、俺を陥れる為の罠だな。 そうと分かれば、俺は全力で別の何かに意識する。そう、確実に萎えてしまう何かに。 ……萎える何かを探し求める。萎える。つまり自分の趣味からかけ離れたもの。そして想像しやすいもの。何か無いか、何か……。 ……! そして辿り着いた。これは萎える。が、積極的に想像するのが躊躇われる。 だが、背に腹は変えられない。 ……すまん、親友。今、俺は修羅となる。 そう、赤城とのBL展開を想像する。そう、俺と赤城は恋人同士。今日も、俺と赤城は二人きりで……。 『ねえ、お兄ちゃん。なんでこれおっきくなってるの?』 ギクッ。お、おっきくなってる、かな? い、いや、まだだ、まだこう寝ぼけ眼の状態。まだ、騙せるぞ。 ほら、赤城、もっと俺を萎えさせろ! 想像の赤城が俺を抱きしめる。 ………………これはこれで、ダメージがでかいな。兄としてのプライドを守る代わりに、俺の精神はボロボロに燃え尽きてしまいそうだ。 もぞ。少し妹が俺の上で動く。 こすれるなにか。 …………………………。 な、なんだこれ。俺の精神と関係なしに、身体が、勝手に反応していく。 お、おさまれ、俺の海綿体、静まるんだっ! くそ、赤城、抱きしめるだけじゃ足りない。もっと俺を、俺を。 想像を加速させ、赤城と裸で抱きあう。こ、これなら。 しかし萎えていく精神と対照的に盛り上がっていく下半身。 おおおおお、俺は今、赤城を想像しながら、ちんちんを固くしている、だと!? このままだと燃え尽きる以前に砕け散る。兄としての尊厳以前に男としての尊厳が消失してしまう。 くそ、桐乃め、中々クリティカルなダメージだったぜ。 だが、まだ俺の最後の防波堤、太ももにより、立ち上がろうとするそれを全力で抑えつける。 勃起してしまうのは仕方ない、だがバレなければいい。あれ、でもさっき擦れたよな? つまり桐乃がまた動いたらこう、バレちゃうんじゃね? つか、今思ったが、さっき擦れたってさ、何処と? …………。 今、桐乃は俺の上に座っている。となると、俺の海綿体の上にあるのは……。 下着を履いてないから、薄布一枚の先の……。 おおおおおおおおおおおおおおっ! よく分からない衝撃が俺の身体を突き抜ける。ありとあらゆる理性と自制が、一気に突破される。もうどうにでもなれ、という気分になって。 俺のリヴァイアサンは、俺のビックフットの拘束を振り切り、地上へと飛び出した。 「……っ!」 そして、迷いなく、目の前の双丘の間へと突っ込んでいく。 「んあっ……!」 ビクン、と妹の身体が跳ねた。 ……………………やっちまった。ぜってえ、バレた。つか、可愛い声あげてたし。うわ、最悪。完全に兄貴失格。 妹の心底軽蔑した視線で、サイテーと言われるまで数秒前と言われるところか。 さようなら、俺の平穏ライフ。こんにちは、俺の変態ライフ。 遠い目で、桐乃からの死刑宣告を待っていたわけだが。 「…………」 カチ、カチ。 桐乃は、黙々とゲームを進めている。 ま、まさか気付かなかったのか? げ、ゲームに集中しすぎて? いやでも今声あげてたし。 俺のその葛藤を見透かしてか、ようやく桐乃が声を出す。 「き、気にしてないから」 俺の方を見ずに、桐乃はそう告げる。 「こう、男は、……仕方ないんでしょ?」 俺の方をチラッと見て、桐乃はそう告げる。 「今、エロゲーしてるワケだし? し、仕方ないって」 ……すまん、俺が今、勃っているのは、エロゲーのせいじゃないんだ。 つか全然ストーリー見てなかったし。 ……そうか、エロゲーを見て勃っている事にすれば、ギリギリ兄貴としてのプライドが保てる? まさか敵からそんな助言を貰えるとはな。 よし、エロゲーに集中しよう。 「…………ん」 なるほど、この展開だとそろそろエッチシーンだな。 「……あっ……」 しかし一人暮らしの野郎の家によくこの妹は押しかけてくるよな。 大体なんで裸エプロンなんて展開になんだよ、ありえねえだろ。 「……んんっ」 「………き、桐乃さん?」 さっきから桐乃が変な声を上げているので、エロゲーに集中しきれない。 つか否が応にも現実を意識しちゃうだろ。 「ご、ごめん。その、あんたのが当たって……」 …………。 「あ、またビクンってした」 あああああああああっ! そうだ、まだ俺の息子、全力で妹に対して体当たりしてたわ! 勃起しすぎて麻痺してんのか余り感覚が無い。 「わ、わわわ悪い」 「べ、別に良いって。あたしこそ変な声出しちゃって、ごめん」 かぁ、と顔を赤くする妹。 俺も負けじに赤くなっているのだろう。 「あ」 そして桐乃がそこで何か気付いたように声を上げた。 「な、なんだどうした?」 赤くなってしまっている自身を誤魔化すように俺は桐乃に話しかける。 「……あ、あんたのパジャマ、汚しちゃってる、カモ」 へ? 顔を真赤にして俯いてしまう桐乃。 そ、それって……。 「…………」 俺は何も答えられない。 妹も黙りこんだまま。 カチ、カチ。 ゲームはしっかりと進んでいく。 やがて。 ゲームは佳境を迎える。 『お、お兄ちゃんの事が、ずっとずっと好きだったの』 カチ、カチ。 可愛らしい妹ボイスで、ゲームの妹がそんな台詞を吐く。 その台詞に対し、ゲームの兄貴は、暖かく受け入れる。 『嬉しい。こんな気持になれるならもっと早く言えば良かった』 カチ、カチ。 イベントCGが入り、妹の全身が映し出される。 『ね、ねえ、お兄ちゃん』 カチ、カチ。 『わたしと、……エッチしよ?』 カチ、 …………。ゲームが、止まる。 桐乃が、画面を見ず俯く。マウスを握る手は、クリックを押さない。 喉が、カラカラに乾いていく。緊張感だけが、場を支配していく。 心臓はずっと早鐘を鳴らし、このまま壊れてしまいそうになる。 やがて、桐乃が口を開く。 「ね、ねえ、兄貴」 俺は答える事が出来ない。 「あたしと、…… プルルルルルッ! そのタイミングで携帯が鳴り響いた。 良い所だったのに、と俺は思ったのだろうか。 それともこの携帯に安心したのだろうか。 音の主は、俺の携帯だった。 「……、出るぞ」 妹に一応、了承を取る。妹は俯いたまま、コクリと頷く。 電話を掛けてきた相手は、あやせだった。 何故か寒気がしたのは何故だろう。 「は、はい、もしもし」 『あ、お兄さん。わたしです』 「ど、どうした?」 『どうした、って……ほら、あたし夕飯を作りに行くの遅れちゃって。お兄さん、お腹空かせてるかな、って思って』 ……あれ? 「今日も、来るつもりだったのか?」 『なにを言ってるんですか。せっかく模試も終わったんですから、今日は少し豪勢にしようと思ってるんですよっ』 横目で、桐乃を見やる。これだけ近くに居るのだ。会話が聞こえているだろう。 桐乃は、目を見開いて、俺を見つめる。そして、口を動かす。 あ、た、し、は、き、い、て、な、い。 『少しお酒も良いかなーって思って、度数弱めですけど、買ってあるんです。あ、少しだけですからね?』 桐乃が、何処となく震えている。何故だろう。 そして、俺もさっきから寒気が止まらない。 『まあ、こんな日ぐらい少しハメを外してもいいかなー、なんて。 ……ところで、お兄さん?』 先ほどまでの上機嫌な声から、打って変わって声のトーンが下がる。 『 桐 乃 と 、 何 を し て い た ん で す ? 』
https://w.atwiki.jp/puzzlederby/pages/421.html
スキップアウェイ(オス) 属性 副属性 タイプ 副タイプ レアリティ コスト 天 - バランス - L☆6 30 レベル スピード スタミナ 根性 1 465 698 233 99 2093 2790 814 スキル/強化型 天の転生(1ターンの間天属性のスピードが2倍)/- Lスキル/強化型 スピードスキップ(1ターンで4属性以上で同時にアタックするとスピード4倍)/- 進化素材1段階 BCクラシック BCクラシック BCクラシック 優勝盾(天) 優勝盾(天) 進化素材2段階 BCクラシック BCクラシック BCクラシック レジェンド像 レジェンド像 入手方法 転生馬
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/414.html
http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1296227693/849-856 ※この物語はフィクションであり 登場する人物・団体・その他名称とは 一切関係ありません……ですよ! もう聞き飽きるくらいssを読んでいるお前らだろうが、一応自己紹介をしておこう。 俺の名は高坂京介。 自分で言うのもアレだが、特筆すべきことなどない平凡な男だ。 「ねーお父さん」 俺の娘(世界一カワイイ)が話しかけてきた。 「ん、なんだ?」 「お父さんってしすこん?」 「はぁ!?」 いきなり何言い出すんだこいつは!? どこでそんな言葉学んだんだよ……ってまぁ、予想はつくが…… 「桐乃叔母さんから聞いたのか?」 「うん!お父さんと叔母さんは仲がいいんだねって言ったら、 〝あの兄貴はどうしようもないシスコンだからね~(´∀`)マ、アタシが可愛いからだけどね、フフン〝 だってー」 あの野郎、たまに来たと思ったら人のいない所で好き勝手言いやがって…… 昔よりは仲が良くなったかもしれんが、俺はシスコンなんかじゃねえっての! 「そうか……お父さんはシスコンじゃないからな、我が娘よ!」 「うん、分かった!」 娘が笑顔で頷く。今年で10歳となる娘のその表情は、 初めて会った頃の妻にとても似ていて、その頃の思い出がふと蘇ってきた。 ふとしたきっかけで、俺の妹、桐乃からの〝人生相談〝を受けることとなった、それによって様々なトラブルと遭遇し、解決し、とにかく奮闘していたあの頃。 そして、今では妻となった彼女に初めて会ったーーーー 「お父さん?どうしたの?」 「ん、あぁスマン……昔の事を思い出していたんだよ」 「そうなの。あ、お母さんの小さい頃って、どうだった?」 「あぁ、今のお前ソックリだぜ。小さくて可愛くて抱きしめたくて……グヘヘ」 「……との事ですよ、お母さん?」 娘の視線の先には、 「/////」 顔を赤くして(⇦カワイイ)妻が立っていた。 ってオイ!?聞かれてたの!?途端に恥ずかしさが込み上げてきて、俺の顔も赤くなる。 「も、もう、京介さんったら……」 「は、謀ったな我が娘よ!?」 「たまたまだよー?」 くうっ……ヤベー。恥ずかしさハンパじゃないぜ。つーかさっきのアレって〝私はロリコンです〝って言ってるようなもんじゃねぇか! 「ま、まぁとにかくだ、俺は昔も今もお前を愛してるぜ!」 「///私も愛してます、京介さんっ♡」 妻が抱きついてきた。鼻腔をくすぐるいい香りだ……俺は妻の腰に手を回し、唇を近づけーーーー 「死ね、変態兄貴」 「!?きっ、桐乃ォ!?」 振り向くと、桐乃が汚物を見るような視線を俺に浴びせていた。 「桐乃さんの、いたんスカ……」 「ハァ……いつでも変態だね、アンタ。ちょーキモいんですケド」 桐乃は俺の家にちょくちょく遊びにくる……主に娘と遊ぶために。そしてそのたびに変な事を吹き込むから困ったもんだ。やれやれ。 「お前の妹好きも相当のモンじゃねーかよ」 「アタシはアンタみたいにどこでも発情期でイチャイチャしたりとかないんですケド?」 は、発情期まで言いますか…… 「そ、それは……欲望が体の端から滲みでてるだけだっての!」 「……キモ」 「グホァ!」 シンプルなその言葉が俺のハートに突き刺さる。 「つべこべ言わずに、なんで素直に〝私は変態です〝って言えないわけ?」 「暴力は……いけない……」 マジ泣けてくるぜ。確かに否定できないけどさ。 そして桐乃は俺という名の汚物から視線を外し、娘と2人で別の部屋へと移動していった。 「京介さんは桐乃さんと仲がいいですね」 「今の会話でそうとれるお前が凄いぜ……」 「ふふっ♪」 妻が無邪気に微笑む。マジ天使の微笑み。 桐乃といえば、桐乃にこいつを紹介したときはヤバかったな……今でも良く覚えてるぜ。まだ彼女であった妻を取られちまうんじゃないかってくらいベタベタしてたな…… 「なぁ……」 「なんですかっ?」 「今まで……本当に、ありがとな」 「へっ?いっ、いきなりどうしたんですか!?」 「そのさ……、昔の事とか思い出してたんだ」 「そう……ですか。懐かしいですね、京介さんが必死にパパを説得した事とか♪」 「あの時はヤバかったな……」 なんせ外国語を覚えるとこからだぜ?受験勉強より死ぬ気だったぜ! 「本当、俺なんかと結婚してくれてありがとな」 「私こそ……京介さんのお嫁さんになれて、夢のようです!」 ちょっぴり赤い顔の、乙女の微笑み。 あぁ、妻のこの顔を独り占めできるなんて、俺は世界の鼻つまみ者になってもお釣りが来るな…… 「……覚えてますか?」 「何をだ?」 「私が京介さんに告白したときです」 「あぁ。無論、覚えているに決まってる」 「わたしは……あなたが、大好きです」 「そうか……なら、俺から1つお願いがある」 「俺と……付き合ってくれ」 「……はい……!」 あのときのようにキスを交わすーーーー 妻の唾液は蜜のように甘く、舌が水音をたてながら絡み合う。何度も交わしたキス。 しばらくの後、唇を離す。妻の口から垂れる唾液が扇情的だ…… しかし何度交わしても緊張するぜ。なぜかって? そりゃーーーー 「愛してます、マネージャーさん!」 「懐かしい呼び方だな……愛してるぜ、ブリジット」 俺の嫁はこんなにも可愛いから、な。
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/142.html
http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1266820218/130-145 俺の幼馴染がこんなに不人気なわけがない 俺はそのとき麻奈実が突然何を言いだしたのかわからなかった。 「きょうちゃんが桐乃ちゃんを連れ戻すためにアメリカまで行ってたから休んでいたなんて、うそだよね?」 あぁ、そのことかと思いながら……確かに馬鹿みたいで信じがたい話ではあるが、俺は即座に麻奈実の言葉を否定していた。 「うそじゃねぇよ。俺は確かに学校を休んでアメリカまで行って、桐乃を日本に連れ戻してきたさ」 「うぅん、というよりも学校を私と同じ日から学校を休んでたってのも、うそでしょ?」 麻奈美のやつは俺の声がまるで耳に入っていなかった。 麻奈実の様子がおかしいのはわかっていたが、どうもこれはさっきまでのおかしいとは違っていた。何というか狂気をはらんでいた。 「あー、麻奈実。ひとまず落ち着いてくれ、俺がついていけてない」 それでもさっきより俺が落ち着いていたのは一度麻奈実と普通の話ができたおかげだろう。俺の心に麻奈実は意外と大丈夫という慢心が入り込んでいた。 だからこんな言い方をしてしまったのだろう。とうに麻奈実の心の歯車はくるう寸前であったというのに。 「もういいからね、きょうちゃん。無理しなくても大丈夫だから。やっぱり私みたいな地味な女の子と話してても、楽しくないんでしょう?」 俺はこんな必死な表情をしている麻奈実に対しても、未だ支離滅裂なこと言っているという印象を抱いていた。 どうしてさっきみたく、真剣にとりあってやる気にならなかったのだろうか。 「さっき言ってくれたあの長い言葉も、その前の励ましも、最初に言ってくれた私の顔を見たいって言葉も……みんなみんなうそなんでしょう?」 最後のこの言葉は、もはや悲鳴に近かった声色だったはずだ。それなのに、呑気なことに俺はそう言われて、麻奈実を気づかう前に逆上していた。 「なっ……! 麻奈実、いい加減にしやがれ。俺はお前をマジに心配して、一つの偽りもなく素直に俺の気持ちを言ってきた! それを全部うそなんて……さっきから、なんでそんなに俺の言葉を信じてくれねぇんだよ!?」 「信じられるわけないでしょ!!」 馬鹿な俺は頭に血が上っていた。自分の信頼を無くした要因を考えるために今夜は徹夜だなどと決めた覚悟はどこへ行ってしまったのか。 俺の叫びが最後の着火剤。麻奈実の心の炎は涙ぐらいじゃ消えないほど燃え上がっていた。 「私見たもん! 見る気なんて無かったし、そんなの見たくも無かったのに……。けど、見ちゃったんだもん……」 そのときもはや麻奈実の目に悲しみや哀らしさなどは消え去っており、ただまっすぐ俺の顔を睨みつけるだけであった。 「あの日、きょうちゃんが黒猫さんと、キスしてるところ! 私は見たのっ!」 麻奈実の大絶叫は俺の鼓膜を通して脳を揺らすのに十分なほどであった。 俺の目の前で絶叫した麻奈実。 俺の頬にひやりとした液体があるのを感じた。 それは今しがた絶叫した麻奈実の口から飛んだツバでもなく、麻奈実の瞳のはしに溜まった涙でもなく、俺からでた冷や汗であった。 なぜ、こうなってしまったのだろうか。俺の心を焦りが支配する。 そして、どうして俺は今……、どうして、どうしてこんなに後ろめたい気持ちで心がいっぱいなのだろう。 「あの日、きょうちゃんが桐乃ちゃんから来ためーるを見て、すっごく怖い顔になって、様子がおかしくなったまま別れたよね?」 そういうことだったのか。 「私は心配だった。きょうちゃんのことがとにかく心配だった。なんだったら、助けてあげたかった。だからきょうちゃんと別れたあと、私引き返して後を追ったの」 なんてこったい。まったくもって想像の範囲外だった。 「学校に着いて、きょうちゃんを探し回って、校舎裏でようやく見つけたと思って近づいていった。そしたらさ、そしたら……黒猫ちゃんが、きょうちゃんの頬にっ……!」 黒猫とはそういう関係じゃねぇ。黒猫にそういう気持ちがあるとかの話は、まだしてないんだ。 「信じられなかった! なにそれ? 桐乃ちゃんからのめーるは? あやせちゃんにかけた電話は? 全部うそだった。わざわざ黒猫さんに会うための言い訳だった!」 でも麻奈実からしたら関係ない。そりゃそうだ、人気のない校舎裏で同じ部活動の仲が良い先輩と後輩が居て、後輩の方からキスをしている景色なんて第三者から見れば、十人が十人その二人はそういう仲なんだと思ってしまう。 「それで、桐乃ちゃんのために学校を休んでアメリカまで行ってたから、私がずっと休んでるのを知らなかったなんて、信じられるわけがないでしょう!? どうせ私が休んでるのを良かれと思って、ずっと黒猫さんと遊んでたに決まってる」 信用なんて失って当たり前だ。俺が麻奈実の立場だったら、信用を失うどころか軽蔑している。 「……ていうか、ひどいよきょうちゃん。いくら私と下校してる途中でどうしても黒猫さんに会いたくなったからって、アメリカで一人頑張ってる桐乃ちゃんをダシに使うなんて……」 麻奈実の心情は、まさしくこの一言につきていたのだろう。 俺が麻奈実の信用を失った理由は、俺が黒猫と恋仲にあり、なおかつ幼馴染との下校中に色欲をかもしだした俺が、自然な形で黒猫と会うためにアメリカ留学中の桐乃を利用したと、麻奈実が勘違いしているからなのだ。 「いやっ、麻奈実それはちがっ」 「言い訳なんて見苦しい真似しないで」 「言い訳じゃねぇって! あのときに来たメールは、本当に桐乃から来たメールだ!」 「……違うって言うなら、あのとき来た桐乃ちゃんからのめーる、いま見せてよ」 「えっ? ……いやっ、それは。その……」 それは出来ない。あのときのメールの内容は、あまりに衝撃的で今でも一字一句覚えている。 『アンタに預けたあたしのコレクション ぜんぶ 捨てて』 このメールを麻奈実に見せるということは、内容の意味についても説明しなくてはいけない。 それはつまり、麻奈実に桐乃の趣味をばらすことになってしまう。 「……出来ないんだ。それともめーる消しちゃった? それならめーるの内容言うだけでも良いよ。嘘じゃないなら言えるよね?」 「…………」 俺は何も言えなかった。 これなら即座にハッタリでも言えばまかり通ったかもしれないが、元々混乱していた俺に嘘八百を並べる冷静さもなければ、麻奈実を信じさせることのできる内容を言える自信も無かった。 無言を貫くことしか出来ない俺を見て、麻奈実はため息を一つ吐いた。 「……やっぱり、うそだったんだね。そこまでして黒猫ちゃんに会いたいなら、毎日ずっといっしょに居れば良いよ。 朝からいっしょに登校して、お昼ご飯もいっしょに食べて、放課後もいっしょに部活で遊んで、いっしょに仲良く帰れば良いよ? だけどその代わり、二度と私と幼馴染面しないで」 麻奈実が俺に怒っていることは理解した。信用を失った原因も把握した。 確かに麻奈実の怒りはもっともである。俺が黒猫とのお付き合いのために、妹を利用して幼馴染との接近を避けた。今の麻奈実には、俺がそういうことをする人間に見えている。 「わかったでしょ。そんなきょうちゃんが、いくら私のことを心配してるとかなんとか言ってきても、信じられるわけがないの……」 とある人でなしが、お前との楽しかった日々はくだらなくない、とっても大切な日々だったんだ、だから引き篭もる幼馴染の身が心配だ、と言っている。 これでその幼馴染がその人でなしの言う事を信じるというのなら、もはやその幼馴染は聖人君子をも軽く凌駕する清い存在なのではないだろうか。 「……わかったよ、麻奈実」 あぁ、わかったとも。なんてひどいすれ違いだコノヤロー。だけど今の俺に麻奈実の信頼を取り戻すための絶対的な方法が無い。仮に今、桐乃に電話をかけて事情を説明させても、俺が桐乃にそう言わせるよう懇願したとこいつは思うかもしれない。 なんせ今の麻奈実から見たら、俺はそういうこともやりかねない人でなしだからな。 俺に今、麻奈実を信用させる方法は無い。お前は俺が黒猫といちゃいちゃラブラブしてて、お前との幼馴染の関係が手に余って困り果てた末に、アメリカにいる妹を利用している最低な男に見えているんだろうからな。 「でもな、俺がお前を心配しているこの気持ち、それだけは信用してくれ! そして、お前のためなら俺は何でもする気でいるということも。お前のために、俺は明日からずっとお前が学校に来るまで毎日ここに来ようとしていることも。頼む、信じてくれ……」 今はそれだけで十分だと俺は考えた。 俺のことをいかに最低で頭にドが付くほどのクズな奴と勘違いされたままでも今は構わない。ゆっくりと時間をかければいずれ誤解も解けるだろう。 しかし、このまま麻奈実を引き篭もりになってしまうほどの苦悩と一人で戦わせてなどいられるか。それを指くわえてただ見ているのもだ。 「……無理だよ」 「頼む……頼むから……」 気付いたら、いつの間にか俺は土下座をしていた。麻奈実に対して土下座をする日が来るとは思いもしなかった。 顔を伏せているので麻奈実の表情は見えない。俺の懇願に麻奈実は一体どういう反応を示してくれるんだろうか。 拒絶か許容、後者であれば良し。前者でも良し。前者なら俺の顔をあげる時間がまだまだ先になるだけのこと。 俺はお前に以前よりも優しくなったと言ったが、それはある意味あきらめが悪くなったとも言えるんだぜ? 「……さっき、『お前のためなら何でもする気でいる』って、言ったよね。あれ、本当?」 「あっ、あぁ。勿論だとも」 永遠とも思えるような静寂をやぶった麻奈実の言葉。 俺は内心やったと思い、希望の光に照らされる奴隷のような面持ちで顔をあげる。 ……おぉ、こわいこわい。あいもかわらず麻奈実は今まで俺が見た事ないほど怖い表情をしていた。 顔のどのパーツとっても笑っていない。というか表情が無い。まだ怒ってる顔の方が怖くないと言えるだろう。 麻奈実の顔を見ながらそんなことを考えていたら、俺の視線に気付いたのか麻奈実は僅かに口の端を上げる。 この後の麻奈実の言葉を聞いた後、今しがた麻奈実が浮かべた笑みを表すのに、悔しくも魔性の笑みという単語が一番的確だと思ってしまった。 「じゃあ、今すぐ黒猫さんに電話かけて。それでお前の事が大ッ嫌いだ、付きまとわれていい迷惑だ、って言って。そうしたら信用する」 おう、オーケーオーケー! 第一黒猫とはまだ恋人とかそういう話はしてないし、それぐらいのことで済むのなら……って、オイ! 「なっ!? い、いくらなんでもそれは……」 というよりも、そりゃおかしいだろうよ!? 確かに麻奈実は俺と黒猫が恋仲であると勘違いし、挙句その影響で俺が最低なことをしている奴に見えているのだろう? だけどそれで黒猫に別れの電話をかけたら許すって、話の流れが合わねぇって。 むしろ麻奈実の言うとおりにすれば、俺は幼馴染の信用を取り戻すために黒猫の気持ちを踏み躙るゲス野郎になってしまう。 ……さっきよりも余計に信用が置けない人間のする行動になっているように感じるのは、俺だの気のせいだろうか? 「出来ないの? 何でもするって言ったのに」 それでも麻奈実は狼狽する俺に冷たく言い放つ。 くそっ、冷静になってくれ麻奈実。お前の言う通りの行動を俺がとったしよう。だが、それでは何の解決にもなってないことに。 お前の悩みは解決されないし、俺の信用が本当の意味で戻るわけでもない。ただ「黒猫」が傷つくだけなのだと。 「…………あぁ、出来ない」 「そう……」 俺が申し訳無さそうに言うと、麻奈実は寂しそうに呟く。 まるで初めからその答えが返ってくるのはわかっていたと言いたげな表情だ。 ちくしょう、そんな顔をしないでくれ。お前は俺よりも何倍も頭が良いから、ちょっと頭を冷やしてくれればわかるはずだ。 自分の言っていることがいかに支離滅裂で、自分の提案した条件がどれほど無駄であるかを。 「いくらなんでもそれはねぇよ、麻奈実。今の状況で悪いのは、うまく身の潔白を説明できない俺だ。黒猫に罪はない……」 「……ふぅん、黒猫ちゃんには優しいんだね」 何とか麻奈実に今一度思いなおして欲しいという意図を込めて麻奈実の言ったことを否定するが、返ってきたのは苦々しげな表情を浮かべながら放たれた皮肉だった。 チッ、なんだなんだその言い回しは。まるで黒猫を目の敵にしたような言い方するじゃねぇか。麻奈実らしくもねぇ。 桐乃にいらねぇこと吹き込まれた影響で黒猫が麻奈実のことを嫌っているのは気付いていたが、ひょっとして麻奈実も黒猫のことが嫌いなのか? 「そういうことじゃねぇって! 第一、今回のことで黒猫は何も関係ないだろ!?」 「関係ない……って?」 「俺はお前の信頼を無くしちまった。だからお前は今引き篭もるほど深刻な状況なのに、俺は助けになってやることが出来ない。でもそれと黒猫のことは別のことだろう?」 どうかこれでわかってくれ。麻奈実が自分の言葉の浅さに気付いてくれと、俺は心の中で祈った。 両手を広げ自分の身体全体を使って俺の考えを伝えようとした。 そんな俺の姿を見て、麻奈実はしばしの沈黙のあと、すっと重い腰をあげて立ち上がった。 俺は土下座から顔と身体を上げた状態、言うなれば正座の姿勢をしていたのだが、何かせねばならないという衝動に駆られて俺も麻奈実につられて立ち上がっていた。 「…………きょうちゃん」 すると麻奈実は俺の名を呼んだ。フルネームではないけれど、長年麻奈実に呼び親しまれた、もう一つの俺。俺の分身のような名前であった。 いつもと違うのは麻奈実の声が震えていたことだけ。 「バカ」 返事をしようかと思った瞬間、小さな声で確かに麻奈実の口はその二文字を囁いていた。 その後、俺は顔面に鈍い衝撃を感じとってから、身体が大きく後ろに吹き飛ばされていた。 「ぶへっ!?」 いい歳をして何とも情けない声が上がってしまった。 ドーンッ、と大きくも低い音が響く。俺の身体は一瞬何者かに支えられたような感覚を覚えたあとに、ゆらりと床に身体を打ち付けていた。 「痛ぇっ……!?」 身体全体が軋むような痛みを感じながらも、先ほどの顔に感じた痛みの方がひどく痛くて鼻の頭あたりを中心に手で押さえていた。 麻奈実の部屋を閉じきっていた襖が俺の身体によって廊下側へと倒れていることに気付く。 どうやらさっき俺の身体を支えていると錯覚したものはこの襖のようで、襖がいくらか床に倒れこむ衝撃を吸収してくれたから身体全体の痛みほうは和らいだのだろう。 あまりに一瞬の出来事で何が起きたか頭で理解ができていなかった。しかし、前方にいる麻奈実へと視線を向けると、同じく一瞬で何が起きたかを頭で理解していた。 一歩前に出された足と軸足の見事なバランスに、ありあまる力の余波を受けたのか強く握り締められた左手。痛みに耐えるような表情と震える右腕。 そして、つい先ほど俺の顔面を直撃した、麻奈実の前方に勇ましく突き出された右の握り拳。 俺は麻奈実に、グーで殴られていた。それも顔を。 「なっ、なにすんだっ!?」 俺は麻奈実に、グーで殴られていた。 こんな一行を俺の人生でお目にかかることになるなんて、今までの俺は一回でも考えただろうか。いや、ない。 今俺が怒鳴っているこの瞬間ですら、何か悪い夢を見ている気分だった。 でも目の前にいる麻奈実は、やはり俺がよく知る幼馴染の麻奈実であって、それ以外の何者でもなく、またそれ以上それ以下でもない。 何度見直そうともそれは俺の幼馴染であり俺を殴りとばした、ただの麻奈実であった。 「きょうちゃんのバカァッ!! 私が今何で悩んでるかも、どうしてきょうちゃんが信用できないかも、きょうちゃんは何もわかってない!!」 「何もわかってないって何だよ!?」 麻奈実も俺と同じできっと自分達が出せる最大音量で叫んだに違いない。 先ほど無表情が一番怖いと言ったが訂正する。やっぱり、人間感情を剥き出しにして怒った表情が一番怖い。 眼鏡の奥にある麻奈実の瞳はキッと俺だけを睨みつけ、歯を動物のキバのようにギリギリと隙間からのぞかせながら、声には怒りを抑えるといった一切のためらいが無かった。 ひょっとしたら俺が全力で言い返したのは、あまりに攻撃的な麻奈実の姿に命の危機を感じた俺の生存本能が、麻奈実に対して威嚇をしたのかもしれない。 二人の視線が直行する中、田村家の階段を慌ただしくドタドタと誰かが駆け上がってくる音がする。 そりゃ襖がはずれて倒れるほどの音がしたんだ。一階で事の成り行きを気にしていた田村家の皆様だって、何事かと思って様子を見に来るだろうよ。 一番初めにたどり着いたのはロック、次に親父さん。そうして少し遅れてから爺ちゃんと婆ちゃんがやって来た。 倒れた襖から部屋を覗き込んでいるのだろうが、俺はもうそちらに意識をやる余裕など無い。 麻奈実が倒れこんだ俺の襟元を掴んで、涙を流しながら絶叫したからだ。 「私はきょうちゃんが大好きなのッ!」 …………えっ? 「幼馴染としてじゃなくて、女の子として、ずっとずっと昔から、きょうちゃんのことが大好きだったの!!」 …………。 「それなのに、信じられない。きょうちゃんは何もわかってなかった! 黒猫さんとキスしているのを見ただけで、私が死ぬほどショックだったことも、そのせいで食事も喉が通らないのも、ずっと部屋から出たくなくて、誰とも会いたく無くなって、だから引き篭もってるってことも。 私よりも黒猫ちゃんのことを大切にしてるきょうちゃんなんか……信用できなくなっちゃったってことも、全部わかってなかった!!」 俺がアメリカに行くきっかけは、黒猫から受けた「呪い」だった。 その「呪い」は黒猫の世界では俺がへたれたら全身から出血するというものだったが、俺の生きる平凡な世界ではキスと呼ばれるもので、好意を寄せる者にしかしないものだ。 その「呪い」を、麻奈実は目撃していた。 麻奈実は幼馴染であったが、いつからか俺に好意を寄せ、いつの間にか俺を一人の男として見ていた。 俺が黒猫に「呪い」を受けたのを目撃してから、麻奈実は家に引き篭もった。 俺が麻奈実の心配をして家に見舞いへ来た。 麻奈実は俺を信用せず、「たかが幼馴染」と言った。 麻奈実にとって、「幼馴染」とは、確かに「たかが」という副詞が冠されるに相応しい立ち位置だったのだ。 …………………………あっ、繋がった。全部、繋がった。 「帰って。きょうちゃんなんて、もう顔も見たくない」 吐き捨てられた言葉が現実には見えずとも、確かに俺の身体へと突き刺さった。 襟元から手が離れたかと思うと、麻奈実はすっと俺に背を向けた。 振り返りざまに見えた麻奈実の顔は、ただの一人の少女の、悲しさに震える泣き顔であった。 「みんなの顔も見たくない。襖が倒れてるからって、もし部屋に入ってきたら私本気で許さないから」 あぁ、俺は何ということをしてしまったのだろう。 もしこの状況を第三者が見たら、麻奈実のことを一方的に悪く思うかもしれない。 麻奈実の様子を心配して見に来た俺に、自分の言いたい事だけ吐き捨て、その思いが伝わらないことに苛立ち俺を殴った自分勝手な女の子。そんな風に見えるだろう。 だが、違うのだ。 普段の麻奈実は俺を殴るどころか、虫を殺すのも可哀想だと考えてしまうほど優しいのだ。 ただただ怠惰な人生を過ごしてきて、出来の良い妹に嫉妬して忌み嫌い、妹に人生相談という名目の命令でエロゲーを強制的にやらされ、麻奈実といっしょでなければ勉強をする気もあまり起きないような、 そんなどうしようもない俺の幼馴染であってくれて、そればかりか俺のことを幼馴染以上の存在といつの間にか見逸れてくれていた。 それが麻奈実であった。 では、その優しい麻奈実にすらグーで殴られた俺は、どれほど最低な人間なのか。 今日の会話の中ですら、俺の人間性の酷さを片鱗だけでも容易に見て取れる。 田村家の皆様が心配するなか、俺が行けば何とかなるなどというわけのわからぬ自論を頭の中で展開。俺が行けば以前に、俺自身が今回の件の元凶であったというのに。 そのくせ麻奈実に少しきついことを言われれば、俺はたかだか今日一日会えなかっただけ寂しかったんだぞと絶叫プラス長大な演説。アメリカに行って何日間も麻奈実を放置していたといのに。 優しすぎた麻奈実はそんな俺の安っぽい演説にすら反応してくれて、部屋から顔をのぞかせた後に部屋の中にまで入れてくれた。お前の心中の方が俺よりもよほど荒れていたはずなのに。 それだけで俺は有頂天、まるでもういつもの麻奈実を取り戻したかのように、何の警戒もせず麻奈実の心のデリケートゾーンを土足で走り回っていた。 絵に描いたような自分勝手、自己中心。我が田んぼに引いた水などもう既に溢れている。 第一、俺は今までの麻奈実と過ごした日々で、薄っすらとだが気付いていたはずだ。 麻奈実が俺に幼馴染以上の特別な感情を寄せていることを。 クラス中の皆からは付き合っているようにしか見えず、桐乃曰くキモいくらいにベタベタ。 時折幼馴染の行動の意味がわからなくなるだと? どう見ても照れ隠しです。本当にありがとうございました。 俺は本当にどうしようもないクズなのだ。 俺は心の中で麻奈実が俺に異性として好意を寄せていると気付きながら、麻奈実と幼馴染の関係であることがあまりに心地よくて、その関係を崩さないようあえて麻奈実の気持ちに明確な答えを示さぬようにしていたのだ。 そのことに、ついさっき麻奈実に大好きだと言われ気付いた。 俺はずっと麻奈実との関係の進展を誤魔化してきた。 麻奈実が俺に黒猫がキスをしているところを見たと言ったとき、俺が焦りを感じ後ろめたさを覚えたのが何よりの証拠だった。 俺が麻奈実のことを本当にただの幼馴染と認識し、麻奈実だって俺のことをただの幼馴染と考えているに違いないと思っていれば、黒猫とのキスを見られたと言われたところで俺は何も思わないはずだ。 それなのに焦りと後ろめたさを俺が感じたのは、麻奈実が俺に寄せる純粋な乙女心に感付いていたからに他ならない。 俺は麻奈実の気持ちに気付いていながら、自分のことだけを考えて行動しつづけていた。 幼馴染という関係の永続調和、恋人でも無ければただの友人でもない。永久に望んだ幼馴染。 その結果、我慢の末の限界突破。麻奈実をグーで殴らせるほど、怒らせてしまったのだ。 俺は正真正銘のクズであったのだ。 「…………麻奈実。俺、帰るわ」 崩れた襟元を正しながら立ち上がり、俺は別れの言葉を告げた。 本来なら今も背を向けて肩を揺らしながら泣いている麻奈実を支えたくて仕方無かったが、俺にはその資格は無いと思ったからだ。 ずっと麻奈実を騙し誤魔化し、幼馴染であることを強制していた俺には、たとえ麻奈実から傍にきて支えて欲しいと頼まれても、行く気にはなれなかった。 震える背中に、俺も背を向ける。 「今まで、すまなかった」 麻奈実の返事は無い。もはや「さようなら」と、別れの言葉すら交わせないのだ。 最後のその俺の言葉には嗚咽が混じっていた。男泣きというには、いささか不純すぎる。かつて男泣きをしてきた全ての日本男児に申し訳が立たない。 なんせ、この期におよんで俺が涙を流し惜しんでいるのは、麻奈実との幼馴染の関係が崩れてしまったことへの悲しみと寂しさからなのだから。 きっと麻奈実が今流している涙は、俺を殴ってしまったことへの断罪であろうというのに。 「……失礼します」 麻奈実の部屋のはずれた襖からのぞく田村一家に一礼する。これは挨拶でなく謝罪だ。 麻奈実を助け出せなかったことではなく、皆様の大切な麻奈実をずっと苦しめていたことの。 安心してください。もう二度とあなた方の麻奈実には、一切手を出しません。 それどころか、もう麻奈実の顔を思い浮かべることすらしないよう、努力します。 「……あ、あんちゃん!」 「とめるなロック。……今は手加減できそうにねぇ。次引き止めたら、殺すぞ」 今にも泣きそうなロックであったが、俺が睨みつけたとたんヘビ睨まれたカエルのように身体を硬直させた。なんだ、そんなに俺の顔が怖かったのか? 冗談言っちゃいけねぇ。さっきの麻奈実の方がよっぽど怖い顔してだろうよ。 ……チッ、しまった。さっそく麻奈実の顔を思い浮かべてしまった。 田村家の皆様すいません。もう少しだけ、せめてこの傷が癒えるまで、俺というクズに麻奈実の顔を頭の中だけで思い浮かべる権利を下さい。 そうして俺は田村一家が立ち尽くす襖前を通り抜けて、階段を一歩一歩下りていく。 ふと足を止めて、今この階段から飛び降りたらどうなるだろうと考える。 死にたくなったわけではない。ただ、さっきの襖が倒れた音よりも凄い音がするだろうから、麻奈実が心配して見にきてくれるかもしれないと思っただけだ。 …………実に危ない。麻奈実が来てくれると思ったら、俺は本当に飛び降りかねない。 気が付いたら明らかに転落するほどの大股一歩を踏み出しかけていた。 俺は気をしっかりもったうえで、ややぎこちない足取りになりながら階段を下りきる。 その後の記憶は覚えていない。 足早に麻奈実の家を出たあとは、夕暮れの視界が涙で歪む中、家に帰るまで道に迷わないよう必死だったから。
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/345.html
http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1293190574/45-48 「おう、待たせたな」 「この聖夜に五分の遅刻よ……下僕の癖に遅れてくるなんて、いい度胸ね」 「す、すまん。その……」 「言わなくていいわ、どうせまたあの女に振り回されて遅れたのでしょう……でなければ、こういう時に先輩が遅れて来るなんてないでしょうし」 「……正解だが、まるで見ていたかのような発言にちょっとびびった」 「フフフ……この地は全て私の魔眼の下にあるのよ? その程度は容易い事」 まさに出掛けにちょっとした喧嘩をやらかしていたのだが、それにしても……うーむ……俺や桐乃の行動ってよほど読まれやすいんだろうな。 いや……それだけ、こいつが俺たちのことを理解してくれてるって事かもしれない。 「まぁ、とりあえず行こうぜ」 「ええ、立派にエスコートをつとめて頂戴……どこへ連れて行ってくれるのかしら?」 「ん、任せろ……ええと……」 ごそごそとポケットを探り、用意していたメモを探りだして広げ…… ……! 「……のうぇっっ!?」 「んなっ……! 貴方……何という物を公の場で広げているのっ!」 嘘っ! 俺ちゃんと下調べして地図とか書いてたのにっ! 迅雷のごとき素早さでもって「それ」を丸め、ポケットに押し込む……が……。 はみ出してるっ! ぐわふぇっ! 「み……みちゃ……見ました……?」 「……あ……貴方、どれだけ業が深いの……」 「ちっ、違うっ! これは俺のだけれどそうじゃないっ!」 なっ……なんでこんな物が俺のポケットに……というか何故なんの疑問も持たずに広げたんだ俺! 明らかにサイズが違うだろ! 感触とかも! メモの走り書きがA3サイズになってる時点で気付けっ! 「……どうせ、あの女の仕業なのでしょう」 黒猫がため息をつきながらそう呟く。う、まぁ……どう考えてもそうだよなぁ……前にもやらかしてくれやがったけど、あいつ俺に 何の恨みがあるんだよ! 「う……、す、すまん。その……」 「気にしていないわ、そんなものさっさと仕舞って行きましょう」 俺は気にするんだが……こういうときの心遣いって、麻奈実やお袋のもそうだが……かえって辛いな……。 「あ、ああ……ったく……あいつ、いったい何の恨みがあってこんな事を……」 「……『恨み』……?」 「ん、そうでもなきゃこんな真似しねーだろ」 「……はぁ……何処までも愚鈍な存在なのね……先輩の首の上に載っているソレは、裁きの羽根よりも軽いのかしら?」 何言ってるかやっぱ分からんぞ……しかし弱った……。 「ま、まぁいいじゃないか……しかしどーすっかな、予定はともかく地図やチケットは痛い」 「あまりの鈍さに泣けてくるわ……やはり、相応の躾が必要な様ね……まずはその変態的に偏向した性衝動から 矯正していくべきかしら?」 なんか地雷踏んだっ!? 何故っ! さっき理解ある女な発言してたのにっ……! ……やっぱピンナップの眼鏡巨乳秘書モノが駄目だったっ!? フォ、フォローっ! こんな時はっ……選・択・肢・召還! カモーン……そして君に決めたっ! 「ふっ……お前の方が、こんなモノよりもずっと魅力的だぜ?」 「…………」 「……」 「……」 …………あっ……アレー? おっ、おっかしーな……桐乃に借りたエロゲだと、褒めればたいていうまくいってたのにっ! 「一度、はっきり言った方が良いのかしら……いい事? 先輩、私は貴方の性的嗜好については既に知っているし、 思春期の男性の……そ、その……生理についても……あの女よりは理解しているつもりよ。それは勿論、抵抗が無いと 言えば嘘になるけれど」 ごはっ……! こっ……これはこれで凄く辛いっ、これなんて羞恥プレイっ!? 桐乃のカリビアンバレや麻奈実の 「お兄ちゃん」 も辛かったが……真面目に解析されて説明されるって……物凄くキツいっ! 「 『資料』 という名目で貴方のコレクションの一部をいただいて、ほぼリサーチ済みだし……」 いつの間にっ! 誰がっ…… いや、聞くまでもないけどよ……犯人……っ! 「ノリノリで渡してくれたわ…… 『これ3ヶ月くらい箱の底にあったからバレないと思うよ?』 って」 殺してぇ……今俺はアイツを心底殺してぇ……っ!! 「そ、それに……私はまだ成長期だから、予定ではあの女よりも田村先輩や赤城さんに近づくはずよ……ただ、流石に……その…… 『眼鏡をかけたまま顔に』 ……はちょっと……」 「すんませんでしたあああああああああっ」 ここが屋内ならジャンピング回転土下座だよコラ! もういっそ殺してくれ! 「入ったら……って言うし……」 マジ勘弁してくれ…… というか、言ってるおまえが涙目じゃねえか! 桐乃といいオマエといい……耳年増にも程があるだろ。 そういや、ゲームで自キャラが脱がされかけたときもこんなだったな。あー、うわー、顔真っ赤だ! やべえ、抱きしめてえ! ええいっ……っ! 「ど……どっか行こうかっ!」 「……顔が危険すぎるというか、発情しているようにしか……今すぐ帰りたくなってきたわ……」 しっ……しまったぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああっっ!! な……なんかテンパり過ぎだろう俺……これは流石に駄目だ……桐乃めっ……なんてことしてくれやがったんだ……orz 「ちょ、ちょっと……こんな場所で座り込まないで頂戴」 「お、おお……すまん……」 「はぁ……少し言葉が過ぎたわ、せっかくの逢瀬だもの……もっとゆっくりと段階を踏んで躾ける事にするわ」 ……調教されるのは確定なのか。 「だ、大丈夫だけど、桐乃の悪戯のことはもう勘弁してくれ 」 「やれやれ……ちょっとした事で挫けてしまうのは本当に兄妹でそっくりなのね……」 ホントもう勘弁してください……。つうか桐乃がそんなタマかぁー? 「まぁ、天罰と思って忘れることね、もしくは躾のなっていないフェレットに噛まれたと思って……先輩が取ってきた、軽薄な行動の結果よ…… 一昨年は田村先輩と……去年は実の妹と過ごしているなんて……どうしようもない雄ね」 「ひでー言われようだなおい」 もうすっかり慣れたけどな、なんだかんだでこいつとの付き合いも……恋人同士になってからも、四ヶ月が過ぎたわけだし。 ただ、やっぱその、なかなか進展しないっつーか、健全な男子高校生としての色々な期待とかあるわけですよ、……そこんとこ もうちょっと酌んで欲しかったぜ! 「ふふ……シスコンにしてマゾ属性の先輩には丁度いいでしょう?」 「否定しづらいが、そろそろそのネタでイジるのは勘弁してくれ」 「そう……御免なさい、私も興が乗りすぎたようね……」 え、ノリだったのか今の……。 「……う、まあ……ほどほどで。……しかし弱ったな……今日は飛込みの予約無しじゃ、どの店も入れないだろうし……」 せめて携帯に番号くらい入れとくんだった……あと、アプリの使い方も桐乃に習っときゃ良かったぜ。 途方にくれていると、黒猫が微笑みながら 「いい事を思いついた」 という風にこう切り出した。 「なら……私に任せてもらえないかしら?」 「え?」 「先輩の思っていたようなご期待に沿えるかどうか分からないけれど……普段の労をねぎらうに、やぶさかではないのよ?」 「こ……こっちのほ……ご本よんで……?」 「おう、いいぜ……うわ『かちかち山』だ、懐かしいな」 「もう……ちょっと、お兄ちゃんの邪魔をしては駄目よ……」 「姉さまー、私も手伝う!」 「……それじゃ、こっちのチンした鳥を運んで並べてね」 「はーい」 ……俺は……今、こうして黒猫の家のコタツで……のんびりとくつろぎながら料理が出来るのを待っている。 膝の上には下の妹がちょこんと乗っていて絵本を読んでくれとせがんでくる。最初はちょっと人見知りなのかと思ったけど、そうでもなかったみたいだ。 「あ、こら。……ちゃんと踏み台を使わないと危ないわよ」 「だいじょうぶー」 あー……なんか和むな……そういや俺も昔……こんな風に桐乃に絵本とか読んでやったことがあったような……なかったっけ? まあいいや、昔過ぎてよく思い出せない。 「けーき……あけていー?」 「まだ駄目だな」 しかし、この妹どもは可愛いな……うちの茶トラとはえらい違いだぜ……というか、桐乃がこの子猫たちを見たら、めるるイベントの 時のように危険な状態になりかねん……警察官の娘が幼児誘拐とかは勘弁だぜ……(*1))ガクガクブルブル 「え~」 「はは、もうちょっと待てよ。瑠璃お姉ちゃんがすぐご飯持ってくるから」 ここへ来る道すがら、あわてて買ってきたコンビニのケーキなんだけど……これだけはしゃいでくれるとなんとも嬉しくなるな。 もちろん、黒猫へのプレゼントも用意しておいたけれど……。 「はいー、おまたせでしたー」 「お、さんきゅ」 上の方の妹……(翡翠でみどりと読むらしい)みどりちゃんがこれまたコンビニで買ってきたチキンを運んでくる。 周りにレタスやトマトを盛っただけで、ずいぶん美味しそうに見えるものだな。手伝ってやりたいが……下のほうの妹 (こっちは琥珀と書いて「こはる」と読むらしい)が膝を占拠していて、動けないのが辛いところ。 「ほら、こはる……お兄ちゃんの膝からおりなさい? こっちでしょ……」 さっきの毒舌からは想像も付かない優しい声で妹を呼ぶ黒猫……なんかいいな、こういうの……普段見えないところだけに、新鮮に感じてしまう。 「はーい」 丸っこいスプーンとフォークが並んだ小さな食器が置かれた席に移動する琥珀、ぽっかり空いた膝がちょっとだけ寂しい。 ……んわっ……! 「……ど、どうかしたの? 先輩」 「いっ……いや……足が痺れた……」 ずーっと乗せてたからな……重みがなくなって、急に来た……。 「吃驚させないで……すぐ治るわよ。親指を折っておくといいわ」 「あ、なんか聞いたことあるかも」 「ほら……翡翠も座って 『いただきます』 しましょ」 「はーい」 うん、すげー素直な良い子達だ……この世には素直な妹というものも、存在していたんだな……ちっょと感動したぜ! 「ねえ、ねえさま」 「何?」 「おにいちゃんはねえさまのおとうさんなのですか?」 「……」 「……」 ええと……これって、文脈的に……そうだよな……やっぱ。お母さんに対するお父さんとか、嫁に対する亭主だよな……? どう答えてよいものか分からず黒猫の方を見ると、これまた返事に詰まったと見えて真っ赤になっていた。 うーむ、…… ……どう答えたら……ええい……! 「あのね……お兄ちゃんはね、お姉ちゃんの……」 「……2人とも、寝ちゃったか」 「そうね……お客が来るなんて珍しいから、はしゃぎ過ぎたのかも。……2人の相手をしてくれて、プレゼントまでくれて……ありがとう」 「お、おう……こっちこそ、ご馳走様」 コンビニで買った、メルルのおもちゃ付きお菓子とかだけど……あんなに喜んでくれると思わなかったぜ。 さっきまではしゃいでいた2人の妹たちは 「これから 『本物のサンタさん』 が来るから、早く寝なさい」 と黒猫に言われて2人ともすぐに布団に入り ふすま一つ向こうの部屋ですやすやと寝息を立て始めた。……本当に素直だよな…… 「前もって分かっていれば、もっとちゃんとしたものを作ったのだけれど……」 そう言って謙遜している黒猫だが、コンビニのチキンにもちっょと手が加えられていて……おそらく自家製らしいハーブと胡椒で整えたのだろう、 コンビニの品にありがちな臭みは全く感じなかった。一からの手料理……という訳じゃないが、普段から家事をこなしていないと、できない手際の良さだ。 「いや、俺の方こそ急に来ることになっちゃって……予定とか、失敗しちゃってゴメンな?」 「心配しないで、元々そんなに期待してなかったから問題ないわ」 「……それはそれで凹むなオイ」 「他意はないのよ?」 分かってるって、これでもだいぶんおまえの事を理解できてるつもりなんだからな。でなきゃ……あの時、ああいう事にはならなかったし。 「そうか、そりゃ良かった」 「それに、もっと嬉しいこともあったから……」 「……さっきのは、その……」 「勢いでも、その場の事でもいいのよ、私が嬉しかったのだから、水を注さないで頂戴」 「う、すまん」 「さっき、渡せなかったのだけれど……良かったら、使って頂戴……その……妹たちのもののついでに編んだのだけれど……」 そう言って、黒猫がリボンで飾った手編みらしいマフラーを渡してくれた。黒を基調としたシンプルな色だけれど、立体的な編み方と模様で そういうのに疎い俺でも、たいしたものだと分かる。何色かに分けて使われている毛糸のトーンもすごく綺麗だ。 「……髪の毛とかは編みこんでいないから、安心して」 んな心配してねえよ!? 「お……さ、サンキュ……早速使わせてもらうわ……っと、俺からも、コレ……」 ポケットから……今度はちゃんと確かめてプレゼントを取り出す。 「……ありがとう……」 「前に、コミケでは、安いのしか買ってやれなかったから……その、今度はちゃんとしたのをと思って」 「…………まだまだ駄目ね……」 あれ、また地雷っ!? っかしーなぁ……。 「気……気に入らなかった……?」 「……いいえ、これは凄く気に入ったわ……ねぇ、着けてくれるかしら」 そう言って、黒猫が綺麗な黒髪をかき上げる……つーか! うなじやべえ! マジヤバイ! 「つっ……着けるぞ……」 「鼻息が怖いのだけれど……」 紫の石の目が入った黒猫をモチーフにしたペンダントで、我ながらちょっと安直過ぎるかも……と思ったのだけれど、 気に入ってくれたなら何よりだ……出掛けにこの事で桐乃と相談して喧嘩になったのはまぁ、さておくとして……だな。 「ほい、出来たぞ」 「ありがとう……ねぇ……」 震える手でペンダントを着け終える……その肩に置いていた俺の手を、黒猫がそっと取って引き寄せ…… 「……瑠璃」 「先輩……」 「ん……」 「……んっ……」 「「……」」 ……あれ? 今何か「 」がちょっと多く……ふすまの隙間が…… 「「「「!!!!」」」」 …… …… …………その後……色々あったけど……桐乃に締め出し食らって、門限過ぎて親父に〆られたけど……本当に、最高のクリスマスだったぜ……うん。 (おわり)
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/310.html
http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1290468634/ 「なろっ!!」 高坂がムキになって俺のボールを奪いにくる。 言っておくが、ボールはサッカーボールのことだからな? 近々球技大会があるんで、俺はサッカー担当の高坂にトレーニングを付けてやっているんだ。 「高坂、お前ディフェンダー向きだと思ってたんだけどな」 「あん?」 普段から結構醒めた感じで周りを見てるし、目立ちたがりって訳でもなく、どっちかっていうと粘り強い、守備向きのタイプだと思ってた。 「夢中になると、周り見えなくなるタイプなのな」 サッカー部の俺は球技大会じゃサッカーに参加できないんで、クラスのコーチ役なんだが 俺はコイツをクロスの練習させてサイドバックに添えようと思っていた。 状況に応じてフィールドを上がって攻撃に参加するサイドバックは、冷静さも必要だ。 が、今のコイツを見てると、とてもじゃないが冷静さは期待できなかった。 「サイドハーフな、お前。とにかく走って周りを生かせ。汗かき役だ。後、ごっつあんでもなんでもいいからゴールへの意識も忘れんなよ」 後で清水エスパルスのビデオでも見せてやろうか。 コイツが前にいるなら、サイドバックはもうちょっと守備の意識が薄くても飛びだしが上手い奴が欲しいな。 「んな体力俺にはねーぞ。つーか素人に注文つけすぎだ」 「でも俺に個人特訓お願いするぐらいにはやる気があるじゃんか」 「それは、陸上部のエースである妹様に馬鹿にされたからだよ……けっ」 うんうん、妹の為なら頑張っちゃうよなぁ! 「お兄ちゃんと先輩が個人特訓……うへへへへ……」 「……あと、アレも何とかしてくれ、赤城」 「瀬菜ちゃんが応援してくれたら、練習にも身が入るだろ!」 「あれは応援じゃねぇ! もっとおぞましい何かだ!!」 きったねぇ! おい、高坂、唾飛ばすんじゃ……って、雨かよ? 「げ、本格的に降り出してきたぞ!?」 「ちっ……お前は兎も角、瀬菜まで濡らす訳にはいかねぇな」 「お邪魔ーッス」 「お兄ちゃん、ちゃんと挨拶しなきゃ駄目でしょ!」 いきなりの雨でずぶ濡れになった私達は高坂先輩のお家にお邪魔することになりました。 雨に濡れたお兄ちゃんと高坂先輩……うへへ……抱き合って暖めあったりしないかなぁ……げへっ 「ああ、別に畏まらなくても親父もお袋もいねーからさ。 桐乃は……家にいた筈なんだけどな、どこに行ったんだか…… 瀬菜、お前の服乾くまで俺のシャツでいいか? 勝手に桐乃の借りる訳にはいかねーしよ」 「私よりもお兄ちゃんに先輩のシャツを貸してあげてください!」 うへっ…うへへへ……高坂先輩のシャツにお兄ちゃんドキドキしないかなぁ……「これが高坂の……」とか……えへっ 「瀬菜ちゃん、お兄ちゃんの事をそんなに心配してくれてるんだな! でもお兄ちゃんは鍛えてるから大丈夫だぜ! それよりも瀬菜ちゃんの方が心配だ! 高坂なんかのシャツより、俺のシャツを使ってくれ!!」 「なんかとはなんだ、なんかとは。つーか、お前のシャツも濡れてるだろーが。 大事な妹に風邪ひかせたいのか。あと、どう考えてもお前の心配をして言った発言じゃねぇ」 「なんだよ高坂、ツッコミ厳しいぞ」 そうかーお兄ちゃんに突っ込まれているんだー。やっぱり先輩×お兄ちゃんだよね!! うへっにゃへへへ…… 「なんならシャワー浴びていくか?」 「お兄ちゃん、先輩の好意に甘えたら? やっぱりボディソープで滑りをよくしておかないと痛いと思うし……」 「いや、お前に聞いてるからね? 誰が赤城にシャワー貸すかっての! もう後半の発言はつっこみすらしないからね! 聞き流すからな!」 というわけで、高坂先輩とお兄ちゃんの薦めで、私はシャワーを借りることになりました。 ふへへ…きっと二人ッきりになりたいんだよね、先輩とお兄ちゃんは……うへへへ…… そういえば洗濯カゴの中に、土に汚れた先輩のジャージがあったなぁ。 お兄ちゃんは殆ど汚れてなかったけど、先輩は転んだりしていたから…… そうか、きっと先輩の擦りむいた膝の傷をお兄ちゃんが舐めて……ぐへっ…… いけない、涎、涎…… シャアァァァァァァァ…… お湯が私の冷えた身体をゆっくりと解していくのが分かる。 冷たかったお風呂場も、シャワーの湯気で充満し始めて…… ふと、私がお風呂場の外を見ると、入り口の磨りガラスに人影が映ってました。 高坂先輩? でも着替えのシャツやバスタオルは先輩に貰ったし、先輩がここに来る理由はない筈。 影はしゃがんでモゾモゾと動いています。 もしかして、私の服を探しているのかな? 乾かす為に…… でも、今私はシャワーを浴びている。下着を着たままシャワーを浴びる人は居ない。 つまり、そこには服だけじゃなくて、下着もあるはずで、それを先輩に見られている……?! ちょ、ちょっと待って! 先輩とは限らないよね。 私の服ならお兄ちゃんが持っていく事だってあるだろうし、お兄ちゃんなら下着を見られても大丈夫だ。 高坂先輩だってお兄ちゃんは兎も角、私には興味がない……のかな? それはそれで少し寂しいような…… でも、高坂先輩が私の下着泥棒をしようとしたら、お兄ちゃんが絶対に許さないと思うし きっとあの影はお兄ちゃんだ。 お兄ちゃんに違いない。 シャアアァァァァ…… 影は立ち去ることなく、しゃがんだまま小刻みに動き続けている。 私は不安になって、シャワーのお湯を流したまま、そっとお風呂場の入り口を開けた。 「ゴオォォォォリュゥ!! ゴォォォルゥゥゥンンッ! 兄貴の臭い、あたしにゴールッ!!! スンスン……兄貴の汗まじりのジャージィィィ……兄貴がサッカーして盛った雄の臭いつきっ! 兄貴ってば何時の間に汁ケ04に所属してたの? 来年には汗ーナルに移籍決定?! はぁ…はぁ……久々の上下セット……着ちゃうよ? あたし兄貴のジャージ着ちゃうよ? あたしのフィールド始まっちゃうよ? だってもう我慢できないもん。兄貴帰ってくるってきいて 洗濯機の中に隠れてたんだもん。ぜ、全部兄ジャージ嗅ぐ為ッ!あたしシャドーストライカーッ! ……ゴソゴソ……はぁぁ……きたぁぁぁ……兄貴に囲まれたぁぁ……ラピッズ! 11人の兄貴に囲まれたぁぁ、あたしゴールtoゴールしちゃう!アストラッ! ……ハフゥ…軽く飛んだぁぁ……大空に翼ったぁぁ……兄貴のファントムドリブル食らったぁぁ…… 兄貴の臭いファンタジスタすぎ! トップ下? トップ下が一番濃厚な臭いなの?! 違う、実はトップ脇。トップ脇こそ兄貴ジスタが自由になれる最高のポジショニング! ……スンスン……キタコレあたし天才! 兄貴の脇濃厚すぎ! 兄貴汁凝縮!! 兄貴活かせるのはあたしだけ! あたしレジスタとしての才能開花しちゃった!? はぁはぁ……兄貴こんなに動き回っていいの? サッカーってチームスポーツなんだよ? こんなんじゃ、こんなんじゃ……あたしのポゼッション高まりまくりぃっ!メタルルグスッ! 兄貴セルフィッシュすぎぃ! オナドリしすぎぃ! でも魅せまくりぃ! クリクリィ!!イラクリス! ハァッン!!……あたし、ブブゼラ吹いたぁぁ……コパアメリカに向けてクパァアメリカしちゃったぁぁ……」 高坂先輩の妹の桐乃ちゃんがカズダンスを踊っていました。 あまりに激しいダンスの為、足が三本に見えます。あれが日本代表のユニホームについているヤタガラスかぁ…… お風呂場の湯気が浴室に逃げていっているけど、桐乃ちゃんは気づいてないみたい。 というより、桐乃ちゃんから湯気がでているように見えるのは 私は今メガネがないから、よく見えないせいなのかなぁ? 桐乃ちゃんの発言からすると、くんくんしているのは高坂先輩のジャージみたいだ。 「ヤバいよコレ、マジヤバイ。兄貴のジャージ、スパイク…じゃなかった、スパイス効き過ぎ!! なんで土とか混じっちゃってるの? 発酵すんの? 兄菌酵素分解しちゃってんの? 兄貴って大地だったの? 大地に根ざした兄貴だったの? 四大元素突入しちゃった?! ……スンスン……はぁぁ、兄貴の頑張った汗が滲み出てるよぉ……きもぉ~ なんでこんなに頑張っちゃてんの? 妹に言われたからって、球技大会の練習しちゃう兄貴シスコン過ぎ。ウザッ いいとこ見せたいの? 妹に格好いいところ見せたくて頑張っちゃってんの? でも駄目じゃん、球技大会じゃあたし見に行けないじゃん。あの黒いのだけじゃん、兄貴のカッコイイ姿見られるのは。 マジ腐ってる。そんなことに気づかない兄貴の頭もだけど、3年制敷いてるこの国おかしくない? これメッセージでしょ? 兄貴からのメッセージ、暗号文! 兄貴、妹をエニグマ扱いとか本気!? あたしの気持ち解読してくれないのに、自分の気持ちだけ解読しろっての? 自己中過ぎっ! それはそれとして、つまり兄貴はあたしに日本を変えろって言ってる。学校制度の改革、むしろ兄妹婚是正への法改正! どんだけ変態? 兄貴、あたしと結婚したいの? 子供の頃の「あたしお兄ちゃんと結婚するー」って約束守るつもり? キモ! ウザ! キモ! ありえなくない、子供の頃の約束だよ? でも約束はやくそくだから結婚してあげる。 あたし兄貴と結婚する! むしろもう結婚した! だってもう10年以上同棲してんだから、事実婚決定じゃん? はぁぁぁ……あたし結婚しちゃったよぉ……兄貴に人生ボロボロにされちゃったぁぁ……責任とりなさいよね、馬鹿兄貴!!」 し……知らなかった…… 私とお兄ちゃんが結婚していたなんて!!! と、ということは、お兄ちゃんが高坂先輩と突き合ってるのは不倫!? 男同士の禁断の関係なのに、さらに不倫だなんて……うへっ…うへへへへへ……燃え上がるぅ…… こ、今年の冬はいい本が描けそう……ぐへっ それぞれ妻のいる二人の男が、サッカーを通じて肉体をぶつけ合い、激しいスライディングで重なり合い 怪我をさせてお見舞いに通う内に、愛に目覚め、妻に隠れて……むふふふふ……… シャアァァァァアァァ…… はっ?! 私ったらまたトリップしてた!? いつのまにか桐乃ちゃんも居なくなってるし…… はぁ…先輩の家のシャワーをいつまでも借りている訳にもいかないし、上がろう。 シャワーの蛇口を捻り、先輩が用意してくれたバスタオルで髪の水分を吸収していると 「……先輩のジャージ」 私はカゴに捨てられたジャージに視線を落とした。 同人誌に大切なのは1に妄想、2に妄想、3、4がなくて、5に経験だ。 ……ゴクッ 私は先輩のジャージを掴んでいた。 取材……これは取材。私はお兄ちゃんになりきって、先輩のジャージを嗅ぐ。 「高坂先輩……ううん、高坂………」 スンスン 酸っぱい匂いが私の鼻を抜けていった。 これが先輩の……違う、今の私はお兄ちゃん。 高坂の匂いを……京介の匂いを、京介の身体を想像しながら嗅ぐの。 私じゃない。私じゃないんだから…… スンスン 目を瞑る。 先輩の胸の中に、私がスッポリと収まっていく。 先輩はお兄ちゃんが私にするように、頭を撫でる。 でも、お兄ちゃんのゴツゴツした手とは違う、大きいけど優しい手。 そんな事を先輩の匂いを嗅ぎながら考える…… スンスン はあぁ……先輩の男臭い匂い…… お兄ちゃんもこんな感じなのかなぁ…… 今度比べてみよう…… スンスン 匂いを嗅いで確信した。絶対高坂先輩は攻めだ。 だって匂いだけでも私をこんなに責めてくるんだから。 先輩……先輩…… スンスン 先輩の匂い……五更さんも知らないだろうなぁ……うへへ……私だけ…… 高坂先輩……先輩……私とお兄ちゃんで兄妹丼しませんかぁ……うへへっ…… トントン トントン 「瀬菜ちゃん? 随分長い時間シャワー浴びているみたいだけど、何かあったのか? 困ったことがあったらお兄ちゃんがなんとかするぞ! 瀬菜ちゃーん!!」 うへっ……うへへへっっ…… トントン 「赤城、瀬菜はいつもこんなに長いのか?」 「そうだなぁ、いつもより15分ぐらい長いな」 「……そんな具体的な数字は聞いてねぇし、聞きたくなかった。 まあいい、取り敢えず中に入ってみるか。風呂場ん中に踏み込まなけりゃいいだろ」 「なっ! もし瀬菜ちゃんが着替え中ならどうするんだ! そんなイベント、お前にはさせられないぜ!!」 「着替え中なら、さっきの声に反応してるだろうが。いいか、開けるぞ!!」 ガラッ うへっ…うへへ……ぐふふっ…… 「せ、瀬菜ちゃん? どうして裸で高坂のジャージを嗅いでるの?」 「あ、赤城! 俺は裸なんて見てねぇぞ! 目瞑ってるだろ! ……は? 俺のジャージ!?」 うへっ…あへ……にゅふふへへ…… ………ん? あれ? どうしてお兄ちゃんと先輩がいるの? 二人で仲良くお風呂で洗いっこしにきたのかな? じゃあ私も早く着替えて二人の邪魔をしないようにしないと…… 私は自分が生まれたままの姿で、高坂先輩の汗が染みこんだジャージをクンカクンカしてたことに気がついた。 「め…め……」 「「め?」」 「メガネ割れろォォォオオォォォォオオォオォ!!」 知らなかった。女の子でも洗濯機を持ち上げることができるなんて。 火事場の馬鹿力ってやつなのかなぁ? 「つーかメガネ付けてるのお前じゃねぇか!!」 「分かったよ瀬菜ちゃん! 今日から俺はメガネかける!!」 お兄ちゃんと高坂先輩に、私の投げた洗濯機が飛んでいった。 「「ひでぶっ!?」」 おわり
https://w.atwiki.jp/vip_oreimo/pages/94.html
202 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 14 20 24.54 ID MjI6d/rI0 どうしてこうなった。 どうしてどうしてこうなった。 昨日、親父とお袋は子ども達を残して 2泊3日の温泉旅行へと連れ立っていった。 事の発端は桐乃。 2週間前くらいに夕食の席で突然こうぶち上げたのだ。 「お父さんとお母さんに、旅行をプレゼントさせてください」 贈り物をする人間の言葉としては些か下手に出ている感もあるが これはウチでは仕方ない。子は親に敬語。特に父親のいる前では。 それが我が家の侵されざる不文律なのだ。 「急になんだ」 「そ、そうよ、どうしたの、桐乃ったら」 動揺しているように見えるが母親は興奮を隠し切れていない。 ここらへん、親父とは違いがありすぎる。 203 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 14 21 17.24 ID MjI6d/rI0 「仕事で稼いだお金を自分のためだけに使う事に少し気が引けるというか…… 要は、親孝行しておきたいなって思ったの」 まぁこの子は、なんつって。お父さん聞きました?なんつって。 母親は1人舞い上がっている。 それに引き替えアンタは、と俺に一瞥くれるのも忘れない。 「あんまりすごい所は厳しいけど……お父さんが2日ぐらいお休み取れるなら どうかなって思ったんですが、どうですか?」 乗り気の母親は親父に熱い視線を注ぐ。 「……検討してみよう」 母さんの歓声が上がったのは言うまでもなかった。 そして翌日の夜には早くも有給休暇を取得してくるあたり、 親父は親父で内心喜んでいるのだろう。 可愛い娘の親孝行だからな。受け取ってやるのも愛情だ。 え、俺? いや、まぁ今はそれは置いとこうぜ。 そんな訳で、早速宿に連絡して予約完了。 (桐乃はすでにネットの評判などで宿を決めていたらしい。) そして冒頭。2人は水入らずで出かけていった。 204 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 14 22 05.31 ID MjI6d/rI0 平日だから俺も桐乃も学校がある。 朝食を食べ、それぞれ登校し、学校では麻奈実や赤城と話し、 放課後には部活に顔を出して黒猫や瀬菜たちと次の企画について論じ、 帰宅した頃には時計は19時を回ろうとしていた。 「ただいまー、っと」 いつものように靴を脱ぎ、麦茶を飲もうとダイニングキッチンのドアを開けると 「お、おかえり……」 台所にはエプロンを付けた桐乃が立っていた。 「お前、何してんの?」 状況を理解できず空っぽになった頭ではそんな言葉が限界で。 「は、はぁ? 夕食の準備に決まってんじゃん。それとも何? アンタが作るってーの? 何が入ってるか分かんなくて怖いっつーの!」 いやまぁね。確かにね。俺の質問も悪かったよ。 そりゃあそうだよ。台所でエプロンつけて、包丁で野菜切ってて 何してんのって、見りゃ分かるよね。うん、俺が馬鹿だった。 でもさ。桐乃だぜ? ウチは専業主婦のお袋がいたからってせいもあるけど 桐乃が料理してるところなんて見たことなかったし、想像もできなかったんだよ。 じゃあお前自分で作るのかって言われたら多分カップ麺だったと思うけどさ。 205 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 14 23 17.34 ID MjI6d/rI0 「何よ。じゃあアンタの分はいらないのね」 「いや、いる、いるよ!食べますって!」 「ふ、ふーん。食べたいんだ……アタシの手料理……ふーん……」 なんだよ。食べて良いのか悪いのか分かりづらいヤツだな。 ただ、料理している桐乃の邪魔をするのも悪いかなと思ったんで麦茶はキャンセルした。 「じゃあ、部屋にいるからな」 「う、うん。出来たら、呼ぶから」 「おう」 ……桐乃の手料理、か。完璧人間のアイツの事だし。 結構上手なのかもしんねえな。 まぁあんまり期待してそうでもなかった時が辛いし。 毎日20年近く作り続ける母親と比べるのも酷だし。 あんまり上を望むのは止めておこうか。 部屋に入り、着替えを済ませて適当に本なんぞ読んでいると 唐突にドアがノックされた。 「できたよ」 それだけ言って桐乃は1階に降りてしまったようだ。 さてさて。鬼が出るか蛇が出るか。 ……ん? これじゃどっちが出てもダメじゃん。 そんな事を思いながら階段を降りるとなんとも良い香りが鼻腔をくすぐる。 そして食欲はドアを開けると嗅覚だけじゃなく、視覚によっても加速した。 206 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 14 24 24.21 ID MjI6d/rI0 「お、おぉっ……」 桐乃は先に椅子に座ってこちらを見ている。 「は、早く席ついたら?」 「あ、ああ」 テーブルに並んでいるのはどれも美味そうだ。 魚の煮付け、おひたし、根野菜の煮物に厚焼き玉子、味噌汁まで完備されている。 ちらりと桐乃を見ると、ジッとこちらを見ている。 これは、先に食べろという事なのか? 「い、いただき、ます……」 「……召し上がれ」 やはり俺が先に食べるようだ。ええい、ままよ! まず味噌汁。口元に近づけるとふわりと出汁と味噌の良い香り。 具は豆腐とわかめか。ちゃんと綺麗に小さく切り揃えられている。 「美味い」 「ほ、ほん……ゴホン。お味噌汁だけじゃなくて他のも食べなさいよ」 言われるまでもない。 俺は魚の煮付けに箸を伸ばした。 そっと箸を入れると身はほろりと解けるように切れた。 断面から新しく立ち上る湯気がまた食欲をそそるねえ。 207 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 14 25 25.14 ID MjI6d/rI0 「これも美味い」 「え、あ、あの……ほんと?」 「嘘言ってどーすんだよ。すげーうめぇっての。お袋より美味いかもしんねーぞ」 桐乃は顔を光り輝かせて喜んでいるように見えた。 そんなバカな。 桐乃が、俺の妹が、こんなに可愛いわけがない……! 安心したのかようやく桐乃もご飯を食べ始めたのだが、 先ほどの顔を見て何故か顔が熱を帯びているのを感じた俺は 急いで桐乃の手料理をかっ込んだ。 「そんな慌てなくても……」 「う、うるせえ。美味いから食が進むんだよ!悪いか!」 「わ、わるくない……」 食事を食べきって、俺は自分の部屋のベッドに逃げるように飛び込んだ。 208 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 14 26 31.79 ID MjI6d/rI0 あれ以上はヤバイ。桐乃ヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。 まず可愛い。もう可愛いなんてもんじゃない。超可愛い。 可愛いとかっても「あやせと同じくらい?」 とか、もう、そういうレベルじゃない。 そこまで暴走しかけた俺は先ほどの事を思い出した。 あんまり美味くて、良い嫁になれるみたいな事を口走りそうになって でも咄嗟に急ブレーキを踏んだ。 嫁って。誰のだよ、畜生。って訳だ。 そりゃ兄妹で結婚なんてできる訳ないしさ。 いや、何考えてるんだよ俺は。これじゃあ本当に変態じゃねえか! でも意識しないようって考えれば考えるほど意識しちまうんだよ。 長い睫毛とか、柔らかそうな赤い頬っぺたとか、滑らかな肌とか、 ふっくらした口唇とか、さらさらした髪とか、すらりと伸びた手足とか、 陸上やって引き締まったお尻とか、キュッとくびれた腰とか、 その割にちゃっかり出てる胸とかさ! イカン。イカンぞ。これでは妹の身体に発情する変態と罵られても言い返せない! どうすんだよ。どうすんのよ。どうすんだよコレ! あーもう、ヌくにも今ヌいたら妹でヌいたみたいな事になって、 そんな事になったら自己嫌悪ハンパねぇぞ!? 「ねえ、兄貴?」 「きっ、桐乃!?」 気がつくと、そこにはドアを開けた桐乃の姿があった。 209 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 14 27 31.38 ID MjI6d/rI0 「どうかしたの……?」 「えっ、あ……いや……」 言えるか。お前に発情しちまったなんてよ。 「ほ、ホントはアタシの作ったご飯、美味しくなかった?」 「な、なんでそうなるんだよ」 「だって……食べ終わるなり部屋に戻ってさ、ちょっと心配になって来てみても返事はないし ドア開けたらなんか苦しそうに悶えてるし……」 桐乃の表情は珍しくも本当に俺を心配しているように見えて。 余計罪悪感でいっぱいになった。 「薬持ってこようか?」 「い、いや」 そこまで言いかけて気がついた。 桐乃が、すぐ側に、立っていた。 「桐乃……?」 なんてこった。俺、どんだけ動揺してんだよ。 こんなに側に来るまで接近に気づかないなんてよ。 「あ、兄貴……それ……」 「っ……!」 そう。罪悪感とか自己嫌悪とか関係なく。 俺のそれはギンギンにいきり立っていたのだ。 210 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 14 28 13.42 ID MjI6d/rI0 「え、えっ?」 恥ずかしくて死にそうだ。 「あ、兄貴……」 実の兄が勃起してるところを見せちまうとは……どんだけ気まずいんだよ。 あーあ。これでまた変態兄貴に逆戻りか。つーかもう2度と口きかなくなるかもな……。ははは……。 というか。いつもの桐乃なら変態とか何とか叫んで一撃かましてさっさと退散するだろうに なんで今日に限ってそういう反応がないんだ? そんな事を考えていると、何故か桐乃は俺の横に座った。 「き、桐乃? お前何して……」 「あ、あのさ。もしかしてそれ……」 生唾を飲み込む音は、果たしてどちらのものだったのか。 「アタシに、興奮してくれたの?」 「な、あ……」 「そうだとしたら、……嬉しいよ」 そして、桐乃は、俺の口唇に、柔らかい口唇を優しく押し付けてきた。 もう、限界だった。 俺は、桐乃と、そのままベッドに倒れこんだ。 212 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 14 29 14.37 ID MjI6d/rI0 すーすーと可愛い寝息を立てて寝ている桐乃を見る。 コイツってばホントに端整な顔立ちしてるよな。 同じ両親から生まれてどうしてこうも違うかねえ……。 2人とも生まれたままの姿。 2人とも同じ両親から生まれた子ども。 これは決して叶わない、叶ってはいけない想いだったはずだ。 もしかして、桐乃は、昔から俺の事を……。 そんな事を考えながら、俺もまた、深い眠りへとつくのだった。 朝。目覚ましの音と共に起きると、目の前には桐乃の顔があった。 「おはよう、兄貴」 「ああ、おはよう。桐乃。つか起きてたのかよ」 「まあね。でも、ベッドの中で好きな人とおはようって挨拶したかったんだ」 言ってから真っ赤になる桐乃。言われた俺ももちろん真っ赤なんだが。 くすぐったいような、甘ったるい空気が俺の部屋に満ちている。 「学校行かないとな」 「うん。本当は、兄貴と一日ずっと一緒にいたいけど。ダメだよね」 「……それも悪くないけど、親が不在でもきちっとしないとな」 お互いに軽くシャワーして身支度を整え、桐乃の用意した朝食を取る。 やっぱり桐乃の作ったご飯は美味かった。 昼休み。一通のメールはあやせから。 放課後公園で会えますか、という文面だった。 216 以下、名無しにか - 2010/11/12(金) 15 12 23.02 ID MjI6d/rI0 ……話の内容が目に見えている気がしたが、だがいつかは通らなきゃいけないだろう。 話せばあやせも分かってくれる、と、良いな。という超希望的観測を胸に。 公園に着いた時にはまだあやせは到着していなかったようだが、 代わりにメールを1通受信した。 『ちょっとだけ遅くなります』 律儀なヤツだ。俺はどのぐらいかだけ聞いておこうと返信メールを 「遅くなりました」 そんな声が、俺の背後から聞こえて。 なんだか背中が熱くて。ぬるぬるしている。 肩が何かに強くぶつかった。 「手を出したら殺しますって、言いましたよね。 ああ、ごめんなさい」 「もう、聞こえていませんよね」 終わり
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/33202.html
すきっぷしーけんすみゅーじっく【登録タグ Easy Pop GUMI す 初音ミク 巡音ルカ 曲】 作詞:Easy Pop 作曲:Easy Pop 編曲:Easy Pop 唄:巡音ルカ・GUMI・初音ミク 曲紹介 はずむような イラストを seri氏 が、動画を STEP氏 が手掛ける。 歌詞 心躍らせてよ このまま その音で… いつものように 眠気と戦う朝 ニュースの声 聞き流しながら ぐるぐる廻ってる 時代の流れも あの日の 間違えも 心躍らせてよ このまま その音で 歌もダンスもへたくそでもいい 好きなように騒ごう Oh... Skip Skip Sequence Music Oh... Skip Skip Sequence 自分なんて どうせ何もできない ふさぎ込むな とは言わないけど 人はみな違って あたりまえ そうじゃない? キレイごとじゃなくて 自分にしか流せない涙 できない表情 恥ずかしいと思うことだって 間違ってない うまくやれなかった時でも それでいい 未来に繋がらないことなんて 何一つ無い 周りに流されて 無理をして 仕方ない事かもだけど 自分にしか持ってない何かが 誰にでもあるという事 さぁ 踊りましょう 歌いながら はずむような さぁ 進みましょう ゆっくりでいい 手をとって 心躍らせてよ このまま その音で 歌もダンスもへたくそでもいい 好きなように騒ごう Oh... Skip Skip Sequence Music Oh... Skip Skip Sequence Music コメント おおおお待ってた -- 名無しさん (2015-10-22 00 24 43) もっと評価されるべき -- 怜愛 (2015-11-08 18 00 11) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/596.html
http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1330012485/246-254 ※10巻ネタバレを含みますので、10巻見てない方はコテハンをNGで 京介×あやせ 10巻直後より そんなあなたの事が好きです。 新垣あやせ。 俺の妹、桐乃のクラスメイト。ファションモデル仲間であり、モデルだけあって見た目は極上。 俺の好みにクリティカルヒットを生み出すオーバーキルな容姿――反面、性格に難があり、 人に手錠を掛けて火で炙るなんて事をしでかすとんでもない女。過去を思い返すと痛い目にばかり合わされていて、 彼女が包丁を持っているだけで、心が落ち着かなくなる。そういう女の子。 関係は、桐乃の友達、という桐乃を介さないと成り立たない関係、だった。 その関係が変わるだろう一言を、あやせは言った。 「……俺の事、嫌いだったんじゃないのか」 ずっとずっと、そう言っていた筈だ。 「ええ、嫌いですよ」 あやせは続けて言う。 「でも、大好きなんです」 笑顔で、こちらをしっかりと見て。 「……さっきより、大がついたな」 「あ、ほんとですね」 対して、俺はその笑顔が見られず目を逸らしてしまう。 告白されて。好きと言われて。胸は確かに高鳴る。 けど、不思議と動揺はなく、まるで想定していたかの様な。 そういう心境だった。 何より、まず俺の脳裏に浮かんだのは―― 「……桐乃ですね」 あやせは、俺の心を見透かすかのように俺を見つめる。 「桐乃との約束が、お兄さんにはありますから」 そう。俺は、桐乃と約束をしたのだ。桐乃との関係が一旦落ち着くまで、俺は新たな彼女を作らない。そう、決めた。だから―― 「そうだ。俺は桐乃と約束をしたんだ。だから、」 「付き合う事は出来ない、とあなたはそういうんですね」 「ああ、悪い……」 約束の事は誰に聞いたのかは知らないが、あやせは知っている。その事を知った上で、 思いを告げてくれたのだろうかと考えると、切ない感情が俺の胸を締め付ける。 例え付き合えなくても、と。 「そういう事だから、その気持ちは、嬉しいんだが……」 「どういう事です?」 「いや、だから、桐乃と約束があるから」 「わたしはしてませんよ?」 ん? 「わたしは、桐乃と約束をしてません。だから、わたしが誰かと付き合う事は、問題が無い筈です」 んん? 「いや待て、でも俺は約束を――」 「――なぜあなたの約束を、わたしが守る必要があるんですか?」 そう言われると、確かに無い。 ならあやせが誰と付きあおうと、いや、俺と付きあおうと問題ないのか。 いや、おかしいだろう。そうすると、俺が桐乃との約束を破ってしまう。 あれ、でもあやせは何か約束を破った事になるのか? 「な、無いな」 そう、これは俺の約束であってあやせの約束ではない。 俺にとって不都合であっても、あやせにとって不都合では無い。 あれ、待て。何かがおかしい。俺は思考を纏めようとした所で、 「そうでしょう。なら問題はありません。わたしは、あなたが好きです。 お兄さんが好きなんです。そして、わたしはあなたのそばにいたい」 畳み掛けるように、あやせは言う。 「例え、桐乃を敵に回したとしても」 それは、 「駄目だ!」 認められない。俺が、桐乃から親友を奪うなんて、そんな事は間違えている。 「……」 「あやせは、桐乃の親友だろう? そうだ。確か言っていたじゃないか」 前に黒猫との口論で。 「桐乃が嫌がっている事をするのなら、親友は失格だって――」 ――そうか、だから敵に回しても。 「――親友の座を引いても、か?」 そういう事なのか? あやせは、あくまで毅然としたまま、こちらを見続けている。 桐乃から嫌われる事を、あんなに恐れていたのに。 どういう心境の変化だ。 「いえ、違います」 あやせは、はっきりと言った。 「わたしは、桐乃の親友です。それは、変わることはないでしょう」 きっぱりと。宣言した。 「だからこそ、わたしはそれを理由に身を引いたりしません。そしてお兄さんの一番も決して渡したくありません。それが、桐乃の嫌がる事であっても」 その強い目の輝きは、誰かを思い出す。そう。かつて、妹が浮かべた光。 自分の趣味も、親友も、どちらも手に入れると言った妹の。 「わたしは、桐乃も、お兄さんも、どちらも手に入れます」 正直に言おう。 その宣言の前に、俺はどうしようもなく、惹かれてしまった。 妹との約束を、確かに破棄してしまいそうになるぐらいに。 強さ。そうか、あやせは、桐乃と同じフィールドで戦ってきたんだ。 モデルとして、時にライバルであったりした筈だ。 親友であり、戦友である彼女は、あの桐乃とタメを張れるぐらいに、理不尽で、そして、どこまでも努力家なのだろう。 そして、同時に悟った。 俺は、妹にもずっとずっと惹かれていたのだ。あの目の輝きに。 成し遂げるというその強さに。 その強さを、輝きを失わせるぐらいであれば、俺なんて幾ら罵倒されたっていい。 笑顔でいてくれるなら、それでいい。 その妹に対して抱いていた想いが、そのままあやせへと向かう。 何故、蹴られても、罵倒されても、俺はあやせの好感度が落ちなかったのか。 桐乃と似ているからだ。 好きな人、好きな事の為には努力を惜しまない。 必ず、手に入れるべきものは手に入れる。 「あやせ……」 「お兄さん……」 この時は、桐乃との約束を破棄してしまってもいい、と。 そのぐらいに心を動かせされていた。 だから、俺はあやせを見て。 そして、そこにあるヘアピンに気付いた。 桐乃から、貰ったというそのヘアピン。 それは何故、貰ったものか。 桐乃が大事にしていて、数がもう残り少ないヘアピン。 なのにそれを何故あげたのか。 それは、それは。 京介の邪魔をすんなぁっ! 「……ッ!」 慌てて、一歩引く。 今、何をしようとしていた。 あやせの肩に手を掛けて、引き寄せて。 今、何をしようとしていた、高坂京介! 「……」 静かな目で、俺を見続けるあやせ。 その視線を見ていられずに俺は、目を背ける。 「わ、悪い。やっぱ、あれだ。うん、考えさせてくれ」 この期に及んで考えさせてくれ、だなんて我ながら情けない。 思いっきり好感度を下げてしまった気がするが、それはそれで仕方ないのだろう。まだまだ、未完成な男なのだ、高坂京介という男は。 恐る恐るあやせの方を見る。 「いいですよ」 予想に反して、あやせは笑っていた。 「ふふっ、確実に断られるという状況から、考えて貰える状況まで進展したんですよ、お兄さん」 目を細めて、嬉しそうにこちらを見て、ウインクをして見せて。 「どう考えても、これはわたしの勝ちでしょう。楽しみにしていてくださいね」 そう言いながら、あやせは踵を返していく。 「わたし、桐乃に負けませんから」 次の日。 俺は風邪を引いていた。馬鹿は風邪を引かないと言われてる事から、風邪を引いた俺は決して馬鹿ではない、と言える所ではあったが、 「あんた、本当バカ? 何、あれ? ちょっと普通に引いたんですケド。何、死にたいの? 殺してあげようか?」 等と妹に罵倒されても全くもって言い返せないのが今の心境である。 何があったか、少し思い出してみよう。 あれから俺はあやせを追いかける事が出来ず、ただ呆然とそこに立ち尽くしていた。 頭の中がぐちゃぐちゃして、とても思考が纏まらず、後悔なり懺悔なり何なりで青ざめたりしながら、 しかし、心が火を付けられたように熱かった。 あやせ。見た目は、とても好みな女性。そして、性格もまた好みだったのだと気付いた、女性。 黒猫に告白された時。そしてデートを重ねた日々。その時も胸は高鳴り心は熱かった。 だが、あの時の心は暖かい、何か湯たんぽのようなそういう熱さだった。 なら今のこの燃え尽くすような熱さは何なのか。 余りに熱く、恐らく顔も真っ赤になっているだろうこの状態をどうにか脱したくて、俺はそれから家に帰り、 もう冬にもなろうという時期なのに関わらず、風呂に水を張り、そこに身を沈めた。 そこから数十分後。 寒さの余りガタガタ浴室で震えて気を失いそうになってる所を、桐乃に発見され、母親に自殺の疑いをかけられ、父親に無言でため息をつかれ、 そのまま服を着せされ、布団に連行され、気を失うようにして眠り。 今に至るという訳だ。 一晩寝た所で、寧ろより悪化していて、歩きまわる事はおろか、満足に立つことさえ出来ない状態の俺の隣で、最大ボリュームで延々と俺を罵倒し続けているのが桐乃。 流石に文句を言うだけではなく、お粥を持ってきてくれたり、額のタオルを交換してくれたりと中々甲斐甲斐しく面倒を見てくれてはいるのだが、 ここまで延々と罵倒されていると休まるものも休まらない。 「……桐乃」 「ん、何かして欲しいの? ほら言ってみ?」 黙れ、とはいえなかった。こうして俺が声をかけると直ぐに心配そうにこちらを覗きこみやがるのだ、この女は。そんな顔を向けてくる奴に、文句など言えようもない。 何より、俺自身、バカな事をまるで否定出来ない訳で。 「なんでもない」 「ん、分かった」 まるで母親のような優しい微笑みを俺に向けて、桐乃はテーブルにノートパソコンへと視線を戻す。 ノートパソコンに映しだされているのは当然、エロゲだ。 桐乃曰く、人を看病するのならこのゲームは必須というものらしく、展開としては看護師である妹が、兄を甲斐甲斐しく奉仕する作品な訳だが、間違えても病人の兄の側で妹が嬉々としてプレイするものではないと思うんだが。 そんなゲームをしながら、ブツブツ俺への文句を言いつつ、会話の端々に「菜々ちゃんかわいー!」だの「うひょー、たまんねえこれ」とか織り交ぜてくるものだから、ただの罵倒よりもどっと精神的に疲れていく訳だが。 しかしこれはこれで悪くない、なんて思うほどドMに染まった訳ではないが、まあ、こいつらしいな、と思って少し、心が暖かくなる部分もあり、とりあえず何も言うまいと思う訳だ。 「はぁはぁ、あーもう! 菜々ちゃん最高、どうやれば画面の中に入れるかな、うはっ、駄目だ、鼻血でそ、うひひ」 「やっぱ戻れてめえ!」 // 夜。 熱が大分引いてきて、自分で歩けるようには回復してきたので、桐乃を自分の部屋に帰し、一人安静してた訳だが、昼にひたすら寝ていたせいか、目が冴えてしまっていた。 とはいえ夜中なので、徘徊する訳にも行かず、PCを起動させる程の気力はなく、やる事はせいぜい、頭を使って思考する事だけだ。 そして当然考えるべき事は、昨日の事だ。 あやせ。もう昨日の事は、桐乃と話したんだろうか。その割には、桐乃に変わった所は見受けられなかった。ならまだ黙っているのか。しかし、いつかは話すのだろう。その時、桐乃はどういう反応を返すのだろうか。 怒るのだろうか、それとも――。 携帯の着信音が部屋に鳴り響く。 桐乃が取りやすい位置に置いておいてくれたので、特に動かず携帯を手に取る。 何となく予感はしていたが、あやせからのメールだった。 文面としては、昨日の事は特に触れず、桐乃から聞いたのか風邪の事を心配するメール。 結果が出てほっとしたのが今頃出たのかも知れない等と風邪の原因を推測しているが、まさかあやせとの事が原因だとは言えず、どう返したものか、と頭を悩ませていると、また着信音が鳴った。 またあやせからのメールだった。 なんだろと思い、開いてみると添付ファイルがついていた。 「ぶはっ!」 あ、あやせ、いや、てめ、俺を殺す気か、つか、なんで、えええ?! そこには、ナース姿のあやせの画像がついていた。 何故あやせがナースの服を持っているのか、そしてどういう意図でこの画像を送ってきたのか分からないが、少なくともせっかく下がりつつあった俺の体温が再び向上したのは間違いない。 別にナースフェチとかそんなんじゃないんだが、これは破壊力がありすぎる。 無意識に画像を保存してしまい、尚且つ待受にしてしまいそうになるぐらいヤバい画像だった。 「……何を考えてやがるんだ」 桐乃に負けないとは言っていたが、何、そういうバトル? こうあやせには健全な方向性で頑張って欲しかったがコスプレかよ。 桐乃も前にメイド服とか割とノリノリで着ていたが、流石にナース服は着てこなかったぜ。 いや、ナース服とメイド服と言ったら、後者の方がアブノーマルな感触はあるが……。 つか、返信しづれえ。 どう返信すればいいんだ。この最初のメールの返信で作ってた、そんな心配しなくても大丈夫、ありがとうなとかいう平凡なメールをこれに返していいのか? だからといって、ナース服、最高でした、とか返したらセクハラで訴えられそうだしな……。 「ナース服、最高でした、と」 ピ、送信。 はっ! いかん、セクハラを辞めると決意した筈なのに、ついそのまま送ってしまった! いやでも待て待て、俺は単純に褒めただけだ。セクハラじゃない。そもそも送ってきたのはあやせだ。俺が欲しかった訳じゃない。俺は悪くない筈だ。 トゥルルル。 電 話 か か っ て き た ! どうしよう、と悩んでみたが、取らないと取らないとで怒られそうだ。 俺、病人なんだぜ、なんでこんな悩ませる。 ふぅ、と息を吐き、覚悟を決めて電話に出る。 「はい、高坂です」 「わたし、あやせです。あなたの家の前にいます」 「ひぃっ!」 メリーさんかよっ! 「冗談です」 しかも冗談かよ。慌てて飛び起きて、窓を覗きにいってしまったじゃないか。 無論、ときめきとかじゃなく、恐怖ゆえの行動だ。 「ちょ、ちょっとお兄さん。なんかドタバタした音が聞こえましたけど、まさか窓に確認しにいってませんよね?」 「……月が綺麗だな」 「月が綺麗って……、あ、あれですか、そのI love youの」 「違うっ! なんでこの流れでそんなロマンチックな解釈が出来る!」 「そうですか。残念です」 しゅんとした解答が返ってくる。 ……あれ? いつもであれば、「なんて破廉恥な事を言い出すんですか、この変態!」とか続く筈なんだが。 「な、なあ、あやせ?」 「月が綺麗ですね」 ぐはっ! こ、この流れでこの台詞、だと……! 「あ、ああ。そ、それよりもあやせ?」 「わたしがお兄さんに告白してる事よりも重大な案件ですか?」 「…………」 「あ、もしかして知らないんですか。月が綺麗ですね、というのはですね。そ、その、あ、愛し」 「知ってるから! 大丈夫、知ってます!」 この女、前々から恐ろしいとは思っていたが、今、別の意味で戦慄している。 「そうですか。ところで……」 あやせは、ここで会話を一旦切り、そして真剣な口調に変わった。 「わたし、あなたの家の前にいます」 月を見ていた視点を、下げる。 暗闇。そこに携帯の明かりでぼんやりと映し出される女性の姿。 同じく、月を見上げていた視線を、こちらに向けて。 「家に、入れてくれますか?」